本郷一刀「G記?」 (213)
※クロスオーバー作品です。両方の作品、または片方を貶めるための物ではありません。
※そういった作品が苦手な方はお手数ですが戻るを推奨致します。
※ある種時系列は無茶苦茶です。それでもよろしければ。
それではどうぞ。
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―――遥かな昔。
其の天地において中央に位置する、"ある巨大な"国々があった。
そこでは今、大陸の全土を巻き込む程の"大乱"がそこかしこで渦を巻いていた…。
―――とある村。
女性「―――きゃああああああああああっ!!??」
暴漢1「げへへへへ…姉ちゃんよお、そんな嫌がらなくったっていいだろうがよ。おおん?」
暴漢2「俺達ゃ今をときめく"黄巾党"の一員よ。気持ちよ~く持て成してくれりゃあ天の国へご招待してやるぜぇ?」
村娘と思しき若い女性が二組の男に今まさに組み伏せられようとしていた。
必死に抵抗する様も男達にとっては逆に嗜虐心をそそり立てられるだけの代物であるのか、女性の押し退けも一切通用せず。
遂には地面へと叩きつけられてしまった。
女性「だ、誰かぁ…!!」
村人A「……」
村人B「……」
村人C「……」
周囲に対し必死に助けを請うが、誰もが女性から目線を逸らしてしまう。
揉め事に進んで立ち入りたくないという心理も勿論だが、男二人が与する組織の名を耳にして逆らおうとする者はこの村には誰一人としていなかった。
もし逆らおう物ならば己の命は愚か、それこそ村の存続すら危うくなる…。
暴漢が示した名は、それ程までに強大であった。
暴漢1「残念だったなあ!誰もテメエを助けちゃくれねえってよぉ!」
暴漢2「諦めて俺等の物になっちまえよ姉ちゃん。…それじゃあ精々楽しませてくれよぉ…」
舌舐りしながら女性に対して手を伸ばす暴漢。
だが。
―――ザシュッ!
暴漢1「―――あ?」
暴漢2「―――ん?」
乾いた音が辺りに響き、遅れて"ごろり"と重々しく"何か"が転がり落ちたと同時に。
暴漢1「あ―――い、いでえええええええええ!!腕があああああああ!!俺の腕があああああ、ぎいいいいいいい!!??」
それが"切断された自分の腕"である事に気づいた。
だくだくと出血する痛みを押すようにして叫び、のたうち回る暴漢。
その様を尻目に、背後から。
???「…無辜の民を怯えさせ、あまつさえ涙を流させる貴様達の何が"侠"か。恥を知れ!」
暴漢達を真っ向から否定せしめる野太い男の声が。
暴漢2「だ、誰でいっ!?俺達を黄巾党の一員と知っての…!!」
無傷の暴漢が相方の敵を取ろうと腰の曲刀に手を伸ばしつつ後ろを振り向こうとして。
暴漢2「…………!!!!」
出来なかった。
何故ならば。
その喉元には、きらりと陽光を反射する鋭い刃。
一丈にも及ぼうかという太柄から伸びたソレが如実に語る。
―――"動かば、斬り捨てる"。と。
暴漢2「…こ、こんなことをしやがって。どうなるか解ってんのか、テメエ…」
冷や汗を流しつつも目線は刃から離さずに暴漢は口を開いた。
動けぬのならば舌で戦おうという、その意気や良しと言うべきか。
???「―――"解ってんのか"、だあ?テメエこそ自分の行いってヤツを省みやがれってんだ。"腕一本で済ませて頂き有難うございます"ってのが筋ってモンじゃねえのか?」
"槍"を構える男の横手から、今度は若い男らしき口調の人物が割って入った。
ちらりと横目を向ければ、炎のように真っ赤な鎧の一端が目に映る。
暴漢1「いでーよおおおお!いでーよおおお!!おがーちゃああああん!!」
???「うるせえっての!それだけ騒げりゃ死ぬこたあねえよ!!」
言って、暴漢の傷口に布と思しき物を巻いて手当を施す。
???「おらっ!これで帰れるだろうが!とっとと何処かへ消えちまえ!!」
???「一息に切り捨ててくれようとも思ったのだが、我等が"兄"と"御使い殿"が頑なに止めた故此度はこれで終わりとするが…是非が在りや?」
暴漢2「―――ブルブルウルブルブルブルブルブルブル…!!!」
槍の男の重々しい物言いにそれ以上暴漢は口を開くことが出来ず、唯ひたすらに首を横に振るうだけであった。
???「では、去ねい」
暴漢2「は、はひぃ……!」
喉元から刃をどかすと、暴漢は尚も蹲る相方を抱え、ガサガサと這うようにしてその場を離れて行く。
その最中に。
暴漢2「(当てが外れたぜチクショウ!こんな辺鄙な村にあんな手練が迷い込んで来るなんてよぉ……!!)」
せめてその面を拝んでやろうと目線を上げて。
暴漢2「(………!!!)」
心の中で息を飲んだ。
己に刃を向けていたと思しき武者の、その風貌。
緑色の鎧、頭部には鬼を象ったと思しき黄金の装飾。
顔面から垂れ下がるは黒々とした偉丈夫な顎鬚。
そして何よりも。
暴漢2「(あの刀身の刃紋は…!!)」
青く輝く龍を彫り込んだ偃月刀。
暴漢2「(ま、間違いねえ。それによくよく見れば片方の赤いのにも見覚えが…!!)」
あれが音に伝え聞く―――…!!!
???「……行ったか?」
???「みてえだな…っと、大丈夫かい?お嬢ちゃん」
女性「は、はい…。あ、ありがとうございます…!」
???「に、してもよお…」
赤い武者が周りを見回す、すると。
村人A「………」
村人B「………」
村人C「………」
???「…オレ達、善い事をしたつもりなんだけどなんかあまり歓迎されて無いっぽいな」
二人を取り囲むようにして眺める村人の表情は変わらず重い。
いや寧ろ視線に敵意も混じっているような気さえする。
???「仕方あるまい。黄巾の噂がここまで広まっている事を鑑みれば我々の所業は単なる節介以外の何物でもなかろう」
???「わからねえでもねえけど…なーんか、やるせねえよな」
???「それをどうにかするべく我々は起ったのだ。…我等二人と"あの方々"で、な」
???「…そっか。そうだよな…」
迷いを振り切るように鼻を擦ると、武者二人は村で食料を買い込みそのまま帰路へと付く。
―――二人の"主人"と"兄"の待つ場所へと。
女性「―――お待ちになって下さい!」
???「……あん?」
???「……?」
その直前、二人の元へと追い縋る一つの影。
それは先程自分達が助けた女人であった。
息せき切って二人の前まで走ってきた女性は。
女性「先程はロクにお礼を言えず…どうかコレを、お持ちになって下さい」
言って、手に持つ袋を二人に差し出した。
???「?…こりゃ、芋に米に野菜に…うっは、すっげえ色々入ってるぜ!」
???「これは…かたじけない。騒がせただけの我々にこのような…」
女性「いいえ。貴方がたが来て頂けなければ私は今頃…村の人達も今にきっと解って下さいます」
???「お心遣い、痛み入る。では、有り難く頂戴いたす」
???「アンタも気をつけてな。そんじゃあな!」
女性「あの、せめてお名前を…!」
女性の言葉に、緑と赤の武者は一度だけ振り向きこう答えた。
―――俺の名は………。
―――拙者の名は……。
???「…あ。二人が帰って来たみたいだ…おおお~~い!」
村の入口付近にある大樹を馬の仮宿とし、その番をしていた"ある若い男"は村から出てきた武者二人の姿を見た途端、開口一番大声を張り上げた。
???「―――"関羽"!"張飛"ぃ~!!」
"張飛"と呼ばれた赤い鎧の武者は無邪気に叫ぶ若者に答えるように、自身も大声で。
張飛「―――"劉備"のアニキぃ~!!そんなにデカい声出さなくっても聞こえてるってえの~!!!」
関羽「………、」
両者にとっては丁度良い声量であっても傍に居る緑の武者…"関羽"にとっては些か以上に耳に障るようで、眉根を潜めて歩を進める。
そんな彼の心情等露知らず、両者は共に大声で収穫を喜び合っていた。
その最中において。
関羽「……む」
張飛「あん、どしたい?」
関羽「いや、"あのお方"もご無事なようで何よりと思うてな」
安堵するように顎鬚を撫ぜる関羽の視線の先には、劉備とは別の、大樹に寄りかかるようにして待機する影一つ。
張飛「劉備のアニキだけで護衛をするっつーんで若干心配してたんだけど。ま、杞憂ってヤツだったか」
関羽「言葉が過ぎるぞ張飛。…買い物に些か時間をかけ過ぎた故、少々歩みを早めるぞ」
張飛「お、おいおい。ちょっと待ってくれって!」
そして…。
関羽「劉備殿。関羽と張飛、食料の買い込みを終えて只今帰参致しました」
張飛「右に同じく。オマケに村の女の子から色々お礼なんか貰っちまったんで、暫く食う物に困らなくても良さそうだぜ!」
劉備「それは良かった!…村にも被害が及んでないようでホッとしたよ」
関羽「…近頃黄巾党の連中は、いよいよ見境が無くなってきたようですな」
劉備「そんな事を無くす為にも、俺達も一刻も早く討伐隊に参戦しなくちゃならない」
劉備「……なあ、そう思うだろう?」
劉備「――――――一刀も」
一刀「…………お、おぅ。そ、そうだね」
張飛「なんだよ"御使い様"よ。歯切れが悪ぃなあ、ハラでも減ってんのか?」
関羽「張飛。御使い様は我らの行軍にお付き合い頂いているのだ。疲れが出るのも当然であろう」
劉備「そうなのかい、一刀?」
一刀「…や、別に疲れとかは…」
張飛「に、してもよう…。前々から思ってたんだが"天の御使い"ってえのは皆アンタみたいに"やわらかぼでぃ"ってヤツなのか?」
一刀「……硬いとか柔らかいとかは置いとくとしても、俺が居た国じゃこれが世間一般的な"人間"の体付きだと思うよ……」
張飛「へぇー。天の国ってのは変わってんだなあ、そんなんで戦場とか行って大丈夫なのか?主に防御的な意味で」
一刀「…逆に張飛達は丈夫そうでいいね。主に防御的な意味で」
張飛「そりゃあな、なんてったって俺達は―――」
―――誉れ高き 頑 駄 無 族 だからな!
関羽(ガンダム)「―――然り」
劉備(ガンダム)「俺達は生まれた時からこの姿だから自分の容姿に疑問を抱いた事は無いなあ」
張飛(ガンダム)「だろだろ?やっぱ御使い様が特別なんだって!」
一刀「…………」
一刀「なあ、やっぱり俺ここに居るのは間違いなんじゃないか?」
関羽ガンダム「何を仰られます、御使い様!」
関羽ガンダム「―――数日前、山の麓に流れ星と共に我々の前に現れた貴方様の神々しいお姿。今を以て忘れる事は出来ません」
関羽ガンダム「旅を始めたてであった我々にとって、貴方様との出会いは正に天からの啓示とも呼べる事態であったのです。故に、何卒弱気な事を仰らないで頂きとう存じ上げまする」
一刀「…いや、でもなあ…」
劉備ガンダム「俺は一刀と一緒に旅をしてて楽しいけどなあ。天の国の話とかも聞けるし」
一刀「…まあ、俺も楽しくない訳じゃないんだけど…」
張飛ガンダム「大体よお御使い様。アンタ俺達から別れるっつっても、どっかアテとかあんのかい?言っちゃ悪いがそのヒョロ腕じゃあそこらの野盗にすら勝てそうにないぜ」
一刀「…それを言われるとなあ…」
劉備ガンダム「まあ、どちらにせよ落ち着けるまでは俺達と一緒に居た方が安全だと思うよ?…その後の事はその時考えればいいんじゃないかな」
一刀「そう……だよな」
張飛ガンダム「さぁてさて、話も終わった事だし荷物纏めて出発ぁ~つ!!」
―――所で俺達何処に向かってるんだっけか?
―――もう忘れたのかお前というやつは…。
―――俺の兄弟子の公孫賛の所へ厄介になれればなーとは思ってるんだけど…。
―――あ、俺知ってる。"北方の勇将"って言われてる人だったっけ?
―――もうご存知であるとは、矢張り天の国の情報というのは凄まじき物でござるな!
―――あ、いや。そこまで持ち上げられるとこそばゆいかな~、なんて………。
それは遥か昔の物語。
ここではないどこかで語り継がれる、ある英傑達の物語。
天地に連なる其の大陸の名は、"三璃紗"。
これは、後の世に「三国伝」と呼ばれる事となる戦いのほんの一幕。
"地球"という名の星から来たとある少年―――"本郷 一刀"と。
三国にその名有りと言われた英雄―――劉備、張飛、関羽(ガンダム)達との。
出会いと戦いの歴史である。
一刀「(―――なーんて、いい感じに締めてはみたけどさあ…)」
一刀「(やっぱり何か違和感を感じるんだよなあ)」
一刀「(具体的にどうってワケじゃあないんだけど、ああいや、頑駄無って時点でそれはもう十分おかしいってワカってるんだけどさ)」
一刀「―――チラリ」
張飛ガンダム「―――ワイワイ」
関羽ガンダム「――――、」
劉備ガンダム「―――ガヤガヤ」
一刀「(……男、だよな?)」
一刀「(紛れもなく、十中八九、誰が見たってそうだ。…すいません、実は最初若干微妙でした)」
※この世界での一般人⇒町民"ジム" (凸)/ヤァ!!
一刀「(いや、男でいいんだ。男であるべきなんだ、俺の世界だって男なんだからさ劉備玄徳とかは)」
一刀「(でもなんだ、この胸の内から湧き上がるこの感情は?)」
関羽ガンダム「…御使い殿、拙者の顔に何か?」
一刀「あ、いや、なんでも…」
一刀「(髭だなあ…いや、"美髯公"なんだから髭で合ってんだよ何訳分からん事言ってんだ俺)」
一刀「(…まあ、兎に角もあの三国志の世界に来たのは紛れもない事実なんだし)」
一刀「(―――もうしばらく、楽しんでみるのもアリ、なのかなあ……)」
等といった思惑などはさて置いて、今日も三璃紗の夜は耽る…。
―――???
???「―――こんなん"G記"に書けるかボケェ!!!」ガッシャーン!!
???「……何事でござろうか?」
???「また例によってヤツの病気であろう。放っておけ」
以上デス。書き終えてから調べてみたんですがこの組み合わせ意外と多かったんですね。さすがと言うかなんというか。
しかしながら水子にするのもな…という事でこの場を借りて上げさせて頂きました。
出来ることなら他の人々も書いてみたかったんですが即興では厳しいのでこの形に。
最初は曹操(ガンダム)が魏に行ってしまって大わらわにしようかと思ったんですがそっちは誰かやってそうなので。
しかしあれですな。
蜀⇒仲良し。
呉⇒仲良し。
魏⇒(トップ同士が)絶望的なまでに相性悪。
というのがありありと見て取れるのがまたなんとも。
それではこれにて。
>>1です。
>>本郷
、、、素で間違えてましたorz
よりにもよってスレタイで、、、あお恥ずかしい、、、正しくは「北郷」です、はい。
続きが出来たんで投下します。もうこのまま行くしかねえや(涙)。
せめて切りの良い所までは…本郷じゃなく、北郷です。
―――その昔、"幽州"という地に"北斗七星"と称されし英雄がおったそうな。
古来の英雄・三侯の一人である「龍帝」の流れを汲む、其の若者の名は"劉備玄徳"。
彼は、三璃紗の大陸全土に蔓延る"黄巾党"の、民へ無常なるの暴虐の数々。
その行状を見過ごすことは出来ぬと、正義の志を共にする仲間であり義兄弟の契りを果たした、"関羽"と"張飛"。
二人の若武者と共に己の力を民の為に奮うべく、兄弟子である"公孫賛"の元へ馳せ参じるべく旅を続けていた。
その最中。
ひょんな事から立ち寄る事となったとある霊山の麓に、真昼間にも関わらず辺り一面を照らす眩い輝きと、一筋の尾を引きながら落下する"光の珠"が降り注いだ。
何事かと三人が向かったその先では―――…。
張飛ガンダム「―――…とまあ、そこで御使い様が眠ってたってのが俺達の出会いの始まりだったっつーか」
関羽ガンダム「―――…張飛、誰に向かって話をしてておるのだ?」
張飛ガンダム「…あん?誰ってそりゃあ…………誰だっけ?」
関羽ガンダム「…独り言を呟いている暇があるのであれば兵連の一つでも行ったらどうだ?御使い殿や劉備殿を見てみろ」
張飛ガンダム「……?」
促された張飛が平原に目を配ると…。
劉備&一刀「―――ゼンタイミギニナラエ!!」
歩兵1「―――ハイ!」
歩兵2「―――ハイ!」
歩兵3「―――ハイ!」
歩兵4「―――ハイ!」
以下同文……。
張飛ガンダム「おーおー。堂に入ってるこって」
関羽ガンダム「感心しとらんでお前も動かぬか。現状ただでさえ人手が足りぬのだ、人員を遊ばせておく余裕なぞ我等には無い」
張飛ガンダム「そりゃわかんだけどよ…どうにも俺ぁ他人に物事を教えるってのが苦手でなあ…口より先に手が出るタチで」
関羽ガンダム「今までがそうであってもこれからもそれでは我も劉備殿も御使い殿も困る。…軒をお借りしている公孫賛殿は"あの通り"忙殺されている故、現状兵連に赴けるのは我等だけなのだぞ」
張飛ガンダム「まあそりゃあ、流浪の俺達に兵力周りの事を任せてくれんだから余程信頼されてるってのは俺でも解るさ…流石は"アニキのアニキ"って事か」
劉備のアニキの連れなだけで素性も録に解らぬ自分達にもこうして仕事を任せてくれる、公孫賛という人物。
出会って間もない間柄ではあるが、張飛は彼のことを早くも尊敬し始めていた。
張飛ガンダム「しっかし、まあ―――」
まさか黄巾党が"あんなこと"になるなんざなあ―――…。
結果から先に言わせて貰うのであれば。
民を苦しませていた、俗に言う"黄巾の乱"は…。
その構成員の尽くが討ち果たされる、或いは近隣の村や街へと落ち延びるか、また或いはその地力を惜しんだ地方豪族達の兵士へと帰順するなどして…。
今やその影響は殆ど無と化してしまっていた。
何故このような結末になってしまったかと言うと…。
黄巾の乱の首謀である頭目・"張角"とその配下・"張遼"と"張宝"。
その尽くが…。
―――ある日忽然と姿を消してしまったのである。
録に下知も聞かずに「中黄太乙!!」と叫んで略奪ばかりしていた彼等であったが、"首領消失"という一大事は(幹部まで消え失せたが為に情報統制が間に合わずに)直ぐに三璃紗全土を駆け巡った。
黄巾党1「張角様はいずこへと消えられたのか!?」
黄巾党2「我等をお見捨てになられたのか!?」
黄巾党3「馬鹿な、そんな事などありえぬ!!」
ある者は"張角様は天上へと入定なされたのだ!"とその神意性に縋ろうとし。
またある者は"もう黄巾党はおしまいだ!"と悲嘆に暮れ。
或いは変わらず"そんなの関係ねえ!"とばかりに変わらず略奪に走る者。それを止める者。
上から下へのてんやわんやの大騒ぎとなった。
その混乱の極みの中、間隙を縫うようにして官軍や地方の氏族等は彼等に対し一大攻勢をかけた。
幾ら内情が腐敗しかけているとはいえ、弱った獲物を逃すほどに愚かでも無く。
その後の顛末は上に書いた通りとなり。
こうしてかなりの年季に渡り三璃紗を脅かした"黄巾の乱"は、一先ずの終結を持ってその幕を下ろす事になった。
…が。
それで終わる程戦国の世というのは優しい物では無かった。
あくる年、時の霊帝が居城を構える都において、其の霊帝が崩御したとの報が各所に発せられる。
黄巾の乱以上の衝撃が三璃紗に走り、更に聞く事に寄れば其の死の原因は病死ではなく何者かによる"暗殺"が濃厚であるとされ。
それを指揮したとされる男の名は―――…。
―――"董卓"と言った。
彼は霊帝の重臣の一人である"何進"という男を懐柔すると、己の息のかかった者達と共に瞬く間に都・"洛陽"を掌握せしめた。
霊帝の息子である"幼帝"さえも手元に置いた董卓に対し逆らえる臣下は誰もおらず、反逆を企てた者はその全てが董卓と配下の"李儒"によって無残な死を遂げさせられた。
その暴虐さは留まる事を知らず、遂には洛陽に住む民草にまでもその矛先が向けられる事となる。
しかしそのような行状を知った周辺諸侯の貴族豪族達はこぞって。
"董卓討つべし!"
という気運を昂め、遂には"半董卓連合軍"という一軍を形成するに至った。
無論、連合軍には劉備を筆頭とする一団も所属しており。
そしてその盟主となったのが―――…。
公孫賛イージーエイト「―――全軍!攻勢をかけよ!!何としても陽の落ちる前にこの"虎牢関"を抜けるのだ!!」
歩兵達「「「―――おおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!」」」
一糸乱れぬ動きで董卓軍を討伐せしめるは公孫賛率いる白馬の軍。
そして。
その前方、第一線では。
関羽ガンダム「ぬうおおおおおおおおおおおっ!!!」
関羽が手持ちの偃月刀を振るえば歩兵の首が幾つも飛び。
張飛ガンダム「ちぇいりゃああああああああああっ!!!」
張飛も負けじと槍を繰り出すその様は"燕人"の名に相応しく。
劉備ガンダム「深追いは禁物だ、俺達は慎重に歩を進めれば良い!!」
後方の陣では劉備が率先して兵達へと激を飛ばしていた。
当初は練度を心配されていた歩兵達も、前線で見事な舞を繰り広げる関羽と張飛に勇気づけられ、今や確固たる一軍と化していた。
さらにその横では。
一刀「……………………、」
渋面を作りつつ戦いを見つめている、天の御使いこと北郷一刀。
凄惨な戦場に怖気づいたのか、否。
劉備ガンダム「……どうしたんだ、一刀?」
その姿に疑問を抱いた劉備が何事か尋ねても。
一刀「……ああ、いや、なんでも……」
と一旦は否定するが、
一刀「…………、」
直ぐにまた眉間に皺が出来ていく。
その上。
一刀「なんで…ここは…それに…」
ぶつぶつと何やら呟く始末。
劉備ガンダム「(…………)」
今は戦場に居る為踏み込んで聞く事は出来ないが、この一刀の態度は些か以上に気にかかる。
思えば連合軍に参加した時から妙だった。
劉備ガンダム「(そう、あれは確か…)」
連合軍が正式に発足する前。
公孫賛から呼び出しを受けた劉備が喜びの表情で一同を集めた時のこと…。
~~~~~~~~~~~~~~~~
一刀「―――へ!?公孫賛…さんが"反董卓連合の盟主"に!?」
劉備ガンダム「ああ!今しがた正式に下知されたそうだ!聞けば俺達もその席に加えてくれるってさ!!」
張飛ガンダム「するってえと俺達も…遂に一軍を任せて貰える機会に恵まれたってコトだよな!!やったな劉備のアニキ!!」
関羽ガンダム「いつの日か民草の為に力を奮う事が出来る…信じて旅を続けてきた甲斐がありましたな!」
等と、各々感慨深くしている横で…。
一刀「…………、」
一刀は一人、顎に手を当て何やら物思いに耽っていた。
そして。
一刀「……あの、さ。こういっちゃ何なんだけどさ…」
劉備ガンダム「…うん?」
一刀「公孫賛…さん、の所って家柄が余りよく無いとかで厚遇されてないって話を聞いたんだけどさ…」
一刀「他に白羽の矢が立たなかったの?例えば…そう、"袁紹"とか、"曹操"の所とかさ…」
張飛ガンダム「……"えんしょー"?"そーそー"?」
関羽ガンダム「…聞いた事の無い御仁等ですな。知り合いで?」
一刀「知り合いってワケじゃないんだけど、どっちかって言うと家柄で有名っぽそうな…カンジっていうか」
劉備ガンダム「…………ああ!」
ポンと、劉備が思い出したように手を叩く。
劉備ガンダム「そういえば公孫賛のアニキが呟いてたな…」
一刀「ど、どんなことを!?」
ガバッ!、と一刀は身を乗り出して劉備の発言に注視する。
劉備ガンダム「何でも―――…」
―――この所、位の高い所の嫡子や親戚がこぞって行方不明になってしまっている事件が相次いでいるとか何とか―――。
劉備ガンダム「後…"江東の知り合い"に援軍を頼もうとしたけれど、そこも音信不通になってしまっているとも…真偽を確かめたくともこの時勢じゃそれも…」
一刀「…………、」
張飛ガンダム「それで公孫賛のダンナにお鉢が回って来たってか?」
関羽ガンダム「例え生まれがどうであれ、公孫賛殿の人柄は我等が良く知っておる。決して兵達をぞんざいには……如何した、御使い殿?」
一刀「……………、」
関羽が気遣うように発した声も、一刀には聞こえてはいないようだった。
呆然としたように立ち尽くす彼は、漸く口より一言だけ。
――――――曹操が、居ない……?――――――
そう、発した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本日はここまでです。
(はぁ~!)袁家もねえ!曹家もねえ!頼りのツテの孫家もねえ!
華雄もいねえ!呂布もいねえ!だけど突破だ虎牢関!!
…唯の関羽&張飛無双ですな本当にありがとうございます。
次回は虎牢関突破後か他の2国の方々は何処行っちゃったの?い焦点を当てられれば。
それでは。
欲を言えば、張兄弟達による「木星合体!!」の件は削りたくは無かったのですが、あの3人は別に役目を用意してあるのでそちらでどうにか。
…つくづく思うに呂布の居ない虎牢関っつーのも味気無いなあ。(華雄から目を逸らしつつ)
この組み合わせはwwww
期待
恋姫側も出てくるのかな
三国伝か、恋姫のどっちかにしか出てこないのって、世代が違うのと司馬ビー以外だと誰かいたっけ
本日の分投下します、洛陽攻略戦序章まで。
…実は物語は未だプロローグの域を出てなかったりします。
おかしい、どうしてこうなった。
>>51
割とそれなりに居たりします。
恋姫の方には「魏」であれば徐晃やら張郃やらが居ないですし、「呉」ですと長沙四騎衆の幾人かが欠けてたり。
…容量がキツいんでしょうなあ、色々と。
三国伝だと確かに司馬懿が筆頭になりますなあ。他だと…胡軫とか李儒とか、だったかなあ…。
公孫賛イージーエイト「逃げる者は追わずとも良い!降伏した者に対する狼藉も許さぬ!!」
歩兵達「「「―――ははっ!」」」
虎牢関における戦の勝敗は、董卓側の兵達の士気が極端に低い事もあり、公孫賛率いる連合軍の大勝となった。
都への侵入口となる関所付近においては、実力のある武将が尽く関羽と張飛によって迅速に打倒された事も大きな手伝いとなった。
故に、連合側の死傷者は殆ど無いに等しかった。
劉備ガンダム「二人共、お疲れ様!公孫賛のアニキも二人の働きぶりに感動してたよ!!」
張飛ガンダム「へへー!まだちょいと暴れ足りねえけどな!どいつもこいつも、まるで歯応えがありやがらねえ」
関羽ガンダム「拙者達はなすべき事をしたまで。お二人こそ董卓兵達への説得、見事の一言でござった」
一刀「ま、まあ。殆ど劉備のお手柄だったけどさ…」
実際の所、公孫賛陣営に投降してきた董卓兵の多くは劉備と一刀の演説による所が大きかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
劉備ガンダム「―――聞け、董卓兵達よ!我が名は幽州の北斗七星、劉備玄徳!!そしてこの隣に逐わすのは天よりの御使い様であらせられる!!」
一刀「(……………!!)」※精一杯背筋を伸ばしてます。
董卓兵1「あれが天の御使い様だって?」
董卓兵2「なんか普通のガキっぽいぞ?」
董卓兵3「だが着ている物を見ろ。何やら神々しい輝きがあるような…」※唯の学生服です。
董卓兵4「顔つきも俺達とは大分違うな」※人間とMS族じゃそらね。
董卓兵5「本当に、天から来たのか…!」
―――ザワ…ザワザワザワ…!!
じわりじわりと話は伝播して行き、そこを劉備が畳み掛けるようにして。
劉備ガンダム「俺達は悪に虐げられる民草達の為に剣を取った。だがお前達はどうだ?何の為に戦っているんだ?都では今正に董卓によって非道の限りが尽くされているという…」
董卓兵達「「「「………」」」」
劉備ガンダム「それを間近で見て来たお前達の心は何も感じないのか?そんなに董卓が怖いのか?今ここで俺達を退けた所で次に暴虐の牙に晒されるのはお前達一人一人の家族かもしれないんだぞ!!」
劉備の熱の篭った演説に、董卓兵の戦意がみるみる内に萎んで行く。
董卓兵1「…洛陽には母がいるんだ」
董卓兵2「俺は妹が…」
董卓兵3「息子が…」
董卓兵4「だが裏切ればそれこそ董卓は家族の命を奪うぞ?」
董卓兵5「しかしこのまま従い続けていても結果は同じだ」
―――「そうか…」「そうだ…」「そうだな!」
―――カチャン!
董卓兵達「「「―――我々は連合軍に降伏する!」」」
徐に武器を捨て始めた董卓兵達は、次々と連合軍に寝返って行ったのだ。
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張飛ガンダム「いやー、あん時のアニキと御使い殿の顔。正に"侠"の顔だったぜ?」
劉備ガンダム「よ、よせよ張飛。ただ俺は少しでも犠牲のないよう必死に…」
関羽ガンダム「…ん?如何なされた、御使い殿」
誰もが戦勝ムードに浮き足立ち、先の明るさに笑顔になっているに対し。
一刀「………、」
一刀だけは渋面のままに。
一刀「―――本当に、"呂布"はここに居ないんだよね?」
仕切りにあちらこちらで"呂布"という単語を口にしていた。
張飛ガンダム「ま~たそれかよ、御使い様よう。"りょふ"だか"ぎゃふ"だか知らねえけど少し気にしすぎじゃねえか?」
関羽ガンダム「…我等が戦っていた関所付近では"呂布"と申す武将の姿は何処にも見られませんでしたな」
劉備ガンダム「そんなに、"呂布"という武将は凄いのかい?一刀」
一刀「…凄いというか、なんというか」
三国志における最強の武将と言えば?
という問を投げかければ紛れもなく上位に君臨するであろう知名度を誇り。
歴史の授業をサボり気味だった一刀であっても名前を覚える程の豪傑。
それが"呂布"なのだ。
一刀「(や、実際に会った事無いから良く解らないのも事実なんだけど)」
まあ、会ったら会ったで大変な事になる気がするが。
何しろ本で伝わる逸話だけでも人を頭から食べてしまいそうなくらい苛烈なのだ。
裏切りが代名詞でありながら三度の飯よりも戦が大好きという、正に戦闘狂を体現したような武将。
そんな男がこの時節にも関わらず戦場に姿を見せていない。
しかも、捕虜にした董卓兵に問うてみても。
董卓兵(捕虜)『…某は董卓軍に所属してそれなりに経つが、そのような侠の話はトンと聞いたこともない』
…との事だった。
曹操や袁紹、孫堅等といった三国志に名を残す武将達の不在もさる事ながら、今回における呂布の消失。
おかしい。どう考えてもおかしすぎた。
だが、幾ら違和感が募ろうとも今の一刀ではそれを解き明かす事は叶わない。
少々腕に覚えがあるからと言って一人旅が出来る程優しい世界ではない事は今までの行程で十分に思い知っている。
一刀「(少なくとも今は…未だ劉備達と一緒にいるべきだな…)」
一刀「(兎に角ももう暫くの間は、董卓征伐に集中しよう、うん)」
自分の知る"三国志"という物語から既に大分逸脱してしまっている。
余計な情報であたら劉備達を混乱させるような事は避けた方が良いだろう。
一刀「(…とはいっても、それじゃあ俺の利用価値はほぼゼロだよな…)」
知識が使えぬのであれば、これから先は出たとこ勝負となる。
一応、天の御使いというアドバンテージがあるがそれだっていつまで使えるか怪しい…。
一刀「(…何とか、出来ればいいんだけどなあ)」
関羽ガンダム「……"呂布"……"呂布"……か」
張飛ガンダム「あんだよ鬼ヒゲ。アンタも御使い殿みたくぶつぶつぶつぶつ呟く癖でもついちまったのか?」
一刀「…俺、そんなにぶつぶつ言ってる?」
張飛ガンダム「割と」
関羽ガンダム「……いや、何でもない。さ、まだ戦いは続いておる故、取り急ぎ公孫賛殿に合流しようぞ」
そう言ってはぐらかしたものの。
関羽ガンダム「(……呂布……)」
未だに関羽の脳裏には"呂布"という単語が渦を巻いていた。
心が騒めくというか、"忘れてはならぬ"と自分の身の内の何かが警鐘を鳴らしているというかそんな曖昧な錯覚に囚われるようでもあり。
……かくして、一刀の心の溜息や関羽の瞠目を尻目にその後連合軍は快進撃を続け。
反董卓連合軍の戦場はあっと言う間に。
決戦の地、洛陽へと移る―――…。
―――宮廷・最上部。
???「………。」
"男"は大広間に鎮座された宮廷椅子に腰掛けつつ、手に持った大杯をグビリと飲み干した。
その瞳は洛陽の空へと向けられながらも、何の情念も抱かずに、ただ無言で次の酒を開け放つ。
―――ドタドタドタドタドタ…!!
やがて大広間に何者かの足音が響くと、入口より一人の男が姿を現した。
額には珠のような汗が浮かび、手に持った扇でせわしなく頬を仰ぎ、息は絶え絶え。
余程急いでここへ来たというのがありありと見て取れる。
だがそのような様にも関わらず、宮廷椅子の男は乾いた口調で言い放った。
???「―――"李儒"か。何用だ?」
駆けつけた男の名は"李儒シャッコー"。
洛陽の軍事全てを司る"軍師"であり、尚も酒を仰ぎ続ける男の腹心の部下とも呼べるべき存在である。
即ち、宮廷椅子に座っているこの男こそが…。
暫く肩で呼吸をしていた李儒は数刻置いて息を整え辛うじて一礼をすると、矢継早に。
李儒シャッコー「"何用だ"?ではございませぬ!先程からの都の"異変"、四方や聞こえぬワケではありますまい!?」
己が"主人"に向け注進した。
李儒シャッコー「―――"董卓"様!!!」
董卓ザク「………、」グビリ
李儒からの報告に対し、彼の主人でありこの洛陽の支配者である男……"董卓"は、黙して酒を飲み続けた。
無視をした訳ではない。
そんな事などはとうに理解していた。
城下より響き渡る"あの音"。
"―――ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお……………!!!"
幾重にも重なり合う怒号と地鳴りの連鎖が、波のように宮廷へ押しかけてくるのを感じる。
原因などたった一つしかない。
官軍の残党どもの寄り集まりが、正に今洛陽を攻め立てているのだろう。
董卓ザク「……我が軍勢はどうした?」
李儒シャッコー「そ、それは……」
気だるげに董卓が尋ねると、恐る恐る李儒は董卓軍の大半が連合軍へ寝返った事を伝えた。
董卓ザク「………役立たず共が、まあよい。残った兵達を全員投入せよ、不届き者共を押し返せ」
李儒シャッコー「……は!?」
思わず李儒は聞き返してしまった。
今、この男は何と言った?―――全軍?まだこの情勢をどうにか出来る物と考えているというのか。
最早都を捨て逃げるかどうかという段階なのだ。
しかも。
李儒シャッコー「お、恐れながら董卓様。あの連合軍等めに対抗できる戦力は、最早我等に残されてはおりませぬ」
たった今そう伝えたではないか。
思わず怒鳴りつけたくなる衝動をどうにかして押さえつけ、尚も申し開く。
だが。
董卓ザク「―――城下の者共が残っておるだろうが」
李儒シャッコー「―――は?」
今度こそ、李儒の思考は真っ白に停止した。
董卓ザク「女だろうと子供だろうと構わぬ。武器を持たせて突撃させれば少しは戦力になろう。…拒否すれば斬り付けてでもやらせれば良い」
呆然とする部下などおかまいなしに、淡々と董卓は自らの考えを伝えた。
現状都へ住まう人間の数は数万、それら全てを戦場へと投入すれば、なる程数の上では連合軍に拮抗出来よう。
―――出来れば、の話だが。
李儒シャッコー「お、おたわむれを……」
乾いた笑いで、辛うじて李儒は遠まわしに"否"と答えた。
事態は逼迫し過ぎている上、それをした所で100%勝利できる保証など何処にも無い。
失敗すればそれこそ家族を利用された兵員や、生き残った住民に粛清される未来など決まったような物だ。
いかに董卓に引っ付いて悪逆非道の限りを尽くした李儒とはいえ、そのような提案等到底飲める訳が…。
董卓ザク「―――冗談と思うてか?」
李儒シャッコー「………!!!???」
"くらり"と。
大広間の温度が数度冷えたかのような錯覚に捉えられた。
気だるげな態度と酒を手放さぬ無気力な態度は変わらずに。
ただ、黒々とした漆黒の瞳だけが李儒を射抜く。
その無言の圧力が、李儒に主人の言うことが何処までも本気であるという事を惜しみなく理解させた。
李儒シャッコー「じ、時間を稼いで我等だけで逃げるというのですね…!流石は董卓様…!!」
悪あがきと思いつつも、最後の抵抗とばかりに口を開くが。
董卓ザク「李儒―――」
―――ワシは不届き者共を皆殺しにせよ、と言っておるのだぞ?
ピシャリと。
真っ向から斬って捨てられた。
逃げるな、留まり、戦え。
ようはそういう事だ。
李儒シャッコー「~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」
我慢の限界だった。
"この男"が何を言っているのか最早徹頭徹尾理解出来ない。
追い詰められすぎて頭がどうにかなったというのか?
腐っても自分は軍師だ。
知恵を繰り、敵を陥れ粉砕する事こそが至上である。
勝ち目と逃げ目が残っているというのならばまだ力を尽くすことにやぶさかではない。
だがこれは、これは決して違う。
違うモノだ。
"あの男"のように皆が皆戦闘狂では―――…。
―――…はて。
―――"あの男"とは一体、誰の事であったか―――?
董卓ザク「―――李儒よ」
李儒シャッコー「…………はっ!?」
董卓ザク「…ワシの命令に従う気があるのか無いのかハッキリせい」
李儒シャッコー「……………………、」
うろんな瞳を向け続ける主人に、ギリと臍を噛んだ李儒は董卓の方へと向き直ると。
李儒シャッコー「…おふざけは大概にしてくれ…」
あらん限りの声で、叫んだ。
李儒シャッコー「私は軍師であり―――自殺志願者では決して無い!それ程までに勝ちたいと言うのであれば董卓様…いやさ、董卓!!貴様自身が戦場へと趣いたらどうだ!!私はもう貴様に従うことなど出来ぬわ!!」
董卓ザク「…………、」
配下の怒りをどう捉えたか、董卓はグビリと杯を飲み干すと―――…。
―――ズドム!!
李儒シャッコー「…………………………………………はい?」
強い衝撃が身体を通過した感覚と。
―――胸部に空いた黒い穴。
それが最後に李儒が感じた全てであった。
李儒シャッコー「あ………………が………………」
―――ドサッ…。
膝から崩れ落ち、物言わぬ物体と化した元部下に、主人は。
―――ならばお前の注進の通りにしてやろうぞ―――李儒よ。
たった一言だけ言い残すと、それきり李儒の死骸には一瞥もくれずに。
董卓ザク「………………………、」
―――グビリ!
再び酒を煽り始めた。
本日はここまでです。
いやーねえ酔っ払いってばシラフの人に直ぐ絡んで。(違
次回は洛陽決戦。
おや、とーたくさんの、ようすが…?
それではこれにて。
本日分投下します。…こりゃ今月中にプロローグ終えられるか微妙になってきたな…。
―――洛陽城下町。
公孫賛イージーエイト「全軍かかれーい!!目的は飽くまでも首魁・董卓の首一つぞ!!民や街には決して危害を加えてはならぬ!!」
公孫賛兵「「「―――うおおおおおおおおーっ!!!」」」
―――┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨…!!
董卓兵1「き、貴様等ぁ!逃げずに応戦せぬか!!」
董卓兵2「冗談じゃねえや!あんな大群にこれっぽっちでどう戦えってんだい!!」
董卓兵3「命あっての物種だあ、俺ぁ逃げるぜ!!」
最早董卓陣営は"軍"としての体裁を成しては居なかった。
正門から雪崩込む公孫賛兵の勢いを見ただけで逃げる者が後を絶たない始末。
城下では僅かとなった董卓兵の相手を公孫賛等が勤め上げている、その頃。
董卓討伐の先陣はへと赴くは。
―――宮殿外・広場。
張飛ガンダム「―――おらあああああああああ!どけどけどけ雑魚共!張飛様のお通りだあああああ!!」
群がる敵兵を槍で敵を打ち払うは。
―――"燕人"、張飛翼徳。
関羽ガンダム「ここを突破出来れば、残るは宮殿・大広間……!!」
偃月刀片手に主人の道を切り開くは。
―――"鬼の武神"、関羽雲長。
劉備ガンダム「そこに董卓が…もう一息だぞ二人共!!」
二人の介添えを受け、一直線に長階段を駆け上るは。
―――"龍帝"を継ぐ者、劉備玄徳。
この3名であった。
張飛ガンダム「…しっかし御使い殿を本陣に置いてきちまって良かったのかねえ?」
関羽ガンダム「…仕方あるまい、ここは此度の大一番。激化して行く戦で御使い殿を守って戦う余裕は、例え拙者であっても些か以上にキツい」
劉備ガンダム「それに、留守番とはいえ公孫賛のアニキの直衛なんだ。アニキだったらきっと一刀を守りきってくれるさ」
―――そして。
関羽ガンダム「…見えた!劉備殿、あれこそが…!!」
劉備ガンダム「宮殿内部への入口か!よおし!!」
更に速度を上げ、一息に―――階下を登りきった。
張飛ガンダム「―――張飛、一番乗りぃ!!」
関羽ガンダム「(それはお前の台詞ではなかろう)」
劉備ガンダム「董卓は何処だ……董卓!!!」
城下では未だ公孫賛軍が戦いを繰り広げている。
この戦が開戦してから大勝を続けて来たとはいえ、犠牲となってしまった者達は決して少なくはない。
その者達の想いに報いる為にも、ここで悪逆董卓を何としても逃がすワケにはいかないのだ。
広々とした宮殿内部を探るべく、第一歩を踏み出そうとした劉備達であったが、その時。
―――暗がりに倒れ込む"何か"の存在に気づいた。
李儒シャッコー「―――――――――、」
張飛ガンダム「うおっ!?こ、こいつは……?」
関羽ガンダム「この風貌と服装から察するに、コヤツは確か"李儒"……!」
張飛ガンダム「李儒って、董卓軍最凶軍師と呼ばれた、あの悪名高い……!?」
劉備ガンダム「そんなヤツがどうして、こんな……」
劉備たちが困惑していると。
―――何奴だ?
大広間の最奥から声がかかった。
思わずその方を向けば、酒を片手に劉備達を睨めつける初老の男が豪奢な椅子へ鎮座していた。
誰だ、などと問いかける必要などは無い。
この情勢で、宮廷椅子へと座る人物などこの世にたった一人しか居ないからだ。
劉備ガンダム「お前が―――董卓だな!」
劉備は剣を抜き放つと、眼前の男に向け念押しのように断言した。
董卓ザク「……そうだ、いかにも余は董卓だ……」グビリ
そんな強気の態度にも関わらず、取り立てて気を悪くした風も無く。
男―――紛れもなく"董卓と名乗った―――は、杯に口をつけつつ気だるげに答えた。
劉備ガンダム「………?」
特に狼狽えた様子も無い董卓に、劉備は思わず首を傾げてしまう。
己に向けられた刃が見えてないのだろうか?
いや、そもそもとして。
董卓「…………………、」
眼前の男は、劉備自体を見ているのか。
それともいないのか。
それすらも怪しかった。
張飛ガンダム「…あすこで転がってる李儒の死体は、テメエの仕業か?」
その態度が癪に触ったのか、張飛が槍を構えたまま一歩前へと進み出る。
董卓ザク「……………いかにも」
威圧的な張飛の言動にもどこ吹く風で、"それがどうかしたのか?"といった感じに董卓は肯定し。
関羽ガンダム「何故、かような事を?」
董卓ザク「…余の命令に逆らったから…とでも言えば良いか?」
関羽が投げかけた質問に対しても、いかにも事務的な…悪く言って無機質全とした口調で言い捨てる。
劉備ガンダム「…!た、たったそれだけで…李儒はお前の右腕じゃなかったのか!?」
董卓ザク「……………、」
血も涙も感じられない董卓の言質に絶句する劉備にも、やはり董卓は無言。
関羽ガンダム「かような戯言を弄しながら…貴様は洛陽の民も、霊帝のお生命も愚弄し続けて来たというのか!?」
董卓ザク「……………!」
―――ピタリ、と。
口に運ぼうとした杯の動きが止まった。
怒気を孕んだ関羽の言葉の中にあった、一つの単語を耳にした途端、ポツリと。
董卓ザク「…………霊、帝?」
瞬間、この大広間で対峙してから始めてと言える感情の揺らぎを見せた。
張飛ガンダム「そらっとぼけてんじゃねえよ!テメエが暗殺した都の王様のこったよ!!まさか忘れちまったとは言わせねえぞ!!!」
関羽ガンダム「それだけでは無い!貴様が霊帝暗殺の際に強奪した聖印・"金玉璽"……その所在をいずこへと隠した!?」
漸くまともに話が通じるようになったかと、ここぞとばかりに関羽と張飛は糾弾した。
…しかし。
董卓ザク「…………フ、フフフフフ………」
三人「「「―――?」」」
董卓ザク「くひ、ヒヒヒヒヒヒヒ………」
―――クヒャーッハッハッハッハハハハハハハハ…!!!
張飛ガンダム「な、何だ……?」
関羽ガンダム「…………、」
劉備ガンダム「と、董卓……」
董卓ザク「―――ハ、ハハハハハ…!ファハハハハハハハハハハハ!!!」
一体何がおかしいのか、董卓はタガが外れたかのようにゲタゲタと笑い転げていた。
董卓ザク「ヒッヒッヒッヒッヒッヒヒヒ……」
やがて。
董卓ザク「――――――グリン!」
三人「「「―――っ!?」」」
唐突に、バネ仕掛け人形のような動作で首を動かすと。
董卓ザク「―――さて」
董卓ザク「貴様等は一体何者ぞ?」
始めて。
この場に居る自分以外の人間を認識したかのように、問うた。
劉備ガンダム「幽州の北斗七星…劉備玄徳!!」
関羽ガンダム「その義兄弟、関羽雲長!!」
張飛ガンダム「右に同じく、張飛翼徳様よ!!」
三者三様に、気圧されてなるものかと腹に力をいれ、名乗りを上げる。
董卓ザク「…劉備…そうか……貴様が…ククク…」
董卓ザク「―――それで?貴様等この洛陽に何をしに参った?」
張飛ガンダム「てめっ―――頭がどうかなってんじゃねえのか!!俺達ゃテメエを討ちに来たんだよ、討・ち・に!!」
敵の大将を追い詰めておいて、世間話をしに来たというワケではあるまいに。
董卓ザク「そうか…クックック…それはそれは…態々ご苦労な事だ」
張飛ガンダム「~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!」
ギリギリギリという張飛の歯ぎしりがここまで聞こえてきそうだった。
普通、お前討つと言われれば恐怖で顔がひきつるなり激昂して襲いかかるなり悪党なら当然とする行為を、董卓は一切行わおうとしなかった。
まるで、"そんなものなどに興味はない"とでも言うかのように。
関羽ガンダム「…………(コヤツ…)」
その異様さに、関羽は己が手に持つ偃月刀に微かに力を込め始めた。
妙な動きをすれば直ちに首を跳ね飛ばせるように。
すると。
董卓ザク「さて―――そこの貴様、確か関羽とか申したな?」
関羽ガンダム「(…!気取られたか!?)」
南無三とばかりに董卓に対し飛びかかろうとするも。
董卓ザク「確か先程貴様は"玉璽"がどうとか言っておったなあ?それは……」
董卓ザク「―――これの事か?」
関羽ガンダム「―――!!!」
董卓が取り出したモノを見た瞬間、関羽の強張りが強制的に解かされた。
金色に輝く龍の意匠を施された印…あれぞ正しく、時の皇帝がその身分を顕す証明とも言うべき神器。
金玉璽そのものであった。
董卓ザク「貴様等、コレが欲しいというのであろう?なら―――」
―――欲しければほれ、呉れてやろうぞ。
張飛ガンダム「…………!!」
劉備ガンダム「………なっ!?」
関羽ガンダム「…………何っ!!」
董卓は手に持った玉璽を、それこそ道端の石ころを投げるような感覚で放り捨てた。
―――カラ…カラ…カラン…!
玉璽はそのまま、磨き抜かれた大伽藍の床に滑り落ち、乾いた音を辺りに響かせた。
劉備ガンダム「なっ、何てことを…!!」
関羽ガンダム「―――董おぉぉぉぉぉぉぉ卓うぅぅぅぅぅぅぅぅ―――ッッッ!!!!」
激一閃。
偃月刀を砕かんばかりに握り直した関羽は跳躍し、一息に董卓が鎮座する場へと迫る。
玉璽とは即ち三璃紗の歴史そのもの。
先人達が造り上げて来た想いを、土足で踏みにじるような行為に、関羽の怒りは頂点へと達した。
最早この暴虐の徒を生かしておく理由は微塵も無い。
董卓ザク「……………、」
そんな時にあって、尚も董卓はその場を動かずにいた、いや関羽の気迫に推されて動けぬのか。
だが、そんな事はどうでもいい。
ありったけの力を込めたこの偃月刀の一撃で死んだことすら気付かぬ内にあの世へ送ってくれようぞ。
関羽ガンダム「逆賊董卓!!その首級、この関羽雲長が貰い受ける!!!」
―――ガキィィィィ!!
大広間に、金属を叩きつけたような鈍い音が響き渡った……。
本日はここまで。関羽殿ユニヴァース!!
友人から"一刀要るのん?"ってツッコミが入りまして。
一応一刀の技能としては説得や交渉等の際に居るだけで該当者のカリスマに上方修正がかかります。
それこそ曹操とかに使わせればそれはもうすんごい程。
だから要る意味は十二分に…いや無論活躍もします。主に次の次ぐらいで。
???「本当です!信じてください!!」
それではこれにて。
今日はちょっと早めに投降。
せめてプロローグ終了までは頑張らんと…。例え誰が見てなくとも…。
―――洛陽周辺・公孫賛軍、本陣。
一刀「…………劉備達、無事かなあ」
洛陽より数理程離れた箇所に設置された陣幕の一つでは、天の御使いこと北郷一刀が祈るように怒号に包まれた都を見つめていた。
一刀「相手があの"董卓"とはいえ、呂布も居ない状態でそう苦戦することはないだろうけど…」
どうにもやきもきしてしまう。
自分があそこに付いていったって足手まといだというのは十二分に解っている。
しかし、それでも…。
苦楽を共にした仲間の安否を、安全圏から願うしか出来ないというのは侠として、些か以上に情けなくなってしまう。
一刀「はあ…」
そして、本日何度目か解らない溜息を…。
一刀「…ん?」
―――ズキン…!
何だろう。
今、胸のあたりがキュッっとなったような…。
一刀「…心配のし過ぎで疲れが溜まったのかな。まだ若いのに…」
机にある水瓶を取ろうとして。
一刀「あっ―――っつ…!!」
続く刺すように鋭い頭痛に顔を顰めた。
一刀「な、なんだ、こ…れ…?」
―――そして、瞼の裏に焼き尽くは。
―――漆黒の空間でせめぎ合うようにしてぶつかり合う。
―――3つの光の珠。
一刀「(一つは……"劉備"!?それじゃ、もう"二つ"は……?)」
―――映像は次々に移り変わる。
―――赤い大地を彩る炎。
―――洛陽のような大国が近隣の村を襲撃する様。
―――自分の身体が、三璃紗以外の別の大地を踏みしめている映像にもなった。
―――あれは、女の子?
―――自分に付き従うように寄り添い歩く、桃色の髪をした…。
―――そして。
―――それらを覗き込むようにして輝きを放っている、漆黒の…。
一刀「―――ッ!!!…と、止まった…?」
そこで映像はプツリと途切れ。
同時に頭蓋を最病んだ頭痛もピタリと止んだ。
一刀「何だったんだ…?」
疑問を呟いてみても、今の自分に分かる訳もなく。
ただ。
一刀「(な、何だ…?)」
理由は解らない、先程の映像の影響だろうか。
心臓がバクバクと高鳴っている、先程の締め付けられるようなそれとは違う…これは、虫の知らせというべき物だろうか?
身の内より染み出す"何か"が己の足を動かそうとする。
―――"劉備の元に急げ、さもなくば大変な事になるぞ"、と。
一刀「い、急げと言ったって…!!」
陣幕から都を見れば、未だに怒号は鳴り止んではおらず。
殆ど董卓兵は居ないと聞いていても、自分が乗り込んでいって果たして敵と遭遇せずに董卓が居るらしき宮殿へと乗り込めるだろうか?
…成功率は限りなく低そうだ。
一刀「(かと言って、公孫賛さんに迷惑をかけるわけにもなぁ…)」
意見注進しようにも肝心の総大将は洛陽の中だ。
いっそ口先三寸で本陣の兵を丸め込むか!?
などと物騒な事を考えていた矢先―――。
???「―――失礼致す!天の御使い殿がおわす陣幕はこちらであらせられるか?」
一刀「……?」
こんな時に一体誰だろう?
声の様子からして、自分の知人ではなさそうだ。
返事をしたものかどうか一刀が迷っていると…。
???「我が主、公孫賛より御使い殿の様子を見て参れと申し付けられた故、御目通り願いたく…」
一刀「(公孫賛からの直接の使者だって?)」
これはある意味渡りに船だった。
相談すれば洛陽に居る公孫賛への連絡も容易いかもしれないと、一刀は一縷の望みをかけて陣幕を開け放つ。
そこに居たのは、自分に向かって礼儀正しく一礼をする―――…。
ある一人の"若武者"の姿。
???「直接お目に掛かることが出来、恐悦至極。私の名は―――」
―――宮殿内部、大広間。
―――ガキィィィィィ!!!
董卓の首を飛ばすべく放たれた関羽の渾身の一撃は。
関羽ガンダム「―――――――――、」
見事、悪逆の徒の首を両断―――。
劉備ガンダム「なっ……!?」
張飛ガンダム「なんだぁ……っ!?」
―――せしめなかった。
董卓ザク「……いかんなあ、関羽よ」
董卓の首の皮膚までほんの一寸。
だがその一息を。
どこからか手にした長剣で。
董卓ザク「ワシは玉璽は呉れてやると言ったが…命まではやるとは言ってはおらんぞ?」
止められて、しまっていた―――。
張飛ガンダム「あ、アイツ……!」
劉備ガンダム「董卓が、剣を…!?」
劉備に張飛も、目の前で繰り広げられた光景が信じられなかった。
関羽の全力の一撃を止めたのもさる事ながら、董卓という男はおよそ直接の武力で戦うような、武人タイプの侠では無かった筈だ。
それがここにきて…。
関羽ガンダム「――――――、」
関羽は、己の一撃を止められた事に一瞬思考が止まりかけるも。
関羽ガンダム「――――――!!!」
直ぐに持ち手を変え、今度は偃月刀の重みで鍔迫り合いを敢行した。
関羽の膂力と相まり、いずれ刃が董卓の頭骨にめり込むは必死の筈。
だが。
関羽ガンダム「ぬうッ――――――!?」
―――ガギギギギギギギギギ!!
金属と金属の擦れる嫌な音が鳴り響く。
何と董卓は椅子に座った状態でありながら、しかも片腕一本で両手持ちの関羽の圧力を押し返し始めたではないか。
劉備ガンダム「関羽……!!」
張飛ガンダム「お、おい何やってんだ鬼ヒゲ!?冗談だよな!?」
関羽ガンダム「…………!!!」ギギギ…。
張飛の激に対し、関羽は無言。
つまりは返事を返すことすら困難であるという状況。
董卓ザク「フハハハハ……どうしたどうした、関羽よ?」
そんな彼を嘲笑うように軽口を謳い上げる董卓。
関羽ガンダム「(―――!!ならば…!!)」
関羽はワザと手の力を緩めると。
董卓ザク「―――!?」
体勢を崩させ、その反動を使い。
董卓の身体を思い切り蹴たぐった。
そして。
―――ザシュッ…!!
返す刃で、董卓の武器を。
―――その腕ごと、宙へと飛ばした。
関羽ガンダム「まずはその腕一本、頂戴致す―――!!」
董卓ザク「――――――、」
切断面よりぶしゅぶしゅと激しい出血が迸り、それを呆然と眺める董卓。
張飛ガンダム「いよっしゃあ!流石は鬼ヒゲ関羽だぜぇ!!」
思わず張飛も拳を握って喝采を送った。
だが。
董卓ザク「………ふ、フフフフ………」
三人「「「―――!?」」」
董卓は、傷の痛みにのたうち回るでもなく、命乞いをするでなく。
董卓ザク「―――ハハハハハハハハハ!!!」
己の血にまみれながら、嗤っていた…。
劉備ガンダム「………っ」
張飛ガンダム「な、何だコイツ…。気味悪いぜ…」
劉備と張飛は、その異常性に思わず後ずさり。
関羽ガンダム「………!!」
関羽が今度こそ首を断とうと偃月刀を構え直した。
次の瞬間。
―――ぶしゅ…ぶじゅ、ぶじゅじゅじゅじゅじゅじゅじゅ…!!
―――突如、腕の切断面の肉が不自然に膨れ上がると、あっと言う間に出血を塞ぎ。
―――あろう事か、それによって新たな"腕"が形作られて行くではないか。
劉備ガンダム「―――なっ!」
張飛ガンダム「―――ん、だとぉ!?」
関羽ガンダム「これは……!?」
異変は、それだけでは無い。
膨張は、腕から頭部―――頭部から身体―――身体から足―――へと次々と伝播するように広がり…。
黒々とした体色が、血のように真っ赤に染まりあがる。
やがてそれは、"人間"というちっぽけな殻さえも打ち破り。
全身は、劉備達を見下ろして有り余るほどの巨体へと変貌して行く。
―――ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ! ! ! !
大広間に出現した、かつて董卓であった"何か"。
その、肩口の肉が再び盛り上がりを見せたと同時に…。
関羽ガンダム「むうっ―――!?」
張飛ガンダム「や、やべえぞアニキ…。何かやべえ!!」
劉備ガンダム「二人共、今すぐここから離れ―――!」
伽藍堂が、真っ白な閃光に包まれた―――…。
ここまでです。短くてすんません…。
魔王全として劉備に立ちはだかる董卓というのも何か新鮮…。
董卓は黒⇒赤になってますんで演者MSも変更ですがそれはまた次回にでも…。
それではこれにて。
ウボガァさんがラスボス全としているなんて・・・
これから恋姫キャラも出てくるのかな
ちなみに北郷はナイトのユニオン族みたいなSD体型なのか、それとも普通に八頭身なのかどっちのイメージですか?
>>125
普通に八頭身=人間という区分で書いてます。
それが物語の中で活かせるかどうかは微妙ですが…。
本日分投降します。
スランプ抜けて良かった良かった…。
―――ズドオオオオオオオオオオオオオ………ン!!!
公孫賛イージーエイト「―――!?」
遠方より鳴り響いた大音量に、思わず公孫賛は采配の手を止める。
公孫賛兵「―――と、殿!あれを…!」
公孫賛イージーエイト「むう…!」
部下が示した方に目を向ければ、宮殿の一角が崩れ落ち、もうもうとした煙が上がっているではないか。
公孫賛イージーエイト「何が起こったというのだ…!」
確認したくともここからではそれもままならない。
もしや、先行した劉備達の身に何かあったというのか。
公孫賛イージーエイト「……劉備……」
今は残敵の掃討に注視しているが故、迂闊にこの場を離れる訳にもいかず。
彼は、弟弟子達の無事を祈るように口中で劉備の名を呟いた。
公孫賛イージーエイト「…む?」
その時。
我が方の物と思しき白馬に乗った兵が"一騎"、戦列を離れ一直線に洛陽宮殿へと向かう様が目に止まった。
公孫賛イージーエイト「………あれは」
背が一瞬見えただけであったが、馬上に跨るその姿は紛れもない。
自分が良く知る……"ある男"の物であった。
―――宮殿外・広場
劉備ガンダム「―――……ふ、二人共…大丈夫、か?」
張飛ガンダム「……ああ、何とかな…」
関羽ガンダム「劉備殿も、ご無事で…?」
爆風によって宮殿外にまで吹き飛ばされた劉備達は、煙が立ち込めロクに視界が効かないながらも互いの無事を確認する。
そこに。
―――ハハハハハハハハハハハハ!!!
煙を押しのけ伸ばされる赤き巨腕。
劉備ガンダム「うっ!?」
張飛ガンダム「ちっ!?」
関羽ガンダム「うぬっ!?」
間一髪鋭い爪に引き裂かれる事を回避し、劉備達は体勢を立て直す。
空を切る腕はそのまま石畳の地面に深々と突き刺さり、それを起点とし。
噴煙の奥より、瓦礫を押しのけ赤き巨体を出現させた。
劉備ガンダム「……董、卓……」
董卓ザク(剛獣)「フフフフククククククク……生きているとは中々にしぶといヤツよのう、劉備よ」
その頭部こそ董卓の面影を若干残しているものの、隆々とした腕や足が、赤色となった身体と合わさって、其の様は故事に記された"鬼"のよう。
張飛ガンダム「どうなってやがんだ…アレが本当に"董卓"だってえのか!?」
関羽ガンダム「化生のモノが董卓に成り代わっていたとでも…?」
劉備ガンダム「どちらにせよ、あんな怪物を野放しにしていたら…」
洛陽どころか、この三璃紗という大陸自体がこの化物に蹂躙されかねない。
剛獣董卓「ならば今一度―――喰らうがいい!」
ボゴリ。
鬼の肩が蠕動し、黒々とした砲口を覗かせた。
劉備ガンダム「―――!いけない、また…!!」
察した劉備が二人に退避を促す。
―――剛獣。
―――滅 光 波ァ !!!!
吐き出された光の塊が、石畳へと着弾すると共に今一度の大衝撃を生み出す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――ズドオォォォォォォォォ……!!
一刀「ま、また揺れた…!?」
???「急いだ方が良さそうですな。御使い殿、しっかりとお掴まり下され!」
???「―――ハイヤァッ!!」
手綱を惹かれた馬が益々速度を上げると、目指す宮殿はもう間近まで迫る。
一刀「(無事でいてくれよ、劉備……!)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
董卓「―――むうん?」
妙な。
着弾した大穴付近に、劉備共の死骸が無い。
跡形もなく吹き飛んでしまったのか。
否。
劉備ガンダム「――――――!」
関羽ガンダム「――――――!」
張飛ガンダム「――――――!」
董卓「…ほほう?」
張飛ガンダム「(舐めんなよ!例え化物が相手だろうとな…!)」
関羽ガンダム「(然り!どちらにせよ、我等の行うことは変わらん!)」
劉備ガンダム「(ああ!二人の言う通り、俺達は―――…)」
―――逆賊董卓を討ち果たし、三璃紗を覆いし暗雲を晴らす!!
民の笑顔を取り戻すべく今日まで旅を続けて来た。
何としても、ここでこの戦を終わらせる。
張飛ガンダム「―――でええいやあああっ!!」
一番槍となったのは張飛。
後に続く二人の為に隙を造るべく間断無く蛇矛を突き出す。
―――ギン!キン、キイィィン!!
しかし、堅牢な肉体に阻まれてしまい穂先は愚か切り傷一つ入らない。
張飛ガンダム「か、かってええええ!何で出来てんだコイツの身体はよ!」
剛獣董卓「…フフフフ…」
その程度か?とほくそ笑む董卓に。
張飛ガンダム「何嗤っていやがる!余裕こくのは―――コレを食らってからにしやがれ!!」
張飛は、己の鎧の背後にある鉄の二枚羽を蛇矛へと装着させた。
頭上に掲げられた蛇矛が唸りを上げると、次々に雷光がその周辺へと纏わる。
―――爆ぁぁぁぁく裂!
―――大 雷 蛇 !!!
炸裂した雷撃が、大気を切り裂いて董卓へと向かう。
そして直撃。
閃光と火花が辺りを駆け巡った。
張飛ガンダム「見たか!これが張飛様必殺の一撃よ!!」
だが。
剛獣董卓「ぬうるいわああああああああああああああっ!!!」
雷光を受けて尚董卓の進撃は緩まない。
張飛ガンダム「―――ガアアアッ!?」
高速で繰り出された掌での一撃を返され、張飛の身体が紙切れのように吹き飛ぶ。
広場壁面にまで距離が及び、叩きつけられるようにして漸く勢いが止まった。
関羽&劉備ガンダム「「―――張飛!?」」
無事を確認せんと叫ぶが、巻き起こる粉塵の向こうはシンとして返答は返って来ない。
関羽ガンダム「おのれいっ!!」
二撃目は関羽。
偃月刀を煌めかせ、張飛の仇を取らんと肉薄する。
先立って張飛の攻撃は董卓の身体には通らなかった。
関羽ガンダム「(ならば、狙うは頭部!!)」
関羽ガンダム「受けよ、董卓―――」
―――鬼牙。
―――百 烈 撃ぃ !!!
魔獣の顔面を八つ裂きにせんと繰り出された数千の突き。
それが到達するよりも早く。
剛獣董卓「フハア―――ッ!!!」
ガバッ!と牙が生えた口蓋を覗かせ。
燃え盛る火炎を吐き出した。
関羽ガンダム「ぬううううううっ!?」
業火は関羽の鎧に肉体に、焼き尽くしてくれるとばかりにへばり付く。
そこを。
剛獣董卓「そんなに熱ければ、どれ―――扇ぎ消してくれよう!!!」
羽虫を払い散らすようにして殴打された。
関羽ガンダム「カハ―――ッッッ!!」
張飛と同く、関羽もまた瓦礫の向こうへと飛び消え去る。
劉備ガンダム「関羽うううううううううううっっっ!!!!」
叫ぶ劉備に。
剛獣董卓「後は貴様だけぞ…劉備?」
立ち塞がる魔獣。
しかして劉備の勇気は一向に衰えず。
劉備ガンダム「そこを…退け、董卓―――!!」
右手に三侯を継ぐ証・「龍帝剣」
左手に蒼き正義の証・「爪龍刀」
二対の大剣を手に、劉備は天高く跳ぶ。
劉備ガンダム「うおおおおおおおおおおーーっ!!!」
煌く軌道はさながら流星。
その連撃を以て敵を叩き切る劉備の必殺。
―――星 龍 斬 !!!
剛獣董卓「若造、貴様の攻撃が一番―――なまっちょろいわああああっ!!」
敵の目を眩ます機動も化物には通用せず、拳で真正面から星の光諸共に打ち砕かれた。
劉備ガンダム「うぐ―――っ!!!」
得物を取り落とす程の打撃を受けた劉備は先の二人同様に、二、三度地面に叩きつけられ―――大広間の石柱へと突っ込んだ。
それが誘因となり、堆く積まれた瓦礫に。
劉備ガンダム「がは………っ!!」
身体を押し潰されてしまう。
剛獣董卓「クハハハハ…良い様だなあ劉備よ」
劉備ガンダム「ぐ、うううう……」
全身に力を込め瓦礫を動かそうとするが、身を潰す大岩はびくともしない。
藻掻く劉備を愉悦の表情で見下ろしながら、怪物は嗤う。
剛獣董卓「このワシによくも歯向かいおって…などとは言わぬ。それが貴様の運命貴様の宿命ぞ」
劉備ガンダム「……?」
剛獣董卓「どうした劉備?どうした英雄?この程度かこんなものか?お前の物語はここで終わりか?」
"何だろう"
絶体絶命の瞬間であるにも関わらず目の前の怪物の言葉が、妙に劉備の心に引っかかる。
嘲笑しているようであり哀れんでいるようであり。
いやそれよりも、何かもっと別の意味が含められているように感じ…。
劉備ガンダム「ううう―――ぐっ!!」
しかし今は惚けている訳にはいかない、一刻も早くこの場を切り抜けねば。
が、腹の底から気合を込めようとも、大岩は不動を保つ。
剛獣董卓「―――ふん、つまらぬ…」
魔獣は、冷めた口調で言い捨て。
その瞳に黒い感情が燃え宿る。
剛獣董卓「これ以上あがけぬ、というのであればそれもまた一興か…」
呼応し、三度開け放たれる砲口。
剛獣董卓「ならばひと思いに―――消してくれるわ!!」
邪悪な輝きが董卓の周りに集まって行く。
この状況でアレを至近で食らわば絶命は必死。
劉備ガンダム「お、俺は……!」
防御も回避もままならぬというのに、それでも劉備玄徳という男は諦めない。
劉備ガンダム「俺は、こんな所で、死ぬ訳には、いかない……」
龍帝剣を遺してくれた魯粛先生。
こんな自分を兄と呼んでくれた関羽と張飛。
迷惑をかけたのに、自分達を慕ってくれた涼州の子供達。
流浪の身でありながら、俺達に董卓討伐を託してくれた公孫賛のアニキ…。
そして…。
危険な旅にも関わらず、自分達の神輿として、嫌な顔一つせずここまで付いて来てくれた―――。
劉備ガンダム「みんなの、為に、俺は………!」
しかし、そんな劉備の想いも。
剛獣董卓「終わりぞ、若造…………跡形もなくなれいッ!!!」
無情に放たれた光弾の露に消え―――。
――――――ドシュウッ!!!
劉備ガンダム「―――!?」
何だ?
董卓の攻撃の音では無い、これは―――!
思わず閉じかけた瞳を開けば……。
剛獣董卓「ぬ―――が、があ、あああああああああああああああああああああ!!!!」
眼球に突き刺さった、"長槍"によってもがき苦しむ董卓と。
劉備の傍へと駆け寄る"一人の影"……。
一刀「きゅ、救援の出前、お待ち……どう」
劉備ガンダム「か―――、」
何故か真っ青な表情で息を切らせた一人の少年。
劉備ガンダム「―――――――――一刀……!?」
―――天の御使い、北郷一刀がそこに居た。
劉備ガンダム「一刀!どうして…いや、どうやってここに…本陣で待ってたんじゃなかったのか!?」
一刀「あ~、いや…何で来たかって質問をされると返答に困るというか…」
ぽりぽりと鼻を掻きつつ、何とも説明しづらい経緯をどう表現すればよいかと悩むが。
一刀「…でも、どうやって~の件は説明出来るよ。…"あの人"が早馬を出してくれたから…」チラッ
最も、慣れない高速機動で肝も冷やしたが。
劉備ガンダム「"あの人"……?」
同じく目を向けた先に、怪物と真っ向から対峙する。
―――馬上に跨った、一人の男の姿があった。
男は細身の槍一本で自分の何倍もの巨体を誇る董卓へと踊りかかり、その都度突いては押し突いては引くという動作を繰り返す。
時には張飛よりも繊細に、関羽よりも豪胆に。
二人が鍛え上げられた"鉄"だとすれば、眼前の男はまるで"羽"。
どこまでも軽やかな対極なる武は、戦場にいながらまるで舞を舞っているかのような錯覚すら覚える。
劉備ガンダム「――――――、」
一刀「うわ、この岩おっもいな…何かテコになるものなるもの…あ、槍があった。よしこれで…!」
舞に見惚れている劉備を尻目に、一刀は瓦礫の中から太目の槍を見つけ出すと岩に宛行い渾身の力を以て体重をかける。
一刀「ふぎぎぎぎ…!だ、だけど運良く"あの人"が来てくれて助かったよ…!公孫賛陣営には居ると思っていたんだけど、探している暇も無かったし…!!」
劉備ガンダム「―――"あの人"」
そのニュアンスに、知人のような気軽さを感じ。
劉備ガンダム「一刀は、あの武者の事を知ってるのか?」
一刀「…う?うん…って言っても、劉備には"まだ"馴染みは無いんじゃあないかなあ…ぐぎぎ…」
劉備ガンダム「???」
そう。
劉備は知る筈が無いのだ。
今、怪物と相対している男の名が。
いずれ自分にとって無くてはならない存在となる事を。
剛獣董卓「―――ぬうううううううう、ちょこまかとうっとおしい!貴様……!!一体何者ぞ!!」
一向に馬上の男を捕らえられない董卓は憤り、正体を見極めんと叫ぶ。
???「―――私の名、か…」
???「化物に名乗る名など無い。…と言いたいが。ここは、敢えて名乗りを挙げさせて貰おうか」
息一つ切らさず怪物を見据える男は、槍をゆっくりと前へ突き出し。
朗々と、己が名を謳い上げる。
―――性は趙、名は雲。字は子龍!
―――人呼んで、"趙子龍"と申す!!
―――義により悪逆董卓討伐の志士、劉備玄徳殿に助太刀致す!!!
男の名は、"趙雲子龍"。
後に、劉備直属の"五大将軍"の一人に数えられ、共に国を護り抜く事となる。
両雄の、出会いであった。
「剛獣・董卓」
・"何か"よって怪物へと変貌した董卓ザク。
初老の身体は筋骨隆々になっており、身の丈も常人の数倍。その姿は"鬼"そのもの。
それにより体色も「黒」から「赤」くなっているが別に3倍というではない。
口からは火炎を出し、腕より繰り出される拳の破壊力は圧巻。
必殺技は肩の砲門より発せられる光弾「剛獣・滅光波」(ごうじゅう・めっこうは)。
剛獣⇒ごうじゅう⇒五十⇒50という事で演者MSモチーフは「ザク50」。
本日はここまでです。
次回は遅れてやってきた主役と、皆大好き>>1も大好き全身胆さんの活躍。
…ちなみに劉備は張三兄弟との戦いが無かった事になっちまってるんで"アレ"がまだ使えません。
火力不足にも程があらぁ。
それではこれにて。
投下しまーす。今回で第一部終了となりますので、それでは…。
剛獣董卓「"趙子龍"だと?―――しゃらくさい、踏み潰してくれる!!!」
趙雲ガンダム「―――御使い殿!劉備殿をお頼み申す!!」
劉備救出を一刀へと託し、愛馬・飛影閃へと跨り直した趙雲は再び舞を開始する。
一刀「ま、任され…って恰好良く決めたいけど…ぎぎぎぎ…動かないんだよね、これ…!!」
劉備ガンダム「か、一刀…!」
耳まで真っ赤にして力を込めるが相も変わらずピクリとも動かない。
そうこうしている内に。
趙雲ガンダム「ぬっ……!」
剛獣董卓「どうした趙雲。龍の名は伊達か?ククク…」
董卓の攻撃が徐々に趙雲を捉え始めていた。
鎧に掠っただけでその周辺が罅割れ、傷こそ負ってはいない物の、見目麗しかった姿も今や無残そのものだった。
趙雲ガンダム「―――!!」
しかし趙子龍は撤退を選ばない。
飽くまでも敵の目を己が姿に注視させる事に終始する。
理由は明白。
ここで少しでも距離を取らば、敵の攻撃が一刀と劉備に向かうは必死。
いかな自分の立つ位置が、一歩踏み外さば地獄へ真っ逆さまな蜘蛛の糸の上であっても、一度決めた事から決して背は向けない。
それが趙雲という侠であった。
趙雲ガンダム「―――飛影閃!今少し辛抱を!!」
飛影閃「ヒヒィィィィィィン!!」
抉れ、大穴がそこかしこに点在する石畳の、未だ荒らされていない部分への移動を愛馬に一任し。
両手に構えた愛槍に、全神経を注ぎ込む。
一刀「んぎいいいいいいいいいいい…!!………痛っ!!」
劉備ガンダム「……………!!」
しかしそんな侠の奮戦を嘲笑うように鎮座する大岩。
槍を懸命に握る一刀の掌が、無理な力加えた影響で裂け、血が滲む。
劉備ガンダム「も、もういい。一刀、俺は―――!!」
―――バギィッ!!
飛影閃「―――ヒイィィンッ!?」
遂に逃げ場の無くなった董卓からの攻撃を、趙雲の愛馬は自分の身を投げうつようにして防ぐ。
趙雲ガンダム「飛影閃っ!?…おのれっ!!」
落馬し、機動力を失っても槍を握る力はまだ残っていると、真っ向勝負を仕掛ける趙雲。
首を落とされようとも残った牙で敵の進撃を防ぎかねないその執念は、正しく龍そのもの。
剛獣董卓「いい加減貴様の相手も飽いたわ!ここらで終わりに―――」
―――刹那、董卓の背後へと躍りかかる者達が居た。
剛獣董卓「―――!!」
殺気を感じた魔獣は、殆ど本能で必殺を防いだ。
手に握られし刃は。
張飛ガンダム「全くよ…俺に黙って盛り上がってんじゃねえよ…!!」
蛇矛と。
関羽ガンダム「劉備殿と御使い殿には指一本…触れさせん!!」
偃月刀。
劉備ガンダム「か、関羽……張飛……!!」
ボロボロになりながら戦列に復帰する義弟達。
愛馬を失って尚戦おうとしてくれる趙雲。
恐怖を推して、ここまで来てくれた一刀。
劉備ガンダム「……みんな……」
知らず両眼から涙が溢れ出た。
皆が傷ついているというのに、俺はここで何をやっているんだ。
大岩に潰され、動くこともままならず、それなのに自分を救おうと皆が傷ついてゆく。
何が董卓を倒すだ。
何が幽州の北斗七星だ。
龍帝を継ぐ者が聞いて呆れる。
劉備ガンダム「……俺の、所為で……!」
悔恨と共に漏れ出た言葉を。
一刀「―――"俺の所為"だなんて、言うなよ…!」
少年が否定した。
劉備ガンダム「………一刀。でも……」
一刀「ぐっ……。俺さぁ、皆に"天の御使い"だなんて囃し立てられてるけど、実際はこんな岩一つ満足に動かせない役立たずなんだよ…」
―――だけど。
流星に乗ってこの世界に来た時。
始めは心細くて仕方なかった。
一刀「だってそうだろ?過去だとか三国志とか以前に、頑駄無だのなんだの…自分自身の姿形自体が通用しない世界で…生きていけるのかって…」
そんな風に考えてたら。
劉備は俺の前に自分の手を差し出して。
劉備ガンダム『姿形が違ってたってさ、こうやって手を握れば…ほら温かい』
―――温もりがあるって事は、君も俺達と同じ人間っていう何よりの証明じゃないか。
―――俺達は君の事を笑わない。
―――絶対に。
一刀「……そう言って、受け入れてくれたじゃないか」
劉備ガンダム「…………、」
一刀「だから俺は…正直今もちょっと怖いけど、逃げるだなんて事はしないよ…!」
―――ベキイ!
力を入れすぎた槍が砕け散り、破片が一刀の頬を掠め血が流れる。
彼は、都合5本目となる槍を手に取り、諦めずに大岩にあてがう。
一刀「だって、さ―――」
関羽ガンダム「ぬおおおおおおおおおおおおっ!!!」
関羽も。
張飛ガンダム「どおりゃあああああああああああっ!!」
張飛も。
趙雲ガンダム「はああああああああああああああっ!!」
城下で戦っている公孫賛さんも。
―――勿論、俺も。
一刀「皆、劉備の事が好きなんだよ……」
劉備ガンダム「…………!」
一刀「そう感じさせられる劉備玄徳だから、皆は信頼して、戦えるんじゃないか…!」
一刀「…それなのに、劉備自身がそれを否定して、どうするんだよ…!」
一刀「皆だって命削って戦ってるんだから、俺だってこんぐらい……!!!」
劉備ガンダム「………………………俺、は……………」
黙し、己の心に問う。
董卓を倒し、三璃紗に平和を取り戻す。
それが目的だった筈だ。
だが、何の為の目的であり。
誰の為の平和だったか。
それは…。
劉備ガンダム「三璃紗の……民達の……」
劉備の瞼に、今まで出会った人々の顔が浮かび上がる。
野盗や黄巾党の暴虐に晒され、悲愴となった顔。
世を儚み、怒りに震える顔。
嘆き、悲しみ、怒り、恨み…そんなものが大半であった。
だが、そのような戦国の最中にあって。
それは、確かに咲き誇るようにして存在していた。
劉備ガンダム「…そうか、そうだった…」
どんな時であっても、自分達の足を進ませた物。
劉備ガンダム「悲しみだけじゃない、怒りだけじゃない…」
幽州で、桃園で、平原で、涼州で、行く先々全てで。
劉備ガンダム「こんな簡単な事を忘れていたなんて…」
劉備玄徳に、三璃紗の明日を託してくれた。
―――友や、民達の笑顔。
劉備ガンダム「俺は、敵を倒すためだけに戦いに来たんじゃない…」
―――その笑顔を守る為に、戦って来たんだ…!!
劉備ガンダム「守りたい…」
守りたいんだ。
こんなちっぽけな俺を、信じてくれている仲間を…兄弟達を…。
―――この国に生きる、全ての人々を…!!
―――ドクン…!
一刀「(あ、あれ…?)」
何かまた胸の奥がキュッとなって…。
力の入れすぎで血が上ったのか?
―――ドクン…!
一刀「(い、いや違う…この感じはさっきの…!)」
陣幕で、自分に襲いかかった正体不明の頭痛の前兆…。
一刀「(こ、ここで頭痛は勘弁して欲しいんだけど…!!)」
―――ドクン…!
一刀「(あれ…?)」
頭は痛くない。
いやそれ所か、妙に身体が軽くなって来てるような…?
―――ドクン…!
―――ドクン…!
一刀「(へ…?)」
今、確かに感じた。
自分以外の誰かの鼓動が重なり合うのを。
―――ドクン…!!
―――ドクン…!!
脈動はどんどん大きくなり、それに伴い力も溢れるような錯覚も覚えた。
一刀「(こ、これは…!)」
一刀ははっとなり、傍らの劉備に視線を移す。
すると…。
剛獣董卓「―――ええい、うっとおしいハエどもが!!!こうなれば最大火力で洛陽ごと吹き飛ばしてくれようぞ!!!」
とうとう痺れを切らした董卓は、纏わり付く関羽達を無視してエネルギーを集め始めた。
収束する邪悪な光は先程までとは比べ物にならぬ程の輝きを発し、光だけでこの場を飲み尽くさんと明滅する。
張飛ガンダム「…どうするね、お二人さんよ?」
関羽ガンダム「…我ら二人が命を賭さば、時間は稼げよう。…その隙に劉備殿達の救援を乞うてよろしいか?趙雲殿…」
趙雲ガンダム「いや、私もこの場に留まり盾となりましょうぞ。…アレは、それ程とモノと見受けられます故」
関羽ガンダム「確かに二人よりも三人の方が確実、ただそれならば…」
張飛ガンダム「残った力で全力攻撃、それで諸共倒せりゃお慰みってか。ま、俺様好みの策ではあるけどな」
最早それは作戦でも何でもなかった。
命を賭した、特攻。
関羽ガンダム「…しかし趙雲殿、何故そこまでして我等に…」
趙雲ガンダム「…生来我の強い性分でして。故に公孫賛殿には迷惑の掛け通しでしたが」
張飛ガンダム「よ~するに頑固者ってこったろ?俺は好きだぜアンタみたいな侠。出来るなら一緒に旅してえぐらいだぜ」
趙雲ガンダム「…それは来世での約束となりそうですが…覚えておきましょう」
膨れ上がった光弾の重圧によって空気がピリピリと振動する。
発射まで間がもうそれ程無い。
張飛ガンダム「さーて燕人翼徳、最後の一働きといくかい!!」
関羽ガンダム「劉備殿…先に逝く不義、どうかお許し願いとう存じまする…!」
趙雲ガンダム「我が愛槍に全ての力を込め…いざ!!」
各々が、道に準ずる覚悟を決めた。
正にその時だった。
剛獣董卓「―――むうん?」
何だ?と董卓は意識を逸らす。
輝きが増している。
だがこれは、我が方のモノではない。もっと別の。
輝きの根源は魔獣の背後より染み出ている。
剛獣董卓「(後ろ、だと―――?)」
そこに居るべきはくたばりぞこないの若造が一匹、その筈だ。
だが。
剛獣董卓「――――――!!」
その光景に、魔獣は瞠目し。
張飛ガンダム「な、なんだありゃあ!?」
趙雲ガンダム「あれは……!」
関羽ガンダム「劉備殿……!」
続いて、関羽達もそれに気づいた。
彼等の目に飛び込みしは。
倒れていた筈の劉備ガンダム。
その身に纏うは。
邪悪を消し去る、暖かな。
―――黄金色の、光。
剛獣董卓「こ、これは…これはあああああああああああ!?」
魔獣の表情が驚愕に歪む。
既に黄金の輝きは完全に邪悪なソレを上回り、眩さに目が眩む程となっていた。
劉備ガンダム「……………、」
一刀「………りゅ、劉備………」
側に居た一刀はその一部始終を見ていた。
急に劉備の体が光り始めたかと思いきや、幾ら動かそうともピクリともしなかった大岩が、まるで劉備を避けるようにして離れたのだ。
そして劉備は、自由の身となった身体で、その二本の足で。
再び魔獣の眼前へと、立つ。
剛獣董卓「(―――馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な……!!!)」
董卓の心は、今までにない程に散々に乱れていた。
復活した劉備もさる事ながら、自らの身を焦がすこの光は。
剛獣董卓「(何故ここで"この力"が目覚める…!そんなことは有り得ぬ筈…まさか"玉璽"が…―――否、アレにそんな力など…!!)」
そこで漸く、董卓は。
一刀「―――、」
劉備の側に立つ、一人の少年に気づいた。
剛獣董卓「(……何だアレは?何者だヤツは?知らぬぞ…余はあんなモノは知らぬ!!!!)」
知り得ぬイレギュラーに、完全に混乱を極めた董卓。
それが、大きな隙となる。
劉備ガンダム「―――うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
天地を震わす叫びが、想いが、劉備の身体を天高く浮かび上がらせた。
それに呼応するかのように。
張飛ガンダム「……!!な、か、身体が…!!」
関羽ガンダム「灼けるように、熱く……!!」
関羽と張飛の身体もまた、緑赤に光り輝き。
立つ事もままならない程であった身の内から溢れんばかりの力が漲る。
張飛ガンダム「―――おい、鬼ヒゲ!!」
関羽ガンダム「―――応、張飛よ!!」
何が何やら解らぬが、己達の兄が"呼んでいる"事を感じ取った二人は。
それぞれの鎧の一部分を、光に乗せて劉備へと飛ばした。
緑、赤、黄金…。
3つの光が、今ここに一つに合わり。
新たな力を形作る。
劉備ガンダム「とおおおおたくううううううううううぅぅぅぅっっっ!!!」
爆発した光の流れに乗り、劉備は天を疾走する。
それは邪悪を飲み込むような一個の彗星となり、真っ直ぐに剛獣・董卓の元へ突き進む。
剛獣董卓「な、舐めるな若造があああああああああああああっっっっ!!!!!」
完全に気圧された董卓は苦し紛れに光弾を発射するが―――。
劉備の速度は、それを受けて尚衰えず。
遂には。
董卓という夜の闇を。
劉備ガンダム「うおおああああああああああああああああああああ!!!!」
剛獣董卓「ぬがあああああああああああああああああああああああ!!!!」
―――ザシュ……っ。
剛獣董卓「…………………ご………っ………!」
―――貫いた。
―――洛陽・城下町。
公孫賛兵「ほ、報告…報告します!物見の兵より通達!!今しがた洛陽宮殿内において、董卓が劉備玄徳率いる部隊によって討伐されたとのことです!!!」
公孫賛イージーエイト「やってくれたか…劉備…!」
公孫賛イージーエイト「―――者共!勝鬨を上げよ!!この戦、我が方の勝利ぞ!!」
公孫賛兵「―――うおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!」
―――曳々、応!!
―――曳々、応!!
―――曳々、応!!
………。
董卓討伐の報は、数刻もしない内に洛陽中に知れ渡った。
最後まで交戦を貫き通そうとした董卓兵も、それが事実と判明した途端完全に戦意を失くし、その全てが連合軍に投降した。
その後、董卓に軟禁されていた霊帝の子、幼帝ガンダムも無事公孫賛により救出され。
これにより、霊帝の暗殺より始まった、永きに渡る董卓討伐の戦いは一先ずの終結を迎える事となる…。
圧政より開放された洛陽の民はこの出来事を心底から喜び、
町民「「「「「公孫賛、万歳ー!!劉備玄徳、万歳ー!!!」」」」」
英雄を称える声は日夜を問わず、洛陽の空にいつまでも鳴り響いていたという。
そして。
それから幾日もの月日が流れた…。
―――幽州。
公孫賛イージーエイト「……本当に行くのか、劉備?」
劉備ガンダム「ああ。もう怪我も治ったし、いつまでもアニキの所で甘えてるワケにもいかないしね」
張飛ガンダム「俺ぁもうちょっとここに滞在していてえんだけどなあ…」
関羽ガンダム「…お前の場合はご馳走にありつきたいだけであろうが…」
公孫賛イージーエイト「本音を言わば、お前達や御使い様にも幼帝の補佐を願いたい気持ちもあるのだが…」
董卓を退けたとはいえ、疲弊した漢王朝が直ぐに復活するワケでは無い。
減ってしまった臣下の補充や新たな法の根回しなど、やる事はそれこそ星の数である。
劉備ガンダム「…いや、今の俺にそれは過分だよアニキ」
一刀「右に同じで…胃に穴が空く事になりそうだし…」
だとすれば、劉備玄徳が行うべきは何か。
確かに王朝の復興も成さねばならぬ事かもしれない。
しかし、涙を流す民達は王朝の人間だけでは無い。
それならば自分は、そんな人達の支えとなりたい。
始めは過小な、取るに足らない事かもしれない。
だがそれらが寄り集まれば。
いつかは三璃紗全土に、真の平和が訪れるかも知れない。
何年、いや、何十年かかろうと…いつかきっと。
公孫賛イージーエイト「…分かった。そこまで決心が硬いのならば俺から言う事はもう何も無い」
劉備ガンダム「我侭を言ってごめんよ、アニキ」
公孫賛イージーエイト「何の。それならそれで、俺は俺の使命を果たすまでさ」
公孫賛は董卓討伐の功績が評価され、今や都の重鎮の一人となっている。
近々幼帝から正式に補佐役としても任命されるという事もあり、こうやって気軽に顔を付き合わせられるのも最後となるかもしれない。
公孫賛イージーエイト「お前は外、俺は中から三璃紗の明日を掴み取る。…魯粛先生も、きっとそれを望んで俺達の事を見守って下さっているだろうからな」
劉備ガンダム「…うん」
公孫賛イージーエイト「さて、長話もここまでにしておくか。……"向こう"についても、元気でな。劉備」
劉備ガンダム「公孫賛のアニキも、どうかお元気で」
公孫賛イージーエイト「…お互いにな。お前の活躍が耳に入るのを楽しみにしているぞ、劉備」
そして、龍帝は白馬の元を離れ…。
―――平原。
張飛ガンダム「………あ~!何か気ままに旅するなんて久しぶりだぜえ!!どっか村にでも立ち寄って酒でも飲みてえ気分だな!」
関羽ガンダム「…張飛。幾ら平和になったとはいえ、我等は豪遊に行くワケでは無いのだぞ」
張飛ガンダム「わあってるっての!でもよお、どっかでお祝いやったってバチは当たらねえだろうがよ。なんたって……」
―――劉備のアニキが一地方の"領主"に任命されたんだからよ!!
張飛ガンダム「領主だぜ領主…くぅぅ~っ。昔の俺達に聞かせてやりてえ…!」
関羽ガンダム「全く張飛の楽天者め。……拙者から言わせて頂くのであれば、些か対価に見合ってない褒美と見受けしますが」
劉備ガンダム「今の俺にはこれでも過分だよ、関羽。それでも、こんな俺を求めてくれるというなら精一杯応えるだけさ」
張飛ガンダム「ええと、そんで。その街って何て名前だっけか?確か…じょ、じょ、じょ…」
一刀「………"徐州"だよ」
漢王朝からの要請を辞退した劉備一行に、公孫賛はならばと徐州の統治を願い出た。
何でもそこを治めていた領主が何らかの理由で行方不明となり、現行で統治者が不在となってしまっているらしいのだ。
???「"件の事件"に巻き込まれたとの噂も登っておりますが、どちらにせよ何とも面妖な話ですな……」
張飛ガンダム「……って、自然に話に混じって来ているけどよお」
張飛ガンダム「―――居たのかよ、アンタ!!」
趙雲ガンダム「――――――はい?」
関羽ガンダム「何を言っておるのだ、お前は。公孫賛殿の屋敷からずっと我等に同行していたではないか」
張飛ガンダム「い、いや。それにしちゃ気配が薄かったっつーかなんつーか…」
劉備ガンダム「…俺達に付いて来る事にして本当に良かったのか趙雲殿?…正直アテの無い旅になりそうなんだけど」
関羽ガンダム「左様。趙雲殿ならばその武勇で、いずれは公孫賛殿の右腕まで上り詰められましょうに」
趙雲ガンダム「"趙雲"で宜しいですよ皆々様。…公孫賛殿から暇を戴きまして、考えた結果…劉備殿達の旅に同行したいという想いが存外に強かったのでしてね」
建前上、趙雲は洛陽での戦いの際に、主君に無断で持ち場を離れた罪により放逐を言い渡されていた。
尤も、これは公孫賛による粋な計らいである側面が強かった。
この申し付けにより、趙雲は自由な心で劉備達に同行する事を決意出来たのだ。
趙雲ガンダム「(二君に仕えずという私の信条を汲んで、あの方は……)」
結局最後まで迷惑のかけ通しとなってしまった。
そんな自分が公孫賛に報いるには、今私が仕えるお方の為に全力で槍を振るう事に他ならない。
趙雲ガンダム「(天の御使い殿…そして、劉備玄徳殿…)」
あの時、しかと自分は見た。
金色の光に包まれ、闇を切り裂くその姿は、古より伝え聞く"龍帝"そのものであった。
その瞬間、彼は遂に真に己が仕えるべき主君に巡りあえたのだ。
劉備ガンダム「(………董卓………)」
劉備もまた、"あの時"の事を思い返していた。
茫洋とする頭で、けれどもしっかりと董卓を見据え―――。
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剛獣董卓「―――ご、ふうっ………」
劉備ガンダム「……!な、何が……!?」
起こったというのか。
彗星となった自分の体は、魔獣の堅牢な肉体を見事粉砕せしめていた。
気付いた時には身体は憔悴しきっており、指一本動かす事もままならない。
剛獣董卓「…ふ、はは、ははははは…」
大穴の空いた胸より、次々と火が灯ると。
やがて董卓の体が一個の火の玉へと変わる。
董卓ザク「…ははははは…よもや、こんな結末で、終わるとは…」
それでも死にきれぬ董卓はぶつぶつと取るに足らぬ単語を呟き始めた。
恨み言か、哀切か、懇願か。
炎に包まれた顔面からではその反応は窺い知れない。
だが。
董卓ザク「―――劉備よ―――」
魔獣が最後に呟いた言葉は、劉備の心に仄暗い澱となりいつまでも残る事となる。
董卓ザク「…ワシを倒した貴様は、これで名実共に英雄となろう…」
カラカラと炭化し始めた身で、口調だけはハッキリと。
董卓ザク「誇るがいい、称えらるがいい…己の正義の下に突き進むがいい」
―――所詮お前は、
―――劉備玄徳以外には、成りえぬのだから……。
ゴウ、と骨まで焼かれた魔獣の体が崩れ去る。
後に残ったのは廃墟と化した宮殿と。
嘗て董卓と呼ばれていたモノの灰。
それのみであった。
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劉備ガンダム「……」
一刀「……董卓の事を考えてるのか?劉備……」
劉備ガンダム「…えっ!あ、ああ…」
顔に出ていたのか、ピシャリと言い当てられてしまった。
張飛ガンダム「またそれかよ!アニキもあんな化物の事なんていつまでも気にするこたぁ無いだろうによ?」
関羽ガンダム「張飛の言う通り。仮に劉備殿が劉備殿にしかなれぬというのであれば、貴方は精一杯劉備玄徳であらせられれば、それで良いではありませぬか」
趙雲ガンダム「己の運命は神でしか知り得ませぬが、運命で身を縛るのも解き放つのも、どちらも人にしか出来ぬ物だと私は存じております」
趙雲ガンダム「そして貴方は"龍帝"を継ぐ者である以前に"人"である。…そうではありませんか?」
劉備ガンダム「…そうか。そう、だよな…」
例えこれから先どんな事が待ち受けようとも。
信頼できる仲間と共に、劉備玄徳は劉備玄徳で有り続ければ良いのだろう。
今は、それで十分だった。
劉備ガンダム「―――見えた!あれが徐州か!!」
遠目に城壁らしき建造物と、門の前で主の到着を待ち望んでいる沢山の領民。
劉備達は逸る気持ちを抑え、街の人々に手を振り返す。
この日。
劉備達は徐州の民達に笑顔で迎え入れられ。
劉備玄徳という英雄の物語は、徐州という場を以て始まろうとしていた。
尤も、それが…。
―――平原。
???「…何か、会う人会う人おかしなキラキラを目に付けているのだ…」
???「ここはいずこの国境だ?確かに私達は"益州"に向かっている最中であったのに…」
???「―――皆、どこに行っちゃったんだろう…?」
董卓兵残党1「へいへーい!!そこの姉ちゃん達……!?」
董卓兵残党2「な、何か変わったカッコしてやがんな…異民族か?」
董卓兵残党3「女だったら何でも構わねえ!おい、金目のモン置いてきなあ!ついでに見世物屋に売り払ってやるぜ!!」
???「っ、と、盗賊!?」
???「なんかトゲトゲしてて、いたそーな鎧なのだ…」
???「惚けている場合かっ!お下がり下さい、ここは私が…!!」
―――涼州。
???「―――こっからだせええええええええええっ!!!だしてくれよおおおおおおおっ!!!」
衛兵1「……まーた叫んでるのかあの"女"」
衛兵2「しかし見た事もない姿をしていたが、何処の国の女なんだ?」
衛兵1「尋問はしてみたたのだが何やら要領を得ていくてなあ。涼州の出身だとかなんとか口にしていたが…」
衛兵2「え?それじゃあ俺達の仲間じゃないのか」
衛兵1「そんな訳無かろう。俺達の村であんな女なんて見たことも無いぞ、それに……」
子供「―――おい馬超。聞いたか?前にこの村に来た劉備さん達が董卓を倒したって話!」
馬超ブルーディスティニー「ああ!この間村に来た商人が話してるのを聞いたぜ!すっげーよなあ劉備さん。いつか俺も絶対、劉備さん達みたいな侠になるぞ!!」
衛兵1「人を騙くらかすならもっと上手くやれってんだ。よりにもよって―――」
―――馬騰様の息子の名を騙ったんだからな。
???「だから!あたしは!騙してなんかいないってばああああああ!!!」
???「"馬騰"に……"母上"が居るってんなら逢わせてくれよおおおおおお!!!」
衛兵1「―――貴様!!滅多なことを言うんじゃない!!馬騰様は侠だこの戯け者め!!」
???「あたしは戯けじゃないっ、あたしは……」
―――あたしの名前は、"錦馬超"だあああああああああああっ!!!
―――荊州。
兵士「―――それではこれで失礼致します」
黄忠ガンダム「…うむ。ご苦労であった」
黄忠ガンダム「さて―――」
???「…………」
黄忠ガンダム「そう強張る必要はありませんぞ、楽にして下され」
???「………はい」
???「放浪していた私共を拾い上げて下さった事、まずはお礼を言わなければなりませんね」
ちらりと部屋に設置された天蓋に目を向ければ。
???「すぅ…すぅ…」
穏やかな寝息を立てる"我が子"の姿。
やはり"ここ"は落ち着くのだろうか。
黄忠ガンダム「ホッホッホ!何、突然言われた時は面喰らいましたがこうしていると中々に悪くは無いと感じ入る」
黄忠ガンダム「―――"自分自身"と向き合うというのは」
???「……………そう、ですわね…」
―――徐州。
商人「………あんたが"趙子龍"とかいう男かいね?」
趙雲ガンダム「…?確かに我が名は趙雲ですが、失礼ですがご老人は…?」
商人「――――――遂に捕まえたぞこの盗人が!!返せ、ウチの商品を返せええええええ!!」ガバッ!!
趙雲ガンダム「は……?はあああああああああああああっ!!??」
一刀「趙雲が盗人!?」
張飛ガンダム「お、おめえ。顔に似合わず大胆な事してんだな…」
関羽ガンダム「ご老人、なにかの間違いではござらぬのか?」
商人「いや!確かにコイツじゃ!!あれは忘れもせぬ数日前…」
―――儂が店を開いている茶屋で。
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???「おおお…この茶請けのメンマ…コシといい、味といい、舌触りといい…ここに来て漸く我が舌に合う美味に巡り逢えた…」ホロリ
商人「そ、そうかい。そこまで言ってくれるのならワシも商売人冥利に尽きるっちゅうもんじゃ…そんならもう一つどうじゃ?」
???「おおっ、かたじけない…むう、これも美味…!これも、あれも、それも、どれも…!」
商人「…お武家さん。褒めてくれるのは嬉しいんじゃが、お足の方はどうなっているのかね?」
???「…オアシ?」
商人「お代じゃよ、お・だ・い!…ワシも慈善事業で店開いとるワケじゃないんじゃ。貰うもんは貰わんと」
???「……………ふむ」
???「ご主人、私は"趙子龍"と申す旅の者。一所に留まるワケにはいかぬ故これにて失敬」
商人「………………は?」
???「―――メンマ代は出世払いという事にしておいて頂きたい、それでは!!」シュタッ!!
商人「ふむ。…………出世払いねえ………」
商人「―――って、そんなわけにいくかい!!だ、誰か!ドロボー!メンマドロボーじゃあああああああああっ!!!」
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商人「あん時はワシのメンマを分かってくれるお人と思うて油断してしもうたが、今度は逃がさん!さあ出せ!ワシの丹精込めて作ったメンマの代金をはようだせい!!!」
趙雲ガンダム「ご、ご老人…!離してくだされ…!!」
商人「離さぬというたろうがあ!開放して欲しくば金払え!!金こそメンマの対価ぞ!!」
一刀「………」
張飛「………」
関羽「………」
劉備「………」
その後、メンマの代金は劉備達がちゃんと支払った。
そして、趙雲には暫く。
―――そんなにメンマが好きなら言ってくれれば…。
という哀れみの視線が送られる事となった。
趙雲ガンダム「―――ぬ、濡れ衣でござる!!!」
起こり得る出来事全てが。
正道の上で起こり得たる事態かどうかは。
最早神にも、G記にすら、解り得ぬ事となるが。
それまた、別の機会に解き明かそう。
導入編、これにて終幕。
多分一番出世した公孫賛アニキ。この世界では憤死しないと思われます。
劉備側は一旦これで終了とし、次からは…消えてしまった他の武将達にライトを当てて行きたいなあ、と。
⇒曹操&曹操による、ドキッ★(部下の)胃痛だらけの城内会議編か。
⇒何故か生きてる孫堅ガンダム(グランドファーザー)における、江東征伐フルドライブ編に分岐していきます。
その時々でお金持ちとか魂ィ!さんの出番もあるかと…。
それではこれにて、長い事ありがとうございました。
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