C.C.「いよいよ明日だな」 (47)


ルル「ああ。予定通り世界の憎しみは今、俺に集まっている」

ルル「明日のゼロレクイエムで全てに決着をつけ、俺はこの世から消える」


C.C.「せっかくブリタニアへの復讐という悲願を達し、皇帝の座にまで上り詰めたというのに、自らそれを無にするのか」

ルル「勘違いするな、俺が目指していたのはナナリーも望んだ優しい世界だ。全てはその為の過程に過ぎん」

ルル「俺の成し遂げた事は全て多くの犠牲の上に成り立っている。
    奪った命だけではない。ギアスをかけ捻じ曲げた全ての人間の意思も含めてだ。それらに報いるためにも、俺は……」

C.C.「ふ、殊勝なことだな」



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C.C.「……なあ、ルルーシュ」

ルル「何だ?」


C.C.「お前は本当にそれでいいのか」


ルル「……何が言いたい」




C.C.「捨てろ」



ルル「―――は?」


C.C.「全てを捨てろ。今なら間に合う。全てを投げ出して私と逃げろ。
    一人で勝手に死ぬなど契約不履行にも程があるだろう。私に、笑顔をくれるんじゃなかったのか」


ルル「今更何を言い出す。……契約は俺が直接叶えてやることは出来ないが、優しい世界が来ればきっとお前もいつかは」

C.C.「お前がいなければそんな明日は来ない」

ルル「何故そんなことを言い切れ―――」


C.C.「私がお前を愛しているからだ」



ルル「……」


C.C.「この際だからはっきり言うぞ、ルルーシュ。私はお前のことがどうしようもなく好きなんだよ」

C.C.「奴隷の時も、ギアスを得た時も、コード保持者となってからも、こんなに誰かを愛したことはない」

C.C.「今更お前がいない世界など真っ平御免だ」


C.C.「なあ、ルルーシュ、考え直せ。……お前の本当の気持ちはどうなんだ」

ルル「俺は……」


ルル「俺は世界を騙し、欺き、操り、壊した。これは俺の責務だ。人々が望む優しい世界を創造するためのな」

ルル「だから、その問いに答えることは―――」

C.C.「違うな。お前はただ罰が欲しいだけだ」

ルル「!」


C.C.「お前は多くの物を犠牲にし、操ってきた。友人、家族、同胞、臣下、そして多くの国……いや、人類そのものさえも」

ルル「その通りだ。だからその代償として俺は」

C.C.「裁かれるべきだと思っている?」

ルル「……そうだ」

C.C.「いいや違う。裁かれたいんだよ、お前は。例えペルソナを被っていても、お前の本質は悪ではない」

C.C.「シャーリーを巻き込み、ユーフェミアを暴走させ、ロロを死なせてしまったお前にはもうそれしか逃げ場がないんだ」

ルル「違う!!」


C.C.「何が違う?その通りだろう?お前が真に優しい世界だけを望んでいるなら、生きたまま皇帝という立場を利用する道もあった筈だ」

C.C.「それをしなかったのは、この身は死という罰をどこかで受けなければならないという強迫観念がお前の中にあったからだ」

ルル「……例えそれが事実だったとしても、今この状況が整った以上、これから俺の成すことは変わらない」


C.C.「―――Cの世界でお前は言ったな、明日が欲しいと」


C.C.「私はお前と共に在る明日が欲しい。人々のギアスにかかるというのなら、私の望みを聞け」

C.C.「共犯者なら、最期まで付き合え」



ルル「C.C.……お前ならば分かってくれるだろうと思っていた。だがとんだ買い被りだったようだな」




C.C.「……どうしても、やるのか」

ルル「……そうだ」


C.C.「……」











C.C.「―――だ、そうだ。良いな?スザク」

スザク「……ああ」


ルル「スザク!?」



ルル「どういうことだ?何故ここに……」


スザク「ルルーシュ。君には今からC.C.のコードを継いでもらう」



ルル「何!?」


C.C.「ギアスが極限まで強化された今、お前はコードを得る資格を得た。……心配するな、すぐに終わる」


ルル「そういうことではない!お前達は何を言っているんだ!?それがどういう結果を齎すか、分からないはずは無いだろう!!」

ルル「スザク、お前はユーフェミアの仇である俺を恨んでいるんじゃなかったのか!」

スザク「恨んでいるさ。だけど―――」



スザク「赦せない罪なんてない。ただ、赦したくないだけ」

ルル「!」


スザク「以前Cの世界で話しただろう。シャーリーの言葉だ」


スザク「ルルーシュ。君はユフィのことをずっと悔やんでいたと聞いた」

ルル「……C.C.?」

C.C.「そうだ、私が話した。全てをな」

ルル「勝手な事を……」


ルル「ならなおさらだろうスザク。俺は自分の力も制御できずに、手を差し伸べてくれた彼女を巻き添えにした。許される事ではない」

スザク「僕だってもちろん最初は怒り狂ったさ。でも、ユフィは最後まで君がゼロだとは言わなかった」


スザク「ユフィは君を恨んではいなかったんだ……僕はもう自分がどうすればいいのか分からなくなったよ」

スザク「だから君がゼロレクイエムのことを言い出した時、その苦しみがようやく終わりになる気がしたんだ」

ルル「ならば―――」

スザク「でもそれはルルーシュが死ぬからじゃない。君が償おうとしていることを初めて明確に知り、その役目を僕に任せたからだ」


スザク「さっきのC.C.の誘いに乗っていたら、僕はこの場で君を斬り殺すつもりだった。それが彼女と交わした契約だ」

スザク「計画が崩れても、最悪、悪逆皇帝の首を獲ったゼロさえ民衆の前に出れば良いんだからね」


ルル「……この計画はお前が言い出したのか」

C.C.「そういうわけだ。だが事が事だけに私の言だけでは不十分でな。お前にはスザクを踏み切らせるだけの意思を示してもらった」


C.C.「ゼロレクイエムは予定通り行う。だがコード保持者のお前が死ぬことはなくなる」

ルル「C.C.……ふざけた真似をしてくれたな……」

C.C.「そもそも人々の願いとお前の死はイコールではない。民衆が望んでいるのは悪の権化であるお前の消滅。悪逆皇帝という存在が死ぬことだけだ」

ルル「それは、確かに、そうだ、が―――俺は…!」


スザク「僕は決めたよルルーシュ。ゼロレクイエムで皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは死に、君の罪とペルソナは清算される」


スザク「だからゼロレクイエムという贖罪は必要なんだ。君にとっても、世界にとっても」



スザク「そして君がそれを成し遂げた時、僕は決意しよう。君を許すと」



スザク「その為に君には一度死んでもらう。そして生き返って彼女と生きろ」

ルル「……スザク。本当にそれでいいのか」




スザク「―――君は、コードを継ぐんだ」





「僕が話すことはこれで全てだ。明日、約束の場所で会おう。―――C.C.、後は任せた」







ルル「ふ……はは、見事にやってくれたな。これで俺は死という罰を受けながらも、また生を掴むことになるわけか」

C.C.「これだけは言わせてくれ。ルルーシュ、さっき語った私の気持ちは全て本心だ。私はただお前が生きられる方法をとったに過ぎない」

ルル「……」



ルル「……分かった」



ルル「良いだろう。ギアスならば仕方がない。その願い、聞き届けよう!」


C.C.「!」



ルル「フ、おかしなものだな。ギアスという力で人の意志を踏み躙ってきた俺が、
    ここにきてたった一人の願いによって救われることになろうとは」


C.C.「……ならばルルーシュ、これも契約だ」

ルル「ああ。こうなってしまった以上仕方がない。ゼロレクイエムの後、俺はお前と共に在ろう」


ルル「必ずお前に笑顔を齎してみせる。そして、……笑顔で死なせてやる」



ルル「……それから、今までありがとう。●●、お前がいたから俺はここまで来ることが出来た」

C.C.「ふん、素直なお前は気色悪いな」

ルル「黙れ魔女」



ルル「今ならば嘘偽りなく本心を曝け出すことができる。C.C.、俺もお前を―――…」



ルル「いや、これは全てが終わってからだな。それまでは待てるだろう?」

C.C.「ふふ、いいだろう―――待っているよ、ルルーシュ」



C.C.「では、服を脱げ」

ルル「分かった。―――――……、は?」


C.C.「何を躊躇っている?コードを継ぐのだろう?ならば身に付けているものは全て脱げ」


ルル「待て待て待て!何故そうなる!?」



C.C.「私の記憶を見ただろう?コードの譲渡は服を着たままでは出来ないんだ」

ルル「あの世界でお前と皇帝はその恰好のままコードをひとつにしようとしていたではないか!」


C.C.「それはあの空間限定の、しかもコード保持者同士の場合だ。身体に新しくコードを刻む場合には衣服は邪魔になる」

ルル「ば、馬鹿な……」


C.C.「さっさとしろ。ボウヤにはハードルが高いかもしれんが……言っておくがな、私だって恥ずかしいんだぞ」


ルル「やめろ!この状況で恥じらいを見せるんじゃない!余計やりにくくなるだろうが!」


C.C.「なるべく下の方は見ないでやるから」

ルル「黙れ!!」




―――斯くして、魔女と悪逆皇帝の儀式は終わり。

明くる日は皇帝ルルーシュの命日となった。


正義の味方ゼロによって彼の暴君は討たれ。

歓声とどよめきの中、世界には確かに平和が訪れた。







C.C.「―――王の力は、人を孤独にする」






C.C.「少しだけ違っていたか。―――な、ルルーシュ?」

ルル「……」


ルル「チッ、この格好は気に入らん。何故俺が御者なんだ」

C.C.「フフ、良く似合っているじゃないか。やはり皇帝のコスチュームよりも麦わら帽子の方がボウヤには相応しいな」

ルル「く……」


C.C.「それにお前の顔を晒す訳にもいかないだろう?こんなド田舎にも悪逆皇帝の顔は知れ渡っているからな」

C.C.「お前は貧しい馬引き、私は荷の上で揺られる旅の美女。これが自然な構図だ」

ルル「フン、年増の魔女が何を言うかと思えば……」

C.C.「今のは特別に聞かなかったことにしてやる。だが次に同じ単語を発したら目的地に着く前に天国行きだぞルルーシュ」

ルル「出来るものならやってみろ」


ルル「―――この身体のことはお前が一番よく知っているだろうが。今の俺はそう簡単にはくたばれん」


C.C.「あぁ、そうだったな"魔王"。私としたことがすっかり忘れていたよ」


C.C.「その点から言うと、確かに今のお前の格好は些か滑稽だな」

ルル「いや、容姿よりもこの麦わらが頭にチクチク刺さるのが気にくわん。これならば、多少暑くともゼロの仮面の方がましだ」

C.C.「どこの世界にフルフェイスのヘルメットを装着して馬を引く御者がいる」


C.C.「まあオレンジ卿の農場に着くまでの辛抱だ。それまで耐えろ軟弱ボウヤ」

ルル「フン……」



ルル「仕方ない。さあ奔れ、ガウェインにランスロットよ!ジェレミアの待つ農園に急ぐのだ!」


C.C.「待て待て。馬におかしな名前を付けるんじゃない」


ルル「む、仰々し過ぎたか?一応、玉城と朝日奈という案もあったのだが……」

C.C.「すぐくたばりそうな名だ。やはりガウェインで良い」

ルル「そうだろう」


ガウェイン「ブルル」

ランスロット「ヒヒーン」

とりあえずここまで


―――――――――――
―――――――



ジェレミア「よし、こんなものか。アーニャ、新しい板を持ってきてくれ」


アーニャ「わかった。……ジェレミア、なんか今日は張り切ってる」

ジェレミア「分かるか?―――フフフ。そうか、やはり分かってしまうか」


アーニャ「ルルーシュたちのこと?」

ジェレミア「その通りッ!!全ては今日からこのゴッドバルト農園に住まわれる予定のお二人をお迎えする為!」

ジェレミア「古びた家屋をここまで修復するのは苦難の連続だったが、それも今日という日の為と思えば……」



アーニャ「でも、無理はよくない」

ジェレミア「そうだな。申し訳ないが、間に合わない分はルルーシュ様達にも手伝っていただこう」

アーニャ「働かざる者、食うべからず……」

ジェレミア「それは何かの名言かね?」

アーニャ「スザクが言ってた。エリア―――…日本のことわざだって」

ジェレミア「はは。なるほど、確かにその通りだ」


ジェレミア「まあ農園の方は前の持ち主からそのまま譲り受けたから食うには困らんがな」

アーニャ「増設したオレンジ畑も少しずつ育ってきた。でも……どうしてオレンジ?」

ジェレミア「あれは私の個人的な趣味だ」

アーニャ「そう……」



ジェレミア「―――む?」




アーニャ「誰か来たみたい。……牛乳屋さん?」

ジェレミア「いや、あれは……!」キュイーン





ジェレミア「ルルーシュ様ぁぁぁ―――!!!こちらです!このジェレミア・ゴッドバルト、殿下のお越しをただひたすらにお待ち申し上げておりましたぁぁあ!!」


ルル「馬鹿者ォォォ!!!その名を大声で呼ぶんじゃない!!」



ここまで

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