エレン「地下室にて」(238)

※バレ、キャラ崩壊、グロ、リョナ、胸糞注意
※ジャンはストヘス区の作戦には参加していなくて、アニは壁を登れなかったものとしてください

ーーー調査兵団管轄 どこかの地下室

ナナバ「足元気をつけてね」

コニー「…今度はここで待機か?」

サシャ「随分階段降りましたね。こんな所があったんですねー」

ユミル「ほれサシャ、さっさと行けよ。後がつっかえてんだから」

クリスタ「空気が悪い…」

ジャン「何だよ、たらい回しされてるみたいじゃねーか、オレら」

ライナー「…………」

ベルトルト「(…ライナー、今すぐ脱出した方が…)」ボソッ

ライナー「(ダメだ、地上では調査兵団が待機している。下手に動くと拘束されるぞ)」ボソッ

ナナバ「はい、到着。申し訳ないけど、君たちここでしばらく待機してて」

クリスタ「あっ、はい…ナナバさん、一体何を…」

ナナバ「うん、担当者がすぐ来るからそっちに説明してもらって」

クリスタ「はい…」

ーーー2時間後

サシャ「暇ですー」グテー

コニー「暇だー。ジャン、歌でも歌ってくれー」グテー

ジャン「何でだよ!くっそ、担当者すぐ来るって言ってたのに…」

  コンコン ガチャ

エレン「わりーわりー、皆いるかー?」

ジャン「エレン!?」

ミカサ「……」バタン

サシャ「あ、ミカサー。2人もここに連れて来られちゃったんですかー?」

エレン「連れて来られたんじゃなくて、自分から来たんだよ」

コニー「どういうことだ?」

エレン「オレ、こっちの調査担当だからさ。ほら、資料」バサバサ

ジャン「はあ!?お前が?」

ユミル「こっち?調査って何だ?」

エレン「うーん…素性調査?」

ジャン「今更こんなとこに隔離してか?大体、入団する時に書類諸々提出してるだろ」

クリスタ「こっちって言うのは?」

エレン「104期の調査兵団が調査対象なんだけどさ、人数が多いから二手に分かれたんだ」

エレン「アルミンいないだろ?そっちの手伝いに行ってるんだよ」

ライナー「……どうしてこんな所でやるんだ。地上で十分だろ」

エレン「あー…もうぶっちゃけるわ。104期に敵の諜報員が紛れ込んでる可能性が高いんだってさ」

全員「!」

ジャン「諜報…104期にか?」

エレン「それで全員一旦隔離して、身の潔白が証明され次第通常任務に戻るんだってよ」

ジャン「何でお前が調査担当なんだよ。オレらと同じ新兵じゃねーか」

エレン「土下座する勢いで頼み込んだからな」

ジャン「はあ?なんでそんな事したんだよ」

エレン「色々あるんだよ」


ジャン「チッ…それでお前とミカサだけ武装してんのか…」

エレン「わりぃな。事情が事情だけに勘弁してくれよ」

エレン「ここは地下な上に、セキュリティもがっちりだ。地上には調査兵団の精鋭が待機してるからな」

エレン「諜報員なんていないとオレは信じてるが…職務上一応言っておくよ。逃げようとしても無駄だぞ」

コニー「誰が104期に諜報員がいるなんて言い出したんだよ」

エレン「調査兵団の幹部だよ。色々事情があってな…細かいことは極秘事項だ」チラッ

ベルトルト「」ビクッ


エレン「そんなに長くはかからないはずだ。何かあったらオレかミカサに言ってくれ」

ミカサ「………」

ライナー「…どうして皆を集めた理由をそう簡単に明かす?目的が分かってしまえば警戒されると思わないのか?」

エレン「はは、さすがライナーだな。いきなり訳の分からない状況に放り込まれてそこまで気が回るのか」

ライナー「茶化すな」

エレン「んー…別に?こんな状況で黙っとくのも何か白々しくねーか?」

ライナー「……」

エレン「ここにいるのはジャン、ライナー、ベルトルト、コニー、クリスタ、サシャ、ユミル。ほとんど優等生ばかりだ。まあ取り越し苦労になるだろうな」

エレン「湿気臭い地下で申し訳ないけど、数日の休養だと思って羽を伸ばしてくれ。じゃあ、一旦解散」


ジャン「……んだよあいつ、偉そうにしやがって……」

コニー「疑われてんのか、オレら…。あんまりいい気分じゃねぇな」

サシャ「こんなジメジメしたところじゃ余計に気分も晴れないですね」

コニー「楽しみなのはメシくらいかー」

サシャ「何か特別なモノ出ますかね!」

コニー「知らね。あーあ、トランプくらいもって来れば良かったぜ」

ジャン「お前ら、どんな時でもブレねえのな………」ハァ


クリスタ「………諜報員だって。やっと兵士になれたと思ったのに、どうしてこんな………」

ユミル「別にお前がそうだって言うわけじゃないさ。あんま深刻になるなよ」

クリスタ「そうだけど…同期の中にいるかもって言うだけで何だか…」

ユミル「エレンも言ってただろ、すぐ終わるって。後ろ暗いことが無ければ堂々としてろ」

クリスタ「……うん……」

ユミル「………」


ベルトルト「…どういうこと…?」

ライナー「壁外調査の時にどうも罠ってたみたいだからな…しかし、どうして104期まで的を絞ったのか」

ベルトルト「アニに何か…」

ライナー「正体がバレたとでも言うのか?いや、壁外調査でも姿を晒さずに逃げ切ったはずだ」

ベルトルト「…さっき、エレンが僕の顔を見たんだ。一瞬だけど」

ライナー「あの時は全員の顔を見渡してただろ」

ベルトルト「やっぱり地下に来てしまったのは失敗だったんじゃ…」

ライナー「かと言って、俺たちだけ体よく抜けられるような理由もなかった。変に嫌がれば逆に怪しまれるしな」

ベルトルト「……」

ライナー「良いか、今はこの場をとにかくやり過ごす。不用意な行動には出るな。とにかく兵士に徹するんだ」

ライナー「今正体がバレれば、今までやってきたことが全部水の泡だ」

ベルトルト「……分かった」


コニー「おー、2人ともここか」ヒョコ

ライナー「お、おお。どうした?」

コニー「エレンが集合してくれ、だとよ」

ライナー「ああ、すぐ行く」

ライナー「(…良いか、動揺してぼろを出すなよ。何があっても)」ボソッ

ベルトルト「……」コクリ


エレン「悪いな、また集まってもらっちゃって」

ジャン「尋問はじめるのか?そういうのは1人ずつ呼び出してやるもんじゃないのかよ」

エレン「そう警戒するなって。尋問っつーか、見てもらいたいもんがあってな。ミカサ、頼む」

ミカサ「……」ズリズリ ドサッ

ライナー「!」

ベルトルト「…ッ!!」

サシャ「…アニ?」

アニ「ーーーーッ!ーーーーッ!!」

コニー「…おい、何だよ、何でアニがガチガチに拘束されて…」

エレン「だってこいつ、諜報員だったんだもん。女型の巨人の正体、これ」

クリスタ「…え?どういうこと?」

エレン「大変だったんだぜー、こいつ捕まえるの。ストヘス区で大暴れしやがってさ」

ライナー「……何の話だ」

エレン「アルミンがな、壁外調査の時に気付いて…まさかと思ってカマかけてみたらビンゴだよ」


エレン「……ウォールマリアを壊して人類を大量に殺した奴らの仲間だとよ」ゲシッ

アニ「……!!!」ギロッ

エレン「おーおー、こわい顔で睨みやがって…お前、自分の立場分かってんの?なあ?」グリグリ

ベルトルト「……!」ガタッ

ライナー「(ちょっと待て、様子を見ろ)」ボソッ

エレン「ほら、自己紹介しろよ。私があの時の女型ですよーって。話せるようにしてやるからさ」シュルッ

アニ「……」

エレン「んだよ、ガン無視かよ。折角喋れるようにしてやったのによ。ほら、何か言うことねーの?」

エレン「…ここにいる奴ら全員、お前らに仲間を殺されてるんだよ。分かるか?」

エレン「104期に調査兵団…もう数えるのも面倒になるくらいな…………一言くらいなんか言えよ…」

アニ「……………」ギュッ

エレン「目なんか閉じたところで逃げらんねーよ」

エレン「ずっと騙してた連中にさぁ……なぁ!何にも言うことねーのかよ!!」グイッ

アニ「…………ッ」


エレン「…そう言えば、お前結果的に殺してるよな…ミーナ」

アニ「!!」

エレン「オレは見てないんだけどさ…まあ、最低な死に方だったんだろうな」

エレン「オレも一旦喰われたんだけどさ、巨人に。臭いは痛いはもう最悪の気分だったよ」

エレン「ミーナも同じ気分味わったんだろうなあ…仲が良かったお前の仕業とも知らずに」

アニ「…やめて…」

エレン「オレが今黙ったところでどうなる?それが現実だろ」

アニ「…聞きたくない…」

ベルトルト「(…ライナー!)」ボソッ

ライナー「(落ち着け!多少痛い目に合わされても、黙秘してる限り殺されは……)」

エレン「……そうかよ…………じゃあ聞けないようにしてやるよ」ザシュッ

ミカサ「!エレッ…」




  …ゴロン


ライナー「…え?」

ベルトルト「…あ」

サシャ「ひっ…」

ジャン「…おい…」

コニー「アニ…?」

ユミル「エレ…お前…」

クリスタ「……い……」

クリスタ「………いやああぁあああぁぁぁぁぁ!!!!!」

エレン「きゃーきゃーうるせーなぁ…ほら、見ろよ。首の断面からちょっと蒸気が出てやがる」

エレン「死んでも回復しようとしてるんだな…キメェ…まあ、オレもそうなのか…」グリグリ

ベルトルト「…あっ、あああああああああ!!!うああぁああぁああぁぁぁ!!!!」ダッ

ライナー「待て!落ち着け!!落ち着くんだ!ベルトルト!!!」ガシッ


コニー「おい、エレン!!お前どういうつもりだ!どうしてアニを…」

エレン「どうしてって…話聞いてたか?バカ。人類の敵だったんだよ。こいつとその仲間が壁を壊したんだって」

エレン「3年間もしれっと訓練兵に混じりやがって…あーあ、騙されたよ。バカみてぇ」ゲシッ

ジャン「だからっていきなり殺す奴があるかよ!!」

エレン「…これ聞いたらお前が一番腹立つはずだぞー、ジャン」

ジャン「は!?」

エレン「調査兵団が捕獲した巨人を殺した犯人な、どうもアニみたいなんだよ」

ジャン「そっ…それがどうした!!」

エレン「…マルコの立体機動装置をアリバイに使ってるんだよ」

エレン「たまたま拾ったのか…それともわざわざ殺したか…」

ジャン「!!」

エレン「どっちにせよ、こいつがマルコの死を利用したことには変わりないよな…なぁ、ジャン」

ジャン「…そんな…それは…くそっ、くそぉ…」


エレン「…で、さっきから揉み合ってるデカいの」チラッ

ライナー「!」

エレン「ただの同期が殺されただけにしちゃあ反応が激しすぎだよなぁ」

ベルトルト「……!…エレン…!!」

エレン「おー、こえー。普段大人しい奴が怒るとおっそろしーなぁ」

エレン「仲間が殺された、っつーよりは…初恋の相手でも殺されたような感じだなぁ。どう?」

ベルトルト「…このっ…殺してやる…!!」

エレン「ハッ…もしかして当たり?まじかよ、人殺しだぞ、こいつ」

エレン「オレ見たからな。調査兵団をプチプチと虫みたいに殺してんのを。趣味ワリーなぁ、お前」

ベルトルト「……!」ガリッ

ライナー「おい!待っ…」


ミカサ「」パシッ

ベルトルト「あっ…」

エレン「…見たぞー。お前、今巨人化しようとしただろ。ミカサ、拘束」

ベルトルト「離っ…」

ミカサ「遅い。これでもう自傷はできない」ガチャッ

エレン「ミカサがはえーんだよ……お前がどんな巨人かは知らんが、これから調査兵団に引き渡す。せいぜい良い子でお話ししてくるんだな」

ベルトルト「んーーーーッ!!んんーーーーッ!!!」ガタガタガタガタッ

エレン「目ん玉引ん剥いちゃって、まぁ…ちょっと煽っただけで簡単に正体表しやがって」

エレン「んな怒る権利あると思ってんのか?裏切ったのは…いや、最初から騙そうとしてたのか?」

エレン「どっちでもいーや。とにかくクズなのはお前らの方だろ。被害者面すんなよ」ゲシゲシ

ベルトルト「んんんん…っ!!んんーーーーっ!……んんん………」ポロポロ

エレン「うっわ、今度は泣き出しやがった。何だ?反省…後悔…違うな。愛しの彼女が死んで悲しいのか。手前勝手も良いとこだな」


ライナー「…もうやめてやれ、エレン…」

エレン「ん?ああ、忘れるとこだった。ミカサ、こっちのデカいのも拘束な」

ミカサ「……」ガチャガチャ

ライナー「……」

エレン「何だ?随分大人しいな」

サシャ「…どうしてライナーまで…」

エレン「は?あんだけつるんでたのに、こいつだけ無関係ってこたーねーだろ」

エレン「それに、さっき言ってた調査兵団の幹部だけどな。あの女型と、このデカいの2人が同郷だったって言うんだよ」

エレン「なのに、オレたちから見ると不自然なくらいよそよそしかった…元々この2人がターゲットだったんだよ」

エレン「…だったんだけど、こっちは不気味なくらい大人しいな…おい、どうした。観念したか?」ゲシッ

ライナー「……」フルフル

エレン「…何だ?首振って…何か話すんなら、猿ぐつわだけ外してやるよ」

エレン「但し、分かってるだろうな。ここで巨人化したところで拘束されるか殺されるのがオチだからな」

ライナー「」コクン


エレン「…分かった。ミカサ、外してやれ」

ミカサ「…」シュルッ

ライナー「ぷはっ………俺は…俺は何も知らん」

エレン「はぁ?なにを白々しい。んなもん通用すると思ってんのかよ」

ライナー「アニが同郷だったのも知らん。ベルトルトがそんな…諜報員だったなんて思いもよらなかった…」

ベルトルト「……?」

エレン「…ふっざけんなよ!!そんな言い訳で誤魔化せるとでも思ってんのか!!!」ドコッドコッドコッ

サシャ「ちょっ、エレン!何してるんですか!!」

エレン「お前が!お前らが殺したんだろうが!!オレの班員も!同期達も!…母さんも!!!」ドカッドカッ

クリスタ「落ち着いて!ミカサ!!エレンを止めて!」

ミカサ「……」

エレン「それを今更…人殺しが!裏切りもんがぁ!!お前らさえいなければ…!!」ドコッ

ジャン「やめろ、エレン!コニー!手伝え!!」ガシッ

コニー「落ち着け!落ち着けよ、エレン!!」ガシッ


エレン「…!…はぁっ、はぁっ…」

ライナー「…げほっ……何を言われようが…知らんものは知らん…」

エレン「…くそっ…修復もしねぇのか…コントロールできるのか…?」

ミカサ「…本当に違うのかm」

エレン「お前の意見は聞いてねぇよ」

ミカサ「……」

エレン「このまま上に渡すわけにもいかねぇか…こいつはしばらくここで監視する」

エレン「もっかい猿ぐつわだな。妙な考え起こすなよ」

ライナー「……」


エレン「取りあえずこっちだけ引き渡すか…おい、ミカサ」

ミカサ「……」ガシッ

ベルトルト「ーーーーーーッ!」バタバタ

エレン「往生際のわりぃ野郎だな。オレも手伝うわ。ミカサ、頭持て」ガシッ

ミカサ「……うん」

エレン「お前ら、裏切りもんの片割れに構うなよ」ギィ バタン


サシャ「一体何が…どうなってるんですか…」

コニー「…女型って…アニが裏切ってたって…ベルトルトも…ライナーまで…?」

ライナー「……」

クリスタ「…首から血が…止まらない…アニ…」

ユミル「…あまり見るな、クリスタ。後始末をするから…ちょっと部屋から出てろ…」

クリスタ「…後始末?」

ユミル「…このまま死体を転がしとくわけにもいかねぇだろ…」

サシャ「…ああ、そうか…アニ、死んだんですね…あそこに転がってるの、アニなんですね…」

ユミル「…良いから!お前らみんな部屋から出ろ!!」グイッ

クリスタ「ちょっ…ユミル!?」

サシャ「ユミル1人でそんな!」

コニー「おい、押すなよ!!」

ユミル「ガタガタ言うな!外の空気…は吸えねぇけど、とにかく大人しくしてろ!!良いな!」グイグイ バタン


ユミル「……ジャン、お前も出て行け」

ジャン「……」

ユミル「…頭抱えて座り込んでるだけなら邪魔だ。あいつらと一緒に行け」

ジャン「…意味わかんねぇ…マルコを殺したのがアニだって…?」

ユミル「そうかもしれないってだけだろうが」

ジャン「…マルコの立体機動装置…オレが見つけられなかった…アニは…知ってたのか?…マルコがどうやって死んだか…」

ユミル「……」

ジャン「…ベルトルトも…5年前壁を壊した奴らの仲間…?何で…3年も同じ訓練兵で…」

ジャン「…ライナー!」ガバッ

ジャン「おい、ライナー!お前何か知ってるんだろ!?何かの間違いだろ!?おい!」

ライナー「……」

ジャン「…あっ…ミカサに拘束されて…待ってろ!今外し…」

ユミル「やめとけ」

ジャン「は!?何でだよ、お前までライナーが諜報員だって言うんじゃないだろうな!」


ユミル「私には分からん。ただ余計なことをしない方が身のためだって言ってるんだ」

ジャン「何だよそれ!?」

ユミル「エレンもミカサも様子がおかしい…特にエレンだ。訓練兵だった頃より随分雰囲気が変わった」

ユミル「いや、こんな状況だからしょうがないのかもしれないが…」

ユミル「とにかく、とばっちりを受けたくなかったら大人しくしとけ」

ジャン「そんな…ライナーは…」

ユミル「そいつだって分かってるさ」

ライナー「……」コクン

ユミル「な」

ジャン「……ライナー…済まない…」

ライナー「……」

ユミル「…分かったら、ライナー引きずって出て行ってくれないか」

ジャン「いや…オレも手伝う。1人じゃキツいだろ」

ユミル「…好きにしろ」


ーーーーーーーー

ーーーーー

ジャン「おい、ミカサ」

ミカサ「…何?」

ジャン「エレンは?」

ミカサ「今は外している」

ジャン「そうか」

ミカサ「何か用?」

ジャン「ミカサ、エレンの様子がおかしいと思わないか?」

ミカサ「様子?」

ジャン「その…なんだ、ライナー達にあんな態度を取ることなんて無かったろ」

ミカサ「…今は状況が」


ジャン「そうじゃなくて…あーもう、単刀直入に聞くわ。お前、どうしてエレンを止めないんだ」

ミカサ「……」

ジャン「お前ならアニを殺すのを止められたはずだ」

ミカサ「……」

ジャン「前はそんなんじゃなかっただろうが。暴走したエレンを諌めて…何故今はそうしない」

ミカサ「……」

ジャン「…答えられないのか?」

ミカサ「…トーマス」

ジャン「え?」

ミカサ「ミリウス、ナック、ミーナ、フランツ、グンタさん、エルドさん、ペトラさん、オルオさん…」

ジャン「…?」

ミカサ「トロスト区が破られてから、壁外調査まで…エレンの身近にいて死んでいった人たち。そう…マルコも」

ジャン「……」


ミカサ「…それだけじゃない。もっとたくさんの同期が、調査兵が死んでいった」

ミカサ「特に、壁外調査ではエレン1人を守るためだけにたくさんの兵士が死んだ」

ジャン「あれはエレンをエサに敵を釣ろうとしたんじゃねぇか。エレンが悪いわけじゃねぇ」

ミカサ「それでも、エレンのためと言うことに変わりはない」

ジャン「…責任を感じてああなったって言うのか?」

ミカサ「責任…なんてことばで片付けられるか分からない」

ミカサ「この1ヶ月でエレンは巨人になり、人類の敵と疑われ、身近な人を失い、信頼していた仲間からの裏切りを経験した」

ミカサ「…今のエレンは空気が入りすぎた風船みたいなもの。触れるだけで割れてしまいそう」

ジャン「……」

ミカサ「アニ達の裏切りが分かったとき、エレンは酷く塞ぎ込んでいた」

ミカサ「しばらくしたら戻ったけれど、今度は前以上に敵を憎むようになった…まるでそれ以外見えないかのように」

ミカサ「もうエレンは、巨人…敵を憎むことでしか自分を保つことが出来なくなっているのかもしれない」

ミカサ「今エレンを押さえつけたら、本当に割れてしまいそうで…」


ジャン「それでアニを殺すのを黙ってみてたのか?」

ミカサ「…ジャン、今日のエレンの話を聞いてどう思った?」

ジャン「どうって…」

ミカサ「エレンは間違ったことは言っていない。壁を壊したものは人類の敵」

ミカサ「そしてアニがずっと私たちを騙していたことも、人類をたくさん殺したのも事実」

ミカサ「…私にも彼女を許せない気持ちは、ある」

ジャン「ミカサ…」

ミカサ「エレンだけの意志では無い。私も同じ。私もエレンを止めなかったことでアニを殺した」

ジャン「庇ってるつもりか?」

ミカサ「…何とでも思ってくれて構わない。ただ、私は自分の意志でエレンを止めなかった。それだけ」

ジャン「ベルトルトについては確証があったのか?…その、諜報員だって言う」

ミカサ「詳しくは言えないけど…確証があったわけではない」

ジャン「一か八かだったのか…やり方がムチャクチャだな。アニから情報は引き出せてたのかよ」

ミカサ「………それは言えない」


ジャン「まあ、オレも容疑者なんだもんな……これからどうなる?」

ミカサ「分からない。諜報員がこれ以上出て来ないと言う確証もない」

ジャン「はぁ…先は見えねぇのか」

ミカサ「残念だけど」

ジャン「…このまま黙ってエレンに従うつもりか?」

ミカサ「……」

ジャン「どうしてそこまで…」

ミカサ「私にはもう…彼しかいないから…」

ジャン「……ッ」

ミカサ「理解してくれとは言わない。ただ、解放されるまでは大人しくしていて欲しい…サシャも」

ジャン「え?」

サシャ「」ビクッ

ジャン「盗み聞きかよ…悪趣味な奴だな」

サシャ「い、いや、たまたま通りかかっただけで…」コソコソ

ミカサ「私からはそれだけ…じゃあ」カツカツ


ジャン「……」

サシャ「……」

ジャン「…くそっ、エレンの奴…」

サシャ「ミカサの言う通り…短い期間でエレンには色々ありすぎましたね」

ジャン「オレは納得してねぇぞ」

サシャ「正直、私も…アニを殺す必要が本当にあったのか…」

サシャ「ベルトルトもライナーも、何か行き違いがあったんじゃないかって思えてしょうがないんです」

ジャン「…どうだかな」

サシャ「甘いんでしょうか、私…」

エレン「まあ、甘いんだろうな」


サシャ「!?」ビクッ

ジャン「エレン…いつからいた?」

エレン「? 今さっきだよ、行き違いが云々って」

サシャ「今のは…あの…」

エレン「ああ、言い繕わなくっても分かるよ。3年間同じ釜の飯を食った仲間だもんな」

サシャ「あ…はい…」

エレン「もっとも、向こうは仲間だなんて全く思ってなかったワケだけどな」

ジャン「…おい」

エレン「何だ?オレなんか間違ったこと言ってるか?」

ジャン「…そういうことじゃねぇよ」

エレン「じゃあどういうことだよ。騙されてた自分に腹立つから、連中を庇って誤魔化そうとしてんじゃねーの」

エレン「ほら、思い出せよ…マルコを殺したのは誰だ?直接にせよ間接にせよな」

ジャン「…ッ」グッ

サシャ「ジャン、抑えて…エレンももうやめてくださいよ…」


エレン「サシャもさぁ…兵士としての自覚っつーか…ちゃんとあんのか?」

サシャ「え?」

エレン「何のために兵士になったんだよ、お前」

サシャ「え…何のためにって…」

エレン「巨人から人類を守ってこその兵士だろうが。それを何だよ、ちょっと情がうつったからって」

サシャ「そんなつもりじゃ…」

エレン「じゃあどういうつもりだよ。お友達のアニちゃんを殺したエレンくん、酷い!とでも思ってんじゃねーの?」

サシャ「そんなこと…思ってません…」

ジャン「エレン!お前いい加減にしろよ!!」ガッ

エレン「…はいはい、オレが悪かったですよーっと…服伸びちゃうし、放してくんない?」

ジャン「お前なぁ…!」

サシャ「もうほんと…やめてください…私のことなら気にしないで…」

ジャン「…くそっ!」バッ

エレン「はい、どーも…お前らも自分の立場忘れんなよ」カツカツ


ジャン「…何なんだ、あいつは!!あんなんじゃなかったぞ!」ダンッ

サシャ「本当に…おかしくなっちゃったんでしょうか…エレン」

サシャ「このまま無実だと証明されて地上に出ること、本当にできるんでしょうか…?」

ジャン「縁起でもねぇ。変なこと言うなよ」

サシャ「…すいません…」

随分あっさりアニ殺したな
ということはリョナグロ担当は誰になるのかな?(すっとぼけ)

>>47
そっちはあんまり期待しないで<グロリョナ


エレン「入るぞー」ガチャッ

ライナー「……」

エレン「ちったー話す気になったか?…猿ぐつわ、外すぞ」シュルッ

ライナー「……」プハッ

エレン「お前のツレなぁ、ちょっと拷問かましただけで喋る喋る」

ライナー「……」

エレン「目的も計画もお前のこともぜーんぶな。女型が死んだことで心が折れたかな?」

ライナー「…それが本当なら、俺が何も知らないってことも証明されたはずだ…」

エレン「まだそんなこと言うのかよ、なあ?」

ライナー「…さっきから言ってることがふわふわしすぎだ…それでカマかけてるつもりか…?」

エレン「あー…やっぱダメ?オレ馬鹿だからさ、こういうの苦手なんだよねー」

ライナー「…第一カマかけたところで俺は何も知らん。何も出て来んぞ…」


エレン「…ふぅーん…ちょっと試したいことがあるんだけど、いいか?」シャキッ

ライナー「…そんなおもちゃみたいなナイフで…俺の首も落とすか…?」

エレン「んなことしねーよ。んー…太ももでいっか」ザクッ

ライナー「…ぐっ…!!」

エレン「…本当に修復しねーな…オレには出来ないけど、ある程度自分の意志で自由にできるのか?なあ」

ライナー「…だからっ…俺は巨人じゃないと…!」

エレン「強情だなあ。さっさと全部吐いちまえば、本当に無実の連中はすぐにでも解放されるっつーのに」

ライナー「……!」

エレン「残りの連中に真っ白な奴がどれくらいいるかは知らねーけど、いい迷惑だよな、ほんと」

エレン「こーんな光の届かない、じめじめした場所に長時間閉じ込められて」

エレン「仲間の死体見たり、裏切られてるのを知ったり…ありゃーしんどいぞ」


ライナー「…そう思うんなら解放してやれ…」

エレン「だーめ。奴ら、自分が白だと証明できるもん持ってねーもん」

エレン「っていうかさ、お前命令できる立場じゃないの、分かってる?」

エレン「逆に言えばお前次第なんだけどな。他の連中が解放されるのも軟禁されたままでいるのも」

ライナー「…俺は…」

エレン「何も知らん、って言うんだろ?はいはい…まあよく考えろよ」バタン

ライナー「……」


サシャ「…ライナー?」ガチャ

ライナー「…誰だ…サシャか…?」

サシャ「さっき、エレンが出て行くのが見えて…あ、猿ぐつわ外してもらえたんですね」コソコソ

ライナー「…俺に関わるな…余計な疑いをかけられるぞ…」

サシャ「…足!どうしたんですか!?血が…」

ライナー「…何でも無い」

サシャ「何でも無い訳ないじゃないですか!ちょっと待っててください、止血します!!」

ライナー「…ダメだ…今すぐ出て行け…」

サシャ「そんなわけには行きませんよ!えっと…この部屋にも確か救急箱が…」ゴソゴソ

ライナー「サシャ…頼む…出て行ってくれ…」

サシャ「応急処置したら出て行きます。じっとしてて下さい!」

ライナー「…早く…」

サシャ「…ちょっと待って…取りあえずこれで…」


エレン「ふーん、手際良いんだなー。さすがだな、サシャ」ヒョコ

サシャ「ひっ!?」

ライナー「…あ…」

エレン「裏切り者に手当てしてやるなんて、やさしーんだなー」

サシャ「…まだそうだって決まったわけじゃ…」

エレン「そうじゃなけりゃ色々説明つかねーだろ。バカなこと言ってんじゃねーぞ」

サシャ「エレン…どうしちゃったんですか?特にライナーとは仲が良かったのに…まるで人が変わっ」

エレン「あ?何言ってんだ」ガッ

サシャ「痛っ!髪…引っ張らないで…」

エレン「何だ、オレがおかしくなったって言いたいのか?おかしいのはお前が今手当てしてやったこいつだろ」

エレン「兄貴面して騙してたんだぞ!3年間、ずっとだ!!」

ライナー「…サシャは何もしてないだろ!やめろ…」

エレン「うるせぇよ、誰のせいだと思ってんだ」ゴッ

ライナー「っ…!」


サシャ「ごめんなさい!お願い、放して下さい…っ」

エレン「お前も裏切り者の仲間か?なあ」

サシャ「違う…違います!私は人類を裏切ってなんか…!」

エレン「だろうな」パッ

サシャ「えっ?」ドサッ

エレン「お前は出自もハッキリしてるし、諜報員やれるような頭も持ってなさそうだからな。擬態してたら別だけどな」

サシャ「…だったら」

エレン「けどな、オレから見ると兵士としての覚悟が足りねーわ。敵に甘い顔見せやがって…」

サシャ「そんな!だってライナーですよ!?急に敵なんて言わr」

エレン「そういうのがダメだっつってんだよ」バキッ

サシャ「あッ…!?」

ライナー「サシャ!?」


エレン「サシャ、答えろ。お前、どうしてこいつの手当をした?」

サシャ「え…理由…ですか?」

エレン「さっさとしろよ」

サシャ「え…どうしてって…足から血が出てて…」

エレン「そうじゃねーよ、どうして『裏切り者』の手当をしてやったのか、って聞いてんの」

サシャ「そんな…怪我を見たら…裏切り者とかそういうのも頭になくて…」

エレン「頭になかった?そう言うのが兵士としてダメだって思わねーの?なあ」

エレン「わかんねーの?そういう安っぽい私情にこいつらは付け入ってんの」

エレン「そうやって裏切り者を中途半端に庇う奴はな、人類から見たら敵であるのと同じなんだよ」

サシャ「…あ…う…」


エレン「…改めて兵士としての覚悟を決める必要がありそうだなぁ…サシャ」ギリッ

サシャ「…い、痛っ!手を離して…!」

エレン「オレが…手伝ってやるよ…!」ドカッ

サシャ「ぐっ…!?ゲホッ!!」ドサッ

ライナー「エレン!何やってるんだ!!」ガシャッ

エレン「うん、だからさ。気持ちをな、入れ替えてもらおうと思って」ドカッドカッドカッ

サシャ「ぐ…ぁっ!うぐっ!、げほげほげほっ!!」


ライナー「お前の蹴りで腹ばっかりやったら死ぬぞ!おい、やめろ!!」ガシャッガシャッ

エレン「これくらいで死ぬようじゃあ、そもそも兵士としてやっていけねーよ」ドコッドコッ

サシャ「うぐっ!やめ…お願…」

エレン「なあサシャ、分かるだろ?敵に情けをかけたら付け入られるだけだって。それじゃダメなんだよ…」ゴンッ

サシャ「ゲホッ…はぁっはぁっ…」

ライナー「サシャ!おい、サシャ!?」

サシャ「ぐ…うぅ…大丈夫…です…」

ライナー「大丈夫なワケあるか!誰か!誰か来てくれ!!」ガシャガシャガシャッ


 バタバタバタバタ…

コニー「おい!何の騒ぎだ!」バンッ

ライナー「コニー!クリスタ!サシャを…」

クリスタ「サシャ!?何があったの、エレン!」

エレン「んー?何って…教えてやってたんだよ。兵士とはどうあるべきかってな」

クリスタ「どうしてそれで倒れてるの!?」

エレン「言い聞かせてもちーっとも分かってもらえなかったからな」

コニー「サシャ!おい、しっかりしろ!!クリスタ、サシャを一旦ベッドに運ぶぞ!」

エレン「あ、そうだっ」ポンッ

エレン「2人とも、サシャの手伝いしてやってくれ」

クリスタ「さっきから何言ってるの、エレン!?」

エレン「兵士としてどうあるべきか、分かってないんだよ、サシャは。これじゃあ本物の兵士になれない」

コニー「本物の兵士ってなんだよ!?手伝うって何のことだ!いいからサシャを…」


エレン「こうすんの」ドカッ

サシャ「かはっ…!!」

クリスタ「サシャ!」

コニー「エレン!てめぇ!」

エレン「巨人に甘い顔を見せる兵士はいらねーの。お前らだってそう思うだろ?」

エレン「サシャはどうもそこんとこが分かってないみたいでな。ちょっと教育してやらないと」

クリスタ「?…エレン…サシャも諜報員だったって言うの…?」

エレン「んー、違うんじゃね?」

クリスタ「だったらどうして…!」

エレン「…んー…人の心配してる場合じゃないだろ…クリスタ、お前はどうして兵士を目指した?」


クリスタ「…え?何、いきなり…」

エレン「何か理由があるだろ?何となく訓練兵になったわけじゃないはずだ」

クリスタ「…えっと…」

エレン「クリスタ…出自で言ったらお前けっこう怪しいんだよなー…」

クリスタ「!」

エレン「お前も裏切り者の仲間か?なあ」

クリスタ「違う…私は…」

エレン「私は?」

クリスタ「その…本妻の子じゃなくて…家から…追い出されて…」

エレン「ふーん…だから身元があやふやなのか」

クリスタ「……」

エレン「5年前に孤児が大量に発生してるから、どこの馬の骨か分からん奴も確かに多いが…」


エレン「…上官に聞いたんだけどな、お前の身辺調査結果がどうにもおかしいらしくってな」

クリスタ「え?」

エレン「詳しくは教えてもらえなかったけど、調べていっても最後はでっかい壁にブチ当たるんだとよ」

エレン「そっから先にどーしても進めないってさ…孤児ならそんなことにはならないからなぁ」

クリスタ「…あ…」

エレン「いっつもつるんでるユミルも怪しいっちゃ怪しいが、ただの孤児だと考えれば別に説明はつく」

エレン「…お前、何者だ?」

クリスタ「……」

エレン「人類の敵じゃないってことを証明できるか?」

クリスタ「…証明は…出来ないけど…私は敵じゃない…」

エレン「それを信じろって?随分都合のいい話だな」


エレン「おーい、ライナー。クリスタもお前らの仲間か?」

ライナー「……」

エレン「答えらんねーわな。また『俺は知らん』を繰り返せば、クリスタが尋問にあう。否定すれば自分が敵だと認めることになる」

コニー「さっきからクリスタと何話してんだ…まさか、クリスタまで…」

エレン「ああ、そうだよ。身辺調査の結果から言えば、クリスタはかなり黒い」

クリスタ「…違う!私は人類を裏切ったりしてない!」

エレン「そんな言葉が信用できるかよ!」ゴッ

クリスタ「あぅっ…!」ドサッ

ライナー「クリスタ!」ガシャッ

コニー「…あ……」


エレン「コニー…クリスタを拘束してくれるか?」

コニー「…オレ…」

エレン「何だよ、出来ねーの?」

コニー「…だってそんな…仲間をいきなり…」

エレン「出来ねーのかって聞いてんの」

コニー「…出来ねーよ…ライナーも…サシャも…クリスタも…どうしてこんな…」

エレン「…ったく、どいつもこいつも…」ドカッ

コニー「ぐぁっ!」ドサッ

ライナー「コニー!!…エレン…!お前どういうつもりだ!!」ガシャガシャッ

エレン「疑わしきは罰せよ、って奴だ」

ライナー「…コニーにも何かあるのか!」

エレン「ねーよ。サシャと同じで素性ははっきりしてるしな」


エレン「…ただし、これもサシャと一緒で兵士としての素質に疑いがあるがな」ドコッ

コニー「…!!おぇ…っ…エレン…何で…」

エレン「裏切り者はもちろん、そいつらに甘い顔見せる連中も人類の敵なんだよ」

エレン「…敵は徹底的に排除しなきゃいけないんだ」ドコッドコッドコッ

コニー「ぐぁ…っ、ごほっ!エレ…やめろ…」

エレン「お前の中にある甘さを全部潰してやるよ。そうして目が覚めたらな、お前は本物の兵士になれるんだ」ドカッ

コニー「ぐっ…はぁっ…げほっ!!」

ライナー「エレン!やめろ!!頼む、やめてくれ!!!」ガシャガシャガシャガシャ


エレン「…何だ?人類を大量に殺した奴が今度は人類を助けようとするのか?」ピタッ

ライナー「…!…違う!俺は何も知らんと言ってるだろうが!!」

エレン「じゃあ、同郷の2人についてはどう説明するつもりなんだよ」

ライナー「…エレン…まさかお前、俺の前で仲間を痛めつけて…脅すつもりか?」

エレン「脅しになんのか?なら試してみても良いけどな」

ライナー「無駄だ、俺は何の情報も持ってない!!ただの一兵士だ!」

ライナー「それでも気が済むんなら俺を殴れ!他の奴らに手を出すな!!」

エレン「いい加減白けるぜ、ほんと…だが、それとこれとは話が別だ」ドゴッ

コニー「ぐぇっ…!」

ライナー「やめろおおおぉ!!」ガシャガシャッ


   ガチャッ

ミカサ「…これは…?」

エレン「おー、ミカサかぁ。悪いけど、クリスタ拘束しといてくんね?」

ミカサ「…どうして皆…倒れて…」

エレン「サシャとコニーは別件だけどな。まあでも、こいつらも縛り上げとくか」ゴリッ

コニー「…う…あぁ…」ゴフッ

エレン「うわ、血ぃ吐きやがった。でもな、コニー。これに耐えればお前も本当の兵士だぞ。頑張れ」グリグリ

ミカサ「…エレン…?何言って…」

ライナー「ミカサ…!エレンは一体どうしたんだ!何かおかしいぞ…」

エレン「…ハハッ、容疑者様がそんなこと言うのか。良いからちょっと黙ってろって」ゴスッ

ライナー「ぐぅっ…!」

ミカサ「…あ…」


エレン「早くしろよ。クリスタが怪しいのは分かってただろ?」

ミカサ「エレン、どうして…!?サシャとコニーは違うって今…」

エレン「…何だ…お前までオレの邪魔をする気か…?」

ミカサ「…!」

エレン「早くしろ」

ミカサ「クリスタ…」スッ

クリスタ「…う…ミカサ…」

ミカサ「……」ガシャッ

クリスタ「…違うの…私は敵じゃない…」

ミカサ「…大人しくしていて…」



   バタバタバタバタ バンッ

ジャン「おい!!何があった!」

ユミル「クリスタ!」ガバッ

クリスタ「あ…ユミル…今までどこに…」

ユミル「すまん、ジャンと話し込んじまってて…エレン!どうしてクリスタが拘束されてるんだ!!」

エレン「素性が怪しすぎなんだよ、クリスタは」

ユミル「怪しいからって拘束すんのか!目的は諜報員を捜し出すことだろ!!」

エレン「ん?言ってる意味がわかんねーな。怪しけりゃ諜報員である可能性が一番高いだろ…………ユミル、お前何か知ってるのか?」

ユミル「…!…い、いや」

ジャン「おい、エレン!コニーとサシャも諜報員だったのか!?何でこんなボロボロになってんだよ!!」

エレン「…その2人は諜報員の可能性は低い」

ジャン「は!?」


エレン「ただし、人類の敵を庇いすぎる。これじゃあこいつら自身が敵になっちまうよ」

ジャン「何したんだよ、コニーとサシャは!」

エレン「サシャはライナーの怪我の手当てをした。コニーはクリスタの拘束を拒んだ」

ジャン「それだけかよ…!」

エレン「充分だろ」

ジャン「…くそっ!話になんねぇ…ユミル、ミカサ!2人を取りあえず運び出して手当を…」

エレン「ダメだ」

ジャン「お前っ…いい加減にしろよ!」ガッ

エレン「今のままだと2人とも兵士として中途半端だ。こいつらは柱に縛り付けて、しばらく自省してもらう」

ジャン「んなことしたら死ぬぞ!2人とも!!」

ユミル「…ジャン、待て」

ジャン「ユミル!てめえまたそんなこと言うのか!」


ユミル「良いから、ちょっと来い」

ジャン「何だよ!」

ユミル「(良いか、今はエレンに従え)」ボソッ

ジャン「何をっ…」

ユミル「(調査兵団はお前の言うこととエレンの言うこと、どっちを信用すると思う?)」

ジャン「は!?」

ユミル「(忘れるな。私たちは今あくまで容疑者だ)」

ユミル「(さっきお前が言ってたミカサの話も合わせて考えると、今エレンは何をするか分からない状態だ)」

ユミル「(下手に逆らえば、私たちを敵だとして突き出そうとするかもしれない。そうなったらこいつらの治療どころじゃねぇ)」

ユミル「(今は…従うんだ。皆を助けたければ…)」

ジャン「…ッ」


ユミル「エレン、お前の言うことは分かった。そのかわり、身の回りの世話くらいは良いだろ?」

エレン「ん?ああ、そうだな。じゃあ、頼むわ。行くぞ、ミカサ」カツカツ

ミカサ「…ユミル、ジャン…」

ユミル「任せとけって、な」

ミカサ「……」コクン


   …バタン


浅間山荘事件というか、それまでの赤軍関係のアレコレを思い出すな……

>>86
ネタ元はそれです


ジャン「……」

ユミル「…どうもこりゃ、諜報員の疑いが無い2人の方がよっぽど重症だな…おいサシャ、生きてるか?」ペチペチ

サシャ「…う…ぐ…ユミ…」

ユミル「無理にしゃべるな。ジャン、コニーはどうだ?」

ジャン「…ダメだ、意識が無い…辛うじて息はあるが…」

ユミル「…そうか。クリスタは…大丈夫だな。拘束は辛いだろうけど、少しの我慢だ」

クリスタ「……」コクン

ライナー「…本当に柱に縛り付けるつもりか…」

ユミル「さあ、どうしようか…ライナー…お前、ずっと見てたんだろ?」

ライナー「…ああ…」


ユミル「お前から見て、どうだった?エレンは」

ライナー「…酷く思い詰めているというか、追い詰められていると言うか…『人類の敵は全て排除する』と、ひたすら…」

ユミル「ミカサの話と一緒だな。これは…慎重に対応しないと危ない」

ジャン「何とか外に知らせにいけねぇか?」

ユミル「地上への扉はガッチリ閉まってる。出入りできるのはエレンとミカサだけだ」

ジャン「解放されるのを待つしか無いのか…一体いつになるんだ。くそっ、ここだとどれだけ時間が経ったのかも分からねぇ」

ライナー「…ミカサの話とは何だ…」

ユミル「エレンが少し前からおかしかったんだと。ミカサも余り強く出られなくなってるみたいでな」

ライナー「…どうして」

ユミル「トロスト区襲撃から色々ありすぎて、もう潰れかけらしい……気持ちは分からんでも無いが」

ライナー「……」


ジャン「…おい、ライナー…ベルトルトのことだが…」

ライナー「済まんな。本当に何も知らないんだ…実際の所、俺も驚いていて…」

ジャン「そうか…そうだよな。ベルトルトだってきっと、何かの間違いで…」

ライナー「……そうだな……」

ジャン「今はしんどいかもしれないけど、我慢しろよ。外に出たらオレが上に直接掛け合うから」

ライナー「……ああ…頼む……」

ユミル「ジャン、それより今は目の前のこいつらだ」

ジャン「まさか本当に縛り付けるなんて言わねぇだろうな」

ユミル「残念ながら、そのまさかだよ」

ジャン「…本当に危ないぞ、こいつら」


ユミル「微妙なところだな…一時的にでもエレンに従って警戒を解かないと、余計事態を悪化させるかもしれん」

ジャン「そのためにコニーとサシャには苦しんでもらうってか…くそっ、何でこんなにエレンのご機嫌伺わなきゃいけねぇんだよ…!」

ユミル「今だけだ。解放されるまでの我慢だ」

ジャン「クリスタまでヤバい目に遭ってるのに、やけに慎重だな…どうしたんだよ」

ユミル「…何が何でも無傷で解放されなきゃいけないんだよ、私は。クリスタに嫌疑がかかってるなら尚更な」

ジャン「は?何だよ、それ」

ユミル「こっちの話だ。気にすんな」


ユミル「それよりこの部屋じゃ狭過ぎる。3人は別室に移動させよう」

ジャン「コニーとサシャだけでも何とか外に…」

ユミル「諦めろ。しばらくしたら、またエレンに頼んでみるさ」

ジャン「でもさすがに縛り付けるってのは…」

ユミル「直立不動で縛り付けとけ、なんてエレンも言ってない。何とか2人が少しでも休めるように工夫しよう」

ジャン「…それしかないか…よし、行くぞコニー」グイッ

ユミル「じゃあな、ライナー。また1人になるが」

ライナー「…何だったらクリスタは置いていってくれても良いぞ…」

ユミル「ふざけんな…まあ、冗談が出るようなら大丈夫だな」


ライナー「…ユミル…」

ユミル「あ?」

ライナー「…エレンから…クリスタを守れよ…」

ユミル「お前に言われなくたってそうするさ。何だよ、本気で惚れてんのかよ」

ライナー「…頼む…」

ユミル「そんなこと言ってもお前の評価は上げてやらねーからな」

ジャン「ユミル、後はオレがサシャを運ぶ。クリスタを頼む」

ユミル「ああ」


   バタン




ライナー「………………」

ライナー「…俺は…何をしているんだ…」

ライナー「俺の…俺のせいなのか…?全部…」

ライナー「…くそ…畜生…畜生…」

ライナー「…ベルトルト…アニ…俺は…どうすれば良い…」


ーーーーーーーー

ーーーーー

コニー「…ここは…」モゾモゾ

ジャン「目ぇ覚めたか、コニー」

コニー「…オレ…どうなって…」ギシッ

ジャン「すまねぇ…エレンの指示でな。しばらくそこに縛り付けておかなきゃいけないんだ」

コニー「…サシャとクリスタは…?」

ジャン「サシャは今眠っている。そこからじゃ見えないけど、お前のすぐ側にいるぞ」

サシャ「……」スー

ジャン「クリスタはお前らほど痛めつけられていない。拘束こそされたがな。ユミルがみてる」

ジャン「…気分はどうだ?」

コニー「…気持ちわりぃ…体中いてぇ…」


ジャン「水、飲めるか?」

コニー「……」フルフル

ジャン「何か食いもんを…」

コニー「…何もいらねぇ…」

コニー「…なあ、ジャン。エレンがオレをダメな兵士だって…」

ジャン「……」

コニー「…オレ、上位に入って調子乗ってたのかな…」

ジャン「…んなことねーよ」

コニー「…オレな、104期に敵がいるって聞いても、どうしても信じられなくって、信じたくなくって…」

コニー「…エレンの言う通りだ。アニは巨人だったって言うし、ベルトルトが手を噛もうとするのも見た…」

コニー「…それなのにオレ…兵士なのに…兵士になったのに…まだあいつらを庇いたいって思ってる…」

ジャン「…静かにしとけ、コニー」


コニー「…オレ…どうしてこんなに中途半端なんだろう…エレンが言ってた。オレの中にある甘さを全部潰すって…」

ジャン「そんな話真に受けるな。エレンの方がどうかしてるんだ」

コニー「…どうして…オレだって…立派な兵士になって…村のみんなに…母ちゃんに…」ゴボッ

ジャン「コニー!?」バッ

コニー「…いやだ…こんなところで終わるの…いやだ…」

ジャン「コニー!待ってろ、今縄を解いてやる!!ユミル、ユミル!」

ユミル「んー、どうした?コニー、目が覚めたか?」ヒョコ

ジャン「それどころじゃねえ!すごい吐血量だ!!」


ユミル「……!」

ジャン「おい、コニー!!待ってろ、今外で処置を受けれるようにしてやるから!ユミル、エレンかミカサを!」

ユミル「あ、ああ」ダッ

ジャン「コニー!意識をしっかり持て、コニー!!」

コニー「……ぐ……」

ジャン「…コニー?おい!コニー!!くそっ、蘇生措置を…」グッグッグッグッ

ジャン「コニー!しっかりしろ!!おい!コニー!!?!」



    バタバタバタバタ バンッ

ミカサ「コニー!?今すぐ外に連れて行くか…ら…」

ユミル「…あ……」

ジャン「……………」

ミカサ「…そんな…」

ジャン「……くそっ!くそっ!!何でコニーが!このっ、エレン!出て来い!!」ダッ

ユミル「おい、ジャン!ミカサ、ジャンを止めてくれ!!」

ミカサ「……」ダッ


   バンッ

エレン「ぅおっ、ビビった。何だ?いきなり」

ジャン「何だじゃねーよ!コニーが死んだぞ!!」ガッ

エレン「……え……」

ジャン「てめーが殺したんだぞ!!どういうつもりだ!」

エレン「…本当に死んだのか?コニーは…」

ジャン「ああ、そうだよ!行って顔見て来い!!体中ボコられて、血塗れで…!お前がやったんだぞ!!」

ミカサ「ジャン!」ガシッ

ジャン「離せ、ミカサ!こいつは仲間を殺したんだ!!コニーは敵じゃなかったんだろ!?なあ!エレン!!!」

エレン「…死んだのか…そうか…」


ジャン「おい、答えろ!!どうしてコニーを殺す必要があった!どうしてコニーは死ななきゃいけなかったんだ!!!」

エレン「…コニーは…」

ジャン「答えろ!答えろエレン!!!」

エレン「…オレが殺したんじゃない…自分の甘さに負けて死んだんだ」

ジャン「……………は?」ピタッ

ミカサ「…エレン…?」

エレン「コニーが本物の兵士なら、あれくらいで死ぬことはなかったはずだ」

エレン「兵士としての甘さが、コニーを殺したんだ。本物の兵士なら死なずにすんだんだ」

ミカサ「…エレン…何言って…」

エレン「…そうだ。コニーは自分に負けて死んだんだ」


ジャン「……お前、それ本気で言ってんのか…」

エレン「ああ」

ミカサ「…エレン…違う…コニーはあなたに暴行されて…」

エレン「だから、兵士として甘かったんだっての。簡単に敵に同情するような弱さがコニーを殺したんだよ」

ミカサ「…あ…エレ…」

ジャン「……それだけか、エレン。コニーについてはそれだけか。お前が殺したんじゃないって言うんだな」

エレン「…そうだ」

ジャン「………」クルッ カツカツ

   バタン


ミカサ「………」

エレン「どうした?お前も行けよ、ほら」

ミカサ「……エレン、コニーは……」

エレン「…敵に甘い顔を見せる兵士は敵も同然だ。いちゃいけないんだ」

ミカサ「……」

エレン「ほら、行けよ。行けって」

ミカサ「……」

エレン「…出て行けって言ってるんだよ!!!」

ミカサ「……」カツカツ


    …バタン



エレン「………」


ユミル「無事だったか、ジャン」

ジャン「…無事…?エレンの所に行っただけで安否を心配されるとはな」

ユミル「顔色がひどいぞ」

ジャン「…コニーに比べりゃマシだ……体、綺麗にしてくれたんだな…」

サシャ「…ジャン…」

ジャン「サシャ…縄、解いてもらったのか」

ユミル「今ならエレンも何も言わねぇだろ………エレンは何て?」

ジャン「コニーが弱いから、甘いから死んだんだとよ…オレが殺したんじゃねぇってさ」

ユミル「…本当にそう言ったのか」

ジャン「…ありゃもう、エレンじゃねぇよ…」


ミカサ「……」ガチャ

ジャン「ミカサ…さっきはその…すまなかったな」

ミカサ「私が…エレンを止めていれば…こんなことには…」

ユミル「…反省は後にしよう。今からでもエレンを止められないか?」

ミカサ「私だとエレンを余計に苛立たせてしまう…でも、アルミンなら…」

ジャン「…人死にが出た。ここは上官に出張ってもらう方が早い」

ミカサ「…上官…」

ジャン「駄目か?」

ミカサ「……」

ジャン「…割れるのが怖いか?」

ミカサ「出来れば一度、アルミンに頼みたい…彼なら、エレンを落ち着けさせられる」


ユミル「ジャン、どうする?」

ミカサ「…………」

ジャン「…分かった。アルミンにエレンを任せてみよう」

ミカサ「……」ホッ

ジャン「ミカサ、今すぐアルミンを呼びにいけるか?サシャの治療もして欲しいんだが」

サシャ「…私なら、大丈夫です。痛みも余り強くなくって…」

ユミル「無理するなよ。エレンに相当やられたんだろ?」

サシャ「…ええ。でも、今私が消えたらどんなことになるか…」

ジャン「コニーがああなっちまったんだ。お前の体だって無事とは思えねぇ」

ミカサ「今日はもう遅い…今ならエレンに気付かれずに外に出られるかも」


サシャ「…もう夜なんですか…ほんと、ここにいると時間が分からなくなりますね…」

ユミル「腹減ったか?」

サシャ「…いえ、そんな気分じゃないです…」

ジャン「サシャの口からそんな言葉が聞ける日が来るとはな」

サシャ「…もう、失礼ですね…どちらにしても、今日はもうここで寝させて下さい…何だかダルくて…」

ミカサ「…サシャがそう言うなら。私は今からアルミンに連絡をつけてくる」

ジャン「ああ、頼む。サシャは明日アルミンが来た時点ですぐに外で診てもらおう。出来るか?」

ミカサ「わかった。治療の手配もしておく」

ジャン「…コニーは…」

ユミル「可哀想だが、アニと同じ場所に寝かせておこう」

ジャン「そうだな…こんな空気が悪い所で済まねぇ…早く外に出してやるから…」


ーーー地上 調査兵団 詰所

ミカサ「……」コンコン

アルミン「あれ、ミカサ?どうしたの?こんな夜遅くに」ガチャ

ミカサ「……アルミン……」

アルミン「?まあ、入って」

アルミン「こっちは調査が終わったよ。全員解放でおしまい。良かったよ」

アルミン「…そっちはベルトルトがいたんだもんね…アニの事も聞いたよ…」

ミカサ「……」

アルミン「ライナーがどうしても認めないから、揺さぶりをかけるためにもしばらくこっちで預かりたいって」

ミカサ「…え…?」

アルミン「エレンからの報告でね…どうしたの?」


ミカサ「…エレンが…?」

アルミン「うん。僕は又聞きだけど」

ミカサ「…………アルミン…エレンが…」

アルミン「?」

ミカサ「…もう私の話は聞いてくれない。声が…届かない…」

アルミン「何かあったの?」

ミカサ「…ごめんなさい…私が…」

アルミン「ミカサ?…落ち着いて、ゆっくり話してくれれば良いから、ね?」

ミカサ「エレンを止められない…もう私では…助けて、アルミン」

アルミン「…エレンがどうしたの?最近確かに思い詰めてはいたけど…」

アルミン「同期の尋問なんてちょっと荷が重すぎるんじゃないかな…ただでさえ女型捕獲作戦の後なのに…」


ミカサ「……あ……」

アルミン「…言えない?いいよ、無理に言わなくても」ナデナデ

ミカサ「……」

アルミン「ハンジ分隊長に様子を見てきてくれって言われてたんだ。あっちはベルトルトにかかりっきりだしね」

アルミン「明日の朝、そっちに行くよ。だから今はゆっくり休んで。ね?」

ミカサ「…明日は、絶対に私の側から離れないで欲しい…」

アルミン「え?」

ミカサ「…また、迎えにくる」バタン

アルミン「…?」


ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー地下

サシャ「…う…」

ユミル「…どうしたサシャ、眠れないか?」

サシャ「…あ…すみません、ユミル…なんだか寒くって…」

ユミル「寒い?そうかな…分かった、毛布を持ってくる」

サシャ「…それに、暗くて…」

ユミル「一応明かりはつけておいたんだけどな。もうちょっと明るくするか?」

サシャ「………………」

ユミル「どうした、まだ何かあったらちゃんと言えよ」


サシャ「………ユミル…何だかこの部屋、おかしいです……」

ユミル「おかしい?何がだ?」

サシャ「なんだかグニャグニャして…壁、動いてませんか…?」

ユミル「…サシャ…?」

サシャ「…壁が…迫ってきます…ユミル…逃げないと…」

ユミル「サシャ…寝ぼけてるのか?」

サシャ「…潰される…壁に…暗い…寒い…」

ユミル「サシャ!?お前、何言って…おい、1回ちゃんと起きろ!!」ペチペチ

サシャ「…逃げて…壁が…寒い…暗い…寒い………怖い…」

ユミル「おい、サシャ!!しっかりしろ!サシャ!サシャ!!」

サシャ「…………こわい……………」

ユミル「………サシャ……」


ユミル「…ジャン…」ギィ

ジャン「…何だ…もう朝か…?」ムクッ

ユミル「サシャ…駄目だった……」

ジャン「え……」

ユミル「…駄目だったよ…間に合わなかった…」

ユミル「……あの時……無理矢理にでも外に連れ出していれば…!」

ジャン「嘘だろ…そんな………もう…勘弁してくれ……」


ユミル「…もうこれ以上は無理だ。次はクリスタかライナーか…私たちか」

ジャン「………」

ユミル「後はもう…アルミンに任せるしかない…それが失敗したら…」

ジャン「……失敗したら…もう最終手段しかねぇだろ…エレンを…」

ユミル「……」

ジャン「…いや、やめとこう。取りあえずアルミンを待つ」

ユミル「…そうだな…」


ユミル「……」ガチャ

クリスタ「ユミル…?」ゴソゴソ

ユミル「クリスタ…ごめんな。サシャにつきっきりで」ナデナデ

クリスタ「私は大丈夫。ちょっと苦しいけど…サシャとコニーは?」

ユミル「………」

クリスタ「ユミル?どうしたの、頭抱えて…ねえ、サシャとコニーは?」

ユミル「クリスタ…」


クリスタ「…ねえ、どうして答えてくれないの?」

ユミル「…ごめんな…」ギュッ

クリスタ「ユミル…?まさか…」

ユミル「……お前だけは…助けるから……」

クリスタ「…嘘…2人ともまさか…」

ユミル「…………」

クリスタ「…そんな…サシャ…コニー……」ポロポロ

ユミル「……ごめんな……」ギュゥッ


ーーーーーーーー

ーーーーー

  カツカツカツカツ

ミカサ「…アルミン、こっち」

アルミン「…誰もいない…?」

アルミン「いや…気配はするけど…なんだろ、違和感が…ねえミカサ、皆いるんだよね?」

ミカサ「…エレンはこの部屋」

アルミン「…? エレン、おはよう」コンコン ガチャ

エレン「…あ、アルミンか」

アルミン「えっと、ハンジ分隊長に様子を見て来いって言われたんだ」

アルミン「ついでに調査報告書、持ってきたよ。一応エレンも目を通しておいてって」バサッ

エレン「そっちはもう終わったのか」パラッ


アルミン「その…ベルトルトのことは聞いたよ」

エレン「ん…?ああ」ペラッ

アルミン「覚悟はしていたけど…やっぱり信じられない」

エレン「……」ペラッ

アルミン「…ライナーは?」

エレン「んー…知らぬ存ぜぬで押し通そうとしてやがる。厄介な奴だ」ペラッ

アルミン「そう…ちょっと顔を見ても良い?」

エレン「ああ、こっちだ」

ミカサ「…私も行く…」





アルミン「…ライナー…」

ライナー「…アルミンか…」

アルミン「酷い…有様だね…」

ライナー「まあな…それより…助けてくれ…」

アルミン「ごめん…疑いが晴れない以上、君を解放するわけには…」

ライナー「…俺じゃない…」

アルミン「え?」

エレン「やっと読み終わった…あっちは全員解放なんだな。お疲れ、アルミン」バサッ

ライナー「…サシャ達を…」

アルミン「サシャ?ミカサ、そう言えば他のみんなはどこに…」

ミカサ「……っ」


エレン「…クリスタは拘束した。自分の無実を証明する材料が無かったからな」

アルミン「!そ、そうなんだ…可哀想だけど、身辺調査が完了すれば解放になるかな…サシャは?」

エレン「サシャとコニーは…本物の兵士になるために今は自省中だ…コニーは失敗したが」

アルミン「本物?失敗?…何の話…?」

エレン「コニーは…負けたんだよ。自分自身の甘さに。敵に情けをかけるからそうなる」

ライナー「…負けた…?」

アルミン「さっきから何言ってるの、エレン?」

エレン「裏切り者に甘い奴らがいたからな、ちょっと生まれ変わってもらおうと思ったんだ」

エレン「それでオレが手助けしたんだが…無駄だったみたいでな」

ライナー「…エレン!お前まさか…!!」ガシャッ

アルミン「ライナー?…エレン、どういうこと…?一から説明して」


ライナー「ミカサ!サシャとコニーは!!」

ミカサ「…エレン…サシャも…」

ライナー「!!」

エレン「なんだ、サシャも駄目だったのか。残念だな」

ミカサ「…エレン!あなた、自分が何を言ってるか分かってるの!?サシャもコニーも何も悪くなかったのに!!」

エレン「ミカサまでそんなこと言うのかよ。敵に隙を見せまくってる奴が悪くないわけねーだろ」

ミカサ「お願い、もうやめて!エレン!!」


アルミン「みんな、どうしたの?ねえエレン、何かあった?」

アルミン「…この地下の違和感は…何か関係があるの…?」

エレン「……」

アルミン「さっきから皆が言ってること…僕の勘繰りが過ぎてるだけかと思ったけど…」

エレン「……」

アルミン「ねえ、エレン…『失敗した』…って…」

エレン「……」

アルミン「……!」ダッ

ミカサ「アルミン!」ダッ


アルミン「ねえ!誰かいないの!?」タッタッタッ

アルミン「コニー!ジャン!サシャ!クリスタ!ユミル!」タッタッタッ

アルミン「どうして!?誰か!!」タッタッタッ

ジャン「…アルミンか…」ギィ

アルミン「ジャン!良かった…ねぇ、ここで一体何が…」

ジャン「……頼む、オレたちを連れ出してくれ…エレンを…止めてくれ…」

アルミン「え…?」

ジャン「…こっちだ…」カツカツ

アルミン「ジャン、どこへ…」カツカツ

ジャン「……」ギィ


アルミン「え…?サシャと…コニー…?こんなところで寝て…もう1人…?誰…?」

アルミン「…首が…ない…」

ミカサ「…アレは…アニ」

アルミン「…え?サシャとコニーは…じゃあ…」

ジャン「…ああ…」

アルミン「…まさか……エレンが…?」

エレン「オレじゃない」カツカツ

ジャン「!」ビクッ

アルミン「…エレン…」

エレン「そいつらはな。負けたんだよ」

アルミン「負けた?誰に?」


エレン「自分自身にな」

アルミン「…え…」

エレン「誰も分かってくれないんだ」

エレン「敵に対して隙を見せちゃいけない。情けをかけちゃいけないんだ」

エレン「中途半端に兵士をやって、敵に付け入られてしまうようじゃ…いずれ自身が裏切り者だ」

アルミン「殺したのは…エレン?」

エレン「オレは…手助けをしただけだ!あいつらが本物の兵士になれるように…!」

ミカサ「エレン、違う…そんなことをしなくても兵士は仲間なの。あなたの敵は…」

エレン「ああ、お前の言う通りだよなぁ!アニもライナーもベルトルトも兵士だったけどな!!」

ミカサ「……ッ!」

エレン「ただ兵士だと言うだけじゃダメなんだよ!敵に通じたりしない、絶対に裏切らない!そうじゃないとダメなんだ!!」


アルミン「エレン…」

エレン「お前は…分かってくれるだろ?アルミン」

ジャン「(逆らうな…何をするかわかんねぇぞ)」ボソッ

アルミン「………」コクン

アルミン「…エレン、君の言う通りだ。サシャもコニーも『本物の兵士』じゃなかった…そうだね?」

エレン「!アルミン…」

アルミン「よく頑張ったね。ベルトルトもあぶり出したし、ライナーだって時間の問題だ。もう調査兵団に任せよう?」

エレン「…いや、ライナーは…」

アルミン「そう、酷く強情だね。いっそのこと、調査兵団に引き渡してしまった方が効率的に話が聞けるかもしれないよ?」


エレン「…オレには無理だって言いたいのか?」

アルミン「そうは言わない。ベルトルトをあぶり出したのは君だ。それはみんな認めてる」

エレン「ならライナーだって…」

アルミン「エレン1人で抱え込む必要は無いよ。ハンジ分隊長が喜んで協力するさ」

エレン「……………そうか…そのほうが良いかもしれないな…」

アルミン「調査はこれで終わりだ。さあ、もう皆で外に出ようよ」

ジャン「……」ホッ


エレン「…いいや、まだ一人残ってる」

アルミン「え?」

エレン「クリスタだ」

アルミン「い、いや…クリスタも調査兵団に任せて…」

エレン「ダメだ。アルミン、こっち来い」グイッ

アルミン「い、痛ッ…エレン、どこへ…」

ジャン「おい、エレン!」

ミカサ「待って、エレン!アルミン!」


   ガチャッ

クリスタ「!?」ビクッ

ユミル「…どうした、エレン」

エレン「アルミン、クリスタには話を聞いてなくてな。お前がやってくれないか」

アルミン「え…僕が…?」

エレン「そうだ。ライナーはともかく、クリスタは全くの手つかずなんだ」


アルミン「あ、う、うん。えっとじゃあ…クリスタ」

クリスタ「……」

アルミン「…出自がハッキリしない点についてその…ちゃんと説明して欲しいな」

クリスタ「……」

ユミル「アルミン、クリスタは……」

エレン「ユミルは黙ってろ」

ユミル「……」

クリスタ「…ごめんなさい。どうしても言えないの…」

エレン「またそれか。そんなのが通ると思ってるのか」

クリスタ「…信じて。敵じゃない」

エレン「今ここであの3人に同じことを聞いてもそう答えるだろうな」

クリスタ「……」


アルミン「…エレン、アニたちとクリスタでは身辺調査の結果に接点が無い」

エレン「今の所はな」

アルミン「理由は分からないけど…短絡的に敵だと決めつけるのは何だか釈然としないんだよ」

エレン「そうか?」

アルミン「うん…さっきも言ったけど、身辺調査の結果がちゃんと出るまでは調査兵団に預けて…」

エレン「アルミン、適当にお茶を濁そうとしてないか?」

アルミン「い、いや…そんなつもりじゃ」

エレン「ぬるいな…やっぱりライナーと同じ聞き方を…」


ユミル「!」サッ

エレン「…?ユミル、どけよ。お前も敵を庇うのか?」

ユミル「……」

クリスタ「ユミル、私は大丈夫だから…」

ユミル「…そんなわけに行くか」

エレン「チッ…何茶番やってんだ…」

ミカサ「待って、エレン。私もアルミンに賛成。拘束した者は調査兵団に預けてしまう方が良い。一旦外に出よう?」

エレン「…だめだ。ここで敵かどうか白黒はっきりつける」ジロッ

クリスタ「……!」ゾクッ


アルミン「ちょ、ちょっと待って。手荒じゃない方法だってあるんだし…」

エレン「敵かもしれない奴に何言ってんだ」

アルミン「敵じゃないかもしれないだろ?」

エレン「…言葉遊びだな、アルミン…やっぱり誤魔化そうとしてるだろ」

アルミン「違うよ。ただやり方を変えようと言ってるんだ」

エレン「…サシャとコニーの話も適当に流しただけか?…お前、本当にオレが何を言いたいのか分かったのか?」

アルミン「…………」

エレン「アルミン」

アルミン「…アニ達と3年間過ごして、104期は彼らに仲間意識を持つようになってしまった」

アルミン「その仲間意識が仇となって、いつ彼らに味方するものが現れるか分からない…いつ巨人側に寝返るものが現れるか分からない…そう言うことだろ?」

エレン「………」


アルミン「エレンは…怖いんだろ?また裏切られるのが…裏切られるくらいなら最初から自分がその芽を摘み取ってやるって…そう思ってるんだろ?」

エレン「………」

アルミン「そうやって…1人ずつ殺していくの?そんなこと繰り返したら、最後には誰もいなくなる」

エレン「…殺すつもりなんて無かった…」

アルミン「そうだね。でも、コニーとサシャは死んでしまった。君の理屈を受け止めきれなくて」

エレン「………」

アルミン「エレンの理屈は間違っていないと思う。敵は敵だ……ただ、皆それを受入れる下地ができていないんだ」


アルミン「皆、心の中で葛藤してるんだ。信じたい気持ちや、裏切られた怒り、3年間で培われた尊敬や友情、誰も整理なんてついてない」

エレン「…葛藤?……オレもか…?」

アルミン「…うん、多分ね…僕だってそうなんだ」

エレン「………」

アルミン「それぞれが整理をつけなきゃいけない。時間をかけても、それぞれが受入れていかないと意味が無いんだ」

アルミン「僕たちに今必要なのは時間だ。だからこそ、この先は調査兵団に任せるべきだ」


エレン「…アルミン…」シャキッ

ミカサ「!」

アルミン「地上へ出よう、エレン。これでお終いにしy」

エレン「アルミン…お前も結局分かってくれないんだな…」ザシュッ

ミカサ「アルミン!!」バッ

アルミン「…あ…?…」ドサッ

ジャン「ミカサ!アルミン!」

エレン「…オレは、葛藤なんてしてない…巨人を駆逐するためなら迷ったりしない…」


ジャン「おい!2人とも、大丈夫か!」

ミカサ「…私は腕を少し切っただけ…それより、アルミン…」

アルミン「…つ…エ…レン…どうして…」ハァッハァッ

エレン「…どうして分からないんだよ…葛藤する余地なんかないだろ…」ヘタッ

ミカサ「……エレン…どうして…どうしてアルミンを……!!」

エレン「…巨人と人類の間で葛藤するなんて、それこそ裏切りじゃないか…」

エレン「どうして…誰も分からないんだ…オレ達は兵士だ…巨人を殺すために兵士になったんだろうが…」

エレン「それが出来ないなら、せめて…オレの邪魔をするな…オレは全部殺すんだ…裏切り者も…巨人も…」

ミカサ「……あ……」

ユミル「行くぞ、ジャン」

ジャン「行くって…どこに…」

ユミル「しっかりしろ。逃げるんだよ、地上に。ミカサ!良いな、それで」

ミカサ「…………」


ユミル「悪いが、これ以上は無理だ…ジャン、アルミンを頼む。傷はそんなに深くなさそうだ」

ユミル「怪我したアルミン担いできゃ上も事情をすぐ理解するだろ」

ジャン「あ、ああ…行くぞ、アルミン」ガシッ

アルミン「……エレ………」

エレン「…邪魔はさせない…誰にも…」

ユミル「クリスタ、拘束したまんまでごめんな。調査兵団が怪しんでるんならこの格好のままの方が警戒が解けやすい」

クリスタ「……」コクン

ジャン「待て!ライナーは!?」

ユミル「あんなでっかいの担いでいけるか。どっちにしろすぐに調査兵団の手が入る。大丈夫だ…行くぞ!」ダッ

ジャン「せめて一言知らせてから行く!ユミルとミカサは先に行け!アルミン、ちょっと我慢な!!」ダッ

ユミル「おい!そんな悠長な…あーもう!」

ミカサ「……」ダッ



   ガチャッ

ジャン「ライナー!オレたちは一足早く地上に出る!もう少しの我慢だ、待ってろ!」

ライナー「…それ…アルミンか…?」

ジャン「!ああ…エレンを説得してもらうつもりだったが…失敗した…」

ユミル「だーもう!良いから早くしろ!」

ジャン「先行ってろって言っただろうが!」

ライナー「……皆………済まなかった…」


ジャン「え?」

ライナー「……済まない……」

ジャン「い、いや気にすんなって。一番しんどかったのはお前だろ?上官達が来れば…」

ライナー「…いや、違う。そうじゃないんだ…」

ジャン「ライナー?お前、何言って…」

ユミル「アルミン殺す気か!良いから行くぞ!」ダッ

ジャン「あ、ああ…じゃあライナー、すぐに助けてやるからな!」ダッ





ライナー「…………」

ライナー「…そうじゃないんだ…」

ライナー「…俺は…全部分かっていて…お前達を見殺しにしたんだ…俺が…殺したんだ…」

ライナー「…皆、済まない…」

ライナー「……それでも俺は………」

ライナー「……………戦士なんだ……」


ユミル「出口だ!ミカサ、早く開けてくれ!」

ミカサ「…これが、鍵…使って」チャラ

ジャン「…ミカサ、お前行かないのか?」

ミカサ「……」コクン

ジャン「…駄目だ。一緒に行くぞ」

ミカサ「これくらいはかすり傷。自分で…」

ジャン「怪我の話じゃねえ」

ユミル「?ミカサは自由に出入りできるんだから別に良いじゃねぇか」

ジャン「いや、良くない。行くぞ、ミカサ」

ミカサ「…私は…エレンの側にいる」

ジャン「駄目だ!今オレたちと行かないと駄目なんだ!」グイッ

ユミル「ジャン、どうしたんだ?お前」


ジャン「ミカサ、お前ああなったエレンを庇いきれると思ってるのか!?」

ミカサ「……」

ジャン「これだけの事件起こしちまったんだ!側にいると巻き添えくうぞ!!」

ミカサ「…どちらにせよ、私はエレンと共に調査を担当した。私にも責任は…」

ジャン「手を出したのはエレンだろうが!」

ミカサ「…それでも、私はエレンから離れない。離れたくない…」

ジャン「ミカサ!」

ミカサ「…ジャン、手を離して…」

ジャン「ミカサ…っ」

ユミル「扉を開けたぞ!ジャン、急げ!アルミンを医者に診せないと!!」ダッ

ミカサ「…ジャン、アルミンをお願い…」

ジャン「………分かった……」ダッ

pcの調子が激悪だわ

こういう唯のレスなら大丈夫だけど、SS書き込もうとすると専ブラが落ちる
他のスレでは大丈夫だったのに
ほんとなんなん

何が言いたいかっていうと、更新がちょっと滞るかもしれません
ごめんなさい

あーもーあげちゃうし・・・


ーーーーーーーー

ーーーーー

  バタバタバタバタ

調査兵団モブA「残っているのは!?」

ハンジ「報告通りならエレン、ミカサ、ライナーの3名だ!手分けして直ちに全員を拘束してくれ!」

調査兵団モブB「ライナー・ブラウン、確保しました!こちらは既に拘束されています!」

ハンジ「あとはエレンとミカサか!」


  ガチャッ

調査兵団モブC「…ここは?…!ハンジ分隊長!死体を発見しました!」

ハンジ「何体!?」

調査兵団モブC「男女1体ずつに…うっ…首なしが1体です!」

ハンジ「くそっ、ジャンたちが言っていた通りか…!」

   ダダダダダ

調査兵団モブA「この部屋か!」バンッ

ミカサ「!」

調査兵団モブB「いた!ハンジ分隊長!エレンとミカサを発見しました!」

ハンジ「すぐ行く!」ダッ


ハンジ「エレン、ミカサ、分かっているね?両名とも拘束させてもらうよ」

ミカサ「……」ギュッ

エレン「…オレは…裏切り者を…」

ハンジ「…ミカサ、エレンを離しなさい」

ミカサ「……」ブンブン

ハンジ「今回はトロスト区でエレンが巨人化したときとは事情が違う…エレンは明らかに罪を犯したんだ」

ミカサ「…エレンだけではありません。私も同罪です…」

ハンジ「それは今後の取り調べではっきりさせる。とにかく君たち2人も地上に出るんだ」

ミカサ「…私たちを…離さないで…」ギュゥッ

ハンジ「…拘束しろ」


調査兵団モブA「はっ!おい、いい加減離れろ!」ガシッ

ミカサ「…触るな」

ハンジ「ミカサ、諦めなさい」

ミカサ「………」ギュッ

ハンジ「ここで抵抗したところで事態は好転しない。もう学んだでしょ?」

ミカサ「……ダメ…」

ハンジ「ミカサ。離すんだ」

ミカサ「…………」

ハンジ「ミカサ」

ミカサ「…………」スルッ


調査兵団モブB「やっと離れたか、大人しくしとけよ!」ガシャッ

調査兵団モブA「両名、拘束完了しました」

ハンジ「よし、3名とも地上に出せ。エレンとライナーに傷を付けるな。慎重にな。完了次第、死体も回収しろ」

調査兵団モブs「はっ」

ミカサ「……ダメ…エレン…」

エレン「……」

ミカサ「……いや…連れて行かないで…エレンを…」

エレン「…ミカサ…オレ…」

ミカサ「……!…ダメ!ダメ!!お願い、私たちを引き離さないで!エレン!!エレン!!!」バタバタ

調査兵団モブA「うぉっ!暴れるな、おい!!」

調査兵団モブB「すげー力だな!おい、大人しくしろって!」


ハンジ「…ハァ…良い、エレンを先に地上に出しなさい」

調査兵団モブA「は…はっ!」

調査兵団モブB「おい、行くぞ」ガシッ

エレン「……オレはただ…」

ハンジ「猿ぐつわ忘れてるよ」

調査兵団モブB「申し訳ありません!おい、もう喋るな」ギュッ

エレン「……っ」

ミカサ「…いや!いやぁ!エレン、行かないで!いやあぁぁぁああああ!!」

調査兵団モブA 「行くぞ、よ…っと」

   ギィ バタン


ミカサ「……いやぁ……エレン…………」ポロポロ

ハンジ「……………」

ハンジ「…ミカサ、状況を理解して欲しい。我々も何も意地悪をしているわけじゃないんだ」

ミカサ「……ぅ……」ポロポロ

ハンジ「やっとの思いで捕獲した敵と、兵士を2名内輪もめと言う形で失ったんだ」

ハンジ「…これからどうなるのか…ああもう、考えたくもないね…」

ハンジ「……はぁ……………くそっ…最悪だな…」

test


ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー数日後 明け方 憲兵団管轄地下牢

    ヒタヒタヒタヒタ


    …ガシャン


ライナー「…エレン」

エレン「…ライナー?お前、どうしてここに…」ガシャッ

ライナー「やっぱり拘束されてるのか。立場が逆転したな」

エレン「何しにきた。仇を取りにきたのか?」

ライナー「いや…話をしにな」

エレン「そんな理由で憲兵団がすんなりお前を通すわけねぇだろ…殺したのか」

ライナー「……」


エレン「やっぱりお前、敵じゃねぇか。この殺人鬼が」

ライナー「…そうだな」

エレン「地下にいた時に首を刎ねておくんだったよ」

ライナー「…ああ…」

エレン「さっさと失せろ…何があってもお前のうなじを削いでやる。首洗って待ってろ、裏切り者が」

ライナー「裏切り者か……なあ、エレン」

エレン「何だよ」

ライナー「俺は確かに同期や仲間を騙し続け、挙げ句殺した」

エレン「何を今更…」

ライナー「だがな、今のお前と俺、何が違う?」

エレン「は…?」


ライナー「自分の理屈を押し付け、信頼してくれていた仲間を殺した。その点では俺とお前、違いはないはずだ」

エレン「…何を…」

ライナー「お前はもう、俺と同じ裏切り者なんだよ。エレン」

エレン「…てめーと一緒にするな…!」

ライナー「そうだな。お前は壁を壊したりはしていない…壁内で言えば俺のほうがよっぽど重罪人だ」

エレン「そうじゃねぇ!オレはお前らみたいな裏切り者とは違うって言ってるんだ!!」

ライナー「違いやしないさ…だが、お前が言った通り、俺たちが…いや、俺さえいなければお前はそんな風にならなかったのかもしれんな」

エレン「軽くぬかしやがって!!オレは違う!お前とは違う!!」

ライナー「…済まなかったな、エレン…謝ってもしょうがないことだが…」


エレン「違う違う違う!オレはお前ら敵を殺すために…」

ライナー「…悪いが、今度は俺の理屈を押し付けさせてもらう…拘束は外すぞ」ガシャッ

ライナー「一緒に来てもらう。俺たちの故郷へな」

エレン「……離せええぇぇっ!!」ドンッ

ライナー「うぉっ!?」ヨロッ

エレン「オレは…お前と一緒なんかじゃない!オレとお前は違う!」ガバッ

ライナー「エレン!よせっ…」


   パシッ

エレン「…!ベルトルトぉぉ!!てめーも逃げ出しやがったのか!離せっ、この…」

ベルトルト「……」ゴッ

エレン「…う……」ドサッ

ライナー「…外で待ってろと言っただろうが」

ベルトルト「剣を奪われといて…何言ってんの?」

ライナー「………」

ベルトルト「僕にはエレンが自分の首を刎ねようとしているように見えたけどね…まあ、僕としては黙って見てても良かったんだけど」

ライナー「…手は出すなよ」

ベルトルト「分かってるさ…今はね」


ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー更に3日後 調査兵団 詰所

ジャン「失礼します」ガチャ

エルヴィン「ああ、わざわざ呼び出して申し訳ない。座って」

ジャン「はい」ガタッ

エルヴィン「体調はどうかね?」

ジャン「はい、体は元々何ともなかったので。お気遣いありがとうございます」

エルヴィン「そうか。それは良かった」

ハンジ「ジャンの報告書は読んだけど、もうちょっと聞きたいことがあってね。現状も知りたいでしょ?」

ジャン「……はい」


エルヴィン「あまり時間もない。ハンジ、手短に行こう」

ハンジ「了解。余りいいニュースは無いけどね…まず一つ。ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーが逃亡した」

ジャン「…は?」

ハンジ「あの事件で調査兵団の信用が地に落ちてね。一連の対諜報員に関する作戦について主導権を握りたい憲兵団が、好機とばかりに首を突っ込んできたんだ」

ハンジ「それでエレン・ベルトルト・ライナーの3名は憲兵団預りとなった。それはもう風のように攫っていったよ」

ハンジ「ただ、ストヘス区で我々に煮え湯を飲まされたのが余程堪えたみたいでね。憲兵団の警戒はライナー達よりむしろ調査兵団に向けられていた」

ハンジ「護送中にその隙を突かれたよ…何ともお粗末な話だね」

ジャン「え…逃亡したって…どうして…」

ハンジ「君の訴えは残念ながら的外れだったってことだ。彼らが諜報員だと言うことはこれで確定した」

ジャン「…そんな…だってライナーは…」


エルヴィン「地下にいた時、どんな会話を交わした?」

ジャン「…エレンに拘束されて…それでもオレたちを心配して…あんな状況でも優秀な兵士そのものでした…」

ハンジ「それだけ?思い出してみて。彼が敵だと言う視点でみたとき、不審だと思われることは言ってなかった?」

ジャン「…特には……いえ、最後に話したとき『済まなかった』って…何を言ってるのか分からなかったんですが…」

ハンジ「他には?」

ジャン「…いえ…嘘だろ、ライナー最初から全部分かってて…」

ハンジ「……」チラッ

エルヴィン「分かった、ありがとう。追い打ちを掛けるようで済まないが、関係者に数名行方不明者が出ている」

ハンジ「エレン、クリスタ、ユミルの3名だね」

ジャン「……」


ハンジ「まずエレン。ライナー達に持っていかれたと見てまず間違いない」

ハンジ「ライナー達の逃亡で、兵力が捜索に大幅に割かれた。それでエレンの警備が手薄になってしまったらしい」

ハンジ「狙っていたのかたまたまなのかは分からないが…とにかく憲兵団の対応は後手に回りっぱなしだったようだ」

ハンジ「どうも憲兵団は仕事が甘いね…いや、我々に言われたくはないだろうけど。死傷者も出たようだよ」

ハンジ「まあ、それを差し引いても鮮やかな手並みだよ…調査兵団としても手放したくない人材だったね」

ジャン「…はは…」


ハンジ「それで、クリスタとユミルが不思議なんだけど…忽然と姿を消してしまってね。こっちは争った形跡すら無いんだ」

エルヴィン「ジャン、彼女達と訓練兵として過ごして何か感じたことはあるか?」

ジャン「…いえ、特に接点も無かったので…」

エルヴィン「…そうか」

ジャン「申し訳ありません」

エルヴィン「いや、良いんだ。そういう視点で見ていないと気付かないものだからね」

ジャン「敵としての視点、ですか?」

エルヴィン「正確には違うんだが…まあいい、こっちの話だよ」


ジャン「そう言えば…地下にいた時に、ユミルが自分は決して傷ついてはいけないと…」

エルヴィン「傷?」

ジャン「…クリスタを守るために、まずは自分を大事にしなきゃいけないという意味かと思ったんですが…」

ハンジ「……彼女も監禁すべきだったね…」

エルヴィン「言ってもしょうがない…あの混乱の中では最善策は取れなかっただろう」

ジャン「…まさか、ユミルまで…」

ハンジ「どうだろうね……じゃあ、良い話を一つ。アルミンは回復に向かってる。ただ…精神的なショックが大きいみたいでね」

ハンジ「その点についてはミカサも変わらないけど、彼女の方が回復には時間がかかりそうだね」

ジャン「ミカサの怪我の程度は軽かったはずです……こっちも精神的なものですか」


ハンジ「さっき、一連の経過を説明して彼女からも話を聞こうとしたんだけど、錯乱とも言えるくらいに動揺してね」

ハンジ「…無理もないか。ミカサのエレンへの執着ぶりは、付き合いの浅い我々から見ても感じ取れるものだったからね」

ジャン「…ミカサに対しての処罰は…」

ハンジ「まあ、現場に居合わせた者としてある程度の責任は免れないが、あれだけの逸材だ。何としてでも調査兵団に引き戻すよ」

ジャン「…そうですか……結局…オレ以外全滅か…」

エルヴィン「……」


ハンジ「それどころか…今回の件で、調査兵団の運営にも大きな影響が出てね」ハァ

ジャン「え?」

ハンジ「事件を聞きつけた支援者達が怒っていてね」

ハンジ「成果をあげられないばかりか身内殺しをするような兵団に出す金は無い、と。返す言葉も無いね」

ハンジ「ただ、憲兵団の大ポカがあったお陰でね。辛うじて痛み分けの形に持ち込めそうなんだ」

ハンジ「ある意味、ライナーとベルトルトのお陰で調査兵団の首の皮が繋がったわけだよ…皮肉なもんだね」

ジャン「そうだったんですか………って…あれ…?」

ハンジ「どうかした?」


ジャン「ライナーもエレンも行方不明なら…どうして捜索を開始していないんですか?こんな所でのんびり話をしている場合では…」

エルヴィン「……」ハァ

ハンジ「のんびり…ね。お前ら何遊んでるんだ、って?」

ジャン「あ!い、いえ、そう言うつもりでは…」

エルヴィン「ハンジ、大人げないぞ」

ハンジ「はいはい……エレンが消えてから実はもう3日経ってるんだよ」

ジャン「え!?」

ハンジ「ミスの露見を恐れた憲兵団が内々に処理しようとしてね…初動が完全に遅れた」

ジャン「そんな…」


ハンジ「壁内の捜索はもちろん行っているが、期待は薄い。かと言って壁外で闇雲に捜索をするのも無理だからね」

ハンジ「加えて調査兵団をよく思っていない連中やら教団やらがごちゃごちゃうるさくてね」

ハンジ「全く下らない…人類の存亡の瀬戸際だって言うのに…」

エルヴィン「ハンジ」

ハンジ「ああ、ごめんね。それで、対抗策を練ってはいるんだが…カードを全て奪われてしまっている状況でこれから」

エルヴィン「ハンジ、それ以上は良い」

ハンジ「……」フゥ


エルヴィン「そんなわけで、状況は芳しくない」

エルヴィン「まだどういう形になるか分からないが、君にも動いてもらうことになるだろう。心積りだけはしておいてくれ」

ジャン「…はい」

エルヴィン「…君も辛いだろうが、そこはもう訓練兵を修了した兵士だ。耐えてくれ」

ジャン「はい…大丈夫です」


エルヴィン「それじゃあ、最後に1つ。良いかね?」

ジャン「はい」

エルヴィン「今回の事件、君の感想を聞かせて欲しい」

ジャン「報告書に経過は全て書きましたが」

エルヴィン「経過じゃない。感想だ」

ハンジ「…?」

ジャン「…感想…」

エルヴィン「そうだ。ジャンが地下で感じたことを聞かせて欲しい」


ジャン「…感じたこと…………あそこは…ただでさえ息苦しかったんですが…」

ジャン「いつからか、何かに支配されて身動きできないような酷い閉塞感を感じるようになって…」

ジャン「…全面を囲む石壁がオレたちを押しつぶそうとしているような気がして…すみません、訳が分かりませんよね」

エルヴィン「いや、続けてくれ」

ジャン「…はい…そうだ、いつからかじゃない…多分アニが首を切られた瞬間からだと思います」

ジャン「エレンが…怖かったんです…オレ、最初からあいつとは仲が悪かったし、今も嫌いなんですが、怖いと思ったことなんてなくて…」

ジャン「仲間が暴行されたときも死んだときも、殴り倒すことすらできなかったんです…」

ジャン「…もう違う世界の人間みたいで…奴が何か言う度に体も頭も動かなくなって…」

ジャン「……………」

エルヴィン「ジャン?」


ジャン「いや…違う…エレンが言ってることは結局間違ってなかった…」

ジャン「ライナーもベルトルトも敵で…でもオレたちはそれを受入れられずに…奴は孤立して…」

ジャン「そうか…押しつぶされようとしてたのはエレンの方だったんだ…」

ジャン「最初から…ミカサがちゃんと教えてくれてたじゃないか…割れそうだって…」

ジャン「…そんな状態で話を聞かない連中を相手にしてたんだ…エレンにしてみれば、違う世界の人間はオレ達だったんだな…」

ジャン「奴はオレ達が怖かったんだ…だから、力で組み伏せてでも……」

ジャン「そうだ…オレだって一旦は奴とはもう話が通じないから殺してしまおうって…殺してでも逃げようって…そう思ったじゃないか…」

ジャン「…何も違わない…オレもあいつも…」

エルヴィン「ジャン」

ジャン「!」ハッ


エルヴィン「すまない。まだ整理が付いていないのに酷なことを聞いたね」

ジャン「…いえ、こちらこそ申し訳ありません。支離滅裂なことをダラダラと…」

エルヴィン「いや、短い休養になるかもしれないが、今は休んでくれ…これで終わりだ。ありがとう」

ジャン「…はい、失礼します」カツカツ バタン


エルヴィン「……」

ハンジ「何のために?」

エルヴィン「いや、別に。少しでも情報を引き出したくて悪あがきしてみただけだよ」

ハンジ「成果は?」

エルヴィン「…とりあえずは無かったな。悪いことをした」

ハンジ「…感想は?」

エルヴィン「意地が悪いな」

ハンジ「ブーメランになってるよ」


エルヴィン「『オレもエレンも変わらない』…か。怖いことを言うね…誰しもに起こりうることなのかもな」

ハンジ「一線を越えるか越えないかは別の話だよ。その壁は大きい」

エルヴィン「そうか?…意外とそう言うものは地面に引かれたただの細い線だったりするんじゃないか?」

ハンジ「……そっちこそ怖いこと言わないでよ」

エルヴィン「怖いか…そうだな。人間は怖いよ。巨人より怖いかもしれないな」

ハンジ「珍しいね。そんな感傷的なこと言うなんて」

エルヴィン「感想をいえと言ったのはそっちじゃないか」

ハンジ「適当に流してくれるかと思った」

エルヴィン「酷いな…続けるか?感想」

ハンジ「…止めとこうか。無駄に口を動かしてもしょうがない」

エルヴィン「勝手だな」


ハンジ「ごめんってば…にしても、彼はちょっとエレンに感情移入しすぎだね」

エルヴィン「巨人に食われるならまだしも、仲間が仲間を殺したわけだからな。あれもリハビリのようなものだろう」

ハンジ「ここでやられても困るんだけどね」

エルヴィン「それは私が悪かった」

ハンジ「…本気で生き残りを調査兵団に戻す気?」

エルヴィン「ああ、ただでさえ人手不足だ。細かいことは言ってられないだろう」

エルヴィン「…まあ、仮に復帰できてもあの事件の生き残りだ。周りの視線は冷たいだろうな」

ハンジ「冷たい視線だけで済むならありがたいもんでしょ…ったく…」

エルヴィン「まあそう怒るな。彼に限って言えば『被害者』の立場だぞ」

ハンジ「…それでもね。『ライナーはぼくのお友達です。悪い奴じゃないんです』なーんて上申書出されるとね…何やってたの、あんたって言いたくもなるよ」

エルヴィン「結果を知っていれば何とでも言えるさ」


エルヴィン「それに、我々の監督や判断が甘かったことも原因の1つだからな」

ハンジ「…同期なら多少警戒も緩むかも…なんて思ってエレンを行かせたのはやっぱり間違いだったね」

エルヴィン「ストヘス区の作戦の後での必死の懇願だったからな。あの時は驚いたが」

ハンジ「敵意むき出しのベルトルトを引きずり出して来たときも驚いたよ…まさかアニをエサにしてたとは思わなかった」

エルヴィン「エレンは何を考えていたんだろうな。憎しみが暴走したのか何か焦りがあったか…」

ハンジ「大きな魚を2匹釣れるなら、1匹は犠牲にしても良いとでも思ってたのかな。全然良くなかったんだけど」

ハンジ「それに、他の同期にまで手を出した理由がさっぱり理解できないよ。報告を読んでも断片的なことしか分からないし」

エルヴィン「それが一線のこちら側と向こう側の差か?」

ハンジ「そこまで戻る?」


エルヴィン「なぁ、ハンジ」

ハンジ「何?」

エルヴィン「我々は調査兵団の指揮者として、兵士達に心臓を捧げることを強要できる立場だ」

ハンジ「……そうだね」

エルヴィン「今まで随分と兵士を巨人のエサにして来た私が、その一線とやらを越えていないと本当に言えるのか…考えていたら分からなくなってきたよ」

ハンジ「何言ってんの、違うよ。全然違う」

エルヴィン「何が違う?」

ハンジ「彼は私情を爆発させただけ。そこには大義名分も納得できる理由もない」

エルヴィン「私にはそれがあるか?」

ハンジ「それが無ければ兵団は機能しないじゃない…団長、しっかりしてよ」


エルヴィン「そうだな…まあ、これくらいにしておこうか。知ってるか?反省や自己分析は人間の行動本能を麻痺させるんだそうだぞ」

ハンジ「何それ」

エルヴィン「お前も言ってたじゃないか、無駄に口を動かしてもしょうがないって。反省も愚痴もこれでお終いにしよう」

エルヴィン「さて、反省に絡み取られる前に行動するとしようか…仕事は多いぞ。ハンジ分隊長」

ハンジ「……了解」


ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー時間は少し遡って

ーーーエレンが誘拐された日の日没前 ウォール・ローゼ 壁上のどこか

ユミル「…クリスタ、ごめんな」ボソッ

ユミル「怖かったんだ…あそこは…地下は怖い…」

ユミル「どうしてもお前と助かりたくって…サシャとコニーを見殺しにした…」

ユミル「本当は分かってたんだ。あの2人が危ないこと。ジャンの言う通り、無理にでも2人を外に連れて行けば助かったかもしれないな…」

ユミル「……そうだ…ジャンと協力すればエレンを取り押さえて鍵を奪うことだって出来たんだ」

ユミル「ただ、そんなことをして私の正体までバレるのが怖かった…正体がバレたらお前と離ればなれになっちまう」

ユミル「………私はジャンを丸め込んで、あの2人を見殺しにしたんだ…」

ユミル「ごめんな、クリスタ。悲しい想いをさせて、ごめんな…」


ライナー「ユミル」

ユミル「…何だよ」

ライナー「そろそろ行くぞ。クリスタは」

ユミル「薬が効いてる。よく眠ってるよ。エレンもな」

クリスタ「………」スー

エレン「………」スー

ライナー「そうか………ユミル、今の話」

ユミル「聞いてたのかよ」

ライナー「聞こえたんだよ」


ユミル「そうだ。私はエレンの共犯者だよ……責めるか?」

ライナー「俺がか?そんなことして何の意味がある…第一、共犯者だって言うなら俺だってそうだ」

ユミル「…お互い、罪深いもんだな」

ライナー「まあ、今更だがな」

ユミル「みんながみんな自分の都合を押し付け合ってこのザマだ…コニーもサシャも浮かばれねぇな」

ライナー「…そうだな」

ユミル「それでも望みのものはすべて手に入れた。お前の粘り勝ちだな、ライナー」

ライナー「…そう単純なもんでもないさ」

ユミル「…ああ…そうだったな…アニが…」

ベルトルト「ユミルには関係ないだろ」

ユミル「お前まで聞いてたのか…怒るなよ」

ベルトルト「別に怒ってはいない。黙っててくれ」


ライナー「…まあ、そうだな。お前が取引に乗ってくれたお陰で楽が出来たのは確かだな」

ユミル「…病室に抜き身の剣引っ提げて侵入してくるのは、取引じゃなくて脅迫って言うんじゃねーの?」

ライナー「『私も連れて行かなきゃここで大騒ぎしてやる』も立派に脅迫だと思うが……しかし、お前がなぁ…」

ユミル「…ふん」

ライナー「地下ではいつ俺の嘘に気付いた」

ユミル「は?気付くも何も、あんなんで誤魔化せたと思えてたのか?あれで騙されるのはジャンとコニーとサシャとクリスタくらいなもんだぞ」

ライナー「…ほとんど全員じゃないか」

ユミル「馬鹿ばっかりだったからな」

ライナー「…………」

ユミル「…悪いな。ベルトルさんの言う通り黙った方が良さそうだ」


ライナー「…本当に良いのか。お前の安全の保証までは出来んぞ」

ユミル「あ?クリスタとエロゴリラを一緒にしとけるか」

ライナー「ったく…人を何だと思ってんだ」ハァ

ベルトルト「ライナー、さっきから喋りすぎだ」

ライナー「…そうだな。すまん」

ベルトルト「もう日が沈む。出発しよう」

ライナー「……ああ」


ユミル「これで兵士ともお別れだな」

ライナー「名残惜しいか?」

ユミル「こっちの台詞だよ」

ライナー「…そんな資格は俺にはないな」

ユミル「真面目だねぇ。懺悔くらいなら聞いてやっても良いぞ」

ライナー「物好きな奴だな……だが、俺は戦士だ。そんなもんは壁の中に置いていくさ」

ベルトルト「2人とも、傷の舐め合いもいい加減にしてくれ。聞いていられない」

ライナー「悪かったよ………じゃあ、行くか」




おしまい

上にも出てたけど、40年ほど前に起こった山岳ベース事件と言うのを下敷きにしてます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月24日 (火) 14:52:52   ID: y09hrDeq

ハンジ、エルヴィン勝手なこと言ってるよね。お前ら何もしてないくせに。
って読んでて思った。

2 :  SS好きの774さん   2016年06月30日 (木) 02:00:17   ID: NUPl9Avf

エレンが1番正しいな

3 :  SS好きの774さん   2016年08月31日 (水) 06:40:53   ID: 3q9jvmvJ

浅間山荘に気付いた奴、察し良すぎだろ。

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