相鉄ラリホー(314)

・・・

男「・・・・・・」

『間もなく、かしわ台・・・かしわ台です』

男「・・・はっ」

男「あぁ・・・また寝過ごしちまった・・・」

<ヴーーーーーーーーー

男「やべ、電話鳴ってる・・・うわぁ、立川先輩か・・・はい、もし」

『二見ィ!お前いつまで待たせるつもりだ!?』

男「あ・・・つい寝過ごして・・・」

『お前が肉買ってこないと始められないだろーがぁ!!』

男「あー電車の中だから一旦切ります」

『おい、待っ・・・』

二見「やっべー、先輩超怒ってんな・・・」

二見「・・・・・よし、もういっそ立ってよう。そうだ、そうすれば眠らないからな」

二見「・・・それにしても」

二見「絶好の花見日和だ・・・」

-こども自然公園-

柴田「・・・あ、あれ二見じゃね?」

立川「遅いっ!!」

二見「すんません、心地よい日差しに包まれ夢の世界に旅だってまんた」

立川「お前なぁ、バーベキューやるってんだから肉がないと始められないだろ!!」

柴田「マジ空きっ腹で酒飲んだから、みんな酔うのが早いこと早いこと。見てみろよ、アレ」

見ると、何人かの仲間たちが既に真っ赤になって近くにいる子供と遊んでいるのが見える。

二見「ははは、楽しそうじゃん。おーいお前たち、事案だけは起こすなよー!」

立川「おい、反省はなしかこの野郎」

二見「ちゃんと肉は買ってきたでしょうが。バイト明けに無理やり誘っといて、文句言わないでくださいよ。ほい、これ」

柴田「すげぇ!!これ牛肉何Kgあるんだよ!?」

二見「2kgある。相模大塚の肉のハナマサで買ってきた。あー、悪いが先にちょっと一服させてくれ」

柴田「ていうかベーコンwww丸のままかよwww」

立川「おい二見、遅れてきたんだからお前ペナルティな」

二見「んー・・・あ、火がねぇや。柴田ー、火ぃ貸してー」

立川「お前には今から・・・」

柴田「火ぃ?このガスバーナーでいい?」

二見「なんでそんなもん持ってきてるんだよ」

柴田「炭の火おこし用に決まってんだろ!ほら」カチッ

立川「ちょっと・・・」

二見「熱っ!!おい、あんま近づけんな!前髪燃える!!」チリチリチリ

柴田「汚物は消毒だあああああああ!!」ボー

二見「おい馬鹿やめろ!煙草が燃え尽きる!!ただでさえ値上がりして貴重になったというのに!!」

立川「あの・・・」

立川「ふ、二見ィ!!」

二見「ったく・・・あ、なんか言いました?立川先輩」

立川「なんか言いました?じゃないっつーの!!」

二見「スゥー・・・・」

立川「お前、遅れてきたんだからペナルティだ!!今からお前は」

二見「ぷはー」モクモク

立川「うっ!げほっ、げほぉっ!!ばかやめろ!!」

二見「あっ、ごめんなさい。風向きのせいですかね・・・?」

立川「ぐうっ、このヤロー。もう絶対に許さ・・・」

二見「ぷふぅー」モクモク

立川「げふう!げふんっ!!や、やめろって!!」

二見「副流煙は身体に悪いから近づかない方がいいですよ」

立川「お前、先輩をなんだと思っ」

二見「おーいお前たちー!肉だぞおおおおおお!」

男1「うわあああああああああああ肉だああああああああ!!」

男2「待ってましたああああああああああああああ!!」

男3「二見さん素敵抱いてえええええええええ!!」

立川「・・・」

・・・

二見「いやぁ、それにしても満開だな」

柴田「天気もいいしなー。よきかなよきかな」

男1「おい!このベーコンでけぇな!!」

男2「ああ!でけぇ!!」

男3「敷地面積500ヘクタールくらいありそうだな!!」

立川「・・・あのさぁ、二見はまず皆に謝っ」

男1「よし、串刺しにしようぜ!!」

男2「素敵!豚の丸焼きみたい!!」

男3「あのくるくる回す奴持ってこようぜ!!」

二見「だからなんでそんなもんがあるんだよwww」

立川「・・・もういいや」

柴田「・・・じゃ、二見も来たことだし気を取り直して・・・カンパーイ!!」

一同「カンパーイ!!」

二見「って、お前ら皆もうベロンベロンじゃねえかwww」

立川「・・・お、おい二見!遅れた罰だ!!お前、近くの業務スーパーで酒買ってこい!ま、まぁお前を選んだ私の責任でもあるし、手伝っ・・」

二見「スハー」モクモク

立川「えふん、げっほ!!も、もうやめてくれぇ!!」(涙目

柴田「おい二見、あんまり立川先輩いじめるなよ」

二見「いじめてないよ、風向きのせいだよ」

柴田「先輩涙目になってるじゃねえか」

二見「煙のせいだろ?」

立川「こ、このやろ・・・」ギリギリ

柴田「だけど、本当にもう酒がないな。よし、ちょっくら調達してくるか」

二見「ん?そうか。じゃ、俺も手伝うよ」

立川「え、ちょ・・・」

二見「おーいお前達!何が飲みたい!?」

男1「スミノフー!!」

男2「スピリタス!」

男3「お前死ぬ気か!?」

二見「おーし、じゃあ適当に見繕って買ってくるわ!!・・・先輩は?なんか飲みたいものは?」

立川「あ、わ、私は・・・もういい、知らん!!」

・・・

柴田「買ってきたぞー」

男1「やべえ、やべえよお!!このままじゃ俺、ベーコンの匂いでおかしくなっちまうよぉ!!」ビクンビクン

男2「まだだ、待て、ステイ!!」ビシッ

男3「震えているだと・・・この俺が・・・!?」ガタガタ

二見「こいつら相当出来上がってんなぁ」

立川「・・・」

二見「あ、先輩。とりあえず缶チューハイいくつか買ってきたんで、この中から選ん・・・」

立川「・・・」ガシッ

二見「え、ちょっとそれジョークで買ったスピリタス・・・」

立川「うるせぇ」

二見「ちょ・・・止めといたほうがいいですって」

立川「うるせぇって言ってんだろ」ゴク

立川「」

二見「あぁ・・・ほら言わんこっちゃない・・・」

・・・

柴田「よーし、そろそろ撤収するぞー」

←消し炭になったベーコン

男1「俺が・・・俺があの時手を伸ばしていれば・・・」

男2「違う・・・俺があの時ステイさえかけていなければ・・・」

男3「もういいんだ・・・誰も悪くない・・・誰も・・・自分を責めるのはもうよせ・・・」

二見「何やってんのお前ら」

柴田「よし、お前ら忘れ物すんなよー・・・さて、問題は」

立川「」

柴田「どうするよ、これ?」

二見「正直、遺棄したい」

柴田「まぁ気持ちは分からんでもないが、そうもいかんだろ」

柴田「ていうかこれ・・・ちゃんと生きてるよな?」

二見「ああ。さっきから酒臭い吐息を撒き散らしてる。こりゃ、下手に火近づけたら引火するかもしれんぞ」

柴田「どんだけだよ・・・」

二見「困ったな。酔いがさめるまで様子を見るにしても、もう暗くなるぞ」

柴田「仕方ねぇ、駅までおぶってくか」

二見「やれやれ・・・花見で酔いつぶれるとかダメな大人の典型だな」

立川「おごふぅ・・・」

二見「お前、そろそろ代わってくれよ。この火気厳禁女担いでちゃ、一服も出来ねぇ」

柴田「いや無理だよ、俺ガスバーナーとかあのベーコン焼いてたぐるぐる回す奴とか持ってるもん・・・」

二見「ていうかそれお前のなのかよ」

二見「おらぁ先輩起きてくださいよぉ」ユッサユッサ

立川「ああああぁぁ・・・やめろ揺らすな・・・」

二見「やれやれ・・・このまま駅の救護室にぶち込んじまうか」

柴田「いや駅員さんに迷惑だろ・・・お前、帰りの電車向き同じなんだから送ってってやれよ」

二見「電車の中で吐き散らかされたらやってられんぞ」

立川「う・・・ぷ」ブルブル

柴田「あ、おい!それまずい兆候じゃないのか?」

二見「うわ本当だ!やべぇ離れろ!!」

立川「・・・」ガシッ

二見「ちょっ、服掴まれてる!柴田ぁ!柴田あああああ!」

柴田(その時、二見は最高に悲しそうな顔で俺のことを見てきたんだ。きっと、助けてほしかったんだろうな)

柴田(でも俺・・・ガスバーナーとか、ぐるぐる回す奴とか持ってたから・・・アイツに、手を差し伸べてやれなくて・・・)

立川「えれえれえれえれえれ」

二見「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

柴田「すごい・・・立川先輩、マーライオンみたくなってる・・・」

二見「見てないで助けてくれえええええええ!!」

立川「ご、ごめ・・・おえええぇぇ」

二見「ひいいいいいいいい!!」

柴田「」

・・・

駅員「これ・・・とりあえずシャツだけでも」

二見「た、助かります・・・」

立川「」グッタリ

駅員「ジャケット、どうします?拭くだけじゃとれないでしょこれ・・・」

二見「ちょ、ちょっと濯がせてください・・・」

結局彼は、救護室で駅員がコンビニで買ってきたシャツに着替え、タクシーを呼んで家路についた。

・・・

立川「・・・はっ」

二見「起きましたかこの野郎」

立川「えっ・・・あ、あれ?ここどこ・・・」

二見「俺の部屋ですよ」

立川「えっ」

立川「そういえばなんで・・・あれ、昨日・・・うわ、最悪」

二見「こっちのセリフだっちゅーの」

立川「やべぇ、口ん中気持ち悪ぃ・・・」

二見「ほらぁ、あっちに洗面台あるからさっさと綺麗にしてきてくださいよゲロ川先輩」

立川「おおう・・・」

・・・

二見「大体飲みすぎなんですよ、アンタ」

立川「面目ない・・・っていうか、お前のせいだろ!」

二見「あぁん?」

立川「ごめん」

二見「クリーニング代、2000円」

立川「」

二見「あと、そのシーツもう使いたくないんでシーツ代、3000円」

立川「」

二見「耳を揃えて払ってもらいましょうか」

立川「・・・ふ、ふざけるなー!ボッタクリすぎだろう!?」

二見「ふざけてるのはどっちですか。駅の構内でマーライオンみたいになってたくせに」

立川「」

二見「周りの人が何人か貰いそうになってたっつーの」

立川「」

二見「あ、あと二俣川から海老名までのタクシー代も貰いましょうか」

立川「いや・・・いやぁ・・・おねがい、許して・・・・」ガクガク

二見「許さん」

立川「うわああああああああああああ!!」

立川「」

二見「5,6,7・・・8千円か。ちょっと足りないけど、まぁこんなもんか」

立川「ひどい・・・」←すってんてん

二見「ん、じゃあ払うもん払ったらさっさと帰ってください」

立川「こ、このやろう!この恨み、絶対忘れんからな!!」

二見「心配するな、俺も忘れん。不足分はあとできっちり請求しにいく」

立川「ひいぃ!!」ガタガタ

立川「・・・あ、ヤバ」

二見「?」

立川「大声だしたらまた具合悪くなってき・・・ぅぷ」

二見「そこで吐いたらハウスクリーニング代2万円追加」

立川「うぐぷ・・・」←口押えてる

二見「汚ぇハムスターだ」

<オエエエエエエエエエエ

二見「はぁ・・・ったく、今日も夜バイトだってのに」

<ガチャ

立川「死ぬ、死んじゃう・・・・」ゲッソリ

二見「先輩、酸っぱいんでこっちこないでください」シッシッ

立川「・・・・・うううぅぅ」

二見「・・・仕方ない。もうちょっと寝てていいですけど、夕方には帰ってくださいよ。俺バイトあるんだから」

立川「・・・・すまん」

二見「そう思うならもうやらんでください」

立川「・・・・ああ」

そう呟くと彼女はベッドの上に横たわる。

しえん

立川「はあぁぁぁぁ・・・・」

二見「・・・・はい、ポカリ」

立川「あ、ありが・・・いくら?」

二見「別に金とりゃあしませんよ・・・」

立川「ん、ありがとう・・・」ゴクゴク

立川「うー、気持ち悪・・・これ私死ぬんじゃねえかな」

二見「死ぬならここ以外の場所で頼みますよ、面倒くさい」

立川「・・・・お前、なんで先輩の私にそんな辛辣な言葉浴びせかけるの?」

二見「好きな子には意地悪したくなるアレですよ」

立川「ええっ!?」

二見「なに今日いちデカい声出してんすか。真に受けるか普通」

立川「ぐっ・・・・」

二見「ほら、夕方になったらマジに出て行ってもらいますからね。せめてそれまで寝てろこの野郎」

立川「ううう・・・この屈辱、いつか晴らしてや」

二見「あぁ?」

立川「ひい!!」

その声を聞いた彼女は、そのまま反対を向いて毛布に包まってしまった。

>>39
ありがとう

・・・

二見「先輩・・・せんぱーい、おら起きろ―」ユッサユッサ

立川「Zzz・・・」

二見「起きろって・・・」ユサ・・・

二見「・・・」

二見「・・・・」モミモミモミ

立川「よっしゃあ!ひっかかったな!!」ガシッ

二見「お、起きた」

立川「馬鹿が!寝てる私に欲情したか!?このことを言いふらされたくなかったら・・・」

二見「79のBか・・・どうやら頭の中と同じで発育が悪いらしい」

立川「」

二見「ほら、俺バイト行かなきゃいけないんで、出てってください」

立川「なっ・・・あ、う・・・・」

二見「あぁ駅までは送ってきますわ、場所分からんだろうし」

立川「馬鹿野郎ォォォ!!」

二見「うるせぇ」

立川「お、お前なんか一番痛い方法で誰にも迷惑かけずに死ねっ!!」

二見「精一杯感あふれる罵倒のセリフだなぁ」

立川「変態!この変態野郎ッ!!」

二見「おう」

立川「最悪だ!お前最悪だっ!!」

二見「ほら早く靴履いてー」

立川「このっ!」ゲシゲシ

二見「なんすか、治療費まで払いたいんすか?」

立川「ぐっ・・・な、なんでも金の話にしやがって!!汚いぞ!!」

二見「いやアンタのほうが汚いでしょうよ。身体中酸っぱいんですよ」

立川「ムカツク!!」

二見「・・・あぁ、ほら」

立川「・・・へ?」

彼は黙って8千円を彼女に手渡す。

二見「アンタの金でしょーが。すってんてんでどうやって家まで帰るんすか」

立川「あ・・・」

二見「これに懲りたら、もう二度とあんな飲み方しないでくださいよ」

立川「う・・・・わ、分かってるつーの!!」

二見「ならいいんすけど。ほら、行きますよ」

二人は夕暮れの坂道を、駅に向かってゆっくりと歩き始めた。

・・・

夏。

二見「・・・なんでいるんすか」

立川「・・・・」

二見「いや帰ってくださいよ・・・俺これから柴田たちと一緒に厚木基地いくんだから」

立川「先輩と飛行機どっちが大・・・」

二見「飛行機に決まってんだろ」

立川「ちょっ、ちょおっ!!即答すぎるだろ!!」

二見「数か月に一度しか寄港しない空母の艦載機の方が、毎日大学で会うアンタよりも貴重だ」

立川「ぐっ、ぐううう・・・・」

二見「はぁ・・・何しに来たんですか?マジで」

立川「これ・・・」

そう言って彼女は財布の中から紙幣を取り出す。

二見「ん・・・1万円?」

立川「花見の時に、世話になったからな・・・」

二見「別に大学にいる時に渡せばいいでしょーが」

立川「ば、馬鹿野郎っ!売春かなんかだと思われちゃうかもしれないだろっ!!」

二見「ははあ、暑さで頭やられてんのか」

二見「つうか、わざわざこのために俺の家の前で待ってたんすか?」

立川「あ、あぁ・・・」

二見「まいったなー・・・実害が出ないとストーカーって警察動いてくれないんだよな・・・」

立川「おい!!」

二見「いや、でも別に金はいいっすよ」

立川「あ、そう!?」ササッ

二見「ええ。だから早く帰り給えよ」

立川「つれないな、この酷暑のなかせっかく美人の先輩が尋ねてきたというのに」

二見「まあ美人というのは否定できない」

立川「え」

二見「ほらこれで満足か。帰れ」

立川「帰らせるための方便か」

二見「いやホントこのままじゃ熱中症になっちゃいますよ」

立川「なんだ、心配してくれてるのか?」

二見「自分の身をね」

立川「・・・・なるほど」

二見「家の前で倒れられでもしたら、最悪俺の元にポリスが来てしまう」

二見「ていうか、なんで先輩俺に纏わりつくんです?好きなんですか、俺のこと」

立川「ああ、割と」

二見「ふうん・・・じゃ、俺そろそろ行くんで」

立川「ま、待てって!スルーか!?ていうか家になんか取りに来たんじゃないのか!?」

二見「そうだけど、俺が扉明けたら先輩家の中入ってくるつもりでしょう?」

立川「なんだ、見られちゃマズイもんでもあるのか?」

二見「別にないけど今更アンタにエロ本見られたくらいでどうとも思わん」

立川「ぐう・・・・」

二見「・・・・はあ、本当に煙草とか取りに来ただけっすよ。そのまますぐ出ますよ?俺」

立川「ん・・・」

そう言いつつも彼は彼女を部屋の中へ入れる。

立川「暑ゥい」

二見「あたりまえでしょ。今まで出かけてたんだから」

立川「クーラーつけていい?」

二見「今から出かけるって言ってんだろニワトリ並みの頭脳かあんた」

立川「私留守番してるからさぁ」

二見「マジでストーカー被害受けてるって警察に突き出しますよ」

立川「なんだよー、本当はうれしいんだろ?」

二見「他に用事がなきゃな」

立川「え、ええっ!?」

二見「さ、用が済んだらさっさと帰った帰った」

立川「ちょ、ちょっと待て!?本当か?」

二見「何が?」

立川「今の話・・・用事がなければ嬉しいのか!?」

二見「・・・・」ハナクソホジー

立川「こ、このやろう・・・それも嘘か」ギリギリ

二見「さ、ちょっとマジに勘弁してください。もうアイツら相模大塚着いちゃってるらしいんで」

立川「私も行く」

二見「ゑー」

立川「露骨に嫌がるなよ!!」

二見「済みませんが本日は炎天下ということもありますし、お止しになったほうがよろしいかと・・・」

立川「そういう意味じゃねえよ!遠回しにすんなって!!」

二見「だって・・・先輩別に飛行機興味ないでしょうが・・・」

立川「興味あるある!めっちゃある!!」

二見「ゑー、マジでついてくるんすか?ゑー」

立川「な、なんでそんなに嫌なの?」

二見「だって先輩ウザいんだもん」

立川「ぐふうっ!!」

二見「やたらと俺にちょっかい出してくるし」

立川「そ、それは・・・」

二見「大体、アンタ4年だろ?就活はどうした、就活は」

立川「わ、私は院に行くからいいんだっ!!」

二見「へー、じゃあ研究してなよ」

立川「ムカツク!!」

<ヴーーヴーーヴーー

二見「やべ、柴田からメールだ・・・先に行く、か。ああもう!合流できなかったじゃねえか!アンタのせいだ!!」

立川「いや多分あの時すぐに出ても間に合わんかっただろ?」

二見「・・・本当についてくるんすか?」

立川「おう!」

二見「・・・はぁ」

彼は大きな溜め息をつくと、洗面台の棚の中から取り出したタオルを彼女に手渡す。

仁科「はい」

立川「なにこれ?」

二見「炎天下の中歩くんだから。汗かくでしょーが」

立川「へ?・・・・あ、ありがと」

二見「そのかわり邪魔しないでくださいよ。『これ何が面白いの?』とか口にしたり、思ってそうな表情したらそのメガネ叩き割るからな」

立川「」

県道40号線、厚木基地北側のフェンス。

二見「お、いたいた・・・おーい、遅くなっ」

男1「すげぇ、すげぇよぉ!!ライノのアフターバーナーが腹の中までズンズン響いてくるよぉ!!」

男2「いいんだろ?なぁ、これがいいんだろ!?」

男3「感じる・・・ゼネラル・エレクトリックの息吹を・・・」

二見「ここにも暑さで頭をやられた連中が・・・」

立川「いや、コイツらはいつもこんな感じだろ」

柴田「よぉ、遅かったな・・・って、なんで立川先輩が?」

二見「後をつけられた」

立川「つけてねえって」

柴田「なんだよ、これじゃいつものメンバーだな」

二見「いい思い出ねえよ。この人、また吐くんじゃねえか」

・・・

二見「・・・お、ホークアイだな」

柴田「奥で海自のP-1がエンジンチェックしてんのが見えるな」

二見「ん・・・本当だ。どうする?スポーツ公園側回るか?」

柴田「んん・・・確かに正面から腹を押えたいな」

立川「・・・・」

二見「でも、早歩きでも40分はかかるだろ・・・となると、走るか」

柴田「先にP-3が上がるはずだから、日飛側から回って行って最悪横からの写真は撮れるようにしとこう」

二見「よしお前ら!反対側回るぞ!!P-1が飛び立つ前にスポーツ公園まで行く!!」

男1「サー!」

男2「イエス!」

男3「サー!」

立川「えええええええ!!」

二見「先輩、アンタにゃ無理だ・・・ここで帰った方がいい」

立川「な・・・ば、バカにすんな!こうみえても中学の頃は陸上部・・」

柴田「急げ!日飛側から回るぞ!!遅れんなよ!!」

男たち「ラジャー!!」

立川「・・・何これ」

・・・

柴田「おらぁ、気合入れろーお前達!」

男1「お前によし!」

男2「俺によし!」

男3「うん、よし!」

立川「はっ・・・はぁ、はあぁ・・・」ヘナヘナ

二見「・・・なんだ、もうへばったのか。だらしない」

立川「う、うっせ・・・お前らの体力が異常すぎんだよ・・・」ゼェハァ

男1「サー!たった今P-3が飛び立ちました、サー!!」

男2「サー!すでにF7エンジンの金切声も聞こえるであります!サー!」

男3「サー!特にいう事なし!サー!」

柴田「頑張れ!あと800mくらいだ!!」

二見「・・・あー、悪い柴田。先行っててくれ」

柴田「んん?」

立川「はぁ、はぁ、はぁ・・・おぇ」コヒューッ コヒューッ

二見「・・・と、いう訳だ」

柴田「・・・よしお前ら、二見は置いて先に行くぞ!!」

男1「あばよ、戦友!!」

男2「次会うときは、敵同士かもな!!」

男3「死ぬにはいい日だ!!」

二見「うん、分かったから早く行け。P-1飛んじゃうぞ」

立川「はぁっ・・・はぁっ・・・ふぅーっ・・・」

二見「ほら、もうちょっといったらファミマあるんで、頑張ってください」

立川「だ、だめ・・・なんか出る・・・」

二見「もう口からバブルスライムとかいう一発芸いいっすよ、ゲロ川先輩」

立川「お前・・・それ・・・やめろ・・・」

・・・

立川「・・・はぁ」

二見「落ち着きました?」

立川「ああ・・・まったく、死ぬかと思った」

二見「だからついてくんなって言ったのに」

立川「・・・」

ふと空を見上げると、灰色の飛行機が飛び立っていくのが見える。

二見「あぁー、行っちまった・・・」

立川「・・・あれが見たくてお前らあんなに走ってたのか?」

二見「ええ」

立川「・・・あんなの、空港にいけば似たようなのが一杯いるじゃないか」ボソッ

二見「・・・・」

二見は無言で彼女のかけていた眼鏡のレンズを掴む。

立川「え、ちょ」

二見「アイツらの前でそんなこと言ったら血祭にあげられますよ」グリグリグリ

立川「あっああああバカやめろメガネに指紋がああああ」

二見「はぁ、まったくアンタのおかげで見たいもんもみれないし最悪ですわ」

立川「お前これひどいよ・・・脂べったりじゃん」

そういって彼女はかけていた眼鏡を外した。

なにこれ実在地名なの?
とりあえず支援

二見「っ・・・!」

立川「ん?どうした」

二見「先輩って・・・メガネ外すと意外に・・・」

立川「えっ・・・」

二見「目が3だったりするのかと思ってたけど、そうでもないんですね」

立川「お前ぶっ飛ばすぞお前」

二見「なんつーか、薄い・・・顔が」

立川「うるせえ」

二見「貴様、ニセモノだな!?俺の大事な立川先輩をどこへやった!?」

立川「えっ、あ、な、何言ってんだお前馬鹿かっ!」←メガネかける

二見「うわっ!急に目の前に先輩が現れた!!キモっ!!」

立川「おい」

<ヴーーヴーーヴーー

二見「ん・・・メールか。・・・あーあ、アイツらもう帰るって言ってますよ」

立川「うわダッセぇ置いてかれてやんの」プークスクス

二見「・・・・・・・・・・・」メキメキメキ

立川「痛いいたいいたたたたた!!極まってる、極まってる!極まってるって!!」ペシペシ

二見「ったくマジで何しに来たんだこの女」

立川「ねぇこれ首取れてない?大丈夫?」フラフラ

二見「仕方ねえ、俺も帰るか・・・」

立川「また歩くの!?」

二見「・・・・・もうこのまま桜ヶ丘まで行きますわ」

良いね~超地元
支援

・・・

立川「・・・・・・」

二見「・・・・・・」

立川「な、なあ・・・」

二見「なんすか」

立川「今日は、その・・・悪かったよ」

二見「許さん」

立川「」

二見「割と本気で今日俺の先輩に対する好感度は40%くらい下がりました」

立川「え・・・そ、それって、今はどれくらいなの?」

二見「3%」

立川「さ、さん!?」

二見「正直学生課に根回しして停学まで追い込むことを目論むレベルです」

立川「ひどい!!」

二人は大和駅で相鉄線に乗り換える。

立川「・・・あ、席空いてるぞ。座ろう」

二見「別に3駅くらい立ってればいいでしょ」

立川「疲れたんだよ・・・それに、通路に立ってたら海老名駅で前に行く客の邪魔になるだろ」

二見「へいへい」

立川「・・・」

彼女が二見の肩に頭を乗せる。

二見「・・・おい、たかだか3駅しかないんだから寝ないでくださいよ」

立川「・・・ん」

二見「・・・はぁ」

次に二人が目を覚ましたのは、2往復目の三ツ境駅のだった。

つづきます

>>80
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E9%89%84%E6%9C%AC%E7%B7%9A

>>85
ありがとう

訂正

>次に二人が目を覚ましたのは、2往復目の三ツ境駅のだった。

>次に二人が目を覚ましたのは、2往復目の三ツ境駅のことだった。

よく見たら>>66の二見が仁科になってた 訂正

・・・

二見「電車の中で3時間以上寝るとかなんで車掌さん終点で起こしてくんないの?」

立川「きっとアレだな。私達が恋人同士に見えて声かけづらかったんだよ」

二見「そうかそうか。お死になさい」

立川「なんだよ、そこまで邪険にしなくてもいいだろ」

二見「とにかく次に海老名ついたら降りるぞ。もう21時回ってんじゃねーか」

立川「あー・・・そのことなんだけどさぁ」

二見「断る」

立川「もう私、寮の時間過ぎちゃってんだよねぇ」

二見「断る」

立川「泊めてくれよ」

二見「他の友達に頼めよ」

立川「お前んちが一番近いじゃん」

二見「年頃の男女が二人で夜を過ごす意味が分かってんのか?」

立川「童貞か。お前エロゲかなんかのやりすぎじゃねえ?」

二見「黙れよ」

・・・

立川「なんだかんだいって言うこと聞いてくれるあたり押しに弱いよな、お前は」

二見「そうでもしないと実害を被る可能性があるからな。いやもうある意味被ってるけど」

立川「はい、タオル返すわ」

二見「ん」

立川「・・・嗅ぐなよ」

二見「おぇ」

立川「おい」

二見「・・・アンタ、着替えどうすんだ」

立川「お前の貸してくれよ」

二見「サイズ合わねーよ馬鹿かあと30cm背が伸びてからいえこのチビ」

立川「お前女で180もあったらやべぇだろ」

二見「第一、下着どうすんだよ」

立川「お前の貸せよ」

二見「死ねよ」

立川「なんだよ、結構女でもトランクスとか履いてる奴いるぞ」

二見「知らねーよ。ていうかたとえ男だったとしても貸さねーよ、気色悪い」

立川「馬鹿、女だから貸すんだろ?」

二見「アンタもう本当帰ってくれよ・・・それか友達の家に行ってくれ・・・」

立川「断る」

二見「ああもう・・・」

立川「・・・・・・それに。お前も私がここまで来る意味、もう・・・分かってんだろ?」

二見「・・・」

立川「こう見えて今結構テンパってるからな、私」

二見「そうかい・・・」

立川「うん・・・」

二見「・・・なんでだ?」

立川「ん?」

二見「どうして俺なんだ?」

立川「さあ・・・・こっちが聞きたいくらいだよ。お前がうちに入ってきて、最初に顔を見た時からずっとだ・・・」

二見「乙女か」

立川「案外な」

見ると、俯いた彼女の耳はすでに真っ赤になっている。

二見「・・・」

立川「・・・」

二見「・・・どうすんの、この空気」

立川「さあ・・・」

二見「さあ、って・・・・」

立川「・・・嫌、だったか?」

二見「分からん・・・」

立川「・・・」

二見「・・・けど、まあ。悪い気はしない」

立川「そうか・・・」

二見「ん・・・」

立川「とりあえず、シャワー貸して・・・汗やばい」

二見「・・・着替えは?」

立川「・・・タオルとシャツだけ貸してくれたら嬉しい」

二見「ん・・・」

そういって彼女は浴室へと入っていった。

相鉄民代表して乙

・・・

立川「ありがと・・・」

二見「・・・下着は?」

立川「つけてない」

二見「マジか・・・」

立川「だって汚れてるし。履きたくねえ」

二見「どのみち明日履くだろうに」

立川「洗濯してくれよぉ・・・」

二見「分かった分かった・・・」

立川「あぁちょっと待って!!」

二見「あん?」

立川「そのまま洗濯機に入れればいいか?さすがに見られるのはちょっと・・・」

二見「ああ」

立川「・・・分かった」

二見「ん」

・・・

立川「・・・」

二見「・・・」

立川「な、なんか喋れって!!」

二見「先輩さ・・・」

立川「ッ」ビクッ

二見「もう一回聞くけど、年頃の男女が二人で夜を過ごす意味、分かってんのか?」

>>106
ありがとう

立川「・・・分かってるよ」

二見「そうか・・・」

小さな声で呟いたその答えを聞き、二見は彼女を抱き寄せる。

二見「・・・なら、お互い納得ずくだな」

立川「・・・」

二見「・・・さっきの話だけどさ」

立川「ん」

二見「嫌だったか、って話。さっきは分からんって言ったけど」

二見「・・・本当に嫌だったら、とっくにアンタから離れてる」

立川「・・・そうか」

彼女は腕の中で小さく頷き、もう一度「そうか」と呟いて抱き着いてきた。

二見「身体小さいな・・・」

立川「うん・・・」

二見「まるで子供みたいだ」

立川「・・・ごめんな」

二見「なんで謝るんだよ」

二人はそのまま唇を重ねる。

立川「ん・・・」

彼女はそのまま二見の下半身に手を運ぶ。

二見「っ・・・」

立川「・・・ちゃんと、興奮してくれてるんだな」

彼女は愛おしそうに、彼の部分を撫で上げる。

二見「・・・」

立川「よかった・・・」

心底ほっとしたように彼女は言うと、もう一度唇を重ねてくる。

そしてそれを受け、彼もまた彼女の胸に手をかざす。

先端の突起に軽く指が触れた途端、彼女の小さな体がピクリと跳ねあがる。

立川「はあっ・・・」

口を離した途端、切なそうに吐息を漏らす彼女。

立川「もっと・・・」

その言葉に呼応するように、男の手は胸から下半身へと伸びていく。

下着を着けていないその部分は、すでにじわりと染みができている。

二人は啄むように何度も唇を重ね、互いの身体に触り合う。

その呼吸は徐々に荒くなり、時折彼女の喉からは嬌声が漏れ出てくる。

立川「ふうっ、んうっ!」

二見「はあっ・・・」

そして二見は、彼女の中心へと手を伸ばす。

立川「んんんんっ!!」

そこはすでに熱く濡れそぼり、指を這わせればぬるりとその最奥部へ引き込まれるようだった。

立川「はあっ・・・はあっ・・・!!」

彼女の顔はますます紅潮し、震える手で二見の肩を抱いている。

二見「い・・・たくないか・・・?」

その言葉に、彼女は彼の肩の上で頷いた。

指を動かす速度を速めると、彼女の前身の痙攣も徐々に激しさを増してきた。

その口から漏れ出る吐息すら震えている。

立川「い・・・・・・く・・・っ!!」

次にその指が秘裂の上端にある肉芽をなぞり上げた瞬間、彼女の身体は弓のように跳ねあがった。

立川「あんっ!!ひうっ、んんっ!!」

彼が指の動きを止めると、彼女はぐったりのその体にもたれ掛ってくる。

立川「はぁっ・・・はぁっ・・・」

二見「・・・先輩、俺のも」

二見がそう言って彼女の手を自分自身に導こうとすると、彼女は小首を傾げたようにこちらを見る。

そしてその手は、自らの意思をもって二見の屹立したそれを弄り、窮屈そうな下着の中から解放した。

立川「・・・」

彼女は片手で髪を押えながら、そこに顔を近づけてくる。

二見「っ!!」

熱く柔らかい感触が、彼自身の側面に伝わってくる。

そして次の瞬間には、亀頭全体がその感触に包まれる。

立川「ふっ・・・んふ・・・」

彼女が顔を上下に動かすたびに、口の隙間からはぬちぬちと粘性を帯びた音が漏れてくる。

彼は僅かに顔を俯かせ、目を瞑ってそれに耐える。

二見「せ・・・んぱいっっ・・・」

彼の身体も、先ほどの彼女と同じように小刻みに震えはじめた。

それを察知した彼女は、口を動かすスピードを速める。

二見「うっ・・・あぁ・・・ちょ、ストップ・・・」

彼は肩を叩いて彼女を止めようとするが、彼女は一向に止める素振りを見せない。

二見「くっ・・・う、ふぅっ・・・!」

身体の芯に電流が走ったかと思うような衝撃と共に、彼のリビドーが解き放たれる。

立川「んっ!!けほっ、かふっ!!」

その勢いに、思わず彼女は咳き込んだ。

二見「はっ・・・はっ・・・はぁっ・・・」

肩で息する二見に、彼女はゆっくり語りかける。

立川「・・・いっぱい出た」

二見「はは・・・うん、本当に」

立川「大丈夫だった?」

二見「ああ、なんかすごい・・・すごかった」

立川「ふふ・・・なんだよ、それ」

二人はお互いの顔をみて笑いあう。

立川「続き・・・どうする?」

二見「うん・・・でも、ゴムないから」

立川「そっか・・・」

そう言って彼女は僅かに微笑みを湛えたまま視線を落とす。

立川「・・・このままでも、いいんじゃないか?」

その提案に、彼の心臓がドキリと跳ねあがる。

二見「・・・っ、んん」

立川「ふふ・・・満更でもなさそうだな」

二見「そりゃあな・・・でも、ダメだよ。さすがにそれは・・・」

立川「まあ、な・・・」

二人は顔を見合わせる。その顔は笑みを湛えてはいるが、お互いどこか心残りのある表情を含んでいる。

立川「・・・買ってくるか?」

二見「今から?」

立川「うん・・・」

二見「・・・いや、今日は・・・」

立川「ちぇっ」

彼女は悪戯っぽく舌打ちをする。

立川「賢者モードってやつか。童貞らしくないぞ」

二見「うるせー」

立川「ま・・・このまま外に出るのも、ちょっと恥ずかしいしな」

二見「はは」

立川「・・・あぁ、洗い物増やしちまったな・・・ごめん」

二見「いいよ・・・」

立川「・・・・なぁ」

二見「ん?」

立川「私と付き合ってくれるか?」

二見「突き合う、物理的に?」

立川「いや・・・うん、まぁそれも含めて」

二見「ここまでやっといて何言ってんすか」

立川「はは、確かに」

そう言ってもう一度、二人は唇を重ねる。

立川「二見、好きだ」

二見「物事の順番間違えてますよ、先輩」

立川「そうかもな・・・で、お前は?」

二見「・・・好きに決まってるでしょ」

窓の外では街灯に惑わされた夜蝉達が、忙しない鳴き声を上げていた。

数日後・・・

二見「うー暑ぃ・・・」

立川「よーう」フリフリ

二見「・・・だからなんでいんだよ」

立川「いいだろ別に。彼女なんだから」

二見「わざわざ外で待ってること無いでしょ。マジでぶったおれますよ」

立川「そう思うなら早く合鍵よこせよ」

二見「アンタに合鍵渡したら何されるか分からん」

立川「別にやましいことはないんだろ?」

二見「やましいとかじゃなくて、こないだエアコンの温度設定最低にしたうえで毛布にくるまってたろ?電気代がもったいない」

立川「何だよケチくせーなー・・・あ、そういやなんかハガキ来てたぞ」

二見「おいおい、勝手にポストの中見るなって・・・お、免許更新か」

立川「え、免許!?」

二見「はぁ」

立川「お前車運転できんの!?」

二見「いやバイク」

立川「なんだ・・・」

二見「高校のとき、通学するのにとったんでね」

立川「お、じゃあちょっと免許証見せてみ」

二見「なんでよ・・・」

立川「いいから、早く」

二見「・・・はい」

立川「若いwww少年Awwww」

二見「人の顔写真みて笑うとは失礼な」

立川「ははは・・・」パシャリ

立川「はい、返すよ」

二見「おい待て今なんで写メとった」

立川「でもお前、バイク持ってないじゃん」

二見「今はね。上京する折に後輩に譲った」

立川「じゃあ別に免許更新しても意味なくないか?」

二見「いやいや一度とったもんを簡単に失効させるわけにもいかんでしょ。それに、普通免許取った時早くゴールドになるんで」

立川「ふうん・・・ちなみにそれって、二人乗りできるやつ?」

二見「ん?ああ、普通自動二輪だから二人乗りできるのも運転できるよ」

立川「バイク買おうぜ!!」

二見「ゑー」

立川「後ろに乗せてよ!!」

二見「今更バイク買うくらいならそのお金で普通免許とるわ」

立川「むー・・・」

二見「ふむふむ・・・場所は二俣川か。相鉄1本で行けるな」

立川「せっかく遊びに来たんだから構ってよー」

二見「いや、でも明日からしばらくバイトが続くんすよ」

立川「ならなおさら構ってよ!!」

二見「さて11時半か・・・んー、どうしよ。まだ午後の受付に間に合うっちゃ間に合うな」

立川「え・・・本当に行くのか?」

二見「うん」

立川「・・・せ、せっかく待ってたのに」ジワッ

二見「泣くなよ」

立川「な、泣いてねぇよ!これは心の涙だ」

二見「要するにマジ泣きじゃねーか」

・・・

<まもなくさがみ野です・・・

立川「なー、二俣川ついたらまずメシ食おうぜ」

二見「どうしてこうなった」

立川「いいじゃん。デートだよデート」

二見「運転免許試験場でか?それに、行っても講習受けてる間は一人で待ってることになるんだけど」

立川「よし、じゃあその間に私も免許とる勉強しとくわ」

二見「ま、先輩がそれでいいなら・・・」

立川「・・・それにしてもさぁ」

二見「ん?」

立川「相鉄って、なんかすげぇ眠くならね?」

二見「んー、そう?」

立川「小田急とかはそうでもないのに、なんでだろうな」

二見「なんかこう・・・あるのかね。相鉄特有の眠くなるオーラ的なものが」

立花「ラリホーだな」

二見「懐かしいな」

立川「正直あんま使わないよな、ラリホーって」

二見「あー、先輩はバイキルトとかルカナンもあまり使わなそう」

立川「・・・あれ?もしかしてそれ遠回しに馬鹿って言ってる?」

二見「いや別に」

・・・

二見「ふう、駅からはバスか」

立川「平日なのに結構混んでんなー」

二見「土日だったらすごいことになるんだろうな・・・」

立川「はー、神奈中以外のバスなんて久しぶり」

-神奈川県運転免許試験場-

二見「ここかぁ・・・」

立川「なかなか年季の入った建屋だな」

二見「お・・・献血車きてるじゃん。何なら俺が講習受けてる間、社会貢献してきたら?」

立川「んー、無理」

二見「なんだ、注射が怖いのか。ガキじゃあるまいし」

立川「違うって・・・私の血液型、超珍しいタイプでさ」

二見「ピッコロさんみたいな感じ?」

立川「いやさすがに色は赤だっつーの。稀血っつって、100万人に1人しか同じ血液型の人がいないんだと」

二見「Rh-ってやつ?」

立川「いや、もっとレアなやつ。だから私アレだぞ、実は赤十字社にマークされてるからな」

二見「赤十字社にマークされる女とか・・・」

立川「日本にも数えるくらいしかいないからな。1回私が献血すると10年は冷凍保存されるらしい」

二見「すげぇ、ガチなやつじゃん!!」

立川「ふふん、すごいだろ?いや別に自慢できることでもないけど」

二見「・・・リッター単価いくらだろ」

立川「お前怖いよ目がマジじゃねえか」

立川「んで・・・たまに呼び出されんだよ。病院とかに」

二見「血を寄越せ!って?」

立川「んー、まぁそんな感じ・・・」

二見「大変なんだな・・・」

立川「2か月前にそれで呼び出されてね。だからまだ献血しちゃいけないんだよ」

二見「なるほどね」

二見「・・・あれ?ってことはさ」

立川「ん?」

二見「先輩、血液型占いできないじゃん」

立川「いや、一応O型ではあるけど」

二見「あ、そうなんだ・・・って話してる場合じゃないな、受付並ばないと」

立川「じゃあ私向こうで待ってるわ」

・・・

二見「おわったー・・・」

立川「おう、お疲れ」

二見「はぁ、腹減ったぜ・・・とりあえず食堂に」

立川「新しい免許見せてー」

二見「ん?あぁ、ほら」

立川「・・・ぷっ、写真写り悪いなお前」

二見「うるせー」

立川「前の免許の写真のほうが可愛げがあったぞ」

二見「そうかい、そりゃどうも・・・うーん、カレーでいいか・・・」

立川「あ、ねーねー。せっかくなんだからここじゃなくてどっか別の場所に食べに行こうぜ」

二見「えぇ・・・?別にここでもいいじゃないすか」

立川「馬鹿、デートだっつってんだろ」

二見「そう思ってんのはアンタだけだって」

立川「驕るぞ?」

二見「よっしゃ焼肉食いに行こうぜ焼肉」

立川「みなとみらいにさぁ、クリスピークリームドーナツがあるんだよね」

二見「いまから横浜行くってか。もう3時も回ろうかというのに」

立川「いいじゃん。山下公園の夜景とか、きれいだぞー」

二見「乙女か。海老名だって田んぼのど真ん中に建つリコービルの灯りはある意味幻想的だぞ」

立川「そういうんじゃねえって」

二見「今から横浜は嫌だー」

立川「くそー、せっかく人が奢ってやるつってんのに・・・」

二見「それはまた今度にして、今日はもう帰りましょう」

立川「えー」

二見「帰りにミスド買ってあげるから」

立川「んー・・・」

・・・

二見「結局海老名駅のホームで立ち食いソバかぁ」ズルズル

立川「ここ朝通る時めっちゃいい匂いするよな」

二見「うん」ゴクゴク

立川「・・・あ、そうだ。さっきの話だけど」

二見「んー?」ズゾゾー

立川「いつ行く?」

二見「何が?」

立川「よ・こ・は・ま!!」

二見「もうちょっと、涼しくなってからでいいんじゃないすかね」

立川「まーたそうやって先送りにする」

二見「いや、さっきも言ったけど・・・本当明日からがっつりバイト入れちゃってんすよ」

立川「・・・どれくらい?」

二見「二週間」

立川「はぁ!?」

二見「正確には7泊×2かな」

立川「」

立川「な・・・7『泊』!?泊まり込みのバイトかよ!?」

二見「うん、まぁ」

立川「漁船にでも乗るのか!?」

二見「どういう発想だよ・・・そんなんじゃないって」

立川「じゃ、じゃあ住み込みの工事現場とか・・・?お前まさか闇金に手を出し」

二見「落ち着けって」

立川「如何わしいバイトじゃないだろうな?」

二見「・・・」

立川「お、おい返事しろよ」

二見「ごちそさまー、よし、じゃあミスド行くか」

立川「おいって!!」

・・・

立川「・・・治験?」

二見「うん」

立川「それって要はアレだろ?薬の人体実験」

二見「まぁ、有体にいえば」

立川「よくまぁそんな如何わしいバイトを見つけてきたもんだ・・・」

二見「いや、まぁバイトっていうかボランティアって名目なんだけどね」

立川「そうなのか?無償なのによくやるな・・・」

二見「ボランティアとは銘打ちつつ、実際は報酬もでるんだけど」

立川「・・・なんかダーティな話だなぁ」

二見「それに、就活の時のESに『ボランティア参加経験あり』ってかけるしね」

立川「そんなの、アピールポイントになるのか?」

二見「なぁに、要は何やったかよりどう伝えるかよ」

立川「口八丁ってことじゃねえか」

二見「はは、まあな」

二見「・・・というわけで、二週間ほど家を空けますので」

立川「寂しい・・・」

二見「帰ってきたらちゃんと遊んであげるから」

立川「・・・本当か?」

二見「ああ」

立川「そっか・・・じゃあそれまで、私も里帰りでもしてるかな」

二見「そういや先輩の故郷ってどこなんすか?」

立川「八王子」

二見「近ぇ!!ていうかそんなに近くてなんで寮!?」

立川「いやー、近いつってもなんだかんだ通学に2時間くらいかかるし、ちょうど寮も空きがあったからな」

二見「八王子ってーと相模線か・・・本数も少ないし、確かにちょっとキツイわな」

立川「あれ地元じゃ『しゃがみ線』っていうんだぜ。待ち時間が長すぎて皆しゃがんでるから」

二見「はは、面白いなそれ」

立川「とにかく、お前が返ってくるまで待ってるよ」

二見「ああ」

・・・

続きます

見てるぞ頑張れ
立川先輩超可愛いprpr

>>171-173
ありがとうございます

そして2週間後。

立川「よっ、久しぶり!」

二見「なんだ、明日の朝来るのかと思ってた」

立川「へっへー。そんなわけないだろ?何しろ二週間ぶりだしな。もう会いたくて会いたくて・・・」

二見「震えて待ってたか?」

立川「あーもう震えてた震えてた。マグニチュード4くらい」

二見「微妙な規模だな・・・メシは?」

立川「まだ食べてない」

二見「ん。じゃあどっか食べ行くか」

立川「あ、何なら私、作るぜ?」

二見「な・・・なんだと・・・」ざわ・・・

立川「なんだよそのリアクション」

二見「え・・・だって先輩、寮暮らしだろ?料理できんの?」

立川「あのなぁ・・・家に居るときくらいは私も家事手伝うっつの」

二見「そ、それもそうか・・・」

立川「・・・お前、なんでさっきからちょっと恐れ慄いてんの?」

二見「いや・・・無事に明日の朝を迎えられるのかなって・・・」

立川「殴るぞ」

・・・

立川「で・・・何食べたい?」

二見「肉」

立川「食材かよ。もっと詳しく」

二見「牛肉」

立川「そういうことじゃねえ」

二見「あ、じゃあステーキ食べたいっす、ステーキ」

立川「ス、ステーキ・・・?いや、いいけど、なんでまた?」

二見「いや、入院中あしたのジョー読んでたんすけど、ジョーが金飛龍と戦う前に食ってたステーキ見てずっと食いたいなーって」

立川「あ、そうか・・・治験って、やってる最中はずっと病院食なのか」

二見「そうですよ。しかも投薬のタイミングがあるから自由に食事もとれないし・・・だから今はがっつり肉が食べたい」

二人はそのまま肉屋へ向かう。

立川「牛肉かぁ・・・さすがにいい値段するなぁ」

二見「心配するな。金はたっぷりある」

立川「お、文字通り命を削って得た金か」

二見「うむ。だからなるべく美味そうな肉を選ぶべし」

立川「へへ・・・そういうことなら・・・」

そう言って彼女は国産サーロインに手を伸ばす。

二見「・・・」

それを見た二見は静かに彼女の腕を掴み、それを制す。

立川「む、なんだよ。・・・はは~ん?さてはさすがにこの肉じゃ高すぎて・・・」

二見は無言で、隣にあったA5ランクの最上級肉を指さした。

立川「え」

二見「これ、500g包んでください」

店員「はい、毎度!」

立川「」

立川「な・・・なっ・・・」ガクガク

二見「分かったか?これが『美味そうな肉』だよ、先輩」

店員「はい、500gお待ちどうさま!ありがとうございます!!」

二見「あ、どうもー」

立川「グ、グラム・・・2980円・・・!?」ガクガク

二見「なに震えてるんすか。はは~ん?さては禁断症状ってやつか」

立川「ち、違うわ!!ていうかお前こんな・・・えっ、これで15000円!?」

二見「ちゃーんと焼いてくださいよー」

立川「おっ、お前・・・一体いくら持って・・・」

二見「・・・・片手じゃ足りないくらい、かな」ボソ

立川「」

立川「なんか・・・本格的にやばいバイトだったんじゃないだろうなぁ・・・?」

二見「そんなことないですよ?適正価格です」

立川「・・・深く考えるのはもう止そう。じゃ、付け合せの野菜を・・・」

二見「ゑー、肉だけでいいよー」

立川「子供か。ちゃんと野菜も採らないとバランス悪いだろ」

二見「そういうアンタはお母さんか」

立川「えーと、野菜売り場はあっちか・・・」

二見「あ、じゃあちょっとその隙に俺薬局行ってきます」

立川「薬局?何買うの」

二見「いや・・・万が一お腹が痛くなった時のために正露丸を」

立川「お前本当に殴るぞ?」

・・・

二見「おー、美味しそうだ」

立川「肉を焼くという行為にこれほど緊張したことが未だかつてあっただろうか。いや、ない」

二見「大丈夫ですって。ちゃんと上手に焼けてますよ」

立川「な、ならいいけど・・・」

二見「さ、食べましょう。いただきまーす」

二見「・・・」スク・・・

立川「すげぇ・・・簡単に切れる・・・」

二見「・・・」トポ・・・

二見「うまい、うますぎる」モニュモニュ・・・

立川「お前食い方汚いよ」

二見「いや、バキとかこんな感じですって」

立川「知らんて」

二見「美味しいですよ、先輩も早く食べるよろし」

立川「だってお前・・・こんなの美味くないはずがないじゃないかぁ・・・あああぁぁなんだこれすげぇ・・・」モグモグ

二見「・・・ちったぁその分の肉が乳につけばいいのに」

立川「うるせぇよ」

・・・

二見「ごちそうさまでした」

立川「お粗末様でした・・・って全然お粗末じゃないよ、これ」

二見「美味しかった?」

立川「正直感動した」

二見「そりゃーよかった」

立川「・・・って、本来ならそれ私のセリフのはずなんだけどな」

食器を片しながら彼女が聞く。

立川「そうだ・・・明日何時に出る?」

二見「んー、朝起きてゆっくりしてから」

立川「よし、じゃあ9時にここを出るか」

二見「9時ぃ?早すぎですよ」

立川「あぁ?8時に起きて準備すれば十分間に合うだろ」

二見「8時に起きるとか夢物語乙!明日は10時までは目覚めることはないだろうと予言しておく」

立川「いや、起こすよ」

二見「無理だね」

立川「は?なんで」

二見「ふふ・・・今夜は寝かせないぜ?先輩」

立川「えっ・・・」

二見の言葉に、彼女は僅かに頬を赤らめる。

・・・

二見「あー、やっぱり二週間も家開けてると埃がすごいなー」ゲホゲホ

立川「・・・お前彼女泊めといて部屋の大掃除はないだろ」ゴシゴシ

二見「でも、先輩も汚いとこは嫌でしょ?」

立川「そりゃ綺麗なほうがいいけども・・・もう夜中じゃねーか。あんまりやりすぎると、近所迷惑だぞ」

二見「大丈夫ですよ。この部屋、割と防音しっかりしてるし」

立川「ああもう・・・」

二見「・・・ふう、こんなもんかね」

立川「げ・・・もう2時過ぎてるぞ」

二見「水回りが特に大変でしたねー。先輩のおかげでマジ助かりました」

立川「やばいって・・・もう寝ないと、明日起きれなくなるぞ」

二見「だから10時に起きればいいでしょ?」

立川「9時には家を出るぞっ!!8時になったら叩き起こすからなっ!!」プンスカ

そして翌日・・・

立川「ついたー!!」

二見「ふあぁ・・・眠ぃ・・・って、めっちゃ曇ってる」

立川「見ろ、ランドマークタワーの上半分が見えなくなってるぞ」

二見「すげぇ、レガイア伝説みたい」

立川「なにそれ」

二見「昔友達の兄貴がやってたプレステのゲーム」

立川ちゃんかわええ・・・

これ、オリキャラだよね?

立川「よーし、じゃあまずMARK IS行こー!」

二見「何それ」

立川「去年できたショッピングモールだよ。知らないのか?」

二見「知らない」

立川「何だよ、どうでもいいことはよく知ってるくせに」

二見「去年とかまだ上京したばっかだしなぁ」

立川「じゃ、まずは手始めに色々見てまわっ」

二見「やばいモンベルが俺を呼んでる」フラフラー

立川「ちょ、待てって!!」

二見「俺、山登りは興味ないけど登山グッズ大好きなんすよ」

立川「いや、あの・・・」

二見「このチタンマグ超ほしい」

立川「おーい・・・」

・・・

二見「いやー、色々買っちゃったなぁ」ホクホク

立川「わ、私にも何か買ってよ・・・」グス

二見「分かってるって、泣くなよ」

立川「な、泣いてねぇよ」

>>197
然様でございます

・・・

立川「・・・うーん、こんなんどう?」

二見「すげぇ、先輩が服選んでる・・・まるで女の子みたいだ」

立川「だから殴るぞ?」

二見「俺に服のセンスを問われてもなぁ、よく分からないっすよ」

立川「大丈夫だよ。こういうのはセンスどうこうを期待して聞いてるわけじゃないから」

二見「じゃあ何故助言を求めるのか」

立川「言わないと分かんないのか?野暮だなぁ」

二見「・・・別にどんな服着てたって大丈夫だよ」

立川「お・・・それはデレたのか?」

二見「いや、別に・・・」

立川「ん、水着かぁ・・・そういやもう何年も海なんて行ってないなー」

二見「何ならここで水着買ってそのまま横浜港で泳いでくれば?」

立川「嫌だよ」

二見「ですよね」

立川「ちなみに、お前どんな水着が好」

二見「ビキニ」

立川「早ぇよ」

立川「・・・ビキニか、定番だな。やっぱ男はそういうのがいいの?」

二見「んー、でも先輩のビキニは見たくないかも」

立川「どういう意味だおい」

二見「なんか・・・居た堪れない気持ちになりそう・・・」

立川「ぐっ・・・わ、悪かったな胸が小さくて」

二見「謝って済む問題じゃねえだろ!!」

立川「なんでそこでお前がキレるんだよ!!」

・・・

立川「はぁ・・・結局何も買えなかったな」

二見「もう帰ります?」

立川「帰らねーよ!まだ昼食も食べてないじゃないか!!」

二見「あ、そういやドーナツ食べたいとか前言ってませんでしたっけ」

立川「ん?おぉ。でもちょっとここからだと遠いんだよな」

二見「あれ、あれ乗ってみましょうよ、あれ」

←ベロタクシー

立川「あ、あれかぁ・・・?別にいいけど」

二見「よっしゃー行こ行こ!!」

・・・

立川「こ、これで1000円かぁ」

二見「お兄さんありがとう!!トライアスロン頑張ってなー!!」バイバーイ

立川「そしてお前はなにタクシーの兄ちゃんと仲良くなってんだよ」

二見「いやー素晴らしいわ。俺も将来あの仕事やろうかな」

立川「時々思うんだけどお前センスおかしいよ」

・・・

二見「・・・で、これがそのドーナツ?」

立川「うん」モグモグ

二見「なんていうか・・・美味い、けど」モグモグ

立川「な、なんだよ」

二見「俺はミスドのほうが好きかなぁ・・・」

立川「美味しいじゃん。ミスドとはまた違う感じで」

二見「うーん、俺は舌が安いからなぁ・・・あ、先輩」

立川「ん?」

二見「口の横にチョコついてる」

立川「ん・・・」

二見「・・・」

立川「いやそこは取れよ。取ってそのまま口に入れる流れだっただろ」

二見「乙女か」

立川「あぁ乙女だよ!たまには期待に応え・・・っ!?」

彼女がそこまで言いかけた時、二見は顔を近づけ直接それを口で掬い取った。

立川「う・・・///」

二見「指で取るのはあんまり綺麗じゃないしな」

立川「い、いきなりなのはちょっと、その・・・」ドキドキ

・・・

二見「もう7時半か・・・暗くなってきたし、そろそろ帰ろうか?」

コスモクロックをみて、二見が呟く。

立川「あー、待って・・・」

二見「ん?」

立川「せっかくだから、乗ってこうぜ。あれ」

二見「えぇ・・・こんな曇ってちゃ、何も見えないと思うけど?」

立川「いいんだよ。二人で乗る事に意味があんの」

二見「乙女だな」

立川「・・・そうだよ?知ってるだろ」

二見「ふふ、そうだな」

そして二人は、観覧車へと乗り込む。

・・・

二見「・・・はは、やっぱり何も見えないな」

立川「うん・・・でも、また今度来る口実ができたから」

二見「そっか・・・」

立川「ん・・・」

・・・

・・・

<急行海老名行き間もなく発車します・・・

二見「あぁ、出ちまうな・・・」

立川「いいよ、次のに乗ろう。歩き回って疲れたし、もう座りたいよ」

二見「ん、そうだな」

そうして彼らは次の電車を待つ。

帰りの電車の中で、彼女は不思議な夢を見ていた。

『・・・結局、お前にも上手く甘えることが出来なかったんだな、私は・・・』

『お前と一緒にいることが私にとっての幸せなんだけどな・・・』

『・・・好きだった、よ』

立川(これは・・・・?)

<まもなく、海老名、海老名です・・・

二見「ほら、先輩。もう着くぞ」

立川「ん・・・?」

立川(夢・・・?)

二見「おーい、どうした?寝ぼけてんのか?」

立川「ん・・・いや」

駅を出て、夜の坂道を登る二人。

二見「疲れた?」

立川「うん、ちょっとね」

二見「はは、電車の中で爆睡だったもんな」

立川「いびきとかかいてなかったか?私」

二見「いや、実は俺も寝てたからよく分からん」

立川「はは、やっぱり相鉄は眠くなるんだって」

二見「相鉄ラリホー、か・・・」

立川「そうそう」

二見「まあ、あながち間違いじゃないかもな・・・」

立川「それに、今日は結構歩いたし」

二見「ああ、はやく帰って休もう」

立川「うん」

・・・

立川「ただいまー」

二見「ただいまって・・・ここは俺の家」

立川「そそ、私達の愛の巣だ」

二見「愛の巣、ねぇ・・・」

彼女は床に荷物を投げ出し、ベッドの上に横たわる。

立川「あーっ、疲れたぁ!」ドサッ

二見「そのまま寝るなよー」

立川「んー・・・」

そう言って彼女は電車の中でみた夢のことを思い出す。

立川(あれは・・・多分、夢じゃない。気がする)

物思いに耽る彼女の隣に、二見が腰かける。

二見「先輩、これ見てみろよ」

立川「んー?」

彼が持っていたのは、観覧車で撮った1枚の写真。

立川「なんだ、お前だけピンぼけしてるな」

二見「本当だよ。ひどくねえ?」

立川「写真うつりが悪いのは今に始まったことじゃないだろ」

二見「そうだけどさ。これじゃまるで心霊写真じゃんか」

その言葉に、何故か彼女は自分の鼓動が早くなるのを感じた。

立川「・・・っ!」ガシッ

二見「お、おう?どうした・・・いきなり」

急に抱き着いてきた彼女に、二見は驚く。

立川「・・・大丈夫だよな?いるよな、ちゃんと」

二見「は、はぁ・・・?」

立川「・・・い、いや、ごめん。なんか、実はお前がここにいないんじゃないかって気がして・・・」

そう言って抱き着いてくる彼女の手は小さく震えている。

二見「・・・馬鹿だなぁ、何言ってんだか」

立川「ん・・・」

二見は優しく彼女の頭を撫でる。

そしてそのまま唇を重ね、彼女の身体をベッドに押し倒す。

立川「ん・・・ぷは」

二見「・・・はぁっ、先輩・・・」

彼の手が服の中に滑り込んでくる。

立川「ま、待って・・・汗かいてるし、シャワーを・・・」

二見「ん・・・」

その言葉に、二見は静かに身体を離す。

二見「あー、その・・・今日は、あるから」

立川「へっ?」

よく見ると、彼の視線の先にはカラフルな小箱が見える。

二見「こないだはさ・・・最後までできなかったし・・・」

立川「お、おう・・・」

浴室で身体を洗いながら、彼女は考える。

立川(あれはきっと夢じゃない・・・あれは、私)

立川(いままでずっと繰り返してきた、私の記憶・・・)

立川(『私』の・・・)

その時、いきなり浴室のドアが開いた。

立川「ひょわあっ!?」

二見「・・・」

立川「ちょっ、ちょちょちょちょ!!?」

二見は無言で彼女に抱き着いてくる。

立川「なっ、バカやめ・・・」

それを封じるように、二見は彼女の口を塞ぐ。

立川「んっ、んぅ・・・」

二見「先輩・・・」

彼女の身体を強く抱きしめる二見。

二見「先輩、好きだ・・・」

立川「なっ・・・いきなり、どうしたんだよ」

二見「・・・さぁな。さっきので俺、もう我慢できなくなったのかな・・・」

言いながら彼は彼女の秘部を弄り始める。

立川「ひぅ・・・」ビクッ

二見「まぁ・・・俺はなんつーか、こんな性格だから、さ」

立川「二見・・・」

二見「ただちょっと・・・恥ずかしいだけなんだよ」

立川「・・・うん、わかってるよ」

二見「・・・先輩」

二人は、そのまま身体を重ねる。

立川「んっ・・・くぅ」

彼女のそこは、既にシャワーの湯とは違うモノで濡れているのが分かる。

二見「脚・・・広げて」

彼女をその場に座らせ、脚を開かせる。

立川「ちょ、ちょっと恥ずかしいって・・・あんま見ないで・・・」

二見「・・・よく見たいんだよ、何しろ初めてだし」

立川「うっ、うううぅ・・・」

彼女は耳を真っ赤にして顔を背けている。

二見の指がそこに触れる度に、それは妖しく形を変える。

立川「はうぅ・・・」

二見「先輩・・・俺、もう」

二見のそれはすでに硬度を増し、その先端は切なそうに泣いている。

立川「う、うん・・・いいよ・・・」

それを見た彼女は静かに答える。

二見「・・・手が震える」

立川「・・・ふふ、可愛いな」

二見「そういう先輩は、声が震えてるぜ」

立川「ん・・・実は、ちょっと、怖い」

二見「え・・・」

立川「あ、私もその・・・初めて、だ」

二見「ま、マジか・・・」

立川「そ、その・・・やっぱ痛いのかな」

二見「それは・・・俺に聞かれても」

立川「はは・・・」

何とか声を絞り出してはいるが、その表情は緊張を含んでいることが分かる。

二見は彼女を抱き寄せ、優しく頭を撫でる。

二見「痛かったら、言ってくれよ」

立川「・・・」

彼女は無言で首を横に振る。

二見「なんでだよ・・・」

立川「だってお前・・・言ったら途中で止めちゃうだろ?」

その言葉を聞いて、二見は軽く唇をかむ。

立川「お前は、優しいから」

二見「んん・・・」

立川「大丈夫だから、お願いだから。最後までやって・・・」

彼女の言葉を聞き、小さく頷いた彼は自らのそれを彼女の入り口に押し当てる。

二見「・・・挿入れるよ」

立川「うん・・・」

だが、何しろ初めての経験である。手元は震え、すでにしとど濡れたそこは、二見のそれをヌルリと滑らせその狙いを逸らさせる。

二見「あ・・・あれ・・・、おかしいな」

立川「ん・・・」

当惑する彼に、彼女はそっと手を添える。

立川「もうちょっと下・・・かな」

二見「・・・っ!」

いままでヌルヌルと滑っていたそれは、彼女があてがった部分にピタリと嵌り、その動きを止めた。

そのまま二見は、ゆっくりと腰を前に出す。

立川「う・・・く、ぅっ!」

彼女の口から苦しそうな吐息が漏れる。

罪悪感と同時に、下半身が熱い快感に包まれていく。

二見「せ、先輩・・・」

立川「はっ・・・はあぁぁ・・・二見ぃ・・・」

ゆっくりと、腰を前に進めるほどに彼女は小さく声を上げる。

立川「ど・・・どう?」

二見「もうちょっとで、全部入りそう・・・」

立川「じゃなくて・・・気持ち、いいか?」

二見「うん・・・」

立川「そっか・・・よかった・・・」

その言葉に、二見の中の何かが切れた。

後ろから彼女の身体を抱きしめ、そのまま最奥部に向かって腰を突き当てる。

立川「ひぐぅっ・・・!」

二見「先輩・・・」

そしてそれを一度引き抜き、もう一度その中へ突き立てる。

先ほどまで浸入を拒んでいたその滑りは、今や本来の役割を果たしつつある。

立川「うっ、んっ・・・ひっぐ!!」

二見のそれが内部で擦れる度、彼女の喉元から声が漏れる。だがそれは、嬌声とは程遠い。

罪悪感からくる焦燥の念に駆られつつ、二見は腰を動かし続ける。

二見「出る・・・っ!!」

立川「んんうっ!!」

最後に2,3度、腰を大きく撃ちつける。こみ上げてくる快感に呼応するように、自らの分身が彼女の膣内でビクビクと脈打つのが分かる。

引き抜かれたラテックスの表面は、じっとりと赤く染まっていた。

・・・

立川「ううぅ・・・」

彼女は髪を濡らしたまま、ベッドに横たわっている。

二見「・・・大丈夫?」

立川「うん・・・でもなんか、異物感・・・」

二人の間に交わされる言葉数は少ない。

二見「・・・」

彼は黙って彼女の前に横たわる。

その腕を、彼女は強く抱きしめてくる。その胸が、まだ激しく鼓動を打っているのが分かった。

立川「・・・朝まで、このまま一緒にいて」

二見「・・・ああ」

昼間の疲れも手伝い、二人の意識が溶けていくのにそれほど時間はかからなかった。

・・・

・・・

数日後。

立川「は?怪談会?」

二見「うん。そろそそろ納涼の時期だし、柴田の家でサークルメンバーあつめてやろうってさ」

立川「アレだな、えーっと・・・百物語!」

二見「たかだか10人程度のメンツで100も話が出てくるかは疑問だが」

立川「よっしゃ!じゃあロウソク買いに行こうぜ!!}

二見「ロウソク?つまんない話をした奴にロウを垂らすのか?」

立川「ちげーよ!!話が終わったら吹き消していって、100本目が消えるときになんか出るっていうじゃん?」

二見「何かって何」

立川「え・・・そりゃ、お化け・・・とか?」

二見「・・・・」

立川「そんな可哀そうな人を見る目でこっちを見るな」

二見「でもまぁ、たしかにそういう演出があったほうが雰囲気は出るわな」

立川「そうそう!」

二見「よし、じゃあ買ってこか」

立川「行こ行こ!!」

二見「あ、さすがに100本は買わねーぞ」

・・・

柴田「よし・・・みんな集まったな・・・」

男1「くっくっく・・・この門をくぐった者は一切の希望を捨てよ・・・」

男2「一度足を踏み入れたが最後、2度と無事には出られない・・・」

男3「ここが地獄の一丁目・・・」

二見「お前らノリノリだな」

柴田「よし、普通に話しはじめても面白くないからな。まずはコイツで存分に肝を冷やしてもらう」

二見「なんだそれ?」

柴田「稲川淳二先生の『ミステリーナイトツアー』だ」

二見「おいおい、ガチのやつじゃねえか・・・」

男1「怖いぞぉ」

男2「死んじゃうぞぉ」

男3「トイレ行けなくなっちゃうぞぉ」

・・・

男1「」

男2「」

男3「」

二見「や、やっぱ本職は違うっつーか・・・」

柴田「お、おう・・・すごい、すごかったな」

二見「・・・先輩は怖くないんすか」

立川「うーん、声ではビビったけど・・・」

二見「まぁ、確かに」

見ると、後輩達の中には涙目になっているものもいる。

柴田「あー、具合悪いとかマジやばいやつは抜けてもいいぞ?」

男1「1ぬーけた!!」

男2「馬鹿いうな俺もだ!!」

男3「ええい、俺が先よ!!」

柴田「あ、お前らは強制参加だぞ」

男達「」

結局、いつものメンバーと数人の1年生が残って怪談を続けることになった。

1年生「・・・これが、私の地元に伝わる身投げ池の話です」

男1「なんでや!!女の子は死ぬ必要なかったやろ!!」

男2「ばか!龍神様のばか!!」

男3「生贄は野蛮な風習、はっきり分かんだね」

二見「お前らうるせぇよ」

立川「無理にでもテンション上げてないと怖くてやってらんないんだろ」

柴田「よし、次はお前の番だぞ」

男1「あー、俺らは3人で一つの話するわ。よし、いくぞお前ら」

男2「あぁ、あの話だな」

男3「ほえ面かくなよ」

立川「お前ら仲いいなぁ」

二見「馬鹿のジェットストリームアタックだな」

男1「あれは・・・俺らがまだ小学生のころの話だ」

男2「俺達の通う小学校には、校庭の隅に木造の旧校舎があってな」

男3「よく、隠れてそこで遊んでたりしたもんだ」

二見「お前ら小学校の頃から一緒なのかよ!?」

立川「リアルズッコケ三人組だな」

男1「その校舎には、あるお化けがでるという噂があった」

男2「そのお化けとは、今や全国区で名を馳せるトイレの花子さん、だ」

男3「夜に旧校舎のトイレの周りを3回まわって彼女の名を呼ぶと、彼女が現れると言われていた」

二見「あぁ、うちの学校にもあったなぁ。そんな噂話」

柴田「うちは4時44分にトイレ行ったら出るって言われてたな」

男1「ある時俺達は、先生の目の届かない旧校舎裏で、こっそり持ち込んだDSをしていた」

男2「3人とも、マリオカートで対戦しようとしていたんだ。旧校舎には、ぎりぎりどっかの野良Wi-Fiが届いていたからな」

男1「そして、ある日それは起きた・・・」

男2「俺達がゲームを起動したら・・・そこには何と」

男3「『4人目』のプレーヤーがいたんだ・・・!」

男1「当然、俺達も最初は偶然近くを通りかかった人間を疑った」

男2「だが、その周辺にDSを持っている人物は見当たらなかった」

男3「そこで俺達は確信したんだ・・・この4人目のプレーヤーは、花子さんだということに・・・」

二見「花子さんDS持ってんのかよ」

柴田「しかもWi-Fi設定してるとかすげーな」

男1「それから俺達は、その4人目のプレーヤーのことをこう呼んだ」

男2「花子さん、COMではない4人目プレイヤー、だがその正体は一切が不明・・・」

男3「その名も・・・花COM-X<ハナコム・エックス>」

二見「お前らそれ言いたかっただけだろ」

立川「もうこれギャグじゃねーか」

柴田「別の意味で涼しくなったな」

男1「いや、でも現象自体は本当に起きたんだよ」

男2「1か月くらいすると自然に無くなったけどな」

男3「今でも不思議だぜ・・・」

二見「ふーん・・・手の込んだ悪戯かね?」

柴田「じゃ・・・トリは頼みますよ、先輩」

立川「おう、任せとけ」

立川「・・・これは、大昔に私の地元にあった城の話でね・・・」

その後、彼女が話したのは八王子城跡にまつわる話だった。

話を聞いたメンバー全員に想像を絶する恐怖を与えたその語りっぷりは、2名失神、1名失禁という結果をもたらし、後にサークルの伝説となる。

・・・

立川「いやぁ、楽しかったな!!」

男1「ちょっと、大きな声出さないでください!泣いてる子もいるんですよ!!」

男2「ひっく・・・ひっく・・・」

男3「ふえぇ・・・おトイレいけないよぉ・・・」

二見「いいからお前はパンツ洗って来いって」

柴田「皆、少しは涼しくなったか?」

1年生「普通に怖かったです・・・」

柴田「はは、立川先輩の秘められたた才能を見た、って感じだったな」

立川「そうだろそうだろ。もっと褒めろ」エッヘン

二見「社会に出る上では一切役に立たないけどな」

立川「うるせー」

その後、恐怖を紛らわせるため・・・というわけではないが、皆で朝まで飲むことになった。

二見がベランダで煙草を吸っていると、部屋の主である柴田が出てきた。

柴田「よう、飲んでるか」

二見「ああ、ぼちぼち。・・・それにしても、ずいぶん散らかっちまったな」

柴田「まったくだよ。あいつらに至っては小便まで漏らす始末だしな」

二見「はは、花見の時ゲロかけられた俺の気持ちが少しは分かったか」

柴田「んー、まぁな・・・」

そう言うと柴田は、少しだけ目線を逸らす。

柴田「・・・なぁ二見。お前さぁ」

二見「ん?」

柴田「立川先輩と、付き合ってる?」

二見「ん・・・あぁ、まぁ」

柴田「そうか・・・」

そう言うと彼は二見の握っている黒い箱から煙草を取り出す。

柴田「一本もらうぞ」

二見「ん」

火をつけてやると、柴田は大きく息を吸い込む。

柴田「ふー・・・・そうか、やっぱりな」

二見「何だよ、いきなり?」

柴田「いや、確認しときたかったんだよ。最近、二人の雰囲気が前とちょっと変わったしな」

二見「マジか・・・そんなつもりはなかったんだが」

柴田「はは、まぁお前はそうかもしれんけど。先輩は確実に変わったよ」

二見「そうか?」

柴田「あぁ。服の雰囲気とか、お前に対する物腰とかちょっと柔らかくなったしな」

二見「よく見てんなぁ」

柴田「ああ。何せ、俺もあの人のことが好きだったからな」

彼の言葉に、二見の心臓がドキリと跳ねあがる。

二見「え・・・」

柴田「実は、このサークルに入ったのも半分は先輩目当てだったりする」

二見「マジかよ・・・」

柴田「ああ」

そういってもう一度、彼は大きく息を吸い込んだ。

柴田「ふー・・・・・・アメスピ、か・・・俺も吸ってみるかな」

二見「・・・」

柴田「・・・」

二見「なぁ」

柴田「ん?」

二見「その・・・なんつーか・・・んん」

柴田「なんだよwww」

二見「これ・・・ごめんって言えばいいのか?」

柴田「俺に聞くなって・・・」

二見「・・・」

柴田「いいんだよ。俺は。あの人が幸せになってくれれば、それで」

二見「んん・・・」

柴田「それにあの人は最初からずっと、お前の事好きだったみたいだしな」

二見「・・・」

柴田「一見つれないように見せかけて、お前も心の底ではあの人の事嫌いじゃないのも分かってたし」

二見「あぁ・・・」

柴田「まぁ・・・最初のうちは絶対俺のほう振り向かせるなんて・・・思ってないわけでもなかったけど・・・」

二見「・・・」

柴田「今はもう、そんなんどうでもいいさ」

二見「柴田・・・」

柴田「ま、悔しい気持ちも全くないわけでもないけどな。とにかく、素直に祝福するよ」

二見「おう・・・ありがとな」

柴田「それにしてもさ。それならそうと早く言えよな。俺とお前の仲じゃねーか」

二見「タイミングを逃してな・・・というか、言うほどのことでもないかと思って」

柴田「このアホ」

彼は二見の肩を強めに叩く。

二見「痛てっ」

柴田「まったく・・・でも、まぁ。俺も酒が入ってなきゃこんな話できないしな」

二見「・・・そうだな」

柴田「おう」

二見「・・・」

柴田「・・・」

二人の咥える煙草が、静かに短くなってゆく。

二見「・・・先輩と二人の時でも、こんな空気になったことはないぞ」

柴田「そりゃそうだろ」

その時、ベランダの窓が開けられる。

立川「おーい、そこの男2人!一体何話して」

二見「ふぅー」モクモク

立川「げほぉっ!げふっ、げふんっ!や、やめんか!!」

二見「あー、いや先輩の顔に蚊が止まってたんすよ」

立川「くっ・・・この屈辱・・・思い出したぞ、確か花見の時にも、って・・・なんだ柴田、お前も煙草吸って・・・」

柴田「ぷはー」モクモク

立川「げふんっ!!げふげふ、お、お前まで!?」

柴田「あれ?いやー、風向きのせいですかね・・・?」

立川「完全無風じゃねーか!!ぐううう・・・柴田は私の味方だとおもってたのに!!」

そう言って彼女は窓を閉めてしまった。

二見「ははっ」

柴田「先輩には悪いが、今はまともに話できなさそうだわ・・・」

二見「そうか・・・」

二人は黙って夜空を見上げる。

柴田「・・・うし、そろそろ中入って飲みなおすか」

二見「おう・・・って、アレ・・・」

柴田「どうした?」

二見「内側から鍵かけられてる・・・」

柴田「あのヤロー・・・」

・・・

翌朝、日も明けきらぬうちに二見と立川は柴田の家を出る。

二見「朝日が目に染みる・・・早く帰って寝たい」

立川「私も・・・」

二人はフラフラとした足取りで駅へと向かう。

夏休み中の早朝、相鉄線の車内には彼ら2人のほかに人影はない。

立川「ボックス席独り占めー!」ポフッ

二見「こらこら、足を乗せるなみっともない・・・」

立川「んー・・・」

徹夜明けの身体に、電車が線路を走る音と振動が心地よい。

二見が朝の陽射しの中微睡みかけていると、彼女が静かに口を開いた。

立川「・・・なぁ、二見」

二見「ん・・・?」

立川「お前。生まれ変わりって、信じるか?」

突然の彼女の問いかけに、戸惑う二見。

二見「生まれ変わり・・・かぁ。どうだろうな?」

立川「ほら、たまにテレビとかでやってるだろ。前世の記憶を持っている人たちの話とか」

二見「あぁ、やってるなー・・・まぁ基本的には、そういうオカルト系は信じてない・・・と思うけど」

立川「そうか・・・」

二見「なんでまた?」

立川「いや、私な・・・生まれ変わりっていうのかどうかはわからないけど」

二見「うん」

立川「こないだ、お前と横浜に行った帰りの電車で眠ってる時に、夢を見てさ」

二見「夢?」

立川「ああ。夢・・・」

立川「その夢の中じゃさ、私は二見の幼馴染だったり、友達だったりするんだよ」

二見「へえ」

立川「まぁ、それは二見であって二見じゃないんだけどさ」

二見「んん?」

立川「名前がね。無いんだよ。どうしても思い出せないっていうか・・・」

二見「はは・・・それなのに、俺だって分かるのか?」

立川「分かるよ・・・で、私はやっぱり二見のことが好きなんだけどさ」

二見「うん」

立川「上手く想いを伝えられなくて、結局二見は私から離れていっちゃうんだ・・・」

二見「・・・」

立川「ある時私は二見の幼馴染で、ずっと仲良くしていたのに高校進学を機に二見から離れてしまう・・・」

立川「そしてまたある時は二見の友達で、私は大人になるまでずっとそばにいたのに・・・」

立川「・・・結局二見は、他の人と結ばれちゃうんだよね」

そう言って彼女は伏し目がちに微笑んだ。

二見「それはそれは・・・その夢の中の俺ってのは、随分モテるんだな」

立川「うん。だから、次は私の番。もう、逃がさないから」

二見「はは・・・俺にとっちゃ、これが初めてのはずなんだけどな・・・」

困ったような笑顔を浮かべる二見に、彼女はそっと口づける。

・・・

それから、時は流れ二人は結婚する。

大学卒業から4年が経った頃、二人は子を授かった。

そこから幸せな家族生活が始まる・・・そのはずだった。

いつか、彼女が話してくれた通り、彼女の血は100万人に1人しか適合する者がいない。

小柄な彼女の身体は、過酷な出産に耐えることが出来なかった。

産まれてきた子供の顔を見ることなく、彼女は逝ってしまったのだ。

おいこれもしかしてお化けなんての続きか!?

支援!!

残された父子は、二人で生きていくことになる。

その苦労は並大抵のものではなかった。我が子に対する愛情を以ってしても、社会の厳しさに挫けそうになることが幾度もあった。

だが、彼は歯を食いしばってそれに耐えた。

最愛の人が遺してくれたその子と共に生きていくことが、今は亡き彼女に対する愛情であると彼は考えていた。

そして、更に二十余年の歳月が流れた・・・。

・・・

「父さん、今までありがとうな」

彼の前には、スーツ姿の青年が立っている。

「立派になったな。・・・ほら、母さんにも見せてやれ」

そう言って懐から取り出した手帳の中には、大きく膨らんだ腹部を抱え微笑む彼女が写っている。

「・・・俺達の子供は、こんなに大きくなったぞ」

「ふふ、なんかアレだな。そのセリフ、まるでドラマみたいだな」

「俺にとっちゃ一世一代のドラマだったっつうの」

二人は笑いながら話している。

「よし、じゃあそろそろ行くよ。父さん」

「おーう、頑張れよ」

彼はその青年を見送り、身支度を整える。

「さて、と・・・俺もそろそろ行くか」

・・・

電車が薄桃色の花びらを纏いホームに進入してくる。

辺りにはスーツに着られている、と言った表現が似合う若者達の姿が多く見える。

席に座り、うららかな春の陽射しに彼はそっと目を閉じた。

瞼の裏には、これまでの出来事がまるで昨日のことのように浮かんでくる。

『お前。生まれ変わりって、信じるか?』

あの日彼女が問いかけた言葉がふいに頭をよぎる。

もし、生まれ変われたとしたら。自分はまた彼女に会うことができるだろうか。

その答えは、あの頃交わした二人の会話の中に埋もれてしまう。

彼は、そのまま目を開けられずにいた・・・。

・・・

『間もなく、かしわ台・・・かしわ台です』

「・・・はっ」

「あぁ・・・また寝過ごしちまった・・・」

<ヴーーーーーーーーー

「やべ、電話鳴ってる・・・」

「はい、もし」

「あ、二見か?もう皆ついてるぞ」

「あぁ、今電車乗ったとこなんで、もうちょっとです」

「ん、わかった」

そう言って彼は電話を切る。

「やっべー、先輩たちもうついてんのか・・・」

「・・・・・よし、もういっそ立ってよう。そうだ、そうすれば眠らないからな」

「・・・それにしても」

「絶好の、花見日和だ・・・」

-相鉄ラリホー おわり-

以上です。

>>295
気付いてくれたのね私うれしい
男「お化けなんて怖くねぇぜ!!」 - SSまとめ速報
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完結・淡々と魚の話するわ - SSまとめ速報
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以前書いた上記の続きというか、パラレルワールド的な感じです。

>>306
ありがとうございます

>>285
訂正

翌朝、日も明けきらぬうちに二見と立川は柴田の家を出る。

翌朝、日が昇るのと同時にに二見と立川は柴田の家を出る。

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