男「街中ラプソディー」 (31)

◇果てしなく見切り発車です。タイトルを思いついただけで書き始めております。

◇少なくともエタることはないと思います。

◇地の文がんがんと入れていきます。

◇前作が終わったばかり、かつ思いつきで申し訳ありませんが、お付き合いよろしくお願い致します。

前々作
男「誰よりも下手なピアニスト」
男「誰よりも下手なピアニスト」 - SSまとめ速報
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男「○○大学就職支援課」

【安価】男「○○大学就職支援課」 - SSまとめ速報
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では、相変わらずのんびりと始めてまいります。
しゃっくりが止まりませんが、書いていれば止まると信じたいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391436449

ラプソディーという楽曲の定義は恐ろしく適当だと僕は思う。ワルツのように三拍子である必要もなければ、ソナタのように楽章の必要もない。結局のところ必要なのは”叙情性”と”民族性。この二つだけだ、というのは決して僕の独断ではなく、世の中の一般的な解釈である。

そんな暴力的な解釈で定義されるラプソディーというジャンルは、とてつもなく便利だった。テンポも拍子も更には楽器も何一つ定めがない。世の中一般で言われるクラシック音楽の中では最も自由だと言っていいだろう。

しかし、残念ながら僕がこう主張するのは、僕自信がこの麗しき理屈を思いついたわけではなくて、あくまで僕の世界一残念な師匠の主張に僕が『確かに』と納得してしまったためなのだけれど。

書いていれば止まると思っていたしゃっくりが一層激しさを増して
きやがりましたので、ちょっとすいません、中断いたします。

まあ割と短編の予定ですのでお付き合いのほどよろしくお願い致します。

さて、朝起きたら何と無く曖昧な記憶でスレを建てたような気がしたので、履歴を辿るとやはり建てておりました。

全く構想もないまま建てましたが、朝うんうん唸っていたらいい感じの話が思いついたので、今晩から進めていこうと思います。

ただ、予定より長編かつ即興ではなく書き溜めでやっていきたいと思いますので過去作以上のまったり更新と思われます。

それでは今後ともよろしくお願い致します。

さてほとんど進んではいませんが、ちょこっと投稿したいと思います。

よろしくお願いします。

~始まりのラプソディー 第一楽章 Op.1~

ラプソディーという楽曲の定義は恐ろしく適当だと僕は思う。ワルツのように三拍子である必要もなければ、ソナタのように楽章の必要もない。結局のところ必要なのは”叙情性”と”民族性。この二つだけだ、というのは決して僕の独断ではなく、世の中の一般的な解釈である。

そんな暴力的な解釈で定義されるラプソディーというジャンルは、とてつもなく便利だった。テンポも拍子も更には楽器も何一つ定めがない。世の中一般で言われるクラシック音楽の中では最も自由だと言っていいだろう。

しかし、残念ながら僕がこう主張するのは、僕自信がこの麗しき理屈を思いついたわけではなくて、あくまで僕の世界一残念な師匠の主張に僕が『確かに』と納得してしまったためなのだけれど。

そんな世界一残念な師匠が僕に『旅に出る』と告げて、お店を出て行ったのがつい昨日のことだ。事の顛末はこうだった。

「きみはとてもピアノが上手だ。素晴らしいと思う。私よりよほど早くイスラメイを弾けるだろうし、ミスタッチも少ないだろう」

「唐突に何でしょう?」

「しかし、君の演奏は機械製だ。そこには何の想いもない」

「……」

「君は今不満な表情を浮かべた。そう、確かに感情はある。けれど、それをピアノに乗せることができない。そんなことは、当たり前のことだ。そう、凡人であれば。けれども、君はまがりなりにも私の門を叩いた。それも速度記号はプレスト、強弱記号はフォルティッシモだった。とても不愉快だった。だから君は仮に真髄まで凡人だったとしても、全てを入れ替えて天才とならなくてはならない。それほど私の門を叩くのは重大なことだ」

「……あなたは僕に何も教えてくれません」

「そう。私は君にまだ何も教えていなかった。君が弾く楽譜どおりのピアノに歯ぎしりをしながら、いつか不足していることに気づくだろうと気長に待っていた。しかし、君は気付かなかった」

「……」

そこで、私はちょっと旅に出ようと思う。うんと長い時間……そうだな、1年程」

「あてはあるんですか?」

「……君には1年間シンフォニーを任せよう。君の自由にしてくれていい」

「……そんな!僕はコーヒーの淹れ方ぐらいしかわかりません」

「十分だ。君には自動演奏のピアノもあるだろう?」

「……」

「というわけで、行ってくるっ!早く飛行機に乗りたくてうずうずしてるんだっ!」

「……さっきまで僕に向けてやけに堅苦しく言っていたことは、旅行を承服させるための言い訳だったんですね」

「うっ……。でも君のピアノに命がこもっていないのは本当だよ。そして、きっとシンフォニーでの日々は君に不足しているものを与えてくれるはずだ」

「はあ……わかりましたよ」

「やったっ!じゃあ行ってくるっ!」

「はいはい……行ってらっしゃいませ」

>>6僕自信→僕自身

……そうして僕の世界一残念な師匠は旅立ってしまったのだった。僕に”喫茶店シンフォニー”を押し付けて……。

「はあ……」

僕の今日一日を楽曲だとするなら、主題は溜息に違いない。弟子に何も教えない師匠がついにネグレクトを決め込んだのだから、どうしたって溜息を吐いてしまう。確かに、師匠の言っている僕の欠点は事実だと思うし、自分でもどうにかしたいと感じている事ではあった。だからこそ、僕は……師匠風に言うならば、”師匠の門”を乱暴に叩いた訳だし。とはいえ、まさか気怠そうに門を開けた人物が、全く僕の欠点について指導してくれないとは僕も予想外であったし、こんなことになるとわかっていたのならば、開かずの門として触れずにいたのにと思ってしまうのだった。

「はあ……」

幾度と無く主題を奏でても、それを咎める人がいないというのが唯一の救いだと思った。シンフォニーに殆ど客を招けるような魅力がないことは、僕にとってはとても有り難かった。古ぼけて小さなこの喫茶店の魅力をあえて一つ挙げるならば、お客さんの座席を隅に追いやって憚らない図体のグランドピアノだろう。ちなみにショパンの愛したプレイエル製だ。

しかし、自分自身で魅力と言っておきながらあくまでこの魅力は、演奏者にとってのもので、喫茶店を訪れるお客さんにとっては魅力どころか邪魔なオブジェでしか無いような気がする。それこそ、演奏する人間は師匠曰く、”機械”とのことだし。

「……思い出したら腹立ってきた」

師匠はいつもそうだ。僕にとって都合が悪いことをしたいときには、僕の欠点を指摘して強引に自分の主張を通してしまう。僕の欠点を直すために必要だとかご丁寧に言い訳まで付けて。

「……あんな適当な師匠の喫茶店にシンフォニーなんて……烏滸がましいにも程がある」

師匠には……そう、ラプソディーで十分だ。さすがにスケルツォは失礼だろうから。

「……看板替えてやろう」

僕は師匠への小さな仕返しを決意し、店の奥から工具を探し出す。そしてものの30分後には、”喫茶店シンフォニー”は”喫茶店ラプソディー”へと様変わりしたのだった。

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

さて、短くて申し訳ないですが、初回はこんな感じです。

時間が少々開くと思いますが、暇な時に見ていただけると喜びます。

では失礼します。

おはようございます。

次回投下は週明けになる予定です。よろしくお願い致します。

さて、週明けと言いましたが思いの外時間ができまして、それなりに書けましたので
投稿してまいります。よろしくお願いいたします。

~悪魔のラプソディー Op.2~

僕が喫茶店シンフォニーを勝手に喫茶店ラプソディーへと改造してから早3日、いまだに僕はコーヒーを淹れていない。いくら素人の僕でもこの店が喫茶店として機能していないことは簡単に分かった。必須要素であるお客がいないのだから。

しかし、お客が来ないおかげで黙々とピアノの練習ができたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。雑用を発注する師匠も居ないわけだし……。もしかしたら、師匠は『自分がいないほうが僕の練習時間が増えて、成長に繋がる!』なんて殊勝な考えに基づいて、旅に出たのかもしれない……。あの残念な師匠のことだから、万に一つもあり得ないけれど。

「ふぅ……」

もはや開店後の日課となったハノンを弾きとおすと、時計の針は一回りとまではいかないものの、四分の三程度進んでいた。単調な練習曲だからつい飽きてしまいがちになるけれど、一日に一度は弾かないと腕がなまってしまうような気がしてならない。だからこそ僕は一日のルーティーンの中にこの練習曲を組み込むようにしている。

「……よし」

小さな独り言も誰もいない店内ではやけに大きく聞こえて、何故だか気恥ずかしい。軽い顔の火照りを振り払うように、僕は演奏を始める。練習曲Op.10-4、ショパンが作曲した曲だ。

2分を切るような短い曲だけれど、少し速いスピードで弾きこなした時の爽快感が好きで、演奏者としてはとても好きな楽曲だ。スピードを保ちながらも音の粒が潰れてしまわないように心掛ける。僕の弾いた一音一音を切り取っても、喫茶店の隅々まで響くように。

「……」

会心の出来とは言わないものの、今日の調子はそれなりのようだ。ミスタッチが無いのは当然としても、リズムのぶれも音のぶれも少なかったのではないだろうか……。

「……つまんない」

声の方向に目を向けると、それこそグリム童話の主人公のような、デパートで売っている人形のような、金髪蒼眼の女の子が入口のドアに背をもたせて立っていた。

「……初対面なのに随分とご挨拶ですね」

僅かながらも自画自賛の対象となっていた演奏を初対面の人間に貶されて、僕の心は少なからずささくれていた。苛立ちが籠るのは仕方がないだろう。

「つまんないものはつまんないんです。あなたの演奏は誰に向けているものでもない。完全に自分の満足のためのものです。そして、あなたはミスタッチがなく、楽譜のとおりに弾けるという些細なことだけで、満足してしまっています。だから、つまらない」

「……」

「少なからず図星と思う部分があるようですね。悔しそうに私を睨みつける元気があるのならば、まだ改善の余地はあるのではないかと思います。例えば、もっと感情を籠めるとか」

師匠もそう言っていた……。感情を籠める……。

「まあ今すぐは無理でしょうから、私が1年間指導します」

「……え?」

「……?師匠から聞いていませんでしたか?旅行に行く代わりに、別な先生を派遣すると……」

「……あの馬鹿師匠」

「……尊敬すべき人ではありますが、何もかも適当で人間としてはだめ人間ですね。……とりあえず、よろしくお願いいたします」

「あー……。よろしくお願いします」

そう言って少女が差し出す手を僕がすんなりと握ったのは、言われたことが図星だったからというわけでも、師匠が派遣した先生だからというわけでもない。僕は、どうしても抜け出したかったのだ。師匠から凡人と言われ続ける底なし沼のような状況から。そして、そのためなら藁だろうとすがる。そんな意思を持っていたからに過ぎない。決して、この少女を信頼したわけでも無ければ、仲良くなりたいと思っているわけでもない。丁重に扱っているのだって、機嫌を損ねなれて指導してもらえないといったリスクを考えているだけだ。

「とりあえず、コーヒーでも飲みましょうか」

そういって無垢に微笑む笑みは、僕に受け入れられた安堵に満ちているような気がして、心に僅かな罪悪感を覚える。しかし、そんな罪悪感で揺らぐような僕の意思ではない。仮に、この少女が指導に適さないと思えば、追い出してしまおうとさえ思っているのだから。

「コーヒー、美味しいですね」

少女は口を付けてすぐに目を丸くして驚いている。僕も確かに、この喫茶店のコーヒーを初めて飲んだ時にはあまりの美味しさに驚いた。師匠曰く、『昔は世界中で演奏会を開いてたからさー、各地の農場のおっちゃんが私に惚れ込んで安く良い豆を送ってくれるんだよね』とのことだった。正直に言えば演奏旅行の最中に何しているんだこの人はと思ったけれど、あまりにも美味だったため、思わず師匠の不真面目さに感謝してしまった記憶がある。

「……んー、本当にこれならば何杯でも飲んでしまいそうです」

「胃に悪いと思いますよ」

「そうですね。ご飯は無いのですか?」

「一応純喫茶を気取っているから、無いと師匠が言っていました。間違いなく、作るのが面倒なだけですが」

「……仕方ないので、棚に大量に積まれたレコードを再生して、肴代わりにしませんか?」

「わかりました。リクエストは?」

「キーシンの演奏ならば何でも」

……僕はそこで唐突に魔がさしてしまった。キーシンの演奏をリクエストするぐらいなのだから、他の演奏者の演奏をかけたらすぐに違うと分かるはずだ。僕が手に取ったのは、ルガンスキーの演奏だった。どことなくキーシンに類似している部分があるような気がするし。僕はあまりピアニズムの違いというのはわからないのだけれど……。やはり、こういった部分が、機械だと言われてしまう理由なのかもしれない。

ショパンのバラードOp.47、所謂バラードの3番だ。演奏者としての観点で言えば、4つのバラードの中では最も簡単だと思うけれど、どうにも弾いた気がしない曲だ。僕に欠けているらしい、感情表現が大いに求められる曲だと言うことなのだろうか。

「……」

再生を始めても、少女の表情は全く変わらなかった。楽曲に合わせて体が動くこともある。所詮、人間なんてそんなものだ。思い込んでしまえば、違うピアニストの演奏さえも、本人の演奏だと感じるのだ。

「……いい演奏ですね。でも、これはキーシンではありません」

演奏が終わり、僕がネタばらしをしようと口を開くと、凛として少女は言った。

「……悪意があったとは思いたくありませんが、私を試したのですか?」

僕を真っ直ぐに見つめる瞳はごまかしを許してはくれないように見えた。

「はい。ちょっと試してみようと思ってしまいました」

「……そう……ですか……」

そう言って少女は僕を真っ直ぐに見つめたまま、声を上げずに涙を流し始めてしまった。僕の僅かな悪意が招いた結果に、狼狽する一方で、『見ず知らずの相手なのだから、試してしまうのは当たり前だ』と考えているのも事実だった。

「……ごめんなさい」

心にもない言葉だなと思いながらも、一応は謝ることにした。この出来事でショックを受けて、居なくなってしまわない限りは、1年間指導してもらうことになるらしいし。

「あなたのピアノのような謝罪は要りません」

「……」

涙を流しているのに、その声は凛としていて透き通り、僕の心に刺さるようだった。

「あなたはピアノが詰まらないだけではなくて、心も詰まらないのかもしれません。まだ私はあなたのことを知らないので、決めつけはしませんが」

「……」

言い返せるわけなんてない。ほとんど間違っちゃいない。

「まずは、信頼を築きたいと思っていましたし、あなたの対応は私を信頼してくれた故なのかと思っていました。けれども、違うようです。なので、私はあなたの問題に応じたいと思います」

「……問題とはどういうことですか?」

「あなたが流したCDの演奏者を全て当ててみせましょう」

「……はあ?」

「さあ、お願いいたします」

どう考えたって無理だと思う。ここのお店に置かれているCDはゆうに1000枚を超える。そして、その全てがピアノ曲なのだ。例えば、先ほどのバラード3番にしても、10種類以上の演奏があるだろう。特にショパンについて言えば、師匠が異常な愛情を示しているから、異様なほどの在庫がある。

「楽曲は、ショパンの練習曲Op.10-3、『別れの曲』でお願いいたします」

「……」

大層な自信だ。よりによって、ショパンの練習曲の中でも最も人気がある曲の1曲である、『別れの曲』を選ぶなんて……。それこそ、『ショパン名演奏集』といったCDにもほぼ間違いなく入っているような曲だ。……そこまで言うのならば、間違えることなんて無いのだろう。僕は、このお店にある全ての『別れの曲』を聴かせてやろうと決意した……。

「これでおしまいですか?」

「……はい」

「やはり、素晴らしい曲ですね」

「……はい」

既に街灯に灯が燈り、カラスさえ鳴かなくなっていた。ほとんど丸一日、『別れの曲』を聴き続けたことになる。最初は、アシュケナージやポリーニ、アルゲリッチといった有名どころばかりを再生してみたのだけれど、あっという間に言い当てられてしまい、少しずつ、古すぎる演奏や逆に新しすぎる演奏、例えばリパッツィやトリフォノフをチョイスしたのだけれど、全く無意味だった。更に言えば、複数回録音している演奏者については、何年の録音だということまで言い当てられてしまった。後半は、もはやただの意地だった。とりあえず、全てを再生してやるという無駄な意地の結果、カウンターに置かれた大量のCDケースと、お金にならない大量のコーヒーを淹れたという事実だけが残ったのだった。

「これで、信じていただけましたか?」

「……はい」

「よかったです。明日からまたよろしくお願いいたします」

「……はい」

最初は無垢に見えた微笑みも、素晴らしい一日を経て悪魔の笑みに見えるようになった。僕は、この先1年に著しい不安を感じながらも、悪魔の去ったお店の店じまいを始めるのだった。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

こんな感じで今回の投下はおしまいです。

また見通しが立ちましたら、投下時期をお知らせいたします。

個人的事情により、書き溜めをする時間があまりとれない感じなので、
次回書き込みは暫く時間が開いてしまうと思われます。

目処がつきましたら書き込みをいたしますので、よろしくお願い致します。

このスレもそうですが、書きたい内容が思いついたにも関わらず
時間的制約上暫くは書けそうにないという……ぐぬぬ。

色々と面倒な書類が待ち受けている現状に嫌気が差してつい愚痴混じりで
申し訳ございません。

またそのうち、生存報告&書き込みをしたいと思います。

色々と個人的にイベントが盛り沢山すぎて
長編のようなものに取り掛かる時間がなさそうなので
一旦このスレはHTML依頼したいと思います。

いずれ、まとまった時間が取れる時に改めて
作成します。

お目汚し失礼しました。

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