女騎士「ロボ女騎士だと・・・!?」 (303)
ロボ女騎士「クッコロセ クッコロセ」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「張り合わないでください」
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ロボ女騎士「ソンナモノデコノワタシガ ソンナモノデコノワタシガ」
女騎士「しかし・・・こんなものを造ってどうするつもりだ。はっ、まさか・・・」
オーク「女騎士さんの国に自爆攻撃をさせるためですよ」
女騎士「なんだ、いやらしい目的じゃないのか」
オーク「いやらしいのは一人だけで十分ですから」
女騎士「わ、私だけで十分だなんて・・・デレェッ」
オーク「ほんと雌豚ってクソですね」
女騎士「豚に豚と言われた!? くっ」
ロボ女騎士「クッコロセ クッコロセ」
女騎士「ロボに先回りされた!? くっ・・・殺せ」
女騎士「しかしこの寸胴では、私の美貌の一割も再現できていないぞ」
オーク「そうですか? 八割くらいはできているような」
ロボ女騎士「オンナダカラトイッテ オンナダカラトイッテ」
女騎士「これのどこが私の八割なんだ。私を侮辱する気か」
オーク「でも女騎士さん、最近太ったでしょう」
女騎士「フッ・・・ロクに鍛錬もできずあんなことをされていてはなぁ!」
オーク「なんで勝ち誇った顔なんですか?」
女騎士「生まれつきこういう顔なんだ」
オーク「そうですか。というかめちゃくちゃ自由行動してるじゃないですか、ウザいくらいに」
女騎士「そこはほら、あれだ。おまえたちに洗脳されてしまったんだ」
オーク「そうですか」
女騎士「・・・。くっ、殺せ・・・」
ロボ女騎士「ハヤクトドメヲサスガイイ ハヤクトドメヲサスガイイ」
ロボ女騎士「ケンサエアレバ ケンサエアレバ」
オーク「とにかく、これをもう少し改良して、自律型の自爆兵器にします」
女騎士「なるほど」
オーク「なるほどって、女騎士さんの同胞に対する兵器なんですけど」
女騎士「囚われの身になった私を助けにもこない連中など・・・」
オーク「助ける価値が無いと判断されたんじゃないですか」
女騎士「そうか、そういう精神攻撃か。オークめ、やるようになったな」
オーク「本当は女騎士さんに爆弾をくくりつけて、一石二鳥にしたいんですけど」
女騎士「おいおい、バッドエンドにはまだ早いぞ」
オーク「いや、女騎士さんみたいな人を顔パスで通すほど、人間もバカじゃないだろうって」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ロボ女騎士「キタナイモノヲムケルナ キタナイモノヲムケルナ」
オーク「なので、このロボには女騎士らしい誇りと技術を身につけてもらいたいのです」
女騎士「まるで今の私にはそれが無いとでも言いたいようだ」
オーク「はい」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「じゃあそうしましょう。いけ、ロボ」
ロボ女騎士「ギュオオン!!」
女騎士「うおっ!? こ、こいつ、動くぞ。しかも速い」
オーク「なんだ、意外とまだやりますね。ちなみに今のは最大の六割の力です」
女騎士「おい、これでは私より強くなってしまうぞ」
オーク「もしかしたら、自爆させないでそのまま使った方がいいのかもしれません」
女騎士「それではますます私の存在意義がなくなるじゃないか」
オーク「まだあるとでも思ってるんですか」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「と、このように戦闘力はそれなりなので、あとはコミュニケーションの問題です」
女騎士「私のような誇りと教養は一朝一夕で身につくものではないからな」
オーク「そうですね」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「自覚があるならどうにかしてください。それよりもロボの問題です」
ロボ女騎士「ヒメニハテヲダスナ ヒメニハテヲダスナ」
オーク「このように現状では、記憶されたワードを連呼することしかできません」
女騎士「しょせん機械のカタマリだな」
オーク「肉のカタマリがえらそうに言わないでください」
女騎士「それでは私が[ピザ]みたいじゃないか」
オーク「そうですね」
女騎士「くっ、殺せ・・・」
saga忘れてたわ
ロボ女騎士「キシトシテシナセロ キシトシテシナセロ」
オーク「これを少なくとも、潜入時に疑われない程度の会話をできるようにします」
女騎士「それができたら苦労しないだろう」
オーク「だから、苦労しているんです。毎日テレビ見て寝てる人とは違うんです」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「だから自覚があるならどうにかしてください」
ロボ女騎士「ヨロイガトケルダト ヨロイガトケルダト」
女騎士「機械のくせにいやらしいワードを言うな!」
オーク「騎士のくせにだらしない人に言われたくありませんね。それよりトレーニングです」
女騎士「ま、また調教だとっ・・・///」
オーク「豚の調教には飽きました。人工知能のトレーニングです」
ロボ女騎士「ミッミルナ ミッミルナ」
オーク「多くの状況と、それに対する反応を教えることで、行動パターンを増やしていきます」
女騎士「なるほどな。で・・・最初は前からか、後ろからか?」
オーク「そういうことがしたいなら一人でしていてくれますか」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「それでは簡単なことから始めましょう。女騎士さん、あいさつしてください」
女騎士「よう、豚」
オーク「鏡に向かってではありません、ロボに向かってです。変なことは言わないでくださいね」
女騎士「なるほど。・・・おいロボ公! この豚をブン殴れ!!」
ロボ女騎士「メイレイヲ ニンシキ コウゲキ カイシ ギュオオン!!」
女騎士「危なっ!! 私じゃない!! 豚だ!!」
ロボ女騎士「ギュオオン!!」
女騎士「私じゃないと言ってるだろうが!! このポンコツが!!」
オーク「漫才をしろとは言ってないんですけど」
オーク「さっさとあいさつをしてください」
女騎士「こんにちわ」
ロボ女騎士「コンニチワ コンニチワ」
女騎士「こんにちわは一回!」
ロボ女騎士「コンニチワハイッカイ コンニチワハイッカイ」
女騎士「やかましいわ! 腹の立つロボだな、誰に似たんだ」
オーク「女騎士さんも多少はロボを見習ったらどうですか」
女騎士「どういう意味だ」
オーク「あらゆる意味ですけど」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ロボ女騎士「ミナラッタラドウデスカ ミナラッタラドウデスカ」
女騎士「繰り返すな!! 腹立つ!!」
ロボ女騎士「コンニチワ ワタシハ オンナキシ ロボデス」
オーク「少しは会話になってきましたね」
女騎士「自分でロボと言ってどうするんだ」
オーク「そのへんは後で修正すればいいんです。人間と違ってすぐにできます」
女騎士「なぜ私を見て言うんだ」
オーク「人間も幼い頃なら修正しやすいんですが」
女騎士「おっと、ロリコンはまずいぞ」
オーク「女騎士さんがもうどうしようもないオバサンだと言ってるんです」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ロボ女騎士「ドウシヨウモナイ ドウシヨウモナイ」
女騎士「というか、このいかにもロボっぽい抑揚はなんとかならないのか」
オーク「発声システムが未完成なんです。気にしないでください」
ロボ女騎士「キニスルナ キニスルナ」
女騎士「半端に会話できるようになった分、うっとうしくなったな」
ロボ女騎士「ソレハキサマダ ソレハキサマダ」
女騎士「うっ! こいつ・・・自我を持っている・・・!?」
オーク「ただのパターン反応ですよ。やっと学習機能が動作し始めたんです」
ロボ女騎士「ソノトオリ ソノトオリ」
女騎士「では聞くが、この世で一番美人の女騎士さんはだーれだ」
ロボ女騎士「ソレモワタシダ ソレモワタシダ」
女騎士「おまえはロボだろうが!! 女騎士さんはこの世に私一人!!」
オーク「機械相手に本気でキレないでください」
オーク「では、そろそろ実地訓練をしましょう」
女騎士「もう自爆させちゃうのか」
オーク「それは本番です。今回は、ロボを知らない別の人と話をさせてみましょう」
ロボ女騎士「デハ ダレト ハナシマショウカ」
女騎士「ホントに会話してるんだよな・・・メイドイン豚のくせに・・・」
オーク「あそこに下級魔族のゴブリンくんがいますね。ちょうどいい相手になりそうです、ロボ、行ってきなさい」
ロボ女騎士「ワカリマシタ ゴシュジンサマ」
女騎士「くっ・・・オークは私だけの・・・///」
オーク「さて、どうなるでしょうか」
女騎士「スルーされた!? くっ、殺せ・・・」
ロボ女騎士「ヤア ゴブリン キョウモ イイテンキダネ」
ゴブリン「えっ!? な、なんだ、女騎士さんか・・・いきなりどうしたんですか」
女騎士「おいクソゴブリン、そいつのどこが私なんだ」
オーク「静かにしてください。これは実験なんですから」
ロボ女騎士「トキニ キサマ イッパイ オチャデモ ドウ」
ゴブリン「は? お茶ですか・・・? 珍しいですね、女騎士さんが・・・」
ロボ女騎士「ノムノカ ノマレルノカ スッキリ シロ」
ゴブリン「日本語がおかしくないですか? まあいつものことか・・・」
女騎士「ちょっと殴ってくる」
オーク「後にしてください」
ロボ女騎士「ソレジャア イコウカ ゴブリンクン ウフフ」
ゴブリン「はあ」
女騎士「うふふなんて私が言うか!」
オーク「静かにしてくださいって」
ゴブリン「・・・あっ! 言っとくけど、ボク、ヘンなことはしませんからね。彼女がいるんだから」
女騎士「おぉん!? あんだとこのゴブ公!! 私より同族のバケモンがいいってか!!!」
ゴブリン「うわっ!? お、女騎士さん? じゃあこっちの女騎士さんは・・・」
ロボ女騎士「ワタシガ ホンモノダ ソイツハ テキノ スパイダ」
ゴブリン「なるほど! こいつめ、死ね!」
女騎士「おまえが死ね!!」
ゴブリン「ゴフッ!」
オーク「後にしろと言ったのに・・・まあ、実験はできたからいいか」
ゴブリン「えーっ! じゃあ、この女騎士さんはロボットなんですか」
ロボ女騎士「ソウハ ミエナイダロウガ シンジツ ナノダ」
女騎士「なんで見分けがつかないのか言ってみろ。内容によっては殴る」
ゴブリン「い、いやですよ、何を言っても殴るくせに」
ロボ女騎士「ボウリョクハ イケナイナ キシドウニ ハンスル」
ゴブリン「やっぱりこっちがホンモノなんじゃないですか、オークさん」
オーク「もしそうだったらよかったんだが、こっちの出来の悪い方がホンモノなんだ」
ロボ女騎士「ヨノナカ リフジンナ コトモ アル」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「ともあれ、これでコミュニケーション面でもある程度ロボが通用することがわかりました」
女騎士「こんなアホゴブリンを例にしたら後悔するぞ」
ゴブリン「ロボットと見分けがつかないほうが悪いんじゃないですか」
女騎士「ほう」
ゴブリン「ゴフッ! オフッ!」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
ゴブリン「ほ、ほら、こっちのほうが優しい! ボク、包容力のある女性が好みです!」
女騎士「誰も聞いて無いんだが。まあ、おまえにはこっちのガラクタの方がお似合いか」
ロボ女騎士「モウシワケナイガ イヤラシイ キノウハ ジッソウ サレテイナイ」
オーク「そうですね。その手の機能は自爆には不要だと思ったので」
ゴブリン「なんだ、そうだったんですか・・・女騎士さんよりよっぽど実用的なのに」
女騎士「おぞましいことを言うな! この樽ロボットとゴブリンの交尾など・・・」
ロボ女騎士「ジュヨウガ アルナラ ジッソウモ アリウル」
オーク「そうですね、ホンモノよりは一名多い需要がありますし」
女騎士「くっ・・・殺せ」
オーク「さて、次はもう少し高度な相手を選びましょう」
ゴブリン「ボクがアホみたいな言い方ですね」
オーク「直接そう言ってほしいの?」
ゴブリン「・・・」
女騎士「この鬼畜オークは部下に対してもこうなのか」
ゴブリン「そうなんですよ、ときどき疲れちゃいます」
ロボ女騎士「ゴブリンハ カトウナ ダケデ バカデハ ナイ」
ゴブリン「ロボ女騎士さんは優しいなあ・・・」
女騎士「やっぱこいつアホだわ」
オーク「人のこと言えるんですか」
女騎士「くっ、殺せ・・・」
ゴブリン「あっ、向こうにいるのはダークエルフさんですよ」
オーク「なるほど、あの方なら高等魔族だし適役だね。少し失礼ではあるけど、お相手願うとしよう」
ロボ女騎士「デハ イッテクルゾ」
オーク「期待している。がんばってくれ」
女騎士「なんで私よりロボに対しての方が丁重なんだ」
オーク「雌豚よりは僕が作ったロボの方が高等でしょう」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ロボ女騎士「マテ ソコノ イイオトコ ナヲ ナノレ」
ダークエルフ「ムッ、何奴・・・貴様、女騎士ではないか。オークの奴は何をしている」
ゴブリン「あっさり引っかかりましたねえ・・・」
女騎士「魔族にはアホと節穴しかおらんようだ」
オーク「人間もみんな同じ反応だったらどうしますか」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ダークエルフ「おい、誰かおらんか。捕虜が脱走しているぞ」
ロボ女騎士「マア マテ イイコト シヨウジャ ナイカ」
女騎士「ロボの分際で誘惑だと!?」
オーク「これもパターンの一つです」
ダークエルフ「な、何? 貴様、私を何だと思っておるか」
ロボ女騎士「イマサラ ドンパチシテ ドウスル コノサイ キモチヨク ナロウゼ」
ダークエルフ「や、やめろ! この私が人間ふぜいと・・・」
女騎士「そういう問題じゃないだろ、どいつもこいつも」
ゴブリン「いいなあ、ダークエルフさん」
ダークエルフ「し、しかし貴様、戦いをやめて女らしくなったな・・・むふ」
ロボ女騎士「ソウ オモッテ クレルナラ ウレシイ キャッ」
ダークエルフ「私もこう、これくらいムチッとしていた方が・・・」
女騎士「魔族にはデブ専しかおらんのか」
ゴブリン「自分がデブだって自覚はあるんですか」
女騎士「ほう」
ゴブリン「ンゴッ! ガッホォ!!」
ダークエルフ「!? だ、誰だ」
オーク「またバレてしまいましたね。すみません、ダークエルフさん」
ダークエルフ「オーク? そ、それに・・・貴様・・・」
女騎士「よう、デブ専」
ダークエルフ「お、おお、女騎士っ!? それじゃあこいつは・・・」
ロボ女騎士「ジツハ ソッチハ ロボット ナノダ」
ダークエルフ「そうなのか!? 確かにやたら寸胴だな」
女騎士「ほう」
ダークエルフ「オボッ!? ろ、ロボットにぶたれた! 三原則はどうした!」
ゴブリン「いや、実は、こっちの方がロボ女騎士さんなんです」
ダークエルフ「えーっ!? まさか・・・」
ロボ女騎士「フフ バレチャ シカタネエ ロボオンナキシトハ アタシノ コトヨ」
オーク「ダークエルフさんも完全に騙されていましたね。これはいけそうです」
ダークエルフ「くっ・・・オレとしたことが・・・」
女騎士「マジでアホしかおらんのだろうか・・・」
オーク「では、いよいよ人間相手のテストをしましょう」
ロボ女騎士「ウデガ ナルゼ ボキッ ナンチャッテ」
女騎士「やっとこれが自爆するのか。せいせいするな」
オーク「だからそれは本番です。次は人間の街にロボを送り込んで支障が無いか見てみます」
ゴブリン「一人で行かせるんですか? ボクらが行ったら人間に騒がれそうですけど」
オーク「そこで、ここは人間に変装しやすいダークエルフさんにお願いしようかと」
ダークエルフ「なぜそこでオレが出るんだ。これは貴様の勝手な計画だろう」
オーク「まあまあ。もし、そのテの機能が実装された際には、優先して・・・」
ダークエルフ「ん? あ、ふむ・・・なるほどなあ」
女騎士「ドラム缶に欲情する変態がいるらしい」
ロボ女騎士「フフッ オンナトシテ ミラレルノモ ワルクナイナ」
女騎士「こ、こいつ・・・ロボのくせに女騎士らしいセリフを言いおって・・・」
オーク「女騎士さんもたまには女騎士らしいことを言ってください」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ダークエルフ「それでは行くか、ロボ」
ロボ女騎士「ウム」
オーク「途中で変なことしないでくださいね」
ダークエルフ「ふ・・・それは後の楽しみに取っておこう」
女騎士「おい待て変態。人間の町なら私が行ってもよかろう」
ゴブリン「町に行って何するんですか」
女騎士「この辺にはコンビニしかないから、たまには店で飲みたい」
ゴブリン「あのー、女騎士さんって本当に女騎士なんですか」
女騎士「うむ、気付いたか。実は騎士以上の高貴な身分の出でな」
ゴブリン「いや、ただの酒飲みの無職のオバサンなのかなって」
オーク「ゴブリンくんってときどきクソ度胸を見せるけど、わざと?」
ゴブリン「ンブッ! ゴッフッ!」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
オーク「というか女騎士さん、あなた一応捕虜なんですけど」
女騎士「完全に調教されたから問題ないだろ」
ゴブリン「それって平然とした顔で言うことですか・・・」
女騎士「完全に調教されちゃったのほぉおおお!!」
ゴブリン「うわ」
女騎士「あ?」
ゴブリン「すいませんでした」
オーク「まあいいでしょう。ダークエルフさん、お願いします」
ダークエルフ「ちっ、しかたないな。ロボと二人きりになれると思ったのに」
オーク「こっちは連れて帰ってこなくていいので」
ロボ女騎士「ウム」
女騎士「くっ、殺せ・・・」
_ 人人人 _
> 寝る <
 ̄Y^Y^Y ̄
もっと書きためておくわ
ちょっと貯まったから、連投する
ダークエルフ「あれが人間の町だな。む、小癪にも番兵がおるぞ」
ロボ女騎士「ピピッ セントウリョク 5カ ゴミメ」
女騎士「ふっ、相手をあなどるとは騎士の風上にもおけんな」
ロボ女騎士「イマノハ オマエノ コトダゾ」
女騎士「あんだとこのポンコツ!! ブッ壊したる!!」
兵士「ンッ!? なんだ、何をやっておるか、貴様ら」
ダークエルフ「不審に思われてるぞ! 静かにせんか、女騎士」
女騎士「ぐ・・・」
ロボ女騎士「ヤレルモンナラ ヤッテミロ アカンベー」
女騎士「おおん! ほおん!!」
兵士「おい、そこの女。何をわめいておるか」
ロボ女騎士「スミマセン カノジョハ ビョウキナンデス アタマノ」
女騎士「のーみそカラッポのロボットが何を言うか!?」
ダークエルフ「このように人間をロボットと思ってしまう病気なのです」
兵士「そうか、気の毒にな。なるたけ静かにさせろよ」
女騎士「うぐぐ・・・なぜ気付かんのだ、アホどもが・・・」
ダークエルフ「町にはたやすく侵入できたが、これからどうすべきか」
女騎士「そんなことも考えていなかったのか」
ダークエルフ「まずはおまえを馬小屋につなぎにいくか」
ロボ女騎士「バカト イウノハ ウマト シカト カクノダ」
女騎士「ほー・・・何が言いたい、ポンコツ」
ロボ女騎士「イヤ バカニハ イッテモ ワカランダロ」
女騎士「自爆スイッチオン!!!」
ダークエルフ「やめんか馬鹿者!」
ロボ女騎士「アイニク バクヤクガ ミトウサイ ナンダナ コレガ」
女騎士「ぐぐう・・・せめて黙らせるボタンは無いのか」
ダークエルフ「おまえにあるなら押してやるぞ」
女騎士「ダークエルフのはこの、みぞおちらへんかな?」
ダークエルフ「オフッ!! ・・・」
ロボ女騎士「マッタク ニモツヲ フヤシヤガッテ」
ダークエルフ「・・・」
女騎士「腹パン一発で気絶する上級魔族が悪い」
ロボ女騎士「ブキヲ モタヌ アイテヲ ナグル キシガ イルカ」
女騎士「くっ・・・ロボのくせに・・・」
少女「そ、そこの騎士様、お助けを~っ」
女騎士「ムッ? なんだ、貴様は。私を誰だと思っている」
少女「あ、これは失礼しました、召使いの方・・・」
女騎士「ほおん! くぉおん!!」
ロボ女騎士「カマワヌ ムスメヨ トキニ ナニゴトダネ ケッソウヲ カエテ」
女騎士「おまえはロボット! 騎士はわ・た・し!!」
少女「ろ、ロボット・・・?」
ごろつき「お、見つけたぜぇ~。覚悟しな、お嬢ちゃん!」
少女「!!」
少女「よ、寄らないでください・・・!」
ごろつき「そうはいかねえなあ。道案内してやったんだから、お礼はしてもらわねえと」
少女「そんなこと・・・」
ロボ女騎士「ソコノ オマエ コノコニ ナニヲスル ツモリダ」
ごろつき「ンッ!? なんだテメエ・・・邪魔する気か」
女騎士「その前に何か言うことはないのか、この物体を見て」
ロボ女騎士「ソウダ モクテキヲ ノベルガ イイ」
ごろつき「ケッ、言うまでもねえだろ! おい、おまえら!!」
ごろつきB「おう!」
ごろつきC「うへへ!」
ごろつきD「ぶっとばしたらあ!」
少女「よ、四人も・・・!」
ロボ女騎士「フッ カズデ セメルノハ ヨワサノ アカシダナ」
少女「格好いい・・・騎士様・・・」
女騎士「あの・・・私が騎士なんですけど・・・もうどうでもいいかな・・・」
ごろつき「ふふん。いくら騎士とはいえ、この数でそうそう楽に勝てるかな」
女騎士「フン・・・私を誰だと思っているか」
ごろつきB「そこの奴隷も戦うつもりか」
女騎士「くっ・・・殺せ。いや、殺す!」
ロボ女騎士「オチツケ コンナ ヤツラノ チデ ヤイバヲ ヨゴス コトハ ナイ」
少女「格好いい・・・騎士様・・・」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ごろつきC「お望みとあらばやってやるぜ!」
女騎士「あぁん!? 甘ぇんだよ、クソガキが! オラァ!!」
ごろつきC「ゴフッ!! ・・・」
ごろつきD「こ、この女奴隷、やるぞ」
女騎士「この女騎士様にタテ突くなんぞ、一億五千万光年はええんだよ。ペッ」
ロボ女騎士「オマエ ソノ ソダチデ ヨク キシニ ナレタナ」
女騎士「ロボットの貴様にだきゃあ言われとうないわ!!!」
ごろつき「ぐ・・・やり手が二人もいるのかよ・・・こうなったら!」
少女「!」
ごろつき「先生! お願いします!」
剣士「ウム・・・」
少女「こ、この人は・・・!?」
ごろつき「ヘッ、先生はこの地方じゃ最強の剣士と言われる人だぜ、覚悟しな!」
ロボ女騎士「ホウ タショウハ ヤル ヤツガ デテキタカ」
女騎士「おい、いちいち私のセリフを取るな」
剣士「のけ・・・俺の相手はそこの女だ」
女騎士「おっ。フッ・・・わかる奴にはわかるか」
ロボ女騎士「ソウダナ ジャ ドイテロ」
女騎士「ふんぐ! むんぐ!!」
剣士「どかぬなら、まとめて斬る・・・!」
女騎士「ウオッ!? あ、危ねぇ」
ロボ女騎士「コレハ トウホウニ ツタワル イアイギリカ ヤルナ」
剣士「抜け、女」
ロボ女騎士「フッ ナラ ソノキニ サセテ ミルガイイ」
剣士「・・・ほう」
少女「格好いい・・・騎士様・・・」
女騎士「くっ・・・というかそのロボットハンドじゃロクに柄も握れんだろ・・・」
ロボ女騎士「サア カカッテコイ スデデ アイテニ ナッテヤル」
剣士「その余裕・・・後悔させてやろう」
ごろつき「・・・ゴクリ・・・」
少女「がんばって・・・騎士様・・・」
女騎士「がんばれ、剣士! 一刀両断したれ!」
剣士「・・・」
ごろつき「・・・」
少女「・・・。!!」
剣士「てやあっ!」
ロボ女騎士「ギュオオン!!」
ごろつき「は・・・速ぇ!」
剣士「・・・」
少女「ど、どっちが・・・!?」
女騎士「・・・。フ・・・終わったな・・・」
剣士「・・・」
ロボ女騎士「・・・」
剣士「・・・。どさり」
ごろつき「せ、先生っ!?」
ロボ女騎士「マタ ツマラヌ モノヲ キッテ シマッタ」
女騎士「うそぉ!? どう見ても入ってただろ!!」
ロボ女騎士「アンズルナ ワタシハ ガンダニウム ゴウキンセイ ダカラナ」
女騎士「んほぉーっ! 固いだけで普通に斬られてたんじゃねーか!!」
ごろつきB「せ、先生がやられるなんて」
ごろつきD「な、なんてこった・・・」
ごろつき「こ、こうなったら袋叩きだ!! かかれ!!」
少女「きゃーっ!!」
ロボ女騎士「フッ マトメテ ヤリヤスク ナッタナ ギュオオオオオン!!!」
ごろつき「ぎゃーっ!!」
女騎士「なんでみんなそっち行くの・・・。騎士は私だよ・・・殺せ・・・」
ごろつき「ぐふう・・・」
ロボ女騎士「シンパイ スルナ ミネウチダ」
ごろつきB「いぎい! 腕があ!」
ごろつきD「いたい! いたいよお! 腹があああ!」
女騎士「あっ、こりゃ肋骨折れてるな・・・まあみね打ちには違いないか・・・」
ごろつきB「いてえよお! 助けてよう!」
ロボ女騎士「ヤカマシイ」
ごろつきD「ヒッ!」
ごろつき「い、命ばかりはお助けを~!」
ロボ女騎士「オマエラノ イノチナド ウバウ カチモナイ ウセロ」
ごろつき「は、はい・・・ひええ~っ!」
女騎士「やれやれ・・・。これで少しはおとなしくなるといいが」
ロボ女騎士「ナニモ シテイナイ ヤツガ ナニカ イッテルゾ」
女騎士「人の見せ場もセリフも奪っておいて何を言っておるか!!!」
少女「あ、あのう・・・」
少女「騎士様・・・助けていただき、どうもありがとうございました」
ロボ女騎士「キニスルナ コレクライ タイシタ シゴトデハ ナイ」
少女「そんな・・・ぜひ、お礼をさせてください」
女騎士「ふむ、そこまで言うならしかたない」
ロボ女騎士「オマエニ オレイヲ スルトハ イッテナイ」
女騎士「くっ・・・殺せ」
少女「いえいえ、ぜひお二人にお礼を・・・」
女騎士「さすが、わかってるやつはわかってるな!」
ロボ女騎士「ソリャ オマエダケ ハブイタラ クウキ ワルクナルシ」
女騎士「このロボ腹立つ!! 電源スイッチどこだ!!」
少女「まあまあ・・・。私の家にご案内しますので」
ロボ女騎士「デハ オコトバニ アマエルト スルカ」
ダークエルフ「うーん・・・? こ、ここはどこだ? 何があった?」
女騎士「あ、こいつもいたんだ。すっかり忘れてた」
ロボ女騎士「ジツハ カクカク シカジカ マルマル ウマウマ」
ダークエルフ「なるほど。まあ、それくらいならよかろう」
女騎士「・・・便利な世界だな」
少女「えっと、では、このあたりで・・・」
ダークエルフ「どうかしましたか」
少女「みなさん、この円の中に入ってください」
女騎士「入ってどうするんだよ」
少女「これは魔法陣です! 我が家までテレポートしますわ」
ダークエルフ「はっ? 魔法? テレポートって・・・」
ロボ女騎士「マテ ハエガ ハイッテイタラ タイヘンダ」
女騎士「蝿一匹どころか金属塊が混じってんだけど」
ロボ女騎士「タシカニ オマエナンカト ユウゴウ シタラ セップク モノダナ」
女騎士「ワープ中にこのガラクタを四次元空間に捨ててこよう」
ダークエルフ「というかロボ、どこでそんな知識を・・・ってそうじゃない! いったいこれでどこに・・・」
少女「行きますよ~、えいっ!」
ダークエルフ「あっ、ちょ・・・あああ~」
ゴブリン「あれっ」
オーク「どうかしたかな」
ゴブリン「いや・・・ロボ女騎士さんの発信機のシグナルが消えちゃいました」
オーク「ふむ、トラブルかな」
ゴブリン「まさか勝手に自爆したなんてことは・・・」
オーク「爆薬を積んでないからそれはないだろう。もし電源が切れても発信機は作動するはずだけど」
ゴブリン「どうします? 他のエルフの方に頼んで様子を見てきてもらいますか」
オーク「なんで自分で行こうとしないの?」
ゴブリン「え!? いやっ、あの、僕、変装してもバレるんで・・・すいません」
オーク「ふーん、それはそうだねえ」
ゴブリン(はあ・・・ホントこの人の下ってしんどいわ)
オーク「ふーん、そう」
ゴブリン「文字媒体だからって心理描写まで読まないでくれますか!!」
オーク「メタを言うもんじゃないよ。おや・・・シグナルが復活したね」
ゴブリン「え? あ、ホントだ。でもここって・・・」
思ったより貯まってなかった(粉みかん)
またそのうち
少女「つきましたわ!」
ダークエルフ「はっ。こ、ここは?」
ロボ女騎士「ジーピーエスニ ヨルト トウケイ 139ド ホクイ 35ド」
女騎士「んなもん聞いてもわかるか、ポンコツ」
ロボ女騎士「ツマリ ニンゲンノ オウコクノ シュト ダナ」
女騎士「な、ななな、なにぃ!?」
ダークエルフ「うそぉ!?」
少女「うふふ、さすが騎士様ですわね。そのとおりです」
ロボ女騎士「ツキニ カワッテ オミトオシヨ」
ダークエルフ「月はともかくGPS衛星は世界観的にどうなんだ」
女騎士「くだらねーこと言ってる場合か! これはいかんだろ」
ダークエルフ「た、確かに・・・人間の首都となると・・・ん?」
ダークエルフ「我々はともかく、別におまえはやばくないんじゃないのか」
女騎士「おまえらはバレなきゃよかろう。私は変装もしてないんだぞ」
ダークエルフ「だからここはおまえたち人間の首都だろ。なんで変装する必要があるんだ」
女騎士「職場の人間に見つかったらどうする。また奴隷のように働かされる日々だぞ」
ダークエルフ「・・・。・・・」
ロボ女騎士「ハタラカズニ タベル メシハ ウマイカ」
女騎士「最高だぞ」
ダークエルフ「やっぱ人間ってクソだわ」
ロボ女騎士「コレホド マデニ クソマミレ ナノハ メズラシイト オモウ」
少女「みなさーん、どうかされましたか?」
ダークエルフ「い・・・いや、なんでも」
少女「それでは行きましょう。我が家はもうすぐですので」
ダークエルフ「・・・。どうしよう・・・」
ロボ女騎士「イザト ナッタラ ドーント イコウヤ」
少女「さあ、着きましたわ。ここが我が家です!」
ロボ女騎士「ココハ ニンゲンノ オウコクノ キュウデン ダナ」
ダークエルフ「あああ・・・やっぱり」
女騎士「そんなこったろうと思ったわ」
ロボ女騎士「モット オドロケヨ オマエラ」
女騎士「ファンタジーで世間知らずのお嬢様を助けた場合、9割2分くらいはお姫さまですわ」
ダークエルフ「まあうすうす覚悟はしていた」
少女「さすがは騎士様たちですわね! 実はわたくし・・・」
姫「この国の第3王位継承権者の王女なのです!! ばばん!」
ダークエルフ「わー、おどろいたあ・・・ぱちぱち」
姫「ありがとうございます!」
女騎士「アホ、手ぇ叩いてる場合か。はよ帰るぞ」
姫「そんなことおっしゃらずに! どうぞごゆっくりしていかれてください!」
ダークエルフ「というかおまえは残れよ。帰ってきてもタダ飯食らいが増えるだけだし」
女騎士「やだ! 帰る!! 帰ってビール飲みながら野球中継みるの!!」
ロボ女騎士「マイニチガ ニチヨウビデ タノシイノカ」
女騎士「最高だぞ」
ダークエルフ「やっぱ少なくともこいつはクソだわ」
姫「ではみなさん! 私のお城にご招待いたしますわ」
ダークエルフ「いや、それはその・・・」
女騎士「騎士様(笑)とその奴隷は楽しんできて、どうぞ。私は帰る」
ロボ女騎士「ハタラカナイ ドレイハ ナント ヨベバ イイノダ」
ダークエルフ「あのですね姫、我々もちょっと忙しいので、今日はこのへんで」
姫「いやいやいや! どうぞどうぞ!!」
ダークエルフ「ちょっほんと無理・・・無理ってほんと!」
女騎士「客引きとカモの図か」
ロボ女騎士「クサッテモ キシ ナンダカラ オウゾクハ ウヤマットケ」
女騎士「いいのいいの、どうせ王侯貴族は私ら騎士になんて大して関心ないから」
ロボ女騎士「ソレハ オマエガ ムノウ ダッタカラ シカト サレテタ ダケダ」
女騎士「ふおお! んっほお!!」
兵士A「なんだ、なんの騒ぎだ」
兵士B「あっ、姫様! いったい今までどちらへ」
姫「ちょっとそこまで。あなたたち、この方たちを中へご案内さしあげてくださるかしら」
兵士A「はあ。誰ですか、この者たちは・・・ん!?」
兵士A「あ、貴女は女騎士さまではありませんか!」
女騎士「うっ!! ば、ばれちまった」
ロボ女騎士「ウム ヒサシブリ ダナ」
兵士A「確か魔族の捕虜になったと聞いておりましたが・・・」
ロボ女騎士「ソウダ サイキン スキヲ ミテ ダッシュツシテ キタノダ」
兵士B「そうなのですか。それはご苦労様です」
兵士A「なんだか以前よりも精悍になられましたな! 何せ以前は・・・」
兵士B「お、おい、よさんか。ささ、女騎士さま、どうぞお通りください」
ダークエルフ「ばれてなさそうだぞ」
女騎士「くぉお! あっほぉ!!」
兵士A「ときに、そこの奇声をあげている者たちは何者ですか」
ロボ女騎士「タダノ ニモツモチダ キニスルナ」
ダークエルフ「さ、さようで。騎士様に雇われた身です」
女騎士「おまえって高等魔族のくせに、小物の演技が上手いよな」
ダークエルフ「おまえもちっとは演技せんか!!」
姫「とにかく、立ち話もなんですから、中に参りましょう。私は着替えてまいりますわね」
姫「お待たせしましたわ~」
女騎士「ほー、着るものを着ればそれなりに見えるものだな」
ダークエルフ「おまえが鎧着てるだけで騎士を名乗れるのと同じだな」
女騎士「ほう」
ダークエルフ「あがうっ!!」
姫「どうかされましたか?」
ダークエルフ「い、いえ・・・何か虫ケラが・・・あはは」
ロボ女騎士「スマンナ コノモノタチハ コノヨウナ バショニ ナレテオラン」
女騎士「そうだぴょーん。私はバカだからわかんないぴょーん」
ロボ女騎士「ツイニ コワレタカ」
ダークエルフ「口調が変わっただけで元からこうだろ」
女騎士「ほう」
ダークエルフ「んびゅぅっ!!」
姫「どうかされましたか?」
ダークエルフ「い、いえ・・・目にゴミが・・・」
姫「では、こちらで少々お待ちくださいまし。今、何か運んでこさせますので」
女騎士「やれやれ。しかしどいつもこいつも、女騎士様とこのポンコツを見間違えおって」
ロボ女騎士「ボディーガ チガウンダヨ ボディーガ」
女騎士「転がすぞこのドラム缶が」
ダークエルフ「しかしこの場合、ばれなくて済んでよかっただろうが」
女騎士「それは確かに・・・ん? 待てよ・・・」
ロボ女騎士「コイツ ワルダクミ シテルゾ カオデ ワカル」
女騎士「こいつをここに置いて行けば、私は心おきなく向こうで暮らせるんじゃないの」
ダークエルフ「・・・。たまには怠けること以外に脳を使えよ」
女騎士「だってロボの方が騎士らしいんだろ。なら私なんてどーでもいーじゃーん」
ロボ女騎士「フテクサレルナヨ アー メンドクセ」
女騎士「うるせえ粗大ゴミ! 女騎士鈍器アタック!!」
ロボ女騎士「イテッ」
ダークエルフ「人ん家の家具で殴るな! まったく・・・あれ、ロボ?」
ロボ女騎士「・・・。ピー・・・」
ダークエルフ「お、おい。どうしたんだ」
女騎士「なんだ、壊れたか? 人に失礼なことを言っておいて、自分が壊れちゃ世話ねえな~。がっはっは!」
ダークエルフ「壊れたじゃなくて壊しただろうが!! おい、ロボ、大丈夫かー・・・?」
ロボ女騎士「ピー・・・ガガッ。・・・」
ロボ女騎士「・・・」
ダークエルフ「まったく動かなくなってしまったぞ・・・」
女騎士「よいよい、そんなものはここに捨てていこう」
ダークエルフ「おまえに対して同じことを言いたかったんだが」
女騎士「ほう」
ダークエルフ「あごっ! そ、そんなことより、ロボをなんとかせねば」
ロボ女騎士「ピー・・・ガガガ」
女騎士「おっ、なんか鳴ってるぞ」
ロボ女騎士「ピピ・・・シンコクナ エラー カンリシャニ レンラク シテクダサイ」
ダークエルフ「管理者って・・・オークか。しかしどうやって連絡すればいいのだ」
女騎士「魔族は携帯も持ってないのか」
ダークエルフ「おいこら! ちっとは世界観を考えんか!」
女騎士「ロボの出てくる世界で携帯電話が出てこない方が不自然なんじゃあないですかねえ・・・」
姫「みなさま、お待たせしました・・・あら?」
ダークエルフ「ゲッ!」
姫「その機械はいったい・・・? それに女騎士さまは?」
女騎士「ここにいるだろうが、ここに」
ダークエルフ「い、いかん。確かに停止したらただのロボットにしか見えんぞ」
女騎士「停止する前からそうだろうが!!」
姫「まさか・・・そのロボットが女騎士さまの変装を・・・?」
ダークエルフ「い、いや、姫! これはですね・・・」
女騎士「そうだぞ! ちなみにこいつは魔族だ!」
姫「ええっ!」
ダークエルフ「あっ、へ、変装が! このアホ、いったい何のつもりだ!」
女騎士「じゃかましいわ! もうガマンならん!」
ダークエルフ「おまえがガマンしたことが生涯に一度でもあったのか」
女騎士「フン! 女騎士さまはこの世にたった一人! この私だけだ!!」
姫「えっと、これもロボットなのですか?」
ダークエルフ「いや、そうだったらとっくに爆発させてます」
女騎士「くっ・・・殺せ」
姫「さて・・・魔族の方がロボットを連れて、我らの城にいるというこの状況・・・どうしたものでしょう」
ダークエルフ「・・・。成り行きでこうなったまでです。貴女や城にどうこうするつもりはありません」
姫「そうだとしても、かりにも人間の姫である私が、黙って見逃すことも難しいですわねえ」
女騎士「ケッ、たかが王族風情が。実力で突破してやるぜ」
ダークエルフ「おい、それ魔族のセリフだぞ」
姫「実力ですか。けれど、ここが人間の本拠地ということを忘れないでほしいですわ・・・パチッ☆」
兵士「どやどやどや! 姫さま、何事ですか! あっ、魔族だ!!」
ダークエルフ「うっ! ひ、姫、我々としてはですね・・・」
姫「お話は、地下牢でお伺いしますわ♪」
兵士「じりじり」
ダークエルフ「うぐぐ・・・ロボがいたらこの程度、一掃できるというに・・・」
女騎士「フッ、ここでやっと女騎士さんの本領発揮といこうか・・・んっ?」
姫「何か外が騒がしいですわね」
兵士「ひ、姫さまーっ! 大変です!!」
姫「何事ですか。これからが楽しいところなのに」
兵士「そんな場合ではありません! 魔族が攻めてきたのです!!」
ダークエルフ「な、なにぃ!?」
姫「・・・なるほど・・・この方たちはその尖兵ということですか」
ダークエルフ「い、いやいやいや! それはホント違いますって!」
女騎士「高等魔族のくせに何も聞かされてないのか。まあ、しょうがないわな」
ダークエルフ「どういう意味だそれはっ! まだ本当かどうかもわからんのだぞ」
姫「それは確かにそうですわね」
兵士「本当ですよ! ほら、あれ!」
女騎士「おん? なんかこっちに来るぞ」
ダークエルフ「あ、あれは、我が軍の空挺突撃竜騎兵!? 突っ込んでくるーっ!!」
ねる 細切れですまんな
兵士「うわーっ! ドーン! ガシャーン! ガラガラガラ!!」
女騎士「迫力のねえ効果音だ」
ダークエルフ「げほっ、ごほっ! まさか本当に・・・」
魔族兵士「全員降りろっ! むっ、人間の兵士だ! 突撃!!」
兵士「きゃーっ!」
騎士「ひ、姫さま、こちらへ!」
姫「しかたないですわねえ・・・全員、一時退却しなさい」
女騎士「あっはっは、ふがいない人間どもだ。私が相手をするまでもなかったな」
魔族兵士A「あっ、待て。こいつは捕虜の女騎士だ。ぐうたらで有名なあいつだ」
魔族兵士B「なぜあの出不精の捕虜がこんなところにいるのだ」
女騎士「・・・。さて、久々にやろうか・・・カス魔族がよお・・・」
ダークエルフ「まあまあまあ! おい、おまえたち、オレだ! ダークエルフだ!」
魔族兵士A「だ、ダークエルフ様!? あのヘタレで有名な!?」
魔族兵士B「お、おい、よせ。本人の前だぞ」
女騎士「そこは止めるんじゃなくて否定してやれよ」
ダークエルフ「・・・」
魔族兵士B「あー・・・。そ、それより、なぜダークエルフ様がこんなところに?」
ダークエルフ「いーよいーよ、どーせオレはヘタレだし!」
女騎士「それは確かにそうだな」
魔族兵士A「確かに」
魔族兵士B「お、おい、よせ。本人の前だぞ」
ダークエルフ「あーん! あんまりだ!!」
騎士「ここで大きな音がしたぞ! 突入する!」
魔族兵士A「ムッ、いかん、敵の増援だ!」
女騎士「もう何がなんだか、わけわかんねえな」
ダークエルフ「ああ・・・どうしてこんなことに・・・」
騎士「いけいけ! 突撃ー!」
魔族兵士「応戦しろ! 人間どもを倒せっ!」
女騎士「私は魔族の方に賭けるから、おまえは人間の方な」
ダークエルフ「あのなあ! もっと危機感はないのか!?」
女騎士「人間が勝っても魔族が勝ってもどっちでもええやん、わたし捕虜だし」
ダークエルフ「オレは魔族だっつーの!! 人間が勝ったら最初の状況に逆戻りだわ!」
女騎士「確かに、卑怯でいやらしいダークエルフなんぞ、リンチで処刑だな」
ダークエルフ「卑怯はともかくオレのどこがいやらしいんじゃ!! おまえにだけは言われたくないわ!」
魔族兵士「ばたんきゅう」
騎士「よーし、雑魚は片付いたぞ。あの高等魔族をやれっ!」
ダークエルフ「ひえっ! ろ、ロボ、なんとかしてくれっ」
ロボ女騎士「・・・」
ダークエルフ「お・・・おい、女騎士でもいいからなんとかしてくれっ!」
女騎士「チッ、人間が勝ったか。まあいいや、賭け相手がいなくなりそうだしな・・・」
ダークエルフ「こ、このド腐れ底辺騎士モドキがあーっ!!」
騎士「いけっ! ボコボコにしてやれっ!!」
オーク「・・・」
兵士「ぐほっ! ぎゃふっ!」
騎士「!? な、なんだ、新手か」
オーク「・・・」
兵士「ひっ! あ、あいつは、オーク族はじまって以来の傑物と名高いオーク!!」
騎士「な、なにぃ!?」
女騎士「あっ、豚だ」
ダークエルフ「お、オークっ! なんといいところに! 助けてくれっ」
ゴブリン「ボクもいますよ!」
女騎士「あっ、雑魚だ」
騎士「ひるむな! 突撃ー!!」
ゴブリン「ぎゃーっ!」
オーク「やれやれ、だから後ろにいろと言ったのに」
騎士「うっ! お、オーク・・・しかし、この戦力差だ、囲んで倒せ!」
オーク「かかってこい。相手になってやる」
女騎士「なんか豚が主役っぽいんですけど」
騎士「ぐふぅ・・・魔族ごときに負けるとは・・・がくっ」
ダークエルフ「ひえーっ・・・全滅か」
女騎士「やるじゃん豚」
オーク「誰かさんと違って努力してますから」
ダークエルフ「そ、それより、いったい何事だ。人間の王都に攻め込むなどと」
女騎士「そんなに私の体が恋しかったのか」
オーク「もちろんダークエルフさんたちを回収するためですよ」
女騎士「そんなに私の体が恋しかったのか」
オーク「人間の宮殿に魔族や自爆兵器が潜入したなんてバレたら、外交問題ですからね」
女騎士「そんなに私の体が恋しかったのか」
オーク「うるさいんですけど」
女騎士「くっ・・・殺せ。あ、なんか久しぶりに言った気がする」
ダークエルフ「しかし、正面から攻撃する方がよっぽど問題なのでは・・・」
オーク「その問題を解決するメドも立ててあります。それより、ロボはどこに?」
ロボ女騎士「・・・」
オーク「フム、単純な外部衝撃による端子のズレですね。どこかにぶつけましたか」
ダークエルフ「こいつが悪い」
女騎士「殴ったくらいで壊れる機械が悪い」
オーク「じゃあ、今度から衝撃耐久試験には女騎士さんを使いましょう」
女騎士「お、オークにならぶたれてもいい・・・///」
オーク「その前に時速120キロで走行する自動車に乗って、コンクリート壁にぶつかってもらいますね」
ゴブリン「それより、ロボはホントに治るんですか? ぴくりとも動きませんけど・・・」
オーク「ピクピク動いてる方がホラーだよ。まあ、もちろん治る」
ダークエルフ「さすが設計者だな」
オーク「えっと・・・。この角度で、この威力の・・・エイッ」
ロボ女騎士「イテッ アレ ココハ ドコ ワタシハ ロボオンナキシ」
ダークエルフ「・・・。チョップで治るとはたまげた精密機械だなあ・・・」
ゴブリン「ロボじゃない方もチョップして治せればいいんですけどね」
女騎士「ゴブリンくんは治るのかな?」
ゴブリン「ンブッ!」
ロボ女騎士「アイカワラズ カワイソウナ ゴブリン」
騎士「先に突入した部隊からの連絡が途絶えた! 全員、戦闘に備えろー!」
オーク「潮時ですね。ダークエルフさん、全軍に戦闘停止命令を出します」
ダークエルフ「それは構わんが、これからどうするんだ」
オーク「人間の王に停戦を申し出ます」
女騎士「そっちからケンカ吹っかけておいて、フテえ奴だな」
ゴブリン「めずらしく女騎士さんが正論言ってる」
女騎士「ほう」
オーク「奇襲攻撃によって城の戦闘能力は奪いました。今が交渉の最大にして最後のチャンスです」
ダークエルフ「し、しかし・・もしそれが決裂したら、全面戦争になりかねんぞ」
オーク「そのときは人間の王を排除し、速やかに全面戦争に移行します。先手を取って頭を潰した我らが圧倒的に有利です」
ダークエルフ「・・・。オレはときどき、おまえが恐ろしくなるぞ」
オーク「それはどうも。僕が交渉をしてもよろしいですか」
ダークエルフ「ウム・・・もちろんだ」
ダークエルフ(・・・。しかし、そこまでの価値がオレやロボにあるとは思えんのだがな・・・)
女騎士「私にはある」
ロボ女騎士「タシカニ カネヲ ハラッテデモ オイダス カチハ アル」
国王「・・・。なるほど。話は理解できたが」
オーク「我々としては、捕虜となったダークエルフが回収できればそれでよいのです」
ロボ女騎士「ワタシガ ツレテキタ ホリョノ セイデ コンナコトニ ナルトハナ」
国王「いや・・・脱出する際に捕虜とした魔族を連れ帰るのは、何も悪いことではなかろう」
ダークエルフ「・・・」
国王「それよりも、その奪還を、それもこの王都でやすやすと許す我が軍のふがいなさと言ったら!」
騎士「う・・・」
兵士「・・・」
オーク「とにかく、これ以上の戦闘はお互いにとって無益でしょう。このあたりで手打ちとしましょう」
国王「・・・。くやしいが、それしかなさそうであるな」
ゴブリン「死人も負傷者も、お互い回復は済んでますので、ノーサイドですね」
女騎士「何もしないで死にかけてた当人が言うなよ」
オーク「本作戦は全面戦争を望むものではない、限定的作戦です。そちらもそういう認識でよろしいですか」
国王「無論だ・・・このまま開戦すれば、頭をそちらに握られたまま戦に臨むということだからな」
オーク「では、そのようにお計らいください。陛下が賢明な方で幸いでした」
国王「そちらこそ、仕掛け方といいこの引き際といい、あざやかな手際だったな、魔族の司令官よ」
オーク「いえ。仕事ですから」
女騎士「やっぱり豚が主役っぽいんですけど」
姫「ふうむ・・・なるほど、魔族にもなかなか腕の立つ方がおられるのですね・・・」
兵士「あれ、姫、こんなところでいかがなされましたか」
姫「いえいえ、なんでもありませんわ。ところで、魔族の輸送ドラゴンは中庭に停まっているのでしたね?」
兵士「そうですが、それが何か・・・?」
姫「なんでもありませんってば☆」
兵士「アッ、まさか、魔族のドラゴンに便乗して魔王の国に行こうだなんておっしゃいませんよね!」
姫「・・・あらあら、うふふ・・・。ときに、ここに鋼鉄の槍がありますわね」
兵士「はあ、そうですね」
姫「これを自分の手で、半分に折り曲げられますか?」
兵士「できるわけがないでしょう、そんなこと」
姫「そうですか。フンッ・・・メギョッ!!」
兵士「・・・」
姫「・・・うふふ?」
兵士「ヒッ!! ぼぼぼ僕っ、何も見てないでひゅ!!」
姫「もちろん、そうですわね♪」
ゴブリン「全軍、撤収の準備ができました」
オーク「では、速やかに出発する」
女騎士「あーあ、やっと帰れるのか。ナイターには間に合いそうだ」
オーク「ああ、女騎士さんは残ってくださいね」
ダークエルフ「そうだ。結局、おまえがオレを捕虜にして逃げてきたって設定になったんだしな」
女騎士「そんなん知るか。残すならこのポンコツを残していこう」
ロボ女騎士「ハア ワタシモ カエッテ シャワー アビタイ」
ゴブリン「ゴクッ」
女騎士「生ツバ飲み込んでんじゃねーよ変態ゴブリンが!!」
オーク「なんにせよロボはうちの財産なので。女騎士さんは生ゴミなので」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ゴブリン「ほんとに殺そうとしたら殴ってくるくせに・・・」
ダークエルフ「とにかくこいつは置いて出発だ。いつまでもここにいたら面倒だぞ」
オーク「そうですね。ロボとダークエルフさんはあのドラゴンに乗ってください」
女騎士「はい、わかりました」
オーク「女騎士さんはいろんな意味で危ないので下がっていてください」
国王「まったく・・・赤っ恥じゃ! これが開戦の奇襲だったら、王国軍は総崩れぞ」
騎士「は、ハハッ・・・面目ございません」
国王「しかしあのオークとかいう獣人・・・人の城に攻め込んでおいて堂々と停戦を提案してくるとはな・・・」
騎士「敵ながら、さすが風に聞こえる男かと・・・」
国王「フン、おかげでこの目で直接見せてもらったわ。さて、この大失態の責任は誰に取ってもらおうかのう・・・」
騎士「・・・」
親衛隊「へ、陛下。大変でございます」
国王「どうした。今日のこと以上に大変なことがあるか」
親衛隊「それが、ご三女様が行方知れずでして」
国王「なんだ、またか。よいよい、放っておけ。どうせまた冒険ごっこに飽きたら帰ってくる」
親衛隊「いえ、それが、『魔族の城に行ってきますわ~♪』との書き置きが」
国王「おおーん!!」
親衛隊「ど、どうされました」
国王「びっくらこいたに決まっとろうが!! いかんぞこれは、一歩間違えば・・・」
親衛隊「確かに・・・姫さまが魔族に、その・・・いやらしいことをされるなど・・・うへへ」
国王「そんなことはファンタジーのエロ同人ではよくあることだろうが! それよりも・・・」
騎士「そうですな・・・こんなタイミングで、魔族に余計な口実を与えなければよいですが・・・」
親衛隊「は、はあ・・・?」
今日はここまで 100レス以内には収まらん模様
ゴブリン「離陸完了! これより我が軍は魔王城に帰還します」
女騎士「ふう、ひと段落だな」
ダークエルフ「なんだかんだ言ってついてきおって」
オーク「女騎士さん、寝てていいんですよ」
女騎士「えっ、オーク優しい・・・って寝てる間に落とす気だろうが!!」
オーク「起きてるときでいいならパラシュートを記念に差し上げます」
ロボ女騎士「サスガ フトッパラダナ」
女騎士「これだから魔族は信用できねーんだ」
ダークエルフ「まあこいつは置いといて、すまなかったな、オーク」
オーク「いえ、いろいろ想定外の事態があったようで」
ゴブリン「いやー、しかしいい訓練になりましたね。いつでも戦争できますよ」
オーク「あっそう。確かに君は最前線の突撃部隊に向いてると思ってたんだよ」
ゴブリン「えっ、いやいやいや、そういう意味じゃなくて・・・」
オーク「じゃあなんなの」
ゴブリン「・・・。いやほんと、すいませんでした」
ロボ女騎士「センソウハ ジゴクダゼ ヒャッハー」
魔族兵士「お、オーク様! ちょっとこちらへ・・・」
オーク「どうしたね」
魔族兵士「いえ、実は・・・後ろの尾部に・・・」
オーク「・・・。なるほど、行ってみよう」
女騎士「なんだよ、何かあったのか」
ロボ女騎士「オキャクサマノ ナカニ オイシャサマハ イラッシャイマセンカ」
ダークエルフ「シッポに問題があってもドラゴンは飛行できるはずだがな」
ゴブリン「人間が爆弾か何か仕掛けたんじゃないですか」
女騎士「爆薬の入っていない爆弾ならここにあるけどな」
ロボ女騎士「ドウセ ツムナラ スイバク クラスガ イイネ」
魔族兵士「あれです、閣下」
オーク「うーむ」
ダークエルフ「あ、あれは・・・!?」
姫「ひええええ! 助けてくださああい!!」
ダークエルフ「あれは人間の王国の姫じゃないか!」
ゴブリン「えっ! あの風圧でバケモノみたいな顔になってる子がですか!?」
女騎士「元からバケモノのツラしてるヤツが何いってやがる」
ゴブリン「ゴブリンはこれが普通の顔です! そうでないにしても女騎士さんが人のこと言えるんですか」
女騎士「蹴りっ」
ゴブリン「あああ、あっぶな!! この高度だとギャグ抜きで死ぬんですけど!!」
オーク「しかし、風防結界の外、しかもこの高高度でよくつかまっていられるな。僕でも5分ももたないぞ」
魔族兵士「人間離れしてますね、文字通り」
ダークエルフ「冷静に言ってる場合か! 早く助け出さないと落ちるぞ!」
ロボ女騎士「シカシ アソコマデ ドウヤッテ イクノダ」
ゴブリン「いくらボクたち魔族でも、この気流の中じゃ、間違いなく吹き飛ばされますね」
魔族兵士「では、減速して高度を下げましょう」
オーク「いや、減速すると気流に乱れが生じて、彼女が吹き飛ばされる可能性が余計に高まる」
ダークエルフ「じゃあどうしようもないじゃないか」
オーク「そうですね。見捨てるしかなさそうです」
ゴブリン「えーっ・・・」
姫「ぐぉらあああああああ! たすけろぉおお!!!!」
ゴブリン「節操が無くなってきましたよ・・・」
ダークエルフ「な、なんとかならんのか、オーク。また国際問題になるぞ」
オーク「しょうがないでしょう。勝手に乗る方が悪いですし」
女騎士「ほんま鬼畜やなこいつは」
ロボ女騎士「マア オチツケ ココデ ワタシノ デバンダ」
ゴブリン「いくらロボ女騎士さんでもこの暴風じゃ・・・」
ロボ女騎士「フフフ ワタシノ コノ ハガネノ ウデガ ヤクニ タツノサ」
ダークエルフ「おーっ、腕が延びるのか。さすがロボットだ」
ロボ女騎士「デハ チョット シツレイ」
ゴブリン「・・・」
魔族兵士「・・・」
オーク「・・・」
ダークエルフ「・・・」
女騎士「・・・とどかねえじゃん」
ゴブリン「だいぶ届きませんねぇ」
オーク「まあ、わかってたことだけど」
ロボ女騎士「ナニゴトニモ ゲンカイハ アル キニスルナ」
姫「うぉらあああてめぇらああコントやってんじゃねええええええ」
オーク「ということで、やれるだけのことはやったので」
ゴブリン「しょうがないっすね」
女騎士「しかしあのアホ娘はなんでドラゴンの尻尾につかまってたんだ」
ロボ女騎士「マゾクノ シロヲ スパイデモ スルツモリ ダッタンダロ」
ダークエルフ「だとしても、本当にいいのかなあ・・・」
オーク「ちょうど今、海の上ですから、このへんで落としておきましょうか」
ゴブリン「ひえっ・・・」
女騎士「鬼畜豚の本領発揮だな」
オーク「このまま苦しい思いをして最後に陸の上で墜落死するよりマシでしょう」
ダークエルフ「そ、そりゃまあそうかもしれんが」
ロボ女騎士「ウーム シカシ コマッタナ ウデガ ノビタママ ナオラン」
オーク「そろそろオーバーホールが必要かな」
女騎士「けっ、こんなもん蹴っ飛ばしておきゃ直るだろ。ソレッ」
ロボ女騎士「イテッ ・・・ギュ ギュ ギュ・・・」
ゴブリン「ん・・・?」
ロボ女騎士「ギュオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!」
魔族兵士「ぐわっ!」
ゴブリン「どえっ!」
ダークエルフ「おわっ!?」
女騎士「危ない危ない、こいつ暴走しおった。いきなり停まるよりタチ悪いわ」
オーク「停止させたのも暴走させたのも女騎士さんなんですが」
ダークエルフ「あっ、とっ、と・・・」
ゴブリン「あ、ダークエルフさんが」
ダークエルフ「とっ、ま、と、と、あっ」
魔族兵士「あっ・・・そ、そっちはいかんですよ!」
オーク「ロボ、ああいうのを『たたらを踏む』というんだ」
ロボ女騎士「ナルホド キヨミズノ ブタイカラ トビオリルノダナ」
女騎士「そしてダークエルフは勢いのままに結界を踏み越えたのだった(棒)」
ダークエルフ「おっ。うおあああああああ!!!」
ダークエルフ「おおお! ぐほおおお!!!!」
ダークエルフ(あかん、これはあかんで! ほんまに死ぬでこれ!(←エルフ弁))
姫「おああ!? ふおああああ!!!」
ダークエルフ「どおっおおおお! ぶおおおおお!!!」
ダークエルフ(なんやあのブサイク。せや、人間の姫やないか)
姫「くおあああああ! ふおあおおああああああ!!!」
ダークエルフ「むぼほおおおおおお! おおおおおおおおお!!!!!」
ダークエルフ(アホンダラ、近寄ってくんなや! いっしょに落ちるやんけ!!)
姫「ふむんぐおおおおお! ごっほほおおおおおお!!!!!」
ダークエルフ「おごおおおおおお! ぶっほおおおおおおおおお!!!」
ダークエルフ(引っ張んなボケ!! く、くそ、あかん、このままじゃもたへん!!)
ダークエルフ「・・・ほうなっらら! いひかばちかじゃああああああ!!!」
姫「んぼっ!?」
ダークエルフ「ワレ・ナンボ・ノ・モンジャ・コラ・イテモータルデッ!!(←呪文)」
魔族兵士「あ、あのー・・・ダークエルフ様の姿が・・・あと人間の姫も・・・」
ゴブリン「・・・」
オーク「残念な結果になってしまいましたね」
ゴブリン「なんだかんだ言っていい人だったのに・・・」
女騎士「そうか?」
オーク「80パーセントくらいは女騎士さんのせいなんですけど」
ロボ女騎士「アンズルナ コレモ メイヨノ センシダ」
女騎士「私にはつくづくアホみたいな死に方に思えたが」
魔族兵士「・・・」
ゴブリン「・・・。まあ、ぶっちゃけそうっすね・・・」
ゴブリン「ドラゴン着陸。我々は基地に帰投しました」
オーク「よろしい。現時点をもって本作戦のすべての行程を終了する、全員ご苦労だった」
魔族兵士「閣下、おめでとうございます。損害は、行方不明1・・・ですな」
ロボ女騎士「カワイソウナ ダークエルフ」
女騎士「そうか?」
ゴブリン「それに人間の姫さまも・・・どうしたもんですかねえ」
オーク「それも含めて魔王陛下に報告に上がるから、ゴブリンくんは後始末を頼む」
ゴブリン「了解・・・ん? あれはなんの騒ぎですかね」
医療班「通せ! 急患だぞっ!」
衛兵「待て、そちらはともかく、これは人間の女ではないか」
魔族兵士「あ、あれは、まさか・・・」
ゴブリン「ダークエルフさまじゃないですか!?」
ロボ女騎士「ワオ ミラクル キセキタイケン アンビリーバボー」
オーク「じゃあ、私は陛下のところに行くから、頼むよ」
ゴブリン「えっ!? あ、は、はい・・・ほんと冷徹だよなあ」
女騎士「しかしあのヘタレも悪運が強いな。どうやってここまで来たんだ」
ゴブリン「おーい、キミたち! そちらは人間の姫君だ! 丁重に扱った方がいいぞー!」
また寝る前に投下する
オーク「・・・という次第でございます、陛下」
魔王「ウム、よくやった。人間どもに一泡吹かせてやったのう」
オーク「元はと言えば私の撒いた種でございますので」
魔王「ふふ。転んでもタダでは起きぬ、その根性をわらわは買っておるぞ」
オーク「もったいないお言葉」
魔王「で・・・ダークエルフの奴が連れてきた姫というのはどうした」
オーク「医療班が治療を施しておりますが、さほどの傷ではないようです。驚異的な強靭さです」
魔王「フム、うまく使えば駒にもなろうな」
オーク「それは陛下の御采配次第かと」
魔王「うふふ・・・男の子でないのが残念だがのう」
オーク「さようで」
魔王「おぬしもこの、勇者くん人形はいらんか? いろいろ使えるでよ」
オーク「おそれながら、私には高尚に過ぎる御趣味でございます」
魔王「姫がさらわれたからには、きっと次の勇者が来よう・・・うっふふふ・・・」
オーク「・・・」
女騎士「はああ~、疲れた。さ、ビールビール」
ゴブリン「鎧くらい脱いだらどうですか?」
女騎士「おーっと、雑魚ゴブリンふぜいが女騎士さんと簡単にヤれると思うなよ」
ゴブリン「そりゃ簡単に罰ゲーム食らったらイヤですよ」
女騎士「ちょっと汗をかくか」
ゴブリン「フゴッ! オッボ!!」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
ゴブリン「だ、だいたいそれこそ汗くさいでしょ鎧のまんまじゃ! ボク変なこと言ってます!?」
女騎士「うるさい! 鎧を脱いだら私のアイデンティティーにかかわる」
ロボ女騎士「ネッコロガッテ ケツヲ カキナガラ ビールヲ ノムノハ カカワランノカ」
女騎士「けっ、ロボットにゃあこの美味さはわかんねーだろうよ」
ゴブリン「最初の頃と比べて口調が素ですよね・・・」
ロボ女騎士「ソウダ ゴブリン ワタシハ シャワーヲ アビテクルゾ」
ゴブリン「えっ! ここでサービスシーンですね!」
女騎士「二足歩行爆弾の洗浄シーンがどんなサービスになるんじゃ!!」
オーク「ああ、ここにいたのか」
ゴブリン「あ、オークさん。どうもお疲れ様です」
オーク「うん。ダークエルフさんが回復したそうだ、見舞いに行こう」
女騎士「それくらいの情は豚にもあったんだな」
オーク「こういうのは社会的常識の範疇だと思うんですけど」
ゴブリン「まあ女騎士さんの言うことですから・・・」
女騎士「女騎士チョップ!」
ゴブリン「いってえ!! やっぱ騎士じゃないよこの人!」
ロボ女騎士「オークヨ ワタシノ メンテナンスハ マダナノカ」
オーク「今、ラボの準備をしている。見舞いが終わったらやろう」
女騎士「私は試合見てるから」
オーク「誰もついてきてくれなんていってませんが」
女騎士「くっ・・・殺せ。おっ、先発は昌かぁ」
オーク「ダークエルフさん、ご無事で何よりでした」
ダークエルフ「うむ。ヤケクソで唱えたテレポート呪文が上手くいってよかった」
ゴブリン「魔法陣無しで魔法が使えるエルフでよかったですね」
ロボ女騎士「アトヅケ セッテイニ シテハ ワルク ナイナ」
ダークエルフ「しかし一歩間違えれば、海の藻屑になっているところだったぞ」
ゴブリン「いやー、あのときはあっという間で、助けるヒマもなかったですね!」
オーク「助けようとはしたわけ?」
ゴブリン「えっ。そ、それはもちろんでしょ・・・」
ダークエルフ「いーよいーよ、もう。命があっただけで十分だわ、はーあ、ほんま疲れた」
オーク「今日はごゆっくりお休みください。そういえば人間の姫はどうしていますか」
ダークエルフ「ん? ああ、別室で治療を受けているはずだが・・・」
医療班「おい、こらーっ! 待たないか!!」
ゴブリン「なんだか廊下が騒がしいですねえ、怪我人がいるってのに・・・ひとこと言ってやろう!」
姫「ダークエルフさま~!!」
ゴブリン「オブゥ! ど、ドアが飛んできた・・・がくり」
ロボ女騎士「オイシャサマノ ナカニ オイシャサマハ イラッシャイマセンカ」
姫「ダークエルフさま! ダークエルフさま~っ!!」
ダークエルフ「ヒエッ! わ、ワレは人間の姫やないか! なんやねんもう!!」
オーク「ダークエルフさん、エルフ弁が出てます」
ダークエルフ「おっといかん・・・ってそういう問題か」
ロボ女騎士「セヤ ソレハ アニメデ ヨクアル エセ カンサイベン ヤナイカ」
オーク「一般の読者向けにエルフ弁を表現した結果だよ」
ダークエルフ「そういう問題でもないわ! 姫、いったい何事ですか!?」
姫「何事も何も、命を助けていただいたお礼に参ったのですわ!」
ダークエルフ「ああ、あれはたまたまです。本当にたまたまでしたから」
姫「ま、まあ、タマタマだなんて・・・キャッ」
ダークエルフ(なんやこいつ・・・)
ロボ女騎士「ソッチノ ホウモ ゲンキニ ナッテ ヨカッタナ」
姫「キャーッ、騎士さまったら! いやん!」
オーク「・・・。我々は邪魔みたいだな。行こう、ゴブリンくん」
ゴブリン「えっ!? え、ええ・・・そうですね・・・」
ダークエルフ「おいこら、逃げるんじゃないっ!! 医療班、姫君をなんとかしろ!!」
医療班「姫様、どうぞこちらへ。貴女様にはVIP用の病室がありますので」
姫「そんなものは結構ですわ! 私はダークエルフ様といっしょにいるのです!」
医療班「そういうわけにも・・・」
ダークエルフ「おい、遠慮してないで力ずくで連れて行かんか」
医療班「えーっ、相手は人間とはいえ王族ですよ。後で責任問題になったら・・・」
ダークエルフ「責任はオレが取る! とにかく今日は早くゆっくり休みたいんじゃ!」
医療班「そんなに言うんなら自分でやりゃいいじゃないですか」
ダークエルフ「お、お、おまえらっ! オレは高等魔族でしかもケガ人だぞっ! ナメとんのか!!」
姫「そうですわ! やっぱり私が看護さしあげるしかありませんわね!」
ダークエルフ「・・・。すみませんが姫、眠ってもらうっ!!」
姫「おっと、甘いですわね」
ダークエルフ「う・・・!?」
医療班「か、かりにも高等魔族のダークエルフさんの一撃を片手で止めた!?」
ダークエルフ「なんだそのかりにもって・・・あっ、痛、いたたたた!!」
医療班「そのうえ軽々とひねりあげた!?」
姫「うふふ。どうぞゆっくりしてくださいまし、ダークエルフさま」
ダークエルフ「う、ウソやろ・・・こんな細腕でこの力・・・」
姫「一目ぼれした女の強さですわ♪」
ダークエルフ「ひ、一目ぼれぇ!?」
医療班「・・・。では、我々もこの辺で・・・」
ダークエルフ「お、おい、待て、逃げるな! 一人にしないでーっ!!」
姫「あら、二人きりですわよ☆」
ダークエルフ「ひーっ!!」
ゴブリン「そんなわけで、姫さまはダークエルフさんにぞっこんなんですよ」
女騎士「ほーん」
ゴブリン「ダークエルフさんを連れ帰るか、自分がここに残るかなんて言い出してるとか」
女騎士「ふーん」
ゴブリン「これがまた、物凄い押せ押せなんですよ。ボクはああいう子は苦手ですね!」
女騎士「へーん」
ゴブリン「ちょっと! マジメに聞いてます!?」
女騎士「うるせえなあ。今いいとこなんだ」
ゴブリン「それはボクの部屋のテレビなんですけど! ここはボクの部屋なんですけど!」
女騎士「じゃ、ちょっと借りるわ。99年租借な」
ゴブリン「うわーん、列強の横暴!! やっぱり宮殿に置いてくればよかったんだ!」
実況『和田が打ちました! これはいい当たりか!?』
女騎士「おっ!?」
実況『大きい! 伸びてゆく! ランナーは三塁を回るっ!』
女騎士「おーっ! おーん!」
実況『・・・そこでレフトが危なげなく取ってアウトです、この回の中日の攻撃は無得点で終了』
女騎士「なんやねんおまえ」
ゴブリン「おまえがなんやねん」
ゴブリン「うわーん、ぶたれた上に追い出された! ボクの部屋なのに!!」
オーク「・・・ふむ、やはり頭部が弱点になるか。駆動系もそうだが、構造的に改良の余地があるな」
ゴブリン「んっ? オークさんのラボか・・・ロボ女騎士さんのメンテかな」
オーク「それ以外の項目はおおむね合格点だな・・・量産へのメドは予想より早く立ちそうだ」
ゴブリン「りょ、量産って・・・あのロボ女騎士さんを!?」
オーク「なんだ、ゴブリンくんか。こんな時間に熱心だね」
ゴブリン「あ、いえ・・・でも、今の話は本当ですか?」
オーク「当然だろう。兵器というのは量産して配備してこそだよ」
ゴブリン「それはまあ、そうですが」
オーク「対人間用の兵器として、全土の軍に配備する。それが最終的な計画だな」
ゴブリン「ロボ女騎士さんが全軍に配備された暁には、人間どもの完全制圧も夢じゃありませんね!」
オーク「そうだね。まあ、それはどうでもいい」
ゴブリン「え・・・」
オーク「夢というのは、自分の能力が見合う限りにおいて・・・高く持つべきだと僕は思うのでね」
ゴブリン「・・・? そ、そうですか・・・」
ゴブリン(なんだろう・・・すごく陰謀っぽい臭いがする・・・何かすごいことを企んでるような・・・)
オーク「ほう。ゴブリンくん、少し眠ろうか」
ゴブリン「えっ。あ」
昨日寝る前に投下すると約束したな? あれは嘘だ。
・・・また寝過ごさなかったら寝る前に投下します
ダークエルフ「うーん・・・うぅーん・・・蛇が・・・蛇が来るぅ・・・」
姫「あらあらダークエルフさま、悪い夢を見ておられるのかしら。抱きしめてあげましょうね~、ギュッ☆」
ダークエルフ「ヒギィ!! し、締め殺されるぅーっ!!」
魔族兵士「おい、この病室から何か奇声がすると通報があったんだが」
医療班「いや、大丈夫です。ほんと大丈夫ですんで・・・」
姫「ああ~、ダークエルフさま、ダークエルフさま~っ」
ダークエルフ「ンギッ! ムギィッ!」
魔族兵士「・・・これが大丈夫な声か?」
医療班「大丈夫ですってば!! 我々にどうしろっていうんですか!?」
魔族兵士「そ、そんな剣幕になることはなかろう、私は患者の様態を心配しているのであって・・・」
ダークエルフ「・・・」
医療班「ほら、静かになったでしょ!」
魔族兵士「う、うーむ? まあいいが・・・いったいなんだったんだ」
姫「よかった、ダークエルフさまが心安らかな顔に!」
ダークエルフ「・・・。・・・」
ロボ女騎士「パチッ オオ ヨウヤク メンテガ オワッタカ」
オーク「うん、待たせたね」
ロボ女騎士「オッ ナンカ カラダガ カルイゾ」
オーク「各部を調整したので、前よりも機動性が増しているはずだよ」
ロボ女騎士「フム サスガハ オーク ダナ」
オーク「そうだね」
ロボ女騎士「ミロ ゴブリン ウマレカワッタ ワタシヲ」
ゴブリン「ボクはゴブリンでゴブ。何も知らないでゴブ」
オーク「こっちは少し調整しすぎたか・・・」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
実況『試合は2-0でヤクルトの勝利に終わりました。ヒーローインタビューの準備が・・・』
女騎士「ぐご~! がご~!!」
ロボ女騎士「フアーア イイ アサダ」
女騎士「朝っぱらから私のセリフを取るんじゃねえ、ポンコツ」
ロボ女騎士「ソンナ ドブガワ ミタイナ カオイロデ イイ アサモ クソモ ナカロウ」
女騎士「あー、負け試合で飲む酒は悪酔いするわ」
ロボ女騎士「コレガ キシノ セリフ ナンダカラ ヨモ スエダ」
女騎士「ロボットが騎士ごっこしてる時点で世も末だっつーの」
オーク「女騎士さんもせめてごっこくらいしてください」
女騎士「なんだオーク、朝からビンビンなのか」
オーク「寄らないでください。息が臭いんですけど」
女騎士「うぐっ! 久々に心に響く言葉だぜ」
オーク「そうですか。実は息以外も臭いと思ってたんです」
女騎士「くっ、朝一番の殺せ・・・」
ロボ女騎士「タシカニ クサソウ」
女騎士「てめーに鼻は無いだろうがクソロボット」
ロボ女騎士「デモ クサソウ」
ゴブリン「あっ、おはようございます、みなさん!」
ロボ女騎士「オウ ゴブリン オマエハ サワヤカ ダナ」
ゴブリン「そうなんですよ。なんだか今日はいつになくすがすがしい朝なんです」
女騎士「私のイビキにそんな効果があったなんて」
ゴブリン「そういえば、女騎士さんのイビキも気にならないくらい熟睡してましたね」
オーク「よかったじゃないか」
ゴブリン「ホントですね。まるで脳みそを丸洗いしたみたいです!」
オーク「そう・・・」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
ゴブリン「いや、今のはたとえですよ、たとえ」
オーク「そんなことより、今日はミノタウロス将軍と会議をする予定だろう」
ゴブリン「ああ、そうでしたね! セッティングの方は任せてください、それでは!」
女騎士「さわやかでもゴブリンはゴブリンだな」
オーク「そうですね。調整としてはあんなものかな」
ロボ女騎士「ヤッパリ カワイソウナ ゴブリン」
ミノタウロス「久しぶりであるな、オークよ。元気そうだな」
オーク「閣下もご健勝、おめでとうございます」
ミノタウロス「で・・・それが例の機体か?」
オーク「はい」
ロボ女騎士「ナゼ ネギシオ ブタカルビ ドンヲ ハイシ シタノダ」
ミノタウロス「ちょっと前に復活したぞ。しかしワシは豚ではなく牛・・・でもないわコラ」
オーク「どうかお気になさらず。言語系の調整は今後も続けていきますので」
ミノタウロス「わかっておる。ロボットにブチ切れるほど若くないわ」
オーク「それで、テストの結果はご覧になられましたか」
ミノタウロス「ウム。ワシが要求した性能はすべて満たしておるな、さすがだ」
オーク「恐縮です。では、計画の方もそのように?」
ミノタウロス「ウム・・・。くれぐれも外に漏れんようにな」
ロボ女騎士「イイ カミオムツヲ ショウカイシテ ヤロウカ」
ミノタウロス「ワシはそこまで老いぼれではない・・・ってそういう漏れではないわ」
オーク「どうかお気になさらず」
ミノタウロス「まったく。では頼むぞ、オークよ・・・期待させてもらうからな、ふふふ」
オーク「・・・」
今日は以上 また今度
姫「フンフン、フンフーン♪」
ダークエルフ「・・・」
姫「もうすぐ朝ごはんができますからね、ダークエルフさま!」
ダークエルフ「そう・・・」
医療班「ダークエルフさまー! 朝食後にお薬は飲んでくださいねー!」
ダークエルフ「あいつらめ・・・遠巻きに言いおって・・・」
姫「私たちの愛のオーラは、他人を寄せ付けませんのね!」
ダークエルフ「そりゃあ誰だって、好きで骨は折りたくないですからな・・・」
姫「朝からナカグロが多いですわよ、ダークエルフさま! 明るく参りましょう!!」
ダークエルフ「えっと、私、ダークなエルフなんで・・・。なぜか身体中が痛いんで・・・」
姫「今日からは二人の新しい生活がスタートするんですから! うふふ♪」
ダークエルフ「ああ・・・なしてこないなことに・・・」
ロボ女騎士「ウィーン ガシャ スチャ オマエヲ タイホ スル」
女騎士「はあ? ・・・おまえ昨日、ロボコップ見ただろ」
ロボ女騎士「ウム アト ターミネーターモ ミタ デデンデン デデン」
女騎士「そうか。じゃあラストシーンを再現しよう、溶鉱炉のある場所知ってるぞ」
ロボ女騎士「ソンナニ コノヨカラ ジョウハツ シタイノカ」
女騎士「てめーが落ちるんだよクソロボが!!!!」
ゴブリン「お二人とも、今日も仲が良いですね!」
女騎士「ほう」
ゴブリン「オブッ! ゴフッ! な、なぜ・・・」
女騎士「あーイライラした。早く自爆しろよドラム缶ロボットめ」
ロボ女騎士「ソウシタクテモ メイレイガ ナイカラナ」
女騎士「じゃあ、してやるよ。自爆しろ」
ロボ女騎士「ヤダプー アッカンベー」
女騎士「・・・」
ゴブリン「アボッ! ギャホッ! な、なぜボクが・・・」
ゴブリン「そんなことがまたあったんですよ!」
オーク「そう」
ゴブリン「いくらなんでもひどくないですか!? 女騎士さんって捕虜ですよね!」
オーク「キミは魔王陛下の兵士だよね? いくらなんでも弱くないですか?」
ゴブリン「・・・。ぐすん」
オーク「まあ、しかたない。少し手が空いたから秘密兵器を作ってあげよう」
ゴブリン「えっ、秘密兵器!? ほ、ホントですか」
オーク「ウソだと思うなら別にいいけど」
ゴブリン「い・・・いえいえいえ! ぜひお願いします!!」
オーク「では、一時間ほど待ちたまえ」
ゴブリン(な、何だろう。強力媚薬とか催眠装置かな・・・女騎士さんとそんなことしたくないけど)
ダークエルフ「コソッ・・・キョロキョロ」
ロボ女騎士「キョドウ フシンノ オトコヲ ハッケン ピーピーピーピー」
ダークエルフ「わあっ! やめんかロボ、静かにしてくれ!」
ロボ女騎士「ナンダ ダークエルフカ キョドウ フシンナ ワケダ」
ダークエルフ「どういう意味だそれは。いや今はどうでもいい、頼むから騒がないでくれ!」
ロボ女騎士「オッ ツイニ ワタシニモ エロシーンガ キタカ」
ダークエルフ「そういう意味じゃない! あのな・・・」
姫「ダークエルフさま~? どこに行かれましたの~?」
ダークエルフ「ヒッ!!」
ロボ女騎士「フム ナルホド ジョウキョウハ リカイシタ」
ダークエルフ「そ、それはよかった。それじゃ落ち着いて行動しよう」
ロボ女騎士「オーイ ヒメ ダーリンハ ココダゾ ピーピーピーピー」
ダークエルフ「 」
姫「あらあら、そんなところに・・・かくれんぼですのね? うふふ」
ロボ女騎士「ヒトダスケガ デキテ ナニヨリダ」
ダークエルフ「うおおお! ちくしょおおおお!!!」
女騎士「あーあ、空から万馬券が降ってこねえかな」
ゴブリン「またそんなことを言ってるんですか。本当にどうしようもない人ですねえ、アッハッハ」
女騎士「ほう」
ゴブリン「おーっと! ボクもそう何度も同じ手は食いませんよっ! 来い!!」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
女騎士「あ? なんだこのオモチャは」
ゴブリン「秘密兵器ロボゴブリンです! ふふ・・・オークさん謹製ですよ!」
女騎士「ふーん。フンッ」
ロボゴブリン「ゴブッ! ・・・」
ゴブリン「あー!! ろ、ロボゴブリンが!」
女騎士「なんだ、ワンパンで伸びやがって。一発じゃ足りねえな~?」
ゴブリン「いや・・・あの、今のはですね、その、冗談というか、その」
女騎士「ふーん、そりゃあ面白いねえ。・・・で、覚悟はいいか?」
ゴブリン「・・・。お、オークさんのウソつきーっ!!」
オーク「ゴブリンくん、説明も聞かないで飛んでいって大丈夫かな。アレはオトリ用のロボットなんだけど」
ゴブリン「ゴブッ! ゴブッ! ゴブッ!」
オーク「あっ・・・やっぱり」
女騎士「やっぱりロボットより生モノの方が何回も使えていいな」
オーク「そうですか? 実はこのロボット、復活機能があるんですよ。ポチッ」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
女騎士「なるほど。これならいくら叩き壊しても大丈夫だな」
ゴブリン「ゴブッ! ぼ、ボクは大丈夫じゃないんですけど!!」
女騎士「あ、間違えた。フンッ!」
ロボゴブリン「ゴブッ!」
女騎士「ポチッ。フンッ! ポチッ。フンッ!」
ロボゴブリン「ゴブッ! ・・・ゴブッ!」
ゴブリン「・・・。見ていていたたまれない・・・」
女騎士「ゴブリンは優しいなあ。じゃあそっちを殴ろう」
ゴブリン「えっ。いや、ボクは復活機能ないんで・・・いやホントもう無理、ゴブッ!!」
ゴブリン「そんなことがあったんですよ! とうとう丈夫なボクも病院送りですよ!?」
ダークエルフ「そう・・・」
ゴブリン「なんですかダークエルフさん。元気がないですよ」
ダークエルフ「そら病院のベッドの上だし」
ゴブリン「というかもう回復したんじゃないんですか。サボリですか?」
ダークエルフ「ああ!? じゃあおまえはオレの部屋にあのモンスターを招待しろってのか!」
ゴブリン「お、落ち着いてくださいよ。でもダークエルフさん、これはチャンスですよ」
ダークエルフ「何がどうチャンスなんだ」
ゴブリン「相手は人間とはいえお姫様ですよ。結婚したら一生遊んで暮らせるじゃないですか」
ダークエルフ「オレが一生遊んで暮らしたい、どっかのクサレ騎士みたいなグータラだというのか」
ゴブリン「いちいちネガティブに取らないでくださいよ。それに顔だってカワイイじゃないですか」
ダークエルフ「オレが顔しか見てない面食いだといいたいか」
ゴブリン「ダメなのは性格と腕力だけじゃないですか」
ダークエルフ「そこをオレにガマンしろというのかっ!? うあーん!」
姫「あらあらダークエルフさま、どうされましたの~?」
ダークエルフ「・・・」
姫「あら、ゴブリンさん。お加減が悪いのですか」
ゴブリン「い、いえ。いや、悪いんですけど、ボクのことはお構いなく」
姫「そんなわけには参りませんわ。ダークエルフさまのお友達ですものね!」
ゴブリン「い、いえ、別に友達でもなんでもないです」
ダークエルフ「そう・・・」
ゴブリン「いやだから、上司と部下ってことですよ」
姫「ダークエルフさまの部下なら、私にとっても部下みたいなものですわ!」
ゴブリン「えっとそれは、ちょっと、というかだいぶ違うような・・・」
スピーカー『緊急警報、緊急警報、こちらは防災魔王城』
ゴブリン「うわっ!? ビックリした、いきなりなんだろう」
スピーカー『城内に人間の特殊部隊が潜入した。全員、ただちに戦闘態勢に移れ』
ゴブリン「えーっ! 戦争でもないのに、魔王城が攻撃されるなんて」
ダークエルフ「なんでだろうな(棒)」
姫「物騒ですわねえ」
ゴブリン「・・・。・・・」
ここまで
スピーカー『繰り返す、全員ただちに戦闘態勢に移れ』
女騎士「おっ、とうとう私を助けに来たのか」
ロボ女騎士「ニドト モドッテ コナイヨウニ ショブンシニ キタンダロ」
女騎士「女騎士キック!」
ロボ女騎士「ブツリデ クルナラ レベルヲ アゲテコイ」
女騎士「うがあ、いってえーっ!! こいつ、前より硬くなりおった!」
兵士「全員、姫さまを発見したらただちに報告しろ!」
ロボ女騎士「ホレミロ オマエジャ ナカッタ」
兵士「あっ、あれは人間に擬装して作られた卑劣な殺人兵器だ! 気をつけろ!」
女騎士「おまえも有名になったな」
兵士「二体もいるぞ! 破壊しろ!」
ロボ女騎士「タシカニ ユウメイニ ナッタ ヨウダナ オタガイ」
女騎士「・・・」
兵士「ゴフッ! ガフッ! つ、強いぃ・・・」
医療班「ダークエルフさまー! 我々は避難しまーす!!」
ダークエルフ「患者を置いて逃げる気か!」
医療班「もう完治したでしょー! 後はがんばってくださーい!!」
ダークエルフ「あの薄情者集団め・・・」
ゴブリン「というかボクは普通に患者なんですが・・・」
姫「でも、病院を狙ってくることはないでしょうから、ここなら安全ですね!」
ダークエルフ「・・・」
ゴブリン「・・・。ここがいちばん危険ですねえ」
騎士「いたぞ! 姫様だ!!」
兵士「魔族もいるぞ! 排除しろっ!」
ゴブリン「ゲッ、もう来た!」
ダークエルフ「もうどうにでもな~れ」
姫「やめなさい! ダークエルフさまに触らないで!!」
兵士「ンガッ!! ひ、姫さま、何を・・・」
騎士「姫! 我々は貴女様を救出に参ったのですぞ」
姫「何が救出ですか。私は帰るつもりはありません!」
兵士「なんと! もう魔族にあ~んなことやこ~んなことをされてしまったか」
ゴブリン「したんですか、ダークエルフさん」
ダークエルフ「かろうじてまだだ」
姫「そうです! ダークエルフさまと一つになるまで、よそへは行きません!」
騎士「ムムム・・・これではしかたない! 実力で拘束さしあげろっ!!」
兵士「姫様、ご無礼!」
姫「きゃーっ!」
兵士「オボッ!」
姫「やめてっ!!」
騎士「グハッ!」
ダークエルフ「・・・。これが俗に言うイヤボーンか・・・」
ゴブリン「物理的に説得力のあるイヤボーンですね・・・」
魔族兵士「ここに敵本隊が侵入しているぞ。突撃ー!」
ダークエルフ「おーい、もういいぞ。全部終わっちゃったから・・・」
騎士「む、無念・・・」
魔族兵士「では、この連中は捕虜として引き取っていきます」
ダークエルフ「うむ、頼む」
ゴブリン「いやー、しかし災難でしたね、ダークエルフさん」
ダークエルフ「災難なのはあの潜入部隊の方だろ」
姫「敵のことをおもんぱかるなんて・・・さすがダークエルフさま」
女騎士「おい雑魚兵士ども、こいつらもオリにぶちこんどけ」
兵士「きゅう・・・」
魔族兵士「あ、はい」
ゴブリン「えっ、まさか女騎士さんも助けに来たんですか」
ロボ女騎士「イヤ カレラハ ウンワルク ソウグウシタ ダケダ」
ゴブリン「なるほど。女騎士さんももう人間よりは魔族に馴染んでますよね」
女騎士「さんざん魔族のナニを染み込まされてしまったからなあ!」
姫「まあ! じゃあ、私もダークエルフさまの・・・キャッ!」
ダークエルフ「・・・愚かな人間よ・・・なぜもっと大部隊を送り込まんのだ・・・」
魔族兵士「陛下、通信がつながりました」
魔王「ウム。よう、国王殿・・・今回はポカをやったのう」
国王『・・・。なんとでも言うがいい』
魔王「で、どうするつもりじゃ? 王族と交換するような捕虜はそちらにはあるまいて」
国王『フン。言っておくが、ワシはあいつが心配なわけではないぞ』
魔王「またまた、強がりおって」
国王『じゃあ約束せい。あのド腕白娘のせいで貴様の城が穴だらけになっても、文句はつけんとな』
魔王「人間なんぞと約束してたまるか。それより、アレじゃ。姫を救う勇者とかはおらんのけ」
国王『ああん? 前途ある少年をマジ泣きして帰ってこさせたのはどこの変態大魔王じゃ』
魔王「誰が大魔王じゃ。じゃない、誰が変態じゃ」
国王『おぬしのせいで勇者の職業イメージがダダ下がりなんじゃ。責任とらんか』
魔王「じゃあ、かわゆいかわゆい勇者くんを送ってくれるなら、姫は返したる」
国王『それは責任を取るとは言わんだろうが』
魔王「今度は添い遂げる覚悟じゃ」
国王『それはもう変態を通り越して犯罪者じゃろ』
魔王「とにかくそれが唯一にして絶対の条件じゃ、頼むぞ! そいじゃ!」
国王『あっ待て・・・ブツッ』
ゴブリン「しかし姫さまは本当にお強いんですねえ」
姫「そんなことありませんわ。最低限の護身術は、王族のたしなみというだけです」
女騎士「特殊部隊を抹殺する程度のたしなみとはなんなのか」
ロボ女騎士「トイウカ ソンナニ ツヨイナラ ゴロツキクライ タオセタダロ」
姫「ああ、あれは『ごっこ』ですわ!」
ダークエルフ「は・・・?」
姫「悪者に襲われる女の子って憧れるじゃないですか。それも白馬の騎士さまに助けられるなんて!」
ダークエルフ「・・・」
ゴブリン「・・・」
ロボ女騎士「スマンナ ウマニ ノッテナクテ」
女騎士「ロボが馬に乗るとかどこのマスターアジアだ」
姫「いいんです。私・・・もっと大事な人に出会えましたから! ぎゅっ!」
ダークエルフ「んぎっ! し、絞まる! 絞まっちゃいけないところが絞まるぅー!」
ゴブリン「医療班さん、ボクだけ別室に移れませんかね・・・」
魔族兵士A「では、この地下水路から潜入した人間どもはすべて排除されたのだな」
魔族兵士B「そのようですね。たいしたことなかったみたいです」
魔族兵士A「ウム。しかしいくら人間どもでも、この魔王城にそんな少数で来るものか」
魔族兵士B「それが、最初の報告では五十人からの特殊部隊が潜入していたはずなんですが」
魔族兵士A「ああ? しかし、捕虜にしたのはせいぜい十数名だろう」
魔族兵士B「ええ。撤退した形跡もないし、いったいどういうことなんでしょうね」
???「ウィーン・・・ガシャ」
魔族兵士A「ンッ!? なんだ、あれは」
魔族兵士B「ま・・・待ってください、隊長。ここに転がっているのは・・・」
魔族兵士A「こ、これは人間たちの・・・!!」
???「ターゲット カクニン ハイジョスル」
魔族兵士B「!! ぎゃーっ!!」
魔族兵士A「ひっ・・・な、なんだ・・・なんなんだこいつらはーっ!?」
ロボ女騎士「ハッ」
オーク「どうかしたかな」
ロボ女騎士「イヤ イマ スゴイ メイゲンヲ オモイツイタノニ ワスレチャッタ キガスル」
オーク「そう・・・」
魔族兵士「あっ、オーク様。実は地下水路に向かったパトロール隊からの連絡が途絶えたのですが・・・」
オーク「・・・。人間の残党かもしれないな、僕が行こう」
魔族兵士「では、一個小隊をお供させます」
オーク「いや、僕だけでいい。このロボも連れて行くから」
魔族兵士「あ、そうですか。承知しました」
オーク「・・・。ターゲット認識機能の調整が必要か・・・」
魔族兵士「は?」
オーク「独り言だよ」
ロボ女騎士「モルダー アナタ ツカレテルノヨ」
ここま
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ゴブリン「あっ、ロボ・・・無事だったのか」
姫「まあ。なんでしょう、このカワイイ子は」
ゴブリン「いや、ぜんぜん可愛くないでしょ」
ダークエルフ「卑下しないでいいんだぞ、ゴブリン」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
姫「ゴブリンさんのかたちをしたロボットですのね! カワイイ~っ、ぎゅっ!」
ロボゴブリン「ゴブッ! ・・・」
ゴブリン「ヒエッ・・・」
姫「まあ、止まってしまいましたわ。電源ボタンを押してしまったんでしょうか」
ダークエルフ「人類の電源ボタンは一度しか押せないんですが・・・」
姫「あら、やっぱりここにスイッチが。ポチッ」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
姫「それじゃあ、もう一回。ギューッ!」
ロボゴブリン「ゴボヴッ! ・・・」
ダークエルフ「なんか濁った声がしたぞ・・・」
ゴブリン「や、やっぱりボク、部屋変えてもらお・・・精神的なのはともかく肉体的にキツイのはちょっと・・・」
国王「うーむ・・・どうするかのう」
兵士「国王陛下! 大変です」
国王「なんじゃ、今わしは忙しいのだが」
兵士「いえ、実は・・・先の奪還作戦に参加した隊員たちが」
国王「捕虜交換はまだのはずじゃろう」
兵士「それが・・・。およそ三十名が、素っ裸でまとめて袋詰めにされて送られてきたのです」
国王「・・・なんじゃそれは、両端が縛られた小豆袋みたいな、何か深い意味があるのか」
兵士「さあ・・・ある意味ものすごい光景ではありましたが・・・」
国王「しかし、外交交渉のタネになる捕虜をタダで返してくるとはの」
兵士「理由はわかりませんが、全員記憶が曖昧なようです。なんらかの精神操作を受けたのかも・・・」
国王「スパイにするなら操作の痕跡など残さんわ。とりあえず病院に送っておけ」
兵士「ハッ、ではそのように。失礼いたします」
国王「やれやれ、魔族のやることはわからんわ。さて・・・かわいそうな勇者は誰にするかのう」
オーク「よし・・・先行量産型のテスト結果も良好だな」
ロボ女騎士「オウ コレガ ワガ イモウトタチカ」
オーク「そうだ。これにさらに改良を加えて量産体制を構築する」
ロボ女騎士「ハヤク ミンナデ ジバク シタイナ」
オーク「んっ? ああ、そういえば・・・自爆機能のテストがまだだったな、僕としたことが」
ロボ女騎士「ノチノ ヨノ タメニ ワタシガ ヒトハダ ヌゴウジャ ナイカ」
オーク「いや、オリジナルを失うのはまだ早い・・・11号機から13号機、起動しろ」
先行量産型11号「オヨビデスカ オークサマ」
先行量産型12号「システム オールグリーン」
先行量産型13号「ゴメイレイヲ」
ロボ女騎士「オマエラ コエガ チイサイ ヤリナオシ」
先行量産型11号「オンセイ オプションハ ステレオ モノラル ダケデス」
ロボ女騎士「ウーム ヤハリ フィクションノ セカイデハ シサクガタノ ホウガ ユウシュウダナ」
オーク「諸君らに任務を与える。よく聞きたまえ・・・」
ダークエルフ「こらーっ、ゴブリン! 逃げるな! 裏切り者ーっ!!」
ゴブリン「すいませんダークエルフさん。でもボク、お二人の邪魔はしたくないんです」
姫「まあ! お心遣い、感謝しますわ!」
ゴブリン「・・・。あーよかった、あれじゃ治るもんも治らないよ」
医療班「通せ、急患だ!」
魔族兵士A「うーん、ううーん」
魔族兵士B「バケモノが、バケモノが来るーっ!」
ゴブリン「大変だなあ、女騎士さんにでも殴られたのかな・・・」
オーク「似たようなものだろうね」
ゴブリン「あれ? オークさん、もしかしてお見舞いに来てくれたんですか」
オーク「いや、違うけど」
ゴブリン「・・・」
オーク「まあ、これからは忙しくなりそうだから、早目に治して出てきてね。それじゃ」
ゴブリン「・・・。しばらく養生したいなあ・・・でも、オークさんが病院に何の用なんだろう」
医療班「あ、これはオーク様・・・」
オーク「キミ、さっきの兵士たちの病室はどこかな?」
ミノタウロス「フンッ! フンッ! フウ・・・ほれぼれするような我が筋肉だ」
魔族兵士「閣下、大変です!!」
ミノタウロス「何事だ。しかしおまえら一般兵士は口を開けば『大変です』ばっかりだな」
魔族兵士「メタを言っておる場合ではありません! 勇者が現れたのです!」
ミノタウロス「ああん? どうせまた、どこかの田舎者のハッタリだろう。放っておけ」
魔族兵士「本人に本物の勇者かどうか聞いたら、本物だと答えたそうですが」
ミノタウロス「そこで偽者だと言ったら偽者だと思うのか、おまえは」
魔族兵士「しかし万が一本当に本物だったら・・・」
ミノタウロス「まったく、わずらわしい。面倒だから叩きのめしておけ」
魔族兵士「はあ、ではそのように」
電話『プルルル プルルル』
ミノタウロス「ああもう、将軍職は忙しいのう。もしもし!?」
電話『もしもし、閣下ですか。例の機体のテストを行います』
ミノタウロス「ああ、おまえか。おおそうだ、今、テストにちょうどいい情報が入ったぞ」
電話『いえ、もうこちらの方で実行に移しています。まもなく、爆発が起こる予定です』
ミノタウロス「何、爆発? どういうこと・・・うおっ!!」
勇者「あの、今、地震があったような・・・?」
警備隊「気にせんでよろしい。・・・で、キミは本当に勇者なのかね」
勇者「そうです! 国王陛下から直々に任命されたんですよ!」
警備隊「で、所持品がこれだけかね」
勇者「国王陛下から賜った、どうのつるぎと10ゴールドです! これは父の形見のかわのよろいです!」
警備隊「・・・。娘の小遣い20ゴールドは多すぎるのかな」
勇者「はい?」
警備隊「いや、なんでもない・・・。で、レベルは・・・1? ・・・えーっと、魔族なめとんの?」
勇者「それはこれから、魔族の人を倒して上げていきます!」
警備隊「・・・。キミね・・・もう少し人生経験積んだ方がいいよ」
勇者「はい! だからこれから積んでいきます!」
警備隊「・・・」
魔族兵士「おい、ミノタウロス様が、勇者はとりあえず叩きのめせってよ」
警備隊「うーん・・・そうすべきなんだろうが、なんか罪悪感が・・・」
勇者「?」
ミノタウロス「ど、どういうことだ。ワシの軍管区であんな大爆発が」
電話『ご覧になられましたか? あれが例の機体の自爆装置です』
ミノタウロス「よーく見えたわ! ・・・まさか貴様、はじめからそれが目的か」
電話『閣下には機体の性能をよく知っておいていただきたいと思いまして』
ミノタウロス「つくづく鼻持ちならんヤツだ。まあいい・・・確かにあの威力は凄まじいな」
電話『軍用火薬とマイクロ魔法陣を組み合わせた爆破装置です。砦の一つは吹き飛ばせるでしょう』
ミノタウロス「フムン。で、量産の方はどうなってる」
電話『この実験でテストは終了です。あとは工場のラインを動かすだけです』
ミノタウロス「よし、すぐに始めろ。今度はこちらから連絡するからな、勝手に動くなよ」
電話『承知しました、それでは。ガチャッ』
ミノタウロス「・・・。フフ、もうすぐだな・・・」
魔族兵士「あの、閣下・・・?」
ミノタウロス「あの爆発については、武器庫での事故と説明しておけ」
魔族兵士「しかしそれでは、閣下の責任問題では・・・」
ミノタウロス「かまわん。どうせすぐに、責任なぞどうでもよくなるからな・・・」
また夜に
女騎士「あーああ、最近出番が少ないな。私は主役だぞ」
ロボ女騎士「ヒマジンハ ヒマソウデ イイネ」
女騎士「ム・・・ポンコツめ、まだ自爆してなかったのか」
ロボ女騎士「フッ イモウトタチニ サキヲ コサレテ シマッタナ」
女騎士「妹ぉ? まさか他にも私の出来損ないロボットがいるのか」
ロボ女騎士「シンパイ スルナ マネ シタノハ ガイケン ダケダカラ」
女騎士「磁石くっつけたる」
ロボ女騎士「イーマニ ミテイロ ハニーワ ゲンジン ゼンメツダー」
女騎士「こいつ・・・どうでもいい知識ばかり増やしおって」
ロボ女騎士「ワタシモ ガッタイシテ キョダイ ロボ オンナキシニ ナリタイ」
女騎士「これファンタジーなんだけど」
ロボ女騎士「オマエガ イチバン セカイカンニ アッテナイゾ」
女騎士「くっ・・・殺せ」
警備隊「じゃあ、これに乗れば魔王城まで行けるから」
勇者「ありがとうございます! 魔族の方って親切なんですね!」
魔族兵士「しかし、10ゴールドじゃ途中までしか行けないだろ」
警備隊「あ、そうか・・・じゃ、これ、貸しとくから」
勇者「本当にありがとうございます!」
バス『第5軍管区発 魔王城行き まもなく発車します』
勇者「すごい! 魔界の馬車はしゃべるんですね!」
警備隊「・・・。キミね、気をつけなよ、いろいろと」
勇者「はい! がんばります!」
バス『魔王城行き 発車します ドア閉まります』
勇者「(手を振っている)」
警備隊「・・・心配だ」
魔族兵士「魔王城に行ってボコボコにされれば、人生ってのがわかるって」
警備隊「うーむ・・・なにか騙されて勇者に祭り上げられたんじゃないかなあ」
魔族兵士「人間もそこまで残酷じゃないだろ、たぶん」
国王「うええっくしゃぶしゃあおぉお!」
親衛隊「ウオッ、きったねえ!」
国王「なんじゃと」
親衛隊「い、いえ・・・風邪ですか、お大事に」
国王「ウム・・・昨日エアコンつけっぱで寝たからかのう、ズビビ」
量産型1号機「ウィーン ガシャ ウィーン ショウネン ガッショウダン」
オーク「栄えある量産型1号機です」
女騎士「最初からしゃべれるのか・・・」
オーク「今までのデータの蓄積がありますから。量産型はクラウド型のデータストレージも採用しています」
量産型1号機「キョウミ ナイネ」
女騎士「アホのデータが蓄積してもアホしかできないということか」
ロボ女騎士「オリジナルノ ワタシハ ゼロゴウキッテ トコロダナ」
女騎士「確かに、暴走もするしな」
ロボ女騎士「オマエガ シンデモ ワタシガ イルモノ」
オーク「ちょっと違うが、正しい」
女騎士「くっ・・・殺せ」
ゴブリン「あれっ、ロボ女騎士さんが二人?」
オーク「おやゴブリンくん、退院したのか」
量産型1号機「ヨウ ザコ ワタシハ リョウサンガタ ダゾ」
ゴブリン「量産型!? うっ、頭が・・・」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
オーク「では陛下、量産型ロボ女騎士の配備は計画のとおりに」
魔王「うむ、よきにはからえ」
オーク「それでは失礼いたします」
魔王「待て、オーク。わらわに何か言うことはないか?」
オーク「必要な説明はさせていただきましたよ」
魔王「・・・フ、ならばよし。行くがいい」
オーク「・・・」
魔王(ふ・・・魔王たるもの、たまにはこうして格好をつけねばな・・・)
魔族士官「陛下、失礼します」
魔王「なんじゃ、せっかく己に酔っているときに」
魔族士官「い、いえ、お耳に入れるべきか迷ったのですが・・・実は・・・」
魔王「・・・。なにっ! 勇者が来ただとっ!!」
勇者「ここが魔王城かあ」
魔族兵士「おい、そこのおまえ。人間のくせに魔王城に何の用だ」
勇者「あっ、僕、勇者なんです。魔王を倒しに来たんです!」
魔族兵士「ああ、そういう企画か。最近は珍しいな」
勇者「あと、お姫様を助けにきたんですけど」
魔族兵士「それは運が良いな、今は本物の姫がいるぞ。病院だ」
勇者「じゃあ、先にそっちに行きます。ありがとうございます!」
魔族兵士「どうせなら近くの宿に泊まってってくれよ、オレの実家が旅館やってるんだ」
勇者「はい! ・・・あっ、そういえば、帰りのお金がないや。まあいっか!」
ダークエルフ「カタカタ・・・『逃げる 隠密 方法』」
姫「あら、ダークエルフさまったら! 病院で電子機器はダメですわ!」
ダークエルフ「うっ! な、何もやましいことは」
姫「うふふ。夫婦の間に秘密はあっても、ウソはナシですわよ♪」
ダークエルフ「どこに秘密を隠す余地があるんですかね・・・」
医療班『ピーン↑ポーン↑パーン↑ポーン↑。ダークエルフさま、お客様でーす』
ダークエルフ「おいこら! スピーカー越しじゃなくて、せめて部屋の前まで来い!」
医療班『もうお通ししましたので、ご心配なく。ピーン↓ポーン↓パーン↓ポーン↓』
ダークエルフ「まったく。しかし、いったい誰だ? ゴブリンのヤツはどうせ来ないだろうし」
勇者「コンコン! 失礼します!」
ダークエルフ「んっ!? なんだ、人間じゃないか。人間が私に何の用だ」
勇者「いえ、実は、ここに王国のお姫様がいると聞いて」
姫「あら、私が何か?」
勇者「あなたが! 実は僕、勇者なんです!」
ダークエルフ「えーっ!!!」
ダークエルフ「よかった! よかったあ!! ついに来てくれたんだね!! ぐすん!」
勇者「えっと、僕、魔族の人にも期待されてたんですね! 感激です!」
姫「あら。私は帰りませんわよ」
ダークエルフ「ななななんでぇ!? どうして!!! 格好いい勇者さまが来てくれたのに!!!」
姫「私の王子さまは、ダークエルフさまですもの」
勇者「そうなんですか!」
姫「そうです」
ダークエルフ「そうじゃありませんっ!!」
勇者「うーん、でも、困ったなあ。王様には姫様を連れてかえるように言われてるんです」
姫「じゃあ、このロボゴブリンくんを代わりに差し上げます」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
勇者「わあ、かわいい! ありがとうございます、これで王様にも顔向けできます!」
ダークエルフ「できへんわ!! だいたいそれ、姫のもんじゃないでしょ!」
姫「しかたありませんわねえ・・・じゃあ、条件があります」
ダークエルフ「ななな、なんですか!?」
姫「勇者さんが、魔王陛下を倒すことです!」
ダークエルフ「・・・」
勇者「なんだ、そんなことですか」
ダークエルフ「な、なんだって、きみねえ。レベル50や60じゃ、陛下にキズ一つつけらんよ?」
勇者「あ、僕、まだレベル1なんです」
ダークエルフ「・・・。どうやってここまできたの・・・?」
勇者「バスっていう馬車に乗ってきました!」
ダークエルフ「・・・」
姫「そんな勇者さまなら、魔王の一人や二人、チョチョイのチョイですものね!」
勇者「はい! がんばります!」
ダークエルフ「あ、あの、姫・・・条件というのはせめて達成の可能性があるものを・・・」
姫「あら。ダークエルフさまは、そんなに私と離れたいのですか?」
ダークエルフ「うっ・・・いや、そういうわけでもないんですが・・・」
魔王「おーい、邪魔するぞ」
ダークエルフ「誰だよまた・・・って!! これは魔王陛下っ!? 平伏!!」
魔王「よいよい、頭を上げい」
勇者「あなたが魔王さんですか! 僕、勇者です!」
魔王「ほう~、おぬしがか。ふむふむ・・・」
魔王「ふーむ、個人的にはもう少し幼い方が好みじゃが・・・まあよかろう」
勇者「ありがとうございます! それで、僕、あなたを倒しにきたんですけど」
魔王「おう、よいぞ。それじゃ、ここじゃなんだから、わらわの部屋に行こうかの?」
勇者「はい!」
ダークエルフ「あっ、ちょ・・・」
魔王「なにか?」
ダークエルフ「いっ! いえ・・・なんでもございません・・・」
姫「かわいそうな勇者さま」
ダークエルフ「それは確かに・・・条件云々は別としても、レベル256の陛下が相手では・・・」
姫「うふふ・・・ダークエルフさま、意味が違いますわよ」
ダークエルフ「は・・・?」
姫「ダークエルフさまも私の好きなようにスキル振りしてさしあげますからね・・・うふふふ・・・」
ダークエルフ「ヒイ!? た、助けて! 陛下っ! 勇者さま~!!」
まだ続く
量産型99号機「ウィーン ガシャ ウィーン ブルドン」
オーク「これは第8軍管区の第3大隊に輸送してくれたまえ」
魔族兵士「ハッ、承知しました」
女騎士「しかしまあ、この工場を見ているとおぞましい気分になるな」
ゴブリン「確かに、ロボとはいえ女騎士さんを大量生産してるわけですからね」
ロボ女騎士「ニンシンハ トモカク シュッサンハ カナリ トクシュナ フェチ ダゾ」
女騎士「いくら私でもガキをひり出すのはそうそうやりたくないわ」
ゴブリン「年齢的にムリなんじゃないですか」
女騎士「ほう」
ゴブリン「オボッ! ブフッ!」
オーク「病み上がりなんだから大事にしなよ」
量産型100号機「ウィーン ガシャ オメデトウ ワタシガ 100タイメノ リョウサンガタ デス」
オーク「よし、とりあえず第一陣はここまでにしよう」
ゴブリン「じゃあ、ラインを止めますか」
オーク「いや、とりあえず部品は作っておかないと、メンテナンスに困るから。組み立てラインだけ停止だ」
ロボ女騎士「ジバク スレバ メンテ ナンテ カンガエナクテ イイノニナ」
魔族士官「おい、通るぞ。陛下に御決裁いただく書類がある」
魔族兵士「あ、今はちょっと・・・お取り込み中でして」
魔族士官「急な書類だ。ミノタウロス将軍から急かされてるんだがな」
魔族兵士「いや、実は・・・。・・・」
魔族士官「・・・。あー・・・なるほど。また哀れな人間が来たのか」
魔族兵士「陛下の御趣味もなんとかなりませんかねえ」
魔族士官「やめとけ、まかりまちがって自分がターゲットになったらどうする」
魔族兵士「ひえ~、それは悪夢ですね・・・」
魔王「・・・」
魔族兵士「あ、へ、陛下! どうされましたか、顔色が」
魔王「・・・。うふふ・・・ビギナーズラックとはいえ、なかなかやりおるわい・・・うふふふ」
勇者「魔王さま、パンツ忘れてますよ~!」
魔族士官「・・・!?」
魔族兵士「ぴ・・・ピンピンしている・・・だと!?」
魔族士官「ま、まさか・・・本物の勇者が現れたというのかっ・・・!?」
ゴブリン「これがロボ女騎士さんの配置図ですか」
オーク「そのとおり。全土の主要部隊に、明日までには到着するだろう」
ゴブリン「でも対人間用兵器なら、国境付近の部隊に置けばいいんじゃないですか」
オーク「そうだね」
ゴブリン「・・・。えっと、どうしてそうしないか聞いてもいいですか」
オーク「ゴブリンくん。秘密を知ればそれだけ責任が重くなる。わかるね」
ゴブリン「・・・」
オーク「それでも知りたいというのなら教えるけど、実は」
ゴブリン「い、いやいやいや! いいですいいです! ボク、そんなに力持ちじゃないんで!」
オーク「そう・・・」
ゴブリン「でも、量産型のデータは全部、ここのサーバーで管理してるんですよね」
オーク「それが?」
ゴブリン「その気になれば、ここから全土の量産型を制御できるってことですよね」
オーク「それが?」
ゴブリン「いや・・・万一テロリストがロボ女騎士さんを一斉に動かせば、われらが魔王軍といえど・・・」
オーク「・・・」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ロボ女騎士「オオ ロボゴブリンハ カワイイナア」
ゴブリン「ボクはゴブリンでゴブ。何も知らないでゴブ」
ロボ女騎士「オオ ゴブリンハ カワイソウダナア」
オーク「彼ももう少し賢ければね・・・」
ミノタウロス「フンッ! フンッ! ・・・フ、いよいよ今日か・・・腕が鳴るわ」
魔族士官「閣下、失礼いたします。まもなく定例演習のお時間です」
ミノタウロス「ウム。全部隊、揃っておるか」
魔族士官「ハッ。全軍、完全装備で集合しております」
ミノタウロス「よし、すぐに行く。準備しておけ」
魔族士官「ハッ!」
電話『プルルル プルルル』
ミノタウロス「・・・来たか。もしもし」
電話『時間ですね』
ミノタウロス「ウム・・・頼むぞ、オーク。事の成否はおまえの働き次第だ」
電話『私はミスをするつもりはありません。閣下もどうぞ計画どおりに』
ミノタウロス「フン! わかっておるわ・・・では、魔王城で会おう!」
オーク「・・・。さて、始めるか」
ロボ女騎士「ハジマリハ イツモ トツゼン ダ」
オーク「そうだね」
魔族兵士「あ、オーク様。おはようございます」
オーク「うん。すまないな」
魔族兵士「は・・・ゴフッ! な、何を・・・」
オーク「さて、ロボ・・・突入して管制室を制圧してくれ」
ロボ女騎士「オッパジメルト スルカ」
魔族兵士「へ、陛下! 大変でございます!!」
魔王「う~ん、なんじゃ。まだやるのか・・・」
魔族兵士「うわっ・・・見ちまった」
魔王「なんじゃと」
魔族兵士「い、いえ。いや、それどころではありませんぞ!!」
勇者「ん~、眠いです~。むにゃむにゃ」
魔族兵士「第5軍管区のミノタウロス将軍が・・・クーデターを宣言したのです!!
ま寝前
そろそろ〆に入ろう(提案)
ゴブリン「ふあ~あ、よく寝た。今日もさわやかな朝だなあ・・・ん、なんか外が騒がしいぞ」
魔族兵士「大変です、情報司令センターが何者かの攻撃を受けています! 早く防御を固めないと!」
魔族士官「いったい何事だ!? 人間のスパイのしわざなのか?」
ゴブリン「なんだ、また人間がお姫さまを奪還しにきたのかな。物騒だなあ、ロボ」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ゴブリン「まあ、だからっていつもの仕事がなくなるわけじゃないし・・・」
魔族兵士「おい、聞いたか! これはミノタウロス将軍のクーデターらしいぞ!」
ゴブリン「え、ええ!?」
魔族兵士「しかもオーク様も計画に加担してるらしい! おまえは無関係なら隠れてた方がいいぞ!」
ゴブリン「えーっ!? お、オークさんがクーデターに!?」
魔族兵士A「あーあ、今日もヒマだなあ」
魔族兵士B「平和だなあ」
量産型76号機「ウィーン ガシャ」
魔族兵士A「お、あれは昨日配備されたっていう新型の対人兵器だな」
魔族兵士B「しかし、誰をモデルにしたんだか知らんが、えらくブサイクな兵器だよなあ」
魔族兵士A「ははは、まったくだ」
量産型76号機「ピピッ データヲ ジュシン コウドウ プログラム シュウセイ」
量産型49号機「ウィーン ガシャ ターゲット カクニン」
魔族兵士B「・・・ん? なんかこっちに来るぞ」
量産型76号機「コウゲキ カイシ ギュオオオン!!」
魔族兵士B「ぐほあ!?」
魔族兵士A「な、なんだっ!? 故障か!?」
量産型49号機「コウゲキ カイシ」
魔族兵士A「う・・・わ、悪かった、ブサイクじゃないから! ・・・うおあああ!!」
量産型49号機「ギュオオオオオン!!!」
ミノタウロス『・・・我が忠勇なる決起軍兵士達よ!
今や体制側戦力の半数が我が新兵器によって叩きのめされた!
この勝利こそ我らの正義の証である!!
決定的打撃を受けた政府軍にいかほどの戦力が残っていようと、それはすでに形骸である!
あえて言おう! カスであると!!』
反乱軍兵士『ジーク・ミノ! ジーク・ミノ!!』
魔族士官「・・・現在までのところ、ミノタウロス将軍に呼応した軍管区は8つのうち3つにのぼります」
魔王「・・・」
魔族士官「さらにクーデター軍は劈頭の奇襲で2つの軍管区を制圧、この魔王城に向かって進軍中です」
魔王「・・・」
魔族士官「この基地においても、情報司令センターが制圧され・・・新型兵器の制御が奪われました」
魔王「・・・」
魔族士官「全土に配備された100機の新型兵器の暴走により、各部隊は大混乱に陥っているようです」
魔王「・・・」
魔族士官「・・・。陛下・・・」
魔王「フ・・・フフフ」
魔族士官(・・・。前からいろいろアレだったけど、とうとうきたか・・・)
魔王「なんじゃと」
魔族士官「い、いえ、私は何も」
魔王「フフ・・・初動は百点満点じゃ。後の問題は詰めの具合じゃな」
魔族士官「は・・・?」
魔王「くくく・・・楽しいとは思わんか、完璧なモノをブチ壊すというのは・・・これからがお楽しみよの!」
勇者「魔王さ~ん」
魔王「あっ」
勇者「どうしたんですか? 何かあったんですか」
魔王「いやいや・・・なんでもないぞ。そうじゃ、今日は衣装を変えて楽しもうぞな」
勇者「本当ですか! 僕、物心ついてからずっとこの服だったんです!」
魔族士官「ちょ・・・陛下、クーデター軍への対処はどのように」
魔王「あん? それはあれだ、あれをああいうふうにしとけ」
魔族士官「具体的にお願いします!」
勇者「魔王さん、お仕事があるなら、僕、待ってます!」
魔王「ええんじゃええんじゃ。わらわはおぬしのようなかわゆい男の子とニャンニャンするために生きておるのじゃ」
魔族士官(アカン)
魔王「なんじゃと」
魔族士官「な、何でも・・・いや! やっぱり言わせてもらいますが陛下! 今はそのような場合ではありませぬ!」
勇者「そうなんですか!」
魔族士官「おまえも本当はミノタウロス将軍の手先なんだろう! 陛下をかどわかしおって!!」
勇者「そうなんですか!?」
魔王「えーい、やかましいわ、外野は石にでもなっとれ! 魔王ビーム!!」
魔族士官「ンガッ・・・こ、これでは国が亡びますぞ・・・!!」
魔王「さーて勇者よ、お楽しみじゃのう~」
ダークエルフ「・・・。今日も一睡もできなかった・・・」
姫「すやすや」
ダークエルフ「寝たら何されるかわからんし・・・まあ起きててもそうなんだけど・・・」
医療班「おい、急患だ! 通してくれ!」
ダークエルフ「なんだ、また騒動か。オレにとっては遠い世界の出来事になっちまったなあ・・・」
医療班「ダークエルフ様! この病室も使わせてもらいます!」
ダークエルフ「おっ! おまえたちも多少は医療関係者の矜持を取り戻したか」
医療班「そんなことを言っておる場合ではありません! クーデターだそうですよ!」
ダークエルフ「な、なんやて? このご時勢にどこのアホウがそんなことを」
医療班「ミノタウロス将軍です。オーク様も関わっておられるとか」
ダークエルフ「あの将軍が・・・それにオークだと! いかん、オレも行かないと」
姫「う~ん、ダークエルフさま~。離れないでくださいまし~」
ダークエルフ「よーしおまえら、ちゃんと姫を見ていてくれよ」
医療班「いや、それは無理です。体よく逃げないでくださいね」
ダークエルフ「そんなことを言ってる場合じゃない! クーデターなんだろ!!」
魔族兵士「ダメです! 第二中隊も応答途絶、まるで突破できません!」
魔族士官「そんなバカな。情報司令センターを制圧したのはせいぜい小隊規模の内応部隊のハズだ」
魔族兵士「そ、それが・・・ぐわっ!」
魔族士官「!!」
オーク「フム・・・こんな散発的な攻撃とは、まだ事態の重大さに気がついていないのか」
魔族士官「お、オークさま・・・」
ロボ女騎士「ワタシモ オルデヨ」
オーク「キミ、戻って伝えたまえ。今日中に臨戦態勢を整えないと、三日で魔王城は陥落すると」
魔族士官「は・・・はいっ。ひえ~っ!」
オーク「やれやれ。ロボ、倒した兵士たちを外に放り出しておいてくれ。人質は取らない」
ロボ女騎士「ウム タマニハ シリアスナ テンカイモ イイネ」
オーク「そうだね」
国王「フウ、やっぱり朝は和食じゃの。ズズズ」
テレビ『臨時ニュースをお伝えします! 魔王軍のミノタウロス将軍が、クーデターを宣言しました!!』
国王「ブーッ!!」
騎士「うわっ、きったねえ!!」
国王「なんじゃと」
騎士「い、いや、それよりも陛下。まさかまさか、魔王に対するクーデターですぞ」
テレビ『クーデター軍はすでに国土の三分の二を制圧、魔王城に進軍しているとのことです!』
国王「うーむ、なんと。しかし我が情報部は何をしていたのだ、こんな話は聞いておらんぞ」
兵士「きっと勇者殿のおかげですな」
国王「あっ、そんなこともあったな・・・とりあえずそういうふうに宣伝しておくか」
騎士「陛下、この機会に魔族の領土を切り取っておくのはどうでしょう」
国王「よ~し、そうじゃな。全軍に出動命令じゃ、こないだの恥をそそいでみせい!」
兵士「ハッ!!」
魔族兵士A「ざわざわ・・・おい、どうなってるんだ。いつまで待機してればいいんだ」
魔族兵士B「今にもクーデター軍が来るかもしれないってのに・・・」
ゴブリン「・・・」
魔族兵士A「それだけじゃねえ、この城も一部が反乱部隊に占拠されたらしいじゃねえか」
魔族兵士B「オーク様が情報司令センターを制圧したって話か。あの人ならやりかねないな・・・」
ゴブリン「情報司令センター・・・量産型ロボ女騎士さんの司令本部か・・・」
魔族兵士A「あの人とやるくらいなら、まだミノタウロス将軍と戦う方がマシだな」
魔族兵士B「魔王陛下もいるとはいえ、これはどっちが勝つかわからんな・・・」
ゴブリン「・・・」
量産型19号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
量産型40号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
量産型77号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
ミノタウロス「はっはっは、これは壮観だのう。オークのヤツの腕は確かだったな」
反乱軍士官「閣下、大変です」
ミノタウロス「また大変か。今度はなんだ」
反乱軍士官「国境付近に人間の軍隊が集結しています。我らが領土への攻撃態勢を整えているようです」
ミノタウロス「むう、ヤツらめ、火事場泥棒のつもりか」
反乱軍士官「我が方の主力は政府軍に対する戦線維持で手一杯です。いかがしましょう」
ミノタウロス「よし・・・なら、あのロボットどもを二十体ほどまわしてやれ」
反乱軍士官「それだけでよろしいので?」
ミノタウロス「時間稼ぎができればよい。数日中には、魔王城にわれらの旗が翻るであろうからな!!」
ダークエルフ「おい、おまえら! 何をぐずぐずしておるか!」
魔族士官「あっ、ダークエルフ様!」
ダークエルフ「さっさと戦いの準備をしろ! ミノタウロス軍はそこまで来ているぞ!」
魔族士官「し、しかし、陛下からの命令が・・・」
ダークエルフ「命令を待つだけならロボットにもできるわ! 十分以内に戦闘態勢に入れ!」
魔族士官「は、ハッ!」
魔族兵士「さすが、腐っても高等魔族だ」
ダークエルフ「誰が腐ってるだと」
魔族兵士「い、いえ。しかし閣下・・・それは?」
姫「んう~、ダークエルフさま、はげしいですわ~」
ダークエルフ「・・・。気にしないでよろしい」
魔族兵士「激しかったんですか」
ダークエルフ「いてこますぞワレ」
魔族士官「全部隊、戦闘準備だ! 我々はこれより反逆者ミノタウロスの手勢との交戦を開始する!!」
騎士「全軍! 突撃ぃーっ!!」
兵士「わーっ!」
魔族兵士A「た、大変だ。こんなときに人間どもが攻撃を仕掛けてきたぞ」
魔族兵士B「我々の戦力ではどうにもならん。撤退しよう!」
量産型44号「ウィーン ガシャ」
魔族兵士A「!? これは・・・あのロボットの増援だ!」
量産型51号「ウィーン ガシャ ターゲット カクニン」
量産型70号「ウィーン ガシャ コウゲキ カイシ」
量産型38号「ギュオオオオン!!!」
兵士「わーっ!」
騎士「あ、あれは、ウワサに聞く魔族の新兵器! まずい、退却だ!」
量産型16号「ウィーン ガシャ コウゲキ カイシ」
騎士「ヒッ・・・ギャーッ!!」
魔族兵士A「せ、正規軍相手に正面から・・・あっというまに全滅させちまった」
魔族兵士B「もう全部こいつらでいいんじゃないかな・・・」
量産型24号「ソレモ ワタシダ」
ゴブリン「はぁっ、はぁ・・・ここが情報司令センター・・・うっ!!」
魔族士官「う~ん・・・」
魔族兵士「ぐふう・・・」
ゴブリン「こ、これだけの戦力が全滅・・・」
スピーカー『やあ、ゴブリンくん』
ゴブリン「!! その声はオークさん! いったいどういうことですか!?」
スピーカー『どうもこうもないだろう。話は聞いてないのかな』
ゴブリン「じゃあ・・・クーデターに加担してるっていうのは本当なんですか」
スピーカー『加担も何も、僕がいなければこの決起は間違いなく失敗しているよ』
ゴブリン「・・・!!」
スピーカー『キミは大勢が決まるまでは隠れていた方がいいだろう。今のところ成功率は五分五分だからね』
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ゴブリン「で、でも・・・どうして・・・」
スピーカー『さてね。あ、そうだ、キミに一つ言っておきたいことがある』
ゴブリン「なんですか! この期に及んで今さら!!」
スピーカー『いや、そこは量産型の索敵範囲内だから、早く行かないとケガするよ』
先行量産型6号「ウィーン ガシャ ターゲット カクニン セントウリョク 2カ ゴミメ」
ゴブリン「わあっ! は、早く言ってくださいよーっ!!」
ゴブリン「と、そんなことがあったんです・・・」
ダークエルフ「うーむ・・・ではあそこを占拠したのはオークに間違いないのか・・・」
魔族士官「大変なことになりましたな」
ダークエルフ「ウム・・・ロボ女騎士がすべて敵に回ったとなると・・・」
姫「でも、逆にあそこをなんとかすれば、ロボさんたちは停止するわけですね」
ダークエルフ「それはまあ、そうですな」
姫「では、簡単です! 司令センターを爆破粉砕しましょう!」
魔族士官「ヒエッ・・・笑顔で言うことですか」
ダークエルフ「・・・(もう慣れた)」
ゴブリン「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。あそこにはオークさんがいるんですよ」
姫「そうは言っても、オークさんもいまや反乱軍の一員ですし、事態は一刻を争いますわ」
魔族士官「確かに・・・一個大隊を投入しても制圧できないとなれば・・・」
ゴブリン「でも・・・。・・・ダークエルフさんはどうなんですか」
ダークエルフ「・・・。しかたあるまいな」
ゴブリン「!」
ダークエルフ「だが、事前に投降を呼びかけよう。それくらいの猶予はあるはずだ・・・」
紙『オークニ告グ
一.今カラデモ遅クナイカラ原隊ヘ帰レ
二.抵抗スル者ハ全部逆賊デアルカラ爆殺スル
三.オ前の部下ノゴブリンハ国賊トナルノデメチャクチャ泣イテオルゾ
戒 厳 司 令 部』
ロボ女騎士「ナゼ ロボット ミタイナ カキカタ ナンダ」
オーク「フム・・・ダークエルフさんも詰めが甘いな、こういうときは奇襲が大事なのに」
先行量産型7号機「オヨビデスカ オークサマ」
オーク「よし。キミたちは戒厳司令部に突入し、これを速やかに制圧したまえ」
先行量産型8号機「リョウカイ シマシタ」
先行量産型9号機「ジバク シテモ イイデスカ」
オーク「それはまだダメだ。今、魔王城で大規模な破壊活動が起きれば、余計なところを刺激しかねない」
先行量産型9号機「ザンネン ザンネン」
ロボ女騎士「シンパイ スルナ キカイハ マタ アル」
オーク「では行きたまえ。特に司令官のダークエルフとかいうアホはボッコボコのギッタギタにしてよろしい」
先行量産型7号機「ハイ ワカリマシタ イッテキマス」
ロボ女騎士「ユウハン マデニハ カエルノヨ」
つづく
200までにも終わりそうにないね(白目)
魔族士官「・・・どうだ? 何か反応はあるか?」
魔族兵士「・・・。いえ・・・まだ何も・・・」
ゴブリン「ちょっと! なんでボクがこんな目に!!」
魔族士官「落ち着け。縛り上げたのは、あくまでオークの動揺を誘うためだ」
魔族兵士「そうだ、誰もおまえが国賊だなんて思ってないぞ」
ゴブリン「うーん、たぶんオークさんは、ボクが目の前で火刑にされても何も言わないと思う・・・」
魔族士官「ンッ!? おい、何か出てきたぞ」
魔族兵士「ゲッ!! あ、あれは例の量産型ロボ女騎士です・・・しかも複数! まずいですよ!」
魔族士官「に、逃げろーっ!」
ゴブリン「ちょ、ちょっと、縄をほどいてくださいよーっ!」
先行量産型6号機「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
先行量産型7号機「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
ゴブリン「ふ、踏まないで! ここにかわいそうなゴブリンがいまーす!! あーっ!!」
先行量産型8号機「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
ゴブリン「あぶっ! げぶっ! おぶっ!!」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
魔族兵士「大変です! 複数のロボ女騎士がこちらに向かっています!!」
ダークエルフ「な、なんだと。まさかオークのヤツ、ここを攻撃するつもりか」
魔族士官「降伏勧告が裏目に出たかもしれませんな・・・」
ダークエルフ「とにかく、なんとかしてロボを撃退しなければ」
魔族士官「しかしどうやって・・・オーク様もいたとはいえ、一個大隊を壊滅させる力ですぞ」
ダークエルフ「むむむ・・・」
姫「うふふ・・・ここは私におまかせくださいまし」
ダークエルフ「ひ、姫? いや、いくら姫といえど、あのロボを何体も相手にしては・・・」
姫「心配ありませんわ。真正面からすべてを相手にしなければいいのです」
魔族士官「それはそうですが、失礼ながら、いくら王族とはいえ戦闘に関しては素人ですからなあ」
姫「あら。私、王立士官学校でゲリラ戦と対テロ作戦の単位をいただきましたのよ♪」
魔族士官「・・・」
ダークエルフ「それは王女として何の役に立つ予定だったんですかね・・・」
姫「今こうして役に立つではありませんか! それでは行って参りま~す!」
魔族兵士「なんか不安だな・・・」
魔族士官「あんまり不安じゃなさすぎて不安だ」
ダークエルフ「確かに・・・」
魔王「ああ~いいのう、やっぱり男の子はぴっちり半ズボンだのう! 眼福じゃ~」
勇者「ありがとうございます!」
魔族士官(石にされたのはともかく、せめて向きを変えてくれねえかな・・・)
先行量産型6号機「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
先行量産型7号機「モクヒョウハ アホノ ダークエルフ」
先行量産型8号機「ヘッポコ ダークエルフヲ ボコボコニ セヨ」
先行量産型9号機「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
IED魔法陣『ピッ』
ゴブリン「ああ、早くダークエルフさんに知らせないと・・・うわっ、ば、爆発!?」
先行量産型9号機「ピー・・・ガガガ」
先行量産型6号機「トラップヲ カクニン チュウイセヨ」
先行量産型7号機「チュウイ チュウイ」
IED魔法陣『ピッ』
ゴブリン「あっ。おわあああ!!」
ロボ女騎士「オッ 9ゴウト 7ゴウノ ハンノウガ トダエタ」
オーク「ほう、損害は1機程度だと思っていたが、やるね」
ロボ女騎士「ヤハリ ココハ ワタシノ デバンダナ」
オーク「真打は最後に出るものだよ」
ロボ女騎士「タシカニ ワタシハ シュジンコウ ダシナ」
オーク「うむ・・・あれ? そういえば誰か忘れてるような・・・」
女騎士「あれ~、なんでコンビニが閉まってんだ!? おい、酒をよこせー!!」
ゴブリン「な、なんだ。なんで爆発が・・・」
先行量産型7号機「ガ ガガガ ピー」
ゴブリン「ああ・・・ろ、ロボ女騎士さんがやられるなんて」
姫「残り二つ・・・」
ゴブリン「!?」
先行量産型6号機「ウィーン ターゲット カクニン」
姫「寄らば、斬ります!」
ゴブリン「あ、ひ、姫さまっ! そんなナイフじゃ無理ですよーっ!!」
先行量産型8号機「コウゲキ カイシ」
姫「フンッ!!!」
先行量産型8号機「ンガッ」
ゴブリン「ヒエッ・・・ウソでしょ、刺さった・・・斬ってないし・・・。で、でもあれだけじゃ」
姫「ゴブリンさん、伏せてくださーい!」
ゴブリン「えっ」
ナイフ『ピッ』
ダークエルフ「ま、また爆発だ。本当に大丈夫なのか・・・」
魔族士官「まあ、もし姫がやられたら、何度も爆発はしないはずですからな」
魔族兵士「建物が崩れないといいですが」
ダークエルフ「・・・。しかし、よく考えてみると、今のオレはフリーなんだよな」
魔族士官「は?」
ダークエルフ「いや、そのつもりになれば、姫から逃げ出せるわけで」
魔族兵士「あのさあ・・・そういう考え方がいかんのですよ」
ダークエルフ「おまえらにはオレの気持ちなんてわからんだろう!」
魔族士官「逃げ出して、いつ捕まえられるかわからない生活の方がよいですか」
ダークエルフ「・・・」
魔族兵士「もう諦めましょうよ、ダークエルフ様」
魔族士官「そうですよ。住めば都というではないですか」
ダークエルフ「お、おまえたち、他人事だと思って・・・」
魔族士官「いや、他人事というか」
魔族兵士「万が一他の誰かに興味が移ったら困りますし」
ダークエルフ「あーん! ワイはイケニエやないもん!!」
ゴブリン「な、ナイフが爆発するなんて・・・ゲホッ、ゲホッ」
先行量産型8号機「プスプス」
姫「大丈夫ですか、ゴブリンさん」
ゴブリン「ボクは大丈夫ですけど・・・」
先行量産型6号機「ターゲット カクニン」
ゴブリン「も、もう一機いまーす!!」
先行量産型6号機「コウゲキ カイシ ギュオオオオオオオオオン!!!」
ゴブリン「ひえーっ!」
姫「フンッ!」
ゴブリン「と・・・跳んだっ!?」
姫「シュタッ」
ゴブリン「着地した・・・ロボの頭上にーっ!?」
姫「ゴブリンさん! その調子で実況お願いします!!」
ゴブリン「あ、はい・・・」
勇者「ニャー!」
魔王「ああ~猫ちゃんの格好もド似合いじゃのぅ~」
魔族士官(まあ、本人がするよりかは百倍マシだわな)
魔王「あ?」
魔族士官(い、いえ、なんでも・・・私は石です・・・)
姫「ガシッ!」
ゴブリン「ロボの頭をつかんだ!」
姫「フンッ! フゥン!!」
先行量産型6号機「ギッ ギギッ」
ゴブリン「ろ、ロボの・・・首が・・・」
姫「ハッ! オオアアッ!!」
先行量産型6号機「ガギッ ベギギッ」
ゴブリン「あ、ああっ・・・」
姫「ンドリャッシャアアアアアアアア!!!」
先行量産型6号機「バギョッ!! ・・・」
ゴブリン「と・・・とれ、た・・・」
姫「フゥ・・・大したことねえな」
先行量産型6号機(頭部)「ガンッ! ガランガランガラン・・・」
ゴブリン「ヒッ!!!」
姫「大丈夫ですか、ゴブリンさん?」
ゴブリン「だ、だだだ、だだいじょじょじょ」
姫「あらあら、お粗相なさってしまいましたね・・・戻りましょうか、敵も殲滅したことですし。うふふ・・・」
ゴブリン「ひ・・・ひいー・・・」
オーク「・・・。全滅か・・・」
ロボ女騎士「ダークエルフ ヤルジャン」
オーク「いや、あの方も印象ほど弱くはないが、ロボ4体が相手では味方がいても勝ち目は無いはずだ」
ロボ女騎士「デハ ゴブリンカ」
オーク「それは120%ない」
ロボ女騎士「カワイソウナ ゴブリン」
オーク「しかし、対クーデター司令部制圧が失敗した以上、ここが本当に爆破される可能性も考えなくてはいけないな」
ロボ女騎士「イザト ナッタラ コッチカラ ジバク シテヤロウ」
オーク「うむ・・・しかしその前にやっておかねばならないことがいくつかある」
ロボ女騎士「デハ ワタシハ ジセイノ クデモ カンガエテ オクカ」
オーク「ネットワークプロトコルの書き換え・・・作戦司令権限の携帯指揮管制システムへの移譲・・・」
ロボ女騎士「ワガ サダメ タメラウ ナカレ ダイバクハツ
ロボニ ウマレテ ハナト チルナリ
ロボオンナキシ」
オーク「うん、悪くないね」
今日は以上
女騎士「なんだよ、スーパーも開いてねえじゃん! というか人っ子一人いないとは何事だ?」
魔族兵士「ンッ、なんだ貴様。今は戒厳令下であるぞ、非戦闘員は屋内におらんか!」
女騎士「戒厳令だあ? クーデターでもあったのか」
魔族兵士「そうだ。まさか知らないわけがなかろうが」
女騎士「私が見るニュースはスポーツニュースだけだ。で、オマエは戒厳令なのに何をしているんだ」
魔族兵士「ああん? 私は貴様のような不届者が空き巣に入らないよう、見回っておるのだ」
女騎士「なるほど。一人で大変だな」
魔族兵士「人員が少ないから仕方なかろう。この城も一部が反乱軍の手に落ちたのだぞ、それも知らんのか」
女騎士「ほーん、で、見張りの交代までどれくらいあるのだ」
魔族兵士「あと一時間というところだな。まったく、貴様のような者がいなければ防衛に専念できるものを」
女騎士「そう・・・」
魔族兵士「むっ!? な、何をする・・・オボッ!! ・・・」
女騎士「さて・・・。非常時なことだし、物資を補給しに行きますかねえ」
姫「というわけで、当面の脅威は去りましたわ!」
ダークエルフ「さ・・・さすが姫ですな」
魔族士官「ひそひそ・・・本当にやったぞ。人間技じゃないな」
魔族兵士「ぼそぼそ・・・実は姫も人間型の戦闘ロボットなんじゃないですか・・・」
姫「あら、確かめてみます?」
魔族兵士「うっ! い、いえ、これはとんだ失言を・・・」
ダークエルフ「・・・。ああ姫、ゴブリンのヤツは無事ですか」
姫「もちろんですわ。ちょっとお怪我がありましたので、手当てを受けています」
ダークエルフ「では、一段落か・・・爆破準備の方はどうか」
魔族士官「工兵部隊が順調に準備を進めています。完了まで十分ほどです」
ダークエルフ「・・・オークの命運もあと十分か。投降してくれればいいのだがな」
姫「そうですわね、反徒になったとはいえ、大切な部下の方ですものね」
ダークエルフ「えっと、爆破を提案なされたのは誰でしたかな・・・」
魔族兵士「ダークエルフ様、商業区画のスーパーで警報が作動したそうですが。空き巣のようです」
ダークエルフ「あん? かまわん、放っておけ。チンケなコソ泥に対処している場合ではない」
ミノタウロス「おお・・・見えたぞ、魔王城だ!」
反乱軍士官「いよいよ正念場でございますな」
ミノタウロス「ウム。ここまでは順調に来すぎているくらいだがな・・・」
反乱軍士官「しかし、姑息な人間どもも撃退した今、我らに後顧の憂いはございません」
ミノタウロス「油断は禁物だぞ。あそこにはまだ、最強の敵が控えているのだからな・・・!」
魔王「あにゃあ~! 女の子の格好も似合いすぎじゃあ~」
勇者「さ、さすがにこれは、ちょっと恥ずかしいです」
魔族士官(いかん、普通にカワイイ・・・)
工兵部隊『こちら工兵部隊、準備完了です! ご指示を!』
ダークエルフ「・・・」
魔族士官「ダークエルフ様・・・」
ダークエルフ「・・・。うむ・・・やれ」
工兵部隊『了解! 点火、点火!!』
魔族兵士「おお・・・情報司令センターが・・・」
ダークエルフ「・・・」
姫「ダークエルフ様・・・おいたわしや」
魔族士官「しかしこれで、各地で暴れているロボは停止することでしょう」
ダークエルフ「ウム・・・」
工兵部隊『こちら工兵部隊、任務は無事・・・うわっ!?』
魔族士官「む? どうした、何かあったのか」
工兵部隊『大変だ、あのロボットが・・・わーっ!! ・・・ザザザ・・・』
魔族兵士「・・・。ま、まさか・・・」
無線『ザザ・・・。ダークエルフさん、惜しかったですね。まだ事態は何も解決していませんよ・・・ザッ』
ダークエルフ「!! お、オーク! おい、どういうことだ! 応答しろ!!」
ゴブリン「うう、ううう・・・お、鬼が・・・鬼が来るぅ・・・」
医療班「通せ、急患だ!」
工兵部隊「うーん」
ゴブリン「ハッ。こ、ここはどこ、ボクはゴブリンでゴブ」
ダークエルフ「目が覚めたか・・・」
ゴブリン「あっ、ダークエルフさん! ・・・そうだ、オークさんは・・・」
ダークエルフ「司令センターは爆破した・・・」
ゴブリン「そ、そんな・・・」
ダークエルフ「・・・。オークのヤツは無事だ。そして・・・ロボも動きを止めていない」
ゴブリン「ええ!? そんなバカな・・・データ集積用のサーバーが壊れたのにどうして」
姫「おそらく、各ロボットが個別のデータと判断で、独立して動くように設定が変更されたのですわ」
ゴブリン「そ、それじゃ・・・」
姫「ええ。いまやロボットの群れを止める方法は、各個撃破しかなくなったようですわね・・・」
ダークエルフ「・・・オレの手にはもはや負えん。陛下にすべてをお任せするしかなさそうだ・・・」
ゴブリン「・・・」
魔族兵士「おーい! 反乱軍が来るぞー!! 残っている民間人は退避しろーっ!!」
女騎士「ウィー・・・ヒック! タダ酒がたくさんじゃ! 極楽じゃあ~!」
ダークエルフ「陛下! 陛下ーっ!! ドアを開けてください!」
魔族兵士「ダークエルフ様、ミノタウロス軍が商業地区に侵入を開始しました!」
ダークエルフ「まずいな・・・地の利はあるがこちらは数で負けている。押し切られるぞ」
魔族士官「あの、突入部隊の準備が完了しましたが・・・」
ダークエルフ「・・・。陛下の御寝室ではあるが、やむをえんだろう」
魔族士官「よし、おまえたち。ドアを破ったら、中で何が起きているのか確認しろ」
突入部隊「イエッサー!」
ダークエルフ「突入開始! 行け!」
扉『ドンドン! ドンドンドン!!』
魔族士官(あ~っ、いかん! これは突入してくるぞ! ドアの前にいるのは石化してるオレなのに~っ)
勇者「魔王さん、なんだか外が騒がしいです」
魔王「気にするでない、ほれ、次はこれじゃ」
扉『ドンドン! ドカッ!!』
突入部隊「全員突入! ゴーゴーゴー!!」
魔族士官(た、倒れる~っ!! 割れるぅ~っ!)
魔王「・・・やれやれ、無粋なヤツらじゃ。えいっ」
魔族士官「あっ・・・か、解除された。あでっ」
突入部隊「ダークエルフ様! 陛下を確認しました・・・が・・・」
ダークエルフ「・・・。うわあ」
魔王「なんじゃと」
ダークエルフ「い、いえ・・・その水着は陛下がお召しになられるのですか」
勇者「僕だと思います!」
姫「まあ勇者さん、とっても可愛らしいですわ~!」
ミノタウロス「ふむ・・・軍事的にはさほど重要でない地区とはいえ、魔王城の一画というに・・・こうもあっけないか」
反乱軍士官「さて・・・。ワナに引き込まれておりますかな」
ミノタウロス「陛下は良くも悪くも、そういうことをされる方ではないわ」
反乱軍兵士「閣下! 商業区画の制圧はほぼ完了しました」
ミノタウロス「なんだ、ほぼとは」
反乱軍兵士「いえ、実は・・・スーパーマーケットを制圧しようとした部隊からの連絡が途絶えておりまして」
反乱軍士官「伏兵、あるいはブービートラップですかな」
ミノタウロス「建物一つだけに仕掛けることもあるまい。無線の故障だろうが、念のため追加の部隊を送れ」
反乱軍兵士「ハッ!」
ミノタウロス「フム・・・しかし、不気味なほどの静けさよの・・・」
反乱軍士官「閣下。斥候の報告によれば、本丸の付近に敵の大規模な防衛部隊が展開しているようです」
ミノタウロス「おお、ようやく本格的な戦いとなるか。ワシの腕を振るう機会が残っておってよかったわ!」
反乱軍兵士A「ここが先遣部隊からの連絡が途絶えたという店か」
反乱軍兵士B「何の変哲もないスーパーだな・・・オレが先に行く、戻ってこなかったら増援を呼んでくれ」
反乱軍兵士A「気をつけろよ、ここまできて」
反乱軍兵士B「・・・。何もないな・・・ンッ!?」
女騎士「ウィッ! ヒィ~ック!!」
反乱軍兵士B「な・・・なんの声だ。動物か何かか・・・?」
女騎士「ウィッ! ウィ~ッ!!」
反乱軍兵士B「!! あ、あれは!」
女騎士「お~っ、またお客さんかあ。酒もってこい! 缶ビールは飽きたぞぉ!!」
反乱軍兵士「あぐう・・・」
反乱軍兵士B「これは先遣部隊の・・・まさかこの酔っ払いが!?」
女騎士「あ~ん、誰が酔っ払いじゃ。わたひはまだ、ぜんぜん酔ってないじょお!!」
反乱軍兵士B「チッ、おとなしく眠ってろ!」
女騎士「甘いわ!」
反乱軍兵士B「オボッ!? は、速い・・・そんなバカな・・・ガクッ」
女騎士「あああ~、テンション上がってきた! あろろろっ! 女騎士さん、やっちゃうぞぉ~!!」
ダークエルフ「陛下! すでに反乱軍は商業地区を制圧しております。すぐに反撃を!」
魔王「あ~はいはい、やりゃいいんじゃろ、やりゃあ」
ダークエルフ「ホッ・・・陛下がいれば、いくらミノタウロス軍といえど・・・」
姫「勇者さん、これなんかどうですか?」
勇者「これは、服というよりは、布切れですね! なんだか懐かしいです!」
魔王「おいこら小娘! わらわの勇者に触るでないわ」
姫「あら。勇者さんはあなたの着せ替え人形じゃありませんわよ?」
魔王「当たり前じゃ。着せ替えだけじゃなくてあんなことやこんなことも・・・ぐふふ」
ダークエルフ「あ、あの、陛下! できるだけ早目にご出陣を!」
魔王「いや待て、今すごくいいアイデアが思いついたんじゃ。のう勇者、ちこうよれ」
勇者「はーい!」
ダークエルフ「へ、陛下~っ!!」
ミノタウロス「なんだ、いったいなんの騒ぎだ」
反乱軍士官「それが・・・酔っ払いが暴れておるようでして」
女騎士「あろっ! あろあろあろっ!!」
反乱軍兵士「この女、フサゲおって!!」
女騎士「フンッ、どぇや!!」
反乱軍兵士「ガハッ・・・!!」
反乱軍士官「・・・あれでもう、二十人あまりがやられています」
ミノタウロス「あれは死んでも働かないクサレ騎士で有名な、女騎士ではないか。あんな才能があったとはな」
女騎士「オッ! 牛だ! ようやっとツマミが来たねえ~!!」
ミノタウロス「誰が牛だ! しかたない、ワシが直々にのしてやるわ」
反乱軍士官「お待ちください、将軍おん自らなど・・・ここはロボにやらせましょう」
量産型95号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
量産型51号「ゲンザイ ドクリツ カツドウ モード」
女騎士「ケッ、機械じゃ食えねえんだけどなあ~」
ミノタウロス「フム、面白い。生身の女騎士とロボット女騎士、どちらが勝つか・・・」
魔王「ほれできた!」
勇者「わあ」
姫「あらあら、これは・・・なかなか」
ダークエルフ「私には趣味の悪い衣装にしか思えませんが・・・」
魔王「ほう。これはわらわが若い頃の衣装なんじゃがな~、そうかそうか、趣味が悪いか」
ダークエルフ「えっ! い、いや、今のはですな・・・『スミに置けない』の間違いですな」
魔族士官「苦しいですなあ」
魔王「あああ、勇者がわらわの格好をしておるというこの背徳感~っ」
ダークエルフ「・・・」
魔王「何かゆったらどうじゃ、ン?」
ダークエルフ「お言葉ですが、なんて言えばいいんですかっ!?」
勇者「魔王さん、なんか僕、これを着てると・・・こう、ムズムズするような・・・」
魔族士官「ダニでも湧いてるんじゃないか」
魔王「ほう」
魔族士官「ピギャッ!! ・・・し、しどい」
勇者「んんん・・・なんか、すごいです・・・力が湧いてくるようなっ・・・!!」
姫「・・・!? 勇者さんの体からドス黒い光が・・・!」
量産型95号「ターゲット カクニン」
量産型51号「コウゲキ カイシ」
女騎士「ウィ~ッ、来いやポンコツども!」
量産型51号「ギュオオオオオオン!!」
女騎士「ゆらり」
反乱軍士官「!? あの動きでかわすか・・・」
ミノタウロス「ムムム。あれは理性のある人間にできる動きではない・・・恐怖も恥も外聞も忘れた者の動きよ」
量産型95号「ギュオオン!!」
女騎士「ひらり」
反乱軍士官「ですが、いくら避けようと鋼の装甲は貫けますまい」
ミノタウロス「ウム・・・だが・・・」
量産型95号「ギュギュギュ・・・ギュオオオオオオオオン!!」
量産型51号「ギュオオオオオオオオン!!」
反乱軍士官「に、二体同時・・・これは避けられまい!」
女騎士「オオアウッ!!」
ミノタウロス「!」
オーク「フム。なぜか女騎士さんがミノタウロス軍を止めているな」
ロボ女騎士「ガンバレ イモウトタチ」
オーク「さて・・・高見の見物もいいが、そろそろフィナーレの準備を始めるとしよう」
ロボ女騎士「モウ オワッチャウノカ マダ ジバク シテナイノニ」
オーク「何事にも始まりと終わりがある。そのいずれをも見届けられるのは幸運だ・・・」
量産型95号「ガ・・・ガガッ」
量産型51号「ギュオオ・・・ン・・・」
反乱軍士官「ま、まさか・・・相討ち! これを狙っていたと・・・!!」
ミノタウロス「ムムウ・・・女騎士! やはりただのグータラではなかったっ!!」
女騎士「ウヘヘ・・・ウィック! クイックイッ」
ミノタウロス「ム・・・! よかろう・・・今度こそワシが相手になるぞ」
反乱軍士官「・・・」
勇者「あははは! アーッハッハッハ!!」
反乱軍士官「!? 何奴!」
ミノタウロス「あれは・・・!?」
勇者「こんにちは! 僕、勇者ですっ! それじゃ、みなさん・・・死ねぇ!!」
反乱軍士官「ぐあっ! な、なんだこの魔力はっ!!」
ミノタウロス「あれは・・・陛下がまだ若くてピチピチだった頃の格好ではないか!」
魔王「ほう。では今はどうなのじゃ」
ミノタウロス「!!!」
ダークエルフ「い、いったい何が起こったのだ」
魔族兵士「勇者くんがいきなりわめきはじめたと思ったら、空を飛んで・・・」
姫「おそらくは、あの禍々しい衣装に込められた魔力と怨念のせいでしょう」
魔族士官「禍々しいというよりは、くさそうですな」
魔族兵士「陛下がいないからって・・・」
ダークエルフ「しかし、あの衣装が人間の体を操っているというのか」
姫「それだけではないはずです。勇者さん自身の魔力のポテンシャル・・・それが更なる力を与えている」
魔族士官「な、なぜそんなことまでわかるんです」
姫「あらやだ・・・ただの想像ですわ♪」
ダークエルフ「とにかく・・・経緯はどうあれ魔王陛下もとうとう出陣なされた。我らもお供するぞ!」
魔族兵士「オーッ!」
魔族士官「いよいよ決戦ですな!!」
つづく
勇者「あははは! 手ごたえがまるでないですね!!」
反乱軍兵士「ひええ、強いっ!」
反乱軍士官「全部隊、防御だ! ロボを前面に出して迎撃しろ!」
魔王「ミノタウロス・・・」
ミノタウロス「・・・」
魔王「ここまで来たからには、それなりの覚悟を決めておろうな。聞かせてもらおうか」
ミノタウロス「決起の檄文はご覧になられたはずだが?」
魔王「あんな雑兵向けの張り紙は読むに足らん。なにゆえ将としてのおぬしが反旗を翻したか・・・」
ミノタウロス「・・・。陛下は覚えておりませぬだろうな・・・」
反乱軍士官「回想に入るぞ! がんばって耐えろー!!」
勇者「アーハッハッハ、バターを熱したナイフで切るようですっ!! たのしーっ!」
量産型67号「ドカーン ヤラレタ」
反乱軍兵士「ひええーっ! 早目に終わらせてくださーいっ!!」
~回想フェードイン~
魔族士官「陛下、この者たちが今年の士官候補生であります」
魔王「ウム。おいおまえ、名を名乗るがいい」
ミノタウロス「ほ、本官は、ミノタウロスであります!」
魔王「はっはっは、そう慌てるでない。フム・・・しかし貴様、なかなか可愛い顔をしておるな」
魔族士官「あっ・・・(察し)」
ミノタウロス「あ、ありがとうございます、陛下。光栄です!」
魔王「時間があれば、ちょっと私の部屋に寄っていかんか?」
魔族士官「どうぞどうぞ。おい、他の者は私といっしょに来い! 急げ!」
ミノタウロス「陛下の御部屋に招待いただくなんて・・・」
魔王「うふふ、怖がるでない。楽しいことをするのだからな・・・」
ミノタウロス「モオオーッ!」
魔王「ふひひひ、こやつめ、いい声で鳴きよるわ!! オラオラッ!!」
ミノタウロス「ンモオオーッ!!」
~回想フェードアウト~
反乱軍士官「・・・」
反乱軍兵士「・・・」
ダークエルフ「・・・」
魔族士官「・・・」
ミノタウロス「あ、あのとき以来、私は女性恐怖症になり・・・この歳まで恋人の一人もできませんでした!!」
魔王「・・・」
ミノタウロス「あれからいったい何人の若者がその毒牙にかかったか! 陛下は覚えておられましょうか!」
魔王「・・・おまえは今まで食べたソーセージの数を覚えているのか?」
ミノタウロス「フザけないでいただきたいっ!!」
ダークエルフ「ひえっ・・・」
ミノタウロス「それに飽き足らず、今度は人間の少年を連れ込んでいるとか・・・これはもはや魔族の体面に関わるっ!!」
魔族士官「・・・」
ミノタウロス「これ以上魔族の品性と節度を汚す者を、軍の首級として掲げることは! 私の矜持が許さんっ!!!」
魔族兵士「・・・。気持ちはわからんでも」
魔族士官「なあ・・・」
ダークエルフ「あの猛牛将軍も昔は美少年だったのか・・・想像しがたい」
魔王「く・・・くくく・・・」
魔王「ふはは・・・ハハハハハッ!」
ミノタウロス「何がおかしいッ!」
魔王「フ・・・何もおかしくはないわ。道理だと思っただけじゃ」
ミノタウロス「なんだと・・・」
魔王「人をこれほどまでに強く突き動かすのは、理念や理想ではない。そうした個人的な恩讐というやつよな」
ミノタウロス「・・・」
魔王「よかろう! ならばわらわは、おぬしの憎しみも何もかも、すべて破壊しつくしてやろうっ!!」
ミノタウロス「!! ぐあっ・・・!」
反乱軍士官「閣下! 全軍、閣下をお守りしろーっ!!」
反乱軍兵士「おーっ!!」
ダークエルフ「ヤツらもあんな話を聞かされてなおついていくんだから、忠義があるよな」
魔族士官「というかカッコつけてますけど、陛下が全面的に悪くないですか、これ」
魔王「ほう」
魔族士官「ンガッ!! ・・・あ、あんまりだ」
ダークエルフ「だが、陛下とあの闇勇者、さらに我々の軍団が加われば・・・もはやミノタウロス軍は敵ではない!!」
あ、忘れてたけど、今回は食事中の人はちょっとだけ注意な
ゴブリン「はあっ、はあ・・・あ、あれだ。本当にミノタウロス将軍の軍隊が・・・」
女騎士「・・・」
ゴブリン「あ、女騎士さん! もしかして女騎士さんも戦いに?」
女騎士「・・・」
ゴブリン「あの、女騎士さん?」
女騎士「ウッ・・・」
ゴブリン「う?」
女騎士「ウプッ・・・オエッ! ボエッ! ゴベエエ!!!」
ゴブリン「わーっ!! きったねーっ!! ゲロ吐いた!!!」
女騎士「ゴエッ、ンボェッ。アー、ハアー・・・ンップ! オボエエエエ」
ゴブリン「あー・・・あーもうなんなのコレ・・・この人女騎士だよね・・・」
女騎士「エッ、アエッ。ゴホッ、ゲホッ・・・ハアー、きもちわりぃ」
ゴブリン「それはボクのセリフですよっ!!」
勇者「アハハ! ロボットがいっぱいだあっ!!」
量産型47号「ウワー ヤラレター」
魔王「わらわも遠慮せずにいくぞぉ!」
反乱軍兵士「ひぃーっ!」
ダークエルフ「投降する者は攻撃するな! 抵抗する者は徹底的にブン殴れ!!」
反乱軍士官「うぐぐ・・・まさかこれほどまでに押されるとは・・・」
ミノタウロス「・・・。ここまでだな」
反乱軍士官「!! か、閣下」
ミノタウロス「兵は皆よくやった。ワシにもう少し力があればな・・・」
反乱軍士官「・・・」
無線『・・・ならば、その力を授けましょう』
ミノタウロス「・・・!? その声、オークか・・・!」
無線『閣下、残ったロボをお借りします。もうしばらく、兵たちだけで耐えてください』
ミノタウロス「・・・。もはや頼りはおまえだけだ、好きにするがいい・・・」
無線『ありがとうございます。しかし、それなりに期待していただいて結構。仇花にはさせませんよ』
ミノタウロス「・・・。皆の者! まもなく最後の増援が到着するぞっ、踏ん張れ!!」
量産型75号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
量産型12号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
量産型20号「ウィーン ガシャ ウィーン ガシャ」
オーク「残存数は70機余りか。これに密かに追加生産した50機を合わせれば・・・いけるな」
ロボ女騎士「イッタイ ナニガ ハジマルンデス」
オーク「ロボ女騎士シリーズの真の姿を見せてやろう」
後期量産型101号「ウィーン ガシャ」
後期量産型102号「ウィーン ガシャ ハイチニ ツキマシタ」
オーク「よし、始めるぞ」
ロボ女騎士「ワクワク」
オーク「キャリブレーション取りつつゼロモーメントポイントおよびCPGを再設定、
疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結。
ニュートラルリンケージネットワーク再構築、メタ運動野パラメータ更新。
フィードフォワード制御再起動。伝達関数、コリオリ偏差修正。運動ルーチン接続、
システムオンライン。ブートストラップ起動」
ロボ女騎士「ニホンゴデ オk」
オーク「全システム、オールグリーン。全機、合体プロセス始動!!」
ミノタウロス「フンッ、フウンッ!」
魔族兵士「ぐわーっ!!」
ダークエルフ「将軍! どうか投降してください!」
ミノタウロス「ワシが投降することはありえんっ! 己の行為の先にあるのはその始末のみっ!!」
姫「どこかの国王と違って潔いですわねえ。ここは一思いに」
ダークエルフ「し、しかし・・・」
勇者「アーッハハハハハ!! 牛さんだぁーっ!!」
ミノタウロス「!!」
反乱軍士官「閣下っ!! ・・・ぐふっ・・・」
ミノタウロス「クッ・・・! くそおおおお!!」
魔王「フン、大勢は決したか・・・ン!? なんじゃあれは」
ダークエルフ「あ・・・あれは? 竜巻・・・いや、違う!」
魔族士官「人のかたちをした・・・巨人・・・!?」
ゴブリン「あ・・・あ・・・あれは!!」
女騎士「水をくれえ~、きもちわりぃよぉ~」
ゴブリン「あれは・・・超大型の・・・ロボ女騎士・・・さん!?」
魔族兵士「な・・・なんてこった。空が三分でロボが七分だ」
オーク『そのとおり。全高200メートル、総重量1500トンの超弩級巨大兵器だ・・・』
ダークエルフ「オークだと!? そ、そんなバカな・・・いったいどこにそんなものを」
オーク『総計120機のロボ女騎士が合体したのです』
ダークエルフ「えっ? いや、ちょっと待てよ、あのサイズのが120機いても、えーっと」
オーク『こまけぇこたぁいいんだよ』
ダークエルフ「あ、は、はい・・・」
魔族士官「なんでかしこまってるんですか」
オーク『念のため警告しておきますが、多少の攻撃はこれには効きませんよ』
魔王「ふふ・・・最後の最後に、面白いものを持ってきたのう、オークよ」
オーク『恐れながら、陛下の魔法もこの質量の前には水鉄砲同然です』
魔王「では試してみるとするか! アホチャイ・マンネン・パーデンネン(呪文)!!」
オーク『・・・ぬるいですな』
ダークエルフ「・・・!! 陛下の最大級の戦術攻撃呪文・・・その直撃に・・・耐えただとっ!?」
魔王「・・・」
オーク『お遊びはここまでにしましょう・・・攻撃を開始します』
つづく
巨大ロボ女騎士「ヴィーン ズズン ヴィーン ズズン」
魔族兵士「う、うわーっ! 踏み潰されるぞー!!」
ダークエルフ「これはいかん! モブ兵士ではとても相手にならんぞ」
魔族士官「いったん撤退しましょう!」
ダークエルフ「しかし、撤退したところであれを倒す方法があるのか・・・!?」
勇者「あははは! また大きいのが来ましたね!!」
姫「勇者さん・・・」
ダークエルフ「彼ならやってくれるか」
ロボ女騎士(サブフライトシステム)「ソウハ イカネエ」
魔族士官「あ、あれは・・・」
ダークエルフ「ロボ女騎士! だが合体していないぞ」
姫「どうやらその代わりに、飛行ユニットとビーム兵器を装備したようですね」
魔族兵士「なんでそんなことが一目でわかるんですかね・・・」
姫「女の子の想像力ですわ♪」
勇者「あーん、うるさいハエです!!」
ロボ女騎士(SFS)「オット ドチラカト イエバ ハチ ナンダナ コレガ ギュオオオン!!」
ゴブリン「ダークエルフさーん!」
ダークエルフ「おお、ゴブリン。すっかり忘れてた」
ゴブリン「この際その扱いはどうでもいいです! いったい何がどうなってるんですか」
ダークエルフ「目下の問題はオークの操るあの巨大ロボ女騎士だ」
女騎士「ウエッ・・・エッ、頭いてえ・・・」
ダークエルフ「さらにオリジナルのロボ女騎士が高機動装備を得て護衛についている・・・」
ゴブリン「文字通り鉄壁の布陣ですね」
ダークエルフ「おまえも何かパワーアップとかしないのか」
ゴブリン「えっ!? もしかしてボクにも出番があるんですかね」
ダークエルフ「いや、聞いてみただけだが」
ゴブリン「・・・」
姫「飛んでいる方はともかく、大きな方はなかなか難敵ですわね」
ダークエルフ「ウム・・・ここは陛下に・・・あれ? 陛下はどうした」
魔族士官「えっ、さっきまでこちらにおられましたが・・・」
ダークエルフ「こ、こんなときに・・・!」
魔王「うふふ・・・オークめ、期待以上に楽しませてくれるわ」
コンソール『生体認証確認。ようこそ、魔王陛下』
魔王「とうとうこれを使うときが来たか・・・おまえたち、目覚めるがいい!!」
人工知性A『お呼びでしょうか、陛下』
人工知性B『準備はすでにできております』
人工知性C『どうぞご命令を』
魔王「フ・・・1000年前の大戦(←二度と出てこない設定)の遺産か。よくも物持ちしたものだ」
人工知性A『恐れ入ります』
魔王「よろしい、では始めよう・・・マクロス! じゃない、魔王城! バトルモードッ!!」
ダークエルフ「陛下はいたか!?」
魔族兵士「ど、どこにもいらっしゃいません!」
ダークエルフ「ぬうう・・・まさか逃げ出すような人でもあるまいが・・・」
巨大ロボ女騎士「ヴィーン ズズン ヴィーン ズズン」
魔族士官「まずいですぞ、このままでは魔王城に突っ込みます」
ダークエルフ「しかし、もはやどうにも・・・ムッ!?」
ゴブリン「じ、地震だ!」
姫「きゃー、ダークエルフさまっ!」
ダークエルフ「ひ、姫、こんなときに・・・あ、あれは!?」
魔族兵士「魔王城が・・・!!」
魔族士官「空中に浮き上がっているっ!?」
ダークエルフ「終盤だからってなんなんだこの展開はーっ!?」
人工知性A『魔王城、バトルモード展開完了』
人工知性B『前方1000メートル、敵性巨大機動兵器を確認。識別パターン青』
人工知性C『主砲、射撃準備完了まであと120秒』
魔王「よーし、それまでは通常兵器で応戦する。ミサイル全門発射!」
人工知性A『申し訳ありませんが、ミサイルは長年のメンテナンス不足のため、発射できません』
魔王「ずっこけ! だったらなんでもいいから撃て!」
人工知性B『射撃兵器は主砲を除き、経年劣化による爆発の危険性があります』
魔王「なんじゃそれは! やる気あんのか!?」
人工知性C『なお、メンテナンスの責任者は歴代魔王陛下となっております』
魔王「・・・。ええい、だったら、肉弾戦じゃ! 巨大ロボのロマンじゃーっ!!」
人工知性C『了解。突撃を開始します』
ゴブリン「ひ、ひえーっ・・・魔王城が人型ロボットになっちゃった・・・」
魔族兵士「もはや何でもありですな」
ダークエルフ「まさか、あれを操っているのは魔王陛下なのか・・・」
姫「うふふ、それ以外に誰がおりましょう」
魔族兵士「あっ・・・ま、前に進み始めましたぞ」
魔族士官「なんかこう、空を飛んでるアレみたいにビームとかないのか」
ミノタウロス「馬鹿者! 男なら男らしく肉弾戦だ!」
ダークエルフ「あれ、閣下、もういいんですか」
ミノタウロス「あんなデカブツを見てたら、下でチマチマ戦うのがバカらしくなったわ」
姫「それに、部下の方も心配でしょうしね。ふふ」
反乱軍士官「・・・閣下、面目ありません」
ミノタウロス「おまえたちはよくやってくれた。後は・・・あの男たちはどこまでやるつもりなのか・・・」
ゴブリン「陛下は女性なんですけどね・・・」
オーク「ふむ・・・これが伝説の超魔法要塞・魔王城か。噂通りの威容だな」
管制システム『敵接近、前方800メートル。衝突マデ5秒』
オーク「やれやれ、スケールが大きくなってもやることは同じか・・・接近戦に備えろ!」
管制システム『了解。接近戦用意』
オーク「まがりなりにも、魔王陛下と拳を交えることになろうとはな・・・。・・・願ってもない機会だ」
ゴブリン「あーっ、魔王城と巨大ロボ女騎士さんが・・・ぶつかりますっ!」
ダークエルフ「・・・!」
魔王城戦闘モード「ズズー・・・ン」
巨大ロボ女騎士「ドオ・・・ン・・・」
魔族兵士「・・・」
ミノタウロス「・・・。思ったより地味だな」
反乱軍士官「まあ、サイズがサイズですから、あまり高速では打撃できないでしょう」
姫「しかも質量も装甲も同じくらいですしね。なかなか決着はつきそうにありませんわねえ」
勇者「落ちてくださーい、このカトンボさーんっ!」
女騎士ロボ(SFS)「マアイガ アマイゾ ボウズ」
魔族士官「あっちの方が見てて面白いですね」
ダークエルフ「うーん・・・見世物じゃないんだがなあ」
魔王「ちいい、さっさと腕を引かんか! 一発殴るのにどれだけかかっておる」
人工知性A『一発殴るだけでも物凄いエネルギーを消費するのです』
人工知性B『さらに引く際にも、何百トンもの質量を移動させるエネルギーが必要です』
魔王「理屈はどうでもいいわ! もっとパーッといかんのか、パーッと!」
人工知性C『主砲、MAOHキャノンのエネルギー充填がまもなく完了します』
魔王「おーっ、それは凄そうな装備じゃの。準備が出来次第、ぶっぱなせ!」
人工知性A『了解しました』
オーク「ムウ・・・さすがに魔王城相手では、この巨大兵器も簡単には勝たせてもらえないか」
管制システム『完全勝利ノ可能性、95パーセントノ戦術ヲ提示シマス』
オーク「・・・。確かにこれなら勝てる・・・が、これは最後の手段だな」
管制システム『敵機動兵器ノ中心部ニ、高エネルギー反応ヲ検知』
オーク「ふ・・・とはいえ、最後の手段を使う時も、そう遅くはならないようだ・・・」
魔族士官「おい、重傷者を優先して運べ。反乱軍も区別するな」
反乱軍兵士「うう、すまんな・・・」
魔族兵士「もう終わったことだ。明日からはまた同じ魔王軍だろ」
ダークエルフ「やれやれ、もう一段落着いた感じですな」
ミノタウロス「とはいえ、あの二体のケリがつくまでは、収まりがつかんだろう」
反乱軍士官「もしオーク様が勝つようなことになったら、どうなるでしょう・・・」
ミノタウロス「さてな。あの男は何を考えているのかわからんフシもある・・・」
ゴブリン「それは本当にそうですね!」
姫「勇者さんと小さいロボ女騎士さんも、決着がつきませんねえ」
勇者「こらーっ!! 勝負してくださーい!!」
ロボ女騎士(SFS)「アタラナケレバ ドウトイウ コトハ ナイ」
ゴブリン「ロボ女騎士さーん! 避けてばっかりじゃ戦いは終わりませんよー!」
魔族士官「いったいこれからどうなるんでしょうな・・・」
人工知性A『MAOHキャノン、エネルギー充填完了』
魔王「お~しおしおしおし、ついに来たなあ。で、それはどんな兵器なんじゃ」
人工知性B『Mものすごく Aあつい Oおゆを Hはっしゃする キャノンです』
魔王「あばばばーっ!! ナメてんのか貴様らーっ!!」
人工知性C『このネーミングは初代魔王陛下によるものですので、我々に責任はありません』
人工知性A『それに、単に熱いと言っても、瞬間最大熱量は一兆度に達する超高エネルギー水鉄砲です』
魔王「お、おお。そう聞くとなんだか光の巨人も倒せそうな気がするな」
人工知性B『では、ご命令を』
魔王「よぉお~し、MAOHキャノン、ターゲット照準っ! 目標、巨大ロボ女騎士っ!!」
管制システム『警告。敵機動兵器ヨリレーザー照準ノ照射ヲ確認』
オーク「来たな、こちらも最終破壊プロセスを開始しろ。62秒でケリをつける」
管制システム『了解。ツイニソノ時ガ来タ』
オーク「うむ。プロセス105から221はカット、安全性の確保は無視して各フェイズを進めろ」
管制システム『敵機動兵器内部デ熱量ノ収束ヲ確認、攻撃ノ最終準備行動ト思ワレマス』
オーク「・・・突撃だ。全速前進して魔王城に組み付け!」
人工知性A『ターゲット補足完了。誤差修正、水平方向にゼロコンマ66、垂直方向にゼロコンマ90』
人工知性B『MAOHキャノン、射撃準備よろし』
魔王「くくく・・・オークよ、これで終わりじゃな!」
人工知性C『敵機動兵器、本城へ向かって接近、なお前進中』
魔王「なんじゃと!? この期に及んで・・・」
人工知性A『この距離で射撃すると、MAOHキャノンが本城にも被害を及ぼします』
魔王「構わぬ! あの敵を倒せればそれでよい! MAOHキャノン、てええーっ!!!」
ダークエルフ「ムッ? 魔王城の中央部に光が・・・」
ゴブリン「あっ、これはあれですよ、ビーム砲です!」
魔族士官「サングラスとかかけないで大丈夫ですかね・・・うおっ!」
ミノタウロス「お、おお・・・光が巨大ロボ女騎士を・・・」
反乱軍士官「直撃・・・決まったか」
ゴブリン「ロボ女騎士さんはああいうのないんですかね?」
ダークエルフ「それをオレたちに撃たれたらどうするんだよ・・・」
姫「あら? 雨でしょうか」
ダークエルフ「ん? おかしいな、空は晴れて・・・あれ、なんか冷たくない雨だな」
ゴブリン「と、と、というか、熱くないですか? あ、あぢっ、うおあっ!!」
魔王軍兵士「熱っ、あっつ!! さっきのビームはお湯か何かか!」
反乱軍士官「阿呆、お湯を発射するロボットがいるか。おそらく熱線の高熱で空気中の水蒸気が・・・あちちっ!!」
姫「えいっ! 防御シールドですわ」
ゴブリン「あっ、そういえば姫さまは魔法陣も使えたんでしたね」
姫「うふふ、さっきも本当は戦いたくてたまらなかったのですけど・・・魔族の方の内々のことですので」
ダークエルフ「・・・。お心遣い、痛み入ります・・・」
魔王「おい、味方にも被害が出ておるではないか」
人工知性A『想定の範囲内です。射出量のうち極微量は周囲に飛散する仕様です』
魔王「撃つたびに熱湯の雨を降らせていては味方もたまらんぞ」
人工知性B『破壊力は格段に落ちますが、冷水で発射することもできます』
魔王「・・・。なんかこう、あの赤と青のカランを思い出すのう」
人工知性C『仕組み的にはほぼ同様です』
魔王「なんだか初代魔王に対する敬意が・・・まあいいわ、戦果はどうじゃ」
人工知性A『敵機動兵器からの反撃の兆候はありません』
人工知性B『熱反応の計測結果から、動力炉に決定的打撃を与えたと推測されます』
魔王「ふふ・・・上出来じゃ。さあどうする・・・オークよ」
ここまで 寝る前にもうちょっと落とす予定
オーク「ぐ・・・さすがは魔王の城・・・すさまじい威力だ」
管制システム『警告、警告。エネルギー炉ニ致命的損傷。全体ノ32パーセントノブロックガ壊滅状態』
オーク「・・・。最終破壊プロセスはどこまで進んでいる」
管制システム『現在フェイズ6マデ完了、フェイズ7ヲ進行中』
オーク「よし、プロセス7058から7999までをカット、フェイズ8と9をまるごとカットしろ」
管制システム『ソレデハ爆発エネルギーノ充填ガ不十分デス』
オーク「かまわない。下半身部分をパージし、上半身部分だけでも魔王城に喰らい付くぞ」
管制システム『左腕ブロックノ反応ガアリマセン』
オーク「なら、右腕だけでもいい。なんとしても、爆発有効圏内に魔王城を取り込め!」
管制システム『了解。前向キニ善処シマス』
ロボ女騎士(SFS)「ムッ」
勇者「わわっ! 急に止まらないでください!」
ロボ女騎士(SFS)「ボウズ オアソビハ オワリダ ソロソロ ワタシモ イカナクテハ」
勇者「ふふ・・・今の僕をなめてもらっては困りますっ!」
ロボ女騎士(SFS)「キュピィーン ソコッ」
勇者「!! そんな・・・一撃で・・・直撃・・・!」
ロボ女騎士(SFS)「フッ キュウショハ ハズシタ アンズルナ」
勇者「う・・・ぐう・・・がはっ」
ロボ女騎士(SFS)「アレッ オモッタヨリ イタソウ」
勇者「・・・」
ロボ女騎士(SFS)「オーイ ゴブリン ソイツ テアテシテ ヤッテネー」
ゴブリン「えっ? わ、わーっ、空から勇者さんがーっ!」
姫「フウンッ! ・・・危ない危ない」
勇者「うーん・・・」
ミノタウロス「・・・おぬし、そんな細い身体でよくやるな」
姫「パワーが団地妻ですわ♪」
ダークエルフ「おい、医療班! 彼を治療してやってくれ!」
反乱軍士官「閣下、あれを・・・巨大ロボ女騎士が火を噴いています!」
ミノタウロス「動きが鈍くなっておるな、動力炉に一撃をもらったのかもしれん」
魔王軍士官「これは・・・勝負ありましたかな」
ダークエルフ「オーク・・・今ならまだ間に合う。脱出しろ!」
管制システム『フェイズ10、進行率57パーセント、残リ32秒』
オーク「よし、右腕をロケットモードで放て。同時に下半身パージ、背部スラスター全開、いけるな」
管制システム『了解、命令ヲ遂行シマス』
人工知性A『警告、敵機動兵器の腕部が超高速で接近。回避不能』
魔王「なんじゃと・・・うおっ! や、奴め、まだやる気か」
人工知性B『腕部攻撃による損害は軽微。敵機動兵器、腰部関節に断裂発生』
人工知性C『敵、背部加速装置に熱量確認。腕を軸にこちらへ突撃してくるつもりです』
魔王「なに・・・下半身を捨てて、いったい何をするつもりじゃ。体当たりしたところで・・・」
人工知性A『緊急警告、敵機動兵器中心部に超高熱源反応』
人工知性B『99.8パーセントの確率で、自爆するものと思われます』
魔王「!! ば・・・馬鹿な! 回避しろ!」
人工知性C『回避不能』
魔王「ぐ・・・。・・・MAOHキャノン、現在の充填出力で構わんから射撃しろ! コクピットを狙え!!」
人工知性A『了解。MAOHキャノン、出力16パーセント。誤差修正・・・発射』
管制システム『フェイズ10、進行率92パーセント、残リ7秒。6、5・・・』
オーク「・・・終わりか」
管制システム『警告、敵ノ高エネルギー攻撃ヲ確認。至近、回避不能』
ダークエルフ「巨大ロボ女騎士が・・・!」
姫「取り付いて自爆するつもりですわね」
ゴブリン「えーっ!!」
ミノタウロス「いかん、あれでは陛下もタダではすまんぞ」
反乱軍士官「・・・しかし、我々にはどうすることも・・・」
魔族士官「あっ! ま、また光が・・・」
ダークエルフ「ロボの頭部に・・・!!」
つづく あと1回か2回で終わる(気がする)
オーク「・・・ぐ・・・空が、見えるな」
管制システム『ザザッ・・・警告、第一カラ第八マデノ装甲板ガ融解、極メテ危険ナ状態デス』
オーク「直撃・・・やられたか・・・」
管制システム『フェイズ10、進行率100パーセント』
オーク「・・・。コンソールが破壊された・・・これでは自爆は無理だ」
管制システム『命令ヲ頂ケバスグニデモ自爆デキマス』
オーク「これだけは手動による操作でなければダメなんだ。僕がそう作った・・・」
管制システム『ナント。ウーム、残念』
オーク「僕も詰めが甘かったということだ。・・・すまんな、ロボたち・・・本懐を果たせずに」
管制システム『長イ人生、ソウイウコトモアル』
オーク「ふ・・・そうだね・・・」
人工知性A『敵機動兵器、完全に沈黙しました』
人工知性B『高熱源反応は未だに存在するものの、自爆する兆候はありません』
人工知性C『敵パイロットも生存しているようです』
魔王「・・・。ふうう・・・なんとかなったようじゃな」
人工知性A『ただいまの射撃で魔王城の全エネルギーを使い果たしました』
人工知性B『再稼動まで、あと300秒かかります』
魔王「かまわんかまわん。もう戦いは終わったのじゃ。わらわの大勝利でな!」
ダークエルフ「・・・」
ミノタウロス「・・・」
ゴブリン「・・・。動きが止まった・・・」
反乱軍士官「終わった・・・のですかな」
ダークエルフ「オーク・・・」
ミノタウロス「・・・まだ奴が死んだとは限らん」
姫「そうですわね。巨大ロボ女騎士さんも頑丈ですもの」
ゴブリン「そうですね・・・」
ミノタウロス「ダークエルフよ、後の始末を頼む」
ダークエルフ「ハ・・・」
ミノタウロス「ワシは直々に、陛下の裁きを受けねばならんからな・・・」
反乱軍士官「閣下・・・」
魔族士官「お・・・おい、見ろ。魔王城が傾いているぞ」
ダークエルフ「なに・・・!?」
魔族兵士「まさか・・・倒れる!?」
魔王「ど、どうなっておる。早く体勢を立て直さんか」
人工知性A『現在、本城のメイン動力炉の出力は3.34パーセントです』
人工知性B『大質量の敵機動兵器が取り付いているため、姿勢制御のパワーが足りません』
魔王「なにぃ!? だったら倒れるしかないということか」
人工知性C『はい』
魔王「はいじゃなかろうが! なんとかせい!!」
人工知性A『あと220秒で必要な出力が確保できます』
人工知性B『転倒しても後で起き上がることはできますので』
魔王「あ、そうなのか。じゃあしょうがないか・・・かっこわるいけど・・・」
人工知性C『なお、このまま転倒した場合、魔王城の城下町が壊滅します』
魔王「ああ、城下町が・・・って、なななな、なんじゃとっ!?」
魔族兵士「まずいぞ、あの方向には城下町がある! あそこには民間人が残っているのに・・・」
魔族士官「す、すぐに避難を勧告しなければ!」
姫「遅いですわね。私どもが到達するころには魔王城は倒れてしまいますわ」
ダークエルフ「そんな・・・! なんてことだ・・・」
ミノタウロス「臣民を巻き込むのは我らの本意ではない! なんとかならんのか!?」
ゴブリン「そうはいっても、巨大ロボ女騎士さんも停止した今、あの魔王城を止めるなんて・・・」
ロボ女騎士(SFS)「ソコデ ワタシノ デバンダ」
ダークエルフ「ろ、ロボ!? おまえ・・・」
ロボ女騎士(SFS)「ヒーローハ オクレテ ヤッテクル モノサ」
ゴブリン「でも、いくらロボ女騎士さんでも、どうやってあれを・・・」
ロボ女騎士(SFS)「マア ミテイロ」
女騎士「頭が割れる・・・水ぅ・・・」
ロボ女騎士(SFS)「オイ ソコノ ヨッパライ オマエモ コイヤ」
女騎士「なんだ、ポンコツ・・・あっ、なんか浮いてる・・・おあーっ!?」
ロボ女騎士(SFS)「ユラスナヨ オチルゾ」
ダークエルフ「ま、待て、ロボ! どうするつもりだーっ!?」
オーク「くっ・・・腕を解けば離れるはずだ。ブロックごとパージしろ」
管制システム『メイン及ビサブ動力炉ガ破壊サレタタメ、エネルギー伝達系ガダウン。制御ハ不可能』
オーク「・・・。ここまでは計算していなかった・・・」
管制システム『敗北ソノモノハ計算ニアッタノカ』
オーク「自分にできることと、そうでないことの区別くらいはついていたさ・・・んっ?」
管制システム『警告。高速デ飛来スル小型飛行物体ヲ探知』
オーク「あれは・・・ロボ女騎士?」
ロボ女騎士(SFS)「マタセタナ アイボウ ソレニ イモウトタチ」
女騎士「ウエッ・・・オエッ! 吐きたいのに吐くモンがねえ・・・」
オーク「どうするつもりだ、ロボ」
ロボ女騎士(SFS)「ワスレタカ ワタシニ ジバク キノウヲ トウサイ シタノハ オマエダゾ」
オーク「・・・まさか・・・」
ロボ女騎士(SFS)「ワタシガ ジバク スレバ ホカノ ロボモ レンサハンノウデ バクハツ スルダロウ」
管制システム『確カニ、量産型ニモソレゾレニ自爆システムト爆薬ガ搭載サレテイル』
オーク「巨大ロボとして自爆できなくとも、合体した個々の機体が爆発すれば分離できることに変わりはないか・・・」
管制システム『サスガ オ姉サマ』
ロボ女騎士(SFS)「ダテニ トシハ クッテナイゼ」
オーク「・・・。だが・・・それではロボも量産型たちも・・・」
ロボ女騎士(SFS)「オーク ワタシハ コノトキノ タメニ ウマレタノダ」
オーク「・・・」
ロボ女騎士(SFS)「マシテ ヒトゴロシ デハナク ヒトダスケノ タメニ チレルナラ イウコトハ ナイ」
管制システム『私達モ同ジ意見ダ』
オーク「おまえたち・・・」
女騎士「ロボのくせに・・・泣かせやがるぜ」
ロボ女騎士(SFS)「デハ オーク オマエハ ダッシュツ シロ」
オーク「・・・」
管制システム『我々ノ爆発デ、一人タリトモ犠牲ヲ出スコトハ許サレナイ』
ロボ女騎士(SFS)「ソウダ ナニヨリ オマエハ ワレワレノ ソウゾウシュ ナノダカラナ」
オーク「・・・」
ロボ女騎士(SFS)「カミハ カミトシテ スベテヲ ミトドケル ギムガ アル」
オーク「ふっ・・・言うようになったな、ロボ」
ロボ女騎士(SFS)「ヨキ テホンニ メグマレタ ユエダ」
女騎士「そうだな」
ロボ女騎士(SFS)「オマエハ サイコウノ ハンメン キョウシ ダッタゾ」
管制システム『オ姉サマ、モウ時間ガナイ』
ロボ女騎士(SFS)「ウム」
オーク「だが、ここから脱出するのもそう簡単なことではないぞ」
ロボ女騎士(SFS)「ソノタメニ コノ ノンベエヲ ツレテキタ」
女騎士「ふっ・・・わかってるぜ。ここで女騎士さんに謎の力がみなぎり、ロボを押し戻す」
ロボ女騎士「アホカ オマエハ コノ フライトユニットヲ ツケロ」
女騎士(SFS)「あ? なんだこれは」
ロボ女騎士「ヤッパリ タイケイハ アッテタナ ピッタリダ」
女騎士(SFS)「それについてなんだが、よく考えると私は重厚な鎧を着込んでるわけだよな」
オーク「そういう問題ですか」
オーク「じゃあ女騎士さん、この飛行ユニットでうまく飛んで、地上に降りてくださいね」
女騎士(SFS)「あおん!? こんないかがわしい機械を練習もなしに、しかも豚を背負っていけるわけねえだろ!」
オーク「心配しないでも、失敗しても死ぬだけです」
女騎士(SFS)「まだ死にとうないわ! だいたいあれだろ、ダークエルフならワープできるだろうが!」
ロボ女騎士「ラスト クライ オマエニモ ミセバヲ アタエテヤル キヅカイヲ ワカレヨ」
女騎士(SFS)「ロボに同情された!? くっ・・・殺せ」
オーク「大丈夫ですよ。女騎士さんは殺しても死なない主人公ですから」
女騎士(SFS)「えっ、そうか。やっぱり私が主人公なんだな」
オーク「せめて最後くらいはそれらしいところを見せてください」
女騎士(SFS)「よーし、それじゃ行くぞ! 主人公なら死ぬはずがないからな!!」
ロボ女騎士「ヤハリ アホハ サイゴマデ アホダッタ」
オーク「・・・。・・・ロボ・・・さよなら」
ロボ女騎士「ウム オワリハ イツモ サミシイ モノダ」
管制システム『デモ私タチハ、一人ジャナイ』
オーク「そうだな。おまえたち、今度はもっと美人に作ってやるからな」
ロボ女騎士「タノシミニ シテ イヨウ」
管制システム『サア、ゴ命令ヲ』
オーク「・・・。自爆しろ、ロボ女騎士たち! 誰の目にも見えるほどに盛大に!!」
管制システム『了解。行キマショウ、オ姉サマ』
ロボ女騎士「エエ ヨクッテヨ」
ロボ女騎士「ユービロントゥミー サヨナラ イエナクテ
イツマデモ ダキシメタカッタ」
女騎士(SFS)「おああああああああ止まんねええええええええええええええええええ!!!」
管制システム『I belong to you 張リ裂ケソウニナル
コノ胸ヲ 君ニ差シ出シテ』
オーク「落ち着いてください。要はヘリコプターと同じです」
女騎士(SFS)「んのあああああああああヘリも乗ったことねえええええええええええええ!!!」
ロボ女騎士「ウィービロントゥアース ハルカナ ソラノモト
コバルトニ ヒカル チキュウガ アル」
管制システム『悲シミハ ソコカラ 始マッテ
愛シサガ ソコニ 帰ルノサ』
女騎士(SFS)「ああああああああああああああああメビウスの輪からあああああああああああ」
オーク「いくつもの罪を・・・繰り返す・・・平和より自由より正しさより・・・」
ロボ女騎士「キミダケガ ノゾム スベテダカラ
ハナレテモ カワッテモ ミウシナッテモ ・・・」
管制システム『輝キヲ 消サナイデ ・・・』
反乱軍士官「!! ロボが・・・巨大ロボ女騎士が大爆発を起こしています!」
姫「これは・・・量産型ロボの自爆が集中してオーバーロードしているのです。なのに、恐怖は感じない・・・」
ダークエルフ「・・・むしろ暖かくて、安心を感じるとは・・・」
ゴブリン「オークさんが・・・」
魔族兵士「巨大ロボ女騎士が魔王城から離れていきます・・・!」
ミノタウロス「そんな馬鹿な・・・!」
魔族士官「魔王城、姿勢制御開始。確実に転倒から回復します!」
勇者「魔王さーんっ!!」
魔王「・・・You can change your destiny・・・時の向こう」
勇者「魔王さん・・・?」
魔王「You can change your future、闇の向こう・・・」
勇者「・・・We can share the happiness、捜してゆく・・・」
魔王「許し合えるその日を・・・。・・・綺麗じゃないか、奴の花火は・・・」
勇者「・・・。そうですね・・・」
(C)TM NETWORK
それから1か月後・・・
ゴブリン「前略 マイハニーへ
僕は元気です。あのクーデター騒ぎからようやく日常が戻ってきたようです。
このニュースはもうそちらに届いているでしょうか。
なんと、あの魔王陛下が退位を宣言されたのです。
退位に伴い、クーデター事件で死罪を言い渡されたミノタウロス元将軍以下、
元反乱軍の士官すべてに恩赦が下されました。
もちろんその中には、僕の上司であるオークさんも含まれています。
もっと信じられないことに、次の魔王にはダークエルフさんが就くことになりました!
クーデター鎮圧の功が評価されたそうですが、僕にはやっぱり信じられません。
あのダークエルフさんを魔王陛下と呼ばなきゃいけないなんて!
むしろ王妃様の方が魔王らしいんじゃないでしょうか。
そうそう・・・もうすぐ、クーデターの後処理でお流れになっていた結婚式があるそうですよ。
そのときは、キミもこっちに来てくれるといいなあ。」
ゴブリン「恩赦を受けたミノタウロス元将軍は、元反乱軍士官の女性と結婚して、
田舎で畜産業を営むそうです。牛を飼うのかどうかは知りません。
魔王陛下、もう元魔王陛下ですが、あの方は勇者くんと一緒に
人間の国に住むことにしたそうです。人が変わったように
温厚な女性になっているそうですよ。きっと、夜に備えているためでしょう。
オークさんは、恩赦の翌日から何事もなかったかのように出勤して、
みんなを(僕もです)驚かせました。相変わらずの優秀さで、
なぜこの人がクーデターに参加したのか、僕にはいまだにわかりません。
たぶん、僕なんかにはわからない理由なんでしょう。
そして女騎士さんは、相変わらず昼まで寝てはお酒を飲んでいます。
僕は女騎士さんに代わる呼び方を考えた方がいいと思っています。
でないと世の中の他の女騎士さんに失礼だと思いますから。
たとえば、『ダメオヤジ騎士』とか『女も騎士もやめた女騎士』とか、ぴったりじゃないでしょうか。
それで、僕はと言うと・・・」
魔族兵士「ゴブリン様ー!」
ゴブリン「ふう・・・久しぶりに手紙を書くと疲れるなあ。どうした?」
魔族兵士「ゴブリン様、ガレキの撤去作業は昼までには完了しそうです。ようやく商業地区の再建に移れますな」
ゴブリン「わかった、もう少しがんばってくれ。・・・やれやれ、ゴブリン様だなんて。慣れないよなあ」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ゴブリン「ん、どうしたロボ。何を持ってるんだい」
ロボゴブリン「ゴブ」
ゴブリン「こ、これは・・・まさか!」
電話『・・・そうか。では、そちらもうまくやっておるのだな』
オーク「そうですね。予想していたよりは波風は小さく済んだようです」
電話『ふ・・・あの巨大ロボといい、おまえがどこまでを見越していたのか、私にもわからんわ』
オーク「大きな予想外の一つは、貴女の御動向ですよ」
電話『・・・』
オーク「不満分子を扇動してあぶり出し、まとめて粛清する・・・それは貴女のためだったはずだ」
電話『結果としては同じだ。ただその恩恵を受ける者が変わっただけでな』
オーク「では、今そちらにおられることも、初めからの御意思であったと?」
電話『そうではない。気分だよ、気分』
オーク「・・・」
電話『どうも、あの大仕事を終えたら、どっと疲れてしまってな。もうよかろうと思ったのだ』
オーク「そうですか。個人的には、貴女に仕える方がよかったのですがね」
電話『それはすまんな。一番に苦労をかけたお前に何もしてやれずに』
オーク「いえ。それ以上の何かを求めた覚えは僕にはありません」
電話『では、その何かを探して生きるがいい。王道に果ては無いぞ・・・さらばだ、オークよ。ガチャッ』
ロボ女騎士の模型『・・・』
オーク「・・・。人は常に、何かを得たことよりも、その対価に目を向けるものだな」
ゴブリン「オークさん! オークさーんっ!」
オーク「どうしたね、ゴブリンくん。少しは士官らしくしたらどうだ」
ゴブリン「そんな場合じゃありませんよ! これ!」
オーク「・・・。これは・・・」
ゴブリン「やっぱり・・・そうですよね?」
オーク「ロボ女騎士の記憶チップ・・・無傷で残っているなんて」
ゴブリン「奇跡です! 本当に、主人公は死なないんですよっ!」
オーク「・・・。そうだね・・・」
オーク(・・・。神はサイコロを振らない・・・ならばこの奇跡という名の偶然は、神ではない何かが起こしたのだろう)
ロボ女騎士の模型『・・・』
オーク「やはり僕は・・・観測者よりも創造者の方が好きだ」
ゴブリン「え?」
オーク「いや。約束を果たさなくちゃな、今度はもう少し美人に作るって・・・」
完
女騎士「おい! ちょっと待て! なんで私がトリじゃないんだ!!」
魔王「あーっ! もうちょっとでキレイに終わりそうだったのに!! 空気読め!」
女騎士「うるせーんだよペーペー魔王ごときが!! あ、もうヤったんか? ん?」
魔王「うぇっ!? ・・・あ、いや・・・お、おまえには関係ないだろうが!!」
女騎士「あっ・・・ふーん(察し)」
魔王妃「うふふ、カワイイですわね♪」
女騎士「私はこういう男ムリだわ、ちょぉめんどぃ」
魔王「・・・とにかく!! 往生際よく退場せんか、最後くらい!」
女騎士「やだ! みんなの女騎士さんがこんな終わり方なんて認めない!!」
魔王「ああ・・・なんでロボがいなくなってこいつが残ったんだろう・・・」
魔王妃「まあまあ。いいではないですか、にぎやかですし」
魔王「よかないですよ」
魔王妃「あら。私のお願いでも、だめですか?」
魔王「・・・。・・・」
女騎士「わはは、主人公は勝つ! 私はここにいてもいいんだーっ!! パキィィィン!!」
ミノタウロス「おめでとう!」
魔王「おめでとう!」
魔族士官「おめでとう!」
魔族兵士「おめでとう!」
勇者「おめでとう!」
人工知性A『おめでとう』
国王「めでたいのう」
姫「おめでとうございます!」
ロボゴブリン「ゴブ ゴブ」
ダークエルフ「おめでとう!」
ゴブリン「おめでとう!」
女騎士「みんな・・・ありがとーう!!!」
オーク「 母に、ありがとう
父に、さようなら
そして、全てのロボットたちに
おめでとう 」
ロボ女騎士Mk2「サンキュー」
女騎士「くっ・・・殺せ」
終
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\ヽ, ,、
_ `''|/ノ
\, V
`L,,_
|ヽ、) ,、
.| ヽYノ
/ r''ヽ、.|
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ヽ, y' /` ‐ 、 ,.. -'ヘ ヽ. }ノ
ヽ,' / /`,ゝ' ´ ヽ Y.
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| {ト」l|. : | " ``: |!トリ |
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