春香さんの家のリビング。
春香の父「はっ!?」
春香「私もう決めたの!!勿論いいよね?お父さん!」
春香の父「……善いも悪いも、あまりに突然すぎて訳が分からないぞ?春香」
春香「だから私がアイドルになるってことだよ」
春香の父「ふむ…そういう事か……」
春香「そういう事だよお父さん」
春香の父「勿論。駄目だ」
春香「ですよねーって…ええ!!?」
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春香の父「そりゃ…いきなりアイドルなんぞになるなんて言われて、ああいいよ。なんて言う父親なんている訳ないだろ!?」
春香「じゃあイキナリでなければいいんだよね……では…お父さん改めて言います。わたしアイドルになりたいです」
春香の父「そんなの駄目に決まっとるだろ」
春香「いきなりじゃなくてもダメじゃん!!」
春香の父「イキナリじゃなくてもダメだ」
春香「そんな~。こんなにかわいい娘が、こんなにお願いしてるのに……」うっうー
春香の父「どうしてお前が、いきなりこんな事を言い出したのか…さっぱり分らんが……」
春香の父「まぁ。お前の事だから、TVか何かに影響されたんだろうが…お前みたいな間の抜けた娘が、芸能界みたいな所でやっていける訳がないだろうが」
春香「間の抜けたって…失礼な……それに私が間の抜けたドジっ娘だとしたら、それは紛れも無くお父さん譲りだよ!!」
春香の父「お前も充分失礼だよ!じゃあ尚更駄目だ。俺と似ているというならな」
春香「そんな事ないよ!私はお父さんとは違いんだから!!」
春香の父「何がそんな事ないって言うんだ?どこが俺と違うのか言ってみなさい」
春香「私…お父さんと違ってカワイイし?そこんとこはお母さん譲りだし?」
春香の父「――――っ!?自分の事を可愛いって…その神経の図太さは確かに芸能人向きだな」
春香「でしょ?なら――――」
春香の父「駄目なもんは駄目だ!!お前にそんな才能なんてない。門前払いになるだけだ」
春香「お父さんの分からず屋!!私ね実はもうオーディション受けて、受かっちゃったんだー」どやっ
春香の父「なにーーー!?既にオーデションを受けて来たって……?」
春香「765プロっていう、芸能事務所のオーデションを受けて合格したの!!」
春香の父「合格って……」
春香「それでマネージャーっていうかプロデューサーさんに、ご両親の同意が得られれば、事務所に所属させてくれるって言われて……」
春香「だからこうやって、お父さんにお願いしてるの!」
春香の父「お前…私に黙って……何時の間にこんな不良娘に……」わなわな…
春香「不良娘って……」
春香の父「どうしても駄目だっ…って言ってもなりたいのか?」
春香「うん。私…絶対にアイドルになるってもう決めたんだもん!!」
春香の父「なんて事だ…………もう埒が開かん!!……おーい母さん!!」
ひょこ…
春香の母「はいはい。どうしたの?さっきから二人ともそんな大きな声を出して……」
春香の父「春香が…春香がいきなりアイドルになりたいって言い始めて…もうオーディションも受けたって言ってるんだ……」
春香の父「いつからそんな不良むすm――――」
春香の母「ああ。その事でしたら、春香本人から既に聞いてますけど」
春香の父「なにーーーー!!!!?」
春香の父「どっどういう事だ!?母さん!」
春香の母「ええ。春香からアイドルのオーデションを受けるから、親の許可が必要だって言われて……」
春香の父「それで…母さんは許可したのか!?」
春香の母「ええ。とても真剣な顔をしてましたし。正直、受かるとも思ってませんでしたから」
春香「お母さん!?何気に酷い!!」がぁ!
春香の父「だが…春香が言うにはオーデションに合格してしまった様だ…嘘を吐いていなければの話だが……」
春香「もうお父さんまで!!」
春香の母「そうなんですか?…………本当なの春香?」
春香「本当だよ!!嘘なんかじゃないってば!」
春香「もう…こうなったら今度ウチに、プロデューサーさんを連れて来るから!それなら信じるだろうし、アイドルになる事を認めてくれるんでしょ!?」
春香の父「いや…それとこれとは別の……」
春香「もういい!連れて来るったら連れて来るんだからね!!じゃあもうお休みなさい!!」
だだっ
春香の父「おい春香!まだ話は終わってな―――――」
春香の父「はぁ…まったく……聞き分けがない処は、誰に似たんだか……」
春香の母「ふふ…春香のああいう言い出したら聞かない頑固な処…あなたにそっくりだわ」
春香の父「いや…むしろ母さんに――――」
春香の母「えっ?何か言いましたか?」
春香の父「いっいえ何でもありません!!」びくっ
春香の母「ふふ…昔に戻ってますよ?あなた」くすくす
春香の父「…………と言うか…母さんはどう思ってるんだ?春香が芸能人になる事については」
春香の母「そうですね…確かに心配ですけど、あの子が自分で決めた事なら……」
春香の父「貴女もなのか!ふんっ。俺は断固認めないからな!!大切な娘をあんな胡散臭い世界に放り込めるか!!」
春香の母「……まったく頑固で、何時までも子離れ出来ないんだから」ぼそ…
春香の父「ん?何か言ったか母さん?」
春香の母「いいえ。何にもいってませーん」しらっ
春香の父(ああ…とは言ったものの。春香はプロデューサーとやらを家に連れて来る様だし、これからどうなってしまうんだ……)はぁ
数日後。
とあるファミリーレストラン。
春香「……と、云う訳なんです。プロデューサーさん……」
P「ふーむ。つまり母親の方はともかく、父親の方が絶対に君の芸能界入りを認めないと……」
春香「そうなんです!まったくあの人頭が軽いくせに妙なところで固いんだから」
P「おいおい。自分の父親の事をそんな風に言うもんじゃないよ」
春香「だってですねー。私があんなにアイドルになりたいって言ってるのに、ぜんぜん聞く耳持を持ってくれなくて……」
P「しかし君はまだ未成年だし、やはり親御さんの許可がないとな……」
春香「だったらどうするんですか?私にアイドルとしての素質があるって言ってくれたのは、プロデューサーさんなんですよ!?」
P「それはそうだが……確かに君にはその素養がある。私としてもせっかく見付けた才能を、このまま埋もれさせたくはないが……」
春香「私だってせっかくのチャンスを逃したくないんです」
P「そうだな……でも君が何を言ってもダメなんだろ?」
春香「はい。私一人じゃどうしてもお父さんを説得できないんです」
P「…………そういう事か」
春香「…………そういう事です」にこっ
P「……分った。今日明日にでも私が君のお宅に参って、お父さんに挨拶と説得をさせてもらうよ」
春香「流石プロデューサーさん。話が分かります!」にこっ
街中。
P(うーん…とはいったものの、どうしようかな……?こういう子の父親に限って怖い人って事も多いし……)うーむ
春香「……―――っん!プロデューサーさんっ!!」
びくっ
P「はっ!?どうした!!」
春香「どうしたってプロデューサーさんこそ、何ボケっとしてるんですか?」
P「い…いやちょっと考え事を―――――」
春香「そんな事はどうでもいいんです!」
P「どうでもいいって君が―――――」
春香「ほらっアレ!見てください!!」
びっ
P「あれって……もしかして……」
春香「そうっ!プロデューサーさん!ドームですよ!!ドーム!!!」
P「でもそれが…どうしたんだ?」
春香「どうしたって…ドームは私の目標なんです!!」
P「目標?」
春香「はいっ!まずは武道館!!そしてアリーナ!!」
春香「最後にドームでコンサートをする……」
春香「それが私の夢であり目標なんです!!」
P「そうか……だがな春香くん」
春香「はい」
P「『まずは』の武道館で結構大変な事なんだぞ?」
春香「あはは…実は私も…途方もなくおっきな事言ってるのくらいは分ります……でも――――」
P「でも?」
春香「夢はおっきく持った方がいいですし……それに――――」
春香「プロデューサーさんなら私をあそこまで、連れて行っ(プルデュースし)てくれると信じてますから!!!」
P「春香君……」
P(この表情…雰囲気……もしかしたら…この子なら本当に……)
P「よし分った!俺に付いて来い!!俺が君をあそこまで連れてってやる!!」
春香「はいっ!プロデューサーさんっ!!」
P「だが俺のレッスンは厳しいぞ?着いて来れるかな?」
春香「はい!頑張ります!!…………でもその前に……」
P「その前に?」
春香「お父さんを説得してくださいね?プロデューサーさん!!」
P「―――――!?」はっ
P(そっ…そうだったー。それがまた残ってた――――――)ずーん
とりあえずここまでです。
少し不定期気味になると思いますが
よろしくお願いします。
それでは。
翌日。
春香さんの家のリビング。
春香の父「……で、君がウチの春香が言っていた、プロデューサーさんとか言う者かね?」
P「は…はいそうです。お父さん」
春香の父「!!君にお父さんなどと呼ばれる筋合いは無い!」
P「すっ済みませんd――――」
春香の母「まぁ。お父さんたら、そんなに強く言わなくても……」
春香の父「しっ…しかしだな母さん……」
P「…………」ほっ…
春香の母「まぁ取り敢えず、お茶を淹れましたから、プロデューサーさんも飲んでくださいね」
P「あっ有難うございます。いただきます……」ずず…
春香の父「おい君……今、ウチの家内を見て、どうしてこんなうだつの上がらなそうなおっさんと、結婚したんだろうって
思っただろ?」
P「いっいえそんな事!!確かにお綺麗な方ですけど……」
P(やっぱり本人も自覚していたのか……)
春香「今はウチのお母さんの事はどうだっていいでしょ!?プロデューサーさん話を進めてください!」
P「あ…ああそうだった……それでですね…お父―――」
春香の父「だから君にお父さんと言われる筋合いはない!!……そうだな…ふむ。私の事は今後、園長先生と呼びなさい」
P「園長先生……ですか?」
春香の父「うむ。春香から聞いているかもしれんが、私はこう見えても保育園に勤めていてね。苦節十云年、ついに今年度から園長に就任したんだよ」
P「そうなんですか。おめでとうございます」
春香の父「ここまで来るのは大変だった……そうあれは5年前の―――――」
春香「お父さん!!今はそんな事はどうでもいいの!!」
春香の父「うう…そうだな……」しゅん
P「…………………」
春香の母(……全くこの人は、よっぽど自分の出世を自慢したいのね……)はぁ…
P「―――――という事になります」
春香の父「……………」
P「それに私はですね…園長先生。春香さんのこの天n……天真爛漫な性格は芸能界に向いていると――――」
春香の父「駄目だ駄目だ。春香みたいな娘が、芸能界に向いている訳がないじゃないか」
春香「お父さん!!」がぁ
春香の父「ほら今だって、直情的に声を荒らげて。こんな単純な思考の子では、要らん事言って直ぐに潰されてしまうのがオチだ」
春香「うう……」
P「それは…そこのところは私がどうにかフォローをします。確かに短絡的な所はありますが、その瞬発力が彼女の魅力でもありますから」
春香の父「…………君に娘を守リ切れるのか?」
P「はいっ私が責任を以って、春香さんを支え、守りますから」
春香「プ…プロデューサーさんっ////////」
春香の父「………………ふん。君に娘を守れるとは思えんがね」
春香「お父さん!!もうっいい加減にしてよ」
春香の母「…………」
P「彼女は…娘さんは、私及び765プロが…全力でバックアップすることをお約束します。それでも…どうしてもお許し頂けないでしょうか?」
春香の父「駄目だ!駄目だって言ったら駄目だ。何度言わせるんだ全く……」
P「御母さんもですか?」
春香の母「うーん。そうですね…私も確かに心配ではありますけど……」
春香の母「娘が春香が自分で決めた事ですから、私としては尊重してあげたいとは思っています」
春香「お母さん!!」ぱぁぁ
P「そうですか。有り難う御座います」ぺこり
春香の父「母さんも相変わらず、何を言っているんだ!まったくどいつもこいつも……」むすっ
春香「まったくお父さんは頭固いんだから!私は絶対大丈夫だよ」
春香の父「お前の【絶対】と【大丈夫】は『絶対に大丈夫じゃない』だぞ」
春香「!!お父さん!今のひどくない!?」むっ
春香の母「……………」はぁ
P(……………うーん。どうしたらいいかな……?このままじゃ埒が開きそうもないし……)
春香の母「…………これ以上やっても平行線でしょうから、春香…私たちはいったん席を外しましょう」
春香・春香の父「「えっ!?」」
春香の母「男同士。お父さんとプロデューサーさんの二人だけで腹を割って話し合った方が、いいかもしれないしね」
春香「お母さん!?」
春香の父「母さん?」
春香の母「ほらっ春香行きますよ!」ぐいっ
春香「ちょっお母さん!!分ったから引っ張らないでよ!!」
春香の母「では。あとはお二人で話し合ってくださいね」ぺこり
パタン…。
数分後。
春香の父「……………」ムスッ
P(…………さて…どう切り出したらいいものか……と言うか、取り敢えずこの沈黙をどうにかしたいな…よし!ここで空気を換えよう――――)
P「あの――――」
春香の父「……君も判ってると思うが、あの子はなぁ…春香は母親に似て少々天然なところがあってな……」
P「はぁ……」
P(あの人も天然なのかぁ……あの歳を感じさせない美貌で天然キャラとか。この親父、ホント旨い事やりやがったなぁ……)
P「…………」
P(しかし…もしあと20年若かったら、アイドルとして……いや、あの人の華はアイドルよりむしろ、女優タイプか……)うーむ
春香の父「おいっ君!なにぼーっとして、人の話を聞いてるのか!?」
P「――――はっ!?済みません!!ちょっと考え事を……」
P(しまった…つい…いつもの癖が出てしまったな……)
春香の父「まぁいい。それでだな…やはり私は心配なのだよ。あの子は天然な上に、感化されやすい性格でな……」
P「…………確かに感受性は高いと思います」
春香の父「物は言い様だな。それに誰に似たのか調子がいいところもあって、芸能界なんて所に入ったら、あれやこれやですぐに、おかしな処に流
されてしまいそうでな。心配なんだ」
P「確かにお気持ちは分ります。彼女は今時の子には珍しいくらいの、純真さがありますから」
春香の父「ふんっ。君はよく判った様な事を言うな」
P「これでも…私はアイドルの芸能事務所のプロデューサーですから、人を見る目は養っているつもりです」
春香の父「だったら尚の事判るだろう。あの子は芸能界なんて世界には向いて無いのd―――――」
P「いえっだからこそです!!」
春香の父「………だからこそ?」
P「ええそうです。さっきも言いましたが彼女の天真爛漫な性格は、寧ろ何色にも染まる事は無いですし……」
P「そして、彼女には、他のアイドルにありがちな、『どうしても』っていう気負いも無い」
春香の父「確かに…今までアイドルになるって、一言も言ってなかったしな……」
P「そういう、ある種の純粋さとフットワークの軽さが、彼女の強力な武器になると私は思っています」
春香の父「……だが言い出したら聞かないがな」
P「確かに危うい所もあると思います。ですが、それは私がアイドルのプロデューサーとして、しっかり管理していきます。ですから――――」
春香の父「…………それでもやっぱり駄目だ。君に…いや誰であろうとも、誰が何を言おうとも、春香を他人に任す様な事はさせられん」
P「そうですか……」
春香の父「そういう事だ。もう君と話す事はない」
――――。
P「それでは。今日のところは失礼します」ぺこり
春香「プロデューサーさん……」
P「済まない春香。上手くいかなくて」
春香「うー。お父さんホントに頑固なんだからぁ!!」
春香の母「ごめんなさいね。あの人、ああなったら聞かない人ですから……」
春香の母「でも…それだけ春香をこの子の事を、心配しているんです」
P「分っています。今日話してみて、どれだけ春香さんを、娘さんを愛しているか分かりました」
春香の母「それで…どうなさるの?やっぱり春香の事は諦めるんですか?」
春香「お母さん!!?」
P「いえ。寧ろ益々、彼女の事を諦められなくなりました。あなた方の様な親御さんから生まれ育てられた子であれば、為人も信頼出来ますし、私
としても育て甲斐がありますから」
P「そして、そんな才能(ヒト)こそ、芸能界で成功する……と私は思っています」
春香「プロデューサー!!」ぱぁぁ
春香の母「そうですか……では頑張って下さいね」
P「はいっ。ありがとうございます!!」
―――
取り敢えず今日はここまでです
それでは。
―――――。
リビング。
春香の母「プロデューサーさん帰られましたよ」
春香の父「そうか…やっと帰ったか。で、春香は?」
春香の母「頬を膨らませて、自分の部屋に閉じこもってますよ。今頃は多分…不貞寝でもしてるんじゃないかしら」
春香の父「そうか……」
――。
春香の父「まったく…今日は疲れましたよ……」
春香の母「あなたも、本当に頑固なんだから」
春香の父「こんな時にこそ、頑固にならなくてどうするんですか?娘の一生が掛かっているというのに……」
春香の母「一生だなんて大袈裟な……」
春香の父「大袈裟なんかじゃないですよ。もし芸能界何かに入って、何か仕出かしたら…それこそ、あの子がどうなってしまうのか、心配にならな
い方がおかしい」
春香の母「確かに…私たちには縁の無かった話ですからね……」
春香の父「そうでしょ――――」
春香の母「でも春香が自分で決めた事ですし、それにあのプロデューサーさんですか?あの方が見てくれるなら、安心出来そうな気がするんです」
春香の父「ふんっ。貴女もですか?春香もあの男に妙に懐いて…全くあんな男のどこがいいんだか!」むすっ
春香の母「あら?もしかして妬いているんですか?」
春香の父「そっそんな事は無いですよ!!とにかく芸能界何かに入ったら、どんな事をさせられるか…きっと大勢の目の前で恥をかかされるに決ってますよ」
春香の母「確かに…ああいう世界ですからそういった事はあるでしょうね…でも春香もそれはある程度は覚悟の上でしょうし、それに……」
春香の父「それに…何です?」
春香の母「アナタだってここの前身のアパートの前で、酔っぱらった勢いで私の事を『好きだーーー!!!』なんて、叫んでた事があったじゃないですか」
春香の父「―――――!!」
春香の母「アレも十分恥ずかしい事だったと思いますけど?」ふふん
春香の父「そっそれはっ――――」
春香の母「ふふ…あの子のお調子者なところは、アナタに似たんでしょうね?」くすくす
春香の父「まったく、からかうのはそれ位にして下さいよ?」
春香の母「ふふ…ごめんなさい。昔の事を思い出してしまって、懐かしくなってつい……」
春香の父(でも…いったん感情が昂ぶったら、手が付けられなくなるのは、貴女に似たんですけどね…面と向かっては言えないけど……)
―――。
春香の父「……それに…やっぱり芸能界というのは、人気商売で収入も安定しないですし…もし失敗したら……と思うと……」
春香の母「……お金の事を、あなたが言いますか?」
春香の父「えっ?」ギクッ
春香の母「あなたが保育園に就職したって聞いた時は、夢があっていいなぁ…なんて思いましたけど……」
春香の父「…………」
春香の母「今はまだしも、結婚した当時はあなたの給与明細を見て、このお給料でやっていけるのか…と、正直思いましたもん」
春香の父「うぐっ!」
春香の母「でも…前のアパートを取り壊して、今のハイツに建て直した時に…オーナーの音無さんに、私に管理人を続けてくれないかって言って下さって、そのご厚意にどんなに助けられたか……」
春香の父「……確かに…音無さんには、何から何まで感謝してもし切れないな……」
春香の母「ですから…春香も同じなんじゃないかと思うんです」
春香の父「同じ…ですか?」
春香の母「はい。春香も…これから先…たくさんの人と助け合いながら生きていくと思います」
春香の父「…………」
春香の母「勿論、本人の努力も必要ですけど、そうやって何だかんだでやっていけると思うんです。春香はそういった縁や人に、恵まれてそうな子だと思うんです」
春香の母「私たちがそうだった様に――――」
春香の父「………………」
春香の父「それにあの子は、あなたに似て…どこか放って置けない所がありますから」
春香の父「……俺に似て……ですか?」
春香の母「『私』――――が言うのだから、間違いはありませんよ」
春香の父「……………そうですね」
春香の母「それにもし、失敗したっていいじゃないですか。あの子はまだ若いんですから、幾らでもやり直しは出来ます」
春香の父「それは…そうですけど」
春香の母「それに私たちだって、色々と回り道を迷い道をして、『今』があるんですから」にこ
春香の父「そうですね」
春香の父「でも…あの子は…春香はこの歳でもう、自分のやりたい事を見付けたんですね。俺なんか大学を卒業してから、やっとこさ見付けたというのに……」
春香の母「あの子も…いろいろ考えて、感じて……そうやって、少しづつ大人になっていっているんですよ……」
春香の父「そうですね……」
春香の母「あなた…さっきからそればっかり」
春香の父「そうですね……ってあっホントだ」
春香の母「全くもう、相変わらずなんだから……」くす
春香の父「ははは……そうですね」
春香の父「あははははは――――」
春香の母「うふふふ――――」
春香の母「確かにあの子の選んだ道は、あの子が思っている以上に、厳しく険しい道かもしれません」
春香の父「そうですよ。あの子は分っていない、芸能界なんて所に身を置くのが、どれだけ大変なのか」
春香の母「でも…それでも、あの子が自分で選んだ道なんです。だから私は、その想いを尊重してあげたいんです」
春香の父「それは…そうですけど……」
春香の母「それにもし、あの子が何かあって、戻って来る様な事があったら……」
春香の父「あったら?」
春香の母「その時は私たちであの子を抱き締めて、そして守ってあげればいい。私たちはあの子の…春香の『親』なんですから」
春香の父「…………親は子の成長を見守り、何かあった時は全力で身を挺して守る存在…か……」
春香の母「はい」
春香の父(俺は……あの子の――――――――)うーん
春香の父「――――――あーっもうっ訳が分からんくなってきた!色々考え過ぎて疲れました!今日は寝ます!!」
春香の母「分りました。おやすみなさい。あなた」
春香の父「……おやすみなさい」
とりあえずここまでです。
それでは。
――――――。
翌日。
夕刻ごろ。
春香さんの家のリビング。
春香「お父さんっ!今日もプロデューサーさんが来るからね!今日こそh――――」
春香の父「春香。ちょっとここに座りなさい」
春香「?話し合いならまだ――――」
春香の父「いいから。座りなさい」
春香「……分ったわよ」
すっ
春香「それでどうしたの?お父さん」
春香の父「春香……お前どうしても、その…アイドルをやりたいのか?」
春香「勿論だよ。だからこうやって何度もお願いしてるんだし……でもどうせまた反対するんでしょ!!」
春香の父「そうか…分った…………………………好きにするといい」
春香「ほらやっぱりダメって―――――えっ!?」
春香「……お…お父さん。今なんて……」
春香の父「分ったから、好きにすればいいと言ったんだ。何度も言わさないでくれ、あまり言いたい事じゃないんだから」ムスッ
春香「ホントなの!?お父さん!!」
春香の父「………………ああ」こく
春香「ありがとう!お父さん!!」ぱぁぁぁ
春香の父「ただし。一つ条件がある」
春香「条件?」
春香の父「毎年恒例の、花見には必ず参加する事」
春香「うん。絶対出るから」
春香の父「それから――――」
春香「それから!?」びくっ
春香の父「もし、どうしても辛くてどうしようもなくなったり、悩む事が有ったら、一人で抱え込まないで俺や母さんに必ず相談する事」
春香の父「母さんも……………父さんも、お前の事をずっと心配しているからな」
春香「お父さん……」ぽろ…
春香の父「芸能界はああ云う世界だから、これから色々な仕事(こと)をさせられるとは思うが、お前の尊厳が傷付けられると思う事は、絶対にしない事」
春香「うん…うん……」ぽろぽろ
春香の父「もう一つ。お前がアイドルをする以上、極力スキャンダルを起こさない事」
春香「うん……」ぽろぽろ…
春香の父「特にあのプルデューサーとかいう男には、信頼はしても【そういう事】にはなるのだけは絶対に赦さんからな」
春香「えっ!?……う…うん……」ぽ…ぴた
春香の父「おい春香」
春香「何?お父さん」
春香の父「お前、とぼけた顔になってるぞ?もしかしてもうあの男の事を―――――」
春香「そっ!そんな事ないよ!!?もうっ何言ってるのお父さん!!でも――――――」
春香の父「でも?」
春香「本当にありがとう…お父さん―――――」
春香の父「ああ。分かったよ」
春香「お父さんダイスキ!!」
がばぁ
春香の父「!?おおっとっ!!」
だきっ
ぎゅっ…
春香「えへへ…ありがとうお父さん」
春香の父「……まったく…こんな時にだけ。まったく…このお調子者め」
春香「えへへ。こーゆーとこは、お父さんに似たんだよ?」にこ
リビングの入り口。
春香の母(ふふ…良かったわね。春香)
―――――。
春香さんの家の玄関前。
P(今日こそは、おとう…園長先生に許しを貰わんとな……いい加減、これ以上は長引かせる訳にもいかないだろうし……)はぁ…
P(かと言って、これ以上…どうあの頑固親父を説得すればいいんだ?昨日寝るまで考えたけど、上手くいくか分かんなんし……)
P(まったく…あの親父、とぼけた顔をしてるくせに、何処までも頑ななんだからな……まぁそれだけ自分の子どもに愛情を持っているって事なんだろうけど……)
P(いい加減決めないと春香にも悪いし、俺だって春香の才能と可能性を、このまま埋もれさせたくはない―――――)
すっ…
ぱんっ!
P(よしっ顔張って気合も入れたし!行くぞ!!!)
すっ
ピンポーン。
春香の母『プロデューサーさんですか?今開けますね』
ガチャ
P「失礼します…って春香か……」
春香「………………」
P「春香。今日こそh―――――」
春香「プロデューサーさん!!!」
がばぁ!!
P「!?」
だきっ!!
P「どっどうしたんだ!?春香/////////」
春香「やりました!やりましたよ!!プロデューサーさん!!!」
ぎゅうっ
P「やったって……何を?」
春香「お父さんが許してくれたんです!私がアイドルになる事を!!」
P「へっ?」
春香の父「あんまり聞かんから仕方なしに……だ。それに娘が自分で決めた事だ…親としてその想いを尊重してやりたい気持ちもある」
P「おとう……園長先生。ありがとうございます」(最敬礼)
春香の父「ふんっ君の為ではないぞ。あくまでも春香の意志を尊重しただけだ。あと、春香の娘の事を―――――」
ばっ
ぺこり
P・春香「!?」
春香の父「何卒…よろしくお願いします」(最敬礼)
P「園長先生…………分りました。娘さんは…春香さんは私が責任を以って、立派なアイドルに育て上げてみせます」
春香「お父さん…プロデューサーさん……」
春香の父「ここまでやったんだ。何があっても絶対に春香を守ってくれ。もし…そうでない場合は…分ってるな?」ギロリ
P「はっはい!誠心誠意お守りさせて頂きます!!」びくっ
春香「もうっお父さんてば……」はぁ
春香の母「うふふ……」
春香の父「あと。春香。いい加減その男から離れなさい」ゴホン…
春香「はっ!?///////]
ばっ!
春香「す…済みませんプルデューサーさん…嬉しくなってつい……///////」かぁぁ
P「……あはは…」
春香の父「それと君―――――」
P「はい。何ですか?」
春香の父「俺は君に絶対におんぶなんか、されないからな!!」
P「……?…は、はあ……そうですか…………」
春香の母(…………さて…これから先は、一体どうなるのかしらね……)ふふふ…
取り敢えずここまでです
それでは。
―――――。
その夜。
リビング。
春香の母「そう言えば…さっき、春香に芸能界入りを許す代わりに、一つと言っておきながら、随分と沢山の注文をしてましたね」
春香の父「聞いてたんですか!?さっきの話」
春香の母「ええ。立ち聞きなんかして…悪かったかしら?」
春香の父「いや…それは…いいんですけど。全く…これでも寧ろ少ないくらいですよ!全く以って言い足りない!」
春香の母「ふふ…本当に言い足らなそうな顔してますね」
春香の父「それに…もし―――まぁ有り得ませんけど、万が一にでもあのPとかいう男が、春香と結婚したいなんて言いに来たら、それこそ…かぐや姫も躊躇する位の無理難題を突き付けてやりますよ!!」
春香の母「まあっ…」
春香の父「あの子は私にとって、かぐや姫…いや、それ以上の存在なんですから」
春香の母「ふふ…そうですね」
―――。
春香の父「もう…今まで大切に育ててきた桜が、散って仕舞った様な気分ですよ」はぁ
春香の母「違いますよ。これから咲くんですよ。蕾から花に。育てるのは私たちではないんですけどね……」
春香の父「…………まったく。これから春香はあの男に育てられて、奴の手でその花を咲かされるれるかと思うと…心底いい気はしませんよ」
春香の母「…………もうっ。ヘンな言い方で言うのはやめてください」はぁ
春香の父「でも…あの子が私たちの手から離れてしまうって思うと……」
春香の母「別に今生の別れって訳ではない…と言うか事務所にもこの家から通うんですから、そんなに肩を落とさなくてもいいじゃないですか」
春香の父「それもそうですね。そう思うと芸能人がウチにいるってのも、なかなか良いモノだって思えてきました」
春香の母「まったく…やっと自分の意志を主張出来る様になったかと思ったら、結局は流されやすいままなんですから……」
春香の父「はは…これじゃ貴女と初めて逢った時から何も変わって無いですね……かあ…いや、管理人さん」
春香の母「でも…貴方のそういうところも好きだったから、今…私は貴方と一緒に居るのですから……」
春香の父「響子さん……」
すっ…
春香の母「裕作さん……」
すっ…
――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――
―――――――――――――――
―――――――――――
――――――――
―――――
―――
――
―
^
―――――――。
数日後。
765プロ事務所。
春香「―――――――皆さん!今日からよろしくお願いします!!」ぺこり
ぱちぱちぱちぱち
ミーティング室。
P「さて…今日から正式に、ウチの事務所の所属アイドルになったわけだけど……」
春香「はい。がんばりますっ!」ぐっ
P「まずは最初に芸名を決めたいと思うんだが…どうかな、本名の『五代 春香』で往くのか、それとも……」
春香「芸名で往きたいと思います。だってその方が芸能人っぽいですし」
P「はは…春香らしいな。まぁ春香自身がそう決めたんなら、それでいいだろう。さて…どんな名前を付けるか……」
春香「それなら、もう決めてます」
P「ほう…なんて名前なんだ」
春香「―――――――天海―――――――『天海 春香』…です」
P「…………『天海 春香』か。ふむ…どうして、その名前にしようと思ったんだ?」
春香「それはですね…私の夢はいつかドームで歌う事だという事は知ってますよね?」
P「ああ。何度も聞かされたからな
春香「そんな大きな目標を達成するには、やっぱり天(そら)と海の様におっきな存在に、ならないといけないと思うんです」
P「そうだな」
春香「だから、それならいっそ名前を『天海』にしてしまえって思ったんです」
P「…………そうか……」
春香「…………だめ…ですか?」
P「……いや、駄目ではないが……でもそれだったら、下の名前は変えなくていいのか?」
春香「はい…この名前は…両親が付けてくれたものですから、この『春香』って名前は大事にしたいんです」ぎゅっ
P「そうか…分った。よしっ『天海 春香』でいこう!!」
春香「はいっ!ありがとうございます!プロデューサーさん!!」
P「じゃあ。これから辛い事も苦しい事もあるだろうが、その先にある夢に向かって頑張ろう!!」
春香「はい!よろしくお願いします!!プロデューサーさん!!!」
―――――――――――。
それから、春香のアイドルとしてのレッスンと活動が始まり――――――。
彼女は少々ドジで天然なところもあったが、持ち前の元気と一生懸命さで、アイドルとしての心構えや、歌唱力、ダンス技術の向上など、次々とアイドル歌手に必要なスキルを習得していった―――――。
そして―――――――
観客「「「「うぉぉぉぉぉぉーーーー!!!」」」」
春香「今日は私の初の単独ライブにお越し頂いて、ほんっっとーーーーにありがとうございます!!」ぺこり
観客「「「「うおぉぉぉぉぉーーーー!!!!」」」」
春香「ここまで来れたのも…みんな私の可愛さと才能―――――じゃなくて応援してくれた皆さんのお蔭です!!!」
春香(もちろん。私をこの世界に送り出してくれた、お父さんとお母さんの御蔭である事も、忘れてないからね!)
観客「「「「うぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!」」」」
春香「そんな皆さんに、めいっぱいの感謝と、めいっぱいの嬉しい気持ちと想いを込めて!最初の一曲目はこれしかないと思って、この歌に決めました!!!!」
観客「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ――――――!!!!!」」」」
春香「皆さん!!これまでありがとう!!そしてこれからもよろしくお願いします!!!」
観客「「「「うぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!」」」」
春香「では早速!唄います!!―――――――」すぅ…
観客「「「「――――――――――」」」」じっ…
春香「『悲しみよこんにちは』―――――――――」
観客「「「「えっ!?」」」」
おしまい。
誰か書いてそうで、恐らくは誰も書いて無いお話だと思い書かせて頂きました。
実質の主役が春香さんでもPさんでもなかった、気もしないではないですが、
どうにか終わらせられて良かったです。
ありがとうございました。
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