鬼「親父を殺した桃太郎に復讐する」 (224)

10年前、俺の親父は桃太郎に殺された。

親父は盗みを働いたこともないし、暴力も人にふるったこともない。ただ魚をとって慎ましく生きてきただけだ。

親父は悪いことをしていない、悪鬼ではないのに殺された。

鬼「親父……仇は俺が討つからな…」

親父の墓前で自前の鉄刀をかざす

俺は桃太郎を許さない

鬼「よし……行くか!」

般若のお面と頭巾を被る、人間は鬼を毛嫌いしているから正体をみせては旅に支障がでてしまう…。

鬼「……まずは桃太郎の居場所を探さないと」

城下町に行けば人もたくさんいるはずだ。そこで情報を集めるとしよう。

鬼「目指すは城下町」

北に向けて歩きはじめた。

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鬼「城下町まであと二里ってところか……ふぅ」

街道の端にある切り株に腰掛ける。

鬼「…このおにぎりも最後か……お金を稼がないと飢えて死んでしまうな」

最後のおにぎりを食べようとした瞬間、なにか白い布のようなものが目に入る。

鬼「人間……か?」

少女「……」

少女「あ……あの…お侍様」

鬼「あ…俺は…」

少女はひどく汚れている。着ている服もボロボロで、おそらく孤児だろう…。

少女「荷物持ちでも…なんでもするので雇ってください……!!」

鬼「え…えぇ…?」

そんな華奢な体で重たい荷物など相当な負担だろう……この子も生きるのに必死なんだな

少女「お願いします!!!」

ぎゅるる……

少女「あ……」

少女の顔が急に真っ赤になる。

鬼「…お腹すいたんだな。これ半分やるよ。」

少女「え……あ…ありがとうございます!」

少女は半分にわけたおにぎりを申し訳なさそうにとると、無我夢中で食べ始めた。

鬼「お前…親は??」

少女「親は……鬼に…殺されました。」

鬼「そ……そうか。」

心が締め付けられる

鬼「鬼は…その……嫌いか??」

少女「私は鬼が憎いです」

鬼「……」

少女「なんの罪も犯していない私の親は鬼に殺されました……私は鬼が憎いです…。」

鬼「………」

この子……俺と同じだ。

親を殺された悲しみは、種族に関係なく平等に訪れるものなんだ。

鬼「……少女」

少女「はい…?」

この子の悲しみや憎しみが少しでもおさまるなら…

鬼「俺は鬼だ。」

少女「………え?」

鬼「知らぬとはいえ、種別の同じ者が取り返しのつかない事をしてしまった。本当にすまなかった!!」

頭巾をとって土下座をする。地面に頭をこすりつけ慈悲をこう。これでこの少女の悲しみや憎しみが少しでもおさまるなら…。

少女「………お…鬼…悪鬼」

鬼「ち…ちがう!俺は!」

少女「ひぃぃ!!!!」

少女は走って逃げ出した…。

鬼「俺は…悪鬼なんかじゃ……ッ」

人間にとって鬼とは……災厄をもたらす存在…。

鬼「鬼であること自体が罪なのかもしれん……」

現に俺は桃太郎を殺そうとしている…。人を殺そうとしているのだ。これが悪鬼と言わずなんと言うのだ。

鬼「………」

城下町に向けて歩き出した。

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鬼「……ふぅ…あともう少し」

城下町の街並みがうっすら見える。あと少しで到着だ。

鬼「…ん?」

城下町の方から1匹の荷馬と数人の男たちが走ってくる。

山賊「そこのお面のお侍さん!ちょっと聞きてぇことがあるんですが!」

鬼「聞きたいこと…?」

山賊「ここの街道でみすぼらしいおなごを見ませんでしたか??」

鬼「………あぁ…それなら一里ほどいったところで見たぞ。どうかされたのか?」

山賊「いやぁ……そいつが鬼に殺された孤児でしてね!うちでこき使ってたんですけど、昨晩まんまと逃げられまして…恥ずかしながら連れ戻しにいく最中ですぜ…へへっ」

鬼「………」

あの少女が……この男たちに…。あの体躯からしてロクな食事もとらずただ働かされていたのだろうな。

山賊「ではまた……!」

鬼「………」

このまま面倒ごとに首を突っ込まず。城下町に行くのが正解だろう……。

鬼「………」

男たちは少女のいた方向にかけていった。

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少女「………はぁ…ここまでくれば…」

親の仇である鬼に出会ってしまった。山賊から命からがら逃げ出してきて鬼にもでくわすなんてツイてないな……。

少女「あのおにぎり…すごく美味しかったなぁ…」

鬼がおにぎりをくれるなんて……なんか変な鬼だったなぁ…。

山賊「おい!!いたぞ!!」

山賊2「捕まえろぉ!!!」

少女「ひぃッ!!」

そんな……せっかくここまで逃げてきたのに…

山賊「へへっ!このクソ餓鬼が!!俺たちから逃げ出そうなんざ百万年はやいんだよぉ!!」

少女「いやぁッ!離して!!!」

山賊「お前は容姿だけはいいからなぁ…へへっ!人買いに売れば相当な金になるはずだ!」

山賊2「足を縛れ!」

少女「ううッ…」

なんで私だけ……こんな目に……

山賊「売る前に少しだけ味見するってのも悪くねぇよなぁ??お?」

少女「だれか……助けて…」

山賊2「身寄りのない孤児なんてだれが助けるってんだ!!」

少女「………ッ」

おとさん…おかさん……生きるのって辛すぎるよ…こんなことになるんだったら…あの時一緒に鬼に殺されておけばよかった……。

山賊「さぁひっぺがせ!!」

鬼「………おい」


山賊「…あ?…なんださっきのお侍さんか!一体こんなところで何を…??」

少女「ッ!!」

鬼!!一体なんでこんなところにッ!!?

鬼「その少女…俺がもらいうけたい。」

山賊「……はぁ??」

鬼「素直に渡せば痛い目をみなくてすむぞ。」

山賊2「いくらお侍さんでも……そればかりはどうしょうもないですぜ?」

山賊「この餓鬼は俺たちが先にさらったんだ。俺たちの物なんだよ…??そうだろ?」

鬼「物…?」

鬼「極悪人間が………生き物を物扱いしてはいけないと親から習わなかったのか??」

少女「……」

この鬼……なにかが違う…。

山賊「人様が下手にでれば調子に乗りやがって……!!侍ごときが調子に乗るなよ?」

鬼「俺は侍なんかじゃない……」

頭巾と面をとる

山賊2「……ッ!!?」


鬼「……俺は鬼だ」

山賊「鬼ぃ!!?」

山賊2「それも…赤鬼や青鬼なんかじゃねぇ……ッッ…!! 殺人特化の黒鬼だッッ!!」

鬼「殺人とは失礼な……鬼であろうと……生き物をむやみには殺さない。悪鬼と罵られようとも、正義のない殺しはしない…!!」

少女「……」

山賊「へへっ…だが……鬼の角は高く売れる…!! 黒鬼なら尚更だ!!殺してやるッッ!!」

山賊2「どけ邪魔だッ!」

少女「きゃっ!」

山賊「2人で同時に斬りかかるぞ!!お前は裏に回れ!!」

山賊2「おう!!」

山賊は刀を抜いた。

鬼「汚ねぇ刃だ……血が染み付いてやがる」

山賊「うるせぇ!!お前もこの刀のサビになるんだよッッ!!!!」

山賊2「死ねぇぇえええエッッ!!!!」


鬼「…遅いッ!」


抜刀の構えから一閃。山賊たちの腹部から鈍い音が聞こえる

山賊「う……くぁ」

山賊2「……ぁ」

鬼「安心しろ……俺の鉄刀に刃はない……」

鉄のなまくら刀…親父の形見だ…。

鬼「…まぁ当分は起きられないだろうが」

山賊は音も立てずに静かに横たわっている。

少女「………な…なんで…」

鬼「………」

刀を鞘におさめる

少女「なんで私を……助けたの…?」

鬼「…困ってる鬼や人がいれば助ける。それは当然の事だろう」

少女「でも…私は……あなたが鬼だというだけで……」

鬼「きにするな。」

少女の目から大粒の涙がこぼれる。


少女「…うっ……ひぐっ……助けてくれて……ありがとう……。」



鬼「おう……鬼として当然のことをしたまでだ」

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鬼「……なぜついてくる」

少女「私は命を救われた身……この命…黒鬼様に捧げます…!」

鬼「ちょ……黒鬼とかやめて…鬼ってばれたら面倒だろ…」

少女「では黒様!荷物をお持ちします!!」

鬼「あ…ありがとう……この軽いやつでいいよ」

鬼「もうじき城下町だ」

少女「黒様はなぜ城下町を目指しておられるのですか…?」

鬼「あぁ……その…桃太郎の情報をね」

少女「桃太郎ですか…!?あの桃太郎なら私も少しは知っていますよ」

鬼「本当か!!?」

少女「……でもなぜ桃太郎を?」

鬼「……俺の親父は…桃太郎に殺されたんだ」

少女「…!?」

鬼「俺は君と同じだ……親を殺されたから桃太郎を憎む。奴は俺の親父を無表情で斬り刻んだ……」

少女「私も……親を殺された鬼は嫌いです…」

鬼「……」

少女「でも…!あなたは嫌いじゃない!!……鬼だから憎しみ嫌う…私は間違っていました……。」

鬼「………ありがとう」

鬼「俺はこの目で確かめる。」

少女「……」

鬼「鬼もすべてが良い鬼とは限らない…むしろ悪い鬼の方が多いくらいだ……。」


鬼「だから被害を受けた俺が正義なんてそんな安っぽいことは言わない。桃太郎は善なのか……それとも悪なのか…確かめたいんだ」

少女「……桃太郎を殺すんですか……?」

鬼「……場合によってはそうなるかもしれない…人間にとっては英雄かもしれないが…戦わない鬼からしたら極悪非道の悪魔だ」

少女「……私はどんなことがあろうと…あなたについていきます…。」

少し寂しそうな顔をしながら少女は俺の袖をつかんだ。

鬼「…荷物持ちは大変だぞ」

少女「こんなに軽い荷物でいいのならいくらでも持ちます」

人の声が聞こえてくる。もう城下町はすぐそこだ。

鬼「桃太郎の話……あんみつでも食べながらゆっくり聞かせてくれ。」

少女「あんみつですか!!?わかりました!」


少女は俺の袖を強く引っ張った。

このおなごが後のあんみつ姫になるのか(適当)
つか般若の面の男に話しかけるとかこのおなごもチャレンジャーだな


>鬼「おう……鬼として当然のことをしたまでだ」?

鬼ってなんだろう(哲学)

IDがころころ変わるスマホ勢なので酉をつけることにします。>>1です。

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少女「おいしい!」

鬼「……俺の分も食べていいぞ」

少女「本当ですか…!!?ありがとうございます!」

あんみつを美味しそうに食べる少女。お金も少なくなってきたし、仕事でも探さないと旅を続けられなくなるな…。

鬼「その…桃太郎について教えてくれるとありがたいんだが」

少女「そ…そうでしたね!」

少女はぺろりとあんみつを平らげると、俺の隣に座った

少女「桃太郎……簡単に説明すると、何でも屋ですね。」

鬼「何でも屋…?」

少女「はい、鬼退治もその一環だと聞いています。桃太郎はお金さえ払えばどんな依頼も完璧にこなすことか……。」

鬼「……」

金で動く何でも屋か…

少女「その圧倒的強さ故に、神格化する人まで現れ、桃太郎教なんてものもあるそうですよ。」

鬼「桃太郎教って語呂悪いな」

少女「桃太郎はとにかくデタラメな強さらしいです……。鬼を何十匹も相手にして1つの擦り傷もつけず無傷で生還した……もはや伝説ですね」

鬼「………それは俺も知っている、親父が手も足もでなかったからな。」

少女「あ…ごめんなさい……」

鬼「気にすんな。だが奴も人間、殴られれば痛いはずだ。決して死なない生き物なんていない。」

少女「……本当に戦うですか?」

鬼「……あぁ……殺すかどうかは別として、一太刀あびせないと気が済まない。この親父の刀で……」

少女「………」

鬼「さて、もうじき夜になる。桃太郎の居場所はまた明日聞き込みするとしよう」

少女「明日は私も手伝います!」

鬼「頼むよ…人と話すのは苦手だ。」

少女「任せてください!!」

日が西に傾く…空はいつのまにか朱色に染まっていた

鬼「宿はとってある、行くぞ。」

少女「はい!」

手をつないで宿屋に向かった

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宿屋


宿主「ようこそお越しくださいましたお侍様。汚い宿屋ですがどうぞゆっくりしていってください」

鬼「……失礼する」

宿主「お部屋はこちらでございます」

少女「黒様!お風呂一緒に入りましょう!」

鬼「……少女は女湯だろ」

少女「私は今年で15になりますが、見た目的には10の子と変わらないはずです!問題ありません!!」

鬼「15……俺と2つしか違わないじゃないか…」

宿主「今日の宿はあなた様御一行のみになりますので問題ないかと……」

鬼「……」

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風呂場


鬼「……はぁ」

少女「黒様ー!!お風呂気持ちいいですよー!」

鬼「…相手は子供相手は子供相手は子供。」

湿った木の扉を開ける。中はほんのり薄暗い。

少女「お背中お流ししますよ?」

鬼「ちょ…ま……前を隠せ…!!」

隠れ巨乳だと…!?

少女「隠せと言われても隠すものが……」

鬼「…うっ……まぁいい…背中を頼む…。」

相手は子供なんだ…いちいち緊張する必要がどこにある…そして俺は鬼だ。人間の女子に興奮するわけがない…たぶん。

少女「では失礼します…。」

少女「背中……キズだらけですね…」

鬼「あぁ…天狗に修行をつけてもらった時にできたキズだ…」

少女「天狗!!?……ただのおとぎ話だと思っていました……」

少女が背中を優しく擦る。誰かに背中を洗ってもらうなんて何年振りだろうか…。

少女「………」

鬼「…角が気になるか…?」

少女「い…いえ!そんなことは!!」

鬼「……?」

少女「………」

鬼「……」

少女「……」

鬼「……」

少女「……」

鬼「……」

な…なんだこの無言の圧力は…なにか喋らなければ!!

鬼「その……こんどは俺が洗うよ。手ぬぐいかして」

少女「あ…はい……ありがとうございます」

鬼「……」

目を奪われるほどの綺麗な背中…人間の女子はこんなにも折れそうな腰をしているのか…。

鬼「さ……触るぞ?」

少女「……どうぞ」

手ぬぐいを少女の背中に這わせる。少しでも強くすると折れてしまいそうだ。

少女「…ん……ぁ…」

鬼「……」

少女「……ぅ」

気にしない気にしない。相手は子供だ。相手は子供だ。

鬼「こんなあれでいいだろう!!綺麗になったぞ!よかったな!!」

少女「……もう終わりですか?」

鬼「…うっ……あれだ!綺麗になったぞ!」

少女「…意気地なし」

少女がなにか呟いたがよく聞こえなかった。俺はすぐさま湯船に浸かる。

湯船に浸かりながら空を見上げると、綺麗な満月が浮いていた。

鬼「……」

少女「今日は…その……」

鬼「…?」

少女「…本当に助けてくれてありがとうございました……私はあんなに酷い事を言ったのに…。」

少女はすこしだけ涙を浮かべながら絞り出すように言った。

鬼「気にするな……困った人は助ける。それが人間にとってあたりまえの事のように、鬼としてもあたりまえの事なんだ。」

少女「……こんなに優しい鬼がいるならもっと早くに出会いたかった…」

笑顔で少女は答える。

鬼「俺はもうあがる…ゆっくり浸かってていいぞ」

少女「…はい。」

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部屋


鬼「いろいろあぶなかった…」

…優しい鬼か……。


俺は優しい鬼なんかじゃない…憎しみの為に人を傷つけようとしているんだからな。


鬼「桃太郎、生きる伝説か。」

伝説だろうがなんだろうが俺の親を殺したことには変わりない。

鬼「………」

無表情で…まるで作業でもするかのように俺の家族を斬り刻んだ。俺はどうしても奴が許せない。憎しみの連鎖だとか…恨むのは筋違いだと言われるかもしれない


だけど


許せない。


鬼「絶対に許さん………この鉄刀で一太刀あびせるまではこの怒りはおさまらんぞ……ッ」

鉄刀を握りしめて目を血走らせる。

トタトタとはしる音が聞こえる。少女が風呂からあがったのだろう。急いで鉄刀を手放す

少女「黒様!!」

鬼「…どうした?」

少女「こ…こここの着物は!!?」

少女は藍色の着物を着ている。今日の昼に、宿をとるついでに買ったものだ。

鬼「いつまでもボロボロの着物じゃ嫌だろ?荷物持ちのお代だと思ってくれればいい」

少女「あんな軽い荷物を持つだけでこんな……本当にありがとうございます!!」

鬼「…おう」

そこまで喜んでもらえるとは……素直に嬉しい。

鬼「じゃあ俺はそろそろ寝る…少女も早めに寝るんだぞ。明日は早いからな」

少女「はーい!」

鼻歌を歌いながら鏡の前でうろうろしている。着物を気に入ってくれて何よりだ…


少女「おやすみなさい…黒様…」

鬼「あぁ………おやすみ。」


少女の鼻歌がだんだん遠のいていき……俺は眠りについた……。

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眩しい………

鬼「………朝か」

宿屋で目をさます。枕の上に置いてある頭巾と面を取ろうとしたが、うまく手が布団から抜けない。

鬼「………おい」

少女「……すやすや」

鬼「すやすやじゃねぇよ」

少女が布団の中に潜り混んでいた。柔らかい2つの双丘があたっているような気がするが普通に気の所為だろう。

少女「朝ごはんの準備ができたそうです。起こしに来たんですけどなかなか黒様が起きないので、つい。」

なぜか怒った雰囲気を醸し出しながら淡白に話す少女。

鬼「……わかった食べに行こう」

朝の億劫な気分を振り払い食堂へ向かう。

食堂につくと、おいしそうな豆腐やら魚やらが並んでいた。面を外す。

鬼「いただきます」

少女「いただきます!」

白身魚を一口食べると、爽やかな塩気が口に広がる。

少女「お……おいしい!!」

宿主「ありがとうございます」

鬼「……宿主…少し聞きたいことが」

宿主「はい?何かお困りでも??」

鬼「………桃太郎をご存知ですか?」

宿主に聞く。旅人が往来するこの宿屋なら情報も集まりやすいだろう。

宿主「そりゃあ桃太郎は知っていますよ。なにせ生きる伝説ですからね」

鬼「……その桃太郎に是非会いたいのですが……恥ずかしながら居場所にまったく検討もつかず、なにか有益な情報を知りませんか?」

少女「この豆腐おいしい」

宿主「……そういえば、先日訪れたお客様が桃太郎の武勇伝を語っていましたなぁ……」

鬼「その話詳しく聞きたい……」

宿主「えぇいいですとも。たしか吉備の将軍が街を荒らす山賊やらの退治を桃太郎に依頼したとかなんとか……山賊も数が多いらしいので2ヶ月は吉備に滞在するそうですよ。」

鬼「それは本当か!?」

宿主「え……えぇ…身なりも綺麗な方がおっしゃってたので信憑性は高いかと…」

吉備か…歩いて10日というところ…2ヶ月も滞在するなら確実に間に合うはずだ

鬼「ありがとう宿主……少女、そろそろ出発するぞ」

少女「ふぁい…しょっとらってくらさい」

口一杯にほうばる少女を見ると、木の上に登るネズミを思い出す

宿主「またお越しください」


宿屋を後にした。

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少女「黒様、これから何処へ向かうんですか?」

鬼「吉備へ向かう、10日も歩けばつくだろう。」

少女「……10日ですか」

鬼「だが……もう宿をとるお金がないので仕事を探すことにする」

少女「そ…そういうことなら私に任さてください!仕事探しは得意なので!」

鬼「…頼んだ」

少女に任せるとまた山賊やらなんやらに絡まれそうなのでこっそりついていこう

鬼「……」

物陰に隠れながら少女を伺う、端から見ればただの変態だな……。


少女「あの…すいません!」

瓦版売「お?どしたじょうちゃん?瓦版なら安くしとくよ!!」

少女「いえ……その…何か仕事の話は…ありませんか?」

瓦版売「じょうちゃんの歳で仕事探しかい?世の中も不景気になったねぇ…」

少女「15です…私」

瓦版売「まぁまぁサバを読まなくても仕事なら紹介してやんよ! 」

少女「……さば?」

瓦版売「こっからまっすぐいったところに仲介屋がある、そこにいきゃあじょうちゃんに合う仕事みつかるんじゃねぇか??」

少女「ちゅ…仲介屋ですね!わかりました!ありがとうございます!」

瓦版売「いいってことよ!気にすんな!」

鬼「……」

少女は世渡りが上手そうだ。15であの容姿なら大人になった頃にはとんでもないべっぴんになるだろう…。


少女「黒様!この先の仲介屋というところに行けば仕事が貰えるそうです!!」

鬼「仲介屋か……とりあえず行ってみよう」

少女「はい!」

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仲介屋


仲介と白くあしらわれたのれんをくぐる


鬼「失礼する……」

仲介人「……お侍さんですかい?」

鬼「…私はただの流浪人だ。仕事を貰い受けたい。」

少女「…」

仲介人の目つきが怖いのか、少女は俺の後ろで縮こまっている。

仲介人「その上物の刀……剣の腕に自信がおありで?」

鬼「…多少は」

仲介人「なら……妖怪退治なんてどうですか?」

鬼「妖怪退治?」

仲介人「ええ…この先の村から言伝が届いてましてね。なんでも村の水源を枯らしたり牛を殺したりする妖怪がでるそうで……」

鬼「……」

仲介人「村からの依頼は妖怪退治。それなりに報酬もあります?どうしますか??」

鬼「その依頼……引き受けよう」

妖怪なら得意分野だ。殺さずとも少し灸をすえて説得すればいい。

仲介人「ではこの札を……北の村の村長に渡せば仕事人だと証明できます。」

鬼「ありがとう。」

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仲介屋を後にして北の村へと向かう。この城下町からはあまり遠くないのですぐにつくだろう。

少女「妖怪……どんな妖怪なんでしょうね……」

鬼「……怖いか?」

少女「怖くなんてありません!黒様が妖怪になんて負けるはずがありません!」

鬼「……麒麟とかになら負けるぞ」

少女「それは神様です!」

鬼「…麒麟は強かった。」

少女「戦ったことあるんですか……?」

鬼「天狗と修行してた時に、池の鯉を丸焼きにして食ったんだ。そしたらすごく叱られた。」

少女「麒麟って本当に実在するんですね…こう……雷とか出すんですか?ビリリって」

鬼「だすぞ。すごく痺れる。」

少女「麒麟の雷に打たれて生きてるって普通にすごいですね」

不定期更新ですいません。1日書き溜めて7時くらいにまとめて更新しようと思います。

てすと

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少女「だいぶ歩きましたね……」

鬼「そろそろつく、歩けそうか?」

少女「頑張ります!」

二、三里と歩き、あたりの景色も少し変わってきた。木々が少なく山肌はゴツゴツしている。

少女「この辺りは金でも採れるんでしょうか……あちこち掘り返されてますね」

鬼「人間も罪なことをする……こんなことをすればここを住処にしている妖怪が黙っているはずがない。」

少女「………」

遠くに建物が見える、どうやら村に着いたようだ。

鬼「村長の話を聞いてくる。少女もついてくるか?」

少女「はい、お伴します。」

適当にあたりを見回して、1番大きな建物に目を付ける。おそらく村長の家だろう。農作業をしている若者に声をかける。

鬼「すまんが、村長に合わせてはくれんか?」

村人「……あんた誰じゃ?」

鬼「私は流浪人。この度は妖怪退治を請け負い、村長に詳しい話を聞きたい。」

村人「………」

村人は俺の腰につけているものを見て、納得したように頷いた。

村人「わかった、村長連れてくるけん待っといてください。」

鬼「……」

そういうと村人は、せかせかと扉を開け村長の家へと入っていった。

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村長「この度は、私どもの依頼を受けていただきまことにありがとうございます。」

肥え太った外見……よほど儲かるのだろう。

鬼「…前置きはいい……この村の現状、そして妖怪の詳細について聞きたい。」

村長「…わかりました。おい村人C、妖怪について話してくれ」

村人C「……わかりました。」

げっそりとした顔の男は、その真夜中のことについて話だした。

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1ヶ月前 真夜中 川の淵にて


村人B「うへぇ……せっかく作った水門が壊れとるがな」

村人C「裏庭にまだ材木があったはずじゃ」

「……きゅる」

村人B「……なんの鳴き声?」

村人C「?」

「きゅるる」

村人B「気味悪いな……明日、水門を直そう……。」

村人C「おう…そうだな」


「きゅるる…るるるるるるる」

村人B「っがあッッ!!?!?」

村人C「ッ!? おい!! 村人B!! どこいくんじゃ!!」

村人B「何かにッッ! 足をッ!!?」

村人C「……ひ…ひぃいぃい!!」

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村人C「わ…私は……村人Bを…見捨てて逃げました……。」


鬼「……」

村長「村人Cの話を聞き、若い衆に調べさせに行くと、そこには村人Cの無残な死体がありました。」

鬼「死体?」

村長「ええ……肛門から内臓を引きずり出されている無残な死体でした。」

鬼「……」

鬼「………ここの山はひどく荒れている…ここまで荒らせば妖怪も黙っていない。」

村長「……」

鬼「山を元に戻さねば被害者は増え続ける。妖怪を祀る社を作り、そして山を荒らすのをやめれば、妖怪は何もしてこないだろう。」

村長「……は?」

鬼「……」

村長「こんなに金が掘れる山!見過ごすというのですか!?そんな馬鹿な事をするなら死を選びますよ!」

鬼「……そんなに金が大切か…ッ…人間ッ……!」

少女「黒様…落ち着き下さい…」

鬼「ッ……あぁ…すまない」

少女の一声により正気を取り戻す、危うく鉄刀で斬りつけるところだった……。

村長「あなたも金で雇われている身、人の事をどうこう言える立場ではないでしょう?」

鬼「…ッ」

村長「金が掘れる場所にいる妖怪が悪い。人間様に害をなす妖怪を退治する……なにが間違っているんですか?」

鬼「………」

村長「……あなたにも相応のお金は用意しますよ?」

鬼「……」

臭い息が顔にかかる……頭に血が上っていくのがわかる。

鬼「……」

村長「あなたは妖怪を殺すだけでいい…その他のことなど考えなくていいのです。あなたもお金が欲しいのでしょう?」

鬼「……」

村長「そこの少女も……安物の着物ですねぇ…藍染よりもっと高級な着物を着せてあげることもできるんですよ?」

少女「ッ…!! この着物を馬鹿にしないでください!!」

村長「ッ……小娘ごときが大人の話にちゃちゃを入れるな」

少女「私は15です!!子供ではありません!」



鬼「もういい……わかった。」

村長「へへ……あなたも賢いお方だ…妖怪を殺してさえくれればお金は払います。」

鬼「それ以上……ッ」


鉄刀を手に取る




鬼「……喋るな…ッ!!」


村長「…っぐふ!!!??」

鉄刀の柄で肥え太った腹を一閃する。

村人C「お…お前!!なにを!!?!?」

鬼「貴様ら人間の手前勝手な都合で山を荒らし生き物を殺す……すべて妖怪が悪い…??」

村人C「ッ……」

村長「……ぅ」


鬼「ふざけるのも大概にしろ……ッ!!」


村長「お…私に手を出すなど……金を欲する将軍に刃向かうことと同義だ……5日と生きられると思うなよ…!!」

鬼「黙れ外道、それ以上をその汚い口を開くなら命の保証はせんぞ。」

村長「ぅッ………」


鬼「人間も妖怪も等しく同じ命、それを蔑ろにするような人間の依頼は死んでも受けん。帰るぞ少女」

少女「はい!黒様!!」


村長「こ……このままで済むと思うなよ…」

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少女「まったく!頭にきますねあの村長!」

鬼「……」

少女「この着物を馬鹿にするなんて信じられません!!」

鬼「………はぁ」

少女「どうしたんですか、黒様?」

鬼「……やはり暴力を振るったのはよくない…口で説得する前に刀が出てしまった……」

少女「黒様って度を超えたお人好しですね…」

すんませんゆっくり書いていきます

鬼「村長にああ言った手前すごく言いづらいんだが……。」

少女「…?」

鬼「俺たち妖怪」

>>136
失敗

鬼「村長にああ言った手前すごく言いづらいんだが……。」

少女「…?」

鬼「俺たち妖怪が人間を傷つけたのはまぎれもない事実。村長がどんなに嫌な人間だとしても、この村にはたくさんの人間が暮らしている。」

少女「黒様…」

鬼「だから簡単に見殺しにはできない……報酬は貰えないと思うが、妖怪を説得しに行く。」

少女「…わたしはどこまでもついて行きますよ!!」

少女は袖先をぎゅっと引っ張った。

鬼「…ありがとう」

妖怪も人間も等しく同じ命……身を削ることにより多くの命が守られるのならそれが正しい事かつ嬉しいことでもある。偽善者妖怪のやるべき仕事だ。

鬼「たしか…川のあたりにでる妖怪らしいな」

少女「人間を簡単に殺せる妖怪……そうとう強いんじゃ…」

鬼「話を聞く限りではかなり強いだろうな、殺されるかもしれん。」

少女「そ…そんな!やっぱやめておいたほうが!」

鬼「鬼をも簡単に殺せる妖怪を野放しにしておくわけにはいかない。………怖いなら宿で待っていてもいいぞ?」

少女「絶対について行きます!そんな危険な場所に黒様を1人で行かせるわけには行きませんよ!」

鬼「……」

鬼「暗くなってきたな……」

少女「……はい」

川の上流を目指して歩いていると、あたりは荒地から鬱蒼とした林にかわっていた。

鬼「ここなら妖怪がでてもおかしくないな」

少女「なんまんだぶ…なんまんだぶ…!」

鬼「それは妖怪には効かんぞ」

少女「っ!?」

少女「ではこの異国から渡ってきた十字架とやで………」

鬼「十字架?」

少女「なんともこの十字架には摩訶不思議な力が宿ると聞きます…きりすとぱわーですね。」

鬼「………」

鬼「その…きりしとぱわーが効くがどうかは知らんが……なんだが神々しいものを感じるな」

少女「きりすとぱわーです!間違えないでください!!」

鬼「……すまん」

さらに林の奥へ進むと、巨大なクスの木が川の道を塞いでいた。樹齢100年は軽く超えているだろう。

少女「……行き止まりですね…アテが違ったんでしょうか?」

鬼「…………何かがおかしい」

少女「…?」

少女「おかしい…??なにがですか?」

鬼「…こんな川のそばに巨大なクスの木が自生するなんておかしいに決まっている。普通に考えれば大量の水で根腐れしてすぐに枯れるはずだ」

少女「ではなぜこんな巨木が……」

鬼「これからそれを確かめる」

少女「…鉄刀!?」

鉄刀を抜く、あたりに鉄がすれる音が響く。

鬼「明らかに妖術の類……幻覚を見せられているやもしれん…。」

少女「そんな!きりすとぱわーがあるはずなのに!!」

鬼「……ともかく…幻覚ならば刀で斬りつければ四散するはず…」

少女「…きりすと……。」



鬼「……ふッ!!」

鉄刀で巨木を斬りつける

少女「…え?巨木が霧に……??」

切れ切れになった巨木が霧になり四散する。


鬼「やはり妖術だったか……」

鬼「妖術を使える妖術などごく僅かだ……これは手強い相手やもしれん…」

少女「巨木が霧に……妖術なんて初めて見ました。」

巨木がなくなった後には狭そうな洞窟が開いていた、どうやら地下へと続いているようだ。

鬼「進むぞ、この先に件の妖怪がいるはずだ。」

少女「……はい」

>>148
誤字すいません

鬼「妖術を使える妖怪などごく僅かだ…」

です。

トリあってますかね?

すんません。更新します。

ーーーーーーーーーーーーーーー

暗くて狭い洞窟を進む


少女「じめじめしてますね……」

鬼「岩が苔で滑るから気をつけて歩くんだぞ」

少女「はーい」

少女は砂利道を丁寧に歩いている。藁であまれた草履がとても冷たそうだ……。

鬼「……足は大丈夫か?」

少女「足ですか……??」

細い足に小さなすり傷がいくつもついている。指が赤くなってとても冷たそうだ。

鬼「……ちょっとこっちへ来い」

少女「?」

小首をかしげて少女が寄ってくる、本当に17とは思えない顔立ちだ。

鬼「……これでだいぶマシにはなるだろう」

少女「おぉ!すごくあったかいです!ありがとうございます!!」

着物の切れ端を少女の足に巻いてやる。簡易的ではあるが、多少は暖かくなるはずだ。

少女「……この先にいる妖怪も…黒様のような優しい妖怪だといいですね!!」

鬼「優しい…か……。」

俺は優しくなんかない。

復讐に溺れる悪鬼だ。親を殺した桃太郎に復讐する為に旅をしている、まぎれもない悪鬼だ。

……桃太郎にも、俺の親父と同じように息子がいるかも知れない。そんなことは理解している。

復讐の連鎖だろうがなんだろうが……もう止められないんだ……。


鬼「俺は惨めで弱い鬼だ…優しくなんてない…。」

少女「冷たい足をあったかくしてくれる妖怪はきっと優しいですよ。」

鬼「……なんだか変な妖怪だな」

得意げに話す少女をみるととても安らぐ。なんというか……妹ができたらたぶんこんな感じなんだろうな……。

少女「む?なんだか今失礼な事を言われたような気がします…!」

鬼「気のせいだと思うぞ」

少女「…??」


いつか本当の家族になれたら…どんなに幸せだろう……。

少女「あれ?行き止まりですね…?」

目の前にある小さな沼が道を塞いでいる。

鬼「少女……下がっていろ」

少女「っ!」

鬼「とんでもない妖気だ……怨念にまみれている。」

沼は赤黒いような妖気を発していた。人間が少しでもあびればたちまちに祟られてしまうだろう。

鬼「……」

無言で鉄刀に手をかける

「……誰じゃおめぇ?」

少女「ひぃっ!!」

鬼「少女ッ!!下がっていろッ!!!!」


赤黒い沼がぶくぶくと泡だつ。


「鬼…か……まぁええわ………」


沼から小さな皿と、ギョロギョロした目が覗いた。


河童「おめぇもオラを殺しにきたんだろう…」

鬼「……くッ」

なんて妖気だ……しかも河童だなんて運が悪すぎる。


河童「さぁ…はやく殺しにこいよ??オラもお前をころしてやるからよぉ…」

歯の間になにかの肉がはさがっているのが見える……。おそらく人間の肉だろう。

鬼「あ…争うつもりはない……俺はお前を説得しにきたんだ。」

できることなら戦いたくはない。それほどまでにこいつは強い。

河童「せっとく…?」

鬼「お前の怒りは十分にわかる……だが……罪のない人間を殺すのはやめろ…」

河童「……」

鬼「あの村には…たしかにここの川や森を荒らした人間は多くいる……だけど、罪もない女子供まで殺すことはないだろう。」

河童「おめぇ……」

鬼「……」


河童「さては阿呆だな??」

河童「命の価値ってのはなぁ…みーんなおんなじなんだ。」

鬼「……」

河童「虫や魚や人間や妖怪……みんなおんなじ命。おんなじ価値なんだぜ??」

鬼「あぁ……お前の言う通りだ…」


河童「オラは仲間を83も殺された。」

鬼「…」



河童「だから人間85匹をおなじようにして殺す。命の価値はみーんな同じ。だからおんなじ数だけ殺すんだよ。」

鬼「怨霊に成り下がるつもりか?」

河童「オラは正しい。間違っているのはこの世界と人間だ。」

>>178
誤字失礼

鬼「お前の言っていることは確かに正しい……人間は自分たちの命は他の種族よりも尊い物だと勘違いしている。」

河童「……」

鬼「アリをふみにじり、食べ物を粗末に扱う。祟られてもしょうがない事を人間はしている。」

河童「なら…そこをどけよ…オラはお前を殺したくはねぇ。お前には怨みもなにもねぇからな…」


鬼「…だが……むやみに人を殺すお前を俺は見逃すわけにはいかん!自分勝手なワガママだとはわかっている!だがお前にはもう人間を殺しては欲しくない!!」

河童「……」


鬼「このワガママを通す為!俺はこの鉄刀に…憎しみや怨念を捨てる事を誓う…ッ!」

鬼「俺は親を桃太郎に殺された……俺自身が復讐しようとしているのに、復讐に呪われている貴様を斬ることはできない……」

少女「…黒様……」

鬼「だから……貴様の怨念を断ち切る為!自らの怨念をも断ち切る!!俺はこの鉄刀に!!」


鬼「殺さずの誓いをたてるッ!!」


河童「…じゃまをすんなら殺すまでよ」


鬼「その怨念…この切れない刀で断ち切ってやる。」




河童「いくら天下の大妖怪、黒鬼といえど……ここはオラの洞窟だ…」

鬼「……」

河童「オラの邪魔をするヤツはみんな死んじまえばいいんだッッ!!」

鬼「くッ!!」

河童が突進してくる。凄まじい衝撃が腹を突き抜けて息が止まる。

鬼「っ……ぁ…」

少女「黒様っ!!」

河童「オラは相撲じゃ負けた事ない。そんな鉄のなまくらでふせぎきれるわけなかろ?」

鬼「……これごときで調子にのるなよ」

刀を鞘から抜く

河童「刀を抜いたところでなにも変わらん。押しつぶしてやるッッ!!」

河童が同じように突進してきた。

鬼「そんな直線的な攻撃…2度も当たるか!」

河童「ここは洞窟だぜ?」

鬼「ッ!!?」

背中が洞窟の壁に当たる。

河童「ここはオラの土俵だ!避けるこたぁできねぇッ!!!」

鬼「ッぐふっっ!!!」

みぞおちに河童の肩がめりこむ、肋骨がパキッと鳴った。

鬼「ぁ……」

鼻と口から血が垂れる。なるほど……この狭い洞窟は相撲の土俵と同じ…かわすなんてできない……正面からあたるしかないんだ。

鬼「っ!……はぁ…はぁ…」

河童「ほう?まだ意識があるんか??」

まずい……このままじゃ圧し殺される!!どうにか突破口を開かないと確実に殺される!!

鬼「くッ!!」

柄で河童の頭を狙う、苦し紛れの攻撃だ。

河童「ッ!!?!?あぶねぇ!!!」

鬼「……?」

河童「あぶねぇ……」

かわしたと言うより……怯えている?

鬼「……頭の皿をかばったのか?」

河童「次で最後にしてやる!!」

鬼「……」

こいつの弱点は頭の皿だ…!!頭の皿を狙えば勝機はある!!

だけど……

鬼「もう……身体が動かない…」

河童「オラの攻撃を2回も耐えたのはお前がはじめてよ……肋骨も内臓ももうボロボロだろ?楽にしてやる…」

少女「や…やめてくださいっ!!」

少女「これ以上……黒様に何かするようであれば…!私が許しません!!」

河童「あ?」

少女「ひぃ…!」

河童「心配せんでもお前はあとでゆっくり飲み込んでやる。美味そうな足しやがって……へへ」

鬼「少女!!逃げろ!!!」

俺は死んでもいい……だけどこいつだけは!

少女「逃げるなんて嫌です!!絶対に逃げません!!」

河童「……」

河童「気にくわんのぉ…」

鬼「……ッ」

河童「鬼……そんなにこの娘が大事か??」

鬼「少女には手を出すな、お前を退治しようとしているのはこの俺だ」

河童「へへ…へへへへへ!!!もしオラがこの娘を殺せば!お前はオラを殺したくなるだろう!??」

少女「…っ!」

鬼「……やめろ」

河童「怨みや憎しみを断ち切る?……そんななまくらじゃあなんにも切れないことを教えてやる!」

鬼「ッ!!」

河童「……なぜその身体で動ける…!?」

鬼「…か……」

肋骨がきしむ。死ぬほど痛い。

鬼「…もう……家族を失うのは嫌だッ!!」

妹「…く…黒様!!」

脇腹の痛みも、鼻から垂れる血も、全て無視して河童に打突する。

河童「くッ!!皿を狙っているのは分かるぞ!!」

とっさに河童は皿を両腕で守る



鬼「さぁ……腹がガラ空きだ」

河童「ッ!?皿を狙っていないだと!!!?」


鬼「殺さずの十連撃ッ!!これでお前の怨念を断ち切る!!」


起の一太刀が河童の脇腹を捉える

河童「うぐぅぅっ…!」

鬼「ニ・三・四・六ッッ!!!!」

承の四撃が左肋骨を破る。鈍い音が洞窟に響く。

河童「ッく!!やられっぱなしじゃねぇぞぉ!!」

鬼「七・八・九ッッ!!!!」

河童「あがぁァアッ!!!」

河童の右拳が、転の三撃で粉砕される。

河童「オラ…の拳がぁ…ッ!!」


鬼「これで終いッ!」

刀を鞘に収め、抜刀術の体制をとる。

河童「こッ…ころせぇええぇええええ!!!!!」


鬼「殺さずの十連撃ッ!最後の一太刀ッッ!!」


鉄刀の黒い一線が河童の両膝を砕き割る。


河童「……かはッ…!」


鬼「一桁数え唄……獅子舞斬り…ッ!」



河童「………っ……ぁ……な…なぜころさない…」


鬼「お前の腕と両膝は当分の間、使い物にならない………よって…もう人を殺すこともできないはずだ。」

河童「……こ…殺せぇっ……!」

鬼「お前は可哀想な妖怪だ……仲間を殺されて…辛かったろう…さぞ人間が憎かっただろう……。」

河童「…………」

鬼「だが……その哀しみを、罪もない人間の子に味あわせる権利などお前にはない…」

河童「……ぅぁ……お…オラはまちがぇ……ぁ…」

鬼「その腕が治るまで……ゆっくり考えろ。何が正しいのか、その怪力は何の為に使うべきなのかをな」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


泣き崩れる河童を後にし、洞窟を抜けた。


少女「黒様……大丈夫ですか?」

鬼「……あぁ…2、3日もすれば治る…」

少女「あ!あそこに山小屋があります!ひとまずそこで休みましょう…!」

IDころころ変わりまくってます……。スマホ勢の性ですね。こんなつまらんSSに支援ありがとうございます。完結まで頑張ります

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

山小屋


少女「大丈夫ですか…?」

鬼「あぁ、1日もすれば治る……はず」

山小屋の窓からは、丸い大きな満月が見える。いつのまにか夜になっていたのか……。

少女「……とりあえず、川で水を汲んできますね!」

鬼「すまん…」

鬼「…………」

小屋にあったボロの桶を持って、少女は川へ水を汲みにいった。

鬼「…………ッ」

河童にやられた傷が疼く

奴は人間を呪っていた、あのまま放っておけば確実に強大な怨霊へと変化していただろう…。

怨みを断ち切らなければ怨霊へ変化し、ただただ人を殺すだけの恨みつらみの塊になる……殺さずの誓いをたてなければ俺だって例外ではなかった。

鬼「……俺は本当に…桃太郎への怨みを断ち切れたのだろうか…」


確証はない。今はまだなんともないが、桃太郎を目の前にした途端に、しまっていた感情が暴れだすかもしれない。

鬼「親父がこの切れない刀で、桃太郎と戦った意味……か…。」

殺すための刀ではなく

たぶんこの刀は…………


鬼「……守る為の刀」


親父が俺に残してくれたこの刀を、復讐に使うなんてきっと間違っている。この刀は少女や、罪のない人間や妖怪を守るためにあるんだ。

鬼「………」

俺の桃太郎への醜い強い怨みも、この刀がいつかは完全に断ち切ってくれるだろう。

…………


だったらもう……旅をする必要も…

少女「ただいま戻りました!!」

鬼「……早かったな」

少女「黒様の為!雷よりも早くかけてきましたからね!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


少女「腕…あげてください」

鬼「……っ」

身体に包帯を巻いてもらう。天狗との授業で、青アザをつくっていたのがすごく懐かしい。

少女「これで安静にしていれば治るんですよね……?」

鬼「あぁ、骨折くらいなら1日あれば充分だ。」

少女「鬼ってやっぱり凄いんですね…」

少女「その……黒様…。」

鬼「…?」

少女「なんというかその……とても言いにくいんですけど……洞窟から帰る途中にこんなものが落ちていましてですね…。」



鬼「……金の延べ棒じゃねぇか…。」

少女の手は、金の延べ棒を握っていた……3本も。

少女「……たぶん河童を討伐しようとした村人の持ち物かと…。」

鬼「き…きき金の延べ棒か……初めて見た…!」

少女「……黒様、歯が噛み合ってませんよ。」

鬼「……」

少女「……」


鬼「………落し物だったら貰っても大丈夫だろう」

少女「ですよね!!」

>>217
誤字

少女「ですよね」じゃなくて
少女「やった!!」にしといてください

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