男「誰もいないな」女「そうだね」 (19)

男「じゃあさ」

女「しません」

男「もう二人っきりなんだから」

女「そうね、確かに私とあなた二人しかいないね」

男「だからさ」

女「お断りします」

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女「ちょっと! 何出してるの?」

男「見てわかるだろう、ゴムだよ」

女「えいっ」ポイッ

男「何するんだ!」

女「あなたが変なことする前に捨ててやったのよ」

男「はあ……手ごわいな……」

女「ため息つきたいのはこっちよ。気をつけないと何するかわかったものじゃないわ……」

スタスタ

男「女さん、歩くなら車に乗らない?」

女「車の何でするって? 冗談じゃないわ」

男「何もしないよ」

女「じゃあどうしてさっきのゴムを拾ってきてるの?」

男「えっと、これは……。じゃあさ、マッチ持ってるからさ蝋燭つけて」

女「私、そういうの一番嫌い」

男「じゃあさ、カラオケ入らない?」

女「まともに歌えないでしょ」

男「あの空間がいいんじゃないか」

女「どうしてあなたはそういう事しか考えられないのかな……」

男「くそっ……今日も密室作戦は失敗か……」

今日はもう寝ます

男「ここでしよう」

女「は? ここって道路の真ん中で?」

男「どうせ誰も見てないし」

女「昨日は密室がいいとか言ってたじゃない」

男「場所なんてどこでもいいんだよ。レッツゴートゥーヘブン!!」

女「い、いやーっ!!」
ボコバキ

男「いてて……酷いな……」

女「道路のど真ん中なんてあなたおかしいんじゃない?」

男「むしろおかしいのは君だよ」

女「あなたが毎日毎日迫ってくるからおかしくなりそうよ」

ザバーン

男「海だー」

女「海だね」

男「誰もいないね」

女「海でもしないよ」

男「どうせ誰も来ないよ」

女「嫌なものは嫌」

スタスタ
子犬「くーん」

女「あれ、迷い犬かな?」

子犬「くーんくーん」

女「よしよしどこから来たの?」

ヨロヨロ

子犬「くーん」
スリスリ

男「かなり弱ってるな。きっと何も食べていないんだろう」

女「何か食べさせないと」

男「よし、二人プラス一匹でしよう」

女「空気読め!」

男「どうせ助からないんだ。せめて最へぶっ」

女「そういう所が最低って言ってるの」

子犬「くーん」

女「もう大丈夫だからね。おいしい物食べさせてあげるから」

男「よし、ご飯にするか海に入るか、それとも」

女「よしよし、いっぱい食べていいよ」

子犬「くーん」
モグモグ

男「無視か」

女「よしよしいい子だね」

男「この子はオスなのかメスなのか」

女「メスみたいね……」

子犬「くーん」
ペロペロ

男「おい、くすぐっていな」

女「あなた気に入られたね」

男「おうおう、どうした?」

子犬「くーんくーん」

男「わかんねーよ」

女「これでもする?」

男「今日はやめとくよ」

子犬「くーん」

男「そういやこいつ、どこから来たんだ?」

女「首輪してるね」

男「じゃあ飼い犬だったんだな」

女「そうみたいね。飼い主探そう」

男「見つかるわけないって。よし、じゃあ三人で」

女「ふざけないで。飼い主に怒られるよ」

男「飼い主なんて見つからないって。誰が怒るんだよ」

女「飼い主よ」

男「だいたいどうやって探すのさ」

女「ポスターでも貼ったら誰か見るかも」

男「誰が見るんだよそんなもの」

女「あなた、本当に考え方が暗いね」

男「そうでなきゃ毎日迫らないよ」

女「理解に苦しむわ」

男「それはこっちの台詞だよ」

女「うう……グスッ……子犬ちゃん……」

男「病気だったんだ。わかっていただろう」

女「でも……」

男「ちゃんとお墓まで作って弔ってあげた。十分だろう」

女「助けられなかった……」

男「俺たちじゃ無理だったんだよ」

女「わかってるよ。でも……」

男「できることは全部やった」

女「だからって……」

男「もう諦めろ!」

ビクッ
女「っ!」

男「これが運命なんだよ」

女「……」

男「さあ、忘れさせてあげるよ」

女「……最低。でも、いいよ。ちょっと怖いし、痛いのは嫌だけど……」

男「大丈夫、痛くしないから」

女「ちゃんとゴムはあるのね」

男「それじゃあ……」

女「やっぱりダメッ!」

男「えっ」

女「こんなことで自棄になっちゃうのはやっぱりダメだわ」

男「急にどうした?」

女「これで自棄起こすんじゃあ、子犬ちゃんを見つけなかった方が良かったみたいだから……」

男「……」

女「だから、ごめんやっぱり無理……。できないよ」

男「そうか……」

SW旅行に出てました。
戻ったので書きます。

女「あ、リスだ」

男「森にリスぐらいいるだろ」

女「私、野生のリス初めて見た」

男「これ、レッドリストに載ってた種類じゃないか?」

女「そうなんだ」

男「向こうにもいる。絶滅危惧種だったのに随分と増えたな……」

女「そうね。森林開発もなくなったからね……。あ、オスがメスに求愛してる」

男「そろそろ、しようか」

女「待って、私は絶対しない」

男「どうして頑なに嫌がるんだ?」

女「嫌だからよ。したいなら一人ですればいいじゃない!」

男「一人が嫌だから……言ってるんだ」

女「そんな理由で私に迫らないで。他の相手でも探してよ」

男「他には誰もいないよ」

女「もしかしたら」

男「もう俺たち以外、この世界には誰もいないんだよ!」

女「……わかってる。でも、最後まで諦めたくないの」

男「でも、もう無駄なんだ」

女「だからって、心中なんてごめんよ。ゴムバンドだろうと、密室で練炭だろうと、道の真ん中でも、海でも、森でも!」

男「それで、何になる? もう希望なんてないんだ」

女「だから心中なんて馬鹿げてる」

男「馬鹿げてるのはお前だ。早く一緒に楽になろう。……一人にだけは……なりたくない」

女「なら、子孫でも増やす?」

男「え……?」

女「誰もいないね」

男「そうだな」

女「じゃあ」


初SSでしたが、どうにか完結できました。
読んでくださった方はいるのかわかりませんが、いましたらありがとうございます。

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