さやか「まどかー、こっちこっち」
まどか「ワクワクするね」
仁美「そうですね。楽しみです」
ほむら「……」
ほむら(この感覚。全く同じ。何も変わらない)
ほむら(私はまた、ここへ戻ってきたんだ)
仁美「暁美さんの席はこちらですよ?」
ほむら「ありがとう」
杏子「お菓子あるぞ。食うかい?」
さやか「まだ早いってぇ。出発もしてないじゃん」
まどか「マミさんも一緒だったらよかったのになぁ」
杏子「留年でもしないと無理だろ」
まどか「そうなんだけど」
ほむら(私の戦いは既に始まっている……。絶対に諦めないわ)キリッ
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早乙女「みなさん、バスガイドさんのご挨拶があります。注目してください」
まどか「はーい」
マミ「うふ。おはようございます。バスガイドを務めさせていただきます、巴マミです」
さやか「マミさん!?」
杏子「なんだ。就職したのか」
マミ「違います。職業体験でバスガイドを選んだら、こうなってしまったのよ」
仁美「まぁ。そうなのですか」
さやか「ねえねえ、まどか。そういうのって本番もするの?」
まどか「さぁ……」
杏子「マミ、しっかりやれよなー」
マミ「任せておいて。それでは今から2時間かけて目的地に向かうわ。休憩は30分後と1時間後の二回あるけれど、抜かりはないかしら? 途中下車はできないわよ」
仁美「心得ています」
さやか「だいじょーぶでーす」
マミ「もし気分が悪くなったらすぐに言ってね」
ほむら「……」
マミ「では、出発よ!!」
まどか「走り出したよっ」キャッキャッ
杏子「ホントだなぁ」
仁美「お二人とも、窓に張り付くのはお行儀が悪いですよ」
さやか「まどかも杏子も子供だよねー」
まどか「えー、ひどいー」
杏子「それより二時間もあるんだし、お菓子でも食おうぜ」
さやか「早いってば」
杏子「なんだよぉ、退屈だろぉ」
まどか「トランプなんてどうかな?」
仁美「いいですね」
さやか「おー、やろうやろう!」
まどか「ほむらちゃんは?」
ほむら「……遠慮するわ」
まどか「えー? 折角、隣の席なんだし、やろうよー」
杏子「付き合いわりぃぞ」
ほむら「私に構わないで」
仁美「いつもの暁美さんではないようですね……」
さやか「なんかあった?」
ほむら「何もないわ」
杏子「あー、分かった。お前、車酔いするんだろ? だから、あんまり下を向いたりできないんだな」
ほむら「……!」
まどか「え? そうなの?」
ほむら(まずい……!! まどかの隣という幸福を手に入れたのに……!! このままだと……!!)
まどか『マミさーん、ほむらちゃんはバス酔いしやすいみたいなんですけどー』
マミ『そうなの? それはいけないわ。すぐに私の隣へきて。私の隣にいれば、もう何も怖くないっ』
ほむら(それだけは……その未来だけは……認めない……!!)
まどか「ほむらちゃん……?」
ほむら「自慢じゃないけれど、私、乗り物で気分を悪くしたことは、一度たりともないわ」キリッ
杏子「マジで自慢にならねえな」
ほむら「トランプね。いいわ。受けて立ちましょう」
さやか「そんなにムキにならなくても」
仁美「本当に乗り物酔いは大丈夫なのですか?」
ほむら「心配なんて不要よ」
ほむら(エチケット袋も携帯しているもの。それに酔い止めも飲んできた。今度こそ、私は負けない。負けるわけにはいかない)
ほむら(まどかの隣にずっといたいから)
まどか「……?」
杏子「まぁ、いいや。なにからやる?」
さやか「定番はババ抜きだよね。仁美は?」
仁美「私は大富豪が好きですね」
まどか「七並べなんてできないかな?」
杏子「どこにならべるんだよ」
さやか「とりあえず、ババ抜きをやろー」
杏子「最下位はどうするんだ?」
まどか「え? どういうこと?」
杏子「こういうのは罰ゲームがないと盛り上がないだろ」
さやか「えー?」
仁美「面白そうですね」
さやか「仁美ぃ……」
杏子「負けたやつはなんか一発芸でも披露してもらうか」
さやか「あんたが負けたら、ちゃんとやってくれるわけ?」
杏子「とーぜんだろ」
さやか「まどか、いいの?」
まどか「う、うん。ほむらちゃんは?」
ほむら「え? ……私は負けないわ」
まどか「そうなんだ。すごい自信だね」
杏子「んじゃ、やろうぜ。やっぱり、こういうのはスリルがねえとな」
さやか「はいはい。負けなければいいんだもんね」
ほむら「……何をするの?」
杏子「いいか? 一発勝負だからな」
さやか「いつでもオッケー」
仁美「それでは配りますよ」
まどか「緊張してきた……」
ほむら(バスが走り出してから5分が経過。残り1時間と55分……。長い戦いになるわね……)
仁美「どうぞ、暁美さん」
ほむら「ありがとう」
ほむら(同じ数字のカードは捨て――)クラッ
ほむら「……っ」
ほむら(この感じ……前兆だというの……? そんな、まさか、酔い止めだって飲んだのに。やつが来る……かもしれないというの……?)
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「何かしら?」
まどか「カードをじっとみてるけど……」
ほむら「気にしないで」
まどか(ほむらちゃん……ジョーカーが来ちゃったのかな……?)
杏子「んじゃ、あたしからな」
さやか「なんでよー」
杏子「誰からでもいいだろ。ほら、よっと」
さやか「もう、勝手に始めちゃうんだから。次は私ね」
仁美「お好きなのをどうぞ」
さやか「よっと……。うーん……」
仁美「では、私が」
まどか「はい」
さやか(仁美……ポーカーフェイスにもほどがあるでしょ……)
まどか「次は私がほむらちゃんのを……」
ほむら「……」
まどか「えいっ。やった、揃った」
ほむら「おめでとう」
杏子「ほら、早くとれよ」
ほむら「そうね」
――10分後
仁美「これ、とてもおいしいですね」
杏子「だろー? もっと食っていいからな」
仁美「いただきます」
さやか(早く、このジョーカーを処理しないとなぁ)
まどか(ほむらちゃんがジョーカーを持ってそうだけど……)
ほむら(来ている……確実に……奴が……近くまで……!!)
さやか「はい、まーどか」
まどか「えいっ。……あっ」
さやか(よしっ!)
まどか(さやかちゃんが持ってたんだ……。だったら、ほむらちゃんのあの難しい顔は……)
ほむら(何故……!! どうして……!! どうしていつも同じ運命をたどるの……!!)
まどか(ほむらちゃんの演技なのかな。演技力あるね、ほむらちゃん)
まどか「はい、どうぞ」
ほむら「もらうわ……」スッ
――5分後
さやか「やったぁ。あーがりっ」
まどか「むー……」
ほむら「はぁ……はぁ……」
仁美「暁美さん? 具合でも悪いのですか?」
ほむら「何を言っているのかしら。私の体調は万全よ」
仁美「それならいいのですが……」
ほむら(顔に出しちゃダメよ。この席は死守するのよ。まどかの隣は絶対に守ってみせる……!!)
まどか「……」
ほむら「……なに?」
まどか「あ、えと、次は私だから、取るね」
ほむら「ええ……どうぞ……」
ほむら(私の手札にジョーカーがいる……。いつの間にはいって――)クラッ
ほむら「ふっ……うっ……!!」
ほむら(来た……!! 来てしまったのね……ついに……ワルプルギスの夜が……!!)
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「ふぅ……ふぅ……」
まどか(カードを取ろうとするとほむらちゃんの顔色が変わった……? これが、ジョーカーなの……?)
ほむら(トランプを見る余裕は……ない……。休憩まで残り15分……。このまま、戦うしかない……)
まどか「……」
ほむら「は、やく……まどか……」
まどか「こ、これにしようかな……」
ほむら「ふぅぅぅ……!!!」
まどか「え……!?」
まどか(これは取られたくないってこと? こっちがジョーカー?)
ほむら(胃液の逆流が始まっている……。いえ、でも、まだ我慢できる。できるはずよ。まどかの目の前で無様なことだけはできない)
ほむら(今は一刻も早くこのババ抜きを終わらせて、窓を開けて、外の空気を吸わないと……!!)
まどか(こっちがジョーカーなんだね。大丈夫だよ、ほむらちゃん。ほむらちゃんに罰ゲームなんて、絶対に渡さないから……!!)
まどか「えいっ」
ほむら(まどかに……悪魔が渡った……。これで戦いは長引いてしまうのね……)
杏子「これも開けるか」
仁美「それは?」
杏子「食うかい? スルメだ」
仁美「いただきます」
ほむら「……!」
ほむら(杏子……!! ここでそれを開けるの……!? そんな臭いがするお菓子を……!!)
ほむら「……」キッ!!!
杏子「うおっ」ビクッ
杏子(なんか、すげー睨まれた……。なんか悪いことしたか? あ、そうか)
杏子「悪い、悪い。ほら、食えよ」グイッ
ほむら「ちょ……」
杏子「あーん」
ほむら「やめて……おねがいだから……や、めて……きょ、うこ……」
杏子「あ、あれ? これが欲しかったんじゃないのか?」
ほむら「それいじょう……ちか、づけないで……」
ほむら「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
杏子「なんか、怖いな」
仁美「そうですねぇ」
さやか「顔色、悪くない?」
ほむら「まだ寝ぼけているのかしら、美樹さやか。私は、いたって、健康体よ」
さやか「そんな風には見えないし、なんでフルネームで呼ぶのよ。いつもみたいに呼んでよー」
ほむら「これは、あれよ、その、ポーカーフェイスってやつよ」
さやか「全然ポーカーフェイスじゃないんだけど」
ほむら「次は、私の番ね……。行くわよ、まどか」
まどか「うん」
ほむら「これね」スッ
ほむら(ジョーカー……!!)
まどか(ほむらちゃんに渡っちゃった。もう一度、私がジョーカーを引かないと)
ほむら(次で終わらせる……! まどかを勝たせて、終わらせるのよ)
まどか(ほむらちゃんを絶望で終わらせたりしない!!)
――5分後
まどか「えいっ」
ほむら「はぁ……はぁ……ぁ……」
杏子「いつまでジョーカーを引き合うんだよ」
仁美「よほど仲がよろしいんですね」
さやか「そういうことなのかな」
まどか「どうぞ、ほむらちゃん」
ほむら「う……ぇ……」
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「す、こし……窓を……あけても……いいかしら……?」
まどか「ほむらちゃん……もしかして……」
仁美「やはり気分が優れないのですね」
さやか「杏子」
杏子「おう。オーイ、マミー」
マミ「はぁーい。なにかしらー?」
ほむら「……!!」ガシッ
杏子「な、なんだよ?」
ほむら「やめて、杏子。巴マミだけは、絶対に呼んじゃダメよ」
杏子「マミだって言ってただろ。気分が悪くなったらすぐに言えって」
ほむら「そんなこと、絶対に許さないわ」
杏子「お前……」
ほむら「心配しないで。もうすぐ休憩時間……そうなれば……きっと、持ち直せる……」
さやか「なんでそこまで無理するわけ?」
ほむら「貴方には分からないわ。私の気持ちなんて……ふぅぅ……うっ……」
仁美「私は分かります」
ほむら「え……」
仁美「前方座席に移動した時点で嘔吐寸前であることは間違いないわけですから、恥ずかしいですよね」
ほむら「そ、そうそう。よくわかっているじゃない」
仁美「では、なんとか耐える方法を探しましょう。休憩の時間まではあと少しのはずですから」
まどか「ほむらちゃん……」
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