伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」 (42)

小鳥「…………」カタカタ

小鳥「…………ふぅ」

春香「…………」

春香(後ろからソーっと……)

春香「ことーりさん♪」

小鳥「わっ! ど、どうしたの?」

春香「えへへぇ……はいどうぞ! 疲れたときには甘いもの、でしょ?」

小鳥「クッキー? どこで買ってきたの?」

春香「作ってきたんです!」

小鳥「え? これ春香ちゃんが作ったの!?」

春香「はい!」

小鳥「えー! うそ……えぇー!?」

春香「やだなぁ~、私がお菓子を作るのは初めてじゃないですよ?」

小鳥「だってこれ包装だってしっかりしてるし……ホント、売り物みたいよ」

春香「そうですか?」

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小鳥「でも誰か他の人にあげるんじゃなかったの? 私なんかが貰っていいの?」

春香「みんなの分もありますよ。 それは小鳥さんの分です」

小鳥「そっか……うん、ありがとう」

春香「どうぞ食べてください」

小鳥「その前に……ちょっとコーヒー淹れてくるわね!」

小鳥「春香ちゃんも一緒に食べましょ?」

春香「あっ、私淹れてきますよ!」

小鳥「お茶汲みは事務員の仕事よ。 ちょっと待ってて」


小鳥「はいどうぞ」

春香「ありがとうございます」

小鳥「お砂糖とミルクはお好みで入れてね」

春香「はーい」

小鳥「さて、それじゃ頂いてもいいかしら?」

春香「いいですとも!」

小鳥「……あむ」

春香「…………」ドキドキ

小鳥「うん、とっても美味しいわ!」

春香「よかったぁ~」

小鳥「これはタダで食べちゃいけないってぐらい美味しいわね」モフモフ

春香「そんなことないですよぉ」


小鳥「春香ちゃんはホント、お菓子を作るのが好きなのね」

春香「それは……きっと嬉しいからです」

小鳥「嬉しい?」

春香「私がお菓子を作るのは、もちろん自分で食べる為っていうのもありますけど……」

春香「やっぱり誰かに食べてもらって、その人に元気になって欲しいから」

小鳥「…………」

春香「でも気付いたら、元気になっているのは私でした」

小鳥「え?」

春香「お世辞かもしれませんけど、みんな私のお菓子を食べたとき……」

春香「『美味しい』って言ってくれて、私に笑顔のお返しをくれます」

春香「そのお返しのおかげで、逆に私の方が元気を貰ってるんです」

小鳥「笑顔のお返し………なんか、良い言葉ね」

春香「そうですね」

小鳥「やっぱり春香ちゃんはすごいなぁ」

春香「……へ?」

小鳥「私は今の今まで、元気を与えるのは一方的なものだと思っていたわ」

小鳥「自分が持っている元気を、相手に分け与えるものだって思ってた」

小鳥「でも春香ちゃんは違う」

春香「…………」

小鳥「う~ん、なんて言ったらいいのかな?」

小鳥「『人に元気を与えることで、自分も元気になれる』って、実はすごいことだと思うの」

春香「すごいこと?」

小鳥「普通は……って言うと変だけど、相手に何かを与えるときって……」

小鳥「心のどこかで見返りを求めていたり、驕るような気持ちになっているものなのよ」

春香「確かにそうかもしれませんね」

小鳥「でも春香ちゃんは、自分まで元気を貰えるって言ったわ」

小鳥「その言葉が自然と出てくるような心を持ってる春香ちゃんは、とっても素敵」

小鳥「もっと言うなら、そんな春香ちゃんこそアイドルに相応しいのよ」

春香「ちょ、ちょっと話が大げさになってませんか?」

小鳥「そんなことないわ。 お菓子を作ることと、アイドルの活動は似ているの」

春香「え? そう……ですか?」

小鳥「春香ちゃんがアイドルを続ける理由ってなにかある?」

春香「それは、少しでもファンの皆さんに元気になって欲し………ぁ」

小鳥「ね? この二つは手段が違うだけで、根本的には同じことなのよ」

春香「そっか」

小鳥「私も春香ちゃんには、いつもたっくさんの元気を貰ってる」

小鳥「それは何も私だけじゃないの」

小鳥「春香ちゃんは本当に優しい子で、いつも周りを気にかけてる」

春香「う、う~ん」

小鳥「みんなの中で一人だけ元気のない子が居たら、自分から話しかけてあげるし……」

小鳥「元気がないにも色々あって、そっとしておいて欲しいときもあるじゃない?」

小鳥「そんな時には、付かず離れずの距離で相手を見守ってあげてる」

春香「……そんな自覚ないですけど」

小鳥「春香ちゃんは、相手の性格とか、その時のテンションとか、周りの空気とか……」

小鳥「それだけじゃなくて、その場に居る他の子たちの性格なんかも見てるの」

春香「…………」

小鳥「その上で自分がどういう距離感でその人と接すればいいか……」

小鳥「自分がどう振舞えばいいかを瞬時に、そして無意識に判断してる」

春香「私そんなにすごい人じゃないですよ?」

小鳥「あら、さっきだってそうじゃない」

小鳥「私が疲れてるのを見て、お菓子をくれたわ」

春香「あれは…………そっか」

小鳥「私達はね、春香ちゃん。 みんなで夢に向かって歩いてるわけじゃない?」

春香「そうですね」

小鳥「だけど、足並みを揃えて……ってわけには、なかなかいかないわ」

小鳥「歩くのが早い子も居れば遅い子も居る。 疲れて立ち止まっちゃうことだってある」

小鳥「そういうときに春香ちゃんがみんなの歩幅を考えて、調整してくれるの」

春香「歩幅の調整?」

小鳥「例えば歩くのが遅い子が一人居て、みんなと離れてしまったとするわ」

春香「はい」

小鳥「春香ちゃんは、その子のそばに駆け寄って手を引いてあげる」

小鳥「もしくは、そっと背中を押してあげるの」

春香「それは……逆の場合でも?」

小鳥「そうね」

春香「で、でもそういうのって……私じゃなくてプロデューサーさんが……」

小鳥「うん、プロデューサーさんもそういう面にはすっごく気を遣ってらっしゃるわ」

小鳥「でもやっぱり難しいっていうか……」

小鳥「あの方はみんなのプロデューサーであって、お友達ではないでしょ?」

小鳥(それ以上の感情を抱いてる子ばかりだと思うけど……)

春香「ま、まぁ……そうですね」

小鳥「対する春香ちゃんは、みんなのお友達でしょ?」

小鳥「んー友達って言葉は的確じゃないか……」

春香「でも、たしかに友達です」

小鳥「プロデューサーさんは立場上、少し高いところからみんなを見ているの」

小鳥「……上から目線って意味じゃないわよ?」

春香「はい」

小鳥「でも春香ちゃんは、みんなと同じ場所に立っているわ」

春香「同じ場所?」

小鳥「そう……その微妙な立ち位置の差が、私達の関係をより良いものにしてるの」

春香「…………」

小鳥「プロデューサーさんは男性だし、年だってみんなとは違う」

小鳥「手の届かないところだったり、触れてはいけないところがあると思うの」

小鳥「そういった隙間を、春香ちゃんが埋めてくれてる」

小鳥「だからプロデューサーさんは春香ちゃんに感謝してるはずよ?」

春香「えー?」

小鳥「なんていうのかな? 嫌味を感じさせないお節介焼きっていうか……」

小鳥「見返りを求めない優しさっていうのが、春香ちゃんの魅了だと私は思うの」

春香「そ、そう……ですか」


小鳥「ゴメンなさいね、なんか……変な話になっちゃって」

春香「いえ……なんとなく理解できましたし、なんとなく……嬉しいです」

小鳥「実はね、私も自分で何を言ってるのか、なんとなくしかわかってなかったの」

小鳥「自分のボキャブラリーの貧困さに逆に感心したわ」

春香「あはは」

小鳥「でも、なんとなぁーく伝わったなら……まいっか! ふふっ」

春香「そうですね、うふふっ」

――――
――


ガチャ


小鳥「あっ……プロデューサーさん、おかえりなさい」

P「お疲れ様です、小鳥さん」

春香「おかえりなさい!」

P「おっ? 春香は今日も元気だなぁ。 俺は激つかヘトヘト丸だよ」

春香「そんなときは……じゃーん! クッキーですよ、クッキー!!」

P「クッキー? どこで買ってきたんだ?」

小鳥「んふっ、私とおんなじこと言ってる」

春香「これは私が作ってきたんですっ」

P「えっ? マジで!? 春香、スゴイじゃないか!!」

春香「えへへ」

P「ちょうど小腹が空いてたんだ。 さっそく頂こう」

P「いただきまーす」

春香「どうぞ!」

P「もっ……もっ……」

P「うん、旨い」

春香「……やった」

P「これだけ旨いと、クッキーモンスターもビックリだよ」

小鳥「セサミストリート? 懐かしいですね」

小鳥「……は、春香ちゃんも知ってるわよね?」

春香「はい知ってますよ」

小鳥「あー良かった! 知らないって言われたらどうしようかと……」

P「まだお若いですよ、小鳥さんは」

小鳥「んなっ……それはお世辞と皮肉、どちらですか?」

P「いえ、他意は無いです」

小鳥「り……りょうほーですかあああ~」

P「NO! NO! NO! NO! NO!」

ガチャ


伊織「…………」

小鳥「あら? 今度は伊織ちゃん」

P「ん? 律子と一緒じゃないのか?」

伊織「今日律子はあずさ達と一緒。 私は一人だったわ」

P「そうだったっけか……」


春香「伊織、おつかれさま」

伊織「…………」

春香「クッキー食べる? 私、作ってきたんだー」

伊織「いらない」

春香「えっ……あ、そう……」

春香「それじゃ、お家に帰ってから――」

伊織「いらないって言ってるでしょ」

春香「…………ごめん」

P「こら伊織、そんな言い方ないだろ」

伊織「なによ」

P「それは春香が伊織の為に作ってくれたんだぞ」

伊織「誰もそんなこと頼んでないわよ。 勝手に作ったんでしょ」

春香「ぇ……」

小鳥「伊織ちゃん……」

P「どうしてそんなこと言うんだ?」

伊織「…………ウルサイわね」

P「伊織ッ!」

伊織「大声出さなくても聞こえてるわよ!」

P「それなら答えてみろ、どうしてそんなこと言うんだと聞いてるんだ」

伊織「アンタには関係ないでしょ!」

P「なんだと!」

伊織「……もういい帰る!」


バタン!

P「ったく……なんだってんだ」

小鳥「プロデューサーさん、どうして大きな声出すんですか」

P「いや、それは伊織があんなこと……」

小鳥「あんなこと、伊織ちゃんが本気で言うわけないです」

春香「そ、そうです……よね。 伊織、何かあったのかも……」

P「本気じゃないとしても、何かあったとしても、あんな態度を取るのはいけないことだ」

P「伊織の為を想って作ったのに……春香が可哀相じゃないですか」

春香「いいんです私は……それよりも伊織が心配ですっ」

春香「私、ちょっと行ってきます!」


P「はぁ……」

P「ウチはみんな優しい子たちばかりなのに、どうしてこうなるんですかね」

小鳥「きっと、みんな優しい子だからですよ」

P「……え?」

小鳥「もちろんプロデューサーさんも含めて」

春香「はぁ……はぁ………あっ、居た!」

伊織「…………」

春香「伊織ー!」ダッ

伊織「あっ、危な――」

春香「きゃぁ!」


ステテーン


春香「痛つつつつ……また転んじゃった」

伊織「だ、大丈夫!?」

春香「えへへ……大丈夫だよ」

伊織「よかった……」

春香「って、私のことはどうでもよくて……」

春香「伊織、どうしたの? 何かあったの?」

伊織「ぁ……いや……」

伊織「…………」

春香「伊織?」

伊織「どうして……」

春香「???」

伊織「どうして怒らないの?」

春香「……どうして怒らないといけないの?」

伊織「だって……春香が作ってくれたクッキー、いらないなんて……」

春香「そんなの本気じゃないことぐらいわかるよ」

春香「……ちょっとショックだったけど」

伊織「それなら……」

春香「そんなことより、何かあったんでしょ? 私で良ければ相談に……」

伊織「…………」

春香「そっか……ゴメンね、無理に聞いたりして」

春香「私、先に事務所に戻ってるから」

伊織「…………ぁ」

春香「元気出してね……それじゃ!」

伊織「……は、春香!」

春香「なぁに?」

伊織「…………」

春香「どうしたの?」

伊織「…………ぐすっ」

春香「!?」


伊織「わだじ……ぎょうね………ひっく……」

春香「ゆ、ゆっくりでいいよ」

伊織「うぅ……うわぁぁぁん!」ダキッ

春香「おっとっと」

伊織「すんっ……ぐず……」

春香「落ち着いてからね」

伊織「うぅ……はるかぁ……」

春香「よしよし、泣かない泣かない」ナデナデ

伊織「ひっく……ぐずっ………はるか……」

春香「うん、ここに居るよ」

伊織「ぅぅ……」

春香「嫌なことがあったんだね……もう大丈夫」

伊織「…………すんっ」

春香「みーんな伊織の味方だよ」

伊織「ごべんなざい」

春香「いいのいいの」

春香「それより、何があったのか聞かせて?」

伊織「…………」コクッ

春香「ありがと」

春香「そっかぁ……テレビ局の人が悪口を……」

伊織「通りかかったら、たまたま聞こえてきたの」

伊織「何人かで……笑ってた」

春香「悪口って、伊織の?」

伊織「うぅん……765プロとか、プロデューサーのことも」

春香「冗談半分だったんじゃない?」

伊織「悪口は悪口よ」

春香「そうだけど……」

伊織「私……何も出来なかった」

春香(伊織にしては珍しい……)

伊織「プロデューサーとか、みんなの顔が浮かんで……」

伊織「文句を言いに行くと、ソイツ等の悪口を認めちゃうみたいで……嫌だった」

春香「……うん」

伊織「でもでも……何も言えなかった自分が情けなくて、悔しくて……」

春香「私は……伊織が何も言わなかったのは正しかったって思うなぁ」

伊織「えっ?」

春香「私だって765プロの悪口を言われたら悔しいし、言い返してやりたいと思う」

春香「でも、よくわかんないけど、私達が居る芸能界とか大人の世界って……」

春香「多分感情だけで動いちゃダメな場所なんだと思う」

伊織「感情……だけで?」

春香「うん、大人って面倒臭いんだよ」

伊織「…………」

春香「前にね、プロデューサーさんがちょっとしたミスをしちゃって」

春香「テレビ局の人に謝ってたんだけど……」

春香「その人も怒ってたんだろうけど、結構ひどいこと言われちゃったりしたんだ」

伊織「ひどいこと……って?」

春香「うーんと、よく覚えて無いんだけど……とにかく厳しいことを言われたと思う」

春香「あとは、ミスした内容とは直接関係ないことまで言い出したりとか……」

伊織「そう……」

春香「それでね、プロデューサーさんは気付かれないように拳を握って、歯を食い縛って……」

春香「すっごく悔しそうな顔してた。 でも……最後まで頭を上げなかった」

伊織「…………」

春香「プロデューサーさんも今日の伊織と同じで、悔しかったんだと思う」

春香「でも言い返したりしなかったのは、やっぱり私達の為を想って我慢してくれたんだよ」

伊織「私達を想って?」

春香「うん。 だってあそこで感情的になっても、得るものは無いじゃない?」

伊織「だからって好き勝手言われて黙ってるの?」

春香「そうだよ」

伊織「そんなの……」

春香「情けないかな? カッコ悪い?」

伊織「そ、そういうわけじゃ……」

春香「私にはすっごくカッコ良く見えたなぁ」

伊織「…………」

春香「だから今日伊織が我慢したのも、間違いじゃなかったんだよ」

伊織「…………でも、やっぱり私は悔しいと思うわ」

春香「うん、悔しいのは私も同じだよ?」

伊織「だったら……」

春香「私はね伊織……『悔しいと思うこと』が悔しいと思うんだー」

伊織「……えっ?」

春香「顔も知らない人に言われたことなんてさ、別に気にしなくていいじゃん」

春香「それなのにわざわざ悔しいと思って、モヤモヤした気持ちになるのって……」

春香「なんだかその人達に負けたみたいじゃない?」

伊織「…………」

春香「伊織の大切な時間を、その人達の為に使ってあげてるようなものだよ?」

伊織「……そっか」

春香「嫌な人とか嫌なことの為に時間を費やすなんてもったいないよ」

春香「もっと楽しいことに使わなくっちゃ」

伊織「そうよね。 あんな奴等の言うことなんて、聞くだけムダよ」

春香「うん、その調子その調子」

伊織「アイツ等に躓くような伊織ちゃんじゃない」

伊織「私達765プロは、そんなに軟弱じゃないわ」

春香「そうだよ。 誰にも悪口言わせないように、もっともっと頑張ろうよ」

伊織「そうよ、ギャフンと言わせてやるんだからっ!」

春香「……実際にギャフンと言った人に会ったことはないけど」

伊織「ギャフン」

春香「あはは」

伊織「ふふっ」

春香「……やっと笑ったね」

伊織「…………ぁ」

春香「おかえり、いつものいおりん」

伊織「……た、ただいま」

伊織「でも……私も馬鹿よね」

春香「え? どうして?」

伊織「だって、みんなの悪口言われて機嫌悪かったのに」

伊織「それで春香とかプロデューサーに八つ当たりするなんて……」

伊織「これじゃ一緒になって悪口言ってたようなもんじゃない」

春香「そだね」

伊織「私……馬鹿よ」

春香「大丈夫だよ伊織。 私達はちゃーんと分かってるんだから」

伊織「……なにを?」

春香「伊織が優しい子だってこと!」

伊織「いや……そ、そうでもないわよ」

春香「あー照れてるー」

伊織「もぉ」

春香「えへへ」

春香「さっ伊織、戻ろ?」

伊織「…………やめとく。 なんか顔合わせづらいし」

春香「それじゃー私からプロデューサーさんに伝えておくね」

春香「もう大丈夫、心配ないって」

伊織「うん、お願い。 それと……代わりに謝っておいてくれないかしら?」

伊織「プロデューサーと、小鳥にも」

春香「うん! わかった」

伊織「それから、一番は……」

春香「???」

伊織「春香、本当にゴメンなさい」

伊織「あんなこと言って………ぐすっ……ゴメンナサイ」

春香「もう……泣かなくていいよ」

伊織「だって……私………」

春香「ちゃんと分かってるから……ね?」

伊織「すんっ………グス……」

春香(うーんと……そうだ!)ガサゴソ

春香「はい伊織、どーぞ」

春香「落ち込んだ時には甘いもの、でしょ?」

伊織「ぁ……」

春香「今度は……貰ってくれるよね?」

伊織「……ふえぇぇぇん!」ブワッ

春香「あれ?」

伊織「ひっく……ぅぅ……」

春香(もっと泣いちゃった……)


伊織「ごべんなざい…………はるか……ありがどう」

春香「こちらこそ、貰ってくれてありがとう」

伊織「帰っでがら…………食べる……から……」

春香「うん!」

春香「……落ち着いた?」

伊織「うん」

春香「私、そろそろ戻るけど……大丈夫かな?」

伊織「えぇ、もう大丈夫よ」

春香「そっか……それじゃ、またねー!」

伊織「バイバイ」


春香『…………ワァッ!』

ステテーン


伊織「…………」

春香『エヘヘ……バイバーイ』


伊織「優しい子……か」

伊織「優しいのは春香の方よ」


伊織「ありがとう」

――――
――

春香「天海春香、帰還しましたー」ビシッ

P「ど、どうだった!?」

小鳥「その様子から見ると、良い結果が聞けそうね」

春香「えぇ安心してください、大丈夫です」

春香「誰かが悪口言ってるのを聞いたらしくて、それで落ち込んでたみたいです」

P「そうだったのか……伊織らしくないな」

小鳥「でも、それでお二人に当たっちゃうのは、伊織ちゃんらしいですね」

P「あはは、確かに」


小鳥「……オスカーみたいですよね、伊織ちゃんって」

P「オスカー? またセサミストリートですか?」

春香「それって、ゴミ箱に住んでる……」

小鳥「そうそう!」

P「むしろ伊織は豪邸に住んでますけど……」

小鳥「普段はつい憎まれ口をきいちゃうけど、本当は優しい子なんですよ」

P「あぁ、なるほど」

春香「セサミストリートかぁ……」

P「ん? どうしたんだ?」

春香「なんだか、私達みたいですよね」

小鳥「えっ?」

春香「いろんな個性のキャラクターが居て、でもみんなが仲良しで」

春香「お互いがお互いを思いやってる」

P「……うん」

春香「そういう関係って、すっごく素敵だと思います!」

小鳥「そうね、そんな素敵なみんなに囲まれて……私は幸せよ」

P「小鳥さんだって素敵ですよ」

小鳥「やーだぁ! もぅプロデューサーさんったらぁ~ん」

P「…………」

春香「…………」

小鳥「とにかく! 今日もみーんな救われた!」

小鳥「さて、残しておいたクッキーを…………あら?」


小鳥「ない」


P「…………ぁ」

小鳥「ぁ?」

P「い、いえ……」

小鳥「…………」

P「…………」

小鳥「春香ちゃん?」

春香「は、はい」

小鳥「あれって、何枚入ってたの?」

春香「5枚……ですかね」

小鳥「そう………私ね、2枚食べたのよさっき」

P(…………ヤバイ)

P「…………」ソローリ

小鳥「プロデューサーさん?」

P「はい?」

小鳥「……食べやがりましたね?」

P「…………」

小鳥「私のクッキー」

P「て、てへ……ぺろ……」

小鳥「ぷ…………ぷ…………」

P「……ぷ?」


小鳥「プロデューサーさんのばかぁぁぁーーーーー!!!」


P「うわぁー! すいませ~ん!」

小鳥「かえせかえせかえせーーー!!」

P「イタッ………ちょ………バイオレンス反対!」

小鳥「ばかばかばかばか!!」

小鳥「フゥー! フーッ!」

小鳥「トイレに逃げ込むなんて、卑怯ですよっ!」

P(食い物の恨みは恐ろしや……)

春香「あ、あの! 小鳥さん、まだありますからっ」

小鳥「ダメよ! それじゃー私の気が収まらないわ」

P「どうしたら収まってくれるんですかー?」

小鳥「…………」

小鳥「うぅ………」


小鳥「ふえぇぇぇん! はるかちゃ~ん!」


春香「おっとっと」

小鳥「グスン…………」

春香「……よしよし」ナデナデ

春香(ふふっ、子供みたい)

P「……お?」

春香「よぉ~しよしよしよしよしよしよしよし……」

小鳥「…………ぅぅ」

P(なになに? もしかして抱き合ってるのか?)

P(……見てみたいな)


ガチャ


小鳥「……ん?」ギロッ

P「……げっ」


小鳥「ふ、ふえぇぇぇん! プロデューサーさぁ~ん!」

P・春香「「えぇっ!?」」


P「ちょ……小鳥さん?」

小鳥「うぅ……ひっく……」

P「……よ、よしよし」ナデナデ

春香「…………」

P「小鳥さん……ごめんなさい」

小鳥「いいですよもう」

P「よかった」

小鳥「そのかわり……」

P「そのかわり?」

小鳥「もうすこし……このまま……」

P「あっ……は、はい」ナデナデ

春香「むぅ」

小鳥「……春香ちゃん」

春香「はい?」

小鳥「てへぺろ(・ω<)」

春香「ぐぬぬ……」


伊織「…………」

伊織(戻ってきたけど……やっぱりもう帰ろ)

END

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