着物商人「レアなアイテム売ります買います!」 (857)

商人「ちょっとちょっとそこのお兄さん方!」

村人1「なんだ?」

村人2「あ、コイツ最近村で変なガラクタ売りつけまわってるって奴じゃないか?」

商人「は?ガラクタとは心外ですね!」

村人3「見慣れん服着てるし異国のモンか!」

村人2「行こうぜ、変な物かわされちまうぞ」

村人1「とっとと村から出てけ!」


商人「ケッ、レアな道具の価値も分からないような連中でしたか」

商人「あーあ、この村じゃ変に噂が広まってしまってるみたいですしそろそろ場所を変えましょうかね」

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商人「家を出て早2年」

商人「地道に行商の旅をしているものの採算は取れず……」

商人「やりたくは無いが騙し騙されの危険な商売を続けてなんとか生きながらえて来ましたが……」

商人「ああ!もう明日の食事のお金さえ持っていない!私はどうやって生きていけば……ヨヨヨ」チラ

金髪少女「……」

商人「オヨヨヨ……」チラッチラッ

金髪少女「……あ、あの」

商人「はい!なんでしょう!あ、私行商やっておりまして可愛い小物から竜魔をぶった切るような超スゴイ武器まで取り揃えてるんですよ!」

金髪少女「は、はぁ……」

商人「何か買っていきますか?買いますよね!」

金髪少女「み、見るだけなら……」

商人「ありがとうございまーす!」

商人「お客さん可愛いですからこんな髪飾りなんていかがですか?」

商人「その綺麗な金髪に似合う真っ赤な宝石の付いたコレ!」

金髪少女「高そうですね……」

商人「そりゃもう職人の手で丹精込めて作られた一品ですからね」

商人「ざっと……こんなもんで」チンッ

金髪少女「そんなにお金持ってません!」

金髪少女「私がお金持ってるように見えますか?」

商人(あーひっかける相手間違えたかなぁ、なんかワンピース一枚だけのみすぼらしい格好だし)

商人「あははーそうですよねー、お嬢ちゃんごめんねー」

金髪少女「急に態度が……」

商人(なんか変な芝居して損したな、もっと身なりのいい奴このあたりに居ないんですか?)

金髪少女「あの……」

商人「ゴメンネお嬢ちゃん、ちょっとお姉ちゃん今忙しいんだけど」

金髪少女「買い取りはやってますか?」

商人「え?買い取り?まぁ一応は」

商人(どうせ大したもの持ってないんでしょうけど)

金髪少女「じゃあこれを」ジャラジャラ

商人「うわ!なんか沢山出てきた」

商人「どこにこんなもん沢山隠し持ってたんですか」

金髪少女「それは秘密です」

金髪少女「装飾品や武器が大半ですけど」

商人(冒険者だったか、軽装過ぎて分からないですよ)

商人「でも、あー……大した価値は無いですねぇ」

商人「特に魔術的効果のある物はないですし市販で売っているものばかりですね」

商人「一応買い取りますけど雀の涙程度ですよ?」

金髪少女「はい構いません、引き取っていただけるなら」

商人(困るなぁ、あんまり価値が無いと転売も怪しいですし)

商人(この国はどこかと戦争してる訳じゃないから武器とか売れないんですよねー……あ)

商人「おや?これは……」

金髪少女「どうしました?」

商人「いえ!なんでもないですよー!アハハ」

金髪少女「?」

商人(この指輪、魔道核がついてる!ラッキーですね)

商人(これがいい能力を付ける核ならぼろ儲けですね、需要ありますしどこか他の冒険者にでも売りつけましょう)

商人「とりあえず全部買い取らせていただきますね!」

金髪少女「いいんですか?買い取り拒否の物もあるかと思ったんですけど……」

商人「(よし気づいてない!)いえいえ、私も善意でこのお仕事に取り組んでますので」

商人「冒険者の方は立派な金づ……お客様ですから!」

金髪少女「まぁ!ありがとうございます!」

商人(フフフ、この子チョロイですね)

商人「ええっと、代金のほうはっと……」カタカタカタ チンッ

商人「ちょいと色を付けさせて貰いました、こんなところですね」

金髪少女「こんなに頂いてもいいんですか!?」

商人「勿論!なんたって善意で商売してますから!」

黒髪少女「……善意ねぇ」

眼帯少女「……」

商人「うわビックリした!?」

金髪少女「……なんだ、居たのか」

黒髪少女「単独行動するときは声をかけてくださいと言っておいたハズですが?」

金髪少女「そんなもん、いちいち報告なんてしなくてもいいだろう」

金髪少女「それに、貴様もよく一人でどこか消えるじゃないか」

黒髪少女「取り仕切ってるのは私ですので、そこは自由にさせてもらってます」

金髪少女「チッ」

眼帯少女「……どうどう」

商人(怖っ!!さっきの態度と一変してるよこの子!!)

商人(ま、買うもん買ったしとっとと離れるか)

商人「それでは取引終了ということで私はこれにて……」

金髪少女「あ、はい!ありがとうございます!」

商人「それではー」

眼帯少女「……ちょっと待って」

商人「はひ!?」

眼帯少女「……今あなたが買い取ったもの全部見せて」

商人「な、なんですか突然」

眼帯少女「……私は彼女とは別の客、一度売られてしまったものにケチをつける気はない」

商人(うわー、気づかれた臭いな)

商人「はい、お客様ということですので私が苦労して集めたこのアイテムの数々をお見せ……」

眼帯少女「いらないから、さっきの見せて」

商人「あー……はい」

商人(ケチ付けられそうだなー、いや、一度取引が成立してるんだ!めげるな私!)

スレタイ開放倉庫?

>>12
何かと思って調べたらまんまでワロタ

商人「今私が買い取ったのはこちらですねー」ガチャガチャ

眼帯少女「……ふむ」

商人(まぁいい、取り上げられそうになっても実力行使で逃げ切ってしまいましょう)

商人(悪いのは価値を見いだせなかった方なんですからね!)

黒髪少女「何か目ぼしいものでもありましたか?」

眼帯少女「……うん、いくつか」

商人「いくつか?」

眼帯少女「……これとこれ、下さい」

商人「えぇっと……弾丸一つと……欠けた短剣ですね」

商人(いよっしゃ!!指輪はスルー!!)

商人「ではお会計は……こんな感じです」チンッ

商人(高めに吹っかけてやる)

眼帯少女「……はい、それで構わない」

商人「え!?」

眼帯少女「……なにか?」

商人「い、いえ……なにも」

商人(相場とか知らないのか?それとも知っててこの値段で了承?)

商人(だとしたらあの二つにそれほどの価値が……ムムム、私の目利きが甘かったか)

商人「あのぅ、査定の方をもう少し……」

眼帯少女「……お金はもう出した。一度出した値段を撤回するのは物売りとしてはどうかと思う」

商人「ですよねーごめんなさいアハハハ」

商人(クソが!……まぁいい、アレが価値があるかはわかりませんしね)

商人「ところで……こんなことを聞くのもなんですけど、そちらは何に使われるのですか?」

眼帯少女「……教える義理は無い」

商人「そんな連れないこと言わずに教えてくださいよー」

眼帯少女「……」

黒髪少女「教えてあげたらどうですか?私も用途は想像できませんけど」

金髪少女「私も気になりますね」

商人「ほらほらー、お連れの方もこう言ってる訳ですしー!」

眼帯少女「……わかった」

眼帯少女「……まずこれ、弾丸」

金髪少女「それは何か特別な物なんですか?」

眼帯少女「……これ自体が魔道核」

商人「んな!?そんなバカな!」

黒髪少女「魔動核……よく聞きますが実際はどういうものなんですか?」

金髪少女「私もよく知らないんですが」

眼帯少女「……特定の効果を秘めた魔力を保有する魔石」

眼帯少女「……普通なら宝石のように加工して武器や防具、装飾品に付けるものだけど」

黒髪少女「弾丸ですね」

眼帯少女「……確かに核単体で機能するけど特別強度が強いわけでも無いから正直弾としては粗悪品もいいとこ」

商人「私には分からなかったのに……」

眼帯少女「……分からなくて当然、こんなの知ってないと見分けがつかない」

眼帯少女「……純度は高いからその指輪のよりはマシ」

商人(やっぱりバレてたか)

黒髪少女「何の効果がついているかは分からないんですか?」

眼帯少女「……それはもっと調べなきゃ私も分からない」

眼帯少女「……どのみちこのままじゃ使えないから加工しなおす」

商人「え?あなたが直接加工するんですか?」

黒髪少女「この子、鍛冶師ですよ」

商人(しまったぁぁぁ!プロ相手に下手な取引しちまったぁぁぁ!!)

ごめんなさい、書かなきゃいけないと思ってても華麗に逃げてた
食堂って前作の?

商人「お…お……」

黒髪少女「?」

商人「覚えてやがれコンチクショー!!」

……

黒髪少女「可哀そうに、あんまり苛めるから逃げていきましたね」

眼帯少女「……苛めた訳なじゃい、現実を教えただけ」

金髪少女(何が違うんだろうか)

黒髪少女「で、そっちの短剣は結局なんなんですか?欠けてますけど」

眼帯少女「ん……これは単なる趣味」

金髪少女「趣味?価値は無いんですか?」

眼帯少女「……この世界で100年くらい前に実在した殺人鬼の使ってた短剣と同じモデルのもの」

眼帯少女「……コアなマニアには人気。レプリカだとは思うけど、価値は私が決める」

黒髪少女「私がって……あぁ、それも治すんですか」

眼帯少女「うん……この手の物を買い取ってくれる人を知ってるから」

眼帯少女「彼女が売るよりも価値を知ってる人の手に渡ってほしい……同じ物売りとしての感想だけど」

金髪少女「利益重視そうでしたからね、あの娘」

黒髪少女「個人の差ですよ、そんなのは」

黒髪少女「で、あなたがあんなに沢山の物品を持っていたことの方が気になるのですが、私は」

金髪少女「アレは貰いものだ、使わないから持っているよりも売って旅の資金にした方がいいだろう」

黒髪少女「お金の心配はあなたたちが心配する必要はありません、私が付き合わせてるんですから」

黒髪少女「そ・れ・に、物を売るときは私を通してくださいな。もっと高く売りますので」

金髪少女「……チッ、嫌味か」

眼帯少女「……心配してくれてるんだと思う」

黒髪少女「ま、あの娘にはまた会えそうですし、その時に売ったものの仕返しはしましょうか」

金髪少女「これ以上は死体蹴りにしかならないからもう許してやれ」

――――――
―――

商人「あ゛ー、物売れなくて村出る羽目になるわ変な客捕まえちゃうわ捕まっちゃうわでいい事なしですねー」

商人「ま、旅商人やってる以上は損失は覚悟してます、気を取り直していきますかねぇ」

商人「あんまり近い村だとか町だと私の事が噂になってるかもしれないですし、なるべく離れた場所がいいですね」

商人「ふむ……ここからだと……お、魔導都市が近いですね」

商人(魔導都市、ここ数十年の間に起こった次元歪曲で他の世界から得た技術によって急発展した都市)

商人(魔導核はもちろん、機械類も盛んでしたね)

商人(薬草の類はよっぽど珍しいものでなければ需要は無さそう)

商人(近くに鉱脈が無いからひょっとしたら機械に使う銅とかが案外高く買い取ってくれるかもしれませんね)

商人「鉱石のストック……よし!これくらいあればまとまったお金になりそうですね」

商人「さて、近いといっても数日かかりそうですし、どこか人里で移動手段確保して……」

ガサ

商人「ぬ?」

ガサガサ

商人「何者ですか!姿を現しなさい!」

商人(言ってみたいセリフの一つですね、ホントにそんなこと言っても恥ずかしいだけですが)

剣士「……」ヌッ

商人「」

剣士「……」

商人(うわぁ、さすがにこれは恥ずかしい)

剣士「……」

商人(じっと見てるよ……どう切り返そう)

剣士「……フッ……」

商人「?」

剣士「フッ……ハハハハハハハハ!!」

商人(笑われたぁーー!?)

剣士「ちょうどいい……お前でいい」

商人「へ?」

剣士「……出せ」

商人「え?な……」

剣士「私は腹が減っている、食糧を出せ、あるだけ全部だ」

剣士「出さなきゃ斬る、身ぐるみ剥いで斬り殺す」

商人(あぁ……なんて日だ……)

勇者の食堂と同じ奴だよねこれ?

商人「あ、あ……その……」

剣士「出せ」

商人「お金さえ出していただければお出しいたしますよ?」

剣士「……」

商人「……」

商人(あ、何言ってんだ私)

剣士「……おい、貴様。その身なり、東洋人の……耳からして獣人か」

商人「ふぇ!?あ、はい」

剣士「……そうか」

商人「そ、それが何か?」

剣士「クッヒヒ……私は東洋人も獣人も両方嫌いだ」

剣士「弱いくせに自分の立場を弁えないわ強いものにはへーこらするわでいいとこなしの無能だからなぁ!」

商人(イヤァーーー!この人ちょっと目がイってるーー!?)

剣士「金を持ってい無さそうな私が弱者に見えたか!?くたばれ犬畜生が!!」

商人「ヒィィ」

剣士「チッ、避けたか。大人しく出すもの出しておけばこんなことにはならなかったのにな」

商人「ふ、ふっざけんなぁー!」

剣士「!?」

>>25
はい

商人「わ、私だって武器くらい持ってんだコンチクショー!」

商人「お腹減らしたケモノ一匹追い払えなくて何が旅商人だ!」

商人「この刀で返り討ちにしてくれる!!」

剣士(がたがた震えて何を言うか……へっぴり腰、素人か。だが……)

剣士「いい剣だな。名はなんという」

商人「え?私の名前ですか?私は……」

剣士「貴様の名など聞いていない。その片刃の剣だ」

商人「ひゃい!こ、この刀は名だたる鍛冶師、ヴォーグが唯一認めたという刀!聞いて驚けその名も!」

剣士「早く言え」

商人「あ、はい、名刀・斬姫と申します」

剣士「斬姫……あぁ、見た目にそぐわぬ美しい名だ」

剣士「……欲しい、寄越せ」

商人「やっぱりそうなりますよねー」

剣士「その剣を見て私も気が変わった」

剣士「命は助けてやる、だから持ち物全部置いて消えろ」

商人「さっきより酷くなってるじゃないですか!?そんな条件飲めませんよ!だったらこの荷物全部燃やして命を絶つことを選んだ方がまだマシです、商人として!」

商人「でも出来れば荷物全部無事なまま生き残りたい!」

剣士「ならいい、力づくで奪い取ってやる。それから自害しろ」

商人(取りつく島もない……)

商人(あ、いや、来た道戻ればさっきの人たちが居るかも!)

商人(冒険者っぽい人たちだったから助けを求めりゃなんとかしてくれる……ハズ!)

商人(見返り求めて来たらさっさと逃げちゃえばいいですしー)

商人「と、言うわけでさよならー!!」

剣士「っ!逃がすか!」

商人「あーっはは!!狼獣人の脚力舐めんなー!!」

剣士「……調子に乗るなよ犬畜生」

商人「なっ!足に氷が!」

剣士「ズッコケたな。残り少ない魔力を振り絞って出した魔法だ、普段なら全身氷漬けだ」

剣士「その程度で済ませてやったんだ、それじゃあ……」

商人(その程度で済ませてやった?今出せるそれが限界なんでしょ?)

商人(こうなったら……来い、もっと近くに!手製の爆弾に巻き込んでやる!)

剣士「荷物を……」

?「ちょいと待ちな、そこな可愛い御嬢さん方!」

商人「ここで助け舟!?」

剣士「ん?」

騎士「ご期待通りの助け舟だ、犬耳の人」

商人「助けてください!見て分かる通り襲われているんです!あとこの耳は狼です!」

剣士「……邪魔が入ったか」

騎士「疲れ切ってて美人な顔が台無しだぞ?」

剣士「抜かせ……今起こっていることは貴様には関係ないだろう」

剣士「邪魔をするのなら貴様も斬る」

騎士「俺は人助けに理由はいらないと思ってるんだけどな……別に、お前がその気なら」

騎士「……試してみるか?俺を斬れるか」

剣士「……チッ……その剣、諦めんぞ」

商人「へっ!ざまーみろコンチクショー!私にちょっかいかけるからこうなるんだ!二度と私の前に現れんなー!」

騎士(あれ?この人助けてよかったのかな)

商人「いやー、おかげで助かりました。死ぬかと思いましたよ、いっそ死のうかと思いましたよ」

騎士「いいよ、こっちも好きでやってるんだ。礼はいらない」

商人「あ、ホントですね?今の言葉聞きましたよ。お礼、いらないんですね」

商人「わかりました、感謝の気持ちだけを送ります。本当にありがとうございました」

騎士「」

――――――
―――

騎士「行ったみたいだな」

商人「用心深いですね」

騎士「その剣にご執着みたいだったからな、油断した隙をついて……なんてこともあり得る」

商人「ふふ、でもまた守ってくれるんですよね?」

騎士「そういうことがあればな。氷溶かすからちょっと待ってろ」

商人「あ、火種ならこちらで用意できますよ」

騎士「ん?魔法使えるのか?」

商人「いえいえ、世の中便利なのは魔法だけじゃないんですよ」

商人「私は商人ですからね、そういう便利なものも持ち歩いてるんですよ」

騎士「へぇ、どんなのだ?」

商人「フッフッフ、どんな場所でもどんな時でもすぐに火が付く!その名も!」

騎士「その名も?」






商人「ライター」

騎士「思った以上にショボかった」

商人「バカにしないでくださいよ、このライターに使われているオイルはまだ発見されたばかりの新しいエネルギーで出来てるんです」

商人「水中でも普通に火が付く優れものですよ」

騎士「水中で火を付ける事なんてまずないだろ……まぁいい、早く貸せ」

商人「はい、お願いします。いきなり足に向かって出したりしないでくださいよ?少しずつですよ」

騎士「分かってるよ。えーっと、普通のライターと付け方は変わらないよな?ほいっと」

商人「あ、先に調節しとかないと物凄い勢いで火が噴出されますので気を付けてください」

騎士「っ――――――!?!?」

商人「大丈夫ですか?」

騎士「クソッ!火は苦手なんだ、先に言ってくれ!!」

商人「でも今のが思いのほか強かったのか地面から足が離れました」

騎士「ふぅ……ともかくこれで解決だな、立てるか?」

商人「あはは、ちょっと手を貸してください。怖くて腰を抜かしてしまいまして……」

騎士「ああ、命が狙われてたんだったな。仕方ない、誰だってそうなる」

商人「よいしょ、ありがとうございます……あっ」

商人「すみません、こんな寄りかかるような姿勢で」

騎士「寄りかかるくらいだったら別にいいよ、少し休んだ方がいいんじゃないか?」

商人「そうですね、そうしたいんですけど……」

騎士「どうした?」

商人「お連れの方、いらっしゃいます?」

騎士「?ああ、ここら辺で野宿してたしそいつはさっきまで寝てたけど」

商人「あの……後ろ……お連れの方ですか?」



竜「……」


騎士「oh...」

商人「な、何かの間違いですよね?竜と一緒に野宿してたなんて」

竜「のう、お主。何故お主は女子を抱いておるのじゃ?」

竜「この状況を説明してくれんか?」

商人(キャァァァァァシャベッタァァァァァ)

騎士「いや、まて違う!誤解だ!」

商人「!?」

竜「ワシが寝ている隙に浮気とは……お主も随分と大胆になったのぅ」

騎士「違う訳があるんだ!とりあえず元の姿に戻れ!」

商人(浮気!?元の姿!?)

竜「これが元の姿じゃ馬鹿者が!!」

竜「……裏切りおって……ワシを……私を……捨てて……」

騎士「捨ててなんてない、俺がお前を裏切るなんてことは無い!」

竜「う……グス、でもあなたは……」

騎士「あぁ口調がブレ始めた!お前はいつだって思い込みが激しいんだから」ダキッ

騎士「俺が好きなのはお前だけだ……」

竜「うぐぅ……その手を離さないでください……グス」

騎士「あぁ、離すかよ……絶対に」







商人「え、なにこれ異種恋愛?」

――――――
―――


竜少女「すまぬ、変な誤解をしてしまっていたみたいじゃの」

商人「そんなものすっ飛ばすくらいすごいことが目の前で起こったのでそれはもういいです」

騎士「目の前に竜が現れればまぁ驚くよな」

商人「それもありますが、その竜がメキメキ音を立てながら人の姿になったことに驚いてるんですけどね」

騎士「竜の貴重な擬人化シーンだ、滅多にお目にかかれないぞ?」

商人「何度もお目にかかったら逆にスゴイですよ」

竜少女「してお主、襲われておったみたいだが大丈夫じゃったか?」

商人「おかげさまで。あなたの立派な騎士様に助けていただいたので」

竜少女「うむ、ワシの自慢の旦那じゃ!」

騎士「……照れるからやめろよ」

商人「仲がよろしいことで、それより……」

騎士「まだ何か?」

商人「先ほどあなたが使い切ったライターの御代を頂きたいと思うのですが」

騎士「……はい?」

竜少女「?」

騎士「いや、あれでもあんたの足の氷溶かすために使って……」

商人「余計に火を使い切った事は事実です!あそこまで使う予定はなかったんですよ?」

騎士「分かったよ、そんな言い寄るな……ライターだからどうせ大した値段じゃないだろ?払うよ、いくらだ?」

商人「そうですね、ざっと……こんな感じです」チンッ

騎士「……え、高。嘘、高い!?なにこれマジで言ってんの!?」

商人「大マジです。さっきも言った通り発見されたばかりの新しいエネルギーを使われていますので」

商人「手に入れるの凄く苦労しました……それは語るのも途方のない文章量になるくらいの出来事でした」

騎士「ちょっ!流石にふざけんなよ!いくらなんでも吹っかけ過ぎだろ」

騎士「大体、こういうことあんまり言いたか無いが、さっき助けたじゃないか!それでチャラってことでダメなのか?」

商人「ハッキリとお礼はいいって言ったじゃないですかー!嘘つき!」

騎士「こんな……バカな……」

竜少女「悪い癖出しおって馬鹿者が」

竜少女「おい、犬っ娘」

商人「狼です。なんでしょうか?」

竜少女「竜相手にそんな商売吹っかけるとはいい度胸しておるの」

竜少女「金額は……ふむ、今すぐに払える額ではないな」

竜少女「ワシらはこの通り旅の者、冒険者じゃ。こんな貧乏そうな見た目の男では金はすぐに用意は出来ないのは分かるじゃろ」

騎士「び、貧乏そうに見えるのか?」

竜少女「担保に何か渡そうにも金目のものは……そこの男の馬鹿でかい剣かワシが腰に掛けている2本の剣しかない」

商人「でしょうねぇ、ですが……」

竜少女「冒険者が自分の商売道具を易々と渡すわけがない、渡せるわけがない」

竜少女「目的はなんじゃ?返答によってはちょいと痛い目にあってもらうぞ?」

商人「そんな計算高くはありませんよ」

商人「さっきみたいに誰かに狙われたくないので、目的地まで護衛を頼みたいと思いまして」

竜少女「ワシやコイツがお主を襲わない保証はないぞ?」

騎士「俺?んなことしねーよ」

竜少女「お主は黙っとれぃ」

商人「あなた方は自分が助けた人をその場で襲うんですか?」

商人「私はあなた方がそんな酷い人には見えません!」

商人(ちゃんと人を見て選んでるつもりですよ)

竜少女(狡賢い……)

竜少女「いいじゃろう、それでチャラになるのであれば引き受けよう」

竜少女「だが、これ以上吹っかけるようであればこちらも打って出る。それでよいな?」

商人「交渉成立ですね!その条件で私も飲みましょう!」

商人「あ、でも道中何かご入り用でしたら言ってくださいね!お売りしますから、別途で!」

竜少女「現金な奴じゃのぅ。お主もそれでよいな?」

騎士「ごめん、話の内容半分も理解できなかった」

商人「そうと決まれば出発です!」

騎士「それはいいが場所は?あんまり俺たちの目的地から離れてても厄介だ」

商人「魔導都市へ向かおうと思います」

商人(本当はもっと離れた場所に行きたかったんですけどこっちの方が取引しやすそうですしね)

竜少女「交易が盛んな場所じゃの。……ふむ、ワシらも行こうと思っていた場所の通り道じゃから都合もよい」

騎士「少し距離があるな、中継点で何か足になるもんあるか?」

商人「近場に汽車が通ってたはずですのでそれで向かおうと思います」

商人「あ、交通費は護衛費用に含まれませんので各自でお願いしますねー」

騎士「ここで出してくれるって言うなら逆に裏がありそうって疑うけどな」

竜少女「この犬、喋ってて疲れる相手じゃ……」

――――――
―――


竜少女「と、言うわけでさっそく汽車に乗り込んだが」

竜少女「お主が追い払った女子も現れなかったようじゃし、もう大丈夫なんじゃないかの?」

騎士「襲ってこなかったとしても目的地まで連れて行くってのは約束しちまったからな」

騎士「それでチャラにしてくれるんだ、安いもんだ」

竜少女「そのお主の尻拭いをしたのはワシだということを忘れんでくれ」

騎士「分かってるって……しかし、遅いな。もうすぐ出発の時間だぞ」

竜少女「いろいろ店を物色しておったのぅ、そういえば」

商人「いやーすみません遅くなりましたー」ドスドスドス

騎士「お?噂をすれば……っておい!?」

竜少女「うお!大荷物じゃの」

騎士「そんな両手いっぱいに何を抱えてんだよ!?」

商人「ここいらの名産品と珍しいものがチラホラあったので買い漁ってきちゃいました」

騎士「椅子に乗り切らなくて普通に邪魔だよ!廊下に飛び出してるよ!」

竜少女「旅をする上でそんな荷物明らかに重量過多じゃろうに」

商人「フッフッフ、旅商人を甘く見ちゃあいけませんよ!」

竜少女「?」

中途半端

>>43
前も言われたんだけどどこをどうしたらいいかってのは聞きたい
完結してないけど

商人「パンパカパーン!異次元ポケットー!」

竜少女「なんじゃそりゃ」

騎士「妙に聞いたことのあるようなフレーズだな」

商人「このポケットの中身は異次元になっていて、こことは別の世界に繋がってるんです」

商人「そこで!その世界を倉庫代わりにして手に入れた道具を全部ぶち込んでるんですよ!」

商人「このポケット無くしたら私はもう生きていけませんね、うん」

竜少女「……それ普通に凄くないか?」

騎士「この世の覇権取れそうなアイテムじゃねーか、そんなもん世に出回ってるのか」

商人「あ、これ偶然手に入ったものですから現品限りだと思いますよ?」

商人「それにこのポケットの口より大きいものは入らないですし、実際中がどうなっているのか私も知りません」

商人「オーパーツですね、完全に」

竜少女(そんな凄いものをこんな奴が持っていていいのじゃろうか)

騎士「それなら物買った時点で入れてこればよかったじゃないか。なんでわざわざ手で持ってきた?」

商人「そりゃだって、こっちの方が目立つじゃないですか」

商人「ただでさえ着物+獣人+可愛い女の子で目立ちまくってる上にこんなにいっぱい抱え込んでたら話しかけてくる人は沢山いますよ?」

商人「そこでカm……お客さんを捕まえるんですよ!」

騎士「おい今なんて言いかけた!?カモ!?」

竜少女「どうでもいいがお主ら大人しく座っとれぃ。そろそろ汽車が動くぞ」

商人「あ、そうだ。2、3日かかりますけどなりますけど、お二人とも食糧やら飲み物やらは買っておかなくてよかったんですか?」

騎士「トラブルが無けりゃそのくらいで着くか……飯は乗り継ぎの町で買えばいいだろ」

商人「次の乗り換えは明日の昼ごろですよー。夜通し走り続けますので」

騎士「え゛、マジか。今昼だぞ……」

竜少女「ワシらを先に乗せておいたのは食事をさせん為か……」

商人「そんなこと事して私に何の得があるんですかー?」

商人「あ、お腹が減ったらいつでも言ってくださいね?たっぷり蓄えはありますから!」

商人「勿論売り物ですけど!」

騎士(このやり場のない怒りはどうすればいいんだ……!)

竜少女(時刻表を見なかったワシらも悪い、買わなければいい話じゃ)

――――――
―――

竜少女「うー……」

騎士「……」

商人「~♪」

竜少女「うー……うー……」

商人「~♪」

竜少女「むぅぅ……」

騎士(うるさいぞさっきから)

竜少女(もう夜なのじゃ……おなかすいたのじゃ……我慢できそうないんじゃ……)

騎士(だからって……ああもう、生野菜しかもってねぇ!そのまま食え!)

竜少女(嫌じゃ!うぅ……もう最終手段じゃ……)

騎士(財布に手を入れるな!あぁ、あいつがすっげぇ憎たらしい顔で笑ってやがる!)

商人「どうやら限界が来たようですねぇ」

騎士「くっ、コイツの腹具合がちょっと悪いだけだ。ほら、トイレ行ってこい」

竜少女「違う!腹が減っているのじゃ!えぇいもういい!ほら金じゃ!!さっさと飯を寄越せ!!」

商人「毎度ありがとうございます!ご一緒にオレンジジュースはいかがですか?」

竜少女「勿論貰おう!」

商人「どうも~♪」

騎士「あーあ……」

商人「お手製の愛情弁当です、保存方法は秘密です!」

竜少女「ハムッ ハフハフ、ハフッ」

騎士「うわ、すっげぇ美味そうに食うなお前。ちょっとキモい」

商人「ほら、相乗効果で食べたくなってきましたよね?どうですかご一緒に?」

騎士「俺はいらん。こいつほど我慢できないわけでもないし言うほど腹も減ってはいない」

商人「あら残念。他にもお酒なんかありますよ?大人の嗜みでパイプなんかも……」

騎士「酒は飲まないしタバコも吸わん。どっちもコイツが嫌うからな」

商人「ありゃりゃ、何を楽しみに生きてるんですか」

騎士「余計なお世話だよ!?大体さっきからやけに進めてくるけど一体なんなんだよ!」

商人「黙ってても品物は売れませんよ。店に置いておけば勝手に売れる、なんて物なんて極僅かです」

商人「こっちからセールストークしなきゃ普段目につかない、気にも留めない商品なんて沢山あるんですから」

騎士「俺からしてみりゃ過剰接客だよ。何言われても俺は買わないからな」

商人(こういう客を堕としてみたい、と思うのは私の商人としての性だろうか)

竜少女「よからぬ事を考えておるような表情をしておるな」ハムッ ハフハフ、ハフッ

商人「ま、確かにあんまり言いすぎたりしてるとお客さんに怒られたりしますけどね」

商人「接客の難しいところですよ」

騎士「それは自分で難易度上げてないか?」

竜少女「あー食った食った、グェー」

騎士「そっちはそっちで汚いからそういう事はやめなさい」

商人「あ、飴ちゃん食べます?これはサービス品ですのでタダで差し上げますよ?」

竜少女「わーい!ありがとう!」

騎士「おい!餌付けされんな!」

竜少女「むお?何じゃ?この棒にぶっ刺さった……リンゴか?」

商人「はい!私の実家のお菓子屋で作ってる特製のリンゴ飴です!見るのは初めてですか?」

竜少女「うむ、見たことも聞いたこともないのじゃ」

商人「まぁここら辺じゃまず見ないですよね、そういう意味ではレアものだったりしますよ?」

竜少女「でもどうやって食べるんじゃ?随分食べにくそうじゃが」

商人「もうお好きなように!ガブっと行くかペロペロじっくり行くかお好みで」

竜少女「」ガシュ ジャリジャリ

商人「お、いきなりかぶりつきましたね。というか本当に美味しそうに食べますね」

騎士「なぁ、リンゴ飴って確か中のリンゴはカッスカスの粗悪品じゃなかったか?」

商人「おや?食べたことあるんですか?」

騎士「小さいころにな。アレは不味かった記憶しかないんだが」

商人「私はそんなもの取り扱ってませんよ!自信を持って出せるものを提供してますので!」フフン

竜少女「甘い味の中にジューシーな果肉が広がっているのじゃ!」

騎士「へぇ、美味そうだな。タダなんだろ?俺にもくれないか?」

商人「ダメですよー、私の商品買って頂いた方に対してのサービスなんですから!」

騎士「ぬ、そっちが駄目なら……なぁ、一口くれないか?」

竜少女「嫌じゃ」

騎士「」

商人「でも、あなた方とこうやって喋っているだけで十分に利益が出そうですね」

騎士「騒いでるだけで迷惑だよ、なんでそうなるんだ」

商人「私が商人であることと、あなたたちに何かを売ったこと、サービス品を提供している事を口に出しているんです」

商人「宣伝はバッチリです。しかもこんな狭い場所で、次の駅まで何も手に入らない不自由な状況が続けばそのうち……」

竜少女「そのうち?」

乗客1「おーい、そこの着物の嬢ちゃん!俺にも何か売ってくれねぇか?」

騎士「なぬ!?」

竜少女「おお!」

商人「ほら引っかかった……はーいただいま参りまーす!」

乗客2「こっちも頼むよ犬耳のお嬢ちゃん!」

商人「狼です。はーいお待ちくださーい」



騎士「なぁ、確かこの汽車に会社から派遣されてる売り子居たよな」

竜少女「うむ、長旅じゃからの。よく考えたらワシもそっちを待っていればよかった」

竜少女「そもそも、ワシらはともかく汽車内での売り買いは許可されているのじゃろうか」



商人(定期的に汽車の売り子が回ってくるハズですからそれまでには終わらせますか)

1か月更新なしはまじめに弁明しようがないけど社会人だから10時間以上おきにくらいにしか書ける環境ではないのでそこはご勘弁
スローペースで書きたいけど思いついたことを思いついた時に書くのはひょっとしてご法度だった?
後これは我がままだけど、書き溜めはちょっと理由があってやりたくないです
でも終わりまではしっかり書いていきたい……
アドバイスありがとうございましたm(_ _)m

今日はここまでーとか?
やっぱ書いた方がよかったのか……
こういうこと書くとまるで誰も見て無いのに何言ってんだこいつ、作者様()とか言われそうで怖かったけど

わかりますた
とりあえずまた数日書けなくなるということだけ書いときます
自分のスレ自分で汚して失礼しました

再開

商人「はいはいーい、みなさん順番におねがいしますねー。あ、ちょっと!勝手に商品触らないでくださいねー、それ貴重なんですよー」

商人「はい、毎度ありがとうございます!あ、どうぞこれが噂のリンゴ飴です」

商人「どうもー!はーいそこのお子様ー、勝手に私の商品に振れないでくださいねー。あ、それ買い取らせてください」

商人「え?買い取りのときはサービスしてくれないかって?しょうがないですね、どうぞリンゴ飴です」

商人「まいどー!おい、そこのクソガキ!汚い手で触るな!お前が一生掛かっても払いきれない程の貴重なモンなんだぞ!?」

商人「ああもう!リンゴ飴あげるからあっち行ってろ!」



騎士「俺たちに吹っかけたとは思えないほど普通に商売してるなぁ」

竜少女「腐っても商人というわけか」

商人(いやぁ、サクラが居ると助かりますね)

商人(やっぱり一人旅はやめて腕の立つ冒険者に寄生しながら商売の方がいいですね、無論タダで)

商人(あの二人は多分私からとっとと離れたいだろうから駄目だろうなぁ、強いかどうか分からないですし)

商人(ま、そこらへんは魔導都市あたりで探しますかね)

「お嬢さん、ちょっといいかな?」

商人「はいただいまー……あ」

黒服「汽車内での物品売買は禁止されてるよね、ちょっと我々の車両まで来てもらえるかな?」

商人「……大変です!暴漢です!護衛の先生方カモーン!!」



騎士「この生野菜どうする?早く処理しないと腐っちまうぞ」

竜少女「さっきご飯食べてしまったからのぅ、こんなところで調理するわけにもいかんし」



黒服「それじゃあ行こうか」

商人「NOおおおおおおおおおおおおお!!」


1時間弱こってり絞られました

――――――
―――

商人「なんでさっき無視してんですか!?」

竜少女「アレはどう見ても暴漢ではないし自業自得じゃろ」

騎士「護衛対象外だ、怒られただけで済んだからよかっただろ」

商人「むぅ、薄情者ですね二人とも」

騎士(出来れば関わりたくないんだよ)

竜少女(同行者と思われたくないだけじゃ)

商人「あ、そういえば。この汽車になんか不正乗車した人がいるらしいですよ?」

商人「そこらへんも問い詰められました。乗車券持ってるのに失礼ですよね!」

騎士「疑われるようなことやる方が悪いだろう」

商人「まさかとは思いますがあなた方ではないですよね?後々面倒なので」

竜少女「お主の方が失礼大爆発じゃな。ほれ、乗車券はちゃんと持っておる」ピラ

騎士「俺は失くしそうだからコイツに預けてある」ドヤァ

商人「ならいいですけど……まさかあの剣士じゃないかなー、とか思ったり」

騎士「そんな都合よく乗り合わせるわけないだろうHAHAHA」

商人「それもそうですねー、狼であるの私の鼻が奴の臭いを覚えてますからねーHAHAHA」

竜少女「お主ら、それは前振りか何かか?」


商人「そろそろいい時間ですね、お二人ともお休みですか?」

竜少女「うむ、昼まで暇じゃしそれまで寝れるな。用がない限り起こすでないぞ」

騎士「同じく、おやすみ」

竜少女「なんか精神的に疲れたのぅ、おやすみ」



商人(フッフッフ、さて私は他の車両を回って何か売ってきましょうかねぇ)

商人(今度は見つからないようにしないと)

商人(黒服の人は前の車両から来てたんで後ろの車両を回りましょうか)

商人「では、未知なる道へいざゆかん!」

「おい、犬」

商人「狼です!なんですか?商品買いたいなら他の車両に回ってから売らせていただきますよ」

剣士「剣が欲しい、斬姫が欲しい」

商人「ハハッ」

剣士「……」


商人「フラグ回収はえぇよチクショオォォォォォォォ!!!」

商人「大体なんでこんなところに!?お腹が減って力が出ないんじゃなかったの!?不正乗車したのお前か!?お前なのか!!?」

剣士「行き倒れていたところを親切なおばあさんに助けられて飯をご馳走になった、その後お前を追ってたら汽車に乗ったから慌てて汽車に乗ろうとしたらおばあさんが乗車券を買ってくれた」

商人「1日で過密なスケジュールだなおい!おばあさんに感謝しろよ!?」

剣士「そのうち礼はするつもりだ、さぁ渡せ」

商人「何故この刀を狙うんですか!?もっと強そうなの持ってる人いるでしょ!?私の後ろの人たちの剣見てくださいよ!相当な業物っぽいですよ!」

剣士「その斬姫の方が美しい、私はそれが欲しいんだ」

商人「ああ話通じねぇなもう!!」

竜少女「ウルサイのぅ、起こすなと言ったであろう」

騎士「ん……ん?てめぇは!懲りてなかったか!」

剣士「懲りるも何も貴様とは一戦も交えていないぞ?」

騎士「……だったら今分からせてやるよ」

商人「そうだ!こっちには高い金出して雇った護衛が居るんだ!さっさとやっちまってくだせぇ!」

騎士(金なんて一銭も出してないだろ)

竜少女「この者か……なぜここまで接近を許した!お主の鼻は飾りか!?」

商人「いやぁ、なんかこの人始め嗅いだ臭いと全然違ってたので……」

剣士「おばあさんの作ってくれたニンニクたっぷり餃子は美味かった」

商人「そういうことかコンチクショウ!!」

竜少女「お主ポンコツじゃのう」

商人「ウルサイ!さっさと追い払ってください!!」

騎士「あんまり騒ぐとまた黒服のにーちゃんが来るぞ?」

商人「構いません!やましいことは無いですから正義は私たちにあります!」


乗客「なんだ、喧嘩か?」

乗客2「さっきの商人か」

乗客3「冒険者同士のイザコザか?余所でやってくれよ」


竜少女(こういうことをするからワシらの職業がよく誤解されるんじゃの)

剣士「剣を差し出せば私も何もしない、出せ」

商人「嫌だからこうして対峙してるんですよ!」

商人(って、あれ?あの娘の剣、よく見たらボロボロじゃないですか)

騎士「どけ、俺がやる」

剣士「こんな狭い場所でそんなデカい獲物を振り回すのか?他の客に被害が出そうだな?」

騎士「女相手に本気なんてださねぇよ!拳で勝負だ!」

剣士「女だからと……舐めるな!!」

竜少女「うつけものめ!男女差別じゃ!」

商人「女性だって強い人は強いんですよ!?」

騎士「はい!?お前らまで何言って……ギャァァアァァァァ!!」カチコチ


竜少女「馬鹿者!敵の言葉に惑わされおって!」

商人「敵の術中に嵌って何氷漬けにされてるんですか!!」

剣士(こいつらはギャグでやっているのか……?)

竜少女「ま、どうせ拳一つで勝てる相手ではないというのは分かっておったわ」

竜少女「そこのバカはほかっておいて……ワシが相手じゃ」

剣士「子供が……怪我をしたくなければどけ」

竜少女「子ども扱いするなよ?お主の数千倍は生きておる」

竜少女「ほれ、ワシは足止めしておくからお主はさっさと逃げんか。黒服でも呼んで来い」

商人「分かりました!じゃあこの場はお任せします!」

剣士「そう易々と逃げられると思うなよ?」

竜少女「挑発的じゃの?もうワシに勝ったつもりか?」

剣士「戦う以前の問題だ……クッヒヒ」

竜少女「……気味の悪い笑い方をしおって……ん?」

ガタンガタン

竜少女「どうした?早く他の車両に行け!」

商人「扉が凍っていてピクリとも動かないんですよぉぉぉぉぉ!!」

竜少女「oh...」

剣士「隙だらけだぞ!」

竜少女「ぬ!?ぬかった!」

剣士「手足だけ氷漬けにした、これでもう身動きは取れまい」

商人「何やってんですか!?」

竜少女(詠唱無しでこの威力、中々の魔法の使い手じゃ)

竜少女(剣士かどうかは怪しいが……しかしマズイの)

商人「いやぁぁぁ!こっちに来るなケダモノォォォ!」

剣士「獣は貴様だ犬が。さて、私の剣はどこだ?」

商人「狼だ!あとこの刀お前のじゃねぇから!」

竜少女(元の姿に戻る……却下、車両が吹き飛ぶわ)

竜少女(ハウリングもブレスも確実に他の乗客を巻き込むことになる……ぬぅ、人間社会というのは実に不便じゃ)

竜少女(奴は……)

騎士「」カチンコチン

竜少女「えぇい、クソの役にも立たん!!」

騎士(誰のせいだよ……)カチンコチン


商人(仕方ない、かくなるうえは……)

商人「……」スッ

剣士「ん?なんだその球体は?」

商人「おいつの名はFBR-2!お手製の爆弾です!」

乗客「ば、爆弾!?」

乗客2「嘘だろ!?」

乗客3「テロか!!」


ガヤガヤガヤ


剣士「ハッタリを……」

竜少女「ば、馬鹿者!何を考えておる!」

商人「ハッタリでも何でもないですよ!モノホンの爆弾です!近づいたら即爆破させますよ!」

竜少女「気でも触れたか!規模は知らんが周りを巻き込むことになるぞ!」

商人「知ったことかぁぁ!私の商品取られるくらいだったら心中してやる!!」

剣士「ならば爆破前に叩く!」

商人「もう遅い!起爆!!」

竜少女「光が……このッ……!?」

剣士「クッ!!」

ギャー!!
テロダー!!
カーサーン!!

……


竜少女「……?」

剣士「クソっ!!閃光弾か!!」

竜少女「……なるほど、やはりハッタリか」

竜少女「ワシは平気だったが……」


ギャー!
メガー!


竜少女「ま、そこまで強いものではなかったようじゃし、すぐに皆回復するじゃろう」

剣士「チィ!どこへ行った犬畜生!!」

竜少女(あの一瞬で上手く逃げ切れたか……)



商人(フッフッフ、狼獣人の運動能力を甘く見ちゃあいけませんよ!)

商人(あの一瞬であればこんな大きいリュック背負ったままでも窓を開けて車両の上に上ることくらい造作もないんですから!)

商人(さて、なるべく音を立てないように移動しましょうかね。できれば黒服さんの居る車両の上まで移動できれば安全なんですけど)

商人「……ん?」


眼帯少女「……」

金髪少女「……」

黒髪少女「あら……」


商人「……」




商人「不正乗車だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

>>69
商人「おいつの名はFBR-2!お手製の爆弾です!」

新単語 おいつ

黒髪少女「下が騒がしいと思ったら、何か催し物でもなさっていたんですか?」

眼帯少女「……そんなことより、無賃乗車がバレた」

金髪少女「屋根の上ならばれないと思ったんですけど……浅はかでしたね」

商人「図星かよ!何やってんだあんたら!普通に犯罪だよ!?」

黒髪少女「詐欺まがいな事をしていたあなたに言われたくありませんね」

商人「詐欺じゃねぇよ!商売だよ!一緒にスンナ!」

金髪少女「だからやめようって言ったじゃないか……」

黒髪少女「あら?割と乗り気だったじゃないですか。子供が陰でパイプを蒸かすのと同じくらいの……ちょっとした悪ふざけのつもりですよ」

眼帯少女「……ただ単に旅費を浮かせたいだけって言ってた」

黒髪少女「こーら!そういうことは分かってても他の人の前では言わないでくださいね?」

ハハハハハハ


商人「どうでもいいよもう!!」


剣士『声……屋根の上か!!』

竜少女『馬鹿者ーー!!何をしておる!!』

商人「しまったーー!!」

商人「あなたたちのせいで居所がばれてしまったじゃないですか!」

黒髪少女「?誰かに追われているんですか?」

眼帯少女「……騒いだのはそっち」

商人「ヘイヘイ、私が悪ぅございましたよ!ってことで足止めよろしく!!」スタコラサッサ

金髪少女「あ、ちょっと……行ってしまいました」

黒髪少女「勝手に足止めを任されてしまいましたが……来ましたね」


剣士「……」


黒髪少女「あなたは、私たちと一戦交える気はありますか?」

剣士「……必要ならば」

眼帯少女(……!)

黒髪少女「そう、なら……」

眼帯少女「……私がやる」

黒髪少女「あら珍しい、どうしたんですか急に?」

眼帯少女「……その剣、ボロボロ。……酷い使い方をしない限りそんな事にはならない」

剣士「ん?これか?私に合わなかっただけだ。どんな使い方をしようがこれは私の物だ、私の勝手だ」

眼帯少女「……武器はただ使えればいいものじゃない、武器は使い手を守るためにある」

剣士「守っては意味がない!相手を倒すことに意味がある!」

眼帯少女「……あなたに、使われる武器の心は分からない」

剣士「武器に心などない!武器は武器だ!」

眼帯少女「……その通り。でも、許せない」

剣士「安い感情だな……蹴散らしてくれる!!」


黒髪少女「ふぅ、手出しはしませんので好き勝手やってくださいな」

――――――
―――


商人(貨物車の中に隠れるのよ!)

商人(といった感じで隠れちゃいましたが……)

商人(今あのお二方と合流したら他のお客さんたちに迷惑がかかってしまいますしねぇ)

商人(どのくらい足止めしてくれるかはわかりませんがしばらくここで様子を見ましょう)

商人(あ、全然足止めとかしてくれないかも……それも考えて罠でも張っておきましょうか)

ガラガラ

剣士「ここか」

商人(早ッ!!)




眼帯少女「……うぐゅ」

金髪少女「瞬殺でしたね……」

黒髪少女「あなた、そんなに強くないんですから無理しなくてもよかったじゃないですか」

眼帯少女「……しかも手加減された。悔しい」

黒髪少女「にしても、なんであなたから突っかかったりしたんですか?珍しい」

眼帯少女「……彼女の剣が気になった」

金髪少女「?普通の剣みたいでしたけど」

眼帯少女「……ボロボロだった理由を知りたかっただけ」

眼帯少女「……始めは酷い使われ方をしていただけだと思ってたけど」

眼帯少女「……彼女の剣技は素晴らしかった。しかし、剣が彼女に合わずにひどく消耗していた。それだけ確かめたかった」

眼帯少女「……いつか彼女に合った剣と巡り合えることを切に願う」

黒髪少女「何がしたいのかさっぱりわかりませんが……とりあえず、あの犬耳の娘のために足止めした訳ではないってことですか?」

眼帯少女「……うん、そんな義理は無い」

黒髪少女「ですよね、私は戦う気、サラサラなかったですし」

金髪少女「右に同じく。流石に生死にかかわるなら助けようとも思うが、あの様子を見ると命を奪おうとまではしてないからな」

黒髪少女「それは分かりませんが……ま、ほかっておいても大丈夫でしょう」

眼帯少女「……私の手当をしてくれるとありがたい」

黒髪少女「剣の腹で殴られただけでしょうに、我慢なさいな」





剣士「痛い目にあいたくなければ早く出てこい」

商人(ヘルプ!!助け舟!ヘルプ!!)

小休止

再開

剣士「今ならまだ拳一発で許してやる、出ろ」

商人(若干ランクダウン!?いや、ちょっと待ってて!罠が、罠がもう少しで完成するから!)

剣士「どうやら私は犬の貴様より鼻が利くらしいな……近くにいるのは分かっているぞ」



剣士(……犬と言えば反応すると思ったが、さすがにそこまでバカではないか)




剣士「……」




商人「狼です!!」

剣士「そこか!!」

剣士(木箱ごと殴ってやった……手応え……無し!?)

商人「フッフッフ!こっちですよヘッポコ剣士さん!」

剣士「フン、どうやら貴様の運動神経を侮っていたようだ。全力で行かせてもらう!ウラァ!!」

商人「当たりませんよ~」

剣士(後ろに回り込んだ!?どうなっている!?)

剣士「クソ!この!!」



商人(フッフッフ、そうやって私の幻とずっと追いかけっこでもしていてください)

商人(取扱い危険薬、幻ハーブを焚かせてもらいました、そしてこの威力!!)

商人(ふざけたほど安直な名前ですけどこれ、取扱いに免許いるんですよねー。取っておいてよかった)

商人(まぁ、私はこうしてガスマスクしてなきゃいけないんですけどね)

商人(さて、暴れまわっている今のうちに……)


剣士「この貨物車ごと氷付けぇ!!!」

商人「」

剣士「フ……クヒヒヒ……これで私のホームだ……」

商人(やっべぇ!今のでこの車両の至る所に穴が開きやがった!これじゃあハーブの効果が)

剣士「そらそら!!手も足も出ないだろう!!踊れ踊れ!!」

商人(でももうなんか幻覚が次のステップに進んでる!?)

剣士「そこだぁぁぁぁぁ!!!」

商人(!!ああっと!!そっちは!)


剣士「な!?壁を突き抜けた……!?そんな……」

商人「だめぇ!!!」

……

剣士「……」

商人「ふんぬぅー!諦めるな!自分を信じろ!この手を離すな!」

剣士「今の今まで襲われていたのに、なぜ私を助ける」

商人「人助けに理由は無い!ってカッコイイこと言いたいですけど今はそんな場合じゃないです!早く這いあがてこいコンチクショー!!」

剣士「解せん……何故だ」

商人「早 く し ろ っ て 言 っ て ん の が 聞 こ え ね ぇ の か お 前 は !?」

商人「足引きずってる!!汽車の速度ですごい勢いで足引きずってる!!」

剣士「慌てるな、すぐに上る」シュタッ

商人「出来るなら早くしてくださいよ……」

商人「だぁ!冷や汗かきまくりですよ!まったく……」

剣士「……では聞きたい、何故私を助けた」

商人「私は人殺しをやっているわけではありませんので」

商人「あなたには単に私を諦めてほしかっただけです」

剣士「お前のことなどどうでもいい、私はお前の剣が欲しいだけだ」

商人「だーかーらーぁぁぁぁぁぁ!!そういうことじゃなくてだなもう!!」

商人「私は!いいですか?私ですよ!?あなたに!この刀の事を!諦めてほしかっただけなので!」

剣士「私は諦めんぞ」

商人「話の腰を折るな!!」

スパーン!!

剣士「何をする、痛いじゃないか……」

商人「何をする!?お前散々私に殴り掛かっておいてそりゃねぇだろ!?」

商人「ダメだ、普通に説明しても疲れるだけだ……」

剣士「だが……」

商人「ん?何?まだ何か?」

剣士「お前は私を助けた。今までの事は謝る、すまない」

商人「あぁ……そんな感謝の言葉なんて要りませんよ、何の得にもなりゃしませんし」

剣士「それについてだが、礼はしたい」

商人「お?言いましたね?お礼がしたいって言いましたね?何か私に壌土してくださるのですか?出せ!金目のモン出せ!」

剣士「突然人が変わったな……これならくれてやる」スッ

商人「わぁい!さっきまであなたが腰に掛けてた剣だぁ!って、てめぇの持ってたボロクソの剣なんざいるか!!」

剣士「中々の年代物なんだがな……斬姫と交換してくれ」

商人「お礼じゃねぇのかよ!?明らかに釣り合わない交渉だよ!?」

剣士「じゃあどうすれば譲ってくれる。恩人に手は上げたくない」

商人「渡さなかったら手ぇ上げる事前提かよ!?いい加減にしろよこのド腐れ女ぁ!!」

商人「あ゛ー疲れる!!もういい!金持って来い!こんだけ払えば買い取らせてあげるから!」カタカタカタ チンッ

剣士「……金は持ってない」

商人「じゃあ無理です!はいダメー!没収ー!諦めてお帰りくださーい!」

剣士「その剣が私を呼んでいるんだ……諦められない」

商人(呼んでる?また訳のわからないことを)

商人「だったら稼いできてください、まとまったお金があるならお売りいたします」

剣士「そうか……」トボトボ

商人「やっと諦めたか……初めからそうしてくださいよ」

剣士「……この汽車に乗っている連中の財布全部で足るか」

商人「ちょっと待てゴルァ!!」

剣士「ウルサイな、弱い犬はよく吠える」

商人「狼だ!そんな汚い方法で金集めんな!」

剣士「私は今まで奪って生きてきた。だから他に金を手に入れる方法なんて知らない」

商人「知ったことか!!それ以外の方法でどうにかしろ!!」

剣士「注文が多い……じゃあ仕事をくれ」

商人「甘えんなぁ!!魔導都市辺りで討伐でもしてろ!!」

剣士「……!」



竜少女「お主らいつまでそうしておるつもりじゃ!」

騎士「黒服がこっちに来てるぞ」

商人「来たな役立たず共め!お前らのせいで私がどれだけ悲惨な目に合ったかわかるかコンチクショウが!!」

竜少女(み、妙に過激になっておる)

騎士「そんな事はどうでもいい、ここから逃げるから俺につかまれ!」

商人「に、逃げる?どこへ!?」

竜少女「急げ!そこの穴から飛び出せ!!」

騎士「はいよ!」ガシッ

商人「ちょ!あなたたち死にたいんですかうおッギャァァァァアアァァァ――――――」



剣士(あの犬……)

黒服1『こっちだ』

黒服2『貨物車の方だ!どうなっている!』

剣士(獣人は嫌い……だが……礼はしたい)




黒服1「こ、これは……」

黒服2「貨物車が……」

黒服1「どこの賊にやられたらこうなるんだ……」

黒服2「こちらセキュリティ、至急応援を。あと汽車を止めてくれ、やむを得ん。ああ、酷いぞ。貨物車の連結部分が綺麗に切り落とされている……」


……

金髪少女「なんだ、足取りが付かないようにしたのか?」

黒髪少女「ま、見てて面白かったのでこれくらいはしてあげますよ。軽いサービスです」

眼帯少女「……着物の彼女、いい刀を持っていた。私も見てみたい」

――――――
―――


騎士竜「どうだ?空の旅は?」

商人「生きた心地がしません」

竜「じゃろうな。いきなり飛び出して"これ"じゃからのう」

商人「一番驚いたのはあなたも竜だったって事ですかねぇ」

騎士竜「まぁな、言う必要もなかったし知られなけりゃそれでもよかったし……」

商人「あと鷲掴みはやめてください、普通に胸とか触ってるんですけど」

騎士竜「あぁ、悪いな。俺の大きさだと人を乗せて飛ぶのはちょっと無理だからな」

竜「どれ、ワシの背に移すがよい。人ひとり乗せるなぞ造作もないわい」

商人「こりゃどうも……ま、これも生きているうちに体験できないようなことですから十分な価値になりますね」

竜「経験こそ財産じゃの」

騎士竜「冒険者をやってると一番耳にする言葉だな」

商人「私の財産は経験よりもレアアイテムですよ!ハハハ!」

商人「って、あ!これなら別に汽車で移動しなくても飛んでいけばよかったじゃないですか!」

竜「この姿は何かと目立つからの、あまりこれで行動はしたくないんじゃ」

騎士竜「いつどこで、誰が珍しい竜狩りをしてるか分からないからな」

商人「強い生物ほど弱点が明るみだったり多いんでしたっけ?」

竜「そんなところじゃ」

騎士竜「さて……あんまり長距離は移動できないからそろそろ降りて野宿だな」

商人「うえぇ……汽車の椅子に座ってた方がまだマシだったのに」

竜「贅沢言うな」

竜「あと、お主らはまだ飯を食っていなかったの。ちょうど材料もある、ワシが特製の野菜スープを振る舞ってやろう」

騎士竜「お、いいねぇ!お前の作る料理は美味いからなぁ」

商人「へぇ、料理出来るんですか」

商人(あんなちんちくりんな子供の姿だったからてっきり中身も子供だと思ってた……というのは胸に秘めておきましょう)

竜「いつも作るのはワシじゃ……まったく」

――――――
―――

今日ここまでかも

再開

再開宣言してこの体たらくである(時間的な意味で)



商人「あ゛ーもうすぐ着きますねー」

騎士「結局歩くハメになったな」

竜少女「ヒッチハイクしようにもまさか車も見つからんとは思わなんだ」

商人「専用道路が通ってるみたいですし都市の近くまで行かないと未開拓地が広がっているだけでしたね」

商人「何か採取しようにも何もないってどういうことですかまったく!旅の楽しみ半減ですよ!」

竜少女(ワシらはコイツとようやく解散できるのが楽しみじゃがの)

騎士(口に出すなよ、何言い返されるか分からん)

商人「お!見えてきましたよ目的地!いやぁ、でっかい建物がたくさん立ってますねー!」

騎士「この国を代表する都市みたいだな、交易も盛んだし」

竜少女「美味い飯が食えそうじゃの!」

商人「ですねー。もう歩きっぱなしだったんでクタクタですよ」

商人「中に入ったら早速みんなで宿でも探しましょうか!」

竜少女「……お主は何を言っておる」

商人「へ?」

騎士「護衛の約束は到着までだったろ……宿まで一緒になる義理は無い」

商人「そ、そんなぁ……またアイツに襲われたらどうするんですか!」

竜少女「んなもん知るか!大体お主、依然ワシらの事を役立たずと言っていたではないか!」

商人「オウフ!」

騎士「今度はもっと腕の立つ奴を引っかけるんだな、それじゃ」

竜少女「達者でのー」

商人「え、ちょ……」

騎士「あ、剣の手入れしたいからどこか鍛冶屋に寄ってくか」

竜少女「ふむ、それならワシの使い魔に探させよう」

テクテクテク

商人「ちょ、ちょっと待ってください!おいこら待て!薄情者!裏切り者!カムバーック!!」

――――――
―――


商人「畜生!到着するなり逃げられた!」

商人「ま、さすがにこれは仕方がないですね……アイツがあのまま汽車で移動してるとは考えにくいですし、追ってくるにしてもしばらくは大丈夫だと思いますが……」

商人「と言うよりお縄についてもらっていると願いましょうか、うん。あの状況じゃ逃げられないしね!」

商人「そうですねぇ……それじゃあまずいろいろと店を回って品物のレートでも見ますかね」

商人「もともと鉱石売りに来たようなもんですし、そこらへん重要ですね。護衛を雇うのはその後でいいでしょう」

――――――
―――

とある鍛冶屋

商人「な、なんじゃこりゃ!!」

商人「ほとんどの鉄鉱石が普通の単価下回ってるじゃねーか!なんだよこの大安売りは!」

店主「ん?どうしたんだいお嬢ちゃん?」

商人「あ、オホホホ、失礼しました。いえ、鉄鉱石がやけに安いなぁと思いまして……」

店主「ああ、それね。お嬢ちゃん旅の人?ここ2,3日で来たばかりなら知ってるはずないか」

商人「なんですか?鉱山でも見つかったんですか?」

店主「いや違うよ、鉱山の豊富な隣国から物資の支援があったんだよ」

店主「順次、各店舗に入れてくれることになってね。ウチもそれにあやかってこの値段になってるって訳さ!」

店主「旅商人には残念な話だけどな。まぁ、個々でネットワークを持っているだろうからそんなヘマをする奴ははみ出し者の商人だけだけどな」

店主「ん?どうしたお嬢ちゃん?」

商人「」

商人(あぁ……特定の組織に所属していないのが仇となったか……)

商人「そ、そうですか。ご説明どうも……それでは……」

店主「お、おう。何も買っていかねぇのかい?」

商人「えぇ、いろいろ見て回っていただけなので」

商人(何も知らずに価格調査してたなんて言えるはずがない……)

カランカラン

店主「お、いらっしゃい!今日も工場使っていくかい?」

仮面男「こんにちは。そうだね、使わせてもらいに来たよ」




商人「なんかすげぇの入ってきた」

店主「今日も何か作っていくのかい?」

仮面男「いや、今回は友人から武器の点検を頼まれていてね……流石に利益にならない事は迷惑だったかい?」

店主「いやぁいいよ、ここんところ世話になりっぱなしだからね。いいよ、使っていきな!」

仮面男「ありがとう、もし時間が余るようだったら何か売れるようなものを作るよ。では早速……」

商人(……おんや?あの武器確か……)

商人「ちょっと、そこの仮面のお兄さん」

仮面男「ん?私の事かい?」

商人(アンタ以外に誰が居るんだよ)

商人「そちらはご友人の武器とおっしゃいましたけど、その方ってひょっとして竜の……」

仮面男「おっと、その先は言わないでくれ。バレたら色々とマズイみたいだからね」

商人「そ、それは失礼しました……」

商人(やっぱりあの竜二人の武器か)

仮面男「彼らの知り合いかい?」

商人「ええ、まぁ。長い夜を語り明かした仲です」

商人(嘘は言ってない)

仮面男「フフ……見たところ商人みたいだけど、違うかい?」

商人「はい!旅商人をやっております!よろしければ見ていってください!」

店主「ええ!?お嬢ちゃん旅商人だったのか!?」

商人「気が付いてなかったのかよ!!こんなデッカいリュック背負ってワザと商品飛び出させたりしてわかりやすいようにしてるのになんで気が付かないんだよ!!さっき普通に嫌味言われてるかと思ってたよ!!」

店主「わ、悪い悪い……俺は周りから鈍感で通ってるみたいでさぁ」

商人「どうかしてますよ!」

仮面男「他人の店で堂々と自分の持ってきた商品売ろうとしてる方がどうかしていると思うよ」

商人「あそうだ、作業工程とか見てみたいんですけどダメですか?」

仮面男「ん?邪魔さえしなければ私は構わないよ。いいかな、彼女を工場に連れて行っても」

店主「俺も構わねぇよ、悪いことしちまったからな」

仮面男「だそうだ。準備するから少し待っててくれ」

商人「分かりました!先に行って待ってますね!」

商人(身なりもよさそうな人ですし、あわよくば何か売れるかもしれませんね)

商人(ここの店で取り扱ってない素材とかも持ってますし……点検だけとか言ってたから売れるかなぁ)

鎧少女「……おい」

商人(作業中は流石にダメでしょうし、始める前に声かけてみようかな)

鎧少女「聞いているのか犬耳?」

商人「狼です!ってうぉあ!!びっくりした!突然現れた!?」

店主「おあっ!アンタいつの間に入ってきたんだ!?」

鎧少女「……驚かせたな、すまない。それより、着物の狼……でいいか?」

商人「はい、狼です」

鎧少女「……あの仮面の男を引っかけようとするなよ?騙されはしないと思うが人がいいからな」

商人「……引っかける?何の事ですか?」

鎧少女「お前の事は先に"あの"二人組から聞いている。護衛を探して詐欺紛いな事をしている奴がいたってな」

商人「な!失礼な!詐欺じゃなくて正当な取引でしたよ!」

鎧少女「まぁそこらへんは興味ないからいいとして、アイツにちょっかい出すようならタダじゃおかないぞ?」

鎧少女「そういうわけだ、失礼する」フッ

商人「おぉう……消えた……」

店主「何だったんだありゃ……」



仮面男「準備できたよ……どうしたんだ?二人ともそんな変な顔をして」

――――――
―――

小休止

ちょっとだけ再開

仮面男「……」

商人「……」

仮面男「……」

商人「……」

商人「ふぁーぁ……」

仮面男「点検しているだけだ、見ているだけでは退屈だろう?」

商人「ふぇ!?そ、そんなことないですよ!」

仮面男「無理はしなくていいよ、大したことは本当にしてないしね」

商人「むぅ……あ、いくつか聞いていいですか?」

仮面男「私が答えられる事なら」

商人「武器の点検を任されたって言ってましたけど、よっぽどあの二人から信頼されてるんですね?」

商人「竜の二人組から信頼されるなんて一体あなた何者ですか?」

仮面男「いきなり思いきった事を聞くね。私は、鍛冶が出来るただの冒険者だよ」

仮面男「もっとも、あの二人が私を信用しているかどうかは分からないけどね」

商人「と、いうと?」

仮面男「私に武器の点検を任せている理由は、私がこの武器を作った本人だからね」

商人「おお、意外な回答」

仮面男「彼の大剣、爆竜剣は私の作品。彼女の二振りの剣、竜鳴剣と竜涙剣は私が補修と改装をしたものだ」

仮面男「私以外にも腕のいい者はいくらでもいるだろうが、作製と補修をしたのが私だから私に預けたのだろう」

商人「へぇ……でも、この都市に着いた時に腕のいい鍛冶師を使い魔に探させるって言ってましたからやっぱり信用してるんじゃないですかね?」

仮面男「ほぅ……」

仮面男「……」

商人「……照れてますか?」

仮面男「……照れてるよ」

商人(なんか面白い人だなぁ)

商人「その武器には何か特殊な機能とか付いてたりするんですか?」

仮面男「ああ、爆竜剣には爆破の魔導核が使われている……これだね」

商人「こ、これ装飾用の宝石じゃなくて魔道核だったんですか!?ここまで大きいのは見たことないですよ」

仮面男「純度も非常に高い、私もここまでいい物は他には知らないね」

商人「でも、爆破の魔導核って確か主にそのまま爆薬として使われることが多いんじゃないですか?」

仮面男「そうだね、普段使われるものは採掘用や解体用に爆薬に混ぜられることが多いが、それはあくまで純度の高くない……悪く言ってしまえば粗悪品だね」

仮面男「特に爆破の魔導核は珍しいものではなく、天然のものでも採掘量も多いし自ずと市場に大量に流通するんだ」

仮面男「魔法で魔導核を作った時に失敗なんかしたりすると大体この核になるしね」

商人「この大剣にこの魔導核を装着させたメリットはなんですか?自爆でもするんですか?」

仮面男「いや、直接爆破させて一個消費じゃ割に合わないよコレ!?」

商人「流石に冗談ですよ」

仮面男「これは、斬った直後に使い手の意思で爆破の魔法を付与するんだ」

仮面男「爆発の規模は振った時の力加減に比例する」

商人「なんか使いにくそうですね。なんで使いにくいものを作っちゃうんですか」

仮面男「と、言うより、この核自体が武器に付けるとこういう能力しか付与できないのが問題なんだけど」

仮面男「もっとマシな物に出来たかもしれないけど、そこは私の力不足だな……」

商人(傍から見てたらこんな立派なモン作り上げる職人は中々いないと思いますけどねぇ)

商人「そっちの……あの娘が持ってる剣は何かあるんですか?」

仮面男「こっちの二振りは雌雄二対の剣、鳴が彼女の父親の亡骸で、もう片方の涙が母親の亡骸で作られたらしい」

仮面男「どちらも長らくある貴族の手に渡っていたらしいが、私と初めて出会った時には既に取り戻していたみたいだ」

商人(うわ、超ハード)

仮面男「こっちは特にコレといった能力は無いが……あぁ、どちらも彼らの牙と爪を素材として使われているね」

仮面男「自分の体の部位を使って武器を作ってくれと言ってきた時はさすがに私も驚いたよ」

仮面男「私も嬉しかったけどね、滅多に手に入る事のない竜の爪や牙を使って武器を作れるのだから」

商人「……あ」

商人(しまったぁぁぁ!!あの二人からこっそり鱗でも剥ぎ取っておくんだったぁぁぁぁ!!)

商人(そうだよ何やってんだ私!目の前にレアアイテムの塊が居たじゃねーか!)

商人(プライド捨てて頼み込めば譲ってくれたかもしれないのにィッ!!私のバカ!!)

仮面男「何か後悔しているようだけど大体察しはつくよ、ご愁傷様」

小休止
しばらく武器話が続きます

再開
もやし炒めは出るかも
綺麗な商人はそのうち

仮面男「他には……実は竜の一部以外に貴重な金属を使っているよ」

仮面男「爆竜剣そのものにはオリハルコンをベースに、鳴涙には補修箇所その他諸々にアダマンタイトを」

仮面男「こっちはもともとアダマンタイトが使われていたからこうするしかなかったのだけれど……」

商人「随分豪華な素材ですね!?あの方たちにそんな高価な物買えるお金なんてあったんですか?」

仮面男「いや、無償で請け負ったよ。自分の腕には自信があるけど、所詮私はアマチュアだからね。保証は出来ない」

仮面男「鉱石は私が用意したものだ。最近は錬金術で質がまったく同じ模造オリハルコン、アダマンタイトが作れるみたいだけど、やっぱり素材にはこだわりたいから本物を使っている」

商人「!?」

仮面男「んー?あちらが貴重な竜の素材を提供する代わりに……だから、無償ではないか」

仮面男「趣味の範囲だね、これは」

商人(いや割に合わねぇだろそれ!?むしろ多くを与えちゃってるよ!?どんな趣味だよ!)

仮面男「この剣についてはこんなところだね、ほかに聞きたいことはあるかね可愛い商人さん?」

商人「ノリノリですねぇ。それじゃあ、私の持ってるこの刀についてはどう思いますか?」

仮面男「刀……東洋の武器か。見せてごらん」

仮面男「ふむ……いいね。反りのない直刀、青白いではなく完全な深い青色の刃」

仮面男「これは特殊合金かな?材質は調べてみないと分からないが、普通の刀は3、4人ほど斬った時点で刃がダメになるが」

仮面男「とても魔力を通しやすい物になっている。使い手が魔力を流し続ける限り刃が血や油分を弾いて長持ちしやすくなっている」

仮面男「切れ味自体も悪くなさそうだ。刀自体も微量ながら魔力を放っていて強化とある程度の再生をしてくれる……」

商人「!?ある程度の再生ってまさか……あ、やっぱり!ちょっと!勝手に刀に傷をつけないでください!!」

仮面男「いやぁすまない、確証があったからこそ少し傷をつけてみたが、瞬時に治ったね」

商人「むちゃくちゃやりますね!?最悪弁償してもらいますよ!?」

仮面男「はは、まぁそうなってしまったら流石に買い取るよ。ところで名前はなんて言うんだい?」

商人「え?私の名前ですか?私は……」

仮面男「いや君じゃなくてこの刀」

商人「ありゃ、これは失礼しました。この刀は名だたる鍛冶師、ヴォーグが唯一認めたという刀!聞いて驚けその名も!」

仮面男(ヴォーグだと……?)

商人「名刀・斬姫!どこの市場にも出回っていないモノホンのレア物!お安くは出来ませんがいかがでしょう!」

仮面男「武器は間に合っているからいいよ……ヴォーグか……」

商人「流石に鍛冶に手を付けてる人でその名を知らない人はいないでしょうね」

仮面男「数百年前に実在した天才鍛冶師……狂気的とまで言われた彼のスタイルは誰もマネすることは無かった」

商人「狂気的……?私の知らない話ですね」

仮面男「彼は決して自分のオリジナルの作品は作らず、いつも必ず模造品を作った」

仮面男「気に入った武器があればそれをどんな手段を使ってでも回収。時には持ち主を死に至らしめることもあった」

商人「ず、随分とえげつない話ですね……」

仮面男「回収した武器を真似て自らが同じものを作る。しかし同じなのは見た目だけ、中身はまるで別物」

仮面男「その武器の数々、時には異形な変形を遂げるものも、時には使用者の命を吸い殺すものもあった」

商人「まるで魔剣ですね……」

仮面男「そう!魔剣なんだ!!」ガタッ

商人「ヒィ!!」

仮面男「武器が出来上がる度に彼は人を斬った!殺した!人間だろうが獣人だろうが構いはしない!!」

仮面男「時に君のような可愛い女の子をズタズタに引き裂いたこともあった!!」

商人「」

仮面男「だが趣味ではない!その生涯をかけて模造品を作り続けたヴォーグの目的はこうだった!」

仮面男「自分だけの、自分の為だけの最強の兵器を作り上げること!!」

商人「へ、兵器!?」

仮面男「そしてヴォーグは作った、その最強の兵器を……」

仮面男「だがそれと同時にヴォーグは悟った」

仮面男「『自分はコイツに見合う人間か?この兵器を振るって最強となりえる器なのか?』と」

商人「ゴクリ」

仮面男「その日、ヴォーグは命を絶った。自らの作り上げた兵器で首を刎ねたんだ」

商人「な、なぜ……?」

仮面男「自分亡き後、この兵器は野に放たれるだろう。自分の命をその兵器に捧げることで彼は自分の魂をそこに閉じ込めたんだ」

仮面男「最強の兵器に最強の担い手が現れることを信じ、その目に焼き付ける為に……」

仮面男「そして時は数百年流れ……出会った!この兵器を意図も容易く扱う者に!」

仮面男「そしてこれが……」スッ

商人「そ、それは?」

仮面男「天才鍛冶師ヴォーグの最終作にして最高傑作、魔剣ガル・ヴォーグ!」

商人「なななな、何故そのようなものをあなたがががが」

仮面男「巡り廻ってきたんだよ、私の手に」

仮面男「最強である私の手にィ!!」

商人「」

仮面男「私が手にしたとき、ヴォーグの魂は確かにここにあった……」

仮面男「そしてヴォーグは私の体と一体化し、今に至る……」

商人「……え?えぇ!?」

仮面男「あぁ、武器が欲しい……貴様の刀……キリヒメと言ったカ……」

仮面男「ウツクシイ……トテモ……」

商人「え、ちょ、冗談ですよね?ね?あはは……」

仮面男「手に入れル……ドンナ手段ヲ使ってモ……」

商人「あ……ぁ……」

仮面男「ソイツヲ……ヨコセェェェェェェェェェエエエエエエエ!!!!」

商人「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」

仮面男「と、言うのは冗談で」

商人「ああああああああああ!!んなこったろうと思ったよ!!!本気でビビったわ!!ちょっとチビったわ!!」

仮面男「それは失礼、この話をして驚かすの大好きなんだ」

商人「趣味わりぃなおいぃ!?」

仮面男「だが、この魔剣ガル・ヴォーグの逸話については本当の事だ」

商人「げっ!それ本物なんですか?」

仮面男「ああ、証明出来るものは無いが間違いなく本物だよ」

商人「それが本当だったら博物館行きの代物ですよ。何故本物だと?」

仮面男「ヴォーグの魂が宿っていたからね、昔は会話なんかも出来た」

商人「んー……にわかには信じられませんが」

商人「それで、そのヴォーグさんの魂とやらは居ないんですか?」

仮面男「ああ、既に役目を終えて魂は消えていったよ」

商人「最強の担い手をその目で見た……ということですか」

仮面男「いや、ある大戦の最終決戦で私の妻がこれを使って敵に攻撃した時に叩き折ってしまった」

商人「はい!?」

仮面男「その時に満足そうに消えて行ったよ、ふふっ『楽しかったぜ、ありがとよ』なんて言ってさ」

商人「……」

仮面男「それで、私が持てる限りの技術で修復したのがこれだ。彼は消えてしまったが機能は完全回復……」

商人「ばっ――――――――――っかじゃないですか!?」

仮面男「!?」

商人「実物だったら国宝級ですよ国宝級!!それを叩き折った!?あなた物の価値わかってるんですか!?」

仮面男「い、いや、これも武器なんだし……使わないといけないだろう?」

商人「はいそうです!確かに武器は消耗品ですし使わなきゃいけないです!で も ね」

商人「これは歴史的価値のある物です!時代を刻む証明です!なのになんですか!?奥さんが叩き折った!?」

商人「どんな怪力女だよ!?見てみたいよその腕っぷし!!」

仮面男「あ、あんまり滅多な事を言うと……」

商人「なんですか!?」

鎧少女「滅多な事を言うと後ろからその腕っぷしを見せつけるぞ、狼娘」

商人「うわ!また出た!?」

鎧少女「失礼な、初めからずっとここに居たぞ」

商人「そんなバカな、私の鼻センサーに引っかからなかったですよ!?今気が付きましたよ!」

鎧少女「私は毎日風呂入るようにしているからなぁ……それで臭いにくいんだろ」

商人「そんなバカな……」

仮面男「紹介が遅れたね、彼女が魔剣を叩き折った私の妻だ」

鎧少女「その言い方やめろ!大体その剣は元々私の物だろう!」

仮面男「ははは、こいつぅ」

鎧少女「誤魔化すな!」

商人「何なの一体……」

仮面男「で、だ」

仮面男「この眉唾物の魔剣と同じく、その刀。彼が唯一認めたと言っていたが、それも証明できるのかい?」

商人「あー、そのことでしたら多少膨張して言ってますけど、彼の鍛冶場の隠し部屋に飾ってあった武器の一つって言うのは本当ですよ?」

商人「少し前ですけど、商人ギルドの正式な場で私も立ち会ってますから」

鎧少女「ほう……そこで誰にも気づかれないようにくすねてきたと?」

商人「人聞きの悪い!その場にいた全員で分けたんですよ、こっそり」

商人「ま、のちにバレてこれが原因で全員ギルドから物品没収と追放食らったんですけどね」

商人「その時に隠し通したのがこの一刀だったというわけです」

鎧少女「最悪だなお前」

商人「こういうものを売らずに倉庫の肥やしにしておく方がよっぽど勿体ないと思いますけどね」

鎧少女「さっき魔剣を博物館行きと言っていたじゃないか」

商人「物によりますよ。確かにこれはヴォーグが所有していたものですが彼が作ったものでは……」

仮面男「いや、それ恐らくヴォーグの作品だよ」

鎧少女「なに?」

商人「なんですと!?」

仮面男「さっきも言ったろう?模造品を作るって」

仮面男「彼のオリジナルはこの魔剣しかない。ヴォーグの銘で作られたといわれる武器は大方が偽物か、気が付かれていないか」

仮面男「死の間際、自分の集めた武器や防具をすべて破壊している」

仮面男「オリジナルとすり替えることでワザと自分の作品が世に出回るようにしたんだ」

仮面男「隠し部屋に置いてあったのは……置き忘れだろう、多分」

商人「多分て……」

商人「いや、でもだとしたらこの刀……手放さない方がいいのでしょうか?」

鎧少女「肥やしにするのはなんちゃらかんちゃら……」

商人「えぇい!急に惜しくなったんですよ!悪いですか!」

仮面男「あと、それが本当に彼の作品なら君の手元から離れる可能性が高いだろうね」

商人「なぬ!?私が手放すとでも?死んでも離しませんよ!」

仮面男「いやいやいや、そういうことじゃなくて。彼の作ったものには特殊な魔法が掛けられているようで」

仮面男「自分の所有者に相応しい者の所へ行こうとするんだ。まるで意志を持っているかのように」

鎧少女「確かにこの魔剣は私は父上から譲り受け、その後手放す事になったが……」

仮面男「それを私が受け取り、そして結果的に君の元へ帰って行ったね。魔法が解けた今は私が使っているけど」

仮面男「いくつか彼の作品を見たことがあるが、ほとんど持つべき者が持っていた、という感じがしたよ」

商人「伝説の武器って感じがしますね。私が所有者に相応しくなれたりしないんですか?」

仮面男「君、剣術は?」

商人「さっぱりです。何分物売りなもので」

仮面男「だとしたら難しいだろうね。ある程度の使い手を好むみたいだから」

鎧少女「後は……波長?のようなものが合ったりするとかか?特徴としては」

鎧少女「お前が旅をしている最中にいなかったか?やたらその刀を欲しがってたり刀が呼んでるとか言う奴」

商人「……」

商人「……サァ?イマシタッケネソンナノ?」

仮面男「いたんだね」

鎧少女「よかったじゃないか、おめでとう。博物館行きも倉庫の肥やしも免れるぞ」

商人「嫌ですよ!あんな奴に渡すなんて!」

魔導核がものすごい表記揺れしてることに今更気が付いた

鎧少女「売りつければいいじゃないか、得意なんだろ?」

商人「流石に無一文の相手に売ることは出来ませんよ。ってかあなたさっきから私に厳しいですね」

仮面男「まぁ、そこらへんは君次第だね。泣く泣く手放すか、泣きながら奪われるか」

商人「涙の別れが決定しているかのように言わないでくださいよもう……」

商人「それよりもうひとつ、聞きたいことが」

仮面男「どうぞ」

商人「あなたが今は魔剣を使っているんですよね?でしたら反対側に置いてある……大きい剣は奥さんが?」

仮面男「いや、こっちも私の剣だ」

鎧少女「私の今の獲物は槍だ」

商人「二刀流とか言うやつですか。なんか誰がどれ使ってるかとか複雑ですねぇ……」

商人「この剣にも何か逸話が?」

仮面男「気になる?」

商人「そりゃあ、ここまで聞いたら。多分こっちもただ者ではないでしょうし」

商人「あ、さっきみたいに脅かす方向は無しで!」

仮面男「む?そうか、残念だ……」

鎧少女(そんなことで落ち込むなよ……)

仮面男「……神器という種の道具を知っているかい?」

商人「えぇと、確か、この世には存在し得ない物質、および製造方法で作られた神が使うとされるアイテムですね」

商人「天界、および異界から何らかの要因で極稀に地上へ持ち込まれることがある」

商人「一振りで幾万の兵をひれ伏す刃、巨万の富を得る幸運を与える首飾り、服用することで異次元の扉を開ける事の出来る丸薬など」

商人「決してその形状は予測できるものではない、神々の使う道具として作られた……ってまさか」

商人「そ、それが……!?」

仮面男「そう、この剣は聖剣マリーフィア。正真正銘の神器、神の作りし……されど、神殺しの剣」

商人「……」





商人「……なんか信じられませんね」

仮面男「言うと思ったよ」

商人「いや~、魔剣の方は百歩譲って信じるとしても流石に神器の方はですねぇ」

仮面男「うん、さすがにこれは信じてもらえるとは思わないよ」

仮面男「この剣の出所はハッキリしているが……ま、真相を知るのは私たち夫婦だけで十分だ」

鎧少女「ああ、誰に話す事でもないだろう」

商人「逆に気になりますねぇ……話さないのならいいですけど」

商人「何か神器らしいギミックとかあったりしたんですか?悪魔の軍勢を一振り血の惨状にさせたーとか、念じただけで人をぬッ殺すーとか」

仮面男「聖剣らしからぬ機能だね……大したものじゃないよ」

仮面男「魔法による刃の出し入れ、以上」

商人「え?それだけ?」

仮面男「そう、それだけ」

仮面男「あ、いや。あと凄く軽い」

商人「それ本物だとしてもハズレじゃないですか……」

仮面男「しかし、地上の技術では不可能なんだ」

仮面男「何もない柄の部分から魔法の刃を形成すること自体は可能だ」

仮面男「だが何もない柄から実体剣を形成することは理論的に不可能」

仮面男「使い手が魔力を込めることでそれを可能にする能力を持つ神器、というわけさ」

商人「期待してたのとなんか違う……」

鎧少女「そう言うな、そういうものだってあるんだ」

商人「じゃあせめてその仕掛け見せてくださいよー。それならそれが神器だって私も認めますから」

仮面男「あー、いや、その……」

仮面男「この聖剣も魔剣と同じく、大戦で……なんだ、叩き折ってしまってね、私が」

商人「―――――――――はいぃ!?」

仮面男(また来た……)

商人「叩き折った!?一体あなたはなんなんですか!?唯一無二の歴史的な一品の可能性があるを壊して回るのが趣味なんですか!?タチ悪いですね!!」

仮面男「しゅ、趣味って……」

商人「それで?魔剣はしっかり元通りになって、聖剣のギミックの方は?」

仮面男「あー……私の技術では流石に……」

商人「何の価値も無くなっちまったよ!!ただちょっと大きい小奇麗な剣だよ!!あ、あとホントに軽い!!」



仮面男「私は何故こんなに怒られているんだ……」

鎧少女「変なのに捕まってしまったな、やれやれ……」

――――――
―――


仮面男「……」

鎧少女「……」

商人「……ふぁ……」

鎧少女「暇なら出て行ってもいいぞ」

商人「んが!?そ、そんな事ないですよ!」

仮面男「……」

商人「……さっきから私を無視するように作業に没頭しているみたいですけど」

鎧少女「あの竜共の武器に直す箇所がいくつかあったらしい。無視されてる訳ではなくただ集中しているだけだ」

鎧少女「ああなると私の相手もしてくれなくなる」

商人「寂しいんですか?」

鎧少女「……寂しい」

商人(可愛い)

仮面男(可愛い)

仮面男「二人ともすまない、今の私ではまともに話し相手にもならないし見ていても退屈だろう」

仮面男「気晴らしに依頼所にでも行って来たらどうだい?」

鎧少女「コイツとか?」

商人「いや、私冒険者じゃないですし足手まといにしかなりませんよ?」

仮面男「大丈夫、彼女は強いし何かあったら絶対助けてくれるから」

仮面男「それに、危険な仕事を受ける必要もないんだ。あくまで気晴らし」

鎧少女「この狼と行動を共にする理由がないじゃないか。却下だ、なるべくお前のそばに居たい」

仮面男「それは嬉しいけど……君はもっと身内以外にも協調性を持った方がいいよ。連れて行っていいよ、私が許可する」

商人「お?それじゃあ依頼に寄生させてもらいますね!」

鎧少女「お、おい勝手に決めるな!バカ!離せ!やだーー!!」



店主「さっきから工場からの叫び声が凄い」

――――――
―――


商人「と、言うわけで依頼所です」

鎧少女「なんで私が……」ブツブツ

商人「そう不貞腐れずに!あ、これなんか私が行っても大丈夫じゃないですか?」

商人「ふむふむ、近年増えているウサギ型魔物の変異種の生態調査ですって」

鎧少女「ん?狩りつくして根絶やしにすればいいのか?」

商人「んな脳筋じみた依頼じゃないですよ!?話聞いてました!?」

鎧少女「冗談だ、そんな事するわけないだろう」

商人「ホントに根絶やしになんてしないでくださいよ?」

鎧少女「するか!……ほら、お前の名前を書類に記入しろ」

商人「こういうのって初めてなんですよねぇ~。チョチョイのチョイっと、OKです」

鎧少女「ん、どれ……林檎?これなんて読むんだ?偽名か?」

商人「偽名じゃないですよ、リンゴ。英語でアッポゥ!そう、それが私の名前です!」

鎧少女「そうか、美味そうな名前だな。それじゃあ提出して出発だな」

商人「あ、ちょっと!流れ的にあなたの名前を私に名乗るんじゃないんですか!」

鎧少女「ここらの地方では位の高い者ほど呪いの類を避ける為に名を名乗らない習慣がある。悪いが私は名乗れんぞ」

商人「うぇ、マジですか。私呪われるんですか?」

鎧少女「名前以外にも色々と条件があるが……よっぽど恨みを買われていなければ何もないだろ」

商人「…………」

商人「林檎ちゃん大丈夫♪」

鎧少女「色々恨みを買ってそうだな。そしてお前の頭は大丈夫そうにない」

小休止
名前出しちゃった林檎ちゃん

再開

鎧少女「さて、それはどうでもいいとして。依頼中は私の言うことを絶対に聞け」

商人「ん?経験者の意見は優先しますが流石にそこまで危ない物じゃないですよね?」

鎧少女「何があるか分からんからな。特に、お前みたいに欲深そうな奴は出張って何するか分からん」

商人「んま!失礼な!流石に私もそういう真面目な時は慎重になりますよ!あと欲深いなんてさっき会ったばかりなのに言わないでください!」

鎧少女「受注できたみたいだな……ほら、行くぞ」

商人「あ、ちょっと!聞こえないふりですか!?」

――――――
―――


商人「都市から出れば広がる未開拓地……」

鎧少女「この森林地帯に棲む魔物の生態調査だな」

鎧少女「必要項目が結構あるな……フンまで回収しなければいけないのか」

商人「なるべく干渉はしないようにともありますね。まぁウサギ型と言っても魔物ですし近づかないに越したことはありませんね」

商人「というか、こんなもの専門の人たちがやればいいじゃないですか」

鎧少女「危険が付きまとうからこそ、取り換えの利く冒険者にやらせるんだろうな」

鎧少女「……しかし木々が邪魔なほど生い茂っているだけで生物自体があまりいないな」

商人「生態系自体が壊れてるんじゃないですか?なんか増えてるとか書いてありましたし……お?」

商人「っとと、これはフンですね。危ない危ない」

商人「魔物の物でしょうか?なまじ鼻が利く分最悪な気分ですけど」

鎧少女「!!……それに近づくな」

商人「え?な、何かあるんですか?」

鎧少女「……恐ろしいな、本当に」

商人「もったいぶらずに行ってくださいよ!なんですか!?」

鎧少女「それ、多分人糞だ」

商人「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」

商人「ホワイ!?なして!?なぜに!?なにゆえ!?」

鎧少女「こういうところでたまにあるんだ……人間とは限らないがそれに近い種族か。まったく、嫌な気分にさせる」

商人「冒険者怖い」

鎧少女「見なかったことにしよう、引き続き探索を続けるぞ」

商人「了解です。あ、ついでにいい香りのする消臭スプレー撒いておきますね。魔物逃げちゃうタイプの臭いですけど」

鎧少女「それはやめろ」

商人「結構歩いてるのに見つかりませんねぇ」

鎧少女「帰りを考えてもこのペースだと今日中には無理かもしれんな」

鎧少女「いかんせん範囲が広すぎる。せめてどこのエリアいるのか依頼主が調べるべきだろ」

商人「この魔物、定期的に住処を変えてるみたいですしそれも難しいとかなんとか」

鎧少女「周期も法則性も分かっていないんじゃ依頼を受けたこっちもお手上げだ」

商人「誰がこんな面倒な依頼受けたんですか?」

鎧少女「……」

商人「……そう、私です!」

鎧少女「腹が減ったな、ここらで飯にしよう」

商人「突っ込みも無しに話題をそらされるとちょっと来るものがありますね」

商人「そうだ、お弁当入ります?林檎ちゃん印の特製弁当、お安くしておきますよ?」

鎧少女「いらん。食事なら持参してきている」

商人「あら残念。携帯食ですか?」

鎧少女「ああ、質素だけどな。夫が作って持たせてくれたものだし食べなきゃ損だ」

商人(携帯食だから知れてるな。お弁当チラつかせてみますかね)

商人「では私はこれ!特製スタミナ弁当!肉肉肉と肉尽くしな贅沢で豪快なお弁当♪長丁場になりそうですし体力付けるのは必須!」

鎧少女「夕方には引き上げるつもりでいるしそんな重いもん食ってれるか。私のはこれだ」

商人「おや?小さな包みから出てくるそれは……」




鎧少女「おにぎりだ」

商人「ここで和風」

鎧少女「夫が東洋の島国出身だからな。携帯食と言えばあっちではコレがポピュラーなんだろ?」モッキュモッキュ

商人「仮面被ってるから顔立ち確認できませんでしたが同郷だったとは。というか小さいのが2つしかないですけど足りますか?」

鎧少女「私は小食だからな、これくらいで十分だ。お前は食わないのか?」モッキュモッキュ

商人「ああ食べ方可愛いなもう!なんかどうでもよくなってきた!食べますよ!この肉しか入ってないようなスゴイ弁当!誰だよこんなの作ったの!!」ガツガツガツ

……

商人「胃もたれしてる上にお腹痛いです」

鎧少女「それみろ」

――――――
―――

商人「結局目標が見つからずに依頼所に帰ってきちゃいましたよ」

鎧少女「こういう時もある。明日もまた森に入るから同じ時間に陣準備をしておけ」

商人「始めは嫌々だったのにノリノリじゃないですかー」

鎧少女「まぁ、日は浅いがこれでもプロだからな。受けたものは責任を持つ」

商人「私は違うんですけどね~。森の中じゃ商売できないし、目ぼしい物も何もなかったし。私だけ損してる感じですよ」

鎧少女「自分から寄生すると言っておいてそれは無いだろう。まあいい、強制はしないから好きにしろ」

商人「いんや!そうは言っても受けてしまったのは自分の意思!終わるまで一緒にがんばりましょう!」

鎧少女「そうか?いい心がけだ」

商人(売ろうと思っていた鉱石が売れそうにないのでしばらく他の物の価格調査だけで済ませようってだけですけどね)

鎧少女「じゃあここで解散だな、私は一旦さっきの鍛冶屋に寄ってから宿泊先に行くが……」

商人「あ゛、宿取るのすっかり忘れてた……どうしよう」

鎧少女「そいつはご愁傷様、では明日」

商人「どうしよう、こんな時間じゃ入れてくれる宿探すなんて難しいだろうなぁ」チラッ

鎧少女「あ、夕飯どうするんだろう。あっちで出ないなら買い物しておいた方がいいかな」

商人「あぁ……こんな大きな街で私は野宿しなければいけないんでしょうか!夜中に暴漢に襲われて無残にも美しい花が散ってしまうなんて!!」チラッチラッ

鎧少女「一度相談してからだな、作るとしたらあいつ何が食べたいかなぁ」

商人「ああ!なぜこんなにも世間の風は冷たいのか!!ああ!なぜなの!!」チラッチラッチラッ

鎧少女「ええい鬱陶しい!!私を見るな私に構うな犬っころ!!」

商人「犬じゃなくて狼ですって!!あ、ちょっとそんな乱暴な!」

鎧少女「乱暴なのは貴様だ!しがみつくな!離れろ!!」

商人「鎧の上からでもわかるような華奢な体ぁぁぁ!!」

鎧少女「離せ変態!周りの視線が痛いからやめろ!!」

商人「つーわけで宿、一緒にお願いします♪」

鎧少女「どういう訳だよ!」

商人「割り勘でいいんですよぉ!お願いします、もうこんな時間に宿なんてどこも入らせてくれないんですから、マジで」

鎧少女「……割り勘でいいんだな?」

商人「お?乗ってきますか、いいですよ。流石に全部そっちが出せみたいに図々しいマネできませんからね」

鎧少女「今でも十分図々しいが……とりあえず離れろ」

商人「はいはーい!では旦那さん迎えに行ってレッツらゴー!」

鎧少女(まずいな……あの竜共に押し付けられる形で厄介な奴に捕まってしまったみたいだ)

小休止

再開

商人「ぐっへっへ、宿代浮いた浮いた」

鎧少女(いつまで笑っていられるかな)

鎧少女「着いたな……邪魔するぞ」カランカラン

店主「いらっしゃい。あぁ、仮面の兄ちゃんの連れか。今しがた作業が終わったみたいで片づけしてるよ」

鎧少女「ん、時間通りだな。外で待っていると伝えておいてくれ」

店主「あいよ」

商人「時間決めてたんですか。今までずっと剣を弄ってたんでしょうか?随分長く作業してましたね」

鎧少女「ああ、とにかく丁寧にやるのがあいつもモットーとかなんとか」

商人「それで、仕上げたのはいいんですけどどうするんですかアレ?わざわざ届けに行くんですか?」

鎧少女「いや、そろそろ取りに来るハズだが……」





竜少女「げ、なんか見覚えのある奴が店の前に立っておるぞ」

騎士「なんか話してるけど……知り合いとかじゃねーよな?」

鎧少女「来たか」

商人「遅かったですねーもう作業とか終わって片づけに入ってるみたいですよ?予定時間より早く来るもんじゃないんですかこういうのは?」

竜少女「予想的中じゃ……」

騎士「うわっ……」

商人「うわってなんですか!?なんちゅう反応するんですかあなた方は!?」

竜少女「小娘、ワシが言うのもなんじゃが交友関係は少し考えたほうがいいぞ?」

鎧少女「お前たちに押し付けられる形になったんだよトカゲが」

竜少女「あ゛ぁん?目上の者の意見もまともに聞けんのかお主は!」

鎧少女「その幼児体型でよく言えたものだな?」

竜少女「お主もちっこいじゃろうが!」

鎧少女「お前よりは背は高い!」



騎士「会うなりいきなりこれだよ」

商人「あらあら、仲のよろしくない事で。で、原因は?」

騎士「大体お前のせい」

仮面男「随分賑やかだね。店の中から普通に聞こえるよ」

商人「あ、ただいま奥さんを連れて無事に戻りました!」

仮面男「どうもありがとう」

チビ!
ヒンニュウ!
チンチクリン!
ガミガミギャーギャー


仮面男「さて、彼女たちはとりあえず置いておいて」

商人「いいんですかアレ?」

騎士「剣のほう、悪かったな」

仮面男「構わないよ、私も趣味でやっていることだし」

仮面男「一応手入れは入念にしておいたよ。よっぽど大きい傷以外は君が持っていれば再生するから、本当に簡単な手入れをしただけだけど」

騎士「その手入れを俺だけでも出来るようになれればそれが一番だけどな」

仮面男「君はこれから長い人生を歩んでいくんだ、ゆっくり覚えていけばいい」

騎士「……"永い"人生か」

仮面男「……すまない、軽率だった」

商人「お二方?何か感傷に浸っているところ悪いんですがそろそろあの見苦しいキャットファイトを止めないと騒ぎになりかねませんよ」


ゴミ!!
カス!!
クソビッチ!!
アバズレ!!

仮面男「oh...」

騎士「」

仮面男「そこまでにしておけ品がない。どうせ突っかかったのは君だろう?」

鎧少女「離せ!今日こそどっちの立場が上かこの爬虫類に思い知らせてやる!」

商人「可愛い顔が台無しですよー」

騎士「先にお前が変な事言うからあっちも突っかかってくるんだよ。喧嘩するくらいなら喋らなきゃいいだろ」

竜少女「ええい離さんか!高々30そこそこの小娘にバカにされては数千年生きたプライドというものが!」

商人「お二人ともやめてください!私の為に争わないで!」

鎧少女「黙れ!訳のわからんことを言うな!」

竜少女「そもそもお主のせいじゃ!」

商人「なんで!?さっきも言われたけど私悪くなくね!?」

仮面男「はいはい、彼女が緩衝材になってくれたおかげで喧嘩はそこまで、これで終わり」

商人「そうです、そこまでです!この話は終わりです!」

商人(被害が拡大する前に)

鎧少女「まったく……分かった。すまないな、少しイライラしてた。狼のせいで」

竜少女「ぬぅ、先に謝られてしまったか。ワシも悪かったの、イライラしてた。犬のせいで」

商人「狼です。だから私のせいにするのはやめろ」

仮面男「3人の見苦しい喜劇をどうも」

騎士「お前ら普通に喋ってるときとかはなんてことは無いのに、ちょっとしたきっかけがあればこれだからな」

喧嘩の下りいらなかったな

仮面男「さて、宿に戻るとしよう」

鎧少女「そうだ、コイツが割り勘で私たちと同じ宿に泊まりたいと言っているんだが構わないか?」

仮面男「ん?構わないが……しかし」

鎧少女「別にいいだろう?困ることもあるまい」

商人「もう決定してますけどねー。よろしくお願いしまーす!」

仮面男「……まぁいいだろう。面白そうだ」

騎士「面白い……?」

竜少女「……ふむ、なるほど。面白そうじゃの、ワシらも帰りのついでに見ていくか」

商人「?なんですか?」

鎧少女「よし、ならばとっとと行くぞ。もう辺りも暗くなってきた」

――――――
―――


商人「……」

竜少女「じゃあワシらはここでお別れじゃな」

騎士「今日はありがとな、それじゃあまた」

仮面男「ああ、さようなら」

鎧少女「またな」

商人「……あの」

仮面男「どうしたんだい?」

商人「いえ、私たち確か宿に泊まるって言ってましたよね?」

鎧少女「確かに言ったな、そして割り勘だ」






商人「…………なにこの大豪邸」

竜少女「よかったのう、こんなに豪勢なところで寝泊まりできるなんてあまり体験できることではないぞ?」

騎士「あーうらやましいなー、俺たちじゃとてもじゃないけど割り勘でも払えそうにないわー」

商人「ちょっっっっっとまてぇぇぇぇぇぇ!!聞いてないぞこんなこと!?豪華すぎるだろなにこれ!?」

鎧少女「言ってなかったからな。もちろんワザと」

仮面男「要人や大物政治家が招かれて泊まるような宿だ、そこらの豪華ホテルと宿泊費を比べるのもおこがましいほど」

騎士「一般人の俺が泊まろうものなら10分で全財産消えてなくなりそうだなーこれは」

竜少女「ま、こやつらはなんといっても割り勘じゃからの、安く済むのではないか?気休め程度に」

商人「」

鎧少女「こんな下らんものの建設費や維持費は税金で賄われている。ちなみに、私たちは招かれて来ているから宿泊費は免除だ」

商人「な、なら私も免除ということで……」

鎧少女「招待されたのは私たち1組だけだ、もう一つ部屋を増やすのならこちらの口利きで代金も半分にしてやろう」

鎧少女「そこらの商人で払える額の金額ならいいんだけどなぁ」

商人「あー……私、別の宿を探してきまーす……」

鎧少女「あーあぁ、誰かさんが泣きついて宿を紹介しろとせがんできたから宿泊費半額という破格の条件で部屋を用意してやろうと思ったのにあんまりだなぁー!」

鎧少女「商人としての信頼に関わるんじゃないかなーと私は思うんだけどなー」

商人「やめて!大声で言わないで!」

鎧少女「なんかこの狼の獣人はいらないガラクタ人に押し付けるようなこともしそうだなー!」

竜少女「この着物を着た商人は都合のいい話を持ちかけて相手を騙して金品を奪ってそうじゃのー!」

商人「おいバカやめろお前ら!人通りが多いんだよここは!」

鎧少女「本性を現したぞ!」

竜少女「やっぱり極悪人だったのじゃ!!」

商人「はぁ!?根も葉もないこと言わないでくださいよ!言わせたのあなた方でしょ!?」

竜少女「うわーん!怒鳴られたのじゃあー!この犬耳のおねーちゃんが苛めたのじゃあー!」ダキッ!

鎧少女「やめてください!泣いている子もいるんですよ!」ナデナテ

商人「ちょ!?なんてことを……」



ワイワイガヤガヤ

「えーなにあれ?」
「あの獣人が泣かせたみたいだ」
「まだ小さい子二人相手に……」
「もやしと玉子焼き或いはパスタ要りませんかー?」
「聞いたか?商人だってよ?」
「うわ、詐欺か?」
「ひでぇな、まだ相手は子供じゃないか」

ワイワイガヤガヤ

商人「な、あ……」




騎士「天罰が下ったか」

仮面男「明らかに人為的なものだけどね。そして謎のコンビプレーだ」

商人「お、おおお……」

鎧少女「?」

商人「覚えてやがれコンチクショー!!」ダダダダダッ




竜少女「凄い勢いで逃げて行きおった」

鎧少女「ま、このくらいでいいだろう。私は被害を受けていないからアレだが、少し目に余るものがあったしな」

鎧少女「逆にこの状況から開き直っていれば部屋をとってやろうかとも思ったが」

仮面男「この状況から開き直ったらメンタルが強すぎるだろう」

竜少女「ワシらは心底スッキリしたがの!」

騎士「いいもん見れたよ、ありがとな」

仮面男「これならここら辺の地区ではしばらく商売は出来なさそうだね。可哀そうだけど」

竜少女「こんな立派な豪邸が立っていて金持ちが多そうな地区じゃしな、あやつに取っては高い授業料になったの」

鎧少女「あ、しまった。これじゃあ明日あいつ依頼所に来ないかも……」

仮面男「彼女は必須なのかい?」

鎧少女「いや、そういうわけじゃなけど……まぁそれならそれでいいか」

騎士「それじゃあ俺たちは今度こそ御暇しようかね」

竜少女「またの!」

鎧少女「楽しかったよ、またな」

仮面男「付き合ってくれてありがとう、おやすみなさい」

――――――
―――


商人「あぁ、実に不幸だ。何故私がこんな目に合わなきゃいけないんだ」 ※自業自得です

商人「ってか初めから泊める気とか無かったって事かよ!なんか今になって腹立ってきた!」

商人「チクショウ、幸い商店街通りで明るいからまだいいものの、こんな発展している都市のど真ん中で野宿とか嫌ですよ」

商人「……結構歩いたし、ここら辺なら商売出来るかな?そのまま夜を明かせば何とかなるでしょう!」

商人「よし、そうしよう!念のためマスクとサングラスを付けてっと……ここに露店を開くわ!!」


商人「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!珍しいレアアイテムの陳列!滾る商人の熱線!どこにもない素晴らしきユートピアが今ここに!!今、買い取りも熱い!高価な物を売って買って!当てろ世界一周旅行!(?)」




商人「って、通る人たちみんな可哀そうなものを見るような目で私を一目見てから通り過ぎるばかり……これだから都会はっ!!」チョンチョン

商人「誰ですか背中をつついて。私は今忙しいんですから」

少年「ねぇ犬耳のねーちゃん」

商人「狼ですって、子供?もう夜ですよ、こんな時間にうろちょろしてたら悪いおじさんに連れていかれちゃいますよ?」

少年「さっき俺と同じくらいの子苛めてたの見てたよ、泊まるところ無いんだろ?」

商人「oh...」

商人「ワタクシハ先ホド騒イデイタモノ達トハ関係アリマセン」

少年「そんな変わった服着てる人なんてねーちゃんしかいないって」

商人「というか何ですか?私に何か要件でも?からかいに来たというのなら営業妨害でムショに突き出しますよ?」

少年「何言ってるのかよくわからないけど。よかったらさ、俺ん家に泊まっていかない?」

商人「ガキんちょの癖に私を家に連れ込もうと誘ってるんですか?そういうことはもう少し大人になってからするんですね」

少年「ねーちゃんみたいなひんそーな体なんて興味ねーよ」フニョ

商人「っておい!胸を触るなマセガキ!私は高いぞ!?」

少年「ウチ民宿なんだよ。今は誰も泊まってないし、ねーちゃん宿無しで可哀そうだから母さんが客引きして来いってさ」

商人「可哀そうな扱いされちゃったよ……それならまぁありがたい話ですけど、騙して強面なお兄さんがたくさん居る部屋に押し込まれたりしないでしょうね?」

少年「?なんで?」

商人「あぁ、純粋無垢な子供に何言ってんだ私は!分かりました、案内してください!」

少年「やりぃ!お客さん取ってお小遣いアップだぜ!」

商人(私の思考が完全に穢れてるパターンだったか……胸触ったことは水に流してやるか)

商人「あ、そうだ。お菓子食べます?」

少年「なに?タダでくれるの?商人なのに?」

商人「ちょっとしたサービスですよ。はい、リンゴ飴」

少年「うおすっげぇ!なにこれ見たことない!」

商人「ぬっふっふ、これはですねぇ……」

――――――
―――


少年「母さん、連れてきたよ」

商人「お邪魔しまーす」ソロー

母「あら、いらっしゃいませ」

商人(よし、大丈夫そうだ)

商人「この子から紹介されて来たのですが、いいんですか?」

母「はい、今日は誰も宿泊予定の人は居ませんからね」

商人「……さっきの騒動を見ていたんですよね?いいんですか?」

母「ええ、私はそういう事は気にしませんから。初めから見ていたので楽しかったですし」

商人「あ、なーんだ。だったら私が悪いことしてないのは知ってるんですね!よかったよかった」

母「推定無罪ですけどね」

商人「ひでぇ」


少年「じゃあ俺部屋の用意してくるよ」

母「先に手洗いしなさいね。あとうがいも……」

少年「そんな子供扱いすんなって!今は俺は従業員なんだからさ!」タタタ

母「あ、ちょっと。……もう、最後まで聞かないで」

商人「ふふ、頑張ってる姿が可愛いじゃないですか。人の胸勝手に触りましたけど」

母「あら、ごめんなさい。あの子、好きな子にちょっかいかけるのが癖なんですよ」

商人「ありゃ、私は好かれてるってことですね?ま、子供のすることですし構いませんけど」

母「ふふふ、ありがとうございます。それと、食事はお済ですか?もうすぐ支度ができますのでご一緒にいかがですか?」

商人「お?それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」

休憩

>>153
投下中に文句言うなカスって言おうと思ったら>>1だった件

再開
>>166
それは私のお稲荷さんだ

食卓にて

少年「ねーちゃんどこから来たの?何歳?スリーサイズは?」

母「こら、ご飯食べてるのにあんまり質問ばかりしてるとお姉さん疲れちゃうでしょ。あと最後の質問はやめなさい」

商人「出身は東の方の小さな島国ですね。歳は今年で22になりました。スリーサイズは答えるわけねぇだろエロガキ」

母「あぁ、どおりで綺麗な服を。あちらではそのようなものが普段着なんですか?」

商人「いえいえ、もう着物着てる人は滅多にいませんよ。こういう服装の方が商人っぽいので私はこんな恰好してるんです」

少年「そういうの知ってるよ!男はサムライとかニンジャとかってのでしょ?」

商人「あー、探せばいるんじゃないですかね。最近は他国に影響されて剣士とかアサシンとかにすり替わってるみたいですけど」

母「ここにはやはり商売をしに?」

商人「ええ、鉱脈が近場に無いので鉱石を売りさばこうとしたんですけど……」

母「最近鉱脈と物作りの盛んな隣国から大きな支援がありましたからね」

母「そういえば、近々その隣国の国王様を呼んでパーティが行われるそうですよ?」

母「確か場所はあなたが騒ぎを起こしていたあの豪邸で」

商人「騒ぎを起こしたのは私ではありません。でも、それなら上手く集まってきた金持ちを引っかければいい商売になりそうですね」

商人(ん?だったらあそこに宿泊したあの二人組は一体何者……?)

母「でも物を売ること自体が難しいんじゃないですか?」

商人「と、いうと?」

母「パーティは関係者以外は立ち入れないみたいですし、外で商売するにしてもあなた……」

商人「……そうでしたね」

少年「ねーちゃん歩いてた人たちみんなからスゴイ目で見られてたね」

商人「ここら近辺ではもう何もできないですね。次会ったらどうしてやろうか」

再開

母「ですけど、国の代表が来るわけですからそのパーティに合わせて各所で催し物を出すみたいですよ」

母「ここじゃ流石に露店も開けないと思いますが少し場所を変えれば出来るんじゃないですか?」

商人「ふむふむ、なるほど。金持ちは捕まりそうにないですけどそのお祭り騒ぎで来る観光客やらなんやらにいろいろ売り捌けどうですね」

母「本当はウチもそれで女性3人のお客さんの宿泊予約を取ってたんですけど、2日前に列車事故があったみたいで来れなくなったとか……」

商人(……列車事故?)

少年「貨物車が誰かに切り離された上に穴だらけになってて氷漬けになってたってニュースでやってたね」

商人(氷漬け……?あぁアレか……うん、私は悪くない)

母「電話でひょっとしたら来るとしか言われなかったので……部屋は一応開けてるんですけど」

少年「ウチは有名でもないし他のお客さんも居ないけどね。で、都合よく宿無しのねーちゃんが現れたってわけ」

商人「宿無し言うな!……私が魔導都市に着いてから宿を探したのはお昼前でしたけどそれじゃあ遅かったみたいですね」

少年「予約とかもあるはずだし、朝方に宿を探しても馬小屋みたいなところしかないんじゃねーの?」

母「こら、ウチも宿屋なんだからそういうことは言っちゃダメでしょ?」

少年「だっていくつか本当に馬小屋みたいなところあるんだもん」

商人(都市と言っても貧富の差はピンキリですか……)

一方その頃

―――――――――

騎士「俺たち、まるでまともな宿があるように振る舞ったけどさ」

竜少女「寒いのじゃ……」

騎士「この部屋、壁に穴開いてるよ……窓ちゃんと閉まらないし」

竜少女「……隣の部屋から若い力を漲らせている卑猥な男女の声が聞こえるのじゃ……」

騎士「……明日は野宿でいいよな?」

竜少女「うん……」

―――――――――

少年「そうそう!ニュースと言えばさ、俺も大ニュースがあるんだ!」

母「なに?またどうせ女の子にちょっかいかけて酷い目にあったとかでしょ?」

少年「いつもやってることだけどそんなのニュースじゃねーよ!」

商人「いつもあんなことやってんのかよクソガキ」

少年「別に減らないからいいだろそんなもん」

商人「女の子大事にしないといつかバチがあたりますよ」

少年「それはどうでもいいや。それより、ここの地区から街の外に出てすぐの森あるじゃん?」

母「またそんな危ないところへ行って……!あそこは整備されてないし魔物もいるかもしれないから行っちゃダメって言われているでしょう?」

少年「へーきだよ、あそこで魔物なんて見たことないんだもん」

少年「それでさ、その森に行ったときにさ、すっげぇ大きいのがいたんだよ!」

商人「魔物ですか?」

少年「だから魔物じゃないって。ウサギだよ、ウサギ」

商人「ウサギ……?」

母「それでどうしたの?まさかちょっかいかけたの?」

少年「ううん、遠くで見てたらさ、顔色の悪い変なおっさんが『ここは危険だよ』って言って俺を連れてワープしたんだよ!ワープ!」

母「そんな変な作り話を……お姉さんの気を引こうとしてるの?」

少年「ち、違うよ!ウサギもワープしたのもホントの大ニュースなんだから!」

商人「変なおじさんはともかく……そのウサギはどのくらい大きかったかわかりますか?」

少年「え?んっと……ウチの1階の天井くらいかな?」

母「本当にいたとしてもそれは魔物じゃない!もうあそこへは行かない事!わかった?」

少年「ちぇー、数少ない遊び場なのになぁ」

商人(依頼所で貰った情報ではウサギ型の魔物は小型ということは記載されていたはず……これが変異種?)

少年「ごちそーさま!風呂入れてくるね」

母「はい、お願いね」

商人「あ、私もごちそうさま。お夕食まで頂きましてありがとうございます」

母「いいですよ、実は宿泊費の中に含まれてるサービスですし」

商人「それは私が今食事をしなくてもしっかり夕食代取られてたってことですか」

母「うふふふ」

商人「食えない人ですねぇ……っていうか先に言ってくださいよ」

母「ご一緒するとおっしゃいましたので言う必要はないと思ったんですよ」

商人「それを知らずに朝食とか逃したらどうするんですか」

母「うふふふ」

商人「……」

母「……」

母「冗談ですよ?」

商人「じゃないと困ります」

母「失礼しました、ではお風呂の準備ができるまで部屋で寛いでください」

商人「そういやお風呂入れてくるって言ってましたけど、シャワーで済ませるものじゃないんですか?ここら辺は」

母「東洋のお客さんも結構来ますから、湯船に浸かりたいという方もいらしたので」

母「あんまり広くない家ですけど張り切って和室も用意したりしてます」

商人「お?ってことは私が借りる部屋が?」

母「そうですね、余計なお世話でしたか?」

商人「いえいえ、私もそっちの方がいいですよ。ありがとうございます」

少年「ただいまー。それじゃあ俺が部屋に案内するね!」

商人「んじゃあお願いします」


……


少年「ここだよ」

商人「おお、畳!イッツ畳!!そして何故か飾ってある鏡餅と角松!正月かい!!」

少年「母さん東洋の事分からないからそれっぽいのをそれっぽくしただけだけどね」

商人「穴だらけの障子!他の客のせいかこれは!」

少年「それは俺がやっちゃった」

商人「何故破った!?これ一か所破ると直すの全部はがさなきゃいけないんだよ!?」

少年「あ、いや。前に美人のねーちゃんが泊まった時に中が気になってつい」

商人「将来有望だなこのガキんちょ!?」

商人「あとなんですか?この趣味の悪い……」

少年「それ?ゴガツニンギョウだったかな?ヒナニンギョウ?母さんが買ってきたやつだからよくわかんないや」

商人「どう見てもワラニンギョウだよ、そしてなぜこんなにデカいんだ」

母「抱き枕にどうぞ♪」

商人「使わねぇよ!?胸のあたりに釘刺さってるよ!?どうやって私の国の知識付けたらこんな器用な間違いするの!?あと突然現れないで怖い!」

母「あ、これなんかどうです?竹が無いからそこら辺の木の棒で補って自分で作ったんですけど」

少年「テレビでよく見るよね、なんかこう『カコーン』てなるやつ」

商人「ししおどしだよ!?部屋の中に置くものでもないしそこら辺の木の棒使ってる時点で原型留めて無いよ!?」

母「力作です」ドヤァ

商人「決定的に何かが間違ってます!もういい疲れた……」

母「ではごゆっくり~」

少年「ねーちゃん!後で背中流してあげるよ!」ガラガラピシャ!

商人「テメェ人が風呂入ってる最中に一歩でも足を踏み込んだらグーで殴るぞグーで」

商人「あ゛ーやっとゆっくり出来る」

商人「騒がしい親子だなまったく、いや一方的に騒いでるのは私か。突っ込みが追いつかん」

商人「さて、お風呂に入る前に商品の手入れでもしますかね」

商人「ちゃんと面倒見てあげないとヘソ曲げちゃいますからねぇ」

商人「お、そういえば。先日買い取った魔導核付きの指輪の鑑定してませんでしたね」

商人「ごたごたしてたせいですっかり忘れてました、鍛冶屋で調べてもらうのが手っ取り早いですけど……」

商人「ま、明日あの仮面の人に頼みましょうかね。若干会いづらいですけど」

少年「ねーちゃん独り言多いね」

商人「障子の隙間から覗くなエロガキ」

小休止

これ前作とかあるのか
良ければスレタイ教えてもらませんか

>>186
同じキャラが何人か出てくるだけで直接的な繋がりはないけど
勇者「定食屋はじめました」

げ、しばらくトリつけ忘れてたのか

再開

少年「とりあえず風呂湧いたよ」

商人「そうですか、わかりました。それじゃあさっそく入りに行きますか」

少年「うん!」



商人「……」テクテク

少年「……」テクテク

商人「つ い て く ん な」

――――――
―――

カポーン

商人「お風呂に浸かれるなんて久しぶりですねぇ」

商人「普通の宿でもシャワーか最悪野宿で水浴び程度ですし」

商人「女一人旅って危険が多いんですよねぇー。襲われかけたことが何回あったことか」

商人「……体目当てじゃなくて荷物目当てばっかりだったなぁ」

商人「私ってそんなに魅力ないんでしょうか……」シュン



少年「ねーちゃん!背中流すよ!」ガラガラッ!!

商人「お手製爆弾FBR-2!!」

少年「目がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

商人「次に来たら本気で顔面にグーですよ?」

……

商人「あのガキ油断も隙もありゃしませんね、私の貞操が危なすぎます」

『……お邪魔します』

母『あら、こんばんは』

商人「?」

『……予約を入れた者ですが』

母『えぇっと確か……』

『……3名女性で入れてたはずです。名前は青空カフェ御一行で』

母『はい、ご予約を受けています。お疲れ様です、列車事故大丈夫でしたか?』

『……それなりに』

母『他のお客様は?いらっしゃらないみたいですが』

『……今日は来れない、明日に来る』

母『畏まりました、3泊のご予定でしたね。お夕食は……』

『……頂きます』



商人「どこかで聞いたことのある声と喋り方だなおい」

母『今作りますのでごゆっくりして行ってください』

少年『眼帯のねーちゃん!俺が部屋に案内するよ!』

商人「やっぱり眼帯の人か……どういう巡り合わせだよこりゃ」

商人「また鉢合わせになるのも嫌ですしバレないうちにとっとと部屋に戻りますかね」チャプ

眼帯少女『……先にお風呂に入りたい。あっち?』

少年『あ、ちょっとまって!今他の人が』

商人「あ、やべぇ。こっち来るか?」

眼帯少女『……入ってるの女?』

少年『う、うん』

眼帯少女『……なら構わない』

少年『え?でも……』

眼帯少女『……脱ぐからあっち行ってて』

商人「逃げれねぇ……」

眼帯少女『……入るけど、構わない?そう』ガサゴソ

商人(何も答えてねぇよ!もうなんか脱いでるし!)

眼帯少女『……それじゃあ入る』

商人(ん~、よく考えたら売り物の事とあの剣士の事があっただけだし気にするまでもないのか?)

商人(気まずくてもとっととお風呂あがればいいだけですし、腹括りましょうか)

単眼少女「……失礼する」

商人「ど、どうぞ~」

単眼少女「……」

商人「……」



商人「!?」

単眼少女「?」

単眼少女「……あぁ、前会った人……久しぶり?」

商人「……えっと……どちら様でしょうか?」

単眼少女「……?」

商人「私の知り合いにサイクロプスはいません」

単眼少女「……」

商人「……」

単眼少女「……驚かせてごめんなさい……」シュン

商人「だぁぁぁ!違う違う違う!決してビックリしたとかじゃなくて単に驚いたというかなんというか!」

単眼少女「……」ナミダメ

商人(サイクロプスの女性って自分の顔にコンプレックス持ってて凄く傷つきやすいんですよねぇ……)

――――――
―――


商人「あのぅ、ごめんなさい。悪気があったわけじゃ……ほら、お風呂上りに一杯牛乳飲みます?有料ですが」

眼帯少女「……いらない。驚かれるのは慣れてる……相手の事を考えなかった私が悪い……グスッ」

少年「あー、ねーちゃんが眼帯のねーちゃん泣かせたー」

商人「だーかーらー!」

眼帯少女「……いい、誰だってアレを見たら驚く」

単眼少女「……こんな風に」ピラ

少年「」

眼帯少女「……グスッ」

商人「泣くくらいならやらなきゃいいじゃないですかそれ」

眼帯少女「……でも、眼帯取らなきゃお風呂に入れない」

商人「そもそもその眼帯どうなってるんですか?明らかに顔の構造変わってるじゃないですか」

眼帯少女「……マジックアイテム。私の友達から貰ったもの」

商人「へぇ、凄いアイテムですねぇ。作ったのもそのお友達ですか?」

眼帯少女「……作ったのは友達の友達。私もこの眼帯がどんな仕組かは分からない」

商人「私もそんなもの聞いたことないですからねぇ。これが量産できれば世のサイクロプス達を救えるかも……」





商人「それじゃあ後学の為に、それ売ってください」

眼帯少女「ハハッ、残酷な事を言う」

商人「ではそれを作ったお友達のお友達を紹介してください」

眼帯少女「……教える気はない。いい予感がしない」

商人「むぅ、それは残念ですねぇ、まぁいいですけど」

商人「よし、とりあえずあなたは起きてください。悪夢は終わりましたよ」バンッ

少年「はっ!?父さん!?死んだ父さんが川の向こうで手を振ってた!」

眼帯少女「……グスン」

商人「泣いても喚いてもあなたが撒いた種です」

商人「そうだ、ついでに頼んでみるか……」

商人「すみません、あなた確か鍛冶師だって言ってましたよね?」

眼帯少女「……うん、そう」

商人「それじゃあちょっと頼んでもいいですか?」

眼帯少女「鍛冶の仕事?」

商人「はい、この指輪の魔導核の効果を調べてほしいんですけど……できますか?」

眼帯少女「問題ない、出来る。納期は?」

商人「あ、えぇっと……出来ればすぐに」

眼帯少女「分かった、じゃあ部屋に篭るから。明日の夜に取りに来て、それ以上早くは出来ない」

商人「わ、わかりました……」

眼帯少女「……それじゃ……あ、少年」

少年「え?あ、はい!」

眼帯少女「……食事は部屋で取るから、持ってきて」

少年「うん、わかった……」

眼帯少女「……」スタスタ


少年「なんか、眼帯のねーちゃん仕事の話になったら凄くハキハキ喋り出したね」

商人「うむむ、アレがメリハリのあるプロってやつですか」

商人(値段は鑑定後ということになりそうですね……ま、それは当然として)

商人(明日どうしましょうねぇ。仮面の人に会う理由が無くなっちゃいましたし)

商人(でも……ウサギ型の魔物の件も気になりますし、それは一応報告しておいた方がいいでしょう)

商人(大きい魔物のせいで一緒に依頼を受けたあの人がやられちゃったら私も寝覚めが悪いですし)

少年「ねーちゃんはもう寝るの?」

商人「え?あぁ、そうですね。もうすることも無いですし」

少年「それじゃあさ!俺に何かアイテム見せてよ!変なものとか持ってるんでしょ?」

商人「変ってなんだよ変って!?……ん~まぁ仕方ないですね、ちょっとだけですよ?」

商人「変わったものと言えば例えばコレ!獣寄せの笛!」

少年「おお!なんかそれっぽい!吹くとねーちゃんの仲間の犬が集まってくるとか?」

商人「私は狼です。いえいえ、そんなチンケなもんじゃないですよ!」

商人「なんと!この笛はこんな風に吹くだけで!」ピィィィィィ!!

少年「吹くだけで?」




商人「狼男の山田さんの霊を降霊させることが出来るのです!」

山田「やぁ」

少年「誰だよ」

少年「その幽霊山田が何の役に立つんだよ!?」

商人「山田さん舐めんなよ!?一人旅で寂しがってる私にとって大切な友達なんだよ!?」

山田「林檎ちゃん、今日も可愛いね」

少年「ナンパ始めたよ!?」

商人「山田さん中々のプレイボーイだったみたいです、さすが狼」

山田「こっちの少年はお友達かい?君も可愛いね?」ジュルリ

少年「こいつバイだよ!?両刀だよ!?今すぐ縁を切るべきだよねーちゃん!!」

山田「バイバーイ、なんつって」

商人「はい、夜分遅くにすみませんでした、おやすみなさい」

少年「渾身のギャグをスルーしたよ!ってか普通にガラクタじゃん」

商人「ガラクタとは失礼な!変わり種ならまだまだありますよ~ホラ!」

商人「姿ミエナクナ~ル(薬用)!」

少年「(薬用)!?」

商人「これ危険薬品ですから免許取るの苦労したんですよねぇ」

少年「で、一応聞くけど効果は?」

商人「まぁ、文字通り姿が見えなくなりますね」

商人「効果はかなり融通が利いて、来ている服や持っているものも一緒に消えてくれるんですよ」

少年「夢のような薬だね!」

商人「ですが、さすが危険薬品に分類される代物!」

少年「……強い副作用でもあるの?」

商人「いえ、この薬正しくは不可視になるのではなく飲んだ人そのものの存在を限りなく薄くさせるんです」

商人「しかも効果時間はその人その人で変わって、最悪のたれ死ぬまで誰にも相手にされず一生を終えた人もいました」

商人「他には人の煩悩に強く反応して邪まな事を考えると全身の骨が粉々に砕け散ります」

少年「こえぇよ!!よくそんなもん世に出回ったな!?」

商人「……違法ものです。現物も取扱い免許も」

少年「おいぃ!!」

商人「それはそれ、これはこれ。さて次は……」

少年「も、もういいよ変わり種は……いろいろと確信したから」

商人「私が優秀だと?」

少年「なんでそうなるの!?優秀っぽさこれっぽっちも無かったよね!?」

商人「ま、生きていくにはこれくらい黒くならなきゃいけないんだよ……大人はね」フッ

少年「少なくとも俺の知り合いにねーちゃんほど黒い大人はいない」

少年「って、そんなものよりさ!武器見せてよ武器!」

商人「武器ぃ?あぁ、やっぱり男の子ってそういうのに憧れるんですね」

小休止

やっと再開

少年「だってカッコイイじゃん!知り合いの冒険者のにーちゃんとかの持ってる剣とかスッゲェ飾り付けしてあったりしてるしさ!」

商人「ゴテゴテした装飾だからって強いというわけじゃないんですけどね。自分に合った使いやすさとかそういうのを……」

少年「そんなのいいからさ!早く見せてよ!」

商人「あなたみたいな子供に紹介する武器はありませんよ、危ないったらありゃしない」

少年「そこはホラ!ねーちゃんスゴイ商人なんでしょ?俺みたいなのが扱える安全な武器とかさ」

商人「ンなモンあっても見せるわけにはいかないの!ガキはとっととクソして寝ろ!」

少年「ちぇっ!なんだよケチ」

商人「ケチで結構。私は子供を戦わせるために商売してる訳ではありませんので」

少年「どいつもこいつも子ども扱いしやがって!こんなところに居られるか!もういい、俺は部屋に帰る!」

商人「あ、ちょっと!どうでもいいところで死亡フラグを……行っちゃったよ」

商人「ま、でも子供にはちゃんと言い聞かせておかないと何やらかすか分かりませんしねぇ」

母「えぇ、まったくです」

商人「ファ!?」

母「あの子ったらあろうことか冒険者に憧れて……」

母「将来はここを出て旅をしながら暮らすんだって言ってるんですよ?冒険者って言ったらニート予備軍じゃないですかもう……」

商人「それを冒険者の人の前で言ったら怒られますよ、そんな事より突然現れるのはやめてください」

母「将来は宿を継いでほしかったんですけど……男の子ですからね、そういうのに憧れちゃうのは仕方がないんでしょうか?」

商人「活発ですからねぇ、でも最近は女の子でも冒険者になりたいって子は増えてるみたいですよ?あと私の発言スルーされること多いなホント」

母「あの子に武器を見せるような事はしないでくださいね?一応」

商人「それはご安心を。私だってお客さんを見て商品を選んでますから」

商人「それに、子供に武器を持たせるなんてことは私は絶対にしませんので」

母「お願いしますね。それじゃあおやすみなさい。朝は朝食をおとりになりますか?」

商人「はい、頂きます」

母「それでは朝食が出来次第起こしに来ますので」

商人「普通に起こしてくれれば助かります」

母「フフフフ……」

商人「……」

母「……」

母「……おやすみなさい」

商人「おい、ちょっと待て。さっきみたいに冗談って言わないのかよ」

――――――
―――


商人「なんか部屋の風景が気になってまともに眠れなかった」

ガラガラ

母「おはようございまーす!とりあえずこれで起きて……あら起きてたんですか?」

商人「おはようございます、なんでバズーカ構えてるんですか?」

母「いえ、東洋ではこれがドッキリな起こし方だと聞いてたものですから」

商人「……もういいよ」

母「では朝食が出来てますので温かいうちに召し上がってください」

商人「分かりました、着替えてから行きますね。あとガキんちょ、後ろで待機するな、お前も出ていけ」

少年「チッばれたか」

……


母「ところで、今日はお出かけですか?」

商人「はい、約束がありますので」モグモグ

商人「ってそういえば何泊するって言ってませんでしたね」

母「そういえばそうでしたね、基本的には2泊する人が多いですけどどうなさいます?」

商人「順序が逆になったな……しばらくここを拠点にしますので1週間程泊めさせてもらいますか?」

少年「ここら辺で商売できそうにないのに?」

商人「うっさい、地区くらい変えるわ!」

母「ええ、大丈夫ですよ?宿泊費の方は前払いですが……」

商人「あ、そっちもすっかり忘れてましたね。失敬失敬」

少年「これで払わずに出て行ったら母さんの雷が落ちるんだぜ?」

商人「ほほう?と、言うと?」

少年「必殺のブレーンバスターが……あ、ちょっとやめて!」

母「そんなでたらめを言う子にはこうです!」グキッ

少年「ホグゥ!!」

商人「とりあえず恐ろしいのは分かりました、下手すると本気で死ねますのでやめてあげてください」

――――――
―――


鎧少女「……そろそろ時間だな、さすがに来ないか」

竜少女「まぁ昨日の事もあるじゃろうし来るに来れんじゃろうて」

鎧少女「念のために代わりにお前を連れてきたんだが、どうやらそうして正解だったみたいだな」

鎧少女「でもよかったのか?お前、あの男に依頼なんて受けなくてもいいって言われてるんだろ?」

竜少女「奴の事は気にせんでいい。ワシを気遣ってくれるのは嬉しいことじゃがどうにも暇でな」

竜少女「お主とお茶をすると嘘を言ってきたわ」

鎧少女「ウチの旦那なら上手く誤魔化してくれると思うが……気の毒だなそっちの旦那は」

竜少女「よいよい、たまにはワシもいろんなことをしてみたい」

鎧少女「これ以上ここで話していても仕方がない、それじゃあ行くか」

商人「ちょいとまちなレディ達!」

鎧少女「うわ……」

竜少女「あんなことがあったのに来おったわ……」

商人「あ、何その反応!?悲しい!林檎ちゃん泣いちゃう!」

鎧少女「何故来たんだ」

商人「一度した約束はちゃんと守りますよ!それに今回の依頼の事で気になることもありますし」

鎧少女「……なんだ?言ってみろ」

商人「やっぱり気になりますよね?この情報が欲しかったら有料……」

竜少女「もうコイツ焼いてもいいんじゃないだろうか」

鎧少女「許可する、やれ」

商人「……の所を本日無料とさせていただきます。冗談です、やめて、口の中に炎を溜めないで」

……


商人「……と、言うわけなんですよ」

鎧少女「2メートルちょっとのウサギ型の魔物か」

商人「はい、貰った資料には何も書かれていなかったので」

鎧少女「確かに、この魔物は普通のウサギと同じ大きさのように書かれているな」

鎧少女「……これが本当なら契約違反で違約金ふんだくれるな」

商人「お?中々セコいこと考えますねぇこのこの!」

鎧少女「言ってみただけだ、お前じゃあるまいし」

商人「なぬ!?私がそんなみみっちい商人に見えますか!?」

鎧少女「見える」

竜少女「見える」

商人「チクショウ!世知辛い世の中だ!!」

鎧少女「確認も踏まえて調べてみるか。子供の言うことだから信憑性も怪しいし」

竜少女「こやつがいるならワシは不要か?」

鎧少女「いや、念のため戦える人材が欲しい。着いてきてくれ」

竜少女「うむ、よかろう。しかし、お主がいるなら戦力的にワシは要らないような気もするが……」

商人「?竜ほど戦力になる人材なんてそうそういないんじゃないですか?」

竜少女「この女、その竜であるワシより強いぞ?」

商人「へぇ、ただ者ではないと思ってましたがそんな人本当にいるんですねぇ」

竜少女「……お主、信じておらんな?」

商人「ええ、まったく」

鎧少女「お前たち、グダグダ言ってないで行くぞ」

商人「あ、旅路で何か必要になったらいつでも言ってくださいね。お売りしますから」

竜少女「安心しろ、買わん」

鎧少女「本当に必要なら奪い取るからいい」

商人「ひでぇなおい!」

――――――
―――


竜少女「どうじゃ?何かいたか?」

鎧少女「ダメ、碌に動物もいない」

竜少女「そろそろ昼になるな……結構な時間探してもこれか、先が思いやられるのぅ」

商人「そうは言ってもこの森、なかなか広いですしね」

商人「竜さん、あなたが変身してバビューンと空を巡回して探すとか出来ないんですか?」

竜少女「それはアウトじゃ。ワシの正体はなるべく知られたくはないし、何より魔物が逃げてしまうじゃろ」

商人「あー、始まったばかりなのに今日も何も収穫無しに終わりそう……」

鎧少女「埒が明かないな……しょうがない、あんまりズルはしたくないんだが」

商人「何か策でも?」

鎧少女「私が空から探そう。そうすればお前たちの手を煩わせずに済む」

商人「!?」

竜少女「よいのか?お主だって自分の正体晒すのは嫌じゃろう?」

鎧少女「ここに居る連中が口を紡げばいい話だ。お前は信用してるから何も言わんが……」

鎧少女「狼娘、これから起こること、誰にも言わず黙っていてくれるか?」

商人「いや、勝手に話を進められても何が何だか……」

鎧少女「まぁ、公言しなければ何でもいい。とりあえずそれは約束しろ」

商人「それくらいならまぁ……あ、いや!その秘密を言われたくなければこの商品を買……」

鎧少女「なお、信用に値しない場合は実力行使に出る」

鎧少女「手始めにこの槍でお前の眼をズバッとだな……」

商人「はい!約束します!誰にも言いませんし誰にも喋りません!誰にも発言しません!」

鎧少女「よろしい」ニコッ

竜少女「ホントにお主は怖いのぅ」

鎧少女「……それでは」ファサ

商人「せ、背中から翼!?有翼人だったんですか?」

商人「いや、でもこれは……魔力の塊?」

鎧少女「実体と魔力と半々だな。これが天使の翼とか言うやつだ」

商人「天使って……えぇ!?」

商人「あの天使様!?ほら、よく教会とかに降り立ってなんか胡散臭いお告げとかしていくあの!?」

商人「本当にいるんだかよく分からない存在でもうソイツを見た日にゃ天からのお迎えとか言われちゃあの!?」

竜少女「お主散々変な風に思われておるぞ」

鎧少女「正しくは天使ではなく女神なんだがな……」

商人「女神ってあの女神様!?ほら、よく教会とかに……」

鎧少女「もういいから」

商人「確かにそんな翼を持つ種族を見たことないですからねぇ……いやはやありがたやありがたや」

鎧少女「拝むな恥ずかしい!」

商人「あぁ、でも納得です。こんなに綺麗な人が女神様とかイメージ通りですもん」

鎧少女「そ、そりゃどうも」

竜少女(押しに弱いのう、照れておる)

商人「ちょっとちっこいのがまた可愛いですけど」

鎧少女「ふんッ!」ザクッ

商人「ヒギィ!お尻に槍が!!」

鎧少女「一言余計だったな」

商人「抜いて!槍が血で真っ赤になってる!」

鎧少女「元々赤い槍だ。それに深く差してもいないわ」

竜少女「喜劇はどうでもよいから早く行ってきてくれんかの?」

鎧少女「二人はここで待っていろ、一通り回ったらまたここに戻ってくる」フッ

商人「あ、消えた」

竜少女「女神じゃから不可視になることくらいは容易なのじゃろうな」

商人「だったら別に私に正体明かさなくても、見えなくして翼を出して飛んで行ったらよかったんじゃないでしょうか?」

竜少女「……それもそうじゃの」

商人「何なんでしょうね一体」

竜少女「さぁ?神の考える事はよくわからん」

商人「それじゃあ私たちはランチといきましょう」

竜少女「人に働かせておいてこれか。ま、腹も減ったし先に頂くとするか」

商人「お弁当また買います?お安くしておきますよ?」

竜少女「いらん、今日はちゃんと作ってきた。ホレ!」

商人「おお、野菜たっぷりなお弁当」

竜少女「まともな調理場が無かったからこんなもんしか作れなかったがの」

商人「実はあなたが料理出来るということに驚いてたんですよ。見た目的な理由で」

竜少女「こんな子供みたいな様子でも女性じゃからの。夫にはいいものを食わせてやりたい」

商人「いい事言いますねぇ~。私は男の為じゃなくて利益の為に作りますけど」

商人「ちょっと女に飢えている連中に私の手作り弁当チラつかせてやると泣いて喜びますからね。いい儲けになります」

竜少女「悪魔じゃのうお主」

竜少女「さて、それじゃあ食べるとしよう」

商人「そうですねー、私もお腹すいてるんでとっとと済ませちゃいましょう」

竜少女「いただきまー……」

シュパッ

竜少女「あ゛、弁当が!?」

商人「!?」

ウサギ「」モッキュモッキュ

竜少女「……」

商人「……目標発見でーす」

竜少女「……ok相棒、速やかに捕獲作戦を遂行するのじゃ」

商人「はい!?いやいやいや、依頼内容はアレの捕獲ではなく観測ですよ!?何言っちゃってるんですか!?」

竜少女「ワシの弁当を盗った挙句食い荒らすとは笑止千万!痛い目にあわせなきゃ気が済まぬ!」

商人「冒険者が依頼内容無視すんな!信用にかかわるだろ!?」

竜少女「知ったことか!食べ物の恨みは恐ろしいということをその体で分からせてやる!!」

ウサギ「」モッキュモッキュ

ウサギ「……ウキュ?」

竜少女「……」

商人「……」

竜少女「可愛いのぅ」

商人「可愛いですねぇ」

竜少女「んにゃ!惑わされるな!アレは世にも恐ろしい盗人ウサギじゃ!決して許すな!」

ウサギ「」ビクッ

シュババババ

商人「ああ!そんな大声連発するから逃げちゃったじゃないですか!」

竜少女「弁当を持ったまま!?えぇい、逃がすか!追うぞ!」

商人「ここを離れたりしたら後で女神様に怒られますって!ちょっおい行くな!聞けよクソチビ!?」






竜少女「逃げられた」

商人「そして完全に道に迷った」

竜少女「お主の犬の鼻でなんとか元の場所に帰れないかの?出来なければ追跡は?」

商人「狼です。いや、私の鋭い嗅覚でもそこまではちょっと……」

竜少女「役に立たん鼻じゃのう、お主が獣人である利点が無いではないか」

商人「ぬぅ、言い返せないのが辛い」

商人「……あれ?嗅いだことのある臭いが……?」クンクン

竜少女「ん?女神のものか?」

商人「いえ、あの人からはほとんど何も臭わないので……げっ!?」

竜少女「どうした?」

商人「アイツだ……あの剣士、しかも結構近い」

竜少女「奴か!?なぜこんなところに……」

商人「……」


―――
――――――

剣士『注文が多い……じゃあ仕事をくれ』

商人『甘えんなぁ!!魔導都市辺りで討伐でもしてろ!!』

剣士『……!』


―――
――――――

商人「なんででしょうねぇ?」

竜少女「原因を知っていそうな顔をしておるな」

商人「とりあえずここから離れましょう、見つかると厄介ですし」

竜少女「そうじゃのう、また面倒くさいことになる前にとっとと行くか」






剣士「……何かいた気がしたが、気のせいか」

商人「さて、気を取り直しまして……どうしましょう?」

竜少女「ワシに聞かないでくれ、困っておる」

商人「そりゃあそうでしょうねぇ、あなたのせいでこうなったわけですから」

竜少女「スマヌ……」

商人「適当に歩いていても迷うばかりですし、あちらに私たちを見つけてもらいましょう」

竜少女「なにかするのか?」

商人「狼煙でも上げて知らせようかと」

商人「そう!遭難した時にこれがあれば助けが来てくれる!『遭難補助キット』ー!!」

竜少女「遭難を補助することが目的のような名前じゃの」

商人「さぁこれを使って空に向かい七色の信号弾を!」

竜少女「……ところで、それはおいくらじゃ?」

商人「……はて、何のことでしょう」

竜少女「前例がある以上、お主の持ち物はそう使わせる訳にはいかん」

竜少女「どうせ、そんな大層なものを使っておいて後から代金請求する気じゃろう?」

商人「そんな事するわけないじゃないですかー、緊急事態ですよー?」チッ

竜少女「しっかり舌打ちまで聞こえておるわ馬鹿者」

商人「ヘイヘイわかりましたよ、フェアに行きましょう。これを使って二人が助かる、二人がハッピー」

商人「あなたが助かる、私が儲かる。ダブルハッピー、ok?」

竜少女「答えはnoじゃ。目先の利益を優先するか今後の命を大事にするか選ばせてやろうか?」

商人「喜んで信号弾を発射させていただきますッ!!」ピュルルルルル~

竜少女「流石にワシもそこまで過激な事はしないがのう」

商人「普通に目がマジでしたよ、私の扱いが殺意に変わってましたよ」

竜少女「同じことを繰り返せば誰だって嫌になるじゃろ」

竜少女「それはそうと……狼煙だの信号弾だの言っていたが不味いんじゃあないのか?」

商人「何故?助けが来てくれるならいいじゃないですか」

竜少女「あんな目立つもの打ち上げたら違う者まで来てしまう気がするのじゃが」

ガサゴソ
剣士『さっきのはなんだったんだ?』



商人「……」

竜少女「……」

商人「移動しましょうか」

竜少女「そうじゃの」


……

鎧少女「バカかお前たちは!?」

竜少女「うぅ、痛いのじゃあ……」ナデナデ

商人「頭殴る事無いでしょうに……」ナデナデ

鎧少女「あんなド派手な物打ち上げたら魔物が警戒して隠れてしまうだろ!」

商人「いやぁ、でもこうやってまた合流できましたし?」

竜少女「結果オーライなのじゃ!」

ガツンッ
ゴンッ

竜少女「またブッたのじゃぁ~」

商人「ウサギを追ってたのには変わらないからいいじゃないですか~」

鎧少女「マナーが悪いだろうマナーが!他の依頼を受けてる者たちもいればこの森に生息している他の生物もいる!」

鎧少女「追跡に関してはその時々の状況にもよるから何も言わんが、トカゲ!お前は仮にもプロだろう!?身勝手すぎるぞ!」

竜少女「面目ないのじゃ……」

商人「あの……反省してることですしこの辺で……」

鎧少女「お 前 は 二 度 と 私 の 前 で 変 な 物 を 使 う な」メリメリ

商人「痛い!分かりました!!痛い!!頭を鷲掴みにしないで!凄く痛い!!」

鎧少女「はぁ……一応、同じ依頼を競合してる冒険者もいるハズだし、あまり目立つことや妨害行為をしていると冒険者ギルドから文句を言われたり仕事を回してもらえなくなるんだ」

鎧少女「私だけならまだいいが、私の関係者が割を食うんだ。頼むから自重してくれ」

商人「申し訳ありませんでした」

竜少女「スマヌ……」

鎧少女「分かればよし!それじゃあまた探す所から始めるぞ?」

商人「あ、それなんですけど」

商人「そうもさっきから変な臭いがしてまして……」

鎧少女「変な臭い?」

小休止

再開

商人「変なと言うか……なんというか」

竜少女「もったいぶらずに早う言わんか」

商人「ドストレートに言いますと血の臭いが強くなってるんですよ」

鎧少女「血?」

竜少女「人のものか?」

商人「どんな生き物のものかまでは分からないですけど、確かに臭います」

鎧少女「……何かあったかもしれんな」

竜少女「もし人のものなら放ってはおけんの」

竜少女「臭いの方へ案内を頼む」

商人「えぇ!?こういうのは関わらない方がいいんじゃないですか!?」

竜少女「馬鹿者が!見つけたお前が言うことじゃなかろう!」

鎧少女「本来なら商人であるお前が関わる事ではないが今は私たちがいる、案内しろ」

商人「うぅ……血と一緒に危険な臭いが……」

……

商人「ここら辺です」

竜少女「人の気配はしないのう」

鎧少女「……!アレを見ろ」

商人「アレ?……あ、あのウサギ!」

竜少女「あ!ワシの弁当箱!」

鎧少女「どうやら血の臭いの正体はこのウサギの魔物のもののようだ」

商人「酷い怪我……どうしてこんな」

竜少女「さっきまではワシの弁当を貪りながら逃げておったのにの」

鎧少女「両目をやられているな、何か鋭利なもので斬られた……いや、抉られているな」

竜少女「まだ息がある。どれ、ワシの魔法で治癒してやろう」

竜少女「完全には治してやれんが、出血は止めれるじゃろう」

鎧少女「……放っておけ」

商人「!?」

竜少女「……何故そんなことを言う?」

鎧少女「治る見込みのない怪我、それに仮にも魔物だ。いつ人に危害を加えるか分からん」

商人「なっ……そんな言い方!?」

竜少女「貴様……生ける者を救おうとして何が悪い!?」

鎧少女「その魔物について分かっていること自体が少ないんだ!どんな危険があるか分からない以上下手に私たちが手出しをすることではない!」

鎧少女「コイツは縄張り争いに敗れてこの仕打ちを受けたのかもしれん、他の生物に襲われてこうなったのかもしれん!」

鎧少女「だがそれはあくまで自然の摂理だ!手を加えていい事ではない」

竜少女「目の前で命を散らそうとしている者を見捨てろというのか!?」

鎧少女「そいつを助けてやったところでお前はそいつの面倒をこれからも見ていくのか?目が見えなくなったそいつはまた同じような危険な目に合うだけだ!」

鎧少女「お前の行いが間違っているとは私も言い切れない、だが……お前のそれは、無責任すぎる……」

ウサギ「キュウ・・・・・・」

商人「あ、怪我は」

竜少女「もう治した……」

竜少女「……確かにお主の言う通りかもしれん」

竜少女「だがの、こういうのは理屈ではないんじゃ」

鎧少女「……」

竜少女「ワシは長い間封印されておったから、お主たちと比べたらこの世界の事は何も知らぬ」

竜少女「年甲斐もなく自分が甘く、浅はかなのは認めよう」

竜少女「じゃが、お主はこの子を見てどう思った?冷酷にも見捨てようと真っ先に思ったか?」

鎧少女「……そんな訳ないだろう……」

商人「……それじゃあ、とりあえずやることは決まりましたね?」

竜少女「?」

鎧少女「ハァ―――ア……仕方ない!狼娘!」

商人「はい!」

鎧少女「金は私とコイツが出す、だからこの魔物が他の生物から襲われなくなるようなものを売ってくれ」

商人「アイアイサー!こういう時の為の商品も扱っております故、今回は特別にお安くしておきます!」

竜少女「お主ら……」

鎧少女「私もちょっと言い過ぎた、普段から気を張りすぎていたみたいだ」

竜少女「……お主、チョロイのぅ」

鎧少女「槍でぶっさすぞトカゲ」

ウサギ「キュウ・・・・・・キュウ・・・・・・」

商人「おんや?何か言いたげですね?」

竜少女「犬っころ、ちょっと翻訳してくれ」

商人「狼です。あと流石の私もウサギ語は分からないです。竜さんは?」

竜少女「分かったら初めから聞かんわ」

鎧少女「そういう商品は扱ってないのか?」

商人「残念ながら、昨今の翻訳業界でそういった商品を出すのをやめてくれといった声が大きいもので」

商人「イヌ科だったら私も分かるんですけどねぇ」

竜少女「中途半端に使えんのうお主」

商人「ほっとけ!」

鎧少女「……いや、言いたいことは大体分かった」

商人「なぬ!?ウサギ語が分かるんですか!?あるいはあなたエスパーですか!?」

商人「いや、女神様だからそういうこともお手の物……あ、これを使ってなんか大きくお金が動きそうな予感」

鎧少女「バカ違う、それに人を金儲けの道具に仕立て上げようとするな……あの茂みから何か聞こえないか?」

商人「ん~?」

キュウキュウ

キュウ

竜少女「?こやつの仲間かのぅ?」

鎧少女「そうじゃなくて、おそらく……」

キュウキュウキュウ!

商人「あ……子供」

ウサギ「キュウ・・・・・・」

キュウキュウキュウ!

鎧少女「……」

竜少女「見殺しにせんで正解だったようじゃ」

鎧少女「スマン」

商人「もういいじゃないですかそれは」

商人「ウサギさん、ちょっとごめんなさいね~」

ウサギ「キュウ?」

竜少女「それが魔物避けか?」

商人「はい、『選定の首飾り』と言いまして」

商人「装備した者の近寄ってほしくない人物や魔物を寄せ付けなくさせるものです」

商人「これは効力が弱い方なのですが、魔物同士の縄張り争い程度なら問題ないかと」

鎧少女「相手に作用するタイプの装備品か?本当に大丈夫か?」

商人「効果は私が試したので大丈夫です。もっとも、人が装備するより防衛本能が高い魔物が装備する方がよっぽど強い効力を発揮すると思いますけど」

竜少女「突っ込みどころを探したらいくらでも出て来そうな装備じゃのぅ」

商人「その都度説明はさせてもらいます」

ウサギ「キュウ!」

鎧少女「さて、それではそろそろ帰るか」

商人「え!?まだ依頼をこなしてないですよ!?この子たちの観測……」

鎧少女「必要項目なら今書き終わった」

商人「早ッ!」

鎧少女「後は毛とフンと、出来れば体液か」

竜少女「血は散らばっておるもので十分、フンは子供たちの物を貰うか。あとは毛じゃの」ブチィ!

ウサギ「ウギュウ!?」

商人「毛を必要以上に毟った!?ってかアンタ救った命に対してその扱い!?」

竜少女「弁当の恨み、忘れたとは言わせん」

ウサギ「」ビクッ

商人「こいつぁひでぇ……」

鎧少女「こいつらの事は心配だが今はお前の商品とやらを信じることにしよう……行くぞ」

――――――
―――

―――――
―――


黒髪少女「地の利はあちらにある、と言うところでしょうか」

金髪少女「あのデカウサギ、力の差が分かった途端すぐに逃げたな」

黒髪少女「賢いのは少し不味いですね……追跡も不可能、やろうと思えばできますが……」

金髪少女「やめろ、お前の魔法は強すぎる。森全体を凍らせたらそれこそ問題だ」

黒髪少女「そんなことはバカな事は流石にしませんよ」

黒髪少女「とはいえ、ほかっておいて犠牲者が出ても嫌ですね」

金髪少女「奴の縄張りはこの森一帯だけだろう、下手に刺激をしなければ都市の方に来るとは思えん」

金髪少女「一応、冒険者ギルドに報告を入れておこう」

黒髪少女「危険と判断されれば討伐隊が組まれるわけですが」

金髪少女「そこから先は私たちの知ったことではない。あくまでボランティアでやってることだからな」

黒髪少女「私たちは冒険者ではなくただの旅人、旅行人。今回のコレも、たまたま見かけただけの趣味ですしね」

金髪少女「危うく、この森での依頼を受けていた冒険者が襲われそうになっていたところを助けただけだがな」

黒髪少女「ホント、見ず知らずの人を助けるのが趣味なんて、貴女変わってますね」

金髪少女「お前に変わっているとは言われたくないな……」

――――――
―――

――――――
―――


鎧少女「よし!終わり!」

商人「うぉっしゃー!おわったー!」

竜少女「ミッションコンプリートなのじゃ!」

鎧少女「提出物の内容も問題なかったようだ。というか規定よりも優れていたから報酬に色を付けてくれたぞ」

竜少女「わーい!今日はその報酬で焼き肉なのじゃー!」

鎧少女「お前の取り分は一番少ないぞ?」

竜少女「なして!?」

商人「いや、参加時間と活躍を考えれば妥当ですよ……」

竜少女「おかしいじゃろ!?あの時ウサギを生かしていなければ依頼達成できなかったではないか!?」

鎧少女「その通りだな……まぁ二人一組で焼き肉食える程度には残しておいてやる」

竜少女「わーい!あいつと焼き肉なのじゃー!」

商人「で?私はいか程貰えるのでしょうか?」

鎧少女「ん?あと全部はお前の取り分だ」

商人「……」

商人「え、マジすか」

鎧少女「首飾りの支払の事もある。それを踏まえれば妥当な額だ」

商人「いやぁ、でも流石にそれは……」

鎧少女「いい、私の気持ちも入っているんだ。受け取ってくれ」

竜少女「うむ、人の気持ちを無碍にするものではないぞ?」

商人「……そうですね、わかりました!これで首飾りと今回の依頼、そして女神様の気持ちとしてこの報酬を受け取りましょう!」

鎧少女「ありがとう、これが残りの報酬だ。受け取れ」

商人「はいどうも~♪」

商人「……アレ?」

竜少女「報酬、確かに受け取ったな」

鎧少女「これが妥当なんだ、文句は言わせん」





商人「うわぁ、微妙にすくねぇ……」

商人「あの、色絵お付けてもコレってちょっと少なくないですか?」

鎧少女「元々難度の低い依頼だったんだ、そんなもんだ」

鎧少女「そもそも依頼を選んだのはお前自身だろう?」

竜少女「ワシへの報酬が焼き肉二人前程度だったことからお察しなのじゃ」

商人「……あの首飾り、結構なお値段……」

鎧少女「だろうと思ったよ、だけどお前は首飾りの件を含めて受け取った」

竜少女「うむ、確かにワシも聞いておったぞ」

商人「こっこの詐欺師共め!?」

竜少女「お主に言われたくはないわ!!」

商人「うぅ……あんまりだ……商売上がったりだ……」

鎧少女「昨日の事もあるし流石に少し虐めすぎたか」

竜少女「ほぼ死体蹴り状態じゃからのう」

仮面男「あ、帰ってきていたか」

騎士「おーっす、お前らお揃いだな」

鎧少女「迎えに来てくれたのか?」

仮面男「ああ、勿論」

竜少女「ただいまなのじゃ!」

騎士「お帰り、久々の依頼は楽しかったか?」

竜少女「うむ!もちろんじゃ!」

騎士「そうか、俺との約束を破って行く依頼はそんなに楽しかったか」

竜少女「oh......」

仮面男「すまない、朝から忙しかったから弁当を作ってあげられなくて」

鎧少女「いいよそんなの。それに今日はもともと私の当番の日だろ?私の弁当美味しかったか?」

仮面男「君のお弁当が美味しくないわけがないだろう?いいお嫁さんになれるよ」

鎧少女「もうお前のお嫁さんだよ」

仮面男「HAHAHA」

鎧少女「HAHAHA」

商人「人前でイチャコラすんなてめぇら!?見てて痛々しいんだよ!!」

竜少女「おお、相手がいなくて僻んでおるぞ」

鎧少女「なにそれ怖い」

商人「何かある度に喧嘩してる設定どこ行った!?絶対仲いいだろお前ら!?」

仮面男「それはともかく……今日は彼女に付き合ってくれてありがとう。昨日の事でもう来ないと思ってたけど……」

商人「私は過去を振り返らない強い女ですから!」

騎士「図太い神経してるよまったく」

竜少女「今日は焼き肉パーティーじゃー!早く宿に帰るぞー!」

騎士「……焼き肉はいいがどこに帰るって?」

竜少女「宿……あ……」

竜少女「……ひもじいのぅ」

仮面男「一応話は聞いているよ、私たちと同じ宿に入るといい」

竜少女「じゃがそんな金は……」

仮面男「代金は、これからも私という鍛冶師をご贔屓に……と、言うことでいいかな?」

竜少女「そ、そんなことでいいのか?」

仮面男「ああ、安いものだよ」

商人「ちょっとまてゴルァ」

仮面男「何か?」

商人「私には金を請求しといてそっちの竜にはこれからもご贔屓にぃ~?」

商人「おかしいでしょそりゃ!?なんの差だよ!?」

鎧少女「付き合いの差だろ」

商人「シャラーップ!付き合いの差よりも扱いの差の方が気になるんだよこっちは!」

仮面男「いやぁ、流れ的に君はそういう扱いでもいいのかなぁと思ってたんだけど」

商人「それは虐めだよ!?虐めの始まりだよ!?」

竜少女「過去を振り返らんと言った直後にこれである」

騎士「俺でも結構萎縮してるのに図々し過ぎるだろコイツ……」

仮面男「それじゃあ解散だね」

騎士「俺たちは行先同じだけどな」

竜少女「んにゃ、先に焼き肉食ってから帰るぞ!焼き肉~♪」

商人「はぁ……仕方がない。私はあのエロガキと神出鬼没の女将の居る宿に戻るとしますか」

鎧少女「おい、狼娘」

商人「はい、まだ何か?」

鎧少女「明日、良ければ昼辺りから時間を空けておいてくれないか?」

商人「ん?依頼の事ですか?」

鎧少女「いや、個人的な事だ。なんだかんだ言っても感謝はしているんだ、そのお礼に……な?」

商人「それはデートのお誘いと言うやつでしょうか?」

鎧少女「うん、そんなところ」

商人「あら、直球。分かりました、それじゃあお昼頃にあなたの所の宿に出向きますね」

鎧少女「ああ、悪いな。それじゃ」

商人「はい、おやすみなさい。また明日……」

――――――
―――


少年「ねーちゃんお帰りー」

商人「はーい、ただいま帰りましたよー」

少年「お風呂にする?ご飯にする?それともやっぱりお風呂?」

商人「やたらと風呂を進めるなマセガキ」

母「お帰りなさいませ、お夕飯出来てますよ?」

商人「お、グッドタイミング!それじゃあそっちを先に頂きましょうかね」





金髪少女「あ、お帰りなさい」

黒髪少女「先にお夕飯を頂いていますよ」

商人「」

商人「しばらく私の前に出てこなかったんで存在を忘れていましたよ」

黒髪少女「先に"あの娘"が来てたから私たちも来ること言うことを感づいていたでしょう?」

金髪少女「始めの時も列車の時も3人セットでしたからね」

少年「眼帯のねーちゃんもだけどみんな美人さんで俺ビックリしちゃったよ。はい、これねーちゃんの飯」

商人「あ、どうも。それで、眼帯の人は?」

黒髪少女「あなたから受けた仕事でまだ作業中ですよ」

金髪少女「部屋に篭りっきりですが大丈夫でしょうか?」

商人「昨日の夜からずっとやってますけど……まさか持ち逃げ!?」

黒髪少女「あなたじゃあるまいし……」

金髪少女「あの娘に限ってそんなことは無いですよ」

少年「ねーちゃん置き引きとか平気でやってそうだよね」

商人「私の世間からの評価がこれかよ!?」

商人「でもま、今日の夜には終わるとは言っていたんで」

黒髪少女「あの娘はいろいろと余計な事をするから作業に遅れが出るんですよ」

商人「余計な事?無駄な装飾をしたり、頼んでもいないものや機能を付けたりですか?」

黒髪少女「えぇ、まさしくそれです」

金髪少女「私はただ鎧の整備を頼んだつもりが、次の日には全部金縁になって帰ってきました……」

黒髪少女「折れた槍の修理を頼んだら先端に魔動式のガトリングガンが勝手に付けられました……」

商人「oh......」

黒髪少女「腕は確かなんですけどねぇ……」

金髪少女「確かなんですけどねぇ……」

商人(頼む相手を間違えたか……)

母「技術や才能を持っていたりするとついつい試してみたくなっちゃうんですよねぇ」ニュルリ

商人「うわ、変なところから出た!?」

母「机の下からご登場~」

少年「母さん、そろそろ本気で引かれてるよ」

母「私、ニンジャに憧れてるんですよ~」

商人「聞いてませんよ」

黒髪少女「頼まれてもいないことをするのはどうかと思いますけどね」

金髪少女「私の金縁はともかくガトリングガンはちょっと……」

母「でもあなた方の武器や鎧はそれによって使いにくくなったりしましたか?」

黒髪少女「思いっきりピーキーな物にされましたけど、まぁ私専用に改造したということもあって手にしっくりは来ますけど」

金髪少女「機能面には問題は無いので何とも……」

母「あなたたちの事をよく見ているお友達だからこそ出来る事じゃないんですか?」

母「ひょっとして、普段はそんな勝手にアレンジを加えるような事はしないとか」

黒髪少女「まぁ、アレでもプロですしね」

金髪少女「確かにそんなことはしないと思いますよ……多分」

商人「あ、確証は持てないんだ」

黒髪少女「あなた、やけに話をいい方向に持っていきたがりますね?」

母「それはもう、人を褒める方がお互いに気分がいいじゃないですか」

母「特にお友達の事を話すなんて一番楽しいことですよ?」

母「私はお友達が多い方ではないのであなた方が恨め……羨ましくて」

商人「おい今何言いかけた」

黒髪少女「まぁそうですね、少しはあの娘を信じてあげてもいいですね」

金髪少女「私たちの装備の完成品インパクトが強すぎるだけで他の物もそうであると決めつけたらダメですよね」

金髪少女「と、言うことで。鑑定を頼んだ物が無事であるといいですね!」

商人「無事ってなんだよ無事って!?」

ガラガラッ

眼帯少女「……指輪から光線が出るような仕掛けを付けたいんだけどこいつに追加料金をぶち込みたいんですが構いませんね!」

商人「付けんでいい!!」

眼帯少女「……残念」

黒髪少女「夜通しお疲れ様、この娘の分の食事もお願いします」

母「はい、ただいま」

少年「すぐ持ってくるねー」

眼帯少女「……さて、鑑定の方は早く終わったけど磨きやらなんやらをしていたら遅くなった」

商人「何やらってなんですか……」

眼帯少女「……結果だけ言わせてもらうと、この指輪についている魔導核は『奇跡』の力を持っていた」

商人「奇跡?聞いたことないですね。レア物臭がプンプンしてきますけど」

眼帯少女「……そう、かなり珍しい。私も見るのは初めて」

商人「それで、効果はどのようなものが?」

眼帯少女「……文字通り奇跡が起こる」

商人「漠然としてますね」

眼帯少女「……詳しく言えば、装備している人の本当に綺麗な願い事を一つだけ叶えることがある」

商人「どんなことでも?」

眼帯少女「……どんなことでも」

商人「……」

商人「おらぁ!寄越せ!!」バシィ!!

眼帯少女「アゥ!」

商人「超レアなアイテムが欲しいスゴイ豪邸に住みたい一生楽して暮らしたいイケメンの旦那さんが欲しい世界を我が物にしたい世の中の愚民どもが私を崇拝する世界に改編したいetc……」

商人「チクショウ!真摯に願っているのに何一つ叶わないじゃねーか!」

眼帯少女「……心が邪念に満ち溢れている……」

黒髪少女「あなたじゃ一生かかってもその魔導核の効果が使えそうにないですね」

眼帯少女「……完全に宝の持ち腐れ」

商人「大体こんな眉唾物の効果なんて信じられっかってんだ!」

商人「まぁいいや、代金払いますよ。いくらですか?」

眼帯少女「……お代はいい」

商人「お?言いましたね?聞きましたよその言葉」

眼帯少女「……一つだけ条件を飲んでほしい」

商人「条件?まぁ、聞けることだったら聞きますけど」

眼帯少女「……正直、その指輪は商品としての価値はほとんどないと思う」

商人「確かに、効果が使えるかどうか分からない魔導核が付いてるってだけで他に特に何もないですからね」

眼帯少女「……だから、それを売るときは、その指輪を本当に必要だと思っている人に売ってほしい」

商人「?そりゃそうでしょ、相手は必要だから買うんですし」

眼帯少女「……客を選ぶのはあなた」

商人「それが条件で鑑定料タダにしてくれるんだったら喜んでその条件を飲みますよ」

眼帯少女「……うん、それでいい」

少年「飯持ってきたよー!」

小休止
前SSと比べたら笑えないレベルで長くなってる

再開

眼帯少女「……いただきます」

少年「うん、食べ終わったら皿は置いといていいよ。あとで俺が片づけるから」

黒髪少女「御馳走様。それでは私たちは部屋に行きますか」

金髪少女「そうだな、歩きづめで疲れた……」

金髪少女「あ、お風呂は入れますか?」

少年「準備出来てるからいつでも入れるよ」

金髪少女「それじゃあ私は先にそちらへ……」

商人「……ガキんちょ、ちょっちいいですか?」

少年「なに?」

商人「私にはセクハラしておいてなんであの人達には何もしないんですか」

少年「……一回けし掛けたんだけどね」

商人「やったのかよ」

少年「金髪のねーちゃんはホラ、俺より少し年上程度じゃん?」

商人「見た目だけだと思いますけどね。趣味じゃないと」

少年「眼帯のねーちゃんは……うん」

商人「あなた気絶してましたからね」

眼帯少女「……グスン」

商人「あぁ泣かせちゃったよ」

少年「黒髪のねーちゃんは……純粋に怖い」

商人「怖い?」

少年「なんて言うか……盛大に転んだふりをして胸に飛び込もうとしたらさ」

商人「おい」

少年「避けられてた。さらに言えば後ろに回り込まれていつの間にか組み伏せられてた」

商人「あの人大人げなさすぎだろ!?」

眼帯少女「……彼女は警戒心が強いだけ。そのせいで子供に嫌われやすい」

母「もう!そんな事ばっかりして!」

商人「あ、普通に出てきた」

母「あんまりやりすぎると飽きられてしまいますからねぇ」

商人「やらなくていいです」

少年「綺麗なねーちゃん達に甘えられるなんて今だけだからね!これ以上大きくなってからやるとただの変態だよ」

商人「自覚があるならやめろよ」

眼帯少女「……ご馳走様」

母「はい、お粗末さまでした」

商人「随分早いなおい」

眼帯少女「……とりあえずはさっきの約束だけは守ってほしい」

商人「はいはい、わかってますよ。私からしてみりゃこの指輪への興味はなくなっちゃいましたからねぇ」

商人「いくらレアアイテムでも使い道が無けりゃねぇ。魔導核付きの装備なんかは特に」

眼帯少女「……指輪を欲しがる人は、必ずしも効力に期待しているわけではない」

商人「?」

眼帯少女「……指輪本来の意味を理解して……おやすみなさい」

母「お風呂はいいんですか?」

眼帯少女「……眠い」

商人(ひょっとして昨日から寝てないのか?)

母「分かりました、おやすみなさい」

眼帯少女「……」トコトコ

商人(指輪本来の意味……順当に考えればアクセサリーか)

商人(まぁ魔導核は綺麗な宝石に見えなくもないですし……しかしそういう用途でいいのか?)

商人(せっかくの珍しい核も使わなきゃ意味ないのになぁ)

少年「ねーちゃんねーちゃん」グイグイ

商人「ケツを触るな。はいなんでしょう?」

少年「またなんか珍しいもの見せてよ!」

商人「え~、どうせまた最後に武器見せろとか言い出すんでしょ?」

少年「そ、ソンナコトイワナイカラサー」

商人「はい、ダウト。つーか女将さんがいる目の前でそんな反応すんなよ」

母「ええ、あなたがどういう理由で武器を欲しがっているかは分からないですけど、いい加減にしないとそろそろ怒るからね?」

少年「うぅ~……」

商人「ほら、リンゴ飴あげるからそれ食ったら歯ぁ磨いて寝てろ」

少年「わーい!」

少年「じゃなくて覚えてやがれ!」ピューン

母「ホント、困った子」

商人「リンゴ飴はしっかり持っていきやがった」

商人(何をそう武器を持つことに固執するんだか……)

――――――
―――

翌朝

商人「ふむ、このくらいでいいか」

少年「なにしてんのー?」

商人「今日は一時休業にして遊びに行こうかなぁと。そのための準備をですね」

少年「なら俺がいろいろ案内しようか?面白い場所とか知ってるよ!」

商人「残念、今日は先約がいますので」

少年「先約?」

商人「デートですよデート」

少年「でッ!?」

商人「オホホホ、ガキんちょにはまだ早すぎましたかね?」

少年「デート……ねーちゃんがデート……」

商人「お、おい、大丈夫か?」

少年「……」トボトボ

商人「あぁ行っちゃったよ……相手は女性なんですけどねぇ」

少年「なぁんだ!友達と遊びに行くだけだね!」グワッ

商人「後ろから出てきた!?お前今私の前方にいただろ!?」

少年「いってらっしゃーい!」

商人(腐っても親子といったところか……現れ方が歪すぎる)

商人「さて、待ち合わせ場所はあそこの宿でしたね」

商人「前の事があるからあんまりあそこら辺を歩きたくないんですが……」

商人「今日の着物は色違いを選んできたのでバレるわけないですよね!」

ガヤガヤヒソヒソ
「おい、またあの獣人だぞ」
「懲りないなぁ」
「もやし炒めを貰おうか」
「親父ぃぃぃぃ!!」
「恥をしらないのかしら?」

商人「私は何も聞こえない!」

ツインテ「……来たか」

商人「?どちら様?」

ツインテ「そういうのはいいから、声で分かれ」

商人「いやぁ、こんな凄く可愛らしい御嬢さんは初めてみましたよ」

鎧少女「槍で刺すぞ」ビシュン

商人「ごめんなさい!冗談です!一瞬で鎧を着ないでください!槍をしまってください」

ツインテ「まったく……」ビシュン

商人「しっかし……普通に驚きましたよ」

ツインテ「何がだ?」

商人「鎧姿しか見たことなかったので、その……」

ツインテ「よく言われるが、いつもあの恰好をしているわけがないだろう」

商人「黒いドレスにツインテール……ホント、女の子って感じですね」

ツインテ「これが私服だ、悪いか?」

商人「いえいえ!可愛いなぁって思っただけですよ!」

ツインテ「……照れるから可愛いなんて言うな」

商人(可愛いなぁ)

商人「それで、今日私を誘った本当の目的は?」

ツインテ「今日は羽を伸ばすためにお前を誘ったんだ、それ以外に理由は無い」

商人「私みたいなのを誘うなんて物好きですねぇ」

ツインテ「そういうことは自分で言うな」

ツインテ「あと、基本的にノープランだから、ホントにその辺ほっつき歩くだけだぞ」

商人「それじゃあ魔導都市の名所めぐりでもしましょうか!」ガサッ

ツインテ「それは?」

商人「パンフレットです!私大きい街とかに行く前に必ず準備するんですよ~」

ツインテ「そういうの好きなのか?」

商人「いえ、何か商売に繋がりそうな事はないかなぁと調べるだけですけど」

ツインテ「あぁそう……」

商人「そういやここに来てから魔導都市っぽいもの一つも見かけてなかったですねぇ」

ツインテ「中央区に行かなきゃそういうのは無さそうだな」

商人「宿がある区域はほんとに宿しかないですからねぇ」

ツインテ「魔法道具や機器類が盛んとはいえ、観光目的で来る連中が大半だからな」

商人「あ、アレなんか魔導都市っぽいですよ!魔動式噴水!」

ツインテ「いかにもって感じだな」

商人「地下水脈から直接魔法で水をくみ上げてるみたいですね。ってか魔法で水出してる訳じゃないのね」

ツインテ「噴水の上にはよくわからん球体が宙に浮いていたりな」

商人「あれ、時間になると周りに水をまき散らすみたいですよ?」

ツインテ「そういうのは誰が得をするんだ?」

商人「さぁ……?夏場とかに便利なんじゃないですか?」

商人「さて次に行きましょう」

ツインテ「テンポ早いな」

商人「このくらいのペースで行かなきゃパンフレットに載ってる場所全部いけませんよ」

ツインテ「おまっ……全部回る気か!?」

商人「そのくらいしないと楽しめませんよ!はい、次々!」

ツインテ「押すなって!もうちょっとゆっくり、ああもう!」

休憩

もしかしてこれ前作ある?

再開
>>283
勇者「定食屋はじめました」
直接的にはまったく関係ないけど同じキャラが出てくる

商人「お次はこれ!魔導都市記念モニュメント!」

ツインテ「何の記念だ?」

商人「この都市が出来た時の記念に建てられたみたいですね」

ツインテ「随分歪だな。崩れそうだ」

商人「魔法によって重力制御と維持をされてるみたいで、何やっても壊されない自信があるみたいです」

商人「なお、これに傷をつけられた人には記念ストラップが配布されるみたいです」

ツインテ「防御力に自信があるのはいいが景品がショボイな」

商人「試しに魔法やら武器で攻撃する人とかいるみたいですね、ホラあそこのギャラリーも……」



剣士「ふん!ふん!」ガキンッ!ガキンッ!



商人「……」

ツインテ「随分頑張っているみたいだが、あんななまくらな剣で傷が付くわけないだろう」

商人「……次行きましょう」

ツインテ「まぁまて。私も試してみたくなった」

商人「へ?」

商人「いやぁ、さすがにこんなことに労力を割くなんて馬鹿らしく思えません?私はそう思いますのでとっととここから離れましょうよ」

ツインテ「……闇よ集え」

商人「ちょっ!?」

ツインテ「光を飲み込み食らい尽くせ!!」

商人「なんか手のひらに物凄い瘴気のようなものが集まったと思ったらそれを投げた!?」

バチューン!!
バキバキッ!!
ベキッ!

ツインテ「む、傷をつけようとしただけなのに……手加減し損ねた」

商人「そして普通にヒビ入れちゃった!?」

剣士「!?」

商人「あぁやべぇ!気づかれる!早く次行きましょう!」

ツインテ「あ、ちょっと!だから急かすなって!まだストラップ貰ってない!!」

商人「ンなモンどうでもいいから!」

商人「あー、なんか疲れる」

ツインテ「魔法なんて久しぶりに使ったからなんか楽しいな!」

商人「テンションあがってますね……それよりなんなんですかさっきの?」

ツインテ「何って、魔法だが?闇魔法、見るのは初めてか?」

商人「まぁ見るのは初めてですけど、そうじゃなくて女神様が闇魔法ってどうなんですかビジュアル的に」

ツインテ「そういうのは偏見だぞ?女神だろうとなんだろうと私の得意属性なんだから仕方がないだろう」

商人「はぁ……いいですけど」

ツインテ「フフッ、次はどこに行く?まだまだ面白そうなとこがありそうだな!」

商人「あーキャラ変わっちゃってるよ。次はですねぇ……」

商人「魔法学校!到着です!」

ツインテ「魔導都市なんて名前だからありそうな雰囲気はしていたがやっぱりあったか」

商人「初等部から高等部までエスカレーター式、大学は独自の専門学科がたくさんあるみたいですねぇ」

ツインテ「私は学校と言うものに通ったことがないから新鮮だな」

商人「おや?いいとこの御嬢さんって感じがしてたんですが学校は行ってなかったんですか」

ツインテ「勉学は全て父上と私の側近から教わっていたからな」

商人「側近?」

ツインテ「あ、いやスマン、こちらの話だ」

商人「でも学べる場所っていいですよねぇ。次の時代を築き上げていく子供たちがこうして生活できる場所は素晴らしいと思います」

ツインテ「ウチの息子もこういうところに一度ぶち込んでやろうかな」

商人「……今何と?」

ツインテ「ウチのバカ息子。碌に勉強もせずにいつも剣の稽古稽古稽古と……」

ツインテ「ふぅ……先が思いやられる」

商人「お子さんいらしたんですか!?」

ツインテ「ああ、今年で17になる。何を驚いている……」

商人(いや、そうか、女神様だから私より若く見えるのか?にしても……うぅ~ん……)




商人「旦那さん、ロリコンですか?」

ツインテ「唐突に凄いことを聞くんだなお前は」

ツインテ「っていうかロリって……人を子供扱いするな!」

商人「まーいいや!次行こう次!」

ツインテ「だーかーらー引っ張るなって!」

商人「さっきは押してたんで次は引っ張る事にします」

ツインテ「結局は同じだ!離せ!一人で歩ける!」

商人「HAHAHA!体がちっこいおかげでおねーちゃんこんな風に持ち上げちゃうことも出来るぞ~」

ツインテ「私の方が年上だあ!離せ!」

商人「あー可愛いなぁー」

鎧少女「ケツから串刺しにするぞ」ビシュン

商人「はい、申し訳ございませんでした」

商人「ではこちらが次の目的地ですね」

ツインテ「淡々と進んでいくな」

商人「ここはなんと!」

ツインテ「なんと?」

商人「公園でございます」

ツインテ「引っ張るほどでもないだろう」

商人「4か所目でパンフレットがネタ切れを起こしているみたいです」

ワイワイキャッキャ

商人「流石に公園だけあって子供たちが遊んでいますね」

ツインテ「見慣れない遊具があるな。デカいボールみたいだ」

商人「アレも魔動式みたいですよ?」

商人「魔力を注入すると宙に浮くみたいです」

ツインテ「それは危なくないか?」

商人「子供でも魔力制御出来ちゃう子はいますしねぇ。安全装置とか付いてるんじゃないですか?」

ツインテ「よし、私の魔力を思いっきり注いでみるか」

商人「やめて」

商人「そろそろいい時間ですね」

ツインテ「昼飯を取るか。店の情報は載ってないのか?」

商人「近くに良さげなオープンカフェがあるみたいですね、そこにしましょうか」

竜少女「そうじゃの、ワシもそこへ行こうとしておったところじゃ!」

商人「……」

ツインテ「……」

竜少女「何をしておるか。さっさと行くぞ!」

ツインテ「お前どこから湧いた」

竜少女「湧いたとは失礼じゃの!さっきまでここの公園で遊んでおったのじゃ!」

ツインテ「相方はどこ行った?」

竜少女「うむ!デート中じゃったがはぐれてしまっての」ムンッ!

竜少女「良ければお主らと一緒に行動したいのじゃが」

ツインテ「さて、昼食はお前が言ったの店でいいな」

商人「そうですね、景色もよさそうですし」

竜少女「ワシを無視していくな!連れていけ!連れて行ってくださいお願いします一人だと寂しいんです!」

ツインテ「可哀そうだから先に迷子センターに連れて行くか」

……
昼食


竜少女「うむ、こういった軽食も中々良いのぅ」

商人「結局連れて来ちゃいましたけどよかったんですか?」

ツインテ「一人にしておくわけにもいかんし、いい大人を迷子センターにぶち込むのも気が引けたからな」

竜少女「オレンジジュースも追加で頼むのじゃ!」

商人「大人に見えないですよねぇ」

ツインテ「私たちより数百倍長生きしててこれだからな」

ツインテ「……すまない。少し席を空けるぞ」

商人「はいどうぞ」

竜少女「なんじゃ?糞か?」

グシャッ

ツインテ「お前はもう少し常識を学ぼうな?」

竜少女「ハハッ頭に槍を突き立てることは無かろう」

竜少女「まったく、あの暴力女め」

商人「今のはどう考えてもあなたが悪いですよ」

竜少女「目上の者に対してあの態度は無かろうに。ワシも今のは冗談で言ったつもりなのに」

商人「まだ食事中の人がいることに気を使ってください」

商人「ところで……あなた達、一体どういう関係なんですか?」

竜少女「お互いを愛し合っている関係に見えるか?」

商人「そういうことは聞いてないですよ」

竜少女「ま、いい喧嘩友達と言ったところじゃの」

商人「付き合いは長いんですか?」

竜少女「んにゃ、数回程度しかあったことがない」

竜少女「会う度に喧嘩をしておるが……まぁ、それはあっちが気を使ってくれている事なんじゃろうな」

商人「気を使って喧嘩って」

竜少女「ワシは……そう、昨日言った通り、長い間外の世界から隔離されておっての」

竜少女「寿命の事もある。長生きばかりして外に出られなかった報いとして、ワシに友人なんて一人も作れなかったんじゃ」

商人「報いって……長生きすることは悪いことではないですよ」

竜少女「……生きててよかった事なんぞ、ほんの一握り程度にしか思ったことは無い」

竜少女「じゃが、奴と……そして連中と出会ってからは充実しておるの」

商人「あの方々全員ひっくるめてですか?」

竜少女「うむ、不器用なりにワシを愛してくれる男も」

竜少女「何考えているか分からんがワシにとっての恩人であるあの仮面も」

竜少女「ワザと毎回突っかかりやすくワシに接してくれるあの女神も」

竜少女「みーんな、大好きじゃ」

商人「なんか羨ましいですね、そういう関係」

竜少女「お主にはおらんのか?頼れる者は」

商人「地元に帰れば友達は沢山いますけど、正直敵ばっかり作ってきたような旅でしたからね」

竜少女「お主のこれまでの行いを見ていれば十分に理解できる」

商人「うるせぇよ。ともかく、私はずっと一人で」

商人「でもそれでいいって思ってる所が大きかったですね。結局、人と長くいるとその人の悪いところも全部見ることになりますし」

商人「ぶっちゃけ、商いをする上で私は自分の能力に絶対的な自信を持っているので、他の事は興味をなるだけ示さず」

商人「全部一人で出来るって自分に思い込ませて、そういうの人間関係からくる煩わしさを避けてたんです」

商人「でも、あなた方みたいな人たちを見かける度にちょっと羨ましく感じたり……」

竜少女「悪いところが見えてくるのは仕方がない。それぞれが違う生き物なんじゃ」

竜少女「ずっと一緒にいることは出来んが、節度を持ってお互いを頼ればお互いを好きになれる」

竜少女「じゃが、馴れ合いだけでは旅は出来ん事は確かじゃの」

竜少女「それこそ、ホントに『ああ、コイツなら信用できる』と思った者と行動することができればいいんじゃがの」

商人「そういう相手がホイホイ見つかりゃ世話ないんですけどねぇ」

商人「でも、あなたと数日一緒に行動して分かったことならありますよ?」

竜少女「なんじゃ?」

商人「一緒に旅は出来なくても友達にはなれるって事ですね」

商人「まぁ私の方から一方的な感情ですしあなたが私の事をどう思ってるか分からないですけどね。あ、なんか口に出すと照れるなこれ」

竜少女「……」

商人「あのー、何か行ってくれないと私の恥さらしで終わってしまうのですが」

竜少女「……ウグユッ」グスン

商人「!?」

竜少女「ワシの……私の友達になってくれるんですか?」

商人「え、ああ、ちょっとどうしたんですか?困りますよ何泣いてるんですかまたなんか変な勘違いされる!」

竜少女「だって……私が友達なんて……エグッ出来るなんて……グスッ」

商人「ああ、ちょっともう泣くな!涙拭け!だぁぁぁあ私の着物に顔を擦り付けるな!鼻水が付く!」

ツインテ「なーにやってんだお前らは」

商人「助けて!この状況を打破してお願い!」

ツインテ「おーよしよし、泣くならこっちで泣け」ナデナデ

竜少女「うん……」グスン

商人「もうなんなんですか……」

……

竜少女「いやー、歳を取るとどうも涙腺が弱くなってのぅ」ケロッ

商人「キャラまで変わるか普通?」

ツインテ「このババアキャラは作ってるらしいぞ」

商人「マジで!?」

竜少女「こりゃ、それは言うな馬鹿者」

竜少女「ともかくじゃ、スマンの犬っ娘。嬉しくてつい泣いてしもうた」

商人「狼です、いい加減呼び方を変えてください」

商人「それと、私は名前を隠している訳ではないので林檎ちゃんって呼んでくれてもいいんですよ?」

竜少女「お主にそんな可愛い名前は似合わん、犬っ娘で十分じゃ」

商人「友達宣言したにもかかわらずこの扱いである」

騎士「いたよ……やっと見つけた」

竜少女「おお、見つかってしまったのう」

騎士「見つかってしまったじゃねーよ、人がトイレに行ってる最中にどっか行きやがって。その場で待ってろって言ったろ」

竜少女「その待ってる最中にこの者たちを見つけてしまったから仕方が無かろう」

商人「……はぐれたとか言ってませんでした?」

竜少女「嘘じゃ」

ツインテ「何故私たちに付きまとった」

竜少女「ぶっちゃけコイツとのデートが若干退屈だったからの」

騎士「強制送還」

ツインテ「お勤めご苦労」

竜少女「いやじゃあ!離せこの痴漢!ロリコン!」

商人「そんなこと言ってると本気で警察の方々が出動するのでやめなさい」

騎士「とりあえず連れて帰ってたっぷり説教しておくわ」

ツインテ「そうしておけ、言っても聞かないなら一発頭ぶん殴ってやれ」

竜少女「そんな殺生な……」

商人「でもデート中に女の子を退屈させるような人もどうかと思いますね」

ツインテ「ん?まぁそうだな、ウチのはそんなことはしないぞ?」

竜少女「羨ましいのう、やっぱり男としての器が違うのかのう」

騎士「やめて、対象を俺に変更しないで」

竜少女「ま、ワシらはワシらのデートに戻るとしよう。それでチャラじゃ」

騎士「立場がまったく逆転したなオイ」

竜少女「ありがとの、また機会があればお主らと遊びたいわ」

ツインテ「ああ、私ならいつでも付き合ってやるよ」

商人「ええ、勿論です。私もいつでもウェルカムですよ!」

――――――
―――


ツインテ「あっという間に一日が終わっていた」

商人「何をしていたか記憶に残ってないですね……で、宿の前に着いちゃいました」

仮面男「お帰り、待っていたよ」

商人「旦那さんのお迎えとは、羨ましいですねぇ」

ツインテ「待たせるような用事でもあったのか?」

仮面男「ああ、まあね。用があるのは君ではなく……そこの狼さんだけどね」

商人「ん?私ですか?」

仮面男「明日、この宿……と、言うより豪邸だね」

仮面男「ここでパーティが開かれるんだけど」

商人「あー、風の便りで聞きましたよ。何でも国の代表が来るとか来ないとか」

仮面男「知っていたか、なら話は早い」

仮面男「実はそのパーティに私たちも招待されていてね」

商人「ほほぅ、こんなところに泊まれるなんてただ者じゃないと思ってましたけど、参加するってことはやっぱりお偉いさんなんですねぇ」

仮面男「参加証がここに5枚あるんだ」スッ

ツインテ「おい、お前まさか……」

仮面男「本当なら私達と私の息子、そして部下2人が参加する予定だったんだけどね」

商人「だったけど?」

仮面男「アイツら……私たちに面倒事押し付けて……自分たちは仮病で参加できないとか抜かしやがって……」ゴゴゴゴ

商人「ちょっちょっと怖いですよ……」

ツインテ「コイツ、身内には厳しいタチなんだ」

仮面男「そういうわけでコレが3枚余るわけだ」

仮面男「ウチ2枚は竜の二人に」

仮面男「そしてもう1枚は……」

商人「三丁目のジョンソンさんに?」

仮面男「そう、ジョンソンさんだね。彼は気立てがよくて出来た男だっておい!」

商人「……」

ツインテ「……」

仮面男「…………すまない」

商人「振った私が悪かったですねこれは」

ツインテ「寒いギャグはいいから、話が進まん」

商人「その残った1枚を私に?」

仮面男「そういうこと。商品の販売は出来るかどうか分からないが、私の方から口添えをしておこう」

商人「お?それじゃあ大手を振って中で商売できるって事ですか!?」

仮面男「ああ、出来るように言っておくよ」

商人「いやっほう!報われた!今までの苦労が報われた!売るぞぉぉグエッヘッヘ、金持ちのバカどもにガラクタ売りつけてやるぜぇぇぇっへっへ!」

仮面男「……程ほどにね」

商人「他に何か準備してきた方がいいものとかありますか?」

仮面男「服装には気を使った方がいいかもね……と言っても着物で大丈夫だと思うよ。そういう珍しいものを着てくる人もいるだろうし」

仮面男「時間は参加証に書いてあるよ。他に注意事項があれば明日直接話すよ」

商人「でも私でいいんですか?」

仮面男「他に渡すような知り合いはいないからね」

仮面男「それに、妻の友人を誘わない理由は無いだろう」

商人「友人だなんてそんなぁ~」

ツインテ「お前とそんな関係になった覚えは無いんだけどな」

商人「そんな連れないこと言わないでくださいよ~ぐへへへ」

ツインテ「下心が見え見えだよ」

仮面男「それじゃあまた明日、時間を守ってね」

商人「了解でっす!林檎ちゃんは出来る女ですので!それじゃあまた明日ー!」

仮面男「うん、おやすみなさい」

ツインテ「……」

仮面男「まるで嵐のような女の子だね」

ツインテ「……どういうつもりだ?」

仮面男「何のことだい?」

ツインテ「このパーティでお前のしようとしている事、私が知らないとでも思っているのか?」

仮面男「隠しているつもりはないんだけどなぁ」

ツインテ「あの娘と竜共をスケープゴートにでもするつもりか?」

仮面男「……利用可能なら。だが危険な目に合わせるつもりはない、少しばかり連中の目を引きつけてくれるだけでいいんだ」

仮面男「バカ息子共が来てくれたら一番楽だったんだけどねぇ」

ツインテ「いいじゃないか、帰国する理由が出来たんだ」

仮面男「ああ、事が終わったら一発殴りに国に帰ろうか」

――――――
―――

小休止
パーティ→剣士→ウサギ→最後でようやく終わりが見えてきたよ……

続けて小休止
2、3日書けなさそうだから一応

再開


商人「さて、宿に帰ってきたのはいいものの……」

商人「何か物足りませんねぇ」

商人「なんででしょうか……」

商人「そうか!今日セールストークしてねぇや!こうしちゃいられねぇ!」

商人「夜の街に物売りに徘徊だぜヒャッハー!!」ダダダダダ




少年「一人で喋ってると思ったら突然走り出して行っちゃったよ……」

商人「さて、露店開くにしても私の悪い噂があちこちで回っているみたいなので変装グッズでやり過ごしましょうかね」

商人「グラサンとマスク!いかにもって感じの風貌に!」

商人「今日は路地裏でそれっぽい商品でも売りましょう」

商人「マット引いて商品並べてこれで完璧!さぁ夜の猛者ども!私の商品を買いに寄ってこい!!」





商人「路地裏だと人通り少ない上に着物にグラサンとマスクって怪しすぎて誰も近寄りませんよねコレ」

商人「つーか前回の変装の時点で気が付くべきだったなこりゃ」

騎士「……お前何やってんだ?」

商人「oh......そして知り合いに遭遇……」

騎士「また懲りずにくだらないことしてんのか?」

商人「くだらないとはなんですか!私の天職をバカにしないでくださいよ!」

騎士「んな事はどうでもいいけど、ここで商売するのはやめとけ」

商人「あぁん?私の商売邪魔しようってのか?」

騎士「そういうことじゃなくてだな……ここら辺は」

ヤクザ「よぉネェちゃん、誰の許しを得てここで商売してんのかなぁ?」

商人「」

騎士「つまりはそういうことだ」

……

商人「いやぁ、最近のヤーさんは優しいんですね。お説教だけで終わるなんて」

騎士「お前今までよく商売なんて続けられてきたな」

商人「色々と危ない橋渡ってきましたけどね」

騎士「いくらここら辺で商売出来ないからってあんな場所に行くことは無いだろう」

商人「今日は何も売ってないので落ち着かなかったんですよ、商人の性ってやつです!」

騎士「訳わかんねぇな」

商人「物売りじゃないあなたには分からんのです」

商人「そういえばあなたは何故路地裏に?」

商人「普通は寄り付かないような所ですか何か用事でもあったんですか?」

騎士「偶然道端歩いてたら子供に犬耳のねーちゃんが心配だから追ってくれって言われたんだよ」

騎士「なんで俺が知り合いだって知ってたんだか……一応、礼は言っておけよ」

商人(そういやあの私の悲劇の騒動を目撃したとか言ってましたねぇ)

騎士「……それよりさ、ありがとな」

商人「?何ですか急に?」

騎士「アイツの事だよ、友達になってくれて……」

商人「……あぁ、そんな事ですか」

騎士「そんな事、で片づけてくれるな。アイツ、すげぇ喜んでたからさ」

商人「そういうもんですかねぇ」

騎士「そういうもんだ、理解されなくてもいい。アイツの問題だからな」

商人「まぁ深くは追及しませんけど。あ、そうだ、何か買っていきますか?彼女へのプレゼントとか」

騎士「そこから無理やり繋げるか……一応見ておく」

商人「はいどうもー!こちらが今日出している商品でーす!」ズラッ

騎士「おっおい、こんなにアクセサリーの類を俺に見せられても良し悪しなんて分からんぞ?」

商人「そこらへん有耶無耶にして買わせるのが手ですから」

騎士「オイ」

商人「これなんてどうです?宝石だらけのゴージャスな首飾り!」

騎士「却下、派手・デカイ・重いの三重苦でアイツに似合わん」

商人「んでわコレ!小さくもその存在をさり気なくアピールする真っ赤なピアス!」

騎士「耳飾りは邪魔だから付けたくないんだと」

商人「ぬぅ……ではこちら!ちょいとオシャマなフリフリ付いたヘアバンド!」

騎士「既に同じようなものを何個か持っているぞ」

商人「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!注文が多いんだよ!何だったら納得するんだよ!!」

騎士「爆発すんな!もうちょっと大人し目のやつとか無いのか?」

商人「あーもう、ハイハイこれ、メリケンサックとか」

騎士「ンなモン渡せるかボケ」

商人「ちょっとワガママが過ぎますよー。これ以上何を求めるんですか」

騎士「メリケンサックを進めておいて何を言うか」

騎士「もっと目立たない……そうだな、チョーカーなんてあるか?」

商人「首輪をプレゼントする男性は相手を束縛させる願望があるとか無いとか」

商人「ま、もっとも?首輪なんざ狼である私が持ってる訳ないですよ?犬畜生じゃあるまいし?」

騎士「……指輪とか腕輪あるか?」

商人「でしたらこちらにズラッと」

商人「何か目ぼしいものはありましたか?」

騎士「あんまり可愛いの無いな」

商人「一々うるせぇよ!年行った金持ちか冒険者相手にばっかり商売してるから若者向けってのが少ないんだよ!」

騎士「確かにマジックアイテムとかゴテゴテしたのばっかりだな……お?」

騎士「この指輪、シンプルでいいんじゃないか?この綺麗な石が付いてるやつ」

商人(魔導核付きの指輪……!)

商人「あーそれはですねぇ……」

騎士「気に入った、これ買うよ。いくらだ?」

商人「え?お買い上げ?冷やかしじゃなくて?」

騎士「お前、俺をなんだと思ってるんだよ……」

商人「いえ、以前絶対に私から買わないなんて言ってたので」

騎士「心境の変化だよ!ほっとけ!」

商人「うーん、でもその指輪は……う~ん」

騎士「何か悩むことでもあるのか?」

商人「はい、それいい物なんですよ。私が手放すのも惜しいくらい」

騎士「へぇ、それで値段吊り上げようってか?」

商人「はい、それも考えてるんですが」

騎士「待てコラ」

商人「一応、魔導核付きの物ですから説明はさせていただきますね」

騎士「!この石、魔導核か!?そりゃ売るのも戸惑うわな」

商人「核に付属された効果は『奇跡』」

騎士「『奇跡』?聞いたことないな」

商人「私も調べてもらった時に初めて聞いたので……そんでもって、効力がこれまた分かりにくく」

商人「本当に綺麗な願いを一つだけ叶える、とかなんとか」

騎士「……本当かどうか怪しさ満載だな」

商人「私もそう思います」

商人「魔導核であることは確かなのでそれなりのお値段を付けさせていただくつもりなんですが」

商人「効力の方がどうもわけわかんない事になってるので価値を付けにくいんですよ」

騎士「……」ボソボソ

商人「ん?どうしました?」

騎士「アイツと美味い物食いたいアイツと一生遊んで暮らしたいアイツとずっと幸せに暮らしたいアイツの命を……」

商人「その指輪から手を離せゴルァ!」

商人「欲望炸裂だな!?私と同じことしてんじゃねーよ恥ずかしい!」

騎士「これはそういう効力と見せかけて人の欲望を暴く物なんじゃなかろうか」

商人「そんなわけあるか!否定できないのがちょっと悲しいわ!」

騎士「本当に効果があるのかはさておき、なんでそんな事説明したんだ?」

騎士「核付きだっていうこと以外黙ってればいい値段で売れるだろ」

商人「効果が判明してないものを売るのは商人としてはやっちゃいけない事なんですよ」

商人「そして、装備品の能力を偽ったりすることもアウト。こっちは完全に信用問題に関わってきますね」

騎士「詐欺紛いなことしておいてよく言うよ」

商人「私は商品のいい所を出来るだけ言いまくって売ってるんです!あることないこと言いふらしてる訳じゃないんですよ?」

騎士「その商品の悪いところはどうしてるんだよ?」

商人「言わないかはぐらかします」

騎士「だろうな!」

>>328
商人「そんなわけあるか!否定できないのがちょっと悲しいわ!」

林檎ちゃん日本語しっかり話してください

騎士「で、いくら?」

商人「へ?それを聞いたうえで買うんですか?」

騎士「ああ、気に入ったからな。それに、この指輪に運命のようなものを感じたんだ……」キリッ

商人「そういうこと言って恥ずかしくないんですか?」

騎士「うるせぇよ!お前だって初めて会ったとき『何者ですか!姿を見せなさい!』って顔真っ赤にして言ってたじゃねぇか!!」

商人「それは会う前だよ!?ってかそこから見てたのかよ!?もっと早く助けに来いよ!!」

騎士「どうでもいいからさっさと売れ!」

商人「これ以上はお互いの傷を抉り続けるだけですからね、いいでしょう」

商人「お値段は……」カタカタカタ チンッ

商人「こんなもんで」

騎士「うぉい!一般冒険者が買える値段じゃねぇよ!吊り上げ過ぎだろ!?」

商人「あーはいはい、どうせ買えないってのは分かってますよ。安くすりゃいいんだろ安くすりゃ」

騎士「安くするなんて珍しいこともあるんだな」

商人「まぁ、今後売れるかどうか分からないですからねぇ。だったら手ごろな値打ちで捌いておこうかと」カタカタカタ チンッ

騎士「こ、これなら何とか買えそうだ……高いが」

商人「そこまでして欲しい物なんですか?」

騎士「アイツと出会ってからもうすぐ2年目になるんだ」

騎士「こっそり買っておくチャンスなんてそう無いし、こうやって知り合いからお墨付きの物を買うのも悪くないかなぁって」

商人「お墨付きって訳じゃないですけど……だったら同じようなものであの竜さんに似合いそうなものはまだありますよ?勿論それより安く済みますし」

騎士「アイツへのプレゼントなんて初めてなんだ、ちょっとはいいもの渡したいからな」

商人「それでちょっと高価なメリケンサックなんて渡したらおもしろそうだと思いません?」

騎士「デリカシーが無いと言いながらそのまま俺が殴り殺される未来しか見えん」

商人「それじゃあ……ま、ちょっとだけまけときますよ」

騎士「!?」

商人「何驚いてるんですか」

騎士「いや、驚くだろ!?今までのお前の悪行の数々を見聞きしてれば!?」

商人「酷いこと言いますね!?」

騎士「あー、まぁスマン」

商人「ちょっとだけですよ、ホンのちょっとだけ。お友達の旦那様ですからね」

商人「そういう記念日とかは大事にしなきゃですからね」

騎士「へへっ、悪いな」

騎士「……ホント、ありがとな」

商人「何度も何度も気持ち悪いですねぇ」

騎士「それだけ感謝してるって事だよ。宿まで送ろうか?」

商人「ありがとうございます。ところで、今更なんですけどあの竜さんはどうしてるんですか?」

騎士「明日のパーティに備えて宿で寝てるよ。初めての事で楽しみなんだとさ」

商人「開催時間は夜ですけど……ずっと寝るつもりですか」

騎士「竜は寝ようと思えばどれだけでも寝れるらしいぞ」

商人「らしい?あなたも竜じゃないですか」

騎士「そんなに寝た経験が無いのよ、俺は」

……
宿

少年「ねーちゃんが男連れてきたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

騎士「ちょ、まて!お前が連れてこいって言ったんだろ!?」

母「あらあらまぁまぁ」

商人「誤解ですからね?ね?」

――――――
―――

次の日の午後

商人「う~ん、どっちにしようか迷うZE☆」

少年「ねーちゃん何してんのー?」

商人「勝手に人の部屋入ってくんなって……今日のパーティに着ていく着物を選んでるんですよ」

少年「パーティって前言ってた?忍び込むの?」

商人「そこまで性根は腐ってないよ!?ちゃんと招待されたよ!?」

少年「金持ちばかり集まるのになんでねーちゃんみたいな貧乏人まで」

商人「お前ヒデェこと言うな!?そこまで貧乏じゃないからね!?」

少年「それで、着るもの選んでるの?どれも同じようにしか見えないけど」

商人「女の子のおめかしをどれも同じとか言ってるとモテないぞ~?」

少年「分からないものは分からないよ」

商人「ま、お子様には女の扱いが分からなくて当然ですよねぇ」

少年「む、言ったな!これでも食らえ!ボディタッチ!」

商人「リバーブロー!」

少年「脇腹がぁぁぁぁ!!」

母「もう、この子ったらまたそんな事ばっかりして」バサッ

商人「畳の下からこんにちは!?」

母「いっそこの宿をニンジャ屋敷に改装しようかな~」

商人「話題性抜群だけど宿としてみたら最悪だよ!」

黒髪少女「うっるさいですね、さっきから!隣の部屋まで聞こえる大声で……他の客も居る事理解してますか?」

商人「ホラ怒られた」

少年「母さん気を付けてよ」

黒髪少女「あなた達二人に言ってるんですが?」

商人「ショボーン」

少年「ショボーン」

母「申し訳ございません、私の方でキッチリ言い聞かせておきます」

黒髪少女「ふぅ……まぁでも、賑やかなのは悪いことではないですから、程ほどにお願いします」

商人「ツンデレだー」

少年「絶滅危惧種だー」

黒髪少女「黒槍!!」バキィ!!

商人 少年「ウゲェッ!!」

母「ああ!噂のガトリングが付いた槍で二人を殴り飛ばした!!」

黒髪少女「見た目ほど痛くはないハズですので大丈夫でしょう。反省しなさい」

商人「普通に痛い……」

――――――
―――


騎士「一応入り口まで迎えに来たが」

竜少女「まだ来ておらんようじゃのう」

ツインテ「開催までにまだ時間が開いている。どうせどこかで物を売りつけているんだろう」

商人「いやーすみません、皆さん待ちましたか?」ドスドスドス

騎士「お、来たか……ってなんだその荷物は?」

商人「何って、今日売る予定の物ですよ。全部」

ツインテ「いくらなんでも持ちすぎだ、怪しすぎて検問に引っかかるぞ」

商人「検問?なんでそんなもんあるんですか?」

竜少女「各地から権力者や国の代表、はたまた国王まで参加しているんじゃ。あって当然じゃろう」

商人「まぁ、そんなこともあるんじゃないかなぁ~と思ってちゃんと異次元ポケット持ってきてるんですけどね」

騎士「初めから入れておけよ」

ツインテ「異次元ポケット?」

商人「見せたこと無かったですかね?これですよ、コレ」

ツインテ「ネコ型ロボットが腹に付けてそうな形だな。名前も」

竜少女「それ以上いけない」

商人「口の大きさまでなら何でも入るんですよ。ある程度伸縮しますし重さも感じない!旅商人としては便利便利!」

ツインテ「同じような能力を持った神器の話を聞いたことがあるが……」ボソッ

商人「はい、なにか?」

ツインテ「いや、なんでもない。それじゃあ会場に行こう」

ツインテ(そんな事話したらまた騒ぎ出しそうだし黙っておくか……)

商人「ところで、仮面の人はいらっしゃらないんですか?」

ツインテ「アイツはあいさつ回りで忙しいからな、後で合流になる」

商人「そういえばあなた達は一体何者なんですか、国王まで来るって言うパーティの招待状貰えるなんて只者じゃないですよね」

ツインテ「今それを聞くか……後でいいだろう。そのうち嫌でもわかる」

竜少女「ワシらは一般人だけどのぅ」

騎士「実際、何をする訳でもなくただ飯を食いに来ただけなんだよな」

ツインテ「私はあくまで国の代表だけどな……」

商人「でもやっぱり、いろんな変わった種族とか来るんですね~。私の国も物の怪ばっかりですけど」

竜少女「あそこの青白いホッソリした感じの奴も代表か何かかの?」

騎士「あー、なんか戦隊物のちょっと弱い幹部みたいな見た目してるな」

ツインテ「あいつは……」

怪人男「おや?あなた、確か……」

ツインテ「誰かと思えば異次元魔王じゃないか」

怪人男「いやぁお久しぶりです、元気してました?」

ツインテ「さてな?お前は相変わらず顔色が悪いな異次元魔王」

怪人男「やめてくださいよ、私はそんな大層な名前を名乗るほどの物じゃないんですから~」




商人「ここにきて仮面を上回るビジュアルの新キャラが来たよ」

騎士「正直俺も驚いてる」

ツインテ「紹介しよう、異次元空間干渉能力の使い手の別名、異次元魔王だ」

怪人男「どうも~、勿論本名は伏せさせてもらいますけどね~」

竜少女「凄く威厳の無い魔王じゃのぅ」

怪人男「ぶっちゃけ私、能力がものすごいだけで戦闘能力は皆無なんですよ~」

ツインテ「こんなのでも一国を収める国王だ、無礼の内容にな」

商人「あなたが一番無礼な立ち振る舞いをしているように見えるんですが」

騎士「異次元魔王……でも聞いたことあるな」

竜少女「うむ、運送会社の社長をやっていて、その身一つで荷物をお届けするということを聞いたことがあるぞ」

怪人男「はぁい、私、この能力を有効活用させてもらってるんですよ~」

商人「国王自ら!?」

怪人男「日用品からエアバイク、車でも何でもお運びいたしますよ~」

怪人男「でも、正直私のような者がこんな場所に来てもよかったのでしょうか?」

怪人男「いくら私が国王と言っても成り上がりですし、他の国の王が集うこの場所でやっぱり私は相応しくないのでは……」

ツインテ「そんな事より、ウチのを見なかったか?そろそろ合流したいんだが」

商人「国王の話をそんな事で済ませちゃったよ!?めちゃくちゃ無礼だよ!?」

怪人男「あ、それならさっきあっちの方で見ましたよ~」

ツインテ「そうか、それではまたな」



騎士「……この女がいろいろ凄いのは知ってるけどさ」

竜少女「他国の王に対してこの態度である」

商人「いくらなんでもあそこまでスルーするのは酷くありません?」

ツインテ「アイツが魔王になる前からの付き合いなんでお互いよく知っているからいいだろう」

ツインテ「それに、あんなゆったりとした喋りでさらに話が長いときた」

ツインテ「関わりたくないな」

商人「キッパリ言いすぎですよ!?」

男「やぁ、待ってたよ」

ツインテ「いたか、探したぞ」

男「すまないね、挨拶が結構時間がかかってしまってね」

商人「……」

男「みんな揃ったことだし、このまま会場に入ろう。まだ料理は出てきてないけどね」

ツインテ「ま、騒ぎは起こすなよ?迷惑被るのは私たちなんだからな」

商人「あの……」

ツインテ「どうした?」

商人「いえ、ね?そちらの男性の方……誰ですか?」

仮面男「うん、言われると思ったよ」サッ

商人「あ!これは失礼しました……」

男「いいよ、仮面外した瞬間に村人Cとか言われるような顔してるからね……ハハッ」ホロリ

ツインテ「AでもなくBでもなくCだ。ここ、重要だぞ」

商人「重要じゃねーよ!?本人泣いてるぞ!?」

騎士「にしても、アンタ仮面外すとホントに特徴無くなるよな」

竜少女「唯一目立つポイントが少しボサボサのロンゲくらいじゃからの」

男「ハハッ……ハハ……」

商人「何で気にしていることを執拗に攻め続けてるの!?」

男「こういうことがあるから公の場でも仮面が手放せないんだけどね」

商人「私はてっきり傷を隠す為だとか正体を知られない為に仮面を被ってるのかと思ってましたよ」

ツインテ「正体を隠す意味でも被っているが、本当の理由は童顔を隠す為だ」

男「私、これでも40超えたおっさんだからね」

商人「嘘、若ッ!?20そこそこに見えますよ!」

男「君も私の気にしている事を容赦無く言うね」

小休止
分かりにくいけど
鎧少女→ツインテ
仮面男→男
こういうのってどう表現するのが正解なんだろうか

そのままでいいんじゃね

強いて言うなら髪形で揃えて男をロンゲにするとか?

再開
>>349
髪型でそろえるという発想は何故思い浮かばなかったのだろうか……
ありがとうございます、一応このままで続けます

男「さて、それはそれとして」

男「私は後からスピーチがあるから、それの準備をしてくるよ」

商人「おんや?主催か何かでしたか?」

男「いや、私はゲストだね。本来ならこういった事は私の息子がやらなければいけないんだが……」

ツインテ「例によってウチのバカ息子は仮病による不在だ」

男「何故私が尻拭いでこんなことせにゃならんのだ」

商人「いい加減教えてくださいよ、何者なんですか」

男「おっと、主催者が舞台に上がったようだ。私も行ってくるよ」

商人「あ、ちょっと!ほんと焦らすなもう!」

―――

大臣「皆さま、お忙しい中お集まりいただきまことにありがとうございます」

大臣「ワタクシはこの国の魔導都市の管理を任されている大臣でございます」

大臣「本日は、隣国からの支援、そして各国との交友を深めるためのパーティを開かせていただきます」

―――

商人「あぁ、かなり規模が大きいと思ったらそういう趣旨でしたか」

騎士「俺は金持ち共が意味もなく毎日開いてる類のものかと思ってたよ」

竜少女「そんなもんどうでもいいが、料理はまだ出てこんのか?こういうのは普通先に出ているものではないのか?」

ツインテ「こいつら連れてきてよかったんだろうか……」

―――

大臣「ここで、本来ならば隣国の国王様をお呼びして一言お願いしていたところなのですが……」

大臣「急病を患ってしまわれたということですので、本日は臨時でこの方に来ていただきました」

大臣「ではお願いいたします、先代国王様」

男「ああ」

―――

商人「」

騎士「やっぱりああいうのは似合ってないよなぁ」

竜少女「ワシらの知っておるあやつは鍛冶道具を持っておるか剣を構えておるかのどちらかだからのぅ」

ツインテ「私も、アイツが国王なんてとことん似合っていないと思うがな」

商人「色々とぶっ飛び過ぎて言葉がでねぇ」

商人「え、ちょっと待って、どういうこと?ワッツ?ホワッツ?」

ツインテ「聞いた通りだ。アイツは元国王で息子が現在の国王だ」

騎士「王は王でも魔王だったけどな」

商人「魔王!?ホントのホントに!?」

ツインテ「この場で嘘をついてどうする、本当の事だ」

商人「oh……魔王が何故にあんなチンケな店の工房で鍛冶なんかを……」

ツインテ「人の店をチンケとか言ってやるなよ」

商人「いや、でもおかしいでしょいろいろ!?なんでそんなド偉い御方が冒険者を!?」

ツインテ「ま、いろいろとめぐり合わせがあったんだよ。語る気はないが」

商人「ほぇ~、そんなこともあるんですか」

商人(あれー、なんだろう?)

商人(あの仮面の人が王様ってわかった時点で、なんか色々と商売のチャンスを逃してきたような気がする)

ツインテ「上手く取り入っていれば専属で商売が出来そうだったのに、惜しいことをしたな」

商人「ですよねー」

ツインテ「もっとも、お前と会う前にそこの竜共からお前の話を聞かされていたから、ファーストコンタクトの時点でダメだったけどな」

商人「……あなた方、一体何を話したんですか?」

騎士「着物の犬の詐欺師がいる」

竜少女「東洋人の犬にぼったくられた」

商人「一生恨むぞコラ」

竜少女「そういうな、あくまで結果論じゃ」

騎士「そうそう、俺たちゃ被害者でしかないっての」

商人「まだ言いますかあなたは……」

―――

男「皆さま、こ、このたびは……えぇっと、お集まりいただき、誠に感謝の意を表しまして……」

男「遺憾であるがゆえに、その……なんだ、私が感謝致します?」

大臣「……文法が滅茶苦茶どころの話じゃないですよ?」ボソボソ

―――

ツインテ「くっふふ……始まったぞ、訳の分からないスピーチが」

商人「何が言いたいんですかアレは」

ツインテ「元々平民上がりのアイツがこんな大衆の中でかしこまって上手く喋れる訳がない」

ツインテ「他に大きな……そうだな、例えばテレビに出て喋った時は全国にあんな醜態をさらすわけにもいかないからな」

ツインテ「私が不可視状態になって後ろから喋る内容を教えていたんだが、今日はそれが無い」

ツインテ「中々珍しいアイツの慌てっぷりが見られるぞ、アハハッ!」

商人「意地悪ですねアナタ。助けてあげないんですか?あぁ、こっち見て助けを求めている……」

ツインテ「フフッ女神は気まぐれでほんの少し意地悪なんだ」

―――

男「えー、とにかくですね」

男「今回の支援の件で、この国と今後もいい関係を築けるように祈っております」

男「そこは我が息子、現国王の手腕とこの国の王にかかっています故」

男「この国と我が国の未来を祝し、カンパイ!」

大臣「まだ誰も杯を持っていませんよ?」

男「え?あ、すまない……」

―――

商人「ちょっと!緊張しすぎだろ!?料理来てないよ!?」

竜少女「顔を真っ赤にして可愛いのう」

ツインテ(写真取っとこ)

―――

大臣「どうも、ありがとうございます。それでは……」

男「それともう一ついいかな?」

大臣「……はい、いかがなさいましたか?」

男「どうも最近、この魔導都市で素晴らしい研究がおこなわれていると耳にしたのだが」

男「何でも、この国の発展につながる事とかで」

大臣「……さて、研究者たちが行っている事すべてが私の耳に届くとは限りませんので」

男「……赤い石、豹変」

大臣「……ッ!」

男「失礼、私の聞き間違いだったかな?それじゃあ、これで私のスピーチは終わります」

大臣「え、ええ、どうもありがとうございました。続きまして……」

大臣(腐っても魔王と言うところか……この男、私に圧力をかけたつもりか?)

男(今は自身の立場に酔いしれていろ。知ってしまった以上、貴様の所業を見過ごす分けにはいかん)

―――

男「やぁ、ただいま」

ツインテ「おかえり、ちょうど料理も運ばれてきたみたいだな」

竜少女「ぐっふっふ、ワシはこれを食うために来たんじゃ!あんなつまらん政治家や権力者共の話などどうでもいいわ!」

騎士「同感だ、それじゃ食うか!」

ツインテ「……感触は?」

男「微妙だな。これから調べるつもりだ」

商人「何の話をしてるんですか?」

ツインテ「お前には小難しい金持ちの話だ、気にするな」

商人「あ、それってちょっと私をバカにしてます?」

ツインテ「フッどうかな?」

男「仲、よさそうだね?」

ツインテ「そ、そんなことは無いぞ!」

商人「もーう!照れちゃって可愛いなぁ~」

ツインテ「照れてないし頬をつつくのやめろ!」

商人「それより魔王様ぁ~ん?」

男「"元"だけどね。あと狼なのに猫なで声とはこれいかに」

商人「私と専属で売買の契約を結びませんか~?今ならサービスして珍しい素材なんかも……」

男「遠慮しておくよ。素材は手持ちで十分だし、そういうのは今後もする気はないし」

商人「分かってたけど言ってみただけだよチクショウ!」

商人「ってかよく考えたら隣国からの物資の支援ってあんたの国からの支援だったのかよ!そのせいで私はこの街に着いた瞬間からハードモードだったんだよチクショウ!!」

男「それは私の知るところじゃなよ……」

男「ほら、それよりさ。許可、ちゃんと貰ってきたからさ」

商人「許可?」

ツインテ「昨日言っていただろ、この場で売り買いしてもいいと」

男「そそ、それでこの数日分の損失を取り返してきなよ」

商人「そうだった!そのためにいろいろ拵えて来たんだった!うおーーやったるでぇーー!!」ダダダダ

男「なるべく派手にやってくれても構わないからねー……って、行っちゃったか」

ツインテ「言わなくても派手に"やらかす"だろうな、アレは」

騎士「普通は派手にやれなんて言わずに程々にしとけって言わないか?特にアイツは」モグモグ

男「なるだけ大衆の注意を一時的に逸らすだけでいいんだ、少しの間だけでも……」

竜少女「ふむ、何か企んでおるな?」モグモグ

男「ああ、ちょっとした悪巧みさ」

ツインテ「こんな回りくどいやり方しなくても正面から堂々とやればいいだろうに」モッキュモッキュ

男「私には私のやり方がある、君のようには上手くできないからね」

ツインテ「分かっているよ、言っただけ」モッキュモッキュ

竜少女「なんのこっちゃ」モグモグ

小休止

再開

商人「へいへい!そこのおねぇさん!私の商品見ていかないか?」

商人「ちょいとマチな貴族たち!この壺を買えば幸福が……」

商人「おっと!そこな紳士達よ、世にも珍しい珍品が並ぶこの私の素敵なアイテムの数々を括目せよ!」

怪人男「おや、精がでますねぇ」

商人「あ、さっきの怪人さん。どうも~」

怪人男「異次元魔王と呼ばれていたのに早速怪人ですか……まぁいいですけど~」

怪人男「あと、珍しい珍品って意味が重複してますよ」

商人「そんな事よりどうです?私の出してる商品、見ていきません?」

怪人男「あなたも私の扱いが雑ですねぇ」

怪人男「それで、どんな商品が立ち並んでいるのでしょうか?」

商人「ハイ例えばこちら!先ほど売れに売れたカイウンの壺!」

怪人男「すでに胡散臭さがプンプンしてますねぇ」

商人「まぁ実際はただの壺なんですけどね」

怪人男「そういうことは行っちゃいけませんよ。あと、それで開運とか言っちゃってると普通に詐欺ですよ」

商人「カイウンさんっていう結構有名な職人が作ってる壺なんでそこらへんは問題ありません、後は私の手腕です」

怪人男「ひでぇ」

商人「他にはこんな商品もありますよ?」

商人「高機能靴べら!」

怪人男「靴べらに高機能もクソもあるのでしょうか?」

商人「モチロン!靴を履いた時に手に持っていれば自動で伸びて靴を足に合わせてくれます!」

怪人男「それって普通の靴べらと比べて何か意味があるのでしょうか?」

商人「……さぁ?少なくとも私は欲しいとは思いませんね」

怪人男「そんなもん売りつけてるんですか!?」

商人「それが仕事ですので」

商人「他に人気と言えば……この幻想万華鏡ですね」

怪人男「あら、こっちでは珍しい物ですね、カレイドスコープ。素敵じゃないですか~」

商人「そうですねぇ、やっぱり貴族の方々は綺麗な物には目がないですねぇ」

商人「ただこの万華鏡、見た人に幻覚作用を及ぼす効果がありまして」

商人「見えちゃいけないものが見えたりするのはもちろん、気が付いたら綺麗な川の向こうから亡くなった方々が手招きしてたり自分が描いていた夢のような世界に旅立ってしまったりする時がありますね」

怪人男「さっきから会場内で阿鼻叫喚したり幸せそうな顔で倒れている人がいると思ったらそういうことですか」

商人「効能はちゃんと説明したうえで買って試しちゃうんだから、探究心が強いんじゃ仕方がないよね☆」

怪人男「止めろよ」

商人「あ、こんなのもありますよ!室内用花火!」

怪人男「普通に物騒ですよ!?」

商人「これは燃え移る事のない特殊な魔法の炎を発火源としているのでより安全に花火が楽しめちゃうんですよ」

怪人男「まったく室内でする必要がないですねぇ」

商人「雨の日だけどどうしても花火がしたい!!って人用ですね」

怪人男「我慢しましょうよそこは……」

ツインテ「予想以上に暴れているな」

商人「おや、あなた方も何か買いに?」

竜少女「そんな訳ないじゃろう、ワシはここに食いたいものを取りに来ただけじゃ」

ツインテ「私は冷やかしに来ただけだ」

商人「ケッ、なら来るんじゃねぇよ!シッシッ!」

怪人男「ところでそちらの旦那さんはどこへ行かれたのですか?姿が見当たりませんが」

ツインテ「下らん野暮用だそうだ、お前の気にするところではない」

怪人男「なるほど……では私も御暇しましょうかねぇ」

商人「何も買わずに行ってしまうのですか?」

怪人男「どれもまったく買う気になりませんよ……」

竜少女「逆に何故こんなものの数々を自信満々に売っているのかが疑問じゃが」

商人「金持ちは珍しけりゃ何でも買うんですよ」

ツインテ「とうとうとんでもない暴論を吐き出したな」

怪人男「それじゃ、私はこれにて失礼しま~す」ビュンッ!

商人「うおお!消えた!?」

ツインテ「さっきも言った通り、奴は異次元空間への干渉能力を持っている。ワープなんてお手の物だ」

商人「そしたら何でもやりたい放題ですね」

ツインテ「ただ、制約が結構多いことと逆に言えばワープしか出来ない能力であるということくらいか」

ツインテ「何度もいしのなかにいる状態になったんだとさ」

商人「普通に怖いですね」

商人「あ、それより騎士の方の竜さんはどうしたんですか?」

竜少女「奴ならさっきパスタを食って嗚咽しておったのう」

竜少女「予想以上に不味かったとかなんとか」

ツインテ「なんでそんなマズイもんがパーティの料理で出てくるんだ」

竜少女「どこぞの貴族が碌に料理も出来ない自分の息子を無理やり権力で厨房に入れたという話を立ち聞きしたぞ」

ツインテ「世の中非常識で滅茶苦茶な奴がいるんだな」

竜少女「まったくじゃ、権力で解決しおってからに」

商人「非常識的の塊なあなた方が言えるセリフじゃないですよ」

商人「……おっと」ブルル

竜少女「どうした?」

商人「どうやら催してしまったようなので私も一時撤退しますかね」

竜少女「おお、クソか」グサッ

ツインテ「こっちは食事中なんだが?お前は本当に下ネタが好きなんだなぁ?」

竜少女「やめろ!謝るから槍を刺すのはやめてくれぇ!」

商人「ちょっとツッコミ入れる余裕が無いので失礼します!」ピュー

竜少女「行ってしまったのう」

ツインテ「本当に余裕がなかったんだろうな、そしてお前は反省していろ」

竜少女「それは謝っておるじゃろうに……で、だ」

竜少女「お主の連れ、結局のところどうなのじゃ?」

ツインテ「何の事だ?」

竜少女「あのつまらなさそうな人間の大臣に意味深な事を聞いておったじゃろ」

竜少女「お主らはわざわざ親睦の為だけにこんな所に来るような連中ではあるまい」

ツインテ「国と国との間の関係はお前が思っている以上に大切なんだ」

ツインテ「現国王……私たちの息子が来れない以上、暇を持て余していた私たちが尻拭いをしてやるのは当然だろう」

竜少女「あの犬っ娘を暴れさせるように言っておいてよく言う」

竜少女「あやつがいなければ、大方ワシらにその役割を振り分けるつもりだったのじゃろう?」

ツインテ「だ・か・ら!何のことだ!」

竜少女「まったく、白を切るのが上手いのぅ。まあよい、これ以上はまた喧嘩に発展するだけじゃし、ワシも黙っておこう」

竜少女「自分の夫の意思を尊重するのは構わんが、少しはワシらを信用してくれてもいいのではないか?」

ツインテ「……友人としてならこの上なく信用はしているよ」

竜少女「変なところでデレおって……」

「きゃー!!」
「なんだ!?どうした!?」
「突然弾丸のようなものが飛んできてあそこのテーブルに直撃したぞ!」

ツインテ「ん?」

竜少女「何事じゃ騒々しい」

「さっきロケット花火振り回してた奴がいたぞ!」
「変な商人が売ってたやつか!」
「お、俺じゃねぇ!俺は悪くねぇ!」
「そんな事より巻き込まれた人がいるわ!」

騎士「」

「おい誰か医者を呼べ!」
「大変だ!意識が無い!」
「きゃー!殺人よー!」

ツインテ「」

竜少女「」





商人(そういやあの花火セット内のロケット花火は人を吹っ飛ばす威力は十分あるから使うなとは言っておいたけど)

商人(ま、忠告はしっかりしましたし大丈夫でしょうね。それよりトイレはどこだ……)イソイソ

――――――
―――


商人「あ゛ーすっきりしたー」

商人「ったく、この館広すぎるんだよ!トイレがどこにあるかわかりゃしないじゃないですか!」

商人「でも流石に要人御用達の宿を兼用してるだけはありますね。ってかホントに宿なのかよ、デカいよマジで」

商人「……ん?」



仮面男「……」



商人「おや、あんなところに仮面の人が。ってアレ?なんで着替えちゃってるんだろう?」

仮面男「……」


商人「あ、行っちゃった。こっちを見たような気もしたけど気が付かなかったのかな?」

商人「人通りがまったく無い通路ですしそんな事は無いと思うんですけどねぇ」

商人「……知的好奇心が疼きますね!後を付けてみますか!」

商人「この角を曲がって~っと……え?」

商人「……何、この臭い……」

商人(凄く血なまぐさい……やだ、嘘ですよね……)

商人(この角の向こうから……)

商人(ヤバい、絶対にヤバいものがこの先にある……)

商人(近づいちゃいけない気がする……なんだか分からない威圧感も感じる……)

商人(今ならまだ来た道を戻れば何事も無かったように終えれるけど……でも)

商人(でも……けが人だったらどうする?とっさに最悪のケースだけが頭をよぎったけど)

商人(助ける?見捨てる?小さい子だったら?満足に動けない老人だったら?)

商人(どちらにせよ関わらないのが一番だ……だけど)

商人(私の友達の旦那さんが、まさかそんな事を……)

商人(あぁ、それが一番気になって仕方がないんだ。これは間違いだ、間違いであってほしい)

商人(確認するだけ。そう、なんてことは無い事を確かめてから戻ろう!)

商人(胸を張って『さっき旦那さんがコスプレしながら闊歩してましたよ!』なんて言ってもとに戻ればいいんだ!)

商人(この角を曲がって……)





商人「……いや……そんな、嘘……」

目の前にある物が歪すぎる
血生臭さとその光景で頭がぼんやりしていてハッキリとしない
そこにいたのは見ず知らずの黒ずくめだった
さっきの仮面の男ではない、服装からわかる
手が見える、良い血色だ
ついさっきまで争っていたのだろうか?
その手元には鋭利なナイフが転がっている
何故そんなものを?なぜこんな場所で?
見ず知らずの黒ずくめは横たわって何も言わない


当然だ、何故なら



商人「首……無い……」

……


仮面男「……もしもし?」

ツインテ『なんだ?こんな時に?』

ツインテ『お前があの狼娘に暴れさせる材料を与えたせいでこっちは色々と大変な事になってるんだぞ?』

仮面男「そうか、そっちはそっちで上手くいったんだね」

ツインテ『会場めちゃくちゃだわ竜に感づかれるわでこっちはてんてこ舞いだ、これを収拾させる私を少しは私を労われよ?』

仮面男「うん、勿論だよ。事が終わったら何でもするよ、君が望むなら」

仮面男「それよりも……相談したいことがあるんだ」

ツインテ『なんだ?手短にな』

仮面男「……始末しているところを見られた」

ツインテ『珍しいな、お前がそんなところを見られるなんて』

仮面男「ああ、ブランクが長いからね。私もまさか見られるとは思わなかったよ」

ツインテ『で、口封じはどうする?脅しで足りるか?金でも渡すか?』

ツインテ『場合によってはそっちも始末しなきゃいけないが……』

仮面男「……彼女だ」

ツインテ『?』

仮面男「その場にいないだろう?」

ツインテ『……おい、タチの悪い冗談はよせ』

仮面男「冗談でも私は君にそんなことは言わないよ」

ツインテ『ッ!』

仮面男「もし彼女がこのことをきっかけに逆に脅して来たりするようなら厄介だ」

仮面男「中々頭の回る娘だ、どうやれば得をするのかはすぐに計算できるだろう」

仮面男「……早急に始末する方向で行きたいんだけど、どうかな?」

ツインテ『……』

仮面男「……」

ツインテ『……』

ツインテ『……』

ツインテ『……お前の決定なら私は構わん』

仮面男「やめてほしいならそう言いなよ?私には嘘をつかないでくれ」

仮面男「それと、実際に始末なんてそんな気サラサラ無いし」

ツインテ『はぁ!?お前なんでそんな選択肢私に迫った!?』

仮面男「さっきスピーチ最中に助けてくれなかった仕返しだよ」

仮面男「アレ、凄く恥ずかしかったんだから」

ツインテ『……』

仮面男「……ひょっとして怒ってる?」

ツインテ『別に?』

ツインテ『まぁいい、そんな事よりどうするつもりだ?』

ツインテ『見られてる以上対策はしておかないといけないだろう?』

仮面男「正当防衛だから話せばわかってくれると思うんだけどなぁ」

仮面男「今日のパーティ始まってから3人目だし、襲われる身にもなってくれよ」

ツインテ『知らん。どのみちどう説明してもお前がやった事実は消えんだろう』

仮面男「彼女、私だけならともかく君とも人間関係崩れちゃいそうだが」

ツインテ『そこは仕方があるまい。誤解されるよりはマシだ』

仮面男「人との繋がりは大切にしなきゃ」

ツインテ『その人間関係壊すような種を撒いたのはお前だお前!』

仮面男「でも、こんなこともあろうかと前準備はしていたよ」

仮面男「心強い協力者がいるからね」

ツインテ『あぁ……アイツか』

仮面男「私の後についてくるように言っておいたから今頃彼女と接触しているんじゃないかな?」

ツインテ『少し不安だが、今は頼らせてもらおう……』

竜少女『うおおおおお!死ぬなあああ!ワシより先に逝くんじゃないぞおおお!!』

騎士『リョウリガマズイ、カラダガイタイ』

仮面男「……そろそろ電話切るよ」

ツインテ「……そうしてくれ」

――――――
―――


商人「うおおおおお!腰が抜けて立てねぇぇぇ!!」

商人「ヤバいって!マズいって!ホラーテイストに浸ってる場合じゃねぇって!モノホンの死体だよこれ!」

商人「何が知的好奇心だコンチクショウ!数秒前の自分を呪ってやりたいわ!」

商人「いや、実際ヤバイ。何やっても視界に入る。想像以上に怖いわコレ!」

商人「そ、そうだ!これは夢なんだ!全部夢!目を覚ましたら『ああ、なんか嫌な物見たな』って曖昧な記憶で次の日を迎えよう!」

商人「そう……目をつむって……」

商人「ホラ!目を開けたらそこには何もない!爽やかな明日がまっている!カモン早朝!!」



商人「ってホントに何もなくなってる!?何なんだよオイィィ!?」

怪人男「あなた面白いですねぇ」

商人「って代わりに怪人がでたぁぁぁぁぁぁあああ!?」

怪人男「どうでしたか?私のスーパー!イリュゥゥージョン!普段味わえない感覚でしたでしょう?」

商人「へ?」

怪人男「いやね?私、こんな見た目してるもんですからよく人から驚かれるじゃないですか?」

怪人男「それを見るのが楽しくなっちゃって、エスカレートした末に今みたいな小道具用意して脅かしちゃったりするんですよ~」

怪人男「どっきり大成功~☆」テッテテー

商人「ガゼルパンチ!!」

怪人男「顎がッ!!」

商人「ふざけんじゃねぇよ!?こっちは精神的に極限状態だったんだぞ!?先にトイレに行ってなかったらこの辺大洪水になってたわ!?」

怪人男「あなたみたいな可愛い女の子の大洪水なら一度見てみたいですねぇ」

商人「セクハラ発言してんじゃねぇぞゴミクソ野郎!?」

怪人男「あぁ、もっと弄ってくださぁい」

商人「こいつぁやべぇ!?」

怪人男(この場はとりあえず何とかしましたよ?)

怪人男(私も正式に依頼を受けた以上、キチンと働かせていただきます)

怪人男(あの暗殺者と思われる人の遺体は私の能力で血液と臭いごと異空間へ飛ばしましたが……)

怪人男(でもこんな事、普通はしませんからね?なじみ深いあなた達だから受けたことなんですから、もうこんなこと真っ平御免ですよ)

商人「まったく、見た目にそぐわず悪趣味ですね」

怪人男「ホホホ、褒め言葉ですよそれは~」

商人「これがドッキリって事は、あの仮面の人もグルだったって事ですよね?」

怪人男「え?あぁ、まぁ……彼が発案者ですので」

商人「なんかムカついてきました!後を追って私も脅かし返します!逆ドッキリってやつです!」

怪人男「え、ちょ……」

商人「あなたもついてきてくださいね!今度は私を手伝ってもらいますよ!」

怪人男「えぇー……」

小休止
林檎ちゃんにシリアスは似合わない

再開

商人「つーわけで、あの人の臭いを追ってここまで来ましたが」

商人「変な場所に着ちゃいましたね。どうも隠し部屋的な」

怪人男「あわわわ……こんなとこまで来ちゃうなんて……」

商人「まるで知っていたかのような物言いですね?」

怪人男「いえいえいえ!私は何も知らないですって、はい!」

商人「怪しいですねぇ、見た目もそうですけど」

怪人男(うぅむ、このままだと彼の計画が丸々無駄になってしまいますねぇ、なんとか手を打たないと……)

商人「お、ここにも隠し扉発見!臭い辿るだけの簡単な作業ですから順調ですねぇ」

怪人男「ね、ねぇ、絶対ついて行ってもいい事ありませんって。引き返しましょうよ」

商人「嫌ですよ!妙にリアルなドッキリ仕掛けられてこのまま泣き寝入りなんて!」

怪人男「泣き寝入りて……そ、そうだ!アレは私が単独で仕掛けたことであの人は関係ないんですよ~!」

商人「今更取って付けたような言い訳しないでくださいよ。やられる前にあの人が私をチラ見したの知ってるんですよ?」

怪人男(……ダメだ、何も思い浮かばない!最悪、失敗覚悟でこの人連れてワープするか……)

商人「……なーに深く考え込んでるんですか?」

怪人男「いえ!なんでもないですよ!」

商人「ますます怪しい」

商人「あ、そうだ。あなたワープ出来るんですよね?ワープ」

怪人男「!ええそうですよ!ワープ出来ちゃいますよ!」

商人「私を連れて仮面の人の所まで飛べないんですか?」

怪人男「人物指定されても相手は移動してますし、曖昧な情報だけだと壁の中に埋まりかねないんですよ~」

怪人男「それと、私以外の生物を一緒にワープさせるとあんまり長距離は飛べないんですよ~」

商人「むむ?使えませんねぇ」

怪人男「酷い言いぐさですねぇもう……」

怪人男「あ、ですけど。ここの通路、どうも壁を跨いでも一本道みたいですから安全にワープ出来るかもしれませんよ?」

商人「それが出来るならデメリット説明してないでとっととやっちゃってくださいよ!」

怪人男「先に説明しておかないと後から文句言いそうじゃないですかあなた……」

怪人男「ではいいですか?どこでもいいので私に触れてください、股間でもどこでもいいので」

商人「滅しろ変態。じゃあとりあえず肩に手を」

商人「大丈夫なんですか?ワープ中に手を離したりしたら異次元の彼方に放り出されるとかしないですよね?」

怪人男「安心してください。ワープは手を離す暇なんて感じないくらいに一瞬で終わりますよ」

怪人男(よし、これでワープしてパーティ会場かその近くまで戻れば後は他の皆さんがこの人を引き取ってくれるでしょう)

怪人男(その後にここに戻ってこれば万事解決!これでよし!)

怪人男「それでは、1・2の3で飛びますよ?」

商人「ほいほい了解!」

怪人男「1・2の……」

商人「1・2の……」

怪人男「さ……」

商人「はい、さようなら!」パッ

怪人男「ん??」ビュン!!

商人「私が先に行くのを拒んでる節がありましたし、自在にワープ出来るんなら元の場所に戻そうとか考えてそうですしねぇ?」

商人「ここから先一人でも行けそうですし頼りなさそうな人と一緒に行くよりはいいでしょうに」

商人「ま、この先に本当にワープしてるならごめんなさいでいいですし、いないならいないでいいですけど」

商人「さて、あの人を追って行きましょうかね」


……

怪人男「……どうも~」

竜少女「突然瞬間移動してきたと思ったら……」

騎士「」

ツインテ「コイツの頭上に転移してきてスタンピングキックでトドメを刺すとはな。自分の仕事を全うせずよく遊んでいられるな?」ジャキン

怪人男「誤解です!やめてください!槍はしまってください!」

……

商人(さてと、何やら本格的にヤバそうな場所に出てきましたね……)

商人(何かよくわからない生物……?のようなものが入った培養カプセルの数々……)

商人(こんな趣味の悪いものとあの仮面の人と何か関係があるのでしょうか?)

商人(おっと、誰かいる……)



大臣「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」

大臣「本日、パーティを開いた本当の目的はこの部屋に集約しております」

大臣「もっとも、お集まりいただいた方々のほとんどは知っていたことだとは思いますが……」


商人(たしかこの国の大臣でしたか……この部屋が本当の目的?)

大臣「こちらが例の赤い石となります」

大臣「この石を額に埋め込まれた生物は巨大化、および強化と狂化をされた新たな生物となるのです」

大臣「私どもは弁明上、この石を『狂化の魔導核』と名づけました」


商人(人口的に魔導核を作るのは珍しいことではないですが……直接生物に埋め込むことなんて聞いたことないですね)

商人(出来たとしても普通の魔導核では効果は得られないハズでるからね)


大臣「最終目的は軍事利用を考えております」

大臣「野生生物に埋め込んでも十分な戦力として期待できるでしょう」

ギャラリー1「狂化と言いましたが制御は出来るんですか?」

大臣「長らく制御関連で苦しめられていましたが、そこもクリアいたしました」

大臣「核に一定の波長の電波を流し込めば簡単な命令のコントロールは可能となります」

大臣「今はまだ実験段階ですが、最終的には意のままに操ることも出来るようになりましょう」

ギャラリー2「まだ軍事利用するには程遠い気もしますが?」

大臣「だからこそ現段階で発表しておくのです」

大臣「私の立場で行動を起こすにはそろそろ限界が来ていますので」

大臣(だから他の国の者がコソコソと私を調べているんだ……)

大臣「これも我が国の発展の為でもあります。ぜひとも皆さんにスポンサーとなっていただきたいのです」

ギャラリー3「それは考える時間が必要だろう」

ギャラリー4「そうだ、こんな半端なもので私たちが金を出すと思っているのか?」

大臣(ほざいていろ、わざわざ経歴が真っ黒な連中を集めたんだ。無理にでも搾り取ってやるさ)

ギャラリー5「しかし、それとは別に他の国の者も多々いるようですがこれは?」

大臣「私の知人達です、いずれこの技術を買って頂くためのね……」

大臣(無論、断れない立場の連中だがな……)


商人(こーんな場所で隠れてコソコソやってるってことは相当アレな事なんでしょうねぇ)

商人(これをダシにして脅して……なんて考える事でもないですね。そこまで危ないことはしませんよ)

商人(仮面の人の動向が気になりますけど、とっととこの場から離れましょうか)

商人(にしても不気味ですねぇここは)

商人(このカプセルの中の生物なんて今にも動き出しそうな)

生物『……グ……ゲ……』

商人(うわ、なんか発してるよ……)

生物『……ダ……』

生物『……ズ』

商人「?」

生物『ダズ……ゲデ……』

商人「……えっ!?」

大臣「ん?誰かそこに来ているのか?」

商人(あ、やべぇ!)

「何!?」
「侵入者か!?」
「このことがバレたら……」

大臣「皆さんお静かに、担当の者に調べさせます。おい、行ってこい」

大臣「もし姿を見せないようなら強硬手段も取っていい」

商人(姿見せても大変なことになるだろそりゃ!)

商人(本格的にヤバい!逃げ切れるかこれは!?)

仮面男「……いやぁ、強硬手段をとるなんてやめてくれないかな?」

大臣「!?」

商人「!?」

仮面男「すまない、隠れるつもりは無かったんだが、出てこれる雰囲気でもなかったんでね」

大臣「……隣国の元王……ここまで嗅ぎつけていたか」

仮面男「ああ、あなたの研究が気になって仕方がなかったからね」

商人(た……助かったぁ……でも何でこのタイミングで……)

大臣「……こんな場所にまで、一体何の用ですかね?」

仮面男「要件なんて一つしかないんじゃあないのかい?」

大臣「……あなたの国は小国ながら大国に決して負けはしない軍事力を保有している。この技術は必要ないでしょう?」

大臣「それとも……正義感の強いあなたはここを潰しに来たとでも?」

仮面男(あくまで展示用の施設を潰したところでどうなることも無いだろう……)

仮面男「正義感が強いのは妻の方だ。私は単に気になると言ったろう?」

仮面男「私も、この研究が完成次第技術を買い取りたいと思ってね?」

仮面男「何のために支援をしたと思っているんだい?」

大臣「……もともとこれが目当てだったと?」

仮面男「そうさ、知識を共有して私も甘い汁が吸いたいと思ってね」

商人(……嘘でしょ……)

商人(さっきのドッキリも胡散臭くなってきましたね)

商人(私を欺く為だけにやったこと?偶然居合わせただけの私にそこまでするか?)

商人(仮に別件だとしても、こんな……生き物を弄ぶような事を……)

生物『ア゛……ア゛……』

商人(……コレ……種族は分かりませんが、ヒト……だったんでしょうね……)


大臣「信じられませんな。あなたが欲するようなものじゃない」

大臣「だからこそ、この場にお呼びしなかったのですよ」

大臣「それに、あなたは今やただの冒険者。多少権力があるとしてもそれはたかが知れているものだ」

仮面男「そうとは限らない。今私の国を率いている王は我が息子」

仮面男「就任してまだそう日は経っていない。正直、王としての器は大きいとは言えないし、才能も無いに等しいだろう」

仮面男「逆に、私は国からの人望は厚い。私が反旗を翻せば賛同者が多く募るだろう」

大臣「ほう?」

大臣「あなたは王の立場に返り咲きたいと?」

仮面男「そうだ!再び魔王として君臨したい、昔のようにな!」

仮面男「だからこそ絶対的な力が必要になる。今いるだけの戦力では不安が残るばかりだ」

商人(あんなことを……ッ!)

大臣「……わかりました、今は信じることにいたしましょう」

大臣(無論、手放しではないが)

仮面男「そうか……近いうちに完全に信用されることを願うよ」

仮面男(ここで事を起こしても何の解決にもならん。すべての要素を炙り出すまで泳がせる……)

大臣「そうですね、では早速信頼に足る行動を起こしてほしいのですか……」

仮面男「……なにかな?」

大臣「そこのカプセルの後ろに隠れている者を即刻処刑していただきたい」

商人「!?」

仮面男(……誤魔化しきれなったか)

大臣「まるで隠れている者を庇うように出てきたようですが、あなたの関係者ですかな?」

仮面男「……何のことかな」

大臣「まぁいいでしょう……ではお願いしますよ、魔王様?」

仮面男(私が庇って出てきた間に何故逃げなかった、長々と喋っている間に何故脱出しようとしなかった……クソッ)

商人(あばばばばばばばば、本気でこいつぁやべぇ!)

仮面男「……分かった、その信用に答えよう……」

商人(あー!神様仏様魔王様!どうか御救いになってくださいーーー!!)

大臣「そこのカプセルの……」

仮面男「後ろに……」

商人(ヒィィィィィ!)


ビュン!!


商人「!!」

仮面男「ッ!……お前か……来い!」ガシッ

怪人男「え?アレ?なんですか一体?」

大臣「なんと……異次元魔王でしたか」

怪人男「へ?」

仮面男「指定した場所に好きに行き来できる能力……なるほど、王自ら密偵とはな」

怪人男「え?なに?なになに?」

大臣「あなたの筋書きではないのですか?」

仮面男「まさか、彼とはあまり仲が良くないのでね」

怪人男「えー?そんな事言わないでくださいよ~。ずっと前から仲良くしてくれてたじゃないですか~」

仮面男「黙れ、それ以上口を開くな!」ガッ

怪人男「ヒッ!」

大臣「それで?出来るんですか?その男を」

仮面男「問題ない、一思いに首を刎ねてやろう」

怪人男「えぇ!?」

商人(首刎ね!?やっぱりさっきのは……)

仮面男(何やってんだ!?さっさと逃げろよ!?)

怪人男「えーっと冗談ですよね?」

仮面男「悪いが私は冗談が嫌いだ」

仮面男「思いっきり首を刎ねさせてもらうぞ?大量の血飛沫も飛ぶだろう、皆離れているといい」

大臣「私は確認の為近くで見させてもらうよ?」

仮面男「……ああ、構わない」

怪人男「ちょおおお!?何言ってるんですか!?私が何かしましたか!?」

仮面男「黙って私の言うことを聞けッ!」

怪人男「は、はいっ!」

商人(あぁ、ホンの僅かな付き合いでしたが……さようなら、怪人異次元魔王さん……)

大臣「おや?聖剣で斬るのですか?」

仮面男「……魔剣は元々妻の物だ、汚したくないんでね」

仮面男「どちらにせよ屠る威力はある……さよならだ、異次元魔王よ」

怪人男「あぁ……娘よ、先立つ不孝を許してくれ……ってこれは違うか、あははh」ザシュ

ブシュー

ゴロン


商人(…………もう嫌だ……逃げよう)

仮面男(やっと行ったか……)

大臣「ん、確かに見届けさせて頂きましたよ?」

大臣「……いい笑顔で頭が転がっていますね」

仮面男「最後に渾身のギャグでも言ったつもりだったんでしょう、くだらなさすぎて鼻で笑ってしましましたが」

仮面男「一応身元が割れないように頭だけでも消しておきましょう」

大臣「そんなことが出来るのですか?」

仮面男「ああ、私の光の魔法を使えば粒子状に分解させることも可能だ」

大臣「完全犯罪に便利そうですね?」

仮面男「無機物限定だけどね」

仮面男「……流れ出でよ。集いし聖剣!輝け刃よ!」

ビュン!!

大臣「おお、珍しい光の魔法が見れるとはいやはや……」

仮面男「……信用してもらえたかな?」

大臣「上々ですね」

……

騎士「イタタタ……なんであんなモノが飛んでくるんだか」

竜少女「奇妙なパスタを食って悶絶したと思ったらロケット花火が直撃して……」

ツインテ「上から不気味なオッサンが降ってくるフルコンボを食らうとはな、運がないな」

騎士「まったくだよ、ったく……」

ビュン!!

怪人男「あー死ぬかと思った~」

竜少女「」

騎士「」

ツインテ「……首だけで登場とは、これは驚いたな」

怪人男「あ、ちょうどいい所に」

怪人男「ちょっと緊急事態が起こりまして、すぐに救援に向かってあげてさいな」

怪人男「私は諸事情により首から下が動かせないので……ってか動かしたらいろいろ台無しなのでお手伝いできませんが」

ツインテ「……分かった、気配をたどればすぐに奴の下に行ける」ビシュン

騎士「俺たちは何か手伝うことあるか?」

鎧少女「いらん、足手まといだ。お前たちはここに待機しててくれ」

竜少女「ハッキリ言ってくれるのう」

怪人男「あと、商人さんも見かけたら声をかけてあげてください」

鎧少女「なっ!あいつまだ居たのか!?」

怪人男「ずっと彼の後を付けてたんですよ~」

鎧少女「さっきお前がここに転移してきた時点でそれを言えバカ!」

鎧少女「お前がこんな状況から察するに、あまりいい状態ではないな……」

怪人男「彼女のせいで予定がいろいろ狂ってしまってますからねぇ」

鎧少女「すまない、お前たちは狼と合流次第ここから立ち退いてくれ。何があるかわからん」

騎士「ん、わかった」

竜少女「ふむ、それならいっそこの館から出るとするかの。ここ自体もう安全ではなさそうじゃしの」


「ヒャー!俺は神だー!」
「あぁ、おばあちゃんが川の向こうで手を振っている……」
「やめてくれぇ!こっちに来るなぁ!」
「花火が綺麗だヒャッハー!」


騎士「……ダメだこりゃ」

竜少女「新しい宿探すしかないのう」

鎧少女「とにかく頼んだぞ」タタタ

怪人男「あのー、私はどうすればいいんでしょうか~?」

騎士「知らねぇよそんなの」

竜少女「で、お主はなんでそんな首だけの状態になっておるんじゃ?」

怪人男「これは私の能力の応用ですよ~」

怪人男「身体の一部だけを別の場所にワープさせることが出来るんですよ~」

怪人男「彼が私の首を刎ねるなんて言い出したから驚きでしたよ、ハッハッハ」

騎士「彼?」

竜少女「仮面の奴じゃろう。なんでそんな事言い出したんじゃ」

怪人男「いろいろ事情が込み入っているんですよ~公言しないように言われてるんで言いませんけど」

竜少女「ここでもワシらは除け者か」

怪人男「いや、それにしても血飛沫まで要求してくるなんて無茶ぶりもいい所ですよ~」

怪人男「それも応用で出来たりするんですけどね?他人の血なんですけど~なかなか飛び散らせる制御が難しくて~」

竜少女「ンなモン聞いておらん、お主は黙っておれ」

騎士「生首が喋るってなかなか怖いなこれは」

怪人男「もう、私頑張ったんですよ~?」


商人「……」トボトボ

竜少女「来たか、早かったのう」

商人「……あなた達は知っていたんですか?」

騎士「?何をだ?」

竜少女「……知っているといえば知っているが、全容は知らん。勝手にワシらが首を突っ込んでただけじゃ」

騎士「だから何の話?」

商人「……ごめんなさい、私これ以上あなた達に付き合いきれません」

商人「怖すぎます、私には話のスケールが大きすぎてどうにも出来ないです」

竜少女「その様子だと女神の奴とは会わなかったようじゃの。何があったかは知らんが……スマンの、ワシらではお主にどう声をかけていいか分からん」

竜少女「あと、付き合いきれんと言われても首突っ込んできたのはお主の方じゃと一応突っ込んでおく」

商人「……殺されたんですよ」

竜少女「……まさか、奴が!?」

騎士「おい、嘘だろ!?アイツが死ぬわけねぇだろ!?」

商人「……嘘じゃないですよ!!私の目の前で確かに首を刎ねられたんです!」

商人「あの怪人さんが!」



竜少女「なんじゃ、そっちか」

騎士「仮面の方じゃねーのか。別にいいよ、知り合いって仲でもないし」

商人「薄情だなあんたら!?」

竜少女「いや、だって……のう?」

怪人男「生きてますしねぇ?」

商人「ぎゃぁぁああああああああああ!?でたぁぁぁぁあああ!?」

騎士「押し黙るのと対の反応だな。とりあえずここから出よう」

怪人男「あ、私も生きてることがバレたらマズイのでこのまま連れて行ってください。首だけじゃ動けないので」

竜少女「気味が悪いのぅ」

商人「なにこの状況!?説明して!?誰か説明!!」

――――――
―――

大臣「では、今後ビジネスパートナーとしてお願いしますよ、魔王様?」

仮面男「ハハッ、まだ気が早いよ?」

大臣「なに、すぐにでもこれを完成させてあなたを王座に戻しますよ」

大臣(とはいえ、当分は……)

仮面男(お互い腹の探り合い、と言うところか)

鎧少女(聞こえるか?助けに来たぞ)

仮面男「……!」

大臣「どうかされましたか?」

仮面男「いや、なんでもない。それよりこの体の処理だが……」

鎧少女(……と言っても、お前は口を聞けそうにないか)

鎧少女(いいか、よく聞け。コイツの体は私の不可視の魔法で一緒に消す)

鎧少女(魔法を使って消してやったとでも言っておけ)

仮面男(それさっき彼の頭で使った言い訳なんだよなぁ……)

ピピピピ

大臣「む、電話か……もしもし、どうした?」

『た、大変です!パーティ会場が……』

大臣「会場がどうした?」

『じ、地獄絵図と化して……うわぁぁぁ!!』ブツッ

ツーツー

大臣「一体どういうことだ?」

大臣「まぁいい、その死体の処理は私の部下にやらせる」

大臣「皆さん、この後はご自由にここを見学するのも、ここの館に宿泊されている方は先に部屋に戻っていただいても構いません」

大臣「私は会場の方を見て回ってきますので、今日は解散といたしましょう。では……」

仮面男(会場の混乱に乗じていろいろと調べるつもりでいたんだけど……今頃遅いよ……)

鎧少女(マズイな、奴の体持って行かれてしまったぞ……)

仮面男「……行ったか」

仮面男「大丈夫、折を見て奪還するよ。その間に体を触られても彼が動かない事を祈るばかりだけどね」

鎧少女(あくまで首が別の場所にあるだけで体は繋がったままだからな)

――――――
―――


怪人男「ああ!複数人に私の身体が触られてる!くすぐったくて動いちゃいそう!」

騎士「えぇい喋るな気色悪い!」

竜少女「口にガムテープでも撒いて本格的に黙らさせるか」

小休止

再開

騎士「さてと……やっとの思いで外に出たが」

竜少女「会場だけでなくここら辺全体が混沌の渦になっておったのう」

怪人男「脱出するだけでも大変でしたねぇ」

商人「……それで?これはどういうことなんですか?」

竜少女「見ての通り、お主が死んだと思っていたこの戦隊物の幹部のような見た目の怪人は生きておる」

騎士「どういうわけか首だけだけどな」

怪人男「首だけの理由はさっき説明したじゃないですか~。もっかい初めから言いましょうか?」

竜少女「いらん説明じゃ」

商人「もういろんなことが起こりすぎて整理出来ないんですけど」

騎士「ただ一つ言えることがある」

騎士「あの仮面の男は俺たちの味方だ。そこだけは信じてやってくれ」

商人「はぁ……」

竜少女「疲れておるみたいじゃし、頭の中で整理が付くまで少し休め」

怪人男「疲れはお肌の天敵!適度な休息で私のようなツヤツヤなお肌を保ってくださいね!」

商人「あなたを見ているとまったく休めません、視界から消えてください」

怪人男「」

竜少女「いや、絶句するまでもなく当然じゃろ……」

怪人男(まったく!誰のせいで現在進行形でこんな目に会ってると思ってるんですかもう!)プンプン

騎士「プンプン怒ってても可愛げがねぇっての、生首抱えてる俺の身にもなれよ」

竜少女「それはともかくワシらは宿無しに戻ってしまったのう」

騎士「こうなっちまった以上、そこは仕方がないな……おい、怪人のオッサン」

怪人男「いや、誰もかれもが怪人呼ばわりって酷いですね……なんですか?」

騎士「アンタはどこの宿に泊まってた?出来れば俺たちも一晩だけでいいから泊めてほしいんだが」

怪人男「人にものを頼む態度じゃないですねぇ、いいですけど」

怪人男「でも残念ながら、私もあのパーティ会場のあった豪邸に宿を取っていたので同じく宿無しですねぇ~」

騎士「そうか……出来るだけ早くコイツを休ませてやりたかったんだけどな」

商人「……あ、私ですか?」

竜少女「当然じゃ、目に見えてやつれておる」

商人「ハハハ……心配かけてしまいましたね」

商人「私は大丈夫ですよ、このまま自分の泊まっていた宿に帰りますから」

竜少女「無理はするなよ?」

商人「ご心配なく!こういう想定外の事態は慣れてるつもりですから!」

商人(まぁ……ほとんど空元気ですけど)

騎士「よし、それじゃあ行こうか。場所知ってるから俺が案内するぞ」スタスタ

竜少女「うむ、頼むぞ。ワシも早う休みたいわ」スタスタ

商人「って、あれー?どこ行くんですか皆さん?」

竜少女「どこって……決まっておるじゃろう?」

騎士「お前のいた宿だよ。俺たちも宿無しって言ったろ」

竜少女「部屋は同室でも構わん、とっとと行くぞ」

商人「ちょっと待て!なんでそうなる!?オイこら置いてくな!」

――――――
―――

少年「せい!やあ!」ブンブン

少年(つまんねーなぁ)

少年(ねーちゃんはパーティに行ってて居ないし)

少年(黒髪のねーちゃんは怖くてセクハラ出来ねーし)

少年(こうやって木の棒使って剣の特訓しようにも隠れてやらないと母さんがうるさくてなかなか出来ないし)

少年「あーやってらんねぇ!!」ポイッ

少年「そして疲れたー!」ドサ

少年(で、こうやって都市の外れの森らへんで一人で特訓。これはこれで秘密の特訓みたいでカッコイイけどさー)

少年「張り合いねーなぁー!」

少年(……ねーちゃん今頃どうしてるかな?) ※早めに帰ってきている途中です

少年(変な奴に捕まったりなんかしてないよね?) ※変な怪人を捕まえました

少年(男運無さそうだからコロっと騙されちゃいそうだなー) ※貴族たちをコロッと騙してました

少年(初めて会った時にひんそーな体とか言っちゃったけど、ねーちゃん中々イイ体してるしメッチャ可愛いよなぁ) ※邪念

剣士「……おい、小僧」

少年(それがいつか見も知らぬ男の手に……!?嫌だ!それは嫌だ!ねーちゃんは俺と……!)

剣士「そこのヨダレ垂らしている腑抜けた顔の小僧、聞いているのか?」

少年(ぐへ、ぐへへへ)

剣士「……」ザクッ

少年「痛い!?なんか足の裏刺された!?一気にリアルに戻された!?返して俺のファンタジー!!」

剣士「……お前にそっくりな喋り方の犬を知っているが、まぁそれはいい」

少年「うわ誰!?人攫いですか!?やめて!ウチに身代金払えるほどお金ないよ!!」

剣士「黙れ、刺すぞ」ザクッ

少年「はい、もう刺してます」

剣士「こんな時間にこんな場所で子供が何をしている?危険だぞ」

少年「お、俺を子ども扱いすんなよ!剣の稽古だよ!稽古!」

剣士「ほぅ?ただ棒を振り回していたようにしか見えなかったが?」

少年「あ、見てたんですか……」

剣士「まぁ、どうでもいい。帰れ、この時間になると奴が活発的に動き出す……」

少年「奴?」

剣士「知らんでいい。完全に日が落ちる前にとっとと消えろ」

剣士「……」

少年「……」

剣士「ぼーっとしていないで帰れ。今度はもっと深く刺すぞ」

少年「あ、いやね。おねーさんってさ」

少年「凄く綺麗だよね」

剣士「……」

少年「……」

少年「……アレ?無反応!?渾身のボケが!?いや、綺麗なのは嘘じゃないけどさ」モジモジ

剣士「……小僧、走れるか?」

少年「え?」

少年「どゆこと?」

ガサガサ

剣士「チッ!捕まれ!」ガシッ

少年「って、アーレー!」ダダダダ

ガサガサ

魔物「グゥルルルル」

魔物「ゴガァァァ!!」ダダダ

剣士「小僧!私の体の邪魔にならないようにしがみ付いておけ!」

少年「う、うん!分かったけど……!アレってもしかしてウサギ!?」

剣士「知っているのか?」

少年「うん、ちょっと前にこの森で見たでっかいウサギにそっくりなんだ!」

少年「あのおでこの赤い石!見間違えるはずないよ!」

剣士「……そうか、まぁどうでもいいが」

少年「どうでもいい!?」

剣士「クヒッ……クヒヒヒ!やはり見れば見るほど斬り甲斐がありそうな化け物だ!!」

剣士「前は逃がしこそしたが、今回は必ず叩き斬ってくれる!!」

少年「あ、このおねーさんヤバいわ」

剣士「やっぱりお前は邪魔だ!どいてろ!」ポイッ

少年「おぶぅ!」ドシャ

少年「何で投げ捨てた!?しかも走ってたせいで結構な勢いで地面にキスだよ!?」

剣士「元々、飯をお前から集る気で声をかけたんだ。ついでに連れてきただけだ、死なれたら困るだろう?」

少年「ひでぇ!」

魔物「ウゴ……ウゴガァ!」

剣士「ハッ、知性の無い畜生が!この私が調教してくれる!」

少年「あ、それちょっとエロい」

魔物「グガァァ!!」

剣士「当たらん当たらん!動きが直線すぎる!ホラ腕に一発!」

魔物「ガアアァァ!ウッガァ!」

剣士「相当腹が減っているようだな、噛みつき攻撃だけでは捉えることは出来んぞ!」

剣士「頭カチ割ってやろう、そぉれ!」

魔物「ウ……ガァアァ!!」

少年「すげぇ……ウサギの攻撃がかすりもしない……」

魔物「グゥゥ!」ブンブン

剣士(?コイツ……)

剣士「まぁいいか……コイツでトドメだ!凍り付け!」

魔物「グゴッ!?」

剣士「手足は封じた!このまま斬る!」

魔物「ガガガガガ!!」バキバキバキ

剣士「何!?」

少年「氷を腕力だけで砕いた!」

剣士「クソが!」

魔物「ゴゥアアアア!!」ギィンッ

剣士「なっ……!!」

少年「け、剣が……」

剣士「折られた……だと?」

魔物「ギ……ギュウ……」メキメキメキ

魔物「キュウ・・・・・・」

少年「あ……小さくなった」

魔物「キュウ!」タタタタ

剣士「……また逃げられたか。命拾いをしたな」

剣士「いや、助かったのは私の……方か」ドサ

少年「あ、アレ?おねーさん!?なんで倒れてるの!?どこも怪我なんてしてないよね!?」

剣士「……」グゥ~

剣士「腹が……減った……」

――――――
―――

竜少女「宿じゃ!」

騎士「まともな宿だ!」

怪人男「フカフカベッドが楽しみですね!」

商人「悪いですけど生首はNGで」

怪人男「NO!」

母「あら、おかえりなさい。お友達の方ですか?」

商人「はい、そうなんですけど……」

母「フフッ、ご一緒にお泊りですか?」

商人「は、え?あ、いいんですか?」

母「来るものは拒みませんよ~。食事代だけは頂きますけど」

竜少女「おお!物わかりのいいご婦人じゃのう!」

母「部屋は2部屋ありますけど両方とも使ってしまっているので、皆さん林檎ちゃんの使っている部屋でいいですよね?」

商人「はい、それでお願いします……いいですね皆さん?」

竜少女「食事代だけと言うのはそういうことか。うむ、飛び込みじゃからまったく文句は無いぞ」

騎士「……リンゴちゃんって誰?」

怪人男「あのう、奥さん?生首でもOKでしょうか?」

母「あー、生首さんはNGで~」

怪人男「NO!」

母「冗談ですよ?フフフフ……」

眼帯少女「……お客?」

母「あら?お目覚めですか?かれこれ1日中眠っていらしたみたいですけど」

眼帯少女「……うん、起きたら連れが二人ともいないし、変なの増えてるし」

商人「一応私のお友達何で変とか言わないでくださいね?」

竜少女「うむ!まったく心外じゃ!」

眼帯少女「……変なのはそこの首だけの人って言いたかった、謝る」

怪人男「誰も驚いてくれない上にドライな反応ばっかりですねぇ?」

騎士「俺に話を振るな、そろそろお前の置き場所が欲しいんだが」

商人「とりあえず邪魔ですしこの鳥籠の中に入れておきましょう」ドンッ

騎士「ホントなんでも出てくるな……オラ、お前の居場所だ、ありがたく思え」

怪人男「あの、非常に雑な扱いなんですけど。私って確か魔王でしたよね?」ギュウギュウ

商人「そんなもん遥か記憶の彼方に消え去りました。大体ポッと出のキャラの癖に出張り過ぎなんですよ」

怪人男「何その言い方!?私もう知らない!何があってもあなたと口きかない!」

騎士「おぉー、なんか首だけなのとこの鳥籠の形のおかげで某吸血鬼に見えるぞ。魔王っぽくていいんじゃね?」

竜少女「それいじょういけない」

商人「さってっと……それで?落ち着いたようですし、ここらで知ってること話してくれないですか?」

竜少女「ふむ……そうじゃのう。ワシの答えられる範囲では答えておこう」

怪人男「私は答えません!」プイッ

騎士「すみません、女将さん。ちょっと聞かれたくない事を話すんで席を外してもらえますか?」

母「あらあら、わかりました。では私はゆっくりご飯を作ってますので、話が終わったら声をかけてくださいね?」

騎士「あ、いや。俺たちはさっきパーティで食ってきたばかりで……」

竜少女「食う!全然食えなかったから食う!」

母「フフフ、わかりましたよ」スタスタ

騎士「まだ食うのかよ……」

商人「話を戻してもいいですか?」

竜少女「で、何から聞きたい?」

商人「ズバリ、あの仮面の人の目的です」

竜少女「……ハッキリ言おう、ワシらも連中の考えておる事はサッパリわからん」

怪人男「プンプン!」

商人「アレ?てっきりあなた方もグルだと思っていたんですが……」

竜少女「あくまで憶測じゃが、ワシらは単に何者かの目を引きつけておく為に呼ばれたみたいなのじゃ」

商人「目を引きつける?」


眼帯少女「……」ジー

怪人男「……何でしょう?」

竜少女「そうじゃ、奴がお主に派手にやれと言っていたのが証拠じゃ」

商人「そんな事言ってました?」

騎士「聞いてなかったのかよ……」

商人「だってまぁ、物売ることで頭がいっぱいだったもので」

竜少女「もしお主が役に立たないのであれば、ワシらが何らかのアクションを起こすように仕向けていたじゃろうな」

竜少女「自分で行動することを第一に考えている奴じゃが、使える物は何でも使う。なかなか狡猾な奴じゃ」


眼帯少女「……」ジー

単眼少女「……」パッ

怪人男「ヒィッ!?」

竜少女「女神の方は初めから何をするかを知っていたみたいだったがのう」

商人「なぜそう思うんですか?」

竜少女「事が起きてからの動きが実に迅速じゃった。色々と動き方を予め決めておいたのじゃろう」

竜少女「少し慌ててはいたが、緊急事態が発生した時でもすぐに行動に移せたのは、もともとワシら抜きでも出来たことだということになるのう……」

竜少女「……ワシらは初めからアテにはしていなかったということじゃ」

商人「……竜さん?」

竜少女「……やるせないのう、こっちは友達だと思っているのに、あっちはワシらに何も話してくれないのは……」

竜少女「挙句、この計画に加担しているのがそこの頼り無さそうな生首ではのう!」


怪人男「秘儀!顔左半分だけワープ!!」

単眼少女「!?」ビクッ

騎士「……はぁ……」

商人「空気読めよ……」

怪人男「え?なんですか?なんでそんな冷たい目で私を見ているんですか皆さん?」

眼帯少女「……」スタスタスタ

怪人男「ああ!一人にしないで!今の今まで睨めっこしてた仲じゃないですかぁ~!」

竜少女「こっちは本気で悩んでおるのに、全容を知っておるお主は生首だけでは飽き足らずさらに顔半分を消して遊んでおるのか……」

怪人男「違うんですこれは……あら~ん?」

商人「うわ、突然気持ち悪い声出さないでくださいよ!?」

怪人男「いえ、私の体の方で何かあったみたいなんです」

騎士「何があった?」

怪人男「ふむふむ、定期的に私の肩が叩かれています」

怪人男「おお!どうやら私の体の奪取に成功したみたいです!」

竜少女「連中か?」

怪人男「まぁ、死体の肩を定期的なタイミングで叩く物好きはいないでしょうし、生きているのを知っているからやってるんでしょうけどね」

怪人男「それじゃあ、飛ばした顔の左半分をあっちに転送しまーす!」

商人「器用な事できますねぇ」

――――――
怪人男「へいお待ち!」ビュン

仮面男「うわビックリした」

鎧少女「左半分だけ飛ばしてくるとは……まだあいつらと一緒か?」

仮面男「ええ、皆さんに私の頭を運んでもらっていましたので」

鎧少女「そうか、無事に全員抜け出したか……」

仮面男「それじゃあ彼らの出番は終わりだ、後は私たちでなんとかしよう」

鎧少女「そうだな、異次元魔王よ。そこにいる連中にそう伝えてくれ」

商人『ちょ――――――ッとまったぁーーー!』

仮面男「!?」

鎧少女「な、なんだ!?声が……」

怪人男「音の振動をワープさせてもらいました~。電話代わりにどうぞ~」

鎧少女「余計な事を……」

仮面男「それで?なんの用だい?」

商人『アンタらねぇ!ちょっと勝手が過ぎませんか!こっちを使うだけ使って用が済んだらボロ雑巾のように捨てるだなんて!』

竜少女『……ワシも同感じゃ。何故お主らだけで事を進める。確かにワシらはこやつとお主に何があったかは知らんが、巻き込まれていいだけの実力はある、頼られていいだけの信頼もある』

竜少女『……じゃが、この仕打ちは……』

鎧少女「バカが、それは単に巻き込みたくなかっただけだ」

仮面男「この件については"過去に私たちの撒いた種"なんだ。それに関係ない君たちを巻き込みたくはない」

騎士『巻き込みたくないんだったら初めから呼ぶんじゃねぇよ!』

仮面男「本来の囮役は私の息子と部下になるはずだった。それも、彼らが認識しない間に事を終えるようにするハズでもあった」

竜少女『ワシらが知ってしまったということに非があると?』

鎧少女「違う!そうじゃない!」

鎧少女「お前の事は実力はよく知ってる、信頼だってしている」

鎧少女「頼るときは頼らせてもらっている……でも……」

仮面男「君たちが私たちを信頼しているように、私たちも君たちを信頼している。だが、こちらも理屈ではないんだ」

仮面男「ケジメを付けなければならない事なんだ、私たち二人の手で!」

竜少女『……じゃが……』

仮面男「……今回の件についてはほぼ私の独断だ、彼女に非は無い。すまなかった」

鎧少女「お前……」

商人『まったくですよ!私はそれで死にかけたんですからね!』

仮面男「そうだ、君にさえ見られなければ穏便に終わっていたんだが……」

鎧少女「ああ、お前に見られなければな……」

商人『はい?』

――――――

怪人男「あなたがあんな遠い場所にあるお手洗いに行かなければこんなことにはならなかったんですよ」

商人「いや、ちょっとまてよ!?この流れまた全部私のせいになるパターン!?」

竜少女「むぅ、そういえば会場の近くにトイレはあったハズじゃがの」

商人「それは本当に見つけられなかっただけで……」

怪人男「それで、ドッキリ仕掛けられたからってドッキリしかえす!なって言い出してついていくハメになって……もう!」

仮面男『ドッキリ?なんの事だ?』

怪人男「あ」

商人「……アレ、仮面さん関係なしにあなたが一人でやったことだったんですか?」

怪人男「そ、そういうことでは……」

仮面男『君の嘘からが発端だったか……』

怪人男「ああもう!そうですよ!そういうことでいいですよ!」

怪人男(一応、あなたの名誉もありますからそういうことにしておきます!)

仮面男(すまない……)

鎧少女『もうその辺でいいだろう?こっちもやることが増えたんだ、この際手伝ってもらおう』

仮面男『しかし……』

騎士「アンタも頭が固いねぇ」

竜少女「ワシらは好きでやっておる事なんじゃ、思いっきり頼るといい」

商人「そうですよ!皆さんこう言ってることですし、ドーンとやっちゃってください!さて私は何事も無かったかのように明日の商売の準備を……」

竜少女「無関係なふりをしておるがお主もすでに関係者じゃからの?」

商人「え?私も手伝わなきゃいけない流れ?」

鎧少女『無理にとは言わんが、なるべく人数が欲しい。頼む、報酬も弾もう』

商人「こういうのは本業じゃないんですけどねぇ……まぁ、ご褒美出るなら頑張ってみましょうか。あ、なるべく安全な事だけですけど」

鎧少女『ああ、そのつもりだ』

仮面男『……わかったよ、それじゃあ詳しいことは追って連絡する』

仮面男『聞きたいことがあったら異次元魔王か、現場にいた狼君に聞いてくれ』

仮面男『今言える内容はその二人が言えることそのままだ』

仮面男(まぁ、してもらえる事はそう無いと思うが……)

鎧少女『こちらからは以上だ……ごめんな』

竜少女「よい、そうとは知らずワシも言いたい放題言ってしまってスマン」

怪人男「いやぁ、友情って素晴らしい!女の子同士の友情だと絵になっていいですねぇ!興奮します」

竜少女「どうでもいいからお主はさっさと元に戻らんか」

怪人男「おっとそうですね、それじゃあこっちへワープ!」グチャグチャ

怪人男「ギャァァァア!鳥籠の事すっかり忘れてたぁぁあ!人に見せられない体になっちゃうぅぅ!!」

商人「大丈夫ですかコレ?」

騎士「何とかなるんじゃない?魔王名乗ってるくらいだし」

竜少女「とりあえずお主の知っておる事を話してくれ、それが分からんことには何も出来ん」

商人「はい、私が見て聞いたことは……」


……


騎士「狂化の魔道核……ねぇ」

竜少女「そんなもんもう魔道核とは呼べんな」

怪人男「あの方たちの目的はそれの研究と知識の根絶です」

怪人男「関係のない誰かの命を弄んで作られる兵器に義は無いとかなんとか」

商人「あそこでまるで展示品みたいに扱って……許せません!」

竜少女「おまけに意識があると来た……考えただけで最悪じゃのう」

騎士「何で意識なんてあったんだ?制御するんなら消してしまう方がいいだろ?」

商人「多分それは不完全なものなんだと思います」

商人「まだ実験段階とか言ってましたし、完成させるにしても時間がかかるんじゃないかと」

竜少女「実用段階までは短くても数年……まだまだ時間があるとみていいじゃろう。慌てて解決させるものでもないか」

商人「でも、放っておいたら無意味な犠牲が増えます」

竜少女「うむ、分かっておる。そうなる前に奴らは解決に乗り出したんじゃ。ワシらも手伝ってやりたい」

少年『だたいまー!ちょっとー誰か手伝ってー!』

商人「あもう!シリアスムードで話が進んでたのに突如現れちゃったよあのガキンチョ!」

少年『誰でもいいからはやくー!この人死んじゃうー!』

商人「人命かかってる!?」

母『ごめんねー!ごはん作ってるから手が離せないのー』

商人「いや優先順位おかしいだろ!?」

騎士「俺が行ってくるよ、下らねぇ事だったらぶっ飛ばすぞ小僧」



剣士「……」グゥー

騎士「」

少年「あれ?騎士のにーちゃん来てたの?とりあえず何か食べさせるから居間に連れてって!」

小休止
ようやくメイン(のハズ)の二人が再会するよ……

再開
け、剣士はこれからが見せ場だよッ!

――――――
―――


剣士「ハグッハムッガツガツ」

商人「……」

竜少女「……」

騎士「……」

剣士「……おかわりだ!」

母「フフフ、はいはい。そんなに慌てて食べなくてもご飯は逃げないですよ?」

怪人男「いやぁ見事な食べっぷりですねぇ」

剣士「昔からよく言われる」

商人「いやちょっと待てよ!?お前なんでこんなところに居るんだよ!?」

剣士「?……そういえばなんでお前達がここに居るんだ?」

商人「質問を質問で返すなぁーッ!!ってか今それ私が聞いただろ!?」

少年「ねーちゃん落ち着いてよ、これでも俺の命の恩人なんだからさ」

騎士「恩人だとぉ?」

竜少女「公衆の面前で大暴れするような女が子供を助けるとは、どういう心境の変化じゃ?」

剣士「いや、腹が減ってたから集ろうとしただけだ。助けたなんて結果でしかない」

母「そういう結果が残ったんならいいじゃないですか~。はい、どんどん食べてくださいね?」

剣士「頂こう」

商人「もうなんだよ一体……」

随所に荒らし湧いてるので一旦潜伏

再開

母「そんな事言わずに!あなた達のお友達なんでしょう?」

剣士「そうなのか?」

商人「お前が聞き返すな。私にこんなお友達はいません」

少年「あ、ワープのおっさんだー!なんでウチに来てるの?」

怪人男「おや?誰かと思えばあの時の坊やではないですか~」

商人「こっちもこっちで知り合いかよ!って、あの時話してたワープのオッサンてこの人だったんですか」

少年「うん、あのウサギが近くに来たとき俺を連れてワープしたんだぜ!」

怪人男「ええ、偶然通りかかったので運がよかったですよ、ホホホ」

少年「それでさ!また出たんだ、あのデッカイウサギ!」

怪人男「ッ!そ、それは本当ですか?」

少年「う、うん……たまたま出くわして、それでそこのおねーさんが追い返したんだけど」

剣士「仕留めるには至らなかった、万全であったのならこうはいかなかった」モグモグ

騎士「大きい都市だからそういうのは無いと思ってたが、物騒なモンスターがいるんだな」

少年「都市を出てすぐの所に大きな森があるんだ、最近変なウサギがいるって噂だったけどやっぱりあれがそうだったのかな……」

竜少女「……森にウサギ、のう……」

商人「あのウサギ親子の事が心配ですか?」

竜少女「まぁの。どちらにせよ様子は見に行きたいが……」

騎士「先に狂化の魔道核の事を優先させたいな」

母「コラ!またあの森へ行ったの!?」

少年「げっバレた」

母「バレたじゃないでしょ!いい加減にしないと起こるよ!」ギリギリ

少年「母さんやめて、両手で頭を潰そうとするのやめて、尋常じゃないくらい痛い」


怪人男「綺麗なお嬢さん、ウサギは逃げて行ったんですね?」

剣士「ああ、小さくなって逃げて行った」

商人「小さくなって?縮小の魔法でも使ったんですか?」

剣士「そんなもん使えん。とにかく小さくなったんだ」

商人「だからどう小さくなったんだよ!具体的に言えよ!」

剣士「小さくなったんだ、それ以外に何がある?」


怪人男「小さく……ふむ」

騎士「何か心当たりでも?」

怪人男「いえ、まったく。狂化を施した魔物が何体か野に放たれていると情報は入っているんですが……」

怪人男「私が以前見たウサギ型の魔物は確実にその中の一匹でした。額に魔導核が埋まっていたのでなおさら」

怪人男「小さくなるという症例が無いですから、彼らの報告待ちですね」

竜少女「その小さくなるという事、もしや狂化前の姿に戻るとかではあるまいの?」

怪人男「……だとしたら非常に厄介ですね」

竜少女「普通の魔物と区別がつかなくなる上に雲隠れされかねん」

怪人男「それで、そのウサギの額に大きな石とかくっついていませんでした?」

剣士「ああ、ついてたぞ?赤いのがな」

騎士「……最悪じゃねぇか」

剣士「叩き割れはしなかったが、そこを攻撃した後は様子がおかしかったな」

剣士「突然動きが鈍って苦しがっているようにも見えた」

剣士「……万全なら負けなかったんだが、武器がなぁ……」チラッ

商人「何故私を見る!斬姫はわたさねぇよ!あっち向け!」

竜少女「連中にも報告しておけ、明らかに個体の能力でも無さそうじゃしな」

怪人男「ですねぇ~。明日は森へ探索ですねこりゃ」

騎士「他に何か気が付いた事は無いか?なんでもいい、話してくれ」

剣士「何をそこまで気にしている?奴は私のエモノだぞ?」

商人「誰もそんな話してねぇっての!ホントお前と喋ると疲れるな!」

剣士「お前が無駄に突っ込みを入れているだけだろう」

竜少女「別にお主の獲物に興味などない。ワシらは情報が欲しいだけじゃ、喋っても損は無かろう」

剣士「情報か!ならばいくらで買ってくれる?」

商人「……は!?」

竜少女「なんてことない事に金を要求してくるかこの小娘が!」

剣士「私も学んだんだ、そこの犬のように強引に何でも値段を付ければ金が手に入るんだろう?」

商人「私ぃ!?なんでそこで私!?」

竜少女「お主余計な入れ知恵を……」

商人「いやいやいや!私関係ありませんから!」

剣士「何か間違ったか?」

商人「全然違うからね?情報を売るっていうのはね……」


説明中


商人「わかった?」

剣士「わからん」

商人「ですよねー」

竜少女「どうでもよいがそんなもの説明している暇があったら早う聞き出さんか」

商人「とりあえずコイツの持っている情報に価値が無いことを教えました」

騎士「よし、それで何を知っている」

剣士「大したことではない、ただ私が戦ったやつは他の奴と交戦した経験があったみたいだ」

商人「なんだ、それだけか……ほんと大したこと無いですねぇ」

竜少女「何故そうだと?」

剣士「傷があった、顔に」

商人「ッ!」

竜少女「っ!!どんな傷じゃ!?」

剣士「頭から頬にかけて、目も見えていなかったみたいだ」

商人「まさか……ねぇ?」

竜少女「……悩みの種が増えてしまったのぅ」

剣士「正直そんな事はどうでもいい」

剣士「お前たち、知り合いに鍛冶師はいないか?」

騎士「どうした急に?」

剣士「戦いの途中で剣がやられた」ガチャン

商人「うわぁ、派手に折れてますね」

竜少女「これは……そもそも年期物みたいじゃしもう修復出来んじゃろう」

剣士「それは困る!これしか持っていないんだ!」

騎士「そう珍しい剣でもないみたいだし、治すよりも新しく買い換えたらどうだ?」

剣士「そんな金無い」

商人「修理するのにもお金かかる事知ってます?」

剣士「そうなのか?」

商人「そうですよ!?今までどうやって修繕とかしてたの!?」

剣士「こう、鍛冶師を脅してだな……」

商人「それ一番ダメなパターンだよ!!」

剣士「お前は本当にうるさいなぁ」

商人「お前がそうさせるんだよコンチクショウ!!」


怪人男(ふむむ……狂化が自発的に解けるとなると厄介ですねぇ)

怪人男(研究施設から何匹"逃げた"のか数もハッキリしていませんし、駆逐に時間がかかりそうですねぇ)

怪人男(ま、私は戦闘とか出来ませんのでそこら辺は彼らに任せちゃいましょうかねぇ)

1シーンに人数居すぎると訳わかんねぇなコレ

――――――
―――


商人「で、私の部屋に上がりこむのはあなた達だけですか」

竜少女「男性二人は特別にリビング行き。女性と同室は遠慮してくれたんじゃ、そこはありがたく思え」

剣士「屋根つきの場所で寝れるのは何日ぶりかだな」

商人「……何サラッと紛れ込んでるんですか」

剣士「ダメか?」

商人「ダメだ!出てけ!」

剣士「お前、意地が悪いな」

商人「私たちの関係分かってって言ってんのか!?」

剣士「……なんだ?」

商人「なんだってなんだよ!?敵だよ!?」

剣士「私たちは敵だったのか……!」

商人「今更だなおい!?」

少年「ねーちゃん達ー風呂湧いたよー」ガラガラ

商人「お前はナチュラルにノックもせず部屋の戸を開けてんじゃねェよ!」

少年「グハッ!エルボーッ!?」

剣士「湯が勿体ない、全員で入るぞ」

竜少女「お主、そんなところで謎の倹約せんでいいじゃろう」

剣士「湯に浸かるときはそうすると昔教えられたんだ」


……

竜少女「ふぅ、いい湯じゃあ」カポーン

商人「本当に3人で入っちゃったよ」

剣士「……」

商人(流石に声に出しては言いませんけど、綺麗な体してるなぁ)

商人(そして中々お胸が……おっと、あのクソガキじゃあるまいし何考えてんだ私!)

竜少女「ところで、お主何しにこの魔導都市へ来たのじゃ?」

竜少女「列車事故があった時点で無理にここに来る事は無かったろうに」

剣士「そこの犬が魔導都市の事を口走っていたから来てみただけだ」

商人「狼です。そういやさっき突っ込み忘れたな」

竜少女「結局お主が招いたのか……」

商人「好きで招いた訳じゃありませんよ!私は刀が欲しけりゃ金を出せ!魔導都市ででも働いて金稼げ!って言っただけです」

剣士「そうなのか?」

商人「そうだよ!?他に何の目的があってそういうこと言うの!?」

剣士「てっきり武者修行でもして斬姫に釣り合う使い手になれと言われたかと思ったんだが……」

商人「ンなこと一言も言ってねェよ!?曲解も甚だしいわ!?」

竜少女(今は襲ってくる素振りをこれっぽっちも見せておらんから放置しておるが、さてどういうつもりで動いておるのじゃこの娘は……)

剣士「頼む、恩人を襲ってまで奪いたくはない。斬姫を私にくれ!」

商人「だからその恩人から奪われるか壌土するかの二択を迫るな!」

剣士「今の私には戦う術がない、アレを渡してくれれば奴を倒せるんだ!」

商人「このままじゃずっと平行線だよもう……」

竜少女(……大丈夫かのぅ?)

少年「ねーちゃん達!背中流しに来たよ!」ガラガラ

商人「ホント不屈の精神だな!?もう一発RFB-2食らいたいのか!?」

少年「今日はサングラス装備だぜ!うっはははそこには俺の理想郷!」

商人「だったら物理的に殴る!!」

少年「うへへへ、そしたらいろいろ見えちゃうもんねー!」

竜少女「まったく騒々しいのう、見られても減る物でもないし好きなだけ見せておけばよかろう」

商人「あなたは人の姿に擬態してるだけから羞恥心とか無いかもしれないですけど私は違うんですよ!?」

竜少女「そこの剣士を見てみぃ、湯船から立ち上がって全部見られても動じてはおらんぞ?」

商人「ってオイ!何立ち上がってんだ!?全部丸見えだよ!」

少年「あばばばばばば」

剣士「……おい小僧」

剣士「戸を閉めろ、寒い」

少年「え、あ……」

剣士「戸を閉めろ」

少年「……はい」ガラガラ

剣士「ふぅ」ポチャン

商人「……なんていうか」

竜少女「冷めた反応で追い払ったのう。お主は大げさな反応するから子供が付け上がるんじゃ」

商人「突っ込まずにはいられない性分ですから仕方ないじゃないですかぁ……」

竜少女「悪いとは言わんが接し方を考えい」

剣士「……先に上がるぞ」

商人「あ、どうぞー……じゃなくて私も上がります!」

商人(風呂入ってる最中に荷物漁られたらたまったもんじゃないですしね)

竜少女「ん?そうか、ワシはもうしばらく入っているとしようかの」


……

剣士「……」

商人「……」

商人(部屋に戻って何をするかと思ったら)

剣士「……」

商人(折れた剣を眺めているだけ。てっきりしつこく斬姫渡せって詰め寄ってくると思ってたんですが、調子狂いますねぇ)

剣士「……」

商人(んで、最高に気まずいっと)

剣士「……私は」

商人「んへ?」

剣士「私は今まで何かを奪いながら生きてきた」

剣士「生まれは分からない。多種族がお互いを支えあって生きていた集落に私は捨てられていた」

商人(意味ありげな事語り始めちゃったけどどうしよう……)

剣士「そこそこ幸せだったと思う、みんな私によくしてくれた」

剣士「だがある日、集落は襲われた。ある国の軍の侵攻によって、敵兵が潜伏している疑いがあるという理由でだ」

剣士「私の、私たちの生活がすべて奪われた」

剣士「水も食料も……命も」

商人「……」

剣士「それでもみんなは私を守った、幼かった私を守った」

剣士「……最後は私一人になった」

剣士「死にたくなかった。だから私は奪った」

剣士「アイツらが私たちから奪ったように、私もアイツらから奪ってやった」

商人「……何を奪ったんですか?」

剣士「一番初めはこの剣だ」

剣士「残り一人だった私に油断していた兵士から剣を奪うのは容易かった」

剣士「二番目に奪ったものは、その兵士の……命だ」

剣士「触ったことのない鉄塊で、鎧の隙間から肉を抉った」

剣士「苦痛の叫び声を上げる兵士眺めてから、その後の記憶は曖昧だ」

剣士「気が付いたら集落からかなり離れた場所。返り血だらけ、辺りには屍」

剣士「全部私がやったらしい……覚えてはいないが」

剣士「それからずっとだ、私は一人で生きてきて、人から奪って生きてきて」

剣士「この折れてしまった剣とずっと一緒に……」

商人(碌な手入れが出来なくてずっと使い続けりゃそりゃ酷くボロボロにもなりますよねぇ)

商人「……って攻めてきた軍隊一人でやっつけちゃったんですか!?」

剣士「いや、私が殺していたのはほんの数人……か」

剣士「その時私を眺めていた奴がいたが……おそらくそいつが他の連中をやったんだろう」

剣士(そう、忘れはしない。あの光景、あの"魔王"の姿……)

商人「それ、思い入れがある剣なんですね?」

剣士「思い入れかどうかは分からないが、私のルーツでもある。手放したくはないと思っている」

剣士「……だが最近、分からないことが出来た」

商人「分からない事?」

剣士「私は奪って生きてきた、のに」

剣士「私に与えていた者もいたことに気が付いた」

商人「与えていた?なんですかそれ?」

剣士「行く先で私に菓子をくれた子供もいた」

剣士「見も知らぬ私に肉まんをくれた老人もいた」

剣士「お前から剣を奪おうとしたハズなのに、お前に命を与えられていた」

商人「あー……」

剣士「解せない」

剣士「私は奪う事しか知らない。奪うか奪われるかの二つしかないと思っていた」

剣士「なのに、お前は……」

商人(そっか、この娘は……だとしたら、今までの行動も)

剣士「恩は返せと昔教えられていた。だが、返し方が分からないんだ。教えてくれるみんなももういない」

商人「いいんですよ、そんな事」ダキ

剣士「?」

商人「不器用ですねぇまったく」ナデナデ

剣士「お、おいやめろ。気持ち悪いぞ」

商人(奪うことでしか生きてこれなかった。与えられる事を知らなかった)

商人(そんな風に生きていたら分からないですよね、相手に何かを与えるという事も)ナデナデ

剣士「……」

商人「いつかきっと、あなたにそれを教えてくれる人は現れるハズです」

商人「いいえ、悩むことが出来るのならば、きっとあなたは答えにたどり着けますよ」

商人(この娘のせいで命の危険に晒されたのに、どうしてこんなに愛おしく感じるんでしょうねぇ)

剣士「……お前、温かいな」





竜少女「キマシタワーなのじゃ!!」ガラガラッ!

少年「この瞬間を待っていたんだ!!」

商人「ここでぶち壊すか!?」

小休止
まだまだ剣士

再開

商人「ってか有らぬ勘違いをしないでくださいね!?そういうのじゃないですから!」

竜少女「随分男っ気が無いとは思っておったが、まさかまさかのどんでん返しじゃのう」

少年「大丈夫!俺は男じゃなければねーちゃんが誰と付き合っていようと構わないから!」

商人「お前は黙っていろ」

剣士「こいつらは何の話をしているんだ?」

商人「ああ気にしないでくださいね?この人たちはちょっと頭おかしいんです」

剣士「私は女同士の関係などには興味ないがな」

商人「あれ!?理解しちゃってた!?普段はおバカなのに!?」

剣士「バカなのは理解している、それよりも斬姫くれ」

商人「唐突だな!?渡さないよ!?」

剣士「チッ、同情を誘えば乗っかってくると学んだのだがダメか」

商人「ちょっと待てや、今の話全部ウソかよ!」

剣士「……嘘はついてはいない、実際は気まぐれに話しただけだ」

商人「そ、そうですか?あなた本当によくわかりませんね……」

剣士「……」

剣士(何故私は昔話をこの犬にしたのだろうな……)

剣士(……斬姫以外にも私はコイツに何を求めているんだ)

騎士「お前らウルサイなホントに……」

竜少女「ぬお!男子禁制じゃぞ、何しに来おった!」

少年「男は出てけよ!俺以外!」

騎士「……突っ込むべきなのか?」

少年「ナニを突っ込む気だ!?」

竜少女「お、男同士でそういうのはワシはちょっと……」

商人「あなた達仲イイですね」

少年「そっち方面で意気投合!」

竜少女「うむ!そっち方面じゃ!」

商人「どっち方面!?」

剣士「お前は散々だな」

騎士「言うな、いつもこんな感じなんだよ……」

騎士「それよりも、鍛冶師の事だが……」

剣士「いるのか?」

騎士「いつ都合が付くか分からんが、腕のいい奴が知り合いにいるんだ」

竜少女「じゃがあの仮面はしばらくこっちに顔を出せんじゃろう」

騎士「あー、まぁな」

剣士「それではダメだ、今すぐに剣を治さなければならん。このままでは戦えん」

竜少女「戦えないと言うてものぅ……」

騎士「言っちゃ悪いがその剣はもう使い物にならんぞ?」

剣士「……そんな事は……治してみなければ分からんだろう?」

少年「ねーねー、ねーちゃん。あの人紹介したら?」

商人「あの人……ああ、そういえばこの宿に居ましたね、鍛冶師」

剣士「本当か!」

商人「え、ええ、隣の部屋に……」

剣士「行ってくる」

騎士「おいちょっと待て!突飛押しも無く押しかけるのは迷惑だろ!」

竜少女「聞きもせんと行ってしもうた」

商人「あちゃー、こうなる事は予測できたのに何やってんだ私」

竜少女「都合よく押し付けられたとか内心考えてないじゃろうな?」

商人「……てへっ☆」

商人(しっかし……)

商人(あれだけ私の斬姫に拘ってたのに、いざ自分の剣が折れたらこっちに目もくれずに付きっ切りですねぇ)

商人(それだけ大切にしてきたってことですか)

商人「……つーか金の問題解決してないよね?」

竜少女「本気で修理することしか頭に無いみたいじゃの」

騎士「それでも金の事を忘れるか?」

商人「あの娘なら忘れかねませんね」

少年「おねーさんちょっとバカぽいもんねー」

……

剣士「失礼する」ガチャ

眼帯少女「……」

剣士「……」

眼帯少女「……久しぶり」

剣士「?」

眼帯少女「……何の用?」

剣士「鍛冶師がいると聞いた、コイツを治してもらいたい」

眼帯少女「……まだ使ってたんだ、その剣」

剣士「??」

眼帯少女「……私の事覚えてる?」

剣士「すまん、どこかで会ったことがあるか?」

眼帯少女「……私の素顔を見て驚かれるより存在を忘れられる方が辛い」グスン

剣士「そんな事はいい、お前が鍛冶師か?そうならコイツを治せ」

眼帯少女「……とうとう折れたんだ」

眼帯少女「……何で自分に合わない剣を使い続けるの?」

剣士「何故そんな事を聞く?お前には関係ないだろう、私の勝手だ」

眼帯少女「……だったら新しいのを買ったら?いくつか紹介してあげるけど?」

剣士「嫌だ、コレがいい」

眼帯少女「……あなたがあの商人から刀を奪おうとしていると聞いたけど?」

剣士「それとこれとは別だ、あの剣が私を呼んでいるんだ」

眼帯少女(……呼ぶ?……なるほど、魔刀持ってるんだ、彼女)

剣士「今はそれよりもコイツを治せ」

眼帯少女「……直してどうするの?」

剣士「また使う、それ以外に何がある?」

眼帯少女「……その剣は既に死んでいる、何の魔法も施されていない一般の剣」

眼帯少女「……拘る理由は知ろうとは思わないけど、そんなに大事ならなんでもっと大切に使わなかったの?」

剣士「使い方など私の勝手だ!!コイツはまだ死んでなどいない、だから"治せ"!!」

眼帯少女「……剣を持たないあなたに脅されたところで何も怖くは無い」

眼帯少女「……もう少しだけ武器の声を聞いて、そうすれば分かるハズだから」

剣士「何が分かる……武器は物言わぬ鉄塊だ!」

眼帯少女「……その鉄塊はあなたに語りかけていたはず、聞こうとしなかったのはそっち」

剣士「訳が……分からん」

眼帯少女(……私も言ってて訳が分からなくなってきた)

剣士「……この剣は私なんだ……死んでなどいない……まだ……」

眼帯少女「……」

眼帯少女「……貸して」

剣士「治してくれるのか!?」

眼帯少女「……それを決めるのはあなたのこれからの行動」

剣士「?」

眼帯少女「……そう、いいこと思いついた。うん、傑作」

剣士「さっきから気味が悪いなお前」

商人「はーい、そこまでそこまで!あんまり他人に迷惑かけちゃダメですよー。あ、お邪魔しまーす」ガチャ

剣士「なんだ?」

商人「なんだじゃないでしょうが!あなたが騒いだりしたら私が怒られることになってるんですよ何故か!」

騎士「連れてきたのはアンタのようなもんだからな」

商人「えぇい!茶々を入れるな鬱陶しい!」

眼帯少女「……彼女に刀を譲ってもらって」

剣士「なんだと!?」

商人「はい?」

眼帯少女「……暴力や強奪はダメ、ちゃんとした形で彼女から刀を譲ってもらえればこの剣を修理してあげる」

商人「ちょっと待って!なんで私が引き合いに出されてるんですか!?」

眼帯少女「ダイジョーブダイジョーブ」

商人「おかしいだろ明らかに!?」

剣士「……分かった」

商人「なぬ!?」

剣士「そいつから斬姫をもらえれば治してくれるんだな?」

眼帯少女「……うん、約束する」

商人「渡さないよ!?何があっても万が一にも!欲しけりゃ金出せ原価の3割増しで!」

剣士「難攻不落だな」

眼帯少女「……ボッタくりよくない」

商人「チクショウ!付きまとわれる理由がなんかエスカレートしちゃってるじゃないですか!」

剣士「どのみちお前には礼をしなければならないんだ、そのついでだ」

商人「ついで!?何であなたのお礼のついでに私の斬姫を譲らなきゃいけないんですか!?」

眼帯少女「がーんば!」

商人「こんな時ばっかりあなた…(三点リーダ)つかなくなりますね!?」

剣士「任せろ、お前の為に何でもするぞ。肩もみか?肩もみでいいな?」モミモミ

商人「やめろ!そんなことを積み重ねたところで私の心は揺るがないよ!?あ、気持ちいい」


竜少女「妄想が捗るのう!」

少年「いいよね!女の子万歳!」

母「ウフフ、R指定ですか?」

怪人男「ウホホ!生百合ですよ生百合!」

騎士「お前らどっから湧いて出た……」

――――――
―――

商人「ふぁぁ……眠ッ」ガチャ

眼帯少女「……何でいきなり無断で入ってきた?」

商人「地味に怒ってるからですよ、今にも飛び蹴りを浴びせようとしてるくらいには」

眼帯少女「……他の人たちは?」

商人「何時だと思ってるんですか?皆寝静まってますよ」

眼帯少女「……何か用?」

商人「色々と文句を言いたいのと、聞きたいことが少々ですね」

眼帯少女「……文句は聞き流す、質問は答えられる範囲でなら」

商人「いや、文句聞き流すなよ」

商人「まぁいいや、文句と質問先にどっちかた聞きたいですか?」

眼帯少女「……質問から聞く」

商人「私の斬姫の事、どこで聞いたんですか?あなたには話していないハズですが?」

眼帯少女「……前の列車の時にあなたが刀を持って逃げていたのを見たから、彼女にカマをかけただけ」

商人「なんか信用できませんが……」

眼帯少女「……深くは知らないけど適当に話を合わせてたら色々と合点がいっただけ」

商人「んー、まぁそれはそれとしておきましょう」

商人「もう一つ、なんで私が刀を譲ることをその剣を直す事の条件にしたんですか?」

眼帯少女「……そうしたら彼女のやる気も出るだろうし面白そうだったから」

商人「私たちはあなたのおもちゃにされたと!?」

眼帯少女「……嘘。本当は彼女にはこの剣を手放してもらって、本来持つべき武器を持ってもらおうを思っただけ」

商人「で、その持つべき武器ってのは」

眼帯少女「……あなたの言う斬姫」

商人「言うと思いましたよ……」

眼帯少女「……そもそもこの剣からは訴えかけるように何か強い思念を感じる」

眼帯少女「……彼女はそれに気づかないで、ずっとこの何の変哲もないような剣に縛られている」

商人(さっきの話が本当の事だというのなら……手放せない気持ちもわかりますけどね)

眼帯少女「……この剣を自分とも言っていた。それじゃあ、ずっと自分を傷つけて酷使してきたことになる」

商人「自分と重ねてるんですね、今までの人生奪って生きてきた。奪った剣、奪われた命、それを心のどこかで良しとしていない事」

商人「本当に気にしてないなら誰かに何かを与えられることで葛藤なんてしませんよ」

眼帯少女「……よく語る」ニヤニヤ

商人「べ、別に深い意味は無いですよ?ただ、ちょっと生い立ちを知っちゃっただけで……」アセアセ

眼帯少女「……彼女の事、嫌い?」

商人「嫌いです」キッパリ

眼帯少女「……流れ的にはもう少しデレることこなのに」

商人「ま、お礼はしたいだの改まった態度で接してただのでちょっとは見直しましたけど」

眼帯少女「……話せばわかる人」

商人「いや、それは無い、マジで」

眼帯少女「……でも放っておけない、という感情は芽生える。もう少しだけ彼女を見てあげていて」

商人「それはあの娘が諦めるまで面倒見ろと?」

眼帯少女「……まぁ、渡したくないのなら上手く切り抜ける方法でも考えておくといい」

商人「無責任だなぁもう」

商人「それじゃあそろそろ文句の方を……」

眼帯少女「本日は閉店いたしました、またのご来店をお待ちしております」

商人「饒舌だなおい!?逃げんなよ!?」

眼帯少女「」クカースピー

商人「早ッ!もう寝ちゃってるよ!」

商人(ま、言っちゃった事は覆りそうにないですし、しばらくは様子見ですかね)

商人(幸い竜さん達がいるのである程度は安全だと思いますけど……)

商人(ところで、この方のお連れの方々はどこ行っちゃってるんでしょうか?朝見たっきりですけど……)

――――――
―――

黒髪少女「……本気でタチが悪いですね」

金髪少女「どうした?いつものお前ならとっとと片づけているハズだろ?」

黒髪少女「あのウサギ、今日に限って現れないとは」

金髪少女「あれだけデカいならとっくに見つかっていてもおかしくないのにな」

黒髪少女「御給金でないのに私たちはこんな夜中まで上空の散歩ですよ、まったく勝手なんですから!」

金髪少女「冒険者ギルドに直接抗議しに行け、安請け合いしたお前も悪いが……」

黒髪少女「すぐ終わると思ったんですよ!大きければすぐ見つかると思って」

金髪少女「しかし妙だな、今まで少なからず報告されていたにも関わらず、急に積極的に討伐に乗り出すとは」

黒髪少女「それも、まだ依頼所に出ていない討伐依頼みたいですしね」

黒髪少女「フリーで動ける私たちを使っているのがまた何とも怪しいですね」

金髪少女「あーあ、なんでこんなことになんたんでしたっけ?」

黒髪少女「……ごめんなさい」

金髪少女「先の列車事故でお前が無茶して私たちの事がバレなければ、ギルドのほうでもみ消してもらうなんてことも無かったろうに」

黒髪少女「もう!謝ってるじゃないですか!」

――――――
―――

小休止
金髪少女と鎧少女と剣士が凄い勢いで口調被ってる気ががが

再開

――――――
―――


翌朝

商人「はぁ!?着いてくるなと!?」

竜少女「うむ、さすがに今回の件は戦う術のないお主を連れて行くわけにはいかんからのう」

騎士「前の……列車でそいつに襲われた時もそうだったが、俺たちが常にお前を守れる程強いわけじゃないからな」

剣士「フンッ……」

商人「まぁ足手まといになるのはわかりますが、手伝うと決めてしまった手前どうにも」

竜少女「すまんのう、ワシらか連中からの指示を待っていてくれ。ひょっとしたら何か入用になるやもしれんし」

騎士「と、言うわけで、森の調査に進展があるまで待機しといてくれ」

商人「本音を言ってしまうとホッとしているんですけどね」

竜少女「ぶっちゃけたのぅ」

商人「あ、そうだ。私は戦えないですけどこの娘は戦力になるんじゃないですか?連れて行ってください」ズイッ

剣士「私は剣がないから戦えんぞ」

竜少女「生憎じゃがその者はワシも傍に置きたくない」

騎士「もう氷漬けは嫌だお……」ガクブル

商人「ついて行かなくても私の安全が保障されない件について」

剣士「なんでだ?何かあったら私が守ってやるぞ?」

商人「あなたに襲われる危険性が高いんですよ、わかってますか?」

剣士「?」

商人「わかってないねその顔は!」

竜少女「以前のような敵意は感じぬから大丈夫だとは思うがの……多分」

騎士「交わした約束は守りそうな性格をしているもんな……多分」

商人「そこは自信を持って言ってくださいよ!?」

騎士「だってねぇ?」

竜少女「だってのぅ?」

剣士「話は掴めんが、わかった。今日一日お前を守ればいいんだな?」

商人「いつそんな話をした!?」

剣士「任せろ、剣は持たないが暴漢程度なら氷漬けにして見せよう」

騎士「ヨカッタナー念願ノ護衛ガ見ツカッテー」

商人「色々と丸投げかよチクショウ!」

竜少女「丸投げというかそれはお主の問題であってワシらは何も関係ないような……」

怪人男「ではお二方、そろそろ私の能力でワープしますけど準備はよろしいですか?」

商人「あ、いたんですか」

怪人男「とうとう空気扱いですか」

商人「気を付けてくださいね?危ないと思ったらすぐに逃げるんですよ?」

竜少女「言われずとも分かっておる、吉報を待っておれ」

竜少女「……あのウサギ、何も関係なければいいのじゃが」

商人「はい……」

怪人男「じゃあ飛びますので私につかまってくださいね~」

騎士「人を連れての転移は安定しないって聞いたけど、まさか転移先が地面の中とか空中とかだったりはしないよな?」

怪人男「……飛びますよ~」

騎士「おいちょっと待て!?何か言えよ!?」

怪人男「質問は受け付けませんよ?ハイ3・2・1!」ビュン


商人「あーあー……不安要素残して行っちゃったよ」

剣士「?」

商人「そんななんで?って顔して首を傾げないでください可愛いなぁもう」

少年「おーい、そろそろ朝食できるよー……ってあれ?ねーちゃん達だけ?」

商人「ありゃりゃ、間が悪かったですね。ってかあの人たちも一声かけて言えばいいものを」

剣士「3人いなくなったな」

少年「げっ、野郎二人と大食らいが一人いたから母さん結構多めに作ってたよ」

商人「散々な言い方ですね」

少年「ま、いいか。残った分はみんなの昼食に出せば」

商人「おい、客の前でそういうこと言うなよ」

剣士「残さん、全部食うぞ」

商人「そこ張り合う必要ないですよ!?」

……

母「あら、皆さん早くに出て行かれたんですね?朝食も取らずに大丈夫でしょうか」

剣士「まったく、礼儀を知らん連中はこれだから」モグモグ

商人「お前も大概だっての」

眼帯少女「……残すのはもったいない、可能な限り食べる」モグモグ

剣士「おかわりだ」カラン

少年「おねーさんよく食べるねぇ」

剣士「食えるときに食ってエネルギーを蓄えないと強くはなれないからな」

少年「おぉ、強者のオーラが……」キラキラ

商人「逆に言うと食える時が少ないような物言いですが」

黒髪少女「……た、ただいま戻りました……」ガラガラ

金髪少女「うう……」

母「あら、お帰りなさいませ……目の下にクマが出来てますが大丈夫ですか?」

金髪少女「大丈夫です、1日寝ないくらいは……」

黒髪少女「一晩中走り回ったり飛び回ったりでここまで消耗するとは……最近基礎トレーニングをサボっていたツケが回ってきましたね……」

母(と、飛び回る?)

眼帯少女「……お帰り、収穫は?」

金髪少女「残念ながら皆無ですね……」

黒髪少女「私たちも朝食いただけますか?」

母「あ、はい!ちょうど3人分キャンセルが出たのですぐにご用意できますよ」

金髪少女「お、お願いします……」

黒髪少女「あら?そちらの青髪の方は……」

金髪少女「確か列車でお会いしましたね?」

剣士「なんだこいつらは?」モグモグ

商人「いや、前会わなかったの!?ってか確実に会ったよね!?」

剣士「戦わなかった奴とか弱かった奴は基本的に覚えていない。コイツらがどっちかは知らないが」

商人「頭大丈夫か!?ほんの数日前だぞ!?」

剣士「頭……髪なら気を使っている方だが何か?」

商人「もうダメだ、まともに会話すら成り立たねぇ」

剣士「それは流石に冗談だ……覚えていないのは本当だが」

黒髪少女「そう……それは残念ですね」

眼帯少女「……弱い奴は覚えてない……グスン」

商人「そういえば、あなた達やたらと別行動してますけど何かしてるんですか?」

黒髪少女「フフッ、大人の女性の夜はトップシークレットなのですよ?」

少年「おぉ、アダルティ!」キラキラ

金髪少女「夜通しで依頼をこなしていただけでそんな変なことはしてないですからね!?」

剣士「で、そこの眼帯女は戦力にならないから置いて行ったと?」

黒髪少女「そんなことはありませんけど……色々危険ですしねぇ?」

金髪少女「そう、安全第一ですよ?うん」

眼帯少女「……その遠回しの優しさが心に刺さる」グスン

黒髪少女(と、濁して言いましたが)

金髪少女(まだ公開されてない情報なんだ、口が裂けても言うなよ?)

黒髪少女(上から圧力をかけられていると煩わしいですね、普段ならサクッと圧力かけてる人ごとやっちゃうんですが……)

剣士「ごちそう様」

少年「はーいお粗末さまでした。おねーさんはこれから予定ある?なかったら俺と二人でいいことしない?」

商人「ここまで来るともう清々しいレベルだなおい」

剣士「予定は無い、が。私はこの犬から剣を貰えるように頑張らないといけないからな」

商人「狼です、いい加減に覚えろ。そして渡さないと言っているだろ!」

剣士「ホレこんな状況だ、少し剣を振るいたくても物がないのではどうしようもない。さて、何をすべきかな」

少年「……ねえ、今することが無いのなら俺に剣を教えてよ!」

剣士「え……なぜ私が?」

少年「昨日のおねーさんの戦い見てさ、俺やっぱり将来冒険者になろうと思ったんだよ!」

少年「あんな風にかっこよく俺も剣を振ってみたいんだよ!」

剣士「わ、私にはやることが……」

商人「ここに居たって私の気持ちは変わらないですし時間が無駄に過ぎていくだけですよ?だったらほかに有意義な過ごし方はあるんじゃないですか?」

剣士「しかし、剣が無いではないか……」

少年「ちょうどいい木の棒とかあるからそれでいいでしょ?ね?教えてよー」

剣士「それは困る、私は誰かに物を教えたことなんて……おい、押すなこら!」

少年「いいからいいから!庭に行こう!」

剣士「た、助けろ!こういう時どうすればいいかわからん!」



商人「いやー、ああいう初々しい反応って可愛いですねぇ」

黒髪少女「体よく厄介払いしましたね、あなた」

小休止
このペースじゃ終わらんのう

再開

商人「いやぁ、ほかっておいたら絶対私にまとわり着いてきますからねぇ」

黒髪少女「それはそれは、よく好かれるのですね?」

商人「あんなのに追い回されたらたまったもんじゃないですよ」

黒髪少女「でもまぁ、人の出会い、縁は大切にすべきですよ?あの娘の場合はもうあなたに敵意は無いみたいですし」

商人「簡単に言ってくれますね?何度か殺されかけたんですよこっちは……」

商人「おまけに取引に勝手に私の刀をダシにしちゃう人もいますしね?」

眼帯少女「今日も元気だ飯がうまい!」

商人「おい、ごまかすな」

眼帯少女「……でも、物は考えよう」

商人「お?」

眼帯少女「……今彼女はあなたから刀を譲ってもらおうと色々と考えているハズ」

眼帯少女「……それ故に、彼女はあなたの言うことに絶対服従」

商人「そういえば私の言うことは素直に聞いてくれますねぇ」

眼帯少女「……そう、だから今の状況を逆手にとってあんなことやこんなことをしたり……ぐへへ」

商人「私が男だったらそうしたんでしょうけど残念ながらそっちの気はありません」

商人「ですが……ふむ」

金髪少女「何か考えが?」

商人「ま、しばらくはコキ使えるって事でしょうね」

黒髪少女「普通はそう考えますね、やっぱり」

……

少年「おねーさん!構えとかあるんでしょう?こう、天地魔闘的な」スィー

剣士「……それは反撃の構えな上に剣は関係ないぞ」

剣士「ともかく、私の剣術に構えなど存在しない、我流だからな」

少年「おお我流!かっこいい響き!」

剣士「覚えたければ見て覚えろ、私は人に物を教えることは得意ではない」

少年「うんわかった!じゃあ見てる!」

剣士「……」ブンブン

少年「……」ワクワク

剣士(やはり、棒切れを振り回しているだけでは無意味だな。もっと重く、形状が剣に近いものの方が……)

少年「……」キラキラ

剣士(……見られているとどうもやりにくいな)

剣士「……あまり見つめられると集中出来ん」

少年「え?だっておねーさん見て覚えろって言ったじゃん」

剣士「そこまで熱の籠った眼差しをしなくてもいいだろう」

少年「だってカッコいいもん。昨日助けてくれた時なんて特に」

剣士「よくわからん……助けたのだって偶然に過ぎん。必要ならばお前を餌にしてまで勝とうと思っていたがな」

少年「うぇ、マジで?」

剣士「大マジだ、運が良かったな」

少年「そうだね、運が良かった。だからこうしておねーさんから剣を教わろうとしてるし」

剣士「私からは教えようとはしないが……なぜお前は剣に憧れる?カッコつけたいだけなら他にも色々と出来ることがあるだろう?」

剣士「剣を持つ以上、それにはリスクが付きまとう」

剣士「相手を殺すか自分が殺されるか、この二つだ」

少年「カッコつけたいだけじゃないよ、別に……」

少年「それに、何も殺し合いだけじゃないでしょ?そういうの」

剣士「形式ばったものは所詮はお遊戯だ、剣は……いや、武器は人を殺すためにある」

少年「……俺の父さんさ、冒険者だったんだ」

剣士「ん?」

少年「でも、昔にまだ赤ん坊だった俺を魔物から助けるために体を張って守ったんだ、それで死んじゃったんだって」

少年「父さんはお世辞にも強かったり、凄い冒険者とまではいかなかったらしいけどさ」

剣士「……弱い父親のように死にたくはないと?」

少年「違うよ!……ううん、結果的にはそうなのかな」

少年「ただ、俺が強くなれば守れるものが増えるでしょ?」

少年「友達だって母さんだって、これから出会う人たちも全部……」

剣士「……守る剣では強くはなれん」

少年「そんなことは……ッ!」

剣士「ある!相手を倒すことだけを考えればいい、他の考え事なんて不要だ」

少年「……おねーさんは、守りたいものが無いの?」

剣士「……そんなもの、とっくの昔にすべて奪われた……」

剣士「私は自分が生きるために剣を振っている」

剣士「……私のことを師事するな、そもそもの考え方が違うから何の参考にもならん」

少年「俺は……」

黒髪少女「随分な物言いですね?まるでこの世の全てを知っているかのような……」

商人「物陰から見てましたが子供にそういうこというのはちょっと大人げないんじゃ……」

剣士「居たのか……お前たちには関係あるまい、現実を突き付けてやっただけだ」

商人「昔は守りたかったもの、あったんですよね?それってひょっとしてあなたを拾ってくれた……」

剣士「……みんな、弱かったから死んだ。私を守ろうとしたから死んだ」

剣士「いっそ、初めから何も無いほうがやりやすいだろう」

黒髪少女「確かに、一理ありますね」

商人「同意するのかよ!?」

黒髪少女「でしたら、今のあなたはどうですか?」

剣士「今の私……?」

黒髪少女「そう、同じ状況で今のあなたが剣を持っているとします」

黒髪少女「力を持っていれば、誰も死なずにすんだ、みんなを助けられた……違いますか?」

剣士「そんなもしもの事など知らん。例え剣を取ったとしても私は守るために戦う訳ではない」

商人「強情ですねぇ……」

剣士「事実だ、不要なものは切り捨ててきたつもりだからな」

少年「それでも……」

剣士「なんだ?」

少年「それでも俺は、おねーさんに助けられた」

剣士「まだそんなことを……結果に過ぎんだろう」

商人「その結果で、あなたは人ひとり救ってるんですよ?大したもんですよ、私には出来ません」

剣士「お前は私の命を救った、お前もやっているだろう」

商人「それこそただの結果論です。私、人殺しはしたくないですから」

剣士「屁理屈を……」

商人「屁理屈垂れ蔵はあなたです、あなたの剣は誰かを守れるほどに強いんですよ?」

商人「だったら、何かを奪うだの奪われるだのと言わずに、それを認めて今後そう生きていったらいいじゃないですか」

剣士「……へりくつたれぞう?」

商人「そっちかよ!?今真剣な話してたのにそっちに流れるのかよ!?」

黒髪少女「ま、そう易々と生き方を変えろと言う権利は私たちにはありませんが」

商人「アンタはアンタで私を否定かよ!?」

黒髪少女「あなただって子供じゃないんでしょ?もう少し賢い生き方をしてくださいな、見てるこっちがもどかしい」

黒髪少女「不器用なのは仕方ないですが、誰もかれもが敵かのように見ていては落ち着けないでしょう」

剣士「一番胡散臭そうなお前には言われたくはないな」

黒髪少女「あら?そんなに胡散臭かったですか?」

剣士「私が出会ってきた強者はみな飄々としている連中ばかりだった……お前には同じようなものを感じる」

黒髪少女「私からはさぞ素敵なオーラにじみ出てるんでしょうね」

剣士「……ああ、ドス黒いものがヒシヒシと伝わってくる」

商人「おーい、訳わからん会話で私を置き去りにするなー」

少年「俺もいるぞ!」

剣士「あと、一つ訂正させろ」

剣士「私はまだ14だ、大人と言うにはまだ早すぎる気もするが」

商人「!?」

少年「!!?」

黒髪少女「あら……あまりにも大人びて綺麗だったので、これは失礼しました」

商人「ウソだろ……私より8つ下……」

少年「お、俺の3つ上……」

黒髪少女「随分衝撃的だったみたいですね」

剣士「?」

小休止

再開

剣士「ともかく、私からお前に教えられることは何もない」

少年「うーん……それでもいいや、見てる」

剣士「話を聞いていたのか?」

少年「意見は違えど俺はおねーさんの剣に惚れたんだ、だから見て学ぶ!」

商人「あなたも強情ですねぇ」

少年「おねーさんが教える気が無いのなら俺は俺なりのやり方で強くなるさ」

少年「見るなとは言われてないしこのまま見学を続けるよ」

剣士「……勝手にしろ」

商人「おやおや?こういう実直なタイプは苦手ですか?」ニヤニヤ

剣士「そんなもの知らん」



母「まったくあの子ったら……」

黒髪少女「随分前からこんな物陰で見ていたようですが、止めなくていいのですか?」コソッ

母「あら、バレてましたか?」

黒髪少女「そりゃあ、私は素人ではないので」

母「あら素敵…………止めたいけれど、今はあの子の好きなようにやらせます」

母「危ないことは流石に止めますが……まぁ、途中で挫折するのがオチだと思いまうけど」

黒髪少女「お父様の背中を追いかけているようにも見えますが、あなたは否定的なんですね」

母「そりゃもう、命あっての人生ですから。あの子には危ない目に合わずに普通に生きていて欲しいんです」

黒髪少女「男の子は冒険に強く憧れるものですからね、歳を重ねればまた考えも変わるでしょう」

母「せめて、先立つ親不孝さえしなければいいんですけど」



剣士「せいっ!はっ!」ブンブン

少年「おぉ、いいねぇこのアングル」ズリズリ

商人「おーい、そんな地面這いつくばって近づいたら」

剣士「フンッ!」グシャ

少年「ウブオッ!?」

剣士「邪魔だ」

商人「そりゃ見えるか見えないかの位置まで来たら顔を踏みつぶされますよ」

少年「悔いは無い……グフッ」



黒髪少女「親不孝するならセクハラで警察に厄介になる親不孝のほうが先ですかね?」

母「将来が不安です……」

剣士「そうだ、犬」

商人「狼です。もう何回言ったこのフレーズ」

商人「で、なんでしょう?」

剣士「どうしたら斬姫を譲ってくれる?」

商人「今更その話かよ!?何回話を振っても堂々巡りだよ!?」

剣士「わからないからお前に聞いているんだ」

商人「だから金を払えと……って、いい加減このくだりも何回目だよ」

少年「それならねーちゃんの仕事を手伝ったら?」

剣士「仕事を手伝う?」

少年「うん、その斬姫っていうやつの値段分」

剣士「ふむ、それもそうか」

商人「オイ何勝手に話進めてんだ」

商人「そもそも私の仕事は誰かに手伝わせることなんてしません。この腕一つでやっている商売ですから!」

少年「でもねーちゃんなんか敵が多そうだよね」

商人「私に敵が多いわけじゃないですけど……まぁ確かに旅路で野盗に遭遇とかしょっちゅうありますけど」

少年「だったらなおさらいいじゃん!おねーさん強いし」

商人「いや、いくら強くてもねぇ……」

剣士「そうだな、いつ暴漢に襲われるかわからん。私を雇え」

商人「ここ最近遭遇した暴漢がお前だから拒否してんだよ私は」

眼帯少女「だったら今あなたが巻き込まれている事件を解決するまでの間だけ用心棒にするといい!!」ペラッ

商人「壁の中からこんにちは!?唐突に出てくるのはやめてください」

眼帯少女「……女将さんから借りたニンジャグッズ、壁と一体化できるシート」

商人「普通に壁と柄が同じだけのものじゃないですかこれ……ってかなんで事件云々の事知ってるんですか?」

眼帯少女「……途中まで一緒にいたの覚えてないの?」

商人「あー、確か怪人の人と睨めっこしてたような……」

眼帯少女「……グスン」

商人「だぁぁごめんなさいごめんなさい!ちゃんと覚えてますよ!」

剣士「事件?なんだ?解決したらくれるのか?」

商人「あなたは関係ないからちょっと黙ってろ……あ、いやそんなことないか。でもなぁ……」

剣士「私にできることなら何でもする。それしかお前に対する恩返しも斬姫を譲ってもらうことも思いつかない」

商人「うん、確かに一度交戦している以上アドバンテージはあるか……そうですね」

商人「わかりました、それでは今私が抱えている問題の手伝いをしてもらいます」

剣士「ああ、わかった」

商人「即答ですね、内容を聞いてませんがいいんですか?」

剣士「どのみち私に拒否する権利はない。私を好きに使え」

少年「好きに……!?」ピキーン

眼帯少女「……使う!?」ピキーン

商人「はい、お前らこそ真に黙れ。先に言っておきますが、あなたの言う恩はそれで帳消しにしますが」

商人「それに加えて斬姫をどうするかは別の問題として捉えておいてください」

商人「そこまで考えてやれるほど、私はお人よしではないので」

剣士「仕方がない、それでいい。だが……」

商人「そして、本当にあなたが自分のあの剣をもう一度手元に戻したいのなら、斬姫の事は誰かに教えを乞わずに自分で考えてください」

剣士「……ああ、お前が言うならそうしよう」

商人「よしよし、いい子ですね」

剣士「それで、私は何をする?」

商人「今は事件の事については待機です。私は色々と仕込みをしますが、あなたはそうですねぇ……ま、私に絶対服従ということで」

剣士「程度によるが、それで構わない」

商人「今のは冗談のつもりだったんですけどねぇ」


少年「……俺も、剣さえあれば……」

眼帯少女「……?」

――――――
―――

竜少女「ふむ、的外れじゃったのう。いや、失念しておったと言うべきか」

騎士「何か気になることでも?」

竜少女「2、3日前に親子の魔物ウサギの話をしたのを覚えておるか?」

騎士「ああ、それなら。お前らが気にかかっていたウサギと今回現れたっていうウサギがどうのこうのって事か?」

竜少女「それもあるが……その親子ウサギの巣を確かめようと思っておったのじゃが」

竜少女「資料を流し読みしかしていなかったワシの落ち度じゃのう。奴らの習性を忘れておったわ」

騎士「習性?何かあるのか?」

竜少女「うむ、この魔物ウサギは定期的に住居を変えるらしく、その都度前の巣を壊して新しい巣を違う場所に作るようなんじゃ」

騎士「だとしても子連れだろ?遠くには行ってないんじゃないか?」

竜少女「だといいのじゃが……まぁいい、今は同種のものを見つけることに専念しよう」

竜少女「例えハズレでも何か狂化の手がかりにはなるハズじゃ」

怪人男「あのぅ……」クタン

騎士「なんだオッサン?」

怪人男「結構な高さから落ちたので体が動かないんですよ~。出来れば治癒魔法かけていただけるとありがたいんですが……」

竜少女「転移先を上空にしたお主の責任じゃろう」

騎士「俺たちは竜になれば飛べるから地面に埋まるよかマシだったが」

怪人男「いや、さすがに3人同時にワープはキツイものがありましてねぇ」

騎士「一人ずつ飛ばすとかもっと賢いやり方があったろう」

怪人男「あ、それもそうですね!往復がちょっと面倒ですけど」

竜少女「まぁ、送ってもらった手前無下に扱うわけにもいかん。仕方がないから治してやろう」

怪人男「ありがとうございます~」

竜少女(さて、どうしたものかのう……)

――――――
―――

商人「部屋に戻ったことですし、それじゃあ始めますかね」

剣士「仕込みと言っていたが、何をするんだ」

商人「まぁ、よく使いそうなものを出しておいたり手入れしたりですかね」

商人「まだあなたに任せられるような事は無いのでとりあえず自由にしておいてください」

商人(竜さんや女神様がパパーッと解決してくれれば私たちの出番もないんですけどね)

商人(その場合はどうしよう……結局ストーカーされることには変わりないし)

剣士「自由と言ってもな……見ていてもいいか?」

商人「ええ構いませんよ。あ、品物には触らないでくださいね?」

剣士「ん、わかった」

商人「回復薬とか多めに出しておいたほうがいいかな?あの人たち見てたら必要無い気がするけど……」

商人「武器の替えは……みなさん大層なもの持ってるせいで私の手持ちが霞んで見えるレベルだなぁ……」

商人「役に立ちそうな変わり種のものを用意しようとしても全部危険薬品か、一歩間違えればこっちが全滅しかねないものばかりだな」

商人「……アレ?私って初めからいらなくね?」

剣士「変なものしか持ってないなお前」

商人「こ、これじゃあ戦えねぇ……」

剣士「なぁ、することが無いなら斬姫を見せてくれないか?」

商人「することが無いってあんた……まったく、今ですか?渡しませんよ?」

剣士「ああ、私の手に取らなくていい。見たいだけだ」

商人「それならホイ、これがお目当ての刀です」キラン

剣士「ああ、その青い刃。やはり美しい剣だ……今すぐにでも手にしたい……」

商人「目が危なくなってるよ!?」

剣士「……ところで、前々から気になっていたんだが」

商人「前から気になること?」



剣士「カタナってなんだ?」

商人「」

商人「あ、いや、まぁ……そういえばあなた一回も斬姫の事カタナって言ってなかったですね」

剣士「察するに剣の呼び方の違うものか?」

商人「そうなんですけど……厳密な分け方は分かりませんが、おもに片刃のものをそう呼ぶんです」

剣士「ほう、それは知らなかったな」

商人「剣士やってて知らなかったって言うのも変な話ですが」

剣士「一般常識なのか?」

商人「そういわれると対応に困りますね」

剣士「あと、その剣……いや、カタナだったか」

剣士「……魔剣か?」

商人「ゲッ、わかるんですかそういうの?」

剣士「いや、なんとなくそう思っただけだ。何度も呼びかけられているような感じがしているからな」

商人(鍛冶師ヴォーグの作品は所有者を選ぶ……結局はそういうことなんでしょうね、これも)

商人(でもダメです。こっちだって商売でやってるんですから!そんな簡単に手放してたまるかってんだ!)

ガタガタ

商人「ひぅ!?」ビクッ

剣士「どうした?」

商人「いえ、何でも……」

商人(斬姫が震えた……私に忠告でもしてんのか!?)

剣士「にしても、暇だな」

商人「なんだかんだで私もやることなくなっちゃいましたしねぇ」

剣士「……これから先、私がすべきことはなんだ?」

商人「当面はやっぱり待機。情報が出そろうまで私の出番自体ありませんし」

商人「本当なら竜さんたちと一緒にウサギの調査と討伐に行ってほしかったんですけど」

剣士「私には剣が無いからな……本当なら私が仕留めていたハズなのに」

商人「かといって私が武器を無償提供するのは本末転倒ですし」

剣士「……やっぱり待機か」

商人「ですねー」

小休止

再開

鎧少女「ああ、見事に暇そうにしているな」

剣士「ッ!?」

商人「どわ!?音もなく現れないで下さいよ!?」

鎧少女「悪いな、こうやって人が驚く反応を見るのが好きなんでな」

商人「人が悪いなもう……にしても、なんでこの宿が分かったんですか?あの後一度も連絡はしてなかったハズですけど」

鎧少女「便利な連絡係がいるだろう、奴から聞いた」

商人「ああ、怪人さんですか」

剣士「……」

鎧少女「そこの女は何者だ?出来れば他人に聞かれたくない話をしたかったんだが」

商人「あー、この娘は気にしないでください。何話しても理解しないと思いますので」

剣士「サラッと失礼なことを言うなお前」

鎧少女「ま、どっちでもいいが……」

商人「いいのかよ」

鎧少女「他の連中は?もう森のほうに行ってしまったのか?」

商人「はい、朝から調べるって言って3人で行ってしまいました」

鎧少女「ちょっと遅かったか、出来れば全員いるときに話しておきたかったのだが」

商人「何かわかったんですか?」

鎧少女「色々とな。叩けば叩くほどホコリが出てくるものだな、あの大臣は……」

商人「そんなの一晩でどうやって調べるんですか……」

鎧少女「ちょっとあいつの部下を絞め上げてやっただけだ、絞めたのは私じゃないけど」

商人「詳細は聞かないことにしておきます」

鎧少女「それがいい」

剣士「……なぁ、こいつ何者だ?ここまで接近していたのにまったく気が付かなかったぞ」

商人「あー、なんと説明していいのやら……」

鎧少女「女神だ、敬えよ?」

商人「あっさりカミングアウト!?隠しておきたかったんじゃなかったの!?」

鎧少女「先にこう言っておけば誰も信じないだろう」

商人「でもこの娘は底抜けのバk……」

剣士「女神か、珍しいな。なら仕方がない」

商人「仕方がないの!?ってか案の定信じちゃったよ!?」

剣士「生きていればたまにはこういう信じられないような体験もするだろう」←本気で信じてる

鎧少女「そうそう、なんでも柔軟に対応すればいいんだ」←話に乗ってくれたとだけ思ってる

商人「微妙に噛み合ってないなぁ」

商人「あ、一応報告しておきますけど、その娘も関係者ってことになっちゃいました」

鎧少女「何?話したのか?」

商人「いえ、なんというか、関係していたというか……」

鎧少女「話を聞こう、何があった?」

剣士「何かよくわからんがどういうことだ?」

商人「私が話すのであなたは首を突っ込まないでくださいね?話がややこしくなりますので」

剣士「失礼な奴だな」

……

鎧少女「……なるほど、偶然にも私たちが請け負っていた依頼のウサギが狂化の実験体になった可能性があるということか」

商人「危機に陥ると巨大化した姿から元の小さい姿に戻って逃げたそうです」

鎧少女「やっぱりな……」

商人「やっぱり?心当たりがあるんですか?」

鎧少女「それも追々、揃ってから話そう」

剣士「私が戦ったあいつ、お前たちの知ってる魔物だったのか?」

商人「今はその可能性があるってだけですよ」

鎧少女「しっかし参ったな。私のミスとはいえ連絡する手段くらい持っておくべきだった」

商人「たしか竜さんって使い魔いましたよね?それで連絡取れないんですか?」

鎧少女「使い魔は基本的に主が召集することで召喚される。あらかじめ命令しておかない限りこっちからのコンタクトは取れん」

商人「えっと、それじゃあ女神様は使い魔とかいないんですか?」

鎧少女「私はそもそも契約の方法を知らないから無理だ」

商人「むぅ、なんか神秘的な人たちはみんな使い魔とかいると思ってたんですけどそうでもないんですね」

鎧少女「妙な偏見だな」

剣士「携帯電話……とか言ったか?金持ちはみんな持っていると聞いたが、それはどうなんだ」

商人「携帯電話って魔動式でも本体も維持費も高くて一般人はとてもじゃないですけど買えませんよ……流石の私も扱ってないですし」

鎧少女「そうなのか?金の事は今まで気にしたことが無かったから知らなかったな」

商人「やはり金持ち!一味違うッ!」

鎧少女「請求書は全部実家の息子に届いてるハズだからな、私の知るところじゃないな」

商人「あ、ダメな人だった」

鎧少女「いや、家の財産はもともとは私のものだったし……うーん」

商人「さいですか。それよりも旦那さんは一緒じゃなかったんですか?」

鎧少女「あいつはまだ調べることがあるみたいだったからな。私が連絡係でここに来たんだ」

鎧少女「正直、出歩くだけで暗殺者どもに狙われるからお前たちを巻き込まないようにしてるんだけどな」ボソッ

商人「……今なんと?」

鎧少女「お前の気にすることではない、今日は来られないということだ」

商人「お、おう」

剣士「それで、結局ほかの連中が来るまでどうするんだ」

商人「どうしましょうねぇ、結局待機という結末を迎えそうですが」

鎧少女「よし、なら携帯ゲームで時間を潰すぞ」サッ

商人「またそんな近代的なものを……」

鎧少女「好きなんだからしょうがないだろう」ピコピコ

剣士「待つことには変わりないんだな……」

――――――
―――

小休止

話 が 進 ま な い

再開

竜少女「いま戻ったのじゃ!」

騎士「先に言っておくが収穫は無しだ」

商人「お帰りなさい、ダメでしたか……」

怪人男「連続でワープしまくって疲れました……ちょっと休みます」

騎士「お疲れさん、俺たちは随分楽できたし明日も頼むぞ」

怪人男「ヒィッ!安易にワープ使わせるんじゃなかった……」

鎧少女「ん、揃ってるな。私のほうからも報告がある」

竜少女「なんじゃ、来ておったのか」

怪人男「一休みしてからじゃダメですか?」

鎧少女「後にしろ、私も忙しいんだ」

剣士(さっきまでゲームして時間を潰してたじゃないか)

鎧少女「狂化の魔導核を埋め込まれた生物についての特徴と少し不味い事がいくつかわかった。話しておこう」

竜少女「その……ウサギの事じゃが……」

鎧少女「すでに聞いた。特徴からして核を埋め込まれている可能性が高い」

竜少女「……やはりお主が言ったように、魔物は始末しておかねばならなんだのか……」

鎧少女「極論だ、お前の言ったことも間違ったことじゃない」

騎士「それより不味い事ってなんだ?計画がバレたとか?」

鎧少女「潰そうとしているのは既にバレているだろう。現にウチのがパーティ後も何回も暗殺者に襲われている」

騎士「それは不味い事に入らないのか……」

鎧少女「暗殺のベテランがそこらの若い奴に負けるわけがないだろう」

商人「旦那さんって魔王……ってか国王じゃなかったでしたっけ?暗殺て……」

鎧少女「気にするな、こっちの話だ」

商人「はぁ」

鎧少女「なに、不味いと言ってもそう大したことじゃない」

竜少女「被検体が何匹か研究所から逃げ出していた、とか言う話ではないじゃろうな?それじゃとかなり不味い事じゃが」

鎧少女「うん、まぁその通りなんだが」

商人「おいぃ!?重大だよ!?」

鎧少女「逃げた数も分かっている。見つけて一匹ずつ始末するか保護していけばいいさ」

騎士「そう簡単なことじゃないと思うけどな……結構強いみたいだし」

剣士「だが私よりは弱い」

商人「そこはアピールしなくていいから」

鎧少女「いや、そこも重要だな」

剣士「ほら見ろ」

商人「誇らしげになるなよ……それで、なぜ重要なんですか?」

鎧少女「捕獲にあたる奴がその魔物より強くなくてはいかんだろう、だからその青髪の女がギリギリ勝てる強さのボーダーラインにしておく」

剣士「……ギリギリだと?」

鎧少女「文句なら後で聞く、話を続けよう」

鎧少女「魔物の特徴だが、すでに交戦したことがある者がいるみたいだが、その特徴がほとんど当てはまるんだ」

竜少女「やはりウサギの魔物か」

鎧少女「そうだ、『異様な大きさ』『額に赤い石』『弱った時の収縮』と、調べて分かった要素がそろっている」

鎧少女「まぁ、捕まえるかすれば分かる事だ」

鎧少女「例え目に傷を負っていたとしても私たちの知っている奴とも限らんだろう」

竜少女「うむ……」

鎧少女「お前たちにはその魔物の捕獲を頼もうと思っていたが、もう始めていたから私は若干無駄足だったな」

商人「そんなことはありませんよ、明確な目標が立てれましたし」

騎士「やっぱり生け捕りが好ましいか?」

鎧少女「ああ、確固たる証拠として大臣に突き付けてやるからな」

鎧少女「本当に手におえないなら始末してもいいが……まぁ、その場合は私たちの仕事が遠回りになるだけだ」

剣士「話は終わりか?」

鎧少女「ああ、何か質問でも?」

剣士「先ほど、まるで私が弱いかのように言われたからな。それについて」

鎧少女「弱いとは言ってはいないだろう、語弊があったなら謝るが」

商人「いやー、普通にあの言い方はイラッと来る人は来るんじゃないですか?」

鎧少女「……なら実力を見ておくか。外へ出ろ、相手をしてやる」

……

騎士「で、本当に戦うのかよ」

竜少女「協力者の実力を見ておきたいんじゃろう。勝手に死なれても困るしのう」

少年「……戦うの?」

商人「教育上こういうのは子供に見せていいのやらどうやら」


鎧少女「一本勝負でいいな?私の獲物は槍だ、お前は」

剣士「今は持っていないが……片手剣を使いたい、誰か貸せ」

騎士「俺のはデカ過ぎて使えないだろ、パス」

竜少女「ワシのは2本セットで使う細身の剣じゃから無理じゃのう、パス」

怪人男「私、武器を持ってるとか以前に戦えません、パスで」

商人「で、結局私かよ!?持ってる武器全部売り物だよ!嫌だよ!」

少年「ねーちゃんケチだなー」

商人「ケチでもなんでも商品を貸せるか!」

眼帯少女「……なら私の剣を使うといい」ヌッ

商人「流れぶった切って突然出てきた!?」

剣士「スマン、借りるぞ」

眼帯少女「……私の剣だから大切に扱って」

鎧少女「準備はいいか?」スチャ

剣士「構わん、捻り潰してやる」チャキ


ギィンッ!!


商人「おーい、力見るだけだからマジにならないでくださいよー」

竜少女「残念じゃがあの剣士に勝ち目はないじゃろうな」


ギンッガンッ


商人「善戦しているように見えますけど実力に差があるんですか?」

竜少女「差なんてレベルではなくアレは壁じゃ、先の見えん絶壁じゃ」


剣士(なんだコイツ!?)ギンッ

鎧少女「先の意気込みはどうした?守りに徹し始めているぞ!」ガッガッガッ

剣士(舞うよな身軽な動き、手足を動かすかのような槍捌き)

剣士(そして……遊んでいるッ!)


竜少女「完全に手を抜かれておるな」

商人「確かにあの娘が防御に徹し始めてるのは分かりますが……ぐぬぬ、それ以上は分からない」

騎士「これが強者の戦いか……俺もそれ以上がわからない」

竜少女「お主、まだ弱いからのう」

キンッ

少年「あ、弾かれた……」


鎧少女「勝負アリ、だな。絶対的な自身があったみたいだが、なに大したことは無い」

鎧少女「お前程度の腕前だったら星の数ほどいるぞ?」

剣士「……クソッ」

鎧少女「ここまで徹底的に叩きのめされたのは初めてか?悔しいのは分かるが上には上がいる」

剣士「クソックソックソッ!!」

鎧少女「お前はまだ若いみたいだし、これから伸び代もあるだろう。才能も十分だし、あとは自分にあった武器を見つけて気長に……おい聞いているのか?」

剣士「クソがッ!!凍り付け!!」

鎧少女「何ッ!?」ピシピシ

商人「おいバカ何やってんだ!?」

剣士「負けるのは嫌いなんだよ!このまま砕いてやる!」

鎧少女「ほう、氷の魔法も使えるのか。しかも中々強い」

鎧少女「不意打ちも申し分ない、これは将来有望だな」

商人「感心してる場合か!?止めなきゃ!」

竜少女「放っておけ、勝敗は決しておる」


剣士「グッ……あ……?」

鎧少女「だが、不意打ちでの魔法はこう使うんだ、わかったか?」

剣士「私の背後から……何が当たった……」ドサッ


商人「……えと、何が起こったんでしょう?」

竜少女「説明しよう!」

竜少女「あの娘が氷を張った時にあの女神は既に娘の背後に火球を作っておったのじゃ」

竜少女「そしてそれを……ボカーンじゃ!」

商人「そんなこと一瞬でできるんですか?」

竜少女「熟練の魔法使いなら簡単なことじゃろう」

竜少女「勝敗が決まって戦いをやめなかったあの娘の自業自得じゃ」

商人「そりゃそうですけど……なんかなぁ」


剣士「……完璧に負かされたのは……初めてだ……」

鎧少女「年季が違うんだよ、年季が。もっと経験を積め、お前なら上も目指せるだろう」


竜少女「カッコつけたがりのお主が好きそうなセリフじゃのう」

騎士「あー、俺もあんなこと堂々と言ってみたいなぁ」

剣士「……悔しいな」

商人「大丈夫ですか?結構痛そうでしたけど」

剣士「これくらいなら大丈夫だ……最後の最後まで手加減していたのか」

鎧少女「さてな?……っていうか、私と戦っても何の参考にもならんな」

鎧少女「おい、デカい方の竜!」

騎士「その呼び方やめろよ……」

鎧少女「コイツと戦ってみろ、お前ならマシな戦いが出来るだろ」

騎士「いいけど……女が相手かぁ」

竜少女「まーたそうやって差別しおって!」

騎士「でもなぁ」

剣士「よし……こい!」

騎士「ちょ、ちょっと待て!インターバルくらい入れたらどうだ?お前疲れてるだろ?」

剣士「この程度で疲れるわけないだろう、問答無用!」ザッ!

騎士「うわッ危ねぇ!!」

ギンッギンッ



鎧少女「これはこれは、元気な事だ」

少年「ね、ねぇ……」

鎧少女「ん?どうした?」

少年「君、俺とそんなに歳変わらなさそうなのに強いんだね?」

鎧少女(そんなに私は子供っぽく見えるんだろうか……)

少年「その槍に何か秘密とかあるの?」

鎧少女「槍?ああ、これは確かに強い槍だが」

商人「真っ赤な血の色の槍ですね。そういえば、これも何か逸話があったりするんですか?」

鎧少女「あるにはあるが……最近出来た物だから神器や魔剣と比べたら大した事は無いぞ?」

少年「き、聞かせてよ!」

鎧少女「天使を990体、神を9体、そして魔王を1体刺殺した槍だ」

少年「……」

商人「……怖いよ」

少年「流石に冗談だよね?」

鎧少女「ま、信じるか信じないかは自由だ」

商人(女神様が天使とか神殺しの武器を持ってるってのは普通に信じられませんけど)

少年「強い武器を持ってれば、強くなれるの?」

鎧少女「妙なことを聞くな?答えはNOだ」

鎧少女「一般人相手なら包丁を振り回すだけで殺せるが、実戦で使うには技術だっている」

鎧少女「ま、確かに使い手の身体能力を高める魔法がかかった武器やそういう魔導核も存在するが……それに頼ってるようじゃ2流もいいところだな」

少年「そういう武器って魔剣とかって言うんでしょ?」

鎧少女「魔剣が必ずしもそういう効果を持っているとは限らないが……確かに多くは何らかの効力を発揮するな」

少年「……」

商人(この子はさっきから何を……?)

騎士「モウヤメヨウヨ」

竜少女「惨敗じゃないか……」

剣士「お前、そんな腕でよく以前私に喧嘩を売れたな」

騎士「あの時はほら、その場のノリだよノリ」

竜少女「はぁ……」

騎士「冷たい目で見ないでください……」

竜少女「だーれが稽古つけてやっていると思っておるのじゃ?」

剣士「……竜の姿にならないのか?」

騎士「あー……アレはダメだ、フェアじゃねぇ」

剣士「負けるのも嫌いだが手を抜かれるのは嫌いだ」

竜少女「よせ、変身したら流石に強くなりすぎる。街のど真ん中暴れられたら収集つかなくなるわ」

鎧少女「決着がついたみたいだな」

剣士「話にならなかった」

騎士「面目ない」

鎧少女「……お前もう計画から抜けていいぞ」

騎士「そんな殺生な!」ウルウル

鎧少女「冗談だ、竜化した時の強さは知っている。明日も引き続き捜索を頼む……信頼してるぞ」

騎士「お、おう!任せろ!」

騎士(竜になってもこの夫婦に手も足も出なかったんだよなぁ)

竜少女(ワシらとは別次元の強さじゃからのう)

鎧少女「要件を伝えるだけだったのに随分長居してしまったな。私も忙しい身だ、そろそろ失礼する」

商人(アンタ待ち時間ゲームしてたじゃないですか)

剣士(戦うときも随分楽しそうだったが)

怪人男「一応今回の件、国家がらみということも考えられますが……というより確定みたいなもんですが、それはどうするんです?」

鎧少女「ウチの国の側近に連絡が取れたからそっちで片付けさせる。息子は仮病続行中だったが」

怪人男「私の方でできることはありますか?これでも一応王なので」

鎧少女「ハハッ、さすがに軍を持たない国の助けは借りれない。お前のとこの国民まで巻き込むつもりはないよ」

怪人男「国民は巻き込まれずとも国王の私がガッツリ死にかけてるんですがその辺どうなんでしょう~?」

鎧少女「では、何かあったら連絡する……おい、竜。使い魔を貸せ」

竜少女「おっと、そうじゃの。連絡手段が無いから今日みたいな面倒なことになったんじゃったのう。しばしの別れじゃ、ホレ行ってこい」

使い魔「キキッ!」

怪人男「無視かい!まぁいいですけどぉ」

商人「あなたの立ち位置が安定しまくってますね」

母『みなさーん!ご飯が出来ましたよー』

竜少女「おお!ちょうど飯の時間じゃ!」

騎士「いいタイミングだな、腹が減ってしょうがなかった」

商人「なんか飯食ってばっかりな気もしますが……」

竜少女「描写的な問題じゃ、気にするな」



剣士「……剣、確かに返すぞ」

眼帯少女「……丁寧に扱ってくれてありがとう」

剣士「人の物だからな、私の剣のように使うわけにはいかん」

眼帯少女「……あの剣があなた自身だというのなら、もっと大切に使ってあげればよかったのに」

剣士「……後悔はしているが、私は間違っているとは思わん」

眼帯少女「……そっか」

――――――
―――


鎧少女「ただいま」

仮面男「お帰り、随分といい顔をしているね」

鎧少女「色々と楽しめたからな」

仮面男「そりゃあよかったね」

鎧少女「……」

仮面男「そりゃあよかったね」

鎧少女「なぜ二回言う」

仮面男「誰かさんが私を放っておいて不必要なほど長い時間開けた事で怒っているからかな?」

鎧少女「……ごめん」

仮面男「ウソ、怒ってないよ」ナデナデ

鎧少女「……バカ」

鎧少女「っと、じゃれ合っている場合じゃなかったな」キリッ

仮面男「ああ、すまない。潜入を続けようか」キリッ

鎧少女「伝えるだけ伝えたが、大臣潰しは私たちで決行するんだろう?」

仮面男「ああ、側近が手を回してくれるみたいだ。ありがたいよ」

仮面男「逃げた被検体の処理について……は彼らに任せよう」

鎧少女「既に交戦した者もいたみたいだ、あっちは何とかなるだろう」

仮面男「そうだね……私は久々のスニーキングミッションだが」

鎧少女「一国の元王が久々の潜入か、変な感じだな……私は経験が無いからお手柔らかにな?」

仮面男「完璧に姿を消せる君こそが向いていると思うんだけどね……行こうか」

鎧少女「ああ、了解した」

――――――
―――

商人「ですからね?この商品はここがこうなってこうしてこうで……」カチャカチャ

竜少女「おお!なるほどなるほど!これは面白いのう」

商人「いかがです?この特製ワァーイズリィーング、今ならセットでお安くしておきますよ?」

竜少女「よし買った!」

騎士「おーい、世間知らずの竜を騙すなよ。それただの知恵の輪だろ」モグモグ

商人「こういうのをいかにして売るかも商人にとって重要なスキルなんですよ!外野は黙ってろ!」

剣士「下らんな」ガツガツ

母「あら?青空カフォご一考さんはお見えになってないですね?」

少年「さっき呼んだんだけど時間をずらして食べるんだって」

母「あらあら、一緒に食べた方が楽しいのに~」

少年「鉢合わせになりたくないんだってさ」

母「?」

商人「あの人たちも勝手ですねぇ」モグモグ

竜少女「お主以外にも一組泊まっておるみたいじゃったの」モグモグ

騎士「あの眼帯の人の連れか、どんな奴なんだろうな」モグモグ

商人「長い黒髪の綺麗な人と金髪の小柄な方ですね~、思えばあの人たちに絡まれてから(?)妙なことばっかり巻き込まれてるな」

騎士「長い黒髪……ねぇ」

竜少女「ここらじゃ珍しいのう」

商人「私も黒髪ロングですけどね」

なるべく前のSSの話題を持ち込まないために黒髪少女と竜二人の鉢合わせを無理やり回避

商人「で、明日も探索ですか?」

騎士「そうだな、ウサギ共を追っていれば手がかりくらいは掴めるハズなんだけど」

竜少女「肝心のウサギが移動しまくっておるからのう」

商人「それなら私も参加しましょうか?狼の嗅覚は獲物を捕らえるためにあるのです!」

竜少女「むぅ、それが一番かのう……林檎、ワシらはお主を守りながら戦える自信は正直無いぞ?」

商人「いざとなったら皆さんを盾にして逃げますから安心してください!」

騎士「ひでぇなオイ」

怪人男「まぁ、固まって行動していれば安全でしょう。明日同行してもらいましょう」

剣士「私はどうしたらいい?」

商人「んー……まぁ、しょうがないですね、私も命かかってますし。剣くらい貸してあげましょう」

剣士「斬姫を貸してくれるのか!?助かる!」

商人「ちげぇよ!?貸す安物だよ!?」

剣士「チッ」

商人「露骨に嫌そうな顔すんなよ」

怪人男「私、疲れているのでもう寝ます……」

竜少女「うむ、お疲れ様なのじゃ」

騎士「明日は朝飯食ってから行くか、今朝は悪い事しちまったみたいだし」

母「まったくですよ!」プンプン

少年「いい歳してプンプンとか恥ずかしいって」

母「コブラツイスト」

少年「アベバ!?」グキッ

商人「女将さん強いですねぇ」

母「鍛えてますから」ニッコリ

少年(明日の朝か……)

剣士「……?」

竜少女「んじゃ、ワシも風呂入って寝ようかのう」

剣士「私は面倒だからそのまま寝る」

商人「入れよ」

少年「ねーちゃん、ちょっといい?」

商人「ん?どーしたの?」

少年「ねーちゃんの商品もっと見てみたいんだ」

商人「ああ、いいですよ。おさわり禁止ですけど」

少年「分かってるよ」

商人「あ、言っておきますけど武器は見せませんからね?」

少年「それも分かってるって!」

少年「……ねーちゃんってさ」

商人「ん?」

少年「魔物、怖いと思う?」

商人「そりゃ怖いですよ、命狙ってきますもん」

少年「俺は知らないんだけどさ、昔獣人も魔物として扱われてたんだよね?」

商人「あー、そうみたいですねぇ。それこそ私の生まれるずっと前ですけど」

少年「人間とか襲ってたのかな?」

商人「どうでしょうね?ヒトがヒトを襲う理由なんていろいろありますし」

商人「ま、食事が目的じゃないのは確かですが。獣人であるこっちもヒトですし」

少年「……よくわかんないよね、そういうの」

商人「どうしました?急に哲学的になって」

少年「俺、やっぱり許せないんだ。ヒトを襲う魔物が」

商人「……お父さんの事ですか?」

少年「父さんの事はよく覚えてないけど……明日、ねーちゃんも魔物の住処に行くんでしょ?」

商人「なんだかんだで逃げ切る自信があるから行くだけですけどね」

少年「俺も、魔物と戦いたい!戦って強くなりたい!」

商人「……馬鹿げた事言ってないで、商品見るなら見るで早くしてください。そうでないなら糞して寝ろ」

少年「……強くなれば、守れるものも増えるんでしょ?」

商人「私は戦いをしないのでそこらへんは分かりませんよ」

商人「ただ、無謀な勇気で命を落とそうとするのはバカのする事だということは知ってますけど」

少年「……無謀なんかじゃ……」

商人「何をしようとしているのかは知りませんが、あんまり人をおちょくってると流石に怒りますよ?」

少年「……ごめん、変なこと聞いたね。おやすみ!」ダダダ

商人「あ、おい!ちょっと!……なんなんだよ一体」



少年(魔剣があれば強くなれる……みんなを守りたいんだい……)

――――――
―――

翌朝


竜少女「みんな!丸太は持ったか!」

騎士「お前は何を言っているんだ……」

怪人男「ふあぁ……朝から元気ですねぇ」

竜少女「とっとと面倒事を終わらせたくなっただけじゃ!さぁ今日こそ終わらせるぞ!」

騎士「俺たちに出来ることがこれだけしかないから言えることだな」

竜少女「国の事などワシらの知ったことではないからのう」

母「あの……」

騎士「ああ女将さん、おはようございます」

竜少女「おはようなのじゃ!」

母「はい、おはようございます。ところで、ウチの子見ませんでしたか?」

怪人男「いえ、私たちはさっき起きたばかりなので知りませんよ」

母「……どこへ行っちゃったんでしょう」


商人『ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


竜少女「何事じゃ!?」

騎士「偉大な王の断末魔みたいのが聞こえたぞ!?」



商人「無い!?無い無い無い無い無い!?どこにも無い!!」

剣士「なんだ朝っぱらから騒々しい……」

商人「お前か!?お前がやったのか!?出せ!今すぐ返せ!」ユサユサユサユサ

剣士「なんだ一体、私は何も知らんぞ」

商人「しらばっくれんなぁ!!お前しかいないんだよ!」

剣士「だからなんだ?」



商人「斬姫が無くなった!!」

剣士「なんだとッ!?」

商人「それどころかいくつか他の物もなくなってる……」

剣士「お前の管理が甘かったんじゃないか?」

商人「そんなわけないでしょう!まぁ確かに斬姫は異次元ポケットにしまわずに常に手元に置いておくようにしてましたが……」

剣士「持ち去られたというのか?では一体誰が……」

商人「それがお前だと言っているだろうがぁぁぁぁ!!」ガクガクガク

剣士「やめろ、それならとっくに持ち逃げしている。揺らすな」

竜少女「何があった!?」

商人「泥棒です!私の持ち物が盗まれたんです!」


竜少女「なんじゃ、そんなことか」

騎士「心配して損したぞ」

商人「そんなことかとは何だゴルァ!!」

母「……まさか、あの子……」

商人「……あの子が盗んだと?」

母「信じたくはありませんが、今朝から姿が見えないんです。もしかしたら」

商人「でも何のために……」

剣士「……無謀な勇気」

商人「え?」

剣士「昨日の夜、小僧と何やら話をしていたろう。あいつ、力もないくせに妙に好戦的だからな、戦う打算でもしていたんじゃないか?」

商人「私に話を持ちかけてきたのは、役に立ちそうなものを見定めるため……?でも昨日は何も見せませんでしたよ?」

剣士「ずっと私たちの話を聞いていたんだ、何か思うところがあったんだろう」

竜少女「むぅ、だとしたら一人で森に向かったということか」

騎士「タチの悪いことに寝ている隙に荷物を持ち出したって事か」

母「……仕方がありません、私が……」

商人「連れ戻してきますッ!」ダッ

騎士「おい待て!そうと決まったわけじゃ!」

剣士「クソッ、世話の焼ける!」ダッ

竜少女「んな!?お主も武器を持たずにどうする気じゃ!」

怪人男「あー、二人ともすごい速さで出て行っちゃいましたねぇ」

竜少女「何をしておるか!お主はワープして止めにいかんか!」

母「……こんな事が」

騎士「……ここはプロ冒険者の俺たちに任せといて、女将さんは待ってて……」

母「冒険者なんかに任せていられませんッ!」

騎士「ッ!」

母「……ご、ごめんなさい……」

竜少女「何やら訳ありのようじゃが、取り乱しておるようじゃし少し落ち着こう」

母「はい……」

怪人男「だ、ダメです。正確な位置も分からないから出鱈目にワープを続けてもあの二人を見つけられませんよ~。異様に足が速いですし」

竜少女「クソッ、役に立たん!」

配達員「あ、冒険者さんですか?」

騎士「ん?なんだ、アンタ?」

配達員「依頼所から緊急収集が出ています、これが概要です。では」

騎士「緊急収集?」

母「……登録されている冒険者に対して行われる収集です、おそらく何かあったんでしょう」

竜少女「ん、詳しいの。して、内容は?」

騎士「……オイオイオイ、ウソだろ?」

怪人男「どうしました?」



――――――――――――
緊急収集

今日未明、東区先森林にて冒険者含む男女6名の惨殺死体を確認
いずれも数件目撃情報のあった大型ウサギの魔物仕業と思われる
一度、依頼所にて集合せよ

――――――――――――

剣士「待て!そんなに物を取られたことが憎いか!」

商人「それは当たり前でしょう!でもそれ以前に……あのバカガキッ!」

剣士「お前はどうする気だ?」

商人「ぶっちゃけるとガキンチョが心配です!連れ戻してお説教です!」

剣士「……私はどうすればいい?」

商人「少しでもあの子を心配に思うなら私の手助けしてください!」

剣士「そうでないなら?」

商人「いらん!帰れ!」

剣士「分かった、ならこのままついて行こう」

――――――
―――

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再開

少年(クソ……なんでこんなことに……!!)

魔物「グルルルォ」

少年(こんなはずじゃ……クソックソッ!!)

少年(剣を振る間もなかった……不意打ちなんて卑怯じゃないか!)

少年(こうやって岩場に隠れるのが精いっぱいだなんて……今までコイツに出会ってもこんな事なかったのに!!)

少年(なんで突然震えだすんだよ!!どうして思うように体が動いてくれないんだよ!!)

少年(怖くて……動けないよ……)

少年(……何か……何かないか……ねーちゃんから借りた(?)道具の中に何か無かったっけ)

少年(やっぱり説明くらい聞いておけばよかったな……前は碌なの無かったからな)

魔物「ググ……ゴガァ……」

少年(いつか臭いでバレちゃう……どうにかしないと!)

――――――
―――


剣士「それで?その狼の鼻で臭いを辿れるのか?」

商人「狼です。あ、狼ですねハイ。今やってますけど……こっちだ!」

商人「まったく、なんでこんなことに!」

剣士「……走りながら出いい、聞け」

商人「なんですか?」

剣士「あの小僧、どうしてお前の剣を盗んでいったか分かるか?」

商人「そりゃ、魔物を倒すためでしょう?英雄ごっこでもしようとしたんじゃないですか?」

剣士「英雄気取りか……それもあるだろうが」

商人「含んで言いますね、何か他の目的でもあったんですか?」

剣士「……憶測だが」

剣士「……アイツ、誰かに認めて欲しいんじゃないか?自分の存在を」

商人「はぁ!?よくある目立ちたがりのガキって事ですか?!」

剣士「魔物が許せないだの何だのとベラベラ言っていたが行動があまりにも幼稚だ」

剣士「本当にその気があるなら今こんな行動は起こさん」

商人「幼稚も何も子供ですし……」

剣士「私だって奴と歳はそう変わらん」

商人「あー……14でしたね、あなた」

剣士「……結局、人の行動原理は誰かに自分を見て欲しいということが大きい」

剣士「アイツの交友関係は知らんが、どうも目をかけてやっているのが母親だけという事もあるだろう」

商人「……ここ数日友達とかの話も聞いてないですね。学校にも行ってないみたいですし」

剣士「一人は案外辛いぞ?」

商人「……あなたは、どうなんですか?」

剣士「……どういうことだ?」

商人「いえ、自分に問いかけているようにも聞こえましたので」

剣士「……まぁいい、そのことは後にしろ」

剣士「ともかく、間が悪かったな。色々と要因が重なりすぎた」

商人「と、言うと?」

剣士「小僧が2回とウサギの魔物に遭遇していること、そのどちらも傍に助けてくれる誰かがいた事だ」

商人「……それで、自分一人でもどうにかできると思い込んでしまったと」

剣士「ああ。そして、さらに都合よく自分の活躍を見せたいと思っている存在が現れた事だ」

商人「誰ですかそれ?」

剣士「……お前だバカ」

商人「はい!?なぜに私!?」

剣士「色恋沙汰に目が暮れて周りが見えなくなった結果だろうな、とんだマセガキだ」

商人「何か下らな過ぎて納得いかねぇ……」

剣士「だが捜索は続けるだろう?」

商人「それはもちろん!ホントにそんな理由ならグーパンで顔面潰してやりますよ」

商人「……それにしてもあなた」

剣士「ん?」

商人「よく人を見てますね?そんなこと私は考え付きもしなかったのに」

剣士「たまたまだ」

剣士(……人を気に掛けるなんて、そんなこと一度もなかったのにな)

剣士(……どうも本当にコイツと出会ってから私はおかしくなっているみたいだ)

商人「ッ!?」

剣士「どうした!」

商人「あの子の臭い……血が混ざってます!」

剣士「量は?」

商人「臭いはそんなに濃くないですが……他の獣の臭いもします!」

剣士「種類は」

商人「そこまでは分かりませんが……私が出会ったウサギと似たような臭いがします」

剣士「不味いな……」

商人「この先です!」

剣士「この先は……!」

商人「あ……」

剣士「……川だな」

商人「あー……臭い切れちゃってます」

剣士「ふぅ……どうする気だ」

商人「どうするもこうするも手当たり次第行くしかないでしょ!あの子が危ないんですから!」


バシューン!!ピュルルルルル~


剣士「ッ!アレは!」

商人「私の七色信号弾だ!おそらくあの子が使ったんです!」

――――――
―――

少年「こ、これでいいの!?山田さん!」

山田「オッケー、上出来よ!あとは誰かが見つけてくれるのを祈るだけだけど……」

少年「よかった、たまたま獣寄せ笛持ってて……」

山田「物理的に干渉は出来ないけど可能な限りは助けてあげるよ」

山田(俺のホントの正体は笛に宿る精霊なんだけどねぇ~)

山田(吹かれなきゃ外に出られないけど、この子の荷物に紛れ込むことくらいは出来るからね)

山田「さて少年、ここで一つ問題が発生した」

少年「問題?」

山田「ああ!あの信号弾を見ているのは必ずしも人間だけじゃないってことだ」

少年「……」

山田「……」



魔物「ゴガァ!」コソッ


少年「バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ダダダダダ

名前で世界観ぶち壊す山田

――――――
―――


剣士「信号弾が上がったのはここらへんか?」

商人「臭いも残っています、間違いありません……が」

商人「チクショウ、移動してますね」

剣士「そりゃ、信号を見たのは私たちだけでは無いだろうからな。追われているとしたら尚更だ」

商人(そういやちょっと前に同じことやりましたね私)

商人「……!あそこ!臭いが強いです!」

剣士「洞窟だと?あんな場所に逃げ込んだのか!?」

商人「行きましょう!」

商人「なんでこんなところに逃げたんでしょう……案外長い洞窟ですね」

剣士「灯りが無いから不便だな、嗅覚だけでどうにかなるか?」

商人「かなり獣臭いですね、若干怪しいです」

剣士「かなり獣臭い……?」

グォゥ……

剣士「……なるほど、逃げ込んだのではなく」

商人「誘いこまれたって訳ですか……」

剣士「後方!上に張り付いている!仕方がない、奥へ走れ!!」

魔物「ガァァァァァ!!」

商人「チックショウ!なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ!!」

剣士「私たちを見つけたから小僧は餌に使われた、という事か」

商人「この洞窟内にいることは確かですが……オワッと!危ねぇ!」

魔物「グァァア!!」ブンブン

剣士「無暗に腕を振り回しているだけでは捕らえられんぞ、成長しないな獣め!」スッ

商人「腰に手を当てて何してんですか!?」

剣士「あ……」

商人「?」

剣士「剣、無いんだった」

商人「ドアホォォォォォォ!!早く逃げるぞ!!」

商人(そして私も異次元ポケット忘れたぁぁぁぁぁぁ!!)

剣士「クソッ!目は慣れてきたが灯りが無ければうまく動けん!」

魔物「ゴガァァ」ガンガン!!

商人「壁にぶつかろうが容赦なく追ってきてます!」

剣士「痛みというものを感じないのか化け物め!」

商人「これが狂化……痛みも感じないなんて」

剣士「あんなのだが罠に嵌める知性はある、タチが悪い!」

剣士「なッ!行き止まりだと!?」

商人「そ、それじゃああの子はどこに!?あの魔物の臭いが強すぎて……」

魔物「グガァ!!」ダンダン!!

商人「来た!」

山田「林檎ちゃん!こっちだ!」

剣士「誰だ!?」

商人「や、山田さん!」

少年「ねーちゃん!こっちの横穴!」

商人「い、今そっちに……」

魔物「ガァァアア!!」

山田「ダメだ!間に合わない!」

剣士「凍り付け!!」

魔物「ガウ!?」カチン

剣士「持って数秒だ!早く入れ、私も入りたい」

商人「は、はい……助かりました。よっこらせっと」

少年「ね、ねーちゃん……」

少年「その……俺……」

商人「……後でたっぷりお説教です、今はこの状況をどうにかしましょう」

剣士「この横穴の大きさからして奴は入ってこれん、しばらくここで休むぞ。流石に私もこの距離を走り回るのは疲れた」

商人「よく考えたらあなた人間ですもんね」

剣士「あまり息が上がっていないお前を見ているとたまに獣人が羨ましく思うよ……」

山田「これからどうするんだい?」

商人「打開策がゼロって訳でもないですが……あなたが持ってきた道具、全部見せてもらえますか?」

少年「う、うん……」

商人「さっき使った信号弾が入った遭難セット、山田さんの笛」

少年「山田さんの笛!?名前変わってるよ!?」

商人「それと、お弁当とライターと室内用花火……なんでこんなクソの役にも立たないようなものばかり持ってってんですか!?」

少年「それ全部ねーちゃんの商品だよ!?」

商人「……そして」

剣士「やはり斬姫を持っていたか」

少年「うん……」

商人「私は護身用の閃光弾しか持ってねぇし……」

山田「うん、それ使えるんじゃないかい?」

山田「この暗がりで動けるんだ、きっと目もいい筈だ。俺が閃光弾と一緒に外に出て注意を引き付けるよ、その隙にみんな逃げるんだ」

剣士「……お前はどうするんだ?」

山田「幽霊だから平気さ!」

商人「……ではあなたを信じます」

山田「任せなさい!」

山田「俺は物も持てないから林檎ちゃんが閃光弾を投げたら一緒に飛び出すよ」

商人「それじゃあお願いします……3、2、1」

山田「うおおおおお!」

商人「特製爆弾FBR-2もといフラッシュボム林檎ちゃん2号投下!!」ポイー

剣士「そんな略だったのか」

魔物「グゥゥ?」

山田「へイ!こっちだ!ヘイ!」

魔物「ゴォォォ」ブンブン

山田「なに!?効いてない!?ウワァー」ブオーン

商人「や、山田さーん!!」

剣士「振り払われると霧のように消えるんだな」

剣士「と、言うより効いてないとはどういう事だ?」

商人「あ、私の知ってるウサギだったら両目が塞がっててまず目が見えてないんだった」

剣士「両目?」

少年「山田さんはどうなっちゃったの?」

商人「あぁ、大丈夫ですよ。幽霊ですから死にませんし、しばらく経ったらまた笛で呼び出せるようになります」

少年(どういう原理だよ……)

剣士「おい、ちょっと待て。話が合わないぞ」

商人「山田さんが幽霊ってところがですか?」

剣士「その狼男の話は割とどうでもいい。そっちじゃない、魔物の目の傷の事だ」

剣士「私が戦っていた魔物は確かに目に傷を負っていたが、両目だなどと言ってはいない」

少年「俺も見たよ、右目に大きな傷がついているの」

商人「あ……え……?つまり……」

剣士「杞憂に終わったな、お前の知っているウサギの魔物とは違う魔物だという事だ。目の前にいるやつがどうなのかは知らんがな」

商人「あ……そっか、よかった……」

剣士「まぁ、感傷に浸っている場合ではない。どうする?」

剣士「暗くてよく見えんが横穴にへばり付いている、あっちには逃げられそうもない」

商人「この奥はどうなっているんですか?」

少年「あんまり大きくないけど、池になってる」

商人「……もしかしたら外の川とつながっているかもしれませんね」

剣士「行けるのか?」

商人「見てみないとわかりません、ともかく進みましょう」

少年「どうかな……?」

商人「魚が泳いでますね、あと大きな穴もあります」

商人「魚に目ン玉付いてますから外と繋がりがあると思います」

剣士「どこでそんな知識を得るんだ」

商人「とあるアニメです。ともかく潜ってみます」

剣士「……魚が通れるくらいの穴しかなかったらどうするつもりだ?それもこんな暗がりだ、碌に進めないだろう」

商人「そこはご安心を、このライターは水中でも使えるという優れものですから。それに、たとえ穴が小さくても今はやらないよりはマシでしょう?」

少年「お、俺が行こうか?」

商人「あなたはこのお姉さんと待機しててください、結構危険ですし。ここは大人の私に任せなさい!」

とあるアニメ=名探偵コ○ンなことは密に密に

商人「では……この子、お願いしますね」

剣士「ああ、気を付けて行けよ」

商人「フフ、心配してくれてどうも」

剣士「ふん……」

商人(ライターオイルは万全、私の肺活量も良好!さて、行くか……)ボチャン



少年「俺……何もできないで……」

剣士「当たり前だ、身の丈を考えろ」

少年「でも……!」

剣士「まだ自分の力量も分からんのか……」

商人(あー、水冷てぇ。さっさと終わらせて帰って寝たい)

商人(穴は……入口はこんなもんだけど奥はどうなっていることやら)

商人(奥に進めば進むほど狭くなってくる……無理か?)

商人(……やっぱりダメか、ここまでしか進めない……他の手を考えるか)

商人(一旦戻って……ん?なんか引っかかって……)

商人(ッ!?ぐおおお!着物の帯が岩場に引っかかりやがった!?ってかこんな服装で水ん中潜ろうとかアホか私は!?)

商人(動きやすいように丈は短くしてあるけど水中潜るなんて普段やらないことやるからこんなことに!!)

商人(チクショウ!外れねぇ!手元がまともに動かねぇ!)

スィー

商人(ん?)

面白い顔の魚「ンボ!」

商人「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」


商人(あ、ヤベ、死ぬ……)

商人(あー、22歳で死ぬとか短い人生過ぎるだろ)

商人(まだあんなことやこんなこともしてないのにここで終わるとかマジかよ)

商人(もっと賢く生きれたらなぁ……私が死んだらあの子たちどうなるんだろう)

商人(もし帰れなかったら女将さん悲しむだろうなぁ、竜さんや女神さんは私の事で泣いてくれるかなー?)

商人(つーかあの魚なんだよ!突然現れやがって!アホか!?こんな場面でどうでもいい魚が私を殺しに来るとかアホか!?)

商人(もういいや、死んだら呪い殺してやるあの魚!死ね!焼き魚になって跡形もなく食われて死ね!)

剣士「……」

商人「ムグッ!?ムググググ!!!」

剣士(なーにやってんだコイツは)

剣士(氷を球状にして空気を運んできてやったぞ、吸え)ゴッ

商人「ムゴ!ムゴゴゴゴゴ!」スーハースーハー

剣士(凄い顔してるな……これが引っかかっていたのか、危ないところだったな)ブチィ

商人(あぁ、私の大切な服が……)

剣士(ダメだったみたいだし、戻るぞ)グイグイ

商人(……また脱出方法考え直さなきゃなぁ)

剣士「すまない、戻ったぞ」ザパァ

少年「大丈夫だった?」

商人「死にかけた」ゼーハーゼーハー

剣士「穴の中は一直線だったからライターに灯りを追えた、運が良かったな」

商人「ありがとうございます……さて、どうしましょうか」

剣士「……お前、もう一つしか方法はないだろう」

商人「正面突破ですか」

剣士「なるべく避けようとするのは分かる、だが私は奴を退けたことがある」

商人「剣があれば、でしょう?」

剣士「……意地になるな、前に襲ったことなら謝る」

商人「わかりました、私もここで死にたくはありませんので……」

キュウ

少年「え?」

キュウキュウ

商人「う、ウサギ?なんでこんなところに」

剣士「……おい、こいつはまさか!?」

魔物「ギュウ……」

魔物「ゴガァァァァ!!」メキメキメキ

商人「大きくなった!?」

剣士「コイツ、あの時みたいに体を縮めて入ってきたのか!?」

少年「あ……ああ……」

魔物「ウガァ!!」ブン

商人「危ない!!」ダキッ

魔物「ウアァ!!」

商人「うぐッ……うう……」

少年「ね、ねーちゃん……」

商人「よ……予想以上に効きますね……」

少年「……ゴメン、なさい……」

商人「へへ、頑丈ですから大丈夫です……よ!」

剣士「吹っ飛ばされて壁に叩きつけられておいてよく言う……」

商人「あだだ……体、まともに動かせそうにないです……斬姫、勝手に持っていってください」

剣士「……」

商人「どうしたん……ですか?早く……」

剣士「名を預ける」

商人「え?」

剣士「ここら辺の国の風習だ、本当に信頼した者にだけ名を教える」

剣士「いつか現れるかもしれん私を屈服させた男にだけ教えるつもりだったが、まあいい。お前たち二人に私の名を教える」

商人「こんな時に悠長な……」

少年「ねーちゃん、重要なことだよ。王族とか貴族とかの間だけで、もう一般には廃れてしまったことだけど、これは……」

剣士「一種のケジメだ、聞いておけ」

剣士「私の名は」カチャン

剣士「メリア・アート!メリアは私を拾ってくれたみんなが付けてくれた大切な名、アートは私の育った集落の名だ!」シャキン

商人「いい、名前ですね……」

剣士「林檎!魔剣・斬姫、確かに"借りる"ぞ!」バッ

商人「借りる……って?」

剣士「ク……ヒヒヒ!クヒヒヒ!!化け物狩りだ畜生が!」

商人「あー、笑い声でいろいろ台無しだよ」

少年「おねーさん、ねーちゃんの事名前で……」

商人「あー、さっきの時点でそうでしたけどやっと犬畜生と呼ばれなくなりましたね」


剣士「ヒーッヒヒヒヒ!!最高だ!最高の気分だ!!」ザシュザシュザシュ

魔物「ガウウウウウ!?」


少年「魔剣に魅入られたらああなるのか……強い、あれが魔剣の力……!」

商人「いや、あの娘出会った当初からあんな感じでした」


剣士「ほらほらどうした!!動きが鈍いぞ!やはり食う事しか考えられない畜生か?」

魔物「グゥン!!」

剣士「何!?グッ!」

剣士「グハッ!」

商人「ど、どうしたんですか!?せっかく刀を渡したというのに!」

剣士「……アイツ、痛みを感じないという事をすっかり忘れていた」

商人「え、ああ、そういえばそうでしたね」

剣士「再生能力も備わっている……以前戦っていた時は痛がっていたし、再生なんてしなった……」

商人「着実に核が体に馴染んでいる、て事ですね」

剣士「ああ、だが退路は開けた」

商人「入口を塞いでいない今のうちに出ましょう!」グイ

少年「うわ!ねーちゃん俺を背負って大丈夫なの!?」

商人「治りました!」

少年「早ッ!?」

剣士「あの魔物よりお前の生命力が不気味だ……」

商人(大丈夫なワケ無いですよ……今無理しなきゃあなた達を不安にさせるだけですからね)

剣士(……言葉が無くても分かる。林檎、帰れたら少しはお前を労ってやる)

魔物「ウググ!」

剣士「走るぞ!」

商人「はい!」

魔物「グガ!」ガンッ!

商人「よし!案の定横穴の入口に引っかかった!」

剣士「油断するな!学習能力が高い!またさっきみたいに小さくなって潜ってくるはずだ!」

剣士「そうさせない為にも……」ピキピキピキ

商人「何が始まるんです?」

剣士「入口を氷で塞ぐ……なるほど、斬姫は魔法の補助もしてくれるみたいだな」

商人「そんな私の知らない使い方まで……」

剣士「美しき氷の刃よ、この地をお前の世界に変えよ!」パキン!

商人「んな!?一瞬で洞窟ン中が氷漬けになったぞ!?」

少年「すっげぇ……」

剣士「私の魔力だけではこんなことは出来ない、流石だな」

剣士「分厚く氷を張った、もう出てくることも出来んだろう」

少年「倒さないの?」

剣士「捕らえられるのなら捕らえろ、だったな」

商人「結構律儀ですねぇ、あなたなら『私の獲物は私が殺す!』とか言いそうでしたけど」

剣士「斬姫を持った事で興味がなくなった」

商人「そう言えばさっき、"借りる"って言ってましたけど……今はもうそのまま持って行っても文句は言いませんよ?」

剣士「……こんな状況だ、そんな気にはなれん。私なりに考えた結果だ」

商人「そっか……」

少年「出口だよ、明るい……」

商人「悪夢のような一瞬からようやく抜け出せましたね」

商人「皆さんに連絡して来てもらいところですが……何も持たずに飛び出したのがいけなかったですね」

剣士「仕方ない、歩いて帰るぞ。報告はそれからでも遅くはない」

商人「魔物は大丈夫なんですか?氷が壊されたりしないですよね?」

剣士「数日では溶けない量だ、ましてや光の届かない洞窟の中、素手で殴っても壊せん」

商人「なら安心ですね……」

商人「さーて、戻ったらタップリドップリお説教タイムですよ?覚悟しとけよクソガキ!」

少年「……わかってる……けど」

剣士「何が納得出来ん?お前の無謀な行動で死人が出そうになった、この事実は変わらんぞ」

少年「……」

>>688
商人「皆さんに連絡して来てもらいところですが……」
誤字脱字が一人に集中している……

商人「それより、背中から降りてもらえません?ちょいと腰を痛めてまして……」

少年「あ、うん」

剣士「林檎、歩けないようなら私がお前を背負うがいいか?」

商人「あはは……子供の世話にゃなりませんよ」

剣士「お前は強くは無い、だからお前は守られる立場だ。おとなしく私を頼ればいい」

商人「大人が子供を守らないでどうするんですか!だから、あなた達が私を頼ってください!」

剣士「……よくわからん」

商人「私もよくわかりません……フフ」

竜少女「うぉーい!お主らー!!」

騎士「無事か!?」

少年「迎えのほうが先に来たみたい……」

商人「心配かけちゃいましたねぇ」

騎士「おい、怪我してるじゃねぇか!大丈夫か!」

少年「俺は平気……ねーちゃんの方見てあげてよ」

竜少女「なんじゃ、お主らボロボロではないか!すぐに治癒してやる、こっちへ来い」

商人「あはは……どうもすみません……」

竜少女「何をしておる、お主もじゃ」

剣士「私はいい、ほとんど無傷だ」

商人「怪人さんは来てないんですか?」

竜少女「あやつこそ連絡係で必要じゃ、宿に残ってもらっておる」

騎士「安否が確認できただけでも良かった……お前らが出て行った後に冒険者ギルドの依頼所から緊急収集がかかったんだぞ?」

剣士「何だそれは?」

騎士「この森でウロウロしてた魔物が人を殺したんだとよ、6人ほどな」

商人「ッ!……死者まで出たんですか……」

竜少女「この国の大臣の不始末じゃ、モノを突き付けてやればもう言い逃れは出来んじゃろう」

騎士「そこは俺たちの仕事じゃねぇからな、アイツらに任せるとして……」

剣士「その魔物ならおそらく私が捕らえた奴だろう」

竜少女「ぬ?捕まえたのか!して、どこに?」

商人「あの洞窟の中です」

騎士「洞窟って……」

竜少女「なぜこんな場所に氷漬けの洞窟があるんじゃ」

剣士「色々あったんだ」

商人「色々あったんです」

竜少女「むぅ、仲良くなっておる。なんか妬けるのぅ」

騎士「んじゃ、連絡だ。使い魔を伝ってあいつらに」

竜少女「うむ、もう終わっておる」

商人「早ッ!?どうなってんだ使い魔システム……」

竜少女「少し待てば来るじゃろう、逃げないようにここで待とう」

商人「……この子は先に宿に帰してきますね」

少年「……」

騎士「ああ、何があるかわからんからな。お前たちは戻れ」

剣士「私より弱いお前が残るのか?」

騎士「うるせー、疲れてるお前よりは戦力になるわ!」

剣士「……そうか、当てにさせてもらう」

騎士「お?おう……」

商人「ではお願いします」

竜少女「治癒はしたが無理はするでないぞ?肉体の疲労まではどうしようもないからのう」

剣士「行くぞ、歩けるな」

少年「……大丈夫だよ」




騎士「ホント、アイツら何があったんだろうな」

竜少女「仲良きことはよい事じゃ、キリヒメとか言う刀があの娘の手に握られているところを見るとそういう事なんじゃろうな」

騎士「あ、そいうやそうだな」


商人「あ、ウサギの事竜さんに話すの忘れてました」

剣士「ん?戻るのか?」

商人「どうしましょう、不安の種はとっとと取り除いておいた方がいいですし……」

少年「俺が伝えてこようか?」

商人「ダメです、また危ない目に合いたいんですか?」

少年「もうここには危ないものなんてないよ……」

商人「そうは言ってもですねぇ……」

バシャ

剣士「?水の音?」

商人「そういえば川が近くにありましたね」

バシャバシャ

少年「何かいるのかな?」

バシャバシャバシャ

商人「……嫌な予感がします」

剣士「……同感だ、私もだ」

剣士「……覗いてみるか?」

商人「放置は……出来ませんね」

バシャバシャバシャバシャバシャバシャ



魔物「グゥ………フー!フー!フー!!」

魔物「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」


剣士「出てきたのか!あの池から!」

商人「私たちでは入れなかったあの小さい穴から……なんちゅう頭の良さしてんだアイツ!」

剣士「もう形振り構っていられん、奴を殺す気で行く!」

少年「出来るの!?あいつすぐに傷が塞がるんだよ!?」

剣士「やるしかない、お前たちはここで待っていろ!」

商人「り、竜さんたちを呼んで……」

剣士「下手に動くと感づかれる、私が確実に仕留める、ジッとしてろ!」ダダダ


魔物「アアアアアア!!」

剣士「お前とはもう何日間か戦い続けていたな、私が追ってお前が逃げて……」

剣士「だがそれも今日で終わりだ!」

剣士「応えよ斬姫!凍てつけ刃よ!」

魔物「ゴガアアアアアアアア!!」

少年「やっぱりあの人たちを呼んできた方が……」

商人「あの娘を信じましょう……動いて標的をこちらに変えられたら私たちは戦うことは出来ないんですから」

少年「どうして……俺は……」


ガサ

商人「こんな時に後ろから不穏な影が……」

ガサガサ

少年「ウソ……だろ……」

商人「ッ!?これは……!」


「グゥ……」

剣士「驚いたな、さっきよりも強くなっているじゃないか!」

魔物「グン!グン!!」ブンブン

剣士「私も避けるだけでは手が回らなくなってきたぞ……」キンッキンッ

剣士「だが、もうお前とは遊ぶ気にはならん!」ザシュ

魔物「ウウウウウ」

剣士「痛みが無くとも、再生しようとも、それは着実に蓄積されていく!そこが知れたな!」


ガサ


剣士「ん?……っ!?」

魔物「ガ……?」


「グゥ……グゥ……ゴガアアアアアアアアア!!」


剣士「二体目だと!?アイツらはどこだ!?大丈夫なのか!」

剣士(クソ、こいつはどの程度だ、同じ練度ならば二体相手は非情に戦いにくい!)

剣士(あの二人も連れて帰らなきゃいけない……どうする、どうすればいい……)

「グゥ……」

剣士(……悔しいが、二人を無理やりにでも引きずって逃げるしかないようだな……)

魔物「ガゥ……」

「ガアアアアアアアア!!」ドシンドシンドシン

魔物「ギャアアアアアアアアアアア」バキッ


剣士「何だと!?魔物が魔物を襲った!?」


魔物「ウガァ!アアアアアア!!」

「アアア!!!ガアアア!!」

商人「メリア!」

剣士「無事だったか!これはどういう事だ!」

商人「後から来たもう一方の魔物……両目の引っ掻き傷、私が知ってるウサギの魔物です!」

剣士「お前を助けに来たとでもいうのか!?」

商人「わ、わかりません……ひょっとしたら」

剣士「なんだ?」

商人「あの両目の傷はあっちの魔物に付けられたもの……かも」

剣士「要は復讐か、私の獲物を……」

商人「……」

剣士「……と、言いたいところだが。今はお前たちの命を優先しよう、逃げるぞ」

商人「ちょっと待って!」

ウサギ「ウグ……」

魔物「フーフーフー!」

剣士「アイツ……弱いじゃないか!もう持たないぞ!」

ウサギ「キュウ……」メキメキメキ

少年「小さくなった……」

剣士「どの道倒す必要が出てきたみたいだ……」

商人「ダメ!あの子が殺されちゃう!」

魔物「ゴガアアアアア!!」

ウサギ「キュ……」

剣士「残念だが……」

商人「いやああああああああ!」



騎士竜「何かわからんがくらえッ!」ドカッ!

魔物「ギャアアアアアアアア!!」


商人「!?」

剣士「!!?」

少年「!?!?」

竜少女「お主ら無事か!?」

商人「え、ええまぁ」

竜少女「まったく、こんな短い時間で2回も心配させおって!」

剣士「あのリザードマンをデカくした感じのは……」

竜少女「うむ、奴の竜としての姿じゃ。二足歩行で人としての形を残しておるから竜人とか言うのかの」


騎士竜「立てド腐れ、てめぇが冒険者殺しの犯人だな?」

魔物「グ……ググ!」

騎士竜「大人しくするなら良し、後で罰は受けてもらう」

騎士竜「抵抗するっていうなら……」

魔物「ウガアアアアアアアアア!!」

騎士竜「爆竜剣で叩ッ斬る!!」ズシャアアア

魔物「ア……」ドシャ


剣士「さ、再生を許さずに一撃……」

竜少女「竜化しておらんとあのデカい剣を存分に振るえないのもいけないのう」

商人「絵面が完全に怪獣大決戦なんですけど」

騎士竜「フン、口ほどにもない……やったぞ」

竜少女「やったぞ、ではないわボケが。突き出すはずの材料を殺してしまいおって」

商人「そんなことよりあのウサギは!?死にかけてたんですよ!」

剣士「ここだ……まだ息はある」

竜少女「どけ!治癒魔法をかける!」

商人「どうか……」



騎士竜「……俺の活躍の意味は?」

竜少女「……もうダメじゃ、これ以上は治せん……」

商人「そんな……」

竜少女「これが……こんなことが天命だとでも言うのか……」

商人「なんでこんな事を……」

ウサギ「キュウ……キュウ……」

ウサギ「キュゥ……」

剣士「……息が止まったな」

竜少女「ごめんなさい……ワシでは……私じゃ助けられなかった……」

商人「……この子、首飾りしてない……」

剣士「首飾り?」

商人「私のあげた首飾り……天敵から身を守る物です」

剣士「野生の動物なんだ、邪魔だと思うのなら自分で外すだろう」

商人「そう……ですよね」

少年「ねーちゃん達!こっち見て!」

商人「……なんですか?」

キュウキュウ
キュウキュウ

商人「あ、そうか……子供が居たんでしたね」

剣士「ここは巣か、簡易的な使い捨ての巣。毎日こんなのを作って移動しているんだな」

剣士「……この魔物は本当に頭がいいみたいだな」

商人「え?」

騎士「巣の中に……首飾りが」

竜少女「このウサギ、まさか子を守る為に……?」

商人「この首飾りを持っていればその天敵に出会うこともなかったのに……」

竜少女「……近場にあの魔物が現れた時点でそうも言っていられなかったのだろう」

竜少女「首飾りを置いて自分は奴を追い払いに行ったんじゃ。おそらくの」

騎士「親の愛ってやつか、死んでも守りたいものなんだろうな……」

竜少女「ワシらは子供が居ないからそういうことは分からんが……そういう事なんじゃろうな」

少年「親の愛……」

剣士「……守りたいもの、か」

キュウキュウ

商人「この子たちはどうするんですか?」

竜少女「女神のやつならほかっておけと言うじゃろうが……」

騎士「ダメだぞ、旅に連れては行けん」

竜少女「お主も言うと思ったわ」

キュウキュウ

商人「あぁ、こんなに私になついて」

ガブ

商人「いてぇ!?今噛みやがったなコイツ!?油でカラッと揚げて食ってやろうか!?」

剣士「……自然の中で生まれたのならほかっておけ、小さいとはいえ野生の生物だ。自分たちで生きる方法くらい見つけるだろう」

鎧少女「その必要はない……少し遅れたようだな」スッ

剣士「……音も気配もなく現れるのはやめろ」

竜少女「こやつらを貰ってくれるのか?」

鎧少女「ああ、貴重なサンプルだからな」

騎士「サンプル?」

鎧少女「本当に大事なことを伝え忘れていたが、研究所から逃げ出した魔物の数は6匹だった」

商人「おい、いくらなんでもそれ伝え忘れちゃいけないだろ!?」

騎士「倒したコイツらを含めて後4匹って事か……おい、このウサギの子供が6匹いるんだが」

鎧少女「ああ、狂化させられた魔物はこの森には2匹迷い込んだようだな」

鎧少女「そこに転がっているデカいのと、私たちの知っているウサギ……」

鎧少女「他の2匹は研究所が回収、残りの2匹は私の国の者が回収した」

商人「結構話が進んでたんですねぇ」

鎧少女「お前たちに話した時点で残り3匹だったからな、夜の間でどうにかなった」

剣士「つまり?」

騎士「どういう事だ?」

鎧少女「そのウサギ達はこの親ウサギが脱走した後に出来た子供という事だ、だからサンプル」

竜少女「んな!?お主この期に及んでまだこの者達をそんな風に扱うか!」

鎧少女「悪いようにはしない、責任を持って引き取るつもりだ」

竜少女「うぬぬ……なんか納得いかんのう」

商人「ここは信じましょう、私たちではどうすることも出来ないんですから」

キュウ!

鎧少女「色々と検査とかするけど大丈夫、お前たちには酷い事はしたりはしないからね」ナデナデ

キュウキュウ!

鎧少女「……生まれた命に罪は無い、親の業を背負わせる訳にもいかない」

鎧少女「私も人の親だからわかる、信じてくれ」

竜少女「うむ……わかった」

鎧幼女「いい子だ、お前も親になればわかる時が来る」

竜少女「なっななななっ何を言っておるか!まだワシはそんな予定無いわ!」

少年(……この人大人だったんだ……)



商人「ところで、指輪渡したんですか?」

騎士「……まだだ」

商人「婚約指輪とかじゃないんですからとっとと渡しちゃいなさいよ」

騎士「俺にとっては同じようなもんだよ、タイミングがだな……」


剣士「どうでもいいが帰ろう、疲れた」

――――――
―――

小休止
あとちょっと、あとちょっとで終わる……

再開
読み方は割と序盤で仮面さんにカタカナ表記してもらったのにコレである
やっぱり女の子の発言の方を見ちゃうよね!

眼帯少女「……彼らを遠くから見てるだけ、声をかけないの?」

黒髪少女「この状況で声なんてかけにくいでしょうに。あの魔物を取り逃がしたのは私の責任でもありますし」

金髪少女「元凶はあんなモノを作った者達だ……気にすることは無いだろう」

黒髪少女「半ば強制的でしたが、関わってしまった以上は見て見ぬふりは出来ません」

黒髪少女「最悪、竜達の介入が無ければ私が割って入るつもりでしたが……あの剣士の娘一人でもどうにかなりましたね」

眼帯少女「……どんな形であれ、彼女の手にはあの刀が握られている。約束通りに直さなきゃ」

――――――
―――

竜少女「ところでお主、連れはまだ帰ってきていないのか?」

鎧少女「帰ってきていないというか、私はさっきまで一緒に行動していたんだが」

騎士「俺たちが呼び出しちまったって事か……悪いな」

鎧少女「それはいい、それが私の仕事だからな」

少年「……」

商人「……家に着く前に言い訳くらいなら聞いておきますよ?」

少年「……俺はただ……誰かに認められたかったんだ……」

剣士「的中だな」

商人「なんでそんな事わかるんだよマジで」

少年「母さんには宿を継げって言われてるけど……死んじゃった俺の父さんも、それに母さんも昔は冒険者だったんだ」

竜少女「やはりか……」

騎士「依頼所の内情に詳しかったからか?」

商人「身のこなしからして明らかに常人離れとかしてましたけどね」

少年「小さかった俺を連れて旅を続けてたけど、父さんが俺を庇って死んじゃってから母さんは冒険者をやめて……」

少年「発展途中だったこの街にたどり着いて、それから宿を始めたんだ」

少年「俺は学校も行ってないし友達とかいないし、俺を見てくれてるのは母さんだけだったんだ」

少年「……母さんはそれでいいって思ってるけど、俺はそうじゃない。誰かに認められたい、誰かにもっと俺を見て欲しい」

商人「私への度重なるセクハラもそういう事情があっての事か」

少年「ゴメン、それは趣味」

商人「」

少年「だから少しでも強くなって魔物でも退治出来れば、誰かが俺を見てくれる……そう思ったんだ」

騎士「そんな向上心があるならなんで地道に努力しようとしない?」

少年「何の才能もない俺が頑張ったところで知れてるよ、だから強い武器が欲しかったんだ!」

剣士「はぁ……」

商人「呆れた……こりゃ酷いですね」

少年「なんだよ!」

剣士「自分の才能の限界を決めるのは軽率過ぎる……お前はまだ子供なんだ」

少年「おねーさんだって子供だろ!なのにこんなにも強いのはなんでだよ!」

剣士「そりゃ……才能だ」

少年「ぐぬぬ」

商人「それ完全に煽ってますよ」

商人「そうやって無謀なことをしでかして……あなたはあなたを心配してくれる人の命を危険にさらしたんですよ?」

少年「……誰も頼んでない!!」

商人「……私のものを盗んで行ったことは?」

少年「ちゃんと返すつもりだった!!」

商人「……女将さんを……心配させたんですよ?」

少年「俺は!!……宿なんて継ぎたくない……ッ冒険者になりたいんだよ!!」ダダダダダ


竜少女「……どうしようもないのう」

騎士「まだ子供なんだ、だが積りに積もったものが爆発したんだろう」

竜少女「あんな言い方無いじゃろう……」


商人「……」

剣士「……叱らないのか?」

商人「手前勝手なのはどうしようもないにしても、彼を叱るのはあの子のお母さんの役目です」

商人「私の事についてはその後……結局はあの子と私は他人ですからね」

商人「ま、可能ならば助走をつけて顔面をグーパンで殴りたいところですが」

剣士「だろうな、私もそうしたい」

竜少女「だろうと思ったわ」

騎士「手を出さないだけマシか……人生の先輩としての意見を聞きたいんだが、アンタはどう思う?」

鎧少女「私に振るか!?……まぁ子供のやることだ、大目に見てやれ……とは言える状況ではないが」

鎧少女「スマン、私は子育てについては何も言えん。自分の子供を十数年ほったらかしにするような親だ」

商人「……訳ありですねぇ」

鎧少女「落ち着いてからもう一度話し合うべきだ、今回の事はいくら相手が子供でもちゃんとした謝罪はさせた方がいい」

とぅるるるるるる

鎧少女「ん?アイツから電話だ」

商人「なんちゅう着信音にしてるんですか」

鎧少女「もしもし?どうした?」

仮面男『不味い事になった、部下をそちらに向かわせたから魔物の引き渡しをしたら君はすぐに魔導都市に戻ってくれ』

鎧少女「不味い事?何があった?」

仮面男『大臣がヤケになって行動を起こした……クソッ、すべてが裏目に出たか……』

鎧少女「街の方に何かあったのか!?」

仮面男『すまない、結構多く相手にしてるんだ、そろそろ切るよ』ギンッザシュッ!!

鎧少女「すぐに行く!待ってろ!」

竜少女「何かあったのか?」

鎧少女「すぐに街に戻るぞ、何かが起きている」

商人「こ……これはまさか連戦というやつでしょうか」

剣士「私は構わんが」

竜少女「先に戻った小僧も心配じゃし、とっとと戻るか」

鎧少女「……お前たちはここに残ってくれてもいいぞ」

鎧少女「元は私たちの撒いた種だ、無理に付き合う必要もない」

騎士「そんなこと言うなって」

竜少女「前も言うたじゃろう、ワシらは好きで付き合っておるんじゃ。もっと頼ってくれてもいいくらいじゃ」

商人「あ゛ーもうどうにでもな~れ!」

剣士「お前は戦えないから本当に残れ」

――――――
―――


少年「な……なんだよこれ……」


「逃げろ!追いつかれるぞ!!」
「道を開けろ!どけ!」
「いやぁ!死にたくない!」
「冒険者は何をしているんだ!早くコイツらを何とかしろ!」


少年「街が……魔物だらけになってる……」

怪人男「ああ!帰ってきてたんですね!」

少年「お、おっさん!」

怪人男「女将さんを心配させて!あなたは何をしてるんですか!……っと、今はそれどころじゃないですねぇ」

少年「ど、どうなってるんだよこれは!」

怪人男「あなたが知る必要はありません。さ、私につかまってください」

怪人男「安全なところまでお送りしますよ」

少年「……家が心配だ!」ダダダダ

怪人男「ああ!ちょっと待ってください!」

鎧少女「なるほど、この惨状か……」

怪人男「あ、お帰りなさい!あの子が……」

商人「ああもう!私が捕まえてきます!」ダダダ

剣士「チッ、また追うのか……」ダダダ

竜少女「あの二人、今日はよく走るのう」

怪人男「この状況、何か知っているんですか?」

竜少女「ワシらもよくわからんのじゃ」

騎士「仮面のやつに直接聞かないことには何とも……」

鎧少女「大臣がヤケを起こしたとか言っていたが……安全なところにいたハズの大臣を強行させるような事でも起きたのか……?」

竜少女「お主のところの者が何かやらかしたんじゃなかろうな?」

鎧少女「……わからん。ともかく現状を打開しよう」

竜少女「うむ、とりあえずワシは人気のないところで元の姿に戻ろうかの」

騎士「持てる力で戦うか……大勢に見られるけどいいのか?」

竜少女「仕方ないじゃろう。じゃが、化け物の集団の中に化け物が2匹紛れ込んでも大差ないじゃろうに」

騎士「……ほかの冒険者に攻撃されないように気を付けような」

鎧少女「では、行くぞ!」

――――――
―――


少年「か、母さん……!」

母「……あ、お帰り……なさい」

少年「なんで……こんな傷だらけ……」

母「フフ、家を守りたかったから……久しぶりにちょっと……頑張っちゃった……」

少年「怪人のおっさんと一緒に逃げればよかったじゃないか!どうして残ったんだよ!」

母「私がここに残るように言ったから……だって……入れ違いになったら大変でしょう?」

商人「追いついた……ってええ!?どういう状況ですか!?」

母「お帰りなさい……ごめんなさい、林檎ちゃん。この子が迷惑をかけて……」

商人「いえ、それは後からでいいんですけど……」

少年「なんで……俺を待ってたんだよ……こんなにも滅茶苦茶やった後なのに、こんな傷だらけになるまで戦って!なんで!」

母「……家族なんだもん、自分の子供の帰りを待たないで……どうするの?」

少年「ッ!」

母「……あなたが冒険者になりたいなんて言い出して、すごく心配だった」

母「お父さんみたいに……いつか死んじゃうんじゃないかって」

母「だから、なるべくそういったことには関わらせないようにしてた……でも、それがダメだったみたいだね」

少年「母さん……」

母「守ってあげたかった……でも、もっと外を見せてあげるべきだった……私があなたを束縛してたんだね」

少年「違うよ!俺が……何も知らない俺がずっと母さんに甘えてただけだった!ずっと無知なことに甘えてただけだった!」

母「まだ子供だもん……これから先、いろんなことがあると思う。いろんなことを経験して大きくなっていく……」

母「それが、何かを守ること、誰かに認められていくことなんだよ……だから……」ペチッ

少年「うん……わかってる……わかってるよ……」

母「よしよし、反省できたね?」

少年「勝手なことしたのも、ねーちゃんのもの盗んだのも……全部……ねーちゃん、ごめんなさい」

商人「あー、うん。まぁこの場に流されてそれは良しとしましょう。ですが……」





商人「傷だらけといっても極めて軽傷で辺りが魔物の屍だらけのその山の上に堂々と君臨しているのもどうかと思いますよ?」

母「ウフフフフフ」

母「ごめんなさい、盗んだ件でこの子の事、任せてもいいですか?」

商人「私が叱ってもいいんですか?」

母「……束縛して視野が狭くなっていたことは事実です。私にこれ以上の発言力はありません。だから、身内でない人にお願いしたいんです」

商人「……無責任ですよ……親として」

母「招致してます、これは本来なら私が言い聞かせることだという事は……」

母「……甘すぎましたね、あの子も私も……」


少年「ねーちゃん……俺も戦いたい!今度は俺が母さんを……ねーちゃんを守りたい」

剣士「お前はまだそんなことを……」

商人「……」

少年「心配かけたことは……ごめんなさい、さっきあんなこと言っちゃったし、許してもらえないかもしれないけど」

少年「でも……せめて、傷付かないものを、安全な武器でもいい!俺に貸して!力になりたいんだ!」

商人「……女将さんの言っていたことの意味も分かってなかったみたいですね……」

少年「え……?」

商人「メリア、すみませんが斬姫をちょっと返してもらえますか?」

剣士「ああ、どうするつもりだ?」

商人「……では、この刀をあなたに預けます。どうぞ、これで存分にあなたの守りたいものとやらを守ってください」

少年「あ……どうして……?」

商人「あなたの欲しがっていた武器ですよ?魔剣ですから、素人が使ってもひょっとしたら強くなるかもしれませんね?」

少年「何言ってんだよ……そんなのいらないよ……俺は!」

商人「怖くなったんですか?傷つけるのも傷つくのも」

少年「ッ!!」

商人「ほら持て!!」グイッ

少年「うう……」

商人「本物の刃物だ!重いだろ!人なんて簡単に殺せるぞ!!」

商人「お前はこれを盗んでいった!いとも容易くだ!これで何をしようとした!?命の奪い合いをしようとしたんだぞ!?」

少年「それは……」

剣士「……」

商人「あなたは何がしたかったんですか?恰好つけたかっただけですか?引き下がれなくなっただけですか?」

少年「みんなに認められたかった……」

商人「さっき聞きました。それだけですか?」

少年「……守りたかったんだ……父さんみたいに……誰かを……」

少年「母さんもねーちゃんも、みんなも……」

母「……」

商人「……守るってことは、こうやって武器を取って戦う事だけじゃないんですよ」

商人「そんな無謀で出来ないことをやろうとするな、怪我をして心配するのはいつも親なんだ」

商人「死んでしまったら……それでお終いです」

少年「……グス」

商人「……叱るだけ叱りました、あとはもう一回。母親であるあなたが何とかしてください」

母「ごめん……なさい……」

剣士「そんな言葉、ツラツラとよく出てくるな」

商人「こう行商で長旅していると、こんなご時世嫌でも人の生き死にを見るんですよ」

商人「別に私は身内が死んだとか言う経験は無いですけど……戦争中の所なんか見てたりすると、考えさせられるんですよ」

商人「……そんな私がこんな事言っても、重みなんて全然ないですけどね」

剣士「……私にはわかる」

剣士「剣を取らざるを得なかった私は仕方がないにしても、小僧は戦う理由なんてない」

剣士「……無事でいて欲しい、傍にいて欲しい。ただそれだけでも、あの母親にとっては大切なんだろう」

商人「あの子の存在が、女将さんを守ってるってことですね。わかってくれればいいんですけど……」

少年「ねーちゃん……俺、間違ってたよ」

商人「うんうん、わかってくれたか!」

少年「俺……俺なりの方法で戦うよ!」

商人「以下無限ループにつき顔面パンチで終了させます!!」ドゴォ!!

少年「ぶべら!!?」

少年「違うよ!?戦うって言っても物理的にじゃなくてこれからの事を言おうとしただけだからね!?」マエガミエネェ

商人「おっと、そりゃ失礼」

剣士「見事にぶち壊したな」

剣士「さて……これからの事を語る前に、やることはやっておこう」

商人「そうですね……こうそこらじゅうに魔物に徘徊されてたら締まりませんね」

母「私に何かできることは……」

商人「それこそあなたは息子さんを守ってあげてください。もう一線は引いた身でしょう?」

剣士「小僧、お前は母親を大事にしろ。戦いは戦う者に任せておけ」

少年「うん!」

剣士「林檎、お前もだ。ここに残って隠れていろ」

商人「ギリギリまであなたをサポートしますよ、女の子一人出歩かせるのは大人として見過ごせませんからね!」

剣士「お前も大概だな……守り切れる自信は無いぞ?」

商人「大人をもっと信用しなさい!そんじゃ行きますよ!」

――――――
―――

仮面男(隠し研究所はやけにあっさり破棄したな……)

仮面男(最後に盗み見た大臣の姿は半狂乱だったが……私以外にもこの計画を潰そうとしていた者が居たというのか?)

仮面男(私自身、奴とはパーティ以来接触自体していない。こんな状況になるなど、ほかの要因があったとしか思えん)

仮面男(……まぁいい、直接聞きただせばいいだけだ)ザシュッ

仮面男「……今のコイツで最後だ。残っている研究員共、一緒に切り捨てられたくなければ知っていることを全部話せ」

研究員「ひ、ひぃ……」

仮面男「私が来なければお前たちはこの暴走した魔物の餌食になっていたところだ、正直に話せば命は取らん」

研究員「し、知らないんだ……こんなことは何も聞かされていない……!」

仮面男(だろうな。都合の悪いものを切り捨てようとしている、といったところか)

仮面男(……)

仮面男「分かった、信じよう。だが、この場所は押収させてもらうが構わないな?」

研究員2「そ、そんな!それでは我々は……」

仮面男「罰せられるか?当然だろう、大勢の人を実験台にしてこんな非人道的な実験をしていたんだ。国の許可もなく」

仮面男「調べただけで旅行者、冒険者、ホームレス……この国からいなくなっても困らない連中ばかりを誘拐して」

仮面男「大方大臣の暴走だろうが……お前たちも同罪だ。命があるだけありがたいと思え」

研究員3「クソッ!大臣にも捨てられてこんなことに……全部あいつが悪いんじゃないか!」

仮面男(屑どもが……)

研究員「……グ」

仮面男「ん?」

研究員「グ……ゴ……」メキメキメキ

研究員「ガアアアアアア!!」バキバキ

研究員2「そ、そんな!?」

研究員3「コイツまで実験体にされてたのか!?」

仮面男「保険か?徹底的に根本から始末する気だったか」ザシュッ

研究員「ア……ガ……」

仮面男「だが、そこらの魔物と同程度ではな」

仮面男「お前たち、悪いが額を抉って核を埋め込まれていないか見させてもらうぞ」

仮面男「他にも改造されている者もいるかもしれない」

研究員2「や、ヤメロォ!」

ピピピピ

仮面男「電話……命拾いをしたな」

研究員2「命拾い!?額抉るだけじゃなかったのか!?」

仮面男「抉ったら死んじゃうでしょそりゃ……もしもし?」

鎧少女『軽いパニック映画状態だぞ』グサッ

仮面男「うん、知ってた」

鎧少女『なぁ、今テレビ見れるか?』

仮面男「なんだい?面白いドラマでもやっているのかい?おい、テレビを付けろ」

研究員2「は、はいっ!」ピッ

鎧少女『ジョークが飛ばせるならお前の方は余裕なんだな……ちょいと胸糞悪いものを見せることになるのを先に謝っておく』


――――――
大臣「ただいまこの都市で大規模なテロが発生しております。魔物を放つという大変悪質なものです!」

大臣「軍を導入して事態収めようとしています。皆様ご安心ください!」
――――――

鎧少女『外にある魔法のスクリーンにデカデカと映ってるから最悪だなこっちは』

仮面男「あたかも自分は関係ないって顔しているな」

仮面男「少し調べれば事実は分かるだろう、こんなものは一時しのぎだ」

鎧少女『そこは権力で押しつぶす気だろう、ヘタすりゃコイツ国王より力持ってるからな』

仮面男「これが権力ってやつか……」


――――――
大臣「犯人は必ずわが国の軍が捕まえます!どうか皆様、速やかに避難を行ってください!」
――――――

仮面男「あの大臣の事だ。諦める気はないだろうが、研究員共は切り捨てる気か……ま、末端の連中ならそうなるだろうな」

研究員3「くそ……くそ……!」

仮面男「同情はしないがな」

――――――
―――

小休止

再開

剣士「しかし、なんだな」ザシュッザシュッ

商人「何ですか藪から棒に」

剣士「コイツら、確かに常人よりも強いだろうがまるで手応えが無い」

剣士「それどころか逃げ惑っている奴までいるくらいだ」

商人「……それは多分」

剣士「元が人だったかもしれない奴……だろ?」

商人「気づいてたんですか?」

剣士「私はこっちに向かって来ている奴としか戦っていない、安心しろ」

商人「……暴走して理性を失ってしまった場合は仕方ないですが、何とかして助けてあげられないんでしょうか」

剣士「それを考えるのは私たちではない、今は暴れている奴の処理だ」

商人「はい……」

剣士「強さはあのウサギの魔物が特別だっただけか……連中の中で統率が取れているわけでもなく、個体差もバラバラ」

剣士「動物や魔物を狂化させた奴はまさしく畜生で動きが読みやすい、人を狂化させた奴は今度は対して強くは無い」

剣士「おまけに、比較的原型が残っている奴に限って理性が飛んでいないからタチが悪い……見ていて吐き気がする」

商人「一度皆さんと合流しましょう、解決の糸口がまったく掴めません」

剣士「分かった、戻るのにまた突っ走るが着いてこれるか……と、聞くまでもないな」

商人「毎日重い荷物を持って走り回ってる獣人の私の体力をなめんなよ!」

剣士(治癒をしたとはいえ、さっき結構な大怪我をしたはずなんだが……体の頑丈さは人間卒業一歩手前だな)

竜「ぬ?お主ら戻ってきたのか」

商人「うお変身してる!?とりあえず、こっちはこっちでいろいろと解決したので」

騎士竜「捻くれ小僧は大丈夫だったのか?」

商人「顔面に一発くれてやりました」

鎧少女「どうしてそうなった」

剣士「加勢する、私は何をすればいい」

鎧少女「そうだな、まずあそこの役立たずを回収して来てくれ」



怪人男「いやー!やめてー!服が破れちゃううう!あ、引っ張らないでこれ高かったんですから。痛ッ!何するんですか!酷いじゃないですか怪我したらどうしてくれるんです!?」



商人「10体くらいに揉みくちゃにされてますけどなんであの人死なないんですか」

鎧少女「そういう星の下に生まれてきたんだろう。多分核爆弾が直撃しても五体満足で生きてるだろうな」

剣士「連れてきた」

怪人男「いやぁ、狂化された魔物は強敵でしたね」ボロッ

鎧少女「転移して逃げればよかった話だろう……」

商人「今の状態についていろいろ知りたいんですが、何かわからないんですか?」

鎧少女「潜入してたウチのと連絡が着いたがあっちもどうもハズレ臭かったから何とも言えないな」

鎧少女「ただ、大臣が研究所の一つを切り捨ててそこにあった被検体すべてを解放したという事くらいだ」

商人「それがこの惨状って事ですか」

竜少女「……どういうわけか能力の差が激しいがこれはどういう事じゃ?」

怪人男「それは私が説明しましょう」

怪人男「と、言っても憶測も混じりますが……」

怪人男「被検体のほとんどが実は失敗作なんですよ」

騎士竜「失敗作?コイツら全部見た目が変質しているがこれが失敗なのか?」

怪人男「ええ、同じ種族の狂化でも見た目が完全に別物だったり、強さがマチマチなのもその証拠」

怪人男「獣の習性に従い、人を襲うものもいれば特に何もせずいつも通りの行動をするもの、人がベースになっているのは暴走するのもいれば意識があるのもいたりと見ていて悲惨です」

鎧少女「……こんな不完全なものを軍事利用しようとしていたのか」

怪人男「大臣はいつか成功するとか言ってましたけど、この研究自体はものすごく難航してまして実用化の目途なんて立ってなかったんでしょうね」

怪人男「老人が意固地になって続けちゃってもう迷惑な話ですよ」

竜「……で、その情報はどこで手に入れたんじゃ?」

怪人男「アレ?言いませんでしたっけ?私がちょちょいと資料盗んできたんですよ?」

鎧少女「いつの話だ?」

怪人男「私が魔導都市に着いたばかりの時ですから……1週間くらい前ですね、ワープに失敗してたまたま研究所の倉庫内に飛んじゃったんですよ~。息苦しくて死ぬかと思いました」

商人「……」

竜「……」

騎士竜「……」

鎧少女「……なんで情報を開示しなかった?」

怪人男「やっぱり私、伝え忘れてました?アッハッハすみませんねぇ~」ザクッ

怪人男「」

鎧少女「……知ってりゃ役に立った情報だな」

商人「擁護出来ないのでそうやってしばらく魔物の餌になっててください」

怪人男「」ガブガブ

剣士「魔物の数も少なくなってきた……倒したのか逃がしたのかわからんぞ」

鎧少女「それはいい。逃げたのは私の国の連中に回収させている最中だ」

商人「あなたの国の人たちちょっと優秀過ぎません?」

鎧少女「信用できる者達しか呼んでいない、そいつらがたまたま優秀だっただけだ」

商人「はぁ……」


バラバラバラバラ


騎士竜「ん?何の音だ」

商人「おー珍しい。ヘリですねぇ……こんな時に?」

竜「さっき放送で軍を呼ぶとか言っておったがそれではないのか?」

剣士「私はてっきり、そこの怪人が魔物にバラバラにされている擬音かと思ったぞ」

鎧少女「私もだ、こんなところでスプラッター的なものを見せられても困るが」

商人「それはどうでもいいですけど」

怪人男「」バリバリダー

騎士竜「軍にしても一機だけなのは変だろ。魔導師も大量に派遣するだろうから専用の魔動式の乗り物で来るはずだ」

竜「……もしやと思うが、大臣が自分だけ逃げようだなんて思っているのではないじゃろうな?」

鎧少女「可能性はあるな……私が追う!」バッ

商人「凄い勢いで飛んでった!?流石は女神様ですね……」

剣士「おい竜ども、お前たちはいかないのか?」

竜「ぬ?別にあの女神一人で大丈夫じゃろ、ワシらより強いし」

竜「それにワシは疲れた、あーかったるくて動けんわ。歳は取りたくないのぅ」

商人「なんじゃそりゃ」

剣士「面倒になっただけか……」

騎士竜「あの人は本当に一人で大丈夫だろ、ここももう魔物が居ないし俺たちは反対側を回る。お前たちは悪いけどヘリを追ってくれないか?」

商人「それだったらあなた達の方が適任じゃないですか?」

騎士竜「この姿を維持するのって結構疲れるんだぜ?燃費も悪いし体の節々は痛むし」

騎士竜「元の姿に戻ったらそこの嬢ちゃんより弱くなるからな、安定して戦えるお前がフォローに行った方がいい。相方はこんなだし」

竜「うにゅう」

商人「厳つい見た目でそんなかわいい声出すなよ」

剣士「まぁいい、行くぞ林檎」ダダダ

商人「はいはい、なんかあっちこっち移動して貧乏くじひかされまくってる感じですねぇ」ダダダ

騎士竜「頼んだぞー!」



騎士竜「……動けるか?」

竜「スマンな、気を遣わせて」

竜「しかし、言い訳が滅茶苦茶じゃのう」

竜「元の姿もなにも、ワシらの"本当の姿"はこっちの方なんじゃ。疲れるわけも体が痛むわけもないじゃろう。燃費が悪いのは認めるが」

騎士竜「そんなことはアイツらにはわかるワケないだろ、俺たちしか知らないことなんだ」

騎士「それに俺は人間だ、これが俺の姿だ。人として生まれた、それだけは忘れたくはない」

竜「……」

騎士「ところで、本当に調子が悪いのは見て分かっていた。どうして動けなくなるまで戦っていた、俺はお前にこんなつらい思いをさせたくないからお前を戦わせたくなかったんだ」

竜「力配分を間違えただけじゃ。最近どうも年甲斐もなく楽しくて休むことを忘れはしゃぎ過ぎてのぅ」

竜「ま……友達の前でちょっとカッコつけたかっただけじゃ」

騎士「少し休んでろ、無理して倒れられても困る」

竜(分かっておる……ワシが目に見えて弱っていることも、お主が最悪の事態を危惧しておることも……)

――――――
―――

鎧少女「ビンゴ!当たりだ!」

大臣「おやおや、飛んでいるヘリの扉を突き破ってくるとは。恐ろしい御嬢さんだ」

鎧少女「軽口を言っていられるのもここまでだな、諸悪の根源め」

大臣「はて、なんの事かな?」

鎧少女「お決まりの言葉を掃いて捨てるように言わせてもらうが、しらばっくれるなよ小悪党?」

大臣「それで、"女神さん"?私になにか御用かな?」

鎧少女「特に証拠は無いが貴様の悪行を咎めに来た!とりあえず私がお前を裁く!」

大臣「それは理不尽すぎるだろう!?」

鎧少女「理不尽なものか、女神っていうのはなんでも正当化させるんだよ」

鎧少女「……貴様、なぜ私が女神だと知っている……?」

大臣「敵国の情報を調べているのは自分たちだけだと思ったか?元魔王め!」ガラガラガラガラ

鎧少女「クソッ対神兵器か!?」

大臣「無力だな!無様だな!神の作り出した鎖によって神自らが戒められようとはな」

鎧少女「この鎖……神器か」

大臣「そう、神が神を屈服させるために編み出した兵器だ。まさか本当に使う日が来るなんて思ってもみなかったが」

大臣「このような小娘が神だとは、笑わせる。お前も実験体の一人にしてやろうか?」

鎧少女「あーあー、やっぱりお前は黒だったか。真っ黒くろすけだな、ハハハ!」

大臣「この状況でよく笑えるものだな……生かして狂化の魔導核を埋め込んでやろうと思ったが気が変わった、絞め殺すか」

鎧少女「バカだろ貴様……ヘリのパイロットがどうなっているか見てないのか?」

大臣「何!?」

パイロット「……」

大臣「し、死んでいる……これは!?」

鎧少女「お前の顔を見たときにとりあえず尊い犠牲になってもらった。まぁ同罪だと思えばいいか」

大臣「槍で一突き……こんな一瞬で」

鎧少女「よかったな、お前を殺したら夫がうるさいんでな」

大臣「だがお前はこのザマなのは揺るがない」

鎧少女「徹底的に私をメタったつもりだろうが、そもそも前提条件がおかしいだろう。私一個人に単身で勝てるワケが無い」

鎧少女「つまり、手足が動かなくてもお前を殺す方法はあるってことだ」

鎧少女「何ならこの距離からお前の耳でも鼻でも噛み千切ってやろうか?何ならこのまま内臓引きずり出してやってもいいぞ?」

大臣「下品な……やはり悪魔と天使の間に出来た忌々しき汚れた存在か。お前の両親は化け物を作りたかっただけのようだな」

鎧少女「……お前の種族はなんだ?エルフか?ドワーフか?ああ、その厚底の靴を見る限り案外背が低いからホビットか?」

大臣「何の話だ?」

鎧少女「我が父は誇り高き幻魔の末裔!母は気高き天の使い!貴様の目の前に者を誰と心得るか!」

鎧少女「我は魔王!父と母が愛し合い出来た、望まれて生まれた命だ!私の両親を侮辱することは許されん!」

鎧少女「極刑だ……ヘリが落ちる前にな」

大臣「な……に?」ブシュ

大臣「……?」シュー

鎧少女「だが、さっきも言ったように殺したら私の夫が怒るんでな。今はそれで勘弁してやる」

大臣「あ……?」

大臣「腕が……無い!?」

大臣「があああああああああああ!?」

鎧少女「あはははははは!もがけ苦しめ!私の槍は生きているんでな!こうして人の血肉を食いにやってくるんだ!お前のような極悪人の肉だ、さぞ美味いだろうなぁ!」

剣士「おい、ヘリが変な軌道を描いてるぞ?」

商人「へぇ、ヘリってあんな動き出来るんですね……って落ちてるって!?なぜ!?あの人何したの!?」

ヒュルルルルル

剣士「あ、落ちた」

ドーン

商人「爆発した」

剣士「……」

商人「……」

商人「大変だああああ!?」

剣士「女神ってあの程度で死ぬのか?」

商人「どうなんでしょうね、どのくらい頑丈なのか知りませんけど。じゃなくて早く行くぞ!そうでなくても心配だ!」

剣士「おーい、大丈夫か?生きてたら返事をしろー」

商人「アンタなんか軽いな」

剣士「私より強い奴がそう簡単に死ぬか、多分生きてるだろう……ほらな」

鎧少女「危ない危ない、鎧が無ければ即死だった」

商人「鎧パワー!?ってか無傷だし!?」

鎧少女「冗談、鎧が無くてもあんな爆発で死ぬワケないだろう」

商人「え、そっち?しばらく自由落下もしてたはずなんですけど」

鎧少女「女神は易々とは死なないんだよ……とりあえず私に巻き付いている鎖を解いてくれないか?自分ではどうにもならない代物を巻きつけられた」

剣士「面白いな、こんな短時間で束縛プレイか。心躍るな」

鎧少女「そういうな。ま、確かに私は縛られるのは嫌いじゃないな」

商人「アンタら精神科紹介しようか?」

商人「よっと……解けましたよ」

鎧少女「ああ、ありがとな……まったく、厄介なものを持ってくる」

商人「特殊なものなんですかコレ?かなり長い鎖ですけど」

鎧少女「対神兵器、神が作りし神を捕らえる戒めの鎖。要は神器だ」

鎧少女「私を封じるために用意してくるとは、迷惑な話だ」

商人「じ、じじじじじ神器!!?この手に取っているのがあの神器!?」

剣士「ほう……初めて見たな」

商人「私だって初めて見たよ!?それもこんな持って間近で見れるなんて……」

鎧少女(お前の異次元ポケットも神器だっての、気づけよ)

商人「いやぁ、こんなに珍しい事もあるんですねぇ、感動しちゃいますねぇアッハッハ」サッサッ

鎧少女「おいネコババしようとすんな、私が回収するに決まってんだろ」

商人「ネコババなんて酷い言い方しますねぇ、私はただ落ちてた鎖を拾っただけですよ、ゴミ拾いゴミ拾い」

鎧少女「ゴミならいらないだろう、早く渡せ」

商人「だーっはっはっは!神器は私のもんだ!これで一攫千金目指して億万長者だああ!!」ダダダ

鎧少女「捕らえろ」

槍「ギャース」ガスッ

商人「おが!?」ステン

剣士「お前たち楽しそうだな」

鎧少女「紹介しよう。私の得物、血槍イー・ザンだ。逸話はさっき話した通りだ、しいて言えば生きている」

槍「ゴゲッガガガッ」

商人「うわキモい」

剣士「普段は魔法で姿を変えているといったところか……ところで、大臣とやらはどうなった?」

鎧少女「奴なら腕一本喰らって黙らせた。ヘリの墜落からは守ってやったから、あとはウチの旦那待ちだな」

商人「えと……どこにいるんでしょう?」

鎧少女「どこって、そこらへんに埋まってるだろ?お前の鼻で探せ」

商人「こう焦げ臭いと探せるものも探せませんよ……おんや?」

商人「かなりの血の匂い……だんだん遠ざかってる?」

鎧少女「ッ!しまった逃げられた!?まだそんな気力があったか!」

商人「おい!ここで逃がすとかアンタお茶目すぎるだろ!?チクショウまた走るのかよ!」ダダダ

剣士「お前はどうするんだ?」

鎧少女「さっきの鎖は神に対して毒も含んでいる、しばらくまともに動けん……頼めるか?」

剣士「言われなくても。林檎一人を行かせる訳にはいかんだろう」

鎧少女「フフッ、そうだな」

剣士「ふん」ダダダ



仮面男「やぁ、満足気だね」

鎧少女「雑魚相手に不覚を取ったんだ、満足どころか不満足だよ」

仮面男「彼女たちを見てどこか楽しそうだったよ?……一人は私の知らない子だったけど」

鎧少女「楽しそうなのは気のせいだろう……捕まえる口実は考えてきたか?」

仮面男「……捕まえてから考える」

鎧少女「だからお前は王として三流以下とかよく言われるんだよ。私なら経済的にも社会的にもどんな手を使っても屠るぞ」

仮面男「私達の仲間が必死に資料とかをまとめてくれているよ。折角だし、だから後からみんなで考えよう」

鎧少女「まったく……」

仮面男「……それ以前に、まずは私の妻をこんな目に合わせた報いを受けてもらうがな……」

鎧少女「あの二人、すぐに追わなくてもいいのか?」

仮面男「私たちとは別に彼女たちを隠れて付けている者がいるみたいだ」

仮面男「敵意は無いみたいだが、こちらのと接触は控えようとしてる。だから少しずらして追うよ」

――――――
―――

黒髪少女「あちらはこっちの事に気が付いてくれたみたいですね」

金髪少女「わざわざ譲ってもらってなんか悪い気もするけれど……」

黒髪少女「ですが、どうやらお邪魔なのは私たちの方みたいですね。あの娘たちの安全だけ確認したら引きましょうか」

金髪少女「ここまで目をかけるとは、随分お人よしなんだな?」

黒髪少女「若き少年少女を見捨てる理由はどこにありますか」

金髪少女「建前。本音は?」

黒髪少女「見てて面白い。これにつきます」

金髪少女「性格悪いね」

黒髪少女「ええ、私は悪魔ですから」



剣士「視線を感じる」

商人「え?なんだって?」

剣士「なんでもない、まだか?」

商人「後ちょっとの距離……見つけた!」

大臣「私は死なん、こんなところで死なん……この国のが栄光をつかむには私無しでは成しえない……」


商人「うわ、ホントに片腕もげてる……病的なまでになんかブツブツ言ってるし」

剣士「このまま行くと街の中央広場に出る、人ごみの混乱に乗じて見失ったら厄介だ」

商人「ではここで決着と行きましょう!思ったら私たちあの人と特に因縁めいたものとか無いですけど!」

剣士「弱いもの虐めは趣味ではないのだが……斬り伏せる!」

商人「オイお前どれだけ私の事虐めてたと思ってんだ?」

剣士「待て、そこのジジイ」ザッ

大臣「……私は忙しいんだ、退け下民が」

剣士「特に個人的な恨みは無いが、お前の命を貰いに来た……覚悟ッ!」

商人「おい待て命は貰わんでいい!」

大臣「有象無象がッ!私に逆らうか!」ギュイン

剣士「魔法!?抜かったか!」

大臣「滅却せよ!消し炭になれ!!」

剣士「氷の壁よ!」ピキン

商人「どわぁ!?水蒸気で前がみえねぇ!?」

剣士「……今の煙で逃げられたな」

商人「まだです!あそこ!」


大臣「余計な手間をッ!!」ダダダ


剣士「あれだけの大怪我でよく動けるものだ、なんという精神力だ」

商人「感心している場合じゃないでしょう、接近しても魔法で防がれるし」

剣士「遠距離から魔法を放っても防がれるだろうしな。もっと物理的なをぶつけたいが……何か都合のいい道具は無いのか?」

剣士「こう、物を投げたら絶対に当たる百発百中君とか」

商人「ありますよ?よく知ってますね?」

剣士「本当にあるのかよ」

商人「今は手持ちに無いですけどね……室内用花火のロケット花火じゃまず間違いなく防がれるでしょうし」

剣士「ん?そういえばここは……」

商人「魔導都市記念モニュメント……」

商人「そうだ!アレ使いましょう!」

剣士「アレ?あの歪な物体か」

商人「そうです!私にいい考えがあります!」

商人「アイツがあのモニュメントの横を通るときに思いっきり魔法をぶち込んでやるんです!」

商人「斬姫on今のあなたの魔法ならあの絶対防御に定評のあるモニュメントを破壊できるはずです(ヒビ入ってるけど)」

剣士「瓦礫の下敷きにすると言うわけか」

剣士「だがアレは私がいくら斬りつけても壊れなかったんだぞ?そう上手くいくか?」

商人「大丈夫!自分を信じろ!今なら出来るやれば出来る絶対出来る!(あのヒビ割れを狙えば)」

剣士「……いや、無理そうだな」

商人「何だよ!?もっと熱くなれよ!?」

剣士「奴はあの物体と別方向に進もうとしている」

大臣「」スタスタ

商人「誘導するんだよぉおおお!撃て撃て撃て!」

剣士「注文が多い奴だ」バシュンバシュン


大臣「チッ、しつこい!」バッ

剣士「誘導は出来た、次は?」

商人「魔力全乗せでモニュメントにデカいの一発ぶち込めぇええ!!」

剣士「……氷の結晶、一つとなりてその姿を現せ!!」ガキンッ

大臣「ひ、氷山だとッ!?」

商人「デカッ!?いくらなんでもデカい!?正直舐めてた!!」

剣士「押しつぶせ!」

大臣「炎神舞え!我が敵を塵とせよ!」ブワッ

剣士「真正面からぶつかる気か!?」

大臣「溶かし尽くせえッ!!」

剣士「侮っていた……奴は手練れの魔法使いだ」

商人「あとちょっとなのに!」

大臣「ぐぅッ!」

剣士「負傷している相手に負けてられるか!!押し殺せ!!」

商人「だから殺すなって!」

大臣「限界か……!」

ズンッ!

剣士「やったか!?」

商人「それフラグ!!」

大臣「……ふ、ふふ……どうやらこの都市が私を救ったみたいだな」

商人「モニュメントに激突して……大臣には当たらなかった……」

ビシッ

剣士「林檎……言われた通り、ぶつけてやった……ぞ」ドサッ

商人「あ、おい!?どうした!?」

剣士「正真正銘魔力全乗せだ……もう立てん」

ビシビシッ

大臣「私の作った都市なんだ……私の作り上げてきた地位なんだ!こんなところで失ってたまるか!」

商人「見届けさせてもらいましたよ」

大臣「……一人獣人が残ったか。ふんッ、獣の相手をしている暇などない。命が惜しくば去れ!」

商人「満身創痍の身で何言ってんですか」

大臣「お前のような何も知らない奴に私の邪魔をさせるものか……」

商人「分かりたくもねぇよンなもん」

商人「人の命弄びやがって、何が国だ地位だ!」

大臣「ハッ!小娘がいっちょ前にこの私に説教か?」

商人「私にゃアンタの思想なんて知ったことじゃねぇよ!」

ビシッビシッ

商人「ただ自分の身可愛さに自国民まで巻き込んで挙句自分はその場から逃げるだぁ?ふっざけんな!」

大臣「命の重さがあるだろう!私はこの国に必要な人材だ!」

商人「アンタのような人の痛みも知らないバカは誰も必要となんてしてないよ!」

大臣「国という形を知らない典型的で頭の悪い言い方だな!綺麗事で政治が成り立つか!」

商人「それで結構!私はそんなもの知りたくないですからね!」

大臣「ならば口を継ぐめ!!目を逸らせ!!力の無い物は何も聞くな!!」

商人「典型的なエゴイストでしたか……ですが、巻き込まれた人たちへの報いは受けてもらいます」

大臣「お前に何ができる!」

ビシビシビシッ

商人「ちょっとだけ、ちょっとだけでも私でも魔力が練れたりするんだ……ちょっとだけでも」

大臣「やってみろ……無力な獣が!」

商人「この街は、あなたの作った街です」

商人「でも、あなた自らがこの街を裏切ったんです」ガンッ

大臣「モニュメントを殴った……?何を……」


ビシビシビシッ


ビキッ


大臣「何ィ!?魔防壁!クソッ消耗して魔力が……!?」

商人「この街は……決してあなたを守ったりしませんッ!」


ズゴゴゴゴゴゴゴゴ


――――――
―――

商人「……あっ」

仮面男「これは……驚いたな」

商人「もう……遅いですよ。私、今日どれだけ走ってたと思うんですか?」

仮面男「こんな青空の下で眠ってるなんて、よっぽど疲れてたんだね」

商人「瓦礫の下に……」

仮面男「ああ、今引きずり出している」


「あーいたいた、これでよく生きてるなぁ」

「何だっていいさ、とりあえず口を割らせよう」


商人「リザードマンとエルフ……?あの人たちは?」

仮面男「私の仲間だ、今回の件で色々と動いてもらっていた……リザード兵君は後で鉄拳制裁の対象だが」

商人「?」

リザード兵「おら、目ェ覚ませ」グキッ

大臣「うっ……」

エルフ「ウチの大将が直々にアンタと話がしたいんだって、光栄だね」ドサッ

仮面男「……」

大臣「やはり裏で糸を引いていたのはお前だったか……」

仮面男「無力で無様で……滑稽だな?」

大臣「フッ……お前を突き動かすのはお前の妻の一大事だけということか」

仮面男「口を慎めゲスが」ガッ

大臣「フフ……頭を踏みつけて楽しいかい?魔王様?」

仮面男「いくら私を煽ったところで無駄だ、人の皮を被った化け物め」

商人(アンタ煽られてド頭踏みつけてますやん)

大臣「化け物?それはあなたの事ではないのでは?」

仮面男「……悪いが、私はもう魔王を引退した身だ。化け物と呼ばれる筋合いはない」

大臣「ああ、失礼。今は勇者を名乗っているんでしたね?これはお笑いだ」

仮面男「ああ、お笑いだな。だが、私は大真面目だ」

大臣「で、勇者様は私に何をしようというのでしょうか?まさか私をその手で裁こうなどというのですか?」

仮面男「……」

大臣「……たかが冒険者風情がッ!!平民上がりの王がッ!!この私を裁く?笑わせるな!!」

大臣「私がどれだけ苦労してこの地位を手に入れたと思っている!?何も労せずすべてを手に入れた貴様には到底理解できまい!!」

大臣「私こそがこの国を守っている!!この国を思っている!!軍事に加担して領土を増やそうとすることが何故いけない!?」

大臣「私こそが絶対だ!!こんな勇者気取りの遊び人が私を裁くだと!?バカにするなクソッ垂れ共が!!」

仮面男「裁くのは私ではない、この国の法だ」

大臣「っ!?」

仮面男「国王にはすでに話は通してある、貴族たちも悠々としていたそうだ」

仮面男「お前はやりすぎた、ただそれだけだ……」

大臣「あ……あぁ……」

仮面男「誰もお前の味方をする者はいない」

仮面男「誰も、お前を必要となどしていない」

大臣「バカな……なぜだ、私は何のために今まで……」

仮面男「……権力を振りかざしていただけで、お前は味方を作らなかったみたいだな」

仮面男(……裁けないなら裁けないで、私が直接手を下していただろうがな)

仮面男「二酸化珪素……」

大臣「?」

仮面男「アルミ・マグネシウム・カルシウム・鉄」

大臣「……何が言いたい、気でも触れたか……」

仮面男「粉状魔鋼・魔粒子・蒼鉄鋼・直接砕いた適当な魔導核」

仮面男「……お前の研究とやらに使われていた核の原材料だ」

仮面男「魔導核を除けばどれも簡単に手に入るようなものばかりだ……いや、ほとんど石ころと考えてもらってもいいだろう」

大臣「……」

仮面男「何やら自身の研究に絶対的な自信を持っていたようだが、この石の生成方法……どこで手に入れた?」

大臣「……全てを失った今となってはどうでもいい」

仮面男「そうか……身柄を引き渡す、連れて行け」

リザード兵「あいよー」

エルフ「自分で歩きな、私たちはそこまで面倒は見ないよ」

大臣「……」

商人「あの……」

仮面男「……答えられる範囲で答えておくよ」

商人「まだ何も言ってないんですけど」

商人「前、女神様が"私たちの撒いた種"って言ってたのが気になって……どういう事なんですか?」

仮面男「過去に私の国でも大規模な人工魔導核の研究を行っていたんだ」

仮面男「今でこそ一般に普及しているが、昔はそうでもなかった。自然に生成される大変貴重なものは手に入れるのも一苦労」

仮面男「まして調べるまで効果が分からないと来た。そこで本物の魔導核を砕き分け、ほかの物質で補い量産を図ろうとしたんだ」

商人「一般的に売っているのはそれと魔法使いが作れるものですね」

仮面男「ああ、そうだ。だが、そこで問題が起きたんだ」

商人「問題?」

仮面男「ああ、まだペーパープランだったその計画書と内容が外部に持ち出されてね……」

仮面男「後に、考えは同じだがもっと効率的な方法を取ったものを採用することになるんだが。まぁこれは別として……」

仮面男「そもそも魔導核の量産の技術を持っているのはウチの国だけ、なのに連中はそれが出来た。不完全な形で」

商人「あの大臣が持ち出した……と?」

仮面男「いや、奴はその技術を買ったんだろうね」

仮面男「外部に漏らした者を捕らえても、高値で売ったとしか言わなかったから発見出来なかったんだ」

仮面男「不完全な技術だったために形にするには相当な時間と労力を必要としただろう」

仮面男「その間に私の国では量産に成功していたから売り出すことは出来なかったみたいだが……」

仮面男「だが不完全なものは所詮完成させても不完全。碌に機能しないガラクタに成り果てただろう」

仮面男「それで、改悪に改悪を重ねて完成したのがあの狂化の核だ」

仮面男「魔導核は体に埋め込んだところで人体に効果は現れない、アレは不良品もいいところだ」

仮面男「効果も不揃い、強度も純度もダメダメダメ……人から盗んだ偽物の技術じゃ、一生かかっても成功しなかっただろうね」

仮面男「国のためだと何だと言い訳にして、自分の技術に絶対的な自信を持っていた奴だからこそ、後に引けなくなったんだろう」

商人「……それじゃあ、犠牲になった人たちが……」

仮面男「不憫かい?」

商人「……あんな奴のエゴに付き合わされて、それじゃああんまりですよ」

仮面男「大本を辿れば私に非があるようなものだ、責任は取る」

商人「それはっ……違うんじゃないですか?」

仮面男「違わないよ。自分の……戦争するための資金繰りをしていたんだ」

仮面男「結局、その技術はこんな形で使われてしまった。そういうわけだ」

仮面男「……責任の取り方は、残った人たちや動物たちを保護して元に戻すための研究をしてやることしかできないけど……」

仮面男「総力を尽くすつもりだ、それしか私には出来ない……」

商人「……」

――――――
―――

初めは物を売りに来ただけだった魔導都市
こんな大きな事に巻き込まれるなんて思ってもいませんでした
国とか政治とかは私にはよくわかりません
私はただの旅商人、通りすがりの行商人
この国とは一切無縁のこの私が、いったい何をやってんだか
危険なことに足を突っ込み、毎日走りまわされて
それでも後悔していません
だって……

商人「うっひゃひゃひゃひゃ、売れる売れる!飛ぶように売れる!」

竜少女「お主は……」

商人「ハイ!この街を救った救世主!林檎ちゃんとはこの私だいっ!買ってけ買ってけ!」

剣士「……私はいつまで売り子を続ければいい」

商人「あ?何言ってんだ?一生に決まってんだろ?体で斬姫の代金を払いきるにはそれくらいの時間がかかるんだよ!あ、いらっしゃいませ!」

騎士「コイツ、ちょっと調子に乗りすぎじゃないか?」

竜少女「まったく、新聞の一面を飾ってからずっとコレじゃからのう」


いやぁ涎が出るほど商売うまく行ってますからねぇ、事件万々歳ですよHAHAHA

小休止
次回、エピローグ

再開
多分これで終わる

……その後の事、ちょっとだけ語りましょうか

まずは女神様と仮面の元魔王現勇者さん


仮面男「私たちか?事後処理があるからしばらく滞在しなくては行けなくなったな」

鎧少女「ホントはパーティ終わってからとっととここを発つつもりだったんだが……誤算が色々とあったからな」

リザード兵「本来早く片付くハズだった大臣の暴挙が予定より遅れましたからね……仕方ないですよ」

仮面男「お前たちのせいだお前たちの!!」ドカッバキッボコッ

リザード兵「ヘブッ!?何すんだ糞魔王が!?刺すぞ!?」

仮面男「やってみろ糞トカゲッ!!」


商人「……なんか白熱してますね」

鎧少女「パーティに呼ばれていたのは本当は私たちの息子とアイツ、それにそこのエルフと今ここにはいないが側近が」

鎧少女「後はこいつらの選んだ適当な人材を連れてくるつもりだったんだが……」

エルフ「申し訳ありません……私は都合が悪く遠征に行っていたものですから」

鎧少女「お前については側近から聞いているからわかっている、問題は息子とそこのバカだ」


リザード兵「ぎゃぁああ――――――――」チーン

仮面男「魔王って言うな!!お前が私に勝てるワケないだろ」


商人「……仮面の人、容赦ないですね」

鎧少女「旧知の仲だからな」

鎧少女「ま、パーティの報告を聞いた後に逃げるように遠征に行ったのは不味かったな」

エルフ「もっとマシな言い訳出来たハズなんですけどね……本当は勇者さんと魔王様たちに会いたくなったんじゃないですか?」

鎧少女「だったらまぁ……嬉しいんだけどな、あと私の事を魔王っていうな!」

エルフ「あっごめんなさい!昔の癖で……」

商人「女神様が魔王……?」

鎧少女「気にするな、こっちの話だ」


何やら私が触れなくてもいいことが盛り沢山のようだ

でも、彼らとの挨拶で一番驚いたのが……

剣士「おい林檎、今日の売り上げの勘定終わったぞ」

商人「おお、早いですねぇ。ちょっと教えただけですぐに飲み込むのは流石です!」

剣士「好きでやっている訳ではないのだが……」

仮面男「彼女は?」

剣士「ッ!」

仮面男「……?どうしたんだい、血相変えて?」

商人「あぁ、あなたは顔を合わせるのは初めてでしたね、この方は……」

剣士「魔王……!」

仮面男「……私を知っているのか?」

商人「え?あれ?知り合い?」

剣士「ずっと……貴方を探していた」

商人「"貴方"だぁ!?頭おかしくなったか!?まさか計算ばっかりさせてたから知恵熱が……!?」

剣士「黙れ」

商人「はい」

剣士「私を、覚えていませんか?アートという集落で貴方が攻め込んで来た軍を倒したことを……!」

仮面男「すまない、襲われた集落の巡回はかなり多くこなしている……覚えていないな」

剣士「あ……そう……か……」


私の手駒、剣士メリアが仮面の人と知り合いだったこと(一方的だったが)

後で聞いた話だが、彼女は直接彼と話した訳ではなく遠くから見ていただけだったとのこと

そりゃ覚えられてないわ

でも、とても悲しそうな顔をしていたのは胸が痛かった。私のメリアに何してんだこの腐れ勇者

次は怪人さんもとい、……役職名なんだっけ?

怪人男「異次元魔王ですよぉ!」

商人「ちょっと、モノローグに突っ込みはやめてください」

怪人男「まったく、今回の事件での私の扱いの悪さと言ったら酷いにも程があります!」プスンカ

商人「いやぁ、あなたがヘマとかしなきゃもっと円滑に事が運んだんじゃないんですかねぇ?」

怪人男「あなたがイレギュラー過ぎたんですよ!?あなたが下手に行動起こして尻拭いしたの私ですからね!?」

商人「はいはい結果論結果論」

怪人男「もう……いいですけど!」


こんなナヨナヨした人だが、一国の王で運送会社の社長だ

もっと媚び売ってパイプでも作っときゃよかったか……


怪人男「モノローグとか言ってますけど丸聞こえですよ」


ちなみに、後から聞いた話だが。既婚者らしく年頃の娘さんがいるらしい

心配だからとっとと国に帰るんだとか

最近近所に住む勇者にたぶらかされてるとも言ってましたね……頑張れお父さん!

お次は最も世話になったであろう竜のお二方

この人たちは……女神様にも言えるけど胸張って言える!うん、大好き!


竜少女「その唐突な告白はやめんか」

商人「トキメキました?」

騎士「まさか」

商人「お二人はラヴラヴな夫婦生活送ってるんですもんねぇ~一人モンは邪魔ですかそうですか」

騎士「……コイツが悪いんだが一応弁明しておくが、俺たちは結婚してねぇ」

商人「何ですと!?散々妻だの夫だの言ってたじゃないですか!?」

竜少女「女神共を見てたらどうしてもワシもその気になってしまってのぅ……まったく、いつ本当の夫婦になれることやら……」チラッ

騎士「……」

商人(あー、ひょっとしてそのための指輪か……)


驚くべきことに結婚してないと来た

商人「お二方はもう魔導都市を出るんですよね?」

騎士「ああ、このまま西へ向かう」

商人「何か用事があるんですか?」

竜少女「古の竜を研究しておる施設があるみたいじゃ、それの様子見といったところかの?」

騎士「……俺もこいつも、竜ではあるが竜の事をあまり知らないんだ。だから俺たちに必要な情報があるかもしれんから」

竜少女「それを探しに行くという訳じゃ!」

商人「そっか……ここでお別れなんですね」

竜少女「案ずるな、ひょっとしたらまた会えるかもしれん」

竜少女「そこいらの道端か、はたまた地の果てか、あるいは別世界か……ともかく」

竜少女「ワシらはズッ友じゃぞ☆」

商人「……」ダキッ

竜少女「うお!?突然なんじゃ!?」

商人「もちろん、ずっと友達ですよ」

竜少女「うー……」ウルウル

騎士「これ以上は名残惜しくなっちまうぞ?……林檎、ありがとな」

竜少女「お礼を言わなきゃいけないのは私ですよ、ありがとうございました」

竜少女「うわぁ~ん!嫌じゃあ~!せっかく出来た友達と離れたくないのじゃあ~!!」

商人「はいはい、リンゴ飴あげるから泣き止んでください」ナデナデ

竜少女「うん!」ニパー

商人(可愛いなぁ)


二人はそのまま西側のゲートを潜り去って行った

後姿を眺めながら、いつか「私は竜と友達だ!」なんて言って地元のみんなに彼女たち二人を紹介してみたいと思った


……でも、私が彼女と再開することは二度となかった

黒髪さん達青空カフェ御一行は……

実はあの事件以来姿を見ていない

女将さん曰く、代金だけ置いて立ち去って行ったとのことだ。残念


剣士「……だが、あの眼帯のやつはしっかり仕事をしていったようだな」

商人「おおー、やっぱりいつみても立派に直しましたね」

剣士「元は付いてなかった装飾まで施してある。余計なことを……」

商人「まぁあなたからしてみれば不満でしょうねぇ」

剣士「ああ、だが……」

剣士「治って帰ってきたんだ、私の心が」

商人「それじゃあ武器は二つもいらないですよね?斬姫はもう用済みって事で」

剣士「バカを言うな、アレの力を完全に引き出せるのは私だけだ。売り物に戻すのは許さんぞ」

商人「分かってますよ、斬姫はあなたに貸出中ですから。ほかの誰にも渡しません」

剣士「ああ……すまない、お前の居場所は私の所ではないな」

商人「そっちを売りにでも出すんですか?」

剣士「もっと有意義な使い方を思いついただけだ」

そして、私たちは……

――――――
―――


「3番ホーム下り、列車が通過します」

少年「うー……ねーちゃん達もう行っちゃうのかよ」

商人「私は旅の商人ですよ?一か所に長く滞在はしませんよ」

母「何から何まですみませんでした……」

商人「別にいいですよ、私はやりたいことやって言いたいこと言って過ごしただけですから」

剣士「その過程でたまたまそこの小僧を更正させたと?」

商人「更正させたかどうかは知りませんが、しっかり言い聞かせたのは女将さんですよ。ね?」

母「ええ、言ってもなかなか理解してくれなかったので一晩よく語りました。拳で」

少年「マックノーウチッマックノーウチッ」

商人「見事なデンプシーロールでしたね」

少年「ねーちゃん、今だから言うけど。俺、ねーちゃんの事……好きなんだ!」

商人「いや、言わんでも知ってたから」

剣士「自分でも鈍感だとわかる私でも理解してたからな」

少年「ほげぇ」

商人「おっと、これ以上立ち話してたら乗り遅れちまいますね」

母「どうかお気をつけて」

商人「ええ、そちらも。いつまでも仲睦まじい親子でいてください」

剣士「小僧、道を間違えるなよ。お前は賢い、色々なことに挑戦していけ」

少年「俺と3歳しか違わないおねーさんに言われても……」

「列車が発車します」

ガタンガタンガタン

母「お元気で!」

少年「俺!大きくなったらねーちゃんの事嫁に貰いに行くからなーーー!!」タッタッタ

商人「ばっかやろー!私は高いぞーーー!」

剣士「小僧!お前は筋は悪くない!ゆっくりでいい、これからも鍛錬を続けて行け!」

少年「……うん!」

剣士「餞別だ!私の剣、私のルーツ……受け取れ!」ポイッ


少年「うげあ!?」ガンッ


商人「オイ列車走ってあっちも走ってるのにそんな重いもん投げつけるバカがいるか!?」

剣士「それくらいは持てるようになれ!」


少年「」グッ!!

母「」ペコッ

ガタンガタンガタン


商人「よかったんですか?あの子に渡しちゃって」

剣士「傍には常に見咎めてくれる親がいるんだ、無茶はしないだろう」

剣士「過去のしがらみも消えた……それに、私もお前のように誰かに何かを与えてやりたかったんだ」

剣士「……林檎、お前の言った通りだったな」

商人「何がですか?」

剣士「いつか与えることを教えてくれる者に出会える……お前自身だったとはな」

商人「あー、そんなこと言いましたっけ?」

剣士「言った。お前は端々で自分の発言を忘れるな」

商人「ノリと勢いで生きてますからねぇ」

剣士「ところで、私はお前についてきてもよかったのか?」

商人「斬姫の事が一番大きいですけど、何より私を守ってくれる護衛がちょうど欲しかったので」

剣士「今までよく無事に一人で旅なんて出来たな」

商人「そりゃアンタにブーメランしたいセリフだよ」

商人「ま、一人でいるよりも誰かといた方がずっと楽しいですけど」

山田「俺を忘れちゃいけないよ林檎ちゃ~ん!」

商人「うお!?山田さん!?笛吹いてないぞ!?」

山田「あーうん、この子が謝って吹いちゃったらしいんだ」チョイチョイ


子ウサギ「ウッキュウ!」

剣士「!?」

商人「ウサギって……コイツ私の手に噛みついた奴じゃねーか!?女神様に回収されたんじゃなかったのか!?」

山田「その前にずっと君にしがみついてたみたいだよ?その後はその大きなリュックの中で食いつないでたみたいだけど」

商人「最近なぜか弁当が消えると思ってたらそういう事だったか」

剣士「気づけよ」

商人「う~む……あの人たちの国なら次の駅から行けないとこ無いですから、当人たちは居ないけど事情を話して預けに行くべきか……」

子ウサギ「ウッキュウウッキュウ」ウルウル

商人「そんな目で見るなッ!人数増えると何かと食費がかさむんだよ!」

剣士「一匹増えても変わらんだろう、その分私が働く。だから連れて行ってやれ」

商人「……しょうがないですねぇ。こいつ変身とかしないよな?」

子ウサギ「ウッキュウ?」

山田「その時はメリアちゃんが何とかしてくれるよね?」

剣士「私の名をお前みたいな汚らわしい糞犬獣人が呼ぶな」ブンッ

山田「ほあああああああああああ」

商人「や、山田さーん!!」

商人「ま、そのうち復活するから放置でいいでしょう」

剣士「使い捨て放題のデコイか、今にして思えばいいアイテムだな」

山田(酷い)

商人「さて、お弁当でも食べましょうか。ちゃんと二人分作ってきたんですよ、ほらこの通り……」カラッ

子ウサギ「ゲプッ」

剣士「」ガクガクガクガク

子ウサギ「!?!?!?!」

商人「怖い!?食の執念が!!無表情でウサギを揺さぶり続けている!!」

剣士「早速コイツを開きにして食ってみようと思う」

子ウサギ「ウギュウ!?」

商人「連れて行くって言ったのあなたですよ!落ち着いてください!」


「卵焼きー、もやし炒めー、物凄く美味しい絶品な頬が落ちること間違いなしの最高級パスタいりませんかー?」


商人「ほら、売り子さん回ってきた事ですし、お金は私が出しますから。あ、もちろんお小遣いから引きますけど」

剣士「構わんが……異常なパスタ押しだな」

商人「すみませーん!なんかくださーい!」

男性「はいはーい……お、可愛い御嬢さんたちだな」

女性「……アレ?あなた」

商人「ん?どこかでお会いしました?」

女性「パーティに参加してましたよね?魔導都市の」

商人「ええ、してましたけど」

女性「ああやっぱり、チラッと見ただけですけどね。私たち、そこで料理作ってたんですよ」

商人「へぇ、あの並んでた料理の数々はあなた達が作ってたんですか」

男性「卵焼きともやし炒めとパスタだけだけどな」

商人「何だよそのチョイス」

商人「ってかそれしか売ってないんですね」

女性「作り置きですからね、朝一番に作った出来立てホヤホヤのものばかりですよ」

商人「今昼だよ!?それ作り立てって言わないよね!?」

男性「何かの縁だ、コレはタダでやるよ」

剣士「そうか、悪いな」ガツガツ

商人「おい待て!タダより怖いものは無いぞ……て言う前に食べてるから遅いよね、ハハ」

女性「お金には拘ってないんですけどね」

男性「困ったときは親父から絞るからな!」

女性「クズが」

商人「んー、なんか逆に気味が悪いですねぇ……貰いっぱなしもアレなんで私はコレあげます」ヒョイ

男性「お、リンゴ飴か」

女性「珍しいですね」

男性「しかも美味い!」

女性「勇者さん!新しいお料理に使えませんか!?」

男性「創作意欲が湧いてきた!!席に戻って色々と考えるぞ!」ダダダ

女性「はい!」ダダダ


商人「……なんなんでしょう一体」

剣士「……」ガツガツガツ

商人「どうしました?」

剣士「これはイランな」ポイー

商人「窓の外にパスタを捨てた!?」

剣士「アレは食ってはいけない気がする、だから捨てた」

商人「さいですか」

――――――
―――



ガタンガタン

商人「……」

子ウサギ「キュー」クカー

剣士「う……ん……」スースー

商人「滅茶苦茶な日常でしたね、ホント……でも」

黒髪少女「でも、楽しかったですか?」

商人「滅多打ちにされてた方が多かった気もしますが、充実もしてましたね」

商人「……怖いですから現れるにしてもワンクッション置いてください」

黒髪少女「フフッ、それは失礼しました」

剣士「……」スースー

眼帯少女「……寝てれば可愛い」ツンツン

金髪少女「だからといって下手に頬をつついてると噛まれるかもしれませんよ?」

剣士「んぐぅ」ガチン!!

金髪少女「ほら……」

眼帯少女「……あ、危なかった……」

商人「まさかまた無賃乗車とかじゃないでしょうね?」

黒髪少女「二度も馬鹿な真似はしませんよ……それより、一つ謝らせてください」

商人「何かありましたか?」

黒髪少女「いえ、大臣が最後に魔物たちを放ったことについてです」

商人「……あなた方、何をどこまで知ってるんですか?」

黒髪少女「あなたの持ってる情報全部+αですね」

黒髪少女「……冒険者ギルドの上層部に私の知り合いがいるんですが」

黒髪少女「あろうことか、誰かさんが今回起きていることすべてをその人にリークしてしまいまして」

眼帯少女「……」

黒髪少女「あ ろ う こ と か 私 に 内 緒 で リ ー ク し て し ま い ま し て」

眼帯少女「……ごめんなさい」

商人「ちょこちょこ作戦会議中に顔だしてたのはそのためだったんですかあなた……」

黒髪少女「冒険者ギルドは国境を越えて大きな権力を持っています」

黒髪少女「おそらく、あなた達の計画の便乗して期を図って告発……焦った大臣がこのような狂気に走ったんでしょう」

商人「……ですが最終的には大臣は失脚して国に裁かれます。経緯はどうあれ、いつああいう状況になってもおかしくは無かったですし、あなた方のせいではありません」

黒髪少女「あなたの心遣い、痛み入ります」

黒髪少女「……人って不思議ですよね、必死に生きて必死にもがいて。いつか死んで何もなくなってしまうのに」

商人「何言ってんですか?」

黒髪少女「あなたは無駄だとは思いません?」

商人「思いません、私は趣味でやってるところもありますが……そうしないとそもそも野たれ死ぬのが早まるだけですから」

黒髪少女「長く生きていたいのですか?辛いことも沢山あるでしょうに」

商人「それと同じくらい楽しいことだってあります。今日辛くてもまた明日、楽しくなるといいなって希望を持つことも出来ます」

商人「それが毎日ずっと続いていく……ちょっと楽観視してますけど、私は生きてるってそういうことだと思いますよ?」

黒髪少女「フフッ、失礼しました」

黒髪少女「それじゃ、そろそろ私たちはお暇しましょうか」

商人「意味深なことだけ聞いといてサラッと終わりかい」

黒髪少女「そうですねぇ……では最後にもう一つ意味深なことを聞きますが」

黒髪少女「商売、好きですか?」

商人「ええ、もちろん。趣味と実益と……大切な出会いと繋がりがありますから!」

黒髪少女「それは重畳。この数日間、あなたにとっていい経験になったみたいですね」

商人「あなた方との出会いももちろん大切ですよ?中々スリリングでしたし」

黒髪少女「あなたみたいな実直な人は好きですよ?」

商人「はいはい、世事はいいですから。私もそろそろ眠くなってきたからもうこの辺で……ふあぁ……」

商人「……また、会えたらいいですね」

眼帯少女「……生きていればまた会える」

金髪少女「おやすみなさい、いずれまた」

黒髪少女「眠いところをご迷惑をおかけしました……それでは」

――――――
―――

剣士「オイ林檎……」ザックザック

商人「なんですか……話しかけないでください、疲れてるんですから……」ザックザック

子ウサギ「ギュー」ビターン

剣士「なぜ私たちは砂漠のど真ん中を歩いている……」

商人「いやぁ、どこで道を間違えたんでしょうねぇ?」

剣士「……地図、逆さまだぞ」

商人「……」

剣士「……」

商人「うがあああ!!水が!水が欲しいいいい!!!」

子ウサギ「ウギュウウウウ!!」

剣士「騒ぐな騒々しい!!大体お前がここらに生息する珍しいサボテンが欲しいとか言い出すからこんなことに……!」

商人「うるせぇ!お前だって加工したら食えるとか言って意気揚々としてたじゃねーか!前よりちょっと頭良くなったからって生意気言いやがって!!」

剣士「……やめよう、腹が減る。そのせいで氷も作れない状態なんだが」

商人「そうですね……体力の無駄遣いです」

商人「あ、そういや『天候変更雨のち雨』ってアイテムがありましたね。強制的に辺り一帯を雨にする画期的な装置が」

剣士「全世界の何割かが救われそうな装置だな」

商人「っつー訳でスイッチオン!!」ブイーン

剣士「……」

商人「……」

剣士「いつ雨が降るんだ?」

商人「……来年ぐらい?」

剣士「貴様ああああああああ!!」ブンブン

商人「だあああ!?斬姫を振り回すな危ない!!」

子ウサギ「ウーキューウー」ビターン

自分のやりたいことやって生きてきた私だが、どうも何かを振り回し振り回される
それが私の人生のようだ

商人「ぎゃああああ!当たったあああ!!」ビターン

剣士「峰討ちだこの畜生!」

いろんなことに首を突っ込んでは巻き込まれ、安全な道を行ったはずが巻き込まれ
売り物売ってレアアイテムを買いあさり、それをぼったくり同然の値段でまた売る

商人「うお!なんか見えるぞ!」

剣士「飯か!?」

子ウサギ「!!」

そんな毎日が、誰かと出会う毎日が、みんなと過ごす毎日が
とっても楽しくて仕方がない、だから商人はやめられない

商人「うひょあああああ!!オアシスだ!砂漠のオアシスだ!!」ダダダダダ

剣士「……まて、アレは蜃気楼では……オイ待て!!」ダダダダダ

どんなピンチに陥ろうとも、おのずと突破していたり
気が付いたらいろんなアイテム手に入れて
それが私、私たち!

商人「ひゃっほーう!!水だぁぁあ!!この土地は私が手に入れた!買いたきゃこの値段の10割増しだああ!!」ドサッ

剣士「気を確かにもて!!それはただの砂だバカ!!」

子ウサギ「ウッキュウ」ヤレヤレ


着物商人「レアなアイテム売ります買います!」 終わり

やっと終わった……
モチベーション下がりまくりで1か月放置した挙句逃げること考えてたけどまさかのコメントが付いて嬉しくて継ぎはぎだらけで再開
それでも異様なまでに長くなり数か月かかるというバカっぷり

プロットなしの思いつき投稿なんて二度とやらねぇ
次書くときは絶対に下地だけは作りたい

過去作

勇者「定食屋はじめました」
勇者「定食屋はじめました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365500381/)

ディアボロ(……ブチャラティのジッパーが!?)
ディアボロ(……ブチャラティのジッパーが!?) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371919184/)


もし見てた人がいるなら1か月放置申し訳ありませんでした
最後まで見てくれてありがとうございました

ぶっちゃけると指輪は前振り
騎士と竜少女の話は別で書くつもりだからそっちでいつか

こっそり答えておくと私のSSは鬱にはなるけど絶対バッドエンドじゃ終わらせない
しゃしゃり出て失礼しました

再開

違う
間違えたこっちじゃねぇ

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