ニーナ「ホモォ……」スザク「違うから!」ニーナ「ホモォ……///」(89)

■前回まで

前スレ:カレン「やっぱりわたしの紅蓮弐式!!!1」ゼロ「そうだな」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1383833467/)

これまでのまとめ:http://geassfun.at.webry.info/

 01 ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
 02 C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
 03 シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」
 04 スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」
 05 ルルーシュ「デートか……」/ユフィ「デートです!」
 06 C.C.「デートねぇ……」/コーネリア「デートだと!?」
 07 カレン「わたしの紅蓮弐式!!!!!1」ゼロ「うむ」
 08 カレン「やっぱりわたしの紅蓮弐式!!!1」ゼロ「そうだな」

全速力で!

■ゲットー 騎士団トレーラー ─────

 カレン「……あれ、ゼロ?」

 ゼロ「どうした?」

 カレン「持っているそれ、アッシュフォードの制服じゃ……」

 ゼロ「ああ……少しここを離れる」
    「葬儀に出なきゃいけないからな」

 カレン「……今からなんだ?」

 ゼロ「そうだ……」
    「予定通りに、頼む」カツカツ

 カレン「はい……」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

……わたしの元クラスメイトでもあったシャーリー……
彼女のお父さんが死んだことを知ったのは、キョウトから戻ったあくる日のことだった。

ゼロへの報告のため、彼の部屋の前に訪れた時、室内で彼とCCが、
口論をしているようだった……ノックをする手が、思わず止まる。


 CC「……そいつらにも家族はいた、恋人も、友人も……」
    「……理解してなかったとでも言うつもりか?」
    「お前の……」

 ルル「黙れッ!…………あの時からなッ!」

.
 CC「なら、なぜ今更迷う?それとも……」
    「せがまれるままに……」

 ルル「……黙れッ!」

 CC「ふふ……どれだけえらそうなことを言っても、所詮は……」

 ルル「貴様ッ!」ドサッ…


……ちょっと、これは止めに入るべきじゃないかという気がした。
わたしは、少し強めにノックをする……が、力余ってドンドンというかなり大きな音になった。

.
 カレン「カ……カレンです、報告に……!」

 ルル「…………入れ」


扉が開き、中に入ると、彼とCCは別々の場所にいた……非常に不穏な空気と共に……
わたしは思い切って聞いてみる。


 カレン「二人とも、いま、何を……?」

 ルル「……」

.
 CC「ふっ、喧嘩をしていたのさ」
    「この坊やがな、ぬるいことを考えているようだったのでな……」

 カレン「ぬるい?」

 ルル「……」チッ

 CC「……ナリタで、こいつの友達の父親が死んだのさ」
    「あの土石流に巻き込まれて……」

 カレン「ルルーシュの友達……?」

.
ルルーシュは、少し考えるそぶりを見せたが、すぐ私の方を向いた。


 ルル「シャーリーを知っているな?」

 カレン「うん……まさか?」

 ルル「そうだ、彼女のお父さんだ」
    「あの時、ふもとにいたらしい」

 カレン「……じゃ、あの時の……わたしの輻射波動」

.
 ルル「君は責任を感じる必要はない」
    「責任を問うなら、俺の指揮にある」

 カレン「……でも……」

 ルル「ふもとの街にまで被害が及ぶことを計算に入れていなかった俺の責任だ」
    「いいな、君は不要なことを考えなくていい」

 カレン「……はい」

 ルル「明日は、彼女のお父さんの葬儀に参列してくるので日中しばらくいなくなる」
    「その間の連絡はペンディングしておいてくれ」

 カレン「……わかりました」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

……冬の、重苦しい雲が立ち込める空の下で葬儀は行われた。
シャーリーのお父さんが入った棺が土中に埋められ、神父は最後の祈りをささげる。
俺以外にも生徒会の面々が葬儀に参列し、共に彼の冥福を祈った。

葬儀が終わり、人々は墓地を去ってゆく……
後には、俺とシャーリーだけが残った。

あの後、彼女を自宅まで送ってから、彼女とは会っていなかった。
数日ぶりに逢う彼女は、随分とやつれていた……

.
 ルル「……シャーリー、大丈夫か?」
    「あれから……」

 シャーリー「……大丈夫だよ……」

 ルル「……そうか……」


それだけ言うと、互いに俯いたまま口を閉ざしてしまう……
……ふと、トレーラーでCCとした口論のことが頭をよぎった。
情にほだされて……彼女が、哀れで……抱きしめキスをしたのか、俺は……?
それだけで……?

.
 シャーリー「…………ルル、ごめんね……」

 ルル「えっ?」

 シャーリー「……悪かったよね、あんな……」
        「……ほんと、ずるいよね!」

 ルル「……」

 シャーリー「あれじゃぁ……ああするしかないもの!」
       「だから、忘れて!…………困らせちゃって、ごめんね……」

 ルル「シャーリー……」

.
 シャーリー「……わたし……やり方、間違えちゃった……!」ニコ…

 ルル「!」


シャーリーの悲痛な微笑みを見た瞬間……
自分でも思ってもみなかった言葉が、とっさに口をついて出た。


 ルル「……違う、間違っているぞ」

 シャーリー「!!」

 ルル「俺が求めたんだ……君に……!」

.
 シャーリー「…………ちがう!嘘だよ、そんなの!」ポロ…
       「だってルル、わたしのこと、別に……」

 ルル「君が好きだ……!」

 シャーリー「いいんだって、無理しないで、ルル!」
       「ほっ、ほんとに……優しいんだから!」ポロポロ…
       「別にわたし、いいの……」

 ルル「シャーリー!」カツ…

 シャーリー「やめて!!」

 ルル「!!」ビクッ

.
 シャーリー「…………ごめん、ルル……」
       「わたし、ちょっと…………変だね……ごめん!」ダダッ!!

 ルル「シャーリー……ッ!」


シャーリーは、そう言い残すと墓地の外へと走り去ってしまった。
彼女に強く拒否された俺は、追うこともできず、その場に立ちすくんだ……

.
■ゲットー ガレキ撤去現場 ─────

 スザク(……だいぶあちこちが傷んできたな、こいつも……)ガコガコ
     (またロイドさんとこでメンテしてもらわなきゃ……)


オレはいつものように、改造グラスゴーでガレキの撤去をしながら考え事をしていた。
ユフィが考える理想の世界へ、どうやったら近づけるのか……

一緒に作業をしている仲間たちの間で、オレはリーダーのような扱いを受けていた。
亡き枢木首相と同じ名前……息子だと明言はしていなかったが……
で、且つグラスゴーが操縦できる人間、しかも集団生活の経験もある。
望む望まないにかかわらず、オレは自然と集団の中心に位置するようになった。

.
オレは彼らに度々、ユフィの考えを説いていた。
ブリタニア人と日本人の共生……それは勿論、帝国の施しというニュアンスが強いが、
それでも今よりもマシな生活になるのなら、という程度の、彼らからの賛同は得られている。

しかし、彼らが今、最も期待しているのは、黒の騎士団だ……
日本人の間で、ゼロ率いる黒の騎士団の存在感は強まる一方だった。
彼らが、ゲットーへの配給を横流ししていた組織を潰して以降、その声は日増しに
大きくなりつつある……
今現在、困っている事を解決しようという姿勢……そこは認めるしかない。


 スザク(だが……代償として血を流す行為だ)
     (それじゃ、本当の解決には……)ガコガコ

.
ゼロは……ルルーシュは言った、「俺が俺であるための組織だ」と……
そうである限り……いま彼らは弱者救済を掲げているが、本当の目的はブリタニアの打倒だ。
先日の、ナリタでの騒動がそれを物語っている。


 スザク(ルルーシュは……本当に行政特区に賛同してくれるのだろうか?)
     (……うん?)


と、そこにケータイへ着信が入った……ルルーシュだ。
最近、彼からよく連絡がある。


 スザク「もしもし?」ピッ

 ルル『スザク……』

.
■ゲットー シンジュク公園 ─────

スザク(……確か、ルルーシュが言ってた場所はこのあたりだったな……)テクテク


夕刻、シンジュク公園にある神社跡……
作業が終わり、オレは彼との待ち合わせをした場所へ足を踏み入れた。

ブリタニアの日本侵攻の際に神社は焼失し、今は土台しか残っていない。
唯一残された石段に、彼は座っていた。


 ルル「スザク……済まなかったな、呼び出したりして」

 スザク「いいさ、今日はもう帰るだけだからね」

.
オレは、彼の隣に腰を下ろした。
石段のひんやりとした感触に、少しお尻が浮きかける。


 ルル「例の件は……順調か?」

 スザク「行政特区かい?前途多難だよ……」
     「ユフィも、まだ総督には話をしてないらしい」

 ルル「そうか……」


ルルーシュは、寂しげな微笑を浮かべていた。
いつもの、自信に満ち溢れた彼とはやや違和感のある表情を、オレは怪訝に感じる。

.
 スザク「ルルーシュ、この間のナリタでのことだけど……」

 ルル「なんだ?」

 スザク「あの土砂崩れ、騎士団が起こしたっていう噂を聞いたんだけど……」

 ルル「ははっ……そんなわけないだろ?」
    「あれは自然災害だ……戦闘が影響を与えた可能性はあるがな」


彼は、それを笑い飛ばす。
オレも俄かには信じがたい話だったので、それ以上聞く気をなくした。

.
 ルル「スザク……俺の仕事、手伝ってくれないか?」

 スザク「その話か……その気はないって、何度も……」

 ルル「……」

 スザク「……前みたいに、何が何でも否定する気はないよ」
     「ゲットーの人たちの間でも、君たち騎士団の評判は上々だ」

 ルル「……」

 スザク「でも、オレは君とは別の、目指すものがある」
     「ユフィの夢……行政特区の実現だ」
     「今もそのために、少しずつ人々を変える努力をしているんだ」

.
 ルル「ああ……わかってるさ」

 スザク「…………何があったんだ?」


先ほどからずっと、彼に対する消えない違和感の原因を、オレは直接聞いてみる。
ルルーシュは、少しの間黙っていたが……


 ルル「……俺のやり方を、お前は『失う物が多すぎる』と言うが、」
    「夢を追う過程ではどうやっても失うものがあるだろう……」
    「それは、お前のやり方でもきっと同じだ」

 スザク「そうだな……多分、そうだろうな」

.
 ルル「なるべく失いたくない、という気持ちはわかる」スック…
    「だが……代わりに失うのが時間だとすれば……」
    「それこそが本当に、取り返しがつかない損失じゃないのか?」ジッ


立ち上がったルルーシュは、オレをじっと見下ろす。
オレも彼の顔を見上げながら、言葉を返した。


 スザク「……その代わりに、人の命を犠牲にするというのか?」

 ルル「!……」

.
一瞬、彼の表情が険しいものに変わる。
ルルーシュは顔をそむけ、言葉をつないだ。


 ルル「……最小限に抑える努力はしている」

 スザク「君はまるで……将軍気取りだな」

 ルル「!!」キッ

 スザク「……オレの父親がそうだった、」
     「身内では、犠牲を払うことなぞ厭わないといつも言い放っていた……」
     「犠牲になる人々の痛みなど、考えもしないくせに……!」ギリッ…

.
最近、彼と話しているといつも、父親の姿がオーバーラップする。
徹底抗戦を唱え、最後の一人になるまで戦えと訴えていた枢木ゲンブの姿に……


 スザク「自分は安全な場所にいて、ああしろこうしろと指示をするだけ……」
     「それで人々が死んでも、『やるだけはやった』だ!」
     「何が、やった、だ……自分は責任を取りもしないくせに!」

 ルル「俺はッ!」ザッ!!
    「……俺は、お前の父親とは違う!」
    「いつだって、俺自身が先陣をきって走っているッ!」
    「でなければ、誰もついてこないからな!」」

 スザク「……」

.
 ルル「…………ああ、わかっている、わかっているさ」
    「俺の言葉一つで、死ぬ者がいる……」
    「……だが、無為な死はさせない、必ずその犠牲に報いる」
    「そのためなら、さらに多くの血を流すことだって俺は厭わない……!」

 スザク「…………ルルーシュ、」
     「それは、独裁者が言うセリフだ」

 ルル「……お前も、民主主義が大好きか」

 スザク「好き嫌いじゃない、公正な仕組みだと思っている」

 ルル「フッ……公正か……案外に、そうではないんだがな」
    「まあいい、おかげでひとつ……決心がついた」

.
 スザク「なんだ?」

 ルル「大したことじゃない、今後の生き方について、な」
    「行政特区、うまくいくといいな……」

 スザク「そうだね……?」

 ルル「ありがとう、スザク……また連絡をする」カツカツ…


ルルーシュはそう言って微笑むと、公園の外へと歩き始めた。
会った時よりも、"彼自身"を少し取り戻しているような感触があった。
オレは、去ってゆく彼の背中に言葉をかける。


スザク「ああ、また……」

.
■Intermission ─────

カワグチ湖の件の失態の責を問われ、キョウトにより自害を偽装された片瀬少将……
彼は殺される直前に、海外逃亡のための手筈を整えていた。

これまでも彼は、フジのサクラダイト採掘場から横流しされた流体サクラダイトを海外へ向けて
密売することで資金を得ていたのだが、逃亡にあたりそれらを全てトウキョウ湾の倉庫へ
移していた。
それを密かに船に積み、海外へ出る計画だったのだ。

片瀬と解放戦線亡き今、流体サクラダイトは持ち主不在のまま放置されていた……

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ゼロ「……流体サクラダイト?」

 藤堂「うむ、今、トウキョウ湾のシバウラ埠頭に保管されているはずだ」

 ゼロ「それは初耳だ……」

 藤堂「生前の片瀬少将が、海外向けに密売していたものだ」
    「我々の資金源になっていたのだ」
    「トウキョウ湾に移送したと聞いていたが、我らが利用していた倉庫をそのまま」
    「使ったなら、シバウラにあるはずだ」

.
 ゼロ「なるほど……」
    「それが今、放置されている、というわけか」

 藤堂「うむ」

 ゼロ「……その宝、我々が正当な権利者、ということになるか?」

 藤堂「これを知る者は他にはいないはず……誰も文句を言うまい」
    「人を手配し、早々に回収しにゆこう、案内は私がする」

 ゼロ「ふむ……では、カレンと新人を派遣しよう」
    「新人の訓練にちょうどいいだろう」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 コーネリア「なに?」
       「サクラダイトの密売だと?」

 ダールトン「はっ、先日捕えた解放戦線の協力者の尋問で、」
       「連中が流体サクラダイトを海外に横流ししていた、と……」

 コーネリア「ふん、どうやらキョウトの正体がいよいよ見えてきたな」

 ダールトン「ほぼNACの連中と見てよさそうですな」

.
 コーネリア「……で、そのサクラダイトはどこにあるのだ?」

 ダールトン「トウキョウ湾の埠頭に保管しているらしく、」
       「いま場所の特定をしております」

 コーネリア「特定を急がせろ、発見次第没収だ」
       「1リットルであろうと、サクラダイトを主義者たちの手に渡すわけにはゆかん」

 ダールトン「イエス、ユアハイネス」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 桐原「片瀬らがさばいていた流体サクラダイトだが……」
    「どうやら、ナリタにはないらしい」

 宗像「相当量を保管しておったと思うが……」
    「では、どこに?」

 桐原「奴は、海外逃亡を図っておった」
    「どこかの港に移送したか……」

 公方院「……海外航路と考えれば、」
      「ニイガタ湾かトウキョウ湾のどちらかじゃろうの」

.
 桐原「うむ、いま双方に人を送り込んでおる」
    「発見次第、回収せねばならん」
    「とても捨て置ける量ではないからのう……」

 宗像「それに、密売の証拠をあの女に掴まれると、またぞろ厄介なことになる……」
    「クロヴィスの治世が恋しいのう」

 桐原「元の濁りの何とやら、か……クク、全くよ」

.
■アッシュフォード学園大学 研究棟 ─────

 ロイド「ああ、スザクくん~、お久しぶり~!」ニコニコ

 スザク「1週間ぶりですね」
     「グラスゴーのメンテナンス、お願いに伺いました!」

 セシル「あら、スザクくん!」
     「この寒い中、毎日ゲットーの整地で大変でしょう?」

 スザク「でもないです、身体を動かしていればあったかいですし」

 セシル「風邪には気を付けてね、汗をかいたらすぐ拭くようにね?」

 スザク「ありがとうございます!」ニコッ

.
……政庁から貸し出されている改造グラスゴーは、ロイドさん達が面倒をみてくれている。
毎日朝から晩まで酷使しているので、定期的なメンテナンスが欠かせない。


 ロイド「このグラスゴー、ちょっと動き悪くなーいー?」

 スザク「ロイドさん、ランスロットと比べてませんか?」

 ロイド「いやいや、だいぶ劣化してきたかなあって」

 セシル「軍の廃棄車輛の改造品ですからね……」
     「ガタがきてますわ、さすがに」

.
 ロイド「……ちょっと改良しよっか?」ニヤ

 セシル「またぁ……」

 スザク「改良?」
     「嬉しいですね、パワフルになるなら歓迎です」

 セシル「ロイドさんは別の意味でパワフルにする気だと思うわよ?」
     「総督に怒られても知りませんよ、ロイドさん?」ハァ…

 スザク「えっ?」

.
と、そこへオレの背後から声がかかった。
初めて聞く声だ。


 ??「ロイドさん、ランスロットのテストが終わったぜー」

 ロイド「ありがと~、すまないねぇわざわざ~」ニコニコ

 ??「宰相閣下のご命令だからね、しようがない」


オレは後ろを振り向く……と、目の前に胸板の壁が立ちはだかっていた。
長い金髪を後ろで編み上げた大男がオレを見下ろしている……なんだ、この大きさ!?

.
 ロイド「スザクくん、紹介しとくね、ジノ・ヴァインベルグちゃん」
     「じきナイト・オブ・スリーになる子だよ~」

 ジノ「ああ、君がスザクかぁ……はじめまして」

 スザク「は、はじめまして……」

 ジノ「ランスロットのベストパイロットだったって?」
    「君がねえ……?」ジロリ

 スザク(……感じ悪いな)

 ロイド「デバイサーとしてのスペックはジノ君と同等かもしれないねぇ」

.
 ジノ「ふーん……」ジロジロ

 スザク「……なにか?」

 ジノ「いや、見かけによらないもんだなあってさ!」ニカッ

 スザク「えっ?」

 ジノ「イレヴンなのにナイトメアを乗りこなせるんだろ?」
    「勿体ないなあ、ブリタニア軍にまた入ればいいじゃん!」

 スザク「ええっ!?」キョトン

.
 セシル「ジノ卿、それは無理だったの」
     「総督がスザク君の地位を剥奪したんだから……」

 ジノ「そうなんだ?」
    「まあ、コーネリア様はそこらへんに拘るお方だしなあ……」

 ??「あの……すいません……」


再び、オレたちの背後から声がかかる。
今度は女の子の声だ。これまた聞いた覚えがない。
振り向くと、そこにはアッシュフォード学園の女学生が2名立っていた。

.
 ???「ロイドさん、って……こちらにいらっしゃいますか……?」

 ロイド「ああ、僕だよ~」
     「ひょっとして、君がニーナくん?」

 ニーナ「はい、そうです」ニコッ
     「あの、量子学にもお詳しいと、大学でお伺いしまして……」

 ロイド「僕の専攻は工学だけどねぇ~……」ポリポリ
     「まあ、お世話になってる学園のお話だし、相談には乗るよー」

 ニーナ「ありがとうございます!」パアッ!!

.
 ???「良かったね、ニーナちゃん!」

 ニーナ「うん!」

 ジノ「……君ら、アッシュフォードの学生なの?」ジロジロ


ロイドさんの隣に立っていたジノ卿は、無遠慮に彼女らに話しかけた。
ニーナと名乗った子は、立っているだけで圧迫感のある彼に話しかけられ狼狽したようだ。


 ニーナ「はっ、はい……!」ビクビク

 ジノ「へえ……かわいい子が多そうで、いいなあ……」ニヘラー

.
 ???「なっ、なにかご用ですか!?」ガバッ


一緒に来ていた子は、ニーナさんを自分の後ろにまわしてかばった。
というか、この子は……!


 スザク「あれ、君は……確か、ルルーシュの友達の、シャーリーさん……?」

 シャーリー「あれっ、あなた……ホモ」

 スザク「ホモ!?」

 ニーナ「ホモ?」ピクッ

.
 シャーリー「じゃないじゃない!///」
       「スザクくんですね、こんなところで!?」

 スザク「意外なところで会うね?」
     「というか、その件をまだ覚えてるんだね……」

 シャーリー「いやっ、あの時すごく驚いたものだから……///」

 ニーナ(この人、ホモなの?……ちょっとそれっぽいけど……)
     (見た目爽やか系だし、イレヴンでホモって、すごく燃える設定じゃない……///)

 ジノ「えっ、ホモなの、スザク!?」

 スザ&シャリ「違います!」

.
 ジノ「違うの?でも今……」

 スザク「いや、前にちょっとした誤解があって……」

 シャーリー「そうそう、不運な出会い、って言うのかな?かな?」アセアセ

 セシル「スザクくん、あなた……」キッ

 スザク「違います、違いますよセシルさん!」

 ニーナ「わっ、わたしそういうの嫌いじゃないから!///」

 一同「えっ!?」

.
■夜間 トウキョウ湾 シバウラ埠頭 ─────

 カレン(ふわあー、眠いなあ……新人教育、めんどうだなあ……)ゴトゴト…
     (まあ、サクラダイトのタンクを持って帰るだけだし、)
     (とっとと終わらせて帰って寝ようっと……あーさむ……)


空気がすっかりと冷え込んだ冬の深夜……
わたしは、藤堂さん、四聖剣の朝比奈さんと黒の騎士団の新人メンバーと共にトレーラー2台に
分乗し、流体サクラダイトが保管されているという埠頭に向かった。

倉庫に行き、サクラダイトをトレーラーに積み、持って帰る。たったそんだけ。
新人だけでもいいんじゃないのかな……

.
 新人A「……なんだかドキドキしますね、カレンさん」

 カレン「そう?簡単な仕事よ、今日はドンパチもなし、死体もなし」
     「早いとこ済ませて帰ってあったかいコーヒー飲みたいわ……」ブルブル


新人の子……わたしと同い年くらいの男は、新人らしい憧れを抱いているのか、
初仕事に目を輝かせている……
いつかこの子も、ゼロが言うところの「戦士の顔」になるのかしら。

.
 藤堂「カレン君、武器は持ってきてないのか?」

 カレン「一応持ってきてます」
     「紅蓮は、腕をノーマルに換装しましたけどね」

 朝比奈「まあ、今日は輻射波動の出番もないだろうと思うよ……」
     「藤堂さん、つきました」


2台のトレーラーは、埠頭の一角にある大きな倉庫の前に静かに停止した。
朝比奈さんが運転席から降り、シャッターの目印を確認する。


 朝比奈「……大丈夫、封印は切れてません」
     「シャッターを上げます……」シュイイーン…

.
電動式シャッターは、滑るように上がってゆく。
トレーラーが倉庫内に入ると、外から見えないように再びシャッターを閉めた。
シャッターが閉まりきったのを確認した朝比奈さんは、倉庫内の明かりをつける。
すると、そこには……!


 藤堂「むう……!?」

 朝比奈「うぇ、こりゃまた……!?」

 カレン「えっと……藤堂さん?」
     「まさか、これ全部……?」

 藤堂「……おそらくな」

.
……人ほどの大きさもあるサクラダイトのタンクが、4段くらいに積み上げられ、
倉庫の中にぎっしりと並んでいた。この量、とてもトレーラーで運べるもんじゃない……
ゼロもこのこと、知らなかったんだ……藤堂さんも驚いている。


 藤堂「これは……タンカーが必要になるほどの量だな……」

 カレン「……どうします?」
     「とりあえず、積めるだけ積んでいきます?」

 藤堂「……ゼロに連絡してみてくれ」

 カレン「わかりました」ピッピッ

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 ゼロ「……なに?サクラダイトの山だと?」

 カレン『これ、トレーラーがあと20台くらいは必要じゃないのかな……』
     『どうする?積めるだけ積んで持って帰る?』

 ゼロ「……その場に置いておけ!」
    「全員、すぐ戻れ!処理方法は後で検討する!」プツッ

 カレン『へ?』

.
藤堂の話で想定していたレベルではなかった……甘かった……!
それだけの量が保管されていたとは……文字通り、爆弾の山だ!

これは、総督府も、あるいはキョウトも絶対に放置しない。
今頃、必死になって探しているはず、そしてそれを我々が手に入れたとなると、
目の色を変える……場合によっては、今この瞬間に鉢合わせも……!

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 カレン「……すぐ帰れ、って……」

 藤堂「……!!」

 朝比奈「藤堂さん……!」

 藤堂「……カレン君、紅蓮弐式に乗れ!」
    「朝比奈は、新人を連れてトレーラーに隠れろ!荷台は切り離しておけ!」


藤堂さんは、そう言うが早いかトレーラーの荷台に飛び上がり、中に入る。
わたしもようやく周囲の気配を察し、後方のトレーラーへ向けて駆け出した。

.
 カレン(くそっ、こんなことなら腕の換装をするんじゃなかった!)ダダッ…!!
     (まさか、ブリタニアが……!)


わたしは、トレーラー内の紅蓮弐式に飛び込み、手早く起動を行う。
同じく、すでに無頼改の起動を済ませた藤堂さんから無線が入る。


 藤堂『いいか、相手の出方を待て!』
    『こちらにはサクラダイトがある、跳弾でも当たって爆発すれば全てが吹き飛ぶ!』
    『相手もへたに手出しができないはずだ!』

 カレン「はいっ!」
     (ほんとに手出ししないでよ……)
     (こんなのが全部爆発したら、わたし絶対生き残れないじゃない……!)ドックンドックン

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 指揮官「ふむ……この倉庫か」

 兵士A「はっ、この倉庫の契約者は解放戦線とつながりのある者でした」
     「ここ最近は人の出入りがなかったと……」

 指揮官「先ほど入ったトレーラーは、まだ出てこないな……」
     「全員、銃を構えろ、ただし発砲は合図を待て!」
     「工兵、シャッターをこじ開けろ!」


……倉庫の前を、すでに数十名のブリタニア兵およびナイトメア数台が取り巻いていた。
カレン達は、彼らがこの倉庫周辺を監視していたのを知らずに中に入ってしまったのだ。

.
工兵がロックを破壊し、シャッターをこじ開ける。
ゆっくりとせり上がるシャッターの先にあったものは……


 藤堂『動くな……!』

 指揮官「!!」


……飛び上がるほど大量の、サクラダイトのタンクを背にして、2台のナイトメアが
こちらにマシンガンを向けていた……指揮官たちは、恐怖で震えあがった!


 指揮官「きっ……貴様らッ!」

.
 藤堂『兵を下がらせろ!』
    『それとも、サクラダイトを撃ち我々と共に心中するか……?』

 カレン(頼むから撃たないでよ……!)
     (わたし、まだ死にたくないんだからね!)ドックンドックン

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

……倉庫から少し離れた場所に停泊しているタンカーの操舵室から、一連の状況を
観察している者があった。
キョウトから派遣されていた、サクラダイト回収部隊の面々であった……


 武装兵A「……あれは、無頼改だぞ?」

 武装兵B「なに?ということは、解放戦線が?」

 武装兵A「つまり、騎士団だな……」
       「そうか、藤堂つながりでこのサクラダイトの存在を知ったのか……」

.
 武装兵B「……これは、対処に悩む場面だな……」
       「御前に指示を仰ごう」ピッピッ


武装兵は、キョウトの桐原に連絡を取る。
現状を説明し、しばらく話した後……


 武装兵B「……御意」…ピッ

 武装兵A「御前は、何と?」

.
 武装兵B「ブリタニアに密輸の証拠を掴まれるな、と……」

 武装兵A「……爆破か」

 武装兵B「騎士団の連中は、不運だったな」
      「タンカーからではまずい、埠頭から狙撃手に撃たせろ」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 カレン「……藤堂さん?」

 藤堂『なんだ?』


わたしたちは、先ほどからブリタニア軍と向き合ったままこう着状態に陥っていた。
抱えてるものがモノだけに、どちらも迂闊に動けない……


 カレン「ちなみに、ですけど……」
     「この、わたしたちの背後にあるサクラダイト、全部売っぱらったら、」
     「どれくらいのものですかね……?」

.
 藤堂『相手にもよる、が……』
    『これだけあれば、解放戦線の1年分の活動資金が調達できるだろう』

 カレン「そりゃすごいわ……」ゴクリ

 藤堂『それを、一発の銃弾で吹き飛ばさない理性に賭けるしかないな』

 カレン「でも、このままじゃ……ん?」ピピピ


外線連絡の合図だ……ゼロから?
わたしが通話をオンにすると、通話モニタにはゼロが現れた。

.
 ゼロ『カレン、藤堂、状況はどうなっている?』

 カレン「さっきから、ずっと睨みあったままです」
     「あっちもこっちも、迂闊に動けないし」

 ゼロ『何!すでに囲まれていたのか!?』

 藤堂『朝比奈たちも、トレーラーに隠れたまま身動きできない状況だ』
    『どうする、ゼロ?』

 ゼロ『構わん、強行突破しろ!』

 カレン「えっ?」

.
 ゼロ『連中の目的はサクラダイトだ!我々を追ってはこない!』
    『迅速に離脱しろ!』

 藤堂『朝比奈たちはどうする!?』

 ゼロ『トレーラーで突破させろ!』
    『いいな、今すぐだ!』ピッ

 カレン「……なに、今の慌て方!?」

 藤堂『…………そうか、キョウトか!』

 カレン「えっ、キョウト??」

.
 藤堂『カレン君、強行突破を図るぞ!トレーラーを挟んで護衛する!』ピピッ
    『朝比奈、合図で突っ走れ!』

 朝比奈『はいッ!』

 カレン「えっ、なに?一体どういうこと!?」

 藤堂『このサクラダイトの存在、みな知っていたということだ!!』
    『キョウトにとって、これは存在してはならんものだ!』

 カレン「つまり??」

 朝比奈『今、もしキョウトの関係者がいれば、これを爆破するだろうってことッ!』

 カレン「えええええっ!?」

.
 藤堂『朝比奈、行けッ!』


藤堂さんの合図で、トレーラは突如タイヤを鳴らしながら急発進した。
荷台がなければ、トレーラーの加速力は圧倒的なものになる。

意表を突いた出足の早さに、驚き怯んだブリタニア軍の集団に向かい、
朝比奈さんはアクセルを緩めることなくそのまま突っ込んでゆく。
同時に、それを挟んだ状態でわたしたちナイトメアも走り始めた。


 カレン「結局、いつも楽な仕事になんないのよねっ!」ギャシャァァァ!!

 藤堂『威嚇射撃!』ガシャッ!!

.
わたしたちは、マシンガンを横なぎに掃射しながら突破を図る。
泡を食って後ずさるブリタニア軍の兵士たち……
わたしと同様、楽な仕事だと思って新兵を回してきていたのか。


 カレン「どきなさいよ、給料安いんでしょ!」ズダダダダ!!

 兵士たち「ひええええ!」

 指揮官「こっ、こら貴様らあああ!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 武装兵B「狙撃班、準備はできたか?」

 狙撃手『できました……』

 武装兵B「よし……では、」

 武装兵A「おい、連中……すばしっこいな」

 武装兵B「……なに?」

.
同志の言葉に、リーダー格の男は狙撃の合図を止め、双眼鏡で倉庫前の状況を確認する。
騎士団のトレーラーとナイトメアが、包囲網に突撃をしかけた様子が見えた。


 武装兵B「御前が連絡を……?」

 武装兵A「まさか……解放戦線を見殺しにした方だぞ?」

 武装兵B「ふむ、危機を察知したのか?」
       「侮れんな、騎士団の連中も……」


ニヒルに笑ったリーダー格は、無線で再び指示を出す。

.
 武装兵B「……狙撃班、30秒後に射撃、成果を確認後迅速に戻れ」カチッ

 武装兵A「ナリタでの借り……か?」

 武装兵B「ここで返しておかんと、末代まで祟られそうだからな」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ブリタニア軍のナイトメアが、紅蓮と無頼改の行く手を塞ごうとした。
わたしは、突進しながら右手を伸ばし、敵の頭を掴む。


 カレン(あっ、輻射波動ないんだった!)


いつものクセで無駄なことをしてしまった自分に舌打ちをし、相手をガアンと殴りつける。
相手パイロットはまだ未熟だったのか、そのまんま横っ跳びに吹っ飛んだ。

.
……突如、紅蓮のセンサーが警報を発した!
右斜め方向から、熱反応……遠方からの、ライフル射撃!


 カレン「うそお!!!」

 藤堂『走れえッ!』


わたしたちがスティックを全開にすると同時に、混乱した現場を一発の弾丸がかすめ飛ぶ。
それは、狙いたがわず、倉庫に積んであったサクラダイトのタンクを打ち抜いた。
瞬間、タンクからまばゆいばかりの閃光が迸る。

.
 指揮官「ひ……!」

 兵士たち「うあ……!」


タンクから溢れた閃光は、並んだ他タンクを飲み込み、一気に膨れ上がった。
突如、地上に半径50mほどもある巨大な光の球が出現し、周囲の建物の陰影が
真昼のようにくっきりと浮かびあがった。
そして次の瞬間、巨大な光の球から、猛烈な爆風が全方向に放出される!


 藤堂『ぬおおおおおおお!』

 カレン「きゃあああああああ!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

 狙撃手『……完了』

 武装兵B「ああ、確認した、迅速に戻れ」

 狙撃手『了解』


リーダー格の男は、埠頭の様子を見ていた。もはや双眼鏡も必要ない。
埠頭の一角に突如出現した光の球は、周囲の建造物やそこにいたであろうブリタニア兵を
ことごとく吹き飛ばした。
数百m離れた位置にあるこのタンカーにも衝撃波が届き、船体が揺らぐほどの爆発だった。
男は、通信機のスイッチを入れ、桐原に報告をする。

.
 武装兵B「はっ、いま確認しました……」
       「……はい、全て…………御意に」ピッ

 武装兵A「どうするって?」

 武装兵B「撤収だ、このタンカーも不要になった、持ち主に返すようだ」
       「隊員に指示を出せ……」カツカツ

 武装兵A「連中……どうなったかな?」

.
 武装兵B「……」ピタッ


足を止めたリーダー格の男は、同志に振り向き、微笑んだ。


 武装兵B「さあな?」
      「機会は与えた、後は奴らの運次第だ」ニヤッ


   ────── 続く

クゥツカー、イェァ!

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