勇者「最強の呪文?」 (124)

王様「勇者よ、これよりそなたの長く険しい旅が始まる」

勇者「はっ!」

王様「魔王を倒すその日まで、苦難の日々が続くことじゃろう」

勇者「もとより覚悟の上です。これが選ばれし者の使命なのですから」

王様「うむ、よい心がけじゃ。そなたのようにまっすぐな若者が勇者でよかったわい」

勇者「ありがたいお言葉です」

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王様「そこでじゃ。そなたの旅の無事を祈り、授けたいものがある」

勇者「し、しかし当面の旅の資金や、剣など一通り必要なものは頂きましたが」

王様「授けたいのは形あるものではない。呪文じゃ」

勇者「呪文……」

王様「さよう。それもこの世で最も効力を発揮するという……最強の呪文じゃ」

勇者「なっ」

王様「使い方を誤れば、悪しき者が使用すれば世の中をいとも容易く混沌せしめる呪文じゃわい」

勇者「そ、そのようなもの、私には到底使いこなせるとは思いません」

王様「なぁに、わしも老いたが人を見る目だけは衰えてはおらんつもりじゃ。そなたはきちんと世のためにこの呪文を使ってくれる。そう信じておる」

勇者「……!光栄です!」

王様「ふぉっふぉ……」

王様「では、呪文を授ける。よくよく聞き逃すでないぞ」

勇者「はい!」

王様「うむ。ではその呪文とは」

勇者「呪文とは……」






勇者「……は?」

王様「以上がその呪文じゃ」

勇者「え、えっと」

王様「なんじゃ、聞こえなかったのか?えらく短い呪文じゃろうに」

勇者「いえ、聞こえました。ばっちりです。一文字も聞き逃してはおりません」

王様「ならば問題はなかろう」

勇者「え……ええええ」

王様「よいか、困った時には迷わずこの呪文を口にするといい」

勇者「ぐ、具体的には」

王様「どんな時でもじゃ。さすれば必ず道は開かれるじゃろう」

勇者「え、その、う、ううん?」

王様「さあ行け!勇者よ!魔王を倒し、この世に平穏をもたらすのじゃ!」

勇者「え、あ、はい。いってきます」

勇者「と、とりあえず言われるままに旅立ったけど……」

勇者「本当なのか?最強の呪文って」

勇者「でもあの場面で王様が冗談を言うとは思えないし」

勇者「ま、まあ気にせず頑張るとするか!」

勇者「気を取り直して旅の準備をしよう。まずは道具屋だな」

店主「っらっしゃーせー」

勇者「えーっと、薬草を十、マジックポーションを五つ、あとは世界地図を一枚もらおうか」

店主「まいどー」

勇者「うんうん。王様からもらった資金で、まずは十分な買い物ができ…………お、おおおおお!?」

店主「お、兄さんお目が高いねえ」

勇者「店主!こ、これは一体!?」

勇者「四海宝剣じゃないか!?」

店主「よくご存知で。いやー入手するのに苦労しましたよ」

勇者「屈指の攻撃力を誇り、空間すら切り裂くという伝説の剣……しかもこんなにこれ見よがしに飾っているってことは、これも商品なのか?」

店主「もちろんでさあ。お代はざっとこれほど」

勇者「ぐっ……伝説には妥当な金額!!」

勇者(王様からの軍資金と五桁は違うぞ……こんなものどうあがいたって買える気がしない)

勇者(だが、これさえあれば魔王討伐がかなり楽になることは間違いない)

勇者(旅立って早速壁にぶち当たるとは俺もツいてな……壁?)

勇者(つまりこれっていわゆる、困難……だよな?)

勇者「あ、あの!」

店主「なんだい分割払いの相談なら認めないよ」

勇者「あの、ですね」

店主「何だ?」

勇者(ええいヤケだ!!使ってやろうじゃないか!その呪文とやらを!)

勇者「『アド街を見た』……!」

店主「……はあ?」

勇者「ぐっ……白い目が思ったよりもキツい!」

勇者(そ、そうだよな。そんな都合いい呪文なんてないよな……)

勇者(これはきっとあれだ。王様からの教訓的な何かなんだろう。甘い言葉に騙されるなとか、そんな)

勇者「いや、すみません。何か勘違いしてました。それじゃ俺はこれで」

店主「……待てよ兄ちゃん」

勇者「は、はあ」

店主「この宝剣、持ってけ」

勇者「はいいい!?」

店主「お代はいらねえ。ま、俺の心付けってとこだな」

勇者「え、ちょ、ちょっと待ってください!こんな高価なものをタダでいただくなんてそんなわけには」

店主「ええいつべこべ抜かすな!この俺がいいって言ってんだ!気の変わらねえうちに持って行け!!」

勇者「え、あ、はあ。じゃあ……ありがとうございます」

店主「なあに!いいってことよ!」

勇者「……」

勇者「宝剣をいただいた上、アイテムまでごっそり持たされてしまった」

勇者「しかも全部無料……」

勇者「ふっ……『アド街を見た』、か」

勇者「俺はとんでもない呪文を授かったのかもしれないな……」

今日はここまで。出落ち甚だしいですが、まあ暇潰しになりましたら。

勇者「しかし旅立ってすぐ、最強の武器を手に入れてしまうとは」

勇者「もっとこう、徐々にランクを上げていくものだと思っていたが……」

勇者「事実は小説よりも奇なりって本当だったんだな」

勇者「他の装備品は普通ランクのものだから、なんか妙に張り切った人みたいだな俺……」

勇者「え、ええい。考えても仕方ない。行こう」

勇者「と、いうわけで。町の外に出てきたぞ」

勇者「ここから先はモンスターがうじゃうじゃ出てくる。気を引き締めないとな」

勇者「折角いい剣を手に入れたんだ。戦闘で使わない手はない」

勇者「いい剣すぎて、なんか逆にモンスターが可哀想な気もするけどなあ……」

【さっそく野生のスライムがとびだしてきた!】

スライム「ぴぎー!」

勇者「うわ!?いきなりのおでましか!」

【スライムの先制攻撃!】

スライム「ぴぎゃぎゃー!」

勇者「いだっ!!」

【勇者に3のダメージをあたえた!】

勇者「くそっ……不意打ちとは卑怯な!」

勇者「いいかスライムよ!この勇者自ら正義の鉄槌をくらわして」

【スライムの、なんかねちゃねちゃする攻撃!】

スライム「ぴっぎゅねちょー!」

勇者「うっわあねばっこい!?」

【勇者に5のダメージをあたえた!】

勇者「うええ……何だこれすげえ生臭い」

【勇者のテンションを地味に下げさせた!】

勇者「くそっ!こうなったらやってやる!くらえ無料の宝剣の威力!!」

【勇者のこうげき!】

スライム「ぴーっ」

【スライムはひらりと身をかわした!】

勇者「くっ!やるな!ならばこいつはどうだ!」

【勇者のこうげき!】

スライム「ぷぷーっ」

【スライムはひらりと身をかわした!】

勇者「ああもう!!」

勇者(ええいスライムごときで手間取っていては勇者の恥!)

勇者(とは言え慣れない剣で手間取っているのは事実!)

勇者(つーかこの剣やたら重いし長いしで……使いにくっ!!)

勇者(慣れるまでこれは時間がかかりそうだ……仕方ないな、元の剣に持ち替え……あ)

勇者(邪魔になるからって売り払ったんだわ……)

勇者「こうなったらもう逃げ……いや待て」

スライム「ぴー?」

【スライムは様子をうかがっている!】

勇者「ダメもとで使ってみるか、あの呪文!」

スライム「ぴぴっ?」

勇者「くらえスライム!」

勇者「『アド街を見た』!」

スライム「!?!」

勇者(よっし!スライムの動きが止まった!)

勇者(今なら余裕で倒せるはずだ!)

勇者「悪く思わないでくれよ、これも世界のた」

【勇者は戦闘に無血で勝利した!!】

勇者「えっ!!?」

スライム「ぴっぴぴー♪」

勇者「ちょっと待て!?俺はまだ何もしてないんだけど!?」

【勇者は通常の五倍の経験値を得た!】

勇者「何で!?」

【勇者は一気にレベルが3に上がった!】

勇者「うわあ力がみなぎる怖っ!!」

【薬草を三つひろった!】

勇者「そこはわりと普通のもの落ちるんだな」

スライム「ぴー……」

勇者「う、うわ!?違う君に文句をつけたつもりはないから!落ち込んで溶けないで!?」

勇者「てか無血の勝利だけどさ、君って血が流れてんの?」

スライム「ぷぴー?」

勇者「まあいいか……ほら、もうお行き。これからは人を襲うんじゃないよ」

スライム「ぴーっ」

勇者「おー。元気でなー」

スライム「ぴぴぴー!」

勇者「はー……」

勇者「なんだこの呪文」

今日はここまで。どこに向かうか不明ですが、お付き合いくださいませ。

勇者「『アド街を見た』!」

【勇者は戦闘に無血で勝利した!!】

勇者「『アド街を見た』!!」

【勇者は戦闘に無血で勝利した!!】

勇者「『アド街を見た』ぁ!」

【勇者は戦闘に無血で勝利した!!】

勇者「『アド街を……見た』ぁああああ!」

【勇者は戦闘に無血で勝利した!!】


【勇者は序盤にしてはちょっと頑張りすぎなくらいにレベルが上がった!】

勇者「具体的な数字を言えや!!!」

勇者「やっと次の村に着いた……」

勇者「とうとう出てくるモンスターすべてと無血で勝利を収めてしまった……」

勇者「もう人は襲わない約束をしたし、まあそこはいいってことにして」

勇者「はー……」

勇者「もうこれ魔王の城直行していいな」

勇者「とにかく今日はもう宿を取って休もう」

勇者「スライムのなんかねちゃねちゃした攻撃のせいで全身粘液まみれだし……風呂に入らないとやってられない」

勇者「通りすがりの方々の視線が痛いのはきっと気のせいなんかじゃないよな……」

勇者「しっかしこの村、規模の割に人が多いなあ。何かあったのかな」

勇者「まあいいや。宿はどこかなーっと」

勇者「こんにちはー」

女将「あ……お客さんかい?」

勇者「ええまあ。一人一泊でお願いします」

女将「お兄さんでもう、今日は十五人目なんだけど……悪いねえ」

勇者「はい?」

女将「もうこの宿は満室なんだ」

勇者「えええ!?」

勇者「そ、そんな殺生な!どうにかならないんですか、おばちゃん!!」

女将「そう言われてもねえ」

勇者「この村に宿屋ってここしかないですよね……?」

女将「そうなるね。まあ、あんたの前に来た十四人みたく大人しく諦めておくれ」

勇者「ちなみに、その十四人はどうしたんです?」

女将「最初の人たちは民家に頼み込んで泊まったりしてたみたいだけど、それももう限界みたいでね。何分小さい村だから。諦めて引き返す人が多いかな」

勇者「またあの道を帰るのか……」

女将「なんなら井戸くらい貸してあげようかね?そこで体を洗ってから引き返せばいいよ」

勇者「ええ……っと」

女将「なんだい?」

勇者「すみません。あんまりこういうこと、連発するのはズルい気がするんですけど」

女将「はあ」

勇者「……『アド街を見た』」

女将「よし!何とかしようじゃないか!」

勇者「ごめんよ十四人……」

宿娘「あの、お荷物はここに置いておきますね」

勇者「本当にすみませんでした……」

宿娘「え、ええ!?そんな土下座なんてよしてください!」

勇者「うん、そうだね。女将さんにする分も土下座は取っておかないと」

宿娘「そういう意味じゃなくって!うちのお母さんも気にしてませんし、大丈夫ですよ」

勇者「いやでも何と言うか、良心のちょっとした呵責が……」

宿娘「よくわかりませんけど、大変なんですねえ」

宿娘「でもお客さんを納屋に泊めるなんて、こっちが申し訳ないくらいですよ」

勇者「あの道を引き返すのに比べたら全然ありがたい話だよ」

宿娘「そう言ってもらえると助かります。あ、お風呂は自由に使っちゃってくださいね。ご飯は欲しかったら言ってください」

勇者「ああ、じゃあ頼もうかな」

宿娘「わかりました。では、ごゆっくり」

勇者「……ありがとう」

勇者「あああああ……何かこれ……呪文を使うにつれてどんどんダメな人間になってく気がするんだけど」

勇者「困難も苦痛も、呪文一つでさくっと解決」

勇者「便利にも程があるだろこれはよ……努力も友情も勝利も生まれねーよ。堕落しか覚えねーよ」

勇者「もうあれだな、マジで早めに魔王を倒してこんな呪文とはおさらばしよう」

勇者「宝剣をくれた店主さんも、ここの女将さんも宿娘さんもいい人だし、これ以上誰かにセコい迷惑かけてらんねーわ」

勇者「モンスターを黙らせることができるのは利点っちゃ利点だけどさあ」

勇者「はあ……風呂はいろ」

勇者「あー……生き返るわあ」

勇者「……戦闘はまったくしてないから、疲れはあんま溜まってないけど」

勇者「ほんとこの呪文、便利だけど何かにつけて解決方法が過剰なんだよなあ」

勇者「今回はまだマシだな。スイートルームとか用意されないだけはるかに常識的だわ」

勇者「これで過剰なサービスでもされた日には、もう俺はどうしたらいいやら……」

がたっ。

勇者「!?」

勇者(今の音って脱衣所から……?)

勇者(俺外にいるんだなー、まだ夕方前なのに風呂に入る奴って)

勇者(スライムにやられたかな?もしくは……)

勇者(もしくは……)

勇者(風呂、サービス、宿の若い娘さん、過剰なサービス、俺一人、呪文)

勇者(はは、まさか……な?)

勇者(いやこれはマズいマズいよ!?いくらなんでも倫理的にどうよ勇者としてアウトだろ!?)

勇者(ああああでも宿娘さん結構俺のタイプだしって何考えてんだ俺はよ!!)

勇者(過剰なサービスダメ!!絶対!!!そう誓っただろ!!!)

勇者(勇気を出して振り返るんだ!他のお客さんなら問題ない。もし万が一宿娘さんで、そんな空気だったら……)

勇者(紳士的に……!!紳士的にお断り申し上げるんだぞ俺!!)

勇者(よ、よし、いくぞ俺!勝負の時は来た!!)

女将「お客様……」
勇者「」
女将「本日は折角起こしいただいたのに、あのような場所しかご用意できず大変失礼いたしました」
勇者「」
女将「せめてものお詫びに私がお背中をお流しさせていただきたく……?」
勇者「」
女将「お客様?」
勇者「すんません勘弁してください服を着てください」

改行ミスった!!


女将「お客様……」

勇者「」

女将「本日は折角起こしいただいたのに、あのような場所しかご用意できず大変失礼いたしました」

勇者「」

女将「せめてものお詫びに私がお背中をお流しさせていただきたく……?」

勇者「」

女将「お客様?」

勇者「すんません勘弁してください服を着てください」

勇者「酷い目にあった……」

勇者「くそっ!五十代女性のヌードなんざ何も生まねえどころか毒だよ猛毒だよ!!」

勇者「夕食も喉を通らなかった……宿娘さんが作ってくれたのになあ」

勇者「まあこれも俺の煩悩が悪いんだ、そういうことにしておこう……」

勇者「はーあ……勇者って虚しい」

勇者「えーっと、世界地図を広げてっと」

勇者「ふむふむ。魔王城にたどり着くには、ここから東の山を越えて、海を渡る必要があるんだな」

勇者「船のアテなんて何もないけど……まあ、どうにかなるだろ」

勇者「どうにか、なりすぎるだろうなあ……」

勇者「ああ……旅の安泰が予想できすぎて胃が痛い」

勇者「よし決めた」

勇者「最短ルートで魔王城を目指す」

勇者「呪文は必要最低限でしか使わない」

勇者「魔王を倒したら、呪文は永遠に封印する」

勇者「あとは……仲間は作っちゃいけないな」

勇者「こんなクズ人間養成呪文で苦しむのは、俺一人だけで十分だ……」

勇者「そうと決まったらもう寝よう……悩んでるうちに、もうすっかり夜中になっちまった」

勇者「明日の朝一番でここを出て、それでもう二度と関わらないようにしよう」

勇者「ごめんよ宿娘さん……妄想の中とはいえ、君を汚しそうになっ」

こんこん。

勇者「!?」

勇者「こんな夜中に……納屋なんか用事はないよな普通……」

勇者「じゃあまさかこれは……」

勇者「夜這い?」

勇者「さっきのパターンで?」

勇者「」

勇者「マジで勘弁してください無理です!!」

「!?」

勇者「もう少し若けりゃなんとかいけると思んですけど!!さすがにちょっと!!キツイですすんません!!」

「…………」

勇者「だから今夜のところは穏便にお帰りくださると…………」

宿娘「……」

勇者「……え?」

宿娘「あ、あ……ご、ごめんなさい」

勇者「え?宿娘さん?なんで?」

宿娘「そう、ですよね……お客様みたいなかっこいい人は、私なんか、抱くの……無理ですよね……」

勇者「え!?ちが!?なんで!?なんでこうなってんの!?」

宿娘「ごめんなさい……今夜のことは……私なんかのことは忘れてください!!」

勇者「ちょっと待って誤解だから!!君なら全然いけるけど!!いっちゃいけないんだけども!!?」

宿娘「ごめんなさいっ……!!」

勇者「待って戻って来てえええええええ!!?」

【→すてる】

【→どうてい】

【それをすてるなんてとんでもない!】

勇者「やかましいぞメッセージウィンドウの分際で!!!!!」

今日はここまで。ちまちまダラダラと進めていこうかと思います。

乙です
勇者が次に訪れる頃にはロリコン勇者が浸透してる気もしたが
基本通り16歳勇者としたら50過ぎ女将の娘を見て「若い娘なら」と断ってもおかしくないのか?

勇者「朝が来た!」

勇者「希望も何もない朝が来たぞ!!」

勇者「何か逃げるみたいに出て来たけど、宿代はそっと置いて来たし……これでいいよな」

勇者「ってか顔合わせられっかっての」

勇者「……正しい選択は時として虚しさを残すんだな」

勇者「よっし!もう切り替えてこの鬱憤は魔王にぶつけるぞ!」

勇者「待ってろ魔王!!なる早で殴り込んで呪文をぶちかましてやるからよぉ!!」

勇者「私怨なんかねーからな!正当な使命感からくる衝動だからな!!」

勇者「ああもう早いとこ山越えよ……」



??「もし、そこのお方」

勇者「ああ……?」

勇者「俺ですか?」

占師「然様」

勇者「えーっと……何でしょう」

占師「お悩みの様子かとお見受けしますが、どうでしょう」

勇者「まあ……こんな朝っぱらから往来で叫ぶ程度には、わかりやすく困ってますけど」

勇者「でも解決策はわかってますし、その手段もちゃんとあります」

占師「ほほう……」

勇者「だからすみませんね、商売するなら他の人を当たってもらえますか」

占師「いえいえ、これは商売ではありません。ただ見えたことを忠告しているだけにすぎません」

勇者「はあ……」

占師「占いではこう出ています。貴方はこのままでは本懐を遂げることはできないでしょう、と」

勇者「あー大丈夫大丈夫。俺にはちゃーんと」

占師「その『切り札』とやら……効果を発揮しない場合もあるようですよ」

勇者「なっ!?」

勇者(この呪文が効かない!?そんなことあるっていうのか!?)

勇者(これまで一度だってハズレのなかったこの呪文に……弱点が?)

勇者(その可能性が万が一にもなくはない、とは言い切れないが)

勇者(しかしこんな占師の言葉……簡単に信用してしまっていいものか)

占師「今、私の言葉を疑っていますよね?」

勇者「当たり前だろ」

占師「手厳しい。ですが私は見えたものを伝えるだけです。未来を切り開く術と共に」

勇者「ま、一応聞いておいてやるよ。で、その術ってのは?」

占師「貴方は仲間を作るべき……そう水晶は示しています」

勇者「仲間ぁ!?」

勇者「それは無理だ」

占師「何故です?」

勇者「生憎、この度に誰かを同行させるつもりはないんだ。そう決めたんでな」

占師「まあ、それも良いでしょう。占いに従うのは貴方の自由です。ですが最後に一つだけ」

勇者「何だ?」

占師「この先の道中で、貴方の切り札が通じない相手が現れることでしょう」

勇者「へえ……通じない相手、ねえ」

占師「以上で私の話は終わりです。お付き合いいただき、ありがとうございました」

勇者「おう、まあ話半分に覚えておくよ。ありがとうな」

占師「いえいえ。くれぐれもお気をつけください」

勇者「うーん……眉唾ものだよなあ、どう考えても」

勇者「でもまあ通じない場合があるかも、ってのはちょっと気になるところだし」

勇者「ま、考えても仕方ない。東の山に向かう道はこっちだよな……っと?」

勇者「何だこの立て札」

勇者「『この先盗賊団出没注意!』……なるほどなあ」

勇者「だからこの村に足止めくらってる奴らがいたってわけか」

勇者「ま、山越えついでにサクッと片付けてしまいますかね」

勇者「……レベルは、序盤にしてはちょっと頑張りすぎなくらい上がってるわけだし」

今日はここまで。シリアスっぽい流れを目指してみました。

>>78
あまり外見や年齢は考えていないので、読んだ方々がそれぞれいい感じに想像してくださると全力で助かります。

勇者「……と思って山に入ったはいいけど」

勇者「そういや俺、まだこの宝剣慣れてねーんだった」

勇者「居辛さあってすっかり忘れてたわ」

勇者「うーん……どっかで素振りでもすっかね」

勇者「雑魚モンスターで試し切りすんのはなあ。折角平和的に解決できる呪文があるんだし」

勇者「そうと決まったら街道をそれて、適当な開けたところを探しますか」

勇者「お、あの辺とか良さそうだな。よーっし早速」

盗賊1「ああ!?」

盗賊2「何だてめえは!?」

魔法使「ひ」

勇者「え?」

勇者「お、あの辺とか良さそうだな。よーっし早速」

盗賊1「ああ!?」

盗賊2「何だてめえは!?」

魔法使「ひ」

勇者「え?」

盗賊1「ちっ……見られちまったからには仕方ねえ。おい!てめえ!」

勇者「えーっと……俺?」

盗賊1「他に誰がいるってんだ!いいか、剣を持っているようだが動くんじゃねえぞ!この女がどうなってもいいのか!?」

魔法使「い、いや……助けて!」

勇者「…………まだ呪文も唱えちゃいないのに、このご都合展開はどうよ」

盗賊2「何をごちゃごちゃ言ってやがるんだ!」

勇者(えーっと……ここはどうしようかな)

勇者(あの女の人を助けるのが先だけど、盗賊と組んでいないとは限らないし)

勇者(呪文でさくっと終わらせてしまうのは楽だけど)

勇者(盗賊『団』だもんなあ。まだ他にも大勢いるはずだ)

勇者(生きたまま本拠地まで連れてってくれる展開なら静かにしてるのが得策なんだけど)

勇者(とりあえず出方を見るか)

勇者「従ってやってもいいが……その人を放せ」

盗賊1「はっ、そいつはできねえな!」

盗賊2「お前らはこれから奴隷として売り飛ばされるんだよ!」

勇者「よっしゃあ抵抗しねえ!俺の身柄は好きにしろや!」

魔法使「な、なんでそんなに諦めがいいんです!?」

短くてすみませんが、今日はここまで。
予想はつくと思いますが、お暇つぶしになりますよう。

酉テスト。ちょっと書いたので久々にやってまいりました。お待たせして申し訳ない……。

勇者「いやー」

魔法使「……」

勇者「無事に着いたね」

魔法使「いやあの……これって無事、なんですかね?」

勇者「え、怪我とかした?」

魔法使「い、いえ!ちょっと擦りむいたくらいですけど……」

魔法使「わかってますか?私たち、盗賊のアジトに連れてかれたんですよ?」

勇者「いやあ、まさか山中の古い神殿がアジトになっているとは」

魔法使「それでこんな牢屋に閉じ込められているんですよ?」

勇者「案外ひんやりしてて過ごしやすいね」

魔法使「なんでそんなに余裕なんですか……これから売られるっていうのに」

勇者「まあ焦っても仕方ないでしょ。武器も荷物も取り上げられたし、なるようにしかならないさ」

魔法使「うう……神様ぁ」

勇者(うーん、この子は普通に巻き込まれただけだなこりゃ)

勇者(っつーことはこの子を守りつつ盗賊討伐、ってのがミッションか)

勇者(盗賊が何人規模なのかさっぱりわかんねーけど)

勇者(ま、なんとかなるでしょ)

勇者(お、そんな矢先に……)

盗賊3「おい女!出ろ!」

魔法使「え……?」

勇者「俺はいいんすか?」

盗賊3「はっ、男に用はないんでな」

勇者「ああ、やっぱりそういうことっすか」

魔法使「え、えっと?」

勇者「まあつまりあれだろ、慰みものってやつ」

魔法使「!?」

勇者「売り払う前にお楽しみってか。ゲスだねえ」

盗賊3「がはは!そういうお前はやけに平然としてやがるじゃねえか」

勇者「そりゃまあ別に俺にゃ関係ないし」

魔法使「ひ、ひとでなし……!!」

盗賊3「おら!早く立て!!お頭がお待ちだ!!」

魔法使「い、いや!離して!!」

盗賊3「大人しくしねえと……がっ!?」

魔法使「!?」

勇者「まずは一匹」

魔法使「え?え?」

魔法使「い、今のは」

勇者「ごめん!見捨てるみたいなこと言って。不意打ちするにはああするのが一番だったから」

魔法使「い、いえ!ありがとうございます!でも武器なんて……」

勇者「ああ。そりゃこれが落っこちてたから」

魔法使「これって……木の棒切れじゃないですか!しかもこんな細い!」

勇者「武器は重要じゃないんだよ。レベルなら十分上げてあるんでね」

勇者「うーんこの活躍、いかにもそれっぽくていいね!じゃあこの調子でさくっと終わらせてくるんで」

魔法使「そ、そんな!危ないですよ!何人いるかもわからないのに!」

勇者「大丈夫大丈夫。これでも腕には覚えがあるからさ」

魔法使「でも……」

勇者「だから君はここに隠れて」

魔法使「いえ!」

勇者「へ?」

魔法使「わ、私も一緒に行きます!」

勇者「はい!?」

今日はここまで……。お待たせして大変申し訳ありません。まったりおつきあいください。

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