王将「自分が前線に出て闘う」(17)

飛車「嘘だろ王将!お前正気か!?お前が取られれば戦に負けるんだぞ!」

角将「攻撃は桂馬と飛車と銀と俺に任せてお前は囲いに入っとけよ!!」

銀将「今日はどうします大将!美濃にしますか!?矢倉っすか?それとも豪華に穴熊にしますか!?」

金将「急戦にしたいなら別に居玉でも全然いいですけどね、どうします?」

王将「」スッ

飛車「振りもせずこっちに寄って来たって事は右玉っすか?自分は別にいいっすけど…」

王将「行け、36歩だ」

歩兵「えっ?あっはい」

飛車「桂馬を跳ねさせて金と銀をこっちに寄せて俺が下がれば……」

王将「」スッ

飛車「!?」

角将「37玉!?何やってんすか!!」

桂馬「さすがに危ないっすよ!一手損くらいまだ取り返せます!引き下がりましょう」

飛車「お、王将……手元が狂ったんだよな……?戦をしすぎて疲弊してきたんだよな?」

王将「……行け、35歩だ」

歩兵「えっ……でも」

王将「早く行けと言っている!!」

歩兵「はっ、はい!!」

飛車「何をするつもりだ王将……まさか」

王将「」スッ

飛車「36玉だと!!そんなバカな!!無茶だ!!棒玉だなんて!」

角将「おいこんなんじゃすぐ寄せられちまうぜ!!早く引き返せ王将!」

銀将「棒銀なら任せろ!アンタは黙って囲われてな!」

王将「来るな!!」

銀将「えっ……」

王将「もうお前達に迷惑をかけるのは嫌なんだ……」

銀将「王将……」

駒全部(今絶賛迷惑掛かってる途中なんだけど……)

王将「俺はもっと役に立つ男になりたい、一番強い男になりたいんだ」

王将「いつも囲われて……敵将が来るのを怯えて待っている…」

王将「そして囲いを剥がされては逃げ……囲いを剥がされては逃げ……こんなのはもうたくさんだ!!」

王将「情けない自分はもう捨てたんだ!俺も闘うぞ!」

飛車「……マジか」

飛車「王将……ちょっとストップな。ちょっとだけ時間頂戴」

王将「ああ、いいだろう。持ち時間は10分だから早く終わらせるんだぞ」

飛車「あ、ああ……」

角将「おいおいどうするんだよ……あいつもうルールなんて忘れて飛び出していっちまったよ…」

飛車「知らねーよ……弱い自分が情けないとか言ってるけど頭の弱い王将を持ってる俺らが情けねぇっての…」

桂馬「相手寄せに掛かって来てるぞ……居玉で全力で寄せにかかってきてるぞ……」

飛車「マジで取り返しつかーねーよ……これ投了もんだよ…」

銀将「振って銀冠とかどうかな……それならまだ軌道修正できるんじゃ……」

飛車「お前王将が自陣に戻るのに最低二手は必要なんだぞ……しかも戻れたとしても仕掛けられてるから安全とは限らねぇ…」

飛車「やべーよ…やべーよ、どうすんだよこれ……」

角将「なんでいきなりあんなこと言い出したんだよ……おい金将、お前あいつの世話役だろ何してたんだよ」

金将「いや……相談受けてたけどさ、さすがに無理って言ったよ。だって真っ当な本将棋で何の捻りもなく棒玉やりたいだなんてアホですよ」

角将「まぁそりゃそうだわな……けどあいつ我儘で飛び出して行ったけどな」

飛車「……相手銀とか金上がってきたんだけど、飛車も振ってきたんだけど、本格的に王将を追いつめようとしてるんだけど」

角将「絶望的だこれ……完全に穴あけられるって…」

飛車「おい見ろよ…相手の王将腹抱えて笑いこらえきれてねーぞ……マジ屈辱だよ」

香車「……とりあえず説得できたとしてももう手遅れだね」

飛車「……投了するか」

香車「いや、まだ終わってない」

飛車「何!?まだこっから逆転できるのか!?」

香車「真っ当に指したら無理」

飛車「何だよ……」

香車「でも大丈夫、多分だけど」

角将「なんかいい方法でもあるのか?」

香車「あいつから王位を剥奪すればいい」

駒全部「!!!?」

飛車「お前天才か!!その手があったか!」

角将「いや……ルール的に大丈夫なのか?」

飛車「大丈夫大丈夫、あいつ取られても知らんぷりしたらいいんだよ」

桂馬「だよな、ってかもうそれで行くしかない。攻め駒として使われたらあいつも本望だろ」

銀将「やむを得んな」

王将「……」

王将(なんか金とか銀に囲まれてる……まだ数手指しただけなのに絶体絶命になってる…)

王将「いや恐れるな……俺はもう闘うと誓ったじゃないか……」

王将「うおおおおおおおお!!!」

パチッ

王将「……」

コトッ

飛車「おいあいつ取られたぞ」

角将「無視だ無視……シラをきりとおすんだろ」

玉将「ワロスwwwまさか王将自ら突っ込んでくるとかバカとしか思えない」

玉将(……取ったのはいいがまだゲームが続いている、何故だ?)

玉将「……待て、何故王将を取れたんだ?普通詰んだらそこで終わりと思うんだが」

玉将(まさか……あいつは偽の王と言う訳なのか!?)

玉将「卑怯だぞ!!お前ら!!」

シーン……

玉将「ぐぬぬ……まとめて取ってくれるわ!!」

飛車「何とか切り抜けたな……」

角将「ていうか最早このゲーム何したら負けなの……」

飛車「おい、相手の駒台から王将が何かサイン送ってるぞ」

金将「……む、ね、ん」

角将「無念じゃねーよバカかあいつ」

金将「なんでゲーム続いてるの?だってさ」

飛車「知らねーよ、相手が訴えねーからじゃねーの」

角将「相手もアホかよ、何が頭脳ゲームだよこれ。ふざけんな」

王様「お前らよく聞け!!」

ビクッ

飛車「おい、あいつ何かしゃべり始めようとしてんぞ」

王将「無念ながら私は死んでしまった……でもなぜかゲームは続いている、これではもうゲームとして体をなしていない」

王将「そこで我が王位を飛車に授ける!これでいいだろう!以上!」

角将「以上じゃねーよ、マジでムカつくわ」

桂馬「ていうか飛車が詰まされたら負けになるって事なの?」

飛車「そういう事だろうけど……」

ワーー!!

飛車「ちょっ…やばいやばい!攻めて来たって!!」

銀将「相手承諾したのかよ…」

角将「ルールが変わってもどの道これじゃ負けるって……」

桂馬「いやまだ希望はあるぞ!!とりあえず持ち直すんだ!!」

飛車「……そうだな、俺遠くまで逃げれるしこのルールならまだいけるかも」

角将「よし!何とか勝つぞ!!なんとしてもわが軍の汚名を挽回するんだ!」

オーッ!

パチッパチッ

飛車「くそっ……追いやられちまった……」

角将「……すまねぇ飛車、俺達の力がそぐわねぇばかりに」

飛車「いいって事よ……お前らはあのクソみたいな状況からよく頑張ってくれた、マジで感謝してるぜ」

桂馬「飛車……」

香車「……お前結構王向いてるかもな」

飛車「寄せよ、俺は戦場を駆け抜ける誇り高き戦士だぜ?王将なんて柄じゃないね…」

銀将「次のゲームは俺達が囲ってやるよ」

飛車「寄せよ、俺は囲われるなんて柄じゃねぇ、それに角将だけじゃ攻撃力不足だしな」

角将「言ったなこいつ~」

飛車「ハハ…」

パチッ

飛車「じゃあな……次のゲームでまたお前らと闘えることを祈ってるよ」

角将「おう」

桂馬「またな」

香車「元気でな」

銀将「次はお互いいい王様に当たるといいな」

金将「たまには棒金してくれよな」

飛車「ああ……」

パチ

王将「……」

飛車「……」

王将「詰みだ」

王将「残念だったな」

飛車「うっさいわボケ!!」ドグシャ

王将「ブフォ!!」





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