【神のみ×ガヴドロ】桂馬「僕は落とし神。天使さえもドロップアウトさせる神だ」 (52)


桂馬「―――で、どうして僕の所に話が回ってくるんだ?」

ハクア「だから何度も言ったでしょ!? 悔しいけど、あんたとエルシィのコンビが一番成果を出してるし、上層部に信頼もされてるのよ!」

桂馬「答えになってないな。じゃ、僕は新作をプレイしないと」クルッ

エルシィ「お話くらい聞いてあげましょうよぉ、神にーさまぁ!」ダキッ

桂馬「ええい、このバグ魔どもが! だいたいなんだ!? 重要案件は僕に一任するってそれ組織としてどうなんだよ地獄!」

ハクア「こっちにも色々と事情があるの! 今回は舞島から舞天までちゃんと交通費も出るから!」

桂馬「まあわかるよ。悪魔が居るんだから天使も居るんだろうというのは別にゲーマーじゃなくても想像はつく」

桂馬「そんな天使たちの中に、人間界に紛れ込んでなんらかの活動をしている奴がいても設定に無理はない」

エルシィ「じゃあ!」パァァ

桂馬「だけどな、だからってなんで……」

桂馬「天使に駆け魂が入るんだよーーっ!?」


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ハクア「その疑問に答えるべく、対象の天使の私生活をのぞいてきたわ!」エヘン!

桂馬「やるなんて一言も言ってないぞ」

ハクア「むっきーっ!」プンスコ

エルシィ「神様っ! ハクアががんばって撮ってきたんですよ!?」

桂馬「嫌だッ! べんべん!」ベーッ

ガララッ

桂馬「窓から!? 引っ越してきて早々何してるんだ!?」

天理(ディアナ)「私からもお願いします、桂木さん。天界の危機でもあるのです」ガシッ

桂馬「ぐおっ!? そ、それは、脅迫だろ! ぼ、僕は暴力になんか、屈しないぞ!」

ディアナ「そうですか」ギューッ

桂馬「ぎぶぎぶ!」バンバン!

ハクア「話が進まないんだから諦めなさいっ!」

桂馬「お前らふざけんなよ! 天使が片付いたらぜったいギャルゲーするからなぁ!」


ハクア「それじゃ、羽衣ビジョンに出すわね」ブォン


ガヴリール『…………』カタカタ


桂馬「これが天使? 汚部屋でネトゲしてる3D女子にしか見えん」

ディアナ「嘆かわしいことにその通りです……」ハァ

エルシィ「お名前は天真・ガヴリール・ホワイト様。この天使様、朝から晩まで神にーさまと同じようにゲームばかりしていました……」

桂馬「一緒にするな。ソシャゲ系のギャルゲならともかく、僕はこういう2.5次元的な出会いは求めてない」

ハクア「何の話?」

桂馬「一応聞いておくが、天使ほどの存在がどうして心にスキマが出来たりした? お前と一緒で偽装か?」

ディアナ「いえ。どうやらこの娘、堕天しかけているようで、そこをヴァイスに狙われたのかと」

桂馬「そりゃ、天使は良いエサだろうしな。だが、堕天? 悪魔になるのか」

ディアナ「今はまだ天使としての役目を果たしていない、駄目な天使と書いて駄天というレベルですが、いずれはそうなるかと」

桂馬「ふぅん……」


ディアナ「あんな生活をしてはいますが、腐っても天使。人を思いやる愛情を忘れていく自分に対し罪悪感を覚えているはず」

ハクア「それが心のスキマを生み、駆け魂によって無理やり広げられた、ってことね」

桂馬「そうは見えないけどな……つまり、人間界に来てネトゲ廃人になった天使を攻略すればいいんだな?」

ディアナ「だ、ダメです! 天理というものがありながら貴方は!」

桂馬「やれと言ったりやるなと言ったり……。ハクア、金は全部地獄から出ると言ったな」

ハクア「え? ええ、今回は天界も関わってる異例中の異例だからね」

ハクア「まだ駆け魂はLv2程度だけど、天使の中でLv3以上になられたらどんな災厄に成長するか……」

桂馬「僕はこれから引っ越す。それと学校を休んで転校する」

エルシィ「え、ええーっ!?」

桂馬「時間がもったいない。最短ルートで行くぞ」


――ガヴのアパート――


ドロドロドロ ドロドロドロ

桂馬「ここが天使の部屋で間違いないな? この隣が僕の数日の新居、と」

エルシィ「はい! ところで、転校はともかく、どうしてお引越しまで?」

桂馬「この手のタイプは月夜や栞と同じだ。自分の居場所を守ろうとするタイプ」

桂馬「こういう手合いはこっちから彼女たちの世界に踏み込んでいくしかない」

桂馬「だが、今回は学校の屋上でも図書館でもなく、個人の部屋だ。さすがに直接踏み込んだらマズイ」

エルシィ「なるほどぉ! それでできるだけ近いここにお引越しを!」

桂馬「いや、"お隣さん"という属性を利用して部屋の中へ入るためだ!」

ヴィーネ「……あの、ヒトの家の前で何をされてるんです?」

エルシィ「えっ?」


桂馬「今日からこちらに越してきた桂木と言います! どうぞよろしく」ニコニコ

ヴィーネ「そうでしたか! 私はここの住人じゃないんですけど、よろしくお願いします」ペコリ

エルシィ「にーさま、この人、例の天使様じゃありませんよ?」

桂馬「うわ、馬鹿!」

ヴィーネ「てん……し……!?」

桂馬「ああもう! エルシィ! と、そこのお前も隣の部屋に入れ!」ガシッ

ヴィーネ「え、きゃぁ!」

エルシィ「にーさま!?」

バタンッ



ガチャ

ガヴリール「……ヴィーネの声? 気のせいか……」キョロキョロ バタン


――桂馬の新居――


桂馬「天使の部屋を訪ねてくるんだから、天使の関係者に決まってるだろ! その目の前で天使なんて言葉を出すなよ!」

エルシィ「あっ! ごめんなさい神様~!」

ヴィーネ「か、神様!? やっぱりあなたたち、いえ、貴方様は、天界の……!?」プルプル

桂馬「……先にそっちの素性を教えてもらおう。そうすれば、隣の天使には悪いようにはしない」

ヴィーネ「……わかりました。私は月乃瀬・ヴィネット・エイプリル、魔界の悪魔です……」

桂馬「あ、悪魔?」キョトン

エルシィ「わあ! 一緒ですね!」ダキッ

ヴィーネ「え、えっ!?」


桂馬「―――それじゃ君は、エルシィたちみたいな公務員を志望してない悪魔、なんだな?」

ヴィーネ「驚きました。まさかこっちでかけ魂隊のエリュシア・デ・ルート・イーマさんとそのバディの方に会えるなんて!」

エルシィ「えへへ、照れちゃいます」

桂馬「お前がその天使を堕天させてるのか?」

ヴィーネ「はぁっ!? 違います! 断じて! むしろ駄天を公正させようとですね!」

桂馬「悪魔なのに?」

ヴィーネ「そ、それは……」

桂馬(こいつもバグ魔なんだな)

桂馬「つまり、あの天使は自発的にネトゲ廃人になっている。そしてお世話キャラは既にいる、か」

ヴィーネ「お世話キャラ?」ポカン

桂馬「なら、少しルート変更だな」


桂馬「見たところ生活力皆無な女子だ。だったら、掃除洗濯料理、家事一切を手伝ってしまうだけで簡単に好感度が上がる」ブツブツ

桂馬「が、そのポジションはもう埋まっている。それなら……」ブツブツ


ヴィーネ「―――ええっ!? ガヴの心の中に、駆け魂が!?」

エルシィ「でも安心してください! 神にーさまは駆け魂を出す天才なんですよ!」エッヘン!

桂馬「見たところヴィネットは新悪魔のようだし、一応協力はしてくれるのか?」

ヴィーネ「も、もちろんです! ガヴが旧悪魔を子として転生させるなんて……そんなの、許されません!」

桂馬「なら話は早い。ちょっと手伝ってくれ」スッ

ヴィーネ「私にできることなら! って、これは……おそば?」


――ガヴの部屋――


ヴィーネ(LINE)『ごめん、今日ガヴの家に行けなくなっちゃった』

ガヴリール「んー、そうするとカップ麺か。お湯沸かすの面倒だな……」グー

ピンポーン

ガヴリール「はーい。って、どちらさん?」

桂馬「あ、えと……隣に越してきた桂木桂馬と言います。これ、良ければどうぞ」スッ

ガヴリール「おそば? ああ、引越し蕎麦とかいうやつか。初めてもらった」

桂馬「もしかして外国の方ですか?」

ガヴリール「え? あ、いや、えっと、まあ、そんなところ。名前はガヴリール」

桂馬「でしたらお蕎麦は迷惑でしたかね……もしよければ僕が作りますが」

ガヴリール「マジか、お前良い奴だな。丁度腹も減ってたし、頼んでいい?」

桂馬「はい! じゃあ、茹で上がったらお持ちしますね!」

ガヴリール「あいよ。部屋片付けて待ってる」


ガチャ

桂馬「おじゃまします。おそば、お持ちしました」

ガヴリール「ん、そこ置いといて。今手が離せないから」カタカタ カチカチ

桂馬(部屋の中、あれだけ散らかってたのに……いや、クローゼットが悲鳴をあげてるから、つまりそういうことなんだろう)

桂馬「それじゃ、ここに置いておきますね」スッ

桂馬(世話焼きポジが居る時点で、僕がどんなに美味い料理を作ったところでポイントは稼げない)

桂馬(これは部屋に入るためだけの口実。本当に大事なのは―――)

桂馬「あれ? ガヴリールさんがやってるの、ネトゲですか?」

ガヴリール「ん? ああ、うん。知ってる? これ」

桂馬「知ってるも何も、僕もやってますよ! って、もしかして……ガヴリールさん!?」


ガヴリール「は? そうだけど?」

桂馬「僕ですよ! ケイマです! 同じパーティーの!」

ガヴリール「ケイマ……って、ケイマ!?」

桂馬「まさかお隣さんになるなんて……いつも回復、ありがとうございます」ペコリ

ガヴリール「こっちこそなんかすまん! いや、すいません! ケイマさんにそばを作らせたなんて!」


桂馬(―――とまあ、下準備もバッチリだ)

桂馬(ネトゲに時間を費やしたのは不本意だが、面白くないゲームでは無かったしな)

桂馬(例の悪魔から聞いた話だと、まだこの天使にはゲームという共通の話題を持つリアルの知り合いは居ないらしい)

桂馬(さぁ、ここからメインルートに入るぞ)


ガヴリール「いやあ、ヴァルハラ王国クエストの時のケイマさん、あれは神懸かってましたよ!」

桂馬「そんな神だなんて。ガヴリールさんはみんなの天使じゃないですか!」

ガヴリール「うわあ、黒歴史やめてくださいよ。もう無駄な課金はしないですから」

桂馬「それもありますけど、あの時パーティーになかなか馴染めなかった僕を救ってくれたのもガヴリールさんだったんですよ」

ガヴリール「へ? まあ、私って無意識でも誰かを救っちゃう能力がありますからね」アハハ

桂馬「そうだ! 明日から開催される難関クエスト、ここで一緒にやりませんか? 僕がノートパソコン持ってきますので」

ガヴリール「なるほど、チャットの時間が削れるのはかなり有利……ん?」

ガヴリール「いや待って! えっとほら、一応ここ、女の子の部屋だし、ね?」

桂馬「えっ? あっ! す、すす、すいません! 失礼なことを!」

ガヴリール「ホントは部屋が汚いからなんだけど……」ボソッ

桂馬「えっ?」

ガヴリール「ああいや! だったら、私がケイマさんの家に行きますよ」


――桂馬の新居――


エルシィ「でもどうしてこんなにすぐ打ち解けたんですか?」

桂馬「廃人と言えども所詮はネット初心者。ゲームの中で仲の良い人は、リアルでも即仲が良いと勘違いしてしまう」

桂馬「そして、ゲームの中で仲良くなることに関して僕の右に出る人間は居ない」キリッ

エルシィ「すごい自信です……!」

桂馬「下準備の段階でルートは完成してるようなもんだ。あとはイベントを1つ起こしてやればいい」


翌日
――舞天高校――


グラサン「今日は新入生を紹介する」

ガラッ

桂馬「失礼します。初めまして、桂木桂馬と……あーっ!」

ガヴリール「あっ」


桂馬(まさかひとつ下の学年に転入することになるとはな。まあ、このクラスの人間の記憶は消えるから構わないけど)

桂馬(今日はヴィーネに頼んでガヴリールを学校に来させた。あとはテンプレイベントを消化しつつ……)


桂馬「ガヴリールさんと同じクラスになれるなんて思ってませんでしたよ」

ガヴリール「本当ですね……あのさ、同じクラスなんだし、さん付けと敬語やめない?」

桂馬「あ、確かに。じゃあ……ガヴ?」

ガヴリール「おう。"ケイマ"とこんなやりとりをするなんて、新鮮だな」フフッ

桂馬「ホントだね」

ガヴリール「今日はよろしくな、桂馬」

桂馬「よろしく……っていうと、クエストだよね」

ガヴリール「むしろ早退したいくらいだよ」

ヴィーネ「何がむしろなのよ、なにが」

ガヴリール「げ、ヴィーネに聞かれてたか」

桂馬「ヴィーネさん? ガヴのリア友?」

ヴィーネ(えっと、演技よね! 演技しなきゃ!)ドキドキ

ヴィーネ「りあとも? うん、多分。よろしくね、桂馬くん!」

ガヴリール「……?」


――桂馬の新居――


ガヴリール「いよっし! ここもクリア!」カチカチ

桂馬「順調だね!」カチカチ

ガヴリール「やっぱケイマは他のプレイヤーとは一味違うな。安心感がダンチだ」

桂馬「チャットじゃなく、リアルでその言葉が聞けて、すごく嬉しいよ」ニコ

ガヴリール「えっ? あ、そうだな。ボイチャじゃヘッドセットが鬱陶しいし」

桂馬「ガヴ! 次は一緒に行くよ!」

ガヴリール「オッケー!」


翌日

チュンチュン …


ガヴリール「んぅ……あれ、いつの間にか寝てた……ふわぁ……」

ガヴリール「いつもだったら4時過ぎても余裕なのに……まぁ、楽しかったし……」

ガヴリール「誰かと一緒にゲームするのって、こんなに楽しいんだな……」

ガヴリール「さて、トイレトイレ……って、なんか部屋の配置、いつもの左右反対?」ヌギヌギ

ガヴリール「…………」チラッ

桂馬「…………」スヤスヤ

ガヴリール(―――――ッ!! ///)


ガヴリール(ヤッベー! 色々とヤッベー! お、落ち着け、私!)カァァ

ガヴリール(大丈夫、バレなきゃ犯罪じゃない! 今日、私はここに居なかった!)ドキドキ

ラフィエル「…………」ニコ

ガヴリール(あ、終わったわコレ……)

ラフィエル「偶然ですよー? 今ガヴちゃん何してるかなーと思って千里眼して神足通しただけですよー?」

ガヴリール「まだ何も言ってないわけだが」

ラフィエル「それじゃ、人類滅ぼしますねー」ニコニコ

ガヴリール「待って!!!!」ガシッ

桂馬「ん……?」


ラフィエル「―――じゃあ、桂木さんは"ゲームの中での"お友達なんですね」

桂馬「ええ、まあ」

ラフィエル「私はガヴちゃんの"幼馴染"の、白羽・ラフィエル・エインズワースと申します」

桂馬(おいなんだよ! またわけのわからん力が使えるキャラが登場したのか!?)

ガヴリール「ゲームに夢中で気付かなかっただけなんだ! お願い! 天か……家族には報告しないで! なんでもするから!」

ラフィエル「ええ、さすがにこれを報告しちゃうとつまらないことになってしまうので報告はしませんよ」

ガヴリール「ほっ」

ラフィエル「なので、これは個人的な質問なんですが……本当に何も?」

ガヴリール「いや、もしそんなことになってたら完全に堕ちてるからね?」


桂馬(ヤバイな、監視してくる天使の幼馴染が居たとは。このままでは僕が男友達に甘んじるルートに押し込まれる)

桂馬(これであの白いのが冷やかしキャラなら良かったが、そういう風には天地がひっくり返っても見えない)

桂馬(エルシィに頼んで事情を説明して協力させる方が良いか?)

ガヴリール「ってかラフィ、今日学校じゃね? 行かなくていいの?」

ラフィエル「緊急事態でしたから。今日は三人で遅刻確定ですね」

桂馬「ええっ!? わ、もうこんな時間! 急ごう、ガヴ!」ガシッ

ガヴリール「しょうがない休も―――う、うん。行こうか」ギュッ


――舞天高校――


桂馬「まさか転校早々廊下に立たされるとは……」

ガヴリール「あのグラサン、今に見てろよ」

桂馬「グラサンって……ふっ。ははっ」

ガヴリール「ぷっ。あははっ」

ガララッ ピシャッ

サターニャ「ううっ……グスッ……」ウルウル

桂馬「……えっと?」


ガヴリール「また宿題やってこなかったのか。馬鹿だな、サターニャは」

サターニャ「っさいわね! あんただって遅刻して立たされてるくせにぃ!」グスッ

ガヴリール「欠席じゃないだけマシだろ」

桂馬「友だち?」

ガヴリール「んー……まあ、そんなとこ」

サターニャ「ちょっと何よそれ! 私たちはライバルでしょう!?」ムキーッ

桂馬「ライバル?」

ガヴリール「ああ、気にしないでいいから」

サターニャ「私を無視して下等動物のオスと仲良くするなんていい度胸じゃないガヴリール……!」ククク

サターニャ「今日こそはこの大悪魔、胡桃沢・サタニキア・マクドウェル様にひざまずかせて―――!」

ガララッ

グラサン「……静かにしろ」ギロッ

ピシャッ

サターニャ「……うぇぇ……っ」ポロポロ


桂馬(ライバルポジも悪魔に潰されたか。となると、残る選択肢は……)

桂馬(少し危険だが、落として上げる作戦で行こう)

ガヴリール「そういや、今日も桂馬の家行っていい?」

桂馬「ごめん、ガヴ。今日はヴィーネに街を案内してもらう約束をしてて」

ガヴリール「えっ……」

桂馬「引っ越してきたばかりで、早いうちに色々慣れておこうと思って。そしたら、ヴィーネの方から助け船を出してくれてさ」

ガヴリール「そう、だったんだ」

桂馬「ガヴはクエストで忙しいだろうし、夜遅くじゃまた今日の朝みたいなことになったら良くないしね」

ガヴリール「ああ、うん」


――下校中――


ガヴリール「…………」トボトボ

ガヴリール「……はぁ」モクモクモク


<物陰>

ヴィーネ「ねえ、大丈夫なの!? ガヴから駆け魂のオーラが私にも伝わるくらい大きくなってるんだけど!? モクモクしてるんだけど!?」

エルシィ「少し駆け魂が成長してますよ、神にーさま!!」

桂馬「あれでいい。こうすることで今まで一人でプレイしていて楽しかったはずのネトゲをつまらないと思わせる」

エルシィ「もうにーさまが女の子にいじわるするのにも慣れてきました……」

桂馬「これで僕が彼女の心のスキマに入る準備ができるわけだが、あとひとつイベントが起きれば……」


ラフィエル「サターニャさんにはガヴちゃんに連絡を取らないよう伝えておきました」

サターニャ「ガヴリールが心配で、ゴホン、地獄の駆け魂隊とやらの活躍を見させてもらいに来たわよ!」

エルシィ「が、がんばります!」

ラフィエル「これでガヴちゃんが助からなかったらどうなるかわかってますか? 人間さん?」ニコ

桂馬(やっぱりこいつに事情説明したのは失敗だったか……?)プルプル

エルシィ「そう言えば、今回は女の子を怒らせたりはしないんですか?」

桂馬「おまっ、余計なことを!」

ラフィエル「ガヴちゃんを怒らせるんですか? 悲しませるんですか? ん?」ニコ

桂馬「……今回は対象が堕天しかけの天使だからな。重要なのはそこじゃない」

桂馬「人間じゃない、というのがドラスティックかつシンプルなポイントだ」

桂馬「天使の本質……それは、感謝を捧げることにある!」


  ヒロインがにんげんじゃなくてもいいじゃないか

         にんげんだもの       けいま



桂馬「今は昔竹取の翁といふ者ありけりの時代からの鉄則だ。人間でない者には、人間の現実女と同じ攻略をしてはならない」

ヴィーネ「ヒロイン?」

サターニャ「攻略?」

桂馬「天使がヒロインの場合、9割方最後の敵は天界そのものになる」

桂馬「つまり、天使を堕天させて人間と同レベルで生活させることでハッピーエンドなんだ」

桂馬「それがまたプレイヤーの攻略欲求を満たす構造にもなっている」

ラフィエル「えっと……?」

桂馬「だが、今回は逆に天使を天使らしくさせることで攻略しなければならない……」


桂馬「なあ、ラフィエル以外にガヴの周りで天使って居るのか?」

ヴィーネ「千咲ちゃんは……今は天界か」

ラフィエル「ガヴちゃんのお姉さんなら千里眼でいつも監視しているかも知れません」

桂馬「お姉さんが監視、か……厳しいのか?」

サターニャ「え、ええ。厳しいなんてもんじゃないわよ……」

ヴィーネ「そ、そうね。ちょっと怖かったわね……」

桂馬(悪魔たちが怯えている……これなら)


桂馬「―――エンディングが見えたぞ」


――ガヴの部屋――


ガヴリール「…………」カチカチ

ガヴリール「よし、クリアっと」カチカチ

ガヴリール「…………」

ガヴリール「そういや、今日はヴィーネからもラフィからも、サターニャからも連絡ないな」

ガヴリール「桂馬もまだ帰ってきてないみたいだし……」

ガヴリール「今頃ヴィーネと二人きりで街を……」モクッ

ガヴリール(やっぱり、神様の罰が当たったのかな。こんな駄天使が愛されちゃいけない、よね……)モクモク

ガヴリール「…………」モクモクモク

ガチャ バタン

ガヴリール「っ!」ピクン

ガヴリール「い、いやいや、下の階の部屋の玄関の音かも知れないだろ……」

ガヴリール「…………」


――桂馬の新居――


ピンポーン

シーン…

ガヴリール「…………」

ガヴリール「やっぱりまだ帰ってな―――」

ガチャ

桂馬「はい。って、ガヴ?」

ガヴリール「あっ、いや、その……」モジモジ

桂馬「……ネトゲ、一緒にやる?」ニコ

ガヴリール「う、うん!」パァァ


ガヴリール「いよっし! ここもクリア!」カチカチ

桂馬「順調だね!」カチカチ

ガヴリール(……どうしてかな。桂馬と一緒の方が、ひとりでやるより楽しいかも)エヘヘ

桂馬「どうしてかな。ガヴと一緒の方が楽しい」

ガヴリール「えっ……」トクン

桂馬「ゲームの話題って、誰かと共有することがなくてさ。いつも周りに邪魔されてばかり」

ガヴリール「うん、うん」

桂馬「それをこうして、憧れのガヴリールさんの隣でできるなんて。僕の祈りが通じたのかな」

桂馬「ありがとう、ガヴ」ニコ

ガヴリール「う……///」テレッ

桂馬「ガヴ! 次は一緒に行くよ!」

ガヴリール「オ、オッケー!」


翌日

チュンチュン …


ガヴリール「んぅ……あれ、いつの間にか寝てた……ふわぁ……」

ガヴリール「さて、トイレトイレ……って、なんか部屋の配置、いつもの左右反対?」ヌギヌギ

ガヴリール(ん? これってデジャヴ……)チラッ

桂馬「…………」スヤスヤ

ゼルエル「…………」

ガヴリール「」


ゼルエル「起きろ、人間」ゴスッ

桂馬「ぐえっ!? な、なんだ!?」

ガヴリール「」ガクガクブルブル

ゼルエル「残念ながら、貴様には弁護人はつかない。貴様は神の意思に背いたのだ」コォォォォ…

ガヴリール「ま、待って姉さん! 悔い改めるから! 悔い改めるからぁ!」

ゼルエル「ガヴリール、お前には後で仕置きがある……」

桂馬「へえ、神の意思……それは僕の意思だ。ガヴにお仕置きなんてさせない」

ゼルエル「もはや是非もない」ゴォォォ…

ガヴリール「だ、ダメぇぇぇっ!!!」


\カッ!/


キラ キラキラ …

ゼルエル「……ほう。この私に全力で立ち向かうとは」

ガヴリール「はぁ……はぁ……っ」バサッ

桂馬「てん……し……?」

ガヴリール「はは、バレちゃったね……。ごめん、後で、記憶、消させて……っ」ウルッ

ゼルエル「記憶を消されるのはお前だ、ガヴリール。その男に関する全ての記憶をな」コォォォ…

ガヴリール「くっ、二撃目はさすがに……」

桂馬「―――やめろォっ!!!」


ガヴリール「桂馬ッ!?」

桂馬「……ガヴに手を出すな」

ゼルエル「何の力も持たない人間の分際で、よく私の"神の腕"の前に出れたものだ。その心意気は認めてやろう」

ガヴリール「やめろ桂馬! 姉さんの力の前には塵ひとつ残らないぞ!?」

桂馬「ガヴは、なかなかパーティーに馴染めなかった僕を救った天使なんだ」

ガヴリール「……え?」

桂馬「そんな天使とこうして出会えた奇跡……それを祝福するために、昨日は街へプレゼントを買いに行っていた」スッ

ガヴリール「―――ッ!?」ドキッ


ガヴリール「い、いいのか? こんな駄天した私を、天使って呼んでくれるのか?」ドキドキ

桂馬「君に救われた恩、一生忘れない。きっと似合うよ、その素敵な髪に」ニコ

ガヴリール「翼の形の、髪飾り……っ」ウルッ

ガヴリール(そっか……だから帰ってくるの、遅かったんだ……)

桂馬「遅くなってごめん。ゲームだったらワンクリックで購入できるのに、これだからリアルはクソゲーなんだ」

ガヴリール「ああ、そうだな……っ、クソゲーだ……」ポロポロ

桂馬「一緒にクリアしよう。このクエストを!」

ゼルエル「言い残したことはそれで全てか?」ゴォォォ…

桂馬「お前は、僕をなんの力も持たないちっぽけな人間だと思ってるようだけどな、それは大間違いだ」

ゼルエル「なに?」

桂馬「僕は"落とし神"。愛の力で天使さえもドロップアウトさせる神だッ!」ダキッ

ガヴリール「な――――」



チュ …


――屋根の上――



\ボォォォォォンッ!!/


エルシィ「駆け魂、こ~りゅ~っ!!」


キュィィィィィン… スポンッ


・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

――どこか空の上――


エルシィ「えっへへ~、ヴィーネさんとサターニャさんとメルアド交換しちゃいました~♪」

桂馬「それ、冥界でも使えるのか? ってゆーか、ちゃんと天使たちの記憶、消したんだろうな」

エルシィ「え? 消してませんよ?」

桂馬「……はァッ!?」

エルシィ「協力していただいたお姉さん天使様に、皆さんの記憶をそのままにしておくようにって頼まれたんです」

桂馬「なんで!?」

エルシィ「なんでも、ガヴリールさんの心に生まれた愛情はホンモノだから、それを忘れさせるなんてことはできない、とのことですよ! にーさま!」

桂馬「あのキスのあと、血涙を流して僕を昇天させかけた天使の言葉とは思えないが……これじゃおちおち天国にも行けないな」ハァ

桂馬「……まぁ、またガヴとゲームできるなら、天国もいいところなんだろうけど」ボソッ


――登校中――


ガヴリール「おばあちゃん。この歩道橋の階段、荷物持ちましょうか」

おばあちゃん「ありがとう。助かるねぇ」


ヴィーネ「ガヴが……」プルプル

サターニャ「人助けを……」プルプル

ガヴリール「お気をつけて~……って、ふたりともなんだその顔。失礼だな」

ヴィーネ「綺麗なガヴ、ってわけでもないのよね?」ツンツン

ラフィエル「みたいですね~」ニコニコ

ガヴリール「ん、まぁ、なんだ。人に感謝されるのってやっぱ悪くないなって思ってさ」

ラフィエル「なんだかんだでガヴちゃんは天使ですからね。愛されてなんぼです!」

ガヴリール「うん。私は駄天使だけどさ……それでも、天使でいいんだって思えたから」


ガヴリール「そうだよな。私の神様……」ニコ






おわり

>>8
×ヴィーネ「はぁっ!? 違います! 断じて! むしろ駄天を公正させようとですね!」
〇ヴィーネ「はぁっ!? 違います! 断じて! むしろ駄天を更生させようとですね!」

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