女「人と木のひと時」 (8)
女「ねえ楠の木さん」
楠の木「なんだい、女ちゃん」
女「今日は陽が強いねー」
楠の木「そうだね、風も少し出てきた」
女「そういえば、楠の木さんってずっとここに居るの?」
楠の木「ああ、木だからね」
女「いつでもー?」
楠の木「うん、いつでもさ。ずーっと動かず、ここに居るのさ」
女「えー、うっそだー」
楠の木「・・・・・・嘘だったら怖くないかい?」
女「うん、ちょっと怖いね」
楠の木「女ちゃんはいつもこの丘まで歩いて来ているのかな?」
女「そうだよー」
楠の木「そうかい」
女「・・・・・・あ、楠の木さんっていくつなの?」
楠の木「そうだなぁ、もう二百歳くらいになるんだろうか」
女「だからそんなにおっきいんだね」
楠の木「うん、そうさ」
女「私も二百歳になったら大きくなっていると思う?」
楠の木「・・・・・・思わないなあ」
女「うん、そうだよね」
楠の木「うん、そうさ」
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女「楠の木さーん!」タッタッタッタ
楠の木「こんにちは、女ちゃん」
女「あ、どうもでごんす」
楠の木「なんだい、それは」
女「もの真似もの真似。誰だと思う?」
楠の木「そうだなぁ・・・・・・雷電爲右エ門かい? 力士の」
女「はずれでーす」
楠の木「残念だなぁ。誰なんだい?」
女「バイト先の先輩ー」
楠の木「・・・・・・知らないなぁ」
女「でね、最近好きな人が出来たの!」
楠の木「へえ、どんな木だい?」
女「え、人だよ」
楠の木「そうだよね」
女「その先輩の友達なんだけどね、すごく格好良いんだー」
楠の木「それはよかったねぇ」
3
楠の木「ごらん、女ちゃん。今日は林業の方がいらしているみたいだ」
女「うん・・・・・・」
楠の木「あれ、今日は何だか元気がないね」
女「・・・・・・」
楠の木「何かあったのかい? 言ってごらん」
女「あのね、最近お父さんに聞いて知ったんだけど・・・・・・」
楠の木「うん」
女「・・・・・・ごめんなさい、やっぱり言えない。これを言ったら友達じゃなくなっちゃう」
楠の木「遠慮することはないよ、言ってみなさい」
女「・・・・・・実はね、私の家・・・・・・木で出来ているの」
楠の木「・・・・・・うん、知ってたよ」
女「え!?」
楠の木「みんなの家は木で出来ているんだよ」
女「・・・・・・知らなかった」
楠の木「その方が問題だと思うなぁ」
4
女「ごめんね、楠の木さん」
楠の木「あのね、女ちゃん。君達の為になるのなら、僕達は切られても平気なのさ」
女「・・・・・・そうなの?」
楠の木「もちろん。僕達が水や土を必要としているように、君達も木が必要なんだろう?」
女「うん・・・・・・」
楠の木「誰かの為になれるっていうのはね、とても嬉しいことなんだよ?」
女「あの切られそうな木も・・・・・・?」
楠の木「ああ、もちろんさ。声を聞いてごらん?」
イチイの木「がぁぁぁあああああああいでぇええええええええやめろおおぉぉおぉ!!!」
楠の木「・・・・・・」
女「楠の木さぁん!!」ウル
楠の木「あれだね、空耳だよ」
女「ほんとに?」
楠の木「ああそうさ」
暇な時続き書きます。
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