響「おしっこもらしちゃったぞ……」 (70)

――夜

小鳥「響ー、そろそろ寝なさーい」

響「んー」ポケー

小鳥「ほらほら、炬燵から出る出る」ズルズル

響「んあー」

小鳥「明日、幼稚園遅刻しちゃうわよー」

響「わかってるよー」ウトウト

小鳥「その前に――」

響「?」

小鳥「おトイレ、済ませちゃわないとね」

響「……いいよ。へーき」

小鳥「平気じゃないでしょ。またおねしょしても知らないんだから」

響「おねしょしない!」////

小鳥「はいはい、わかったからおトイレに行く行く」

響「おねしょしない!」

小鳥「はいはい、お母さんが悪かったから……」

響「おかあさんついてこないで!」

響「ひとりでいくから!」

小鳥「……でも、ひとりで――」

響「へーき!」

小鳥「じゃあ、お母さん先に寝てるからね?」

小鳥「なにかあったら――」

響「……」テテテッ

小鳥(大丈夫かしら……)

伊藤誠「響ちゃんか・・・ふふふ」

誠「かわいいなぁ・・・」

誠「なんとしてでもお近づきになりたい」

誠「さて・・・」

誠「ヤるか」

響「じぶん、ひとりでおトイレいけるぞ!」テテテッ

響「はるかちゃんもちはやちゃんもひとりでいくっていってたし!」テテテッ

響「……」ピタッ

響「なんかしずかだな……」

響「……」

響「……」

響「いぬ美ー?」テテテッ

――トイレ

いぬ美「ワフッ?」

響「いぬ美! いいこにしてるんだぞ?」ショロショロ

いぬ美「……?」

響「じぶんがついてるからこわくないだろ?」カラカラ

いぬ美「ワフ?」

響「……」フキフキ

響「おへやいくぞ、いぬ美!」

いぬ美「ワフ♪」

ガチャ

P「ただいまー」

響「お父さんかえってきた!」タタタッ

いぬ美「ワフッ!」ダダダッ

――――――
――――

響「お父さんおかえりなさい!」

P「ただいまー……って、なんだ、響、まだ起きてたのか?」

響「うん!」

P「そっかそっか」

響「……?」クンクン

P「……? なんだ?」

響「お父さん、おさけくさいぞ……」

P「はははっ。まあ、お酒を飲んできたからな」

P「お酒の匂いがするのは当たり前だな」

響「……」

響「おさけっておいしー?」

P「んー、相手によるかなー?」

P「仲のいい人と飲めばおいしいし……」

P「気を遣う相手だと飲んでてもおいしくないっていうか……」

響「???」

P「はははっ。響にはまだ早かったかな」ナデクリナデクリ

響「うわわわッ!」

P「はっはっは!」

響(お父さん、酔っ払ってるぞ……)

P「水でも飲むか……」スタスタ

響「……」トコトコ

いぬ美「ワフッ」ヨタヨタ

P「……」ゴッキュゴッキュ

響「……」ポケー

P「……ん? 響もお水飲むか?」

響「さんぴん茶がいい!」

P「さんぴん茶かー。響は好きだなー」ガチャ

トポトポ

P「はい、溢さないようにな」

響「こぼさない!」

P「はいはい、気をつけてな」

響「……」グビグビ

P「そろそろ寝なきゃな」

響「お父さんは?」

P「お父さんはお風呂入る」

響「ふーん……」

P「おやすみ、響」ナデナデ

響「おやすみなさーい」

響(……おへや、いこう)

響「いぬ美、はうすだぞ!」

いぬ美「ワフッ!」トコトコ

――――――
――――

――寝室

ガチャリ

響「……」トコトコ

小鳥「響、随分遅かったわね? 一人で出来た?」

響「できた!」プンプン

ガサゴソ

響(う……)

響(おふとん、つめたいぞ……)ブルッ

小鳥「……」

小鳥「響、ママと一緒に寝る?」

響「ねない!」

響「お母さん、さっきいやなこといったから!」プリプリ

小鳥「あらあら、ママ、嫌われちゃった」フフフ

響「……」プンプン

響(なんだか寒いな……)

響(またちょっとおしっこいきたいぞ……)

響(でも、またさむいし……)

――――――
――――

――――
――――――

――翌日


響「……」パチッ

響「……?」

響「……?」

響「……」ソーッ

響「……ッ!」

響(やっちゃったぞ……)

響「……」キョロキョロ

響(お父さんもお母さんもいないぞ……)

響(もし、みつかったら……)

小鳥『ほおら、響、またおねしょしたじゃない』

小鳥『お母さんの言うことを聞かないからです!』

P『響、いい加減におねしょ癖は治さないとな』

春香『ひびきちゃん、おねしょしたのー?』

千早『……』クスッ

響「……」

響(なんとかごまかさなきゃ……!)

響(まず、ぱんつはきかえなきゃ……)ヌギヌギ

響(あたらしいぱんつだして……)ガサゴソ

響(よし!)ハキハキ

響(これは……)ビッチョリ

響(タンスのおくにしまおう!)グイグイ

響(これでばっちりだぞ!)

響(じぶんはやっぱりかんぺきさー!)クフフッ

響(あとはこのぬれたおふとんだぞ……)ジーッ

響(かわかさなきゃ……。ドライヤー? それともコタツ?)

響(うーん……)

ガチャ

小鳥「響! そろそろ起きない、と……」

響「」

小鳥「……?」

響「……」

小鳥「あらら……」

小鳥(あちゃー、またやっちゃったか……)

小鳥(昨日はちゃんとトイレに行かせたんだけどなあ……)

小鳥「まあ、仕方ないわね」ニコッ

響「……」

小鳥「気にすることないわ。お風呂行きましょ」

小鳥「綺麗にしないとね」

響「……じぶんじゃない」ボソッ

小鳥「え……?」

響「じぶんじゃない!」

小鳥「じぶんじゃないって……」

小鳥「じゃあ、誰がしたのかなー?」ウン?

響「いぬ美!」

小鳥「……いぬ美が?」

響「いぬ美がした! じぶんみたもん!」

小鳥「いぬ美がねえ……」

響「ほんとだよ!」

小鳥「いぬ美はずっとリビングにいたけどなー」

響「いぬ美!」

小鳥「ねえ、響」

響「……」

小鳥「ママね? おねしょは悪いことじゃないと思うの」

小鳥「たしかに、しないにこしたことはないんだけど」

小鳥「おねしょはしようって思ってするものじゃないんだから」

小鳥「だから、ママ、怒ったりしたことないでしょう?」

響「……」

小鳥「でもね? ママ、嘘ついちゃう子は嫌いだなー」

響「……」

小鳥「……響?」

響「……」ボソッ

小鳥「なあに?」

響「いぬ美! いぬ美がした!」

小鳥「……」

響「いぬ美がしたの!」

小鳥「……そ」

響「いぬ美がしたの!」

ガチャ

P「おいおい、なんだ、朝っぱらから大声出して……」

小鳥「あなた……」

P「ん……?」チラッ

響「……」

P(あー……)

P「小鳥、響だってわざとしたわけじゃないんだ」

P「そんなに叱ってやるなよ」

小鳥「……響じゃなくて、いぬ美がしたのよ」

P「あ?」

P「いや……」チラッ

P(どう見たって響だろ……)

響「……」

小鳥「響がそう言ってるの……」

P「なるほど……」

P(そういうわけか……)

P(さて、どうしたもんか)ウーン

P「なあ、響……」

響「……」ダダダッ

P「あ……」

小鳥「響、どこ行くの!?」

――トイレ

響「……」カラカラ

響「……」ゴシゴシ

ポイッ

響「……」カラカラ

響「……」ゴシゴシ

ポイッ


ジャゴーッ!

響「……」

ガチャ

響「……ッ!」

小鳥「……」

響「……」

小鳥「響、シャワー浴びていきなさい」

響「……いい!」プイッ

小鳥「じゃあ、おまた拭いていきなさい」

響「いい!」

小鳥「良くありません!」ガシッ

響「うぎゃー!」ジタバタ

小鳥「ああ! もう、暴れないの!」ゴシゴシ

響「じぶん、おねしょしてない!」

小鳥「わかったから!」ゴシゴシ

響「うあーん!」ジタバタ

――通園バス 車内


春香「もうすぐクリスマスだねー」

千早「そうね」

響「……」

春香「ふたりはプレゼント、サンタさんにおねがいした?」

千早「わたしはCDとコンポとマイク!」

春香「そ、そんなに!?」

千早「うん。はるかちゃんは?」

春香「わたしはね……、響ちゃん?」

響「……?」

春香「どうしたの? げんきないよ?」

千早「かぜひいちゃった?」

響「ううん……」フルフル

春香「……?」

響「あのさ……」

響「サンタさんっていいこのところにしかこない?」

春香「うん! だからはるかいいこにしてたんだ!」

響「……」

春香「響ちゃんはいいこにしてなかったの?」

響「いいこじゃなかったかも……」

春香「だいじょうぶ! ひびきちゃんはいいこだよ! ね? ちはやちゃん!」

千早「うん。ひびきちゃんはいいこだよ」

千早「サンタさん、ぜったいきてくれるわ!」

響「うん……」

響「……」

響『いぬ美がした!』

響(うそついちゃった……)

響(どうしよう……)

響(かえったらあやまろうかな……)

響(でも……)

小鳥『嘘つく子は嫌いって言ったわよね?』ゴゴゴ

響(……)

響(だまってよう……)

響(ばれてないんだからだいじょうぶさー)

――お昼過ぎ


響「せんせい、さようならー」

やよい「はあい。さようならー」ニコニコ

響「……」チラッ

小鳥「……」

響「……」

小鳥「さ、帰りましょ」ニッコリ

響「うん……」

小鳥「幼稚園、どうだった?」

響「……ふつう」

小鳥「そう……」

響「……」

響(うう……)

響(こんなきもちになるなら……)

響(しょうじきにあやまればよかったぞ……)

――――――
――――

ガチャリ

小鳥「ただいまー」

響「……ただいまー」

小鳥「まず帰ったら、手洗いうがいね?」

響「うん……」

――――――
――――

響「……」ガラガラ ペッ

響(お父さんとお母さんにはばれてなかったけど……)

響「……」ゴシゴシ

響(いぬ美にだけはあやまっておこう……)

響「いぬ美ー」テテテッ

ガラーン……

響「……?」

響「いぬ美ー?」トコトコ

シーンッ

響「……??」

響「……」タタタッ

響「お母さん!」

小鳥「……なあに?」

響「いぬ美は?」

小鳥「ああ、いぬ美……」

小鳥「いぬ美は――」

響「……」

小鳥「人にあげちゃったわ」

響「」

響「な……」

小鳥「……」

響「なんで!?」

小鳥「だって家のいろんなところでおしっこしちゃったら困るでしょう?」

小鳥「お母さん、午前中お買い物に行ったら……」

小鳥「犬が欲しいって言ってる人がいたから、いぬ美をあげたの」

響「なんでなんでなんで!」バンバン

小鳥「……」

響「ちゃんとしつけするから! だれにあげたの!?」

響「いぬ美かえしてもらう!」

小鳥「さあ? でも、その人、アメリカに行くって言ってたわね」

響「あめりか……」

響「あめりかってがいじんがいるとこ?」

小鳥「そうね、いぬ美もいまごろ飛行機の中かしらねー」

響「」

P『ん? 犬を飼いたい?』

P『ちゃんとしつけできるか?』

響『できる!』

――――――

小鳥『どの子がいいかしら?』

P『みんなかわいいな。響はどの子がいい?』

子犬『ワンッ!』

響『……ッ!』

響『この子がいいぞ!』

――――――

響『よろしくな! いぬ美!』

いぬ美『ワフッ!』

P『もう名前をつけたのか』ハハハッ

小鳥『大事にするのよ』ニコニコ

響「……」チラッ

ガラーン……

響(いぬ美がもういない……?)

響(じぶんのせいだぞ……)フラッ

響(じぶんがあんなうそついたせいで……)ジワッ

響(いぬ美はなにもわるくないのに……)ウルウル

響「う、うええ……」

響「うええええええん!」

響「うえええええええ!」

小鳥「……」

響「うえええええええ!」

小鳥「……」

響「ごべんなさい……!」

小鳥「……」

響「おねしょしたのじぶんなんだ!」

響「いぬ美はなにもわるくないんだ!」

響「だ、だから……」

響「だからいぬ美を返してえええ」ウエエ

小鳥「そう……」

響「ううう……」グスッ

小鳥「じゃあ、ママは空港に電話してみるわ」スクッ

響「え……」

小鳥「まだ間に合うかもしれないから」

響「う、うん……」

小鳥「少しの間、お留守番できる?」

響「うん……」グスッ

――十分後

ガチャ

小鳥「ただいまー」

小鳥「……あら?」

響「……」

小鳥「ずっとそこで待ってたの?」

響「……」コクリ

響「いぬ美は?」ドキドキ

響「ひこうきのっちゃった?」

小鳥「……んー」

響「……」ドキドキ

小鳥「……」スッ

いぬ美「ワフッ!」ヒョコッ

響「いぬ美!」パアッ

いぬ美「ワフッ!」

響「いぬ美いいいい!」ダキッ

いぬ美「ワフッ!」フリフリ

響「ごべんよおお! いぬ美いいいい!」ギュウッ

いぬ美「ワフッ!」ブンブン

小鳥(やれやれだわ……)フフッ

――夜

――リビング――


P「うまくいったみたいだな」グビッ

小鳥「なんとかねー」モグモグ

P「これで嘘をつかなくなればいいんだけど……」

小鳥「そう、うまくいかないのが、子育てなんですよねー」

P「はははっ。すっかり小鳥もお母さんだな」

小鳥「ええ、全くだわ。それはそうと――」

P「……?」

小鳥「昨日の夜、響にさんぴん茶飲ませたそうね?」

P「……」

小鳥「響に聞いてるわよ?」

P「……いぬ美を預かってくれたお隣さんへのお礼、なにがいいかな?」

小鳥「ごまかしてもダメですよ?」ニッコリ

P「」

響(つぎのひ、タンスのなかをみたら)

響(よごれたぱんつはなくなってました)

響(あれはいったいどこにいったんだろう?)

――――――
――――

――前の日の午前中

小鳥「ああ! もう! 濡れたパンツなんか入れて!」

小鳥「周りのも全部洗わなくちゃいけないじゃない!」

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