彼女は茫然と立ち尽くしていた。
手足の感覚を放棄したまま、眼前に広がる光景に思考が追い付いていなかったのだ。
周囲にいる人間もまた同じく。
その存在は、誰もが凍りつくのに相応の特徴を持っていたからだ。
「あ…………」
誰かが声を漏らし、そして声よりも先に全身を震い走らせる。
そして今から起きる全ての始まりを告げる、悲鳴が上がった。
「アリだ──────────ッッ!!!! 」
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一人の悲鳴が伝染し、彼等のいた交差点は瞬く間に狂乱と化してしまった。
そしてその狂乱の渦に呑まれていく人間とは別に、市街地近くに存在する何の変哲も無い公園の林から。
【それら】は噴き出すかのように現れたのだ。
女「ひ……ぁ…………」
女(…どうして……)
女(どうして、巨大生物が……っ)
未だ動けずに座り込んでしまったスーツ姿の女は、市街地へと轟音を打ち鳴らしながら進んでくる【巨大なアリ】達を見ていた。
彼女がいるのは、林からほぼ目の前の街中。
距離にして約900m。
それだけの距離があっても、まるで触れられる位置にいるかに錯覚してしまう程にアリは大きいのだ。
いつの間にか歯をガチガチと鳴らしながら、彼女は見開いた目を閉じられずにいる。
恐怖の核から目を離せば、直ぐにでもそれが背後から襲いかかってくる。
そう考えてしまっていた。
女「……っ…ひぃ…っ」
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