榛名「榛名だってイチャイチャしたい」 (449)


――金剛型ティータイム

霧島「ん?」

比叡「へ?」モグモグ

榛名「……です」

金剛「……」コクリ

金剛「榛名、もう一度言ってごらん?」

榛名「う……その……」

【18禁(予定)】


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417699343


・この物語は、夕張「提督の夜のデータ」
夕張「提督の夜のデータ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409305994/)
の続きになります

・この物語は、私の脳内妄想劇場です。あなたの鎮守府の娘たちとは多少相違があるかもしれません

・キャラ崩壊、口調崩壊あります

・書くの遅い



金剛「……」ジー

榛名「な、なんでも……ない、です……」シュン

金剛「はぁ……」

金剛「榛名……どうしてそこで尻込みするノ?」

榛名「……え?」

金剛「榛名だって、提督が好きなんでショー?」

金剛「だったら遠慮なんかしちゃ、ノー! なんだからネー!」

金剛「これをlook!」ピッ


テレビ『どもども、青葉です! どうですか榛名さん、楽しんでますかー?』

榛名「……?」

テレビ『姉の金剛さんや先任戦艦の陸奥さんすら抜いて、鎮守府のエースと名高い榛名さんですが……ずばり、何を目標に頑張っているのですか?』

比叡「これは……?」

金剛「私達金剛型がここに揃った時の記念partyのvideoネー!」

霧島「それはまた懐かしいものを……どこから引っ張り出してきたんです?」

金剛「この前青葉に貰いました!」


テレビ『目標……ですか? それはもちろん、提督のお役に立つことです』

榛名「榛名、こんなインタビュー受けた記憶ありません……」

金剛「この時の榛名、珍しく酔ってたからネー」

テレビ『提督の期待に応えたい、勝利を提督に捧げたい……そう思って榛名は頑張ってきました。それは、これからも変わりません』

テレビ『そしてゆくゆくは、提督のお嫁さんになれたら……なんて』

榛名「」

榛名「な!? なっ……!?」パクパク


テレビ『おぉ!? なんかよくわかりませんが、急に大胆発言頂きましたー!』

テレビ『っ……っ……』テレテレ

霧島「自分で言って照れてる……」

榛名「えっ? えっ……?」カァァァ

比叡「それはこっちの榛名も同じみたいだけど」

金剛「ん~…流石私の妹ね! 榛名は昔も今もso prettyダヨー!」ギュー

榛名「わぷっ、お、お姉さま……?」

金剛「榛名の提督へのloveはもうみんな知ってるんだから、今更恥ずかしがらなくても良いデショー?」ギュー

比叡「お姉様、その初々しさも榛名の美徳ですよ」

金剛「Oh! もちろんわかってるヨー?」


金剛「このvideoからもわかるように、榛名は提督とイチャイチャしたい! そうデショー?」

榛名「は、はい……」カァァ

金剛「OK! ここは私達に任せておいて!」

榛名「え……よろしいのですか? その、お姉さまも提督のこと……」

金剛「ノープロブレム! 私も提督のことは好きだけど……妹の幸せを願うのも、姉の役目ネー」

金剛「それに榛名、最近頑張ってたでしょう?」

比叡「たしかに、ミッドウェーの時も渾の時も……本土防衛の旗艦を任されてたのは榛名でしたね」

霧島「最近の出撃でも、好成績を残してます」

金剛「イエース! そろそろ大本営から練度向上の認可が降りても良い頃……と、提督も言ってマシタ!」

榛名「ほ、本当ですか!?」パァァ


霧島「練度があがったら、99……榛名も、ケッコンカッコカリできるようになるんだね」

榛名「榛名……やっとここまで……」

金剛「これでバリちゃんに追いつける……だから、もう遠慮はいらないんダヨ?」

榛名「お姉さま……」

金剛「これは頑張った榛名へのご褒美とお祝いネー!」

金剛「各自、提督が榛名loveになるための案を考えてくること!」

霧島「私も、ですか?」

金剛「オフコース!」

比叡「お姉様の頼み、榛名のためなら……気合、入れて、行きます!」

霧島「そうね……艦隊の頭脳。榛名のために使いましょう!」

金剛「大船に乗ったつもりでいてクダサーイ!」


榛名「あ、ありがとうございます!」

比叡「よし、榛名! 今夜は前祝いに飲んで食べて!」

榛名「ひ、比叡姉様、気が早いですよ……」

比叡「いいからいいから!」

ワイワイ

金剛「……」ニコニコ

霧島「金剛お姉様、本当によろしいのですか?」コソッ

金剛「ん~? ノープロブレム! 榛名は今まで本当に頑張ってきました。その努力は報われるべき……私はそう思いマス。それに……」

金剛「私はハーレム賛成派デース!」

霧島「ハーレム、それは……」

金剛「わかってます。But……提督が本当に1人しか選んでくれないのなら、それは……きっとバリちゃんネ。 私ではなく……」

霧島「お姉様……」


金剛「榛名は……私たち、いえ、この艦隊の中でバリちゃんの次に提督に愛されてる娘だと私は思いマス」

金剛「だから、なんとか榛名とジュウコンさせてハーレムへの抵抗を減らし、そこから姉妹まとめて可愛がってもらいマース」

霧島「なんと」

霧島(したたかっ)

金剛「……と、考えていますけど、正直そう上手くいくかはわかりません」

霧島「そもそも、提督がちゃんと榛名と"そう"なってくれるかすら……」

金剛「……」コクリ

金剛「でも、榛名に幸せになって欲しいって気持ちも、自分も提督に愛されたいって気持ちも……嘘ではないデス」

霧島「……お姉様」

金剛「……」ニコリ

金剛「私はきっと、夢を見させて欲しいんだと思います」

霧島「夢……ですか?」

金剛「提督はバリちゃんも私達もみんなまとめて愛してくれる……そう思いたい。だから、私は……」

霧島「……」

金剛「……私はきっと、良いお姉さんではないデスね」

って感じでだらだら不定期更新で書いていきたいと思っているので、どうかよろしくお願いします


――叢雲の部屋

提督「……」

叢雲「……それで、何の用なのよ」

提督「いや、その……相談に」

叢雲「……」ジトッ

提督「……」メソラシ

叢雲「また面倒くさい話じゃないでしょうね? 少なくとも、アンタがヘタれな話なんてもう聞く気はないからね」

提督「……い、いや、今回は違う、と思う」

叢雲「今の間は何」

提督「う……し、仕方ないだろ!? こういう相談できるの、お前ぐらいだし!」

叢雲「……」ワタシダケ

叢雲「はぁ……まあいいわ。話してみなさい」


叢雲「榛名とジュウコンすべきかどうか……ですって?」

提督「はい……」

叢雲「……あんたね、"そういうの"私が助言したとして、その通りにするわけ?」

提督「それはわからない……けど、参考に、というか」

叢雲「参考、ね……」

提督「……」

叢雲「まあジュウコンしたら、少なくとも夕張は悲しむでしょうね」

叢雲「あんただって、それがわかってるから私に相談しにきたんでしょ」

提督「……」

叢雲「でも、そんなに深く考えなくても良いんじゃない? ケッコンカッコカリは、あくまでも艦娘の限定解除が目的なわけだし」

青葉「それはどうですかねぇ」

提督「」ギョッ


青葉「ケッコンカッコカリ……確かに主目的はそうでしょうけど、私達にとってそう簡単なものではないですよ。なんせケッコンですからね。大本営も思い切ったことをしたものです」ウンウン

青葉「申請には婚姻届にも似た書類が必要になりますし、その媒体は指輪です。加えて、初めてケッコンカッコカリした時に大本営から何が送られました?」

提督「……布団だ」

青葉「そうです! もはや同衾しろって言ってますよね! ケッコンカッコカリするほど苦楽を共にし、確固たる絆を築いた男女が同じ布団で寝て何も起こらないことがありましょうか!?」

叢雲「……半年手を出せなかった男ならそこにいるじゃない」

提督「うぐっ」

青葉「ヘタれの話は今はいいんです!」

提督「ぐはっ」

青葉「大事なのは、大本営が同衾を咎めないどころか推奨してる節すらあるということですよ!」

青葉「これは、大本営が提督と艦娘が関係を結ぶことを黙認する、と言っているようなものです!」


青葉「そんなケッコンカッコカリを突きつけられて、期待しない人はいませんよね? 夕張さんだってそうだったでしょう?」

青葉「ですから当然、榛名さんも期待してますよ! もちろん青葉もです!」

叢雲「……あんた、練度いくつだっけ?」

青葉「1です!」

叢雲「……」

青葉「……」ブワッ

青葉「どうせ青葉はケッコンカッコカリに最も遠い艦娘の一人ですよ!」シクシク

叢雲「別に何も言ってないじゃない。それよりあんた、どこから入ったわけ?」


青葉「むぅ、流石叢雲さん……青葉の突然の侵入にも涙にも冷静ですね。鎮守府最古参の年季は伊達じゃないってことですか……ぐすっ」メモメモ

提督「あ、青葉お前いつから……」

叢雲「……あんた、つけられたわね」

青葉「考え事してる提督は無防備で助かります」フフン

提督「なんと……」

叢雲「でも、部屋の鍵はかけておいたはずだけど?」

青葉「開いちゃいました」テヘペロ

提督「それは開けたって言うんだよ!?」

青葉「最近、川内さんに弟子入りしましたから、気配消しもバッチリです」ニンニン

青葉「でも安心してください! 今回の話はオフレコにしますから!」

提督「……本当か?」

青葉「処女かけてもいいですよ!」

叢雲「……」

提督「……」


青葉「処女かけ「おい」」

提督「女の子なんだから身体は大切にしなさい」

青葉「はい」

叢雲「それで、あんたはどうしたいわけ?」

提督「え?」

叢雲「ジュウコンの話よ」

青葉「ちなみに、ジュウコンは大本営も公に認めていますよ!」

提督「……"提督"としては、榛名の練度をこのまま99で燻らせとくのは勿体無いと思ってる。だから、指輪は受け取ってもらいたい」


叢雲「……」

提督「でも、俺には夕張がいるから……榛名とそういう……恋仲、みたいになるのは無理だ」

叢雲「そ。ならそう言えばいいじゃない」

提督「っ、でもそれは」

叢雲「榛名を傷付ける?」

提督「っ」

叢雲「そんなの当たり前じゃない。こんな惚れた腫れたの話だもの、あんたが1人しか選べないって言う以上、みんな幸せなんて無理な話だわ」

提督「う……」

叢雲「無理なら無理って、はっきり言ってやるのも優しさよ」


青葉「……」ニヤニヤ

叢雲「……なに」

青葉「司令官、叢雲さんはこう言いたいんですよ」

青葉「『あんたもこの艦隊を纏める提督なら、私達みんなまとめて囲うぐらいの甲斐性見せなさいよ!』」

提督「……」キョトン

叢雲「……」スッ

青葉「あ、あらぁ? 叢雲さん、それ魚雷ですよ? え、待って、あや謝んぶ」

叢雲「あんた、もう帰りなさい」グイグイ

提督「え……」

叢雲「私は私の考えを言ったわ。あとは、あんたがちゃんと考えて決めないと駄目よ」

提督「……そう、だよな」

叢雲「まったく……あんたはいつまで経っても頼りないのねぇ……」

提督「……」

叢雲「大丈夫よ。あんたがちゃんと考えて決めたことなら、きっと悪いようにはならないわ」

提督「……ああ」


――翌朝 廊下

比叡「――だからそこで言ってやったわけ、ケーキ オン ザ 苺……ってね!」

榛名「ふふふ、比叡姉様ったら」

金剛(苺の上にケーキ……)

ダダダッ

金剛「お?」

ドタドタドタ

霧島「これは……また、ですかね」

提督「赤城てめぇこらぁ!」ダダダッ

赤城「……」タタタ

提督「また備蓄の食料食いやがったな!?」

赤城「……っ」タタッ

金剛「ヘイ提督ぅ! 朝から大変そうですネー!」

提督「おう金剛シスターズ、おはよう! じゃあ急ぐから!」

金剛「応援してまーす!」

提督「」グッ


提督「っとと、榛名!」

榛名「は、はい!」

提督「大事な話があるから、後で執務室に来るように」

榛名「はい! 大事な……大z、えぇ!?」

赤城「……」モグモグ

霧島「あの、司令……赤城さんがまた何か食べながらこっち見てますけど……」

提督「なん……てめぇそれ! 俺の備蓄のダッツじゃねぇか!?」

赤城「上々ね」ウットリ

提督「本当に毎度毎度……鳳翔さんも間宮さんも大変ご立腹です! 今日はもう許さんからなっ!」ダッ

赤城「……ふふっ」タタタッ

ドタドタドタ

夕張「待ってぇ……」パタパタ

パタパタパタ


霧島「……嵐のようでしたね」

比叡「ひえ~……しかし、赤城さんも懲りませんねぇ。お腹が減るなら、お菓子なり保存食なり買い込んどけば良いのに」

金剛「ノー。アレはただ、提督に構ってもらいたいだけネー」

比叡「えっ」

金剛「比叡は着任が遅かったですから、あの赤城しか知らないんデスネ」

霧島「昔の赤城さんは、まさに大和撫子。才色兼備、クールビューティのお姉さんって感じだったんですよ」

比叡「……まっさかぁ」ハハッ

金剛「ホントダヨ? まああの頃から食べる量は多かったですが……分別もあったし、何より大事なのは戦果をあげることって感じでしたから」

霧島「でも、ある日を堺に提督と親しげになったなーって思ってたら、"ああ"なってました。時々熱のこもった目で提督を見つめてますから、赤城さんも提督にホの字なのでしょう」

金剛「まあ今までキリングマシーンのようにやってきたみたいですから、アプローチの仕方も甘え方もわからない……といったところでしょうね!」

比叡「流石お姉様! 素晴らしい分析です!」

金剛「ふふーん」

霧島「……」ワタシハ?

榛名「……」

金剛「それより……」


金剛「はーるな!」ギュッ

榛名「きゃっ」ビクッ

榛名「お、お姉さま……?」

金剛「んふふ……大事な話、楽しみですネー」ニコッ

榛名「あ……は、はい」カァァ

霧島「これはもしかすると、もしかしちゃうんじゃない?」

榛名「そ、そうかな……?」ソワソワ

比叡「勝負パンツ……履く?」

榛名「しょ、しょ……ぱ……!?」

霧島「姉様、先走り過ぎ」


――――
――

ドタドタ

提督「あか、赤城……ぜぇ、待てこら……はぁ」

赤城「うふふ、体力落ちたんじゃないですか? 提督」

提督「うっせぇわ! 絶対捕まえたるかんな!」ダッ

赤城「負けません!」タッ

赤城「あら?」

加賀「……?」

加賀「赤城さん? なに――」グイッ

赤城「さあ、加賀さんも一緒に」タタッ

加賀「ちょ、ちょっと赤城さん、わけがわからないのだけど……」タタタ

提督「加賀お前もかぁぁ!」

加賀「?」

赤城「うふふ、楽しいですね!」

加賀「え?」

赤城「提督との追いかけっこ」

加賀「追いかけっこ……」クルッ

提督「待てこらぁぁ!」

加賀「……」

加賀(提督に追いかけられている……)

――加賀ビジョン

提督「待て~!」キラキラ

加賀「!」

加賀「流石に気分が高揚します」ダッ



提督「ぜ、はぁ……くそっ、流石に体力に差がありすぎる……こうなったら!」

提督「」ピューイ

提督「……」タタタ

ポイ

提督「……」タタタ

ポィィィイイイ

提督「……来たか」

夕立「提督さん! お呼びっぽい!?」ガバァ

提督「うわっぷ」ドターン

時雨「……」ギュッ


夕立「提督さん! 提督さん! ご用事はなぁに?」ワフワフ

提督「おぉよしよし。お願いがあってな……」

時雨「いいよ。何でも言ってよ」

提督「赤城と加賀を捕まえてくれ」

時雨「またつまみ食いでもしたのかな?」

提督「そういうことだ」

夕立「任せて! 夕立、提督さんのためなら何でも頑張れるっぽい!」チラッ

時雨「うん」コクリ

夕立「さあ、最高に素敵なパーティしましょ!」ズギャッ

時雨「時雨、行くよ……!」シュン


赤城「この2人をけしかけるのは卑怯です!」スマキ

加賀「駆逐艦と侮りました」スマキ

夕立「夕立ったら、結構頑張ったっぽい? 提督さん、褒めて褒めてー♪」

提督「もちろんだ! でかしたぞ夕立!」ナデナデ

夕立「」ムフー

時雨「……」チラッチラッ

提督「時雨も、よくやってくれたな」ナデナデ

時雨「あ……」パァァァ

提督「さて……」

赤賀「「」」ビクッ


提督「お前ら、ホントいい加減にしろよな。どうして食料庫に手をつける? 3食に加え、食べるに困らない程度の給料は与えているはずだが」

赤城「……」ヒューヒュー

加賀「赤城さん、吹けてません」

提督「はぁ……夜中腹が減った時のために予め食料買っておけ。どうしようもないなら食料庫に行く前に俺の部屋に来い」

提督「俺だって多少料理の心得はあるし、夕張もいる。ある程度の食べ物なら部屋に置いてあるから、何かしらは出してやれるだろう」

赤城「提督の手料理!?」ガタッ

加賀「流石に気分が高揚します!」ガタッ

夕立「夕立も食べたいっぽい!」

時雨「ここは譲れない」

提督「お、おう……まあそれはそれとして、罰は受けてもらうけどな」パチン


明石「どうもお疲れ様でーす」

赤城「えっ」

加賀「ちょ」

提督「おーおーいい顔だな。ふふふ、怖いか」

提督「じゃ、あとよろしく」

明石「本当によろしいんですか?」

提督「あくまで罰の範囲でな」

明石「」グッ☆

赤城「ま、ままま待ってください!」

加賀「反省してます」

明石「あ、そうだ。せっかく2人だし、アレ、試してみようかな」

赤城「アレ!? アレってなんですか!?」

加賀「流石に気分が落ち込みます」

提督「あ、後から夕張も行くからな」

赤賀「「」」

時雨「鎮守府の二大変態エンジニア(褒め言葉)が仕置人とは、流石に同情するよ」

明石「それじゃ、工廠までごあんな~い」

赤城「一航戦の誇り、こんなところで失うわけには……」ズルズル

加賀「そんな……馬鹿な」ズルズル


夕立「提督さん! 夕立、提督さんの手料理がたべたい!」

提督「お?」

時雨「僕もお願いしても良いかな」

提督「機会があったらな」

夕立「……」ジー

時雨「……」ジー

提督「……わかった。約束な」

夕立「」ポーイ

時雨「」パァッ

提督「それじゃ、今回はありがとな。戻っていいぞ」

夕立「はーい」

時雨「また何かあったらいつでも呼んでよ」

パタパタ

夕張「や、やっと追い……追いつきました」


提督「おお、遅かったな」

夕張「……どうせ速力も体力もありませんよ」

提督「怒るな怒るな。2人は明石が連れてったから」

夕張「はい。私も後で向かいますね……」

夕張「ところで、提督?」

提督「は、はい」

夕張「昨夜は、いったい何処に言ってたんですか……?」

提督「いや、その、アレだよ。散歩……少し、考えを纏めたくて」

夕張「……榛名さんのことですか」

提督「……うん」

夕張「……」

提督「その、とりあえず指輪は渡そうと思う」

夕張「っ」ズキッ


提督「……提督として、榛名を今の練度のまま燻らせておくのは勿体無いと判断した」

夕張「そう、ですか……」

提督「もちろん、榛名と関係を結ぶつもりはないし、その旨もちゃんと伝える」

夕張「……」

提督「……お前が嫌だって言うなら、指輪渡すのもやめるけど」

夕張「……」ムー

夕張「仕方ありません、ね……艦隊のためを思えば、榛名さんの強さは不可欠です」

夕張「でも!」

提督「」ビクッ

夕張「ホントのお嫁さんは私、なんですからね!」ニコリ

提督「は、はい!」


――――
――
――執務室前

榛名(ケッコンカッコカリ……昨年の秋頃、大本営が発表したシステム)

榛名(それまで上限があった艦娘の能力を引き上げるもの)

榛名(その媒体として指輪が用いられ、初めてケッコンカッコカリした提督と艦娘には布団が送られる……)

榛名(榛名は、提督の初めてにはなれなかったけど、これでやっと……)ドキドキ

榛名「はっ……いけません。まだその話かどうかもわからないのに……」

榛名(そう言い聞かせても、鼓動は早鐘のように鳴って収まらず、扉に伸ばした手は期待と緊張で震えている)

榛名「……よし! 榛名、いざ! 参ります!」


ガチャ

榛名「きゃっ」

夕張「あ、ごめんなさい! って……榛名さん?」

榛名「ゆ、夕張さん……」

夕張「どうしたんです? 扉の前で突っ立って」

榛名「榛名はその、提督に呼ばれて……」

夕張「ああ……そう、ですか」


榛名「……」

夕張「……」

夕張「どうぞ、入ってください。私はこれから、少し席を外しますので」

榛名「あ、はい。失礼します」

夕張「……おめでとうございます、榛名さん」

榛名「え?」

夕張「でも、提督は渡しませんから。それじゃ」

スタスタ

榛名「……榛名だって、負けません」

トントン

榛名「提督、榛名です。今、よろしいでしょうか」

ドア<おー、入ってくれ


榛名「失礼します」

提督「おう。まあ座ってくれ」

榛名「はい。失礼します」

提督「……」

榛名「……」

提督「昨夜、大本営から通達があった。榛名、お前の練度は99だ」

榛名「あ……ほ、本当、ですか」

提督「ああ」

榛名「」パァァァ

提督「今まで、本当によくやってくれた。榛名には本当に感謝しているし、頼りにもしている」

榛名「そんな……榛名には勿体無いお言葉です」

提督「それで、その……俺も提督として、榛名がこのまま練度が上がらないのは勿体無いと考えてる」

提督「だから……」スッ

提督「指輪を用意させてもらった」


榛名「あ……」ジワッ

提督「もちろん、受け取るかどうかは榛名次第だ。嫌だったら、断ってくれて良い」

榛名「とんでもないです! 榛名はずっと、提督のことをお慕いしています」

提督「……ありがとう。その気持ちは、本当に嬉しい」

提督「でもな、榛名。だからこそ、渡す前にこれだけは言っておかなくちゃいけない」

榛名「はい……?」

提督「知っての通り、俺はもう夕張とケッコンカッコカリしている」

榛名「……」

提督「……俺が好きなのは夕張だ。だから、もし榛名とケッコンカッコカリしても、榛名と恋人……のような関係になることはできない」

榛名「……え?」


榛名「ど、どうして、ですか……?」

榛名「だって、ケッコンしたら、榛名も……え……?」

提督「すまない」

榛名「あ……」ジワッ

榛名「……」ポロポロ

榛名「……ごめんなさい」グイ

榛名「少し……考えさせてください」


――廊下

榛名「……」

榛名(あの時、最初は何を言われたのかわからなかった)

榛名「……提督」ジワッ

榛名(ケッコンカッコカリすれば、提督の寵愛を受けられるのだと思っていた)

榛名(恋人のように寄り添って過ごせるのだと思っていた)

榛名(愛してもらえるのだと……)

榛名「うぅ……」ポロポロ

榛名名(でも、黙って頭を下げる提督の姿に、そんなものは榛名の勝手な思い込みで、幻想でしかなかったのがわかった)

榛名("わかって"しまった)

今回はここまで
ありがとうございました


金剛「ヘイ榛名! こんなとこで立ち止まってドウシ……榛名?」

榛名「あ……」ゴシゴシ

榛名「き、奇遇ですね! お姉様!」

金剛「ん~?」ズイ

金剛「どうしたの? どうして泣いてるの」

榛名「い、いえ、泣いてなんて……榛名は大丈夫です」

金剛「榛名?」

榛名「……」

榛名「提督に、はっきり言われてしまいました……恋仲にはなれない、と……」

金剛「……嘘」


榛名「榛名、馬鹿みたいですよね? 勝手に盛り上がって、はしゃいで……」グス

金剛「榛名……」

比叡「お姉様~!」タタタ

比叡「あら? お取り込み中でした?」

比叡「……? 榛名、どうして泣いてるの……?」

榛名「比叡姉様……」


比叡「……なるほど。話はわかりました。提督も罪作りな人ですね」

金剛「いえーす……」

比叡(それでお姉様も元気ないのか……まあお姉様はこれぐらいで諦めるとは思えないけど)チラッ

榛名「……」

比叡(このままだと、榛名はヤバそうかな)

比叡「でも、まあ……榛名。いいんじゃない? 今がどうだってさ」

榛名「え……?」

比叡「たしかに今、提督と夕張は好き合ってる。それは覆らない」

比叡「でもさ、結婚したわけじゃない。ケッコンカッコカリはあくまでもシステムで、(仮)なんだよ」

比叡「だから、まだ大丈夫だよ」

比叡「最終的に、提督が本当に"結婚"するってなった時に、榛名が嫁になってれば良いんだから」

榛名「比叡、姉様……」

比叡「あ、でも金剛お姉様が提督の嫁になるのだとしたら……あれ、どうしたら良いんだろう……」

金剛「比叡……天才ですか?」

比叡「ひゃっほーい! お姉様に褒められたぁぁぁ!」


榛名「最終的に、榛名が……」

金剛「たしかにその通りデース。私としたことが、少し弱気になりました……」

金剛「私のLVOEは、一度フラれたぐらいで諦められるような簡単なモノじゃありまセン」

金剛「たとえ提督が私以外の人を愛していても、何度フラれても……きっと私は提督のことが好きだって胸を張って言い続けます」

榛名「お姉様……」

金剛「どんなに辛くても苦しくても……私は、この恋を諦めたくない」

榛名「それなら!」

榛名「それなら榛名だって同じです! 榛名だって提督に愛されたい! 抱きしめてもらいたい! 好きだって!」

榛名「……好きだって、言ってもらいたいんです」


金剛「だったら、やることは1つ、デショ?」ニコッ

比叡「そうだよ。なりたいんでしょ? 提督のお嫁さん」

榛名「はい」

比叡「諦められるの? 提督のこと」

榛名「諦めたくありません」

比叡「え? 聞こえないよ?」

榛名「榛名、諦めたくありません!」

比叡「その言葉が聞きたかった」

金剛「……比叡、考えてきたんですね?」

比叡「ええ……私の案はこれです!」

比叡「王道に、提督に尽くましょう! 男はみな貞淑で従順な良妻が好きと言いますし、榛名にもぴったりです!」

金剛「……」

榛名「良妻……」

祥鳳「それ、今までと変わらなくないですか?」

比叡「」ガーン


金剛「Oh! 祥鳳、ビックリするから急に出てこないでクダサーイ」

比叡「」

祥鳳「私が思うに、榛名さんに足りないものはズバリ、"押し"!」

祥鳳「榛名さんの奥ゆかしさ、そして良妻に成り得るその潜在力は既に十分過ぎるほどアピールできてるはずです」

金剛「……なるほど。一理ありマース」

祥鳳「ここで必要なのは攻め! あの奥ゆかしい榛名さんがまさか、こんな大胆な……! そう思わせるギャップが最高に萌えるんです」

金剛「たしかに榛名は少し堅苦しすぎますネー」

金剛「もっと私のようにフランクに接しても良いはずデース」

榛名「お姉様のように、ですか……? ですが榛名、お姉様のように可愛らしく愛嬌を振りまくのはその、恥ずかしい、です……それに、もし拒絶されたら――」

金剛「ノー! 榛名、イチャイチャしたいんでしょう?」


金剛「アプローチするのって確かに不安だし怖いかもしれません。でも、だからって何もしなかったら叶うものも叶わないヨ?」

榛名「……」

金剛「大切なのは、気持ちを伝えること! この際提督の都合なんて度外視ネ!」

金剛「察しと思いやりがJapaneseの美徳なんて言うけれど、言葉にしなきゃ、態度で示さなきゃ伝わらないこともあるヨ」

金剛「もちろん、時と場所とムードも大切にネ!」

榛名「お姉様……」

祥鳳「そうですね……まずは、提督と過ごす時間を増やしてみてはどうでしょう? 例えば――」

比叡「秘書官になる! ですね!」

榛名「榛名が、秘書官に……?」

金剛「イエース!」

榛名「……はい! 榛名、頑張ります!」


――翌朝 執務室

提督「は……?」

夕張「え……?」

榛名「榛名にも秘書官をやらせてください」

提督「えっ、でも、それは……」チラッ

夕張「……」

提督「その、指輪は受け取ってくれる、ということでいいのか? ……昨日のことを承知した上で」

榛名「はい。提督が、榛名と"そう"なってくれないことはわかりました。でも、少しでも榛名をお側において欲しいんです……」

榛名「週に何回かで構いません。夕張さんと交代で秘書官を務めさせてください」

夕張「……」

榛名「だめ、でしょうか……」

夕張「……その提案は、宣戦布告、と受け取っていいんですか?」

榛名「……」ニコッ

提督「宣せっ!? で、でも榛名、俺は――」

夕張「提督は黙っていてください」

提督「お、おう」ビクッ

夕張「……」ズズズ

榛名「……」ゴゴゴ

ドドドドドド

提督(やだ……こわい)


夕張「……」フゥ

夕張「わかりました」

提督「夕張!?」

榛名「……いいんですか?」

夕張「正妻の余裕ってやつです」

夕張「不安なら、そんな提案受け入れるわけないですよね?」フフン

榛名「」ムッ

榛名「その余裕、榛名が崩してみせます」

夕張「無駄です。提督は私にゾッコンなんですからぁ!」

提督「……あの、そういう話俺の前でしないで欲しいんだけど」


――――
――

夕張「うわぁぁ! 助けてむらえもーん!」ガバァ

叢雲「……遠征から帰ってきて早々なんなの」

秋月「あの……」

夕張「うわぁぁぁ」ギュー

天津風「夕張さん?」

叢雲「……」

夕張「叢雲ちゃんいい匂いする!」スンスン

叢雲「」ヒュッ

夕張「へぶぁ!」

叢雲「さ、遠征の報告に行きましょ」

秋月「え、でも、あの……」

叢雲「いいから」スタスタ

天津風「……夕張さん、ああいうこともするんですね」

おかしい……
榛名とイチャイチャさせるつもりが、何故こんな小難しい感じに……(クリスマス叢雲超可愛かったですね!)

長らくお待たせしててすみませんが、今回はここまでです。ありがとうございました


――――
――執務室

叢雲「……」

榛名「」ニコニコ

提督「……」

叢雲「珍しいわね。夕張が秘書官じゃないなんて」

榛名「はい! 今後は夕張さんと交代で務めさせて頂きます」

叢雲「へぇ……」ジトッ

提督「……」サッ

秋月「あの! 榛名さんもケッコンされたんですよね? おめでとうございます!」

榛名「ありがとうございます」ニコッ

天津風「ねえ」

提督「ん?」

天津風「あなた、練度が99になった娘とは……その、誰とでもケッコンカッコカリしてくれるの……?」

提督「うぇ!? えっと……」チラッ

叢雲「……」コッチミンナ


提督「……まあその、なんだ。そういうことになるかもしれないな。もちろん練度向上のためだぞ? やましいことはないし、するつもりもない。榛名とのケッコンカッコカリだって練度のためで、ビジネスライクなものだ」

榛名「そう、ですね……残念ながら、今はまだ」

秋月「今は」

天津風「まだ?」

提督「榛名」

榛名「申し訳ありません。出すぎた発言でした」

榛名「提督の仰る通りです。榛名はもう、フラレてますから」

秋月「えぇっ!?」

天津風「嘘っ!?」

叢雲「へぇ……?」

提督「……」


秋月「でも、それならどうして榛名さんが秘書官を?」

榛名「それは榛名の我儘を聞いて頂いただけです」

天津風「それじゃあ榛名さんはまだ……?」

榛名「ええ。お慕いしています。残念ながら、榛名は提督の特別にはなれなかったようですが……今はこうして指輪をいただいて、お側にいさせて頂けるだけで嬉しいんです」

提督「……」キマズイ

叢雲「……あんたらね、こいつの前であんまりそういう話を」

天津風「それって、十分特別なんじゃないですか?」

榛名「え?」

提督「ん?」

天津風「夕張さんはあなたにとって特別なのよね。そんなことは"見ていれば"わかる。だから、指輪を最初に渡した」

天津風「でもそれって、あなたにとってもケッコンカッコカリの指輪が単なる限定解除のためのものではなかったってことよね」

提督「っ」

天津風「それに、その2つ目の指輪……あなたの自費なんでしょ?」


天津風「だったら、この鎮守府で二番目に指輪を受け取ることができた榛名さんもあなたにとっては十分特別ってことじゃないの?」

叢雲「……」フム

天津風「たとえ二番目のケッコンカッコカリだったとしても、他の皆を差し置いてそれを行うことができた。その事実がすでに特別だという証……違う?」

提督「そ、それは……」

榛名「え、え……?」パァァァ

天津風「ウチには大和型のお二人も、長門型のお二人もいるわ。一航戦だって、雷巡だって……強い人なんて他にもたくさんいるのに、ウチのエースは榛名さんなんだから」

天津風「それは、あなたにとって榛名さんが特別だということじゃないの?」


提督「……違わない。確かに、俺にとって榛名は特別だ。戦力も、その人となりも本当に信頼してる。風貌だって、正直俺好みだ」

榛名「提督……!」

提督「でも、それでも、だ。俺にとって一番は夕張なんだ」

提督「その夕張が悲しむことはしたくない」

提督「だから、このケッコンカッコカリもあくまで練度のためだ。それ以上のことはない」

榛名「……」

天津風「ふぅん……ま、とりあえずそれでいいわ。練度が99になれば、あなたがケッコンしてくれる。それがわかっただけでもいい」

提督「っ……お前、それは」

天津風「そういうこと。まあ私にはまだまだ先の話だけど……」

天津風「私達にとってあなたがどれだけ重要な存在なのか……あなたはもう少し自覚すべきだわ」

提督「」ボーゼン

天津風「……っ」カァァァ

天津風「し、失礼するわ!」タタッ


秋月「あ、あの! 秋月もその、頑張りますから! し、失礼します!」タッ

提督「……まじか」

叢雲「はぁ……モテモテね。あんた」

提督「……正直複雑だ。好かれてるのはそりゃ嬉しいけどさ」

榛名「提督は素敵な方ですから、当然かと」

叢雲「……あんたもブレないわね。じゃあはいこれ。今回の遠征の報告書」

提督「お、おう」

叢雲「ま、頑張りなさい。誰かに刺されないことを祈ってるわ」

提督「……演技でもないこと言うな」

榛名「ご安心ください! 万が一何かがあっても提督は榛名がお守りします!」フンス

叢雲「……」

提督「……」

榛名「ど、どうして黙るんですか!?」


――――
――叢雲の部屋

叢雲「……ふぅん。そういうこと」

叢雲「それで今日アイツの隣にいるのが榛名だったわけね」

夕張「……うん」

叢雲「嫌なんだったら断れば良かったじゃない。なんで受けたのよ」

夕張「……強者感が出てかっこいいかな、と」

叢雲「帰れ」

夕張「じょ、冗談だから!」

夕張「……本当は、私もすこし考えてるの」

夕張「これからの艦隊のあり方、というか……ケッコンカッコカリはどうしても直面してしまう問題だと思うから……」

叢雲「……へぇ。あんたはてっきりアイツを独占したいのかと思ってたけど」

夕張「もちろん、それがベストだけど……」

夕張「……」


夕張「私、これでも皆のことが好きなの。私には姉妹艦はいないけど、いたらこういう感じなのかなって……この鎮守府の皆のこと、家族みたいに思ってる」

夕張「だから、皆には幸せになって欲しい。いつ何があるかわからいから尚更、ね」

夕張「けど、私だって提督のことが好き。愛してる。独り占めしたい。誰にも渡したくない……」

夕張「でも、皆も提督が好きなこと、わかるから……私がそうすることで皆の士気が下がったり、それが原因で万が一のことがあったりしたら――」

叢雲「……」

夕張「私、もうどうしたら良いのかわからなくて……」


叢雲「……正直、なんとも言えないわ。私も良い助言ができる気がしない」

夕張「だよね……」

叢雲「もっともアイツは……あんた以外と関係を結ぶ気は今のところ無さそうだけどね」

夕張「そう、かな……」

叢雲「ええ。良かったじゃない。愛されてるわよ、あんた」

夕張「」ニコッ

夕張「……」

叢雲「……どうして限定解除がケッコンカッコカリなのかしらね」

夕張「え?」


叢雲「どのみち、あんたとアイツが折り合いをつけないと片付かないことだわ」

夕張「うん……」

叢雲「……色恋沙汰だもの。頭で難しく考えたって答えなんて出ないわよ」

夕張「けど、だったらどうしたら……」

叢雲「だから、もっと簡単でいいんじゃないかってこと」

夕張「え?」

叢雲「自分がどうしたいのか……」

叢雲「秘書官として、とか倫理的にどうこうじゃなくて、あんたが……あんたたちがどうしたいのか」

叢雲「本当は、それぐらい単純なことなんじゃない?」

夕張「……そうなの、かな」

叢雲「ま、よく考えなさい。そこのとこも含めてね」

夕張「……」

叢雲「……まったく。あんたたちは本当にもう」ハァ

叢雲「あんたが私達を家族だと思ってくれてるのと同じように、私も、きっと皆だってあんたのこと大切に思ってる。だから、あんたがどんな答えを出したって恨んだりしない」

叢雲「そりゃ場合によっては多少ギクシャクしたりはするかもしれないわ。でも、大丈夫よ」

叢雲「家族って、そういうものでしょう?」

夕張「叢雲ちゃん……」


――廊下

夕張「……」スタスタ

夕張(叢雲ちゃんはああ言うものの、どうしたものか)

夕張(私が思うようにって言ってもなー……正直それが難しい)ウムム

夕張「はぁ……」

夕張(これから榛名さんと祥鳳さんとの定期女子会あるし、正直どんな顔していけばいいかもわからない)

夕張(いっそ欠席しちゃおうかな……)

夕張「……」ガシガシ

夕張「あぁぁ、もう!」

夕張(榛名さんは来るのかな……来るだろうな。ここで欠席とか逃げたようなものだし)

夕張「うぅ……気が重い」

「あっ!」

夕張「」ビクッ


五月雨「夕張さ~ん!」テテテッ

夕張「小走りの効果音がテテテッとか可愛すぎでしょ」

五月雨「お疲れ様です!」タンッ

夕張「うん。お疲れ様五月雨ちゃん」

五月雨「お仕事はもうお終いですか?」

夕張「うん」

五月雨「じゃあ一緒に帰りましょう!」ニコー

夕張「うん!」



五月雨「それで、涼風ったら――夕張さん?」

夕張「……え?」

五月雨「もー、話聞いてました?」

夕張「……ごめん、少しボーっとしてた」

五月雨「お疲れですか?」

夕張「そんなことないよ。元気元気!」

五月雨「……」ジーッ

夕張「……本当は、少し悩み事があってさ」


五月雨「わたしじゃ、力になれませんか?」

夕張「そんなことない。でも、これは私が解決しなくちゃいけないことだから……」

五月雨「そうですか……でも、何かあったらすぐ私に言ってくださいね! わたしじゃ力不足かもしれませんけど……わたし、頑張っちゃいますから!」

夕張「五月雨ちゃん……」ブワッ

五月雨「うわわ、どうして泣くんですか!?」

夕張「五月雨ちゃんが天使過ぎてつい……」ポロポロ

五月雨「もー、なんですかそれ……本当に大丈夫ですか? 夕張さん、元気ないし心配です……」

夕張「……じゃあ五月雨ちゃん、あれやってよ!」


五月雨「え、またですか? で、でも、あれは少し恥ずかしくて……」

夕張「お願い! やってもらえれば、頑張れるから!」

五月雨「じゃ、じゃあ……」テレ

夕張「ふわぁぁ……照れてる五月雨ちゃん可愛い……」ポロポロ

五月雨「も、もう! いきますよ!」

五月雨「」ギュッ

夕張「ぉふ……」

五月雨「夕張お姉ちゃん、頑張って!」ギュー

夕張「超元気でた」キリッ

今回はここまでです。ありがとうございました


――――
――食事処 鳳翔

夕張「……」

榛名「……」

祥鳳「……」ゴクゴク

祥鳳「ぷはっ……あの、状況は理解してるつもりですけど、もう少し楽しそうにしてくれません?」

祥鳳「飲みたいから今日来たんですよね?」モグモグ

夕張「……ま、そうですね。ずっとギスギスしてても仕方ないですし」

榛名「榛名も……そう思います」

青葉「さ、それじゃもう一回乾杯しましょう!」

榛名「え?」

夕張「は?」

祥鳳「……本当に神出鬼没ですね」

青葉「気配を消すのも記者の嗜みです」ニンニン


青葉「それで、実際のところどうなんです? 秘書官交代制になったわけですけど、榛名さん提督のことおとせそうですか?」

夕張「それ、私の前で聞きますか……」

榛名「……まだなんとも」

夕張「」ホッ

祥鳳「でも夕張さん……交代で秘書官を務めることを決めたってことは、なんだかんだ言って一夫多妻制も視野に入れてるってことなんじゃないですか?」

夕張「っ……そ、そんなことはないです! 私は今でも提督のこと独り占めしたいって思ってます」

青葉「でも、私達の練度が上がれば上がるほどケッコンカッコカリする人はどんどん増えてくるわけですよね?」

青葉「もちろん皆が皆提督とそうなりたと思っているわけではないと思います。ですが、そうなりたいと思って頑張ってきた人がそうなれないと知った時……士気の低下は著しいと思いますよ?」

夕張「それは……」


青葉「実際、榛名さんがケッコンし、交代制で秘書官を務めていることで、今提督は夕張さんと榛名さんを囲っていると思っている人がほとんどだと思います。中にはそれに嫌悪感を示す人もいるでしょうが……」

青葉「青葉の独自調査によると、幸か不幸か、この鎮守府はハーレムに寛容なようです」

夕張「……」

青葉「……まあ、ケッコンカッコカリを練度の限定解除ではなく、そういうものだと認識してる私達サイドにも問題があると思いますが」

榛名「……」

祥鳳「どのみち、どうするのか早めに決断して鎮守府全体に告知しないと……荒れますよ?」

夕張「わかってます。だけど……少し考えさせて欲しいかなって」

榛名「……でも」

夕張「え?」

榛名「でも榛名は……夕張さんが立ち止まっている間も手を緩めるつもりはありません」

榛名「提督や夕張さんにはご迷惑かもしれません。榛名のやっていることは、世間的にもあまり胸の張れることではないと思います」

榛名「でも……榛名、諦めないことにしたんです」

夕張「……榛名、さん」


祥鳳「もちろん私もです」

祥鳳「と、言いたいところなんですが」

ダン!

祥鳳「どういうことなんですか!? 私最近、すっかり出撃できてないじゃないですか!」

夕張「はて……」

榛名「ふむ……」

祥鳳「へぇ……?」ガタッ

夕張「い、いや、私たちは何もしてないですよ!?」

榛名「そ、そうです! 艦隊の編成はあくまでも提督の采配ですから!」


祥鳳「……」ワナワナ

祥鳳「私、大規模作戦の時しか出撃してないんですよ!?」

夕張「と、トラック泊地防衛の時は大活躍だったじゃないですか」

青葉「第一波の防衛作戦だけですけどね」

祥鳳「」ブワッ

榛名「あ、青葉さん!」アワアワ

夕張「で、でもまだ鎮守府No.3の練度ですし!」

祥鳳「……ってきてるんです」

夕張「え?」

祥鳳「追いつかれてきてるんです! 重雷装巡洋艦と一航戦と帰国子女に!」


青葉「」フッ

青葉「良いじゃないですか、それぐらい」

青葉「青葉なんて……未だに練度1ですからね!?」ブワッ

榛名「あっ……」

祥鳳「なんと……」

夕張「ぱねぇ……」

青葉「くっ……青葉、司令官に嫌われてるのでしょうか……」

夕張「そんなことはないと思いますけど……実際、練度が低いままの人もまだ結構いますし」

夕張「大規模作戦や度重なる改二の実装で全員を出撃させることができないだけだと思います。特に大規模作戦の際は、主力を出さざるを得ませんし……」

青葉「うぅ……」

夕張「大丈夫ですって、いずれチャンスありますよ! ほら、今日は飲みましょう!」


青葉「こうなりゃヤケです! 今日は潰れるまで飲みます!」

夕張「ええ、付き合いますよ!」

ワハハハハ

祥鳳「……ふふっ」

榛名「どうかしました?」

祥鳳「……いえ、こうしてきっちり定期女子会を開いて飲んでるあたり、私達の仲ももうよくわかんないなって思って」クスッ

榛名「……」

榛名「そうですね。榛名もそう思います」ニコ



金剛「……」ジー


――――
――

提督(榛名と夕張が交代で秘書官を務めるようになって、しばらく経った)

提督(一時はどうなることかと思ったが、特に問題もなく業務を行っている)

提督(どうやら2人は一緒に飲みに行ったりもしてるらしく、不和が生まれるような素振りもない。少なくとも、表向きは)

榛名「……」ニコニコ

提督「榛名、そこの資料取ってくれないか?」

榛名「はい。こちらですね?」

提督「ありがとう……はぁ」

榛名「お疲れですか?」

提督「ん……すまない。流石に、少しな」

榛名「少しお休みになってはいかがでしょう」

提督「ありがとう。でも、この書類は書き上げないといけないから」

榛名「では、それが終わったら休憩にしましょう。休むことも必要です」

提督「……そうだな。じゃあ――」

ダダダッ

「提督ー!」

バァン

蒼龍「提督! 加賀さんと瑞鶴がぁ!」

提督「……はぁ」


提督「また喧嘩してるのか」

蒼龍「そうなんです! 止めてくださ~い!」

提督「赤城は……入渠中か。翔鶴はどうした?」

榛名「今日は非番で外出中です」

提督「そうだったか……祥鳳は?」

蒼龍「ずほちゃんを弄ってて取り合ってくれないんですよね……」

提督「……」

提督「仕方ないな……」

榛名「提督」スッ

榛名「ここは榛名にお任せください。提督のお手を煩わせることではありません」

提督「しかし……」

榛名「提督はそちらの書類を終わらせて、どうぞお休みになっていてください。今回は榛名が対応します」

提督「……わかった。ありがとな」

榛名「いえ。提督のお役に立てることが、榛名の喜びですから」ニコッ


榛名「榛名、ただいま戻りました」

提督「Zzz……」

榛名「提督? あ……」

榛名(榛名が戻ってくると、提督はソファに座ってうたた寝しているようでした)

榛名(最近忙しかったですし、やはりお疲れだったようです)

榛名「何かかけるものものは……」ゴソゴソ

榛名(見つけたタオルケットを提督にかけながら、ふと思う)

榛名(今なら、提督に触れられるのではないだろうか。身を寄せることができるのではないだろうか……と)

榛名(でもそれは、きっと卑怯なことで、もし提督にバレてしまったら……きっと困らせてしまう。もしかしたら、軽蔑されて距離を置かれるかもしれない)

榛名(そう思っているはずなのに、ダメだとわかっているのに……榛名の身体は提督の隣に身を寄せ、手は提督の頬をなぞっていた)


榛名「提督……」

榛名(小さく呟きながら、ほぅっと息を吐く)

榛名「卑怯な榛名をお許し下さい」

榛名(提督の左肩に頭を預け、右手を絡めるように重ねた)

榛名(提督の手はゴツゴツとして力強く、彼の心を表しているかのように暖かい)

榛名(頬が熱を持ち、胸は早鐘のように高鳴った)

榛名「榛名は今、提督に触れているんだ……」

榛名(ニヤけてしまいそうになる唇を必死に引き結びながら、榛名は自分の指を彼のそれとそっと絡めた)


提督「ん……Zzz」

榛名(提督の手ははまるで赤ちゃんのように榛名の手を握り返しくる)

榛名「ふわ……」

榛名(じわじわと滲み出てきた多幸感に榛名は包まれていった)

榛名「はふ……」

榛名(もしかしたら、夕張さんだと思ったのかもしれない。榛名とは全然関係のない夢をみているのかもしれない)

榛名(でも……それでも、今、提督の隣で彼の手を握っているのは間違いなく榛名なのだ。その事実は間違いなく榛名の心を満たしていた)


榛名「提督」

榛名(絡めた指にそっと力を込めながら私は最愛の人の名前を呼ぶ)

榛名(たったそれだけのことで、たしかに榛名の心は満たされた気がした)

榛名(最初に感じた罪悪感なんてもう消し飛んでいた。それぐらい嬉しかった。提督に寄り添うことができる、触れることができる……甘い蜜のように溢れ出る陶酔感に榛名は抗えなかった)

榛名「……」フフッ

榛名(絡めた指から伝わる温もりを感じながら、そっと目を閉じる)

榛名(やがて訪れたまどろみの中で、榛名はたしかに気付いていた。榛名はきっと、もう抗えない。抗いたくないのだということを――)

今回はここまでです。ありがとうございました


――――
――

榛名「提督、提督」ユサユサ

提督「ん……」

榛名「提督、起きてください」

提督「……榛名?」

榛名「はい。おはようございます、提督」

提督「ああ……」ポー

提督「はっ! 今何時だ!?」ガバッ

榛名「もう少しでちょうど1900です」

提督「嘘だろ!? 寝過ぎた!」

榛名「あの、提督……書類なら、榛名がやっておきました」

提督「へ?」

榛名「ですので、確認をお願いします」

提督「……マジ?」

榛名「お疲れのようでしたので」

提督「どれ……」パラパラ

提督(ざっとみた感じだと……完璧だ)

提督「榛名、お前……超優秀じゃん。ありがとう、助かった」

榛名「榛名には勿体無いお言葉、ありがとうございます。お役にたてたのなら嬉しいです」


提督「……」ペラペラ

提督(しかこの書類たち……本当に良い感じに仕上がってるな)

提督(秘書官をやり始めてまだそれほど経ってないのに、もう仕事覚えたってのか)パネェ

榛名「あの、提督……」モジ

提督「……ん?」

榛名「その、差し出がましいとは思ったのですが……」モジモジ

榛名「お夕飯、を……作らせていただきました。もし良かったら……召し上がっていただけますか」

提督「まじ?」

提督(普段夕飯は、鳳翔さんのところに行くか、夕張と食べることが多いが……)

榛名「……」フアンゲ

提督(せっかく作ってくれたのに無碍にはできないか)

提督「ああ、頂くよ」

榛名「」パァァァ

榛名「今お持ちしますね!」タタッ


榛名「……」ソワソワ

提督「じゃ、いただきます」

榛名「い、いただきます」

榛名「……」ジーッ

提督「」パクッ

榛名「……」ドキドキ

提督「」モグモグ

提督「……うまい」

榛名「本当ですか!?」ガタッ

提督「ああ、榛名は料理も上手なんだな」

榛名「」ヤリマシタ!


榛名「こちらは、榛名の一番得意な料理なんです!」

提督「たしかに美味い」モグモグ

榛名「これは隠し味に梅干しを入れてるんです。臭みが消えて、味も引き締まるんですよ」

提督「へぇ~」パクパク

榛名「それからこちらは――」

提督「ふんふん」

榛名「」ハッ

榛名「す、すみません食べてる時に。鬱陶しい、ですよね……」

提督「? そんなことはない」

榛名「提督はお優しいですね」

提督「俺は榛名と話しながら食べるの楽しいよ」

榛名「っ」カァァァ

榛名「……その」モジモジ

榛名「たくさん練習……したんです。だから、提督に美味しいって仰って頂けたことが本当に嬉しくて……」

榛名「榛名、今とっても幸せです」ニコッ

提督「」グハッ

提督(なにこれキュン死する)


――――
―― 翌日

夕張「……それで、榛名さんの手料理を堪能したわけですか」ムスッ

提督「うん」ポニテサワサワ

夕張「こんなの浮気ですよ浮気! 」カキカキ

提督「いやだって、せっかく作ってくれたのに断るのもさー……」カミノケサラサラー

夕張「提督は少し無防備過ぎます! 榛名さんの好意は明らかなんですからあんまり甘やかさないでください!」

大淀「……どうでもいいですけど、業務中にイチャつくのやめてくれません?」

提督「え?」

夕張「はい?」

大淀「そんな何言ってのみたいな顔されても困ります!」

夕張「でも私仕事してますよ?」

大淀「だったら、提督はどうして夕張さんの髪の毛を玩んでいるんですか!? そして夕張さんがそれを諌めないのは何故!?」

提督「いや、夕張の髪の毛さらさらで気持ちよくて……」

夕張「別にいつものことなので……」

提督「ポニテにしろロングにしろふわふわにしろ女性の艶やかな髪っていいよね」

大淀「そんなことは聞いてません! 少しは弁えてもらわないと困ります! だいたい、お二人は――」

ガミガミ


榛名「……」コソッ

榛名「……髪の毛」ジー


提督「……」カキカキ

榛名「」ソワソワ

提督「んー……」

榛名「」チラチラ

榛名「」ファサッ

提督「……榛名」

榛名「はい!」

提督「今日の演習なんだけどさ、摩耶の練度を――ん?」

―― ドアの隙間

霧島「」パクパク

提督(何やってんだあいつ)

霧島「」サッ

提督(何だあれ……カンペ?)

霧島『髪を褒めて』

提督「髪?」

榛名「」ピクッ


榛名「」スススッ

ドア<バタン

提督(なんだったんだ)

榛名「」サラッ

提督「……それで榛名、演習なんだけど」

榛名「……はい」ショボン

提督「?」

提督(なんか榛名が近い)

提督「……榛名、なんか近くない?」

榛名「気のせいかと」

提督「でもさ――」

榛名「……」ファサッ

提督「ああ、そういう……」

榛名「?」

提督「いや、こうして見ると榛名って綺麗な髪してると思ってな」

榛名「」パァァァッ


提督(とりあえず、霧島の言うように褒めてみたが……)

提督「……」ジーッ

提督(なるほど、こうして見ると榛名の髪はたしかに綺麗だ)

提督(濡羽色の髪の毛はその名の通り濡れたような艶を伴ってしっとりと波打ち、しかし彼女が身体を動かすとそれに合わせてサラサラと流れるように舞った)

提督(その美しさときたら、彼女の巫女服と美貌も相まってもはや神秘性まで感じるほどである。正直健全な日本男子としては胸ときめかずにはいられない)

提督「……」

提督(加えて、近くにいるせいで見え隠れする胸元とその肌や髪から立ちのぼる甘い香りに胸の高鳴りも止まらない)

提督「その、やっぱり良いシャンプーとか使ってるのか?」

榛名「どうでしょう……ただ、少し気を使っていはいます」

提督「そうか。なんか甘い香りもするしさ」

榛名「そうでしょうか……その、お嫌いですか?」

提督「いや、榛名によく合った良い匂いだと思うよ。でも、その……」

榛名「ありがとうございます!」

提督「ちょっと離れようか。流石に近い」

榛名「嫌です!」

提督「え、あれ? えぇー……?」


ドア<ガチャ

夕張「提督、装備改修のことで明石さんから提案があったんですけど」

提督「お、おお夕張! なんだ?」ガタッ

夕張「あら、なんです? わざわざ席を立って。座っててもそっち行きますよ?」

提督「いや、すこし身体を動かしたくてな」

夕張「ふぅん……?」チラッ

榛名「……」ムー

夕張「……」フム

提督「それで、明石がなんだって?」

夕張「あ、はい。それでですね――」

提督「それは――」

榛名「……」ジー

夕張「でも、それなら――」

榛名「!」


榛名「」ゴソゴソ

榛名「」ムスビムスビ

榛名「」ポニーテール

提督「――って感じで伝えてくれ」

夕張「わかりました」

榛名「あの、提督!」

提督「ん?」

榛名「……」モジモジ

提督「なんと……」

夕張「……榛名さん?」

榛名「榛名も髪を結ってみました……どうでしょうか?」

夕張「わ、私の真似したからって、提督が靡くわけじゃないですから」

榛名「別に真似したわけじゃありません。ちょっとした気分転換的なものです!」ムスッ



榛名「それで提督、どうでしょうか。似合いますか?」

提督「正直めちゃくちゃ可愛い」

夕張「おい」

提督「い、いや! もちろん夕張のポニテもかわいいよ!?」

夕張「そっ、そうじゃなくて――ん?」

榛名「」プルプル

夕張(ニヤけそうになるのを必死に堪えてる……)

提督「……榛名?」

榛名「は、ひゃい!」ニヘラ

榛名「」ハッ

榛名「す、すみません! 見ないでください! 今榛名、とてもだらしない顔してますから!」カオカクシ

夕張「……」

提督「……」

提督(なんだこれ俺に褒められたのがそんなに嬉しかったの?顔真っ赤にしてニヤけそうな唇を必死に引き結んで返事声裏返ってるしその拍子ににやけちゃってるしそれでまた照れちゃったりしてそのはにかんだ笑顔を写真におさめたい)

夕張(なんなんですかこれさっきからポニテ褒められたぐらいでそんなに嬉しそうにしてニヤけるの我慢したり顔隠したりしゃがみこんだりカリスマガードですかあざといにもほどがるでしょいい加減にしてくださいアニメじゃない萌がここにある)

提張「「可愛い」」

榛名「っ」カァァァ

提督「かわいい」

榛名「う、嬉しいです……」

夕張「かわいい!」

榛名「も、もう……!」テレテレ

提督「青葉! 青葉を呼べ!」

夕張「青葉さぁぁぁん!」

霧島「いい加減にしてください」ヒュッ

提督「ぶっ」

夕張「ぴっ」


提張「「」」

霧島「まったく……いくらなんでも騒ぎ過ぎです。ね、榛名?」

榛名「っ……っ」テレテレ

榛名「榛名褒められちゃった……提督にも夕張さんにも」モジモジ

霧島「……嬉しいのはわかったから、そのニヤけた面どうにかして」

榛名「うふふ」ニコニコ

霧島「金剛お姉様が呼んでるからおいで?」

榛名「でも榛名、今日の業務が……」

霧島「大丈夫。終わったら私も手伝うしさ。それに……」チラッ

提督「」シーン

霧島「司令もこんな状態だし、業務にならないでしょ?」ニコッ

榛名「はは……」

青葉(これが、霧島ネキと言われる所以ですねわかります)パシャパシャ

今回はここまでです。ありがとうございました


――金剛の部屋

金剛「……さて、今日こうして集まってもらったのは他でもありません。榛名と提督についてmeetingするためデス!」

比叡「おー」パチパチ

榛名「えっ」

金剛「以前私は言いました。各自、提督が榛名loveになるための案を考えてくること!と……」

金剛「そろそろいい頃合いです。みんな、当然考えてきましたヨネー?」

比叡「……」サッ

霧島「……」メガネキラッ

金剛「っと、そのまえに現状を聞きましょうか。どうなの? 榛名」

榛名「えっと……先ほど髪が綺麗だと褒めて頂きました!」

霧島「……」

金剛「……」

榛名「……」ニコニコ

比叡「え、終わり?」


霧島「……霧島の分析によると、これは何も進展していませんね」

榛名「そ、そんなことは……」

金剛「じゃあ進展したんデスカ?」

榛名「……こ、この前提督の手を握りました」テレッ

比叡「ほぅ……」

金剛「ふむふむ」

霧島「……」

榛名「……」エヘヘ

比叡「え、終わり?」

榛名「」テレッ

霧島「いや、照れるところじゃないでしょ」

金剛「だー! 全然話が進みません! ボーイ&ガールじゃあるまいし、もっとこう……ガッといきなさい!」

比叡「」ウンウン

霧島「ケッコン前までは虎視眈々と提督を狙う狩人の眼をしていたのに……どうしたの?」

榛名「それは……」


榛名「いざケッコンしてしまったら迫るのが恥ずかしくなったというか……」

霧島「本当は?」

榛名「……その、一度フラレてるし、勇気が出なくて」

金剛「ノー! そんなこと言ってたら、いつまで経っても進展しないヨ!?」

榛名「ですが……」

比叡「提督だって榛名のこと憎からず思ってるだろうし、ガンガンいっても良いと思うけど」

榛名「無理に迫ったら避けられてしまうような気がして……榛名は提督に未練たらしい面倒くさい女だと思われたくないのです……」

金剛「んー……」

霧島「はい!」

金剛「ハイ、霧島」

霧島「夕張さんという特定の相手がいる以上、提督を落とすのは難しいと思います」

榛名「……」シュン

霧島「ですが、だからこそ突破口があります!」

霧島「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。提督を落とす前に夕張さんを味方につけたら良いんです! これが私の案です!」ドヤァ

比叡「おー」


金剛「悪くない考えネ! どのみち、バリちゃんと対立していては略奪愛しか道はなくなるわけだし?」

榛名「それは榛名も本意ではありません。艦隊に修復不可能な不和が生まれるのは榛名も嫌ですから」

霧島「問題はその方法ですが……」

金剛「ふむ……」

榛名「でも榛名はもう夕張さんと仲良しだと思う……」

比叡「たしかに……よく一緒に遊び行ってるもんね」

金剛「んー……うん。飲み会、partyしましょう!」

榛名「ぱーてぃ?」

金剛「イエース! 私達姉妹と提督、バリちゃんの6人でネ!」

金剛「たしかに榛名とバリちゃんは仲良しネ! But お互いまだ話してないこともあるはずデース。ここはお酒の力を借りちゃいましょー! 私たちでガンガン飲ませマース!」

榛名「えぇっ!?」

霧島「……そうですね。ノミニケーションとも言いますし、ここらで一度腹を割って話すのも必要かもしれません」

金剛「That's right! バリちゃんもここのところ何か考えてるみたいだし、その辺の話も聞きたいところデスネ! そしてあわよくば、酔った勢いで提督にアプローチ!」

榛名「夕張さんの前でですか!?」

金剛「フォローは任せて!」

榛名「で、ですが」

霧島「そうと決まれば日取りを決めて提督を誘わないとですね!」

榛名「ちょ、ちょっと話を」

比叡「なんだか燃えてきたね!」

榛名「……はい」モウヤルシカナイ


――――
―― 食堂

叢雲「……それで、最近どうなわけ?」モグモグ

提督「どうって?」

叢雲「そんなの夕張と榛名とのことに決まってるじゃない」ショウユトッテ

提督「いや、特に問題はないが……」ハイ

叢雲「ふぅん? 正直意外ね。ぐいぐい迫られてるのかと思ったわ」

提督「……まあ俺も最初はどうなることかと思ったけどな。でも榛名は分別もあるし」

提督「それに一応……ちゃんとフッてるからな」

叢雲「……」モグモグ

叢雲「ま、そうね。それよりあんた……私に何か言うことあるんじゃない?」

提督「ん? んー……」パクパク

提督「改二おめでとう?」

叢雲「ありがと。でもそれは実装当日に聞いたわ。ほら、改二になった私を見て何かないわけ?」


提督「う~ん……」

叢雲「……はあ。もういいわ。こういうのって催促することでもないと思うし」

提督「催促ってことは、俺がなんかお願いされたりしてるってことか?」

叢雲「違うわ。別に気にしなくて大丈夫よ。大したことじゃないし」

提督「そうか……むむ」

夕張「提督ー! そろそろ時間ですよ!」

提督「……っと、すまん。そろそろ行くな」

叢雲「はいはい。演習指揮頑張りなさい」

提督「そうは言っても相手は元帥殿だからな……」

叢雲「何言ってんの。あんただって甲勲章貰ってるんだから実力は遜色ないはずよ。負かしてやるぐらいの気持ちでいきなさい」

提督「……なんか叢雲ってオカンみたいだよな」

叢雲「へぇ……?」ニコッ

提督「おっと、もう行かないと」アワワ

提督「ああ、その新しい制服も似合ってるぞ。なんかエロいし」ガタッ

叢雲「……あんたはさっきから一言余計よね」

提督「じゃあな」タタッ

叢雲「まったく……」

叢雲「似合ってる、か。ちゃんと言えるじゃない」

叢雲「……」ニヘラ


――――
――

提督「……」カリカリ

榛名「提督、先の演習の件で元帥からお褒めの言葉と観艦式の依頼が来ています」

提督「観艦式ぃ? ちょっと見せて」

提督「……ちょっと張り切りすぎたな」

榛名「勝っちゃいましたもんね」

提督「でも元帥殿だって主力ではなかったはずだ」

榛名「それはこちらも同じです。もっとも、夕張さんが旗艦で提督が指揮を取るとなった時点で負けはないと榛名は思ってましたよ?」

提督「その信頼は素直に嬉しいが……この展開は正直面倒だな。光栄ではあるが……当然主力級を出さなければならないのだろうな」

榛名「それを期待されていると思います」

提督「しかしまさか主力全員でここを空けるわけにはいかないしな。少し考えるか……後で」

榛名「忘れちゃダメですよ?」

提督「わかってる。でも、忘れてても榛名が教えてくれるだろ?」

榛名「もう……ずるいです。そう言われては、榛名が忘れるわけにはいきません」

提督「はは、冗談だ。でも、頼りにしてるのは本当だよ」ニコッ

榛名「~っ」キューン


榛名「……あの、提督。今度お姉様たちとお酒を飲みに行くんです。と言っても、鳳翔さんのところでですが……もし良かったら提督もご一緒に如何ですか? もちろん、夕張さんも一緒に」

提督「ん……珍しいな。金剛が酒を飲むなんて」カキカキ

榛名「はい。ですので提督もご一緒にどうかと思いまして」

提督「そうだな。せっかくだから混ぜてもらおうかな」

榛名「はい! 夕張さんにも榛名から伝えておきますね」

提督「わかった。楽しみにしてるよっと……ふぅ」ノビー

榛名「……お疲れでしたら、少し仮眠なさいますか?」

提督「そうだな……」

提督(以前仮眠を取ってから、榛名はこうして度々休憩を進めてくるようになった)

提督「うん。20分ぐらいで起こしてくれ」

提督(秘書官としての榛名の働きぶりは素晴らしく、長い間秘書官を務めていた夕張と比較しても遜色ないレベルだ)

提督(その安心感もあり、緊急の用件が無い限り榛名の好意に甘えるようにしている)


提督「榛名も休んでていいからな?」

榛名「ありがとうございます。この報告書の確認が終わったら休憩させていただきます」

提督「うん。じゃあ、すまないが少し寝るな」

提督(仮眠を取るようになってから身体の調子はすこぶるよく、作業効率も上がっている。気付かないうちに疲労は溜まっているのだと実感した)

提督(ソファに腰掛けながら榛名をちらりと見やると、こちらを見ていた彼女とパチリと目が合った)

提督(彼女は照れたように微笑み、ごゆっくりおやすみくださいと優しく言った)

提督(瞼を閉じて数分と経たずに押し寄せてくる睡魔に俺が負けるのにそう時間はかからなかった)


榛名(書類を片付け、大きく伸びをする。提督は静かに寝息をたてていた)

榛名「……」チラッ

榛名(提督が眠りについてからまだ5分ぐらいしか経っていない。指定の時間まであと15分はある)

榛名「」ソーッ

榛名(提督を起こさないように静かに近付き、その隣に腰を降ろす)

榛名(提督の右手と榛名の右手を絡ませ、胸に顔を埋める)

榛名(大きく息を吸い込むと提督の匂いが鼻腔をくすぐり、ピリピリとした電流が身体中を荒々しく駆け巡った)

榛名「ん……ふぁ……」

榛名(頭の中が焼けるように熱い。眼の奥で光が瞬いて、じわじわとお腹に熱がこもった)

榛名「~っ」ビクッ

榛名(全身を駆け巡る刺激が徐々に治まるにつれて、身体が脱力していく。同時に甘い蜜のような幸福感がじんわりと浮き立った)

榛名(激しくなった動悸が収まるのを待ってから、榛名はそっと顔をあげた)


榛名(あれから、榛名はこの行為をやめられなくなっていた)

榛名(それどころか、どんどん積極的になっていく自分を抑えられないでいる)

榛名(最初は隣に座り、手を握るだけだった)

榛名(次は抱きついてみた。提督の胸に顔を埋めると胸が高鳴った)

榛名(身体をなぞり、頬を撫で、ともかく榛名は提督に触れた。提督の温もりを感じたかった。身体に、心に焼き付けたかった)

榛名「提督……」

榛名(頬に触れ、唇をなぞり、なぞった指にそっと口付ける)

榛名(頬が火照り、呼吸が少しずつ荒くなっていく。早鐘のように高鳴る心臓の音が鼓膜の奥でうるさいくらいに反響していた)

榛名「……」ゴクッ

榛名(接吻……をすれば、このドキドキは収まるのだろうか)

榛名(けど、それはあまりにもリスクが高過ぎる。そして卑怯極まりない)

榛名(……でも、こうして眠っている提督に近付き、触れている時点で榛名は卑怯で卑屈な女なのかもしれない)


――――
―― 居酒屋 鳳翔

榛名「……」コクコクッ

榛名「ぷは。はぁ……」

足柄「あら? 榛名じゃない。珍しいわね。1人で飲んでるなんて」

陸奥「ほんとね。今日は夕張や祥鳳はどうしたの?」

鈴谷「榛名さんちーっす」

榛名「榛名だってたまには1人で飲む時もあります。そちらも……なんだか珍しい組み合わせですね」

陸奥「そう? ま、たまにはね」

鈴谷「せっかく会ったんだし、榛名さんも一緒に飲もー?」

榛名「え、ですが……」

足柄「いいからいいから! 色々話聞かせなさいよ」


陸奥「それで? 提督と何かあった?」

足柄「え?」

鈴谷「そうなの?」

陸奥「いや、珍しく1人で飲んでるからさ」

榛名「いえ……そういうわけでは」

足柄「んー? 何々? なんかあるならここで全部吐き出しちゃいなさいよ」

榛名「……その」

榛名「提督と何かあったというわけではないのですが……少し、自己嫌悪を……」

鈴谷「自己嫌悪? 榛名さんみたいな良い人が?」

榛名「とんでもないです。榛名はそんな立派な人ではありませんから」

足柄「よくわからないけど、提督絡みではあるってことよね」

榛名「まあ……」

足柄「う……」

鈴谷「う?」

足柄「羨ましい!」


足柄「うわぁぁぁ! 私だってそうやって提督とのことで悩んだり落ち込んだりしたぃぃぃ!」

鈴谷「あはは、足柄さんじゃ無理っしょー」ケラケラ

足柄「なんでよ!?」

鈴谷「だってさー、明らかに練度低いじゃん」

足柄「うぐっ」

陸奥「……まあそうねぇ」←練度80

鈴谷「……」←練度59

榛名「……」←練度116

足柄「……」←練度1

足柄「なにこれおかしくない?」

足柄「べ、別に練度低いからって提督と良い関係になれないわけじゃないし!」

榛名「ええ。提督はこの鎮守府で嫌いな人はいないと仰っていましたよ?」

足柄「良いこと言った!」

陸奥「でも練度が私達にとって特別なものになってるのは確かよね」


足柄「はぁ……もう直談判しに行こうかしら。いい加減戦場に出ないとなまっちゃいそうだわ」

鈴谷「練度は大本営の認可がないと上がらないもんね」

足柄「そうなのよねぇ……ケッコンなんて遠すぎるわ。もうなんとかして既成事実を作るしかないのかしら」

陸奥「物騒なこと言うのね」

足柄「婚活よこんかつ!」

足柄「既成事実(こんかつ)」

鈴谷「なにそれこわい」

榛名「残念ですが、提督を陥落させるのは難しいですよ?」

足柄「私頑張る!」

鈴谷「ははぁ~ん。さては榛名さん、遠慮しちゃって提督と進展してないなぁ?」

榛名「う……遠慮と言いますか。その……」

足柄「何!? そんなんじゃ駄目よ! せっかくケッコンしたんだから突撃よ! 突撃!」

榛名「ですが、そう単純な話ではなくて……」


足柄「よくわかんないけど気にすることないわよ! 男と女だもの、それは色々なことがあるに決まってるわ!」

足柄「私もそうだもの」

陸奥「ん?」

鈴谷「え?」

榛名「……」

足柄「でも、そうやって色々あるうちにいつの間にか絆が生まれてるの。私もさ、昔はね……」フゥ

足柄「あれはそう、私が艦娘になる前……まだピッチピチのJKだった頃の話よ……ふふっ、懐かしい」

榛名「……」

足柄「……」

陸奥「……」

鈴谷「……」

足柄「……」

陸奥「……」モグモグ

足柄「……」

鈴谷「……」ゴクゴク

足柄「えぇそうよ! ないわよ! そんな経験全っ然ないわよ! 」

鈴谷「ぶふっ、急に切れないでよ」ゴホッ

陸奥「なんですぐにバレる見栄を張ろうとするのか理解に苦しむわ」


足柄「いいじゃないちょっとぐらい! イメージトレーニングはバッチリだから大丈夫よ!」

足柄「ともかく! 榛名はもっとグイグイ行きなさい! 姉の金剛をもっと見習うべきよ!」

陸奥「まあそれは同意するわ。榛名、あなたの働き次第では私達まとめて提督に愛してもらうことも夢じゃないの。わかるわね?」

陸奥「もちろんあなたがハーレムに反対していなければ、だけど」

榛名「そういうことでしたら、そもそも榛名は夕張さんと提督の中に割って入ろうとしているわけですから……ハーレムが嫌だという我儘は言えません」

榛名「ですが、提督はああいうお人なので……あまりハーレム、というのは好まないようです。そういうところも素敵ですが」

鈴谷「……でもさ、男の人的にはハーレムってやっぱ夢じゃないの?」

榛名「どうなのでしょう……」

足柄「実際のところさー、榛名がその身体を使って誘惑したらコロッといくんじゃない? 意外に」

陸奥「……コロッとはいかなそうだけど、なし崩し的に関係は持てそうよね」

鈴谷「そうだったらチョロ過ぎじゃん?」

榛名「そんな簡単にはいかないと思いますが……」


榛名「それに榛名、特段身体に自身があるわけではないですし。一応スタイルが崩れないよう気を使ってはいますが……」

足柄「あんたそれ、龍驤の前でも同じこと言えるの?」

榛名「う、えっと……りゅ、龍驤さんも引き締まった良い身体をしていると思いますよ?」

鈴谷「とりあえずさ、榛名さんはサラシやめてブラにしよ?」

榛名「え、急になんです?」

鈴谷「やっぱりさ、サラシより可愛いじゃん? それにせっかく立派なモノ持ってるんだからさ、サラシで潰しちゃうのは勿体無いよ」

榛名「ブラ……」

陸奥「何なら私が見繕ってあげるけど?」

榛名「本当ですか? それなら是非! 本当は少し憧れてたんです」

足柄「そしてその勝負下着で夜這いをかけるってわけね!?」

榛名「えっ」


陸奥「夜這い……は無理じゃないかしら。きっと夕張さんと一緒に寝てるだろうし」

足柄「なんて羨まけしからん」

鈴谷「一緒に、かぁ……」

榛名「……」

足柄「榛名負けてるじゃない! そんなんじゃ駄目よ!」

榛名「榛名はまだ大丈夫です……」

足柄「仕方ないわねぇ……カツを! カツを食べましょう!」

鈴谷「ぅえっ!? 重いよ!」

足柄「験担ぎよ! もちろん勝つためにね! しっかり食べて元気つけなさい」

榛名「足柄さん……」

陸奥「カツはまあ無理して食べなくてもいいけど」

足柄「なんでよ!」

陸奥「あなたの思うように、悔いがないように……頑張ってみなさい。お姉さん、応援してるからさ」

鈴谷「鈴谷も相談ぐらいなら乗れるし」

足柄「ケッコンしてるんだから、遠慮なんていらないのよ!」

榛名「みなさん……ありがとうございます」

榛名「榛名、頑張りますね!」

足柄「そうと決まればカツを食べましょう!」

鈴谷「もう自分が食べたいだけでしょ……」

榛名「はい! 榛名、カツ食べます!」

足柄「お、いいわね! ガンガン行きましょう!」

榛名「榛名、ガンガンいきます!」

榛名「榛名、気合!入れて!食べます!」

気合! 入れて! 寝ます!
ありがとうございました


―― 大浴場前 廊下

夕張「……」パタパタ

夕張(まさか部屋にシャンプーを忘れちゃうなんて……また提督待たせちゃうから少し急がないと)

夕張「ん?」

ビスマルク「……」キョロキョロ

夕張(ビスマルクさん? お風呂の前でいったい何を……)

ビスマルク「」コソコソ

夕張「ちょちょっ!」

ビスマルク「」ビクッ

夕張「ビスマルクさん、そっちは男湯ですよ!」

ビスマルク「あ、あら夕張じゃない。あなたもお風呂?」ファサッ

夕張「そうですけど……今、男湯に入ろうとしてませんでした?」


ビスマルク「……」プイ

金剛「そっぽ向いたって無駄デース! 私だってしっかり見ましたからネ!」

夕張「うわ、金剛さんいつの間に……」

金剛「今バスタイムが終わったところネー」スタスタ

金剛「こっちは今提督が入浴中です! そこに入っていこうなんてなんて羨ましい!」

夕張「……本心が隠しきれてませんけど」

金剛「大方ラッキーすけべ? をしようとしたんでしょうけど、そうはいきません」

金剛「大体そういうのは偶然起こるから許されるのであって、意図的に行ってはただの覗きと一緒デース!」

ビスマルク「し、失礼ね! 覗きなんてしないわよ! 私はただ、アトミラール……提督の下着を少し借りようと思っただけ!」

夕張「えっ」

金剛「What!?」

夕張「え? あの、えー?」

金剛「……変態でしたか」

ビスマルク「何よ。これがこの国での愛情表現じゃないの?」


夕張「いや、そんな愛情表現普通しませんよ」

ビスマルク「え? みんなやってるんでしょう?」

金剛「無知を装って誤魔化そうたってそうはいきません! 公然と行われることだと思ってるなら、なんでコソコソしてたデース!? やましい気持ちがあったに決まってマス!」

ビスマルク「私の国には無い風習だから少し恥ずかしかっただけよ」

夕張「いや、だから日本にもそんな風習はありませんって」

金剛「いくらHENTAIの国とはいえ、リアルにやったら犯罪デース」

ビスマルク「なっ、え……?」

ビスマルク「そ、そんなはずないわ! だってプリンツがそう言ってたもの!」

ビスマルク「あの娘、そう言っていつも私の下着を持って行くわ」

金剛「Oh……」

夕張「……マジですか」


夕張「とりあえず、それは嘘なので下着は諦めてください。それと、オイゲンさんとは一度お話する必要があると思います」

ビスマルク「……ホント、なの?」

夕張「……」コクリ

ビスマルク「オイゲン……あの娘……!」ワナナワ

ビスマルク「用事ができたから失礼するわ!」

夕張「困ったことがあったら相談してください」

ビスマルク「Danke. 助かるわ」

夕張「もう提督の下着盗んだりしたらダメですからね!」

夕張「ふぅ……まったく」

夕張「……」

夕張(……どう取り繕っても、やっぱり提督に好意を持つ人は多い)

金剛「……とんだ変態どもでしたね」ヤレヤレ

夕張(そろそろ、腹をくくらないとかな……)

夕張「はぁ……」

夕張「とりあえず金剛さんはそのポッケの下着を返してくださいねー」

金剛「」ドキーン


――――
――

夕張「……」カリカリ

提督「……」フムフム

夕張「……あの、提督」

提督「うん?」

夕張「広報から届いた榛名さんのポスター眺めてないで仕事してくれません?」

提督「ん……いや、でもこれ可愛くてさ。なかなかいい仕事するよな。こんぷてぃーく」

夕張「可愛いですけど……それはそれ、これはこれです」

提督「や、もちろん夕張も可愛いぞ!」

夕張「……ありがとうございます。でも、仕事はしてくださいね」

ドア<コンコン

夕張「はーい」


榛名「失礼します」

提督「ん」

榛名「あの、本日はお日柄も良くて……」

提督「うん」

榛名「その……」

夕張「?」

榛名「覚えておいでですか? 先日お話した……」

提督「ああ、飲み会か?」

榛名「」パァァァッ

榛名「はい! そうです! ぱーてぃ、です!」

榛名「失礼かとは思ったのですが、一応確認に参りました!」

提督「はは、心配症だな」

夕張「そうですよ。提督が飲みの日を忘れるわけないじゃないですか」


夕張「そんなに楽しみだったんですか?」

榛名「はい! 最近は提督とご一緒できなかったですし……」

夕張「ですって。ほら、時間までに仕事終わらせないと」

提督「む……そうだな。そう言われては片づけざるを得ない」

榛名「今日はたくさん仕事あるんですか?」

夕張「そういうわけじゃないんですけど……提督ったら、榛名さんのポスター眺めて全然仕事しないんですから」

榛名「えっ」

提督「いや、だってさ……良く撮れてるよこれ。ほら、こんなに可愛い」

榛名「っ」カァァァ

榛名「も、もう提督! ちゃんと仕事しないと駄目ですよ」

榛名「か、可愛いと仰っていただけるのはとても嬉しいですが……今日は飲み会もありますので」

提督「ん……そうだな。すまない」

榛名「それに、提督がお望みでしたら榛名はいつだってお側に参りますから……もっと実物の榛名を見て欲しい、です……」モジモジ

提督「榛名……」キューン

夕張「ちょっと! 私がいるのにいい感じにならないでください!」グイッ

提督「ととっ」


榛名「……」ムーッ

夕張「ほら、仕事しますよ!」

提督「はいはい」

榛名「……では、今夜楽しみにしてますね」

提督「ああ。19時だったよな?」

榛名「はい! お姉様たちも待ってますから……遅刻しないでくださいね?」

提督「もちろんだ。今日の飲み会は俺も楽しみだからな。心配しなくても遅刻なんてしないよ」

夕張「さ、そうと決まれば仕事ですね」

提督「ん、うん……そうね。仕事だね……」

夕張「ほら、やりますよ」

――――
――

提督「おい夕張、急げ急げ!」

夕張「もう完全に遅刻ですねこれ……」パタパタ

提督「まさかあのタイミングでな……」

夕張「えぇ……那珂ちゃんにあんな絡まれるなんて」

提督「うぅむ……遠征ばっかでフラストレーションが溜まっているのだろうか」

夕張「う~ん……そういうわけではないと思いますが……たまには目一杯歌わせてあげたらいいんじゃないですか? 神通も怖いですし……」

提督「……そうだな。那珂ちゃんを蔑ろにすると怖いもんな。神通」

夕張「溺愛してますよね」

提督「まあしちゃう気持ちはわかる。あんな可愛い妹がいたらそりゃあなぁ……」


夕張「……お兄ちゃんって呼んであげましょうか?」

提督「いや、いい」

夕張「なんでですか!?」

提督「え、いや……だってお前妹じゃなくて嫁候補だし」

夕張「提督……」

提督「」テレッ

夕張「候補ってどういう意味ですか?」

提督「深い意味は無いよ!? ただまだ結婚カッコガチはしてないからさ!」

夕張「ふぅん……?」

提督「いや、その……この戦」

夕張「わぁーストップストップ! それ以上は駄目です! フラグですからぁ!」

提督「……」

夕張「……」

提督「……じゃ、じゃあ急ごうか! 榛名たちも待ってることだし」

夕張「……はぁ。ですね」


――居酒屋 鳳翔

ガラッ

提督「榛名たちはどこだ?」

夕張「えっと……」キョロキョロ

隼鷹「お、提督じゃーん!」

提督「ん?」

龍驤「あー、ちょっとキミキミ! こっち来て!」

提督「すまんな。今日は先約があるんだ」

隼鷹「かぁ~、固いこと言うなよなー」

千歳「そうですよ提督、私達の仲じゃないですか」ムギュ

提督「ほわぁっ!?」

千歳「うふふ、なんです? 変な声出して」

提督「なんです? じゃないわ! いきなり後ろから抱きつくな!」

千歳「ふふっ、当ててるんですよ?」

夕張「ちょっと! 私の前でそんなことするなんていい度胸ですね!」


千歳「あら、これは失礼」パッ

夕張「……」ムー

隼鷹「おーそのまま連れてきてよ」

千歳「だそうですよ?」タユン

夕張「ぐぬぬ」

龍驤「うぎぎ」

提督「いや、今日は先約があるって」

千歳「まあまあ。少しだけですから」グイッ

提督「うわわ」

夕張「あ、ちょっと!」


千代田「もうお姉! ちょっと近すぎじゃない!?」

提督「まったくもって同感だ」

隼鷹「ほらほら駆けつけ三杯!」

千歳「はい、どうぞ」トクトク

提督「いや、だから待てって」

隼鷹「……私さぁ改二祝い何も貰ってないよね」

龍驤「それならウチもや!」

千歳「そう言えば私も貰ってませんね」

千代田「……千代田もだけど」

提督「……一杯だけな」

隼鷹「ひゅー! そうこなくっちゃ!」

夕張「ちょっと提督!」


金剛「テイトクぅ~!」ゴゴゴ

提督「ひっ」

金剛「遅刻して来た上に何やってるデース!」

提督「いや、違うんだよ金剛。これはだな……」

金剛「違わないデス! もう! 提督が遅刻したせいでこっちは大変なんですからね!」

金剛「ほら! 早く来てください!」グイッ

隼鷹「ちょっと待ちな! 先約があるのはわかった。だが、提督か夕張のどっちかは置いてってもらおうか!」

提督「先約あるのわかってないだろそれ」

金剛「そう言われても、はいどうぞって聞くわけにはいかないデース!」

龍驤「ふぅん? だったらどうするん?」

金剛「バリちゃんを置いていきマース!」

夕張「知ってた」


金剛「ただし、1時間だけネ!」

夕張「……仕方ありませんね。ほら、榛名さんも待ってるでしょうし、提督は行ってください」

提督「いいのか?」

夕張「酔っぱらいに道理は通じませんから。それに……」チラッ

千歳「?」タユ

夕張「千歳さんとはさっきのこととかちょっとお話があるので」

龍驤「ほぅ……手貸すで」

提督「ほ、ほどほどにな?」

金剛「OK! そうと決まればレッツゴー!」グイッ

今回はこんなもんで


提督(金剛に連れられて辿り着いた先はそう、混沌だった)

提督(比叡は右手の箸に刺し身を挟んだままテーブルに突っ伏し、霧島は榛名に絡まれて青い顔をしている。テーブルの上はたくさんの皿で埋め尽くされ、榛名はというとあろうことか一升瓶を抱えてそれを飲んでいた)

提督「おい金剛……榛名ってこんな飲み方するやつだったか?」

金剛「……」ジトッ

金剛「あの榛名がこんな飲み方する理由をよく考えてください」

提督「うぐっ……」

金剛「今帰ったヨー」

榛名「」パァァァッ

榛名「お姉様! と……?」

提督「よお榛名。ごめんな、遅れちゃって」

榛名「提督!」

榛名「遅いです! もう待ちくたびれて待ちくたびれて……榛名はもう……!」プンスカ

提督「すまん……」

榛名「提督」ポンポン

提督(榛名は彼女のすぐ隣をポンポンと叩いた)

提督「……座れって?」

榛名「」ニッコリ

提督「……じゃあ失礼して」ヨイショ


榛名「……」ジーッ

提督(めっちゃ見られてる)

金剛「ハイ提督。とりあえず、乾杯しましょー!」

提督「お、おう」

金剛「それじゃ、カンパ~イ」チン

提督「乾杯」チン

榛名「です」チン

金剛「」コクコク

提督「」ゴクゴク

榛名「」ゴクゴクゴク

榛名「ぷはぁ!」

提督「お、おう。良い飲みっぷりだな」

榛名「提督!」

榛名「どうして遅刻したんですか!?」


提督「俺も遅刻はしたくなかったんだが……のっぴきならない事情があってだな」

榛名「」ムー

榛名「……した」

提督「ん?」

榛名「遅刻しないって言いました!」

提督「そ、それはそうだが……ごめんな」

榛名「……」プクゥ

金剛「テイトクぅ……榛名は今日を本当に楽しみにしてたんです。 ごめんの一言で済んだらポリスメンはいらないですよ?」

提督「ぐっ……」

金剛「テ・イ・ト・ク?」ジーッ

提督「……わかった。どうしたら良い?」

金剛「」ニコッ

金剛「榛名、提督に何して欲しい?」


榛名「……抱っこ、して欲しいです」

提督「いや、それは駄目だろ」

榛名「抱っこ!」

提督「……酔ってますね榛名さん」

金剛「提督? いいじゃないですか抱っこぐらい」

提督「いや、そうもいかないだろ。子供を抱っこするのとは違うんだぞ」

金剛「心配いらないヨー? 酔った榛名はちょ~っと幼くなるから」

提督「そういうことじゃなくてさ……」

榛名「……」ムー

金剛「No! できるはずですヨ!」

榛名「」イソイソ

金剛「本当にごめんなさいって思ってるなら……申し訳ない気持ちで胸がいっぱいなら……相手が誰であれ抱っこできる……!」

榛名「」スクッ

金剛「たとえそれが……榛名?」

榛名「」ヨイショ

提督「ん?」

榛名「」ストン

提督「んん?」

榛名「」ギュッ

提督「榛名さん!?」


榛名「ふふっ」スリスリ

提督(あぐらを組んで座っていた俺の膝に上に彼女はいた)

提督(とろん、と蕩けたような瞳で俺を覗きこみ、すりすりと俺の胸に顔を埋める)

提督(ほんの少し開いた彼女の胸元では柔らかそうな双丘がちらつき、その下では彼女の短い袴が今にもめくり上がらんばかりにはだけている)

提督「」ゴクリ

提督(これはやばい。色々やばい)

金剛「ん~榛名、Good job!」

提督「全然グッジョブじゃないよ!?」

榛名「榛名は大丈夫です!」

提督「俺が大丈夫じゃないから!」

榛名「なんてったって改二ですから! ケッコンもしましたし」ギュー

提督「ちょ、そんなにくっつかないで……」

提督「って、酒臭! 誰こんなに榛名に飲ませたの!?」


榛名「もう提督! 女の子に臭い、なんて、めっです!」

金剛「そうですよ提督? それに飲ませたなんて心外デース。榛名が自分で飲んだんデスヨ」

金剛「飲んだ理由はわかりますよね?」

提督「そ、それは……はい」

金剛「なら、やるべきこと……わかりますよネ?」

提督「わかった……が、とりあえずこの姿勢はやめてくれ。俺の理性がヤバイ」

榛名「いやです!」

提督「嫌かぁ……」


榛名「提督、榛名が食べさせてあげます! 何か食べたいものはありますか?」

提督「えっと……」チラ

金剛「」ニコッ

提督「……じゃあその唐翌揚げを」

榛名「はい! あ~ん」スッ

提督「あ、あーん」パク

榛名「美味しいですか?」

提督「うん」モグモグ

榛名「このお刺身も美味しいですよ。どうぞ」

提督「あー」パク

榛名「」ニコニコ

提督(なにこれ。恥ずかしいけど正直幸せ)


金剛「提督? 自分ばかりじゃなくて、榛名にも食べさせてあげてください」

提督「ほぁ!?」

榛名「え、いいんですか?」

金剛「もちろん!」

提督「いや、ちょ」

榛名「あ、あー」テレテレ

提督「えー……」

榛名「……」アー

提督「えっと、じゃあ……」スッ

榛名「」パクッ

榛名「とっても美味しいです」ニコッ


金剛「」ニコニコ

金剛「そういえば提督ぅ……榛名とケッコンしたということは、今提督は私の義弟ってことだよネー?」

提督「はぁ……?」

金剛「お姉ちゃん、って呼んでも良いんだよ?」

提督「何言ってんのお前」

榛名「」スリスリ

金剛「ノー! 恥ずかしがらないでクダサーイ!」

榛名「」スンスン

提督「恥ずかしいとかじゃなくてさ……榛名、匂い嗅がないで」

榛名「」シュン

提督「今更呼び方変えるのもな……お姉ちゃんなんて言う柄でもないし」


金剛「むー……」

提督「いや、確かにお前は良い姉だと思うよ?」

榛名「」サワサワ

提督「でもさ、俺はお前を姉とは思えないし……榛名、俺の胸に手を這わせるのをやめなさい」

榛名「」ムー

金剛「むー……姉弟プレイはお預けですか」

提督「プレイって……お前そういうのどこで覚えてくるんだよ」

榛名「」ンー

金剛「トップシークレット、ですよ?」

榛名「」チュー

提督「榛名、ストップ」ガシッ

提督「何しようとしてんの?」

榛名「ちゅー……」

提督「それはいけない」


榛名「もう! あれもダメこれもダメって、提督は我儘です……」

提督「いや、どう考えてもそんなことはないと思う」

榛名「それに、さっきからお姉様とお話してばかり……榛名ともお話してください!」

金剛「Oh、ごめんね榛名」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」ニコー

提督「ん、そうか」

榛名「提督は大丈夫じゃないです!」プクゥ

提督「あれ!?」

榛名「……」ジトッ

提督「……なんでしょう」

榛名「」スッ

提督「急に頭差し出して何?」

金剛「撫でろってことですヨ!」


提督「えぇ? じゃあ……」スッ

提督「……」ナデナデ

榛名「……」パァァァッ

提督「……」ナデナデ

榛名「んふふ」スリスリ

提督(……可愛い)

ガタッ

金剛「お?」

夕張「……」ワナワナ

夕張「提督! 何してるんですか!?」


提督「ち、遅刻のお詫びです……」

夕張「近すぎます! 離れてください!」

提督「まあ、そうなるな」

夕張「」ギロッ

提督「はい! ただいま!」

提督「そういうわけだから……榛名、もう離れて」

榛名「嫌です」

提督「いや、でも俺ももうこれめっちゃ怒られそうっていうか、怒られてるっていうか」

提督「だから、な?」グイッ

榛名「ん!」ギュー

夕張「……」

提督「榛名! 夕張が怒ってるから! 青筋ビキィだから!」

夕張「……」スタスタ

榛名「……」ギュッ


夕張「……」ジトー

提督「あの、夕張さん……?」ビクビク

夕張「……」スッ

夕張「」ギュッ

提督「ふわっ!? 夕張……?」

夕張「静かに」ギュー

金剛「ヘイ提督ー、これが両手に花ってやつデスネー?」

提督「正直そんな羨ましい状況なのかはわからないが……」

榛名「」ムムム

夕張「」フン

榛名「榛名が先に座ったんですよ!」

夕張「そんなの関係ありません。提督は私のなんですから」


榛名「夕張さんはいつも提督と一緒にいるじゃないですか!」

夕張「当然です。私は提督の奥さんなんですから!」

榛名「それなら榛名だって提督のお嫁さんです!」

夕張「私が正妻です! 榛名さんなんて良くて側室ですよ側室!」

榛名「」ムー!

夕張「私はもうキスもHもしましたし」フフン

提督「こ、こら夕張……そういうこと言うな」アワアワ

榛名「は、榛名だって……」

夕張「してませんよね? 当然です。提督は私のなんですからね!」

榛名「……」ムー

榛名「」ジワッ

榛名「うわぁぁん。お姉様ぁ……!」ヨタヨタ

金剛「よしよし。泣かないの」ナデナデ

榛名「うぅ……榛名だって榛名だってぇ」ギュー

金剛「うん。わかってます。わかってマスヨ」ナデナデ


提督「ゆ、夕張……榛名泣いちゃったぞ」アワワ

夕張「……知りません」ギュッ

夕張「提督は私のなんですから……」ギュー

提督「……」ポリポリ

榛名「……夕張さんのアホー!」グス

夕張「」イラァ

夕張「榛名さんこそ全然大丈夫じゃないんじゃないですか? この前だって下着の柄ゴシップ誌にすっぱ抜かれたくせに!」

榛名「なっ……! それは言わないでください!」

榛名「夕張さんだっていっつもおへそだして露出狂か何かですか!?」

夕張「むっかぁ!」


提督「お、おい夕張……榛名も喧嘩はやめろ」オロオロ

夕榛「「提督は黙っててください!」」

提督「そんなありがちにハモらなくても……」

金剛「」コクコク

金剛「ぷはぁ……」

提督「金剛、悠長に飲んでないで止めた方が……」

金剛「ノー、提督。こういうのはとりあえず気が済むまでやらせとけばいいんです。二人共お酒はいってるし、明日には仲直りしてますよ」

金剛「度が過ぎるようだったら、そこで止めれば十分ネ!」

提督「そういうもんか?」チラッ

榛名「」ハルー!

夕張「」バリー!

提督(不安だ)

金剛「大丈夫。そのうち疲れて止めますよ」


――――
――

榛名「……」スヤスヤ

金剛「……」ヨシヨシ

夕張「……提督」スヤァ

提督「お前が言った通り……嵐は過ぎ去ったな」ナデ

金剛「ですね」

榛名「お姉様ぁ……」ギュッ

金剛「……」ナデナデ

提督「……こうして見ると、やっぱりお前は姉なんだなって思うわ」

金剛「これでも長女ですカラ……この子たちにとって、良い姉であるかはわかりませんけど」

提督「それだけ慕われてるんだ。良い姉だよ、お前は」

金剛「……」カァッ

金剛「提督に褒めてもらうのは、特別嬉しいデス」


金剛「……」

金剛「提督は……榛名に不満があるんですか?」

提督「なんだいきなり?」

金剛「どうして手を出してあげないんです?」

提督「……その話か」

金剛「……榛名は提督にとって魅力的ではないのですか?」

提督「そんなわけないだろ。こんな良い娘なかなかいない」

金剛「提督みたいな良い人もなかなかいませんよ?」

提督「……お前、唐突に褒めるのやめろ」

金剛「あら? 提督照れてます?」

提督「悪いかよ」

提督「お前だって榛名に負けないぐらい魅力的だ。そんな女性に褒められて動じないほど俺は手馴れてない」

金剛「……提督こそ、そういうの真面目に言うのは卑怯です」

提督「……」

金剛「……こほん」


金剛「榛名が魅力的だって言うなら、どうして手を出さないのです?」

金剛「他の鎮守府ではハーレムを築いてる提督だっているって聞きマース」

金剛「提督だってその気になればハーレム作れますヨ?」

提督「……」

提督「……例えば、夕張の前にそれはそれは素敵な男性が現れたとする」

金剛「はい?」

提督「性格も良く、容姿だって申し分ない。この人と一緒になってもきっと幸せになれる……そんな相手だ」

金剛「……」


提督「もし夕張がその男と関係を持ったら……俺は凄く悲しいし、正直正気を保てる自信がない。だから、俺もそういうことはしない。たとえどんなに魅力的な女性が俺を好いてくれたとしても、夕張が俺を慕ってくれているなら俺はそういうことをするわけにはいかない」

金剛「……提督」

金剛「さっきの抱っこもかなりグレーゾーンだと思いますよ?」

提督「煽ったお前がそれ言うかよ」

金剛「ふふ、冗談です」

提督「……こういうこと言ったの恥ずかしいから内緒にしてくれな」

金剛「秘密を共有できるなんて幸せデース」ニコッ

提督「……」ゴクゴク

金剛「……本当、バリちゃんが羨ましい」ボソッ

ありがとうございました
今回はここまでです

長らくお待たせしていて申し訳ない
遅筆ですが最後まで書きたい気持ちはあります
なので、気長に待ってもらえたらそれはとっても嬉しいなって思います

――――
―― 翌日

榛名「昨日は本当にご迷惑を……」

比叡「謝らなくていいよ。結構楽しかったしさ」

霧島「そうそう。榛名は普段から気を使いすぎなんだし、たまには暴れてもいいでしょ」

金剛「可愛かったデスヨ? 昨日の榛名」

榛名「うぅ~……止めてください。思い出しただけで榛名、恥ずかしいです……」

金剛「提督ともいっぱいボディタッチできたし、いいじゃないですか」

榛名「それは……そうですが」

榛名「……榛名、提督にも謝ってきます」

金剛「気にしなくてもいいと思いマスが……それで榛名の気が済むなら行ってらっしゃいな」

榛名「はい……」

金剛「……」

金剛(今回の飲み会、榛名もバリちゃんも泥酔してしまったから当初の予定通りにはいかないかと思いましたが……)

金剛(榛名は酔った勢いでアプローチできましたし、バリちゃんの言動もなかなか興味深いものがありました)

金剛(バリちゃんの口から側室という言葉が出ました。これはバリちゃんもそれを視野に入れてるということ……)

金剛「風向きが変わりそうですネ」ニヤリ


――執務室

夕張「……頭痛い」

提督「おい、大丈夫か」

夕張「もう隼鷹さんたちと飲むの怖い……」

提督「確かに酒豪揃いだが、無理に飲ませる奴らではないと思うが」

夕張「違うんです。楽しくて気付いたらベロベロになってるんです」

夕張「ペースも早いから一緒に飲んでると気付いたらこっちも結構飲んじゃってて」

提督「あー」

提督「まあ今日は特に出撃とかはないから、休みながら働けばいいよ」

夕張「すいません……」

ドア<コンコン

提督「はいはい」

榛名「失礼します……」


提督「ああ、榛名。おはよう」

榛名「おはようございます」

榛名「あの、昨夜はご迷惑をおかけして……ごめんなさい!」

提督「はは、ベロベロに酔ってしまったことか? そんなことは謝らなくていい」

夕張「……そうですよね。提督は良い思いしたみたいですし」ジトー

提督「あ、あはは」

榛名「ですが……」

提督「……じゃあ今日の執務を手伝ってくれないか? 見ての通り夕張は二日酔いでな」

提督「もちろん、榛名に支障がなければだが」

榛名「は、はい! 榛名は大丈夫です!」


提督「さて、とりあえず今日中に決めときたいのは観艦式に誰を行かせるかってことだけど……」

提督「あ、夕張は旗艦で出席確定だから」

夕張「まじですか」

提督「まあしょうがないよなぁ……前の演習の旗艦お前だったし」

夕張「……」←凄い嫌そうな顔

提督「俺は同伴できないけど、お前が行くなら安心だし」

夕張「まあ仕方ありませんね……」

提督「あとは……どうするか」

夕張「有事の際を考えると、いつものフルメンバーとはいきませんからねぇ」

提督「かといって、元帥からの依頼だ。極端に練度が低い者を送るわけにもいかない」

榛名「各艦の二番手か三番手で構成するのが順当では?」


提督「まあそうなるかー」

夕張「二番手で揃えるなら、戦艦は金剛さん、正規空母は瑞鶴さん、軽空母は準鷹さん、重巡は……あ、航巡はどうします?」

提督「つっても現状前線で戦えるレベルの航巡はウチでは筑摩と鈴谷しかいないしな……熊野もいけなくはないって感じではあるが」

榛名「利根さんはまだ重巡ですしね……」

夕張「じゃあ航巡は熊野さんということで」

榛名「それなら、重巡は羽黒さんですね。駆逐艦は時雨ちゃん、潜水艦はイクちゃんでしょうか。航空戦艦も出すなら伊勢さんが該当しますが……航巡と同様の状況であることを鑑みると、No.3の山城さんでしょうか。重雷装巡洋艦は……」

提督「もともと3人しかいないからな……3番手の木曽に行ってもらうか」

提督「で、そうなると……10人か。人数の指定はあったか?」

榛名「たしか艦隊2つ分……12人ですね」

夕張「となると、あと2人ですか」

提督「あー……観艦式だし、大和にでもいかせるか。華やかになるだろうし」

榛名「榛名は那珂ちゃんをいれてあげると喜ぶと思います」

夕張「なんと……!」

提督「天才?」

提督「たしかに観艦式はアイドル的にはライブ的な感じになりうる。これは那珂ちゃんのご機嫌取りに使えるな!」


夕張「喜んで貰えれば、神通にも怒られませんね!」

提督「よし、観艦式のメンバーはその12人で決定。夕張、指示書の作成と連絡よろしく」

夕張「わかりました……すいません榛名さん、書類作るの手伝って貰えますか?」

榛名「ええ、もちろんです」

提督「……」

提督(金剛の言う通り、2人は昨夜の衝突なんて無かったかのように話している)

提督(昨夜の榛名の言動から察するに、榛名はまだ俺のことを好きでいてくれているのだろう)

提督(このままでいいわけはないのだろうが……毅然とした態度で彼女をあしらうことができないでいる。それはやはり、彼女に一途に慕われることにどこか喜びを感じていしまっているからなのだろう)

提督「……」ガシガシ

提督(昨日金剛にあんな偉そうなこと言っててこれだもんな)

提督「……よくない、よなぁ」

祥鳳「何がですか?」

提督「ほわぁ!?」


提督「祥鳳、いつの間に?」

祥鳳「なんです? 人を忍者かなにかみたいに」クスクス

祥鳳「ちゃんとノックして入って来ましたよ? ドアを開けてくれたのは榛名さんですし」

祥鳳「考え事ですか?」

提督「……」メソラシ

祥鳳「悩み事あててあげましょうか」

提督「いや……」

祥鳳「ふふっ」

祥鳳「……提督の悩みを解消する方法を教えてあげます」スッ

祥鳳「みんな抱いちゃえばいいんです」ボソッ

提督「っ!?」


提督「冗談だろ?」

祥鳳「冗談じゃないですよ?」

提督「……」

祥鳳「」ニコッ

提督「……用件は何だ?」

祥鳳「いえ、特に用があったわけではないんです」

提督「は?」

祥鳳「ただ最近……提督とお話できてないな、と思って……ダメでした?」

提督「……そう思ってくれるのは嬉しいぐらいだけど、お前それ俺の悩みわかってて言ってるよね?」

祥鳳「それに対する解決案を私は提案しましたよ?」


提督「だが、それは……」

祥鳳「そうすれば概ね解決です。提督がみんなを愛してくれれば、それで……」

祥鳳「何を隠そう、私も提督をお慕いしてる一人ですよ?」

提督「は……?」

祥鳳「……」

提督「……」エ?

祥鳳「……あの、何か言ってください。恥ずかしいじゃないですか……これでも勇気を振り絞ったんですよ?」

提督「祥鳳、すまないが俺は……」

祥鳳「わかってます。でも、私は諦めませんよ?」


提督「……」

祥鳳「ごめんなさい。提督を困らせたいわけじゃないんです」

提督「どうしてお前たちは揃いも揃って俺のことを……」

提督「ここにいる男が俺ぐらいだから、それで好きだと勘違いしてるだけなんじゃないのか?」

祥鳳「……提督。流石に怒りますよ? 同じ事を夕張さんにも言えますか?」

提督「……すまない」

祥鳳「確かに私たちは男性の知り合いは少ないです。親密になったのは提督が初めてと言ってもいいぐらいの子がたくさんいます」

祥鳳「だからといって、そんなことでこの気持ちを否定されたくないです」

祥鳳「私が提督をお慕いしているのは本当です。勘違いなんてことはありえない」

祥鳳「全機発艦したら触ってもいいって……言いましたよね?」

提督「祥鳳……」

夕張「……あの、さっきから2人でこしょこしょと何を話してるんです?」ジトッ

祥鳳「」ハッ


祥鳳「ごめんなさい。少し熱くなってしまいました」

祥鳳「本当はこんなこと言うつもりじゃなかったんですけど……」チラッ

夕張「……」ジトー

祥鳳「提督、私が言ったこと……少しは考えてみてくださいね?」

祥鳳「失礼します」ペコッ

夕張「……」ジトー

提督「……」

榛名「……」ナニハナシテタンダロ

榛名「……あ、あの! 榛名、指示書貼ってきますね!」タタッ

ドア<パタン

夕張「……提督、考えとくって何をです?」

提督「い、いや……別に」

夕張「……」ジトー

提督「……ハーレム作れって言われた」

夕張「っ……そうですか」


夕張「……」

夕張「どうするんです? 作るんですか……ハーレム」

提督「そんなわけないだろ」

提督「……たしかに榛名や祥鳳たちのことも大切に思っている」

提督「彼女たちにこんなにも思われて嬉しくないと言えば嘘になる」

提督「けど、俺にとっての一番はお前だし、お前にとっての一番は俺であって欲しいと思ってる」

夕張「提督……」

提督「だから、お前が望まないことはしたくない」

夕張「提督!」ガバッ

提督「うわっと」ギュッ

夕張「嬉しいです……んー」チュー

提督「んむ……お前、ここ執務室だぞ」

夕張「初めてだってここだったんですし、いまさらじゃないですか」

提督「それはそうかもしれんが……んんっ」

夕張「ん……ぷは、今夜は熱い夜になりそうですね」

提督「……そうかもしれんけど、照れるから言わんでくれ」


――――
――観艦式前日

提督「それじゃ皆、しっかりな」

金剛「任せてくだサーイ」

那珂「ねえねえ! 那珂ちゃん本当にセンターでいいの!?」

提督「ああ、もちろんだ。楽しんでこい」

那珂「」パァァァ

提督「大和も久しぶりの出番が遠征で申し訳ないが、よろしく頼む」

大和「はい、この大和にお任せを」

夕張「じゃ、行ってきますね」

提督「気をつけてな」


榛名(明日は観艦式……先日3人で選んだ面々が出撃していく)

榛名(観艦式は明日行われ、その後彼女たちはまた一泊してこちらに戻ってくる)

榛名(つまり、今日から3日間は榛名が秘書官で、鎮守府内もいつもより人が少なくなる)

榛名(……もちろん、夕張さんもいない)

榛名「……」

提督「……さて、今日の仕事を始めますか」

榛名「……」

提督「? 榛名?」

榛名「あ、はい!」

提督「どうした? ぼーっとして。疲れてる?」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」

榛名「……大丈夫、です」ボソッ

今回はここまでです。ありがとうございました


――――
――執務室

提督「……」カリカリ

提督「榛名、これ今日の開発目標と担当な」

榛名「はい」

提督「それからこれが演習の編成と遠征予定」

榛名「はい」

提督「主力級が観艦式行ってるから、有事に備えて今日は出撃はなし。通達よろしく」

榛名「承知しました」

提督「あ、悪いけどついでにお茶買ってきてくれないか? もう残り少ないからさ」

榛名「お茶……ですね? わかりました。では、行ってきますね」

パタパタ

提督「ふぅ……」

ドア<コンコン

霧島「失礼します」


提督「霧島? どうかしたか」

霧島「本日は提督にお願いがありまして……」

提督「お願い?」

霧島「はい。榛名が秘書官を勤めるようになってしばらく経ちましけど……榛名、よく働いていると思いません?」

提督「そうだな。正直夕張と比べても遜色ない働きぶりだよ」

霧島「そうでしょうとも!」ウンウン

霧島「だったらご褒美……あげてください」

提督「……ご褒美?」

霧島「ええ。そういうのって大事だと思います」

提督「それはそうかもしれないが……ご褒美とか夕張にもあげたことないんだけど」


霧島「……それはいけませんね」

霧島「日頃の感謝を表すのって大切ですよ。些細なことかもしれませんが、そういう積み重ねをしないことが亀裂を生むんです」

提督「……怖いこと言うな」

霧島「そして、気付かぬうちに亀裂が大きくなり、いずれは」

提督「わー! わかった!」

提督「確かにお前の言うことはもっともだ。いい機会だし、これを気に何かする」

霧島「ぜひそうしてください」ウンウン

提督「お前も何か考えといていいぞ」

霧島「へ?」


提督「言ったろ? いい機会だって」

提督「確かに榛名には特に感謝しているし、夕張は俺にとって特別だ」

提督「でも、俺はお前達みんなに感謝している。なら、お前達みんなにご褒美をあげるのが道理だろう」

霧島「……嬉しいです」

霧島「けど、そういうのほどほどにした方がいいですよ」

霧島「提督が私達を家族のように大切にしてくださっていることは嬉しいです」

霧島「ですが……提督は男性で私達は女性です」

霧島「あまり見境なくみんなに優しくしては……そのうちヤラれますよ?」

提督「……肝に命じるよ」


――酒保

榛名「お茶、お茶……」

榛名(提督が好きなのは……)

榛名「あった」

明石「あら? いらっしゃい榛名さん。珍しいですね」

榛名「明石さん。お疲れ様です」

榛名「少しお使いを頼まれちゃって」

明石「ああ、提督のお茶ですか。他にも何かどうです? いろいろありますよ」

榛名「そうですね……」

榛名(そう広くはない店内。所狭しと様々な物が並んでいる)

榛名(ふと目に入ったのは医薬品コーナーだった)

榛名(風邪薬、栄養剤、漢方薬、胃腸薬、睡眠薬、傷薬……薬って、こんなにいろいろあるんだ)

榛名「……」ジー

榛名(睡眠薬……)

明石「? 榛名さん、調子悪いんですか?」

榛名「あ、いえ……その」


榛名「……」

榛名「……睡眠薬を頂きたいのですが」

明石「なんです? 寝れないんですか?」

榛名「寝れないわけじゃないんですが、眠りが浅いと言うか……疲れが抜けないと言うか」

榛名「今はあまり疲れを残したくないので」

明石「あー。榛名さん秘書官の仕事も始めましたもんね」

明石「生活リズムが変わったので体が驚いているのかも」

明石「それなら、これなんておすすめですよ。ぐっすり眠れると思います。効き目も早いので、寝付けない時も良いですよ」

榛名「ありがとうございます」

明石「良くならないようでしたら、一度ちゃんと診てみましょうね。ずっと薬に頼るのはやっぱり良くないですから」

榛名「……はい。ありがとうございます」


――――
――

榛名「提督? 用があると霧島に聞いたのですが……」

提督「ん……まあ急ぎの用というわけではないのだが、ずるずる後回しにするものでもないからな」

提督「まずはこれ」スッ

榛名「?」

提督「遅くなったが改ニ祝いだ」

榛名「え……よろしいのですか?」

提督「大したものではないが……」

榛名「とんでもありません! 榛名は凄く嬉しいです」


提督「それから、それとは別に……なんだ、欲しい物とかしてほしいことがあれば、できるだけ工面する」

榛名「……急にどうしたんです?」

提督「まあ急にそんなこと言われてもそうなるよな」

榛名「功績を上げたりしたわけでもないですし……こんな、優しくしていただく理由がありません」

提督「そんなに深く考えなくていい。改二祝いは改二になった奴全員に渡しているし、もう1つはお礼だ」

榛名「お礼、ですか?」

提督「ああ。榛名が秘書官を兼任するようになって、俺も夕張も以前より随分余裕ができた。そのお礼だ」

榛名「しかし、秘書官の仕事は榛名から言い出したことです」

榛名「夕張さんだって頑張っていますし、榛名だけ何かをいただくわけには……」

提督「ん……まあ榛名ならそう言うと思ったよ。もちろん観艦式から帰ったら夕張にも何かするつもりだ」

提督「だから、気にせず言ってみろ」


榛名「そうですか……」

榛名「」ハッ

榛名「あれ、今なんでもするって……」

提督「言ってないね」

榛名「……ですよね」シュン

榛名「……」

榛名「それなら、あの……提督の机で業務をさせていただきたいのですが……」

提督「え? そんなことでいいのか? 確かに秘書官の机よりも俺の机の方が多少立派かもしれないが……そんなのご褒美とかじゃなく、いつでも代わってやるよ?」ヨイショ

榛名「あ、待ってください! 違うんです」

提督「?」

榛名「そうではなくて、その……提督の隣で……」

提督「……え?」


榛名「……」ニコニコ

提督「……」カリ,カリ

提督(どうしてこうなった)

提督(榛名は今俺の机で執務を行なっている)

提督(そして、俺も俺の机で執務を行なっている)

提督(つまるところ、寄り添うように座って執務を行なっている)

榛名「……ふふっ」カリカリ

提督(……近い)

提督(少し動いただけ、ペンを走らせるだけでも互いの腕が、肩が触れる)

提督(その度に彼女は嬉しそうに頬を緩め、ふわりと漂う彼女の甘い香りが鼻腔をくすぐった)

榛名「……」サラッ

提督(髪をかき上げる仕草に胸が高鳴る)

提督(かき上げたことで覗く首筋がいやに扇情的だ)

提督「……ん?」


提督(肩に紐が見える)

提督(……サラシじゃない、だと)

提督(サラシはサラシでクるものがあったが、榛名がブラをしていると思うと……正直ドキドキする)

提督(いったいどんな柄だろうか。形状は。良くない妄想がどんどん膨らんでいく)

提督「」モンモン

提督「」ハッ

提督(いや、こういう考えは良くない。俺には夕張がいるわけだし、他の人に目移りするなど……)チラッ

榛名「……」

提督(しかし榛名は本当に美人だな)


提督(どちらかと言えば可愛い系の夕張と違い、美しいという言葉がよく似合う)

提督(艶やかな黒髪は毛先に向かって流れるように伸び、彼女の動きに伴ってさらさらと舞う様には嘆息せずにはいられない)

提督(綺麗な頬のラインにきめ細かい白皙の肌。音を立てそうなほど長いまつげに縁取られた瞳は橙色に煌き、まるで宝石のようだ)

提督(その落ち着いた柔らかな物腰は、ともすれば姉である金剛よりも大人びた雰囲気をまとわせ、古き良き日本の女性というものを強くイメージさせる)

提督(大和撫子、そんな言葉がぴったりと当てはまる彼女は結婚すればさぞ良い妻となるのだろう)

榛名「……あの、提督」

榛名「そんなに見つめられると流石に恥ずかしいのですが……」

提督「す、すまない。もう見ないから」

提督(いけない。夕張一筋と言っているのにこんなんじゃ偉そうなことは言えない。気をしっかり持たなければ)

榛名「……」ミテホシクナイワケジャナイノニ


榛名「……」

榛名「あの、提督。喉乾きませんか? 榛名、お茶をお持ちします」

提督「そ、そうだな。お願いする」

榛名「はい。すぐにお持ちしますね」

――――
――

榛名「……」

榛名(榛名の目の前には用意したお茶と……明石さんのところで買った艦娘用の睡眠薬がある)

榛名(艦娘と言っても、心まで一息に強靭になるわけではない。特に新兵のころは、戦闘の恐怖に眠れない日々が続く娘も多い)

榛名(これはそんな彼女たちのための睡眠薬だ)

榛名(基本的な成分は普通の睡眠薬と変わらない。ただ、"少し"強く効くようになっている)

榛名「……」

榛名(足柄さんたちはこんな意味で言ったわけじゃない。彼女たちの応援を榛名が曲解しているだけだ)

榛名(これのどこが積極的なのか、ガンガンいくって一体どこに向かっていっているのか)

榛名(そう自分に問いかけながらも、はぁ、はぁ、と荒い呼吸が止まらない)

榛名(心臓は早鐘のように鳴り、薬を握った手の平はじっとりと汗ばんで気持ち悪い)

榛名「」ゴクッ

榛名(この薬を入れれば、提督はちょっとやそっとじゃ目覚めない)

榛名(その間なら榛名は提督に何だってできる)

榛名(なんだって、できるのだ)

榛名「榛名は臆病で、卑怯で……悪い女です」


榛名「お待たせしました」

提督「ああ、ありがとう。いただくよ」ゴクッ

榛名「……」ジッ

提督「……」カリカリ

提督「」ゴクゴク

榛名「……」カリ,カリ

提督「……」カリカリ

――――
――

提督「」ウツラウツラ

榛名「……」ドキドキ


提督「」スー

榛名「……」カリカリ

提督「」スー

榛名「……提督?」チラッ

提督「」スー

榛名「提督」ツンツン

提督「」スー

榛名「……」ゴクッ

榛名「ん……はぁ」ドキドキ

榛名「提督……お休み、ですよね?」

提督「」スー


榛名「……提督」サワ

榛名「……」ナデナデ

提督「ん……」

榛名「」ビクッ

提督「」スー

榛名「はぁ、はぁ……」

榛名(提督は間違いなく眠っている。薬は問題なく効いているようだ)

榛名(さわさわと頭を撫でると、少し固い短い髪の毛が指の間をすり抜けながら榛名の手をくすぐった)

榛名「……」ナデ

提督「」スー

榛名「……好き」

榛名(椅子の上で眠る提督に覆いかぶさるように、榛名は彼の膝に跨った)

榛名(無防備なその姿に良くない感情がふつふつと湧き上がってくる)

榛名「提督、好きです」

榛名「……好き、です」

榛名(その言葉を口にする度に、邪な欲望が大きくなり、溢れだした感情が榛名の呼吸を荒くさせた)

榛名「……はぁ」

榛名(両手で提督の頬を掴み、力なく垂れた顔をそっと持ち上げる)

榛名「ごめんなさい提督……榛名はもう、我慢できません」

榛名(小さな寝息と、まるで榛名を誘うようにほんの少し開いた唇)

榛名「はぁ……提督、好き」

榛名「好き……好きです」

ちゅっ

榛名(瞬間、電流が走ったようだった)

榛名(唇から伝わるゾクゾクとした痺れるような快感)


榛名「え……ふぁ」

ちゅっ

榛名「んむ……」

榛名(何度唇を重ねても、もっと、もっと……って唇を離すことができない)

榛名「ん……ぷは、ちゅ」

榛名(頭がくらくらする)

榛名「キス……気持ちいい」

榛名(唇を重ねながら半開きになった唇をチロチロと舐める)

榛名(まるでマーキングをするように、たっぷりと唾液を塗りつけ、提督を汚していく)

榛名「はぁ。ちゅ、れろ……」

榛名(唇の間に舌を滑り込ませると、つるつるの歯とその奥の提督の舌に榛名の舌先があたった)


榛名(絡ませたい、と思った)

榛名(唇を押し付けるようにして舌を奥へと伸ばす)

榛名「ん……ふ……」

榛名(唇同士が擦れる感触が心地いい)

榛名(肌に当たる彼の鼻息が擽ったい)

榛名(無抵抗な提督の舌を捕まえてつつき、絡ませ、じっくりと味わう)

提督「んぐ……」

榛名(提督が小さく呻くのがわかったが、止まらない)

榛名(絡めた舌が、擦れる唇が、体から伝わる体温が……)

榛名(全てが気持ちいい)

榛名(今まで味わったことのない官能に、快楽に、ずぶずぶとはまってしまう)

榛名「ぷは……」

榛名(いけない。これ以上は本当におかしくなる)

榛名(……我慢、できなくなる)

提督「ん……」スー

榛名(下着……濡れてる)

榛名「榛名……変態だ」

榛名(……着替えてこなくちゃ)


――――
――

提督「ん……あれ、また寝てしまってたのか」

榛名「ええ。いつの間にか」

提督「おかしいな……途中までそんな眠気は感じてはいなかったはずなんだが」

榛名「きっと気付かないうちに疲れが溜まっていたんですよ」

提督「そうだろうか……最近は休憩の時に仮眠をとったりもしてるのに」

榛名「……本日はお早めにお休みになったらいかがでしょう?」

榛名「出撃もありませんし、急ぎのものだけ済ませてしまえば大丈夫だと思います」

提督「……ん。そうするか」

榛名「提督は十分過ぎるくらい働いてます。ちゃんとご自愛くださいね?」

提督「ああ。ありがとう、榛名」


榛名「……」

榛名(よくもまあすらすらと嘘が出てくるものだ)

榛名(そんな自分に嫌悪感もあるが……それと引換に心が満たされたのも事実)

榛名「……」スッ

榛名(唇にそっと手を触れる)

榛名(さっきまで、本当にキス……してたんだ)

榛名「……」ドキドキ

榛名(残ったのは確かに感じた快楽の余韻と提督と触れ合えた多幸感……それらに比べれば罪悪感なんて、ほんの少ししかなかった)

榛名「……気持ち良かった」ボソッ

榛名(この睡眠薬が想像以上に効くことがわかった)

榛名(提督も怪訝に思っているから頻繁には使えないだろうけど……)

榛名(薬は、まだまだ残ってる)

榛名「」ペロ

榛名「……また、したいな」

今回は以上です
ありがとうございました


――――
――

榛名「~♪」フンフン

霧島「……」メガネフキフキ

霧島「榛名、良いことでもあった?」

榛名「うん」エヘヘ

霧島(提督は上手くやってくれたみたいね)

霧島「……」ヨシ

霧島「あら? 榛名、そんな髪留め持ってたっけ?」

榛名「あ、んふふ……提督に頂いたんだ」ニコニコ

霧島「へぇ……」ジー

霧島(シンプルだけど、小さな宝石があしらってある。高級感もあるし、素材も悪くなさそう)

霧島「良かったじゃない」

榛名「うん。榛名、毎日これつける!」

霧島("ご褒美"がしょうもない物だったらまた乗り込んでやろうかとも思ったけど、これなら及第点かな)


ドア<バーン

金剛「榛名、いるー?」

榛名「はい。ここに」

金剛「お弁当箱買ってきました! これで女子力アピールしまショ!」

霧島「どうしてまた急に?」

金剛「男をつかむなら、まず胃袋をつかめ! デース!」

榛名「確かに昔からそう言いますが……以前、榛名は一度料理をご馳走していますよ?」

金剛「ノー! せっかく練習したのに一度きりなんて勿体無いワ!」

金剛「ここで改めて榛名の料理好きをアピール!」

金剛「それを繰り返すうちに提督の胃袋が榛名の手料理を求め始めるはずデース!」

金剛「そうなったらもうこっちのモノネ!」


金剛「毎日弁当を作って正妻アピールも良し!」

金剛「提督の部屋で直接ご馳走するも良し!」

金剛「料理上手をアピールして損はないワ!」

霧島「それはそうですが……ん?」

霧島(金剛お姉さまの手に本が……)

金剛「」つ"胃袋神話"

霧島(……神話)

榛名「はい! 榛名頑張ります!」

金剛「応援してるからね!」


――――
――

榛名「提督! 榛名、今日はお弁当を作ってきました!」

夕張「むむ……」ジー

提督「お、おう」

夕張「むぅ……」ウーン

榛名「夕張さんの分もあるので一緒に食べましょう!」
夕張「あ、はい。ありがとうございます」

提督「じゃ、いただきます」

夕張「ます」

榛名「はい!」

提督「ん……」モグモグ

夕張「ん~、美味しい!」パァァァ

提督「ああ、相変わらず絶品だな」

榛名「良かった」パァァァ


夕張「ってそうじゃない!」ガタッ

提督「」パクパク

榛名「?」モグモグ

夕張「なんか最近榛名さん近くないですか!? 積極性増してませんか!?」

夕張「え、何? はっ」

夕張「もしかして私がいない間に何かありました!? 浮気!?」

榛名「うふふ……」サス

夕張「何でお腹さすってるんですか!?」

榛名「楽しみですね、ぱぱ?」

提督「誰が誰のパパ!?」

夕張「ちょっと提督!?」ガシッ

提督「いやまて夕張! 俺には覚えがない!」

夕張「どういうことなんですかぁ!? 説明してください!」ガクガク


提督「ま、待って、待て夕張!」ガクガク

榛名「ふふっ」クスクス

夕張「むっ」ピタッ

榛名「冗談です」

夕張「……」

提督「だから話を聞けと……」グラグラ

榛名「でも、本当にしたいって……思ってますよ?」

提督「なっ」

夕張「っ」

提督「いや、榛名。俺は」

榛名「あ! 榛名お姉様と約束があるんでした! 失礼しますね!」

タタタッ

提督「ぬぅ……」アレー

夕張「むぅ……」


――――
――

提督「……」カリカリ

榛名「……」カリカリ

提督「……榛名、なんか近くない?」

榛名「気のせいだと思います」

提督「そうだろうか……」

提督(最近、榛名が近い)

提督(デスクワークをする時はもちろん、工廠や演習で現場に向かう時もご飯を食べる時も……彼女が秘書官を務める時は、何をするにも俺にひっついてまわる……)

提督(嫌なわけではないが、正直落ち着かない。夕張に対する後ろめたさもある)

提督「そうかな……榛名の香りを感じるぐらいには近い気がするんだが」

提督(そう思ってやんわり伝えようとすると)

榛名「……榛名臭いでしょうか」

提督「そんなことはない。むしろいい匂いがするぐらいだけど」

榛名「いい匂いだなんて、榛名感激です!」

提督「いや、そういうことじゃなくてね」

榛名「あ、提督、喉が乾きませんか? 榛名、お茶をお持ちしますね!」タタッ

提督(なんやかんやで話が途切れ)


提督(かと言って、直接伝えようとすると)

提督「なあ榛名」ズズッ

榛名「はい! なんでしょう?」トナリニスワル

提督「……近い」

榛名「え……」

提督「その、離れてくれないか」

榛名「……」ウルッ

提督「っ……」

榛名「……」ジワッ

提督(こうやって泣きそうな顔をするのだ)

提督「嫌なわけじゃない。でも、やっぱりちょっと近いというか、いろいろ困るから、その……」

榛名「……意識、していただけてるのですか?」

提督「うぐっ……」


提督「……」ガシガシ

提督「榛名、前にも言ったと思うけど俺は」

スッ

榛名「言わないでください」ピト

提督(拒絶の言葉を吐き出しかけた俺の唇は、彼女の人差し指で塞がれていた)

榛名「わかってます。でも、榛名が提督を好きでいることは榛名の自由……ですよね?」

榛名「榛名は提督のことが好きです。ですから、たくさんアプローチすることにしたんです」

提督「榛名、それは「好き」」

榛名「好きです」ジッ

提督「う……」カァァァ


提督「……」コマッタ

榛名「……こうして想いを募らせることも、いけないことでしょうか」

提督「そんなことはないが……」

榛名「でしたら、もう少しこの気持ちを抱かせてください。すぐに忘れてしまえるほど簡単なものではないんです……」

提督「……」

榛名「もちろん、夕張さんと別れてくれなんて言うつもりもありません」

榛名「ただ、提督の寵愛をほんの少し榛名にも注いで頂ければ……なんて」

提督「それは難しい相談だが……」

榛名(榛名が言葉を遮るからか、提督の優しさか……提督は苦い表情をしつつも榛名を強く拒絶したりはしない。こうして秘書官も続けさせてくれている)

榛名(その提督の優しさにつけこんで榛名はこうしてアプローチを続けている)

榛名(あの秘め事を繰り返すようになって、少し……積極的になれたのかもしれない)

提督「……」

榛名(でも、困ったような表情をする提督を見ると、それが正しいことなのかはわからなかった)

榛名(……結局榛名は自分のことしか考えていないのかもしれない)


――――
――

榛名「提督……ごめんなさい」

榛名("いつものように"眠った提督に唇を重ねながら、小さく謝罪する)

榛名「榛名、提督を困らせてますよね……」

榛名(でも、それでも……と思ってしまう)

榛名(榛名は提督に必要とされたい。もっと触れ合いたい)

榛名「いつまでも榛名をお側において欲しいんです」

榛名(提督は返事をしない。眠っているから当然だが……)

榛名「ん……ぷは」

榛名「……」モンモン

榛名(最近、どうも満たされない)

榛名(こうして提督に触れて、重なりあって、それは榛名が望んでいることで、幸せなことのはずなのに)

榛名(なのに、日に日にもやもやは高まるばかり)

榛名(提督の体温、吐息、その唇……それをどれだけ味わっても満たされない)

榛名「……」

榛名(理由はわかっている)

提督「」スー

榛名(提督が眠っているから、意識がないままだからだ)


榛名「提督……」

榛名(だらりと垂れた提督の腕を掴み、榛名の腰に回す)

榛名(力ないその手は榛名を包み込んではくれない)

榛名「……」ギュッ

榛名(榛名は提督の意志でそれをして欲しいのだ)

提督「」スー

榛名(抱きしめて欲しい)

榛名(愛を囁いて欲しい)

榛名(愛を紡いだその口で、榛名の唇を奪って欲しい)
榛名「……」

榛名(どうしたら良いのだろう)

榛名(どうしたら、提督は振り向いてくれるのだろう)


榛名(……このままアプローチを続ければ、いつか提督は応えてくれるのだろうか)

榛名「……後ろ向きな考えは良くない、ですよね」

榛名「……」ナデ

榛名「榛名だって、イチャイチャしたいですから」

提督「」スー

榛名「……ちゅ」

榛名(最後にもう一度唇を重ねて立ち上がる)

榛名「……」

榛名(提督にタオルケットをかけ、少しだけ乱れてしまった服装を整える)

榛名「仕事、しなくちゃ……」


――――
―― 医務室

提督「……どうだ? 何かわかったか?」

明石「まあ……断定はできませんが」

提督「そうか、良かった。最近意図せず眠ってしまうことが多くて本当に困っていたんだ。原因がわからなければ対策もできないからな」

提督「夕張や榛名のおかげで今のところ実務に影響はないが、今後もそうとは限らないからな」

提督「それで、どうなんだ? もしかして病気か何かか?」

明石「……最初はそう思いました。不眠症があるように、逆に眠りすぎてしまう過眠症なんて病気もありますから」

明石「そこまではいかないにしても、ストレスなどでそれに近い症状が出てるのかと思ったんですが……」

提督「……」

明石「……」ウーン

明石「提督、最近何か薬を服用したりはしていますか? 風邪薬とかアレルギー薬とか……睡眠薬、とか」

提督「いや、飲んでないが……だいたい睡眠薬なんて飲んでたら、眠くなるのは当たり前だ。こんな相談をしに来たりはしない」

明石「ですよね……」

提督「なんだ? 何かあるならはっきり言ってくれ」


明石「……単刀直入に言いますと、何か薬物を使われた可能性があります」

提督「……」

提督「は?」

明石「その――」

ダダダッ

ドア<バーン

提石「「」」ビクッ

夕張「……」

提督「お? え? 何?」

明石「夕張さん……?」

夕張「……」ツカツカ

提督「夕張?」

提督「急にどうした。怒ってるのか?」

夕張「これ、見てください」ガサガサ

提督「……青葉の新聞か?」ドレドレ

明石「……」ノゾキコミ


提督「……え?」

明石「あら……」

夕張「……」

提督「何、この……これ」

明石「ほぅほぅ……榛名さんも大胆ですねぇ」

夕張「……どうするんです?」

提督「どうするって……」

明石「犯人、見つかっちゃいましたね」

提督「……」


――――
ーー 掲示板前

ザワザワ

榛名「……」

榛名(どうして、なんで)

榛名("それ"をする時は他に人がいないことを確認して、執務室に来そうな人の予定も把握して、鍵もしめて……タイミングは見計らっていたはずなのに)

榛名(鎮守府通信【号外】とかかれたそれには、榛名がしたことと眠った提督の唇を奪っている榛名の姿が写っていた)

榛名(最早日課にもなりつつあったあの甘い秘め事は、榛名が望まない形でこんなにもあっさりと露呈することとなった)

ザワザワ

榛名(みんなが榛名を見ている気がする)

榛名(脂汗が浮かび、眼の焦点が合わない)

榛名「ち、違うんです……榛名、榛名は……」

榛名(振り返り、絞り出した声は自分でも驚くほど震えていた)

夕張「……榛名さん」

榛名「」ビクッ

榛名「ゆ、夕張さ」

夕張「提督が呼んでます。一緒に来てくれますね?」

榛名「っ」

榛名「……はい」

今回はここまでで。ありがとうございました


――執務室

提督「……」

夕張「……」

榛名「……」

提督「……さて」

榛名「」ビクッ

提督「呼ばれた理由はわかるな?」

榛名「……はい」

夕張「釈明があるなら聞きます」

榛名「……その、ごめんなさい!」

提督「……」

榛名「ごめんなさい。最初はほんの出来心だったんです……」

榛名「提督をもっと近くで見たくて、触れたくて……」


榛名「……最初は、提督がお昼寝をした時に隣に座って抱きついてたんです」

榛名「でも、段々エスカレートしてしまって……提督がもっとぐっすり眠ってくれたなら、いろんなことができるって思ってしまったんです」

榛名「それで……薬を使いました」

提督「……」

榛名「……普通に、気持ち悪いですよね」

榛名「寝ている間に……それも、薬まで使って」ジワ

榛名「ごめんなさい……本当に」ポロポロ

夕張「……」

榛名「ごめんなさい。どうか、嫌わないでください……」

提督「……別に嫌いになってはいない」

提督「むしろ、そういう行動には萌えすら感じるぐらいだが……」

夕張「……」ゲシッ

提督「痛い!」

提督「とは言え……実際に自分が当事者になると、正直気分の良い物ではないな」

榛名「ごめんなさい……」


提督「反省してるならいい。今回のことは、はっきりと拒絶してこなかった俺にも責任があるだろう」

提督「これ以降、こういうことは一切無しだ。俺は榛名の気持ちに応えることはできない。いいな?」

榛名「……はい」

提督「……今回のことに対する榛名の処分だが、他の奴らの手前もある。不問とするわけにはいかない」

提督「次の出撃まで……2週間ぐらいか。それまで榛名を謹慎処分とする」

榛名「はい……はい?」

提督「どうした」

榛名「それだけ……ですか?」

提督「ああ。言っただろう。今回のことは俺にも責があると」

榛名「ですが……」

提督「いい。もう下がりなさい」

榛名「っ」


榛名「……ありがとうございます。失礼します」

夕張「榛名さん」

夕張「提督はこう言ってますけど、私は怒ってます」

夕張「いくらなんでも薬を盛るのはやり過ぎです。謹慎中自分がしたことをよく考えてください」

榛名「はい。ごめんなさい……」

ドア<パタン

提督「……はぁ」

夕張「……」

提督「……青葉、いるんだろ」

青葉「ばれましたか」


提督「今回のこと……記事にしたのはあまりに軽率だったんじゃないのか。俺か夕張に伝えるだけで良かったのに」

青葉「あまりの出来事に興奮してしまって……すみません」

夕張「記事にしてしまったのは今更どうしようもありません」

提督「ああ。だが青葉、お前が記事にしたんだ。事態の収集もしっかりやれ」

提督「間違っても、今後榛名が皆から距離を置かれることがないように」

青葉「わかりました」

青葉「……でも提督、薬盛られて唇奪われたのに、案外ケロッとしてますね」

青葉「榛名さんのこと、嫌いになったりはしないんですか?」


提督「……こんなことで榛名を嫌いになるわけないだろ」

夕張「はいはい。提督は役得ですもんね。榛名さんのキスできて!」

提督「う……悪かったよ。でも、俺だって本意じゃない」

夕張「それは……わかってますけど」

提督「……今回のことは正直驚いたし、気分が良いものではないのも事実だ」

提督「だが、榛名を嫌いになることはない」

夕張「……提督は甘すぎます」

提督「榛名を嫌いにならないのはお前だって一緒だろ?」

夕張「……それは、そうですが」

青葉「ほほぅ……そのお二人の言葉、記事にしちゃったりして」

提張「「駄目だ」です」

青葉「……ですよね」


――執務室の廊下

榛名「……」シャガミコミ

榛名(嫌われた。きっと)

ドア<ハルナサンノコト、キライニナッタリシナインデスカ

榛名「」ビクッ

榛名「ひぐっ」ジワ

榛名(怖い。提督の答えを聞くことが。その言葉を聞くことが)

榛名(でも、榛名はその場から動かず聞き耳を立ててしまっていた)

ドア<ハルナヲキライニナルコトハナイ

榛名「え……」ドキッ

榛名(……予想外の言葉に胸が高鳴った)

榛名「……」ドキドキ

榛名(同時に湧き上がってきたのは強い後悔と、夕張さんへの嫉妬、そして、抑えがたい情欲だった)

榛名(提督の言葉が嬉しかった)

榛名(諦めようとしていたのに……吐き出すことのできない気持ちが今にも溢れだしてしまいそうだ)

榛名(提督はどうしてこんなにも榛名に優しくしてくれるのだろう)

榛名(愛おしい。狂ってしまいそうなほどに)


榛名「……」

榛名(夕張さんはその提督の愛を一身に受けているんだ)

榛名「……ずるい」

榛名(ずるい。ずるい)

榛名(榛名だって提督と重なりたい)

榛名(繋がりたい)

榛名(愛されたいのに……)

足柄<実際のところさー、榛名がその身体を使って誘惑したらコロッといくんじゃない? 意外に>

榛名(前に足柄さん達と飲んだ際、彼女たちが言っていた言葉が頭に反芻する)

陸奥<……コロッとはいかなそうだけど、なし崩し的に関係は持てそうよね>

榛名(思えば榛名は、提督に言葉や態度でアプローチこそすれ、直接的な"誘惑"というものはしていない)

榛名「提督と、関係を……」

榛名(舌の根の乾かぬうちにそんなことをしては、今度こそ榛名は信用を失うかもしれない)

榛名「でも――」

榛名(どうせ叶わない恋なら……)


――廊下

提督「はぁ……」

提督(何だか大変なことになってしまった)

提督(あんなことがあったとわかっても、榛名のことは嫌いにならない。それは嘘偽りない正直な気持ちだ)

提督(だが、気分の良いものではなかったのも事実だし、それ以上に困惑してしまって思考がぐちゃぐちゃだった)

提督(夕張にも申し訳ないことをした。口に出して非難してくることはないが、ずっと難しい顔をしているし、一度ちゃんと話さないと――)

グイッ

提督「ほわぁっ!?」

バタン

提督「は?」

ガチャ

提督「え?」

榛名「……」


提督「は、榛名? 何故ここに、それにこの部屋は……」

提督(榛名に引き入れられた部屋は普段あまり使われる事のない空き部屋だった)

提督(薄暗い部屋の中、今しがたドアの鍵を閉めたであろう榛名がぼんやりと佇んでいる)

提督「……榛名、お前には謹慎を言い渡したはずだ」

榛名「……」スッ

提督(無言で足を踏み出す彼女に思わず後退る)

提督「榛名……?」

提督(部屋が薄暗いせいで彼女の表情がよく見えない。だが、ただならぬ雰囲気の彼女に気圧され、距離を取るように少しずつ後ろに下がっていた)

榛名「……提督、ごめんなさい」グッ

提督「うわっ」トン

提督(一気に距離を詰められたかと思うと、肩を押され壁に追いやられていた)


榛名「……」ギュッ

提督(俺の動きを封じるように手を取り、体を密着させてくる)

提督「……榛名、どういうつもりだ」

榛名「ごめんなさい。でも、榛名……榛名は……」

提督「待て、待て榛名。こういうことは無しだとさっき言ったはずだ」

榛名「ごめんなさい。ごめんなさい。でも、提督が榛名を嫌いにならないなんて言うから。優しくするから」

提督「なっ、聞いてたひぅ!?」

榛名「ちゅ……」

提督(首筋に榛名の唇が触れる)

提督(振り払おうと腕に力を込めるが、動かない)

提督(彼女の手の平は優しく、だが確実に俺の手を絡み取り、拘束具か何かのように動きを封じていた)


榛名「はぁ……提督」

提督(密着したことで彼女の姿が、表情がよく見える)

提督(首筋に吸い付きながら、彼女は蕩けた瞳で俺を見上げていた)

提督(豊かな2つの膨らみを俺の胸に押し付け、下腹部を擦り付けるようにして密着してくる)

提督「っ、は、榛名!?」

榛名「んっ……はぁ……」

提督(優しく擦り寄せられた鼻先が首筋を撫でる)

提督(時折吐き出される甘い声がどうしようもなく官能をくすぐった)

榛名「……榛名は我慢できません。諦めようとしてたのに、どうして、どうして……ああ、提督、ごめんなさい」

提督(彼女はごめんなさい、と繰り返しながら益々体を密着させてくる)

提督(柔らかな唇が頬に軽く重なり、暖かい吐息が耳をくすぐった)

提督「榛名、離れろ」

提督(少し強い口調でそう言うが、彼女は聞く耳を持たず、その命令に抗うように体を重ねてくる)

榛名「んっ、ふ……」

提督(すらりと伸びた彼女の脚が俺の太腿の間に滑りこんだ)

榛名「……あっ、はぁ……ふぁ……」

提督(体をぐいぐいと押し付け、"自分の"を俺の脚に擦り付けくる)

榛名「んくっ……ひ……う、っ……」

提督(耳元で囁かれる蕩けたようなその声音と淫靡な甘い香りが理性を溶かしていくようだった)


提督(熱を帯びた彼女の吐息が耳を包む度に背筋にゾクゾクとした快感が走り、喘ぎ声も相まって俺の頭はもはや冷静とは言えない状態になっていた)

提督「榛名、止め「お願いします」」

提督(俺の言葉に被せるように彼女は言った)

提督(静かだが、有無を言わせぬはっきりとした言葉だった)

提督(動きを止めた彼女は熱い吐息を漏らしながら俺の耳元に唇を寄せる)

榛名「お願いします。一度だけでいいんです。榛名を、抱いてください」

提督(まるで懇願するような、今にも泣きだしてしまいそうな……そんな声だった)

提督「……」

榛名「……駄目ですか。もちろんこのことは誰にも言いません。本当に一度だけでいいんです」


提督「……駄目だ」

榛名「どうしても、ですか?」

榛名「提督だって男性です。こういうこと、嫌いじゃないですよね……?」

提督(彼女は妖しく微笑みながら、身体をゆっくりと擦りつけてくる)

榛名「っ…んっ……あっ」

提督(俺の胸には2つの豊満な胸が淫らに潰れた形で押し付けられ、太腿にはじんわりと熱をもった彼女の秘所が当たっていた)

榛名「……あぁ…てっ……提督っ」

提督(彼女が身体を擦り付ける度にそれらは俺に強く押し付けられ、熱を帯びた吐息が耳をくすぐった)


榛名「……ふふ」チラッ

榛名「大きくなってますね……榛名で興奮してるんだ……嬉しい」スッ

提督(悔しいが、事実だった)

提督(身体は正直だ、なんてその分野ではもはや使い古された言葉だが、自分が身を持ってそれを体験することになるとは思わなかった)

提督(だが、榛名みたいな美人に密着され、妖艶な喘ぎ声を耳元で囁かれて反応しない男なんて果たしているのだろうか)

提督「っ、違う。これは……」

提督(いくら夕張が好きだと言っても、正直に反応してしまう自分に腹が立つ)

榛名「提督も苦しい、ですよね? 手で触ってあげます。ゆっくり……ですけど」

提督(彼女のしなやかな指が、すっかり張ってしまったズボンをなぞる)

提督(ゾクゾクとした快感ともどかしさを感じながら、目の前の彼女を欲望のままに組み敷きたいという欲求が頭をもたげるのがわかった)


提督「ぐっ……」

提督(頭を振ってその気持ちを押し出す。俺には夕張がいるのだから)

提督「榛名、止めてくれ」

提督(ゆっくりそう言うが、その声は自分でも驚くほど弱々しかった)

榛名「どうしてそんなこと言うんですか? 直接……触ってほしくないんですか……?」

提督「駄目だ。止めろ」

提督(言いながら開いた手を動かし、何とか彼女を突き放そうともがくが、彼女はこれ以上ないぐらいに身体を密着させ益々俺の自由を奪っていく)

榛名「駄目ですよ、提督。だって、提督のここ……こんなに苦しそうです」

提督(優しく股間を撫でていた白い指がおもむろに俺のそれを掴んだ)

提督「っ」ビクッ

榛名「本当は提督だって、したいんですよね? ね……? そう言ってください。お願いです」

提督(彼女の唇が首筋を這う。彼女の指は握る強さを増していき、溜まった血液がドク、ドクと脈打っていた)

榛名「はぁ……榛名と、して頂けます……よね?」

提督「だ、駄目だ。榛名、それはできない……一度だってやってしまったら――」

提督(吐き出しそうになった言葉を呑み込む)

提督(俺は今何を言おうとした。"こんなこと"を考えること自体が、夕張への裏切りに他ならないのに)


榛名「あ……」

提督(が、彼女には出していないその言葉が聞こえてしまったようだった)

提督(彼女の口角が小さく上がり、腕を掴む手に力が入る)

グイッ

提督(腕を引かれたかと思うと、肩を押され尻もちをついてしまう。そのまま間髪入れず彼女が覆いかぶさってきた)

提督(肩を押さえつけられ、彼女がのしかかって来る)

榛名「駄目ってどういうことですか? なんですか? ちゃんと説明してください」

提督「それは……」

榛名「どういうことですか?」

榛名「榛名と一度でもやってしまったら、どうなっちゃうって思ったんですか?」

提督「は、榛名……」

榛名「それは、榛名で欲情していただけたってことですか?」

榛名「本当は榛名と……したい、ってことですか」


提督(はだけた服、上気した頬、じっとりと湿った秘所……)

提督(そのどれもが扇情的で、手の届く場所にあった)

提督(今こうしている間も彼女からは確かな好意を感じるし、それ故に彼女が囁き、肌を重ねて俺を誘惑する様はクるものがあった)

提督「……」ゴクッ

榛名「……ああ、良かった」

榛名「榛名、本当は不安だったんです」

榛名「提督にとって榛名は魅力的じゃないんじゃないかって。提督は榛名を求めてくれないんじゃないかって」

榛名「でも、提督にとって榛名はちゃんと魅力的だったことですよね?」

提督「……確かに榛名は魅力的だ。だが、それと榛名と"したい"かは別の話だ」

榛名「……嘘です」

提督(彼女は言いながらゆっくりと腰をくねらせた)

提督「っ」ビクッ

榛名「だって、提督のここ……こんなに固くて大きくなってます」

提督(下着越しでもわかるくらい濡れている彼女の"そこ"が容赦無く俺を刺激してくる)

提督(乱れたスカートの隙間から彼女の下着が見え隠れし、彼女が動く度に豊満な胸が揺れた)

榛名「ん……あっ、わかりますか? 榛名の、ここも……もうこんなに濡れて……」

榛名「ごめんなさい、はしたないですよね……でも、榛名は提督のこと思うだけでいつも……」

榛名「……いいですよね? 入れちゃっても」


提督「っ……だ、駄目だ」

榛名「提督、我慢しなくていいんです。榛名ももう、我慢したくありません」

提督「榛名、止めてくれ」

榛名「提督、キス……しますね」

提督「榛名!」

榛名「」ビクッ

榛名「てい、とく……?」

提督「駄目だ榛名。止めてくれ」

提督「俺は、夕張を裏切りたくない」

榛名「あ……」

榛名(提督の悲しげな表情に、頭に登っていた血が一気に引いていく)


榛名「そんな……どうして、そんな顔をするのですか」

提督「……」

榛名「提、督……」

榛名(ああ、榛名は愚かだった。少し考えればわかるはずだった)

榛名(いくら提督が優しくたって、自分を無理やり犯そうとしている相手に微笑んでくれるわけがない)

提督「……」

榛名(確かに榛名は提督と繋がりたかった)

榛名(そのためなら強引に押し倒してしまっても、と思った。強姦のような形になってしまっても構わないと)

榛名(でも、でも……)

榛名「あ、榛名……なんてことを……」

榛名(榛名は提督にそんな顔をして欲しかったわけじゃない)

提督「榛名……」

榛名(提督に……そんな目で榛名を見て欲しかったわけじゃない)

榛名「あ、ああ……榛名……榛名は……っ、ごめんなさい!」


榛名(どうしてもっと早く気付けなかったのだろう……)

榛名「ごめんなさい、ごめんなさい」

榛名(榛名は提督に甘え過ぎていた)

榛名(提督なら受け入れてくれるんじゃないかってそう思っていた)

提督「……」

榛名(目先の欲望を満たすことで頭がいっぱいで……自分に都合の良い未来、行動を正当化するための言い訳しか考えていなかった)

榛名「ごめんなさい」

榛名(結局榛名は、自分のことしか考えていなかったのだ)

榛名「もうしません。もう、しないから……だから。嫌いにならないでください……お願い、します……」

榛名(こうして今も自分のことを考えてる。本来なら、提督に嫌われる榛名のことではなく、榛名に襲われた提督を心配すべきなのに)

榛名「ごめん、なさい……」

榛名(榛名は本当に……どうしようもなく卑屈で、卑怯で、下衆な女だ)

榛名(こんな榛名が提督に愛されようなんて、それこそおこがましいことだったのかもしれない)


提督「……」スッ

榛名「てい、とく……?」

榛名(気付いたら、提督に抱き寄せられていた)

提督「ごめん。応えてやれなくて」

提督「ありがとう。俺をこんなにも好きになってくれて」

榛名「提督……」

榛名「ごめんなさい。榛名、もう提督にご迷惑はかけません」

榛名「でも、今だけ……もう少しだけ、こうさせてください」


――――
―― 廊下

提督(あの後、榛名は目一杯泣いた)

提督(その間、彼女は何度も謝り、最後にお礼を言って彼女の自室へと帰っていった)

提督(ごめんなさい、と繰り返しながら泣きじゃくる彼女を前に、せめて胸を貸してやる以外にどうすれば良かったのか……そうしたことが正解だったのかはわからない)

提督「はぁ……」

提督(半ば強姦にも近い形で彼女に襲われたにも関わらず、彼女に対して嫌悪感は抱かなかった)

提督(むしろ、戸惑いの方が大きい)

提督(まさか榛名が、あんなことをするとは思わなかった)

提督(その辺の有名人よりよっぽど見目麗しく、礼儀正しく、事務も戦闘もそれなり以上にこなす能力もあり、人徳も人望もある)

提督(そんな彼女が、それをした)

提督(それだけ……追い込んでしまっていたということなのだろうか)

提督「謹慎中に多少心の整理ができてくれていればいいのだが……」


提督(……夕張には何も伝えていない)

提督(伝えられなかった。榛名に押し倒されたなんて、どうして言うことができるだろうか)

提督(我ながら女々しくて嫌になるが、夕張に嫌われるかもしれないと思うとどうしても口にできなかった)

提督「……榛名も、こんな気持ちだったのだろうか」

提督「……」

提督(彼女の謹慎は昨日で終わった。幸か不幸か今日の秘書官は夕張だ)

提督(だが、彼女は今雑務に追われ、執務室に来るのは遅くなる。もちろん、その雑務を命じたのは俺だが……)

提督「榛名に会ったら、どう声をかければいいんだ……」

提督(思わず口に出してしまう。真面目な彼女のことだ。謹慎明けの報告、もちろんこの前のことの謝罪も兼ねて彼女は執務室を訪れるだろう)

提督(榛名のことを嫌いになったわけじゃない。でも、あんなことがあった手前、どういう顔をして彼女に会えばいいのかわからない)

提督(自然と執務室へ向かう足も重くなってしまう)


提督「……」ピクッ

提督(予想通り彼女は待っていた。執務室の前で)

榛名「おはようございます。提督」

提督「……ああ、おはよう」

榛名「あの、先日は本当にご迷惑を……」

提督「その話はいい。お互い、辛くなるだけだろう」

榛名「ですが……」

提督「無かったことにはできないが、俺はもう許した。全部今まで通り……とはいかないだろうが、俺は榛名を信頼している」

榛名「……ありがとうございます」

提督「……とりあえず、入ろうか」


提督「秘書官を止める?」

榛名「はい」

提督「……そうか。榛名がそれを望むなら構わない。だが、もしこの前のことを気にしてるなら――」

榛名「提督」

榛名「提督のその優しさは美徳かもしれませんが、あまり気を持たせるようなことはもう仰らないでください」

提督「む……」

榛名「いいんです。元々、秘書官をやりたかったのは提督の気を引きたかったからで……それも無理だってわかりましたから」

提督「……」

榛名「そろそろ、踏ん切りをつけないといけないと思ったんです」

提督「そうか……」

榛名「提督には……もちろん夕張さんにも、本当にご迷惑をおかけしました」

榛名「でも、もうやめます。これからはその分今まで以上に働きますので。雑務も戦闘も……何なりとお申し付けください」

提督「……わかった。では早速だが、今日は出撃予定がある。いけるか?」

榛名「はい。榛名は大丈夫です。お任せ下さい」

提督「よし。期待している。ただ、無理だけはしないようにな」

榛名「ありがとうございます! 提督の艦娘として……今まで以上に提督のお役に立てるよう頑張ります!」


――――
――

夕張「榛名さん」

榛名「……夕張さん? 何か御用でしょうか」

夕張「秘書官、止めるんですか」

榛名「はい」

夕張「……提督と何かありましたか」

榛名「……そう、ですね」

榛名「……」

榛名「提督を……強姦しようとしました」

夕張「ご……はい?」

榛名「軽蔑してくれていいです」

夕張「……」


夕張「……本当、ですか」

榛名「はい」

夕張「それを馬鹿正直に言うなんて……いったいどういうつもりですか」

榛名「……このまま隠し続けても良いことにはならないと思ったので」

榛名「もっとも、こうして夕張さんに尋ねられなければ言うつもりはありませんでしたが」

夕張「……」

榛名「言ってしまえば、少しは楽になると思ったんですが……そう上手くはいきませんね」

榛名「どうして榛名はあんなことをしてしまったのでしょう」

夕張「……そんなこと、私に聞くなんて喧嘩売ってます?」

榛名「そんなことは……でも、ちょっと意地悪したいなって思ったのは事実です」

夕張「なっ」

榛名「榛名は夕張さんが羨ましいんです」


榛名「夕張さんが提督と付き合いが長いことも、夕張さんが旗艦であるために本当に頑張っていることもわかってます」

榛名「そんな夕張さんを心から尊敬していますし、好意的な気持ちを持ってます」

榛名「……でもそれ以上に、提督の寵愛を一身に受ける夕張さんが本当に妬ましいです」

夕張「っ……」

榛名「ごめんなさい。榛名は、榛名が思ってたより綺麗じゃなかったみたいです。今回のことで、それが身にしみてわかりました」

榛名「提督に薬を盛ったり、挙句の果てには押し倒して誘惑して交わろうともしました」

榛名「……でも、勘違いしないでください」

榛名「提督は何もしていません。榛名が無理矢理しようとしただけで、提督はずっと榛名の誘惑を拒んでました」

夕張「……」

榛名「どれもそれもきっと夕張さんのためです」

榛名「榛名はそれが……凄く羨ましい」


夕張「榛名さん……」

榛名「それに気付いてしまった時に榛名はわかったんです」

榛名「……もう榛名には勝ち目がないって」

夕張「……」

夕張「提督のこと、諦めるってことですか……?」

榛名「……はい」

榛名「今まで本当にご迷惑をおかけしました」

夕張「……」

榛名「……榛名たちももう、今まで通りにはできないかもしれませんね」

夕張「そう……かもしれませんね」

今回はここまでです
ありがとうございました


――――
――

夕張「提督、第一艦隊帰投しました」

提督「おう、お疲れ様」

夕張「こちら、報告書です」

提督「ありがとう」ペラ

提督「……最近の榛名は以前にも増して本当に凄い働きぶりだな」

夕張「ええ。まさに鬼神の如し、です。正直私の練度もいつ追い抜かれるか……って感じです」

提督「これなら、近々行われる大規模作戦でも期待できそうだな」

夕張「そうですね。赤城さんや金剛さんも調子いいですし……大和さんなんて次の出撃はいつだーってそわそわしてますよ?」

提督「……まあ大和は例によって、決戦兵器だから頻繁には出せないとは思うが」

夕張「でも、今回のは今までで最大規模って話ですし」

提督「ああ、総力戦になるだろう。もちろん大和の出番もある。そのつもりで準備を進めてくれ。みんなにもそう通達を」

夕張「はい」


提督「……夕張」

夕張「はい?」

提督「……いや」

夕張「なんです?」

提督「……」

夕張「……榛名さんのことですか」

提督「……ああ」

夕張「大丈夫です。私は提督のこと嫌いになったりしませんよ」

提督「夕張……だが――」

夕張「榛名さんに犯されそうになった、ですか?」

提督「」ピクッ

夕張「……榛名さんから聞きました」

提督「そう、か……」

提督「すまない。俺から言い出せなくて……」

夕張「いえ……言えませんよね。そんなことは」


提督「本当にすまない……」

夕張「大丈夫です」

夕張「思うことが無いわけじゃありません。でも……」ギュッ

夕張「嬉しかったです」

夕張「榛名さんとしないでくれたこと」

提督「……疑わないのか?」

夕張「私は提督を信じてます。これまでもこれからも」

夕張「今更疑ったりしませんよ」

提督「……ありがとう」

夕張(これで提督を独占できる)

夕張(でも、と思う)

夕張(……どうしても榛名さんの顔がちらついてしまうのだ)

夕張(後ろめたい気持ちはある。でも、恋人を、好きな人を独り占めしたいって思うことは当たり前……のはずだ)

夕張(榛名さんのこともみんなのことも大好き。けれど、それとこれとは話が別だ)

夕張(提督のことは譲りたくない。何より、榛名さんを拒絶してくれた、私を選んでくれた提督の気持ちを素直に受け取りたい)

夕張(……そう思うことはいけないことなのだろうか)

夕張(……ううん)

夕張(私は、間違ってない……よね)

夕張(私は提督の恋人、なのだから)


――――
――

夕張(榛名さんが提督から離れたことは、様々な憶測を伴って瞬く間に鎮守府中に広まった)

夕張(彼女たちの関心のほとんどは、"結局のところ提督と榛名さんがどういう関係にあったのか"、"何故離れるに至ったのか"ということだった)

夕張(榛名さんはそのことに関して固く口を閉ざしているようだし、私も提督も語るつもりはない)

夕張(このままほとぼりが冷めてくれれば……と思うけど)

夕張(問題は……)

祥鳳「……」

金剛「……」

夕張(榛名さんの提督への接し方が変わったことで、提督に好意を持っていた子達に少し不穏な空気が流れ始めたこと)

榛名「……」

夕張(榛名さん自信に何処か無理してる様子があること)

榛名「」スタスタ

祥鳳「……」タタッ

夕張「……」チラッ

夕張(……それに気付いていながら何もしない私自信だ)


祥鳳「……」タタタ

祥鳳「あの、榛名さん」

榛名「はい?」

祥鳳「……提督のこと、諦めたんですか?」

榛名「諦め……」

榛名「……」

榛名「……そう、ですね。榛名はこのまま身を引こうと思ってます」

祥鳳「本気ですか」

榛名「はい。榛名はこれ以上、提督に嫌われたくないんです」

祥鳳「嫌われるって……提督がそう言ったのですか」

榛名「いえ。提督は変わらず榛名に接してくれています。信頼している、とも……」

祥鳳「だったら」

榛名「だからこそ、です」

榛名「榛名は卑怯で汚い嫌なことをしました。それでも提督は榛名を信頼していると……嫌いにならないと仰ってくれたんです」

榛名「そんな提督に、どうしてこれ以上のご迷惑をかけることができるんです?」

祥鳳「……それは、今でも提督のこと好きってことですよね」

榛名「……」ニコ

祥鳳「……わかりました。榛名さんがそれでいいなら何も言いません」

祥鳳「でも、私は諦めませんから」


榛名「……」

榛名(『諦めない』そう言って立ち去る祥鳳さんを榛名は見送ることしかできなかった)

榛名(……提督のことが今でも好き。そんなことは自分がよくわかってる)

榛名(だからこそ……好きだから、離れたのだ。この気持ちを押し込めるために)

榛名(近くにいたら、榛名はまた何かをしてしまうかもしれない)

榛名(抑えがたい欲求が出た時、こと提督のことに関して榛名は自制できる自信がない)

榛名(そんな榛名では、絶対に嫌われてしまう)

榛名(こんな榛名じゃ提督に嫌われちゃうから)

榛名(……きっと、今ぐらいの距離がちょうどいいはずなのだ)

榛名「……」ギュッ

榛名(でも、榛名の身体も心も覚えている)

榛名(提督の側にいた時の、寄り添った時の、触れた時の……あの温もり。多幸感)

榛名(榛名がそれを味わうことはもう無いのだと思う度、榛名の心は少しずつ淀んでいく)

榛名「……」スゥ

榛名「はぁ……」

榛名(大きく深呼吸する。失恋なんて、誰もが経験すること。辛いのは榛名だけじゃない。だから……)

榛名「榛名は、大丈夫」

短いですが、今回はここまでで

今年中には終わらせたい(願望)

恐れながら申し上げます
今年中に完結させることができません
申し訳ありません!


霧島「榛名」

霧島「今日も出撃なの?」

榛名「うん」

霧島「……最近調子良いのはわかるけど、流石に多過ぎない? たまには休まないと……司令に頼み辛いなら私から頼んでみようか?」

榛名「勘違いしないで霧島。これは榛名がお願いしてるの」

霧島「お願いって……」

榛名「提督は適度に休みを入れようとしてくれてる。それを無理言って出撃させてもらってるの」

榛名「……今はともかく戦っていたいから」

霧島「榛名……」

榛名「心配しないで霧島。榛名、負けないから」


提督「……」ペラ

夕張「どうしたんです? 難しい顔して」

提督「ん……榛名のことなんだが」

夕張「はい」

提督「少し心配だ」

提督「この報告書の通り、結果は以前よりも良いぐらいだがな」

夕張「ふむ……」

提督「榛名たっての願いで、積極的に編成に組み込むようにしてる」

提督「榛名は練度も高いし、ウチではお前に次いで旗艦経験もあるから……榛名が艦隊にいることは俺としても安心できる」

提督「榛名自身、ここ最近の活躍は申し分ないし、士気も高い。榛名のことだ、きっと体調管理も万全だろう」

提督「けど、最近は本当に出ずっぱりだ。休むよう促しても断られるし……そこはかとなく危うさを感じる」

夕張「危うさ……そう、ですね。なんとなくですが、私も感じてます」

提督「今まで以上に戦果を上げてるし、何かミスがあったというわけでもないから……榛名がどうしても、と言う以上出撃させてきた。だが、流石に心配になってきた。杞憂で済めば良いが、万が一があっては困る」

夕張「はい」

提督「休むよう命令を出すのは簡単だが……」

提督「金剛を呼んでくれ」


金剛「ヘーイ! 提督ぅ! お呼びですかー?」

提督「ああ。少し相談があってな」

金剛「相談? 任せてください!」

提督「榛名についてなんだが……最近出撃が多いだろ?」

金剛「ハイ。榛名の活躍ぶりは姉としても鼻が高いデス」

提督「ああ。だが、どうも休もうとしなくてな……少し心配なんだ」

提督「休むよう金剛からもそれとなく促して欲しい」

金剛「hmm……それはもちろん構いませんが、私が言うよりも提督から言った方が榛名は言うことをきくと思いますよ?」

提督「もちろん俺からも言うが……」

提督「俺が休むよう強く促したら、確かに榛名は休もうとするだろう。"命令"として」


提督「今の俺達の関係はきっとそういうものに近い」

提督「……自惚れかも知れないが、榛名が今こうして頑張っているのも俺とのゴタゴタを清算しようとしてるから……だと思ってる」

夕張「提督……」

提督「元々勤勉な榛名にしたって、最近のは度が過ぎてる。俺だって馬鹿じゃない。それぐらいの考えには辿り着くさ」

提督「それで榛名の気が済むなら、と思って出撃させてきたが……」

金剛「流石に心配になってきた……と?」

提督「……ああ」

提督「榛名がしたことは……俺はもう許したつもりだ。だから、そんなことのために無理をしてほしくない」

金剛「その言葉を提督が直接伝えてあげた方が良いと思いますが」

提督「……それは」

提督「……」

提督「本当に俺が声をかけていいのだろうか」


金剛「どういう意味です?」

提督「今更優しい言葉をかけて、気を持たせるようなことをして……それは尚更榛名を傷つけてしまうだけじゃないのか」

金剛「それは……」

提督「榛名は優しく責任感が強い。俺の言葉を聞いても、はいそうですかとなるとは思えない」

提督「むしろ……」

夕張「提督に気を使わせてしまったと気に病み、殊更に戦果を求めるかも……」

提督「ああ。そうなっては意味が無い」

提督「だからお前を呼んだ。金剛、迷惑をかけてすまないが……よろしく頼む」

金剛「……迷惑、なんてことはありません。榛名は私の大切な妹ですから」

金剛「でも……。いえ、わかりました。榛名のこと、今まで以上に気に掛けておきます」


――――
――

金剛「榛名」

榛名「お姉様。何か?」

金剛「最近調子良いみたいですネ!」

金剛「But 最近は根を詰めすぎだと思います。少しは休んだほうがいいよ?」

榛名「お気遣いありがとうございます。ですが、休養は夜ちゃんと取っていますから」

金剛「No! 睡眠と休養はイコールじゃないよ」

金剛「どうしてそこまで出撃したいの?」

榛名「出撃したい……と言うよりは、榛名は戦果をあげたいんです」

金剛「それなら十分あげてるでショー?」

榛名「……いえ、まだまだです」

金剛「榛名?」

榛名「……榛名は戦わないといけなんです」

金剛「ふむ……?」

榛名「榛名は取り返しのつかないことをしました」

榛名「そんな榛名が今も変わらず提督のお側にいれるのは、榛名が艦娘として有用だからです」

金剛「有用って……」

榛名「強くない榛名に、提督のお役にたてない榛名に価値はありません」

金剛「提督がそう言ったのですか?」

榛名「いいえ。ですが……榛名は提督に必要とされたいんです」

榛名「だから榛名は戦って、戦って、提督に勝利をお届けしたい」

榛名「それで提督が喜んでくれるなら、必要だと言ってくれるなら、ほんの少しでも……褒めてくれるなら――」

榛名「榛名は、大丈夫です。大丈夫なんです」

金剛「榛名……」


金剛「……榛名が大丈夫でも、私は心配です」

金剛「もちろんバリちゃんも、提督だって本当に心配してます」

榛名「提、督も……?」

金剛「Yes! 榛名のこと、心配してたよ?」

榛名「榛名を、心配……」

榛名(どうしよう。そんなつもりじゃなかったのに……)

榛名「……」

榛名(嬉しい。嬉しい)

榛名(提督は本当に優しい。こうして離れてもなお、どんどん好きになってしまう)

榛名(喜んでもらいたい。気に入られたい)

金剛「榛名?」

榛名「」ハッ

榛名(違う。それは、駄目だ)

榛名「ごめんなさい、お姉様。榛名……少し休みます」

榛名「ご心配ありがとうございます。でも、榛名は大丈夫ですから」

金剛「榛名」

榛名「わかってます。お姉様の仰るようにちゃんと休みも頂くようにします」

榛名「お姉様にも夕張さんにも……もちろん提督にもご迷惑をかけるわけにはいきませんから」

金剛「……」フム

榛名「それじゃ、榛名は部屋に戻ります」

金剛「榛名」

金剛「休むのはもちろんいいことです。でも、勘違いしないでください」

金剛「私にはいくらでも迷惑かけていいんだからネ!」

榛名「……ありがとうございます、お姉様」


――――
――

提督「さて、第二次SN作戦もいよいよ佳境に入る」

提督「ここまで本当によくやってくれた。次の出撃で本作戦は終了となる」

提督「FS作戦。連合艦隊での出撃となる。編成は先立って伝えた通りだ。旗艦は第一艦隊を榛名、第二艦隊を夕張に任せる」

提督「先遣隊の情報では、戦艦棲姫が2体に加え、新たな姫級が確認されている」

提督「残念ながら、ここまでの戦いで我が鎮守府の備蓄資材は潤沢は言えないが……」

榛名「大丈夫です」

赤城「ええ。油断も慢心もありません」

夕張「いつも通り、きっちりしっかりやってきますから」

提督「ああ、信頼してる」

榛名「必ず勝利をお届けします」


提督「夕張」チョイチョイ

夕張「はい?」

提督「榛名のこと、何かあったらフォロー頼むな」

夕張「はい」

提督「もちろん、他の皆も」

夕張「もちろん」

提督「それから、お前も無理はするな」

夕張「……わかってます」

夕張「……」キョロキョロ

夕張「あの、提督」

提督「ん?」

夕張「行ってらっしゃいのちゅーを……んー」

提督「なっ、お前」

夕張「んー!」

提督「……」キョロ

夕張「ん……それじゃ、頑張ってきますね」

提督「ああ、気をつけてな」


夕張「艦隊帰投しました」

提督「ああ、お疲れ様」

夕張「まったく、今回ばかりは正直無理だと思いましたよ……」

夕張「時雨ちゃんが決めてくれなればね!」ガバッ

時雨「わっ」

夕張「もう時雨ちゃんホント最高っ」ギュー

提督「ああ、最高だよ時雨」ワシャワシャ

時雨「ちょ、ちょっと……」

夕立「むぅ~、夕張さん! 提督さん! 夕立も頑張ったっぽい!」グイグイ

提督「わかってるよ。夕立もお疲れ様」ナデナデ

夕張「夕立ちゃんも偉い!」ギュッ

夕立「」ムフー




榛名「……」ギリッ


提督「お前らもお疲れ様」

大和「……」

赤城「……」

提督「なんだ。元気ないな」

榛名「……申し訳ありません」

提督「何故謝る?」

榛名「それは、私達第一艦隊が何の戦果もあげれなかったからです」

提督「……まあそうだな」

提督「第一艦隊には戦艦、正規空母の主力級を集結させている」

提督「それは夜戦前に勝負をつける……或いは、夜戦までに敵主力を無効化し、第二艦隊の負担を減らす狙いもある」

提督「今回お前達はその役目を完璧に担えたとは言い難い」

榛名「……はい」


提督「だが、俺はお前達が頑張っていることを知っている。それこそ死に物狂いでな」

提督「戦争なんだ。過程が良ければいいなんて言えない。結果が全てだ。負けたら何も残らない」

大和「はい……」

提督「でも、お前達はみんなこうして帰ってきてくれた。誰一人欠けること無く、勝利して、だ」

提督「それは間違いなく誇るべきことだ。言っただろう? 結果が全てだ。お前達は勝った。今はそれでいい」

提督「各々反省点はあるだろうが、それは次に活かしてくれればいい
んだ」

提督「それに……お前達が無事だったことが俺は何より嬉しいよ」

赤城「提督……」

提督「ほら、辛気臭いのは終わりだ。俺達は勝ったんだぞ」

提督「さっさと風呂入って休め。明日は祝勝会だ」

赤城「!」ガタッ

赤城「一航戦、赤城! 寝ます!」タタッ

提督「いや、だから先に入渠しろと」

加賀「赤城さん、私も」タタッ

提督「……はぁ、慌ただしい奴らだな。榛名たちも早く休みな」

榛名「……はい。失礼します」


―― 祝勝会

榛名(祝勝会と言う名の宴会はまさに大騒ぎだった)

榛名(みんな笑顔で、今回の大規模作戦の成功を誰もが喜んでいる。今回の作戦はそれだけ難しいものだったということなのだ)

榛名(それを誰一人失わず完遂した提督も、私達を取りまとめ、率いた夕張さんもはやはり凄い)

榛名(それに引換え榛名は……)

榛名「……」

霧島「榛名」

榛名「霧島?」

霧島「お疲れ様。隣いい?」

榛名「うん」

霧島「」ゴクゴク

榛名「」コクコク

霧島「……嬉しくない?」

榛名「え?」

霧島「なんだか難しい顔してるから」

榛名「……今回、榛名はあまり戦果をあげれなかったから」


霧島「そんなことないと思うけど」

榛名「ううん。榛名はやっぱりまだまだだなって思ったよ」

榛名「皆を率いた夕張さんも、敵の総旗艦に止めをさした時雨ちゃんも……本当に凄いって思った」

霧島「時雨は今回のMVPかもしれないわね。あそこで代わる代わる揉みくちゃにされてるし」

榛名「でも……」

霧島「ん?」

榛名「でも……それが榛名じゃなかったことが、凄く悔しい」

霧島「……また次頑張ればいいじゃない。ほら、榛名も呑んで。今はお祝いの場なんだから」

榛名「うん……」

隼鷹「お二人さん、呑んでるぅ~?」ヒック

榛名「うわ……」

霧島「面倒なのが来た……」

隼鷹「あひゃひゃ、こいつは手厳しいねぇ!」

隼鷹「ま、呑んで呑んで……あたしの酒が飲めねってのかい!?」

霧島「いや、何も言ってないじゃない」

隼鷹「確かに」ドッ

霧島「」イラッ


隼鷹「そんなことよりさぁ……提督知らない? いないんだよねぇ提督がさぁ」

霧島「そういえば……」

榛名「あ、じゃあ榛名、ちょっと探して来るね」スッ

霧島「あっ、じゃあ私も」

隼鷹「おっと、あたしを置いてくってのかい!?」グイ!

隼鷹「一緒に飲もうぜぇ? せっかくお酒と同じ名前してんだからさ」
霧島「ちょっと、お酒臭いから離れなさい」

隼鷹「かぁ~、そんなこと言うなよ~」

霧島「は、榛名助けて」

榛名「頑張って」ススッ

霧島「え、ちょっと! 嘘でしょ?」

隼鷹「なんだよぉ……」クスン

霧島「……」シカタナイ

霧島「霧島の名、伊達ではないことをお見せしましょう!」

隼鷹「ひゅ~! 素敵! 抱いて!」


榛名「……」

榛名(提督を探すといったものの、会うのが少し怖い気がした)

榛名(……いろんな感情が渦巻いて、今どんな顔して会えばいいのか、ちゃんと笑顔を作れるのかわからない)

榛名「……」

榛名(結局、榛名は中途半端なのだ。気持ちの整理もつけないまま、戦うことで気を紛らわしてるだけ。だから大事なところで戦果がだせない)

榛名「でも、気持ちの整理なんて……あ」

夕張「――――」

榛名(廊下の向こう、曲がり角のところに夕張さんが見えた。彼女なら提督の居場所を知ってるかもしれない)

榛名「夕張さ――」

榛名(出しかけた言葉を呑み込む)

榛名(彼女は物陰で抱き合っていた。提督と)

夕張「ん……」チュ

提督「お前、誰かに見られたら」

夕張「大丈夫です。みんな、宴会に夢中ですから」

夕張「最近忙しくてこうして2人でゆっくりできることなかったじゃないですか」

提督「それは、そうかもしれないが……」

夕張「5分だけ。ね? そうしたら、戻りましょう?」

提督「……そうやってねだられたら断れないな」

夕張「ふふ、提督……」チュ




榛名「……あ」

榛名(気付いたら逆方向に駆け出していた)


榛名「……」

霧島「あ、榛名おかえり。提督は?」

榛名「……もう少ししたら戻ると思う」

隼鷹「ひゅ~、やったぜ! みんなに報告だぁ!」ダッ

霧島「きゃっ、ちょっと、私も!?」

榛名(隼鷹さんに引っ張られて席を離れる霧島を横目に、席に座ってお酒を流し込む)

榛名(動悸が止まらない。胸が痛い。苦しい)

榛名(どうして)

榛名(これは榛名が望んだことのはずなのに)

榛名(提督と夕張さんの仲が深くなることが、提督の眼に榛名が映らなくなっていくことが、こんなにも苦しいなんて)

榛名(榛名が身を退けば退くほど、提督のために戦えば戦うほど、尽くせば尽くすほど、提督の中から榛名がいなくなっていく)

榛名(そういうことなんだ)

榛名(辛い。辛い……)

榛名「」グッ

榛名(でも、それでももう……榛名は諦めるしかないんだ)



金剛「……」


―― 祝勝会後 廊下

金剛「榛名」

榛名「……お姉様?」

金剛「大丈夫? なにかあった?」

榛名「え?」

金剛「なんだか無理してるように見えたから……」

榛名「っ……そんなことありません。榛名は大丈夫です」

金剛「本当?」

榛名「……ええ、榛名は大丈夫です」

金剛「嘘。今だって怖い顔してるよ。気付いてる?」

榛名「え……」

金剛「榛名。私には取り繕わなくていいんだよ? 辛いなら辛いって、ちゃんと言って欲しい」

榛名「お姉様……」


金剛「……私、最近榛名の笑顔見てません」

榛名「そう、でしょうか」

金剛「……やっぱり提督のこと?」

榛名(さっき見た提督達の姿が頭をよぎる)

榛名「違います」ズキッ

榛名(お姉様はきっと本気で榛名を心配してくれている。でも、お姉様が提督のことを口にする度に胸が苦しくなった)

金剛「提督のこと……本当はそんな簡単に諦められるものじゃなかったんでしょう?」

榛名(夕張さんと抱き合う姿が、唇を重ねる姿が、幸せそうな笑顔が頭を埋め尽くしていく)

榛名(苦しい。止めて欲しい。榛名は諦めなくちゃいけないのに)

榛名「……だとしても、榛名はもういいんです」

金剛「本当? 榛名、本当はまだ提督のこと」

榛名「やめてください!」

金剛「」ビクッ


榛名「そんなこと言われなくたって榛名が一番わかってるんです!」

榛名「でも仕方ないじゃないですか!」

榛名「榛名はもう拒絶されてしまった! なのに、諦められるとかまだ好きなのかとかどうしてそんなことを聞くんです!?」

榛名「これ以上榛名にどうしろって言うんですか!」

金剛「榛名……」

榛名「……」ハァハァ

榛名「ごめんなさい。もう、諦めさせてください……」

榛名「榛名はこれ以上提督に迷惑をかけたくない」

榛名「失望されたくない」

榛名「――嫌われたく、ないんです」ジワッ

榛名「だから……」ポロポロ

金剛「ごめん。ごめんなさい榛名」ギュッ

榛名「う、うぅ……あっ、ああぁぁぁ」ポロポロ

金剛「ごめんね。辛かったね……」ナデナデ

榛名「あああぁぁぁああああ」ギュー

金剛「……」ヨシヨシ


――――
――

榛名(あの後、榛名はお姉様にしがみついて大泣きしてしまった)

夕張「今日の出撃は戦闘哨戒です」

夕張「先日大規模作戦を行いましたが、反攻が無いとは限りません。敵艦隊の動向を調査し、接敵した場合は可能な限りこれを撃破します」

夕張「哨戒ルートですが――」

榛名(今思えば誰かに見られてもおかしくない状況だったが、私たちの様子に気付いた比叡姉様と霧島が上手いこと人払いをしてくれたらしい)

夕張「……榛名さん、聞いてます?」

榛名「」ハッ

榛名「大丈夫です。すみません」

夕張「珍しいですね。ぼーっとするなんて。調子が悪いなら無理せず言ってくださいね?」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です! 行けます!」

夕張「なら、良いんですが……こほん」

夕張「本作戦の説明は以上です。何かありますか?」

北上「な~し」ヒラヒラ

赤城「特にありません」

金剛「No problemネ!」

加賀「問題ないわ」

夕張「では、準備に取り掛かってください」


――海上

榛名(ひとしきり泣いたことで気持ちの整理ができたと思いたいが、そう上手くはいかないものだ)

榛名(あれから数日が経ったのに榛名の心には未だぐずぐずが残っていて、それがどうしようもなく榛名を苦しめる)

赤城「――!」

榛名(それでも榛名は戦わなくてはならない。今までの償いのため、提督のため……そう思ってこれまで頑張ってきたのだから)

夕張「ーーーー」

榛名(でも、榛名は見てしまった)

金剛「――」

榛名(榛名に見せたことのない笑顔で)

榛名(榛名にかけたことのない幸せそうな声音で)

榛名(榛名に触れた時とは違う優しげな手つきで)

榛名(夕張さんを抱き寄せる提督を)

榛名(接吻を交わす2人の姿を)

北上「――い! 榛名!」

榛名(今思い出しても胸が苦しい。叫びだしてしまいたいほど、心が痛い)

榛名(どうして榛名じゃないんだろう)

榛名(諦めるなんて嘘だ。戦果を求めてる理由だって、償いのためだけなんかじゃない。榛名は提督に見て欲しくて、提督の一番になりたくて)

榛名(榛名だって本当は……ずっと前から、今だって――)

夕張「榛名さん避けてっ!」

榛名「」ハッ

榛名「しまっ」ズッ


榛名(夕張さんの声に、榛名が我に返った時にはもう遅かった)

榛名(目の前に迫っていた敵の砲弾は榛名の顔を掠めると、そのまま榛名の右舷装備に直撃した)

榛名「きゃぁぁぁぁ!」

榛名(爆発が起こり、艦が揺らぐ)

榛名(右舷の砲塔が吹き飛び、爆発がまた新たな爆発を呼んだ)

妖精1「敵砲弾、右舷に直撃! 第一、第二砲塔大破!」

榛名「くっ……第三、第四砲塔回頭! 当たらなくても良いです! 牽制してください!」

榛名「消化急いで! 誘爆を防いでください! 両舷全速!」

榛名「っ!?」ガクン

妖精2「右脚艤装、応答ありません!」

妖精1「敵、第二射来ます!」

妖精2「右舷艤装完全に沈黙、駄目です! 艦の水平を保てません!」

榛名(冷たい海水の感触と共に、右足が沈むのを感じた。右脚の浮力も推力も失ったせいで右半身が酷く重い)

榛名(グラリ、と視界が傾き、右脚が波に包まれる)

榛名(幸か不幸か、榛名の姿勢が崩れたことで、敵の砲弾は榛名の横を掠めて海の中に消えた)

榛名(大きな水柱が立ち、榛名の身体を揺らす。)

榛名「っ……左脚機関最大! 右舷艤装を全て破棄」

妖精「しかし、そんなことをしては艤装の加護が半減してしまいます!」

榛名「このまま的になるよりはマシです!」

妖精「~っ!」

榛名(軽くなった身体を左足の推力で何とか立て直す)

榛名「主砲! 砲撃開始!」


夕張「っ……金剛さん! 榛名さんがやばい! フォローして!」

金剛「言われなくても!」

ズッ

金剛「っ」

戦艦ル級「……」ズズズ

金剛「Shit」

夕張(ル級に阻まれて金剛さんの足が止まる)

夕張「っ」チラッ

駆逐イ級「――!」ザパァッ

夕張「ちっ」

夕張(海から飛び出してきたイ級を避け、20.3cm連装砲で土手っ腹に風穴を空ける)

夕張「」クルッ

夕張(舞い上がった爆煙を抜け、振り返りざまに榛名さんと対峙している戦艦タ級へ艦首魚雷を放った)

夕張「赤城さん!」

夕張(私がそう声を上げた時には、空を赤色のリボンのエンブレムをあしらった艦載機が空を舞っていた)

夕張(艦載機が金剛さんの行く手を阻んでいたル級へ次々に爆撃していく。同時に幾つかの艦載機が榛名さんの方へ向かうのが見えた)

赤城「……」ウィンク

夕張(流石、よく見てるなぁ)


妖精「敵、砲撃を確認!」

榛名「回避します!」

榛名(敵の砲弾が榛名の顔の真横を通り過ぎていく)

榛名「っ」

榛名(榛名の顔の真横を掠めた砲弾は、榛名の頬を切り、同時に幾束かの髪の毛を引きちぎっていった)

榛名(引きちぎられた何本かの髪の毛と一緒に、髪留めが落ちていくのが見えた。提督に頂いた、大切な髪留め)

榛名(普段は大破しても取れることはないのに。艤装を半分破棄したのがよくなかったのだろうか)

榛名「駄目っ」

榛名(思わず手を伸ばすが届かない)

榛名(嫌だ、と思った)

榛名(アレを失ってしまったら、提督へのこの気持ちまで失ってしまう。そんな気がした)

榛名(叶わなくたって、馬鹿みたいだって、榛名はまだこの気持ちを失いたくない)

榛名(立ち止まり、海の中に手を伸ばす)

妖精「敵、砲撃を確認! 着弾まであと――」

榛名(妖精が何か言っているが、耳に入らない)

榛名(伸ばした手の先で、榛名の想いが海へ落ちていく)

榛名(上手くいかない)

榛名(どうして……?)

榛名「榛名はただ――」


金剛「榛名!」

榛名(伸ばした手は、お姉様に握られていた)

榛名(そのまま引っ張られて、敵の砲弾をすんでのところで回避する)

金剛「どうして立ち止まるの!? 死ぬ気!?」

榛名「……」ポロポロ

金剛「榛名?」

榛名「提督に頂いた髪留めを……無くしてしまいました」ポロポロ

榛名「榛名は……っ。ごめんなさい」

榛名「まだやれます!」

金剛「榛名……」

金剛「……」ブチッ

タ級「」ズズズ

金剛「ぶち殺し、確定デース」


夕張(どうやら金剛さんは無事榛名さんと合流できたようだ。赤城さんの艦載機がタ級へ爆撃しているのも見える)

夕張(崩すなら、今かな)

夕張「北上さん!」

北上「はいよ~」ジャカッ

北上「酸素魚雷40門、一斉射~」

夕張(40もの魚雷が水面を這い、爆発と水柱が次か次へと立ち上る)

北上「ひーふーみー……あ、ごめん。撃ち漏らした」

夕張(彼女がそう言うが早いか、水柱の間を縫うようにして飛ぶ艦載機があった)

夕張(赤城さんのものと色違いの青色のエンブレム)

加賀「鎧袖一触よ。心配いらないわ」

夕張(艦載機から放たれた魚雷が敵に突き刺さり、残った敵を沈めていく)

赤城「付近に敵影なし」

夕張「了解。各自、戦闘態勢のまま待機」

夕張「赤城さんと加賀さんは偵察機で付近の警戒をお願いします」

夕張「榛名さん!」


榛名「……」ボロボロ

夕張(……思ったより損傷が酷い。今回はここまでかな)

夕張「」ピピッ

夕張「はい、夕張です」

榛名「ゆ、夕張さん。榛名はまだいけます」

夕張「ええ、そうです」チラッ

夕張「……わかってます。では」

夕張「今回はここまでです。この海域を急ぎ撤退します」

榛名「そんな、待ってください! 榛名は大丈夫です! まだやれます」

榛名(嫌だ。戦いで役に立てなければ、榛名は――)

夕張「榛名さん、わかっていると思いますが、大破で撤退はウチの掟です」

榛名「ですが!」

夕張「榛名さん」

榛名「っ」

夕張「撤退です」

榛名「……わかりました」

夕張「榛名さんを中心に輪形陣を敷きます。先頭は金剛さん、北上さんは私と殿を。両翼は一航戦のお二人に任せます」


―― 執務室

提督「……ひとまず、無事で良かった」

榛名「ありがとう、ございます……」

提督「報告は聞いている。戦闘中に考え事か?」

榛名「申し訳ありません」

提督「……その、俺のことか」

榛名「っ……いえ、違います。榛名の個人的なことです」

提督「そうか……内容がなんであれ、戦闘に集中しないのは良くない」

榛名「はい。ごめんなさい」

提督「今回は無事だったが、次はそうはいかないかもしれない。悩みがあるなら、俺でも誰でも良い。相談してくれ」

榛名「……ですが、これは榛名が自分で解決しなければならないものですから」

提督「だったら出撃前に言ってくれ。戦闘に集中できないようであれば、出撃は差し控える」

榛名「そんなっ」

提督「榛名がいくら出たいと言っても、万全でないなら出すわけにはいかない。そんな危険を犯させることはできない」


榛名「そんな、それでは……」

提督「……榛名、お前が最近頑張っているのはその、俺にあんなことをしたからか?」

榛名「」ビクッ

榛名「そ、それは……」

提督「だとしたら、そんなに思いつめなくていい」

提督「言ったはずだ。俺はもう許したと」

提督「そんなことのために必要以上の危険を負う必要はないんだ」

提督「頼むから、無理だけはしないでくれ」

榛名「提督……」


榛名「どうして……どうしてそんなに優しくしてくださるのですか……」

提督「大切だからだ」

榛名「どうして、そんなことを言うのですか」

提督「……これまでずっと一緒にやってきただろ。そうでなくても、俺たちのためにこんなに頑張ってくれているお前を大切に思わないなんて俺には無理だ」

榛名「榛名は提督に酷いことをしました。卑怯なことをしました」

榛名「艦娘としてだって、こうして被害を出して……お役に立ててません」

榛名「それでも、提督は榛名を大切だと、仰るのですか」

提督「そうだ」

榛名「……」

提督(沈黙がヒリヒリと肌を焼くようだった)

提督(彼女は今にも泣き出しそうな顔をしていた。嬉しそうな悲しそうな辛そうな……そんな複雑な表情だった)

提督(そんな彼女を見ると、俺の心もまたズキリと痛む。もしかしたら、俺はまた榛名を苦しめているのか)

提督(それでも伝えたかった。たとえ恋人としてじゃなくても、榛名が十分大切な存在だということを)


榛名「提督にとって榛名は……なんなのですか」

提督「大切な――」

榛名「大切な部下? 仲間? 友人?」

榛名「大切ってどういう意味……?」

榛名「榛名はその言葉をどう受け止めればいいのですか……」

提督「それは……」

榛名「……提督は、榛名をどう思っているのですか」

提督「……」

榛名「……榛名は、提督が好きです」

提督「……榛名」

提督(彼女の頬には涙が伝っていた)

提督(俺を好きだと言って泣いていた)

榛名「榛名は、提督が好きです……」

榛名「榛名を導いてくれるあなたが、支えてくれるあなたが、いつも気にかけてくれるあなたが、優しく話しかけてくれるあなたが、榛名はどうしようもなく好きなんです」

榛名「提督が榛名を大切だというその意味も、提督には夕張さんがいることだって本当はわかってます。でも、だからってどうしたらいいんです?」

榛名「榛名だって忘れようとしました!」

榛名「でも、いくら忘れようとしたって、諦めようとしたってこの気持ちはなくならない。日増しに増えていく気持ち、欲望……榛名は」

榛名「あなたを好きになるほど卑屈になって、苦しくなって……汚い自分に気づいてしまう。でもそのどれもあなたと一緒にいれば受け止められた」

榛名「あなたと一緒にいることが、幸せだったんです」

榛名「だから……だから」


榛名「榛名はあなたに必要とされたかった」

榛名「あなたにとっての一番になりたかった」

榛名「でも、恋人としても、女性としても一番にはなれない」

榛名「だから、艦娘として、兵器として……あなたの、あなたのための武力として、榛名は一番になろうと思ったんです」

榛名「でも、上手くいかない」

榛名「FS作戦でも、敵の旗艦を撃ちぬいたのは時雨ちゃんで……榛名が率いた第一艦隊は有効打すら与えることができなかった。今回だって……榛名はほとんど役にたってない!」

提督「そんなことはない。榛名は必要だ」

榛名「……どうして」

提督「っ……」

榛名「どうして、榛名じゃないのですか……」

提督「榛名……」

榛名「……榛名じゃ、ダメなのですか」

榛名「榛名では、ダメなのですか」

提督「……駄目だ」

榛名「っ」

榛名「どうして、どうしてですか……榛名だって提督を誰より愛しています」

榛名「秘書官の仕事もできます。きっと提督のお役にたてます。支えることができます」

榛名「戦闘だって……今以上に強くなって、きっと提督に勝利をお届けします」

提督「……榛名。そういうことじゃないんだ。わかるだろ」

榛名「……」ポロポロ

榛名「そう、ですよね……榛名……すみません」

提督「」ズキッ

提督「だが榛名、俺は」

榛名「やめてください!」

提督「」ビクッ

榛名「提督には夕張さんがいる! なら、どうして榛名に優しくするんです!? 好意を向けてくれるんです!?」

榛名「もうこれ以上榛名に優しくしないでください!」

提督「榛名、俺は」

榛名「嫌だ! 聞きたくない!」

榛名「どんなに好きになったって、あなたは榛名の想いに応えてはくれないのに!」

提督「っ」

榛名「あ……っ、ごめんなさい!」ダッ

ドア<バタン

提督「榛名……」

今回はここまでです。ありがとうございました
今年中に終わらせられなくてごめんなさい

良いお年を

お久しぶりです
お待たせしていて申し訳ありません

年を開けてから急に仕事が忙しく、時間が取れませんでした
まだ書き上がっていないのですが2ヶ月経っちゃいそうなので出せるとこまで投下します


夕張(諸々の雑務を終えて執務室に帰ってきた時だった)

夕張(中から榛名さんの声が聞こえた)

夕張(泣いているような、そんな声だった)

ドア<バタン

榛名「……」

夕張「あ……」

榛名「っ」タタッ

夕張(部屋を飛び出してきた彼女と一瞬目があったが、彼女は何も言わず走りさってしまった)

夕張「……」

夕張(榛名さん……泣いてた)

夕張「……」

提督「……」

夕張(執務室に入ると、呆然と立ち尽くす提督がいた)

提督「夕張……」

夕張(彼もまた、辛そうな顔をしていた)

夕張「……提督」

叢雲「ちょっと、次の遠征のことなんだけど」

提督「……」

夕張「……」

叢雲「……何この空気」


――――
――

叢雲「……ふぅん。ま、なるべくしてなったって感じじゃないの」

提督「っ……」

叢雲「あんた、踏み込み過ぎ。榛名が大事なのはわかるけど、タイミングってもんがあるでしょ。今回は最悪」

提督「しかしこのままでは」

叢雲「心配なら出撃だけ控えさせる命令を出すだけで良かったでしょ。今回のことを嗜めるのはあんたじゃなくてもできたはずよ」

提督「む……」

叢雲「夕張、あんたもよ」

夕張「うん……」

叢雲「気付いてたでしょ。どうして出撃させたの?」

夕張「……それで榛名さんの気が済むならって思って。榛名さんなら多少調子が悪くても大丈夫かなって……」

叢雲「あんたにしては少し浅慮だったんじゃない?」

夕張「うん……ごめん、なさい」

叢雲「私に言ってもしょうがないでしょ」

夕張「……うん」


提督「……」

叢雲「あんたはもう少し榛名を……女性として見るべきよ」

叢雲「あの娘は女性として大切にされたいの。わかるでしょう? それができないなら必要以上に踏み込むべきではないわ」

提督「……ならどうすれば良かったんだ? 冷たくすれば良かったのか? それが無理なら受け入れるしかなかったと?」

提督「だがそれは夕張に対して不義理になってしまう。俺は……夕張だけを愛そうと努力したつもりだ。でもそれは間違いだったのか……?」

夕張「提督……」

叢雲「はぁ……榛名に冷たくするって選択肢はないわけね」

提督「……それは」

叢雲「あんたのその……心に決めた一人を……夕張を愛し抜こうとする姿勢は正しいものだと思う」

叢雲「でも、なら尚更榛名に対して優しくすべきではなかったわ。少なくとも今は……ね」

提督「だが、それは」

叢雲「冷たくしろとか酷いことをしろって言ってるわけじゃない。必要以上に優しくするなって言ってるのよ」

提督「む……」

叢雲「あんたが榛名を家族のように大切に思っているのはわかってる。でも、それを今のあの娘に押し付けてもあの娘が苦しむだけだってこと」


叢雲「……この際だから言っておくけど、私達にとって一人の女として愛されるって言うのは本当に嬉しいことなのよ」

提督「……」

叢雲「艦娘になった時点で私たちの身体はもう普通の人とは違う。きっと、完全に元に戻ることもないでしょう」

提督「叢雲……」

叢雲「……そのこと自体にもう後悔はないわ」

叢雲「けど、こうなってしまった私達を……今後、あんたと同じように愛してくれる人が現れる保証はない」

叢雲「私達は化物と変わらないから」

提督「っ、それは違う!」

叢雲「本当にそうかしら」

叢雲「病気には滅多にならないし、身体能力もちょっと引くぐらい底上げされて、おまけに若さも保てて……ふふ、ここだけ言えば至れり尽くせりね」

叢雲「でも、それだけじゃない。敵の砲撃で傷だらけになった身体が、吹き飛んだ四肢が、"お風呂"に入るだけで治り、あまつさえ高速修復剤などというよくわからない液体を身体にかけただけで1分と経たず元通りになる」

叢雲「正直、自分でも気持ち悪いと思うことがあるわ」

叢雲「かつて私達が人間だったことなんて、もうほとんどの人にとって関係ないの」

叢雲「私達を人と扱わない奴らなんていくらでもいる。実際にそういう扱いを受けてきた娘だってたくさんいるわ」

叢雲「でも、そんな中で……あんたは私達を大切だって言ってくれた」

叢雲「怪我をしたら心配してくれる。悪いことをしたら叱ってくれる。意見が食い違ったら喧嘩してくれる。楽しかったら一緒に笑ってくれる……まるで家族みたいに」

叢雲「そして――」チラッ

夕張「……」

叢雲「……実際に艦娘を一人の女として愛してくれている事実がある」

叢雲「夕張があんたを独占したいのも、榛名があんたに執心するのも……正直わからないでもないわ」

叢雲「でも、この状況をそのままにして良い理由にはならないわ。どうするのか決めなさい」

夕張「……」

提督「……」


―― 榛名の部屋

榛名(逃げ帰ってきてしまった。提督に暴言を吐いて、喚き散らして……)

榛名(榛名はどうすれば良かったのだろう)

榛名(失恋なんて誰もが経験してるはず……なのに、榛名はどうしてそれを消化できないの)

榛名「提督……」

榛名(前はその名を呼ぶだけで、考えるだけでも幸せだったのに)

榛名「っ、う……」ジワ

榛名(溢れ出る気持ちがただただ辛い)

榛名(どうして、なんで)

榛名(榛名は何のために頑張ってきたの……)

榛名「榛名、榛名は……」

金剛「……榛名?」

榛名「お姉様……?」

金剛「どうしたの? 大丈夫?」

榛名「お姉様……」ジワ

榛名「……榛名はもう、大丈夫じゃ、ないです」ポロポロ


金剛「……少しは落ち着いた?」ヨシヨシ

榛名「はい……ごめんなさい」

金剛「構いません。それで……提督と何かあったの?」

榛名「……榛名が一方的に我儘を言ってまた提督を困らせてしまいました」

金剛「やっぱり……諦められない?」

榛名「……難しいです」

金剛「そう、ですか……」

榛名「……最初、提督に榛名の気持ちを打ち明けた時、無理だって言われたんです。夕張さんを裏切れないから、榛名とそうなることは無理だって」

榛名「でも、榛名は諦められなくて……必死で頑張れば、認めてもらえる。褒めてもらえる。もしかしたら榛名のことも受け入れてもらえるって思ったんです」

榛名「だから……榛名頑張ったんです。秘書官の仕事も。戦いだって」

榛名「……でも、提督の隣にはいつも夕張さんがいて」

榛名「……」

金剛「榛名……」

榛名「だから、榛名は諦めようと思って……酷いことも、してしまいましたし……」

榛名「でも……この前、見ちゃったんです」

榛名「榛名に見せたことのない笑顔で」

榛名「榛名にかけたことのない幸せそうな声で」

榛名「榛名に触れた時とは違う優しげな手つきで」

榛名「夕張さんを抱き寄せる提督を……そっと口付けを交わす姿も」


榛名「榛名はそれが本当に辛くて、悔しくて」

榛名「榛名は提督を諦めようとしてたのに、何度もそう言い聞かせていたのに……諦めたくないって思っちゃったんです」

榛名「でも、やっぱり提督には断られてしまって……」

榛名「……」

金剛「……」

金剛「榛名は本当に提督のことが好き、なんですね」

榛名「……提督は本当に優しくしてくれたんです」

榛名「榛名が初めてここに来た時も、その後も」

榛名「本当に……榛名が提督に薬を盛った時も気にしなくていいって、もし秘書官を続けたいなら構わないってそう優しく言ってくれるんです」

榛名「FS作戦で榛名が期待に応えられなかった時も大丈夫、無事でよかったって」

榛名「今回も榛名を家族のように大切だって言ってくれて……」

金剛「うん」

榛名「でも、榛名はそれが何より辛かった」


榛名「だって、榛名は提督のお嫁さんになりたかった」

榛名「夕張さんように隣にいたかった」

榛名「でも、榛名がどんなに頑張ってもあそこにはいけない……ほんの少しの望みすら榛名には残されてない」

榛名「それがわかったら、今まで自分が何のために頑張ってきたのか、どうして戦ってきたのか、何がしたかったのか……わからなくなっちゃったんです」

金剛「……榛名は提督のために戦うって、そう言ってたじゃない」

榛名「違う……違うんです」

榛名「榛名は本当は、提督のために戦っていたわけじゃない」

金剛「え……?」

榛名「全部、自分のためです」

榛名「榛名はただ、提督に褒めて欲しかった」

榛名「認めて欲しかった」

榛名「必要だと言って欲しかった」

榛名「好きに、なって欲しかった……!」

金剛「榛名……」

榛名「戦果をあげれば、提督は褒めてくれる。また榛名を呼んでくれる。だから榛名は戦って、戦って……提督に求められたい自分のために頑張っていただけです」

榛名「榛名は卑怯者です」

榛名「提督にあんな酷いことをしたのに、結局は自分のことばかり考えて……提督に応えて貰えないってわかってしまったら、途端に戦いたくなくなってるんです」

榛名「こんなのこの国を守る軍人として、艦娘として失格です。提督にだって軽蔑されてしまう」


榛名「提督を好きになるまではこんなに辛くなることなんてなかったのに……」

榛名「……榛名が横恋慕したから、恋をしたからいけなかったのでしょうか」

榛名「榛名が提督を好きにならなければ……提督にご迷惑をおかけすることもなかったし、夕張さんとギクシャクすることもなかったし、こんな……辛い気持ちになることもなかった」

榛名「……」

榛名「榛名は、恋をしてはいけなかったのでしょうか……?」

金剛「榛名」

榛名「榛名は――」

金剛「榛名!」

榛名「」ビクッ

金剛「恋をしていはいけないなんて、そんなことありません」

榛名「お姉様……?」

金剛「……たしかに今の榛名の考えは軍人としては間違ってるかもしれません」

金剛「でも、榛名が今戦いたくないって思ってしまうことは何もおかしくない。人としておかしなことは言っていない……私はそう思います」

金剛「普通のサラリーマンだって辛いことがあったら働くのが嫌になります。子供だって学校を休みたくなります。そんなの、皆一緒です。だから榛名、そんなに自分を卑下しないで」

榛名「お姉様……」

金剛「好きな人に褒められたいって、必要だと思われたいって考えることの何がいけないの?」

金剛「そのために頑張ることだって、素敵なことだと私は思います」


金剛「確かに、恋は辛いことも苦しいこともたくさんあります。不安で眠れなくなる時だって、悲しくて泣いてしまう時だってあるでしょう」

金剛「でも、それと同じくらい……ううん、きっとそれ以上にたくさんの幸せを感じたはず」

金剛「秘書官になれた時も」

金剛「料理が美味しいって言ってもらえたときも」

金剛「プレゼントを貰った時も」

金剛「榛名は本当に嬉しそうでした」

榛名「……」

金剛「毎日提督のところに向かうだけで……毎日幸せそうに笑ってましたよ」

榛名「それは……」

金剛「榛名……私は恋をしたことが間違いだなんて言って欲しくない」

金剛「大変だし、辛いこともきっとたくさんある。でも、それでも……恋をしたってことを、それぐらい誰かを好きになったってことを大切にして欲しい。自分が抱いたその気持ちを否定しないで欲しい」

金剛「だって、恋は自分を幸せにするためにするものなんだから」

榛名「お姉様……」


榛名「でも……それなら榛名はどうしたらいいんです?」

榛名「辛い……辛いんです。幸せになんか、なれてない……!」

榛名「こんな気持ちをずっと持ち続けろと言うのですか!?」

金剛「大丈夫。榛名のその気持ちはちゃんと報われると私は思いますよ?」

榛名「そう思ってくれるのは嬉しいです。でも、そんな根拠のないことを言われたって何の慰めにも、解決にもなりません」

金剛「……提督は秘書官を続けてもいいって言ってくれたんでしょう?」

榛名「それが何の関係があるって言うんです?」

金剛「それは、凄いことだよ」

榛名「え……?」

金剛「榛名は正直取り返しのつかないことをしたと思います」

金剛「でも、それを踏まえてですよ。嫌いにならない。ましてや、そばにいてもいいって言ってもらえるなんて……それだけですごいことなんですよ?」

榛名「……そう、でしょうか」


榛名「諦めたくないのでしょう? なら、もう少しだけその気持ちを大切にしてみない?」

榛名「ですが……この気持ちを抱いていたって、榛名はもう……」

金剛「でも……諦めたらどんな想いもそこで終わってしまうから」

榛名「……」

金剛「建前とかじゃない、榛名の正直な気持ちで良いんだよ。諦めるなら、私もそれをサポート……って言ったら少しおかしいかもしれませんが、榛名を支える努力をします」

榛名「……本当は諦めるべきなんだと思います」

金剛「うん」

榛名「でも……でも、提督への気持ちは消えないんです。消えてくれないんです……!」

榛名「榛名は、提督に触れたい、撫でられたい、求められたい!」

榛名「榛名は諦めたくない! この気持ちも消したくないです!」

金剛「……なら、大丈夫。提督もバリちゃんも……私達が思っているよりずっと、榛名のこと大好きみたいですから」ニコッ

榛名「え?」

金剛「ね? バリちゃん」

ドア<ガチャ

夕張「……バレてましたか」

金剛「」ニコ

金剛「じゃあ、私は行きますね。バリちゃん、榛名のことよろしく頼みましたヨー?」

ドア<バタン

榛名「夕張、さん……」

夕張「……少し、お話しましょうか」

今回はここまでです
ありがとうございました

続きはまた近いうちに


榛名「諦めたくないのでしょう? なら、もう少しだけその気持ちを大切にしてみない?」

榛名「ですが……この気持ちを抱いていたって、榛名はもう……」
これおかしい
榛名が榛名に言ってるぞ

>>415
指摘ありがとうございます

榛名「諦めたくないのでしょう? なら、もう少しだけその気持ちを大切にしてみない?」

金剛「諦めたくないのでしょう? なら、もう少しだけその気持ちを大切にしてみない?」

に脳内変換お願いします


――――
――少し前 執務室

叢雲「それで、結局どうするわけ?」

夕張「私は」
提督「俺は」

夕張「……」

提督「……」

夕張「提督はどうしたいんですか?」

提督「……今まで言ってきたことに嘘偽りはないよ」

提督「俺は、お前が嫌がることはしたくない」

提督「けど――」

夕張「このまま榛名さんを放っておくのも嫌、ですか?」

提督「う、すまない……」

夕張「……欲張りですね。提督は」

夕張「私が嫌だと言ったらどうするんです?」

夕張「榛名さんを放っておくことができるんですか?」

提督「……お前が嫌だと言うならそうする」

夕張「嘘ですね」

夕張「今の榛名さんをそのまま放っておけるほど、提督は割りきり上手じゃないです」


提督「そんなことは……」

叢雲「ない、とは言い切れないんじゃない。今のあんたを見てるとさ」

提督「……そう、だな」

提督「……」

提督「結局俺は、夕張に良い顔をしたくて、でも悲しそうにしている榛名を見るのも辛くて……」

提督「そうやって、自分の気持ちが楽になるように動いていたのかもしれないな……」

夕張「提督……」

提督「……今まで散々綺麗事を言って、お前を悩ませて、榛名を傷付けてきたと思う」

夕張「それは……仕方ない、です」

夕張「結局私たちは自分のために生きてると思うんです」

夕張「私が提督を独り占めしたいのも、榛名さんが薬を使ってまで提督と触れ合おうとしたのも……自分のことを第一に考えていたから」

夕張「だから提督のその気持ちを咎めるつもりはありません」

夕張「でも……悲しそうな榛名さんを見たくない、というのが本心であるなら、"これからどうするのか"をちゃんと決めてほしいです」

夕張「提督が私だけを見てくれようと努力してくれるのは嬉しいですけど……今はどうすべきか、じゃなくてどうしたいかを教えてください」

提督「……どうしたいか、か」

提督「……」

夕張「……」

提督「俺は夕張を幸せにしたいと思ってる」

提督「……だが同時に榛名にも幸せであって欲しい」

夕張「つまり、そういうことだって受け取っていいんですね」


夕張「……本当に欲張り。私が一番って言ってくれてるのに、結局提督は榛名さんを切ることはできないんですね」

提督「……すまない。だが――」

夕張「ここに来て撤回はなしですよ」

提督「っ」

夕張「別に怒ってるわけじゃありません。でも、はっきり言葉にして欲しいことはありますよ?」

提督「……」

夕張「提督、榛名さんを抱いてください」

夕張「そして、私達をまとめて幸せにしてください」

提督「夕張……」

夕張「夕張も榛名も俺が幸せにする、と言ってください」

夕張「榛名さんにも幸せになって欲しい、じゃなくて俺が幸せにすると言ってください」


叢雲「……本当にいいの?」

提督「え?」

叢雲「こいつが榛名を抱いても」

夕張「うん……たとえそうなったとしても、結局私が提督を好きなことはきっと変わらないと思うから」

叢雲「……わかってると思うけど、それは」

夕張「うん。公に重婚を認めることになるって」

夕張「榛名さんだけを特別扱いはできないもんね……」

夕張「でも、"それ"を認めるのはここの人たちだけですよ? 外に女を作ろうものなら……」

提督「……そんな予定もアテもないが」

夕張「ならいいですけど。もし"そう"なる気があるなら、提督が私たちを皆まとめて幸せにするってちゃんと約束してください」

夕張「複数の女性を囲うって言うんですから、それぐらいの覚悟は決めてもらわないと困ります」

提督「……お前はそれでいいのか?」

夕張「それを聞くのは卑怯ですよ」

提督「っ、すまない……」

夕張「……結局のところ、このまま榛名さんがすり減っていくのを見るのが私も辛いみたいです。こんなこと言ったら、同情なんてしないでって怒られそうですけど……」

叢雲「……ホント、どうかしてるわ。あんた榛名のこと好きすぎじゃない?」

夕張「あはは……でも、きっとこれで良いんです。皆で一緒に幸せになれるなら……きっと、その方が良いと思うから」

提督「夕張……」

夕張「でも……私が一番じゃないと嫌ですからね」

提督「……わかった。俺も腹を括るよ」

夕張「ええ」

提督「……」

夕張「提督?」ジトッ

提督「……夕張も榛名も俺が幸せにする。約束だ」


――――
―― 榛名の部屋

榛名「……」

夕張「……」

榛名「……どうして、こんなことになってしまったのでしょうね」

榛名「榛名が我慢できなかったから、それとも榛名が提督に恋をしてしまったからでしょうか?」

夕張「そんなことは……」

榛名「……最初は側にいられるだけで良かったんです。本当ですよ?」

榛名「そうしている間にいつか、ほんの少しでも榛名の方を見てくれれば……そんな希望があるだけで良かったんです」

榛名「……でも、どうしてでしょう」

榛名「側にいるのが当たり前になったら、もっともっとって。榛名、どんどん我慢できなくなってしまって」

榛名「それで――」

夕張「榛名さん……」


榛名「……」ジロリ

榛名「……どうして」

榛名「どうして、提督の隣にいるのが榛名じゃなかったのでしょうか……榛名だって、きっと提督を支えられたのに」

夕張「……」

榛名「どうして夕張さんなのですか? ずっと提督の笑顔を独り占めして、愛されて……なんで、戦艦の榛名ではなく、軽巡の夕張さんがっ……!」

夕張「それは……」

榛名「ごめんなさい。榛名酷いこと言ってますよね。でも……でも、それでも! 榛名はそう思わずにはいられないです!」

榛名「だって! 榛名は提督に拒絶されたのに、こんなに好きなのに! なのに夕張さんは……どうして夕張さんは愛して貰えるの!? 榛名と夕張さんで何が違うの!?」

夕張「……」

榛名「……榛名は夕張さんが妬ましい」


夕張「榛名さんだって、提督に愛されてますよ」

榛名「……は?」

榛名「どうしてそんなこと言うんですか……?」

榛名「どうして? 夕張さん、榛名が提督に拒絶されたの知ってますよね」

榛名「なのに、どうして? そうやって、榛名を馬鹿にするのですか。そのためにここに来たのですか!?」

夕張「違います。私は――」

榛名「いいです!」

夕張「っ」

榛名「慰めなんていらないです! 特に夕張さん、あなたからは……!」

夕張「榛名、さん……」

榛名「……ごめんなさい。もう出ていってください。大好きだったはずの夕張さんに……これ以上酷いことを言いたくない」

夕張「悪態ぐらいいくらついてくれても構いません。でも、少し私の話も聞いてください」

榛名「嫌です! もう榛名に構わないでください!」

夕張「大丈夫です。嫌なことではないはずですから!」

榛名「なんなんですか!? これ以上榛名に惨めな思いをさせないでください!」

夕張「そんなつもりはありません! ただ、提督と――」

榛名「嫌です!」

夕張「話を聞いてください!」

榛名「提督となんだっていうんです!? 今更提督に会えるわけないじゃないですか! どんな顔をして会えって言うんです!? それともなんですか、夕張さんが榛名と提督の仲を取り持ってくれるとでも言うんですか!?」

夕張「そうですよ!」

榛名「だったらもう榛名に――え?」

夕張「提督との関係を認めるって言ったんです!」

榛名「な、何を言って……?」


夕張「はぁ……少しは落ち着きました?」

榛名「……ほ、本当に認めてくれるんですか?」

夕張「私が身を引くってことじゃないですよ。2人まとめて愛してもらうってことです」

榛名「でも、それは……」

夕張「安心してください。提督も了承してます」

榛名「……」

夕張「……本当は私だって不本意ではあるんですからね」

榛名「なら、どうして……」

夕張「……」

夕張「榛名さんは、この鎮守府の主力艦隊の要です」

夕張「金剛さんでも長門さんでも大和さんでも赤城さんでもなく、あなたが精神的支柱なんです。わかりますか?」

榛名「そんな、榛名なんて……」

夕張「いいえ。皆認めているんですよ。それこそ大和さんも赤城さんも長門さんも……海外から派遣されてきたビスマルクさんですら、ここの"エース"が榛名さんだってこと」

榛名「……」

夕張「もちろん、提督もです」

榛名「提督も……」

夕張「あなたがそんな調子では、艦隊の運営に支障が出ます」


榛名「だから……」

夕張「……と、言うのが発表する建前です」

榛名「え?」

夕張「本当のところは結局……私も提督も榛名さんのことが大好きってことですよ」

榛名「夕張さん……」

夕張「私たちは艦娘です。いつ死ぬかわかりません」

夕張「もちろん簡単に死ぬつもりはありませんが……私達の仕事は戦争ですから」

夕張「砲弾、魚雷、爆撃……いつ私達がその餌食になるかわからない。戦場に出たら、私たちはいつだって死と隣り合わせです」

夕張「だからこそ、得られる幸せは精一杯噛み締めなきゃいけない。それは榛名さんだって同じなんです」

榛名「でも……本当に良いんですか?」

夕張「……本当は私、ずっと迷ってたんです。重婚についてどうするべきか」

夕張「薬の件の後、榛名さんが身を引いてから、提督を独り占めできて……最初はこれでいいかなっても思ったんです」

榛名「はい……」

夕張「……でも、時折見せる榛名さんの悲しそうな表情気付いてました。見て見ぬ振りをしてたんです」

夕張「さっき、榛名さん自分が卑怯だって金剛さんに言ってましたよね。私も同じです」

夕張「口では榛名さんを家族だ大切だって言いながら……私はやっぱり提督を独り占めしたかった」

榛名「そんな……それは当然の権利です。だって、夕張さんも提督もお互い愛しあってます。榛名とは立場が違います」


夕張「……私、思ったんです。やっぱりみんな幸せになるべきだって」

夕張「私達こんなに頑張って、命がけで戦ってるのに……望みが叶わないなんてあんまりだと思いません?」

夕張「そりゃ、全部叶えるなんて無理だと思います。でも、叶えられる望みなら叶えないと……私が少し我慢することで、榛名さんの望みが叶うなら、幸せになれるなら……」

夕張「きっと今まで難しく考えてたんです。私が感じているこの幸せを皆で共有できるなら……きっと、その方が良いんです」

榛名「夕張さん……」

夕張「……とは言え、同じ人のそばにいたいと思ったら、お互い迷惑かかっちゃうと思います。気にしないとは言えませんが……今はこれでいいと思うんです」

夕張「限度とか、色々問題は出てくるかもしれませんけど、とりあえず今は……ね」

榛名「……ありがとう、ございます」

夕張「」ニコッ

夕張「一緒に、幸せにしてもらいましょうね?」

夕張「でも、正妻の座は譲りませんから!」

榛名「……はい」

夕張「それじゃ、行きましょうか」

榛名「行くって……」

夕張「もちろん、提督のところへですよ?」

榛名「ふぇっ、い、今からですか?」

夕張「ええ。全は急げと言いますし……」

夕張「……」

榛名「で、でも……その」

夕張「……私達はこれから」

夕張「3Pをします」


――提督の部屋

夕張「――と、言うわけで連れてきました」

提督「……夕張」

提督「本当に、いいんだな」

夕張「……くどいですよ。提督」

提督(夕張は溜め息をつきながら近づいてくると、俺の首に腕を回した。そのままそっと唇を重ねてくる)

夕張「ん……」

提督「……夕張」

夕張「私が一番じゃないと嫌ですからね。たとえ榛名さんがいても、提督の初めての奥さんは私なんですから」

提督「ああ。わかってる」

榛名「……」

夕張「ほら、榛名さんも来てください」

榛名「夕張さん……でも」

夕張「もちろん、嫌ならいいんですよ?」

榛名「っ、嫌……なんてことはないです。たとえ2番目でも提督に愛して頂けるなら、榛名は……」

提督「……榛名」

夕張「なら……私はしばらく席を外しますね」

榛名「え……?」

提督「は?」

夕張「初めてが3Pなんて、嫌でしょうし……いろいろ積もる話もあるでしょうから」

榛名「夕張さん……」

夕張「頃合いを見て戻ってきますから、その時は私も混ぜてくださいね」

ドア<バタン


提督「……」

榛名「……」

榛名「あの」
提督「その」

提督「……」

榛名「……榛名は提督に謝らなければなりません」

提督「……」

榛名「さっきのことも、これからのことも」

榛名「きっと本当に辛い選択をさせてしまったのだと思います。申し訳ありません」

提督「……俺の方こそ、何も考えず榛名に無神経なことを言ってしまっていたと思う。すまなかった」

榛名「とんでもないです! 提督の優しい言葉……榛名は嬉しかったんです」

提督「榛名……」

榛名「でも……それと同じぐらい辛かったのも事実です。榛名が提督と結ばれることはないと思っていたから」

提督「……」


榛名「……提督」

榛名「無理なら無理と言ってくださっても大丈夫です」

榛名「こうして榛名を愛そうとしてくれた……お二人の気持ちだけでも、榛名は嬉しいです」

提督「いや……夕張と決めたんだ」

提督「榛名、お前が望むなら……俺もお前を愛してみる」

榛名「提督……」

提督「卑怯な言い方ですまない。だが、やはり俺にとっての一番は夕張だ」

提督「榛名のことを一番に愛することはできないと思う……これまでも、そういう対象として見ないよう努力してきたつもりだ」

榛名「……はい」

提督「でも、それでも、だ。榛名がその……俺とそうなることを望むって言うなら……俺のことを愛してくれると言うなのなら」

提督「俺もその気持ちに応えよう。精一杯榛名のことを愛すると約束する。夕張だけじゃない。榛名、お前も……俺がちゃんと幸せにしてみせる」

榛名「はい……はいっ」ジワ

榛名「ありがとうございます……十分です。提督に愛して貰えるなら、榛名は一番じゃなくても大丈夫です」ポロポロ

榛名「榛名は提督を愛しています。好きです。提督じゃなきゃ、嫌なんです」

提督「……ありがとう、榛名」ギュッ

榛名「あ……」

提督「俺も榛名のことを好きになる」

榛名「う……あ……嬉しい、嬉しいです」ギュッ

榛名「榛名、榛名は……」ポロポロ

提督「すまなかった。今まで」

榛名「う、うぅ……あっ、ああぁぁぁ」ギュー

提督「……」ナデナデ


――――
――

榛名「……申し訳ありません」

提督「いいよ。俺の胸ぐらい、いくらでも貸すさ」

榛名「ありがとう、ございます……」

榛名「……」

榛名「榛名……もう一つ提督に謝らなければならないことがあります」

提督「うん?」

榛名「……提督に頂いた髪留めを無くしてしまったんです」

提督「あの戦闘でか?」

榛名「はい……」

提督「……そんな辛そうな顔をするな」

提督「さっきも言っただろう。榛名が無事だったことが嬉しい、と。髪留めはまた買えばいい」

榛名「……ありがとうございます、提督」

榛名「……」

榛名「提督……」

提督(榛名が潤んだ瞳で見つめてくる)

榛名「その……榛名を、抱いてください」


提督「榛名……」

彼女は頬を染め、恥ずかしそうに俯きながら俺にしなだれかかってきた。
頭半分ほど身長が低い彼女は俺の首筋に顔を埋め、ゆっくりと深呼吸すると意を決したように顔をあげる。

榛名「……榛名、わかったんです」

提督「え?」

さらさらの前髪から覗く大きな瞳はしっとりと潤み、少し上目遣いで覗きこんでくる仕草はまるで機嫌を伺いながら擦り寄ってくる犬のようにも見えた。

榛名「榛名は提督を榛名のものにしたいんじゃないんです」

彼女の瞳に吸い込まれたようにそこから視線を外せずにいると、彼女はますます身体を密着させ、柔らかな腰や胸をゆっくりと擦りつけてきた。

榛名「……榛名が、提督のものになりたいんです」

提督「」ゴクッ

薄い桃色の瑞々しい唇。柔らかく甘い匂いのする肌。
押し付けられた豊満な胸から伝わる蕩けてしまいそうなほど魅惑的な感触。
情欲を沸き立たせるには十分過ぎるほどの身体が目の前に差し出されていた。


榛名「提督……どうか榛名の身体に触れてください」

榛名「唇も胸もお尻も脚も好きなところを提督の手で……」

榛名「私の身体の全ては提督のものです」

提督「提督の印をたくさんつけてください」

榛名「提督の匂いをたくさんつけてください」

榛名「他の誰でもない。提督が、あなたが好きって……あなただけなんだって、身体にも言わせてください」

榛名は顔を紅潮させながらそう口にした。
理性がとろとろと溶けて崩れていくようだった。

提督「……榛名」

彼女の肩に手を置くと、彼女は目を閉じ唇を差し出した。
そっと顔を寄せながら、頭を色々な重いが駆け巡るがそれをぐっと押し込める。

夕張にあれだけのことを言わせて、榛名にこれだけ思われて、愛の言葉まで囁き、幸せにする約束までしたのに今更後に引くことができようか。
彼女達を愛すると、幸せにすると決めたのだ。

榛名「ん……」

唇に柔らかな感触が伝わる。少し湿った、柔らかい唇の感触。

榛名「……あ。はぁ……幸せです。提督、もう一度して頂けますか……?」

提督「ああ」

榛名「ん……んん、ちゅ……」

彼女を強く抱きしめてこちらから唇を重ねる。
彼女の蕩けた瞳が、背中に回された手が興奮をかきたてた。
今まで押し込んでいた欲望が、堪えていた情欲が溢れだして止まらなかった。
もう今更止まることは無理だ。


榛名「んんっ! んっ……あ……」

唇を割り、舌を侵入させると榛名の身体がビクンと跳ねた。
が、特に拒む事無く舌を受けれてくれる。

提督「榛名……」

榛名「提督、んむっ」

彼女は歓喜の声を漏らしながら、こちらの舌の動きに合わせて舌を絡ませ、身をよじらせた。

舌を離そうとすると、彼女から舌を絡めてくる。
唇を重ねたまま榛名と部屋の一番奥の布団に移動し、そのまま押し倒していた。

提督「ん……榛名」

榛名「提督……」

お互い荒い呼吸を繰り返しながら見つめ合う

提督「すまない。あれだけ偉そうなことを言っておきながら……」

榛名「いいえ。嬉しいです。榛名で興奮してくれたんですよね?」

榛名「この日のことをずっと待ってたんです。提督に求めて頂ける日をずっと、ずっと……」

提督「榛名……」

瞳を潤ませながら噛み締めるようにそう言う彼女がどうしようもなく愛おしく感じて俺はもう一度彼女に優しく口付けた。

――――
――


――――
―― 翌日

提督(朝食を食べに食堂に入ると、視線が一気に集まるのを感じた)

榛名「♪」スリスリ

夕張「……」ギュッ

提督(原因は間違いなくこの2人……に抱きつかれている俺だろう)

提督(食堂内がざわつくのがわかる)

叢雲「……ちょっと、入り口で立ち止まらないでくれる」

提督「ん、ああ……すまん」

叢雲「……」チラッ

叢雲「」フン

叢雲「」スタスタ

提督「……」

青葉「て、ててて提督!」バタバタ


青葉「これは……何事ですか? どういうことですか? 説明してください!!」

提督「これは――」

榛名「そういうことですよ」フフン

青葉「そういう……そういうこと!? それはつまり、SEXしたってことですか!?」

提督「声が大きいよ!」

榛名「ええ。昨夜はたくさん……しるしつけてもらいました」テレッ

夕張「ふぅぅぅん」

提督「いや、あの……途中からお前も混ざったよね?」

青葉「だ、だだだ大事件じゃないですか!」

青葉「夕張さん公認ってことですか!? 重婚を認めるということですか!? 今後他の人が提督と関係を持つ可能性もあるということですか!?」

夕張「ちょっと、あまりいっぺんに質問しないでください」


青葉「く、詳しくお願いします!」

夕張「……わかりました。提督、席取っといてください。少し説明してきますから」

提督「ああ。わかった」

パタパタ

提督「……慌ただしいな」

榛名「仕方ありません。それだけ皆びっくりしているんです」

提督「そうか……」

提督「……」チラリ

榛名「?」ニコッ

提督「う……その、榛名。少し離れて」

榛名「こうして寄り添うのはダメ、ですか……?」

提督「駄目、ではないが……今は周りの目もあるし」

榛名「いえ、榛名は大丈夫です!」

提督「や、俺が恥ずかしいと言うか……」

榛名「ですが、榛名ももう提督のお嫁さんなんですから、もっともっとこうやってイチャイチャしたいです」

提督「……」ムゥ


提督「その、正直に言うとまだ少し戸惑ってる」

提督「昨日も言ったかもしれないが……今までは、そう見ないようにしてたんだ」

提督「美人だと思っていたし、意識したことがないわけじゃない。でも、俺には夕張がいるし……あくまでも提督として接しようと努めてきた」

提督「だから、急にこう距離が縮まると、頭が追いつかないというか」

提督「どうしたらいいかわからない。情けない話だけど」
提督(そう言う俺に榛名は優しく微笑むと、さらに身を寄せてきた)

榛名「だったら、尚更たくさんイチャイチャしましょう」

提督(ふわりと彼女の甘い香りが舞う)

榛名「戸惑いがなくなるぐらい慣れれば良いんです」

榛名「ですから、こうして……」

ギュッ

榛名「たくさん、練習しましょうね」


おわり

本当に長い間、ありがとうございました

恋愛経験の乏しい自分にはこういう話は少し難しかったようです
次はもう少し緩い話を書けたらなって思います


祥鳳「夜伽にきました」

或いは

叢雲「秘書艦と初期艦」

的な話をぼんやり妄想してるので、その時はどうかよろしくお願いします

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年12月31日 (水) 21:05:38   ID: MCDwgBwm

いいねー!サイッコウダネー!

2 :  SS好きの774さん   2015年07月31日 (金) 00:52:00   ID: lgmcSNXK

榛名嫌いじゃないけど、ハーレムになったら夕張かわいそうだな…

3 :  SS好きの774さん   2015年08月26日 (水) 14:14:19   ID: 7SPp_gIG

これもう和姦ねえな

4 :  SS好きの774さん   2015年08月26日 (水) 22:13:09   ID: 42BKrciF

いい流れだぁぁぁぁぁぁぁぁ!

5 :  SS好きの774さん   2015年08月27日 (木) 01:47:21   ID: gIYiaGym

野獣先輩榛名説

6 :  SS好きの774さん   2015年09月25日 (金) 10:29:11   ID: pbKGJRdv

好き

7 :  SS好きのうなぎさん   2015年10月01日 (木) 15:11:35   ID: nlqYKSbZ

これは期待

8 :  SS好きの774さん   2015年10月05日 (月) 02:20:09   ID: N76cSbZG

期待してます

9 :  SS好きの774さん   2015年10月07日 (水) 20:59:48   ID: BaKArIe6

前作の幸せそうな夕張みてから読むと辛い…でも面白い…

10 :  SS好きの774さん   2015年10月16日 (金) 22:37:45   ID: -gH5GrF3

こ、こいつは…
続きが楽しみだけど胃に来るタイプのSS…!

11 :  SS好きの774さん   2015年10月29日 (木) 19:11:06   ID: -Q3tCKRm

クスリは…強姦はあかん…胃に来る…
でも幸せな結末を夢見てしまう(キリキリ

12 :  SS好きの774さん   2015年11月11日 (水) 00:06:36   ID: KDypaWE2

完結してないのに完結タグつけんなばかちん!

13 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 16:38:26   ID: YavVabmz

サッー!

14 :  SS好きの774さん   2015年11月30日 (月) 01:53:31   ID: vy3U7i3C

よかった.....寝とられなくて、よかった....!ついでに今作でも夕張とのエロシーン書いて欲しかった.....!

15 :  SS好きの774さん   2016年02月01日 (月) 22:39:59   ID: 2bTvCV7s

今月はまだ更新されないな〜。。。
たのしみにしてるんだけどな。。。

16 :  SS好きの774さん   2016年02月02日 (火) 00:19:09   ID: FmbdStwh

このssはもっと長くやってほしいと思うくらい面白い、続きに期待

17 :  SS好きの774さん   2016年04月10日 (日) 11:09:25   ID: _wTLjU6V

劣化大淀が随分偉そうなので、途中で読むの辞めたわ

18 :  SS好きの774さん   2016年04月15日 (金) 23:44:52   ID: u5Z4trSH

祥鳳さんはどうなったんだ、、、







19 :  SS好きの774さん   2016年04月21日 (木) 23:29:50   ID: VsgHQ30U

ちょっと榛名と結婚してくるわ

20 :  SS好きの774さん   2016年05月02日 (月) 03:00:44   ID: zareuhp9

榛名が嫁の俺としては、提督と夕張の上から目線がウザいわ

21 :  SS好きの774さん   2016年08月16日 (火) 18:27:13   ID: WGGwOori

榛名ちょっと重すぎない…?
いくら可愛くて性格良くてもキツイわ

22 :  SS好きの774さん   2016年10月05日 (水) 21:36:03   ID: Gl0y4lnS

そこまでの展開にキツいなあ辛いなあ、金剛がいいこと言ってるかもとか思ってたら夕張の「3Pします」発言で全て持って行かれたwww
ていうか3Pシーンも書いてくださいなんでもはしません

23 :  SS好きの774さん   2016年12月28日 (水) 19:00:25   ID: 6cfuLLtL

榛名が退官するか沈んで提督が死ぬまで後悔するのも見てみたい。

榛名とイチャイチャして夕張がウガー言ってるだけで良かった

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