賢者「ゆ、勇者様……少し、やりすぎでは?」(200)

勇者「? ああ、この事??」

ザクッ ザクッ

魔物「痛い……やめてくれ…………殺さないでくれ!」

賢者「そ、そうです……一思いに即死させてあげた方が」

勇者「……嫌だけど?」

ザクッ

魔物「痛ぃぃぃぃぃぃも、もういっそ殺……」

勇者「殺さない、まだ殺さないよ」

賢者「勇者様!」

勇者「……少し黙れよ、賢者」

賢者「ですが……っ!」

勇者「……ああ、ここまで旅してきてまだそんな優しい事が言えるんだ。さすが賢者様だ」パチパチ

ザクッ!

勇者「でもな、こいつらも……ついさっきまで人間喰ってたじゃん。頭からガリガリ」

賢者「そ、それは……」

勇者「もう大分からふっ切れてたけど、こいつら魔物は完全に敵だ」

賢者「こうして言葉も通じ、感情のある……知能のある生物です」

勇者「確かに」

ザクザク

勇者「でもな、人間も知能のある生物なんだよ」

賢者「……」

勇者「そこに転がっている死体……どこから拐ってきたのかしらないが、まだ小さい子供がたくさん」

賢者「ま、魔物も、生きるために……」

勇者「ほう、『生きるために、仕方なく』か。まあ、俺ら人間だって家畜喰いまくりだもんな」

勇者「なら洞窟の壁に磔にされてる綺麗な死体も、生きるためなんだよな。なら仕方ない」

賢者「……」キョロ
賢者「っ」

勇者「俺達も帰ったら、鶏や豚。壁に吊るすか」

賢者「……ですが」

勇者「しつこいぞ賢者」

賢者「……しかし…」

勇者「お前の言い分はわかる。そっちの方がウケも良いだろう、正義っぽい」
勇者「けど俺ら魔王倒すために旅続けてるんだ」

賢者「それが、なんの理由になるのですか!」
賢者「魔王討伐は悲願ですが……相手が魔物といえど、イタズラに命を弄ぶのは…」

勇者「ごもっとも。模範的賢者だな、お前は」

勇者「だが、どっちかというと悟りを開いた俺の方が賢者に近いんじゃないか?」

賢者「なにを悟ったと言うのですかっ、貴方のはただの『諦め』です! 『思考の放棄』です! 『逃げ』です!!」

勇者「随分言われるなあ俺も。『逃げ』? なら、それでもいいよ」

ザクザク

勇者「憎いから。苦しめて殺したいから魔物を痛め付ける。何か言うことあるか?」

賢者「あ、貴方は……っ」

勇者「それにさあ」
勇者「異種姦? っていうのか?? 人間でもあんまするやついないけど」

勇者「こいつらバンバンするじゃん。ガキだろうが構わず。もう、猿の方がまだそこら辺ちゃんとしてるレベル」

賢者「たしかに、おぞましい行いです。許されざる行為です」

勇者「俺にしてみたら、そっちの方が断然辛いと思うよ。『豚みたいな魔物に犯されて死ぬ』……って。口にするだけでも吐き気がするわ」

ザクザク

賢者「……話が逸れています。いま問題なのは、貴方の魔物に対する」

勇者「じゃあさ」
勇者「仮に、俺が賢者を力づくで犯すとする」

賢者「なっ……」カァ

勇者「仮にだよ、仮に。根はネンネなんだから」

勇者「散々犯す。二、三日 水だけ摂取して犯し尽くす」

勇者「そして殺す」

賢者「な、なにを……っ」

勇者「まあ、お前ならその間に舌を噛みきって死ぬだろうな……知らんが」

賢者「勇者様っ」

勇者「大きい声を出すなよ、苛々する」

勇者「まあ、相手が人間の男なんだから……その分、豚に犯されるよりマシか」
賢者「……」

勇者「怒った? わるいわるい」

ザクザク

勇者「俺だったら四肢切断されて死ぬ方が幾分かマシだ。痛みには耐性あるし……鈍感とも言うが」

賢者「だから、それが今なんの関係があるんですかっ!」

勇者「許せるの? そんなヤツ」
賢者「っ……」

勇者「ああ、『人間にも、良いヤツと悪いヤツがいるから』それと同じ理論で、魔物も……とか言うのは無しな」
勇者「こいつら総じて殺されて同然な種族だから」

賢者「な、何て酷い……」ギリ

勇者「要するに……いいか? 要するに、だ」
勇者「俺は魔物を――…完全に憎んでいる」

勇者「要する必要も無いか、さっき言っていたもんな」
賢者「……それで…」

勇者「賢いんだろ? 賢者って名乗るくらいだ」
勇者「そんな俺を更正させる言葉があるのか? あったら唱えてくれよ、念仏代わりに聞いてやる」

賢者「……そ、それは…」

勇者「『なにを言っても無駄』なんだよ」
勇者「お前はさっき、俺が『逃げ』たやらなんやら並べあげてくれたけどな」
勇者「『壊れた』って言い方の方が、まだしっくりくる」

賢者「……」

勇者「ああ、納得する感じか……まあ、そうか」
勇者「……そうだよな。ネジが外れてるのか、怒りやら恐怖やらで錆び付いてるのか」

勇者「脳味噌の方は錆び付いて、賢者がどれだけ正義的な潤滑油を注いでも効果無しってこと」

賢者「……その」

勇者「良いよ、気を使わなくて」
勇者「それじゃあ、魔物の討伐も済んだしこの洞窟から出るか」

ザクッ

賢者「……」

――…
勇者「街には着いたが、宿屋より先に旅用のブツを調達していくか」
賢者「……」

勇者「なんだ? まださっきの事でも考えてるのか」
賢者「……やはり、私には勇者様が誤った道に進まぬよう…」

勇者「優しいなあ賢者は」
勇者「でもあんま暗い顔していると、戦士だって嫌だろう」

賢者「……すみません」
賢者「ですが、それはそれです。仏頂面は直すようにしますけど、勇者様の事は譲れませんから」

勇者「……ああ」
勇者「良い言葉だな『それはそれ、これはこれ』」

勇者「……そういう事だな」
賢者「?」

勇者「俺は殺しや悪行を憎むが、それはそれだ」
勇者「魔物相手の行為には、どう非難されても好きに痛め付けるし、殺す」

勇者「理屈じゃないんだよ」
賢者「……」

勇者「それに、忘れたのかよ」
勇者「僧侶を殺したのはどの種族だ?」
賢者「! そ、それは……」

勇者「親友想いだよな、魔法使いの後にわざわざ僧侶に転職してそれを極めて……って、重すぎるくらいだ」

勇者「歩きながらで難だけどな」
勇者「僧侶は、足から喰われていただろ」

賢者「やめてくださいっ」

勇者「……」ポリ

勇者「思い出さずとも、怒りに溢れて仕方ないと思うんだが」
勇者「賢者は自分の心も簡単に律する事が出来るんだよな、すごいわ。凄い」パチパチ

賢者「……っ」

勇者「怒るなよ……わるかった」
勇者「じゃあ人を変えるか」

勇者「戦士の右目が無くなったのは?」

賢者「……やめてください」

勇者「戦士の両耳は?」

賢者「……本当に、怒りますよ」

勇者「俺以上にぶっ壊れた戦士の脳味噌は誰のせいだ!?」
賢者「勇者様っ!」

勇者「……それで」
勇者「パーティーで、賢者だけがどこも失わず…壊れず……それは、僧侶や戦士が死にもの狂いでお前を守ったから」

賢者「……わかって、います…」

勇者「誰も彼もから愛されて、幸せ者だ」

賢者「わかっています……たくさんの方々に救われて、今こうして生きていられる事も」

勇者「本当に、みんな仲間想いだな」
勇者「戦士は……まあ、言わずもがなか」

勇者「僧侶まで、まるで同性愛者かってくらいお前に構って構って……」

賢者「……」

勇者「でも、俺だけは賢者を女として見た事は無い」

賢者「…………はい」

勇者「反対だったんだ、パーティーに女を入れるのは」

賢者「……勇者様の言いたい不安要素は、わかります」

勇者「本当にか?」

賢者「……?」

勇者「じゃあ、その綺麗な長髪を切るか」

賢者「え……?」

勇者「丁度、良く斬れる剣もある」スッ

賢者「勇者様?」

勇者「女がパーティーにいるとさ」
勇者「まず、くだらない色恋沙汰で不和が起こるだろう」

賢者「落ちついてください…」

勇者「戦闘中でも、戦士は案の定、お前や僧侶を無駄に守って効率の悪い戦いをする」

賢者「……」
賢者「旅の始めに私は言いました。『女として見てくれなくて良い』と」

勇者「そうかそうか」
勇者「じゃあその、生きるのも大変な旅の中で無駄に手の行き届いた長髪は?」

賢者「!」

勇者「その髪飾りは? 機能を無視したスカートは??」

賢者「こ、これは……」

勇者「戦闘では守られて、食事や風呂も優先されて……食事の方は、戦士がどうしてもというから女を最優先にしたが」

賢者「……」

勇者「そうソレ。そのすぐ泣きそうな目をするところ。それが一番勘に触るんだよ」

賢者「……わかりました」
勇者「おっ」

賢者「剣を、貸してください」

勇者「良いよ、斬らなくて」
賢者「?」

勇者「わるい。賢者の意思を確認したいだけだったんだ」
勇者「すまん」ペコ

賢者「……そうですか」

勇者「それとさ、話は戻るけど」

賢者「……」
勇者「睨むなよ。まあ聞いてみろ」

勇者「俺達の最終目標は……魔王討伐。ここまでは良いな?」
賢者「……はい」

勇者「じゃあさ、そのためなら何をしても良いと思うか?」
賢者「『何をしても』というのは……」

勇者「? ああ、犯罪や倫理的なタブーの事」
賢者「はあ……」

勇者「ピンと来ないか……じゃあさ、この前 皆で、人食ったろ?」

賢者「人……え?」

勇者「あの……僧侶がまだ生きていて、毒沼ばかりの樹海だ」
賢者「人……? なにを言って…」

勇者「そうか、戦士にはあの後教えたんだったか」

勇者「あの時さ、近くに食えそうな魔物もいなかったし……餓死寸前だっただろ?」

賢者「……あの樹海で…ですか?」

勇者「魔王討伐より先に死んでは元も子もない。覚えていないか? 俺が袋に入れて持って帰った……」

賢者「……」
賢者「っ」

勇者「そうだ、あの時の肉」
勇者「アレは……人間の肉だ」

賢者「……うっ…」

勇者「吐くなよ? もう消化も済んで、お前の血肉になってるんだ」
勇者「食い物を探していた時に見つけたんだ。何かに襲われたんだろうな、死んだばかりの女だった」

賢者「っ……」

勇者「『いつもの魔物の獣臭さや、生臭さが少ない』って言っていただろう」
勇者「それで、樹海を抜けて数日後に全員揃って謎の身体不良でぶっ倒れた」

勇者「あの時は、『ああ、人が人の肉を食うとこういう異常反応を起こすのか』なんて思ったな」

賢者「うぇ……」

勇者「どうだ?」

賢者「……嫌悪感が酷いです」

勇者「まあ、生きるためだ」
勇者「そして"生きるため"は、"魔王討伐のため"だ」

勇者「それを踏まえて、どうだ?」

賢者「……二度と御免被りますが」
賢者「その女性の命を頂いた事実、忘れずに…

勇者「ああ、そういうんじゃくて」
勇者「セーフか? って聞いたんだ」

賢者「……魔王討伐の為になら、ですか」

勇者「ああ、魔王討伐だぞ? 人類の悲願だ。なにを置いても優先されると思うが」

賢者「……」
賢者「それで、魔王を倒せるのなら。そうでないと、その女性にも……僧侶や他の方々にも示しがつきません」

勇者「まどろっこしい言い方だなあ……セーフって事だな」

勇者「じゃあ」
勇者「俺に強姦経験があるって言ったら?」

賢者「……え?」

勇者「別に、誰かに許してほしいわけじゃない」

賢者「……?」

勇者「ほら、二つ前に魔物の城で戦闘になったろ」

賢者「……」

勇者「おい、聞いてるのか」

賢者「っ」
賢者「あ、貴方が変な事を言うから……」

勇者「俺はさ、お前の言い分を否定しないよ」
勇者「だから……否定された上で、それをわかって言いたい事を言っている」

勇者「わかってもらおうとか、理解してほしいとは思っていない」
勇者「俺の言い分を否定してもらった方が、自分が壊れている事を再確認出来るんだ」

賢者「……何度でも言います」
賢者「勇者様は、間違っています」

勇者「……そうだな」
勇者「肩書きだけの勇者だ。魔物殺しとかモンスターハンターって呼んだ方がしっくりくるかもな」

賢者「……それで」

勇者「? ああわるい、話が途中だったな」

賢者「……」

勇者「そこの城にさ、獣人の子がいただろう」

賢者「……?」

勇者「いたんだよ。人間と魔物の子だったろうが…」
勇者「……目を疑うほどの美人でさ。こう、言葉も通じなかったんだけど」

賢者「……それで、行為に及んだのですか?」

勇者「その時にはさ、もうお前とか…人間の女を見ても興奮しなくなってた」
勇者「何ヶ月ぶりかに血が昇ってさ、城の主を討伐した後だったし好きに弄んだ」

賢者「軽蔑します……最低っ…」

勇者「わからないよな。あれからまた興奮する事が無いし、俺も未だにわからない」
勇者「……で、これは? どう思うよ」

賢者「魔王討伐に関係ありません、正直……貴方へ向けていた好意は落ちるところまで落ちました」

勇者「……まあそうだろ」
勇者「言わなくても良かったんだけどな。言わないとわからないだろ、こんな事」

勇者「もう隠す気も無い」

賢者「……」

賢者「聞かなければ良かった」

勇者「この事実を隠されたまま、で良かったのか」

賢者「それなら、まだ貴方を好きでいられました」

勇者「いらねえよ、んな好意」
勇者「嫌われるってわかって言ったんだ。思ったように嫌悪すればいい」

賢者「……」

賢者「それで、その獣人の少女は……?」

勇者「殺す気も起きなかったからな。そのままだ」

賢者「……」
賢者「この短時間で貴方の事、よく知ることが出来ました」

勇者「そうか」
勇者「看板が見えてきたぞ、食料や薬草を買ったら宿屋に向かう」

賢者「……」

――…

勇者「それで……ああ、どこまで話したか」

賢者「先程ので終わり。というわけではないようですね」

勇者「これだけ魔物を殺してるんだ。向こうからすれば、俺こそが大悪人だろう」

賢者「人間が殺されているように、人間もまた魔物を殺しています」

勇者「魔物さえ襲ってこなければ、人間は手を出さないんだけどな」
勇者「それでさ」

勇者「魔王討伐を達成したら、その後は何がしたい?」

賢者「……何度も話し合いましたよね」
賢者「まあ、何度話しても楽しいですけど……」

勇者「賢者は、何がしたい?」

賢者「まずは……産まれ育った村に戻って」

勇者「うんうん」

賢者「家を新築して、ペットも飼って……」フフ

勇者「素敵な旦那様に、可愛い子供のいる平和な世界――だったか」

賢者「……覚えているんじゃないですか」
賢者「まあ、素敵な旦那様の方は……探し直します」

勇者「平和を絵に描いたような幸せな生活だな」

賢者「それで」
賢者「勇者様は、魔王討伐が叶ったら……」

勇者「その場で死ぬ」

賢者「え?」

勇者「魔王討伐は悲願だからな」
勇者「それが叶ったら、もう思い残す事はない…」

勇者「……というか、殺し過ぎた。俺の命じゃ足りないと思うが、贖罪みたいなもんだ」

賢者「……」

勇者「……はじまった」

賢者「……」グスッ

勇者「……これは、言わなきゃ良かったな」

賢者「どうしてそんな事を言うんですか」

勇者「『逃げ』だよ。お前が言った通り」

賢者「呪文で阻止します……」

勇者「自殺者に神の加護が効くと? 無いな」

賢者「……」

勇者「人を食っても、こうして賢者が回復呪文を使えるということは」
勇者「神様的にも、グレーゾーンなのかもな」

賢者「親愛なる神は、敬虔な

勇者「ああ……ストップ」
勇者「ソレいつも長くなるから、今は我慢してくれ」

勇者「……後、新しくパーティーに人間を追加は出来ないだろう?」

賢者「……ええ、一度試みましたが大変な結果になってしまいました」

勇者「その件もそうだが」
勇者「だから女はパーティーに入れるべきじゃない」

勇者「僧侶を欠いて、一度他のパーティーと合同で旅をした」

賢者「……はい」

勇者「結果は、見つけた装備や金の取り合い…」
勇者「……女がいれば、それがやはり不和を生んだ」

賢者「……」

勇者「仕方なしに暫く三人で旅をして、着いた街々で仲間を追加した」

賢者「……しかし、この旅を共に歩くには、誰もが能力不足でした」

勇者「魔王を倒すパーティーなんだ。そこらに代わりがわんさかいるなら苦労しない」
勇者「結果、やはり三人だけで旅をする事になり今に至る……というわけだ」

賢者「……」
賢者「僧侶さん……」

勇者「……ああそうだ」
勇者「これも言おうか今まで悩んでたけどさ」

賢者「?」

勇者「僧侶の遺体、埋葬しただろう」

賢者「? ……はい」

勇者「次の日、墓から死体が無くなっていた」

賢者「っ……」

勇者「掘り起こされた……にしては土の様子がおかしかったし」
勇者「中から土をどかしたような跡だった」

賢者「どうしてそんな大事な事を黙っていたんですか!?」

勇者「あの時はお前も一杯一杯だったろ」
勇者「あれ以上負担はかけたくなかったからな、一日かけて探索したが遺体どころか僧侶の装備も見つからなかった」

賢者「……」

勇者「それと、三つ前に貰った王様からの最後の手紙だが」

賢者「私……帰ったら、真っ先に僧侶さんの墓前で…魔王を打ち倒したよって……」
賢者「僧侶さんの分も……やり遂げたよっ…て……」

勇者「……」

勇者「王様からの手紙にはこう記してあった」

実はこのSSは僕の7年間の遠距離恋愛がベースになっています。
もちろん、秒速5センチメートルと絡ませるためや特定を防ぐために、無理やり時系列や場所、内容はいじっています。
でも各キャラの言い回しなどは当時のをそのまま使っています。そしてこのSSに登場するキャラにも全てモデルがいます。
ちなみに男はSSの内容を盛り上げるためにモテる設定でしたが、僕は一度も告白されたことがありませんし、
告白したのも小学生の時からずっと好きだった幼馴染のモデルになっている女の子に中学の時に告白をしたのが唯一です。
そしてこれからもずっと死ぬまで好きでい続けたい子もその子です。
ちなみにイケメンのモデルの奴も本当にあんなくそ野郎で幼兄のモデルになった人にボコられました。

じゃあ何でこんなことを蛇足で書くかというと、『あの映画』だけが遠距離恋愛の結果じゃないということを知って欲しかったからです。
すごく上からな発言になってしまっていますが、『距離』に負けなかった『二人』が少なからず実在するんだってこと、
そしてその『距離』に勝つためには、このSSでもキーワードになっていますが、『想いをちゃんと伝え合うこと』、そして『大事な二人だけの約束を交わし、果たすこと』、
これが『距離』に勝つために大切なことなんじゃないかということを僕の実体験をもとにこのSSで皆さんに伝えたかったからなんです。

以上で蛇足は終了です。気分を害された方がいたら本当に申し訳ありません。
でもこれから、遠距離恋愛に挑もうとしている方、もしくはすでに途中の方、そして遠くに好きな人がいる方になんらかの考えるきっかけになればと思っています。
また、あの『秒速5センチメートル』という映画には僕自身とても考えさせられました。確かに僕もあの映画を見て凹みましたが、「あんな結果にならないためにも」と、遠距離恋愛に絶対に負けないという気持ちが逆に強くなったきっかけにもなりました。
そのおかげで僕は7年という年月を乗り越えて彼女と一緒になれました。なので、皆さんにもそういう風にあの映画を捉えてもらえれば、あの映画を見たことも決して無駄ではないと思えるのではないかと思います。

では長々と書いてしまいましたがこれで本当に本当に終わりです。ここまで読んで頂いて本当に本当にありがとうございました。

勇者「『国が魔物に追い詰められている――…至急応援に来られたし』ってな」

賢者「! そんなっ」
賢者「最後の手紙って、もう3ヶ月も前の……」

勇者「移動魔法だって、好きな所へ好きに移動出来るわけじゃない」
勇者「戻るだけならまだしも、魔王の影響力が強いこの辺りでは強いジャミングがかかっていて、正確にここへまた戻ってこれる可能性は限りなく低い」
勇者「谷底にでも落ちたら終わりだろう?」

賢者「……ですが」
賢者「国には私たちの家族や友達が……」

勇者「……俺達の仲間だって、命を落とした」
勇者「魔王討伐さえしなければ犠牲になる命が増え続けるだけだ」

勇者「だから、戻りたい気持ちを圧し殺して……歯を食いしばってでも早急に目的を達成する必要がある」

賢者「……はい…」

勇者「あと、戦士の事なんだが」

賢者「?」

勇者「最近、めっきり会話の数も減って」
勇者「戦いの時だけだ、意識がハッキリしているのは」

賢者「……はい」

勇者「だから、普段からお前が笑いかけてやってくれれば、それでアイツは喜ぶ」

賢者「……」

勇者「さっきの髪を切るって、アレさ」
勇者「もし本当に切っていたら、俺が戦士にボコボコにされてるところだよ」

賢者「……はあ」

勇者「……もう良い時間だな」
勇者「明日は朝早くから出かける。戦士にも伝えておいてくれ」

賢者「……了解です」
賢者「おやすみなさい」

勇者「……おやすみ」

――…

賢者「勇者様!」
勇者「?」

賢者「もう、やめてください……」
勇者「……ああ、これ」
ザクッ ザクッ

賢者「……最近、特に酷くなってきてます」

勇者「そうか? 自覚はあまり無いが」

魔物「許して……」

ザクッ ザクッ

賢者「勇者様っ」

魔物「……子供が、たくさんいるの…」

ザクッ

勇者「……ああ、わるいな。そういうの、効かないんだ」

ザクザク

魔物「  」

賢者「……勇者様…」

勇者「そろそろ、魔王の城に近づいてきたな」

賢者「……はい」

勇者「……」
賢者「……」

勇者「……」

賢者「勇者様?」

勇者「……」

賢者「勇者様」

勇者「? ……ああ、わるい」

賢者「調子が優れませんか?」

勇者「ああ」
勇者「もう魔王戦も近いのに、体力も少なく……食料もあと僅か」

勇者「当然、近くに村などは無い……どうしたものかと思ってな」

賢者「……」

勇者「……喉、渇いたな」
勇者「魔物、いねえかな」

賢者「……魔物の血は、身体に毒ですよ」

勇者「……最後の食料か」

賢者「魔物……見つかると良いですね」

勇者「……逞しい事言うようになったな」

賢者「……そ、そうですね」

勇者「じゃあ、これは賢者が食べろ」

賢者「いえ、これだけなので勇者様が」

勇者「良いから。女が最優先だろ」
勇者「戦士から、頼まれているからな」

賢者「……」

勇者「……ほら」

賢者「……その、戦士さんはどこかに埋葬しないんですか」

勇者「……どうせ、僧侶の時みたいに魔物かなにかに掘り出されて喰われるだけさ」

僧侶「……」

勇者「だから、この食料はお前が食え」

僧侶「……はい」

――…
勇者「……」

賢者「……」

勇者「……」

賢者「……あれから3日間、魔物の姿が見えませんね」

勇者「……」
賢者「……」

――…
勇者「……」

賢者「……7日、目…」

勇者「……」
賢者「……」

勇者「……」
賢者「……」

勇者「…………」チラ

賢者「……」



賢者「……」コク…

>>167
眠気で……
僧侶×

再開はpm7:00になりそうなので別の日に建てます

山岡「やれやれ、こんなSSを面白いと言っているようじゃ、
   vipperの質も落ちたもんだ」
山岡「明日pm7:00にもう一度このスレに来てください
   こんなもしもしが書いたようなSSよりずっと面白いSSを
   ご覧に入れますよ」

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