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■前回まで
前スレ:カレン「わたしの紅蓮弐式!!!!!1」ゼロ「うむ」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1383223930/)
これまでのまとめ:http://geassfun.at.webry.info/
01 ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
02 C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
03 シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」
04 スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」
05 ルルーシュ「デートか……」/ユフィ「デートです!」
06 C.C.「デートねぇ……」/コーネリア「デートだと!?」
07 カレン「わたしの紅蓮弐式!!!!!1」ゼロ「うむ」
全速力で!
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■Intermission ─────
(コーネリア率いるブリタニア軍によるナリタ侵攻の前日夜、黒の騎士団は現地入りを)
(することにした……日本解放戦線の藤堂らには事前に、山麓を利用した軍事演習で)
(利用させてほしい旨の連絡を入れたが、ナリタ侵攻については口をつぐんだ)
藤堂『ふむ、演習か……』
『いまここは、雪が積もっているのだが大丈夫か?』
ゼロ「その方が望ましい」
「最近、団員の間に緩みが出ているのでな……組織を引き締める目的で行うのだ」
藤堂『フッ、どの組織も、抱える悩みは同じか……よかろう、監視には連絡を入れておく』
『ただし我々の本拠地は迂回してもらう、指示ルートを使ってくれ』
ゼロ「了解した、感謝する」
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■ペンドラゴン コードR研究室 ─────
シュナイゼル「バトレー君、彼らの調査結果はどうかな?」カツカツ
バトレー「はっ、ジェレミア卿とキューエル卿の両名とも、コードRの影響下にあります」カツカツ
「以前私が見た、ヴィレッタの脳波に酷似した反応を示します」
シュナイゼル「ふむ……」
「ヴィレッタも確か、エリア11のトウキョウ租界の……?」
バトレー「はっ、そうであります」
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シュナイゼル「1回だけなら偶然、2回あるなら必然を疑え、だね」
「彼らがその影響を受けた理由は?」
バトレー「はっ、最も可能性の高い仮説としては、あの女との接触が挙げられます」
シュナイゼル「そう……君から以前、そう聞いたね」
「ところで、それについてひとつ、腑に落ちないことがあるんだ」
「その女、どうして君やクロヴィスにその"力"を使わなかったのだろうね?」
バトレー「…………」
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シュナイゼル「簡単に逃げ出せたはずだ、その"力"があれば」
「ということは、その女はその"力"を持っていないのだろう」
バトレー「……しかし、ではどうして……」
シュナイゼル「女は"力"を持っていない、しかしそれと無関係の偶然だとは思い難い現実がある、」
「そこから導き出せる推論は、別人がその"力"を持っている、ということだ」
バトレー「……ほっ、他にもコードRが!?」
シュナイゼル「彼女を救い出したのが別のコードRだとすれば、全て得心がゆく」
バトレー「なるほど……!」
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シュナイゼル「そして、もう一つ大切な事実がある」
「ヴィレッタは必然があった、しかしジェレミア達には必然がない」
バトレー「と、おっしゃいますと?」
シュナイゼル「ジェレミア達は、すでにコードRが逃げ去った後の話だね?」
「彼らに"力"を使う意味は?」
バトレー「…………!」
シュナイゼル「そう、ヴィレッタの時と、ジェレミア達の時は、"力"を使う目的が変わっている」
「反帝国主義者たちの中に、別のコードRがいると考えられる」
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バトレー「そっ……それは、誠に由々しき事態……!」
シュナイゼル「君の部下は、まだエリア11にいるのだったね?」
バトレー「はっ、彼らは彼らで、独立で研究を続けておりました」
「先日連絡をとったところ、ヴィレッタにロボトミー手術を施したことにより、」
「影響を排除できた、とのことです」
シュナイゼル「彼らを本国へ呼び戻したまえ、宰相の保護を与える、とね」
バトレー「はっ!」
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■ナリタ侵攻当日 アッシュフォード学園 クラブハウス前 ──────
ルル(3日ほど留守にするからな……行く前に、ナナリーの顔を見ておくか……)カツカツ
(作戦が終わったら、ナナリーへのお土産も買っておかねばな……)
シャーリー「あっ、ルル!」タタタッ…
「あのね、あのね!」
ルル「ああ、シャーリー、ちょうど良かった……」
「3日ほど旅行に出かけるから、会長にそう伝えてくれないか?」
シャーリー「えっ?いきなりだね……」
「どこに行くの?」
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ルル「アタミだよ、貴族の人の招待でね……」
「あちらで、チェスの大きな"勝負"があるらしい」
シャーリー「まーた賭け事ぉ?」ジロー
「そんなのしちゃ、ダメだって!」
ルル「大丈夫だって、賭け事じゃないよ」ニコッ
「シャーリー、お土産は何がいい?」
シャーリー「えっ?うーん……何だろ?何がいいかなあ……」
「というかルル、あのね、その…………コ……コ、コン……」
ルル「??」
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シャーリー(……勇気出せ、言え、言うんだシャーリー!)
「……ルルーシュッ!」
ルル「はいっ!?」
シャーリー「こっ……これ、コンサートの券!///」ピラッ
ルル「ふむ?」
シャーリー「2枚あるけど、1枚は私のなの!1枚余るからあげる!///」
ルル「??ありがとう……?」
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シャーリー「だっ、だから私といっしょに行って!///」
「ね、行かないと無駄になっちゃって勿体ないし!///」
ルル「ああ、そうだな……?」
シャーリー「よしっ!約束ね!この日はあけておいてね!」
「じゃっ、旅行気を付けてね!賭け事はダメ、ゼッタイ!///」ダダダッ…
ルル「……あ、お土産、何が……?」キョトン
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■アッシュフォード学園大学 研究棟 ─────
セシル「えっ、ナリタへ向かうんですか?」
ロイド「うん、そうー」
「総督が大規模な作戦をするらしいから、それへの参加許可を取り付けたよ~」ニコニコ
セシル「パイロットは……わたし?」
ロイド「君しかいないよぉ~?」ニマー
「こないだは使わなかったけど、セシル君向けのカスタマイズでどこまでできるか、」
「試してみたいんだよねぇ~」
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セシル「あと10%を埋めるためのモジュール、ですね」
ロイド「そそ、これがうまくいけば、デバイサーの選択肢が広がるからねぇ~」
「というわけで、2泊3日の旅行に行こうか~!」
セシル「……今すぐとか言わないでくださいね、」
「着替えとか準備しますので、最低でも2時間ほど待ってください」
ロイド「えっ、着替えとかいるの?」
「たった2泊3日だよ?」キョトン
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セシル「ロイドさんと一緒にしないでください」ハァ…
「というかロイドさん……まさか3日間、その服のまんまのつもりですか!?」
ロイド「うん」ニコニコ
セシル「あなたって人は……!」
「ロイドさんの着替えも準備しますから、絶対着替えてくださいね!」プンスカ
ロイド「ぇええ~?」
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■ナリタ連山ふもと コードR研究所 ──────
研究員A「まだ準備ができないのか!?」
「もうすぐ道路が封鎖されてしまうぞ!」
研究員B「ヴィレッタをハッチに収めれば完了する!」ガチャガチャ
研究員C「ギリギリだったな、あと1日連絡が遅ければ、」
「ナリタから脱出できなくなっていた……」アタフタ
研究員A「資料は最小限必要なものだけ積み込め!」
「あとは、脱出直前に火をつけて証拠隠滅を図る!」
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ヴィレッタ「……」Zzz
研究員B「ヴィレッタ、背中を丸めて……あっ、」ガイ-ン!!
ヴィレッタ「……?……Zzz」
研究員B(あせった……ヴィレッタの頭を、ハッチのフタにぶつけちまった)
(問題ないか、後でチェックするか……)
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■日本解放戦線 本拠地 ──────
藤堂「……なにッ、敵襲だと!?」
兵士A「はっ、ブリタニア軍のナイトメアが、このナリタ連山を包囲しています!」
「その数、すでに百以上……!」
兵士B「退路、完全に断たれています!」
藤堂「ぬうッ……これは……ッ!」
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(コーネリア達が侵攻を開始する日の朝……)
(俺は、演習の準備と称して掘削機の準備などを団員に指示していた)
(その時、遠方から多数の敵ナイトメアの空輸部隊が接近してくるのが確認できた)
(ナリタ連山のふもとに投下されるナイトメアの群れ……街中でも、軍の動きがあるようだ)
(待ち構えていた瞬間が、ついに訪れた)
(事前に手に入れた情報と、そこからの推測をした通りの展開になりつつあるようだ)
ゼロ「……フッ、始まったな」
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玉城「おっ、おい……冗談じゃねぇぞ、ゼロ!」
「あんなのがきたら完全に包囲されちまうっ!」
「帰りの道だって……」
ゼロ「もう封鎖されているな……」
「生き残るには、ここで戦争をするしかない……」
井上「戦争!?」
玉城「真正面から戦えってのかぁ?囲まれてるってのに!?」
南「相手はコーネリアの軍……しかも今までと違って大勢力だぞ……!」
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ゼロ「ああ……これで勝利すれば世間では"奇跡"と呼ばれるだろうな……」
玉城「あのなぁ……奇跡は安売りなンかしてねェんだよ!」
ゼロ「私は今まで一度でも、"奇跡"頼みの作戦を行ったことがあるか?」
井上「……いや、ないけれど……」
扇「しかしゼロ、これは、今までと状況が……!」
「どうやって切り抜けるというんだ!?」
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玉城「戦力差がありすぎるだろうが!こンなのどうしようもねェよ!」
「何が戦争だ、オメェなんかに任せたのが間違いだった!オレが……ッ!?」
(そう叫ぶ玉城に、俺は素早く銃口を向けた)
(俺が構えた銃を凝視し、その場に固まる玉城……)
(そして突然の組織内での対立に、驚く団員達……)
ゼロ「わかった……事態は急速に逼迫している、問答は時間の浪費に過ぎない」
「ではこうしよう……」
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(俺は指先で銃をくるりと回し、銃把を玉城に向けた)
(怪訝な表情をする玉城……)
ゼロ「……私を、撃てッ!」
玉城「!?」
扇「!!」
カレン「ゼロ……!?」
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(ブリタニア軍の侵攻開始と同時に、山麓のいたる所に設置された砲台が一斉に、)
(狂ったように火を噴いた)
コーネリア「空爆で本拠地を叩いてしまうと、敵の資料が手に入らないからとはいえ、」
「航空戦力が使えないのが難点だな……」
ギルフォード「後方支援の火力は十分にあります、時間の問題でしょう」
コーネリア「見よ、ダールトンとアレックスの部隊は果敢に攻め上げておるようだぞ?」
「……む、あれは?」
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(コーネリアとギルフォードの部隊の前方が開け、地下から敵ナイトメアが3体出現した)
コーネリア「ほう、この山を要塞化していたか!」
ギルフォード「殿下、お下がりください!」
コーネリア「ギルフォード、私をそこらの女と一緒にするな……」
(そう言うが早いか、コーネリアのグロースターは猛然と、敵ナイトメアに突っ込んでいく)
(その勢いに驚いたナイトメアが機銃を掃射するも、グロースターは華麗に身をひるがえし、)
(ランスの一振りでナイトメアたちをなぎ倒した)
ギルフォード「……仕方ありませんね、援護にまわります」フゥ
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
ゼロ「……誰でもいい、すでに退路が断たれたこの状況下、私抜きでこの事態を乗り切れる」
「自信のある者がいるなら……今すぐ私を撃ち、騎士団を率いるがいい!」
玉城「おめェ…………!」
ゼロ「……黒の騎士団に参加したからには、選択肢は2つしかない……」
「私と生きるか……私と死ぬかだ!」
(これが、一つ目の"賭け"……)
(もしここで、何者かが俺を撃ち、リーダーになろうというなら……)
(その程度の連中しか集めることのできなかった俺の敗北だ)
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(だが……玉城が言い出したことも含め、全て想定通りの展開だった)
(俺は、この場面の"勝率"は95%以上だと見ていたが、果たして……)
玉城「……チッ!好きにしろよ!」
南「ああ……あんたがリーダーだ……!」
ゼロ「……ありがとう、感謝する」ニヤリ
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
兵士A「藤堂中佐、我々は完全に包囲されました!」
「機関協力員も、一斉に逮捕されたようです!」
兵士B「中佐、コーネリア軍から、投降せねばこのまま殲滅するとの連絡が……!」
藤堂「ならん!ここで今我々が降ったら、日本の抵抗活動は終わってしまう!」
兵士A「……では中佐、どういたしますか!?」
藤堂(……そうだ、黒の騎士団……?)
(まさか、この事態を見越して!?)
「……黒の騎士団を、ゼロを呼び出せ!」
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(団員の掘削作業を見守っている俺の無線機に、藤堂から連絡が入る)
(そろそろだと思っていた……今のところ、事態にイレギュラーは発生していない)
ゼロ「……藤堂か?」
藤堂『ブリタニア軍が、この山をぐるりと取り囲んでいるぞ!』
『コーネリア直々の指揮だ!』
ゼロ「ああ、わかっている……」
藤堂『なに!?』
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ゼロ「今、我々は奇襲作戦のための準備を行っている」
「準備が整うまで、何とか持ちこたえてくれ」
藤堂『奇襲……だと!?』
『ゼロ!まさか貴様……知りながら、私にこのことを黙っていたのか……!』
ゼロ「だからこそ来たのだ、藤堂ッ!」
「お前たちを窮地から救い出し、コーネリアを捕縛するために!」
「藤堂!日本解放戦線を率い、私の下に来いッ!」
藤堂「何ッ!?」
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ゼロ「考えろ、藤堂!草壁の造反およびテロ行為、そして片瀬の自害……」
「いま、ブリタニアがこうして総力を挙げて解放戦線を潰しに来た状況で、」
「君たちにブリタニアに対抗できるだけの力があるのか!」
「そしてこのことはキョウトとて知っていたはず、ならばなぜ事前の連絡をよこさない!」
「更なる援軍を送らない!考えればおのずと答えが出るだろう!」
藤堂『グッ……』
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ゼロ「藤堂よ、頑なに名分に固執し、大局を誤る気か!」
「我が旗の下に参じろッ!我々と行動を共にしろッ!」
藤堂「…………そのようなこと……亡くなられた片瀬少将が許しはせんッ!」
「我々は誇りある日本人だ!命など惜しくはない、最後の一人になってでも戦い抜くッ!」
「貴様のような」
ゼロ「藤堂ッ!、日本人とは、民族とは何だッ!」
藤堂『!!』
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ゼロ「言語か!土地か!それとも血の繋がりか!」
「それらがなくば、市井の善良な市民であれど日本人ではないのか!」
「それらがあれば、民衆を顧みない悪辣な政治家でも日本人なのかッ!」
「もっとも重要なのは、"心"ではないのか!」
「自覚・規範・矜持……文化の根底たる心こそが、最も肝要ではないのかッ!」
藤堂『ぬ……!』
ゼロ「答えろ、藤堂ッ!私は何者だ!」
「日本人である貴様を救い出さんと、あえて死地に赴いた私は……」
「エリア11の独立の為、日本人を率い、黒の騎士団を組織しブリタニアに反逆する私は、」
「一体何者だァッ!」
藤堂『ぬうっ……!』
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(……これは、今回の計画のうちの最大の"賭け"だ)
(藤堂のような優秀な"駒"は何としても手元に置きたいところだが、奴が解放戦線を)
(率いる立場にある上、俺がブリタニア人であることを知っている藤堂が、そう簡単に)
(我々に合流するとは思えなかった)
(それを不問とさせるだけの舞台装置が必要だった……)
(故に、この侵攻をあえて教えず、背水の陣において覚悟を問いただす賭けに出たのだ)
(しばしの、だが永遠とも思えるほどの沈黙の後……)
藤堂『……貴様は、日本人ではない……ッ!』
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ゼロ「……」
藤堂『…………だが、同志だッ!』
『日本解放戦線は、黒の騎士団と合流するッ!』
ゼロ「……貴殿らの参加、心より歓迎する!」
「チャンネルをAP7に合わせ、待機してくれ!」
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(フフ……前提条件は全てクリアされた……勝機は見えた!)
(俺は通信回線をAP7に切り替え、騎士団全員に号令をかける)
ゼロ「……これより我々黒の騎士団は、日本解放戦線との共同作戦を開始するッ!」
「ブリタニア軍の包囲網を破り、脱出を図る!」
「同志を助け、この窮地を脱すれば、君たちは真の戦士となり、」
「国内における黒の騎士団の存在は揺るぎないものとなるだろう!」
「総員……戦闘態勢ッ!」
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
藤堂「騎士団の連中が、奇襲の準備をしている!」
「それが完了するまでは、砲台からの集中砲火で敵を釘づけにしろ!」
兵士『了解ッ!』
千葉「藤堂さん!我々も、討って出た方が!」
藤堂「まだだ!連中の奇襲後にチャンスが来る!」
「それまでは歯を食いしばって耐えろッ!」
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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(解放戦線の砲火により、ブリタニア軍の主力部隊の動きは山腹で鈍化した)
(迂回しようにも、左右には谷がありそこを渡れない……待ち構えていた、絶好の機だ!)
ゼロ「……よし、今だ!紅蓮弐式、輻射波動を使え!」
カレン『はいッ!』
『紅蓮、行きますッ!』ガシュ!!
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(……"紅蓮弐式"の輻射波動による、地下水の水蒸気爆発……)
(それは、山麓の斜面を崩壊させ、壮大な土石流を引き起こした)
(比類なく圧倒的な土砂の壁は、その流れの途中にある樹木や施設、そしてナイトメアや)
(兵士たちを敵味方の区別なく一瞬で押し潰し、泥の流れの中に巻き込んでゆく)
(また、降り積もっていた雪は吹雪のごとく舞い上がり、これに巻き込まれずとも)
(周囲の視界を完全に失わしめた……奇襲の条件は整った!)
(ふもとの街にまで及んだその濁流が描いた、壮大な泥の河……)
(山頂付近から見下ろす様相のその凄惨な光景に、俺は思わず見惚れてしまった)
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ゼロ(クク……ククク……フハハハハハッ!いいぞ……素晴らしい戦果だ……)
(なるほど、より高高度を取る者が戦場を制する道理だ……今まさに、実感したぞ!)
「ブリタニア軍は分断された!」
「騎士団および解放戦線は、Cルートを用い北方へ脱出せよ!」
「藤堂らはコーネリアの部隊を攪乱してくれ!」
藤堂『承知ッ!四聖剣、ゆくぞッ!』
四聖剣『はッ!』
ゼロ「零番隊は私と共に来いッ!」
「孤立したコーネリアを、我々が捉える!」
カレン『はいッ!』
.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(主力部隊が壊滅的打撃を受けたブリタニア軍は、それ以上攻めることもできず、)
(解放戦線の残存戦力の砲火にその身を晒すしかなかった)
(孤立したコーネリアの部隊に対し、俺が率いる零番隊は挑発を仕掛ける)
(プライドの高いコーネリアがこれを見逃すはずもなく、周囲から包囲陣を仕掛けた"無頼改"の)
(集団をギルフォ-ド達に任せ、紅蓮弐式の姿を追う……)
(が、それは単なる解放戦線の部隊ではない、藤堂率いる四聖剣の部隊であった)
(ギルフォードらは予想外の苦戦を強いられ、コーネリアへの助勢に向かえない!)
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(そしてまた……)
(新型ナイトメア、紅蓮弐式の前には、コーネリア操るグロースターといえど敵ではなかった)
(谷底でカレンと俺の挟撃に晒されたコーネリアは、武装を破壊され、)
(さらに輻射波動で機構異常に陥った……緊急脱出装置も作動しなくなった)
コーネリア「おのれ……ッ!こいつが、動きさえすれば……ッ!」
ゼロ「よし、カレン……コーネリアを引きずり出せ、慎重にな」
カレン『はい!……ふふ、さあ顔を見せなさい……』ニヤ
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(紅蓮は、右手の巨大な爪先でグロースターのコクピットハッチをつまむと、)
(ゆっくりと引き抜いた……ハッチは、バキバキと金属が破断する音をたてて開く)
(ついに、コーネリアを孤立させ、我が手に……!)
カレン『…………!!』ガバッ!!
(突然、紅蓮は右手をコックピットを離し、谷底のふもと側を睨む)
(尋常ではない勢いで駆け上がってきた、一台の白いナイトメアがあった)
(撃ち込まれたスラッシュハーケンを、紅蓮は右手で叩き落とす)
.
セシル「させないわ!」
ゼロ「来たか、ランスロット!」
(無頼を、さらにはグロースターをも凌ぐ性能を持つ、次世代ナイトメア、ランスロット……)
(本来ならその存在は脅威であるのだが、今は事情が違う!)
ゼロ「カレン、行け!」ニヤリ
カレン『こいつは、わたしが仕留めるっ!』ゴオオォォォ!!
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(迫りくるランスロットに、真正面から向かう紅蓮弐式)
(ランスロットはヴァリスを構えたが、その瞬間、紅蓮弐式の姿はスコープから消えていた)
セシル(えっ!?なに、この速さ!?)
(……と思う間もなく、側面警報!)
(ほとんど反射的にスティックを引くと同時に、紅蓮弐式の特斬刀がランスロットの胸元を)
(掠めた……セシルは瞬時にMVSを横なぎに振るったが、高周波ブレードは)
(空を切り裂いただけだった……紅蓮はすでに一足以上も引いていた)
.
(ランスロットと同等、あるいはそれ以上の動力性能を持つ敵性ナイトメア……)
(その事実にセシルは、初めて実戦での恐怖を覚えた)
セシル「うそ!……ロイドさん、これ、普通じゃないわ!」ブルッ…!
カレン(やれる、やれるわ、わたしの紅蓮二式なら……!)メラメラ
.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(ランスロットの相手をカレンに任せた俺は、破損し、引きずり出されたグロースターの)
(コクピットに歩み寄る)
(座席には、戦略目標……コーネリアが、身動きもできないのかぐったりとしていた)
ゼロ「……またお会いしたな、コーネリア」カツカツ
「次に逢う時が、私の最期……だったかな?」
コーネリア「……殺せ、私を……!」キッ!!
「虜囚の辱めを受けるくらいなら……私は死を選ぶ……!」
ゼロ「敗れても、なお意気軒高か……」
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コーネリア「クロヴィスを殺し、今また私を殺せば……貴様は永遠にブリタニアから」
「追われる身となるのだ……」
「ククッ、ネズミのように、死ぬまで逃げ惑うお前の姿……実に滑稽だ……」
「その無様さを思い描きながら、私は地獄に行くとするさ……」
ゼロ「……殺す必要のない者を、私は殺しはしない」
「それどころか、貴女には生きていてもらいたいのだよ……」
コーネリア「なに……!?」
.
ゼロ「……その前に、ひとつ教えてもらいたいことがある」
「マリアンヌ妃の暗殺事件についてだ」
コーネリア「!?」
(俺の言葉に、コーネリアは意表を突かれたという表情をする)
(仮面の下で、俺はコーネリアを注意深く観察しながら言葉を続けた)
ゼロ「コーネリア……貴女の知っている事を話してもらいたい……」
「私は長年、その真相を探し続けているのだ」
.
コーネリア「……きっ、貴様が知ったとてどうなるというのだ!」
「第一お前に話す義理もない!」
ゼロ「そうでもないのだよ、コーネリア……」
「君は、その点で私に大きな借りがあるのだからな……」
コーネリア「……なに……?」
ゼロ「なぜなら、私は……マリアンヌ妃の子なのだから」
コーネリア(マリアンヌ様の、子供……?)
(あの方の子供といえば、ナナリーと……)
.
(彼女は、少しの間怪訝そうな顔をしていた)
(が、突如、何かに気付いたように目を大きく見開く)
コーネリア「……まっ、まさか……!?」
ゼロ「そう……お久しぶりですね、姉上」
コーネリア「……バッ、馬鹿な!」
「ルルーシュは確かに、日本侵攻の時に死んだはず……!」
ゼロ「ククク……母上を殺した仇を求めて、地獄から舞い戻ってきたのですよ……」
.
コーネリア「お前……本当に、ルルーシュなのか……!?」
ゼロ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです、姉上」
「貴女はおおかたシャルルの、私が死んだという嘘を信じたのだろうが……」
コーネリア「違う、陛下は何もおっしゃられなかった……!」
「ひどい空爆だったと聞いて、生きてはいないだろうと……!」
ゼロ「……」
.
コーネリア「……いや、待て、顔を見せろ……!」
ゼロ「ほう?私がルルーシュではない、と?」
コーネリア「そのような嘘、皇族について調べればいくらでもつけるわ!」
「貴様がルルーシュの名を騙っているなら、絶対に許さん……!」
「クロヴィスを殺し、さらに今は亡き我が弟の名まで騙るならば……」
ゼロ「クク……相変わらずですな、姉上……」…カポッ
コーネリア「…………ルルーシュ……!」
.
(仮面の下から現れた俺の顔を見て、コーネリアは息をのんだ)
(もはや否定しようもない……そう、俺は、貴女の妹、ユフィと同様に、)
(貴女が可愛がり、愛した弟だ……)
コーネリア「……ほ、本当にルルーシュだったのか……」
「もっと、顔を……近くで見せてくれ……」
(俺は、コーネリアの傍にゆっくりと歩いてゆき、膝をつく)
(彼女は、震える手を伸ばし、俺の頬にそっと触れた)
コーネリア「……男の顔になったな、ルルーシュ……」
「ユフィが聞けば、さぞかし……」
.
ルル「……姉上、母上を殺したのは貴女か?」キッ…
コーネリア「ちっ、違う!」
「……あれ以来、私も、あの事件の真相を求め続けているのだ!」
ルル「なに?」
コーネリア「あの時、私はマリアンヌ様から、護衛を外すように言われた……」
「警護担当として、常につき従っていた私を、当日に限って、だ」
ルル「なんだと!?」
.
コーネリア「マリアンヌ様は、何者かとの約束があったのではないかと私は考えている」
「だが、その相手が全く記録に残っておらんのだ……」
ルル「……」
コーネリア「もし、テロの襲撃を知っていれば、私は何を言われようと絶対に、」
「"閃光のマリアンヌ"の傍を離れることはなかった……」
「私は、あの方を、心の底から敬愛していたのだ……!」
ルル(……嘘をついているそぶりはない)
(姉上も知らぬ陰謀があったということか?さらにその上の者達の……)
(……となると、シュナイゼルに聞くしかないのか……)
.
(と、その時、背後で大きな爆発音が鳴った)
(驚いて振り返ると、紅蓮が膝をつき、その右腕が煙を噴き上げていた)
カレン『ゼロ!ごめんなさい、ランチャー弾の直撃を防ごうと……!』
ルル「白兜はどうした!?」
カレン『相打ちよ、谷底に蹴り落としたわ!』
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(……そろそろ潮時だ)
(俺はそう判断すると、騎士団に指令を出した)
ルル「全軍撤退!これ以上は無駄な消耗戦になる!」
「切り開いたCルートを使い、北方へ抜けろ!」
「カレン、紅蓮は動くか?」
カレン『大丈夫です!』
ルル「よし!迅速に撤退するぞ!」カポッ
カレン『はい!』
.
(仮面を被りながら指示を出す俺に、コーネリアが声をかける)
コーネリア「待て、ルルーシュ!」
ゼロ「……なんでしょう?」
コーネリア「こっ……答えろ、なぜお前はクロヴィスを殺したッ!?」
ゼロ「……奴が、シャルル・ジ・ブリタニアの子供だからだ」
コーネリア「!!」
.
ゼロ「皇帝の下で俺たちは、互いに競い合い、殺し合う宿命にある……」
「それがブリタニア皇族の宿命……ですよね、姉上?」
コーネリア「しっ……しかし……!」
ゼロ「そういえば、貴女もそうでしたね……」チャキッ
コーネリア「ル……!!!」
.
(俺は、ゆっくりとふところに手を入れ、銃を取り出して彼女の額に狙いを定めた)
(死んだと思っていた愛する弟に銃を向けられ、殺される……)
(彼女は、想像すらしたことのない状況に、呆けたような表情になった)
ルル「……だが、貴女には生きていてもらいたのです、」
「最初に申し上げたとおり……」
「……姉上…………」キィィィィィン……!!
コーネリア「ぬう…………!?」
.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
(……どれくらいの時間が経ったのだろうか)
(グロースターのコクピット内で気を失っていた私は、ナイトメアの接近する音で目が覚めた)
(あれは……ギルフォードのナイトメアの音だ)
(数名の兵を引き連れたギルフォードは、私のグロースターの傍に停止すると、)
(弾けるようにコクピットを開き、そのまま飛び降りて私に駆け寄った)
ギルフォード「コッ、コーネリア殿下!」ダダッ…!!
.
コーネリア「……ギルフォードか……」
ギルフォード「お気を確かに!」
「お身体はいかがですか!?」
コーネリア「……身体が動かん……済まんが、私をここから引きずりだしてくれ」
(彼らは、数名がかりで私を座席から引っ張り上げ、地面に横たえた)
(モルヒネを打たれ、私は一息つく)
ギルフォード「じきにメディコが参ります!」
「しかし、よくぞご無事で……!」
.
コーネリア「……我が軍の状況はどうなっておるか……?」
ギルフォード「はっ……損耗が、限界を超えました」
「土石流で全部隊の40%以上が埋まり、またふもとの街にも被害が及んでおります」
「これ以上の作戦活動は……」
コーネリア「やむを得んだろうな……全軍に、撤退命令を出せ」
「悔しいが……今回は、我々の負けだ……ゼロに華を持たせてやる……」
ギルフォード「殿下、しかしゼロはなぜ、殿下をそのまま……
コーネリア「うん?」
.
ギルフォード「奴の機体が、コクピットが開いた状態で放置されておりました」
「てっきり、殿下を拉致しようとしたものかと……」
コーネリア「む……?」
(……そういえば、奴が私に近づいてくる姿は鮮明に覚えている)
(だが、そこから先の記憶がぷっつりと途絶えていることに私は気付いた)
コーネリア「……いや、私も覚えておらん……」
「どうやら、途中で気を失ったらしい……」
.
ギルフォード「連中の計画に狂いが生じたのか……」
「しかし、殿下がご無事なようで何よりです……!」
(……記憶を失う直前まで、私は意識がはっきりとしていたはずだ)
(そこから突然、気を失うなどということがあるのだろうか……?)
(また、あの状況でゼロが私を放っていったことも解せない)
(私を殺す、絶好の機会だったというのに……)
(解放戦線の本拠地を叩いたというものの、腑に落ちぬ、後味の悪い結末となった……)
.
■ Intermission ─────
(……俺の作戦は、見事なまでに図に当たった)
(日本解放戦線を壊滅し、同時に協力者のリストを手に入れんとしていたコーネリアだが、)
(俺が起こした土石流と奇襲により部隊の50%以上を損耗、アジトは土砂に埋まり、)
(藤堂らは黒の騎士団に合流した……解放戦線はなくなったものの、事実上の敗北であった)
.
(冬の積雪で崩れやすくなっていた斜面が、侵攻により崩落したものだ)
(……総督府は今回の件を、そう発表した……こちらに輻射波動という恐るべき兵器が)
(あることを、できれば公にしたくないという政治的判断によるものだろう)
(また、そう発表しなければ騎士団に敗北したことになり、"ブリタニアの魔女"の名声に)
(傷がついてしまう、だから先んじてそういう噂を流そう……ディートハルトのその提案も)
(的確なものであった)
(民間にも多大な被害が及んだ今回の作戦だったが、先手で対策をうったことにより騎士団を)
(非難する声はごく小さなもので済んだ……彼は今後、色々と活用できそうだ)
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(ナリタ戦で戦果を挙げ、また藤堂ら解放戦線の精鋭を騎士団に加えた俺に、)
(キョウトから呼び出しがかかった……キョウトの重鎮が、直接会いたいと言うのだ)
(扇やカレンたちは大喜びしていたが、キョウトからすれば今エリア11で彼らが使える"力"は)
(我々くらいしかないのだ、俺から見れば当然のことだった)
(キョウトへ向かう当日……)
(シャーリーとのコンサートの約束がある日だったが、キョウトを疎かにするわけにもいかない)
(少し遅れるかもしれないことを、彼女に連絡したら……)
シャーリー『……今日の約束なんだけど、遅れるかもしれない……』
ルル「??」
.
シャーリー『……でも、あの……きっと大丈夫だから……』
『うん、必ず行くから……』
ルル「……なんだか元気なさそうだぞ、風邪を引いたのか?」
シャーリー『ううん、大丈夫だよ!ごめんね、ルル……』
ルル「そうか……無理はするなよ?」
(少し元気のない彼女の声に、若干の気ががりを感じたが……)
(俺は、極めて重要なキョウトでの"作戦"に集中することにした)
.
■ナリタ連山ふもと 土石流災害現場 ─────
セシル「ええ……敵の機体は、右手に輻射波動を取り付けていました」
ロイド「やっぱり、か……」
「まさか敵に協力するなんてねぇ……あのラクシャータが……」
セシル「敵パイロットもエース級でした……」
「わたし、今度こそ死ぬかと……」
ロイド「補助モジュールでもダメかぁ……」
「まぁ苦肉の策だったけど、どうするかなぁ……」
「コーネリア殿下は、軍からテストパイロットを選んでもいいって言ってくれたけど……」
.
セシル「えっ、そうなんですか?」
ロイド「うん、君が殿下の救助にかけつけたでしょ、」
「あれで、ランスロットの有用性を認めてくれたんだ」
セシル「……じゃ、私はもう、乗らなくてもいいんですね?」
ロイド「君以上に適性のあるパイロットがいればね~」ハァ…
セシル「いて欲しいですね……」ハァ…
.
■租界 コンサート会場前 ─────
(……キョウトからの帰還に手間取った俺は、シャーリーとの待ち合わせに)
(随分と遅れてしまった)
(途中、幾度となくシャーリーに連絡をしたのだが、繋がらなかった)
ルル(やはり、怒っているんだろうな……もう帰っててもおかしくない)カツカツ
(明日、どう言って謝るか……)
(二時間近くも遅れながらも、俺は約束の場所に行ってみる)
(夕方から降り始めた雨が、日が落ち夜になった今もまだ降り続いていた)
(徐々に雨足が強くなりつつある)
.
(待ち合わせ場所……コンサート会場の前まで来て、俺は仰天した……)
(シャーリーは、まだそこに立っていた……俯いて、ずぶ濡れになりながら……!)
(まさか、もし俺が来なければ、ここでずっと待っているつもりだったのか!?)
(俺は、あまりの光景に、謝罪の言葉よりも先に怒りが湧いた)
ルル「…………シャーリー!」カツカツ
「何をバカなことを!」
シャーリー「…………」ポタポタ
.
(俺の、怒気をはらんだ呼びかけにもシャーリーは応じない)
(俺は自分がさしていた傘にシャーリーを入れる)
ルル「俺が来なければ、帰ればいいじゃないか!」
「傘もささずに、ずぶ濡れになって……風邪をひいたらどうする!」
シャーリー「…………ゴメン……」ポタポタ
(いつもなら、俺が遅れたことを怒り出すはずのシャーリー……)
(こんな様子なら、怒り心頭でもおかしくなかった)
(……だが、今は怒りもせず、彼女は俺の言葉に素直に謝った)
(その様子に、俺は違和感を覚える)
.
ルル「……いや、謝るのは俺の方じゃないか……」
シャーリー「……ゴメンネ……」ポタポタ
ルル「……どうしたんだ、シャーリー?」
シャーリー「……」
(俯いたまま、押し黙っているシャーリー……)
(普段と、あまりにも異なる様相に、俺はどうすればいいのか戸惑ってしまう)
(何も言えずにいると、彼女はぽつりとつぶやいた)
.
シャーリー「……アノネ、」
「オトウ、サン……シンダノ……」ポタポタ
ルル「……えっ?」
シャーリー「…………」グスッ
「お父さん……死んだの……」ポタポタ
ルル「……嘘だろ?」
シャーリー「ほんとうなの…………いっ……埋まって……」
「ナリタで……うっ……」ポタポタ
.
ルル「!!」
(……ナリタだと?)
(それは……俺の作戦で、ということか……!?)
(あの作戦で、シャーリーのお父さんが……!?)
(……バカな…………そんなバカな、あり得ない!バカな、バカなッ!!)
(なぜシャーリーのお父さんが、そんなところに!?)
.
シャーリー「ゼロが……土砂崩れ、起こしたんだって……」グスッ
「えへ、嘘っぽいよね…………そんなの……」ポタポタ
ルル「…………」
シャーリー「……今朝、連絡があって…………」
「でも、ほんとうだった…………ひどかった……」
「……おとうさんが…………う、うあ……ああ……ッ!」ポロ…
ルル「シャーリーッ!」
.
(俺は傘を放り出し、今にも崩れ落ちそうなシャーリーをとっさに抱きしめ支えた)
(彼女は俺の腕の中で、それまで溜まっていた感情を一気に爆発させた)
シャーリー「あああっ!うああああああっ!」
「なんで!どうしてえっ!どうしてなのおっ!」ボロボロ
ルル「……」ギュ…
シャーリー「どうして!ゼロは正義の味方じゃなかったのおっ!」
「おとうさん、何も悪い事してないよっ!なんで、どうしてなのお……っ!」
ルル「…………」
.
シャーリー「ルル!ルルぅ!わたし、わかんない!もうわかんないの!」
「怖いの!お願い、助けて、たすけてえっ!」
ルル「シャーリー……ッ……!」ギュウゥゥ…!!
シャーリー「あああっ!ああっ、うああああああああああっ!」
(……愚かだったのか、俺は?)
(戦術に、土石流などを組み込むべきではなかったのか?)
(だが、解放戦線を救い、同時にブリタニアに壊滅的打撃を与える戦術はあれしかなかった)
(そうしなければ、藤堂らは……そして、この先の俺の戦略が……)
.
(……俺の胸に顔をうずめ、泣きじゃくるシャーリー……)
(あの、いつも太陽のように明るかった子が、今、絶望に身をよじり、ただ泣き叫んでいた)
(俺がもたらした悲劇に、心を押し潰されそうになりながら……)
(謝罪など、あまりに恐ろしくて口にできなかった)
(ただ、いまここにいる、砕け散ってしまいそうな少女を、どうしても、救いたくて……)
ルル「……シャーリー!」
シャーリー「……!」
.
(……俺は、顔を上げた彼女に接吻をした)
(一度目は、そっと、触れるように……)
(そして二度目は、明白な意思を以て、彼女の柔らかな唇を奪った)
(シャーリーは瞳を閉じ、唇を吸われながら俺にしがみつく)
(震えながら必死に息を止める彼女が愛おしくて、俺はさらに強く抱きしめながら)
(彼女の首筋にもキスをした……)
シャーリー「ル……ルル……!」
ルル「シャーリー……ッ!」
.
(……雨は、土砂降りになっていた)
(俺は今、初めて、己の"罪"を……この背中に背負っていたモノを理解した)
────── 続く
くぅ疲……(´・ω・`)
乙!死んでしまったか…
ねりさんはギアスで記憶失ったの??
乙!
積極的な童帝だな
>>89
シャーリーとはキス済みだった分、ちょっと攻めてますね!
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