ほむら「色とりどりの果物」QB「取れたてだよ!」 (26)

ほむら「へぇ、あなた菜園なんかやっていたの」

QB「そうさ、人間のことを良く知るためには人間の真似をするのが一番だからね!」

ほむら「…これは?」

QB「ややっ!目が高いね!」

QB「それはラズベリーだよ!」

ほむら「取れたてにしては色が悪いようだけれど」

QB「それはすこし傷んでいるよ」

ほむら「取れたてなんて言えないじゃない」

QB「このラズベリーは傷んでからが本番なんだ」

ほむら「…はぁ?」

QB「ほら、このあたりとかすこし黒ずんでいるだろう?」

ほむら「そうね」

QB「その傷んでいるところと新鮮なところが合わさっている」

QB「それがこのラズベリーの売りなんだよ!」

ほむら「…」

QB「ひとつ食べてみないかい?」

ほむら「…」

QB「大丈夫だよ、毒なんか入っていないさ」

QB「それに毒を持ったところで君には無害に近しいだろう?」

ほむら「そうね」

ほむら「…」パクッ

QB「…どうかな?」

ほむら「…悪くないわ」

ほむら「傷んでいるとはいえ流石ラズベリーね」

ほむら「程よい甘味と酸味が押し寄せてくる」

ほむら「…いえ、むしろ傷んでいるからこそ癖になる味が出せるのかしら」

QB「そうだろう?」

QB「気に入ってくれたかい?」

ほむら「…」

ほむら「…」

ほむら「いいえ」

QB「え?」

ほむら「むしろ吐きそうになるわ」ペッ

QB「なんてことするんだい」

ほむら「知らないわよ、ただこれを飲み込むことを体が許さないの」

ほむら「ええほんと、吐きそうになる味」

QB「…そうかい」

QB「ならこれはどうだい?」

ほむら「…ここは?」

ほむら「また随分と大げさなところね」

QB「そうだよ、ここで育てているパインは甘くなるように徹底しているからね」

QB「聞いてご覧よ、この音楽」

QB「ここの雰囲気とマッチしているだろう?」

ほむら「…そうね」

QB「一切れ食べてみないかい?」

ほむら「…頂くわ」パクッ

ほむら「…」モグモグ

QB「どうだい?」

ほむら「そうね、さっきのラズベリーとは違ってとっても甘いわ」

QB「そうだろう?」

ほむら「こんな優しい味、普通なら出ないでしょうね」

ほむら「それに酸味も少ないわ」

ほむら「いくらでも食べられる」

QB「ふふふ」

ほむら「…」

QB「気に入ってくれたかい?」

ほむら「いいえ」ペッ

QB「…」

ほむら「甘ったるくて胸焼けしそう」

ほむら「顔が歪むほどの甘さだわ」

QB「これも気に入ってくれないのかい」

ほむら「当たり前でしょ」

ほむら「こんな甘いもの、もう二度と食べたくない」

QB「…そっか」

QB「ならこれはどうかな?」

ほむら「…これは?」

QB「さくらんぼだよ」

ほむら「さっきと違って今度は草が生い茂っているわね」

QB「このさくらんぼは無農薬なんだ」

ほむら「へえ、良く見ると大きさもまちまちだけれど」

QB「そうだよ、このさくらんぼは野生に近い形で育てているからね」

QB「だからこそ、ここまで強く育つんだ」

ほむら「…」

QB「ひとつ食べてみないかい?」

ほむら「…ええ」パクッ

ほむら「…野性味の強い味」

QB「そうだろう」

ほむら「…ラズベリーよりも強い酸味と」

ほむら「だけどほんの少しだけ見え隠れする甘味」

QB「どうだい?」

ほむら「悪くはないわ」

ほむら「悪くは、ね」

QB「…気に入ってくれたかい?」

ほむら「…いいえ?」ペッ

ほむら「こんなもの商品としてすらなりっていない」

ほむら「きちんとした過程を経ないものは」

ほむら「どんな事を宣ったって大したものにはならないわ」

ほむら「…言うなれば出来損ないね」

QB「ひどいこと言うなぁ」

ほむら「ひどい出来よ」

QB「…これならどうかな?」

ほむら「…」

ほむら「これは?」

QB「桃だよ」

QB「実験に実験を重ねようやくできたんだ」

QB「もともと親となった桃はすごい素質を持っていた」

QB「そうして生まれたのがこの桃なのさ」

ほむら「そう」

QB「しかもパインやさくらんぼのように極端な育て方はしていない」

QB「ほど良いバランスで成り立った僕たちの最高傑作なんだ」

ほむら「…」

QB「どうかな?」

ほむら「…ええ」パクッ

ほむら「とっても甘い」

ほむら「それに雪のような口溶けね」

QB「そうだろう?」

ほむら「程よい酸味がまた甘さを引き立てているわ」

QB「…」

ほむら「すべてを包み込むような、大好きな味…」

QB「…今度こそ、気に入ってくれたかい?」

ほむら「…」

ほむら「…」

ほむら「…いいえ」ペッ

QB「…」

QB「どうしてだい?」

ほむら「大好きな味だからこそ吐き気がするわ」

ほむら「甘くて酸っぱくて」

ほむら「愛おしくて切なくて」

ほむら「…二度と味わいたくない」

QB「…これも気に入ってくれないんだね」

ほむら「…分かっているくせに」

QB「…」

ほむら「知っているんでしょう?」

ほむら「私はもう、どんな味も欲しくないの」

QB「…」

ほむら「…あれは?」

QB「…え?」

ほむら「あれよ、あれ」

QB「…あぁ、あれかい?」

QB「どこから生えてきたんだろうね、全くわからない」

QB「ぶどうはぶどうなんだけれどね」

ほむら「…」ヒョイ

QB「それは僕たちが育てたわけではないよ?」

ほむら「うるさいわね」パクッ

QB「…」

QB「…ひどいものだね」

QB「…形こそは立派だけれど」

QB「中身はグズグズだ」

ほむら「…」

QB「…ほとんど腐っていると言った方がいい」

ほむら「そうね」

ほむら「甘すぎて酸っぱすぎて最悪の食感」

ほむら「…ふふ」

QB「…どうしたんだい?」

ほむら「ほんと、酷い味」

QB「…」

ほむら「酷い味だけれど、ね」ゴクン

QB「…そんなものが気に入ったというのかい?」

ほむら「…いいえ」

ほむら「だけれど何故か、飲み込まないといけないような気がしたの」

QB「わけがわからないよ」

ほむら「そうね、私も」

ほむら「どうしてこうなったのか、分からない」





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「むら…ん!」

「…むら、ちゃん!」

「ほむらちゃん!」

ほむら「…ん」

まどか「次移動教室だよ?」

ほむら「…私は…」 

まどか「ウェヒヒ、疲れてたんだね、気持ちよさそうに眠ってたよ」

ほむら「…そう」

まどか「ほら!早く行こ!」

ほむら「…まどか」

まどか「…え?」

ほむら「……」

ほむら「いえ、とっても似合っているわ、そのリボン」

まどか「…あ、これ?ウェヒヒ、ほむらちゃんがくれたんだもん!」

まどか「お気に入りだよ!」

ほむら「…」

ほむら「…」

ほむら(そうよ、私は)

ほむら(自分でこの世界を望んだの)

ほむら(誰の理解もいらない)

ほむら(誰の助けもいらない)

ほむら(誰とも関わってはいけない)

ほむら(…形こそは立派だけれど)

ほむら(中身はグズグズ…ね)

ほむら(よく言ったものだわ)

ほむら「…ええ、行きましょう、まどか」








ほむら(願わくば、この最高の悪夢をいつまでも)

おてぃまい
おてぃんてぃん

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