男「…へ?」 メリー「だから」(218)
メリー『もしもし。わたしメリーさん。今しまむらの前に居るの』
男「は、はあ。そうですか…」
Pi
男「切れた…なんなんだ一体?」
ピロピロピロ Pi
男「もしもし」
メリー『もしもし。わたしメリーさん。いまあなたのアパートの前に居るの』
男「番号間違ってませんか?」イラッ
Pi
男「切れた…最後まで聞けよ」
ピロピロピロ Pi
メリー『もしもし。わたしメリーさん。いまあなたの部屋の前にいるの』
男「…いやだから番号は?確認した?」イライラ
Pi
男「…またか!くそっ!!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1342107511
ピロピロピロ Pi
メリー『もしもし。わたしメリーさん。いまあなたのうしr』
男「いい加減にしろやあこんのボケがああ!!!」
メリー「ひっ!」ビクッ
男「さっきから何回も何回も間違い電話掛けやがってええ!!!人の言うこと聞けやあああ!!!」
メリー「ごご、ごめんなさいごめんなさい!!」
男「ゴメンですむんなら警察いらんのじゃボケええええ!!!」
メリー「すみませんすみません!!」ペコペコ
男「ふー、ふー…」
メリー ビクビク…
男「…名前は?」
メリー「あ、あの…最初に名乗ったと思いますけど…」
男「名前は?」
メリー「ですから…」
男「なーまーえーは?」
メリー「…め、メリーです…」
お前かよ待ってた
男「…で?」
メリー「…え?」
男「で?」
メリー「えっと…」
男「そーれーで?」
メリー「え?あの…あっ、あの…」
男「謝り方もしらないのか?何回も間違い電話するだけのことはあるなあおい!」
メリー「あ…し、しつこく間違い電話してすみませんでした…」ドゲザー
男「…よし」
メリー「…へ?」
男「もう掛けてくんなよ。じゃあな」
メリー「あ、あの…」
男「あ、それから。電話するときは番号をちゃんと確認しろよ」
メリー「あ、はい…じゃなくて!」
男「あん!?」
>>3 お待たせしましたwww
メリー「ひっ!」ビクッ
男「まだなんかあんのか?ああ!?」
メリー「あああ、あのですね…」ガクガク
メリー「ああ、あなたのTEL番…xxx-xxxx-xxxxですか?」
男「ああ、そうだけど」
メリー「ああ、あの…私の知り合いの番号なんですそれ…」
男「…は?」
メリー「それで…その番号に掛けたらあなたが出て…」
男「俺は昨日、この番号で契約したとこなんだけど?」
メリー「そ、そうなんですか?じゃあ…」
男「きっとこの番号の前の持ち主だろ?あんたが電話するつもりだったのは」
メリー「…そうです…だから何度も電話して…」
男「まあ、俺が電話に出た時点で間違いだって気付くだろ…」
メリー「そ、それが…その人、時々オトコの人を部屋に入れたりしてたから…てっきりそのオトコの人かと…」
男「チョットマテ。オトコを部屋に入れたりって…あんたの知り合いってオンナか?」
メリー「は、はい。っていうか人形を持ってるのって大体女の子じゃないですか?」
男「…人形?何のことだ?」
メリー「いえその…私、人形なんです」
男「…苗字が?」
メリー「そうじゃなくて…その…さっきからあなたの後ろに居るんですけど…」
メリー「だからその…ちょっとでいいんで後ろを見てもらえませんか?」
男「後ろに?アホ言うな。この部屋には俺しか居ないぞ」
メリー「と、とりあえず振り向いてもらえませんか?お願いします」
男「ったく…後ろを見ればいいんだな?」クルッ
メリー「あ、初めまして。メリーと申します」ペコッ
男「あ、これは御丁寧に…って、やけに小さいなあんた」
メリー「人形ですから」
男「…へ?」
メリー「え?」
メリー・男「「…」」
メリー「…あ、あの」
男「…おばけえええ!!!」
メリー ビクッ
男「おおおばけ怖いいいい!!!」ガクガクブルブル
メリー「…えっと…」
男「悪霊退散!悪霊退散!!」パッ パッ
メリー「やめてー!塩まかないでー!!」
・
・
・
男「…」セイザー
メリー「…」セイザー
男「…つまり、あなたは都市伝説で有名なメリーさんという怨霊だと」
メリー「…はい」
男「それで、ある人を探していると」
メリー「はい…」
男「で、唯一の手掛かりのTEL番に掛けたら俺が出て」
メリー コクン
男「きっと一緒に居るオトコがTELに出てるんだろうと思っていたと」
メリー「ご、ごめんなさい…まさかTEL番を変えてるなんて思わなかったから…」
男「それで、○○町の道端からここまで、電話を掛けながらわざわざ歩いてきたと」
メリー「はい…ごめんなさい…」シュン
男(人形が正座して落ち込んでる姿って…なんか変だな)
男「いやまあ…こっちもちょっと大人気なかったって言うか…」
男「俺さ、一浪して今年大学に入ったばっかでさ」
男「ケータイも親が契約した、高校のときから使ってるやつだったんだけどさ」
男「やっぱ脛齧ってるみたいでイヤで、バイトして金貯めてさ、今日やっと自分名義で契約したんだ」
メリー「…」
男「それがこの番号なんだ。俺にとっては記念すべき自立の第一歩なんだ」
男「…それがこんなことになるとはなあ…」
メリー「ご、ごめんなさい…ケチつけちゃって…」
男「…まあいいや。今更だし」
メリー「うぅ…」
男「そんで?」
メリー「え?」
男「メリーさんはどうしたいの?」
メリー「あ、その…大変申し上げにくいんですが…」
男「なに?」
メリー「じ、実はですね…あなた…」
男「“男”でいい」
メリー「は、はい。男さん、私からの電話を取っちゃいましたよね?」
男「あー、うん。取ったね」
メリー「その時点でですね…呪う対象が固定されたんですよ…」
男「…へ?」
メリー「だから」
メリー「私は男さんの怨霊になったんです…」
男「はあ?」
メリー「それでですね…あの…その時に本来呪うべき人のことも忘れちゃって…今更どうしようもないって言うか…」
男「…つまり?俺はメリーさんに呪われてるってこと?」
メリー「言いにくいんですけど…はい」
メリー・男「「…」」
男「…何してくれてんのあんたはああ!!!」
メリー「ひぇっ!」ビクッ
男「ようやく大学に受かって!これから自立に向けて頑張ろうって矢先に!!呪われるだとおお!!!」
メリー「すすす、すみませんすみません!!」ペコペコ
・
・
・
男「…ごめん。また頭に血が上っちまった」
メリー「い、いえ…元はといえば私が悪いんですから…」
メリー「男さんが怒るのも無理ないですよう…間違いで怨霊に取り付かれちゃったんですから…」グスッ
男「…それなんだけどさ」
メリー「はい?」
男「呪いをなくす方法って言うのはないのか?」
メリー「それは…あるにはありますが…」
男「じゃあ、その方法を試してみようよ。な?」
メリー「でも…基本的に男さんが死なないと呪いは解けませんよ?」
男「はいやめー。他には?」
メリー「ほ、ほかには…強力な呪術者に除霊してもらうとか…」
メリー「もっとも、この場合私は消滅しますが…」
男「じゃあ除霊もダメだな」
メリー「え?」
男「ん?」
メリー「いえ…なんで除霊はダメなんですか?」
男「え?だって消滅するんだろ?」
メリー「ええ、まあ…」
男「それじゃ俺の寝覚めが悪いだろ?」
メリー「…へぇ」
男「他には?」
メリー ジー
男「な、なんだよ」
メリー「いえ。なんでもありません」ニコッ
男「変なヤツだな…ところで俺、呪われてんだよな?」
メリー「え、ええ」
男「ぶっちゃけ、どんな呪い?」
メリー「そうですね…まだどんな呪いにするかは考えて無かったですね」
男「え?それって自分で選べるんだ」
メリー「はい」
男「できるだけ地味なのでお願いします」
メリー「で、でも…“呪い”って殺すことが目的だから…」
男「…終わった…俺の人生終わった…」ガクッ
メリー「あ!そ、そんな落ち込まないでください!!」アタフタ
男「だって…」
メリー「あ、あの…そうだ!元々私を捨てた人を呪うはずだったんですから、その人の所に行けば或いは!!」
男「…呪いが消えるのか?」
メリー「だ、だって…捨てられたから呪うのであって、その人の元に帰ることができれば、呪う理由もなくなりますし…」
男「…つまり、元の持ち主を探し出せば何とかなるんだな?」
メリー「はい、いえ…何とかなるかも…ですが…」
男「…よし!明日から持ち主探しだ!!」
メリー「…切り替え早いですね」
男「あ、ところでさ」
メリー「なんですか?」
男「メリーさんの“電話をかけて近づく”スタイルって決まりでもあんの?」
メリー「そうみたいですねぇ」
男「誰かから教えてもらうとか?」
メリー「教えてもらったことはないですね。ただ…先輩の記憶?みたいなのが頭に流れ込んできて…」
メリー「それで覚えるみたいですよ?」
男「じゃあ、なんでメリーさんは電話かけながら近づいてくるんだ?」
メリー「あ、それはですね…相手の位置を確認するためなんです」
男「どういうこと?」
メリー「ケータイって声が遅れて聞こえるんですよ」
男「え?そうなの?」
メリー「そうなんです。で、電話をかけて、遅れて聞こえる自分の声を頼りに相手に近づくんです」
男「遠く離れてるのに聞こえるの?」
メリー「ええ。怨霊は耳がいいみたいで、どんなに離れた所に居ても集中すれば聞こえるんです」
男「それで遠くからだんだん近づいてくるのか」
メリー「ええ。中には逃げ出す人もいるらしくて。そういう人の場合は見失わないように追いかけなきゃいけないんですよ」
男「逃げ切られたらどうなるんだ?」
メリー「それは無いですね。だって最初に電話を受けた時点で呪いの対象として固定されますから」
メリー「地の果てまでも追いかけて呪いをかけます。どれだけ時間がかかっても…」
男「なるほど…結構苦労してるんだな」
メリー「そうですね。まあ、相手を呪い殺そうとしているんですから多少の苦労は…」
男(“多少”とは思えないんだけど)
男「で、相手を間違えてこんなことになる…と」
メリー「言わないでくださいよぅ…結構落ち込んでるんですから…」
男「ゴメンゴメン。お、もうこんな時間だ。風呂にするか」
メリー「お風呂!」
男「ん?入りたいのか?」
メリー「はい。道端に捨てられたときに車に踏まれたみたいで…ほら、タイヤの跡があるでしょ?」
男「そういえば…結構汚れてるな。ホツレもあるし」
メリー「ええ…それで恨みが募ってメリーさんになっちゃったみたいで…」
男「洗ってやろうか?」
メリー「え?えっと…へ、変態?」
男「なっ!そんなこと言うやつは風呂抜き!!」
メリー「ああ!ごめんなさいごめんなさい!!」
男「まったく…人形に欲情するわけねーだろ」
メリー「そ、そうですよね…」
男「ミクさんのフィギュアなら別だけどな」
メリー「やっぱり変態だー!」
男「…よし!やっぱ風呂抜き!!」
メリー「ああ!ごめんなさいごめんなさい!!」
~お風呂~
男「ふぃー…」
メリー「気持ちいいですね~♪」
男「ああ…っていうか、お湯に浸かってると糊が剥がれるとか無いのか?」
メリー「一応縫い付けてあるので大丈夫ですよ?」
男「そうか…じゃあ石鹸で洗うか」
メリー「え?男さんが洗ってくれるんですか!?」
男「メリーさん、一人で石鹸とか使える?」
メリー「…無理です…」グスン
男「だろうな。ほれ、洗面器から出てきなさい」
メリー「はい…あの…優しくしてね?」
男「台詞はエロいが実際は色気も何も無い不思議!」
・
・
・
ワシャワシャワシャ
メリー「…」
男「どうだー?」
メリー「あ、はい。気持ちいいです」
男「そっか。ところでなあ…」
メリー「なんですか?」
男「おなかのここんとこ。なんか硬いものが入ってるみたいなんだけど何?」ツンツン
メリー「…さあ」プニプニ
男「わかんないのか?」
メリー「私が怨霊になる前のことはほとんど分からないので…」
男「なるほど…ちょっと取り出していいか?」
メリー「…え?」
男「ほら、ここんとこ解れてるだろ?」ツー
メリー「ひゃん!くすぐったいってば!!」
男「へんな声出すな!人が聞いたら誤解するだろ!!」
メリー「い、いきなり脇を触るからです!」
男「…まあいい。とりあえずここから指を入れて…」
メリー「あっ…そんな!…無理矢理…指を入れないで!あっ…あんっ…はあん…」
男「声はエロいがエロくない不思議!」
・
・
・
メリー グッタリ
男「…なんだこれ?」
メリー「はあ…はあ…なんですか?」
男「電池とマイクみたいなのと…盗聴器みたいだな。電池が液漏れしかけてるな…」
メリー「そうですか…」ケダルイー
男「やる気なさげだな…」
メリー「男さんのナニが私の中を引っ掻き回したからじゃないですかあ…」
男「指だからね?ナニじゃなくて指だからね?」
メリー「それに私もうこんなにビチョビチョにされて…」
男「お湯だし!」
メリー「はあ…もう好きにして…」
男「…その台詞、かわいい女の子が言ったら興奮するんだがなあ…」
メリー「どういう意味ですか」ジロッ
男「ちんちくりんの人形が言ってもなあ…」
メリー「…もし部屋のフィギュアが言ったら…」
男「萌えます!」
メリー「変態だー!」
男「うるさい。お湯掛けるぞ」ザバーン
メリー「きゃあん!」
~部屋の中~
チクチク ヌイヌイ
男「…よし、できたぞ」
メリー「あの…鏡を…」
男「ん?…ああ。そこにあるだろ」
メリー「あ、はい。よいしょっと…」
ジー クイッ クイッ
メリー「…意外とお上手なんですね。裁縫」
男「まあな。一通り家事は出来るぞ」
メリー「へえ…お母さんから教わったんですか?」
男「…いや、婆ちゃんだ」
メリー「じゃあお婆さんに感謝しないといけませんね。おかげでこんなに上手に直してもらえました」
男「…」
メリー「ん?どうしたんですか?」
男「いや、なんでも…それでさっきの話だけどな…持ち主の手掛かりになるようなものは何かあるのか?」
メリー「そうですね…電話番号とか」
男「おい!」ビシッ
メリー「いたっ!もう…なんでデコピンするんですか!!」
男「電話番号は俺のだろ!」
メリー「…あ、そうでした」
男「…他になんかないのか?名前とか…」
メリー「名前ですか…確か“女ちゃん”って言ってたような…」
男「“女”か…他には?」
メリー「…すみません…」
ピロピロピロ ピロピロピロ
メリー・男「「!?」」
メリー「わ、私じゃないですよ?」
男「わかってるよ」Pi
?『やあ。やっと繋がったよ。女ちゃん、ひどいなあ。半年以上ずっとケータイの電源切ったままなんて』
?『まあいいよ。僕は寛大だからね。それより僕が出張で居なかったこの2週間、寂しかったんじゃない?』
?『でももう大丈夫。これから君の部屋に行くから。これからはいつでも君の傍にいてあg』Pi
男「き、気持ち悪っ!」
メリー「ど、どうしたんですか?」
男「なんか気持ち悪いヤロウからの電話だった…誰かの呪いか?」
メリー「ええまあ…」ポリポリ
男「…そういや呪われてたんだ俺…」
メリー「すみません…」
ピロピロピロ ピロピロピロ
メリー・男「「!?」」
男「…」Pi
?『もしもし!?あいつまた女のアパートに来てるよ!もしもし?聞いてる?』
男「あ、はい。聞いてます」
?『え?…あっ!ご、ごめんなさい!!』Pi
プーッ プーッ…
メリー「今度は?」
男「今度はオンナの声だった…てか“女”の知り合いみたいだったな」
メリー「…それです!」
男「な、何だよいきなり大声出して…」
メリー「男さん、今の人の電話番号、履歴に残ってますよね?」
男「あ、ああ。…そうか!リダイヤルすればさっきのオンナに掛かるんだな!!」
メリー「そうですよ!手掛かりになります!!」
男「よーし。まずはこの番号を電話帳に登録して…」
メリー「…最初の電話も登録しますか?」
男「そうだな…とりあえず登録して、コイツからなら無視するか」
メリー「…私の電話番号は?」
男「…一応登録しとこう。そういやこれリダイヤルできるのか?」Pi
メリー「わっ!」
男「どうした?」
メリー「い、いえ…頭の中で呼び出し音がなったのでビックリしたんです…」
男「取れるか?」
メリー「えっと…」
メリー『も、もしもし?』
男「おお!ちゃんと繋がってる!!」
メリー「すごいです!これで別行動しても連絡できますね!!」
男「…別行動なんてするのか?」
メリー「するかもしれないじゃないですか!それよりもさっきのオンナの人に電話しなきゃ!!」
男「そうだな」Pi Pi Pi
プルルル プルルル ガチャ
?『…もしもし?』
男「あ、すみません。さっきあなたから電話を頂いた男というものですけど…」
?『はい?』
男「ちょっとお尋ねしたいことがあって電話したんですが…」
?『…どういったことでしょうか?』
男「実はですね、先ほど見知らぬオトコから電話が掛かってきまして…」
男「“女”っていう人のことを言ってたんですけど…」
男「“部屋に行く”とか“ずっと傍に居る”とか…とにかく気持ち悪くてですね」
男「で、先ほどの電話であなたが“女”って言う人と知り合いだって分かったんで…」
男「とりあえずお伝えしたほうがいいかと思いまして」
?『はあ。わざわざありがとうございます。では』
男「ちょっと待って!」
?『ほかになにか?』
男「すみません。ちょっと教えてほしいことがありまして」
?『どんなことですか?』
男「とりあえずお名前を…なんて呼べばよろしいですか?」
?『…女友です』
男「女友さん。あの…お願いがあるんですけど…」
女友『…なんですか?』
男「…女さんに会わせてくれませんか?」
女友『え?』
男「あー、やっぱいきなりこんなお願いは無理ですよね…」
女友『…理由は?』
男(メリーさんが覚えていたTEL番とストーカーが掛けてきたTEL番が一緒だった…てのは言ってもなあ…)
男「…あの、さっきの怪しいオトコってストーカーっぽくって…」
女友『…』
男「女さんのちょっとした個人的なことも言ってたんで…」
男「それで、とりあえず女さんにお知らせしたほうがいいかと思いまして…」
女友『…どんなことを言ってたの?』
男「それは…電話ではちょっと…」
女友『…』
男「…」
女友『…アパートなら』
男「ありがとうございます」
女友『…○○町○○アパート203号室です…』
男「ありがとうございます。明日の昼頃にでも行ってみます」
女友『…わかりました。ほかには?』
男「そうですね…あの…20cmぐらいのオンナの子の人形に覚えはありませんか?」
女友『え?…どんな人形ですか?』
男「髪は茶色の毛糸。服は白、スカートは赤のチェックなんですけど」
女友『…似たような人形に覚えはありますけど…それがなにか?』
男「それは…誰の所有物か御存知ですか?」
女友『…私ですが』
男「え?」
男(ということは…メリーさんが呪おうとしてたのは…女友さんなのか?)
女友『…すみません、急いでいるので切っていいですか?』
男「あ、ごめんなさい。それじゃ、おやすみなさい」Pi
メリー「…どうでした?」
男「ああ。女さんのアパートの場所を聞き出せた」
メリー「すごーい!やりますね男さん!!」
男「まあ、電話だと相手の顔もわからないから話しやすいし?」
男「それに…このTEL番の元の持ち主ならメリーさんのことも知ってるんじゃないか?」
メリー「…ありがとうございます」ペコッ
男「いきなりなんだ?」
メリー「見ず知らずの…しかも間違えて呪ってしまった私のために、こんなにしていただいて…」
男「いやいや。呪いを解くためにしてるんだから」
メリー「それでも…ありがとうございます…」ペコッ
男「…さ、さあて!もう寝るかなー!?」
メリー「…案外シャイなんですね」クスッ
~女のアパートの近く~
バタタタタ…
男「グーグルマップによるとこの辺なんだけど…あの公園とかに見覚えは?」
メリー「どうですかね…」
男「うーん。はずれか?」
メリー「すみません…」
クスクスクス
男「…なんかメッチャ笑われてるし…」
メリー「なんでですかね?」
男「そりゃあ…原チャリで人形と話しながら運転してるからじゃね?」
メリー「…傍から見るとただの危ない人ですね」
男「…」ピシッ
メリー「いたっ!またデコピン!?」
~女のアパート~
キー ガッタン
男「…このアパートだな」
メリー「…」
男「なんか思い出したか?」
メリー「いえ、ただ…」
男「ただ?」
メリー「なんだか…すごく息苦しいんです…」
男「大丈夫か?」
メリー「変ですよね。人形なのに息苦しいって…すみません。早く行きましょう」
男「お、おう」
・
・
・
男「…203号…ここだな」
メリー「…」
男「…押すぞ?」
メリー コクン
男「…」
ピンポーン
男「………………あれ?」
ピンポーン
メリー「………どうしました?」
男「いや、誰も出てこないんだ」
メリー「本当にここ何ですか?」
男「聞いた住所通りなんだけど…すんませーん!」ドンドン
「確保ーっ!」
メリー・男「「え?」」
警官‘s「おとなしくするんだ!」
男「え?…ちょっ!ちょっと!!メリーさん!!」
メリー「お、男さん!!」
・
・
・
~警察署~
ダン!
男「だから!俺はストーカーなんかじゃないって!!」
刑事「まあまあ。落ち着けって。な?」
男「…っ!」
刑事「お前は被害者にしつこく付きまとい電話や手紙でストーカー行為を続けている。そうだな?」
男「だから違うって!」
刑事「…いい加減にしろ!」
男「あんたこそいい加減にしろ!!」
刑事「お前は今日の夕方、被害者の友人のところに電話を掛けた。違うか!?」
男「女友さんだろ。掛けたよ」
刑事「そら見ろ。やっぱりお前がストーカーだろうが」
男「なんで電話だけでストーカー呼ばわりなんだよ!!」
刑事「そのあと、被害者に話があるとか何とかいって住所を聞き出した。そうだな!?」
男「あ、ああ…住所は聞いたけど…」
刑事「だからお前がストーカーだろ!!」
男「ストーカーなら住所ぐらい調べて知ってんだろーが!!俺は知らなかったんだよ!!」
・
・
・
ガチャ
警部「こちらです」
女 オズオズ…
女友「大丈夫?わたしがついてるからね?」
女「う、うん…」
警部「…あの男です。見覚えはありませんか?」
女友「わたしは…ちょっと分かりません…もう少し背が低かったような気が…」
警部「ふむ…ではあなたはどうですか?」
女「…あ、あの…こんな声じゃないです…」
女「そ、それに…もっと背が低くて…髪も短くて…あの人じゃありません」
女「ご、ごめんなさい…はっきり見たことが無いもので…」
警部「…ふぅ。そうですか…」
・
・
・
刑事「…」
男「…」
ガチャ
警部「おい」
刑事「はい」ガタッ
ヒソヒソヒソ…
刑事「…分かりました。おい、帰っていいぞ」
男「はあ?」
刑事「容疑がはれたんだ。もう帰っていいぞ」
男「…ちっ。謝罪ぐらいしろよ」ガタッ
警部「すみませんねえ。うちの若いのが迷惑かけちゃって」
男「…あんたもグルだろ」ジロッ
警部「…ナンノコトデスカ?」フッ
男「…ふんっ」
~夕方・警察署の前~
男「やっと解放か…」
男「…メリーさんを探さないと…TELしてみっか」Pi Pi
?「男くん?」
男「え?は、はい。そうですけど…」
男(なんだこのイケメンは?)
?「ちょっとごめん。俺、この子達の会社の先輩なんだけど…」
男「え?はあ?」
?改め先輩「ほら、謝りたいんだろ?」
女・女友 コソコソ
女友「ええっと…その…ごめんね?」ペコッ
女「…あ、あの…ごめんなさい」ペコッ
男「あ、いえ…えっと…」
先輩「あ、この子たちさ、君の事をストーカーと勘違いしちゃってさ」
男「…へ?」
先輩「君、女友ちゃんに女ちゃんの住所聞いたろ?」
男「は、はあ…」
先輩「それで女友ちゃんが君をおびき寄せるために女ちゃんが前に住んでたアパートの住所を教えたら君が来て…」
女友「あたし、あんたのことストーカーだと思ったから…」
女友「それで、女が一昨日まで住んでたアパートの住所を教えたの…」
先輩「女ちゃん、ストーカーの被害にあってて、急いで引っ越したんだ」
女友「あたし、女の新しい住所知らなかったし。ま、知ってても教える気はなかったけどね」
女友「それで…どうせなら捕まえてやろうって…」
女友「それで物陰から覗いてたの。で、あなたが来たから警察に連絡して…」
男「はあ…つまり俺はあなたのせいで警察に捕まったってわけですね?」
先輩「おい、そんな言い方しなくてもいいだろ?」
女友「いいのよ。こっちが悪いんだし…ごめんね?」
男(茶髪ショートでちょっとキツメの感じの人だな)
女「ご、ごめんなさい…」
男「えっと…なんであなたまで?」
女「え?だ、だって…あたしのせいでストーカーに間違えられたから…」
男(こっちは黒髪ロングで薄幸の美少女系と)
男「…はあ。もういいですよ。ところで…あなたが女友さん?」
女友「…女友です」
男「やっぱり。聞いたことある声だと思った…ってことはこっちが女さん?」
女「は、はい…」
男「俺は男です。初めまして」
先輩「…とりあえず場所を変えないか?いつまでも警察の前で立ち話ってのもアレだし」
男「…そうですね」
今日はここまでにします
おやすみなさいノシ
南蛮船時?
>>ALL お待たせしました
再開します
>>54 メリーさんスレ、多いですもんね…
~ファミレス~
先輩「注文は決まったかな?」
男「あ、はい」
先輩「今日はお詫びに奢るよ」
男「あ、いいんですか?」
女「あ、せ、先輩。わ、私も出しますよ」
女友「女はいいの。せっかく先輩が奢るって言ってるんだから、ありがたく奢られましょ?」
先輩「あ、ああ…」
女「で、でも…やっぱり私も払います」
先輩「女ちゃんは優しいなぁ」ニコッ
女「あ…//」
先輩「でもいいよ。俺が奢るから。な?」ナデナデ
女「あうぅ…//」
男(リア充死ね!)
女友「じゃあ注文するよ?」ピンポーン
ウェイトレス「御注文はお決まりでしょうかー」
・
・
・
男「ごちそうさまです」
女友「あ、男くん。ほっぺにケチャップがついてるわよ?」
男「え?どこですか?」
女友「拭くからちょっと顔だして?」
男「…へ?」
女友「ほらここ」フキフキ
男「あ、ありがとうございます…」
先輩「ははは。女友ちゃんは優しいなあ(棒」
男(目が笑ってないよあんた。わかりやすいなぁ)
女「…」イラッ
男(ん?女さんがイラついてるような…気のせいか?)
男「女さん、どうしました」
女「え?」
男「いや、なんか落ちつかなそうだったから」
女「そ、そんなこと無いですよ?」
男(なんかちょっと引っ掛かるな…)
先輩「…ところで、男くん。時間は大丈夫かい?」
男「えーっと…あ」
男(そういえばメリーさん、大丈夫かな?)
先輩「どうしたの?」
男「あ、すみません。ちょっと電話を…」Pi Pi Pi…
メリー『もしもし。わたしメリーさん。さっきのアパートの近くの公園にいるの』
男「男です。連絡が遅れてごめん」
メリー『男さん、無事だったんですね!警察に連れて行かれましたけど、大丈夫ですか?』
男「俺のほうは大丈夫だよ。それより…そっちのほうは?大丈夫?」
メリー『ええ、大丈夫です。でも人目があるから動きが取れなくて…今は植え込みの中に隠れてます』
男「そっか。わかった。こっちは今から女さんたちと話をするから、そっちにいくのが遅くなるけど」
メリー『私は大丈夫ですよ。だからちゃんと話し合ってくださいね?』
男「ははは。信用無いのな」
メリー『男さんてイライラすると見境無く大声出すじゃないですか』
男「うっ…おっしゃるとおりです…」
メリー『だから、私のことは気にしないでくださいね?のんびり待ってますから』
男「ん。わかった。じゃあ」Pi
男「あ、すみません。お待たせしちゃって」
先輩「いいよいいよ。気にしなくて。約束でもしてるの?彼女?」
男「いえ、そうじゃなくてですね…友達です」
先輩「友達?女の子?」
男「ええまあ、一応…」
先輩「あー。じゃああんまり引き止められないね」
男「はあ。なので手短にお願いします」
先輩「ああ。わかった。じゃあ早速…」
先輩「…ことの発端は半年ほど前なんだ」
女友「女がね、あたしに『誰かに見られてる』って相談してきたの」
女友「それで、あたしが気のせいだよって言ったら…」
女「あ、あの…毎日夜になると電話が掛かってきて…その日の私の行動を説明するんです…」
男「なにそれこわい」
女「うっ…うぅ…」
女友「こらっ!女が泣いちゃうじゃない!!」
男「あ、すみません…」
女友「…他にもいろいろあってね。警察に相談したんだけど…現行犯逮捕でないと難しいって言われてね」
女友「それで先輩に相談して…とりあえずケータイを解約して番号を変えたりしたのよ」
男(そのとき変えた番号が今俺が使ってる番号か…)
女「そ、そしたら今度は…殆んど毎日のように手紙が入ってくるようになって…」
男「事態は悪化?」
女友 ジロッ
先輩「…男くん、茶化すのはどうかと思うよ?…確かに聞いてて楽しいもんじゃないけど」
男「はあ。気をつけます」
女友「…だけどここ2週間ほど何もなかったんだよね?」
女「うん…だからこの際引っ越しちゃおうって…それで一昨日…」
男「で、昨日の夜になって俺のケータイにストーカーから電話があったと」
女友「たぶんそのときだろうね。あたしがコンビニから帰る途中あのアパートの傍を通ったらストーカーがいて」
女友「それで女に電話しようとしたら間違えて古い電話番号のほうに掛けちゃって…」
先輩「そういうことなんだ。そこから先は説明は要らないだろ?」
男「ええ」
女「…」
男(女さん、怯えてんのかな?俯き加減で喋らなくなったけど…)
ピロピロピロ ピロピロピロ
女・女友・先輩 ビクッ
男「あ、俺のケータイです。…え?」
女友「どうしたの?」
男「…ストーカーからです」
女「切って!!」
女友「お願い男くん」
男「はいはい。ほいっ…と」ピロピ Pi
先輩「また掛かってきたか…」
女 ガクガクブルブル
女友「女、大丈夫だからね?」ナデナデ
男「とりあえず電源切りますね」Pi ピー…ッ
女友「…先輩、もう女は限界みたいだから…先輩の車で家まで送ってやってくれませんか?」
先輩「え?そ、そりゃあ…女ちゃんがいいなら…」
女「お…お願いします…そ、その前に洗面所に…」ガクガク
先輩「じゃ、じゃあ…一緒に行こうか?」
女 コクン
ヨロヨロ…
女友「じゃあ男くん。女が帰ってきたら、あたしも一緒に行くわね」
男「あ、はい」
女友「…大丈夫かなぁ…」
男「女さんの心配ですか?」
女友「そうよ。あの子精神的に弱いからね」
男「あ、そっちの心配なんだ」
女友「どういう意味?」
男「いや、先輩さんが女さんを襲ったりしないか心配してるのかと」
女友「それはそれでいいんじゃない?」
男「こわいよ!この人かわいい顔して怖いよ!!」
女友「褒めてくれてありがと♪」
男「こわいってとこはスルー!?」
女友「自覚あるし」
男「性質悪いよ!」
女友「あのさ、ここだけの話だけど女ってね…先輩のことが好きなの」
男「…へ?」
女友「だから襲われたって問題ないんじゃない?むしろ襲われたほうがいいかも♪」
男(この人…なんかもういろいろと酷い…)
女友「その方が手っ取り早いでしょ?駆け引きとか色々すっ飛ばせるし」
男「そういう考え方って…オンナとしてどうなんですか?」
女友「まあまあ。細かいことは気にしない♪」
男「はあ…ところで、女さんってどんな被害にあってたんですか?」
女友「…なんでそんなこと聞くの?」
男「いや、なんか女さんの怯え方がハンパなかったんで、どんなことをされたのかなと」
女友「悪趣味ね…」
男「でももし電話の相手が女さんじゃなくて俺だってわかったら俺、ストーカーに何されるかわかんない訳でしょ?」
女友「そうね」
男「だから予備知識として知っておいたほうが、心の準備が出来るんじゃないかと」
女友「そっか…でもあんまり気持ちのいいもんじゃないよ?」
男「そりゃまあ…嫌がらせなんてそんなもんでしょ」
女友「じゃあ…さっきは女がいたからあんまり言えなかったけど…」
女友「会社への無言電話、女の一日の行動日記、郵便ポストをこじ開けられたりとか…」
男「はあ…陰湿だなぁ…」
女友「言ってて思った…でね、女は友達もいなくなって…」
男「え?なんで?」
女友「一日の行動日記って言うのにね、女のことだけじゃなくて一緒に居た人たちのことも書かれてるのよ?」
女友「まったく見ず知らずの人に自分達が観察されてるって、気持ち悪いもんだからね」
女友「だからみんな女から離れていっちゃって…それで余計に女が参っちゃったんだよね」
男(そりゃそうなるわな)
女友「警察にも相談したんだけどね…現行犯でないと難しいって言われてさ」
男「ちょっといいですか?」
女友「なあに?」
男「じゃあ女友さんは、なんで女さんと一緒にいるんですか?」
女友「…ほっとけないからじゃダメ?」
男「理由としては弱いです」
女友「…まいっか。あたしさ、会社でセクハラされてたのよ」
男「してた方なんじゃ…」
女友「なあに?」ジロッ
男「い、いえ…」
女友「…で、その現場を女がケータイで撮影してくれてね。動画をばら撒きますって女が言ったの」
女友「それからはセクハラが無くなったわ」
女友「…あたし、女に助けられたの。だから今度は私が女を助けてあげたいんだぁ…」
男「じゃあ先輩さんとくっつけようとしているのも…」
女友「ん?」
男「いえ、なんでもないです」
女友「そう?」
男(先輩さんは女友さんのことが好きなんだろうな。でも女友さんはその気は無いと…)
女友「そういえばさ」
男「なんですか?」
女友「昨日、人形のこと言ってたでしょ。あれってどういうこと?」
男「あ、気にしないでください」
女友「めっちゃ気になるんですけどー」
男(あー、どう言い訳するか考えてなかった。あの盗聴器みたいなのの話を出すべきか…)
男「っていうかですね、女友さん、心当たりがあるんでしょ?」
女友「うん。前に女に貰ったことがある人形と特徴が一緒なのよ」
男「女さんから?」
女友「ええ。あの子、そういうの得意みたいなのよ」
男「そうなんですか…ちなみにその人形は今は?」
女友「そういえば最近見てないな…どこに行ったんだろ?」
女友「誕生日のプレゼントでさ、手作りだって言ってたのに…なくしたら女に怒られるわね…」
男「そうですか…」
男(女友さんを見る限り捨てたって感じじゃないな…)
女友「…あ、もうこんな時間」
男「じゃあ、帰りますか」
女友「そうだね。会計はあたしがしとくよ」
男「あ、いいですよ。割り勘で」
女友「いいのいいの。元々あたしらが謝罪するために来てもらったんだし。それに」
女友「明日、先輩に請求するからね」ニコッ
男「はぁ…かわいそうな先輩さん」
物陰:?「…」
~夜・女の前のアパートの近くの公園~
バタタタタ…キーッ
男「よっと。メリーさん居るかな?」Pi Pi Pi
メリー『もしもし。わたしメリーさん。いまあなたの足元にいるの』
男「おわっと!居た!!」
メリー「もうお話は終わったんですか?」
男「ああ。お待たせ、メリーさん。退屈してなかったか?」
メリー「大丈夫ですよぅ。あの子とお話してましたから」
男「あの子って?え?あの猫?」
メリー「ええ。またねー」ノシ
猫「なーお」ピョン スタスタスタ
男「ふーん…どんな話をしてたんだ?」
メリー「どんなって…あの部屋の人のこととか、怪しい人とか…」
男「で、なんか収穫はあったのか?」
メリー「そうですね。あの部屋の人…女さん?ですけど、半年ぐらい前まではよく夜中に出かけたり夜更かししたりしてたそうです」
メリー「でもここ半年ぐらいは早く寝てたみたいですね」
男(ストーカーにつけまわされるようになってから早く寝るようになったのか…)
男(じゃあそれより前は何をしてたんだ?)
男「それで?」
メリー「それ以上のことは分かりませんよ。あの子もそこまで人間に興味があるわけじゃないですし」
男「ふーん。まあ、一旦俺の部屋に帰るか」
ナニアレ ヤダ、ニンギョウトハナシテルー キモーイ
メリー「…そうですね」
~男の部屋~
男「…」
メリー「…男さん」
男「ん?」
メリー「どうしたんですか?さっきから難しい顔をして」
男「ああ。今日のことを整理してるんだ」
メリー「整理…ですか?」
男「うん。まず、女さんがストーカーに狙われている。これは事実だ」
メリー「そうですね」
男「で、女さんは先輩さんのことが好きみたいだ」
メリー「そうなんですか?」
男「ああ。女友さんが言ってた」
男「で、女さんはストーカーのことを女友さんに相談した」
男「そして女友さんは先輩さんに相談して、女さんにの電話番号を変えるとか部屋を引っ越すとかアドバイスしたりしてたんだ」
メリー「なるほど…それで先輩さんのことが好きになって…」
男「そうらしいな」
メリー「…」
メリー「…どうした?」
メリー「…いえ、なんか違和感があるんです…」
男「違和感?」
メリー「ええ…」
男「どんな?」
メリー「良く分からないんですが…何か引っかかるんです」
男「…実は俺もなんだ。なんなんだろうな。何か引っかかるんだよな…」
メリー「男さんもですか?」
男「ああ」
メリー「…気になりますね」
男「…けど、今はメリーさんのことを優先しないとな」
メリー「ありがとうございます。でも、私の呪いは今のところ発動してませんし、いま一番の問題はストーカーじゃないですか?」
男「それもそうか。といってもなあ…なんも手掛かりはないし」
メリー「そうですね…あれから電話もないですし…」
男「ま、悩んでてもしょうがない。風呂入って寝よう」
メリー「…男さんてホント切り替えが早いですねぇ…」
~翌朝~
男「…」
メリー「どうしたんですか?早くしないと大学に遅れるんじゃ…」
男「いや、靴を履こうと思ったらドアに手紙が挟まっててな」
メリー「手紙?」
男「ああ」カサカサ
女さんは僕のものだ。
二度と近づくな。
メリー「これって…」
男「ストーカーの仕業だな…」
メリー「どうするんですか?」
男「…あとで女友さんにTELしておくか」
メリー「え?それだけ?」
男「ほかにどうしろって言うんだよ」
メリー「…確かに、ほかに出来ることはないですね」
男「しっかしこいつもバカだなぁ。なんで俺のところに手紙を入れるんだ?」
メリー「え?」
男「いやだってさ、女さんが好きなのは先輩さんで、俺じゃないのに」
メリー「そうですね…あ!」
男「どうした?」
メリー「大学!時間大丈夫ですか!?」
男「あ!やべっ!!」
~大学・授業の無い講義室~
男「ええ。ですから気をつけたほうがいいと思います」
女友『わかったわ。わざわざ連絡してくれてありがとう』
男「先輩さんにも気をつけるように言っておいてください」
女友『ええ。言っておくわ』
男「それじゃ」Pi
メリー「…あの」
男「ん?なんだ?」
メリー「ストーカーが先輩さんじゃなくて男さんを狙った理由を考えていたんですが…」
男「え?ずっと考えてたの?」
メリー「はい。大学の授業なんて聞いても私にはわかりませんから。それでですね…」
男「ストーカーが俺を狙っている理由か?」
メリー「はい。あの…ひょっとしたらあのとき…女さんの前のアパートに居たんじゃないかと思うんです」
男「俺が警察に捕まったときのことか?」
メリー「ええ。女さんのアパートに訪ねてきた男さんを彼氏と勘違いして…」
男「え?そんなことで?」
メリー「だって、自分が好きになった女性の部屋に見知らぬオトコが来たんですよ?」
男「身内かもしれないだろ?」
メリー「ストーカーさんなら女さんの家族関係も調べてるんじゃないですか?」
男「なるほど…」
メリー「そして警察から出てきた男さんが女さんたちといっしょに居る所を見て…」
男「けどさ、先輩さんはずっと前から女さんと一緒に居たから、先輩さんを彼氏だと思うほうが自然じゃないか?」
メリー「それなんですけど、先輩さんは女友さんに言われて女さんの相談に乗っていたんですよね?」
男「ああ」
メリー「と言うことは、先輩さんはいつも女友さんといっしょに女さんに会いに行ってたんじゃないですか?」
男「あ!そうか!!それでストーカーは先輩さんは女友さんの彼氏だと思っているかもしれないと…」
メリー「そういうことです」
男「なるほど…そういうことなら辻褄は合うな。となると…」
メリー「ええ。これからも狙われるのは男さんと言うことになります」
男「…やっぱ呪われてるわ。俺…」
メリー「す、すみません」
男「いやいや、メリーさんのせいじゃないよ」
メリー「でも…」
男「それに、もしそうだとしてもさ、メリーさんは俺のために色々頑張ってくれてるだろ?」
男「だからそれで帳消し!な?」ニカッ
メリー「…ありがとうございます」ウルッ
~校庭~
男「ふぁああ…」
ピロピロピロ ピロピロピロ Pi
男「もしもし?」
メリー『わたしメリーさん。うふふ。大きな欠伸ですね』
男「なんで講義って眠くなるんだろうな?」
メリー『それは分かりますね。私も鞄の中で寝ちゃいましたから』
男「いいなー。俺も寝たいよ」
メリー『そんなことじゃ留年しますよ?』
男「うっ。それは避けたいな…」
メリー『じゃあ、頑張って起きててくださいね?』
男「ああ。そうするわ。じゃあ」Pi
モブ男「めずらしいな、男に電話なんて。もしかして彼女か?」
男「いやいや」
モブ女「えー!?男くん、彼女いたの!?」
男「だから違うって」
モブ男「じゃあ誰だよ」
男「それは…えっと…誰でもいいだろ!?」
モブ女「やっぱり彼女じゃないの?」クスクス
男「いや、だから…」
モブ男「今度紹介しろよ。な?」
モブ女「あたしも男くんの彼女見てみたーい♪」
男「…勝手に妄想してろ」カタッ
モブ男「おい、どこに行くんだよ」
男「ちょっとな」
モブ女「彼女によろしくねー」
男「付き合いきれん…」
?「…彼氏気取りかよ…ちっ」
メリー ゾワッ
ピロピロピロ ピロピロピロ Pi
男「どうした?」
メリー『もしもし。わたしメリーさん。今、殺気を感じました』
男「え?殺気?」
メリー『気をつけてください』
男「あ、ああ。分かった」Pi
ヒュー ガシャン!
男「!?」ビクッ
モブ女「大丈夫!?」
男「あ、ああ…大丈夫だ」
モブ男「あっぶねえなあ…誰だ!植木鉢なんか落としたやつは!?」
ピロピロピロ ピロピロピロ Pi
男「もしもし?」
?『…今のは警告だ』Pi プーッ プーッ…
男「…ストーカーの野郎…くそっ!」
モブ男「…今の電話、なんだ?」
男「あ、ああ。なんでもない…バイト先からだ。今日これから出てこれないかって」
モブ男「そ、そうか…」
男(こいつらを巻き込むわけにはいかないからな)
~スーパー~
男「キャベツは相変わらず高いな…もやしにしとこう」ガサッ
男「豚肉は…細切れで十分だな。あとは胡麻ドレッシングと…」
ピロピロピロ ピロピロピロ Pi
男「もしもし?」
メリー『もしもし。わたしメリーさん。いま男さんの鞄の中にいるの』
男「どうした?」
メリー『いま近くをストーカーらしい人が通りました。気をつけてください』
男「え?…おわっ!」ヒョイ
シャーッ ガシャーン!
店員A「大丈夫ですか!?」
男「あ、ああ。大丈夫です。当たってませんから」
店員B「すみません。お怪我は無いですか?」
男「あ、はい」
ナニ? ダレカガ カートヲブツケタンデスッテ マアコワーイ
メリー『男さん!』
男「大丈夫だ。それより…ありがとう。また助けてもらった」
メリー『いえ…元はといえば私のせいですから…』
男「もう気にするなって。それよりストーカーは近くに居るか?」
メリー『えっと…ちょっと分からないですね…』
男「ってことはもう居ないと思っていいみたいだな。じゃあ…メリーさん、何か欲しいものある?」
メリー『綿!』
~男の部屋~
男「いただきまーす」
メリー「…男さんって何でもできるんですね」
男「前に言ったろ?家事は一通り出来るって」モグモグ
男「それに、豚しゃぶのモヤシ添えなんて誰でも出来るって」
メリー「そうなんですか?」
男「そうそう」
メリー「ふーん…」
男「…どうした?」
メリー「いえ、料理も裁縫も出来て…すごいなって…」
男「そんなことないって」
メリー「でも、どうして家事をするようになったんですか?」
男「…俺ん家さ、父子家庭なんだ」
メリー「え?」
男「俺、母さんを早くに亡くしてさ。物心ついたときから婆ちゃんの家に居たんだ。中学を卒業するまでな」
メリー「…」
男「あ、別に辛かったわけじゃないぞ?俺、婆ちゃん好きだったしな」
男「で、その婆ちゃんにさ、“これからの男は家事ができて当たり前”って言われて、家事をするようになったんだ」
男「おかげで今はすごく助かってる。婆ちゃんに感謝しないとな」ニカッ
メリー「…ごめんなさい」
男「まーた謝ってるし…もう気にすんなって。な?」
メリー「でも…話を聞けば聞くほど、呪い殺すような人じゃないって…それが分かって…」グスッ
男「…気にすんな。俺はまだ生きてるんだし。な?」
メリー「でも…」
男「それより、スーパーで買ったこの綿、どうするんだ?食べるのか?」
メリー「食べません!体中の綿の嵩が減ってるんで足して欲しいんです!!」
男「そういや盗聴器を取り出してそのままだったもんな。飯が終わったらするか」
メリー「はい。お願いします」ペコッ
~風呂上り~
男「っぷはーっ!風呂上りの麦茶サイコー!!」
メリー「やっぱりお風呂に入ると綿がほぐれて気持ちいいですねぇ♪」
メリー・男「「あはははは」」
ピロピロピロ ピロピロピロ
男「ん?誰だ?…公衆電話かよ…」
メリー「…ストーカーさん?」
男「そうだろな。よっと」Pi
ストーカー『女さんは私のものだ。お前は邪魔だ』
男「そうかい。ところでストーカーさんよお」
ストーカー『馴れ馴れしく話すな!大方貴様が女さんを騙して引っ越しさせたんだろ!!俺が出張に行っている間に!!』
男「でかい声出すなって。ちょっと話をしようぜ」
ストーカー『貴様と話すことなんか無い!お前だけじゃない!!女さんに近づくヤツはみんな邪魔者だ!!』
男「そう熱くなるなって」
ストーカー『邪魔者は排除する!排除だ!!イーッヒッヒッヒッヒ!!』プッ プーッ プーッ…
男「あ、切りやがった」
メリー「…ちょっと離れたところに邪念を感じます。遠ざかってますね…」
男「明日からは用心しないとダメだな」
メリー「そうですね…私も出来るだけ警戒します」
男「ありがとう」
メリー「い、いえ!もとm」
男「それ以上言うのは禁止!」
メリー「…はい」
男「女友さんにも連絡しておいたほうがいいな」Pi Pi Pi
女友『もしもし?』
男「あ、女友さんですか?」
女友『そうだよー。デートの誘い?』クスクス
男「いえ、それはないです」
女友『傷つくなあ。もうちょっとこう…言い方があるでしょ?』
男「以後気をつけます。それでですね、今ストーカーから電話があったんです」
女友『え?』
・
・
・
男「と言う訳なんです。女さんが引っ越したこと…頭に来てるみたいですよ?」
女友『分かったわ。注意しておく』
男「女さんは?」
女友『彼女は会社を休んでる。家に閉じこもってるわ』
男「え?大丈夫なんですか?」
女友『会社にくると後をつけられる可能性があるでしょ?』
男「食料とかは…」
女友『今のところ買い物には出てるわ。さすがに今はストーカーも女の家までは分からないでしょうから』
男「分かりました。くれぐれも気をつけてください。先輩さんにも連絡を」
女友『ええ。ちゃんと伝えておくわ。じゃあ』
男「おやすみなさい」Pi
メリー「…どうなるんでしょうね…」
男「ま、なるようにしかならないさ。もう寝るわ」
メリー「はい。おやすみなさい」
~翌朝~
メリー「…」
男「ん…ん?おはよう…」ネボケー
メリー「…男さん、さっきストーカーさんが来たみたいです」
男「なに!?」
メリー「ポストに何か入れたようです」
男「見てくる」
ガチャッ
男(ポストの中は…と。手紙?)
パタン
メリー「どうでした?」
男「手紙が入ってた。どれどれ?」カサカサ
男「…」
メリー「どうしたんですか?」
男「いや…」カサッ
排除する排除する排除する排除する排除する排除する排
除する排除する排除する排除する排除する排除する排除
する排除する排除する排除する排除する排除する排除す
る排除する排除する排除する排除する排除する排除する
排除する排除する排除する排除する排除する排除する排
除する排除する排除する排除する排除する排除する排除
する排除する排除する排除する排除する排除する排除す
る排除する排除する排除する排除する…
メリー「これは…」
男「ったく暇だよなあ。こんな手紙を書いてポストに入れるために早起きしてさ」
メリー「…」
男「ん?どうした?」
メリー「男さんって…動じませんね」
男「まあ、こんなので死ぬわけでもないし?」
男「呪いに比べりゃこれぐらいはどうってことない」
メリー「なんか…すごいですね…」
男「細かいことは気にしない主義なんだ」
メリー「そういう問題でしょうか…」
男「そんなことより腹減った。朝飯朝飯♪」
メリー(まあ、そんな男さんの動じなさのおかげで今の私があるんですけどね)
~翌朝~
男「今朝はなんだ?」
ガチャッ
男「うっ…」
パタン
メリー「どうしました?」
男「いや…猫の…」
メリー「あ、言わなくていいです」
男「…とりあえず警察に…」Pi Pi Pi
・
・
・
警官「では」
男「はあ…」
パタン
メリー「あの…」
男「現行犯逮捕でないと無理だってさ」
メリー「どうしてですか?証拠なら電話や手紙がありますよね?」
男「それだけじゃ相手を特定できないからってさ」
メリー「じゃあ…」
男「ま、当てにならないってことだ。女さんがあんな風になるのも分かるな」
メリー「どうして…」
男「日本の警察は“疑わしきは罰せず”なんだ。だから、何か起こってからでないと動けないんだ」
メリー「そんなっ!それじゃ被害があってからでないと警察は何もしないってことですか!?」
男「ま、分かっちゃいたけど…実際にされると堪えるな…」ポリポリ
メリー「…これから…どうするんですか?」
男「…自分で気をつけるしかないだろ」
メリー「そうですね…私も気をつけますから」
男「ありがとな」
メリー「はい。頑張ります」
~数日後・朝~
男「…さて、そろそろ出かけるか」
メリー「はい。じゃあ鞄の中に…」ゴソゴソ
男「じゃあ行くよ」
ピロピロピロ Pi
メリー『ちょっと待ってください…はーい。いいですよー』
男「よし。じゃあいくか」
パタン
男「鍵をかけて」ガチャ
カンカンカン
男「今日は学校のあとバイトだからスクーターで行くか…ん?」
スカッ スカッ
メリー『どうしました?』
男「いや…スクーターのブレーキワイヤーが切られてる…」
メリー『…ストーカーですか?』
男「たぶんな。しょうがねえから歩いていくか…」
メリー『大丈夫ですか?』
男「ああ。今日はバイトがあるし、スクーターの修理は明日だな」
メリー『警察には?』
男「どうせただのイタズラで片づけられるよ。ちょっと急ぐぞ」
メリー『はい』
Pi
男「はぁ…地味に堪えるなあ…」
・
・
・
男「赤信号か…」
ピロピロピロ Pi
男「どうした?」
メリー『悪意が近づいてきます。たぶんストーカーさんです』
男「分かった。気をつけるよ」
男「とは言ってもなあ…ストーカーの顔も分かんねーし…」
ドンッ!
男「っ!?」
男(突き飛ばされた!?くそっ!)
ガシッ
ストーカー「!?」
男(手をつかめた!踏ん張れ!!)
ストーカー「くっ、くそっ!」
男「てめえ!なにしやがんだ!!」
ストーカー「うわああああ!!!」ドンッ!
男「くっ!」
男(体当たりしてきやがった!車が!!)
キキーッ
男(間に合わない!受け身を!!)
ドドンッ ドサッ
男「…ふぅ」
ムクッ
運転手「だ、大丈夫か!?」
男「ああ…受け身をとったからなんとか…奴は?」
ストーカー「うぅ…」
通行人「いま救急車を呼んだから!」
男(なんとか生きてるな)
男「すいません、警察にも連絡を…」
通行人「は、はい!」Pi Pi Pi…
男「あ、あいつは…いた。おい!」
ストーカー「うぅ…くそっ!貴様なんか…貴様なんかに…」フラッ
男「…もう終わりだ。大人しくしてろ」ゴンッ
ストーカー「がっ…」ガクッ
ピロピロピロ ピロピロピロ Pi
メリー『男さん!大丈夫ですか!?』
男「ああ、大丈夫だ」
メリー『…この人がストーカーさんです。よくも男さんを…!!』
ゴゴゴゴゴ…
男「やめろ」
メリー『どうしてですか!男さんをこんな目に合わせたんですよ!?』
男「メリーさんが呪うと死んじまうだろーが」
メリー『こんな人、生かしておく価値はありません!!』ゴゴゴゴ…
男「だからやめろって」
メリー『でもっ!』
男「俺はメリーさんに怨霊になってほしくないんだ。しかもこんなヤツのせいでさ」
メリー『でも…』
男「今回は目撃者もいる。警察も動くだろ。だから…な?」
メリー『…分かりました』
ピーポーピーポー
通行人「救急車が来ましたよ!」
男「ああ…ありがとう」
~病院~
メリー「大したことなくて良かったですね」
男「まあな。検査入院で明日まで入院になったけどな」
メリー「男さんは生身なんですから、体を大事にしないとダメですよ?」
男「ははは。はいはい。メリーさんは平気なのか?」
メリー「私は鞄の中に居ましたから特には…」
男「よかった。メリーさんが怪我しなくて」
メリー「その時はまた男さんに直してもらいますよ。ふふふ」
男「おう。任せとけ。はははは」
コンコン ガチャ
刑事「男さん。ちょっといいですか?」
男「なんですか?」
刑事「あなたを突き飛ばした男ですが…言ってることが支離滅裂なんで、ちょっと困ってるんですよ」
男「はあ」
刑事「あなたの証言では彼は女さんと言う人に付きまとっているストーカーで、男さんを逆恨みしていると」
男「ええ。そうです」
刑事「で、お尋ねしたいのは…彼との接点なんですが…」
男「まったく知らない人です。俺が契約したケータイの番号が、たまたま以前女さんが使っていた番号で」
男「それでストーカーが電話をかけてきて…恨まれる憶えなんて全くないですよ?」
刑事「そうですか…女さんと言う人に連絡はできますか?」
男「…女さん、あのストーカーのことで警察にも相談に行ってますから、そっちで分かるでしょ?」
刑事「そうですか…ま、調べてみますよ」
男「お願いします」
刑事「それじゃ」
男「はい」
ガチャ
刑事「あ、そうそう」
男「まだなにか?」
刑事「彼、ストーカーの前科がありましたよ。だから今回のことで実刑は免れないでしょうね」
男「そうですか」
刑事「じゃ」
パタン
男「…ったく。動くのが遅いっての!」
メリー「…男さん、結構きつくあたってましたね」
男「まあな。最初に警察がちゃんと動いてくれてりゃこんなことにはならなかったって思うとな」
メリー「でもこれで…」
男「ああ。もう女さんはストーカーに悩まされることはないな」
メリー「良かったですね」
男「…次はメリーさんの番だな」
メリー「え?」
男「どうすりゃメリーさんの呪いから解放されるか、だよ」
メリー「あぅ…そうですね…」
コンコン ガチャ
女友「男くん、大丈夫!?」
男「ああ、女友さんか。刑事さんに会わなかったですか?」
女友「ええ。そこで会ったわよ。女が捕まってるわ」
男「女さんも来てくれたんですか?」
女友「ええ…あれ?」
男「どうしました?」
女友「その人形…」
男「あ、ああ。これは…前に話しましたよね?」
女友「え?…あ、ああ!あのとき話してたのがこの人形なの!?」ヒョイ
男「ええ」
メリー「…」
女友「へぇ~。うちにあったのとそっくりだわ」
男「あの…」
女友「あ、ゴメンゴメン」コトッ
メリー「…」
女友「で?男くんの容体は?」
男「大したことないですよ。ただの検査入院ですから」
女友「でも、車にはねられたんでしょ?ホントに大丈夫?」
男「大丈夫ですって。あははは」
女友「あはは。元気そうでよかったわ。それにしても…女、遅いね。ちょっと見てくるわ」
パタン
メリー「男さん…」
男「ん?どうした?」
メリー「さっきの人に持ち上げられた時…懐かしい感じがしました」
男「あ、じゃあやっぱりメリーさんは女友さんの部屋に居たんだ」
メリー「ええ、たぶん…でも」
男「ん?」
メリー「私を捨てたのは…あの人じゃありません」
男「…そっか」
メリー「私は…誰に捨てられたんだろ…」
男「それは…」
コンコン ガチャ
女友「女連れてきたよー」
メリー「…っ!?」
男「あ、久しぶりです女さん」
女「…だ、大丈夫ですか?」
男「ええ。怪我したわけじゃなくて検査入院ですから。女さんも顔色が良くなりましたね」
女「ええ」ニコッ
女友「男くん。女ねえ、先輩と付き合うことになったんだって」ニヤニヤ
女「もう!女友ったら!!」デレデレ
男「あ、おめでとうございます」
女友「あははは。デレるなデレるな♪」
女「もう…」
女友「あははは。じゃあ、あたしは刑事さんに呼ばれてるから、ちょっと行ってくるね」
パタン
男「あ、そこに椅子があるから座ってください」
女「うん…」
男(この人、どうも苦手なんだよなあ。なに話せばいいんだろ…)
女「あの…男さん、ごめんなさい。私のせいでこんなことに…」
男「いや、これは女さんのせいじゃないでしょ」
女「でも…」
男「まあ、これでストーカーも逮捕されたし、安心ですね」
女「ええ。男さんのおかげです。ありがとう」ニコッ
男「お礼ならそこの人形に…あれ?」キョロキョロ
女「どうしたんですか?」
男「いや…そこに人形があったはずなんですが…」
女「捜しましょうか?」
男「あ、いいですよ。そのうちひょっこり出てくると思いますから」
女「ふふ。男さんって変わってますね」
男「そうですか?」
女「ええ。だって人形の話をしてるように思えなくて。まるで…生きてる人みたいに言うんだもの」
男「いやまあ…その…」
女「それはそうと、私も探しますよ。どんな人形ですか?」
男「そう言われるんなら…20cmぐらいのオンナの子の人形なんですけど」
女「…フィギュアですか?」
男「違いますよ。髪は茶色の毛糸。服は白で、赤のチェックのスカートを穿いた人形なんですけど」
女「…っ!?」
男「女友さんが、女さんにもらった人形にそっくりだって言ってましたけど…」
女「…」
男「どうしたんですか?」
女「え?いえ、なんでも…あの…男さん、その人形…どこで…」
男「あ、○○町の道端で拾ったんですよ」
女「…っ!」
男「…どうしたんですか?顔色が良くないみたいですけど…」
女「え?…あ、だ、大丈夫です…あ!男さん、お手洗いとか行きたくないですか!?」
男「え?そんなには…」
女「早めに言ったほうがいいですよ!ほら、行ってきてください!!」
男「え?でも…看護師さんが来たときに留守にしてると怒られるし…」
女「私がいるから大丈夫です!さ、どうぞ!!」
男「えっと…じゃあ、行ってきます…」
パタン
男「なんなんだいったい…あの人、やっぱり苦手だわ…」
男「っと。それよりメリーさん、どこに行ったんだろ?」
男「ケータイで…あ、あれ?」
男(病室に忘れてきたのか…)
男「…まあいいや。先にトイレに行ってこよう」
~夜中・病室~
男「zzz…」
メリー「男さん、男さん」ペチペチ
男「ん…zzz…」
メリー「男さん、起きてください。男さんってば」ペチペチ
男「ん…ん?…メリーさん?…今までどこに行ってたんだ?電話しても出なかったし」
メリー「…」
男「ん?どうした?」
メリー「…思い出したんです」
男「何を?」
メリー「…恨むはずだった人を…です」
ガバッ
メリー「安心してください。まだ恨んで…ないですから」
男「そっか…良かった…」
メリー「…」
男「…何があったんだ?」
メリー「…男さん、お話があります」
男「話?」
メリー「…男さん。このままだと私…女さんを呪います」
男「どういうことだ!?」
メリー「…男さん。以前違和感を感じるって話をしたの、覚えてますか?」
男「違和感?…あ、そういえばあったな」
メリー「その違和感の正体が分かったんです。それでこれを取りに行ってたんです」
コトッ
メリー「男さん、覚えていますか?」
男「これって…メリーさんの中から取り出した盗聴器か?」
メリー「ええ。これが違和感の正体です」
男「どういうことだ?」
メリー「これは私の中にあった。そうですね?」
男「ああ、そうだな」
メリー「では、誰が私の中にこれを入れたんでしょう?」
男「え?そりゃ…え?待てよ?」
メリー「そうです。ストーカーさんが入れられる訳が無いんです。だって…」
メリー「私は…女友さんへの誕生日のプレゼントだったんですから」
男「!!」
男(そうだ。女友さんは“女の手作りだ”って…だからあの盗聴器は…)
メリー「それから…男さんがトイレに行っている間に女さんがなにをしていたか…わかりますか?」
男「いや…そういやなんか変だったよなぁ。女さん…」
メリー「私、女さんに見つからないように、見つからないように隠れてたんです」
メリー「そこで…女さんがなにをしていたのか、男さんのケータイで動画を撮っておきました。見てください」
男「いつの間に…ってか、勝手に触るなよ。プライバシーの侵害だぞ…」Pi Pi Pi
動画:ガサガサッ バサッ
女「ない…ない!」ゴソゴソ
女「…あんっ!どこなのよ!!」バッ
女「くそっ!早くしないと!!」バサッ
女「なんであの人形がここにあるのよ!!」バンッ
男「女さん…何してたんだ?」
メリー「…」
男「なんか…探し物か?」
メリー「…私です」
男「…へ?」
メリー「だから」
メリー「女さんが捜してるのは…私なんです」
男「な、なんで…あ!」
メリー「そうです。女さんが捜していたのは…この盗聴器なんです」
男「…ちょっと待って。頭を整理するから…」
メリー「…もういいですか?」
男「うん…まだちゃんと整理できてないけど…」
メリー「じゃあ…この盗聴器を私の中に仕込んだのは女さんです」
男「うん…それしかないな…」
メリー「では…女さんはなぜ私の中にこんなものを入れたんでしょうか?」
男「それは…分かんねえ…メリーさんは?」
メリー「私…思い出したんです」
男「思い出した?なにを?」
メリー「私は女さんに作られた人形です。女さんは言ってました」
メリー「“これで女友の弱みを握ってやる”って」
男「え?」
メリー「…女さんは実は以前から先輩さんのことが好きだったです。でも先輩さんは…女友さんのことが…」
メリー「それで、女友さんの弱みを握って、先輩さんにばらして…自分のほうを向かせようとしたんです」
メリー「そのために私に盗聴器を仕掛けて…」
男「なんだよそれ…」
メリー「でも、そのあとすぐに女さんはストーカーに狙われて…先輩さんと話ができるようになって…」
メリー「それで…私のことは忘れてたみたいなんです…」
メリー「ところが引っ越しする時に女友さんの家に泊まったときに私を見つけて…」
男「メリーさんを持ち出して捨てたってことか」
メリー「はい」
男「けど、なんでそんなことしたんだ?そのまま置いとけば盗聴できるんじゃないのか?」
メリー「もし女友さんが盗聴器に気がつくと困ったことになると思ったんだじゃないでしょうか…」
メリー「それに…電池切れだったでしょ?」
男「あ、なるほど…見つかるとやばいし、置いておいても役に立たないってわけか」
メリー「はい…」
男「だからメリーさんを持ち出して…」
メリー「用済みになった私は道端に捨てられた…」
男「それでメリーさんはその恨みを晴らすために怨霊になって俺のところに来たってわけか」
メリー コクン
メリー「そのことを思い出した時…女さんを呪おうとしました」
男「なっ!」
メリー「でも出来なかった…今は男さんにとり憑いてますし…それに…」
メリー「…呪おうとすると男さんの悲しそうな顔が浮かんで…」
メリー「だから…」
男「そっか。ありがとな」
メリー「いえそんな!御礼を言うのは私のほうですよ!!」
男「お礼なんていいよ。それに…」
ナデナデ
メリー「あ…」
男「よく我慢した。えらいぞ」ナデナデ
メリー「うぅ…うぇええ…」
男「よしよし…」ナデナデ
・
・
・
男「…で、これからどうする?」
メリー「…男さんはどうするんですか?」
男「俺は…とりあえず女さんと女友さんの二人と話してみるつもりだ」
メリー「先輩さんは?」
男「あの人は呼ばなくていいだろ」
メリー「どうして?」
男「先輩さんはストーカーのことに絡んでるけど、メリーさんのこととは関係ないだろ?」
メリー「それはそうですけど…大丈夫ですか?」
男「ああ。ややこしいことに関わり合いにならずに済むんならそれに越したことはないだろ?」
男「けど…メリーさんが俺のところに居ることは女さんにはバレてるだろうし、無視しても絡んでくるだろうしな」
男「だから、三人で話して、それで終わりにしよう。な?」
メリー「…そうですね。でも、くれぐれも気をつけてくださいね?」
男「ああ」
~翌日・フードコート~
男「…遅いなあ」
ピロピロピロ Pi
メリー『わたしメリーさん。いま男さんの鞄の中に居るの。オンナの子は支度に時間がかかるもんなんですよ』
男「そういうもんなのか?」
メリー『男さん…女性と付き合ったことないんですか?』
男「ああ。うちでは学校から帰ったら買い物して洗濯物取り込んで晩飯作って…」
男「彼女どころかクラスメイトともまともに話したことはないな」
メリー『思いっきり所帯じみてますねぇ…』
男「ほっとけ!」
女友「あー!いたいた!!」
男「あ、女友さんだ。切るぞ」
メリー『…落ち着いて話して下さいね?』
男「ああ」Pi
女友「あれえ?電話?彼女?」ニヤニヤ
男「いえいえ、友達ですよ」
女「彼女じゃないんですか?」
男「違いますって」
女友「なーんだ、つまんないの」
男「何を期待してるんですか。まったく…」
女「それで…お話って?」
男「あ、それなんですが…見ていただきたいものがありまして」ゴソゴソ
コトッ
メリー「…」
女「っ!?」
女友「あ、昨日の人形じゃないの。これがどうかしたの?」
男「はい。これ…見覚えがありますよね?女さん」
女「…」
女友「え?…これってやっぱりあたしが貰った人形なの?なんで男くんが持ってるの?」
男「女さんには話しましたよね?○○町の道端で拾ったって」
男「それで、この人形の中にこんなものが入っていたんですよ」
コトッ
女友「…なにこれ?」
男「盗聴器です」
女友「え!?なんでこんなものが入ってるの?」
女「…」
男「…女さん、間違ってるところがあったら訂正してください」
女 ジロッ
女友「え?なに?女ってば何か知ってるの?」
女「…」
男「…女友さん。これは、女さんが女友さんの弱みを握るためにこの人形に仕込んだものです」
女友「…はい?」
男「この人形を女友さんにプレゼントした時…女さんがストーカーにつけ狙われる前のことですが」
男「女さんは先輩さんが女友さんに気があることが気に入らなかった」
男「だから、女友さんの弱みを握るため、この人形に盗聴器を仕掛け…女友さんの弱みを握ろうとした」
女友「ちょっと待って…頭が追いつかない…」
男「ちゃんとついて来て下さいよ?…女さんは女友さんの弱みを握って…」
男「それを先輩さんにバラすことで、先輩さんが自分のほうを見るように仕向けようと計画した」
男「そのためには女友さんの私生活を知る必要があった」
女友「そんなもの知ったって面白くもなんともないわよ?」
男「ところが、その直後から女さんはストーカーにつけ狙われて、それどころではなくなった」
男「精神的に追い詰められた女さんは女友さんに相談し、女友さんは先輩を巻き込んだ」
女友「う、うん…あたしが先輩に“女がストーカーに狙われてる”って…」
男「…運命のいたずらですね。思いがけず女さんは先輩と話をするようになった」
男「そして…この人形のことは忘れてしまった」
男「それから約半年。ストーカーのことで引越しをするために女友さんの部屋に泊まった女さんは…」
男「女友さんの部屋に飾ってあった、この人形を見つけたんです」
女 ギュッ
男「女さんは焦りました。先輩さんとの距離も縮まってきた今、この人形のこと…盗聴器のことがばれるとまずいことになる」
男「女さんは女友さんに気付かれないようにこの人形を持ち出し…○○町の道端に捨てた」
女「…作り話だわ」
女友「…女?」
女「だってそうでしょ!?こんなのアンタの推測じゃない!!」
男「…認めたらどうですか?」
女「認めない!」
男「推測ですが事実でしょう?」
女「だったら!証拠を見せなさいよ!!証拠がなければだれも信じないわ!!」
男「…証拠はありますよ」
女「この人形?それとも盗聴器?そんなのいくらでも捏造できるじゃない!!」
男「…女さん、昨日俺の病室でこの人形を探していたでしょ」
女「…っ!そ、そんなことしてない!!」
男「こんなことはしたくなかったんですが…」ゴソゴソ
女友「ケータイ?」
男「女さん、あのときこのケータイは動画撮影モードになってたんです」
女「!?」
男「見てみますか?」
Pi Pi Pi ザー…
女「ない…ない!」ゴソゴソ
女「…あんっ!どこなのよ!!」バッ
女「くそっ!早くしないと!!」バサッ
女「なんであの人形がここにあるのよ!!」バンッ
女「あ…」
男「この動画は捏造なんかじゃありません」
女「あ…あぅ…」
女友「女…あんた!」
女「…ご…めん…なさい…」
男(やっと認めたか…)
女友「…いい。わかった」
女「お願い…先輩には…」
女友「言わない。だけど条件があるの」
女「…条件?」
女友「あんたは友達なんかじゃない。もう二度とあたしに話しかけないで」
女「っ!?」
女友「それから。女、ちょっと話があるんだけど?」
女「…はぃ…」
女友「…男くん」
男「なんですか?」
女友「その人形あげるわ。煮るなり焼くなり好きにして」
男「へ?いや、でも…」
女友「じゃあ、男くんが処分して。あたしはもういらないから」
男「いや…そうじゃなくてですね…」
女友「そんな人形、もう見たくないのよ!お願い」
男「は、はあ…分かりました」
女友「それとさ、先に帰ってくれる?あたしはこいつと話があるから」
男「…はい。じゃあ…」
女「…きさまぁあああ!!!」ガタッ
女友「黙れ!!!」
女 ビクッ
女友「…座れ。話があるって言ったでしょうが」
女「うぅ…」ガタン
女友「男くんに手出ししたら先輩に言うからね」ジロッ
女「…ぁぃ…」
女友「…じゃあ、男くん。ごめんね?」
男「いえ…失礼します」ガタッ
~男の家~
メリー「これで全部片付きましたね」
男「女さんが何か仕掛けてくる可能性はあるけどな」
メリー「それは大丈夫でしょう。女友さんにバレることを考えたら…」
メリー「女さんもそんな墓穴を掘るような真似はしないと思いますよ?」
男「ああ。けど…後味の悪い話だ」
メリー「そうですね…」
男「…あ、そういえば」
メリー「なんですか?」
男「女友さん、メリーさんを俺に引き取らせたけど…そっちは恨みとかは…」
メリー「ないですよ。こうなるのは予測してましたし…」
メリー「それに、女友さんも嫌でしょ?」
男「まあそうだな。メリーさんを見るたびに女さんのことを思い出すだろうしな」
メリー「女友さんはそれなりに大事に扱ってくれてましたからね。見るたびに嫌なことを思い出すくらいなら…」
メリー「…手放して貰ったほうが幸せなんですよ。きっと」
男「そうかもな」
メリー「ええ…」
男「で…恨みのほうは?」
メリー「言いにくいんですが…残ったままです」
男「やっぱり」ガクッ
メリー「でももう呪いが発動することはありません。っていうか、私が男さんを恨む理由がないですし」
男「そっか…よし!今夜はお祝いしようぜ!!メリーさん、何か食いたいものは?」
メリー「あ、私は何にも食べませんよ。人形ですから」
男「そっか。じゃあ、何か欲しいものは?」
メリー「ないですよ。人形ですから」
男「うーん。じゃあ、何か希望は無いか?」
メリー「希望…ですか?」
男「そう。なんかない?」
メリー「…男さん、それは…なんでもいいんですか?」
男「え?あ、ああ。俺で出来ることならな」
メリー「実は…お願いがあるんです」
男「お願い?あ、あんまり金がかかるのはちょっと…」
メリー「たぶん大丈夫ですよ。それでお願いって言うのは…~~~」
【エピローグ】
~数日後・男の実家~
ガラガラガラ
男「婆ちゃーん、ただいまー」
男婆「あら、おかえり。もっと遅くなるんじゃなかったのかい?」
男「あー、そのつもりだったけど、家に寄ってから行こうと思って、ちょっと早めに出たんだ」
男婆「そうかいそうかい。ほら、冷たい麦茶だよ」
男「お、さんきゅー」ゴクゴク
男婆「元気そうだねえ…あら?」
男「あ、それな。電話で言ってた人形だ」
男婆「まあまあ。かわいらしいお顔をして」ヒョイ
メリー「…」
男「婆ちゃん、親父は?」
男婆「お酒を買いに行ってるよぉ。男ちゃんと飲むんだって」ナデナデ
男「そっか。じゃあ、親父が帰ってきたら行ってくるわ」
男婆「晩御飯は肉じゃがでいいかい?」
男「…ああ。ちょっと自分の部屋に戻ってるわ」ヒョイ
~男の実家部屋~
メリー「優しいおばあさんですね。抱き上げられたとき、暖かくって柔らかくって…安心できました」
男「そっか…」
メリー「…男さんのお父さん、男さんと飲みたくてお酒を買いに行ってるんですね」クスッ
男「ああ。何かにつけて飲みたがるんだよなぁ…」
メリー「いいじゃないですか。男親は、息子と飲むのが夢だって言う人は多いらしいですよ?」
男「にしてもなぁ…俺、飲むと眠くなる体質だからなぁ…」
ガラッ
男父「おう。今夜は泊まってくんだろ?」
男「久しぶりに会った第一声がそれかよ!…まあ、泊まっていくつもりだけどさ…」
男父「今日はいい酒が手に入ったから、日が落ちてから一杯やるぞ」
男「わかったわかった。じゃあ、俺たちはそろそろ出かけるわ」
男父「ん?」
男「どうした?」
男父「いや…お前今“俺たち”っつったろ?」
男「ああ…あ?ああ。いい間違いだ」
男父「なんだ…てっきり彼女かなんかを連れて帰ってきたのかと」
男「いやいや。そう言うんじゃないから」
男父「じゃあなんだ?お前ひょっとして…空想の友達とかか!?」
男「んなっ!友達ぐらいリアルでいるわ!!そうじゃなくてだな…」
男父「…男」
男「なんだよ」
男父「…悩みがあるなら、飲みながら聞くぞ?」
男「ねえよ!しかもなんで飲むんだよ!ってか、あんたに相談しても“飲んで忘れろ”しか言わねえだろうが!!」
男父「よし!こうしちゃおられん!!酒を買い足しに行かねば!!」ダダダダ…
男「だから!…って、もういねえ…」
メリー「…面白いお父さんですね」クスッ
男「悪いやつじゃないんだけどな…時々うざいんだわ」
メリー「だめですよ。お父さんのことを悪く言っちゃ」
男「悪く言ってるつもりは無いんだけどなぁ」
メリー「…男さん、そろそろ時間じゃないですか?」
男「あ…そうだな…」
メリー「すみません、男さん。お手数をおかけします」ペコッ
男「いいっていいって。メリーさんには世話になったからな」
メリー「…ありがとうございます」ニコッ
~近くのお寺~
メリー「うわあ…大きなお寺ですね…」
男「ああ。割と有名なお寺らしい」
メリー「あ、見てください」
男「ん?あ…」
メリー「大勢いますね…」
男「ああ。全国から来るらしい」
メリー「あそこは?」
男「ああ…社務所だ…」
メリー「そうですか。行きましょう、男さん」
~社務所~
巫女「では、こちらに御供養される方のお名前をご記入いただきまして、御供養料をお願いします」
男「はい…これでお願いします」
巫女「それでは本殿のほうへ」
男「はい」
~本殿~
巫女「こちらでしばらくお待ちください」
男「はい」
メリー「…いよいよですね…」
男「…なあ、メリーさん。ホントに…」
メリー「まだ言ってるんですか?もう決めたことです」
男「…」
~~~~~回想~~~~~
男お願い?あ、あんまり金がかかるのはちょっと…」
メリー「たぶん大丈夫ですよ。それでお願いって言うのは…供養してほしいんです」
男「はい?」
メリー「男さん…人形供養って知ってますか?」
男「地元のお寺が確かそうだったな…いやいや、そうじゃなくてだな!」
メリー「…男さん、私は怨霊なんですよ?」
メリー「しかも、誰も呪うことができない中途半端な…そのせいで…」
メリー「…男さんは気付いていないかもしれませんが、私は少しずつ男さんを不幸にしてるんです…」
男「そんなことないだろ?」
メリー「ううん…今回のストーカー騒ぎも、私の呪いが関係しているんです…」
男「え?」
メリー「私は…呪いの力を使わなかったために…少しずつ怨念を放出していたみたいなんです…」
メリー「怨念は邪念と結び付き…力となって…」
メリー「…今回のことは、私の怨念がストーカーさんの邪念と結び付いて起こったんです」
メリー「そのせいで…男さんはストーカーに狙われる羽目になったんだと思うんですよ」
メリー「普通、女さんの番号に電話して男さんが出たら、番号を確認してちょっと話をして、間違いだって気付くでしょ?私もそうでしたし…」
メリー「でも怨念のせいでそうならずにこじれていった…」
男「いやいや、そんなのこじ付けだろ」
メリー「そうだったらどんなにいいか…」
男「きっとそうだって。な?」
メリー「…でも…違うんですよ…さっき言ったことは本当なんです…」
男「メリーさん…」
メリー「私は…これ以上男さんに迷惑をかけたくないんです…だから…お願いします!」ペコッ
男「け、けど…」
メリー「今なら穏やかな気持ちで供養してもらえます。だから…お願いします。男さん」
~~~~~~~~~~
メリー「…男さん」
男「ん?」
メリー「私…男さんに会えてよかったです。でないと今頃は本当の怨霊になってたでしょうから…」
メリー「私が今、こうしてここに居るのは…男さんのおかげなんです」
男「…」
メリー「だから…男さんにはいくら感謝してもしきれません」ニコッ
男「…」
メリー「…ねえ、男さん」
男「ん?」
メリー「フィギュアさん、大事にしてあげてくださいね?」
男「え?…あ、ミクさんか?ああ」
メリー「彼女、男さんによくしてもらってるって、ありがたいって言ってましたよ?」
男「え?ミクさんも話ができるのか?」
メリー「ええ。と言っても彼女と話せるのは私だけですけどね」
男「ふーん…そっか。ああ、大事にするよ」
メリー「ええ。でも…」
メリー「ちょっとだらしない時があるって言ってました。お酒を飲んだ時は」
男「あー…」
メリー「彼女、男さんのことが心配だから、もうちょっとシャキっとしてほしいって言ってましたよ?」
男「…はい。以後気をつけます…」
メリー「絶対ですよ?」
ガララッ
住職「お待たせしました」
男「あ、はい」
住職「では、お人形を」
男「これです」
ヒョイ
住職「これはこれは…いいお顔をしておられる」
住職「まるで…自ら供養されようとしておられるようだ」
男「はい…」
住職「さぞや大事にされてきたのでしょう?」
男「いえ、あまり大事には…」
住職「いやいや。お人形を見ると持ち主がどのように扱ってこられたかわかります」
住職「…このお人形は随分と愛されていたようですな」
メリー //
住職「では、ほかのお人形といっしょに御供養します。それでは」
男「ちょっ、ちょっと待ってください!」
メリー「!?」
男「…最後に…もう一度だけ…」
住職「分かりました。拙僧は大護摩壇のほうにおりますので、御心がお決まりになりましたらおいで下さい」
ピシャッ
メリー「…どうして…きゃっ!」
ギューッ
男「…これで最後だから…」
メリー「男さん…」
男「…もういいよ」
メリー「…ずるいです」
男「…へ?」
メリー「だから」
チュッ
男「え?…へ?」
メリー「仕返しです!イーだっ!!」
男「…ははっ」
メリー「うふふふ。…じゃあ、行きましょう」
男「ああ」
~境内~
男「あれか…」
メリー「あれが大護摩壇ですか…仲間がいっぱいいますね」
男「そうだな」
メリー「寂しくなくて良かったです」ニコッ
男(そんな…こんな時に微笑まないでくれよ…こっちが辛くなっちまうだろ…)
メリー「…男さん」
男「ん?」
メリー「私は大丈夫です。だから…男さんも笑って見送ってくださいね?」
男「…ああ、わかった」ニコッ
ザッ ザッ ザッ
住職「…もうよろしいかな?」
---きっかけはちょっとした間違いだった
男「はい。お願いします」ヒョイ
---怒った
住職「確かに」ソッ
---怖かった
コトッ
---話し合った
住職「これよりお人形の御供養を執り行います」
---助かるために協力した
パチパチ…メラメラ…
---助けるために協力した
仏説摩訶般若波羅蜜多心経~~~
---困難があった
メラメラ…
---ヤバイと思った
男(メリーさん…こっちを向いて座ってる…)
---変だと思った
ピロピロピロ ピロピロピロ
---考えた
男「メリーさん!?」
---秘密がわかった
Pi
---すべてが繋がった
男「もしもし?」
---別れが来た
メリー「わたしメリーさん。いま大護摩壇の中に居るの」
---寂しくなった
男「メリーさん!」
---でもこれでいい
メリー「まだちゃんとお別れを言ってなかったから…」
---これがいちばんいい
メリー「…さよなら…男さん…」
---だから…
男「ああ…さようなら、メリーさん」
~END~
乙
リアルタイムでラストまで見れて良かった
女をヤンデレズビアンかと疑ったのは内緒
これで終わりです
このような駄文にお付き合いいただき、ありがとうございます
ちなみに、過去作品はここにあります
http://blog.livedoor.jp/ssdobin64/
もしよろしければお立ち寄りください
それでは、おやすみなさいノシ
乙!
見てきた
お前だったのか
>>167-169 ありがとうございます
ヤンデレズビアンwwwそう思われたのは過去作の影響ですかね?www
乙
過去作品も見てみよう
最後のくっせー寒い終わり方なんなん??????
~バイト先~
ガチャン!
男「…やっちまった」
バイト女「何やってだよ。さっさと片付けろや」
男「あ、ああ…」
バイト女「…ここ最近、なんか変だぞ?」
男「そうか?」
バイト女「なんかあったのかよ?」
男「…いや、なんでもない」
バイト女「ふーん…しっかりしろよな!」
男「ああ。ごめんな?」
バイト女「でないとあたしが楽できねえからな」
男「おい」
~男の部屋~
ガチャ
男「…ただいま」
パタン
男「…」
トタトタトタ ドサッ
プシッ ゴクッ ゴクッ…
男「…ふぅ。やっぱビールは苦いな…ツマミツマミ…」ガサゴソ
バリッ モグモグ…
男「するめうめぇ」
ゴロン
男「…メリーさん…」
男(はぁ…あれからやる気でねえなぁ…)
チラッ
男「…なあミクさん。なんか話してくんねーかな…」
ミク「…」
男「…だよなあ…もっとしっかりしなきゃいけないよなあ…」
男「…あかん。眠くなってきた…ふぁああ…」
男(もういいや…今日はこのまま寝ちまえ)
・
・
・
男「zzz…ん…ん?…ふぁああ…朝か…ん?」バサッ
男「…なんでタオルケット被ってるんだ?」
男(昨日は帰ってからビール飲みながらするめ食って…そのまま寝ちまったんだな…)
男「…じゃあこのタオルケットは一体…」チラッ
ミク「…」
男「…んな訳ないか。たぶん寝ぼけて持ってきたんだろ」
男「さて…と。そろそろ起きて学校に行かないとな」
・
・
・
男「今日は大学のあとバイトだったな…」
男「昨日みたいにミスしないようにしっかりしないとな」
男「あ、そういやスクーターもそろそろガス欠かも。バイト行く前に入れとかないと」
男「…よし!気合入れますか!!」バシバシッ
男「じゃあ、いってきます」
パタン
ミク「…いってらっしゃい、男さん」
~後日談 END~
これで終わりです。
なお、html化依頼は今度の日曜に出す予定です
それではまたいつかノシ
IDがwww
5回上げて5回下げてソフトバンクwww
やはり来たか後日談
俺はいい終わりかただったと思うよ。>>1の書きたいように書いてほしい
次を期待して待ってる乙
>>199-204 ありがとうございます
次回作は…まだ影も形もありませんorz
また何か思いついたら書きます
がんば
乙
毎回短編の謎解き&恋愛って感じで好きだけどこういう終わり方も良いな「だから」シリーズ
乙
次回作はよ
>>210-214 ありがとうございます
解釈は皆さんのご自由にwww
ミク編ほしいなーチラッチラッ
>>216 それはご自分で想像してくださいwww
>>ALL ありがとうございました
html化依頼を出してきますね
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません