気がついた時には、彼は広大な草原の中に一人、ぽつんと立っていた。
ついさっきまで、乾燥しきった砂漠の上を歩いていた彼が、である。
果たして、これは幻覚なのだろうか。
彼は自分の身になにが起こっているのかまるで理解できなかった。
だが、今の彼にはそれよりも先に優先すべきことがあった。
ガンマン「腹が減ったな……」
彼は二日間も飲まず食わずだったのである。
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スライム「ピキー!」
足元から甲高い鳴き声が聞こえる。
視線を下ろすと、玉ねぎのような形をした半透明の生物がいた。
顔には愛嬌のある笑顔を浮かべている。
今までに見たことがないほどの奇妙な生き物だった。
彼は深い溜め息をついた。
色は水色である。あまり食欲をそそられなかった。
ガンマン「だが無いよりはマシか……」
言うが早いか、彼は腰の横に両腕をダラリとぶら下げた。
そして、謎の生物に向かって言った。
ガンマン「許せよ……」
それは瞬きをするほどの合間だった。
ホルスターに差してあった拳銃を抜くと同時に、耳をつんざくような轟音が響いた。
弾は謎の生物に向かって放たれたのだ。
銃弾に貫かれた謎の生物はばらばらに飛び散った。
先ほどまでのかわいらしい表情は最早見る影もない。
彼は飛び散った破片を拾って、それを口元に運んだ。
ガンマン「…………」
しばらくの間、口の中で咀嚼する。
ガンマン「……悪くはない」
味はほとんどないが、食感がコリコリとしていて面白い。
彼にとっては初めて経験することで、とても新鮮に感じられた。
それに加えて、水分が多い。
緊急時には水の代わりになりそうだ。
重宝できそうだった。
ガンマン「…………」
彼はガンマンハットを深くかぶり直した。
空を見上げると太陽はもう沈みそうだった。
だいたい午後の5時ごろだろうと彼は思った。
だとすると、そろそろ今日の宿のことを考えないといけない。
彼は周囲を軽く見渡したが、周りには草原が広がっているだけだ。
建物は何一つ見えない。
ガンマン「しばらく歩けば、牧場があるかもしれない……」
運がよければそこに泊めてもらえばいい。
もし、無理であればいつもどおり野宿をすればいい。
彼はそう考えた。
ガンマン「だが、油断はできないな……」
なぜなら、ここは慣れない土地だ。
なにが起こるかわからないので、用心に越したことはないだろう。
いつの間にか風がだんだんと強くなってきて肌寒い。
彼は風を防ぐように、羽織っているポンチョの向きを整えた。
そして、ゆったりとした足取りで歩き始めた。
それから一時間ほど歩いただろうか。
彼は町を見つけた。
だがその町を目にした瞬間、彼の胸中にはある種の違和感がわきあがってきた。
ガンマン「随分と旧時代な造りだな……」
彼の視界の先にあるのは、ヨーロッパなどで見られる白いレンガの城。
その真下には城下町が広がっている。
少なくともアメリカ大陸では見たことがない光景だった。
ガンマン「…………」
普通の人間ならこの光景に驚くだろうが、彼は至って冷静だった。
考えれば考えるだけ無駄だろうと、すでに諦めていたからである。
とりあえず彼はその町に向かってみることにした。
門番A「通行証は?」
ガンマン「……なんだそれは?」
門番A「この町を出入りするために必要な証明書のことだよ!……ったく、これだから田舎者は!」
門番の小太りの男は苛立たしげに舌打ちをした。
その隣にはもう一人の門番がいる。こっちは痩せすぎて頬がこけている。
彼らは全身が鉄の装備で覆われており、その手には長槍が握られている。
ひょっとすると、王国直属の兵士なのかもしれない。
このように町の入り口の前でガンマンは足止めを喰らっていた。
彼の後ろには10人ほどの人の列ができている。
どうやらみんなこの町に入るつもりのようだ。
門番B「まあ、落ち着けよ。通行証を導入したのはここ最近のことだ。知らないのは無理もないだろう」
痩せこけた門番は苦笑いをしながら、横の相棒を軽くたしなめた。
そのあと、ガンマンに向かって説明を始めた。
門番B「いいかい、旅人さん。通行証が必要になったのには二つ理由がある」
門番の男は指でブイサインを作った。
門番B「まず一つ。原因はよくわからんが、ここ最近は"魔物"の数が急に増えた。夜に出歩こうものなら、命がいくつあっても足りないほどにな。まあくれぐれも気をつけることだ」
ガンマン「…………」
"魔物"
おとぎ話ならまだしも、現実世界ではまず見かけることがない空想上の生物だった。
だが浮き上がってきた疑問は一旦飲み込んで、今は門番の話に集中することにした。
門番B「二つ目。ここはかの徳高き"アイレアン公"が治める土地だ。最近はなにかと物騒なので十分に警戒を強めよ、という陛下のお考えだ」
"アイレアン公"というのは"アイレアンという町の王様"のことだろうとガンマンは理解した。
門番B「通行証を持ってないのなら今から作ればいい」
気がつけば門番は一枚の書類を手にしていた。
その書類には、蛇がうねったような横文字がびっしりと書きつづられていた。
見た感じだと、少なくとも英語の筆記体ではない。
その一番下にはサインをするような欄がある。
ガンマンはそこに署名するためのペンを渡された。
ガンマン「…………」
だが、彼には教養がなかった。
生まれてこの方、文字を一度も書いたことがなかったのだ。
なぜなら必要ないからだ。
西部で生きていくには、水と食料と拳銃さえあれば十分なのだ。
とりあえず、彼は震える手でペンを書面になぞらせた。
書類の横文字をまねる要領で、ゆっくりと。
門番B「……変わった名前だなぁ、あんた」
サイン欄に目を通した門番は怪訝そうな表情をした。
だがそれはただ呆れただけのことで、そこまで警戒した様子ではなかった。
ガンマンは心の中でひそかに安堵した。
ガンマン「…………」
彼はガンマンハットを深くかぶり直した。
手続きが終わったようだと判断した彼は、そのまま門をくぐろうとした。
門番A「待て!まだ終わってないぞ!」
だがそれは長槍のバリケードによって遮られた。
門番A「お前はまだ大事な手続きを一つだけ残している。考えてもみろ。署名だけで通れるなら門番は必要ない……だろう?」
ガンマン「…………」
門番A「いいか?発行料として500ゴールドを徴収することになっている。早く出せ」
ガンマン「……500ゴールド」
"ゴールド"という通貨単位を彼は初めて耳にした。
しばらく考えた末に、彼はポケットの中に入っている全財産を取り出した。
"ドル"や"セント"で代用できないかどうか一応試してみるためだ。
ガンマン「……足りるか?」
だがそれは門番の手によって無残にも叩き落された。
そして足元に散らばった。
門番A「俺は500ゴールドを出せと言った!そんなボロきれはいらん!」
ガンマンの顔を睨みつけながら、門番は怒鳴り散らした。
しかしガンマンは表情をまったく動かさなかった。
ガンマン「これ以上は持ち合わせていない……」
門番A「なら今日はそこらで野宿でもして、明日出直すがいい!もっとも、寝ている間に魔物のエサになるのが関の山だろうがなっ!」
ガンマン「…………」
門番の下品な笑い声を聞き流すようにガンマンは後ろを振り返った。
そして、そのまま町を立ち去ろうとした。
その時だった。
商人「ちょい、そこの、そこの旅人さんや、ほれ」
彼は手の中に何か固い物を握らされた。
手を広げてみると、紋章の入った銀貨が5枚見えた。
銀貨を渡した人物は、今まで彼の真後ろに並んでいた老人だった。
老人は鎖のついた大きな箱を肩から下げている。
ガンマンは老人の職業が恐らく商人だろうと予想した。
商人「これでよかろう?」
商人はニカッと歯を見せて笑った。
この金を使って門を通れ、と言いたいらしい。
ガンマンは商人を怪しんだ。
金を渡される理由がわからなかったからだ。
だがまずは門をくぐらないとどうしようもないので、ここは商人に従うことにした。
今はここまでです
また来ます
ガンマン「……なにが狙いだ?」
ガンマンはウィスキーの杯をちょびちょびと口に運んでいる。
商人「若いうちから人を疑うのはいかんな~。もっと気楽にいけ、気楽に。でないと、寂しい老後を送るハメになるぞ?」
ガンマン「……俺にくだらん説教は不要だ。質問に答えろ」
ガンマンは少しだけ語気を強めた。
商人「…………」
商人は呆れた様子で軽く溜息をついた。
商人「最近の若いもんは落ち着きがなくていかん」
彼はウィスキーをボトルから自分の杯にそそぎ、それを一気に煽った。
現在の彼らは小さな丸テーブルに二人で座っていた。
そこは町の酒場だった。もちろん商人のおごりだ。
酒場は多くの人でごった返しになっていて、あちこちから奇声が飛んでくる。
外にまで聞こえるほどの大音量だった。
商人「よかろう。あんたの質問に答えるとしよう」
それからしばらく経って商人が急に口を開いた。
彼の口角にうっすらと浮かんだ挑戦的な笑み。
ガンマンは商人を不気味だと思った。
商人「まあ、そう構えなさんな。なにも、とって食おうってわけじゃないんだからよ」
ガンマン「…………」
ガンマンは煙草の先に火をつけた。
商人「あんたは俺を疑ってんだろう?どうして見ず知らずの他人にわざわざ金を恵んでやったのかってな」
ガンマン「…………」
ガンマンは口から煙を吐き出した。
煙は天井に向けてのぼっていく。
商人「もちろん、ちゃんとした理由はあるんだぜ」
商人は歯を見せてニヤリと笑った。
彼は自分の上着のポケットに手を突っ込み、何かをごそごそと漁っている。
商人「その理由がこれさ」
そしてポケットから手を抜くと、机の上にその中身を置いた。
紙幣の束だった。
ガンマンはそれに見覚えがあった。
商人「忘れもんだぜ、にいちゃん」
そう、それはガンマンの全財産のドル札の束だった。
商人「わしの商売はいわゆる骨董品のようなものを扱っていてね。世界中の物好きを相手に商売をしてるのさ」
商人「この商売も長い。続けているうちにだんだんと金の匂いに敏感になってくる。そして現在に至るというわけさ」
商人「あんたを助けたのはだな、久しぶりに儲かりそうな予感がしたからだよ。絶対に儲かる。わしの目に狂いはない」
ガンマン「…………」
ガンマンは口にくわえてた煙草を灰皿にぐりぐりと押し付けた。
ガンマン「……なにが望みだ?」
商人は口元を歪めて不気味に笑った。
商人「そうだな、札束も気になってるが、中でも一番わしの目を引いたのが……」
言いながら、商人はガンマンの腰についている拳銃に向かって手を伸ばした。
ガンマン「……動くな」
だが、商人の体の動きは途中で止まることになった。
撃鉄を起こす音が聞こえた。
銃口は商人の腹部にぴったりと接している。
今、引き金をひけばただではすまないだろう。
ガンマン「…………」
商人「…………」
周りの喧騒にまぎれて、二人の間には氷のような静寂が存在していた。
互いの唾を飲み込む音がはっきりと聞こえるほどの緊張感だった。
商人の頬を一筋の汗がつたった。
商人「いくら欲しい?好きなだけ払おう」
ガンマン「…………」
ガンマンは商人の目をジッと見つめて言った。
ガンマン「こいつは俺の商売道具だ。いくら貢がれても譲らん……」
商人「…………」
商人「そうかい」
商人は諦めがついたのだろうか。
投げやりな返事をした。
ガンマンもホルスターに銃をしまった。
その瞬間、張りつめた緊張の糸は緩んだ。
とりあえず今はここまで
また投下します
商人「さて、取引を続けようか。この札束、全部合わせて1000ゴールドでどうだ?」
ガンマン「…………」
その後も二人の取引は続いていた。
ガンマンはガンマンハットのつばを指でいじりながら答えた。
ガンマン「2000ゴールドだ……」
商人「馬鹿言っちゃいけねえ。2000ゴールドは、ちと高すぎるぜ。できるなら負けてやりたいとこだけどよ、こちとら生活がかかってるんでね。1200ゴールドなんてどうだい?
」
商人の苦笑いを気にせず、ガンマンは続けた。
ガンマン「2000ゴールドだ……」
商人「1400」
ガンマン「2000ゴールドだ……」
商人「1650」
ガンマン「2000ゴールドだ……」
そんなやり取りがしばらく続いた。
商人「あんた、知ってるかい?今日"勇者"がこの町へ来られるのをよ」
ガンマン「知らんな……」
取引が終わったあともガンマンは商人と酒を酌み交わしていた。
酒を飲みがてら、情報を集めるのが目的だ。
商人の話の中に出てきた"勇者"という単語に彼は反応した。
はじめて耳にする単語だった。
商人「まあよかろう。今から説明してやろう。勇者ってのはだな……」
商人が言いかけたその時だった。
酒場のドアが勢いよく開け放たれた。
ドアベルが派手に音を立てる。
商人「お!こりゃ、ちょうどいいや。見てみなよ、どうやらやっこさん、おいでなすったみたいだぜ」
商人が入り口の方に向かってあごをしゃくった。
勇者「…………」
魔法使い「ゆ、勇者くん。やめようよー」
ガンマンが目を向けた先には、全身を白銀の鎧で覆った一人の男がいた。
その後ろには黒いローブに身を包んだ小柄な女がくっついている。
魔法使いのような服装の女は先ほどから視線をきょろきょろとさせて挙動不審な様子だった。
勇者と思われる男は、そんな魔法使いの制止の声を無視してカウンターに座った。
酒場の喧騒は先ほどと変わって、水を打ったように静まり返っていた。
蚊の鳴くようなささやき声だけがその場に残った。
勇者「ウィスキー」
マスター「……かしこまりました」
酒場のマスターは迷惑そうに眉をひそめていたが、勇者は気にした様子を見せなかった。
いや、正確には気にする余裕もないのかもしれない。
勇者の目はうつろで、生気を失ったような色をしていた。
生きているのか死んでいるのかさえわからないほどに。
ガンマン「……勇者というのはみんなああいう感じなのか?」
ガンマンは商人に尋ねた。
商人は首を横に振った。
商人「勇者ってのは書いて字のごとく、勇気ある者、つまりは英雄さ。だが、やっこさんの場合は例外だ。歴代勇者の中でもあれほどの問題児はいまい」
勇者に聞こえないほどの小声で商人は答えた。
そんな時だった。
兵士A「マスター、こんばんはー!」
兵士B「飲みにきましたよーん!」
ドアベルの音が閑散とした店内に響き渡る。
べろんべろんに酔っぱらった王国兵士の二人組が酒場へ入ってきたのだ。
もうすでに二人は千鳥足になっている。
兵士A「あれれー。なんだかみんなくらいなあー。どしたのどしたのー?」
だが酔っぱらっているとはいえ二人にも、この異様な雰囲気が肌に感じ取れたらしい。
二人の視線は、自然に勇者と魔法使いの方へと向かっていった。
ガンマン「……勇者というのはみんなああいう感じなのか?」
ガンマンは商人に尋ねた。
商人は首を横に振った。
商人「勇者ってのは書いて字のごとく、勇気ある者、つまりは英雄さ。だが、やっこさんの場合は例外だ。歴代勇者の中でもあれほどの問題児はいまい」
勇者に聞こえないほどの小声で商人は答えた。
そんな時だった。
兵士A「マスター、こんばんはー!」
兵士B「飲みにきましたよーん!」
ドアベルの音が閑散とした店内に響き渡る。
べろんべろんに酔っぱらった王国兵士の二人組が酒場へ入ってきたのだ。
もうすでに二人は千鳥足になっている。
兵士A「あれれー。なんだかみんなくらいなあー。どしたのどしたのー?」
だが酔っぱらっているとはいえ二人にも、この異様な雰囲気が肌に感じ取れたらしい。
二人の視線は、自然に勇者と魔法使いの方へと向かっていった。
兵士B「おやおやおやー!これはこれは勇者さまじゃないですかー!魔王討伐とやらは順調ですかー?」
勇者「…………」
勇者は兵士の挑発を聞こえない振りをして、ウィスキーの入ったグラスに口をつけた。
その様子がおかしかったのだろうか。
兵士は調子に乗って言葉を続けた。
兵士B「無視はよくないなー!ねえ、勇者さまー!」
兵士A「大体、今更魔王討伐ってのがおかしいだろ?あんたの親父と魔王は三年前に相打t……
勇者「魔王はまだ生きている!」
兵士の言葉を否定するように勇者ははっきりと言い放った。
拳に握りつぶされ、手元のグラスは粉々に砕け散っていた。
拳から流れる鮮血が床に滴り落ちる。
兵士の二人組はその気迫に一瞬圧倒されたが、すぐに元の調子を取り戻した。
兵士A「魔王は死んだんだよ!あんたの親父さんと一緒にな!実際に現場を目撃したやつだって何人もいる」
勇者「……ざけるなよ」
勇者はカウンターに両手を叩きつけて席を立ち上がった。
そして兵士のところまで歩いて行って、その胸ぐらをつかんだ。
勇者「それなら最近になって、急に魔物が増えた原因はなんだ!?俺に説明してみろッ!!」
その勢いのまま、勇者は兵士の顔面を思いっきり殴り飛ばした。
兵士の巨体は背後の机に向かって吹き飛ばされる。
机の折れた耳障りな音が店内に響き渡った。
勇者はもう一発拳をお見舞いしようとしたが、魔法使いが彼の腕を必死になって引き止めていた。
兵士A「へへへ、情けねえ!女の前だからいいカッコ見せようってか?いいご身分だねえ!」
兵士B「魔王討伐だってただの口実に決まってらあ!本当は人気取りと女の尻を追っかけるのが旅の目的にちがいねえぜ、この勇者さまは!」
魔法使い「ち、ちがいます!勇者くんは……!」
勇者は兵士の横柄な言動にももちろん腹が立った。
だがそれ以上に、なにか言い訳をしようとする魔法使いの自信なさげな態度が彼を苛立たせた。
勇者「黙れッ!!」
魔法使い「きゃっ!」
気がついた時には彼は、魔法使いを引き離すように、腕を大きく振り払っていた。
その反動で床に尻もちをついた魔法使いは、目を涙で潤ませて勇者を見つめていた。
その瞳には悲しみの色が宿っていた。
勇者は彼女に対して罪悪感を感じたのだろうか。
やりきれない表情で視線を魔法使いからそらして、勇者は兵士二人組の方へと向き直った。
兵士A「……にゃろお、やろうってのか?」
兵士B「勇者だろうが誰だろうか関係ねえ。受けた痛みは倍にしてきっちり返してやる。骨の一本や二本では済まさんぞ?」
まさに一触即発といった雰囲気。
身を切り裂くような緊張感が辺りを支配していた。
今はここまで
また来ます
投下のたびの乙レスや質問レス、いつもありがとうございます
この作品でガンマンの使ってる拳銃は、コルト社のピースメーカーという設定です
僕は拳銃の知識に関してはドがつく素人なので、細かい部分はみなさんのご想像にお任せします
次回は明日か明後日に投下します
勇者「…………」
勇者は、背中にかけてある大剣のグリップを強く握りしめた。
刀身の長さは背の丈ほどだが、幅は普通の剣の2、3倍は軽く超えている。
その斬撃の餌食になれば、巨大な岩石も粉々に砕かれるだろう。
剣先の付け根の近くには、ルビーのように光り輝く赤色の宝玉が埋め込まれていた。
その赤色は燃えるような色をしていた。今の勇者の瞳との色と同じだった。
兵士A「……へへへ」
兵士B「…………」
兵士たちも勇者に続いて、手に持っている長槍を勇者の顔を目掛けて構えなおした。
その光景を見て恐ろしく思ったのだろう、見物客の中から女の甲高い悲鳴があがった。
マスター「か、神様……!」
酒場のマスターはカウンターの後ろにしゃがみこんで、手を合わせて神に救いを求めていた。
目をギュッとつぶって、歯をがたがたと震わせながら。
商人「さて、面白いことになってきた。これからどうなるかな?なあ、にいちゃん、ここは一つ賭けでも……」
愉快な様子で商人はガンマンに視線を送ろうとした。
商人「……おろ?」
だがいつの間にか彼は姿を消していた。
机の上にあったウィスキーのボトルも消えていた。
商人は慌てて周囲に目をやって、ガンマンの姿を探してみる。
すると、すぐに見つかった。
ガンマン「…………」
勇者「なんだおまえは?」
なんと彼は勇者と兵士たちの間に割って入っていたのである。
ウィスキーのボトルを片手に。
ガンマン「これでも飲んで少しは頭を冷やせ」
言いながら、彼はウィスキーのボトルを勇者の目の前に突き出した。
勇者は血走った目でガンマンの顔を見据えながら答えた。
勇者「邪魔だ。今はそんな気分じゃない」
ガンマン「…………」
だがガンマンはその場を動こうとしなかった。
すると、勇者は彼を威圧するように怒鳴り散らした。
勇者「邪魔だと言っただろう!殺されたいのか!!」
その瞬間、勇者の頭をなにかひんやりとした感覚が襲った。
そのすぐあと、アルコールの強い匂いが鼻孔に伝わった。
彼は頭からウィスキーをぶっかけられたのだ。
ガンマン「頭は冷えたか?」
勇者「貴様……!」
勇者「俺を馬鹿にしてるのかッ!!」
勇者は大剣のグリップから手を離して、ガンマンの胸ぐらに掴みかかった。
彼の頭は冷えるどころか、余計に燃え上がってしまっていた。
ガンマン「…………」
だがガンマンはいつでも冷静だった。
彼は勇者の掴みかかった腕を手刀で叩き落した。
そのとき、一瞬の隙ができた。
勇者「……なにッ!?」
ガンマン「…………」
そして流れるような動作で、勇者のみぞおちに向かって重い拳を叩き込んだ。
勇者の表情は苦痛に歪められ、意識はしだいに遠のいていく。
勇者「う……が……!」
彼は大きな音を立てて、床に倒れ伏せた。
意識はすでに失っていた。
ガンマンは彼を持ち上げて、自分の肩に抱え込んだ。
そして、聴衆に向かって一言告げた。
ガンマン「俺のツレが迷惑をかけた」
ドアベルの鳴る音ともに彼は酒場から出て行った。
その様子に呆気にとられていた魔法使いも、すぐに気を取り直して立ち上がった。
魔法使い「し、失礼しましたあっ!!」
不器用そうに深々とお辞儀をした彼女は、勇者たちを追って駆け出した。
その場に残された人々はみんな言葉を失っていた。
商人「むちゃくちゃだぜ、あいつ……」
商人は呆れたようにつぶやいた。
ガンマン「……ここらへんでいいか?」
ガンマンは、シングルベッドの上に勇者をそっと下ろした。
そのベッドの角にガンマンは腰を下ろした。
ここは宿の一室。勇者と魔法使いが今夜泊まる部屋だった。
魔法使い「あ、はいっ!だいじょうぶです!」
ガンマン「…………」
ガンマンが後ろを振り返ると、魔法使いは緊張した面持ちで、ぎこちなく棒立ちになっていた。
恐らく彼女は自分のことを恐れているのだろう、とガンマンは思った。
その証拠に魔法使いの視線は、こちらの顔を見ないようにずっと下に向けられている。
魔法使い「………っ」
ガンマン「…………」
そのまま彼らの間には気まずい沈黙が訪れた。
すると、魔法使いは以前にも増して挙動不審になった。
その様子が見るに堪えなかったので、ガンマンは彼女に話題を振ることにした。
ガンマン「……おい」
魔法使い「ひゃいッ!!」
彼の呼びかけに返ってきたのは、なんとも間抜けな返答だった。
ガンマン「…………」
どうやら失敗だったらしい。
魔法使いはずっかり涙目になってしまっていた。
ガンマンは今度はなるべく優しい口調で話すように心がけた。
ガンマン「おまえのツレにはよく言っておけ。次からはよく考えて行動しろ、とな」
魔法使い「え?」
魔法使いはキョトンとした表情でガンマンの顔を見つめた。
ガンマン「じゃないと、次は牢屋にぶち込まれるぞ?」
魔法使い「あ」
そのとおりだった。
ガンマンが騒ぎをとめていなければ、ただ事では済まなかっただろう。
縛り首になっても文句は言えないだろう。
下手をすれば勇者の付き添いである魔法使いも、巻き添えになっていたかもしれない。
ガンマン「……俺はもう行くぞ」
一通りの用事が済んだので、ガンマンは部屋を出ることにした。
その場で呆然としていた魔法使いは、ガンマンがドアノブに手をかけようとしているのに気づいた。
魔法使い「……あ、あの」
そして、彼の背中にぽつりと小さく声をかけた。
ガンマンは振り向きはしなかったが、ドアノブを握ったまま立ち止まっていた。
魔法使い「どうして、助けてくれたんですか?」
ガンマン「…………」
魔法使いの問いに対して彼は返答に困った。
特にはっきりとした理由がなかったからだ。
だから、こう答えた。
ガンマン「……なんとなく、だ」
宿主「すみません、今夜はあいにく満室でして……」
宿主はハンカチで顔の汗を拭きながら言った。
帳簿に記されている部屋は、すべて人の名前と思われる文字で埋め尽くされていた。
ガンマン「……そうか」
宿主「はい。申し訳ないのですが……」
下がった眼鏡をくいっと上にあげて、宿主は弱気にそう答えた。
時間はすでに午後の9時を回っていた。
酒場で時間を潰し過ぎたことをガンマンは今になって後悔した。
だが今更考えたところでどうにもならないので、彼は毛布を借りて宿の外で寝ることに決めた。
勇者「う……」
勇者は気怠いまどろみの中で目覚めた。
目の前には白い天井がある。彼は、自分が宿の部屋にいるのだとわかった。
しばらくすると、左手になにやら冷たい感触がした。
それに加えてジクジクした痛みも感じた。
魔法使い「あ、勇者くん、起きたんだ」
勇者「魔法、使い……」
彼の視線の先には、穏やかな笑顔を湛えた魔法使いがいた。
彼女はぬれたタオルをしぼって、甲斐甲斐しく勇者の手をふき取っていた。
彼は、酒場でグラスを握りつぶしたことを思いだした。
その時に出来た傷が、ジクジクとした痛みの原因だった。
どうやらあの時は気分が高揚して気づかなかったらしい。
ぼんやりとしか感じなかった痛みが、今頃になって急に激しく痛み始めた。
魔法使い「動いちゃダメ!傷が開いたらどうするのっ!」
勇者「……すまん」
腕を持ち上げようとした勇者だったが、魔法使いの一喝によってそれも叶わなかった。
穏やかな時間が流れていく。
二人の間に言葉はなかったが、魔法使いとは昔から長い付き合いなので勇者はそれほど苦には思わなかった。
むしろ、かえって心地よく感じていた。
それから、しばらくして魔法使いが口を開いた。
魔法使い「あとであの人にちゃんとお礼言わないとダメだよ?倒れた勇者くんをわざわざここまで運んできてくれたんだから」
勇者「あの人……?」
魔法使い「ほら、あの人だよ。茶色のぼうしかぶった……ちょっとだけ目つきの悪い人。思い出した?」
勇者「…………」
魔法使いが楽しそうに話しているのが彼の癪に障った。
だから、思いがけずに刺々しい言葉を使ってしまった。
勇者「あいつ、余計なことしやがって!」
その言葉を口に出した瞬間、勇者は我に返った。
しまったと思ったときには、もうすでに手遅れだった。
魔法使いの笑顔はみるみるうちに沈んでいって、悲しみの色を帯びていく。
魔法使い「……なんで、そんなこと言うの、かな?」
勇者「…………」
勇者はなにも答えなかった。いや正確には、なにも答えられなかったのだ。
だが魔法使いはそのまま言葉を続ける。
魔法使い「あの人がいなかったら、わたしたち、明日から旅できなくなってたかもしれないんだよ?」
勇者「…………」
魔法使いの言ってることは正論だった。
くだらない罪で牢屋に入って、目的である魔王討伐が達成できないこと。それこそまさに本末転倒だ。
勇者はそのことを頭では理解していたが、納得することができなかった。
自分の行為が愚かだとわかっていながら、勇者は自分をとめることができなかった。
勇者「……惚れてるのか?」
魔法使い「え?」
勇者「あいつに惚れてるんなら、俺を置いてどこにでも行ってしまえばいい!」
魔法使い「………っ!」
その時、乾いた音が部屋に響き渡った。
少し遅れて勇者は、自分が魔法使いの平手打ちをくらったのだと気づいた。
魔法使い「…………」
やがて、ドアの閉まる音が聞こえた。
それは寂しい音だった。
魔法使いはそのまま部屋を出て行ってしまったのだ。
勇者は彼女にぶたれた頬を指先でそっとなぞった。
勇者「あいつ……泣いていたな」
とりあえずここまで
また来ます
こんばんは
次は明日か明後日に投下します
ガンマン「…………」
ガンマンは、宿屋の入り口のすぐ横に背中を預けて、片膝を立てた状態で座り込んでいた。
その体は宿屋に貸してもらった毛布に包んである。
吐いた息が煙のように、風とともに後ろへ流れていった。
そんなとき、宿屋の入り口のドアが勢いよく閉まる音が聞こえてきた。
魔法使い「はあはあ……!」
ドアの前に立っていたのは、魔法使いだった。
息を切らせて、肩を激しく上下させている。
下にうつむかせた顔には、よく見ると大粒の涙が伝っていた。
どうみても異様な光景だった。
ガンマン「……どうした?」
とてもじゃないが、そのまま放っておくことができなかったのだろう。
ガンマンは気がつけば目の前の少女に対して声をかけていた。
すると、魔法使いは顔を上げて、その泣きはらした目でガンマンを見つめた。
彼女は投げやりな様子で言葉を吐き捨てた。
魔法使い「あなた、には……かん、ひっく……けいないです」
魔法使いの言葉は、嗚咽によってところどころ聞き取れなかった。
だがガンマンには、彼女が強がっているのだということは感じ取れた。
ガンマン「……そうか」
そう言ったきり、ガンマンは黙り込んで夜空の星々に目をうつしていた。
今の彼女には何を言っても無駄だと思ったからである。
星は彼らの頭上で、きらきらと瞬いていた。
ガンマン「…………」
魔法使い「ひっく、えぐ……」
魔法使いは、そのまま地べたにぺたりと座り込んで、しばらくの間泣き続けた。
恐らく今は自分のことだけで必死になっていたのかもしれない。
ガンマンに気を遣う様子は一切見えなかった。
やがて嗚咽の音はゆっくりと収まっていき、魔法使いの涙もすっかり枯れた。
彼女は赤く腫れた目をガンマンに向けると、小さく言った。
魔法使い「恥ずかしいとこ、見られちゃいましたね……」
ガンマン「…………」
その言葉とは裏腹に、魔法使いはどこかすっきりしたような表情を浮かべていた。
ガンマンは相変わらず何も言わないままだった。
魔法使い「わたし、疲れました。ほんとに疲れたんです……」
『疲れた』という単語を彼女は強調するように繰り返した。
魔法使い「なんででしょうね?自分のやることなすことが、全部裏目に出ちゃうんです。そして時々、考えてしまうんです」
魔法使い「わたしはいったい、なんのために頑張ってるんだろ……って」
魔法使いは自嘲気味にそう言ったあと、慌てて言葉を付け加えた。
魔法使い「あ、ごめんなさい!わたしったら、ひとりでなにいってるんだろ……」
魔法使いは顔を赤くして、恥ずかしそうにうつむいた。
ガンマン「…………」
魔法使い「…………」
それを最後に、二人の間の言葉は途切れた。
ただ風の通り抜ける音とひんやりとした夜気だけが感じられる。
しばらくして、ガンマンは思いついたように口を開いた。
ガンマン「夜空の星、風の音、草の匂い……」
魔法使い「……え?」
ガンマン「一人になれば、そんなどうでもいいことを考える余裕も出てくる」
魔法使い「…………」
ガンマンは腕を枕にして、そのまま仰向けに寝転んだ。
ガンマン「俺には、お前になにがあったのかはよく分からん……」
そして、ガンマンハットで顔全体を覆った。
ガンマン「明日からどうするか、今夜一晩よく考えてみるんだな」
魔法使い「…………」
彼はそれ以降は言葉を発しようとはしなかった。
魔法使いはしばらくその場で考えこんだあと、ゆっくりと立ち上がった。
魔法使い「……おやすみなさい」
ガンマンは何も言葉を返さなかった。
魔法使いの足音が遠ざかっていくのを感じながら、彼は深い眠りに落ちていった。
商人「…………」
宿屋の横側の壁に張り付いて、彼らの会話の一部始終を盗み聞きしていた男がいた。
それは商人だった。
少ししてから、宿屋に入っていった魔法使いが再び入り口から出てきた。
それから彼女は自分の手荷物を片手に、夜の暗闇の中へと一人消えて行った。
その様子を見届けた商人は口元を不気味に歪ませて、音を殺して宿屋へと入って行った。
そして、彼は受付の前で立ち止まった。
商人「宿主さんよ、勇者さまの部屋ってえのは何号室だい?」
宿主「なんです?急に」
宿主は品定めをするような視線で、商人を上から下まで眺めまわした。
そして、不審な表情をさらに強めた。
宿主「最近はなにかと物騒ですからねえ。お客様の情報は丁重に取り扱うようにしてるんです」
商人「……ってえと、どういう意味だい?」
宿主は眼鏡のズレを直しながら答えた。
宿主「部屋番号を教えることはできない、ということです」
それを聞いた商人は、受付の台の上に身をぐっと乗り出して言った。
商人「わしは他の客とは違う。勇者さまからお呼びがかかってるんでねえ」
宿主はいかにも不快そうに顔をしかめた。
そして、すぐに冷たく言い放った。
宿主「……では、今からご本人様に確認をとりますがよろしいですか?」
商人「別にかまやしねえが、それでいいのかねえ?」
宿主「どういう意味です?」
商人はニカッと歯を見せて笑った。
商人「さっきの酒場での騒ぎはあんたの耳にも入ってんだろう?」
商人「あの人のご機嫌を損ねるようなことがありゃあ、大剣でその石頭を叩き割られるかもしれねえぜ?」
商人はわざと語気を強めて、脅しつけるように言った。
すると、宿主の顔はみるみるうちに青ざめていった。
宿主「に、205号室……」
商人「へへ、ありがとうよ」
商人は怯えている宿主に背中を向けて、二階に続く階段をのぼっていった。
階段をのぼりきったところを右に曲がった突き当りが、勇者の泊まる部屋だった。
商人「さてと……」
部屋の前にやってきた商人は、コンコンとドアを軽く三回叩いた。
部屋の中からはひとつも音がしない。
商人「もしもーし!勇者のだんなあ!」
次は少し強めに叩いてみたが、なんの反応も返って来ることはなかった。
ドアノブを回しても、特に引っかかる様子もなかった。
商人は軽くほくそ笑んだ。
商人「予想通りだぜ。やっこさん、すっかり寝てやがるらしい」
そのままドアを開けると、ウィスキーの強い匂いが鼻をついた。
勇者はウィスキーのボトルを片手に、机の上で俯せに眠りこけていた。
試しに肘を突いてみたが、何の反応も返ってこない。
商人「こりゃあ相当酔ってやがる。しばらくは起きそうにないぜ」
商人は安堵の表情で部屋をぐるりと見渡した。
すると枕元に置かれた、一枚の紙が目についた。
商人「……なんだこりゃあ?」
拾い上げてみると、紙には走り書きと思われる文字が羅列されていた。
商人は注意をこらして、それに深く目を通していった。
勇者くんへ
いきなりでびっくりするかもしれないけど、ずっと前から勇者くんに伝えたかったことがあります
言いたかったけど、言えなかったことです
本来なら面と向かって言わないとダメかもだけど、今のわたしにはそんな勇気はありませんでした
卑怯だと思うかもしれないけど許してね
わたし、明日からしばらく一人で旅に出ようと思ってます
いまのわたしが勇者くんのそばにいても迷惑をかけるだけだと思うから
このままじゃ弱い自分のままで、そこから前に進めないと思うから
でも、いつか必ず強くなって帰ってきます
勇者くんの隣に立っていても恥ずかしくないぐらいに強くなります
その時は、また一緒に冒険してくれると嬉しいです
さようなら
僧侶より
P.S.
さっきはほっぺたをぶってごめんなさい
P.P.S.
ちゃんとご飯食べなきゃダメだよ
それから包帯も毎日ちゃんと替えること
商人「…………」
それは書置きだった。
僧侶が勇者にあてて書いたものに違いなかった。
商人はもう一度その書置きを眺めた。
長い間考え込んだあと、彼はあごを擦って唸った。
商人「いいことを思いついた」
商人はその書置きを四つ折りに畳んで、羽織っている上着の内ポケットにしまった。
彼は、ベッドの近くに置いてある勇者の大剣に手を伸ばした。
そして、剣先の付け根近くの宝玉をねっとりと撫でまわした。
商人「これが吉と出るか凶と出るか……」
言いながら彼は宝玉を抜き取り、それを窓から覗く月の光にかざした。
宝玉は相変わらずきれいな赤色をしていた。
商人「頼むぜ、運命の女神様よお」
商人はズボンのポケットに宝玉をしまうと、忍び足で部屋を抜け出した。
空に浮かんだ満月は、雲の間にぼんやりと漂っていた。
もう深夜だった。
>>89
大事なとこでミスった……
×僧侶
○魔法使い
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