エレン「最近ミカサと一緒に寝てねぇな」(77)

──2200 消灯時間~男子寮201号室『エレン・アルミン・ライナー・ベルトルト』

エレン「はぁ……」

アルミン「溜め息なんてついてどうしたんだい?」

ライナー「どうした?訓練で張り切り過ぎて疲れたのか?」

ベルトルト(寝よ……)

エレン「ん?いや、最近ミカサと一緒に寝てないなと思ってな」

ライナー「さ、最近ってどういう事だ!?ね、寝たことがあるのか!?」

アルミン「開拓地に居た時も一緒に寝てたね」

エレン「初めてあった日からずっと一緒だったよ」

ライナー「あ、あぁ……そういう意味か……」

アルミン(お前は何を考えた)

ライナー「そんな事で何で溜め息なんかつくんだ。お前はミカサか」

エレン「そりゃ恋しいからに決まってんだろ……そろそろ限界なんだ……」

アルミン「え?」

ライナー「は?」

エレン「な、なんだよ」

アルミン「た、たまには家族と一緒に居たい……みたいな意味だよね?」

ライナー「そうだったな、お前ら家族って設定だったな」

エレン「なんて言えば伝わんのかわかんねぇけど……ミカサが居ないと落ち着かないっていうか」

アルミン「い、いつも一緒に居たもんね」

ライナー「お前らセット運用が前提だからな」

エレン「だからそうじゃねぇって!なんて言えばいいんだ?ミカサ成分?ミカサニウム?が足りないっていうか」

アルミン「は……?」

ライナー「ミカサみたいなこと言うな……」

エレン「……この際言っちまうけどよ」

アルミン「……」

ライナー「ん?」

エレン「俺、ミカサより酷いぞ?」

アルミン「酷いってどういう……?」

エレン「ミカサが……、その、俺関係で普通じゃないのは俺も理解している」

アルミン「何故かエレンのベッドの中でミカサが瞑想していた事あったね。キリッとした表情で」

ライナー「パンツ盗んだ事もあったな……キリッとした表情で」

エレン「俺も似たようなもんなんだ……ミカサを感じてないと不安でしょうがねぇ」

ライナー「お、おう?」

アルミン「具体的にはどういう事なのさ?」

ライナー「パンツ盗ったりしたのか!?ここにパンツがあるのか!?」

エレン「いやねぇよ。パンツ盗っちまったらそれはもうミカサのじゃねぇだろ」

アルミン(そういう問題か?)

ライナー「なるほど!お前は『ミカサのパンツ』にしか興味が無いって事だな!?」

アルミン(なぜ納得した!?)

エレン「まぁ……ミカサのあれを悪化させたようなもんだと思ってくれ」

アルミン(『悪化』って自覚はあるのか……)

ライナー「しかし意外だな。お前が巨人以外のものにここまで興味を示しているとは」

アルミン「巨人を駆逐する以外の行動原理が存在していたのか……」

エレン「俺が巨人と戦うって決意したのもミカサの為だからな」

ライナー「そうなのか?壁から出たいとか言ってた気がするが」

アルミン「お母さんの仇を取る為だと思ってた」

エレン「それもある。母さんを殺した巨人をぶっ殺したいし、外の世界を皆で探検するのが夢だ……けど」

アルミン「けど?」

エレン「それ以上にミカサにあんな思いをさせやがった巨人が許せないんだ」

エレン「ミカサの両親の事は知ってるよな?」

アルミン「うん、誘拐犯に……だよね」

エレン「ミカサは両親を一度亡くしているんだ。ミカサがどれだけ悲しんだか……」

エレン「最初のうちは無理して笑ったりしてたが……それでも毎晩のように泣いてた」

エレン「そんなミカサもいろいろ乗り越えて自然に笑ってくれるようになったんだ」

エレン「俺、あいつの笑顔が大好きだった……それなのに……」

エレン「またミカサの目の前で俺達の母さんが殺されたんだ……」

エレン「俺は絶望したよ。何していいかわからなくなった。でも俺の事なんでどうでもよかった」

エレン「ミカサはこんな思いを二度も味わわされているんだな……って思ったら、俺の絶望なんてちっぽけなもんだ」

エレン「だから俺は誓ったんだ。ミカサにこんな思いをさせた奴を許す気はない、この手でぶっ殺すって」

アルミン(意外とまともな理由だ……)

ライナー(なんかごめんな)

エレン「あいつらを殺せるなら俺はどうなろうと構わない。例え俺が憎き巨人になろうが化け物になろうがどうだっていい」

アルミン「そ、そんなにミカサの事想ってたんだ……」

ライナー「そんなに好きなら付き合っちまえばいいじゃないか?お前らお似合いだぞ?」

アルミン「ミカサはエレンの気持ち知ってるの?」

エレン「言ってねぇし知らないんじゃないか?言う気もねぇけど」

ライナー「何でだ?お前いつもぶっきらぼうな態度とっているが……」

エレン「それじゃつまんねぇじゃん」

アルミン「は?」

エレン「怒ったりムキになったりたまに涙目になったり……昔は色んな可愛い表情見れたんだぜ?今は見せる事ねぇと思うけど」

アルミン(何言ってんだこいつ)

ライナー「だがそんなのだと、見放されるかも知れんぞ?」

エレン「それはねぇよ。俺がミカサで精神を安定させてるように、あいつも俺が心の支えらしいからな……」

アルミン(自分で言うのか……)

ライナー「だが、いずれは結婚したいんじゃないのか?そんな態度で大丈夫なのか?」

エレン「そんときは婚姻届を押し付けながら『書けよ、これ』って言うつもりだ」

アルミン「もうちょっとマシなやり方はないのかい……?」

ライナー「ま、まぁ……エレンが何と言おうがミカサならOKしそうだが……」

エレン「あいつは雑な押しに弱い、経験則だ」

ライナー「そ、そうだったか……」

アルミン(それで納得するのか……)

ライナー「しかし、ミカサのいろんな表情が見たいならむしろ付き合ったほうが都合がよくないか?」

アルミン「普通そう思うよね」

エレン「そりゃそうなんだろうが……その」

ライナー「なんだはっきり言え」

エレン「甘えるタイミングを完全に見逃したというかなんというか」

アルミン「どういう事?」

エレン「最初に会った時からこんな感じで接しちまったからよ……いつ優しく接すればいいのか見失っちまったっていうか……」

ライナー「お前バカだろ」

アルミン「昔から思ってたけどエレンってバカでしょ」

エレン「だってしょうがねぇじゃん!親父の目の前でイチャイチャできるか!ミカサも一番辛い時だったし!!」

アルミン「それで初めて会った日から今の今までずっと甘えたくて仕方ないのを我慢してた、っていうのかい?」

エレン「ああそうだよ……」

アルミン「エレンってホント馬鹿だね」

エレン「う、うるせぇ!」

アルミン「でもさ、そんなんでよく今まで生きてこれたね……ミカサみたいに積極的に攻めていけるわけでもないのに」

ライナー「そうだな、ミカサなんちゃらを補給しないと死んじまうんだろ?」

エレン「そりゃ寝るときはずっと一緒だったし、起きてる時もミカサが常に引っ付いてたし」

ライナー「それもそうだな、向こうからくるのか」

アルミン「で、訓練兵になって一緒に寝られなくなって死にそうになってる。と」

エレン「あぁ……ミカサは俺があげたマフラーで凌げるみたいだけど、俺そういうの持ってねぇし」

ライナー「昼間のあれじゃ物足りないのか?」

エレン「全然足りねぇ……ミカサの寝顔を見ないと死んじまう……」

アルミン「なんで寝顔?」

エレン「だって寝顔すげぇ可愛い」

ライナー「お、おぅ……」

エレン「しかも『えれんだいしゅきぃ……♪』って寝言言いながら抱きついてくんだぞ!?たまんねぇよ!」

ライナー(確かに……クリスタにそんなことされたらたまらんかも知れん……)

アルミン(あれ毎日毎日うるさかったな)

ライナー「しかしよくそんな状況で手を出さなかったな。凄まじい自制心だ。まさに兵士の鑑だな」

エレン「手を出すってなんだ?こっそりなでなでならしたぞ」

アルミン「いやそういう意味じゃなくてヤっちゃうほうでしょ」

エレン「あぁ……そういうのはミカサのそうから迫ってきたしな」

ライナー「普段の様子から簡単に想像できるな」

エレン「最初に迫ってきたのは出会って3か月目くらいだったと思う」

ライナー「まだ9歳の頃だな?じゃあその時は何もなかったんだな」

エレン「親父から『そういうのは大人になってから好きな人としなさい』って言われててさ」

ライナー「それで踏みとどまったのか、凄いな」

エレン「日頃から母さんから『もう子供じゃないんだから!』って言われてたし、ミカサのこと大好きだったから……」

ライナー「おい」

エレン「それからミカサのこと以外考えられなくなっちまったよ……」

ライナー「お前裏切ったな!?俺まだ卒業してないのにお前だけ抜け駆けか!?」

アルミン「エレンは早いね……僕はつい最近やっとだっていうのに」

ライナー「……なに」

エレン「お!やっとクリスタにOK貰えたのか!」

ライナー「待て」

アルミン「うん!ま、まぁ……全然もたなかったけど……」

ライナー「おい」

エレン「最初はそんなもんだって」

ライナー「どっどういう事だお前ら!?クリスタだと!?」

エレン「知らなかったのか?」

アルミン「恥ずかしかったから隠してたんだ。エレンやミカサには相談に乗ってもらってたけど」

ライナー「……すまんが、俺はもう寝る」

エレン「え?あ、あぁおやすみ」

アルミン「ごめんねライナー。ライナーの事も知ってたけど……こういうのは早い者勝ちだよ?」

ライナー「もうお前らとは喋らん……二度と話さん……人類なんて今すぐ滅ぼす……シーナ吹き飛ばす……」ブツブツ

アルミン(ざまぁ)

エレン「まぁそんな話はどうでもいいとして、俺はどうするべきなんだ?」

アルミン(まだ続けるのか……僕も寝たいんだけど)

アルミン「どうするって言ったって……寮にまで会いに行けば?ついでに一緒に寝れば?」

エレン「随分と雑な意見だな……それしか思いつかねぇけど」

アルミン「女子寮に男子が入ったら厳罰ものだけど、エレンなら皆に見逃してもらえるんじゃないかな」

エレン「どういう理屈だよ」

アルミン「フランツが女子寮に頻繁に行ってるらしいけど、皆が黙っててくれるってさ。エレンも大丈夫だよ」

エレン「なんでそこにフランツが出てくるんだ?俺とミカサの関係が、フランツとハンナみたいに見えるってか?」

アルミン「皆思ってるし、思ってないの君達だけじゃないかな」

エレン「そ、そうなのか……じゃあ行ってくる!」

アルミン「決断早いね!?」

エレン「ダメでもミカサがどうにかするだろ?大丈夫だ、行ってくる」

アルミン「ついでに『恋しくて死にそうだ!』ってぶちゃけちゃえば?」

エレン「いや、それは」

アルミン「もうこの際正直に言っちゃって楽になりなよ」

エレン「……それもそうだな」

アルミン「ミカサって103号室だったよね?僕も行っていい?」

エレン「何しにくんだよ」

アルミン「クリスタも103だから……」

エレン「お前も会いたくなったのか?」

アルミン「いや、エレンの話聞いてたら無性にムラムラしてきちゃってさ……トイレにでも連れ込もうかと思って」

エレン「お前って意外と積極的なとこあるよな。でもよ、ユミルとアニも居るぞあの部屋。連れ出せるか?」

アルミン「なんとか説得してみせる」

ベルトルト「アニも居るのか、僕も行こう」

エレン「お前起きてたのか……」

アルミン「どこから聞いてたんだ……?」

ベルトルト「最初から聞いてたよ。まぁそんな話は今どうでもいいじゃないか」

ライナー(お前らなんか死んじまえ……)

──2300 女子寮103号室『ミカサ・アニ・クリスタ・ユミル』

クリスタ「でねーアルミンがねー」

ユミル「天使が……あたしの天使がぁ……」

アニ「ふーん……」

ミカサ「っ!エレンが近づいている!」

アニ「ついにおかしくなったかい」

ミカサ「違う、確実に接近してきている。アルミンも居る気がする……」

クリスタ「え!?アルミンが?」

ユミル「……」

コンコン

<ミk──

ミカサ「えれん!」ガチャ

アニ「早……」

エレン「カサーってうわっ!」

ミカサ「どうしたのこんな時間に会いに来てくれたの恋しくなっちゃったのうれしい私もエレンに会いたかったでも」

エレン「お、落ち着けミカサ……俺の話も聞いてくれ」

ミカサ「分かった、聞こう」

エレン「……えーっと、その」

ミカサ「……」

エレン「い、一緒に寝てくれ……こ、恋しくてしにそ──」

ミカサ「分かった今すぐ寝ようすぐ寝ようでも寝る前に色々といい事しよう3個師団を編成できるくらい赤ちゃん作ろ──」

アルミン「あ、あの、クリスタ?その……」

クリスタ「全部言わなくても分かるよ?ズボンが大変なことになってる」

アルミン「う、うわっ!」

クリスタ「もう……アルミンったら……ふふっ、いいよ?」

アルミン「ほ、ホント!?」

ベルトルト「……アニ」

アニ「……しょうがない奴だね、あんた」

──その翌日、ウォール・シーナ内地に鎧の巨人が出現した。

突如出現した巨人の姿に人々は何が起こっているのか、それすら理解することができなかった。

鎧の巨人が人類の活動領域を破壊し尽くそうとしたその時、突如として超大型巨人及び女型の巨人が出現した。

ウォール・マリアを放棄する最大の要因を作り出した超大型巨人を目の当たりにした人々は絶望の淵に立たされた。

しかし、信じられないことに超大型巨人と女型の巨人は力を合わせ、鎧の巨人を撃退した。

そして何事もなかったかのように突如消滅した。

何が起こったのか理解できた人は少ない。

何故、超大型巨人と女型の巨人が鎧の巨人から街を守ったのか、誰にも理解できなかった

あれから20年。

人類軍の主力であるイェーガー3個師団の活躍、アルレルト技術研究本部の開発した兵器、そして2体の巨人によって全ての巨人が駆逐された。

人類は、再び地上の覇者へと返り咲いたのである──。

おわり

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