文香(きっかけはほんの取るに足らないものでした)

・・・

文香(……最近奏さんとの暮らしに張り合いがありませんね)

文香(今日も小松伊吹さんと一緒に家で映画鑑賞をするとか)

文香(これが倦怠期というものでしょうか……？)

あやめ「アナスタシア殿が今人気のテレビアニ

あやめ「アナスタシア殿が今人気のテレビアニメの主題歌を歌っているらしいですね！」

珠美「まゆ殿も765プロの奈緒殿と一緒にエンディングを歌っておりますね！」

あやめ「心なしかお二人とも目のハイライトが8割引きですが……」

珠美「アナスタシア殿は今後の方向性について今までにないほど真剣にお話されておりましたな……」

文香「……なるほど、そのようなアニメがあるのですね」

文香「……どんな内容か気になりますね」ポチッ

文香「なるほどこの番組ですか……最近のアニメは映像が綺麗ですね。宛ら実写のよう――」

謎のバリトンボイスの男『エクストリィィィムチャリノリィィィィィ！！！！アァッ――――！！』ズチュ！

文香「――ッこれだ！！」

奏「平和って素晴らしいわ」

伊吹「……どうしたの急に」

奏「Lippsの面々に追い回されることもいちごパスタの試食をさせられることも静岡県民に屋上に呼び出されてブラックコーヒーを飲まされることも世界レベルのDVD鑑賞に付き合わされることもない」

奏「そして何より文香が来ない――ッ！それが素晴らしいわッッ！！」

伊吹「……うんそっか」

奏「好きな映画を何も警戒せずにだらだらと炬燵で観る……そんな幸福な日常があるなんて知らなかったわ」

伊吹「幸せのレベル下がってない？」

奏「伊吹ぃ～みかん～～」

伊吹「はいはい。てかそろそろドーナツクッション法子に返してあげなよ」

奏「もうちょっとだけ～」

文香「そんなに使い勝手が宜しいのでしょうか？」

奏「そうなのよ～ダメージがある部分を的確に護ってくれている感じが――」

奏「文香っ１？どこから来たの！？！？」

文香「玄関から」

奏「伊吹ッッ！？また鍵閉め忘れたでしょ！？！？」

伊吹「あーうっかりしてた」

伊吹「てか寮の部屋に鍵かける必要なくない？」

文香「さあ奏さんこちらの自転車に――」

奏「待って待って待って！！あともう少しで私のお尻が完全復活するのよ！？もう少し、もう少し待ってもらえないかしら？？」

文香「……やだ！それでは――」

奏「そこをちょっと待って待ってって！一週間っ、一週間で良いんだから！！」

文香「ちょっと自転車に乗るだけですよ？何を怖がることがあるのでしょうか、いやない(断言)」

奏「絶対何か仕込んでるもん！！もうやだぁ……たすけていぶきぃぃ～～」ぐすっ

伊吹「普段の大人びた様子から想像出来ない幼児退行ぶり……」

文香「ぞくぞくしますねぇ……うふふっ♪」

伊吹「うわぁ……文香ちゃんってそんな邪悪な笑みが出来んだ……」

文香「さあ早くその駄々っ子幼児退行している現役JKカリスマアイドルを渡してください…」グイッ

奏「いやよおぉぉぉお！！！！」ガシッ

伊吹「痛い痛いっ！！なんで髪に掴まるんだよ！！」

奏「だって掴めるところなんてそこしかないじゃない」

伊吹「はったおすぞ」

伊吹「……まあなんていうか、今回は見逃してくれない？奏もこうだいぶ追い詰められているわけだし」

奏「そうよそうよ文香っ！私の代わりにこの純情ダンサーを差し出すから私のお尻だけは助けて！！」

伊吹「どうぞお持ち帰りください」

文香「ありがたく頂戴いたします」

奏「いぶきぃぃぃぃぃい！！！」ずーるずーる

バタン

ｵﾝｷﾞｬｧｧｧｧｽ!!!

伊吹「ふう……全くなんで奏はああなっちまったんだろうな……」

伊吹「さてと、奏が帰って来た時のためにボラギノールと、あとお風呂をぬるめで用意してっと」

伊吹「いつもいつもお尻ばっかり狙われちゃって――」

伊吹「……ふふっ♪文香ちゃんには感謝しないとな」

伊吹「だって奏のお尻をケアできるのはアタシだけだから――」

――そう、奏はアタシがいなきゃダメなんだから

その後、エクストリームチャリ乗りに失敗した奏は全治2週間の大けがを負い、仕事にそれなりに支障が出たがあやめ殿の暗躍によりほかのアイドルをあてがう事でスケジュール調整は完璧に行われた。
特にまゆは何故かエンディングを歌っている番組を急遽降板し、まるで何か吹っ切れたかのように生き生きとアイドル活動を行うのだった。

さらにその穴埋めできらりと杏は超人気アニメのエンディングを歌うこととなった。

奏は――
ますます伊吹による手厚いケアなしに生きていくことは出来なくなった。今日も彼女は暖かな居場所のある場所へと帰るのだった――

めでたしめでたしっ