提督「嵐の山荘で」不知火「二人きりですか。では安価ですね」提督「なぜ」 (35)

タイトル通りです
登場人物は提督と不知火のみ
3回安価をこなしたらなんやかやで嵐は過ぎ去り夜が明けて終わります



似たようなスレが過去にもありました

提督「嵐の山荘で」初月「二人きり、か」提督・初月(……>>安価でもするか)
提督「嵐の山荘で」初月「二人きり、か」提督・初月(……>>安価でもするか) - SSまとめ速報
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 窓の外は激しい雷雨。

不知火「これは、無理ですね」

提督「そうだな、無理だ」

 秘書艦の不知火と俺は、二人でよく晴れた山を登り、一軒の山荘に来ていた。で、着いて1時間ほどで山は恐るべき嵐に巻き込まれてしまったわけだ。
 まあ、さすがにこの建物が崩れたりはしないだろうが、俺たちが今から山を降りることも、この後に到着予定だった艦娘たちが、嵐が止む前にここに来ることもできないだろう。

提督「どうしようか」

不知火「どうしようもありませんね。不知火たちはここで嵐が過ぎるのを待つしかないでしょう」

提督「そうなるよな」

 俺は少しだけ息をつく。
 ここで過ごすことに問題があるわけじゃない。電気もあれば水もあり、食べるものもあるし料理だってできる。
 問題は、ここには俺と不知火しかいないことだ。

 なんか緊張する。

不知火「司令」

提督「な、なんだ」

不知火「こうして座っているだけでは芸がありません」

提督「じゃ、どうする」

不知火「考えがあります。それは……」

>>2

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あたたまる

不知火「……とりあえず、あたたまりましょう」

提督「……そうだな」

 もう、季節は冬にさしかかる頃だった。部屋の中の温度も低い。
 登山で暑いくらいだった身体も、さすがに冷えてきたころだった。

不知火「この建物には暖房器具はあるのですか」

提督「そうだなあ、確か……」


 どうやってあたたまりましょうか(三回に含まない追加安価です)

>>4

SEX

 暖炉を見れば薪はなく、エアコンはリモコンの電池が切れており、ストーブは当然のように燃料切れだった。

提督「なんてことだ」

不知火「……どんどん寒くなってきました」

 外を見ると、なんと雨は雪へと変わっていた。山の天気が変わりやすいからって、これはあんまりじゃないか?
 本当に凍死するかもしれん。不知火は艦娘だから平気だというのがせめてもの救いか。
 ただ、不知火も疲れている。なんとか暖を得る手段を探さなくては……。

不知火「……」

提督「……」

 ふと、不知火を見ていると急に頭の悪いことを思いついた。
 このシチュエーション、アレだな。雪山に閉じ込められた男女が、裸になってお互いを……という。
 いやいやいやさすがにないだろー。なんて思っていると、不知火がこっちを見ているのに気づいた。
 あ、顔をそらした。

不知火「……」

提督「……」

 何で不知火はさっきから何も言わないんだ? というか、俺も何も言わないのは。
 ……ひょっとして、不知火も同じことを考えているのでは。
 バカな、あの不知火がそんなはずは。

 寒い。

不知火「……」

提督「……」

 理性的な判断というのは、寒い中でもだんだんできなくなってくるものだなと思う。



どっちが先に言い出すのでしょうか(追加安価)
>>9

提督

提督「不知火」

不知火「……はい」

提督「寒いな」

不知火「……はい」

提督「……暖まらないか」

不知火「……いいですよ」

………………

 後で、ベッドの側でリモコンの電池が見つかった。
 まあグダグダと言い訳をするのはやめよう。俺は不知火が好きだったし、命の危険もあったし、不知火も多分俺のことを想ってくれていたから了承してくれたのだ。
 責任を取る覚悟もある。

不知火「……暑いですね」

提督「こんなに雪が降っているのにな……」

 そのまま寝てしまうと、朝早くにみんなが来るとさすがにまずい、ということで俺たちはリビングの部屋にいた。
 ソファにならんで寄り添っている。
 手は繋いだままだ。

提督「恥ずかしい」

不知火「誰も見てはいませんよ」

提督「そうだな……」

 まあ、こういうことになってしまった。しかし、外は暗いが夜明けには遠い。もう少し何をして過ごすか考えよう。

>>12

いちゃつきながら思い出話

安価とレスをありがとうございました。
続きは夜に投下しようと思います。
どんな思い出があるかを書いていただければ参考にします。
(これは安価ではありません)

「いや、まさか不知火とこうなれるとはな」

「初めて出会った時には想像もしていませんでした」

「あれは怖かった……。提督睨み殺しコンテストが艦娘の教育機関では行われてるのかと思った」

「単に緊張していたのです……。命を預ける相手がどんな人か、ずっと気になっていましたから」

「そうだったのか。第一印象はどうだった?」

「頭が悪そうだなと思いました」

「てめえ」

「女子に暖まるために一緒にベッドに入ろう、と誘うくらいなので当たっていましたね」

「それに乗っかってくる艦娘はどうなんだよ」

「……きっと計算があるのです。多分」

「かわいい言い訳なのか、怖いこと言われたのか迷うな」

「不知火の第一印象はどうでしたか」

「ん、目つきが悪いなって」

「……それだけですか」

「それ! その目が怖いんだよ! 慇懃無礼で威圧的で……あ、あーその目やめて……。あとはそうだな、真面目そうだなと思ったよ、うん」

「それだけですか?」

「あーわかったわかった。かわいいなーきれいだなーこいびとになりたいなーってしんそこかんじた」

「それで良しとしてさしあげましょう」

「いいのか……」

「つまり、最初から司令は不知火に劣情を抱いていたと」

「その結論で本当にいいのか?」

「仕方ありません。不知火が魅力的すぎたのです。こうなってしまったのも全て不知火のせいでしょう」

「その変な自信は相変わらずだな。あの時とか……」

「あの時?」

「ああ。不知火が、第三回鎮守府キャンペーンガール選考会に出た時の」

「その話はやめてください」

「く、首に優しく手を当てながら言うな! 握りつぶされるかと思った……」

「不知火に落ち度はありませんでした」

「まあ、あれはな……。でも、一度大怪我をした時があったよな」

「……それも、恥ずかしい話です」

「そうか? みんなあの話は大好きだぜ。未だに語り継いでるくらいだ」

「いくら新任艦娘を任されていたからといって、あんな魚雷に当たってしまうようでは……」

「彼女をかばったんだから、仕方ないだろ。しかもその後の反撃で、3体も沈めてるしな」

「今ならば、魚雷を撃ち落とした上で全部を沈めてみせます」

「怖いなー」

「怖いですか?」

「いや、俺は怖くないけどな」

「そうですか……」

「なんだ、今でも新任たちに怖いって言われるの気にしてたのか」

「い、いえ、そういうわけでは……」

「もっと笑えばいいんだよ、こうだ」

「ほ、ほおを、ひっはってもいひはあいまへん」

「マッサージすると柔らかくなるかもだろ」

「そんな理屈がありますか」

「硬いんだよ、不知火は」

「顔が柔らかくなったからといって、笑えるわけがないでしょう」

「素直に気持ちを表現すればいい」

「そんなことをしたら死んでしまいます」

「筋金入りだな……。ツンデレなのかどうかはよくわからんが」

「そう言うのならば……。あなたも、もっと素直になればよかったのではないですか」

「俺が?」

「ずっと不知火と、こうしたかったのでしょう……?」

「ふうん?」

「ど、どういう反応ですか!」

「いや、まあそりゃな。いつかはと思っていなかったわけじゃないよ」

「妙に歯切れが悪いですね」

「ああ、悪かった。うん、したかったよ。こうなって、すごく嬉しいのは確かだ」

「だったら……」

「でもなー、やっぱりそれは俺のセリフのような気がするんだよね」

「なんですか、それは?」

「不知火のほうがずっとこうなりたかったんじゃないのか、ってことだ」

「バカを言わないでください」

「俺の目を見て言えよ。そんな横向いて本音を言うやつはいない」

「あなたがあまりおかしなことを言うから、笑いをこらえているのです」

「だから後ろを向いて言うなって。笑ってもいいからこっちを見ろよ。もしくは本当のことを言ってほしいなー」

「……ふん、一度したくらいで増長しないことね」

「じゃあもう一回してみるか」

「い、いきなり後ろから抱きつかないで……!」

「熱いな、不知火。鼓動が伝わってくるぞ」

「あなたのせいです……」

「それは嬉しい言葉だね」

「……言っておきますが、不知火はわかっていましたからね、あなたのことなんて」

「どういうことだ」

「不知火を秘書艦にしたことです」

「ん?」

「きょ、今日のような機会を作るためでしょう。だから、その、不知火はいつでも……いえ、そうではなく、警戒、そう、警戒をしていたのです」

「俺が不知火を秘書艦にしたのは、前の秘書艦が強く薦めたからだぞ」

「え」

「あの娘は教導に行きたいって言い出したからな。じゃあ、後任をしっかり用意してくれと俺から伝えて……で、彼女が挙げたのが不知火だった」

「えっ、えっ……」

「もちろん不知火が優秀なのは知っていたし、適正もありそうだから非公式に依頼を……ああ、あの時呼び出したやつな。で、受けてくれたから決めた」

「………………」

「おーい、どうした不知火」

「死にます」

「まてまてまてまて、ナイフに手を伸ばすんじゃない。死ななくていい死ななくて。嬉しいよ、不知火がそう思っていてくれたとはな」

「一生の恥です……」

「一時の恥だって。勝ち誇ってくれたっていいんだぜ。俺を惚れさせてやったーって」

「では、その、あなたは……」

「ああ、うん。秘書艦になって、不知火と一緒に過ごすようになってからだんだんと、って感じだったな」

「……そうでしたか……馬鹿みたい……ああ……」

「だから、落ち込むなってばー。……ということは、不知火はどうだったんだ? いつから俺を、好き、になって、くれちゃったりしたりしてもらってたのかなー」

「……それは……あの、あの時……」

「うん」

「……ええと、その、……あの時、です」

「あの時……? 秘書艦になる前、ってことは、あれか、俺がお汁粉を奢ったときか。寒い中、出撃ご苦労さまって言って」

「その時は、別に不知火だけにご馳走してくれたわけではありませんでした。同じ隊の全員で……」

「(してほしかったって言ってるみたいだな)じゃああれか。月見の時にたまたま二人きりになった時とか」

「そ、その時は、実は……待ち伏せをしていたのです」

「なんと」

「羊羹を渡した艦娘に、司令が通るタイミングを探照灯の明滅で教えてもらって……」

「そこまでやってたのかよ。……しかし、それより前ってことは……。さっき話した、不知火が大怪我をしたときか? 真っ先に駆けつけた覚えがある」

「あれは、嬉しかったです……でも、違います」

「それより前? 何かあったかな……。俺が覚えていないエピソードか? その前って言うと印象的なのは、初めて会った時くら……い……って……」

「……」

「……」

「……そう」

「マジで!? な、なんで!?」

「そんなの……不知火にだって、わかるわけがないじゃない」

「あんなに睨みつけられてたのに……。いや、ひょっとして、じっと見つめられてたのか」

「……うん」

「え、俺ってそんなに美男子だった? まいったなーハハハ」

「無いから」

「全部の照れを吹き飛ばす厳しいツッコミをありがとう」

「……はあ。もうこれで、全部。不知火に秘密はないわ。煮るなり焼くなり好きにすれば」

「おお、言ったな。よーし、好きにさせてもらおう」

「あっちょっと、そういう意味じゃ……もう……」


おわり

提督「いや、おわりじゃなくて」

不知火「まだするつもりなの……?」

提督「あ、いや、その話ではなく。なんかまだ嵐が去ってないからさ」

不知火「ううん、不知火は眠い……」

提督「俺も眠い……」




作者も眠いのですがどうしましょうか(たぶん最後の安価です)
>>25

寝よう無理すんな次はRの方でよろしく

Rはさておき寝ます



提督「そだな。寝よう」

不知火「うん……」

提督「じゃあ、俺は自分の部屋に」

不知火「まって」

 俺の腕をベッドの不知火が掴む。いや、だからそれはまずいんだって。

提督「さっきも話しただろ、ほら、俺たちが一緒に寝てるところを、明日来る艦娘たちに見られたら……」

不知火「別に……いい」

提督「よ、よくはない」

不知火「……不知火と一緒じゃ、恥ずかしいの?」

提督「俺にも社会的立場というものが」

不知火「立場と不知火のどちらが大切?」

提督「そ、そういうこと聞く!? まて、落ち着こう。たとえば、結婚とかも視野に入れると、再就職も大変な世の中だからさ……」

提督「それに俺は、深海棲艦の被害を止めるまで、鎮守府をやめるつもりはない、という決意をしたようなそんなような」

不知火「それは不知火がなんとかするわ。お金も……」

提督「そ、その意気込みと自信は大変に結構だけど、不知火一人に重圧を背負わせるわけには……だから、手を離して……」

不知火「…………」

不知火「うん……」

 不知火はひどく名残惜しげに手を離してくれた。……なんだかさびしく感じてしまう俺がいる。大概だな。

提督「ありがとな。じゃあ、お休み」

不知火「その前に……」

提督「ん?」

不知火「キス、して……」

提督「(素直にさせすぎただろうか)」

不知火「……だめなの」

提督「ダメなわけあるか」

 俺は不知火に顔を近づける。……なんでだろうな、さっきまで何度もしていたはずなのに、熱が引いた今では妙に恥ずかしい。
 ……柔らかい感触。触れるだけで気持ちがよくて、幸せになる。
 自分から出たはずなのに、またこのベッドに……彼女の元へと戻りたくなる。

提督「……不知火」

不知火「ん……」

提督「……」

不知火「……すぅ……」

提督「眠ったか」

 後ろ髪は引かれたが、今日はこのあたりでいいよな。明日もあるし、明後日もある。
 俺は彼女の髪に少しだけ触れて、布団を直し、電気を消して静かに部屋を出た。

提督「おやすみ、不知火」

翌日の朝。


提督「朝だな……」

 窓の外には嵐の気配は完全に消えうせ、雪が跳ね返す朝日がただただまぶしい。
 俺は着替えを済ませ、台所で朝食を作っていた。思えば、昨日は食事もせずに眠ってしまった。風呂にも入っていない。
 冷静に考えると、暖まるのにガスは使えたな。思いつかなくてよかった。

提督「えーっと、ベーコンエッグにトーストにサラダ。いかにも新婚っぽい朝食、なんちゃって」

 不知火はまだ起きていないようだ。
 後続の艦娘たちもまだ到着していない、というか、冷静に考えると雪山を登ってくるものだろうか。ちゃんと連絡をしたほうがいいか。

提督「まあ、とりあえず不知火を起こすか」

 俺は不知火の部屋へと歩いていった。何だかわくわくするね、このシチュエーション。
 幸せな気分で、部屋のドアを開けた。

提督「おはよう不知火、朝食が」
不知火「……」
提督「あ……」
不知火「おはようございます」
提督「ご、ごめん」

 謝って、あわててドアを閉める。……着替え中だった。
 なんというダメなラブコメだろうか。俺は人気を得るために、女性キャラクターの素肌を晒す恋愛系少年マンガはあまり好きではない。いやどうでもいい。
 下着姿の上に、シャツの袖を通す姿を頭から追い出す。深呼吸、深呼吸。

不知火「お待たせしました」
提督「お、おお。早いな」

 そんなことをやっている間に、不知火が部屋から出てきた。はずい。

不知火「朝食を用意していただけたのですか」
提督「ん? ああ、そうだそうだ。冷めないうちに食べよう」

 俺と不知火は並んで歩き始めた。

不知火「……そういえば、お互いに相手のために料理をしたことはありませんでしたね」
提督「そういえばそうだな」

 不知火にチョコレートをもらったり、そのお返しをしたことはあった。
 ただ、その時はお互いに市販品だったのだ。
 ……まあ、もらったチョコをネットで調べたらちょっと引くくらいの値段だったから、今思えば愛は篭っていた。お返しの品を探すのに苦労したなあ。
 そんなことを考えていると、不知火がなぜか不満そうな顔をしている。

不知火「……先を越されてしまいました」

 そうきたか。俺はそんな彼女が面白い。

提督「早起きは三文の得というわけだ。そういえば、告白したのも、過去を語ったのも俺が先だったな」
不知火「むっ……」

 さて、これ以外に先制を取れるものがあるかな。
 好きになったのは不知火が先だけど、それはあまり負けたって感じじゃない。勝ちというのもピンとは来ないけどね。

不知火「……まだ、あなたがしていないことはありますよ」
提督「ほう、なんだろうな」

 不知火に何をしてもらえるのか、今から楽しみだ。
 そして、俺たちは食卓に着いた。

提督・不知火「いただきます」

 不知火はサラダを食べた後、トーストにベーコンエッグと残ったサラダを挟んだ。
 俺はトーストを最初にナイフで切り分ける。その後にベーコンエッグを切っては黄身に漬け、トーストに乗せるスタイル。

不知火「変わった食べ方ですね」
提督「よく言われるな。不知火は、らしい食べ方だ」
不知火「どういう意味ですか?」
提督「君は君のままでいいってことさ」

 不審げな顔で、不知火はエッグサンドをばくりとかじる。かわいいなあ。
 笑って、調味料を取る。塩をかけた後、次は醤油と、味を変えながら食べるのが楽しい。
 目玉焼きはナントカ派、という人も多いが、俺からすれば何でもかけてみればいいところは見つかるものだ。

不知火「おいしいです」

 半分ほどエッグサンドを消し去ってから不知火が、いま気づいたようにつぶやいた。
 とても嬉しいけれど、そんなに凝ったものを作ったわけじゃないからこそばゆい。

提督「口にあったようで、よかった」

 食事が終わり、こまごまとした雑事を済ませ(連絡をしたら艦娘たちはこちらに向かっているとのこと)、さて。

提督「ヒマになったな」
不知火「……では」

 雑事を終えて伸びをしていた俺の腕を、不知火が掴んだ。

不知火「あなたがまだしていないことを、してさしあげます」
提督「なんだなんだ」

 妙に強引な不知火だった。いや、彼女は大抵強引なのだった。昨日は少しとろけていたから忘れてたのだ。
 ……ふと思ったが、彼女の行おうとする初体験が、何か俺の想像もつかないマニアックなエロスだったらどうしよう。
 どうしようと言ってもどうすればいいかわからないまま、俺は壁際に追い詰められた。このまま後ろを向けとか言われると怖いな……!

不知火「いきます」
提督「何を……」

 何をされるかと戦々恐々とする俺に向かって、不知火が腕を振りかぶった! え、殴られるの!? 初家庭内暴力!
 彼女の手が閃光のごとき恐ろしい速度で走り、俺の顔の左側を叩く。死んだ? 俺死んだ?
 
 ……いや、冷静になると俺の顔じゃなくて、左側の壁を叩いていた。バン、と音がしていた。

不知火「……どうです。壁ドンです」
提督「……バンって言ってたけどな」

 とても変な空気になった。……ま、まあ確かに? 俺は壁ドンはやったことがなかったけど? というか、やると逆に殴られそうで怖いとか思ってた。
 俺の困惑を他所に、不知火は実に不満そうだ。

不知火「……悔しくないのですか。女の側から壁ドンを先にされたのですよ」
提督「わかんねえ悔しさのツボだな、それ……」 

 むしろ、身長差で少し背伸び気味の不知火がかわいい。抱きしめたくなる。
 ……そうしよう。
 俺は不知火を上から両腕で抱きしめる。不知火の身体が浮く。

不知火「な、なにを」
提督「かわいいから」

 そのまま身体を入れ替え、不知火を壁側に。そしてホールドを解く。不知火はまだ驚いた顔をしている。ここは畳み掛けるところだろうか。きっとそうだ。
 俺は左腕を曲げて、不知火の横の壁に叩きつける。……結構痛い。壁ドンはやる方は痛いのか、新発見だ。何事も経験だな。
 この流れにびっくりしたように固まっている不知火。スキだらけだな、不知火!

 えい、と唇を奪う。

 少しだけ触れて、離れた。俺は不知火の顔が見たかったのだ。……そう、この顔だよ! その顔が見たかった!

不知火「な、な、な……」
提督「壁ドンからのキスだ。これはまだ不知火はしてなかったな?」
不知火「も、もう……! もう!」

 不知火が俺をぽかぽかと叩き始める。ははは、俺も結構恥ずかしいけど、これは俺の勝ちだな! 勝った!

 ……そんな風に遊んでいると、あっという間に時間が過ぎていくものだ。もうすぐ艦娘たちが到着する時間になった。
 俺と彼女はしっかりと防寒着を着込んで、山荘の外で艦娘たちを待っている。
 並んだ彼女が、ぽつりとこぼした呟き。

「終わってしまいますね」

 あんまりその口調がさびしそうなので、逆に笑ってしまった。

「まだ俺たちは始まったばかりだろう」
「でも、二人きりの時間は終わりです」

 そう言いながら、寒そうに両手に息をはきかけていた。
 仕方ないやつだ。俺は彼女の手を握る。

「……あ」
「また行こう、いつか、どこかへ。二人で」

 俺の言葉を聞いて、彼女が頬をゆるませた。

「はい」

 彼女の笑顔は、この雪に光る朝日すべてよりも眩しい、と思えた。

 遠くから、艦娘たちの声が聞こえてくる。



Fin

読んでくださった方、安価をくださった方、ありがとうございました
文章を褒めていただいたレスもあってやったーってなりました

今回はいきなりセックスから入り展開が速い感じでこの後何書けばいいんだろうと困惑したりして面白かったです
あと前回のように怪談を書いたりポーカーをやったりを覚悟していたけどそういうことはなく
いったい初月のスレはなんだったんだろうと昨日のことのように思い返します

今回も楽しんでいただけたのならば幸せです ありがとうございます

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