学校 放課後
男「さようなら、先生」
「あら。男くん、今日も遅くまで委員長のお仕事?」
男「はい。早急に済ませておきたいことがあって」
「頑張ってるわねー、うちのクラスの生徒も見習ってほしいわ~」
「オイこら! 待てって!」ダダダダ
「ギャハハハ! ウェーイ!」ダダダダ
「──コラァー!! 廊下は走らない! 危ないでしょう!」
男「えっと。それじゃあ先生、これで」
「まったくもお。あ、うん、男君はあんな風になっちゃ駄目よ?」フリフリ
男「……」ペコリ
男(あんな風にか。でも自分を客観的に見るのは難しいと思う)スタスタ
男(けれど周りから『頑張ってるね』と言われる内は、うまくやれているんだろう)
男「うん…そう思おう…」グッ
スタスタ ガタゴトン プシュー
ガヤガヤ ガヤガヤ
男「けれど…」スッ
~スィートランド・ラブホテル~
男(ラブホテルに住んでる時点でアウトだよなぁ……)シミジミ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1502618493
前作↓
叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」
叔母「今日からココに住んで」男「ラブホテルで?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464445806/)
~ラブホテル・44号室~
叔母「唐突だけど、今度この部屋を改装します」
男「………」ピタ
叔母「いただきます」パシン
男「え? それ初耳なんですが。え、改装? え、いつ?」
叔母「一週間後ぐらい?」モグモグ
男「何故もっと早く言ってくれないんですが…」
叔母「大丈夫。色々曰くつきでも絶対にやってくれる改装業者だから、安心して」
男(なにそれ逆に怖い……)
叔母「気になるなら部屋の整理手伝うけど」
男「あっ、いえいえ! 居候の身ですし、自分の身の回りぐらいはどうにかしますって」
叔母「ふーん…」モグモグ
叔母「でも、私もきっと暇だろうし手伝えることがあるなら、」
男「ぜんぜん大丈夫です!」ペカー
叔母「……。君がそういうのなら別にいいけど」モグモグ…
男「自分のことは自分でしますよ」ニコ
叔母「そっか……」モグゥ
ガチャ!
受付「──やっほー! 今日も今日とてご飯食べきたよー!」
男「ハイハイ用意してますよ、っていうか大丈夫なんですか、このままで」
受付「いただきまーす! ほぁん? どったの急に?」モグモグ
男「一週間後、俺ここから居なくなるんでご飯ないですよ」
受付「ああ。改装ね、そんときゃ巫女ん家にお世話なるよ。てか、準備とか手伝おっか?」
叔母「………」フフッ
男「え、手伝ってもらってもいいんですか?」
叔母(──アレッ!?)バッ
男「助かりますよ、色々と」
受付「どんとお姉さんにおまかせよ」ニッ
叔母(お、男くん…私には頼らないで、受付には頼るの…?)ワナワナ
男「実は冷蔵庫を運ぶ方法に困ってたんですよねぇ」キャッキャッ
受付「コラコラ。なぁに重たいの持たせようとしてるのかな~?」キャッキャッ
叔母(しかも楽しそうに計画してる…)ブルブル
男「今週の飯のお代がまだですから。ツケるぐらいなら身体で払ってください」
受付「ぐっ…うまく使うじゃない、お姉さんのことを…!」
男「嫌なら月イチで借用書作りますけど」
受付「淡々と怖いこといったなあ!? ウチはもっと穏やかな関係性で居たいのに!」
叔母(するい…私も手伝ったり、楽しい会話したい…)ソワワッ
男「それは貴女次第です。今の手持ちは?」
受付「まったくアリマセン!」
男「じゃあ荷物整理で。お話はこれで終わりです」モグモグ
受付「ウチとキミとの繋がりはお金だけなのかい!?」
男「どーせ無駄遣いしたんでしょう。知ってるんですよ、ケータイ新しくしたの」モグ
受付「何故ソレを…目敏いな…」
受付「あ! でもでもぉ、お姉さん今すぐにって話ならぁ身体で払うのもやぶさか無いヨ?」チラ
男「………」モグモグ
受付「サラッと無視するのやめて?」
男「叔母さんお代わりいりますか?」ニコ
受付「ウチのお話きいてあげて!」ヤダーッッ
叔母「……………」
男「叔母さん? どうしたんですか?」
叔母「そういえば私、ココのご飯代払ってないけど…」
男「え! 結構ですよ! 叔母さんにからはいただきません!」
叔母「いやちゃんとそこは…」
男「大丈夫です! 叔母さんには大変お世話になってるんですから!」ペカー
叔母(なんてまぶしい信頼度…)ウッ
受付「……」じぃー
受付「最近、オーナーに対して優しすぎない? あとウチに冷たくない?」
叔母(お…)ソワ
男「そ、そうですか? 特に態度変えたつもりは…」
叔母「実は私も思っていた」キリッ
男「叔母さんも!?」
受付「ほらご本人登場じゃん」
男「え、でも…お世話になってる人に対して気を使うのは普通じゃ…」
叔母「私はもっと頼って欲しいよ、男くん」
男「叔母さん…」
受付「お姉ちゃんはもっと優しくして欲しいなぁって!」
男「ちょっと今は黙ってて」
受付(ホント冷たい…)シクシク
男「俺は十分頼ってると思うんですが…立場的に…」
叔母「いや、もっとさ、キミ個人の問題で困ったこと、あるだろう?」チラチラ
男「困ったこと…個人の問題…」
叔母「…」ドキドキ
男「ああ、確かに。俺は家族として言わないと駄目なコトがありました」
叔母(男くん…! そうとも君はもっと頼っていい。私をこき使っていいんだ…!)
男「叔母さん…」ニコ
叔母「ハイ!」
男「──ちゃんと服を着て下さい」スッ
叔母「……………」(ブラ&パンツ)
受付(今まで言わんかったケド、この人、素で露出っ気あるよね)ヒソヒソ
男(シッ! 家族として優しく諭すんですよ、あと貴女の格好も相当だから)ヒソヒソ
叔母「ハイ、ゴメンナサイ」ドンヨリ
次の日 44号室
男「よっこら、しょっと。ふぅー…」ストン
受付「あれ? ねえ男くん、アレ知らなーい?」オーイ
男「あ、はい! ガムテープですか? それともダンボール?」
受付「いや、エロ本だけど」
男「働いて?」
受付「まさか一冊も無いの…?」
男「あっても教えないよ…」
受付「えーっ! 今日はコレだけを楽しみにしてたのに、ガッカリだよお姉さん!」
男「勝手にガッカリしてて下さい」ガサゴソ
受付「冷たいんだから、もー」スタスタ
受付(あ。そうだ、客の忘れモンのエロ本隠して驚かしたろ)ニシシ
受付(確か、階段踊り場に纏めて置いてたハズ──)チラ
叔母「………」ズモモモモ
受付「──なにやってんスか、オーナー……?」ビクッ
叔母「う、受付っ!」ビク
受付「えっと、なんスか、下は暇なんスか? だったらコッチ手伝って下さいよ」
叔母「くッ…そう簡単にはいかないから困ってるんだ…ッ!」グッ
受付(なに言ってんだこの人)
叔母「私のことは気にしなくていい…好きに男くんに使われろ…」ゾモモ
受付「そりゃ終わるまでは好きに使われるつもりですけど…」
受付「あの。先に言っておきますケド、──お金はちゃんと払いましたからね?」
叔母「え?」
受付「飯代ッスよ、飯代」
受付「ウチこんなんですけど、金に関しては結構キビシイほうなんで」ポリポリ
受付「事故で携帯壊しちゃって、それで彼に飯の支払い遅れてたんですよ」
叔母「……」
受付「──ま、だらしなさで誤魔化そうとしたら、くっく、どうやらバレてたッスけど」クス
受付「だから友達に金借りて払いました、今回の手伝いは……利子払いってコトで」
叔母「……羨ましい……」ズモモモモモモモ
受付「なんて?」
叔母「じゃあ、なんだ、お前はなんの罪もなく彼の手伝いをしてるのか…!?」
受付「そこまで殺伐した関係じゃないッスけど!?」
叔母「どうしてお前だけ…」サメザメ
受付(そういやこの人。昨日も様子が変だったな…いつも以上に…)
受付「なにか問題でもあるんスか、彼の引っ越しに」
叔母「ぇ、引っ越し?」
受付「いや、だって、引っ越しデショ? 改装するなら住む部屋が無いと」
叔母「………あっ」
受付「えっ!? もしかして引越し先を考えてあげてないの!?」
叔母「じゃあ今、彼はどこに荷物を運んでるんだ……?」
受付「ウチが知るわけねーデショ! ちょっ、男くーん!?」
ハーイ
受付「どこにいるの!? ていうか何処に荷物を運んでるのさー!?」ダダッ
叔母(……ぉ、ぉぉ……)ブルブルブル
ガックシ
叔母(私は、なんて情けない叔母だ…彼のために何もやれやしない…)ギュッ
叔母「……心を、決めねばならぬッ」キッ
~~~
男「確かに改装中は住む場所どこかなって、思ってましたけど…」
受付「地下の用具入れスペースに、荷物を押し込んでる姿は…ウチでも切なくなったよ…」グス
叔母「……男くん。私は決めました」
男「は、はい? なにをですか?」
叔母「私はかれこれ、君の住む場所を有耶無耶にしてきたと思う」
男「今さらですね本当に…」
叔母「でも、今日でそれは終わりなんだ」
叔母「──一緒に住もう。私と一緒に、同じ部屋で」
男「それは、つまり叔母さんの部屋で…?」
叔母「そうともさ…」キラキラ
男「あそこでかぁ~…」ウーン
叔母「そういうと思った!」
叔母「なので私は、この一週間をかけて部屋の掃除をしておきます!」
男「モロモロ無理だと思います」フリフリ
受付「無理ッスよ」コクコク
叔母「私は折れない! 覚悟を決めたのだ、男くんの保護者として鉄壁たる志をな!」
男(叔母さんの様子おかしくありません…?)ヒソヒソ
受付(いつも以上よね…)ヒソヒソ
叔母「さらば。過去のだらしない私……」スッ キラキラ…
男「提案はとても嬉しいですけど…でも…」
受付「ラブホとオーナーの部屋、けっこう距離あるッスよ?」
男「そうですよね。それに部屋の掃除と荷物運びが同時期になりますし」
叔母「……」
受付「人居ないのにこれ以上仕事増える選択する必要あります?」
男「ケル君もまだ帰ってこないし…」
叔母「…うん…」コク
受付「むしろラブホの従業員増やしましょーよ、全然足りて無いッス」
男「俺の心配よりこっちが大丈夫なんですか、ここの営業方針…?」
叔母「……ん……」コクコク
男(静かになっちゃった……)
受付「しゃーない、もうウチに住めば?」
男「でも、どっこいどっこいでしょ?」
受付「フフーン! 巫女がこの前に遊び来て片付けたのだよ。めっちゃキレイ、ビビるぐらい」
男「そ、そうなんですか? でも荷物とかあるし…」
受付「ミコに頼めば喜々としてやってくれると思う。十代の荷物って単語だけで」
男(意味がわからない…)
受付「てーことで、オーナー。そんな感じに勧めてオッケーッスか」
叔母「ソレデイイヨ」
受付「声ちっさッ!?」
男「自分も周りの負担が少なく済む方がいいと思いますけど…」チラチラ
叔母「…ハイ…」トボトボ…
受付「ん~…? 今日のあん人、マジでどうしちゃったワケ?」ポリポリ
男「………」
~叔母宅~
叔母(お腹減った)グゥー
叔母(引越し準備中に出向くのは気が引けるし、なにより、当初の目的であったお手伝いを放棄してる今…)
叔母「むしろ最初より状況が酷くなってる気がする…空回りしてばっかりだ…」
ゴロン
叔母(私はただ、彼の手助けをできれば良いだけなのに)
叔母「…相変わらず、わがままだな」
prrrrr
叔母「む…もしもし…?」ムクリ
『ハロー! まだワタシの妹ちゃん、元気してる?』
叔母「お義姉さん…お久しぶりです…」
『あん? どうしたよ寂しそうな声しやがって、欲求不満か?』
叔母「間違っちゃいないですね…」
『カカッ! 暇なら男作れよ、ラブホばっかりかまかけてないで外で歩いてみろって!』
叔母「男…」
『そーそー。なんなら、上流階級の頭空っぽ野郎ども紹介してやるけど?』
叔母「それはそれで、楽しそうですね」
『おっぱいポロリするだけで金落としてくれるから、妹ちゃんなら稼ぎ放題だぜ』
叔母「ははは。それはいい…」
『ん。まァ、そーいうこと言ってっと息子に怒られそうだから、ナイショな今の話』
叔母「え? 彼がなぜ怒るんです?」
『あん? そりゃアイツが妹ちゃんにお熱上げてるからだろ』
叔母「………」
叔母「……ほ、ほんとに?」
『……………。何、今のガチっぽい感じ…』
叔母「んぇっ!? いやいやいやっ!? そちらの気のせいだと思いますが!?」ビックゥウウ
『まさかアンタ手ぇ出してないよね…? ウチの息子に…?』
叔母「バッ、ちょっ、馬鹿だな義姉さんーッ!? なわけないでしょーッ!?」ダラダラダラダラ
『そういうテンションの妹ちゃん初めてなんだけど……』
叔母「こ、こういう態度の時もたまにはあります…!」
『じゃあタイミング考えてね…お義姉さんもう年だし、すごいびっくりするから…』
叔母「コホン。それで久しぶりの電話ですけど、何用ですか?」
『ああ、息子のこと』
『離婚裁判。勝っちった、って伝えておいて。当分、日本で暮らせるよってさ』
叔母「……」
叔母「おめでとうございます、お義姉さん」ペコ
『おうよ。今、一人で祝杯あげてる。ワイン二本目』
叔母「寂しそうですね…」
『まったくだ。一人になるための裁判だってぇのに、いざ独りになりゃ惨めなモンだな!』クック
叔母「今度お邪魔しますよ、いい酒残しておいて下さい」
『うむ。その時、妹ちゃんのことなんて呼べばいいかね?』
叔母「そうですねー…」
『息子の彼女?』
叔母「えっ! んえーっ!? ちょっ、そーいうのはやめてくださいよぉ~」テレテレ
『…………………………………………』
叔母「じょ、冗談ですから! 今のも!」ダラダラダラダラ
『なんか怖いよ、今の妹ちゃん……』
叔母(私自身もヤバイと思ってる……)ダラダラ
『と、とりあえずさ、うん、まー息子のこと頼んだわ。……ムスコって意味じゃないよ?』
叔母「わかってますってば!」カァー
『くっく、元気になったねえ妹ちゃん。良いことだ、良いことだ』クスクス
叔母(からかわれていたのか…っ)ぐす
『じゃあとは宜しく。色々やること終わってまあ暇だし、仕事の合間にでも一回そっち行くわ』
叔母「え? こ、これるんですか?」
『おうとも』
叔母「楽しみにしてます。ぜひ、いらして下さい」
『カッカ! おう!』
ピッ
叔母「……。うん、いい話を聞けた、とってもいい話だった」
グッ パタン
叔母(彼の周りがどんどん幸せになっていく。どんどん住みやすくなっていく)
叔母(──あぁ、そう、私は彼をサポートするべくして家族になった)
だから彼を支え、認められ、私も満足できる。
叔母「きっとこれが幸せってコトなんだろうなぁ…」シミジミ
叔母「……」
叔母(お酒飲みたくなってきた、飲もう)ゴロン
~~~
男(──よし、準備はちゃんとしてる。後は鳴らすだけだ)スッ
ピンポーン
男「……」
ガチャ
叔母「ん~…」ボリボリ
男「叔母さん、こんばんわ。夜分遅くにすみません」ペコリ
叔母「……」じぃー
叔母「え? あ、うん。男くん? アレ? なんでここに…うん…?」グラグラ
男「実は今日は晩御飯を作ろうかと思って──叔母さん?」
叔母「ん~~~ッ…」
叔母「──ああ、そっか。これ夢なのかな、うんうん、キミと会いた過ぎて…見た夢なんだ…」キィ
男「ちょっと大丈夫ですか!? さっきからフラフラとして…!」バッ
叔母「おっ? えへへー」ムギュー
男「おっぷ!?」ぽふっ
叔母「んん~~~~」ナデナデナデナデ
男「ぉおぉおぅむぉおうっ!?」ぐりんぐりんぐりんぐりん
叔母「つーかまーえた☆」ぐいっ
男「うわぁっ!?」
きぃ パタン!
叔母「んんーー……髪の毛いい匂い、ホテルのシャンプー使ってないなぁキミ」クンクン
男「ちょ、ちょっと!? 叔母さ、んっ!?」
叔母「むちゅう~~~~~~~~~~っ」ジュボボボボボボボ
男「ぐぁー! 頬が喰われるー!」ギャー
ジュボッ!
叔母「あはは! 頬は食べないよ! んふふ!」デレー
男「…!? …!!!? お、叔母さん一体どうしちゃったんですか…!?」ビクビク
叔母「好き」
男「はいッ!?」
叔母「好きだよ、男くん。だーいすきぃ~…」ちゅっ
男「ちょっ、待って、叔母さッ! んむぅ!?」
叔母「ん、んっ、んー!」ちゅっちゅっ
男「──痛いッ! 頬に歯が当たって凄く痛い! やめて…! 本当にやめてください!」バッ
叔母「えぇ~…」シュン
男(ぐッ、この匂い! もしやお酒を飲んで…にしても叔母さんが酔うことなんてそうそう…)チラ
【お酒の空き缶】?五本以上 カランコローン
男「洒落にならないぐらい飲んでる!!」
叔母「うッぷ…」ビクン
男「おわーっ!? 駄目…! ここで吐いちゃ、だ…ッ! ───あ……」
一時間後
叔母「ずびばべん…でびば…」ズビー
男「大人しく寝てて下さい…謝罪は明日でも良いですから…」ぽんぽん
叔母「ごべんね…叔母さん、本当にどうしようもなくって…」ボロボロ
男(泣き上戸…)
男「良いですよ、構いません。もうキ…キス…なんて前にしちゃってますから」テレ
叔母「二回も奪ってごべん…」
男「二回目はノーカンです、ノーカン。お互い、そういうことにしときましょう」
叔母「……。おとこくん、超大人…」グス
男「褒めてます?」
叔母「そういうこと好き…」
男(ああ、酔っぱらいに会話求めても駄目だな…)
男「叔母さん。寝たままでいいですから聞いててください、俺の話を」
叔母「………」コク
男「ずっと言いたかったことがあったんです。けれど機会がなくて言えなくて、だから今言っておきますね」
叔母「……?」
男「俺、いつかラブホテルを出ようと思います」
叔母「だべぇー!!」バッ
男「寝てて」ぐぃ
叔母「ぐぇッ」ぽすんっ
男「……。酔ってる貴女に宣言する自分は、とっても卑怯だと思うし意気地なしだと思います」
叔母「男くん…居なくなっちゃヤダ…」
男「………」
男「駄目です。俺はいつか、俺自身の頑張りでラブホテルを出たいんです」
男「数ヶ月、ここで過ごして──変わりたい、もっと自分らしく生きようと思えるようになりました」
叔母「………」
男「それは悪いことでしょうか? 駄目なことでしょうか? …俺にはわかりません、けれど…」
男「そう思えたことを俺は誇りに思いたい」
叔母「…男くん…」
男「貴女のお陰です。有難うございます、本当に…本当に…ありがとうと、貴女に伝えたかった…」
ギュッ
男「叔母さん。俺はきっと、あのラブホテルが好きなんです。絶対に絶対に離れたくないんだと思います」
男「でも…」
叔母「……?」
男「……いえ」
男「──これは言わないでおきます。多分、叔母さんには言えない、かな」
叔母「どうして…?」
男「そりゃあ勿論、あれです。男の意地ってやつです、意地っ張りってやつです」
男「言ったら色々と終わっちゃうというか、頑張りがなくなるというか、…そんな感じなんです」ニコ
叔母「…そっか」
叔母「なら私は…応援するだけだよ、キミの頑張りを心から支えるだけだ…」ムクリ
男「はい」
叔母「ずっと変わらない。今も昔も、君だけを見てるよ」
男「…ありがとうございます」
叔母「男くん」
男「…」コク
叔母「頑張って。応援してる、…いつか君が君だけの意思で飛び出せる日まで…ずっと…」クタァ
ぎゅっ
叔母「──愛してるからね…」
男「……」ブルッ
パタリ…
叔母「すー…すー…」
男「…俺もです、叔母さん」
~次の日~
叔母「すみませんでした」ドゲザー
男「お決まりになってません、それ?」
叔母「まったくもうどうしようもない叔母でスミマセン!」
男「い、良いですってば! 確かにこの部屋で寝るのは大変でしたけど…」
叔母(あれ? 何気に色々と片付いてる…もしや寝てる間に彼が…)
男「ちょっとシャワー借りてもいいですか?」
叔母「エッ!」
男「…今から学校なんですよね」
叔母「ウッス」
男「いっ、言っときますけど! 寝てる間になにもしてませんからね!? そーいうことしませんよ俺は!?」
叔母「し、知ってるよ! 男君はすごい紳士だって!」コクコクコク
男「…そもそも叔母さんなんですから、そこで否定してくださいよ…」ボソボソ
スタスタ
男「叔母さん」クル
叔母「は、はい? なにかなっ?」
男「……」
男「これからもよろしくお願います。貴女のラブホテル『スィートランド』で」
叔母「──……」
叔母「…はい、こちらこそ、よろしくお願いします」ペ、ペコリ
男「三年間。お願いしますね」
叔母「…うん」コク
男「って俺の身体…ちょ、待ってゲ───臭い!? 臭くないですか!? うそっ!?」クンクン
叔母「うん。ごめんけど、結構くさい…」
男「お風呂入ってきます!!」ババッ
第十三話 終
だいたい日曜日辺りで投下
ではではノシ
受付宅
男「よいしょっと」ポスン
男「ふむ。予め荷物整理してたけど、やはり量はどうにもできなかったか」キョロキョロ
ゴチャアア
男(これを期に、少しは捨てようかな。余計なものが増えてる気がするし)
男「…しかし、それにしても」チラ
受付「ぐがぁあああ…ごぉおお……っ」ムニャムニャ
男「酷い…」パシッ
男(部屋はキレイなのに…部屋の主がこの場でもっとも憐れだよ…)
受付「あーん、むにゃむゃぁ…ケヒヒ! ガハハ! むにゃ…」
男(恋人が出来れば変われるのかな。全然想像つかないけれど)スッ パサァ
受付「むひひ」ムニャ
男(この人だって普段から最低限の化粧ぐらいしてれば、まだ──)ポンポン
受付「んぁ?」パチクリ
男「あ。起きた」
受付「んん~~…ッ? なんで、君がここに居るの…?」ボリボリ
男「ちょっと、今日からここに住むんでしょうが」
受付「あんで?」
男「あんでじゃない。まったくもう…」スッ
男「じゃあ朝ごはん作ってあるので、食べて目を覚ましてください」スタスタ
受付「ん、んん」コク…
男「俺はもう学校の時間なので、お皿は水につけて、シャワー浴びてください。お酒くさいから」
受付「わかりました…」コクコク…
男「お昼ごはんも冷蔵庫に入ってますからね」トントン
受付「どうも…」
男「じゃあ、いってきます」
受付「いってらっさ~~い」フリフリ…
きぃ パタン
受付「……。もうちょっと寝よう」パタリ
~ラブホテル『スタッフルーム』~
受付「ふんふーん♪」
叔母「受付いるか?」ガララ
受付「む? チィ~~ッス! 今日は珍しく早いッスね~~」
叔母「……」ガララ ピシヤ
スタスタ スタスタ
受付「客は少なくてラクチンっすわ。あと電話があってケル君が明日──」チラ
叔母「受付」ずずいっ
受付「うわッ、顔近っかッ!? なにッ!?」ビク
叔母「お前に話があるんだ」ずずずいっ
受付「ちょっと距離近いって…な、なんスか今更改まって…」
叔母「ああ。今更ながらにお前に言いたいことがあって早めに出てきた」
受付「えっと、そうなんですか。じゃあどうぞ…?」
叔母「実はだな…」
受付(なんだろ。また男くん関連か、最近は彼に構いたがりだもんな)
叔母「──男くんの責任者としての覚悟が如何程か、今から私に教えて欲しい」
叔母「返答次第では即返還を望む」コクコク
受付「ほんっと今更なにを言ってんのアンタ?」
叔母「いや、勿論だが、私一人でこの状況の落とし所は考えたんだ」
受付「落とし所もなにも部屋が汚いからデショ」
叔母「ああ、それもあるだろう」
受付「それだけだよ」
叔母「とにかくそうやって悩んだ挙句、私がたどり着いた答えがお前だった」
受付「ど、どういうこと?」
叔母「自分一人じゃ認めきれないから、私を説得してくれない?」ペコ
受付「こっちに負担ありまくりじゃないッスかそれ!?」
叔母「いやはや身勝手なのは認めるよ」フッ…
受付「身勝手過ぎるでしょ…もっとがんばってくださいよ…」
叔母「頑張ったさ…私なりにちゃんと沢山考えたんだ…」
受付「つか、説得もなにも結局、他に決着方法が無いなら認めたらどうです?」
叔母「無理だと思う」フリフリ
受付「今、速攻に思考放棄しましたけど、本当に今日まで悩んでました?」
叔母「頑張ってました」キッパリ
受付(こういった話題だと絶対にブレないなこの人は…)
受付「オーナー、あのですよ?」ハァ
叔母「ん」
受付「何をそうも意固地になってんのか知りませんし興味もないッスけど」
受付「男くんが納得した上の今なんで、我々がくっちゃべっても仕方ねえつーか、意味ないデショ」
叔母「? 端から私個人の問題だから、彼は関係ないだろ?」
受付「なんでそこは割り切れるんスか!?」
叔母「私が悩み事程度に彼を巻き込むわけ無いだろ」
受付「元の原因が彼の住居問題なんですけど!」
叔母「だからお前に相談してるんだろう?」キョトン
受付「うッ…なんか頭痛くなってきた…頭痛が痛くなってきた…」グリグリ
叔母「ハハ、言ってることおかしいぞ受付」フフフ
受付(そりゃアンタでしょーが。ったく、たまに見せるおバカっぷりは何なんだ)
受付(ウチと一緒に男君が住んでほしくない。納得以前に、他人に説得してほしいぐらい)フゥ
受付(なのに彼を巻き込みたくない、とか…あれ…?)
受付「ふと思ったんですけど」
受付「なんかこれ、オーナーから恋愛相談受けてるみたいで気持ち悪いッスね」
叔母「そおなの?」シュン…
受付「いや、この程度の悪口ぐらい割り切ってくださいよ」
叔母「そっか……気持ち悪いのか、これ……」
受付(いや、そういや元より気持ち悪かったわ、相談事自体が)
叔母「もし彼の耳に入りでもしたら、うぉお、怖い怖いすぎる」ブルブル
受付「そんなの気にしても今更感ありますけど…」
叔母「このことはあまり公言しないようにする。受付、今日はすまなかったな」
とぼとぼ…
受付「──オーナー、ウチが理解できる限りでなら言っておきますけれど」
叔母「え?」チラ
受付「別に彼のことなんて、どーーーーでも良いですからね」
叔母「お前…」
受付「そらちょっかいとか出しましたよ? でも年下だしそれに以前に、男とか作る気まったくないんで」
受付「特に家に居るときは、モードが違うんで。自宅モードは一言も喋りもしないっすよ」
叔母「む。そういや家だと妙に静かだったな」
受付「外弁慶なんスよ。つまり、心配するよーなコトなんて起こりませんし起こしません」
叔母「……」ピク
受付「どーぞご安心を。そも提案したのウチだし、テキトーに過ごしてみせますよ」ニッ
~~~
受付「……」パチクリ
男「ん? まったく、やっと起きましたね受付さん」パサリ
受付「……」ぽけぇー
男「また寝ぼけてるんですか? つか、どんだけ寝てるんですか」スタスタ
受付「なんか…」クンクン
男「はい?」カチャカチャ
受付「めっちゃいい匂いする…」
男「煮込みハンバーグです。今から温めるんで待っててください」カチン
チッチッチッ ボォオ
受付「……。今何時なの?」ファアア
男「えーと、七時半回ったぐらいっすね」スタスタ
受付(だいぶ寝てたな…休みだからってダラケすぎた…)
受付「ん、そうかい。それじゃあ君はご飯済ませちゃったんだね」むくり
男「いや、食べてませんけど」
男「──出来れば受付さんが起きてから食べようかと思ってたので」ニコ
受付「………」
男「今日のは自信作です。ガスで料理が久しぶり過ぎて気合入っちゃいましたから」
受付「へぇ、そおなの、ほぉーん」フワワワァ
男「はい! それにそれに、野菜ジュースが安く買えたので二本ぐらい買ってしまって~」ニッコニコ
受付「……。今日の君、なんだか元気だよね」
男「? そうですか?」
受付「いや、私がいつもどおりじゃないだけかも…」
男「あぁそれはちょっと思ってました。家じゃ受付さん、わりかし静かですよね」
受付「まあね。一人の時までワチャワチャしてたら頭おかしいでしょ…」
男「でも、俺が居ますよ?」
受付「え? じゃあ襲ってほしいの?」
男「アクセル振り切れ過ぎじゃないですか、それ」
受付「くけけ。元気なお姉さんが良いなら頑張っちゃうけど、ウチ?」キラリン
男「まあまあ。自然体が一番ですよ、どっちの受付さんも俺、嫌いじゃないですし」
受付「あり? 意外とお姉さんに脈あり的な?」
男「わさび入れますよ、ハンバーグの中に」
受付「地味に酷いよねそれ……」
男「じ・つ・は! ハンバーグにわさびって、これが妙に合うんですよ!」パン
受付「えぇ~…本当にぃ~…?」
男「ものは試しです。さっそくやってみましょう」
男「でも煮込みハンバーグに合うかどうかは知らないんで、実験台になってください」スッ
受付「さらっと嫌らしいこと言ったね今!?」
男「くくく。俺も試すんで一緒に食べましょうよ」
受付「ったく、仕方ないな~」
~~~
男「おはようございます」
受付「おひゃよー」シャカシャカ
男「今日は早いんですね。隣、失礼します」スッ
受付「どうひょー」シャカ
男「どうも、ってアレ?」キョロキョロ
受付「? どったの?」
男「いや、えっと、受付さん、まさかですけど…」
受付「なんでひょ?」モゴモゴ
男「それ俺の歯ブラシなんじゃ…」
受付「え? あ! そうかも、うん」ピタ
男「……………………………………」ドンビキ
受付「……」シャカシャカ…
男「なんで再開するの!? ちょっとやめッ、イヤァアーー!! やめてッ!!」グイグイ
受付「ぺっ! なんで君が焦ってんのさ」
男「アンタほんとすっごいな! 人の歯ブラシ使って抵抗ナシなの!?」
受付「別に…」
男「おぇっ! マジで、おぇぇ! ですよ!」
受付「仕方ないなぁ、もう。じゃあかわりにお姉さんの使っていいよ?」スッ
男「ばっちぃ!!」バシィイ!
受付「ばっちいはヒドイ!!」
男「どう考えても汚いでしょうが! ムキィー! ヒドイ! アンタは酷いよ!」
~~~
男「行ってきます」ムスッ
受付「男くん。今日はバイトの日だから鍵持っててよー」
男「もう持ってますよ。貴女とは違うんですから、だらしない貴女とは」ジトー
受付「へいへい。しっかりものだね、頑張って勉強しておいで~~」ヒラヒラ
男「………」クル
キィ パタン
受付「まったく、ここまで根に持つタイプだったとは」フゥ
受付(乳児じゃあるまいし、歯ブラシぐらい気にしすぎだっつの)
受付「……まったく」チャリチャリ…
数時間後
受付「ただいま~あっついなあ今日も~」ガチャ
男「…おかえりなさい」カチャカチャ
受付「ウッス。今日もお疲れ、頑張って勉強してきた?」パタン
男「ええ、まあ」フィ
受付「おっと、なになに? まだ今朝のことで怒ってる? ちっちゃい男ですな~」スタスタ
男「………」トントントン
受付「それじゃあ何時までたっても彼女なんてできないよぉ~」アハハー
男「………」ピタ
男「受付さん」
受付「な、なによ?」゙
男「そこに座ってください。良いから早く」
受付(え…? ヤバ、もしかして本気で怒らせちゃった…?)
男「お願いします」
受付(目が本気だ。…短かったなー同棲生活、ま! 端からそうなると思ってたケド)ストン
受付「それで? お姉さんに何の用事?」
男「………」じっ
受付「早くしてよね~~汗かいて疲れてるんだし、さっさとシャワー浴びたいんだけど~~」パタパタ
男「これ、どうぞ」スッ
受付「は? ナニコレ?」
男「開けたらわかりますよ」
受付(なんなのさ一体…)
ガサガサ ビリッ
受付「──え……これ……」ガサリ
男「新しい歯ブラシです。俺が床にはたき落としたやつ、もう捨ててしまったので買ってきました」
受付「……」
男「今度は見分けしやすいようにピンク、にしたんで…もう間違えることも無いと思います…」テレ
受付「……くっ」プルプル
男「よく考えたら怒るほどでもないなって──ちょっと、なにを笑ってるんですか」
受付「あはは! だって笑っちゃうよこんなこと!」
男「お、俺だって一応は気にしてたんですよ!? 居候の身だし…むしろ迷惑かけたのは俺だったかなって…」
受付「いやいや、そうじゃなくってさ。うん、まあコレみてよ」スッ
男「え、これって…?」ガサリ
受付「開けてみても良いよ」ニコ
男「──新しい歯ブラシだ…これ、受付さんが…?」
受付「ごめんね」
男「! いや受付さんが謝ることなんてちっともありませんよ!」
受付「いいや、ごめんだよ。ウチが勝手に一人突っ走って、一人で完結しちゃってたからさ」
男「どういう…?」
受付「ううん、なんでもない、なんでもないんだ」スッ
受付「──ありがと、大切に使わせてもらうね」
男「……っ」ドキ
男「……はい、俺も大切に使わせてもらいます……」ギュッ
受付「うん」ニッ
男「受付さん。改めてすいませんでした、そしてありがとうございます」ペコ
受付「いーってコトよ。それよかさ、晩飯食べながら生活上での取り決めしない?」
男「良いですねそれ! 不介入な所や、持ち物の場所取りとか決めましょうよ!」
受付「おっ、乗ってきたね~~じゃあじゃあ、ウチは月・火・水・木・金はお掃除しない感じで~」
男「あぁ~~元よりやる気ないんですね~~」ニッコニコ
受付「おっとその怖い笑顔は誰に似たのかな~~?」ニコニコ
~~~
男「今日はいい天気だったのでお布団干しておきました」ビシッ
受付「良くやった居候一号くん! …はて? お布団とかウチにありました?」
男「まさかの雑魚寝だったので、クローゼットの中から発掘させていただきました」グッ
受付「なんたる…流石だよ君…」ブルブル
男「どうです? もふもふです、もふもふ。気持ちいですよ、ほら」ぽふぽふ
受付「おりゃーっ!!」バッッ
男「おわっ!? ちょ、待ッ!?」どしーん
受付「…ふふっ」
男「あはは…」
受付「んーーー、まさに太陽の匂い。イイネ、久しぶりに嗅いだよコレ」クンクン
男「まあ、それってダニの死骸の匂いらしいですけどね」ニコ
受付「いま言う必要あるそれ?」
男「でも俺も好きですよ、この匂い」くんくん
受付「やだもお、男くんったら。お姉さん家の布団嗅いでスキとか……えっち☆」ツンツン
男「ダニですよ」
受付「そのパワーワード凄いわ…」
~~~
男「受付さーん、もう寝ますけど何処に居るんですかー?」
「ここだよ、ここー。ベランダにいるー」
男「…なにやってんですか、ここで」ガラリ
受付「みてごらん、ホラ。超きれいだから」
キラキラキラ
男「え? うわっ! おぉっ! すげー綺麗な星空だ…!」
受付「でしょでしょ? 都会じゃ珍しいよね、前に旅行でみた北海道並だわ」
男「へぇ~~…」
受付「お酒飲みたくなっちゃった。男くん、君も一緒のむ?」ニヘヘ
男「…ちょっとだけなら」
受付「うぇっ!?」
男「べ、別に俺だって少しぐらいは嗜みますよ? 親父の部屋にあったの舐めたことあるし…」
受付「そりゃ飲んだとは言わないでデショ。つか、その一舐め超高そう…」
男「くっっそ苦かったですけどね。あ、ちょうどいい! 戸棚で見つけたマグカップ使いましょう!」
タタタッ
受付「………」クス
受付(なんだろ、妙に元気もらっちゃってるな私。ま、そーいうのも悪くないか)クスクス
男「お待たせしました、これで良かったですかね?」カチャ
受付「君が飲みたいのでいいよ。お姉さんも、それが飲みたいから」
男「そ、そうですか? じゃあこれで…」スッ
受付「うんうん。じゃあ君にはちょっとだけ注いで、ウチもこっちに注いでっと」コポコポ ジュワワ
受付「はい、どーぞ。お姉さんから貴重なお酌だぞー味わって飲みなさい!」
男「ウッス! あざっす!」スッ
受付「乾杯」
男「か、乾杯…」
カチン
「苦っ!?」
「カッカー! まだお子ちゃまには早いにゃー! ウチだって結構きつめのやつにゃしししし!」ケラケラ
「たった一口そうなるアルコール度やばいでしょ!?」
「つべこべいうにゃー! ほれほれー!」
「イヤァーーーーーッッッ!!!!」
~~~
~~
~
~数日後・受付宅付近~
清掃「そういえばフォクシィーがラブホきてないの珍しいね?」スタスタ
叔母「そうでもないよ。ここ最近は意味もなくラブホに来なくなったからね」スタスタ
清掃「オトコが居ないから?」
叔母「それ以前に入り浸っていなかった?」
清掃「でもでもオトコ来てからほぼ毎日きてた思う。ご飯目的で」
叔母「そういやそうだ。羨ましい、よくよく思えば男君のご飯を食べ放題なんだなアイツ…」
清掃「ケルケルもはやくオトコ飯たべたい!」
叔母「そうだね。連絡入れてあるし、タイのお土産ついでにいただこうか」
ぴんぽーん
「──はーい、今あけまーす!」
ガチャ
男「あ! 叔母さん! …それにケル君おかえり!」
清掃「ただいまオトコー♪」
叔母「おはよう男くん」コクコク
男「おはようございます。ささ、上がってください」ススス
叔母「もう既に我が家の立ち振舞だね…」シュン
男「そ、そうですかね?」テレ
清掃「あれ? フォクシィーは?」
叔母「まったく居候に出迎えさせるとは…」
男「あ。受付さんならお風呂入ってますよ」ニコ
叔母「……オフロ……?」
男「はい。昨日は夜遅くに帰ってきて、そこから一緒の布団で寝てたらしく…」
男「朝起きたら二人とも汗ダラッダラなんですよ! あはは、笑っちゃいますよね~」
叔母「え……え……なにそれ……え…?」
清掃「羨ましい! ジェラシーよケルケル! ボクも今度誘って!」プンプン
男「あはは。流石にあの小さい布団じゃ、三人も寝られないよ」
清掃「じゃあオトコの上でイイヨ!」
男「ケルくんは俺を蒸し焼きにしたいのかな?」
叔母「……………」
男「それじゃあどうぞ、上がってください。スリッパも用意してますから」
ススッ
清掃「ワーイ!」タタッ
叔母(お客用のスリッパの隣に、ペアの使いこなされた男女用のスリッパがある)ピキーン
叔母「……」スッ スススッ
叔母(ハッ!!? 二つの家鍵にお揃いのキーホルダー…!?)ズガシャーン!!
男「なにしてるんですか、叔母さん?」ひょこ
叔母「なんっ、でもないよー…っ!? ぜんっぜん、気にしないでいいからー…!」ダラダラ
男「そうですか? 麦茶を用意してるので、どうぞ飲んでください」
叔母「う、うん…」
スタスタ
叔母(なんだろう、このひしひしと伝わってくる──この内装、このグッズ、このマグカップ──)
【洗いたて☆ お揃いのマグカップ】
【一つのコップに二本並んだ歯ブラシ】
【女性用衣服&学校指定ジャージ混濁の干し物】
叔母(や、やだぁーーーー!! やだーーーーー!!! これ以上このさきに行きたくなぁーーーいっ!!)ボロボロボロ
叔母(私が想像していた日々が、ところせましと現実となって広がっている───)
ポタ パタタ パタ…
叔母「あ…」ツツー…
叔母(叔母さんはもう、もしかすると必要なかったのかな。もう君にとって…私は、もう…)
受付「……なに人ん家を眺めてガチ泣きしてんスか……」ドンビキ
叔母「──受付ッ!!?」ぐるん
受付「ひっ!? なんスか!?」
叔母「お前いったじゃあないかっ!? 全然興味ないって! なんだよー! このラブラブカップルみたいな部屋はー!」ワーン
受付「ハァッッ!? アンタこそなにいってんだ!?」カァァ
叔母「照れてるじゃないか!」
受付「お、お風呂あがりだからですケドー!? つか、意味わかないですしッ? ウチ興味なんてねーですしッ?」プ、プイ
叔母「顔を見て言え…っ! 私の顔を見て…!」
受付「…………」
叔母「私の顔をみろーッ!!」
男「何を騒いでるんですか、ちょっと───って受付さん!? バスタオル! 外れそう!」
叔母「そんなことよりも男くん!? やっぱり君はここには置いとけないよ!」バッ ビシッ
男「ええっ!? いきなり何を言って、ああっ!?」
ハラリ ハラリ パサリ
叔母「わっ! すっ、すまない受付───」
受付「…ぁ…」カァァ
受付「きゃあ!? だ、だめ! 見ちゃだめ男くん!」ババッ
叔母「え?」
男「……え、今の……」
受付「……!」ハッ
受付「ッ!? ッッ!!?!!?」ボッ
叔母「えぇ…お前その反応…ぇぇぇ……」
受付「ち、ちがッ! 今のはわたしっ! ガチの反応じゃなく! そーいうノリというか…!?」ブンブン
清掃「──今の超プリティな反応のスクリーム誰ッ!? そんな人ここに居る!?」バババッ
男「えっと、その…」チラ
受付「…っ……っ……っ」プルプルプル
叔母「ケルケル君と男くん、少し居間の方で暇をつぶしてもらってていいかな」
男「ハイ」
清掃「エー? ケルケル知りたいよさっきの純情そうな声あげた人…」ちぇーっ
スタスタスタ
叔母「受付」
受付「……ウッス……」ボソ
叔母「もう男くんと一緒にすまないほうが良いと思う、お前の為にも…なんか、その、ね…」ポンポン
受付「ハイ」
第十四話 終
~オマケ~
男「このお菓子うま~~い!」
清掃「でしょー! フフーン! ケルケルこれ超すきなの」
~オマケ~
男「このお菓子うま~~い!」
清掃「でしょー! フフーン! ケルケルこれ超すきなの! もとイートしてオッケーよ!」
受付「あ。これってあのお茶が合いそうじゃない? なんだっけ、あのー…そのー…」
男「あ! この前買ったハーブティーですね!」
受付「そうそう! それそれ!」
男「確かにそうだ! って、受付さん。そういえば光熱費払ってなかったのでやっておきましたよ」
受付「あれ? そうだっけ?」
男「まったくもう。あと夕方から用事あるので、晩御飯冷蔵庫に入ってますからね」
受付「へへー! 今日限りとは言えお世話になります~~~、って待って。財布どこ?」
男「玄関に戸棚があるんで、そこに置いときました」
受付「そっかそっか! どーもどーも!」ヘヘー
叔母(敢えて言わなかったことが一つあるが……)もぐもぐ
受付「あれ? そういやテレビのリモコンどこにあるの!?」(男のジャージ姿)
叔母(コイツすっごい生活力低くなってるな…男くんと住むとこうなるのか…)
受付「あれーどこー? あれどこー? ねー? どこー?」
叔母(ちょっと怖い…)
また日曜日、あたり、で
ではではノシ
ケルケル宅
清掃「──ウェルカム・オトーコォー!」ニコッ
清掃「オイデマセー! 今日はボクの家でぱーっとパーディだよ!」ワーイ
男「お、お邪魔します」
男(おお、壁が見えないぐらい所狭しと物が沢山…フィギュア、漫画本にポスター…)キョロキョロ
男「事前に話には聞いてたけど、本当に凄いね。物がいっぱいだ」
清掃「エヘヘー! 大事で大切なグッズもりだくさん!」ニッコニコ
男(本当に趣味で生きる人ってのは凄いな。自分には全くない感覚)キョロキョロ
清掃「さあさあ上がって上がって! オトコ好きなところにどぞー!」サササッ
男「うん、ありがとう」スッ…
清掃「あのねあのね、ケルケル嬉しくっていっぱい準備しててね、オトコの為にたくさん……」チラ
男「………」
清掃「あれ、どうしてオトコ立ちっぱなし?」
男「え? 今日からこのスペースが俺の居場所でしょ?」チンマリ
清掃「どうして突然そんな怖いこと言う!?」
男「物が多いし…どかして座るなんて俺にはできないよ…」フリフリ
清掃「もっとどっかり座っていいんだよ!?」
男「そ、そうなの? じゃあ失礼して…」ギュグググ ストン
清掃「だからチンマリ座るのヤメテ! コンパクトにまとまろうとしないで!」
【取りあえず二人で片付けてスペースを作った。】
清掃「あー…びっくりした、今後はそーいうのは無しよオトコ…」ハァ
男「ごめん…」ポリポリ
清掃「なんでかしこまる? フォクシィーの家じゃのびのびしてたのに」
男「うーん、多分だけどケル君と年が近いせいなのか気を使ってるのかも…」
清掃「フツー逆だと思うよケルケル…」
男「うん、ごめんね、普通な男子高校生じゃ無くて」
清掃(今日のオトコなんだかヒクツよ…)
男「えっと、ケル君は部屋で普段なにをしてるの? やっぱりゲームとか?」
清掃「ウン? そうね、あとマンガよんだりお菓子食べたり! それとそれと!」
清掃「――オトモダチ呼んでパーティしたりするよ! ハッピータイムね!」ニコ
男「お友達って……」
清掃「コッチで出来たフレンドなの。ケルケルと同じ趣味のヒト」ウフフ
男「あっ……そ、そうなんだ……」
清掃「? どうしたのオトコ? 不安そうな顔して?」
男「……。さっきパーティと言ってたけど、もしかして誰か呼んでたり、とか?」
清掃「モチロン! パーティなのに二人だけじゃノンノンだから!」にぱー
男「そっか。ありがとうケル君」ホロリ
清掃「なんて悲しい笑顔するオトコ!?」
男「そのね、言い辛いんだけど、世代が近い人と会話する自信があまり無いんだよね…」
清掃「エェッ? でもボスとはフツーにトークしてるよ?」
男「いや、あの人は例外なんで。同世代とかすら関係ない人だから」ブンブン
清掃「そこはガールフレンドだって否定するトコロよ」
男「うぐッ、今はその話は無しッ! と、とにかく! ケル君には申し訳ないけど…」
男「もしかしたら友達の方に迷惑掛けるかもなって…だから、申し訳ないなって」
清掃「んも~~! オトコってばシンパイショーね」ハフゥ
清掃「そんなのまったくへーき! もし無言続いても、ケルケルのフレンド気にしない」
男「そ、そうなのかな?」
清掃「むしろチャンスだからオタトークをガンガンくらうと思う」シュピ
男(それはそれで辛い……)
清掃「とにかくフツウ一番! オトコ大丈夫、ケルケルとフレンドなんだもん!」ニコ
男「うん。ケル君がそう言ってくれるとありがたい、なんだか落ち着いてきたよ」フゥー
清掃「ウンウン! クールダウン、落ち着くことがタイセツよ!」
清掃「──じゃ、もう玄関に居るみたいだから呼んでくる!」ダダッ
男「ごめん! その急展開っぶりだと動悸ぶり返しちゃうよ!?」ババッ
ガチャ
清掃「ハロー! よくきたメイユウ!」
男(うぅっ…緊張するにはするが、ケル君の友達だ。きっと話しやすい人なのだろう…)チラ
碧眼「来たでござる」(金髪ロン毛&ちょんまげカツラ&新撰組コス)
男(うっわ~~…見た目すっごい濃い~~…)スン…
碧眼「お土産持参で参ったで候。これ、たべて」スッ
清掃「WoW! これオスシー!? 何気にお高いヤツです!?」
碧眼「ござるござる。バイト、頑張った」グッ
清掃「すごかですな~! ケルケルもバイトやるけど、オスシは回るのしか無いのよね」
碧眼「アレはアレで美味ござる。イカとかワタシ好き、へにょっててオイシイ」コクコク
男(あぁ…突っ込みが無いのは、友達の人がいつもこの格好なんだね…)
碧眼「………?」チラ
男「!」ビクッ
清掃「ンフフ? 気になった? 気になっちゃうモノよね!」キラリン
碧眼「ドナタ?」ビシッ
男「あ、あの、今日からケル君の家でお世話になる…男です、よろしくお願います」ペコ
碧眼「………」じぃー
男「……?」ドキドキ
清掃「ア! またコンタクト忘れてるメイユー! 危ないよ、ちゃんとしなきゃ」
碧眼「ブシに近代科学はフヒツヨウ……」ムス
清掃「それで前にドブにハマったの忘れたのー!?」
碧眼「それ忘れろでござる。──今から付ける、待ってろ」ゴソゴソ
かちゃり
碧眼「………」じぃー
男「ど、どうも。改めましてこんにちわ…」ペ、ペコリ
碧眼「………」
スッ
スタスタスタスタ…
男「って、あ、あれ? 待っ、ちょ、──嘘、行っちゃった…!?」
清掃「ah~~……」
男「なんっ、えっ!? 待って!? なんか気分を害すること言ったかな俺!? どう思うケルくん!? ねえ!?」ブンブン
清掃「あーうん…」
清掃「ちょとオトコ待ってて。ケルケル話してくるから、ここで落ち着いてフリーズよ」セイセイ
男「大丈夫!? 本当に俺ここで住んでいけるかな!? なんなら切腹するよ俺!?」
清掃「マジ落ち着いてオトコ! ヘーキ、ヘーキだから!」
パタン
清掃「……ソノー」コソーッ
碧眼「知らない人いるって聞いてない」カァァア
清掃(真っ赤な顔押さえてベッドに倒れてる…)ダラダラ
清掃「あのねメイユウそのね、これにはジジョーがあって、」
碧眼「言ってない。全然知らない人いる、そーいうことケルケル言ってない」ぐぐぐ…
清掃「トモダチきてる、そうちゃんと言ったよ?」ニ、ニコ
碧眼「まったく知らない人きてる! ケルケルそれは言ってない!」ガァーッ
清掃「ダネ」
碧眼「……ゼッタイ変なヒト思われた。へにょいイカ好きな武士ヘンタイ女子だって……」ポロポロ
清掃(そのカッコ変だとわかってたんだ…)
碧眼「ッッ~~~!」ガバァッ
清掃「WoW! ど、どうしたの!?」
碧眼「ゴアイサツする」グスッ
清掃「い、いまから? 大丈夫? ちゃんとできる…?」ソワソワ
碧眼「やらねばできぬナニゴトも!」ダダッ
清掃「あっ!? 急に走ったらまた裾フンで転けちゃ───」
ガチャ
男「──あの~~、改めて英語で自己紹介すれば誤解も…」
碧眼「Ouch!?」コケッ ぐるん! すぽー!
男「えっ?」チラ
ヒュン! ダァンッ! ビィイイ~~~ンン…
男「……………………」(思考停止)
清掃「なんで刀ホンモノ持ってきた!? 死ぬトコロよあと少しで!」
碧眼「…うぇぇええええ…」ボロボロボロ
清掃「泣きたいのケルケルの方だから!? って、オトコ大丈夫!? けがない!?」ダダッ
男「俺……命狙われるほど嫌われちゃったの……?」
清掃「ミラクルな勘違いよ! ゼンゼン嫌われてないから安心して! ねっ? メイユウ?」
碧眼「………………」
清掃「ゴアイサツはどこいっちゃったの?!」
~~~
男「………」
碧眼「………」
シィーン
清掃(空気オモイ…どうにかして二人のゴカイ解かないと…)チラチラ
清掃「──そういえば! 今日はケーキあるの、みんなでイートしよう! ねっ?」
清掃(甘いもの食べればゴカイもイチコロ! さっそく取ってこようっと)フンフーン♪
ガサゴソ ガサゴソ
清掃「この辺にたしかー……あっ!!」ハッ
清掃(まずいよ! むしろ二人して放っておくほうがマズイ気がする! 多分!)クルッ
男「や、やあ」ヒョコ
清掃「オトコ!? あ、あれ? どうしたのキッチンに用事?」
男「うん、まあね、用事というよりはケル君と二人で話をしたかっただけなんだけどね…」
清掃「そ、そんなアッチ気まずい?」
男「気まずいよ…何度か話しかけてみたけど、そのね、オーラ、というか目つきが、ね…」ハハ…
清掃(ホント良い子なの…ただ目つき悪だけで…)ホロリ
男「でも、何かしら理由があるはずなんだ。嫌われるにもきっとわけがあると思う」
清掃(いや、最初からなにも無いから凄いのよ……)
男「うん。じゃあもう一回頑張ってみる、きっと次こそトモダチになってみせるんだ」
清掃「ケルケル応援したい…でもケンカじゃなく、ただ二人は──」バッ
碧眼「……………」じぃぃぃぃぃぃーーー
男「!?」ヒクッ
清掃「め、メイユウ……? そ、そこでなにをしてるの……?」
碧眼「拙者の名前出てた気がする。二人コソコソ、ワタシの悪口を…」ジィー
清掃「全然チガウッ!? コソコソしてたけど悪口まったくチガウ!!」
清掃「ねっ? オトコもなにか言ってあげて──」バッ
男「イッテナイヨ」キョドドド
清掃(キモチわかるけどちょっとは頑張ってオトコっ!!)
碧眼「………」じぃーーー
清掃「こ、このとおりメイユウの勘違いですので…むしろ仲良くしたい思ってるよ…?」
碧眼「《ハァ~~…、ケルケルちょっと訊いて良い?》」
男(あれ英語だ…)
碧眼「《なにが悪かったって、正直、最初の印象が駄目だったと思うの。刀で殺しかけたし、挨拶無視したし》」グス
清掃「《まあ、うん、そこは盟友が悪かったと思うし…僕も悪かったともうけど…》」
男「………」キョロキョロ…
碧眼「《だから、彼が好きなモノなにか教えてよ》」テレ
清掃「《どいうこと?》」
碧眼「《ゲームとか、漫画とかアニメとか。そーいうのだったら言葉難しくても色々伝わるしさ……》」フフン
清掃「………………………」ダラダラダラダラ
男(何を話してるんだろう…)シュン
碧眼「《アンタの友達だし、たくさんアニメ知ってそうよね! ちょっと楽しみ、私こそ話ついていけるかな~》」ニシシ
清掃「《ソノ…アノデスネ…》」
碧眼「《? 母国語でイントネーション滑るなんて器用じゃない、アンタ。どうしたの?》」
清掃「《実はーその~~…えっと~~……》」
男(ハッ!? も、もしや俺の悪い点を言い合ってるんじゃなかろうか!?)ビクッ
男「もしそうならッ! 俺的にむしろ面と向かって言ってくれたほうが……!!」
碧眼「───……」チラ
男(うぐッ! コッチ見てる!?)
碧眼「……………」ズンズンズン
男(すごい形相でコッチ近づいてきた……!?)ドッドッドッ
ガシッ
男「スミマセン! 舐めた口利いてッ! お金なら靴底の下に挟んで──」バッ
碧眼「Let's see an animation together」
男「へ…? アニメを…一緒に、…?」
碧眼「オススメある。拙者と見ようござる、……オーケー?」テレ
男「あ、うん…」コク
~~~
<キャーセンパイノエッチー
男「……」
碧眼「……」
清掃(結局こうなのね。メイユウは強引だけど相手のシュミ否定しないし)チラ
清掃(オトコも相手合わせてトーク聞いてくれるし、実は相性すっごいイイと思う)ハフゥ…
<センパイ ハレンチ!
男「……」チ、チラ
碧眼「……」ニ、ニヨニヨ
清掃(けどハラハラする…)
清掃(メイユウ萌えたそうだけど、遠慮して気持ち悪い顔して…男も気遣って笑いどころ探して大変そう…)
清掃「目を離したらどうなるか、わから、ふわぁっ、フワァ~~~……」
清掃(眠い…そういや徹夜でパーティの準備して眠かった…でもガマン、ガマン…)うとうと…
~~~
清掃「──……ん」パチパチ
清掃「……」ぼぉー…
清掃「って、わーーいッ!? ケルケル寝ちゃってた!? ウソウソ!? しまっ、二人はなをして──」バッ
男「あれ? 起きたんだ、ケル君」ニコ
清掃「オトコ! 大丈夫だったっ? ケンカしたりしてないッ? 割腹ヘイキ!?」
男「発想が飛び出てるね。…いや、俺も最初の頃に言ってたけども」
清掃「寝ちゃってゴメン…ケルケル夜更かし過ぎた思う。というか、メイユーはどこに…?」キョロキョロ
男「え? ここにいるけど?」キョトン
清掃「え、どこにいる? ここって何処……」チラ
碧眼「ニャーン」ゴロゴロ(膝枕)
清掃「………ェェェ…」
男「いや待って!? その、なんだか凄い勢いでくっつかれてね、うん、今に至ると言うか…!」ブンブン
清掃「い、一体何をしたの?」
男「思い当たるフシは特に何も……」
男「一緒にアニメを見て、それから感想を言い合って、次回の予告を見たり色々と話したり」
清掃「うんうん」コク
男「あとお茶を用意してあげたり、重い刀を持ってたから手のひら揉んであげて、お菓子食べたり」
男「ついでに耳かきしてあげてたらこうなってしまってたのだけれど…どのへんでこうなったかはよく…」
清掃「うん! ところどころおかしいね!?」
男「やっぱり!? 途中途中で俺も「これ変だよなー」とか思ってたんだ! でもケルくん寝ちゃってたし!」
清掃「止めてよそーいうときは! 起こしてよケルケルを!」
男「こ、これをもし続けてたらどうなってたのやら……」わなわな
清掃「………。ケルケルの部屋は神性な場所よ、絶対にメッだからね」
男「フラットな言い方で諭された…! ゴメン! 今度からは気をつけますッ!」
清掃「にしてもメイユーもそこまでガード低い子じゃないのに…どうしてここまで…」
碧眼「にゅふふ」ゴロゴロ
清掃「……。とりあえず写メっとこ、キュートだから」パシャ
男「というかこの娘、そもそも寝てるの? 起きてるの?」ドキドキ
碧眼「なぁーん」スリスリ
清掃「フム? 声でてるから起きてるかも?」
男「起きてるんだ…人ってここまで人間的なのやめられるんだ…」コショコショ
清掃「ケンカしないならヨシ! じゃケルケル外に買い物行くので! あとはヨロピク!」シュビッ
男「なにが宜しくなのケル君ッ!? 何処行くつもり!?」
清掃「ドリンク買ってくるよー! 肝心なモノ忘れちゃうなんて、ボクっておっちょこちょい」ペロ
男「だっ、だったらこの子を正気に戻してから――」
清掃「大丈夫よ。ケルケル、オトコ信頼してる」ニッ
パタン
男(ちょ――本当に俺一人でこの娘の相手をせよと…ッ?)チラ
碧眼「にゃんにゃん」
男(うぐッ、なら現状維持で誤魔化して見せよう…! 撫でれば良いんだろう! 撫でれば!)ナデナデ
碧眼「チッ」バチン
男「えええっっ!?」ドキーッ
碧眼「《――もういい。触らないで》」フアサァ…
碧眼「《ケルケル居ないのに続ける意味ない。私も恥ずかしいのに…な、なにその顔は…》」
男「………」ブルブル
碧眼「アー…チガウ、ワタシはケルケル安心させるから、キャットのマネしてた…」
男「ふ、普通に喋ってる…! 猫語喋ってた人が…!」ブルブル
碧眼「……………………………………」
男「って待て、ケル君を安心させる為とは――つまり、わざと猫のマネを…?」
碧眼「………」コクコク
男「普通に言葉で言えば良いんでは無かろうか…」
碧眼「コトバよりカッコウのほうが伝わる」
男「不器用を通り越して無駄に器用だね…」
碧眼「………」ススッ
ススス
碧眼「………」じぃいいいーーーー
男「……距離近いッスけど、今度はなんですか……」ダラダラダラ
碧眼「名前ききたい。拙者におしえて」じぃー
男「今更ですけど、男です……」
碧眼「オトコ? 変な名前。拙者、メイユーっていうの。よろしく」じぃー
男「め、メイユー? …盟友じゃなくて?」
碧眼「ほんとにそー言うなまえ」コクコク
男「そ、そうなんだ…へぇ、良い名前だね…」
碧眼「イイナマエ? 拙者喰ったことある、へにょい見た目のクセしてかったいやつ」
碧眼「スジョウユつけるとヤミィ」コクコク
男「それ多分なまこですね…」
碧眼「ナマーコ!?」かぁぁぁ
男「……下ネタでも無いです」
碧眼「…………」バシバシバシ
男(痛くない…そ、そうか突っ込まれて嬉しいのか…変な人だなこの人…)
碧眼「…………」じぃー
男「な、なんでしょう? その、さっきから距離が近いというか…なんというか…」
碧眼「さっきはごめん。色々ごめん。拙者、イロイロやりすぎた」
男「あ、いや別に気にしてないんで大丈夫ですよ」ペコ
碧眼「フーン? 謝られるのトクイね、おとこ」
男「……」ピク
碧眼「オーケー。拙者にもっと謝ってホシイ?」
男「えっ!? な、なぜに!?」
碧眼「――ナカヨクしかた、わかんないから」
男「……どういう意味?」
碧眼「おとこ。なにしたら普通なのか、ワカリズライ。ケルケルのトモダチなのにスキンシップ苦手」
碧眼「近寄ったら逃げるし、トーク中も目を見ない、ツッコミはうまいケド」じぃー
碧眼「でも謝られるときだけ見てくれた。拙者のこと、見てくれた」
男「………」
碧眼「だから、あやまってホシイ?」ニコ
男「…なんか、凄いですねアナタ」
碧眼「ナニガ?」
男「――すみません、ひとつきいていいですか?」
碧眼「OK」
男「……じゃ、遠慮無く」チラ
男「――貴女、本当は何歳なんですか?」
碧眼「……フーン?」
男「大変失礼な質問だと思います。けれど聞いておきたくて」
碧眼「おとこと一緒よ?」
男「そうなんですか、なら、俺はやっと普通に会話できてるんだな…」ボソリ
碧眼「?」
男「話を戻しましょうか。先ほどの謝って欲しい話、別に結構ですよ」
男「君が全然知らない俺が居て、互いに戸惑って誤解が生まれた。…それは分かる、理解も出来るから」
碧眼「優しいのねおとこ。拙者、そーいうのすきよ」ニコニコ
男「でも、わざとらしくありません?」
碧眼「…………ワッツ?」
男「――わざとらしい。さっきから全て、なにからなにまでわざとらしく、…感じたりします」
碧眼「wwao!! 怒らせた? 拙者マズイことしちゃった?」
男「怒ってなんかいない、です」ジッ
男「…根拠はありません。理由なんて言葉に出来るはずも無い、だって単なる勘ですから」
碧眼「オー……」
男「でも一度気になってしまったので、最後まで言わせて貰います」
男「もしかして、何処かで俺と会ったことありませんか?」
~~~~
清掃「フンフーン♪」ガサガサ
清掃(オトコとメイユウ、ナカヨクしてるかな。帰ったら甘い甘いケーキを食べてハッピーね)ウフフ
「――ケルケルくん!!」
清掃「why? あ! owner!」パァアア
叔母「はぁっ…はぁっ…良かった、君を見つけられて…」
清掃「どうしたの? そんな慌てて…」
叔母「んぐっ、私のことはいい。それよりも男くんはそっちにいるんだよね…っ?」
清掃「エ、うん、ウチにいるけど…」
叔母「ならよかった…」ホッ
清掃「ど、どうしたのオーナー?」
叔母「……。それがね、さっき義姉さんから電話があって――――」
~~~
男「会ったことありませんか?」
碧眼「………」
男「………あの?」
碧眼「フゥ~~~ン? キャハハ、アーウン、実はどこかであるカモ?」ゴロロン
男「うおっ! …ころころ口調変わりますね、びっくりした…」
碧眼「わざとらしい? ふふん、ワザトラシイ! アハハ! そっか~おとこにはそう感じちゃうか~」ゴロ
男(コスプレ衣装ぐしゃぐしゃになってるけど大丈夫なんだろうか…)ソワソワ
碧眼「そんな拙者キライ?」
男「え、別にキライだと断言するほどでは…」
碧眼「くすくす。じゃ苦手なんだ」
男「………ええ、まあ」
碧眼「素直で良い子だね。だからフレンド少ないんだね、おとこ」クス
男「な、なぜそれを……」
碧眼「拙者のカン。お返しね、さっきの」ニコ
男「す、すみません。今度からはコトバには気をつけます」ションボリ
碧眼「………」じぃー
碧眼「《大体知れたよ、君のこと》」
男「……?」
男「……?」
碧眼「《私は結構用意周到でね。やりたいことがあったら、まず周りから固める。外堀から埋めていく。形から目標に入るんだ》」
碧眼「《イロイロと苦労したんだよー? 義妹さんより、あの人、受付って人。勘が鋭いんだもん》」ハフゥ
碧眼「《だから…》」
碧眼「《髪色を抜いて、口調にキャラを変え、付け入りやすい関係から入り込み、全て騙しきる》」
碧眼「《…まあ瞳の色は変えなかったケド、この瞳だけは君に憶えて欲しかったんだ》」
スッ… グイ!
男「わっ」ドタリ
碧眼「《――キタナイ私の一番、綺麗な部分だから。君には正直に教えたかったの》」クフフ
男「ちょ、ちょっと!? なぜ押し倒して…!?」
碧眼「《………。顔そっくり、性格全然なのに、そのギャップ、超かわいい》」コショコショ
男「か、かわいいっ? 今かわいいって言っ――あははははははは! ちょッ、くすぐっ、あははは!!」
碧眼「んむーーー」ムチュー
男「えッ!? やめっ、ちょっとーーーー!!?」ギャーッ
ガチャガチャ
碧眼「《…アララ、もう時間切れ》」パッ
男「ハァッ…ハァッ…一体、急になにをして…!?」
碧眼「《まったくこぎ着けるのに大変だったのに。ま! これからもメイユウちゃんで来るからよろしくよ!》」
碧眼「《ねっ? 息子ちゃん!》」チュッ
男「ちゅっちゅしすぎでしょう貴女!?」
碧眼「じゃ、拙者は帰るね。シーユー!」ビッ
スタスタ パタン
男「…………………えぇ…?」
~~~
叔母「早く早く早く」ソワソワソワ
清掃「そんな急かさなくてもオトコちゃんといるよ~~!」エーン
叔母「そ、そんなこと言ってとんでもない奴出てきたらどうするの!?」
ガチャ きぃい!
清掃「WAO!? メイユウ!? どこいくの!?」
碧眼「ケルケル……御用事ある為かえるでござる、すまないで候……」
叔母(うっわ~~~…すごい濃い子でてきた~~~~…)
清掃「エエーッ! じゃあじゃあパーティは!?」
碧眼「今度暇が出来たら現れレル。しばしまたれよ、わたしすぐくるよ、お土産もって」グッ
清掃「…ぜったいだよ…?」グスン
碧眼「ウム。へにょいイカもって現れる、絶対」コクコク
清掃「ウン…」コク
碧眼「………」チラ
叔母「む」
碧眼「―――《また、貴女の大切なボーイに会いに来るよ》」クス
スタスタ…
叔母「………? 最後、彼女はなんて言ったんだ?」
清掃「―――OK! このままownerがパーティ参加すればいいよ! これでいい!」パァアア
叔母「えっ? いや、私が居てもジャマになるだけでは…」
清掃「お酒出るよ? 実は喫煙もおっけー!」
叔母「お邪魔します」キラリ
清掃「YATTA-! オトコー♪ ownerきてくれたよー! やったねー!」ドタタ
叔母「――……」チラ
叔母(妙だったな。さっきの子、見た目に合わない大人向けの香水つけてた)クンクン
「――お、叔母さん!? 来てるんですか!?」
叔母「……。実はきてます…」でれぇ
第十五話 終
遅くなってすんませんっした
明日現れます ノシ
女「…………」
「ゴハン一緒たべよ~~」
「ゴメーン! 今日はカレシと食べるからさ、明日でもいい? いいよね? じゃまた~!」
「あっ! あんにゃろー! 一昨日も同じこと言っとったクセにぃ!」プンスカ
「すぐまた分かれるクセよぉ~~~!!」
女「別にいいじゃない、ほら、さっさと食べちゃいましょ」
「む~~女ってばドライよね~~」
女「そう? べつに普通だと思うけど」パカリ
「でも呆れるわ。最近、魂胆ミエミエの急ごしらえカップル多すぎでしょ」
「遠足、近いしね~~思い出、つくりたいしね~~」
女「………」モグモグ
ぴたり
女「…ひとつ質問があるんだけど」
「なにさ?」
「どしたよ?」
女「カップルの定義って何? 男女が付き合うってどういうコトなの?」
「おぃぃ…いきなりどうしたよ、この娘…」
「女ちゃんもパリピったりしたい感じ?」
女「パリピ…? そんな静電気みたいなコトじゃなくて、真面目に答えてよ。付き合うって何?」
「ドキドキだよ! 心わくわく、キャピキャピが恋心で付き合うってことだよ!」キャルルルルン☆
女「きゃぴ…」
「ほら出たよ、妄想甚だしいキャラが…一人前にカレシ作ってから言えよソレ」
「アンタに言われたくないんですケド~~~」
女「じゃあ一緒に居て、キャピれて、ドキドキして、心わくわくすれば付き合うってコトなのね?」
「ん? ま、まあ、間違っちゃいないと思うけど…」S
「あれあれぇ~~? もしや女ちゃんも好きな人いるとかぁ~~~?」
「マジで? あっ!! アレか委員長か?! チョット前に噂になってたの!」
「あ~~~! でもアレって結局は男女の仲直り作戦だって、女が勝手にゲロってなかった?」
女「え? まあ、それはそうだったけど、今はちゃんと付き合ってて…」
「だ、だよな? そんな素振り全く見せてないしアリ得るわけ…」
「ラブラブなところ一切見てないのにアリ得るわけ…」
「「──ハァッッッ!!!?」」
~放課後・公園~
キィコ キィイコ
女「……ハァ」
男「そういや遠足が近いけれど、女さんの班はきちんとまとまってる?」
女「え? まあ、普段から話す娘が揃ったから」
男「へぇ、それは良かった」ニコニコ
女「………」じぃー
『付き合ってる自信が湧かない?! んだそりゃ!?』
『気にしてんの? だったらガッツリいけ! ガッツリ! 女ちゃんならヨユーっしょ!?』
女(まったく、言いたい放題言ってくれるわ。出来るならやってるわよ)
女(でも、違うのよ。私とコイツとの関係ってそう簡単に…)
キィコ…
女「ねえ」
男「思うんだけど、班の構成はやっぱりランダムじゃなく──どうしたの?」
女「ウソは嫌い。だから、正直に話して欲しいの」キィコキィコ…
男「え…」
女「この数日間…いや数ヶ月…ずっと思ってた、けれど口にはできなかった」ギュッ
女「だって、怖いもの。口にした瞬間に疑問が答えに変わっちゃうじゃない」
女「でもガマンの限界」スッ
女「学校の帰り、一緒に遊んだ時、…とか、訊くべきタイミングはいっぱいあったけど」
男「……」
女「今回ばかりは聞かせてもらうわ」
ガシャン ユラユラ…
女「───貴方、もしかして住む場所ないでしょ?」
男「…………どうしてわかったの?」
女「やっぱり! つか、ハァッ!? なんで住む場所なくなるワケ!?」
男「うぐッ、うまく誤魔化せてると思ってたんだが……」
女「フツーわかるでしょッ!? 毎回毎回、九時まで公園で粘られちゃ色々と疑うわよッ!」
男「ぐッ…ごめん、実は…寝るまで話し相手が欲しかったんだ…」クッ…
女「まさか公園で寝泊まりしてるの!?」
男「もろもろ事情がありまして…」
女「いや、どんな事情があればホームレスになるのよ…」
男「でも、あと一日なんだ。あと一日過ごせれば、ちゃんとラブホテルに戻れるんだ」
女(それはそれでどうなのだろう…)
男「ははは。それにしても、まさか君に見破られるなんて」クス
女「…どういうコトよ」
男「うん。女さんには隠し通すつもりだったんだけど、まあ、バレちゃ仕方ないよな」
女「はぁ? なんで隠すワケ? 心配されたくないとか、言いたいの?」ゴソゴソ
男「それもあるけど」チラ
女「………」ピッポッパッ
男「誰に電話してるの、それ?」
女「私の家だけど?」prrrrrr
男「ほらやると思ったッ! お馬鹿! どうしてすぐ無茶な行動しようとするんだ君は!?」パシッ
女「ちょッ、コラ! 返しなさいよ!」
男「だめだめだめ! どうせ家に泊まらせようと考えてるんだろう!?」ピッ
女「あ、当たり前じゃない! どうして止めるのよ…!?」バシッ
男「そ、それは……」ポリポリ
女(!! なに、その顔、普段はまったく気にしないクセして、そーいうのは意識する、の?)チ、チラ
男「だって、君のご両親をどう言い包めるかが難題になってくるし」ウーム
女(想像以上に真面目な答えだった……)
男「やっぱり面倒事は増やさないでおこう。女さんの気持ちは十分にありがたいけどね」
女「じゃ、じゃあまた公園で過ごすの? ていうか今までどうやってきたのよ…」
男「うん。実はそのための準備は色々と揃えていてね、ほら、みてごらん」ガサゴソ
男「寝袋に缶詰、そして虫除けスプレーに太陽電池灯もある。どうだ、これで完璧だろう?」ニコ
女「…もしかして実は楽しんでたり、してる?」
男「え? そんなことないよ?」キラキラキラ
女(満ち足りた顔してるけどッ! …ハァ、ダメだわ、もう色々とダメだ)
男「フンフーン♪」カチャカチャ
女(ラブホに住むぐらい大胆で、親を脅すぐらい機転が利くのに、こーいう変なとろこで頑固)
女(…覚悟、きめるか)
女「男」がしっ
女「本当は言いたくなかったんだけど、もうこれ以上、貴方の暴走を止める方法が思いつかないから言うけど」
男「おっと、説得しようとしても無駄だよ。何を言われても俺は今日を凌ぎ切るつもりだから」
女「貴方、ちょっとくさい」
男「…………」
【女宅で泊まることが決定しました】
女宅
女「紅茶がいい? それとも緑茶? 珈琲?」
男「あっ、いやいやいや! 別にお構いなく! 気にしないでいいから、うんッ!」ブンブン
女「あっそ。じゃあテキトーに決めちゃうから、そこら辺に座ってて」スタスタ
男「う、うん…」
男「……むぅ…」キョロキョロ
女「なに人んちで、ウムウム唸ってるのよ」ジトー
男「どぅわぁッ!? 戻ってくるの早くない!?」ビックゥウウ
女「すぐそこキッチンなんだから、当たり前でしょうが」じー
男「……いや、ね、人の家に上がるのは緊張せざるを得ないというか」
女「ラブホに住んでるくせに?」
男「むしろそんなところに住んでるからだよ。普通の家ってのが逆に新鮮に感じてしまう」
女「相も変わらずよくわかんないわね、貴方の感性って」コトリ
男「自分でもそう思う。……あ、どうも、いただきます」ズズッ
女「それに高校生の身分で路頭に迷うとかあり得る? なによ、仮居が居心地悪いから逃げ出してきたって」
男「うぐッ」
女「ケルケルさんにも嘘をついて、保護者の叔母さんにも嘘ついて公園で過ごしてたとか」
女「ってか今までどう誤魔化してたの? 友人宅に泊まるなんて、バレそうなものだけど」
男「公衆電話を介して他人の声を模した録音を流し、携帯電話から友達の存在を偽装した、かな?」
女「用意周到すぎる…」
男「こっちも本気だったからね、うん」ウムム
女「それは、どうして?」ジッ
男「えっと、つまり居づらかった理由? それは…」
女(そう。貴方は分け隔てない性格してる一方で、変に距離を保とうとする)
女(私みたいな奴に話しかけるクセに。…学校じゃ一人も友達ができない、変なやつ)
男「うーん、なんていうかなぁ、こう…居場所に加わる違和感? というか、緊張感というか…」
女「緊張感ね…」
男「だから……まぁ、うん、いろいろと思うところがあって逃げ出したっていうか……」
女「そ。ま、いいわ。とりあえずそういうコトだっていうことで」
男「えっ? そ、そんなんで良いの…?」
女「良いの! それよりお腹空いてない? 公園で寝泊まりじゃろくなゴハン食べてないでしょ」
男「まぁ……コンビニ弁当の残飯を貰ってたけど……」
女「ろくなもんすぎないソレ!?」
男「店員のお姉さんが恵んでくれてね…あれは絶対に俺の境遇を勘違していた目だった…」ホロリ
女「舐めてたわ…貴方の徹底した逃げっぷり、チキンオブチキンね…」
男「ごめん。ここは遠慮するべきだろうけど…」ぐぅー
女「クス。別に良いんだってば、私が勝手に連れ込んだんだから、貴方も自由に過ごしなさい」スッ
男「女さん…」
女「それに遠慮なんて要らないでしょ。だって私たちは───」
ピタ
男「私たちは?」
女「なっ、なんでもないっ! ちょっくらトイレ行ってくるわっ!」ダダッ
男「別に言わなくてもいいよソレ!?」
すんませんでした
できれば毎日数レス投下予定
ではではノシ
女(もうもう、まったくもう! 私というやつはいつも余計な一言を…!)ズンズン
女(さっさとご飯の準備して気分を切り替えようっと、冷蔵庫…中身はっと…)
ガチャ
女「って、アレ? ……ウソでしょ?」ピタ
~スーパー~
女「ごめんなさい…まさか一つたりとも食材が無いなんて…」ズーン
男「そこまで気にすることないと思うけどな…」セイセイ
女「き、気にするわよ! ああまで食わしてやる、なんて豪語しておいてコレだもの!」
男「うーん、俺的には一から食費に関われて嬉しいけどね。後々の精算とかが楽だし」
女「……すーぐそうやって大人っぽいこという」ジトー
男「俺は面倒なことが嫌いなの。女さんだってそうだろう?」
女「む。っていうか、別に買い物についてこなくても良かったのよ?」
男「人の家で留守番とか怖すぎだろ…もし家族が帰ってきたらどう説明するんだ…」
女「え? 誰も帰ってこないけど?」
スタスタ ラッシャイマセー
男「………は?」
女「まあ男手ありゃ荷物運びは楽よね。お言葉に甘えて買い物かごは貴方に持ってもらおうかな」フフ
男「オイ待って、ちょい待って」ガシッ
女「きゃっ?! な、なによ…!? ジャンケンで決めようってワケ!? だったら受けて立つわ!」
男「違うッ! そこじゃなく、──誰一人? 帰ってこない? 両親どころか、お姉さんも?」
女「じゃなきゃ家に誘わないでしょ!」
男「……なんで?」
女「いや、アンタこそどう説明するつもりだったの? お姉ちゃんなんて絶対反対するでしょ?」
男「……先生、実家ぐらしなの?」
女「そうだけど──あ、これ言っちゃダメなやつだったわ…わぅ、忘れなさい! 良いわね!?」
男「い、いや、それは良いんだ、俺がいいたいのは、今夜は俺と君が二人きりなのかって話で…」
女「当たり前じゃない、そんなことも分からなかったワケ?」フッ
男「アンタやっぱりバカなんじゃないのか!? ドヤ顔するんじゃない!」
女「なっ、なんで私が責められなきゃいけないのよ!?」ガーッ
男「コッチはモンモンと君のご両親に対してどう説明つけるか考えてたんだぞ!?」
女「ハァッ!? 公園で言ってたこと本気でだったの!?」
男「当たり前じゃないか!」
女「当たり前じゃないわよ! 極秘裏よ、秘密のお泊まり会ってコトになるの!」
男「ぐっ、がっ、君は……!」
女「まだなにか!?」
男「ッ……俺は、男、なんだぞ…」ボソリ
女「っ!」
男「本当にそれでいいのか…って話で…提案は嬉しかった、けど…君は本当に…」
女「…………バカなんじゃないの」
男「え…」
女「なによ、それこそ今更じゃない…当然な顔して、家に上がってきたクセに…いまごろになって意識して!」
女「───私も、どうしたら良いのか分からなかったのに……」ぐすっ
男「ぉぉぉう…」パクパク…
女「なによ…っ…私だってキチンと考えて、言いたいことガマンしてたんだから…っ」プルプル
男「ごめん、ごめんね、女さん」
女「い、いいわよ別に。説明不足なのは認める、あと言いたいこと言えてスッキリしたんでしょ、ふんっ」プイ
男「そう、なんだけど、そうじゃなくって…」
女「……?」
男「俺ってそういや、君との関係をきちんと言葉にしてなかったなって」
女「え…」
男「だから、ちゃんと今、この場で──」
「ね、良いわねェ、若い子は」クスクス
「秘密のお泊まり会ですって、かわいい~」
「おかーさん、あれなーに?」
「青春よ、青春」
男&女「ッッッ~~~~~~!!?!?!?!?!!!」
女「いッ! いまッ! それッ、聞かなくちゃダメかしらッ!?」
男「そそそそそうだねッ!? ここッ、スーパーだし、入り口だしッ!?」
女「とりあえずご飯買うわよッ!? ねっ!? ほら行きましょ!?」バヒューン
男「ちょっ!? 早いって!? ま、待ってくれ!」
~~~
女「はぁ~ッ……ホント、嫌になるわ…」グテー
女(急に文句言い出したと思ったら、これまた急にこッ! 告白ッ、の返事…とか…?)カァァ
女「だぁ~ッ…もうッ! なんなのよアイツは!」ガシガシガシ
でも。
女(ちゃんと考えててくれたんだ。あの時のこと、ちゃんと忘れずに言おうとしてくれた)クス
女「まったく。真面目なんだか不真面目なんだか、よくわかんない奴よね───」
女(──ってヤバ! また暴走してアイツのこと置いてきちゃった、今はどこに…!?)キョロキョロ
「お? どこかで見たと思えば、昨日シフト中に会った『お弁当くん』じゃない?」
男「え!? あ、コンビニの店員さんの…同僚さん、ですよね?」
「そうそう! ウチ、スーパーでも働いてるんだ。今日はフツーにお買い物?」
男「まあ、そんな感じです」
「案外、普通に生活してるんじゃない。アイツがキミを公園から拾ってきたと知った時は、一時はどうなるかと思ってたけど」カラカラ
男「ひ、拾ってきた…いや俺、野良生物とかの類じゃないんで…」
「いや野良の類でしょ~~。ガツガツ弁当食べてるキミ、まんま懐いてきた猫そのものだったしさ~~」
男「うう…その節は本当にありがとうございました…」
「いやでも割と本気でさ、元気そうでよかったよ。…大丈夫? お金ある? お姉さん、ここのスーパーのシフトすぐ終わるけど」
男「は、はい?」
「ウチでご飯食べさせてあげよっか? あ、心配ならアイツ連れてくるし、それに寝るところ無いなら泊まってってもいいけど?」ニコニコ
男「へ? あ、いや今日は────」
がしっ
男「おわっ!? ……女さん?」
「お?」
女「駄目、でしょ。今日はうちに泊まるって───いっ、言ったじゃない!!」
男「…………」
女「………ぁ…」かぁぁ
男「うん、良いんだ、わかってる。キミがね、そーいうコトをぶっちゃっけるって、堂々言い切るってさ」カァァ
女「ごめん…また考えなしに発言した…」パッ
「おやおや~~?」じぃー
男「うぐッ」ビクッ
「ふむふむ。どうやら案外、やり手な感じかなキミ?」キラリン
男(不当な評価を受けてる気がするがッ、傍から見て妥当な評価な気がして否定しづらい……!!)ダラダラダラ
「今日は飼い主さん居たわけだ。あはは、今度気が向いたらお姉さんのところに流れてきても良いよ? これ住所ね!」バーイ☆
スタスタ
女「……流れるの?」チラ
男「何も言わないでくれ。俺の状況、そうとう変だって、わかってるから。言わないでくれ……」ズーン
女(変も何も、他人の言うこといちいち気にする性格がラブホに住むから、らしくなくなるんじゃない……)じー
男「ご、誤解するんじゃないぞ! 一応は感謝として受け取るだけで、本当に住所をたどっていくわけじゃないからな!」
女「……」
男「視線に信用性を感じない…!!」
女「よくもまあ、ああも私に返事をしようとした輩が即座に他の女性に言い寄られてちゃあねえ……」じー
男「……晩ごはん、俺が作るってことで納得しませんか?」
女「荷物持ちも貴方」
男「……了解です」
女「皿洗いもしなさい。きちんと寝床は用意してあげるわ、ちゃんとね」
男「わかりました…全身全霊を込めてピッカピカにさせていただきます…」ペコォー
女「よろしい。では早速ながら買い物かご忘れたから取ってきなさい、十秒以内に」ぴっ
男「りょ、了解です!!」
ババッ ダダー!
女「……いい加減に覚悟決めるか、わたしも」
~~~
トボトボ…
女「………」
男(ああ、無事に買い物済ませても、なんて気まずい空気…今までのこと、これからのことを考えたら…)
女「ねえ」
男「はいッ! なんでしょうか!?」ババッ
女「何よその反応。まあ一応、聞きたいことがあるの。うちに着く前にどうしても貴方に聞いておきたくて」じっ
男「な、なに?」
女「ちゃんと答えてくれるって、約束できる? きちんと答えるって自信持っていえる?」
男「そう前置きされるとかなり警戒するんだが…ま、まあ居候の身だし、覚悟を持って答えようじゃないか」
女「……すき?」
男「ぇ?」
女「あたしのこと、すき?」
男「いや待ってくれ!? それって、まず、答えても何も俺はキミに改めて返事をしようとしてただろ!?」
女「まどろっこしいのよね、正直。今そう思ったの、突然に」
男「唐突なダンディズムを発揮しないでくれよ…!!」ドッドッドッドッ
女「そんなあたしってキライ? だめな女?」チラ
男「うぐッ」
女「だからすぐに返事できなかった? ……だから、微妙な距離で誤魔化し続けてた?」じっ
男「……ッ」ドッドッドッドッ
女「──こんな横暴で空気読めなくて、雑で馬鹿な私だから、アナタは好きになってくれない?」
ぴたり
男「それは違う」
女「……うそよ」
男「嘘じゃない。確かにキミは横暴で暴力オンナで、後ろからドロップキック決めてくるヤバイ奴だ」
女「あのね、泣くわよ? 意外とわたし、泣き虫なんだから」
男「それも知ってる。あとアホみたいに負けずキライで誰彼構わず、なりふり構わず、迷惑考えず突貫していく」
女「うぐッ」
男「これは全部事実だ。覆しようもない現実で、いまさらなかったことにもできないし、…やめることだってできないだろうし」
女「…何が言いたいのよ」
男「だから! …だから俺はキミに、悪くないって、言いたいんだよ」
女「…………」きゅっ…
男「──それでいい、そのままの女さんが俺はすっ、すきだって……ことを…」カァァ
女「…男…」
男「あ~~もうッ、なんてことを唐突に聞き出すんだ…!? 顔、どうなってるのか想像もつかない…消えてなくなりたいぃい…」ズーン
女「……」ぽやぽや
男「おいこら、そこ。一人でポヤポヤするんじゃない、俺にも聞いてきたんだからそっちも聞かせてくれ!」
女「え? わたし? …私の気持ちってこと?」
男「そうだよ! この際だ、言いたいこともあるんだろうし全部ココでぶっちゃければいい、なんだってバッチコイだ!」(ヤケクソ)
女「私の……気持ち……」
女(私の思うアナタの好きなところ。私が好きになったアナタの部分)ぽやー
ドキドキして、静電気みたいにパリピって、心が暖かくなる、ぽやぽやとした気持ち。
女「アナタの好きなところは……」
それは、
女「…………うんん??」ピタリ
男「…………なんでそこで黙るんだ?」
女「あれ、待って、ちょっとここまで出かかってるんだけど」
男「おい。人に対する気持ちを魚の骨ごときで例えるな、……え? ちょっとまってマジで言ってるの?」
女「違うのよ!? あれ!? ん~~~!? そうだ! アナタの好きなところって言えば、そう! 顔、とか…!」じぃー
男「う、うん。まあ良いんじゃないか? そ、そーいう好きってのも普通でいいと思うから…」
女「……いや別に……私好みの顔じゃない、気がするわ……」
男「俺のフォロー返してくれ」
女「…………」ダラダラダラダラダラダラダラダラ
男「あのさ、参考までにっていうか、実際のところを聞いておきたいんだけどさ、良いかな」
女「ハイ」
男「もしかして俺って実は……正直なところキミに好かれてない? ラブ的な意味で……」
女「ばっっ!?!? そんっ、なことぉー……!? ないって、いうかぁー……!?」キョドドドドド
男「泳いでる泳いでる。すっごい目が泳いでる」
女「超超超だいすきなんですけど!? 馬鹿にしないでくれる?! アナタに好きって言われたら超嬉しかったし!?」
男「大体のことろ、異性に好きって言われたら普通に嬉しいよね」ジトー
女「ほぐぅ!? でもアナタに告ったじゃにゃい!? あれは嘘だって言いたいわけ?! 私の気持ちなのに!?」
男「だからその告ったときの気持ちを今、聞いているんだろう」ジトトー
女「でも、だからっ、──だってすきなの! 大好きって言葉になにか言葉で表せなきゃいけない法律でもあるんですかーー!? ありませんよねーー!?!?」
男(段々とキャラが崩壊していってる……)
女「良いじゃない別に! 言葉にしなくたって言い表せなくたって! わたしが、アナタを好きだって言いたい、言わせたいの! それで十分なの!」ガーッ
男「……思ったんだけどさ、それってつまり…」ボソリ
女「イヤーーーーーーーーーーーッ!!! それ以上は言わないでぇーーーーーーーーー!!」ズバァッ!
男「座り込んで耳をふさいでも駄目だ、言わせてもらう」グイッ
女「ひぃいぃい~~ッ!?」ズササッ
男「言うよ」じー
女「や、やめっ…やめて…っ!」ブンブンブン
男「それってさ」
男「なんか恋に恋してない、それ」
女「」カッキーーン
男(ものの見事に固まってしまった……)
男「いや、あの、そこまでショック受ける指摘だった? これ?」
女「それは禁句なの…」
男「禁句なんだ…」
女「お姉ちゃんがね、言ってたの『恋はきちんと測りなさい。重さと距離と、その意味を』って」
男「あの先生がそういった関連話すると、色々と重みがあるなあ…」
女「決して恋に恋しちゃいけないの。それだけはきちんと考えて、馬鹿なあたしも慎重にやらなきゃって思ってた」
男「うーん、待ってくれ。確かに俺がそうだとは言ったけれど、まず、色々と先延ばしにしたのは俺じゃあないか」
女「……今はアナタの謝罪も素直に受け取れない……」ズゥーン
男「気にするなあ。だったらこう、納得したら? ……俺が好きだって言って、嬉しかったから付き合うって……」テレテレ
女「……じゃあ言うわよ」
男「お、おう?」
女「貴方、私が今まで散々と悩んでたのに、いざ考えてみれば『なんか違和感ある』って言い出して何も思わないの?」
男「…………………………」
女「どうよ?」
男「俺も自信が無くなってきた……だと……!?」
女「でしょーーーー!?!?! なんか違うのよ! 私と貴方、付き合うって、好き合うってなんか違和感すごい!」
男「さっきまでは暖かい気持ちと恥ずかしさでいっぱいだったのに、なんだろう…違和感…恐怖…意味がわからない!?」
女「そうそうそう!!」バシバシバシ
男「こ、こんなことってあり得るのか…!? そ、そうかコレがキミが感じたっ、そのなんていうかっ───」
男&女「…………なんだろう?」コテリン
男「ともかくっ、なんともし難いよくわからない感情に囚われてしまった、とみて良いのか…?」
女「…思うのよ、わたし。これって案外、勝負ってことにならない?」
男「そうか! なるほど! ごめん、実は何言ってるのか全然わからない。大丈夫?」コクコク
女「お互い告白した、好きかもって思えた、でも違和感があるから──微妙になってる」
男「……まさか」
そう、最初から気づいてたんだ。
クラスメイトに相談したときから、いや、もっと前から、貴方と出会ったときから運命づけられていた。
わたしたちはやっぱり頭がおかしい関係性、だってこと。
女「好きになったほうが、負け」ニヤリ
男「……本当に、すごいね君って」
女「良いじゃない、それってとっても素敵なことよ。告白の有無を一瞬で終わらせない私たちってすごいじゃない!」フフン
男「……うん、すごいね、それを面と向かって否定で居ない俺はもうなんだっていいさ……」ホロリ
【女宅お泊り編 後半に続く】
第十六話 終
~オマケ~
店員(ふぅあ~~~…やあっとシフト終わった、お酒買ってかえろーっと)フワワ
店員「んむ?」チラ
「──それでいい、そのままの女さんが俺はすっ、すきだって……ことを…」カァァ
「…男…」
店員(おやおや~? 弁当くんと、飼い主ちゃんだ。こーんなところでイチャイチャと、青春だなあ~)
店員(彼ってやり手のヒモ男子かと思えば、案外、純愛まっしぐらだったのね。お姉さんちゃちゃ入れちゃうところだったわ、危ない危ない)
店員「若いっていいね~~……んん? 雰囲気ちょっと、変?」チラ
「もしかして俺って実は……正直なところキミに好かれてない? ラブ的な意味で……」
「超超超だいすきなんですけど!? 馬鹿にしないでくれる?! アナタに好きって言われたら超嬉しかったし!?」
「良いじゃない別に! 言葉にしなくたって言い表せなくたって! わたしが、アナタを好きだって言いたい、言わせたいの! それで十分なの!」
店員「……………………………………………」
「貴方、私が今まで散々と悩んでたのに、いざ考えてみれば『なんか違和感ある』って言い出して何も思わないの?」
「俺も自信が無くなってきた……だと……!?」
「でしょーーーー!?!?! なんか違うのよ! 私と貴方、付き合うって、好き合うってなんか違和感すごい!」
「さっきまでは暖かい気持ちと恥ずかしさでいっぱいだったのに、なんだろう…違和感…恐怖…意味がわからない!?」
「そうそうそう!!」バシバシバシ
「こ、こんなことってあり得るのか…!? そ、そうかコレがキミが感じたっ、そのなんていうかっ───」
「…………なんだろう?」コテリン
店員「いや普通に初めて付き合うのが怖いだけでしょ。くっそーイチャつきよってからに」
色々と復活しまし、した、つもりです…
気まぐれに投下します… ではではノシ
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