タイトル通りです
登場人物は提督と叢雲のみ
3回安価をこなしたらなんやかやで嵐は過ぎ去り夜が明けて終わります
似たようなスレが過去にもありました (ありすぎでは?)
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窓の外は激しい雷雨。
提督「これはないだろ」
叢雲「ほんと、ありえないわよ」
秘書艦の叢雲と俺は、二人で小雨の降る山を登り、一軒の山荘に来ていた。で、着いて1時間ほどで山は恐るべき嵐に巻き込まれてしまったわけだ。
まあ、さすがにこの建物が崩れたりはしないだろうが、俺たちが今から山を降りることも、この後に到着予定だった艦娘たちが、嵐が止む前にここに来ることもできないだろう。
提督「どうしようか」
叢雲「知らない。ここで待ってる以外に案でもあるの?」
提督「……まあ、そうだな」
俺は少しだけ息をつく。
ここで過ごすことに問題があるわけじゃない。電気もあれば水もあり、食べるものもあるし料理だってできる。
問題は、ここには俺と叢雲しかいないことだ。
なんか緊張する。
叢雲「ねえ」
提督「なんだ」
叢雲「突っ立ってないで、何かしたら?」
提督「何かって?」
叢雲「そうね。じゃあ……」
>>2
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1474559992
怪談
トリップつけわすれてました
叢雲「こういう時は怪談でしょ?」
提督「そんな学生みたいな」
叢雲「なに? アンタ怖いわけ?」
提督「なぜ挑発してくるんだ……俺は大人だからそんな程度では乗ってやれない」
叢雲「いいから、黙って聞きなさいよ!」
提督「あーわかったわかった、わかりましたよ叢雲先生」
叢雲「じゃあほら、電気消して消して。あっ、アレをもってこなきゃ」
提督「楽しそうだなー」
こうして俺達は電気を消し、テーブルに座って向き合った。
叢雲は懐中電灯で顔を照らしている。変な顔でちょっと面白い。
叢雲「いい? これはね、本当にあった話よ」
提督「ふーん」
叢雲「ふーんじゃないでしょ! 本当にあったのよ!」
提督「怒鳴るなって」
………………
叢雲「……ってわけ。どう? 怖かったでしょ?」
提督「うん(叢雲の目が怖かった)」
叢雲「でしょ! でしょ!」
提督「(嬉しそうだな……)久しぶりの怪談、堪能したよ」
というわけで、俺達は電気を点けて再びテーブルへと座った。
提督「でもまあ、今の話だとあんまり今の状況とは関係なさそうだな」
叢雲「それは……そうね」
提督「やっぱり嵐の山荘には殺人事件とか」
叢雲「ちょ! ちょっと、変なこと言わないでよ」
提督「ああ、悪い悪い」
叢雲「もう……」
叢雲は落ち着きなさげにきょろきょろしている。
自分から怪談なんか振ってきたのにな……。
叢雲「ほら、次はアンタが何かしなさいよ」
提督「そんな隠し芸大会みたいなノリで? さて、何をしたものか」
>>7
やっぱり怪談は難しいですね……
今夜はこのあたりで失礼します
筋トレ
提督「じゃあ一緒に筋トレでもするか」
叢雲「はー? わざわざこんなところで、なんでよ」
提督「いやまあ、習慣として」
叢雲「つまんない男ね」
提督「褒めるな。この程度の山を登ったくらいじゃ物足りないだろ」
叢雲「はぁ……。夕餉の前に身体を動かしておくと考えるか……」
そういうわけで、俺たちは山荘備え付けのトレーニングルームへとやってきたのであった。すごいなこの山荘。
叢雲「うわ……なんなのこのトレッドミルの数。需要があるわけ?」
提督「ペッグデックはかっこいいよな。映画で筋トレといえばやっぱり顔と身体を見せられるこれだ」
叢雲「こんな沢山のダンベル、絶対使わないでしょ……」
提督「よりどりみどりだな。で、どんなトレーニングをしようか」
さて全然知らないジャンルなのでどんどん追加安価をしてみましょう
(○○しながら××みたいな書き方でもかまいません 物理的に無理なものは無理ですが)
>>10
サウナスーツを着てランニングマシーンを走る
提督「よーしサウナスーツとトレッドミルの組み合わせでいこう」
叢雲「筋トレじゃなかったの? ボクサーじゃあるまいし、減量をしてどうするのよ。無駄に水分を消費するだけじゃない」
提督「いや、この組み合わせだと限界が早まるからな。……そう、勝負といこうじゃないか叢雲」
叢雲「ああ、そういうこと……」
提督「先にへたったほうが負けというわけだ」
叢雲「ふーん、面白いじゃない。じゃあ、アンタは普通の服で走っていいわよ」
提督「余裕だな」
叢雲「前線に出てる艦娘の私と、イスに座ってるだけがとりえのアンタじゃ勝負にならないでしょ」
提督「言ったな。いいだろう、やってみるといい」
というわけで、叢雲はサウナスーツを、俺はもってきていたTシャツを着て、隣り合ったトレッドミルに並んで立ったのだった。
速度設定はランダムにした。いつ早くなるか、遅くなるかはわからないというわけだ。……これ、最高速度だと全力疾走の必要があるな。
叢雲「(これ、思ったよりも分厚くて重い……)ふーん、こんなもの? 普段着と大して変わらないわね」
提督「そうか? じゃあ、中にもう一枚くらい着ても構わないぞ、前線でご活躍されてる叢雲様」
叢雲「むっ! いいわよ、そうしてやるわ! ……その代わりアンタが負けたら、まあ絶対負けるわけだけど、覚悟しておきなさい」
提督「具体的にはどうなるんだ?」
叢雲「え。えっと、ええっと、そうね……。そう! そうよ! この勝負に……」
勝負が終わるとどうなるのでしょうか
勝ったら○○、あるいは負けたら○○の形でお願いします(追加安価)
>>13
負けたら勝った方の言うことを何でもひとつ聞く
叢雲「この勝負に負けたら……私の言うことを何でも聞いてもらう! どう?」
提督「へー、いいのかそんな条件で? 自分が負けた時のことは考えないのかな」
叢雲「ハッ、私が負けるわけがないでしょ。もしも負けたら何でもしてあげるわよ」
提督「……今更だけど、よくそこまで自信たっぷりになれるなー」
叢雲「当然よ。アンタなんかに負かされる程度の、ヤワな鍛え方はしてないの」
提督「では、日ごろの鍛錬の成果を提督として直々に試してやることにしよう」
叢雲「上等! 行くわよ!」
提督・叢雲「用意……はじめ!」
・勝負のルール
コンマの十と一の位の数字を使います
十の位は叢雲、一の位は提督に加算するポイントとなります
これを繰り返し、規定ポイントまで先に溜まったほうが負けです
提督 規定ポイント10
数字を半分(端数切捨て)にして加算します
叢雲 規定ポイント20
数字をそのまま加算します(サウナスーツの不利)
・その他のルール(使っても使わなくてもいいところなので、読み飛ばしてOKです)
1 ○○ががんばる
叢雲か提督のどちらかをがんばらせることができます
がんばると、相手の数値の上昇を「+3」することができます(がんばったほうは根性でその分の数値を上げないわけです)
両方をがんばらせることはできません
つまりは勝たせたい方を応援するルールです
2 話題を振る
黙って走っていると書くことがないので、会話をさせます
その内容を安価で決めることができます
ただし、登場人物は提督と叢雲だけなので、他キャラの名前を出して話をさせることはできません
これらのルールを使用する場合は、
1 ○○ががんばる
2 ○○(話す内容)
といった形で、数字と一字空けを入れて安価を書いてください
例1
1 提督ががんばる
2 叢雲ってかわいいよな……と提督がつぶやく
例2
2 異世界転生するならどんな世界がいいか話す(このように、2だけを使うことももちろん可能です)
さて、やってみましょうか
>>15
2 叢雲って出撃した後パンスト蒸れない? 蒸れたらどうしてる? と提督が聞く
叢雲 4
提督 4
提督「はっ、はっ、はっ……そういやさ」
叢雲「ふっ、ふっ……なによ」
提督「叢雲、出撃の時の制服はパンティストッキングなわけだろ」
叢雲「……だからなに?」
提督「暑くないか? 汗とか」
叢雲「はあ? ……今ほど暑くないわよ」
提督「そりゃそうだな……」
叢雲「……そもそも、航行中は水の上だからむしろ涼しいくらいね」
提督「俺は経験がないからわからんが、そういうものか」
叢雲「水も被るしね……。というか、夏よりもキツイのは断然冬よ。水を被れば冷たいし、そのまま帰ってくるまでずぶ濡れなんだもの」
提督「ああ、そうなるわな……はぁ、はぁ……」
叢雲「というか、なんでそんなこと聞くわけ?」
提督「いや別に。艦娘の労働環境についての考察のための情報収集の一環」
叢雲「フーン。何かいやらしいことを考えていたんじゃないの?」
提督「俺は清廉潔白を形にしたような人間だよ。いやらしいことなんてとてもとても」
叢雲「うさんくさい……」
提督「そういう叢雲サンこそ、今の質問を何かいやらしい想像に結びつけたのではないかね」
叢雲「はぁ!? バカなこと言ってんじゃないわよ!」
提督「ああそう、そうですか。はっ、はっ、はぁっ」
叢雲「ふふん、アンタ、そろそろ息があがってきたんじゃない?」
提督「まさか。これからだろ」
叢雲「そうだといいけどね……!」
安価のルールは>>14です
では>>17
1 提督ががんばる
2 耳ユニット(正式名称何て言うんだ叢雲の頭上に浮いてるやつ)はなんか役にってるのか
叢雲(規定20) 4+1+3=10
提督(規定10) 4+2=6
・今思いついた追加ルール
同時に規定ポイントに達した場合は数字が大きいほうが勝ち、という大逆転ルールです
(がんばりすぎると先に潰れるわけです)
同じポイントの場合は引き分けで、お互いがお互いにひとつずつ言うことを聞かせることができます。
提督「はぁっ……だんだんキツくなってきたな」
叢雲「ふぅっ、へー、そうなの? 私はまだまだ余裕だけど」
提督「無理するなよ、叢雲。冷蔵庫にジュースがあったぞ」
叢雲「子供扱いしないでよね」
叢雲の頭の上に浮いている(サウナスーツのフードはその下にある)、耳めいた艤装もまだまだ元気だ。なかなか厳しい勝負になってきたか。
視線に気づいた叢雲が、なぜか恥ずかしそうに手で耳艤装を隠した。全然隠せてないが。
叢雲「ちょっと、何見てるのよ」
提督「見れば色々とわかって便利だからな」
叢雲「サイテーね」
提督「何を恥じることがあるんだ……。というかそれは一体なんなんだ」
叢雲「仕様書読んでないわけ?」
提督「さすがに艦娘全員分のものを隅々まで読むのは無理だ。スペックと運用上の諸注意とかは結構見たが」
叢雲「ふん、まあいいわ。これは試作型の発光信号用の艤装なの」
提督「ほう」
叢雲「頭の上についていて、浮遊式接続で全方向可動。光の色や点滅の間隔も調整できる優れものよ」
提督「それは便利そうだ」
叢雲「でしょう?(とくい)」
提督「でもそれ叢雲と、ごく一部の艦娘以外が付けてるの見たことないな。デザインもバラバラだし」
叢雲「うっ」
提督「冷静に考えると、海の上で艦娘程度の高さから光らせて、届く光を使って通信することってあんまり無いんじゃないか」
叢雲「むむむ……」
提督「そうか、だから試作型で終わったんだな。無用の長物……」
叢雲「うるさいわね!」
叢雲の声と共に、耳艤装が俺の顔へと飛んできた。な、なんだと! とても痛い音が二回鳴り、そして俺は実際に痛い。
提督「な、なにをする!」
叢雲「不勉強なシレーカンさまに、こういう使い方もできるってことを教えてあげたのよ!」
提督「そんな乱暴な使い方があるか! 壊れたらどうするんだ!」
叢雲「そこまでヤワじゃないわよ! 壊れたって、どーせ無用の長物でしょ!」
提督「戦闘以外で艤装を壊すと俺が文句言われるんだよ!」
叢雲「アンタの頭が硬すぎて壊れるなら自業自得よ!」
そんな風にしばらく激しく言い合った結果。とても疲れた。
叢雲「ふぅ、ふぇ……あー、無駄な体力使った」
そう言う叢雲の耳艤装は、ややへたり気味となっていた。
提督「まあ、こういう使い方が一番かもな……」
叢雲「ふぅっ、ん、なんか言った?」
提督「なにも?」
安価ルールは>>14
というわけで>>20
提督ガンバレ
最近、姉妹中はどう?
>>14の1、2の記法に沿ってお願いします(普通のレスとはっきり区別する意図があります)
取り直しになんのか?
なら
1 叢雲ががんばる
2 あの槍はどうしたのか
>>22を採用させていただきます
叢雲(規定20) 10+9=19
提督(規定10) 6+0+がんばりで3=9
なんというデッドヒート
ところで恐らく次回適用する、>>19の「同時に規定ポイントに達した場合」のルールで数字の調整を書き忘れてました
この場合は叢雲の数字を半分にして判定します(たとえば「21」VS「10」なら、「10.5」VS「10」に。0.5上なので叢雲の勝ちになります)
といったところで、少し休憩します
また後で
提督「ぜえ……ぜえ……」
叢雲「………………………………」
キツい……。さっきから、叢雲の声が聞こえない。大丈夫か……?
提督「むらくも……いきてるか……」
叢雲「うっさい……わね……死にそうよ……」
悪態をつける元気があるなら、まだまだ大丈夫……か? 俺はもうダメだが……。
いや……耳艤装がなんか弱々しい……フラフラしていて、ころんと落ちて転がりそうだ……これは限界が近いな……。
提督「いいかげん……諦めたらどうだ」
叢雲「まだ……まだ……」
提督「……そういえば……お前……この前、二回目の改造したよな……」
叢雲「あー……? だから……なによ……この程度で……疲れるなって言いたいわけ……」
提督「いや……お前……アレはどうした……」
叢雲「……アレじゃ……わにゃ……わきゃ、わかんないっての……」
提督「あのマストだよ……槍っぽいやつ……最近、持ってない……」
叢雲「ああ……新しいのが……まだ……できてない……」(新しい槍をもっている叢雲改二のイラストは雑誌に掲載されたことがあります)
提督「……そうか……しかし……アレ、実際に戦闘で使うのか……」
叢雲「いちおう……使えるらしいけど……使ったことない……」
提督「……じゃあいらない……」
叢雲「あれは……あれで便利なのよ……魚獲ったり……木の実取ったり……」
提督「……いやいやいや……」
そんなことに使ってたのかよ……。本当にいらないんじゃないか……。
叢雲「……ていうか」
提督「ん……」
叢雲「アンタ……さっきから……私のこと……ばっか聞いてる……」
提督「……ん? ……?」
>>15
>>17
>>22
提督「……そういやそうだな……」
叢雲「なんなの……?」
提督「……なんとなくだ……」
叢雲「……わかった……」
提督「……なにが……」
叢雲「……わたしのこと……好きなんでしょ……」
提督「…………」
そうきたか。
提督「……ちがうって……いいたいわけ……?」
提督「……さあな……勝って、言わせてみたら……どうだ……?」
叢雲「……ぜったい……負けない……!」
提督「……俺も……手を抜きは……しない……」
安価のルールは>>14 追加ルールは>>19、>>23
>>25
1 提督ががんばる
2 浦波と仲良くなるにはどうすればいい
申し訳ありませんが、>>14にあるとおり、この二人以外の特定キャラの名前を出して話をすることはできないルールです
>>安価↓でお願いします
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
…………やばい。
…………意地の張り合いで限界を超えている気がする………………。
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
…………二人の呼吸音とトレッドミルの作動音、そしてそれにも増して嵐の音がとてつもない。
…………この山荘、大丈夫だろうか。
…………いや、俺たちはそもそも何をやっているんだろう。
…………このまま俺たちが死ぬと発見したヤツも混乱するだろうな。
…………こいつら、一体何をやってたんだ、って…………。
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
提督「……………………………………」
叢雲「……………………………………」
…………ああ、まだがんばってしまった。
…………思考も記憶も、もはや飛び飛びだ。
…………一体俺たちは何をやっているんだろうか。
…………さっきも似たことを考えなかったか。
…………どうだったかな……もう、よくわからない。
…………いかん、ちょっと……根性にも……物理的……限界……。
提督「………………………………!」
ふと気づくと、俺は床の上に立っていた。
叢雲「……………………………………」
叢雲はまだ気づいていない。……やれやれ。俺はわずかな距離を歩いて、叢雲の横まで歩く。……それだけの動作がキツい。
そして、叢雲側のトレッドミルの電源を切ってやった。
叢雲「……? ……!」
俺がスイッチへと手を動かしたのが視界に入り、やっと俺に気づいた叢雲が、ゆっくりと足を止めていく。
叢雲「…………終わった?」
提督「ああ、終わりだ……勝ったのは叢雲だよ、おめでとう」
叢雲「……そっか……」
勝ち誇るかと思ったが、そんな余裕もない。
膝に手をついて頭を下げ、激しく息をついている。サウナスーツのフードから、その髪の一房がするりと垂れる。
提督「とりあえず……水分補給と休憩だな……」
叢雲「そうね……」
俺たちは並んで歩き出し、同時に足をもつれさせて転んだ。
……このまま寝てしまおうか……。
叢雲(規定20) 19+7+がんばりで3=29 半分で14.5
提督(規定10) 9+4=13
というわけで、叢雲の勝ちでした。
叢雲「あー……死ぬかもって本当に思った……」
提督「俺もだよ……」
俺たちは居間へと戻って、ソファに座っていた。互いに二リットルのペットボトルを四分の三ほど空にして、やっと人心地ついた。
健康に悪いから、もうこういう勝負はできればやらないことにしたい。
提督「叢雲はがんばったなー」
叢雲「アンタも艦娘相手に、意地を張りすぎなのよ」
提督「俺は限界までやっただけだよ」
叢雲「そう。ま、私はまだまだ余裕があったけど。なんだったら、もうちょっと走ってもいいくらい」
提督「そうか。あー、腹減ったな。余裕のある叢雲さんに食事を用意してもらおう」
叢雲「は!? な、何言ってんのよ!」
提督「俺はもう限界すぎるから無理。がんばってくれ」
叢雲「わ、私だって足ガクガクいってんのよ! 大体、勝ったのは私でしょ!」
提督「そうだったな。まあ余裕があるフリなんかするから、からかってみただけだよ」
叢雲「こいつ……意地の悪い……」
提督「そういう叢雲は面白い性格してるよな」
叢雲「何それ」
提督「文字通りの意味だよ」
叢雲が何かを言おうとして、そこで大きな風が山荘を少し揺らした。思わず二人で上を見上げる。……大丈夫だよな?
提督「こんな嵐は初めてだな」
叢雲「海の上では、そこまで珍しくはないけどね……」
提督「艦娘は大変だ」
叢雲「他人ごとみたいな言い方しないでよ」
提督「そうだな。では、普段から苦労をかけている叢雲に、今日は遠慮なく褒美をやろう。何でも言ってみるといい」
叢雲「普通、負けて言うことを聞く側が、そんな態度が取れるものかしら。……そうね、それじゃあ……」
さて、叢雲は何を言い出すのやら。
たぶん最後の安価なのではないでしょうか たぶん
>>33
間宮券
>>33じゃない、>>34ですね
まあ気にせず
叢雲「じゃあ、間宮で奢ってもらおうかしら」
提督「なんだ、それくらいでいいのか?」
叢雲「なに? もっとすごいものを期待してたわけ?」
提督「思ったよりも日常の範囲の話だったから、意外だった。ぶっ倒れる寸前までやったのに」
叢雲「それもそうね。では、100回奢ってもらいます」
提督「えー」
叢雲「負けたんだから文句は言わない」
提督「100回か……。痛い負けだったな」
叢雲「復讐戦はいつでも受け付けるわよ。負けるのが怖くないならね」
提督「月に叢雲のかかる夜ばかりだとは思わないことだ」
叢雲「何を言っているのかわからないけど、受けて立つわ」
提督「……まあ、しかし」
窓の外は、相変わらず激しい風と雨が吹き荒れ、月に叢雲どころではない。
提督「とりあえず、それも帰ってからのことかな……」
叢雲「そうね……」
これからどうしようかな、ということでもう一個安価をとってみます
>>36
歌でもうたう
叢雲「……何かヒマをつぶせるものはないかしら」
叢雲は立ち上がり、山荘の中を探検し始めた。元気だなー。俺はもう寝たい。100回奢りの現実から逃げ出したい。
提督「俺だけ寝ようかな……」
叢雲「……あ!!」
何かをみつけたらしい叢雲の声。さっきまで疲れてたはずの彼女が、どたどたと走ってきた。回復が早くて、艦娘はうらやましい。
で、何があったんだ?
叢雲「この山荘、カラオケルームがあるわ!」
提督「……まあ、山登りの後のトレーニングルームよりは需要があるだろうな」
叢雲「いきましょいきましょ!」
提督「寝たい……」
叢雲「負けたんだから文句言わない!」
提督「100回奢るんだから文句くらい言わせてほしい」
そう言いながらも、俺はカラオケへと引きづられて行くのだった。
………………
というわけで、10人くらいは入れそうな広めのカラオケルームへ。
提督「本格的だな……」
叢雲「せっかくだから、今日は夜通し歌うわよ!」
叢雲はそんなに歌うのが好きだったのか。知らなかった。俺も好きなほうだとは思うがしかし、疲れている。
提督「あー、その前に何か食べたりしないか」
叢雲「それもそうね。お店の人が持ってきてくれるわけじゃないし」
さすがに、注文や時間延長のための電話はついていない。
提督「冷凍食品でいいか」
叢雲「せっかくなんだから、色々作りましょうよ。自分で作ったものでカラオケなんて最高じゃない?」
提督「確かに普通の店じゃ持ち込みはNGだけどさ。……でも今から作るの大変だと思う」
叢雲「だらしないわねー。女の子の前で疲れた顔しちゃって、男でしょ」
提督「あんだけ提督ごときが艦娘に勝てるわけないとか言って、今更女の子のフリ……いたい、いたいから頬をつねるな」
叢雲「ふん。せいぜい、精のつくものでも食べることね。そうね、生のにんにくチップスをご馳走してあげる」
提督「俺にトドメを刺すつもりか?」
………………
キッチンは実に広々としていて、コンロの数も多い。設備の充実ぶりがありがたくはある。
提督「とりあえずフライドポテトの準備でもするか。じゃがいもを剥いて切って水に漬ける……」
叢雲「カラオケメニューの定番としては、ピザとか焼きたいわよね」
提督「そんな時間はさすがに……。ああ、スパゲッティがある。これをドゥ代わりにするやつでいくか」
叢雲「そうしましょ! 普通に食べる分と、焼くぶんね。あとは……見て! この塊肉!」
提督「どれだけ食べるつもりなんだよ」
叢雲「だってたくさん運動したし」
提督「消費カロリーを遥かに飛び越えている。太るぞ。叢雲の健康と美容のために間宮100回はやめて、10回にしよう」
叢雲「余計なお世話よ! 決めたわ、これもローストする!」
提督「炭水化物と脂質とたんぱく質。三大栄養素だけはバッチリだ」
叢雲「野菜もたくさん食べればいいのよ。トマトにレタスにルッコラに……」
提督「いよいよ常識的な品数を超えてきた。タイムスケジュールを作るか」
叢雲「そうね、料理はプロジェクトよ」
そうして、俺たちはなんだかんだで二時間ほど料理を続けたのだった。
同時進行で6品、追加のために火の通し待ちの料理も4品くらい作った。叢雲と俺の技術もなかなか大したものだ。
提督「うん、うまい」
叢雲「おいしい」
まずは遅い夕食から始まった。登山の後、食事もせずに俺たちは怪談をやったり走ったりしていたのだった。バカだ。
サラダを片付け、スパゲッティを飲み込み、ローストした肉を噛み千切った。
……はー、落ち着いた。生きている実感が湧いてくる。
ところで、俺よりも叢雲のほうが食べている。艦娘だからなのか、叢雲が大食いなのかは微妙なところだ。
叢雲「何見てるの? なにかついてる?」
提督「よく食べるなーと思っただけだよ」
叢雲「食べられるのも艦娘の才能のうちよ」
そういうわけで、食事も一度終わる。
軽食がテーブルに残り(俺は少しつまんだだけだが、叢雲はばくばく食べてた)、いよいよ叢雲がマイクを取った。
叢雲「さあ! ここからが本番よ!」
提督「マイクを握って大きな声を出すんじゃない……近所迷惑だ」
叢雲「半径一キロには誰もいないわよ! いい? この叢雲の歌を特等席で聴けるんだから、感謝しなさい!」
提督「ほほう、そこまで言うならさぞ上手いんだろうな」
叢雲「当然よ! じゃ、送信!」
カラオケマシンに向かって、叢雲がリモコンを操作した。そういえば曲リストなんか見てなかったな。もう番号を覚えているわけか……。
さて、ここからはじゃんじゃん安価を取ってみましょう
被ったら↓です
叢雲はどんな歌を歌うのか
>>41
叢雲の歌は……
0 すごく上手(80)
1 上手(70)
2 ふつう(50)
3 ダメ(0)
4 地獄(-30)
この数字に、>>40のコンマを足したのが叢雲の歌の評価になります(得意な歌は上手く歌えるわけです)
>>42
(あ、足すのは歌のコンマです。数字を直し忘れました)
>>安価↓
デスメタ
???
>>42のコンマが59で
たとえば4なら
59-30=29
ということ?
>>43 です
では59+80で139ですね
とてもたかい
流れ始めたのは、重低音のギターと激しいドラム……。
全然詳しくないからわからんが、デスメタルというやつか。意外なような、そうでもないような。
叢雲はにこにこしながら、楽しそうにリズムを取っている。まあ、本人が好きならつきあってやるか。
そんな気分は、叢雲の声と共に一瞬で消え去った。
うねり狂うような激しい激情と峻厳な冷徹さを孕んだ声に、頭がかきまわされる。
歌詞の不吉さが、そのままに世界の色を繰り返し塗り替える。
死、破滅、破壊。世界が何度も砕けて、これ以上はない、と思ってもまだ解体されていく。
メロディもビートも完全に彼女のものだ。
彼女の歌声に、曲が……いや、世界の全ての音が従属させられているかのようだ。
山荘が揺れている。揺らしているのは嵐か?
違う、叢雲が揺らしているのだと俺は信じた。
そして死滅した宇宙に巻き起こる、再生、誕生、長い生、だが再び巻き起こる死と破滅の輪廻の果てに、俺は何かを見た……。
叢雲「はー……。堪能した。……ちょっと、アンタ、なに呆けてんのよ」
提督「え? ……あ、いえ、申し訳ありません、叢雲様」
叢雲「なによそれ。ふざけてるの?」
提督「いえいえ、私のごとき卑小な存在にとてもそのような失礼なことは」
叢雲「だ、だから何なのよ……。まあいいわ、ほら、次はアンタが歌う番よ。はいマイク」
提督「そ、そんなまさか! 叢雲様のお歌の後に私ごときの歌声をお聞かせするなど」
叢雲「もう、いいからさっさと歌いなさいってば! まったく、私が歌った後はなんでみんな歌いたくないって言い出すのかしら」
それはそうだろう、まさか今の歌声を聞かせていただいた身で、では次は自分が、と思える勇気を持つものがいるだろうか。
いや、そんな蛮勇を持つことすら許されはしない。
……とはいえ、叢雲様のご命令を断り、ご機嫌を損ねることなどそれ以上に許されることではない。
未熟な自分の恥をお見せすることも覚悟せねばなるまい。その上でご機嫌を損ねるようならば、自分の首を差し出せば済むことだ。
提督「では、歌わせていただきます……」
叢雲「はいはい、どうぞ。うん、このポテトのディップおいしい」
なんだかおかしなことになりましたが提督の歌を決めてください
>>46
提督の歌は……
0 すごく上手(80)
1 上手(70)
2 ふつう(50)
3 ダメ(0)
4 地獄(-30)
この数字に、歌のコンマを足したのが提督の歌の評価になります(得意な歌は上手く歌えるわけです)
>>47
ビートルズ
れっといっとびー
そういうわけで、私はビートルズのレットイットビーを歌った。
……そこそこに上手く歌えたのではないかと思う。いや、しかし叢雲様の歌声に比べれば自分の歌などカス未満の雑音に過ぎないが……。
歌が終わる。
叢雲様は恥を晒した私に、その御手を打ち鳴らし、賞賛のお言葉を贈ってくださったのだった。
叢雲「司令官、結構歌も上手じゃない」
提督「と、とんでもありません。叢雲様に比べれば……」
叢雲「そうなの? みんな上手って言ってはくれるんだけど、私、自分ではよくわかんないのよね。好きで歌ってるだけだから」
なんということだろうか。これほどの歌声を持ったその本人が、そのチカラに無自覚であるとは……。
これは天の配剤なのか? それとも悪魔の悪戯なのか……。
叢雲「じゃ、次は私ね! 送信!」
叢雲様が選択された曲は、先ほどとは全く違うジャンルのものだった。もしや、これも……?
そうして私は、再び圧倒的な歌の生み出す光によって、魂の在り処を見失うのであった。
……4時間後……
叢雲「ハーイ、じゃ次は司令官の番!」
提督「へいへい。さて、何歌うかな」
叢雲「もー、先に選んでおいてって言ってるでしょ」
提督「そんな余裕はない……じゃ、Love Togetherでいくか」
叢雲「わー!」
イントロが流れはじめ、ぱちぱちと叢雲が拍手をして、俺はマイクを口に近づける。
さすがに叢雲の声にも慣れはじめ、俺の魂は無事、肉の器へと着地してくれた。
もちろん、叢雲の声を聞き流して何かをしてるような余裕はないが。
叢雲は自分が歌っている時だけでなく、俺の歌もとても楽しそうに聞いてくれて、歌い甲斐がある。
カラオケに向いているタイプだ。……あとは、あまりに歌が上手すぎなければ……おかしな話だが。
叢雲「……あ、食べ物がまたなくなっちゃった」
提督「テレビ塔ひとり……ああ、じゃあまた俺が作ってくるか」
叢雲「いいわよ、歌ってて。今度は私が持ってくるから」
提督「それじゃ、この曲が終わったら二人でいこう」
叢雲「うん、そうしましょ」
……ルームの外に出ると、もう大分明るかった。
提督「嵐も去ったなー」
叢雲「ほんとウソみたいな晴れ模様ね」
提督「まあ叢雲の歌のおかげだろうな」
俺は割と本気で言った。
叢雲はくすぐったげに、そんなわけないでしょ、と返す。
………………
というところであとはED的なものを残すだけとなりましたが
一回おやすみなさいませ
二人カラオケ大会は終わり、俺たちは食器を洗っていた。寝てからでもいいんじゃないか、とも思うのだが、なんとなく流れで後片付けまでやっていた。
叢雲は非常にご機嫌な様子で、鼻歌を歌いながら食器を乾拭きしている。彼女の声は相変わらず綺麗だった。
提督「楽しかったな」
始まる前は疲れて眠くて仕方なかったが、終わってみれば名残惜しいくらいだ。一晩中身体を動かしたのに、なんだかスッキリした気分。
叢雲「うん。また歌いたい」
提督「今日の夜にでも歌えばいい。みんなと一緒に」
多分、今日の午後には、艦娘たちも到着するだろう。
……起きて出迎えないといけないのかなあ。寝ていたいなあ。
叢雲「……そうね。うん、そう」
提督「……?」
叢雲はなにかを考えているような顔をしている。
俺には何かを考える余裕はあんまりないのでよくわからないが。
叢雲「……ねえ、司令官が最初に歌った、れりびーってどういう意味?」
司令官「れりびー……ああ、Let it be」
叢雲「そう、それよ」
司令官「……なんか、あるがままにとかそんな感じ」
叢雲「ありのままの?」
司令官「すがたみせるのよ、って違う。いや日本語だと同じに聞こえるけど」
叢雲「あるがまま、ね」
司令官「そう。困った時は素直にやれみたいな話だった気がする」
叢雲「ふうん」
そのまま、俺と叢雲が食器を洗う音だけが少し。
叢雲「そういえばさ……」
司令官「なんだ?」
叢雲「走ってた時、なんで私のことばかり聞いたの?」
司令官「……あー、なんでだっけ」
実際、よく覚えてない。適当に思いついたことを話してただけだったからなあ。
叢雲「ねえ、なんでなの」
司令官「叢雲の26のひみつを解明するためだ」
叢雲「真面目に答えなさいよ」
蹴られた。
司令官「これが俺のあるがままなんだ」
叢雲「ああそう。そうですか」
もう一回蹴られる。
叢雲「これが私のありのままだから」
提督「暴力性を剥きだしにする言い訳に、その言葉を使うのはよくない」
叢雲「ふん」
そんなことを言いながらも手を動かし続け、そして洗う食器もなくなった。
よし。これで後は……。
提督「……じゃ、寝るか」
やっぱり寝よう。みんなもきっと俺たちのことを許してくれるさ。
なのに、なぜか叢雲は不満そうだった。
叢雲「もう?」
提督「もうって、俺たちは徹夜したんだぞ」
叢雲「みんなの到着まで起きていればいいじゃない」
提督「そうすると眠れなくなりそうだし……」
叢雲「徹夜なんて珍しいことじゃないでしょ」
提督「仕事で徹夜している分、ちゃんと寝たい……」
どうして叢雲は俺を寝かせてくれないのだろうか。
仕方ないので、ひきづられるままにソファに並んで座る。
叢雲「じゃあ、ここから勝負よ。先に寝たほうが負け」
提督「おお。俄然、やる気が出てきた。奢り百回を帳消しにさせてもらおう」
叢雲「そんなフラフラの状態で私に勝てるつもり?」
提督「そう思うなら素直に寝かせてくれよな」
……実際のところ、これは俺にも勝ち目のある勝負だ。俺が夜遅くまで仕事をしている最中、ふと叢雲の方を見ると、さっきまで元気だった彼女が寝ていることがある。
叢雲は急にスイッチが切れるように眠るタイプなのだ。それまで俺が保てばいい。
そんなわけで、俺は彼女の自滅を待つことにする。
窓から差し込む光が暖かい。
提督「あー、天気がいいな」
叢雲「そうね。絶好の登山日和ってところ?」
提督「だな。俺たちは降りるだけだけが」
叢雲「どうかしら。もっと高い山に登ろうって言い出す子がいるかも」
提督「提督として命令する。大人しくしてろと」
叢雲「横暴ね」
提督「このくらいは許してほしい」
本当に暖かくて、なんだかすぐに眠ってしまいそうだ。コレは気を引き締めてかからねばならない。……しかし、こうして座っているだけというのはつらい。
かといって、眠気を覚ますために何かをする体力も気力もない。いきなり万策尽きた。
叢雲「……あのさ」
提督「……ん?」
俺は半分眠っているような気分で、叢雲に応えている。
叢雲「えっと、さっきの話だけど」
提督「……どれ?」
叢雲「走ってた時に、私のことばかり聞いた、って話」
提督「……ああ」
叢雲「……あの時、あっ、あの時っていうのは走ってた時ね、なんか私、変なこと言ったけど、あの時は疲れてておかしくなってただけだから」
提督「……そうか」
叢雲は何か早口で言っていたので、あんまり頭に入りゃ……入らなかった。
なんか思考で噛んだ。いよいよダメか。
叢雲「本当だからね」
提督「……わかった」
叢雲「……でさ」
提督「……ん」
叢雲「その、間宮の奢りの話だけど」
提督「ああ。百回のやつな」
この話題になるとちょっと目が覚める。我ながら悲しい。
叢雲「十回くらいにしてあげてもいいわ」
提督「……それはありがたいな」
叢雲「その代わり……」
提督「代わり?」
叢雲「その……」
提督「……?」
叢雲「あ、アンタの料理、やっぱり結構美味しいから、また食べてあげてもいいわ」
提督「……ん?」
突然話が変わってわからなくなった。
提督「つまりどういう意味だ」
叢雲「もう、大体わかるでしょ。……わかりなさいよ。わかるの」
提督「……眠いんだ」
叢雲「……アンタが作るなら、十回くらいで許してあげるって言ってるの」
提督「なんだ、そのくらいならお安い御用だ」
叢雲「そ、そう」
提督「……でも、間宮の十倍おいしい料理を作る自信はないな……」
叢雲「そんなこと、どうでもいいから……、あっ、ちがっ、どうでもよくはないけど!」
提督「難しいな……」
難しい。そして俺の意識を維持するのも難しい。
はー……眠い……。
叢雲「少しはね、察するってことを……せっかく、私が……」
叢雲の声が、遠くなっていく……。いよいよか……。奢りが二百回になるかな……。
「少しは人の気持ちというものを……あ、私は別に気持ちなんてないんだけどっ……」
「……ちょっと?」
「…………寝ちゃったの?」
「…………なんだ」
「………………」
「いろいろ、ありがとね」
「あっ、これはお礼を言っただけ。深い意味は……」
「……って、寝てるんだ」
「……もう、なんで先に寝てんのよ……」
「はあ……」
「……あるがままってむずかしい……」
「……あのさ」
「いつも、感謝はしてるのよ」
「こんな時だけお礼を言うのは、ずるいってわかってるんだけど」
「……でも……」
「……ね、いいよね……?」
「…………」
「……おやすみなさい、司令官」
「…………」
「…………寝た、かな」
彼女は静かに寝息を立てている。ギリギリのタイミングで狸寝入りが成功したな。
「…………」
……でも、まあ。
今回は。いや、今回も、負けておこう。
「……はあ……」
「…………」
「敵わないよ、君には」
「……俺もさ、こんな時だけ言うのは、どうかと思うんだけど……」
少しだけ、本音を言葉にして。
目を閉じる。
「……おやすみ」
日差しがゆっくりと強くなっていく、朝と昼のあいだ。
山荘の中、窓から入る光が、ソファに並んだ少女と男を、照らしている。
体を預けあって、寄り添いながら眠る二人を、木々が静かなメロディでつつむ。
ぎゅっと、彼の指を、彼女の手がつかんでいた。
おわり
このSSまとめへのコメント
良いな。