【艦これ】じいと姫と北方旅 (194)
深海棲艦
それは突然現れ、我々の生活や命を脅かすものたちである
今でも深海棲艦との戦争は続いており、我々の生活は日々脅かされている
「……おーい、大丈夫かー…?」
そんな時代の中、私は海を見つめていた
正確には海に浮かぶあるものを
「……どうしたもんか」
そこには白い肌…つまり、深海棲艦らしき者がうつ伏せで浮かんでいた
雲一つ無いよく晴れた日の出来事であった
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1418287147
※注意
このSSは艦これSSだと思う
初(長編)SS
全編にわたってオリキャラが出る
一応閲覧注意
史実とか詳しく知らない人が書いてるから突っ込まないでくれたらうれしい
軍を辞めて幾星霜、あてもない旅を続けて数年経つ
「さて、今日も釣りに行くか」
自ら食いつないでいくために今日も食料を探しに行く
私が唯一得意であった釣りは、それに適していた
「昨日は大物が釣れなかったが、今日こそは」
波止場に向かい、糸を垂らす
そして獲物がかかるのを待つ
この待っている間の時間、これが釣りの醍醐味だと思う
何を考えるでもなく、竿にも一定の注意を払う
この感覚が私は好きであった
「む、来たか」
晴れた日にはよく釣れるのだ
曇りや雨だとどうにもうまくいかない
「せーの、せい!」
掛け声と共に釣り上げる
釣った魚が軽く痙攣した
大きさはまあまあと言ったところか
後2、3は欲しいが、幸先のいい始まりだ
ざざーんと落ち着いた波の音を聞きながら再び糸を垂らす
しかし、その後待ちの体制に入った私の視界に見慣れないものが写った
「白い浮翌遊物…?海鳥…にしては大きすぎるか」
どんどんこちらに流されてきている
そしてついにそれが人の形をしていることまで認識する
その時点で私はある程度の予想が出来た
「白い肌、白い髪…」
そう、あれは深海棲艦であると
さらに、人型ということはかなり強力な個体であろうと
「逃げるか…?いやだが、流される深海棲艦など見たこと無いぞ…」
物珍しさからその場に立ち尽くし、白い浮翌遊体を眺める
そして、それが波止場のすぐそこに来て、
ゴスッ
となかなかいい音を出しながら頭をぶつけ、それでも動かない
「……どうしたもんか」
逃げればいいのに、私は何故だかその白い浮翌遊体に同情していた
それにはその深海棲艦が非常に幼い容姿をしていたことや、私の旅の目標にも関係していただろう
「仕方ない…か」
衣服を脱ぎ、救出用の道具を用意し、私は海に飛び込んだ
助けてしまった
我々の敵であるはずの深海棲艦を
助けだした深海棲艦は外傷もなく、呼吸も落ち着いている
私は取り合えず、この深海棲艦が目を覚ます前に逃げ出すべきか迷っていた
「今ここで逃げ出したら自分の命は助かる…が、コイツを放っておくと絶対面倒なことになる。かといって目を覚ましたあと私に何が出来る。やはり逃げるべきか。しかし、こんなものを放置して逃げるなど目覚めが悪すぎる…。いや、だが…」
堂々巡りの思考をしていたためなかなか行動に移せなかった
そんなことをしていたからだろう
私は深海棲艦が身じろぎしたのを見てしまった
深海棲艦はそのままゆっくりと体を起こし、目を開ける
伸びをしたあと辺りを見回し、こちらを見た
真っ赤な目と私の目が合わさった
「………………」
「………………」
お互い完全に無言
ここだけ時間が止まってしまったかのように、まばたき以外何もできない
そのまま三分ほどたち、ようやく私は言葉を絞り出した
「……おはよう」
「……おは、よう?」
その深海棲艦は私の言葉を復唱しただけで、再び黙り込んでしまった
言葉を発したことにより少し冷静になった私は、その深海棲艦がこちらを襲ってこないか細心の注意を払いつつ質問をした
「お前さんは、何者だ?」
「………?」
わからないと言う風に首をかしげる
「お前さんは、私を襲うか?」
「………」
ふるふると頭を横にふり、またこちらを見つめてきた
「どこから来たかは分かるか?」
「………」
再び首をかしげた
「むぅ…」
取り敢えず襲っては来ないだろうと思い、少し緊張を解く
しかし困った
このままでは話が進まない
私は頭を抱えた
どうすればいいんだ、と
そして吹っ切れた
もう知らん、逃げる、と
急にこのような事態になったら、相手が誰であれ面倒なことになる前に逃げたくなるであろう
一度助けてやっただけでもよくやった方だ
全ての荷物を持ち、全力ダッシュで逃げた
人生で一番早いのではないかという速度で走った
ある程度走り、草木に囲まれた場所に着いたので一先ず足を止めた
ここまで来れば大丈夫だろう
そう思い後ろを振り返った
すぐ後ろにあの深海棲艦がいた
「……………」
再び無言でこちらを見つめてくる深海棲艦
私は絶え絶えの呼吸の中叫んだ
「何故連いて来る!」
「深海棲艦って陸上でも運動能力高いのか!」
「…………」
……今コイツちょっと得意気な顔したなこの野郎
しばらく息を整えた後、私はある重大な質問を投げ掛けた
「お前、もしかして私に連いて行きたいのか…?」
その質問に深海棲艦は
「………!」
大きく首を縦にふった
私は諦めの境地でもうひとつ尋ねた
「お前、名前はなんだ?」
「ほっぽ…う…せい…き」
これがこの先少しだけ続く、私とこの深海棲艦との少し変わった旅である
「北方」
「………?」
「お前さんの呼び名だ。呼び方が分からなければ不便だろう?」
「…………」
北方は頷いた
無害なことはわかった為、取り敢えず釣りを再開することにした
おまけに今日から北方にも食事を与えなければならない
「……………」
釣糸を垂らし、いつもの感覚に落ちる
「……………」
北方は糸の垂れている海面付近をじっと見ている
あまりジロジロ見られると集中できないのだが、仕方あるまい
「………よし、来た!」
わずかな振動を察知し、釣り上げる
少し小振りだが、北方に与える大きさとしては上等だろう
釣った魚を箱に入れ、再び糸を垂らす
その時北方が私の袖を引っ張った
「なんだ、集中できないからやめてくれ…」
「……それ、やりたい」
「お前、普通に話せるのか…」
黙り込んでいることが多かったもんだからてっきり話すことが相当苦手か、ほぼできないものかと思っていた
「釣りをしたいとな。別に構わんが、出来るのか?」
「…………?」
首をかしげやがった
「はぁ、全く…。ほら、こっちに来てみな」
とことこと寄ってくる北方
この姿を見てると、本当にコイツがあの深海棲艦だなんて忘れてしまいそうになる
「まずエサを付ける。次に針を海に投げ入れてひたすら待つ」
やってみろ、と促した
エサはその辺で採った虫だが、まさか虫を嫌がるか?
と思ったら、北方は虫入りの箱に手を突っ込み、鷲掴みした
「待て待て、そんなに要らん。一匹で十分だ」
「…………」
北方はしばらく自分の手と私の事を見た後、ゆっくりと虫を取り出した
「そうだ。それをこの針に付けるんだ」
北方は拙い手付きではあるが、エサを取り付け、針を海面へ投げ入れた
竿ごと
私は海へ本日二度目の飛び込みをした
「何をしている!?投げるのは竿じゃなくて針だ!」
濡れた体を拭きながら叫ぶ
「…………?」
北方は違うの?とでも言いた気な目で首をかしげた
私はあまりに無垢な瞳に何も言えなくなってしまった
「はぁ…次こそはちゃんとやってみてくれ…」
「…………」
コクリ、と首を振り、北方は再びエサを取り付け、今度こそ糸を海面へ垂らすことに成功した
「よし、そのまま竿を放すなよ?引いてるタイミングは私が教えるから感覚はその時覚えてくれ」
北方はこちらを見ずに頷き、じっと海面を見ていた
十分もしない頃か、糸を垂らした辺りに水紋が広がったのを私は見逃さなかった
「北方よ、僅かな振動を感じるだろう。じきに食らい付いてくるから、その瞬間になったら一気に上に引き上げるんだ」
北方は真剣な表情をしながら最適なタイミングを図っていた
そして、ザバッと大きく釣り上げる
釣れた獲物は今日一番の大物だった
その後も北方は次々と大物を釣り上げ、十分な数を手に入れたところでやめさせた
北方の顔は非常に満足気であり、実際片付けの際に楽しかったか?と尋ねると、
「…………!」
コクコクと首を何度も縦に振った
心なしか、北方の体がキラキラしている気がした
さて、釣りが終わった頃には大分日が落ち、水平線に太陽が沈みかけていた
「完全に暗くなる前に飯とするか」
私はあらかじめ集めておいた木の枝などに火を起こし、鱗や内蔵を取り除いた魚を火にかけた
北方は相変わらず私のやることをじっと見ている
焼ける間、することもないので北方と話をした
「なぁ、深海棲艦だってのに私を襲わないのはどうしてなんだ?」
「………襲わなきゃ……ダメ?」
「いやいや!そんなことはないぞ!?」
「しかしな、深海棲艦が港や船を襲ったと言う事件は数えきれないほど起きていてな。お前さんみたいなのは全く未知の存在なんだよ」
そもそも言葉を話す深海棲艦自体ほとんど報告がない
そして、言葉を話す深海棲艦は総じて強力な力を持つと言う
それに名前を聞いた時、コイツは「せいき」、と言った
つまり、鬼や姫型の深海棲艦だということだ
そんなのがどうして私なんかと一緒にいるのか、さらには海で浮かんでいたのか、さっぱり分からない
「やっぱり目を覚ます前に逃げるべきだった…」
「……元気、出して?」
「……ああ、ありがとうよ…」
情けないことに慰められた
北方はそのまま魚を指刺し言った
「じい、そろそろ焼ける」
「ん、あぁそうだな…って、じい?」
北方は今度は私を指差して、
「じい」
と言った
『じい』ってまさか、私のことか
確かに既に50を越える年齢とはいえ、爺さん扱いされるとは…しかも深海棲艦に
「なぁ北方。私は爺ではなく、お兄さんとかでいいんだぞ?」
「………?じいはじい…だよ?」
「………もう何でもいいわ…」
焼けた魚を手に取る
「いただきます」
「……いただ、きます」
北方が復唱した
はぐはぐと魚を平らげていく北方
まるで小動物のようで、私は自分の分を食べるでもなく眺めていた
視線に気がついたのか、北方は
「……じい、食べないの?」
と聞いてきた
「…食べるよ」
魚は少し焦げていて苦かった
今日はここまで
これから完結までしばらくよろしくお願いします
初(長編)ってことは短編は書いてたの?何書いてたか教えて
>>102
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NEWソートの奴は私用のメモ書きと練習帳みたいなもので、他人が読むことをあまり想定しておらずSSとは言い難いので読まない方がいいです
では投下します
─────────────────────────
洞窟内を歩いて数時間経った頃か、先から光が漏れているのが見えた
「北方、出口だ」
「んー……?」
北方はいつの間にか背中で寝ていた
少しゆすって目覚めを促す
「ほれ、もうすぐ外に出るぞ」
「………ぐう……」
だが返事をしただけでまたすぐに寝てしまったようだ
「仕方ないやつめ」
さて、呉の言った通りこの道は近道でもあったようだ
こんなにも早く出口に着くとは予想外だったが
久方ぶりの明るい光に足取りも早くなる
しかし、出口付近である異常に気がついた
女
鳳翔殿の店で泊まった晩に見た、あの髪の長い女が出口の前に立っていたのだ
警戒を強くする
「また貴様か…何用だ。一体何を企んでいる」
女の姿は逆光の影響ではっきりと確認できない
女は薄ら笑いを口に張り付けながら言う
「フフフ……ココマデ来マシタカ…ヤハリ正解ダッタ…」
「正解?どういう意味だ」
「準備ハ出来タ…後ハソノ子次第……時ハモウ…差シ迫ッテイル」
「質問に答えろ!北方と何か関係があるのか!?」
「フフフ……直グニ分カリマスヨ…」
そう言うと女はあの夜のように忽然と姿を消した
「ちっ…また逃げたか…!」
「んん…じいうるさい」
叫んだせいか、北方が眼を覚ました
よく考えればこいつが起きていればあの女のことがわかったかもしれない
過ぎたことだが少し後悔した
「北方、髪の長い女の記憶はあるか?」
「んー…?全然」
一応聞いたが無駄だったようだ
あの女…二度も私たちの前に現れるとは、最早偶然ではあるまい
この洞窟を通ることを知っていたようであるし、どこかで監視されている可能性もある
分からないことだらけだ
「じい、なんか寒い」
北方が唐突に言った
言われてみれば、なんだか肌寒い
「そういばそうだな…」
「っくちゅん」
「…私の首に向かってくしゃみをするのはやめろ」
唾液がべっとりとついてしまった…
「あー…ごめんなさい」
「…もうよい」
とりあえず洞窟から出るとしよう
外が明るい内に町にも着いておきたい
首を拭きながら出口へ向かうのであった
─────────────────────────
「わぁ…」
「なんと…」
洞窟を抜けた先には白銀の世界が広がっていた
わたしの足首が隠れる程度には積もっているし、強くはないが雪も降っている
なるほど寒いわけだ
「じい、きれいだね」
「そうだな…寒いのは勘弁だが」
「うん、寒い」
「ふむ、確か鞄に…あった」
北方を一度背中から下ろし、鞄からマフラーと手袋、肩掛けを取り出す
「ほれ、これをつけるといい」
「ありがと…」
北方に白い手袋を渡す
ミトンのような構造をしている上に、私の手に合った大きさなため北方には少し大きいが、
「あったかあったか」
本人が気に入っているのでよしとしよう
それにしても、手袋は替えのものを含めて二つあるが、マフラーは一つしかない
仕方あるまい
「北方、お前がこれをつけな」
「なにこれ?」
「マフラーと言ってな、首に巻いて寒さを凌ぐものだ」
「でも…じいが寒くなっちゃうよ?」
「私は構わん。そんな柔な体はしとらん」
「んー…こうすればいいよ」
北方はわたしの背中によじ登り、マフラーを私の首と自分の首両方に巻いた
長さが足りていないが、無いよりはマシだ
「お前は優しいな…」
「そうかな?」
「じゃあ最後にこの肩掛けを被るといい」
「うん…大分あったかくなったね」
「そうだな……では行こうか」
少し奇妙な見た目ではあるが、体は温かい
肩掛けが落ちないように気を配りながら積もった雪に足跡を付け歩き始めた
洞窟から歩いて一時間程度、町が見えた
北の町特有の急斜面の屋根・床の高い玄関が見渡せる
時刻は夕方17:00を回ったくらいか
まだ明るい内に町へ着けてよかった
こんな雪の中、夜中に宿を探すのは一苦労だ
人通りもかなり少ない
「さて、何処に泊まるとしようか」
「じい、お腹空いた」
「そうだなぁ…昼は食べなかったしな」
呉の地図を見る
町の大体の見取り図まで書いてあるため、これを頼りに動けばいいだろう
「じい、裏に何か書いてある」
「む…なんだこれは」
北方に言われた通り裏面を見ると、何かが書いてあった
「なになに…」
『北方ちゃんがいたら、その町の宿探しに困るだろうと思っていいところを紹介しとくよ。先に店主には事情を含めて連絡しとくからそこへ行ってくれ。店主は鳳翔と同じ元艦娘だが、信頼してくれていい。風邪引くなよ? 呉』
「あいつめ…今度また礼を言わねばならんな」
「呉って実はすごい?」
「そうだな…私の大事な友だ」
「私もじいの友?」
「そうだなぁ…友と言うよ手のかかる孫だな」
「ひどい…」
「はっはっ、例えさ例え。さぁ、呉の紹介した宿へ行こう」
「はーい」
軽い冗談を交わしながら雪で人気の少ない通りを歩き始めた
─────────────────────────
「どうやらこの宿のようだな」
町の少しはずれた場所にその宿は建っていた
「ほーしょーさんのお店と雰囲気が似てるね」
「言われてみれば…」
二階建ての少し小さめの宿のようだが、窓からは橙の温かい光が漏れている
木造であるのも同じだ
「よし、入ってみよう。北方、背中から降りてくれ」
「うん」
マフラーをほどき、ぴょんと背中から北方が飛び降りた
頭巾に積もった雪がバサリと落ちる
さっきまであった体温による暖かさが消え、体が震えた
扉に手をかけ開けると、やはり鳳翔殿の店で見たような内装が広がっていた
店には他の客は見当たらない
カウンターの奥で蒼い和服を着た女性をみつけたため、声をかけた
「済まぬが、一晩泊めていただけぬか?」
「すみません今日は貸しきりなんです…って…もしかして、横須賀様でございますか!?」
「あ、ああ…そうだ。呉と言うものから連絡が来ていないか?」
「はい、呉様からお聞きしております。お待ちしておりました」
和服の女性は礼をし、自己紹介をした
「龍鳳と申します。横須賀様…いえ、提督、私の事を覚えていますか?」
言われてみれば何処かで見たような顔立ちである
唸りながら記憶を捻り出しているところに、龍鳳が大きなヒントをくれた
「て・い・と・く。提督?この感じ、記憶にありませんか?」
「あ…ああ!まさか大鯨か!」
「??」
話についていけない北方が棒立ちしていたが、私は驚きでそれどころではなかった
本日分終了
次回「じいの覚悟」
前半が終わりました。次回から超展開へと入ります
多分今週中に更新します。放置してごめんなさい
また短編書いてたんでこちらでも読んでもらえればうれしいです
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