元お嬢様「安価とコンマで最終決戦?」元メイド「8ですぅ」 (869)

モンスターあり剣あり魔法あり、機械も超能力もありなごった煮の世界。

革命が起きた近世のファンタジー国家で、指名手配された元貴族の少女が生き延びようとあがいてきた。

王子と共に挑む反乱の先に、彼女はどんな結末を迎えるのか。

全ては安価とコンマ次第な8スレ目。

1スレ目『魔境』 お嬢様「安価とコンマで逃亡生活」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408711559/)
2スレ目『アンブロシア』 元お嬢様「安価とコンマで魔術師生活」邪教徒「その2だ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409055017/)
3スレ目『イロモノ旅団』 元お嬢様「安価とコンマでお仕事生活」海風の妖精「3ブロシア」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409745651/)
4スレ目『魔法競技会』 元お嬢様「安価とコンマで忙しく生活」魔人「その4じゃ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411492100/)
5スレ目『人外と仲良し』 元お嬢様「安価とコンマで大勝負」アフロ「クインテット!」(5スレ目です) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413208217/)
6スレ目『長旅』 元お嬢様「安価とコンマで旅歩き生活」吸血鬼「やっとその6ね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430900309/)
7スレ目『王子と英雄(11歳)』元お嬢様「安価とコンマで生きている」海神「7スレ目ー♪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449926380/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457282120

~あらすじ~

ある年……フルフィリア王国で革命が起きた。

反乱軍あらため共和国軍は、革命の象徴として王族・貴族の処刑を決めた。

貴族の町ウベローゼン市に住むお嬢様であるソピアは、使用人の少年によって逃がされ、命がけの逃亡生活が始まった。

逃亡中の王子達と共に反乱を企てる一方で、英雄の勲章を持つ一人として反乱鎮圧を依頼されてしまう。

年齢も変わってしまい次第に人間離れしてきたソピアにハッピーエンドはあるのか……!?


~主人公~

ソピア・ウィンベル、11歳(呪いが解けると72歳)(元16歳)。

世間知らずで体力にも乏しく気弱だが、頭は良く物怖じはしない方。

下級貴族の生まれで、お嬢様らしからぬ素朴な性格・口調、でも実はTPOに応じて高貴な振る舞いもできる。一般人に溶け込めるため逃亡に役立った。

大抵ソフィアというバレバレの偽名を使っているが意外と何とかなっている。

共和国軍には神殺の英雄として表彰されているが、あと少しで正体がバレる。

吸血鬼の義姉、一国の神レベルの使い魔、魔人、神竜、堕天使含む天使達などの人外には愛されているが、運が悪い。

数いる天使の内、幸運の天使にだけ見捨てられるほど運が悪い。

★最終的な目標★

1.革命返しを成功させる

2.両親を助け出す

3.魔力を暴走させてしまい人外にならない

これらが現在の最終目標です。





武器戦闘系職業一覧

『剣士』 上位職『ソードマスター』『武士』
『槍士』 上位職『重装騎士』『馬上騎士』
『メイサー』 上位職『棒術師』『ヘビーメイサー』
『ファイター』 上位職『格闘家』『武術家』
『アーチャー』 上位職『戦弓士』『狩弓士』
『ガンマン』 上位職『コンバット』『スナイパー』
『ホワイトシーフ』 上位職『アサシン』『忍者』
『サイズユーザー』 上位職『デスサイズ』『伐採師』
『ウィップユーザー』 上位職『ロープマスター』『調教師』
『罠師』 上位職『ボマー』『奇術師』


魔法系職業一覧

『火魔術師』 上位職『エナジー』
『水魔術師』 上位職『治癒薬師』
『岩魔術師』 上位職『錬金術師』
『風魔術師』 上位職『時間魔術師』
『日魔術師』 上位職『癒心魔術師』
『月魔術師』 上位職『蝕心魔術師』

火&水『瘴気薬師』 水&岩『氷魔術師』 岩&風『召喚術師』
風&火『雷魔術師』 火&岩『竜脈術師』 水&風『精霊術師』
日&月『天術師』

『白魔術師』 上位職『聖教徒』『クルセイダー』
『黒魔術師』 上位職『邪教徒』『ネクロマンサー』


生活系職業一覧

『山人』 上位職『登山家』『鉱夫』
『海人』 上位職『船員』『潜水士』
『森人』 上位職『栽培士』『木霊主』
『旅人』 上位職『吟遊詩人』『考古学者』


専門職系職業一覧

『料理人』 上位職『バーテンダー』『調合士』
『裁縫師』 上位職『ドレッサー』『人形師』
『木工師』 上位職『大工』『芸術家』
『石材師』 上位職『鍛冶屋』『宝石細工師』
『占い師』 上位職『詐欺師』『エスパー』
『メカニック』 上位職『エンジニア』『ドライバー』
『牧人』 上位職『ブリーダー』『狩人』
『レンジャー』 上位職『レスキュー』『トレジャーハンター』
『パン職人』 上位職『酒造家』『操菌師』
『パフォーマー』 上位職『音楽家』『タレント』
『商売人』 上位職『経営者』『輸送業者』


その他(ギルド無し)

『探偵』『娼婦』『清掃員』


職業詳細は7スレ目の4~6に記載

【39日目朝時点のステータス】

ソピア=ウィンベル(魔:ソフィア 旅:ルーフェリア)
見た目:11歳(本来72歳)・スカイブルーの瞳・黒髪ふんわりロングパーマ(桃色のリボンで二つ結び)・小学校の制服風・ムーンストーンの杖(知20)・ストーンキューブ
所持金:9070G
アイテム:
ウベローゼン市地図・旅人ギルドカード・共和国軍の勲章・野営セット・銀の短剣・ナイフ・金槌・ハサミ・ドライバー・ライター・花柄の傘・平和のロザリオ
魔人ルーン×3・ポーション×2・回復の杖・自動迷彩マント・海子の杖
薄汚れた赤ずきん・エセ探偵セット・女中の服・緋袴・海子の服・強化繊維インナー(防小)・シューズ・桃色のリボン・リボンカチューシャ・アザラシ革の手袋
オニキス×2・琥珀の欠片・火魔術結晶・キングウォッチ・クロノクロウの羽・チャンピオンツタベルト・光るビン・ステンレス・8色カラーキューブ
樹魔術の書・重力魔術の書
おてんばワンピース・ウサギなエプロン・ネコのぬいぐるみ

ジョブ:月魔術師・旅人
スキル:全属性魔術・妖精対話
 ダンス・料理・長旅歩き・小休止・脱兎・騎馬・野営・夜目・受け身・考察・探し物

体力32/32 精神52/52
筋力30 敏捷44 知力70(90) 器用20 交渉力70 魔名声83 旅名声128 注目度10
経験値:体7・精47・筋0・敏67・知0・器83・交31


知り合い
高圧的な16歳サイズユーザー:エルミス「一生わたしに尽くしなさい!」(主従:99.99)
心優しい義姉13歳吸血鬼:ヒレア「今日から私がお姉ちゃんね」(義姉妹:10.15)
文系15歳美少年風魔術師:トール「あなたを守り抜くと誓います」(恋人:10.04)
あざとい17歳メイド:アン「ソピアについて行きますよぅ」(大親友:10.04)
控えめな18歳アーチャー:ハルカ「キミに命を預けるよ」(仲間:X.XX)
ジト目12歳白魔術師:ラファ「助け合うのですよ」(仲間:X.XX)
お喋りな16歳ホワイトシーフ:フィナ「……」(??:10.61)
ボクっ娘ブラコン16歳女水魔術師:ミルズ「ソフィアもボクのモノ」(??:10.56)
頭脳派長身18歳岩魔術師:クルト「俺の味方か……」(??:10.18)
おしとやかな12歳商売人:フローラ「お気遣い頂き感謝します」(仲良し:7.88)
魔法街の仕立て屋人形:クリスティ「失礼しました!」(友人:4.48)
明るく優しい22歳ホモ日魔術師:キュベレ「結果的に…息抜きになったかしら?」(友人:4.25)
宿屋のおばちゃん:メリル「すっかり有名になっちゃって、大丈夫かねぇ」(親しみ:3.31)
武人な19歳火魔術剣士:テンパラス「英雄か……」(知人:2.02)
皮肉屋な22歳男コンバット:ロット「へぇ、帰って来れたんだ」(知人:1.93)
色男な24歳レンジャー:オルド「あの娘がラヌーンを発見したってマジかよ」(知人:1.59)
正統派シスター19歳聖教徒:テレサ「クルトさんの師匠なんですか?」(知人:1.42)

上がり症16歳ボーカリスト:ポロ「わ、私……負けませんから」(協力者:X.XX)
お調子者13歳黒魔術師:レン「おれの呪いで2人を助ける!」(協力者:X.XX)
フランクな24歳セラピスト:サナ「久しぶりの地元だね」(仮協力者:X.XX)

その他関わりのある人


・会ったことのある名ありキャラ
15歳女パン職人:イリス 明るく男勝り
15歳女ファイター:フェイラン 気の強いカンフー娘
43歳男レスキュー:キアロ ソピアと同じ宿が拠点の頼れるおじさん
40代清掃員:メヒィアス夫妻 うるさい妻と無口な夫の夫婦
20歳女ファイター:ノア 赤髪で大雑把な手練れファイター、宿屋近くの酒場にいる
19歳聖教徒:テレサ 市内の聖教会で受付を務める正統派シスター

18歳女娼婦:エリー 元旅人で姉御肌な魔境カフェのオーナー
30歳男探偵:シュン 探偵ギルド筆頭の名探偵、自由人
33歳男岩魔術師:ガルァシア 魔境チームの熟練魔術師、威圧感があるが世話焼き
29歳男ボマー:バルザック 魔境チームの仕事人、いつも適当な酔いどれおっさんだが素面だと怖い
15歳性別不明エスパー:ネル 魔境チームの情報収集担当、神出鬼没

・その他魔術師
ヴィーク スクーニミー市の士官学校に通う岩魔術師、クルトの親友
リウム 聖十字病院の名医の息子で水魔術師、ミルズをいじめていた、サナの弟
ディアナ 18歳のナルシストな月魔術師、ある時は天文学者、またある時は怪盗、その正体はグリエール家の一員

・仲のいい名無しキャラ
邪教徒さん 邪教の館(黒魔術師ギルド)の受付で面倒見のいいおっさん
魔法局受付さん 底意地の悪い女性、そのくせ癒しの魔法を得意とする
魔人さん 数百年前のお姫さま、魔法を極めるうちに人間ではなくなってしまった、市内に越してきてソピアの魔法の先生になった
アースドラゴン 遺跡に封印されていた神竜、外界を見せる代わりにソピアに力を貸す

・共和国軍
ブラッドレイ元帥 共和国軍六勇の一人『重壁』、エルミスの父で仕事より家族を優先したがる子煩悩
オーグロス陸軍大将 共和国軍六勇の一人『鬼顔』、キュベレの父で女性を見下す堅物の大男
アルフレッド憲兵隊長 共和国軍六勇の一人『勇者』、やたら声が大きい正義漢
エルシャルロウ空軍大将 共和国軍六勇の一人『白服』、ギャグ補正で強い科学者
魔導長 共和国軍の魔術師のトップ、雷の魔法を得意とする穏やかな老人
知将 共和国軍のブレイン
師匠 共和国軍に協力する殺し屋『凶爪』、フィナの特訓を手伝う乱暴な口調の女性
『漁神』英雄の勲章を持つおっちゃん、大怪魚を釣り上げたらしい
『拳魔』英雄の勲章を持つ新聞記者、一人で外国の軍を撃退したらしい
『龍殺』英雄の勲章を持つ12歳の村娘、太古のドラゴンを倒したらしい

・王族と貴族
ミハイ5世 王族で唯一軍の手を逃れて逃亡中の王子、反乱を目論む
イデア 逃亡中の貴族の一人、若き騎士の女性
レオナール 逃亡中の貴族の一人、富豪の中年男性
ウィルアック 逃亡中の貴族の一人、放蕩公爵と呼ばれウィアという偽名で町を練り歩く
デューク ウィルアックの執事、ピエロのマッドと名乗りジェスチャーでウィアと意思疎通する
ニコラ 逃亡中?の貴族の一人、4年前から行方不明

・外国の人物
アフロ外交官 南大陸の連合帝国から来た、チェーンソーを武器に戦う
マトイ 魔導帝国ノーディスのスパイで重力魔術師、7歳の天才幼女、天真爛漫だが好戦的で容赦がない
ジョー ジャルバ王国のスパイで武術家、鋭い直感を持つ、普段は他人を気遣える頼れる青年

ソピアが行ったことのある場所


●ウベローゼン市
職業相談所
ウィンベル邸(ソピアの元自宅)
聖十字総合病院
ブラッドレイ邸(元帥・エルミスの自宅)
クルト・ミルズの自宅
魔人の城
・各ギルド街(>>5)
今までに行ったのは
『勇者の館(剣)』『ファンキータウン(銃)』『何でも屋(盗)』『魔法局(魔)』『聖教会(白)』『邪教の館(黒)』『登山協会(山)』『農協(森)』
『宿屋(旅)』『美食通り(料理)(パン)』『ファッションストリート(裁縫)』『ノーレイ財団(機)』『牧場(牧)』『不夜街(芸能)』『オフィス街(商売)』
宿屋周辺……酒場・カフェ・道具屋・王子の隠れ家
魔法局周辺……屋外競技場・日魔術ホール・魔法のパン屋・魔法の仕立て屋・薬屋・マジックアイテム屋・図書館・岩魔術師のカフェ
聖教会周辺……道具屋・ハーブ畑・聖騎士の館
・食事
宿屋近くのカフェ&酒場・魔法局近くのカフェ・カフェ『アンブロシア』・レストラン『ランプロア』・パティスリー『ブリガド』
●ハーバリア市
ハーバリアタワー・王立造船所・海人ギルド総本山・水族館・港・市場
●ファナゼ市
中央市場・東西南北の商店街・遊園地・パフォーマーギルド本部・博物館・地下街・グリエール商会本社
●王都ティルベルク
王宮・魔人の城跡地・勇者の城・大聖堂・魔法局本部・各国大使館・ゲームセンターほか
●モスボラ市
鉄鋼業区・人形職人の工房・喫茶『ネクタール』・外国人街・屋台通り・鉄道駅・モスボラ山
●サウソーシャ騎士団領
名誉の広場
●スクーニミー市
士官学校・自然科学大学・医科大学・音楽院・大図書館・公共ホール・画廊・お化け屋敷・ベリアト天文台
●プエルトマリハラ市
フルーツパーク・ヨットハーバー・シーサイドチャペル・青の洞窟
●ダンジョン
魔人の城・ストーンキューブ
●外国
ラヌーン島





フルフィリア共和国地図

学     麓  山
|\  /|  |
騎―王―貴―商―砂
|/  \|   \
工     港―浜  湿

貴…貴族の町ウベローゼン市
王…王都ティルベルク
港…軍港の町ハーバリア市
商…交易の町ファナゼ市
工…鉄鋼の町モスボラ市
騎…サウソーシャ騎士団領
学…学問の町スクーニミー市


世界地図

       ノ
  ラ    |
      |

   ┌―フ―――┐

    |  |     └――┐
コ―┘   └┐         |
         サ        └┐
                  └―――――ジ


フ…ファンタジーと機械、革命の国 フルフィリア共和国
ノ…魔術師と山脈、針葉樹林の国 魔導帝国ノーディス
ジ…香辛料と自然信仰、軍拡の国 ジャルバ王国
サ…海洋貿易と亜人、湿原の国 サロデニア共和国
コ…火山と洞窟、ドワーフの国 コホーテン首長国
ラ…領土紛争地 ラヌーン島

属性相性表(B←A AはBに強い)

火←水←岩←風←火

日⇔月

その他←黒←白←その他



複合属性

火&水…毒・酸
火&岩…溶岩
火&風…電気
水&岩…氷・冷気
水&風…砂糖
岩&風…空間のゆがみ?

火・日 爆発
火・月 重力
水・日 植物
水・月 海水・塩
岩・日 水晶
岩・月 重い石
風・日 ドロドロした何か?
風・月 空気の塊?

ソピアの使用可能魔法

○攻撃
月光光線【通常・拡散・精神攻撃付加】
精神攻撃【通常・拡散・ドレイン】
流れ星(月魔法弾)【通常・連射・散弾・プラネタリウム(異空間幻覚)】
ライトボール(日魔法弾)
運命の矢(白魔属性で追尾、当たると他の魔法にも追尾効果)
ダークフェザー(黒魔属性で追尾)【通常・爆発】
明星光線(黒魔属性、魅了・恐怖付加)
ブラックホール(重力魔法弾)
メテオ
影打ち(影への攻撃が少し通る)
凍土(触れると凍る氷柱)
ルシフェルホール(即死)

○攻防一体
ダークフライト(六枚翼を生やして飛行、翼は刃と盾になる)     アダマント(金属生成)

○状態異常
精神系状態異常【強魅了・全体魅了・幻覚・盲目・恐怖・混乱】
光の鍵(時間停止)
戦の笛(暴走)
グランドクロス(不運)

○防御・強化
反射魔法
聖域(魔法の威力を弱める魔法陣)
オーラリー(天候操作を無効化)
戦の笛(仲間の筋力と防御を上げる)
神の腕(自己の肉体強化)
神の目(自己の視力強化、透視)
聴力強化
体重減少(飛行能力が上がる)
動体視力強化(攻撃を回避できる)
跳躍力強化
クロックアップ(一定時間3倍速で動ける)

○回復
樹魔術【総合回復】
日魔術【精神力回復・精神系状態異常回復】
白魔術【体力回復・身体系、精神系、不自由系状態異常回復・解呪】

○特殊
属性変換(火・水・岩・風・日・月の魔法の属性を変える)
多分身魔法(最大で5人にまで分身できる)
晩鐘(音を聴いた人物だけ周囲が夜になる)
除霊(憑依している幽霊を追い払う)
実体化魔法(物理攻撃が効くようにする)

○必殺技
ムーンブラスト 当たった光線が拡散、周囲の敵に降り注ぐ
ルナティックアンブロシア 対象の最も恐怖を感じる幻覚を見せる
ディストラクター 破裂して魅了の光を放つ星形魔法弾
アンブロシアレイン アンブラーを回復しノーアンブラーにダメージを与える雨を降らす

○工作系月魔術
信頼魔法(相手が素直に頼みを聞いてくれる)     操り魔法(相手が指示通りに動く)
透明魔法(ただし触れた部分に影ができる)    変装魔法(特定の人物に変装できる)    注目魔法(対象に注目が集まる)

○非戦闘用
転移魔法
プライベート異空間(収納や閉じ込め、退避)
読心
運命の輪(知人のいる方向が分かる)
加熱魔法
加護(コンマを+10する)
天秤魔法(神に2択のどちらが死ににくいかを聞ける)      光の螺子(物の時を巻き戻す)
神の声(発言力を大幅アップ)      ガブリエルブレス(絆を永遠にする、自分には使えない)

○運
賽子魔法(願い事を20%の確率で叶えるパルプンテ)    奇跡魔法(願い事を叶えるがどこかでしわ寄せが来る)
恋の百合(50%の確率で交友度にボーナスかマイナス)

○パッシブ
三天使の加護(呪い・時間停止・消滅が無効)
魔力制御(これがないと素早く魔法を使えていない)
妖精対話(これがないとマリンが仲間になっていない)
瞑想技術(訓練で精神力が上がりやすくなる)
知恵の実(スキル訓練時コンマ+20)

テンプレを結構変えつつ、8スレ目です

ちょっと内容削りすぎですかね?

途中から参加する読者さんもいるようなので後で用語説明みたいなものも貼ろうと思います

7の残りは埋めネタ?

>>10
メインキャラで番外編書けるほど作中時間が経過してないですね……
やるとしたらサブキャラ短編、書きたいのは六勇小ネタや学園ネタとか
6スレ目最後で出ていたマトイちゃんの話をやってもいいかもしれませんね

(姉妹関係が逆転したという事で、お姉ちゃんらしい事を自分なりに模索するヒレアちゃんが見たいです)

目の調子が悪いので延期します、本編再開は木曜日に

>>12は番外編が本編より先行しちゃうとまずいので、本編か番外編かは分かりませんが後々

番外編は6スレ目最後のネタ消化を優先します
ラヌーン編の直後、雪と針葉樹林と魔法の国ノーディスに連れ去られるお話
ノーディスで見たい要素や展開があればネタ提供お願いします(多すぎると反映できない可能性も)

魔法街、図書館。

ソピア「トールくん、いるー?」

トール「あっ、ソフィアさ……ん……」

トール「…………」

ソピア(11歳)「…………」

トール「…………」

ソピア(小学生スタイル)「…………」

トール「……うわぁ」

ソピア(ドン引きされた……)

トール「何か……あったんですね」

ソピア「ショック?」

トール「いろいろあったけどこれが最大のショックですよ!!!!」


1.私の事嫌いになった?
2.王子様のキスで元に戻るかも
3.中身は年上だから大丈夫だよ
4.自由安価

ソピア「私のこと、嫌いになった……?」ウルウル

トール「え、あ、そ、その」

ソピア「……」ウルウル

ソピアは涙をにじませながら上目づかいでトールを見上げていた。

トール「そそそそんなことないですから!! 泣くのはやめてください!!」

客「おい静かにしたまえ。ここは図書館だ」

トール「し、失礼しました! 一旦外に出ましょうか……」



魔法街、広場。

トールはたっぷり15分かけてソピアを落ち着かせた。

当然ひどく目立ったが、その様は恋人の痴話喧嘩ではなく泣く子をあやすのが下手なお姉さんにしか見えなかった。

ソピア(最初は軽い嘘泣きのつもりだったのに、だんだん本当に悲しくなって泣いちゃった)

ソピア(大声で泣いたの何年ぶりだろう?)

トール「何も泣くことないじゃないですか……」

ソピア「くすん。だって、トールくんが大声出すから……」

トール「本当にショックだったんですよ! まさか告白していい雰囲気になった翌日にこうなるなんて!」

トール「ソフィアさんが拉致されたり、キュベレさんが軍人だったり、ソフィアさんが襲撃されたり、正体を知ったり、」

トール「短い間にいろいろありましたけど、こんなの予想できませんよ!」

ソピア「あっ、そういう際どい話はこっちでしよう?」

トール「い、異空間!? わかりました……」

魔法街の適当な場所でプライベート異空間の魔法を使用する。

岩魔術師や風魔術師には異空間の存在に気付かれるが、魔法街では珍しいことではないため異空間を壊そうとする者はまずいない。

トール「いつの間にこんな魔法を……」

ソピア「昨日の夜だよ」

トール「本当、ヒレアさんの言うとおりですよ」

トール「ちょっと目を離すとソフィアさんにはろくでもない事が起きます……」

ソピア「そんなに悪い事は起きてないよ?」

トール(ソピアさんが小さくなったことを抜きにしても、いろいろ話したいことがあるんですよね……)


会話の話題(トール側から)

例1.どうして小さくなったんですか
例2.ソフィアさん、急に魔力が増してますけど…
例3.昨日、家を覗いてましたよね?
例4.共和国軍への反乱について
例5.昨晩のフィナ襲撃について
例6.プレゼントを渡す
※自由安価

↓3まで

トール「ソピアさん」

ソピア「どうしたの改まって?」

トール「……昨日、家を覗いてましたよね?」

ソピア「……ごめんね」

トール「別に、いいです。いつか言わないといけない事でしたから」

トール「実は……僕には家が無いんです」

ソピア「昨日いたのは……」

トール「廃屋です。ただ、鍵はあるので物を盗まれる心配はありません」

ソピア「トールくん……」

トール「僕は、孤児なんです」


トール「……生きる知恵も力も無い孤児は、他の浮浪者たちと協力して生活することができません」

トール「彼らは敵なんです。生きるために僕の持つ食糧を奪います」

トール「だから……僕は一人で生きてきました」

ソピア「浮浪者だったんだ……。でも、トールくんは頭がいいよ。どうして?」

トール「体は、人一倍弱かったですから。僕が生きていくためには知識が必要でした」

トール「落ちていた新聞を読んで勉強してました」

ソピア「図書館じゃないの?」

トール「ソピアさん。浮浪者がどうして仕事にありつけないか、知っていますか?」

ソピア「ううん。知らない」

トール「身なりですよ。食べ物や服を買うお金が無いのでやつれてみすぼらしい姿になります」

トール「そんな姿の人にきちんとした仕事を頼みたいギルドなんてないんですよ……」

ソピア「仕事しないとお金が手に入らないのに……ひどい」

ソピア「ごめんね。私、世間知らずで……」

トール「謝ることじゃないです。貴族は……知らないだけですから。知っていて放置している裕福な平民の方こそ批判されるべきです」

ソピア「でもトールくん、今はすごく綺麗な格好してる」

トール「……ソピアさんにはすごく言いづらい事なんですけど」

トール「共和国軍が貴族達を連行した直後、僕は運良く貴族の邸宅に侵入できたんです」

トール「お金や服、食料を持てるだけ持って逃げました」

トール「そうして僕は身なりを整え、魔法局や図書館に門前払いされなくなったんです」

ソピア「よかったね」

トール「……それからの生活はすごく充実してます」

トール「暇さえあれば図書館で本を読み、そこでキュベレさんと知り合って……」

トール「そうして、あなたに出会ったんです」

ソピア「……」

トール「あの頃は、ソピアさんの方がみすぼらしい格好をしてましたね」

ソピア「このこと、他に誰か知ってるの?」

トール「……言えるわけないです」

トール「軍人のキュベレさんにエルミスさん」

トール「商家のクルトさんとミルズさん」

トール「そして……貴族のソピアさん」

トール「僕が浮浪者だったなんて知ったら、離れていくに決まってるじゃないですか……!」

トール「でも、夢を見るのはここまでですね……」

トール「ソピアさん……僕とあなたは釣り合わないんです。身分の差は年齢なんかよりずっとずっと大きいものなんですよ」

トール「僕を嫌いになりましたよね……」


1.今は同じ魔術師だもん
2.正直に言ってくれてうれしい
3.自由安価

ソピア「正直に言ってくれてうれしい」

ソピア「もう、そんなことで嫌いになるわけないよ」

トール「本当ですか……?」

ソピア「身分なんて関係ないよ。トールくんはトールくんだもん」

ソピア「私を助けに来てくれた、私の大好きなトールくんだもん」

トール「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」

ソピア「私がこんなことで嫌いになると思われてたことの方がショックだよ」

トール「それは……ごめんなさい」

トール(ソピアさんにプレゼントを渡したい)


↓コンマ二桁 高いほどトールのプレゼントは高価

コンマ84……店売りの高級品



トール(この日のために用意しておいた贈り物……)

トール(依頼をたくさんこなして稼いだお金で買った高級品、今こそ渡す時!)

トール「ソピアさん」

ソピア「うん」

トール「こんな場所ですけど……受け取ってください!」


1.キャッツアイの指輪(月属性の高級宝石。魔法のことまで考えて選んだ)
2.精緻な懐中時計(ノーディス製のブランド品。ずれない、壊れない、美しい)
3.永遠の薔薇(高位の時間魔術師によって時を止められた形の良い赤い薔薇。枯れないが生きている)

一輪の薔薇の花が贈られた。

ソピア「……きれいなお花」

トール「これは永遠の薔薇といいます」

トール「時間が止められているので、決して枯れませんし千切れません」

トール「薔薇の花言葉はご存知ですよね?」

ソピア「うん」

ソピア「永遠の愛の象徴なんだね。素敵」

トール「……喜んでいただけましたか?」

ソピア「とっても! 大事にするね」

ソピア「バッグに入れていてもいいの?」

トール「はい、乱暴に扱っても平気ですよ。時間が止まっている限りは」

ソピア(バッグに白魔術のリベレーションを使ったら駄目だね……私自身は加護で時間停止が効かないから、私が持っている限り大丈夫かな)


↓コンマ×5(最低150)、トールとの交友度が上がります

トール「永遠の愛をあなたに」(恋人:10.04→14.99)



(読心!)

トール「これは永遠の薔薇といいます」(ドキドキ……)

トール「時間が止められているので、決して枯れませんし千切れません」(噛まなくてよかった)

トール「薔薇の花言葉はご存知ですよね?」(しまった、赤い薔薇と言うべきでした)

ソピア「うん」

ソピア「永遠の愛の象徴なんだね。素敵」

トール「……喜んでいただけましたか?」(ちょっとキザ過ぎたかもしれません……)

ソピア「とっても! 大事にするね」

ソピア「バッグに入れていてもいいの?」

トール「はい、乱暴に扱っても平気ですよ。時間が止まっている限りは」(持ち運ぶ派なんですね……装身具の方がよかったでしょうか……)

(読心終了!)


※特に指定が無い場合、直前のレスを読心します


ソピア(トールくん、かっこつけてたけど内心すっごく慌ててる)

ソピア(それだけ私の事を考えてくれたってことだよね。うれしい)

トールに反乱の前に連絡するよう頼まれた後、ソピアはアンの元に向かった。

怪しまれないようにいつも通り病院で働いていたアンはすでに病院の門の前で待っていた。

ソピア「お待たせ」

アン「……ますます子供っぽくなりましたねぇ」

ソピア「ふふん、大人になったもんね」

ソピアは永遠の薔薇を見せた。

アン「まだ早いんじゃないですか?」

ソピア「トールくんと仲が悪くなるって言いたいの?」

アン「そうではなくてぇ……ほら、お話では戦争の前に婚約した兵士さんって必ず死ぬじゃないですかぁ」

ソピア「……やめてよ」

ソピアたちはウベローゼン市郊外、南の森へ歩く。

アン「その格好はどうにかした方がいいかもしれません」

ソピア「そう?」

アン「皆さんを混乱させるだけですよぉ」

ソピア(昨日会ったばかりの私がいきなり小さくなってたらね……説明で無駄に時間を使うのは軍に見つかるリスクが高いよ)

ソピア(それとも昨日が変装だったことにすれば説明は一言で済むかな)

ソピア「あれ?」

森の入口でソピアを待っていたのは……


1.変装魔法を使い16歳のソピアの姿で行く
2.このままの姿で行く

↓1 選択安価


↓2 コンマ奇数…エルミスがいた コンマ偶数…ハルカがいた

ハルカ「やっ、ソフィアさん」

ソピア「ハルカさん、こんにちは」

ハルカ「今から大事な話があるんでしょ。あたしも行っていいかな……?」

ソピア「うん。仲間だからね」

ハルカ「町の中でも森にはモンスターが出るからね……気は抜いちゃダメ」

ソピア「…………」

ハルカ「どうかした?」

ソピア「なんで馴染んでるの!?」

ハルカ「あー……アンさんから全部聞いたんだ」

アン「ハルカさんはさっき病院を訪ねてきましたですぅ」

ソピア「びっくりされないことにびっくりしたよ……」

歩く3人の前にモンスターの影。

怪鳥「キエエーッ!」バサバサ

ハルカ「下がって!!」

アン「な、なんですかぁ!?」

ソピア「こうなると思ってた」

現れた怪鳥は中型モンスターだ。今のソピアの敵ではないだろう。

怪鳥「クッ、クッ」クイクイ

ハルカ「……手招きしてる?」

アン「あっ、そういうことですかぁ。行きましょう!」

怪鳥は時たま振り返ってソピア達を確認しながら進むと、大木の幹の中に入って行った。

ソピア「……プライベート異空間だ」

ソピア達は王子のものと思われる異空間に足を踏み入れる。

ソピア「お邪魔します」ペコリ

イデア「お待ちしておりました」

ウィア「今日は仲間を連れてきたんだな。俺もだけどね」

レオナール「トリ、ご苦労だった」

怪鳥「コキキッ」

ミハイ「君は……ソピア君でいいんだね?」

ソピア「はい。ソピア・ウィンベルです」

イデア「姿を変えることで軍の目を欺いていたのですか。素晴らしい」

ソピア(特に疑う人はいなかった)


ハルカ「アンさん、この方たちは……?」

アン「逃亡貴族の方ですよぉ」

アン「あの綺麗な女性はイデア・ベアトリクス・フォン・ヴァレンティンさん、騎士団の方です」

アン「もじゃもじゃの方はレオナール・グザヴィエさん、元々は富豪で、今は森に住んでるらしいです」

アン「ピエロの隣の方はウィルアック・ヨークフィールドさん、ウベローゼン市の公爵様で、ピエロはその執事です」

アン「細くて背が高くて赤い目の人が王子様です」

ハルカ「ありがとう」


ミハイ「まずは最終確認だ。諸君、反乱に参加する意思は固まっているかい?」

イデア「無論です」

レオナール「我輩の仲間たちの助力は得られた。いつでも行動は可能である」

ウィア「あ、俺もオーケーだよ」

ソピア「はい。頑張ります」

ミハイ「重ねて礼を言わせて貰おう。ありがとう、諸君」

ミハイ「僕から作戦を指示する前に、諸君の戦力を確認しておきたい」

ソピア(どこまで戦力を明かそうかな……)


1.ここにいるアンとハルカだけ紹介、他は詳細を伏せる
2.1+エルミスが味方であることを明かす
3.1+ヒレアとマリンの正体と能力まで明かす
4.1+ソピアの使える魔法を全て教える
5.全部

↓2 2・3・4は複数選択可

ソピア(私の魔法の事は伏せた方がいいよね……)

ソピア(特に読心は教えたくない)

ソピア「まずはこれを見てください」

イデア「共和国軍の勲章……まさか!」

ウィア「噂には聞いてるよ。ソピアちゃん、英雄『神殺』なんだって?」

ウィアは一同にソピアの功績について説明した。

イデア「貴女が吸血鬼を退治しラヌーン国を滅亡させた、と」

レオナール「なれば貴殿はかなりの実力者ということか」

ソピア「いえ、私はそんなに強くないです」

ヒレア「だって私たち生きてるもの」

マリン「ねー♪」

ソピア「また影から出てきた……」

ヒレア「お姉ちゃんだからね。いつでも守ってあげなくちゃ」

マリン「ソフィーは義理の姉が吸血鬼で、ワタシを海神に変身させられる海子でもあるのよー」

イデア「流石に貴女も逃亡を成し遂げられるだけの運と実力をお持ちのようですね」

レオナール「しかし、目立ち過ぎである」

ソピア「そうかもしれません……」

ウィア「俺と同じで仲間がたくさんいるのかな。他には?」

ソピア「エルミス……エイラ・ブラッドレイさんが仲間です」

ウィア「へえ」

ソピア「あと、ジーク・オーグロスさんとも知り合いです」

レオナール「貴殿には危機感が無いのか……」

ソピア「2人ともいい人ですよ」

ミハイ「ふむ、それは使えそうだ。どうにか呼び出せないかね?」

ソピア「エイラは人質にはできません。共に戦ってくれる仲間です」

イデア「しかし、裏切られるのでは?」

ソピア「いいえ、絶対に裏切りません」

ウィア「断言するってことは何かあるんだろうさ。俺は信じるよ」

ソピア「後はここの、アーチャーのハルカさんとガンマンのアン。風魔術師の仲間もいます」

ミハイ「そうか……ソピア君、ありがとう」

イデア「先日もお話した通り、私はサウソーシャの騎士の一員です」

イデア「現在はウベローゼンの町に護衛の騎士を2名連れておりますが、獄中に囚われた騎士達を解放すれば戦力になっていただけるでしょう」

イデア「また、騎士団領では共和国軍に対する不満が高まっています」

イデア「本格的な内戦になれば必ずや王家のために駆け付けると、騎士団を代表して宣言します」


ウィア「俺の仲間は彼らさ」

マッド「ニタニタ」

掃神「…………」

猫姫「はいにゃ」

ウィア「2人は強者の勲章を持ってるから兵士100人分以上に強いよ。マッドも同じくらい戦える」

ウィア「本当はもっとたくさん呼ぶつもりだったんだけど、ウベローゼンの知り合いが何人も違法ハーブにはまっちゃってたんだ」

ウィア「軍に狙われたかな」

ウィア「他の町の知人にも電話で連絡したけど、この分だと間に合いそうにないかな」


レオナール「我輩は昨日、森の仲間に助力を願った」

レオナール「言葉は通じぬが、多くの者が我輩の力となることを承ってくれたようだ」

ウィア「森の仲間?」

レオナール「……貴殿らがモンスターと呼ぶ者たちである」

レオナール「かなりの実力者もいる。例えばこのトリは不死鳥である」

怪鳥「…………」

ミハイ「レオナール君は数多くの強力なモンスターを使役できるのだね」

レオナール「……使役ではない! 我輩と彼らは対等な関係である!」

ミハイ「これは失礼した」


ミハイ「最後に僕だね」

ミハイ「僕は魔法弓を得意としている。残念ながら兵士の軍勢や大型モンスターを相手にできるほど強くは無いがね」

ミハイ「また、趣味の遺跡探索で得た有用な道具がいくつかある」

ミハイ「この異空間もそうした道具で作り出したものだ。時間があれば諸君にも僕の自慢の道具を紹介したいのだがね……」

ミハイ「戦える仲間はいない。僕は諸君以上に追われている身だったものでね、他人との交渉は最低限に控えていたのだよ」

ミハイ「では、具体的な反乱の内容について話すとしよう」

ミハイ「囚われの貴族を助け出し、共和国軍を降伏させれば僕らの勝ちだ」

イデア「しかし牢獄の数は多いです。助け出すことができるのでしょうか?」

ソピア「あ、麓町の監獄に全員いるらしいですよ」

イデア「それは本当ですか!?」

ソピア「英雄として軍の空中戦艦に招かれた時に、はっきりと聞きました」

ソピア「でも、麓町に戦力を集めるらしいので、助け出すのは大変だと思います」

ミハイ「他には何か言っていなかったかい?」

ソピア「他の牢獄にもある程度兵を置いて、逃亡できないように空中戦艦、港町の軍艦、国境も守ってて」

ソピア「扇動できないようにテレビ局も守ると言ってました」

ミハイ「困ったね……完全に行動が読まれている」

ウィア「反乱、もう無理くね?」

ミハイ「いや、場所が分かっていて、それが一か所であることは僥倖だ」

ミハイ「何が何でも突破する他ないだろう」

イデア「同感です」

レオナール「他国の協力を得ることはできぬのか?」

ミハイ「既に手は打たれているんだ。承認式で多くの国が共和国政府を認めてしまった」

ミハイ「今や僕らの依頼に応じてくれるのは革命が広がる恐れのある隣国くらいだろう」

ソピア「でもそれ、魔導帝国ノーディスとジャルバ王国ですよね? 今ラヌーンで戦争してますけど……」

ミハイ「その通り。僕らは侵略のきっかけとして利用されて最後は捨てられるだろう」

ソピア「あと……大統領就任式と共に処刑を行うとも言っていました」

ミハイ「大統領就任式の日程を知っている者はいないか?」

アン「はーい、調べておきましたよぉ。明日の正午ですねぇ」

ミハイ「では、それまでに助け出さねばなるまい」

ウィア「助けるだけじゃなくて、逃げる先を用意しないと駄目だろ?」

レオナール「戦う準備を進めるのならば軍の基地を奪うのが良いだろう」

ミハイ「監獄に向かう救出班と基地を奪う攻略班に分かれよう」

ソピア(まずはお父様とお母様を助けなきゃ!)

ソピア「私は、救出に向かいます」

ウィア「適任だね。ソピアちゃんか王子のどちらかがいいと思ってたよ」

ミハイ「いやしかし、僕が単独で見付かって討ち取られたら終わりだ。悪いが攻略班の後方支援に専念させていただこう」

レオナール「我輩も攻略であるな。数が必要だろう」

ウィア「俺も。派手な方が楽しいじゃん」

イデア「ソピア様、私も連れて行っていただけないでしょうか?」

ソピア(どうしようかな。この人は足手まといになるかも知れない)


1.イデアも連れていく
2.イデアと仲間の騎士には基地を落とす方で頑張ってもらう

異空間のすみっこ。

マリン「ぶー、話しにくーい」

ヒレア「王子様、私たち平民が話してはいけないようなオーラがあるわ」

猫姫「ウィアも結構偉い人にゃんだけどにゃあ。普通に話せるにゃあ」

掃神「…………」

ヒレア「アンは王子様に仕えてたって昨日聞いたけど……」

アン「上流階級同士の会話に割って入るメイドは三流ですぅ」

マッド「……その通りでございます」

アン「でも真面目な話の邪魔にならない程度にリアクションすると喜んでもらえます」

マッド「ええ……私もウィルアック様にもっと声を出せとお叱りを受けますね」

ヒレア「……その分派手に動いてるからいいんじゃないかしら」



ソピア「はい。あなたも家族が捕まってるんですよね。一緒に行きましょう!」

イデア「恩に着ます……!」

ウィア「じゃ、戦いは男衆で」

イデア「いえ、私も救出を成し遂げたならばすぐに参戦いたします」

ミハイ「個別の作戦はそれぞれで考えた方がいいだろう」

ミハイ「その前に実行日時を決めておこうじゃないか」

レオナール「今夜ではないのか?」

ミハイ「早朝の方が集中力が切れてなお襲撃には適している。日が上ると良くないがね」

イデア「では早朝に致しましょう」

ミハイ「しかし一つデメリットがあるのだよ。なんだか分かるかね、ソピア君?」

ソピア「えっと……眠い?」

ミハイ「その通り。敵が眠い時、僕らもまた眠いということさ」


作戦実行は

1.39日目深夜
2.40日目早朝
3.40日目朝

※今は39日目です

ソピア「今夜がいいと思います」

ソピア「流石に早朝は私たちも辛いと思うので……」

レオナール「賛成である。我輩の仲間の多くが夜行性、深夜が最も実力を発揮できるだろう」

ミハイ「では、夜2時で決まりでいいかな」



ソピア「イデアさん、改めてよろしくお願いします」

ヒレア「ヴァレンティン家って騎士の中ではどうなのかしら」

イデア「名誉騎士の一族ではありますが……私自身は未熟者です」

ソピア「私なんてダンス以外何もできなかったんですよ。騎士の方がすごいに決まってます!」


イデアさんのスキルを自由安価

例:『逃げ足』『ダンス』『レイピア術Ⅰ』『風魔術』など

↓1、2、3

今日はここまで、週末忙しいので次は月曜日

番外編終わってないので、前スレへの誤爆に気を付けつつ再開します

イデア
『鉄壁』…物理防御・精神防御・魔法防御が高い
『戦術』…兵員の配置や指示能力に長ける
『忠誠』…特定の対象に忠義を尽くして行動する際能力が向上する、今の対象は騎士団と王家
※指揮官。武器は振りまわさない。


イデア「騎士の家に生まれたので、ギルドの壁を超えてどんな武器でも一通り扱えます」

ソピア「私もどんな魔法でも使えるのでお揃いですね」

イデア「えっ?」

ソピア「何でもないです」

イデア「ですが……実戦で武器を振るったことは一度もありません」

イデア「私はさほど体が強くないので、主に戦術など、指揮官としての教育を受けました」

イデア「しかし、盾の扱いには自信があります!」

ソピア「あれ、でも盾持ってませんね」

イデア「あります」スッ

ソピア「わっ、大きい盾、どこから!?」

イデア「岩魔術師が作成した収納のルーンですよ。武器もここにしまっています」

イデア「貴女のバッグにも仕掛けられているのでは?」

ソピア「やけにたくさん入ると思ってたらそういうことだったんだ……」

ミハイ「それでは諸君、今夜0時に麓町の旧ザネッティ邸で相見えよう」

ソピア(そろそろ解散だね。最後にもう少し誰かと話しておこうかな)


1.ミハイ
2.イデア
3.レオナール
4.ウィア
5.ニコラ
6.安全を考えて足早に帰る

ソピア「王子様、私と少しお話して頂けませんか?」

ミハイ「ああ、構わないよソピア君。楽にしたまえ」

アン「王子様、お久しぶりですぅ!」

ミハイ「やあアン君。また髪型を変えたのだね?」

アン「どうですかぁ?」

ミハイ「ああとても似合っているよ。だが、君に似合わない髪型はほとんどないだろう」

アン「ありがとうございます! 王子様大好きー♪」ギュ

ソピア「アン……」

アン「お嬢様も適当でいいんですよぉ?」

ソピア「流石に不敬が過ぎるような……」

ミハイ「子供の態度までとやかく言いはしないさ」


例1.アンは王宮でもこんな子だったんですか…?
例2.趣味の遺跡探索について
例3.昨晩王子からのメッセージを届けてくれたギターを背負った男性について
※自由安価

↓2まで

下2までだとソピアが何のために話し掛けたか分からなくなったので下3まで採用



(読心!)

ミハイ「ああ、構わないよソピア君。楽にしたまえ」(千原ジュニア。千原ジュニア)

アン「王子様、お久しぶりですぅ!」(やっと落ち着いて話せる)

ミハイ「やあアン君。また髪型を変えたのだね?」(千原ジュニア)

アン「どうですかぁ?」(褒めて褒めて!)

ミハイ「ああとても似合っているよ。だが、君に似合わない髪型はほとんどないだろう」(千原ジュニア千原ジュニア)

アン「ありがとうございます! 王子様大好きー♪」(社交辞令には社交辞令で返します)

ソピア「アン……」

アン「お嬢様も適当でいいんですよぉ?」(ソピアは真面目すぎ!)

ソピア「流石に不敬が過ぎるような……」

ミハイ「子供の態度までとやかく言いはしないさ」(千原ジュニア!)

(読心終了!)


ソピア(あれ……? 王子様の心の声がおかしい)

ソピア(読心魔法が上手くいかなかったのかな)

ソピア(連続で使いすぎるとダメなのかも……魔人先生はそんなこと言ってなかったけど)

ソピア(……なんだか気になる)

ソピア「王子様……千原ジュニアという言葉をご存知ですか?」

ミハイ「ん、ああ。異世界のコメディアンだね」

ソピア(知ってた……!?)

ソピア(ということはさっきの読心結果は当たってたってこと……?)

ソピア(……納得いかない)

アン「王子様……また異世界に行かれたんですかぁ?」

ミハイ「いや、覗いただけさ」

ミハイ「とある遺跡を探索していたところ、壁面に異世界の映像が映ってね」

アン「どんな映像だったんです……?」

ミハイ「複数の中年男性が話芸を披露していただけだ。いやあ、楽しませてもらったよ」

アン「ほっ……」

ソピア「大変な目にあったことがあるんですか?」

ミハイ「2、3度ほど、異世界または別の時代に飛ばされたことがあるね」

ソピア「異世界って……異界?」

ミハイ「魔界や精霊界とは別物だよ。この世界とは法則から異なっている世界でね、ピンチではあったが実に面白いものが見れた」

アン「王子様は何度やっても懲りないんですよぉ……」

ソピア「それだけ遺跡が好きなんですね」

ミハイ「むっ……しばしば勘違いされるが、僕は考古学には全く興味が無いのだよ」

ミハイ「アン君は懲りないと言ったが、僕の目的そのものが非日常にあるのだから懲りるはずもないだろう」

ミハイ「別に遺跡でなくても構わない。不思議な物を持ち帰り、それを研究するのが僕のライフワークなんだ」

ソピア「……遺跡の守護者に邪魔されたりしません?」

ミハイ「ああ。それでも今まで無事に持ち帰れているところを見ると、僕にはかなりの実力がある、または、とてもツイているのだろうね」


ミハイ「ソピア君。君に一つ忠告しておこう」

ソピア「はい」

ミハイ「いたずらに他人の思考を読むのはやめたまえ」

ソピア「気を付けます……」

ミハイ「僕に読心魔法が正常に働かなかったことを不思議に思っているだろう?」

ソピア「……はい。まさか本当に心の中で人名を呟き続けていたわけじゃないですよね」

ミハイ「僕も君と同じ様に不思議に思っている」

ソピア「……えっ」

ミハイ「僕の持つ何らかの道具が魔法を防いだのだと考えられる。だが、そんな道具に心当たりはない」

ミハイ「……君に時間があるならば、どの道具に魔法を防ぐ効果があるのか実験したいのだが」チラッ

ソピア「時間、ないです! ごめんなさい!」

ソピア「聞こえてたと思うけど、こんなスケジュールに決まったよ」

ハルカ「夜0時に麓町ね……。いつ出発する?」

ソピア「どうしよう。もう少し用事があるけど……9時は遅いよね、夕方4時から6時くらい?」

ハルカ「そのくらいがあたしも有難いかな。4時ごろに魔法局前で待っておくよ」

ヒレア「私も。飛んでくるから遅刻はしないわ」


ソピア「アン、今何時?」

アン「1時半ですねぇ」

ソピア「……あまり時間が無いね」


※ヒレア・トール・クルト・ミルズは選べません

39日目昼 現在地:ウベローゼン南部農業地区
1.どこかへ行く
2.誰かと会う(同時指定した人物は同じ場所にいることが多い)
3.自由安価

↓2

ソピア「アンブロシア行こう」

アン「いってらっしゃいませ!」スタコラ

ソピア「あなたも行くんだよ」ガシッ

アン「いやぁぁぁぁ」

ソピア「大体アンなのにアンブラーじゃないなんておかしいもん」

アン「アンはアンブラーの略じゃないですぅ!」

ソピア「ねえ、アンのフルネームは?」

アン「アン・ブラウンですぅ」

ソピア「やっぱりアンはアンブラーになる定めを持って生まれてきたんだよ!!!!」

アン「単純にフルフィリアで一番多い名前なだけなのにぃ!!」


外装・内装ともに植物に溢れたカフェ、『アンブロシア』。

実は店を覆うツタも、店内の植木鉢に植えられているのもすべてハーブなのだ。

もちろん単独で摂取すると有害なハーブはお客様の手の届かない場所に保管しています。

アン「ここ、違法ハーブの拠点なのでは……」

ソピア「風評被害!」

アン「メニューもすっごく変なんですけどぉ……アンに何を食べさせるつもりなんですかぁ……」

ソピア「この店を出るころには、アンにはアンブロシアの精になってもらいます」

アン「絶対イヤですぅ!?」

ソピア「まあ、食べれば分かるよ」

店主「ごちゅうもんはあ?」

ソピア「アンはどうする?」

アン「……お水でいいですぅ」

店主「ネミラルウォーターですねー」

アン「や、やめます! アンはご遠慮しますぅ!」

ソピア「じゃあ私が代わりに頼んであげるね」


1.ウロン茶
2.エスプレフッソ
3.ミルククセーキ
4.フールツオレ

あ.ベリーアタルト
い.プリンコアラモード
う.シモンロール
え.あたらしだんご

※飲み物と食べ物をセットでのご注文よろしくお願いします

↓1 ソピアが頼む
↓2 アンに頼む

ソピア「フールツオレとあたらしだんご、エスプレフッソとシモンロールをお願いします」

店主「かしこまりましたあ」

アン「たくさん食べるんですねぇ(現実逃避)」

ソピア「前にも話したけど、アンブロシアの料理には特殊な効果があるんだよ」

アン「話を聞く分には構いませんけど食べたくは無かったですぅ……」

店主「おまちどぉ」

アン「ちゃんと料理しましたか!? 早すぎませんか!?」

ソピア「アンブロシアでは細かいことを気にしたら負けだよ」

ソピア「ほら飲んで。いいから飲んで」

アン「お断りしますぅ♪」

ソピア「飲めッ!!」グググググ

アン「飲みませんッ!!」グググググ

ソピア「……いいよ。じゃあ私が食べ終わるまで待ってて」

アン「それくらいなら……」

ソピア(残念だったねアン。ここに居さえすればあなたはアンブラーになる運命……!)

ソピア(フールツオレ……その効果は、非現実的でない範囲で嘘が一回だけ本当になる!)ゴクゴク

ソピア「えへぇ……」

アン「ソフィーのこんな顔見たくなかったですぅ……」

ソピア「もふふーん。……店主さん?」

店主「はぁい」

ソピア「アンは、私のお願いを一度だけ素直に聞くと約束してくれたんだよ♪」

店主「うーそですーねー」

アン「早く帰りたい……」

ソピア「アン。お願い、飲んで」

アン「だから絶対に…………あ、あれ、どうして手が勝手に……」

アン「や、やめ、あああ、あああああああ!!??」ゴクッ

アン「アンッ! アアンアン、アンアアンアンッ!」

アン「アンブロッシアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

ソピア「やった!」

※あたらしだんご…どんなものでも新鮮に感じるようになる

ソピア「もぐもぐ……ふきゅうううう…………」

ソピア「新しいっ!!」

アン「うびょおおおおおおおおおおおおおおおお」

アン「ひいぅ、ひいぉ、ひいぉおおさああああ」

アン「222222222222222222」

ソピア「斬新な反応!」

アン「くおおおおおおおおお!」

アン「うううううううるるるるる、るぅぁぁ!?」

アン「ちょあああああああああああああああああああああああ」

アン「ンンンンッンンンンッンッンッンンンンッン」

ソピア「声は苦しそうなのに笑顔なのが新しい!」

アン「Waaaaaaaaaaaaar!!!!」

ソピア(危険性はありません。あまりに美味だと最初は拒否反応が起きるんです)

ソピア(そこさえ超えればその先には天国が待っています! 頑張れ、アン!)

アン「」

アン「……」

アン「…………ぷはぁ!」

アン「ほっぺたが落ちそうですぅ!!」

ソピア「よかった! 新しいアンの誕生だよ!」

アン「生まれ変わった気分ですねぇ」

ソピア「ニューアンはどう?」

アン「これからはアンではなくアンブラーを名乗りますぅ!」

ソピア「アンブラーこそ新人類!」

アン「……ソフィーは優しいですねぇ」

ソピア「そうでしょ。こんなに美味しくて新しい経験をさせてあげたんだもんね」

アン「そうじゃないです」

※エスプレフッソ…フッ素の力で白い歯に
※シモンロール…指紋が皮膚の内側に巻き取られて消える

アン「初めて食べるアンのために、あまり効果が大きくないものを選んでくれたことですよぉ」

アン「暴走してるように見えて冷静だったんですねぇ……」

ソピア「私が初めて食べた時、慣れるまでもっと時間がかかったからね新」

ソピア「アンにはすぐに慣れて欲しいと思ったんだ新」

ソピア「これからアンは立派なアンブロシアの精だね新!」

アン「あっ、それは違いますぅ」

ソピア「えー……新新新」


ソピア「えっ、お代はいいんですか?」

店主「いま、ふーひょーひがいで、おきゃくさん、へったのでぇ」

店主「にゅーあんぶらーふやしてくれたひとには、さぁびすぅ」

ソピア「ありがとうございます!」

店主「こちらこそお、いつもせんでんさんきゅ~。あんぶらーずのそふぃーさんっ」

ソピア「覚えてくれてた……! もう常連と認められたのかな……」

店主「はぁい。あなた、すーぱーあんぶらー」

店主「またきてねぇ」

ソピア「また……はい! 絶対に!」

ソピア(食べ収めのつもりだったけど……尚更死ぬわけにはいかなくなったね)

ソピア(またアンブロシアに、今度はお父様とお母様を連れて食事に来るんだ……!)

※次で自由行動はラストです

※場合によっては複数人と会うこともできます

※早めに麓町へ出発することもできます



~各登場人物の状況~

○全部知ってる
ヒレア・アン・トール・ハルカ

○ソピアが王子と共に反乱を起こすことを知らない(エルミスは察してる)、11歳も知らない
エルミス・フィナ・フローラ・ラファ

○ソピアが貴族だと知らない、反乱・11歳も知らない
ミルズ・クルト・クリスティ・キュベレ・ロット他


●交友度マックス
エルミス・ヒレア・トール・アン

●イベント待ち
フィナ

●仲間・協力者
ハルカ・ラファ・ポロ・レン・サナ

★それ以外は交友度がまだ上がりきってません

★特定の人物に渡すと交友度が大きく上がるアイテム
・おてんばワンピース
アン「メイドとしての意見ですけど今どきなデザインで可愛らしい上にすごく作業がしやすそうです。……ってあれ、ごめんなさい。これはお人形の衣装でした」
・ウサギなエプロン
アン「普段女の子っぽくない娘でも可愛いものは絶対好きですからっ!」

ソピアは一旦アンと別れた。

ソピア(まだ時間はあるね)

ソピア(町の外にいるロットさん以外の知り合いなら誰でも会いに行けそう)

※ヒレア・トール・クルト・ミルズ・アンは選べません


39日目昼過ぎ 現在地:カフェ:アンブロシア
1.どこかへ行く
2.誰かと会う(同時指定した人物は同じ場所にいることが多い)
3.麓町へ出発する(ヒレア・トール・ハルカ・アンが合流します)
4.自由安価

↓2

何でも屋の一室。

フィナ「……」ガチャッ

師匠「遅いぞ」

フィナ「……」

師匠「チッ、返事ぐらいしろっての」

師匠「仕事だ。王子と4人の貴族が明日、囚われの貴族たちを脱獄させるために監獄を襲うらしい」

師匠「軍はどこの監獄を襲うか分からないっつってたが、向こうも馬鹿じゃない。全員収容してる麓町に行くだろうな」

師匠「あたいも貴族たちを迎え撃つチームに参加するぞ。フィナ、お前も来い」

フィナ「……嫌です」

師匠「ま、今回は危ないしな。あたいが相手するからお前は見てればいい」

フィナ「行きたく……ありません」

師匠「あん? まだ踏ん切りがつかないか。影帽子は仕事してんのか?」

師匠「お前が行きたくなくても、あたいが引きずってでも連れていくってことはもう分かってるよな? おっと!」ササッ

フィナ「……くっ」

師匠「あたいにビンタするなんて数年早ええよ! なんだ、またいつものヒステリーか?」

フィナ「あたしは……弟子、やめます」

師匠「…………なんつった、もっかい言ってみろ」

フィナ「あんたの弟子をやめる! 今までお世話になりました!」

師匠「ああん!?」

フィナ「ご、ごめんなさい! で、でもやめるんだから!」

フィナ「争いとか、軍とか貴族とか商会とか、殺し屋なんてもうたくさん!」

フィナ「怖い思いなんてしたくない! 血なんて見たくない、モンスターとも戦いたくない!」

フィナ「あたしは落し物探したり蜂の巣駆除したりしながら楽しく平和に穏やかに生きるんだっっ!!」

バキッ

フィナ「へぶっ!?」ドサッ

師匠「……許されると思ってんのか?」

師匠「お前はもう闇の中に足踏み入れちまったんだよ。あたいが許してもアサシン協会はそれを許さねぇ」

師匠「慣れろ。死に物狂いで慣れろ。それがお前のためだ」

フィナ「…………う、うう」

フィナ「うわぁぁぁあん!! 人でなし! 分かってたけど人でなし!!」

師匠「……麓町のいい菓子屋教えてやる。だから麓町まではあたいと一緒に来い」

フィナ「いやだ、やだやだやだやだ!!」

師匠「ダダこねんじゃねーっての! 何歳だお前!?」


そこに現れたのは

01~25 殺し屋仲間ガドー
26~50 ソピア
51~75 エルミス
76~00 キュベレ

↓コンマ判定

ソピア(フィナと仲直りしたいな……)

ソピア(敵として会うことは無いと思うけど、せめて巻き込んでしまったことを謝っておきたい)

ソピア(運命の輪。魔法に導かれるまま移動すればいつか必ず会える)

徒歩10分。

ソピア「何でも屋にいるみたい」

ソピア(この魔法、フィナがいる方向を壁を無視して示すから入り組んだ場所だと使いにくい……)

ソピア「近い。……この部屋だね」

ガチャ

ソピア「こんにちはー、フィナいるー……?」

師匠「……誰だお前」

ソピア「ハ、ハジメマシテー」

フィナ「ううっ、うう」

師匠「おい、小学生がお前に会いに来たぞ」

フィナ「……う?」

師匠「また後で来る」

ソピア「ふぃ、フィナ! 大丈夫!?」

フィナ「…………もしかして、ソフィー?」

ソピア「そ、そうだよ」

フィナ「……」

ソピア「……」


↓コンマ高いほどフィナが落ち着く

フィナ「……キモッ!!」

ソピア「がーん!」

フィナ「子供だったら攻撃できないとでも思って魔法で変身してきたってわけ!?」

ソピア「そ、そういうわけじゃ……」

フィナ「よくもまああたしの前にノコノコと顔を出せたね!」

ソピア「そ、それは、謝りたくって……」

フィナ「謝る?」

ソピア「こんな騒動に巻き込んでしまったこと。私がエルミスと一緒にいなかったらフィナはアサシン協会に付け込まれなかったかもしれないから……」

ソピア「正体を隠して、あなたに関わって、ごめんなさい……」

フィナ「……そうだよ。あんたさえいなければあたしがこんな目に遭う事は無かったんだ」

フィナ「あたしはね、もう逃げられないんだ……!」

フィナ「殺し屋の道を進むしかないんだ……!」

フィナ「どんなに逃げても嫌がっても、最後はアサシン協会の本部で洗脳されて冷酷な殺人マシーンにされるのがオチなんだ!!」

ソピア「ううん、そんなこと……」

フィナ「あんたに何が分かるっていうの!?」

ソピア「ごめんなさい……」

フィナ「……責任とってよ」

ソピア「責任……?」

フィナ「死んでって言ってるの。わかる?」

フィナ「あたしが死ぬより辛い目に遭うのに、あんただけ笑って生きるなんて許せない」

フィナ「ほら、短剣貸すから。ここを切ると痛みが少なく簡単に死ねるよ。長く苦しみたいならここ」

フィナ「あ、でも見苦しいからあたしの前で死なないで。どっか行って」

ソピア「できないよ……」

フィナ「ふざけるな!!」ガシッ

ソピア「うっ……!」

フィナ「だったら! だったらあたしが代わりに……ッ!?」

その時、フィナは見てしまった。

部屋の鏡に写る、自分にこんな目ができるのかと驚くような冷たい眼差しを。

そして、離れた場所から視線を感じた。師匠のものだろう。

今の会話も聞かれたはずだ。この幼い少女がソピア・ウィンベルだと言う事はすでに分かっているはずだ。

その師匠は遠くからでもソピアを殺せるのに殺していない。つまり。

フィナ「う、うああああああああっ!!!!!」

恨みから生じた殺意と人殺しになりたくない願いの狭間で板挟みになったフィナは……


↓コンマ 奇数…自傷 偶数…逃亡

77でも奇数は奇数です



ザクッ

フィナ「う、ぐッ!」

ソピア「…………えっ!?」

血しぶきが舞う。

ソピアは、それが自分のものではないと気付くのに数秒を要した。

ソピア「フィナっ!!」

フィナ「あ、あはは……あたしって、やっぱり臆病者の、平凡な小市民だ……」

フィナ「こんな大事な時に、直前で急所を外すなんてさ……」

ソピア「フィナ、じっとしてて……ヒール」パァァ

フィナ「あ、あ……」

フィナの傷が塞がる。しかし失った血はしばらく戻らない。

フィナ「なんで……回復したの!」

ソピア「今フィナが死んだら、私が殺したようなものだから」

フィナ「…………」

師匠「おい」

フィナ「あ、し、ししょー」ガタガタ

師匠「フィナ……お前にはがっかりだ」

師匠「ここで消されるか、協会の教育施設に入るか、好きな方を選べ」

ソピア「ま、待って下さい!」

師匠「あん? お前には選択肢はねぇよ、ソピア・ウィンベル」

師匠「逃げられても面倒だ。フィナ、見とけ。お前の代わりにこいつを殺す」

フィナ「や、やめ……!」

ソピア「……!」


>>8の魔法を参考に戦闘開始

※ヒント、大抵の魔法は発動してる間に勝負が決まります

↓2 自由安価

ソピア(クロックアップ! さらに肉体と視力を強化して……)

ザシュ

ソピア「エッ…!? ソ、ソンナ、キョウカシタノニ…」

師匠「チンタラ魔法使ってんじゃねぇよ。魔術師ごときが数倍速くなったところであたいらに追いつけるかっての。なあ、フィナ?」

フィナ「あ、ああ、ソフィー、ああああ……!」

師匠「……お前がまさか自害を選ぶほどヘタレだとは思わなかった」

師匠「しかもそれすらできないほどのヘナチョコだったとは……あたいの見る目が無かったわけだ」

師匠「もうお前なんか弟子じゃねぇ」

師匠「さ、死ぬか、協会送りか、選びな」

フィナ「や、やだ……! 選ぶのやだ……!」

師匠「だらだら付きあうのはやめだ。あと10秒で決定権を奪う」

師匠「10数えたら殺すってことだ」

師匠「1、2、3、4、5、6……」

フィナ「し、死にたくない……死にたくないよぅ……!」

師匠「そうか。生きるならお前には協会の教育を受けてもらう。逃げ切れるようなら、一人前だ」

一年後……心を失ったフィナはターゲットに返り討ちにされてその短い生涯を終えた。

死に対する恐怖は、もはや無かった。



GAMEOVER:13 アサシン協会の掟



※ほぼ負けイベントでしたが、反射・転移で進行しました

1.>>80の行き先選択から再開(内容も併記すると安価採用)
2.>>83の乱入コンマ判定から再開(乱入者をエルミス・キュベレ・ガドーから選べます)
3.>>90でフィナが逃亡するところから再開(師匠はソピアとフィナを泳がせます)

↓再開場所選択

エルミス「何をやっているの!!」

フィナ「え、エルミス……?」

エルミス「ふうん……あなたがフィナの師匠だっていう殺し屋ね」

エルミス「フィナはわたしの下僕よ! 手を出したら許さないわ!」

師匠「……何様だお前」

エルミス「こちらの台詞よ。わたしはエイラ・ブラッドレイ」

師匠「ブラッドレイ……共和国軍元帥の」

エルミス「そう、あなたの雇い主の娘よ! わたしを殺したら共和国を敵に回すことになるわよ!」

師匠「チッ、七光りかよ」

エルミス「フィナ、何があったのか教えて頂戴!」

フィナ「うっ、ひくっ……」

エルミス「付いて来たら許さないからね!」

師匠「行くかよ! クソが……腹が立つ」


魔法街、カフェ。

エルミス「……そういうことね」

フィナ「どうしよう、あたし……」

エルミス「アサシン協会……中々厄介な相手ね。父上でも辛いかもしれないわ」

エルミス「でも、いずれ大陸の覇者となるためには戦わなければいけない相手よね」

フィナ「こんな人前で話してよかったのかな……」

エルミス「いいのよ。むしろどんどん話しちゃっていいんじゃない?」

フィナ「それはないでしょ……」

エルミス「アサシン協会の存在が大衆に知れ渡るといけないからフィナを消そうとしてるのでしょう?」

エルミス「だったら消される前に吹聴して回ればいいじゃない。まさか国民を丸ごと消すような真似ができるとは思えないわ」

フィナ「できるかも……」

エルミス「そうしたらノーディスもジャルバもサロデニアも黙っちゃいないわよ」

エルミス「いつ自国も滅ぼされるか分からないなんて不安だもの。世界中と協会の戦争よ」

カランカラン

ソピア「フィナがここにいるということは……」

エルミス「ソフィー! いいところに来たわね……?」

ソピア「やっぱりいた」

エルミス「ソフィー……縮んでないかしら」

ソピア「昨晩、いろいろあったの……」

フィナ「……!」ギリッ

エルミス「落ち着きなさいフィナ。もうあなたにソフィーを憎む理由はないはずよ」

フィナ「でも、あいつのせいで……!」

エルミス「わたしのせいでもあるわ」

ソピア「フィナ! 聞いてほしいことがあるの」

フィナ「うわ……キモい」

ソピア「ひどい!」

フィナ「何。早く言って消えてよ。キモいから」

ソピア「あのね……ごめんなさい」

ソピア「私が関わったばかりに、普通に暮らせなくさせてしまって……」

エルミス「気にすることはないわ!」

フィナ「……なんであんたが答えるわけ?」

エルミス「ソフィー。フィナは殺し屋の弟子をやめたわ」

ソピア「そう……なんだ」

エルミス「アサシン協会の決まりでやめることは許されないって脅されたらしいのだけど、わたしがいるから関係ないわよね」

ソピア「そう……なのかな?」

エルミス「だから、フィナはこれから普通の暮らしを取り戻せるのよ!」

ソピア「……少し違うと思う」

エルミス「何よ、わたしの理屈に間違いがあるというのかしら?」

ソピア「私とエルミスがいたら、普通の暮らしじゃないんじゃないかな」

エルミス「……そんなことないでしょう! ね、フィナ!」

フィナ「ソフィーの言う通り……特別な人たちと一緒にいたらまともな生活なんてできないから」

フィナ「それとも……エルミスと一緒にいないと協会からは守ってくれないかな」

エルミス「ええ。もちろんよ」

ソピア「エルミス!?」

フィナ「じゃあ、いる。……殺し屋よりはずっとマシだから」

フィナ「でも、今日は帰る」

エルミス「ええ。また今度ね」


1.エルミスと話す
2.フィナを追う

ソピア「待って!」

フィナ「は!?」

ソピア「そんなの、つまらないよ」

フィナ「……何が?」

ソピア「マシだから、私たちと一緒にいるなんて……」

フィナ「……事実だし」

ソピア「私たちと一緒にいるのが、そんなに楽しくないの?」

ソピア「プエルトマリハラでの笑顔は全部ウソだったの?」

ソピア「そうじゃないでしょ。あの時のフィナは心から楽しんでた」

フィナ「それはそれだから……」

ソピア「普通じゃない生活が苦しいだけとは限らないんだよ」

ソピア「この一ヶ月間で、私もそう思った」

ソピア「ずっと普段通りに暮らしてたらフィナには会えなかったからね」

フィナ「殺されかけたのに……会えてよかったって言うわけ?」

ソピア「だって……殺されかけるの、慣れてるから」

フィナ「何があったらそんな境地に達するの……!?」

ソピア「気になるでしょ。また今度話すね」

フィナ「う……」

ソピア「今はお互い気まずいけど……一緒にいればまた仲良くなれると思うの」

ソピア「あっ、だからさっきエルミスは一緒にいないと守ってあげないなんて言ったんだね」

ソピア「エルミスはフィナの思い通り一人にするんじゃなく、エルミスの思い通り皆でいるようにしたんだ。エルミスらしい……」

ソピア「ねえ、フィナ」


1.今度みんなで遊園地に行こう
2.どうなったら一番幸せ?
3.プレゼントをあげる(アイテムは後で指定してもいい)

ソピア「だから……今度みんなで遊園地に行こう」

フィナ「何それ……自分が行きたいだけじゃなくて?」

ソピア「一回行ったけどその時は盛り上がらなかったんだもん……」

ソピア「でも、絶対楽しいよ!」

フィナ「でもさ、行けるの? ソフィー、追われてるんじゃ……」

ソピア「うん。でもそろそろそれも終わるからね」

ソピア「面倒事を全部終わらせたらみんなで遊園地で遊ぼう!」

フィナ「……頑張って」

ソピア「うん?」

フィナ「言いたいことはそれだけ? あたし、もう帰るから」

ソピア「またね!」

ソピア(フィナは去り際に小さく手を挙げてくれた)

ソピア(きっと本当の仲直りもできる。頑張って、平穏を取り戻さなきゃね)

ソピア(今までの貴族としての平穏じゃない、新しい平穏を……)

逃亡貴族レオナール・グザヴィエさんの仲間モンスターを募集しつつ今日はここまで

続きは明日です


すでに出た仲間
サル…マキシマムコング(小型~超大型)
トリ…不死鳥(伝説モンスター)
イヌ…名前未登場(大型モンスター)

↓3まで、条件は強力な野生モンスターであること その内2つ採用、残り1つもどこかで出したい 

邪神が化けた大蛇(本当に従っているのかは謎)

>>104-106採用、オロチは邪神の一形態になります

18時から再開、エルミスにどう動いてもらうかの投票があります、選択次第では今後死亡するメインキャラが増えます

フィナ「……死なないでよ」(友達(仮):10.61)



プライベート異空間。

エルミス「何よソフィー、せっかく離れ離れにならないようにしたのに、迂闊な事言って逃げられたらどうするつもりだったの!」

ソピア「ごめんね。でも上手くいったから許して!」

エルミス「もうっ……」

エルミス「でも、遊園地、楽しみだわ。フィナのためにも早く軍と貴族の対立を解消しなくちゃね」

ソピア「そのことなんだけど……」

今晩の反乱の事をエルミスに告げた。

エルミス「本当に反乱を起こすのね……」

ソピア「うん。最低でもお父様とお母様は助けたいから」

エルミス「それは分かるわ。わたしだって家族が処刑されると聞いたら一人で逃げるなんてできないもの」

エルミス「わたしも手伝ってあげる! 感謝しなさい!」

ソピア「ありがとう! でもエルミスが前線に出てくるのはやめた方がいいと思う」

エルミス「あら、どうして? わたしに攻撃できる兵士なんていないわよ。まさに最強の盾ね」

ソピア「捕まって連れ戻されるんじゃないかな」

エルミス「だったらわたしを人質にすればいいわ! 貴族たちの身柄と交換すればいいのよ!」

ソピア「エルミスのお父さんが激怒するよ。エルミスを返した途端に私たちが皆殺しにされそう……」

エルミス「でも方法によっては有効でしょう?」

ソピア「そうだけど……」


↓3くらいまでで、エルミスの利用法を提案

ソピア「そもそもエルミスを人質にしても、お父さんにしか効果がないと思うの」

エルミス「でも父上は元帥、共和国軍の指導者なのよ!」

ソピア「でも……軍ってまとまってるの?」

エルミス「何が言いたいのよ」

ソピア「家族を大事にするのはすごく立派な事だし、元帥が支持されてる理由の一つだと思うよ」

ソピア「だけど逆に、軍事や国政に私情を挟むのを良く思っていない人もいるんじゃないかな」

ソピア「ラヌーンに飛んで来たのも独断だったんでしょ?」

エルミス「……考えたこともなかったわ」

ソピア「エルミスは私よりよっぽどお嬢様だよ……。過保護すぎるもん」

ソピア「軍の人たちはエルミスのことを可愛がってくれてる?」

エルミス「言う事は聞いてくれるけど避けられてるわね。別にいいのだけれど」

ソピア「良くないよ! 少なくともエルミスの事を嫌いな兵士は一定数いるんだよ!?」

ソピア「彼らは、誰かが先陣切って元帥を批判したらそれに付いてくるよ」

エルミス「そ、そうかしら?」

ソピア「ちょっと話は変わるけど、エルミスのお父さんは革命のリーダーなんだよね?」

エルミス「そうよ! だから人望はあるの!」

ソピア「最初に革命を提案したのは誰?」

エルミス「……父上じゃないの?」

ソピア「違うかもしれないよ。……元帥を革命の旗頭として利用した後、批判して失脚させるつもりかもしれない」

ソピア「フルフィリアを自分の物にするために……」

エルミス「許せないわ! フルフィリアは、わたしのものになるのよ!」

ソピア「もう一つ、大統領が軍人から選ばれたらフルフィリアは軍国になるんだよね」

ソピア「軍国にすることで得をする人たちが、元帥たちに共和制の良さを吹き込んだのかもしれない」

エルミス「グリエール商会……以外にありえないわね」

ソピア「だからエルミスに、その黒幕とも呼べる人物を探し出してほしいんだ」

ソピア「内戦に勝っても負けても、何か仕掛けてくるに違いないから……」

エルミス「でも父上が何も知らなかったらどうするのよ?」

ソピア「軍や商会を調べるにはエルミスの立場は便利だと思うの」

エルミス「たしかに、ソフィーには難しそうね」


ソピア「エルミスに前線に来てほしくない理由は、その便利な立場にあるんだ」

ソピア「ほら、他にも、スパイとして軍の情報を私たちに流すことができないかな?」

エルミス「できるけれど……連絡手段はどうするのよ?」

エルミス「残念だけどわたし、足も遅いし魔法も使えないわ。通信機械も傍受されるだけよ」

ソピア「……魔法なら簡単にはバレない?」

エルミス「風魔術師もいるから程度の低い魔法は察知されるわ」

ソピア(魔人ルーンで転移魔法陣を作って、私たちの拠点とエルミスのいる基地を、魔人先生の城で繋げないかと思ったけど……)

魔人(察知されにくくすることはできるぞ。雑魚魔法兵には気付かれん程度じゃがな)

ソピア(ありがとうございます。……運も必要だけど、エルミスをスパイにしても良さそうだね)


エルミス「スパイって要するに軍を混乱させればいいのでしょう?」

ソピア「情報収集がメインだけどね」

エルミス「混乱させるならやっぱりわたしを人質にするべきよ」

エルミス「わたしを嫌いな兵たちがたくさんいるのなら、父上の独断専行を許さないでしょう」

エルミス「そんな兵たちが父上を見限って行動し始めれば、統率は完全に乱れるわ!」

ソピア「統率を乱すのはいいけど……やっぱり激怒した元帥が襲ってくるのが恐すぎるよ」

ソピア(もしかしてエルミス、私と一緒にいたいだけなんじゃないかな……)

ソピア(幼くなってもすぐに私だと分かって、もう慣れてるし……究極魅了の効果すごい)

エルミス「で、結局わたしにどうして欲しいのよ!」

ソピア「うーん……エルミスはどうしたい?」

エルミス「下僕に任せるわ! こういうのはあなたの方が慣れてるでしょう?」


1.前線(麓町)に連れていく
2.黒幕を探してもらう(軍の基地にいる間はスパイも兼ねます)
3.スパイとして活動してもらう(エルミスに転移魔法陣のルーンを渡します、黒幕探しもできますが黒幕が軍人でなければ徒労です)
4.人質にする

↓2票先取

ソピア「うん、エルミスは人質にするよ」

エルミス「ふふん、わたしの意見が正しかったようね」

ソピア「人質にされると聞いて喜ぶ人なんていると思わなかったよ……」

エルミス「早速父上を脅しましょう!」

ソピア「待って。早すぎるよ。今そんな事言ったら私が殺されるだけだよ」

エルミス「タイミングが重要なのね」

ソピア「うん。貴族を解放させるか軍を混乱させるかができなかったら意味がないからね」

ソピア「エルミスと貴族の身柄を交換した後に、共和国軍から逃げ切るための準備を整えてから」

ソピア「または、内戦が始まってから共和国軍内部を混乱させたい時に、人質を発表するべきだよ」

エルミス「その前に父上が気づくかもしれないわよ」

ソピア「混乱させるための使い方が現実的かもね……」

ソピア(もし元帥の人望がすごかったらそれも意味ないけれど……)


エルミス「人質ということは、わたしも一緒に麓町に行けるのね!」

ソピア(エルミス嬉しそう)

魔人「そうはいかんな!」

ソピア「魔人先生!? ここ、プライベート異空間ですよ! 転移してくるなんてプライバシーの侵害です!」

魔人「わらわでも異空間へ直に転移はできんぞ。ちゃんと表から入ってきたわい」

ソピア「そういう問題じゃないです!」

エルミス「あ、あなたは! わたしに失礼な事を言った変な人ね!」

魔人「覚えておったか」

エルミス「ほら見なさい! わたしはソフィーの敵にならなかったわよ!」

魔人「魔法の力でじゃがの」

ソピア「魔人先生、何の用ですか……」

魔人「人質にするにあたってうってつけのアイテムを持って来たのじゃ。小娘、腕を出せ」

エルミス「嫌よ!」

魔人「ふん、出さないなら刻むまでじゃな」シュン

エルミス「い、いやー! 腕に変なルーンが!」

魔人「わらわ特製、人質のルーン。入れ墨タイプじゃから簡単には消えんぞ」

ソピア「なんてひどいことを!」

魔人「そしてこのルーンの管理権をソピア、お主に譲渡する」

魔人「お主が念じればいつでもこやつの命を奪うことができるぞ!」

ソピア「ええええ」

魔人「さらに、お主が死ぬと同時に発動するよう設定しておくことも可能じゃ!」

ソピア「つ、つまり?」

魔人「お主を殺すとエルミスも死ぬ、と脅すことが可能になるわけじゃ」

エルミス「……!」

ソピア(エルミスが真っ青! そうだよね、だって本当に人質になるわけじゃなく一緒にいたかっただけだもんね……!)

魔人「不安そうな顔をしておるな。クックック、案ずるな」

魔人「ルーンの効果を軍に証明するためにシール型も用意しておいた。適当なモンスターに貼って念じれば命を奪えるぞ。これで心配なかろう!」

ソピア「そうじゃないですっ!」

魔人「何が不満じゃ?」

ソピア「エルミスは私の協力をしながら一緒にいられることを喜んでたのに、こんな仕打ちあんまりです!」

魔人「……お主ら、ハイキングにでもいくつもりか?」

魔人「そんな覚悟で人質を名乗るなぞ、歴史上の数多の人質に失礼とは思わぬか?」

エルミス「ううっ……よ、余計なお世話よ!」

エルミス「わたしがソフィーと離れなければ人質の役目は果たせるでしょう! どうしてこんなことをしたのよ!」


魔人「お主はどうしてもソピアと離れ離れになるからじゃよ」


エルミス「……」

ソピア「……予言ですか?」

魔人「予言というよりは確信に近い……故の、保険じゃな」

魔人「ソピア、お主に起きている波乱は運命の天使の副作用だけでは説明できんのじゃ」

魔人「お主の運命は何者かに操られている」

魔人「そして、その何者かが誰なのかは恐らく突き止められた」

ソピア「えっ……!?」

魔人「さらに、そやつは次にお主とエルミスを引き離すじゃろうと予測できた」

魔人「そうなると人質として機能しなくなるじゃろう」

魔人「わらわは、エルミス、お主の覚悟を無駄にしないために、こうして離れた場所でも人質になれるような細工を施したわけじゃよ」

エルミス「ソフィー……通訳お願い」

ソピア「魔人先生は私たちの事を気遣ってくれたってことだよ。空気は読めてないけど」

魔人「ふん、悪かったの」

ソピア「……教えてください」

ソピア「魔人先生の言う、私の運命を操っているのは誰なんですか?」

魔人「ククク、言うわけなかろう」

エルミス「やっぱりこの人味方じゃないわ!」

ソピア「……運命を操っているのは魔人先生ではないんですか?」

魔人「そう思うなら好きにせい」

エルミス「……帰ったわね」

ソピア(魔人先生がすぐに突き止められなかったってことは……法則神?)

ソピア(刻間神以外にも運命の神々が私の邪魔をしているの……?)

ソピア(私……何か悪い事したかな)


1.予言なんて怖くない!一緒に麓町に行こう
2.仕方ないのでエルミスは人質にしたまま置いて行く。麓町にはまた今度一緒に遊びに行こう
3.軍をより強く脅すために、ソピアが死ぬとエルミスも死ぬようにしておく

↓2票先取

ソピア「エルミス、ごめんね。今回はお留守番してて。麓町にはまた今度遊びに行こう」

エルミス「ソフィーが言うならしょうがないわ。出かけられると思って舞い上がっちゃったわね……」

エルミス「でも、子供に子供扱いされるとすごく不愉快!」

ソピア「ご、ごめんなさい」

エルミス「それと、別にソフィーと一緒にいたかったわけじゃないわ。勘違いしないで頂戴!」

エルミス「わたしがあなただったら人質にするのを選ぶと考えただけよ!」

ソピア「うん。人質になってくれてありがとう」

ソピア「私が死んでもエルミスまで死ぬようにはしないからね。あくまで脅すだけだよ」

エルミス「ええ。でも、勝手に死んだら許さないわよ!」

ソピア「わかったよ」

エルミス「わたしも父上と下僕が和解できるように、何かできることを探してみるわ」

ソピア(あっ、どうせ離れて行動するのなら、エルミスにスパイか黒幕探しを頼んでおけばよかったかも……)

ソピア(できることを探すって言ってたから危なくない範囲で動いてくれるかな?)


魔法街、広場。

ソピア「お待たせー!」

ハルカ「えっと……待ってないよ。まだ16時前だから」

ソピア「でも、もうできることは……」

ハルカ「ゆっくりはできないと思うけど、用事があるなら済ませてきた方がいいよ」

ハルカ「もう後戻りはできないからね……」


1.髪と瞳の色を変えよう
2.クリスティの仕立て屋に入る
3.キュベレが通りかかる
4.テレサとテンパラスが通りかかる
5.賽子魔法(願い事も併記、90で叶う、12で逆、それ以外で異常)
6.自由安価

※トール・ヒレア・アンは自動で合流します

↓2

あんまり進みませんでしたが、ちょっと調子悪いのでここまで…

次回はできれば金曜日に、来なければ土曜日です

そういえば一年前だとヒレアちゃんとロットさんが人気だった気がしますが今はどうなんでしょう


古株のアンは掘り下げられて魅力が出てきた



ヒレアとソピアのやりとりもっと見たい

今日は少しだけ、麓町までは進めます

>>131
ラヌーン編まではどうしてソピアはアンと仲がいいのか全く描写できてませんでしたしね…

>>132
ヒレアとソピアの関係って刻一刻と変化してるんですよね、このまま義姉では終わらないかもしれない

魔法街、仕立て屋。

クリス「いらっしゃいませ」

ソピア「クリスティさん、こんにちは」

クリス「名前で呼ぶってことは、もしかして英雄のお姉さんですか?」

ソピア「英雄……。はい、縮んでますけど、月魔術師のソフィアです」

クリス「まさか、わたしの魔法の打ちどころが悪くって……!?」

ソピア「違います。あの後いろいろあったんです」

クリス「よかったぁ! 結構心配してたんですよっ」

ソピア「本気で襲ってきたくせに……」

クリス「えへへ、ごめんなさい!」

クリス「ところで、今まで着てたお洋服が大きくなっちゃってませんか?」

クリス「よかったら引き取るかサイズ合わせしますよ♪」

ソピア「……商売の匂いを嗅ぎつけましたね」

クリス「昨日のお詫びと修理のお礼、そして従業員なのでタダですっ」

ソピア「私、従業員じゃないですけど……」

クリス「商品を作るお手伝いをしてくれました」

ソピア「自動迷彩マントを作ったの忘れてた。売れましたか?」

クリス「あっ、お姉さんにも売上を分けなくちゃですね」


一枚売れるごとに50G貰える契約でした(5スレ目)

↓コンマ÷2枚売れた(端数切り上げ)

クリス「自動迷彩マントは9枚売れました」

ソピア「あ、大体予想通り」

9枚×50G=450G

9070G→9520G

クリス「透明マントだったらもっと売れると思います。お姉さん、お時間ありますか?」

ソピア「ごめんなさい。今急ぎの用事があって……」

クリス「そうですか……ではまたの機会にっ」


例1.モスボラ市からの帰りは大丈夫でしたか?
例2.ちょっとだけ店内を物色する
例3.服のサイズ直しを頼むor引き取ってもらうor加工するなど
例4.プレゼントを渡す
※自由安価

↓2くらいまで

ソピア「モスボラ市からの帰りは大丈夫でしたか?」

クリス「はいっ。首の修理が終わったので絶好調ですっ」

クリス「新しいこともできるようになったので、野生モンスターなんて楽勝です!」

ソピア「新しいことって?」

クリス「じゃーん。職人さんからいただいた戦闘用マリオネットです」

ソピア「うわぁ……ごついし、拳の先に血に塗れたトゲトゲがついてる」

クリス「邪魔なモンスターさんたちを殴り倒してもらいました♪」

ソピア「たしか、マネキンを操れるんでしたっけ?」

クリス「お願いした通りに動いてくれるんですけど、こうやって糸の魔法で操ってあげないと攻撃を避けてくれません」

ソピア「……それって、人形師のスキルじゃないのかな」

ソピア「裁縫師の上位職だからおかしくはないけど……人形が人形師スキルを使えたらネズミ算になるんじゃ……」

クリス「えっ、わたしが増えちゃうんですか!?」

ソピア「ただの予想ですけどね」

クリス「2、3人増えたら嬉しいけれど、100人増えたらお客さんが入れなくなっちゃいます……」


ソピア(何かプレゼントしてみよう。どんな反応するのかな)


【所持アイテム】
野営セット・銀の短剣・ナイフ・金槌・ハサミ・ドライバー・ライター・花柄の傘・平和のロザリオ
ポーション×2・回復の杖・自動迷彩マント・海子の杖
薄汚れた赤ずきん・エセ探偵セット・女中の服・緋袴・海子の服・強化繊維インナー(防小)・シューズ・桃色のリボン・リボンカチューシャ・アザラシ革の手袋
オニキス×2・琥珀の欠片・火魔術結晶・キングウォッチ・クロノクロウの羽・チャンピオンツタベルト・光るビン・ステンレス・8色カラーキューブ
おてんばワンピース・ウサギなエプロン・ネコのぬいぐるみ

↓ 渡すアイテムを指定

ソピア「クリスティさんにプレゼントがあります」

クリス「えっ、なんですか? お菓子ならご遠慮します」

ソピア(よく渡されるんだろうなあ……)

ソピア「食べれないのは分かってますよ。どうぞ」スッ

クリス「これは……お洋服ですね。お姉さんには小さすぎませんか?」

ソピア「それはそうですよ。クリスティさんのために選んだんですから」

クリス「なるほどですっ。すごく可愛いデザインですね。参考になります!」

ソピア「え、えっと……」

クリス「最新の流行を知って商品作りに活かせばいいんですよねっ?」

ソピア「あの、着ないんですか?」

クリス「着る……思いつきませんでした!」

ソピア「なんで……!?」

クリス「わたし、お洋服を3着しか持ってないんです。外出用が1着と、毎日同じ服だとおかしいので普段着が2着です」

ソピア「新しい服を作ることはないんですか?」

クリス「自分の服を作るくらいなら商品を作ります」

ソピア「でも、その服はローテーションに加えてもいいんじゃないんですか?」

クリス「そうですね、ちょっと試着してみますっ」バタバタ

服を持って2階へ上る。恥ずかしいというよりは客には人間で通しているので見られたくないのだろう。

クリス「お姉さん!」ドタドタ

ソピア「よかった。似合ってる」

クリス「これ、いいです! なんだかすっごく身軽です!」

ソピア「そう思って選んだんですよ」

クリス「あとあと、ちゃんと関節が隠れてるので人前でも大丈夫です」

ソピア(そこまで考えてなかった……セーフ)


↓コンマ+250 クリスティとの交友度が上がります

クリスティ「別人になった気分ですっ」(友人:4.48→7.14)


クリス「お姉さんっ」

ソピア「はい?」

クリス「わたし、とっても嬉しいです!」

ソピア「どういたしまして」

クリス「今度、お返しを用意しておきますね♪」サササッ

ソピア「わっ」

あっという間にソピアのサイズが計られた。

クリス「お願いがあります。次会う時にこれ以上縮んだり大きくなったりしないでくださいね!」

ソピア「は、はい。私もそうならないように気を付けます」



魔法局前。

ソピア「あっ、みんな揃ってる」

ハルカ「用事は終わった?」

ソピア「はい。もう大丈夫です」

アン「それでは出発進行ですぅ!」

トール「……僕が絶対に守ります」

ヒレア「トール。そんな張りつめた顔してたら怪しまれるわ」

通常、貴族の町ウベローゼンから麓町に向かう人々は、街道を通って王都を経由して向かう。

一応道は存在するが、直進すると余計に時間がかかるのだ。

しかしソピアたちにそれはできなかった。王都の検問は突破が厳しく一般人でも数時間待たされてしまうためだ。


トール「ふぅ、ふぅ……」

ソピア「大丈夫?」

アン「だらしないですよぉ」

トール「いきなり傾斜の厳しい階段だなんて思いませんよ……!」

ハルカ「まあ、知らないと谷を通ると思うよね……」

ヒレア「……帰らずの森や海底に比べれば楽じゃない?」

トール「それは、そうですけど……」


まずはウベローゼン北の小さな山を越えなければならなかった。

長い長い階段を上った先には下り階段。平坦な道が無い林の中を上下させられる。


ソピア「軽く登山だね」

マリン(前方にモンスター、強いわー)

ソピア(なんでいきなり!)

マリン(でもこのメンバーなら楽勝ねー)

ソピア(それならいいかな……)

種族
十の位       一の位
1無機物系&軟体系…123液体・45鉱物・67タコイカクラゲ・890貝
2魔法系…12妖精・34妖怪・56悪魔・78ゾンビ・90幽霊
3植物系…1234草花・567キノコ・890樹木
4甲羅系…123カメ・456カニやエビ・7890カブトムシ系
5虫系…123蟻蜂・456蝶蛾・7890クモムカデサソリ
6水棲系…1234魚・567カエルやサンショウウオ・890アザラシやイルカ
7爬虫類系…123トカゲ・456ヘビ・7890ドラゴン
8鳥系…123456タカやフクロウ・7890ダチョウやニワトリ
9獣系…1234犬や猫・5678ヒヅメ系・90コウモリなどその他
0人型…12サル・3456ロボット・7890人形

特性
十の位と一の位
1近接…噛みつきや突進による攻撃  2遠隔…飛び道具による攻撃  3異常…毒や冷凍などの状態異常  4魔法…超常的な攻撃
5速度…身軽さや飛行・水泳能力  6防御…甲殻や属性耐性  7知能…知覚能力や器用さ
8技能…擬態や発光などの一芸  9魅力…美しさや家畜・ペット適性  0協力…回復や群れ


↓1、2モンスター作成 コンマ1で種族、コンマ2で特性

コンマ09、42…遠距離魔法が得意な人形



ソピア「モンスターがいるみたい」

ヒレア「いきなり?」

トール「幸先悪いですね……」

ハルカ「あたしが見てこようか?」

ソピア「気を付けてね」

キャー! ワタシ ワルイニンギョウジャナイデスー!

キケンナマホウ! ソフィアサンニ チカヅケルワケニハイカナイ!

ソピア「…………」

ソピア「……ハルカさんストップ!」


クリス「うう、危ないところでした」

トール「お知り合いでしたか……」

アン「あのプレゼントは彼女のために購入したんですねぇ」

ハルカ「……撃っちゃってごめん」

ヒレア「……なんでこんな森の中にいたのよ?」

ソピア「しかもどうやって先回りしたんですか……」

クリス「お姉さんが山を上って行くのが見えたので、急いで噴射魔法で追いかけたんです」

クリス「でも追い越しちゃったみたいですね」

ソピア「その前に、なんで追いかけてきたんですか?」

クリス「忘れ物ですっ!」

ソピア「あっ、お金……」

クリス「お姉さんもおっちょこちょいなところがあるんですね♪ それではっ」

トール「……」

ハルカ「……」

アン「……」

ヒレア「……」

ソピア「……ごめんなさい」

道なりに進んでいくと木々がまばらになり、開けた場所に辿り付いた。

ヒレア「ここは?」

ハルカ「建物の跡がある、廃村ね」

アン「結構古いですぅ。街道ができるより前の村かもしれません」

トール「何か出そうですね……」

ヒレア「トール、怖いの?」

ソピア「手を握っててあげようか?」

トール「いいです! ただ、最近別の廃村で恐ろしい目にあったので……」

マリン(右の方向に何かいるわー)

ソピア「あ、噂をすれば」

トール「うわぁぁあ!?」


↓1、2 >>147の表を元にモンスター作成 コンマ1で種族、コンマ2で特性

ドンッ

鈍い音と共に、視界が真っ暗になった。

アン「み、みなさーん、無事ですかー!?」

トール「そんな大声出さなくても聞こえますよ……」

ハルカ「……頭を殴られて気を失ったかと思ったよ」

ヒレア「何が起きたの?」

トール「岩に囲まれてるみたいですね……罠でしょうか」

マリン(モンスターにのしかかれてるわー)

ソピア「この岩、モンスターだよ!」


囲う岩。

見た目はただの岩石。生き物が近くを通りかかるとそれを素早く察知し、変形して囲い込む。


ヒレア「だめ。魔剣じゃ削りきれない」

アン「魔法で何とかできませんか?」

トール「こんな狭いところで風魔法を使ったら、みんな激しく壁にぶつかりますよ……」

ソピア「光線魔法はどうかな」

ヒレア「この岩、魔法耐性が強め。跳ね返されたらただじゃ済まないわ」

ヒレア「武器で何とかできないかしら?」

ハルカ「弓を引くには狭すぎるよ」

アン「銃弾が弾かれたらもっと危険ですぅ!」

ヒレア「……もしかして意外とピンチ?」

ハルカ「ねえ、なんだか息苦しくない……?」

トール「空気が薄くなってるんですよ!」

アン「こ、こんなところで死ぬんですかぁ!?」

ヒレア「笑い話にもならないわ……」

トール「仕方ありません……怪我は覚悟でエアバッグを……!」

ハルカ「ソフィアさん、何とかできないかな……!?」

ソピア「うん」

ソピア「転移魔法」

廃村を抜けて再び森の中を歩く一行。

トール「さっきは間一髪でしたね……」

アン「地味に死にかけましたぁ」

ヒレア「ソフィアが転移魔法を覚えてなかったらお終いだったわ……」

ソピア「お姉様は生命力吸収できなかった?」

ヒレア「相手、岩だもの」

ソピア「……無傷で脱出するには転移魔法しか無かったね」


標高が上がってきたが、まだまだ木は減らない。

涼しい空気に交じって水音が聞こえてきた。

ソピア「あっ、滝だ!」

ヒレア「滝ならラヌーンで見たでしょ」

マリン「ワタシとドラゴン作のー♪」

ソピア「あんな破壊的な滝は綺麗じゃないよ!」

トール「海水ですしね……」

ハルカ「私が寝てる間に何が起きてたの……」


↓1、2 >>147の表を元にモンスター作成(ラスト) コンマ1で種族、コンマ2で特性

ソピア「あっ、綺麗な花が咲いてるよ!」

アン「滝の近くは危ないですよぉ!」

ヒレア「飛んだ方がいいわ」

ソピア「そうする!」

トール「羽根も生やせるようになったんですか!?」

ハルカ「それは知ってたけど……随分禍々しい羽根ね」

ソピア「お花摘んできた!」

ヒレア「あら、いい匂い」

トール「レストスミレですね。恵まれた環境でしか育たない珍しい花ですよ」


レストスミレ。

美しく小さな花。フルフィリア各地の森林に自生しているが栽培できないため一般的な花屋には並ばない。

こう見えてちゃんとモンスター。周囲に気配を感じると強力な沈静化魔法を使う。


ヒレア「でも眠くなる匂いね……」

ソピア「うん。摘む時も手から力が抜けそうになったよ」

トール「弱い花ですからね。魔法で脱力させることで身を守っているんですよ」

ハルカ「魔法耐性の強いモンスターが近くにいたら……」

トール「はい。危険な花です」

ソピア「持って行っていいかな?」

アン「たぶん町に着くころには弱ってると思いますよぉ」

ヒレア「その前に私たちが弱りそう……」

ソピア「しょうがない……諦めよう」

歩いていると、林の中に畑が現れた。

農民と思われる男性が畑で作業している。

ソピア「小さな村?」

アン「いいえ、ここはもう麓町の郊外ですよ」

ソピア「あ、もう着いたんだ」


※麓町について今決まっていること
 こんな位置にある→ http://i.imgur.com/Om6GgzD.jpg(フルフィリア共和国地図)
 王都ティルベルクと工業都市モスボラとは鉄道で繋がっている
 炭鉱がある
 旧ザネッティ邸がある

↓1、2、3 麓町の特徴(気候、地形、特産、施設など)
↓4 麓町の名前(○○市)

鉱山の町シスヤタ編は昼過ぎから、いわゆるラスダン前の町です

例によってルナーシャもどこかで使います

体調悪いので明日に延期します

鉱山の町、シスヤタ市。

高い山に囲まれた台地にある大きな町で、この町の東にある炭鉱が国の産業を支えている。

また、北部には希少鉱物の鉱脈も存在する。

かつてザネッティ公爵家はこの希少鉱物を独占することで栄えていた。

一方で南西には農地や放牧地が広がっている。

標高は高いが年中通して日当たりがよいので作物の育ちが良いのだ。

中心街では国内屈指の高級食材を使った料理が楽しめる美食の町でもある。

ただし一般人にはお勧めできない洋菓子店、酒屋、精肉店があるため、どこの食材を使っている店なのか下調べしなければならない。



ソピアのプライベート異空間。

ハルカ「……どうしていきなりここなのかな」

ソピア「先に役割分担を決めておきたいんだ」

アン「攻略班と救出班ですかぁ?」

ソピア「そう。私は救出班だけど、みんなついて来たら目立っちゃってしょうがないよ」

ソピア「何人かは王子様と一緒に攻略班に行ってほしいんだ」

トール「……いえ、陽動や脱獄経路の確保も必要ではないですか?」

ヒレア「私の霧で全員眠ってくれたら楽だけど……」

ハルカ「正直、この中だとあたしとアンは潜入工作には向いてないと思う」

アン「ハルカさんは弓しかありませんし、アンはぶきっちょですもんねぇ」

ソピア「……やっぱり、先に情報収集からした方がいいかも」

トール「では、一旦解散しましょうか」

ソピア「うん、今は7時だね。11時に宿屋前で集まろう」

宿屋前。

ソピア「なんだろう。外におっきな黒い板がある」

ソピア「すみません。これなんですか?」

町人「ああ。大きなディスプレイだろう」

ソピア「ディスプレイ?」

町人「テレビを大きくしたようなものと思ってくれればいい」

ソピア「みんなでテレビが観れるんですか?」

町人「ほら、明日、共和国で初めての大統領選だろう」

町人「その様子を全国に生中継するためにテレビ局が設置したんだ」

ソピア「ふーん……」

ソピア(軍がテレビを通して民衆を扇動されることを恐れていたのは、これがあったからなんだね)


39日目夜 現在地:鉱山の町シスヤタ
1.監獄前
2.旧ザネッティ邸
3.シスヤタ駐屯地
4.美食街
5.宝石店
6.シスヤタ魔法局

ソピア(攻略班が攻め込む駐屯地を視察しておこうかな)


ソピア「ここだね」

兵士「止まれ。ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ」

兵士2「お嬢ちゃん、親御さんはどうしたんだい?」

兵士「日が沈む前に家に帰りなさい」


1.英雄の勲章を見せて名を名乗る
2.信頼魔法を使って中に入れてと頼む
3.外周をぐるりと見て回る
4.自由安価

ソピア「けちんぼ。かーえろ」

兵士2「家まで送っていこうか?」

ソピア「いらないっ!」ダーッ

兵士「脚速いな!」


ソピア(改めて、警備のいない場所を探そう)

ソピア「……」キョロキョロ

ソピア(塀が無いところは必ず兵士が見張ってる。当たり前か)

ソピア(塀はちょっと高いけど私なら跳び越えられる)

ソピア(問題はそういう魔法の対策がされてるかもしれないってこと……)


1.塀を越える
2.塀の内側に転移する
3.信頼魔法
4.勲章を見せる
5.諦めて帰る
6.自由安価

ソピア(転移!)


駐屯地、訓練所裏。

ソピア(入れた!)


1~8 誰にも見られていない
9 魔力を検知されている
0 見られていた

↓コンマ一桁

ソピア「…………」

ソピア(兵士が飛んでくる気配はない)

ソピア(私が言う事じゃないけど、この基地、大丈夫かな……)

ソピア(許可証の提示を求められないように、余計な接触は控えなきゃね)


ソピア(入れたのはいいけど……この後どうしよう?)

ソピア(施設は大きく分けると管理棟、宿舎、訓練施設、武器庫、食料庫があるみたい)

1.訓練施設に潜入
2.武器庫に潜入
3.管理棟に潜入
4.自由安価

訓練施設には屋外訓練所、武術訓練所、射撃訓練所、軍楽隊訓練所、医務室などがあるようだ。

見付かった瞬間に怪しまれるので迷彩マントを被って移動する。

ソピア(小さくなったから隠れやすいね)

ソピア(もう訓練は終わったみたい。誰もいない)

ソピア(あっ、あれは!)

教官長「振りが甘い」

新兵「すみません!」

ソピア(普段着の上から軍服の上着をひっかけているお婆さんが、一人の男性に槍術の指導をしている)

ソピア(あのお婆さんはたしか強者の勲章を持つ軍人の一人、通称『全武』……)

教官長「もうおしまいかい?」

新兵「ま、まだいけます!」

教官長「それなら立たんかい! 戦場では誰も待ってくれやしないよ!」

ソピア(教官長なんだっけ。厳しそう……)

新兵「はー、はー……もう、駄目です」

教官長「……よく頑張ったね。お疲れさま」

新兵「お疲れさまです! 本日はお休みのところ、ご指導下さりありがとうございました!」

教官長「いいんだよ。若造を鍛えるのがあたしの仕事だけど趣味でもあるのさ」

ソピア(意外と優しい人?)

教官長「さて……」

教官長「そこに隠れてるのは誰だい?」

ソピア(転移!)

教官長の投げた石は空を切った。

教官長「逃げたか……」

ソピア(危なかった!!)

ソピア(気を付けないと……今この駐屯地には強者の勲章を持った人たちが集まってるんだ)

ソピア(せっかくリスクを冒して潜入したんだから、何かして帰らないとね)


1.来ている勲章持ちの人々を探ってみる
2.武器庫に潜入
3.管理棟に潜入
4.自由安価

ソピア(管理棟……何か重要な情報無いかな)

ソピア(って重要機密がありそうな場所なのに普通に入れちゃった……)

魔法兵士「俺たちも監獄に向かうぞ。早くしろー」

女魔法兵士「待ってまだお化粧済んでなーい」

ソピア(魔術師もいるんだ……気を付けないとね)

ソピア(私が知らないだけで他にももっとずるい魔法があると思うから……)


管理棟、指令室。

ソピア(ここなら何かあるはず)

ソピア(あっ、声が聞こえる。あの人は……)

魔導長「荷が重いことですなあ。まず間違いなくこちらを攻めてくるでしょうに……」

ソピア(電話で話してるみたい)

魔導長「しかしなぜ六勇がただの一人も来れないのですかな?」

魔導長「ふむ。3人が来れないのは仕方ないでしょう。大統領選に専念して欲しく思います」

魔導長「海軍大将、衛生兵長、空軍大将は? ……ほう、ほう、なるほど」

ソピア(六勇はこの町に来てない? ラッキーだね)

魔導長「老兵2人、全力を尽くすとお伝えください。では、はい、では……」

ソピア(魔導長さんとさっきの教官長の2人がここのリーダーなんだ……)

魔導長「待たせてすまないね、ソフィアさん。電話中じゃった」

ソピア「っ!?」

魔導長「なぜ隠れておるんじゃ……?」

ソピア「その、子供は帰れって言われそうなので……」バサッ

魔導長「ソフィアちゃん、少し見ない間に……小さくなったのう」

ソピア「いろいろありました」

魔導長「若返りの術があるのならばぜひワシにも教えてくれないかな?」

ソピア「あ、これ呪いなんです」

魔導長「ワシも退職したら、見かけだけでも若さを取り戻したいものじゃな」

ソピア(ああ……風魔術で気配探知できるんだ)

ソピア(風魔術は月魔術以上に情報戦向きの魔法なんだね)

ソピア(私の容姿が後で全軍に伝えられることになりそうだけど、着替えれば何とかごまかせるかな……)

魔導長「何かワシに用があったのかい?」

ソピア「え、えーっと」

魔導長「しかし、無理せんでもいいんじゃよ」

魔導長「ワシに予知は使えないが、一つ分かる。王子達は必ず今日ここに攻めてくるとな」

魔導長「いくら英雄と言えどもキミはまだ若い。やめておきなさい」

ソピア「は、はあ」

龍殺「え~、私はやだ~」

ソピア「わっ」

龍殺「神殺ちゃん小さくなった~?」

拳魔「おや、貴女でしたか。言われなければ分かりませんでしたよ」

ソピア(英雄『龍殺』、私と同じくらいの子で同じように誤解で英雄に認定された子。麓町に住んでるんだったね)

ソピア(英雄『拳魔』、ひょろひょろした記者の男の人。外国の軍隊を一人で退けた凄い人。交渉力が高そう)

ソピア「お二人も監獄の警備を?」

龍殺「ううん~。私は山に行くよ~。モンスターの気が立ってるってドラゴンの幽霊が言うの~」

拳魔「自分は取材ですね。魔導長さん、よろしくお願いします」

魔導長「うむ。だがワシの横にいても面白いことはないよ」

龍殺「神殺ちゃんも一緒に来る~?」

ソピア「ううん。私は遠慮するよ」

龍殺「わかった~。がんばってね~」

拳魔「魔導長さん。監獄の地図はありませんか?」

魔導長「コピーは禁止しておるよ」

拳魔「では、新聞には載せられませんね」

ソピア「当たり前です……」

ソピア「あっ、私にも見せてください。警備場所の確認を」

拳魔「止めなくていいんでしょうか?」

魔導長「もう止めはせんよ。吸血鬼から町を救ったこの子の勇気は本物じゃ」

拳魔「実力もですね。ラヌーン国を滅ぼすほどですから安心して任せられます」

ソピア(駐屯地の地図もこの部屋にあった)

ソピア(監獄と駐屯地の構造を頭に叩き込む!)


~駐屯地~

狙撃対策だろうか、背の高い建物は見張り台のみ。

出入り口は南北西の三か所。塀と同じ高さの鉄扉を閉めることができる。


~監獄~

出入り口は正門だけ。

塀の上に監視用の通路が通っている。塀に魔法対策があるかどうかは地図では不明。

内側には囚人の労働用の施設や広場が存在し、かなり広い。

監獄の中心付近に一般囚人の牢があるが、貴族が囚われているのはさらにその地下牢であるようだ。

地下には迷路のような通路がある。今の短時間で道を覚えることはできない。


ソピア(うわあ何このダンジョン)

ソピア「ありがとうございました」

魔導長「職員でもたまに迷うと聞くから、地下には入っちゃいけないよ」

拳魔「ソフィアさん、それではいずれまた」


ソピア(ちゃんとワープで脱出。門だと検査がありそうだもんね)

ソピア「時間は……後2時間くらい?」


39日目夜 現在地:鉱山の町シスヤタ
1.監獄前
2.旧ザネッティ邸
3.美食街
4.宝石店
5.シスヤタ魔法局

ソピア「美食と聞いたら黙ってられないよね!」


美食街。

ソピア「美味しい匂いが、いっぱーい!」

男性「もう夜9時だぞ。なんで小学生がここに」

男性2「こりゃ悪い人に捕まる前に助けてあげなきゃな。オレ軍の人探してくる」

男性「頼んだ! おい嬢ちゃん名前は……っていねぇ!」


ソピア「駄目だ……この格好じゃ、夜出歩けない!」

アン「そんなことだろうと思ってましたぁ♪」

ソピア「アン!」

アン「アンが保護者代わりになりますよぉ」

ソピア「ありがとう!」

アン「ソフィーはどこに行こうと思ってました?」

ソピア「適当に、美味しそうなお店を探そうと」

アン「いけませんっ! そんな風に何にも考えないで美食街を歩いたら死んじゃいますよぉ!」

ソピア「し、死ぬ!?」

アン「はい! 脅しではありません!」

ソピア「ど、どんなお店があるんだろう……」

アン「2軒に1軒はアンブロシア並みのハズレですぅ!」

ソピア「アンブロシアはハズレじゃないよ!!」


1.ベーカリー『いきいきブレッド』
2.酒造『シャトー・プリチュール』
3.鮮魚店『賢者の石』
4.精肉店『生肉屋』
5.カフェ『エアー』
6.洋食店『ヒートフレイムプロージョンボンバー』
7.洋菓子店『ヘヴンズドア』
8.軽食屋台『鉱山グルメ』

↓1、2 2つずつ指定

ソピア「パン屋さんに行こう」

アン「行きましょー!」

ソピア「……アン。どうして後ろの方にいるの?」

アン「そんなことないですよぉ」

ソピア「ま、いっか」


ベーカリー『いきいきブレッド』
「パンが美味しいあなたを待っている!」


ソピアは店に入るなり頬をかじられた。

ソピア「いたい!」

戦士「よう、嬢ちゃん、ここは初めてか?」

パン「シャアア!」

戦士「……はあっ!」パクッ

パン「グギャアアア!」

ソピア「パンがいきいきしてる!」

職人「ここは……パンとの戦いを通じて己を鍛える店」

職人「我が丹精込めて育てたパン、簡単に喰えると思うべからず」

ソピア「きゃっ! いたた……本気を出せばこんなパンなんて……!」

ソピア「でも今は本気を出してる場合じゃない……」

ソピア「ああ、最高の香りが私を引き留める……! でも、これは私を釣ろうとするパンが仕掛けた釣り餌なんだ!」ガチャ

ソピア「……ぜーぜー」

アン「どうでしたぁ?」

ソピア「ハズレだったよ!」

アン「ここは安全な方ですよぉ」

ソピア「…………え?」

ソピア「遠くからでも分かる甘い香り……」

アン「この店はお菓子ですよぉ?」

ソピア「いいもん。見るだけだから」


洋菓子店『ヘヴンズドア』
「甘党以外お断り」


師匠「チッ、これしき耐えれずにどうする……!」

師匠「まだか……頭の中がおかしくなりそうだ……!」

店員「お待たせしましたー!」

師匠「釣りはいらん。退散だ!」シュバッ

ソピア「今のって……」

店員「こちらでお召し上がりですかー?」

ソピア「い、いえ。どんなメニューがあるのかを見学に……」

ソピア(す、すごい匂い……砂糖に全身を包まれてるみたい)

店員「初めてのお客様ですね。ではまずこちらのビスケットをご試食ください」

ソピア「は、はい。……アッマーーッ!! でもハーブの風味が素晴らしいィ! アンブラーの私も舌を巻くゥ!」

店員「お売りしても良さそうですね」

ソピア「…………どういうことですか?」

店員「試食の段階で吐きだしてしまう方が製品を食べてしまうと、最悪ショックで死に至る恐れがありますので……」

ソピア「」


ソピア「甘いアンブロシアだった」

アン「このお店、一度死亡事故が起きたんですよぉ」

ソピア「そういう意味で『天国への扉』なんだ……」

ソピア「あっ、酒屋だけどチーズやピクルスも売ってるんだ」

アン「こ、ここは……ダメですぅ!」

アン「あぁ……入ってしまいましたぁ」


酒造『シャトー・プリチュール』
「レディース&レディース! 私の発酵食品をご賞味あれ」


代理「いらっしゃいませ」

ソピア「ここもすごい臭い……。アンブロシアの別バージョンがいっぱい……」

代理「当店は発酵食品のお店です。店主の意向で女性には一品無料サービス&全品50%オフです」

ソピア「なんてあからさまな男女差別!」

代理「未成年にはお酒は売れません。これは私の意向です」

ソピア「パープルチーズ……泡立つヨーグルト……」

ソピア「マンドラゴラのピクルス……蛇酒『山脈大蛇の欠片』……」

ソピア「貴腐ワイン~永遠の若さが欲しい貴女へ ……これぶっかけたら武器に使えるかな」

代理「あ、装備品ならそちらのコーナーです」

ソピア「武器売ってるんですか!?」

ソピア「アルコール放射器……泥酔爆弾……」

ソピア「細菌噴射装置……カビキラー(相手をカビさせて殺すスプレー)……」

ソピア「硫黄細菌の杖……脳拡張キノコ……」

代理「何か欲しい物はございましたか?」

ソピア「いりません」ニッコリ

代理「またお越しくださいませ」バラバラ

ソピア「店員さんが粉末状になって消えた……!?」


ソピア「もしかしなくても貴腐の店だよね」

アン「よくご無事でしたねぇ……」

ソピア「お魚のお店。料理も出してるんだって」

アン「ここで夕ご飯を食べましょうか」

ソピア「賛成!」


鮮魚店『賢者の石』
「作りたてほやほやの新鮮な魚介類」


ソピア「ヒラメのムニエルすっごく美味しかった!」

アン「新鮮な魚を使っている証拠ですぅ」

ソピア「でもどうして活きのいい海のお魚がこの町で出せるんだろう」

アン「余計な詮索はダメですよぉ」

ソピア「気になるから迷彩マントで……」


厨房。

ソピア(ここに魚の秘密が……!)

錬金術師「ふんふんふーん♪」

・材料
腐った肉×3
軽石×1
水魔術紙×1
賢者の石×1

錬金成功! → ヒラメ×1


ソピア「オエーッ!!」


アン「ここは鮮魚を錬成するお店なんですよぉ」

ソピア「知ってたなら先に言ってよ!」

アン「教えたら食欲が無くなっちゃいますよぉ……」

ソピア「なんてもの食べさせるの!」

アン「アンが払ったからいいじゃないですかぁ!」

ソピア「良くないよ! もっとまともなお店紹介してよ!」

アン「お昼のお返しですうー!」

ソピア「アンブロシアと一緒にしないで!」

アン「こっちは安全性に問題は無いですよぉ!」

ソピア「安心安全アンブロシア!」

アン「ふん!」

ソピア「むー!」

洋食店『ヒートフレイムプロージョンボンバー』……ただの激辛料理
軽食屋台『鉱山グルメ』……食べられる鉱石
精肉店『生肉屋』……次回少し登場します
カフェ『エアー』……店主が仙人、空気を食べる店
でした

明日の夜も少しですが進めます

ソピア「ハーブは食べ物だけど、腐った肉は食べ物じゃないよ」

アン「まだ引きずるんですかぁ」

ソピア「だって……!」

アン「気分転換……じゃないですけど、ちょっと付き合ってくれませんか?」

ソピア「……何?」

アン「ちょっと……見ておきたい場所があるんですぅ」

ソピア「どこに行くの? あまり遠いところはやだよ」

アン「……旧ザネッティ邸に」


旧ザネッティ邸は現在
1.監獄
2.公園
3.墓地
4.自由安価

公共墓地。

アン「……教会の墓地になってたんですね」

ソピア「もしかして、ニコラさんを探しに来たの?」

アン「……はい」

アン「せめて手がかりくらいあると思ったんですけど、ごめんなさい、無駄足でしたねぇ」

ソピア「たしか……火災で一家心中したんだよね。ザネッティ家の人たちもここに眠ってるのかな」

ソピア「公爵様の家だったのにどうしてそんなことになったんだろう……」

アン「その話をするなら先にどうして栄えたのかをお話しないといけません」

ソピア「あれ、知ってたんだ?」

アン「ザネッティ家は農民たちを酷使し、他の町よりも多くの税を要求し、シスヤタの全領民から嫌われていました」

アン「気に入らないという理由で処刑したり、若い子供をさらって奴隷にしたり、それはそれは横暴な公爵家でした」

ソピア「なんてひどい、貴族の風上にもおけないよ」

アン「ウベローゼン市の貴族が例外なだけですよぉ。直接悪いことしませんから」

アン「他の町の貴族のほとんどは真っ黒ですぅ。商会と同じくらいに……」


アン「そんなシスヤタ市である日、鉱脈が見付かったんですぅ」

ソピア「石炭だね」

アン「はい。それともう一つ、世界でここでしか採れない希少鉱物です」

アン「その宝石はニコライトと名付けられました」

ソピア「ニコライトって……ニコラさんから?」

アン「そうです。どうしてニコラはこんな名前を付けちゃったんでしょうねぇ……」

ソピア「名前を残したかったのかな?」

アン「話を戻しますぅ。鉱脈が見付かると、市民は裕福になりザネッティ家への怒りも減りました」

アン「さらにザネッティ家は自費で浄水施設を作ったのですっごく喜ばれました」

ソピア「いいこともするんだね」

アン「ただ、自分たちの食生活のためですよぉ。美食街が出来たのも、ザネッティ家による投資の結果ですから」

アン「市民からの評判が良くなった一方で、家の内部はまとまりが無くなりました」

ソピア「もしかして……鉱石の取り合い?」

アン「はい。元々欲深い一族でしたけど、お金が入って来てさらに狂っちゃったんですねぇ」

ソピア「そして最終的に一家が崩壊して、心中を……」

アン「と、言われています。火災から逃げ延びた庭師の証言が新聞に載ってましたぁ」


ソピア「たまに墓石にへこみがあるんだけど、これ何だろう?」

アン「ニコライト鉱石が入ってたんだと思います。盗まれちゃったんですねぇ」

ソピア「これだけ人目に付かないとね……」

アン「ちなみにこれがニコライトですぅ」

ソピア「持ってたの!?」

ソピア(指輪にはめ込まれた大粒の宝石はピンク色で、その中に輪っかになった虹が入っている)

アン「昔見せたじゃないですかぁ? アンの宝物って」

ソピア「これがそうとは思わなかったの。どこで手に入れたの?」

アン「拾いましたぁ」

ソピア「拾った、って……」チラッ

アン「お墓から盗んでませんからねぇ!」

ソピア「じゃあ、誰かの家から……!」

アン「街道で拾ったんですぅー! それにこんな大粒の宝石、普通ならホワイトシーフや黒魔術師に頼んで何が何でも探すはずですぅー!」

ソピア「探してないからいいってこと……?」

アン「そういうこと! 持ち主が現れたら返しますよ!」

ソピア「実は私、小さなころ街道でお母様の指輪を落としてしまって」

アン「あげませんよぉ」

一方、ヒレアとマリンはハルカと行動していた。


ハルカ「矢の補充付きあってくれてありがとね」

ヒレア「魔法弓は使わないの? 矢が必要ない弓もあるって聞いたけど」

ハルカ「あたし、魔法の適性があんまり無いから……。どんな魔法でも選べるのって実はすごいことだよ」

ヒレア「そうだったの。ごめんなさい」

ハルカ「少しお食事しない?」

ヒレア「うん」

ハルカ「肉料理のお店。ここでいいかな?」

ヒレア「いいお肉使ってそうね」


フード&バー『マンイーター』
「当店では精肉店『生肉屋』から卸した肉だけを使用しております」


ハルカ「メニュー……変わった肉ばかりね」

ヒレア「スライム肉ってそれ液体じゃないの……?」

ハルカ「普通に牛肉でいいかな……。高級なのに意外と安いから」

ヒレア「私も」

常連「裏メニュー、もも」

店員「かしこまりました」

ハルカ「……裏メニュー、頼んでみる?」

ヒレア「アンブロシアよりひどい食事なんて無いわ。物は試しに」

ハルカ「あたしは遠慮しておくよ……」


ヒレア「もぐもぐ……」

ハルカ「どう?」

ヒレア「……肉が少ないわ。普通に牛肉の方が美味しい」

ハルカ「そうよね……。美味しいから高級なんだからね、牛は」




「吸血鬼のお肉ってどんな味がするのかしらぁ……♪」ペロリ

シスヤタ市、裏路地。

ハルカ「ヒレアさんはもう準備はない?」

ヒレア「無いわ。先に集合場所に行きましょ」

ブチッ

ヒレア「え……?」

ハルカ「ヒレアさん、腕が……!」

背後から咀嚼音。

ヒレア「誰!?」

「ほどける食感、闇の味……煮込んでスープにしたいわぁ……♪」

そこではウェイトレスの服を着た女が、半分霧状になったヒレアの腕を片手に持って立っていた。

「はじめまして!♪ 私は生肉屋の店主です……先程はお召し上がりありがとうございました♪」

ヒレア「ハルカ、危ない!」バッ

「活きのいい吸血鬼だこと……♪」ウットリ

ハルカ「は、早い……人喰い……?」

「味見させてぇ……?♪」

ヒレア「……よく分からないけど、止めないと」

マリン(ヒレアー! こいつは共和国軍の勲章を持った強者『悪食』よー!)

ヒレア(強者……あの偽魔人と同じくらい強い相手……)

マリン(ここで倒しておけばソフィーの危険を減らせるわー)

ヒレア(わかった。平和のためにもこの食人鬼はここで倒す)

ヒレア「許さないわ。あなたは絶対に監獄送りにする。今までに何人を手にかけて来たの?」

悪食「食物連鎖ですよ……私たちは命をいただいて生きている……動物でも植物でも人でも同じこと……♪」

悪食「さっきあなたも食べてたじゃない?♪ ……あれ、人間のお肉です……♪」

ヒレア「…………こんなこと言われても吐かないなんて、私、頭の仲間で人間やめちゃったのかしら」

悪食「うふふ……♪ 吸血鬼のお肉を逃すわけにはいかなぁい……♪」スチャ

ハルカ「あれ、包丁なの? ……剣より長い」

悪食「では……すべての命と神様に感謝をこめて……」

悪食「……いただきますっ!!♪」


↓コンマ51以上で撃破、50以下で逃げられる

ヒレア(常人とは思えないほど速い、でも)

悪食「手ごたえが無い……?♪」

ヒレア「あなたに霧が食べれるの?」

悪食「霧肉ぅ!♪ 口に入れればなんだってお肉なのぉ……♪」

ハルカ「……はっ!」バシュ

悪食「あむ。ごっくん」

ハルカ「この速さの矢を食べるの……!?」

悪食「あなたはデザート♪ メインディッシュは吸血鬼ぃ♪」

悪食「……」スッ

ヒレア「……止まった?」

ハルカ「あれは居合! 逃げて!」

悪食「解体っ!♪」ヒュッ

ヒレア「うあっ……」

ヒレアは一瞬で関節や首を切断され、調理しやすい大きさにカットされた。

兵士100人を相手にする強者の試練……悪食と呼ばれる彼女が挑んだ際には兵士の9割が死亡したと言う。

だが、魔力を伴わない斬撃がヒレアに通用するはずもなかった。

悪食「スープを用意、沸騰を待つ間に内臓を取り除いて3枚おろし」テキパキ

見惚れるような手さばきでヒレアを調理していく悪食。

悪食「みじん切りにした矢はいれません……♪ 次、料理の邪魔したらスムージーにするから」

ハルカ(空中で……! 駄目だ、敵わない……)

悪食「腕と脚は洗ってから皮ごとフライ、頭と内臓はよく加熱してパイに挟んで……♪」

悪食「できあがりぃ♪ もぐもぐ…………」

ものの3分で料理を完成させてそれを一瞬で腹に収める。

悪食「」バタリ

倒れた悪食の口の中から黒い霧が溢れだし、ヒレアの形に戻る。

ヒレア「胃袋の中は気持ち悪かった……」

ハルカ「…………」

ヒレア「……すごいショックを受けたのね。後でソフィアの日魔術で癒してもらいましょ」

宿屋前に集合した一同は再びソピアの異空間にいた。

トール「なるほど……この町で食事をしてはいけませんね」

ハルカ「キミは大丈夫だった……?」

トール「僕は携帯食品を持ってきてたので……」

ヒレア「人間を食べて、人間に食べられたわ」

ソピア「お姉様に負けた……!」

アン「張り合うところじゃないですよぉ!」

ソピア「でも悪食って人、見た目で吸血鬼だってよくわかったね」

ヒレア「においで分かったんじゃないかしら……。料理人の上位職なんでしょう?」

ハルカ「料理界……恐ろしい世界ね」

アン「フォローしておきますけど、『バーテンダー』はカクテル作りをはじめとした美しいテクニックを持つだけで、人喰いは普通いませんし」

アン「『調合士』も料理に特殊な効果を持たせるだけで、アンブロシアのような変な効果を売りにしてるお店ばかりじゃありませんから、誤解しないでください……」


ソピア「改めて役割分担しよう」

ソピア「さっき監獄の地図を見て来たんだけど、広いから簡単には助け出せないと思う」

アン「勲章を持った人がたくさん来てますもんねぇ」

ソピア「私一人だけなら警備のふりをして奥まで行けそうだけど、戦えない貴族と王族を逃がすのは大変そう」

ソピア(イデアさんも連れていかないといけないしね……)

ハルカ「強者程度ならヒレアさんが全滅させられるんじゃないかな……」

ヒレア「ソピアちゃんが奥まで行って、私が霧で敵を全員眠らせる。……それだけでいいんじゃない?」

ソピア(ここにきてイデアさんが邪魔になったよ……)

トール「一応、ヒレアさんが対策されてた時のことも考えておきましょう」

ハルカ「その時は、あたしたちで引きつけておくしかないと思う」

ソピア(奥まで全員で突っ切って、ルーンで転移魔法陣を作って、魔人先生の城まで逃げるのも手かな)

ソピア(私たちは王子様に合流しないといけないけどね)

今日はここまで、次は木曜日です


今ある選択肢

・ソピアが単独で地下牢に行き、ヒレアたちに退路を確保してもらう
・ソピアが単独で地下牢に行き、転移魔法陣で貴族を魔人の城へ逃がす
・全員で地下牢まで突き進み、転移魔法陣で貴族を魔人の城へ逃がす

他に作戦があればお願いします(自由安価)

魔導長がいる時点で魔術全般への対策は何かしら施されてそうだなぁ

ヒレアの霧だけに頼るのはやめたほうがいいか

今まで半チートな魔法に頼ったのが枷になるのか?

クルトさんからもらった催涙スプレー使える?

こっちがチート化すると、それが霞むレベルで敵側もインフレするからぶっちゃけ強化パートって無d…

おや、誰か来たようだ

>>223 >>227
岩魔術師や風魔術師、数少ない月魔術師、高位の聖教徒は同じチート魔法を使えますからね
万能な呪いに対して解呪があるように対策はあります

>>228 自由安価で使えます、とはいえスプレーなので広範囲には使えません

>>229
吸血鬼・海神には逃げ回って辛勝しましたが、その吸血鬼は5スレ目で勇者にワンパンされてます
すでにソピア以外がインフレしてて強化無しだと勝つどころか逃げるのも無理なのでテコ入れしました

ソピア「いざと言う時のために町の人たちを扇動する手段を用意しておきたいかも」

アン「それこそテレビ局を奪って、生中継用のディスプレイで情報を使えるとかぁ?」

トール「肝心の情報は何を伝えるんですか?」

ソピア「うーん……軍が違法ハーブの販売に関わってること?」

ヒレア「それ、証拠はあるの?」

ソピア「クルトさんたちが頼りだね……今は使えないか」

ソピア「じゃあ、革命の黒幕がいるかもしれないことは?」

ハルカ「……革命を計画して実行した人がいるのは当たり前じゃないかな」

ソピア「そうじゃなくて、国民には言えないような別の目的のために動いた黒幕だよ」

ヒレア「別の目的って何かしら?」

ソピア「軍が国を支配するためじゃない?」

トール「信憑性は高いですけど……貴族が言っても聞き入れてくれるかどうか」

アン「ウベローゼン市以外では貴族の評判はすこぶる悪いですからねぇ」

ソピア「今のところ有効な手段じゃないのかな……」

アン「でもぉ、テレビ局を奪うのには賛成ですぅ」

アン「あちらにも警備がついてるみたいですし、彼らが監獄や駐屯地に駆け付けるのを防ぐことができます」

トール「それならソピアさん以外で行くことになりますね……」


ソピア(まずは私が何をするのかを決めよう)

1.ソピアが単独で地下牢に行く
2.全員で地下牢まで突破する

↓2票先取

・単独で向かう
反乱者から監獄を守る警備として振る舞い、地下牢まで安全に辿り付ける確率が高いです
ただし途中で止められる可能性もあります
脱出時には仲間に逃げ道を作ってもらいます

・複数で向かう
警備を倒して強引に地下牢まで突き進みます
警備にあたっている強者含む兵士全員を相手にしなければいけません
侵入時に障害を排除しているので脱出時は楽です

↓3で決まる

ソピア「とりあえず……私は一人で地下牢まで行くよ」

トール「い、いくら勲章を持ってるからって一人で行かせるのは心配ですよ!」

ヒレア「……目を離すとピンチだものね」

ソピア「その代わり、みんなには脱出経路を作って欲しいの」

トール「囚われてる方々も全員で出てくるんですよね……」

ソピア「転移魔法陣で私の先生の城まで逃がせるけど、私は脱出しないといけないから」

トール「なるほど……」

アン「攻略班とテレビ局襲撃はどうなさいますぅ?」

ソピア「分担してもいいけど……」


1.4人+イデアで退路を確保してもらう
2.分担する

↓2票

ソピア「攻略班は王子様に任せよう」

ソピア「みんな、私の帰り道を作って。お願い」

ヒレア「わかったわ」

トール「ヒレアさんの霧が効かない相手は僕たちで何とかします」

ハルカ「任せて」

アン「合図を決めておいた方が良さそうですぅ」

ソピア「連絡用の魔法がない……」

マリン「ワタシたちの出番ねー。出てきてー」

クジラの妖精「なに?」

マリン「ワタシが地下に入ったのが分かったら、このヒレアにそれを教えてー」

クジラの妖精「おーけー」

ソピア「そんなことまでできたんだ……」

マリン「ワタシも全部把握できてないわー」

人気のない墓場(旧ザネッティ邸)。

ミハイ「揃ったようだね」

逃亡貴族全員が無事に集合していた。

ソピア「あれ? お姉様たちは?」

アン「監獄の近くに待機してらっしゃいますぅ」

ミハイ「諸君の時計を確認させてもらいたい。…………ふむ、時間はずれていないようだね」

ミハイ「夜の2時、攻略班と救出班は同時に行動を開始してくれ」


ソピアはイデアに作戦を伝えた。

イデア「……はい。了承しました」

ソピア「ごめんなさい、イデアさんも助けに行きたいかもしれませんのに……」

イデア「いえ、ソピアさんと違い、私は救出のために有効な術を持っておりません」

イデア「お役に立てる場で貴女の助けとなるよう尽力しましょう」

イデア「どうか……私の仲間をよろしくお願いします」



※スキルセットは各キャラ最後です

~ヒレアの追加スキルセット~

体力130 精神130 筋力100 敏捷120 知力60 器用30 交渉力50 (目安)

現在ヒレアは
『魔剣』『飛翔』『吸血』『生命ドレイン』『生命の加護:極』『ヒール』
『ダークボール(誘導・炸裂)』『ダークミスト(侵蝕・霧化・霧刃)』『呪い(夜・復活・雨ほか)』『インフェルノ』
を持っています

ほとんど不死身な上に接近戦も撃ち合いも空中戦も得意、あらゆる呪いを使えて、特殊な相手以外は霧で一掃できて、簡単な回復までできる人外です

『キュア』…肉体系の状態異常を治す白魔術
『サニティ』…精神系の状態以上を治す白魔術
『浄化』…悪感情を消し去る光を放つ白魔術
『ギロチンボディ』…高速で突進しつつ自分の体そのものを大きな刃に変える
『ブリザード』…命を枯らす死の寒風を呼び出す
『死体使役』…復活呪いで蘇った死体に指示を出す
『幽霊対話』…幽霊と交渉することができるようになる

↓1、2 追加スキル選択

ヒレアは白魔術が成長しました
浄化は戦意を喪失させることができますが、相手に悪意が無い場合は効きづらい



~トールのスキルセット~

体力45 精神20 筋力10 敏捷15 知力80 器用55 交渉力90

現在トールくんは
『風魔法:殴』『エアバッグ』『つむじ風』『追い風魔法』『停止魔法』『気配・属性・魔力察知』『気流・気温制御』『速読』
を持っています

攻撃力は控えめですが戦闘時のサポートに長け、特に気配察知と停止魔法で先手を取って無力化することもできます

『風魔法:斬』…風の刃で切り裂く魔法
『竜巻』…強力な上昇気流を発生させる大規模魔法
『エアボム』…好きな位置に圧縮された空気を生み出し爆発させる
『魔力収集』…周辺に漂う魔力を一点に集める、通常の魔法を強化できる
『精霊操作』…魔法の根源である精霊を認識・操作し、単純な全属性の魔術を再現できるようになる
『気体制御』…空気中の各成分を単離して集められるようになる
『クロックアップ:擬似』…対象の時間認識を操り行動を素早くさせる

↓1、2 持たせるスキル選択

ここは連取りOKです

トールの攻撃力が上がった!
クロックアップはあくまで感覚的な時間操作なので筋力的に限界がありますし飛び道具は早くなりません、ヒレアとの相性はバッチリ



~アンの追加スキルセット~

体力40 精神70 筋力10 敏捷70 知力80 器用10 交渉力50

現在アンは『拳銃術Ⅰ』『視界拡張』『匍匐』『隠密』『パルクール』『手当て』『道具知識』『重荷運び』『夜目』『聞き耳』『忍び足』『嗅覚』
を持っています

持っている道具次第ではかなり強いですがドジなのがネック、銃撃戦は器用にこなします

『近接格闘術Ⅰ』…ガンマンのための格闘術、キックやグリップ殴りなど
『跳弾』…銃弾を反射させて対象を撃つ、上手く反射させるだけでも難しい
『壁ジャンプ』…壁を蹴って連続で跳べるようになる
『盗み』…スリスキル、相手からアイテムや装備品を奪い取る
『危険察知』…些細な危険の兆候に気づきやすくなる
『攻撃アイテムセット』…スキルではない、強力な爆弾やトラバサミの罠など
『攪乱アイテムセット』…スキルではない、閃光弾や魔封じ風船など
『回復アイテムセット』…スキルではない、医療用ポーションなど

↓1、2 追加スキル選択

アンは割とお金持ちです
もし器用だったらアイテムの暴力で強者の勲章ぐらいは取れます



~ハルカのスキルセット~

体力40 精神60 筋力80 敏捷80 知力40 器用90 交渉力25

現在ハルカは
速射・強射・連射・精密射撃・拡散射撃・狙撃・遠距離回避・乗馬
を持っています

弓矢は物理攻撃力がかなり高く一撃必殺も可能、ただし弓を失うとほぼ何もできなくなる

『超速射』…弓を引く瞬間が見えない早撃ち、連続では使えない
『爆発矢』…着弾すると爆発する射撃、魔法ではない
『ホーミング射撃』…標的めがけてある程度矢の軌道が曲がる射撃、魔法ではない
『ノックバック射撃』…刺さらないが大きく跳ね飛ばす射撃
『超連射』…連続での速射、使用中は移動できない
『瞬間移動』…魔法ではなく技術での素早い移動、大振りな攻撃なら避けつつ反撃できる
『空撃ち』…弓も矢も無い状態で撃つ弓技、実物よりは弱いが思念の矢で攻撃できる、魔法ではない

↓1、2 追加スキル選択

そういえば王子たちがメインの場面もあるの?

安価踏んでたら下で

盾役のイデアさんと相性が良さそうです
次でラスト



~マリンのスキル追加~

体力15 精神50 筋力5 敏捷90 知力20 器用10 交渉力0(精霊量で大きく変化)

現在マリンは
『風魔法:殴』『追い風魔法』『気配察知』
『暴風』…嵐を起こす、風向きや雨粒は自由に操作可能
『洪水』…塩水を操る、ただ水位を上げるだけでなく、重力に逆らって滝を作ったり生物から脱水したりと適用範囲は広い
『ブルーレーザー(マリンビーム)』…円盤から太い光線を放つ、なお光線は宇宙から見た地球の青色の光でできている
『海子契り』…相手の脳に潜り込み自分の体にする
『海流し』…生物に対して捕縛作用のある高波を起こし溺れさせる
『海神の守護(マリンバリア)』…筋力・魔法・防御を強化する青いオーラを与える
『メイルストロム』…青色の精霊を纏った大嵐を起こす、風や水の流れは自由に操作可能
ほか
を持っています

不死身のヒレアに対して火力のマリン、なお周囲が海なら持久力も化け物級です


海に関連する妖精の力でいろんなスキルを閃けます

例1:『造礁』…珊瑚礁の妖精、岩を作り出す
例2:『変形』…船の妖精、船舶の形になれる

↓1、2 自由安価

『凍結』…氷の海の妖精、自身の操る水を凍らせる


↓2 『深淵』ってどんな効果の魔法?

『深淵』…深海の妖精、暗闇で視界を奪いつつ恐怖を与える


今晩はここまで、続きは明日

次回はちょっとエルミス視点で進行します


>>261 王子率いる攻略班はさらっと流す予定です

エルミス「ソフィー、行っちゃったわね」

エルミス「人質のルーン……」

エルミス「…………」

エルミス(わたしが一度下僕を裏切ろうとしたように、下僕がわたしを裏切ったら、わたしの命は……)

エルミス「……いいえ! そんなことないわ!」ブンブン

エルミス「とにかく、わたしにできることをしましょう。まずは父上ね」

エルミス「父上、入っていいかしら?」

元帥「ああ。ちょっと忙しくしているが気にしないでくれ」

エルミス「明日、大統領選なのにまだお仕事があるの?」

元帥「私が大統領に選ばれることはすでに確定している。今はその先の仕事に手を付けているところだ」

エルミスは机を回り込むと父の膝に座った。

エルミス「名簿?」

元帥「エイラ、一国のリーダーとして最も必要な力は何だと思う?」

エルミス「リーダーに必要なのは……下僕を上手く使う力ね!」

元帥「そう。所詮私は軍人、国政においてはほとんどの分野で門外漢だ」

元帥「多くの国民に協力して動いてもらわなければ国を運営することはできないんだよ」

エルミス「今まで王国がやってたものをそのままやるだけじゃいけないのね?」

元帥「王国では、政治のあらゆる分野で貴族が活躍していたからな……」

元帥「貴族は世間で言われているような無能ばかりじゃない。それぞれの町を治めていた公爵は産業、教育、衛生、治安維持などを一手に担っていたのだ」

元帥「大統領に就任したならば、一刻も早く彼らの代わりを務められる人材を適切に配置しなければならない」

エルミス「へえ。あ、この束は教育関係者のプロフィールね」

元帥「私が任せられると思った人材を選び出しているんだ」

エルミス「……忙しいところ悪いのだけど、父上に聞きたいことがあるの」

元帥「ああ。だが今は手短に頼むよ」


1.革命を起こして共和国を作ろうと最初に提案したのは誰なの?教えて
2.元貴族の人たちは絶対に全員殺さないといけないの?わたしはやめて欲しい
3.父上を失脚させようとする人たちがいる可能性はない?大丈夫?
4.自由安価

↓2

エルミス「ねえ、革命を起こしたリーダーは父上だけど、革命を起こそうと言い出したのは誰?」

元帥「うん? どういうことだ?」

エルミス「世間では、大統領には共和制を説いた父上がふさわしいなんて言われているじゃない」

エルミス「あれって本当なのかしらと思ったの」

元帥「ああ……。さっきも言ったように私はただの軍人だからな。確かに、私に共和制の良さを説いた者は別にいる」

エルミス「じゃあその、革命を起こして共和国を作ろうと最初に提案したのは誰なの? 教えて!」

元帥「知将殿だ」

エルミス(……まあ、そうでしょうね)

元帥「彼は軍の参謀長なのだが、政治や司法についても博識な人でな、よく話をするんだよ」

エルミス「でもその人、政治に詳しくない父上が大統領になることについて何も言わないの?」

元帥「だから彼自身も出馬している。もっとも、私が大統領になること自体を批判してはいないがな」

元帥「軍の力を強くすることができれば満足らしい」

元帥「民の安全を常に考える、私と志を同じくする者の一人だ」

エルミス「王様の処刑を決めたのもその人?」

元帥「彼は、王族と貴族は共和制の大きな障害になるため処刑せねばならないと進言してくれた」

元帥「……私も最初は反対したんだ」

エルミス「よかった。父上はみんなを助けるリーダーだものね。何か事情があったのね?」

元帥「革命の前に知人の貴族を呼んで共和制についての話をしたんだ」

元帥「しかし、駄目だった……。感情的に否定するばかりで話にならなかった」

元帥「妥協案として提示されたのも、公爵家の中から全国民が選ぶという形式だった」

元帥「結局、普段いかに人格者を装っていても、約束された裕福さを捨てる覚悟のある者はいなかったのだ」

エルミス「父上も迷ってたのね……」


門衛「元帥殿、来客です」

元帥「身分が確認できたなら通しなさい」

元帥「……エイラ、すまない。来客だ。しばらく出て行ってくれ」

エルミス「わかったわ。お話ありがとう、父上」

エルミス(革命の発案者は知将。後でソフィーに教えてあげなくちゃ)

エルミス(他に調べておくべきことはあるかしら?)

エルミス(やるべきことはやったのだから、普段通りに過ごしてもいいかもしれないわ)


39日目日暮れ 現在地:自宅
1.フローラに会う
2.フィナに会う
3.キュベレに会う
4.軍の基地に行く(六勇がいる)
5.魔法街を散策
6.町はずれで鎌の訓練

↓2

ある道具屋。

エルミス「フィナ! 捕まえたわ!」ガバッ

フィナ「ひっ!! ……ってエルミスかー」

エルミス「師匠かと思った? 安心なさい、あなたの主よ!」

フィナ「てかさ……また今度って3時間後の事だったの!?」

エルミス「そうよ!」

フィナ「あと、ここ! あたしの家の近所なんですけど!?」

エルミス「そうなの? なんとなくフィナがいそうな場所を探しまわっただけよ」

フィナ「この広いウベローゼン市でよく探せたね」

エルミス「運命を感じるわね!」

フィナ「全然」


1.革命の真実について何か知らない?
2.グリエール商会について知ってることを吐きなさい
3.とりあえず、手伝いなさい!
4.自由安価

エルミス「とりあえず、手伝いなさい!」

フィナ「何を!?」

エルミス「これは命令! 拒否権は無いわ!」

フィナ「さっき言い争った直後にそんな態度を取る無神経さはともかくとして、だから何を!?」

エルミス「耳を貸しなさい」

フィナ「うん」

エルミス「ふーーーっ」

フィナ「ひぎゃああっ! ……ふざけてんの!?」

エルミス「冗談よ!」



フィナ「お父さんの失脚を防ぎたい、ね……」

エルミス「だから誰が何をしたいのかを突き止めておきたいのよ」

エルミス「ホワイトシーフのあなたならそういうの得意でしょう?」

フィナ「まあね」

フィナ「今言えるのは……軍の人に聞くのは無駄じゃないかな。元帥が知ってる以上の情報は無いでしょ」

エルミス「知将に直接聞きに行くのは」

フィナ「だめ。最悪消される」

エルミス「わたしはエイラ・ブラッドレイよ?」

フィナ「だからだよ。知将が元帥を失脚させる予定の奴だったらどうすんのさ」

エルミス「誰に聞くのがいいと思う?」

フィナ「親しい人なら安全じゃない? 商会の事ならフローラに聞くとか、後はこないだのキュベレって人、オネエって情報通だって言うじゃん」

エルミス「キュベレは親しい人じゃ無いわ!」

フィナ「そ、そうなんだ……」

フィナ「六勇とか商会に直接かかわるのは、あたしならしないかな……危ないし」

エルミス「まったく、フィナは臆病ね。ソフィーを襲った時みたいな思い切りの良さを見せなさい」

フィナ「それは思いきらない方がいいやつじゃないの!?」


39日目日暮れ 現在地:自宅
1.フローラに会う
2.宿屋の近くで情報通を探す
3.キュベレに会う
4.軍の基地に行く(六勇と知将がいる)
5.グリエール商会のオフィスに行く
6.探偵に聞いてみる

↓2

エルミス「探偵に聞いてみましょう」

フィナ「えっ、いや、探偵でも調べるのに時間かかると思うけど」

エルミス「そんな普通の探偵じゃないわ。軍もよく依頼してる探偵ギルドの筆頭名探偵よ!」

フィナ「うわ、思いっきり立場を利用してる」

エルミス「調べる前に答えを知っているとも言われる彼なら、革命の真相をすべて把握しているに違いないわ!」



裏路地のカフェ。

フィナ「こんなところにその名探偵がいるわけ……?」

エルミス「ええ。ここで間違いないはずなのだけど……」

カランカラン

エリー「いらっしゃい」

ネル「今日罠にかかったのはどんな子カナ?」

ガルァシア「……人聞きの悪い」

バルザック「お? 俺ぁ罠仕掛けてねぇぞ? そしたら嬢ちゃんらすでに木端微塵だぜ?」

エリー「あたしの店も木端微塵だけど」

ネル「ハイバルザック弁償だヨー」

ガルァシア「……こいつらは、気にするな」

エルミス「はっ、わたしとしたことが、つい呆気にとられていたわ!」

エルミス「ここに名探偵がいるはずよ! 出てきなさい!」

シュン「僕ならさっきからここにいるぞ」

シュン「元帥令嬢のエイラちゃんと殺し屋見習いのフィナちゃんだね。ソピアちゃん狩りのリベンジの相談かい?」

シュン「それとも、真逆の立場から情報が欲しいのかな?」

エルミスが足を踏み入れたのは魔境だった!!

シュン「なるほど。元帥の失脚を防ぎたいか」

エルミス「ええ。もしかすると、革命を計画した知将とその仲間……たぶんグリエール商会が、父上を裏切るかもしれないもの」

シュン「嘘つき。そして、大外れ」

エルミス「は?」

シュン「君が助けたいのはソピアちゃんだろ? 僕にはお見通しさ。黒幕探しを頼まれたってとこかな」

シュン「だってソピアちゃんの願いが叶うと元帥は失脚するからね」

エルミス「どちらにも苦しい思いをしてほしくないの。だから、共通の敵を探しているのよ」

シュン「あー、共通の敵ならいるのかな? うん」

ネル「大外れってナニ? ボクも知将と商会がクロだと思ってたんダヨ」

シュン「文字通り、大外れさ。惜しいっちゃ惜しいけど」

エルミス「……誰よ。誰が下僕と父上の共通の敵なのよ!」

シュン「教えない方が面白いな」

エルミス「どうして何でも知ってる人は他人の反応を楽しむのが好きなのかしら……!」イラッ

シュン「まあどうしてもって言うなら君が取るべき行動を教えてあげよう」


1.魔法街のカフェに行きなよ
2.女帝に会いなよ
3.人質のルーンを消しなよ

シュン「そのルーンを消しなよ」

エルミス「……!」バッ

エリー「今さら隠してどうすんだい」

シュン「さっき『何でも知ってる人』が僕以外にいるようなことを言ってたね」

シュン「大方その人の仕業だろう。違うかな?」

エルミス「……そうよ」

シュン「ガルァシア」

ガルァシア「……見たことも無いルーンだ」

シュン「でも、消すのは簡単だろ」

ガルァシア「……消していいのか?」

シュン「どうする?」

エルミス「これが無いと、下僕はわたしを人質にできないわ……」

シュン「でもそれ、分かる人には分かるぞ。君がソピアちゃんの味方だってことがね」

バルザック「いや、おめぇくらいだろ」

エルミス「……いいえ、消さないわ」

シュン「そう。まあ強制はしないさ」

シュン(そう答えると思ってたけどな)

エルミス「行きましょう、フィナ。ここにもう用は無い」

フィナ「あ、待って。あたしはちょっと残る」

エルミス「? まあいいけれど。変なことに首を突っ込んじゃダメよ」

適当に歩いたエルミスは宿屋街の前にいた。

エルミス「これ何かしら」

エルミスが見つけたのは大統領選生中継用のディスプレイだ。

エルミス「テレビのはずだけど……何か違和感があるわ」

エルミス「…………」

トントン

エルミス「誰!?」ビクッ


1.フローラ
2.女帝
3.オルド

眠いので今晩はここまで

フローラ・キュベレのどちらかと話せば進行(2ルート分岐)のつもりでしたが、ひょっとしてこの2人嫌われてます?

ちなみに即興の特殊ルート入りました、こういうのも安価の醍醐味ですね

おつ
なんかエルミスもクズ運な誰かさんの影響出てきてる…?

キュベレもあんまりほっとくと死ぬんじゃなかったっけ

これ、探偵の助言の選択肢ミスったかな。
変なルート入るかもしれん。
しかし、知将とグリエール商会が黒幕ではないが、惜しくはあるのか。
やはり今の体制側に一人はいるっぽいね。
残りはソピアの運命に干渉してる奴だとして、
あと一人は誰?

明日の昼から再開
正直ここまで2人がスルーされるとは思ってなかったので、展開に迷っております
念のため、交友度マックスじゃなければソピアの利益になる行動をしないと言う事はありません

>>294
今の所コンマ判定はないので未知数です

>>295
はい、フラグ折れてませんね

>>296
シュンを信用してもいいのでしょうか?

女帝「ウフフフ、奇遇ね……エイラちゃん」

エルミス「あっ、女帝。こんにちは」

女帝「こんな時間までお出かけ? お父上が心配するわよ……」

エルミス「いいの。強者の勲章でも持ってなきゃわたしに何かできるわけないもの!」


実は、エルミスと女帝は仲が良かった。

どうやらエルミスに過去の自分を重ねて見ているらしい。

当のエルミスも悪名高い女帝と同じだと思われること自体は嫌だが、理解ある大人としてある程度の信頼を置いていた。


2人は最寄りのベンチに座る。

香水の臭いがキツイためエルミスは少し距離を離していた。

町人(あれ、海軍大将じゃね?)

清掃員(こんな町中に……嘘だろ)

女帝「エイラちゃん、強くなったのね」

エルミス「ええ! ラヌーンの、なんだっけ、変な異名を持った海賊にも勝てたんだから!」

エルミス「あなたの助言通り、技を磨いた結果ね!」

女帝「でもやっぱり、貴女なら防御を鍛えた方がよかったんじゃないかしら?」

エルミス「嫌よ。痛いのイヤだもの」

女帝「私は筋力も頭も良くなかったから仕方なく技を磨くしかなかったのよ」

女帝「エイラちゃんは恵まれているわ……」

エルミス「ふふん、これならあなたを倒す日も遠くなさそうね!」

女帝「ウフフ、もし負けたら海軍大将の座は貴女に譲るわ」

エルミス「いらない。磯臭いのはイヤよ。……あなた、海軍大将やめたいの?」

女帝「重役に就いてからというもの、家族と一緒に居られる時間が少なくなってしまったのよ」

エルミス「海軍だものね。ウベローゼンから通うのは大変よね……」

エルミス「あっ、前に『うちの子と仲良くなってほしい』って言ってたじゃない。それ、いつ会えるの?」

女帝「ごめんなさいね……。ミリちゃん、軍の集まりには出たくないって言って聞かなくて……」

エルミス「へー、あなたでも言う事を聞かせられない相手がいるのね!」

女帝「元帥も貴女には頭が上がらないでしょう? そういうものなのよ」

女帝「ところで……」

エルミス「何?」

女帝「そのルーンはどうしたの?」

エルミス「何でもないわ!」バッ

女帝「ウフフッ、あんまりお転婆しちゃダメよ」

女帝「お父上のためにも、念のため確かめさせてもらうわね」パシン



エルミス「…………はっ」

女帝「……」

エルミス「わ、わたしに何をしたの!?」

女帝「ウフッ、フフフ……アッハハハ!」

女帝「ソピア・ウィンベルちゃん……大胆な事をしたものねぇ!!」

エルミス(しまった……自白系の攻撃を受けたわね……)

女帝「その行動力、素晴らしいわ……! もしも貴女が貴族でさえなかったら面倒を見てあげたのに……」

女帝「いいわ……もしも貴女と生きて会うことがあれば愉しませてもらおうじゃない……」

女帝「その時が待ち遠しいわ……ウフフフフッ!!」

女帝「逃がさなぁいッ!」ヒュッ

エルミス「キャッ! 分身したのに、鞭で絡め捕られた……!?」

女帝「エイラちゃんは困った子ね……。でも、いいわ。私には何があったのか想像できるもの……」

女帝「ひとまず貴女には事が終わるまで大人しくしていて貰わないといけないわ」

エルミス「な、何をするの……」

女帝「元帥に事情を説明して引き渡すだけよぉ。いくら私でもこれ以上の乱暴はしないわ……」

エルミス「ううっ……」

エルミス(ごめんなさい、ソフィー……あなたを危険に晒してしまったわ)

エルミス(探偵の忠告に従ってルーンを消しておけばこんなことには……)

魔境カフェ。

ネル「ネー、シュン。あの子騙したヨネ」

シュン「何のことだい?」

ネル「商会が敵じゃないってサー、グリエール家の一人一人がハズレとは言ってないよネ?」

シュン「はっはっは。ネルも少しは僕のレベルに追いついてきたようだ」

バルザック「ああいう場面でおめぇが真面目に話したことあっかぁ?」

フィナ「いや、それどころか……」

フィナ「ウソついたでしょ、あんた」

シュン「ほう、根拠はあるのかな?」

フィナ「根拠って言うか……師匠から聞いたし」

フィナ「フルフィリアで一番の探偵は、頭はいいけど自由人で、面白いか面白くないかだけで話すから信用に足らないって」

ネル「そうだヨ」

バルザック「ああ、違いねぇ」

シュン「これは手厳しい」

エリー「あんた、なんであの子の前で言ってやらなかったのさ?」

フィナ「だって……本当にヤバい奴のとこに向かったら困るじゃん。エルミス、無鉄砲な所あるし」

シュン「君にとって彼女の望みはどうでもいいんだな?」

フィナ「……あたし、あんまり深く考えるの得意じゃないから。エルミスが危ないって思ったからそうしただけ」

フィナ「それじゃ、お邪魔しました」

魔法街。

フィナ「あれ、なんでここに来たんだろ」

フローラ「フィナさん!」

フィナ「あれフローラ、奇遇じゃん」

フローラ「フィナさんは来てくれましたか……。ちょうどよかった」

フィナ「どしたの?」

フローラ「これから私は商業都市ファナゼに向かいます。それだけお伝えしておきたくて」

フィナ「うん、わかった。もしエルミスがフローラを探してたら伝えとく」

フィナ「で……何があったの? ファナゼって言えばグリエール商会の本拠地じゃん……」

フィナ「こんな時期に行くなんてただ事じゃなさそうだけど」

フローラ「時期は関係ございません。おじいさまに真意をたずねに行くのです」

フィナ「あー、港町のリンクス雑貨店を潰したことのね。マニーは関係ないって言ってたけど、ホントかどうか分かんないもんね」

フローラ「あの……もしよろしければフィナさんに護衛を頼みたいのですが……」

フィナ「……ごめん。友達だし、もちろんいいよって言ってあげたいところだけどさ……」

フィナ「あたし……今、ちょっと、武器持てないんだ……。本当にごめん!」

フローラ「いえ……お気持ちだけでもありがたく思います」

フィナ「でも大丈夫? 他に護衛のあてはある?」

フローラ「ええ。あの方がそうです」

キュベレ「あらっ! 誰かと思えばフィナちゃんじゃない! おっひさ~」

フィナ「オネエさんだ!」

フィナ「へー、フローラとも知り合いだったんですね」

キュベレ「まっ、お互いウベローゼンでは顔が広いからねぇ」

フィナ「オネエさん強いの?」

フローラ「ええ。強者の勲章をお持ちですのよ」

キュベレ「自慢にならないけどね。こんなんよ」スッ

フィナ「『輝鬼』ジーク・オーグロス……って、えー! 軍の方だったんですか!? あー、エルミスとはそういう繋がりで!」

キュベレ「外では、キュベレ、と呼んでちょうだいねん♪」

フィナ「強者……師匠より強いのかな」

キュベレ「あっ、アタシ、強者では下の下よ。初めてちゃんと武器の稽古したの1週間前だし」

キュベレ「ただ、遺伝のせいでそれなりに使えてしまうだけなのよねぇ」

フローラ「キュベレさん、それよりもあれやってください」

キュベレ「いいわよ♪ そぉれ!」ポンッ

フィナ「わ! 指先から花が咲いた!」

フローラ「素敵な魔法、うらやましい……」

キュベレ「アタシ日魔術師だけど心も癒せるオネエになりたくってね、友達(ユキ)のコネで水魔術もかじってたんだけど」

キュベレ「そしたらこないだセラピストの子(サナ)と知り合ってねー、日魔術と水魔術のミックスでこんなことができるって教えてもらったのよ!」

フローラ「私も魔法、はじめようかしら……」

フィナ「いいじゃん! 一緒にやろうよ。あたしも師匠の弟子やめたしさ」

フローラ「えっ、そうなのですか?」


※キュベレの水魔術設定・武器の稽古してなかった設定は3スレ目448の安価から


フローラ「すみません、フィナさん、そろそろ出発しなければいけないので……」

フィナ「もう暗くなってるけど、今日行くの?」

フローラ「はい。いまならまだ日付が変わる前に宿がとれますもの」

フィナ「灯りは?」

キュベレ「アタシよ」

フィナ「フローラをよろしくお願いします」

キュベレ「任せといて! 男っぽいから嫌だけど、フローラちゃんが危ない時には武器も使うから!」

フィナ「……フローラもいざという時には武器使ってね。状態異常ってすっごく便利だから!」(小声)

フローラ「……はい。使わなければいけない場面にならないように気を付けます」(小声)

フィナ「それじゃ、気を付けて!」

今後、エルミスの出番はちゃんとあるのでご安心を

あと1、2レスでソピア操作に戻ります


好きなモブを選んで下さい、フィナの知人になります

1.テンパラス(熟練の剣士・火魔術師、真面目な武人、時に優しく時に厳しい19歳)
2.テレサ(白魔術師の上位職、すでに軍に不信感しか持ってない、聖女のような19歳)
3.オルド(それなりのレンジャー、ソピアのすごさを目の当たりにしてる、色々と軽い24歳)

懐かしいモブ達だ

敵対、死亡フラグって全員分解除することは可能なの?

あちらを立てればこちらが立たずということはない?

修正
>>300 ウソついたでしょ → 全部ウソなんでしょ
>>302 心も癒せるオネエ → 身も心も癒せるオネエ


>>305 下手したら名無し非安価モブより影が薄くなってますからね…終盤ですし全員に出番あげたいんですよ

>>307 全員解除可能でした(監獄突入前なら)

急に忙しい日が続いています
明日の夕方には再開したい

テンパラスさんがどれくらいモブかというと一人称が安定しないくらいモブ、今後は初登場時の私に合わせます




引き続き、魔法街。

フィナ「あっ、火剣士さん」

火剣士「シーフのフィナだったな」

フィナ「火剣士さんが魔法街にいるなんて珍しいですね!」

火剣士「ちょっと、待て。その呼び方ではまるで私が端役のようではないか」

フィナ「だって長いし略しにくいんですもん」

フィナ「実際あたしの知り合いの中では端役の方ですし?」

火剣士「……実績が足りないか」


フィナは途中で恐怖を思い出し涙目になりながら長話をした。ソピアやエルミスの素性は流石に隠した。

テンパラス(火剣士)「そうか。殺し屋の弟子はやめたか」

フィナ「……落ち着いて考えると、予定通り技を学んでおさらばした感じ」

テンパラス「うむ。私もお前の選択は正しかったと思うぞ」

テンパラス「何があったかは知らぬが、友を手にかけさせようとするとは非道極まりない組織だ」

フィナ「そう、ですよね」

テンパラス「私もできる限りお前を守ろう」

フィナ「あ、危ないですって!」

テンパラス「案ずるな、私を誰だと思っている」

フィナ「名もなき火剣士さん」

テンパラス「……名前は、ある」


フィナ「これから、どうしよっかな……」

テンパラス「話なら聞くぞ」

フィナ「あたし、武器が握れなくなっちゃったんです。刃物を見ると震えてしまって」

フィナ「これじゃ何でも屋の仕事なんて出来っこないんで、転職しようかなと……」

テンパラス「候補はあるのか?」

フィナ「もしかしたら魔法局かも。あ、そうなったらテンパラスさんも先輩ですね!」

テンパラス「東国の戦技に興味はあるか?」

フィナ「東の国……ってジャルバ王国ですか?」

テンパラス「さらにその先だ。私は今、東国の剣技を修めている」

テンパラス「その東国には戦いを避けるための技があるのだ。今のお前に適しているのではないか?」

フィナ「いいかも……」

テンパラス「興味があるならば明日の9時に剣士ギルドへ来ると良い」

テンパラス「だが、今日はもう遅い。夜は暗殺者の時間だ。私が家まで送ろう」

フィナ「あ、ありがとうございます!」

夜11時、エルミスの自宅。

元帥「……海軍大将か」

女帝「夜分遅く悪いわね。夜遊びしてたエイラちゃんを届けに来たのよ」

エルミス「……」

元帥「それは手間を掛けさせてしまったな。申し訳ない」

女帝「ついでに一つ、重要な情報を手に入れたわ」

女帝「英雄『神殺』として勲章を与えた月魔術師のソフィアちゃん……彼女が逃亡貴族の一人ソピア・ウィンベルよ」

元帥「すまないが既知の事実だ」

元帥「先刻、衛生兵長から通達があった。王子と逃亡貴族4名の会話を含む、ソピア・ウィンベルに関する情報を入手したとな」

女帝「あら、残念ね……」

女帝「ではこのこともご存じかしら……お宅のエイラちゃん、ソピア・ウィンベルの人質になっているわよ」

元帥「…………な、なんだと!」

女帝「それも自ら進んで、ね……って聞いてないわ」

元帥「エイラ、奴に何をされた。正直に話しなさい」

エルミス「……ごめんなさい、父上」

元帥「謝る前に、まずは話を聞かせなさい、エイラ」

エルミス「…………」

怒声を上げたり物に当たったりしてはいないが、父が今までにないほど怒っているのがエルミスには分かっていた。

ソピアを守れなかったこと、そして父を心配させたことに耐え切れず、エルミスはただ無言で涙を流すことしかできなかった……。



同刻、シスヤタ市、共和国軍駐屯地、司令室。

魔導長「ふむ……そうですか」

風魔術師「はい。『貴腐』からの連絡です」

魔導長「あの娘さんが……残念じゃ」

拳魔「彼女、大胆な事をしましたね。まさか軍の内側にもぐりこむとは。面白い記事になりそうです」

魔導長「違うんじゃよ……」

魔導長「彼女はただ、怪物と化した友を助け、ラヌーン国からの帰還を果たしただけじゃ……」

魔導長「間違いなく、彼女は善良で有望な若者だった」

魔導長「しかしその彼女がワシの属する軍の敵とは……現実が恨めしいぞ」

拳魔「軍に恩を売る意図は無かったのでしょうか?」

魔導長「無い。ワシはそう感じた」

魔導長「だが、軍務に私情は挟めん……。風魔術師よ、監獄に連絡を」

風魔術師「すでに。ですが……読まれていたようです。監獄の警備に『神殺』の姿は無いとのこと」

魔導長「では、警備の者たちに通達を。……敵は英雄だ、決して油断してはならない、と」

深夜、1時半。

ソピアたちは監獄近くの裏路地で待機していた。

異空間の中に隠れていないのは、精神力の節約のためだ。周囲には人気が無いので人目を気にする必要が無いのだ。

ソピア「ふぅ……ちょっと冷えるね」

トール「標高が高いですからね……」

ヒレア「こっちにおいで。温めてあげる」

ソピア「ありがと。……お姉様、体温低い」

ドォン

イデア「今の音は……?」

アン「爆発ですかぁ?」

ハルカ「監獄の方からしたね」

これは想定外の事態である。

夜2時に監獄と駐屯地を同時に攻めることで、防衛力が片方に集中するのを防ぐ目論みだった。

しかし、ソピアたちが突入するよりも早く監獄が襲撃されてしまったらしい。

このままでは駐屯地の兵士が監獄に殺到する恐れがあり、そうなれば救出に成功する可能性は大幅に下がってしまう。

イデア「私たちも突入致しましょう!」

トール「いえ、攻略班と足並みを揃えるべきです。普通の兵士が増えてもヒレアさんが一掃できるでしょう」

ヒレア「もし霧が効かなくても、マリンかソピアの魔法で殲滅すればいいわ」

アン「時間差で襲撃することで軍を混乱させられるかもですぅ?」

ハルカ「意見は半々だね……。決めるのはリーダー、キミよ」

ソピア「リーダー……?」


1.予定を変更して早めに監獄に突入する
2.予定通り2時まで待つ

↓2

ソピア「2時まで待つよ。だって、何が起きてるのか分からないもん……」

トール「聞き間違いかもしれませんしね……」

イデア「了解です。待ちましょう」

ヒレア「気になる。様子を見てきましょうか?」

ソピア「だめ。強者がたくさんいるんだよ」

ソピア「マリンがとんでもないモンスターも交じってるって言ってたし……」

ヒレア「それなら、そばにいるわ」

ソピア「うん」

サウソーシャ大監獄、正門前。

ドォン!!

まるで爆発のような衝撃が街の舗装路を吹き飛ばす。

海軍の強者『金錨』の振り下ろしたイカリの一撃だ。

金錨「チッ、避けられちまった」

「ふっ、町を壊すのが君の仕事なのかい?」

金錨「てやんでいっ! 治安が守れりゃ構いやしねぇさ!」

金錨「そいや、もういっちょ!」ブン

「……」

金錨「ぐがあっ!」

イカリを振る最中に攻撃で体勢を崩され、その勢いのまま海兵の男は建物に激突。崩れた瓦礫の下敷きになった。

「よく見たらその武器、金メッキじゃないか。本人同様の見かけ倒しだな」

大壁「ここは通さないぞ!」

正門の中央で陸軍の強者『大壁』が蒼盾を構えている。彼は六勇『重壁』に次ぐ防御力を誇る若き騎士だ。

大壁「何物をも通さぬ大いなる壁! その名の意味を知るがいい!」

「……意外と素早いんだな」

大壁「鈍足で足止めが務まるものか!」

「そうだね。でもさ」

怒涛の連続攻撃が蒼盾の中心の一点を穿つ。

「攻撃もしないと足止めは務まらないんだ」

大壁「何!? 私の盾が!?」

中心が弱くなった盾は一蹴りで呆気なく割れてしまった。

大壁「ぐあっ!?」

狼狽える騎士の背中に矢が突き立つ。

「……不意打ちのつもりか?」

堅嵐「…………(この男、かなりの実力者だ)」スッ

塀の上から矢の雨を降らせたのは、同じく陸軍の強者『堅嵐』。

一度の発射で確実に標的を仕留める事で知られる、国内では最強の弓士だ。

そのハードボイルドな振る舞いから、彼に憧れる兵士は多い。

「君がどんなに優秀な暗殺者でも、弓を引く音で丸分かりだ」

堅嵐「…………(俺に二度目を撃たせるとはな)」ビュン

「……!」

彼の放つ矢の一本一本が凄まじい破壊力を持つ。瞬く間に、正門前がまるで嵐が吹き荒れたかのような有様に変容した。

だが。

「無駄だよ。撃ち合いで俺に勝てるわけがない」

後頭部に銃口を突き付けられた男は大人しく弓矢を放して両手を上げた。

「なぜなら君は時代遅れの弓使いだから」

敵は軽口を叩きながらも彼を手早く縛り上げる。

堅嵐「…………強いな。名は」

「君のような弱者に名乗る名は無い……と言いたいところだけど」

「今は、覚えておいて欲しい気分なんだ」

ロット「俺の名前はロット……一人ぼっちの反逆者だ」

戦闘の音は絶え間なく聞こえてくる。

ソピア「……」

トール「……粘ってますね」

ハルカ「う、上見て!」

アン「きゃっ! ……気持ち悪いですぅ!」

イデア「皆様! 炎の壁が……! 伏せて下さい!!」

ヒレア「マリンバリア、お願い!」



ロットは無数の兵士たちを得意のガンカタで華麗に蹴散らしていく。

塀の上の監視兵からは、そのように見えていた。

ロット(くっ……! 数が多すぎる! まさか銃弾が足りなくなるかもしれないとは思わなかった)

ロット(しかもなんで強者があんなにいるんだ。襲撃のタイミングを誤ったか?)

ロット(あの金メッキのせいで初っ端から全力の回避をしないといけなくなったし、青い男のせいで連射しすぎた銃が一丁ダメになった)

ロット(しかも回避強化した状態なのに矢が数本掠った……止血したいが隙が見付からない)

焔華「止まりなさい」

恐愛「ふふふ」ニコニコ

赤い装束の女性と満面の笑みを浮かべた憲兵が立ちふさがる。いずれも100人以上の兵士に相当する強者だ。

ロット(ああクソッ、まだいるのか!)

ロット(舐められて一気に来られたら終わりだ。いつものテンションを崩すなよ)

恐愛「その二丁拳銃……王都で連合帝国の大使を襲ったテロリストの残党で間違いなさそうですね」

焔華「王子の仲間でしょうか」

ロット「いや、俺は一人だよ」

恐愛「都合がいいです、ねッ!!」ブォン

ロット(危ないっ! 今、こいつ腕が伸びたように見えたが……)

焔華「逃がしません」ボォォ

ロット(普通の炎じゃないな、ヤバそうな魔法の炎だ。退路が塞がれてしまったか……)

ロット「……君たちの相手なんて一人で十分さ」

焔華「入口の武闘派の方々とは相性が良かったようですが我々は同じようにはいきませんよ」

ロット「へえ、君たちの方が弱そうだけどな」

ロット(そんなことない。こいつらは魔術師だ、銃では分が悪い。……まあ、対策はあるけどな)

恐愛「貴方に愛を与えましょう」パキッ ポキッ

焔華「現界を彩る魔焔の華。咲き誇れ、炎神ヘイム!」


↓コンマ25以上で『焔華』&『恐愛』撃破

恐愛「ふふふふふ!」ニコニコ

熟練のファイターでも実現しえない程の、高速の拳の連打がロットを襲う。

銃弾すら弾いてしまうその拳を目で捉えることはできない。ロットは相手の重心移動から動きを予測して回避していた。

ロット(当たったらどうなるか分からない、何が何でも避けるんだ!)

魔焔神「…………」ゴォォォォ

ロット「あっちは魔界の妖精か……珍しいね」

焔華「よく知っていますね。確かにヘイムは魔界出身の、花の妖精です」

ロット「あんな禍々しい花があってたまるか」

焔華「馬鹿にしないでください。ヘイム、人体発火!」

ロット「つうッ……!」

ロット(必中か、畜生……!)

焔華「美しい花になり、散りなさい」

ロット(全身火だるまになる前に勝負を決めないといけないが……)

恐愛「貴方が燃えようとも、私は殴るのをやめませんから! 貴方にっ! 愛を! 教えるためにっ!」ドドドドッ ブン ブン ブンッ!

ロット「半笑いの男の愛なんて受け取りたくないよ、気持ち悪い。せめて女の子だったら可愛げがあったのにな」

恐愛「愛に性別も身分も何もかも関係ないのですっ! 愛の前に人類は皆平等っ!」

恐愛「はぁぁ、滾ってきました! 愛が、溢れる!」

憲兵の男の全身が蠢く肉塊に変貌した。

ロット「うえっ……! 気持ち悪いどころか恐怖しか感じないな……! 一体何なんだよ……」

恐愛「自分の聖教会への愛、神への愛を疑った私は……あえて悪魔と契約し邪教徒となることで、自分の愛が本物なのかどうかを確かめました」

恐愛「結果はこの通りっ! 真実の愛を持つ私の全身は、愛で出来ているのですよっ!」

ロット(全身心臓じゃないか……。いや、心臓だからハート、ハートだから愛って言いたいのか)

ロット「俺には悪魔に取りつかれたようにしか見えないけどな」

恐愛「私の愛は、無限大ィィィィ!!」グモモモモ

膨張した心臓の塊が空を覆い尽くす。脈打つ肉色の空はソピアたちからも容易に観測できた。

ロット「これで正体が分かった。……俺の勝ちだな」

焔華「手遅れです。ヘイムの注精は終わりました。さようなら」

魔焔神が綿毛のような火を飛ばす。それは地を這うように遠方まで広がっていく。

ロット「お、おい、やめろお前ら」

焔華「焦土(フラワーガーデン)!!」

魔焔神「……!!!」ゴオオオオ

恐愛「世界に愛をぉぉぉぉ!!」

心臓の塊が町を押しつぶし、焔の華が町に咲き乱れた。

ロット「はぁっ、はぁ……」

恐愛「」

焔華「……ヘイム? どこですか?」

一瞬だけ見えた滅びの光景は消え、通常の風景に戻っていた。

使い魔を探す木霊主の女の首根っこをロットが掴みあげる。

ロット「お前ら馬鹿か!! 俺を殺すために町全部犠牲にするつもりか!!」

焔華「敵対者にしか効果はありませんよ……」

ロット「……魔術ってのは本当に出鱈目だな」

焔華「それよりも! ヘイムをどこにやったんですか!」

ロット「ああ、撃ったよ」

焔華「そんなわけありません。ヘイムも、恐愛も銃撃ごときで死ぬことは……」

ロット「銀弾十字射撃。君の使い魔や心臓の化け物みたいな、魔物の類なら確実に仕留めることができるのさ」

ロット(まさかあの一瞬で二回とも成功するとは思わなかったけどな……。火事場の馬鹿力って奴か)

焔華「そ、そんな……」

女は慌てて逃げ出そうとする。

ロット「っと、縛っておかないとな。ヘイムとやらがいなければ君は魔法を使えないんだろう?」

焔華「ああ……ヘイム……」



トール「何ですか今のとんでもない精霊量は……」

マリン「火属性じゃなかったら防げなかったわー」

ソピア「マリンありがとう」

ヒレア「……ふう。何とか相殺できた。とんでもない生命力ね……」

ソピア「お姉様もありがとう」

アン「あの心臓、当たってたらどうなってたんですかぁ?」

ヒレア「私の浄化魔法に似てた。たぶん……あらゆる乱暴な行動がとれなくなるわ。要するに従順なロボットになる」

イデア「やはり、突入した方がいいのでは」

ソピア「一瞬だったし無視していいんじゃないかな」

鷲男「悪の手先よ、そこまでだっ!」

ロット「なっ……!」

ロット(息つく間もないとはこのことだ……)

焔華を縛っているロットに声をかけたのは空軍の強者『鷲男』。

カラフルな全身タイツにマスクという派手な姿で、腕を組み空中で仁王立ちしている。

背中にはジェットパックを背負っているが今は噴射していないようだ。

鷲男「このヒーローの前で婦女暴行とは、見過ごすわけにはいかん! とうっ!」スタッ

ロット「……ヒーローか」

鷲男「私の名は、エンチャントイーグルマン!」

鷲男「荒野で修行中に毎日、国鳥エンチャントイーグルの卵を食べ続けたためか」

鷲男「あるいは風魔術と月魔術という組み合わせで魔法の腕を鍛えたためか」

鷲男「体質が限りなく鳥に近づいてしまった男だ!」

ロット「知ってるよ。鳥魔術師だろ?」

鷲男「この超軽量級ヒーローが来たからには……っと、私の事を知っているのか!」

ロット「知ってるからこの際言わせて貰うけど、鳥魔術師って、ダサいよ」

鷲男「飛魔術師や羽魔術師の方が格好悪いだろう」

ロット「もう一つ言わせて貰う」

ロット「俺はお前をヒーローとは認めない」

鷲男「なぜだ?」

ロット「ここに捕らわれている、罪のない人々を救おうとしないからだ」

鷲男「何を言うかと思えば!」

鷲男「王家と貴族はいつだって悪だった。罪もない人々を苦しめて欲望のままに生きていた」

鷲男「そして今では、正義が勝つ理想の社会に反旗を翻そうとする、悪そのものだ」

鷲男「悪の手先よ、貴様らの思い通りにはさせん!」

ロット「……俺は悪と言われても構わないさ」

ロット「だけど、貴族が全て悪だとどうして分かるんだよ。全員と話をしたのか?」

ロット「俺は少なくとも一人、罪のない貴族を知っている。俺は彼女のヒーローになりに来た」

鷲男「貴様がヒーローだと?」

ロット「ああ。ニヒルなガンマン、略してニヒルマンだ」ニッ

ロット「覚悟しろ、エンチャントイーグルマン。このニヒルマンがお前を倒す!」

鷲男「ハッハッハッハ! ……ふざけるな。悪の手先がヒーローを名乗ることは決して許さんぞ」

ロット(ああ見えてかなりの実力者で、数多くの人々を救ってきた正真正銘のヒーローだ)

ロット(だからこそ……超えないといけない)


↓コンマ35以上で『鷲男』撃破

今晩はここまで、次は恐らく本日の夕方

ロットさんにはこんなポジションになってもらいました

撃破できなかった敵はソピアたちの前に立ち塞がります

安価スレなのに本当不定期でごめんなさい
絶対に火曜日に再開します

>>316訂正 サウソーシャ大監獄 → シスヤタ大監獄



鷲男「はっ!」ゴウッ

ロット(飛んだか……。どちらかというと、狙い撃つのは苦手だ)

ジェットパックが火を吹き、鷲男が空を舞う。魔力で作り出した半透明の翼で向きを調整しているようだ。

鷲男「おっと、撃たれてはかなわん。透明飛行!」

ロット(月魔術だな。だけど、耳を澄ませてジェットパックの音を聞けば……ここだな)パァン

一発だけ撃った銃弾は空中で弾かれる。

鷲男「エアー・シールド、私に銃は通用しないぞ! だが、よく当てたな!」

ロット「うるさいからね。どこにいるのか丸わかりさ」

鷲男「喧しかったのだな、これは失敬。消音飛行!」

ロット「何っ……!」

ロット(しまった……姿も音も消されたか。肌で感じる風と気配を頼りに撃つしか手は無い)

ロット(でも相手は大型鳥モンスター並の高速で動いている。そして風魔術での防御……詰んだか?)

ロット「どこにいるか分からないなんて、地味で姑息なヒーローだな」

鷲男「クリスタル・バード!」ゴッ

ロット「ぐあッ! くっ……マントが……!」

鷲男「その耐魔装備、岩属性耐性をおろそかにしていたようだな」スタッ

体当たりの直後に姿を現して地に降り立った男に即座に発砲すると、それは爆発しロットを激しく吹き飛ばした。

本人はまだ上空にいた。消音と透明化は解除されている。

鷲男「幻影だ!」

ロット(ダメだ……飛んでる隙に逃げるしかない)タタッ

鷲男「逃がさん! 私には貴様の居場所が手に取るように分かるぞ!」

ロット(屋内に逃げれば飛びまわれないはずだ……)

鷲男「む? 正門から感じ慣れぬ気配が……。なんと、兵士が倒されているではないか! 今行くぞ!!」ゴウッ

暗視能力で新たな悪を捉えたヒーローは速やかにそちらの排除に向かう。

シスヤタ大監獄、囚人労働施設。

ロット「……追ってこないな」

岩属性を纏った突進の直撃を受けたロットは大きなダメージを受けていた。

ロット「突入して、結構立つな……。今何時だ?」

教官長「2時8分だよ」

ロット「……!」

施設の入口に老婆がいた。

その腰は曲がっておらず、気配の一つもさせずに立っている。

教官長「あの若造共は、侵入者一人仕留められないのかい」

教官長「己の実力を過信して訓練を怠ったね。あのザマでこの国有数の強者だなんて実に情けないよ」

教官長「そうは思わないか、若造?」

ロット「……ああ、そうだな」

ロット(厄介な相手に見付かってしまった……)

ロット(王国軍の中心人物の一人で、女性でありながら前線で戦い続けた歴戦の武人)

ロット(あらゆる武器の扱いに通じ戦場では敵の武器を奪いながら戦い、その姿から『全武』の二つ名でも呼ばれる……)

教官長「しかし、相手が悪かったね」

教官長「見れば分かるよ。お前さんの実力は英雄の勲章を与えるに値する程だ」

ロット「お褒めに預かり光栄だな」

教官長「まったく……あたしが戦わなくて済むのはいつになるのかねぇ」

教官長「まあ所詮はババアだ。少しは加減しなよ」ギロッ

ロット(冗談じゃない! あの六勇ですら純粋な武器の扱いでは勝てない程の化物婆さんだ。手加減なんかできるもんか)

ロット(だが、俺には勝機があるかもしれない……)


↓コンマ50以上で『全武』撃破

ロット(俺にだけある勝機、それは俺の武器が銃であること)

ロット(銃は北大陸では歴史の浅い武器だ。『全武』が若いころには存在しなかった銃なら……!)チャキッ

外国での修行で数多くの視線を潜り抜けてきたロットには、両手で連射しながら的確に狙い撃つことが可能だった。

彼は初め、拳銃の故障を疑った。

目の前の老婆が、自然に歩きながら全ての銃弾を避けたことを信じられなかったのだ。

ロット「嘘だろ……」

教官長「弓矢と同じだよ」

教官長「たとえ引く動作が無くとも、目線で分かる」

ロット「舐めるな!」

ロット(跳弾を利用した全方位からの射撃! すべて避けることは不可能! ……!?)

教官長「借りるよ」

一気に距離を詰めた老婆はロットの顎に打撃を食らわせると、体勢を崩した隙に拳銃を一丁掠め取った。

そのまま接近戦に突入する。

両者ともに回避に集中しながら、銃撃での一撃必殺を狙う。

ロット(おかしいだろ……! なんで……)

ロット(なんでこの婆さんは、ガンカタの動きをマスターしてるんだよ……!)

教官長「よっと!」ゴチン

ロット「がはっ!」

不意を付く頭突きで転倒するロット、すかさず撃ち込まれた銃弾を床を転がって回避する。

ロット「畜生……!」サッ

机の裏に身を隠し、距離をとっての銃撃戦が始まる。

ロット(あの婆さん、遮蔽物もいらないっていうのか……。だが次のチャンスで決めるっ……!)

カチ カチッ

教官長「おや、弾が切れちまったよ」

ロット(今だッ!!)バッ

物陰から飛び出すロット。

次の瞬間には蹴りで宙を舞い……そして肘鉄で地面に叩き落とされていた。

教官長「悔しいかい? 残念だったね、敵である以上リベンジのチャンスは無いんだ」

ロット「ぐうっ……!」

一方、ソピアたち。

アン「後10秒……3、2、1、2時ですぅ!」

ソピア「出発!」

トール「ソピアさんは僕の後ろにいてください」

イデア「前衛は私が!」

ハルカ「飛び道具に気を付けて……!」

見張り軍人「なんだお前たちは!」

アン「ごめんなさぁい!」パァン

剣士軍人「敵襲ー!!」

イデア「ヒレア様、お願いいたします!」

ヒレア「しばらく眠ってなさい」ブワッ

黒い霧が正門周辺を覆い、大半の兵士を眠らせる。

魔法軍人「なんだと……!」

ソピア「マリンビーム!」

マリン「それー♪」

魔法軍人「うああっ!」


ソピア「楽勝だったね」

トール「もう少し対策されてると思ってましたが……」

ハルカ「増援が来る前に進まない?」

イデア「警戒は怠らないように」

鷲男「待て! 私が来たからにはこれ以上は進ませんぞ!」

イデア「どこですか!?」

アン「屋根の上ですぅ!」

ヒレア「変態がいるわ……!」

鷲男「そこにいるのは……英雄『神殺』だな!」

ソピア「誰だっけ」

鷲男「私の名は、エンチャントイーグルマン!」

鷲男「荒野で修行中に毎日、国鳥エンチャントイーグルの卵を食べ続けたためか」

ソピア「マリンビーム」

鷲男「あるいは……おっとぉ!」バッ

鷲男「名乗りの最中に攻撃を始めるとは、なんたる悪党!」

ヒレア「急いで片付けましょ!」

ソピアたちは強者の勲章持ちを甘く見ている。


メンバー
ソピア(マリンもセット)・トール(補助メイン)・ヒレア(不死身)・アン(銃とアイテム使い)・ハルカ(弓オンリー)・イデア(盾オンリー)

↓2 『鷲男』と戦闘するメンバーを指定(個人・複数人・全員OK、ソピアが参加しない場合コンマのみで判定)

>>338 視線→死線



イデア「別行動は危険です。全員で対処いたしましょう!」

トール「急いでいる時こそ確実に、ですね」

鷲男「とうっ!」ゴウッ

ヒレア「空中戦ね、いいわ!」バサッ

ハルカ「……狙い撃つ!」

ソピア「マリン、お姉様に当たらないようにビーム! アンは当てそうだからやめて」

アン「信じてくださいよぅ!?」

鷲男「エアー・シールド! 私を傷つけることはできんぞ!」

ヒレア「くっ、硬いわ……。霧も効かないみたい!」

トール「彼の属性は風と月です。珍しいですね……」

ソピア「それなら属性変換で……光線魔法(火&日)!」

鷲男「コロナ・バード!」ボォォォ

燃え盛る男が光線の中を突っ切り、拳を振るいながらソピアとトールに突進する。

ソピア「きゃぁっ!」

トール「いたた……マリンのバリアのおかげで助かりましたが、今の技は……」

ソピア「もしかして、あの人も属性変換が使えるの?」

鷲男「ふむ、流石に敵が多いな。隠密飛行!」

ヒレア「消えたわ……?」

ソピア「まさか、透明魔法……!?」

トール「気配は……後ろです!」

鷲男「ルビー・バード!」ドッ

突如現れた男がマリンに突進からの拳を食らわせる。

ヒレア「マリン!?」

ソピア「大丈夫、ギリギリ生きてたよ……。回復まで少しかかるけど……」

トール「さっきは僕とソピアさん相手に火と日、今はマリン相手に岩と日……こちらの属性も敵に筒抜けのようです」

鷲男「フェザー・ボンバー!」ドゴゴゴ

イデア「くううっ!」

ハルカ「防御、ありがとうございます……!」

ソピア「今のはエアバッグとダークフェザーのような……」

イデア「ソピア様とトール様の使う魔法と同じものを使う敵ということでしょうか」

アン「敵に回すとこんなに恐ろしいんですねぇ」

ハルカ「せめて音が聞こえれば射れなくもないけど……」

ヒレア「私よりも速く飛んで、バリアも貼ってるわ。たとえ見えたとしても厳しいと思う」

トール「幸い、僕の気配察知で場所は分かります」

ソピア(たくさんある私の魔法でどうにかできないかな……?)


↓2 自由安価、>>8の使える魔法を参考に なおコンマ奇数でトールが打開策を閃く

最近更新ペース安定しないね

無理に平日にやらんで土日とか時間ある時にまとめて進めるとかでもええのよ?

どうでもいいけどそろそろ前スレに>>1が何か書き込まないと1ヶ月オーバーで依頼出されるぞ

>>349
今は昼には暇があって18時以降はパソコンを使える時間が少ないので、しばらくは昼から進めたいと思います

>>350
もうそんなに放置してたのか…近日中に投下しようと思います

とりあえず次回は土曜日で

すいません延期です、明日15時から

イデア「またもや姿を隠しました……!」

トール「くっ、僕が警告してからじゃ回避が間に合わない」

ソピア「……。トールくん、ちょっと離れてて」

トール「えっ、危ないですよ!」

ソピアは自身に透明化の魔法をかけて、仲間たちと距離を取った。

ソピア(魔力制御……内なる魔力を高める……!)

トール「な、何やってるんですかソピアさん! 敵も僕のように気配、魔力、属性を探れるんですよ!」

ソピアの居場所を探って、守るために近づこうとするトールの手をヒレアが掴んだ。

ヒレア「だめ」

トール「な、なにを」

突如、ソピアの目前に鷲男が現れた。それは今まさに高速で殴りかからんとする姿勢。ジェットパックの音も仲間たちの耳を打つ。

ソピア(かかった!)

鷲男「オール・エンチャント・バード!」ゴッ

全属性を纏った拳がソピアを激しく殴りつけ吹き飛ばす。

鷲男(捉えた! ……なんだ? 脇腹にチクリと痛みが)

ソピア「げほっ……一斉、攻撃……!」

ヒレア「任せて!」

ヒレアの連射した魔法弾は鷲男を追尾する。しかしそれは誘導弾ではない、威力の高い炸裂弾だ。

鷲男「小癪な!」

小回りを利かせて追跡を振り切る。一発だけ着弾したがバリアがそのダメージを完全に防いだ。


ソピア「あれだけじゃダメなんだ……」

透明化、消音、バリアの3つの魔法で身を守る鷲男。彼に攻撃を行うためにソピアは一つの策を弄した。

魔法を無効化する聖域は自身の周囲の狭い範囲にしか効果が無い。

ソピアはあえて透明になり、さらに魔力を高めて大技を使おうとしているように見せかけることで、鷲男を引きつけ、聖域の範囲内に誘導したのだ。

そしてバリアが解除された鷲男へ運命の矢を一発当てた。

ソピア(これで相手が見えなくても、適当に撃てば魔法が当たる……)

アン「お、お嬢様ぁ! 生きてらっしゃいますか!?」

ソピア「強化魔法をかけてたから、何とかね……」

トール「なんて無茶な事を……!」

ソピア「トールくんは攻撃に集中して……。まだバリアを何とかしないと……」


↓コンマ奇数…トールが何とかする 偶数…ソピアが回復する方が早い

鷲男「イーグル・ナックルゥ!」

ヒレア「痛っ!」

白魔術でなくとも魔力さえ付加されていれば、物理攻撃はヒレアに通用する。

ヒレア(『悪食』が弱かったから甘くみてたけど、霧を意にも介さない化け物じゃない……!)


アン「す、すぐに回復いたしますぅ。ポーションは、ええと……」

トール(治療中を狙われたらおしまいだ。僕が何とかしないと……!)

姿と飛行音を消した鷲男をヒレアの魔法弾が追う。

トールはその魔法弾がソピアたちの方へ進路を変えたことに気付くと、慌ててエアバッグの魔法を発動した。

鷲男「くっ、読まれたか!」ゴウッ

トール「き、効いた……そうか」

トール(風を制するのは風だ)

トール「全力で、気流を操る……!」

トールの気流操作が鷲男のエア・シールドを不安定にさせる。

トール「ハルカさん……お願いします!」

ハルカ「いいよ。……見えなくたって射る方法はある」スゥ

ハルカ「弓技:催涙雨!」

拡散射撃。矢が雨のように降り注ぐ。

イデア「……来ますよ」

ハルカ「分かってます……そこっ!」バシュ

鷲男「ぬぉあっ!」ズザザ

ハルカはあえて矢の雨を避けられるように射り、自分に向かって突進するように誘導した。

そしてノックバックさせる矢を真正面から当て、鷲男を撃ち落としたのだ。

ソピアの捨て身の作戦を見たハルカも改めて覚悟を決めたのである。

ヒレア「今なら!」

地に伏せる鷲男の背中に、急降下したヒレアの素手が刺さる。

そうして、決着がついた。

鷲男「」

イデア「強敵でしたね……」

ハルカ「ソピアさん、大丈夫?」

ソピア「アンに治してもらったし、これくらいならなんともないよ」

アン「本当は安静にしてた方がいいんですけどねぇ」

ソピア「そんなこと言ってられないよ。時間かかっちゃったね、先を急ごう」

ヒレア「マリンは? バリアがないと狙撃されるわ」

ソピア「あっ、あそこ」

マリン「もぐもぐ」

火花の妖精「」

ヒレア「あれ、さっき炎の壁で攻撃してきたのじゃないの……?」

マリン「復活ー♪」

ソピア「こら! 拾い食いはだめだよ!」

マリン「緊急だったからー……」

ヒレア「今回は許してあげて」

ソピア「わかったよ……」

ダンッ

その銃声で、ロットは自らの死を確信した。

だが、全身の傷の痛みは消えない。

ロット「……?」

顔を上げると、老婆は別方向に銃を向けていた。

ロット(別の襲撃者がいたのか……?)

教官長「何のつもりだい……『死神』」

死神「フン」

そこにいたのは、漆黒の鎌を携えた細身の男であった。

赤と銀のオッドアイが薄暗い部屋で光っているように見える。

教官長「あんたは軍に協力しているんじゃなかったのか?」

死神「……その男の死に場所はここじゃない」

教官長「死神の仮装をしてると思ったら、本気で自分を死神だと勘違いしてるとはね」

教官長「戦場では人間の死期は人間が決めるんだ。手出しはさせないよ」

死神「ならば……ここで俺と刃を交えるか」

教官長「上等だよ」

老婆はロットの銃を床に放る。

ロットはそれを回収すると急いで逃げ出した。

ロット(命拾いしたな……)

ロット(地下牢までもうそこまで遠くないはずだ)

ロット(もう、カッコ悪くても構わない。彼女を助け出すことさえできれば……)

中央収監施設、中庭。

ロット「遅い!」パァン

看守「がっ……!」ドサリ

ロット「これで全員か」

ロット「この階には普通の囚人しかいないな。脱獄させた所で味方になるとは思えないし、無視でいいか」

ロット(手負いでも何とかなるもんだな……もう誰も出て来るなよ)

ロット「っ!!」バッ

ロット(この投げ針は……畜生っ!)

師匠「……避けたか」スタッ

木の上から飛び降りて来たのはタイトな黒いスーツに身を包んだサングラスの女。

フルフィリア国内で最強との呼び声高い殺し屋、『凶爪』だ。

ロット「……奇遇だな」

師匠「お前ならここまで来ると思って待ってたんだ……」

ロット「へえ。サインならまた今度にしてくれよ」

師匠「お前さえ仕留めれば、あたいの仕事は終わりだ」

師匠「手間かけさせんなよ」スッ

両拳にセットした長い爪を構える。

ロット(……最悪だ。こいつにだけは会いたくなかった)

ロット(でも……)

ロット「やるしかない、か」


↓コンマ ゾロ目…ラッキー それ以外…順当

ロット「くっ、はあっ……!」

ロットが膝をつく。

連戦の傷と疲れが響き、爪での素早い攻撃を避けるだけで精一杯だったのだ。

師匠「チッ、ギルドでやりあった時の方が手応えがあったぞ」

師匠「まあいい、とどめだ……。っ!」

ロット「まだ……終わってない」スッ

師匠「まだ早撃ちする元気があったか。だったら……」

ロット(この姿勢は……!)

それは1秒当たり10回の急所への攻撃を加える必殺技の前兆。

師匠「凶爪瞬殺舞」ヒュッ

ロット(リミッター解除!!)

通常の人間には視認できない早業に対応すべく、ロットも筋肉に命令を送った。

ドドドドド ダンッ ダダダッ!

2人の攻防が機関銃のように連続した音を生み出す。

そして……

ロット「ぜー……ぜー……」

師匠「はあっ、はあっ…………クソが!」

ロット「嘘だろ……確かに胸を撃ったはずだ!」

師匠「そうだ、確かに当たった。……アイツに命を救われたってのか」

ロット「あいつ? ぐああッ!!?」ズバッ

師匠「毒爪閃。……隙を見せたな、野郎」

ロット「うあああっ……!!」

師匠「これでお前の孤独な反乱もおしまいだ。残念だったな」

師匠「……クソッ、立てん。やっぱり負担が大きすぎるか……」

ロット「それは……都合がいい……」スクッ

師匠「な……お前、まだ……!」

満身創痍のロットは猛毒の餌食になり、いつ気を失ってもおかしくなかった。

だが、歯を食いしばり、それでも立ち上がる。

ロット「生憎……まだ俺は死ねないんだよ……!!」

ハルカ「軍の人……みんな倒されてるね」

アン「銃でできた傷が目立ちます。たぶん先に襲撃した人ですぅ」

イデア「油断しないように。起き上がって奇襲されることもあり得ます」

ヒレア「そうね。死んでる人はほとんどいないわ。……とても起きれないでしょうけど」


ソピア(魔人先生ー)

魔人(どうした。気を逸らしている場面ではなかろう)

ソピア(さっきの人が使ってた複合魔法について教えてください)

魔人(ああ、自称、鳥魔術師じゃな)

ソピア(風と月の複合って鳥なんですか? 試してみたらただの風みたいでしたよ)

魔人(わらわなら空魔術と名付ける)

魔人(すごく高度の高い、高空の属性じゃ。空気が薄い場所ほど風と月の精霊量が増大する)

魔人(攻撃に使えば真空やジェット気流、羽根が生み出せるぞ。自分に使えば空気の抵抗が減り速く飛べる。……鳥魔術というのもあながち間違ってないのう)

ソピア(私も羽根生み出せますし飛べますけど)

魔人(黒魔術があればいらんということじゃな。特にお主の力の源は天空の悪魔じゃろう)

ソピア(あ、だから明星光線みたいな天術師っぽい魔法も使えるんだ)


教官長「ふん……逃げたね。姿を隠す技術に長けるということは、『死神』の出自は……」

教官長「ん?」チラッ

ソピア「あっ」

教官長「まったく、こんな時に……。ソピア・ウィンベルだね。話は聞いてるよ」

ソピア(ああ、貴腐のレディーに報告されてたんだ)

ソピア(一人で潜入しなくて正解だったね……)

教官長「仲間もいるようだけど……一人も逃がしゃしないよ!」スッ

ソピア(魔法は使わないみたいだけど、すっごく強そう)


メンバー
ソピア(マリンもセット)・トール(補助メイン)・ヒレア(不死身)・アン(銃とアイテム使い)・ハルカ(弓オンリー)・イデア(盾オンリー)

↓2 『全武』と戦闘するメンバーを指定(個人・複数人・全員OK、ソピアが参加しない場合参加した仲間の組み合わせに応じてコンマ判定のみで決着)

風邪引いて寝てました…
明日に延期します

近況報告。
熊本に住んでましたが、私は運良く他県に滞在中だったので無事です。SSのデータも無事です。
交通が復旧して熊本に戻るまでは至って普通の生活ができるので、再開は不可能ではないです。
とはいえ、しばしば死者が出る内容なので今再開するのはやめておくべきかとも思っています。
特にご意見が無ければ、少なくとも5月までは休止させていただきます。

ここまで進めたのに終わらせるのは勿体ない……
再開準備進めてます
月曜あたりに前スレか今スレかどちらかに投下予定

久しぶりなのであらすじ
主人公ソピアは、王子と他の逃亡貴族3名と共に共和国に反乱を起こした。
囚われの貴族・騎士たちを救出すべく牢獄を襲撃したが、それは共和国軍にも筒抜けであった。
牢獄を守る軍人達との戦闘も終盤、ソピアたちの前に国内最強の殺し屋と武人が立ち塞がった。

ソピア・トール・ヒレア・アン・ハルカ・イデアの全員で、教官長『全武』と戦います



トール「あ、あれ? どうして彼女がソピアさんだと……」

教官長「魔導長と会って話をしたんだろう?」

ソピア「ごめんね……見付かっちゃったの」

教官長「どんな小細工を使ったかは知らないが、あんたが姿を変えられることは皆知っているよ」

言いながら老婆は一歩後ろに下がり、その鼻先を銃弾が通過した。

アン(不意打ちのつもりだったのに、こっちも見ないで避けるんですかぁ!?)

教官長「借りるよ」シュッ

アン「きゃん!」

ハルカ「このっ……!」バシュ

老婆は振り返りざまに奪った拳銃を発砲、ホーミングする矢を撃ち落とす。

アン「な、なんて腕前……」

教官長「最新の武器と言えども要は引く動作の無い弓矢だね」

教官長「前線に出る兵士ならこのくらいできてもらわないと困る」

イデア「皆さま、私の後ろに!」

ハルカ「武器じゃ勝てない……ごめんね、役立たずで」

ソピア「いいよ。ここは私たちに任せて。行くよトールくん!」

トール「はい!」

ヒレア「呪いが効けばいいけど……」

光線、空気、霧の魔法の一斉攻撃が教官長を襲う。

ソピア「や、やった!?」

教官長「やっ!!」ブン

トール「危ない! ぎゃっ……!」

霧の中から飛び出した教官長の手刀からソピアをかばったトールが倒れ伏した。

トール「」

ソピア「と、トールくん……!」

アン「気絶してるだけですぅ……たぶん」

ヒレア「ほ、本当に人間なの、あなた?」

教官長「あんたたちは本当に強いよ。まだ若いのに、素晴らしい経験を積んでいるのが分かる」

本来なら素手で触れられないはずの霧化したヒレア、その首に教官長の指が食い込む。

教官長「だが、その経験を何十年も重ねなければ、あたしらには及ばんよ」

ヒレア(ダメ……こんなの、勝てっこない……!)

ロット「ハアアアアッ!!」ガッ ダン ダン

ロットは猛毒に身体を蝕まれながらも気力で戦闘を続けていた。

その顔に普段のニヒルな気取った笑みはもはや無く、意地と脂汗だけが浮かんでいる。

師匠「いい加減に、くたばれ……!」バッ ササッ

その一方で殺し屋『凶爪』も追い込まれていた。

ありえない速さで動く必殺技の直後に、さらに速く動く『毒爪閃』を使ってしまった彼女は、疲れ切った体を無理に動かしている。

ロット(逃げに専念しやがって……でも、ガンカタはどこまでも届くんだよっ!)

避けた、と思った拳の先から銃弾が飛んでくる。

通常の接近戦や銃撃戦ではあり得ない攻撃が、殺し屋の脇腹に、腕に、脚に命中した。

師匠「ぐぅ……!」

ロット(よし、この調子で……!)フラッ

わずかな安堵がロットの足をすくった。

転倒するロットを見て、殺し屋も足を止める。

彼女らしくなかった。だが、いつでも止めを刺せる相手を前にして、限界を超えて酷使した脚が地に縫い付けられたように動かなくなってしまったのだ。

何より、すぐにでも止血が必要な状態であった。

双方、絞り出す様に声を出す。

師匠「……終わりか。しぶとい銃野郎」

ロット「俺は……」

師匠「……あん?」

ロット「俺は、まだ死ねない……!」

ロット「こんな俺よりも……強くて、カッコ良くて、理想のヒーロー……」

ロット「彼女を、せめて彼女を救えないと……カッコ悪すぎるんだよ」

ロット「背負うもののない殺し屋とは違うんだ、俺は!」

師匠「るせぇ!」

師匠「あたいだってな! あのバカ弟子をきちんと破門してやんねぇと、死んでも死にきれねぇんだ!」

師匠「……あたいの我儘で激情しちまった」

師匠「アイツの好物を渡して、詫びるんだ」

師匠「あたいにゃ、生きて、協会から逃がしてやる責任があるんだ……」

ロット「だったら……俺の足止めなんかしてないで、帰ってくれよ。その方がお互い――」

師匠「無理だ」

師匠「協会の依頼でお前を仕留めなければいけない」

師匠「重要な任務だそうだ。失敗したらあたいも、弟子も、命はねぇ」

ロット「……その協会ってのはそこまでして俺の邪魔をするのか」

ロット「こんなところで立ち止まってられないな。君を倒しても次の刺客が来るんだろう」

ロット「ゲホッ! ……ぺっ」

ロット「時間がない、すぐに終わらせる……!」

ソピア「う、うう……みんな……!」

教官長「これだけの兵士を倒したからどれほどの怪物かと思ったが、どちらも大したことなかったねぇ」

教官長「さて、拘束して牢へ連れていこうか」

「教官長殿」

教官長「あんたは……知将様じゃあないか。なんで基地から出てきたんだい」

知将「通信兵が出ないので直接通達に参りました。何、襲撃者相手に遅れは取りませんよ」

教官長「あんまり自分の実力を過信するんじゃないよ。あんたを失うことは一人の実力者を失う以上に大きな損害になる」

教官長「で、なんだい? 見てのとおりすごく忙しいから手短に頼むよ」

知将「貴女には撤退していただきます、教官長殿」

教官長「わかった、何か考えがあってのことだろう。こいつらを牢に送ったら帰るよ」

知将「いえ、彼らは置いて行ってください」

教官長「いいや危険だ。あんたに任せるわけにはいかないね」

知将「いえ、帰っていただきます。これは上官としての命令です」

教官長「妙だね。それが軍にとっての利益になるとは思えない」

知将「私が偽物だとお思いですか?」

教官長「……この目に狂いがなければ、あんたは知将本人に違いない」

教官長「了解した。帰るよ」ザッ ザッ

知将「…………」

知将「行きましたか」

ソピア「……?」

知将はソピアにポーションを使った。

ソピア「……えっ、あ、あなたは」

知将「貴女に幸運あれ」スッ

ソピア「ま、待って……!」



教官長「おかしいことばかりだね。『死神』といい知将といい……」

教官長「もしかしたら、共和国軍と反乱者の対立というシンプルな構図ではないのかもしれない」

教官長「少し調べてみようかね」

中央収監施設。

ソピアは施設の奥へと進む知将を追いかける。

ソピア(知将といえば、軍の参謀……私の敵のはずなのに!)

ソピア「あれ? 確かにこの廊下を曲がったのに」

ソピア「隠し扉でもあるのかな……。普通くぐれる大きさじゃないけどこの小窓から出た?」

ソピア「どこかから外に出てみなきゃ……」


ソピア「ここは中庭? 人が倒れてる」

ソピア「……ろ、ロットさん!?」

ロット「…………ルーちゃん?」

ソピア「ひ、ひどい怪我! 早く回復を!」

ロット「なんで君がここに……幻でも見てるのか、俺は」

ソピア「あ、あれ? 傷が塞がらない……。そっか先に解毒を、なんで効かないの……?」

ロット「無理だ、諦めろ……」

ソピア「なにを……えっ、フィナの師匠が……!」

ロット「アサシンの猛毒だ……付け焼刃の魔法で治るもんじゃない」

ロット「ルーちゃん……そいつ、死んでるか……?」

ソピア「……はい。……もしかして」

ロット「俺は、勝ったのか……」

ロット「やった! やったぞ! 俺はゴハッ!!」

ソピア「ろ、ロットさん! しっかり!」

ロット「でも、俺は結局……畜生……」

ソピア「……ロットさんも私たちより先に戦ってたんですね、誰かを助けるために」

ロット「……!」

ソピア「私もそうです」

ロット「そうか……ルーちゃんも俺と同じ……」

ソピア「ありがとうございます。ロットさんのおかげで楽に奥まで来れました」

ロット「だったら、俺のしたことも無意味じゃなかったのかもな……」

ロット「それだけでも救いになった。最後にルーちゃんに会えて、俺は幸運だったな」

ソピア「そんな、もうダメみたいなこと言わないでくださいっ……!」

ロット「何泣いてんだよ、ルーちゃん……」

ソピア「だって……!」

ロット「俺と君は、ただの顔見知りだろ……」

ソピア「……」

ロット「ルーちゃん、一つ頼まれてくれないか」

ソピア「……はい、なんですか」

ロット「この指輪を、彼女に届けてほしい」

ロット「本当は……カッコよく助け出して、プロポーズするつもりだったんだ」

ソピア「はい……絶対に届けます」

ロット「俺の名前を出せば、すぐに分かると思う」

ロット「頼んだ……」

ロット「……なあ、ルーちゃん……」

ロット「…………俺は……ヒーローに……」

ロット「……………………」

ソピア「ロットさん……!」


1.遺体を調べる
2.仲間の居場所へ戻る
3.自由安価(アイテムは>>4、魔法は>>8)

ソピア「あっ、フィナの師匠が解毒剤持ってたんじゃ……!」

ソピアは殺し屋『凶爪』の持ち物を調べた。

ソピア「服の下に硬いものがある……」

ソピア「焼き菓子?」

ソピア「……この濃厚過ぎる香りは、洋菓子店『ヘヴンズドア』のクッキー!」

ソピア「銃弾で破れてるけど、この紙は手紙かな」

ソピア「『フィナへ』」

ソピア「…………」

※ヘヴンズクッキーを入手した

『ヘヴンズクッキー』…甘党以外が食べると最悪死に至る絶品スイーツ。銃弾をも弾く硬さを誇るため、食す際は噛まずに舐めて楽しむ。


ソピア「解毒剤は見つからなかった」

ソピア「ロットさん……せめて上着を脱がせて上にかけておこう」

ソピア「……全身傷だらけだ」

ソピア「服の内側にあるのも含めて拳銃を4丁も持ってたんだ。1丁壊れてるけど……」

ソピア「これも、ロットさんが助けたかった人に持っていこう」

※特別仕様拳銃を入手した

『特別仕様拳銃』…ロット愛用の拳銃たち。いずれも銃の国に住む腕利きの職人によるオーダーメイド。

ソピア「……よし」

ソピア「知将は見失ったし、トールくんたちの場所に戻らなきゃ」クルッ

ソピアが振り返ると、中庭の出入り口に佇む漆黒の影――

死神「また会ったな。『神殺』よ」

ソピア(しまった……! 一人の時に……!)

死神「そう身構えるな。俺の目的は貴様ではない……」

ソピア「そ、そうなんですか?」

死神「だが、その前に……」

死神「貴様の持つ、遺品を渡して貰おうか」

ソピア「……えっ、どうして」

死神「説明が必要か? ククッ……」

死神「俺は、死者の痕跡を消し去る死神なのだ……」

ソピア(読心!)

死神(任務に失敗した者はその証拠ごと消す……それが俺の役目)

ソピア「……アサシン協会?」

死神「フッ……流石は英雄と言った所だろうか。隠し事は通用しないようだ」

死神「如何にも、俺はアサシン協会影帽子第三隊、通称イレイザーの一員」

死神「死亡したアサシンの回収および情報操作を通常の任務としている」

ソピア「……ぺらぺら喋っちゃっていいんですか」

死神「『神殺』への情報開示は許可されている」

ソピア「私、ここでアサシンが負けたことを知ってますけど」

死神「構わん。大衆に知らせることができる立場ではないだろう」

死神「さて、貴様には二つの選択肢がある」

死神「貴様が先ほど回収した遺品を明け渡すか……」

死神「俺に抵抗し協会を敵に回すか、だ」

ソピア(私はロットさんの知人とフィナに遺品を届けたい)

ソピア(でも、この状況で敵を増やすのは良くない……)

ソピア(…………)


1.遺品を渡す
2.死神と戦う
3.逃走する

ソピア(アサシン協会の人ってことはたぶん逃げきれないよ)

ソピア(でも遺品は渡したくない。ロットさんの、そしてフィナの師匠の思いを無下にはできない)

ソピア(だから、協会に報告できないようにここで仕留める!)

死神「早くしろ。俺は今すぐに貴様の首をはねることもできるぞ?」

ソピア(共和国軍にも協力してるんだからそうしても良さそうなのに……どうして?)

ソピア(今は考えてもしょうがない。とりあえずチャンスだ)

ソピア(隠れて奇襲されるのが一番怖いけど、目の前にいる。そして私が先手をとれる)

ソピア(できるだけ相手に何もさせずに勝ちたい……!)


※ヒント
 相手は大鎌使いにしてアサシン。読心魔法は問題なく効いた。

↓2 自由安価、>>8の使える魔法を参考に

安価を出しつつ今日はここまで、次はできるだけ早くやります

4か月間待たせた皆さん、本当に申し訳ないです。
少々忙しく時間が取りづらい日々が続いていました。
完結させるため巻きで進めたいと思います。そのため、重要でない安価が減ると思いますがご容赦ください。

ロットさんの死について。
王都テロを放置した時点で死亡フラグが立っていたんですが、3スレ目の1000の願いにより>>359のコンマで10分の1の確率で生き残るようにしました。
意外と惜しかった。

安価なら一レス下

明日投下予定
恐らく監獄編終わりまで

ソピア「……わかりました。遺品を渡します」

死神「賢明な判断だ」

ソピアは拳銃と指輪、クッキーを置いた。

死神「これで全部か、間違いないな」

ソピア(今だ!)

グサ

死神「何をす――」ピタッ

ソピア「……効いた」

ソピア「止まっている人にも攻撃できるのかな」

ソピア「あ、羽根はちゃんと刺さった」

ソピア「光線は当たった場所だけ光ったままになるんだ」

ソピア「周りの空間も止まってるってことなのかな?」



ソピア「前衛的なアート作品みたいになった……あ、そろそろ時間切れ」

死神「ぐほぁあ!!!???」ドサッ

ソピア「やった!」

死神「一瞬で敵に肉薄し首を刈る瞬間殺法を得意とする俺様が……反対に何もできずに倒れる、だと……!?」

ソピア「よかった……動く前に倒せて」

死神「貴様に騎士道の精神はないのか……!」

ソピア「ないです。大体アサシンに言われたくないです」

死神「口を動かすのさえ限界だ……無念……」

ソピア「気を失った……。この人を処理するために別の人がいるってことはないよね……?」

ソピア「フィナとエルミスの方が手強いかも」

ソピア「魔法対策って大切なんだね」


※もしちゃんと戦っていた場合、実体のある分身+高速移動、鎌増殖+鎌投げ、隠密+首狩りを使う強敵でした

ヒレア「ソピアちゃん!」

トール「ここにいたんですね! 心配しましたよ……」

ソピア「みんな!」

アン「あのお婆さんはどうなったんですかぁ?」

マリン「きゃー、死体ー!」

ソピア「あ、実は……」



トール「知将が……そうですか」

ソピア「ロットさんが倒れているのを見つけて見失っちゃった。どうして助けてくれたんだろう……」

イデア「彼は以前騎士団と懇意にしておりました。そのためでしょうか?」

アン「先に兵士を倒してくれていたのはロットさんだったんですねぇ……」

ヒレア「そんな、ニヒルマンが死んだなんて……」

ハルカ「この強そうな刺客は一人で倒したんだ?」

ソピア「うん。魔法で時間を止めたらすごく楽に勝てたよ」

中央収監施設、地下牢。

兵士「な、なんだ貴様らうぎゃっ!」

ソピア「ナイスショット!」

ハルカ「下からも上がってきたからこれで全員かな」

ソピア「戦の笛で防御力を上げてるけど、不意打ちには気を付けて」

ヒレア「このドアね」

イデア「ついにこの時が……!」

ソピア「待ち伏せが怖いからみんな下がってて」

ヒレア「私とソピアが突入するわ。合図したら来て」

トール「はい、気をつけてください」

ガチャッ


↓コンマ奇数…罠 偶数…何事もなく牢へ

ガチャッ

ヒレア「……ふう。特に罠はないみたい」

ソピア「みんな、入っていいよ」

ざわっ

貴族「誰だ?」

貴族「兵士じゃない……?」

騎士「おお、イデア!!」

イデア「お父さん!」

騎士「後ろの彼らは……」

イデア「ご安心を。私の仲間です」

騎士「助かったのか……私たちは」

騎士「皆様、助けが来ましたぞおおお!!」

トール「鍵、ありました!」

ヒレア「増援が来た時のために上で見張ってくる。マリン借りるわ」

ソピア「行ってらっしゃい、お姉様」



貴族「うおおおお! 俺たちは助かったんだあああ!」

貴族「ありがとうございます!!」

貴族「早くッ! 早くアタクシたちをここから出すザマス!」

貴族「こんな遅くまで何をしていたのじゃ! 朕の妻と息子が処刑されてしまったではないか!」

貴族「押さないで! まだ鍵は開いてません!」

イデア「み、皆様、どうかお静かに」

トール「パニックですね……今開けたら飲み込まれますよ」

ソピア「これじゃ話ができない……」

老人「黙れええええい!!!!」

貴族「…………」

騎士「……っ!」ビシッ

老人「……ゴホンゴホン」

側近「ご無理はなさらないでください」

側近「イデア。経緯は不要だ、状況を話せ」

イデア「……はい。牢獄内の兵士の大半は気を失うか死亡しています。しかしここシスヤタ市の基地では王子率いる隊と共和国が戦闘を行っていて……」

ソピア「ねえトールくん……この方は?」

騎士「知らないと申すか!!」

ソピア「あ、す、すいません」

騎士「良いっ! この方こそ、我らが誇るサウソーシャ騎士団前団長」

騎士「長年の間フルフィリア王国を支えてきた王国軍三本柱の一人」

騎士「先の内線ではブラッドレイ中将率いる反乱軍と前線で戦い抜いた王国軍元帥」

騎士「騎士長様であらせられるぞ!!」

騎士長「…………」ボケー

ソピア(話聞いてないように見えるんですけど)

騎士長「……」ボソボソ

側近「はい、はい。……貴族の皆様! お聞きください! 騎士長様のお言葉です!」

側近「安全のため、もうしばらく牢で待機願います!」

わーわー ぶーぶー

側近「処刑される恐れはもうありません! もうしばらくの辛抱です!」

ソピア「あのー」

貴族「なんだ子供!」

ソピア「ロットって人の知り合いを探してるんですけど」

貴族「今それどころじゃないのが分からないのか!」

貴族「危険など知るものか! 助けに来たお前たちと騎士が我々を守ればいい話だろう!」

ソピア(なんて自分本位で向こう見ずな人たち。これじゃすぐ捕まるのも納得だよ)

ソピア(困ったな。ロットさんの恋人もお父様とお母様も見つからない……)


イデア「ソピア様。私たちは攻略班の連絡を待つことになりました」

ソピア「王子様が基地を制圧するのを、ここでですか?」

イデア「はい。奇襲を受ける可能性を考えて、私達はここで護衛に徹します」

ソピア「で、でも攻略班が負けたらとても護衛なんて……」

イデア「私も、騎士団員を連れて増援に向かうつもりでしたが……騎士長様の決定ですから」


側近「そこの少年、鍵を開けなさい」

トール「えっ、で、でも……」

側近「騎士長様のご命令です」

トール「は、はい、今すぐ!」

ガチャッ

騎士長「……」スタスタ

トール「あ、あの、一人でどちらへ……」

側近「王子の元へ向かうとのことです。我々には待機が命じられました」

トール「ちょっ、ええっ!? 危ないですって!」

女性「あら、お一人で行ってしまいました……」

女性「そこのキミ。お名前はなんていうの?」

ソピア「えっ今私もそれどころじゃない」

女性「お返事は?」

ソピア「は、はい! ソピアです」

女性「ソピアちゃん、先生は動けないから代わりにソピアちゃんに頼みます」

先生「さっきのおじいちゃんに、武器を忘れてますよ、って伝えてほしいの。できる?」

ソピア「重大だった!」

トール「ソピアさん、どうしたんですか?」

ソピア「騎士長様へ伝言頼まれたところ。あとこの人になんとなく子供扱いされてる気がする」

先生「え、小学生だよね?」

先生「ソピアちゃんが言うこと聞いてくれないので先生が自分で伝えに行きます。だから鍵を開けて?」

トール「いやダメですよ!? 危ないですから!」

先生「大丈夫大丈夫。ほら、これを見て?」

トール「名刺? ウベローゼン東小学校教諭、○○。で、こっちは、フルフィリア王家は○○氏を英雄『教弾』として、えええ!?」

先生「うふふ。驚いた?」

ソピア「英雄の勲章! あの、もしかしてあなたはロットというガンマンをご存じでは?」

先生「ロット君ならお友達だけど、ソピアちゃんもお知り合いなの?」

ソピア「実は……」



先生「……そっか。ロット君が」

ソピア「ロットさんにはいろいろ助けてもらいました。今日の救出も、兵士の半分を倒したのはロットさんです」

ソピア「最期は、国内最強の殺し屋と、相討ちになって……」

先生「うん。分かった……。じゃあ、この指輪と拳銃、確かに受け取ったからね」

先生「……ここから出して」

トール「で、でも……」

先生「ロット君の、かたき討ち」

トール「英雄の勲章を持つ方が出ます! 邪魔しないでください!」

20分後

貴族「おいまだなのか!?」

トール「まだそこまで経ってないような……」

貴族「黙れ平民! 私たちを閉じ込めるなんて、後で覚えてなさいよ!」

トール「僕が閉じ込めたことになってる……」

イデア「今までここにいた時間に比べればずっと短いはずなのに、何故なのでしょう」

アン「すっごくストレスが溜まってたんでしょうねぇ」

アン「アンたちは兵士と違って殴ったり蹴ったりしないから言いたい放題なんですよぉ」

ソピア「反乱起こされたの、貴族の方が悪い気がしてきた」

トール「実際そうだと思いますよ。共和国軍は基本的にほとんどの町で支持されてますから」

アン「ウベローゼンの貴族はおとなしい上に親切で礼儀正しいですから、他を知らないとびっくりしちゃいますよね」

アン「鉱山の町シスヤタと工業都市モスボラの貴族は大体、自分では働かないくせに偉ぶってますぅ」

アン「学園都市スクーニミーと商業都市ファナゼの貴族は頭いいんですけどプライドも一層高いんですよぉ」

アン「王都ティルベルクとリゾートの町プエルトマリハラの貴族は何も考えてません。話しやすいけどお馬鹿さんなんです」

イデア「あまりそんなことを言うものでは……」

ソピア「でも王宮に仕えてたアンが言うと説得力あるね……」

トール「サウソーシャ騎士団領と貴族の町ウベローゼンだけ評価高いんですね。……本当は?」

アン「ウベローゼンの貴族は平和ボケで騙されやすい。サウソーシャの貴族は頑固でつまらない、ですぅ」

アン「はっ!? 何言わせるんですかぁ!?」

イデア「固い……ですか」

ソピア「……ちょろいよりマシだと思います」

ズシンッ!!

ソピア「な、なに……?」

イデア「揺れましたね……外ですか?」

トール「外は……ヒレアさんたちが! 急ぎましょう!」

ガチャン

ハルカ「はあ、はあ……大変!!」

トール「増援ですか!?」

ハルカ「うん……2人だけ……だけど……」

ソピア「でもお姉様とマリンなら……」

ハルカ「魔導長と英雄が来たの!!」

続きは明日、安価は最低でも一か所はあるのでよろしくお願いします

今夜投下するつもりでしたが時間がなかったため火曜夜に始めます、すいません

間に合わなかった……2日間忙しいので金曜日に、遅くても土曜日には……!

続きを書きたい…けれども書く時間が取れないんです
一応保守
諦めたら依頼出して終わりにします

保守
2月下旬には続きを書きます
読者ほぼいなくなったと思うので大きな分岐点までしばらく安価がなくなると思います

生きてます。お待たせしてます。16日か17日に監獄編の続きを投下します。
4月から引っ越して環境が変わるため、もしかしたら完全終了の可能性もありますが、逆にどんどん進められるようになるかもしれません。

引っ越し準備で忙しくこのままだと更新が1週間以上後になりそうなのでコンマ判定の所まで投下します

数分前……

ハルカ「ヒレアさん、2人だけで行かせてよかったと思う?」

ヒレア「大丈夫よ。騎士長って人、あの教官長と同じ位にいた人なんでしょ?」

ヒレア「第一、王子様とレオナールたちで十分勝てると思うわ。ほとんどの強者はこちらに集中していたんだから」

ヒレア「それよりも、近づいてくる敵はいない?」

ハルカ「うん……。動くものは見えないね」

マリン「モンスターの気配はないわー♪」

ヒレア「そう。何かいる気がしたらすぐに言ってね。霧を出すから」

マリン「……ヒレア、霧!! おかしいわー!」

ヒレア「わかった! で、でも何が」シュウウ

マリン「町にいた気配も全部消えてるのー!」

ハルカ「騒ぎになってるからみんな避難したとか……」

バヂィッ!!

魔導長「ほほう。お見事」

拳魔「姿を消していたのによく気づきましたね」

ハルカ「ち、近いっ……!」

魔導長「お嬢ちゃん、霧は消しなさい。わしの雷の盾は破れんよ」

ヒレア「……何の用? 牢獄はご覧の通り、制圧したわ」

拳魔「だからこそですよ。自分は記者である前に一フルフィリア国民ですから」

拳魔「英雄の勲章を賜っておきながら、有事の際に動かないわけには参りませんからね」

魔法兵「魔導長様! 住民の避難が完了しました。戦闘許可も下りています! ここは私が!」

魔導長「待ちなさい。キミに勝ち目はないよ。わしに任せて先に戻っていなさい」

魔法兵「ですが……!」

魔導長「邪魔になるんじゃよ。ほら、帰った帰った」

魔導長「一応聞くが……どいてくれる気はないかい?」

マリン「ないわー!」

ハルカ「ソピアさんに手は出させない」

魔導長「……先に手を出したのはキミたちじゃろうに」

魔導長「軍を欺き、強者たちを殺めた罪、たとえ神が許してもわしが許さんよ」バチチチッ!

ハルカ「……っ!」

ヒレア「ひるまないで。このおじいさんは電気しか使えない。私たちなら十分勝てるわ」

マリン「恐いならソフィーを呼んできてー」

ハルカ「わかった」ダッ

魔導長「ほうほう、舐められたものじゃのう」

拳魔「普段まったく戦わないからですよ」

拳魔「さて、魔導長への密着取材と参りたいところですが、お一人での相手はお辛いでしょう」

拳魔「僭越ながら、こちらの妖精の相手は自分が引き受けます」

マリン「ワタシをただの妖精だと思ってるのかしらー?」ギュギュギュ

拳魔「人型に変化……いや、これは!」

拳魔「いやはや、これは衝撃の事実です! まさかラヌーンの海神がまだ生きていたとは!!」

拳魔「そして英雄『神殺』の使い魔に堕ちていたとは!!」

拳魔「なんて、まあ知ってましたがね」

ドゴォンッ!!

ヒレア「いきなり雷撃なんてひどい」

ヒレア(フュネッサの亡霊を一撃で戦闘不能に追い込んだ雷撃……でも私には効かないわ)

ヒレア(人はいないけど家畜・庭木・虫から少しずつ生命力を分けてもらえば十分回復できる)

魔導長「ひどいのはキミたちじゃよ」

魔導長「わしはな……珍しく怒っているんじゃ」

ヒレア「……あなたは話が分かる人だと思ってた。もう一度、ソピアと話をしてくれない?」

魔導長「断る」

魔導長「わしがキミを許したのは勇敢な若者の善意あってこそ……」

魔導長「だが、ソピア・ウィンベルは共和国に反旗を翻すために吸血鬼の力を手駒として利用した!」

ヒレア「違う!」

魔導長「違うものか!」

魔導長「キミは、善良な市民が、反乱に参加しこれだけの兵士を倒すというのじゃな!?」

ヒレア「他に……方法はないじゃない」

ヒレア「自分の家族が死ぬっていうのに、黙って見てるなんてできるわけない!」

魔導長「……そうか」

魔導長「じゃが、わしにも軍人としての責任がある」

魔導長「監獄を襲った暴徒の鎮圧、そして討ち損ねた吸血鬼の殲滅じゃ」

魔導長「悪く思うな、セイッ!!」ドン

ヒレア「っ!? 飛ばされ……!」

ドン ドドン

魔導長「英雄の青年が近くにいては困るからのう」シュン

ヒレア(私の手前に連続で雷を落として弾き飛ばすなんて……器用な使い方もできるのね)

ヒレア(しかももう追い付いてきた……)

魔導長「放電照射!」バリバリ

ヒレア「くっ!」バシュッ

ヒレア(魔導長さんにも恩義はあるけど、今はもう私達の敵。本気で私を殺そうとしてる!)

ヒレア(やるしかないわ……!)

ヒレアは上空から魔導長の首に狙いをつけ、短剣を構えて急降下した。

ヒレア「!」ギュン

魔導長「こっちじゃ」ヒラリ

ヒレア「嘘……!?」

魔導長「わしは雷の速度で動くことができる。何度やっても無駄じゃよ」

ヒレア「どうかしら!」クイッ

バヂィッ!

ヒレア「霧の刃まで……!」

魔導長「無駄じゃと言ったぞ。わしの全身を覆う雷の壁は全ての魔法と飛び道具を瞬時に分解する」バチバチ

魔導長「こうして話している間にもキミは雷で焼かれ続ける。さあ、どうする?」バチバチ

ヒレア「たぁぁ!」ギュン

魔導長「ほい、ほいっと」ヒラヒラ

魔導長「いつか魔力が切れると思ったか。根競べじゃな!」

ヒレア(この人は危険すぎる!)

ヒレア(監獄からできるだけ離さなきゃ……!)

ヒレア「はぁ、はぁ……」ギュン ギュン

魔導長「……そろそろ良いな」

ヒレア「なにが」

魔導長「奥義『雷獄』!」パチッ

カッ

ヒレア(意識が飛んだ……)

ヒレア「……けほっ、さ、再生……できない?」

ヒレア「うっ、森がずっと向こうまでなくなってる……」

ヒレア「草も、虫も、残ってないの……?」

魔導長「大した生命力じゃな」

ヒレア「!」ビクッ

魔導長「あの日、わしがウベローゼンで吸血鬼退治を若い子たちに任せた理由がわかったかい?」

魔導長「……もし全力で戦えば、市民は全滅、町一つが地図から消えてしまうんじゃよ」

魔導長「町は避けたが森をこれだけ焼き払ってしまった。加減が効かんでのう」

ヒレア「不便、ね……」

魔導長「全くじゃ。おかげで守るべきものが多くなるにつれて戦う事ができなくなってしまった」

魔導長「キミは敵だが、一つお礼を言わせてもらおう。久しぶりに全力で力を解放できて楽しかったよ」

ヒレア「……」

魔導長「人の心を持つ相手で気分は悪いが、捕縛できぬ怪物は殲滅するしかあるまい」

魔導長「暴れると余計長引くよ」バリッ

ヒレア「い、いや……! やめて!」

魔導長「死の恐怖で失禁してしまったか。むう、やはり心苦しいのう」

魔導長「電熱分解」バチバチ ヂィィィ

ヒレア(あ、熱い……!)

魔導長「欠片も残さず蒸発しなさい」

一方、妖精マリンと英雄『拳魔』は無人の町で戦闘を開始していた。

マリン「ソフィーのためなら容赦しないわー!」ムクムク

拳魔「まあ使い魔ですからねぇ」

拳魔「ほう、人型からさらに変形を……これが海神の真の姿ですか?」

マリン「教えナイ……」キュイイン

拳魔「答えて頂かないと取材になりませんよ、ってチャージだ危ない」バッ

マリン「逃がさナイ……」ザアア

町中の水が集まりマリンと拳魔を覆うドームになる。

拳魔「これは素晴らしい! そして美しい!」

拳魔「いやあ、実演ありがとうございます! 水と月光さえあれば海の魔法は使えるんですね!」

マリン「黙レ……」ゴウ

パァン

拳魔「なるほど、この威力は自分には真似できません」

マリン「マネ……?」

拳魔「はい。では取材は終わりです。お疲れさまでした」

拳魔「後は……その身に叩き込んであげましょう。フルフィリアには存在しない、最強の武と魔を!」

拳魔「グラヴィティ……」グググ

マリン「動きガ……」

拳魔「破魔掌!」パキィン

マリン「……!!」ボロボロ

圧倒的な量の精霊の塊である海神に物理的な攻撃を行うと、触れた側が消滅してしまう。

だが、拳魔の放った正拳突きは、海神の身を、そして攻撃用の円盤を抉り破壊していた。

マリン「この技、どこかデ……」

拳魔「破魔連打!」ドドド

マリン(よ、避けないとー!)

拳魔「追いかけっこは嫌いなんですよ!」ググググッ

マリン(動けないならもう迎え撃つしかないわー!)

マリン「全て、壊れロ……」ドッ ゴオオ ダン

大量の塩の塊、青い暴風、深海の色をした魔弾が乱射される。

一つ受けるだけでも致命の攻撃が、海神の正面を隙間なく埋め尽くした。

拳魔「おお怖い、だけど町を守るのも英雄の務めです」

拳魔「反射気功壁!」

全ての攻撃が斜め上へ跳ね返され、上空で消え失せた。

マリン「その技、スパイ達ノ……」

拳魔「気付きましたか」

拳魔「お察しの通り、ジャルバ王国の武術と魔導帝国ノーディスの重力魔術ですよ」

拳魔「正式に教わったわけではありませんがね。ジョーさんとマトイさんを取材した際に、いただきました」

拳魔「組み合わせればこれほど強力だというのに、対立している二国は実に勿体ない事をしています」

マリン「ラヌーンの民の、仇……」ゴゴゴ

マリン(ちょっとー! ワタシがリーダーよー!)

島の妖精(こいつは許せないねー)

マリン(この人がラヌーンを滅ぼしたわけじゃないわー!)

島の妖精(ごめんねー。こいつを倒せるならその二国にも勝ったようなものだからねー)

マリン「貴様を滅ぼス……」

拳魔「祖国への情が残っていましたか」

拳魔「分かりました。では僭越ながら……」

拳魔「自分はただの記者ですが、フルフィリアとジャルバとノーディスを代表して、ラヌーン国の残滓に終止符を打ってさしあげましょう!」バッ

それは一方的な戦闘であった。

どれほど強力な攻撃を放とうとすべて返され、回避も防御もできない攻撃が海神を少しずつ削っていった。

拳魔「メテオ空芯打!!」ゴゥゥゥ

ズシンッ!!

そしてついに、高く跳び上がり勢いを付けた拳魔の一撃が体の中心を貫通し、主導権を奪っていた島の妖精の意識が途絶えた。

マリン「無念……」

拳魔「いやあ手強かったです。反射をミスしていれば負けていました」

拳魔「おや?」

ハルカ「こっち!」

トール「ひ、ひどいクレーターです……」

ソピア「マリン!?」

拳魔「英雄『神殺』と仲間たち……」

拳魔「残念でしたね。貴女の強さの源である使い魔はもう倒しました」

ソピア「トールくんとハルカさんは地下に戻ってて。ここは私が何とかする」

マリン「そ、ソフィー! ダメ、逃げてー!」

拳魔「まだ動けるんですか、化け物め!」

拳魔「はああああ……」コォォ

マリン「うっ……」ズシン

拳魔「破魔重圧連打!!」

ソピア「マリィィィィィン!!!!」


↓1 ヒレア、コンマ末尾0以外でセーフ
↓2 マリン、コンマ末尾0以外でセーフ

魔導長「ん?」

魔導長「『雷獄』で焼けた範囲に誰か入ってきおった」

シュッ

レン「うわぁ!」

魔導長「ここは危ないから引き返しなさ……うん? キミはわしの孤児院の子じゃないか」

レン「ま、魔導長さん……こんな森で何をしているんですか?」

魔導長「それはわしが聞きたいのじゃが……」

レン「誰かいる!」ダッ

魔導長「あ、こら、待ちなさい!」

レン「ひ、ヒレア!?」

ヒレア「レン……?」

レン「誰にやられたんだ! まさか……」

ヒレア「……」コクリ

レン「そ、そんな……!」

魔導長「キミ、危ないからそこをどきなさい」

レン「……嫌です」

魔導長「キミも襲われたんじゃろう。第一、キミは彼女を嫌っておったろう」

魔導長「助ける義理があるのかい?」

レン「仲直りしたんだ。ソフィアさんのおかげで、ヒレアはもう大丈夫だ」

レン「今のヒレアは悪い子じゃない! だからおれは助ける!」

魔導長「だが、監獄を襲撃し、多くの兵士に被害が出たのじゃぞ。死人も出ておる」

レン「そ、それは……何か考えがあるんだと思う」

魔導長「教えてあげよう。ソフィアさんの正体は逃亡貴族。監獄に囚われた貴族を助けるために彼女はこの子を利用したんじゃよ」

レン「……分かんないよ」

魔導長「ふむ」

レン「分かんないから、おれは分かるまでここをどかない!」

魔導長「そう来たか……」

魔導長「しかし、どかないのならキミを巻き込む事になるが……それでいいのかね?」

レン「っ!?」

レン「ヒレアに手は出させないからな」

魔導長「どきなさい」バチッ

レン「どくもんか!」

魔導長「言う事を聞きなさい!」バチバチ

レン「魔導長さんこそ、やめろよ!」

魔導長「邪魔だと言ってるのが分からんか小僧ッ!!!!」ヂヂッ バリバリ

ドォン!

魔導長「ふぅ…………」ヂヂッ

ヒレア「……?」

レン「ま、守れた……」

魔導長とレンの間には棺桶型の防御魔法、黒魔盾が出現していた。

白魔術による攻撃を除き、正面で受けさえすればあらゆるものを閉じ込める事のできる、攻防一体の万能魔法だ。

レン「やったぞ! おれの魔法が通じた!」

ヒレア「まだよ!」

魔導長「……」バチッ ヂヂッ

魔導長「帰る。次の機会にしよう」

レン「えっ」

魔導長「こんな精神状態で……取り返しのつかないミスをしてからじゃ遅いからのう」パリリ

魔導長「電気が漏れ出てるようでは、わしもまだまだじゃな……」スタスタ

ヒレア「……」

レン「……行っちゃったな」

ヒレア「レン……ありがとう」

レン「あ、ああ! こっちこそありがとう!」

ヒレア「何が?」

レン「いや、なんでもなかった。今のはおれがおかしいな」

レン「なんか、興奮してんだ。勝てたし! それに、こわかったし……」

ヒレア「恐かったね……」

レン「あの、さ。おれ、ソフィアさんに重要な話が合って急いできたんだけど」

ヒレア「そういえば、ウベローゼンで違法ハーブを配ってる組織に殴り込むって言ってたわね」

レン「うん。でも直前で事件が起きて……案内してもらえるか?」

ヒレア「ええ。私も、ソフィアを迎えに行かないと」スクッ

レン「って、うわっ、ヒレアもらしてる! ばっちぃ!」

ヒレア「バカっ!」

ソピア「マリィィィィィン!!!!」

拳魔「うおおおお、おわあっ!?」ダダダダ スポッ

トール「敵が……消えましたね」

ハルカ「落とし穴でもあったのかな……」

拳魔「っと」ピョン

拳魔「誰ですか、こんな物掘ったのは!」

龍殺「私だよ~」

ソピア「『龍殺』さん!」

ハルカ「知り合い?」

ソピア「私と同じくらいの年の普通の子に見えるけど、ああ見えて英雄の勲章を授与されてる子」

ソピア「本当なら共和国軍の六勇が対処しないといけないような古の神竜を一人で倒したって言われてる」

龍殺「拳魔さん、何してるのかな~?」

拳魔「ああ、神殺さんことソピアさんが反乱を起こしたので、戦闘中なんですよ」

龍殺「じゃあこれなあに~?」

拳魔「これは失敬。さっきの攻撃で町を壊してしまいましたか。ただ悪いのはそこの青く発光してる妖精で」

龍殺「パンケーキのおばちゃんのお店~」

拳魔「はい?」

龍殺「ここの美味しかったのにな~」

拳魔「は、はあ」

龍殺「おばちゃん怒るだろうな~」

拳魔「後日、謝罪に伺いましょう」

龍殺「私も怒ってるよ~!」

拳魔「それは申し訳ない」

龍殺「問答無用の~、ドラゴ~ン、パ~ンチ」

拳魔「あはは、そんなゆっくりパンチぐおわあ!?」ドォォン

トール「当たってないのに吹っ飛びましたよ……」

ソピア「古の神竜は死んでなくて自分の中にいるって言ってた」

ハルカ「ってことはあの子のパワーは……」

龍殺「ドラゴ~ン、しんこきゅう~」ボォォォ

拳魔「この炎の勢い! さては彼女も古の神竜を殺さずに味方につけましたか!」

拳魔「ストップ! 話し合いましょう!」

拳魔「大人にはパンケーキよりも大事なものがあるんです!」

龍殺「う~ん、でも私は、牢屋に閉じ込められた人を助けに来た人を止めるのは大事じゃないと思うな~」

拳魔「あ、そこは忘れてなかったんですね」

拳魔「貴女、まさか貴族の味方をするつもりですか?」

龍殺「ううん~。私は正しい方の味方~。みんなが笑ってる方がいいよね~」

拳魔「まだ貴女は小さいので知らないかもしれませんが、貴族はみんなの幸せを奪っていたんですよ」

龍殺「でも誰も死なないのが一番しあわせだよ~?」

拳魔「はあ……子供特有の夢物語ですねぇ」

拳魔「いいですか。貴族を外に出すと」

龍殺「あなたも誰も殺さずに国を侵略から守ったんでしょ~?」

拳魔「いや、最後まで聞いて下さいよ」

龍殺「あのね~、夢は力で叶えるものだって、ドラゴンが教えてくれた~」

拳魔「まあ、ある意味そうですが」

龍殺「みんなをしあわせにするために~、あなたを力ずくで倒すよ?」

龍殺「ドラゴ~ン、じだんだ!」ドゴゴゴゴ

拳魔「それ、自分が幸せになってませんが!?」

拳魔「ちょっと! パンケーキ店以外の建物も壊れてますから! 地震を止めてください!」

拳魔「瓦礫がこちらに……まさか!」ズシン

龍殺「ドラゴンのおふとん~」

龍殺「神殺ちゃん~、拳魔さんを地中に封印したよ~!」

ソピア「めちゃくちゃだ……」

龍殺「牢屋の中は揺れてないから安心してね~」

ソピア「あ、ありがとうございます……」

マリン「……」ガタガタ

ソピア「マリン、もう大丈夫だよ。なんで震えてるの?」

マリン「危険極まりないモンスターの片方、起きてるわー……」

ソピア「あ、軍の飛行要塞で言ってたね。古の神竜の事だったんだ」

マリン「プレッシャーで消滅しそうー……」

龍殺「ん~?」

拳魔「噴射破魔掌!」ドォン!

ソピア「あっ、封印が……」

拳魔「はあ……こんなに苦戦したのは初めてかもしれません」

龍殺「まだやる~?」スッ

拳魔「武器になりそうにない小さなスコップで一体何をするつもりですか」

龍殺「うふふ~」(掘るジェスチャー)

拳魔「……降参です。ここで諦めても貴女に足止めされても結果は変わらないでしょう」

龍殺「己の実力を信じずしてそれでも男か~! byドラゴン」

拳魔「自分は戦士ではないので、貴女から得られる技もないなら諦めますよ」

拳魔「ソピア・ウィンベルさん……貴女が新聞の一面を飾るのを楽しみにしていますよ」

ソピア「……共和国新聞でなく王国新聞の第一号を飾りますからね」

拳魔「それもそれで面白そうですね、では」スタスタ

ボコッ

龍殺「逃がさないよ~」

拳魔「痛っ!? いきなり地面から飛び出ないでくれませんかねぇ!?」

龍殺「このまま逃がしたら後でまた邪魔しに行くでしょ~」

拳魔「そんなまさか」

龍殺「事件が終わるまで私と遊んでてね~」

拳魔「……は?」

龍殺「私がどうやってドラゴンさんを倒したか話してあげるから~」

拳魔「……もう一声」

龍殺「ドラゴンさんの恥ずかしい秘密暴露しちゃう~」

マリン「キャアアアーッ!!」

龍殺「ドラゴンさんが、海神さんも恐れおののく程の圧力を出してるから、ホントに知られたくない話だよ~」

拳魔「聞かせていただきましょう」

龍殺「神殺ちゃん、がんばってね~。ばいば~い」

ソピア「うん、バイバイ……」

ハルカ「あの子、絶対ドラゴンいなくても曲者だよ」

トール「同感です」

ソピア「一緒に来てもらえば六勇の誰か一人くらい倒せたかも……」

地味に6スレ目>>995を回収
今後、ごく一部除き基本的に安価無しで書きます
ここからはもはや自己満足、期待せずにどうぞ

ヒレア「うう……」

ソピア「お姉ちゃん! よかった……!」

ヒレア「そっちも何とかなったみたいね……」

マリン「危なかったわー」

レン「あれ、ヒレアに妹なんていたのか?」

ヒレア「ソピアよ、この子」

レン「ソフィアさんはお姉さんだったはずだろ?」

レン「って、ここ、監獄じゃないか! どうしてここに? ここで何があったんだ? なんで小さくなっているんだ?」

ソピア「レンくんが全く話について来れてない!」

ヒレア「ここまで置いてけぼりだとどこから話していいかも分からない……」

レン「な、なんだよ。おれはのけ者にされてたのか!?」

アン「だいじょーぶ、あなたは間違ってませんよぉ」

アン「2日会わないとその間にとんでもないことになってるのがお嬢様なんですぅ」

ソピア「全く否定できない……」

三行で分かるかもしれないあらすじ
・王政崩壊によって世間知らずの女の子ソピアは命を狙われる身になってしまった
・色々あった末にロリババア(呪いが解けると老婆になる幼女)になりさらに人間をやめた
・共和国軍との戦いが始まり、両親を含む貴族を監獄から助けたところ


レン「なにがなんだかわからない。特に真ん中」

ハルカ「キミは正常だよ」

レン「ラファたちになんて説明すればいいんだ……」

ヒレア「どう説明してもレンの下手な冗談だと思われるに違いないわ」

ソピア「冗談みたいな人でごめんなさい……」

トール「まだ、ソピアさんの素性を知らない人もいたんですね」

ソピア「クルトさんたちにもまだ教えてないよ」

トール「大丈夫でしょうか……? 彼らは共和制への移行を歓迎していたはずですが……」

ソピア「私、二人は敵にならないって信じてるよ」

マリン「あの程度の実力の魔術師なんて、今のソフィーの敵じゃないわー」

ソピア「そういうことじゃないよ……」

ソピア「たしかに共和制には賛成だって言ってたけど、今の軍のやり方は気に入らないとも言ってたもん」

レン「うん。おれにも、軍の悪事を許さないって言ってた」

ソピア「あれ? レンくんはどうしてここに? クルトさんたちと一緒にいたんじゃ……」

ヒレア「ウベローゼンで何か事件が起きたって言ってたわ」

レン「そうだ! おれはそれを伝えるために走って来たんだ」

ソピア「どうしたの?」

レン「クルトさんがいなくなった!」

レン「今日の昼から薬物をばらまいてる奴らのアジトを叩くって言ってたのに……」

レン「妹のミルズさんにも何も言わずに消えてしまったんだよ!」


ソピア(クルトさんは心を読んだ時に、自分は嘘をついていると言っていた……。まさか?)

マリン「裏切ったのねー」

トール「それよりも……勘づかれて敵に捕まった可能性の方が高いと思います」

ハルカ「拷問されてたら他の仲間も危ない。作戦はやめて逃げた方が……」

レン「とんでもない! このままだとおれたちの町のみんなが中毒者にされてしまう!」

ソピア「じゃあ、作戦は実行するの?」

レン「そのつもり。だからミルズさんに頼まれたんだ」

レン「ソフィアには頼らないって言ってたけど、状況が悪化したから協力してくれないか、って」

レン「だから明日の朝、ウベローゼンに来て欲しいん……だけど……」

イデア「不可です。恥を知りなさい」

ソピア「イデアさん!?」

イデア「黙って聞いていましたが……貴方も私達の状況は理解しているはず」

イデア「国家の未来と我々の命を賭けた戦いの最中、町一つの危機を救っている暇などないのです!」

ソピア「……そこまで言わなくても」

イデア「いいえ。ソピア様には助けに向かうという選択肢が芽生えていた」

イデア「そのような顔をされていました」

ソピア「……」

イデア「我々の目的は国の奪還です」

イデア「すでに共和国軍へ宣戦した以上、引き返すことはできません」

ソピア「そう、ですね……」

ソピア(故郷がピンチだけど、私も今が正念場)

ソピア(まだ助けたお父様の顔も見てない。今の私にミルズお姉ちゃん達を助ける余裕はない……)

ヒレア「そういうわけで、ごめんなさい。レン」

ヒレア「それどころじゃないの」

レン「わかった……」

怪鳥「クエエーッ!」バサバサ

レン「も、モンスター!」

イデア「いえ、これはレオナール様のお仲間の不死鳥です」

ハルカ「あ、手紙を持ってる」

トール「どうやら、向こうも片付いたようですね」

数刻前……共和国軍駐屯地前。


フォレストウルフ「グルル……」

ポイズントード「ゲコロロロ」

ヒートキラービー「……」ブゥウウン

レオナール「紹介しよう。我輩の仲間たちである」

レオナール・グザヴィエ。

かつてはアウトドア趣味の男爵であったが、革命後、森林の中で生きている内にモンスターと心を通わせるようになった男だ。

彼の呼びかけに応じて、ありえない程の数のモンスターが鉱山の町シスヤタの市街に集っていた。


ウィア「壮観だな。町の警備隊は何やってるんだか」

マッド「皆、駐屯地か監獄の警備のために召集されたのでしょう……」

掃神「…………」ウズウズ

猫姫「この子たちは掃除しちゃダメにゃ」

ウィアことウィルアック・ヨークフィールドは顔の広さと親友であるマッドの能力を活かして逃げ延びてきた。

道化師の姿をした執事マッドはパフォーマーとしての経験により、気配の強さを自在に操る事ができるのだ。

共和国軍から強者の勲章を与えられた『掃神』『猫姫』の二人もウィアに協力していた。


兵士「モンスターの群れだ! 応戦しろ!」

ミハイ「ふむ、兵士が出てきたな」

フルフィリア王家最後の一人、ミハイ・オフィリアス・ド・フルフィリア5世。

優れた知性とコレクションしていた不思議な道具の数々で、軍の追っ手から逃れてきた。

ミハイ「さあ、時は来た。進軍しよう」

数十分後。

スナイパーセイウチ「タウ!」ダン

兵士「ぐああああっ!」

ジャイアントラビット「ウサァ!」ブンッ

兵士「クソ、キリがない!」

かつてない規模のモンスターの群れに共和国軍兵士は苦戦を強いられていた。

そもそも、軍人の仮想敵は人間である。

特に対人格闘術の類はモンスター相手にはまるで通用しなかった。

上級魔法兵「助太刀致します!」

兵士「おお! 魔導長直属の……助かる!」

上級魔法兵「強いエネルギーを秘めた結晶です。爆発するので近づかないように!」

ドォン ドォンドォン


レオナール「ぬう……仲間達が次々と……!」

ウィア「そろそろ俺達の出番かい?」

ミハイ「ああ。頼むよ」

ミハイ「強者の勲章を持つ敵には気を付けたまえ」


掃神「…………掃技、バイオレンスワイパー」

ガガガガガガッ!!

兵士「な、なんだ!? ぎゃあッ!!」

上級魔法兵「強者、掃神……! うぐっ!」

掃神はその名の通り、掃除界の神、最強の清掃員と称されている。

社会の最下層に属しながらも百の兵士に相当する実力を備える彼の仕事場は、危険なモンスターが跋扈する下水道だ。

広範囲を薙ぎ払う彼のモップ捌きは、血や毒液、トラップの類の一つも残さない。

兵士「矢の雨も一瞬で掃除されちまう! 一体どうすりゃいいんだ……」

兵士「不味いぞ、爆発する結晶が取り除かれた!」

猫姫「出番にゃよー! みゃーの娘たち」ババッ

フィギュア「ニャー!」

マグネット「ニャー!」

キーホルダー「ニャー!」

兵士「おい、何か来るぞ!」

猫姫「カバンを叩くとねこが二倍、も一つ叩くとねこが四倍♪」

カフェ:ねこまみれ店主である猫姫のもう一つの顔が芸術家である。

彼女の作るねこ型の小物は魂を持っており、持ち主の呼びかけに応じて動く事で人気だ。

特に、製作者本人が使役した場合、ねこ達は完全に破壊されるまで止まらない無敵の兵隊と化すのだ。

マグネット「フシャー!」ザクッ

兵士「ちぃっ! 治療頼む!」

兵士「視界一面ネコしか見えねぇ」

兵士「おい、防衛線突破されるぞ!」

上級魔法兵「本体を叩く!」ゴゥ

猫姫「ねこシールドだにゃ」

刺繍「ニャフ」パクッ

ロリータ服のスカート部分に施されたネコの刺繍が火炎弾を食べて、満足そうに微笑んだ。


ダダダンッ!

ジャイアントラビット「ギャウ」ドサッ

掃神「……かはッ!」ガク

レオナール「ぐおおっ……腕をやられた!」

ミハイ「狙撃だ! 皆、伏せたまえ!」

ウィア「義銃がいたか……」

憲兵隊所属の強者『義銃』は、市民を守る事に対する強い責任感と熱い心で知られるスナイパーだ。

狙撃でありながら複数の対象へ連射を行い、しかもその銃撃を99%外さない腕を持つが……

一方で、同時に100人の兵士を相手取る百兵の試練では、狙撃銃を使わずに根性で何度でも立ち上がり拳で全員を倒す体力を見せつけた。


ミハイ「レオナール君、大丈夫かい」

レオナール「我輩は問題ない。だがこのままでは、仲間が全滅してしまうのである!」

発砲音は絶える事なく続き、次々とモンスター達が倒されていた。

ウィア「待った。音がしないか?」

ギュオオオオ ドン! バゴン!

珍走「オラオラオラァァァ! ワイ様のお通りでァァァいッ!」ギコギコギコ

破壊音の中心に、三輪車を漕ぐ男がいた。

裏の世界で用心棒をしていた彼は、圧倒的な脚力でペダルを回すため、二輪車ではバランスを崩し派手に転んでしまうのだ。

なお、本人はカッコいいと思っている。

義銃「珍走殿! いたずらに建物を壊してはなりません!」

珍走「その名前で呼ぶなやァ! ワイは珍奇じゃないっちゅうねん!」ギコギコギコ ドゴォン

珍走「これがワイの戦いのスタイルや! 文句は受け付けへんでぇ、王都のおまわりさんよォ!」ギコギコギコ

義銃「本官は……基地の防衛のために、悪を野放しにしなければいけないのでありますか……ッ!」

義銃「目の前で、罪なき市民の帰るべき家が破壊されていると言うのに! うおおおおん!」

珍走「泣いてへんで撃てやコラァ! ワイ一人じゃ捌き切れへんで!」ドン バゴォン

三輪車に接触したモンスターが宙を舞う。

しかし、猛進する三輪車は反動を感じさせずに暴走り続ける。

キーホルダー「フニャ」バゴン

フィギュア「ニャブグ」グシャ

猫姫「にゃああ! みゃーの娘たちがぁ……」

ミハイ「危険だ。皆、僕に繋がれ」パシッ

フッ

珍走「何や!? 連中が目の前で消え失せたで……?」

義銃「うおおおお!」ダダダダダンッ!

上級魔法兵「先にモンスターを片付けてください!」


ウィア「これが、例の『世界の裏側』か」

ミハイ「いかにも。静かなものだろう?」

ウィア「音もなく建物が破壊されてるってことは、外ではまだ三輪車が暴れてるって事だな」

レオナール「我輩の仲間が……!」

猫姫「みゃーの娘もほとんど残ってないにゃー……」

ミハイ「しかし、今全滅するわけにはいくまいよ」

掃神「…………何か策が?」

ミハイ「残念ながら、無策だ」

ウィア「おいマジかよ」

ミハイ「幸い、10分はこちらにいられる。今のうちに体勢を整え、有利な位置で戦闘を再開しよう」

義銃「一段落ついたであります」

珍走「アホ。人っこ一人倒してへんやないか」

珍走「まさか自分、人を撃つ覚悟がないねんか?」

義銃「失礼な! 本官はいつでも全力で……」

「イヨォォォォオオオオ!!」

パカラッ パカラッ

珍走「馬かいな?」

義銃「いえ、あの方は……!」

騎士長「わぁれこそはぁ!! サウソーシャ騎士団長であぁぁぁるっ!!」

珍走「嘘やろ!? あのジジイは監獄に囚われてたやないか!」

義銃「監獄が破られたのでしょう! くううッ!」

珍走「ええわ! ワイが討ち取ったる!」ギコギコギコ

義銃「む、無茶であります!」

「君の相手は先生です」

義銃「何者!」ジャキッ

先生「お久しぶりですねおまわりさん。春の防犯指導教室ぶりですよね」

義銃「貴女は、元・英雄『教弾』……! いつ、本官の背後へ……!」

先生「銃撃無しのガンカタ……つまり格闘で突破してきました」

先生「こんな夜更けに発砲なんてしたら、子供たちが起きちゃうでしょう?」

義銃「配慮には及びません。付近の住民は避難済みであります!」

先生「では、撃っていいという事ですか」チャッ

義銃「……!」ゾクッ

義銃「戦っていいのでありますか! 貴女は、生徒を人質に取られていたはず!」

先生「おまわりさんのそんな言葉を聞いたら皆、悲しむでしょうね……」

先生「私はこの戦いで大切な人を失いました」

先生「私は、彼のために……生きるために戦います」

義銃「くっ…………いいえ! どんな理由があろうと、本官は正義のために貴方を逮捕するであります!」

義銃「覚悟ッ!」バッ

先生「……リミッター解除!」ギュン

元王国軍元帥である騎士長の力は、馬の潜在能力を限界に引き出すという物であった。

馬の範疇を超えた馬、そのいななきは悪魔さえも震え上がらせ、その突進は大型モンスターでさえ地の果てに吹き飛ばす。

騎士長「若造が! 我に勝とうなぞ60年早いわぁぁ!!」

珍走「アカン……ただの馬が化け物になっとる……」


義銃「これが英雄と強者の格の違いでありますか……!」

ウベローゼン東小学校の先生『教弾』は義銃をも上回る対人不殺主義者である。

彼女は、とうとう一度も発砲することなく共和国軍の軍勢を蹴散らしてしまった。

先生「大事な形見の銃は、汚したくありませんからね」


こうして、脱獄者二人の活躍により攻略班も大きな被害を出さずに駐屯地の奪取に成功した。

戦いを終えた王子と4人の貴族は、仲間達に警備と後始末を任せ、シスヤタ駐屯地の会議室に集まっていた。

ミハイ「一人も欠ける事無く再会できた。大変喜ばしい事だね」

ウィア「ひとまず、お疲れ様だな」

ミハイ「助けた貴族は騎士の者達に誘導させているよ」

ミハイ「兵舎も決して広くはないが、監獄よりは過ごしやすい環境だろう」

ソピア(アンはけが人の治療、ハルカさんは見張り番、ヒレアお姉様とレン君は助けた人たちに振る舞う料理の手伝い)

ソピア(トール君は、監獄に移送中の兵士が抵抗したら魔法で鎮圧するために、騎士の人たちに同行している)

レオナール「10人以上の強者が守っていた中、よくも突破できたものである……」

ウィア「つっても、俺たちの方はお互い2人ずつだったわけじゃん?」

ミハイ「救出班のソピア君たちには感謝しなければいけないな」

ウィア「よっ、やるな英雄!」

ソピア「いいえ……私じゃないんです」

ミハイ「ふむ。ロット、と言う青年が戦っていたのだったね。本来なら勲章級の働きだ」

ソピア「ほとんどの兵士と強者はロットさんが倒したんです」

ソピア「ロットさんがいなかったら、もっと時間がかかっていたかもしれませんし、最悪、私達が負けていたかもしれません」

ウィア「そしたら俺たちも義銃たちにやられてたわけだ」

レオナール「せめて、きちんと弔っておきたいのである」

イデア「いいえ。そんな時間はございません」

イデア「私達の反乱と勝利は、すでに六勇の耳にも入っているはず」

イデア「今すぐ襲撃される可能性も十分にあるのです」

イデア「急いで次の策を決めなければいけません!」

ミハイ「イデア君の言うことももっともだ」

ミハイ「では僕から次の行動を説明させてもらうよ」

ミハイ「日が昇ると共に大統領選が始まり、正午以降、集計が終わると引き続き大統領就任式が開かれる」

ミハイ「共和国軍の重役は皆、そちらにかかり切りで思うように動くことはできない」

ミハイ「だからこそ、この駐屯地を奪えたのだからね」

ミハイ「僕たちはこのまま南へ進軍し、ウベローゼンの陸軍基地、ハーバリアの海軍基地を落とす」

ミハイ「僕たちに対抗できる強者も残り少ない。ほとんど手間はかからないさ」

ヒレア「……要するに私が町の人も兵士も、霧で全部眠らせちゃえばいいのね?」

ウィア「なんで君がいるんだ?」

ヒレア「ソピアの保護者だから」

イデア「助けた者達はいかがなさるのですか?」

ミハイ「連れて行く。戦闘中は町の外、山の中に待機してもらうが、生きるためなのだから我慢してもらわねばならない」

ミハイ「幸い、野生モンスターは僕たちの味方だ。むしろ山の方が安全と言える」

ミハイ「そして、海軍基地を落としたら、全員、軍艦に乗り込み国外へ逃亡する」

ミハイ「聖教国かサロデニア共和国なら亡命を受け入れてくれるに違いない」


マリン「はーい! 聞いて聞いてー!」

マリン「ワタシはラヌーンの海神よー」

マリン「海にさえ逃げれば、海流を操作して誰にも近づけないようにできるわー」

マリン「さらに、海の繋がってる場所なら、どこへだって一瞬で行けちゃうわー」

マリン「亡命できなかったらいっそ逃亡貴族だけでどこかに国を作っちゃえばいいんじゃないかしらー」

マリン「ラヌーンの二の舞にならないことはワタシが保証するわー♪」

ミハイ「だ、そうだ。心強い限りだね」

イデア「では、その方針で……」

ウィア「反対」

ミハイ「どうした、ウィア君? 他の策があるならば聞かせたまえ」

ウィア「その作戦、六勇にエンカウントした瞬間終わりじゃね?」

ウィア「強者がほとんどやられたんだから、大統領選に出てない一人か二人が出張って来るだろ」

ミハイ「一応、遭遇した際に使う道具もいくつか用意しているさ」

ミハイ「例えば……この、刺した相手を弱体化させる針、のようにね」

ウィア「それを当てられる保証も効く保証もないんだろ?」

ウィア「それよりも、俺は確実な手段を取りたいな」

レオナール「ほう。自信たっぷりであるな」

ウィア「人質だよ。元帥の娘、エイラ・ブラッドレイちゃんを誘拐する」

ウィア「そうしたら元帥は慌てる。元帥のわがままで軍の内部も混乱、大統領選も混乱」

ウィア「軍の統率が乱れて各々勝手な行動を取りづらい、その隙をついて王子の案の通り海へ脱出」

ウィア「完璧だろ?」

ミハイ「元帥が暴走する、あるいは元帥が無力化されたら余計に状況は悪くなると思うがね」

ウィア「じゃあこうしよう。保険として女帝の娘も誘拐する」

ヒレア「……女帝に娘がいるの?」

ウィア「いるよ。絶縁状態だっていうけど」

ヒレア「それじゃダメじゃない」

ウィア「でも、女帝は会えない分、娘の事を人一倍愛している、って聞いた」

ウィア「信頼できる情報筋から聞いたから間違いないぜ」

ウィア「二人ともウベローゼン在住だよ」

ヒレア「エルミスを連れてくるだけなら簡単そうね」

ヒレア「どうしても見つからないなら、やっぱり私が霧を出してみんな眠らせてから探せばいいし」

ヒレア「女帝の娘をどうやって探すかが課題?」

レオナール「いずれにせよ……ソピア殿に頼りすぎであるな」

レオナール「ソピア殿?」

ソピア「んぁ……」

ウィア「あははっ、寝てるし」

イデア「起きてください! 大事な話の最中です!」

ソピア「うぇ……? あ、あー! ごめんなさい!」

ミハイ「許してあげたまえ。子供の身で徹夜したのだ。無理もない」

イデア「しかし、意思を確認しておかなければ。いずれにせよ、作戦の中心はソピア様なのですから」

ソピア「えーと、とにかくがんばります……」

イデア「きちんと概要を聞いて選んでください!」


ソピア(まとめると)

ソピア(強行突破を試みたら、たぶん女帝・貴腐・白服の誰かと戦う羽目にはなると思う)

ソピア(でも、六勇が相手なら、魔人先生を呼び出せば助けてくれるんだよね)

ソピア(人質作戦の場合、少数でウベローゼンに入って、兵士に見つからないように主に女帝の娘を探すミッションになる)

ソピア(でもすでにエルミスには人質のルーンを刻んであるから、私が念じるだけでどこからでも命を奪える)

ソピア(その事実を伝えるだけでも作戦は最低限成功するから、お手軽ではあるね)


※戦闘安価は全カットしましたがルート安価は残します

1.強行突破!海外脱出!
2.人質を連れて安全に逃げる!

↓2前後までで、コンマが高いレス採用(魔法などの自由記述も採用するかも)

ソピア「王子様に賛成です。強行突破しましょう」

ソピア「女帝の娘が見つからなかった場合、時間のロスになります」

ソピア「それよりは一気に突き進みましょう!」

ソピア「六勇が現れたら、私にも対抗手段があります」

ソピア「万が一の時は、私と王子様に任せて下さい」

ミハイ「ウィア君、それで構わないかな?」

ウィア「いいよ。ソピアちゃんが首を縦に振らなきゃ俺の策も実現しないからな」

ミハイ「仮眠と食事を取ったら行軍を開始する。日の出とともに出発だ」

駐屯地、食堂。

ガヤガヤ

貴族「このような質素な食事がこれほど美味しく感じるとはね」

貴族「やはり贅沢は敵ですわね」

貴族「野菜は嫌いなのだ」ポイ

貴族「おかわりはまだなのか! 朕を待たせるとは何事じゃ!」

トール「すみません! 食事は一人一膳しか用意できなかったんです……」

アン「騎士長さん。ごはん、置いておきますよぉ」

騎士長「……」ボケー

アン「大丈夫ですぅ?」

側近「久しぶりに馬に乗ったので疲れているんです」

アン「なるほど……」

アン(馬から降りたらただの後期高齢者ですねぇ……)

ハルカ「ねえ、ソピアさんのご両親を見てない?」

アン「はれ? そういえばまだウィンベル夫妻を見てませんねぇ」

ハルカ「ソピアさんもまだ挨拶してないって言うから、先に探しておこうと思ったんだけど……」

ハルカ「もしかして、ここにいない、なんて事ないよね?」

アン「そんなことないと思いますけどぉ……」

シスヤタ大監獄、最奥の牢。

生きていた兵士と強者たちは騎士たちに連れられて閉じ込められていた。

負傷した兵士には衛生兵が傷の手当てをしている。

大壁「なぜ、私を射たのだ! 絶対に許さないぞ!」

堅嵐「…………俺の射線に入るのが悪い」

大壁「貴方の射線は正面全てでしょう!」

金錨「バッキャロー! 狭い牢屋でケンカしやがんじゃねぇ! 生きてるだけで儲けもんだろがい!」

珍走「どないや、初めて逮捕された感想は?」

義銃「屈辱の極みでありますッ!!」

鷲男「私は不審人物として逮捕された経験があるから何ともないぞ。それもヒーローの定めさ!」

焔華「死んだのは恐愛と、凶爪さんですか……」

死神(凶爪の死体を処分できなかった俺様もいずれ協会に処罰されるだろう……)

死神(だが、ここにいる限り極めて安全だ。来るなら来い! アサシン協会の刺客よ!)

監獄の外。

「ふ、ふふ……」

その一角で死んだように倒れていた憲兵服の男が、薄笑いを浮かべて立ち上がる。

恐愛「ふふふふふ……!」

恐愛「愛がある限り、私は不滅!」

恐愛「愛の力で囚われの皆を助け出さねば!」

恐愛「そして愛を理解できない貴族とその協力者達に愛を刻むんです!」

恐愛「この、拳でッ!」グッ

魔導長「待ちなさい」

恐愛「っ! 魔導長殿に、敬礼!」ビシッ

魔導長「無事だったか。戦いに行くのはやめなさい」

魔導長「シスヤタ市の戦いは我々の敗戦で終わったよ」

恐愛「いえッ! 私の愛はこんな所で燃え尽きません!」

魔導長「キミが軍を愛しているのならば、ワシらに協力して欲しいんだがね」

魔導長「どうやら、軍に第三者が介入しているようなんだ」

恐愛「なんと……!」

魔導長「教官長からそう連絡を受けた。憲兵として、キミも無視できなかろう?」

魔導長「ワシは王都へ向かうが、キミはどうする?」

恐愛「仲間を見捨てて行くというのは……」

魔導長「……すでに騎士長が解放されておる。残った所で馬に轢かれるのがオチじゃぞ」

魔導長「騎士長を正面から倒せるのは今の元帥『重壁』以外におらん」

魔導長「ワシがいれば逃げ切れると思うが……それでも残るかい?」

イデア「皆様、改めて、よくぞご無事でいらっしゃいました」

騎士「まさかヴァレンティン嬢に助けられるとは……」

騎士「その御恩に報いるため、全身全霊をもって戦わせていただく所存です」

騎士「騎士団領に馬を飛ばした。じきに皆も駆けつけてくれる。我らの反撃の始まりです」

名誉騎士「イデア」

イデア「父様!」

名誉騎士「娘を町に残しておいた判断は間違っていなかったようだ」

名誉騎士「お前はもう一人前の騎士だ」

イデア「ありがとうございます。ですが、私の技量はまだ半人前の身」

イデア「父様、これからも騎士の模範として私を導いて下さい」


レオナール「おお! 我が妻よ! 息子よ!」

レオナール「レオナール・グザヴィエ。ただいま迎えに参ったのである!」

妻「え、ええっ……あなた、なの?」

息子「少し、離れてくれよ。臭い」

レオナール「む、むう」

レオナール「しかし! この姿は我輩が山で生き延びた事の誇りなのだ」

妻「せめてもう少しは身だしなみを整えた方が良いですわ」

息子「ほぼ原始人じゃないか。貴族失格」

レオナール「ぬう……」


友人「おーっすウィアー! 俺のために助けに来てくれたんだな!」

友人「テメエならやってくれると思ってたぜ!」

ウィア「いや、お前らはついで。俺は女の子を助けたかっただけさ」

先生「ご無沙汰しております」

ウィア「相変わらず綺麗だね。さっきは、俺のために戦ってくれてありがとう。なんてな」

先生「あなたのためではありません」

ウィア「でもさ、もうロットは死んじまったんだろ。ここらで俺に乗り換えない?」

先生「…………」

友人「おい……その口説きはありえねぇよ……」

マッド「…………失礼ながら、今のウィア様は糞野郎でございます」

友人「コイツだけは処刑した方が世の為になんじゃねーか?」

ウィア「こりゃ参ったね」

ソピア「……お父様は?」

ハルカ「……ごめん」

アン「とうとう見つかりませんでしたねぇ」

男爵「ちょっと、いいかい」

ソピア「はい?」

男爵「君たちが助けに来る直前、僕は見たんだ」

男爵「僕の近くにいた2人の男女が消えてしまう、その瞬間を」

男爵「もしかしたらあれが君のご両親だったんじゃないかって思ったんだけど……」

ソピア「消え、た……?」

アン「どんな消え方でしたかぁ?」

男爵「パッ、て。姿が薄くなっていくわけじゃなくて、まばたきの瞬間に消えたよ」

ソピア「どういうこと……?」

トール「召喚魔法の類じゃないかな、と……」

ソピア「それって!」

トール「……ピンチですね」

ウベローゼン市、ブラッドレイ邸。

元帥に招かれた魔法を解く専門家が、エルミスの腕に刻まれたルーンを見ている。

黒魔術師「驚くほど強力な術者による魔法です……」

黒魔術師「解除できる者はフルフィリア国内にいるかどうかも怪しいです」

元帥「物理的に消すことはできないのか?」

黒魔術師「ルーンは入れ墨のように、内側に刻まれています」

黒魔術師「腕の肉を大きく削がなければ消すことはできません」

元帥「ならんッ! エイラを傷つけてなるものか!」

エルミス「……」

元帥「こうなったら術者を直接……!」

エルミス「やめて父上! そんなことしたら、ソフィーと違ってあの人は容赦なくわたしを殺すわ!」

元帥「……いかん、焦っているな」

母「あなた、お客様ですよ」

女帝「おはようございます。元帥、エイラちゃん」

元帥「海軍大将か」

女帝「ウフフ、調子はどう?」

元帥「難航している……。フルフィリア最強の魔術師を不意打ちし一撃で葬る以外に選択肢がなくなってしまった」

女帝「それは私達でも難しいわね」

元帥「できるとすれば陸軍大将か憲兵隊長だが……」

女帝「二人とも今日は大統領選に出馬しているから動く暇が無いわ」

女帝「それは貴方もよ、元帥殿?」

元帥「うむ。時間が押している。そろそろ王都へ向かわねばならん」

女帝「……エイラちゃんの事は私に任せて下さらない?」

元帥「信頼していいのか?」

女帝「プレゼントよ。持ってきて頂戴?」

上級魔法兵「はっ」ドン

女帝の部下が厳重に縛られた男女を床へ突き飛ばした。

女「うっ……ソピア……」

男「弱音を吐くんじゃない……。心で負けたら駄目だ……」

元帥「彼らは?」

女帝「昨晩、帰った後すぐに部下に命じて呼び出した、ウィンベル男爵とその夫人よ」

エルミス「……!」

男「頼む、私達はどうなってもいい……ソピアへの拷問はやめてくれ……!」

女帝「貴方達に主張する権利はないのよ」

女帝「先に仕掛けて来たのはソピアちゃんの方じゃない?」

男「ふざけるんじゃない! 先に狼藉を働いたのは共和国軍、お前たちじゃないか!」

元帥「……芯の強そうな男だが、交換条件を飲ませられるのか?」

女帝「私、交換条件を突きつけるなんて言ってないわよ」

女帝「それとも、エイラちゃんにこんな事をしたソピアちゃんに、ただでご両親を返してあげていいの?」

元帥「やはり……お前は恐ろしい女だ」

元帥「ただ、やりすぎないようにな」

女帝「ウフフッ……。元帥殿の分も残しておかなくちゃね?」

元帥「その通りだ」

元帥「仮に他の貴族を許しても……ソピア・ウィンベルにだけはこの手で報復せねば気が済まんのだ……!!」

女帝「ウフフ……。さあ来なさいソピアちゃん」

女帝「まさか王都へ行くはずもないし、貴族を連れてくるならこの町しかないわよね?」

女帝「この六勇『女帝』が、貴女に地獄を見せてあげるわ……」

女帝「ウフッ、ウフフ、ウフウフフフフッ!!」


↓ 出番多い割に名前の無かった女帝の苗字を募集

『女帝』海軍大将フリンデルさんに決定、どことなく優雅さと妖しさを感じる気がします

女帝の娘は探さなくてもいずれ登場するので決めておきました



39日目終了

【ステータス】
ソピア=ウィンベル(魔:ソフィア 旅:ルーフェリア)
見た目:11歳(本来72歳)・スカイブルーの瞳・黒髪ふんわりロングパーマ(桃色のリボンで二つ結び)・小学校の制服風・ムーンストーンの杖(知20)・ストーンキューブ
所持金:9520G
アイテム:
ウベローゼン市地図・旅人ギルドカード・共和国軍の勲章・永遠の薔薇・野営セット・銀の短剣・ナイフ・金槌・ハサミ・ドライバー・ライター・花柄の傘・平和のロザリオ
魔人ルーン×3・ポーション×2・回復の杖・自動迷彩マント・催涙スプレー・海子の杖
薄汚れた赤ずきん・エセ探偵セット・女中の服・緋袴・海子の服・ヒレアのおさがり・強化繊維インナー(防小)・シューズ
桃色のリボン・リボンカチューシャ・アザラシ革の手袋
オニキス×2・琥珀の欠片・火魔術結晶・キングウォッチ・クロノクロウの羽・チャンピオンツタベルト・光るビン・ステンレス・8色カラーキューブ
樹魔術の書・重力魔術の書
ウサギなエプロン・ネコのぬいぐるみ・ヘヴンズクッキー

ジョブ:月魔術師・旅人
スキル:全属性魔術・妖精対話
 ダンス・料理・長旅歩き・小休止・脱兎・騎馬・野営・夜目・受け身・考察・探し物

体力32/32 精神52/52
筋力30 敏捷44 知力70(90) 器用20 交渉力70 魔名声83 旅名声128 注目度10
経験値:体7・精47・筋0・敏67・知0・器83・交31


知り合い
高圧的な16歳サイズユーザー:エルミス「一生わたしに尽くしなさい!」(主従:99.99)
文系15歳美少年風魔術師:トール「永遠の愛をあなたに」(恋人:14.99)
お喋りな16歳ホワイトシーフ:フィナ「……死なないでよ」(友達(仮):10.61)
心優しい義姉13歳吸血鬼:ヒレア「今日から私がお姉ちゃんね」(義姉妹:10.15)
あざとい17歳メイド:アン「ソピアについて行きますよぅ」(大親友:10.04)
控えめな18歳アーチャー:ハルカ「キミに命を預けるよ」(仲間:X.XX)
ジト目12歳白魔術師:ラファ「助け合うのですよ」(仲間:X.XX)
ボクっ娘ブラコン16歳女水魔術師:ミルズ「ソフィアもボクのモノ」(??:10.56)
頭脳派長身18歳岩魔術師:クルト「俺の味方か……」(??:10.18)
おしとやかな12歳商売人:フローラ「お気遣い頂き感謝します」(仲良し:7.88)
魔法街の仕立て屋人形:クリスティ「別人になった気分ですっ」(仲良し:7.14)
明るく優しい22歳ホモ日魔術師:キュベレ「結果的に…息抜きになったかしら?」(友人:4.25)
宿屋のおばちゃん:メリル「すっかり有名になっちゃって、大丈夫かねぇ」(親しみ:3.31)
武人な19歳火魔術剣士:テンパラス「英雄か……」(知人:2.02)
皮肉屋な22歳男コンバット:ロット「後は頼んだ」(死亡:-.--)
色男な24歳レンジャー:オルド「あの娘がラヌーンを発見したってマジかよ」(知人:1.59)
正統派シスター19歳聖教徒:テレサ「クルトさんの師匠なんですか?」(知人:1.42)

上がり症16歳ボーカリスト:ポロ「わ、私……負けませんから」(協力者:X.XX)
お調子者13歳黒魔術師:レン「おれの呪いで2人を助ける!」(協力者:X.XX)
フランクな24歳セラピスト:サナ「久しぶりの地元だね」(仮協力者:X.XX)

ソピア、逃亡40日目の朝。

ウベローゼン市に朝日が昇る。

宿屋の主人メリルが早朝から仕込んでいた朝食を宿泊客に運んだ。

メリル「今日はいよいよ大統領選、共和国の新たな出発点だねぇ」

メヒィアス夫人「あたしらには関係ない事だがね!」

メヒィアスさん「……」コクリ

社会の底辺、清掃員として生きているメヒィアス夫妻にとって、誰が大統領に選ばれたとしても生活の変化には期待できなかった。

キアロ「俺はもう投票に行ってきた」

メリル「あらお早い。おばちゃんは忙しいからギリギリになりそうだよ」

キアロ「ワケがある。まだ広報されてないが……実は昨夜、麓町の方で王子と貴族たちが駐屯地と監獄を制圧したらしい」

メリル「まぁ! 最後の抵抗ってところかねぇ」

キアロ「この町に戦火が広がる恐れがある。有事の際にすぐ動けるよう用事は早めに済ませておいたんだ」

キアロはウベローゼン市の病院に所属するベテランのレスキューである。

人命救助を優先するが、いざという時には戦闘を行う覚悟も持っていた。

バタン

オルド「ルーちゃんいるかー?」

メリル「いないよ」

オルド「えー、なんだよ。選挙行った後また遺跡探検に行こうと思ったのによ」

オルド「なんか今日人少ねーな。珍しくウィアもいねーし」

彼は宿屋の隣のバーを根城にしているレンジャーのオルドである。ルックスに恵まれているが趣味は酒と女遊びだ。

オルド「ロットも帰ってこねーし、オレ、孤独だ……」

オルド「孤独を紛らすにはこれしかねーな……」スッ

キアロ「おい、それは何だ!」バッ

メリル「違法ハーブじゃないか。最近流行ってるって聞くけど、あんたもかい……」

メヒィアス「あたしらも押しの強い勧誘を受けたけどね! 続ける金がないって言って断ったんだよ!」

オルド「ちょっとだけだから、返してくれよ」

キアロ「駄目だ。正しくないハーブの使い方は身を滅ぼす」

オルド「ちぇっ……」

メリル「革命が終わって一月以上経ってるのに、前より治安が悪化しているってどうなんだかね」

キアロ「……今日にでも一波乱あるかもしれない。皆も用心してくれ」

宿屋を照らす朝日を一筋の雲が覆い隠した。

というわけでようやく監獄編終わりです、大変お待たせしました
次回はウベローゼン・違法ハーブ編、黒幕の姿が見えてくる話になると思います

市民達「なあ、誰に投票した?」

市民達「もちろん元帥だよ」

市民達「他国に負けない強い国が生まれるんだ」

市民達「軍国万歳! 共和国万歳!」


市民達がフルフィリア共和国の新たな旅立ちに沸き立つ。

ここはウベローゼン市。

かつて貴族の町と呼ばれたこの町は、貴族がいなくなったことで国内でも特に大きな変化を迎えようとしていた。

この町が進む一本の道。それは軍の高官が居を構える軍事の町。

だが、一般市民も多くの軍人も気付かぬ所で、もう一つの分かれ道が生まれていた。


男「夢中草の購入者は1050人前後。魔法街にもじわじわと浸透してきております」

強面「教会を咎めた聖教徒が追放処分になったらしいな。順調じゃねぇか!」

男「くくくっ、ボスもお喜びになることでしょう」

強面「『薬物の町』実現まで後一歩だな! がっはっはっは!」


共和国政府は発足の直後に、社会の裏側で活動していた既存の非合法組織を解体。

多くの国民が喜んだこの施策だが、その目的とは裏腹に治安は悪化した。

今まで非合法組織の管理を受けていた数多くのゴロツキの活動が拡大したのだ。

しかも最悪な事に、軍の一部がその活動に加担している有様であった。

しかし、ついにこの日、己の町を愛する者達がそれぞれに行動を開始しようとしていた。


ミルズ「そうはさせない」

ミルズ「例え多くの市民が手遅れでも……軍が協力していたとしても……」

ミルズ「ボクたちの町はボクたちが守る」

ミルズ「夢中草も正しく調合すれば有用なハーブの一種なんだ」

ミルズ「ポーション製造の専門家、水魔術師の一人としても危険な使い方を許してはおけない」

ミルズ「そう……」

ミルズ「夢中草を安全に食べるならカフェ:アンブロシアで!」


……主人公の手の届かぬ場所へと波乱は拡大していく。

芳香都市ウベローゼン編、開幕。

午前10時、魔法街、クルト行きつけのカフェ。

クルト『……大統領選挙の最中、軍は王都に集中しているはずだ』

クルト『その隙を突き、俺たちは軍の関与など知らなかったフリをして連中のアジトを叩く』

クルト『具体的には、裏路地、聖教会、病院を、分担して抑える』

クルト『市民のグループが大々的に違法ハーブの流通・生産の場を暴き批判すれば……』

クルト『軍は関与を否定し、関係者は憲兵に逮捕されるだろう』

クルト『……軍を味方にし、町を守れさえすれば俺たちの勝ちだ』

ミルズ「と、兄様は言っていたよ」

リウム「だからその兄はどこに行ったんだよ」

水魔術師の二人はクラスメートである。

医者の息子リウムはつい十日ほど前まで変わり者の少女ミルズをイジメていたが、今は協力関係にあった。

サナ「ヒレアちゃんかあの海神のどっちかでもいてくれればすぐ終わるのになぁー」

ラファ「麓町にソフィアたちを呼びに行ったレンも帰ってこないのです……」

リウムの姉で医者のサナと、白魔術師のラファも成り行きでこの作戦に参加する。

しかし、海流に閉ざされた国ラヌーンでの戦いを目撃している二人は、ソピア(の仲間)の力をあてにしていた。

リウム「あの黒魔術師、貴族の反乱に巻き込まれたんじゃないだろうな?」

ラファ「怖い事言わないでください!」

リウム「というか、なんであいつらは麓町にいるんだよ」

ラファ「それは分かりませんが……ヒレアが出発する前にそう言ってたので間違いないのです」

ミルズ「隣町で内戦が始まったのは恐ろしい事だけど、ボクたちにとってはチャンスだ」

サナ「だね。新聞によると監獄と駐屯地を守ってた軍人はほぼ全滅し監禁されたって言うし」

サナ「この町も襲撃を警戒して陸軍基地に残った軍人を集めてるってさ」

ミルズ「敵のアジトを守る軍人が少ないほど、兄様の言っていた計画は成功しやすいからね」

ラファ「では、クルトもソフィアもレンも抜きで、今いるメンバーだけで実行するのですか?」

ラファ「私の担当は何にも問題ないのですが……」

リウム「俺は一人でもやるぞ!」

サナ「ま、何とかなるでしょうっ」

ミルズ(いつまでも兄様に甘えてるボクじゃいけない)

ミルズ(兄様の、そしてソフィアの隣に立てるボクになるために、必ず成し遂げるんだ)

ミルズ「行こう。作戦開始だ」

ミルズとリウムの二人は、裏路地へ向かった。

数日前、不登校になった級友を探しに訪れた際に偶然にも違法ハーブ販売業者の拠点を見つけてしまったのだ。

二人は辛くも逃げきったが、その時、裏路地に他の級友を残してきてしまった事が気掛かりであった。

ミルズ「リウム、そういえばキミ、女装やめたんだ」

リウム「姉ちゃんに怒られた」

ミルズ「当然」

リウム「だけど、キュベレさんのように優しくて頼れる存在を目指すのは諦めないからな」

ミルズ「それはいい事だと思うけど」

リウム「っ! 向こうから誰か来るぞ」

それはエプロンを付けた大人びた体格の少女と、異国の装束を身にまとった少女の二人組だった。

「あいや! あなたたちはアンブラーズのミルズとアクアリウムのリウムあるネ!」

「水魔術師……まさか、あんたたちがハーブを?」

リウム「違う! 俺たちは業者じゃねえ」

お互いに相手を警戒し身構える四者。

ミルズ「誰? ボクはキミ達を知らない」

フェイラン「申し遅れてすまんある。私、カンフーファイターのフェイラン言うある」

イリス「パン屋見習いのイリス。トールの知り合いって言えば分かるかな?」

ミルズ「ああ、トールの」

リウム「安心していいのか?」

ミルズ「たぶんね」

ミルズ「で、パン屋がなんでこんなところに?」

フェイラン「私が誘ったある」

イリス「ウベローゼンの町がピンチだっていうから付き添いでね」

リウム「俺たちと目的は同じなのか」

フェイラン「なら話は早いネ。共闘するよろし!」

ミルズ「いいけど……パン屋は置いてった方がいいんじゃない」

イリス「ウチ、トールよりは強いけど?」

ミルズ「足を引っ張らないでよ」


リウム「敵のアジトはこっちだ」

イリス「……変なにおいがしてきた」

ミルズ「リウム、そろそろ」

リウム「ああ。持ってきたぞ、気付け草」

ミルズ「二人も食べておいて。正気を失わなくなるから」

フェイラン「もぐもぐ。まじぃある」

イリス「調理すれば苦味を消せるのに」

水魔術師ギャル「リウム! お久~! 500年ぶり?」

水魔術師ヤンキー「オレは最強の破壊ロボットだー! うおー!」ジタバタ

水魔術師メガネ「幻覚にこそ真理があったんだ! 君達にもこの喜びを教えてあげよう!」メガネクイッ

水魔術師女子「リウム……ごめん……あたしもう、やめられないの……」ヨダレダラー

アジトへと歩みを進めたミルズたちは、路地裏の奥で級友の変わり果てた姿を目の当たりにした。

リウム「クソッ、お前らまで……!」

ミルズ「あっちの二人は幻覚が進み過ぎて脳内で人間やめちゃってるし……」

フェイラン「倒すある?」

ミルズ「足元がおぼつかないみたいだし、無視して行こう」

ミルズ「リウム、助けるなら今は放っとくべきだよ」

リウム「くっ……」


ミルズ「あの建物は……」

リウム「間違いない。この前見つけたアジトだ」

リウム「行くぞ!」

バタン

強面「うるせえぞ薬中共! ……あん?」

強面「この間のガキ共じゃねえか。お友達を連れてノコノコときやがったか」

柄の悪そうな男がゾロゾロと現れる。

リウム「この前と同じようにはいかないからな」

フェイラン「アチョー!」

チンピラたちは全く強くなかった。

どこのギルドにも登録していないはぐれ者には、力任せに殴り掛かる以外に能がなかったのだ。

男「すんません……!」

強面「ケンカでガキ共に負けてんじゃねぇぞゴラァ!」

フェイラン「こいつだけタフあるね……」

イリス「後はウチに任せといて」

前に出るイリスは右手にバゲットを握っている。

ミルズ(堅いパンで殴りつけるの?)

強面「遊びじゃねぇんだぞ、お嬢ちゃん」

強面「パンで俺が倒せると思ってんのかオラァ。一発だけ殴らせてやんよコラァ」

イリス「じゃ、遠慮なく!」ゲシッ

強面「がッ!?」

フェイラン「出たある! イリスの伝家の宝刀、バゲットキック!」

フェイラン「美味しそうなバゲットで注意を逸らした隙に脛を強打する恐ろしい技ある!」

イリス「ほら、追撃行くぞー!」

フェイラン「『つねる』ある! どこをつねっているかは想像に任せるよろし!」

強面「がアァァァ!!」

フェイラン「『ねじる』ある! 見てるだけでも痛そうな技ある!」

ミルズ「技なの……?」

イリス「はい、とどめ! おらおらおらー!」

フェイラン「あ、あれは必殺の『揉む』! しかもパン屋の修行で強化されているある!?」

ミルズ「あんな所を揉むなんて、あんまりだ……!」

リウム「今、グチャって音したぞ……」


強面「」

リウム「さっきのは攻撃じゃない、暴虐だ……」

ミルズ「あれ? でも全く傷が残ってない」

イリス「まあね。傷を残すいじめっ子は三流よ」

フェイラン「イリスは体の内側にしかダメージを与えないある」

イリス「正直、トールの方がねじりがいがあったかな」

フェイラン「そういえば『搾る』『ちぎる』が残ってたあるね」

リウム「ひいっ! 俺たちのイジメとは次元が違う……!」

ミルズ「トール……初めてキミを尊敬したよ」

20分後。

ミルズ「……そっち、何かあった?」

リウム「何もねぇ。ハーブもねぇし書類もねぇ」

イリス「もしかしてここ、はずれ?」

ミルズ「そんな馬鹿な……。この間彼らがハーブの話をしているのを聞いたし、中毒者もたくさんいたじゃないか」

リウム「生産は病院と教会だけってことか……?」

フェイラン「さっきの男がボスでよかったあるな?」

ミルズ「たぶん」

フェイラン「じゃ、そいつだけとっ捕まえて帰るある」

イリス「さっき言ってたけど、病院と教会に行ってる仲間がいるんでしょ」

ミルズ「……仕方ない。帰ろうか」


ミルズ「ん?」

帰り道に立ち塞がっていたのは、先ほど会ったばかりの人物だった。

水魔術師ギャル「いや……諦め、早っ」

ギャル「キャハハハハ!! マジウケるwww ……なんつって」

ギャル「あー、ダル……」

リウム「お前……?」

いつも明るく騒がしかった級友の様子がおかしい。

リウム「ハーブのせいで性格まで変わっちまったのか……!?」

ギャル「ちげーし……薬中のフリして隠れてたんだよ」

ギャル「そりゃアタシのキャラ的に疑われるポジじゃないしさ……それで薬中に紛れてれば確実にスルーされるけどさ……」

ギャル「まぁ、ボスとしてはある意味正解なんだけどもさぁ……」

リウム「ぼ、ボスだって?」

ギャル「そーだよ。アタシがボスよ。どう、ウケた?」

リウム「ウケねーよ。なんだよお前がボスって、冗談にしてもつまらねぇよ!」

ミルズ「自分から正体を晒すボスなんていないよ」

ギャル「いや、あれだし……」

ギャル「アタシさ、陰でさ、コソコソ頑張ってるワケ。でもさ、誰もアタシの脅威を知らないって、あれじゃん……」

ギャル「つまんないじゃん……」

ミルズ「……なにそれ」

ギャル「あんまりにもアタシの事に気づく奴がいないんで、アタシから正体を教えてみましたってゆー……あれ」

フェイラン「つまり、あなたとっちめれば良いあるな?」

イリス「洗いざらい吐いてもらうよ」

ギャル「暴力反対ー。別に、全部教えるから。……はぁ」

ギャル「アタシの本名は……サキューラ・ユーリ・グリエール」

ギャル「違法ハーブを流通させてんのは、アタシの友達で先輩の……死の商人サマに任されたお仕事」

ギャル「これでいい?」

リウム「良くねぇよ! 色々釈然としねぇよ!」

ギャル「アタシが恐ろしい存在だってこと、分かってくれた?」

ミルズ「いや、全然伝わってないから」

ギャル「そっか……なら、実力行使か……」

ギャル「ビオーラ! マリー!」

ビオーラ「よっこらせ!」バッ

マリー「ついにオレ様の出番が来たぁ!」バッ

ミルズ「どこに隠れてたのこいつら!」

リウム「どっちも知らない奴だな」

ビオーラ「ユーリ姉の妹、ビオーラ・フラン・グリエールだべ! 趣味は園芸だべ! よろしゅう!」

マリー「この闇のウェディングプランナー、マリーGG様を知らないだとぉ!?」

イリス「男なのにマリーなの、あんた?」

フェイラン「仕事少なそうな職あるな」

マリー「うるせぇ! 気にしてんだよ黙れよぉ!」

ビオーラ「行くべさ、マリー兄!」

園芸少女は植木鉢を掲げる。

ビオーラ「ビオトープ!」

植木鉢から芽が出てあっという間に花が咲いた。

それは葉よりも幻覚作用が強い花粉を撒き散らすという、夢中草の花だ。

リウム「あれは、俺のグロウと同じ魔法……!」

ビオーラ「マリー兄、パスだべ!」ヒョイ

マリー「おう! 行くぜぇ!」

夢中草の花が瞬く間に花束に加工される。

マリー「受け取れぇ! インスタント披露宴! 闇のブーケトス!」ブン

フェイラン「勝ったある」

ミルズ「あれ? 時間が飛んだ?」

リウム「いや、直後だぞ。瞬殺だった」

ビオーラ「ごめんだべユーリ姉!」

マリー「すまねぇサキューラ!」

ギャル「こうなったら、アタシ自らやるしかないか……」スッ

ミルズ「……!」ゴクリ

ミルズ「って彼女そんなに強かったっけ?」

リウム「いや、普通レベルだな」

ギャル「ふーん……真の力を見ればそんなことは言えなくなるし」

そう言いながらギャルはミルズ達からゆっくりと距離を取る。

フェイラン「気を抜くなよろし」

イリス「迎え撃つよ!」

ギャル「ビオーラ! マリー!」

ギャル「……ダッシュ!!」ダッ

ミルズ「逃げた!?」

リウム「しまった! あいつは逃げ足が速いんだ!」

フェイラン「追うよろし!」

ドシン

ミルズ「ま、また援軍?」

立ちはだかるは3mはあろうかと言う大男。

横幅も相当のものであり、まさに巨人と言う他なかった。

大男「憤怒っ!」ドゴンッ!

大男が片足を己の頭よりも大きく上げてから地面に叩きつけると、地面が大きく振動した。

ミルズ「うわっ……!」

フェイラン「ハイッ! テイッ! ……ダメある、肉の鎧に弾かれるあるよ!」

大男は掌を正面に差し出した。

武術の素人であるミルズ達にも分かるほど、その掌に力が集まっていく。

ミルズ(今までの相手とは全く違う……)

ミルズ(この大男の相手をしながら追いかけるのは絶対に無理だ)

ミルズ「皆、撤退! 戦うだけ無駄!」

正午を過ぎた。

そして、フルフィリア共和国の初代大統領就任式が始まっていた。

その様子は国内のすべての町に設置された大型ディスプレイで生中継される。

ここ、ウベローゼン市にも宿屋街と陸軍基地前の二か所にディスプレイが設置されており、聴衆がその周辺に集まっている。

そんなディスプレイ前が、騒然としていた。

市民「おい、なんで音が出ないんだ!?」

メリル「ごめんねぇ、あたしも機械には弱いんだ」

旅人「陸軍基地前も同じ状態らしい」

市民「開票作業はまだ終わってないからいいが、式が始まるまでに何とかしろ!」

キアロ「落ち着きなさい! 音が無くても結果は画面だけで分かるだろう!」

市民「何様だてめー!」

メリル「はいはい! やめなさい! ケンカして音が出るのかい!?」

旅人「一体、誰のせいでこんなことに……」

「あたくしですわ!!」

旅人「!?」

美しい金髪をなびかせる女が一人、ディスプレイの上に立っていた。

ポージングを決め、キラキラと輝く彼女からは不思議と目が離せない。

市民「誰だお前は!」

「よくぞ聞いてくださいました!」

ディアナ「あたくしの美しき名はディアナ!」

ちなみに、本人曰く美しすぎる真の名はディアーラ・ナルス・グリエール。

彼女も外様ではあるがグリエール家に生まれた者である。

ディアナ「誰が呼んだか、美しすぎる怪盗ですわ!」

彼女自身だけがそう呼んでいる。

ディアナ「この美しすぎる怪盗ディアナ様が、スピーカーの部品をいただきに参上しましたの!!」

旅人「音が出なくなった原因は君なのか!」

ディアナ「おーっほっほっほ! 捕まえてご覧なさいな!!」ピョン ダッ

市民「ま、待てえ!」

聖教会。

ラファ「犯人は、あなたなのです」ビシッ

神父「……なんだね?」

ラファ「さあ、罪を告白しなさい。天に座したる主はあなたの悪事を見逃しません!」

神父「思い当たる節はありませんが……」

ラファ「ふっふっふ……すでに調べはついているのですよ」

ラファ「あなたは聖教会の信徒に対して、免罪符という物を売りつけて、個人で多額の利益を得ているそうですね」

ラファ「金のために信仰を利用するなんて、神への冒涜に他ならないのです!」

ラファ「そして同時に、あなたは栽培されている夢中草の違法な横流しも行っている」

ラファ「違いますか!?」

神父「……少し違うな」

神父「免罪符とハーブの利益は協力者にも還元しているんだ」サッ

あくどい顔をした神父が手を掲げると、周囲のシスター達が魔術を使用する陣形を取る。

神父「やれ。神の名の下に」

人間を丸ごと消し去る強力な聖光が教会内部を埋め尽くす……。

パァン!

神父「反射だと……!? ぐわああ!」

シスター「白魔術師としての力量は彼女より私達の方が大きく上回っているはず……」

ラファ「はあ……あまりに予想通りの行動すぎて、残念なのです……」

ラファ「ありがとうございます、テレサさん」

テレサ「全反射の結界、この教会で使用できるのはわたくしだけだったことをお忘れですか?」

神父「て、テレサ……! なぜだ、貴様は追放したはずだ!」

テレサ「それでも、神はわたくしに力を与える事をお選びになったようですね」

ラファ「一教会が、聖教国に認められたテレサさんを追放できると思ってたのですか? アホなのです」

テレサは白魔術師の上位職、聖教徒である。

未成年でありながら白魔術師の総本山たる聖教国で洗礼を受けた、高位の聖職者だ。

神父「黙秘権を行使する」

テレサ「守護天使様にお聞きするので何も話さなくて結構でございますよ」

テレサ「本名はフリー・ジャン・グリエールもしくはフリー・ジャンピエトロ」

テレサ「ゼニー・グリエールの息子で30歳。兄弟が大勢いらっしゃるようですね」

ラファ「これも予想通りなのです。汚い商売をする小者はグリエール家だと相場は決まっているのです」

神の名簿。相手の個人情報を知ることができる白魔術である。

神が術の行使を許可しない場合もあるが、聖教徒ともなればほとんどそういう事態は発生しない。

神父「そういうことだ。俺に何かあったら商会が黙ってないという事を忘れるな」

ビリビリビリ

神父「ギャアアア!!」

テレサ「嘘をつくとバチがあたります」

神父「お、俺は商会の人間じゃない! 親に捨てられた外様の者だ!」

神父「ふぅ……電流が止まった……!」

テレサ「貴方に助言をした方はいらっしゃいますか?」

神父「黙秘権だ。個人情報以外は知れないだろう」

テレサ「……。なぜ、ご実家を恨んでらっしゃるのに、ご商売を?」

神父「黙秘権」

テレサ「彼のお母上は聖教会に所属されていたそうですが、ゼニー氏に無理やり関係を持たれ純潔を奪われてしまったそうで……」

テレサ「子供に罪は無いと考えて出産しましたが、彼を生んだ直後に自ら死を選んでしまわれたとのことです」

ラファ「彼も辛い身の上なのですね……」

神父「なぜそれを!」

読心魔法。使っている間相手の心の声がすべて聞こえる。

テレサ「そのような方は彼だけではなく、グリエールの血を引く外様の方々はリーダーの助言の下、ご商売をされていて……」

テレサ「その理由は、実家に商売で勝ちたいと言う思いからではなく、単純に一家に生まれた者の性だそうですね」

ラファ「つまり、ゲスの血を引いてるのですか」

神父「祖父の血は濃かったんだ……」

テレサ「あら、お話していただけるご気分になられたのですね!」

神父「何にも黙秘できないからな……!」

バタン!

ディアナ「この美しすぎる妹分が助けに来ましたの!!」

神父「ディアナ! でかした!」

ラファ「テレサさん」

テレサ「はい」


ディアナ「このあたくしを捕らえるとは、実に美しくない仕打ちですわ……!」

神父「何しに来たんだよお前……」

ラファ「捕まりに来たんじゃないですか?」

テレサ「これで、解決まで後一歩ですね」

ラファ「どうでしょう? まあミルズ達はともかくサナがしくじるとは思えないのですけど」

聖十字病院。

サナ「父さん!」

名医「サナ!? 帰ってきていたのか!」

サナは地元から離れ、学園都市スクーニミーの医科大学に通っていた。

サナ「父さん、聞いたよ」

サナ「市民の健康を守る私達医者が、夢中草の違法な流通に加担するなんて、何考えてんの!」

名医「サナ、聞いてくれ。私達は……共和国政府に依頼されているんだ」

サナ「院長はなんて言ってた?」

名医「すべて私に一任すると言われた……」

サナ「いくら相手が軍でも医者として断るべきだよ」

名医「だが……何をされるか分からないじゃないか」

名医「お前たちに何かあってから後悔しても遅いじゃないか」

サナ「……わかった。それは、仕方なかったと思う」

サナ「でも、聞いて。リウムはハーブの生産を止めるために裏路地へ行ったよ」

名医「なんと馬鹿な真似を……!」

サナ「馬鹿な真似じゃない! リウムも覚悟を決めたんだ」

サナ「市民の健康を守るために軍に逆らう覚悟を!」

名医「リウム……!」

サナ「今からでも遅くないよ!」

サナ「父さん! 父さんは私達の手本でしょ!」

名医「……」スッ

名医「年を取ると、どうも冒険を避けてしまうようだ」

サナ「それは私も同感」

名医「定年も近い私だが……今一度、勇気を出し、信念に順じよう」

サナ「夢中草はどこで栽培してるの?」

名医「C棟一階裏の小屋だが……何をしに行くんだ?」

サナ「現場検証? 夢中草の栽培を誰が指示してんのか分かれば大きな収穫だからね」

サナ「軍が命令してきたって言っても、私は軍の中の誰かが暴走してるだけだと考えてる」

名医「そう考えた根拠は?」

サナ「あの娘バカのブラッドレイ元帥が自分の住んでる町をメチャクチャにするとは考えにくいから」

名医「なるほど、合点がいった」

名医「ついていこう。今は鍵をかけている」


サナ「実家のようなものなのに、こんな所入ったことなかったや」

名医「私も革命前までは近寄る事もなかった」

サナ(げっ、兵士残ってんじゃん……)

上等兵「名医殿、どうされたのですか? 異常はありません」

名医「中に入れて欲しい」

上等兵「なぜです?」

名医「……もう、私はやめにしたのだ」

サナ「ちょっ、父さん」

名医「私達の病院は今後、非合法なハーブの流通に一切加担しない」

上等兵「……」

名医「そういうわけだ。いかに政府の命令と言えども、病院は市民の命を預かる施設だ」

上等兵「こ、困りますよ……そんな」

名医「今まで困っていたのは私達だ……。申し訳ないがこちらの意も汲んでいただきたい」

上等兵「そ、そんな事伝えられるわけがない……死にたくない!」

サナ「ど、どうしました? 落ち着いてください!」

上等兵「うああああッ!」ジャキッ

パァン

名医「ぐふっ……!?」

サナ「父さん!?」

サナ「なぜ撃ったんですか!」

上等兵「うああああ!」

サナ(駄目だ、恐怖で錯乱してる……!?)

サナ「……ヒプノセラピー」ポゥゥ

上等兵「あ、う……zzz」

怪我を治す水魔術と精神を癒す日魔術を習得したサナは、ヒーリング系魔法のエキスパートとして成長していた。

心身に強く働きかける彼女の魔法は、激しく興奮した人間もたちまちにして沈静化させる。

名医「うぐぅぅ……」

サナ「父さん! 今治すからね」

「アラ。人が倒れてイルワネ」

サナ「っ!」

化女「イケナイ。急いで手術が必要ダワ。ドキナサイ」

サナ(共和国軍衛生兵の一人、『化女』!)

化女は全身整形を繰り返しサイボーグとなった美人女医である。

体中に手術用の装置が数多く組み込まれており、その手術の成功率と美しい容姿が巷で人気を博している。

サナ「治療は私がするから必要ありません!」

化女「ダメヨ。銃弾の正確な摘出において私の右に出る者はイナイ」

言いながら、中指の先から微小なアームを露出させる。

その機構を見てサナは顔をしかめた。

化学薬品と改造手術によって二度と傷病に陥らない身体を作り上げる事をモットーとする化女に対して、サナは人の自然治癒能力を高めて元の状態に戻す魔法主体の医師である。

この二人は正に水と油であった。

サナ「彼は私の父です。そんな得体のしれない装置や薬品を父の体に入れないでください」

化女「今キヅイタワ。そこで眠っているのは私の部下カシラ?」

化女「アナタが眠らせたノ?」

サナ「はい、興奮していたので、落ち着かせるために仕方なく」

化女「起きてチョウダイ」ブスッ

上等兵「わあっ!」

化女「何があったノ?」

上等兵「ば、化女様……こいつら、夢中草の生産をやめるって……」

化女「アラ。ひどい契約違反ネ」

サナ「……あんたが父さんにやらせてたってわけか」

化女「血圧上昇。筋肉の収縮。表情筋のステート測定。……コレハ敵意の感情」

化女「興奮した患者は落ち着かせなければイケナイワ」ガシャン

化女「処置の最中に欠損した部位は交換してアゲルから安心シテチョウダイ」ウィーン ガコン ガコン ジャキン!

サナ「何その変形……あんたのような医者がいるか!」

ウネウネ ザワザワ

上等兵「く、草がうごめいて……!? 申し訳ありません! 自分は退避させていただきます!」バッ

化女「測定不能。植物の操作魔術?」

サナ「操作じゃないよ……これは全部、私の体の一部! アロマセラピー:なめらかイバラ!」

水と日の精霊を吸収しすぎたサナの体質は、人間の姿形を保ちながらも限りなく植物に近いものとなっている。

体から任意の植物を生やす事ができるのもその特性の一つだ。

化女「損傷皆無。毒性無し。コレガ攻撃?」

サナ「捕まえただけだよ。今のうちに父さんの治療を……」

ジュウッ

サナ「あづッ!!」

化女「レーザーメスよ。あらゆる状況で負傷兵の治療を任される私ガ、拘束や障害物で動けなくなることがあってはナラナイノ」

化女「魔術の使用をセンサーで確認。変化、花畑の展開。毒性アリ」

サナ「邪魔すんなって言ってんのよ……!」

園芸セラピー:レストスミレ。

強力な沈静化魔法を放つ珍しい花が病院裏一面に咲き誇る。

化女「意識レベルの低下……。薬剤の投与を開始……。フウ」

サナ(こいつ、自分に注射を……)

化女「遠隔インジェクター起動。パラライズドラッグ装填。正しい拘束を見せてアゲルワ」ダンッ

サナ「ぐうっ!」

サナ(自然物じゃないから中和できない!? くっそう……)

名医「や、やめろ……」

化女は目から怪光線を放ち、人体の状態をサーチする。

化女「関節がすり減ってイル。交換が必要ネ」

化女「古い関節の除去をオコナウワ」

先端に鋭い刃物の付属した四本のアームが、名医の肩と膝に添えられた。

名医「……っ!」

化女「執刀ガビッ」ドゴッ

化女「ビガガッ……状況確認、頭部へのダメージ5%。原因、植物体構造物」

サナ「……」ダラン

筋肉が麻痺し脱力しきったサナを、無数の蔓と花が支えて立たせている。

インコフラワー「あー。あー。マイクテスト。インコテスト」

インコフラワー「舐めんじゃないよ……。自然の物が必ずしも安全とは限らないって事を教えてやる!」

舌と喉の代わりを務めているのはクチバシ型の花、移動に使っているのは脚の長いマンドラゴラの下半分。

そして先ほど化女を殴りつけたのは頑丈な果実の殻だ。

化女「モンスターの集合体カシラ」

インコフラワー「あんたにだけは言われたくないわ!」シュッ

化女「自動防御」ガキン

鋼鉄に匹敵する針を持つサボテンと骨切断用チェーンソーがぶつかり激しく火花を上げる。

サナ(今だ!)

食鉄植物「……」ダラー ジュウウ

不意を突かれ、鉱物モンスターを好んで食べる植物の唾液が化女に浴びせかけられた。

化女「……成分解析、エラー。腕部機構、損傷60%。胴部機構、損傷20%」

化女「危険。退却スベシ」バッ

インコフラワー「金属だけを溶かす溶解液だよ。見たか、これが天然由来の力!」

化女「弱点解析、不要」

インコフラワー「さっさと帰れ! まださっきの浴びたいか!」

化女「ケミカル除草剤、噴霧。痛み分けで終わりマショウ」

インコフラワー「ボ、ゲ、ゲ…………」

化女「人体に影響はナイワ。アナタはどうか知らナイケド」

化女「退却用ブースト始動。サヨウナラ」

ゴオオオ

サナ(し、死ぬ……!)ズル ズル

サナ(一旦池に落ちて薬品を洗い流す)ズル ズル ドボン

サナ(溺れる……! 酸素生成……)

サナ(体は麻痺したままだし、動かせるだけの植物も出せない……)

サナ(ソーラーセラピーで自然回復するまで待つしかない)

サナ(父さん、待たせてゴメン……!)


テレパスズラン(お父さん!)

名医(サナ、か……?)

テレパスズラン(そう。父さんの娘。今は根っこ越しに話してる)

テレパスズラン(ゴメン、まだ体が動かせないんだ)

テレパスズラン(とりあえず、止血と体力の回復だけしておくから。後は生身が動かせるようになってからね)

名医(ああ……)

ザッ

テレパスズラン(……誰?)

貴腐「やあ、君。ユニークな外見をしているねぇ」

貴腐「私の生み出す世界とは違う、生気に満ち溢れた緑だ」

貴腐「さっきは私の部下がごめんね? 彼女は医療行為を邪魔されるとヒステリーを起こすのがたまにキズなんだ」

貴腐「でもそういう、顔や声に出ないけど感情豊かなのが可愛いんだけどさ。ふふふふふ」

貴腐「おっと、レディーの前で他のレディーの話をするのは紳士として恥ずべき行為だったね。申し訳ない」

貴腐「大丈夫、君も綺麗だよ。お世辞じゃないさ!」

貴腐「いや、本当に……見れば見るほど、実に、私好みのレディーだ……」

貴腐「どうかな? 君、私のレディーにならないかい?」

貴腐「…………」

貴腐「恥ずかしがり屋さんなのかな?」

貴腐「…………」

貴腐「返事がないってことはOKでいいんだろう?」

貴腐「ああ……だけどすまない。私は忙しい身でね。常にレディーを連れ歩くことはできないのさ」

貴腐「そこで、君には菌の姿になってもらうよ」

貴腐「怖くないさ! 他のレディーたちも最初は怖がってたけど、今は満足しているよ」

貴腐「ほら、力を抜いて…………」

聖教会。

リウム「――で、俺の友達がグリエール家の奴だったらしい」

ミルズ「自称だけどね」

リウム「その大男は明らかに格が違った。上位職レベルの強さだと思うぞ」

ミルズ「ファイターとパン職人の子とは逃げる途中ではぐれちゃった」

テレサ「わたくし達はグリエール家のお二人を捕まえました」

ラファ「向こうにもグリエールがいたのですか?」

リウム「そっちもってことは、あいつが言ってたのは本当って事か……」

ミルズ「彼らを追いかけなくても、ここにいるグリエールに聞けば済むね」


ディアナ「黙秘権を行使しますわ!!」

神父「ディアナ……テレサにはそれが通用しない」

テレサ「彼は免罪符専門商人のフリー・ジャン・グリエールさんで、彼女は産業スパイのディアーラ・ナルス・グリエールさんです」

ミルズ「違法ハーブは専門じゃないんだ?」

ディアナ「あたくしは美しすぎる協力者の指示に従っただけですの!」

ディアナ「偶然通りかかっただけでハーブの事なんて知りませんわ!」

神父「俺はサキューラに頼まれて手伝っていた」

神父「サキューラが何を考えてこんな長続きしなさそうなビジネスに手を出したのかは知らない」

リウム「アイツ、友達に任された仕事だって言ってたよな?」

ミルズ「死の商人サマって言ってたね」

神父「ああ、ボスの意向だったのか……」

ラファ「今すぐボスの名前を吐くのです!」

ディアナ「ええ。よろしくてよ!」

ディアナ「あたくしの美しすぎる協力者、その名は……」

ディアナ「死の商人こと、ミリエーラ・グリエール様」

ディアナ「あの方は、あたくしよりも美しい、唯一のお方……!」

ディアナ「金に愛された至高の存在ですの!」

神父「免罪符の販売も彼女の発案だ……」

神父「半端な生まれの俺たちに仕事を与えてくれるんだ。俺にとって彼女は聖人に等しい」

テレサ「いいえ。罪深いお方です……」

テレサ「その方さえいなければ、グリエール家を追放された貴方がたは商売を諦め、誠実な生き方ができたかもしれませんのに……」

ミルズ「美しいキミ、偶然通りかかったって言ってたけど何してたの?」

ディアナ「あたくしを美しいと言ってくださるの!?」

ミルズ「いや、名前覚えられないだけ」

ディアナ「……。あたくしは、大統領就任式を生中継するディスプレイの、スピーカーを破壊するためにこの町に来ましたの」

ミルズ「それもミリエーラって奴の指示?」

ディアナ「もちろんですわ」

ラファ「ミリエーラは何がしたいのですか……?」

リウム「ウベローゼン市民に恨みでもあんのか?」

今回投下分は以上
グリエール家が某ンピースのシャーロット家のごとくワラワラ沸いてきますが
こちらはご覧のように一部を除いて雑魚しかいないので気にせず流してください

次回、安価で名前が決まったキャラの中で最も影の薄いと思われるあの人が再登場

フィナ「頼もう!!」

ウベローゼン市郊外、田園地帯の中にその建物はあった。

雑木林で囲まれた敷地に建つ独特の雰囲気を持つ屋敷は遥か東国の建築だ。

フィナ「ってここ来た事ある!」

テンパラス「そうなのか」

フィナ「この建物は道場じゃなくて神社って言うんですよ。前友達に聞きました!」

昨日、ソピアの友人の一人でありホワイトシーフの少女フィナは、剣術と火魔術を操る男テンパラスに、異国の武芸を学べる道場に誘われていた。

そして今朝、二人は剣士ギルドで待ち合わせしてこの道場こと神社を訪れたのだ。

フィナ「ね!? ここ神社ですよね!?」

神主「いかにも。だがこの神社は道場も兼ねておる」

神主「自由にお呼びください」


テンパラス「紹介しよう。私の剣の師だ」

侍「鏡都国より流れ参った浪人、生蔵と申すものでござる」

フィナ「キョウト国のナマクラさんですか。あたしはフィナです、よろしくお願いします!」

侍「雛も武士の技を学びに来たのか?」

フィナ「雛じゃないです」

テンパラス「いや、彼女は忍びの技を学びに来た」

侍「では、おみきの担当だな」

オミキと呼ばれた少女は巫女装束を着たとても小柄な少女だった。

顔は狐の面で隠されている。

フィナ「こんにちは。あ、ソフィーの先輩の巫女さんだ」

フィナはソピアがまだ普通の妖精だった頃のマリンを迎えに行く際に、一度この神社を訪れていた。

フィナ「えっ、ということはあたしも巫女修行するの?」

オミキ「すいません。私は巫女ですが、忍者でもあるんです」

フィナ「そっかー」

オミキ「今からするのは忍者の修行です」

フィナ「えっ、あたし忍者になるの?」

オミキ「何も聞いてないんですか?」

フィナ「何かね、テンパラスさんから逃げる技や隠れる技を学べるって聞いてきたんだけど……」

オミキ「その言い方は語弊があります……」

フィナ「どうするかなー、忍者怖そうだしなー」

オミキ「怖くないですよー」

フィナ「……ニンジャ、ヒトコロサナイ?」

オミキ「……他にどうしようもなくなったら」

フィナ「くぅ、その答えはずるい」

オミキ「ええとですね、忍者は潜入して情報を盗み出す専門家なんです」

オミキ「そういう仕事なので、できれば戦わずに済むのが一番いいんです」

オミキ「もし戦いになっても、相手の命を奪うまで時間をかけて戦ってないで、動きを封じてさっさと離れた方がいい事が多いんです」

フィナ「ターゲットのついでにおやつ感覚で人を殺すアサシンとは大違いだ!」

オミキ「どうします? 忍者の修行やります?」

フィナ「うん! でもその前に」

フィナ「そのキツネのお面とって。怖い」

オミキ「すいません、これはだめです」

フィナ「なんで」

オミキ「私は典型的なキョウト人の顔で、フルフィリアでは不細工なので恥ずかしいのです」

フィナ「隙あり!」バッ

オミキ「おっと」スッ

フィナ「ざ、残像!」

オミキ「私のお面を奪えたら免許皆伝ということでよろしいですか?」

フィナ「あ、絶対にできないやつだよこれ……」


オミキ「まずは基本の忍び走りです」

フィナ「こう?」

オミキ「基本はできているのですね?」

フィナ「まあ……いろいろあって」

オミキ「続いて、煙幕を貼った隙に背後に回り込む技」

フィナ「こうして……こうだ! できた!」

オミキ「物覚えがいいですね」

フィナ「一発で覚えないと殴られる日々を送っていたもので……」

オミキ「私はそんな事しません」

フィナ「それなら物覚え悪くなろう」

オミキ「やはり体罰は有りにします?」

フィナ「しまった、余計なこと言っちゃった!」

オミキ「壁の向こうにすり抜ける技」

フィナ「おお! すごい技だ!」

オミキ「まずは工具を用意します」

フィナ「ちょっと待って」

オミキ「次に、薄い壁、できれば木製がいいですね。それを探します」

フィナ「うん、もう手順は分かったから!」

オミキ「あら、そうですか? では今日は前もって作っておいたこちらの壁で練習を」

フィナ「夢が壊れたぁ!」


オミキ「攻撃を受けたと見せかけて、残像を攻撃された隙に背後に回り込む技」

フィナ「忍者って後ろに回り込むのが好きなの?」

オミキ「好きですね」

フィナ「もしかして、顔を見られたら負けっていうルール?」

オミキ「そういう節はあります」

フィナ「じゃああたしもお面つけよう! うさぎでいいかな?」

オミキ「これは関係ないです……」


オミキ「気合で自分にしか見えない光源を作り出す暗視術」

フィナ「だんだん魔法みたいになってきた」

オミキ「魔力はないです」

フィナ「そのうちニンジャビームとか撃ちそう!」

オミキ「似たような技なら……」

フィナ「あるんだ!?」

オミキ「しかし、シノビームはニンジャパワーを生み出せなければ使いこなせない大技……!」

フィナ「胡散臭い!」

オミキ「次は武道に属する忍術です」

オミキ「これは、刃に黒い気を乗せて振るい、相手の意識を奪う、春眠の術」

フィナ「その黒いオーラはどう見ても魔法なんだけど……」

オミキ「いいえ。さっきはニンジャパワーでごまかしましたけど。長く苦しい鍛錬の末に己の魂から迸る力、魂気というものです」

フィナ「こんき!」

オミキ「魂気の一つ、忍魂気はご覧のように墨の色をしていて、忍びの心得を身に付けた者が目覚めます」

オミキ「心を無にして辛苦に耐え、決して己の存在を誇示せず、雑念を捨てひたむきに任務を遂行する事」

オミキ「それこそが忍びの心得です」

フィナ「うん。それ絶対あたしには無理だ」

オミキ「あっ、大丈夫ですよ。どうぞ受け取ってください」スッ

パスッ

フィナ「……」

フィナ「魂気、手渡ししちゃったよ……!」

オミキ「見た目より軽いでしょう?」

フィナ「これ、ダメでしょ! 長く苦しい鍛錬した人が損してるじゃん!」

オミキ「長く苦しい鍛錬をした私が許可したので良いのです」

フィナ「はあ」

オミキ「でも、二次配布はやめて欲しいですね」

フィナ「しないから! これ渡された人どんな顔すればいいの!?」


オミキ「では、武器に魂気を纏わせてください」

フィナ「……」

オミキ「何か問題がありましたか?」

フィナ「……すいません。あたし、武器が握れないんです」

フィナ「刃物を持とうとすると手が震えて……つい昨日ショックな出来事があったばかりで……」

フィナ「気が刃を覆ってるから、斬れないのは分かってるんですけど……」

フィナ「この技はまた今度、お願いします! ごめんなさい!」

オミキ「無理強いはしません、ゆっくりやりましょう!」

オミキ「修行のコツはマイペース。嫌々やってもあんまり身に付きません」

オミキ「自分を追い込みたくなった時に追い込めばいいんですよー」

フィナ「なんて優しい……! 師匠とは大違いだ……」

オミキ「?」

侍「あっぱれぬし! 己を刀とするのだ!」

テンパラス「うおおおおお!!」

向こうでは男二人が金色の気を纏って剣道の稽古をしていた。

双方とも刀の間合いには入っていないが、斬撃が宙を飛び交っている。

フィナ「あれも魂気?」

オミキ「武魂気ですね」

フィナ「そうだ。さっきの魂気返しておかないと」

オミキ「いえ! それはしまっておいてください」

フィナ「しまうって、あたしの魂の中とかに?」

オミキ「かばんでもいいですよ」

フィナ「……入らないや。後でいらない道具を整理しないとなー」

フィナ「……どうしよう?」チラッ

オミキ「吸精……はフィナさんはできないので……」

オミキ「とりあえず今のところは口から入れてしまいましょう」

フィナ「んぐ……梅の風味!」

オミキ「喉につまらせないようによく噛んでくださいね」

休憩時間。

オミキ「おやつはいかがですか?」

フィナ「いただきます! これなんですか?」

オミキ「羊羹……アズキゼリーです」

ゴロゴロ

フィナ「あっ、鞠が」

カッ

子狐「我への供え物か?」

オミキ「違います。タケミタマ様、鞠に戻ってください」

子狐「何とぞんざいな扱いなのじゃ……」

フィナ「子狐が喋った!」

フィナ「偉そうなのに声が可愛い。ペットですか?」

オミキ「フルフィリアの言葉で言うなら、使い魔ですね」

子狐「神に向かって使い魔とは失敬なー!」

フィナ「マリンみたいなものか。そういえば、ボールに入れるのって」

オミキ「ソフィアさんの提案を採用しました♪」

フィナ「怒られなかった?」

オミキ「神主さんには叱られましたが納得してくれました」

フィナ「そうじゃなくて、この子狐にさ」

オミキ「フルフィリアに来てから気付いたのですが……偉いのは使役してる私の方ですよね」

子狐「近頃は全く言う事を聞かなくなってしもうた。正直辛い」

フィナ「苦労してるんだね……。おいで。撫でてあげる」

子狐「やめーい! 我は神なるぞ! 気安く触れるでないぞ娘ー!」

オミキ「ペット用の櫛です。お使いください」スッ

フィナ「ありがと!」

子狐「ええい触るな! そのほうは穢れておるんじゃー!」

フィナ「あっ……」ポトッ

オミキ「櫛を落とすくらいショックだったんですか!?」

フィナ「あたし……やっぱり、血に塗れてるのかな……」

オミキ「そんな変なにおいはしませんよ?」

子狐「先ほどからの身のこなしでまさかとは思っていたが、堅気の者ではないな?」

オミキ「タケミタマ様。聞かれたくない事を聞くのは失礼です。お夕飯抜きにしますよ」

フィナ「いや、話させて欲しいな……」

フィナ「騙してるようで、悪いからさ……」


オミキ「アサシンの先生が……」

フィナ「うん。友達が何とか取り持ってくれて縁は切れたと思うけど、あたしの個人情報は協会にも知られてる」

フィナ「今も、すごく怖い……。帰ったら家族が殺されてるんじゃないか、とか……」

フィナ「もしかしたら、オミキさんたちキョウトの人たちにも迷惑がかかるかも……」

オミキ「迷惑だなんて、とんでもない。もしフィナさんを襲ってくるならここに攻め込んで来て欲しいくらいですね」

オミキ「アサシン協会が来ても私達が守ってあげます。お任せください!」

フィナ「な、なんで? あたし、初対面だよ」

フィナ「大きな組織からあたしを守るなんて、そんな義理がどこに……」

子狐「同じ食卓を囲んだのだから身内の一人じゃ」

オミキ「まあ、羊羹ですけど……」

オミキ「キョウト人は縁を大事にするんです」

オミキ「だから、そんなことで遠慮しないで、今後もどんどん遊びに来てくださいね」

子狐「遊んでどうする! 修行じゃ修行ー!」

フィナ「……オミキ先輩」

オミキ「はい。先輩?」

フィナ「抱いて!」ガバッ

オミキ「わっ!」

フィナ「うう、ぐす……」

オミキ「……」

子狐「娘がその師匠に従っていたのは、安心できる居場所、前に立って導いてくれる大人を求めていたんじゃろう」

子狐「これからは主がその立場。期待に応えてやりなさい」

子狐「ほほほっ、神の命令じゃ」

オミキ「命令する立場は私ですが……」

子狐「そこは首を縦に振れぇ!」

フィナ「……でも、正直大人っぽくない」

オミキ「え」

フィナ「なんか、あたしが抱きしめてるような感じになってる」

フィナ「先輩、ちっさ」

オミキ「……すいません」

子狐「なぜ謝る!」

オミキ「落ち着きましたか?」

フィナ「はい、すっかり!」

フィナ「ところで、一つ気になったんだけど……」

オミキ「なんでしょう?」

フィナ「完っ全に忘れてたけど、勝手に忍者のスキル学んじゃっていいのかな」

フィナ「上位職は下位職ギルドである程度名声を上げないと紹介してもらえない事を今思い出して……」

オミキ「紹介されなくても自分から探すのは禁止されていないのでは?」

フィナ「あ、そっか」

オミキ「また、技の系統が似ているだけで、本来ホワイトシーフと忍者には何の接点もありません」

子狐「本場月宿の忍者が、己の技の伝授を異国の何でも屋ごときに咎められる謂れはないのう」

フィナ「あっ、でも……受講料とか、かかりますよね」

オミキ「えっ、お金取ると思ってたんですか?」

フィナ「まさか、ボランティアってわけじゃないでしょ?」

オミキ「私達はキョウトの武芸に興味を持ってくれるだけで十分なんです」

子狐「まー、人数が増えすぎたら考えるかも知れんが……」

オミキ「知名度が低いというか影響力が低いというか……あんまり誰も来ないんですよね」

フィナ「そうなんだ? 国の名前は知ってる人多いのに。遠いから?」

フィナ「あ、ごちそうさまでした!」

フィナ「友達にもお土産に1つ貰っていけないかな?」

オミキ「では、食べた分と2つで200Gになります」

フィナ「お金取るのっ!?」

オミキ「キョウトから運んできていて在庫が少ないので……。すいません」

テンパラス「おや、先に休憩に入っていたのか」

フィナ「お先してまーす」

テンパラス「時にフィナ、お前は選挙には行ったのか?」

フィナ「行ってません。あたしには関係ないと思って」

テンパラス「選挙権は16歳からある……」

フィナ「年齢の問題じゃなくて、いきなり国の代表を決めようって言われても、どういう基準で選べばいいか分かんないし……」

フィナ「しっかり勉強してきた頭のいい人たちで決めてくださいって感じです」

テンパラス「読み書きができるならばそれほど敷居は高くないぞ」

テンパラス「新聞だ。たまには読むべきだな」スッ

フィナ「ふーん……って何この一面!」

フィナ「鉱山の町シスヤタが反乱勢力の手に堕ちたって……!」

フィナ「なんで誰も教えてくれなかったのー!」

テンパラス「知らなかったのか?」

オミキ「私達もすでに聞いていましたが……」

フィナ「何でも屋に行けば黙ってても噂話は入ってくるけど、今日は行ってなかったから……」

フィナ「…………あ」

~フルフィリア全国新聞~

■■シスヤタ市 逃亡貴族により占拠■■

(中略)

●“強者”13名、奮戦も敵わず

共和国軍は〇日朝会見を開き、強者の勲章を授与された11名を含む共和国軍兵士300名あまりがシスヤタ監獄に囚われている事を発表した。

また、シスヤタ市で精肉店を営む“悪食”こと○○氏、ウベローゼン市のホワイトシーフギルド所属“凶爪”こと○○氏の両名が死亡した事も明らかになっている。


フィナ「師匠……死んだんだ」

テンパラス「……」

オミキ「……」

フィナ(なんだろう。悲しめばいいのか、喜べばいいのか、分かんない)

フィナ(これで、少なくとも師匠があたしを追いかけてくることは絶対になくなった。だけど……)

フィナ(もう絶対に仲直りできることもなくなった)

フィナ(……なんて、無理なんだけどね)

フィナ(それでも、師匠にも可愛いところがあったし、頼りになることも多かった)

フィナ(そんなことを考えてしまうのは、もう師匠がいなくて安心してるからなのかな……)

ギュッ

フィナ「……うひゃっ!」

オミキ「フィナさん……今は好きなだけ泣いていいんですよ」

フィナ「……先輩、手、冷たっ!」

オミキ「えええええ!?」

フィナ「うわぁびっくりした。あ、でもお陰で難しい事考えてたけどどうでもよくなったよ」

フィナ「ありがとね、先輩!」

オミキ「扱いが、思ってたのと違う……。先輩なのに」

子狐「普段の我の気持ちが分かったか?」

オミキ「唐突に手を握るのは良くなかった……? しかし短時間で二度も抱きしめるのはなんというか……」

子狐「無視か! なぜ我の扱いが一番下なのだ! 神なのに!」

テンパラス「本当にもう平気か? 白魔術師の知人に、その師匠と話せるよう私から頼んでも良いがどうする?」

フィナ「もう、大丈夫! だってもうあたしにはオミキ先輩がいるから!」

テンパラス「依存しすぎるのも考え物だぞ」

フィナ「別にいいですよね、先輩!」

オミキ「はい!」

侍「困ったものでござるな」

フィナ「二人は付き合い長いですけど、仲良くないんですか?」

テンパラス「ナマクラは師であるがライバルでもある。ナマクラを斬った時、私は剣士としてまた一歩成長するのだ」

侍「拙者とて、いざとなればあっぱれぬしを斬る覚悟はできておる」

オミキ「男の人って怖いですねー」

フィナ「ねー」

「こんにちは! 神主さんいますか!」

オミキ「あら、この声は」タッタッタ

オミキ「いらっしゃい、タロウさん!」

「オミキちゃん、わざわざどうも。靴が多いね。お客さん来てる?」

彼の名はタロウ。キョウト雑貨の店『鏡和』の主人であり、2スレ目にしか登場していないレアキャラだ。

テンパラス「騒がしい奴が来たな」

侍「うむ」

タロウ「そこの子は初対面じゃないか。初めまして! 僕は行商人のタロウというんだ」

タロウ「半年前にキョウト国からやって来たんだけど、聞いてよ!」

タロウ「フルフィリアの人達はキョウト国をひどく誤解しているんだ!」

タロウ「僕は本当のキョウト国というものを広く知らしめたい! と、常々思っているんだ。そういうことでよろしく!」

フィナ「おおう、すごく熱意を感じる! あたしはこの町で生まれ育ったフィナですよろしくお願いします!」

フィナ「あたしは今日オミキ先輩に弟子入りしたばかりなんですけど、でもキョウトがすっごく大好きになりました」

フィナ「いつかキョウトまで行ってみたいので、ぜひ色々教えてくださいタロウさん!」

フィナ「ついでに何か試供品ください!」

侍「お雛も騒がしい娘だな」

テンパラス「ああ。そしてナマクラ、一瞬誰の事を言っているのか分からなかったぞ」

タロウ「そもそもキョウトってのは天下統一されるまでは複数の国だったわけだけど、その中でも歴史があってかつ大きいのが鏡都と恵都で」

フィナ「キョウトの中にキョウトがあるんだ? 紛らわしい!」

タロウ「いいところに気が付いたね! そう、首都の名前を国名に冠しているわけで、でも実は恵都の方が町としては大きいから……」

侍「……」

オミキ「入る隙が……」


フィナ「ええっ!? 挨拶替わりにハラキリしないんですか!?」

タロウ「切腹したら死ぬからね!」

フィナ「キョウトの人ってお腹を切ってもピンピンしてると思ってた!」

フィナ「じゃあ、フルフィリアでは有名なフジヤマ王国ってどの辺にあるんですか?」

タロウ「そんな国はない! 変なものを有名にしないでくれないかなもう!!」

テンパラス「フィナ、もうそろそろ……」


2人のマシンガントークは数十分の間止まることはなかった――


タロウ「そういえばなんか欲しいって言ってたね。これあげるよ。鈴!」

フィナ「独特なデザインだけど、これどう使えば?」

タロウ「地元の若い女の子には髪飾りとして使う人もいるよ」

フィナ「おー、体を揺らすたびに音がする」チリン

オミキ「タロウさん! 私にも一ついいですか。お金は払いますので」

タロウ「へえ? オミキちゃんが自分から欲しがるなんて珍しい。一個くらいあげるよ!」

オミキ「ありがとうございます」

オミキ「お揃い!」チリン

フィナ「えへへ」チリリン

テンパラス「ふう、ようやく会話に割り込めたな」

子狐「タロウ、すまぬが、尋ねて良いか」

タロウ「ナマクラさんも僕に質問があるんだ? 分かる範囲でなんでも答えるよ!」

子狐「そのほうは如何なる用件で神社に参ったのだ?」

タロウ「ああごめん。うっかりしてた」

タロウ「ジュウリョウさんから、至急集まって欲しいって伝言!」

オミキ「至急の知らせだったんですか……!?」

子狐「早く申せ!!」

フィナ「どうしたんですか?」

オミキ「すいません。急ぎのお仕事が入ったので、今日の訓練はおしまいです」

子狐「また明日じゃー! ただし、我らが無事明日を迎えられればな」

侍「縁起でもない事を申さんでくだされ」

オミキ「フィナさん、また明日です!」

フィナ「バイバイ! 先輩!」

フィナ「行っちゃった……」

テンパラス「向こうにも用事があるのだから仕方ないだろう」

神主「もし、お二人とも」

フィナ「あ、神主さん」

神主「私の神社の祭神、そして巫女と仲良くなったようですな」

フィナ「はい! とっても優しい人たちでした」

神主「それは良かった」

神主「ですが、お主に一つだけ頼みがある」

神主「どうか、お面だけは取らないようにしてあげてください」

フィナ「どうして隠してるんですか?」

テンパラス「その理由を知られたくないからだろう」

フィナ「それもそっか」


フィナとテンパラスの二人は神社を後にし、魔法街へと向かっていた。

短い数時間であったが、昨日までの経験でどん底にあったフィナにとっては希望に満ちた時間であった。

テンパラス「お前も魔法街に用があるのか?」

フィナ「友達(エルミス)が待ってそうな気がするし、誰かと話したいなーと思って」

フィナ「あ、ところで気になってたんですけど、あっぱれぬしって誰です?」

テンパラス「私だ」

フィナ「テンパラスはあくまで世を忍ぶ仮の名前だった、と……」

テンパラス「違う。あの侍、ナマクラは頭が悪いのだ」

フィナ「酷い言いざま」

テンパラス「初対面でこそ正しくテンパラスと呼んでいたが、その日の内にてんはれすに変化し、翌日には何があったのか、あっぱれぬしになっていた」

テンパラス「神主曰く、天晴主と向こうの文字で覚えたのが原因かもしれんらしい」

フィナ「なるほど。じゃああたしもこれからあっぱれぬしって呼ぶ事にしよう」

テンパラス「ふん、お前が最終的にどう呼ばれるようになるか楽しみにしておこうか」

フィナ「あたしは短いから関係ないもんね!」

テンパラス「いいや、余計な文字を付けたされるに違いない。私も一度、テンプラパラダイスと呼ばれたことがある」

テンパラス「事実、帰る直前の時点ですでにお前はお雛になっていたからな」

フィナ「オミキ先輩とお揃い……♪」チリン チリン

テンパラス「……」

フィナ「タロウさんとも気が合ったし、明日が来るのが楽しみだ!」

フィナ「キョウト最高ーっ!」

テンパラス「……大丈夫か? フィナよ。お前は精神的に参っているように感じる」

テンパラス「お前は軽率そうに見えて割と慎重な人間だったはずだ」

フィナ「モンスター相手ならそうですけど、喋れる人ならすぐ友達でしたよ!」

テンパラス「そうか? 人は、自分で自分の事はよく見えないものだ。私は心配だ」

フィナ「あっぱれさんの癖に、余計なお世話!」


テンパラス(昨日の今日だ……。詳しくは聞けていないが、アサシンの弟子をやめる際に一悶着あったのは間違いない)

テンパラス(そして、元師匠の死に対する自身の感情が如何なるものか、自分自身で理解できていない印象があった)

テンパラス(心に大きな隙ができている)

テンパラス(今のフィナは月魔術の類を使われずとも、恐怖に支配され、そして容易く魅了される)

テンパラス(しばらくの間、何事もない事を祈るしかない……)

ウベローゼン市、魔法街の広場に面した一画にある魔法の仕立て屋。

補助魔法がエンチャントされた装備品を販売しているこのお店の店主は、オートマトン(自動人形)の可憐なフルフィリア人形である。

クリス「魔法の仕立て屋、開店ですっ。今日は誰か買っていってくれるかな?」

約50年の間、彼女には名前がなかったが、ソピアを含む数名からは制作者の名前をとってクリスティと呼ばれている。

クリス「オーナーさんと月魔術師のお姉さんのためにも、どんどん売りましょー」

この店のオーナーはソピアの友人であるフローラである。

売り上げは芳しくないが、クリスティの目的はお店を存続させる事だけなので、利益は全額フローラのものになっている。

そんなのんびりとした経営競走などとは無縁のお店に、魔の手が迫っていた。


クリス「あれれ? お店のドアの前で誰か待ってますね」

カランカラン

クリス「いらっしゃいませ、おはようございますっ!」

ネル「ボクと一緒に来てもらうヨ」ガシッ

クリス「え?」

テレポート。

店の入り口にいたクリスティは、一瞬にして魔法街の広場に移動させられた。

クリス「え?」

バルザック「爆薬、点火だァ!」

クリス「え?」


そして広場の中央で、クリスティの足元が大爆発。

市民「おい何があった!」

魔術師「キャー!」

バルザック「魔法街のみんな! 落ち着いて逃げてくれ! モンスター退治だ!」

ネル「暴走オートマトンが出たんだヨ!」

市民「な、なに!?」

魔術師「手伝います!」

ガルァシア「……いや、良い。敵は強力だ」

ネル「キミタチには避難誘導をよろしく頼めないカナ?」

魔術師「はい!」


旅人「危険なモンスターが暴れているらしいぞ!」

カフェ店員「まさか、吸血鬼の再来なの!?」

クリスティ「……え?」

町はパニックに陥った。

クリスティはあまりに突然の出来事にフリーズしていた。

バルザック「お、割と頑丈だな。よかったよかった」

ネル「壊れちゃったら話聞けないもんネ」

クリスティ「え?」

ガルァシア「……計算してから爆破すべきだろう」

クリスティ「あの……なんなんですか、みなさんは?」

クリスティ「わたしが腕のいい職人さんに修理してもらったばかりで、特殊なコーティングをされていたから事なきを得ましたけど……」

ガルァシア「おい、わざわざ動きを封じずとも話を聞けそうだぞ」

ネル「でも町の人に退治するって言っちゃったしネ……」

バルザック「まあ、こうなっちまったらあれだな」

バルザック「ほどほどに破壊しながら会話を試みようぜ」

ネル「賛成!」

ガルァシア「多数決ならば仕方ない」

クリスティ「なんでわたしが壊される流れなんですか!?」

クリスティ「わたしはただお店でお洋服を売っているだけなのに!」

ガルァシアが魔法陣でクリスティの脚を止める。

その周辺にバルザックが大量の爆弾を設置。

ドオオオン!

バルザック「やったか!?」

ネル「噴射魔法で逃げタ!」

ガルァシア「追うぞ!」

朝、唐突に始まった鬼ごっこは数時間続いた。

クリスティ「いやああああ! わたし何にも知らないんですうううう!」

ネル「いいやキミは知っていル! そう、あの事を!」

クリスティ「何をですかー!?」

バルザック「自分の胸に聞いてみやがれってんだ!」

クリスティ「わたし悪いモンスターじゃないですううう!」

ガルァシア「……確かに、全く反撃してこないようだが」

バルザック「おいガル! そっち行ったぞ逃がすな!」

クリスティ「どうしてこんなことになったんでしょう……ぐすん」


フィナ「やーいあっぱれぬしー」チリンチリン

クリスティ「ああっ! ちょうどいいところに殺し屋さん!」

フィナ「うぇ!? 仕立て屋の!?」

クリスティ「助けてくださいいいい!」

フィナ「人聞きが悪いから殺し屋さんはやめて!」

テンパラス「追っているのは、奴らか」

バルザック「俺ぁもう疲れたわ! あの赤い剣士にも手伝ってもらおうぜ!」

ガルァシア「おや……彼女は昨日カフェに来た殺し屋見習いとかいう奴だ」

ネル「ンー? フィナちゃんだっケ?」

フィナ「げっ、あんたたちは性悪名探偵の連れの!」


フィナは昨日、エルミスと共に国内ナンバーワンの名探偵が居座っているカフェを訪れていた。

そこにいた腕利きの戦士三人組が彼らだ。

酔っ払いボマーのバルザック。性別不詳エスパーのネル。比較的常識人の岩魔術師ガルァシア。

逃亡生活初めの頃のソピアにトラウマを植え付けた魔境チームである。

フィナ「なんで仕立て屋の子がこいつらに追われてんの!?」

クリス「聞いても教えてくれないんですっ!」

フィナ「あんたたち! 話せばわかる! 話さなければわからない! 話そうよ!」

ネル「でもその娘はオートマトン! 危険なモンスターなんだヨ!」

テンパラス「……私にはそうは思えん。邪魔をされたくなければ構えを解け」

バルザック「どうする?」

ガルァシア「……従おう。この剣士と戦う理由はない」

ネル「チェッ」

フィナ「テンパラスさん……あっぱれです!」

テンパラス「やめろ。……話ができる相手は安全だったろう?」

テンパラス「現状、この者たちの方がモンスターに見えた。それが仲裁の理由だ」

バルザック「俺っちをモンスター扱いかよオイ!」

ネル「ボクらは正義の味方なのにネー?」

フィナ「正義の味方?」

ガルァシア「……俺が代表して説明しよう」


フィナ「つまり、この町では違法ハーブが異常に流行ってて、このままじゃ流通させてる組織に町が乗っ取られるから」

ネル「ボクたちは町を守るために立ち上がった!」

バルザック「んで、シュンの奴が魔法街広場の仕立て屋にいる人形が首謀者に繋がってるなんて言うもんだからよぉ」

クリス「ひどい濡れ衣ですー!」

フィナ「シュンってあの嘘つき探偵じゃん……」

ネル「マアネ」

バルザック「でも他にヒントもねぇしさぁ」

テンパラス「真偽も分からん情報で騒ぎを起こすな」

ガルァシア「嘘、か……」

フィナ「しんみりと呟いて、何かあったの?」

ガルァシア「昨日、俺がお前の連れの腕に刻まれた、人質用のルーンを消そうとしただろう?」

フィナ「エルミスの? あの探偵に簡単に消せるって言われてた」

ガルァシア「実はあのルーン、俺の実力では到底消せるものではないということを後で知った」

ガルァシア「シュンは、ルーンを消せなくて焦る俺を眺めて楽しみたかったらしい……」

フィナ「うわぁひどい奴だ」

テンパラス「よくそんな男の発言を信じる気になれたものだ……」

フィナ「で、一応聞くけど、何か知ってるの?」

クリス「違法ハーブなんてものが流行ってる事すら知りませんでした! 人形嘘つかない!」

ガルァシア「悪かった。シュンには俺たちからきつく言っておく……」

ネル「なんかおかしいと思ってたんだよネ。店にはハーブの痕跡もないし、思考を読んでも心当たりなさそうだったしサ」

バルザック「仕方ねえ。今回はこの人形をぶっ壊したら大人しく帰るか」

クリス「はいっ。これで一件落、ええええええ」

フィナ「どうしてそうなるわけ!?」

バルザック「どうしてって、一応モンスターが町中にいたら討伐しとかないとだろ」

ネル「町の平和を守るのサ」

テンパラス「……確かに、町にモンスターが現れた際の通常の対応はその通りだ」

テンパラス「市民権を得ている、または人形師ギルドに所属する使役者がいるなら話は別だが……」

クリス「市民権ってどうやって取るんですか?」

バルザック「よし、やろう」

クリス「きゃーひとでなし!」


クリスティの体中に、爆弾が取り付けられる。


フィナ「待って待って! この子はあたしの親友の仲間……」

フィナ「ううん、この際所有物でいいや!」

クリス「所有物なんですかわたし!?」

フィナ「人の物を勝手に壊すのはいけないんだよ!」

テンパラス「正論だな。実際の対応は審議が必要になるであろうが……」

ネル「ンー、だったら交換条件でどうダイ?」

フィナ「……条件聞かせて」

ネル「キミ、殺し屋の弟子なんでショ。そのアサシンのスキルを使って、本当の首謀者の手がかりを探し出してヨ」

ネル「そしたらこのオートマトンは見逃してあげル」

バルザック「おぅ、それいいな。俺ぁ暴れたいだけだができれば悪者相手に暴れたいもんな」

ガルァシア「他に頼めそうなアサシンのガドーは近頃姿を見ないからな……」

フィナ「ぐぬぬ、何でも屋からガドーくん呼んで来ようと思ったのに」

ガドーはフィナより年下のアサシンであり、死んだ師匠の後輩であった。

テンパラス「アサシンに接触する気だったのか……?」

フィナ「そういえば不味かった。危ない危ない」

テンパラス「だが、どうするんだ。お前は今アサシンのスキルを使いたくはないだろう」

フィナ「でも、断るわけにいかないし……」

フィナ「武器を使わない技術なら、何とかなるかも……」

ガルァシア「……了承ということで構わないな?」

フィナ「ええいわかりました! 何でも屋、ホワイトシーフとして、違法ハーブの業者探しの依頼引き受けた!」

クリス「わーい! 助かったー!」

クリス「ありがとうございますっ、殺し屋さん♪ わたしの大恩人です、殺し屋さん♪」

フィナ「やっぱり助けるのやめようかな……」

クリス「ええっ!?」

テンパラス「彼女の事はお雛さんとでも呼べばいい」

クリス「了解です!」

フィナ「ちょっと!? じゃあこの剣士はテンプラさんでいいからね!」

クリス「はい、覚えました!」

テンパラス「何をする! そこはあっぱれで良いだろうに……!」

バルザック「こいつがむっつりさんでこいつが美少女くんだ。俺っちの事はイケメンさんでよろしくな!」

ガルァシア「バルザック貴様……!」

ネル「ウワー言ったもん勝ちダ!」

クリス「いいえ! 通り魔とはよろしくしませんっ」

テンパラス「まあ、当然そうなるな」

フィナ「うん。正解」


フィナ(もめごとには首を突っ込みたくなかったけど、この子が壊されたりしたらフローラが悲しむよね……)

フィナ(誰かを傷つける仕事じゃないし、フローラのためだから仕方ない)

フィナ(アサシンの技を活かすのは今回だけ。我慢しよう。きっと無事に終わるから……)

今回ここまで。
神社とタロウ再登場のキョウト回でした。フィナは今後戦う機会少なめなので安価でのスキル訓練は割愛。
ソピア不在ウベローゼン編は残り半分くらいです。

同刻、その首謀者を追いつめていたのはパン屋の職人見習い、イリスだった。

マリー「このマリーGG様を二度までも!」

ビオーラ「おめぇ、パン屋向いてないだ! 転職すべきだべ!」

ギャル「今治療す、ギャッ! うぜー……」

イリス「うざくて結構。あんたたちが弱いのが悪いんだよ」

違法ハーブ販売業者の元締めとその配下二人は、ただのパン屋を相手に完全に戦意を無くしていた。

ギャル「つーか、どうやってここまで……」

イリス「あ? でかぶつならフェイランに任せてるよ。十分足止めはできてるみたいだねぇ?」

イリス「さっ、親玉の死の商人とやらを呼んでもらおうか?」

ピロピロリン

ギャル「通信機……!」

イリス「貸しな」バッ

イリス「もしもーし。ウチ、イリスって言います。今さっき、サキューラちゃんをフルボッコにしました」

イリス「あんたが死の商人?」

ミリエーラ『…………』

イリス「ふーん、だんまり。だったら、子分共は大型モンスターの巣に連れて行って、アジトには火を点けさせてもらうわ」

ミリエーラ『……この計画は私が進めているものです。邪魔しないでください』

イリス「は? 私が、って何様なのあんた? ウチの知り合いじゃないでしょ」

ミリエーラ『ミリエーラです…………貴方、ゲドさんでしょう?』

イリス「おや、君だったか」

ギャル(口調が、変わった?)

イリス(ゲド?)「無闇に僕を呼び出さないで欲しいのだが」

ミリエーラ『あなたが駒を管理しきれていないのが悪いんです』

ミリエーラ『駒を増やしすぎて手にあまっているのでは?』

ゲド?「見くびらないでくれないか。わざと自由にさせているのさ」

ゲド?「駒の自由意志でどこまで君を追いつめられるかの実験。中々有意義だと思わないかね?」

ミリエーラ『分かりあえませんね』

ゲド?「そう言うな。僕たちは今まで二人三脚で動いて来た仲間じゃないか」

ミリエーラ『それが仲間をも陥れる罠を仕掛けた人の言葉ですか?』

ミリエーラ『生憎、罠はすでに解除させていただきました』

ゲド?「なんて事をするんだ」

ミリエーラ『ですから、計画の邪魔なんですよ』

ミリエーラ『もうすぐ町に“彼女”が帰ってきます。そのための仕込みが無駄になりかねません』

ゲド?「だからそれをやめて欲しいと言っているのだがね。“彼女”の身に何かあったらどうするんだ」

ミリエーラ『“彼女”があなたの罠に巻き込まれる恐れは?』

ゲド?「そうならないように僕が手引きしているんじゃないか」

ミリエーラ『とにかく、今は帰っていただけませんか?』

ゲド?「分かった。君の作戦の成功を願っているよ」

ゲド?「これ以上の邪魔が入らなければいいのだがね?」


ゲド?「では、通信機は返そう。さらばだ」

ギャル「……あんた、何? ボスの敵? 味方?」

ゲド?「仲間の敵だ。お互いにそう思っている」

ギャル「意味わかんないし……」


物陰。

フェイラン「何が起こってるあるか? イリスは敵だたある?」

フェイラン「でっかいのが追い付く前に、ここは私が追及ね!」

(今見たことは忘れたまえ)

フェイラン(頭の中に声が……!?)

パン屋ギルド周辺、美食通り。

二人は、いつの間にかそこに立っていた。

イリス「あれ?」

フェイラン「あいや?」

イリス「ウチら、何してたっけ?」

フェイラン「ううむ……違法ハーブの売人のボスをとっちめに行ったところまでは覚えてるある」

イリス「あっ、確か死の商人とかいうのを追ってたんだよ!」

フェイラン「実に物騒な名前よろしね」

イリス「違法ハーブを追ってただけなのに、この件、とんでもないのが絡んでそうだよ」

フェイラン「私たちの手に負えない相手あるか?」

イリス「いいや。ちょっと食事休憩したらまた探しに行くよ!」

フェイラン「承知あるね!」

聖教会。

テレサ「では彼らをよろしくお願いします」

シスター「は、はい!」

神父「おいディアナ。怪盗なんだから縄抜けくらいできないのか?」

ディアナ「この教会ではあたくしの美しさが封じられていますわ。すなわち、不可能でございますの!」

神父「封印でブスになるのか、お前……」


リウム「とにかく、死の商人ミリエーラ・グリエールって奴を捕まえない事には解決しないらしいな」

テレサ「違法ハーブの販売を諦めさせればそれで解決ですが……」

ミルズ「まずは最低でもあのギャルを捕まえないといけない。それで諦めなかったらミリエーラもだね」

ラファ「はあ……面倒臭いのです」

再度裏路地に向かい首謀者を捕まえるべく、聖教会の入り口を抜ける一行。

そこに、教会の壁にもたれかかり水筒でコーヒーを飲む一人の男がいた。

シュン「ミルズちゃんだな?」

ミルズ「誰?」

シュン「探偵ギルドのシュン。君と話すために待っていたんだ」

ミルズ「悪いけど今は暇じゃないよ」

シュン「君達の目的にも関係あるかもしれないが、いいのかい?」

テレサ「この人……心が読めません」

シュン「思考に蓋をするのも探偵の得意技ってもんさ」

ミルズ「話したいならここで話してくれないかな」

シュン「……まずはミルズちゃんにだけ話しておきたい事なんだ」

シュン「安心してくれ。僕に戦闘能力は無い。いざとなったら僕を倒して進めばいいさ」

リウム「どうすんだミルズ? 倒すか?」

ミルズ「……先に行ってて。後で追いつく」

場面は、リウム達が再度訪れる少し前の裏路地へ戻る。

ギャル「ボス……さっきのは? 詳しく教えてよ」

ミリエーラ『彼女は単なる彼の駒でしかなかったということです』

ミリエーラ『だからこそあなたは助かりました。これ以上はナイショです』

ギャル「ま、助かったからいーけど……」

のしのし

ギャル「ジュウリョウさん、おかえりー」

力士「済まぬ、サクラ。敵を取り逃がした。よもや四股の下をくぐって行くとは……」

ギャル「そいつなら帰ったし。なんか知らんけどボスと口喧嘩して負けたらしーよ」

力士「何事もなければ良かった」

侍「桜!」

オミキ「ご無事ですか!? すいません、タロウさんから話を聞くのが遅れてしまい……」

ギャル「あー、アタシは全くなんともないから」

オミキ「妹君が気絶なさっているようですが……」

ギャル「あいつらは繋ぎってゆーか……盾だし」

ギャル「オミキさんとナマクラさんがいればもう用済み、的な……?」

タロウ「一人忘れていやしないかな! ほら!」

ギャル「あっ、ごめん! タケミタマ様も、よろー!」

子狐「うむ!」

侍「一大事なり。全戦力を結集してお守りしようぞ」

力士「我ら用心棒が揃ったからには、もはや指一本触れさせん」

オミキ「頑張りましょう、ナマクラさん、ジュウリョウさん、そしてタロウさん!」

タロウ「オミキちゃんは誰かと違って優しいなあ!」

子狐「っと、誰か来るぞ。構えよ! 我、偉い! 役立った!」

リウム「見えたのは、こっちだったな!」ダッ

ラファ「はい! ほら、いますよ!」

力士「先程逃げた内の一人だ。ここは俺が」

侍「否、全員でかかるべきだ」

ラファ「この『神の目』からは逃れられな……見つけた時より敵が増えてるのです!?」

リウム「数時間前の大男もいやがる……! テレサさん、頼んだ!」

足元に聖なる魔法陣を発生させたテレサが二人の前に出る。

テレサ「初めまして。聖教徒のテレサと申します」コォォ

テレサ「貴女のお仲間のフリー氏とディアナ氏は捕らえました。まずは話し合いを……」パァァ

力士「ぬんッ!」スパァン

侍「はっ!」シュッ

ガキィン パリン!

テレサ「うっ……!」


ラファ「あ、ありえないのです! テレサさんの聖光壁が……!」

リウム「おいお前! 何者だよこいつら!?」

ギャル「何者って……同郷の仲間って奴だし」

ギャル「アタシの本当の名前はサクラ・ユリガハラ……キョウト人とのハーフだから、捨てられたんだよ……パパに」

リウム「お前、ころころ本当の名前が変わるな……」

ラファ「あなたの本名とか過去とかどうでもいいのです」

ギャル「はあ、まあ詳細を話してやるつもりもないんだけどさ……」


力士「つっぱりつっぱりつっぱりィ!」ガッ ガッ ガッ ガッ

侍「猪突の構え…………ハァッ!」ダンッ!!

テレサ「攻撃をお止め下さい……!」サッ パリン! キンッ! パリン!


ラファ「隙あり! 聖なる裁きを食らうのです!」

チリン

ラファ「ぎゃふ! げほごほっ! 一体どこから、何を……!」

オミキ「背後から蹴りました」スゥ

リウム「い、今加勢する! グロウ!」

チリン

ズバババッ!

オミキ「芝刈りの術」シュタッ チリン

リウム「おい、今召喚したばかりだぞ……」

テレサ「きゃあっ!」ズサァ

ラファ「か、格が違うのです。全員が最低でも上位職レベル……!」

ずしんっ

力士「こっちの道は通行止めだ」

リウム(もう道は上しか残ってねぇ!)ダッ スルスル

チリン

オミキ「……仲間を捨てて逃げるつもりですか?」

リウム「どうやったら屋根の上に回り込めるんだよ……!? くそっ」スタッ

侍「辞世の句を詠むが良い」チャキ

ギャル「何か言い残すことはある?って意味だけど」

リウム「そこの仮面の奴の言う通りだ……なんでお前は俺たちを……!」

リウム「仲間だっただろ、俺たち! 一緒に馬鹿やった! 魔法競技会にもみんなで出場した!」

ギャル「いや、大事なのは……付き合いの長さ? たぶん」

ギャル「まあ……アンタたちと楽しかったのは否定しないけど」

ギャル「一番楽しかったのはミルズで遊んでる時かな。つまんない人達に邪魔されちゃったけどさー」

タロウ「あれ? ここで情けかけちゃうの!?」

ギャル「あ、それとこれとは話が別。やっちゃって」

子狐「おっと、敵さんらに朗報じゃー。強力な戦士がこっちに来てるぞ、良かったな」

子狐「いやっ、あまり良くない! この気は……」


フィナ「師匠曰く、裏路地で騒いでる変わった外見の人はその近辺の地理に詳しい」

ネル「どうやって聞き出すノ? ネー? ネー?」

フィナ「脅すか、最悪拷問するかすればいいじゃん……あんたらがね」

バルザック「俺ぁ脅すの苦手だ。その前に爆破しちまうからな!」

クリスティ「いました! 確かに変わった外見の人ばかりですっ」

オミキ「あら」

タロウ「うわっ!」

フィナ「あっ」

テンパラス「……」

侍「お雛よ。後をつけて来たのか?」

フィナ「あ、間違えました。ここじゃない」

バルザック「ちぇっ何だよ」

ネル「いや、ビンゴだヨ」

ネル「キミたちが違法ハーブ事件の首謀者とその用心棒で間違いないネ?」

リウム「み、味方なのか……!?」

ネル「その切迫した返答から察するに、キミたちを襲っている彼らがボクらのお目当てってことダ」

ギャル「はぁ……また敵増えるのダルっ。正義漢多すぎてマジ萎えー」

ギャル「はーい。首謀者でーす。別に推理とかいらねーし……」

バルザック「本当に見つけちまった! お手柄だぜ嬢ちゃん!」バンバン

フィナ「背中叩かないで苦しい!」

フィナ「……ホントに違法ハーブを流通させた首謀者を突き止めたの、あたし?」

ギャル「だからそー言ってんじゃん……」

クリスティ「おかげでわたしの冤罪が証明されましたばんざーい!」

フィナ「えっ、違うでしょ。キョウトの人たちがここにいるし……」

フィナ「あっそうか。オミキ先輩達も町を守るために急いでたんですね! さっすがー!」

タロウ「君、察し悪っ!」

テンパラス「……フィナ。この者達は町を混乱させた一味の仲間だ」

フィナ「テンパラスさん何言ってるの? あたし怒るよ?」

バルザック「なんだってそんなにこだわってんだ? 彼氏でもいたか?」

ガルァシア「バルザック、今は黙っていろ……」

フィナ「テンパラスさんってほんとに失礼ですよね、先輩!」

オミキ「……」

テンパラス「……そこの派手な女。お前が中心のようだが、説明してもらおうか」

ギャル「いーよ。そこの痛い子にさ、説明して納得させないとマジで話進まないし……」

タロウ「大丈夫! 僕が説明するよ!」

タロウ「これはいわゆる裏稼業の一環なんだ」

タロウ「ハーブの中毒者を増やして、資金を稼ぎつつ僕たちの影響力を高めていく」

タロウ「そしてゆくゆくはこの町を活動拠点に、フルフィリア国内で様々なビジネスを行うんだ」

タロウ「表向きの活動のない暴力グループは共和国軍に解体されたからね。絶好のチャンスだったんだ!」

力士「特に、どこの町にでも現れる三輪車の男がいなくなったのが幸いだな」

ギャル「説明面倒だったから助かった。ありがと。」

ギャル「ま……これで分かったでしょ。アタシらはこの町を脅かす恐るべき敵だってこと」

フィナ「……他の人はともかくオミキ先輩は偽物に違いない! 同じお面を被れば……!」

タロウ「同じ鈴つけてるじゃん! 僕はあの鈴二つしか持ってなかったよ!」

フィナ「……」

フィナ「キョウトって、礼儀正しくて思いやりに溢れた国民性だって聞いてたのに……」

タロウ「あのさあ、そういう誤解って本当困るんだよね!」

タロウ「みんながみんなござるって言うわけじゃないし、ハラキリなんて滅多にお目にかかれない!」

タロウ「古臭い物ばっかりあるわけでもなければ、フジヤマ王国なんかじゃ断じてない!」

タロウ「根っからの善人もたくさんいるけど、他国を内側から蹂躙し平和を奪って生きる事に何の躊躇いもない集団もいる!」

タロウ「それが本当のキョウト国の姿なんだ! ちゃんと理解して欲しいものだねまったく!」

フィナ「……!」

タロウ「まあ、ある意味、君が誤解しているのは正しいとも言えるんだ」

タロウ「もしも本国で僕らの悪事が公になったら、僕らはキョウト人を名乗るジャルバかどこかの外国人だったという風評が流れる」

タロウ「そうすればキョウト人は一人残らず善良だという噂は間違いじゃなくなる」

タロウ「だから君が騙されたのも仕方ない事なんだ」

侍「タロウ喋りすぎだ」

フィナ「先輩! これってキョウト式ドッキリお芝居なんだよね。そうだと言って!」

オミキ「……いいえ。すべてタロウさんのお話しした通りです」

フィナ「タロウさんも名演技でした! 舞台でも通用しますよ!」

タロウ「しつこいなあ君は!」

ガクリ

テンパラス「フィナ!」

フィナ「……違うって言ってよ! 嘘って言ってよ!」

フィナ「もう、強くても、汚い人間にはなりたくないんだから……」

オミキ「嘘だなんてことは言えませんが、よかったら私達の仲間になりませんか?」

子狐「こんな我らでよければ歓迎するぞー」

フィナ「……お断り。あんたたちもアサシン協会と同じ、他人を食い物にして生きる下衆だ……」

フィナ「そんな連中に関わって生きたくない……」

オミキ「そうですか……仲間ではない人物に知られてしまったからには、消さなければいけません」

フィナ「ははっ……師匠も似たような事言ってた気がする」

子狐「まさか断られるとは。羊羹に夢中草を混ぜておいたのに、失敗したのー」

テンパラス「フィナがやけに執着すると思えば、そういうことか……!」

テンパラス「お前たちは決して許さん!」

侍「あっぱれぬし如きが、拙者に勝てると思うか?」

テンパラス「勝てん。私一人ではな」

テンパラス「テレサ殿、フィナを頼む」

テレサ「はい!」

ネル「あ、もういいかイ?」

バルザック「この黄金トリオを相手にただで済むとは思うなよ!」

ガルァシア「主に周辺の地形が、だがな……」

リウム「できることをやるしかねぇ」

ラファ「とにかく、あなたたちがさらに悪者だってことは分かったのです」

テンパラス「外道め……我が剣で焼き切ってやろう!」

テレサ「テンパラス様、どうか油断なさらないよう……」

フィナ「……」

クリスティ「ええと、お店に帰っていいですか?」


力士「3対9だが、果たして?」

侍「相手になるのは3、4人程度でござろうよ」

オミキ「タケミタマ様、万が一の際はお力添えを頼みます」

子狐「おっ、ついに我を頼ったか! うれしい!」

ギャル「面倒だけど回復くらいはするよー」

タロウ「僕は三三七拍子で応援するからね!」

ギルド上位職6名を含む乱戦が始まった。

ソピアは何度か上位職相当の敵を倒しているが、本来ならば下位職では複数人でも相手にならない強さを誇る熟達者である。

必然的に、実力不足の者にできる仕事は限られた。

テレサ「リウムさんには負傷者の治療をお願いします」

リウム「分かった! おい、そこの。とりあえず邪魔だから下がれ!」

フィナ「……」

リウム「くそっ、ミルズなら話を聞けたかもしれねぇのに」

リウム「あいつ、遅えな……」


フィナ(みんな、あたしを裏切っていく……)

フィナ(今、あたし以上に絶望してる人なんて、きっとどこにもいない)

ミルズは聖教会から場所を移し、廃屋の隙間でシュンと向かい合っていた。


ミルズ「……どうぞ」

シュン「こほん。まず前置きから語らせてもらおうか」

シュン「僕も違法ハーブの流行にはうんざりしていてね。特に何をするでもないが眉を顰める日々が続いていた」

シュン「そんな折、違法ハーブの販売を止めるべく独自に動いている集団の存在を人づてに聞いて、僕も何かできないかと考えたのさ」

シュン「ギルド筆頭探偵たる僕も結局、ウベローゼン市を愛する市民の一人……」

シュン「町を守るためなら無償の捜査もやぶさかじゃない」

ミルズ「それで、なんでボクだけ?」

シュン「……これを見てくれ。とある武器店で発見した社外秘の書類の写しだ」


ジェンス魔導具店 代表者:クルト・○○


ミルズ「……。これは?」

シュン「君のお兄さんは、ジェンスという偽名で商人の仕事を行っている」

シュン「偽名での活動が黙認されているとはいえ、政府に提出する書類は戸籍上の名前でなくては問題になるからな」

ミルズ「……心当たりはあるよ。兄様は夜に一人でどこかに出かける事が多かった」

ミルズ「それで? これがなんだって言うの。まだ何か持ってるならまとめて出しなよ」

シュン「まあまあ。物事には順序と言うものがある。次はこれさ」

ミルズ「夢中草の取引記録票……!?」

シュン「商人、ジェンスのね」

ミルズ「まさか、何か理由があったはずだ。夢中草は必ずしも毒じゃない」

シュン「……この封筒も見つかった」スッ


通達“ミリエーラ”側の経営状況について


シュン「筆跡はどうだろう?」

ミルズ「……見間違えるはずがない。兄様の字だ……」

シュン「別の名義で活動している店舗への、手紙が入っていたように見えないか?」

ミルズ「兄様が……死の商人?」

ミルズ「だ、だけど! ミリエーラは女性名だ。少なくとも、ボクの知るグリエール商会の女性は全員ラで終わる」

シュン「そういう先入観を抱かせる名前であるとも言えるな」

ミルズ「頭のいい兄様なら……いいや!」

ミルズ「ボクは信じないぞ。大体、声はどうするんだ!」

シュン「今は直接会わなくても、価格こそ高いが通信機で会話ができる時代だ」

シュン「君は知らないかもしれないが、ボイスチェンジャーというものもある」

ミルズ「……」

シュン「君たちの父が昔ファナゼ市で商人をしていたのは知っているかい?」

ミルズ「……聞いてる」

シュン「ご友人の貴族に裏切られ、借金を返せなくなり、身売りされる寸前まで追い込まれたらしいな」

ミルズ「……父さんはグリエール商会の一人だったんだ」

ミルズ「ということは、ボクも……」

シュン「あははっ、その心配は不要さ」

シュン「君はグリエールの血を引いていない。物心ついた時からすでに金色の目ではなかっただろう?」

ミルズ「そ、それってつまり……」

ミルズ「ボクと兄様には血の繋がりがないってことじゃないか!」

シュン「……ふむ」

ミルズ「……。……?」

ミルズ「いや、デタラメ言うんじゃないよ。ボクは母さんに似てるってよく言われてたし」

シュン「その矛盾の解が一つある。考えてみるんだ」

ミルズ「……異父兄妹?」

ミルズ「いや、それもおかしい。別の父親らしき人なんていなかった」

ミルズ「先に生まれた兄様の父親が他にいるなら分かるけど、妹のボクの父親が違うのはおかしくない?」

ミルズ「だとしたら、ボクは誰なんだ……?」

シュン「もしもの話だが、先に裏切ったのが商会の側だったとしたら?」ピラッ

ミルズ「これは……。……っ!」


シュンが最後に見せた紙片は、古い写真だった。

母と見慣れぬ男性が寄り添っている。

そしてその男性の腕に抱かれる幼い自分の姿。

寄り添う二人の横に立っているのは父と、その手を握る幼いクルト。


シュン「君、お父さんにもお兄さんにも全く似てないよな。むしろ……」

ミルズ「……捏造写真だ」

シュン「僕にはそんな技術は無いし、わざわざ頼んで作るような写真じゃないぞ」

ミルズ「何なのこれ……! 悪趣味な……!」

シュン「ふうむ……目に浮かぶようだ」

シュン「一人の女を巡って争う大商人と貴族。貴族と女の間に子ができても大商人は諦めない。前の女を捨ててまで狙った女なのだから」

シュン「そして、とうとう大商人は実力行使に出た。だが、自分の仕業だと知られる事はないと慢心していたんだ」

シュン「妻と娘を奪われた貴族は、激怒した。そして莫大な借金を負わせることで大商人から地位を奪った」

シュン「しかし大商人は行方をくらまし、妻と娘を購入して取り返すことはできなかった……なんともまあ悲しい愛憎劇だな」

ミルズ「黙れっ!」

シュン「まあ、この写真を見て僕が創作した想像に過ぎないがね?」

ミルズ「もういい! 父さんに直接聞く! それで全部分かる!」

シュン「待てっ! それだけはやめるんだ! 君のために言っている!」

ミルズ「なっ……」

シュン「この話は軽々しく口外すべきじゃない」

シュン「いいかい。君は、共和国軍による処刑の対象になり得るんだ」

ミルズ「そんな馬鹿な……自覚すらないのに、共和国に逆らう理由なんてないじゃないか」

シュン「それでもあり得ない話じゃない。指名手配書は見ていないか?」

シュン「手配されている貴族の内2人は君と変わらない、一人では何もできそうにない少女だ」

シュン「しかも片方は数年前から行方不明だったんだぞ?」

シュン「共和国軍は……徹底的に王家と貴族の血を絶やすつもりだ」

ミルズ「……馬鹿げてる」

シュン「全てを知ってしまった君は切り捨てられるかもしれない」

ミルズ「共和国軍に?」

シュン「“ミリエーラ”にさ」

ミルズ「…………う、ぐっ、なんで」

ミルズ「なんでっ、それをボクに伝えに来たんだ……!」

シュン「……知っておくべきだと思ったんだ。これから戦う相手の事を」

シュン「理由も分からず、最愛の兄に、軍へ引き渡され処刑されるかもしれない……」

シュン「そんな悲劇よりは、ここで伝えるのが優しさというものじゃないか?」

シュン「では、用は済んだので僕は失礼する」

シュン「これからどうするかは、君次第だ」

ミルズ「…………」

ミルズ「もう、違法ハーブなんて追ってる場合じゃない」

ミルズ「あの探偵の言ってた事が本当かどうかはともかく、証拠品は確かにここにある……」

ミルズ「この写真を、書類を……否定してくれる誰かを探すんだ……!」

ミルズ「……」

ミルズ「……誰が否定できるっていうんだ」


クルト『ミルズ……何かあったらすぐに俺に話すんだ。言うまでもない事かもしれんがな……』

ミルズ(でも、兄様には見せられない)

ミルズ(聖教会でボクを助けたのも皆を集めて町を救おうとしたのも何か裏があったのかもしれない)


ソピア『どんな状況になっても私はあなた達の味方です』

ミルズ(でも、ソフィアは、共和国軍に認められた『英雄』だ)

ミルズ(麓町にいるのも反乱の対処のためだろうし、この書類が本物だったら、ボクは……)


ミルズ「魔人先生は、ボクの味方とは限らない」

ミルズ「会ったばかりのサナさん達も信用できるかまだ分からない」

ミルズ「……もう、誰も信じられないじゃないか」

ミルズ「……いや、一人いた」

ミルズ「キュベレさん……!」

キュベレは、茶番と圧力、そしてアフターケアでミルズを過激なイジメから救った頼れるオネエさん。

以来一度もキュベレに会っていないミルズの認識は、そこで止まっていた。

今回ここまで、ageはミス
黒幕の交友度が10以上の場合、黒幕が心から仲間になりたそうにソピアちゃんを見ています。
ソピア側がそれを裏切りだと思うかどうかは安価かコンマで。

膝をついて動かないフィナを尻目に、ウベローゼン市民とキョウト国人の戦闘は続く。

バルザック「爆弾祭りだぜひゃっほーーーい!」ポイポイポイッ

ドドドドドド

ガルァシア「フィナとやらが邪魔だ……」

テレサ「リウムさんには負傷者の治療をお願いします」

テレサ「わたくしの役目は……加護を! サリエルプロテクション!」フォオオン

テレサを中心に巨大な魔法陣が展開し、8人の仲間全員の足元に小さな魔法陣が現れる。

魔法陣から発生した聖なる光がそれぞれの全身を包み込む。聖教徒の使用する上級魔法の一種だ。


侍「耐えられるか、ジュウリョウ?」

力士「平気だ。だが視界が悪い」

侍「おみきよ、頼む」

オミキ「ええ、ただいま」

オミキ「御神、其の御力をもって国敵を征し我らを守り給えとここにかしこみ申す」

子狐「はいよっと!」クルリ

バチバチッ!

武御霊「ふう……この姿も久しぶりじゃ」

オミキ「場を清め給え!」

武御霊「まずは軽めに、神風・春一番」

ゴウ

ネル「煙晴れるよ何やってんノ!」

バルザック「スマン! 今火薬調合すっから待……んなっ、九尾……ッ!?」

テンパラス「何か知っているのか?」

バルザック「外国行ってた頃に見たんだが、イナリっつう妖精モンスターがいんだよ」

バルザック「奴らは、尻尾が増えるほど強い! んで、あいつは最強格だ!」

ネル「バルザックの酔いが覚めるくらいには危険なんだネ」

テレサ「妖精系最上級モンスター……」

クリス「あっ、この精霊量。ラヌーンの海神さんよりもちょっと強いです」

バルザック「それが事実ならこんな町中で遭遇していい相手じゃねぇ!」

武御霊「……我は武神。臆せば臆すほど脅威となる」

武御霊「さあ思い知らせ。キョウトの武を!」

武士、ナマクラが刀を構え走り来る。

バルザック「はっ、錆びた剣なら受け止めてやる!」

テンパラス「いかん!」サッ

バギンッ!

黄金色に輝く刀身が、斜めに構えて攻撃を逸らそうとしたテンパラスの盾を容易く切断する。

テンパラス「この男は、ただの棒でさえ武魂気を纏わせ鋭く研ぎ澄ます。決して受けるな!」

バルザック「わ、悪りぃ!」ドッ

侍「ぬっ!」

謝りつつも鋭い蹴りでナマクラを大きく後退させるバルザック。

罠と爆弾だけが彼の取り柄ではない。


ずしん ずしん

ガルァシア「俺の停止魔法陣が通用しない……?」

力士、ジュウリョウは身長3mの大男である。

その驚異的な筋力は、鈍重そうな体形とはかけ離れた瞬発力を生む。

魔法陣が無ければ、ガルァシアを含む正面にいた者は一瞬の内に叩き伏せられていただろう。

ラファ「い、今なら! この聖光塊を食らいなさい!」

力士「ぐおっ!?」

聖光を武器に加工せず純粋に固めただけの聖光塊は、やや当てづらいが白魔術の中では高い威力を持つ。

魔法耐性の低い巨漢はその衝撃によろめいた。

オミキ「思うようにはいきませんね」スッ

バルザック「俺に近づくと火傷すんぜ嬢ちゃんよぉ!」

チリン トンッ

バルザック「」

ネル「げっ、バルザックがやられタ!」

鏡のように光を反射するクナイの刃は黒いもやのようなものにコーティングされている。

ネル「フウン」チラッ

フィナ「……」

ネル「忍魂気を使った、春眠の術っていうんダ? 普通に斬られるより厄介そうだネ」

ネル「そうそうボクって梅味好きなんダ。ぜひ食べさせてヨ!」

オミキ「いいですよ」

チリン

ヒュッ

オミキ「消えた?」

ネル「どこ狙ってんノ? こっちだヨ!」

オミキ「逃がしません」

動揺した対象から心の声を聞くマインドリーディング。対象が狙う相手の変更を防ぐマインドロック。そしてテレポート。

似たような魔法も存在するが、魔法ではなくエスパーのスキルであるため神や悪魔の力も精霊も用いていない。

チリリン ヒュッ チリン クルッ チリン ヒュッ

ネル(あれ、おかしーナ。バルザックに起こす念を送ってるのに全然起きなイ)

ネル(ンー。ひょっとして思ってたヨリ……)

オミキ「……タケミタマ様、ご助力を」

武御霊「早く頼らんかい」

武御霊「そろそろ容赦せんぞー。神風・木枯らし」

ヒュゴウ

テレサ「うっ……!」

ラファ「と、飛ばされるのです!」

ガルァシア「テンパラス、岩の陰に!」

チリン チリリリン

シュタッ

リウム「」

ラファ「」

ガルァシア「」

テレサ「ラファさんっ……!」

テンパラス「間一髪だ……!」

クリス「なんともありません!」

ネル「アーア。ガルまでやられちゃったヨ……」

オミキ「すいません、だいぶ外しました……」

侍「良い。四人眠らせてくれれば十分楽になる」

力士「あの小娘は……人形か」

テレサ「皆様、起きてください!」

オミキ「私が許すまで絶対に起きませんよ」

ネル「やっぱりそういう事カ……。厄介な性質の技ダ」

テンパラス「人数では勝っていたはずなのだが……」

有利な条件であったはずが、すでに苦戦を強いられていた。

キョウト勢に一切の損害はなく、一方、立っている戦力はテンパラスとテレサ、ネルの三人だけである。

クリスティにそもそも戦う気はない。フィナは双方から人数に数えられていない。

タロウ「ふふん。キョウトの武力が理解できたかな!」

武御霊「……む? まだ誰かの気配が近づいている」

ギャル「10人目ぇ? いい加減にして欲しいんだけど……」

タロウ「あれ? なんだかお酒のにおいが」

この局面で、新たな乱入者。


ズル ズル

貴腐「君たち。ケンカは良くないよ」

貴腐「ケンカをする暇があったら私の作ったお酒を飲もう」

貴腐「変なモノは入っていないからね?」

共和国軍六勇の一人、衛生兵長、貴腐であった。

テンパラス「貴腐……!? なぜこのような場所に……」

テレサ「……最悪の展開かもしれません」

ネル(六勇! 迂闊な動きをしたらやられル……)

貴腐は身なりの良い男だが、その風貌は異様の一言に尽きる。

酷い猫背であり、目は半開き。頭頂部にはその頭よりも大きなキノコが鎮座する。

その周辺に立ち込めるアルコールのにおいがプレッシャーとなり、一同にのしかかる。

貴腐「あれ? 戦ってるのは3人だけ?」

貴腐「まったく……9人で襲い掛かるなんて不公平だと思わなかったのかい?」

テレサ「……貴腐様。どういったご用件で?」

貴腐「まあ焦らないでよ。私はリウム君に用事があって来たんだ」

リウム「」

貴腐「おや、レディーにも起こせないみたいだ」

貴腐「誰か代わりに起こしてくれない?」

ギャル「オミキさん、いいよ」

オミキ「はい」

倒れた面々の体から黒い塊が抜け出し、オミキの手元へ吸い戻された。

ラファ「うっ、どうなったですか……?」

バルザック「ここは居酒屋かぁ?」

リウム「そ、その顔は!」

貴腐「初めまして、リウム君。私は貴腐という者で、共和国軍で衛生兵長をしている。どうぞよろしく」

リウム「よ、よろしく……?」

貴腐「突然だけど、これが何だか分かるかな?」

ズルッ

貴腐は左手に掴んでいた何かを暗がりから引きずり出し、一同の眼前に晒した。

クリス「キノコですか?」

ネル「うワ……!」

ラファ「う、うぷっ」

全体をキノコとカビに覆われた何か。

それは人の形をしており、よく見ると白衣を着ているのが分かる。

ウベローゼン市、聖十字総合病院の名医……リウムの父の成れの果てであった。


リウム「うあああああああああッ!!!!」

バルザック「苗床ってやつだ……トリュフみてぇな匂いがする」

貴腐「君のお姉さんから、君たち一家が私の邪魔をしてるって聞いてねぇ」

貴腐「ぜひお返しをしないといけないと思ったんだ」

リウム「ね、姉ちゃんはどうした……?」

貴腐「お姉さんには私のレディーに、って言ってもわかんないか」

貴腐「今、会わせてあげるよ」


貴腐が人差し指を立てると、そこに濁った色をした粘菌の塊が凝集する。

粘菌は貴腐の腕から垂れ落ちると、裏路地の路面に広がっていく。

ズルリ!と音を立て、水たまりならぬ粘菌たまりの中央から、女性の上半身が飛び出した。

流動する粘菌で構成された顔面は恍惚とした表情を湛えている。


リウム「姉、ちゃん……?」

サナ「あはっ、リウムゥ、見てる~?」

サナ「みんなぁ、菌になってる部分ってとっても心地がいいんだよ……♪」

サナ「ああん……みんなも、早く菌になろうよ……♪」

ラファ「サナさんが……オェェェェ!」

サナ「貴腐様ぁ~、早く菌に戻して~」

貴腐「あはは、すっかり私の虜だね。あんなに嫌がってたのに、一時間もすればこの通りだ」

貴腐「ほら、私の腕にお乗り」

サナ「うふぅん♪」

ネル「悪趣味な……あれは理解できないヨ」

バルザック「あいつと酒は飲めねぇ……」

力士「サクラ、オミキ、見るな! 耳も塞げ!」

武御霊「祟りでもああはならんぞー……」


彼ら自身も悪趣味な方である魔境カフェの3人も、貴腐とは協力関係にあるキョウトの民達でさえも、顔が引きつっていた。

貴腐「まあ、そういう流れでここに来たんだけど」

貴腐「ねえ……リウム君は、トリュフと、女の子(ただし菌)と、ワインと、帽子……この中でどれが好き?」

リウム「……!」ゾッ

リウムは口を開かず、誰もが緊張感で動きを止める。

やけに長く感じられた数秒後、最初に口を開いたのはまたも貴腐だった。

貴腐「あ、でもさ。ここにいるみんなってリウム君以外も私達の障害なんだよね、サキューラさん?」

ギャル「……えっと」

しばらくの間を置いて、コクコクと頷く。



貴腐「じゃ、全員の口封じをしないとね?」



テンパラス「っ!」

ガルァシア「マズい……!」

ネル「みんな捕まれ…無理ダ! 緊急退避ッ!!」

シュシュシュシュシュッ!

貴腐「おや、消えた。今のは?」

オミキ「敵の一人が瞬間移動を使います」

貴腐「なるほどねぇ……あははっ」

貴腐「どこに隠れたって無駄だよ! 私のレディー達からは逃れられない!」バッ

貴腐「ゴー、マイ、レディーズ!! さっきのみんなを見つけて私に報告するんだ!」

100人を超える見えざる追っ手達が、貴腐の下から解き放たれる。

貴腐「いいね。追いかけっこ遊び。子供の頃を思い出すよ」

貴腐「さあ、この限られた時間をめいっぱい楽しもう!」

宿屋前。

メリル「外交官さん、修理用の部品、遅いねぇ」

メリル「……おや? 誰かパンでも焼いてるんかね?」

アフロ「WAO! 何だか変なにおいがするぞ!」

市民「でもなんだかいい感じ」

グルメ「熟成された、品のあるディナーを彷彿とさせる」

人々を陶酔させるその香りの正体は、ひとたび発酵の条件が整えば、あらゆる生き物をたちまちの内に腐敗させ得る菌の胞子。


裏路地の一画。

中毒者「これ、ハーブよりいいかも……」

不良「はっ!? 何かがオレを導いてやがる!」

メガネ「ハーブは一旦やめて、今はこの極上の夢に酔い痴れよう」エアメガネクイッ

女子「……! リウム……!」ダッ

あまねく町の隅々まで行き渡るは、死の胞子を運ぶ風。

その風、芳しく。

章タイトル?を回収しつつ短いですがここまで。
次回、貴腐との戦い。

修正 >>605のタロウ、ナマクラさんも→タケミタマ様も

大変お待たせしました。戦闘回は次回で終わります。

ウベローゼン市、平民住宅地。

ネル「やっちまっタ!」

ネル「緊急だったからみんな適当な場所に飛ばしちゃったヨ!」

ネル「……マー、貴腐の目の前にいるよりマシだよネ」


ウベローゼン市、商人ギルド前のオフィス街。

ガルァシア「ネルの奴め……首から下が地面に埋まっていたじゃないか」

ガルァシア「岩魔術師の俺でなければ脱出は不可能だった」

商人「なぜ彼は埋まっていたんだ?」

店員「誰か、レスキューを呼んであげてください」

ガルァシア「注目を浴び過ぎだ……」


ウベローゼン市、メカニックギルド、屋根の上。

テンパラス「どうやって降りるべきか」

バルザック「ここにいてもその内見つかるし、一か八か飛び降りるしかねぇな!」バッ

テンパラス「仕方ない……」ピョン

ドサッ スタッ

バルザック「痛ってえ! 足くじいた!」

テンパラス「では、達者でな」

バルザック「待て! 俺っちを置いてくんか!?」

テンパラス「お前が近くにいると酒臭くて、貴腐の接近に気づけない可能性が高い」

バルザック「いや分かんだろ。俺とはタイプが違う酒臭さだ」

テンパラス「確かに……貴腐に比べてお前は悪臭を放っている」

バルザック「ひでえや!」

バルザック「そんなことより、作戦会議だ」

バルザック「おめぇさんも手練れだろ。こうなりゃ貴腐を討つしか生き延びる術はねぇ」

テンパラス「軍が関与していると知っていれば私も手は出さなかったのだが……」

バルザック「おいおい、後悔すんなら酒の席でな。切り替えていこーぜ」

テンパラス「しかし……相手は六勇だぞ。どうしろというんだ」

バルザック「俺ぁ貴腐の弱点を知っている」

テンパラス「有名だな。先端恐怖症と高所恐怖症だ」

バルザック「おう。それも重度のな」

バルザック「だから奴ァいっつも猫背で目を伏せて歩いてんだ」

テンパラス「つまり、不意をついて貴腐を高所に連れ出し、鋭い物を突き付ければ良いということか」

バルザック「そのためにおめぇさんの力が必要ってこった」

テンパラス「不意をついて高所へ運ぶのは……エスパーの役割か」

バルザック「死にたくなけちゃ協力するんだな。まずはネルとガルに合流する」

バルザック「こっちだ。はぐれた時は行きつけのカフェに集合するって決めてんだ」


ウベローゼン市、魔法街、屋外競技場。

ラファ「ごめんなさい。急用なので不法侵入させてくださいなのです」

ラファ「火魔術師と風魔術師が飛行訓練に使うジャンプ台、あそこなら!」

白魔術師ラファの得意とする魔法は『神の目』。

鍛えれば、双眼鏡のように一点を拡大するだけでなく、広範囲の人間の顔を一度に認識できるようになる偵察魔法だ。

ラファ「さっきまでしてた匂いも消えましたね」

ラファ「ここから敵の動きを観察して、隙をついて戦えない二人のどちらかを狙うのです」

ラファ「まさか貴腐も仲間を捨てるような畜生ではないでしょう」

ウベローゼン市、宿屋前。

市民「腹減ってきたな」

商人「早くディスプレイの音を出してくれ、大統領選が終わっちまうぞ!」

アフロ「HAHAHA、実に済まない! 手元にスピーカーのパーツが無いんだ、辛抱してくれ」

アフロ「王都からパーツが届くまでミーにもリペアはインポッシブルなんだ。参ったね XD」

いら立つ聴衆の隙間を縫って、暗い表情の二人が鉢合わせした。

リウム「お前は、さっきの……」

フィナ「あんたもここに来たんだ」

リウム「ああ……脚を調達して町の外に逃げようと思ってな」

リウム「でも、無理だ……。この混雑じゃ身動きが取れないし、よく考えたら、軍の検問で数時間待たされてる間に捕まる」

リウム「お前も、ここにいても無駄だぞ」

フィナ「……ここが一番安全だよ」

リウム「なんでだよ?」

フィナ「貴腐って、その気になれば町丸ごと攻撃できるでしょ。ここでもにおいするし……」

フィナ「でも攻撃してこないってことは関係ない人を巻き込まない程度の良識はあるってこと」

フィナ「人混みの中のあたし達をピンポイントで攻撃することもできない。出来るならもうやってるから」

リウム「そ、そうか……。だったら俺もここにいる」

リウム「俺は……死にたくねぇ」

フィナ「……ここにいても、死ぬけどね」

リウム「なっ、お前、安全だって!」

フィナ「早いか遅いかの違い。相手は貴腐だけじゃない……誰に出くわしても、勝ち目はゼロ」

リウム「なんだよ……何なんだよ!! 俺たちが悪いのかよ!?」

リウム「世の中、力が正義じゃないんだろ!? 俺の考えは、間違ってたんじゃないのかよ!」

リウム「どうして、正しい事を言ったら、家族皆殺しにされねぇといけねぇんだよ……!」ガクッ

リウム「ふざけんなよ畜生……畜生っ!」ダンッ ダンッ!

フィナ「…………」

路面を殴り拳から血を流すリウムを見て、フィナは細めていた目をゆっくりと見開いた。

リウム「……」

リウム「なんだよその顔」

フィナ「いや……なんか、あんたよりマシな気がしてきたから」

リウム「は?」

フィナ「あんたがまだ生きようとしてんのに、この程度で死にたい気分になってるのが恥ずかしくなってきた」

フィナ「あたしがここで諦めたら悲しむ人がいる」

フィナ「教訓! 出会ったばかりの人を信用してはいけない! よしっ!」

フィナ「じゃ、あたしはやる事あるから、これで!」

リウム「ま、待てよ!」

フィナ「あんたも信用できない。OK?」

リウム「せめて何しに行くかくらい教えろよ!」

フィナ「仕立て屋の子を助けて、逃げ切る」

フィナ「元はと言えばあの子を助けるために首を突っ込む羽目になったんだから、最後までやり遂げる」

フィナ「友達を悲しませたくないからね。数少ない、信用できる友達をさ」

フィナ「……あんたには、信じられる人残ってないの?」

リウム「……いねぇ。みんな、ハーブに奪われた。ダチには裏切られた」

フィナ「ふーん、だったら仕返ししてやろうとか思わないの?」

リウム「俺には無理だろうが! 考えなくても分かるだろ!」

フィナ「じゃ、できそうな人に頼ればいいじゃん」

リウム「だからいねぇって……! いや……いた」

リウム「キュベレさんなら何とかしてくれるかもしれねぇ……!」

フィナ「ん? キュベレさんって派手なオネエさん?」

リウム「お前も知ってんのか?」

フィナ「知ってるけど……日魔術師のキュベレさんなら今頃ファナゼにいるよ」

リウム「嘘、だろ……」

フィナ「最後に頼れるのは自分だけ、かもしれない。それじゃ」ダッ

リウム「……」

リウム「……? いや、もう一人いた」

リウム「でも……俺に、頼る資格なんて……」

リウム「だけどせめて、伝えないとな……」スクッ

元旅人の娼婦、エリーが切り盛りするカフェ。

通称、魔境カフェ。

カランカラン

ネル「アッ、バルザック!」

バルザック「おお、いたいた!」

テンパラス「魔術師の男もちょうど来たようだな」

ガルァシア「ネル……ワープ先はもう少し考えろ。地に埋まっていたぞ。俺が岩魔術師だったから良かったものの……」

ネル「ごめんヨー」

エリー「あんたがしくじるなんて珍しいね?」

ネル「緊急だったからネ」

エリー「へえ、何と戦ってたんだい?」

ネル「え? 貴腐だヨ。六勇ノ」

バルザック「ついでにキョウト国の偉い神様もな」

エリー「あんたたち一体どこで何してきた!?」

ガルァシア「ここから歩いて10分の町中だ……」

バルザック「チンピラ退治のつもりだったんだがなぁ。あ、エリーちゃんビール一杯!」

エリー「……頭が痛いよ」

テンパラス「マスター。剣士のテンパラスだ。話し合いに使っても良いだろうか?」

エリー「いいよ。下手に避難するよりあんたたちがいた方が安全そうだからね」

ネル「今更だけど、逃げるのは悪手だったネ……」

テンパラス「私見だが、あの場面では最善手だったろう」

ネル「菌を使って遠くから見えない攻撃を仕掛けてくる敵が相手なんダ、姿を見失うのは一番危険ジャン?」

バルザック「ごくごく……プハー! あん? そういやシュンの奴はどこ行きやがった?」

ガルァシア「また、余計な事をしているのではないだろうな……」

シュンに余計な事をされたミルズは、毎日通っている講堂の前で打ちひしがれていた。

リウム「いた……!」

ミルズ「……やあ、キミか。ボスは倒せたのかい?」

リウム「いいや。聞きたい事もあるし、言いたい事もたくさんある」

リウム「だけどまずは現状だけでも伝えないといけねぇ」

ミルズ「兄様が出てきた?」

リウム「何言ってんだ。とにかく聞け」

リウム「俺たちの敵はまずキョウト国の連中、あの3mの大男以外に、眼光の鋭いちょんまげ男、仮面をつけた赤い袴の小せえ女」

リウム「それと禍々しい鎧をつけたでかい狐人間がいる」

リウム「そして六勇の貴腐だ。頭にキノコの生えた変な奴で、遠くからでも見れば分かる」

リウム「こいつらに会ったらとにかく逃げろ、いいな!」

ミルズ「一気に言われても……って、き、貴腐だって? 貴腐がどうして……」

リウム「俺たちも分からない。ただ……俺の親父と姉ちゃんは貴腐にやられた」

ミルズ「なんだって……。そうか、この臭いは貴腐の……」

リウム「……それだけ伝えに来た。お前も気を付けて逃げろよ」

ミルズ「わざわざボクのために……?」

リウム「……悪いかよ」

ミルズ「そんなことない」

ミルズはこの講堂で水魔術を学び始めた頃からつい数日前まで、リウムとその取り巻きによる過激な暴力を受ける日々を送っていた。

そのリウムがである。家族を失ったばかりであるのにもかかわらず、敵に見つかる危険を冒してまでミルズを探して現況を伝えに来たのだ。

ミルズ「……ありがとう」

リウムのらしくない行動は、シュンによって深く深く沈められたミルズの心を、少しだけ明るくした。

ミルズ「ボクは今、キュベレさんに会いたいんだ。何か知らない?」

リウム「キュベレさんはファナゼにいるってさっき会った奴に聞いた」

ミルズ「そう……」

リウム「それ、持ってるの何だ?」

ミルズ「ああ、今のキミには話してもいいかもしれないね。これは……。……!」

リウム「どうした?」

ミルズ「……貴腐って、あれ?」

ミルズの視線の先には、頭に大きなキノコを生やした人影。

リウム「……いや、違げぇ。でも!」


侍「桜、一人見つけたでござるが」

ギャル「あはッ、ミルズもいるじゃん……。ナマクラさん、退路を塞いで」

侍「御意」


リウム「ちっ……回り込まれた。うかつに動けねぇ」

ミルズ「ちょんまげにキノコが生えてるんだけど……どういうこと?」

リウム「知らねえよ! 貴腐がなんかしたんだろ!」

ギャル「どぉー? 仲良くやってるー? アタシも交ぜなよー」

ギャル「本場のチャンバラごっこ。遊びじゃないけどね」

侍「……」チャキッ

ギャル「ナマクラさん、早速そっちの女から斬っちゃってよ」

ミルズ「っ……!」

水魔導師「何をしているのですか?」

水魔導師「リウム君にユーリさん……。ミルズさんへの暴力はもうやめたのでは?」

リウム「違っ、これは……」

水魔導師「また騒ぎになってお叱りを受けるのは避けたいので、その武器は収めなさい」

ギャル「うるさいな」

水魔導師「何か言いましたか?」

ギャル「……ナマクラさん」

侍「ぬうんッ!」ブンッ

スパッ!

水魔/導師「」

モブ女学生「あ、あわわ……先生が真っ二つに……」

モブ男学生「無理だ、あれはもう回復魔法じゃどうにもならない!」

岩魔術師「さっきは広場で爆発騒ぎ、今度は人斬り……!」

火魔術師「憲兵は何やってんだよ!」

ギャル「遊びじゃないってのはこういうこと……ってもうあんな所にいるし」


ミルズ「まさか、部外者の先生まで殺すなんて……」

リウム「あいつらは異常だ!」

侍「逃がさん」

リウム(速い!?)

貴腐の扱う大きなキノコには対象の身体能力を向上させる働きがあった。

また、兵士の逃亡や反乱を防ぐ目的にも用いられている。

侍「ふっ!」チャッ

ミルズ(斬られ……!)

リウム「クソがぁぁぁぁ!!」ガバッ

侍「ぬう!?」

ミルズ「キミ!」クルッ

リウム「立ち止まんじゃねぇ!」

ナマクラの腰にしがみついているリウムは振り回されながらも叫ぶ。

リウム「俺にはもう、どうにもできないんだ……!」

リウム「後はお前に託す! 走れえええ!」

侍「ふっ!」ポイッ

ミルズ「……!」ダッ

ナマクラはリウムをふりほどくと高く投げ上げる。

そして刀の柄を掴むと、一呼吸。

リウム「ミルズ、死ぬなよ」

侍「セイッ!」

ズババッ!

リ/ウ/ム「」ドサッ バラバラ

ギャル「アハッ……リウム、アンタいい男になったじゃん。笑」

侍「まだ追いつける。走るのだ桜」

武魂気の刃は脂で切れ味が落ちることは無い。全身に返り血を浴びたままナマクラはミルズを追う。

すっかり市民のいなくなった講堂前には二つの血だまりだけが残っていた。


貴腐「ん? レディー? 何?」

貴腐「そうか。ふふっ、記念すべき一人目に、乾杯」

彼らに人を殺すことへの躊躇いなど無い。


ミルズ「はぁっ、はぁっ……!」ダッダッダッ

リウム『後はお前に託す!』

ミルズ(なんてことをしてくれたんだ)

ミルズ(わざわざボクに恩を売って……)

ミルズ(あの馬鹿のせいで……兄様が敵だとしても、逃げるわけにはいかなくなったじゃないか……)

裏路地、サクラ達のアジト前。

そこには非戦闘員のタロウだけが残っていた。

タロウ「僕は応援担当だから、走り回らずに留守番してればいいよね!」

ラファ「そうですね。とっても都合がいいのです」

タロウ「だよね! って、うひぃ! 戻ってきた!?」

タロウ「みんなは何をやってるんだ!」

ラファ「『神の目』で全員の位置を把握していたので回避は余裕でした」

ラファ「さあ、今すぐにお仲間と貴腐に連絡して、戦闘をやめるのです。さもなくばあなたに拷問を行います」

<●><●>

タロウ「わ、わかった! だから乱暴はやめるんだ!」

派生魔法『神の目力』は、神かそれに極めて近い者に相対しているかのような凄まじいプレッシャーを与える魔法だ。

萎縮したタロウはすんなりと要求に応じた。

ラファ「さあ、早く。通信機は無いのですか?」

タロウ「もしもし、ジュウリョウさん!? 僕らの負けだ。降伏するんだ」

タロウ「うん、さもないと僕が大変な事になる。すぐに戻ってきてね!」

ラファ(ふう、何とかなったのです。でもいつでもタロウに攻撃できるようにしておかないとですね……)

ヒュウウウウウ

力士「八卦良い……」ドシン!!

ラファ(降ってきた!?)

力士「のこった」ヒュッ

ダァン!!

ラファ「がッ……!」

ラファ(速いし、目力が効かなかった……!)

タロウ「ジュウリョウさん! いやー助かったありがとう!」

力士「礼には及ばん」

ラファ「うぅ……」フラフラ

タロウ「あっ、逃げるよ! とどめを刺してよ!」

力士「うむ」

ラファ(あっさり死んでたまるかなのです……)

ラファ(不意打ちの聖光塊!!)

ぼすん

力士「……」

ラファ「え? さっきは効いたのに……」

力士「力がみなぎるのだ。このキノコを頭に乗せてからというもの……」

力士「まったくと言っていいほど力の加減ができない」ガシッ

ラファ「は、離しなさい!」ジタバタ ボキッ

ラファ「あああああああああああッ!!!」

ジュウリョウはラファの腕を掴むと、背中を向けて腰に乗せる。

勢いあまって骨を折ってしまうがそのまま持ち上げる。

タロウ「おおお! これは……」

そして、全力で地面へと叩きつけた。

タロウ「綺麗な一本背負い!」

ベシャン!

タロウ「……前言撤回。綺麗じゃないよ! ぺしゃんこのスプラッタじゃないか!」

力士「すまん」

タロウ「しばらく僕に触らないでね! 危ないから!」

力士「承知した」

力士「だが、タロウも俺に同行して欲しい。また襲撃されてはかなわん」

タロウ「あ、ああ、そうだね。僕もついていくよ」

力士「まずはオミキたちに合流する。タケミタマ様に探してもらい一人ずつ狙った方が早そうだ」

タロウ「オミキちゃん達はどこに?」

力士「最も厄介であろう敵の人形を追っているらしい。そこまでタケミタマ様が案内してくださる」


貴腐「へえ、もう二人目かい?」

貴腐「スタート地点に戻ってくる勇気ある少女の死に、乾杯」

貴腐に強化されたキョウトの武人には、もはや抵抗すら無意味。

ウベローゼン市、聖十字総合病院近隣。

ミルズ「何とか、まいたかな……」

ミルズ「あっ、ここは……。……」

水魔術師女子「ミルズ!」

ミルズ「キミは! ハーブで正気を失ってたはずじゃ……」

女子「そうなんだけど、この匂いで目が覚めたの」

女子「メガネ達はそのままだったけど……」

ミルズ「一人だけでも助かって良かったよ」

女子「ねえ、リウムは一緒じゃないの?」

ミルズ「……! 彼は……」

女子「どうしたの!? リウムに何かあったの!?」

ミルズ「……落ち着いて聞いて欲しい」

女子「わかった」

女子「あっ」

ミルズ「実は……え?」

貴腐「やあ、こんにちは。今日は運動日和だね」

ミルズ「きっ……!?」

ミルズ(一目見て分かった)

ミルズ(酷くにおいがキツい……)

ミルズ(こいつが、貴腐……!)

身構えるミルズを無視し、貴腐は隣の女子に話しかける。

貴腐「君は、リウム君の幼馴染の子だね」

女子「そうだけど、何……?」

貴腐「では早速……いや、君は中々美しい」

貴腐「ここで死なせてしまうのは惜しいからね。ぜひ、私のレディーになりなさい」

女子「い、意味が分かんないんだけど!」

ミルズ(嫌な予感がする……!)

ミルズ「は、走って!」

女子「!」コクリ ダッ

考える前に体が動き、ミルズは両手を広げて貴腐の正面に立っていた。

死んだリウムの守りたかったであろう相手だからだろうか。

貴腐は焦りも驚きもせず、目の前のミルズを睨みつけた。

貴腐「おやおや、私の恋路に立ち塞がろうっていうのかい?」

ミルズ「ここは通さないよ……」

貴腐「うん、構わないよ」

ミルズ「……?」

ザァッ

ミルズの頬を風が撫でた。

遅れて芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。

女子「きゃあああ!」

ミルズ「しまった……!」

振り返ったミルズが見たのは、菌の塊が背中に命中し、体が服ごと溶け始めている女子の姿だった。

女子「痛い、痛い! 助けてぇ!」

貴腐「ふふふ。すぐに気持ちよくなるからね」

ミルズ「あ、あ、あ……」ゾッ

女子「んくっ、ひぎいい……!」ドロドロ

女子「……」ベタリ

貴腐「完成」

貴腐「皆、新しいレディーの仲間入りだ。優しくしてあげてくれたまえ!」

貴腐「さて、お待たせして済まないね!」クルリ

貴腐「君も割と好みのタイプなんだけど、この私に名前と職業を……ってあれ? あんな遠くに」

ミルズ「はぁ、はぁ……!」ガクガク

貴腐「待つんだ君ぃ~。まずは私とお茶をしようじゃないか~!」スタスタ

ミルズ(貴腐は姿勢が悪くて足が遅い)

ミルズ(でも、ボクの脚が震えてまともに走れない……!)

ミルズ「く、来るな……」

ドテッ

ミルズ「うぐっ!」

ミルズ(た、立たないと、来る! 捕まる!)

貴腐「あはは。つーかーまーえー、た!」

ガシッ

貴腐「うん?」

貴腐「確かに掴んだはずなのに消えてしまった」

貴腐「私は幻でも見たのだろうか?」



ミルズ「ど、どこなの、ここは!」

魔人「安心せい。わらわの城じゃ」シュウウ

ミルズ「ま、魔人先生……」

魔人「怖いという気持ちは分かるがのう、怖い時こそ気を強く持たねばいかんぞ」

魔人「動揺してしまえばせっかくの高い精神力が無駄になる」

ミルズ「助かっ……てない!」

ミルズ「この城もウベローゼン市の中だから、貴腐の攻撃範囲だ……」

魔人「もしもあやつが町を丸ごと発酵させようとしてきたら、わらわが相手してやる」

魔人「大事な城を汚されるのは気分が悪いからな」

魔人「まあ、そんな真似はせんと思うが」

ミルズ「……魔人先生、一つ、真面目に答えて欲しい」

魔人「なんじゃ」

ミルズ「敵は、ボクよりも優秀な先輩魔術師より、さらに強いベテラン魔導師よりももっと上の、魔導長でさえも敵わない六勇の一人」

ミルズ「せっかく仲間になれたのに、リウムも死んでしまった」

ミルズ「兄様もボクの前では無関係を装っていたけれど、夢中草の売買に関与していた」

ミルズ「この写真が本物なら、命の恩人のソフィアにも命を狙われるかもしれない」

ミルズ「今……立ち向かった先に、希望はあるのかな」

魔人「ふむ」

魔人「希望とは時に受け取り方次第。その質問の答えは分からんが、一つ断言できることはある」

魔人「立ち向かわなかった先に希望が無いことは明白じゃ」

魔人「しかし、あやつらも可哀想だの」

魔人「兄と友へのお主の信頼はその程度のものだったのか?」

ミルズ「……信頼している相手だからこそ、敵になる未来なんて受け入れたくない」

魔人「逃げ腰か」

魔人「逃げた所で現実は変わらん。さっさと真実を確かめてしまう方が楽じゃぞ」

ミルズ「……そうだね」

ミルズ「ここで兄様とソフィアを待つよ」

魔人「む? いつまでもわらわの城に留まるのは許さんぞ」

ミルズ「た、戦えって言うのかい!?」

魔人「何のためにわらわが鍛えてやったと思ってる」

ミルズ「でも、ボクは治療用の魔法しか……」

魔人「否じゃ。貴腐に勝利するための魔法もすでに教えたぞ」

ミルズ「回復魔法で攻撃できるわけないじゃないか!」

魔人「後は自分で考えなさい。くっくっく、また会えるといいのう?」パチン

魔人が指を鳴らすと、出入り口に続く城内の扉が次々と開き、ミルズは宙に浮かされるとそのまま正門の外へと放り出された。

魔人が城を王都からウベローゼン市に移した際、選んだ場所は旧貴族の邸宅街である。

人気の無いその区域にも貴腐の放った菌のにおいは立ち込めていた。

ミルズ「魔人先生はボクを切り捨てるつもりだ。試練を乗り越えられない人に用は無いんだろう……」

ミルズ「ひとまず人通りの多い場所へ……」

ギャル「あー、こんな所にいた」

侍「好機!」

ミルズ「なっ、なんでこんな所で……!」

侍「逃がさん!」

ナマクラが遠距離から金色の武魂気を纏った刀を振るう。

ミルズの背を目掛けて飛ぶ斬撃。

ヒュッ パッ

ミルズ「えっ」

しかし、必殺の剣閃がミルズに届くことはなかった。

突如として地面が燃え上がり、現れた数人の人影とナマクラを炎の中へと閉じ込める。

侍「ぬ!?」

テンパラス「捉えたぞ、ナマクラ。今こそ決着を付けよう」

バルザック「景気づけの前哨戦って奴だぜ!」

ガルァシア「……油断するな。貴腐には劣るだろうがこの男も十分に危険……」

ボフン!

バルザックが開幕で起爆させたのは白煙爆弾。

真っ白な濃霧が敵味方の視界を奪う。

テンパラス(この炎の輪からは出ようと思えば出られるが、無傷では出られまい)

テンパラス(仮に出られても今ある輪を消してまた新たな炎の輪を展開すれば良いだけだ。ここで絶対に仕留める)

ガルァシアは目を閉じて集中し、自身の正面に魔法陣を浮かび上がらせていた。

熟練した岩魔術師である彼には、魔法陣を杖などで直接描かずとも、地形を操作する岩魔術を応用してより短い時間で描くことが可能だった。

侍「ぬおおおお! 操気・気扇!」ブアッ

武魂気を操って起こした風が白煙を晴らすと、無防備にもバルザックは酒を飲んでいた。

隙だらけの男を狙ってナマクラは踏み込み斬りを仕掛ける。

バルザック「かかったな!」

だが、その動作こそ罠であった。

無意識に攻撃対象に選ばせる、罠士スキルの一つ、挑発。

侍「ぐ、ぬおお……!」

白煙が視界を奪っていたのはわずか数秒。だが彼らにはそれで十分だった。

朦朧魔法陣と毒煙地雷を踏みつけた、ナマクラの視界が歪み、呼吸が乱れる。

ネル「あいつらに襲われてたってことはキミも味方だネ?」

ミルズ「た、たぶん……」

ネル「おっと。ガル達を助けに行かなくチャ!」ヒュッ

ワープを駆使して斬撃からミルズを救ったネルも、炎の輪の中へと合流する。

バルザック「おいネル、今だ!」

ネル「フッ、弱り目に祟り目ダ、サイコショックを受けてみロ!」キィィィン

侍「がああああッ!」

罠を受けて弱っていたナマクラは念波の影響を強く受け、激しい頭痛を味わう。

テンパラス(卑怯ではあるが、相手は飛ぶ斬撃でも骨ごと人体を切断し、直接の斬撃であれば鋼鉄さえ斬りかねん男だ)

テンパラス(だが、あの状態でも隙が無い……!)

テンパラスが手をこまねいている間に、ナマクラは葉を食いしばり、飛び退いて罠の影響から逃れてしまった。

それを見て、ガルァシアは焦らず、しかし急いで小さな板を地面に叩きつけた。

板に刻まれていたのは筆記のルーン。使い捨ての媒体を介して複雑な魔法陣でも一瞬にして作り出すことができる。

ドッ

バルザック「ぐう……!」

テンパラス「だ、大丈夫か!」

バルザック「割と痛てえ!」

ガルァシアの作り出した軽減魔法陣は、飛び来る一撃必殺の斬撃を鋭めの打撃に変える。

ネル「撃ち合いだネ! 負けないヨ!」

バルザックを盾にして、道端の石ころをテレキネシスで飛ばす。

テンパラスの火の玉、ガルァシアの生成した杭弾、バルザックの爆弾投げもそれに続く。

侍(物量で負けている……。桜は何をしている!)

水魔術師ギャル、サキューラの得意魔法は水属性の魔法弾連射だ。

容易く炎の輪を突破し、得意の弾幕でナマクラの助けに加われるはずなのだが……


ギャル「このワカメ女……!」

ミルズ「通さないよ」

ミルズは多少の水鉄砲攻撃を受けても即座に回復して見せた。

しかし、ここで逃げてナマクラから離れるのも危険。

取っ組み合いになってしまえばミルズだけを斬るのが困難になる。

ミルズの牽制は効果大であった。

侍「ふっ!」

撃ち合いでの不利を悟ったナマクラは刀を構えて正面に駆ける。

一閃。二閃。

しかし、不意打ち気味に振るわれた斬撃をガルァシアとテンパラスは容易く避けてみせた。

ネル(ふふふ、不思議そうだネ)

ネル(サイコショックが決まった時点で彼へのマインドリーディングが発動しタ)

ネル(そうして読み取った攻撃のタイミングをテレパシーで仲間に伝えれば、見てからでは避けられない攻撃でも避けられるのサ)

後退した者は遠距離攻撃、狙われていない者は罠や魔法陣の準備、テレパシーを用いた連携は完璧だった。

いらだちが募るナマクラは、一人に狙いを絞ることにする。

侍「斬るゥゥ!」ギロッ

テンパラス(来る!)

その対象は、厄介な設置・攪乱技を持たないテンパラス。

バルザック「横ががら空きだぜぇ!」ペトッ

ドカン!

隙をついてナマクラの身体に直接爆弾を仕掛け、起爆。

しかしキノコの効果で頑丈になったナマクラは止まらない。

ネル(バルザック下がレ! あれは止められなイ!)

バルザック(ああ畜生! 頼んだぜ剣士さん!)

侍「ぬおおおんッ!!」

テンパラス「ハァッ!」

ズバッ!!

テンパラス「…………」

侍「…………」

バルザック(どっちだ……?)

ガルァシア(火剣士の腹から血が……!)

ネル(……イヤ、見テ! 金色の気ガ!)

テンパラス「……フウ」

テンパラス「武魂気は防壁にもなるのだな。試してみるものだ」

テンパラス「皆、安心しろ。私が受けたのは盾さえ切断する斬撃ではない、ただの錆びた刃だ」

侍「グ……」

侍「あっぱれなり、あっぱれぬし……!」ユラリ

ドサッ

テンパラス「技を盗もうと考えて師事していたが、やはり普段の剣技が馴染む」

テンパラス「だが良い防御スキルを手に入れた。礼を言うぞ、ナマクラよ」


ミルズ「助けてくれてありがとう……」

ネル「こちらこソ! 女の子の足止めご苦労だったネ!」

バルザック「んで、そいつはどこに行ったんだ?」

ミルズ「仲間が倒れるとすぐに逃げたよ」

ガルァシア「薄情な女だ……」

テンパラス「お前もキョウトの者および貴腐と戦っているのか?」

ミルズ「そ、そうなんだ。さっきは貴腐に襲われて……!」

テンパラス「場所はどの辺りだ? 案内を頼む」

ミルズ「貴腐を、倒すつもりなのかい……!?」

ネル「秘策があるのサ」

バルザック「俺たちに任せとけい! お嬢ちゃんは隠れて見てな!」

少し不安な顔をしながらもミルズは一行を病院の近くへ連れていった。

ミルズ「……たしか、この辺りで会ったはず」

テンパラス「助かった」

ネル「後は占いの出番だネ」

バルザック「おおっ、出るか居場所占い!」

ネル「……こっちに近づいてきてル」

ガルァシア「何だと?」

テンパラス「不思議なことはない。菌を使ってこちらの位置を把握しているのだろう」

バルザック「追いかける手間が省けたってもんだ。ガル、待ち伏せの準備だ」

ガルァシア「……分かった」



貴腐「ん? どうしたんだいレディー」

貴腐「複数人で固まってるのを見つけたって?」

貴腐「よし、散歩がてら優雅に向かうとしようか」

ピタッ

貴腐「ん?」

貴腐「んんんんんー?」

貴腐「脚が重くて動かない……」

表面に砂をかけて隠しておいた停止魔法陣は、貴腐の脚をがっちりと拘束していた。

ネル(皆、作戦開始ダ!)

シュッ

パッ

貴腐「……ひ、ひいいええええ!!!!」

テンパラス(効いたぞ!)

付近の建物の屋上。そこに待機しているテンパラスの前へテレポートで貴腐を運ぶ。

すぐさま、待機していたテンパラスが鋭い剣を貴腐の目前へ突きつける。

重度の先端恐怖症で知られる貴腐はそのまま腰が抜けてへたり込んでしまった。

完全に、作戦通りの展開であった。

テンパラス(情けない。六勇の一人ともあろう男が不意を突かれればこのザマか)

貴腐「き、君ぃ! すぐにその剣をしまってくれ!」

テンパラス「断る。まだ死にたくはないんでな」

テンパラス(隙だらけだ……)

テンパラス(このまま斬ってもいいのではないか?)

一呼吸。テンパラスは素早く振りかぶると、貴腐を横薙ぎに斬り裂く。

続けて上段に構えて、斜めに振り下ろす。

よろめく貴腐へ向かって、踏み込みながら突きを

シュウウウ

テンパラス「グッアアアア!」

突如、テンパラスの全身が真っ赤に染まる。

熱した鉄板に水をかけた時のような激しい蒸発の音と共に、テンパラスの肉体が急速に焦げ落ちていく。

一方で、貴腐に刻まれた傷はたちまちの内に塞がり、痕一つ残さず治癒した。


別の建物の屋上から、ネルはテンパラスが骨になっていく姿を見ていた。

ネル「あのバカ!」

ネル(先端恐怖症だけど刃物自体が怖いとは限らないんだヨ!)

ネル(でもなんで、腰が抜けているのにサイコショックが効かなかっタ……?)

貴腐が、ネルを見た。

ネル(マズイ!)

菌に捕捉されている――そうとなればネルの取れる行動は一つだけだった。

テレポートで背後に移動し、即座にテレポートで上空へ連れて行く。

まさか高所からの落下だけで倒せるとは思わないが、パニックにできれば上出来だ。

ネル(どうダ!)

貴腐「えっ……うぎゃあああ!!!???」

貴腐「なんちゃって」

ネル「ハァッ……!?」

即座に、可能な限り遠くへテレポートした。

ネル(あの男……騙しやがっタ!)

ネル(ここにいる人だけじゃない、全ての国民ヲ!)

ネル「痛っ……。……!!」

痛みを感じ、腕を見ると、ガラス質の結晶へと変化しつつあった。

テレポートは、触れた相手も共に移動する。貴腐の見えざる仲間たちはネルを捉えていたのだ。

もう、逃れる術はない。

ネル(覚えてロ……化けて出てやル!)

ネル(だってこのボクは何でもありのエスパーだからネ! だからきっと……!)

ガシャアアン!

転んだ拍子に、そのガラスの塊は路上で砕け散った。


ゴキッ

貴腐「膝打ったぁ! レディー、頼むよ」

貴腐「……これで良し。ありがとう、お礼にキスをしてあげよう」チュッ

何もない空間に向けて唇を付き出す貴腐。

バルザック「なんで起爆しねぇ……!」

貴腐の墜落する地点には大量の地雷が仕掛けられていたはずだった。

膝を痛める程度で済むはずがないのである。

バルザック「!? あの野郎……!」

違和感に気づく。

貴腐は普段の奇怪な姿勢をやめ、背筋を伸ばし、その瞳も正面を見据えていた。

人間らしい姿勢を取った貴腐は身長が高く、そして頭にキノコが乗っている点を除いて意外にも整った容姿をしていた。

バルザック「そういうことかよ……」

貴腐が、バルザックが身を隠す茂みへと近づいてくる。

バルザック「ガル! 聞けぇ! 貴腐の弱点は嘘っぱちだァ!」ポイッ

ドォン キンッ

バルザックは意を決して飛び出し、爆弾を投げつけるが、バリアで防がれる。

バルザック(魔法だと? どうなってやがる)

バリアの魔法を使った貴腐は魔術師なのか? 否、貴腐自身は菌に指示を出す以外の戦闘用スキルを持っていない。

魔法を使ったのはレディー達だ。

菌にされた人間は、人間だった頃のスキルをそのまま使う事ができる。

流石に剣術や演奏などは体格が小さすぎるため不可能だが、魔法に人体のパーツは必ずしも必要ではない。

貴腐は主に魔術師の女性を自らのハーレムに引き入れていた。レディーとは愛人であり同時に戦力でもあるのだ。

すなわち……貴腐と戦うという事は、100人を超える魔術師の集団を相手にするに等しい。

バルザック「うおおおおお!!」ダッ

投げても途中で無効化されるため、バルザックは爆弾を抱えて自滅覚悟で突進した。

バリアを避けて回り込み、貴腐に肉薄するが……

ドォン!

バルザック「がはっ……!」

途中で起爆した。

レディーの一人が『拳』で爆弾を破壊したのだ。

菌で構成された身体を変形させれば、一部の体術や、歌唱、暗視などのスキルも使用できる。

貴腐「やあ。君もお酒が好きなんだね。においで分かるよ」

バルザック「……酒好きのよしみで見逃しちゃくれねぇか?」

貴腐「そういうわけにはいかないからさ……せめて最後に乾杯しようじゃないか」スッ

貴腐「三人目、四人目……五人目の君に、乾杯」

貴腐は懐からワイングラスを取り出して、バルザックにぶつけた。

すると

バルザック「あ、あああ、あがああああ!!」

その全身の穴という穴から液体が噴出した。

それは血でも体液でもない、人間酒だ。

バルザック「あああ……かはっ」ガクッ

貴腐「ふむ……」ゴクリ

貴腐「飲めないこともないけどあんまり美味しくないなあ」

貴腐「やはり、お酒にするなら小さな女の子か熟成されたご老人に限るね」

ダッダッダッ

ガルァシア「…………」

ミルズ「はぁ、はぁ……どこへ行くんだ」

ガルァシア「……高所恐怖症と先端恐怖症は、恐らく貴腐の流したデマだった」

ガルァシア「一度作戦を練り直す」

ミルズ「練り直すったって、もう仲間がいないじゃないか!」

ガルァシア「それでもだ」

ガルァシア「奴らの為にも、ここで俺が死ぬわけにはいかない……」

ザッ

ガルァシア「……何?」

ミルズ「き、キミは死んだはずじゃ……!」

侍「左様……拙者は一度死んだ」

侍「だが、黄泉の国より呼び戻されたのだ……この茸によって!」

侍「斬ル、斬ル、斬ラネバナラヌ!」ダッ

テンパラスに敗北し死亡したはずのナマクラ、その刀傷はぶよぶよとした菌糸体に塞がれていた。

肌の色はくすんでおり、全身に張り巡らされた菌糸体が辛うじて瀕死の身体を動かしているようだ。

半生半死。不死の怪人と化した侍が二人の首を狙う。

ガルァシア「先に行け!」

ミルズ「わ、わかった!」ダッ

ガルァシアは咄嗟に停止魔法陣を出現させ、魔法弾で牽制を行う。

侍「フン!」ザンッ ザンッ

しかし、侍は魔法弾を避けもせずに突っ込む。さらに地面ごと魔法陣を斬り裂き、無効化してしまう。

ガルァシア(……先程よりも強くなっている!)

最後の抵抗。岩の壁を出現させる。

盾ではない。敵の足元に出現させ、突き上げる。

侍「ヌゥウウ!」

足を取られ、バランスを崩して前のめりになる侍は、そのまま空中で前転しながら刀を振るった。

ガルァシア(化け物め……!)

ズバッ!!


貴腐「もう六人目? 早かったね」

貴腐「侍の彼はよく頑張ってくれるなぁ。その健闘に乾杯!」

敵方の残り戦力は振り出しに戻る。魔術師100人と不死の武人3人。

対するは、たった数人の無力な少女。

ミルズ「来る……殺される……!」

ガルァシアはほとんど時間を稼ぐことなく、殺された。

ミルズがナマクラに追いつかれるのも時間の問題だった。

ミルズ「助けて! 誰か!」

しかし、運悪く人通りのほとんどない地区。

とうとう、行き止まりに追いつめられた。塀を乗り越える体力はもはや無い。

侍「斬ル……オマエデサイゴ……!」

ミルズ(もう駄目だ)

ミルズ(これ以上無いほどの、詰み)

ミルズ(……希望なんてどこにもなかった)

一方、リウムと別れたフィナは魔法街の仕立て屋に戻ってきていた。

カランカラン

クリス「いらっしゃいませ!」

フィナ「やっぱりここにいた」

クリス「あっ、殺し屋さん。さっきぶりです!」

フィナ「その呼び方やめてって言ったよね!?」

クリス「ごめんなさい! とりあえずお茶菓子持ってきますね」

フィナ「悠長にお菓子食べてる暇はないんだよ! 状況分かってる!?」

クリス「悪い人の戦いに巻き込まれて追いかけられてるんですよね?」

フィナ「えっ、分かってるの?」

クリス「分かってますっ。だからここに帰って来たんです!」

クリス「わたしの生きる理由は、このお店を営業すること!」

クリス「何があってもお店は守ります。わたしが死ぬときはお店と一緒です!」

フィナ「そっか……。オートマタだもんね」

クリス「殺し屋さんはなぜここに? 危ないですよ!」

フィナ「いろいろ考えてさ。あなたを守ることにした」

フィナ「フローラのためにね。ここ、フローラがオーナーなんでしょ」

クリス「はいっ」

フィナ「もうさ。あたしがその人のために何かしたいって、信じたいって思えるのがフローラしかいなかったんだ」

クリス「へぇ、そうなんですか」

クリス「わたしにはそういう人、誰もいません!」

フィナ「そ、そっか」

結局、フィナは厚意に甘えてお茶菓子を食べた。

フィナ「ところでさ、あなた名前ないの?」

フィナ「呼びづらくてしょうがないんだけど」

クリス「あっ、ごめんなさい」

クリス「クリスティ 1〇〇〇です。ここに書いてあります!」

仕立て屋の娘さんは背中を指さした。

フィナ「……それって製作者と製作年度じゃない?」

クリス「はい、そうらしいですよ」

フィナ「えーと、自分だけの名前って無いわけ? フローラにはなんて呼ばれてるの?」

クリス「ああっ! 今ので思い出しました!」

クリス「初めて会った日に、オーナーさんに名前をつけてもらったんです!」

フィナ「それそれ! あるんじゃん、なんていうの?」

クリス「忘れました!」

フィナ「ズコー!」

クリス「そうでした! わたしがあまりに忘れっぽいので、いつでも思い出せるようにオーナーさんがヒントを残してくれていたんです!」

クリス「この花瓶ですっ!」バッ

フィナ「とっくの昔に枯れ果ててるー!」

クリス「これじゃわかりません。ぐすん」

クリス「こうなったら勘です。きっとわたしは……ハエトリグサ!」

フィナ「それだけは絶対にない!」


フィナ「この店、においしないね」

クリス「はい。お洋服ににおいが移るといけないので、魔法で何とかしました」

クリス「お店には入ってこれませんよっ」

フィナ「やるじゃん」

フィナ「このまま、あいつらが諦めるまで隠れられるかな?」

クリス「わかりません。でもそうだったらいいですね」

約一時間後。

町を練り歩いていたキョウトの民達が、魔法街の広場に近づいていた。

時折、カーテンの隙間から外の様子を窺っていたフィナは、一目見てその特徴的な集団を認識する。

まず目を引くのは3mを超える巨漢のシルエットだ。腕も脚も胴回りも非常に太いが、ほとんどは筋肉によるものだ。

人間一人握りつぶせそうな大きな右手は鮮血で真っ赤に染まっている。

フィナ(さっき、誰か殺されたんだ)

その隣で早歩きで移動しているのはあまりにも小柄な少女。70cm前後、仕立て屋の娘とほぼ同じサイズしかない。

巫女の正装である色鮮やかな緋袴は動きやすいように膝下までの長さで止められており、丈夫そうな足袋が露わになっている。

フィナ(あれは、気配を消す歩法……普通の人にはそこにいる事さえ認識できない)

フィナ(見抜き方は、師匠から教わった)

その師匠と同等か、それ以上に危険な敵。

願わくば、気付かずに通り過ぎて欲しかったが……。

フィナ(あのキツネが、マリンと同じなら……)


武御霊「主ら! 見つけたぞ。あの店じゃー」

武神タケミタマはソピアの使い魔マリンと同じ風精に属していた。

風の妖精は皆、一定範囲の人間・モンスターの探知能力を有している。

オミキ「そうですね。言われなくても分かってました」

力士「なんで?」

オミキ「分かるんです。同じ……ですから」

タロウ「それって敵も分かるって事じゃないか。気を付けて!」

オミキ「はい。奇襲は諦めます」

フィナ「……来たよ。まっすぐこっちに向かってきてる。どうする?」

クリス「迎え撃ちますっ。先手必勝です!」

ガチャッ


タロウ「き、来たよ!」

力士「手下の人形か。小癪な」

仕立て屋の扉から姿を現したのは三体のマネキン人形。

腕の先がトゲの生えた鉄球となっており、その不自然な動きは糸で操られるマリオネットそのもの。

マネキンが襲い掛かる。

オミキ「遅すぎます」ヒョイッ

力士「この程度か……壊すのも面倒だ」

しかし、キョウトの武人達は強者の勲章を得るための百兵の試練を十分に達成できるほどの猛者。

その上、貴腐のキノコによって強化されている。

付け焼刃のマリオネット操作では全くと言っていいほど攻撃が当たらなかった。

力士「ぬん!」バッ

一体のマネキンが張り手を間一髪で避ける。

しかし、ジュウリョウが踏み込んだ右足が石畳を激しく吹き飛ばし、張り手の衝撃が正面にあったカフェを破壊する。


フィナ「ああっ! 吸血鬼に壊された魔法街の修復工事が終わったばかりなのに!」

フィナ「しかもあれ、エルミス行きつけのカフェじゃん。あーあ……」


オミキ「ジュウリョウさん。不利ですけど、ここは私に任せてください」

力士「操り手を壊せば良いのか。分かった」ズシズシ

タロウ「春眠の術は生物にしか効かないんだったね?」

オミキ「ええ。しかし、加減する必要もないので……」

クリス「おっきい人がこっちに来ます!」

フィナ「分かってる! ……ええい!」

ガチャッ

フィナ「あ、あたしが相手だ! 手出しは、させない……!」

フィナは仕立て屋を守るため入口の前に立ちはだかった。

しかし、それでも武器を握ることはできなかった。

力士「素手で俺に挑むとは、愚の骨頂」

力士「俺たちはキョウト国における徒手戦闘の頂点だ。小娘が……。舐めおって」ブォン!

フィナは素早く横に回り込み攻撃を避ける。

フィナ(手刀でも、師匠に教わった急所を突けばなんとかなるかと思ったけど……)

フィナ(敵が大きすぎて急所に手が届かない、無理!)


オミキ「朝靄の術」

フィナ「っ!」バッ ガチャッ

オミキの足元から白く濃い煙があふれ出すのを見て、フィナは即座に仕立て屋の中へ逃げ込む。

フィナ(しゃがんで気配を薄めるのが通用する相手じゃないし、逃げたらお店が危ない!)

バキン ボキッ グシャッ

衝撃音の後、軽い風が吹いてもやが晴れる。武神の能力だろう。

三体のマネキンはオミキによって破壊されていた。

クリス「はわわ! 武器が壊されちゃいました!」

フィナ「もう立てこもってられないよ!」

クリス「はいっ! お店はわたしが命をかけて守ります!」

ガチャッ

フィナ(逃げるなんて選択肢は無い。一人でもいいから、倒す!)スッ

力士「この期に及んで手刀とは……。その腰の短剣は飾りか?」


クリス「よくも壊しましたね! えーい!」

フィナ(強力な熱線と水圧カッターの同時撃ち! しかも後方斜め上から太陽光線!)

フィナ(別々の属性の魔法攻撃でたしか全部中級以上……これができる人間の魔術師はほとんどいない)

フィナ(相変わらずとんでもないなぁ。でも……)

フィナ(頭のキノコのせいか、オミキさん、師匠より速くなってんだけど……!)

ヒュヒュヒュヒュ グイッ

オミキ「何か引っかかって……?」

クリス「かかりましたねっ。マリオネット糸! もう避けさせません!」

オミキ「鎌鼬の術」ズババッ!

フィナ(忍魂気でできた巨大な手裏剣! しかも追尾する!)

クリス「ば、バリアー!」

フィナ(ほっ)

力士「よそ見か……馬鹿にするなッ!」ブン

フィナ「うわああっ!」サッ

力士「ううむ、すばしこい」

オミキ「ジュウリョウさん、代わってください。私の武器では、バリアが……」

力士「致し方なし。俺の速さでは攻撃が当たらん。悔しいが……交代だ」

フィナ(マズい、相性差に気づかれた……)


タロウ「タケミタマ様、手伝わなくていいんですか?」

武御霊「助けを求められていないんじゃ。恐らく、武人としてのプライドが理由で」

タロウ「そんなのどうでもいいから一気に終わらせればいいのに!」


フィナ「そのでかいのにバリアは通用しないよ、頑張って避けて!」

クリス「はーい!」

オミキ「……」テクテク

フィナ(来る!)

チリン

フィナ(後ろ!)バッ

フィナ(あれっ、鈴だけ落ちて……。やられた!)

ガバッ

フィナ「っ!?」

フィナ「えっ? ……オミキ、先輩? 抱き着……」

オミキ「吸魂」ズオオオ

フィナ「あ、あがぁぁぁぁぁっ!!」

フィナ「う……」ドサッ

ヒュッ

オミキ「タケミタマ様。注魂です」

武御霊「来た来た! 久しぶりの生贄じゃー!」

武御霊「力が、みなぎる……!」

武御霊「狙いは……そちらじゃ。神風・野分」

ゴオオオオオ

フィナ(凄い風、倒れてなかったら危なかった……)

フィナ(周りはどうなった? あの娘は、でかい奴は、町は……)

ヒュウウウ……

フィナ「……! お店が……!」

仕立て屋および周辺の家屋は、局地的な暴風によって無残にも全壊していた。

クリス「……」

フィナ「ね、ねえ。大丈夫……?」ヨロッ

クリス「アナタ?」グリン!

フィナ「っ!?」

クリス「コワシタノ、アナタ?」カチャッ

仕立て屋人形は、人間の動きをやめた。

力士「あれはどうしたんだ? 関節の動きも、声の抑揚もおかしい」

オミキ「人間の真似をする理由を無くしたんです」

タロウ「拠り所を失って暴走してるんだよ。もう、自分がどこの誰かも分かってないだろうね」


壊れたはずのマネキンが立ち上がる。

フィナ「な、なんであたしに攻撃するの!?」

精神力を吸われ、身体に力が入らないフィナを、パーツ単位に分かれたマネキンの打撃が襲う。

一方、それらを操る本体はキョウトの人々に狙いを定めていた。

タロウ「ひええこっち来たキモい!」

オミキ「下がってください」

人形は、後ろ向きのでんぐり返しのような動きで向かってくる。

三半規管、内臓、筋肉、その他もろもろを無視して、人体が最も効率よく前進するための動きだ。

オミキ「ああはなりたくないですね……」ヒュッ

ガシッ

オミキ「しまった……」

クリス「コワシカエシ! コワシカエシ!」

念力の一種か、オミキは見えない力で身動きを封じられていた。

素早い移動を得意とし、体重の軽いオミキにとって、捕縛は最も警戒すべき攻撃だった。

もちろん縄による拘束や魔法陣への対策はしていたが、全方向からの単純な圧力を妨害する手立てはなかった。

クリス「アナタ、コワシテ、オミセ、タテル!」

ドゥッ バキン

風魔術の直撃を受け、壁に叩きつけられたオミキ。

その狐の面が衝撃によって割れ、素顔が露わになる。

タロウ「あちゃー!」

フィナ「えっ……」

その顔は不自然に白く。細い目にはまつ毛が無く。

オミキ「面が……。直せませんね……」

表情は変わらず、口も微動だにしていない。

明らかな作り物であった。

フィナ「二重の、お面……?」

辛くもマネキンの残骸から距離をとったフィナは困惑していた。

タロウ「知らない? 呪いのキョウト人形」

タロウ「正式名称は用途や地域別に違うんだけど、僕たちも総称するときはキョウト人形と呼ぶことが多いね」

タロウ「フルフィリア人形と違って単純な美術品じゃなく、子供の成長を願ったり、厄を祓ったりといった祭事に用いる事が多いかな」

タロウ「ちなみに商品じゃないからね!」

フィナ「……それにしては結構大きいような」

タロウ「タケミタマ様の御力だよ。オミキちゃんだけじゃなくジュウリョウさんも大きくしてもらってる!」

タロウ「ただでさえ平均身長が低い国なのに十尺もある大男なんているわけないだろう?」

フィナ(駄目だこの人……。あたしよりも口が軽い……)


力士「今ッ!」バチン

カキンッ

クリス「ランボウハヤメテー」

力士「ぬう……死角が存在しないというのは本当だったか」

オミキ「さて……どうしましょう」

人形であるオミキには急所への打撃、死角を突く移動のように人体の構造に由来する戦法が通用しない。

また、眠る事がないため春眠の術などの意識を奪う技も効果が無い。故に、忍者同士の戦いにおいてほぼ無敵であった。

しかしその特性が今、目の前に立ちふさがっている。

フィナ(筋肉を持たない魔法系モンスターのオートマタには、骨のモンスターと同様に打撃が有効)

フィナ(でもあの子には魔法があるから、大男程度の速さじゃ直前にバリアを貼られて衝撃を殺されてしまう)

フィナ(オミキさんのスピードなら攻撃は当たるけどダメージにならない。なぜなら筋肉が無いから)

フィナ(裏通りで、春眠の術はあの子には効いてなかった)

フィナ(このまま撃退できるかも……)

武御霊「忍者の技が使えないなら、我の力を借りる他ないんじゃないか? んん?」

オミキ「うざいので絶対に頼みません」

武御霊「言ったなー!? だったら今日一日は頼んでも手を貸してやらんもんね!」

クリス「ヤッター、コワシヤスイ!」カタカタ

オミキ「人の技で対応できないのなら……」

ザワッ

オミキのおかっぱの髪が急激に伸びていき、広場を埋めていく。

オミキ「……乱れ髪の術」

フィナ(濡れてないのに、汗で頬に髪が張り付く時みたいに、じっとり絡みついてくる……!)

フィナ「嘘、切れない……」ブン ブンッ

フィナ「ぎゃあ!」グルグル

クリス「ギギギ……フジユウ」グルグル

フィナ「あの子も、飲み込まれてる……はっ!」

フィナ「よ、避けてぇ!!」

クリス「へ?」

カキンッ キンッ パリッ グシャン

力士「ふう……ついにバリアを破った」

フィナ「あ、あああ……木端微塵に……」

力士「オミキ、もう解いて良いぞ」

オミキ「はい」シュルシュル



貴腐「7人目……7個目?」

貴腐「あと1人もとっくに死んでる頃だって? それならもう少し待ってからまとめて報告して欲しかったよ」

貴腐「はい、乾杯。一杯飲んだらもう一度見てきてくれよ、せっかちなレディー」

フィナ(終わった)

フィナ(もう逃げられない。あの子が壊された時点で詰みだった……)

力士「分かっていると思うが、逃げ場は無いぞ」のしのし

タロウ「ジュウリョウさん、ちょっと時間をちょうだい」

力士「む?」

タロウ「フィナちゃん、死ぬ前に少しおしゃべりしようよ!」

タロウ「僕としても少し惜しいんだよね。敵になってしまったけど、すごく気が合ったのは事実だからさ!」

フィナ「……さっさと殺せば。あんたたちと話すことなんて何もない」

タロウ「そんなつれないこと言わないでよ!」

武御霊「フィナ、そのほうは嘘をつかれるのが嫌いだったろう」

武御霊「すごく何か言いたそうな顔をしているじゃないか。嘘をつくのは良くないんじゃないか、ん?」

フィナ「……そうだよ。あたしは嘘つきと、人の命を軽く見てる奴が一番嫌い」

フィナ「忍者は人を殺さないなんて言って……何人殺したわけ?」

フィナ「キョウトなんて、大嫌いだ」

武御霊「そうかそうか。聞いたか、皆の衆?」

オミキ「……」

力士「妥当だ」

タロウ「ひどいなあ! さっきはあんなに興味を示してくれたのに!」

タロウ「僕たちの存在はキョウトの一つの側面に過ぎないんだからね! それで全体を嫌うなんて……君はまだキョウトを何も知らない!」

力士「おい、タロウ……」

タロウ「だからフィナちゃんにはもっとキョウトをよく知ってもらうべく……」

タロウ「ハラキリを体験してもらおうよ」ニヤリ

フィナ「……!!」ハッ

タロウ「オミキちゃん! 脇差を一本貸してあげてよ」

オミキ「……はい」スッ コトリ


石畳に座り込むフィナの前に短い刀が置かれた。

忍魂気を纏っていない刀身は、フルフィリアの一般的な刃物とは比べ物にならないほど鋭い。


タロウ「あっ、気づいてくれた? そう、キョウトの刃物は世界一の職人技!」

タロウ「力を込めなくても軽くお腹を切り裂けるからね!」

フィナ「……」ギリッ

タロウ「なんだいその目は? その目はハラキリというものを誤解している目だ!」

タロウ「いいかい? ハラキリは名誉ある死なんだよ」

タロウ「本来なら敵にハラキリを許すということは武人としてのリスペクトを示すことに他ならないんだ」

タロウ「リスペクトされてもいない外国人のただの女の子がハラキリを許されるなんて、光栄に思うべきだよね!」

タロウ「分かったら細かい作法は抜きにして、お腹を横一文字に掻っ捌くんだ! さあ早く!」

フィナ「……!」ブルッ

力士「逃げようとしたならば、即座に頭蓋を叩き割る」

タロウ「顔も潰れてなくなっちゃうのとどっちがマシか、考えてごらんよ!」

武御霊「主ら、一人こちらに近づいてくるぞ」

力士「増援か?」

ザッ

ガドー「何やってんだ、オマエら?」

フィナ「ガドー、くん……!」バッ


彼はフィナの元師匠の後輩にあたるアサシンであり、若干15歳ながらその実力は当然フィナを大きく上回っている。

数度共に仕事をした程度の関係ではあるが、この状況においてフィナにとっての唯一の頼みの綱であった。

ガドー「なんでボロボロ泣いてんだ? ……ああ、そういう事か」

ガドーは周囲の戦闘の痕とキョウトの民達から感じる敵意から、すぐに状況を把握した。

ガドー「安心しろ。オマエらとやりあう気はねぇよ」

フィナ「そんな事言わないで、助けてよ! 殺される……!」

ガドー「ハア……?」

フィナ「お願い! なんでもするから助けて! あたし、まだ死にたくない……」

ガドー「……なあ、オマエ誰に助けを求めてんだ?」

ガドー「アサシンのオレにオマエの命を救って何の得があるんだよ」

フィナ「得って……今それどころじゃ」

ガドー「何勘違いしてんだ。アサシン協会を裏切ったオマエはもはや同業者ですらない」

フィナ「あたしが……裏切者……?」

ガドー「そうだ。現にアサシン協会からオマエの暗殺依頼が出ている」

ガドー「フィナ、オレはオマエを殺しに来たんだよ」

その冷たい眼光に、フィナは足が震え尻もちをついた。

フィナ「ち、違う……! 裏切ったわけじゃないし……」ガタガタ

タロウ「なんだかんだ言って、君も他人の信用を失くすような事をしてるんじゃないか」

タロウ「同族嫌悪って奴だよね!」

フィナ「うるさい!」

タロウ「……立場、分かってる?」

ガドー「オマエはアサシン協会を知り過ぎた。もはやタダで関わりを断つ事はできない」

ガドー「もし生きていたらオマエの師匠、凶爪への依頼だっただろう。オレでマシだったと思え」

ガドー「だが……オレが手を下す必要もなさそうだがな」

ガドー「オイ、オマエらの代表は誰だ」

タロウ「一応、僕だよ!」

ガドー「やる。フィナ暗殺の報酬金、30000Gだ」スッ

タロウ「い、いや……アサシン協会との縁ができるのは避けたいから、断固として受け取りを拒否するよ!」

ガドー「縁ならたった今出来ただろ?」

タロウ「だ、だけど、彼女は今からハラキリするんだ!」

タロウ「そのお金を受け取ったら僕達がフィナちゃんを殺した事になる。それは尊厳ある自死を選んだ人間への冒涜に他ならないよ」

ガドー「なるほど面倒くさい風習もあるもんだ。だが異国のしきたりを蔑ろには出来ないな」

ガドー「つまり……こうするのが正解か」スッ


ガドーは、フィナの目の前に置かれた短刀の横に30000Gを添えた。

これがフィナの命の価値。

短刀で自らの腹部を切り裂き死亡する事への対価。前払い。


フィナ「あ……」


万全の状態で一対一でも勝ち目のない敵、三人プラス一柱が周囲を取り囲んでいる。

どう転んでも無残な死。恐怖と絶望で涙が溢れる。


フィナ(何がいけなかったんだろう。何を間違えたんだろう)


なぜこうなった?

初めは、手に職をつけるために、弟子を募集していた怪しいお姉さんに話しかけた事だった。

いや、それ以前だ。ホワイトシーフギルドに所属していなければ、アサシンとも忍者とも関わる事は無かったのだ。

……全くホワイトじゃないじゃないか。

フィナは、死んで亡霊になったらホワイトシーフギルドにホワイトなんて名付けてフィナを騙した張本人を祟り殺してやろうと強く思った。

フィナ「んぐうううう!!」


フィナは、苦悶の声を上げながら短刀を手に取った。

決心がついた。死後の目標が出来たのだ。

上手く亡霊になるための条件は分からない。だがなんとなく他人に殺されるより自分のタイミングで死んだ方が良い気がした。


フィナ「い、だああああああああ!!!!」ズプ

ズパァッ!!


深々と突き刺さる冷たい刃。背筋が凍り、全身に冷や汗が吹きだす。

続けて、短刀に力を込め、乱暴に切り裂く。

鮮血が魔法街の広場を染めた。

命の温度が失われていく虚脱感。そして耐えがたい激痛。

不鮮明な視界の中、フィナはもう一本の短刀を構えて躍りかかるオミキの姿を見た。


フィナ(ああ……自分で死なせてくれるなんてのも、嘘だったわけね)

フィナ(掌の上で弄ばれて、最低の死に方だ)

貴腐「残りは二人。そろそろ終わりかな?」

貴腐「おっと、軍から通信だ」

貴腐「……タイミング悪いなぁ」


ざわざわ

市民「逃げろー! 貴族連中の逆襲だ!」

旅人「あわわわわ……ど、どこへ行けばいいのか……」

アナウンス『こちら陸軍本部! 市民の皆さん! 落ち着いて行動してください!』

アナウンス『ウベローゼン市北の林に武装した集団を確認!』

アナウンス『市民の皆さんは至急屋内に避難してください!』

アナウンス『貴族の反乱勢力と見られる武装集団は大勢のモンスターを引き連れています!』

アナウンス『ウベローゼン市民でない方はお近くのギルドの指示に従って冷静に行動してください!』

水魔術師「魔法局はダメ! すでに戦闘が始まってた!」

火魔術師「そうだ、俺、空から見たぞ! 講堂前で人間が真っ二つに斬られるのと、広場でオートマタが暴れているのを!」

戦士「剣士ギルド、人数オーバーで受け入れ不可! 他のギルドへ案内します!」

女帝「ウフフッ、来たわね……」

女帝「でも私はここから動くわけにはいかないし……」

女帝「まずはさっきから町中に菌を広げて臨戦態勢の貴腐に頑張ってもらいましょう」



貴腐「うわあ貴族来ちゃったよ……面倒だな」

貴腐「いや、でもこの町には女帝が待機していたね。つまり私の出る幕は無い」

貴腐「よし、サボろう!」

今回はここまで。
メモ帳の貴腐の能力設定を見返したら異常にめんどくさいタイプの強敵でした。他の六勇とはここまで泥仕合にはならないと思います。

仲間たちを全員失い、行き止まりに追いつめられ、不死身の侍に必殺の剣で斬りかかられたミルズ。

彼女を救ったのは市民の善意だった。

「時よ止まれ!」

侍「ヌグッ!?」ピタッ

「「掴まれっ!」」

発光する少女と金属製の箒に乗った少女が、ミルズの手を掴み離脱する。

その背後で、巨大な樽が転がり袋小路のナマクラへと迫っていた。

ミルズ(あ、あれは……!)

侍「コノ程度!」ザンッ

カッ

衝撃を受けた樽が大爆発を起こす。

「魔法競技会ぶりだね、アンブラーズのミルズさん!」

ミルズ「き、キミたちは……!」

「前略! 平和を守る魔法少女! キュー」 ミルズ「ダメだ!」

魔法少女s「はい?」

ミルズ「キミたちは、危ない! 敵も危ないけど、主に別の意味で危ないから! 早く立ち去るんだ!」

魔法少女青「そんなっ……君を助けるための強化魔法の反動で五感を失ったのに……!」

魔法少女赤「ならせめてこれを受け取ってくれ! 私が作った魔法少女変身アプリ、男でも魔法少女に変えられるぜ!」

魔法少女黒「……その名も、機構魔盤(マキナレコード)。時は金なり……課金すればより強く変身できるわ……」

魔法少女白「動物だってこの通り、行けツノガメピンク!」 ツノガメ少女「行くぞー!」 コケッ ツノガメ少女「躓き死んだー!」 魔法少女白「すごーい! よわーい!」

魔法少女黄「ところで今日ソフィアさんいないの? アトリエを一件譲ろうと思ったのに」

魔法少女黄「そう、言うなればソフィーの  ミルズ「そういうのが危ないって忠告したんだけど!?」

ミルズ「第一、ネタの半分くらい魔法少女関係ないじゃないか!」

魔法少女白「でも少しは恐怖も紛れたよね?」ニコッ

ミルズ「……不服だけどね」

侍「グギィ……!」フラッ

魔法少女黄「そんな……! たる・フィナーレが直撃したのに!」

剣士「ここは僕に任せたまえ!」シャラン

ミルズ「知らない人出てきた」

剣士「フッ、ご存じないかな? 剣士ギルドの王子様と呼ばれるこの僕を☆」

ミルズ「王子!? どうしてここにっ……!」

剣士「いや違うんだ! 僕は断じてミハイ王子とは違う! 子猫ちゃんと同じ平民だからそう睨むんじゃない!」

ミルズ「前!」

剣士「おっとぉ!?」サッ


2、4スレ目に登場した、火剣士テンパラスの友人である彼は、盾を持たない細剣使い。

こう見えてそこそこ強く、特に近接攻撃の回避技術には人一倍長けていた。


キアロ「娘さん、レスキューのキアロだ。治療しよう。……不思議そうな顔をしているな」

ミルズ「だって……知らない人までボクを助けに……」

キアロ「俺達は反乱貴族の手から市民を守るべく、ギルドを超えて結成した自警団だ」

キアロ「あの男は明らかに貴族とは無関係の外国人だが、目の前で危険に晒される市民を見過ごすことはできない」

キアロ「ここにいる皆、同じ気持ちだ」

剣士「その通りさ。子猫ちゃんじゃなくても助けていたとも!」

魔法少女赤「知り合いなら尚更だな」

キアロ「さて、君は避難所へ逃げなさい。魔法局以外のギルドが避難所になっている」

魔法少女黒「……私が、運命の導き手になるわ」

ミルズ「いや、一人で行くよ。それよりもあの侍を何とか止めて欲しい」

ミルズ「あの光る剣は盾でもなんでも斬れる……十分に気を付けて」

キアロ「分かった。肝に銘じておく」

魔法少女白「みんなの力を合わせれば勝てない敵なんていない!」

ミルズ「うん、信じてるよ」タッ


剣士「この戦いが終わったらさっきの子をデートに誘うんだ……」

魔法少女黄「今日は調子がいいわ! もう何も怖くない!」

ミルズ(あっ、ダメそう)

パン職人ギルド街『美食通り』。

いつ訪れてもパンやチーズの香りが食欲を刺激する、“表の美食家”達の集まる街だ。

ミルズ(カフェ:アンブロシアには遠く及ばないけどね)

しかしミルズは“裏の美食家”アンブラーである。もはや普通の美食の香りでは心が躍らないのだ。

ミルズ(ここに来た理由は食事じゃない。貴腐の操る菌から身を隠せるかもしれないから)

ミルズ(パン職人ギルド周辺は、他の職人たちの支配下にある菌で満たされているはず……)

フェイラン「あいやーミルズ! さっきぶりある!」

イリス「ウチらもこれから遅めの昼食なんだけど、一緒にどう?」

ミルズ「キミたちはさっきの……そうか、無事だったんだ」

ミルズ(貴腐に会ってないから狙われてなかったんだ……!)

イリス「あー、ごめんね。食事したら合流しようと思ってたんだ」

フェイラン「満腹なたら、あのでかい奴にリベンジするネ!」

ミルズ「いや、もう諦めた方がいいね。……六勇の貴腐が敵の用心棒だった」

イリス「げっ……。ま、まさか、ウチらも貴腐の標的だったり……?」

ミルズ「それは大丈夫だと思う。二人は貴腐が出てきた時にいなかったから」

フェイラン「ミルズは会っちまったあるか……」

ミルズ「うん、ボクも襲われた。けど、出てきた時じゃ…………あれ?」

ミルズ(確かに襲われたけど、貴腐はまずボクじゃなくリウムの友達を狙って……)

ミルズ(ボクには、お茶をしようと迫ってきたような……?)

イリス「どうしたの?」

ミルズ「……いや、何でもないよ。とにかくこの件は関わってない事にして……」

フェイラン「イリス。私たち顔知られてないから不意打てるあるネ?」

イリス「だねぇ。二人で貴腐、ぶっ飛ばしてやろうじゃん?」

ミルズ(まさか、ボクはリウム達の仲間だと、貴腐には思われてない……?)

イリス「その前にまずは食事ね。ほら、ここウチの店。入って入ってー」

ミルズ「あ……お邪魔します」カランカラン

フェイラン「待つよろし! 入口の消毒ポーションで手を除菌するネ!」

イリス「決まりなんだ。菌が混じるといけないからさ」

ミルズ「…………!! 今、なんて言った!?」

イリス「この消毒ポーションで手を綺麗にしないと、パンに雑菌が付着しちゃうでしょって言ってんの」

ミルズ「消毒ポーション……医療用の……殺菌魔法!!」

ミルズ「行ってくる!」ダッ

フェイラン「どこ行くあるか!」

ミルズ「……貴腐退治っ!!」

キョウトの民に裏切られ、アサシン協会に裏切られ、ついに自害を強いられたフィナ。

しかし彼女を救ったのもまた、一つの裏切りだった。

タンッ タンッ ズバッ

ガドー「」

力士「」

子狐「ぎええ! やられた!」

タロウ「じ、ジュウリョウさん!? アサシンのキミも!?」

タロウ「オミキちゃん、何してんの!?」

オミキ「春眠の術です」

タロウ「そうじゃなくて!」

オミキ「言いましたよね、タロウさん」

オミキ「キョウト国のために働いてくれ、って」

タロウ「そうだよ、だってそれがオミキちゃんの生きる理由なんだろう!?」

オミキ「はい。人の役に立ちたくてあなたの手伝いをしてきたんですけど……」

オミキ「よく考えたら、これ、キョウト国のためになってますか?」

タロウ「え?」

オミキ「寄ってたかって取り囲んで、泣き叫ぶ女の子に無理やりハラキリさせる事は、別にキョウトの利益にならないんじゃないかな、と」

タロウ「なるんだよ! 商売の邪魔じゃん! 然るべき所に告発されたらキョウト国全体の立場が悪くなるんだよ!」

オミキ「でしたら、普通にお天道様に顔向けできる商売をすればいいのでは……」

タロウ「夢中草! 多少リスクを冒しても夢中草を流通させた方が後々利益になるんだって!」

オミキ「神社に閉じ込めて、夢中草入りの食事を与え続けて、手駒にした方がお得なのでは……」

タロウ「ああいえばこう言う! 黙って僕の言う事を聞きなよ! 誰の持ち物だと思ってんの!」

オミキ「……私は、武御霊神社の人形供養堂で目覚めました」

オミキ「従うのは、タケミタマ様のご命令だけです」

子狐「……昔、我はこう命じた」

子狐「『何をすれば他者の役に立てるのか、それは時と場合によって大きく変わる』」

子狐「『我の言う事ばかり聞かず、何をするべきか自分で考えて行動しなさい』」

子狐「その結果がこれじゃよ! なぜ我だけ術を使わず普通に斬った!? いやそもそも斬らんでも子狐の姿に戻した時点で無力化できてるというのに!」

オミキ「ええと……頭のキノコがそうさせました」

子狐「嘘こけい、この反抗期人形! 神で遊ぶな!」

フィナ「……」ガクガク

オミキ「大変! フィナさんが死にそうです。タケミタマ様、すぐに治療を」

子狐「今日一日はもう絶対に手を貸さんと……」

オミキ「治療しなさい」

子狐「えぇ……しなさいだと……。嫌じゃなー。やりたくないなー」

タロウ「なんだよなんだよ! まだ僕は納得してないからね!?」

オミキ「私は……フィナさんを助けた方が、キョウト国、ひいてはタロウさんのためになると思いました」

タロウ「意味が分からないよ!」

フィナ「……オミキ先輩? 痛つっ!」

オミキ「我慢してください。綺麗に合わせないと傷が残りますので……」

子狐「修復終わり。だが、後で医者に診てもらいなさい」

子狐「あちらの人形と店は直せんなー。ちょっとバラバラにし過ぎた」

フィナ「なんで、あたしの治療を……」

子狐「実は、急で悪いがその方の陣営へ寝返ることになった」

フィナ「そっか……ありがとう」

オミキ「先程までの無礼、水に流していただけますか?」

フィナ「……いいよ、一旦ね」

タロウ「ちょっ! いやいやおかしいでしょ! また唐突に命を狙われるかもしれないよ!」

タロウ「なんたって長い付き合いの僕さえも裏切るんだからね! あっさりと立場を変える相手を信じられる!?」

フィナ「えっ……信じるけど」

フィナ「だってこいつらってそういうものだしさ」

フィナ「何考えてるか分かんないし遺恨が残る人間よりもよっぽど付き合いやすいわ!」

タロウ「ま、待ってくれ。話が見えないよ」

フィナ「へー、自分の仲間のことすらよく知らないんだね」

フィナ「キョウトの恐ろしさを教えてくれたお礼に、冒険者のあたしが魔法系モンスターの厄介さについて教えてあげる!」

フィナ「オミキ先輩は、人形系モンスターのオートマタ」

オミキ「キョウトでは禍雛と呼ばれています」

フィナ「オートマタっていうのは、使命を持って生まれてくるわけ」

フィナ「大抵の場合は、生まれた場所を守ろうとして人間に襲い掛かってくる、理性のないモンスターなんだけど」

フィナ「生まれた場所によっては、少なくとも表面的には人間と親しくしないといけないような使命を持ったオートマタになる」

フィナ「例えば仕立て屋の子はお店を営業する事。オミキ先輩はたぶん、神社の参拝者を増やす事じゃないかな?」

オミキ「大体そんな感じです」

フィナ「オートマタは使命のために行動する。あくまで人間は利用するだけ」

フィナ「オートマタにとっては、あたしもあんたも、どうでもいい存在なんだよ! だからすぐに立場を変えられる!」

タロウ「な、なんだってー!?」

オミキ「どうでもよくはないんですけど……」


フィナ「そして神。キョウトではどうだか知らないけど、フルフィリアやノーディスでは妖精が大幅に強化された姿だと言われてる」

フィナ「でも結局のところ妖精! だから契約している木霊主には決して逆らえない!」

オミキ「キョウトでは神職です。木霊主は……確かジャルバ王国の森林地域の言葉ですね」

子狐「そう、決して逆らえない……。誰か助けて……」

フィナ「オートマタは利害関係が一致すれば安全!」

フィナ「神は、使役してる人が仲間なら安全!」

フィナ「そういうものなんだよ!」

タロウ「で、でもまた心変わりするかもしれないだろう? やっぱりフィナちゃんを殺した方がキョウトのためになると考え直す可能性だって……」

フィナ「あっ……でも、そこまで頻繁に変わるわけじゃないと、思う、けど……」

オミキ「心配ないです。よく考えたので」

フィナ「ほら!」

タロウ「君、バカだってよく言われない?」

フィナ「ゲスよりはマシだよ!」

子狐「そんなことより、いいのか? タロウ、その方に身を守る者はいないんじゃぞ?」

力士ジュウリョウとアサシンのガドーは春眠の術で眠らされている。

オミキが解除するまで起こす方法は無い。

タロウ「……切腹が必要なのは僕の方だったか」

タロウ「キョウト男児として、甘んじて死を受け入れるよ」

フィナ「は? いやいや、それって許しが必要なんでしょ?」

フィナ「ダメだし。名誉とかなんとか言ってハラキリで逃げるなんて許さないから」

フィナ「あんたはフルフィリアの法律で裁かれなさい!」

タロウ「う、ぐぐぐ…………」

ダッ

フィナ「逃走した!」

オミキ「追いますか?」

フィナ「いや……今は一緒にいて欲しいかな」

フィナ「お腹、痛いし……」

オミキ「……ちゃんと治療しましたか?」

子狐「した! 内臓ぐちゃぐちゃだったけどどうにか戻した!」


クリス「」

フィナ「あの子の顔……もう動かないんだ」

オミキ「ごめんなさい。もう少し早く考えがまとまっていれば……」

フィナ「あたしがハラキリするまで迷ってたんでしょ? ……しょうがない」

フィナ「先輩、どうするの? これから……」

オミキ「今まで通りです。神主さんは理解してくださるでしょうから」

子狐「我がいる側が正義じゃー。キョウトは敵にはならん」

フィナ「そっか、少し安心した……」

パキッ

フィナ「何の音……ああっ!」

オミキの頭の上、貴腐が植え付けた身体能力強化のキノコが肥大化していた。

音を立ててオミキの頭部が割れていく。

子狐「い、いかん! はっ!」ピカッ

ボシュ

フィナ「先輩!」

子狐「おのれ、そういう仕込みじゃったか……! キノコは消したが……」

フィナ「ああ……先輩の頭が……!」

子狐「たった今……我は自由に術を行使した。そういうことじゃ……」

フィナ「嘘……仲直り、できたのに……」

フィナ「許さない……貴腐……ッ!」

フィナ「…………」

目の前のオミキは立ったまま動かない。

割れた首から忍者の技に使用する墨色の忍魂気が漏れ出ている。

周囲には倒れたままのジュウリョウとガドー。

そして、バラバラになった仕立て屋人形クリスティと、使役していたマネキン。

フィナ「……よし」スッ

子狐「な、何しとんじゃー!?」


1.クリスティの頭部をオミキの胴体に乗せる
2.忍魂気を吸う
3.倒れた二人から装備品をはぎ取る

↓2

今回はここまで、久しぶりの選択安価。
結果は見えてますが次回ようやく貴腐との決戦です。できるだけ早めに。

全然早めに書けなかった……貴腐編ラストまで書きあがってないので保守します

新年早々におみくじでミスプリントを引き当てるソピア

生存報告。この分だといつまでも終わらせられないので六勇の半数はダイジェストで倒すことになりそうです。


>>736

フィナ「見て見て先輩ー! 大吉!」

オミキ「うちの神社、元日には大吉しか入れてないんですよ」

フィナ「なーんだ残念」

フィナ「ってことはソフィーも大吉だった?」

ソピア「ねえ……」

ソピア「『はずれ』って書いて入れたの、誰?」

子狐「な、何しとんじゃー!?」

フィナは、おもむろにクリスティの頭部を持ち上げると、オミキの残された胴体の上に乗せた。

フィナ「ちょうどサイズが合ってると思ってさ」

フィナ「ほら、違和感ないじゃん。これで直せる?」

子狐「いや部品が間違っておるし!」

フィナ「あってるよ。先輩の頭残ってないし間違えるわけないじゃん。おっかしーw」

子狐「笑いごとじゃなーい! 取り返しのつかない事になったらどうする!」

フィナ「まあまあまあまあ、とりあえず繋いでみようよ」

フィナ「何かあったらまた首を壊せば元通りだし」

子狐「倫理観がおかしい!」

フィナ「お願い! 貴腐に対抗するには戦力が必要なの!」

フィナ「どっちか復活してくれたらとっても助かるんだって!」

子狐「しかしなあ……」

フィナ「……ねえ、オートマタの中心がどこにあるか、気にならない?」

フィナ「頭なのか、心臓なのか、壊れたら消えちゃうのか、さ」

子狐「……」

数分後……

オートマタ「大変です! 混ざりましたー!」

首から上だけ西洋人形の雛人形は元気に動き出した!

子狐「ま、混ざったとは一体……」

オートマタ「わたしと私の心が混ざって一つになりました!」

フィナ・子狐「「ええええええ」」

フィナ「や、やばい……首を壊してもどうにもならなさそう」

子狐「だから言ったろうー! 取り返しのつかないことになると!」

フィナ「先輩、仕立て屋さん、本当にごめんなさい!」ペコッ

オートマタ「顔を上げてください。わたしは別に気にしてませんよ」

オートマタ「ほら、もうお面つけなくても人間らしい表情ができますし、記憶力も上がったんですよ、フィナお姉さん!」ニコッ

フィナ「う、うん、それはよかったね……」

オートマタ「グー、パー……。体はちゃんと動きます。忍術も裁縫も今まで通り使えそうですね」

オートマタ「あとあと、魔法と巫女のスキルも忘れてませんよ!」

子狐「ぐわあ! また支配下に置かれた!」

フィナ「でもフローラと神主さんになんて説明しよう……」

オートマタ「私はわたしですし、好きにさせてもらいます」

オートマタ「使命感も薄まりましたからね。わたしは……自由です!」

フィナ「そ、そっか……」

オートマタ「でもできればまたお店は持ちたいですねー。着物作ります」

オートマタ「あ、私のことはオミキでもクリスティでもミキティでも好きなように呼んでくださいね」

子狐「名前を絶妙に混ぜるな」

フィナ「もう先輩は先輩でいいや」

フィナ(でもなんだか貴腐に勝てる気がしてきた)

フィナ(だってさあ……スペック高すぎない? 忍者+木霊主+人形師+全属性魔術師だよ?)

ウベローゼン市の人気のない一画。

市民の自警団と貴腐のキノコの力でゾンビとして蘇った侍の戦いが続いていた。

剣士「そろそろ避けるのも限界だよ!」

魔法少女黄「どうすれば倒せるの……?」

キアロ「頭のキノコを狙うんだ。見覚えがある……あれがある限り何度でも復活する」

剣士「よしきた!」ガキィン

剣士「硬っ……!」

魔法少女黒「……時間を止める。ブルー、手伝って」

魔法少女青「時間稼ぎね! まっかせろー!」

侍「グッ……!」

風魔術による空気圧と、強化魔法による羽交い絞めで侍ゾンビの動きが一時的に止まる。

魔法少女黄「今よ!」

魔法少女白「私の魔法は尻からも出る!」キィィィン

魔法少女赤「まじかるー!」ボォォォ

杖と尻尾型装備から放たれる二条の光線と、魔法でも何でもない改造ガスバーナーが、侍ゾンビの頭のキノコを焼いていく。

魔法少女青「えっ何これめっちゃいい匂い!」

キアロ「やはりあれは貴腐のキノコ……例え人間をグロテスクに変異させるキノコであっても風味を追求する、職人の仕事だ……」

剣士「感心してないで次はどうすればいいか教えてくれないだろうか! 剣が効かないんだ!」ズバッ

キアロ「打撃で意識を奪えるはずだ。剣士の君に頼むべきではないが」

剣士「得意技、さッ!」ドンッ

侍「カハッ……」

魔法少女白「あ、あれは噂に聞く壁ドン!」

魔法少女黄「なんて男らしい強打なの! 壁に叩きつけられた彼の気持ちを想像すると胸のドキドキが止まらないわ!」キュン

魔法少女赤「肋骨と肺に効いてるな」

剣士「まだ足りないのかい? 欲しがりさんだね!」バキッ

魔法少女青「イケメンにのみ許される全女子憧れの顎クイ!」

魔法少女黒「あんな事されたら、頭がおかしくなっちゃいそう……」

魔法少女赤「顎へのアッパーカットだな」

侍「……」ドサッ

剣士「フッ……。おやすみのキスはいらなかったみたいだね」

剣士(勝った……! 僕は……カッコいい!)

形勢逆転されたタロウはキョウト国陣営の拠点である神社へと逃げ込んでいた。

タロウ「神主さん、大変だ!」

神主「どうしたんですかタロウ殿、騒々しい」

タロウ「オミキちゃんが裏切ったんだよ!」

神主「ふふっ……」

タロウ「なんで笑うんだい!」

神主「タロウ殿、お主には分からないでしょうな」

神主「オミキよ、よく成長しましたな……」

タロウ「僕らのフルフィリア支配計画に逆らうのが成長なもんか!」

神主「……そも、この私も祭神を侵略に用いる事に賛同してはおりませぬ」

タロウ「なんだって!? この非国民め! 恥を知れ!」

神主「否。罪を暴かれた者こそが非国民のそしりを受ける。それが私どもの国の慣例でしょう」

神主「立ち去りなさい」

タロウ「いや! まだ暴かれてないよ! なんたってこちらにはフルフィリア最強の一人、貴腐が残っているからね!」

「ほう、タロウさん。この異臭騒ぎはあなたの差し金でしたか」

タロウ「誰だ! ってなんだ、この間(2スレ目)僕の店に来てくれた旅人のおじいさんじゃないか」

タロウ「痛い目をみたくなかったら何も見なかったことにして帰った方がいいよ!」

ご隠居「いいえ。その悪行、決して見逃すわけに参りません」

ご隠居「二人とも、懲らしめてあげなさい」

付き人達「はっ!」

タロウ「こ、降参だ! 僕は丸腰なんだ!」

タロウ「いきなり上から目線で懲らしめるだなんて、なんなんだよお前ら!」

付き人「……この紋所が目に入らぬか!」

タロウ「あっ」

貴腐「ふーん? キョウトの傭兵は雇い主のサキューラさんを残して全滅しちゃったんだ?」

貴腐「心配いらないよ、レディー。私の目的はすでに果たしたからね」

貴腐「お偉いさんだか何だか知らないけど、私にカタナを向けたら次の瞬間にはレディーの魔法の餌食さ」

ミルズ(いた……!)


ベーカリーで貴腐攻略の鍵を手に入れたミルズは、細い路地で貴腐の後ろ姿を発見した。

立ち止まり一息飲み込むと、ミルズは緊張を表情に出さないように心掛けながら貴腐に歩み寄る。


ミルズ「貴腐……さん!」

貴腐「おやぁ? き、君はさっきのレディー!」

ミルズ「先程は逃げてしまってごめんなさい。驚いてしまって……」

貴腐「あはは、こちらこそすまない。目の前で人が菌に変わるのは初めてだったんだろう。刺激が強すぎたかな?」

ミルズ「それにしても、すごくいいにおい。近くで嗅いでもいいですか?」

貴腐「ウェルカム! 存分に嗅ぐといいさ!」バッ

ミルズ「殺菌魔法!」シュウウ

貴腐「ぐああああ!!」

貴腐「なっ!? しっかりするんだ、マイレディーズ!」


迎え入れるように両腕を広げた貴腐の全身に殺菌効果のある水しぶきが降りかかった。

貴腐はこの日、初めて焦りの表情を見せた。

その背筋はまっすぐに伸ばし、両の眼も見開いている。


ミルズ(効いてる! やっぱり、高所・先端恐怖症のデマを流していたのは、殺菌という分かりやすい弱点を隠すためだった)

ミルズ(致命的かつ本来ならわかりやすい、殺菌という弱点を隠す……そのために貴腐は奇妙な姿勢を取り続けていた……!)


ミルズは貴腐の背面に移動しながら何度も殺菌魔法を浴びせる。

貴腐「あぁ、お気に入りのスーツがびしょ濡れだ……」

貴腐「ねえ、そろそろやめてくれないかな? それ効かないからさ」

ミルズ「……っ?」

貴腐「着眼点はいいんだけど、私自身は人間だし、レディーも半分人間だ」

貴腐「さて、私を襲った理由だけど、リウム君の仲間って事でOK?」

ミルズ「…………」

貴腐「肯定と受け取っておくよ」

貴腐「さて、口直しのドリンクになるかレディーの一員になるか、君に選ばせてあげよう」

貴腐「私は紳士だからね」

ミルズ(……魔人先生はボクを助けた時、殺菌魔法を使っていた)

ミルズ(つまり、少なくともレディー以外の菌には効いている。殺菌魔法は使い続けるべき!)

貴腐「話を聞かない子だなぁ!」ブン

ミルズ「危なっ……!」

貴腐は手を伸ばしてミルズに触れようとした。

パン職人のスキルの一つ、『菌活性化』。

本来、短期間で良質なワインやチーズを作るための技術なのだが、貴腐は生きた人間に対してこれを使う。

さらに『操菌師』である貴腐の菌活性化は細菌にも及ぶ。

カビ類や常在細菌に対する菌活性化は、菌に変えられた100人以上のレディーと並ぶ、貴腐の強さの象徴だ。

その手で触れさえすれば、あらゆる有機物を腐らせ、分解する。

たとえその対象が山を超えるほどに巨大な生物であっても例外ではない。


貴腐「上手く避けるねぇ。しかし、精神力が切れた時が君の最期だ」

ミルズ(もう打つ手がない……。逃げようとしても後ろから菌の塊が飛んでくるかレディーの追撃が来る……)


殺菌魔法は本来攻撃用の魔法ではなく、その射程も決して長くない。

そのため、貴腐の腕を避けながら殺菌魔法を絶え間なく当て続ける行動には、相当な集中力を要した。


ミルズ(そういえばレディーが攻撃してこない)

ミルズ(横や後ろはがら空きなのに何もしてこないって事は、貴腐の近くにいる?)

ミルズ「……殺菌対策、菌は服の中に?」

貴腐「隠れているよ。で、どうするんだい?」

しばらく前……。

ラファ『惨い死に方をしてしまったのです』

ラファ『まさか白魔術師の私が幽霊モンスターになってしまうとは……。きっとこの間悪魔の力を借りてしまった影響ですね』

ラファ『ソピアと関わってからというものロクな目に遭っていないのです……』

ラファ『ん? あれは……』

日魔術師『ぐふふふ……。女の子の着替えシーンも、入浴シーンも、エッチなシーンも、幽霊なら覗き放題!』

日魔術師『ぼくちんを死なせてくれた幼女たん、ありがとう! 幽霊サイコー!』

10日前、魔法競技会の最中にヒレアに猥褻行為を働いたために爆殺された、変態の日魔術師だ。

遠くを見る魔法に長けるラファは、道行く女性を次々と全裸にしてテンションが上がっている彼の姿を目撃してしまった。

ラファ『……お久しぶりなのです。クズは死んでも治らないのですね』

日魔術師『どどど、どうしてぼくの姿が!?』

ラファ『私も死んだのです。あなたは欲望が強すぎて幽霊化したのでしょうね』

日魔術師『誰にやられたんだ!? ぼくちんが仇を討ってやる!』

ラファ『あまりに変態で忘れてましたけどあなたってたまに正義感強いところがありましたね』

ラファ『私を殺したのは巨大な男なのです。でもやめておいた方がいいのですよ』

ラファ『仲間に強力な使い魔の類と、六勇の貴腐がいました』

日魔術師『誰が相手だろうと関係ない! ぼくの魔法でひん剥いてやるー!』

ラファ『あっ、行ってしまいました……』

ラファ『でも……彼は除霊された方が世の為になりますね。放置するのです』

ラファ『私は除霊されないように気を付けましょう。復活できなくなるかもしれないのです』

日魔術師『見つけたぁ!』

日魔術師『男相手で気が乗らないけど、あいつは女の子を微生物に変えるのが趣味の変態男!』

日魔術師『生身の少女を愛するぼくちんの誇りにかけて許すわけにいきませんぞぉ!』

日魔術師『武装解除(服を消滅させる)魔法!』

貴腐は、パンツ一枚を残して裸になった!

貴腐「はあっ!?」

ミルズ「よく分からないけどチャンス!」シュウウ

貴腐「ひええ! 冷たい!」

貴腐「レディー! このままでは危ないっ、私の下着の中に隠れるんだ! 早く!」

貴腐「な、なぜ隠れないんだ!? 隠れないと無力化されてしまうじゃあないか!」

ミルズ「“レディー”だからだよ!」

貴腐「そうか! ああその通りだね!」

貴腐「これは紳士としてあるまじき失態……!」

貴腐「失敬! 私は服を着替えに戻る!」ダッ

ミルズ「えっ、脚、はやっ……!」


貴腐は体勢を立て直すべく逃走した。

今ここで仕留めなければ、広範囲の索敵能力と目に見えないレディーの奇襲によって、確実に殺される事はミルズにとって明白だった。

しかし頭頂部から生えたキノコによる身体強化の影響で、貴腐は見た目からは想像のつかない俊足を持っていた。

菌のにおいが強いエリアから少し離れた屋根の上で、機をうかがっていたフィナの下を貴腐が走り抜けていった。


フィナ「き、来た!?」

フィナ「……隙だらけ。なぜか裸だし……」

フィナ「今なら……でも……反撃されたら……」


貴腐はそこそこ脚が速いとはいえ、走る訓練を積んだフィナならば十分に追いついて攻撃できる。

しかし、二の足を踏んでいた。

相手は怪物という表現でも足りない程の強さで知られる六勇の一人。手加減をする余裕などない。

フィナには徒手で貴腐を倒すイメージなどまるで湧かず、かといって短剣を握る事もできなかった。


貴腐「反乱勢力の襲撃で皆避難している。人目が少なくて助かったな」

貴腐「レディー、すぐ目覚めさせてあげるからね……!」

一般人「き、貴腐様……!」

貴腐「おっと! こ、この格好には理由があるんだ。誤解されては困るよ」

一般人「助けてぇ……!」ギシッ

貴腐「マネキン……?」


貴腐がばったり出くわした市民の手首と足首に細い糸が巻き付いていた。

その糸は市民の背後に立っている顔の無いマネキン人形の指先から伸びている。

悲鳴を聞いてそちらに顔を向けると、避難所の建物に集まる市民を大量のマネキンが襲っていた。

それぞれが一瞬にして市民の背後に回り込み、魔法の糸で手際よく拘束する。


貴腐「反乱勢力の仲間の人形師か……? しかし人形モンスターにあのような繊細な動きは不可能なはず」

貴腐「狙いは私か。着替えは中断せざるを得ないね」

貴腐「人間使いの人形……危険だ。軍人として無視することはできない」


一瞬、普段見せない真面目かつ冷静な表情を見せる貴腐。だが内心は少々焦っていた。

何しろ頼りのレディーが活力を取り戻すまでは、肉弾戦もしくは周辺の空気や土壌に存在する菌を集めて戦うしかないのだ。

市民を人質に取られているので広範囲の菌を活性化して一掃することもできない。

貴腐は強化された肉体でマネキンの破壊を狙うが、マネキン達は巧みな足捌きでそれを回避。

どうやら操られている市民にも強化魔法がかかっているようだ。


貴腐「一人、妙に強そうな市民がいる」

筋肉「強そうではなく、強いぞー」

筋肉「ボディビルダーとやら、春眠の術であっけなく眠りはしたが良質な肉体だ。この武神タケミタマの器にふさわしい」

貴腐「……間に合った! 援護を頼むよ、レディーズ!」


貴腐が呼びかけると周囲にいくつもの菌糸体が盛り上がり、女性型に変形する。

半実体化した女性たちがマネキン軍団との戦闘に突入した。

風の刀、風の槍、風の薙刀、風の矢、強烈な張り手。

キョウト国の誇る武の数々が、武術経験の無い貴腐を容赦なく襲う。

成す術なく傷付いていく貴腐だが、強化された肉体は致命傷を防ぎ、わずかな傷も治療班のレディー達の回復魔法によってすぐに修復されていく。


筋肉「何という再生力じゃー……」

貴腐「どんなものかと思ったら、この程度耐えられないようじゃ紳士は名乗れないよ」

シュウウ

ミルズ「追いついた……!」

貴腐「また君か。しつこいレディーも嫌いじゃないけどね」

貴腐「頭のキノコに攻撃したのは当たりだけれど、消毒用の魔法程度ではねぇ」

ミルズ「っ! モンスターの群れ……!」

筋肉「安心せぇ。我らは貴腐の敵じゃー」

貴腐「全く……人間を操って戦わせるとは、なんと外道なモンスターなんだ」

ミルズ「市民を丸ごと洗脳する計画に加担したキミが言えたことじゃない!」

貴腐「ああ……それはね、仕方がなかったんだ」

ミルズ「誰に命令された?」

貴腐「いやあ。ただ、キョウト国の麹菌を手に入れるには他に手段が無かったものでね」

ミルズ「は?」

貴腐「以前は友人に頼めば取り寄せてくれたのだけれど……今、検問が厳しくなっているだろう?」

貴腐「そんな時、キョウト国に伝手があるサキューラさんと知り合って、私は仕方なく交換条件を飲んだんだよ」

ミルズ「麹菌のために……? それだけ……?」

貴腐「そう。私の菌とレディーへの情熱は誰にも止められやしないさ!」

ミルズ「そんな、小さなわがままで……六勇ともあろう人が、国を、町を売った……!?」

貴腐「大げさだなあ。領土を盗られるわけじゃあるまいし」

貴腐「私は麹菌を手に入れて幸せ、キョウト人は商売ができて幸せ、市民は夢中草で幸せ。みんな幸せじゃあないか」

ミルズ「ふざけるな!! 人の命を奪っておいて、何が幸せだ!!」

貴腐「確かに、彼らには悪いことをしたよ。けれども、多数の幸福は守られた」

ミルズ「嘘だ! キミは自分の事しか考えてない!」

ミルズ「……このことは、共和国軍に報告する」

貴腐「ふうむ……理解してもらえず実に残念だよ」

貴腐「これで私は何が何でも君の口を封じなくてはいけなくなった」

マネキン軍団とレディーズとの戦いは、レディーズが優勢だった。

無数の菌で構成されたレディーに対して物理攻撃はほとんど意味を成さない。

対するマネキンは手足の器用さこそ通常のオートマタを遥かに凌駕しているものの、魔法や忍魂気をそれぞれで使用する事はできない。

レディー達にとっては少々狙いにくい的でしかなかったのだ。

戦闘を終えたレディーはミルズへと群がり来る。


レディーA「貴女にもこの快楽を教えてあげるわぁ~……!」

レディーB「みんな、魔法弾の一斉射撃よ!」

筋肉「我の後ろへ! ぬう、この者らも不死身かー」

ミルズ「くううううっ……」シュウウ

貴腐「菌から自分の身を守るだけで精一杯だね」

貴腐「君ももうすぐ菌になるんだよ」

貴腐「うん? なんだいレデ、ッ!?」


レディーから報告を受け、右を振り向いた貴腐は硬直した。

遠くに小さな人形のようなものが見えると思った次の瞬間には視界をそれが塞いだのだ。

見た相手の時間を一瞬だけ止める魔法と、忍者の高速移動技術を組み合わせた奇襲。

貴腐「び、びっくりした」

レディーC「私達を信じてください、貴腐様ぁ」

レディーD「貴腐様には触れさせませんわ!」

オートマタ「邪魔です!」シュッ

サッ キンッ キキン

オートマタ「この数は厳しいですね……っ!」


二体が混ざることで異常なまでの強化を遂げたオートマタだが、20人の実体化したレディーに囲まれ、攻撃を凌ぐだけで精一杯であった。

その方向に向けて貴腐が手を伸ばす。

彼女の操るマネキンと違い、オートマタは市民を抱えていない。

貴腐には、すでに膨大な数に増やした菌を直接ぶつけることが可能だった。


ミルズ「させない……!」シュウウ

貴腐「いいのかいこちらに向けて」

ミルズ「うっ!」シュウウ

貴腐「そうそう、自分に使わなきゃ。一秒でも長く生きたかったらね」

レディーE「吹っ飛べ!」ドカン

筋肉「ぬお!」

筋肉(しまった! この肉体は人質、弾き飛ばされたということは……!)


ミルズ「あっ……」ガクッ

貴腐「ようやく精神力が切れたようだね。中々よく頑張ったじゃないか」

オートマタ「魔法使いさん! ……わわっ!」

レディーF「つかまえたぁ」ドロォ

魔法の連続使用で体に力が入らなくなり倒れ伏したミルズ。

そして先程の倍の数に増えたレディーと交戦し、隙を付かれて捕まえられたオートマタ。

何人かのレディーによって貴腐から離れた場所へ運ばれた市民達。

条件が揃ってしまった。

一定範囲内をまとめて腐らせ、無に帰す、貴腐の真骨頂。

目の前で、懸命に貴腐へ挑んだ魔法使いの少女が死んでしまう。

今、行かなければ。


師匠『殺さねぇと殺される。それは言い訳じゃねぇ、真理だ』

フローラ『フィナさんもいつか、大輪の花を咲かせてくれると信じています』ニコッ


手は今なお震えている。

それでも、窓を開け放つ。

タンッ

フィナ「うあああああッ!」

フィナ「毒刃閃っ!」

ドスッ

貴腐「ぐげっ!」

フィナ「……毒抜きバージョン!」スタッ

ミルズ「キミ、は……?」

フィナ「殺菌! 早く!」ビシャッ

ミルズ「うぷっ! わ、分かった!」シュウウ


ミルズの顔にポーションをかけたフィナは、先程から建物の窓越しに戦場を見下ろしていた。

しかし、貴腐と戦う少女の窮地に恐怖を跳ね除け飛び降りたが、結局短剣を握ることはできなかった。

咄嗟に繰り出した技は、高速で斬りかかり毒を与える、殺し屋直伝の『毒爪閃』……の動きだけ真似たただの手刀。

もちろん、その程度で六勇は倒れない。


貴腐「ふふ……。よく来てくれたね、探す手間が省けたよ」

貴腐「そろそろ追いかけっこにも飽きてきた所だったよ!」

ズズズズズ

レディーG「アタシもアサシンなんだけど、ずいぶん下手クソな技ねぇ」

サナ「私がいる限り、貴腐様はいつでも体力満タン。毒も効かないよ」

女子「ミルズ、リウム……ごめんなさい。私だけこんなに幸せになってぇ♪」

レディーH「大切な貴腐様を傷つけるなんて許さなぁい!!」

フィナ「人の壁……!」

ポーションを浴びたとはいえ、ミルズは限界を超えていた。

ミルズの高い精神力を蝕んでいたのは魔法だけではない。

シュンにより告げられた、自身の出生にまつわる秘密。

家族に裏切られ、貴族の生き残りとして処刑されてしまうのなら、その前に死んでも変わらない……そんな考えさえ頭をよぎった。

だが、目の前の少女は自分の危機に駆け付けた。

そして今まさにその少女が危機に瀕している。

ならば、この場で全力で果てるのも悪くないと思った。


ミルズ「やあああ!」プシュウウウ

レディーH「キャア!」

フィナ「両手、いや、全身から……!?」

フィナ「ちょっとあんた、そんな事したら死んじゃうよ!」

ミルズ「分かってるッ!」


貴腐はそんなミルズをつまらなさそうに一瞥すると、その場から逃げ出そうとした。

彼にとって逃走は有効な戦法だ。彼の役割は司令塔。ただし極めて頑丈でいつでもどこでも無数の兵を補充できる司令塔だ。

ミルズは、走る貴腐の脚にしがみついた。


貴腐「レディーは蹴りたくないんだけど、なっ!!」ブンッ

ミルズ「うあっ!」

オートマタ「フィナさん! 春眠ですっ!」

フィナ「!!」


先程、オートマタが試みようとしてレディーに阻まれたのは春眠の術。

この術で眠らされた者は、フルフィリアの魔術師やエスパーには起こせない事を、オミキが知っていた。

フィナにとっては今日習ったばかりの技だ。

しかし、体は咄嗟に動いた。

フィナ(これなら、勝てる!)

フィナ「凶刃瞬殺舞 素手ッ! 死ねえええええ!」

ドドドドドゴッ

貴腐「いだっ、やめっ、ぎゃっ!」


凶爪瞬殺舞……人間の急所を狙って秒間10回の斬撃を繰り出す、殺し屋『凶爪』の奥義。

春眠の術……己の身から放出した力の塊である魂気を纏った武器で斬りつけて対象を眠らせる、オミキの得意技。

そしてフィナが振るっているのは手刀、ではなくグーパンチ。

フィナは師匠と先輩から習った技を即興で組み合わせ、不殺活人の暗殺拳を生み出したのだ!


フィナ「永遠に寝てろおおおお!!!」

貴腐「あぎっ、がふっ、ぐぎょっ!」


相手は、菌で肉体を強化しているものの肉弾戦の知識が全く無い貴腐。

一撃たりとも回避できず、人間の急所すべてに黒い気を纏った拳が打ち込まれる!

目、耳、顎、関節、股間、様々な臓器に、黒い気が吸い込まれていく。

本来、春眠の術はこのような使い方をするものではない。


フィナ「貴腐が死ぬまで殴るのをやめない!!!」

貴腐「ごっ、がっ、ぶえっ……」


なお、途中から武神タケミタマがフィナの肉体を強化していた。

強化された貴腐の肉体も耐えきれず、骨が砕け、関節が折れる。

もはや不殺とは程遠い、ただの暴力であった。

フィナが動きを止めた時、そこには半裸の男が見るも無残な姿で息絶えていた……。

フィナ「はあ、はあ、はあ、はあ…………。ふう……」

貴腐「」

ミルズ「貴腐が、死んだ……」

フィナ「し、死んでないから! たぶん!」

オートマタ「レディーって呼ばれてた人たちも消えちゃいました」

子狐「心拍が止まっとる。これはもう助からんなー」

フィナ「いいや死んでないね! 刃物使ってないし! 目を覚ましたら仲直り!」

ミルズ「そんな無茶な……」

フィナ「さっきの新技の名前は『春の舞』でいいかな?」

子狐「優雅さのかけらもない、ボッコボコに殴る技を?」

フィナ「あたしの流儀は不殺の暗殺術」

子狐「矛盾しとるぞー」

オートマタ「フィナさん、人を殺してしまった事を認めたくないのは分かります……」

オートマタ「でも、貴腐は私を利用してわたしのお店を壊した極悪人なんですよ! 死んで当たり前です!」

ミルズ(何言ってるんだろうこの人形)

ミルズ「……もし、貴腐が生きていたらこれからも、自分のわがままでもっと大勢の罪のない人々を殺していただろうね」

ミルズ「キミがそうしていなかったら、ボクもキミも死んでいたんだ」

ミルズ「命の恩人を人殺しだなんて責めやしないさ。誰がその行為を責めても、ボクはキミの味方だ」

ミルズ「ねえ、名前を教えてくれないかな?」

フィナ「……あたし、フィナ」

ミルズ「ボクはミルズだ、よろしく」スッ

フィナは握手に応じなかった。

フィナ「……ごめん、あたし、初対面の人はもう絶対信用しないって決めてるんだ」

ミルズ「……そうだね。裏で何してるかなんて、身内ですら分からないものだからね」

子狐「お互い訳ありじゃなー」

オートマタ「え? 一件落着ー!じゃないんですか!?」

オートマタ「まあ一部わたしのせいなんですけどね」

「あいたたた……」ムクッ



フィナ「ひいっ」

ミルズ「あ、あああ……」

貴腐「君たち……よくもやってくれたね」

貴腐「特段不思議な事じゃないよ。菌はね、土の中にだっているし、風に乗って飛んでくる」

貴腐「この世に菌がいる限り、私は何度でも蘇る」

貴腐「私は不死だ」

子狐「春眠の術を克服しおった……」

オートマタ「そんな、もう倒す方法なんて思いつきません……」

ミルズ「殺菌…ぐっ」ガクン

ミルズ「だ、ダメだ……動け、動けえ!」ガクガク

フィナ「ちょっと!? 殺菌できなかったらもう攻撃が……!」

「下着姿で……何をしているのかしら?」

貴腐「や、やあ」

フィナ「……共和国海軍の大将」

ミルズ「通称、女帝……!」

女帝「町がモンスターの群れに襲われているのに、前線に貴方の兵士が現れていないようだから様子を見に来たのよ」

貴腐「た、戦っていたさ! マネキンの残骸が見えるだろう?」

貴腐「市街戦で珍しく苦戦を強いられてね……。ただ、もう終わるところさ」

ミルズ「ち、違います……! 貴腐は……!」

ミルズ「夢中草の売人グループと組んでいて、げほっ」

ミルズ「一般市民のボク達を口封じのためにっ……。他の人も大勢殺されて……!」

女帝「そう……。それは、怖かったわね」ニタァ

ミルズ(今も怖い)

貴腐「おいおいレディー、騙されないでくれよ。衛生兵長たる私がそんな事をするわけがないだろう」

フィナ「嘘を付くな! 憲兵に神社を調べてもらえば、すぐに証拠は見つかる!」

女帝「落ち着いて。すぐに分かるわ」スッ

女帝「嘘を付いているのはやっぱり貴方ね、貴腐」

貴腐「何を根拠に……はっ」

フィナ(今、あたし達は鞭で打たれたんだ! 女帝に操られて、ありのまま起こったことを自白させられた)

フィナ(叩かれた記憶も消されるから知っていなければ尋問されたことにも気付けない!)

女帝「貴腐、貴方は一旦元帥の家で待機。反乱を鎮圧して落ち着いてから軍法会議よ」

貴腐「惜しい……あと2人だったのに」

女帝「元帥の家で暴れたり、奥様やエイラちゃんを傷つけたりしたら…………私の拷問がマシに思えるわよ、ウフフフッ」

貴腐「ひっ……」

女帝「さあ、自分で歩いていきなさい!」パチン

貴腐「……」テクテク

フィナ(あれ、レディーにも解除できないんだろうなぁ)

女帝「フィナちゃん、ミルズちゃん、貴女たちには補償と褒美を与えたいところだけど、今は避難して頂戴。警護を付けるわ」

フィナ(名前も聞きだされてる……)

フィナ「お気持ちだけ受け取っておきます……」

女帝「そう? それならポーションを渡しておくわ。これで疲れを取りなさい」

女帝「そうそう、ミルズちゃん。菌に変えられた貴女のお知り合いは後で元に戻させるわ」

ミルズ「あ、ありがとうございます」

女帝「いいえ。この度は衛生兵長がご迷惑をかけてごめんなさい」

女帝「ではお気をつけて。ウフフッ……」

フィナ「ミルズ。……さっきは適当にかけてゴメン。ほら、ポーション飲んで」

ミルズ「ごくごく……ぷはっ!」スクッ

ミルズ「行かないと……」

フィナ「どこ行くの? まだ動かない方が……」

ミルズ「違法ハーブの元締めが残ってる……!」

神社の周辺地区。

ギャル「げーっ……。なんでお偉いさんがタイミング良く神社に来てるワケ……?」

ギャル「タロウには悪いけど縁を切るしかないか。引っ越しかー……面倒臭い……」

バッ

フィナ「見つけた! 神社の近くを探して正解だった」

ミルズ「逃がさないよ」

ギャル「ウソっ……生きてたの? キョウトの傭兵たちは? 貴腐は?」

フィナ「貴腐はあたしが倒した。オミキさんはこちらに付いたよ」

ミルズ「貴腐は、キミに頼まれたって言ってたよ。キミも捕まえて共和国軍に引き渡す」

ギャル「ハァ!? 監獄とかチョー面倒なんですけど!」

ギャル「もしかして……アタシが弱いと思ってない?」

ミルズ「キミの実力は知ってるからね」

ギャル「ハッ、ウケる。ダサいから使いたくなかったけど、しゃーなしか……」

ギャル「秘技『死ノ薬』……!」

フィナ(ただの水弾の連射?)

ミルズ「避けて!」

フィナ「わぷっ! あれっ、別に痛くない」

ミルズ「高濃度の夢中草エキスが入ってた。あれは即席のポーションを作って連射する技。威力はなくても、当たればいいってことだろうね」

ミルズ「まあ、ボクが中和魔法で効果を消すから何の効果もないんだけど」

ギャル「ちょっ、全部無効化するとかありえんし……マジ最悪……!」

フィナ「じゃ、普通に拘束するね!」

夢中草の売人の元締めであるサキューラはあっさりと後ろ手に縛られた。

魔法は手を使わなくても発動できるが、精神力も大きく削れる上に身体への負担も大きい。

縛られたまま走るのは案外難しいため、相手がベテラン魔術師やテレポート使いでなければ、魔法封印は必要ではないのだ。


フィナ「質問なんだけどさ。死の商人って殺し屋とどう違うの?」

ミルズ「武器商人の事。その中でも特に戦争において敵方にも武器を売る商人への蔑称」

ミルズ「殺し屋みたいに直接手を下すわけじゃないけど、間接的に大勢の命を奪ってる」

フィナ「そっかー。お金のためなら友情もポリシーも捨てる悪魔って感じ?」

フィナ「いかにもグリエール商会らしいや」

ギャル「……聞き捨てならない」

フィナ「何?」

ギャル「取り消せ! ミリエーラ様はアタシ達を救ってくれたんだ」

ギャル「アタシの親友を馬鹿にすんな! ミリエーラ様は、グリエール商会なんかとは違う!」

ミルズ「親友に様付け……?」

ギャル「兄様~なんて言ってるアンタに言われたくないんですけど!」

フィナ「へー、ボスはグリエール商会の人じゃないんだ」

フィナ「でもさ、あんた達のしたことは、あんたが嫌ってそうな商会より酷いよ」

ギャル「……アタシだってこんなめんどい仕事やりたくなかったし」

ギャル「きっとボスにはボスの考えがある。だから言うとおりにしただけ……」

ミルズ「……やっぱり、本人に話を聞かないと解決しない、か」

ピロピロリン

フィナ「何の音?」

ギャル「……通信。あんたらが会いたがってるボスから」

ミルズ「これ?」スッ

ギャル「耳に当てて」

ギャル「ごめん、ボス! 夢中草の仕事は失敗。市民に捕まった。フリー、マリー、ビオーラ、ディアナもたぶんダメ」

ミリエーラ『全―知っ―――す。――――成功です』

フィナ「音量上げてよ」

ギャル「えっ、そうなの? 結構稼いだけど、全体には行き渡らなかったし、何より幹部のアタシが……」

ミリエーラ『あなた方の役目は終わりました』

ギャル「……あの、どういう事?」

ミリエーラ『根無し草は枯れる運命……お疲れ様でした』

ギャル「ま、待ってミリエーラ様……アタシはまだ」

ブツッ

フィナ「捨てられてんじゃん。案の定」

ミルズ「少しだけ、同情するよ。そういえばキミは最初から全くやる気が無さそうだった」

ミルズ「やりたくもないことをやらされて、町の平和を奪い、傭兵や協力者に人を殺させた。辛いだろうね」

ミルズ「でも、キミが今更悔やんだ所で失われた命は戻ってこないんだよ!」

ギャル「うあ、あああああ!!」ガクッ

ギャル「ゴメン、リウム……! メガネ……! みんな……!」

テレサ「ご安心ください。戻ってきますよ」

ミルズ「テレサさん……!?」


ミルズと共に夢中草の販売組織を探していた協力者である、聖教徒のテレサ。

貴腐からの逃走劇が始まった後、影も形もなかった彼女がそこにいた。


フィナ「この人、貴腐にやられたんじゃ……?」

フィナ「貴腐、あと2人だったって言ってたよね?」

ミルズ「ああ……その2人の中にはたぶんボクが入ってなかったんだよ」

ミルズ「ずっと、隠れていたんだね」

テレサ「はい」

テレサ「わたくしは、テレポートで遠くに飛ばされた後、すぐに下水道へ逃げ込みました」

フィナ「下水道って菌が多そうだけど」

テレサ「ええ。貴腐に操られていない状態の菌で満たされています」

フィナ「そうやって菌の捜索網から逃れたんだ! 頭いい!」

ギャル「それより! 戻ってくるって言ったけど、マジ!?」

キョウトの傭兵との戦闘時、テレサはある魔法を使っていた。

生命の天使の固有魔法『サリエルプロテクション』。

この魔法には、加護を受けた対象の死を保留する効果がある。

強者の勲章を得るための百兵の試練などのように、高確率で死者が発生する場では必ず高位の聖教徒がこの魔法で保険をかける。

ただしこの魔法は、効果が続いている間、他の魔法が一切使えなくなるという弱点も持つ。

したがって、天使から貴腐が倒されたと報告を受けるまで、テレサは下水道に棲む凶悪なモンスターから逃げ回る羽目になっていた。


テレサ「すみません。回復や防御結界でサポートしたかったのですが、あの場では人数が多かったので加護を優先しました」

フィナ「いいよいいよ! あたしだって、うずくまってただけだったもん」

ミルズ「ボクなんていなかったからね」

テレサ「では……」

テレサ「生命の天使よ。絶えた命を、契約の時までお戻し下さい」


6本の光の柱がウベローゼン市を照らし、リウム、ラファ、テンパラス、ネル、バルザック、ガルァシアが生き返った。

病院近隣。

バルザック「うっひょー! 俺、復活!」

バルザック「しっかし、流石の俺っちにも六勇を倒すのは無理があったぜ」

ネル「ンー。相手が悪かったネ。でも一番悪いのはアイツだヨネ」

バルザック「ああ。俺たちに敵の正体を黙っていた、シュンをぶん殴りに行こうぜ!!」

ガルァシア「……俺も賛成だ」


テンパラス「……テレサ殿の魔法か。今度会った時に礼を言わねば」

テンパラス「まだ、私の剣の道は続けられそうだ」



裏路地、アジト前。

ラファ「生命保険魔法。知ってたのです」

日魔術師『ぼくちんを置いていくのかぁ~!』

ラファ「憑いてきたら除霊するのですよ。でも今回は働きに免じて見逃してあげます」

ラファ「性的な悪戯をするなら、討伐依頼を出されないようにせいぜい気を付けるのです」

リウム「……父さん」

貴腐によって苗床にされたリウムの父はそのまま残されていた。

リウム「魔法街で、魔導師の先生も死んだままだった……。姉ちゃんも帰ってこない……」

リウム「なんで俺だけ生きてるんだよ!!!」

リウム「それじゃ……意味がないだろ……」

ラファ「……今は、好きなだけ泣いていいのです」

ラファ「落ち着いたら、どこか屋内に移動しましょう。生きるのです。生きなければいけません」

悲しみ喘ぐリウムに、ラファは優しく寄り添った。

彼女もかつて家族を失った身。その心境は痛いほどに理解できた。

テレサ「では、彼女の身柄はわたくしが預かります」

テレサ「お二人もお気をつけて」


サキューラはテレサが聖教会へと連れて行った。

町が落ち着いたら既に捕らえているディアナ達と共に軍へ引き渡すのだろう。


オートマタ「フィナさーん! 神主さんと話をしてきました!」

オートマタ「見違えたわたしの姿に目を丸くしておられました!」

フィナ「だろうね……。フローラはどう思うかな……」

オートマタ「あっ、オーナーさんとは今通信してます。はいどーぞ!」

フィナ「フローラ! フィナだよ!」

フローラ『ハーブの問題、解決したんですね。おめでとうございます!』

フローラ『クリスティさんは……その、災難でした』

フィナ(困惑の表情が目に浮かぶ……)

オートマタ「お店は、建て直していただいたら続けます」

フィナ「ず、図々しい」

フローラ『ちょっと、なんですか……』ガタガタン

フィナ「フローラ、どうしたの?」

クルト『聞こえるか! 一刻も早くモニターを壊すんだ!』

フローラ『クルトさん、ウベローゼンのモニターはもう壊れています』

ミルズ「兄様!? 今どこで何してるの!?」

クルト『み、ミルズか。今俺は、フローラと遊園地にいる!』

ミルズ「……は?」

フィナ「……は?」

クルト『今はゆっくり話している時間がない。また後でな!』

ブツッ

フィナ「…………なんだか、方向性の違う裏切りを受けた気分」

ミルズ「…………ボクもまったく同感」

女帝に避難するように言われていたが、フィナは家に用事があるらしい。

ミルズは、フィナの近くが安全だと思い、家までついていくことにした。


空き巣A「ぐへへ、町が混乱してる今が狙い時だ……」

オートマタ「こらー! 他人の物を盗ってはいけません!」

空き巣B「やべっ、逃げるぞ!!」

フィナ「……」


女性「お願いします! 子供だけでも!」

夫「駄目だ駄目だ! 知らない奴を家には上げられん!」

妻「ちょっと、ドア閉めてよ! モンスターが入ってきたらどうするの!」

女性「うちの子を押さないでください!」グイッ

妻「いたっ。何すんのよ!」

夫「妻を殴ったなテメエ!」

フィナ「……醜い」

ミルズ「急いだ方がいいかもね。家に押し入られてる可能性がある」

フィナの家は、半壊していた。家族の姿もない。


ミルズ「これは一体どういう……! 近くにモンスターはいなかったし、違法ハーブ関係の敵はもういないはず!」

フィナ「……あはは。……最悪だ」ガクッ

オートマタ「フィナさん!? ガドーという男の仲間の仕業ですね。許せません!」

フィナ「……いいよね、先輩は」

オートマタ「はい?」

フィナ「何のしがらみもなくて……夢と目標以外には無頓着で、心が痛むことなんてないんだろうね」

オートマタ「体が痛むこともありませんよ」

ミルズ「フィナ?」

フィナ「もう……嫌なんだ」

フィナ「誰かに裏切られても、家族がいなくなっても、傷付かないようになりたい」

フィナ「躊躇なく人に刃を向けるには、心を殺して人間をやめるしかないんだ!!」


悪魔『その言葉、本当だな?』

フィナ「っ!? ここは……!?」

悪魔『僕は人に非ざる者を司る、死霊・傀儡の悪魔』

悪魔『望むのならば、お前を人間でない物に変えてやってもいい』

フィナ「……この苦しみは無くなるの?」

悪魔『無くなる。ただしお前が得る物は空虚だ。もはや二度と感動することもない』

フィナ「それって……誰かと話したり、美味しいお菓子も食べられなくなるってこと!?」

悪魔『実体があればできる。どう、契約するかい?』

フィナ「実体がある形で……お願いします」

悪魔『フッフッフ……契約成立だな』

フィナ「あっ……!!」

心臓が締め付けられる感覚の後、体温が少しずつ失われる。

初めは恐怖を覚えたが、その恐怖さえも次第に薄れていった……。

ピカッ!!

ミルズ「フィナ! フィナ!」

フィナ「ふぇ……」

ミルズ「ま、間に合った……?」

オートマタ「良くないものが来てるって狐さんが言うので、ミルズさんに起こす魔法をお願いしたんです」

ミルズ「何に会ったか覚えてる?」

フィナ「…………よく覚えてない」

ミルズ「コホン。フィナ。ガドーって誰なんだい? なぜ家を襲ったの?」

フィナ「……話せない」

ミルズ「話してくれ。ボクはキミの力になりたい」

フィナ「ダメ。存在を知ったら、ミルズも巻き込まれちゃうから……」

ミルズ「大丈夫。貴腐より恐ろしい敵なんてそうそういないさ」

フィナ「ねえ、なんで会ったばかりのあたしを助けようとするの? ほっとけばいいじゃん!」

ミルズ「貴腐を倒した時にも言ったけど、命の恩人だからだよ」

ミルズ「フィナが手伝ってくれなかったら、ボクは今頃キノコの栄養分にされてた」

フィナ「…………アサシン協会」

フィナ「あたしは、アサシンの弟子になって、そして弟子をやめた。だから、狙われてる」

ミルズ「やけに強いと思ったら……そういうことだったんだ」

ミルズ「別に驚かないよ。もっととんでもない存在を知ってるからさ」

ミルズ「アサシンの弟子ってことは、ホワイトシーフだ」

ミルズ「……キミにしか頼めない事がある」スッ

フィナ「書類と封筒……あっ、ミリエーラって書いてる!」

ミルズは、シュンに教えられた衝撃の事実をかいつまんで話した。

フィナ「そっか……。ミルズのお兄さんが陰でこっそり商売をしてて、しかも死の商人の正体かもしれないんだ」

オートマタ「えー、それ絶対違いますよ。クルトさんはミリエーラさんじゃないですって」

フィナ「ちょっと黙ってて」

オートマタ「はいっ」

フィナ「だとしたらフローラが危ない! 一番ヤバい奴と一緒にいることになるじゃん!」

ミルズ「でも、この証拠は自称探偵の用意した偽物かもしれない」

フィナ「うん、確かに。あの探偵は昨日から嘘しか言ってない」

ミルズ「キミに頼みたいのは、この書類や取引記録表が本物かどうかの調査」

フィナ「うーん……書類に書かれてるジェンス魔道具店を見に行かない事には分からないけど……」

フィナ「今は状況が悪いかな。あはは……」

ミルズ「そうだね。今、外に居続けるのは危ない」

ミルズ「せっかくだからお茶しないかい? ボクが最近知った雰囲気のいいカフェがあるんだ。フィナもきっと気に入ると思う」

フィナ「ごめん。あたしはアサシンが怖いから人の多いところに行くよ」

ミルズはフィナの手首を力強く掴んだ!

ミルズ「まあそう言わずに! ここから近いし、強いカフェだから大丈夫」

フィナ「強いカフェって何!?」

ミルズ「行けば分かるさ」

フィナ「行かないって! 離して!」

ミルズ「ごめん……。それならボクは寂しく一人で行くよ。じゃあね……」

フィナ「も、もう……。そのカフェ、スイーツはある?」

ミルズ「スウィートな経験ができることは間違いなしだよ! さあ、行こう!」

フィナ「あのさ、先輩……」

フィナ「初対面でグイグイ来られるのって結構怖いんだね!」

オートマタ「夢中草、盛ってないんですけどねぇ」

店主「あなたの こころの おあしす」

店主「カフェ:アンブロシア」

店主「まちはおおさわぎでも、つうじょうえいぎょう」

フィナ(夢中草のにおいがする)

貼り紙『当店は合法です』

貼り紙『安全な調合を行っております』

フィナ(調理じゃなくて調合)

フィナ「だ、騙された。嵌められた……」

ミルズ「騙されたと思ったなら、食べてみなよ。人生変わるよ」

フィナ「あたしをどうするつもりなの!」

ミルズ「怒らないで。ボクはただ、キミに美食の向こう側を見て欲しいだけなんだ」

ミルズ「ほら、メニュー表」

フィナ「ええと…………じゃあ、これにする」

フィナ(オールドファッション。無難なドーナツなら変なのはでてこないでしょ)

フィナ(誤字が気になるけど……)

フィナ(ミルズのはコーラ? でもにおいが別物……)

店主「おまちどぅー」


☆キノコーラの材料☆
・貴腐ワイン(シスヤタ産)……こさじいっぱい
・サイケマッシュの生搾り汁……おおめ
・テングマッシュの生搾り汁……おおめ
・解毒草……ほんのりと
・夢中草……ほどよく
・塩酸……たっぷり

☆オドールファッションの材料☆
・呪われた綿……さんじゅうねんじゅくせい
・解呪薬……なくてもよい
・夢中草……ほどよく
・脱力粉……すてきなぱうだー
・特製シロップ……からだがとろけるあまさ


ミルズは体中からキノコが生えてしまった!!

フィナは踊るマネキン人形になってしまった!!


オートマタ「今までの戦いはなんだったんですかー!!」

●モンスター図鑑

>>321 焔華神。

大型モンスター化した火花の妖精。悪魔の本体の根城である魔界にはこのような妖精が無数におり、焔華神はやや弱い方。

ラヌーン国の海神よりも弱い。


>>321 インキュバス。

自分の事を聖教徒だと思っている魔族。

全身が心筋で構成されており無限に肥大することが可能。

男女問わず心筋に触れた者は激しい愛情に身も心も支配されインキュバスの言いなりになってしまう。


>>643 武御霊。

たけみたま。フルフィリアの風神に相当する大型モンスター。

複数の武神が習合した存在であるため本当はもっと長い名前。

天候操作および人の身体能力を底上げするご利益があるため、運動会の前日に参拝したい神。


>>685 ナマクラゾンビ。

貴腐の操る菌糸によってゾンビとして蘇ったキョウトの侍。高いタフネスと引き換えに思考能力は低下している。

おぞましい姿なのだが頭のキノコだけはポップで可愛らしいルックス。


>>697 神酒添禍雛。

みきそえまがひな。禍雛はフルフィリアのオートマタに相当する。

元はただ髪が伸びるだけの人形で、供え物の御神酒と一緒に武御霊神社の供養堂に納められていた。

顔が不気味。


>>749 神酒スティ雛ドール。

安易な和洋折衷を批判する現代アート作品、と言われても高値は付かない。酷いデザイン。

もし頭と胴体が逆だったら性能もポンコツだった。

●教えて魔人先生! 六勇の倒し方~貴腐編

魔人「無数の手下を利用した広大な索敵範囲と不可視の攻撃が恐ろしい男じゃな」

魔人「とはいえ、本体は六勇最弱。武道や魔術の心得は全くなく指揮能力も優れてはおらん」

魔人「殺菌魔法担当の魔法使い2人と上位職相当の攻撃役が1人いれば、貴腐はもはや手も足も出ぬ」

魔人「しかしあやつは本来、キノコを栽培したり乳酸菌を増やしたりする生産職。戦える方がおかしいんじゃ」

魔人「そしてあやつが真価を発揮するのはやはり後方支援」

魔人「不可視の水魔術師が戦場を埋め尽くし、全ての兵士をひたすら強化・回復し続ける。さらに敵の兵士に菌を付着させて持ち帰らせ、諜報も可能」

魔人「軍勢を引き連れた貴腐は、鬼顔を除く六勇では太刀打ちできぬ事間違いなしじゃな」

魔人「ちなみにわらわなら、遠距離から雷で撃ち抜くか、超高速で接近し菌に指示を出す間すら与えずノックアウトする」

魔人「そういえばあの白魔術師のラファはいい線行っておったのう」

魔人「ソピアも菌が風で飛ばされてしまう高さまで飛行して、神の目(視力強化)で狙いを定め、強めの光線を撃ち続ければ、貴腐ごとき楽勝だったじゃろうな」

●ごちゃごちゃしてたのでまとめると

リウム達「町中ハーブ浸けにしやがって許さん」

聖教会「神父であるフリー氏が主導しました」 → 神父(フリー)「サキューラに頼まれた」

病院「軍の指示でやった」 → 軍の一部「貴腐の指示でやった」 → 貴腐「サキューラさんと取引した」

タロウ「お金になりそうだから乗った」 オミキ・侍・力士「サキューラに雇われた」

サキューラ「ミリエーラ様に指示された」


オートマタ「神社や仕立て屋から解き放たれて自由な人形になりました。今の私は極めて危険なモンスターです」

フィナ「アサシン協会に命を狙われてる。人間は信用できない。もちろんミルズもあまり信用できない」

ミルズ「兄様とソフィアに次ぐ3人目のボクの命の恩人フィナ。現状一番信用できる。アンブラーにしてあげよう」


●黒幕関連まとめ

シュン「あの人形がハーブを流行らせてる奴に繋がってる」 魔境組「人形壊そう」 クリス「冤罪でした」

シュン「死の商人の正体は君の兄かもしれないよ」 ミルズ「信じたくないけど証拠が衝撃的」

ディアナ「ミリエーラ様に頼まれて大型ディスプレイのスピーカーを壊しましたの」

ゲド?「“彼女”を傷付けないでくれよミリエーラ君」 ミリエーラ「変な罠で邪魔しないでくださいゲドさん」

イリス「なんか記憶飛んでる」 フェイラン「私もある」

ミルズ「アハハハハ! キノコが、キノコが増えていくよォ!」

フィナ「ななな、なにこれ、全身が気持ち悪い」

ミルズ「もっと食え食えほらぁ」

フィナ「の、飲み込んだらだめなのに、口が勝手に……!」

フィナ「ん、んうううううう…………ヒャッホー! 美味しい!」

ミルズ「今日からキミもアンブラー!!」

フィナ「アンブラー体操、元気にいってみよー!!」

オートマタ「いえーい!!」←場酔い

フィナ・ミルズ「わっしょいわっしょい!! わっしょいわっしょい!!」


アンブラーもしばらくすると段々落ち着く。


フィナ「あーやばい。筋肉痛無いの最高ー」

ミルズ「胞子までボクの体の延長なんだ、心地よい刺激、恍惚……」

オートマタ「お互い、貴腐と悪魔からそれぞれ助ける必要なかったんじゃないですかねー」

ミルズ「でもアンブロシアの料理はその内元に戻るからね」

フィナ「フローラも帰ってきたらアンブロシアに連れてきてあげよう」

ミルズ「その人、今、兄様と遊園地にいるんだっけ。遊園地ならファナゼ?」

フィナ「たぶんそう。あたし、昨日フローラからファナゼに行くって聞いたし」

ミルズ「兄様がなぜファナゼに……」

ミルズ「やっぱり、本当に兄様が死の商人……?」


大事にしていた妹や、仲間達を放置してクルトが商業都市ファナゼに行った理由。

その真相は昨晩に遡る。

ここまでで芳香都市ウベローゼン編はようやく終了。
この編のテーマの一つがウベローゼンオールスターでした。
出てないのはソピアが最初に出会った浮浪者の人達、骨のような女性、魔法局受付くらいでしょうか。
しかし人数が多い分過去スレを見返しながら書かなければいけない場面ばかりで、自分で自分を苦しめる結果に。

>>796
よう前回更新のときの俺
それで最初から読み直したらいい感じに細部忘れてて
新鮮に楽しめて良かったよ

リアルタイムで追いかけてくのと後から読み直すのだとやっぱり違うんだよな自分の場合……無意識のうちに飛ばし読みになってて細かいところまで読めてなかったりする……

読み返す事自体は楽しいけど安価に参加できる自信はないかもなぁ……

>>797 読み直しまでしてくれるとは…これは絶対に完結させないといけませんね。
>>798 重大な安価はしばらく無いので大丈夫です。通りすがりが安価取ってもいいレベル。

気が付いたら一月経っていた。
ソピアちゃんの出番はまだです。

ソピア、逃亡39日目の夜。

鉱山の町シスヤタ市での戦いが始まるよりも少し前。

ミルズの兄で岩魔術師のクルトは、フルフィリア市の端の方にある小さな店を訪れていた。


店番「こんばんは、ジェンスさん」

クルト「ああ。今日の成果はどうだ?」

店番「杖は2本完成しました。惑星シリーズもいよいよ揃いますね。今日の売り上げはポーションだけですけど」

クルト「構わん。大手以外では装備品はたまにしか売れないものだ」


ジェンス魔導具店。

ニッチなデザインの杖や、ボードゲーム、カードゲーム等を扱う、知る人ぞ知る小さな店だ。

入り口前にはチェスの駒を模した杖が飾られている。

別名義を使う商人はとても多い。

だがクルトは、自身が小さな店のオーナーである事を妹や親しい者にも伝えておらず、後ろめたい思いを抱いていた。


店番「明日は大統領選ですけど、ジェンスさんは誰が大統領になると思いますか?」

クルト「まあ元帥だろうな。しかし俺は明日それどころでは無さそうだ」

店番「この間言っていた夢中草の件ですか」

クルト「うちも夢中草を買っている。用途が違うとはいえミルズ達にはあまり知られたくないな」

クルト「夢中草は調合素材でもあるし、魔導具との親和性が高い繊維素材の一種だ」

クルト「仮に全面規制されれば中小魔導具店、ポーション店は大打撃を受ける」

クルト「ハーブを乱用していない俺たちの生活をも脅かす、奴らは決して許されない」

ドンドン ガチャッ

配達屋「配達屋カモメメールですー。ジェンスさんにお手紙っすー!」

店番「カモメさんが来たという事は、ミリエーラの件ですか」

配達屋「はいっす。『通達“ミリエーラ”側の新情報』ですと」

クルト「ふむ……」

店番「ミリエーラの新店舗を学園都市スクーニミー市に確認。ラヌーン戦争特需を予測していたかのような動き……」

クルト「“死の商人”らしい動きだ。まさか裏で糸を引いていたわけではあるまいが……」

半年前、クルトの知人の防具商人が死んだ。首吊り自殺だった。

しかしクルトには腑に落ちなかった。知人が死ぬ一か月前に、知人の店のすぐ近くに別の装備品店がオープンしていたのだ。

クルトは店主の目を盗んでその店の事務所に潜入し、責任者の名を見た。

その名を一目見た瞬間、知人の死は仕組まれたものだと確信した。

以来、クルトは同業者と協力してミリエーラの動向を可能な限り探り、手紙で情報交換を行っていた。

次の犠牲者を生まないために。


配達屋「あれ? もう一通あるっすけど……」

クルト「『通達“ミリエーラ”より』……。……本人から、だと!?」

店番「封筒の中を見ましょう!」

クルト「ああ!」

『妹と仲間の命が惜しければ、誰にも告げずに一人でファナゼへ向かえ』

店番「これは脅迫状……」

クルト「店番に見せてしまった!!」

配達屋「き、きっと妹と仲間に伝えなければセーフっすよ」

クルト「配達屋にも見られてしまった!!」

店番「ど、どうしましょう。僕も殺される……!?」

クルト「……心配するな。責任者は俺だ」

クルト「俺が決着を付けに行く」

店番「それでは、妹さんたちが……」

クルト「この文面とタイミングから推測して、恐らく夢中草の黒幕もミリエーラなんだろう」

クルト「下っ端を仲間に任せて俺は黒幕を叩く。ミルズ達には……この店の事も含めて後で説明するしかあるまい」

配達屋「大変そうっすねー。無事を祈ってます。そいじゃっ」サッ

クルト「配達屋、お前も来るんだ」

配達屋「ぎょえ! 捕まった!」

クルト「お前は旅人ギルドの所属だろう? 町の出入りにはギルド員か軍人の同行が必要になるが、わざわざ今から探すのも面倒だ」

クルト「赤の他人を巻き込むのは忍びないが、事情をよく知っているお前なら問題ない」

配達屋「カモメまだ死にたくないっすー!」

クルト「俺はお前の実力を買っているんだぞ」


配達屋のカモメは鉄鋼の町モスボラ市の旅人ギルドに所属しており、手紙や荷物の速達を請け負っている。

脚の速さと高い戦闘能力を有し、これまで一切の紛失・破損・遅配無し。ただし料金は高め。

クルトと同業者達はその実力を買ってミリエーラの動向に関する手紙をすべて彼女に頼んでいた。


クルト「お前が首を縦に振るまで、俺はこの手を離さない」

配達屋「む、無理っすよ。会長に怒られますし」

クルト「俺にはもう……お前しか考えられないんだ!」

配達屋「……もしかしてカモメ、口説かれてる?」

クルト「俺と共に行こう。さあ……!」ニッ

配達屋「はい!」

店番「ジェンスさんどうしたんだろう……」

クルト「ふっ、俺はな……。イメチェンがマイブームなのだ」

店番「そういえばメガネ変えましたね」

クルト「己の殻を破るため、色々な事を試したが、一つ達成できていないことがあった」

クルト「俺はインテリ商人からイケメン商人に転向しようと思う」

店番「えっインテリ商人だったんですか」

配達屋「あー、なるほどね。恋がしたいんすね」

配達屋「いいっすよ。カモメがファナゼに連れてってあげるっす」

クルト「よし! 一人目を落としたぞ!」

配達屋「落ちてませんけど!?」

クルト「ラミィはモンスターだったから残念ながら失敗したが、この旅で今度こそ、俺は恋愛を成し遂げる」

クルト「そして築き上げるぞ、クルトハーレム!」

一方、フルフィリア市からファナゼ市に続く街道。

12歳の天才商人フローラは、オネエ日魔術師のキュベレが魔法で照らす道を歩いていた。

彼女はリンクス商会の経営を義父から受け継ぎ、所有する複数の店舗で冒険者のための装備品の生産・販売を行っている。

先日、義理の祖父母が開いていた雑貨店が、実の叔父によって半ば強引に潰されるという事件が起きたため……

その真意を、ファナゼにいる実の祖父に尋ねに行くのが彼女の目的だ。

祖父はフルフィリア共和国のほとんどの産業を支配するグリエール商会の会長である。


キュベレ「マニーマーケットを建てるために、ねぇ……。でも偶然とは思えないわよ」

フローラ「マニーさんは関係ないとおっしゃっていました。けれども一応、確認が必要でございます」

キュベレ「元妻の再婚相手の親にまでちょっかいかけるなんてサイテーね」

フローラ「いえ、母は結婚しておりませんの」

フローラ「彼は多くの女性と子をつくり、最も優れた子を産んだ女性と結婚したと聞いております」

キュベレ「あら、フローラちゃん優秀なのに、見る目ないわね!」

フローラ「『優秀』の条件のひとつが、男性であること、でした」

キュベレ「……古臭い男ってイヤねぇ。アタシのお父さんも男なら誰でも女より優秀って考えだし」

キュベレ「我慢ができずにすぐ暴力で従わせようとする。だから男って嫌いよ」


キュベレことジーク・オーグロスの父親はフルフィリア最強の軍人の一人、陸軍大将『鬼顔』である。

彼は同世代と比べても特に古い考えの持ち主であり、力、強さ、男らしさというものを重視し、息子のジークにもその考え方を押し付けようとしていた。


キュベレ「でもお母さんはご立派ね。今のお父さんと出会うまでは一人でフローラちゃんを育てたんだもの」

フローラ「いいえ立派ではございません。謙遜でなく、心の底から大嫌いです!」

フローラ「幼い私の面倒を見ていただいたのは保母ですので!」

キュベレ「あらら……。天才児にも反抗期はあるのね」

フローラ「私は一生反抗期でございます!」

キュベレ(寂しかったんでしょうね……)

キュベレ(フローラちゃんが今こんなに大人なのは、自立せざるを得ない環境だったことも影響してるのね、きっと)

キュベレ「話変えましょっか! 逆に好きな人はいないの?」

フローラ「フィナさんは好きですよ」

キュベレ「そういうのじゃなくって! 恋のお相手よん♪」

フローラ「は、はい?」

キュベレ「ちなみにアタシが狙ってるのは魔法局の男の子よ」

フローラ「あの……おっしゃらなくても大丈夫ですわ」

キュベレ「アタシ言ったからね! 次はフローラちゃんの番よ!」

フローラ「ええっ……?」

キュベレ「ごめんね。早かったかしら。普通は恋をするお年頃だけど、フローラちゃんはまだなのね」

フローラ「むっ……。い、いますよ」

キュベレ「へえ、どんな男の子?」

フローラ「年上の、同業者の方です」

キュベレ「カッコいいの?」

フローラ「背が高くて、顔も整っていると思います」

キュベレ「どんなところが好きなの?」

フローラ「優しくて、理知的で、でも時に大胆なところ、でしょうか」


フローラは以前、エルミスの誕生会でソピア・フィナ・エルミスに同じ話をした事があった。

しかし、大人のオネエさんであるキュベレの『好きな人特定力』はそこらの小娘とは比べ物にならない!


キュベレ「もしかして……クルトくんじゃない?」

フローラ「んっ!? しまっ、その、コホン。ちっ違いますよ。……キュベレさんの知らない方でございます」

キュベレ「あらやだ、アタシの恋敵なのねっ!」

フローラ「うそっ……」

キュベレ「なんてね。冗談よ♪ 初恋をゲイに邪魔されるなんてトラウマになるわよ」

フローラ「どうして……クルトさんがお店を持っていることを?」

キュベレ「知ってるわよぉ。気になった子の秘密はどうしても知りたくなるものじゃなぁい?」

フローラ「……キュベレさんの顔の広さを甘く見ていました。不覚です」

キュベレ「決め手になったのはフローラちゃんがメガネフェチだってことね。この前会った時もメガネの男の子をチラチラ見てたでしょ?」

フローラ「キュベレさん、怖いです……」

キュベレ「ソフィアちゃんはトールくんとくっつきそうだから、今がチャンスよフローラちゃん! フローラチャンスよ!」

フローラ「恥ずかしいので……もう、やめてください……!」

キュベレ(思ったより楽しい旅になりそうだけど、本題を忘れないようにしなきゃね……)

キュベレ(アタシの役目はグリエール商会の監視)


キュベレがフローラの付き添いを引き受けたのには理由があった。


キュベレ「ファナゼ市に……ですか? 強者の勲章を持つ者はシスヤタ市の監獄の警備を行うのでは?」

鬼顔「お前には期待していない」

キュベレ「力不足ですみません」

鬼顔「……グリエール商会の動きが不自然なのだ」

鬼顔「大統領選の日に家族全員が本社に集まると、俺の耳に入った」

鬼顔「迂闊な真似が出来ぬよう、お前を俺の代理として商会に派遣する」

キュベレ「まさか、グリエール商会が共和国軍へ反意を抱いていると?」

鬼顔「『造船王』パニー・グリエールは知っているな」

キュベレ「はい。陸軍および海軍に装備・兵器を納品している、製造業の有力者です」

キュベレ「彼は革命以前から現共和国軍を支持していました」

鬼顔「俺も懇意にしているが……奴は重度の兵器マニアだ」

鬼顔「大量の兵器を所有している事に加え、趣味で世界各地で起きた戦争の記録を収集している事も分かっている」

キュベレ「……パニー氏が商会を動かして国を戦争へ導く可能性がある、ということですか?」

鬼顔「一つの可能性だ。だが、仮に商会が物流を止める等の挑発を行えば、周辺諸国との緊張が高まる」

鬼顔「戦争が激化するほどに奴は儲かり、そして楽しむだろう」

キュベレ「……お父さんは、魔導帝国ノーディスとジャルバ王国の領土へ侵攻する予定があるとおっしゃっていましたが」

鬼顔「主導権を握るのは俺だ。奴じゃない」

キュベレ「……はい」

鬼顔「相手は所詮、金しか持っていない商人共。力の足りんお前でも出来る仕事だ」

鬼顔「ジーク。この程度の任務もこなせんようなら……分かっているな」ゴゴゴゴ

それぞれの目的で商業都市ファナゼへと向かう、クルト、フローラ、キュベレ。

しかしその町ではすでに幾多の組織が動き出そうとしていた……。

陰謀渦巻くかもしれないファナゼ編、スタート。

深夜、街道。

配達屋のカモメが暗いグレーの車を引いて走っていた。

金属光沢があるその車の中にはクルトが座っている。


クルト「ふむ、馬車より速い上に揺れが少ない。快適だ……」

クルト「車、重くないのか?」

配達屋「見た目より軽いっすよ。それに、カモメはドワーフとのハーフなんで怪力なんです」

クルト「車は岩魔術で作っているのか? 生成魔法だと思うが、俺の知らない金属だな」

配達屋「あ、企業秘密っす」

クルト「そうか。……ふわあ」

配達屋「着いたら起こしますんで、寝てていいっすよ?」

クルト「お言葉に甘えさせていただこう……」

配達屋「クッションなくてすいません。代わりに安眠魔法かけときますね」


商業都市ファナゼは早朝から賑わっている。

商人たちの朝は早い。朝市では買い付けに来た業者に交じって主婦の姿も見られる。

一方、夜間働いていた眠らぬ町の労働者たち、警備員、娼婦、パフォーマーはこれから睡眠時間だ。

今でこそ大きな都市に成長したファナゼ市だが、かつて王国東部はあまり栄えていない地方だった。

度重なる大国の小競り合いによって国境が頻繁に変わる不安定な地域であり、人々は痩せた土地に村を作り主に酪農を営んで生活していた。


今のファナゼ市を作り上げたのが、市民の誰もが知るグリエール三兄弟である。

長男、ミッキー・グリエール。モットーは『みんなの笑顔のためならなんでもする』

旅芸人達を束ね上げて芸能産業を確立、メカニックギルドに投資しテレビや遊園地の開発を支援した“芸能王”。

次男、ビリー・グリエール。モットーは『誰かが損を被る商売は長続きしない』

地道な交渉で街道と市場を整備、町の礎を作った現会長であり“ファナゼの父”。

三男、ゼニー・グリエール。モットーは『強欲は力なり』

類まれなる商才で富を増やし兄の活動を支援、行く先々で出会った女と多くの子を作りついには性病で帰らぬ人となった“絶倫王”。

クルト「俺はファナゼに来いとしか指示されていないが、これからどうすればいいんだ?」

クルト「歩き回ってミリエーラに存在をアピールするか?」

配達屋「しっ。人前で名前言っちゃダメっすよ!」

クルト「そうか、迂闊だった」

配達屋「カモメ達が動かなくても、たぶん手紙の差出人から接触して来るんじゃないっすかね?」

クルト「ならば人の少ない場所に移動するか? ここでは差出人も話しづらいだろう」

配達屋「そんなに焦らなくても、呼んだからには無視しませんって」

クルト「そうだな……。すでに差出人の部下に見張られている可能性を考慮すべきだった」

クルト「配達屋、襲撃に備えるぞ」

配達屋「いや、襲うつもりなら街道で寝込みを襲うと思いますよ」

クルト「いつ戦闘が始まってもいいように、歩いて体を温めておこう」

クルト「地理の把握と食事も必要だ。さあ、まずは中央市場へ行くぞ」

配達屋「あれ? この人もしかして遊びたいんすか……?」


朝食と市場の物色を済ませたクルト達は、ファナゼ市立博物館を訪れた。

各国から集めた珍しい物品が保管・展示されており、考古学に興味が無くても楽しめる観光名所だ。


■ドラゴンブース

●古代竜の鱗 産出地:北サロデニア大湿原

※お手を触れないで下さい 針が刺さる恐れがあります

古代の北サロデニア大湿原には毒針を持つドラゴンが多く生息していたと考えられています。


●竜脈の模型 製作:魔導帝国ノーディス 皇都大学 ○○教授

竜脈とは、地中の奥深くに閉じ込められたドラゴンの生体です。

長く生きる程に生命力を増すドラゴンは、長期間の睡眠中に堆積した土砂や溶岩によって地中に封じられます。

竜脈には膨大な量の精霊(魔力)が残存します。一部の魔術師は竜脈から精霊を補充します。

竜脈が何らかの要因で地上に現れ目覚めた場合、古の神竜と呼称され、人類の脅威となります。


●竜の化石 産出地:プエルトマリハラ市郊外の地層

現生のドラゴンとの骨格の比較から、ファイアドラゴンの先祖と推測されています。

プエルトマリハラ市は周辺地域に比べて極めて温暖です。

魔法局は、火または日の精霊王もしくは竜脈が環境に影響を与えている学説を支持しています。

配達屋「ドラゴンっぽいオーラの謎の精霊源を調べてみたら、本当にドラゴンだったってやつっすね」

クルト「竜脈術は俺が使っている、大地から力を借りる系統の岩魔術の延長にある」

クルト「俺も将来的にサロデニアにある竜の縦穴へ行く機会があるかもな」


■スカイブース

●魔法プリズム装置 製作:魔導帝国ノーディス 禁術研究所 所属研究員

※お手を触れないでください 手がランダムに変色し二度と元の肌色に戻りません

無水滴・無電磁気状態で、精霊操作のみで虹・オーロラの再現を試みた実験装置です。

日と風の精霊の濃度によって、光の反射率が変化し、人の認識する色が変わる事が分かっています。

色の人工的制御は困難を極めており、ノーディスでは無許可での日・風精霊合成実験が禁止されています。


●隕石 採取地:コホーテン国北部 クレーター群

この隕石は未知の金属で出来ています。

鋼鉄を上回る重量と硬度を持ち、よく磨かれた表面は鏡のような性質がありますが、通常の鏡面とはずれた景色を映します。

ぜひ持ち上げて重さを確かめてみましょう。


クルト「手が奇妙な色をしている、というのは個性に含まれるだろうか?」

配達屋「個性的じゃなくただの変な人だから展示品触らないでくださいっす」

クルト「何事も経験だ……」スッ

配達屋「絶対後悔しますって!」

クルト「おや、この隕石、お前の作る車に似ているな」

配達屋「んっ」

クルト「正面から覗くと向きによって天井、床、左右のどれかが映る鏡か。凸面鏡に似た使い道がありそうだ」

配達屋「そんな使い方できるほど隕石はいっぱい無いっすよ」

クルト「お前ならいくらでも作れるだろう?」

配達屋「うっ」

クルト達がのんきに観光を楽しんでいる頃……

フローラとキュベレは、ファナゼ市中央の高層ビルの7階にいた。


グリエール商会本社ビル(フルフィリア共和国 商人ギルド本部)。

社員「一家の皆さんはこちらの扉の奥でお待ちです」

キュベレ「案内ご苦労さま。もう戻っていいわよ」

キュベレ(軍の施設と比べるとびっくりするくらい綺麗な建物ね。清掃員何人雇ってるのかしら)

フローラ「行きましょう? キュベレさん」

キュベレ「そうね」


扉の向こうは豪華絢爛な大広間だった。

床には高級な絨毯が敷き詰められ、天井にはシャンデリアが輝いている。

新品の真っ白なテーブルクロスがかかった長テーブルの左右には、宝石をあしらった金メッキの椅子がずらりと並ぶ。

何も知らない人が見たら、貴族、あるいは王族の晩餐会と誤解するだろう。


パニー「誰かと思えば……確か、フローラ、だったか?」

フローラ「……パニーさん、お久しぶりですね」

パニー「少し見ない間にずいぶん大きくなったな。……失敗作め」

不動産王「はははっ、父さん、それが自分の娘にかける言葉かよ!」

キュベレ(『造船王』パニー・グリエール……会長のビリーの長男で、次期会長と目されていた元不動産王)

キュベレ(フローラちゃんのお父さん、よりによってパニーだったのね……)

不動産王「で? 誰だよこいつ呼んだの。生まれながらの一家の恥を会議に招くとかどうかしてるぜ」

パニー「会長だ。忌々しいことに、会長は追放した者も血縁者だと分かれば社内へ入るのを許すんだ」

キュベレ(『不動産王』トミー・グリエール、20歳。顔は好みだけど、性格が最悪なのよね)

キュベレ(40億Gの男なんて言われてるけど、陰湿な嫌がらせで土地を奪ったり、脅して賃料を強引に釣り上げたりするのはねぇ……)

不動産王「会議じゃないなら何しに来たんだ。マニーおじさんを殺したのは私ですって自白しに来たのか?」

フローラ「……! ……私は、リンクス雑貨店を潰したのはあなたの指示なのか尋ねに参りました、パニーさん」

パニー「知るか。お前なんぞわざわざ相手にするものか」

パニー「なぜ今更金にもならない嫌がらせをせにゃならん?」

フローラ「……そうですか」


パニー「待たせた、ジーク君。私に用があるんだろう?」

キュベレ「お世話になっております、パニーさん」

キュベレ「本日は、陸軍大将の特命で参らせていただきました」

パニー「君の父は大統領選当日で忙しいからな。君が来るのは理解できる」

キュベレ「失礼ながら、グリエール家の方々が一堂に会するのは珍しいことですね」

キュベレ「全員で一体どのような事について話し合うのか、父は大変興味を持っております」

パニー「一つは、自殺した弟のマニーの遺産分与についてだ」

キュベレ(『小売王』マニー・グリエール。会長の次男で、気のいい働き者として商会の中では市民に慕われてる方ね)

キュベレ(恨まれる人じゃないし、なんで自殺なんてしたのかしら……?)

パニー「そしてもう一つが、共和国体制における、今後の営業戦略に関する意見のすり合わせだ」

パニー「処刑された貴族の中には行政に携わる者も多かった。我々商会のノウハウを活かして今後の行政への助言ができないか、とも考えている」

キュベレ「新政府はギルドや大学と連携して改革を進めていく方針ですが、貴方がた商会の力を借りる日が来るかもしれません」

キュベレ「その時は、どうぞよろしくお願いいたします」

パニー「ああ。選挙では君の父に投票させてもらったよ。よろしく言っといてくれ」



フローラはゴージャスな装いの女性を訝しげに見つめていた。

彼女は、両手のすべての指にはめられた指輪、ネックレス、腕時計、髪飾り、靴に至るまで、大量の宝石が用いられたアクセサリで自身を飾っている。


宝石おばさん「あら、何をじろじろ見ていますの、貴女」

フローラ「いえ……。その杖、ノーディス製の魔法杖でございますね?」

フローラ「魔法使いではない方でも上位魔法が使える杖は、ノーディス国外に流通していないはずです」

フローラ「しかも危険な空間操作魔法の杖……。その杖は、どちらで?」

宝石おばさん「親切な魔導師の殿方に譲っていただいたの、オホホ」

宝石おばさん「貴女ずいぶん武器に詳しいのね? いやだわぁ物騒!」

フローラ(『宝石女王』ルブーラ・グリエール。私の叔母に当たります)

フローラ(美しいものに目がない宝石コレクターで、富裕層を相手にしか商談を行わないとか……)

フローラ(彼女も自分の子を一家から追放しているので、好きになれません)

美食家「フローラちゃん、私のドーナツはいかがかな?」

フローラ「……よろしいんですか?」

美食家「食に差別なし! 美味しいものは分け合うべきだ。ただし通常は対価をいただくよ」

フローラ(『食の探究者』ポンディー・グリエール。私の叔父で、三男)

フローラ(フルフィリアに様々な外国料理を紹介した、商人としてはまともな人ですが、料理人ギルドには嫌われてます)

美食家「来週発売するポンディーリングのブルーベリー味だよ。変なハーブ料理より美味しいに決まってる!」

フローラ「友人へのお土産におひとついただいてもよろしくて?」


黒マント「久しいな、我が好敵手よ!」

黒マント「我は先日、ついにフルフィリアの全てのブルーベリー畑を手中に収めたぞ! 青果征服の夢もそう遠くはない……!」

黒マント「貴様はどうだ? 装備征服は順調か?」

フローラ「何度も申し上げているように、私は征服に興味がありません」

フローラ「勝手にライバル視なさらないでください。迷惑です」

フローラ(自称『青果の支配者』キノミー・グリエール。ポンディーさんの息子で私より2つ年上の14歳)

フローラ(一家の間では天才児と呼ばれていますけど、やってることは一定地域の特定の作物の畑を全部買って値段を釣り上げるだけ……)

フローラ(従わない農民の畑に薬品を撒いて、汚染された土地を強引に安く買い取る大悪党)

フローラ(結局は不動産王と同じ、家の力がないと何もできない人……)ジロッ

黒マント「そう見つめたとて、我は魅了されんぞ。控えよ」

黒マント「だが、もしも貴様が我が配下となるならば、貴様に青果の半分をやろう」

黒マント「おい、我を無視して立ち去るんじゃない。不敬なり。……待てっての!」

パニーと不動産王に話を打ち切られたキュベレは、他の来席者から情報を探ることにした。

不動産王に次ぐ商会の年商ナンバーツー、人材派遣会社の女社長に狙いをつける。


キュベレ「共和国軍の“輝鬼”ジーク・オーグロスです。ドーラさん、お時間ございますか?」

女社長「ん? ああ。まだ会議までは余裕がある」

キュベレ(ドーラ・グリエール。故ゼニー氏の娘の一人で、職種問わずどんな依頼でも受け付ける派遣会社の社長)

キュベレ(ギルドから仕事を奪いつつも市民からの評価は上々だけど、地下の奴隷市場の元締めとしての顔もある怖ーい女)

キュベレ「失礼ながら、今日の会議ではどのような議題に関して話し合う予定があるか、お聞かせいただいてもよろしいですか?」

女社長「パニー達から聞いていないか? 議題は今後の一家の方針とマニーの遺産分与だ」

女社長「心配せずとも、パニーの独断専行は私たちが食い止める。私のように、ファナゼを戦場にされると困る家族の方が多いんだ」

キュベレ(あぁ、バレてんのね……)

キュベレ「お気遣いありがとうございます。ドーラさんは今後の方針についてどのような意見をお持ちなんですか?」

女社長「政府への全面的協力だ。ただし私たちも相応に扱ってもらわなければ困る」

女社長「共和国軍とグリエール商会、二人三脚でフルフィリアを立て直していこうじゃないか」

キュベレ(嘘偽りがあるような語りには思えないけど、この人、よくない噂いっぱいあるのよねぇ)

キュベレ(社員からもう少し情報を引き出せないかしら?)

キュベレ「お願いがあるのですが。会議の間、ドーラさんの派遣会社を見学させていただけませんか?」

キュベレ「私個人として、総合ギルドというギルドの形態に大変興味がございまして……」

女社長「それは嬉しいな。ぜひ見ていってくれ。主任!」

社畜「はい」

女社長「お前と同じ強者の勲章をお持ちのジーク氏だ。会社の中を案内してやりなさい」

社畜「かしこまりました」

キュベレ(強者『社畜』……。百兵の試練では開始直後に100人全員が謎の力で倒され、一歩も動かずに勲章を得た男の人……)

キュベレ(派遣会社のPRのために試練を受けたのに、『私は……社畜だぁ!!』と、自ら不名誉な二つ名を要望したのよね)

キュベレ「……なんとなくシンパシーを感じるわ」



投資家「ジーク君。少し話しても構わないだろうか?」

キュベレ(投資家の……名前が出てこないわね)

投資家「オージー・グリエールだ。よろしく」

キュベレ「すみません。あまりお見掛けする機会が無いですよね?」

投資家「……ああ。今まで会食や会議に参加していないからね」

投資家「僕もゼニーの息子なんだが、実力を示して彼らの承認を得ないと本家には入れないんだ」

投資家「ようやく投資家としての功績が認められて、こうして初めて会合に招待されたのだよ」

キュベレ「グリエールの出であることを隠して暮らしている人も大勢いると噂されてますね」

投資家「ゼニーの子は多いよ。僕も全員知っているわけではないがね」

投資家「さて、本題に入ろう」

投資家「お察しの通り、僕たちは君に会議の本題を隠している」

投資家「だが僕たちの企みは、君たち、軍による統治を助けるものだ」

キュベレ「……話していいんですか?」

投資家「ジーク君には話しておくべきだ。陸軍大将を怒らせるリスクを負うのは得策じゃない」

投資家「作戦の決行は正午。大統領選の中継が始まる前に、町を離れておきたまえ」

投資家「陸軍大将に話しても構わない。まあ話す前にすべてが終わるだろうがね」

キュベレ「アンタ達、何をするつもりよ……?」

投資家「話はここまでだ。君に知るすべは無いさ」

社畜「もうすぐ会長とミッキーさんがお着きになります……。外へ出ましょうか……」

キュベレ「そうね」

ガチャッ

着ぐるみ「ル~ルル~ル、ルー! シェルルーだルル♪」

会長「皆、揃っているね?」


会長は身なりのいい、けれども高級過ぎない装いの、雰囲気のいい中年男性だ。

一方、芸能王はいつも通り、ファナゼワンダーパークのマスコットキャラクター、シェルルーの着ぐるみに身を包んでいる。


フローラ「お祖父様」

会長「おお、フローラ。いらっしゃい」

フローラ「会議前にあなたにたずねたいことがございます」

フローラ「マニーさんが、ファナゼのリンクス雑貨店を潰してマニーマーケットの敷地を確保したのは、ご存知ですか?」

会長「何? 初耳だな。マニーめ、なんてことを……」

フローラ「あなたは何もご存じではなかったのでございますね?」

会長「誓うよ。命をかけてもいい。私はフローラに対する嫌がらせを決して容認しない」

会長「そもそも私はフローラに本家へ戻ってきて欲しいと思っている。それは認めてくれているね?」

フローラ「……はい」

会長「マニーが生きていたら相応の責任を取らせた。他に関与した者がいないか、私からも聞いてみよう」

着ぐるみ「YOU! 愉快な仲間たちが席について待ってるよ!」

会長「フローラ。また会議の後でゆっくり話そう」

フローラ「最後にもう一つ聞きたい事がございます!」


会長は反応しなかった。

フローラとキュベレ、社畜を残して扉が閉まる。


フローラ「大伯父様は会議中、着ぐるみをお脱ぎになるのですか!?」

キュベレ「えっ!? そんなこと!?」




着ぐるみ「……着ぐるみじゃなくって貝殻だルル!!」

扉越しに60代男性の裏声が聴こえた。

派遣会社、ロビー。

受付「いらっしゃいませ。ご依頼の受付でしょうか?」

クルト「いや、見物だ」

配達屋「ねえこれ見て。社長の肖像画っすよ! 本人絶対こんな綺麗じゃないっすよね?」

クルト「それは分からんが……来歴も載っているな。幼少期を『契約の国』で過ごし、資本主義を学ぶ」

クルト「ギルドの権限を縮小し誰もが自由に起業できる社会をフルフィリア政府に提案し続けている、か……。若いのに立派だな」

配達屋「あれ? でもおかしいっすね。契約の国って商売人よりもむしろ詐欺師の国っすよ」

クルト「詐欺だと?」

配達屋「契約の効力が強すぎて騙したもん勝ちになってる国だって、外国を周ってる旅人さんから聞いたっす」




派遣会社 二階、総務課事務室。

女性社員「弊社が取り扱う依頼は大きく分けると戦闘系と専門系に分けられますが、ほとんどは戦闘系です」

女性社員「剣士ギルド、魔法局、何でも屋、陸軍、消防団……どこに頼めば正解か分からないという市民の声に応えるべく弊社は設立されました」

キュベレ「確かに……モンスター討伐を陸軍に頼んでいいって知らない人、多いわね」

フローラ「迷子の捜索依頼がなされた時、何でも屋は消防団に連絡すると耳にしたことがございます」

レンジャー「討伐、護衛、探索、採取、配達、何でも屋以上に何でもやらされるんだ」

弓士「何でも引き受けるからいつまで経ってもノルマが終わらねぇんだよ」

レンジャー「依頼を達成して戻ってくると、行く前より依頼の数が増えてんだよな……」

弓士「もう俺は20日も家に帰ってないぜ」

社畜「ふふ……まだまだですね……」

レンジャー「社畜さん?」

社畜「私の今週の労働時間は180時間です……」

レンジャー「っ!」ゾクッ

社畜「実質413連勤であるということも、付け加えておきましょうか……」

弓士「ま、まさかそこまでとは……!」

フローラ「7日間は、168時間しかございませんが……?」

弓士「その気になれば一日に24時間以上働けるんだよ、この人は」

社畜「実演して見せましょうか……」

社畜「こちらの書類の山に、注目してください……」


くたびれたスーツ姿の男は、腕に装着した機械にカードを挿入し、『出』のボタンを押した。

次の瞬間、書類の山がすべてファイルに綴じられた。男は『退』のボタンに指を添えている。


キュベレ「時間を止めて作業したのね?」

社畜「いいえ……。タイムカードをご覧ください……」

『09:09-09:21 結果:書類253枚のチェック・保管』

フローラ「今は……9時10分でございますね」

社畜「仕事の結果だけを残して、仕事を始めた時間に戻ってくる……これが私の『時間外労働』……!」

社畜「私が黙々と事務作業を行っているのを、くだらなさそうに眺めていた貴方がたも存在していたんですよ……」

キュベレ「あー、『注目してください』って言った後、普通に仕事を始めたらそうなるわねぇ」

社畜「私がその場にいなければならない仕事以外は、これで終わらせるように命じられています……」

フローラ「なんとももったいない能力の使い方ですね」

社畜「もちろん、時間外労働分の給料は出ません……。この時空に労働中の私を見た者は一人もいないのですから……」

フローラ「タイムカードを提出なされては?」

社畜「社長は信じていません……。私が会社の人件費削減のために一瞬で仕事を終わらせたと、都合よく解釈しています……」

キュベレ「もう会社やめちゃいなさいよ。アナタならどこに行っても稼ぎ放題でしょ?」

社畜「できるならそうしてますよ……」

キュベレ「そう……脅されてるのね」

社畜「いえ……そういうわけではなく……」

レンジャー・弓士「…………」

フローラ「契約書の効果で縛りつけて、逆らえなくされているのでしょうか」

キュベレ「契約書ってそんなマジックアイテムだったかしら?」

フローラ「魔法ではございませんね」

フローラ「暗示によって運命を操る占い師……その上位職の内、自分の思い込みで超常現象を起こすのが、エスパー」

フローラ「反対に相手に思い込ませて行動を操るのが、詐欺師。それが派遣会社社長……ドーラさんの正体です」

フローラ「ドーラさんより精神力が低く、契約書にサインした方は、もはや騙されたと分かっていても抜け出せません」

社畜「よくご存じですね……」

フローラ「ドーラさんについて知っている事を話すのも制限されていらっしゃったのでしょう?」

社畜「おっしゃる通りです……」

キュベレ「酷い事するものね。なんとかならないの?」

フローラ「契約書を処分するか、処分したと思い込ませるかのいずれかの方法で暗示は解けます」

キュベレ「当然本人は契約書に触れないのよね。記憶操作は高位魔法だし、難しいわね……」

キュベレ(もし商会が何を企んでいるか知っていても、契約書があるから彼らはそれを教えられない)

キュベレ(他を当たった方がいいわね)

派遣会社 玄関前。

クルト「まだ差出人は現れないのか。いっそ派遣会社に捜索を依頼してみるか?」

配達屋「手がかりは名前しかないんすよ……。……あっ!!」

クルト「現れたか!?」

配達屋「会長! お疲れっす!」

フローラ「カモメさん!? なぜこちらに……」

キュベレ「あらぁ奇遇ね! ク……」

キュベレ(口元に指を当ててるわ。黙っときましょ)

配達屋「知ってるかもしれないっすけど、この人は配達屋カモメメールのアドバイザー、リンクス商会会長のフローラさんっす!」

クルト「ああ。前に会った事がある。印象的だったからよく覚えているぞ」

クルト「久しいな、フローラ。インテリ商人のジェンスだ」キリッ

キュベレ(その名乗りと決め顔はなんなのよ!)

フローラ「アンブラーズのクルトさんでしょう?」

クルト「うぐっ」

フローラ「新聞に載っておりましたよ。魔法競技会で優勝なされたんですね。おめでとうございます」

クルト「有名になるというのも良い事ばかりではないな」

クルト「すまない。騙す意図は無かったんだ。ただ商人ギルドに所属していないとはいえ、兼業と見られるのは世間体が悪いのでな……」

フローラ「お気になさらず。よくあることです」

キュベレ「どういうセンスよ。インテリ商人のジェンスって……」

クルト「頭の良さそうな名前だろう?」

キュベレ「逆に頭が悪そうよ! バレバレよ!」

フローラ「そうでしょうか? 私は新聞を読むまで気づきませんでした」

キュベレ「このくらい察しなさいよ。あまりにひねりが無さ過ぎるじゃない」

キュベレ「まっ、アタシが言えた事じゃないけどね。オネエのキュベレって結構そのまんまなのよ。でもアタシはあえて分かりやすくしてるの」

キュベレ「いい? フローラちゃん。そのまんまな名前は大抵偽名よ。気を付けなさい!」

フローラ「別に偽名でもよろしいのでは? クルトさんは頭が良さそうですし、よくお似合いでした」

フローラ「とても良いセンスだと思います」

クルト「嘘を許してくれるばかりか、俺を立ててくれるとは……どこまで大人なんだ」

キュベレ(あっ違うわ、この子……偽名に気付いてたけど好きな人の肩持ってるだけよ!)


クルト「まさか配達屋があの天才少女の傘下だったとはな……」

配達屋「カモメの適性を見抜いて配達屋を提案してくれたんすよ! 会長と出会わなかったらカモメは今も浮浪者でした」

フローラ「カモメさんはリンクス商会の最高戦力ですのよ。私も頼りにしています」

クルト「そうか。年下に甘えっぱなしではないんだな」

配達屋「心外な評価っすね」

キュベレ「ねえ、アタシ達は一応用事を済ませたんだけど、クルトくんは今から仕事かしら?」

クルト「ああ。少し急ぐ必要がある」

配達屋「ジェンスさん、じゃなくクルトさん。会長には話していいっすか?」

クルト「フローラにも無関係ではないか……」

キュベレ「なぁにぃ、仲間外れぇ? 別にいいけど」

クルト「いや、情報通のキュベレさんにも聞いてもらいたい」

クルト「聞くと危険に巻き込まれる可能性もあるが……」

キュベレ「そんな事は全然気にしなくていいわよ。聞かせなさぁい! オネエさんは強いのよ♪」


配達屋カモメが魔法で金属製の車を出現させ、全員で乗り込む。

どうやら中は防音になっているようだ。


クルト「俺は今、ミリエーラという人間を探している」

クルト「そいつから、妹の命が惜しければファナゼに来い、という内容の手紙が届いたんだ」

配達屋「いつの間にか荷物の中に紛れてたんすよ……」

キュベレ「どうして脅迫されてるのか、心当たりはあるの?」

フローラ「もう少しその方の情報はございませんか?」

クルト「武器防具屋で、同業者に何らかの圧力をかけて潰す商人だ」

クルト「俺の店も魔導具を扱っているから、恐らくそれが狙われた理由だろう」

キュベレ「グリエール商会っぽいわね。でもそんな名前の人いたかしら?」

キュベレ「パニーと売り物も被ってるじゃないの」

フローラ「無関係の方かもしれません」

配達屋「グリエール商会とお客さんが被っていない、闇の武器商人……ってことは」

フローラ「その方は地下街にいらっしゃると思います」

配達屋「行き先は決まったっすね。会長の言う事に間違いはないっす」

キュベレ「強引ねぇ……」

クルト「しかし他に当てはない。俺も賛成だ」

地下街へ向かう道中、一行は二組に分かれていた。

男性の中でも脚の長いキュベレとクルトに対して、ドワーフとのハーフで身長が低いカモメと12歳のフローラ。

必然、普通に歩いているだけでも距離が開いてしまう。


フローラ「なぜ私の所へ連れて来たんですかっ……!」

配達屋「会長、クルトさん好きだったじゃないすか?」

配達屋「クルトさんも恋がしたいと言ってたんで、せっかくの機会なのでぜひ会長に引き合わせてあげようと」

フローラ「カモメさんにはウベローゼンで仕事を頼んでいましたでしょう?」

配達屋「クルトさんに強引にファナゼまで一緒に来るように頼まれたんすよ!」

配達屋「お膳立ては済んでますし、仕事の方はカモメ達がいなくても何とかなるでしょ」

フローラ「あなたは、いつも勝手なことをしますね……」

配達屋「会長のことを考えてのことっすよ」

フローラ「防音の車を出してください……仕事の連絡をします」


キュベレ「あら、カップル割引20%オフですって。気前のいいカフェね」

キュベレ「クルトくん、今はフリーなの?」

クルト「ああ。……俺の恋愛対象は女性だけだが」

キュベレ「今はね。いずれ必ず、アタシに落ちるわ♪ クルトくん年上好きそうだもの」

クルト「年齢は関係なく思慮深い人が好きだ。友人としてもな。だが、年上との恋愛は子供扱いされそうで難しそうだ」

キュベレ「若くて大人っぽい子がいいのね」

クルト「キュベレさんとは正反対だな」

キュベレ「ええ♪ クルトくんの言う通り、アタシは少女のように純粋な心の持ち主なのよ☆」

クルト「なんて前向きなんだ……!」

キュベレ「でもアタシ8歳の天文学者を知ってるんだけど、流石に子供過ぎるでしょ? クルトくん的には何歳までセーフ?」

クルト「そうだな…………11歳までだろうか」

キュベレ「随分守備範囲広いのねぇ」

クルト「中身は、年上とも言えるのでな……」

キュベレ「あらら、本当にいる人なのね。アタシの恋敵!」

クルト「しかし恋愛感情ではなく憧れに近いものだ。最初は侮っていたが、今では俺が目標にしている……」

キュベレ(そんなに若くて、クルトくんが認めるくらい大人っぽくて実力のある子なんて、あんまりいないわよ)

キュベレ(フローラちゃん、脈ありね♪)


残念ながら、ソピアのことである!

中身は72歳の老婆だが、見た目も心も11歳のソピアのことである!!

ファナゼの闇、地下街。

至って平和ではあるが、表ではできないような商売が公然と行われているディープなスポットである。

派遣会社社長、ドーラによる管理の下、他国の商人たちが奴隷を売る奴隷市場が有名。

そして、闇料理研究協会という謎の組織の存在も広く知られている。


クルト「思っていたよりも随分と衛生的な環境だ……」

フローラ「下水や遺跡ではございませんもの。奴隷を使って隅々まで清掃もしているのでしょう」

キュベレ「みんな闇の商売人だから案内図は無いのね。目当ての店を探すのは骨が折れそうよ……」

配達屋「車を出せる程広くないっすね。地道に歩きましょっか」


彼らが道中で立ち寄ったのは

1.奴隷市場
2.闇料理研究協会
3.ネコかわいがり倶楽部
4.地下寝具店
5.ダークネスウェディングチャペル
6.裏芸能事務所

↓1、2、3 選択

今回は選択まで。このレスは安価に含みません。

グロと絶望の違法ハーブ編から雰囲気を変えて、商会編はそこそこふざけた話になる予定。
黒幕の正体も2人判明&対峙します。途中で気付いてくれると嬉しい。

延命報告。

時間切れになってしまった&真夜中だけど投下。ダメそうなら次スレ立てます。

地下街は、石のタイルが敷かれ、通路幅も広く歩きやすく整備されていた。

壁には一定間隔で魔法灯が備えられているが、地下であるためやはり薄暗い。

馬車置き場に隣接した南口のスロープから道なりに歩き進めると、柱の立ち並ぶ広間へと辿りついた。

広間には大勢の人々がおり、その中には多くの亜人が含まれていた。


ターバンの商人「手先だけは器用な草原民族の男だ。子種にどうだい?」

ローブの商人「ノーディスの白魔術都市産、身分の低いガキ共を3人セットで半額処分!」

奴隷商「いらっしゃい、観光かい? 見るだけでもいいから寄ってくれ!」


地下街の目玉、奴隷市場。

フルフィリアの富裕層も奴隷を購入しているが、どちらかといえば各国の奴隷商人同士での売買が盛ん。

人権意識の高い南のサロデニア共和国では奴隷が禁止されているため、人さらい達はここファナゼ市を拠点に活動している。

北の魔導帝国ノーディスでは亜人奴隷の人気が高く、奴隷商人達にとってはリスクを冒すだけの価値があった。

東の軍事国家ジャルバ王国では政府と繋がりの強い国民にのみ捕虜の分配がなされ、高い生産性を確保するとともに家事労働から解放されている。

権力の無いジャルバ人が裕福になるためには国外で奴隷を買う必要があるのだ。


クルト「ふむ。見てみるか」

フローラ「あら……奴隷に興味が?」

クルト「社会の事は何でも知っていて損はないからな」

クルト達に声をかけてきた奴隷商は、『筋力値平均以上保証』の看板を掲げていた。

ギルドは能力値の測定基準として、一般人の平均を50と定めている。


クルト「適当に人間を売っていると思っていたが、品質にもこだわりがあるとは、意外だな……」

奴隷商「きちんと活躍できる場所で働かせてやらなきゃ意味がねぇ。家畜と同じさ」

クルト「筋肉質じゃない奴隷はどうしているんだ? まさか処分しているのか?」

奴隷商「いや、まず生まれてこない」

奴隷商「親のステータスが一定値を超えたら、子供はその半分の値を下回らない。ジャルバの中流階級以上じゃ常識だぜ」

奴隷商「一定値ってのは100な。一般的な特訓で上がる最大値。それ以上は上がりにくくなるってことはフルフィリアでも常識だろ?」

奴隷商「たまに手に入る優秀な奴隷を子種にすれば、一定の品質を維持できるってわけさ」

キュベレ「ジャルバと戦争した小国の捕虜ね……」

クルト「なるほど、子種と称して売られているのはそういう者か」

フローラ「彼らは、はじめから奴隷として生まれるのですわね……」

奴隷商「俺の祖父がマッチョな男の奴隷を手に入れたおかげで、こうして良い奴隷を大量生産できてるんだ」

クルト「奴隷を産むためだけに生かされている母親が大勢存在している事になる……。やはりろくな業界ではないな……」

奴隷商「母親も奴隷だから何も問題ねぇよ」

奴隷商「そうそう、奴隷鑑定士が数人いるから奴隷の能力値は偽れない。いろいろ言われることも多いが俺たち結構真面目にやってんだぞ」

フローラ「ドーラさんが市場を開いて奴隷商人を集めた理由がよくわかりました」

配達屋「能力の高い奴隷がいたら自分の会社に引き入れて永遠にこき使おうって魂胆っすね」

キュベレ「頭のいい奴隷ってあんまりいないでしょうし、騙して契約させるならうってつけよねぇ……」


ふいに、奴隷市場の中でも特に身なりの良い男が声をかけてきた。


鑑定士「君タチ、亜人サーカス見て行かないでゲスか? 見物料は一人300Gでゲス」

クルト「サーカス……? そんなものもやっているのか」

鑑定士「適当にさらってきたものの、ステータスが低いから売り物として微妙なんでゲス」

フローラ「だから見世物に……商魂たくましいこと」

鑑定士「オヤ? あんたドワーフと人間のハーフでゲスな? 数値によっちゃ欲しいが、ドレドレ……」


男は能力解析魔法を使った。

ドワーフは西のコホーテン首長国以外ではあまり見かけない、ファナゼで活動する奴隷商人には比較的入手の難しい亜人だった。

筋力・精神力・器用さに長け、頭の回転が遅い傾向があることから、奴隷として非常に都合が良かった。


フローラ「カモメさんは売り物ではございません!」

鑑定士「売る気が無くても手段は、って……ひ、ひいっ! なんだこの化け物ども!」

キュベレ「ハーイ、化け物よん♪ 生まれつきの筋力値140。驚いた?」

キュベレ「どう? アタシを連れ去って子種にしてみる?」(^_-)⌒☆

鑑定士「滅相もございませんでゲス!」ダダダッ

キュベレ「……行きましょ。気分悪くなったわ」

フローラ「ええ。カモメさんを化け物呼ばわりされて……私も最悪の気分です」

クルト「まさかキュベレさんと並び称されるほどの力の持ち主とはな……」

クルト「配達屋、お前、何者なんだ? お前の親もただ者ではないだろう」

配達屋「やっ。たぶん普通っす。というか覚えてないっす」

配達屋「カモメも親に捨てられたんすよ」

クルト「そうか……」

配達屋「そんで、コホーテン国の北の方、隕石がやたらと落ちてくる荒原でそこに暮らす魔女に育てられました」

配達屋「でもある日魔女さんは病気で死んでしまって、またカモメは一人になって、モスボラ市で浮浪者してたところを会長に拾われました」

フローラ「いい拾いものでした」

配達屋「カモメも会長からもらった名前っす。それまではコホーテン語で『半人間』としか呼ばれてなかったんで」

キュベレ「何か由来があるの?」

フローラ「当時から手紙の配達のお仕事をなさっていて、メールの子、と呼ばれていたので、少し追加して」

配達屋「配達屋カモメメールはカモミールが由来っす。花繋がりで」

キュベレ(ダジャレ!?)

クルト「いいネーミングセンスだ」

キュベレ「えぇ……?」

【ダークネスウェディングチャペル】

クルト「この看板は何だ……?」

キュベレ「邪教徒のための結婚式場かしら……?」

フローラ「いいえ。ご説明いたしましょう」

フローラ「ここは、結婚相手が嫌がっている、未成年などの理由で、聖教会の神父を呼べない方々が式を挙げる場所でございます」

キュベレ「非合法な結婚式で満足するの?」

フローラ「非合法でも天使の祝福を受けたい、披露宴がしたい、そういったニーズに応えるビジネスです」

クルト「やけに詳しいな……」

フローラ「それほどでも……」ニコッ

キュベレ(調べたのね! 未成年OKの式場!)

クルト「? なぜ顔をそむける?」

フローラ「……なんでもございません」ニヤニヤ

キュベレ(ニヤけてるわ! まだ一歩も進展してないのに妄想してるわ! この子スケベね!)


闇料理研究協会。

クルト「……!」ピタッ

フローラ「どうしました?」

クルト「少し、寄って行かないか?」

配達屋「闇料理……? 物好きっすねぇ」

キュベレ「別にいいけど……顔怖いわよ? クルトくん」

クルト「きっとお前たちも病みつきになる」ジュルリ


魔術師集団アンブラーズのチームリーダー、クルト。

彼もまた、特殊な料理の虜であった。


売人「クックック……いらっしゃい」

売人「ここは闇の料理人が集い己の腕を磨く、秘密結社のアジトだ」

配達屋「普通に入れるんすね、アジト」

売人「大歓迎さ、ここは勧誘の場でもあるからな」

売人「真の美食を体験していくといい」


実食。

キュベレ「あらー! たしかに地上では食べたことない味ね!」

フローラ「ええ。とても美味ですわね」

配達屋「どっすか? クルトさん」

クルト「…………違う」

クルト「味気ない! こんなもの闇の料理ではない! ハーブを足すんだ!」

闇ウェイター「ハーブ、だと……?」

闇ウェイトレス「貴様、さてはハーブ舌だな!」

闇料理人「表の料理界は腐っている! 料理に毒を混ぜ、彼のようなハーブ舌を量産している!」

闇料理人「ハーブは悪だ! ノー・モア・ハーブ!」

闇ウェイター「イエス、シェフ! ノー・モア・ハーブ!」

闇ウェイトレス「ノー・モア・ハーブ! 料理界を取り戻す!」

クルト「ハーブこそ正義だ! ノー・ハーブ・ノー・ライフ!」

配達屋「……?」

キュベレ「……何よこれ?」

クルト「お前たちも続けぇええ!」

フローラ「の、のーはーぶのーらいふ……?」

闇料理人「我々はハーブ舌共から料理界を取り戻すべく結成された組織なのだ」

闇ウェイター「フルフィリアの料理界は、ハーブと調理道具捌きに頼り切り、食材を蔑ろにしている」

闇ウェイトレス「良質な食材が良質な料理を作る。そう主張し、料理人ギルドから追放されたレジスタンス、それが私達」

闇ウェイター「毒草や無機物を食材に使う国なんてフルフィリアくらいだ。我が国は大きく遅れている」

闇ウェイトレス「料理界のグローバル化を! 私達はポンディー氏の下、主張し続ける!」

闇料理人「分かったら出ていけ! このハーブ舌共め!」


キュベレ「追い出されたわ……」

配達屋「闇料理研究協会、ポンディー・グリエールが会長だったんすね」

クルト「グリエール商会が国を支配したら、カフェ:アンブロシアが潰される可能性があるのか。許せんな……」

クルト「徹底抗戦だ。俺はハーブ料理を友人に広めていこう。皆アンブラーになるべきだ」

フローラ「よく分かりませんけど、自分の信念を貫く姿勢は素敵だと思います」

キュベレ「……いい食材といいハーブを組み合わせれば一番美味しいんじゃないの?」

キュベレ「結構寄り道しちゃったわねぇ」

フローラ「あら……あの屋台」

配達屋「怪しいっすね! 行ってみましょう!」

クルト「……そうか?」


闇武器店。

地下街の南口付近の広場の端にその店はあった。

看板は掲げておらず、床に敷かれたシートに各国の軍で採用されている武器や上位職ギルドで配布されている武器が並んでいる。

椅子にはクルトと同年代に見える一人の美女が脚を組んで腰かけていた。

どこかの国の女性士官制服を改造した衣装に身を包み、胸元を大きく露出させたその女は、クルトを見るなり口元を吊り上げて笑んだ。


女「ジェンス魔導具店のクルトさんですね。お待ちしておりました」

女「私が死の商人こと、ミリエーラです」

クルト「…っ!」バッ


すぐさまクルトがフローラの前に立つ。

カモメは腕をミリエーラへと向けて構えた。


ミリエーラ「構えを解いていただかなくても結構ですが、貴方達に危害を加えるつもりはありません」

クルト「……彼女らはお前の言う『仲間』ではないだろう?」

ミリエーラ「はい。私も、本当に一人で来るとは思っていませんよ」

配達屋「当たりだったっすね」

キュベレ「腰に携えた革の鞭……戦争で儲ける商人、そしてその名前……」

キュベレ「人違いだったら申し訳ないんだけど、まさかアナタ、海軍大将の?」

ミリエーラ「はい。娘です。初めまして、ジーク・オーグロスさん、母がお世話になっております」

キュベレ「まさか女帝の話してたミリちゃんが、闇の武器商人だったなんてね。誰も会った事がないのも納得だわ」

配達屋「へー。あの人、娘がいたんすか」

クルト「……キュベレさん、どういうことだ?」

キュベレ「この子、あの六勇の海軍大将“女帝”フリンデルの娘なの。アタシがいれば話の通じない相手じゃなさそうよ」

クルト「いや、それは知っていたんだ。キュベレさんが軍の関係者とは初耳だ」

クルト「まさかあの陸軍大将の子だったとは……いや、特に問題は無いのだがな……」

キュベレ「アタシはお父さんとは違うわよ!」

ミリエーラ「お互い大変ですね。親の事で偏見を持たれて」

キュベレ「あら? アナタのは偏見じゃないでしょ? なんたってクルトくんを脅すお手紙を送ったそうじゃない」

クルト「ああ。よくも妹を脅しの材料に使ってくれたな……」

クルト「ウベローゼン市で違法ハーブを流行らせているのもお前だろう」

ミリエーラ「夢中草の販売を指示したのは確かに私です。ですが、もうやめます」

クルト「何?」

ミリエーラ「数日後に私達死の商人グループは、フルフィリアを出ていきます」

ミリエーラ「軍とグリエール商会の影響力が拡大し、ギルドの力が低下すると、武器商人としては非常にやり辛いんですよ」

配達屋「夢中草販売の目的は、外国で活動するための資金源作り、もしくはコネ作り。そういうことっすね?」

ミリエーラ「はい。ですので、安心してください」

ミリエーラ「もう私におびえて手紙で情報をやり取りする必要も無くなります」

クルト「……お前の手によって、俺の知人は自殺に追い込まれた」

クルト「違法ハーブの騒動で、ミルズは殺されかけ、俺も一度重傷を負わされたんだ」

クルト「お前のような悪逆非道の疫病神を、責任も取らせず、外国に押し付けて満足すると思うか?」

クルト「お前の罪はこの国で裁かれねばならん。そうだろうキュベレさん!」

キュベレ「そうね……。いくら女帝の娘でも、いや、だからこそ余計に許される行動じゃないわね」

フローラ「カモメさん。この方に触れずに縛ってください」

配達屋「了解っす!」バッ


カモメが魔法で出現させた縄が、空中を自在に動き回りミリエーラを縛った。

しかし彼女は縛られながらも余裕の表情を見せている。

配達屋「魔法防御みたいなのは無かったっすね……」

クルト「……俺を呼び出した理由は何だ? いなくなると宣言するだけが目的なら手紙にそう書けばよかったはずだ」

ミリエーラ「……国を離れる前に、クルトさんと話しておきたかった」

ミリエーラ「クルトさん、貴方に、ウベローゼン市の商人達が私を警戒するようになった、最初の事件について語らせてください」


彼女は、母に憧れており、母を助けられる仕事に就きたかった。

しかし彼女には体力が無かったため、軍人を目指す事はできなかったのだ。

それでも軍に関わる仕事をしたかった彼女は武器商となり、地下街やスラムなどで武器を求める人々に武器を売った。

彼女が武器を売った人々によって傷害事件が起きたこともあり、いつしか彼女は『闇の武器屋』『死の商人』と恐れられるようになっていた。


キュベレ「お母さんの強さは遺伝しなかったのね。……アタシが譲れるなら譲ってあげたいわよ」

クルト「だがやはり、ろくでもない商売人だな」


地道な行商を続け、とうとう彼女は店舗を持つに至った。

しかし、フリンデルの悪名と死の商人の肩書きは、その名を知った者に恐怖を与えた。

彼女の何気ない言動はプレッシャーを与え、近所の防具店店主は恐ろしい拷問や戦場に送られる未来を想像し、その運命が訪れる前に自ら死を選んでしまった。

クルトもまた、ミリエーラ・フリンデルの名を見て悪い想像を膨らませた内の一人であった。


クルト「俺たちが勝手に誤解しただけだと、そう言うのか?」

クルト「言い訳も大概にしろ。武器やハーブの販売を通じて、社会を混乱させたのは歴とした事実だろう!」

ミリエーラ「本当に……申し訳ございません。私は、道を誤ったんです……」

クルト「では、この女を軍の基地へ連れて行こうか。全軍大忙しだろうが誰もいないということはあるまい」

キュベレ「待って。ミリちゃんアナタ、他に部下はいないの?」

キュベレ「全員ウベローゼン市に置いてきたってことはないでしょ」

ミリエーラ「いますよ。彼らには他の仕事を任せています」

キュベレ「その仕事と、部下の居場所について教えなさい。先に止めておかなきゃねん」

ミリエーラ「こちらは人を救うための仕事なので、できれば止めて欲しくないですね」

クルト「人を救う? 何を企んでいる」

ミリエーラ「私がファナゼに来たのは、亜人NGOによる奴隷解放の支援をするためです」


『死の商人』のフルフィリアでの最後の仕事は、奴隷商人たちに誘拐された亜人の解放。

しかしそれはグリエール商会への宣戦布告を意味し、同時に共和国軍を相手にすることにも繋がる。

それを避けるため、ミリエーラはこの日を狙って計画を練っていたのだ。


クルト「大統領選で軍の目が王都に集中する隙を狙ったのは、俺たちだけではなかったか……」

配達屋「しかもこのタイミングで貴族たちが反乱を起こしました。軍を出し抜くには絶好の機会っす」

フローラ「まさかとは思いますが、グリエール商会が集まっているのも、同じ理由ではないでしょうか……?」

キュベレ「そうね……」

ミリエーラ「ジーク・オーグロスさん。貴方にだけは話しておきたい」

ミリエーラ「……グリエール商会の企みを」

キュベレ「アナタ、知ってるの……!?」

投資家「では最終確認です。改めて、計画に賛成の方は挙手を」


商会本部ビル。

豪華絢爛な会議室にて、その計画は賛成多数で実行される事が決定した。


投資家「反対は……ルブーラ氏、ポンディー氏、そして会長、ですか」

投資家「なぜ反対を?」

宝石おばさん「賛成には条件がありますわ」

投資家「条件を教えてください」

宝石おばさん「山人ギルドの解体。あの野蛮な鉱夫たちは、ザネッティ家が没落した後もまだ宝石集めの邪魔してきますの!」

投資家「もちろん解体は可能ですよ、マダム」

黒マント「そいつは僥倖だ。山イチゴを独占する土人ギルド員は一掃せねば!」

美食家「そんな汚い言葉使っちゃいけないよ、キノミー」

投資家「貴方はなぜ計画に反対するんですか?」

美食家「単純に気が乗らないからね。私は料理人ギルドに食材の力で勝ちたかった」

美食家「ただ、決定に文句は言わないよ。多数決だからね」

投資家「会長は、止めないのですか?」

会長「いつも言っているが、家族の意思は尊重したい。だが……とても残念だ」

会長「超能力で国民を洗脳して、全てのギルドを支配下に置き、国家の支配者となる……」

会長「それは……もう、商売とは呼べないんじゃないかね……」


投資家オージーの発案した、国家乗っ取り計画。

カギとなるのは、芸能王ミッキーが強引にアイドルデビューさせた少女、ポロ。

巷ではROKKAの芸名で知られる彼女は、歌唱によって人間の心身に影響を与える特殊能力を持つ。

もう一つのカギが、大統領選当日、すべての町に設置された放送ディスプレイ。

このディスプレイの設置には商会とメカニックギルドが協力しており、映像と音声は一度ファナゼ市のTV局本社に届けられる。


この計画では、放送の音声を編集し、共和国の初代大統領が決定する瞬間を見守る国民に、ROKKAの歌を聴かせて催眠状態にする。

そして意思薄弱状態になった国民に様々な命令を刷り込み、意のままに操るのだ。

計画が成功すれば、商会は国内のすべての業種を独占することができる。

また、商会は共和国軍に全面的に協力、軍の統治は半永久的なものとなる。

武力を持つものと財力を持つものが統治し、国民はただの駒となる、名ばかりの共和国が成立してしまう。


なお、数日前、ROKKAの持つ魔力に目を付けたラヌーン国によって計画が頓挫しかけたので、彼女を無事連れ戻したソピアは商会の恩人である。

ファナゼ中央市場。

カモメが生成、発射した隕石塊が、ディスプレイとスピーカーを粉々に破壊した。


市民「な、なんだぁ!?」

剣士「誰かがディスプレイを攻撃したんだ!」

岩魔術師「弾が消えた……生成弾よ! 近くにあたし以外の岩魔術師がいるわ!」

風魔術師「気配が探れない……。どこへ消えた?」


クルト達はカモメの生成した車で即座に現場を離れていた。

仕組みは自転車と同じであり、カモメがペダルを漕ぐと車輪が回る。


キュベレ「ここまで来れば、降りてもいいんじゃなぁい?」

クルト「ふう……便利だな、この車。周囲の景色と同じ色味に変わる迷彩効果まであるのか」

配達屋「一番の自信作っす! 砲弾はもうちょっと改良できそうなんすけどねー」

フローラ「とにかく、これで催眠音声を防ぐことができました。一安心です」

クルト「ミリエーラ……危険な女だが、今回は助けられたな」

キュベレ「ありえないくらい事情通よねぇ。カモメちゃんの運ぶ手紙の内容から、商会の内情まで知ってるなんて」

クルト「大勢の内通者がいるのかもしれん。そこら辺も詳しく聞いてみるか」

クルト「配達屋。そろそろ車を消してもいいんじゃないか?」

配達屋「あっ、消し忘れてたっすね。今消します」


魔法で作った車が消えると、中に乗っていたはずのミリエーラも消えていた。


配達屋「あれっ?」

フローラ「こういう魔法って、人ごと消えるんでしょうか?」

キュベレ「見て、ロープだけ落ちてるわ!」

クルト「くそっ……逃げられたか!!」

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