【艦これ】提督「バレンタインって何だぁ……?」 (38)

赤城「加賀さんどいてくだいさい!それは私のですよ!」

加賀「いくら赤城さんでも提督のこれは譲れません。私の物です」

青葉「おお、あの一航戦が司令官で争ってるなんてスクープです!」

ろー「これが日本の『ひるどら』ですか……まだまだ慣れませんね、はい!」

卯月『うーちゃんの前に跪くぴょん!』


なにこれ……どういう状況……?

つい数時間前まで俺は久々の鎮守府にワクワクしていたはずだ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1423762175

なのに何で赤城と加賀は俺の身体の上で言い争って

この前仲間に加えた呂500……ろーは俺の手元で話しかけてきて

卯月はそんな俺達を見下ろしてきて

青葉はいつも通りで……

どうしてこうなった

思い起こしてみよう

こういう時に大事なのは状況整理だ

現実逃避で今の状況を忘れるのはよくない

よし、じゃあ鎮守府に入る直前くらいから始めようか……

深海棲艦のトラック泊地急襲

その撃退及び敵主力撃破の功績を認められ、3日ほど中央のお偉いさんからねぎらいを受けることに

鎮守府を空けなければならなかったが、運営が得意な大淀・統括役の長門や加賀もいることだしと思い完全にまかせっきりで中央司令部へ向かった

そして中央では甲勲章というやたら仰々しいものを貰い、『これはあいつらを労ってやらねばな』と思いながら帰ってきた

3日ぶりとはいえやっぱり住み慣れた場所に来ると懐かしさがこみ上げるもんだ

いちいち行儀を良くしなければならないあんな口うるさい場所よりは断然いい

やれ「君には期待できるよ」や「中央へ来ないか?君の所より精鋭の艦娘がそろっているぞ?」やら言うが、やかましいわボケ

無駄にわがままで頑固な中央の連中はやんわりあしらってやーっと帰ってきたものだから安心感もすごい

折角だからと買ってきたお菓子などの手土産も滞りない

チョコレートや砂糖菓子や金平糖など皆が喜ぶだろうものを中心的に買ったし

さて、慣れた鎮守府内を歩き執務室へまずは向かおうと思った

だが違和感を感じる

なんでこんなに静かなんだ

いつもなら駆逐艦の子たちの喚き声、演習場から響く砲撃の音、ワオワオでちでちなのなのアハトアハトもぐもぐどぼーん!とうるさいくらいなのに

他人の目を気にしないで歩けるというのも悪くないが、久々の家といっていい場所に活気がないと心配になる

少し急ぎ足で執務室へ行った

そして扉を開けると

何故か夕張が椅子に縛られていた

夕張「…………?むー!むー!」

目隠しはされていないがさるぐつわ状態で話せないらしい

夕張「んー!んん!」

夕張が目でこれを解いてくれと訴えかけてくる

ちょっと興奮したから放置したかったけど仕方ない

夕張「ん~……ぶはぁ!あ”ー!!」

提督「なんちゅう声出してんだ」

夕張「いや助かりました。このまま放置かと思ったら本気で死ぬかと思いましたよ……」

提督「で?なんでそんなことになったんだ。それにどうしてこんなに静かなんだ?」

夕張「いやぁ……それはその」

提督「早く言えよ」

夕張「ま、まぁまぁそんなに焦らないで!睨まれてちゃゆっくり話もできません!まずは落ち着きましょう?OK?」

提督「OK!」(ガシィ!)

必殺アイアンクロー。相手はもだえる

夕張「あいだだだだだだ!やめて!言うから!ちゃんと言うから!」

解放

綺麗な跡が出来てるが修復剤かければすぐ直るだろう

便利なもんだ

何回傷ついてすぐに治されてまた戦場に赴き、同じ痛みを繰り返し短期間で味わうなんてぞっとしないが

夕張「事の発端はこれです……」

提督「なんだこれ?チョコレート?で、味は?」

夕張「いや食べないでくださいね?」

提督「これがどうしたっていうんだ」

夕張「実は、もうじきバレンタインということで提督がいない間にみんなでチョコレートを作ろうってことになったんです」

提督「ほう、そりゃ嬉しいな」

夕張「最初はみんな和気藹々と楽しんでいたんですが、何か足りないなぁって明石さんや比叡さんが妙ちくりんな薬や食材を混ぜたのをみんなに検食させましてね」

提督「どっから突っ込んでほしい?」

夕張「私はお尻が……ってそうじゃなくて、それを食べた皆がこう……何と言いますか……」

提督「何だ、早く行ってみろ。もう一回喰らいたいか?」

指を世紀末並にボキボキする

あっ変な風に曲がった…痛い…

夕張が怯えた表情をしているがさっさと要点を話して欲しいものだ

あとさりげなく明石と比叡のせいにしてるがこの様子だとこいつも一枚からんでやがるな

そして、どうお仕置きしてやろうかと考えているところに事態は動いた

加賀「…………」

何かいた

今まで気付かなかったが執務室の机の上に何かいた

いや、それがおそらく『一航戦・航空母艦の加賀』であるのはかろうじてわかった

分かりたくもなかったが

そこには手のひらサイズの加賀っぽいのがじっとこちらを見ていた

夕張「あ、ああ!捕まえてください提督!」

提督「ん?あ、ああ……」

加賀「!!」

夕張が叫ぶのでとりあえず従う

加賀っぽいそれは俺が近づくと怯えたように逃げ出した

結構速い

あ、こけた

加賀「~~っ……」

痛みをこらえてるし何処か涙目だ

かわいい

ふと夕張のそばに置いておいたお菓子の袋を差し出してみた

加賀「…………」

加賀っぽいのはお菓子に目が釘付けだ

トドメにこの台詞を言う

提督「ほら、あげるからこっちへ来なさい」




加賀「ありがとうございます」

提督「どういたしまして」

夕張「流石提督ですね!早速一人捕獲ですよ!」

提督「オーケーまずは説明の続きと行こうか」

加賀「美味しいです」

加賀は買ってきたお菓子をぼりぼり食っている

体とほとんど同じサイズの菓子をどう消化しているのかは永遠の謎だ

夕張「ええっと……妙なチョコを皆に食べさせた、まで説明しましたよね?」

提督「……まさか」

夕張「そのまさかです。チョコを食べた鎮守府の皆全員がこのサイズになってしまいまして……」

提督「全員!?約151人全員が!?」

それなんてポケモン

夕張「いえ、正確には私と明石さんを抜いた149人です」

提督「ほとんど変わってねーよ」

夕張「おまけに小さくなった人たちは皆精神年齢も小学生並になっているようで……」

提督「それで加賀がこんな感じになっていると」

夕張「その通りです」

加賀「頭に来ました」

食べながら話すんじゃありません

お菓子で釣られ必死に食べるその姿は普段の誇りの欠片もない

それにしても、人の気配を感じなかったのは皆の姿があまりに小さすぎたからか……?

小人の気配なんて気付きようもないし

しかしなんてこった……

今この鎮守府は実質戦力0じゃないか

早いところどげんとせんといかん

夕張「とにかく提督にはこの子たちの捕獲をお願いしたいんです」

提督「だが149人すべては骨が折れるぞ……」

夕張「あ、大丈夫です。144人くらいは捕獲済みですので」

提督「案外仕事早いな」

夕張「明石さんと全力で探しましたからね……」

提督「明石はどこにいるんだ?」

夕張「収容所になっている演習場でちびたちの相手をしています」

提督「140人の小学生の相手か……」

夕張「もう学級崩壊状態ですよ」

提督「さっさと元に戻せないのか?」

夕張「解毒薬がまだ完成してないんです……ちび達を探しながらではなかなか作業もできなくて……」

提督「解毒薬て」

夕張「というわけで私と明石さんで交代で探してたんですけど、誰かに突然縛られましてね……小さいものだから反応も遅れてしまったのでしょうが……」

提督「どうやったらこんなちっこいのに捕まるんだ……?」

夕張「どうやら執務室の椅子付近に罠が仕掛けてあったようで、それで転んで気絶してたところに……ってところです」

提督「どうにもきな臭いな……」

加賀「私はやってません」

夕張「そういえば赤城さんもまだ捕獲してないんですけど、加賀ちゃんは知りませんか?」

加賀「子ども扱いはやめてください。頭に来たので教えてあげません」

提督「ほれ、金平糖だ」

加賀「流石に気分が高揚します。提督には一生ついていきます」

提督「赤城がどこにいるかわかるか?」

加賀「確か食糧庫ね」

提督「いかにも幼児化した赤城が行きそうな場所だな」

普段なら赤城はしっかりとしたお姉さん気質なのだが、幼児化してタカが外れてるとなるとなぁ

食事量も落ちてることを祈ろう

夕張「それじゃ、加賀ちゃんは私と演習場に一緒に行きましょ?私はそのまま解毒薬を作りに行きますので、提督は他の子の捜索を」

加賀「いやです。私は提督と一緒にいます」

夕張「ちょ」

提督「加賀、わがまま言っちゃいかんぞ」

加賀「赤城さんのことは私が一番よく知っています。一緒に行って損はないと思いますが」

夕張「……一理ありますね」

加賀「ですので私は提督の方に行きます。宜しいですか?」

提督「うーむ……まぁいいか」

夕張「そうですね、だいぶ提督に懐いてるみたいですから逃げもしないでしょうし」

加賀「やりました」

夕張「では私は解毒薬の精製をしますのでこれにて。あ、これは捕まえてない子のリストです、どうぞ。では頑張ってくださいねー」

夕張が執務室から出ていった

何か面倒事を渡された気がする

どちらにせよやらなければならないことではあるが




さて出発だというところに加賀が話かけてきた

加賀「では提督、私を頭の上に乗っけてください」

提督「……落ちないか?」

加賀「問題ありません。此方の方が移動も楽ですので」

確かにこのサイズの加賀に合わせてたら亀みたいな速度しか出ない

というわけで加賀を頭の上に移動

ほんのり暖かいのは彼女の特質からか

加賀「では行きましょう」

微妙に興奮した様子の加賀

これ多分移動云々は建前で、単純に上に乗りたくてやったんだろうな……

加賀を振り落さないように注意しながら執務室を出ていくのだった

というか頭の上でお菓子食べないでくれ

カスがぼろぼろ落ちるから




所変わって食糧庫

サイズの関係上見つけるのは苦労するかと思っていたが、赤城はすぐ発見できた

なぜなら見てわかるほどの空の缶詰めや携帯食料の袋が周囲に落ちていたからだ

赤城本人はその中心で幸せそうな顔で眠っている

見惚れてしまうほどかわいい

加賀「…………ッ」

提督「痛え!」

加賀が俺の髪を引っ張りやがった

加賀「ふん……」

何処かすねている御様子

乙女心はわからない

先ほど頭に乗せたときの様子とかを考えるに、いつも通りのクールに見えてる一方幼児化しているから本能に忠実になっているのだろうか

まぁまずは赤城起こすか

提督「赤城、ほら起きろ」

赤城「う~ん……もっとくださぁい……」

提督「うおっ……こら、指をしゃぶるな」

指で突っついて起こそうと思ったらそのまま口に突っ込まれた

もう片方の手で優しくなでると漸く目を覚ました

しゃぶられた方の指は唾液でベッタベタだ

俺にはこれがご褒美に思えるほど変態ではないのでハンカチで拭く

赤城「あら提督……帰ってきていたのですか」

提督「ああ、事情は大体把握してる。大人しく捕まってくれ」

赤城「えぇ……でもまだまだ食べたいです」

加賀「赤城さん、こちらに来れば美味しいお菓子が食べれますよ」

赤城「お菓子ですか!食べます食べます!早くください提督!」

足元でぴょんぴょん跳ねる赤城

それでいいのか一航戦

誇りの欠片もないぞ今の姿は……

提督「じゃあ一緒に行くか」

赤城「はい!では私も頭に乗せてくださいね?」

提督「はいはい」

赤城を頭に乗せ、お菓子を渡して次の目的地へ歩き出した

いやだから加賀もだけどお菓子をぼろぼろこぼすのはやめてくれって

リストによると、あと捕まえてないのは呂500と、青葉、卯月

呂500……ろーはドックで浮かんでいるのを見つけた

某駆け出しビレッジのマスコットの黄色いアヒルと一緒にぷかーっと

ろー「日本の銭湯って本当に気持ちいいですね、はい!」

風呂は水着で入るものじゃないとちゃんと教えてやらねばな……

他の潜水艦の子も面倒くさいと言って水着のまま入っているのを見かけるからその影響かも知れないが

ろーは非常に聞き分けがよく、すぐに着いてきてくれた

もとから幼いため扱いもいつもと同じでいいので楽だ

というわけで現在頭の上に加賀と赤城、肩にはろーを乗せてというわけのわからないパーティーになった

加賀「あとは卯月と青葉だけですねもぐもぐ」

提督「そうだなぁ……どこ行ったんだか」

赤城「恐らく夕張さんを縛ったのも卯月さんでしょうし、早めに見つけないと面倒ですねもぐもぐ」

ろー「もぐもぐ提督、頑張りますね、って!」

提督「お前ら……言葉は嬉しいがいい加減お菓子食うのやめてくれ」

もはや俺の身体はお菓子のくずでいっぱいだ

軍服の手入れって面倒なんだぞちくしょう

加賀「青葉は恐らく何か派手な事をやらかせば自然に湧くでしょうから後でいいとして、卯月が問題です」

提督「まだ探してない所ってあったっけ?」

赤城「工廠がまだですね」

ろー「なら行こう?ね?」

というわけで工廠に向かったのだった

提督「なんじゃこりゃ……」

ろー「わぁ……すっごい」

赤城「たった二日でこれを作ったのかしら」

加賀「驚きを隠せませんね」

俺たちの目の前にはまるで要塞と化した工廠のような建物があった

あちらこちらにバリケードと砲が付いており、非常に近づき難い

提督「まさかこれ卯月がやったのか?」

加賀「信じられませんが……それしかないでしょう」

赤城「あ、これが最後のお菓子ですか……いただきま」

加賀「待ってください赤城さん、その提督のお菓子は私の物です」

赤城「嫌です!最初に持っていた私のです!」

加賀「例え赤城さんでもここは譲れません」

ろー「これが日本の『ひるどら』ですか……興味津々だな、って!」

提督「いや違うから。変なこと覚えちゃいけません」

青葉「おお!これはスクープですね!次の記事は『一航戦、提督を巡って修羅場突入!?その時提督の選択は!?』で決まりですね!」

提督「青葉、どっから湧いたお前」

青葉「いやですねぇ司令官!青葉はどこにでも湧きますよ!」

提督「小っこくても何にも変わんないのな……まぁいいや、これについて何か知ってるか?」

青葉「もちろんです。これは卯月さんが作ったものですね」

提督「やっぱりか。それでもう一つ聞きたいんだが……多分卯月は小さくなってないだろ」

青葉「さすが司令官ですね。そこまでわかるなんて」

提督「夕張を襲った時点でおかしいとは思ってたんだ。今の皆みたいな小さな体で縛り上げるなんてできるわけがない」

青葉「その通りです。それで、司令官ならさらに奥の真実まで見通しているのではないですか?」

提督「ああ、俺の考えが正しければ……いるんだろう!?夕張!明石!」

夕張「ククク……」

如何にもな笑い方で夕張が工廠の奥から現れた

提督「最初から卯月と明石とはグルだったんだな……」

夕張「ええ……最初からこれの完成までの時間稼ぎ……集めた艦娘も皆この工廠に閉じ込めてありますよ」

提督「なぜこんなことを……」

夕張「なに、簡単な事です。150以上の艦娘のパワーを一つに集約したらどうなるか……それが知りたかった」

夕張「まずは無力化するために薬を盛りました。ですが一部の艦は小さくなった後逃がしてしまいましてね」

夕張「まぁ逃げた側は私への恐怖心関係なく単純に活発だったからでしょうがね」

提督「俺に探させたのも逃げた子を見つけるためか」

夕張「そう、おかげで全員ここに揃いました。感謝しますよ。そこの一航戦やドイツの潜水艦は全然見つけれなくて面倒でしたので」

提督「最初に縛られていたのは俺の警戒心を薄くするためだったんだな」

夕張「理解が早くて助かります。提督のことは常に盗聴してますので帰ってくるタイミングも分かってました」

提督「ちょっと待てそんなもの俺は聞いてないぞ」

夕張「知ってたら盗聴じゃなくなるじゃないですか。それに、そうしないと自分で言うのもアレですがあまり信頼されていないので怪しまれるだろうと思いまして」

提督「そりゃ鎮守府や艤装を無断で改造しまくってたらそうなるわ」

夕張「ふふふ……提督はよくやってくれました。ですがここで役目は終わりです……出番の終わった道化師は早く舞台から去ってもらわないと」

赤城「チョコレートと砂糖菓子は私の一番の好物なんです!お願いしますから諦めてください!」

加賀「私だって好物です。今度違うものを分けるので今はそれを渡してください」

ろー「ねぇ提督ぅ……ろーちゃん暇だな、って」

青葉「この施設見学させて頂いていいですか?どうしても入口が見つからなかったので」

提督「かっこいいこと言ってるが緊張感の欠片もないな」

夕張「もう!なら見せてあげます!この力を!」

夕張が天に向かって拳を突き上げた

具体的に言うと一生の悔いがない人が取るポーズだ

夕張「卯月さん!起動してください!」

卯月『任せるぴょん!』

工廠のスピーカーから卯月の声が聞こえる

その瞬間地震が起きた

いや、正確には工廠が激しく揺れている

提督「な、なんだ!?」

夕張「ふはははは!これが私と明石さんで徹夜で作ったモノ!艦娘の謎パワーを抽出して動く工廠ロボです!」

提督「もうちょっとマシなネーミングはなかったのか」

夕張「明石さんのネーミングですので」

提督「てか明石はどこ行ったんだ」

夕張「役目を終えたのでもう装置のパワーの一部になりました。卯月さんは操縦役です」

提督「扱いがひでえ」

工廠はとうとう人型のロボットっぽい形になり、どこかの戦隊モノを連想させる

緊張感が無いとはいえこれマジどうしよう



装甲ガチガチの巨大ロボ

一方こちらのパーティー

誇りを失ったお菓子大好き一航戦

無邪気なLO帰国子女

小さくなっても性格は同じなパパラッチ

負けたな

卯月『どうしたぴょん!これを見て怖気づいたぴょん!?』

夕張「まぁ無理もないですよねぇ!」

こいういう時どうするかって?

そんなの決まっている

提督「みんな、ちょっと俺から離れてくれ」

皆を体から離れさせ、数歩引きさがって準備完了

ろー「提督?何するの?」

加賀「あの構え……まさか」

提督「行くぞ!これが俺の全力全開だ!」

まず敵に向かって駆け出す

その後勢いよく飛び上がり空中で一回転

膝を曲げた状態でそのまま手を前に伸ばす

姿勢を維持したまま受け身の用量でうつ伏せに

最後に全身で地面を叩きつけるように着地

この際砂埃が飛べば飛ぶほど良い

そしてこの一言

提督「降参します!!」

加賀「あれは全てを捨て、選ばれた人間しかできない絶技……!」

決まった

こんな美しい土下座を見せられては相手もやる気を削ぐはずだ……!

夕張・卯月『「お断りします」ぴょん』

提督「なぜだ!?」

夕張「いえ、性能テストとかしたいんで」

卯月『まだ起動しただけだしこんなところでやめるわけないぴょん。今のはうーちゃんに跪いてるだけっぴょん』

夕張「このロボエンジン部分が弱いんですよねぇ。そこの排気口からモックモクヤバい煙が出てるんで」

あ、本当だ

ただでさえ鎮守府は周辺の人から不気味に思われてるのに環境汚染とかやめてくれよなぁ

あれ?待てよ……

そういえばエンジンって……

提督「赤城、加賀。その菓子俺に渡してくれ」

加賀「嫌です」

赤城「私達へのお土産ではなかったのですか!?」

提督「あとでもっと上手いもん食わせてやるから……な?」

甘い言葉で誘惑

追い打ちに頭と首筋を猫のように撫でてみる

すっごい気持ちよさそうな顔してるな

加賀「ふみゃ…わかりました。今回は御譲りします」

赤城「んにゃぁ…でも約束ですよ?」

ちっこい手から数十個のチョコレートと砂糖菓子を受け取る

こんなにあるなら普通に分け合えばいいのに

子どもの独占欲は怖い

さて、これを……

夕張「卯月さん早く動いてください!」

卯月『ちょ、ちょっと待つぴょん!なんか動きにくいぴょん!』

提督「青葉、この菓子をあそこのエンジンに繋がってるだろう廃棄部分に入れてきてくれ」

青葉「ええ……あんな煙たいところ嫌ですよぉ」

提督「俺が行ったらもっとヤバいわ。それにお前たちみたいな小ささじゃないとバレる」

青葉「……じゃあ後で密着取材お願いしますね?」

提督「OKOK。さぁあいつらがアホやってるうちに早く」

青葉「了解しました!」

提督「ろーちゃんも手伝ってやってくれ」

ろー「はい!」

とてとてと青葉とろーが歩いていき、排気口に菓子を投げ込んだ

夕張と卯月はまだ言い争っている

夕張「だから私が操縦するって言ったんですよ!」

卯月「うーちゃんがいなければこの計画自体発想が出なかったぴょん!これくらいやらせるぴょん!」

夕張「だったら早く……って、なんか排気口からへんな煙出てますよ!」

卯月『いつものことぴょん……あれ?完全に動かなくなっちゃったぴょん!』

夕張「提督!何かしたんですか!」

提督「エンジンに砂糖や飴やチョコを入れると溶けて固まってエンジンをめちゃめちゃにするらしい」

はだしのゲンで読んだ

現実だとどうなるかは知らないからガセでも責任は負わない

夕張「そ、そんな……私の計画が……」

提督「はい試合終了。大人しく投降しろ」

夕張「くっ……かくなる上は……卯月ちゃん!肉弾戦よ!」

卯月「いやもう飽きたからいいぴょん。なんか冷めたぴょん」

夕張「卯月ちゃんんんんんンン!!」

提督「チェックメイトだな」

夕張「何おう!艦娘に勝てるとでも思っているのですか!!覚悟ォ!!」

青葉「おーっと夕張さんのストレートパンチ!ですが司令官これを難なく躱す!司令官そのままカウンター!ストレート見てから差し込んだ!人間でも艦娘に差し込めるんだと!この司令官はなかなか上手いね...さあドラム缶ハメ、ドラム缶ハメ!ドラム缶ハメ!ドラム缶ハメ!ドラム缶ハメ!この司令官はなかなか上手いね!まだドラム缶ッ!倍プッシュ!反射してもダメ!カンチョーもダメ!受身取ってもダメ!!何やっても抜けられない!!これが司令官ハウス!!! ブーストもダメ!!カウンター、死んだぁ!!!!そして星が3つになって司令官にブーストマックス!!ゲージマックス!!ラウンド取るのは我らが司令官!!バニで星取った!これは!グレイヴ!千手!一撃が!入ってぇ!!ミスらない!!勝ったのは司令官!!!艦娘相手にパーフェクト!!!」

ろー「ふぇいたるKO!うぃーん提督!ぱーふぇくと!」

提督「まだまだヒヨっこだな」

数秒後、そこにはボロボロになった憐れな銀髪が転がっていた

こうしてこの事件は解決した

数日後、夕張に解毒薬を作らせ皆は元の姿に戻った

首謀者である夕張、卯月は一年間食事と睡眠以外休みなしで遠征に行ってもらうことに

夕張は改造してないため燃費良好だ

常時微疲労なら問題も起こしにくいだろう

明石にはアイテムのタダ券を10万円分差し出させた

赤字?鎮守府での商売禁止より余程マシだと思え

大体あの魔改造しやがった工廠はしばらく使えなくなってしまったのだからな


赤城「美味しいです!」

加賀「いいものですね、これは」

ろー「提督、日本のごはんは美味しいな、って!」

青葉「おごりだなんて太っ腹ですねぇ司令官!」

提督「まぁ約束したからな……」

そして今約束通りファミレスでこいつらに飯を奢っている

赤城と加賀は全く自重しない食べっぷりでつい見惚れてしまう

赤城「……そんなに見ないでください、恥ずかしいです」

加賀「……見られると食べにくいです。提督も食べたらどうですか?美味しいですよ」

これだよこれ

この恥じらいこそいつもの一航戦だ

人目も気にせず食べ続けるような子供じゃないからな

ろー「提督、ろーちゃんも今回頑張ったよね?って」

提督「ああ、地味だが大事な仕事をやってくれたな。ありがとう」

ろー「えへへ~隠密行動は潜水艦の得意技なんですって!」

頭をなでる

はにかむ姿に悶えそうになる

天子か

ろーちゃんはこのまま無邪気であってほしい

青葉「忘れないでくださいね、この後は青葉と司令官で密着取材ですよ?」

提督「ああ、分かってるって」

赤城「そういえば提督、これをお渡しします」

加賀「あ、私も……どうぞ」

提督「なにこれ」

ろー「ろーちゃんからもどうぞ!」

手渡されたのはかわいらしく梱包された箱

赤城は少し派手な赤い梱包、加賀はシックな黒・緑・金のチェック柄、ろーは子どもらしいイラストの描かれたものだ

ろー「今日は、『ばれんたいん』っていうのなんだって!好きな人にチョコレートをあげるの!」

提督「ああそういえば……そもそもお前たちが小さくなったのもそのせいだったな」

正直あの騒動のせいですっかり忘れていた

誰が事後処理をすると思ってるんだ全く

青葉「ほほう、これは手作りですか!愛されてますねぇ」

提督「へぇ……ありがとう」

素直な好意は嬉しい

変に暴走しなければ、だが

赤城「そういえばあの原因のチョコはどうしたんですか?」

提督「ん?海に流した。あんなもの置いとけないからな」

加賀「ちょっともったいないですね……」

提督「仕方ないさ、その分ここでしっかり食べてくれ」

ろー「うん!」

そういえば青葉はくれないのだろうか

そう思った矢先、青葉が耳元でささやいてきた

青葉(青葉のはあとで二人っきりの時に渡しますね?)

ちょっとゾクっときた

嫌な予感がする

警戒しておこう……

青葉「というか、ここにいない方たちもチョコレートを作っているはずなので、帰ってから大変ですよ?」

提督「マジで?」

青葉「そりゃそうですよ」

提督「はぁ……嬉しいが、糖尿にならないようにしたいな」

ろー「後でどれが一番良かったか教えてほしいなって!」

赤城「面白いですね、是非聞かせてほしいです」

加賀「負けたくありませんね」

青葉「いやぁ大変ですね司令官」

提督「勘弁してくれ……」




その後誰を選んだかは、また別の話



-----------------------------------------------------------

ヲ級「ヲ……?」

戦艦棲姫「ドウシタ?」

ヲ級「向コウカラコンナノガ流レテキマシタ」

ネ級「ソレ……多分チョコレート」

戦艦水鬼「チョコレート……?食エルノカ?」

ネ級「美味シイ」

戦艦棲姫「ソウイエバ地上デハ何カ祭リヲヤッテイルヨウダシ、ソレガ流レテキタカ」

戦艦水鬼「全ク……ポイ捨テトハ人間ハコレダカラ」

ヲ級「ジャア食ベマショウ?哨戒デオ腹スイタ」

戦艦棲姫「フム……イタタダキマス」

ネ級「ウン……美味シイ」

戦艦水鬼「ダガ変ナ味ガスルナ……」





タ級「オ待マタセシマシタ、交代ノ時間……ッテアレ?」

タ級「ナ、何コレ!?」

-----------------------------------------------------------

終わり
申し訳程度のバレンタイン要素
青葉との密着取材の部分は我が書き換えたのだ
では読んでくれた方は有難う御座いました
ハッピーバレンタイン

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom