青年「一目惚れしたんだ」 (24)

友「それだけで?」

青年「そう、それだけで」

友「たいした奴だな」

青年「まぁ大変だったけどね」


青年「ここまで来るのは」

友「でもよ・・・流石にあの方は無理だろ」

青年「わかってるよ。側に居たいだけなんだ」

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*数年前*


父「今日は隣国の姫様がやってきてるらしいぞ」

少年(青年)「へー」

父「見に行こう」

少年「うん」


―広場―


父「すごいたくさん・・・人がいるな」

町人1「最近戦争が激化してるってのに良く来たよな」

町人2「だからこそだろ。和解しようとしてるらしいぜ。あちらさんは」


町人3「見えたぞ! やって来た」


 パカッパカ

姫「……」


町人2「馬車に乗ってるな」

 ザッザッザ

町人1「それよりも注目すべきは護衛の数だろ・・・何人いるんだ」

町人3「50人はいるぞ、護衛」

町人2「当たり前だろ、こんな時代なんだ」


少年「父さん」ツンツン

父「なんだい?」

少年「人がたくさんいてお姫様が見えない」

父「ああ、肩車をしてやろう」ヒョイ

少年「わわっ」


姫「……」


少年「・・・」ボー

少年(かわいいなぁ)



護衛兵1「おい、お前!」

商人「は、はい」

護衛兵1「さっさと飯を渡さないか!」

商人「で、では、代金を・・・」

護衛兵1「・・・払えと言うのか? 我々に・・・」

商人「売り物ですから・・・」

護衛兵1「ふざけるな! こっちはわざわざ、戦争してる国に来たんだぞ!」


姫「...大臣」

大臣「っは」


大臣「そこの兵」

護衛兵1「は!」

大臣「今すぐ代金を払え。姫様はお怒りだ」

護衛兵1「は、はい」



父「少年、そろそろ帰ろう」

少年「うん・・・ねぇ父さん」

父「どうした」

少年「どうして隣の国と戦争なんてやってるの?」

父「領土と食料を奪い合っているんだよ」

少年「どうして?」

父「人間が住めるようなところは3国しかないからね」

父「でも年々人は増えていく、だから食料も足りなくなってきているんだ」

少年「ふーん」


少年「姫様はどこへ行くの?」

父「たぶん・・・この国の王様のところじゃないかな」

**

青年「それが俺が最初に姫様を見たときだった」

友「かわいいって・・・初心だな」


友「・・・そういえばお前って、あっちの国出身だったな」

青年「・・・うん」

友「残念だったな」


青年「ああ。この国と俺の居た国は和解した。でも今度は、もう一つの国が攻撃をしかけてきた」

青年「残念だ」

友「結局お前の国は占領されたんだよな。この国の王は何してんだか」

青年「今はもう戦争はしてないみたいだな」

友「休戦状態にあるだけだよ」

先輩兵士「お前ら何してんだ、入軍式始まるぞ」

友「すいません!」

青年「すみません、すぐに行きます」


―会場―


教官「戦いに出る者、町の警備をするものは二年で全て鍛え上げてやる」

教官「ただし、弱音を吐くことは許されない」


青年(俺は姫様の護衛兵になる)

青年(そのために、成績トップを目指す)


教官「覚悟せよ!」


・・・


友「パーティだってよ、やったな」

青年「うん。でもこれから厳しいんだろうな」

友「そりゃ・・・そうだろうな」


女「こんにちは」スッ

友「!」

青年「・・・女の子?」

女「そうよ」

青年「珍しいね」

女「別にいいでしょ」


女「ところで、あなたは何になりたいの?」

青年「え? ・・・護衛兵だよ、姫様の」

女「やっぱり! 他の人とは目が違うと思ったからねぇ」

青年「それは・・・俺は元々隣の国生まれだからね」

女「あ...そんなじゃなくて」

友「なぁ、俺には聞かないのか?」

女「えっと・・・何になるの?」

友「町の警備兵に決まってんだろ」

女「あっそ」

友「あっそて・・・」


青年「お前は何になるの?」

女「私? ・・・ふふっ」

女「私は王の側近になりたいかなぁ」

青年「!」

友「お、おい、それは」

青年「いいんじゃない」


青年「頑張って」

女「うん」

女「じゃあね」ガタッ


友「・・・変な奴だったなあ」

青年「逞しそうだった」

友「そもそも女で軍に入るってのは・・・」

青年「人それぞれだよ」


教官「起立!」

 ババッ


教官「・・・いい反応だ」

教官「全員、たらふく食ったか?」


友(あ・・・俺も青年も話しこんでて、全然食ってねぇぞ!)


教官「では、これでパーティはお開きだ」

友(そんな・・・)


教官「……これより、試験を開始する!」


青年「!」

友「はっ!?」


 ザワザワ...

「おい...入軍式が終わったってことは、俺たちはもう軍人ってことじゃないのか」

「知るかよ...試験ってなんだ」

女「まじ・・・」



教官「静かに!」

教官「内容は唯の体力テストだ」

教官「帰ってくるのが何時でも構わない。ただし、深夜12時までには帰って来い」


友(走るのか?)スッ

青年(だとしたら、運がいい。あまり食べてないから、戻すこともないだろう)スッ


教官「お前らにはこのコース走ってもらう!」


「お、おい、あのコース30kmはあるぞ」

「ふっざけんな、腹いっぱいで走れねえよ」


教官「兵士はいかなる場合でも動き、命令をこなさなければならない」

教官「リタイアする者は勝手にしろ。その代わり、二度と軍には入れない」




青年「欲に負けてたらふく食った奴はハンデがでかい」ボソッ


教官「では、開始だ! 走れ! コースの途中途中には警備兵がいるからズルをしようとしても無駄だぞ!」


友「俺たちは他のやつらに比べたらマシだが、何にせよいきなり30kmとはな」ダッ

青年「まだ昼だし大丈夫でしょ」ダッ

女「お先にー」ダダッ

友「なっ!」

青年「そういえばあいつもあんまり食事を取ってなかったな」



友「はぁっはぁっ」タタッ

友「あと、あと何キロだ?」


青年「16...km」タタッ

友「大丈夫か? 顔色悪いぞ」

青年「ふぅ・・・ちょっと歩くよ」ピタッ

青年「友は体力あるね」テクテク

友「ん。実家が農家でな、親父にいろいろやらされてたから体力がついたんだ」

青年「そうか・・・先に行ってよ」

友「分かった。頑張れよ」ダッ


・午後6時・


教官「5番目だ、よくやった」


友「ど、ども」

友(一番かと思ったんだけどな)

教官「休んでおけ。寮に帰っていても大丈夫だぞ」

友「はい」


友「あの、教官」

教官「なんだ」

友「どうしていきなりこんな試験を行ったのですか?」

教官「昼にも言ったとおり、兵士はいかなる場合でも動けなければならない」

友「しかし・・・あれじゃ走れない人が多いと思うのですが」

教官「吐いてでも走ればいい」

教官「我々の給料は国の人々の金から出ている。それに戦場に行けば生死にもかかわってくる。甘い世界じゃないんだよ、ここは」

友「・・・はい」


―午後10時―

教官「60番目だ」

「し、死ぬー」

教官「61番目だ」

「あう・・・」


友「おかしいな・・・」

友「なんで戻ってこないんだよ、青年」

友「夕方のときには、もう半分くらいいってただろ」



―午前0時―


教官「まだいるのか」

友「えと、友達が、まだ・・・」

教官「早く寝て明日に備えようとは思わなかったのか?」

友「その・・・」

友「心配で」


友「教官は・・・その、12時なりましたが」

教官「私は朝までいるぞ」

友「えっ」

教官「・・・深夜12時までとはいったが、その前に何時に帰ってこようが構わない的なことも言った」

教官「・・・この試験の本来の意図は」


青年「ちゃんと帰ってくるかどうか、ですよね」

友「青年!」

友「と、さっきの」

女「女よ」

教官「何故、そいつを背負っている」

青年「怪我をしていて・・・歩けないそうで」

青年「自分が背負ってきました」


教官「・・・自力で帰って来れないほどの怪我か」

女「...はい」

教官「戦場だったら死んでいるな」

女「はい・・・」

教官「女、お前は試験不合格だ」

女「!」


青年「ま、待ってください。歩けないんですよ? 彼女は」

教官「歩けないのなら、手を使って帰ってくればいい」

友「ちょっと厳しすぎませんか・・・なんなら後日、再度試験を行うとか」

教官「駄目だ」




教官「青年、お前はこの試験の意図が分かっていたようだな」

青年「それは・・・」

教官「ならばこいつに教えてやればよかっただろう。手を使ってでも、転がってでも帰ってくればいいと」

女「っ・・・」


青年「試験の意図は、自分にはわかりませんでしたよ」

教官「なに?」

青年「彼女が教えてくれたんです」スッ

女「青年!?」

青年「彼女は中々勘がきくようです。昼だって、これから試験があるかもだから、あまり食べないほうがいいよ。と、教えてくれました」

友「そうだったのか!?」


教官「...どちらにせよ、こいつは自力で帰ってこなかった」

青年「有能な人材を棄てる気ですか?」

教官「私に楯突く気か?」

青年「・・・いえ」


青年「・・・自分が彼女を背負ったんです」

教官「ほう、何故だ。戦場でそんなことをして見ろ。お前は真っ先に死ぬだろう」


青年「それは...仲間だからです」

教官「仲間・・・」

青年「戦場で仲間を見捨てるような奴は信頼できませんよ」

教官「なるほど・・・」

教官「では、お前の独断で勝手に背負い、運んできたと」

青年「はい。彼女は転がって帰って来れたでしょうが、自分が無理やり背負ってきました」

教官「・・・っふ」


教官「口達者だな。良いだろう。女の怪我が治り次第、もう一度30km走ってもらう、お前も走れよ青年」

青年「はい」


教官「・・・お前らはもう帰って休め」

三人「失礼します」


友「なあ、マジで女ってそんなに勘が良いの?」

女「違うわよ。全部この人の嘘」

青年「全部じゃないだろ。俺が勝手に背負ったのとかは本当だし」

青年「何にせよ・・・もう一周かぁ」

友「はは...ちょっと酷いよなあの女教官」

青年「確かに。綺麗な顔してるのにな。姫様ほどじゃないけど」


友「ああ、ところで。寮って別れてるんだろ? 男子と女子で」

青年「あっ」


銀髪「お困り?」

青年「...誰?」

銀髪「銀髪よ。なんなら連れて行ってあげるよ、その子」

青年「本当? ありがとう」スッ

銀髪「ううん。じゃあ、おやすみなさい」テクテク



友「青年青年青年」ツンツン

青年「何だよ」

友「俺、あの子、タイプ」

青年「えっ銀髪の子?」

友「YES」

友「うはー良い事あってよかったー」

青年「おう、良かったね」

青年「俺たちも帰ろう、眠い」テクテク

友「ああ、とりあえず初日クリアということで」テクテク





つづきはまた

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