淡々と兵食の話するわ(405)
-旧陸軍編-
男「・・・」ボケー
友「・・・いい天気だなぁ」
男「あぁ、こうやってたまにはのんびり外でビール飲みながら読書するのも悪くないな」
友「あ、次の巻ちょうだい」
男「はいよ」
友「やっとのらくろ少尉になったわ。士官学校卒とか元が野良犬だったとは思えないほどの出世だな」
男「飯盒炊爨回ほんとすこ」
友「分かる。『おかずは牛の罐詰だ』とかあっこりゃたまらん、ヨダレずびっ!」
男「ぎうのくわんづめ」
友「牧歌的な絵なんだけど食事シーンが妙に美味そうに見えるんだよな」
男「最近牛肉の大和煮高くなったよな」
友「うん。安くするために馬肉使用してたりとかな。でも、当時は牛肉なんてもっと高かったんだろうな」
男「それどころか缶詰自体が超高級品だからな」
友「へぇ」
男「巷じゃ見られない珍しい食べ物ってことで、軍隊の外じゃかなり珍重されてたらしい」
友「へー・・・でも、この頃の軍隊のメシなんてほとんど缶詰ばっかじゃないのか?」
男「まさか。缶詰なんて戦闘の時かお祝いの時のパイナップル缶ぐらいしか配給されねえよ」
友「お前詳しいなお前」
男「普通、兵舎じゃちゃんと営内で調理した食事が配られてたんだよ」
友「へー・・・なんだか学校給食みたいだな」
男「・・・よし、そうと決まれば早速実践だ」
友「えっ」
男「いや、当時のレシピは今でも文献として残ってるから割と簡単に再現できるんだよ」
友「へー、そうなんだ」
男「あぁ。ということで今から買い物行って再現してみよう」
友「今から?・・・あぁでも、確かにぼちぼち昼飯の時間だなぁ」
男「よーし、そうと決まったら早速スーパーへれっつご!!」
友「あっ待ってお金ない」
男「心配するな。昨日実家からお米券送られてきた」
友「男さん素敵抱いて」
・・・
男「ま、こんなもんだろ」
友「ずいぶん買ったなぁ」
男「えーと・・・あったあった」
友「なにその本?」
男「軍隊調理法。さっき言ってた当時の陸軍のレシピ集だよ」
友「随分古いなぁ、レプリカか?」
男「いや、本物じゃないかな。死んだ爺ちゃんの遺品整理してたら出てきた」
友「マジかよ!?超プレミアついてそう」
男「うちの爺ちゃん、大戦中は陸軍にいてな。なんか他にも軍票とか色々出てきた」
友「すごい」(小並感)
男「じゃ早速・・・本日のメニューですが」
友「はい」
男「主食、米麦飯」
友「麦飯ですか」
男「麦にはビタミンB1が豊富に含まれていて脚気の予防になるということから採用されたそうだ」
友「へぇ。そんな昔からビタミン補給なんて概念があったのか」
男「ああ。大正年間には既に日本国内でもビタミンの存在が認識され、脚気予防対策としてビタミンB1の摂取が推奨され始めている」
友「へぇー」
男「それまでは森鴎外など著名な学者が脚気細菌説を支持したため、海軍が経験的に得ていた麦飯による脚気予防説が陸軍では行われなかったそうだ」
友「森鴎外って・・・あの作家の?」
男「ああ。そのため日露戦争では陸軍だけで25万人にも上る脚気患者が発生、うち3万人弱が死亡したという」
友「鴎外無能。森老害」
男「一概に森を責められないけどな。当時の欧米じゃ脚気細菌説が主流だったし、脚気自体が未知の病だったわけだから。『よく分からんけどなんか効く』っていうレベルの話じゃ迷信と思われてもしかたがない」
友「だって、海軍では実績があったんだろ?」
男「鴎外は作家であると同時に医学者でもあったからな。現在の医薬品もそうであるように、効果には理由がセットになっていないとそれを認可することはできない。まぁ、陸海軍の仲があまり良くなかったことも背景にはあるだろうが」
友「えぇ・・・」
男「それに当時の日本国内では麦の生産量はそれほど多くなかったし、将兵ら自らが麦飯を拒否したのも理由に挙げられる。なんたって銀シャリが食えるって理由で軍隊に入った人も多かったくらいだからな」
友「なるほどねぇ・・・」
男「次、汁物。鱈昆布汁」
友「鱈?鱈なんて買ったっけ?」
男「買ったぞ、ほらこれ」
友「棒鱈・・・生のやつ使うんじゃないんだ」
男「副食、コロツケー&菜びたし」
友「コロツケー」
男「で、最後は漬物早漬け二号」
友「いきなり二号とかどういうことなの・・・」
男「よし、じゃあ調理を始めるぞ」
・・・
男「まずは米を研ぎます」
友「はい」
男「炊きます」
友「はい」
男「以上だ!」
友「はい」
男「ちなみに米麦の割合は7:3です」
友「なんか半分くらい麦に見えるんだけど」
男「7:3ってのは重量比だからな。実際米より押し麦のほうが軽いしでかいし」
友「なるほど」
男「今日は普通の白米を使ったが、旧陸軍では胚芽米を使用したらしい。これも有効なビタミン源だ」
男「えー、では米麦に吸水させてるスキに早漬け二号を作ります」
友「技の一号、力の二号」
男「ちなみにこれ六号まであるから」
友「マジかよ漬物だけで戦隊組めるな」
男「レッドがしば漬けでイエローがたくわん、グリーンは野沢菜でピンクは桜漬けか・・・あ、ブルーはナス漬けでいけるな」
友「子供たちに人気が出るかは微妙なラインである」
男「というわけで、まずは豆もやしを茹でます」
友「へぇー、漬物にもやしいれるとか斬新」
男「ざっと茹でたらざるで冷ましておきましょう・・・残りのお湯でコロツケーのためのジャガイモを茹でておきます」
友「コロツケー」
男「そしたらキャベツをくし切りにしてから小口に刻む。刻み終わったらさっきの豆もやしとミックスし袋にいれ、塩を入れて揉む」
友「他の調味料は?」
男「まずはこのまま塩で漬け込んで置く。しばらくすると野菜の水分がでてくるから、その時残りの調味料を入れるとまんべんなく味が染み込むという寸法だ」
友「へい」
男「よし、今度は鱈昆布汁の棒鱈を戻すぞ」
友「いやあのこれ、カッチカチやぞ!!」
男「本来なら一晩くらい水に浸しておくんだが、心配するな。早く戻す方法がある」
友「ほう?」
男「まずは耐熱容器に水と砂糖を少々」
友「砂糖?」
男「そこに棒鱈どーん」
友「どうすんのそれ」
男「レンジで・・・チンします」
友「なに今の間」
男「こうすることでより早く乾物が戻る。棒鱈だけじゃなく昆布や干し貝柱でも使えるぞ、ちょっと砂糖を入れて・・・チンは」ピッ
友「だからなにその間」
友「ていうか電子レンジってすごいよな。熱を出さずに電磁波で加熱させるとか初めて思いついたした人は何考えてたんだろ」
男「電子レンジは1945年にアメリカのレイセオン社の技術者がレーダー設置の際に胸ポケットに入れていたチョコが溶けてたことから着想したらしい」
友「その発想がすげぇよ。だって普通は体温で溶けたと思うだろ?」
男「まぁ、レーダー然り電磁波が物理的に何かしらの影響を物体に与えることは分かっていたわけだしな。ちなみに同時期に日本でも電磁波を用いた怪力光線の研究を行ってる」
友「怪力光線wwwwwwwもうちょっとネーミングどうにかならんのかwwwww」
男「その初の照射実験では対象にサツマイモを使用し、見事焼き芋が出来上がったという」
友「怪力焼き芋」
男「ただ、最高でも5m先のウサギを殺す程度の威力しかなかったみたいだがな」
友「ウサギェ・・・」
男「※実験に使用したウサギはあとでスタッフがおいしくいただきました」
<ピロリーピロリーピロリロリー♪
男「ん、できたかな」
友「そういや最近のレンジってチンって言わないよな」
男「まぁ実際チンっていうのは安物のオーブントースターくらいだな」
友「レンジでピロリーピロリーピロリロリー♪」
男「略してレンピロか・・・」ウーン
友「・・・やっぱまだ固くない?」
男「まぁさすがに一晩つけたのに比べればな。とりあえず包丁で切れる程度なら問題ない」
友「はぁ」
男「はい。適度な大きさに鱈を切ったら鍋に水を入れ刻み昆布と共に煮立てます」
友「へい」
男「よし、じゃあそろそろコロツケーの調理にかかるか」
友「コロツケー」
男「さっき茹でた芋を潰す。火が通ってるかどうかは串を刺して云々しゃらくせえ割ってしまえよ」ボグッ
友「男らしい」
男「アツゥイ!!」
友「おっ、大丈夫か大丈夫か」
男「・・・はい。そしたら芋をつぶしてその中に汁を切った鮭缶をブチ込みます」
友「鮭缶?へーそんなの入れるんだ」
男「この辺、肉より魚を食べる機会が多かった昔の日本らしさを感じるな。まぁレシピじゃ他に獣肉も可となってるけど」
友「へー」
男「じゃ、その隙に玉ねぎ刻んで炒めて」
友「分かったナリ」
友「さぁ勇気を出し微塵切りだ包丁・・・包丁を微塵切りってどういうことなの・・・」ガクガク
男「大百科超懐かしい」
友「玉ねぎ目にしみても・・・涙、ナミダ・・・そうなんだ・・・ビバナミダこぼれ落ちてゆけばいいじゃん無駄じゃない」トントントン
男「おいアニメ変わってるぞ」
友「あぁぁ目がぁ!目がぁぁ!!」
男「ちなみにその涙は玉ねぎの成分が鼻や目の粘膜について出るもんだから、切る前に鼻つっぺしとくといいぞ」
友「そういうおばあちゃんの知恵袋は切る前に教えてほしかったナリよ」
男「はい、じゃあ炒めた玉ねぎをじゃがいもの入ったボールに投入して」
友「へい」
男「ここへ塩コショウ、パン粉、塩コショウ、塩コショウを投入します」
友「アカンしょっぱくなってまう」
男「材料を良く混ぜたら小判型に整形して小麦粉をまぶしておきます」
友「先生、さっきの鱈汁の鍋が吹いてます」グツグツ
男「ん、そしたらそこに鰹節と刻んだ青菜をブチ込んで醤油でいい感じの味付けにしといてくれ」
友「わかった」
男「小松菜全部使うなよ。半分は菜びたしにするから」
友「最近菜ものが高くて辛いです・・・」
男「ほうれん草一束300円とかどんな高級食材だよ」(主婦並感)
・・・
友「大体できたかな」
男「あ、あとはさっきの漬物に酢と砂糖と粉唐辛子入れて揉んどいて」
友「わかった超揉むわ」モミモミーン
男「あとはコロツケーが揚がれば完成だな」
友「コロツケー」
・・・
男「できた」
友「うまそう。それにしても、思ったより早くできたな」
男「軍隊調理法は調理の簡便さにも重点を置いてレシピが作られてるからな」
友「なるほど」
男「さ、椀を出しなさい。まず食わねば」
友「」コンモリ
男「当時の兵食では一食辺り2合の米麦飯がこれらの副食と共に配給されたという」
友「多すぎィ!!」
男「さぁ、冷めないうちに食べよう。いただきます」
友「い、いただきます・・・」
友「・・・うーん、なんていうか、素朴な味だなぁ」モグモグ
男「化学調味料に慣れた舌にはそう感じるのもやむを得ない」
友「ていうか全体的にしょっぺぇ・・・」
男「まぁ兵隊という重労働者向けの食事だしな。塩分の補給も視野に入れた味付け量にはなってるよ」
友「こんだけ味が濃けりゃ飯も進むけどさ・・・」モグモグ
男「ちなみに、これだけの量の飯をこなすために納豆が出る日は一人当たり現在の納豆4パック分が配色されたらしい」
友「アカン、納豆だけでお腹いっぱいになってまう」
男「よく薬味の有無や混ぜるタイミングで論争が起きるが、軍隊調理法では薬味は大根おろし、混ぜるのは醤油と大根おろしを入れてからとなっている」
友「へぇ、ネギじゃないんだ。ちょっと意外」
男「まぁでも4パック分もあったらネギよりは大根おろしのほうが食いやすいと思うよ僕は」
友「飯2合に納豆4パックのなっとうかけごはんとか考えただけでウッってなる」
男「ごちそうさま」
友「ごちそうさまー・・・うー苦しい、こりゃ夕飯食わなくていいな」
男「どうだった?軍隊のメシは」
友「うん、なんていうか思ったよりちゃんと?してた」
男「そうだね、プロテインだね」
友「やっぱこう、戦時中の食事って言ったらもっと貧相なイメージだったんだけど」
男「陸軍といえば兵站を軽視しすぎたことがとかく槍玉にあげられるけど、物資もなく補給も断たれた戦争末期はともかく、基本的に戦前の日本軍は総じて高いレベルの兵站能力を持ってたんだけどな」
友「まぁ週刊空母やるような国と同時に大陸相手にも戦うような無茶やらかしてたしなぁ・・・」
男「実際、当時から電気を使った野外調理用の車両なんかも開発してたしな」
友「話を聞くほどに当時の技術って思ったより進んでるんだよなぁ」
男「腐っても列強だし?昔から日本は開発力はあるけど生産力はないって言われてるしな」
友「技術があっても資源がないんじゃなあ・・・」
男「だからもうマジ戦後日本はシーレーン防衛に文字通り命懸けてるマジで」
友「さもありなん」
男「潜水艦やべぇよ・・・やべぇよ・・・ってことが二次大戦でやっと分かったからな」
友「そういや昔からメシは海軍のほうが美味かったっていうよな」
男「陸軍と違って食糧の輸送を考えなくていいし、専門の調理員がいるからな」
友「へー」
-旧海軍編へつづく-
ちなみに軍隊調理法はここに詳しいぞ!!
http://www.gokoku.gr.jp/cooking/index.html
-旧海軍編-
男「はい。というわけで、ここに取り出したるは高橋猛先生著の『海の男の艦隊料理』です」
友「メシくったばっかなのにまたメシの話すんの」
男「旧軍は陸海セットでやっちまった方がいいだろうが!」プンスカ
友「えぇ・・・」
男「で、さっきお前が言った通り昔から陸より海のほうが伝統的にメシは美味いといわれている」
友「肉じゃがとか、カレーとか有名だよな」
男「まぁ実際は、それらが民間に広がったのは海軍よりもむしろ陸軍の功績のほうがでかいんだけど」
友「あ、そうなの?」
男「海軍と違って陸軍は日本各地に基地があったし、兵の数も陸軍のほうが圧倒的に多かったからな。一応調理も持ち回りで全員が作り方を学ぶから、戦後軍隊で覚えた味が戦争の終了と同時に全国に広がって行ったわけだ」
友「なるほど」
男「で、海軍は陸軍より人員が少ないわけだけど、大元の予算はどっちも同じ額なわけだよ」
友「ほほう」
男「となると、当然一人当たりの食費も余裕がでるし、そもそも海軍の場合は最前線の艦上に食料を積み、且つそこで調理するから輸送の手間を考慮する必要がない」
友「確かに」
男「だから、同じ食材でも陸軍は輸送コストがかかる分、前線での食材の単価が高いんだよ」
友「北はロシア国境、南はジャングルの中まで届けなきゃいけないわけだもんなぁ・・・」
男「それでもまだ国力に余裕がある頃は、陸軍糧秣廠も正月におせち料理一式の入った『口取り缶』っていう缶詰を前線に送り届けてたらしいがな」
友「なるほどねぇ」
男「辻政信っていう陸軍の偉い人は、戦艦大和に呼ばれた時に振る舞われたご馳走みて『なんでこんな良いモン食ってんだよ!!』ってブチ切れたらしいけどな」
友「えぇ・・・」
男「ま、というわけで使用する食材からして既に海軍に分がある訳だ」
友「そうだね、プロテインだね」
男「あと、海軍ってのは基本、戦闘だけでなく操艦などの専門技術を要することから組織自体が巨大な技術者集団だ。効率化のために各部門が専門化されてるから、調理もエキスパートが行うことになるしな」
友「それだけの素地があれば、海軍のメシのほうが美味くもならーな」
男「ただ、海軍には海軍の特殊事情もあるんだけどな」
友「特殊事情?」
男「ああ。いくら当時から電気冷蔵庫はあったとはいえ、数百人以上いる乗組員の食料を数週間分積み込むわけだ。当然、その容量が足りるはずもない」
友「アカン、冷蔵庫爆発してまう」
男「だから、どうしても冷蔵庫に入らない分は缶詰や乾燥品等と言った保存性に優れる食品を積み込むことになる」
友「どう考えたって積み込む量はそっちのほうが多くなりそうだ・・・」
男「実際、肉や魚、野菜などと言った生鮮食品・・・生糧品というが、これも出航後数日しか持たない」
友「その生糧品がなくなったら?」
男「たとえば野菜の水煮缶でつくった煮物や、水で戻した乾燥野菜の味噌汁・・・樽に漬けこんだ古漬け・・・」
友「悲しいメシだぜ・・・魚でも釣って食えばいいのに」
男「あ、当然『F作業』っていって、戦闘海域以外では艦上で釣った魚が食卓に並ぶこともあったみたいだな」
友「まぁ周りは海な訳ですからねぇ」
男「そう言ったって、数百人分の魚が毎日釣れるわけでもないし、基本はそういった獲物は士官など階級が上の者の口に入っておしまいだったみたいだけど」
友「悲しいなぁ・・・」
男「まぁ、食えるだけマシよっていう感じかな。カレーなんかも、実際は古い食材の臭いを消すために生まれたってくらいだしな」
友「大航海時代にスパイスに命懸けてたのはそういうことだったのか・・・」
男「あと海軍特有・・・でもないけど、有名な文化にギンバイってのがあるな」
友「つっぱりハイスクールかな?」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
男「そう元は銀蠅よ。積み込まれてる食糧とかをこっそり盗み出すことなんだが、その様が食べ物に纏わりつく銀蠅に例えられてギンバイと呼ばれるようになったらしい」
友「なるほどー」
男「当時、海軍将兵たちの間で人気のあったギンバイ対象食品は生の玉ねぎだったという」
友「なんでまた」
男「さっき言った通り、長期の航海では生野菜はすぐに底をつく。缶詰や乾燥野菜などと言った食事が続くと、乗組員達は自然と生野菜を欲したらしい」
友「でも、玉ねぎも一緒に腐っちゃうんじゃないの?」
男「いや、玉ねぎとジャガイモについては常温でも腐りにくいので大量に船に積み込まれたらしい。これはすなわちカレーにこれらの具が定番となっている理由でもある」
友「ほほう」
男「特に、長期間野菜を摂取できなかった兵たちは刺激の強い野菜を求めたという。入港時の食料積み込みの際は、将兵たちが生の玉ねぎをまるでリンゴでも齧るかのようにほおばっていたという話もあるくらいだ」
友「くさそう」
男「まぁ男所帯だし・・・潜水艦に比べればマシよ」
友「潜水艦とかもっと大変だろうな。狭いし暗いし」
男「ああ。さらに潜水艦の乗組員達は、その危険度も高かったため海軍の中でもパイロットに並び最高の食事が与えられていたという」
友「へー」
男「それでも相当辛かったはずだぞ。なんせ艦内に生ものはほとんど積めないし、日も当たらない艦内で缶詰缶詰アンド缶詰の毎日だからな」
友「聞いてるだけで元気なくなるわ・・・」ゲンナリ
男「唯一、艦内で育てている少量のモヤシだけが、時折味噌汁に浮かび乗組員達を喜ばせたという」
友「悲しいなぁ」
男「で、さっきの本には、実際に海軍で主計兵・・・つまり調理要員の教育に使われた主計兵調理術教科書の内容が復刻されている」
友「さっきの軍隊調理法とは違うのか?」
男「ああ。前線での個人調理も視野に入れ、個々人での持ち回り調理を重視した陸軍とは違って、海軍では調理専門の主計兵のためにより専門的な調理技術に関する記載が為されている」
友「ほほう」
男「その中でも特徴的なのが、さっき言った海軍特有の潜水艦での調理や航空食、饗応料理などのレシピだな」
友「饗応?」
男「来賓を招いて、食事を提供することだ」
友「ああ、お食事会ってことね」
男「実際、海軍は陸軍よりも海外各地に展開することが多いからな。こうした際のパーティ料理はもちろんのこと、下士官に至るまで洋食の食事マナーの教育があったほどだ」
友「ふーん・・・でも、戦争中はそんなこと言ってられないだろう」
男「いや、大戦末期になっても海軍では食事マナーの教育は続けられた。ただ、それまでは本物の料理を使ってたのが、水やタオルを料理に見立てるようになったらしいが」
友「悲しいなぁ」
男「だけどそんな主計兵調理術教科書の中でもやっぱり異色を放つのが潜水艦航海食だな」
友「へぇ。普通の船での調理とそんなに違うもんなの?」
男「ああ。そもそも環境が特殊だからな」
友「食材が極端に少ないとか?」
男「それももちろんだが、もっと重要な違いがある」
友「例えば?」
男「潜水艦はさ、海の中に潜るわけじゃん」
友「うん」
男「中の空気ってどうなってると思う?」
友「なんか、シュノーケル的なアレで海面から取ってるんじゃないの?」
男「ああ、実際海中でディーゼルエンジン回すときはその通りだ。だけど、戦闘中だったり嵐の間はそうもいかないだろ?」
友「うーん・・・じゃあなんか酸素ボンベ的なものを積んでるとか?」
男「いや、実はな。基本潜水中は浮上時に溜め込んだ空気を大事に使って我慢する他ない」
友「マジかよ!?」
男「ああ。だから艦内では空気が汚濁するような行為は禁止されている。喫煙はもちろんの事、乗組員も非番中は呼気による二酸化炭素排出を抑制するため睡眠をとることが推奨された」
友「これはまた随分と原始的だなぁ」
男「そうなると、当然艦内で火なんか使えないわけだ」
友「あっ、そうか・・・燃焼には酸素が必要だもんな。えっ、じゃあどうやって煮炊きすんの?」
男「そこで、潜水艦では電気釜を使用する。まあ、現在の炊飯器を大きくしたようなものだ」
友「なるほどー」
男「水上艦でも基本火は使わないけどな。ほとんどは機関から回ってくる蒸気の熱を使った蒸気釜が中心だ」
友「船上火災こわいからね、仕方ないね」
男「さらに、水上艦でもさることながら潜水艦でより一層貴重となるのが『真水』だ」
友「真水かぁ」
男「当時の艦船では基本、出港地でタンクに詰め込んだ水の他に機関の熱を使った海水蒸留や、航行中のスコールなどから真水を得ていた。当時は膜を使った脱塩技術はまだ完成していなかったしな」
友「周りには水しかないのに水が足りないというのもなんだか皮肉な話だな」
男「潜水艦の場合、海中にいる間はモーターで航行するから海水の蒸留はできない。唯一、浮上中にディーゼルエンジンを使用しているときのみそれが可能になるわけだが、限りある燃料では得られる水の量も雀の涙といったところだ」
友「そんなん・・・飲料水の他にも生活用水もいるだろうし、圧倒的に足りないだろう」
男「だから基本、潜水艦乗組員は歯も磨かないし身体も洗わない。もちろん、洗濯なんて夢のまた夢だ」
友「くさい」(確信)
男「事実、乗組員自身が『乞食のほうがまだ清潔だ』と手記に残しているくらいだからな。そういう事情から、潜水艦に乗り込む軍医は基本皮膚科の先生だったらしい」
友「たしかに皮膚病すごそう・・・」
男「それに潜水艦で攻撃を受けて怪我するような状況って、それもうほぼ死亡確定な状態だしな」
男「まぁ・・・そんな環境の中でしかも出されるメシも缶詰ばかりだから、軍医は栄養補給のためにビタミン剤などを積極的に艦内に持ち込んだという」
友「もう聞いてるだけで食欲なくなるもの」ゲンナリ
男「さらに、歯も磨けないことから当時の潜水艦乗組員は例外的に常時ガムを噛むことを許されていた」
友「へぇ。戦後子供たちがギブミーチョコレートと一緒にGIたちにガムをせがんだ話は知ってるけど・・・当時の日本にもガムなんてあったんだな」
男「ガムが日本で初めて発売されたのは大正5年のことらしい。もっとも、当時は餅のような食感からウケは悪かったみたいだがな」
友「なんか普通に飲み込む人いそう」
男「あと、原則米麦飯であった水上艦艇と違い、潜水艦では精白米が支給された。これは食欲の減退を予防するほか、湿度の高い艦内ではヌカのついた胚芽米や麦はすぐに悪くなってしまうという理由があったようだ」
友「本当にいいもん食ってたんだなぁ」
男「だが長期に渡る艦内生活では、当時高級品だったパインの缶詰さえ、缶特有の匂いが鼻について食欲を無くす者が続出したという」
友「うーん、勿体ないけど仕方ないね」
男「そんな状況を想定して、潜水艦航海食は火を使わず、調理が簡便で、酢や辛子などを用いて刺激のある、乗組員の食欲が増すようなレシピを中心に記載している」
友「いろいろ制約があって大変だよなあ」
男「あぁ。だからこそ潜水艦調理はある意味海軍調理法の技術の集大成ともいえる訳だ。実際、潜水艦のために開発された食品も多いしな」
友「例えば?」
男「餅やうなぎの缶詰、粉末醤油、即席麺、粉末餅などなどなど・・・これらの技術が戦後インスタントラーメンや非常食で有名なアルファ米に受け継がれていくこととなる」
友「なるほどー」
うんちく面白い
支援
男「まぁそんな風に軍需部や主計兵がどれだけ努力しても、将兵たちは『やっぱりご飯にパイン缶乗っけて紅茶をかけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「これもうわかんねぇな」
男「そういえば、そういった用途で開発されて現在では味わうことのできない珍しい食品が存在する」
友「珍しい食品?」
男「ああ。それが自然を、おいしく、楽しくのカゴメが開発した固形ケチャップだ」
友「マジかよ、カゴメそんなもん作ってたの・・・マジ日本のトマトエンペラーだわ」
男「当時のケチャップはビールのような瓶に詰めて出荷されていたんだが、それだと嵩張るし戦地での瓶の回収も難しいからな」
友「今みたいにプラスチックのケースもないだろうしね」
男「ただ、固形にするのは結構苦労したみたいだ。単に煮詰めるだけだと糖分が焦げて風味が変わってしまうし、含まれる酢酸も揮発性だから酸味が飛んでしまう」
友「くそっ・・・フリーズドライ技術さえあれば・・・」
男「フリーズドライ技術そのものは戦前からあったらしいけどな」
友「あ、そうなの。また出たよこのオーパーツ感」
男「なんでもイタリアが『戦場でも美味いもの食べたイーノ』って開発したらしいが、如何せん設備も費用も掛かるからな。軍用糧食向けに本格的に研究・開発されるようになったのは1950年代に入ってからだ」
友「さすがイタリア、食に命懸けてるわ。砂漠でスパゲティ茹でてるだけのことはあるな」
男「戦場で米を炊く日本も大概だと思うぜ」
友「それで、カゴメは結局どうしたの?」
>>62
ありがとう 私せいいっぱい頑張るわ
男「ああ。結局煮詰めるんではなくて、熱風による乾燥を用いたらしい。その際、酢酸の代わりに揮発しにくいクエン酸を添加したうえでな」
友「まさに必要は発明の母だなあ」
男「こうして作られた固形ケチャップはケチャップ羊羹とも呼ばれ、油紙とパラフィン紙に包まれて出荷されたらしい」
友「確かに、それなら軽いし嵩張らないね」
男「ああ。使うときも使う分だけ切って水に溶かすだけだしな」
男「まぁ、それだけやっても将兵たちは『やっぱり溶かさずに切ったやつをご飯にのっけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「日本人特有のとりあえずごはんに乗っけておく風潮」
男「色と言えば艦体の鈍色と海の青しか目にできず、野菜にも餓えた将兵たちにとってあのトマトの赤い色と酸味が大きな慰めになったのは事実のようだ」
友「ふーん・・・たしかに赤は食欲増す色だっていうしね」
男「そんな固形ケチャップだが、戦後は需要が落ち生産されなくなったため、現在では入手不可能となっている」
友「そう言われると食いたくなるのもまた人の性か」
男「今じゃ技術が進歩して生糧品も長期保存ができるようになってきたし、昔よりは自由に水を使えるようになってきたみたいだしな」
友「うーん、なんだかんだで便利そうなんだけどな固形ケチャップ。復刻してくんないかな?」
男「他にも鰹節で味噌汁の出汁をとる陸軍に対して、海軍では前の晩からいりこを水に浸して出汁をとっていたように、同じ料理でも微妙に調理法が異なっている」
友「海軍のほうが仕事が丁寧な感」
男「最初に言った通り海軍には調理専門の主計兵がいるからな。調理技術といった意味では海軍のほうに一日の長があるだろう」
友「全員がある意味プロの調理人なわけだもんなぁ。元々料理人だった人とか向いてそう」
男「いや、本物のコックや板前は主計兵とは別に艦に乗り込んでいた」
友「え、そうなの。なんでまた別々に?」
男「日本海軍は英海軍に倣ったから、兵と士官では食事が違う。兵の食事は主計兵が行うが、士官の食事は一流ホテルの料理人などを徴用して軍属として雇っていたらしい」
友「マジで?え、じゃあわざわざ兵用の料理人と士官用の料理人を乗せてたの?」
男「ああ。調理場も別だったし、調理器具にも差があったようだ。大量調理の必要がある主計科では、食材の裁断に牛刀を使ったり、前の晩から一度に出汁をとったりなど効率を重視している。一方で士官用の調理室では、柳刃や杓子など通常の料理店と同じ道具が揃えられ、味付けなども丁寧に行われていたらしい」
友「へー・・・元のサイフは同じだろうに理不尽な話だなぁ」
男「いや、士官以上の食事については各員の持出しで食材が賄われたらしい」
友「自腹かよ・・・まぁお偉いさんだから金持ってたんだろうなぁ」
男「まぁ、形式上手当はついたらしいが、それでも若い士官になると相当辛かったみたいだけどな。特に艦長がグルメだった場合は」
友「俺絶対AランチBランチ選ぶ方が性に合ってるわ」
-旧海軍編 おわり-
【口取り缶】
(前略)
お餅が出来れば、今度は正月料埋で一杯といふところであるが、正月料理といつても戦場では何も出来ない。
それで、やはり糧秣廠でつくりた小判形の大きい缶詰につめられて、小さいけれどもびんと尾頭を張つた鯛の焼ものや艶やかな黒豆や、うこん色の金とん、それに数の子、昆布巻、田作が一通り揃つてゐる。
これが一箇づゝ渡つた時の兵隊達の喜びやうは、大へんなものである。
平たい缶の衣面には、毎年銃後の気分を表象したレッテルを貼ることにしてゐるが、今年もレッテルが貼られて行つた。
(「野戦のお正月料理」陸軍糧秣本廠より)
-番外編 海軍カレー-
友「でもやっぱり、さっきも言ったけど海軍といったらカレーだよなぁ」
男「今や海軍カレーは代表的な日本食の一つとなったからな」
友「インド人曰くもはやあれは別物らしいな」
男「日本のカレーはインド発イギリス経由日本行きだからね」
友「あぁ、元々は古くなった食材の匂いを消すためだったんだっけ?確かに昔の船じゃ食べ物が持たないのはよく分かったし」
男「ああ。臭い消しもそうだが、スパイスには殺菌効果のあるものも多いしな。東南アジアなど高温多湿の地域の料理にスパイスが多用されるのは、このへんに理由があるらしい」
友「なるほど」
男「特に小麦粉によりとろみを加えているのが日本のカレーの特徴的な部分だ」
友「たしかにインドカレーとか結構サラサラしてるもんな」
男「あれにより色々な具を入れても米に絡みやすく、食べやすくなったわけだ。それに、揺れる船上でこぼれにくいってのもあるしな」
友「今でも海上自衛隊では連綿と金曜カレーの文化が続いてるみたいじゃん?」
男「長い航海でしかも変則勤務だからな。曜日感覚を無くさないために金曜になったらしいが、元々は土曜日だったんだよあれ」
友「えっそうなの!?」
男「ああ。何だかんだ、調理や後片付けも楽だし、鍋に入れておけばあとは飯にかけるだけだからな。昔は給養員が土曜日に上陸するときに食事の手間を減らすために、土曜日にカレーということが多かったらしい」
友「旧海軍からの伝統じゃないのか・・・」
男「そもそも旧海軍でも何曜日がカレーと決まってたもんでもないしな。それに、残った材料は効率よく使わなきゃならんし」
友「たしかに」
男「それに艦ごとにそこの主計課の得意料理というものがあったらしい。例えば空母の場合、赤城はお汁粉などの甘いもの、翔鶴の場合はカレーがそれぞれ得意料理だったみたいだ」
友「なるほど、おふくろの味ならぬお艦の味ってか・・・でも、さっきの主計兵調理術教科書でレシピは決まってるんじゃないの?」
男「いやまぁ飽くまで調理の基本技術と数種類のレシピ例が記載されているだけで、現場ではより臨機応変な対応がされていた」
友「へぇ」
男「実際に、現在の海上自衛隊においても特に決まったカレーのレシピというものは存在しない。各艦の給養員が、自らのレシピを艦の味として受け継いでいるそうだ」
友「へー。なんかバーモンドカレーとか大量にぶち込んでるイメージだけど」
男「基本的には海自では小麦粉とバターを炒めてルウから作るそうだ。味付けはその艦の給養員の好みによるがな」
友「やっぱ海軍はそういうとこ、こだわってんだなぁ・・・」
男「それに、自衛隊に納入される食材は基本入札によって決まるからな。毎回同じ業者が同じ製品を納入するとはかぎらないんだよ」
友「へぇ~」
男「で、金曜日はカレーといっても全ての艦が同じメニューになるわけではない」
友「ん?」
男「例えば、カレーの付け合せがコロッケだったり、メンチカツだったり。鶏のから揚げだったりそれは艦によって異なるらしい」
友「へー、副食までメニューが決められてるんじゃないんだ」
男「逆に米軍なんかはきっちりメニューまで決まってるみたいだけどな」
友「ふーん・・・」
男「カレーに入る具も多種多様だな。ポークカレーの艦もあれば、ビーフカレーの艦もある」
友「それ絶対後者のほうがいいじゃん!」
男「ただ、一人当たりの食材費はどの艦も基本一緒だから、その分どこかでトレードオフになるわけだけど」
友「付け合せが一品減るとか、デザートがつかないとか?」
男「さあそこまでは・・・あ、付け合わせといえば、金曜カレーには大体サラダやフルーツとともにゆで卵がつく」
友「これには坂東AGもニッコリ」
男「ふつうゆで卵はお湯が沸騰する前に卵を投入するんだが、海軍では沸騰したお湯に卵を投入する方法だったらしい」
友「へぇ、なんで?」
男「そのほうが殻が剥きやすいとされていたからだ。実際、高い温度に入れられた卵は表面にヒビが入って白身と殻の間に水が入り込んで剥き易くなる・・・気がする」
友「正直どっちもあんまり変わらないんじゃないですかね・・・」
男「養鶏家曰く、茹で卵にするときは古い卵のほうが殻が剥きやすいらしいぞ」 ※実話です
友「でも、なんでまたカレーなんだろうな?」
友「WW2前までは日英は同盟関係だったしな。当時脚気に頭を悩ませていた海軍が、当時ほとんど脚気に悩まされることの無かった英国の食事を取りいれたことに起因しているらしい」
友「ふぅん・・・」
男「それに、基本的にカレーやシチューは食材を切って煮込むだけだしな。調理の効率も悪くない」
友「なるほどね・・・今じゃ定番の具は、当時から変わってないのか?」
男「うーん、たしか日本に伝来してすぐに紹介されたカレーのレシピは肉に蛙を使ってたんじゃなかったか」
友「ゲテモノ料理じゃないですかやだー!」
男「フランス料理なんかじゃ普通の食材みたいだけど・・・当時はまだ豚や牛の肉も普及してなかったろうし」
友「えぇ・・・海に蛙なんていないじゃん・・・」
男「いや、海軍は最初から獣肉だったろうけど・・・」
男「あと、実は海軍カレーにおいて重要な意味を持つ具材はジャガイモだったりする」
友「あぁ・・・さっき言ってた腐りにくい的な意味で?」
男「それももちろんだが、ジャガイモには船上で不足しがちな栄養素であるビタミンCが含まれている」
友「レモンの?」
男「ああ。100gあたりのビタミンC含有量がレモンは53.7mgに対して、じゃがいもは19.7mg」
友「少ねぇじゃねえか!!」
男「だが、最も重要なのはビタミンCは加熱すると壊れるという点だ。さっきから言っている通り、艦船では生糧品は長持ちしない」
友「それはそうだけど・・・」
男「ジャガイモの場合は、加熱しても芋に含まれるでんぷんによってビタミンCの破壊が抑えられるそうだ」
友「へぇ~」
男「だから、長期航海においてジャガイモは重要なビタミンC供給源となったわけだな」
友「ビタミンCか・・・それも脚気の原因?」
男「いや、ビタミンC欠乏は壊血病の原因だな」
友「壊血病・・・」
男「大航海時代の船乗りたちが苦しめられた病気だ。これもまた脚気と同じようにビタミン不足からくる病気と分かるまでに、随分時間がかかったがな」
友「へー」
男「というわけで、ことさら海軍でカレーが取り上げられる要因はそういった事情が背景にあるからだろうな」
友「なるほどねぇ・・・でも、なんで日本だけなんだろ?元は日本軍の一部だったはずの韓国でも、海軍カレーくらいあってもよさそうなもんだが」
男「旧陸軍でもそうだったが、カレーはよく洗い残しが出たらしい。で、それをネタに階級が下の者に対して私的制裁を行うということで、今ひとつ韓国ではカレーが浸透していないらしい」
友「斜め上の理由だった」
男「まぁそれに基本的に韓国は地政学的に海洋国家とも言えないしな。歴史的に長期航海が必要となる海軍を持たなかったことも、もしかしたら理由の一つにあるかもしれん」
友「はぁー、なるほど・・・」
男「それに、ビタミンCは唐辛子にも多く含まれている。これらをふんだんに使った韓国料理には、特にビタミンC対策は不要かもな」
友「まぁなんにでもキムチついてくるもんなぁ・・、にしても、やっぱりカレーは日本人の仏の胃袋やでぇ」
男「実は、こんだけ話しておいてなんだけど俺あんまりカレー好きじゃないんだよね」
友「ウッソ!?そんな人間いるのかよ!?」(驚愕)
俺「いや、なんていうか味は嫌いじゃないし、給食とかでも割と問題なく食ってたけど・・・金払ってまで食うほどでもないかなぁ」
友「まぁー好みは人それぞれだからね・・・」
男「あ、でも高校の頃はよく100円ショップでレトルトカレー買って飲んでたなぁ、そういや」 ※筆者体験談
友「カレーは飲み物を地でいくのか・・・」(困惑)
男「なんというか、スナック菓子と違って肉や野菜が入ってて腹にたまるし、一番手軽にメシ食ってる感を味わってる気分になるから仕方なく」
友「この人おかしい・・・」
-番外編 海軍カレー おわり-
とりあえず、この後は陸・海・空自衛隊、米軍、戦国時代、大航海時代くらいまでやる(小声)
ひとまず乙!
戦国時代期待
カエルは旨いぞ?あっさりした鶏みたいで
支援ありがとうございます
>>92
マムシは食ったことあるんだけどカエルはないんだよなぁ・・・多分
-航空自衛隊編-
『・・・これを受け政府は弾道弾迎撃ミサイルPAC3と、イージス艦ちょうかいを沖縄方面に配備し・・・』
友「まーた北朝鮮がハッスルしてしまうのか」
男「J-ALERTの音、ほんときらい」
http://www.youtube.com/watch?v=IrUSuQiWB-0
友「アカン、心臓止まってまう」ガクガク
男「まぁこれくらい不気味じゃないとみんな逃げないし・・・緊急地震速報然り」
友「俺、逆にああいう音聞くと思考停止しちゃうからやめてほしいわ・・・」
男「ん、もうパトリオットは那覇基地に展開してるのか」
友「那覇基地って確か軍民共用だから、旅客機からも見えるんだよなこれ・・・見たくないなぁ・・・」
男「1発だけなら誤射かもしれない」
友「怖ぇよ」
友「にしても、このためにわざわざ沖縄まで展開とは陸自も大変だなぁ」
男「パトリオット部隊は航空自衛隊なんですがそれは」
友「えっ?」
男「03式やホークは陸自の管轄ですが、パトリオットだけは空自なのです・・・」
友「なんやて工藤」
男「アメリカじゃパトリオットも陸軍運用なんだけどな。まぁ空陸の切り分けは国によって異なるから」
友「これもうわかんねえな」
男「名目上は、パトリオットは長距離対空ミサイルで各地の警戒レーダーと連携する必要があることから、同じ管轄である空自が管理しているらしい」
友「国の防空は空自の任務で、基地とかの局所防衛は陸自の任務・・・ってとこか。面倒臭ぇ、統一化しようぜ」
男「で、実はこのパトリオット部隊には面白い車両が存在する」
友「へー、なになに?」
男「炊事車という、パトリオット部隊専属のメシ炊き自動車だ」
http://i.imgur.com/Tbme74b.jpg
友「おぉー、移動キッチンだ!」
男「前にちょろっと話した陸自の野外炊具とは違い、こいつは完全な自走式だ」
友「なんでまた陸自と同じものを採用しなかったんだ?」
男「空陸の確執・・・とかじゃなくて、単に自走式のほうが機動性がいいからだろう。実際、こうやって沖縄など各地に展開しているパトリオット部隊について行かなきゃならんわけだしな」
友「なるほど」
男「こいつもなかなか高性能だぞ?車内の蛇口には消毒のための浄水器がついてるし、冷蔵庫には冷凍食品10kg、肉類30kg、野菜60kgが搭載できる」
友「うちの台所より装備が充実していて悲しい」
男「さらに車内には6基の電気炊飯器が搭載され、4基でメシを、残りの2基で副食をつくることが可能だ」
友「すごい」(小並感)
男「一度に約200人分の食事を作ることが可能なこの炊事車は、2004年に発生した中越地震の際の災害支援にも活躍している」
友「やるじゃん!」
男「他にも、自己完結性が必要なパトリオット部隊には、隊員の休養に必要なシャワーや寝台を備えた待機車というものも存在する」
友「なんだかコンパクト陸軍って感じだな。贅沢ゥー!」
男「ちなみに、この炊事車での調理については、陸自と同じで各部門から選ばれた隊員が調理を担当するみたいだぞ」
友「ほほぉー、空自には専門の調理部隊はいないのか」
男「いや、基地にはちゃんと給養小隊という、給食を担う調理専門の隊員がいるらしい」
友「へー、そうなの」
男「ああ。だが陸自の場合は旧陸軍と一緒で、基地内の給食でも各中隊から調理要員を出すシステムになっているらしいがな」
友「なら炊事車にもその給養員の人たち乗っければいいじゃん」(いいじゃん)
男「そうはいっても、そうすると今度は基地が人手不足になるしな・・・それに機動性といった意味では、やはり現場の隊員が持ち回りで作るほうが都合がいいんだろう」
友「レーダー睨んでミサイル撃ってメシまで作れってんだから、パトリオット部隊は過酷だぁ・・・」
男「あ、レーダーといえば、AWACSって知ってるか?」
友<<こちらスカイアイ。メビウス1、聞こえるか>>
男「そう、それそれ」
http://i.imgur.com/vcywhtw.jpg
友「AWACSがどうかしたのか?」
男「いやさ。空自のAWACSって基本、朝離陸したらその日の夜までずーっと空中で警戒任務に就いてる訳よ」
友「うんうん」
男「その間のメシって、どうしてると思う?」
友「うーん・・・機内食みたいにどっかのケータリングを頼む・・・ってことはないだろうな」
男「ああ」
友「あ、分かった。きっと機内に調理器具がついてるんや!!」
男「さすがの自衛官でも空中で煮炊き中にタービュランスに突っ込んだら危険が危ない」
友「えぇ・・・もう(打つ手が)ないじゃん・・・」
男「いや、普通に基地で作った弁当を朝受領して空に上がるんだよ」
友「へー、空弁ってやつか・・・でも、何時間も置いといたら夜食う分は腐っちゃうんじゃないの?」
男「ああ。だから昼食べる分は冷蔵、夜食べる分は冷凍の弁当となる」
友「なるほど」
男「隊員からは前者は生食、後者は冷弁とよばれているらしい」
友「レイベンとか響きが超かっこいい!ナイトレーベンみたい!!」
男「挟まっちまったぜ!!」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
男「特に生食には、レンチンする冷弁には入れることができない生野菜が意識して付けられるらしい」
友「栄養に関する細かい配慮ですね」
男「通常、フライトの2日前くらいまでに『弁当つくっといて!』って要請するらしいんだが、基本は基地ででる給食と同じ食材が使われる」
友「あぁ・・・俺もよく高校の頃の弁当は前の日のおかずの残りだったよ」(遠い目)
男「まぁ、空自の場合は同じ食材でもひと手間くわえるらしいがな。たとえば前日にネギトロが出た場合には、それを使ってハンバーグなどに仕立て上げるらしい」
友「心憎い演出だなぁ・・・母ちゃんにも見習ってほしかった」
男「まぁ、スクランブルとか緊急時には全食レトルトになるらしいがな・・・ていうか弁当作ってもらえるだけありがたく思えよ」(正論)
男「で、早期警戒機だけでなく輸送機の場合でも、食事の時間を跨いだフライトの場合は弁当が搭載される」
友「空自が誇る弁当文化」
男「この時、食中毒を考慮して最低でも一食は外注品を入れることになっているらしいが、特にその比率は決まっていないという」
友「ていうか、同じタイミングで同じもの食べてる時点でアウトなんじゃないですかね・・・」
男「だよなぁ・・・それに、隊員からもボリュームがあって味のいい基地製作品のほうが好まれるようだ」
友「納入業者涙目じゃん」
男「それもまだ国内任務のウチはいいが、昨今流行りのPKOによる国外派兵となると相当大変らしい」
友「まぁ・・・行き帰りの分まで日本から積み込んでいくわけにもいかないしなぁ」
男「現在日本が持つ海外への輸送に使用可能なC-130の場合、93年のモザンビーク派兵では片道4泊5日もかけている」
友「うへぁ・・・」(ゲッソリ)
男「C-130の配備基地は愛知県の小牧にある訳だが、荷物を搭載してモザンビークへ向かうには当然、各国で燃料を補給する必要がある」
友「じゃあ、その時に食べ物を積むのか?現地の軍隊のメシとか?」
男「いや、何せ食文化が違うしそもそもそんな国で離陸のタイミングに合わせて弁当の製作を依頼することなど不可能に近い」
友「これは詰んでますわ。積んでないけど」
男「さらに、最初からある程度の長時間飛行を想定したAWACSや海自のP-3なんかと違って、C-130にはギャレーもないしな」
友「もう(打つ手)ないじゃん」
男「そこで当時とった手段は、地上で加熱した民間用のケータリングを配膳もせずにアルミボックスごと搭載したらしい」
友「ワイルドだなぁ・・・」
男「で、それを狭い機内のパレットに積まれた荷物の上に置いたトレーにドカッと空けて、バイキング形式で各員が好きなものを取っていったらしい」
友「まぁ、それはそれで楽しそうではあるけれど・・・実際機内食って、よくマズイってことで噂が立ったりするよな・・・」
男「実際この時も東南アジアを過ぎたあたりからエスニック臭が強くなって、機内に充満するスパイスの匂いに隊員たちも閉口ものだったようだ」
友「それが4泊5日だもんなぁ・・・」
男「で、93年のモザンビーク派兵のときは輸送任務中に年を跨ぐということで、大晦日の機内ではカップ麺が配られたようだ」
友「あの武田鉄矢のやつ?」
男「そうそう、あの緑のやつ」
友「へー」
男「それと、当時は機上の飲酒も許されていた。正月はちょうど赤道を越えるということで、乗組員にはお屠蘇が振る舞われ、機上で赤道祭りなんかも行われたようだ」
友「それって、飲酒運転ならぬ飲酒操縦になるんじゃないの?」
男「いやもちろんパイロットは飲めないけど・・・でもタバコはコックピットでもスパスパ吸えたらしい」
友「へー、そうなんだ」
男「さらに民間機じゃ飛べないようなコースをこの形状の窓で飛ぶんだから・・・操縦席にいる人たちは、さぞかし気分がよかっただろうよ」
http://i.imgur.com/gUMqEg3.jpg
友「だろうなぁ。足元まで丸見えだもんな。まぁ、何日も見てたらさすがに飽きるだろうけど」
男「で・・・当然、人間上から摂ったものは下から出す必要があるわけだが・・・」
友「・・・」
男「さっきいったけど、元々長時間飛行を想定していないC-130にはギャレーはおろかまともなトイレもない」
友「おぉ、もう・・・」
男「そこで、急ごしらえでトイレユニットが組み込まれたんだが、何せ急造ということもあり仕切りはカーテン一枚だけだったという」
友「落ち着いてクソもできねぇ・・・」
男「まぁ排泄音はエンジン音にかき消されるにしても、如何せん臭いが・・・」
友「ていうか、食いモンの話したすぐあとに下の話するってどうなの」
男「下の処理を馬鹿にしちゃいかんぞ・・・食って出したものを処理するのは自己完結性をモットーとする軍隊にとっては重要な課題だ」
友「たしかにそりゃそうだけども」
男「実際、そういうところをおろそかにしてる軍隊は例外なく練度や士気が低いと言われている」
友「なんだかなぁ・・・」
男「食い物とウンコはワンセットだ!!」
友「おいお前もうちょっとオブラートに包めよお前!!」
-航空自衛隊編 おわり-
魚の人でしょ(ドヤァァァァ!
違ってたら恥ずか死する
>>27
スペース☆ダンディ面白かったよな・・・
支援するじゃんよ
>>104
陸だが駐屯地の食堂の飯は業務隊の糧食班の人とパートのおばちゃんが作ってるぞ?
演習の時の温食はベテランとペーペーの選抜だが
>>120
ただの人違いで死ぬのか・・・(困惑)
>>121
ほんこれ
特に最終回で神にカチコミかけるときのBGMは文字通り神曲
>>122
ご指摘の通り陸自の基地では糧食班長が量やカロリーをきめて、調理は栄養士やパートのおばちゃんや部隊から召喚した隊員がやっているようですね
横田の米空軍基地の食堂にも日本の民間人が軍属として入っているとのこと
こういう指摘や補足はバンバン入れてくれると非常にありがたいです
-海上自衛隊編-
友「俺、小さくてかわいいものほんとすこ」
男「おまわりさんこっちです!!」
友「なんでや!!」
男「犯罪の芽は早めに摘まなきゃ」(使命感)
友「通報されちゃう、ヤバイヤバイ・・・」
http://i.imgur.com/xxShmg8.jpg
友「ほらこれ」
男「はやぶさ型ミサイル艇。全長50.1m、全幅8.4m、喫水1.7m、排水量200t、最高速力44kt、定員21名。主武装として90式SSM連装発射筒と76mm速射砲を装備し、これらを統制するTDPSにはOYQ-8Bを使用しリンク11に対応、既存の護衛艦だけでなくP-3C哨戒機や空自のE-767,E-2Cといった早期警戒機とも情報伝達が可能となっt」
友「そこまで詳細なディティール述べなくていいから」
男「この船がどうかしたのか?」
友「いやさぁ・・・こういう小さいフネにいろんな装備詰め込んでるあたりにロマンを感じるんだよね」
男「はい」
友「だってこれ、小さいだけでもうほぼ護衛艦とシルエット一緒じゃん!超カッコいいわ」
男「はい」
友「しかもこれで80km/hも出るってんだから、夢が広がりんぐですわ」(死語)
男「まぁその分居住性が犠牲になってるけどな」
友「まぁ・・・200tっていったら、ちょっとした遊覧船と大きさ変わらないしな」
男「一応、士官室や科員の寝台なんかも用意されてるらしいが、クッソ狭いうえに三段ベッド・・・俗にいう蚕棚らしい」
友「俺むしろ狭いところも好きだから全然問題ないわ」
男「お前ハムスターかお前」
友「しかし、そんなに狭いと潜水艦並みに調理が大変そう」
男「いやあんなに狭いと流石に調理室は載らないって」
友「あっ、ホンマ・・・」
男「それどころかギャレーと呼ぶのもおこがましいくらいの装備しかないらしいぞ。冷蔵庫と電子レンジ、あとポットくらい」
友「あ、でも大体俺の部屋の調理器具そんな感じだ・・・よし、問題ないな!」
男「まぁそんなわけで、はやぶさ型ミサイル艇も航空機みたいに基地で作った弁当を持ち込む必要があるという」
友「金曜カレーが食べられないね・・・仕方ないね・・・」
男「レンジがあるならボンカレーくらいできるんじゃない?」
友「http://i.imgur.com/WJIThLx.jpg」
男「ホーロー看板超懐かしい。これとオロナミンCのやつは鉄板だわ」
友「そういや、旧海軍では士官と兵は別々のものを食ってたって言ってたじゃん?やっぱ海自でも、そうなわけ?」
男「いや、現在の海自では通常士官も兵も同じものを食べてるらしい」
友「へーそうなの」
男「まぁ、器が変わるらしいがな。通常金属トレーを使う一般隊員に対して、士官はちゃんとした陶器の茶碗やさらに料理が盛りつけられるらしい」
友「ほほう」
男「あと、給仕係の隊員がつくみたいだな」
友「じゃあ、昔みたいにコックや板前みたいな民間人を乗せたりしてないんだ」
男「ああ。ただ、給養員も定期的に調理に関する訓練や教育を行っているわけだから、給養員長クラスともなるとそんじょそこらのシェフや板前に負けないくらいの腕前になるらしいが」
友「へー。退職後も安泰だね」
男「ああ。結構マジで除隊後に店を構える人も多いと聞くな」
友「やっぱ海は昔から食に命懸けてますわ」
男「まぁ航海中の楽しみっていったらそれくらいしかないからね。仕方ないね」
友「そういや、海軍の話してたときにも言ってたけど、今は食糧の保存技術が向上して潜水艦調理もかなり充実してるんだろ?」
男「ああ。それに逆浸透膜を使った脱塩装置が開発されたことで、通常動力艦といえども時には一般隊員まで真水のシャワーが使えるくらいにはなったらしい」
友「やったぜ」
男「それでも原潜なら、有り余る電力で海水を電気分解して真水作り放題なんだけどな・・・同じく酸素も作り放題だから、原潜内の空気は世界一清浄であるといわれている」
友「やっぱり原潜がナンバーワン!!」
男「さらに、真空パックによる食品加工技術やフリーズドライ技術も発達して、最近では航海の終わりに近づいても野菜を供することが可能になったという」
友「偉大な進歩だぁ・・・」
男「それにしても、やっぱり毎日パウチの野菜やフリーズドライが続くと食傷気味にはなるらしいけど」
友「そう?俺なんか別にカップ麺1ヵ月とか余裕だけどな」
男「お前いつか身体壊すぞ・・・ただ、確かに若い隊員には昔からそういう食べ物に慣れ親しんでるので、それほど苦には感じないという例もあるみたいだ」
友「まぁねぇ・・・別に毎食マックとかお菓子でもそんなに不満はないし」
男「ああ。だからむしろ、ちゃんとしたメシに対する欲求は昔の人のほうが高かったのかもしれない」
友「日本人は美味いもの食う事に命懸けてるフシがあるからなぁ」
男「実際、大戦時のドイツUボートなんかは毎日黒パンやサラミだけの生活でもそれほど苦にはならなかったようだ。粗食に慣れてるといったら失礼かもしれないがな」
友「いや映画のUボート見た限りじゃ結構なじり食いしてたぞぉ・・・」
男「そりゃまあ、あの環境ならな・・・飽くまでも日本と比べたらの話だよ。やっぱりどうしても新鮮な食い物は食いたいだろう。特にインド洋じゃ日本の潜水艦からもたらされたミカンに皮ごと齧りつく話もあるし」
友「で、今でもやっぱり潜水艦の乗組員が一番いいもの食ってるの?」
男「ああ。一人当たりの食費を見ると、やはり潜水艦乗組員が一番高くなってるな」
友「ほほう」
男「まぁ、さっき言ったように長期保存用に加工した食品の分の値段も入ってるから、単純にその分良いものを食ってるわけではないだろうけど」
友「なるほど」
男「それでもたまには艦内でステーキなんかが出たりするらしいぞ」
友「そういや沈黙の艦隊でもやまとがニューヨーク入る前に乗組員に食わせてたな」
男「海自の潜水艦では基本、飽きを来させないために質素な食事と豪華な食事が交互に出されるらしい」
友「へぇー」
男「例えば夜がトンカツなら、その日の昼飯はソバといった具合だな」
友「なるほど・・・トンカツは豪華枠なのか」
男「ところでまたウンコの話するけどさぁ」
友「おういきなりビーンボール投げるのやめーや」
男「潜水艦で出た排泄物とか生ごみってどうしてると思う?」
友「えぇ?そりゃー・・・タンクに詰めて、基地に持ち帰ってるんじゃないの?」
男「No」
友「おぉ、もう・・・じゃあ選択肢一つしかないじゃないですか!!」(半ギレ)
男「大丈夫だ、表向きは君の言うとおり基地に持ち帰ってることになってる」
友「全然大丈夫じゃないんですがそれは」
男「まぁでも残飯やウンコみたいな有機物は魚のエサになるから・・・一応、一部のゴミは錘をつけて浮いてこないようにしてるらしいけど」
友「ヴォエ!!」
男「潜水艦の調理で出た生ごみはディスポーザーっていうミキサーみたいな機械にかけて細かく粉砕してるみたいだがな・・・まぁ、生ゴミや排泄物みたいな臭うし無駄に容積を食う搭載物をわざわざ貴重な電力を使って冷凍処理したうえで港に持ち帰ってるかというと」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
男「別に潜水艦や艦艇に限らず、つまるところ海っていうのは地球上の全ての汚濁が行き着くところだからな」
友「いやそれはそうだけど」
男「だから、正直海水を脱塩して飲んでもなんだかぬるりとしててそんなに美味くないらしいぞ」
友「ヴォエ!!」
男「ということで膜で脱塩した真水は、護衛艦に搭載されるヘリの洗浄や艦内シャワーなどの生活用水に優先して使われるようだ」
友「おれもう海水浴行けない・・・」
男「なに、心配するな。薄まってるから」
友「薄まってるから何なんですかねぇ・・・」
男「大丈夫だ。表向きには港に持ち帰ってる。広報を信じろ」
友「なんてことだ・・・なんてことだ・・・」
男「まぁ、よっぽどのことが無い限りプラスチックみたいな自然に還元しないゴミだけはなるべく港に持ち帰ってるみたいだけど」
男「・・・あ、で潜水艦のメシだけどさぁ」
友「お前メシの話の合間にウンコの話はさむのやめろよ。俺じゃなきゃ殴られてるぞ」
男「バーカ・・・お前じゃなきゃこんな話しねえよ・・・」
友「えっ・・・」キュン
男「いや実際お前ぐらいだろこんな話だらだら聞き続けるような暇な奴は」
友「なんだおい喧嘩売ってたのかおい」ビキビキ
男「で、潜水艦のメシだけど、基本海自の給食は艦ごとに実施される」
友「はい」
男「それは入港中でも同様だ。だから、乗組員が研修などで上陸する場合は艦内で弁当が作られる」
友「マジで?基地で食えばいいのに・・・」
男「まぁ軍隊じゃ員数というか帳尻合わせが全てだからな。例えどんなに基地内の食事が美味そうでも、潜水艦乗組員は艦内弁当を食べる事になるわけだ」
友「せっかく陸に上がったのになぁ・・・旧海軍でそれやったら暴動が起きそう」
男「まぁ、土を踏んで外の空気が吸えるだけ御の字よ・・・ちなみに空自の機上食と違って、海自の弁当は基本基地で製作した調理がそのまま弁当に入ることが多いらしい」
友「なるほど、ウチの母ちゃんは海自式だったのか」
男「長期哨戒にあたるP-3Cなんかも、基地食を詰めた弁当にお茶や味噌汁が付く程度みたいだな。最近は外注品が増えてあまり評判がよくないとも聞くが」
友「軍隊って自分とこのメシ大好きなんだな」
男「外注品はどうしても納入コストの兼ね合いで内容がしょぼくなるからね、仕方ないね」
男「それに、最近では保存技術が発達したおかげで航海中でも刺身とかの生ものの提供が可能になったらしい」
友「あれ?自衛隊じゃ釣りはしないの?」
男「あ、当然旧海軍から連綿と受け継がれてるぞ、F作業は」
友「F作業のFって、やっぱFishingのF?」
男「でしょうね」
友「うーん、艦ごとにシマノ派とダイワ派の戦いがあったりして。。。でも、それで魚釣ったら刺身なんて食い放題じゃん」
男「いやそれがな、南方海域では寄生虫やシガテラ毒を持った魚が多いから、乗り込んだ医官が釣った魚を検品するらしいんだよ」
友「ほう」
男「で、そこで1匹でも寄生虫なんかが確認された日にゃ、その時点でもう釣った魚は一口も食べることはできないという」
友「火を通せば大丈夫だろうに・・・もったいねぇなぁ・・・」
男「『自分らで釣った魚を食って食中毒になりまんた』なんてことになったらシャレにならんからな」
友「でも、概要航海中ならいろんな魚が釣れそうだよなぁ」
男「あー、嘘かホントかは分からんが、昔硫黄島基地に配備されてた哨戒ヘリから冗談のつもりで疑似餌を垂らしたらガッツリマグロが掛かったらしくてな」
友「なにそれすごい」
男「あまりのデカさに人員収容用のホイストでも揚げられないってんで、そのまま硫黄島の海岸まで引っ張って行って釣り上げたらしい」
友「松方弘樹もドン引きの豪快トローリングですわ」
>>146
×概要 ○外洋
男「外洋航海といえば、92年にPKOでカンボジアに派遣された輸送艦みうらは、結構大変な思いをしたようだぞ」
友「へー。前のC-130とちがって食い物なんてしこたま詰めるだろうに」
男「いやそうじゃなくて。みうら型輸送艦って、LSTっていう砂浜にドーンと乗り上げて戦車とかを降ろすための船なんだよ。ちなみにこれをビーチングという」
友「はぁ」
男「そのため、船底が普通の船とちがって平底なわけ」
友「何の問題ですか?」
男「通常、艦船の船底ってのは波の力を受け流すように船底に向かって逆三角形になるような形になってる」
友「うん」
男「さらに、モノによっては船体にビルジキールやフィンスタビライザーっていう出っ張りをつけて、船の揺れを抑制してるわけだ」
友「ほほう」
男「でも、このみうら型にはビーチングの邪魔になるこれらの装備はつけられない。おまけに平底の船体は下方向から容赦なく波に叩き付けられる」
友「つまり・・・」
男「めっちゃ揺れるよ!!」
友「だろうなぁ・・・」
男「状態としては風呂に浮かべた洗面器と変わりないからな。おまけに輸送艦だから搭載物で重心も高くなってるし」
友「聞いただけで船酔いしそう」オエ
男「実際乗り込んだ陸自の隊員たちも、折しも通りかかった嵐で荒れ狂う東シナ海上で『降ろしてくれぇ』『殺してくれぇ』と懇願していたらしい」
友「かわいそう」(小並感)
男「いくら精強を誇るレンジャー隊員とはいえ、船酔いの前では無力なのである」
友「なんとか船酔いをしなくなる方法はないんですかねぇ・・・」
男「一応旧海軍から受け継がれてるとっておきの秘法があるらしいけど・・・」
友「へー、どんな?」
男「例え船乗りとはいえ、やっぱり最初は船酔いすることもあるわけじゃん?」
友「そりゃまぁ、その辺は個人差だろうし」
男「で、当然船酔いMAXになると催してくるわけじゃん?」
友「えぇ・・・またそういう話・・・」
男「そうなったら、まずは自分の被ってた帽子の中にとりあえずぶちまける」
友「なんでトイレ行かないんですかね・・・」
男「・・・そしたら、その帽子の中に溜まったそれを、ズズッと飲みk」
友「ヴォエ!!」
男「いや、汚い話だけど本当に旧海軍から海自までずっと受け継がれてる話なんだって」
友「ヴォエ!!」
男「・・・実際、先のみうらに乗り込んでた海自隊員の中にも、それをやってから一度も船酔いしなくなったという体験談を語ってた人がいたらしいし」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
男「元々そんな船に外洋航海をさせる政府にも問題があったといえる。まぁ当時は国外派兵にも慎重だったし、おおすみ型みたいな高性能の輸送船も無かったからしょうがない面もあるが・・・」
友「きたない」(確信)
男「そうは言っても、船が揺れる物である以上、海軍と船酔いは切っても切れない関係だしな」
男「そういったわけで、海軍の調理鍋や味噌汁椀には半分しか中身を入れないようにしている」
友「あぁ・・・揺れでこぼれないように?」
男「そうそう。食堂のイスなんかも、テーブルに引っかけて固定できるようになってるしな」
友「そんなに揺れるのかよ・・・」
男「そりゃお前、一旦外洋に出ちまったら民間船が欠航になるような波でも航行続けるしかないしな。実際旧海軍の駆逐艦は、設計段階で傾斜110度でも転覆しない復元性を確保している」
友「傾斜110度って・・・」
男「船が完全に海面に横倒れになった状態が傾斜90度。さらにそこから+20度ってことは、艦橋なんかの艦上構造物は海の中ってことになるな」
友「」
男「実際、20度くらいまでならちょっとした嵐でもちょくちょく傾くらしい。大体スキーのゲレンデでいうと中級者コースくらいかな」
友「まっすぐ立っていられない」
男「実際、柱にしがみついてメシ食うらしいしな。そんな中でもメシを炊き上げる給養員さんはえらい」
友「ところで・・・海上自衛隊にもギンバイってあるの?」
男「あー、元自衛官の話を聞く限りじゃ普通にあるみたい。まぁ昔みたいに一般隊員にまでまんべんなく横行してるのかは分からんが、機関科と補給科の関係は昔とそれほど変わってないようだ」
友「機関科?なんで機関科?」
男「前にも言った通り、艦内の調理は全て機関から回される蒸気でつくるからな」
友「はぁ」
男「海の男の艦隊料理の著者、高橋先生も書いているように、補給科、つまり主計兵や給養員は機関科にこの辺の依頼をするときに色をつけるのが普通だったらしい」
友「どういうこと?」
男「つまり、何か食い物持ってって機関科の機嫌をとらないと蒸気融通してやんねーよ、ってこと」
友「えぇ・・・」
男「実際調理ができなけりゃ怒られるのは補給科の人員だしな」
友「足元見てるなぁ・・・」
男「ま、そういうところも軍隊の日常ってやつじゃないの。伝統墨守・唯我独尊の海上自衛隊らしいよ」
友「そういや、なんで海自はそんなに海軍とつながりが深いんだろうな?」
男「そりゃ、前にも言いた通り海軍ってのは巨大な技術者集団だからな。一旦解散してするとすぐに再生するのは不可能だし、戦後も復員や掃海のためにこれらの技術が必要だったから、旧海軍の技術・風習が途切れることなく続いてるんだよ」
友「なるほどー・・・伝統墨守・唯我独尊ね・・・」
男「ちなみに陸自の場合は、一旦解体されつつも戦後警察予備隊として米軍に倣った組織を作り上げる中で、旧軍からの文化や価値観を捨てきれなかったことから『用意周到・頑迷固陋』といわれている」
友「がんめいこずい?」
男「頑固ってことだよ。まぁ最近じゃ、陸軍悪玉論も薄れ始めて旧陸軍の良い文化も取り込み始めてるみたいだけど」
友「へー・・・じゃあ、空自は?」
男「戦後、陸海軍の航空部隊関係者を集めて組成され、米空軍と共に発達してきた空自のフレーズは『勇猛果敢・支離滅裂』だ。実際、発足当初はアメリカの様式を積極的に取りいれつつ、さらに内部では陸海軍出身者同士の確執があったことからこういわれている」
友「各自衛隊の長所と短所を表してるわけか・・・うまいこと言うもんだ」
-海上自衛隊編 おわり-
-番外編 南極観測隊の食事-
男「そういや、南極観測船もあれ海自の艦なんだよね」
友「あ、そうなの・・・たしか、『しらせ』だったっけ?」
男「そうそう。今のは2009年に就航した2代目だけど」
友「あのオレンジの船だよね?まぁ南極までいくんだから軍艦くらい出してもおかしくないか・・・」
男「まぁ実際に建造費用を出したのは文科省で、運用を防衛省がやってるって感じだけどな」
友「じゃあ武装とかはないんだ?」
男「艦固有の兵装って意味ではな。ただ、艦内には海賊対処用の64式小銃や9mm拳銃が積み込まれている」
友「へー」
男「さらには南極沿岸から内陸部への輸送用に、大型ヘリ2機と小型ヘリ1機を搭載している」
友「もはやDDHを上回る搭載量ですやん・・・」
男「まぁ実際海自の中ではデカイ艦ベスト3に入るし・・・ちなみにお台場にある船の科学館に係留されている初代南極観測船『宗谷』は、現存する唯一の旧帝国海軍艦船だ」
友「マジで!?」
男「ああ。大戦中は戦地を転々とし、潜水艦から魚雷攻撃を受けるものの不発のため生き残った幸運艦だ。今でも船籍を有しているため、必要があれば舫を解いて航行することもできる」
友「すごい」(小並感)
男「で、毎年この南極観測船は、南極に滞在する研究者の人員交代と補給のため、南極と日本の間を行き来している」
友「年一本の定期連絡船か・・・」
男「特に積み込まれる食材については、相当いいものが積み込まれるらしい」
友「例えば?」
男「和牛サーロインとか、イセエビとか・・・中には熊の掌や燕の巣みたいな超高級食材もふくまれてるらしい」
友「マジで!?」
男「でも、どれも冷凍だし南極じゃ生野菜も不足するし、どんなに高級な食材が有り余っていも越冬隊の人々を食傷気味にさせないためには相当な苦労を要したらしい」
友「えー、そうなん・・・?」
男「面白南極料理人で有名な西村淳氏の著書をみると、イセエビの身ですり身団子とか作ったみたいだ」
友「もったいないお化けがでそう」
男「ちなみに、彼の手記によると、南極観測隊に一番需要があった食材がラーメンを始めとした麺類だったようだ」
友「ラーメンは人類の永遠の口の友って、はっきり分かんだね」
男「持ち込んだ麺がすぐに底をついたため、基地に合った小麦粉に鹹水の代わりにベーキングパウダーを入れるなどの工夫をして、なんとか麺を作った話なども紹介されている」
友「大変な話だ・・・」
男「特に南極における調理では、絶対的に真水が不足するという」
友「えっ」
男「そのため、先の西村氏も元は海上保安庁の主計出身者だ」
友「ちょっと待って。周りにあんなに雪や氷があるのに水が不足するってどういうことなの・・・」
男「たしかに一見水なんて無尽蔵にあるように見えるけど、それってどうやったって一回溶かさないといけないだろ?」
友「はぁ」
男「南極じゃ常時零度を下回る気温なわけだ。つまり、放っておくだけでは氷は融けない。それどころか、食材を凍らせないために冷蔵庫を使うくらいだからな」
友「(溶かせば)いいじゃん」
男「簡単にいうけど、結構な重労働だぞ。水は個体になると体積が1割増しになる。つまり、1立方の水が欲しければ、1.1立方の氷が必要になるわけだ」
友「せやな」
男「さらに氷塊ならともかく、雪となるともっと膨大な量を集めなければならない・・・さらに、それを溶かすのに必要な燃料は水を作るだけでなく、基地の暖房や雪上車の稼働などに使わねばならない貴重なものだ」
友「なるほど・・・確かに、思ったより大変そう」
男「しかも旅行・・・という名の雪上車に乗って何千kmも奥の内陸部へ向かう冒険ことだが、この間は調理器具なんて雪上車に搭載されるレンジと電熱器くらいしかないわけだからな」
友「大変だぁ・・・」
男「とりあえず、水については電気炊飯器の中に雪を放り込んで作っておくらしい」
友「ていうかそれ、まともな調理できないだろう」
男「ああ、だから先の西村氏も、旅行中は肉に食用油をかけて表面だけ燃やしたのを牛のタタキ、レンチンした魚に焼いた金串で焼き目を付けたものを焼き魚といって供するなど、半ばヤケクソの料理を作るほかなかったらしい」
友「草を禁じ得ない」
男「だがそれも、南極観測船がやってきてヘリによる補給が始まると状況が一転する」
友「ほう」
男「しらせの艦内でつくられた大量のステーキなどの食糧が、毎回食事の度にヘリによって運ばれてくるという」
友「随分豪華なデリバリーだなおい」
男「そんな状況でも相変わらず水は貴重品なわけで・・・南極観測隊に同行したカメラマン宮嶋茂樹氏は手記のなかで『都会じゃ滅多に口にできんモンが食えるかわりに、水が使えん・・・』と嘆いているな」
友「うーん、皮肉な話だなぁ・・・」
男「あ、ちなみに昭和基地には南極観測船が来れなかったときのために小銃が置いてあるらしい」
友「えっ」
男「いざとなったらペンギンやアザラシ撃ち殺して食べよう」(ニッコリ)
友「蛮族かな?」
男「まぁしらせが南極まで行けない状況ってそれもう尋常じゃない事態だと思うけど」
友「でも南極とか行くの大変そう・・・」
男「実際、南極に近づくとに通貨する緯度30度~60度の間の海域は、赤道付近で暖められた空気の循環と地球の自転の影響でとんでもない偏西風が吹きつけるという」
友「恐い」
男「その緯度が高くなるにつれて徐々に強さを増す風の様子から、南極周辺海域は緯度ごとに『吼える40度』『狂う50度』『絶叫する60度』と呼ばれている」
友「やべぇラスボス感ハンパねぇ・・・フリーザ様みてぇ・・・」ガクガク
男「ところで、南極観測隊のお土産で人気な商品ってなんだか知ってるか?」
友「おぉー、確か前に南極の氷が大人気ーってテレビかなんかで言ってたな」
男「ああ。それと双璧を成す人気お土産が、ニッカのコンク・ウィスキーだ」
友「コンク・ウィスキー?」
男「南極観測隊用に納入される濃縮ウィスキーのことだ。通常のウィスキーのアルコール度数が40%程度なのに比べ、コンク・ウィスキーでは60%のアルコール度数を誇る」
友「アカン火ぃ吹いてまう」
男「しかも、南極観測隊用にしか製造されないから、国内で製造されているにも関わらず一般では入手不可能という代物だ」
友「ニッカの工場とか行ってもないの?」
男「少なくとも、余市の蒸留所には売ってなかった」 ※実話です
友「へぇー・・・ていうか、それだけ度数が高ければ、酒税とか高そう」
男「南極には法律がないので免税です」
友「やったぜ」(ガッツポ)
-番外編 南極観測隊の食事 おわり-
つぎ陸自いきます
カンメシとパック飯の話はやる 絶対やる
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>>183
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-陸上自衛隊編-
友「おお!機動戦闘車だ!!ストライカーみたいでカッコイイー!!」
自衛官(ニッコリ)
男「おお!野外炊具1号だ!!メシの吹きこぼれ跡カッコイイー!!」
友「えぇ・・・」
自衛官「えぇ・・・」
友「お前これ・・・あぁ、これが前言ってた陸自のメシ炊き車?」
男「そうそう。和製グラーシュカノーネ」
友「グラーシュカノーネ?」
男「大戦中のナチス・ドイツが装備してた類似のフィールドキッチンだよ。直訳するとシチュー砲」
友「シチュー砲・・・火傷しそう」(小並感)
男「これ、2004年の中越地震でビッグスワンの駐車場に全国あkら100台くらい集まっててさ。すごかったぞー」 ※新潟スタジアム
友「えーとなになに・・・『野外炊具1号、一度に200名分の調理が可能』・・・これが100台ってことは、2万人分のメシ炊きしてたのか」
男「これも炊飯釜と調理釜は一緒だから、米だけならオニギリ換算で800人弱くらいの量が炊けるそうだ」
友「800×100・・・8万人分のおにぎりか・・・ドミニカ国民全員におにぎり配れるじゃん」 ※ドミニカ人口約7万人
男「ドミニカ人におにぎり食べる習慣はないだろ」
友「あれ・・・でもさぁ、陸自には確か缶詰とレトルトパックのレーションがあるんだよな?」
男「あるね。戦闘糧食I型・II型」
友「基本外で演習するときとかって、それ食べるんじゃないの?」
男「まぁそういう時もあるだろうけど、陸自の場合調理も演習の一部だし普通に野外炊具も使うだろ」
友「へー」
男「そうでないと、さっきみたいに被災地支援に行ったとき困るじゃん」
友「確かになぁ・・・下手したら大学生が悪ふざけで作る飯以下のものが出来そう」
男「それに、旧陸軍の時も言ったけど、基本陸自も調理技術は個人が修得すべきスキルの一つとなってるし」
友「まー、手が空いてる人がメシ炊きしたほうが効率がいいもんな」
男「それもあるけど、部隊から孤立したときに最低限の調理スキルがないと困るからってのもあるらしいぞ」
友「へー」
男「あと最近じゃ、予算削減のあおりを受けて駐屯地の食堂でも調理は外注だったりするから、野外炊具を使って各隊員の調理演習をしてるとこもあるみたいだな」
友「ふーん・・・でもさぁ、やっぱりある程度調理に精通した人がいないと効率悪いだろ」
男「ああ。だから、基本的には中隊単位で選出された臨時勤務の隊員の他に、業務隊から常勤の隊員が来て指示だしてるそうだが」
友「なるほど」
男「そういう事情もあって、現在でも演習では野外炊具が活躍してるそうだ・・・それに、カンメシやパックメシにしたって、湯煎しなけりゃ食えないしな」
友「あぁ・・・中身米だもんな。冷えてるとカッチカチになってそう」
男「実際、サトウのごはん温めてないのと同じような感じだよ。ロウソクだロウソク」
友「消化にも悪そう」
男「実際この辺がパンに比べて米の不便なところだよな・・・そのせいか、北海道あたりじゃ冬季訓練中はカンパンばっかになるみたいだけど」
友「うへ・・・ていうか、個人じゃ温められないだろ」
男「まぁなぁ・・・パックメシは改良型で加熱用のパックが付くようになったみたいだけど」
友「加熱用のパック?」
男「うん。当初はでっかいホッカイロだったが、最近じゃ石灰を使った加水型の者も納入されているようだ」
友「ゴローちゃんが新幹線の中でやってたジェット?」
男「そうそれ」
友「ま、確かにレトルトなら少しは温めやすいのかな」
男「それにしたって2合近くある飯を中までα化させるのは結構キツイと思うぞぉ」
友「でも缶詰よりはマシだろ。ていうか、早々にカンメシもパックメシに切り替えられるんじゃない?」
男「いや、それは無いだろう。何だかんだで保存性は缶詰のほうが高いしな」
友「それはそうだけどさぁ」
男「実際、パックメシは基本陸自だけだが、カンメシは空自と海自にも採用されてるし」
友「いつ食うんだ?」
男「そりゃ・・・食堂が使えない非常時とか、野外演習の時だろう。空自や海自にしたって、基地警備隊や陸警隊は普通に陸戦想定してるしな」
友「はぇ~」
男「まぁそれでも、どうしても期限前に使い切れなかったカンメシは余っちゃうらしいけど」
友「余ったカンメシはどうなるんだ?」
男「基本、品質が保証できないから廃棄されるそうだ」
友「もったいねぇなぁ」
男「まあ、基地によっちゃ食堂なんかに置いてあって自由に持って行ってもいいようになってるらしいが」
友「へー」
男「俺も前に高校の頃の友達からカンメシいくつか貰ったぞ」
友「本当かよ?どうだった?」
男「まぁ・・・缶詰だなぁ・・・って」
友「そらそうよ」
男「カンメシはあれ箸使うと折れるから缶の蓋上下から開けて押し出したほうが食いやすかった」
友「俺の人生じゃ多分使うことの無いノウハウだけど一応覚えておくわ」
男「あとはそうだな・・・カンメシはなんていうかこう、全体的に味が濃い」
友「まぁ、労働者向けの食事ですし・・・」
男「缶特有の匂いを味付けで誤魔化してるのと、最悪おかずが無くても主食缶だけでも食べられるようになってるらしい」
友「はぁ・・・」
男「そんなわけで、最初は主食缶は炊き込みご飯系ばっかだったらしいんだが、さすがに連食すると飽きるってんで白米もメニューに加えられたらしい」
友「まぁ具を変えたとこで結局炊き込みご飯なんてベースの味は一緒だもんなぁ・・・」
男「パックメシには炒飯やドライカレーなんかがあるみたいだけど、カンメシって基本とり飯しいたけ飯五目飯だったもんなぁ・・・あと、赤飯」
友「あぁ赤飯・・・なんか災害派遣で隊員が食っちゃって不謹慎だってイチャモンつけられた話きいたことある」
男「実際救助任務にあたるなら救助される人より元気じゃないと意味ないのになぁ・・・そんな赤飯だが、2011年を以って陸自と空自の分は調達が終了したらしい」
友「なんとまぁ」
男「あと、何故かカンメシの中で人気の高かったたくあん缶作ってた会社も、こないだ倒産してたな」
友「防衛産業ってもうからないのかなぁ・・・」
男「まあそれだけが理由じゃないだろうけど・・・実際隊員の食事の嗜好も時代によって変わってるだろうし、仕方ないのかもしれんな」
友「でもいいなぁ・・・俺も食って見たいよ。自衛隊に入るか、災害に見舞われるかしないと食えないわけだろ?」
男「あぁ、なんならそこの広報センターの売店でも同じようなの売ってるぞ」
友「マジかよ。買って帰ろ」
友「・・・ところでこの野外炊具?なんかいろいろなギミックがついてるね」
男「ほら、この野菜調理器とか凄いぞ。輪切りやぶつ切りは愚か乱切りやおろし、スライスまでできる」
友「すげぇ、マジックブレットみたい」
男「冬場は凍ってる野菜を切るのも一苦労だしな。一家に一台野外炊具」
友「自宅で200人分もご飯つくらないから」
男「石原軍団も炊き出しのために同じようなもの持ってるみたいだが」 ※実話です
友「で、これわざわざ1号ってついてるってことは、2号以降もあるわけ?」
男「んー、野外炊具2号は構成は大体一緒だけど、牽引車量じゃなくてバラで展開するようになってるそうだ。セットあたりの釜の数も半分だし」
友「ほー」
男「あとは、点火方法と細部の装備を変更した1号(改)」
友「自衛隊の(改)って表現ほんとすこ。F-4EJ改とか」
男「野外炊具の火元には灯油バーナーを使ってるんだが、灯油は引火点が高いので在来型では添加の時はガソリンとの混合気を作って点火している」
友「なんか難しそう」
男「実際手順を守らないと火が付かなかったり火力が安定しないそうだ・・・で、それを解決するために(改)では電気着火式となった」
友「普通のガスコンロみたいな?」
男「まぁ操作的には・・・ただ(改)の場合、発電機が故障すると何も調理ができなくなるから、旧型の方がいいって意見もあるみたいだな」
友「うーん、それは致命的ですなぁ」
男「あとは電力供給の問題で炊飯釜6基フルで使えなかったり、汚れても丸洗いできなかったり、雨天使用とかもキツイらしい」
友「これもう(欠陥品かも)わかんねぇな」
男「でも、蛇口がついてそれまでホースとかバケツで水入れてたのが直接鍋に入れられるようになったり、ステップをつけて調理しやすくしたりと地味なところは改善されてるらしいが」
友「でもなんか兵器として一番アカンところをトレードオフしちゃってる気がするぞぉ・・・」
自衛官(コイツらなんで野外炊具でそこまで語り合えるの・・・やべぇよ、やべぇよ・・・)ガクガク
友「そういや、基地の中の食事ってどんな感じなん?」
男「んー、駐屯地によるだろうけど至って普通の食事らしい」
友「社員食堂みたいな?」
男「一応、摂取カロリーとかは糧食班長が決めて後は外注の栄養士とかが献立決めたりするみたいだけど・・・三食全部摂取するわけだし、そんじょそこらの食堂よりは栄養バランスはちゃんとしてそうだが」
友「ほーん」
男「基本、昼食はAランチBランチから選ぶみたいな感じになってるところが多いらしい」
友「本当学食みたいだな」
男「あと、月に一回はお誕生給食みたいなのもあるみたいだ」
友「お誕生給食wwww小学生かwwww」
男「一応、めでたい日には赤飯とかケーキがついたり、おかずにステーキが出たりもすることがあるみたいだな」
友「はぇー・・・すっごい・・・」
男「・・・ただそれでも、調理要員に選出される隊員は使えない奴が多いって昔から言われてるな」
友「そうなの?」
友「究極言っちゃえば、メシ炊きなんて機械的作業だし、特別なスキルはいらないからな・・・中隊でどうやっても使えない隊員が回されるってのは、どうもそこから来てるらしい」
友「まぁ軍隊だしなぁ・・・仕方ないのかね」
男「陸軍の頃から『輜重輸卒が兵隊ならば 蝶々トンボも鳥のうち 焼いた魚が泳ぎだし 絵に描くダルマにゃ手足出て 電信柱に花が咲く』なんていう、後方支援部隊を侮蔑するような歌もあったしな」 ※輜重兵=陸自の輸送科・需品科にあたる
友「でも誰かがやんなきゃいけないことだしなぁ」
男「実際、朝食準備のために朝早くから調理任務に就くのは大変な苦労だしな。昔から兵隊は胃袋で戦うと言われてるし」
友「いつの時代も裏方がもてはやされることが無いって、はっきり分かんだね」
男「まあ、今の自衛隊自体も国民にとっては裏方でしかないのもまた事実よ」
友「そりゃ、自衛隊が表方でバリバリやってるって、それもう国難真っ最中のことだしな」
男「それでも、最近じゃ国際支援活動なんかで空自なんかじゃ輸送航空隊に対する評価が上がってはいるらしいが」
友「どうしても陸自は国内活動中心になるからね・・・そういや、海外派遣された陸自のメシってどうなってんの?」
男「そりゃ、国内から野外炊具とか持ってって自炊してますよ」
友「へぇー」
男「あとは、現地に調理施設がある場合はそこ使ったり。いずれにせよ、日本にいるときと遜色ない給食が提供されている」
友「まぁー、自分から支援に出かけていっておんぶにだっこって訳にもいかないしなぁ」
男「それでも、現地の環境が出来るまではそれこそカンメシやパックメシ、民生品のレトルトやカップ麺なんかになるみたいだけど」
友「ふむ」
男「かつては衣食住の為の手配が間に合わず他国軍と共同で宿営地を使用、というか間借りすることもあったみたいだ」
友「ほほう」
男「1993年から2年間に渡って続いたONUMOZ(モザンビーク派遣)では、ポルトガル軍に食事を頼ることになったらしい」
友「ポルトガル料理か・・・ピンと来るものはないな」
男「やはり、南ヨーロッパによく見られるトマトやタマネギを多用した料理が多いらしい・・・ただ最初のうちはよくても、連食するとなると隊員たちも閉口ものだったようだが」
友「やっぱり朝はご飯とみそ汁がいいよなぁ・・・」
男「そう思っても、折角食事の便宜を払ってもらっているのに、そんなことしたらカドが立つしな」
友「ていうか、なんでそんなことを?その頃は野外炊具とかなかったのか?」
男「いやあったよ。ただ当時は、たかだか50名ちょいの人材派遣のためにそういった大規模な装備を国外に持ち込めるような情勢じゃなかったんだよ」
友「あぁー・・・現地の治安とか?」
男「それよりはむしろ日本国内の法整備の問題だろう。実際、自衛隊が大規模にPKO参加できるようになったのって、2003年のイラク復興特別措置法からだしな」
友「んー、たしかに9.11以降、自衛隊が海外で活躍する様子とかもちょくちょくニュースでやるようになったな」
男「実際は91年の湾岸戦争からずーっと海外行ってるんだけどな・・・考え方によっちゃ、警備隊の頃から掃海のために朝鮮戦争に派遣されてたわけだし」
友「少しは法整備が進んできたってことなのかねぇ」
男「それにしたってテロ特措法みたいな現行の法律を無理くり解釈した時限立法で誤魔化してるってだけだと思うけどな・・・いずれにせよ、以前にも増して自衛隊の国際貢献が求められる時勢になってるってこった」
友「ご苦労さんだなぁ」
男「Show the flagの活動をさせるなら、せめてコソコソせずに堂々と送り出してほしいもんだけどな。一応彼らも日本代表なんだから」
友「まぁ、復興にきた連中が自国に後ろめたさを感じてるってのは、復興される側も気持ちいいもんじゃないだろうしなぁ」
男「ま、そんなわけで昔よりは海外派遣先でもまともな衣食住が提供されるようになってるようだ」
友「なるほどね。でも、食材とかはどうするんだ?全部が全部日本から持ってく訳にはいかないだろ」
男「当然、基本は現地調達だろうな。とくにイスラム圏じゃ、みりんを初めとした調味料としての酒や豚肉もご法度だし。下手にそれらを持ち込むと現地で問題にもなりかねんしな」
友「みりんもか・・・厳しいなぁ・・・」
男「で、そういった食糧の調達や輸送は日本の商社が契約して行ってるみたいだけど」
友「え。自衛隊が自分でやるんじゃないの?」
男「メインの任務は復興だし、最低限の規模で展開してるからそこは外注のほうが合理的なのかもな」
友「でも日本の商社って・・・危ないだろう。その辺のトラックの運ちゃんや仕入のおっちゃんなんかが、護衛もなしにイラクの街中走ってんのか?」
男「まさか。間に商社が噛んでるだけで、実際に働いてるのはだいたい現地の人たちだってよ」
友「あぁなるほど」
男「但し、護衛は必要だから商社側でPMC(民間軍事会社)を雇ってたりするみたいだけど」
友「PMCって言や聞こえはいいけど、実質は傭兵だからなぁ。自衛隊の飯運ぶために傭兵雇ってるとかこれもうわかんねぇな」
男「まぁなぁ・・・ただ、国内からも空自や海自が物資を運んでるけどな」
友「まぁ魚介類やら味噌なんて、向こうにはないだろうしね」
男「結構民生品も納入されてるようだ。パックのおでんとか、冷凍寿司とか」
友「やっぱり寿司や日本人の心やでぇ」
男「それでも現地じゃ来賓用を中心に振る舞われたみたいだけど」
友「あっちの人、生魚食わないだろう・・・」
男「ああ。だから部族長などを呼んだパーティでも、どんどん乾燥していく寿司を横目に隊員たちはパックメシを食ってたらしい」
友「悲しいなぁ・・・」
http://i.imgur.com/EcUg7nn.jpg
友「装輪装甲車って、思ったよりデカイんだなぁ」
男「そりゃー中に10人乗れるわけだし・・・北海道だとたまに高速走ってるよこれ」
友「マジかよ・・・73式トラックはこの辺でもたまに見るけど、これが高速走ってんの・・・」
男「ところでこの車、どうやって高速料金払ってるか知ってる?」
友「え、自衛隊車両も高速料金払うの?」
男「そりゃまぁ、平時じゃ別に緊急車両じゃないし。まぁチェックだけして後で防衛省が一括納入だろうけど」
友「普通にETCとかじゃないん?」
男「ああ、新しめのトラックなんかは普通にETC乗ってるみたい」
友「コイツはついてないのか・・・うーん、じゃあ普通に窓から・・・って窓がねぇ」
男「これな、普通に上面のハッチから隊員が這い出てルーフの上から料金所のおっちゃんにカードかなんか見せてたぞ」
友「ウッソ」
男「マジで。目の前でそれやられて、あまりに予想外過ぎて思わず笑ってしまった」 ※実話です
友「草を禁じ得ない」
男「あれ首都圏でやったら渋滞すんだろうなぁ」
友「ETC装備96式装輪装甲車(改)の登場が待たれる」
-陸上自衛隊編 おわり-
http://10.studio-web.net/~phototec/
戦闘糧食サイトの雄
次、米軍いきます
-米軍のレーション史編-
『これに対し、米軍は暫定的な空爆を開始すると共に・・・』
友「こいついつも戦争してんな」
男「まぁ国の成り立ちからしてバリバリの戦闘国家だし、多少はね?」
友「独立戦争ね?」
男「そうそう。おまけにそれが終わったら今度は南北戦争。息もつかせず次は両次世界大戦。さらにはその後も朝鮮・ベトナム・中東と、その間におきた紛争まで入れたら戦争してない期間なんてないんじゃないか」
友「もう戦争してないと国がもたないのかね」
男「まぁ確かに軍産複合体主導の戦争経済は米国を構成する上での重要なファクターだとは思うが」
友「MMRじゃ最終的によく悪者にされてたよね。軍産複合体」
男「キバヤシとか超なつかC」
友「ΩΩ Ωナ、ナンダッテー!!」
男「今でこそ人種の坩堝って言われてるけど、独立戦争当時は基本的に入植したイギリス人と一部の黒人奴隷だけだったし、未開拓地も多くて食糧には苦労したようだな」
友「今じゃ全世界どこにいてもコーラやアイス食い放題って聞くのにね」
男「それもこれも、戦いで勝ち続けて得た結果ってことだろ」
友「まぁでも、よくそんな状態で戦争起こして勝てたもんだよ。言ってみれば、今のイスラム過激派がアラブ独立させるようなもんだろ?」
男「うーん・・・まぁ背景は違うにせよ、当時はそもそも世界的に兵站能力が貧弱だったし、今みたいな絶対的な戦力差ってのも生まれにくい背景もあるだろうな」
友「当時の兵隊は何食ってたんだ?」
男「一応、1755年にアメリカに陸軍が創設されてからというもの、パンや肉、調味料などについて配給品目が細かく決められていたらしい」
友「へー」
男「待って・・・資料によると、創設当時の一人あたりの支給内容は以下の通りのようだ」
パン 1lb(453g)
牛または豚肉 1/2lb(226g)
牛乳 1pt(568cc)
ジンまたはビール 1qt(965cc)
エンドウ豆 1/4pt(142ml)
塩漬魚 1lb、但し一週間に一回
バター 6oz(28g)、但し一週間に1回
酢 1pt、但し一週間に一回
友「クォートとかパイントとかこれもうわかんねぇな」
男「アメリカは昔からヤード・ポンド法だからね、仕方ないね」
男「ただこれも、基地の場所や季節、さらには補給状況によってかなりバラつきがあったらしい」
友「まぁあの広いアメリカ大陸に、一律同じ量を支給するのは難しいよな。でも、思ったよりちゃんとしてるんだなぁ」
男「その後すぐに起きた独立戦争では、さらに米や小麦粉、モラセスなどに加え石鹸や蝋燭などの生活用品も加わった様だ」
友「モラセス?」
男「サトウキビを精製したときに出る廃糖蜜のことだよ。当時は砂糖が貴重品だったから、安価なモラセスが兵たちの調味料として普及していたようだ。同じ理由で、ラム酒なんかも配給品目に上がることがあったようだな」
友「なるほど・・・ていうか、一日あたりで1リットル近くも酒が支給されるんだな」
男「当時の酒は酔うためじゃなくてガチで飲料用だったからな。今みたいに浄水されてる水がないし、洗浄じゃ煮沸するのも難しいから防腐の意味もかねてあえて酒を配給していたようだ」
友「確かにバック・トゥ・ザ・フューチャー3でマーティがシェイマスの家で注がれた水とかクッソ汚かったもんなぁ」
男「例えがピンポイントすぎる」
友「いやお前も大概だろう」
男「ただまぁ、前線ではどうしても配給が滞って、兵士たちは毎日ファイヤーケーキという小麦粉を練って焚き火で焼いただけの粗末な食事で糊口をしのぐ日々が続いたそうだ」
友「まずそう」
男「実際、まともな料理って言っても配給の豆と肉を塩をモラセスだけで味付けしたベイクド・ビーンズくらいだったらしいけどな」
友「今そんなもの出したら米軍兵士はブチ切れるだろうな」
男「でも、これを元に発展したポークビーンズなんかは今でもアメリカの代表的な家庭料理だけどな」
友「当時は食事自体も質素だったのかね・・・まぁイギリスの植民地だもんなぁ、納得」
男「独立戦争が終わると、配給の質は急激に悪化していった。だが、その後に起きた南北戦争では再び兵士たちへの配給を充実させるよう努力が払われている」
友「えーと、あれってなんで起きたんだっけ」
男「基本的には奴隷解放を謳う北部軍(アメリカ合衆国)と、奴隷経済で潤っていた南部軍(アメリカ連合国)の利害の不一致が原因とされることが多いようだ」
友「北部軍による奴隷解放戦争ってこと?」
男「いやそれもまた少し違うな・・・実際、北部軍が勝利したにもかかわらず、その後長い間に渡って黒人に対する差別は容認されてたわけだし」
友「アメリカも一枚岩じゃなかったんだなぁ」
男「今でもアメリカ南部では『あれは北部による侵略戦争だった』と主張する人もいるくらいだしな。結局のところ、戦争なんてのは自分の主張を認めさせる外交の一手段でしかないってことだろ」
友「力こそパワーってはっきり分かんだね」
男「南北戦争時の兵士たちの食料については、基本的に独立戦争の頃からほぼ変わりは無かったが、いくらかの発展がみられる。例えば、悪名高いハードタックなんかがそれにあたる」
友「ハードタック?」
男「小麦粉に塩を水を入れて練り上げ、クラッカー状に焼き上げたものだ。独立戦争の際、兵士たちは個々で調理をする必要があり非効率だったために、輸送しやすく腐敗し辛い食品として考えられたそうだ」
友「ふーん・・・カンパンみたいなもんか」
男「あれよりはもっと劣悪なものだったらしいがな。長期保存されたハードタックはとにかく固く、歯が欠ける事すらあったらしい。さらに当時は保存環境も良くない場合が多く、保管中にコクゾウムシなどの虫が大量に沸いたらしい」
友「オゲー」
男「そのため、今ではハードタックという言葉には粗食といった意味も含まれているそうだ」
友「そんなの食わされたらたまったもんじゃないぞ」
男「実際、配給されたハードタックは割って中の虫を落としてから、水やコーヒー、あるいはスラムグリオンと呼ばれるごった煮シチューでふやかしたり、同じく配給された肉の脂でフライなどにして食べられていたらしい。まぁ結局、調理しないと食えないわけだ」
友「なーんか結局あんまり効率よくなってねぇなぁ」
男「戦後余剰となったハードタックは、その後10年以上に渡り兵士たちに配給されつづけたという。このことから、陸軍ではレーションの消費を促すために兵士たちの嗜好を考慮する必要性を認識することになる」
友「まぁいくら軍用糧食とはいえ味は重要だよな」
男「ちなみに南北戦争では、南北それぞれに食事の内容も異なったらしい」
友「へぇ。例えば?」
男「ああ。南部ではそれまで奴隷用の食事とされていたフライドチキンやピーナッツなどが、糧食として支給された」
友「フライドチキンって奴隷用の食事だったのかよ!」ウッソ
男「元々白人たちは胸肉やササミなんかの骨のない部位を好んで食べ、モモや手羽先についてははブラックミートと呼ばれ手を付けることは無かった」ソウダヨ
友「モモ肉が一番美味いだろいい加減にしろ!!」
男「そこで奴隷たちは余ったそれらの肉に、質の悪い小麦粉や古くなったクラッカーを砕いて衣にしたものを揚げて食べていたらしい」
友「はーそれがフライドチキンの元祖か・・・ていうかクラッカー砕いて衣にするんだ。カリカリしててうまそうだな」
男「あとは今だと普通に食べてるナッツ類、ピーカンやピーナッツも当初は家畜や奴隷用だったが、栄養価が高く保存・携帯性が良いため軍用糧食にはうってつけだったので採用されたというわけだ」
友「あんなの食ってくださいと言わんばかりの形してんのになぁ・・・もったいねぇなぁ」
男「それから、北部南部両方で食されたものにコーンブレッドがあるが、これも北部は甘めの味付けなのに対して南部ではややしょっぱい味付けになっていたらしい」
友「南部のほうが好きかも」
男「その後のインディアン戦争では、ジャーキーやペミカン、パイノルなどと言ったインディアンの伝統的な保存食も取りいれられるようになる」
友「ほんと戦争ばっかしてんなこの国」
男「そしてその後のスペイン戦争を経て、アメリカは両次世界大戦に参戦することとなる。この頃から、ぼちぼち缶詰やコンデンスミルクなど保存に適した食品が登場してくるようになる」
友「コンデンスミルク?」
男「欧米人にとって、牛乳はパンと同じくらい食事に欠かせないものだからな。日本でいうところの、ごはんとみそ汁みたいな」
友「はー」
男「そして1901年、米陸軍はレーションを目的別に5種類に分類する」
男「1つ目が、基地などで提供される『ギャリソンレーション』」
男「2つ目が、戦場で提供される『フィールドレーション』」
男「3つ目が、行軍中などに提供される『トラベルレーション』」
男「4つ目が輸送部隊などの移動中に提供される『トランスポート』」
男「そして最後が、作戦行動中や遭難時のカロリー補給を想定した『エマージェンシーレーション』だ」
友「なんでそこまで分類する必要があるんですかね・・・」
男「こうしておくことにより、いざ戦争が始まった場合も使用目的に合致した糧食を効率よく管理・配給することができたからだ」
友「なるほど」
男「さらに第一次世界大戦がはじまると、前線にいる兵士に確実に糧食を届けられるよう『リザーブレーション』、『トレンチレーション』などと言った種類の特殊レーションも追加されていく」
友「トレンチレーション?トレンチって、トレンチコートのトレンチ?」
男「そうだ。元々トレンチは塹壕っていう意味だ。どちらも塹壕戦での使用を想定していた装備のため、こう呼ばれる」
友「はぁー」
男「特に第一次世界大戦では、機関銃の発明により兵士たちは身を隠す必要性が大幅に増し、塹壕に潜んだまま睨み合いを続ける塹壕戦という状況が各地で発生することになる」
友「それはしんどいな」
男「実際、土を掘って作った溝に何日も貼りついてなきゃいけないわけだしな。そうした劣悪な環境下では、伝染病や塹壕足などと言った塹壕戦特有の病気も蔓延し始めた」
友「塹壕足?」
男「塹壕の中は常に水や泥でぬかるんでる上に不衛生になりがちだからな。重篤な水虫や感染症、凍傷で末端の血行が悪くなり、酷い場合には手足を切断する必要があったらしい」
友「ヒエッ・・・」
男「当然、そうした時に総延長が数十kmにも及ぶ塹壕の隅々に糧食を配給するのは並大抵のことではない。そこで考案されたのが、先のトレンチレーションやリザーブレーションというわけだ」
友「なるほど」
男「これらのレーションには缶詰や個別包装品など日持ちがして携帯がしやすい物が詰められた。現在に至る近代レーションの直接的な始祖というわけだ」
友「それらの中には何が入ってたんだ?」
男「一般的に、個人に配布されるリザーブレーションにはコンビーフやポークビーンズの缶詰のほか、ハードタック、砂糖や塩のほか、煙草やコーヒーなどが一通り詰められていたらしい」
友「お・・・確かに今のレーションと比べてもそれほど遜色は無い感じ」
男「トレンチレーションは小隊ごとの配給を目的に、25人分が1缶にまとめられている。中身はリザーブレーションとほとんどかわらないが、主食にはローストビーフやサーモン・サーディン缶など、リザーブレーションに比べて多少上等なものが入っていたらしい」
友「それでも連食はきつそうだなぁ」
男「まぁな。周りには水や泥はおろか排泄物や仲間の死体まで積み上げられてる有様だし。それに、カロリーは摂取できても長期にわたってこれらのレーションを摂取した場合、栄養が偏ってビタミン不足による壊血病なども発生したらしい」
友「本当、戦争は地獄だぜ!フゥーハハハァー!!」
男「最後のエマージェンシーレーションは、もう孤立してどうにもならん時用の携帯食だ。中身は乾燥肉の粉末と小麦粉を焼き固めたものと、チョコレートバーのみ。小型軽量ではあるが、連食を想定したものではなかった」
友「その名の通り非常食ってわけか」
男「そしてその後二次大戦までの間に、米軍はこれらのレーションをさらには発達させていく。それまでのレーションの分類も、それぞれアルファベットで分類されるようになった」
男「ギャリソンレーションはA、フィールドレーションはB。リザーブレーションがCでエマージェンシーレーションがDと言った具合にな」
友「中身は一時大戦の頃から何も変わってないのか?」
男「基本的な構成は変わらないが、BレーションやCレーションについてはハードタックがビスケットになったり、主食缶にビーフシチューや肉と野菜のシチューなどメニューが追加されたようだ」
友「へぇー」
男「さらに、Dレーションではエマージェンシーレーションに含まれていた乾燥肉の粉末と小麦粉が無くなり、チョコレートバーだけになった」
友「チョコレートだけか・・・なんかデザートとかに食っちまいそうだな」
男「開発者側もそれを危惧して、わざわざ『ジャガイモよりマシな程度の味にすること』という条件をつけている」
友「自分から不味くしていくのか・・・」(困惑)
男「これらに加え二次大戦の米軍レーションで外せないのがKレーションだ」
友「やべぇDから一気にKまでワープした」
男「Kレーションは米陸軍が航空隊や空挺部隊、戦車兵などの為に開発された非常用の携帯食だ。開発者のアンセル・キーズ(Ancel Keys)博士の名前を取ってKレーションと呼ばれている」
友「緊急用・・・Dレーションとは何か違うのか?」
男「Dレーションは携行性が非常に高く、生存に最低限必要なカロリーを摂取することを目的としている。本当の意味での緊急食だな」
友「うん」
男「対してKレーションは、高い携行性を持ちながらも戦闘活動に必要な分のカロリーが摂取できるようになっている。そのため、戦車兵や空挺兵など、短期間だけ補給が受けられないような状況での使用を想定している」
友「ということは、チョコ以外にもいろいろ入ってるのか」
男「ああ。空挺服のポケットに収まる15cm×6cm×2.5cmサイズの紙箱の中に、ビスケット缶から各種肉類缶詰、コーヒーや砂糖にチューインガム、煙草まで入ってる」
友「おぉ、思ったより豪華だな」
男「それでも、短期間の使用を想定したレーションだけに連食するとかなり食傷気味になったらしい。実際コンパクトで輸送がしやすかったことから、前線ではDレーションやKレーションばかりの日々が続くこともあったらしい」
友「本当、戦争は地獄だぜ!フゥーハハハァー!!」
男「そんな状況が続いたせいで、兵士たちはこれらのレーションを『ヒトラーの秘密兵器』などと揶揄していたらしい。一説では、GIたちが中のタバコだけ抜き取って後は捨ててたって話もあるくらいだ」
友「もったいないお化けが出るぞぉ・・・」
男「これも圧倒的な国力を誇るアメリカだからこそできることだがな。逆に捕虜になったり補給の途絶した日本兵がこれらをみて『なんて豪華なんだぁ・・・』と息を飲むほどだったという」
友「悲しいなぁ・・・」
男「一応当時の日本にも圧搾口糧なんていうカロリーバーみたいなのはあったんだけど・・・如何せん、補給線が断たれてちゃなあ」
友「ところで、自衛隊は今でも缶詰を使ってるけど、米軍もそうなの?」
男「いや、米軍ではベトナム戦争を最後にCレーションは廃止され、現在では個人携帯用の糧食はMREを始めとしたパック包装の糧食が主流になっている」
友「MRE・・・」
男「Meal, Ready-to-Eat(調理済み糧食)の略だ。だが、当初は各国レーションの中でも特に不味いと有名だったため、これらを捩った様々な蔑称がついている」
友「蔑称?」
男「Mr.E (ミステリー)、Meals, Rarely Edible (とても食べられたものじゃない食物)、Meals Rejected by the Enemy (敵から拒否された食べ物)、Morsels, Regurgitated, Eviscerated (吐き戻され、骨抜きにされた一口)、Mentally Retarded Edibles (精神薄弱料理)、Meal, Ready to Excrete (すぐ排泄できる食べ物)、Meals Rejected by Everyone (誰もが拒否した食べ物)、Materials Resembling Edibles (食べ物に似た何か)」
友「草を禁じ得ない」
男「とはいえ、最近では味も改善され以前ほど酷いものではなくなったらしい。それに、国内のミリタリーショップなんかでも、放出品が比較的手に入りやすい」
友「へー。その気になったら手に入るのか」
男「本当は思いっきりパッケージに『合衆国政府のものである。売り物ではない』と書いてあるんだけど」
友「それアカンやつや」
男「実際どうしても不人気メニューは余りが出るからな。戦場で余ったそれを、休暇で在日米軍基地に来た米兵が小遣い稼ぎに売りさばいてる、なーんて言われてるけど」
友「それアカンやつや」
男「ただ、個人携帯用糧食はともかくとして、BレーションにあたるUGRなんかは、今でも業務用のデカい缶詰使ってるみたいだ」 ※Unitized Group Ration
友「確かに個別包装するんでなければ缶のほうが安く済むだろうしな」
男「だからこそ、米軍では自衛隊と違って年ごとに基本メニューが決まっている。こうすることにより、献立の作成や食料手配の手間を減らし、基地ごとに味や食事の内容に差がでない。調理方法も決まってるから、調理兵の養成も簡単というわけだ」
友「確かにアメリカらしい合理的なやり方だなぁ・・・」
男「まあ3食すべて基地の飯食わなきゃいけないわけでもないけどな。実際、横田基地の中にはファストフードの店も入ってるし、PXなんかでも普通の食品類は手に入るし」
友「PX?」
男「売店(Post eXchange)のことだよ。のらくろにも酒保って出てきただろ」
友「ああ酒保かぁ」
男「今は防大や陸自でもPXって読んでる。海自だけ、艦内の販売所を酒保と呼んでるが」
友「伝統墨守唯我独尊」
男「昔と違って今は航海中酒飲んじゃいけないらしいけどな」
男「ま、そんなわけで、米軍のレーションは今も脈々と進化を続けているという」
友「ほー」
男「MREの他にも、偵察部隊や寒冷地向けにフリーズドライやナッツ類を多用したLRP、RCWといったレーションや、機動部隊用に展開後72時間以内のエネルギー補給を視野に入れたFSRなども開発されている。系統的には、これらはKレーションの後継ってことになるな」
友「兵隊は胃袋で戦うってのは、昔から変わらないんだなぁ」
-米軍のレーション史編 おわり-
※LRP(Long Range Patorol)、RCW(Ration Cold Weather)、FSR(First Strike Ration)
乙!
そこまで不味い不味い言われると逆に食べたくなるな……
>>255
5年前に食ったのは味の埋め立て地って感じだったよ!
-番外編 海兵隊の男メシ-
男「まぁ、どんだけよくできたレーションでも結局は同じものが続くと飽きるわけだ」
友「確かになぁ」
男「実際MREなんかは、全部のパックをごちゃまぜにしてから附属のタバスコをありったけぶっかけて、パックから直に食うのがオツとされている」
友「それかあちゃんに怒られる食い方や」
男「軍隊では早メシ早グソは美徳だからな」
男「・・・はい、というわけで本日は米海兵隊に伝わる伝統的な料理を作ります」
友「えっ」
男「えーまず用意するのは冷凍ハンバーグ、中力粉、ビーフストック、ウスターソース、牛乳、塩コショウ、食パン・・・」
友「あっしまったこれ拒否権がない強制イベントのやつだ」
男「まずはハンバーグを焼きます」
友「ちなみにコレなんて料理なの?」
男「海兵隊では単に『SOS』とよばれています」
友「食べ物なのに救助求めちゃってる」
男「肉が焼けたら、そこにパン以外の材料を全部いれます」
友「すげえ!この時点で不味そうってこれもう一種の才能だぜ!!」オエ
男「そしたらとろみがつくまで弱火で煮込みます。つまり小麦粉を入れることによって、ホワイトソースみたいにしたいわけだな」
友「360度どっから見ても美味そうに見えない。こいつ、スキがないな」(白目)
男「まぁ栄養重視で見た目を考慮しないところもアメリカンらしいワイルドさだよな」
友「これかあちゃんに怒られる食い方や」
男「はい。とろみがついてきたらこれを、皿の上に乗せたトーストの上にぶちまけます」ドバァ
友「」
男「これで完成、と・・・」
友「これはひどい」
男「一応、ノースカロライナ州ジャクソンヴィルにあるレジューン基地のレシピを忠実に再現したんだが」
友「こっ、これが基地で出るのかよ!?」(驚愕)
男「さぁ冷めないうちにどうぞ」
友「えぇ・・・」
・・・
友「・・・」モグモグ
男「どうだ?」
友「なんというか、口に含んだ瞬間から味が完成されている」
男「甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の全てが混然一体となってまるで沼のようだ・・・」
友「時折歯に当たるハンバーグとトーストの食感がこれが食物であったことを思い出させる」
男「・・・まぁ、手っ取り早く調理~栄養摂取はできるよね」
友「食材に対する冒涜というか味覚の終着駅って気がするけど・・・ちなみに、このSOSってなんかの略なのか?」
男「Shit On teh Sand」
友「ヴォエ!!」
男「でもこれ、どっちかって言うとShitよりPukeだよね」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
-番外編 海兵隊の男メシ おわり-
食文化概論を受講していた身としては凄く面白いスレ
ただカレーのくだりに着いては色々と間違いが多いのが少し残念
イギリス由来なのは正しいけどレシピを見れば分かる通りあれはインドカレーをシチューにぶち込んだだけのカレーもどきで臭い消し、毒消し等は特に考慮されて居なかった
何故そうなったかと言うのはインドから帰って来たイギリスの者等がインドカレーを手土産にと献上したんだけど
あまりにも舌に合わないのでどうにか食べられるように出来ないかと王宮の料理長に言ったらならシチューにぶちこめば良いんじゃねってなった
まあ味は悪く無いのでこれでいいだろってなって以降日本にそのイギリス式カレーが伝播する。ちなみに九十年代まで日本ではインドカレーが知られていなかったりもする
>>273
やったぜ。こういう読んでくれたうえでの指摘ほんとすき
確かにインドからイギリスへのカレーの伝来については1772年にインドにいた英国人Warren Hastingsが母国に伝えたとされています。
現在広く日本に膾炙しているイギリス式カレーにはいくつか由来があると言われており、こと「兵食」という意味では、当時のイギリス海軍(および商船乗組員含めた船乗りたち)が、シチューの材料である牛乳が日持ちしない為代わりにカレー粉を入れたという説もあるようです。
つまり、ご指摘の通り「消毒や臭い消しを目的としてカレーを作ったわけではない」という認識で間違いないと思っています。
先の記述では、ウォーレンが母国にカレーを持ち帰ってから数十年後にはカレー粉が登場しており、なぜ当時の船乗りが牛乳の代わりにそれを選んだのか(なぜカレーでなければいけなかったのか)という点に着目し、兵食と結び付けてイメージしやすいよう表現しています。
一応簡単な裏付けは取っているつもりですが確実なソースではなかったりするので、矛盾点や誤った記述、誤解を招く点も多くとあると思いますが、その点についてはこのように適宜ご指摘・補足いただけると幸いです。
あとインドに日本のカレー伝わったのが90年代なのは知らなかった。こないだインド人が自国へのお土産にバーモンドカレー買ってた気がするんだけどあれ牛脂とか牛エキス大丈夫なんですかね・・・(ヒンドゥー的な意味で)
-大航海時代の海軍編-
友「そういやいつも分からなくなるんだけど、海兵隊ってあれ海軍なの?」
男「国によるね。アメリカの場合は陸海空軍や沿岸警備隊みたいに海兵隊っていう独立した軍隊だし、イギリスやスペインなんかは海軍所属だし」
友「へぇー」
男「でも、基本は海軍所属のところが多いよ。米海兵隊にしたって、独立戦争時にイギリスに同様の部隊があったから海兵隊を作ったって話だし」
友「なるほど」
男「そもそも昔の海軍は陸軍を輸送する概念がない、っていうか不可能だったしな」
友「?」
男「だってお前・・・大航海時代の船とか見てみろよこれ」
http://i.imgur.com/1mfFqaa.jpg
友「うん、ボトルシップとかでよくみる奴だ」
男「こんなの、海軍の乗組員乗せたら、もう(他の人員乗せる場所)ないじゃん」
友「たしかに」
男「だから、昔は基本海軍の人員は遠征先での陸戦も視野に入れてたんだよ。それに、大砲が出来る前は基本的に敵の船に接舷して白兵戦をする必要があったしな。それが後の海兵隊に繋がった、と」
友「なるほどねぇ・・・ていうか、こんな船で太平洋横断とか、食い物どうしてたんだろ・・・」
男「当時は今みたいに保存技術も発達してないし、栄養学も発達してなかったからな。それはもうドイヒーな有様だったようだ」
友「うーん、ぱっと思いつくのは干すか、塩に漬けるか・・・缶詰とかもないんだもんな」
男「まぁ大体そんな感じだよ。ゲームの大航海時代やったことある?」
友「あー、少しは」
男「アレに塩漬け肉ってのが出て来るだろ?基本、当時の海軍の貴重な食糧の一つとして塩漬け肉があった」
友「ほほぉ」
男「って言っても、半年以上に及ぶ航海で腐らせないようにするためには相当量の塩分に漬け込んだようだ。文献によると、当時の塩漬け肉は塩による脱水効果でまるで靴底のように固いものだったらしい」
友「これもう(どうやって食うのか)わかんねぇな」
男「基本的には塩抜き・・・と言っても、真水なんて超貴重で使えないから、網に入れて舷側からぶら下げて、海水の中に一日中浸しておくらしい」
友「塩水で塩抜きするのか・・・」(困惑)
男「まぁまだ海水の方が塩分濃度が低いからね・・・で、その肉をやはり海水で煮る。煮あがった肉は鍋から取り出すと同時に表面に白い塩の結晶が浮かび上がり、一口食べると強烈なのどの渇きを覚えたという」
友「腎臓壊れちゃ~↑う」
男「当然、当時は冷蔵庫なんかもないし、航海中は赤道付近の高温多湿の海域を通ることも多かったことから、積み込まれた食材は容赦なく腐った」
友「そらそうよ」
男「例の塩漬け肉も、カチカチになるまで塩に漬けているにも関わらずどうしてもウジが沸いてしまうので、船員たちは肉を取り出す前に樽の中の肉の上に生魚などを置いたらしい」
友「なにそれ・・・おまじない?」
男「こうすると、肉についたウジが新鮮な生魚のほうに集まってくるから、魚にウジが集まった時点でそれを捨てて、肉の方を取り出すのさ」
友「ヴォエ!!」
友「・・・もう素直に生魚のほう食えばいいじゃん」(いいじゃん)
男「そうはいっても船員全員に行きわたるだけの魚を確保するのは難しいからな。同様に、船に乗せたチーズには足が生えるとも言われていた」
友「どういうことなの・・・」
男「当然、港で積み込んだ生鮮食品にはほぼ漏れなくウジが沸く。特にチーズは表面全体にウジが蠢き、まるで棚の中でチーズが動いているように見えたことからこう言われていた」
友「ヴォエ!ヴォォエ!!」
男「主食については南北戦争の時に話したハードタックと同等のものが使用された・・・が、これもやはり保存中にコクゾウムシなどが大量に湧き、船員が口にするころには既にボロボロのスカスカになっていたという」
友「やめてくれよ・・・」(絶望)
男「船員たちはそれを食べる前にテーブルに叩き付けて中のコクゾウムシを落としたり、あるいは栄養補給がてらそのまま食べたりしたようだが、苦みもあってかなり難渋していたようだ」
友「長野県民だってそんな無茶しないだろう多分」
男「これら積み込まれた食材をぐだぐだになるまで煮込み、砂糖や酢などで味付けされたものが当時の船員の基本的な食事だったようだな」
友「腐りかけのRation・・・」
男「さらに貴重だったのはさっきも言った真水だ。当時は現在の水道水に使われているカルキのような消毒剤もなかったから、これもやはり樽の中で為す術もなく腐っていったという」
友「過酷過酷アンド過酷」
男「そもそも水源だって出港地の近くの川とかだしな。積み込んだ水は、最初はなんとか飲めるものの、出航後数日すると藻や苔が浮きドロドロの異臭を放つ状態になる。が、それらが沈殿すると一旦水の味は良くなるという」
友「やべぇよ・・・やべぇよ・・・」
男「だがそれも一時的なもので、その後は下水と呼んで差支えないレベルまで腐り果てていく水を、彼らは飲まざるを得なかったらしい」
友「おぉ、もう・・・」
男「当時の人でも腹を壊すようなシロモノだったから、せめてもの気休めとして殺菌性のあるアルコールを含んだビールやワインなどの酒類が配給されるようになったというわけだ」
友「これもうわかんねぇな」
男「まぁ、その酒にしたって納品業者のピンハネや資金不足で名ばかりの酷い品質のものだったようだ。当時船員たち間には『テムズ川の水の中で麦を洗ったり泳がせたりして引き揚げれば今まで飲んだこともないような美味いビールが飲める』なんて歌もあったそうだ」
友「ファーwwww」
友「ただし、当時は一度航海に出てしまえば半数以上が生きて故郷の土を踏むこともできないという状況がザラだったため、恐怖を紛らわすため船員に飲酒癖が付いてしまうのが常だったという」
友「悲しいなぁ」
男「で、当然こんなものしか摂取できずに問題となるのが最初にいった栄養不足だ。生鮮食品の不足による各種ビタミンの欠乏は、船員たちを深刻な病に陥れた」
友「脚気とか、壊血病とか?」
男「そう。特に船員たちに恐れられていたのが壊血病だ。壊血病に掛かると、最初は傷が治りにくくなり、徐々に歯茎などの粘膜が腐り始め歯が抜け落ち、そのうち皮膚の色も土気色になって死んでいくという原因不明の恐怖の病だったわけだ」
友「こわE」
男「船員たちはまともな治療も受けられず、腐った歯茎を自らの尿でゆすぐという酷い有様だったらしい」
友「ヴォォォォエ!!」
男「ちなみに、同時期の東洋の艦隊ではそれほど壊血病が問題になることはなかったらしい」
友「へ?何で?」
男「沿岸航海が多かったこともあると思うが、一説によると東洋では茶を日常的に摂取する習慣があったため航海中でもビタミンCが摂取できていたのではないかと言われている。日露戦争における旅順攻略戦でも見られるように、東洋では豆苗やもやしといったスプラウツ類を恒常的に食する習慣もあったしな」
友「なるほど」
男「前に言ったように脚気はビタミンB、壊血病はビタミンCの欠乏によって起きる。特にビタミンCは通常生野菜などにしか含まれないから、当時の船上でそれを得るのはほぼ不可能と言ってよかった」
友「でもさぁ・・・同じ哺乳類でも、ライオンとかは肉ばっか食っても壊血病にならないじゃん?」
男「通常哺乳類は自前でビタミンCを体内で合成できるからな・・・ビタミンCを出来ないのは一部のネズミと、人間を含めたの直鼻猿亜目だけだ」
友「えぇ・・・なんでまた」
男「そもそもそれらの動物は、かつて果物などを主食としていたことから、ビタミンCを合成する酵素が失われたと言われている」
友「もったいない・・・」
男「進化生物学においては、生存に不要な遺伝子を持つことは生物にとって無駄なコストを払う=生存競争に不利ということになるらしい。ただ、一部の鳥類についてはかつて何度かビタミンC合成機能を獲得したり喪失したことが分かってるようだが」
男「で、話がそれたが・・・当然、当時はそんなこと分かりっこないから、壊血病は未知の病として大変恐れられた。その恐怖から逃れる為、船員たちはますます酒に溺れ、当時海軍の士気や規律は大変に悪かったらしい」
友「そらそうよ」
男「そんな中、イギリス海軍のジェームズ・リンドという軍医は、船員の中でも船長などの高級船員たちはこの病の発症率が低いところに着目した」
友「どういうこと?」
男「いいもん食ってたってこと。ヒラの船員はさっき言った腐ったメシばっかくってたけど、船長クラスとなると食事用に生きた牛や鶏、それに僅かながらの野菜も積み込まれていたようだ」
友「なるほど。それでそういう人たちは航海中でもなんとか栄養補給ができたわけか」
男「ああ。そこでジェームズは実験的に船員の食事の質を上げて航海を実施してみたところ、壊血病罹患者が劇的に減ったという」
友「やったぜ」
男「これを受け1766年、南太平洋派遣の命を受けたイギリス海軍のジェームズ・クック船長は、自らの船に柑橘類やザワー・クラウトなどを積み込んだ」
友「クック船長、有能」
男「だが当時の船員たちは保守的で、クックが食べることを奨励したそれらの食品に当初は全く手を付けることがなかったという
友「なんでや!!」
男「まぁ当時はそんなもんだろう。占星術なんかの占もかなりの信憑性をもって広まってたし、壊血病の予防のためには酢で船上を洗うなんてまじない的な方法が常識とされていたわけだし」
友「えぇ・・・」(困惑)
男「そこでクック船長は、まずそう言った食物が自分たちだけが有難がって食べ、船員たちに与えないようにした。すると、船員たちは次第に自分たちにもそれを食わせるよう要求してきたという」
友「クック船長、有能。マジ有能」
男「その後3年に及んだ航海中、壊血病で死亡した船員はただの一人も出なかったという。これは18世紀当時としては奇跡といっていいレベルの出来事だった」
友「よかった・・・もう壊血病で死ぬ人はいなくなったんだね」
男「いやそれが・・・クック船長も、そこまでは気付かなかったんだな。当時、船には柑橘類やザワークラウトの他に麦汁も積み込まれたんだが、帰港後クック船長が奨励したのはあろうことかこの麦汁だったんだ」
友(アカン)
男「当時はまだザワークラウトや柑橘類こそが壊血病の予防になるとは分かってなかったからな・・・そして、残念ながらその後百年以上にわたって壊血病が船乗りたちの間から消えることはなかった」
友「保守的な割には経験則を重視しないんですね」(正論)
男「ちなみにその後は、柑橘類やザワークラウトの他、ジャガイモやトウガラシなどがヨーロッパに導入されたことにより、航海中のビタミンC不足は次第に解消されていった」
友「時間がかかったなぁ・・・」
男「ちなみに二次大戦中、英独がそれぞれの兵士の事を『ライミー』とか『キャベツ野郎』だの読んでいたのは、当時イギリス海軍は壊血病予防のためにライムを、ドイツはザワークラウトを食べていたからだという」
友「ドイツ料理ってすんごいザワークラウト使うよね。ウィンナーの付け合せとかスープにまで入ってるもん」
男「あの辺冬は野菜とれないから、長期保存できるジャガイモ含めてザワークラウトは冬の間の貴重なビタミン源だったんだよ」
友「でもさぁ・・・>>276みたいな小さい船じゃ、そんなに食糧積み込めんだろ」
男「まぁできるだけ大量に積み込むのは潜水艦なんかと同じだわな・・・当然、航海中にも補給の必要はあるし」
友「補給?」
男「例えば雨水だったり、無人島があれば上陸して島にいる鳥獣を捕獲したり」
友「無人島0円生活やないか・・・」
男「特に珍重されたのはウミガメだったようだ。動きが遅くて捕獲が容易なうえ、船上で生かしておけるから必要なときにそのまま肉にすることもできたし」
友「・・・でもさぁ、例えば周りに島がなかったり、漂流しちゃってどうにもならんくなったらどうすんの」
男「そりゃもう死を待つのみよ・・・まぁ、どちらにせよ死者は大量に出てしまうから徐々に口減らしもできるわけだし」
友「うへ」
男「まぁそれでもいよいよ!となれば、船のマストや衣服に使われていた皮革や、船内のネズミ、仲間の死体などにも手を出したようだが」
友「地獄や!!」
男「こうした場合の人肉食はさほど珍しいことでもないけどな。藤子・F・不二雄が『カンビュセスの籤』で描いているクシュ遠征の様子のように、はるか紀元前から軍隊では食糧が尽きると敵兵や自軍の兵を殺害し食糧にする事例もあったし。十字軍なんかも一説じゃ『計画的な食糧確保』の為に村を襲ったなんて話も残ってる」
友(アカン)
男「近年でも日本のひかりごけ事件や、ウルグアイ空軍571便墜落事故など必要に迫られたうえでの食人ケースは散見されるし、事態が切迫すれば人間そんなもんじゃないの」
友「地獄や!この世は地獄や!!」
男「もし仮に俺とお前が無人島に漂着したら、多分俺3日目くらいでお前の頭に石ゴッってやって食っちゃうんじゃないかな」
友「早えーよ怖えーよ!!」
-大航海時代の海軍編 おわり-
ちなみにイギリス海軍の提督エドワード・バーノンは船員たちの飲酒癖を見て(アカン)と思ったことから、それまで原酒のまま配給していたラム酒を水割りで配給するようにしたという。
このエドワード提督の着ていた絹と毛の混紡の粗い布地の上着の名前がグログラム・コートという名前だったことから、この酒はグロッグと呼ばれるようになった!
今二日酔いで「グロッキー」という言葉が生まれたのはこのグロッグが元(グロッギー)だと言われているぞ!!
-戦国時代の食事編-
男「で、同じ時代に日本は戦国時代で各武将ハッスルしてたわけだけどさ」
友「いや言うほどハッスルしてたのかなぁ・・・?」
男「そりゃあしてただろう。リアル天下取ったる!状態だしな」
友「蠣崎氏とかそうでもなくね?」
男「確かに信長の野望だと大抵為す術ないしな、蠣崎氏」
男「まぁ、そんな戦国時代ですがやはり基本的な糧食は米でした」
友「日本人は米ってはっきり分かんだね」
男「大名の強さゲージも基本コメの量、石高だしな。今だって過去との物価比較の目安品目に米価を使うことも多いし」
友「お米ゲージがMAXになると隣国を侵略できるのか・・・」
男「なるほど、だから米どころの上杉とか武田とか強かったのか・・・」
友「米こそパワーだ。日本人ならお米食べろ!!」
男「でもまあ実際、戦をするには兵糧が必要だったから、単純に獲れる米が多ければ大規模に戦を展開できて有利なはずだわな」
友「やっぱり当時も前線で米炊いて食ってたの?」
男「まぁ、基本できるときはそうしてたみたいだ。実際、樅に入った状態なら米ってかなり日持ちするしな」
友「あとはそう・・・おにぎりとか?」
男「ああ。戦艦大和の最後の戦闘配食がおにぎりだったように、今も昔もおにぎりは急場の胃袋の友やでぇ」
友「でも米っていちいち炊かなきゃいかんのが手間だよなぁ・・・パンとか焼くのは大変だけど、あとはそのまま食えるじゃん?」
男「ああ。だから糒(ほしいい)といって強飯、蒸した米・・・ようはおこわを乾燥させた物も広く使われた」
友「へー、火を通してから干すのか・・・そうするとそのまま食えるの?」
男「ああ。少しずつ口に含んで食べたり、湯や水をかけて食したらしい。お湯で戻すと、すこし固いが結構ちゃんと戻るぞ。アルファ米の元祖だな」
友「湯漬けを持てい!!」
男「でも、どうしようもないって時は生米のまま食べることもあったようだ。ただ当然消化に悪いから、徳川家康なんかは『生米のまま食うな腹壊すぞ。せめて水に30分くらい浸しておけ』と将兵に指示したそうだ」
友「さり気ない気配りできちゃう系武将とか素敵。そりゃ天下取りますわ」
男「実際彼は三方原の戦の撤退時に腹壊して馬上でやらかしたって話もあるんだよなぁ・・・」
友「えっマジで・・・お馬さんかわいそう」(小並感)
男「あとは、餅とか煎餅、団子や粽なんかも米を加工して主食を携帯しやすくしたものだな。これらは戦陣の中で食することから陣中食と呼ばれている」
友「陣痛sy・・・陣中食・・・」
男「噛むなよ・・・通常、足軽はこれらの主食の他に、芋がら縄など2~3日分の食料を携行するのが常だったそうだ」
友「芋がら縄?」
男「ずいき・・・里芋なんかの茎を、味噌で煮しめてから作った縄だよ」
友「なんで縄にする必要なんかあるんですか」
男「そりゃ、腰なんかに結んでぶら下げておけば携帯に便利だし、本当に縄の代わりにも使えるしな。芋がら縄を食べるときは、必要な分だけを切り取って水で煮込むという」
友「ほーん、味噌汁みたい」
男「そういうこと。言ってみればインスタントみそ汁の元祖って感じかな。実際、食べられるものだけで作られてるわけだし」
友「でも、当時は今みたいに飯盒とか無かっただろ?煮炊きったって、鍋とかどうすんの」
男「んー、鍋が無いときは鉄製の陣笠なんかで煮たみたいだけど」
友「なんか謎の塩味しそう・・・」
男「あと、さらっと言ったけど味噌なんかも当時は貴重な陣中食だ。良質なタンパク源ともなりうるし、各大名は兵糧のためのみならず重要な経済政策の一つとして味噌作りを行った」
友「確かに保存が効く調味料だもんなぁ」
男「いや、当時の味噌は調味料ではなく豆を塩漬けにした保存食という認識だったようだ。信長が桶狭間パーティーの前に敦盛を舞った後に食べたとされる湯漬けの付け合せの焼き味噌も、当時の味噌の食べ方としては広く普及していたという」
友「桶狭間パーティーwwwDJとか出てきそうwwww」
男「現在、日本各地で仙台みそや三州みそなど特色のある味噌が生まれたのはこのためと言われている。実際、手前味噌という表現が生まれたのもこの頃だそうだ」
友「なるほど・・・確かに味噌って、地域によって、というより家庭によっても違うよな。ウチは大体合わせだったけど」
男「それは当時からあったようで、武将たちは『汁講』といい、客人を呼んで自前の味噌を振る舞ったらしい」
友「自前の味噌」(意味深)
男「まあお茶会の味噌汁版ってとこかな・・・招かれた物は、白飯だけ持って呼ばれた家の味噌汁を賞味したらしい」
友「そなたの味噌汁を毎日飲みたい・・・よっしゃ!ホモスレやんけ!!」
男「まぁ実際衆道は認められてたし多少はね?」
友「あとえーっと・・・あれだ、ほうとうなんかも武田信玄が戦の最中に食べてた!とか言ってるじゃん」
男「ああ。こういった鍋料理は調理も簡便で様々な食材を摂取できるうえ、加熱することから食中毒の心配も少ないしまさに兵食に好都合なんだろう。実際、近代にいたるまで洋の東西を問わずこういったごった煮料理は軍隊で広く採用されている」
友「シチューとかもある意味そうだもんなぁ」
男「これに伴い携帯した米や味噌の他に、現地で調達した野草や鳥獣肉なんかも兵たちの口に入ったようだ」
友「はぇ~・・・やっぱ保存が効かない分、現地調達だったんだなぁ」
男「あとは海産物を保存するための醤油漬けから生まれた山梨の煮貝や、不足しがちな米を小麦粉で補った青森や岩手の南部せんべいなど、地域の名物がまんま当時の兵食がルーツだったりするしな」
友「郷土食ってのが、まんま戦国時代から受け継がれてるパターンなわけか」
男「あと面白いところで言うと、地方色のある陣中食として『えのころ飯』ってのが最近有名になってきてるな」
友「あぁ・・・ドリフターズで豊久が犬の腹かっさばいて云々っていってたやつ・・・」
男「そうそう。捕えたえのころ(犬っころ)の内臓を取り除き、中に米などを詰めて蒸し焼きにする薩摩の料理ということらしい」
友「昔は犬って普通に食ってたんだよなぁ・・・今じゃもう愛玩用のイメージが強すぎて無理だけど」
男「えのころ飯の動物の腹に野菜などを詰めて蒸し焼きにする調理法については、ハワイのカルア・ピッグなどのポリネシア文化圏でよく用いられる調理との類似性を指摘する声もある」
友「カルア・ピッグ?」
男「伝統的には、バナナの葉にくるんだ豚肉を土の中で蒸し焼きにする料理だ。このほかにも、ポリネシア文化圏の島々には猪や野鳥などの野生動物の腹に米や芋などを包んで蒸し焼きにする料理が散見される」
友「島津家はポリネシア人だった可能性が微レ存・・・?」
男「実際ポリネシア人のルーツは台湾にあると言われている(ラピタ人)が、そうでなくとも遠洋航海技術を持つこれらの人々が南日本を含む各地に訪れ、こういった料理が伝播していった可能性はあるかもしれないな」
友「はぁ・・・でもなんでまた腹の中に色々詰めたがるんですかね・・・」
男「生物って基本水分を多量に含んでるし、その血や肉汁は栄養豊富だから、恐らくそれらを無駄にしないよう野菜に吸わせて一緒に摂取するのが目的なんだろう」
友「そういう意味では合理的な調理ってことなのかなぁ・・・」
男「逆に西洋なんかは臭み消しのためにハーブ類を入れることが多いけど。元々こういう島嶼部って水や食料が貴重だから、それを無駄にしないっていうのが最大の目的だったんじゃないかな」
友「確かに南国って食糧豊富なイメージあるけど、農耕もできない島の中じゃ果物や魚くらいしか食うもんないもんなぁ」
男「ただ温暖で気候が安定してる分、農耕ができる用地と土や水さえ確保できれば通年食糧が確保できる無敵状態なんだけどね」
友「日本じゃ秋の1ショットでしか米獲れないもんなぁ、基本」
男「だから当時の戦は基本農閑期、つまり米作が行われない時期に集中して行われていた。これは兵力の中心となる足軽が基本的には農民であり、春秋については兵糧のための米を確保する必要があったからだった」
友「まぁ確かに、腹が減っては戦はできぬっていうしな」
男「青田刈りって言葉があるだろ?あれは元々、稲刈り前の稲が青い状態の時に穂を刈り取ってしまう嫌がらせのことを言っている」
友「兵糧攻めとかやられたら敵いませんわ」
男「兵糧攻めをする場合は他にも事前に商人を通じて食糧を買い占めたり、農民を暴行し攻城対象の城内に追い込むようなこともしたらしい」
友「確か秀吉が得意だったんだよなぁ・・・」
男「高松城の水攻めとか有名だね」
友「しかも城の中は阿鼻叫喚だったらしいじゃん。食うもの無くなって木の皮や死体まで食ったんだろ?」
男「ああ。攻城戦は戦闘での死者が少なくなる代わりに、女子供まで容赦なく死ぬことからそう言う意味では非常に凄惨な戦法と言えるな」
友「ヤバいヤバい・・・お前と一緒にいたら俺食べられちゃう」ガクガク
男「籠城3日目くらいで石ゴッ」
男「で、そんな籠城戦を考慮して、加藤清正は熊本城のいたるところに籠城に備えた食糧を備蓄していたらしい」
友「さっき言ってた糒とか味噌とか?」
男「それに加え清正は城の畳に芋がらを詰め、土壁の中には干瓢を埋め込んだという。いわば、城自体が一部食べ物でできていたわけだ」
友「ヘンゼルとグレーテルと清正」
男「さらに城内には120を超える井戸が掘られ、植えられた木も成長が早く、薪として使用することを考慮していたという」
友「はぇ~すっごい・・・」
男「あとこの時代で有名なのっていったら、やっぱ兵糧丸だろう」
友「おー、あの一粒食うとお腹一杯になる忍者がもってたやつ!!」
男「実際、そんなにすごいもんでもないけどな。米粉などの穀物を製粉したものに、鰹節や蜂蜜、木の実などを練り込んで団子状に丸めたものだ。当然、これ一粒で腹が膨れる訳もない」
友「(夢が壊れて)悲しいなぁ・・・」
男「兵糧丸は特にカロリーの摂取に重きを置いている。基本的には米軍のエマージェンシーレーションのような非常食扱いだ」
友「そういや某地獄先生でこれ食って腹に虫がわく話とかあったよな・・・」
男「あとは似たようなものに『水渇丸』という、梅干しを団子状にして乾燥させたものがある」
友「水渇丸?」
男「この頃の梅干しは食用とともに薬用としても使われていたからな。水渇丸は塩分摂取の他、水のないところでこれを見て、出てきた唾で喉の渇きを沈める目的で使われていた」
友「すッッッッぱいッッッ!!」
男「巨大カマキリと戦うつもりか」
男「ちなみに高校時代、友達と兵糧丸をつくったことがあるんだけどな」 ※実話です
友「どんな高校生だよ」
男「まぁ結果としては小麦粉に様々な物を混ぜて揚げ焼きした、『悪ふざけボール』と呼ばれる謎物体が爆誕したにすぎなかったわけだが」
友「何ちゅうネーミングセンス・・・」
男「あの直径3cmに満たぬ球体の中に『美味い』以外の全ての味が含まれていた。しかも食うと何故か酔っ払う」 ※リキュールが大量に入っていた模様
友「完全に毒物のジャンルじゃねえか」
男「さすがにそのまま捨てるのは忍びなかったから、最終的にはほぐしてフナ釣りの餌にしたんだがこれが爆釣でな」
友「兵糧丸=練り餌説」
男「まぁ基本的には炭水化物だし・・・フナなんて米粒でも釣れるからな」
友「絶対食いたくないそれ」
男「えー、非常に残念ですが、本日ここに実物をご用意いたしております」
友「えっ」
男「なお、本品は当時のレシピを忠実に再現しております」
友「ちょ・・・『当時の』ってどっちの当時だよ!?戦国時代か?お前の高校時代のほうか!?」
男「後者だ」
友「」
男「ホラホラホラホラ・・・」ムギュー
友「ちょっ、やめっ・・・ムグォ、アッー!!」ヴォエ
-戦国時代の食事編 おわり-
なるほど、ここから淡々と魚の話に繋がっていくのか(邪推)
参考にするからその兵糧丸レシピ教えてくれ(作るとは言っていない)
>>322
なるほど、そうだったのか
>>323
男子高校生の兵糧丸(意味深)レシピ
材料:
小麦粉
片栗粉
塩
砂糖
ごま油
ヨモギ(ほうれん草で代用可)
卵白
梅干
(以下、主犯格の男の供述による)
ケチャップ
ウスターソース
オレンジリキュール
バニラエッセンス
歯磨き粉
引出しに入っていた謎の粉
ミキサーで粉砕した何か
毛
作り方
①小麦粉に片栗粉少々と水を加え練り込みます。(耳たぶよりちょっと固い程度を目指します)
②半分程度練ったところで卵白、茹でたヨモギと種を外した梅肉をいれ、砂糖、塩、ごま油で味を調え練り込みます。
③練り終わったら、直径2~5cm程度の団子状に丸め、ラップの上で乾燥させます(2時間程度)。まずは2~3個作って様子をみたほうがよいでしょう。残った生地は冷蔵庫に入れておきます
(乾燥中、皆が目を離している隙に残りの材料を生地に練り込んでおきます)
④乾燥させた兵糧丸をフライパンやオーブンなどで軽く焼きます。少し味気ないですが、香ばしくてなかなかいけます。
⑤出来を確認したところで、残りの生地を団子状にします。
⑥再び乾燥させ焼きます。そのケミカルな味に狼狽した後、パン粉等をつけて揚げ焼きにしてもよいでしょう。ダメなものは何をやってもダメという事実を痛感できます。
⑦小さく刻んで釣鉤につければできあがり!!たくさんフナがつれます。
-番外編 戦争期の民間人の食事編-
友「ヴォエ!!」
男「どうだまずいだらう」ホラホラ
友「やめてくださいよ本当に・・・食べ物を粗末にするなっておばあちゃんに言われただろ」
男「じゃけん全部食べましょうねー」
友「食えるか!!」
男「確かに戦争期の食料難を経験した人にとって、食べ物というのは俺達が思っている以上に思い入れがあヴォースゲー」モグモグ
友「あ、お前も食うんだ・・・」
男「多分だけど、この兵糧丸だって戦後の闇市とか持っていったら普通に売れるレベ・・・ヴォエ!!」オエー
友「お前何がしたいんだよお前」
男「やべぇ高校時代のいろんな記憶がフラッシュバックしたわ・・・」クラクラ
友「確かに、戦争中の食べ物の悲惨さについては教科書なんかでよく見るよな・・・すいとんとか、雑炊とか」
男「当時食糧を初めとした生活用品は全て配給制になっていたからな。とにかく生産した物資は全て軍隊優先とされ、民間人はその残りのわずかな配給で食いつなぐほかなかった」
友「確かに家庭菜園でサツマイモやカボチャなんか育ててたって、よく見るもんな」
男「特に顕著だったのが主食である米の制限だな。当時は玄米や、高粱や大豆が混ぜられたものを中心に配給されたという」
友「よく聞くけどそのコーリャンってなに?」
男「ああ、モロコシの実のことだよ」
友「あぁトウモロコシね・・・」
男「違う違う、モロコシ。同じイネ科だけど、トウモロコシとは全く別の植物だよ」
http://i.imgur.com/n74WUJF.jpg
友「なるほど、全然違った」
男「昔から食用や飼料用として世界各地で栽培されていた穀物だ。これを脱穀したものや、大豆を砕いた大豆殻なんかが玄米に混ぜられて配給されたらしい。目方を増やすためにな」
友「毎日混ぜご飯とかキッツイ」
男「実際にはこれら混ざった高粱や大豆殻は取り除かれ、残った玄米も一升瓶の中に入れて棒で突くなどして各家庭で精米していた」
友「でもさぁ・・・元々混ぜ物がある状態でも少ない量だったのに、そんなんで足りるのかよ?」
男「いやだから足りないんだって」
男「当時の節米の方法として、米を炊く際には国策炊きや楠公飯が推奨された」
友「何それ」
男「国策炊きっていうのは、米を炊く前に一度大量の湯で茹でこぼして吸水させてから炊く方法だ。これにより米が通常よりも大きく膨らむというわけだ」
友「へー」
男「で、楠公飯というのは、鎌倉時代の武将である楠木正成が考案したという玄米の炒り炊きのことだ。事前に炒っておいた玄米を吸水させて多量の水で炊くことで、こちらも見かけの量をふやすことができる」
友「ていうかそれ、結局は水なんだから摂取カロリーは変わらないよね」
男「ああ。だが当時は栄養の摂取よりもまずは当面の満腹感を得ることに誰もが重点を置いていた。それも、食料が減るにつれてそれらは鏡飯や蛍飯といった酷い有様になっていく」
友「なにそれ」
男「鏡飯っていうのは、器に自分の顔を映るくらい水の入った薄い粥。蛍飯は大量のヨモギやヨメナの中に僅かな米を入れ炊き上げたものだ。炊きあがると、これらの野草の間に僅かに米が覗いている姿が水辺の蛍のようなことからこう呼ばれている」
友「まずそう」
男「だから味より量重視なんだって」
男「そんな食糧難時代の外食を象徴するのが雑炊食堂と国民酒場だ」
友「雑炊食堂はなんとなく字面で分かるけど・・・国民酒場?」
男「当時、外食するには外食券という券が必要だった。これがないと、基本的には金があってもモノが買えなかったという」
友「ほー」
男「で、国民酒場では一人当たりに出す酒の量や肴の量が事前に決まっていたようだ」
友「券を出して金を払っても定量しか買えないのか・・・」
男「当時、国民酒場を切り盛りしていた人の話によると、酒といっても中で金魚が泳げるくらい薄い酒に、普段なら口にしないような得体の知れない下魚や鬆の入った大根の煮つけ、薄いつゆの中に数本のうどんの浮いた三味線うどんなどがほんの僅か供されていたらしい」
友「うへぇ・・・」
男「そんな状況だから、卓上の一輪挿しの花は格好のアテになったという」
友「目で見て楽しむんじゃなくてガチで食うのか」(困惑)
男「それでも当時は開店と同時に長蛇の列ができたという。中にはこれら供される肴を自宅の夕飯の副食に回すため、酒だけ飲んで並びなおすという人もあったようだ」
友「なんか主客転倒してませんかね」
男「雑炊食堂については言わずもがなだな」
友「はだしのゲンにも出てくるよな。『今日の雑炊は箸が立つぞ!!』っていって、列の並びで殴り合いの喧嘩するの」
男「箸が立つってことはそれだけで水分が少ない=米が多く入っているということだからな」
友「俺はサラサラの奴の方が好きだけどなぁ・・・」
男「そりゃ食糧事情のいい今ならな」
男「この当時の庶民の生活を記した資料は数多くあるが、『この世界の片隅に』という、こうの史代氏の漫画に出てくる食事は具体的な調理法まで記されていて各地で再現している人がいるようだ」
友「へー、どんなの?」
男「スギナ入りの芋餅や、大根とカタバミの和え物、煮干しの煮もの(梅干の種味)にスミレの葉の入った味噌汁・・・とか」
友「道草を食う」(直球)
男「当時は食べれると思われたものは何でも食べた。テニスコートや学校のグラウンドなど、少しでも遊んでいる土地があれば畑にされ、サツマイモやカボチャが栽培された」
友「やっぱり、食料は優先的に軍隊に回されるから配給が少なくなったわけ?」
男「そういう事だろう。しかも当時は主食の米ですら多くはは国外からの輸入だったし、海上封鎖されてしまえば後は国内生産分だけで賄う必要があるからな」
友「あれ?でも日本で唯一自給率100%可能なのが米って聞いたことがあるけど」
男「それは戦後の品種改良や農地整備、大量栽培のノウハウが蓄積された今の話だよ。当時なんて稲は手植えだし、しかも戦争で人手も減ってるんだからもう目も当てられないって」
友「田植えガンダム」
男「お前田植えってホントしんどいからな。あと収穫前の台風とか殺すマジ殺す倒れた稲起こすの大変なんだよあれ」ビキビキ
友「百姓かよお前」
男「まぁそんな状態でも、農村部をはじめ食糧もあるところにはあったらしい」
友「ほー」
男「この辺りについては古川緑波著『ロッパの悲食記』に詳しい」
友「すげぇ名前だなロッパって」
男「えっお前ロッパ知らないの?」
友「知らん」
男「エノケンも?」
友「うん」
男「アラカン(嵐寛寿郎)も!?」
友「アラウンド還暦かな?」
男「マジかよ、信じらんねぇ・・・これがジェネレーションギャップか」ガクガク
友「なにお前ひょっとして大正年間生まれか何かなの?」
男「・・・で、先述の非食記をみると都内でも独大使公邸や一部の料理屋には種類こそ少ないもののウイスキーを始めとした洋酒や肉類も置いてあったらしい」
友「隠してたわけか」
男「まぁ、公的機関以外で配給外の食料があればそれはヤミってことだからな。事実、こういった料理屋はロッパ氏に食材が入ったときの連絡に暗号を使ったり、表から目につかないところで料理を供したりする様子がこの本には書かれている」
友「そんなうしろめたいことなのか」
男「そらそうよ。国を挙げて統制してるんだから。他にも、ロケでいった農村部には酒や卵がふんだんにあり、地元の名士の家でご馳走が出てきたなんて記述もある」
友「ほほー」
男「そして意外と誤解が多いのは、実は本当に食糧確保が大変だったのは戦時下よりむしろ戦後の事だったんだよ」
友「確かに歴史の教科書で当時の闇市の様子とかちょっと書いてあったな。農村部にこっそりヤミ米を仕入れに行くとか」
男「一応食糧統制法なんていう法律もあったけど、戦後の混乱期にあってもはや配給なんてあってないようなもんだからな。実際、ヤミ物資を拒否して配給物資しか口にしなかった山口良忠って裁判官は栄養失調で死んでるし」
友「過酷だぁ・・・」
男「まぁつまり、同時期で生き残った人は確実に闇物資を食ってたってことだろうな。ぐっさんは食糧統制法は悪法だと断定しつつも、法である以上はそれに従わねばならないというまさに近代のソクラテスのような人物だ」
友「唐突なぐっさん呼ばわりに草を禁じ得ない」
男「で、当時のヤミ市は衣類や石鹸などの生活必需品なども売られていたが、やはり中心となるのは食べ物を売る店だった」
友「モノがない時代なのにどこから物資が出てくるんだか・・・」
男「だから言っただろ、あるところにはあるんだよ。特にこういう状況では一次産業は無敵だ」
友「一次産業ってぇと農家や漁師、か・・・確かに、人間が食うモンなんて結局は自然からゲットしたものなわけだしな」
男「こういった地方から人々は物資を抱えて闇市で売りさばいた。人々は給料の大半をはたいてこれを買ったり、衣服などの財産を少しずつ持出して物々交換したりしていたという」
友「闇市っていえば、哲也に出てきた銀シャリとかうまそうだったよなぁ」
男「闇市で売られていたものは様々あるが、どんな資料にも大体出てくるのがバクダンやカストリなどと言った密造酒と、銀シャリやいわしのバター焼き、そして栄養スープだな」
友「栄養スープ?」
男「別名、残飯シチュー」
友「ヴォエ」
男「当時、進駐軍から出た食べ残しなどを大きな鍋にぶっこんで、そこに大根やジャガイモなどをいれ中身を水増ししたスープが、どんぶり一杯10円程度で売られていたという」
友「国民総ホームレス時代」
男「残飯シチューには進駐軍の食べ残しの肉の切れ端やコンビーフなどが入っておりカロリーも高く、当時の餓えた人々にとってそのこってりとした味は非常にウケが良かったたらしい。中にはタバコの吸い殻やコンドームが入っていることもあったようだが」
友「ヴォエ」
男「そんなものでも食べなきゃ生きていけなかったってこった」
友「悲しいなぁ・・・」
男「だからさ、さっきの兵糧丸にしたってこんな状態の闇市に持ってったら普通に売れると思うんだよ」
友「多分個々の材料をそのまま売った方が売れると思うんですけど」(名推理)
男「ポポ分からない。小麦粉か何かだ」
友「どうすんだよ、これ」
男「うーん、またフナの餌にでもするか・・・」
友「結局食べ物を粗末にしてるよねそれ」
男「そんなことないぞ。これがフナの甘露煮に化けると思えば」
友「えっ」
男「ちょうど七輪もあるし・・・山本周五郎の青べか物語みたいに、日がな一日じっくり煮込もうや」ニッコリ
友「釣って食うのか・・・」(困惑)
-番外編 戦争期の民間人の食事編 おわり-
-緊急時下の食事編-
友「まぁ、戦争末期は民間も散々な食料事情だったけど、南方戦線の話とか見てると陸軍も大抵ひどいんだよなぁ」
男「海軍と違って、陸軍は前線まで物資を届ける必要があるからな。補給が途切れてしまえば、後は現地調達するほかないし」
友「まぁ、鉄砲持ってるんだから狩りくらいできるか・・・」
男「それにしたって部隊全員に渡るような量の獲物は取れなかっただろうな。水木しげるも豚を取った日の夕飯に僅かに脂身の浮いたスープしか出なくてブチ切れ金剛だったらしいし」
友「あぁ・・・『そんなことよりパパイヤの根は煮えたのかい』のあのマンガか・・・作中じゃ、水木先生は地元の原住民とよろしくやってたようだけど」
男「最初のうちは、それこそ徴発っていって、軍票を支払って現地民から必要品を買い取ってたんだけどね」
友「そういや、軍票って何なん?確か前におじいさんの遺品にも入ってたっていってたな」
男「軍票っていうのは、軍隊が発行する一時的な擬似紙幣だよ。それを持って軍部に請求すれば、その分のお金があとでその国の政府から支払われるわけ」
友「へー」
男「まぁそれも、その軍にまだ支払い能力がある状態での話だけど・・・事実、戦争末期の日本軍の軍票なんて、もはやケツ拭く紙にもなりゃしないって感じだったらしいし」
友「じゃあ結局は強奪する感じになるのか」
男「まぁそうなるだろうな。実際、インパール方面の撤退戦じゃ、途中にある村々を襲って米や家畜を奪ってたそうだし」
友「悲しいね」
男「特に日本軍は米を炊くために井戸の水や家の木を根こそぎ持っていくっていうんで、中国ではその様を穀物に深刻なダメージをもたらす蝗害になぞらえて日本軍の事を『蝗軍』という蔑称で呼ぶこともあったようだ」
友「虫の皇帝でイナゴか・・・そういやはだしのゲンでもイナゴくってたな」
男「俺アレ好きだよ、スカスカの小エビみたいな感じで」
友「ジャングルなんかじゃ、やっぱりヘビや虫なんか捕まえて食うのかな」
男「まぁ、それらは今の陸自のレンジャーたちも食ってるし、確保さえできれば貴重なタンパク源だからな」
友「でもジャングルの生物って毒とか持ってるの多そうだよなぁ」
男「実際、それで当たったりして命を失う将兵もいたようだ・・・中には硫黄島のように、硫黄分の多い水や消化の悪い草木しか食べる物が無く、腹を壊すと分かっていてもそれを食べざるを得ない状況もあったそうだが」
友「想像を絶する」
男「基本的に旧軍将兵たちはそれぞれ携帯していた米を、ジャングル野菜と呼ばれる現地の草木で水増しして、粉末醤油や粉味噌、塩などの調味料があるうちはそれで雑炊を作って食いつないでいたという」
友「うへぇ・・・」
男「件のうちのじいさん、戦争中はパレンバンってとこで高射砲兵やってたんだけど、まー食うもんが無いってんで配給された粥の中にその辺の草やら何やらぶち込んで食ってたらしいんだよ」
友「おー現役世代の生の声か。すごいな」
男「ある日食った雑炊が妙に美味くて、戦友とがっついて食ってたら食い終わったころに鍋の底から煮えたネズミの死骸がでてきたらしくてな」
友「ヴォエ!!」
男「まぁそれも、きっちり半分こして食ったらしいが・・・如何せん、父さんが小さい頃に聞いた話らしいから真偽のほどは知らん。多分事実だと思うが」
友「なんか、お前んちの家族構成ウチより随分世代が上じゃねえ?うちのじいちゃんなんて確か未だ80いってないぞ?当時戦争行ってたんなら、もう90は超えてるだろ」
男「俺、過去から来たっていったら笑う?」
友「時をかける少年だったのかお前」
男「よし、ちょっとタイムリープしてくる」
友「待て早まるな」
男「あと通常時と異なるって言ったら、営倉に入れられた時の食事があるな」
友「営倉?」
男「軍隊内の牢屋みたいなもんだよ。通常の営倉と重営倉ってのがあって、軍法会議でより罪が重いとされた場合は重営倉行きとなる」
友「ほほー」
男「通常の営倉では営内ででる物と同じ兵食が提供されるが、重営倉では米麦飯と水、塩しか与えられなかったという」
友「キッツイな」
男「だから、旧軍の規定では重営倉は3日以上収監してはならないとされていた。海軍の場合も、このような部屋が艦底近くの、もっとも居住性の悪い区画に用意されていたそうだ」
友「そういえばさ。前に米軍のDレーションの話してたけど、やっぱ自衛隊にも同じような緊急用のレーションがあったりするの?」
男「あるよ。飛行機や艦艇が遭難したときに脱出した隊員が食べる用に、戦闘機の射出座席や艦備付の救命いかだには救命糧食ってやつが搭載されてる」
友「へー。中身は何が入ってんの?」
男「クッキー状のエネルギーバーと、ゼリーみたいなお菓子」
友「へー」
男「災害時の非常食として民間でも同じものが手に入るはずだ。自衛隊に納入されているものには、中に『ガンバレ!救助は必ずやってくる!』という紙がはいっていることから通称ガンバレ食とも呼ばれている」
友「気休めすなぁ・・・」
男「でも実際、サバイバル状況下では本人の生きたいっていう意思が重要だからな。米軍の同様の糧食にはエネルギーバーやシリアルバーの他にコーヒーなどの嗜好飲料も付属している。仏軍に至っては固形燃料やブイヨンまで付いてくる豪華版だ」
友「へー・・・ていうかさ、射出座席ってあれだよね?イスがこうブシュー!ってなってパラシュートが開くやつ」
男「そうそう」
友「あれ、民間機にもつければいいのに。そうすれば墜落したときも生き残る人多いと思うんだけど」
男「いやアレ素人が耐えられるような代物じゃないから」
友「え、そうなの?」
男「プロだって成功率は8割、そのうちまた空を飛べる人は5割だぞ。通常は生きてて良かったねっていうレベルだ」
友「何がそんなに危険なんですかね・・・」
男「あれ、火薬で強制的に打ち出されるから瞬間的に20~30G位の負荷がかかるんだよ。だから、大体は生きてても脊椎が潰れたり、手足を骨折したりするそうだ」
友「ヒエッ・・・」
男「しかも飛行機の速度を考えると風圧もハンパないからな。どんな飛行機でも、ジェット機なら大体300km/hくらいは出してないと失速して墜落しちゃうのに、そんな中生身で飛び出したらどうなるか位は想像がつくだろう」
友(アカン)
男「しかも、戦闘機ならキャノピーを破って飛び出せるけど、旅客機じゃそれも無理だしな。それこそトップガンのグースみたいな最期を迎えることになるぞ。かといって墜落寸前の揺れる機体から自力で飛び出すなんてまず無理だし、飛び降りたところで一般人が生き延びられるものかよ」
友「うぐぐ・・・」
男「まぁ、もしそれらの問題が全部クリアになったとしたって、コストの問題から採用できるとは思えないしな。ていうか、そんな金があるならほかの部分の安全対策に使った方が良いわけで」
友「あ、そっかぁ・・・生きてぇなぁ」
男「ちなみに聞いた話じゃ、空自の飛行機でベイルアウトするときは海に降りるのが良いらしい」
友「あー、市街地に被害がでないように?」
男「それもあるけど、射出座席に仕込まれたボートとか救命胴衣って塩水で反応して動作するようになってるからだって」
友「あ、そうなの。・・・じゃあ湖なんかに降りたら自分でボート膨らまさないといけないのか」(絶望)
男「あとは、意外に山深いとこに落ちちゃうと見つけるのが逆に大変だったりするから。事故調の報告書なんか見ても、山中に墜落した機体を見つけるのに時間がかかるケースが散見される」
友「あれってさぁ、まさか当てずっぽうで探しに来てるわけじゃないだろ?どうやって見つけにくんの?」
男「最近の飛行機は、落ちるときに自動でスコーク77っていう緊急信号を飛ばしてる。さらに、救命ボートには無線機を兼ねた救難信号発信機が搭載されているので、ここから自動発信された信号を元に救難機が飛んでくるというわけだ」
友「へー」
男「だから、領海内くらいなら通常は墜落から1時間以内には救難機が飛んでくる。一応、救命キットの中には脱塩ストローやテグス、釣鉤なども入っているようだが」
友「まぁ発信機壊れてたら漂流するほかどうしようもないしね」
男「一応事前に墜落地点を予測して風向きとか海流を計算したうえで捜索を開始するけどな。ですから、着水してボートに乗ったらまず海流に流されないようにアンカーを打ちましょう」
友「はぁ」
男「で、しばらくして救難機が来てくれたらバスクリンみたいなので海水に色を付けて辺りを目立たせ見つけてもらう、と」
友「あー、トップガンで救助時に海の色が変わってたのはそういうことかぁ」
男「無線機が生きているようなら、この時に救難機のパイロットの名前を聞いておくと後にお礼状を出すときに便利でしょう」ワンポイントアドバイス
友「なにその日常生活ではまるで使えない実践的な無駄知識」
-緊急時下の食事編 おわり-
-カトラリー・食器編-
男「えーと、釣り具持った、マンガ持った、飯盒持った、七輪持った、兵糧丸持った・・・」チェック中
友「最後のほうのアイテムが明らかに異色で草生える」
男「よーし、それじゃそろそろ出発すんべー」
友「おーう」
・・・
男「こ↑こ↓」
友「はぇ~、すっごい・・・まさかこんなところにフナの釣れる場所があったとは」
男「ああ。俺の秘密のスポットだ。・・・お、お前にしか教えてあげないんだからね!!」
友「気色悪ぃよお前」
友「あー、でも釣りなんてするの久しぶりだわー」
男「道具出すの手伝ってくれ」
友「はいよ・・・うーん、七輪と飯盒が出てくるリュックとかシュールだ・・・おっ?なんかこの飯盒重くね」
男「中に調味料入ってる」
友「えっ、現地で調理すんの・・・」
男「飯盒はいいぞー、こうやって入れ物にもなるし、これ一つで煮る炊く焼く大体できるしな」
友「うん、最近は丸い飯盒もよくみるけど、やっぱり飯盒っていったらこの空豆型のやつだよな」
男「こういう形の飯盒は『兵式飯盒』といいます」
友「へー・・・やっぱ軍隊で使ってたから?」
男「そういうこと。あと、昔は将校と兵で違う飯盒を使ってたんだよ。将校のは弁当箱みたいな長方形だったんだけど、一般の兵はこれを使ってたから、そこを分ける意味でも兵式って名前になってる」
友「なるほど・・・この形って確か、ご飯が上手く炊けるように工夫されてできたんだよね?」
男「それまことしやかに言われてるけど、別にそれが主目的なわけじゃないから」
友「ウッソ」
男「事実米食文化がないドイツやイタリアの飯盒もその形してるし」
友「じゃあ、何のために?」
男「普通飯盒は、兵士が背負う背嚢の側面にぶら下げられる。この時曲面が背嚢にフィットして!Good」 ※分からない人は近くのオッサンに聞いてみよう
友「お前本当に俺とタメ?」
男「あとはほら、お前が前に読んでたのらくろにもあったけど、飯盒炊爨回で焚き火の上に渡した棒に複数の飯盒を吊るしてただろ?」
友「ああ、そういえばそうだったかも」
男「そうやって隣の飯盒とくっつけた時にその形だとずれにくいし、煮炊きするものを一箇所に集めれば焚き火用の薪も節約できるわけだ」
友「なるほど」
男「で、副次的な要因としてこの形だと不均一に火があたった場合でも、うまいこと中身が対流するから美味く米が炊ける、と」
友「ほほー」
男「最近のキャンプ用品じゃそんな状況滅多にないから、お前が言うように製造コストが安くて汎用性のある丸いタイプが増えてきたようだけどな」
友「まー確かに焚き火で煮炊きでもするんでなければ、要らん機能だわな」
男「それでもやっぱり男は焚き火だぜ」
友「いや思いっきり七輪持ってきてるじゃん」
友「・・・あれ、でもさ?米軍とかイギリス軍って飯盒使ってたっけ?」
男「ああ、あの辺の国は飯盒ではなくてメスパンを使うな」
友「めすぱん?」
男「メスキットっていって、食事に使う道具類が一緒になってるセットがあるんだよ。パンはフライパンとかのパン」
友「はーなるほど」
男「基本的に米軍のメスキットは、ナイフ・フォーク・スプーンのカトラリーと、取っ手がついたフライパン状の鍋と、真ん中に仕切りのついたその蓋から構成される」
http://i.imgur.com/5SRmtPc.jpg
友「おぉー、こういうの使ってたのか・・・」
男「たまにミリタリーショップなんかで米軍の払い下げ品が売ってるな・・・イギリスの場合は、これよりももうちょっと深くてただの四角形の鍋が採用されていたようだけど」
http://i.imgur.com/FTnQwUg.jpg
友「ああ、アウトドア用品とかでよく見る形だ。インスタントラーメン茹でやすそう」(小並感)
男「チャルメラの麺を丸から四角に変えた明星食品を俺は許さない」(憤慨)
男「ちなみに、同じ欧米でもさっき言ったようにドイツやイタリア、スイスなんかは日本と同じように飯盒を採用していた。イタリアでは戦友のことを『ガメラータ』というが、ガメラは飯盒という意味だ。よくナチスドイツが出てくる物語とかで戦友のことをカメラードって呼ぶのは、このイタリア語からの借用語だったようだ」
友「飯盒2 -レギオン襲来-・・・アカン草生える」
男「しかもそのレギオンにしたってアレたしか古代ローマの軍隊のことだろ」
友「飯盒2 -古代ローマ軍襲来-・・・これもうわかんねぇな」
男「タイムスリップ物のB級シネマ感ハンパない」
友「飯盒とメスパンの使い分けの基準ってどのへんなんだろうな?」
男「うーん、何とも言えないけど多分その国の食文化によるんじゃないのか?主食が煮炊き物か、焼き物なのかとか」
友「確かにイタリアはパスタ・・・日本は米で、アメリカはステーキっていえばなんかそれも分かる気がする」
男「ただ実際はこれらの器具を使って調理をすることはまれで、基本的には配給を受け取る際の食器としての役割のほうが大きかったらしい」
友「ははー」
男「だから当初陸軍では将校用の飯盒は漆塗りで直火使用不可だったし、陸自でも野外演習の場合は飯盒で配給を受けるなどの使い方が中心で、昔に比べ現在では背の低いタイプの飯盒が採用されている」
友「でもさー、日本人というか箸使う文化圏は得だよな。食器さえあれば、あとは棒が2本あればそれでメシ食えるわけじゃん。スプーンとかフォークなくしたら、それもう致命的だろ」
男「棒が2本」(意味深)
友「いいから」
男「確かに、一般的に麺や米麦など、はさんで食べる必要がある食物が多い国は箸を、肉なんかの切ったり突いたりする食物を食べることが多い国はナイフとフォークを使うことが多いようだ」
友「へー」
男「ただ意外なのは、アジア圏でも箸を中心として食事使うのは日本くらいというところだ。中国や朝鮮では基本はレンゲなどの匙を使い、それで足りない場合に箸を使う。汁物を飲むときに椀を直接口に漬けるのは、日本くらいらしい」
友「はあ。でも言われてみれば確かにそうかも。そういう料理屋のスープとか粥って、だいたいレンゲついてくるもんな」
男「最近じゃこの『食物をはさむ』っていう箸の特徴が無重力空間における食事に便利ということで、宇宙飛行士が箸の使い方を覚えるといった事例もあるらしい」
友「あーなるほど」
男「まーいずれにせよ人間の最後のカトラリーは素手だから。イスラム教やヒンドゥー教文化圏じゃ、スプーンや箸を使うのは不浄とされみんな手づかみで食ってるし」
友「聖☆おにいさんのブッダみたいなこと言うなお前」
男「中世ヨーロッパなんかでも、パンを手でちぎったり、肉なんかもナイフで切り刻んで結局は手で食べてたわけだし」
友「ワイルドだなぁ」
男「ん・・・お前それかかってんじゃない?」
友「おぉホントだ・・・へへ、最初の一匹は俺か」ピチピチ
男「ん、よこせ。ワタ取るから」シャキン
友「あ、本当に食うんだ」
男「当たり前だろ」サクサク
友「アーミーナイフかぁ・・・そういうのについてる缶切りって、超使い辛いよね」
男「ん?そうか?」ザクッ
友「だって、まず缶の縁に引っかかりにくいし、折り畳みにしてるせいか刃の形も普通と違って力入れるとすぐに外れちゃうし。まぁ、今時そうそう缶切りなんて使う機会ないけど」
男「・・・お前さ、それどうやって使ってる?」ザクッブチブチ
友「え?どうやってって・・・普通にこう、缶持ってさ・・・」
男「で、その缶はどっち側に回してる?」ジャッジャッ
友「どっちってそりゃ・・・まぁ、反時計回りに奥の方に向かって・・・」
男「それ、使い方間違えてるぞ」ピッピッ
友「ウッソ!!」
男「缶切りって二種類あってさ。日本でよく見るあのコルク抜きとセットになってるやつは、引き切りタイプという」
友「へー」
男「で、アーミーナイフについてるのは基本的に押し切り型の刃が多い」
友「どう違うの?」
男「缶の縁にフックを引っかけて、てこの原理で柄を押し下げながら手前に切り進めていくのが引き切り、逆に刃を缶に押し付けるように前方に切り進めていくのが押切り方だ」
http://i.imgur.com/OHUkAhW.jpg
(左が引き切り、右が推し切り)
友「知らなかった・・・」
男「多分、お前が使ったことがあるのは押切りタイプの缶きりだったんだろう。同じスイスアーミーナイフでも、ビクトリノックスは押し切り型なのに対して、ウェンガーは日本とおなじ引き切り型だ。ウェンガーもうなくなっちゃったけど」 ※ビクトリノックスに吸収されました
友「そうだったのか・・・」
男「ビクトリノックスでもウェイターって種類のナイフなんかは栓抜きもかねて構造的に引き切りを採用してる。コルク抜きもついてるし、最初に持つならオススメの一本だ」 ※ステマではありません
友「やっぱ男なら誰もが一度は憧れるよな、こういうナイフって」
男「まー普段持ち歩いてると警察に見つかった時によっぽどのことが無い限り書類送検されるけどな。俺も明らかに釣り行く格好してるのに没収されたことあるし」
友「世知辛い世の中やでぇ」
男「これでよし、と・・・」
友「どうすんのこれ」
男「まずうちさぁ、七輪あるんだけど・・・焼いてかない?」
友「甘露煮作るんじゃなかったのか」
男「フナなんかは煮る前に一回素焼きにした方が泥臭さがとれて美味いんだって」
既にやったことあんのか」
・・・
男「よーし、あとは飯盒に水と調味料入れて、っと・・・」トポポ
友「そういや親戚の姉ちゃんから聞いたんだけどさ。昔って500mlのペットボトルなかったんだってな」
男「あー。96年に飲料メーカーの自主規制が解除されるまでは最低でも1リットルサイズしかなかったそうだ」
友「96年とか下手したら俺まだ二足歩行すら危ういからな」
男「手頃なサイズのペットボトルの普及により、それまで遠足なんかのちょっとしたレジャーのお伴だった水筒はすっかり取って代わられたという・・・そういや水筒も、重要な食器の一つだよな」
友「やっぱ昔ながらの水筒って言ったらあれだよな、あの、マヨネーズの容器を幅広にしたような奴」
男「うんうん、イチジク浣腸大きくしたような奴な」
友「汚いさすが男例えが汚い」
男「水は人間が活動する上で短期的には食物よりも重要だからな。昔からそれを持ち歩くために様々なものをその容器としていたという」
友「あーなんだろう、西遊記とかの影響かな。昔の人ってひょうたんとかに水いれてそうなイメージ」
男「ひょうたんや竹なんかはもうまんま水入れてくださいってフォルムしてるからな。実際、その2つは昔から水筒として使われるケースも多かったし」
友「あとはこう、何か砂漠を歩いてる時に革袋とかに入れてるイメージ」
男「そういった乾燥地帯では大量に水を運ぶ必要があったため、どちらかというと革袋のような軽くて大量の水が運べる容器が主に使われたようだ」
友「でも、あれってどうやって作ってるん?革なんかに水入れても、すぐに染み込んで漏れちゃうだろ?縫い目とかもあるだろうし・・・」
男「うん。だから昔は、元々水を溜めるのに適した形をしている動物の胃袋や膀胱を水筒として利用していたそうだ」
友「膀胱・・・」
男「それこそ膀胱なんて大量に水を溜めこむために作られたような器官だからな。それに対して水源が豊富だったアジア地域では、先述のひょうたんや竹筒などコンパクトなものが主に使われたらしいが」
友「・・・」
男「その名残りで、英語圏では日本語の水筒に対し、『Water bottle』や『Waterskin』といった複数の表現がみられる」
友「そ、そうか・・・」
男「近代に入ると世界的にも水道整備が進んだため、水筒は主に水を持ち歩く必要が付きまとう軍隊の兵士用のものが多く生産されたという」
友「確かに、戦場には水道なんてないもんな」
男「こうした水筒は当初はブリキ製、次にアルミ製と材質の変化を経て現在では軽量化を重視したプラスチック製のものも採用されている」
友「ほほう」
男「ただし、プラスチック製のものは直火にかけることができないため、未だに金属製のものが使用されることもあるようだ」
友「確かに、その辺の生水なんて煮沸しないと飲めないだろうしな」
男「二次大戦以降は、米軍を初めとして各国でカルキなどを含んだ浄水剤を兵士に配給しているが」
友「いやいくら浄水剤使ったって泥水は綺麗にはならんだろう」
男「まぁ濁ってるのはどうにもならんだろうが、少なくとも腹を壊すリスクは減らすことはできるしな。一応、米軍のマニュアルを見ると、生水を取水する場合は流れのあるところで行うことという注意もあるが」
友「場合によっちゃ今まさにフナを釣ってるこの用水路の水を飲むようなもんだもんなぁ・・・」
男「なーに、火を通せば大抵は大丈夫よ」
・・・
男「・・・」ボケー
友「・・・いい天気だなぁ」
男「あぁ、こうやってたまにはぼけーっとフナ釣りするのも悪くないな・・・」
友「あ、次の巻ちょうだい」
男「はいよ」
友「いやギンコさんまじかっけーわ。ギンコさんにだったら抱かれてもいいわ」
-淡々と兵食の話するわ おわり-
この2人…
ホモかな?
ホモだな(確信)
>>389
ホモだよ(肯定)
ホモなのか・・・(困惑)
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