モバP「トリオ・ザ・スペシャリスト」 (213)



 ※まえがき


・不定期更新。8月中には一区切りつけたいな……
・オリキャラというか、Pとちひろとトレ以外のスタッフが出て来ます。
 そして彼らがメインのSSです。

 それでも楽しめるという方は、どうぞお付き合い下さい







SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407729884




―MBプロ事務所―



ちひろ「と、いうわけで……」

P「……」ムスッ

ちひろ「万年スタッフ不足のMBプロに新しいスタッフさんが来ることになりましたー!
    はい拍手―!拍手拍手―!」パチパチパチパチ!!

P「……チッ」






ちひろ「しかも一気に3人もですよ3人も!これでブラック企業が裸足で逃げ出すほどの
    ウチの業務もかなり楽になるでしょう!バンザーイ!バンザーイ!」

P「……ソッスネ」

ちひろ「おまけに3人はアメリカの超大手芸能事務所勤務の超エリートらしいじゃない
    ですか!必ずウチの即戦力になるって引き抜いた社長も太鼓判を押してますし、
    ウチの業績もアップアップですね!」

P「……」イライライライラ…



ちひろ「今回彼らは業務提携の一環としての期間限定の出向ですけど、このままウチに
    取り込んじゃいましょう!いくら相手がビッグカンパニーの社員でも、ウチの
    敷居を跨いだ瞬間からウチの所有物です!出向期間が終わってもそう簡単には
    帰しませんよ!ね、プロデューサーさん!」ニコッ
  
P「……やっぱり出向の話は断ってきます。俺のアイドル達が他の誰かにプロデュース
  されるのを黙って見ていられません」スクッ

ちひろ「ちひローリングソバット!! 」ドゴッ!!

P「ぐはぁ!? 」ドガシャーン!!

ちひろ「カウント1!2!3!はい私の勝ちー!ウィーッ!」カンカンカーン

P「」チーン






ちひろ「はぁ…… プロデューサーさんもいい加減に大人になってくださいよ。そもそも
    彼らはあなたの業務をサポートする為、ひいてはアイドル達が今よりももっと
    レベルアップする為に来てもらうんですよ?」ヤレヤレ

P「……俺のプロデュースのレベルが低いと言いたいんですか?」ギロリ

ちひろ「いえ、そうではありません。大勢のアイドルのプロデュース方針を1人で決め、
    4人のトレーナーさんに指示を出して最適なレッスンを施し、各業界への挨拶や
    宣伝も欠かさずに行い、彼女達に最高の仕事環境を提供しているプロデューサー
    さんの手腕はもはや神業と言っても過言ではないでしょう」

P「伊達に10年近くこの業界でアイドルのプロデュースをしてませんよ。中学時代の
 プロデュースの真似事を含めるともっと長くなりますが」フン





ちひろ「ですがあなたが完璧なのはアイドルのプロデュースだけです。アイドル達の
    心の奥底にある『普通の女の子としての』悩みや不安のケアまで手が回って
    いないのは事務員の私でもわかりますよ」ジロリ

P「そ、それは 気付いた時は可能な限り問題解決にあたっていますが……」ゴニョゴニョ

ちひろ「表面化してからでは遅いんです。事実過去に何十人もそれで辞めているじゃ
    ないですか。この問題の解決策として社長はアイドルを幅広い世代で集めて
    アイドル同士でも悩みを相談できる環境を作りましたけど、それでも全ての
    子達を救えるほどこの問題は簡単ではありません」キッパリ

P「うぐ……」





ちひろ「彼ら3人にはそれぞれの能力を使って、アイドル達が抱えている小さな問題や
    悩みが大事になる前に解決にあたってもらいます。ですから彼らはアイドルの
    プロデュースに干渉しません。社長も何度もそう説明していたと思いますけど
    まだわかりませんか?」ハア

P「わかってます、わかってますけど……」ギリギリ…

ちひろ「それに業界歴が長いベテランのプロデューサーさんは、これからのアイドルの
    プロデュースを志す後進達を育てるという大事な仕事があるじゃないですか。
    アイドルのプロデュースとは全く性質が異なるプロデューサーの育成も行うと
    なると、いくらプロデューサーさんでもキャパオーバーでしょう?」




P「確かにこの2つの仕事を同時に行うのは非常に厳しいです。無理をして行っても、
  プロデュースに粗が出るのは避けられないでしょう。そうなると彼女達の悩みを
  見逃がすどころか増大させる危険もあります。ですが……」プルプル…

ちひろ「……そんなにアイドルのみんなと離れたくないんですか?」

P「当たり前じゃないですか!何が悲しくてこの業界に下心と下半身丸出しで入ってきた
  ケダモノ共にこの俺がプロデュースを教えなくちゃいけないんですか!手塩にかけて
  育てたみんなと会えなくなるのも悲しいですが、あまりにも気が進まない仕事内容に
  俺のモチベーションはマッハで下がりまくってますよ!」←血涙

ちひろ「ケダモノって…… あなたも同じプロデューサーじゃないですか」



P「いいえ違います!俺はトップアイドルを生み出すという崇高な目的の下に今まで
  必死に働いてきました!巨乳アイドルが他の事務所より多いのはたまたまです!
  巷で騒がれている『MBプロは巨乳好き』というのはデマです!」グワッ!!

ちひろ「バスト90以上が17人もいるのに、巨乳好きではないと言い張るのは苦しい
    ですよ。これから90に届きそうな子もわんさかいますし、どこからそんなに
    沢山スカウトしてきたのか不思議なくらいです」



P「まあそれらのリスクを差し引いても、運営委員会がプロデューサーの育成を急いで
  いるのもわかります。この業界は慢性的にプロデューサー不足ですし、アイドルを
  Sランクまで育成出来る優秀なプロデューサーとなると数えるほどしかいません。
  俺が委員会に抜擢されたのは光栄なことです」フウ

ちひろ「そ、そうですよ!この業界にはプロデューサーさんの力が必要なんです!
    アイドル達が輝く為にはプロデューサーの存在は欠かせないんですから、
    この仕事は未来のアイドル達の為でもあるんですよ!」

P「それもわかってるんです、わかってるんですけど……」ギリリ…

ちひろ「……まだ何かあるんですか?」



P「どうして男のアイドルまでプロデュースをしなくちゃいけないんだ―――――っ!!
  ヤロウのプロデュースなんてやってられるか―――――っ!! 」(悲痛な叫び)

ちひろ「それが一番の理由か―――――いっ!! 」ズコー

P「イヤだ―――――っ!! 男のプロデューサーを育成して、男のアイドルをプロデュース
  するなんてイヤだ―――――っ!! 俺はそんなことをする為にプロデューサーやって
  いるんじゃないんだ―――――っ!! 」ジタバタ!!

ちひろ「うわぁ、大の男が床の上で駄々っ子みたいにジタバタしてる…… こんな姿を
    アイドル達が見たらドンビキするでしょうね」ハア…







***



ちひろ「ということで、提携先のアメリカはハリウッドから『CGカンパニー』の皆さんに
    お越しいただきました!それでは皆さん自己紹介をどうぞ!」



Q「ボンジュ~ル♪ CGカンパニーのチーフスタイリストQuentin(クァンタン)よ~♪
  カンパニーでは『Q』って呼ばれてるからよろしくね~♪」クネクネ



P「……」イラッ





Co「Connor(コナー)だ。CGカンパニーではアクターをメディカル面からサポート
   している。カンパニーでは『Dr.Co』と呼ばれているからCoと呼べ」フンッ



P「……」イライラッ





Pa「よぉブラザー!オレはPaulo(パウロ)ってんだ。出身はブラジルで、カンパニー
  ではアクターのボディガードとか雑用とか、まあ色々とやってるぜ。あ、ついでに
  このスキンヘッドは剃ってるんだからな?ハゲてるわけじゃねえぞ?」ピカッ!!



P「」ブチッ

P「社長もマトモなヤツ引き抜いてこいや―――――っ!! 」ドッカーン!!

ちひろ「失礼ですよプロデューサーさん!彼らはCGカンパニーの中でも特に優秀な
    人達なんですからね!」アセアセ




Co「私をこのオカマとハゲと一緒にするな。非常に不愉快だ」フンッ

P「お前が一番ヤバいんだよ!シャツの上から黒いレースのブラが透けてるぞ!」グワッ!!

Co「男がブラジャーをしてはいけないという法律があるのか?最近ではメンズのブラも
   出回っているし何も問題あるまい。私が愛用しているのは上下共にレディースだが」








Q「アタシもランジェリーを愛用してるわよ~ん♪ ブラはしてないけどね♪」クネッ

P「イギリス人とフランス人に偏見を持ってしまいそうだ……」

Pa「安心しろブラザー!オレはブラザーと同じフンドシだ!親日家だからな!」ニカッ

P「俺はふんどしじゃねえ!日本男児でも今時ふんどしのヤツは少数派だよ!」グワッ!!

Pa「ええっ!? そうなのかっ!? じゃあチヒロもフンドシじゃないのか?」

ちひろ「違います!ていうかさっきから何の話をしてるんですか!いい加減に業務の
    説明に入らせて下さい!」






―――



ちひろ「皆さんも聞いていると思いますが、MBプロでは主にプロデューサーさんの
    プロデュース業務のサポートと、アイドル達のケアを担当してもらいます。
    わかりやすく言えば皆さんはプロデューサーとトレーナーさん達の中間で、
    アイドルが仕事とレッスンをストレスなく行えるようにして欲しいのです」

Pa「ウチのボスにも言われたけど、ちょっと何言ってんのかよくわかんねえなあ。
   具体的にオレ達は何をすればいいんだよ?」ポリポリ

P「『何でも』だ。アイドル達が抱えている問題は千差万別で、仕事もプライベートも
  関係ない。いくら社会に出て大人達と仕事をしているとはいえ彼女達はまだまだ
  未熟だし公私混同もすぐ行ってしまう。だから『こうすればいい』というような
  マニュアルは存在しないし、俺達はその都度知恵を絞らなければいけない」

Pa「うへぇ、そりゃ大変そうだなあ……」




Q「そこはアタシ達がCGカンパニーで磨いてきたスキルとキャリアでカバーすれば
  いいのよ。ボスもそう言ってたでしょ?」

Pa「オレはボディガードくらいしか出来ねえぞ?お前らは頭も良いし、役に立ちそうな
   専門的なスキルがあるけどよお」

Co「フンッ、自信がないならアメリカに帰れ。私1人でも十分だ」

P(仲悪いのかこいつら……?)



ちひろ「まあそう言わずに。それでは早速ですが、まずは皆さんにテストを受けて
    もらいます。プロデューサーさんと両社の社長を交えて相談した結果、
    皆さんにはウチの事務所の各チームを代表するユニットのサポートとケアを
    してもらうことになりました」

P「手元の資料に書いてあるが、MBプロはアイドルを3つのチームに分けている。
  アイドルとしての愛らしさを前面に出したキュート、クール&ビューティーが
  モットーのクール、そしてパワフルでポジティブな魅力が売りのパッションだ。
  各チームの代表ユニットは……」

Q「キュートは『ピンキーキュート(PC)』、クールは『トライアドプリムス(TP)』、
  パッションは『ポジティブパッション(PP)』ってところかしら?」




Co「メンバーはPCが島村卯月・小日向美穂・五十嵐響子、TPが渋谷凛・北条加蓮・
  神谷奈緒、PPが本田未央・日野茜・高森藍子だったか」

P「ほう、もうそこまで調べあげたのか」

Pa「オレは今初めて知ったぞ」

ちひろ(なんでこの人CGカンパニーに入れたんだろう……)





Co「フンッ、これくらいMBプロのHPを見ればわかる。それよりも、この3つの
   ユニットのリーダーが集まった『ニュージェネレーション(NG)』をケアすれば
   3チーム見なくてもMBプロ全体のアイドル像が把握できるはずだ。違うか?」

P「まあ間違ってはいないな。だがNGは俺が歴代でも完璧に仕上げたユニットで、
  プロデュース経験のないお前らが入り込む余地はないと自信を持って言えるぞ。
  今回はテストだから、まずはお手並み拝見ということで難易度を下げた」ニヤリ

Co「……随分とナメられたものだな」イラッ




P「難易度を下げたと言っても、この3つのユニットもハイレベルで仕上げている。
  そこらのプロデューサーならどこをケアすればいいのか全く気付かないだろう。
  現に今の状態でも、この3つのユニットは問題なく活動しているしな」

Pa「じゃあオレ達は何の為にこんなことをするんだ?」

P「俺のプロデュースのサポートをするなら、まずは俺のレベルについてこれるのが
  絶対条件だ。俺だけじゃない、ウチのアイドルは全体的に質が良いと業界内でも
  評価が高い。そんなMBプロが抱える問題は、他の事務所ならば問題にならない
  ような繊細で高度で複雑なものなんだよ」

Q「だからCGカンパニーのエキスパートのアタシ達が選ばれたワケね」ニヤリ

P「そういうことだ。3人で力を合わせて各ユニットをケアしてもいいし、各自で
  分担しても構わない。ただしテスト期間は1週間とする。1週間でこの課題を
  クリア出来なければ、CGカンパニーに帰ってもらうからそのつもりでな」



Co「フンッ、1週間も必要ない。それにこいつらと組むつもりもない」

Q「相変わらずカンジ悪いわね。まぁ、アタシもアンタと組むのはイヤだけど♪」

Co「私はTPを担当する。この中では一番難易度が高そうだからな。後はお前達で
   勝手に決めろ。もちろん手を貸すつもりはないし、私の邪魔をするなよ」

Q「じゃあアタシはPCにしようかしら。アタシカワイイ女の子ってダイスキ♪」

Pa「じゃあオレはポジティブナントカか?ま、一週間あればどうにかなるか」

P「決まりだな。じゃあ今日はこれで解散だ。テストは明日の朝8時から開始とする。
  今日はこのまま事務所でアイドル達に会って情報を集めるもよし、レッスン場に
  行くのもよしだ。ただしテスト対象の9人はオフだからいないがな」





Co「では失礼させてもらう。アメリカから着いたばかりで眠いんだ。今日はこのまま
  ホテルで休むから連絡はメールにしてくれ」スクッ

Q「アタシはレッスン場に行こっと。アイドルの子達に会えたらラッキーかも♪」スクッ

Pa「オレは観光でもしてくるかな。アサクサとか行ってみたいし」スクッ







 スタスタスタ…… バタン



ちひろ「不安です…… 特にPaさん……」ハア

P「いや、アイツは大丈夫ですよ。課題をクリア出来るかどうかはわかりませんが、
  未央達と仲良くやるでしょう。問題はCoですよ」

ちひろ「ああ、ブラ透けてますもんね。加蓮ちゃんが嫌がりそうです……」

P「それもありますが『TPが一番難易度が高そう』と判断したのがわかってないなと。
  確かにクールは気難しい子が多いですが、TPが抱える問題はPCとPPに比べて
  シンプルです。ただしケア出来るかどうかは別ですがね」




ちひろ「なるほど。ではQさんはどうですか?」

P「あいつはよくわかりません。それよりもさっきあいつが俺を見る時、チラチラと熱い
  視線を感じたのですが気のせいでしょうか……」ゾクゾク

ちひろ「ふふっ、プロデューサーさんはモテますね♪」クスクス

P「やめてください!マジでやめてください!男のプロデューサーやアイドルと関わる
  だけでも憂鬱なのに、安息の場であるはずの事務所でも俺は身の危険を感じながら
  仕事をしないといけないんですか!? 」グワッ!!





ちひろ「私には関係ないですし~♪」

P「鬼!悪魔!ちひろ!」

ちひろ「あ、指が勝手に動いてQさんのメアドにプロデューサーさんの住所を……」スッ

P「ギャ―――――ッ!! ごめんなさいすません勘弁して下さい!! 」



ちひろ(こうして3人のスペシャリストさん達による、アイドル達のケアとサポートが
    始まりました―――――)









 まずはプロローグ終了です。「MBプロ」と「CGカンパニー」でピンと来た方も
いると思いますが、このSSはモバマスお姉さんシリーズと同じ世界で、あの話の
続きです。シリーズを読まなくても楽しめるように作りますが、CG社との提携の
いきさつや、プロデューサーが新人Pの育成に駆り出された詳細が知りたい方は
そちらのシリーズを読んで戴けるとわかると思います。ではまた次回

>>32
過去作のURLを貼って下さい……

>>35

1.兵藤レナ「遊んで行かない?」 

2.三船美優「フルオーダーメイド」

3.相馬夏美「空の上で」 

4.服部瞳子「アシンメトリー」

5.高垣楓「くせもの」 
高垣楓「くせもの」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363766552/)

6.川島瑞樹「ローカルマドンナ」
川島瑞樹「ローカルマドンナ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364113441/)

7.片桐早苗「署までおいでよ」
片桐早苗「署までおいでよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364985549/)

8.和久井留美「デイドリーム」  
和久井留美「デイドリーム」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365779696/)

番外.沢田麻理菜「海の女と鮫の女」
沢田麻理菜「海の女と鮫の女」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385985830/)

- - - - -

9.篠原礼「大人のおつきあい」 
篠原礼「大人のおつきあい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368118140/)

10.柊志乃「ホーリークーデター」  
柊志乃「ホーリークーデター」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371280650/)

11.高橋礼子「絶対女王政」
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1380979269/)

12.木場真奈美「プロミネンス」
木場真奈美「プロミネンス」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385698330/)

13.千川ちひろ「ヴィンテージレディトーク」
千川ちひろ「ヴィンテージレディトーク」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389611719/)


点線から上は一話完結、点線から下は続き物となっています。今回の話と続いているのは
礼さんのお話からですので、ざっくりと読みたい人はここからどうぞ。多分わかるはず……

ちなみにピンキーキュートのメンバーですが、決して間違えたわけではありませんw
これ以上はネタバレになるので控えさせてもらいますが、作者は響子も智絵里も好きですよ!






Case 1「ヤマトナデシコ」



【Qの基本情報】
 フランス出身の25歳。身長170センチ体重60キロ。本名はQuentinで、「Q」という
ニックネームで呼ばれている。オネエ口調で話すゲイだが、カワイイ女の子も大好き。
 CGカンパニーでは俳優や女優のヘアセット、メイク、衣装などを一手に引き受ける
チーフスタイリストをしている。Pのことが好き?









―テスト初日・事務所8:00am―



P「おはようございまーす」ガチャ

ちひろ「おはようございます」

P「あの3人はまだ来てないんですか?」

ちひろ「先ほどQさんがお見えになりましたよ。卯月ちゃん達のスケジュールを確認
    した後に、午後から会議室を使わせて欲しいと申請されました」




P「ほう、あいつはマイペースな雰囲気がしたがなかなか行動が早いな」

ちひろ「それからあの子達がよく行ってるケーキ屋さんやお菓子屋さんがあったら、
    教えて欲しいと言われました。お茶会でもするつもりでしょうか?」

P「なるほど、キュートのアイドルには効果的な手段だな。なかなか良い判断だ」フッ

ちひろ「まずはお茶でも飲みながら、軽く顔合わせと挨拶でしょうか?」

P「いや、それならばこんなに朝早くから準備しなくてもいいでしょう。おそらくQは
  今日中にカタを付けるつもりですよ」ギラリ

ちひろ「ええっ!? まだテスト初日ですよ!? 」ギョッ!!






P「ピンキーキュートの問題は1日も早く解決した方がいいんです。あの子達と仲良く
  なった後では、あのユニットが抱える問題に気付きにくくなりますから」

ちひろ「どういうことですか?そもそも私はあんなに可愛くて良い子達のどこに問題が
    あるのかさっぱりわからないんですけど……」

P「わかってるじゃないですか。その『可愛くて良い子』なのが問題なんですよ」

ちひろ「可愛くて良い子なのが問題……?」







***



―3:00pm―



Q「ボンジュ~ルマドモアゼルちゃん達~♪ 待ってたわよ~ん♪」クネクネ

美穂(わ、わぁ、色々とすごいなぁ……)

卯月「はじめまして!島村卯月17歳です!」ニコッ

Q「や~んカ~ワ~イ~イ~♪ 今お茶の用意をするから座って待っててね♪」ウィンク☆

響子「あ、私手伝います!」サッ





島村卯月(17)
http://i.imgur.com/2ZvgeqF.jpg

小日向美穂(17)
http://i.imgur.com/yIbBZyq.jpg

五十嵐響子(15)
http://i.imgur.com/qSL9Djv.jpg





Q「あら、いいのよ別に。あなた達はゲストなんだから」

響子「いえ、やらせてください!私家事とか料理とか好きですから!」ニコッ

Q「そうなの?それじゃカップとソーサーを用意してもらえるかしら」

響子「わかりました!」サッサッサッサッ



Q「へえ、手際良いわね。あなた名前は?」

響子「あ、すみません!五十嵐響子、15歳ですっ!よろしくお願いします!」ペコリ

Q「キョーコね。アタシの助手にしてあげてもいいわよ♪」ニヤリ

響子「ええっ!? あ、ありがとうございますっ!」テレテレ

卯月「すごいなあ響子ちゃんは。私あんなに早く動けないや」

美穂(あ、自己紹介するの忘れた……)






―――



卯月「Qさんはスタイリストさんなんですか?」

Q「元々はコワフュール…美容師だったんだけど、アタシ腕が良かったからスカウト
  されちゃったの。それからCGカンパニーでメイクやファッションも経験して、
  チーフスタイリストになったのよ♪」

美穂「ええっ!? じゃあチーフのQさんがいなくなっちゃって、CGカンパニーさんは
   お仕事とか大丈夫なんですか?」

Q「だ~いじょうぶよ~アタシの部下はみんな優秀だから♪ それに今ウチの会社で
  映画作ってるんだけど、主演女優がイヤなオンナでさ。アイツのブサイク顔に
  メイクするよりも、アンタ達とおしゃべりする方が100倍楽しいわ♪」






卯月「その女優さんって、有名な人ですか?」

美穂「だ、ダメだよ卯月ちゃん、そんなこと聞いたら……」アセアセ

Q「[ピ―――――]よ」アッサリ

卯月・美穂「「ええ―――――っ!! 」」ガタタッ!!

卯月「し、信じられない、あんなに綺麗で優しそうな人なのに……」

美穂「でも奏ちゃんはあの女優さんのこと嫌いって言ってたような……」

Q「アタシ達が頑張ってキレイにメイクしてるのよ。一応オフレコでヨロシク♪」





響子「Qさんってスゴイ人なんですね!私もメイクを教えて欲しいです!」

Q「ウレシイこと言ってくれるじゃない。でもキョーコは今のままでもいいわよ。
  健康的で肌にハリもあって、メイクしてもはじいちゃいそうだし」ツンツン

響子「ほんとですか!? ありがとうございますっ!」

Q「それに比べてウヅキ。アンタ昨日夜更かししたでしょ?」ジロリ

卯月「ええっ!? ど、どうしてそれを……」ギクッ





Q「メイクで目元のクマを隠しているのバレバレよ。アタシの目をごまかせるとでも
  思ったのかしら?そんなの上手になってもいいことないわよ」

美穂「あ、ほんとだ。よく見るとうっすら……」マジマジ

卯月「み、見ないで~!」カアア

Q「若いうちはいいケド、歳をとったら消えないわよ。アタシ達は相手がどんなに
  酷い顔でも限られた時間でキレイに仕上げなくちゃいけないんだから、余計な
  仕事を増やさないでね」

卯月「ううぅ、ごめんなさい……」シュン





Q「やーん!ションボリするウヅキもカーワーイーイー!」ダキッ!!

卯月「ひゃあ!? 」ビクッ!!

Q「ホントにカワイイわねアンタ。こうやっているとCGカンパニーに帰りたくなく
  なくなってきたわ。このままMBプロに移籍しちゃおうかしら?」スリスリ

美穂「ええっ!? それは……」ギョッ!!

Q「あら、なにミホ?アタシのことキライ?」ジロリ

美穂「そ、そういうわけじゃ……」アタフタ





卯月「……美穂ちゃんが好きなのはプロデューサーくんだもんね」ボソッ

美穂「卯月ちゃん!? 」ギョッ!!

美穂(もしかして、さっき目のクマ見たの怒ってる!? )

Q「なになにコイバナ~?言っちゃえ言っちゃえ♪」ニヤニヤ





美穂「ち、ちち違うんです!いや違うって言うのはPさんが嫌いってわけじゃなくて、
   あ、ももももちろん、Qさんのことも嫌いじゃないですし、ちょっとびっくり
   したっていうか、じゃなくてプロデューサーくんっていうのは……」アセアセ

響子「美穂ちゃんが持っているくまさんのぬいぐるみですよ。美穂ちゃんが演技の
   勉強をしていた時に、そのぬいぐるみをプロデューサーって呼んでいたから
   プロデューサーくんって名前がついたんです」ニッコリ

美穂「そ、そそそそうなんです!わわわ私は別にそんなつもりはなかったんですけど、
   いつの間にかみんなプロデューサーくんって呼んじゃって……」アタフタ

卯月「でも美穂ちゃん、プロデューサーくんと毎晩一緒に寝てるよね」サラリ

美穂「卯月ちゃ―――――ん!? 」





Q「やーんオートーメー!ミホもすっごくカーワーイーイー!」

響子「はうう…… 恥ずかしい……」カアア

響子「ふふっ、卯月ちゃんも美穂ちゃんも可愛いですよ♪」ニコニコ





訂正>>53

×響子「はうう…… 恥ずかしい……」カアア

○美穂「はうう…… 恥ずかしい……」カアア






***



卯月「今日はごちそうさまでした!Qさんのお話とっても面白かったです!」ペコリ

Q「ありがと~♪ またみんなで女子会しましょうね♪」ウィンク☆

美穂「女子……会?」

Q「ミホ、アタシはオトコノコ?それともオンナノコ?」ジロリ

美穂「ふぇ!? え、ええと、せ、せせ性別は男の人で心は女の人です!」

Q「や~んショウジキ~!でもそんなミホもカーワーイーイー♪」

美穂(つ、疲れた……)グッタリ






響子「卯月ちゃん、美穂ちゃんと一緒に先に寮に戻ってください。私は会議室を
   片付けてから行きますから」

卯月「え?私も手伝うよ。そっちの方が早く終わるでしょ?」

響子「いえ、大丈夫です!5分もかかりませんのでパパっと済ませちゃいますよ!
   Qさんも後は任せてください!」ニコッ

Q「そう?じゃあお願いしようかしら。行きましょうかウヅキ、ミホ」スタスタ

卯月「ごめんね響子ちゃん、それじゃ任せるね」

美穂「いつもありがとう響子ちゃん。無理はしないでね」






 バタン



響子「……ふう」

響子「さてと、片付けよっと!」カチャカチャ








ガチャ



響子「 !? 」ビクッ!!

Q「やっとアンタの素顔を見た気がするわ、キョーコ」スタスタ

響子「ど、どうしたんですかQさん?忘れ物でも……?」

Q「ええ、アンタに聞き忘れたことがあったのよ」ギラリ

響子「わ、私に?」






Q「キョーコ、『良い子』と『可愛い子』は全然違うのよ。アタシが今日の女子会で
  アンタに一度も『カワイイ』って言わなかったの気付いてた?」

響子「え……」

Q「キョーコ、アンタはとっても良い子よ。気が利くし仕事は早いし、自分のことより
  相手のことを考えて行動が出来る優しい子だわ。でもね……」



Q「アンタはアイドルとして、絶望的に可愛くないわ―――――」








つづく




***



響子「ぜ……ぜつ……」

Q「あ、言っとくけどルックスはいいわよ。健康的で肌にハリがあるって言ったのも
  ウソじゃないし、アンタが体調に気を遣ってるのはカオを見ればわかるし」

響子「じゃあ何が……!」

Q「アンタが一番わかってるんじゃないの?アンタのやることってウソくさいのよ。
  たとえそれが良いことでもね」ジロリ

響子「 っ!? 」ビクッ!!






Q「オトコならコロっと騙されるでしょうね。アンタみたいなルックスの良い子が
  嫌な顔せずにテキパキと世話を焼いてくれるんだから。将来は良いお嫁さんに
  なるだろうなとか、ありもしない幻想を膨らませるでしょう」

Q「オンナでもなかなか見抜けないでしょう。カンの鋭いコは気付くかもしれない
  けど、日本人ってアンタみたいなコがいいんでしょ?何て言ったかしら、ああ
  そうそう『ヤマトナデシコ』だわ。でしゃばらずに一歩引いてオトコを立てて
  尽くすオンナ?アタシには理解出来ない価値観だけど」



響子「……」イラッ






Q「アンタの本性はオトコは騙されるしオンナは見抜けないけど、オカマにはよ~く
  わかるわよ。アンタ最初にアタシを見た時に「気持ち悪い」って思ったでしょ?
  ミホはハッキリ顔に出てたけど、アンタも一瞬眉がつりあがったわよ」

響子「そ、そんなことは……」

Q「アタシが映画女優の悪口を言ってた時、アンタはウヅキより目が輝いてたわよ?
  ホントはそういうゴシップが大好きだけど、そんな話で盛り上がるのは下品だと
  思ってガマンしてたんでしょ?」ニヤリ

響子「わ、私は卯月ちゃんが下品だなんて思ってません!






Q「隠さなくてもいいわよ。今ここにはアタシとアンタしかいないんだから。アンタは
  心の中ではウヅキとミホを見下している。自分は2人よりも気が利くし上品だし、
  役に立つオンナでしょって必死にアピールしてるのがバレバレなのよ」

響子「違う!違います!」

Q「いいえ違わないわ。あ、それからミホがプロデューサーくんの話をした時だけど、
  アンタ一瞬コワイ顔になったわよ?アンタもPの事が好き……」

響子「うわあああああああああっっっ!! !! !! 」



 バチーン!!




響子「はあ…… はあ……」

Q「……気が済んだかしら?」ヒリヒリ

響子「あ…… ご、ごめんなさい……」

Q「このアタシのカオにビンタするなんていい度胸してるじゃない。もちろん覚悟は
  出来てるでしょうね?」ギロッ!!

響子「ひっ!? 」ビクッ



Q「そこ動くんじゃないわよ。当たり所が悪かったら鼓膜が破れるからね」スッ…

響子「う、ううぅ……」ガタガタ…

Q「歯ァ食いしばれやゴルアァァッッッ!! !! !! 」ブンッ!!

響子「……っ!! 」ギュッ







 ペチ



響子「…………へ?」

Q「冗談よ。アタシはプロのスタイリストなんだから、キレイな女の子のカオにキズを
  つけるなんて出来るわけないじゃない」ナデナデ

響子「あ、あはは…………」ヘナヘナ






Q「まぁビンタされたのはマジでムカついたけど、ビビリまくった後に放心して床に
  へたりこんだアンタがカワイイから許してあげるわ」ニヤニヤ

響子「な……っ!? 」カアア

Q「あ、そのカオもカワイイわね。アタシ的にポイント高いわよ♪」

響子「や、やめてくださいよぅ……」モジモジ

Q「ふふ……」

Q「…………」

響子「Qさん?」





Q「……『緒方智絵里』」ボソッ

響子「っ!? 」ビクッ!!

Q「思った通りだわ。アンタこのコが相当キライみたいね」

響子「……嫌いではないんです。智絵里ちゃんはとっても優しくて良い子だし、私も
   普段は仲良くしています。でも私、時々あの子が怖くなるんです」






Q「怖い?」



響子「はい。智絵里ちゃんがアイドルとして活躍すればするほど、私という存在が
   消えてなくなってしまいそうで……」ギリッ








―――



響子「TPとPPと合同でピンキーキュートの初ライブの一週間前に、私は高熱を出して
   入院したんです。ライブ本番までにギリギリ退院出来たんですけど、Pさんは病み
   上がりの私に無理はさせられないって言って、私をメンバーから外しました」

Q「で、アンタの代わりにピンチヒッターで入ったのがチエリだったのね?」

響子「はい。その時はまだピンキーキュートは卯月ちゃんがメインで歌って、私と
   美穂ちゃんはバックダンサーとコーラスだったんです。だからメンバーが
   智絵里ちゃんに変わってもライブ進行にあまり影響はなかったんですけど、
   ライブの後に智絵里ちゃんの人気に火が付いちゃって……」






Q「アタシはまだ会ってないけど、もの凄くカワイイらしいわね。ファンの間では
  『天使チエリエル』とか呼ばれてカルト的な人気があるそうじゃない」

響子「同じ女ですけど守ってあげたくなるというか、ウサギみたいな子です。いつも
   不安気で心細そうな雰囲気なんですけど、それが可愛いみたいで……」

Q「アンタはそれが気に入らないのね?」ニヤリ

響子「話をそっちに持って行かないで下さい。あの時は満足な練習時間もなかった
   智絵里ちゃんに代わってもらって、むしろ悪い事をしたと思ってます。ただ
   私は、あの時私よりもレッスンが全然足りなかった智絵里ちゃんがもの凄く
   人気が出たのを見て『可愛い』がわからなくなっちゃって……」





Q「ムズカシイことを言うじゃない。でもただバカみたいにカワイイカワイイって
  騒ぐだけの能無しよりは、アタシアンタのこと好きよ♪ 」ウィンク☆

響子「……ありがとうございます」サササッ ←Qから5メートル離れる

Q「……アンタだんだん遠慮がなくなってきたわね」イラッ

響子「もうバレちゃいましたから。でも卯月ちゃん達を見下してはいませんよ?」





Q「はいはい、それでいいわよ。で、さっきの話に戻るけど「カワイイ」っていうのは
  どういうことだろうって、アタシもいつも考えてるわ。アタシ達はそのカワイイを
  メイクやファッションで相手に作ってあげるのが仕事だからね」

響子「それは大変ですね……」

Q「もうタイヘンよお~ 一応テンプレはあるのよ?例えばだけど、こうやって口角を
  微妙にあげてカオを作ってみたり……」クイッ

響子「 !? 」ギョッ!!

Q「オンナノコらしいポーズや仕草を決めてアピールしてみたりね」クネックネッ

響子(うわぁ、スゴイけど気持ち悪い……)





Q「でもどんなに表情を作ろうが衣装で着飾ろうが、カワイイってそう簡単に作れる
  ものじゃないのよ。もちろんアンタみたいに演技してもダメ。そもそもイイ子は
  カワイイ子じゃないしね」

響子「私は別に演技をしていたわけじゃ……」

Q「でもアンタはチエリに負けたくなくて、二度とピンキーキュートから外されない
  ようにメンバーの中で1番になろうとしてたんでしょ?だから健康管理にも気を
  遣って、ヤマトナデシコになろうと必死だったじゃない」ニヤニヤ

響子「うぐぅ……」




Q「誤解しないで欲しいんだけど、アタシはアンタを買ってるのよ?ウヅキはちょっと
  ザンネンなコだし、ミホはすぐにテンパるし、あの2人にアタシの助手は無理ね。
  アンタは冷静で周りの状況もよく見てるし、判断力も優れてるから今すぐにでも
  CGに連れて帰ってスタイリストとして教育したいくらいよ」

響子「でも私は、絶望的に可愛くないんですよね?」

Q「アイドルとしてはね。アンタが考える「カワイイ」は最初から間違ってるのよ。
  そういうのが好きなファンもいるかもしれないけど、少なくともアンタの歳で
  そこまで計算してるのは気持ち悪いわ。最低でも10年は早いわね」バッサリ

響子「き、気持ち悪い……」グサッ





Q「これはアタシの持論だけど、人間が人や何か他の物に対してカワイイって思うのは
  本能だと思うのよ。だからカワイイはアレコレと考えて作るんじゃなくて、自分の
  感覚と直感に任せて本能で生み出すものじゃないかしら?」

響子「本能で生み出す?」

Q「年頃の女の子らしく下品なゴシップに食いついたり、夜更かししちゃってうっかり
  目の下にクマを作っちゃったり、初めて見るガチのオカマにビビりつつも、必死で
  そのオカマと仲良くしようとガンバったり。そういうのってカワイイと思わない?」

響子「よくわかりません……」ウ~ン




Q「アンタはクールの方が向いていたかもね。カワイイはカワイイだけで他に意味は
  ないのよ。何かの役に立つわけでもないし、ムダだって多い。だけどカワイイは
  それだけで全てが許される魔法みたいな反則技なの」

響子「じゃあ私が可愛くなるには、どうすればいいんでしょうか?」

Q「まずは自分にウソをつかないで、素直な気持ちになって行動しなさい。アンタが
  家事や料理が好きなのはわかるけど、どんなに好きなことでもやりたくない時も
  あるでしょ?そんな時はサボって他の人にやってもらってもいいのよ」

響子「そんな自分は想像出来ないです。実家でもずっとそうしてきたし……」





Q「じゃあワガママになりなさい。誰かに嫌われたっていいじゃない。PCのメンバーを
  外されてもアンタくらいの技量があればすぐ別の仕事がゲット出来るし、ユニット
  だって選び放題よ。むしろウヅキよりアンタの方がリーダーに向いてるわ」

響子「そ、そんなことは、それに卯月ちゃんはすっごく可愛いし……」



Q「でもアンタ、自分の方がウヅキよりイイオンナだって思ってるでしょ?」ジロリ



響子「…………………………………………はい」






Q「トレビア~ン!今のアンタの言おうか言うまいか必死で悩んでいるカオ、最高に
  キュートだったわよ!今日一番のカワイイだわ!」ゲラゲラ

響子「あ、あの、今のは卯月ちゃんには内緒に……」オソルオソル

Q「わかってるわよ♪ オカマはオンナよりもクチがカタいんだから♪」ウィンク☆

響子「ううぅ、何だか敵に弱味を握られたような気分……」

Q「アタシはアンタの味方よ。可愛くなりたい相談ならいつでも乗ってあげるから、
  遠慮なくしてきなさい♪ 」







***



―6:00pm―



P「PCと接触してからたった3時間で片付けるとはな。なかなかやるじゃないか」

Q「これくらいラクショーよ~ん♪ アタシにホレたかしら?」ウィンク☆

P「お、俺はノーマルだからな!」ゾクゾクッ!!

ちひろ「でもまさか響子ちゃんが問題を抱えているとは思いませんでした。Qさんは
    どうしてすぐわかったんですか?」




Q「カンタンよ~。昨日レッスン場にいたアイドルの子達をつかまえて、PCがどんな
  子達か聞いたのよ。そしたらウヅキやミホは意見はバラバラだけど、キョーコは
  全員が『イイ子』だってピッタリ揃ったの。それでおかしいと思ってね」

ちひろ「何がおかしいんですか?それに卯月ちゃんと美穂ちゃんも、悪い子じゃない
    はずですけど……」

Q「PCってキュートを代表するユニットでしょ?つまりキョーコはカワイイ子達の
  中でも更にカワイイのよね?だったら『カワイイ子』よりも『イイ子』って評価が
  揃って出て来るのはおかしくないかしら?」

ちひろ「あー…… なるほど……」

Q「むしろ女のあなたの方が気付きそうだけど?」ジロリ

ちひろ「すみません、響子ちゃんはいつも笑顔で事務所の掃除をしてくれたり、
    書類の整理も手伝ってくれるので気付きませんでした……」シュン



P「まあ実際に、響子はすごく良い子なんだけどな。だがそのうえ更に良い子に
  なろうとして、自分を押し殺してしまう傾向があるんだ。あの時智絵里を
  代役に選ばなければ、響子が追い込まれることはなかったんだが……」



Q「それだけど、そのチエリは一体どんな子なの?キョーコがあそこまで危機感を
  抱くのは相当だと思うんだけど」ジロリ






P「智絵里は博打要素の強いアイドルでな。性格は繊細で人見知り、歌唱力は並、
  ダンスはダメ、トークもダメでアイドルとしての総合力は響子よりもかなり
  劣るんだが、当たれば信じられないくらいの大成功をさせるんだ。俺も長年
  プロデューサーをやっているが、あんな子はいなかったよ」ポリポリ

ちひろ「代役のはずがメインの卯月ちゃんに迫る勢いでしたからね。ライブの後に
    事務所に問い合わせが殺到して、慌てて智絵里ちゃんのデビューを早めた
    くらいですし……」

P「正直に言うと智絵里はもう少し安定させてから世に出したかったんだが、人気商売
  だからそうもいかなくてな。智絵里がPCに入ったのはその時だけだが、それから
  ずっと人気が衰えることなくウチの第一線で活動しているよ」




Q「Pも罪なことをするわね。そんな状態でよく響子を引き留められたと思うわよ。
  アタシだったらプライドを傷つけられてアイドル辞めるけど」

P「そこは俺のプロデュースで何とかな。それに響子も決して智絵里より劣ってる
  わけじゃないんだ。響子が自分のありのままの魅力に気付く事が出来たら、
  あいつは今よりもっと素敵なアイドルになる。だから絶対に手放せないさ」

Q「それはザンネンね。もしアタシがプロデューサーだったら、キョーコをCGに
  スカウトしてるけど。でもそのチエリってコも興味あるわね。1日でテストは
  終わっちゃったし、次はチエリをケアしてあげましょうか?」

P「バカ言え、気の弱い智絵里をお前みたいなアブノーマルなヤツに任せられるか。
  前よりはだいぶ安定してきたが、並のプロデューサーはとても扱えないくらい
  難しい子なんだぞ。こっちはいつ会わせようか悩んでるのに……」







 ガチャ



智絵里「こんばんは…じゃなかった、おはようございます。Pさん、夏休みの相談
    なんですけど……」ヒョコ



ちひろ「あ」



P「」



Q「ト、ト、ト……」



智絵里「あ、お客さんですか…?こんば」Q「トレビア―――――ンッッッ!! !! !! 」





緒方智絵里(16)
http://i.imgur.com/PdClacJ.jpg





智絵里「ひぅ……!? 」ビクッ!!

Q「なにこのコすっごくカワイイじゃない!! わかったわこのコがチエリでしょ!!
  アタシのオンナのカンがそう叫んでいるわ!! 」ダダダダッ!!

智絵里「あ、あわわわ……」ブルブル

P「まずいちひろさん!責任は俺が取りますからアレ頼みます!」

ちひろ「本当ですねそれじゃ行きますちひローリングソバット!! 」ドゴォッ!!

Q「オーモンデューッ!! 」ドガシャーン!!



智絵里「あ、あの、いったい何が……?」

P「智絵里!お前はたった今から夏休みだ!すぐに三重の実家に帰ってよし!後の
  スケジュール調整は全部俺に任せろ!」ガシッ!!

智絵里「え、ええっ……?でも、急に言われても荷物とか……」

P「まゆと響子とゆかりに手伝ってもらって大急ぎでまとめろ!足りないものがあれば
  後で郵送してやる!用意が出来次第俺が車で三重まで送ってやるから!」
  
智絵里「P、Pさんと三重までドライブ…うれしいかも… えへへ」



ちひろ(その夜智絵里ちゃんは事務所の寮を出発し、Pさんの車に乗って三重県の
    ご実家に無事に帰りました―――――)



END





Case1「ヤマトナデシコ」 END


Case2「ベラドンナ」に続く





Cace2「ベラドンナ」



【Coの基本情報】
 イギリス出身の26歳。身長180センチ体重65キロ。本名はConnorで、「Dr.Co」と
呼ばれている。上下共にレディースのランジェリーを着用している変態だがノーマル。
 CGカンパニーでは俳優が芝居中に負った傷の治療、マッサージやメンタルケアまで
幅広く行う専属のドクター。高圧的な物言いでプライドが高い。








―テスト初日・9:00am―



Co「おはよう」ガチャ

ちひろ「あ、Coさんおはようございます」ペコリ

P「おう、ずいぶんゆっくりだな」カタカタ

Co「テストスタートと同時に来いとは言われてないはずだ。何も問題あるまい」フンッ






P「まあそうだが、Qはとっくに来て準備をしているみたいだぞ」

Co「私には私のやり方がある。こちらも8割方準備は終えている」

P「口だけなら何とでも言えるな。まずは成果を見せてもらわないと」ニヤリ

Co「フンッ、これくらいのテストなど片手間で足りる。私は他にも仕事を沢山抱えて
  いるから忙しいんだよ」

P「じゃあさっさとトライアドプリムスに会って来たらどうだ?今日は午前中から
  レッスンの予定だぞ」

Co「そのレッスンだが、私がトレーナーに指示を出す許可が欲しい。一応ユニットの
  プロデュースをしているお前に確認しておこうと思ってな」ジロリ





P「アイドルの身体データならマスさんが持っているが、それでは不満か?」

Co「それを確認した上で言ってる。麗の所には今朝行ってデータを見せてもらった。
  普通ならばそれで事足りるが、どうも数値が合わない部分がある」

ちひろ「麗……?ああ、マスさんの名前でした!いつもマスさんって呼んでるから
    すっかり忘れてましたよ。彼女とはお知り合いなんですか?」

Co「ドリンクの開発に関して時々アドバイスをしている。それでどうなんだ?」

P「まあ直近に大きなライブもないし、今日だけなら構わないだろう。ただしあまり
  無茶な指示はするなよ?後でベテさんに報告してもらうからな」ジロリ

Co「了解した。では私はこれで失礼する」スタスタ







 バタン



ちひろ「一体Coさんは何をするつもりなんでしょうか?」

P「多分心拍計やセンサーを使うつもりでしょう。身体検査の後に通常レッスンの
  流れですね。TPが毎月1回行っているチェックですよ」

ちひろ「やっぱりあれですか。でもあれって確か……」

P「ええ、加蓮がものすごく嫌がりますね。ただでさえ病院とか検査が大嫌いだから
  俺も毎回苦労してるのに、アイツちゃんと受けさせられるのかな?」




ちひろ「こんな言い方したら可哀想ですけど、加蓮ちゃんの体が強かったらそもそも
    必要のないチェックですもんね……」

P「そうですね。ですがTPが抱える問題が加蓮なのは揺らぎようのない事実です。
  問題は最初からわかってますが、解決出来るかどうかはまた別の話です。あの
  気難しい加蓮にCoがどうアプローチするのか楽しみですね」ニヤリ

ちひろ「アプローチ以前に、Coさんが受け入れられるか心配ですけど……」ハア







―レッスン場・10:00am―



Co「Coだ。MBプロの要請でCGカンパニーから派遣されてきた。今日はお前達の
  レッスンを見て、医学的な観点からアドバイスしてやる」

奈緒(あれ女モノのブラだよな?あたしの見間違いか……?)ジー

凛(上がそうってことは、まさか下も……?)ジー

Co「おい、私の話を聞いているのか?」ジロリ

奈緒「あ、はい聞いてます聞いてますよ!」アタフタ

加蓮「ヘンタイ」ズバッ

奈緒「加蓮!? 」ギョッ!!







神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/Dqrb21L.jpg

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/12cyUHg.jpg

北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/iLjQcpd.jpg





加蓮「アタシ達にアドバイスを聞いてほしいんだったら、まずはフツーのカッコを
   してくれない?透けブラが気になって話に集中出来ないんだけど」フン

Co「お前が北条加蓮か。噂通りの問題児だな」

加蓮「医学的観点からってことは、どうせアタシにアレコレ言いに来たんでしょ?
   だったらレッスンが終わってからいくらでも聞いてあげるから、2人にまで
   迷惑かけないで」ギロリ

凛「別に私達は迷惑だなんて思ってないよ。それに加蓮に向けたアドバイスだったら
  TPにも関係あるんだから」





Co「フンッ、自意識過剰だな。お前のデータなど今まで散々取り尽くされているから
  必要ない。私が用があるのは渋谷凛と神谷奈緒だ」

加蓮「え……?」

奈緒「うぇっ!? あたしか!? 」

凛「どういうこと?」

Co「詳しい説明は後だ。お前達2人はこのセンサーをつけろ。北条は何もつけなくて
  いいから、そのままでレッスンしろ」ドサッ







―――



加蓮「ごめん2人とも、アタシのせいで……」

奈緒「お前のせいじゃねえって。それにあの変態…じゃなくてCoさんが持って来た
   センサーめっちゃ軽くて付けてるの忘れちまうぜ」ブンブン

ベテトレ「渋谷、ベルトはキツくはないか?」カチャカチャ

凛「うん、大丈夫。ベテさん、あの変態って何者なの?」







ベテラントレーナー[青木聖](26)
http://i.imgur.com/hxw7tiv.jpg







ベテトレ「マス姉さんの知り合いだから私もよく知らないが、確か専門はスポーツ医学で
    以前はメジャーリーガーとか診ていたらしいぞ」キュッキュッ

奈緒「そんなにすごい人なのか?ブラジャーしてるのに……」

ベテトレ「まあ見た目はアレだが腕は確かだ。ついでに姉さんのドリンクも美味しくして
    くれると嬉しいんだが、イギリス人のあいつには無理かな」パチン

ベテトレ「よし終わった。どうだ渋谷?違和感とかないか?」

凛「すごいねこのセンサー。確かに付けてるの忘れちゃうかも」



加蓮「……ねえベテさん、アタシもそのセンサー付けていいかな?」

奈緒「え!? お前は付けなくてもいいって言われたじゃねえか」

加蓮「だったら別に付けても問題ないでしょ。それに付けてるの忘れるくらいなら、
   レッスンにもそんなに影響ないだろうし」

ベテトレ「ふむ、少しCoに確認してくるから待ってろ」スタスタ







 バタン



凛「私達に気を遣わなくてもいいよ。プロデューサーもいつもそう言ってるでしょ。
  3人揃ってトライアドプリムスなんだから」

加蓮「そんなつもりはないよ。3人同じ状態の方が正確なデータも出せるだろうし、
   アタシだけ特別扱いされたくないだけ」フン

奈緒「ひねくれてんなあ。ちょっとはCoさんのこと信用してやろうぜ」

凛「ふーん、奈緒はブラジャーつけた男の人がいいんだ」

奈緒「なんでそうなるんだよ!あたしは変態じゃねえ!」グワッ!!

加蓮「ふふっ、ふたりともホントにありがと」クス





***



Co「よし、準備は出来たな。それでは今から普段3人で行っているダンスを1人づつ
  踊ってもらう。聖も見てるから手を抜くなよ」

奈緒「1人づつ?順番はどうするんだ?」

Co「好きにしていい。全員踊ったら少し休憩を挟んで、3人でまた同じダンスを踊る。
  時間がもったいないから早く決めろ」






凛「だってさ。どうする?」

加蓮「テキトーでいいんじゃない?上から奈緒→アタシ→凛で行こうか」

奈緒「こんな時だけ年上扱いすんな。いいよ、じゃあアタシから行くぜ」スタスタ

凛・加蓮「「がんばれなおー♪」」

奈緒「お前らだって後で踊るんだからな!」グワッ!!

Co「まずは神谷か。余計な気を張らないで踊れよ」

奈緒(あれはブラじゃなくてサスペンダーブラじゃなくてサスペンダー……)ブツブツ







―奈緒ダンス終了―



奈緒「ふう、普段は3人で踊ってるダンスだからヘンな感じだな」スタスタ

凛「……」

加蓮「……」

奈緒「ん?どうしたんだ2人とも黙り込んで」キョトン






凛「奈緒、どこか調子悪いの?」

奈緒「いや?別に普通だけど?」

加蓮「アイツのブラが気になってダンスに集中出来なかったとか?」

奈緒「気にはなるけどダンスに影響が出る程じゃねえよ。何が言いたいんだ?」

凛「いや、いつもより下手だなって思って……」バッサリ

奈緒「んなっ!? 」ガーン!!





加蓮「アタシもそう思ったんだけど。熱とかないよね?」ペタペタ

Co「次は誰だ?さっさと来い」

加蓮「あ、はい、行きます」







 タッタッタッ…



凛「ねえベテさん、奈緒ってあんなにヘタだったっけ?」ヒソヒソ

ベテトレ「神谷はクールのアイドルの中では踊れる方だぞ。TPの中では一番上手いしな。
    さっきのダンスもそれほど悪くはなかった」

凛「でも3人で踊ってる時は、奈緒もっと上手いよね?」ヒソヒソ

ベテトレ「ふふふっ、これがキミ達のPが最も得意な『ユニットのプロデュース』だよ。
    Pは性質の異なるアイドルを組み合わせて長所を伸ばし、短所さえも長所に
    変える事が出来るんだ。TPは特にユニットの結束が強いから、1人になった
    時の影響を受けやすいだろうな」






奈緒「じゃあ加蓮と凛も1人だと下手になるのか?」ヒソヒソ

ベテトレ「渋谷はNGも掛け持ちしているからそれほど変わらないと思うが、それでも
    3人の時よりクオリティは落ちるだろうな。だが北条はさほど変わらないと
    思うぞ。見てみろ、あいつはいつも通りだろう?」クイッ

加蓮「~♪」タタン、タン、タタン

凛「ホントだ。加蓮は普段通りだ」

奈緒「あたしも真剣に踊ったんだけどなあ……」ポリポリ





ベテトレ「お前達は勘違いしていると思うが、TPは北条がいて成り立つユニットだぞ。
    体の弱い北条にお前達2人が合わせているのではなく、北条の体の弱さが
    逆にお前達のレベルを高めているんだ」

奈緒「そ、そうなのか!? 」ギョッ!!

凛「確かにNGで踊るよりはTPの方が体が動くような…… でもどうして加蓮が
  私達のレベルを上げているの?」

ベテトレ「言葉で説明するのは難しいな。後でCoに教えてもらえばいいさ」



つづく




***



―レッスン終了後―



Co「ふむ、やはりこうなるのか。自分で確認すると認めざるを得ないな」

奈緒「で、何がわかったんだ?1人で納得してないで教えてくれよ」

Co「どうやらお前と渋谷は、北条とユニットを組む事でアイドルとして能力が飛躍的に
  向上するらしい。1人で踊っている時よりも脳波や脈拍が安定し、リラックスした
  状態でダンスをしているというデータが出た」






凛「そうなの?自分ではあまり実感がないんだけど」

Co「数値換算すると渋谷が約17パーセント、神谷が40パーセント向上している。
  20パーセント程度では踊っている本人は意識しないと気付かないが、見ている
  方はダンスのキレや表現力に微妙な違いが出ているのが分かるぞ」

凛「じゃあ40パーセントの奈緒は?」

Co「気付いてもいいはずだが、どうやら鈍いらしいな」

奈緒「う、うるせえ!人をバカみたいに言うな!」カアア





加蓮「アタシは変わらないの?」

Co「ああ、お前は1人で踊っても3人で踊っても変わらないな。まあこれは最初から
  わかっていたことだが」

奈緒「じゃあ加蓮が一番ダンスが上手いってことか?」

Co「技術面の話は私の専門外だ。聖、教えてやれ」

ベテトレ「また難しいことを言うな。しかしお前達もこのユニットを組んで結構経つし、
    そろそろ教えてもいいかもれん」フウ




ベテトレ「北条」

加蓮「何?」

ベテトレ「一応言っておくが、気を悪くするなよ。TPはお前の『体の弱さ』を利用して、
    個のマイナスをメンバー全員のプラスに変換した特異なユニットなんだ」

凛「じゃあ何?ベテさんは加蓮がマイナスだって言いたいの?」ギロリ

Co「当然だろう。体力のない北条がマイナスなのは事実だ」フン

凛「アンタには聞いて…!! 」加蓮「いいよ凛」

奈緒「加蓮……」





加蓮「アタシは気にしないから。アタシの体が弱いのは事実だし、そこで怒っても
   しょうがないでしょ。そんなことよりも、このメンバーでTPをこれからも
   続けていけるように考える方が大事だよ」

Co「ほう、見た目よりずいぶん達観しているんだな」

加蓮「アンタに誉められても嬉しくないし」フン





奈緒「加蓮もああ言ってるんだし、まずはベテさんの話を聞こうぜ。な?」ドウドウ

凛「……ふん」プイ

奈緒「やれやれ。すまねえベテさん、もう大丈夫だから続けてくれ」

ベテトレ「先程私が、Pはユニットのプロデュースが得意だと言ったのを憶えているか?
    Pはユニットを組ませることでアイドルの長所を伸ばし、短所さえも長所に
    変えてしまう。TPは北条の短所を長所にしたユニットなんだ」







―――



ベテトレ「先程Coは北条と組む事で渋谷と神谷のアイドルとしての能力が飛躍的に向上
    していると言ったが、実際は2人の身体能力は落ちているんだ」

奈緒「は?でもCoさんはデータでは上がっているって……」

ベテトレ「それは脳波や心拍の話だ。お前達は北条と組むとリラックスした状態で踊って
    いるが、必ずそれがプラスに結びつくと限らない。弾けるようなライブ感や
    手に汗握るような迫力は、安定した状態では生み出せないからな」

凛「つまりどういうこと?」

ベテトレ「わかりやすく言えば、個人のアピールを削ってユニットの質を向上させたと
    いったところだな。ユニットで最も大事なのは一体感だ。1人では8割程の
    力しか出せなくても、メンバー全員がその8割程の力で統一されていれば
    ユニットの力は10割を超える。それがユニットのプロデュースだ」






奈緒「何か難しい話になってきたぞ。つまりあたしは加蓮と組むと上手くなるのか
   下手になるのかどっちなんだ……?」ウ―ン

ベテトレ「技術ではなく性質の話だ。神谷のダンスは元々野性的でパッションに近い。
    だが北条と組むと野性は抑えられ、クール方面に表現力がアップする」

凛「ああ、それで1人で踊った奈緒はバタついてるように見えたんだ」

加蓮「ビースト奈緒……」ボソッ

奈緒「おい加蓮、今何て言った?」ジロリ





ベテトレ「渋谷のダンスは正確だが機械的で冷たい印象がある。北条と組むと正確さは
    若干落ちるが、その分温かい血の通った表現をする事が出来るんだ」

奈緒「ロボ凛?いや、メカ凛か」

凛「やめてよ」ジロリ





Co「昨晩TPのライブやお前達が個別で踊っているビデオを確認していたんだが、
  どうも北条以外の2人はTPとそうでない時の体の動かし方に大きな違いを
  感じてな。それでデータを計測させてもらった」

ベテトレ「渋谷も神谷もお人好しだからな。TPのレッスン時はどんなに必死になっても
    常に北条を視界に入れている。それが神谷には冷静さを、渋谷には温かさを
    与え、結果としてレベルの高いユニットになったんだ」

奈緒「そ、そんなことねえよ!あたしは自分のことだけで精一杯だし!」アタフタ

凛「わ、私もユニットのリーダーだから、2人の動きをチェックしてるだけだよ。
  NGで踊る時も私がペースメーカーになってるから……」カアア

加蓮「……」





奈緒「加蓮……?」

加蓮「……ふふっ、アンタ達はアタシがいないとダメなんだから♪」ニヤリ

奈緒「う、うるせえ!お前が普段から世話を焼かせるから、レッスン中もついつい
   気になって目で追っちまうだけだよ!」

凛「ふーん、奈緒の目には加蓮しか映ってないんだ」

奈緒「あーうるせー!お前もこんな時だけ一番年下ぶるんじゃねえ!」



 ワイワイ キャイキャイ




Co「長所を伸ばし、短所さえも長所に変えるか。口で言うのは容易いが、実践すると
  なると大変だっただろう?」

ベテトレ「最初にPに聞かされた時は耳を疑ったよ。だが結果的にプラスに変換した
    だけではなく、更にプラス効果が上乗せされて強力なユニットになった。
    私もこのユニットがここまで成功するとは思わなかったよ」

Co「北条はまるで『ベラドンナ』だな。その身体に猛毒を宿しているが、使い方に
  よっては薬にもなる。今回は薬として作用したわけか」

ベテトレ「Pのイメージでは蓮の花らしいぞ。それでどうする?Pに聞いたが、お前は
    TPの問題を見つけ出して解決しなくてはいけないんだろ?北条の体力は
    ユニットの問題ではあるが、重要な要素になっているとも言えるぞ」ニヤリ

Co「フンッ、8割程度の能力で3人揃ったところで、所詮8割程度の力しか出せない
  ユニットだ。全員が10割出せる方がいいに決まってる」スタスタ





Co「おいお前達、雑談は終わりだ。今から私が北条の体力を2割引き上げてやる」

奈緒「え!? そんなこと出来るのか!? 」ギョッ!!

Co「私を誰だと思っている。これくらい容易い」フンッ

加蓮「今でもキツいのに、2割も上げられたら死ぬんだけど」

Co「それくらいで死ぬか。最先端の科学と医療の力を見せてやる―――――」







***



―3日後・事務所にて―



P「それで、その後加蓮を高級ランジェリーショップに連れて行って、最先端の科学と
  医療に基づいて設計されたランジェリーとスパッツを注文して、完成したそれを
  加蓮に履かせて身体能力を20パーセント引き上げたんだな?」

Co「3日前にオーダーして本日届いたから、報告が今日になった。実際に着用させて
  レッスンを受けさせてみると、北条の身体能力は4割近く向上したぞ。テストは
  これで文句あるまい」フンッ

P「凛と奈緒が加蓮についていけずに、途中でギブアップしたらしいな?」

Co「それはお前のプロデュースが及ばなかったんだろう?私はドクターとして治療を
  したまでだ」シレッ





P「……まあいい、加蓮にはそのランジェリーの着用をしばらく禁止させることにする。
  ユニットのバランスが崩れたら意味がないからな」ハア

Co「しかしお前も手間のかかる方法を取るな。耐力の無い北条をユニットに加えて
  プロデュースするよりも、メンバーをチェンジした方がはるかに効率的だろう。
  何故そこまで北条にこだわる?」ジロリ

P「加蓮は日常の何気ない仕草や漂う雰囲気がとても綺麗で、それがダンスや歌にもよく
  表れているんだ。だからどうにかしてそれをユニットに取り入れたかった。加蓮の
  体力の無さを差し引いても、必ずTPのプラスになると合理的に判断した結果さ」




Co「フンッ、それは合理的とは言わん。仕事が出来るプロデューサーと聞いていたが
  アイドルには甘いようだな」

P「アイドルに嫌われたらプロデュースなんて出来ないさ。特にユニットを組ませると
  仲間意識が強くなるから、1人の機嫌を損ねると全員に嫌われちまうしな。そこが
  ユニットのプロデュースの面白いところだが」ニヤリ





ちひろ「……」プルプル…

Co「ん?どうした事務員、さっきからやけに静かだが」

ちひろ「どうしたじゃないですよ!! 何ですかこの領収書は!? どうしてランジェリーと
    スパッツだけで50万円もするんですか!? 」バンッ!!

Co「これでも安くしてもらったんだぞ。最新の3Dスキャナーを使って北条の身体を
  細部まで計測し、完全オーダーメイドで付け心地はまるで羽毛のように軽くて、
  それでいて身体の機能を極限まで引き上げている。デザインもイギリスの有名な
  ブランドが手がけ、まさに我がブリテンの技術を結集した……」

ちひろ「やかましい!どうでもええわ!」グワッ!!





P「ちひろさん、社長への説得頑張ってくださいね」ニヤニヤ

ちひろ「こんなもん経費で落ちるわけないじゃないですか!加蓮ちゃんにはこの夏
    しっかり働いて元とってもらいますからね!」

Co「残念ながらそれは無理だな。そのランジェリーが私と同じだと教えてやったら、
  北条は二度と付けないと言ってたぞ。捨ててはいないと思うが、あの様子だと
  当分着用する事はないだろうな」サラリ

ちひろ「なに余計なこと言ってくれてるんですか―――――っ!! 」ドッカーン!!





P「どのみち加蓮の手には余る代物に違いないから、使わないにこしたことはないな。
  それに一度身体が感覚を記憶すると今後のレベルアップも期待出来るし」

Co「そういうことだ。北条が得た経験を活かせるかどうかはプロデューサー次第だ。
  私の仕事をくれぐれも無駄にしてくれるなよ」フンッ

P「誰に向かって言ってるんだ。TPを作ったのはこの俺だぞ?」ニヤリ

Co「フンッ、それならいいだろう。では私はこれで失礼する」クルッ





P「ああちょっと待て、お前Paのヤツがどうしているかしらないか?」

Co「知らんな。初日に顔を合わせてから一度も見ていない」

P「それが事務所に来てないんだよ。一応ポジティブパッションと接触している
  そうだが、アイツが何をやっているのかさっぱりわからないんだ」

ちひろ「Qさんはよく事務所に顔を出していますけどね……」ハア





Co「CGカンパニーでも、アイツはボディガードの仕事が入った時だけ会社に来て
  後は外で遊び呆けていると噂されていたぞ。期待しない方がいいかもな」

P「おいおい本当か?大丈夫だろうなアイツ―――――」



END








Case2「ベラドンナ」END


Case3「ダンデライオン」に続く


>>122
Co「数値換算すると渋谷が約17パーセント、神谷が40パーセント向上している。
  20パーセント程度では踊っている本人は意識しないと気付かないが、見ている
  方はダンスのキレや表現力に微妙な違いが出ているのが分かるぞ」

 ↓

Co「数値換算すると渋谷が約20パーセント、神谷が約40パーセント向上している。
  20パーセント程度では踊っている本人は意識しないと気付かないが、見ている
  方はダンスのキレや表現力に微妙な違いが出ているのが分かるぞ」


>>141
Co「CGカンパニーでも、アイツはボディガードの仕事が入った時だけ会社に来て
  後は外で遊び呆けていると噂されていたぞ。期待しない方がいいかもな」

 ↓

Co「CGカンパニーでも、アイツはボディガードの仕事を放り投げて外で
  遊び呆けていると噂されていたぞ。期待しない方がいいかもな」





Case3「ダンデライオン」



【Paの基本情報】
 ブラジル出身の28歳。身長2メートル5センチ体重120キロ。本名はPauloだが、
特にニックネームはない。磨き上げたスキンヘッドが自慢の、大柄で陽気な親日家。
 CGカンパニーでは俳優のボディガードをはじめ、運転手や雑用など何でもやる。
Pのことをブラザーと呼び、アイドル達に対しても気さくに接する。





―テスト3日目・7:00pm事務所―



Pa「ようブラザー!久しぶりだな!」ガチャ

P「久しぶりだなじゃない。こっちが連絡するまで事務所に来ないどころか、現状の
  経過を報告もしないとはどういうつもりだ?」ジロリ

Pa「悪い悪い、ちょっと忙しくてな。一応今日は来るつもりだったんだぜ?」ピカッ!!

ちひろ(頭に蛍光灯が反射して眩しい……)






P「自分がテスト中なのを忘れていないよな?ポジティブパッションのメンバーとは
  ちゃんとコミュニケーションを取ってるのか?」

Pa「ああ、毎日カフェで昼メシ食ってるぜ。みんなパワフルで良い子達じゃないか。
  オレにはあいつらが問題を抱えているとは思えないんだけどな」

ちひろ「え?それじゃあPaさんはまだ何もわかってないんですか?」

Pa「ああ!さっぱりわからねえ!そもそもオレはボディガードだしな!」ニカッ

P(頭が痛い……)






ちひろ「もう既にQさんとCoさんは終わっていますよ。大丈夫ですか?」



Pa「へえ、やるなあアイツら。まぁ、まだ4日もあるし何とかなるだろ。ブラザーと
  チヒロものんびり待っててくれ。そんじゃな!」ウインク☆








 バタン



ちひろ「本当に大丈夫でしょうか……?」

P「未央達とはうまくやってるみたいですけどね……」ハア

ちひろ「ですがPaさんの言った通り、私もポジティブパッションが問題を抱えている
    ようには見えませんが……」

P「そうですね。PPは現状3つのユニットの中で最も安定しています。元々ある程度
  好きにさせた方が力を発揮できるユニットですし、下手に問題を顕在化させたり
  不安を煽ると逆にモチベーションを下げてしまうでしょうね」






ちひろ「それじゃあPaさんは何をすればいいんですか?」

P「乱暴に言ってしまうと何もしなくていいです。ですが『問題が無いから解決』とは
  なりません。トップアイドルにする為には、俺達はあの子達をその頂点まで導いて
  あげないといけませんから。この微妙な違いに気付けるかどうかが、課題クリアの
  決め手になりますね」

ちひろ「『問題の解決』と『導く』の違いですか。私には違いがよくわかりませんが。
    今更ですが、アイドルのプロデュースって奥が深いんですね」ウ~ン

P「でしょう?だから面白いんですよ」







***



―テスト4日目・12:00pm事務所前カフェ―



Pa「というワケで、お前達今何か悩みとかないか?オレがばっちり解決してやるから
  何でも遠慮せずに言ってくれ!」ウェルカム!!

未央「ちょい待ちちょい待ち!ぶっちゃけ過ぎだよパッさん!それバラしちゃったら
   ダメなんじゃないの?」

Pa「どうしてだ?オレは別にボスやブラザーから口止めされてないぞ?」キョトン






未央「いやさ、私もしまむーとしぶりんから聞いたけどさ、パっさんの同僚の人達って
   PCとTPをさりげなくカッコよく解決したんでしょ?だからパっさんもてっきり
   そういう路線で来ると思ったんだけど」ジロリ

Pa「なんだミオ、お前はオレがジェームズ・ボンドみたいに鮮やかに問題を解決して
  助けてくれると思っていたのか?意外と乙女チックじゃねえか」ゲラゲラ

未央「な……っ!? 」カアア

茜「未央ちゃん乙女チックです!」ケラケラ

藍子「ふふ、可愛いですよ♪」ニコニコ






本田未央(15)
http://i.imgur.com/iERf0W4.jpg

日野茜(18)
http://i.imgur.com/fuAXg98.jpg

高森藍子(16)
http://i.imgur.com/YCC7WlW.jpg





未央「う、うるさーい!乙女チックで悪いかー!芸能人になったら誰でも一回くらい
   ボンドガールに憧れるでしょー!」ウガー!!

茜「ボンドガール?DIY系女子ですか?」キョトン

藍子「私はプロポーションがちょっと……」ズーン…

未央「茜ちん論外!それからあーちゃんゴメン!悪気はこれっぽっちもないから!」

Pa「わっはっはっ!ホントにお前らは面白いなあ!」ゲラゲラ







―――



未央「で、みんなの悩みを紙に書いてまとめてみたんだけど……」


【茜ちん】
・母校のラグビー部(栃木)が今年は弱くて初戦敗退しそう
・熱中症対策の為、プロデューサーから太陽が高いうちは走るなって言われた
・好きなメーカーのお茶の分量が微妙に減った
・ランニングシューズに穴が開いたetc…

【あーちゃん】
・最近暑くて日中に散歩が出来ない
・寮の廊下の蛍光灯が切れそう
・欲しかった最新型のカメラが意外と高い
・お気に入りの喫茶店が来月で閉店etc…

【みお☆】
・パっさんの頭が眩しい







未央「……なんかコレ、ユニットの問題と関係なくない?」

茜「元マネージャーの私にとっては大問題です!この夏にどれだけ頑張れるかが花園へ
  行けるかどうかの分かれ道なんですから!」バンッ!!

Pa「じゃあオレはアカネの母校に行って、ラグビーのコーチでもすればいいのか?」

未央「いや、そうじゃないっしょ。もしパっさんのおかげで茜ちんの学校が優勝しても
   それでプロデューサーが出したテストの合格にはならないと思うよ」

茜「高校ラグビーの全国大会は冬ですしね。ちょっと時期が悪かったなあ」





藍子「確かに問題は問題なんだけど、もうちょっとアイドルのお仕事に関係あるような
   ものの方がよくないかな……?」

未央「でもこんな問題でも無理やり出してこない限り、ウチはびっくりするくらい
   順調なんだよね。LIVEバトルで負けてもすぐにリカバリ出来るし……」

茜「卯月ちゃん達はこの前2日くらい落ち込んでいましたね」

未央「みんな頑丈だから、誰もケガとかしないし病気にもならないし……」

藍子「冬は加蓮ちゃん大変そうだったなあ……」





Pa「つまりお前らはバカだから嫌なことはすぐ忘れるし、体も丈夫ってことか」ポン

未央・茜・藍子「「「バカじゃないっ!! 」」」グワッ!!

Pa「お、おうっ!? 」ビクッ!!





未央「パッション=バカみたいな言い方やめてよね!私達はそのイメージを全力で
   払拭しようと必死にやってるんだから!」

茜「そうです!私達はたまたま頭で考えるより先に体が動いちゃうタイプなんです!
  肉体が精神を凌駕してるんです!」

藍子「茜ちゃん、それは何かダメっぽい……」

Pa「わかったわかった、お前らはバカじゃなくて行動力があるんだな。だから問題が
  起きても、グダグダ悩まないでさっさと片付けちまうのか」

未央「まあそういうことかな。良くも悪くもウチのチームカラーみたいなもんだよ。
   だからパっさんの頭も……」ゴソゴソ





未央「はいこれあげる。とりあえず頭に巻いといて」サッ

Pa「なんだこれ?バンダナか?」マジマジ

未央「私のスポーツタオル。これで私の問題は解決したかな♪」ニコッ





Pa「オレの自慢のスキンヘッドが……」

未央「ぐだぐだ言わないの!それにこんな美少女が使ってるタオルがもらえるなんて
   羨ましいぞこのラッキーさんめ♪」ツンツン

Pa「ちゃんと洗ってるだろうな?俺はヤバい趣味とかねえぞ」スンスン

未央「洗ってるよ失礼な!いらないなら返して!」バッ!!

Pa「いーやこのタオルはもうオレのものだ!ありがたく頭に巻いとくぜ!」ヒョイ







 <マテ―!! <ヤナコッタ―!!



茜「藍子ちゃん!私達も追いかけましょう!」スクッ

藍子「え、ええ!? 私は別に……」

茜「3人揃ってポジティブパッションです!ボンバ―――――ッ!! 」ダッ!!

藍子「ぼ、ぼんば―――っ!! 」






未央「あーちゃんはそこで逃げ道塞いで!私と茜ちんで追い込むから!」ダダダッ

Pa「さすがリーダーいい指示出すな!だがそれでオレを止められるかな?」ダダダッ

未央「なにおう!大和魂を見せてあげるよ!」

Pa(どうやら本当にこいつらには悩みがなさそうだな。今も全力で楽しんでいるし、
  信頼関係もあってメンバーも仲良しみたいだ)





茜「トラ――――――――――イッッッ!! !! !! 」ド―ンッ!!

Pa「はは、つかまっちまったな!」ポンポン

Pa(ユニットで一番元気なのはアカネ。コイツの勢いと突進力はユニットの強力な
  武器なんだろうな。オレみたいな大男にもひるまずに思いっきりタックルして
  くるし、女なのに大した度胸を持っている)





茜「待ってて下さいね藍子ちゃん!すぐにそちらに運びますから!」グイグイ

藍子「持って来られても困るんだけど……」オロオロ

Pa(アカネとは逆に、おっとりしているのがアイコ。だがアイコのマイペースぶりは
  メンバーの誰にも負けてなくて、逆にアカネとミオが飲み込まれそうになってる。
  アイコの安定感はユニットの土台だな)




未央「見たか!これがポジティブパッションのチームワークだ!あっはっは!」

Pa(そしてこのユニットを仕切っているのがミオ。コイツは見た目よりずっと頭が
  回る。常に状況をよく見ながらアカネとアイコに的確な指示とフォローを出して
  いるし、やや力技の部分もあるがリーダーの資質は十分だ)



Pa「なかなかやるじゃねえかブラザー。どれだけ探しても問題らしい問題はないし、
  オレは一体どうすりゃいいんだ―――――?」





つづく




***



―18:00pm 事務所裏花壇―



Pa「おお、でっけえヒマワリだな。オレより高いし3メートルってところか」マジマジ

夕美「一番大きいのが2メートル90センチだよ。なかなか立派でしょ♪」スタスタ

Pa「ん?このヒマワリを育てたのはお前なのか?」クルッ

夕美「そうだよ。ガーデニングアイドルの仕事の成果かな♪」ニコッ







相葉夕美(18)
http://i.imgur.com/Ncqw2oA.jpg





Pa「大したもんじゃねえか。こんなデカいヒマワリ、ブラジルでもなかなか見ないぜ」

夕美「ありがと。でもホントはもっと大きくしてあげたかったんだけどね」

Pa「そうなのか?今でも十分だと思うけどな」

夕美「目標は5メートルオーバーだったんだけど、結局3メートルも届かなかったよ。
   まぁ、今年の失敗を糧にして来年は成功させるぞ!ってカンジかな」



Pa「もはや花じゃなくて木だな。水をやるのも大変そうだ」

夕美「このコ達の世話も脚立を使ってやってるんだけどね。あ、そうだお兄さん、
   ちょっと肩車してよ。ここにいるってことはヒマなんでしょ?」

Pa「はは、可愛い顔してズバズバ言うじゃねえか。気に入ったぜお前」





―――



Pa「へえ、それじゃこの花壇はユミが管理してるのか」

夕美「私ひとりでやってるわけじゃないけどね。趣味がガーデニングだから、季節の
   花とか育てて園芸関係の雑誌のお仕事とかもやってるの。このヒマワリの花も
   5メートル超えたら雑誌に載る予定だったんだけどね」

Pa「そりゃ残念だったな。でも一体何がダメだったんだ?」

夕美「う~ん、わかんない。花に聞く事も出来ないしね」ポリポリ

Pa「おいおい、さっき今年の失敗を糧にするって言ってなかったか?」






夕美「もちろん土の配合とか肥料を入れるタイミングとか、実際にチャレンジしてみて
   わかったこともあるよ。でもそれを来年全部やっても、必ず成功するって保証は
   ないでしょ?今年だって最高の環境を作って育てたのに失敗したし」

Pa「そんなもんか。ガーデニングってのは難しいんだな」

夕美「相手は自然の生物だしね。それに花も自力で頑張ってキレイな花を咲かせようと
   してるわけだから、こっちが手を入れ過ぎても逆にうまくいかなかったりするの。
   Pさんは『アイドルのプロデュースと似てるな』って言ってたよ」

Pa「面白そうな話だな。聞かせてくれよ」





夕美「アイドルの才能を開花させる為には、時にはアイドル自身の力に任せて見守る
   ことも大事なんだって。アイドル達が抱える悩みや問題を取り除くことは簡単
   だけど、自力で乗り越えられるように何もしないこともあるらしいよ」

Pa「へえ、確かに誰でも甘やかされるとロクなことにならねえもんな」

夕美「大事なのはアイドルが小石につまづいて転ばないようにするんじゃなくて、
   転んでもすぐに起きあがれる力をつけられるようにプロデュースすること
   なんだって。そうすればそのアイドルはもっと輝くって言ってたよ」

Pa「なるほどな。プロデュースって言っても24時間完璧に出来るわけじゃねえし、
  ある程度はアイドルに自衛させることもあるのか。ボディガードの仕事と近い
  所もあるんだな……」ブツブツ





夕美「私パっさんの役に立った?」

Pa「ああ、ユミのおかげで何とかなりそうだぜ。ありがとな!」ピカッ!!

夕美「ちょ、夕陽が反射して眩しいよ。帽子とかないの?」

Pa「そういえばミオからもらったスポーツタオルが……」ゴソゴソ

夕美「ああ、そういえば未央ちゃんはこのヒマワリが育つのを楽しみにしてたっけ。
   時々みおちゃんパワーを届けに来てくれるよ」

Pa「闘魂注入ってか。アイツらしいな」フフッ






未央「あれ?パっさんまだいたの?もうとっくに帰ったと思ってたよ」ヒョコ



Pa「お、ウワサをすれば」クルッ

夕美「やっほ未央ちゃん、またこのコにパワーを届けに来てくれたの?」クス

未央「トーゼンですよゆーみん!みおちゃんパワーであと1メートルくらいは伸びて
   もらわないとね!このコもまだまだ元気だし余裕だって♪」ニコッ






Pa「ははは、やっぱりバカだなお前。変なことしたら枯れちまうぞ」ゲラゲラ

未央「バカじゃないもん!ゆーみん、パっさんにいじめられなかった?」

夕美「何もされてないよ。水やりとか手伝ってもらっちゃった」

未央「え?パっさんが水やったの?花びら落ちたりしないかな……」

Pa「何でオレが水をやったら花がハゲるんだよ。この頭はハゲてるんじゃなくて、
  自分で剃って磨いてるって言っただろ」ピカッ!!

未央「はいはい、わかったから頭にタオル巻いといてよ」






Pa「ああそうだミオ、お前にちょっと聞きたい事があるんだが」



未央「ん?何―――――?」








***



夕美「それじゃ先に寮に帰ってるね」ヒラヒラ

未央「うん、茜ちんとあーちゃんにちょっと戻るの遅れるって言っといて」ヒラヒラ



 タッタッタッ…





未央「さてと…… やっとふたりきりになったね、パっくん♥」ウルウル

Pa「おう、この時を待ってたぜミっちゃん」ピカッ!!

未央「ぶっ!? あはは!そこは白い歯が光る場面でしょ!なんで頭が光るの!」ゲラゲラ

Pa「うるせえ、何だこの三文芝居は。お前はそんなキャラじゃないだろうが」

未央「パっさんもノリノリだったじゃん。私ミっちゃんなんて呼ばれたことないよ」



Pa「オレだってパっさんともパっくんとも呼ばれたことなかったよ。で、ぼちぼち
  本題に入っていいか?」

未央「ああゴメンゴメン、何となくシリアスな空気って苦手でさ。それでPPのこと
   何かわかったの?」

Pa「おう、このヒマワリに教えてもらったぜ。まさか一番丈夫そうに見えたお前が
  悩んでいたとはな」

未央「ん?ちょっと待ってパっさん、私悩みなんてないよ?PPもNGも絶好調だし、
   強がりじゃなくて本当に何もないんだけど?」キョトン





Pa「『悩みがないのが悩み』だろ?絶好調すぎて退屈してるんじゃねえのか?」



未央「え?」キョトン



Pa「お前はスキがなさすぎるんだよ。最初はリーダーらしくメンタルもフィジカルも
  強いタイプだと思っていたんだが、自分を持て余してるようにも見えたぜ」





未央「う~ん、それって悩みになるの?確かに最近ちょっとだけモヤモヤしてるけど、
   仕事に影響ないし私は特に気にしてないよ?」

Pa「ガマンはよくないぜ。お前は『楽しい』だけじゃ満足出来ないタイプだろ?
  悩み相談なんて堅苦しく考えないで、気楽に話してみろよ」

未央「じゃあ聞いてもらっちゃおうかな。あ、言っとくけど茜ちんとあーちゃんには
   ナイショにしてよ?余計な心配とかかけたくないからさ―――――」






***



未央「私さ、今はそれなりにアイドルやってるけど、ここまで来るのに色々あったの。
   NGのメンバーには何とか選ばれたけど、その後はラジオのパーソナリティを
   外されたりCDデビューが遅かったり、悔しい思いをいっぱいしたよ」

Pa「大変だったんだな。よくいじけずにガマンしたもんだ」

未央「何度アイドルを辞めようと思ったかわからないよ。でも自分が実力不足なのは
   わかってたから、それなら誰もが認めるようなスゴいアイドルになってやる!
   って開き直って猛レッスンしたよ」







Pa「で、お前はアイドルとして才能を開花させたわけか」



未央「ちゃんと綺麗に咲けたかどうかはわからないけどね。おかげ様でNGもPPも
   順調で、昔の苦労話も笑いながら話せるようになったよ。でもあの時の辛さや
   苦しさを乗り越えて今の自分を手に入れたワケだから、絶好調の状態が続くと
   なーんか違和感があるというか、物足りないんだよね」ポリポリ




Pa「つまりお前は根っからのドMということか。まだ若いのに倒錯してるな」

未央「いや違うから。そんなこと言ったらパっさんの友達の方がヤバいじゃん」

Pa「ははは!違えねえ!アイツらのせいでオレまで変態扱いされて困るぜ!」ゲラゲラ

未央「パっさんも相当ヘンだと思うけどね。とてもアメリカのビッグカンパニーの
   エリートさんに見えないよ」アハハ




Pa「まあな。それでお前はこれからどうするつもりだ?」

未央「どうするって言われたってどうしようもなくない?今が一番調子良いんだから
   無謀なチャレンジをしてみんなに迷惑かけたくないし、楽しく仕事が出来れば
   それが一番だよ。今の仕事やレッスンだってラクってわけでもないし」

Pa「おいおい、守りに入るのはまだ早過ぎるんじゃないか?」

未央「私いつの間にか臆病になったのかな?前は失敗上等でガンガン攻めてたけど、
   だんだんユニットやグループのリーダーとして責任が増えてきたから、今は
   結構慎重になってる部分もあるんだよね」ポリポリ





Pa「お前がそれだけアイドルとして成長したってことだろう。こういう問題が起きれば
  これくらい苦労して、これくらいの時間がかかって解決できるって感覚的にわかる
  ようになったんだ。それがわかったうえでチャレンジ出来れば一人前だが、お前は
  まだそのレベルになってないみたいだな」

未央「う~ん、そうなのかな?未央ちゃんよくわかんない」テヘ☆

Pa「まぁ、そのうちお前も攻守のバランスが取れるようになるから、今は遠慮せずに
  ガンガン攻めて、守りはブラザーやチヒロ達スタッフに任せとけ。素人が下手に
  守りに入っても良い事ないぞ」ニカッ





未央「……なんかパッさんが初めてちゃんとした大人の男の人に見えたよ。面白外人
   軍団の1人だと思ってたけど、やる時はやるんだね」シミジミ

Pa「これでも一応プロのボディガードなんだぜ?アイドルのプロデュースはさっぱり
  だが、守るのはオレの得意分野だ。いつまでMBプロにいるかはわからねえけど、
  日本にいる間はオレもお前達を守ってやるから安心しろ」ポンポン

未央「うん!ありがと!よろしくねパッさん!」ニコッ

Pa「おう!任せろミっちゃん!」ピカッ!!







***



―翌日・事務所にて―



Pa「……と、こんな感じでいいか?」

P「夕美に助けられたな。まぁ、そこから問題に気付いたのはお前の実力だし合格と
  しよう。正直に言うと半分諦めていたから良かったよ」ホッ

Pa「オレもダメかと思ったぜ。まさかアイドルに優しそうなブラザーがミオを虐めて
  いたとは思わなかったからな」ニヤリ

P「人聞きの悪い事を言うな。未央は決して実力がないわけじゃないが、逆境をバネに
  して成長するタイプだから俺は心を鬼にしてプロデュースしただけだ。この仕事は
  アイドルを甘やかすだけじゃ務まらないんだよ」




Pa「だけどよ、NGのメンバーなのにミオだけラジオを外すのはやり過ぎじゃないか?
  オレがそんなことをされたらストレスでハゲちまうぜ」ピカッ!!

ちひろ(ここはツっこむところかしら……?)

P「あれはNGのPR戦略だったんだ。メディアと地域の両面からNGを宣伝する為に、
  未央にはあえてラジオのパーソナリティを外れてもらった。その方が未央の魅力を
  最大限活かせると判断した結果だ」



Pa「なるほど、ミオには『草の根運動』をやってもらったわけか」

P「理解が早いな。未央はとにかく対人コミュニケーションに強いんだ。ただ愛想良く
  振る舞うだけなら他のアイドルも出来るが、未央は相手に合わせて軽快なトークを
  交えたり、自然に握手やスキンシップが出来たりとアドリブ能力が高い。それを
  活かさずラジオのブースに閉じ込めるのは惜しくてな」

ちひろ「現代社会がどれだけメディアやネットが進化してデジタル化しても、生身の
    人間によるアナログなふれあいの強みには絶対に勝てません。未央ちゃんは
    まさに適任でした。それにラジオOA中も、未央ちゃんのコーナーを設けて
    中継でつないでいたんですよ?」





Pa「初めて会った時はヒマワリみたいなヤツだと思ったが、実際はタンポポだったか。
  タンポポは踏みつけられてもびくともしないし、アスファルトの隙間でも根付いて
  花を咲かせやがる。ミオは雑草魂を持ったアイドルなんだな」

P「俺はタンポポの強さは、花を咲かせた後に種を飛ばす綿毛だと思うけどな。風に
  吹かれてはるか遠くまで飛んで、降り立った地でまた強く根付いて花を咲かせて
  広がっていく。拡散力ならヒマワリはタンポポの足下にも及ばないさ」

Pa「ははは、それならミオには今以上にガンガン攻めてもらわないとな。これからも
  ミオの背中をしっかり守ってやれよ」ニカッ





P「未央はパッションをまとめるリーダーとして、攻めだけじゃなく守りも学ばせる
  必要もあるからプロデュースの調整が難しいんだよ。だが本人がボンドガールに
  憧れているなら、もう少し攻めにウェイトを置かないといけないな」フム

Pa「そりゃ将来が楽しみだな。それじゃオレはホテルに戻ってるぜ」ヒラヒラ

P「ちょっと待て。お前に聞きたい事があるんだが」

Pa「ん?なんだ?」クルッ




P「お前テスト初日から3日目まで、どこで何をしてたんだ?」ギラリ

Pa「別に大したことはしてねえよ。のんびり東京観光して、ついでにボランティアで
  ゴミ掃除をしたくらいかな」

P「ほう、ゴミ掃除か」

Pa「ああ、オレの頭ほどじゃないがキレイになったと思うぜ」ピカッ!!

P「……」ジ―

ちひろ「?」





P「……わかった。引き留めて悪かったな。ホテルに帰ってゆっくり休んでくれ」フウ

Pa「おう、そうするぜ!何かあればすぐ来るからいつでも電話してくれ」ニカッ



 バタン






P「ふう、バカに見えてあいつもなかなか食えないな」

ちひろ「プロデューサーさん、最後の質問は何だったんですか?」



P「早苗さんから聞いた情報なんですが、おとといの夜に東京を中心に活動していた
  とあるオレオレ詐欺集団が何者かによって潰されたらしいです」ポツリ



ちひろ「……え?」







P「ロープで縛られてアジトに転がされていた構成員の話によると、スキンヘッドの
  大男がふんどし一丁で乗り込んできて、十数人いた構成員を相手にたった一人で
  倒したそうです。その後大男は警察に電話して、外に置いていた自分のスーツを
  着て悠々とアジトを出て行ったらしいですよ」



ちひろ「それってまさか…… でもどうして……?」





P「そのアジトの場所なんですが、藍子の実家から500メートルくらいの所にあった
  そうなんですよ。もしアイツがやったとしたら、藍子だけじゃなくて藍子の親や
  近所の人達を守る為に潰したのかもしれないですね。今はまだ警察が事件を調査
  している段階ですので、くれぐれもオフレコでお願いしますね」シー

ちひろ「言えませんよこんなこと。Paさんを見る目が変わりそうです……」ガタガタ…

P「きっとアイツは未央や茜の実家周辺も調べていたでしょう。手段はいささか問題が
  ありますけど、ボディガードとしては有能みたいですね。さすが社長が目を付けた
  プロフェッショナルですよ―――――」







【エピローグ】



―テスト7日目・最終日―



ちひろ「皆さんお疲れ様でした。皆さんを試すようなことをして申し訳ありません
    でしたが、問題に対して柔軟に対応出来る皆さんの能力の高さを評価し、
    社長もぜひ皆さんに我が事務所のアイドルをお任せしたいと仰いました。
    改めましてこれからよろしくお願いします」ペコリ

P「既にお互い知っていると思うが、テストは全員合格だ。全員がこちらの予想以上の
  成果をあげてくれたから社長も俺も驚いたよ。期間限定ではあるが、同じ事務所で
  働く仲間として皆の力を貸してくれ」ペコリ






Co「お前合格したのか?行方をくらませたと聞いたから不合格だと思っていたが」

Pa「オレにはオレのペースがあるんだよ。まぁ、CGでは部署が違ったから一緒に仕事を
  することはなかったが今日からよろしくな!」ピカッ!!

Q「それよりCo、アンタ自分1人で十分とか偉そうなコト言ったくせに3日もかかった
 そうじゃない?アタシ1日で終わらせたんだけど」ニヤニヤ

Co「ぐ……っ」ギリッ

P「ケンカをするな。仲良くしろとは言わないが、今後連携して問題の解決にあたって
  もらうこともあると思うからコミュニケーションは取ってくれよ」ハア

Q「はーい♪」

Co「フンッ」プイッ





Pa「でもよブラザー、結局オレがやったことは意味があったのか?一応テストは合格
  したみたいだが、根本的な問題の解決にはなってないと思うぞ」

Q「そうねえ。アタシもキョーコにアドバイスしたけど、そう簡単にあのコの考えが
  変わると思えないし、チエリと自分を比べてまた悩むでしょうね」

Co「フンッ、アイドルのプロデュースに干渉しないのがルールだったから、そもそも
  問題を解決することなど最初から不可能だ。今回のテストで出来たことと言えば
  せいぜい問題の先延ばしか、本人に向き合う機会を与えてやることだけだ」






P「それでいいんだよ。問題とひとまとめに言っても、早急に対応しないといけない
  ものから、本人が自力で解決するのを見守るものまで様々なものがある。今回
  お前達に解決してもらった問題は10段階で言えば3~5程度の危険度だった。
  これは『アイドル活動にただちに影響はないが、様子を見守る』レベルだ」



ちひろ「大事なことは、こちらが常にアイドルが抱える問題を把握しておくことです。
    人は様々な問題に悩み、苦しみ、それを乗り越えて成長しますから、こちらの
    都合で彼女達から安易にその機会を奪ってはいけません。私達は親御さんから
    大事な娘さんを預かる身として、彼女達を育てる責任があります」




P「思春期の女の子の悩みなんていくら解決してもキリがないしな。アイドルだって
  人間だから、誰かを妬みもすれば憎みもする。だがそれは人として当然の感情だ。
  そこから競争心や闘争心が生まれて、互いに切磋琢磨して人は強くなっていく。
  ただ問題を解決するだけでなく、どう昇華するかもプロデュースには重要なんだ」

Pa「わかった、ブラザーがドSだからミオはドMになっちまったのか」

Q「や~んキチクぅ~♪ でも優しいだけのオトコよりス・テ・キ♥」クネッ

P「お前ら、ちゃんとわかってるのか?」

Co「フンッ、つまりアイドルが抱える問題をプロデュース材料のひとつとして管理し、
  アイドルの成長に利用しつつ危険水準に達すればケアを行うということだろう?
  実に不合理で非効率極まりない作業だな」

ちひろ(Coさんってマキノちゃんと気が合いそうね……)





P「まあそういうことだ。だがその非効率な作業によってTPが生まれたんだ。加蓮も
  体力がついてきたし、加蓮の成長に合わせてTPは今後更に強くなるぞ」ニヤリ

Q「キョーコは大丈夫でしょうね?アイドルに疲れてボロボロになっちゃうくらいなら
  アタシがもらってあげるわよ?」

P「誰が渡すか。響子の抱える問題については完全に俺の落ち度だが、代わりにあいつは
  智絵里という最高のライバルに出会うことが出来た。智絵里も響子を意識しているし、
  2人は良い関係を築きつつ競い合いながら伸びていくさ」

Pa「ミオはどうなんだ?アイツはそもそも問題だと思ってなかったみたいだが」

P「未央は今頃、心のブレーキを踏んだり緩めたりしているだろう。調子が良い時こそ
  色々とチャレンジをすることが大事だ。これから少しだけ不安定になると思うが、
  慣れたら今より精度の高い『攻め』と『守り』を使えるようになるはずだ」





ちひろ「どの問題も見えにくい、もしくは見えていても対処の方法が難しいものだと
    思いましたけど、皆さんは即座に見抜いて最適な方法で解決をされました。
    中には高額の費用がかかったものもありましたが、未来への投資だと思って
    アイドル達の今後に期待することにします……」ジロリ

Q「アンタまたバカ高いランジェリー作ったの?ウチの経理にも注意されたじゃない」

Co「私はドクターとして最善を尽くしただけだ。医療には金がかかるんだよ」フン

ちひろ(常習犯ですか。これは今後注意する必要がありますね……)メモメモ




P「それで明日からのお前達の仕事だが、俺がしばらく委員会本部にかかりきりに
  なるから、その間プロデューサー代行として働いて欲しい。もちろん今回の
  ようなアイドルのケアも並行して行ってもらう予定だ。わかったか?」

Q「りょーかい♪ アタシ達プロデュース童貞だからイ・ロ・イ・ロ・教えてね♪」クネッ

Co「今度は危険度10の問題を持ってこい。楽過ぎて腕が鈍る」フンッ

Pa「オレは何でもやるぜ。ブラザーの代わりが務まるかどうかはわからねえが、オレの
  頭が輝いているうちは事務所もアイドルも守ってやるからな!」ピカッ!!





P「頼むから外では普通にしてくれよ?ウチの事務所のイメージに関わるからな」

Co「以前にも言ったが、私をこの変態共と一緒にするな」

P「お前は色の濃いシャツを買っとけ。絶対にブラが透けないやつな」

ちひろ(こうして事務所に3人の優秀なヘンタ…じゃなくてスペシャリストさん達が
    仲間に加わりました。あれ?おかしいな、スタッフの数が増えて仕事は楽に
    なるはずなのに、どうして胃が痛くなるんだろう……?)キリキリ…



つづく?




 ここまで。序盤はサクサク進んでいたのにパッションでブレーキがかかってしまい
ました。Paのアイドルかつティーンは普段書かないから難しいです。アイドル達の
設定や抱えている問題は全て作者の妄想ですのでどうかご容赦を。この続きは未定
ですが、あと2作くらいは書けたらなあと思ってます。では

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