千早「春香、私と付き合ってくれないかしら」 (57)

春香「は?え?付き合うって買い物とか?」

千早「いえ、恋人として」

春香「え・・・千早ちゃんってそっちの気がある人だったの?」

千早「いえ、アイドルって男の人と付き合うの禁止でしょ?」

春香「うん。まあそういう風潮はあるよね。うちの事務所はそこまで厳しくないみたいだけど」

千早「だから女の人ならいいかなあっと思って」

春香「恋人なら男女どっちでもいいの?」

千早「えぇ、というか私今度自分で作詞することになったの。で、恋する女の気持ちを知りたいと思ってね」

春香「つまり詞のために私と付き合いたいんだ」

千早「ええ、まあ簡単に言うとそうね」

春香「本当に好きなわけじゃないのに付き合っていい詞なんて書けるのかな」

千早「どういうこと?」

春香「だってさ、西野カナさんだって加藤ミリヤさんだって詞書くために恋愛した訳じゃないと思うよ。

本当に好きな人と恋愛してその結果歌が生まれたんじゃないの?」

千早「なんか・・・頭を殴られたような感覚だわ」

春香「わかってくれた?だからさ、そういうのはアイドル卒業してからでもいいんじゃないかな」

千早「私本気で春香のこと好きになるわ!」

春香「うん・・・いや間違ってはいないんだけどあってるかといったら微妙だよね・・・」

千早「春香の好きな女の子のタイプ聞かせてくれる?」

春香「えー・・・お、女の子かあ・・・」

千早「何でもいいわ、髪型でも性格でも」

春香「えーっと、じゃあ金髪でおっぱい大きくてギャルっぽくていつも気だるそうで歌じゃなくてダンスが上手くて・・・そんな人かな」

千早「・・・なるほど」

春香(ちょっとあからさまに逆言い過ぎたかも・・・)

春香「あっ、でも千早ちゃんが髪切ったり染めたりするのは絶対やめてね、バレたら怒られるの私だし」

千早「春香は美希のことが好きだったのね」

春香「ん・・・ん!?」

千早「金髪でギャルでダンスが上手い・・・美希しかいないわ」

春香「あー・・・確かにそうだね、そういったらそうなるか」

千早「私応援するわ!」

春香「いやー応援されても困るっていうか・・・」

千早「友達を応援するか・・・恋人を取るか・・・そんな歌もいいわね」

春香「んー・・・千早ちゃん目線じゃその歌作れなくない?」

P「春香ー、もう出ろよ。これ切符な」

春香「あ、はい!すぐ行きます」

千早「どこでの仕事なの?」

春香「関西で営業ー、なんか花火大会のゲストで呼ばれたみたい」

千早「ふぅん、気を付けて」

春香「うん、またね。いってきます」

千早「プロデューサー、私の明日の仕事は?」

P「明日?えーっと朝はバラエティの収録で午後からはMステのリハで8時から本番って感じかな」

千早「わかりました」

P「10時に家迎えに行くから」

千早「わかりました。お疲れさまです」

P「家送ってこうか?」

千早「いえ、一人で帰れます」

・・・・・・
・・・・

春香「お疲れさまでしたー」

スタッフ「お疲れさまでした。ホテル取ってあるので今日はそちらでお休みください」

春香「はい!ありがとうございます!」

春香「あーつっかれた・・・たこ焼き食べて早く寝よう」

「春香ちゃん!私大ファンなんです!よかったら握手してください!」

春香「え、ごめんなさい。ここ関係者以外入ってこれないんですけど・・・」

千早「お疲れ。私よ」

春香「えー!?なんで!?なんで千早ちゃんがいるの!?」

千早「春香に会いたくて来ちゃった」

春香「だってここ大阪だよ!?」

千早「新幹線に乗ってきたの。初めて乗ったわ」

春香「ビックリしたー。でもすごい嬉しい!ご飯食べにいこう!」

千早「ごめんなさい。私明日朝から仕事があるの。だから今日中に帰らないと」

春香「えっ、もう終電ないよ。どうやって帰るの?」

千早「だってまだ9時半じゃない。余裕であるでしょ」

春香「在来線じゃないんだよ?新幹線だけで二時間以上かかるんだよ!?」

千早「・・・?」

春香「ほら!9時20分発が最後だよ!」

千早「ど、ど、ど、どうしましょう。仕事に穴開けたら・・・」

春香「明日何時から?」

千早「10時・・・」

春香「じゃあ始発で行けば全然間に合うね」

千早「よかった・・・」ホッ

春香「千早ちゃん・・・ちょっと計画性なさすぎだよ」

千早「ごめんなさい。でも春香に会いたくなって」

春香「そ、そんなことより今日どこに泊まるの?用意・・・してるわけないよね」

千早「春香はどこに泊まるの?」

春香「私はビジネスホテル取ってもらってるけど」

千早「そう・・・じゃあ私はネットカフェにでも泊まるわ」

春香「あのねえ、未成年はそういうとこ泊まれないの」

千早「じゃあどうすればいいの・・・」

春香「私の泊まるとこに部屋変えてもらえないか頼んでみるよ」

千早「ありがたいわ」

春香「まだ花火やってるから終わって帰宅ラッシュが始まる前に早く行っちゃおうか」

千早「あ、ちょっと待って!写真撮っていいかしら」

春香「写真?なんの?」

千早「ブログ用のよ。せっかく大阪に来たんだし」

春香「わかった。じゃあカメラ貸して。撮ってあげる」

千早「いやなんで私一人で写らなきゃいけないのよ。記念撮影じゃないんだから」

春香「え?じゃあどういう」

千早「一緒に撮るの!花火が入った方がいいから・・・ちょっとくっつくわよ」ギュッ

春香「う、うん」

千早「言っとくけど私のブログ一日二十万アクセスあるの」

春香「えっ!?」

千早「よくブログがネットニュースになったりしてるわ」

春香「なんでそんなプレッシャーかけるの!」

千早「撮るわよ」

春香「よしこい!」

カシャ

春香「ど、どう?可愛く撮れてる?」

千早(・・・)

千早(思いっきり見開いた目、不自然なまでのアヒル口・・・)

春香「うわーすっごく可愛く撮れてる!これで二十万人の読者も納得だね」

千早「もう一枚撮りましょう」

春香「えーなんでなんで。それでいいじゃん」

千早「いいから」

春香「ちょっと待って。顔作るから」

千早「春香」

こちょこちょこちょこちょ

春香「えっあははっ!やめてよははっ!!」

カシャッ

千早「撮れたわ。さっきのより全然可愛くてすごくいい笑顔」

春香「えー見せて見せて」

千早「いいの。ブログ楽しみにしておいて」

春香「えー、ぶーぶー」

ーーーー
ーーー
ーー

春香「満室!?」

「はい、この時期は花火大会の影響で大変混雑しておりまして・・・変更はできかねます」

春香「そうですか・・・」

千早「いいわ。私はソファーで寝るから」

春香「ダメだよ!明日朝一で仕事あるんでしょ?疲れ残っちゃったらどうするの!」

千早「いやでも・・・」

「あのー・・・もしかして如月千早さんですか?」

千早「はい。そうですけど」

「もしよろしければホテル宛にサインの方いただいても・・・」

千早「全然いいですよ。部屋の方変えていただければあなた宛のサインもしますし写真も撮りますけど。もちろんお金は払います」

「しょ、少々お待ちください!」

春香「意外と逞しいんだね」

千早「ツイッターに目撃情報とか書かれまくるんだからこれくらいしても罰あたらないわよ」

春香「あの人が千早ちゃんの悪口とか書いたらどうするの」

千早「それは・・・ちょっと考えてなかったわ」

・・・・・・
・・・

千早「結局ダメだったわね」

春香「使えねー。千早ちゃんのパワー使えねー」

千早 「ごめんなさい・・・」

春香「ウソウソ!明日早いなら早く寝よっか」

千早「ええ、おやすみなさい」

・・・
・・

春香「起きてる?」

千早「・・・」

春香「もう寝た?」

千早「起きてるわ」

春香「なんで一回フェイント入れたの」

千早「ふふっ、なんか修学旅行みたいね」

春香「そっか千早ちゃんはいけなかったんだっけ」

千早「そうなのよ。仕事で」

春香「なんかさ、今いる位置がアイドルとしての位置と一緒みたいだよね」

千早「どういうこと?」

春香「千早ちゃんは一個上のベットにいて、私は床でくすぶってるっていうか」

千早「・・・そうかしら」

春香「だってさ、普通アイドルが自分で作詞しようなんてなかなかないよ?

その詞に有名な作曲家の曲つけてもらうんでしょ?

私は自分のオリジナル曲書いてもらうことだってできないのに」

千早「ごめんなさい。話が飛びすぎててよくわからないわ」

春香「仕事の内容だってそう。千早ちゃんはライブツアーにテレビ収録にアルバム製作。

私は月に何回かの営業だけだもん。始めたときは一緒だったのに」


千早「・・・」

千早「・・・」

春香「私さ、やめようかなぁってほんのちょっとだけ思ってるんだ。来年は受験だし

いい大学いってアナウンサーになろうかなんて。元アイドルのアナウンサーってどこの局も欲しいでしょ」

千早「慰めてほしいの?」

春香「えっ・・・」

千早「みんな歩む速度は違う、それぞれの仕事を頑張っていこうって私に言ってほしいの?」

春香「そういうわけじゃ・・・」

千早「アイドルでいられる時間ってすごく短いと思うの。俳優やミュージシャンみたいに一生続けられる仕事じゃない。

だからこそ歩いてる暇なんてないんじゃないかしら」

春香「・・・」グスッ

千早「おやすみなさい」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月07日 (土) 15:07:54   ID: ZFyHtaYS

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