道を歩く二人の男女。
ザッザッザッ……
男「お、あんなところに村があるよ」
男「ちょうどいい。君も歩き疲れたろうし、一休みしていこうか」
女「フン」ツーン
男「ハハ……相変わらず、無視か」
男「ま、おかげで俺は安心して戦うことができるんだけどね」
女「…………」プイッ
村に入る二人。
<新しい ノ)
ヅラよー! 三( )
Σ(゚ε゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ ./
 ̄ ̄ ̄
ノ)
三( ) スチャッ
Σ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
 ̄ ̄ ̄
.ノ)
.( )
⊂( ゚д゚ ) ウンコメーン!
. ヽ ⊂ )
(⌒) |
三 `J
村──
男「なんというか、ずいぶんさびれた村だなぁ」
女「…………」
村人「昔はもっとにぎやかだったんだけどな」ザッ
男「!」
男「す、すみません、さびれたなんていっちゃって」
村人「いや、いいさ」
村人「それもこれも……全部奴らのせいなんだ!」
男「奴ら?」
村人「……旅人さん、この辺りに来るのは初めてかい?」
男「ええ」
村人「実は……ここら一帯を縄張りにしてるゴロツキ集団がいるんだよ」
村人「で、たびたび付近の村や町に来ては、金や食い物を奪っていくんだ」
村人「もちろん、旅人だって見つかってしまったら餌食にされる」
村人「国に手紙を出しても、こんな地域にとても兵は回せないなんていわれる始末さ」
村人「おかげで外から人は来なくなるし、村からは人が出ていくし……」
男「……村や町で協力して撃退するってのはできないんですか?」
村人「昔、そうやって50人ばかりの討伐隊を組んだことがある」
村人「だけど……」
村人「あっけなく返り討ちにされちまった……」
男「そんなに強いんですか?」
村人「ああ、強い」
村人「奴らの人数は、せいぜい30人程度なんだが……」
村人「ボスである首領を始めとした、四人の中心メンバーがとんでもない強さでね」
村人「元兵士だった剣士、魔法を悪用するのが生きがいの魔法使い」
村人「それに格闘家崩れのマッチョって奴がいる」
男(元兵士に魔法使いに、格闘家……)
男(なるほど、それじゃ村や町の人間が束になってもかなわないわけだ……)
村人「とにかく、アンタも十分気をつけてくれよ」
村人「奴らと関わったら、身ぐるみ全部持っていかれちまう」
男「ええ、分かりました」
村人「そっちの美人の姉ちゃんもな」
女「フン」ツーン
村人「え」
男「あっ、気にしないで下さい。誰に対してもこうなんです、彼女は」
村人「い、いや、かまわないけどね……」
男「ところで、この村で食事できるところってあります?」
村人「それなら、あそこを曲がったところにある食堂に行くといい」
村人「女将さんの山の幸を使った料理を、たっぷり堪能できるはずさ」
男「ありがとうございます」
男「じゃあ、そこでメシにしようか。俺も腹に補給しときたいし」スタスタ…
女「…………」スタスタ…
村人(まったく会話しないのか……変わった二人組だなぁ)
食堂──
女将「はいよ、美人女将の気まぐれ山の幸定食お待ち!」ドンッ
男「おっほ~、うまそうだなぁ」
女「…………」
男「いっただっきまぁ~す」
ガツガツ…… ムシャムシャ……
男「…………」ガツガツ…
女「…………」モグモグ…
女将(あの男の人、よく食べるねえ……よほどお腹が空いてたのかねぇ)
すると──
少年「ねえねえ、お兄さんたち!」タタタッ
少女「あなたたち、旅人でしょ~?」タタタッ
男「うん、そうだよ」
少年「いったい、どんな旅をしてるの?」
男「自分の力を役立てるための旅……かな」
少女「お兄さんは、どんなことをやっているの?」
男「俺はこれでも戦士なんだよ」
少年「戦士ぃ~?」
少年「でも、剣や槍みたいな武器を持ってないじゃない!」
男「俺はそういう武器を使わず、戦うんだよ」
少年「ふう~ん」
少女「お兄さん、すごい食欲ね。よくこんなに入るわね!」
男「俺は消費が激しいからね。食べられる時に食べとかないといけないんだ」
少女「しょうひ? はげしい? よくわかんなぁ~い」
男「ハハハ、分からない方がいいかもしれないな」
女「…………」
男「ふう、ごちそうさまでした!」
女「…………」ツーン
女将「あいよ! また来てちょうだいよ!」
男「ええ、ぜひ!」
女将(男の人は、軽く10人前は食っちまったねえ……大したもんだ)
男「ところで、せっかくなのでこの村で一泊していきたいのですが……」
男「どこか泊まるところってあります?」
女将「おや? なんだったら、ウチに泊まっていくといいよ」
女将「もちろん、お代はいらないよ。たっぷり食べてもらったからねえ」
男「本当ですか!? ありがとうございます!」
部屋──
男「あぁ~……食った食った」
男「どうだい、おいしかったかい?」
女「フン」ツーン
男「ハハハ、ごめんごめん」
男「しっかし、ゴロツキ集団か……」
男「なあ、俺たちで退治しに行かないか? 一宿一飯の恩って言葉もあるしさ」
女「…………」プイッ
男「よし、決まりだな!」
翌日──
男「いやぁ~、昨日はどうもありがとうございました」
女将「よく眠れたかい?」
男「ええ、ぐっすりと」
女将「そっちのお姉ちゃんはどうだった?」
女「…………」ツーン
女将「え……」
男「アハハ、よく眠れたそうです。気にしないで下さい」
女将「そ、そうかい」
男「ところで女将さん」
女将「なんだい?」
男「この近辺を縄張りにしてるゴロツキどもってのは……どこにいるんです?」
女将「アンタ、そんなこと聞いてどうする気だい?」
男「もちろん、退治するんですよ」
女将「!」
女将「やめときな! 金品を奪われるか、下手すりゃ命を奪われるのがオチさ!」
男「なぁに、大丈夫ですよ。俺はこう見えても強いですから」
女将「アンタがかい……?」ジロ…
女将「でも、あたしも……村のみんなも、あいつらの根城は分からないんだよ」
男「へ? どうしてですか?」
女将「あいつらは国の兵士の追及を恐れて、しょっちゅう根城を変えてるのさ」
女将「だから……どこにいる、ってのはいえないんだよ」
女将「人数もさほど多くないから、移動しても目立たないしねえ」
男「そうなんですか……」
男(まいったな……ってことは、向こうから現れるのを期待するしかないのか……)
すると──
ワァァァ…… ワァァァ……
「大変だぁっ!」 「あいつらがやってきたぞ!」 「またかよ!」
女将「なんだって!? こないだ来たばかりだってのに……!」
男「あいつらってまさか──」
女将「ああ、そうさ! 今アンタがいってたゴロツキたちだよ!」
女将「だけど、絶対手を出しちゃいけないよ!」
男(たしかに……俺としても、村の中で戦うのは絶対避けたい)
男(ここは大人しく見守るしかないか……)
村──
村の一番広い場所に、ゴロツキたちが集まっていた。
村長「おぬしら……また来おったのか……」ギリッ…
ズラッ……
首領「さぁ~て、村中から金とメシを集めて、出してもらおうか? 村長さんよォ!」
剣士「出さなくてもいいぞ? ちょうど人を斬りたかったところだからな」チャキッ
魔法使い「剣士君、抜け駆けはよしなさい。ボクも魔法を使いたいんですから」
マッチョ「オレは殴りてぇよォォォ!」
箱「…………」ガサガサ…
村人(なんだ、あのデカイ箱!? いつもはあんなの持ってきてなかったよな……)
村人(音がするし、中になにか入ってるのか……!?)
村中から、続々と金銭と食糧が集められる。
首領「なんでえ、これっぽっちかよ」
村長「これでどうか……今日のところは勘弁して下され……」ヘコヘコ…
首領「ケッ」ブンッ
ドガッ!
村長「あうっ!」ドサッ…
村人「村長っ!」
村長「いや、いいんじゃ! 手を出しちゃいかん……!」
首領「よく分かってんじゃねえか、ジジイ。よぉし、今日はこれで引き上げてやる」
男(許せない奴らだ……。だけど、村長さんのおかげで奴ら、もう帰るようだ)
男(あとは村を出てあいつらを尾行して)
男(適当なところでやっつけて金と食べ物を取り返せば──)
少年「ふざけるな!」
首領「あ?」
少年「いっつもいっつも、村からお金や食べ物を持っていって!」
少女「そうよ、そうよ! あなたたち、マジメに働けないの!?」
首領「あぁ~!?」
村長「コ、コラッ! よさんか!」
首領「クソガキどもが……!」ビキッ
首領「オイ……だれか、あのガキどもブッ殺せ!」
村長「や、やめてくだされ! あの子らはあなたたちのことをよく知らな──」ガシッ
首領「るっせえ!」ブンッ
ドゴォッ!
村長「が、はっ……」ドザァッ…
剣士「よし、俺がやってやる。子供は肉と骨が軟らかく、よく斬れるからな」ニタァ…
少年「う、うわわっ……!」
少女「いやぁっ!」
邪悪な笑みを浮かべた剣士が、子供二人に近づいていく。
村人「ああっ!」
男(くっ……やむをえない!)ブリッ
ビュバッ! ベチャッ……!
剣士「──ん? 俺の手になにかついた……」
プ~ン……
剣士「うわっ!? こりゃウンコじゃねえか!」ブンブンッ
首領「なにい!?」
剣士「だ、だれだ! 俺にウンコなんか投げつけやがったのはッ!」
男「俺だ」ザッ…
首領「てめえ、この村のモンじゃねえな……いったい何者だ!?」
男「…………」
男「変! 身ッ!」バババッ
カッ!
男の体が激しい光に包まれた。
ザッ……!
ウンコマン「私はウンコの力で戦う、ウンコマンだ!」ビシッ
首領「な、なんだとォ!?」
剣士「ウンコマン……!?」
魔法使い「ずいぶんと、ふざけた名前ですねえ……」
マッチョ「ブン殴ってやりてぇよォォォ!」
村長(うぅっ……聞いたことがある……)
村長(各地を転々とし、悪党退治の旅を続けているヒーローがいると……)
村長(まさかあやつが……!?)
箱「…………」ピクッ
女将「こりゃあ、いったいどういうことなんだい!?」
村人「あの旅人が、変身しやがった……!」
少年「か、かっこいい……!」
少女「うんこまん、うんこまん~!」
首領「てめえら……あのふざけた本物のクソヤロウを叩きのめせ!」バッ
「へいっ!」 「任せて下せえ!」 「おりゃあっ!」
ダダダッ……! ワァァァ……!
十数人の手下が、一斉にウンコマンに飛びかかる。
ウンコマン「数では私には勝てん!」
ウンコマン「“ラビットボール”!!!」ブリッ
ズガガガガガガ……!
「うぎゃあっ!」 「ひいいっ!」 「ぎゃあっ!」
少年「す、すごい!」
少女「お尻から、次々に弾丸を出していくわ!」
村長「なるほど……ウサギのウンチのような丸い便は」
村長「速度を伴えば、強力な弾丸になるというわけじゃな!」
手下A「チッ……散れ、散れっ!」
手下A「包囲しちまえば、怖くねえ!」
ウンコマン「それはどうかな!?」
ウンコマン「“キング・オブ・ミト”!!!」バッ
手下たちに、自分の肛門を見せつけるウンコマン。
手下A「うっ!?」ガバッ
「か、体が勝手に……」 「ひれ伏しちまう!」 「どうなってんだ!?」
女将「まるで、悪人がえらい人と出くわしてしまった時のように」
女将「ゴロツキたちがひれ伏していくよ……! どうなってんだい!?」
村長「東の彼方にあるという島国には、“インロウ”なるアクセサリーを出すだけで」
村長「悪党どもをひれ伏させる老人がおるという伝説があるが……まさにそれじゃ!」
むろん、ウンコマンの肛門は“三つ葉葵”のようなシワになっている。
ウンコマン「トドメだ、“ウォーターマグナム”!!!」ブリッ
ブリュリュッ……ブッシャアァァァァァ……!
「ぎゃああああっ!」 「助けてぇっ!」 「呑み込まれ──」
手下たちは全員、ウンコマンの便に呑み込まれてしまった。
ホカホカ……
ウンコマン「呼吸穴は空けておいたが、もう全員動けまい! 反省していろ!」ビシッ
村長「ほぉう、柔らかい便も自由自在とは……やりおるわい」
少年「すごい……すごすぎるよ、ウンコマン!」
少女「ステキ!」
ウンコマン「ありがとう!」キラッ
ウンコマン(さてこれで残るは四人……とあの箱か)
ウンコマン(彼らには“キング・オブ・ミト”は通じないだろうな……)
剣士「だらしない奴らだ……次は俺がやってやる」
剣士「なにせ、あいつには手にウンコを投げつけられたからな」
剣士「体中切り刻んで、借りを返してやる!」チャキッ
ウンコマン「剣か……ならば私はムチで相手をしよう」
ウンコマン「いでよ、“バナナウィップ”!!!」ブリッ ニュルッ…
シュルン……
細長い便を出し、それをムチのように操るウンコマン。
村長「ふうむ、聞いたことがある。健康なバナナ便は武器にもなると……」
村人「どこで聞いたんですか、それ……」
ウンコマン「はっ! でやっ!」ヒュルンッ
剣士「ぬっ! はぁっ!」シュッ
ガッ! バシィッ! ビシッ! ガッ! バチッ!
剣とムチがぶつかり合い、激しく火花を散らす。
剣士(くうっ! 軌道が読みにくい!)
剣士(だったら、ムチが伸びきった瞬間を──斬る!)シュバッ
ズバァッ!
ウンコマンの“バナナウィップ”が斬られてしまった。
ウンコマン「むっ……!」
剣士「決まったな」ニヤッ…
剣士「さっきの弾丸みたいな技は、俺には当たらない……終わりだァ!」ビュオッ
ウンコマン「なんの!」ブリッ
ウンコマン「“ストーンガード”!!!」サッ
ガキンッ!
剣士「なにい!? 俺の剣が、硬いウンコに防御されただと!?」
女将「いくらなんでもムチャだよ!」
村長「いや、そうとも限らんぞ」
村長「便秘などで腸に詰まった便の硬さは、時として肛門を傷つけるほどじゃ」
村長「もし、あの硬さをウンコマンが再現するなら──」
村長「金剛石(ダイヤモンド)をも凌駕する硬度を得るじゃろう!」
女将「な、なるほどねえ……大したもんだ」
ウンコマン「さらにこの硬い便は、攻撃にも使えるのだ!」
ウンコマン「“ストーンキャノン”!!!」ブリュッ
ズドォンッ!
大砲のように硬く巨大な便が、剣士の腹にめり込んだ。
剣士「ぐ、はァ……!」ドサッ…
首領「ぬ……!」
マッチョ「なんだとォ!? 剣士がやられちまいやがった!」
魔法使い「どうやら……強敵と見なした方がいいようですねえ」
マッチョ「だったら、次はオレが相手してやるぜェェェ!」ズンッ
ウンコマン「望むところだ!」
ウンコマン「“ラビットボール”!!!」
ズガガガガガ……!
マッチョ「フン、こんなチンケな技、オレには通用しねェよォ!」シュウウ…
ウンコマン(“ラビットボール”が通じない……!?)
ウンコマン(ならば“ストーンキャノン”も耐えられてしまうだろう……)
ウンコマン「鍛え上げた筋肉でできた鎧というわけか……しかし!」
ウンコマン「鎧はこの私にもある! ──装着!」ブリッ
ウンコマンの全身を、茶色い便が包み込む。
ウンコマン「“ブラウンアーマー”!!!」ジャキーン
村長「なるほど、先ほどの硬い便を全身にまとった鎧か!」
少年「すっごぉ~い! かっこいい!」
少女「でも、ちょっと臭い……」
殴り合うウンコマンとマッチョ。
ドゴォッ! バキィッ! メキィッ! ガゴォッ! バゴォッ!
しかし、互いに攻撃力に比べて耐久力が高く、どちらも決め手に欠けていた。
マッチョ「フン、やるじゃねェか!」ハァハァ…
ウンコマン「そちらこそな……」ゼェゼェ…
魔法使い(フフフ、ではここらで魔法使いらしく援護するとしましょうか)
魔法使い「清らかな水よ、全ての汚れを洗い流したまえ……ウォーターッ!」
ドザァァァッ!
ウンコマン「むっ!?」
バシャッ!
魔法使いが放った水柱が、ウンコマンに命中した。
村人「ビックリさせやがって。水魔法は攻撃力が低いから、命中したって──」
村長「い、いかん!」
村人「え?」
魔法使い「フフフ……決めてしまって下さい!」
マッチョ「おうよ!」ブオンッ
ドゴォッ!
ウンコマン「ぐっ……!?」メキメキ…
ウンコマン(しまった……“ブラウンアーマー”は水に弱い!)
村長「やはり……いかに硬い便でも水を浴びれば、泥のようにもろくなるのじゃ!」
少年「そんなぁ!」
少女「がんばって、ウンコマン!」
ウンコマン(防御力が落ちてしまった今、長期戦は危険ッ!)
ウンコマン(しかし、私の攻撃力では彼を一撃で倒すことは難しい!)
ウンコマン(──ならば!)ブリッ
ウンコマン「どうだ。少し疲れたし、カレーでも食べないか?」スッ…
皿に盛られた茶色い物体を差し出すウンコマン。
マッチョ「おっ、うまそうなニオイじゃねえか」
マッチョ「敵に塩を送るってやつか? ありがたくいただく──」モグッ…
マッチョ「うげえええええっ!!!」ブバッ…
ドサッ……
皿に盛られていたのは、もちろんウンコマンの便である。
ウンコマン「これぞ……“ミラージュカレー”!!!」
村長「敵にウンコをカレーだと錯覚させるとは……まさに幻影(ミラージュ)じゃ!」
女将「恐ろしい技だねえ……」
魔法使い「あのマッチョさんを倒してしまうとは……」
魔法使い「まぁ、彼は脳みそまで筋肉でできてるような方でしたからね……」
魔法使い「しかし、このボクはそうはいきませんよ!」バッ
ドザァァァッ! バリバリ……!
水魔法と雷魔法を立て続けに喰らい──
ウンコマン「ぐうっ……」ドロ…
魔法使い「ようやく、あの鎧が溶けて砕けてしまいましたね」
魔法使い「さあ、ここからはボクのターンですよ!」ニヤッ
魔法使いが、さまざまな属性の魔法を連発する。
しかし、ウンコマンも決して倒れない。
魔法使い「しぶといですねえ……」ハァハァ…
ウンコマン「たしかに魔法は多彩だが、こんな威力じゃ私は倒せないぞ!」
魔法使い「なんですって?」ピクッ
魔法使い(ならば──全属性の中で最高の攻撃力を持つ“炎魔法”で勝負!)
魔法使い「紅蓮の炎よ、我が敵を焼き尽くしたまえ──」
村人「ま、まずいっ! 炎魔法を唱えているぞ!」
ウンコマン(今だッ!)
ウンコマン「“スメルガス”!!!」
魔法使い「!?」ビクッ
プゥ~ッ!
魔法使い「って、ただのオナラですか! 驚いて損をしてしまいましたよ!」
魔法使い「さあ、気を取り直していきますよ」ボッ…
首領「!」ハッ
首領「やっ、やめろ、魔法使い! 火はマズイ──」
魔法使い「ファイアッ!」
ボワァァァッ!
ズガァァァァァンッ!!!
魔法使いを中心に、大爆発が起こった。
魔法使い「ゲホッ……! な、なんで……!?」プスプス…
ウンコマン「私の“スメルガス”は、引火性が非常に高いガスなのだ」
ウンコマン「炎魔法なんて浴びせたら、簡単に爆発してしまうほどにな!」
魔法使い「くっさ……」ドサッ…
少年「やった、やったぁ!」
少女「これで残るは、ボスだけだわ!」
首領「ちいっ……」
ウンコマン「残るお前は今までの三人より強さは劣るだろう。勝ち目はない」
ウンコマン「大人しく降参して、捕まるんだ!」
首領「…………」
首領「クックック……」
ウンコマン「!」
首領「ウンコマン……たしかにお前はつええよ。俺じゃとてもかなわねえだろう」
首領「しかし、どうやら勝利の女神は俺に微笑んだようだ……」
首領「なぜなら……俺にはコイツがいるからな!」
ウンコマン「!?」
巨大な箱に近づく首領。
首領「コイツは用心棒代わりにするために、こないだ山で捕まえたんだが──」
首領「はたして、お前はコイツに勝てるかな……!?」
カパッ!
ウンコマン「な……!?」
箱の中に入っていたのは──
フンコロガシ「…………」ギチ…
成人男性と同じぐらいの大きさをした、巨大フンコロガシであった。
ウンコマン「し、しまっ──! 体が……動かない!」ビクビクッ
首領「やっぱりなァ! コイツは突然変異の巨大フンコロガシだ!」
首領「てめえは“ウンコ”、コイツは“フンコロガシ”!」
首領「つまり、てめえはコイツにゃ、絶対に勝てねぇよ!」
フンコロガシ「…………」ガサガサ…
ドゴォッ!!!
フンコロガシの強烈なキックで、ウンコマンの全身が転がる。
ウンコマン「がはぁ……っ!」ゴロゴロ…
村人「なんてケリだ! あんなの俺たちが喰らったら一発でお陀仏だ!」
村長「昆虫が人間ぐらいの大きさになったら、勝てる動物はおらぬというからのう……」
村長「最悪の相性じゃ……!」
首領「死ぬまで転がされろや、ウンコマンさんよォ!」
フンコロガシ「…………」ガサッ
ドゴォッ! バキィッ! ドゴォンッ!
ウンコマン「ぐ、ふっ……!」ゴロゴロ…
少年「ずるいぞ、卑怯者っ!」
首領「黙れ、クソガキ! ──ったく、もっと早くコイツを出すべきだったな」
首領「トドメを刺してやれ、フンコロガシ!」
フンコロガシ「…………」ガサガサ…
ウンコマン「フフ……残念だったな」
首領「?」
ウンコマン「私はたしかにフンコロガシには、絶対勝てないが──」
ウンコマン「フンコロガシも“彼女”には絶対勝てないよ」
首領「彼女……?」
「そこまでよっ!!!」
屋根の上に、もう一人のヒーローが立っていた。
インセクトレディ「とうっ!」バッ
スタッ……!
インセクトレディ「どんな虫も操る、虫使い“インセクトレディ”……参上!」ビシッ
首領(虫使いだと……ってことはまさか!?)
インセクトレディ「今助けるわ、ウンコマン!」ダッ
インセクトレディ「は~い、フンコロガシちゃん、いい子、いい子ね~」ナデナデ…
フンコロガシ「…………」モゾッ…
村人「あの凶暴なフンコロガシが、一瞬で大人しくなった……!」
女将「まるで人懐っこい猫や犬みたいになってるよ!」
インセクトレディ「さあ、決めちゃって! ウンコマン!」
ウンコマン「ありがとう、インセクトレディ!」ムクッ…
首領「ゲッ!」ギクッ
ウンコマン「悪党よ、トドメだっ!」バッ
ウンコマン「“スパイラル・パニッシュメント”!!!」ブリュリュッ…
首領「うっ、うわぁぁぁっ!」
ズシィンッ……!
直径一メートルの特大巻きグソが、首領を押し潰した。
首領「臭いし……重いし……さいあ、くぅ……」ピクピク…
ウンコマン「ふうっ、スッキリした!」スタッ
少年「やった、やったぁ!」
少女「すごいわ!」
村人「ハハッ、ざまあねえや!」
女将「まさか、本当にゴロツキどもをやっつけちまうなんて……」
村長「古来より螺旋を描く便は、快便の象徴だといわれておる……」
村長「非の打ちどころのない、みごとな勝利じゃ……!」
その後、ゴロツキ一味は縄で縛られ、国の兵士たちによって連行された。
ちなみにフンコロガシは、インセクトレディによって住んでいた山に帰された。
女将「ったく、兵隊どもは助けを求めても全然来なかったくせに」
女将「“捕まえたから連行してくれ”って連絡したらすぐ駆けつけてくるんだから!」
村人「アイツらは厄介な仕事には興味がなく、手柄だけに興味があるからね」
村人「ま、とにかく村は救われたんだ。よしとしようよ、女将さん」
少年「すごいや、ウンコマン!」
少女「ありがとう、ウンコマン!」
ウンコマン「なぁに、どうってことないさ」
女将「そういや……アンタは、彼の付添いだった女性だろう?」
インセクトレディ「ええ、そうです」
女将「だけど、昨日とちがってずいぶん愛想がよくなったねえ」
インセクトレディ「それは──」
村長「……それは、虫使いの宿命というものじゃよ」
村長「虫使いは、あらゆる虫を自在に操る力を得るのと引き換えに」
村長「他人を“無視”しなければならない、という掟があるのじゃ……」
村長「これを破れば、たちまち虫使いとしての能力は失われてしまうと聞く……」
インセクトレディ「おっしゃるとおりです」
インセクトレディ「こうして変身している時は、掟を超えるパワーを発揮できるので」
インセクトレディ「皆さんとしゃべることが許されるのですけど……」
少年「だったらお姉さん、ずっと変身してればいいのに!」
インセクトレディ「アタシもそうしたいけど、そうもいかないのよ」
インセクトレディ「ウンコマンもそうだけど、変身は体力をひどく消耗するから」
インセクトレディ「ずっと変身しているわけにはいかないの……」
少年「そうなんだ……。ヒーローって、かっこいいけど大変なんだね……」
少女「インセクトレディは、どうしてウンコマンと一緒にいるの?」
少女「さっきみたいに、ウンコマンの天敵フンコロガシ対策のため?」
インセクトレディ「いいえ、ちがうわ」
すると──
インセクトレディ「…………」ウジュル…
少年「うわっ!」
少女「きゃっ!?」
インセクトレディの口から、細長い寄生虫が現れた。
インセクトレディ「ビックリさせてごめんなさいね。でも、必要なことなのよ」
インセクトレディ「戦いを終えたウンコマンの体内はひどく荒れているの……」
インセクトレディ「なにしろ、あれほど大量の便を出すんですもの」
インセクトレディ「それをケアできるのは……私が体内で飼っている寄生虫だけなのよ」
インセクトレディ「それじゃ……」
ウンコマン「うん」
インセクトレディ「んっ……」チュッ…
ウンコマン「ん……」チュパッ…
インセクトレディはウンコマンに、寄生虫を口移しした。
村長(さっきの虫は……究極の寄生益虫といわれるネオサナダムシ!)
村長(もし彼女がパートナーでなければ……)
村長(今頃、ウンコマンの腸はズタボロになっていることじゃろう……)
/ い そ な ヽ / 邪 時 モ ヽ
| な う ん | | 魔 は ノ |
| き ね と ! ! さ ね を |
/ ̄\| ゃ 救 い | | れ ヽ 食 |
ダ わ う | | ず 誰 べ |
メ れ か ./ _| に に て |
そ 円 な て : /'´ ! 自 も い /
う 環 の / / ヽ 由 る /
決 の |\__/ { ト、 \ で /
め 女 | / ト、\ | \ \ _/
た 神 |/ / ∧N \| ヽ/ ̄ヽ! ̄ / / ハ
の 様 / /j/,.-- 、 ,斗=ミ、/// /V´L フガッ
! が | / _ ι 爪_,ハ ´V :/ ゝ _)
| { 〃心ヾ ゞー' / /ヾ(_,ヘ∧
/j/! V 弋ソ ' / //} }} ∧∧
ヽ____> | ! 〈} //j/ノ / :/ V∧_
ヽ!\ヽ ι ,.-‐―-_、 ´ / / V/ ̄ /
コフゥ ノ八` V´__/ ι 八/ __/ /
r=≦三 | ι / :| :「 ∠ _
| `<_\ `───’ ι | ト、 |__// |
ヽ | _ _ / ノ >'´ /
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|`ー‐┐ r―<ヽヽ__j_/: : : : : :/ // \ _
≧=彡-‐ |: : : : >{: : : {<: : : : :/ /イ
V/ /〉: : : : : :ゝ-xく : : : : 〈 /
/ / {: : :_/:/ /|: \: : : :} /
/ { ! 7: : : : / //|: : : :\/__/
ウンコマン「ふう……コイツを一晩も体に入れておけば」
ウンコマン「俺の荒れ果てた胃や腸はすっかり回復するはずだ!」
ウンコマン「さあ、そろそろ変身を解こうか」
インセクトレディ「ええ、そうね」
シュンッ……
元の姿に戻る二人。
男「ふうっ……」
女「…………」ツーン
男「あとは……村を汚しまくっちゃったから掃除しないと!」
村長「おぬしらは恩人じゃ、そんなことせんでも……」
男「いえいえ、いつもやってることですから! なにしろ自分で出したものですしね」
やがて掃除を終え──
男「さて、そろそろ村を出ようか」
女「…………」プイッ
女将「もう行っちゃうのかい?」
村人「そうだよ、もっとゆっくりしていけばいいのに……」
男「こうしてる間にも、どこかで困っている人がいるかもしれませんから」
男「でも、こんなによくしてくれた村は初めてです! ありがとうございます!」
村長「!」
村長(そうか……便をまき散らし戦うヒーローに、他人を無視しなければならぬ虫使い)
村長(この二人は、決して一ヶ所にとどまれない宿命を背負っておるんじゃな……)
村長(彼らのことを誤解した人々に、心ないことをいわれることも多いじゃろう)
村長(しかし、二人はそんな宿命を呪わず恨まず)
村長(自分たちの能力を世のため人のために役立てておる……ありがたいことじゃ……)
村の全員が、二人の出発を見送った。
少年「さよなら、ウンコマン! さよなら、インセクトレディ!」
少女「また遊びに来てね! きっとよ!」
村人「がんばれよ、二人とも!」
女将「あたしの食堂はいつでもアンタたちを歓迎するよ!」
村長「これから先、色々なことがあるじゃろうが、ワシらは君たちの味方じゃよ」
男「ありがとうございます、皆さん!」
男「……さ、行こうか」
女「フン」ツーン
世界に悪がいる限り、二人の旅は終わらない。
ウンコマンとインセクトレディの戦いは、まだまだ続く……!
<おわり>
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