とある世界のとある時代。
カダスティア、と呼ばれる陸地があった。
広大なる湖には、人の形をした水達が都市を築き。
恵みに彩られた深い森の中で、木々の精達が命を育み。
火を噴く山脈では、赤き鱗の竜人達が雄叫びを上げ。
侵す者無き大空を、鳥と人との相の子達が翼を以って翔け巡る。
戦火を知らず。
飢餓を知らず。
慈悲深き神に祝された、奇跡の中ですら奇跡と呼べる、最たる平和を湛える地。
そこに、あなたはこれより生まれ落ちる。
善を求めるか、悪に沈むか。
孤独を尊ぶか、仲間を愛するか。
何を残すか、あるいは残さないのか。
全ては、あなたの自由である。
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ありふれたファンタジー世界を安価とコンマで生きるスレです。
傾向的には真面目な部類。
■ 注意事項
1)R-18行為は描写がスキップされます。
2)登場人物が死亡したり、重度の障害を負う場合があります。
3)胸糞、鬱展開が発生する場合があります。
4)このスレは複数回の周回を前提として組み立てられています。
5)主人公の死亡によるゲームオーバーは起こりません、コンティニュー回数は無制限です。
6)連取制限は安価コンマ共に有りません。
7)起こり得ない状況や不可能な行動などが指定された場合は、安価を無効化して下にずらします。
■ 前スレ
【安価コンマ】平穏世界のファンタジーライフ【オリジナル】
【安価コンマ】平穏世界のファンタジーライフ【オリジナル】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1467814723/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469531135
■ スレの概要
このスレでは、AVG的な形式を採用しています。
シナリオの中で選択肢を選ぶようか感覚で、安価によって行動を決定し、あなたの人生を進めていきます。
フラグを立て、イベントを起こし、エンディングに向かっていきましょう。
■ スレの進行
シナリオは、以下の方式で進行されます。
プロローグ
↓
固定イベント ←┐
↓ | (フラグが十分に進行するまで繰り返し)
自由行動 x3 ―┘
最終固定イベント
↓
エピローグ
◆ 固定イベント
現在発生しているフラグによって強制的に発生するイベントです。
シナリオに対する影響が大きく、ストーリーが進行しやすくなっています。
また、固定イベントが発生すると同時に季節が変わり、時間が経過します。
◆ 自由行動
名の通り自由に行動できるフェイズです。
ストーリー自体はそれほど進行しません。
フラグを発生、成長させるのは主にここになります。
■ 判定について
選んだ行動の内容によっては、成否をコンマ判定で決定する場合があります。
判定は、コンマ下一桁を用いた 【下方ロール】 で行われます。
基礎能力値を基準とし、状況や技能などで補正をかけて算出される 【目標値】 以下の数値が出れば成功です。
(以下、であるため、同値の場合も問題無く成功します)
また、目標値に関わらず 【 1 】 が出た場合は 【クリティカル】 となり、行動が大成功します。
反対に、【 0 】 が出た場合は 【ファンブル】 となり、あなたにとって極めて不利な結果となってしまいます。
ただし、ファンブルは目標値が10以上の場合は発生しません。
【補正値の参考】
±1 あやふやな状況、かじった程度の技能
±2 天秤が傾き始めた状況、慣れ始めた程度の技能
±3 天秤が完全に傾いた状況、一人前の技能
±4 決定的な状況、一流の技能
±5 奇跡的な状況、他に類を見ない程の超技能
±6以上 異常値、マイナスならば根本的に問題があるか前提条件を満たして居ない、プラスならば運命
■ 能力値について
判定に用いる能力値はキャラメイク時にコンマ判定を用いて決定し、以下の八種類があります。
全ての能力値は、高い程優れている事になります。
【筋力】 物理的攻撃の威力、重量物の運搬、などに影響
【耐久】 物理的被害の大きさ、病気や毒物への耐性、などに影響
【器用】 物品の加工、細かい作業の成功率、などに影響
【敏捷】 走行速度、軽業の成功率、などに影響
【感覚】 芸術的センス、直感による危険の予知、五感の鋭さ、などに影響
【意思】 恐怖や逆境への耐性、一般的に忌避される行為の実行、などに影響
【魔力】 魔法行使による反動の軽減、使用出来る魔法の数や規模、などに影響
【幸運】 様々な被害の軽減、不運な出来事の回避、などに影響
■ カダスティア大陸における国家
大陸地図
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org357186.png
※
国境線はアバウトに引かれています。
また、この地図では都市などは省略されています。
◆ 《クピア》
特徴が無い事が特徴、と言われる国。
取り立てて言うべき特産物も無く、交易路からも外れている。
穏やかな環境こそが人生において最も尊い物なのだと、国民達は拗ねたような顔で語る。
主要人種 : ミーニア リリパット ジャイアント セリアンスロープ ハーピー ドライアド
◆ 《スラフカスタ》
二大湖の中に存在する聖地を求めながらも、水上生活に適応出来ない者達が暮らす国。
宗教色が強く、敬虔な輪廻教徒が大半を占める。
また、大陸における宗教画や神々の彫刻の多くはこの国において生み出されている。
主要人種 : ジャイアント リリパット セリアンスロープ ミーニア ドライアド
◆ 《シアラ・ミニア》
輪廻教の聖地を擁する水上国家。
湖上には都市が築かれ、多くの人々が信仰と共に暮らしている。
東の湖には輪廻の神が、西の湖には輪廻の神を産んだ母神が、それぞれ降臨したとされている。
主要人種 : ヒュドール ミーニア セリアンスロープ
◆ 《クァレヴァレ》
安定した気候と、実り豊かな大地に守られる国。
大陸最大の食料生産量を誇る。
更に、スラフカスタやシアラ・ミニアと、大陸南部を繋ぐ交易により栄えている。
主要人種 : ミーニア ジャイアント リリパット セリアンスロープ
◆ 《ヴァタス》
古い言葉で「荒野」を意味する名を持つ、大半を岩と砂に覆われる地域。
かつてクァレヴァレから追放された罪人達をそのルーツとする。
今では通常の国家として扱われ、交易も行われているが、やや治安が不安定。
主要人種 : ミーニア リリパット セリアンスロープ ハーピー
◆ 《クラッカ》
大陸最大の大森林を国土とする、ドライアド達の国。
必要以上の木々の伐採は禁忌とされ、街道すらろくに存在しない。
主要人種 : ドライアド セリアンスロープ ミーニア ヒュドール
◆ 《ハルピュイア》
連なる岩山を国土とする、ハーピー達の国。
ハーピー以外には過酷な環境ではあるが、標高の低い地域には鉱物を求める人々が都市を築いている。
また、大陸の南北を繋ぐ交易路が存在するが、危険性が高いために利用する者は少ない。
主要人種 : ハーピー ミーニア
◆ 《火竜山脈》
頻繁に噴火を繰り返す火山が連なる地域。
生存に影響を及ぼす程の高温により、サラマンドラ以外の人種の定住は極めて困難。
また、名の通り火口付近には炎を纏うドラゴンの群れが生息する。
主要人種 : サラマンドラ ミーニア
◆ 《グレアモール》
大陸において最も降雨量が多い国。
植生が独特で、他の地域とは全く異なる風景が広がる。
主要人種 : ミーニア ヒュドール ドライアド
◆ 《ディスリス》
ネレンシアと並び、最も気温の低い地域。
南部の荒野に生息する動物に特殊な生態を持つ物が多く、その毛皮や加工品を特産とする。
主要人種 : ミーニア ジャイアント セリアンスロープ ハーピー
◆ 《ネレンシア》
大森林と山脈によって分断される大陸の南北を繋ぐ、最大の交易路により栄える国。
極めて裕福な国家ではあるが、大地の実りは少なく、寒冷で過ごしにくい。
主要人種 : ミーニア
■ カダスティア大陸に生きる種族
■ ミーニア
平均的な能力を持つ種族。
現実世界の人間に良く似る。
取り立てて優れた能力は無いが、劣る部分も存在しない。
能力値補正無し
◆ 種族能力
【始祖】
あらゆる人種はミーニアを始祖とすると、カダスティアの神は語る。
対人友好判定に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 170cm
平均寿命 60年
■ ジャイアント
巨大な肉体を持つ種族。
体の大きさ以外はミーニアと良く似る。
膂力、体力に優れるが、のろまかつ不器用で鈍感。
筋力+4 耐久+4 器用-2 感覚-3 敏捷-3
◆ 種族能力
【頑健】
強靭な彼らの肉体は、刃はおろか病毒すらも跳ね除ける。
物理的ダメージを軽減し、毒や病気に対する高い耐性を獲得する。
◆ その他の情報
平均身長 270cm
平均寿命 80年
■ リリパット
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
器用+2 感覚+3 敏捷+3 筋力-4 耐久-4
◆ 種族能力
【直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 90cm
平均寿命 40年
■ ドライアド
森の中に隠れ潜む種族。
樹皮に似た皮膚と、葉のような髪が特徴的。
魔力との親和性や精神力に優れるが、鈍感で、体力に劣る。
魔力+3 意思+2 感覚-3 耐久-2
◆ 種族能力
【森の隣人】
人よりも精霊に近い彼らは、最も親しい隣人たる植物達とも言葉を交わす。
植物との対話が可能になる。
◆ その他の情報
平均身長 190cm
平均寿命 100年
■ サラマンドラ
好んで火山に棲む、トカゲに良く似た人型種族。
強固な赤い鱗に覆われた頑強な体を持つ。
身体的能力全般に優れるが、細かい事を考えるのが苦手。
筋力+2 耐久+2 敏捷+2 魔力-3 意思-3
◆ 種族能力
【炎の隣人】
火精霊の寵愛を一身に受ける彼らは、強力な炎の加護を持つ。
火属性ダメージによって回復し、自身の操る炎を強化する。
ただし、寒冷地におけるデメリットが倍化する。
◆ その他の情報
平均身長 150cm
平均寿命 50年
■ ハーピー
大空を舞う種族。
猛禽の翼と爪を持ち、大空を舞う能力を持つ。
敏捷性に極めて優れるが、翼を得た代償に腕を失っているため、極めて不器用。
敏捷+5 器用-5
◆ 種族能力
【風の隣人】
翼を持つ彼らは当然の能力として、自由自在に空を翔る。
翼に損傷が無い限り飛翔が可能となり、空中での姿勢制御に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 150cm
平均寿命 60年
■ ヒュドール
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
意思+4 魔力+3 筋力-2 耐久-5
◆ 種族能力
【水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
◆ その他の情報
平均身長 可変
平均寿命 150年
■ セリアンスロープ
獣の特徴を持つ種族。
狼、猫、羊、牛など様々な動物の能力を扱える。
肉体的能力に優れるが、魔力との親和性が殆ど無い。
筋力+2 感覚+2 敏捷+2 魔力-6
◆ 種族能力
【獣の血脈】
獣の特徴を持つ彼らは、外見だけで無く能力も併せ持つ。
選択した獣の種類に応じて、様々な判定に補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 100~190cm(獣の種類によりまちまち)
平均寿命 20~80年(獣の種類によりまちまち)
■ 現在の 【あなた】 のステータス
【5歳 男性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : リリパット】
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足と、木の葉の形の尖った耳を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
【種族能力 : 直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
【筋力】 1
【耐久】 2
【器用】 3
【敏捷】 10
【感覚】 12
【意思】 5
【魔力】 1
【幸運】 7
【出身地 : ネレンシア / サルタン】
【現在地 : クァレヴァレ / イーリェ】
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org356607.jpg
◆ 習得魔法
【種火】
掌に収まる程度の小さな炎を発生させる。
【清水】
両手で作った器に収まる程度の少量の水を召喚する。
【微風】
頬を優しく撫でる程度の僅かな風を発生させる。
【土塊】
拳程度の大きさを限度とする少量の土を召喚する。
【掌握】
『あなたのハートを鷲掴み☆』
一度心を掴んだ対象に行使する事で、一時的に好意を持ちやすく、敵意を抱きにくい状態を作る事が出来る。
あなたに対する好感度が高い程、効果と持続時間が強化される。
一般的な友人レベルの場合、三日間、おねだりに無性に応えたくなる程度が限界。
◆ キーワード
【風になりたい】
【大富豪一族】
【カルト教団のアイドル】
【絶世の美少年】
【布教キャラバン】
■ 所持品一覧
◆ 680 Casa ←USED
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 注意事項 ※
イスナの熱烈な教徒たるあなたは、宵越しの金を持てません。
特殊な事情が無い限り、季節が変動する毎に自動的に所持金の全てを享楽に費やします。
◆ 《欲望》の聖印
あなたが首から提げている、聖印を象った木製の首飾り。
特に効果は無いが、見せ付ける事で輪廻教徒をドン引きさせる事が可能。
◆ ダガーLv1
基礎攻撃力 : 2
加工補正 : 2
肘から手首までの長さの刃を持つ、護身用の短剣。
戦闘用としては心許ないが、無いよりはマシ。
木材や動物素材などの物品加工にも適している。
■ キャラバン主要メンバー
◆ メルヴィ
【19歳 女性】
【種族 : ジャイアント】
巨体を誇るジャイアントの中でも一際大きな体躯の、穏やかな女性。
全身を重厚な筋肉で覆われ、見た目通りの怪力と体力を持つ、キャラバンにおける武力の代表格。
あなたを主君と仰いでいる。
◆ サーシャ
【6歳 女性 / 現実世界の人間換算で16歳相当】
【種族 : セリアンスロープ / 鼠】
キャラバンで最も体格や年齢があなたと近い、人懐っこい愛嬌がある女性。
ミーニアの血が濃く、耳と尾以外に獣の要素は無い。
気配察知や隠密行動に優れ、それを生かした悪戯に定評がある。
◆ ニム
【21歳 女性 / 現実世界の人間換算で27歳相当】
【種族 : ハーピー】
キャラバン唯一のハーピーであり、飛翔能力を用いた索敵で道中の安全に一役買っている。
魅力的な女性の姿態を持つが、本人の精神が幼く、それを武器と思っていない。
物事を深く考えるのが苦手で、感性のみで生きている。
◆ ブルーノ
【37歳 男性】
【種族 : ミーニア】
大酒飲みの粗野な男性。
面倒見が良く、様々な雑用や仲間の悩みの解決に喜びを見出している。
キャラバンの頼れる兄貴分。
◆ テオ
【28歳 男性】
【種族 : ドライアド】
ドライアドにおいて最も縁起が良いとされる、パキラの髪を持つ朗らかな男性。
他者の心に滑り込むのが上手く、キャラバンの財源たる交易で商談を一手に任されている。
優秀な魔法使いでもあるが、一歩間違えば放火魔になりかねない炎狂い。
【円環暦???年】
「馬鹿者が……。
何故、またもあのような下賤と言葉を交わした」
そこは、豪奢な屋敷の一室だった。
床には毛足の長い絨毯が敷かれ、壁には繊細な絵画が飾られている。
目のある者ならば、中央に置かれたテーブルにも注目するだろう。
ドライアドの猛烈な反発により伐採困難なクラッカの大森林。
そこから数十年に一度極少数だけ産出される、王族ですら確保が難しい最高級の樹木が使われている事に、目を剥いて驚くはずだ。
勿論、金銭が注ぎ込まれているのはそれだけでは無い。
部屋を照らす燭台はネレンシア随一の職人の手による物であるし、
無造作に置かれた羽根ペンも数多の人間を殺めた鳥の魔獣を素材としている。
部屋の中にあるたった一つの品ですら、庶民が生涯を掛けても入手できまい。
屋敷の主はおよそ考え得る限りにおいて最高峰の富を持つのだと、それらが無言の内に主張し、証明している。
「いい加減に自覚しろ。
お前は、この私の息子だ。
ネレンシアの始祖、王家とすら並び称される、この家を継ぐ者なのだ」
部屋の中央に立つミーニアの男は、威圧的に言葉を放つ。
受け止めるのは、幼い少年だ。
背丈は男と比べ、余りに小さい。
頭の頂点が膝よりもやや上にある程度。
種族が違うと、容易く理解出来る。
恐らくは母親がリリパットであり、当たり前の法則に従って生まれたのだろう。
そんな少年は、男と目も合わせられずに俯いている。
「地を這う者達とお前では、住む世界が違う。
我らは食らう者であり、奴らは食らわれる者だ。
交流を持とうなど、一体何を勘違いしている」
『……安心して下さい、お父様。
もう、彼女とは会いません』
静かに、しかし苛烈に責め立てられる少年が、口を開いた。
その声は落ち着いた物だ。
風の無い日の湖を思わせる程に、抑揚が無い。
……子供の口から発せられて良い物では、決して有り得ない。
『今日は、お別れを言ってきたんです。
屋敷には近付くな。
子供の遊びには飽きたから、二度と顔を見せなくて良い、と。
申し訳ありません。
僕の我侭のせいでご心配をおかけしてしまいました』
それに、男はほうと息を一つ漏らし、満足そうに頷いた。
威圧は一つ段階を落とし、言葉からは怒りの気配が僅かに薄れる。
「そうか。
うむ、それで良い。
全く、早く言えば良い物を。
その鈍さはお前の致命的な欠点だ。
早々に治すよう努力しろ」
『……はい。
申し訳ありません、お父様』
頷く少年は、こうして一つ切り落とした。
この時の彼にとって、最も愛しい宝であった物を、父親の言うままに投げ捨てた。
胸に刃を突き立てるような苦しみを、深く深く沈めて。
何故ならば、少年は知っていたのだ。
父親は、親友たる少女を心の底から疎ましく思っていた事を。
平民の一人ごとき、一言命じるだけで地獄に叩き落せる事を。
そして、ある日の夜、少年が知らぬ誰かと少女の処遇を相談していた事を。
だから、仕方なく切り捨てた。
同じように失った物は、今までにも少なくない。
今回も、僕が我慢すればそれで良いのだと己に言い聞かせる。
「お前は私が導いてやろう。
良いな?
お前は、私の言葉に従っていれば良いのだ」
少女を失った欠落に、父親の言葉が埋められる。
いつものように。
何かを失う度に、少年はこうして作り変えられて行く。
『はい、お父様。
……ありがとうございます』
街を流れる川の中で。
とある平民の少女が変わり果てた姿で見つかるのは、この翌週の事だった。
【円環暦697年 夏】
懐かしい夢を見た、と。
馬車の揺れで目を覚ましたあなたは、目を擦った。
指には僅かに濡れた感触。
どうやら、夢を見ながら涙を浮かべていたらしい。
「大丈夫?
嫌な夢でも見た?」
聞き慣れた声は、サーシャの物だ。
あなたとサーシャは、キャラバンの中でも飛び抜けて気配に敏感である。
夜闇程度で獣を見落とす訳が無く、昨晩は夜の番を任されていた。
その分の睡眠をこうして昼間の移動中に取る事は、当然許されている。
『うん、ちょっとね。
……サーシャ、もうちょっとくっついてもいいかな?』
「くっつきたいって思ったら、そうすればいいんだよ。
それに、私が嫌なんて言う訳無いでしょ?」
『そうだったね。
変な夢のせいかな、ちょっと忘れてた』
優しく囁かれた答えにあなたは微笑み、すぐ隣にある少女を引き寄せた。
応じるサーシャもあなたの背に手を回し、窮屈な程に密着する。
何も纏わぬ素肌同士が伝える体温は、今のあなたにとって酷く心地良い物だった。
さして間を置かず、その安堵は眠りを誘う。
サーシャも、気付けば静かに目を閉じていた。
あなた達を乗せた馬車は、山沿いの道を行く。
一先ずの目的地までは、もう然程の距離も無い。
あなたの目が再び開かれる頃には、きっと立ち上る湯煙も見えているだろう。
何とかなりませんでした(白目)
キリが悪いですが、今日はこの辺で。
明日は夏の固定イベントの続きになります。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
■ あなたのステータス
【5歳 男性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : リリパット】
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足と、木の葉の形の尖った耳を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
【種族能力 : 直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
【筋力】 1
【耐久】 2
【器用】 3
【敏捷】 10
【感覚】 12
【意思】 5
【魔力】 1
【幸運】 7
【出身地 : ネレンシア / サルタン】
【現在地 : クァレヴァレ / カラデナ】
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org356607.jpg
◆ 習得魔法
【種火】
掌に収まる程度の小さな炎を発生させる。
【清水】
両手で作った器に収まる程度の少量の水を召喚する。
【微風】
頬を優しく撫でる程度の僅かな風を発生させる。
【土塊】
拳程度の大きさを限度とする少量の土を召喚する。
【掌握】
『あなたのハートを鷲掴み☆』
一度心を掴んだ対象に行使する事で、一時的に好意を持ちやすく、敵意を抱きにくい状態を作る事が出来る。
あなたに対する好感度が高い程、効果と持続時間が強化される。
一般的な友人レベルの場合、三日間、おねだりに無性に応えたくなる程度が限界。
◆ キーワード
【風になりたい】
【大富豪一族】
【カルト教団のアイドル】
【絶世の美少年】
【布教キャラバン】
■ 所持品一覧
◆ 680 Casa
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 注意事項 ※
イスナの熱烈な教徒たるあなたは、宵越しの金を持てません。
特殊な事情が無い限り、季節が変動する毎に自動的に所持金の全てを享楽に費やします。
◆ 《欲望》の聖印
あなたが首から提げている、聖印を象った木製の首飾り。
特に効果は無いが、見せ付ける事で輪廻教徒をドン引きさせる事が可能。
◆ ダガーLv1
基礎攻撃力 : 2
加工補正 : 2
肘から手首までの長さの刃を持つ、護身用の短剣。
戦闘用としては心許ないが、無いよりはマシ。
木材や動物素材などの物品加工にも適している。
■ キャラバン主要メンバー
◆ メルヴィ
【19歳 女性】
【種族 : ジャイアント】
巨体を誇るジャイアントの中でも一際大きな体躯の、穏やかな女性。
全身を重厚な筋肉で覆われ、見た目通りの怪力と体力を持つ、キャラバンにおける武力の代表格。
あなたを主君と仰いでいる。
◆ サーシャ
【6歳 女性 / 現実世界の人間換算で16歳相当】
【種族 : セリアンスロープ / 鼠】
キャラバンで最も体格や年齢があなたと近い、人懐っこい愛嬌がある女性。
ミーニアの血が濃く、耳と尾以外に獣の要素は無い。
気配察知や隠密行動に優れ、それを生かした悪戯に定評がある。
◆ ニム
【21歳 女性 / 現実世界の人間換算で27歳相当】
【種族 : ハーピー】
キャラバン唯一のハーピーであり、飛翔能力を用いた索敵で道中の安全に一役買っている。
魅力的な女性の姿態を持つが、本人の精神が幼く、それを武器と思っていない。
物事を深く考えるのが苦手で、感性のみで生きている。
◆ ブルーノ
【37歳 男性】
【種族 : ミーニア】
大酒飲みの粗野な男性。
面倒見が良く、様々な雑用や仲間の悩みの解決に喜びを見出している。
キャラバンの頼れる兄貴分。
◆ テオ
【28歳 男性】
【種族 : ドライアド】
ドライアドにおいて最も縁起が良いとされる、パキラの髪を持つ朗らかな男性。
他者の心に滑り込むのが上手く、キャラバンの財源たる交易で商談を一手に任されている。
優秀な魔法使いでもあるが、一歩間違えば放火魔になりかねない炎狂い。
今晩は19時30分位の開始になります。
よろしくお願いします。
待ってまーす
そういえばキャラメイクの際に地図塗り替えるレベルのこと指定できますか?
たとえば、火竜山脈の火山を大噴火させてクァレヴァレの西部を壊滅させた過去があるとか
>>36
流石にそこまでの規模は厳しいです。
都市ではなく、町か村を壊滅させた。
都市に対し、大規模な被害を与えた。
程度であればそれに見合う能力値さえあれば可とします。
大噴火による西部壊滅を目論む場合は、シナリオ中に目指すと良いでしょう。
なお難易度は理不尽極まる模様。
全く関係ないけど国境線が直線で引かれてるけど争いの種にならないんかね
>>40
国境線は雑に引いただけの簡易な物です。
実際の物は川などの地形に沿ってぐねっていたりします。
次から地図出す時に明記しておきます。
紛らわしくて申し訳ありません。
【円環暦697年 夏 カラデナ温泉街】
おぉっ、と歓声が上がる。
キャラバンの仲間、キャラバンでの留守番を除いた三十名全員の物だ。
一つの店を全席丸ごと占領したあなた達は、各々のテーブルに置かれた鍋に目を奪われていた。
焼け石鍋という名のその料理は、湯の街カラデナを代表する名物である。
近隣の火山の裾野に生息する水牛ならぬ火牛の肉を、たっぷりの野菜と一緒に無造作にぶち込む、豪快な鍋だ。
火牛の肉は臭みが少なく味が濃い。
秋や冬には及ばないが夏でも脂がそれなりに有り、トロトロと鍋全体に溶け出す様は食欲を強烈に刺激する。
ちょうど今まさに、あなた達の目の前に広げられた光景がそれだ。
熱く焼けた石が放り込まれた鍋は瞬く間に煮え立った。
一瞬にしてスープが沸騰し具材が踊り始める。
薄く切られた火牛肉は羽衣のようだ。
ひらりひらりと湯の中で揺れる姿は傾国の名を与えても良いはずだと、あなた達は感じただろう。
「ちっくしょう、こんなの拷問だろうが……!」
仲間の誰かが思わず零し、賛同の声が幾つも続く。
鍋は見ているだけで火傷しそうな程に、ぐつぐつと煮えている。
だというのに、肉は白い脂が溶けるのみで、未だ赤さを損なわない。
何せ、火牛は火に強い生き物だ。
食肉となっても火が通りにくい事に変わりなく、完成までは目の前にご馳走を置かれたまましばし耐える必要がある。
だからこそ、ようやくの一口目は凄まじい感動を伴っていた。
溜まりに溜まった期待。
それに見合うどころか、上回りかねない衝撃が舌を焼く。
あなた達の誰もがろくに言葉も発せずに美味を噛み締める。
肉に歯を突き立てる度に、舌を蕩けさせる旨味が湧き出してくる。
脂は流れ出したはずなのに、赤身の奥に封じられた分がまだあったのだろうか。
甘いとすら表現出来る濃密さだ。
そしてしかし、決してくどくは無い。
焼け石鍋のスープは赤い。
過剰な程に投入された香辛料のためだ。
火山にたとえ、時に火口鍋とも呼ばれる程。
一口で汗が噴き出すほどの辛さがしつこさの全てを掻き消してくれている。
旨味と辛味。
強い二つの味に疲弊すれば、癒すのは野菜の役目だ。
口に含めば解れて消える山菜根菜の類を食めば、砂漠の只中で見つけたオアシスの如き清涼さである。
最早誰もが無言。
例外となるのは一角だけだ。
「メールー! 早く早く!!
肉多めでね!」
「分かった、分かったから叩くのはやめてくれないか……。
あぁ!? 私の分を取るんじゃない!」
手を持たないニムがメルヴィに催促する騒音だけが、店内唯一の言葉である。
あなた達の無言の狂騒は、全ての鍋がスープの一掬いも残さず消えるまで、延々と続けられた。
店を出た後も、あなた達の無言は消えなかった。
誰もが皆、夢のようであった時間を思い返しているのだろう。
香辛料で火照った体を赤く染め、蕩けた瞳で中空を見詰めている。
「これだけでも、来た甲斐がありましたねぇ……」
しみじみとテオが呟けば、耳に入った者は皆頷いた。
そうして、あなたへと目を向ける。
今回のカラデナ経由は、あなたの意見が容れられたと知る者は多い。
道程の説明の際に、テオがぽろりと零していたのだ。
感謝が篭る数十の瞳を集めたあなたは照れくさそうにはにかみ、
そして次の瞬間には殺到した仲間達の手によって、宙を舞うのであった。
それからしばし。
余韻を堪能し終えた者達は我先にと街へ散らばっていった。
カラデナは温泉目当ての観光客が山のように集まる。
当然、娯楽もそれに見合うだけ用意されている。
ある者は財布の中身を倍にしてくると吹き、賭場へと向かった。
旅芸人のために解放された広場を目指し、俺の芸で余所の客を丸々奪ってやると意気込む者も居る。
噂話を好む者は数多の酒場を渡り歩くようだ。
数人で連れ立つ者達は、どうやらそこら中に立ち並ぶ土産屋を冷やかすらしい。
そして勿論、最も多いのは温泉へ向かう者達だ。
鍋でたっぷりと汗をかいた今、熱い湯は天上にあるという神々の国にも匹敵するだろう。
あなたは、このどこへ向かうも自由だ。
誰かを誘っても良いし、一人で歩くのも良いだろう。
あえて賑わいを避け、静かな場所でのんびりとする手もある。
>>↓1 どうする?
『メルヴィ、まだかかりそう?』
「ん、いや、もう行くよ」
カラデナの端。
山脈に最も近い一帯にある混浴の中に、ざわりと声が広がった。
音の発信源となったのは、若い男の三人組である。
恐らく、相当な長時間をここで過ごしているのだろう。
三人全員が真っ赤な顔で、逆上せて倒れるのでは無いかと心配な程だ。
助平そうな顔付きの彼らは、どうやら女性の登場を心待ちにしていたようだ。
男女どちらとも断じ切れない中性的な容貌のあなたが登場した時など、血走った目を見開いて興奮していた。
次の瞬間には股間に視線が移り、哀れな程に肩を落としていたのだが。
そんな彼らは、今度こそと溢れる期待に明確に挙動不審となった。
何の前触れも無く不自然な世間話を始めている。
内容はいかにも真面目な青年達が国の将来を憂う物だ。
無理に隠す必要なんか無いのにと、あなたは微笑ましくなった事だろう。
話をしながらも、視線はチラチラと女性用の脱衣所の扉へと向けられている。
その向こうから女性の、それも若く穏やかな声が届いたのが彼らの期待の源だ。
早く、早く、まだか、まだか。
彼らは雰囲気だけでそう語り、ついに開いた扉に欲望が駄々漏れた瞳を向け―――。
「すまない、遅くなったよ」
―――そして、凶悪という言葉すら霞む鬼を目にし、その意識を失った。
「……何だ、こいつらは」
『逆上せちゃったんだと思うよ。
随分長く入ってたみたいだからね。
メルヴィ、脱衣所に移しておいてくれる?』
「ん、分かった。
そういう事なら仕方無いな」
苦笑するあなたの言葉に応じ、掴み上げた男達をポイポイと扉の向こうへ放る。
若干雑に扱っているのは、彼らが倒れた理由をおおよそ理解しているからだろう。
あなたの気遣いに合わせて言葉では気付かない振りをしただけで、彼女は自信の容貌について十分な理解があるのだ。
そうして処理を終えて、ようやくあなた達は湯を楽しめる事となった。
胡坐をかくように座り込んだメルヴィの膝にあなたが収まり、二人で同時に息を吐く。
湯の熱が骨の髄まで沁み込むようだ。
身震いする程の心地良さに、否応無く顔が緩んでいく。
混浴の湯は、ミーニアの背丈に合わせられている。
小人たるあなたには深すぎ、巨人たるメルヴィには浅すぎる。
膝に乗った事であなたには丁度良くなったが、メルヴィの方は解決のしようが無い。
だがそれでも一緒に入りたいと望んだのはメルヴィの側である。
今日の彼女は、どうにも覇気という物に欠け、人肌を求めているように見える。
何があったのかと聞けば、返って来た答えは良くある物だ。
「あぁ……いやね、この街が懐かしいんだ。
どこでどう暮らしていたかは全く分からないが、カラデナを故郷とした事があったらしい」
見知らぬ郷愁に胸を焼く。
輪廻の神が齎す奇跡が、今日の彼女を弱らせる原因だったようだ。
人は生まれ、死に、また生まれる。
その繰り返しは当然、地域などに縛られない。
ある時は火山に生まれ、ある時は海に生まれる。
あらゆる人々は、幾つもの故郷を持つのだ。
勿論、明確に覚えている訳では無い。
生の記憶は死後に失われる。
年替わりの奇跡で一時だけ蘇る思い出も、その日の内に消え去る物だ。
ただし、残る物もある。
人は、いつかの故郷を見た時に心を焦がす郷愁に襲われるのだ。
何も思い出せはしない。
愛したはずの家族も、共に歩んだはずの友も、骨を埋めたはずの土地も、何も蘇らない。
なのに魂だけが、帰ってきたと泣き叫ぶ。
それこそが、輪廻神が地上より戦火を排した奇跡の正体だ。
人は、己の故郷を焼く事に耐えられない。
攻め入った街に暮らす人々が、いつかの自分の縁者で無いなどと誰も保証出来ない。
自らの子や孫を自らの剣で殺す。
そんな悲劇はきっと、戦場に溢れかえるに違いない。
勝てば、いつかの故郷が焼かれ。
負ければ、今の故郷が失われる。
どこにも救いなど有りはしない。
最後の戦争は、三百年程前だったという。
人々の苦悩を理解せず戦争を命じ続けるディスリスの王を、悲哀から蜂起した民が下したのが、この大陸における戦火の終わりだ。
「……旅を終え、ここに残りたい。
ほんの少しだけ、そう思ってしまったよ。
本当に厄介な感情だ」
ぼんやりと、メルヴィは零す。
そこには、万感の思いが籠められていた。
前世の彼女は、余程この街が好きだったのだろう。
……あなたには、理解出来ない物だ。
何せ、輪廻神の奇跡を身に受けた経験が無い。
転生祭の奇跡は、あなたに何も与えない。
北の果てから昇る光はただ眩しいだけで、郷愁を心に焼き付けはしないのだ。
他に聞いた事の無い異常な現象だが、原因は探り様が無い。
もしかして輪廻の神に嫌われているのかと、曖昧に考える程度が精々だ。
それでも、彼女の心中を想像する事は出来る。
『辛いんだったら、それでも良いと思うよ。
心が命じるままに振舞うのなら、誰も止めない。
僕達の事なんか考えなくて良いんだよ』
静かに告げたあなたの言葉に、メルヴィは苦笑した。
あなたの頬を指先で撫で、そこまでじゃないさと返す。
「ちょっとした気の迷いだよ。
少し人恋しくなっただけで、明日にも収まると思う。
それに、今は君に仕えていられる日常の方が大事なんだ」
今の暮らしがどれほどの幸せに包まれているか、メルヴィは語った。
主君を仰ぎ、その身を守る栄誉が何よりも嬉しいのだと。
そこで、あなたはふと疑問を覚えた。
そもそも、何故メルヴィは自分を主君とするのだろうかと。
あなたは、彼女に何か特別な事をした覚えは無い。
感情を取り戻す前から甲斐甲斐しく世話を焼かれ、人間らしく振舞えるようになってからは、ただ親しく過ごしただけだ。
主従の契りに至るような出来事はまるで無い。
疑問のままに問えば、メルヴィは困った顔をした。
言うべきか言うまいか、迷っている様子だ。
しかし、それは長く続かない。
「主君に問われては答えない訳にはいかないな。
それに、今の私は不忠に過ぎるかと、思ってもいたんだ。
……簡単さ。
ただの、取るに足りないごっこ遊びだよ」
自嘲と共に、彼女は語り始めた。
幼い時分から抱き続けていた夢と、それが破れた顛末を。
メルヴィは、クピアの守りを担う騎士の一族に生まれたという。
罪人を捕らえ、魔獣を殺し、民の安寧を守る者ととして、その生を受けた。
彼女の兄も父も、そして母でさえも剣を執り、あらゆる災禍を切り裂く任を負っていた。
幼い彼女は彼らの背と誇りを見て育ち、当たり前のように騎士を志す。
幸いな事に天賦の才に恵まれた彼女に、家族も大いに期待しその成長を助けた。
生まれついての豪腕は日毎に力を増し、冴え渡る剣技はあらゆる魔獣を退ける。
齢わずか十四。
未だ幼さを残す時分にすら、既に民からは英雄とさえ呼ばれるに至った。
その事実に些かの慢心も抱かなかっただろう事は、あなたには容易く理解出来る。
彼女の人格は、そんな陥穽に足を取られるような未熟を持ち合わせていない。
だから、彼女は何も悪くない。
もし彼女に僅かの責があるとすれば、ただ一つ。
彼女は、余りに強すぎたのだ。
それは、馬鹿馬鹿しい冤罪だった。
酒に呑まれた巨人が暴れ、店を破壊した挙句に四人の男女を斬り殺す。
そんな事件の犯人として、メルヴィは捕らえられたのだ。
無論、あなたは知っている。
メルヴィは樽一つ分の酒を飲み干しても顔色さえ変わらない。
酔って正気を失うなど、どう考えても有り得ない。
先日、罵倒に対して激怒した折も、十分な手加減を忘れてはいなかった。
吹き飛ばされた五人の男達は、既に何の後遺症も無く治癒している。
牢獄に面会に訪れた兄は、歯を砕ける程に食い縛って語った。
他家による、メルヴィを追い落とすための陰謀だと。
既に執拗なまでの根回し、証拠の捏造がされ、覆す事は不可能だと。
それまでの功績を鑑み、処刑だけは免れた。
代わりに下された裁定は、国外への追放。
成人まで、一年。
彼女の夢が叶うまで、残りわずか一年での終わりだった。
「今も時折夢に見る。
仕えるはずだった姫殿下の侮蔑。
石を投げる民の怒りと憎悪を。
君を主君としたのは、そんな理由だ。
失くした夢に未練がましく手を伸ばしているに過ぎない。
君が、何でも受け入れてくれるからと甘えているんだ。
……不快だったなら、言って欲しい。
無理にこんな遊びに付き合う必要なんて、どこにも無い」
メルヴィの言葉はそれで途切れた。
二人だけの空間に、重い沈黙が流れる。
こうして、あなたは彼女の忠誠の理由を知った。
あなたは全てを受け入れる。
命すら賭した信仰が、彼女を認めろと囁いている。
メルヴィの忠誠を受け取る事に、一切の否やは無い。
ただ、あなたは気になった。
メルヴィの瞳には、深い悲しみが宿っている。
口先だけで受け入れるなどと言った所で、それは消え去りはしないだろう。
誰にも見つけられない心の底に、そっと仕舞い込んでしまうはずだ。
……あなたは考える。
彼女の悲哀を拭うために、何か出来る事は無いだろうか。
>>↓1 自由に行動出来ます。
『不快なんかじゃないよ。
何言ってるのさ。
メルヴィがそう在りたいと望むなら、僕達は主従だよ』
あなたは、メルヴィに向き直り口を開いた。
首が痛くなるような高みにある瞳を真正面から見詰め、少しでも心に届くようにと。
『ただ、受け入れる代わりに頼みがあるんだ。
僕達と、ずっと友達でいよう?
今生だけの話じゃなく、生まれ変わっても、ずっと』
「……それは」
『あ、駄目だよ。
僕の騎士だっていうなら、我侭くらい聞いてくれないと』
メルヴィは苦笑と共に頷いた。
来世の事など誰にも保証出来ない。
友達になるどころか、この広い大陸で再び出会える可能性すら酷く低い。
それでも、その約束は温かみのあるものだ。
『ほら、僕だってこんな我侭言っちゃうんだ。
主君が我侭なら、従者も我侭だって全然悪くない。
むしろ張り合いなくて困っちゃうくらいさ』
じっと、目を見る。
微笑を絶やさぬまま、あなたは彼女の全てを認める。
それが、魂にまで届いたかどうかは……。
「……そうだな。
うん、そうしよう。
私達はずっと友達で、無二の主従だ。
我侭も言うから覚悟しておくと良い。
私は主君に、最上の清廉さを求めるぞ」
あなたの言葉を受け入れながらも。
そっとあなたに前を向かせ、目を逸らしたその様を見れば、余りにも明白だった。
あなたの想いは、メルヴィに届いた。
しかし、一歩足りない。
彼女の悲哀は拭いきれず、未だ錆び付いたまま残っている。
それでも、あなたは今こうしてメルヴィの苦痛を知った。
再びの機会は、きっとまた訪れるだろう。
何せ、あなたは主従であり、親友でもあるのだ。
隣を歩む家族の涙すら拭えない。
そんな結末は、きっと誰も望んでいない。
【円環暦697年 夏 固定イベント『捨てられぬ夢、拭われぬ涙』 了】
【円環暦697年 夏 1/3】
「うーん……。
確かに美味しいんだけど、ちょっと足りないよね」
『だよねぇ。
材料は全部揃えたはずなんだけど。
隠し味か、料理人の腕か……』
カラデナを過ぎ、北上する旅の途中。
あなたとサーシャは二人で鍋をつつき、そんな感想を漏らしていた。
温泉街で舌鼓を打った焼け石鍋、その模倣である。
鍋を忘れられなかったあなたは、財布を完全に空にするまで材料を買い込んだ。
そうして記憶を頼りに鍋を作ったのだが、本物には遠く及ばなかった。
中々味わえないレベルの美味である事は間違い無いというのに、鮮烈過ぎる記憶のせいで心から楽しめない。
あなたとサーシャは、顔を見合わせて溜め息を吐いた。
これでは、再び鍋に挑戦するのは避けた方が良いだろう。
残った材料は別の料理にしてしまおうと、決定が下されるのだった。
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※ システムメッセージ ※
イスナ教徒の性により、所持金を全額失いました。
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さて、今日は良い天気である。
何をするにも障害は無いだろう。
既に山裾は遠く、周囲は一本の道が通る以外には見渡す限りの草原。
移動の途上であるために付近に街や村は無く、あなた達の他は時折野生の獣が姿を見せるのみだ。
柔らかな風が草を優しく揺らし、平穏極まりない光景を演出している。
総じて、気分良く過ごせる日であろう。
今日は何をしようかと、あなたはぼんやり考えた。
>>↓1 今日はどうする?
『よし、決めた。
今日は情報収集をしよう』
突然立ち上がりそう意気込んだあなたに、サーシャはぽかんとした目を向けた。
情報収集。
それは周辺地域やどこぞの組織、あるいは権力者などの特定の人物について調べる事を、一般的には指すだろう。
あるいは、イスナ教徒であれば美味や遊技について調べる事も含めても良い。
だが、情報を集めようにも今は難しい。
今は移動の途中であり、街道のど真ん中だ。
周囲に街や村は無く、聞くべき相手がどこにも居ない。
ただし、それは通常の情報収集であれば、という話だ。
『皆にこっそり聞いて回ってみようよ。
意外な誰かの秘密が出てきたりするかも知れないよ。
それこそ、悪戯に使えそうなのがさ』
「…………いいね、それ」
サーシャは目を輝かせる。
まるで獲物を狙う猫のようだとあなたは思った。
勿論、本人はれっきとしたネズミではあるのだが。
『と言う訳で、ちょっとだけ教えて下さいよブルーノさん』
「いや、何がという訳でだお前ら。
全く、何の用かと思えば……」
「まぁまぁそう言わずに。
ところで、ここに温泉街で買ったお酒があるんですけどー」
「よし、何でも聞け。
今の俺はなーんでも答えるぞぉ」
懐柔は赤子の手を捻るよりも容易かった。
ブルーノはとにかく酒に弱い。
話を聞きに行くなら是非持って行こうというのは、サーシャの案であった。
なお、賄賂となった酒はあなた達の物では無い。
ネズミらしくサーシャが拝借してきた誰かの私物だ。
発覚すれば追い回されるだろうが、サーシャが証拠を残してきている訳が無い。
ブルーノも酒を自分の物とするために、わざわざ教えるような事は避けるはずだ。
バレなければ罪じゃないよね、と悪戯に笑うサーシャはイスナ教徒の鑑と言える。
さて、何を聞くべきかとあなた達は小声で相談した。
ブルーノはキャラバンのまとめ役である。
誰の事情に関しても、相当に詳しいだろう。
あなたが満足するだけの情報を握っている事は疑い無い。
また、当初の目的は仲間の秘密であるが、それに固執しなくとも良いだろう。
土壇場で気が変わる事は仲間達の間では良くある事だ。
サーシャも慣れているだろうし、その程度で気を悪くする事は有り得ない。
>>↓1 何について調べますか?
あなたの気にかかったのは、温泉街での一件だった。
メルヴィの心に潜む悲哀を、あなたは拭い切れなかった。
彼女は確かに心を軽くしたようだが、それだけだ。
何か、ほんの僅かでも手がかりになる物は無いかと、縋るような心持ちであなたは尋ねる。
「メルヴィがお前に望む物?
……んー、何だそりゃ。
理想の主君として振舞う事……ぐらいじゃねぇか?」
ブルーノは困惑したように答えた。
そりゃそうかと、あなたは肩を落とす。
その様を見てかどうかは分からないが、ブルーノは頭を掻いてしばし考え込む。
「他は……他だとなぁ。
あぁ、アレくらいかね」
「イーリェでの事なんだがな。
あいつ、街の武器屋の前でぼんやりしてたんだよ」
ブルーノの話では、心ここに在らず、といった様子であったという。
看板代わりの木剣をじっと見詰めていたらしい。
それを聞いて、あなたは一つ思い当たる事があった。
メルヴィは、キャラバンにおいて素手で戦っている。
拳を振るい、蹴りを放ち、五体のみで旅の障害を蹴散らしているのだ。
それだけでも十分過ぎる暴威であったために不思議とは感じていなかったが、それはおかしい。
彼女が目指したのは騎士である。
話の中でも、彼女は過去に剣を振るっていたと、確かに言っていた。
ならば当然、今も剣を使うのが自然であるはずだ。
もしかして、とあなたは考える。
メルヴィは 【剣に特別な意味を見出している】 のでは無いだろうか。
騎士の夢が奪われると同時に、剣を置いたのでは無いか、と。
あなたが一定の満足を得た事に気付いたのだろう。
ブルーノはほっと息を吐き、あなた達から渡されたばかりの酒を一口含んだ。
「おぉっ!?
こりゃあすげぇ、とんでもない美酒だ!
お前ら……本当良い奴らだなぁ」
ぷはぁ、と熱い息を零し体を震わせるブルーノは、実に満足げだ。
この分ならばもう少し聞いても良いだろう。
その隙を見逃さなかったサーシャが、次を聞いた。
「じゃあ次は私ね。
ニムの弱味とかって、何か知りません?」
「ニムぅ?
あいつに弱味なんてあるのかねぇ。
つーか、お前あいつに何か確執でも……あぁ、そうか、そりゃぁなぁ……」
ブルーノは、ちらりとあなたを見たサーシャの視線に、訳知り顔で頷く。
うんうんと何度も頭を動かし、ニヤニヤと笑う。
勿論、色男は大変だねぇ、などとからかう事も忘れない。
あなたも鈍い訳では無いために、おおよそ理解出来る。
時折寝所からあなたを攫っていくニムに、サーシャとしては思う所があるのだろう。
あなたを独占したいという気持ちを、稀にだが見せる事があるのだ。
……こうして目の前で言外に主張する事は、あなたに向けられた抗議でもあるかも知れない。
「あいつは本能だけで生きてるからな。
隠し事なんかろくに無いだろ。
少なくとも俺には弱味なんか思いつかんね
強いて言えば 【自分の荷物には誰にも近付けさせない】 ってぐらいかね。
それも単に宝を隠してるだけだろうしな」
勿論あいつなりの宝だが、とブルーノは言葉を締めた。
ニムの宝とは、つまり先日見つけた瑪瑙のような類だ。
他者にとっては取るに足りない物。
彼女の怒りを買う可能性を考慮すれば、釣り合いは取れそうに無い。
サーシャは分かりやすく肩を落とし、落胆を露わにした。
落ち込むサーシャとは対照的に、ブルーノは未だ上機嫌だ。
後一つ程度ならば聞いてみるのも良いだろう。
>>↓1 どうする?(話を切り上げても構いません)
ニムと言えば、とあなたは思い出した。
先日イーリェの路地裏で遭遇した襲撃者についてだ。
見た事も無い種族だったが、ブルーノならば何かを知っているかも知れない。
彼は少なくとも十年以上を旅しているのだ。
あなたが知らない知識は山ほど持っているに違いない。
果たして、それは功を奏した。
「白い肌、細い体、そんで長い耳……。
つったら、アレだな。
北の大陸から流れ着いた奴だろうよ」
ブルーノは語る。
あなたが生きるカダスティア大陸の北、長距離航海用の巨大船ですら辿り着けない遠方には別の大陸があるという。
そこにはあなた達とは全く異なった種族が生きているらしい。
その存在を証明するのは、極稀に流れ着く異種族だ。
主にヴァタス、スラフカスタ、クァレヴァレといった大陸北東部に彼らは現れる。
そして、遠過ぎる故郷に嘆きながら死んでいくのだ。
「俺が前に見たのは船が沈んで流されたとかいう三人組でな。
ずんぐりむっくりした髭面の、確かドワーフとか名乗った男。
それとお前の言った通りの特徴の夫婦だ。
どっちも碌に飯も食わんで死んじまったけどな。
確か、エルフって種族だったはずだ。
姉さんってのは、一緒に流れ着いたか、それとも故郷に残してきたか、ってとこだろうな」
それで話は終わりだ。
そういった事情なら見覚えが無いのも頷けると、あなたは納得する。
また、希少性を考えれば恐らく遭う機会はもう早々無いだろう。
今後に生かせる物では無さそうだが、疑問が解消出来たのは良い事である。
あなたはブルーノに礼を言い、彼は酒を呷りながら鷹揚に手を振った。
といった所で今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
オマケ
女騎士 「くっ……殺せ! 私は絶対に、オーガなんかに屈したりしない!」
メルヴィ 「……いや、私も女騎士なのだが」
女騎士 「えっ」
質問っす ドワーフやエルフがこの大陸の種族と生殖を行なった場合は子供どうなるんすか?
乙です
ところでコレは無視してくれても良いんだけど
メルヴィとサーシャの胸部ってどんなもんなのかね?
ニムは山脈級らしいけど二人は平原なんだろうか
キャラ作成時に物心ついた頃から現在に至るまで戦争し続けてる傭兵って設定するのはアリ?
1つの安価に1要素の設定と漠然と思ってたけど文で書いたら何要素でも詰め込めるのよね
>>91
多分子供は生まれないと思います。
>>92
ニム → そのバストは豊満であった。
サーシャ → その胸は平坦であった。
メルヴィ → それは胸というには余りにも硬すぎた。
>>95
特に問題ありません。
その場合、戦争が存在した時代に生まれる事になります。
多分円環暦100年代辺りです。
後世に伝わる話と矛盾する事が起きるかもしれませんが、何とか辻褄合わせます。
>>98
申し訳ないです。
その辺、厳密に考えると面倒そうなので、かなり適当にザックリやってます。
次の主人公が産まれる時代が今の主人公よりも遥かに前の時代になる可能性もあるのか
だったら主人公を遥か未来の人間にして、タイムパトロール隊員にすることもできそう
そうすりゃミニアを救えるかもだし
■ あなたのステータス
【5歳 男性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : リリパット】
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足と、木の葉の形の尖った耳を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
【種族能力 : 直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
【筋力】 1
【耐久】 2
【器用】 3
【敏捷】 10
【感覚】 12
【意思】 5
【魔力】 1
【幸運】 7
【出身地 : ネレンシア / サルタン】
【現在地 : クァレヴァレ / レイル】
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org356607.jpg
◆ 習得魔法
【種火】
掌に収まる程度の小さな炎を発生させる。
【清水】
両手で作った器に収まる程度の少量の水を召喚する。
【微風】
頬を優しく撫でる程度の僅かな風を発生させる。
【土塊】
拳程度の大きさを限度とする少量の土を召喚する。
【掌握】
『あなたのハートを鷲掴み☆』
一度心を掴んだ対象に行使する事で、一時的に好意を持ちやすく、敵意を抱きにくい状態を作る事が出来る。
あなたに対する好感度が高い程、効果と持続時間が強化される。
一般的な友人レベルの場合、三日間、おねだりに無性に応えたくなる程度が限界。
◆ キーワード
【風になりたい】
【大富豪一族】
【カルト教団のアイドル】
【絶世の美少年】
【布教キャラバン】
■ 所持品一覧
◆ 0 Casa ← USED(AUTO)
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 注意事項 ※
イスナの熱烈な教徒たるあなたは、宵越しの金を持てません。
特殊な事情が無い限り、季節が変動する毎に自動的に所持金の全てを享楽に費やします。
◆ 《欲望》の聖印
あなたが首から提げている、聖印を象った木製の首飾り。
特に効果は無いが、見せ付ける事で輪廻教徒をドン引きさせる事が可能。
◆ ダガーLv1
基礎攻撃力 : 2
加工補正 : 2
肘から手首までの長さの刃を持つ、護身用の短剣。
戦闘用としては心許ないが、無いよりはマシ。
木材や動物素材などの物品加工にも適している。
■ キャラバン主要メンバー
◆ メルヴィ
【19歳 女性】
【種族 : ジャイアント】
巨体を誇るジャイアントの中でも一際大きな体躯の、穏やかな女性。
全身を重厚な筋肉で覆われ、見た目通りの怪力と体力を持つ、キャラバンにおける武力の代表格。
あなたを主君と仰いでいるが、そこには破れた夢へ向ける悲哀が籠められている。
剣に関して、何か思う所があるようだ。
◆ サーシャ
【6歳 女性 / 現実世界の人間換算で16歳相当】
【種族 : セリアンスロープ / 鼠】
キャラバンで最も体格や年齢があなたと近い、人懐っこい愛嬌がある女性。
ミーニアの血が濃く、耳と尾以外に獣の要素は無い。
気配察知や隠密行動に優れ、それを生かした悪戯に定評がある。
あなたを独占したいと目論んでいるようだ。
◆ ニム
【21歳 女性 / 現実世界の人間換算で27歳相当】
【種族 : ハーピー】
キャラバン唯一のハーピーであり、飛翔能力を用いた索敵で道中の安全に一役買っている。
魅力的な女性の姿態を持つが、本人の精神が幼く、それを武器と思っていない。
物事を深く考えるのが苦手で、感性のみで生きている。
私物に他人が近付く事を酷く嫌っているようだ。
◆ ブルーノ
【37歳 男性】
【種族 : ミーニア】
大酒飲みの粗野な男性。
面倒見が良く、様々な雑用や仲間の悩みの解決に喜びを見出している。
キャラバンの頼れる兄貴分。
◆ テオ
【28歳 男性】
【種族 : ドライアド】
ドライアドにおいて最も縁起が良いとされる、パキラの髪を持つ朗らかな男性。
他者の心に滑り込むのが上手く、キャラバンの財源たる交易で商談を一手に任されている。
優秀な魔法使いでもあるが、一歩間違えば放火魔になりかねない炎狂い。
今晩は20時~20時30分位の開始になります。
よろしくお願いします。
>>101
一度エンディングを迎えて確定した結果は、決して覆らない物とします。
【円環暦697年 夏 2/3 レイル近郊】
輪廻教の聖地、シアラ・ミニア。
大陸最大の富裕国、クァレヴァレ。
この二国の国境沿い、クァレヴァレ側の都市が、レイルである。
聖地を目指す者の多くが経由する事から、信仰の道との通称もある。
むしろ、他国の者にはそちらの名の方が通りが良いだろう。
そんな街の手前で、キャラバンは一度立ち止まっていた。
「レイルに滞在するに当たって、注意しておくべき事があります。
皆、良く聞いて、決して忘れないように」
仲間達を集めて説明を始めたのはテオだ。
本来こういった事はブルーノの仕事なのだが、彼はテオに任せて馬車の点検へ回っている。
車輪や輓具といった要の部分を、いっそ執拗とすら感じる程に繰り返し確認していた。
その異様さは当然誰もが分かる。
必然、普段の騒がしさは一時鎮まり、皆が声に耳を傾ける。
「レイルの治安は安定しています。
信仰の道に相応しく、殺しも盗みも殆ど有りません。
……ただし、それは表向きの話です。
この街では、数年前から人が消える事件が起きます。
莫大な借金を抱えていた。
家族や隣人から疎まれていた。
消えた者はそういった事情を抱えていて、確かに逃げても不自然ではありません。
あるいは、消える直前に酷く酔っていた姿を見られていた、という事もありますね。
しかし、数が不自然なのです。
他の街の、優に倍。
ただの偶然と楽観する事は危険です。
決して、レイルでは一人にならないで下さい。
【最低でも二人、出来れば三人以上で行動する】 よう心がけて下さい」
そこで、テオは言葉を切ってブルーノをちらりと見た。
ブルーノの作業はもう少しかかりそうである。
テオもそう見て取ったのだろう。
当たり障りの無い話で場を繋ぐ事にしたようだ。
「そうそう、レイルの領主なんですが……ここだけの話ですよ?
これがとんでもないマザコンのようなんですよ。
幼い頃の後見人だった、今はもう髪も枯れ果てたドライアドの老婆を常に傍に置いているんです。
事ある毎に甘えた声で意見を求めているというのは、割と有名な話で―――」
領主の情けなさが十分に周知された辺りで、ブルーノの作業は終わった。
事情が事情であるために、レイルへの滞在は最低限。
積荷の取引を終えるための数日を過ごせば、すぐに首都へ向けて発つようだ。
それで話は全て終わった。
馬車の群れはレイルの街門からやや離れた所にいつもの円を組んで止まる。
レイルで捌く荷を乗せた三台だけが門へ向かい、他はこうして街の外に滞在するのだ。
節制を知らない四十四名を養うには当然の方式である。
馬車の入市税はそれなりに高い。
その上、二十台にもなる馬車全てを宿に預けるにも費用がかかる。
野宿に近い形のために多少の危険もあるが、ニムやテオ、そしてメルヴィを筆頭として戦力は整っており大きな問題は無い。
商談へ向かうテオを見送り、ブルーノが合図を出した。
いつも通りの放牧である。
今回は僅か数日だが、各々全力で楽しむのだろう。
ただ、事前の警告のためか、ほんの少しだけ普段の勢いを減じているように、あなたには感じられた。
>>↓1 今日はどうする?
あなたは早速、近くで話し込んでいたサーシャとメルヴィの元へ向かった。
二人は何やら相談しているように見える。
正確に言えば、サーシャがメルヴィに何かを頼み込んでいるようだ。
この二人はそれなりに仲が良い。
あなたが人形のようだった頃、主に世話をしていたのはこの二人なのだ。
恐らくその繋がりだろう。
「あ、丁度良かった。
今ね、メルヴィも一緒に三人で街に行きたいなって話してた所なの」
どうやら、サーシャもあなたと同じ事を考えていたらしい。
あなたとサーシャは連れ立つ事が多いが、どちらも体格はミーニアの子供程度でしか無い。
テオがわざわざ警告までした街を歩くには、少々危険だろう。
素早さには相応の自信はあるが、そもそも事件に巻き込まれないよう振舞う方がどう考えても賢い選択だ。
その点、メルヴィは最も適切な護衛だ。
外見による抑止力、いざという時の実力、両面において最高峰と断言して良い。
勿論、あなたに断る理由は無い。
こちらも同じ誘いをかける所だったと言えば、二人共が嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱり相性最高だね。
以心伝心ってこういう事を言うのかな。
メルヴィ、そういう事だからお願いね」
「あぁ、任されよう。
主君の奥方の護衛も、当然騎士の仕事だからな」
「やだもう、奥方なんてぇ」
サーシャはふやけたような声を出して、あなたに腕を絡める。
滑らかな肌が張り付き、あなたの腕は平たい胸に押し付けられる。
今日のサーシャは夏真っ盛りという事もあり、一段と薄着だ。
上半身など、きつく結んだ幅広の布で胸を隠しているだけ。
一般的な感性を持つ女性ならば、この格好で街に放り出されればその場に蹲って動けなくなる程の露出度である。
一方のメルヴィはといえば、こちらも似たような姿。
しかし、獣欲をそそるとはとても言えない。
男達が見たとして、感嘆の声を上げるか恐怖に震えるかのどちらかだろう。
全身に纏った筋肉の鎧は、最早性別など地平の彼方へ投げ捨てる勢いだ。
話は纏まり、あなた達は街へと入った。
色々な意味で視線を集めながら賑わう通りを練り歩き、様々な店を冷やかす。
そうして一つの通りを端から端まで見終わった所で、あなたは提案した。
『ちょっと情報収集とかしてみない?
テオさんがあんな風に言ってたぐらいだし。
もしかしたら、何か凄い事が起きてるかも知れないよ』
……しかし。
「うーん……あんまり興味ないかな。
本当に何かあったら危ないよ?」
「私も反対だ。
君の命には応えたいが、むざむざ危険に向かうのを見過ごす訳にもいかない」
二人はあなたの意見を否定した。
どうやら、人選を誤ったようだ。
メルヴィがあなたを危険に向かわせる訳が無い。
サーシャも、こういった方面での好奇心は薄いようだ。
これがもし、連れ立っていたのがニム辺りであれば二つ返事で承諾されていただろう。
あなたが意見を曲げないならば、彼女達を説得する必要があるだろう。
勿論、その場合失敗に終われば行動の決定権は二人に渡る。
特に強い主張を持つのはサーシャであるから、あなたは極普通の恋人のような一日を過ごす事になるに違いない。
一部のみを曲げ、他の物事に関する情報を集めるならば、恐らく反対は無い。
危険さえ無ければ二人は特に問題無く賛成するはずだ。
>>↓1 どうする?
『うーん、そっか。
それじゃあ今日は解散して、僕はニムと……』
回ってみるよ。
……とは、口に出来なかった。
絡め取られた腕に、激痛が走る。
サーシャがあなたの肌を抓り、激しく爪を立てているのだ。
「うん?
ごめんね、良く聞こえなかった。
もう一回言ってみてくれる?」
本当に言ったら捻じ切るけど、と彼女の冷えた目が明確に物語っている。
どう考えてもあなたが悪い。
あなたは今、自分に夢中だと一目で分かるような女性と街を歩いていたのだ。
そこに彼女が嫉妬を抱いているニムの名を出せばどうなるかなど、予想はついたはずだというのに。
最早、あなたに抗う術は無い。
決して逃がさないとばかりに腕を引かれ、歩き出す。
助けを求めるようにメルヴィに視線を送っても、自業自得だと首を振られるばかり。
こうして、主導権はサーシャに渡った。
引き摺られるままに向かう先は、どうやら劇場だ。
本日の演目は恋愛劇のようである。
その劇が、気の多い男が妻に背を刺されて終わる物であったのは、偶然だと思いたい所だった。
その日の夜、あなたは無理矢理に寝所へと連れ込まれた。
無論、相手はサーシャだ。
碌に抵抗しないあなたを、彼女は酷く暴力的に貪った。
噛み付くように唇を貪り、殴り付けるように交わった。
しかし、その最中サーシャに喜びの気配は無い。
あったのは、焦燥。
どんな事をしてもあなたを繋ぎ止めたいと、追い詰められた獣のような様であった。
時に涙さえ浮かべて、サーシャは己の体を酷使する。
サーシャは、愛情に飢えている。
彼女が生まれたのは、とある街の娼館であったという。
避妊に失敗した娼婦の子として、彼女は生を受けた。
その生に、愛情など欠片も無かった。
親である娼婦はサーシャの誕生と共に命を落とし、
引き取った娼館の女主人は、サーシャが女である事を幸いと彼女に娼婦としての手管を仕込む。
サーシャに許されたのは、将来金を産む道具としての生活である。
どれ程乾いた物であったかは、あなたにとって想像は容易い。
他の娼婦達も、救いとはならない。
サーシャの愛らしい容姿は、彼女達にとって近い未来の敵としか映らなかったのだろう。
真っ当な愛を注ぐ事は無かった。
残酷だったのは、サーシャに贅沢が許された事だろう。
上等な娼婦にはある程度の教養が求められる。
早い内から学ばせようと、彼女には多くの書物が与えられた。
その中に愛を語る書があった事が、女主人の最大の罪に違いない。
愛とは何なのか。
何故誰も与えてはくれないのか。
淀む心が叫び、しかし現実は醜く汚い。
彼女に見せ付けられた「愛」とは、絡み合う肉欲そのものだった。
娼婦としての教育の一環。
そして同時に客の趣味により、彼女はそれを幾度と無く見た。
これが愛だ。
金銭を代価に与える一夜の快楽こそが愛なのだと、彼女は教わった。
しかし、サーシャは違うと断じた。
ほんの僅か、輪廻の神が齎す郷愁が、それは違うと叫んだ。
求めている物は肉の交わりでは無い。
温かく、柔らかく、ただ包み込まれるような安らぎが欲しいのだと。
だから、サーシャはそれを運命だと信仰している。
偽物と断じた愛を初めて強要されると決まった日に、火の不始末から娼館が焼け落ちたのも。
足の向くままに逃げ出した先で、キャラバンと出会ったのも。
そしてそこに、同じく愛を知らずに育った、あなたが居た事も。
あなたに縋りながら眠るサーシャは、その瞳を涙で濡らしていた。
彼女は愛を知らない。
偽物だと確信しながらも、娼婦の業に頼る以外に何も出来ない。
そして、あなたはサーシャに与える愛を持たない。
一度砕け切った心は、未だそこまでの回復を見せていないのだ。
愛しているなどと囁いた所で、彼女の心を切り刻む虚偽にしか成り得まい。
今のあなたでは、まるで足りない。
あなたは手を伸ばし、サーシャの体を抱き締めた。
今出来る事はたった一つ。
ほんの気休め、あるいはそれ未満でしか無い。
どうか、せめて夢の中だけでも、サーシャが満たされていますように。
絶対の主と信仰する女神に、そう祈るだけがあなたの出来る全てだった。
【円環暦697年 夏 3/3】
レイルでの滞在は、何事も無く終わった。
皆が警告に従ったからか、それともただの杞憂であったのか。
ともかく、今も四十四人は一人も欠ける事は無い。
……ただ、あなたの周囲では一つの問題が発生していた。
「……あのさぁ。
なんかサーシャがすっごい冷たいんだけど」
ニムとサーシャの不仲である。
例の一件以来、サーシャが嫉妬を見せる場面は酷く増えた。
事ある毎にあなたとニムの間に割り込もうとし、空中散歩には一度も行けていない。
『いや、うん。
そんな事もあるよ。
少し距離を取って様子を見るといいんじゃないかな』
「えー、もうちょっとどうにかなんない……って、げ」
話を途中で切り上げ、ニムが飛び去る。
もしやと思って振り向けば、遠くからあなたを見詰めるサーシャの姿があった。
ニムには、どう見てもあなたへの恋愛感情など無い。
精神が幼い彼女は、あなたを一人の親友としか考えていないだろう。
本来、サーシャの敵になる存在では無いはずだ。
しかし、サーシャにとってはそう思えないらしい。
全く違う分野であなたの隣を歩むニムは、彼女の手管では追い落とせない相手だ。
天敵だと、まさにそう感じているに違いなかった。
さて、それはともかく今日は良い日だ。
空は夏らしい青が一杯に広がっている。
既にレイルの街は遥か後方だが、首都へ至る街道には町や村も多い。
今日はもう間も無く見えるはずの村で一泊する予定である。
街道のど真ん中、何も無い草原よりはやれる事も多いだろう。
>>↓1 今日はどうする?
(うん、一回逃げよう。
しばらくニムとどこかに行って、サーシャとは距離を取ろう。
その間に、きっと落ち着いてくれる……はず、だよね)
咄嗟にそう考えたあなたは、素早くニムを追った。
サーシャの驚く気配を背に全力をもって走り抜ける。
現実逃避と呼んで良いだろう。
問題の全てを一時棚上げし、風に身を任せる事をあなたは選んだのだ。
……それが、何もかもを砕く事になると、気付きもしないで。
※ システムメッセージ ※
バッドエンドが確定しました。
内容は最悪レベルの胸糞になります。
プレイヤーには、描写を省略してここでコンティニューする権利が与えられます。
>>↓ どうする? (二票先取)
では、描写は省略されます。
【ヒント】
今無理にサーシャをどうこうする必要は有りません。
彼女の精神状態は、負荷をかけなければ時間経過と共に回復します。
さて、それはともかく今日は良い日だ。
空は夏らしい青が一杯に広がっている。
既にレイルの街は遥か後方だが、首都へ至る街道には町や村も多い。
今日はもう間も無く見えるはずの村で一泊する予定である。
街道のど真ん中、何も無い草原よりはやれる事も多いだろう。
>>↓1 今日はどうする?
といった所で今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
コンテニュー選んだもののBADの内容は気になる
できればエンディング後に詳細頼む
乙でした
>>152
あなたとサーシャが結婚してどこかの街に残るENDです。
サーシャは長く狂気に蝕まれた挙句惨たらしく死にます。
一緒に死んでと願われたあなたも死にます。
他の部分は省略を選んだ事を尊重し、何があっても伏せます。
白目を通り越して一周して黒目に戻るレベルの鬱案件とだけ。
遅くなってすみません。
色々と調整に手間取っています。
下手したら、今晩は更新できないかも知れません。
何とかなりそうです。
多分。
21時30分から開始していきます。
『やぁ、その、なんていうか……良い天気だよね、今日は!』
「…………」
「…………」
休憩を取るキャラバンから少し離れた林の中。
陽気に声を上げたあなたに、重い沈黙が圧し掛かった。
ニムとサーシャによる、無言の抗議である。
二人の不仲に、あなたは一計を講じた。
ペットが欲しいから一緒に探してくれないか。
別々にそう声をかけ、二人を同時に連れ出したのだ。
共同作業に、愛らしい動物。
それらを介して僅かでも蟠りが解ければと、そう思ったのだが……。
「チッ……」
「……ッ」
ニムの舌打ちにサーシャは何も言わず、ただあなたと絡め合った腕に力を籠める。
控え目に言って、空気は最悪だった。
ニムは、端的に言って能天気だ。
普段であれば、わざわざ不快な雰囲気を作ろうとはしない。
しかし、サーシャの態度が余りにも悪すぎる。
喧嘩を売っている、どころでは無い。
最早正面から殴りつけているとさえ言って良いだろう。
「……ねぇ、やっぱりニムは帰ったらどうかな。
その足で動物なんて捕まえたら、折角のペットがグチャグチャになっちゃうんじゃない?
加減なんて知らないでしょ。
いっつも馬鹿みたいに全力なんだから」
今もまた一撃が叩き込まれた。
あなたの少し前方を飛ぶニムが振り返り、据わった目でサーシャを睨む。
その口から返るのは、勿論売り言葉に対する買い言葉だ。
「捕まえるんならこいつがいるじゃん。
飛んで見つけて手を伸ばせば終わり。
あんたこそ帰れば?
一人だけ役立たずって誰でも分かると思うんだけどなー」
一秒毎に、空気は険悪さを増していく。
思わずあなたは空を見上げた。
短慮であった。
せめて、サーシャがもう少し心を安定させるまで待つべきだったのだと、今更に後悔が襲う。
もしくは、成熟した精神を持つ年長者に相談する手もあっただろう。
ブルーノなどはキャラバン内のトラブル解決に慣れており、特に頼りになる。
彼からの助言の一つもあれば、あっさりと答えが見つかる可能性もあったのだ。
しかし、もう遅い。
既に行動に移してしまった今、二人はあなたを挟んで喧嘩の真っ最中だ。
「役立たず?
それってもしかして自分の事かな。
林でハーピーなんて、いるだけ邪魔でしょ。
あぁ、もしかして自分が小鳥だって勘違いしてるのかな。
ありそうだよね、何せ頭が頭だし」
「そういうあんたは好きそうだよね、林。
そこら中にお仲間が居るから一緒に走り回ってればいいじゃん。
あたしが捕まえて食ってやるからさぁ」
言葉の鋭さはまるで刃だ。
聞いているだけで肌が斬れるのでは無いかと、あなたは錯覚を覚えたかも知れない。
一触即発という言葉がまさに相応しい。
二人は自制を知らないイスナ教徒である。
どちらかが冷静になり怒りを収めるなど、期待するだけ愚かだろう。
このままでは、下手をしなくとも命の取り合いにまで発展しかねない。
どうすべきかと、あなたは急ぎ頭を巡らせた。
>>↓1 どうする?
『もう、二人ともいい加減にしてよ!
そんなんじゃ動物が皆逃げちゃうじゃないか。
僕達は喧嘩しに来たんじゃなくて、ペットを探しに来たんだってば』
あなたは咄嗟に、怒った演技をした。
怒りを交し合う二人の間に踏み込み、精一杯表情を作って大声を出す。
『もういいよ!
二人が働かないなら、僕一人で探すから!』
啖呵を切ったあなたは腕を振り解き、踵を返した。
広い歩幅を意識して大股に、いかにも怒っていますという風に林の奥へと向かう。
それを見た二人は……。
>>↓1 コンマ判定 【意思対抗 / 対サーシャ】
基準値 5
意思 5(あなた)
依存 4(サーシャ)
意思 -3(サーシャ)
激怒 -3(サーシャ)
目標値 8
>>↓2 コンマ判定 【意思対抗 / 対ニム】
基準値 5
意思 5(あなた)
意思 -4(ニム)
激怒 -3(ニム)
目標値 3
【意思対抗 / 対サーシャ】
目標値 8
出目 6
成功!
【意思対抗 / 対ニム】
目標値 3
出目 8
失敗……
「あっ……ち、違うの!
そんなつもりじゃなくて!」
サーシャの声は焦燥一色に彩られた。
普段の獣人らしい身のこなしがまるで嘘のようだ。
木の根に足を取られながら、無様にあなたの背を追っている。
青褪めきった顔を見れば、総身に満ちていた怒りなど一瞬で消え失せたと一目で分かる。
これでは喧嘩どころでは無いだろう。
彼女に関しては、あなたの目論みは功を奏したと言える。
しかし。
「…………きっもちわるい。
何それ、あんたも喧嘩売ってんの?」
ニムについては、まるで効果を上げなかった。
それどころか、激怒の気配はより密度を増している。
子供じみた表情ばかりを見せる彼女が、今だけは外見相応の雰囲気を纏う。
凍えるような、完全に冷え切った視線があなたとサーシャを穿つ。
青く鋭い瞳に宿る輝きは刃のそれだ。
既に、彼女の中には殺意すら育っているのかも知れない。
「もういい。
あんたなんか、友達にするんじゃなかった」
ニムは、そうとだけ残して飛び立った。
木々の間を通って上空へ。
瞬く間に見えなくなった彼女を追う事は、きっと難しいだろう。
二人の喧嘩は収まった。
しかし、代償は大きい。
ニムとの仲違いは、あなたにとって痛恨の出来事と言える。
「え、と……」
あなたの服を掴んだサーシャが、か細く呟いた。
何か言わなければならないのに、言葉が見つからない。
そういう様に、あなたには見えた。
ニムが消えて二人きりになる、自分の態度を直視出来たのだろう。
今のサーシャの顔からは、罪悪感が見て取れる。
「……ごめん、なさい」
酷く落ち込んだ様子のサーシャは、しばらくの時間の後ようやくそれだけ口にした。
ニムがどこへ行ったかは、木々が邪魔をして分からない。
追跡は困難だろう。
そもそも、上手く発見出来たとしてニムが再びあなたから距離を取る事も有り得る。
無為に終わる可能性は高い。
それならば、サーシャと共に一日を過ごすのも良いだろう。
サーシャの心の均衡は、更に崩れた。
普段の悪戯な笑顔など、どう考えても浮かべられるはずが無い。
それでも、あなたと一緒に過ごしていれば、幾らかでも回復する目はあるかも知れない。
俯くサーシャの手を握りながら、あなたはどうしようかと考えた。
>>↓1 ペット探しを続けますか?
『ペット探し、続けようか。
ニムが好きそうな子を探してさ、二人で謝りに行こう?』
あなたの提案に、サーシャは頷いた。
その動きも酷く弱々しい。
注視していなければ見落としていただろう、小さな物だ。
完全に憔悴している。
ほんの一時で、まるで別人のようだ。
少しでも持ち直してくれるよう、祈る心地であなたは歩き出す。
幸い、今は夏だ。
春に子を孕んだ動物達が出産を終え、育っている頃だろう。
首尾良く見つけられれば、幼獣特有の愛らしさが心を癒してくれるはずだ。
今のサーシャは、捜索に気を割く事は難しい。
それどころか足手纏いとしかならない。
フラフラと歩くサーシャを気遣いながら、あなたは目と耳を懸命に働かせる。
>>↓1 コンマ判定 【ペット探し】
感覚 12
憔悴 -3(サーシャ)
目標値 9
【ペット探し】
目標値 9
出目 10
ファンブル!!
あなたの五感は、人類において最高峰を誇る。
目も耳も鼻も最早野獣並み、時にそれ以上の性能を発揮する事もある。
だから、それを聞く事も容易かった。
『これは……狐かな?
多分はぐれた子供だと思う。
親を呼ぶみたいな、切ない声だよ。
ほら、サーシャも聞こえない?』
「あ……うん。
私じゃ、はっきりは分からないけど……」
あなたとサーシャは、鳴き声に誘われるままに林を進んだ。
子狐ならばあなたの目的には問題無く適う。
ペットとして懐いた事例も十分に有る上に、ふさふさとした尻尾はとても愛らしい物だ。
ニムも気に入るに違いないと、あなたは足を急がせる。
そして……。
二匹の子狐を目にして、あなたの背筋が凍った。
狐、確かに狐だ。
大きく、そして尖った耳。
尾の先端だけが白い、褐色の体毛。
しかし、その瞳。
禍々しい血の色をした、瞳孔の存在しない眼球が全てを打ち壊していた。
死神の赤い瞳を直視してはならない。
それは毒。
ただ見るだけで四肢を縛る、悪鬼の瞳である。
人々にそう伝えられる獣が、あなた達が発見した物の正体だ。
あなたは素早くサーシャにも目を逸らさせ、後退した。
このままここに居ては不味い事は、考えずとも分かる。
子狐達は親を呼ぶ声を上げている。
もし親が、成熟した捕食者が現れれば、子を見失って気が立っているだろうそれがどう振舞うかは明白だ。
賞金が懸けられるような強大な魔獣には数段劣るだろう。
しかし、厄介な能力を持つ危険な野獣を相手に、憔悴したサーシャを連れたままで対抗出来るとは考えるべきでは無い。
幸い、子狐達の眼球にはまだ大きな力は無いようだ。
僅かだけ直視したが、あなたの体に違和感は存在しない。
>>↓1 どうする?
心を覆い始めた焦りを、あなたは抑えた。
危険だが、しかしこれは好機でもある。
あなたは他者の心を掴む魔法を扱える。
それを用いて手懐けてしまえば問題無くペットとして扱える可能性もあると、そう考えたのだ。
成功しさえすれば、将来的にはキャラバンの戦力として数える事も不可能では無い。
もし万一魔眼を仲間に向けても、牙を突き立てる前に止められれば問題無いだろう。
あなたは意を決して子狐達に近付いた。
しゃがみこんでキュウキュウと鳴き声を真似、警戒を解こうと試みる。
更に、道すがら獣の気を引くためと摘んでおいた果実を、彼らの目の前に二つ転がした。
人間と接した事が無いのだろう。
意外な程に警戒心が薄い彼らは、あなたが何もしないと分かるとあっさりと果実をつつき始める。
一つずつを食べて気に入ったらしく、子狐は次を催促するようにあなたを見上げる。
これならば、魔法も最低限だが通るだろう。
『眼を逸らさず。
耳を塞がず。
手を解かず。
あなたの視界に、どうか僕が映りますよう』
小さく、呟くように詠唱が紡がれる。
それを聞いても、子狐達の様子に変化は無い。
小首を傾げて、不思議そうに見詰めるのみだ。
『祈りの名を、ここに 《掌握 / キタン》 と名付けます』
そうして、魔法が効果を発揮した。
子狐達は数度目を瞬かせ、それからあなたが差し出した手へと近寄る。
指先の臭いを嗅ぎ、安心したようにペロリと舐める様は、無害な獣のそれだ。
今ならば抱き上げても抵抗されないだろうと、あなたは確信する。
目的は達した。
後は急ぎこの場を離れれば良い。
だが、あなたは今魔法を行使した。
という事は勿論、その反動が襲い来る事を忘れてはならない。
>>↓1 コンマ判定 【反動軽減】
魔力 1
目標値 1
【反動軽減】
目標値 1
出目 1
クリティカル!!
しかし幸運にも、今回の反動は思いの外軽い物だった。
左腕に僅かな痺れが生まれたのみ。
それも麻痺にまでは至らず、少々感覚が狂っただけだ。
当然、行動に一切の制限はかからない。
「ね、ねぇ、その子達本当に連れていくの?」
『勿論、そのために来たんだから。
ちょっと変り種だけど、まぁ良しって事で。
これだけ珍しい子ならニムもきっと喜んでくれるよ』
躊躇を見せるサーシャを促し、子狐を抱えてあなたは走る。
林の出口を目指す最中、どこかから響く狐の声をあなたは確かに聞いた。
しかし、それは酷く遠い。
その上、腕の中の幼獣はあなたに顔を摺り寄せるのに夢中である。
どうやら、親の声はまるで聞こえていないようだ。
結局、捕食者に出会う事無くあなた達は逃走に成功した。
草原の中に並ぶ馬車の列へと駆けながら、あなたは息を吐く。
恐ろしい体験であったが、収穫は十分と言って良いだろう。
後はニムとの仲違いをどうにかするだけだ。
そう考えるあなたにとって、危険な獣を連れ帰った事にブルーノとテオがどれだけ頭を抱えるかなど、勿論想像の外の事だった。
といった所で今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
ほう、魔法ですか。
この魔力値では反動で大変な事になりますねぇ。
腕の一本でも封じた状態で親夫婦と遭遇させましょうか。
サーシャも憔悴状態じゃ足手纏いですねぇ。
よっしゃあなたの目の前で喉破られたサーシャの内臓もぐもぐしましょうねー!
↓
クリティカル!!(白目)
質問です
子供の種族は基本的に母親から遺伝するそうですが、獅子のセリアンスロープと虎のセリアンスロープの夫婦でライガーの子供誕生! なんてのは不可能ですか?
質問
主人公の来歴設定時に、国王である父が圧政を敷いたことで民衆の暴力的革命が起きてとばっかりで国を追われた元・王子と設定できますか?
その場合は円還暦600年以降に誕生させることはできますか?
結局ババアは不死になったの?
それとも若返っただけで後10年もすれば死ぬ?
>>207
その辺は可とします。
元々ケモ度に幅を持たせるためだけの設定なので、緩くて構いません。
>>208
国が滅びるレベルの事は流石に。
とりあえず、今の所は不可とさせておいて下さい。
キャラメイク段階で一、二国くらい滅んでも影響無いように小国家群作っておけば良かったですね。
次への課題にしておきます。
というか未登場の国を小国家群に置き換えられないか検討しておきます。
>>209
ドライアドの老婆は、既に 【あなた】 ではありません。
よって、語れる事は無い物とします。
申し訳ありません。
きゅぅぅぅん、と。
甘えに甘えきった狐の鳴き声が早朝のキャラバンに響いた。
「よぉぉぉぉしよしよしよしよしよぉし。
まぁったく、お前はなんでこんなに可愛いのかねぇ」
……同時に、蕩けた音程の猫撫で声も。
たった一月。
幼い子狐が人間に腹を撫でろとせがむようになるまで、かかったのはそれだけの時間だった。
あなたとサーシャが赤眼の狐を連れ帰った時、起こった騒ぎは小さな物では無かった。
赤い瞳を持つ狐とは、森で出会う災害の代表格である。
規格外の生命である魔獣を除けば相当な上位に位置する猛獣と考えて良い。
遭遇してしまえば、一流の戦士であっても生きるか死ぬかは賭けとなるだろう。
幼子の今は問題無いかも知れない。
しかし、将来己の首を掻き切り肉を食らいかねない獣をわざわざ隣に置くなど、まさに狂気の沙汰だ。
……イスナ教徒のキャラバンですら、そういう意見は多かったのだが。
「ほぉれほれほれほれ。
ここかぁ? うん? ここ撫でて欲しいのかぁ?」
きゅふぅん、と更に子狐が鳴く。
楽しげに身をよじらせるそれは、連れ帰った二匹の内メスの方、ベラと名付けられた個体だ。
腹を上に向けて踊るベラはついに興奮がピークに達したのか、腹を撫でる手に噛み付いた。
悲鳴は無い。
何せ、かぷかぷという擬音が似合う甘噛みである。
悲鳴どころか、むしろ嬌声じみた声が上がるのみだ。
反対意見は確かにあった。
しかし、それはあっさりと駆逐されたのだ。
他でも無い子狐達の余りの愛らしさによって。
既に、二匹の狐はキャラバンのアイドルだ。
キャラバン随一の人気者であったあなたを凌ぐ勢いである。
最早野生の欠片も見当たらないベラなど、一日の殆どを誰かに抱かれているような状態にある。
「あぁもう可愛い奴め!
お前どうすれば自分が可愛いのか分かってやってるんだろう?
全く、このこのこのこのぉ!」
完全に魅了されきった人間のサンプルは、あなたの眼前にある。
今にもベラの腹に顔を埋め頬ずりを始めるのではないかとすら、あなたは思っただろう。
「よし、ちょっと遊んでやろう!
この棒を取ってくるんだぞぉ、この棒だ、いいな? 今から投げるからな?
ほぉーれ、取ってこぉー……」
……と。
そこで振り返ったブルーノは、ようやくあなたに気が付いた。
投げようとしていた棒を取り落とし、ピタリと動きを止めて硬直している。
重い沈黙が、一瞬で場を支配した。
さもありなん。
ブルーノはとうに三十路を過ぎた中年のミーニアである。
そんな男が、こうもはしゃぐ様を見られてはこうもなろう。
それも、普段は頼れる兄貴として君臨する男であれば尚更だ。
どうした物か。
少しだけ頭を悩ませて、あなたは口を開く。
『大丈夫ですよ、分かります。
ベラは本当に可愛いですからね。
サーシャなんかも、しょっちゅう似たような感じになってますし』
「…………忘れてくれ、頼むから」
落ちた棒を咥えたベラが、ブルーノへとそれを渡す。
地面に蹲り頭を抱えていたブルーノだったが、彼女の頭を撫でて褒める事だけは忘れていないようだった。
【円環暦697年 秋】
あの日、あなたが考えた案は上手く嵌っていた。
ニム好みの獣を連れ帰り贈り物とする事で、謝罪の機会とする。
これはまさに狙い通りに機能した。
初めの内は話を聞こうとすらしなかったニムは、子狐の切ない鳴き声に陥落したのだ。
許す、許すからとにかく狐を抱かせろ。
そう言葉を発するまでに要した時間は僅か半刻にも満たない。
ニムはとことん刹那的に生きている。
端的に、頭が足りないと言っても良い。
幾ら激怒から苛烈な言葉を吐いたとしても、この程度の出来事であなたへの評価をころりと戻す位には馬鹿だった。
彼女は再びあなたと空中散歩を楽しむ仲となっている。
また、二匹の存在は思わぬ効用も生んでいた。
それが何かと言えば、今まさに目の前で繰り広げられている。
最近のキャラバンにおける日常風景。
毎日の朝食後に巻き起こる恒例行事だ。
「何そのボッサボサの毛並み。
いっつも汚いままなんて信じられない。
やっぱり親がガサツだと本当可哀想だよね」
「はぁ? ネズミも取れない狐に何の価値があるっての?
みっともなく媚売っちゃってさ。
何かあったらすぐに飢えて死ぬんだろうね。
可哀想なのはそっちじゃん、バーカ」
どこかで聞いたような、売り言葉と買い言葉の応酬。
サーシャとニム。
二匹の狐の飼い主である二人の口喧嘩である。
一見相当な険悪さに見えるが、それが破滅的な事態に繋がる徴候はまるで無い。
狐を一匹ずつ抱いた彼女達の顔は、だらしなく緩んでいる。
二人とも自分が世話をする狐を自慢したいだけなのだ。
サーシャは、ベラの美しい毛並みや甘える姿の愛らしさを。
ニムは、ネルと名付けられたオスの狩りの能力を。
言葉は汚い上に極めて挑発的だが、じゃれあっているに過ぎない。
今や、二人は友人と言って良い。
ペット自慢を一通り終えれば、隣り合って座り雑談を楽しむ姿も良く見られる。
雨降って地固まる、という奴だろう。
サーシャはニムに嫉妬する事が無くなり、ニムもニムでサーシャの元からあなたを連れ去る事が無くなった。
一時はどうなる事かと思ったが、良い形に収まってくれたようだ。
動物って凄い。
そんな間の抜けた感想を抱くあなたは、二人の喧嘩を眺めながら寂しそうにしているメルヴィの膝をぽんぽんと叩いた。
慰めである。
ベラとネルを抱けていないのは、キャラバンでメルヴィだけだ。
未だに警戒され、近付くだけで逃げ出される事に、彼女はどんよりと落ち込んでいる。
顔さえ隠せばどうにかなるのではと言い出し、大きな布で体を覆って謎の怪物と化した事も記憶に新しい。
『大丈夫大丈夫。
逃げる距離は段々短くなってきてるし。
きっともうしばらくすればあの子達も撫でさせてくれるよ』
「……ありがとう。
私の味方は、君だけだ」
メルヴィがいつ狐達に触れるかは、キャラバンにおいて秘密の賭けとなっている。
一番人気は「永遠に無理」だという事は、それこそ永遠に伏せておくべきだろう。
さて、そんな日々を繰り返して秋になる頃。
のんびりとしたキャラバンの移動も、一旦一区切りが付こうとしていた。
財をもって大陸に君臨するクァレヴァレの首都。
王家が直接支配する大都市はもう目と鼻の先だ。
時期は折良く収穫祭である。
賑やかな滞在となるだろう事は疑い無かった。
■ 好感度による自動判定……対象をサーシャに決定します。
【円環暦697年 秋 首都クァレヴァレ】
あなたとサーシャは、収穫祭に賑わう街の中を歩いていた。
流石に大陸きっての富裕国の首都というだけある。
庶民が平時利用するであろう場末の店ですら、地方都市の高級店並の佇まいだ。
壁や看板には決して少なくない装飾が施され、冷やかしに覗いてみれば清掃が行き届いた床には塵一つ落ちて居ない。
また、整然と石畳が引かれた通りも見応えがある。
タイル状に並ぶそれらには一切の狂いが無い。
綿密な計算と正確な職人の腕による物と、僅か一目ではっきりと理解出来るはずだ。
完全な等間隔で並び、夜を照らし上げる街灯なども異常と言って良い。
王都は無論の事、大変に広い。
隅から隅まで明かりを灯すなど、燃料や人員にかかる費用は想像を絶するだろう。
考えるだけで頭が痛くなる程だ。
少々面白いのは、これらの贅が王家による物では無い所だろう。
あなた達が出かける前に、テオはそう語っていた。
クァレヴァレ王家は無能で知られている。
十数代に渡り、完全に貴族達の手によって良い様に扱われるだけの傀儡と化しているのだ。
その原因は円環暦300年代に遡る。
神の奇跡により地上から戦火が排され、交易が爆発的な発展を遂げようとする時代。
次々と転がり込む財貨に気を良くした王家は、慢心してしまった。
何もせずとも懐が潤っていく。
それにただ満足するだけで、本当に何もしなかったのだ。
対して貴族達は精力的に働いた。
街を渡り歩く商人達を優遇し、同時に富を吸い上げるための新しい時代に則した仕組みを作り上げた。
王家は富んだ。
しかし、他の貴族達はより遥かに富んだ。
時の王が事態に気付いた時にはもう遅い。
既に王家の権力など鼻で笑える程の財を、重鎮達の誰もが握ってしまっていた。
それ以降、国の実権は王から奪われた。
今日の王など、一切の誇張無くただのお飾りでしか無い。
物心付いた瞬間から放蕩漬けで意思を奪われ、最低限の行事に出席するだけの存在だ。
王都の煌びやかな様は、王の周囲を固める者達による、彼らのための装飾である。
もしくは、自分達は王家を蔑ろにしている訳では無いのだという言い訳でもあるのかも知れない。
「テオさんの話、本当みたいだね。
ちょっとびっくりしちゃった」
『うん、王様が出てきても全然聞いてないんだもん。
宰相さんには凄い歓声だったのにね』
勿論、それは民も十分に知る所であったようだ。
王による収穫祭開催の宣言は、散々な様相であった。
何より酷いのは王が全く気にした様子が無かった事だろう。
民がどう思っているかなど興味が無いと顔に書いてすらあった。
もっとも、そんな事はあなた達には関係無い。
国を憂う愛国者などでは有り得ないのだ。
国家上層部の事情など、ただの世間話以上の価値は持たない。
それよりも重要なのは、今日の祭をどう楽しむかにある。
「……ところでさ。
持ち合わせって、ある?」
『……うぅん、さっぱり。
財布を逆さにしても埃しか出てこないよ』
「実は私も……えへへ、どうしよっか」
だが、あなたとサーシャは揃って見事に素寒貧であった。
これでは金のかかる遊びは楽しみようが無い。
あなた達は顔を見合わせて考えた。
収穫祭の過ごし方は、幾らか考え付くだろう。
まず一つは、さっさと金を稼いでしまうという手だ。
あなたは天上の美声を誇り、歌唱力には定評がある。
サーシャもあなた程では無いが、今すぐ旅芸人に転職しても食べていけるだけの歌い手だ。
賑わう広場の一角で歌声を披露すれば、今日遊ぶだけの資金は確保できるだろう。
祭を楽しんでいるだろう他の仲間を探し、たかってみるのも良い。
世話焼きのブルーノや、あなたの従者を自認するメルヴィであれば十分に目はある。
小言の一つ程度はあるかもしれないが、問題では無いはずだ。
いっそ金のかからない物に狙いを絞るという案もある。
商品の購入は諦める事となるが、冷やかして回るだけでも雰囲気は味わえるだろう。
また、旅芸人達への御捻りは義務では無いために、大道芸だけは片っ端から楽しむ事が可能だ。
>>↓1 どうする?
ここは金を稼ぐべきだろう。
折角の祭なのだ。
買い食いの一つも出来ないようでは余りに寂しい。
だが、その手段をあなたは歌では無く、売春にしようと考える。
あなたの見目は極めて整っている。
祭で浮かれる街ならば、買い手はすぐに見つかるだろう。
どれだけ貰えるか分からない御捻りよりも、交渉次第だが確かな収入となるはずだ。
そう決めて、あなたはサーシャを見る。
あなたが体を売る間、彼女はどうさせるべきだろうか。
>>↓1 サーシャにも売春をさせますか?
『歌って稼ごう。
一緒にやるより別々に歌った方が効率的だし、後で集合って事で。
お昼にここでいいかな?』
「うん、それでいいよ。
どっちが稼げるか勝負だね」
あなたが提案し、サーシャは快諾した。
別れた後にあなたが何をするかは隠してだが。
サーシャは、娼館に関する暗い過去を抱いている。
売春を匂わせる事は避けるべきだろう。
当然、強要など有り得ない。
それはただの一撃で彼女の想いを終わらせる最悪の選択だ。
そうして、あなたは裏通りへ向かった。
収穫祭で賑わうのは、表だけでは無い。
娼館が並び、どこにも所属しない街娼が科を作るそこもまた多くの人間が歩いていた。
あなたは欲望の神の信徒であり、他者の欲を受け止める神の子だ。
当然、じっと観察し探す相手は最も性欲が旺盛な者である。
満たすならばより大きい満足を与えられる者にすべきだと、あなたは当たり前に考えたのだ。
しばしの後、あなたは三人の青年達に目を付けた。
決め手は目である。
通りに立つ女達を品定めするために落ち着きなく彷徨うそれは、完全に血走っていた。
恐らく、地元から一緒に出てきた友人達であろう。
一塊となって歩いているが、態度にまるで余裕が無く、会話すらしていない。
今日、童貞を捨てる。
それも、可能な限りの最上の女で。
考えが透けて見え過ぎる、そういった態度だ。
交渉は実に容易く進んだ。
参考としたのはサーシャである。
育ての親によって娼婦となるべく育てられた彼女を見ていれば、男を誘う術は知れる。
サーシャ自身は己を売った経験が無いようで不完全な所は見て取れるが、今回はそれで十分だった。
青年達に近付き、腕を抱いて媚を売る。
そうして三人で買ってくれないかと言えば、あなたが持つ絶世の美に彼らはあっさり頷いた。
男だけど良いかと確認した際には少々話し合いが持たれたが、それも問題無い。
何なら、脱がしさえしなければあなたは美少女とも見える中性振りである。
三人が一人ずつ娼婦を買うよりも遥かに安いという事もあり、最低限前座になれば良いとの結論が出たようだ。
あなた達の足は、すぐ近くにある連れ込み宿へと向けられる。
青年の一人が宿の代金を払う間。
僅かな時間も惜しいとばかりに、残りの二人はあなたの衣服の隙間に手を差し込み、その素肌をまさぐっていた。
///////////////////////////////
※ システムメッセージ ※
R-18案件につき、描写は省略されます。
///////////////////////////////
魔法カード 【安価の魔手】
>>1の精神にダイレクトアタック。
力尽きたので、申し訳ないですが今日はこの辺で。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
今晩は21時位の開始になります。
多分。
よろしくお願いします。
事を終えた後、青年達が払いを渋る事は無かった。
むしろ追加を払うからと夜までの延長を申し出た程だ。
勿論、あなたはそれを断った。
サーシャとの約束の時間までそう時間は無い。
手早く身支度を整え、あなたは連れ込み宿を後にする。
「あ、きたきた。
もう、結構待っちゃったよ」
あなたが広場に戻ると、既にサーシャは待っていた。
つまらなそうな顔をふにゃりと笑顔に変え、あなたへと大きく手を振る。
そのまま軽快に駆け寄り、いつものように腕を絡めた。
「そっちも結構稼いだんでしょ、早速回ろう?
面白そうなの、さっき見つけておいたんだ」
サーシャが求めるまま、あなたは歩を進める。
一日は長い。
始まるまでに少々時間を取られてしまったが、それでも十分に楽しむ事は出来るだろう。
あなた達は手始めに近場を巡った。
数多の大道芸人が磨いた技を披露する広場だ。
次々に投げ上げたナイフを手や足、時には口まで用いて受け止める者。
全身を灰色に塗り一切の動きを止め、見ただけでは見抜けない程に石像に成り切る者。
体の半分もある長さの剣を、あろう事か丸呑みにする者。
そういった芸に、あなたとサーシャは見入り、手を叩いて賞賛した。
……その中に、一つ良く良く見慣れた男を見つけもした。
赤々とした炎に照らされたドライアド、テオである。
彼が松明に息を吹けば、高々と火柱が上がる。
膨らんだ炎はテオが手を振るのに合わせて華麗に踊った。
彼の指揮の下、炎は分かれ、舞い、広がり、集束して爆発する。
恐らく魔法を操っているのだろうが、そうと分かっていても見ずにはいられない見事な演舞であった。
御捻りを投げる観衆に、彼は優雅に一礼し、本番は夜だと告げた。
炎が最も映えるのは、当然日が落ちてからだ。
今の演舞はほんの宣伝であったらしい。
宣伝でこれならば夜にはどうなるのかと、多くの観衆が楽しみにしているようだった。
未だ燃える松明を片手に、テオはどこかへ立ち去った。
恐らくだが、また別の場所で宣伝を行うのだろう。
それを見送り、あなたは次は屋台にでも向かおうかと提案する。
……しかし。
「うぅん、私はここだけでいいかな。
折角稼いだけど、お金は使わないで見るだけにしようよ」
サーシャはあなたの腕を抱いたまま、そう言った。
視線はじっと正面に向けられている。
……決して、あなたを見ようとはしない。
>>↓1 どうする?
『遠慮なんかしないでいいよ。
三日三晩遊べるぐらいは貰ったからさ。
屋台で買い食いもしないなんて、お祭なのに勿体無いよ』
サーシャの意見に、あなたは反対した。
ずっしりと重みを増した財布を示し、誘いをかける。
そうして胸に抱かれたままの腕を引く。
食欲をそそる臭いさえ嗅ぎ付ければ、意見は容易く翻るだろう。
サーシャと共に美味を批評するのはきっと楽しいはずだ、と。
『……サーシャ?』
しかし、サーシャは手を解いた。
水が逃げるようにするりと腕が抜け、あなたとサーシャの間に一歩の距離が生まれる。
「どうしてかなぁ。
いつもはこんなに気にならないのに。
キャラバンだと、良くある事なのにね。
……少し、におうよ。
男の人の臭いがいっぱい」
サーシャの言葉に、あなたは息を呑んだ。
彼女の五感は、残酷なまでに優れている。
水をたっぷりと用いて落としたつもりで居たが、足りなかったようだ。
あなたが青年達に体を売った事を、サーシャは既に気付いている。
そのまま二歩、三歩と、あなた達の距離は広がっていく。
「なんだかね、どうしても嫌な考えが消えてくれないの。
私達、結局ごっこ遊びなんだなぁ、って。
愛なんて知らないのに形だけ真似てる、紛い物なんだ、って」
サーシャは視線を逸らし、横を向いた。
先を追えば、そこには一組の親子連れ。
愛らしい少年を連れる、たくましい父親とたおやかな母親の姿がある。
焦がれるように、サーシャはそれをしばし見詰めた。
「迷惑……だとは思ってないと思うけど、ごめんね。
それと、ありがとう。
私の遊びに付き合ってくれて。
今日は、一人で回る事にするね」
あなたへと目を向けないまま。
サーシャは、背を向けて歩き出す。
「―――さよなら」
最後にあなたへと届いたのは、そんな一言だけだった。
一人、広場に残されたあなたは呆然と立ち尽くした。
今、何かが決定的に終わったのだという確信があった。
どう足掻いても越えられない断崖を前にした、そんな思いにも近い。
最早サーシャとは、以前のような関係に戻る事は不可能だろう。
一人の仲間として隣に並ぶ事は出来るかも知れない。
しかし、互いの欠落を満たし合う、紛い物の恋人達として振舞うことは、もう出来ない。
手元には十分な金銭。
周囲には祭の狂騒。
イスナ教徒としては決して逃してはならない一日。
……それを楽しもうという考えは、どうしてか湧き上がる事は無かった。
【円環暦697年 秋 固定イベント『訣別 / 愛を求める少女』 了】
■ あなたのステータス
【5歳 男性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : リリパット】
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足と、木の葉の形の尖った耳を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
【種族能力 : 直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
【筋力】 1
【耐久】 2
【器用】 3
【敏捷】 10
【感覚】 12
【意思】 5
【魔力】 1
【幸運】 7
【出身地 : ネレンシア / サルタン】
【現在地 : クァレヴァレ / 首都クァレヴァレ】
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org356607.jpg
◆ 習得魔法
【種火】
掌に収まる程度の小さな炎を発生させる。
【清水】
両手で作った器に収まる程度の少量の水を召喚する。
【微風】
頬を優しく撫でる程度の僅かな風を発生させる。
【土塊】
拳程度の大きさを限度とする少量の土を召喚する。
【掌握】
『あなたのハートを鷲掴み☆』
一度心を掴んだ対象に行使する事で、一時的に好意を持ちやすく、敵意を抱きにくい状態を作る事が出来る。
あなたに対する好感度が高い程、効果と持続時間が強化される。
一般的な友人レベルの場合、三日間、おねだりに無性に応えたくなる程度が限界。
■ 所持品一覧
◆ 1500 Casa ← NEW
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 注意事項 ※
イスナの熱烈な教徒たるあなたは、宵越しの金を持てません。
特殊な事情が無い限り、季節が変動する毎に自動的に所持金の全てを享楽に費やします。
◆ 《欲望》の聖印
あなたが首から提げている、聖印を象った木製の首飾り。
特に効果は無いが、見せ付ける事で輪廻教徒をドン引きさせる事が可能。
◆ ダガーLv1
基礎攻撃力 : 2
加工補正 : 2
肘から手首までの長さの刃を持つ、護身用の短剣。
戦闘用としては心許ないが、無いよりはマシ。
木材や動物素材などの物品加工にも適している。
■ キャラバン主要メンバー
◆ メルヴィ
【19歳 女性】
【種族 : ジャイアント】
巨体を誇るジャイアントの中でも一際大きな体躯の、穏やかな女性。
全身を重厚な筋肉で覆われ、見た目通りの怪力と体力を持つ、キャラバンにおける武力の代表格。
あなたを主君と仰いでいるが、そこには破れた夢へ向ける悲哀が籠められている。
剣に関して、何か思う所があるようだ。
◆ サーシャ
【6歳 女性 / 現実世界の人間換算で16歳相当】
【種族 : セリアンスロープ / 鼠】
キャラバンで最も体格や年齢があなたと近い、人懐っこい愛嬌がある女性。
ミーニアの血が濃く、耳と尾以外に獣の要素は無い。
気配察知や隠密行動に優れ、それを生かした悪戯に定評がある。
あなたと決定的に訣別した。
元通りの関係に戻る事は、もう不可能だろう。
◆ ニム
【21歳 女性 / 現実世界の人間換算で27歳相当】
【種族 : ハーピー】
キャラバン唯一のハーピーであり、飛翔能力を用いた索敵で道中の安全に一役買っている。
魅力的な女性の姿態を持つが、本人の精神が幼く、それを武器と思っていない。
物事を深く考えるのが苦手で、感性のみで生きている。
私物に他人が近付く事を酷く嫌っているようだ。
◆ ブルーノ
【37歳 男性】
【種族 : ミーニア】
大酒飲みの粗野な男性。
面倒見が良く、様々な雑用や仲間の悩みの解決に喜びを見出している。
キャラバンの頼れる兄貴分。
◆ テオ
【28歳 男性】
【種族 : ドライアド】
ドライアドにおいて最も縁起が良いとされる、パキラの髪を持つ朗らかな男性。
他者の心に滑り込むのが上手く、キャラバンの財源たる交易で商談を一手に任されている。
優秀な魔法使いでもあるが、一歩間違えば放火魔になりかねない炎狂い。
※ システムメッセージ ※
今回、あなたは収穫祭で所持金を使い果たせませんでした。
例外的に、売春で稼いだ1500Casaはそのまま保持しています。
【円環暦697年 秋 自由行動 1/3】
祭が終わった次の日、あなたは目を覚ました。
すぐ隣には生物の気配。
……それは、サーシャでは無い。
キャラバンの仲間、その一人である女性だ。
酔った彼女に求められるまま、あなたは体を開いたのだ。
良くある事、である。
だが何故だろうか。
寝所となっている馬車の扉を潜る時、あなたは一度だけ躊躇した。
他者が求めるままに欲を満たさせるのが使命であるというのに。
眠る女性を起こさないよう、あなたは着替えを済ませた。
彼女は何の変哲も無いミーニアだ。
五感は相応に鈍く、昨晩の泥酔を考えれば大音を立てても起きないだろう。
それでも、あなたは細心の注意を払って動いた。
サーシャと共に迎える朝のように、だ。
馬車を出れば太陽は既に顔を出し、東の空を青く染めていた。
(体が、少し重い。
風邪でもひいたのかな)
それを見てあなたが抱いた感想は、そんな乾いた物だった。
祭が終わっても、キャラバンはしばらくの間首都付近に滞在するようだ。
次の移動はまた季節が変わる頃になるとブルーノは言っていた。
首都は豊かな都市だ。
治安も相応に安定している。
何をするにしても、不自由はしないだろう。
>>↓1 今日はどうする?
【円環暦697年 秋 首都クァレヴァレ】
「予算はそんだけか?
それだと……こっちの数打ちになるな」
適当に覗いた武器屋で、巨人の店主はあなたにそう告げた。
ゴツゴツとした巌の掌で示す先には、長大な両手剣が並んでいる。
両手剣、とは言ってもそれはミーニアの基準での話だ。
ジャイアントたるメルヴィに持たせれば、たちまち片手剣に変わるだろう。
そして、あなたにとっては巨大な重りに過ぎない。
引き摺るのが精一杯で、振るうなど夢のまた夢だ。
さて、乱雑に並べられる数打ちの剣は、質が良いとはとても言えない。
最低限の品質は当然確保されているが、一切の飾り気が無い鉄の塊という評価が正しい。
分厚い刃は鋭さにも欠けている。
勿論、潰し切るという大剣の用途には適いはするのだろうが。
■ ツーハンドソード Lv1
価格 : 1200 Casa
基礎攻撃力 : 7
一般的なミーニアの身長をやや上回る、大型剣。
戦闘用として十分な威力を持つが、作りは雑。
大きさの分当然重く、十全に扱うには常人の筋力では難しい。
筋力値が6未満の場合、戦闘中の様々な行動にペナルティ。
順番間違えました。
>>262は一旦無かった事に。
あなたは一人、キャラバンを後にした。
メルヴィの剣について、ふと思い出したのだ。
彼女が剣に対して抱く感情を、あなたは詳細には知らない。
だが想像はつく。
メルヴィにとって、剣とは騎士の象徴なのだろう。
メルヴィは、既に騎士とは呼べない。
ならば剣を握るべきではないと、そう考えているに違いない。
カラデナの温泉街で、彼女は今の自分をごっこ遊びだと語っていた。
今の彼女に剣を差し出した所で、恐らく手に取りはすまい。
相応しくないと固辞する事は目に見えている。
それでも、一本を手元に置いておく事には、きっと意味があるだろう。
【円環暦697年 秋 首都クァレヴァレ】
「予算はそんだけか?
それだと……こっちの数打ちになるな」
適当に覗いた武器屋で、巨人の店主はあなたにそう告げた。
ゴツゴツとした巌の掌で示す先には、長大な両手剣が並んでいる。
両手剣、とは言ってもそれはミーニアの基準での話だ。
ジャイアントたるメルヴィに持たせれば、たちまち片手剣に変わるだろう。
そして、あなたにとっては巨大な重りに過ぎない。
引き摺るのが精一杯で、振るうなど夢のまた夢だ。
さて、乱雑に並べられる数打ちの剣は、質が良いとはとても言えない。
最低限の品質は当然確保されているが、一切の飾り気が無い鉄の塊という評価が正しい。
分厚い刃は鋭さにも欠けている。
勿論、潰し切るという大剣の用途には適いはするのだろうが。
■ ツーハンドソード Lv1
価格 : 1200 Casa
基礎攻撃力 : 7
一般的なミーニアの身長をやや上回る、大型剣。
戦闘用として十分な威力を持つが、作りは雑。
大きさの分当然重く、十全に扱うには常人の筋力では難しい。
筋力値が6未満の場合、戦闘中の様々な行動にペナルティ。
続いて目にするのは、良質の大剣だ。
友人への贈り物としたい。
そういうあなたの言葉に応えて示されたのがそれになる。
店主の言によれば、クァレヴァレの騎士団にも採用されている制式品だという事だ。
作りはシンプルながらも頑健で、古の言葉による装飾も刻まれている。
無論、鋭利さも粗悪品の比では無い。
扱う者の腕によっては岩さえも裂けるだろうと、あなたに確信させるには十分だ。
■ ツーハンドソード Lv3
価格 : 4800 Casa
基礎攻撃力 : 12
一般的なミーニアの身長をやや上回る、大型剣。
戦闘用として何より頼りになる圧倒的な切れ味を誇る。
また、作りが極めて頑丈であり、重い一撃を受けても損傷が生じる事は稀だろう。
大きさの分当然重く、十全に扱うには常人の筋力では難しい。
筋力値が6未満の場合、戦闘中の様々な行動にペナルティ。
あなたは並ぶ剣を見比べ、考えた。
今すぐ買える数打ちにしておくか。
それともどこかで稼いで制式品に手を伸ばすか。
さて、どちらにするべきだろうか。
>>↓1 どうする?
『うーん……今回は見合わせます。
どうせ贈るなら良い物にしたいですしね。
どこかで稼いで、また来る事にします』
「おう、それが良いだろうな。
品切れなんざそうそう起こらん品だ。
ゆっくり稼いでくるといい」
鷹揚に手を振る店主を背に、あなたは店を後にした。
そうして向かうのは、冒険者の宿である。
手っ取り早い稼ぎとなる賞金首。
その情報を求めての判断だ。
笑う黒山羊亭、という屋号の由来は酷く分かりやすい物だった。
カウンターに座る店主を見れば誰にでも理解できる。
そのものズバリ、黒山羊の頭を持つセリアンスロープの女性が宿の主なのだ。
真っ直ぐに近付くあなたへと、彼女は屋号そのままに微笑んだ。
ニィ、と頬を歪ませるその表情は、ともすれば不気味とも写るだろう。
首の半ばから下がミーニアとしか見えないのがまた悪い。
人と獣が混じるセリアンスロープにおいて、最も醜いとされるバランスだ。
だが、山羊の口から漏れる言葉は柔らかな物だった。
冒険者の宿、その店主としては希少と言って良い。
大概の場合は粗野粗雑というのが一般的だ。
「いらっしゃい。
初めて見る顔だけれど、依頼を持ってきてくれたのかしら?
それとも、仕事を探しに?」
あなたの見た目は幼いが、それに対する軽視は無い。
リリパットというのは明白であり、あなたの種族は優秀な斥候としての適性を持つ。
冒険者となる小人はそう珍しい物では無いのだ。
あなたは店主へと愛想良く答え、手配書を確認した。
気になる情報は……。
//////////////////////////
目標値が10を越える判定であり、かつクリティカルでも結果が変わりません。
判定は省略されます。
//////////////////////////
羊皮紙を捲るあなたの手が、ピタリと止まった。
そこに描かれているのは、一人のミーニアの女性である。
容貌は美しく、豊満な体付きだ。
真っ当な趣味の男ならば放っておくなど有り得ないだろう。
どれ程奥手な物でも思わず声をかけようと手を伸ばすに違いない。
……そんな彼女の罪状は、誘拐だ。
ネレンシアの大貴族、王家とすら並び称される大家の一人息子を奪い、逃げたという。
生死を問わずその身柄を捕えた者には莫大な賞金を支払うと、手配書は語っている。
ただ、その手配書には一つおかしな事があった。
女性の罪は誘拐。
しかも、相手は貴族だ。
だとするならばあって然るべき一文が、どこにも無い。
「あぁ、それね。
おかしな手配でしょう?
普通は別の形になるはずなのにね。
息子を取り戻せ、なんて一言も無いのよ」
そうですね、と返してあなたは苦笑した。
内心では、無くて当然だとも考える。
あらゆる物を削ぎ落とし、父親の言葉に従うだけの人形と化したあなたは、最後には当の父にすら見放された。
人の心を持たず、他者の命令が無ければ何も出来ない、常に微笑むだけの置物。
そのような者が社交の世界で真っ当に扱われる理由が無い。
只管に不気味だと、誰からも遠ざけられたのだ。
恐らく、あなたの父親は幸運だったと感じているに違いない。
使い道の無い失敗作が消えた事を喜んでいるはずだ。
子供などまた誰かに産ませれば良いと考えて。
女に賞金を懸けたのも、単に顔に泥を塗った者を処分するための事だろう。
あなたなど、見つからなくとも良いのだ。
あなたは手配書の確認を再開した。
女性はあなたにとって恩人と呼ぶべき相手だが、心配は不要だ。
彼女を害する事など到底不可能だとあなたは誰よりも知っている。
実家からキャラバンへと運ばれる間、それを十分以上の確信している。
今もこの女性は元気に、そして暢気に世界を巡っているだろう事は想像に容易い。
この付近に存在する魔獣は、二体だけのようだ。
流石に首都だけの事はある。
大半の魔獣は騎士団によって征伐されているのだろう。
一体目は、近隣の森に住み着いた、大蜘蛛の魔獣。
一般的なミーニアと同等の体躯を持つそれは、数多の樵を食い殺し木々の伐採を妨害しているという。
異常に素早く、隠密性に長け、更には地形の関係から大人数の投入には全く向かない。
また、鮮血蜥蜴に匹敵するレベルの麻痺毒を持つという情報もあるようだ。
懸けられた賞金は【70000 Casa】
二体目は、首都からやや東の平原に潜む、蚯蚓の魔獣。
大地を割り、岩を砕いて進む剛力を持ち、足元からの奇襲を得意とするという。
地面の揺れから攻撃の察知は容易なようだが、単純な力と巨木の如き体躯による重量が脅威であるようだ。
また、傷を負わせるだけでは地中に逃げられて討伐に失敗する恐れもある。
懸けられた賞金は【45000 Casa】
あなたは手配書を睨み、さてどうするべきかと考えた。
どちらであっても剣の購入には十分、むしろ過剰と言うべきだ。
ニムと二人で山分けしても、剣どころか鎧一式を揃えて大量の釣りまで出るだろう。
>>↓1 どうする? (討伐を決定した場合、秋の自由行動二回目が消費されます)
大蜘蛛の魔獣にしようと、あなたは決定した。
能力や生息地の情報をしっかりと頭に叩き込み、礼を言って店主へと返す。
そうして、無理はしないようにとの声を背に、店を出る。
ニムならば断る事は無いだろう。
体を動かす事を好んでいる上に、自分から挑む事は少ないが命のやり取りに忌避感を抱いていない。
話を持ちかければ二つ返事で頷くだろう事は全く疑い無い。
(キャラバンに帰ったら早速話を通さないと。
……メルヴィ、剣を受け取ってくれると良いけど)
あなたの足取りは、往路よりも軽い。
目の前にやるべき事を置けたためだろう。
朝に感じた体の重さは、少なくとも今はどこかへと消えてくれたようだった。
■ ニム
【21歳 女性 / 現実世界の人間換算で27歳相当】
【種族 : ハーピー】
キャラバン唯一のハーピーであり、飛翔能力を用いた索敵で道中の安全に一役買っている。
魅力的な女性の姿態を持つが、本人の精神が幼く、それを武器と思っていない。
物事を深く考えるのが苦手で、感性のみで生きている。
私物に他人が近付く事を酷く嫌っているようだ。
【風の隣人】
翼を持つ彼らは当然の能力として、自由自在に空を翔る。
翼に損傷が無い限り飛翔が可能となり、空中での姿勢制御に有利な補正を得る。
【筋力】 8
【耐久】 7
【器用】 2
【敏捷】 14
【感覚】 5
【意思】 4
【魔力】 2
【幸運】 6
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【疾風】
体勢の維持が困難な程の強力な風を発生させる。
効果範囲内の全ての生物や物品に転等や吹き飛ばしの判定を強要する。
また、一時的な飛翔速度の向上にも利用出来る。
ここまでで今日はお開きで。
ろくでもない話に今日もお付き合い頂き、ありがとうございました。
すっきりキリの良い所でまた明日。
よーし、明日は森での大蜘蛛戦だぞー。
何とかシナリオも進んでますが、ちょっと後悔がひしひしと。
度を越えた個性、しかも自己の薄さが際立ってる主人公だと色々辛いですね。
もうここまでのアレな人格は作らないかも知れません。
ねこだいすき。
乙ー
主人公なら何度殺されても復活できるけどニムが殺されたらヤバイ
てゆーかこの大蜘蛛は準備すれば主人公とニムで倒せるレベルの魔獣なの?
仲間死亡イベント確定とか無いよね?
>>287
流石にそこまで理不尽にはしません。
打倒の可能性が全くのゼロの場合、一度死亡した後に「遭遇出来なかった」事にして引き返します。
一周目のあなたが蛇に遭わずに帰れたのと同じ展開になります。
乙ですよ
あなたを誘拐した女性ミーニアってのは双剣ぶん回す規格外だったりすんのかね?
質問です
魔獣はいるようですけど、悪魔や吸血鬼といった魔族は存在しないんですか?
今晩は多分20時位の開始になると思います。
よろしくお願いします。
>>293
何となく書いてませんでしたが、理不尽ダンジョンの時期は円環暦で言えば1200年代位になります。
全く時期が合わないため、どこかの大英雄ではありません。
>>295
悪魔や吸血鬼に類する者は、カダスティアでは 【悪鬼】 と呼ばれ一まとめにされています。
旧世界から伝わる伝承に語られるのみで、実際に目撃された例は今の所存在しません。
じゃあキャラの来歴に、悪魔との契約者とか吸血鬼ハンターとか書いても無効ですか?
有効でも【悪鬼】は登場しないの?
>>297
有効です。
ぶっちゃけ、悪鬼自体は実在するので設定すれば登場の可能性は有ります。
フラグ次第ですが。
主人公を神話の時代のキャラにすることは可能?
イスナ様の兄貴って設定にするというのがふと浮かんだんだが
前世設定組み込みたいが何処までなら許容範囲ですか?
【あなた】を既存キャラ(バスク等)の生まれ変わりにすることもOK?
>>300
神話時代は不可能です。
輪廻の神は円環暦0年に生まれました。
あなたの誕生は輪廻の神の御業による物のため、円環暦以前の世界に生まれる事は出来ません。
>>301
一般人ならば特に問題ありません。
既存の名前持ちキャラの生まれ変わりは、申し訳ありませんが不可となります。
理由については詳細に回答する事が出来ません。
【円環暦697年 秋 自由行動 2/3】
賞金の懸かった魔獣について話せば、ニムは何の気負いも無くあなたの提案を受け入れた。
今回は人選が正しかったようだ。
もしこれがメルヴィ相手ならば言葉を尽くして考え直すよう説得されただろう。
「それで、その大蜘蛛ってどんな奴?」
ニムの言葉に応え、あなたは目標の能力について詳細に語る。
大蜘蛛の魔獣は、巣を張るタイプの蜘蛛では無い。
森の中の一定範囲、己の縄張りと定めた区域を徘徊する種である。
蜘蛛の最大の特徴たる糸は、どうやら投げ付ける形で用いるようだ。
体の大きさは一般的なミーニアの成人男性程度。
ただし、その大半は長く太い八本の脚だ。
胴部は意外に小さく、中型の犬程と考えて良い。
脚の先には鉤爪があるようだが、これは武器では無く登攀用の物だ。
肌に刺さりはしても貫くような大きさは持たない。
武器となるのは、顎から伸びた牙のみとなる。
特筆すべき能力は、二つ。
まず一つ目は、蟲特有の身体性能。
一瞬でトップスピードに到達する瞬発力は、巨体であっても健在であるという。
正面から速度で競う事は愚策に違いない。
また、無音と言い切ってしまっても良い程の隠密性も併せ持つと手配書には書かれていた。
体色が濃灰一色であり、薄暗い森に容易く溶け込む点も脅威である。
二つ目は、牙から滴る毒だ。
ただの一噛みで全身から力を奪い、時には心筋すら即座に停止させる鮮血蜥蜴の劇毒。
それと同等の麻痺毒を保有するらしい。
顎が僅かに掠りでもすれば、それはつまり致命傷と成り得るだろう。
合わせて考えれば、相手は暗殺者と呼ぶのが最も相応しいと思える。
また、相手は魔獣である。
あらゆる魔獣は魔法を操る。
それも、人間の中では一流と呼ばれる魔術師を時には大きく凌駕する程の強力な魔法をだ。
大蜘蛛が魔法を用いたという報告は未だ無いようだが、切り札を隠していると考えなければならない。
注意すべき点は、あなた達の側にもある。
「……結構厄介そー。
森の中だと、あたしも満足に飛べないしね」
ニムの言葉の通り、木々が障害となる森林ではニムの翼はその動きを制限される。
彼女の最大の強みである飛翔能力に頼る事は難しい。
以上を踏まえ、あなた達は相談した。
蜘蛛の縄張りである森に向かう前に、準備しておく事はあるだろうか?
>>↓1 出発準備を自由に行えます。
あなたとニムは、一旦街へと向かった。
目的地は冒険者の宿である。
あなたと同様に賞金首を狙う者を一時の仲間とするためだ。
大蜘蛛の賞金額は莫大な物である。
後数人増えた所で、目標には十分に届くだろう。
……が、しかし。
その目論見はあっさりと挫かれた。
「冗談じゃねぇ!
俺は絶対に御免だ!
いいかお前ら、分かってないみたいだから教えてやる。
賞金首を狙うってのはな。
てめぇの首に斧を叩き込むようなもんだ。
首が落ちても万一生き残ってたら金をくれてやる、っていう、博打の中でも下の下の代物だぜ」
いかにも腕っ節の強そうな大男が、吐き捨てるように言った。
彼が言うには、賞金首を狙う冒険者というのは一流の中の更に上位。
己の力を持て余し生死の淵を歩む事に快感を見出した変態共だけ。
普通の冒険者はもっと簡単な依頼をこなし日銭を稼ぐ者達に過ぎないのだ、と。
周囲を見渡してみると、酒場の誰もが頷いていた。
そうして口々に「悪い事は言わんからやめておけ」と発する。
そこに嘲りの気配は全く無い。
本当に、彼らは心の底から諦めるべきだと忠告していた。
店主である黒山羊のセリアンスロープも、同様の意見のようだ。
彼女はてっきり、あなたが周囲の危険な生物に関して調べるために手配書を読んだと思っていたらしい。
魔獣を狙うと知っていれば絶対に読ませなかったのにと、頭を抱えている。
当然、あなたを手伝おうとする者は居ない。
あなたとニムは、困ったように顔を見合わせた。
>>↓1 どうする?
あなたはその場を適当に誤魔化し、冒険者の宿を後にした。
どうやら、彼らは頼りになりそうに無い。
魔獣狩りの仲間とするのは不可能だ。
ならば、とあなたは考えた。
ならば他の場所で仲間を募れば良いのだ。
何も冒険者である必要は無い。
街の住民達の中にも、戦う力を持つ者は居るだろう。
誘惑でも何でもしてとりあえず頭数を揃えようと、あなたは提案する。
ニムは……それを、どこか白けたような顔で受け入れた。
街に幾つかある広場の一つ。
その内裏通りに空気が近い物を探し出し、あなたは早速人々を誘惑した。
あなたが持つ絶世の美にたちまちの内に魅入られた者達へと、あなたは語る。
森に巣食う魔獣を倒さんとする者は居ないか。
勇者には莫大なる賞金と、そして己を自由にする権利を差し出そう。
内容としては、そんな所だ。
それを聞いた人々の反応は……。
>>↓1 コンマ判定 【説得 / 対民衆】
基準値 5
意思 5(あなた)
意思 -5(民衆 / 平均値)
魔獣 -10(常識外による異常値)
目標値 -5
【説得 / 対民衆】
目標値 -5
出目 3
失敗……
「あ、あぁ、いやすまないね。
悪いが、この後仕事があるもんでさ……」
集まった人々はそんな、おおよそ似通った言葉を次々に残し、去っていった。
彼らの瞳は、明確に動揺していた。
内心を記述するならば、次の様になるだろう。
やばい、頭のおかしな奴と関わっちまった。
と。
瞬く間に、あなた達の周囲には広い空間が出来上がった。
誰もがあなたから距離を取り、必死に目を逸らしている。
最早、勧誘どころでは無い事は間違いない。
「なんかつまんない。
……あたし、もう帰ってもいい?
ネルに狩り教えてる方が楽しそう」
あなたの隣で大あくびをしてから、ニムはそう言った。
ニムのやる気も消え失せる寸前だ。
猫のように丸めた体からは、ひたすらに面倒そうな雰囲気だけが漂っている。
>>↓1 どうする?
『まぁ、そう言わずにさ。
誰も来ないのは仕方ないって事で、武器か何か買って森にいこうよ』
「えー……うーん、どうしよっかなぁ」
ニムはその場でしゃがみ込み、羽根の先で地面の砂を集めている。
完全に飽きた子供の様相だ。
集まった砂の山をツツツと伸ばし、変な顔を描き始める。
『ほら、賞金が出れば何でも買えるよ?
美味しい物だって山ほど食べれるし、ネルのおやつだって買い放題だよ?
戦うのだってきっと楽しいしさ。
ね?』
「…………んー」
>>↓1 コンマ判定 【説得 / 対ニム】
基準値 5
意思 5(あなた)
意思 -4(ニム)
倦怠 -2(ニム)
目標値 4
【説得 / 対ニム】
目標値 4
出目 10
ファンブル!!
「うん、やっぱ抜けるー。
行くなら一人で頑張ってよ。
あたしはネルと遊んでるからさ」
バサリ、と音を立ててニムは飛び立った。
瞬く間に空へ舞い上がり、キャラバンの方向へと消える。
飛べないあなたでは追いつく手段など存在しない。
取り残されたあなたは、がっくりと肩を落とした。
あなたの取り得は、鋭い五感と瞬発力だ。
それは人類としては限界に迫る性能を誇っているが……残念ながら魔獣を超えているとは言えない。
一人で挑んだ所で、無惨な屍を晒すだけの結果になるだろう。
無論、毛筋程の傷も付けられずに、だ。
魔獣を打倒する手段はもう無い。
あなたは何も得られない。
それどころか、むしろニムの機嫌を考えれば失ったとさえ言えるだろう。
こうして、あなたの一日は全くの無為に終わる事となったのだった。
【円環暦697年 秋 自由行動 3/3】
最近、何もかもが上手くいかない。
そんな倦怠感を抱きながら、あなたはメルヴィの鍛錬を眺めていた。
メルヴィの拳は縦横無尽に振るわれる。
重く硬そうな外見とは裏腹に、その技術は柔らかい。
時に思いもかけない箇所から飛び出る掌底や裏拳が大気を砕く様は実に見事だ。
何を仮想敵にしているかはあなたには不明だが、彼女に勝てる生物など存在するのだろうか。
そう思えてしまう程の迫力である。
……同時に、もう彼女には剣など必要無いのではないか、とも。
////////////////////////////////
※ システムメッセージ ※
エンディングフラグが確立されつつあります。
現状のまま進行すると、最短で春の固定イベントにて強制的にエンディングに入ります。
////////////////////////////////
鍛錬を終えたメルヴィに賞賛を伝え、あなたはぼんやりとキャラバンを歩いた。
目に入るのは、いつもの騒ぎだ。
ニムとサーシャがそれぞれ子狐を抱き、互いに自慢しあっている。
その様は完全に親友のそれだ。
あなたが入る余地は残っているのか。
そんな思考が、何故か浮かぶ。
……体が重いと、あなたは嘆息した。
>>↓1 今日はどうする?
「あー、それで最近あいつらセットになってんのか。
てっきりベラとネルのせいかと思ってたんだが……」
気付いてやれなくてすまん、とブルーノは頭を下げた。
だが、それは致し方無い事だ。
ブルーノは四十人以上の大所帯を仕切っている。
一人一人に完全に目を配る事は難しく、あなたも今まで相談をしなかったのだ。
謝る必要なんか無い。
あなたはそう言って彼の謝罪を止めた。
「しっかし、お前らがねぇ。
確かに歪な繋がりだったが、そう悪いもんでも無かったろうに。
まぁ、壊れちまったもんはしょうがねぇか。
それじゃ、最初に確認しとくがよ。
お前、どうしたいんだ?」
ブルーノは、じっとあなたの目を覗き込んだ。
真摯に、誠実に。
酒に浸る時のような軽さは、どこにも見当たらない。
「俺に相談に来るって事は、現状が良くないと思ってるって事だよな。
関係を元に戻したいのか?
また別の関係を作りたいのか?
それとも、ただサーシャを放っておきたくないって事もあるかも知れんな。
ほれ、お前の気持ちを聞かせてくれ」
>>↓1 自由に返答できます。
「……そうかぁ。
そりゃあ、まぁそうだろうなぁ」
表情を亡くしたあなたへと、ブルーノは一つの杯を差し出した。
中身は無い。
ただ空っぽの器を、半ば無理にあなたへ持たせる。
「俺が思うによ。
お前はもう指先を引っ掛けてたよ。
後少し、本当に、ほんの少しだった。
ただ、サーシャと一緒に居ればそれで良かった。
悪く言われる事も多いが、偽物だって悪かねぇんだ。
そこから生まれる本物だって、世の中には幾らでもある」
また間違えた酷い。
>>340は忘れて下さい。
『僕は……』
あなたは、必死に考えた。
一体、自分はどうしたいのか。
元通り。
それでは足りない。
ただ傷を舐めるだけの仮初の関係など、サーシャはもう望んでいないだろう。
誰も幸福など得られず、再び緩やかに崩壊するだけに違いない。
新しい関係。
そんな物は分からない。
愛を知らないサーシャと、心を削ぎ落とし痩せ細ったあなた。
どちらも、決定的な物を持って居ない。
結局、問題は一つに絞られる。
『恋を、知りたいです。
偽物なんかじゃない、本当の恋を』
あなたは過去に想いを馳せる。
いつか、あなたはきっとその感情を抱いていたはずだ。
水路に浮かんだ幼い少女。
彼女と過ごす時間の中に、確かにそれはあったはずなのだ。
しかし、それは失われた。
今ではもう思い出す事も出来ない。
削ぎ落とした物は全てが曖昧だ。
少女の顔も、声も、共にどう過ごしたのかも、回顧する権利すら奪われた。
大事な物だったのだと、そう振り返るだけが限度。
だから、もう一度手に入れたい。
奪われた物を取り戻したい。
そうしなければ己は生まれすらしないのだと、あなたはようやく思い知る。
飢えていたのはサーシャだけでは無かった。
あなたこそが、泣き叫び手を伸ばしていたのだと。
「……そうかぁ。
そりゃあ、まぁそうだろうなぁ」
表情を亡くしたあなたへと、ブルーノは一つの杯を差し出した。
中身は無い。
ただ空っぽの器を、半ば無理にあなたへ持たせる。
「俺が思うによ。
お前はもう指先を引っ掛けてたよ。
後少し、本当に、ほんの少しだった。
ただ、サーシャと一緒に居ればそれで良かった。
悪く言われる事も多いが、偽物だって悪かねぇんだ。
そこから生まれる本物だって、世の中には幾らでもある」
ブルーノが次に取り出したのは、酒の瓶だ。
瓶を傾け、あなたの杯へと並々と注ぐ。
酒の色は透き通った琥珀。
それが彼の取っておきであり、最も大事にしている酒だと、あなたは知っていた。
「だが、サーシャはもう戻ってこねぇ。
自分の歪さに気付いたんなら、もう駄目だ。
お前達は、終わったんだ。
……飲めよ。
失恋には酒が付き物って言うだろう」
勧められるままに、杯を傾ける。
味など、まるで分からなかった。
ただひたすらに苦く、強すぎる熱があなたの喉を焦がす。
それはいつかの、心を削ぎ落とした日の苦痛に良く似ていた。
ぽたり、と杯の中に雫が落ちる。
いつしか、あなたの視界は歪んでいた。
もう終わった。
その言葉が、酷く痛い。
ブルーノの言の通り、あなたは既に失った。
失って、その苦しみでようやく全てに気が付いた。
サーシャの温もりがどれ程の救いであったか。
朗らかに笑う彼女にどれ程焦がれていたのか。
確かに、あなたの裡には焼けるような感情が芽を出そうとしていたのに、それを愚かしくも見落としたのだと。
余りの情けなさに、あなたは一時自傷すら望んだ。
己を追い詰めるように酒を呷り喉を焼く。
そのまま燃え尽きて消えれば良いとさえ、考えたかも知れない。
気付けば、頬を伝う雫は止まらなくなっていた。
杯を満たしていた酒も消え、縋るべき物は何も無い。
そんなあなたへと、ブルーノの最後の言葉が贈られた。
「……自覚したな?
それが恋だ。
ま、分かっちまえば簡単なもんだろう?」
それはあなたが思わず顔を上げる程に軽い言葉だった。
ブルーノの顔には柔らかい笑みが浮かび、真摯な瞳は労わるような形を作っている。
「騙したようで悪いがな、こっからが本題だ。
確かに、お前らは終わったし、サーシャも戻っては来ないだろう。
だが、新しく始めちゃいけないなんて決まりは無い。
戻って来ないならお前が行けば良い。
もしサーシャが嫌がったって構うものかよ。
あいつが諦めるまで、お前の心を注いでやれ。
やっちゃいけない事なんて無いだろ、俺達には。
何せ、天下無敵のイスナ教徒なんだからよ」
あなたは呆然とブルーノを見上げた。
何を言っているのか良く分からない。
喪失感だとようやく気付けた胸の穴に潜り込んでくるその言葉の正体が、いまいち判然としない。
恐らく、あなたにとって強すぎる感情のせいだろう。
頭が乱れて、今はとても整理が付かない。
「この馬車はお前に貸してやる。
酒は呑みたきゃ呑め、ツマミも好きにしろ。
自分の心を自覚した上で、今度はどうしたいのか。
一晩じっくり考えていくと良い」
俺はレティのとこでも行くかねぇ。
そんな言葉を残し、あなたの頭を乱暴に一撫でして、ブルーノは消える。
残されたあなたは一人、杯を抱き、触れられた頭に手を当てた。
強い酒で茫洋とした思考では、やはり何も分からない。
しかし、そこにある温もりだけは、確かに感じ取れるような気がしていた。
投下遅れて申し訳ないです。
こういう描写になるとやっぱり難産。
といった所で今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
そういえば、キャラメイクの年齢指定の際に0歳と指定されたらどうするの?
まさかの乳児が母乳離れするまでのストーリーになりそうな予感
あと主人公は実は魔獣化・悪鬼化してると設定することはできます?
ババアの実験台にされたなどの理由で
主人公を民主主義国家の政治家に設定すれば選挙バトルする物語にできるんかね
主人公を現代日本の高校生にすれば>>1の異世界転生物が読めるって事だな!
>>357
年齢に下限を設定する事とします。
キャラメイク時にアナウンス出しますね。
魔獣化悪鬼化は指定しても構いませんが、ステータスに補正は有りません。
また、どちらの場合も発狂や突然死のリスクがありますのでご注意下さい。
>>358
可能です。
……可能ですが、専門外のためどんな出来になるかはお察しです。
恋愛系もかなり苦手ですので、今回の出来を参考にして頂ければ。
>>359
指定しても構いません。
ただし、この世界ではとある事情により難易度が天井ぶち抜いて跳ね上がります。
次の主人公が相変わらず弱かった場合に備えて強い仲間付けてやりたいんだけど
【仲間】の内容はどこまで設定できるのかな
種族・性格・境遇に至るまで設定しても良い?
>>361
その場合は 【相棒がいる】 【保護者同伴】 などと設定して下さい。
仲間の種族、性別、性格、境遇、特筆すべき能力、程度を一括募集し、投票による決定とします。
書き忘れてた。
今晩は20時位の開始になります。
よろしくお願いします。
【円環暦697年 冬 固定イベント】
「よう、少しはマシな顔になったな」
翌朝。
戻ってきたブルーノは、ニヤリと笑ってあなたの頭を撫でた。
乱暴な手付きにあなたの首がグラグラと揺れるが、それも心地良い。
既に酒精も抜けた。
今のあなたには一晩を費やして辿り着いた答えがある。
ブルーノの言う通り、スッキリした顔をしているのだろう。
『はい、ブルーノさんのお陰です。
僕だけじゃきっと、本当に終わってしまうまで何も気付けませんでした。
……ありがとうございます』
「いやぁ、んなこた無いと思うけどな。
で、一応聞かせてくれ。
お前は、どうしたいんだ?」
>>↓1 自由に返答できます。
返答など、決まりきっている。
あなたは己の望みを見つけた。
何よりも熱く心を焼く感情を、確かに自覚した。
ならば、何をすべきかは明白だ。
汝、思うままに振舞うべし。
神の名において、一切の自制を禁ずる。
その聖句の下、あなたが目指すべきは想いの成就、それ以外に有り得ない。
『僕は、サーシャと結婚します!
子供は四人、男女二人ずつがいいですね!
ベラとネルの子供達も一緒に、温かい家庭を築いてみせますよ!』
「……お、おう。
また随分吹っ切れたな、良い事だけどよ」
少々先走りの気もあるようだが、大きな問題では無いだろう。
恋という物には時に勢いも重要なのだ。
さて、そうなれば勿論あなたは行動に移さなければならない。
あなたとサーシャは破局したままだ。
再び始めるために、必要な事があるはずだ。
そして当然、キャラバンの父親役たるブルーノがその背を押さない理由が無い。
「あー、そうだそうだ。
ちょっと思い出したんだけどよ、前にお前らに酒貰っただろう?
ありゃあ相当な上物でな。
秘密を漏らした程度じゃあ到底釣り合わん。
ほれ、代金だ。
いいか、あの酒はお前とサーシャ、二人に貰ったもんだ。
となればサーシャにも渡るようにしないとならんよなぁ。
……どうすりゃいいかは、分かるな?」
差し出された、金貨の詰まった袋を手に、あなたは力強く頷いた。
正直、そこがネックであったのだ。
財布にはそれなりの額が入っているが、少々心許無い。
ブルーノからの贈り物が無ければ、危うい所であった。
あなたは礼を言い、走り出した。
最早一時だろうと立ち止まってはいられない。
一刻も早くサーシャに会わねばと、心が叫んでいるのだ。
朝も早いこの時間、彼女がどうしているかをあなたは知っている。
知識の通りに探せば、ニムと向かい合って罵り合う姿はあっさりと見つかった。
そこへ、駆ける。
今大事なのは勢いだ。
躊躇などどこか遠くへ放り捨てれば良い。
『サーシャァ!
これから一緒にデートしよう!』
「へ……え?
きゃっ!?」
戸惑いの声を無視して、手を引く。
サーシャの力はあなたよりも僅かに上程度の弱さであり、その隙間は暴れる感情が埋めている。
不意打ちであった事も加わり、サーシャの拉致は簡単に成功した。
『ニムー!
悪いけどサーシャは連れてくからね!』
「ちょ、ちょっと待ってよ!
そんな勝手な事……」
「おー、頑張れー。
あたしは応援してるぞー!」
「ニムゥ!?」
サーシャは何やら異論があるようだが、そんな物は関係無い。
信仰、若さ故の無謀、そして何より恋慕を味方に付けたあなたは無敵だ。
手を振り解こうとするサーシャの抵抗を抑え付け、向かう先は……。
【円環暦697年 冬 王都クァレヴァレ】
「……それで、何のつもりなの?」
『だからデートだって。
今日一日、一緒に楽しむんだよ』
「今更、そんな事……」
大通りに差し掛かろうとする道の一角で、あなた達は息を整えながら向かい合っていた。
笑顔のあなたとは裏腹に、サーシャの表情は暗い。
偽物の愛はもういらない。
そんな言葉は誰にでも見て取れるだろう。
覆さなくてはならない。
自身の心を誠実に伝え、失った物を取り戻さなければならない。
……いや、少し違う。
溢れる慕情を礎に、新たに始めなければならない。
『今日、だけでいいんだ。
もう一度だけ、僕と一緒に街を歩いて欲しい』
「……そう、だね。
私の方が貰うばっかりだったから。
ちゃんと返さないといけないよね」
サーシャはあなたの言葉に、寂しそうに微笑んだ。
この返答にどれだけの苦痛を伴っているか、今のあなたには良く分かる。
きっと、昨夜のあなたよりもなお痛い。
彼女が諦め、希望を切り捨てたのはほんの先日の事だ。
直視するには傷跡は余りにも生々しい。
『ありがとう……サーシャ』
だから、あなたの感謝には万感が篭っていた。
チャンスは今日一度きり。
今回を逃せば、二度とサーシャの隣を歩く事は叶わない。
今ここで言葉を重ねた所で、サーシャがあなたを信じる事は有り得ない。
一日が終わる夜までに、あなたは己の行動で彼女の信頼を勝ち取る必要がある。
朝と昼。
王都の広さを考えれば、あなたに許された猶予は、僅かに 【二度】 のみだ。
幸いにして、あなたには十分な資金がある。
不可能な行動は無いと思って良いだろう。
>>↓1 どうする?
広げるための要因が消えてるもので……。
私としても、そっちを主軸にしたいシナリオでした。
あなたはまず、娯楽を求めた。
サーシャの心は今、深く沈んでいる。
彼女の中にあるのは諦観と絶望だろう。
結局、自分には愛など与えられないのだと、そう信じ込んでいるに違いない。
固まった心は石のようだ。
まずは僅かでもほぐさなければ、何も伝わるまい。
「あぁー、落ちる、落ちるって……。
えぇ、あそこから持ち直すの?」
ならばまずは単純に楽しめる場所をとサーカスを訪れた選択は、恐らく正しかった。
サーシャの顔は未だ固く、手も繋がれていない。
あなたとの距離はまだ一歩開いたままだ。
それでも、今日を楽しもうという気にはなったらしい。
命綱も無しに一本の綱を渡る猫のセリアンスロープに視線を向け、ハラハラと見守っている。
「嘘、回った!?」
爪先だけを綱に引っ掛け、一度落ちてからくるりと戻る技には思わず大声を上げた程。
サーシャと、そして他の観客の叫びを聞いた猫は、自慢げにニヤリと笑って見せた。
無論、サーカスには綱渡りしか無い訳では無い。
今回の一座は、どうやら劇仕立ての曲芸を好むようだ。
綱渡りを見事に終えたセリアンスロープが、どうやら主役。
彼を円環暦200年代に活躍した戦士に見立て、その伝承に沿うように進んでいくと楽器を持つ詩人は歌った。
次に始まったのは、アクロバットを交えた剣舞だ。
革鎧を模した衣装の者達が次々に高台から飛び降りて宙を舞い、空中で剣を交える。
風を固めた不可視の足場を踏んで走る様、くるくると回転して剣を振るう様は、それだけでも見応えがあった。
場面は移り、今度は王との会談だ。
剣舞、つまり緒戦が敗北に終わり沈む議場に、セリアンスロープの歌が響き渡る。
人々の勇気と国の繁栄を称えた勇壮な歌である。
生粋のクァレヴァレ市民は堪らなかった事だろう。
セリアンスロープが演じる戦士は、クァレヴァレの英雄だ。
東の荒野へと追放された罪人達が結託し反旗を翻した戦争を終わらせた、幼子も知る戦場の英雄である。
当然、彼が歌ったのはクァレヴァレを誇る物だった。
主役の声に合わせ叫ぶ者も所々に見受けられる。
彼の歌に、王達は勇気付けられたようだ。
だが、それだけでは足りない。
東の罪人達は強く、このままでは王都にまで攻め込まれる事も有り得る。
そこで講じた英雄の一計が、この演劇のクライマックスの一つだ。
クァレヴァレの北の森には、一頭の獣が棲んでいた。
勿論ただの獣では無い。
そして魔獣でも有り得ない。
それは、人の言葉すら話す知恵ある大狼であったという。
大狼に助力を求めた英雄は、一つの試練を与えられる。
己と戦い力を示せと、そう吼えたと伝わっている。
となれば、続く演目も容易く分かる。
伝承に相応しいだけの大きさ、熊のごとき体躯の狼が檻から解き放たれた。
轟々と響く咆哮には何の偽りも含まれない。
明確な殺意を伴って、狼は主役へと躍り掛かる。
それを避け、往なし、時には正面から組み合って危機を演出しながらも血すら流さない男は、実に見事な戦士であった。
いや、彼に敬意を表するならば、実に見事な役者であると言うべきかも知れない。
観客はまさに釘付けだ。
狼が飛び掛る度に悲鳴を上げながらも、その目は決して逸らさない。
「……」
ただ一人、サーシャを除いて。
彼女は、狼を見て思い出したのだろう。
数多の歓声に負けぬよう、あなたの耳に顔を寄せて口を開いた。
「あの時は、ごめんね。
どうかしてたの。
別に私だけの物なんかじゃないのに、裏切られたって、ずっと考えてた」
あの時とは、嫉妬からニムと敵対していた時期の事だろう。
狐達、ベラとネルのお陰で持ち直したが、それまでは酷い有様だった。
夜中に刃物を持ち出すのではないかと、僅かに心配した事もあったかも知れない。
「でもね、もう大丈夫。
今はベラが居てくれるから、一人でも寂しくない。
……もし今日のこれが私を心配しての事なら、もういいよ。
私の事は、気にしないで」
『……違うよ。
僕が、一緒に居たいと思ったんだ』
サーシャの言葉に、あなたは即座に返した。
そうして彼女の柔らかな手を握り、心を伝えるように固く結ぶ。
それに、サーシャは僅かに目を見開いた。
恋人ごっこに興じる間、手を握り腕を絡めるのはサーシャの役目であった。
サーシャが求め、あなたが応える。
その関係が崩れた事は、これまでに無かった事だ。
「そっか。
うん、それならいいの」
困惑を抱いた様子のままサーシャは顔を引く。
それでも、あなた達の手は繋がれたままだった。
しばらくして、熱狂の内にサーカスは幕を閉じた。
演者全員が並び、満場の拍手に応えている。
サーシャも拍手を送る一人である。
どうやら十分に満足したようだ。
全てが解けたとは言えないが、確実に心はほぐれているだろう。
それらを眺めながら、次はどうしようかとあなたは考える。
>>↓1 どうする?
遊園地、という物がこの世界に存在しないので、せめて似たような場所をとサーカスになりました。
申し訳ありません。
今日はこの辺で。
やっぱり恋愛系が苦手過ぎて筆の重さがぱないです。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
主人公を獄中キャラに指定したら脱獄目指して頑張るストーリーになんのかね
もしくは銀魂の桂みたいに刑務所革命する事になるか
どっちにしてもファンタジー世界っぽさゼロになるが
《あなた》に【呪い】がかけられている設定にする事は可能ですか?
>>399
脱獄シナリオになるでしょうね。
魔法も封じられるでしょうし、本当にファンタジー無しになりそうです。
>>400
可能です。
必要であれば呪いの内容も指定して下さって構いません。
通知忘れていたんですが、今回の固定イベント後にそのままエンディングになりそうです。
キャラメイクまで行けるかどうかは微妙なライン。
サーカスのテント近く。
一幕を見終えた観客で賑わう飲食店に、あなた達も混ざっていた。
メニューはさして特筆すべき点は無い。
無難な味、無難な量、無難な値段。
柔らかめに焼かれた薄パンで肉を巻いただけのそれは、実に庶民らしい味であった。
腹を満たしたあなたは、次の予定にサーシャを誘う。
やや強引に手を引き、向かう先は先のサーカスと似たようなテント。
ただ、趣向は相当に異なる。
名をホラーハウスと号する、客を恐怖で歓迎する出し物だ。
そこでの出来事は、大きく語る必要は無いだろう。
恐怖の質はそれなりだったが、所詮作り物の域を出ない。
過去のあなた達であれば、怯えた演技のサーシャがあなたに抱きつく、などという事もあっただろう。
だが、今や二人の関係は既に破綻している。
淡々と、互いに感想を交わしながら出口まで歩む。
そんな味気ない一時であった。
そうして、日は傾いた。
太陽は西の地平へと迫り、街を赤く照らしている。
そろそろキャラバンに戻るべきだろう。
『サーシャ。
今日はありがとう』
「うぅん、いいよ別に」
帰路の会話もまた、静かな物だ。
サーシャは手を繋いだまま、あなたの半歩後ろを歩く。
僅かに俯き、薄灰色の髪で隠れた表情は窺えない。
不安はある。
結局、サーシャは以前のような笑みを見せる事は無かった。
だがもう時間が無い。
あなたは決意し、そして口を開いた。
『サーシャ。
少しだけ、話があるんだ』
そうして、あなたは語った。
サーシャを失った胸の痛み。
自覚した想い。
そして今日の行動の目的を。
『僕は、サーシャを愛してる。
もう一度、僕と始めて欲しいんだ』
……彼女の答えは。
「…………そんなの、今更だよ。
ごめんね、私もう、諦めちゃったの。
今は、そういう事考えたくない」
>>↓1 コンマ判定 【????】
意思 5
信仰 -5
目標値 0
【????】
目標値 0
出目 5
通常失敗
あなたはサーシャの信頼を取り戻せなかった。
サーシャの指が、そっとほどかれる。
あなた達を繋いでいた物は、もう何も無い。
「ごめんね。
本当にごめん。
……先、帰るね」
あぁ、と。
天を仰いで息を吐く。
全ては終わった。
あっさりと、サーシャの心を僅かに揺らす事も出来ずに。
仕方ない。
あなたは、そう。
仕方ないのだと受け入れた。
そうだ。
仕方ない。
仕方ない。
仕方ない。
仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。
仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。
仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。
仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。
仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。仕方ない。
これは、仕方のない事なのだ。
だって、こうする他に方法が無いではないか。
夕陽に照らされ赤に染まる世界の中でもなお赤い。
―――鮮血が、宙に舞った。
深く深く。
柔らかな腹部に突き立てた刃を、そっと引き抜く。
それでサーシャは、不思議そうな顔のまま崩れ落ちた。
仕方ない、と。
あなたは微笑み呟く。
一日では足りなかった。
あなたの想いは届かず、心を繋ぐ事は叶わなかった。
ならば、話は単純だ。
一日で不足ならば一月、それでも足りないならば一年。
いや、それこそ一生を賭けて構わない。
サーシャを捕えて、愛を受け入れてくれるまでを二人で暮らす。
それが、あなたの結論だった。
血に塗れる事も厭わず、あなたはサーシャを抱きかかえる。
キャラバンの仲間など、もうどうでもいい。
この恋さえあれば良い。
もう二度と、失う事には耐えられないと、あなたは自覚していた。
点々と血の跡を残し歩むあなたに、一切の後悔は無い。
これは許されるべき行為だと、あなたは固く信じている。
汝、思うままに振舞うべし。
神の名において、一切の自制を禁ずる。
まさしく聖句の通り、あなたは思うままに振舞う。
『サーシャ、愛してるよ。
愛してるんだ。
この世の何より、誰より、君一人だけを』
力無く抱かれるままのサーシャを見詰めるあなたの顔には、ただ幸福だけが広がっていた。
【円環暦697年 冬 固定イベント 『成就』 了】
【円環暦698年 エピローグ】
『ただいま、サーシャ。
今日も良い子にしてた?』
「…………」
返事は無い。
それでも良いと、あなたは笑んだ。
仕事を終えて戻った家に、サーシャが居る。
それ以上の幸福など存在しないと、あなたは信仰している。
あなたから必死に目を逸らし、体の陰に何かを隠した事など些細に過ぎる。
恐らくは体を繋ぐ縄を切ろうと道具か何かを持っているのだろうが、可愛い抵抗である。
手に入れた家の地下であるこの部屋を出ても、二重三重に固めきっている。
彼女が逃れる術など、どこにも無い。
『今日はね、肉が安く買えたんだ。
僕も値切りが大分上手くなったと思うよ。
久しぶりに豪勢にしよう』
返事は無い。
それでも良いと、あなたは笑んだ。
サーシャと同じ食卓で、時を過ごせる。
それ以上の幸福など存在しないと、あなたは信仰している。
サーシャの頬が涙で濡れた事など些細に過ぎる。
顔を寄せて舐めて拭えば、簡単に止まる物だ。
少々恐怖を感じるのか顔が青褪めてしまうが、それすらも愛おしい。
『今日は転生祭だからさ。
神殿は質素に過ごせなんて言うけど、僕達には関係無いよね。
何せ、大欲の使徒なんだし』
返事は無い。
それでも良いと、あなたは笑んだ。
サーシャの隣で、共にいつかの前世に思いを馳せる。
それ以上の幸福など存在しないと、あなたは信仰している。
ただ、一つ残念だと思う事があった。
あなたは今まで前世を垣間見た経験が無い。
輪廻の神は、あなたにだけは奇跡を起こさない。
前世の自分はサーシャを手に入れていたのかどうか。
そこが確認出来ない事は本当に残念だと、あなたは感じていた。
時が過ぎ夜となった。
緩んだ縄を固く結び直し、あなたはサーシャを抱いて座る。
何も纏わない素肌が触れ合い、偽りの恋人として暮らしたキャラバンの日々が思い返された。
今にして思えば、あの頃の自分はなんと愚かだったのだろうか。
サーシャだけを見ていればあらゆる幸福が得られるというのに、それを甘受していながら他者に目を向けるとは。
まさしく狂気の沙汰としか思えない。
やはり、人形のようだった日々が心を壊していたせいだろう。
あなたは、そう断じる。
そしてまた己の気持ちをそのまま言葉として囁いた。
ゆっくりと、サーシャの奥底にまで沁み込むようにと、無数のキスと共に耳へと降らせる。
返事は無い。
それでも良いと、あなたは笑んだ。
サーシャへと至上の恋慕を囁ける。
それ以上の幸福など存在しないと、あなたは信仰している。
サーシャの体が緊張し、体温を急激に下げた事など些細に過ぎる。
冷えたならば暖めれば良い。
そのための手段をあなたはとても、とても良く知っているのだ。
そうして、あなたはその時を迎える。
真夜中の空に、太陽が昇る。
それは北の地平から突如生まれ、闇を裂くように尾を引いて天を目指す。
世界は一瞬で照らし出された。
眩い光が地を白く染め、夜という夜は欠片も残さず排除される。
今や影さえ掻き消えた。
暗い地下たるあなたの寝所も、僅か一欠けらの闇も無く白に支配されている。
その中心たる白光を、誰もが涙を流して見詰めているのだろう。
彼らが見ているのは、ただの光では無い。
彼らは記憶を辿っているのだ。
魂に刻まれた記録を遡り、己が前世を垣間見ている。
ある者は記憶の中で空を飛んだ。
別の者は木々と対話し、また火の山を駆け回る日々を見た者も居るだろう。
全ては真実なのだと確信出来る確かさで、民の心を郷愁で満たす。
人は生まれ、死に、生まれ、輪廻を巡り続ける。
北天より注ぐ神の奇跡は、万民にその事実をこうして教えている。
……その様を、あなただけが一人、白けた瞳で眺める。
誰もが酔い、涙を零し、神に祈る中。
唯一何の影響も受けられないあなたは、明確な異物としてそこにある。
あなたは、己の前世を知らない。
神の奇跡が注ぐ夜も、あなたには一切の救いを齎さない。
転生祭の知識も、あくまで聞いた物や読んだ物。
輪廻の実感などそこに伴う訳が無い。
―――今までは、確かにそうだったはずだ。
あなたの眼前に、突如世界が生まれた。
それは、白亜の神殿。
湖の上に浮かぶ、神の居城。
幻覚はすぐに終わる。
神殿は罅割れ、崩れ落ち、その内部をあなたに見せる事は無い。
だが、それで十分だった。
完全な確信を、あなたは得た。
僅か一時だけ垣間見た白亜の神殿こそが、己の始まりであると。
『…………サーシャ、君はどうだった?
何を見たの?
答えるんだ。
何を見たのか、今すぐ教えて欲しいんだよ。
サーシャ。
早く。
早く答えてよ。
早く、早く早く早く。
答えろサーシャ!!』
鬼気迫るあなたに、組み敷かれたままのサーシャは酷く怯えた。
今のあなたは何をしてもおかしくない。
彼女をそう確信させるに足る凶相。
抵抗の術も無く、サーシャは与えられた奇跡を語る。
それはあなたにとっての福音。
そして、サーシャにとっての破滅に違いない。
「し、神殿、だった。
白くて、輝いてて、沢山の家族が……」
哄笑が響き、哄笑が響き、哄笑が響いた。
無論、源はあなただ。
幸福が余りにも大きすぎるのだろう。
とても感情の制御など出来ない。
本能が命じるまま、あなたは笑うだけの機械となる。
『同じだ! 同じだよ!
僕も同じ物を見たんだよサーシャ!
やっぱり、僕達は運命なんだ!
前世でも、そしてこれからも一緒なんだ!』
あなたの笑いは止まらない。
驚愕に目を見開き絶望に泣き叫ぶサーシャを、あなたは強く抱き締める。
かつてない抵抗すらも心地良い。
世界の全てが、今のあなたにとっては祝福に他ならない。
逃がさない。
決して、この手を離さない。
誰にもサーシャを渡すものか。
隣に立つべきは世界でただ一人己のみ。
そしてそれは今、神の奇跡によって証明された。
あなたにとっては、それだけが唯一の真実だ。
『愛してる。
愛してるよサーシャ。
君は僕だけの物だし、僕は君だけの物だ』
―――永遠に、二人だけで愛し合おう。
誓いはここに結ばれる。
花嫁の悲鳴など、些細に過ぎる。
離別は決して訪れず、ならばいつかの未来には想いが伝わる日がきっと来る。
あなたはそう、固く信仰していた。
NORMAL END
※ 色々な情報の供養 ※
■ メルヴィ
絶対にオークなんかに負けたりしない(物理)
そんな女騎士。
キャラバンにおける戦力の筆頭。
トゥルールートに入った場合、ラスボス戦は各々の好感度やフラグ次第でNPCの参戦が決まるのだが、メルヴィだけは固定参戦。
彼女の心の迷いを取り除けているか、武装をどれだけ整えられているか、といった辺りが結構重要な鍵になる。
適切な交流を重ねると、あなたの仲間への思いが強化されていく。
■ サーシャ
地雷女。
訣別イベントが最も発生しやすく、その癖ヤンデレ化しやすい。
ヤンデレ化の兆候が見えたら余り刺激せず、体だけの関係を続けておくのが最も無難。
精神がある程度安定状態にあれば勝手に好感度を積み重ねて、その内落ち着く所に落ち着いてくれる。
適切な交流を重ねると、あなたが愛情を思い出していく。
■ ニム
悩みゼロの21歳児。
こいつだけはガチで裏が無い。
荷物の中身は本当にお宝(拾った瑪瑙や蛇の抜け殻など)のみ。
覗いたら怒られるものの、お宝探しにこき使われるだけで済む。
このお宝イベントさえこなしていれば好感度が爆上がりするため、ほぼラスボス参戦フラグが立つ。
適切な交流を重ねると、あなたの精神が段々子供じみていく。
我欲の認識が容易になる、と言い換えても良い。
うん、お幸せにね!(白目)
■ ブルーノ
一番まともな大人。
ただし女癖が悪く、正妻的立場にあるレティ(汎用メンバー)に頭が上がらない。
何かあれば相談すれば、どうすれば良いかサクサク教えてくれる上に好感度が上がる。
好感度を最大限上げていても、ラスボス戦前では参戦を拒否する汎用メンバーを連れて一時離脱する。
その後、参戦勢がピンチになれば弩兵と化したメンバーと共に戻ってくる。
「仕方ねぇだろうが!
ずっと、心のどっかが引き返せって叫びやがるんだよ!
ここでお前を見捨てちまったらよぉ……。
俺は! もう二度とイスナ様の下僕だなんて胸を張れなくなっちまうだろうが!」
そんな胸熱イベントがあった。
書きたかった(涙目)
■ テオ
放火魔。
事ある毎に火を放とうとする点さえ目を瞑れば、ブルーノと並んでまとも。
ラスボス戦では炎が鍵の一つのため、メルヴィと並んで重要人物。
そのため、必要好感度は低い(今回の僅かな交流でも基準を満たしていた)
ブルーノと似たような役割を持つが、こちらはあなたの内面に切り込む傾向が強い。
■ 父親
トゥルールートに乗っていた場合、状況によってはあなたを追っていた。
キャラバン皆殺しの危険を発生させ、あなたの心を急き立てる役目。
今回の場合は何の役割も負わなかった。
■ あなたを誘拐した女性
神の責務? 何それ楽しいの?
とばかりに地上に降りてきちゃったイスナ様。
神らしい力を持つが、おおよそただの痴女。
トゥルールートのフラグが進行していれば、夢の中の回想に登場できた。
ブルーノの「イスナ様がここに居たらお前を攫ってるに違いない」という台詞は、
「実はもう攫われた後だったんですよ」とエピローグで言わせたかったための伏線。
トゥルーエンドを迎えていた場合、遠くからあなたの功績を見届けて良い笑顔で祝福を贈るシーンが予定されていた。
■ レイルの街のドライアドの老婆
絶対永遠を生きるウーマンです(満面の笑顔)
下手に探れば樽の中で泳ぐ人体パーツの群れにクラスチェンジ出来ます。
単に「この街では一人で動いたら危ないよ」という設定のための舞台装置として設置。
なお、海沿いルートでも同等の治安の都市を経由します。
探ったら死亡フラグが立つ所も同じ。
■ ラスボス
再利用の可能性有り。
情報は伏せます。
■ サナリエラ・ユィン=ラナ=スール・フィナ=ヴェリエ
メ イ ン ヒ ロ イ ン 。
そして同時に、あなたが外に目を向けるための最大要員。
彼女の不在が致命傷だった。
イーリェ(最初の街)でサックリ死んだ流れエルフの子。
盗賊に襲われる女の子を助ける、というテンプレを少しだけ捻くれさせて生まれた強盗系ヒロイン。
ボーイ・ミーツ・ガール枠だったのだが、そこに至る前にニムによるガール・キルズ・ガールで高速退場する即死系ヒロインに進化。
全身の骨がグチャグチャな上に色々薄くて細かったために性別さえ不明で終わった。
長ったらしい名前は「ヴェリエの森に住まう狩人ユィンの娘、サナリエラ」という意味。
先頭のサナリの三文字だけを取ればカダスティアの古語で「道標」になる。
今周回における最大の白目案件。
連れていたのがニムではなくメルヴィかサーシャでさえあれば……。
なお、路地裏の探索を行わなくとも固定イベントで確定登場。
キーワードは「ツンデレ」「姐御肌」「苦労人」「郷愁」など。
キャラバンに居るだけで勝手に他者の面倒を見、他メンバーの精神を自動的に安定させる。
そのため、グッドエンドやトゥルーエンドへ向かう難度が劇的に低下する。
似たような役割を持つ者はブルーノだが、ブルーノは他にも仕事があるためあなたから相談を持ちかける必要がある。
他に、ツッコミ気質から来る鋭い指摘で、あなたの変化を教えてくれる役割も担っていた。
ニムと遊んでれば子供っぽくなる、などの情報がここから得られる。
彼女の好感度を高めていった場合、唯一の家族である姉が待つ故郷へ、北の大陸へ帰りたいという願いを聞く事が出来る。
しかし船による渡航は困難極まる。
そこで、あなたの常識外れな思いつきによる空路開拓……【風になる】ためのイベントが開始される。
この空路開拓こそが今周回のメインシナリオでありトゥルールート。
空路開拓イベントは、サナリが居なくとも辿り着く事は可能。
その場合のルートは二つ。
訣別イベントを起こさず、あなたと仲間の問題を解決していきあなたを成長させるルート。
(訣別が発生すると、喪失感からあなたの別の欲求が強まり【風になりたい】にまで至らない)
とにかく布教などを通して信仰心を高め、あらゆる束縛から解放される解脱を目指すルート。
開拓に成功すれば当然あなたは偉人として歴史に名を残し、更に異文化流入による大幅な情勢変動が発生する。
毎度メインとか別途設定せずに進んだ先をメインに仕立てるように盛り上げればいいのに、なんでそんな下手なん?
うわっ……うわっ!そこから白目って……。
>>442
その辺痛感しました。
ガチガチに固めてしまって柔軟性を無くしてしまうのが悪癖のようです。
もうちょっとどうにか出来るよう努力します。
休憩して、22時位からキャラメイクを始めます。
よろしくお願いします。
忘れてた、これだけ出しておきます。
■ ワールドトピック
◆ 愚王戴冠
クピアの新たな王が民に重税を課している。
民の不満が急激に高まり、治安が悪化しつつある。
◆ 新鉱脈の発見
ハルピュイアの山脈において、高い価値を持つ鉱石の大鉱脈が見つかった。
鉱石が生む富を求めて、多くの人々が集まっている。
◆ 麻薬の侵食
ヴァタスにおける麻薬の蔓延に歯止めがかからない。
国内の治安が更に悪化した。
◆ グレアモールの分裂
グレアモール王家に連なる者が、誰一人子を残せなかった。
王家は断絶し、各地の有力貴族達が続々と独立を宣言。
以降、グレアモールは小国家群となる。
※ 来歴で一国ぐらい滅ぼしても良いよ、の意
◆ レイル集団消失事件
クァレヴァレとシアラ・ミニアの国境沿いの街、レイルにて集団消失事件が発生。
二千を超える数の民が一夜の内に忽然と姿を消し、街は大混乱に陥った。
消えた人間達の行方は完全に不明。
未解決の不気味な事件として大陸史に刻まれた。
なお、犠牲者にはレイルの街の領主と、その後見人であった【ドライアドの老婆】も含まれる。
おばあちゃん凄すぎ!?次の話が楽しみだね……色々な意味で
白い輝きに覆われた世界であった。
天も無く、地も無く、ただ白のみが埋め尽くす無限の空間。
そこに 【あなた】 は亡羊と存在していた。
『――ようこそ、輪廻を巡る魂よ。
ここは私の胎の内、あなたの全てを定める運命の出発点です』
ふと、どこからか声が響く。
未だ幼さを残す、少女の声だ。
しかし、その音に含まれる気配は決して幼くなど無い。
連想されるべきは母親の抱擁だろう。
優しく、暖かく、声は静かに 【あなた】 へと語りかける。
『私の名はリィン。
北の果てに眠るもの、原初の揺り籠、魂の観測者。
様々な呼び名が有りますが、最も馴染み深いものは……そうですね。
輪廻の神、というものでしょう。
……とはいえ、定命の者はここより出れば、全てを忘れるが定め。
私の事を語る意味はありませんが』
神を名乗る声は、どこか寂しげに言葉を締め 【あなた】 を促す。
見れば、白のみであった世界には、幾つかの色が生まれていた。
様々な色の淡い光を纏う、小さな鏡だ。
鏡面にどこか見覚えのある風景を写しながら、鏡達は 【あなた】 の周囲を廻る。
『それでは、運命をこれより整えてまいりましょう。
さぁ、あなたが求める物を、選び取るのです』
【キャラクターメイキングを開始します】
※ 順番を変更し、性別の決定は年齢と同時に行います ※
■ 種族の決定
あなたの種族を決定します。
この大陸には八つの種族が存在し、それぞれ能力や特徴に大きな差異があります。
一覧を表示します。
■ ミーニア
平均的な能力を持つ種族。
現実世界の人間に良く似る。
取り立てて優れた能力は無いが、劣る部分も存在しない。
能力値補正無し
◆ 種族能力
【始祖】
あらゆる人種はミーニアを始祖とすると、カダスティアの神は語る。
対人友好判定に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 170cm
平均寿命 60年
■ ジャイアント
巨大な肉体を持つ種族。
体の大きさ以外はミーニアと良く似る。
膂力、体力に優れるが、のろまかつ不器用で鈍感。
筋力+4 耐久+4 器用-2 感覚-3 敏捷-3
◆ 種族能力
【頑健】
強靭な彼らの肉体は、刃はおろか病毒すらも跳ね除ける。
物理的ダメージを軽減し、毒や病気に対する高い耐性を獲得する。
◆ その他の情報
平均身長 270cm
平均寿命 80年
■ リリパット
小さな体を持つ種族。
体躯に比して大きな足を持つが、それ以外はミーニアに良く似る。
器用さ、感覚、素早さに優れるが、膂力と体力に劣る。
器用+2 感覚+3 敏捷+3 筋力-4 耐久-4
◆ 種族能力
【直感】
小さな物事が生命の危機に直結する彼らは、己に迫る異変を敏感に察知する。
危機感知判定に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 90cm
平均寿命 40年
■ ドライアド
森の中に隠れ潜む種族。
樹皮に似た皮膚と、葉のような髪が特徴的。
魔力との親和性や精神力に優れるが、鈍感で、体力に劣る。
魔力+3 意思+2 感覚-3 耐久-2
◆ 種族能力
【森の隣人】
人よりも精霊に近い彼らは、最も親しい隣人たる植物達とも言葉を交わす。
植物との対話が可能になる。
◆ その他の情報
平均身長 190cm
平均寿命 100年
■ サラマンドラ
好んで火山に棲む、トカゲに良く似た人型種族。
強固な赤い鱗に覆われた頑強な体を持つ。
身体的能力全般に優れるが、細かい事を考えるのが苦手。
筋力+2 耐久+2 敏捷+2 魔力-3 意思-3
◆ 種族能力
【炎の隣人】
火精霊の寵愛を一身に受ける彼らは、強力な炎の加護を持つ。
火属性ダメージによって回復し、自身の操る炎を強化する。
ただし、寒冷地におけるデメリットが倍化する。
◆ その他の情報
平均身長 150cm
平均寿命 50年
■ ハーピー
大空を舞う種族。
猛禽の翼と爪を持ち、大空を舞う能力を持つ。
敏捷性に極めて優れるが、翼を得た代償に腕を失っているため、極めて不器用。
敏捷+5 器用-5
◆ 種族能力
【風の隣人】
翼を持つ彼らは当然の能力として、自由自在に空を翔る。
翼に損傷が無い限り飛翔が可能となり、空中での姿勢制御に有利な補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 150cm
平均寿命 60年
■ ヒュドール
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
意思+4 魔力+3 筋力-2 耐久-5
◆ 種族能力
【水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
◆ その他の情報
平均身長 可変
平均寿命 150年
■ セリアンスロープ
獣の特徴を持つ種族。
狼、猫、羊、牛など様々な動物の能力を扱える。
肉体的能力に優れるが、魔力との親和性が殆ど無い。
筋力+2 感覚+2 敏捷+2 魔力-6
◆ 種族能力
【獣の血脈】
獣の特徴を持つ彼らは、外見だけで無く能力も併せ持つ。
選択した獣の種類に応じて、様々な判定に補正を得る。
◆ その他の情報
平均身長 100~190cm(獣の種類によりまちまち)
平均寿命 20~80年(獣の種類によりまちまち)
種族を一つ選択して下さい。
>>↓ 【22:04】 以降の書き込みが有効
あなたは 【ヒュドール】 です。
■ 能力値の決定
あなたの様々な能力を示す基礎能力値を決定します。
これはコンマによって判定されます。
0は10として扱われ、1に近い程低く、10に近い程高い能力になります。
>>↓1 十の位 【筋力】 物理的攻撃の威力、重量物の運搬、などに影響
>>↓1 一の位 【耐久】 物理的被害の大きさ、病気や毒物への耐性、などに影響
>>↓2 十の位 【器用】 物品の加工、細かい作業の成功率、などに影響
>>↓2 一の位 【敏捷】 走行速度、軽業の成功率、などに影響
>>↓3 十の位 【感覚】 芸術的センス、直感による危険の予知、五感の鋭さ、などに影響
>>↓3 一の位 【意思】 恐怖や逆境への耐性、一般的に忌避される行為の実行、などに影響
>>↓4 十の位 【魔力】 魔法行使による反動の軽減、使用出来る魔法の数や規模、などに影響
>>↓4 一の位 【幸運】 様々な被害の軽減、不運な出来事の回避、などに影響
あなたの能力値が決定されました。
種族補正は既に適用されています。
【筋力】 2
【耐久】 3
【器用】 8
【敏捷】 10
【感覚】 1
【意思】 7
【魔力】 8
【幸運】 9
■ 年齢と性別の決定
次に、あなたの年齢と性別を決定します。
年齢が高すぎる、もしくは低すぎる場合、行動に制限が発生する場合があります。
ヒュドールの平均寿命は 【150年】
ヒュドールの成人年齢は 【20歳】
年齢の下限は 【10歳】
以上の情報を参考に、決定して下さい。
>>↓1
♀14
年齢と性別の同時決定のため、両方が指定されている>>486が採用されます。
あなたは 【14歳の女性】 です。
■ 初期位置の決定
次に、あなたの現在地を決定します。
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org361299.png
地図情報と>>5-6の国家情報。
及び>>452のワールドトピックを参考に、初期位置を選択して下さい。
出身地は来歴や種族から自動決定されます。
>>↓ 【22:13】 以降の書き込みが有効です。
あなたは現在 【グレアモール】 に滞在しています。
■ 性格や来歴の決定
あなたがどのような人間か、これまでどのように生きてきたかを、自由に設定出来ます。
この内容により、保有する知識や得意とする技術が自動決定されます。
※ 注意事項 ※
【内容が長すぎる場合】
【この世界では有り得ない内容である場合】
【年齢や性別から考えて異常な内容である場合】
【能力値との整合性が取れない場合】
などは、こちらの判断で一部が無効化される場合があります。
また、安価範囲内で矛盾が生じた場合、早い者勝ちになります。
>>↓1-3 【22:18】 以降の書き込みが有効
草木も生えぬ火山地帯の火竜山脈だけにってかwwwwwwww
うんごめん
>>500
言おうとしたら言われた件
正義の怪盗団の怪盗メイド(鍵師)
人多すぎない?(白目)
あなたの来歴及び性格が決定されました。
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
これは分かりやすくこじらせてますわぁ……。
■ 習得魔法の決定
次に、あなたが行使出来る魔法を決定します。
※ 魔法とは ※
大気中に浮遊する 【魔力】 と呼ばれる元素の操作技術。
操作は主に神代の言語である 【力ある言葉】 と 【明確なイメージ】 によって行われます。
本来人間には許されていない能力のため、行使の度に 【一時的な身体的障害】 が発生します。
障害の度合いは 【起こす現象の規模】 【魔力との親和性(魔力の能力値)】 によって変動します。
魔法によって行える物事に制限は有りません。
ただし、あなたの能力値によっては想定された規模の魔法とはならない場合があります。
例)
魔力の能力値が 【1】 のキャラクターが 【雪崩】 を使用しても、鼠一匹を埋めるのが限度、といった具合。
また、以下の魔法は能力値に関わらず、自動的に習得しています。
【種火】
掌に収まる程度の小さな炎を発生させる。
【清水】
両手で作った器に収まる程度の少量の水を召喚する。
【微風】
頬を優しく撫でる程度の僅かな風を発生させる。
【土塊】
拳程度の大きさを限度とする少量の土を召喚する。
あなたの魔力は 【8】 のため、魔法を 【4つ】 習得できます。
魔法に必要となる 【力ある言葉】 を指定して下さい。
>>↓1 【22:25】 以降の書き込みが有効です。
愛情
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
【精練】
【破綻】
【生成】
■ 難易度の決定
最後に、今周回の難易度を決定します。
◆ EASY
不利なイベントが抑制され、有利なイベントが増加します。
トゥルーエンドに向かうためのフラグが折れにくくなります。
敵対者のステータスがワンランク低下します。
◆ NORMAL
従来の難易度です。
◆ HARD
まだ選択できません。
>>↓1 選択して下さい。
【キャラメイクを終了します】
ステータス整理中。
少々お待ち下さい。
せっかくなので今のうちに質問
ハーピーって卵生ですか? 胎生ですか?
ヒュドールやドリアードの誕生は赤子の形した植物や水の塊のイメージで合ってますか?
じゃあ俺も
どうにかしてババアをブチのめす方法はありますか?
今でもカルヴォダとラウラのフラグは有効?
>>559
ハーピーは卵生です。
多分ニムも無精卵生んでたと思います。
頼めば食べられた可能性あり。
ドライアドは赤子風の植物として生まれます。
ヒュドールの赤子はドロドロのスライムと殆ど見分けが付きません。
成長と共に人に近付きます。
>>561
ありますとだけ。
>>567
有効です。
特にラウラの方は今回強く影響するかも知れません。
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2
【耐久】 3
【器用】 8
【敏捷】 10
【感覚】 1
【意思】 7
【魔力】 8
【幸運】 9
【出身地 : 調整中】
【現在地 : グレアモール / 調整中】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
■■を直接■■■る事で■■■■■■を■■■せる。
物体に対し用いれば軽度の爆発を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減が発生する。
禁呪。
この魔法を使用出来る事を他者に知られた場合、莫大なペナルティが発生する。
◆ キーワード
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
※ 破綻の効果は見直す可能性もあります ※
といった所で今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
明日は世界樹の迷宮5の発売日です。
更新は無いと考えて下さい。
下手したら数日間空く可能性もあります(土下座)
質問
神を殺して神に成り代わる事はできますか?
>>592,593
回答できません。
案の定世界樹にドハマりしているため、再開は週明けになります(ダイマ)
月曜の夜からという事で、よろしくお願いします。
キャラバンの連中は無事?
展開次第では接触できる?
お待たせしました。
今晩から再開します。
プロローグ及び初回固定イベント開始は上手くいけば20時、普通にいけば21時の予定です。
よろしくお願いします。
>>596
特にあなたが何かした訳では無いのでそのまま旅を続けたはずです。
勿論、メンバーがあなたを心配して落ち込んだり捜索したりした可能性はありますが。
前回と同じく時間が経過しますので、寿命の短い者はほぼ不可能、それ以外も接触困難です。
【円環暦733年 プロローグ】
ぱらり、と。
静まり返った部屋の中に、頁を捲る音が一つ。
聞く者は二人。
まず一人は音の主だ。
全身を黒いローブで覆い、体型や人相を全く読み取れない何者か。
男とも女とも不明なそれは、黒塗りの木製デスクに腰掛け、紐で纏められた書類束を読み込んでいる。
もう一人は、恐らく部屋の主人だろう、壮年のミーニアだ。
活力を感じさせる筋肉質な彼はデスクに向かうための大きな椅子に座り、亡羊と黒尽くめの人物を見上げている。
瞳に意思の輝きは無い。
ただ、黒い人物へと素晴らしい芸術品を見るような視線を送るのみだ。
静謐を乱す者はどこにも居ない。
燭台からのか細い光のみが照らす薄暗い室内には、ひたすらに静寂が広がっている。
『……ここも外れ、か』
そこへ唐突に、言葉が生まれた。
黒い人物の独り言である。
それでようやく、僅かだけその人物の詳細が知れる。
声は若く、高い。
恐らくは少女の物だろう。
成人まで数年を残すはずだと、聞いた者は感じるに違いない。
「あぁ、何かございましたか。
不足がありましたら、この私が全霊をもって埋めてみせましょう」
独り言に返った答えは、ミーニアの男の言葉。
厳かに紡がれたそれには偽りの気配は微塵も無い。
言葉通り、十分以上の忠誠が籠められていた。
『その必要は無い。
……ん、いや、待て。
一応聞いてみるのも良いか。
文書に残していない、という可能性は考慮して然るべきだろう』
黒の少女は書類束を投げ出し、男へと向き直った。
そうして、質問を投げかける。
一切の虚偽を許さないと前置いてだ。
『……二十年前の王家断絶。
その事情について、知り得る所を全て語れ』
この地、グレアモールに千年にも迫る長きに渡って君臨していた王家は、断絶した。
暗殺や簒奪といった、血に塗れた出来事では無い。
単純に、本当に単純に血が絶えてしまったのだ。
ある時を境に、王家には子が生まれなくなったという。
数多の娘を後宮に押し込め。
無数の医師による助言を受け。
子宝を呼ぶという薬剤や魔道具を集め。
それでも、誰一人として王の子を宿す事は無かった。
そしてそれは王だけに留まらない。
王家の血が僅かでも入っている者全てが同様の状態だったのだ。
有力貴族の大半がやはり子を為せず、国は未曾有の混乱に包まれた。
しかし、どれほど奔走しようとも事態は一向に改善されない。
誰も解決出来ないままに、最後の王は命を終えた。
それが、二十年前の事だ。
さて、問題は王家が絶えた後。
そこで不自然な事が起きたのだ。
生き残った貴族の誰もが、王家に取って代わろうとはしなかったのである。
彼らはただ、従来の領地にのみ執着を見せた。
自身の膝元だけを大事に抱え、速やかに国境を整えて独立を宣言した。
一切の血を流さず、一切の争いを起こさず、一つの国は八つに分かれた。
国家形態の移行は実に穏やか。
輪廻の神による奇跡があると言えど、異常な事だ。
己こそがグレアモール全土を束ねる次代の王に相応しい。
そう主張する家が二つ三つ存在するのが当然だろうという他国の予想は、容易く裏切られた。
混乱に付け込み手を伸ばそうと考えていた者達は、大いに肩透かしを食らった事となる。
この事実に、邪推を働かせる者は多い。
今の形へ至る道筋を描いた者が居り、全ては陰謀をもって事が為されたのだと。
どうやら、黒尽くめの人物もその類であるらしい。
険しい気配を纏い、男の言葉に耳を傾けている。
しかし、彼の口から出た情報は全て既知の物でしか無かった。
つまりは表向きの物でしかない。
男は王家断絶の詳細など知らず、勿論陰謀に関する情報など欠片も持たない。
その事実に、少女は肩を落とす事は無い。
求めた情報は確かに無かった。
だが、それは屋敷、この都市の領主館を調べる内に分かっていた事だ。
彼女にとってはただの最終確認であり、落胆を覚えるには足りない。
『もう良い、十分に分かった。
……どうやら、貴様は断罪すべき相手では無い。
市民は富み、笑顔に溢れていた。
調べた限り、圧制の気配も不正の兆候も感じられない。
良き領主なのだろう。
今後もそのまま、潔癖を保つが良い。
余の刃に首を断たれぬように、な。
余は次に向かうとする。
今夜の事は、全て忘れておけ』
傲慢な言葉と共に、少女は窓へと向かう。
一切の躊躇無く開け放たれたそこから夜闇に霞む遠い地面を見下ろして。
そこで、男に引き止められた。
「どうかお待ち下さい、我が主。
貴女様の意思を阻む事など出来ないとは存じております。
しかし、どうかせめて、お名前をこの耳に留める栄誉を……」
縋るように懇願する彼に、少女は静かに振り向いた。
どこか、誇らしげな雰囲気を纏ってだ。
そうして名乗る。
彼女が、己をそうと信じ、自ら名付けたそれを。
『我が名を答えてやる訳にはいかん。
余の真なる名は秘匿されるべき物故に。
……だが、そう、覚えておくが良い。
余こそは 《末裔 / カダス》
最後の断罪者にして、かつて戦場に君臨した戦神王の代行者。
そして、貴様達の所業を裁く者だ』
跪いて少女を見送った男は、やがて己を取り戻した。
はて、今まで何をしていたのか。
男には全く思い出す事が出来なかった。
しばし経って日頃の激務のせいだろうと決め付けた彼は、何故か開いていた窓を閉め、部屋を去る。
彼の頭には既に、黒尽くめの少女に関する記憶は残っていない。
ただ一つ。
末裔、という一語が気にかかるとだけ残して。
【プロローグ 了】
精神系魔法?
《恍惚》って自己暗示の魔法では?
記憶消去なんてできたっけ?
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2
【耐久】 3
【器用】 8
【敏捷】 10
【感覚】 1
【意思】 7
【魔力】 8
【幸運】 9
【出身地 : ディスリス / 川沿いの村】
【現在地 : グレアモール / ズラウナム】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
物体や魔法の根幹部を乱し、その構成を破綻させる。
物体に対し用いれば軽度の衝撃を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減、あるいは無効化が発生する。
破綻の度合いは自信の魔力と対象の強度による対抗判定の結果による。
■ 所持品一覧
◆ 900 Casa
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
※ お知らせ ※
【破綻】 の効果が変更されています。
マイルドになりました。
>>611
【恍惚】 は魅了に近い効果を持つ精神魔法です。
他者に対する暗示も問題無く行えます。
自分に対して使用した場合は、精神性との合致による強度ボーナスを得られます。
【円環暦733年 夏 グレアモール / ズラウナム】
【地図情報】
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org363253.jpg
黒尽くめの少女―――あなたはとある都市に踏み入った。
グレアモール小国家群を構成する内の一つ、大陸南西端のディスリスと国境を接するズラウナム。
その首都にである。
先日、魔法を駆使して尋問した領主が治める都市からは二週間程の距離だ。
あなたはのんびりと歩きながら周囲を見渡す。
都市は十分に栄えているようだ。
人々の顔には笑みが浮かび、その衣服は綺麗な物だ。
また、家々の作りもしっかりとした物だ。
頑丈な木材で建てられたそれらは、年月を感じさせる割には破綻の兆しも見られない。
民の財は家と服を見れば容易に知れる。
壁に致命の皹が無く、生地に継ぎ接ぎも無いというのは、彼らが富んでいる何よりの証左だろう。
(これは、ここも外れかな?
って、いやいや、決め付けるには早いよね。
ちゃんと証拠を確保しないと、見落としたせいで何かあったらたまんないし)
あなたは体の表面、ヒュドールの体を構成する水面を震わせた。
今のあなたは衣服を纏っておらず、ドレスのようにも見える体表を剥き出しにしている。
無論、透明な体は体表どころかその向こうの景色まで丸見えだが、これは一般的なヒュドールの姿だ。
彼らは他の種族と違い、体を見られる事に対する羞恥心など存在しない。
そんなあなたの思考には、先日の傲慢な口調は残っていない。
あれはあくまで仕事用の物なのだ。
普段からあのような言葉遣いでは無用な軋轢を生むだけであり、また怪しまれるだけだとはあなたも知っている。
そう、仕事。
あなたが己の役割と信じるそれこそが、首都を訪れた理由である。
かつて大陸南部に名を馳せた者。
戦神とすら称えられた戦場の王。
その末裔こそがあなたである……と、あなたは信じている。
今は平民に身を窶したが、己の身に流れるは尊き血である。
ならば行いもまた尊い物で無ければならず、そして最も適した役割が一つある。
戦神王は、あらゆる不正を許さぬ苛烈な王としても知られている。
民を虐げる貴族を、その爵位を問わずに斬り捨てたのだ。
この事実から、一部では斬首王や鮮血王との名で呼ばれてもいる。
あなたは、そこに感じ入った。
誰よりも強く、誰よりも正しさを愛した彼を己の模範と定めた。
故に、末裔たるあなたが何をすべきかは明白だ。
隣国の王家断絶。
その裏に隠れるとされる何者かの陰謀。
そこに斬首王の末裔という自負が合致した結果生まれたのが、今のあなたの責務だ。
即ち。
(正さなくちゃいけない。
秩序の規範たる王家に刃を向けるなんてあっちゃいけない。
……そう、こんな国は間違っている。
【正しい形に戻す】
それが私の生まれた意味だ)
あなたは通りの遥か先を、そっと見据えた。
視線の先には、僅かだけ見える王城の頂。
玉座に座る者へと、あなたは一方的な敵意を燃やす。
座りたいならば座っていろ。
だが、それは今だけの事だ。
刃は既に放たれていたのだと、死の瞬間に思い知るが良い。
と。
さて、あなたが目的を達するために、まずはやらなくてはならない事がある。
あなたはこの都市の住民では勿論無い。
今のあなたには拠点が無いのだ。
不正の情報や陰謀の証拠などを掴むには時間がかかるだろう。
その間どうするかを考える必要がある。
宿を取るか、家を買うか、あるいは住み込みの仕事を探すという手もある。
宿と家の問題は単純だ。
あなたの現在の資金では長期の宿泊は難しく、家屋の購入は論外。
資金確保の手段も同時に見つけなければならない。
もっとも、冒険者の宿という選択ならば全てが解決する。
定期的に依頼を受けなければ追い出されはするが、身の丈に合った物を選べば危険も無い。
住み込みの仕事でも、やはり問題は揃って消える。
それなりに富んだ都市である以上、上京した者向けのそういった仕事は簡単に見つかるはずだ。
また、貴族の邸宅に下女として潜り込む事が出来れば情報収集にも利用できるかも知れない。
それ以外の手段では、どこかの空き家に潜むか、家主を魔法による洗脳下において間借りするという物もあるだろう。
だがそれはあなたには選べない。
あなたは法と秩序を愛する者だ。
無辜の民に迷惑をかけるような手段は避けるべきだと、当然のようにあなたは考える。
例外となるのは王家に対する反逆を企てた支配階級の者達のみ。
それを踏まえて、あなたは行動を選択する。
>>↓1 どうする?
(あ、良く考えたら良いのがあるわ。
極悪人を倒して賞金を貰おう。
皆は安心できて、私はお金が稼げる。
これぞ一石二鳥)
考えた結果、あなたはそう思いついた。
素晴らしい案であると確信を抱き、早速道を聞いて冒険者の宿を探す。
手配書といえば冒険者の宿。
その法則は大陸のどこであっても変わらない。
あなたは正義の執行に心を躍らせて、その足を進めた。
「……見せられる訳が無い。
子供が粋がるのは止しなさい。
仕事が欲しいなら普通のを紹介するから」
しかし、あなたの目論見はさっさと挫かれた。
鼻息荒く(ヒュドールは呼吸を行わないが、比喩として)手配書を見せろと迫ったあなたに対する店主の返答がこれだ。
鋭い松葉の短髪、ドライアドの中年男性は醒めた視線であなたを諭す。
曰く、賞金首に指定されるような悪人は子供が太刀打ちできるような相手ではない。
返り討ちに遭って死ぬよりも凄惨な事態に陥る前に諦めろ、と。
もしあなたが成人であれば話は違っただろう。
また、大人と子供の見分けが難しい種族であったならば。
だが、残念ながらあなたは成人に後六年を残し、年齢を偽る事も難しい。
姿を自在に変えられるヒュドールだが、声質までは操れないのだ。
また、体の中心、他の種族ならば心臓に当たる位置に存在する核も綺麗な球であり、大人の証明となる歪さは微塵も無い。
残念ながら、尋常の手段では手配書の閲覧は出来なさそうだ。
>>↓1 どうする?
落胆したあなたは、店内を探った。
時間帯が良かったのだろう。
他の客は仕事に出ているのか、全く居ない。
これならば問題は無いと、あなたは確信した。
『そうですか。
それなら仕方ないですね』
「うん、分かってくれたなら良い。
今来ている依頼は向こうに貼り出しているから、そこから選ぶように。
勿論、身の丈に合った安全な物をね」
安堵の息を吐いた店主の言葉に従い、あなたは一旦掲示板の前へと移動した。
そうしてそこで、小声で呟く。
体内に収められた、魔法行使を容易にする短剣へと意識を集中させる事も勿論忘れずに。
『―――微睡みを。
汝は解け、揺らぎ、蕩けるがいい。
静かの水面に心を委ね、揺蕩うままに声を聞け。
我が声を、ここに 《恍惚 / イスナ》 と定義する』
あなたの魔法は何の妨害も無く完成した。
不可視の力が指先を伸ばし、店主の額をじわりと撫ぜる。
>>↓1 コンマ判定 【恍惚】
基準値 5
魔力 8(あなた)
霊銀 2
意思 -7(店主)
目標値 8
【恍惚】
目標値 8
出目 2
成功!
一瞬だけビクリと硬直した店主は、すぐに微笑を浮かべて力を抜いた。
倒れ掛かる体をカウンターに凭れさせ、幸せそうに宙を見詰めている。
それを見て、あなたは良しと呟いた。
完全な手応えがあった。
彼は最早あなたの忠実な家臣に他ならない。
大概の命には喜んで従うだろう。
『普通の依頼だと良いのが無いみたい。
やっぱり、手配書見せてもらえませんか?』
「えぇ、勿論。
あなたが望むならば」
実際に、先程は断られた事もあっさりと通った。
彼は羊皮紙の束を恭しく指し出す。
ありがとう、と返したあなたは早速手頃な賞金首の物色に取り掛かった。
その最中、あなたは少しだけ唇を尖らせていた。
魔法行使のキーワードとなる『力ある言葉』は、自身で選ぶ事が出来ない。
世界において三という数字は神性の象徴とされる。
その法則に従って三音のみで構成されるそれは、ある日唐突に降って来る。
あなたもそのままに受け入れたのだが、恍惚の魔法が秩序に真正面から喧嘩を売る女神と同じ名という事には少なくない不満があった。
もっとも、結局どうしようも無い事なのだが。
さて、手配書を見る限りすぐに手を伸ばせるのは三つだ。
一つ目は、絵画の贋作師だ。
貴族達に偽の名画を売りつけるミーニアの男は、これまで上手くやっていたようだがこの国で足がついた。
逃走には成功したようだが、その背には数本の矢を受けている。
遠方まで移動できた可能性は低く、未だ首都に潜伏しているだろう。
賞金額は 【10000 Casa】
二つ目は、街道に出没する盗賊だ。
十人と少々で構成される彼らは、上手く官憲の目を欺き、僅かな隙を突いて商人を襲っているという。
主な構成員がハーピーというのが最も面倒な点だ。
空を自在に飛び回る彼らは、十分な対抗手段が無ければどうしようも無いだろう。
賞金額は 【一人につき 2000 Casa】
三つ目は、隣の都市に現れた通り魔だ。
襲われた者は七人、その全員が命を落としている上に、一撃のみで迅速に終わらせているために目撃者も無い。
容姿に関する情報も当然皆無であり、相対するならば自身を囮とする他無いだろう。
唯一の情報は、死体の状態からどうやら得物は斧のようだ、という物のみだ。
賞金額は 【8000 Casa】
どれを選んでも、当面の資金としては十分だろう。
「一応、注意を。
賞金額と危険性は必ずしも一致しない。
決めているのはお上だからね。
国に対する脅威の度合いが基準になっている」
店主の蕩けた声を聞きながら、あなたは三枚の手配書を睨む。
あなたの選択は……。
>>↓1 どうする?
通り魔にしようと、あなたは決定した。
あなたとしては極自然な選択だ。
何の罪も無い無辜の民を脅かす脅威は速やかに取り払われるべきである。
盗賊は荷を差し出せば命までは取らず、贋作師はその性質から民への被害は無い。
優先順位を考えればこれ以外に有り得ない。
『決まったわ、ありがとう。
それじゃ、私に会った事は忘れておいて』
「えぇ、勿論。
あなたが望むならば」
手配書を返し、あなたは冒険者の宿を出る。
今日は一度通常の宿を取り、明日に隣の都市へ向かうべきだろう。
疲労は極力除いておかなければ万一も有り得るのだ。
といった所で、今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
明日は隣の都市に到着した所から。
1ターンの戦闘準備後に討伐開始となります。
追記。
国際手配犯の事を忘れてました。
明日ついでに載せておきます。
今晩は21時位の開始予定です。
よろしくお願いします。
手配書の確認を終えた翌々日。
あなたは目的の都市に到着し、その構造を確認していた。
グレアモールの中央部に近付けば独特な物となるのだが、ここはディスリスとの国境にも近い辺境だ。
構造は特に奇抜な物では無い。
石造りの簡素な外壁の内側にごちゃごちゃとした町並が広がっている。
中心部に近付けば二つ目の壁が顔を見せ、その先には身分の高い者や富んだ平民達が整列と居を構えるようだ。
元々は内側の壁だけが存在し、全市民が暮らしていたという。
それが人口の増加に合わせて壁外に好き勝手に住居が建てられ、拡張されたらしい。
そういった経緯があるためか、外周部の町は複雑に入り組んでいた。
真っ当な都市計画の下に作られた物では決して無い。
まるで迷路だと、あなたは感じただろう。
下手をすれば自分がどこに居るかも分からなくなり、夜間ならば尚更だ。
また、当然の事として死角も多い。
このような街では通り魔の姿が目撃されていないのも頷けるという物だ。
そんな街を歩きながら、あなたは手配書について思い返す。
現在、国家の枠を超えて追われるような重罪人は居ないようだ。
討ち取られたか捕えられたか。
軒並み賞金が失効した物ばかりであった。
世の中が平和であるのは良い事である。
そう考えながらも、あなたは憤慨を抑えきれない。
失効した手配書の中には、討ち取られもせず捕えられた訳でも無い物もあったのだ。
寿命による死を迎えたはずだと、手配が取り消された物である。
代表格となるのはやはりドライアドの老婆だろう。
史上最高額の賞金首は、失効から百年を経ても未だ手配書の筆頭に飾られている。
今や幼子の躾にも使われる程の怪物は、結局誰の手にもかからずに逃げ遂せた。
それが、あなたには我慢がならない。
(全く、情けない。
その時代に私が居れば首を落としてやったのに)
さて、二日をかけて街を粗方把握し終えたあなたは、考えた。
そろそろ討伐を実行に移すべきだろう。
新たな犠牲者は今の所出ていないが、いつ誰が殺されてもおかしくは無い。
そうなる前に断罪の刃を振り下ろす事こそがあなたが自身に課した使命だ。
今回の下手人について分かっている事は、以下の通りだ。
犯行は夜間。
凶器は薪割りに使われるような一般的な斧と思われる。
全ての被害者はただの一撃で命を奪われている。
これだけである。
男であるか女であるかも分からず、そもそも種族すら不明だ。
そんな犯人に対し、あなたには優位に立ち得る材料がある。
あなたはヒュドール、つまりは人の形をした水だ。
物理的な攻撃は効果が薄い。
斧の一撃を受けた所で、余程当たり所が悪くない限り体の一部が失われるのみだろう。
十分な量の水さえ確保出来れば一晩で治る程度であり、ヒュドールにとっては軽傷に過ぎない。
痛みも行動に支障を来たす事は無いはずだ。
体積が減った分、体が縮んで多少動きが鈍る事は有り得るが、それだけ。
無論、斧を凶器とする犯人はヒュドールを避ける事は予想できる。
だがそれも先日の潜入にも使った黒いローブで偽装すれば良い。
八度目の凶行を警戒し、夜に出歩く者は少ない。
自身を囮とする事に然程の苦労は無いだろう。
犯人を釣り上げるための工夫は考えずとも良い。
では他に。
討伐を更に優位に進めるため、出来る事は無いだろうか?
>>↓1 戦闘準備に1ターンが与えられます。
頭を捻って考えた結果、あなたは自身の弱点を補おうと考えた。
あなたの最大の欠点。
それは五感の鈍さに他ならない。
賞金首があなたに狙いを定めたとして、それを感知できる可能性は酷く低い。
恐らくは背に刃を受けた瞬間、ようやく襲撃に気付く事になるだろう。
斧の一撃程度が致命傷となる可能性は低いが、回避出来ればそれに越した事は無い。
となれば、話は簡単だ。
他者の接近を感知する手段が、今のあなたにとって必要となる。
まず思い当たるのは魔道具だが、これは不可能だ。
余りにも高価過ぎる。
首尾良く賞金を得られたとしても到底払いきれる額では無いのだ。
恍惚の魔法を用いれば無料での入手も出来るだろう。
しかし、無辜の民から代価も払わずに物品を拝借するなど、あなたには許容出来ない。
法と秩序の番人と己を定義したあなたにとって、それは選択肢に上げる事すら有り得ない。
では何か、丁度良い物は無いかと周囲の店を見渡し……。
そこに、あなたは実に都合の良い物を発見した。
棒を持った男に追われる猫である。
恐らく男はどこかの店主であり、口に咥えた何かの肉片は商品だったのだろう。
身軽な獣は男を嘲笑うように、生来の身軽さでもって消えていった。
なるほど、とあなたは頷いた。
獣であれば当然、その感覚は優れた物であるはずだ。
魔法を用いて支配下に置けば、生きた警報装置として十分に機能するに違いない。
あなたの口元はニヤリと吊り上がった。
これで、今晩の討伐は格段と楽になる事は全く疑い無かった。
そうして、夜になった。
月明かりにのみ照らされる通りを、あなたは歩く。
全身を覆い隠す黒いローブの中には一匹のネズミを抱いてだ。
あなたの得意とする魔法によって意思を支配されたネズミは従順に鼻をひくつかせて周囲を探っている。
通りは細く暗い。
特段裏通りという訳でも無いのだが、この街は発展が無秩序な物であったためだろう。
おおよそ大半の道が狭く、また篝火が灯された場所も少ない。
犯行はさぞやりやすかった事だろう。
だが、それも今夜が最後だ。
断罪の刃は今日、下手人の首を斬り落とす。
あなたはそう意気込み、不安を誘う道を行く。
>>↓1 コンマ判定 【気配感知】
感覚 9(ネズミ)
隠密 -3(襲撃者)
夜闇 -0(嗅覚による無効化)
目標値 6
【気配感知】
目標値 6
出目 1
クリティカル!!
その時、懐のネズミが鋭く震えた。
全身の毛を逆立たせ、あなたの前方へと鼻先を向けている。
それに反応し、視線を向けずに気配を探ったあなたにも知覚出来た。
およそ二十歩の距離だろう。
家屋と家屋の隙間に何者かが潜んでいる。
襲撃者だという確信に、あなたは精神を研ぎ澄ませる。
間抜けにも釣り上げられた下手人は、すぐ傍に居る。
それも、未だ襲撃のために駆け出しもしていない。
あなたは今完全な優位を得た。
確実な先手を取るには十分過ぎる材料だ。
>>↓1 どうする?
あなたはまず、小声で詠唱を行った。
唱えるは精練。
自身の肉体を強化し、斧に対する備えを整えるべきと考えたのだ。
無論、あなたの体は水だ。
幾ら強化した所で、斧を完全に防ぐなど期待できない。
それでも、幾分抵抗を増す事で相手の動きを制限できる可能性もあるだろう。
『練り上げよ。
叩き、打ち据え、折り重ね。
汝は硬き鋼と変ずる。
我が声を、ここに 《精練 / ザハク》 と定義する』
瞬間、あなたの体を構成する水はその性能を増した。
より重く、より固く、されどより滑らかに。
【精練】
筋力 +1
耐久 +1
敏捷 +3
ただし、一つあなたは見落とした。
今は夜。
街を出歩く者は無く、辺りは酷く静まり返っている。
そんな中で、いかに小声とは言え魔法の詠唱など行えばどうなるか。
「……っ!」
その答えが、高く響く足音であった。
潜んでいた下手人の決断は余りにも早かった。
発見され、しかも対処を固めようとした事に気付いたに違いない。
足音は急激に遠ざかり、街の奥深くへと消えようとしている。
無論、あなたは慌てて足を踏み出した。
幸いにも、今のあなたは肉体の性能が強化されている。
走行速度も当然、常よりは速いはずだが……。
>>↓1 コンマ判定 【反動軽減】
魔力 8
目標値 8
【反動軽減】
目標値 8
出目 8
成功!
罪人の背を追いながら、あなたは自身の状態を確認した。
魔法行使による反動は、どうやら極軽い物だ。
今のあなたにとって背にあたる部分の僅かな水が移動できなくなっている。
たったそれだけで、追跡にも戦闘にも支障は無いだろう。
問題はただ一つ。
あなたは二日間街を見て回ったのみ。
対して相手はこの街で犯行を繰り返していたのだ。
当然、地理に関する知識には大きすぎる差がある。
それを覆し、刃を突き立てる事が果たしてあなたに可能だろうか?
>>↓1 コンマ判定 【追跡 / 敏捷対抗】
基準値 5
敏捷 13(あなた)
敏捷 -9(襲撃者)
迷路 -4
夜闇 -2
目標値 3
【追跡 / 敏捷対抗】
目標値 3
出目 2
成功!
結論から言おう。
可能であった。
今のあなたの速度は、地を走る人類としては最高峰にある。
単純な速度であなたを振り切るなど、飛翔手段を持つハーピーですら困難だ。
迷路や夜闇など何の問題にもならない。
入り組んだ道を曲がり逃げれば、壁すらを足場に一切速度を落とさずあなたが追う。
彼我の距離は一向に広がらず、ただ縮まるばかりだ。
時折振り返る顔に濃厚な焦燥の気配がある事を、あなたは確かに感じ取った。
やがて、逃走劇は終わりを迎える。
路地の奥も奥。
どこにも逃げ場が無い行き止まりへと、あなた達は辿り着いた。
そこで賞金首……薪割り斧を構えた男が、振り返った。
目元だけを残して布を巻き、顔を隠しているが、ガッシリとした筋肉質の体型から男である事は疑い無い。
身長を鑑みればミーニアかセリアンスロープだという事実も明らかだ。
この事実だけでも十分な情報だ。
もし討伐に失敗し取り逃がしたとしても、情報料として幾らかの金銭は得られるだろう。
『おや、鬼ごっこは終わりか?
では武器を置き、頭を垂れよ。
慈悲である。
我が断罪の刃にて、痛み無く葬ってやろう』
余裕を見せつけつつ、あなたは最後の勧告を行う。
無論、一切の曇り無く本気の言葉だ。
命を奪った罪人とあらば生かしておく理由は無い。
慈悲による死こそが彼に与えられるべき執着だと、あなたは確信する。
ただし、相手にとっては挑発以外の何物にも成り得ない。
「―――死ぬのはテメェだ!」
怒号と共に、男は地を蹴り走った。
今のあなた程では無いが、目を見張るべき速度だ。
十歩程の距離を凄まじい勢いで詰めつつある。
高々と振り上げられた斧の狙いは、恐らく頭か。
通常ならば致命傷と成り得る箇所。
だが勿論、ヒュドールたるあなたには感覚器を狂わされる以上の損傷にはならないはずだ。
>>↓1 どうする?
その一撃を、あなたは受け入れた。
あなたの頭部、そのおよそ半分がローブのフードごと弾け、周囲にぶちまけられる。
そうして残る体も崩れ落ちた。
死んだと、そう見えるだろう。
攻撃に対し咄嗟に反応しようとし、失敗したと装う演技も及第点だ。
後は油断した所に魔法を打ち込めばそれで終わる。
あなたはそう確信し……。
間断無く放たれ続ける追撃に、容易く期待を裏切られた。
(……!?
な、なんで!?)
なんで、も何も無い。
他の種族とヒュドールでは、斬撃に対し返る手応えは全く違う。
七人もの人間を斬り殺した男に判別できない理由などどこにも無い。
立て続けに振り下ろされる斧は、明確に胸部に狙いを定めていた。
ヒュドールの致命の急所たる核を探しているのだ。
しかし、あなたに出来る事は最早無い。
体は地面に倒れ、斧を五度六度とその身に受けている。
弾け飛んだ水量は既に致命的だ。
男を追い詰めた素早さなど発揮の仕様が無い。
そしてまた、軽く取り回しに易い薪割り斧は詠唱の隙さえ与えない。
『うぁ、ぁ、ああぁあ』
そうして、最期が訪れる。
幾分冷静さを取り戻した男は、斧を捨ててあなたの胸に手を潜り込ませた。
体内に両腕を指し込み握り締めた石のような球体こそが、あなたの核である。
男の怪力によって握り締められたそれが、小さな音を立てて砕けるには然程の時間もかからなかった。
後に残されたのは、黒いローブと小さな水溜り。
たったそれだけ。
あなたはこうして、何も残せず、何者にもなれず。
ただ無為に八人目の犠牲者と相成ったのだ。
DEAD END
安価↓2になりませんか(小声)
終わらせたかったけど終わらなかった。
申し訳ないです。
とりあえず今日はここまでで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
>>687
了解しました。
次から採用してみます。
乙おつ
コンテ無限だし、次に生かすべ
ところで、ヒュードルは頭吹き飛ばさても死なないみたいだけど、その状態で魔法って使えるの?
魔法の詠唱というか、発声をするに頭は必要なんだろうか?
今晩は20時30分位の開始予定です。
また、コンティニュー地点を 【最初の発見時】 【袋小路に追い詰めた時】 のどちらかから選択できます。
よろしくお願いします。
>>691
使用できます。
ヒュドールの種族特性により、発声器官を指先に作る、などの行動が可能です。
そういえば種族間評価ってなんでやめたの?
>>693
確か時間短縮のために削った……ような気がします。
一応乗せておきますね。
【筋力】 2 (平均)
【耐久】 3 (優秀)
【器用】 8 (優秀)
【敏捷】 10 (怪物)
【感覚】 1 (蔑視)
【意思】 7 (劣等)
【魔力】 8 (平均)
【幸運】 9 (評価無し)
「―――死ぬのはテメェだ!」
怒号と共に、男は地を蹴り走った。
今のあなた程では無いが、目を見張るべき速度だ。
十歩程の距離を凄まじい勢いで詰めつつある。
高々と振り上げられた斧の狙いは、恐らく頭か。
通常ならば致命傷と成り得る箇所。
だが勿論、ヒュドールたるあなたには感覚器を狂わされる以上の損傷にはならないはずだ。
>>↓2 どうする?
振り下ろされる斧を前に……あなたはほくそ笑んだ。
好機である。
水の体を持つあなたにとって、物理的な攻撃は効果が薄い。
直撃した所で致命傷とは成り得ず、むしろ反撃の隙に違いない。
『汝、未だ形を持たず、未だ何も為さず。
虚空を彷徨う他に術も無き、哀れ無力なる者達よ』
そして同時に、詠唱を開始したあなたを見て襲撃者もまた笑う。
それは愚者を見る瞳だ。
至近距離で詠唱など、およそ馬鹿のする事だ。
魔法を唱え終えるよりも、斧が頭をカチ割る方が余程早い。
無謀に過ぎる過信を抱えて死ぬが良いと、その瞳が語る。
勿論、果たしてどちらが真なる愚者であるかなど、明白であるのだが。
風船が割れるような音と共に、あなたの頭部が弾けた。
その事実に、男が目を見開く。
飛び散ったのは血では無くただの水。
それが意味する事実、あなたの種族についてようやく悟ったのだろう。
だが、男を責める事は酷だ。
あなたの行動には、ヒュドールらしさという物が余りにも欠如していた。
衣服の着用、夜闇で息を潜める男を発見した鋭敏な感覚、男を追い詰めた俊足。
これらを併せて考えれば、導き出されるあなたの種族はセリアンスロープだ。
唯一魔法の行使のみが例外となるが、全ての獣人が魔法を苦手とする訳でも無い。
『我が声を聞け。
正しき理を知るが良い。
我は汝を導く者。
今こそ、汝に生の意義を与えよう』
虚を突かれた男を嘲笑うように詠唱は続く。
声の発生源は腹部。
頭部の崩壊を見越してあらかじめ作成された二つ目の口が朗々と聖句を紡ぐ。
半ば恐慌に陥った男が再び斧を振り上げるも、もう遅い。
彼はもう、どうしようも無く詰んでいた。
『我が声を、ここに 《生成 / サクリ》 と定義する』
「がっ! ―――!? ……!!!」
そうして、男は終わった。
頭部を丸ごと包む黒色の粘液こそが致命の一撃に他ならない。
粘度の高いそれは、男の頭部と外界とを完全に断ち切った。
視界は奪われ、何も聞こえず、呼吸など以ての外。
驚愕に斧を取り落とし、粘液を拭おうと手を伸ばすも……。
『残念だが追撃だ。
まさか許されるとは思うまい?』
更なる詠唱が終わり、精練の魔法によって粘液がより強く結びつく。
今や粘液を取り除くなど不可能だろう。
自身の顔を掴んだ両手は強力な粘着性によって動かす事もままならない。
彼に残された道は、苦しみに満ちた窒息死、ただ一つのみ。
『死するまでの間、よくよく後悔する事だ。
貴様が手にかけた者達の無念が、僅かでも晴れるようにな。
……もっとも、今の貴様には聞こえてなどいないだろうが』
やがて、男は死んだ。
脈が完全に失われた後、粘液を消し去り確認した顔には恐怖と悲痛に塗れていた。
それを除けば、実に平凡なミーニアの男の顔であった。
七度の凶行を繰り返したなど、到底信じられない程度には。
ともあれ、賞金首の討伐には成功した。
あなたは十分な資金を手にし、都市には平穏な夜が取り戻されるだろう。
自身の行いに満足したあなたは、魔法で作り出した氷の台車に男を乗せ、衛兵の詰所を目指すのだった。
その後は特に問題無く進んだ。
通り魔の正体はそれまで不明であったため少々時間を取られはしたが、十分な確認が取れたのだ。
決め手となったのは二つ。
血痕だらけの薪割り斧と、衛兵達が探し当てた男の家から発見された犠牲者の体の一部である。
どうやら男はハンティングトロフィーとして、犠牲者の耳を収集していたらしい。
死体の損壊は輪廻の神に唾を吐くような所業である。
もう少し痛めつけておくべきだったかと、あなたは僅かに後悔したかも知れない。
【円環暦733年 夏 グレアモール小国群 / ズラウナム】
さて、その数日後、あなたはズラウナムの首都へと戻り宿を取った。
討伐や移動の疲労を拭うべく、用意された大きな桶の中に広がっている。
ちょうど、桶一杯に湛えられた水の中から透明な少女の顔だけが出ている形だ。
ヒュドールという種における、一般的なリラックス方法である。
(やっぱり、良い事した後は気分が良いなぁ……)
勿論、今のあなたは上機嫌だ。
悪を倒し、善を為した。
それはあなたにとって何より大きな喜びだ。
そしてまたもう一つ、あなたの機嫌を良くする材料があった。
都市の夜を脅かしていた通り魔の死は、大々的に喧伝された。
そしてその際、あなたは都市を救った者として表彰されたのだ。
市民達の賞賛と感謝を一身に受け、あなたはまさしく英雄気分であった。
あなたはこれまで、何かを為した事は無かった。
どこにでも居る平凡な村娘。
それが、ほんの少し前までのあなたの立場だった。
少々妄想が激しい点は愛嬌という物だろう。
自身を高貴なる者の末裔と定義しながらも、何の実績も無い。
そこに暗い感情を抱えていたあなたにとって、今回の件は光が差したような物だ。
(……このまま、賞金稼ぎになるのも……。
いやいや、私には使命があるんだから……)
故に、新たな葛藤が生まれたのも致し方無い事だ。
王家断絶の謎を暴き、誤った支配を打ち破る。
あなたはそう誓っていたが、もう一つの道も示されている。
どちらにすべきか、あるいはいっそ二兎を追うか。
あなたの悩みは尽きない。
(あー……まぁいいや。
今日はもう休んで、明日また考えよう)
やがて、考え疲れたあなたは眠りに落ちる。
その頬は僅かに緩み、確かな幸福に彩られていた。
【円環暦733年 夏 固定イベント『正義のためにそのいち』 了】
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2 (平均)
【耐久】 3 (優秀)
【器用】 8 (優秀)
【敏捷】 10 (怪物)
【感覚】 1 (蔑視)
【意思】 7 (劣等)
【魔力】 8 (平均)
【幸運】 9 (評価無し)
【出身地 : ディスリス / 川沿いの村】
【現在地 : グレアモール / ズラウナム】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
物体や魔法の根幹部を乱し、その構成を破綻させる。
物体に対し用いれば軽度の衝撃を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減、あるいは無効化が発生する。
破綻の度合いは自信の魔力と対象の強度による対抗判定の結果による。
◆ キーワード
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
■ 所持品一覧
◆ 8900 Casa ←NEW
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 宿代として一季節毎に 【1000 Casa】 が自動消費されます。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
【円環暦733年 夏 自由行動 1/3】
「あら、おはよう小さな英雄さん!
ほらほら、寝惚けてないで早くしないと朝ごはんが終わっちゃうよ!」
その日、起床して階下に降りたあなたを出迎えたのは恰幅の良いミーニアの中年女性だ。
物静かなヒュドールの夫と二人でこの宿、『夢見る陽光亭』を切り盛りしているようだ。
彼女には隣の都市に嫁いだ娘が居るという。
通り魔の出現からこちら気が気では無かったようだ。
それがあなたのお陰で解決されたと知り、随分と気安く接してくれている。
また、宿代が本来の半額にまで下がっているのもありがたい限りだ。
ただ、あなたにとっては彼女の気安さが少しばかり困る事もある。
『あ、は、はい。
ありがとうございます、すぐ食べます……』
「全くもう、もうちょっと胸を張りな!
そんな縮こまってちゃいけないよ!」
……あなたはこれまで、親も無く親しい友人も無く、村の中であっても孤独と共にあった。
このような距離感で接される事は初めてであり、喜びよりも困惑が強い。
どうすれば良いのか分からないのだ。
王の末裔として振舞っている間はどうとでもなるのだが、まさか普段からあのような傲慢さを振りまく事は出来ない。
その程度の常識は、あなたも勿論持っている。
次々勧められるままに食事を体内に取り込み、吸収し終えた後。
あなたは半ば逃げるように宿を出た。
いや、実際の所逃げた。
夢見る陽光亭はヒュドールが主人である事もあり、あなたにとって良い宿だ。
寝床も食事も、十分以上の質を持つ。
後は女将がどうにかなれば最良だと断言出来るのに、と、肩を落とす。
ともあれ、あなたは気を取り直して顔を上げた。
宿の居心地は良いが、いつまでも怠惰に過ごす事は出来ない。
あなたには使命があるのだ。
正しい王統を取り戻す。
我欲のために王を弑し国を崩した反逆者を除かねばならない。
そのために行動を起こす必要がある。
街の人々から話を聞き、ズラウナムの治世について調べるのも良い。
王の姿勢は臣下の態度にも表れるだろう事から、衛兵達に接触する手もある。
どこぞの貴族の懐に潜り込むための下調べも悪くは無い。
勿論、いつかのように直接的に忍び込む選択肢もあるだろう。
ただし、今のあなたは心が揺れている。
賞金首を誅して受けた感謝は、数日を経ても強く焼きついている。
再び冒険者の宿に出向き手配書を調べる、あるいは一般的な住民の依頼を確認する事も、あなたの心は拒否しないに違いない。
>>↓2 今日はどうする?
あなたは唐突に思いついた。
そうだ、魔獣を相棒にしよう。
と。
先日の賞金首討伐の際、連れて行ったネズミは実に良く働いてくれた。
先制発見を最大限活用する事は出来なかったが、あれで随分有利になったのは確かである。
今後のために一匹確保しておくのは良い考えのはずだ。
それもただのネズミでは無く、規格外の生命とすら呼ばれる生ける暴威、魔獣であったならば……!
「……見せられる訳が無い。
もう少し常識を学びなさい。
相棒が欲しいなら普通の動物にすべきです」
しかし、あなたの目論見はさっさと挫かれた。
いつぞやと同じ冒険者の宿、その店主であるドライアドの男の言葉である。
彼は魔獣の脅威について懇々と語った。
魔獣とは、人間とは比べ物にならない戦闘能力を持った化け物である。
腕の一振りで五体を四散させ、牙の一噛みで人生に幕を下ろす、正真正銘の怪物だ。
低級と分類される魔獣であっても、一流を超えた域に棲む人類の異常個体が命を賭して挑むべき水準に彼らは居る。
暴力の権化。
擬獣化された死。
そう呼ばれるべき者達だと。
「人間の賞金首を仕留めた程度で思い上がらないように。
洗脳ごときがアレらに通じるものですか」
切々と諭され、あなたは肩を落とす。
どうにも、この店主とは相性が悪い。
手配書は早々に隠されてしまい、この分では周辺の魔獣について確認する事は難しいだろう。
>>↓2 どうする?
ちょっと色々難しいので明日に持ち越します。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
遅くなって申し訳ないです。
短いですが、22時位から開始します。
よろしくお願いします。
あなたは一旦、諦めた振りをして宿を出た。
店主は頑なに手配書の閲覧を拒んでいる。
説得するには手がかかるだろうし、相手が意思や魔力に優れる傾向のあるドライアドでは恍惚の魔法も分が悪い。
ここは別の者を相手とするべきだという判断だ。
店の外、やや離れた位置で通りを歩む人々を観察する。
代わりに手配書を確認させるにしても、一般人では難しい。
屈強な冒険者でもどこかにいないかと、あなたは視線を彷徨わせる。
と、その時、丁度良い者が街門の方向から現れた。
恐らく依頼帰りなのだろう。
返り血の汚れが少々目立つ革鎧を着込んだミーニアの男だ。
いかにも熟練らしい風格の彼ならば申し分無いはずだ。
にやりと口元を緩めたあなたは、早速小声での詠唱を開始した。
「なんだ、魔獣について知りたいのか?
だったら手配書なんざ見なくても俺が教えてやるよ」
そして更に運の良い事に、冒険者の男は近隣の魔獣について詳しいようだった。
手配書を見るまでも無く既に蓄えてあった知識をあなたへと披露する。
彼の知識によれば、北方の洞窟に棲む蝙蝠の魔獣が居るらしい。
蝙蝠らしく聴覚に極めて優れているようで、勿論あなたの目的にも適うだろう。
ただし、その脅威は甘く見て良い物では無い。
群れ一つが丸ごと魔獣となった稀有な例であり、飛翔能力と単純な数によって討伐が困難だという。
また、攻撃手段として音の魔法を用いる事が確認されている。
単体ですら人間の鼓膜を破壊するに十分な威力を持ち、複数が束ねられてしまえば物理的な衝撃まで伴うそうだ。
魔獣の情報にあなたは僅かに顔を歪める。
水の体を持つあなたは物理的攻撃に耐性を持つが、魔法では他の種族と同程度の被害を負うだろう。
それが音による物だとすれば尚更だ。
直撃を一度でも受ければ体は容易く弾け飛び、そこであなたの命は終わりを迎えるに違いない。
男に礼を言い、あなたはその場から離れた。
残念ながら、今の所他の魔獣は確認されていないようだ。
蝙蝠以外を狙うならば、己の足で何の手がかりも無く探し回る他は無い。
>>↓2 どうする?
ズラウナムの治世を聞く作業に移行
>>736
全く別の行動になってしまうため、キャンセルされます。
自由行動2/3にて再度指定して下さい。
今回は 「今日は蝙蝠の魔獣には挑まない」 という扱いになります。
あなたは暫し考え、ゆるゆると首を振った。
現状では到底敵う相手とは思えない。
挑むにしても、十分な準備を整えてからにすべきだろう。
さもなくば無様な無駄死にとなるだけに違いない。
とりあえずは、とあなたは再度魔法を唱える。
勿論恍惚を。
対象は近くの道端で寛いでいた猫である。
一瞬だけ全身の毛を逆立たせた白猫は、すぐに全身を弛緩させてあなたへと擦り寄った。
当面はこの猫で代用するのが良い。
猫をペットとする者は、どうやらこの街でも多い。
連れていても不審に思う者は無さそうだ。
戦闘能力など全く期待できないだろうが、危険を察知させるだけならば十分過ぎる。
フニャァ、と蕩けた声の猫を連れ、宿へと戻る。
即席でも名前を付けておこうかと考えるあなたには、分かりやすく猫好きであった女将の狂喜など全く予想もついていなかった。
【円環暦733年 夏 自由行動 2/3】
己の体積が極僅かずつ減っていく感触に、あなたは目を開いた。
眼前には白猫。
未だ名無しの同居人は、喉が渇いていたらしい。
あなたの額へと舌を差し入れて水を飲んでいる。
「ニィー」
止めさせようと手を伸ばせば、不満そうな顔で甘えた声である。
猫らしい愛らしさに思わず手が止まり、その隙に再び舌が伸ばされる。
仕方ない。
どうせ猫に呑まれた程度でどうこうなる事も無い。
そう諦めたあなたは、猫の思うままにさせるのだった。
>>↓2 今日はどうする?
水を飲み終えて満足げな白猫を連れ、あなたは街へと出た。
ズラウナムは規模こそ小さい物の、海に接する港町である。
街の人々も海産関係を生業とする割合が高く、おおむね剛毅、悪く言えば粗野な者が多い。
現に今もどこからか威勢の良い声が響いている。
腕には猫を抱え、体の表面を呆れる程フリル塗れのドレス状に変化させた姿はいかにも街の風景とちぐはぐだ。
必然、人々の視線がチラチラと向けられている。
ただし、あなたはその理由に気付けない。
あなたにとって、高貴なる者がドレスを纏うのは当たり前の事だ。
そのように奇異の視線を向けられる覚えは全く無い。
『あなたって、もしかして人気者なの?』
「ナァオ?」
故に、あなたは視線は猫に向けた物だと考えた。
確かめるように尋ねてみれば、機嫌良さげに顎を逸らせてあなたを見上げた猫は可愛らしく鳴く。
なるほど、これならば納得だと、あなたは確信したかも知れない。
さて、視線の理由はともかく、あなたには使命がある。
あなたの視線は街の西側へ。
緩やかな坂の先、小さな高台に位置する城へと向けられる。
正統なる血族を蔑ろにした僭王の一人。
……少なくとも、あなたがそう確信する者がその城の玉座に座っている。
(……化けの皮を剥いでやる。
それまで精々、いい気になって座っていれば良い)
城に背を向け、目指す先は港だ。
城の近くでは何を思っていても言葉にはし難いだろう。
ならば街の東側、港で話を聞くのが良いはずだとあなたは考える。
また、気の荒い漁師であれば僭王への批判を口にする事もあるだろう、と。
「あん? 陛下の評判だ?
そんなもんお前……最高に決まってんだろうが!」
しかし、あなたの期待は容易く裏切られた。
日常的に網を引くためだろうか、両腕を細かな傷で覆った大男は破顔して語る。
ズラウナムの主 【ザハール】 がいかに良き王であるかを。
治安は良く。
税は安く。
そして何より民に対する思いが違うと、彼は胸を張った。
彼が言う事には、以前は鮫に襲われる、漁の最中に事故に遭う、などして体を壊した漁師は路頭に迷う以外に道が無かった。
哀れんだ王は彼らに新たな職を用意したという。
効率的な漁を研究する院を作り、彼らを雇い上げたのだ。
今では首都以外にもそれは広がり、各地で新たな漁法が次々に生み出されているそうだ。
また、それは漁師だけの話では無い。
農民、薬師、医師、商家、およそ考え得る全ての業種において同様の試みが始まっている。
「昔はよぅ。
この辺りは辺境だってんでもっと適当に扱われてたんだよ。
俺らの声なんざどこにも届きやしねぇ。
それがザハール様と来たら、月に一度は港にまで顔を出すんだ。
困った事は無いか、不自由はしていないか、ってな。
俺は、あんな素晴らしいお方は他に見た事ねぇよ」
結局、漁師の男は一欠けらの批判も口にする事は無かった。
終始誇らしげな顔のまま、仕事の続きがあると去っていく。
その背を見送ったあなたは、むぅと唸った。
彼の話を聞く限りでは、どうにもザハールからは反逆者らしさが感じられない。
もっと傲慢さ、あるいは独善性があって然るべきだと、疑いを捨てきれない。
あなたは港を離れ、今度は街を歩いた。
だが、そちらでも結果は同じだ。
誰も彼もがザハールを賞賛する言葉を吐くばかり。
いよいよあなたには良く分からなくなってきた。
これでは、本当にザハールが良王であるかのようだ。
……そんな時、通りから伸びる暗い小路が目に入った。
裏通りである。
表から見た限りでは、いかがわしい店や酒場が軒を連ねているらしい。
酒が入った者ならば、口が軽くなっているはずだ。
別の話が聞ける可能性は高い。
だが勿論、表を歩くのとは違い少々の危険もあると予想される。
治安が良い都市とは言えど、裏通りにまで良識を期待すべきでは無いだろう。
>>↓2 どうする?
意を決して踏み入った裏通りは……清潔だった。
随分と想像と違う様に、あなたは困惑する。
酔客が転がっている事も無く、捨てられた酒瓶の一つも見当たらない。
見れば、作業着らしい丈夫な服を纏った数人の集団が清掃を行っているのが分かる。
また同時に、深酔いしすぎて前後不覚となった者の介抱も彼らの役目のようだ。
辻に立つ娼婦が、いつもありがとう、と彼らに礼を告げ妖艶に微笑んでいる。
その様からこれが当たり前の光景である事は容易に感じ取れた。
何だこれは、と立ち尽くした。
一般的な街の裏通りとは余りにも雰囲気が違い過ぎる。
これではまるで並ぶ店が変わっただけの表通りだ。
異常とすら言っても良い。
あなたは思わず、清掃員の一人を呼び止め話を聞いた。
彼の口から出たのは……やはりザハールの善政だ。
彼は切々と己の事情を語った。
職を失い裏通りで乞食と化していた彼は、今やザハールに拾い上げられこうして働いているという。
他の作業員達もおよそ同様。
ザハールは乞食達をまとめて雇い上げ、汚れ仕事ではあるが職を与えているそうだ。
そういえばこの街、いやこの国ではスラムらしき物を見ていない事に、あなたは気付く。
もしやと尋ねれば、返って来た答えは……。
「そんな物、もう無いよ。
この二十年で全部綺麗に掃除されちまった」
嬉しそうな笑みと共に、男は言う。
ぽかんと間抜けに口を開ける以外に、あなたに出来る事は無い。
最早、これ以上大きな疑いを持ち続ける事は難しい。
完全に拭い去るには直接の対面、あるいは城への潜入が必要だろう。
しかしどうにも、本当に良王なのでは無いかという考えを止める術は、今の所どこにも無かった。
宿へと戻る道すがら、あなたは考えた。
ザハールは僭王である。
王家断絶の後、勝手に王を名乗っただけの者である事は疑い無い。
だが、彼の善政もどうやら間違いない。
(一度、たった一度だけで良い。
ザハールと言葉を交わす機会さえあれば、少しは何かが掴めるかも知れない……)
今あなたが導く事の出来る結論は、それだけだ。
真なる善王なのか。
善性は仮面に過ぎず内心には黒い欲を抱えているのか。
そこが分からなければ、身動きの取り様が無い。
そんなあなたの苦悩を分かっているのかいないのか。
抱えた白猫は、いつの間にか暢気に寝息を立てていた。
といった所で、今日はお開きで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
一周目の罪の重さが凄い。
本日は20時30分位の開始になります。
よろしくお願いします。
【速報】 玉藻1 清姫3 アンメア1 アルジュナ1 大勝利 【自慢】
そうだイッチ、質問あります。
一つ目
【精錬】の効果時間はどのくらいですか?
二つ目
輪廻教の価値観において獣の屍肉を囮に狩猟を行うことは許されてますか?
>>767
何か忘れてると思ったらそれでした。
まとめて追記したステータスを出します。
獣の屍肉は問題ありません。
禁忌とされるのは人間の死体損壊のみです。
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2 (平均)
【耐久】 3 (優秀)
【器用】 8 (優秀)
【敏捷】 10 (怪物)
【感覚】 1 (蔑視)
【意思】 7 (劣等)
【魔力】 8 (平均)
【幸運】 9 (評価無し)
【出身地 : ディスリス / 川沿いの村】
【現在地 : グレアモール / ズラウナム】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
効果時間は最大でおよそ半日。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
効果時間はおよそ一時間。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
物体や魔法の根幹部を乱し、その構成を破綻させる。
物体に対し用いれば軽度の衝撃を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減、あるいは無効化が発生する。
破綻の度合いは自信の魔力と対象の強度による対抗判定の結果による。
◆ キーワード
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
■ 所持品一覧
◆ 8900 Casa
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 宿代として一季節毎に 【1500 Casa】 が自動消費されます。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
◆ 白猫
感覚 : 7
街の片隅で見つけた適当な猫。
当初は精神支配によって懐かせていたが、現在は普通のペット状態。
人から餌付けされていたのか野生らしさを全く失っており、能力値が低下している。
危機感知判定など感覚を用いる一部の判定を白猫の能力値で行える。
ただし、白猫を働かせるためには【恍惚】の魔法を行使する必要がある。
【円環暦733年 夏 自由行動 3/3】
情報収集からしばし。
あなたは結局、ザハールに関する疑わしい話の一つも聞く事が出来ず今日を迎えていた。
今やすっかり相棒と化した白猫と共に、ぼんやりと時を過ごす。
二日前から降り続いている雨をあなたは眺める。
大陸で最も雨が多いと言われるグレアモールの面目躍如である。
あなたにとっては過ごしやすい日々という事になるのだが、白猫はそうでは無い。
時折雨音に耳を澄ませては溜め息を吐く、といった行動を繰り返している。
一般的に水を嫌う彼らは、外を出歩けずに不満なのだろう。
(そういえばこの子って……あ、オスだ)
小さく蹲る猫の尾を退けて小さな二つの玉を確認する。
そんなどうでも良い作業から、この日は始まった。
>>↓2 今日はどうする?
(……この国は、私が何かする必要は無いかもしれない)
白猫と戯れながら、あなたはそんな考えを抱いた。
ザハールの統治は客観的に見て素晴らしい物だ。
僭王ではあるのだが、今すぐに首を落とすべき対象かと言えば違うという答えを返す他無い。
むしろ、死なせてはいけないという結論すら導き出せる。
その有り余る善性と政治的能力を考えれば、正統なる王家を蘇らせた後に手腕を振るわせるべきだろう。
となれば、やるべき事も見えてくる。
ザハールの件は一旦置き、他国に足を伸ばす。
そのためにグレアモールの国々に関する悪評を知らねばならないと、あなたは立ち上がった。
しかし。
此度もまた、民の言葉はあなたを裏切った。
「悪い話なんか聞こえてこねぇけどなぁ。
今はどこも落ち着いてるみたいだぞ」
船乗りはそう語った。
女子供が夜間にも安心して出歩ける街。
商取引の活性化に成功し富の海を泳ぐかのような国。
放置されていた魔獣が一掃され安全が確保された街道。
そういった物事は、今この一帯に溢れかえっているという。
悪評などまるで無い。
今日のグレアモールはまさに地上の楽園なのだ、と。
どういう事だろうかと、あなたは訝しんだ。
善王はザハールだけでは無かった。
八つに分かれたグレアモール全土がかつてない平和に包まれている。
これではまるで―――
>>↓1 コンマ判定 【??????】
意思 7
?? 2
?? 3
?? -10(■■■■■による異常値)
目標値 2
【??????】
目標値 2
出目 1
クリティカ……クリティカル!?
おかしい。
おかしいと感じるのは、どこなのか。
グレアモールを正統なる王家から奪った八人の僭王。
彼らが善政を敷くのは、何故おかしいのか。
……決まっている。
我欲に塗れた反逆者として有り得ない行動なのだ。
良き王から玉座を奪ったとなれば、民の命を食み、尊厳を踏み躙る者であって然るべきだ。
これでは、彼らはまるで―――。
『…………ねぇ、もう一つ聞きたいんだけど。
前の王は、以前の治世はどうだったの?』
何故か揺らぐ視界の中で、あなたは尋ねる。
無論、それはあなたも良く知っている。
知らねば、王統を正すなどという大言を吐ける訳が無い。
そう、あなたは勤勉に過去を学び。
かつての王を正統と断じ。
正さねばならぬと立ち上がった。
そうして、かつて知った歴史と同じ言葉を、船乗りは告げる。
「あー、俺もまだガキだったから良く覚えてねぇけどよ。
八割の税は重過ぎるだの、どこそこで虐殺があったなんて話は結構聞いたな。
あー、あとは女房子供が城に攫っていかれたってのも少なくなかったか。
ま、今と比べてもそんな悪くなかったんじゃないか。
本当、血が途絶えちまったのは残念だったよ」
ズキリ、と。
あなたの胸の奥、心臓たる核が痛む。
やはり、あなたが知る通りの王の行いだ。
ズラウナムや他の七国と同じく、この上無い善政と言える。
自身の考えはやはり間違っていないと、あなたは安堵した。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
前王の治世は良き物であった。
ならば、正さねばならない。
いかに今の平和を齎す者達と言えど、王に反逆して許される理由など無い。
彼らは死ぬべきだ。
首を刎ねられるべきだ。
あなたのあらゆる力を以て、断罪の刃を振り下ろすべき―――
『痛っ……!』
その結論に至ろうとした時、あなたの核が一際強い痛みを訴えた。
何事かと体内を覗けば、故郷から持ち出してきた儀礼剣が僅かに核に触れている。
どうやら体の操作を誤ってしまったらしい。
幸いにも傷が付いてはいなかったが、下手をすれば一月程寝込まねばならなかっただろう。
「おいおい、大丈夫か嬢ちゃん」
『あ、はい、平気です……』
心配そうな船乗りに礼を告げ、あなたは港を離れる。
その頃には物騒な思考は既にどこかへ消えていた。
朝には有効活用すべき才能だと考えていたのに、何故殺すなどと考えたのか。
今のあなたにはまるで見当も付かなかった。
それにしても変な事を考えたものだと、思考を振り返る。
前王の治世は良き物であった。
それなのに何故だろうか。
ザハールを始めとする八人の王は、まるで悪政からの解放者のようだ。
などと。
そんな荒唐無稽な印象を、あなたは抱いてしまっていた。
さて、それはともかくあなたは他国の評判を理解した。
話を聞く限り、今はどこも平穏のようだ。
どこへ移動するにしても、そう変わりは無いだろう。
勿論、移動を取り止めズラウナムに今しばらく滞在する事も、あなたの自由だ。
http://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org364974.jpg
>>↓2 どうする?
分かりにくくてすみません。
ポイントだけ簡易に。
船乗りの男は 【過去の重税や虐殺を知りながらも、今も昔も善政】 だと語った。
いや、やはり移動は取り止めよう。
あなたはそう判断し、情報収集を続行した。
今のグレアモール各国が平和だとは分かった。
ではそれぞれの関係は。
幾ら国内に善政を敷こうとも、他国と軋轢を生むようでは賢王とは呼べまい。
そちらはどうなのかと、あなたは街を歩く。
まず分かったのは、海に隣接する四つの国に関してだ。
ズラウナム、ミナス・グレア、イラザード、ポート・ボルン。
これらの国は十分以上に良好な関係を築いているようだ。
四国の共通点は、穏やかな湾に港を保有するという事だろう。
荒れ狂う外海とは異なり航海に易いグレアモール湾は、当然のように海上輸送に利用されている。
北の山脈から、あるいは南西のディスリスからの荷を大陸東部の交易路へと繋いでいるのだ。
これに関する通商条約はどの国も損が無いようにと取り図られているらしい。
王同士による友好的な会談も頻繁に行われているとの話も聞けた。
対する山間の国は、どうも閉鎖的な雰囲気があるようだ。
といっても排他とまでは言えそうにない。
単純に、海沿いの四国と比べれば付き合いが少ないというだけに思われる。
鉱石や木材を河川を利用して輸出はするが、おおよそそれだけ。
河の繋がらない国とは深い関係を作ろうとはしていないらしい。
勿論、これはズラウナムの民が言う言葉だ。
実際に山へと向かえば違う意見が出る可能性もあるだろう。
現に、閉鎖性とは裏腹にこんな話もあった。
ズラウナムの王ザハールが、クランディラックの王と共に数年前に演説で語った言葉だという。
我ら八王は皆、血の契りを交わした盟友である。
これがどれ程の重みを持つかは不明だが、少なくとも表立って争う気は無さそうだ。
グレアモール内の国際情勢もまた、安定していると見て良いかも知れない。
集まった話はこんな所だ。
やはり、耳に入る言葉はどれも耳障りの良い物ばかり。
僭王達の瑕疵は全くもって見つからない。
やれる事が何も無いと、あなたは肩を落とす。
今のあなたは、未だ何も為せていない。
賞金首を一つ落としはしたが、それだけだ。
現状では不足に過ぎる。
これでは、まだ何者でも無い。
大きな収穫を得る事無く、あなたは雨の帰路を歩む。
その足取りは酷く重く。
そして、胸の痛みは中々消えようとはしてくれなかった。
といった所で今日はこの辺で。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
頭の痛いタイミングでクリティカるのは一体何故なのか。
集まった話はこんな所だ。
やはり、耳に入る言葉はどれも耳障りの良い物ばかり。
僭王達の瑕疵は全くもって見つからない。
やれる事が何も無いと、あなたは肩を落とす。
僭王を誅する理由も見つからず、民の現状を鑑みれば強行する事も出来ない。
正義を振るう術が無い。
今のあなたは、未だ何も為せていない。
賞金首を一つ落としはしたが、それだけだ。
現状では不足に過ぎる。
これでは、まだ何者でも無い。
故郷で孤独に過ごしていた頃と何も変わらない、ただの小娘でしか有り得ない。
その事実は、今のあなたには少しばかり重い。
大きな収穫を得る事無く、あなたは雨の帰路を歩む。
その足取りは酷く重く。
そして、胸の痛みは中々消えようとはしてくれなかった。
>>807を少し修正。
今度こそ今日はお仕舞いで。
お盆の客の多さに泣きそう。
これから書きます、申し訳ありません。
【円環暦733年 秋 グレアモール / ズラウナム】
時は過ぎ、季節は変わった。
近頃はグレアモールらしい長雨が続き、随分と気温も低い。
そのためだろうか外に出たがらない猫につられ、あなたもまた一時出不精となっていた。
何となく沈みがちな心のまま、宿で何をするでも無く暇を潰す日々だ。
そうなるとどうなるか。
答えは簡単。
気安い女将に捕まり、世間話の相手にされるのはむしろ必然ですらある。
「それでねぇ、あの子ときたらさ……」
今日の話題は彼女の娘に関する物だ。
どうやら、娘がろくに文も寄越さない事に不満が募っているらしい。
口から飛び出すのはその大半が愚痴の様相を呈している。
やれ、昔から宿の手伝いもしない子だった。
やれ、好いた男を追いかけるばかりで随分と頭を痛めたものだ。
そんな益体も無い事柄ばかりを詰め込まれ、しかし逃げる機会は既に逸した。
あなたは顔の表面をやや引きつらせながら女将に相槌を返すだけの装置と化している。
「ん? そうだそうだ。
あんたの親はどうしてるんだい?
その年じゃ、普通は家の手伝いでもしてる頃じゃないか」
と、そこで女将の話は僅かに逸れた。
彼女の言う通り、あなたはまだ子供だ。
ヒュドールにおいて十四歳とは、親の庇護の下にあって然るべき年齢だ。
一人で旅をするというのは少々早い。
むしろ、今の今まで聞かれなかった事が不自然な程だ。
ただ、その話題はすぐに途切れる。
「おい、いい加減にしとけ。
客に愚痴ばかり聞かせる奴があるか。
……悪いね、こいつはこのお喋りさえ無けりゃ最高なんだが」
宿の主人、女将の夫であるヒュドールの言葉だ。
彼は女将に仕事を言いつけ、詫びとの名目であなたの前に茶を置いた。
宿の一階は食堂となっている。
一応酒もあるようだが酒場を名乗らないのは店主の拘りであるらしい。
そんな食堂に、今はあなたと主人の二人だけであった。
店主の物言いに文句を言いながらも女将は外出し、急に静けさを取り戻した宿は妙に居辛い。
だが眼前の茶を放置して離れる事も出来ず、あなたは体を縮こまらせる。
そこに、低く落ち着いた声がかけられた。
「……本当に、悪いな。
あいつはずっと都会暮らしでな。
村の生活ってもんを、殆ど知らないんだ」
それに、なるほどとあなたは得心した。
親について聞かれなかったのは、恐らく彼の気遣いなのだろう。
村の暮らし……都市とは全く異なる、いっそ異界とすら呼べるそれを、彼は知っていたようだ。
都市と村の違いは何か。
こう問われた時、大抵の者はまず人口を挙げるだろう。
それは間違いなく正解であり、そして回答者が思うよりも深刻な物だ。
村では、日常的に人が減る。
豊かなカダスティアでは人が飢える事は殆ど無い。
故に食料だけはあるが、それ以外の全てが欠けている。
人手が足りず、都市を囲うような壁は立てられない。
獣避けの木の柵があるのが精々だ。
それが役に立つかというと、無いよりはマシといった程度。
柵を飛び越える獣も居る上に、まかり間違って魔獣など出れば易々と破壊されるだけ。
獣に食い殺される村人の話など、そう珍しくない。
また、仇討ちのために徒党を組み待ち構えていた男衆が数人を欠いてようやく討伐に成功する事も。
有能な医者も居る訳が無い。
都市では笑い事で済むような怪我が時に命を奪う事もある。
病などその大半が不治となる。
村人に出来る事は病人を何とか都市に運び入れる程度だが、十分な治療を受けさせる富が村にある事は稀だ。
そして、赤子が健康なままに成長しきる割合にも大きな影響がある。
最も深刻なのは、若者の出奔だろう。
村での生活は毎日が命がけだ。
郷里に余程の愛が無ければ、酷く耐え難い。
そんな村において、ただ一つ救世主と成り得る種族がある。
ヒュドールの女性である。
ヒュドールの生殖行為は、他の種族とは大きく異なる。
交わった男の体液を女性が体内に受け入れ、自身の核の欠片と混ぜ合わせ、スライム状の新たな命として体外に排出する。
たったこれだけ。
出産にかかる時間は僅か一日、大きな苦痛も無く、命を落とす事も殆ど無い。
流産に終わる可能性も驚く程低い。
また、核が回復しさえすれば最短で二ヶ月程で再度の出産準備が整ってしまう。
そして何より、他者の体液さえあれば確実な繁殖が可能なのだ。
子を為すために幾度も交わる、などといった非効率性とは完全に無縁。
となれば、村に住むヒュドールの女がどのような役割を担うかは明白だ。
村人達の子を次々に産み、減っていく数を補う事となる。
無論、人種の偏りは様々な不都合を招きやすいために、ヒュドールだけに子を産ませる事は無いが。
生まれる子は通常、母体と同じ種族として生まれてしまうのだ。
あなたの母も、当然のようにそういう女だった。
三月毎に村長が選んだ男と交わり、子を産む。
あなたには多くの兄弟が居た。
だがそれが家族として扱われるかというと、否だ。
他のヒュドールが産んだ子と共に、村の将来の人手として義務的に育成されるだけ。
誰でも無い。
いや、誰でも良い。
そういう物として育てられる。
もし健康なまま育ったならば、その時に報いれば良いとばかりに。
こういった村はどこにでも有る。
誰が悪いという訳でも無い。
単に、そうでもしなければ立ち行かない程に、村の暮らしとは過酷なのだ。
あなたも、以前はそれに疑問を持たなかった。
これが当たり前。
他に生き方など存在しないと、そう決め付けていた。
ヒュドールの女として生まれた以上、母のように生きる将来しか無いのだと。
変わったのは、二つの出来事のせいだろう。
一つは、冒険者の来訪だ。
ある年に増え過ぎた獣を駆除するために、村はなけなしの財を擲って彼らを雇った。
駆除は一日二日で終わる物では当然無い。
彼らも一月以上を村に滞在し、その間に様々な話をした。
その時に、あなたはようやく外の世界を知る。
安全な都市の生活。
かつて名を馳せた英雄。
大陸の闇に蔓延る罪人。
そういった物をだ。
村長は語る冒険者に苦言を呈したが、全てを遮る事は不可能だ。
大人達の隙を突き、あなたは特に熱心に耳を傾けた。
あなたの常識には皹が入った。
英雄。
誰にも代わりなど務まらない傑物。
誰でも無いと定義されたあなたとはまるで異なる、光り輝く者。
存在だけ、僅かな話だけで心を揺さぶるそれは、確かな綻びを生んでいた。
何故、自分はそうでは無いのか。
そんな苦悩は、夜毎にあなたを苛んだ。
そんな中に、二つ目の切っ掛けが訪れる。
母の死だ。
病に冒された母親、村の孕み袋の一つは、あっけない程に容易く死んだ。
そして、出産が可能な年頃の女ヒュドールは、あなただけであった。
些か若くはあるが、大きな問題は無い。
村長はそう判断し、あなたには専用の家が与えられる事となる。
無差別に村の子を産むヒュドールは、ある程度の贅沢が許される。
村の生活を基準としたそれではあるが。
同時に、あなたの機嫌を取るために、あるいは逃がさないために、多くの贈り物も贈られた。
だが、それはあなたを喜ばせる事は無い。
むしろ、刃を突き立てられるようですらあった。
あなたは贈り物を持ち込む彼らを当然良く知っていた。
彼らが母にも同じ顔で、似たような物を渡していた事も。
本当に誰でも良い。
己は真実名も無き路傍の石なのだと確信を抱かせる以外に、何の意味も持たない行為だった。
あなたの心は、ここで割れた。
小さな皹は致命の傷となり、完全に砕け散る。
だから、それは必然だった。
贈り物の内の一つ。
一本の儀礼用の短剣に縋った事は。
それは、村長から与えられた物だった。
十代の半ばにも満たない少女を孕み袋とする事に、良心が軋みでもしたのだろう。
村に伝わる由緒ある品だと語り、管理を任せるとの名目であなたへ渡したのだ。
短剣の刀身には、文字が刻まれていた。
曰く。
汝は我が末裔である。
汝の心に誇りあれ。
それ以外に、あなたは何も知らない。
誰が残した物なのかも、また末裔とは何を意味するのかも。
ただ、あなたは願っただけだ。
路傍の石では無く、短剣を残した誰かが言うように、胸を張って誇れるだけの誰かになりたいと。
あなたが頼みとする魔法を形作る、一つの力有る言葉が授けられたのは、その日の夜の事だった。
酷く静かな、雨音だけが響く宿の中へと、あなたの意識は戻る。
気付けば、宿の主人は痛ましい物を見る表情だった。
村の生活を知る彼は、当然ヒュドールの女についても知るのだろう。
子を産むだけの共有物とされる未来から逃げ出したと看破していると考えて良い。
そんな彼へ、あなたは笑って告げた。
『いえ、別に気にするような事でも無いです。
私にとっては些事に過ぎませんので』
あなたの心は、強く固められている。
短剣を手にした夜以来、心を騙す魔法が解けた事は無い。
自身は戦神王の末裔であると、そう確信している。
村人の行いは無知故として鷹揚に許し。
短剣を持ったままの出奔は己の当然の権利とし。
血に宿る義務を履行しなければならない、と。
あなたの軽い返事に考えすぎだったかと店主は安堵したようだ。
彼が小さく謝罪を述べ、話は途切れた。
そうして沈黙が戻った食堂で、あなたは茶を飲みつつ時を待つ。
いつか話を聞いた漁師は語った。
ザハールは一月に一度程、民の暮らし振りを己の目で確かめる。
その際、民と言葉を交わす事もあるという。
今日が、その日だ。
ザハールと対面しなければならないと、あなたは決意している。
正義を為すために、絶対に必要なのだと。
……あなたは、苛烈なまでに正義を貫き、あらゆる悪を切り裂いた、その名も高き戦神王の末裔だ。
故に、正義を為さねばならない。
己の意味を確たる物にするために。
【円環暦733年 秋 ズラウナム港】
そうして、あなたはザハールを見た。
その光景は漁師が語った通りの物だ。
二十人程の兵だけを連れた立派な装いのミーニアの男は、本当に民と言葉を交わしている。
表情には柔らかな笑み。
幾度も感謝に頭を下げる漁師の肩を己が手で止める様は、深い度量も窺わせる。
僭王らしい傲慢さは無い。
民と視線を合わせる素晴らしき為政者としての雰囲気を十分以上に纏っている。
また、ザハールが連れる兵を見ても分かるだろう。
兵達の態度には一切の緩みが無い。
義務を正しく理解し、己を律する術を確立した者だと一目で知れる。
そこに、あなたは夢見た正義の英雄を重ねすらしたかも知れない。
(違う、まだだ。
まだ分からない。
もっと近くで、実際に言葉を聞かない限り断言なんかしちゃいけない)
あなたは大きく顔を振り、ザハールの印象を振り払った。
全ての判断は対話の後に下すべきだ。
ただ遠目に見ただけで断じて良い物では有り得ないはずだ。
だがどうすべきかと、あなたは悩む。
民と言葉を交わしているとはいえ、唐突に割り込む事は難しいだろう。
王が居る事もあり、港には人も多い。
周囲の民に不敬と罵られては話どころでは無い。
彼があなたに声をかけようと考えるような何かが、今ここで必要だ。
が、それはあっさりと解決された。
漁師との話を終え視線を巡らせたザハールが、あなたに目を留めたのだ。
彼は兵達に声をかけ、まっすぐにあなたへと歩み寄る。
当然、何事かとあなたは慌てた。
もしや貴族の屋敷に忍び込んだ事がバレているのか。
そんな考えも浮かび、今すぐ逃げるべきかとあなたは悩む。
それが杞憂だと、すぐに気付いたのだが。
彼我が近付き、老人らしい深い顔の皺が分かる距離になればザハールが嬉しそうに笑んでいると十分に分かったのだ。
とても罪人を見る顔ではない。
ついに目の前まで到達したザハールが口を開けば、証明として十分な言葉が与えられた。
「もしかして君は、先日賞金首を討伐しなかったかね?」
内心であなたは安堵した。
あなたはどうやら意図せずして、ザハールと対話するための条件を満たしていたようだ。
評判では彼は良き王である。
そんな彼が言葉を直接交わす程に民を思っているのならば、民を脅かす賞金首を誅したあなたに接触するのはむしろ当然だ。
討伐者本人と判断する事は容易かっただろう。
何せ、街中で体表をドレス状にしているようなヒュドールはあなたぐらいの物である。
ザハールの問いに、あなたは頷く。
ここで否定する理由は無い。
「おぉ、やはりか!
ここで出会えたのは何たる僥倖か。
私からも礼を言わねばなるまいと思っていたのだ。
ありがとう。
都市の夜に再び平和が齎されたのは、他ならぬ君のお陰だ」
ザハールはすぐさま喜色満面となり、あなたを激賞した。
周囲の民にもあなたの偉業を語り、港は賞賛の声に埋められる。
ここに、最大の好機は齎された。
ザハール自身があなたとの対話を望み声をかけるなど、そうは無い機会だろう。
彼があなたに抱く印象も最高と考えて良い。
あなたが子供である事も、今は有利に働く。
多少の無礼は、きっと笑って許されるはずだ。
>>↓2 自由に対話が行えます。
といった所で今日はここまでで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
14,15日も遅くなる可能性が結構ありそうです。
申し訳ありません。
親戚の子供の子守してました。
遅くなってすみません、これから始めます。
『私は、民のために当然の事をしたまでです。
力有る者には、力相応の義務がある。
それに従ったに過ぎません』
ザハールの賞賛に対し、あなたはそう返す。
そこに演技は含まれて居ない。
正義を志す者として当たり前の事だと、あなたは強く認識している。
悪を打ち倒す力を持つにも関わらず座しているなど到底許し難い事なのだ。
そして、あなたの正義感はザハールにも良く伝わったのだろう。
彼は彼は深く頷き、あなたに対する印象をより良い物としたようだ。
「素晴らしい事だ。
少々苛烈だが、それも若さ故の熱情という物だろう。
君のような民が我が国に居た事を、神に感謝せねばなるまい」
ザハールも、兵達も、周囲の民も、あなたへ向かう視線の全てが熱を増す。
新しき英雄の台頭を目にしている気分なのかも知れない。
現金な物だと、あなたは内心で自身に苦笑する。
ここ最近沈みがちだった心は、これだけで明確に晴れ間が差した。
己の正義が認められる事は実に気分が良い。
たちまち上機嫌となったあなたへ、ザハールは更に言葉をかける。
「もし君にその気があればの話だが……。
私は優れた者には相応の報いが与えられるべきだと考えている。
その身分に一切関係無くだ。
私の下で民のために力を振るう。
そんな未来に興味は無いだろうか?
無論、後日最低限の試験は必要となるがね」
その言葉に、観衆はまた沸く。
王自らによる勧誘だ。
そうそう見られる場面で無い事は想像に易い。
あなた達を眺める内の一人、流れの吟遊詩人らしき男は気の早い事に何やら考え込んでいる様子すら見て取れる。
恐らく、あなたがこの話を受ければ彼が真っ先に広める事となるだろう。
しかし、あなたの返答は観衆の予想を裏切る物であった。
『申し訳ありませんが、この場での返答は出来かねます。
幾らか不足している物があるのです。
私は、ズラウナムの生まれではありません。
陛下のお顔も今日初めて目にしました。
心に抱く物も知らぬままに主君と仰ぐなど、余りに不義という物でしょう』
背筋を伸ばし毅然と王の言葉に異を唱える。
誠実、を通り越して潔癖と呼んで良い。
当たり前に考えれば諸手を挙げて飛びつくべき言葉を、ただ信条のみを以て手放すなどおよそ正気では無い。
少なくとも、国に仕えるという地位にはあなたの正気を疑う程度には価値があるのだ。
そんな世によっては不敬として刃を向けられかねない反発を、ザハールはむしろ喜んだ。
皺だらけの顔を綻ばせ、慈しむように目を細める。
「ふむ、そうか。
残念だが致し方あるまい。
それに、望みが無い訳では無さそうだ。
褒賞の形を変えよう。
君には一つの権利を与える。
今後、私の視察の際には自由に声を掛けて構わん。
私の心を知って貰わねばならないようだからな」
今度は王が民の賞賛を受ける番だった。
人々は口々に王の器の深さを称えている。
そんな中をザハールは兵を連れ、悠然と去っていった。
良好な結果と考えて良いだろう。
口約束ではあるが、確かに王との約束は取り付けられた。
今後、あなたはある程度自由にザハールと接触が可能なはずだ。
あなたを無碍に扱えば、ほんの小さな物だが器に傷が付く事は間違いない。
まず一歩、確かに踏み締めた。
僅かな一歩ではあるが、何も出来ないまま燻っていた日々よりは遥かに良い。
その事実に満足するあなたには、この後話を聞いていた民衆に取り囲まれる事など、想像もついていなかった。
だが、今日はあなたにとって良い一日となるだろう。
最初の正義である賞金首の顛末について披露をせがまれる体験は、きっと喜ばしい物のはずである。
【円環暦733年 秋 固定イベント 『定礎』 了】
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2 (平均)
【耐久】 3 (優秀)
【器用】 8 (優秀)
【敏捷】 10 (怪物)
【感覚】 1 (蔑視)
【意思】 7 (劣等)
【魔力】 8 (平均)
【幸運】 9 (評価無し)
【出身地 : ディスリス / 川沿いの村】
【現在地 : グレアモール / ズラウナム】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
効果時間は最大でおよそ半日。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
効果時間はおよそ一時間。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
物体や魔法の根幹部を乱し、その構成を破綻させる。
物体に対し用いれば軽度の衝撃を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減、あるいは無効化が発生する。
破綻の度合いは自信の魔力と対象の強度による対抗判定の結果による。
◆ キーワード
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
■ 所持品一覧
◆ 7400 Casa ← USED(AUTO)
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 宿代として一季節毎に 【1500 Casa】 が自動消費されます。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
◆ 白猫
感覚 : 7
街の片隅で見つけた適当な猫。
当初は精神支配によって懐かせていたが、現在は普通のペット状態。
人から餌付けされていたのか野生らしさを全く失っており、能力値が低下している。
連れている限り、危機感知判定など感覚を用いる一部の判定を白猫の能力値で行える。
ただし、白猫を働かせるためには【恍惚】の魔法を行使する必要がある。
いつの間にか宿代上がってるけど
なんかあったっけ(うろ覚え)
■ 所持品一覧
◆ 7900 Casa ← USED(AUTO)
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 宿代として一季節毎に 【1000 Casa】 が自動消費されます。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
◆ 白猫
感覚 : 7
街の片隅で見つけた適当な猫。
当初は精神支配によって懐かせていたが、現在は普通のペット状態。
人から餌付けされていたのか野生らしさを全く失っており、能力値が低下している。
連れている限り、危機感知判定など感覚を用いる一部の判定を白猫の能力値で行える。
ただし、白猫を働かせるためには【恍惚】の魔法を行使する必要がある。
>>866
元ファイルの方が間違ってました。
値下げ分を反映していなかったようです。
修正しておきました、申し訳ありません。
【円環暦733年 秋 自由行動 1/3】
白猫を抱き、あなたは街路を行く。
ただそれだけで数多の視線が注がれた。
それは以前とは異なり奇矯な装いによる物では無い。
あなたと王との対話はたちまちの内に広まった。
今や、あなたは物語に登場する女騎士にようにすら扱われている。
英雄に足る力と確かな信念、そして輝ける正義を持った新星なのだと。
無論、あなたの今後の行動によっては容易く掻き消える程度の評ではあるが。
呼びかけられる多くの声に都度応えながら、あなたは考えていた。
さて、今後はどうすべきだろうか。
ザハールの視察は月に一度程の頻度で行われていると聞く。
彼との接触は特に不自由無く可能だろう。
過度の不敬にさえ気を付ければ、何の障害も無い。
街の評を確固たる物にすべく、人々の依頼をこなしても良い。
また、再び賞金首を狩る選択肢もある。
危険性を考えるならば控えるべきではあるが、悪の処断はあなたが抱く正義の形その物だ。
勿論、それ以外にも考え付く行動は様々ある。
夏の時のような情報収集を行っても良いし、一日を買い物などに費やすのも悪くない。
村暮らしでは有り得なかった娯楽に手を出してみるのも一興だ。
あなたは今や自由である。
極論、ズラウナムに拘らず他国に向かう事だって可能だ。
>>↓2 今日はどうする?
「……今日はまともな用件ですね。
依頼ならばあちらの掲示板にまとめてあります。
好きに選んで持ってきなさい」
三度目の対面となる冒険者の宿の店主、ドライアドの中年は落ち着いた声でそう言った。
指差す先は酒場となった一階部分の隅である。
そちらへと視線を向ければ、あなたが二人に増えて両手を広げても足りない程に大きい木製の掲示板が壁に掛けられている。
だが、依頼が書かれているらしき羊皮紙は随分と少ない。
掲示板はその大きさの半分も使われていないようだ。
「この国は安定していますからね。
冒険者を雇う程の大事はそうそうありませんよ
いつの時期もこの位の物です」
つまらなそうに店主は補足を加える。
といっても、不足とは言えないだろう。
単に、掲示板のサイズが大きすぎるだけだ。
この店主は落ち着き払った様子とは裏腹に、店を構えた頃は夢に溢れでもしていたのだろう。
掲示板からはみ出る程の依頼の群れを夢想して鼻息を荒くする男の姿を想像し、あなたは何だかおかしい気分になっていた。
さて、それはともかく依頼である。
冒険者の宿に持ち込まれた仕事は、大まかに分類されて貼られている。
雑用、調達、討伐、護衛。
この四つだ。
雑用は、都市の中での細々とした仕事である。
専門の職人を頼る程でも無いが、自分でやるには抵抗がある、そんな物事だ。
例としては屋根の簡易的な補修などが挙げられる。
余程ドジを踏まない限りは危険は無いが報酬も少ない。
職人未満としての扱いなのだから、残念だが当たり前の事だ。
調達と討伐は、都市外に出向く必要がある依頼だ。
特定な場所にしか存在しない希少な薬草や素材の確保、畑を荒らす害獣の駆除、といった内容となる。
どちらの場合もある程度の危険を覚悟すべきだろう。
野生動物というのは、時に武器を持った人間よりも恐ろしい脅威である。
その分、報酬は十分だ。
知識か、戦力か、どちらかに自信があるならば良い稼ぎとなるはずだ。
最後の護衛だが、これは当面気にせずとも良い。
都市間を移動する商人の馬車などを護る任となるが、これは当然信用の無い者に回される事は有り得ない。
他の仕事で実績を積まない限り、店主はあなたの受注を認めないだろう。
運次第だが一切危険が無い事も多く、にも関わらず報酬はしっかりという美味しい仕事なのだが、致し方無い事だ。
あなたはじっと掲示板の依頼を眺める。
店主は少ないと不満そうであったが、種類は十分だ。
雑用、調達、討伐、その全てが選り好み出来るだけの数がある。
報酬の相場は、雑用が【100 Casa】、調達と討伐が【1500 Casa】といった所。
無論、これはあくまで平均値であり上下の幅はあるようだが。
>>↓2 どの種類の依頼を選びますか?
あなたは調達の依頼を選び、目を通した。
……が、適した依頼は少ない。
あなたはこれまでの大半をただの村娘として過ごしてきた。
それも特段愛される訳でも無く、特別な教育を受けた事も無い。
村で見た事が無い物に関しては多くを知らない。
どうせ受けるならば知識が有り、品質保持に自信が持てる物が良いのだが……。
>>↓1 コンマ判定 【幸運な出来事】
幸運 9
目標値 9
【幸運な出来事】
目標値 9
出目 3
成功!
貼り出された依頼の一つに、あなたは笑みを浮かべた。
あなたの乏しい知識でも判別が付くだろう品の調達依頼が存在したのだ。
凝血草と呼ばれる野草である。
この植物に含まれる成分には血を固める効果があり、高品質の止血剤の素材となるのだ。
特に今の時期にならば果実が取れ、それは最大の薬効が期待出来る。
あなたが育った村では幸いにも群生地が比較的近くの森林部にあり、重宝されていた。
ヒュドールたるあなたには無関係の事だが、ミーニアなどの出産が近付けば数人の男衆が武装して森に入った物だった。
そういった事情から、あなたも見慣れた物だ。
これならば問題無く採取でき、品質も保持出来る。
報酬は他と比べればやや劣るものの、素材を駄目にする可能性を考えればこちらの方が良いだろう。
また、薬の素材という事は、つまりあなたの採取により救われる命があるかも知れないという事だ。
最早選ばない理由は存在しない。
掲示板から羊皮紙を剥がし、店主へと提示する。
あなたの話も聞き、達成に十分な能力があると信じたようだ。
依頼の受注は問題無く認められ、あなたは森へ入る事と決定した。
といった所で今日はここまでで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
今晩は20時位の開始予定です。
よろしくお願いします。
【円環暦733年 秋 近郊の森】
依頼を受注したあなたは早速、凝血草が見られるという森へと入った。
森は相当な広さがあるようだが、木々は細く密度も低い。
視線を上へとやれば、葉は曇り空を隠しきれてはいない。
恐らくは土地のせいだろう。
この辺りは雨が多く一年の大半は地面が緩い。
今も足元はぬかるみ、連れて来た白猫はうんざりした様子で木の根を渡り歩くようにしている。
グレアモールの中心部へ近付けばこういった環境に完全に適応した植物ばかりとなるという話だが、ズラウナムではそうではないようだ。
これはあなたにとっては良い材料だと思われる。
故郷であるディスリスとそう変わりない植生のために村の知識も使えるはずだ。
さて、あなたは凝血草についての情報を思い返した。
効能については再び触れる必要は無いだろう。
高品質の止血剤の素材になるとだけ覚えておけば、今は十分だ。
今考えるべきは群生地についてだ。
この草が好む環境は、水気が多く光が少ない場所である。
大抵、苔や茸と一緒になって生えている。
村ではあなた自身が採取に向かう事は無かったが、その程度の話を聞く機会はあった。
また、大気中を漂う魔力が多い場所を避けるようだ。
人間の街で育てられていない理由は主にこれである。
魔法行使に不自由するような場所には、特殊な理由でも無い限り人は住まない。
情報から考え、少なくともこの辺りでは無いようだとあなたは肩を落とした。
先述の通り周囲は木々の密度が低い。
湿気は十分だろうが、とてもでは無いが日光を遮り切れているとは言えない。
見つかったとしても僅かな量に過ぎないだろう。
籠一杯に取ってきて欲しいという依頼なのだ。
森の入り口付近で探していては時間がかかるばかりに違いない。
とはいえ、森の奥へと踏み込む事は危険を伴う。
森林部を棲家とする動物は多い。
縄張りを荒らされたと感じた獣に襲われる事は、恐らく覚悟しておくべきだ。
あなたは考える。
森に深く踏み込まず、時間をかけて細々と探すか。
それとも危険を承知で踏み込み、群生地を探すか。
>>↓2 どうする?
わざわざ時間をかける必要も無いと、あなたは判断した。
自身の体内に手を差し入れ、収めている儀礼剣を一撫でする。
短剣ではあるがこうして武器もある上に、種族的に魔法行使にも優れた能力を持っている。
更に鈍感さを補うペットも同行しているのだ。
恐れを抱く必要は無いと、あなたは己を鼓舞する。
やる気無さげに蹲る白猫を抱え上げ、足を踏み出す。
ぬかるんだ泥が跳ね、僅かな音と共に周囲の木々を汚した。
少々の歩きにくさをあなたは感じる。
もし走る必要が出た場合は、これが何らかの問題を生む可能性もあるかも知れない。
向かうべき道は知識のお陰で理解出来ている。
より木々が多く暗い方向へと進めばそれで良い。
その知識は上手く当たり、群生地の発見にそう時間はかからなかった。
好む環境こそ人里離れた森の中と面倒だが、凝血草自体はそれほど珍しい植物では無い。
生えている所には生えている物なのだ。
少なくとも素人同然のあなたであっても容易に見つけられる程度には。
あなたはその場にしゃがみ込み、採取を開始する。
凝血草は蔓状の茎を地面に長く這わせ、一帯の地面全体を自身と仲間の葉で覆うように生える。
それを傷付けないよう、紐の結び目を解くように採取するのは中々の苦労だ。
必然、あなたは作業に集中する事となる。
>>↓1 コンマ判定 【??発見】
感覚 1
眼前 3
目標値 4
【??発見】
目標値 4
出目 6
失敗……
あなたは体をほぐすように腰を伸ばし、額を拭った。
勿論、あなたはヒュドールである。
体が凝る事も汗を流す事も無いのだが、気分の問題だ。
どれだけ集めたかと籠を見ればおよそ半分程。
対して地面の凝血草はまだまだ十分に繁茂している。
この群生地だけで必要量は採取出来る事は間違いない。
白猫も、今の所警戒した様子は無い。
指先程度の小ささの赤黒い果実の匂いをしきりに嗅ぐだけで、随分と大人しいものだ。
僅かな休息を終えたあなたは再び屈み、採取を再開した。
そうしてしばらくの後、籠は凝血草で満たされた。
これだけあれば問題無いはずだと、あなたは頷く。
籠の上部からは幾本かの蔓が納まりきらずに零れている程だ。
少々取りすぎかも知れないとさえ思うが、足りないよりはマシだろう。
あなたは籠に覆い被さり、自身の体を変形させて丸ごと飲み込む。
胸から下腹部までが長く伸び、かつ横にも太く広がり、そこに籠が納まる形だ。
勿論草は完全に水中に沈んでいるが、それは問題にはならない。
水に漬けておく事は凝血草の品質保持には一般的な手段だ。
長期間漬け続けていれば逆に駄目になるが、一日二日程度ならば最良とすら言える。
問題はまた別の所。
外見が不恰好過ぎる事だとあなたは考えたが、効率を考えればこうする他無い。
非力なあなたでは背負って動くには色々と障害もあろう。
……と、そこであなたはようやく気付いた。
草を体内に受け入れた。
それはつまり草と、そこに生った果実に触れているという事でもある。
形状はまさしく手に取るように感じ取れた。
異常は果実にある。
果実に小さな歯型が付き、無傷の物が少なすぎる。
慌てて籠奥の物に意識を伸ばすも、そちらも同じだ。
およそ全ての果実が何かに齧られた痕跡がある。
あなたが採取を行ったのは群生地の広範囲に渡る。
にも関わらずこの結果という事は、日常的にここで食事を行っている存在が居るのだろう。
歯形の大きさを考えれば恐らく小型、手に乗る程度の大きさか。
数を考えれば大規模な群れであるという予想も立つ。
恐らくここは餌場であったのだ。
採取の間は何の異変も無かったが、安全と考える事は楽観が過ぎる。
自身の食事を奪った相手に野生動物がどういった態度を取るかなど、想像に易い。
それを証明するように、足元の白猫が毛を逆立てた。
警戒も露わに低い声を上げ、周囲を見回している。
視線が一所に留まる事は無い。
気配は感知したようだが、正確な場所は未だ特定出来ていないようだ。
まだ然程近くまでは来ていない、という事かも知れない。
>>↓2 どうする?
ちょっと考えましたけど、今回はタイム無しとしておきます。
申し訳ありません。
あなたは即座に逃走を選択した。
何らかの群れと正面から戦うなど危険が大きい。
恐らく幾らかを返り討ちにすれば群れを追い払えるだろうが、そうせねばならない理由は無い。
逃げられるならばそれに越した事は無いのだ。
『我が声を、ここに―――』
その補助として、あなたは二つの魔法を唱える。
恍惚と精練だ。
自身の焦燥や恐怖を掻き消して冷静さと集中力を獲得し、更に身体能力を増強し逃げ足を速める。
これで何の問題も無いはずだとあなたは確信した。
―――ところで、あなたは覚えているだろうか?
凝血草の群生地。
そこはどういった場所であったかを。
あなたの知識には、こうある。
凝血草は、魔力が多い場所を避ける、と。
その例に漏れず、この場も大気中を漂う魔力に乏しい。
……そんな場所で通常の魔法行使が可能である道理は無い。
常よりも激しさを増した反動が、あなたの体を恐るべき速度で蝕んだ。
>>↓1 コンマ判定 【反動軽減】
魔力 8
霊銀 2
欠乏 -5
目標値 5
【反動軽減】
目標値 5
出目 8
失敗……
確信は、そうして打ち砕かれた。
踏み出した足から、一瞬にして力が抜ける。
まともに対応する事も出来ず、あなたは無様に地面を舐めた。
籠を収めた事で丸くなった体は容易く転がり、体五つ分も移動した所でようやく止まる。
幸いだったのは、今のあなたから焦燥が消え去っている事だろう。
己の状態確認はほんの僅か、一瞬だけで済んだ。
だが、それだけだ。
今や状態は最悪と考えて良い。
あなたの両足に当たる部分の水は、全くあなたの命令を受け付けようとしない。
新たな足を形作るにしても、体積が足りない。
腕か頭を材料に回さねば、立ち上がる事も出来ないに違いない。
更に最悪は続く。
ついにここを餌場としていた獣が現れたようだ。
茂みを掻き分ける小さな足音が急速に近付き、そして顔を見せる。
それはネズミであった。
あなたの予想通り手に乗る程の大きさ。
数は、恐らく五十を下るまい。
鋭い爪を生やした六本の足を持つ、赤い瞳のネズミ達があなたを見詰めている。
……そうして、体内の凝血草を当然のように発見したのだろう。
縄張りを荒らされ、目を付けていた餌も奪われ、彼らは一瞬にして怒りに囚われたようだ。
鋭い呼吸音を鳴らしながら、あなたを囲むようにじわりと移動を開始した。
気圧されたらしい白猫が一目散にどこかへ逃げるのを横目に、あなたは行動を選択する。
>>↓2 どうする?
籠の中身を放棄
入口近くで細々ととろう
あなたは咄嗟に、籠の中身を体外に放出した。
凝血草の蔓は水滴をばら撒きながら高々と放られ、大きく広がってネズミ達の上に降り注ぐ。
彼らは予想もしていなかったのだろう。
慌てて飛び退こうとしたが一歩遅く、網のようになった蔓に絡め取られていく。
また、逃れた何匹かの個体も目の前に降って来た果実に気を取られているようだ。
折角集めた薬草だが、命に代えられる物では勿論無い。
こうして作り出した好機を逃してはならないと、あなたは自身の肉体を作り変える。
既に籠を護る必要が消え、余裕が生まれた体積を以て逃走手段を確立した。
生み出すのは百足に似た無数の脚だ。
起き上がるだけの時間も惜しみ、転んだ姿勢のままであなたは走る。
幸い、ネズミ達があなたを追う様子は無い。
草の放出は警戒心を抱かせるには十分だったらしい。
酷く無様だという自覚はあった。
しかし、背に腹は代えられない。
生き残る事が出来ただけマシだと、歯噛みしつつも自身を納得させる他、出来る事は無かった。
森からの帰り道を、感覚が戻った両足でとぼとぼと歩く。
結局、今日中の依頼達成をあなたは諦めた。
既に時間も遅く、これ以上続けるべきでは無いだろう。
夜の森などおよそ人間が生きる環境ではありえない。
急ぎの依頼では無いのだから後日再び森に入れば良いのだが、意気込んでいた分気持ちも沈むという物だ。
溜め息を吐くような仕草であなたは俯き、額を抑える。
恐らく、今日は良く良く眠れる事だろう。
全身を覆う徒労感がどんな薬よりも強烈な睡眠剤となる事は、実に明白だった。
【円環暦733年 秋 自由行動 2/3】
全く収穫が無かった森林行から数日。
あなたは宿で白猫を撫でていた。
一人だけでさっさと先に逃げ出した猫は、首尾良く逃走に成功していたらしい。
少々心配もしていたが、こうしてあっさりと顔を見せた。
森の泥土で薄汚れていた体も洗い終え、ご満悦といった様子で焼いた魚を齧っている。
さて、依頼は未だ残っている。
達成を考えるならば再び森に入るべきだろう。
勿論、失敗で落ち込んだ気分を立て直すために気分転換を行う事も自由だ。
依頼は秋の内に終わらせれば良いと聞いている。
幾らかの猶予はあるだろう。
あるいは、いっそ達成を諦めて破棄する事も出来る。
>>↓2 今日はどうする?
今日はこの辺で。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
今晩は20時30分~21時位の開始になります。
よろしくお願いします。
■ あなたのステータス
【難度 / NORMAL】
【14歳 女性 / 現実世界の人間換算で14歳相当】
【種族 : ヒュドール】
水の体を持つ種族。
知性ある水とも言える彼らは他種族と大きく異なる生態を持つ。
精神的能力と魔力の親和性に優れるが、身体的能力に乏しい。
【種族能力 : 水の隣人】
定まった形を持たない彼らは自身の姿を自在に変更出来る。
外見の変更を自由に行える。
また、物理的ダメージを軽減する。
代償として、水の少ない地域では、継続的にダメージを受け続ける。
【筋力】 2 (平均)
【耐久】 3 (優秀)
【器用】 8 (優秀)
【敏捷】 10 (怪物)
【感覚】 1 (蔑視)
【意思】 7 (劣等)
【魔力】 8 (平均)
【幸運】 9 (評価無し)
【出身地 : ディスリス / 川沿いの村】
【現在地 : グレアモール / ズラウナム】
◆ 習得魔法
【種火】
【清水】
【微風】
【土塊】
【恍惚】
魅了に類する精神系魔法。
他者の心をとろけさせ、言葉を潜り込みやすくさせる事が出来る。
また、自身に使用する事で極めて強力な自己暗示を行える。
一時的に虚偽を真実と完全に思い込む、自身を超人と認識し絶対的な自信を得る、など用途は多岐に渡る。
魔法の行使は意思に大きな影響を受けるため、ブーストとも成り得る。
効果時間は最大でおよそ半日。
【精練】
魔力や物体に対して使用する事で、対象の効果を強化する。
次回使用する魔法の規模拡大、治療薬の効果増大、香辛料の辛味倍化、など。
効果時間はおよそ一時間。
【生成】
魔力を素材とした物体を生成する。
水との関連性が高ければ高い程、生成量と生成速度が強化される。
生成物は30分を限度として消失する。
体内に取り込むなどした場合も同様。
【破綻】
物体や魔法の根幹部を乱し、その構成を破綻させる。
物体に対し用いれば軽度の衝撃を伴った崩壊、魔法に対し用いれば魔力の離散による効果低減、あるいは無効化が発生する。
破綻の度合いは自信の魔力と対象の強度による対抗判定の結果による。
◆ キーワード
【天涯孤独】
【秩序 / 善】
【富裕層への殺意】
【王家の末裔 / 自称】
【中二病】
■ 所持品一覧
◆ 7900 Casa
共通交易通貨。
カダスティア大陸において、使用出来ない都市はほぼ存在しない。
※ 宿代として一季節毎に 【1000 Casa】 が自動消費されます。
◆ 霊銀の儀礼剣
基礎攻撃力 : 2
魔術補正 : 2
希少鉱石である霊銀、別称ミスリルによって作られた儀礼用の短剣。
武器としての能力は最低限だが、周囲の魔力を引き寄せ魔法行使を容易にする特性を持つ。
◆ 白猫
感覚 : 7
街の片隅で見つけた適当な猫。
当初は精神支配によって懐かせていたが、現在は普通のペット状態。
人から餌付けされていたのか野生らしさを全く失っており、能力値が低下している。
連れている限り、危機感知判定など感覚を用いる一部の判定を白猫の能力値で行える。
ただし、白猫を働かせるためには【恍惚】の魔法を行使する必要がある。
(そうだ、クラッカに行こう)
それは突然の閃きであった。
何の前触れも無く、あなたは国家間移動を決意する。
前触れは無かったが、理由は有る。
グレアモール小国家群という物を外部から見るのはどうかと考えたのだ。
内側からでは平穏と見えても、外側からならば違う光景となる可能性が有るかも知れない。
視野を広く持つ事は決して悪くないはずだ。
そうと決まればと、あなたは早速行動を開始する。
クラッカの大森林まではかなりの距離がある。
馬も連れない一人旅では、一月程度で踏破出来る道程では決して無い。
旅の準備を整えねばならない。
旅糧を揃え、携行に便利な鍋を買い、寝袋代わりにもなるローブを新しい物に変える。
それだけで最低限の荷は整った。
火と水は魔法によって補えるために道具を探す必要は無い。
あなたは自身がヒュドールである事に感謝した。
もしこれが肉を持つ種族であったならば、他にも必要な物資が増えていたに違いない。
雨が障害にならない。
その一事だけでも旅においては極めて優位となるのだ。
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※ システムメッセージ ※
旅の準備に 【500 Casa】 を自動消費します。
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それを終えてあなたが向かったのは……冒険者の宿だ。
宿の前で、あなたは黙考する。
あなたは今、この宿から依頼を請け負っている。
旅に出るならば当然、その前に急ぎ終わらせるか、依頼を破棄するかを選ぶ必要がある。
幸い、あなたは冒険者としては新人も良い所だ。
賞金首を仕留めた実績はあるが、依頼は初めてである。
宿の主人も余り大きなペナルティをあなたに課そうとはしないだろう。
>>↓2 どうする?
やはり終わらせるべきだ。
一度の失敗など何だと言うのか。
請け負った仕事を投げ出すなど、真っ当な人間のやる事では無い。
あなたは自身にそう言い聞かせ、踵を返した。
揃えた荷を宿の自室に置き、森へと再び向かう。
前回は奥地へと向かったために獣の群れに囲まれた。
所詮ネズミなどと侮る事は出来ない。
体内に潜り込まれ核に牙を立てられれば、それだけであなたは命を落としかねない。
相手の数を考えれば全てが一斉に飛び掛ってきた場合、取りこぼし無く打ち払う事は困難を極めるだろう。
この失敗を糧に、あなたは森の浅い部分で地道に採取する手を選んだ。
時間よりも安全。
今のあなたは身に沁みてそう実感していた。
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※ システムメッセージ ※
>>920の安価により森での行動が自動決定されました。
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と、考えたは良い物の、作業は遅々として進まない。
あなたの眼前に広がる光景は酷く寒々とした物だ。
森奥の群生地とは比較にもならない。
見える限りの凝血草を集めても一抱え分にも足りないだろう。
前回は絡まり合った蔓同士をほどく事に時間を取られたが、今回は探し回る時間だけでそれを優に上回る少なさだ。
そこに無数の雑草が邪魔をするのだからたまらない。
葉の形が良く似る種類などは最早何者かの嫌がらせじみていた。
早くもうんざりとした気分が湧き上がるのを、あなたは自覚する。
勿論、だからといって諦める事も出来ない。
やると決めたならば何としてもやる。
そういう頑固さがあなたにはあった。
>>↓1 コンマ判定 【幸運な出来事】
幸運 9
目標値 9
【幸運な出来事】
目標値 9
出目 8
成功!
と、その時。
今回も連れてきていた白猫が一声高く鳴いた。
猫に目をやると、毛を立たせて髭を広げ、森のやや奥側を見詰めている。
まさかまたネズミかと一瞬体を固くするも、どうも様子が違う。
何かを嫌がってはいるが、警戒はしていない。
そういった様子である。
そちら側に何かあるのか。
そう判断したあなたは周囲の気配を探りつつ、慎重に踏み入る事とした。
『これは……。
どう見ても、もう死んでるよね』
果たしてそこにあったのは、ドライアドの死体であった。
男性、というよりも少年と呼ぶべきだろう。
未だ僅かに幼さを感じさせる彼は、小さな崖の下で体を投げ出して事切れていた。
近付いて見れば、彼の足は歪に折れ曲がっている。
恐らく崖から落ちて足を折り、身動きが取れなくなったまま獣に襲われたに違いない。
樹皮の肌が切り裂かれ大きく割り開かれた腹部には内臓が殆ど残っていないのだ。
また、彼を観察している内にあなたはある事に気付く。
少年の体は食い荒らされた以外に殆ど傷付いていない。
恐らく死んだのは数日以内だろう。
……もしもの話ではあるが。
前回の探索で入り口付近での採取を選ぶか。
それとも奥地での採取の帰り道にあなたに十分な余裕があれば。
彼を発見して助けられた、などという未来も有り得たかも知れない。
勿論、これはあなたの空想に過ぎない事だが。
少年の近くには、一つの小さな籠が転がっていた。
中身はちょうどあなたも探していた凝血草だ。
籠を一杯に満たすだけの量が詰め込まれている。
彼もあなたと同様の仕事を請け負っていたか、あるいは家族のためにと採取に励んでいたのだろう。
>>↓2 どうする?
いろんな物捻じ曲げて免許証出したくなるから困る
あなたは魂の安息を神に祈り、少年の荷を改めた。
彼を救う事は当然もう出来ない。
それでもせめて家族の下へ遺体を運ぶ位は出来る。
そのためにも身元を示す物の一つもあればと考えての事だ。
だが残念ながらそれらしい物は見つからない。
あったのは一本の刃物のみ。
武器になどならない短さの薬草採取専用のそれだ。
と、そこまで調べてあなたは思い至った。
彼はドライアドである。
髪を構成する葉の形。
肌を形作る樹皮の種類。
そこに専用の刃物を用意する程日常的に森に入る、少年と断言して良い年の頃。
これだけ揃えば特定は容易だろう。
衛兵に伝えて探して貰えば、身元の特定までは数日もかかるまい。
となれば、彼の身元をあなたが気に掛ける必要は無い。
今この場で彼をどうするか。
それだけを考えれば良いようだ。
>>↓2 どうする?
『後少しだけ我慢してね。
あなたの家族と、絶対にもう一度会わせてあげるから』
一切の熱を持たない少年の手を握り、あなたはそう呟く。
彼をこのまま放置する事は出来ない。
何としても連れ帰るべきだとあなたは判断した。
『我が声を、ここに 《生成 / サクリ》 と定義する』
厳かな詠唱と共に周囲の魔力が引き寄せられ、形を為す。
生み出されたのは氷の台車だ。
人一人を乗せるには十分な大きさをしっかりと備えている。
試しに曳いてみると、問題無く車輪も回転している。
ぬかるみにも対応出来るよう車輪にトゲ状の突起を付けた事が良かったようだ。
生成の魔法で生み出した物品はそう長時間は持たないが、途中で作り直せば良い。
森さえ抜けてしまえば休憩を挟んだとしても危険は無いだろう。
【円環暦733年 秋 ズラウナム】
「……ありがとう、ございました。
あなたが見つけてくれなければ、私は息子の最期の思いすら知れなかった」
ドライアドの男が、泣き腫らした目であなたを見詰め、静かに頭を下げる。
少年の父親である。
森の中で下したあなたの判断は正しかった。
彼の姿を確認した衛兵の一人が、彼に心当たりがあったのだ。
少年の身元は早々に特定され、遺体は家族との対面を果たした。
家族の話によれば、少年はある日親子喧嘩の末に家を飛び出したという。
原因は母親の出産が近付いた事だ。
誰もが新しい生命を祝い、少年を半ば蔑ろにしていたらしい。
赤子など生まれなければ良い。
幼い嫉妬から飛び出したそんな言葉に返ったのは父親の強い叱責と、固く握られた拳であった。
以来、一週間以上も彼は帰らなかった。
友人の家でも渡り歩いているのだと父親は断じ、頭を冷やせば良いと捨て置いた。
しかし、現実はそうでは無かった。
正しく反省する事の出来た少年は償いのためにと森へ入ったのだろう。
出産に伴う出血にも良く効く凝血草を求めて。
家の奥からは、甲高い泣き声が聞こえている。
赤子の物だ。
息子にも聞かせてやりたかったと、男は顔を覆う。
あなたは一家にかける言葉が無かった。
少年が既に命を落とした今、あなたに出来る事は無い。
……そもそもとして。
血の繋がった家族の死という物に、そこまでの意味を見出せない。
無論、知識としては知っている。
彼らの擦れ違いは悲しい物であり、少年の死は痛ましい物だと頭では考えられる。
しかし、そこに実感は伴わない。
この程度の死は、村では有り触れていたのだ。
もしあなたが村で死んでいたとして、誰かが涙を流したとも思えない。
私たちにはもう必要の無い物だから、せめてもの礼として。
そう言って渡された凝血草が詰まった籠を手に、あなたは街を歩く。
少々少なく、また採取から日が経っているために品質に劣るが、依頼はこれでも十分に達成出来るはずだ。
しかし、あなたの心は晴れない。
ギシリ、と。
音を立てて胸の奥が軋む。
開けてはならない蓋が揺れるようだと、あなたは何故かそう感じた。
あなたは何も知らない。
正しい事をせねばならないと、あなたは己を律している。
では、正しい事とは何か。
第一に法と秩序。
そして民の笑顔。
これらを守り、維持し、阻む者を打ち砕く事。
あなたはそう、定義していたはずだ。
……しかし、あなたは何も知らない。
家族の愛など、人に囲まれながらも孤独に生きてきたあなたには想像も付かない。
それはつまり―――。
(そんな訳は無い。
私は正しき者だ。
過ちなど……有り得ない)
体内に仕舞いこんだ儀礼剣を、縋るようにあなたは握る。
繰り返し自身に言い聞かせ、軋む心を再び固める。
蓋を開いてはならない。
今のあなたは、そう考える事しか出来ない。
……だが、同時に理解しても居た。
この歪みは、いつか直視しなければならない類の物なのだ、とも。
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※ システムメッセージ ※
依頼を達成しました。
所持金に 【900 Casa】 が加算されます。
また、ズラウナムにおけるあなたの評判が僅かに上昇します。
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【円環暦733年 秋 自由行動 3/3】
「そうかい、もう行っちゃうのかい……。
そりゃあ寂しくなるねぇ」
ズラウナムを発ちクラッカに向かう事を告げると、宿の女将ははっきりと気落ちした。
季節を二つ跨ぐ滞在だったのだ。
彼女とは毎日顔を合わせ、愚痴を聞く機会も多くあった。
実の子と離れ離れという事もあり、娘と接するような気であったのかも知れない。
旅立ちの前日には御馳走を用意すると彼女は約束してくれた。
さて、出立の予定にはまだ少しの期間がある。
それまでは特筆すべき予定は無い。
旅の準備が不足と感じるならば、それに回せば良い。
会っておくべきと考える者に心当たりがあるならば、顔を合わせるのも悪くないだろう。
勿論、心のままにその他の行動を取るのも、あなたの自由だ。
>>↓2 今日はどうする?
出立前にザハールと会っておくことは出来ますか?
>>973
可能です。
そのまま安価として扱いますか?
では今日はここまでで。
お付き合いありがとうございました。
また明日。
次スレは明日立てます。
今帰宅しました。
遅くなって申し訳ありません。
浸水被害は僅かだったので今晩から再開します。
よろしくお願いします。
■ 次スレ
【安価コンマ】平穏世界のファンタジーライフ-03【オリジナル】
【安価コンマ】平穏世界のファンタジーライフ-03【オリジナル】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471606469/)
テンプレ整えて、これから書いて、なので21時30分位だと思います。
■ 前回のあらすじ
依頼を達成するために森に入ったあなたは、ドライアドの少年の死体を発見した。
家族のため凝血草を集めている最中に崖から落ちて死んだらしい彼を、あなたは街へと運ぶ。
少年の父親は連れ帰ってくれた礼にと少年が集めていた凝血草を譲ってくれた。
こうして問題無く依頼を終えたあなたは、ズラウナムを離れる前にこの国の王ザハールに会おうと考えている。
【円環暦733年 秋 グレアモール / ズラウナム】
出立前に、ザハールと顔を合わせておこう。
あなたはそう考えた。
彼はあなたを民衆の前で勧誘し、それを断られたというのに自由に声を掛ける権利までを与えた。
あなたは偉大なる戦神王の末裔を自認しているが、公式には何の身分も無い。
そのような身にこれだけの厚遇を与えられたというのに、無断で国を離れる事は不義理だろう。
幸いにも、次回のザハールの視察は近い。
旅の日程には何の影響も無く、謁見が可能であるに違いない。
そうして暇を潰して過ごし、数日後。
あなたは宿の窓から顔を覗かせ、街の喧騒を確認していた。
ズラウナムに十分な安定を齎しているザハールの人気は、高い。
ザハールの視察は月に一度の頻度で行われている。
にも関わらず、毎度飽きずに民は熱狂し彼らの王に賞賛と歓声を贈っている。
白髭を蓄えた口元を緩ませてザハールが手を振り応えれば、それは一層密度を増す。
完璧な王という形容がきっと正しいのだろう。
正統なる王家に刃を向けた反逆者、という彼への疑いを捨てきれないあなたをして、そう感じざるを得ない光景だ。
現状、ズラウナムの王にはまるで瑕疵など見当たらない。
やがて、人々を熱する王の歩みは街の中央を抜け、港湾部へと向かう。
それを見送ってあなたは宿を出た。
勿論、普段は持ち歩いている儀礼剣は置いてだ。
流石に刃物を持ったまま近付く事はザハールの護衛が許しはしない。
あなたは既に、彼に接触するに十分な権利を獲得している。
ザハールの気を引く必要は無い。
彼が城へ戻る際に必ず通る箇所で待っていれば良い。
つまりは城門付近である。
あなたが王が権利を与えた本人であるという証明は簡単に終わった。
ヒュドールは外見、体を構成する水を自由に組み替える事が出来る。
そのため一見では本人確認は難しいのだが、ヒュドールにも自由に変えられない部位はある。
体の中心、通常の生物で言えば心臓に当たる位置に存在する核がそれだ。
全く同じ形の核は二つと無いと言われている。
子供の内はやや見分けにくいが、あなたの年齢ならば十分だ。
「そうか、旅立つとは残念だが……しかし、旅人を阻む事も出来まい。
道中は気を付けよ。
街道の安全には気を配ってはいるが、世に絶対という物は無い」
城門前であなたが出立の旨を告げると、ザハールはやや気落ちした様子だった。
どうやら勧誘は本気であったらしい事が読み取れる。
また、護衛の騎士に声を掛け、一人を城内に走らせた。
どうやらクラッカまでの道の内、盗賊や魔獣の出没が確認されている箇所が無いかを調べに向かわせたようだ。
あなたの道中はより安全な物となるに違いない。
何せ国が管理する情報だ。
その正確性は信頼に値するだろう。
さて、あなたは今ザハールを前にしている。
彼は十分な寛容さを持ち合わせているように、あなたには思える。
民の暮らしを自身の目で見た事に満足感を感じているのか、機嫌も相当に良好そうだ。
多少の不敬ならば受け入れられると期待しても良いだろう。
出立前に彼と話しておきたい事があるならば、恐らくこれが最後の機会だ。
あなたとて、城内に立ち入る権利は流石に与えられていない。
>>↓2 自由に対話が行えます。
続きは次スレになります。
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