女「選ばれた能力は、綾鷹でした」 (73)


帰り道


友(♀)「え…」

女「ですから、私に適合した能力。綾鷹なんです」

女「効果は…ほら」ガコンッ

女「今、ミネラルウォーターを買った筈なのに綾鷹が出てきたでしょう?」

女「100円払って160円の綾鷹が買える能力なんです」

女「正しくは、"人生の様々な選択において綾鷹が選ばれる"という能力なのですが…」

友「そ、それで最近やけに綾鷹ばっか飲んでたんだ…!」

女「綾鷹を飲んでいたのは普通に美味しいからという理由なのですが…」

友「いっ…」

女「でも、面白いですよね」

女「一見得したように見えるでしょう?でも、しっかりお財布からは60円無くなっているので笑っちゃいます」

友「………元気だしなよっ!」

女「友さんの超能力は確か聖なる光でしたよね」

女「ゾンビを始めとするアンデッドモンスターに有効な希少能力…」

女「その源流は勇者の血筋だと授業で先生が仰っていました」

友「うっ………で、でもあんまり凄く無いんじゃないかなぁ。だって、…な、なんか熱いだけだよっ!?」

女「そうですか」

女「でも、祝わせてください」

女「…おめでとうございます」ムスッ

友「う、うぅ…」



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友「で、でもさっ!超能力なんて無くてもは問題無いくらい女ちゃんは強いじゃない!」

女「……それは、私の家が伝説の勇者の血筋だからですね」

友「あっ…」

女「強くならなくては良い暮らしは出来ない。…幼い頃から教え込まされてきました」

女「今までの条件は平等。差をつけるのは個人の努力のみ。ただし、そこまでの段階だけならば勇者とは呼ばれない」

女「…その血筋故に手に入る、勇者の力の断片を超能力として継ぐ。それが私の、」

友「も、もういいよ!もういいからっ!」

女「…………ぶぅ」ムスッ

友「…そんな顔されても、どうすればいいのさ……」

女「貴女、私と亡命しましょう」

友「えぇっ!?無理だよぅ!あたし鈍臭いしぃ…」

女「でも、このままでは私はお見合いという名の交配で人生が終わってしまいます」

友「…あ………」

女「勇者の家に女として生まれた時点で、不幸だったのかもしれませんが」

女「選ばれたのが急須で入れられたような私では、外部もそう簡単に私を選ぶ事は無いでしょう」

女「そうなれば最悪、この前の授業の大盗賊のような筋肉まみれのおじ様と結構する事になるやもしれません」

友「やっ、やだよそんなの!そんなの女ちゃんが可哀想だよぉ!」


女「………ふふ。冗談ですわ。真に受けないでください」

友「えっ?」

女「少し貴女をからかってみたくて。私が知らないおじ様と添い遂げている様子は、怖かったですか?」

友「こ、怖かったよ~!」

女「貴女のそういう素直な態度、癒やされます」

友「なはは…」

友「でも冗談ならさ、本当の超能力はなんだったの?」

女「いえ。超能力は綾鷹でした。そこは本当です」

友「えぇ!?それじゃあ、どうするの、ヤバいじゃんっ!」

女「ふふ。ご心配なさらないで」

女「綾鷹は、本来選ばれるもの」

女「そんな綾鷹に選ばれたのですよ?」




女「─この程度、他愛もないです」ニコッ


屋敷

妹「私の能力は氷花!」

妹「下らない魔物ならなんでも私におまかせよっ!大半の相手ならきっと怖くて逃げてしまうでしょうね!!」

妹「あーっはっはっはー!!」

父「はぁ。…よし。了解した」

妹「ふふんっ♪」

父「では…次」

弟「はいッ!!」

弟「僕の能力は爆雷ですっ!」

弟「爆破と雷撃…2種類の能力が混ざった混合能力で、破壊に関しては家族…いや、歴代の中でも一番の自信があります!!」ピシッ

ザワザワ…

父「ほう、頼もしいな。期待しておるぞ」

弟「はいっ!!」

父「……して、後はお前だけだが…」

女「先程も申し上げた通り、私の超能力はその辺の超能力とは格が違いますわ」

女「格…ではなく領域、という表現が正しいかもしれませんね…?」

弟「…………」ゴクリ

妹「…っ」ゾワッ

女「あ、綾鷹どうぞ」サッ

父「えっ?今?…まぁいいか……」

父「……それで。口に出す事すら出来んのか?その力は……」

女「えぇ。なんせこの能力は…」

女「おっと。危ない危ない…思わず"選ばれた力"を発動させてしまうところでした」

女(言葉にするだけでも何かしらの選択肢が綾鷹になるんですから、迂闊には使えませんね)

父「……なに?選ばれた力だと?」

女「えぇ」

妹「…ふん!どうせ、弱すぎて言えないような能力なんじゃないの!?」

女「…弱すぎて言えない…ですか」

女「それはいいある意味、良い表現ですね」ムスッ

妹「っ…!」ビクッ

妹(何なのよこの威圧感!)

妹「な、なによ!やろうっての!?」

弟「止せ妹!お前じゃあいつは早すぎる!」ガッ

妹「止めないでよ兄さんッ!剣技で勝てなくても能力さえあれば…!」

弟「その能力がわからないからヤバいんだろ!」

妹「くっ…!」

ダンッ!!


弟「っ!」

妹「!!」

父「…………どうした?」

女「……」

女「これ以上は不毛だと思いまして。失礼させていただきますわ」

父「…ふむぅ……そうか…」

妹「なっ、なによ!逃げるっての!?」

女「…逃げる?」ピクッ

弟「っ…!やべぇ…!」

妹「そうよ!…私が怖いんでしょ!だから、」

女「逃してやってるんですよ。そんな事もわからないんですか?」ムスッ

妹「ひっ……!」ビクッ

女「…いつでも挑戦は受けますよ」スタスタ

弟「………っ!」

妹「あ…あっ……」ブルブル

妹「………っ」ヘタァ

弟「!大丈夫か!?」

妹「う、うるさいわねっ!触らないでよ!!」ウルウル

妹「ぐすっ…私も部屋に戻るから!!」ダッ

弟「おい…!」

妹「……!」スタスタ

父「……」

弟「はぁ……なんだよ…」

父「………なんで似たかなぁ…」ブルブル

弟「えっ?」

父「いやなんでもないさ」ブルブル


次の日 学園


女「おはようございます。友さん」

友「あっ、おはよう~!」

友「…どうだった?」

女「なんとかなりそうですね。流石は急須でいれたようなにごりの旨味です」

友「あはは…ならよかった…」

女「あ、綾鷹どうぞ」

友「ありがとう!…っていいの?160円払うよ?」

女「気にしないでくださいな。買いすぎてしまっただけですし」

友「それって、制御出来ないって事?」

女「そうみたいです」

女「今朝も乗る電車を何となく選んでいたら、頭からそれが落ちてきました」

友「なはは…大変だね……」

友「…もしかして、電車を綾鷹にしちゃったとか!?」

女「あら、よくわかりましたね。花丸あげちゃいます」

友「はっ…!?そ、それ!かなりヤバい能力なんじゃっ、」

女「嘘です。からかっちゃいました?」ニコッ

友「えー!なんだよもぅ…!本気にしちゃったよー!」

女「ふふふ」


友「…、そうえば今日は超能力を実際に使用しての対戦を実技するんだって…」

女「…………………」

女「…そうですか」ムスッ

友「…!ご、ごめん、悪気は無かったんだよぉ~!」

女「…」

友「あうあう~…」

女「…撫でてくれたら許しますっ」

友「え?」

女「な、なんでもありません。…頑張りましょうね」

友「うんっ!そうだね!お互いファイト!!」

女「ふふふ。友さんならきっと1位になれますわ」

友「えっ!?そうかなぁ~!そんな事無いと思うけど~…」

女「いいえ。その力は理論上は自分以外の人間にも有効です」

女「近づくだけで相手をバッサバッサ薙ぎ払えるでしょうね」

友「ふえっ!?そんなに強いのこれ!?」

女「少なくとも、私の家にある文献にはそうありました」

友「そっか…そっか~!よぉし、私張り切っちゃうぞ~!!」

「無駄だと思うけどね。私は」

友「えっ…?」

女「………………」ムスッ


女「それはどういう事ですか。不良さん」

不良(♀)「あんたらの能力は知らないけどさ。私は自分の力に絶対の自信があるんだ」

不良「この実技、どうやら能力によっては模擬武装も使っていいらしいじゃん」

女「……ほう」

不良「うん。あんたのお察しの通りさ」

友「え…?」キョトン

不良「─能力に甘えてるようなカス共、力を使う前に叩き潰す」

友「…っ!」

女「……それは、扱いが慣れないうちを狙う、という事ですか?」

不良「あぁ、その通りだ」

不良「この実技はな、建前上は能力の試運転って事になってる。だが実際は見せしめの場でもあるんだ」

不良「でもだからといってやられるだけでいいはずがねぇ」

不良「そこで私は考えた。…逆に、見せしめにしてやればいいってな…!」ニヤァ

不良「…私はさ、所謂"外れ"だったんだよ。あんたらいいとこのお嬢様にはわかんないと思うだろうが」

女「……」

女(彼女は、超能力者になれなかったんでしょうか)

不良「特にそこの小さいの。さっき、凄い力を持ってるって言ってたじゃん?」ギロッ

友「ひっ…」ビクッ

不良「……覚悟しとけよな」ガタッ

友「あわわわわっ」プルプル

女「…………」


友「ど、どうしよう~!あたし狩られちゃうよ~!!」

女「それは無いと思いますけどね」

友「そんな事無いよ!あの子…不良ちゃんってたしか、元盗賊の家の子なんでしょ?」

友「力は強いし足は速いし背は高いし……身体能力の暴力だよ~!」

女「ふむ……」

女(…何故でしょう。先程のやり取りでしょうか。なんだか、もやもやします)

女(それはともかく…さて、どういう言葉をかけましょうか)ヒューン

女「んべっ!?」ガコンッ

友「うわわっ!?さっそく不意打ち!?」ピシッ

女「……違います。私の綾鷹です…」

友「あえっ!?…なんだそっか~あたし驚いちゃったよ~」

女「…なるほど!」

女「友さん」ギュッ

友「わっ!…い、いきなりどうしたの?手なんか握っちゃって……」

女「綾鷹です」

友「えっ…?」

女「友さんはさっき、あの人に直々に選ばれましたよね?」

友「そ、そうだけど…」

女「ならば、友さんもまた綾鷹であると言えるでしょう」

友「え…??」

女「そして、綾鷹ならば私に選ばれるという事です」

友「…!!」

女「………貴女は私が守ります。大丈夫、心配しないでください」

女「──あの人には、精々にごりの旨味でも味わって貰いましょう…!」ムスッ



「……………」

「なーにがにごりの旨味なのかな~?お馬鹿可愛い~!!」

「まぁ、そんな事どうでもいいけど~」

「それより~」

「……あの娘に危害を加えようとしてるのは、気に入らないなぁ~」

「合流する前に、片付けなきゃね~!」

「ふんふ~ん♪」

「…ここから叫んだら、聴こえちゃうかな?」

「……」スウッ

「やっぱり無理…無理~?」




実技授業

友「だ、大丈夫かなー!大丈夫かなー!?」プルプル

女「大丈夫ですよ。貴女は能力を発動させたまま立っているだけで」

女(実際、それで大半の超能力は無効化出来ますし)

女「それより友さん。作戦、覚えてますよね?」

友「う、うん…!」

友「不良ちゃんが暴れ回り出したら、叩くんだよね!それまではここで隠れとく!」

女「えぇ。あの娘、いつかは友さんを狙いに来る筈。そこを正当防衛的に倒してしまえば、能力を使わなくとも私達は責められないという訳です」

友「…倒せるのかなぁ…?」

女「…問題ありませんよ。例え超能力者相手だろうと、私が倒しますから」ギュッ

女(友さんの能力は強い。しかし、使い慣れていないうちにトラウマを植え付けられる訳にはいきません)

友「女ちゃん…!」ギュッ

女(…それに、私ならば"氷花"相手でも無傷でしたしね)

友「わっ、私頑張るね!いっぱい光出して女ちゃんを守るよ!」

女「ふふ。頼りにしてますから」

「3!」

友「うんっ!!…始まるね…!」

「2!」

女「えぇ」

「1!」

女「始まりますわ」

「スタートー!」



モブA「ギャハハハハハwwww芸術は爆発だ!wwwwおらァッ!!!」ドカーン

モブB「黙れwwww食らえ火炎球wwwwwwww」ゴオッ

不良「…………ッ!!」ザシュッ

モブA「ぐわっ!?」グサッ

モブB「は…?おまっ!!」ズシュッ

不良「へへっ…!」

教師A「なっ…!お前!何をして─」

不良「おらおら!!どこ見てんだぁ!?」ダッ

キャー ウワーッ!




女「…ふむ。あちらは動き出したようですね」ギュッ

友「ふえぇ…女ちゃん!あんまりしがみつかれるとあたし恥ずかしいよ…///」

女「む、ですけれど、しがみついていないと能力範囲に入れないみたいですし…」

友「そうだけどさぁ!」

女「………良い匂いですよ?」キョトン

友「あわわっ!嗅がないでよぉ…///」

ドカーン

女「…ふむ。なるほど。お腹が気になっていたんですね?」サワッ

女「ですが気にする必要はありません。良いお腹です」

友「さ、触らないでよーっ!」アタフタ

ズガーン


モブC「……なんなんだあいつら…いくら当てても無傷だぞ……」

モブD「チッ!折角俺様の晴れ舞台だってのに!!」

モブC「気に入らねぇぜ。こっちにはまるで興味が無いみてぇだ…」

モブD「全くだ。畜生、ガキ共の癖にッ!」

「ガキは誰かな~」シュンッ

モブC「えっ…」スイーッ

モブC「ってうわぁっ!?俺、浮いてる!?」

「にしても、やっと見つけた~?」

モブC「くそ、どうなってやがる……おい!相棒、大丈夫か!!」

モブD「」ドサッ

モブC「あ、相棒ーッ!??」

「君達、うるさいんだよね~」スッ

モブC「ッ!?お、堕とされる…!」

モブC「ぐわあああああ!?!?!?」ヒューン


ドサドサドサッ


モブC「ぐっ…ぐおぉ……いてぇ……」

「馬鹿なこと言うからこうなるんだよ~」

モブC「ぐっ…ぐうぅ…!」チャキッ

モブC「……舐めやがって!うおおおおお!!」

「だからさー…」

モブC「がっ!?畜生…っ!浮くっ…!?」スイーッ

「うるっさいの、邪魔なんだよね~」

モブC「がああ…ああああああああああ!!!」ヒューン


グチャッ


「あーあ。おーい、生きてますか~?」

「……やっちゃったか~?」

モブD「あ、あぁ……!」ガクブル

「あれ、君のほうは生きてたんだ~」

モブD「くそ…っ!お前、一体何者なんだ…!」

「私?そうだね~」




「ただの、清涼飲料水かな~」グビッ



友「はぁっ…はぁっ…」

女「大丈夫ですか、友さん」

友「大丈夫…!けど、ちょっと喉乾いたかなっ…」

女(ふむ…大分消耗させてしまいましたね…。これ以上は友さんが厳しい…)

女(こちらから攻める作戦にシフトしましょうか…)ヒューン

女「んべっ!?」ガコンッ

友「あわわっ!バリアきれてたぁっ!?」

女「すみません、私の綾鷹です」

友「なんだぁ、驚いたよぉ~」

友「……にしてもそのお茶、私のバリアも貫通出来るんだね…」

女「愛の力でしょうか」

友「はわっ…!ば、馬鹿な事言わないでよぉ!恥ずかしいでしょっ…///」

女「…私と一緒に居ると、恥ずかしいですか………」ムスッ

友「…!恥ずかしくないっ!恥ずかしいよ!!」

友「…むしろ、私が釣り合わないかな~、みたいな…」

女「………そんな事はありませんよ」ギュッ

友「あっ………」

女「友さん………」

友「女ちゃん……///」

スッ…



友「はぁっ…はぁっ…」

女「大丈夫ですか、友さん」

友「大丈夫…!けど、ちょっと喉乾いたかなっ…」

女(ふむ…大分消耗させてしまいましたね…。これ以上は友さんが厳しい…)

女(こちらから攻める作戦にシフトしましょうか…)ヒューン

女「んべっ!?」ガコンッ

友「あわわっ!バリアきれてたぁっ!?」

女「すみません、私の綾鷹です」

友「なんだぁ、驚いたよぉ~」

友「……にしてもそのお茶、私のバリアも貫通出来るんだね…」

女「愛の力でしょうか」

友「はわっ…!ば、馬鹿な事言わないでよぉ!恥ずかしいでしょっ…///」

女「…私と一緒に居ると、恥ずかしいですか………」ムスッ

友「…!恥ずかしくないっ!恥ずかしいよ!!」

友「…むしろ、私が釣り合わないかな~、みたいな…」

女「………そんな事はありませんよ」ギュッ

友「あっ………」

女「友さん………」

友「女ちゃん……///」

スッ…


魔法使い(♀)「よっしゃ!!生きてる奴見っけ!」

友「はええっ!?///」バッ

女「…あっ……」

女「………………………………」ムスッ

魔法使い「食らえ!僕様のブレイズ…」

友「あ、危ない女ちゃ…」

友「女ちゃんっ!?」

女「ふんッ!!!!」ザンッ

魔法使い「ぐわああああ!!???わ、僕様のブレイズデストロイストロングがあっ!?」

女「その魔法は二度と見せないで。潔く眠りなさい」ザンッザンッ

魔法使い「んあー!!やめて、許してー!!」

友「あはは……なんだぁ…戦ってたんだ…」


ヒュンッ


女「…っ!?友さんっ!!」ブンッ

魔法使い「ぐはっ!?」

友「……え?」

友「きゃっ!!」ドサッ

魔法使い「いてて…投げる事無いじゃん……」グサッ

魔法使い「あえっ」バタンッ

女「ふうっ…間に合った……」

不良「やるじゃねぇか。まさか人をその速さで投げるなんて」

友「…っ!」

不良「肉体強化系か?まぁいい。私の相手じゃない」



女「…ふむ、来ましたか」

不良「こんなとこに隠れてやがるとは。私が疲れんのでも待ってたか?」

女「いえ。周りが減るのを待っていました。貴女を潰すのを邪魔されたくはありませんから」

不良「へぇ。その割に攻めてこなかったが、そこはどうなんだい?」

女「信じていました」

不良「はっ、信じていました、だと…?」

女「えぇ」

女「…選ばれた私が選んだのですから。そう簡単にやられる筈がありません」

友「女ちゃん…!」

不良「チッ……"選ばれた"とか、気に入らねぇなァ!」チャキッ

女「………すみません、お喋りが過ぎました」

女「……来なさい」

不良「言われなくても…ッ!」


ガキンッ ダンッ

友「ひえぇっ…始まった…!」

魔法使い「んはっ!!」

友「あわわっ!生きてたの!?」

魔法使い「なっ!あんなので僕様が死ぬ訳無いじゃない!」

魔法使い「っていたたた!!おでこが…」

友「む、無理しちゃ駄目だよ!」

魔法使い「大丈夫、この程度…」

魔法使い「…あれ?回復してる?」

友「あっ…凄い!回復能力の使い手なんだぁ~!」

魔法使い「え?違うわよ!僕様は"魔法使い"の能力よ!馬鹿にしないでくれるっ!!」プンスコ

友「魔法使い…?」

魔法使い「えぇ!魔法使いよ!」

友「聞いた事無いや…ごめん……」

魔法使い「そんなぁっ!?」ガビーン

友「えへへ…あたし馬鹿だから…」

魔法使い「………!なら、貴女には特別に僕様のスゴイ魔法を見せてあげましょう!いくぞぉ~!」ヒュンッ

魔法使い「あえっ」グサッ

友「わーっ!?また刺さったーっ!?」アタフタ


不良「おらぁっ!」

女「………っ」ガキンッ

不良「チッ…!…なかなかやるじゃねぇかっ。私と戦って息が切れないなんて…」

女「貴女こそ」

女(こちらから攻撃したら正当防衛にはなりませんし)

不良「…いくぞっ…!」

女「…!」

不良「…やめた。あんた、手加減してるだろ」

女「む」

不良「わかるんだよ。私の斧で斬った感じがおかしい。それに、能力使わないしな」

不良「正直気持ち悪ぃ。…だけどいいよ、そのままで居てくれて結構だッ!」ヒュンッ

女「……!」

女(狙いを友さんに変えますか。もう正当防衛なんて気にしていられませんね)ムスッ

不良「へ…やっぱりな。あんた、あいつを狙われるとマジになるんだ」

不良「いいぜ、だったらあいつを狙ってやるよ…!」

女「行かせません」スッ

不良「っ!??」

不良(なんだ今の動き…っ!?)

不良「ぐああっ!!」


ドサッ
ボトッ
コロコロ…


女「…………?午後の紅茶?」

不良「!!み、見るんじゃねぇ!!!」バッ


女「……………」

不良「チッ……!」ギロッ

女「……………」

不良「お、おいっ!!」

女「…」ジュルッ

不良「ふえっ!?」ビクッ

女「…………………」

女(最近綾鷹ばかりでもうめっきり飲んでいませんね…午後ティー…)

女(あの風味と香り…。市販品ながら、そのクオリティは悪くないもの)

女(…そそります。戦利品として奪い取ってしまいましょうか……)

不良「……バレちまったってわけか…!」

女「え?」

不良「チッ、知ってるんだろ!私の超能力!下らない力だって、馬鹿にすればいいさ!!」

不良「学校に入学して、最初からずっとそうだったよ…!」ウルウル

女(な、何か始まりました……)

不良「こいつのせいでついた渾名は!"昼休み過ぎだけお姫様"-ジ・アフタヌーン・プリンセス!!」ウルウル

不良「略してジフヌン!!!」ウルウル

女「じふぬん」

友「じ、じふぬん…!」

魔法使い「ダサいわね!!!!!」ムクッ

不良「テメェにだけは言われたく無かったよ!」ブンッ

魔法使い「それ程でも!」グサッ

魔法使い「あえっ」バタンッ


友「お、女ちゃんっ…!」タッタッタ

女「!?友さんっ!?来ないでください!」

女(不味いっ…!どうすれば…!)

不良「ふうぅ…っ!」ウルウル

友「大変だよ!その子は…!」

不良「おらァッ!!二人纏めてッ!」ダッ

女「くっ…!」ヒューン

女「……んべっ!?」ガコンッ

不良「っ!?」

不良「な、なんだ!?」

女「………綾鷹です。…今回はトクホの奴ですね………」ムスッ

不良「えっ?」

友「女ちゃん!こんな時に綾鷹出さないでよ!!」モー!

女「す、すみません……」シュンッ

ヒューン

不良「……っ!?なんだテメェは!!」チャキッ

女「!?友さん!危ないっ」ガバッ

友「え、ふわっ!?」ドサッ

ドサドサドサッ

友「人が降ってきたぁっ!?」


小さい女の子「あぁ、避けられちゃった~」

不良「…っ!?」

友「今度は子供!?」

女「…貴女、何者ですか?」ムスッ

友「え…駄目だよ女ちゃん!子供相手にそんな顔しちゃ!」

女「そ、そんなに怖かったですか……」シュンッ

友「あ、いや、そうじゃなくてね?相手は小学生だからっていうか」アタフタ

小さい女の子「……チッ」

友「っ!?」

小さい女の子「私、小学生じゃないんですけど~。それと目の前でイチャつかないでくれます~?」

小さい女の子「…叩き潰すよ?」

友「あわわわわっ!?地雷踏んじゃった!!」プルプル

不良「………っ」

女「…………」

女(超能力者の手練特有の間合い、気配の無さ、それでいて放つオーラの強さ…)

女(……危険ですね…)ムスッ

女「答えなさい。貴女は一体何者ですか?」

小さい女の子「答える義務、無いと思うんだけど~?」

女「ですが、」



不良「……………オイっ!!!」ダンッ!!

女「っ」

友「あわっ!」ビクッ

小さい女の子「………っ!」

不良「……前に言わなかったか?私のとこには来るなって…!」ギロッ

小さい女の子「………お姉ちゃん……」

友「お姉ちゃん…?」

不良「……私は言ったよな?もう絶対に来るなって…!」

小さい女の子「…………」

不良「………っ!」ギリッ

小さい女の子「…うるさいなぁ」

不良「なっ…!?」

小さい女の子「…お姉ちゃんが悪いんだよ。いっつもいっつも可愛くってさ」

小さい女の子「超能力まで可愛いもんだから、みんなの人気になっちゃうんだもん」

不良「…お前、妹だからっていい加減にしないと」

小さい女の子「だからさァッ!!!」

不良「っ!」

小さい女の子「前に周りの奴をゴミ屑にした時、私言ったよね?お姉ちゃんは周りの奴に馬鹿にされるくらいなら学園行かなくていいって!」

小さい女の子「それなのにまた学園行って、また馬鹿にされそうになって、気が付いたらボロボロになって」

小さい女の子「……もうそんなの、一生私がお世話してあげるしか無いよね…?」

小さい女の子「うんっ!それがいいや~!お姉ちゃんは、私が助けてあげないとね~!」スッ

不良「お、お前、何を…」

女「ッ!」ダッ

不良「うわっ!?」

小さい女の子「…は…?……」

ゴッ…!


パラパラ…

女「……く」

女「大丈夫ですか?」ムスッ

不良「…!あ、あぁ…」

女「ならばよし」スクッ

女「………少女、いや、不良妹。話があります」

不良妹「…なんですか~?私の愛の抱擁を邪魔しないでください~」

女「貴女の姉がこの学園をやめるかどうかは明日、私と勝負して決めていただきたい」

不良「え…」

不良妹「は?嫌です。なんで部外者に決められなきゃいけないんですか~?」

女「部外者ではないからです。貴女の姉とは、既に固い友情を結びました」

女「今、見たでしょう?」

不良「…!お前!」

不良妹「お茶を濁さないでくださ~い?」

不良妹「私、そういうの無理なんですけど~!本気に勘弁してくださいよ~!」

不良妹「…キモいから氏ねよ」

女「いいえ」

女「貴女と勝負をするのは私です。貴女が選んだそこの娘は、既に私が選んでいた相手です」

女「…そして、私は選ばれし者だ」

女「─選ばれし私が選んだもの。そう簡単に盗まれては敵いません」





不良「………っ!」


不良妹「…意味不明なんですけど~……!」

不良妹「だけどいいよ。そんなに戦いたいなら今すぐ…!」

友「お、女ちゃーん!」フラフラ

女「!?友さん!?」

不良妹「…っ邪魔するなって!!」スッ

女「やらせません!」ガキンッ

友「あわっ!?…せ、先生達呼んで来たから!もう大丈夫だよ!」

不良妹「なにっ!?」

女「…!ナイスです、友さん」

不良「…」

不良「今は帰れ。…明日、こいつが負けたらそこからはお前の言う通りにしてやるから」

不良妹「……」

不良妹「いひひ?楽しみにしててねっ!お姉ちゃん!」ヒューン


ダイジョウブカー!
ナニガアッター!

不良「……く………」バタッ

女「!」ガシッ

友「わーっ!倒れちゃった!?」フミッ

魔法使い「ふみゅ!!」

友「あわわ!?忘れてた!?」

保健室


不良「…んぐ…、」

不良「あれ…?」

女「起きましたか。……起きてください、友さん。ほら、耳にふうってしちゃいますよ」

友「んぅ…」スヤスヤ

女「……ふぅーっ」

友「ふやぁっ///」ビクッ

友「はーっ!はーっ!…なんだよぉ~!驚かせないでよぉ~…」

友「っていつの間にか膝枕で寝てた!?ごめん女ちゃん!」ガバッ

女「いつも気にしないでと言ってます。貴女の寝相の悪さは、私が固定しないと教室移動してしまうレベルですからね」

女「私、ついつい、お節介で膝枕してしまうのです」

友「だからこそだよ!…その、常日頃からお礼を言わなきゃっていうか…」

女「ふふ、…実に可愛らしい……」

友「ふえぇっ!?///」

不良「………」

女「…友さん……」ガシッ

友「お、女ちゃん…こんなところで…!」ウルウル

不良「……………………」

不良「あー、なんだ、その…」

友「っ!あわわわわっ!!」アタフタ

女「…あ……。…もう」

保健室


不良「…んぐ…、」

不良「あれ…?」

女「起きましたか。……起きてください、友さん。ほら、耳にふうってしちゃいますよ」

友「んぅ…」スヤスヤ

女「……ふぅーっ」

友「ふやぁっ///」ビクッ

友「はーっ!はーっ!…なんだよぉ~!驚かせないでよぉ~…」

友「っていつの間にか膝枕で寝てた!?ごめん女ちゃん!」ガバッ

女「いつも気にしないでと言ってます。貴女の寝相の悪さは、私が固定しないと教室移動してしまうレベルですからね」

女「私、ついつい、お節介で膝枕してしまうのです」

友「だからこそだよ!…その、常日頃からお礼を言わなきゃっていうか…」

女「ふふ、…実に可愛らしい……」

友「ふえぇっ!?///」

不良「………」

女「…友さん……」ガシッ

友「お、女ちゃん…こんなところで…!」ウルウル

不良「……………………」

不良「あー、なんだ、その…」

友「っ!あわわわわっ!!」アタフタ

女「…あ……。…もう」


不良「…すまねぇ。襲いかかっといて、こんな無様な姿みせちまって上に助けられちまって……」

女「気にしないでください。私は一度でも戦った相手には、相手が誰であろうと敬意を払うと決めているのです」

女「お茶と情は濃いごとと、等とも言いますしね」

女「それに、実を言うと貴女の襲撃には共感できるところがあった」

不良「え?」

友「だ、駄目だよ女ちゃんっ!勇者の末裔がそんな事口にしちゃ!」

女「…ですが」ムスッ

不良「…おい待て。お前、勇者の末裔なのか…!?」

女「あぁ、はい。一応そうですね」

女(能力は綾鷹ですが)

友「一応じゃないよ!女ちゃんは立派な勇者だよぉ!」

女「……やめてください。勇者の末裔なんて結構な数が居るんですよ」

不良「…」ゴクリ

不良(…お爺ちゃんから聞いた事があったな…。確か、ウチの先祖は勇者の仲間として戦っていたって)

友「そ、それでも女ちゃんは私にとっては勇者だからねっ!」

不良(あんな話、御伽話か何かだと思って信じていなかった。けどこいつがその勇者なら…)

女「…その言葉だけで、私は十分です」

不良「今の一節…!」

女「…?」


不良「………」

不良「成り行きみたいになっちまったけど、私はあんたを信じることにする」

不良「だから、その、なんだ。えぇと…」

女「…畏まる事はありません」

不良「え…?」

女「困っている人が居るならば救う。倒れている人が居るなら助け出す」

女「それが友達ならば、命を懸けろ」

不良「それって…」

女「……私の母がよく言っていた言葉であり、私が勇者になるならば掲げたい信念です」

女「少し、利己的すぎますね」ニコッ

不良「…へへ」

女「っ笑われたのは初めてです」ムスッ

不良「いや、内容がおかしかった訳じゃないんだ」

女「…じゃあ、何故?」

不良「そうだね…」

不良「あんたに選ばれて、良かったって思ったから、かな」



友「…女ちゃん!ホワイトボード小さい奴!持ってきたよ!」タタタッ

女「ありがとうございます。お代です」

友「わあっ!綾鷹!…今日4本目~」ニコニコ

不良「…?何すんだ?」

女「作戦会議です。お疲れでしょうが、貴女にも参加してもらいますよ」

不良「まぁいいけどさ…」

友「時間なら大丈夫!今、昼休みが終わったところだから!」

不良「…それ、不味いんじゃないか?」

女「友人の一大事に授業に出られるほど、私は真面目じゃないんです」

友「それに授業といっても、例年さっき実技で調子に乗る人が多いからさ。その人達の説教タイムらしいんだよね。この時間」

不良「な、なるほど…」

魔法使い「ま、さらに言うと僕様達は襲撃者によって負傷した扱いになってるからねっ!サボっても問題無いって訳よ!!」

女「む、はじめまして」

不良「あんた誰だよ」

友「そういえば名前知らないや」

魔法使い「ひ、酷すぎない!?僕様泣くわよ!?」

魔法使い「そっ、そうだ!この際だから僕様について自己紹介するわねっ!」

魔法使い「ふふ、僕様は…!」


不良「……はぁ…」

不良(聞けば聞くほど呆れる説明だなぁ…)

女「…なるほど。貴女はかなり万能で有能で性能のいい"魔法使い"という能力を持っていると。これでいいですか?」

魔法使い「ええっ!問題無いわっ!ふふ、勇者だけあって中々筋がいいわね!気に入ったわ!」

不良(…絶対こいつ無能だとか思ってるんだろうなぁ……)

女「ではタンクさん」

魔法使い「タンクじゃないわよっ!私は魔法使い!後衛なのっ!」プンスコ

友「じゃあ…肉壁?」

魔法使い「もっと酷い言い方するんじゃないわよ!!大体、肉壁ってさっきの貴女じゃないっ!」プンスコ

女「友さんにそれだけ言えるなんて、体力が余っているご様子で」ジャキッ

魔法使い「ひいっ!どこから刃出したのよ!?もう悪口言わないから許してくださいっ!」ウルウル

女「ふう…」ジャキッ

魔法使い「た、助かった…」


女「では、作戦を立てましょうか」

友「はい!ルールは1対1のタイマン勝負!相手はガチガチの超能力者!対するこちらは最強の勇者!」

魔法使い「なるほどね!この勝負勝ったわ!」

女「馬鹿言わないでください。それと友さん、誇張は厳禁です。一般的な前衛、に書き換えて下さい」

友「ご、ごめんなさい…」

魔法使い「ば、馬鹿って…」プルプル

不良「…なぁ」

女「む、どうかしましたか?」

不良「あんた、能力者じゃないのか?」

女「能力者ですよ?」

不良「…じゃあ、なんで一般的な前衛、なんだよ。肉体強化系でも無いんだろ?」

女「そうですね。いいでしょう。説明しておきますか」

友「…っ!いいの?女ちゃん…」

女「構いません。ここに居る人物は、信用出来ます」

不良「…」

魔法使い「僕様も?」

女「貴女はほら、馬鹿ですから」

魔法使い「酷いっ!?」


不良「…」グビグビグビ

不良「戦闘中に突然落ちてきたのは、そういう訳だったのか」

不良「美味いな」

女「どうも」

友「…っ」ゴクリ

魔法使い「あれ、あんたも貰ってたの?」

友「今のは固唾だよ!…それより、魔法使いさんは馬鹿にしないの…?」

魔法使い「え?」

女「…」

友「…女ちゃんの、能力の事聞いて……」

魔法使い「馬鹿にする訳無いじゃない。大体、その超能力私も持ってるもの。自分の技を馬鹿にはしたくはないわ」

魔法使い「厳密には違う感じもするけど…」

不良「真面目に返せんのかお前」

女「…今の話、理解出来ていたんですね。感動です」グスッ

魔法使い「ちょっと!馬鹿にしたほうが良かった訳!?」

友「そしたらあたしが聖なる光で焼いちゃうよ」ニコッ

魔法使い「うえっ!あんたそんなヤバい能力持ってたの!?あとサラッとトンデモない事言わないで!?」

女(…やはり、聖なる光は"ヤバい"のですね)


不良「ハッキリ言うけどさ」

女「はい」

不良「それ、"外れ"だよな」

友「あっ…」

魔法使い「はぁっ!?僕様の力にケチつけてんじゃないわよ!」

不良「あんたは黙っててくれ」ブンッ

魔法使い「あえっ」ペチンッ

女「…そうですね。"外れ"でしょう……」

女(…こうもハッキリいわれると、キツいものがありますね…)シュンッ

友「…っ!」

不良「良かった。私もさ。実は"外れ"なんだよ。…前にも言ったけど」ポリポリ

女「えっ…?」

不良「さっき、戦闘中。妹と色々言ってたり、自分で言ったりしてたやつ…」

不良「あれは私の能力が原因だったんだよね」

魔法使い「じふぬんなんて能力私は持ってないわよ?」

不良「あんたやっぱもっかい寝とくか」ヒュンッ

魔法使い「え?睡眠系のじふぬ」グサッ

魔法使い「あええっ」バタッ

友「あーっ!そうだ、じふぬん、じふぬん!思いだしたよぉ!」

女「…む?」

不良「……」


友「この学園の中等部の頃かな。女ちゃんとは少し違う若干天然気味のお嬢様~って感じの娘が居たんだけどね?」

友「その娘の能力が丁度給食中に覚醒したんだよ!」

女「ほう」

不良「……で、その娘は能力が制御出来なかった結果、給食の牛乳や味噌汁をいきなり糖分混じりの別の飲料に変えてしまったんだ」

女「…」

不良「その結果、イジメられるようになった。初めの頃は笑って許してくれた友人も、毎日毎日甘い味噌汁を飲むのは嫌だったんだろうな」

不良「不登校になったその少女が…」

女「貴女。…という訳ですか」

不良「あぁ。……その通りだ」

友「じゃあ、その後の事件はあの娘が…!」

不良「ご名答。勘がいいな」

女「…事件?」

友「ああそっか、女ちゃんは引っ越してきたから知らないんだっけ」

友「ある時、さっきの娘…不良ちゃんのクラスの生徒が、小等部の包丁を持った女の子に襲われる事件が起こったんだ」

女「皆まで言わなくともわかりました。…それが、不良妹さん。なのですね」

不良「…あぁ。そういう事だ。だがまぁある意味、包丁だけなら良かったんだけどな」

女「…まさか」

不良「そのまさかだ。…あいつは襲撃中に能力を目覚めさせ、生身の生徒達を半殺しにしたのさ」

不良「…運命なのかな。発現したその能力は、私が午後の紅茶なのに対して……」


帰り道


女「………」

友「…は、はぁ~!今日は疲れたねっ!?女ちゃん!?」

女「………笑いたければ、笑えばいいですよ」ムスッ

友「わ、笑わないよぉ!本当に元気出して欲しいだけなの!」

女「ふふ、わかってました?」ニコッ

友「なっ!?なんだよぉ~!驚かせないでよぉ~!!」

女「ごめんなさい。はい、お詫びのカテキンですっ」スッ

友「あっ。ありがとぉ~。今回はほうじ茶かぁ~」ニコニコ

友「って!もうっ。次は騙されないんだからね~!」

女「ふふふっ」

女「………」ムスッ

友「…やっぱりさ、無茶してないかな…?」

女「?というと?」

友「……勝てる勝てないじゃなくて。もしかしたら殺されちゃうかもしれないんだよ?」

友「そんな相手に生身で挑むなんて、無茶苦茶だよ!…いくら友達の為とはいえ、そんなの!」

女「…っ」

女「…たしかに、私では部の悪い相手かもしれません」

友「だよねだよね!やっぱり辞め…」

女「だがしかし、これは私が選んでしまった選択肢であり、生き方です」

友「…!」

女「どんなに不利でも、どんなに勝算が低くとも。私は彼女を見捨てることが出来ません」

女「…それを選んでしまったなら、私は私じゃなくなるから……」

友「でも…」

女「友さん。私はさっきはああ言いましたが、あれから内心怖くて怖くて仕方がありません」

女「死にたくない、終わりたくない、と」

友「えっ、嘘でしょ!いつも通り無表情じゃん!」

女「…顔に出ないだけです」ギュッ

友「あっ…」

友(!…震えてる…)

女「……私は今、とても怖がっています」

友「……」

女「友さんに信じて、選んで貰えないから」

友「え……?」

女「私の選ばれた能力は、綾鷹でした」

友「…」

女「でも、私は友さんに選ばれていない。それでは勝てる筈が無い」

女「…私にとっての綾鷹に、選ばれていないのですからね……」シュンッ

友「!!」ギュッ

女「っ…!?」

友「あたし…馬鹿だった!あたし馬鹿だったよ!こんな簡単な事も出来ないなんて…!」

友「女ちゃんっ!!」ガシッ

女「は、はいっ」

友「あたし、女ちゃんの綾鷹を信じる!あたしの勇者を信じる!女ちゃんは絶対勝てる!女ちゃんならお茶の子さいさいだよ!!!」

友「女ちゃんがどれだけボロボロになっても、あたしは信じてるからねっ!!」

友「えと…それで!…無茶、駄目だからね」

女「……」ニコッ

女「……………っ」ギュッ

友「!」

女「…ありがとう、ございます」

友「……うんっ」

女「……………」ウツムキ

友「…もうっ!どうしてまだ下向いてるの!?あたし信じてるんだよ!?」

友「あの娘の能力の名前のせい!?」

女「いえっ!そういう訳ではないのですがっ…///」

友「あっ!」

女「っ……///」

女「…見ないで下さいよ」

友「………ふふっ」

女「なっ、なんですか。そんなに変な顔でしたか…っ?」ムスッ

友「いや、そうじゃなくてさ。…案外、顔に出るタイプだよね!女ちゃん!」

女「はぁっ……?」

女「そんなこと無いです。私はクールで、凛として…」ムスッ

友「…そういうとこ、大好きだよっ!」ニコッ

女「なっ………!?」

女「………」ウツムキ

女「……………………………………わ、私も……」

友「えへへ!両思いだね!仲良しだね~!」ギュッ

女「………私は貴女のそういうところ、ずるいと思いますけど…ね」ギュッ


翌日 教室

ザワザワ…

魔法使い「なによっ!僕様の言う事が信じられない訳!?」

不良「あぁ!信じられないね!私はずっとこの目で見てきたんだ!」

魔法使い「それ自体は正しいわよ!でも、そんなつまんないダジャレみたいな名前じゃないの!その能力は!」

不良「は?んだとテメェ…!」

ガララッ

友「おはよーっ…わわっ!朝から喧嘩ぁ!?」

女「おはようございます。何がどうしたのですか?」

不良「あぁ。いやさ、こいつが私の妹の能力は認めねぇって言うから…」

女「…ほう?」

魔法使い「だって本当に無いもの。無いんだから認めようが無いわ!」

不良「テメェが知らねぇだけじゃねぇのか!?」

魔法使い「なんですって!」

女「…………ふむ……」

友「あはは…知らないうちにだいぶ仲良くなったみたいだね…」

友「それよりさ、不良妹ちゃんはいつくるの?」

不良「…あぁ。あいつなら昼に来るみてぇだ。それより前に学園から抜け出して、約束の場所へ向かうぞ」

魔法使い「?なんでそんな回りくどいことするのよ」

不良「家族の事で人様巻き込む訳にはいかないだろ」

女「えぇ。巻き込むのはお友達だけで十分です」

不良「…本当に感謝してるぜ」

魔法使い「あははは!なんなりと感謝しなさいっ!!」

不良「テメェには感謝してねぇよ」

魔法使い「なっ、なんですってぇ!?」

友「あぁまた!喧嘩しないでよぉ~!」

魔法使い「ちょっと!茶々入れないでよ!」

女「ふふふ」

女「………」

女(もしも、先程の魔法使いさんの言葉が本当ならば…)

女「この勝負…わかりませんよ…」


………


友「はぁー!…昼休みに学園抜け出すなんて初めてだよ~!これであたしも悪い子の仲間入りかぁ~…」

不良「そんなん気にして生きてるのかい?私だったらすぐに息詰りそうだな」

女「私は友さんが悪い子になっても共に居ますからね」

魔法使い「ともだけに?」

不良「いやマジでつまんねぇよ」

魔法使い「酷っ!?」

友「わっ、私も女ちゃんが悪魔になってもずっと一緒だからね!」

女「…友さん……」ギュッ

友「あっ……」

魔法使い「あんたたち仲いいわね。付き合ってたりするの?」

友「あわわわわっ!ちがっ、違うよ!!」バッ

女「…………あら……」

不良「こいつは否定してないけどな」

友「も、もうっ!女ちゃん…!///」

女「…む……」

女「…もっと茶化してくれていいですよ」

友「ええっ!?」

「じゃあその仲引き裂いてあげる~!」

友「っ!?」

女「…来ましたか」

不良妹「おまたせ~!お姉ちゃん待った~?」

不良「……今来たとこだよ」

不良妹「やだ~!初めてのデートみたいで興奮しちゃう~!」

友「………っ」

魔法使い「デートなんてした事無いからわからないわよ!!!」

女「…それは大声で威張れるんですかね……」

魔法使い「ふふんっ!純潔を守ってるのよ!!」

友「あはは…」

不良妹「うるさいです~!」バギュンッ

女「…危ない!」バッ

友「きゃっ!」

魔法使い「私を盾にしないでよっ!」グサッ

魔法使い「あえっ」バタッ

友「あぁっ!?魔法使いさんが!?」

不良「………どっちが敵なのかわかんねぇな…」

不良妹「…今なら許してあげますけど~、本当に戦うんですか~?」

女「あら、怖くなりましたか?」

不良妹「…ほんっとにムカつく…!いいわよ!だったらその口開かなくしてあげるから…!」

友「そんなこと、起こる訳ないんだから!…女ちゃんを舐めないでよ…!」

女「ふふ…友さん……!」

不良妹「貴女は黙ってて!」バギュンッ

不良「おっとォ!…やらせねぇよ」

不良妹「お姉ちゃん……!」

不良「こいつが負けたら、確かに私はもう学園には行かねぇよ」

不良「だが今まで通り、反抗はさせてもらうからな…!」

不良妹「…っ!いいよ!両手両足切り離してでも私がお世話するんだから…!」

友「…女ちゃん…!」

女「……?なんでしょう…」

友「……勝てるよね?」

女「…!……ふふっ」

女「勝てますとも」






女「綾鷹です。勝利の女神に選ばれるのは」


不良妹「………なにそれ…」ググッ

不良妹「ムカつく…!ムカつくムカつくムカつく!!」ズギュンッズギュンッ

不良妹「私のお姉ちゃんは女神に選ばれなかったとでもいいたいの!!??」

不良「………」

友「不良ちゃん…」

女「っ!…っ!!」サッサッ

女「くっ……ぐう!」ガキンッ

不良妹「……?何?普通に避けてるだけじゃない…っ!」

不良妹「私の能力、知ってるんでしょ?お姉ちゃんから聞きましたよね?」

女「…えぇ!知っていますとも…!」

女(重力を操り、空を自由自在に飛び回るのはさることながら、物を飛ばしたり落としたりするのも問題無く行う!)

友(それだけならず、範囲を選ばずに人を浮かせたりする事も出来る…!!)

不良(攻撃のみならず防御に於いてもまさに最強。その力の名前は…!)


女「お~い、お茶…!」

女「お~い、で持ち上げ、お茶(落ちゃ)で落とす。…名前に似合わず、恐ろしい能力です」

不良妹「ふふん。なら話が早いわ…」

不良妹「その生意気な高さから、堕としてあげる……!」


不良妹「あはははは!死んじゃえッ…!」ヒュンッヒュンッ

女「……」バキッ

女「っ!」バタッ

女「…けほ…げほっ!」

友「女ちゃん!!」

女「…ま、まだまだ…っ!余裕でっ…」ダッ

不良妹「余裕があるのは手加減してるからなんだけど~?」サッ

女「っ!?」ヒュンッ


ドンガラガッシャーン


不良「くっそ…!一方的じゃねぇか……!おい!お前の力はその程度なのかよ!?」

女「……まだ…いけます…」ヨロッ

不良妹「お姉さん、あんな大口叩いといて、案外脆いんだね~」

不良妹「私、拍子抜けしちゃったッ!!」ブンッ

女「……っ!」バキッ

女「ぐあっ…」

友「……酷い………酷いよこんなの…!」

不良妹「この剣も壊しちゃえ!」メキッ

女「そ、それは…!」

不良妹「そぉれっ!」バキッ

女「…く……!」ムスッ

不良妹「降参してもいいんだよ?ほらほらっ!」

女「…………まだです…!」

友「も、もう…!」

不良「くっそ!見てられるか!…私の問題なのにこれ以上…!」

友(!私の問題…!)

友(女ちゃんはまだ諦めていない…それなのに、あたしが勝手に諦めていいの…?)

友(…そうだ、女ちゃんの問題はあたしの問題…!ならあたしが諦める訳にはいかない…!)

友「頑張れ!頑張れ女ちゃーん!!」

不良「…!お前…」

魔法使い「無理ね。勝てないわよあいつ」

友「なっ…!なんでそんな事言うのよ!」ガシッ

魔法使い「あの力…グラビティには並みの能力じゃ太刀打ちできないわ」

魔法使い「ましてや、無能力者じゃあ勝ち目なんて無いわよ」

不良「だからグラビティじゃねぇって…」

友「…女ちゃんは無能力者じゃない…っ!」

魔法使い「は…?」

不良「!」

友「女ちゃんは…女ちゃんは…!」

友「めっちゃ!強いんだからー!!」

魔法使い「なによ!訳わかんない事言ってないで友達なら止めてやりなさいよ!」

不良「友達…」

友「くっ…くうぅ…!」ウルウル


女「………」ボロッ

不良妹「あはは、見てよ。あいつら貴女の応援は諦めて仲違い始めちゃったわ!」

不良妹「……堕ちた気分はどうかしら?お嬢様?」

女「……私はまだ、堕ちていない」

不良妹「はっ、強がっちゃって…!」

女「………弱い振りをするよりはマシだと思いますが、ね」ムスッ

不良妹「は…?」

女「貴女の攻撃を受けて、わかったことがあります」

不良妹「なに?…その身体じゃもう動かないだろうし、精々聞いてやるわ」

女「…魔法使いさんの話、そして実際に調べてみて、気が付きました」

女「重力を操り、何かを持ち上げたり落としたりする力。その正しい名はグラビティです」

不良妹「…なにが言いたいの?その力の話なんてして」

女「…私はわかっていますよ?」

不良妹「…っ!」

女「………お~い、お茶。という力は存在しません」


友「え…?」

魔法使い「は?」

不良妹「……っ!!」

女「…いや、違いますね。その力は貴女によって考えられた。こちらのほうが正しい表現です」

不良妹「い、意味不明な事言わないでよ。能力を考える?そんな事出来るわけないじゃない」

女「できますよ。私がそうだったんですから」

不良妹「…!?」

女「私の力は選択が求められる場面において、第3の選択肢を生み出す能力…」

女「その名も、例外運命!」

友「例外…」

不良「…運命!」

魔法使い「…!!」

魔法使い(例外運命…)

魔法使い(停滞したこの世界に、新たな希望をもたらすという伝説の能力!)

魔法使い(あんたが持ってたのね…!)

不良妹「………」

女「ただし、生まれる新たなルートはただのふくよかな味わいそのものでした」

女「…だから私はこの力を、綾鷹と呼ぶ事にした…!」


女「……貴女もまた、能力に別の名称をつけていたのですね」

不良妹「……っ!」

女「姉の能力が本当に午後の紅茶という能力で、それを否定させない為に…!」

女「自分がさも、姉と同じ飲料の能力である事を偽った…!」

不良妹「……それ以上言わないでよッ!!」ブンッ

女「っ!」バキッ

女「…貴女はそれで良かったのかもしれない!けれどしかし!」

不良妹「やめて…やめてよッ!!」ブンッブンッ

女「っ!……やめませ…んっ!」バキッドカッ

不良妹「どうして!?」

女「貴女が最もやってはいけない事をしているからだ!」

不良妹「っ…!」

女「…見なさい、姉の顔を!!」

不良妹「………!!」


不良「………………お前……」

不良妹「……!!」

不良妹「あ、あぁ…ああああ……!」

女「…貴女は自分の自己満足の為に、姉の大切なものを傷つけていました」

女「貴女の…姉のプライドを…!」

不良妹「ち、違うのお姉ちゃん!私は…私は本当に!お~いお茶なの!!」

不良妹「この女の言う事なんて嘘だわ!私を…私を信じてよ!ずっと一緒だったじゃない…!」

不良「…………」

不良「ごめんな。……お姉ちゃんはそいつを選ぶよ」

不良妹「…っ!!!」


友「…もう、やめよう?こんな事してもなんにもならないよ」

不良「そうだ。…全部、お姉ちゃんが頼り無いのがいけなかったんだ…」

不良妹「そんなことッ!!!」

魔法使い「でも貴女は不良の事を裏切ったわ」

不良妹「…あんたは黙ってなさいっ!!」ヒュンッ

魔法使い「黙らないわよ。裏切りはね、絶対にやってはいけない事なの」サッ

魔法使い「それが、盗賊だとしたらなおさらだわ」

不良妹「く…くうぅ…!!」

女「……もうやめましょう。これ以上は、」

不良妹「………っ!ウルサイウルサイウルサイウルサイ!!!」

不良妹「なにがやめましょうよ…なにが意味が無いよ…!」

不良妹「全部…全部あんたのせいだわっ!!」スッスッ…スッ!

女「っ!?」ヒューン

友「お、女ちゃん!!」


女「…!?降りられない…っ!!」ジタバタ

不良妹「へへへ…!浮かせて落として…壊してあげる…!」

不良「…もうやめろォ!!」ダッ

魔法使い「そうよ!あんた、姉に人殺しの妹が居るって顔に泥塗るつもり!?」ダッ

不良妹「邪魔よ!!」ビュンッ

不良「ぐああっ!」ドサッ

魔法使い「あえええっ!!」グサグサグサッ

不良妹「へへへ…!そうだ~!破裂させてやるのも面白いかも~!!」

女「不味い…!!」

不良「うぅ…くそぉ…!」

魔法使い「はわわわ……」ダラー

不良「おまっ…!刺さりすぎだろ…!」

魔法使い「…庇ったのよ…っ!」

不良「えっ?」

魔法使い「妹助けるのは姉の仕事でしょ!…ほら早く行きなさいよっ!」バンッ

不良「…!あぁ!!」

魔法使い「………ぁぇ…」バタッ


女「……」

女(…万事休すですか)

友「女ちゃん!!

妹(間に合え…!!)

不良「やめろおおおお!!!」

不良(…届け…!)

不良妹「あははははは~!」






不良妹「死んじゃえ」

パンッ!!


女「…」ヒューン

友「あ…ああああああああ!!!!」ガシッ

友「女ちゃんっ!女ちゃん!!!」ユサユサ

女「…」グチャッ

友「む、胸元が湿って…!まさか…心臓……?」

不良「そ…んな……」

友「……………………嘘……」

不良妹「……………」

不良妹「…………あははは~…私…やったんだ~……」

不良妹「やっちゃったんだ~……」

不良「……っお前ェ!!」

不良妹「…近づかないでッ!!」

不良「!」

不良妹「…私はお姉ちゃんの汚点になるわけにはいかないんだ~……」

不良妹「も、もう…そんなの死ぬしか無いじゃん~……」スッ

不良(胸元に手を…まさか!)

不良「ふっざけんな!やめろ!!」

友「………」…ストッ

女「…」

不良妹「あははははははは~……」

不良妹「ごめん……なさい…」ポロポロ

不良「おい!!!」

友「………」スタスタスタ


友「………」ガシッ

不良妹「…え?」

友「…ふざけんじゃねぇよっ!!」ブンッ

不良妹「………はやぁっ!!」ペシンッ

不良「…!?」

友「貴女の姉が、友達が、家族が……」

友「死んだらどんな想いをすると思うの!!」

不良妹「あ…あぁ……」

友「それはね、純粋に騙すよりも、能力を偽る事よりも…」

友「何よりも大きな!裏切りなの!!」

不良妹「あああああ……!」ポロポロ

不良「くっ…!」ウルウル

友「…人が死ぬっていうのは、そういう事なのよ!!」ポロポロ

不良妹「あ、ああああ…」ドサッ

友「…………っ…!」ポロポロ

不良「…不良妹……もう…」


不良妹「お姉ちゃん……」ポロポロ

不良妹「………え…?」バチッ

不良妹「ぐあっ!?ぐわああああああああああ!?!?」バチバチバチッ

ゴゴゴゴゴ…
ガガッ!バキッ!ドカン!

不良「!?どうした!何が起こった!?…っく!身体のコントロールが効かない…!」

友「能力が過剰に…!?…きゃあ!!」

魔法使い「感情が抑えきれなくなったの!涙と同じよ!」ガシッ

友「え…!?」

不良「お前、いつの間に…!」

魔法使い「とりあえず少し下がるわ!!地面と一緒に押し潰されるわよ!」ダッ

友「待って!女ちゃんは!?」

魔法使い「あいつを助ける暇は無いわよ!共倒れしたいの!?」

友「っ…そんなぁ!」

女「………」

友「女ちゃん!!」

ヒューン

ドカドカドカッ!ガコンッ!バキバキバキッ!メキッ!


友「女ちゃん!!!!!」


……

不良妹「……あはは~…」バタッ

不良妹「私、やっちゃったなぁ~………」

不良妹「お姉ちゃんを騙して…その上、傷つけたりして~……」

不良妹「あんな顔…させちゃって……」

不良妹「最低だ~…」

不良妹「最低な、妹だ……!」ポロポロ

不良妹「もう戻れないよね…」ポロポロ

不良妹「……人まで殺しちゃったんだもん……!」ポロポロ

不良妹「あははは…」ポロポロ

「………誰を殺したんですか?」

不良妹「!?」

「答えてください」

「いいえ、答えられませんか。何故なら…」




女「貴女に選ばれたのは、綾鷹でしたからね」グチャッ

ポイッ…
カランカラン…


不良妹「うそっ…!?なんで…!?」

女「どうやら、緑茶の綾鷹が私の身代わりになってくれたようです」

女「流石は緑茶ですね」

不良妹「………そんな…ことって………」

女「……詳しい話は後ほど」

女「このままでは貴女も私も潰れて死んでしまいます」

女「…っそれは避けなくてはならない!」スクッ

不良妹「ば、馬鹿!この中で立つなんて…!そんなの本当に…!」

女「これくらいなんて事は無いッ!」

女「…仲間の涙を……見る事に比べたらァッ!!!」ダッ

不良妹「…!」

女「少し…痛みますよ……!!!」

女「はあっ…!!!」



   サザンクロス
女「…-茶 斬 交 差-!」




病院

女「…友さん、ううん……」

「…ちゃん!…女ちゃん!!」

「お…!女……!」

「起き…さい…よ!……」

女「……んー……好き……です……」

「え…………そんな……///」

「おい…い…」

「や…やれね」

女「はっ!!」ガバッ

友「うわぁっ!?」ビクッ

女「友さん、照れ顔しましたよね?今…!」

友「えっ……う、うん……」

友「あっ!ち、違うよ!照れてないよ!…本当だよ!?」

女「…そうなのですか…?」

女(今…確かに照れていたような波動が…私の間違いですか…?)ヒューン

女「んべっ!?」ガコンッ

女「……、今回は濃い茶ですか…」ムスッ

友「……!」

友「えへへ…」ポロポロ

女「っ!?友さん!?どうしたんですか!?ど、どこか痛みますか…?」

友「違う、違うよ~!…うわああああああん!!!」ギュッ

女「友さん!?いきなり抱きつくなんて…!」

友「無茶は駄目って…言ったじゃん!あまし、心配したんだからね!!」

女「…!」

女「…ごめんなさい……」ギュッ

女(無茶は駄目…本当にその通りでしたね……)

女(愛が…痛い…)ヒリヒリ


不良「…相変わらずだな…心配して損した気分だよ」

魔法使い「全くね」

女「…すみません。ご心配をおかけしてしまいました」

女「あんなに大口を叩いておいて…」

女「…本当に恥ずかしい限りです……///」

不良「にひひっ!あんたの照れ顔が見れただけで十分だ!」

魔法使い「そうね!これはレアだわ…!」

女「なっ…!」

女「……っ」ウツムキ

友「ちょ、ちょっと!!女ちゃんの照れ顔はあたしだけの物なんだから!!!」

不良「おいおい…勇者様はみんなのものだろ?」

魔法使い「こいつ勇者なの?男戦士かバイキングでしょ…」

魔法使い「あれだけの攻撃受けて助かるなんてただの女勇者じゃないわよ」

女「…」ムスッ

友「それは魔法使いちゃんでしょ!この脳筋クソバカあばずれ!」

魔法使い「酷っ!?」ガビーン

不良「お、お前案外容赦無いな……」


友「なに!?女ちゃんはそんなんじゃないし!!」

魔法使い「いいやそんなんだわ!どう考えてもおかしいじゃない!」

ギャーギャー


不良「おいおいここ病室だぞ。やれやれ…」

女「…あの娘は、どうなりましたか?」

不良「…あぁ、あいつは今も気絶したままだよ。能力の使いすぎで倒れたってさ」

不良「ストレスとか、疲れとか。そういうものが溜まってるらしい…」

女「そうですか…」

女(……私が綾鷹で殴った事はバレなさそうですね………)

不良「あとなんかケツにたんこぶがあったらしいけど、打ち上げた瓦礫がぶつかったかもしれないって…」

女「………………………」

不良「…ん、どうかしたか?」

女「いえ。なんでもありません」

不良「そか」


不良「お前には、迷惑かけちまったな」

不良「…すまん」ガバッ

女「はい?」

不良「いやさ。こんな事になって、傷まで作らせちまって。…本当に、頭が上がらねぇよ」

不良「これは本来、私がやるべきことだったんだ…」

不良「…能力のせいにして、家族を疎かにして自分を鍛えて…。…全部、あいつにカッコつけたかっただけなんだ…」

女「…」

不良「その結果がこれだ。…私、誰よりも格好悪いな…」

女「…いいんじゃないですか?これくらい、日常茶飯事ですよ」

女「私にも妹が居ますが、昔はしょっちゅう喧嘩ばかりして、周りに迷惑をかけていました」

女(いつも私が泣かせていた気もしますが…)

不良「えっ…意外だな」

女「意外ですか?…これが普通なんですよ。姉妹なんてものは」

不良「……」

女「…これからは、妹さんを大切にしてあげてくださいねっ?」

不良「ああ…!」

不良「それにしてもさ。あんたの妹、災難だな。私、あの娘の姉で良かったよ」

女「え…?」

不良「だってあんたの妹だったら毎回泣かされそうじゃないか」

女「」


帰り道

友「はぁー。暑くなってきたね~…」

女「そうですねぇ。…あ、綾鷹入りますか?」

友「あはは、もういいかな…」

女「それでは午後の紅茶というのはどうでしょう」

友「えっ!?違う飲み物を買えるようになったの!?」

女「飲みたいですか?」

友「の、飲む飲む!飲むよ!」

女「では…はっ!」ヒューン

女「んべっ」ガコンッ

女「お願いします」

不良「任せな。…ほい!」

友「………えー…………」

女「出来上がりました。午後ティーです。どうぞ」

友「あはは、ありがとう………」ゴク

不良「…これぞ、最強コンビだな」

女「えぇ」フンス

友「…………生ぬるい……」


魔法使い「ふふふっ!僕様なら一人で出来る上に、冷やせるわよ!」

友「…どうして全属性の能力が使えるのにそういう方面になるのかな……」

魔法使い「あははは!もっと崇めてもいいのよ!?」

不良「誰が崇めるかよこの馬鹿」

魔法使い「はーっ!?」

女「……それにしても、その日のうちに帰れるとは思いませんでした」

女「私自身の事ながら、少し恐ろしいです…。どれだけ丈夫なのでしょう…」

魔法使い「あぁそれだけどね、多分友のおかげよ」

友「え、私…?」

魔法使い「そうよ。あんたの聖なる光って奴?それ敵意のある奴にダメージを与えて、それ以外は治癒する能力なのよ」

魔法使い「ボロボロのあんたをすぐに友が抱き抱えたじゃない?だから、治癒が早かったって訳ね」

不良「刺さりまくってた筈のテメェが動いてたのはゾンビになった訳じゃ無かったんだな」

魔法使い「なっ、なーっ!?」


女「…ふふ、そういう事だったんですね」

魔法使い「あんたいい加減に…っと!僕様の家こっちだから」

不良「あぁ、なんだよ。着いてくんなよ…」

魔法使い「あんたが着いてきてるんでしょうが!」

不良「あんだと!」

友「あはは…あんな事があったのに元気だね~」

女「……」

女「よし」

女「……友さん、すみません。…私、もう疲れてしまって…」フラッ

友「だ、大丈夫!?」

魔法使い「やっぱり病院に戻ったほうが」グサッ

魔法使い「あえっ」バタッ

不良「しっかり寝ろよな。…そいつと一緒にな」ニヤニヤ

女「…」b

友「え…?」

不良「じゃ、あばよ。また明日な」ズルズル

友「う、うん!お疲れ様!」

魔法使い「はえぇ…」ズルズル

「………………」ササッ


友「…大丈夫?女ちゃん…」

女「……友さんが腕を組んでくれたら、大丈夫そうですね」

友「…そっか!私の力、治癒なんだよね!よいしょっと!」

女「……」ニヤ

女「…やっぱり、大丈夫じゃないかもしれません」

友「えぇっ!?…うーん、やっぱり病院戻る?」

女「友さんの家に泊まりたいですね」

友「えぇっ!?」

女「友さんと一緒に居れば傷が塞がるので…」

女「…っ!く…」

友「あわわわわっ!大丈夫、大丈夫!?」

女「今は大丈夫ですが…」

女「…このままではお風呂が血塗れになったり、痛みで眠れなかったりするかもしれません……かはっ…」ブルブル

友「わーっ!?と、泊まろうね!!お風呂も一緒に入るし一緒に寝るからねっ!!」

女(やりましたわ」

友「えっ?」

女「なんでもないです」キリッ


「…止まって」

女「…!」ザッ

友「うわ!いきなり立って大丈…って!貴女は!」

不良妹「………」ムスッ

女「…何の用ですか?」

不良妹「……その…」

不良妹「あ……謝りに来ましたっ!!本当にすみませんでしたっ!!」ガバッ

友「あ…」

不良妹「えっと…目が覚めました!私が悪かったです!」

不良妹「これからは罪を見直し、お姉ちゃんとも仲良くしていきます!」ガバッ

女「………」

不良妹「……あ………」

不良妹「…許して、くれませんよね……」

不良妹「………」ウルウル

友「………」

友「…」フイッ ニコニコ

女「…」…コクン

女「顔をあげてください」

不良妹「!!!」


女「誰しも失敗はあるものです」

女「そして、貴女達姉妹もまた失敗していた」

女「そういう時は周囲に頼るべきなのです」

女「…許す、許さないどころか、私はもう貴女を友達だと思っていましたよ…?」ニコッ

不良妹「……………っ!」ウル

不良妹「ご、ごめんなさい!ありがとうございます!!」ギュッ

女「ふふ。…怖かったでしょう。超能力も、殺人未遂も……」ギュッ

不良妹「うえぇ……うぅ……」

女「…泣いていいんですよ?不良妹ちゃん」

不良妹「うああ、うわあああああん!!」ポロポロ

友「………」

友「……んふふ………」ポロポロ

女「えっ、な、なんで友さんまで泣いてるんですか…?」

友「え…あれ……?」ポロポロ

友「あはは…なんでだろ…あたしも涙出てる……」ポロポロ

友「…止まんないや…!」ポロポロ

女「……もう………」

女「………ずるいですよ。移っちゃうじゃないですか………」


不良妹「ごめんなさいっ!…2重に迷惑かけちゃいました……」

女「気にしないでください。友達ですから」

友「そうだよ!女ちゃんは友達になら、基本どんな事も許してあげるからね~!」

女「なんでもは、しませんけどね…」

不良妹「…………」

不良妹「あの、なら、いいですか?」

女「…ん、はい。なんでしょうか?」

不良妹「め、迷惑かもしれないんですけど…………」

女「いいですよ?なんでも言ってください」

友「ふふ。なんだろうねっ!

不良妹「………じ、じゃあこれ!」サッ

女「……綾鷹…?」

不良妹「また、私をこれで叩いてくださいっ!!」

女「」

友「」

不良妹「これでお尻を殴られた時…なんでしょうかね…じわぁっときちゃって…///」

不良妹「こ、こんな事お姉さんにしか頼めないんです!というか、あの叩き方はお姉さんしか出来ません!お願いします!」

不良妹「足でも何でも舐めますから!!!」ガバッ

女「えっ…えと、それはですね……」

友「……………女ちゃん?」

女「イッ!?違うんですこれは!」


友「どういう事なの女ちゃん!今宵は私と寝るんじゃなかったの!??」ギュッ

女「い、いやそれはですね、あっ、力強いですいてててて」ミシミシ

不良妹「ちょっ!ちょっと!!お姉さんは私の何だから!!」グッ

女「あの、また今度やってあげますから、ね?って能力で引っ張らないでください腕が引きちぎれます」グリグリ

友「女ちゃん!!」

不良妹「お姉さん!!」

「「どっちを選ぶんですか!!」」

女「……………」

女「……………………………」

女(…ここは………っ!)

女「…………綾鷹?」キリッ






\ドカーン!!!/
ヒューン……
ガコンッ


これにて終了です。
読んだ人、お疲れ様です

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