ちひろ「プロデューサー、オロシャヒカリダケをキャプチャーしたのね?」 (27)


P「あぁ。俺のデスクの下にあった」

ちひろ「オロシャヒカリダケは発酵菌の一種よ。暗闇で光るキノコなの」

P「どうしてキノコが光るんだ」

ちひろ「知らないわ。私はどこかの誰かみたいに生物をとってなかったから」

P「ネットで調べるくらいしてくれても良いだろう」

ちひろ「どうせ話してもわからないでしょう?」

P「……使えない事務員だ」

ちひろ「何か言った?」

P「いや、何も」

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ガチャ


輝子「キノコーキノコー……ノコノコホシショウコー……こ、こっちの方がいい、かな」

P「味はどうなんだ」

ちひろ「さぁね。食べれるみたいだけど、イマイチみたい」

P「そうか……」

輝子「あ、あれ? Pがいない……ここ、出てくまでは居たのに……」

P「確か……このキノコを食べると、電子機器を充電できるらしいな」

ちひろ「プロデューサー、あれはゲームの中の話よ。現実世界ではできる訳ないわ」

P「安心しろ。ここもそう違わない」

ちひろ「……」

P「とりあえず。携帯の充電器を握って、コイツを食ってみよう。繋がった携帯が充電できるかどうか見てみる」

ちひろ「……どうせ無駄だと思うけど」


輝子「Pに……キノコの世話を任せたのに……」

P「……」モグモグ

ちひろ「……」

P「……ふーん」

ちひろ「どう?」

P「まぁ、旨くはないな」

ちひろ「違うわよ」

P「何が?」

ちひろ「電池よ」

P「あぁ……待ってろ。今確認する」

ちひろ「……」


ちひろ「……」

輝子「つ、机の下かな……キ、キノコも、あの場所が気に入ってるみたいだし……」

P「……おぉ」

ちひろ「どうなの?」

P「回復してる! 回復してるぞ!」

ちひろ「えぇっ?」

P「見ろ、確かに回復している。さっきまではいくらか消費していたのに、今は満タンだ」

ちひろ「せ、生体電池も付けてないのに……こんな事って……」

輝子「あれ……い、今のは……Pの声……ダ、ダンボール? こ、これ……何?」

P「ハハハ、どうだちひろ。やっぱり回復したぞ」

ちひろ「あ、ありえない……こんな映画でも出ないようなビックリ人間……一度晶葉ちゃんに解剖して見て貰った方が……」

輝子「やっぱりこれから声がする……P、か、かくれんぼのつもりかな……フヒッ、も、もう見つけちゃった」


ヒョイ


P「!」

輝子「P……み、見つけ……た……」

P「……しょ、輝子……」

輝子「あっ……えっ……そ、それ……」


P「……許せ!」フリフリ

輝子「うっ……」バタッ

ちひろ「プロデューサー! 何があったの!」

P「輝子に見つかった……だが幸い先程スパーッツァから作成した麻酔ハンカチを使い、で眠らせて事無きを得た」

ちひろ「……それ、どうやっても事無きを得てないような……」

P「いや、ギリギリキノコを食ってる所は見られていなかった。言い訳のしようはいくらでもある」

ちひろ「……私は知りませんけど」

P「よし。オロシャヒカリダケは食えた事だし、次の食糧捕獲に向かう」

ちひろ「……まだやるんですね」

P「当たり前だ!」

ちひろ「まぁ、良いですけど」


――


ちひろ「プロデューサー、ドーナツをキャプチャーしたのね?」

P「あぁ。冷蔵庫の中に、厳重に包んであった。数は六個だ。種類も別々のようだが」

ちひろ「……食べるの?」

P「勿論だ」

ちひろ「……それ、法子ちゃんが仕事終わりに食べようとして入れたドーナツなんですけど」

P「そうか。で、味は」

ちひろ「脈絡無さ過ぎるでしょう」

P「あいにく、あまりドーナツは食った事が無くてな。この、ポンデなんとかとかいうのはよく耳にするし、形は知っているが……」

ちひろ「ポン・デ・リングはミスタードーナツで2003年に追加されたドーナツよ。触った感じはムニッとしてるけど、
    実際食べてみると弾力の中にサクッとした心地良い感触が混ざっているのもわかるはずよ。
    そのやみつきになる不思議な食感で、今現在ではもう店の看板商品とも言えるような商品になっているわ」

P「そうか」


ちひろ「味のバリエーションは生だとか、バナナ味とかもあるんだけど、そこにあるのはどうやら普通の物みたいね」

P「あぁ、テカテカと光っているぞ。甘そうだ」

ちひろ「そのドーナツをモチーフにしたポン・デ・ライオンっていうマスコットキャラクターもいるの。
    たてがみの部分がポン・デ・リングになってて、顔は何だかちょっと抜けていて、かわいらしいキャラクターなの」

P「ふーん」

ちひろ「興味無さそうね」

P「まぁな。とりあえず食ってみるか」

ちひろ「……人でなしね」

P「何か言ったか?」

ちひろ「いえ?」

P「よし……じゃあ食うぞ」



ガチャッ


法子「ただいまーっ! お仕事終わりのドーナツドーナツ!」

P「ふん……んまい」モチャモチャ

ちひろ「プロデューサー、法子ちゃんが帰ってきたみたいよ。そこからすぐに退避して」

P「心配するな。ちゃんと見つからない所に隠れている」

法子「……んー? 事務所にドラム缶?」

ちひろ「マズイわ! どうやら気付かれたみたいよ!」

P「何! サイボーグですら中身を見透かせないドラム缶をいともたやすく……」


法子「誰か入ってるのかな……入ってますかーっ」トントン

P「チッ……まずいな」

ちひろ「プロデューサー! このままじゃ……」

P「大丈夫だ。晶葉に作って貰ったコイツを使えば……」

法子「あれ、何だか中から甘い臭いが……持ちあがるかな、よいしょっ!」ヒョイッ

P「今だ!」プシューッ

法子「うっ……」バタッ

ちひろ「プロデューサー! 大丈夫!?」

P「あぁ、何とかな……このタバコ型麻酔ガス銃で眠らせた」

ちひろ「……何でも持ってますね」

P「武器になりそうな物は、適宜使用しなければならない。それが、戦場で生き残る術だ」

ちひろ「そこは事務所ですよ」

P「よし、ドーナツも全部食った。次の食糧捕獲に向かう」

ちひろ「……」

P「どうしたちひろ」

ちひろ「何でも……」

P「そうか」

ちひろ(何で無線なんて使って私はこの外道の相手をしてるのかしら……口調まで変えて……)


――


ちひろ「プロデューサー、眼鏡をキャプチャーしたのね?」

P「あぁ。ロッカーから大量に出てきた。ぞんざいなもんだ」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……食べるの?」

P「……できれば、食べたくない」

ちひろ「……戻してきなさい」

P「はい」


――


ちひろ「プロデューサー、ウサコちゃんをキャプチャーしたのね?」

P「あぁ。冷蔵庫裏にしかけておいたネズミ取りにかかっていた」

ちひろ「……」

P「……あ、味は……」

ちひろ「プロデューサー……冷蔵庫の裏って……普通、人の手とか入ります?」

P「いや、入らない。女性の腕力では、動かす事もできないだろうしな」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「プロデューサー」

P「俺は何も見なかった」

ちひろ「え?」

P「何も、見なかったんだ。君もだちひろ」

ちひろ「……そうね」

P「……元に、戻してくる」

ちひろ「……えぇ」



――



ちひろ「プロデューサー、若葉ちゃんをキャプチャーしたのね?」

P「あぁ。普通に事務所にいた。新調したソファで横になっている」

若葉「Pさん、どうしたんですか~? あ、一緒に横になりますか~? このソファ、とっても気持ちいいんですよ~」

ちひろ「わからないわ」

P「何?」

ちひろ「味はわからないわ。どういう意味ででも、わからない」

P「……俺は、別にこの子をどうこうしようという気は無いんだが……タオルケットの一つでもかけてやろうと……」

若葉「ふぁ……とっても、柔らかくて……眠くなってきちゃいました~」

ちひろ「嘘。小さな子供ばっかり勧誘してくる癖に……この前のこずえちゃんが最たる例じゃない」


P「あれはだなっ……」

ちひろ「おふく、着させてあげたみたいですよねー」

P「それは言われたからであってな……」

ちひろ「まさか、本当にロリコンだなんて……」

P「待て。君は何か重大な勘違いをしている」

ちひろ「早苗さんには、軽めにとは、お願いしておきますから」

P「待て! ボスには言わないでくれ!」

ちひろ「じゃあね」


ブツッ


P「ちひろ! ちひろぉおおおおっ!」

若葉「……えへへ……Pさん……」スースー


――


ちひろ「プロデューサー、バゲットをキャプチャーしたのね?」

P「あぁ、とてもデカイ。これで殴られたら痛そうだ」

ちひろ「ところで……腕と脚、大丈夫?」

P「あぁ……何とか一度は返せたが、後は一方的な攻撃だった。彼女には、やはりまだ敵わないようだ」

ちひろ「曲がらない方向に関節が曲がってた気がするけど……」

P「問題無い。もうサバイバルビュアーのCUREで治療した」

ちひろ「そう」

P「バゲットの他にも、沢山のパンがあるぞ……やきそばパンやら、チーズを挟んだものやら……とにかく、沢山ある」

ちひろ「それは、どうやら大原みちるちゃんの物みたいね」

P「比較的最近入ってきた子だな」


ちひろ「大き目と八重歯が特徴の子ね……髪も、なんだかクロワッサンみたいよね。でもあの目、ちょっと怖いわ」

P「あぁ。暗闇の中で浮かび上がる、猛獣のような目だ。実に鋭い。まぁそれはそれで可愛いと思うんだがな」

ちひろ「そうかもね。でも、最大の特徴と言えば何と言っても底なしの胃袋ね。私の独自調査では、平均成人男性の倍以上は食べているらしいわ」

P「それで、あの軽さか……確か、40kgだったか」

ちひろ「えぇ。人よりも栄養吸収率が低いせいでその分沢山食べないといけないだとか、胃の構造が元から人と違うのかも知れないわね」

P「そうなのか」

ちひろ「私の想像だけどね。ただ単に、代謝が良いだけだとかかも知れないから」

P「そうだな」


ちひろ「……そのパン、食べるの?」

P「当たり前だ」

ちひろ「人の物を食べるのが当たり前だとは、普通思わないわよ」

P「どうして?」

ちひろ「どうしてもこうしても……」

P「まぁいいじゃないか。で、旨いのか?」

ちひろ「そうねぇ……それは、どうやらみちるちゃんの実家で作られたパンみたいよ。
    コンビニだとかで売られているような物ではないから、当然、おいしいと思うわ」

P「フゴゴ(そうか)」ムシャムシャ

ちひろ「答え聞かずに食べてるじゃない」

P「フゴ、フゴゴゴ、フゴ(いや、旨いぞこれ)」


ちひろ「……もうその辺にしておいた方が良いと思うわよ」

P「フゴ?(どうして)」

ちひろ「……わからない。でも、妙な胸騒ぎがするのよ……何か、嫌な事が……」

P「フゴゴゴゴゴ(大丈夫だ)。んぐっ、あぁっ。今はロッカーに隠れている。見つからないさ」

ちひろ「そう……なら、良いけど」

P「いや、しかし……旨いなこれ。やきそばパンはおかずにできる。彼女の言った通りだ」

ちひろ「……あなたも大概ね」

P「んぐっ……あぁ、旨かった。よし、次はこっちの――」



ガタンッ


P「!」

ちひろ「どうしたの! 凄い音がしたけど」

P「わ、わからん……だが、今確かにロッカーが揺れたような……」


ガタガタガタッ


P「ふおっ!」

ちひろ「プロデューサー!」

「あははー……こんな所にいたんですね、プロデューサー……」

P「!」



ロッカーの隙間から覗くレンズのような赤い双眸。
獲物を追い詰めた肉食獣が目に映す、好奇にも似たあの色が、プロデューサーを射抜いていた。


「あははー……人が大切にしている物を盗っちゃうような人は、どうしましょうかねー……」

P「ま、マズイ! ちひろ! 今すぐ救援を!」

「……いただき、ます……」

P「う、うわぁあああああああっ!」

ちひろ「プロデューサー! どうしたの……返事をして! プロデューサー! プロデューサーッ!」



輝子「フヒッ……Pは……親、友……んんっ……キノコ、が……」Zzz

法子「ド、ドーナツが……たくさん……」Zzz

若葉「私は……オトナ……ですよ~……」Zzz



おわれ

誰かが既にやったネタかも知れんが、とりあえず一気に書いた
そんじゃ

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