◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・中央部『渓谷地帯出口』―
ドスンッ ドスンッ!
ゴーレム『グオオオオォォォ!』ドゴンッ
新生暗夜軍兵士「ぐああああっ!」ドサッ
マークス「くっ! ジェネラル隊、ゴーレムの攻撃を受け止めよ! 奴らを陰にやって来るノスフェラトゥの群れにも注意するんだ」
新生暗夜軍ジェネラル隊長「お任せください、マークス様! 行くぞ、私に続け!」タタタタタッ
新生暗夜軍ジェネラル隊『うおおおおっ』ダダダダダッ
ガキィンッ ゴンッ!
グアアアッ ヒルムナ!
マークス「やはり、簡単に村へ近づけさせてはくれないか……」
カムイ「マークス兄さん!」タタタタッ
マークス「カムイか。そちらからの突破は出来そうか?」
カムイ「いいえ、ゴーレムの数は減らせていますが、増援のノスフェラトゥに埋められている状態です」
マークス「ふむ、ゴーレムが減った穴を埋めるためにノスフェラトゥが送られているのならば、ここの渓谷側の補強を優先しているのだろう。逆に考えれば、今ならここを突破し村まで入り込むことが出来るかもしれん」
カムイ「ですが、大丈夫でしょうか。その……こちらからでは敵の拠点がどうなっているのかわからないんですよね?」
マークス「ああ、村全体が黒い靄で覆われていて、敵の動きを察知することはできん。それに、どうやら敵側からはこちらが見えているようだからな。ゼロなどの偵察隊が調べた情報で分かっているのは、魔導砲台や弓砲台の大まかな位置だけだ。しかし、このまま手を出さずにいれば、渓谷に押し戻されかねん。ここで敵中を突破し、村への道を開く」
カムイ「わかりました。私はソーサラー隊の方々と一緒にゴーレムの戦列に攻撃を仕掛けます。マークス兄さんはタイミングを見て攻撃をお願いします」
マークス「うむ、任せたぞ。カムイ」
カムイ「はい、ソーサラー隊の方々は私についてきてください。左翼の敵陣に攻撃を仕掛けます」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「わかりました、カムイ様。ゴーレムも永遠に攻撃できるわけではありません。敵の手が休んだところへ攻撃を仕掛けるのです」
新生暗夜軍ソーサラー隊『はっ!』タタタタタッ
アクア「カムイ、方針は決まったの?」
カムイ「はい、前方の戦列を崩して村内部への突破口を作ります。アクアさん援護をお願いできますか?」
アクア「ええ、わかったわ。サポートは任せて」
カムイ「よろしくおねがいします。皆さん、行きましょう!」タタタタタタッ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1572435960
このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。
最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」
カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438528779/)
所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/)
アクアが暗夜兄妹と和解した3スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456839703/)
タクミとの戦いが終わりを迎えた4スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466084140/)
スサノオ長城攻略戦が終わりを迎えた5スレ目:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483807375/)
白夜との戦いが終わり、願いが途絶えた6スレ目:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6― - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521469400/)
個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
ご了承のほどお願いします。
主人公のタイプは
体 【02】大きい
髪型 【05】ロング・セクシーの中間
髪飾り 【04】ブラックリボン
髪色 【21】黒
顔 【04】優しい
顔の特徴【04】横キズ
口調 【私~です】
長所短所には個人的趣味を入れ込んでいます。
・長所 心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
・短所 盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】
※時々、番外編を挟むことがあります。
番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB++
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワB
(動物の餌やりを一緒にやることになっています)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480] A[6スレ目・619]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540] A[6スレ目・699]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106] A[6スレ目・925]
・レオン×ピエリ
C[6スレ目・76] B[6スレ目・107] A[6スレ目・948]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×エルフィ
C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15] B[6スレ目・317]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479] B[6スレ目・653]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・マークス×エリーゼ
C[6スレ目・620]
・カミラ×ジョーカー
C[6スレ目・671]
・エルフィ×スズカゼ
C[6スレ目・698]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781] B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774] B[6スレ目・108] A[6スレ目・633]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250] B[6スレ目・700] A[6スレ目・926]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410] A[6スレ目・949]
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302] B[6スレ目・654]
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425] B[6スレ目・902]
【支援Cの組み合わせ】
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
C[6スレ目・106]
・シャーロッテ×カザハナ
C[6スレ目・314]
・エリーゼ×カミラ
C[6スレ目・315]
・レオン×ハロルド
C[6スレ目・606]
・スズカゼ×ブノワ
C[6スレ目・607]
○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)
―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)
―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)
―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)
―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)
―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)
―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)
―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
今日はスレ立てだけになります。
6スレ目のURLが作動していなかったのでこちらに
6スレ目のURLのリンクが出来ていませんでした。
白夜との戦いが終わり、願いが途絶えた6スレ目:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6― - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521469400/)
今日はスレ立てだけになります。
前スレの最後のレスが風花雪月になっていたので、この章が終わった時に書く短編は『風化雪月の百合的なもの(複数カップリング)』になりましたので、よろしくお願いします。
また、時々安価をしていこうと思っていますので、よろしければ参加していただけると幸いです。
おつ
支援ない組み合わせでも良いならエーデル×メーチェとか見たいな
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・軍師の天幕』―
マクベス「よし、そのままノスフェラトゥを送り続けなさい、内側の数は最低限で構いません。敵を出来る限り釘付けにするのです」
旧暗夜軍兵士「はっ、マクベス様!」タタタタッ
メイド「マクベス様、防壁での戦いはこちらの優勢で進んでいます。あの魔術のおかげです」
マクベス「丸裸にしていたら、何処からでも入られてしまいますのでね。せめて視覚的に優位に立てなくては、しかし……」
メイド「? なんでしょうか、マクベス様」
マクベス「なんでしょうかではありません。まったく、最後の最後で命令に背くとは思ってもいませんでした、やってくれますね」
メイド「……後でどのような処罰でもお受けします。ですが、今は……」
マクベス「当たり前です。貴女の処遇など今すぐ決めるべきことではありません。今、命令違反という理由で処罰したところで戦力が減るだけで、何のメリットもありませんので」
メイド「ありがとうございます。それではマクベス様、私は魔法部隊の指揮を執りに向かいます」タッ
マクベス「待ちなさい、一つだけ聞いておきたいことがあります」
メイド「なんでしょうか?」
マクベス「なぜ、私の命令に背いたのか、それだけは聞いておかなくてはなりません」
メイド「簡単なことです。マクベス様に仕えることを優先した、ただそれだけです」
マクベス「それだけですか?」
メイド「はい、私はそれだけです。失礼いたします」タタタタタッ
マクベス「……ふっ」
マクベス「仕えることを優先した、ですか……。まったく、あなた方が仕えているのは暗夜王国だというのに」ガサゴソッ
マクベス(まったく……)
マクベス「困った部下たちですよ……」
マクベス(さて、空いたゴーレムの隙間を埋める様にスフェラトゥを送り込みましたが、奴らはどう動くか。このまま、渓谷まで撤退してもらえるのならば何も言うことはありませんが……)
マクベス「さて、どう出ますかな?」タタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『旧暗夜軍前戦陣地・渓谷側入り口付近』―
ゴーレム「グオオオン!」グッ
アクア「!」サッ
ドゴンッ‼‼‼‼
アクア「今度はこっちの番よ、はあああっ!」チャキッ タタタタッ
グッ ブンッ
ドスリッ!
ゴーレム「!!!!」グラッ
カムイ「アクアさん、あとは私が!」ダッ
ブンッ!
ザシュンッ
ゴーレム「グオオオオォォォ……」ドタンッ!
カムイ(ゴーレムの隊列に穴が開きました。これなら!)
カムイ「みなさん、今です!」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「よし、火力を集中して、あの一帯を焼き払うのです!」
新生暗夜軍ソーサラー隊「よし、くらえ!!!!」シュオンッ
ドゴゴゴンッ!‼‼
カムイ(ゴーレムと思われる気配が消えました。なら、次に来るのは……)
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオオオッ‼‼‼」ダダダダダッ
アクア「ノスフェラトゥの大群ね」
カムイ「そうみたいですね。ですが、ゴーレムの数をかなり減らせています。これなら――」
マークス「こちらの好きにできるという物だ。騎馬隊、私に続け!!!」チャキッ
新生暗夜軍パラディン隊長「マークス様に続けー!」
ヒヒヒーンッ!‼‼
ドドドドドドドドッ
マークス「敵を薙ぎ払え、ジークフリート」シュオン! ブンッ
ザシュシュシュッ!‼‼‼
新生暗夜軍ジェネラル隊長「よし、騎馬隊の側面を奴らに取らせるな! グレートナイト隊は先行し、邪魔な奴らを蹴散らしてくれ!」
ギュンター「心得た。全員槍を構えよ、容赦する必要は無い、行くぞ!」
新生暗夜軍グレートナイト隊『ウオオオオッ!‼‼』ヒヒーンッ
ドドドドドドドッ
カムイ「ギュンターさん」
ギュンター「カムイ様、側面の防備は我々にお任せを。村への突破口をお願いいたします」
カムイ「はい、任せてください!」
アクア「カムイ、敵の増援はこの先からやってきているみたい。黒い靄の所為でどこから来ているかは分からないけど、そこに内部に入り込むための入り口があるはずよ」
カムイ「そこを見つけ出して突破しましょう。マークス兄さん、援護をお願いします」タタタタッ
マークス「任せておけ。全員、一気に敵の前線を崩し突破する、いくぞ!」
新生暗夜軍パラディン隊『おーーーーー!!』
ドドドドド!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「カムイたちが動きだしたようね。あの靄を突破して内部に入り込むつもりみたい」
ニュクス「かなり危険だけど、大丈夫なの?」
カミラ「仕方ないわ。劣勢とまではいわないけど、敵の増援で部隊の分断が進んでいるもの。この状態で本格的な籠城戦に切り替えられてしまったら、渓谷に一度戻らざるを得なくなる。そうなれば……」
ニュクス「敵の増援次第によっては、ここで長い時間を掛けることになるということね」
カミラ(そうなれば、奴が新しい手を打ってくるかもしれない。それが王都ウィンダムに向けられてしまったら……)
カミラ「そんなことを許すわけにはいかないわ……」
ベルカ「カミラ様、指示を。ここで待っていても状況は変わらない……」
ニュクス「ベルカの言う通り、今出来ることをするしかない、そうでしょう?」
カミラ「ええ、その通りよ。カムイ達の突入に合わせて私たちも仕掛けるわ。弓砲台と魔導砲台の位置は掴めているから、そこを縫うように仕掛けましょう。ベルカ、一部隊をあなたに預けるから、うまくやってみて」
ベルカ「わかったわ。ニュクス、しっかり掴まっていて」
ニュクス「ええ、お願いね」グッ
ベルカ「任せて、そこの部隊は私に付いてきて」バササッ
新生暗夜軍ドラゴンマスター隊『はい!』バサササッ
カミラ「それじゃ、私達も仕掛けに向かうとしましょう。付いて来なさい」バサササササッ!
新生暗夜軍レヴナントナイト隊『分かりました、カミラ様に続け!』バサササッ
カミラ(戦闘を行っている敵兵力に人間がいない以上、多くは村の内部でこちらが来るのを待っているでしょうね。足並みを揃えないで攻めても各個で対処されるし、そうならないようにしないと……)ゴソゴソッ スッ
カミラ「レオン、聞こえる?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エリーゼ「えーい!」シュオンッ ドゴンッ!
ドサリッ
エリーゼ「やったー! って、あれ?」
ノスフェラトゥ「グオオオオオオッ!」ダダダダッ
エリーゼ「え、まだいるの!? わわっ!」
レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ
ググッ バシュンッ!
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオオオ……」ドササッ
レオン「エリーゼ、大丈夫か?」
エリーゼ「う、うん。ありがとう、レオンおにいちゃん。でも、どうしよう、これじゃ押し込まれちゃうよ」
レオン「ああ、何か手を打たないといけないな……」
サクラ「レオンさん、大丈夫ですか?」
レオン「ああ、何とかね。すまないけど、ノスフェラトゥの攻撃を抑えてくれているジェネラル隊のサポートに回ってくれるか」
サクラ「はい、任せてください」
エリーゼ「サクラ、あたしも行くよ!」
タタタタッ
レオン(どうにか敵を倒しつつ、戦線は維持できている。だけど、だんだんと圧されているのも確かだ……)
レオン「どうにかして突破口を作らないと、このままじゃ渓谷に戻されかねない」
カミラ『レオンも苦戦しているみたいね』
レオン「ああ、ニュクスの作ってくれた水晶で連携は取れるから、すぐに崩れるってことは無いけどね」
カミラ『そうね、ニュクスが作ってくれたこの水晶には助けられてばかりよ』
レオン「ああ、本当にね。それよりも仕掛けるのかい、姉さん」
カミラ『ええ、カムイ達が敵陣の突破を始めているみたいなの。でも、今は内部にいる敵の動きが分からないわ。だから、カムイ達を援護しつつ一斉に攻勢を仕掛けようと思うのだけど……。そっちは動けそう?』
レオン「なるほどね。ベルカの部隊が靄に近づきつつあるのも、その一つっていうことかな?」
カミラ『ええ、そうよ。私もこれから仕掛けるつもり。靄を突破してそのまま敵陣地に入り込んで、防壁を制圧するわ』
レオン「かなり危険だけど今はそれしかないか……。わかった。敵増援の流入が穏やかになってる。そろそろ、増援を終えて門を閉じるつもりかもしれない。閉じられる前に仕掛けよう」
カミラ『なら決まりね。それじゃ、これから仕掛けることにするわ』
レオン「わかった、こっちもベルカの部隊が攻撃に入るのを見計らって仕掛ける。中で会おう、姉さん」
カミラ『ええ、それじゃ』
レオン「……よし」
エリーゼ「レオンおにいちゃん、今のカミラおねえちゃんから?」
レオン「ああ、今から村内部へ強行突破を試みることになった」
エリーゼ「え、あの靄の中に飛び込むの!?」
レオン「同時に攻撃を仕掛ければ、靄の中の奴らも対応するのが難しくなるはずだ。危険は承知だ、でも、敵に圧されて渓谷に戻されるのだけはどうにかしないといけない。これ以上、奴に手を打たせるわけにはいかないからね」
エリーゼ「……そうだよね、白夜王都の時みたいなこと、させるわけにはいかないもん!」
レオン「ああ、絶対にね。ストラテジストとダークナイトを中心にした騎馬戦力で一気に敵戦列を押し上げて、ジェネラルや徒歩の部隊は側面から迫るノスフェラトゥやゴーレムを対処、隙を突いて村に入り込む」
エリーゼ「わかったよ、みんなに伝えてくるね!」タタタタタッ
レオン「ああ。よし、陣形を再編成して攻撃を掛ける! 全員準備するんだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・内部中央に建てられた監視塔』―
旧暗夜軍兵士A「敵の飛竜部隊が二手に分かれました。さらに南西の門へ敵の騎馬隊が接近しているとの情報あり」
旧暗夜軍兵士B「南東門周辺の敵は隊列を組み直しています。おそらく、この部隊も突破を試みようとしているのだと思われます」
旧暗夜軍アドベンチャラー「おい、さっきの別れた飛竜部隊、あれも攻撃に向かってくるつもりだぜ。恐らく弓砲台と魔導砲台が狙いか? それで、あわよくばそのまま突破しようって魂胆だな」
マクベス「ふむ、同時に四カ所を攻撃するつもりですか。まぁ、この状況で攻め入ろうというのならば、それくらいしか向こうに手は無いでしょう」
旧暗夜軍アドベンチャラー「おっと、マクベス様。敵は概ね予想通りに攻撃してきてますよ」
マクベス「当たり前です、これでも綿密に作戦を立てましたのでね。この状況を早急に打開するためにとって来るだろう行動は予想できています。しかし、幾分か敵の動きが早かったか……」
旧暗夜軍アドベンチャラー「まぁ、元から兵力の差もあるわけで、そこは仕方ないですよ。で、どうします?」
マクベス「ここで弓砲台と魔導砲台失うわけにはいきません。直ちに例のポイントへの移動を。それと防壁の守備についている者たちは敵が防壁を突破したら、すぐに行動を起こすように指示を出して置いてください」
旧暗夜軍アドベンチャラー「了解しました。ちなみに敵を抑えられた場合は閉門ってことも伝えておきますよ」タタタタタッ
マクベス(閉門ですか。そうなれば、こちらとしても助かりますが、向こうもそうさせまいと突破してくるでしょうね)
旧暗夜軍兵士A「マクベス様、外部掃討戦力分のノスフェラトゥは次の部隊で最後となります」
マクベス「わかっています。引き続き、あなた方はここで敵の動向を監視を。何かあり次第合図を出すように、それと――」
旧暗夜軍兵士B「わかっています、あの大屋敷までですよね?」
マクベス「その通りです、あの大屋敷までですので、お忘れないように」
旧暗夜軍兵士A「はい、承知しておりますマクベス様。ここは私達にお任せください」
マクベス「頼みましたよ」タッ
マクベス(南側が破られれば敵の飛竜隊の第一陣が入り込んでくるでしょう。もっとも、それがこちらの狙いでもあります)
マクベス「ふっ、軍師である前に、私が魔術師であることを忘れてもらっては困りますよ。彼らは渓谷出口からすでに戦闘が始まっていると思っているのでしょうが――」
「本当の攻撃はまだ始まってすらいないのですよ。カムイ王女……」ニヤッ
今日はここまで
マクベスは軍師であり魔術師でもある。白夜の眼鏡軍師とは違うのです。
風花の百合的短編は、出来そうなら安価で決める形になるかもしれません。
乙
卓上の鬼神「乱戦の定め」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・南方防壁前』―
カムイ「やあああっ!」
ザシュンッ!
ノスフェラトゥ「グオオオオオォォォ……」ドタンッ
カムイ「さすがにここまで近づくと、敵が多くなりますね」
アクア「ええ。あの靄の奥に門があるとは思うけど、ここから目星を立てるのは難しいわ」
カムイ「でも、敵はまだ流入を続けています。なら、その動きから推測することはできます。それに目ではなく気配で探るのなら、私に分があります」
カムイ(これほど近づけば靄の気配も感じられます。それに靄の中を移動する奴らの気配も分かります。後は敵の増援がやって来た方角を辿れば、きっと……)
カムイ「さらに接近します。ソーサラー隊の皆さんも援護を頼みます!」ダッ!
新生暗夜軍ソーサラー隊長「わかりました。カムイ様を援護に回ります」タタタタッ
カムイ(靄の内部の気配、それを探り当てれば、きっと……)
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオオッ!!!!」ダダダダダダッ
アクア「させないわ。はああっ!」グッ ブンッ
ザシュンッ
ドササッ
新生暗夜軍ソーサラー隊長「そこです、ギンヌンガガプ!」シュオンッ!
ドドオオンッ
新生暗夜軍ソーサラーA「よし、このまま押し込んでしまえば……ん?」
ノスフェラトゥ「グオオオオッ!」ドドドドドドッ
新生暗夜軍ソーサラーA「なっ、側面から!? しまっ――」
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオッ!」ブンッ
ドゴンッ
新生暗夜軍ソーサラーA「ぎゃああああっ‼‼‼」ドササッ
新生暗夜軍ソーサラーB「側面の敵に対処しろ。このままだと押し潰される!」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「全火力を側面より接近する敵に集中します。残っているゴーレムの攻撃にも気を配ってください」
シュオンッ ドドドドドッ
ドゴオオンッ!
カムイ(ソーサラー隊の皆さんがどうにか持ち堪えてくれている間に、村への手がかりを見つけないと……)
ノスフェラトゥたち「グオオオオオオオッ!」ドドドドドッ
カムイ「敵の増援……」
カムイ(この敵戦列、一直線にこちらへ向かっている。真正面から向かってきたと言う事は、この先に村に続く門があるかもしれません……)
新生暗夜軍ソーサラーB「新たな敵部隊、正面からこちらにやってきます!」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「このままでは押し込まれるかもしれません。どうします、カムイ様」
カムイ「このまま靄へと突入します。今現れた敵の増援は真正面にこちらへと向かってきていました。おそらく、村を出て真っ直ぐにこちらに向かってきたのだと思います。なら、このまま直進することで……」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「靄の先にある村に辿り着けると言う事ですか」
カムイ「はい、残念ながら確実に辿り着けるという保証はありませんが……」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「いいえ、問題ありません、カムイ様の判断に従いましょう。各自、前方に現れた新たな敵へ攻撃を集中してください」
新生暗夜軍ソーサラーC「わかりました」シュオン バシュンッ!
ドゴゴンッ ドゴゴゴゴンッ!
カムイ「敵の隊列を切り開きます。私に続いてください!」タタタタタタッ!
新生暗夜軍パラディンA「マークス様、カムイ様の部隊が靄の中へ突入するようです」
マークス「よし、われわれもカムイに続く! いくぞっ!」
新生暗夜軍の兵士たち『おおおおおおーーー!‼‼』
ドドドドドドドッ
カムイ「よかった、マークス兄さんたちも追いついてくれそうです」
アクア「カムイ、黒靄の奥には防壁が隠れているわ。弓の攻撃に注意しながら進みましょう」
カムイ「はい」
カムイ(ですが、この距離まで来たというのに敵の矢が飛んでくる気配がありません。敵の人員が多くないことは聞いていますが、明らかに攻撃の勢いが落ちている。まるで、誘導されているのかのようです)
カムイ「いえ、そう考えるべきなのでしょうね」
カムイ(ですが、この靄と防壁を突破して村に入り込めれば、この膠着状態を破ることが出来るはず)
ノスフェラトゥ「グオオオオオッ!‼‼‼」
アクア「はっ!」ザシュンッ
カムイ「やああっ!」ドスリッ ザシュンッ
ブシャアア―― ドサリッ
アクア「カムイ、靄の中に入るわ」
カムイ「はい。アクアさん、失礼しますね」ガシッ
アクア「か、カムイ?」
カムイ「離れないようにしてください。私が先導しますから」
アクア「わ、わかったわ。……お願いね」ギュッ
カムイ「はい、任せてください」
タタタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「マークス様、カムイ様の部隊が靄へと入っていきます」
ニュクス「敵もそれに対処しようとするはずだから、仕掛けるなら今ね」
ベルカ「……そうね、仕掛けましょう」チャキッ バサバサバサッ!
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「よし、ベルカの後に続け!」バサバサバサッ
ベルカ(この先には弓砲台があったはず、靄まであと少し……)
ベルカ「弓砲台の射程に入るわ。それ以外の攻撃もあるはずだから、各自注意して…」
新生暗夜軍ドラゴンマスター隊『わかりました』
バサバサッ
バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターC「……攻撃が来ない?」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「引き付けてから攻撃するつもりなのか……」
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「わかりません。もしかしたらマークス様達の進軍を抑えるために、兵を割いたのかもしれませんし……」
ベルカ「状況はどうあっても変わらない。このまま靄を抜けて弓砲台近辺の防壁上部を制圧する」
バサササッ!
ニュクス「……おそらく待ち伏せているでしょうね」
ベルカ「ええ」
ベルカ(靄の中に入り込んだ瞬間に攻撃を仕掛けてくる可能性もある。それを避けられるかどうかはわからないけど……)
ベルカ「やるしかないわ…」
ニュクス「そうね。こっちは魔力の気配を探るわ」
ベルカ「ええ。靄に入るわ…」
ボスンッ!
ボスンボスンッ!
ベルカ(思った以上に視界が悪い……。だけど、それほどの距離じゃないはず……)
グオオオオオオッ……
ベルカ「このうめき声……」
ニュクス「ゴーレムがいるわね……。それにこのうめき声、攻撃態勢に入って――」
バシュッ!
ベルカ「ニュクス、掴まって!」グッ
ニュクス「!」ギュッ
ヒュンッ! ドゴンッ!
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ……」ドサンッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「ちっ、一人やられた!」
ニュクス「向こうからこっちが丸見えっていうのは、冗談でも何でもないみたいね」
ベルカ「このまま突破する」バササッ
新生暗夜軍ドラゴンマスター隊『はっ!』バサバサッ
ニュクス「それにしてもこの靄、村を覆うように広がっているわね。少しでも入り込んだら視界を遮られてしまうようだから気を付けて」
ベルカ「ええ、注意するわ」
ボスンッ ボスンッ
ベルカ(靄を出たわ。敵は――)
ゴーレム「グオオオオオッ!」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「防壁上部にゴーレム多数! 弓兵の姿はありません!」
新生暗夜軍ドラゴンマスターC「ちっ、思ったより高度が取れねえ。ちょっと高く上がりすぎると靄の中に逆戻りしちまう」
ベルカ「各自、攻撃開始」バサバサッ
ゴーレム「グオオオオオオッ」ドスンッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「はああああああっ!!!」グッ ブンッ!‼‼
ドスリッ!
ゴーレム「グオオオオオオオォォォ……」グニャリ……ドタンッ……
カミラ「ふぅ、どうにか防壁上部に辿り着けたわね。こっちの被害は?」
レヴナントナイトA「靄を抜ける際に数名がやられましたが、多くは健在です」
カミラ「そう、良かった。この様子なら、他もうまく入り込めたと思うわ。この地点を維持して、後続の援護に入りましょう」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はい。しかし、本当にこちらからはすべてが丸見えなのですね」
カミラ「ええ、こんなにはっきりと見えるなんてね。うまく、同時に仕掛けられたからよかったけど、バラバラに攻めていたら各個撃破されていたでしょうね」
カミラ(そう、それくらいこの仕掛けは有効なもののはず。なのに、これは……)
カミラ「……」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「どうかされましたか?」
カミラ「ここはこの村の防衛の要よ。その防衛をゴーレムにだけ任せているのは変でしょう?」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「敵の人員が足りないと言う事でしょう。現在、白夜平原へ続く街道が脅かされているという状況で、そちらに兵力を割いた結果かと……。ここ周辺にいた兵の多くを門の防衛に回したのかもしれません」
カミラ「……だとしても、ここは重要な拠点よ。それをわからないマクベスではないはず……」
カミラ(それに、ここにあるはずの魔導砲台が無くなっている。移動させたっていう事は、防壁を元から放棄するつもりだったということ?)
カミラ「色々と不思議な点はあるけれど、まず村の内部へ降りましょう。みんなと合流するわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はっ!」バサバサッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ
ザシュシュシュ!‼‼
ドサリッ
レオン「よし、ここだな。エリーゼ、門の周辺にいる敵に対処してくれ。僕は内部に入り込んで、周辺を確保に向かう」
エリーゼ「わかったよ、レオンおにいちゃん。誰も通さないんだから!」チャキッ
サクラ「レオンさん、内部からノスフェラトゥが向かって来ます!」
レオン「大丈夫だ、数は少ない。一気に突破して、門の閉門を阻止するよ。ダークナイト隊、準備はいいか?」
新生暗夜軍ダークナイト隊長「はい、レオン様」
レオン「よし、殲滅しろ!」スッ
新生暗夜軍ダークナイト隊『オオオオオーーーー!』ドドドドドッ
キィンッ! ズシャッ
ガキィンッ! ギュアアアッ!
レオン(よし、どうにか閉門を阻止することはできたな。これで門を閉じられる心配はない。敵に取り返されないようにしつつ、後続を援護しないと……)
新生暗夜軍ダークナイト隊長「レオン様、門周辺の掃討、完了しました」
レオン「わかった。それで状況は?」
新生暗夜軍ダークナイト隊長「その、不思議なことに兵士が一人もいないのです。いるのはノスフェラトゥばかりでして、それ以外は何も……」
レオン「……」
新生暗夜軍ダークナイト隊長「いかがしますか?」
レオン「どうにか内部に入ることが出来た以上、ここを捨てる事は出来ないよ。まずは他の部隊と合流しつつ、この地点を維持する」
新生暗夜軍ダークナイト隊長「はっ」タタタタッ
レオン「ここ、突破させるためにあえて手薄にしていたと見るべきか……」
レオン(この状況、明らかにこっちを誘い込んでいる形だ。ここを防衛するだけなら、靄の壁を突破させないことが重要になる。だけど、この状況を見る限り突破されることを考えていた。いや、そもそも突破させるつもりだったのかもしれない)
レオン「防壁とこの視界を遮る靄……」
レオン(この二つを捨てるほどの何かがマクベスにはあるということか……)
タタタタタタッ
レオン「……ん?」
サクラ「レオンさん、門周辺の敵は倒し終わりました」
エリーゼ「それとね、後続の部隊が向かってる。もう少しで合流できるって」
レオン「わかった。姉さんたちも突破出来ただろうから、まずは合流しないと」
エリーゼ「うん、わかったよ。それにしても、なんだか不思議だね。こっちからは全部丸見えなんだもん」
レオン「ああ、敵の防御が厚かったら、こう簡単にはいかなかった」
エリーゼ「うん、何とかなって良かったー」
サクラ「はい。だけど、また外に押し出されてしまわないようにしないといけませんね」
レオン「ああ」
レオン(とにかく、村への道を築けた。今心配するべきは、後続が村の中に入れなくなるという事態だけだ)
レオン「それさえ、どうにかできれば、僕らの勝ちだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地内部・南方防壁西側・上部見張り台』―
旧暗夜軍ボウナイトA「敵が障壁を突破しています」
旧暗夜軍アドベンチャラー「おお、そうか。あれは例の王女様だな。あいつら、手を繋いでこっちに向かってやがる。まったく、健気だねぇ」
旧暗夜軍ボウナイトB「攻撃しますか?」
旧暗夜軍アドベンチャラー「いいや、ここで攻撃する必要は無いってよ。靄の視界不良があるとはいえ攻撃してもあいつらの進軍は止まらないからな。となると、ここはあと少しで落ちる。ここにいてもしょうがねえ。弓砲台の移動処理は終えたんだ。あとは少ないゴーレムが時間稼ぎをしてくれるさ」
ゴーレム「グオオオオオッ」ガチャンッ ドゴンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「ほぉ、敵が見えた瞬間に攻撃とは頼りがいがあるね。それじゃ、こっちは合流地点に向かうか」
旧暗夜軍ボウナイトA「わかりました。しかし、こんな作戦良く思いつくものですね」
旧暗夜軍アドベンチャラー「まったくな。その結果、もう防壁上部にはいられなくなるけどよ」
旧暗夜軍ボウナイトB「他の者たちは中央広場へ向かいました。残っているのは我々だけです」
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、それじゃ撤退するぞ」
旧暗夜軍ボウナイトA「はっ!」タタタタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「さてと、他の場所も残ってるのはゴーレムだけ、これで準備は整ったってところか」チャキッ
ググッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「合図を上げるぜ、マクベス様!」
パシュッ
ヒュイイイイイインッ!‼‼‼
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・南方防壁西側前』―
ヒュイイイイイインッ!‼‼
カムイ「この音……」
アクア「前方からよ。敵が合図を送ったのかもしれないわ」
カムイ「ええ、それにしても矢は飛んできませんが、ゴーレムの攻撃が激しいですね。出来れば、この先に門があればいいのですが……」
カムイ(頼みますよ……)
ドドドドドドドッ
マークス「靄を抜けたか……」
新生暗夜軍パラディンA「前方、ノスフェラトゥ多数。その付近に内部へと通じる門があります!」
マークス「よし、周りの雑魚に構うな! まずは門を制圧する。全軍、掛かれ!」スッ
新生暗夜軍兵士たち『オーーーッ!』ドドドドドドドドッ
カムイ「はぁはぁ、どうにか辿り着けましたね、アクアさん」
アクア「ええ、何とかね。ふふっ、ありがとう先導してくれて」
カムイ「はい」
マークス「カムイ、よくやってくれた。どうにか、門を制圧できそうだ」
カムイ「マークス兄さん。いいえ、私たちの部隊だけではここまでたどり着けませんでした。マークス兄さんが率いる騎馬隊のおかげですよ」
マークス「ふっ、そうか。よし、後続も追いついている。このまま行けば……む?」
カムイ「マークス兄さん?」
マークス「まだ靄の中に入っていたようでな、視界が突然悪くなってしまった」
アクア「境界が分かり辛いから仕方ないわ。実際、こっちからだとどこから先が靄なのかわからないもの。ともかく、まずは靄から離れましょう」タタタタタッ
マークス「ああ。もっともここを抜けた以上、これが障害になることはない。あとは村を制圧するだけだ」タタタタタッ
カムイ「はい、マークス兄さん」タタタタタッ
ズズズズズズッ
カムイ「ん?」
アクア「どうしたの?」
カムイ「……」
カムイ(おかしい、たしか靄の気配はもう少し後ろにあったはず……。でも、今気配があるのは私たちがいた場所を越えています)
ガシャンッ ガシャンッ
新生暗夜軍ジェネラルA「くそっ、この靄の境目はどこなんだ。ああ、視界が曇ったり晴れたり鬱陶しい!」
新生暗夜軍ジェネラル隊長「ほら、早く来い。遅れているとノスフェラトゥに追いつかれるぞ」
新生暗夜軍ジェネラルA「すみません隊長、本当に視界が見え辛くて。くそっ、この靄、まるで付いて来てるみたいだ。いつになっても視界が晴れない」
カムイ「靄が付いて来る?」
カムイ(靄の気配は……)
ググッ グググググッ
カムイ「動いている……」
アクア「え?」
マークス「どうした、カムイ?」
カムイ「この靄、だんだんと村に近づいているようなんです」
マークス「こちらの侵攻に合わせているという事か? しかし、そのような小細工など――」
新生暗夜軍ジェネラルA「ぐっ、うああああ!」ガシャンッ
カムイ「!?」
マークス「な、なんだ!?」
新生暗夜軍ジェネラルA「た、たいちょう、くっくるしい……」ガシャンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「お、おい、何倒れてるんだ。そんなところで倒れたら、やられちまうぞ!? おい!」ガシャンガッシャンッ
ボスンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「な、なんだ? どうして視界が……さっきまで靄はここまで来てなかったはず――」
ドクンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「がっ……、うっ、な、なんだごれ……、が、がらだが……」
ビチャッ
新生暗夜軍ジェネラルB「ぐ、ぐる、ぐるじい……。だ、だれが……」ガシャンッ ガシャンッ
ドサリッ ポタタタタッ
新生暗夜軍兵士「ひっ、な、なんだこれは!?」
グアアアア――
ウアアアアア――
マークス「な、何が起きている!?」
アクア「わからない。でも、敵が何かをしてきたことは間違いないわ。あの靄、さっきのように視界を遮るだけじゃ済まないみたいよ」
ググググッ
カムイ「! 靄がこちらに迫ってきます」
マークス「くっ、この靄に飲まれたらどうなるかわからん。全員、村の中に退避せよ!」
新生暗夜軍兵士「村に急げ、早く!」タタタタッ
カムイ「くっ」タタタタタッ
カムイ(ここは守るべき村でも拠点でもなかった。だからこそ、靄の中を進む私たちに対して、敵は攻勢を仕掛けなかった。そう、ここに私たちが入り込むことこそが狙いだった。これが、いいえ、この村そのものが――)
(マクベスさんが仕掛けた罠なのですね)
今日はここまで
後続を断つマクベスの罠
風花雪月、衣装が増えてうれしい。でも、教員組は衣装チェンジが出来なくて悲しい。
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
今回の戦闘に参加する仲間を決めたいと思います。
・チーム『城塞組男+α』
(ギュンター・ジョーカー・サイラス)
・チーム『城塞組メイド+α』
(フェリシア・フローラ・ブノワ)
・チーム『マークス隊+α』
(ラズワルド・ピエリ・フランネル)
・チーム『エリーゼ隊+α』
(ハロルド・エルフィ・モズメ)
・チーム『サクラ女隊+α』
(カザハナ・ツバキ・アシュラ)
・チーム『レオン隊+α』
(オーディン・ゼロ・スズカゼ)
・チーム(カミラ隊+αα』
(ルーナ・シャーロッテ・リンカ)
◆◇◆◇◆◇
カムイ部隊「カムイ・アクア・マークス」と行動を共にするチーム>>32
カミラ部隊「カミラ・ベルカ・ニュクス」と行動を共にするチーム>>33
レオン部隊「レオン・サクラ・エリーゼ」と行動を共にするチーム>>34
このような形で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
チーム『城塞組メイド+α』
サクラ女隊+α
チーム(カミラ隊+αα』
(ルーナ・シャーロッテ・リンカ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・南西門内部』―
タタタタタタタッ
カムイ「はぁ、はぁ……。大丈夫、靄は追って来ないようです。防壁内側に達したところで動きが止まりました」
マークス「そうか、他の者たちは大丈夫か?」
アクア「私は平気よ。だけど、靄の中にいた部隊はやられてしまったみたい」
カムイ「それに靄の所為で後続が村に辿りつくには多くの時間を要するはずです。いずれ、靄が晴れるかもしれませんが、それを敵が待ってくれるとは思えません」
マークス「どうにか内部に入り込めた戦力だけでどうにかしなくてはならないか……」
カムイ「私たち以外に突入出来た部隊はいるのでしょうか?」
マークス「レオン、そしてカミラの部隊が突入に成功しているようだ。まずは、二人の部隊と合流を目指すべきだろう」
カムイ「よかった。カミラさんとレオンさんの部隊が突入に成功しているのですね。これなら、きっと――」
???『大丈夫、そう言いたいのでしょう。カムイ王女』
カムイ「!」チャキッ
マークス「マクベスか!」チャキッ
???『ええ、そうです。声だけで察するとは驚きましたよ』スゥ
カムイ「……マクベスさん」
マクベス『くっくっくっ。お久しぶりですね、裏切り者の皆さん』
マークス「マクベス……」
マクベス『よもや、私のことを覚えているとは思いませんでした。もっとも、ガロン王様に泥を塗る不貞な輩に覚えられていたくありませんでしたがね。特にあなたのような存在には……』
マークス「何とでも言うがいい、私は私の信じる道を進む。それがお前達に刃を向ける道だとしてもな」
マクベス『ふん、言葉を濁す必要は無いと言う事ですか。結構、これで気兼ねなくあなた方、暗夜の汚点たる王族を皆殺しに出来るというもの。ふっ、皆殺しにしてしまえば、きっとガロン王様も喜ばれるはず。もちろん、あなたも例外ではありませんよ、カムイ王女』
カムイ「残念ですが、あなたに殺されるつもりはありません。本当の敵を打つまで、私は倒れるわけにはいかないのです」
マクベス『ふんっ。ご安心ください。あなたにとっての本当の敵などに興味はありません。私にとってはあなた方こそが倒すべき敵、ガロン王様の覇道を拒む存在。ガロン王様の紡ぐ覇道を支えることこそが私の使命である以上、あなた方を生かしておくわけにはいきません』
カムイ「ガロン王……」
カムイ(やはり、マクベスさんはガロン王……いいえ、奴の命令に従って戦っているということなのですか……)
カムイ「アクアさん、マクベスさんから奴の気配を感じますか?」
アクア「……いいえ。幻影からは何もわからないわ。だけど、村の中心から奴に似た気配がある。おそらく、何かあるはずよ」
カムイ(その気配の源がマクベスさんに何かしらの影響を与えているのかもしれません。でも、こうして話をすることができるのなら、今が最後のチャンスのはず……)
マクベス『さて、挨拶はここまででいいでしょう。これから殺すあなた方の慌てる姿を見れただけで満足ですので。ふふっ、ふははははははははっ』
カムイ「マクベスさん」
マクベス『む? なんですかな、カムイ王女。もしや、この期に及んで命乞いでもしてくれるのでしょうか。いいでしょう、見せてください。あなたの無様な姿を見れば、私の考えが変わるやも――』
カムイ「あなたは、ガロン王の正体を知っているのですか?」
マクベス『ガロン王様の正体……ですか?』
カムイ「はい……」
マクベス『ふん、この期に及んでつまらないことを聞いてくるものだ。ガロン王様は暗夜の王であり、この世界を統べる御方です。そして、私にとって唯一の主君、それ以外の答えはありません』
カムイ(そう、マクベスさんはガロン王を信じている。マクベスさんは長くガロン王に仕えてきたのですから、この言葉に嘘偽りはないでしょう。だからこそ、私は伝えなくてはいけないんです。それが奴に利用されているという事を)
カムイ「それがマクベスさんにとってのガロン王なのでしょう。でも、今いるガロン王はあなたが信じているガロン王ではないんです。ガロン王の皮を被った紛い物でしかありません」
マクベス『……紛い物?』
カムイ「ガロン王はもう死んでいます。今、あなたが従っているガロン王は別人なんです。奴はただ人を殺す為だけにガロン王に成りすまし、戦いを行うための道具にしている。そこにはガロン王が掲げ、あなたが信じているような覇道もなにもありません」
マクベス『……』
カムイ「もう、マクベスさんが信じているガロン王はいないんです。だから――」
マクベス『こうして争う必要は無い、そう言いたいのですかな?』
カムイ「……そうです」
マクベス『……争う必要はないですか。ふっ、まったく面白いことを言う。まさか、そのようなつまらないことを口にしてくるとは思いませんでした』
カムイ「マクベスさん、信じられない話だとは思います! でも、今あなたが従っているガロン王は――」
マクベス『カムイ王女、どうやら私の言葉をちゃんと理解出来ていないようですね。言ったはずです、ガロン王様は私にとって唯一の主君だと、それはどのような状況であっても変わらない。たとえ――』
マクベス『あなたの言ったことが真実であったとしても、私が戦う意味は変わることはありません』
カムイ「……え?」
マクベス『……』
カムイ「マクベスさん。まさか、あなたは……」
マークス「カムイ……」スッ
カムイ「マークス兄さん」
マークス「マクベス。それが、お前の正義と言う事か?」
マークス「……どうなのだ、マクベス?」
マクベス『私は正義のためなどという信念で戦ってなどいません。私は主君、ガロン王様のために戦うのです。それ以外のことなど考える必要もない。すべてはガロン王様のため、ガロン王様が作り上げる世界のため、それ以外のことに費やす時間も力もありはしませんよ』
マークス「そうか……。それ故に退くつもりはないのだろう?」
マクベス『ええ、あなた方をここへ招き入れたのは戦うためですので。あなた方をこの手で殺し、再びガロン王様が求めた世界にしていくため。だからこそ、あなたと相容れることはないでしょう。あなたの求める世界の形と、私の求める世界の形は全く別物。ガロン王様が築いた暗夜王国とそこから広がる世界こそが、私が生きるすべてなのです。故に戦う以外の道はないのですよ、カムイ王女』
カムイ「マクベスさん……」
マクベス『……』
カムイ(この意思は私の言葉で揺らぎはしないでしょう。それほどにマクベスさんの言葉には明確な信念と、そして私が求めてやまない和解に対する拒絶が見える。みんなが思っていたように、マクベスさんの意思は変わらない。とても真っ直ぐなこの意思を折る術を私は知らない。なら、それに対して私がするべきことは、一つだけです)チャキッ
カムイ「私には倒さなくてはならない敵がいます。それを打つためにもあなたをここで打ちます。あなたのその信念に全力で挑ませてもらいますよ、マクベスさん」
マクベス『ふっ、いいでしょう。ですが、ここであなた方を打つのは私のほうです。精々悪あがきに徹することですな』
シュオンッ!
アクア「カムイ、マクベスは……」
カムイ「私は伝えるべきことは伝えました。正直、結果は皆さんの予想した通りになってしまいましたが……」
アクア「……」
カムイ「でも、なんだか不思議なくらいに安心している自分がいるんです」
アクア「安心?」
カムイ「ええ、憎い敵だからとかではなくて、その何でしょうか。すみません、うまく言葉が見つからないんですけど」
アクア「そう、私にはわからないけれど、多分それはあなたにとってとてもいい事なのかもしれないわ。あなたが安心できた意味が分かるといいわね」
カムイ「はい」
マークス「しかし、マクベスがあれほどの忠誠心を持っているとは。そして、ここにいるのはそのマクベスの下に集った兵士だ。先鋭と見て間違いないだろう」
カムイ「はい。でも、こちらも先鋭揃いですから。そう簡単にはやられませんよ」
マークス「ああ、む?」
タタタタタッ
フェリシア「あ、カムイ様! やっと見つけました、無事でよかっ――はわわわっ!」ビターンッ
フローラ「ちょっと、フェリシア!?」
フェリシア「ううっ、転んじゃいましたぁ……」
アクア「こちらも、先鋭揃い……ね」
マークス「ふむ……」
カムイ「ああ、フェリシアさん大丈夫ですか?」スッ
フェリシア「あ、カムイ様。ぐすっ、だ、大丈夫です。ご無事でよかったです」
フローラ「カムイ様、お怪我は?」
カムイ「大丈夫です。フローラさんも無事に内部に入ってこられたようでよかったです」
フローラ「今は重装部隊の一員ですので。それにブノワがサポートしてくれましたから」
ブノワ「気にしなくていい…。カムイ様達と合流できてよかった…」
カムイ「はい、ブノワさんたちが無事で何よりです。しかし、こちらから入り込めた人たちだけで中央に攻め入るのは危険ですね」
マークス「ああ、このまま敵本陣を攻めるのは厳しい。なにより敵の罠で後続が到達出来ない以上、まずは他の部隊と合流を図り、戦力の立て直すべきだろう」
カムイ「そうですね。まずは防壁付近から侵攻したカミラ姉さんの部隊と合流を目指しましょう。おそらく、レオンさんの部隊もカミラ姉さんとの合流するために動くと思いますから」
マークス「おそらくな。それに、敵も狙うならまずは飛竜部隊からだろう。今の状況では、カミラ達もうまく飛び回れるとは思えん。追い詰められているかもしれん」
カムイ「はい、急ぎましょう」
マークス「よし、まずはカミラたちとの合流を目指す。全員、敵の奇襲に警戒しつつ、進軍を開始せよ!」
カムイ(カミラ姉さん、他のみなさんも無事でいてください)タタタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『暗夜軍前戦陣地・南中央防壁内部』―
ヒュンッ! カッ
グオオオオオンッ! グオオオオンッ!
ドススンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、一騎落としたぜ。各員、攻撃の手を休めるなよ。ドラゴン共を絶対に移動させるな」
旧暗夜軍ボウナイトA「はっ!」
旧暗夜軍アドベンチャラー(よし、魔術部隊の到着まで抑えて置ければ、ここは勝ちだ)
パカラパカラッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「ん?」
旧暗夜軍ボウナイトB「敵に動きがありました。現在、東西、それぞれの門より入り込んだ敵部隊がこちらに向けて進軍していると」
旧暗夜軍アドベンチャラー「そうか。まぁ、この状況なら満足に動けないだろうドラゴンをこっちが狙うってことくらいは読めるか……。まぁいい、東の方はブレイブとランサーの部隊が相手してくれる。西の敵はこの先の十字路にいるゴーレムとノスフェラトゥで時間稼ぎ出来るはずだ。こっちは魔術部隊の到着まで、現状況を維持するぞ」
旧暗夜軍兵士たち『おーっ!』
旧暗夜軍アドベンチャラー「さぁ、このまま詰めさせてもらうぜ」チャキッ パシュンッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒュンッ キィンッ
カキィンッ!
カミラ「はぁ、うまく釘付けにされちゃったわね。とりあえず、ドラゴンたちは家屋の影に隠れさせておきなさい。ここで頭数を減らすわけにはいかないわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はっ」
ベルカ「カミラ様、これからどうする?」
カミラ「まだ上昇限界がどこまでかわからないし、大勢で下手には動けないわ。戦線は持ち堪えられそう?」
ニュクス「そうね、白兵部隊をそれなりに輸送できたから、今はどうにか持っているわ。でも、このままじゃ時間の問題よ。明らかに敵の方が多いもの」
カミラ「そう、難しいところね。でも今はまだ持っているのなら、まだ反撃の機会はあるわ。それに負傷者の手当ても大丈夫そうだから」チラッ
新生暗夜軍兵士「いてえ、いてえよぉ」
カザハナ「ああもう、負傷したのは早く物陰に来なさい。こっちはぴょんぴょん行ったり来たり出来るわけじゃないんだから! 大丈夫、この程度じゃ死なないから落ち着きなさい」
ツバキ「落ち着くのはカザハナもだよ。落ち着かないと、治療もうまく行えなくなるからねー」
カザハナ「わ、分かってる! ほら、さっさと負傷箇所見せて、早くしないといけないんだから! ちょっと、ツバキも早く――」
ニュクス「確かにどうにかなっているわね。少しうるさいけど」
カミラ「あら、にぎやかでいいと思うわ。士気が落ちない様に鼓舞もしてくれるし、十分すぎる働きよ。さすがはサクラ王女の臣下ね」
ベルカ「……でも、騒がしいわ」
アシュラ「そう言うなって、現にあの二人がいなかったら負傷者の誘導とかはうまく行かなかったからな。あの二人は十分仕事を熟しているさ」
カミラ「アシュラの言う通りよ。ところで、敵の陣だけど突破口はあるかしら?」
アシュラ「無いわけじゃねえが、結局敵の矢を掻い潜って近づかないとならねえ。まぁ、もたもたしてると、敵が切り込んでくるだろうがな」
カミラ「そう、なら動きましょう。レオンもカムイも私たちとの合流を目指すはずだから、どちらかと合流するまでは持ち堪えないといけないけど、この状況じゃ到着まで持たないもの。ツバキ、カザハナ、負傷者の治療は一段落したわね」チャキッ
ツバキ「うん、どうにかなったよー」
カザハナ「な、なんとかね。で、どうするの? レオン王子かカムイ様の部隊が来るのを待つの?」
カミラ「もう隠れるのはおしまい。一気に距離を詰めて敵の弓兵部隊を瓦解させるわ。ツバキとカザハナはベルカたちと待機して、ニュクスとアシュラは私と一緒にちょうだい」
アシュラ「わかったぜ」
ニュクス「いいけど、動くってどういうつもり?」
カミラ「簡単なことよ。向こうも的が無くて退屈だろうから――」
「無理にでも狙いたくなるように、こっちから動いてあげるのよ」
今日はここまで
ここのマクベスはガロン王のために戦う、そんな軍師である。
そして、今日はカミラ王女の誕生日です。お誕生日おめでとう。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『南中央防壁内部』―
カミラ「こんな感じの作戦だけど、どうかしら?」
ニュクス「率直に言ってかなり危険な作戦ね」
カミラ「ええ危険よ、不満があるなら降りてくれても構わないわ」
ニュクス「早とちりしないで、危険だと言っただけよ」
カミラ「ふふっ、それじゃニュクスは乗ってちょうだい」
ニュクス「わかったわ」
カミラ「アシュラ、私たちができる限り敵を引き付けるから、あなたはその隙を突いてちょうだい」
アシュラ「ああ、部隊指揮は初めてだが、まぁ、上手くやってみるさ」タタタタッ
カザハナ「カミラ王女、あたしたちはどうすればいいの?」
カミラ「アシュラの部隊が敵陣に入り込むと同時に攻めてちょうだい。敵全体に圧力を掛けるように攻撃を仕掛けてくれればいいわ」
ツバキ「全体? この状況ならアシュラの部隊みたいに一点を狙った方がいいんじゃないかな?」
カミラ「そうしたいけど、敵の援軍がレオンやカムイの到達より早かったら、突出した部隊を袋叩きにされかねない。それに飽く迄も私達がするべきことは援軍到着までの時間稼ぎよ」
ツバキ「わかりました。こっちは任せてください、カミラ王女」
カミラ「ええ、お願いね。ベルカは動ける竜騎兵を指揮して、二人の援護に努めなさい」
ベルカ「わかったわ、カミラ様」
カミラ「それじゃ、作戦開始よ」
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、敵はほとんど動きがなくなったな。まだまだ追いこんで本当に身動きが取れないようにしてやる。弓砲台はいつでも打てるように準備をしておけ」
旧暗夜軍兵士「はい」
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、前に出るぞ。進め!」
旧暗夜軍ボウナイトA「はっ。各員前進!」
ザッザッザッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(どうなるかと思ったが、防壁を越えて中に入り込んだ敵の総数はこっちと同等、少なからずは落とした以上、戦力的にこっちが有利だ。へっ、このまま押し込んでやる)
旧暗夜軍アドベンチャラー「へへっ、マクベス様にいい報告が出来そうだぜ」
バサバサッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「?」
旧暗夜軍ボウナイトB「敵のドラゴンが一騎上がりました。まっすぐ、こちらに向かってきます!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「堪え性がないのが出てきたってところか? たった一匹で何ができる。準備は出来てるか?」
旧暗夜軍兵士「はい、間もなく砲台の射程に入ります」
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、打て!」
バシュンッ!
ニュクス「カミラ王女、矢が来るわ」
カミラ「そう、それじゃ激しくするから捕まってなさい」グッ
ニュクス「え、ちょ、ちょっと!?」ガシッ
グオオオオンッ! バサバササッ
ヒュンッ! フォン! ドゴンドゴンッ!
カミラ「回避完了ね」
ニュクス「はぁはぁ……。もう少し早く言って、落ちかけたわ」
カミラ「ふふっ、ごめんなさい。でも、ちゃんと避けられたでしょう?」
ニュクス「それはそうだけど、もう少し抑えてちょうだい。まだ、ベルカの方が優しかったわ」
カミラ「あらあら、ベルカのこと気に入っているのね。主としてとっても嬉しい情報ね」
ニュクス「それより、今の攻撃は弓砲台の物みたい。すぐ飛んでこないから設置されているのは一機だけみたいね」
カミラ「ええ、それじゃ距離を詰めるわよ」グッ
バサササッ!
旧暗夜軍ボウナイトB「敵、さらに加速します」
旧暗夜軍アドベンチャラー「けっ、どんな命知らずだよ。根性あるじゃねえか」
旧暗夜軍ボウナイトB「む、あの特徴的な外装、カミラ王女か?」
旧暗夜軍アドベンチャラー「ほぅ、王族が突出してきたか、縮こまって下がった士気を高めるためかもしれないが、これでこっちが王女を落とせれば総崩れってもんだ。再装填が済み次第、すぐに攻撃しな」
旧暗夜軍兵士「はい。準備完了しました。打ちます!」ガシャコンッ
バシュンッ!!!
ヒュンッ! ドゴンッ!
カミラ「砲台の発射間隔がこれなら行けそうね。ニュクス、準備はいい?」
ニュクス「大丈夫よ、カミラ王女も聞く準備は出来ているの?」
カミラ「心配しないで。あなたの声はちゃんと耳に届いているわ。あなたに命を預けているのだから、当然でしょう?」
ニュクス「そ、そう……」
カミラ「どうかした?」
ニュクス「気にしないで。おそらく三射目が来るわ」
カミラ「そう、それじゃ……」
バシュンッ! ヒュンッ!
カミラ「行くわよ!」ググッ!
バサバサバサッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「どういうことだ? 王女の奴、いきなり高度を上げ始めやがったぞ」
旧暗夜軍アドベンチャラー(まさか、この期に及んで逃げ出そうとしてるのか? 王族だからって結局は命が惜しい、そういうことかよ)
旧暗夜軍アドベンチャラー「へっ、一騎だけで出てきたから何かと思ったが、結局尻尾巻いて逃げるか。へっ、そう簡単にここを抜けられると思っているのか? マクベス様の罠は完璧に作動してんだ。王女だろうがなんだろうが、靄に入った瞬間に死ぬだけだぜ」
バサバサッ
カミラ「ニュクス、もう靄に達するかしら?」
ニュクス「……そこよ!!」
カミラ「!」グッ
グルンッ
バサバサッ
ニュクス「もう少し余裕はあるけど、この高さまでね」
カミラ「そう、だけどこれだけの高さがあれば十分、行くわよ」グッ!
バサバサッ!
旧暗夜軍ボウナイトA「敵、急降下を開始! こちらに向かって来ます!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「なっ、迎撃!」
新生暗夜軍兵士「だ、だめです。まだ装填が――」
カミラ「残念ね。それじゃ、死んでちょうだい」グッ
ブンッ
ガシャンッ!!!
旧暗夜軍兵士「ぎゃああああっ!!!」ドサッ
旧暗夜軍兵士「砲台が……。くそ、逃がすか!」チャキッ
カミラ「ニュクス!」
ニュクス「ライナロック!」
ドコォ゙ンッ!!!
旧暗夜軍兵士「ぐあああああっ!!!」ドサッ!
カミラ(これで、砲台は無力化できた。あとは派手に動き回るだけよ)
旧暗夜軍アドベンチャラー「てめえ!!」チャキッ パシュッ
サッ
カミラ「残念ね。もっとしっかりと狙わないと、私は落とせないわよ」バサバサッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「その言葉後悔させてやる! 王女を落とせ!」
旧暗夜軍ボウナイトA「はっ!」チャキッ パシュッ!
サッ バサバサッ
旧暗夜軍ボウナイトB「ちっ、ちょこまかと!」
パシュシュッ
ササッ バサバサッ
カミラ「これくらい敵を引き付けられれば上々ね」
ニュクス「ええ、ここ周辺の敵はこっちの動きに気を取られている。みんな私たちしか見ていないわ」
カミラ「ふふっ、それじゃ、もう少し付き合ってもらいましょう。アシュラが動きやすいようにね」ググッ
バサバサバサッ!
旧暗夜軍兵士「なんだ、あの動きは!? 何とか撃ち落とさないと――」
タタタタタタッ
旧暗夜軍兵士「な、なんだ? こっちの路地から足音が――」
新生暗夜軍兵士たち『……』
旧暗夜軍兵士「て、敵!? 早く知らせ――」
ザシュンッ
旧暗夜軍兵士「がっ……」ドサッ
アシュラ「すまねえな。こっちも勝つのに必死なんでよ」
新生暗夜軍兵士「アシュラ様」
アシュラ「このまま、真正面の広場を強襲するぞ。隠れる必要はないぜ、俺たちの存在を見せつけてやれ」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
アシュラ「さぁ、第二段階開始だ」タタタタタタッ
旧暗夜軍ボウナイトA「正面に敵部隊が出現! 前方の広場に向かっています」
旧暗夜軍アドベンチャラー「なんだと!?」
旧暗夜軍アドベンチャラー(くそっ、あの王女に気を取られて敵の別動隊を見落としたっていうのか!?)
旧暗夜軍アドベンチャラー「このままじゃ、広場から突破される。歩兵隊、割り込んできた奴らを抑え込めるか?」
旧暗夜軍ランサーA「はい、お任せください。敵を迎え打つ、全員進め!」タタタタタタッ
旧暗夜軍ランサー部隊『おおおおおおおっ!!!!』ドドドドドドッ
旧暗夜軍ボウナイトA「前進してくる敵を攻撃するぞ、全員弓構え!!!」チャキッ
旧暗夜軍ボウナイト部隊『!』チャキッ ギリリッ
旧暗夜軍ボウナイトA「打てぇ!」スッ
パシュッ パシュシュッ!
アシュラ「敵の攻撃が来るぞ! 身を隠せ!」
グアアアッ
ドサッ
アシュラ「ちっ、流石に少しは貰うか。だが、この程度なら問題ねえ」
旧暗夜軍アドベンチャラー(くっ、矢のほとんどが家屋に当たりやがる。距離を稼ぐための曲射じゃ命中率も期待できねえか)
アシュラ「このまま突っ込むぞ!」
新生暗夜軍兵士たち『はい!』
旧暗夜軍ボウナイトA「敵が広場に到達! どうしますか?」
旧暗夜軍アドベンチャラー「魔術部隊はもう少しで到着するはずだ。お前達は広場で敵を抑えに向かえ、俺達は回り込んで奇襲を掛ける。広場で止められれば、こっちの――」
旧暗夜軍ボウナイトB「た、大変です!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「どうした?」
旧暗夜軍ボウナイトB「敵のドラゴン部隊が動き始めました。数、三十以上!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ベルカ「みんな行けそう?」
新生暗夜軍ドラゴンナイトA「はい、問題ありません。これほどの高さがあれば十分に戦えます」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「一刻も早く、カミラ様の援護に向かいましょう」
ベルカ「ええ、分かってるわ。そういうわけだから、私たちは先に行って弓兵の注意を引くから、その隙を突いて……」
カザハナ「うん、まかせて!」
ベルカ「それじゃ、行くわ」バサバサッ
カザハナ「そういうわけだから、みんな準備はいい?」
新生暗夜軍兵「はい!」
ツバキ「僕らは広場の左から攻撃を掛けるから、カザハナは右側から攻撃してくれると助かるよー」
カザハナ「わかってる。それじゃ、行くよ!!!!」タタタタタタッ
ウオオオオオオオーーーーッ!!!!!
ドドドドドドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ボウナイトB「敵ドラゴン部隊、広場に向かって来ます! このままでは戦線が維持できません!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「周辺の兵を広場に向かってるドラゴンの対処に回せ。突破は何としても阻止するんだ!」
旧暗夜軍ボウナイトB「! さらに後続の歩兵部隊が展開、進軍してきます!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「な、なんだと!?」
旧暗夜軍アドベンチャラー(このままじゃ、押し切られる。側面からの奇襲は中止して、俺たちだけでも右翼の敵を抑え込まねえと。でも、左翼と中央は抑えきれない)
旧暗夜軍アドベンチャラー(敵の攻撃速度に太刀打ちできない。中央に寄せ過ぎた戦力を配分できる余裕もない……)
バサバサッ!
新生暗夜軍ドラゴンナイトB「よし、まずは弓兵を狙え!」
新生暗夜軍ドラゴンナイト隊『おーーーーっ!!!」バサバサバサッ
旧暗夜軍ボウナイトB「敵竜騎兵がこちらに向かってきます!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「くっ……」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(だめだ、間に合わねえ!)
バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンナイトB「喰らえ!!!!」ググッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「!」
ザシュッ
新生暗夜軍ドラゴンナイトB「がっ」ドサッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「へっ? な、何が起きた?」
???「アドベンさん、何をしているのですか。ここを任されているあなたが項垂れていてどうします? マクベス様の御役に立ちたいのでしたら、最後まで指示を出してください」
旧暗夜軍アドベンチャラー「……わかってる。だが、そっちも来るのが遅いぞ、メイド」
旧暗夜軍メイド「ええ、それについては謝罪いたします。それよりも、今はできる限り部隊を退却させたいので援護をお願いします。ここで多くの戦力を失うわけにはいきませんから」タタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「退却って、ここであいつらを潰すんじゃねえのか?」
旧暗夜軍メイド「本来ならばそうしたいところです。あの王族の王女を含めた部隊を潰せれば、マクベス様も喜ばれるはずですから」
旧暗夜軍アドベンチャラー「なら、今こそチャンスだろ。ドラゴン共は魔法に弱いんだからよ。ここで一気に――」
旧暗夜軍メイド「わかっています。ですが、私達が到達するのに時間が掛りすぎました……。ここで待っていても私達に勝機はありません。絶対に……」
旧暗夜軍アドベンチャラー「それはどういう……ん?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「どうやら、敵の援軍が間に合ってしまったようね」
ニュクス「ええ、でもここまで戦線を上げておけてよかったわ。これならまだ持ち堪えられるは……ん? まって、西の方を見て」
カミラ「あらあら、考えていたら来てくれるなんて、運がいいわね」
ニュクス「ええ」
タタタタタタタッ
カムイ「どうにか間に合ったようですね」
マークス「ああ、各員部隊の援護に入れ! 敵にこれ以上好きにさせるな」
新生暗夜軍兵士たち『オオオオオオオオオーーーーーーッ!』
ドドドドドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍アドベンチャラー「ちっ、敵の援軍も到着したってことか」
旧暗夜軍メイド「そういうことです。ですから、ここは放棄します。まだ手はありますし、おそらく外に出ていた彼らも戻ってきている頃でしょうから」
旧暗夜軍アドベンチャラー「今更か。もう少し早く戻ってくればあいつらの到着も遅れたっていうのによ」
旧暗夜軍メイド「仕方ありません。単純な命令にしか従わないのが、あの肉達磨の利点であり欠点でもあります」
旧暗夜軍アドベンチャラー「たしかにな。それで、ブレイブとランサーの部隊はどうなってるんだ」
旧暗夜軍メイド「現在、東門より侵入した敵部隊と交戦しているようです。まだ退却していないようですから、奮闘しているようですね」
旧暗夜軍アドベンチャラー「そうかい。今からそっちの援護に向かう感じか?」
旧暗夜軍メイド「はい、と言っても私が数名を率いて向かいます。アドベンさんは中央で敵の侵攻を喰い止めてください。あそこは私たちにとって最高の攻撃地帯ですから」
旧暗夜軍アドベンチャラー「わかったぜ。よし、大屋敷の手前まで退くぞ」
タタタタタタッ
旧暗夜軍メイド「では、東へ向かいましょう。あの二人の部隊がどうなっているかはわかりませんが、少なくともこっちの様にはなっていないでしょう」タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『東区域』―
キィン カキィンッ
ルーナ「はあっ! やああっ!」
旧暗夜軍ランサー女「はっ、それ!」
シャーロッテ「ルーナ、ちょっと下がりな。おらああっ!」グッ ブンッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー、下がれ」
旧暗夜軍ランサー女「はいよっ」サッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふんっ」キィィンッ ガコンッ!
ズササー ズササーッ
ルーナ「はぁはぁ、思ったよりやるじゃないの。そんな、誰もが持ってるような装備の癖に」
旧暗夜軍ランサー女「戦いの腕は装備で決まるのかもしれないけど、実際は鍛錬の差で決まるもの、そうでしょうブレイブ?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー、軽口は慎め」
旧暗夜軍ランサー女「そこは同意してよ。それで、勝てる?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「愚問だな。この程度ならどうにでもなる。力強いがそれだけの攻撃だ、恐れる理由は無い」
シャーロッテ「……ちっ、むかつくこと言ってくれるじゃないの」
サクラ「シャーロッテさん……」
シャーロッテ「大丈夫。それより、私たちから離れないでよ、サクラ様」
サクラ「は、はい」
ルーナ「……」
シャーロッテ(ちっ、まさかこのタイミングでレオン様たちと逸れる羽目になるなんて、ツいてないわ。緊急事態とは言っても、これはまずいわ。それにもっとツいてないのはこの二人ね……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー&ランサー女『……』チャキッ
シャーロッテ(息が無駄にぴったりだし、武器の捌き方も他の奴らと一味違う。正直に言ってこの二人――)
(めちゃくちゃ強いんだけど……)
今日はここまで
更新があまりできなくて申し訳ないです。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『東区域・密集家屋地帯路地』―
旧暗夜軍ランサー女「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」チャキッ
シャ―ロッテ「……」
シャーロッテ(こいつら思った以上に強い。息もぴったりで隙もない。こういう相手は乱戦で相手するならいいけど、こういう対面形式で戦うには分が悪いわ)
ルーナ「どうする、来た道を戻って別の場所から合流を目指す?」
シャ―ロッテ「逃げても追ってくるでしょ。それに戻ったところで――」
ドゴンッ ガゴンッ!!!
グオオオオオオォォォォッ!!!!
サクラ「し、シャーロッテさん……」
ルーナ「下がれないわね、これじゃ」
シャーロッテ「ええ……」
シャーロッテ(まさか、外に溢れてたノスフェラトゥが中に戻ってくるなんて思わないっての。まぁ、レオン様たちが大通りに向かったのはわかってるから、合流は簡単に出来るって思ってたのに……)
シャーロッテ「本当、どうしてこういう奴が離れにいるわけ。向こうの大勢と一緒に隊列組んでなさいよ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「敵の別動隊に対処するためだ。もっとも、来たのはただ孤立した兵だったがな」
旧暗夜軍ランサー女「兵だけじゃなくて、白夜の王女も一緒とは思わなかったけどね」
サクラ「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「どちらにせよ我々の敵だ。逃がすつもりはない」
シャーロッテ「そう……。逃がしてはくれないわけね」チャキッ ジリッ
ルーナ「……」コクリッ
シャーロッテ「ルーナ、援護しなさい!」ダッ
ルーナ「まかせて!」チャキッ ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー、先に俺が出る。援護しろ」ダッ
旧暗夜軍ランサー女「了解」タタタタッ
シャーロッテ(男が先行ね。馬鹿正直に攻撃しても避けられる。なら、このトマホークで!)チャキッ
シャーロッテ「喰らえっ!」グッ ブンッ!
ヒュンヒュンヒュン
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「投擲か。しかし、甘い…」ブンッ
ガキィンッ ゴトンッ!
シャーロッテ「甘いのはそっちだっての。ルーナ!」ダッ!
ルーナ「ええ、この距離なら!」
ルーナ(よし、女の方はまだ距離を詰めきれてない。なら、シャーロッテの攻撃に合わせてあたしも攻撃すれば、こいつは倒せる!)
シャーロッテ「もらった!!!」ググッ
ルーナ「そこ……ん?」
旧暗夜軍ランサー女「ふっ」シュタッ
ルーナ(あの女、何か壁に向かってジャンプしてるような――)
グッ!
サクラ「シャーロッテさん、あぶない!」
シャーロッテ「!」サッ
旧暗夜軍ランサー女「はあああっ!」ダッ! シュパッ!
ルーナ「させない!!!」チャキッ シュパッ!
ガキィンッ!!!
ズササーーーッ!
ルーナ「っ、はぁはぁ……」
シャーロッテ「はぁはぁ……はぁはぁ……」
ルーナ(あの女、壁蹴って一気に距離を詰めてきたわ。なに、このふざけた戦い方は)
シャーロッテ(あ、あぶねえ……。何が起きたかわからないけど、二人のおかげで助かった)
旧暗夜軍ランサー女「おしい……あと少しだったのに。こういうところじゃないとこれは使えないから決めたかったんだけど」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「しかし、奴らの時間切れは近いぞ。音がさらに近づいているからな」
旧暗夜軍ランサー女「そうだね」
ドゴンッ ドゴゴンッ!
シャーロッテ「ちっ!」
ルーナ「……シャーロッテ、もう一回仕掛けられる?」
シャーロッテ「当たり前よ。このまま大人しく挽肉サンドイッチになるつもりはないわ」
サクラ「私も援護します」
シャーロッテ「ええ、お願い」
サクラ「はい!」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「む、そちらの王女は飾りというわけではなかったか。まぁいい、そうでなくては面白くないからな」チャキッ
シャーロッテ「後悔しても知らないわよ。はあああああっ!!!!!」ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
レオン「状況はどうなってる?」
新生暗夜軍ダークナイトA「はい。前方の十字路に敵部隊を確認。さらに後方からノスフェラトゥも迫っています」
レオン「そうか。まさかこんな形で追い込まれることになるなんてね……。後方のノスフェラトゥの対処をお前たちに任せてもいいか?」
新生暗夜軍ダークナイトA「はい、お任せください!」パカラパカラッ
レオン「後方の敵を抑えてもらっている間に、サクラ王女たちを見つけださないと……」
タタタタタタッ
エリーゼ「レオンおにいちゃん!」
レオン「エリーゼ、サクラ王女たちは見つかったかい?」
エリーゼ「ううん、ここにはいないみたい」
レオン「そうか、となると僕たちとは違う方向へ逃げたということか。くそ、ノスフェラトゥの襲撃に気づければこんなことにはならなかったっていうのに……」
エリーゼ「あれは仕方ないよ。靄の事もあったし、どうにか抜けられた負傷者の手当てもしないといけなかったから……。でも、だからこそ、この状況をどうにかしなくちゃいけないって、あたしは思うんだ。そのためにも、サクラたちを見つけないと」
レオン「エリーゼ……。ああ、そうだな。その通りだ。どうにかしてサクラ王女の居場所を突きとめよう」
エリーゼ「うん!」
レオン(だけど、ここ周辺は長い家屋が多く隣接しているし、戻って調べようにもノスフェラトゥの大群がいる。となると……)
レオン「リンカ、頼みたいことがある」
リンカ「なんだ、レオン?」
レオン「ダークファルコンに乗っているお前にしかできないことだ。少し上がって周囲を確認してくれないか。はぐれてしまった兵や、サクラ王女たちを見つけ出したい、出来るかい?」
リンカ「ああ、任せてくれ。それっ、行くぞ」パシンッ
ヒヒーンッ
バサバサッ
バサバサッ
リンカ「よし、ここくらいでいいか。空から鳥が落ちてきたのを見る限り、あの靄は上にもあるだろうからな」
リンカ(さてと、サクラたちが逃げた方角がわかりそうな何かはあるか?)
リンカ「向こうが入ってきた門か。あたしたちが逃げてきた大通りとは別方向となると、西側に向かうくらいしかないが……」
ドゴンッ バゴンッ!
グオオオオオオオオオオオッ!
リンカ「……あそこだな」
バサバサッ
レオン「リンカ、どうだ?」
リンカ「ああ、サクラたちがいると思う方角の目星は付いたぞ」
エリーゼ「え、本当!?」
リンカ「ああ、方角は門から見て西側だ。ここから南西の家屋が集中してる場所で家屋を破壊しながら進むノスフェラトゥの群れがいる。おそらくだが、その先にいると思う」
レオン「そうか……」
レオン(逃げているだけなら、もう合流してもおかしくない。だけど、今も合流できていないとすると……)
レオン「敵と遭遇して交戦状態なのかもしれない」
エリーゼ「早く助けにいかないと!」
レオン「ああ、路地の出口は十字路から伸びる街道のどこかになるはずだ。まずは街道を見渡せる十字路に攻撃を仕掛ける。敵は迎え撃ちに来るはずだ。その隙を突いて僕たちでサクラ王女たちを探し出そう」
エリーゼ「うん、わかったよ」
レオン「リンカ、お前も付いて来てくれるか?」
リンカ「ああ、指示通りに動いてやるさ」
レオン「ありがとう」
レオン(無事でいてくれ、サクラ王女)タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
キィン!
ルーナ「っ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、その程度か」
ルーナ「まだまだ!!」ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふっ、そうこなくては。だが、この程度では、な!」ダッ
ブンッ!
ガキィンッ!
ルーナ「くっ!!!」
ルーナ(もう、何こいつ、本当に強い。腹立たしいくらいに強い)
シャーロッテ「おらああっ!!!」ブンッ
サクラ(ううっ、だめです、シャーロッテさんが射線に入るように相手が動いて、弓を射てない)
旧暗夜軍ランサー女「ふふん、そう易々と援護させないよ。それ!」チャキッ シュパッ!
ザシュッ
シャーロッテ「っ!」
サクラ「シャーロッテさん! 今、治療を!」
シャーロッテ「サクラ様、そこで止まって!」
サクラ「!」ピタッ
シャーロッテ「あんた、それをサクラ様にぶん投げるつもりでしょ? 易々とそんなことはさせないわ」
旧暗夜軍ランサー女「あー、あなたが止めなかったら、王女は倒せたのに」チャキッ
シャーロッテ「……」
シャーロッテ(こいつ、こういうところでの戦い方に慣れてるわ。わざわざサクラ様が攻撃し辛いように、射線に私が重なるようにしてくる。三対一でもこれじゃ意味ないわ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はあああっ!!!」ブンッ
ルーナ「ちっ」サッ チャキンッ
ガキィンッ
ズサササーーーッ スタッ
ルーナ「はぁ……はぁ……」
ドゴンッ!!!
サクラ「こ、この音……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「もうすぐか」
旧暗夜軍ランサー女「このままなら、私たちの勝ちだね」
シャーロッテ「ふん、優位だと高を括ってると足元掬われるわよ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「たしかにその通りだ。人数的に優位な側が口にしているのだからな、言葉に説得力があるというものだ」
シャーロッテ「っ、ムカつく」
ルーナ「ええ、本当にムカつくわ」
サクラ「ルーナさん、シャーロッテさん……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「もう諦めろ。諦めるのであれば痛みなく一撃で葬ってやろう」
旧暗夜軍ランサー女「うん、同じ女性として辱めたりとかそういうのはしないから。暗夜王国の敵だとしても、敬意は払うよ?」
シャーロッテ「その心使いができるなら、そこ通してほしいんだけど」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、いいぞ。通れるものなら通れ。もっとも、お前たちの腕を見る限りでは難しいだろうがな」
シャーロッテ「ちっ」
シャーロッテ(全くもってその通りよ。ルーナとの連携はこいつらの連携に及ばないし……それに……)
ドゴンッ! バギッ!
ルーナ「……もうすぐ奴らが来るわね。このままじゃ、本当にサンドイッチよ」
シャーロッテ「洒落にならないわよ、それ」
ルーナ「……ごめん」
シャーロッテ「謝らないでいいから、何か手を考えなさいよ」
ルーナ「そうは言ってもね……。ああ、もう!」
サクラ「……ごめんなさい、私の所為で。私が逃げ込む場所を間違えなかったら、こんなことには……」
シャーロッテ「……」
サクラ「ごめんなさ――」
シャーロッテ「サクラ様、あやまることなんてないわ」
サクラ「でも……私の所為なのは……」
シャーロッテ「それをあやまったり後悔したって目の前の敵はいなくならない。今の状況が変わらないことくらいわかってるでしょ?」
サクラ「それは……」
シャーロッテ「なら、もう前に進んで行くしかないでしょ。私達は死ぬために後悔するわけじゃないんだからさ。謝るのも後悔するのも、戦いの後でいいのよ。今はそんなことしてる場面じゃないんだからさ」
サクラ「シャーロッテさん」
シャーロッテ「ほら、ルーナもしょげてないでさっさと気合い入れなさい。たしかに相手は強いけど、まだこっちは死んでないんだから圧倒的ってわけじゃない。こっちにも勝機はある、そうでしょ?」
ルーナ「……そうね。ここで落ち込んでも勝機は巡ってこないわ」チャキッ
シャーロッテ「そうそう、ちなみに私は良い男ゲットして玉の輿に乗るまで死ぬ気はないから」
ルーナ「はぁ、そんなのがあんたの夢なわけ?」
シャーロッテ「なに? 悪い?」
ルーナ「悪くはないけど、俗物すぎない?」
シャーロッテ「ふん。別にいいでしょ? で、その夢のための一歩は相手の胃袋を掴んでからなわけで、そのためにはちゃんと味見をしてくれる人がいないといけないわ。幸い、デザートの試食を手伝ってくれるって約束した王女様もいるわけだから、ここで死ぬわけにもいかない。そうでしょ?」チラッ
サクラ「シャーロッテさん……はい!」
シャーロッテ「そういうわけだから、そっちの心遣いに甘えるつもりはないわよ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「そうか。まぁ、今さら乗ってくれたところで遅かったがな」
ドゴンッ!!!
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオッ!!!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「お望みのサンドイッチだ。さぁ、判断が遅かったことを苦しみ悔いながら――」
「マクベス様のために死ぬがいい!」
今日はここまで
シャーロッテはやっぱり姉御的な立ち位置がしっくり来てしまう。
明日はピエリの誕生日です。なので、短いピエリリスを上げようと思います。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―ピエリ誕生日SS―
誕生日を迎えることが大人になる事じゃないって知ったのは、あの子に出会ってからだと思う。それまでの誕生日はただ歳を重ねる事だけしか出来ていなくて、ピエリは大人に近づいてなんていなかった。そんなことを思いながら雪が降る空の下にいると、声が聞こえた。
「駄目ですよ、ピエリさん。そのままじゃ、風邪を引いちゃいます」
そう言って駆け寄ってきたその子を見ていると、お母さんを思い出す。
ピエリのお母さんはとっても優しくて、お料理上手の綺麗な人だった。
ピエリが何かを間違ったことをしたら怒ってくれて、最後には優しくしてくれた。
そんなお母さんがピエリは大好きで、なりたい大人と言われたらお母さんって答えるほどだった。
だけど、ある日、お母さんは真っ赤に染まって居なくなった。
それからお料理の匂いもしなくなった。
イライラして何かに八つ当たりしても怒られなくなった。
好きなことをしても誰も怒らなくなった。
辛くても心配されなくなった。
ピエリのことを褒めてくれる人はいても、心配してくれる人は誰もいなかった。
その日から、ピエリは大人になる事をやめて、子供のままでいることを決めたんだと思う。
その結果、ピエリはみんなから怖がられるようになった。
人殺しだからじゃなくて、ピエリだから怖がっていると知ったのは、あの戦いに参加してカムイ様や他の皆と一緒に戦っている時だった。
ピエリが敵をバラバラにしても怒らない。だけど、何かに関わろうとするとみんな何か理由を付けて去っていく。本当は孤立している事も分かってた。でも、その原因がわからなくて、それを苦しいって言えなかった。
誰もいない場所ならそんなことを考えなくてもいい。そうしてピエリが逃げ込んだのが星界の小さな祠みたいな場所だった。
そこで、ピエリはその子に出会った。その子のことをピエリは全然知らなかったけど、向こうはピエリのことを知ってた。
なのに、その子はピエリのことを怖がったりもしないで、言葉を掛けてきたから思わず聞いた。
『あなた、ピエリが怖くないの?』
ピエリの質問に、その子はこう返してきた。
『その、怖がられたいんですか?』
それにピエリは怖がられたくないって、素直に口にしていた。
素直にそう口にしたら、すごく悲しくなって涙が出る。声を出さないように頑張ったけど、口の中から漏れ出して自然と体が丸くなって動けなくなった。
だけど、こうやって泣いても気にしてくれないと思う。ピエリの事を知ってるなら関わらない方がいいってみんな知ってるから。だから、その子も声を掛けてくれない、そう思った。
『え、ちょ、ちょっと待ってください。なんで泣いてるんですか!?』
『え……』
『ご、ごめんなさい。その、突き放すために言ったわけじゃなくて、疑問に思ったことが口から出てしまったと言いますか……。その……』
『……』
『安心してください、私はピエリさんの事を怖がったりしませんから』
そう言って、その子はピエリの頭を優しく撫でてくれた。
昔、お母さんがそうしてくれたようにピエリが安心できるように優しく接してくれて、それがピエリの中の何かをもう一度動かしてくれたのだと思う。その子、リリスがしてくれたことが、もう一度、お母さんみたいになりたいって思う力になった。
だからかもしれないけど、ピエリはリリスが気にかけてくれる度に、お母さんのことを思い出す。
「駄目じゃないですか、今日の主役が何も言わずに外に出たりしたら。皆さん、探していましたよ」
「今日はピエリの誕生日で、ピエリが主役なの! だから問題ないはずなのよ」
「いいえ、何をしてもいいってわけじゃありませんよ。むしろ、準備してくれている皆さんを心配させたらだめです」
「ぶーっ、リリスは堅物なの」
「堅物で結構ですよ。ああ、頭にいっぱい雪が乗ってるじゃないですか」
さっきまで怒っていたのに、すぐにリリスはピエリを心配してくれる。ピエリの頭に乗った雪を優しく払ってくれて、それがとっても心地よくて嬉しくもあった。
出会ったあの日から、リリスはピエリのことを怖がったりしなかった。
一緒に星界を歩いてくれたし、外への買い出しの手伝いなどもしてくれた。
何より、間違ってることをピエリがしようとすると、止めようとしてくれて、だけどそれが原因で喧嘩になったりもした。でも、リリスはピエリを止めることをやめなかった。
ある日、本当に大喧嘩に発展したことがある。その喧嘩はピエリが勝ったけど、リリスはずっとピエリが間違ってるから止めるって言ってて、どうして止めるのって聞いた。
そしたら、『友達が間違ったことをしようとしているのに止められないのは、相手の事を怖がっているからです。私はピエリさんことを怖がったりしないって言ったじゃないですか。だから止めるんです』って言った。
そう言ってくれたことと、そういう思いを無視してわがままに振舞ってたことが情けなくなっていっぱい泣いた。そんなピエリのことをリリスは優しく撫でてくれて、そこに叱ったあとに優しくしてくれたお母さんを思い出せた。
ピエリの中に残ってるお母さんの記憶をリリスはいっぱい掘り起こしてくれる。何より、今も隣にいてくれることがとてもうれしく感じるくらいに、ピエリはリリスの事が好きだった。
「どうしたんですか、なんだか嬉しそうですけど」
「えへへ、リリスってお母さんみたいって思ったの」
「またですか。残念ですけど、私はあなたみたいな子供、知りませんよ」
「うう、酷いの。ピエリ、こんなにリリスのこと愛してるのに」
「はいはい、ピエリさんに愛されて私はとても幸せですよ。よし、これで雪は落ちましたね。あとは傘とマフラーを……」
リリスは傘を開くとピエリが入るように身を寄せてくれる。さらにマフラーも巻いてくれたから、首元がとっても暖かくなって思わず息が漏れた。
「ふぅ~、あったかいの~」
「ここで風邪を引いたら大変ですからね。今度からは防寒具を付けて外に出てください」
「はーい。だけど、一人で外に出たことは怒らないのね」
「い、いえ……まぁ、ピエリさんが一人でいてくれて助かったというのもありますから……」
「ん、どういうこと?」
「え、えっとですね…。ああ、その、こんなところで渡すのはどうかと思うのですが……」
そう言ってリリスは服のポケットから何かを取り出して、それをピエリに差し出してくる。それは小さな箱で奇麗にラッピングもされている。柄はピエリが好きなお気に入りのリボンと同じものだった。
「なにこれ?」
「ピエリさんへの誕生日プレゼントですよ」
「ピエリの?」
「はい。本当は他の皆さんと一緒にお渡しするべきでしょうけど、これから準備とか色々とあって渡す時間が無さそうだなって。なので、私だけズルしちゃうことにしました」
そうして差し出されたプレゼントを受け取ると、胸の奥がとても熱くなる。なんだか表現できない色々な思いが体の中を駆け巡るような感じがして、次第に顔も熱くなり始めた。
その熱を逃がすように顔を下げて、まずはお礼をと口が開いた。
「あ、ありがとう……なの」
「ふふっ、どういたしまして。これで一つ大人になりましたね」
そう言って、リリスはピエリの頭を優しく撫でてくれた。
『また大きくなったわね』
同時に記憶にあるお母さんを思い出す。いつの誕生日だったかはわからないけれど、それは確かにピエリが成長していることを喜んでいるお母さんの姿だ。
「ピエリ、大きくなれたの?」
二つの言葉に自然と言葉が出た。
それは記憶の中のお母さんに対してなのか、それともリリスに対して聞いたのかはわからない。だけど、答えてくれるのは今の成長したピエリを見てきた人だけだということはわかっていた。
「ふふっ、出会った頃に比べればいっぱい成長していますよ。この頃は余り癇癪も起こさなくなりましたし、大きくなってると思います」
「むー、リリスは一言多いの」
「だって事実ですからね。成長してなかったら、さきほどの言い合いで喧嘩が始まってましたよ、きっと」
「もう……。えへへ」
「ふふっ」
リリスは笑顔を返してくれる。記憶の中のお母さんも笑顔でピエリを見つめてくれた。
『お誕生日おめでとう、ピエリ』
「お誕生日おめでとうございます、ピエリさん」
記憶の中のお母さんと、大切なお友達。
二人のおめでとうに包まれながら、ピエリはまた一つ大人になるの。
-END-
今日はこれだけ
ピエリは守られるよりも一緒にいて、きちんと導いてくれる人がいればきっと素敵な大人になれる子だって思ってる。
リリスはああ見えて肝が据わってるはずだから、ピエリと一緒に歩んでいける友人になれると思う、そんなお話でした。
改めて、ピエリ誕生日おめでとう。
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◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・大屋敷内部』―
マクベス「ノスフェラトゥは村内に戻ってきたようですね」
旧暗夜軍兵士「はい。ですが、西側へ回り込んだ群体は外周で待機していた敵軍と交戦、多くが撃破されたようです」
マクベス「そうですか、まあいいでしょう。障壁がある限り、敵が入ってくることはありえません。それに東側だけでもノスフェラトゥが戻ってきているのであれば上出来です。それよりも、南区域についての報告をおねがいします」
旧暗夜軍兵士「はい。敵は西区域より侵入した部隊が南区域の敵部隊と合流。残念ですが南の第一防衛線維持は不可能と判断し、現在第二防衛線を構築しつつ、最終防衛線での準備に取り掛かっています」
マクベス「そうですか。一部隊でも葬ることが出来ればと考えていましたが届きませんでしたか、西区域を守るノスフェラトゥやゴーレムの数を多くしておくべきでしたね。第一防衛線の破棄を決めたのはメイドですかな?」
旧暗夜軍兵士「はい。メイド殿の采配です」
マクベス「ふむ……」
旧暗夜軍兵士「マクベス様」
マクベス「いいえ、良い判断だと思っただけですよ。あのまま戦線の維持に努めたところで意味はありません。第一防衛線の瓦解が確実な以上、部隊を突出しさせておくべきではありませんから。となれば、当社の作戦は早々に破棄すべきですか。至急、合図を出してください」
旧暗夜軍兵士「はっ! 直ちに!」タタタタッ
マクベス(たしか南区域に入りこんだ敵はカミラ王女だと聞いていましたが)
マクベス「あの状況を切り抜けるとは、少なからずともガロン王様の血を引いているだけはあるということですか……」
マクベス(しかし、まだ戦いは終わってはいません。敵を分断し、王族を内部に捉えることが出来たのです。勝機はまだこちらに――)
マクベス「うっ、ゴホッ! ゴホゴホッ!」ビチャッ
ググッ
マクベス「はぁ……はぁ……」
マクベス(くっ、やはり障壁の維持は負担が大きい。ですが、この程度で倒れるわけにはいきません)
マクベス「ええ、そうです。暗夜王国、そしてガロン王様の軍師である私がこの程度で倒れてなるものか」
マクベス(まだ、多くの兵が奮戦する中で、先に倒れるわけにはいきませんよ)
マクベス「……東区域の撤退が完了次第、私も出るとしましょう」
マクベス(私を信じた者たちを裏切らないためにも、そして私自身が信じるガロン王様のためにこそ、私の命は……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『東区域・大通り』―
新生暗夜軍兵士「敵、十字路に向かって進軍中!」
新生暗夜軍兵士「怯むな、数ならばこちらが優勢だ。このまま十字路を抑えるぞ!」
新生暗夜軍兵士「前方、敵ジェネラル部隊が来ます!」
レオン「それは僕たちの役目だ。エリーゼ、頼む」
エリーゼ「うん、ライナロック! それっ!」シュオンッ
レオン「ブリュンヒルデ!」
ドゴンッ!
ザシュシュッ!
旧暗夜軍ジェネラル「ぐああああっ」ドササッ
旧暗夜軍兵士「敵、前面に魔術部隊を展開しています」
旧暗夜軍ジェネラル部隊長「ちっ、このまま迎撃してもいたずらに兵力を消費するだけか。遊撃隊を編成したはいいが、こうも戦力差が出てしまったか」
旧暗夜軍兵士「敵が十字路に展開開始。抑えられてしまえば、家屋密集地で戦う遊撃隊が孤立しかねません」
旧暗夜軍ジェネラル部隊長「南区域の戦いがどうなっているかはわからないが、援軍を待っている時間はない。合図が無い以上、しばらくはここを死守することに努め、合図があり次第下がるとしよう」
旧暗夜軍兵士「わかりました」
旧暗夜軍ジェネラル部隊長「よし、ノスフェラトゥと挟み打ちにできている今の優位を活かせ! 反魔法処置の済んでいるジェネラルは全面に展開、敵の魔術攻撃を牽制せよ!」
旧暗夜軍兵士たち『はっ!』
レオン「敵の重装兵が増えたみたいだ」
エリーゼ「大丈夫、あたしの魔法でやっつけちゃうんだから!」
レオン「まて、おそらく魔法反射の特殊処置を施している奴らだろう。一撃で倒し切れないと手痛い返しを受けることになるよ」
エリーゼ「え、それじゃどうするの?」
レオン「今の目的は、サクラ王女たちを見つけ出して合流することだ。敵の意識を防衛にだけ集中させられればそれでいい。ジェネラル隊、すまないが仕掛けてくれるかい?」
新生暗夜軍ジェネラル部隊長「はい、お任せください。行くぞ、我らの力を見せつける時だ!」
新生暗夜ジェネラル部隊『おおおおおーーーっ!』
ドドドドドドドッ
旧暗夜軍ジェネラル部隊長「よし、迎え打て!!!」
旧暗夜軍ジェネラル部隊『うおおおおおーーーーっ!!!!』
ガキィンッ
ドゴンッ ドサッ!!
グアアアッ!! ウアアアッ……
リンカ「動きが拮抗し始めたぞ」
レオン「よし、行くなら今だ。散り散りになった部隊を救出に向かおう」
エリーゼ「おにいちゃん、あたしも行くよ!」
レオン「頼む。リンカ危険だが上空から周囲を探ってくれると助かる。何か見つけたら教えてくれ」
リンカ「わかった。それと状況が状況だったら攻撃を仕掛けるが、いいか?」
レオン「ああ、構わない。多くの者が路地を通じて合流を図ろうとしているはずだが、それが来ない以上敵と交戦している可能性が高い、みんな気を付けて捜索を――」
ヒュイイイイインッ!!!!
レオン「!?」
エリーゼ「え、何の音!?」
リンカ「方角からすると、ここの中心部からだな」
レオン「敵の合図みたいだ。何か動きがある前に、早くサクラ王女を見つけ出そう」
パカラパカラッ
バサバサバサッ
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『東区・家屋密集地帯』―
~合図が出る少し前~
ノスフェラトゥ「グオオオオオオォォォ!!!!!」
シャーロッテ「うるさい奴がいっぱい来たわね」
ルーナ「ええ、それでどうする?」
シャーロッテ「ノスフェラトゥを足止めしないといけない気もするけど、背中見せたら目の前の二人が飛んできそうね」
サクラ「シャーロッテさん、ルーナさん、後方は私が足止めします。距離が取れる分、私の方が有利なはずです」チャキッ
ルーナ「ちょっと、大丈夫なの?」
サクラ「はい、これでも弓の腕には自信がありますし、この細道なら外すこともありません。その代わり、前方のお二人の相手をお願いします」
シャーロッテ「……わかったよ。二人を叩きのめしたらすぐに合図するから」
サクラ「はい。お願いします」
ルーナ「もう、あたしを置いて話を進めないでよ」
シャーロッテ「なに、他に何か案でもあるわけ?」
ルーナ「……無いわ」
シャーロッテ「じゃあ、決まり。それじゃ、サクラ王女、背中任せたから」
サクラ「はい、お任せください」チャキッ
ルーナ「そ、そういうわけだから。サクラ王女様、その頼んだわよ」
サクラ「はい、ルーナさんもお気を付けて」ギュッ
ドゴンッ‼‼‼‼
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオオオ!!!!!」ダッ
サクラ(今、私に出来ることは目の前の敵を倒すことだけ。死なないためにも、この先続いて行く白夜王国の姿を見続けるためにも、こんなところで終われない!)
サクラ「行きます!」チャキッ ギリリッ
ノスフェラトゥ「グオオオオッ!!」ダダダダダッ
サクラ(私たちを見つけた以上、敵はまっすぐに向かってくるだけ。家屋を破壊する素振りもない。なら……)
サクラ「そこです!」パシュッ
ズビシャァ!
ノスフェラトゥ「グオオ……」ドサッ
ドゴンッ ガゴンッ!
ノスフェラトゥ「グオオオオッ!」ジタバタ
サクラ(後続を詰まらせれば、侵攻速度は遅くなります。これを続ければ、耐えられる!)
ググッ ドゴンッ!
ノスフェラトゥ「グオオオオオオオオオオッ!」ダッ!
サクラ「はっ!」パシュッ
ズビシャッ!
サクラ「そこ!」パシュッ
ドスリッ!
サクラ「やあああっ!!」パシュッ
ズシャリッ!
サクラ(これなら大丈夫、私は合図が来るまで敵を止め続ければいい。お二人を信じて)
サクラ「ここは絶対に通しません!」パシュッ!
タタタタタタッ
シャーロッテ「はあああっ!!!」ブンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふんっ!」グッ
キィンッ ガキィンッ
ルーナ「そこ!!!」ダッ
旧暗夜軍ランサー女「甘い!」サッ カキィンッ
ルーナ「ちっ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「今度はこちらからだ。はああっ!!」グッ ブンッ!
ザシュンッ
シャーロッテ「っ!」サッ
ポタタタッ
シャーロッテ(ちっ、少し入った……。でも、まだまだ!)チャキッ
ルーナ「シャーロッテ、大丈夫!?」
シャーロッテ「こんなのかすり傷よ。まったく、本当に相手にしたくない奴らね」
ルーナ「本当にね。だけど、退けないでしょ」ダッ
シャーロッテ「そうね」ダッ
ルーナ「今度はあたしが先に仕掛ける」
シャーロッテ「よし、援護は任せなさい」タタタタッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「来い、相手をしてやる」チャキッ
ルーナ「言われなくてもぶつかりに行ってやるわ! はああああああっ!」ブンッ
キィンッ!‼‼
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、この程度か?」
ルーナ「っ」
ルーナ(純粋な剣技で倒すとなると骨が折れるわね、これ。なら、それ以外で崩すまでよ!)
ルーナ「これで、どう!」グッ
ゲシッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「なっ、蹴りだと!?」グラッ
ルーナ(よし、態勢が崩れた。今なら!)
ルーナ「はああああっ!」ブンッ
ズビシャアアッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「がっ!」ポタタタッ
ルーナ「よし、入った!」
ルーナ(けど、浅い)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「この!」グッ
シャーロッテ「まだ、こっちの攻撃は終わってねえんだよ!」ダッ
シャーロッテ(この距離、もらった!)
旧暗夜軍ランサー女「ブレイブ! させない!!!!」ダッ
ガキィンッ
シャーロッテ「ちっ!」
旧暗夜軍ランサー女「ブレイブ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「うおおおっ!」グッ!
シャーロッテ「ルーナ!」
ルーナ「っ!」
ブンッ
ルーナ「よっと!」サッ
ズサササーッ
ルーナ「くそ、仕留め損ねたわね。あと少しだったのに……」
シャーロッテ「でも上々よ、男の傷はそれなりみたいだからな。あいつを倒せれば、ここを突破できるはず」
シャーロッテ(まぁ、この路地抜けた先が敵陣の中心って可能性は捨てきれねえけど……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」ポタタタタッ
旧暗夜軍ランサー女「どうする? 引いて手当てしたほうがいいと思うけど?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「この程度の傷……どうとでもなる。今はこの三人を始末することが――」
ヒュイイイイインッ!!!!
ルーナ「な、なに!?」
シャーロッテ「何かの合図みたいだけど、私たちのじゃねえな……」
ルーナ「ってことは、敵のほうの合図ってことね」
旧暗夜軍ランサー女「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
シャーロッテ(どっちだ? 総攻撃の合図なら、さっさとこいつらぶっ飛ばして合流しないとまずい。でも、これが撤退の合図なら……)
パカラパカラッ……
ルーナ「ん? この音、馬?」
シャーロッテ「敵の援軍か?」
……コダ! サ…ラオウジョ!
ルーナ「この声……」
シャーロッテ「……まったく、サクラ様は愛されて羨ましいわ」
レオン「サクラ王女! どこだ、返事をしてくれ!」
エリーゼ「サクラー、どこー!」
シャーロッテ「へっ、形勢逆転ね。今度はあんたらがサンドイッチよ」
旧暗夜軍ランサー女「ブレイブ……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、ならば長居は無用だろう」
ルーナ「ふーん、逃げるわけ?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、そのつもりだ。もっとも……」グッ
旧暗夜軍ランサー女「……」グッ
ダッ
シャーロッテ「!?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ただで逃げるつもりはない……」
シャーロッテ(向かってきた!? でも、これなら返り討ちに……)グッ
旧暗夜軍ランサー女「はあああっ!!!!」ダッ ブンッ
シャーロッテ「て、てめえ! ルーナ、男の方がそっちに行くよ!」
ルーナ「任せて! はあああっ!」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」フッ
ササッ
シャーロッテ「なっ!?」
ルーナ「抜かれた!?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「さすがに一人くらいは倒しておかなくてはな……」チャキッ
シャーロッテ(しまった、奴らに詰め寄りすぎて背後ががら空きに!)
サクラ「はぁ、はぁ……まだ、諦めません!」チャキッ
シャーロッテ(サクラ様!)
サクラ(今、確かにレオンさんとエリーゼさんの声が聴こえました。ノスフェラトゥの動きも遅くなっているから、あとはこのまま耐えきれれば――)
シャーロッテ「ちっ! 行かせねえ!」グッ
旧暗夜軍ランサー女「それはこっちの台詞だよ!」チャキッ シュパッ
キィンッ!
シャーロッテ「くそっ、サクラ様、逃げて!」
サクラ「え、シャーロッテさん?」クルッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……死ね。白夜の王女」チャキッ
サクラ(……敵? 迎撃を。でもこの距離じゃ、撃ちたくてもすぐに反応なんてできない。下がってもノスフェラトゥにぶつかるだけ……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
サクラ(だめ、避けられない……)
シャーロッテ「サクラ様!!!!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はああああああっ」ググッ
バサバサッ
???「はあああああああっ‼‼‼‼」ブンッ
ガキィンッ!‼‼
サクラ「……あ、あれ?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「な、馬鹿な!?」
ヒヒーンッ!
旧暗夜軍ランサー女「ダークファルコン!?」
サクラ「あ、あなたは……リンカさん」
リンカ「どうにか間に合ったみたいだな、よかった」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「くっ、まさか空から来るか。マクベス様の障壁があるというのに、何て真似をする」
リンカ「高くは飛べないだけの話だ」
ルーナ「な、なるほどね」
シャーロッテ「まさに命知らずって感じね。私は絶対にそんな真似しないわ」
リンカ「おまえら……」
シャーロッテ「まあいいわ、とりあえずこれで形勢逆転、まずはあんたからぶっ飛ばしてやるわ」ドゴッ!
旧暗夜軍ランサー女「っ!」ズササーッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー!」ダッ
ルーナ「さすがに二度も通すと思って――」
ササッ
ルーナ「って、また抜かれた!?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー、退くぞ!」ダッ
旧暗夜軍ランサー女「わかった」ダッ!
シャーロッテ「逃がすか」チャキッ ブンッ!
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!
シャーロッテ(このトマホークの軌道なら、どっちかには当たる!)
旧暗夜軍ランサー女「っ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「!!!!」ダキッ
シャーロッテ「もらった!」
シュオンッ!
バキッ カランカランッ……
シャーロッテ「え!? 消えた!?」
ルーナ「消えた、っていうか誰かが魔法で回収したって感じね……」
シャーロッテ「ちっ、逃がしたってわけね……」
パカラパカラ
パカラパカラ!
レオン「ここにリンカが下りたみたいだけど……! シャーロッテにルーナ、無事だったんだね」
シャーロッテ「は、はい。なんとか無事ですぅ、レオン様」
レオン「負傷してるのか、エリーゼすぐに手当てを。それと他には……」
サクラ「レオンさん……」
レオン「サクラ王女! 無事でよかった」
サクラ「はい、シャーロッテさんとルーナさん、そしてリンカさんのおかげです」
レオン「二人ともありがとう、それとリンカもね」
リンカ「なに、この程度どうってことない。それでどうする? ここに居た敵は逃げていったようだが……追撃するか?」
レオン「いや、この人数で追撃に出ても返り討ちにされるだけだよ。今は部隊を集めて姉さんたちとの合流を目指そう。この村の構造を見る限り、敵は中心部で僕たちを迎え撃つつもりだ」
ルーナ「中心部?」
レオン「ああ、この村の中心部。マクベスが選んだ最後の場所、そこで奴は待っているはずだからね……」
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『東区・中央部に近い路地』―
シュオンッ ドササッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「がっ!」
旧暗夜軍ランサー女「いたっ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(な、なんだ何が起きた……)
旧暗夜軍ランサー女「いたたたたっ、あれ敵が投げたトマホークは?」
???「もうありませんから、安心してください」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……メイドか?」
旧暗夜軍メイド「はい。救出が間に合ったようで何よりです。まさか、白夜の道具に頼ることになるとは思ってもいませんでしたが。これはドローと同じくらい便利なものですね」ポイッ カランカランッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「どちらにしてもありがとう、助かった」
旧暗夜軍メイド「いいえ、あなたがランサーさんを庇ったおかげです。もしも、そうしていなかったらどちらかはあの場所に置いて来なくてはなりませんでした」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「庇った?」
旧暗夜軍ランサー女「あのさブレイブ、もう放してもらっていいかな。流石に鎧が当って痛い」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「あ、すまん」サッ
旧暗夜軍ランサー女「いやいや、謝ることないから。それよりメイドちゃん、ちょっとブレイブの手当てをお願い」
旧暗夜軍メイド「はい、リライブ」シュオンッ
ポワァン
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「助かった。それで状況はどうなっているんだ? あの音が聞こえたと言う事は……」
旧暗夜軍メイド「はい、第一防衛線は放棄、第二防衛線で時間を稼ぎつつ、最終防衛線での総力戦の準備に取り掛かれということでしょう」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「そうか……。もう少し、時間を稼げるかと思っていたが」
旧暗夜軍メイド「やはり王族を中心に動いている以上、敵は強大なのでしょう。もっとも、それを理由に私は諦めたりはしませんが」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「わかっている。お前の頼みを聞いて、それを了承したのはこちらだ。マクベス様のための戦いはまだ終わってはいない」
旧暗夜軍ランサー女「マクベス様のための戦いは、結果的に暗夜王国の戦いだからね。それじゃ、さっさと移動しないと。ここに居ても、意味は無さそうだし」
旧暗夜軍メイド「ええ、それでは参りましょう――」
「マクベス様と共に駆ける事の出来る戦場へ」
今日はここまで
あけましておめでとうございます。
ゆっくりとした更新にはなりますが、今年もよろしくお願いいたします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区域・南部』―
カムイ「……」
ブノワ「……」
カムイ「ブノワさん……」
ブノワ「ああ」ズズッ
シュパッ!
キィンッ!
ブノワ「!」
カムイ「ここも封鎖しているみたいですね」
アクア「主要な十字路に通じる路地はすべて抑えているみたい。さすがに村の内部構造を理解しているだけはあるわ」
マークス「やはり、一筋縄ではいかないようだな」
カムイ「どうしますか?」
マークス「敵の分断作戦はどうにか阻止したのだ。マクベスも各個撃破のために部隊を動かすつもりはないだろう。この状況なら……」
カミラ「全部隊の召集、そうでしょう兄様」
マークス「カミラ、戻ったのか」
カムイ「カミラ姉さん、敵の様子はどうでしたか?」
カミラ「敵はこの先の中央区域に集まっているみたい」
マークス「中央区域か。地図では大屋敷と広場がある場所のようだが……」
カミラ「ええ、とても開けた場所みたいね。ここで催し物とか市場を開いていたのかもしれないわ。今は弓砲台と魔道砲台の見本市ってところかしら?」
アクア「あまり見たくない催し物ね」
カミラ「ええ、それに遮蔽物もほとんどないようだから、攻撃を仕掛けるこっちとしては難しい戦いを強いられるでしょうね」
マークス「しかし、マクベスの作り上げた障壁を無効化しなければこの村から出られぬ以上、立ち向かう他あるまい。このまま中央区域へと向かいつつ、攻勢の準備を進めるよう全軍に伝えよ」
新生暗夜軍兵士「わかりました!」タタタタタッ
カムイ「中央区域へ入る前にレオンさん達の部隊も合流できるといいのですが」
マークス「敵全体が中央区域へ引き始めているから心配いらないだろう。それよりも、南東から入り込んでいる敵ノスフェラトゥの存在に注意が必要だ。敵本隊との戦闘が長引けば、奴らに後ろを取られかねん。中央広場へ攻撃を仕掛ける攻勢部隊の他、後方のノスフェラトゥの足止めをする少数の部隊も作り上げなくてはならないか」
カミラ「ともかく、まずは広場の手前まで進みましょう。まだ奴らが追いつくには時間が掛かるはずよ」
マークス「そうだな。カムイ、この先の路地の制圧を頼めるか?」
カムイ「分かりました、マークス兄さん。アクアさん、行きましょう」
アクア「ええ」
タタタタタッ
アクア「それで、この路地をどう抜ける?」
カムイ「後方からノスフェラトゥの大群が迫っているのですから、時間を掛けることはできません。真正面から叩きましょう。ブノワさん、フローラさん」
ブノワ「なんだ?」
フローラ「はい、カムイ様」
カムイ「この路地を抑える敵を排除します。お二人に先頭をお願いしたいのですが」
ブノワ「わかった……」
フローラ「はい、お任せください、カムイ様」
カムイ「お二人は敵の攻撃を受けることだけに専念してください。フェリシアさんは私とアクアさんに付いて来て、お二人が負傷したら治療をお願いします。敵への攻撃は私とアクアさんが行います」
フェリシア「わかりました」
フローラ「フェリシア、お願いね」
フェリシア「はい、姉さん。がんばります!」
カムイ「……よし、行きましょう」ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ボウナイト「よし、中央広場の準備は整いつつある。お前達は一足先に下がり、マクベス様の本隊と合流せよ。ここは我々に任せて大丈夫だ」
旧暗夜軍兵士「はっ、わかりました」タタタタタッ
旧暗夜軍ボウナイト(よし……本隊への合流は滞りなく行われている。敵に動きが無ければ、われわれも合流を……)
ガシャンガシャンッ!
旧暗夜軍兵士「敵、来ます!」
旧暗夜軍ボウナイト「来たか、編成は?」
旧暗夜軍兵士「重装兵を先頭に歩兵が数名、騎馬兵の姿はありません……。む、あれは――」
旧暗夜軍ボウナイト「どうした?」
旧暗夜軍兵士「か、カムイ王女の姿もあります」
旧暗夜軍ボウナイト「ほう、わざわざ前線に出てくるとは勇猛なことだ。だが、これはチャンスだ。奴を仕留めればマクベス様も喜ばれる。各員、奴を通すな!」
旧暗夜軍ジェネラル「了解、前に出ます」
旧暗夜軍ボウナイト「任せる。ふん、重装兵だけでここを抜けられると思っているようだが、考えが甘いな」チャキッ
旧暗夜軍ボウナイト(これの前ではそのような重装備、なんの意味もないのだからな)
フェリシア「敵が出てきました! 重装兵です」
カムイ「わかりました。アクアさん、アーマーキラーで切り掛りますので、援護をお願いします」
アクア「わかったわ。あなたがジェネラルを仕留めたら、一気に距離を詰めて奥の敵を仕留めるわ」
カムイ「はい。ブノワさん、敵にできる限り近づけますか?」
ブノワ「ああ、任せてくれ…。フローラ、俺が前に出る。お前はカムイ様達を守ってくれるか…」
フローラ「……」
ブノワ「フローラ?」
フローラ「いいえ、私が前に出るわ」ガシャンガシャンッ
ブノワ「フローラ!?」
フローラ「今、あのボウナイトが装備を変えたわ。おそらく、シャイニングボウよ」
カムイ「魔法武器ですか。仕方ありません、奴らの射程圏ぎりぎりで止まってください。そこから、攻撃を仕掛けますから」
フローラ「いいえ、大丈夫です。それに遠距離攻撃なら……」
フローラ(私の血が役に立つはずです)
フローラ「ですから、ここは私にお任せください、カムイ様」
カムイ「フローラさん……わかりました。あなたを信じます」
フローラ「はい……。フェリシア、悪いけど回復をお願いね」
フェリシア「姉さん……。うん、任せて!」
フローラ「行くわ。はああああっ!!!」ガシャンガシャンッ
旧暗夜軍兵士「敵一人、突出します」
旧暗夜軍ジェネラル「無謀にも向かってくるか、これでも喰らえ!」チャキッ ブンッ
フローラ(スレンドスピア……でも、この程度なら!)
チャキッ ガキィンッ!!!
フローラ「っ!」
旧暗夜軍ジェネラル「ちっ、ダメージは入っているようだが、この程度では止まらないか」
旧暗夜軍ボウナイト「装甲に頼って特攻をしかけてくるのだから物理への自信はあるのだろう。だが、その考えが命取りだ」チャキッ
フローラ(来る!)
旧暗夜軍ボウナイト「死ね!」パシュッ!!!
ズビシャアアッ!
フローラ「きゃっ!!!」
旧暗夜軍ボウナイト「よし、当たっ――」
ドクンッ!!!
旧暗夜軍ボウナイト「がっ!!!!!」グラッ
旧暗夜軍兵士「ど、どうしました!?」
旧暗夜軍ボウナイト「ぐっ、ううっ、さ、寒い……。なんで、こんな……ぐあああっ!!」
旧暗夜軍ボウナイト(な、なんだこれは、いきなり体が凍え始めて、くそ、一体何が起きたっていうんだ!?)
フローラ(血はちゃんと反応したみたい。これで私が受けた痛みと同じものが、奴にも伝わったはず。凍て付くほどの寒さとしてね)
フローラ「氷の血、たっぷりと味わうといいわ」
フェリシア「姉さん、今手当てしますから!」
フローラ「ええ。それよりもカムイ様、今です」
カムイ「フローラさん、感謝します! ブノワさんはフローラさんを守ってください」ダッ
ブノワ「わかった…」ガシャンッ
カムイ「アクアさん、仕掛けます!」
アクア「任せて」ダッ
旧暗夜軍ボウナイト「カムイ王女!」
旧暗夜軍ジェネラル「ちっ、死ねええ!!!」チャキッ ブンッ
カムイ「当たりませんよ」サッ
旧暗夜軍ジェネラル「しまっ――」
カムイ「はあああっ!」チャキッ ブンッ
ガッ ギギギギギギギギッ ガゴンッ!
ズビシャアアッ!!!
旧暗夜軍ジェネラル「ぐああああっ」ドサッ
旧暗夜軍兵士「この!」チャキッ
アクア「させないわ」タタタタッ チャキッ ブンッ
ザシュンッ
旧暗夜軍兵士「がはっ」ドサッ
旧暗夜軍ボウナイト(くそ、懐まで入り込まれた! だが、この距離なら!!!)チャキッ
カムイ「アクアさん!」
旧暗夜軍ボウナイト「外すか!」グッ
バシュッ!
サッ
旧暗夜軍ボウナイト(くそ、手が震えて、思うように動か――)
アクア「はあああっ!」チャキッ
ザシュッ!
旧暗夜軍ボウナイト「がっ……、マク……ベス様……。申し訳、ありま……」
ドサッ
旧暗夜軍ボウナイト「」
アクア「……」
カムイ「アクアさん、怪我はありませんか!?」
アクア「大丈夫よ、これでここの路地は制圧できたわね」
カムイ「はい。そうです、フローラさんは!」
アクア「敵の気配はないわ。ここは私に任せて」
カムイ「はい、お願いします!」タタタタタッ
フローラ「はぁ……はぁ……」
フェリシア「姉さん、無茶し過ぎです」
フローラ「ふふっ、そうかもね。でも、ブノワだとあの攻撃は受け切れなかったでしょう? だから私が出る以外の道は無かっただけよ」
ブノワ「面目ない……」
フローラ「謝らないで。それに生き残れたのは、あなたがくれたお守りのおかげかもしれないわ」
ブノワ「持っていてくれたのか…」
フローラ「ええ。案外、悪くないものね。少なくとも生き残った時にこれのおかげって思えるもの」
ブノワ「そうか……」フッ
カムイ「フローラさん、大丈夫ですか?」
フローラ「はい、怪我もフェリシアが治療してくれましたし、お守りの効力もありましたから」
カムイ「お守り?」
フローラ「はい、お守りです。ふふっ」
フェリシア「カムイ様、これからどうしますか?」
カムイ「もうそろそろ中央広場の入口に差し掛かります。そこで後続の部隊が到着するのを待ちましょう」
フェリシア「はい、わかりました。あ、姉さんは私より後ろにいてくださいね。まだ、傷は塞がってませんから」
フローラ「大丈夫よ、そんな心配しなくてもこの程度なら」
ブノワ「いや、まだ傷が塞がっていないのなら、少し下がっててくれ……。きちんとした治療が済むまで、俺がお前たちを守る盾になる……」
フローラ「ブノワ……」
ブノワ「……」
フローラ「……わかったわ。少しの間だけお願い」
ブノワ「ああ……。カムイ様、俺が先行する後に続いてくれ……」
カムイ「はい、よろしくお願いします」
タタタタタタッ
アクア「フローラは?」
カムイ「大丈夫、無事でした。それよりも敵はいましたか?」
アクア「路地の先を見たけどいないみたい。その代り、真新しい靴跡がいくつもあったから、ここら一帯の敵は中央広場に退いたのかもしれない」
カムイ「仕方ありません。まずはぎりぎりまで敵に詰め寄りましょう」
アクア「そうね……」
カムイ(この先、敵と相対するのは遮蔽物もまるでない広場。だとすれば小細工などほとんど通用しないそういう戦闘になるのかもしれません。でも、それはマクベスさんも同じはずです)
カムイ「それがマクベスさんの望む、最後の戦いということですか……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―中央区域『大屋敷前・大広場』―
マクベス「陣の形成は間に合ったようですね」
旧暗夜軍兵士「はい、全部隊の通達が速かったおかげです」
マクベス「ええ、おかげで敵との戦力差はそれほどない状態です。ここからは守るのではなく撃滅する戦いになる。そして、もしも敵が戦線を突破し、この大屋敷に達したのであれば……」
旧暗夜軍兵士「村北部まで撤退でしたね」
マクベス「ええ、その通りです。それが、あなた方にここにいることを許した条件ですから。くれぐれも遅れないようにお願いしますよ」
旧暗夜軍兵士「分かっています。私はメイド殿と同じく、マクベス様のご命令が絶対ですので。では、最後の準備に取り掛かります」
マクベス「ええ、お願いします」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタタッ
マクベス「……」
タッタッタッタッ
マクベス「?」
旧暗夜軍メイド「マクベス様、ただいま戻りました」
マクベス「あなたですか。南西区域撤退の判断は見事でした。多くの兵を失わずに済みました」
旧暗夜軍メイド「いいえ、私の到着がもう少し早ければ南区域の敵に対処できていたはずです。申し訳ありません」
マクベス「それは違います。この部隊配置は私の判断によるもの、あなたの部隊を状況判断後に動かすと決めたのもそうです。ですので、気にすることはありません」
旧暗夜軍メイド「マクベス様……」
マクベス「それに、あなたは私の命令を守っています。そのように不安になる事はありません」
旧暗夜軍メイド「……ありがとうございます」
マクベス「では、行くとしましょう。もう、打つべき手は打ちました。あとはただ戦うだけです」
旧暗夜軍メイド「はい、マクベス様」
マクベス「部隊の再編も済んでいます。この単純な陣形では、奴らに選べる手などありはしません」
マクベス(もちろん、それはこちらとて同じこと。ですが、何も恐れることはありません。このような私個人の戦いであろうとも付いて来てくれる者がいる。だからこそ、私は今も信じ続けることができるのです)
マクベス(ガロン王様の描いた暗夜王国が全てを支配する世界という理想を……)
タッタッタッ
マクベス「……」
マクベス(ですが、同時に理解しなくてはいけないこともある)
旧暗夜軍ランサー女「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
旧暗夜軍アドベンチャラー「……」
旧暗夜軍メイド「……」
旧暗夜軍兵士たち『……』
マクベス(それは、ここに居る多くの兵士、その多くが私にとっての戦いで失われるということ……。すでに犠牲が出ているように、この最後の攻勢でもっと多くの犠牲が出ることは避けられないことです)
マクベス「……」
マクベス(多くの人間の命を背負うことを辛いと思ったことは今までなかった。それは大きな目的の下だからこそ無視できた問題。でも今、ここに居る兵士の多くは私に仕えることを選んだ。それは私自身の思想に命が消費されると言うこと。そして、私にとっての戦う意味は、すでに……)
マクベス「……」
スッ
旧暗夜軍メイド「マクベス様、大丈夫です」
マクベス「な、なんのことですかな?」
旧暗夜軍メイド「誰もこの命を賭すことに疑問など抱いていません。マクベス様の力になりたいからこそ、私たちはここに居ます。だから、そのような顔をしないでください。その、似合いませんから」
マクベス「……ふん、分かったようなことを言いますね。たかが数ヶ月、私の付き人をしていただけだというのに」
旧暗夜軍メイド「ふふっ。マクベス様、この戦いに勝利したら、あの紅茶を淹れさせてください。きっと、この戦いの勝利は、あの紅茶に似合う大きな勝利のはずですから」
マクベス「……考えておきましょう」
旧暗夜軍メイド「はい」
マクベス「……」
マクベス「全軍、配置に着きなさい――」
「これより最後の攻撃を開始します」
今日はここまで
フローラの氷の血が実際発動すると、こんな感じで冷気が相手に降りかかる感じになるのかなって思う。
乙
きれいなマクベス
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区域・中央広場入口南側』―
マークス「やはり、マクベスの準備は整っているということか」
カミラ「ええ、砲台を中心にして敵の戦列は整っているわ。左右の砲台を騎馬で攻めるのも手だけど魔道砲台の前方には杭がいくつもあって通ることはできないから、中央を通って回り込むしかないわね」
マークス「中央の道幅は杭によって狭まれている、そこを抜ける瞬間に仕掛けてくるのは間違いないだろう」
カムイ「騎馬兵や重装備の方々以外でしたら、杭を越えて移動もできそうですが、近づくまでに多くの時間を要するでしょうね」
マークス「となれば、突破の鍵は竜騎兵か」
アクア「だけど、遮蔽物も何もない場所だからすぐに気付かれるわね」
マークス「ああ、さらに敵には長射程の砲台がある。無策で乗りこめば、返り討ちにされるだけだろう。砲台の破壊、制圧を行うには何かしらの手を考えるしかないか」
マークス「幸いにもカミラが砲台を一つ破壊してくれたおかげで、敵の砲台配置には一種の穴がある。敵の攻撃陣は全ての包囲をカバーしているようだが、砲台同士の射程が重なるようにはできていないようだからな」
カミラ「それが唯一の突破口になりそうね」
マークス「そこを打つ以外に手はないだろう。カミラ、すまないが残っている竜騎兵を招集しておいてくれるか?」
カミラ「わかったわ、みんなを集めておくわね」タタタタタッ
アクア「竜騎兵以外に突破口は無いのは確かね」
マークス「ああ、砲台に近づかなければならない以上、頼るしかあるまい。歩兵では距離が遠く、馬では杭を裂けて回り込まねばならん。それに、中央での猛攻を抜けて辿りつくことはできないだろう」
カムイ「そうですね。だとすると、竜騎兵の皆さんが素早く攻撃を行えるようにどう動くべきかを考えないといけませんね……」
マークス「ああ、それについてだが……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
マークス「このように仕掛けようと考えている。最前線を支える兵たちの負担はかなりのものになるが……」
カムイ「いいえ、現状はこれくらいでしょう。敵としても陣を突破されることを無視できないでしょうから」
アクア「そうね。私もマークスの案を支持するわ」
マークス「ありがとう。カムイ、中央での戦闘を任せられるか?」
カムイ「はい、任せてください。マークス兄さんは先行して、敵の攻撃を引きつけてください。中央で敵が抑えに回ってきたら、そこからは私たちが何とかします」
マークス「ああ、頼む。よし、全軍進撃の準備に入る。レオンの部隊には到着次第東側に設置された砲台への攻撃を開始するように伝えよ。カミラにはこの書簡を渡してほしい」
新生暗夜軍兵士「はっ! わかりました!」タタタタタタッ
マークス「カムイ、行くぞ」
カムイ「はい、マークス兄さん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村『中央区域・旧暗夜軍陣地』―
旧暗夜軍兵士「敵を確認、南部と西部より進軍を開始しました」
マクベス「敵の編成は?」
旧暗夜軍兵士「中央は重装兵と騎馬兵を主軸とした編成のようです。西部は魔法兵を中心に形成しているようです。杭を抜けて進むつもりかもしれませんが、兵力は中央ほどではありません」
マクベス「ふむ、魔道砲台に対してはまだ攻勢に出るつもりはないということですか。まぁいい、各砲台は敵が射程に入り次第攻撃を開始しなさい。アドベンチャラー、あなたには中央弓砲台の防衛を命じます」
旧暗夜軍アドベンチャラー「了解しました、マクベス様。よし、弓砲台の防衛に向かうぞ。俺に付いて来い!」
旧暗夜軍兵士たち『はっ!』タタタタタタッ
マクベス「西部の魔道砲台はあなた方で対応をお願いします。相手は魔法戦力が中心ですが、近づかせないよう気を配りなさい」
旧暗夜軍ボウナイトA「わかりました」パカラパカラッ
マクベス「ランサーとブレイブヒーローは東部の魔道砲台の防衛をお願いします。まだ敵の姿はありませんが、気を抜かぬように」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「わかった。行くぞ、ランサー」
旧暗夜軍ランサー女「はいはい。それより傷は大丈夫?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、メイドの治療のおかげでな。もうあのような無様な姿を、お前に見せることもないだろう」
旧暗夜軍ランサー女「そっか、それじゃお手並み再拝見させてもらおうかな」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん」タタタタタタッ
マクベス「あなたは私と来るように」
旧暗夜軍メイド「はい、マクベス様」
マクベス「それで、最初に敵が到達する場所は?」
旧暗夜軍メイド「中央です。多くの戦力がここに集中していますが、道幅の狭くなったところを抑えれば、問題なく対処できるはずです」
マクベス「ふむ……」
旧暗夜軍メイド「いかがしますか?」
マクベス「まずは中央を抑え込みましょう。どうやら、先陣を切っているのはカムイ王女のようですからね。何か策があるのかもしれません」
旧暗夜軍メイド「わかりました」
マクベス(もっとも、どのような策であろうとも蹴散らすまでのこと)
マクベス「行きましょう」タタタタッ
旧暗夜軍メイド「はい、マクベス様」タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷出口の村「中央区域・中央部弓砲台付近」―
旧暗夜軍兵士「敵、さらに接近!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「よし、こっちから挨拶してやるぜ。全員、構えろ!」
旧暗夜軍兵士『……』チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「砲台は指示があるまで各自判断で攻撃、どんどん敵に矢を送ってやれ!」
旧暗夜軍弓砲台兵「わかりました、攻撃開始します」ガシャコンッ!
バシュシュンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「俺たちも攻撃開始だ! 一斉射!」
旧暗夜軍兵士『!!!!』バシュッ!
新生暗夜軍兵士「敵の攻撃、来ます!」
マークス「騎馬隊は散開しつつ、敵の攻撃を引きつけに入る。カムイ、進軍は任せたぞ!」
カムイ「はい、マークス兄さん。フローラさん、ブノワさん、敵の攻撃が来ます!」
フローラ「はい、カムイ様」
ブノワ「ああ、防御陣形に入る……各自、防御姿勢で待機しろ…」
新生暗夜軍ジェネラルA「わかりました、敵の攻撃が来るぞ。歩兵は我々の陰に隠れるんだ!」
ヒュン!
ヒュンッ ガッ ドスススススッ
新生暗夜軍ジェネラルB「この程度の攻撃なら、なんとも――」
ヒューンッ ドゴンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「がっ!!!!」グラッ
カムイ「! 大丈夫ですか」
新生暗夜軍ジェネラルB「ぐっ、だ、大丈夫です。さすがに砲台ですね、そこらの矢と比べ物にならないくらいに重い……」
カムイ「フェリシアさん、この方の手当てを」
フェリシア「はい、わかりました」
カムイ(やはり、砲台の破壊力は侮れませんね。ですが、発射間隔はそれほど速いわけでは無いようですね。どうにか装填の合間に距離を詰めて中央を越えましょう。こちらが中央を越えようとすれば、敵はこちらを抑えに出てこなくてはいけなくなりますからね)
カムイ「進軍を続けます。フローラさん、先行をお願いできますか?」
フローラ「はい、お任せくださいカムイ様。フェリシア、援護をお願いね」
フェリシア「はい、姉さん!」
旧暗夜軍兵士「敵部隊、進軍を再開!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「敵がそろそろ中央に差し掛かるか。なら、こっちも出るしかねえ。砲台は後方への攻撃に専念しろ」
旧暗夜軍アドベンチャラー「重装兵隊と騎馬隊はあの一団に攻撃を仕掛けろ。一気に叩き潰して敵の戦力を削ってやれ!」
旧暗夜軍アドベンチャラー(柵と杭を避けてきた奴らを騎馬隊と重装兵で抑えれば、それで敵の進軍は止まる。あとは、それを叩けば終わりだ)
旧暗夜軍ジェネラル隊長「はっ! 全員進め!」
旧暗夜軍パラディン隊長「各員、突出した敵側面へ撃を仕掛けよ」
ザッ ザッ ザッ
パカラパカラッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「俺達はこのまま援護を続ける。間違えても味方に矢を当てたりするんじゃねえぞ」
旧暗夜軍弓兵「はっ!」
旧暗夜軍アドベンチャラー(へっ、そう簡単に中央を越えられると思うなよ)
旧暗夜軍アドベンチャラー「蜂の巣にしてやるぜ」
ヒュン!
キィンッ カァンッ!
カムイ「っ、攻撃が激しくなってきましたね。フローラさん、大丈夫ですか?」
フローラ「大丈夫、他の皆は問題ありませんか?」
新生暗夜軍ジェネラルA「はい、こちらは問題ありません。まだまだいけます」
アクア「カムイ、正面から敵の重装兵と騎馬隊がやってくるわ」
カムイ「マークス兄さんの予想通りですね。敵の動きは?」
フローラ「前方からジェネラルの分隊、敵の騎馬隊は左右に展開しています」
アクア「ジェネラルで正面から押さえつけて、側面をパラディンで狙うつもりね」
カムイ「ええ、でも敵は同士討ちを避けて弓による攻撃を弱めるはずです。それにここで重要なのは壁を築いて時間を稼ぐことですから。みなさん、踏ん張りどころです、がんばってください」
新生暗夜軍ジェネラルA「はっ!」
ブノワ「む、敵が来るぞ…!」
新生暗夜軍ジェネラルA「全員、何が何でも受け切れ!」
新生暗夜軍ジェネラル部隊『おーーーっ!!』ザッ
ザッ ザッ ザッ!
旧暗夜軍ジェネラル「掛れ!!!」
旧暗夜軍兵士たち『うおおおおおーーーっ!!!』ガシャンガシャンッ!
新生暗夜軍ジェネラルA「来るぞ!!!」
ドゴンッ
バゴンッ
グアアアアッ!
ブノワ「ぐっ!!!」ググッ
フローラ「ふんっ」ガッ
旧暗夜軍兵士「ちっ、崩せないか」
カムイ「どうにか耐え切りましたね。フェリシアさん、今です!」
フェリシア「はい! それっ!」チャキッ シュパッ
ザシュッ!!!
旧暗夜軍兵士「がっ、目が、うがああっ!」
新生暗夜軍ジェネラルA「はああっ」ググッ ドゴンッ!!!
旧暗夜軍兵士「が……、この!!!!!」ググッ
フローラ「くっ、この程度で!」チャキッ
フローラ(重装兵だからと言って、受け切るだけが能ではありませんよ!)
フローラ「はああああっ」ブンッ
バギィッ!!!
旧暗夜軍兵士「ぐおおおおあああっ……」ドササッ
フローラ「はぁはぁ……」
カムイ「フローラさん、お怪我は?」
フローラ「大丈夫です。それよりも、カムイ様は指示に専念をお願いします。今、ここで私たちの事を気にされては、敵に隙を許しかねません」
カムイ「わかりました。フェリシアさん、重装兵の方々への治療を最優先にお願いします」
フェリシア「わかりました!」
カムイ(どうにか重装兵の正面攻撃を耐えることはできました。なら、次に来る敵の攻撃は……)
アクア「カムイ、左右から敵の騎馬隊がくるわ」
カムイ「皆さん、側面からの攻撃に備えてください! 何としてでも騎馬の突撃を喰い止めるんです!」
ブノワ「わかった。フローラ、ここは任せるぞ…」
フローラ「ええ、お願い!」
旧暗夜軍パラディン隊隊長「よし、側面の敵防備はまだ済んでいない。この機を逃すな!」
ヒヒーンッ
パカラパカラッ
新生暗夜軍兵士「敵、来ます」
ブノワ「牽制する。全員、構えろ!」ザッ
新生暗夜軍兵士『!』ザザッ
旧暗夜軍パラディン隊隊長「怯むことはない、このまま敵を蹴散らせ!」
ドドドドドドドッ!!!
ブノワ「今だ!」ブンッ
新生暗夜軍兵士「当たれ!!!」チャキッ ブンッ!
ヒュン ヒュンッ
ザシュッ! ザシュシュッ!
ヒヒーンッ ドササッ
旧暗夜軍パラディン「攻撃が激しく、速度が出せません!」
旧暗夜軍パラディン隊隊長「ちっ! 小癪な真似を!」キィンッ
カムイ(ふぅ、なんとか敵騎馬隊の初撃は耐えきれましたか。ですが、何度も受け切れるものではありません。あとは、例の手がうまく行くのを待つしかありませんね……)
カムイ「頼みましたよ、カミラ姉さん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―中央区域・西部『魔道砲台周辺』―
旧暗夜軍兵士「中央の戦闘が続いています」
旧暗夜軍ボウナイトA「敵は中央から攻める選択をしたか。なるほど、重装兵を駆使して弓砲台の攻撃を受け切り距離を詰めたということか」
旧暗夜軍兵士「こちらはどうしますか?」
旧暗夜軍ボウナイトA「マクベス様からここを死守ように命を受けている。現状はここを守ることに専念するだけでいい。それで、敵の動きは?」
旧暗夜軍兵士「まだ砲台の射程外です。じりじりと距離を詰めつつあります」
旧暗夜軍ボウナイトA「そうか」
旧暗夜軍ボウナイトA(中央での戦いは苛烈を極めているようだな。さすがに敵の戦力のほぼ全てが集中しているのだ、それも仕方あるまい。しかし、最も気になるのは敵の竜騎兵がまだ姿を見せていないことだ)
旧暗夜軍ボウナイトA「中央突破のために投入する機会を伺っているということか?」
旧暗夜軍兵士「敵、増援を確認! 竜騎兵部隊のようです」
旧暗夜軍ボウナイトA「きたか、予想進路は?」
旧暗夜軍兵士「はい、現在中央に向けて進軍しています」
旧暗夜軍ボウナイトA「やはり敵の狙いは中央か。敵魔法部隊の状況は?」
旧暗夜軍兵士「はい、進軍の速度をあげたようです」
旧暗夜軍ボウナイトA「同時に侵攻して我々を釘付けにし、中央への援護に向かわせないつもりか。仕方あるまい、これより向かってくる敵を迎え撃つ。機を見て別働部隊を形成し、中央の援護に向かわせるぞ」ザッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「敵の様子はどう?」
ベルカ「……左奥の魔道砲台周辺の敵は進軍速度をあげた魔法部隊を迎撃することにしたみたい…。すぐに中央にやって来るわけではなさそうね」
カミラ「そう」
ニュクス「中央の方は、私達を迎撃するために弓兵を使うつもりみたい。みんな、構えて待っているわよ」
カミラ「あらあら、準備がいいものね」
カザハナ「うぇ~、あそこに突撃したら、一溜まりもないわね」
アシュラ「まぁ、あれに飛び込みたくはねえな」
ツバキ「ほんとうだねー」
カミラ「ええ、あそこに飛び込むのは難しいわ。もっとも――」
「狙いが中央だったらの話だけどね?」
今日はここまで
FEHで投票が行われてますね。対象に#FEも追加されてよかった。
ところでチキ嫁Pが投票対象にいないのはなぜなのか……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―中央区域・西部『魔道砲台周辺』―
旧暗夜軍兵士「敵部隊、杭を通過しました」
旧暗夜軍ボウナイトA「よし、魔道砲台は攻撃を開始せよ」
旧暗夜軍砲台兵「はっ! 攻撃を開始します!」シュオンッ
旧暗夜軍ボウナイトA「砲台の護衛は最小限でいい。群がる敵を討ち、側面から中央突破を計る敵へ攻撃を仕掛ける。行け!」
ウオオオオオーーーッ!
新生暗夜軍兵士「敵、魔道砲台の動作を確認」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「砲台の広域魔法に気を付けつつ、前進します。敵迎撃部隊の殲滅は騎馬兵を優先しなさい。近づかせてはなりませんよ」
新生暗夜軍兵士「砲台から広域魔法の詠唱痕確認!」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「砲台の攻撃に当たらないよう注意しなさい」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
ヒュオオオオオッ! ドゴンッ!
新生暗夜軍兵士「広域魔法着弾を確認、続いて敵部隊接近します!」
新生暗夜軍ソーサラー隊長「各員、迎撃開始! はあっ!」シュオンッ
ドゴンッ!
旧暗夜軍メイド「マクベス様、西部区域でも戦闘が始まったと報告がありました」
マクベス「おそらく魔道砲台へ向かった敵の目的は中央への援軍を断つことでしょう。中央突破を成し遂げるために、こちらの援軍を阻止したいはず、最小限の足止めを狙っているだけでしょう、現状西部に問題はないはずです」
旧暗夜軍メイド「敵もそれは承知で足止めを狙っているはずですから、戦力差で負けることは無いかと……」
マクベス「ならば、向こうは彼らに任せて大丈夫でしょう。注意しなくてはならないのは、奴らの動向です」
旧暗夜軍メイド「敵の竜騎兵ですね」
マクベス「ええ、中央を騎馬や歩兵で抜けるのは困難ですが。竜騎兵となれば話は別です。急襲しこちらの陣を瓦解させ、中央突破が狙いでしょう。おそらく、竜騎兵の攻撃と共に拮抗しているこの状況を敵は打開するために動くはず、何としてでも耐えなければなりません」
旧暗夜軍メイド「迎撃準備は整っています。敵竜騎兵部隊を指揮しているのがカミラ王女ですと、手強いでしょうね」
マクベス「だとしても、敵の要は間違いなく竜騎兵部隊による急襲制圧戦術であることに間違いはありませんし、カミラ王女もそれを狙っているでしょう。崩されなければ、こちらは勝利に向け一歩進むことができます」
旧暗夜軍メイド「はい、マクベス様」
マクベス(そうです、竜騎兵部隊が消え去れば敵の侵攻は打ち止めになることでしょう。未だに東部魔道砲台への敵侵攻が確認されていないことは気になりますが、敵の飛行戦力はほぼ今見えているものだけでしょう。ならば、これさえ打つことができれば……)
マクベス「……」
旧暗夜軍兵士「マクベス様。敵竜騎兵部隊が動き始めました。まっすぐ向かって来ます!」
旧暗夜軍兵士「中央激戦区の敵集団は重装兵が中央へと集結しつつあります。おそらく強行突破の準備だと思われます」
マクベス「予想通りに来ましたか。ならば、こちらも出るまでです。あなたは第二魔法部隊を指揮しなさい」
旧暗夜軍メイド「わかりました、マクベス様」
マクベス「では、行きますよ」
オオオオーーーーッ
ドドドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―中央区域・『中央南部』―
新生暗夜軍レヴナントナイトA「前方、弓砲台後方より、敵部隊の移動を確認。マクベスが率いる部隊のようです」
ニュクス「中央攻撃を見越した動きね。動きが速いわ」
カミラ「ええ、こっちも急いで手を打ちましょう。いくらカムイやマークスお兄様がいても、あの軍勢を受け続けることはできないわ」
カザハナ「冷静に分析してる場合じゃないと思うんだけど……」
カミラ「その通りね。それじゃ、こっちも動くわよ。ベルカ、先行をお願いできる?」
ベルカ「わかったわ……。ニュクス、捕まっていて」
ニュクス「ええ、きちんとエスコートしてちょうだい」
ベルカ「ええ、任せて。あなた達も付いて来て……」バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「わかりました。よしお前ら、落されるなよ!」
新生暗夜軍ドラゴンマスター部隊員『はっ!』バサバサッ!
カミラ「私達は先行した部隊が右翼からの攻撃を仕掛けるタイミングに合わせて、侵攻するわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「了解です!」バサバサッ
カザハナ「それにしても、この作戦、本当に大丈夫なのかな? 途中で落とされたりとかは勘弁してほしいんだけど」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「お任せください! 必ずや、送り届けてみせます」
カザハナ「わかった、頼んだからね」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「はい、しっかり捕まっていてください!」バサバサッ
ツバキ「アシュラ、到着したら頼むよー」
アシュラ「ああ、任せておけ。さっさと無力化してやるさ」バサバサ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍弓砲台兵「敵竜騎兵部隊、接近してきます!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「来やがったな! 弓を構えろ!」
旧暗夜軍アドベンチャラー(かなりの量だが、マクベス様の部隊も向かってる。ある程度減らせればこっちの勝ちだ)
旧暗夜軍弓兵「射程に入りました!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「……放て!!」
バシュンッ
パシュシュッ!!!
ザシュッ ザシュシュッ!
旧暗夜軍弓兵「くそ、落ちねえ」
旧暗夜軍アドベンチャラー(ちっ、攻撃が当たってる奴もいるが、撃墜までには至らねえか……。中央で戦ってる味方を攻撃するつもりなら、その背中を撃ち抜いてやれるんだが……」
旧暗夜軍弓兵「敵竜騎兵部隊、さらに前進を開始! こちらに向かってきます!
旧暗夜軍アドベンチャラー「照準を合わせておけ、接近してくる奴らを迎え撃つぞ。十分に引きつけろ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「敵、第二射の準備に入りました」
ベルカ「わかった……。右翼からの攻撃、頼んだわ」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「はい。お任せください! 右翼へ展開する部隊は私に続け!」
新生暗夜軍ドラゴンマスター部隊「了解しました!」バサバサッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍弓兵「敵、射程に入ります!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「射て!!!」
パシュッ
バシュンッ!!!
バサバサッ
旧暗夜軍弓兵「敵、左右に展開します」
旧暗夜軍アドベンチャラー「ちっ、側面から攻撃するつもりか!」
旧暗夜軍弓兵「東に逃れた敵が攻撃態勢に入りました」
旧暗夜軍アドベンチャラー「東から対処しろ。西の奴らは弓砲台で牽制、近づけさせるな!」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「いくぞ! うおおおおおっ!!!」バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスター部隊『おおおおおっ!!!』 バサバサッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「各自、迎撃しろ!」
旧暗夜軍弓兵「喰らえ!!!」チャキッ パシュッ
ズビシャッ! グオオオオッ ドスンッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(中央部の拮抗地帯への攻撃より、こっちの砲台を落としに来やがったってことか。ここを抑えて、中央への支援が出来ないようにするのが狙いか)
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「くらえっ!」チャキ ブンッ
サッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「甘いんだよ!」チャキッ パシュッ
ザシュリッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「がっ……」ドササッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「どうにか、なったか」
旧暗夜軍アドベンチャラー(だが、このままじゃまずい。西側に分散した敵と、まだ向かってきてるレヴナントナイトの部隊が残ってる。この状況で、攻撃を仕掛けられたら……)
旧暗夜軍弓兵「! 後続の敵、こちらに向かって移動を開始!」
旧暗夜軍アドベンチャラー「くそ、思ったらすぐこうなるか!? 正面の襲撃に備えろ。西側もだ!」
旧暗夜軍弓兵「駄目です、人員が足りません」
旧暗夜軍アドベンチャラー「人員に余裕がないのはわかってる。だが、ここを落とされれば、中央への支援個所を一つ失うことになる。どうにかして守り抜くんだ」
旧暗夜軍弓兵「しかし、現実的に人数が、一方向守るのでも手一杯の状況では……」
???「ならば、正面を私が受け持ちましょう」
旧暗夜軍アドベンチャラー「マ、マクベス様……」
マクベス「どうにか間に合ったようですね。話は後です、正面は私に任せて、あなた方は側面の対処に当たるように」
旧暗夜軍アドベンチャラー「わかりました! よし、形勢逆転だ。向かってくる奴らを一匹残らず打ち落とすぞ」
旧暗夜軍弓兵「はっ!」
旧暗夜軍メイド「マクベス様、私はもう一方の弓砲台へ向かいます」
マクベス「はい、東部の魔道砲台へ向かう敵の部隊が確認されています。状況によっては、そちらへの援護に出てください」
旧暗夜軍メイド「わかりました」タタタタタッ
マクベス「もっとも、この急襲を耐えきれば、敵に打てる策は無いも同然ですがね」
旧暗夜軍ソーサラーA「マクベス様、敵竜騎兵の後続が来ます」
マクベス「ふっ、空を飛んでいることを有利だと思っているのかもしれませんが、それは間違いというものです」スッ
マクベス(この魔法の前ではその優位こそが敗北に繋がることを――)
(その身で知ってもらうとしましょう……)
今日はここまで
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷入口の村内部『中央区・左弓砲台周辺』―
新生暗夜軍レヴナントナイトA「弓砲台正面に敵部隊展開を確認。マクベスの部隊です!」
カミラ「ベルカ達が展開した後で良かった。あの子たちじゃ、魔法攻撃に対処し続けるのは厳しいもの」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はい。ですが、敵は全方位に対処できる形になっています。このままでは……」
カミラ「……」
カミラ(おそらくだけど、こちらの動きにマクベスはいち早く勘付くはず、そうなってしまったらおしまいね。なら……)
カミラ「カザハナ、ツバキ、アシュラは先に進みなさい。私が敵を引きつけるわ」
カザハナ「え、それってすごく危険なんじゃ……」
カミラ「大丈夫、私を信じなさい。それよりも、本命をあなた達に任せることになるのだから、しっかり決めてちょうだい」
ツバキ「わかった。こっちは俺達に任せてください、カミラ王女」
アシュラ「ああ、きっちり決めてやるさ」
カミラ「ふふっ、頼りにしているわ。あなたたち、私と一緒に来てくれる?」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はい、カミラ様。仰せのままに」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「お任せください、カミラ王女」
カミラ「他は手筈通りに進みなさい。さぁ、私達の力を見せつけるわよ」
新生暗夜軍兵士一同『はっ!』
バサバサバサッ
旧暗夜軍ソーサラーA「マクベス様、敵接近します」
マクベス「砲台に近づかせてはなりません、各自迎撃を開始しなさい」
旧暗夜軍魔法部隊『はっ!!!』
シュオオオンッ バシュンッ!
シュオオオオンッ ドゴンッ!
新生暗夜軍竜騎兵「っ、なんて魔法の量だ」
新生暗夜軍竜騎兵「だが、動いていればそう当たるものでは無い。このまま先を目指すぞ」
旧暗夜軍魔法部隊「ちっ、ちょこまかと……」
バサバサバサッ
マクベス(さすがに高速で飛翔する相手に直撃させるのは難しいことを敵もわかっている。ですが、この魔法に直撃などという概念はありません。ただ、巻き込むだけでいいのです)
マクベス「その力、暗夜を語る裏切り者たちに示す時です」シュオオオオオオオオンッ
ヒュオオ……
マクベス「エクスカリバー!!!」ヒュオオオオオッ!
新生暗夜軍竜騎兵「な、なんだ。これは風?」
新生暗夜軍兵士「風の渦、一体なにが――」
ヒュオオオオオオオッ
ギギッ ザシュシュッ!
新生暗夜軍竜騎兵「がっ、ぎっ、が、がらだが―――」
新生暗夜軍兵士「ひき、ちぎられ――」
ブチャッ! ドササッ
新生暗夜軍兵士「」
新生暗夜軍竜騎兵「」
マクベス「まず一騎……」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「カミラ様、あの魔法は……」
カミラ「初めて見るわ。出し惜しみをするつもりはないということね」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「広範囲を巻き込む強力な魔法なようです。進軍方角に出されれば、多くの味方が巻き込まれてしまいます」
カミラ「先を行くあの子たちを落とさせるわけにはいかない。マクベスに攻撃を仕掛けるから、あなた達は周囲の兵をお願い」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「分かりました、カミラ王女」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「了解です」バサバサッ
カミラ「……行くわよ」
マクベス「はあっ! 死ねぇ!!!」シュオオオンッ
ヒュオオオオオッ!
ギャアアアアッ!!
ドササッ
マクベス「ふっ、簡単に落ちるものですね。暗夜王国の名を騙る裏切り者共にふさわしい最後です」
バサバサッ
マクベス「む?」
カミラ「マクベス!」チャキッ
マクベス「!」サッ
カミラ「はあああああっ!」チャキッ ブンッ
ドゴンッ
マクベス「おやおや、まさか王女ご自身から殺されに来るとは。犯した罪の重さに、ようやく気が付きましたか?」
カミラ「あら、その罪に気づいたのなら見逃してくれるのかしら?」
マクベス「おかしなことを口にされる。ガロン王様が築いた暗夜王国を裏切った罪は、死をもって清算される以外の道などありえはしません!」バッ
ヒュオオオッ
カミラ(来る!)バササッ
ヒュオオオオオオオオオオオッッ!!!!
グオオオオオッ! バサッバサッバサッ
カミラ「っ!」
カミラ(なんて力、少しでも力を緩めたら渦に巻き込まれない)
カミラ「だけど、この距離なら」
バサササッ
マクベス「ちっ」
カミラ(あぶなかった。直撃を狙わなくて大丈夫なくらい、広範囲を巻き込む魔法の類のようね……)
カミラ「面倒なものを隠していたのね、あなた」
マクベス「ふん、ガロン王様の忠実なる臣下である私が使う最上級の魔法です。貧弱なものであっていいわけがないのですよ。もっとも、それをこのような形で使うことになるとは思ってもいませんでしたが!」シュオンッ
ヒュオオオオッ!
カミラ(風の流れ、左から来る)バササッ
ビュオオオオオオオオオオッ!
カミラ「っ!」
グオオオオオッ
カミラ(詠唱から渦が出来上がるまでの時間が早い、巻き込まれる!)
ザシュシュッ
グオオオオオオッ!!!
カミラ「ぐっ!」ザシュシュッ
マクベス「くくっ、これで終わりです、カミラ王女」
カミラ「っ、そうはいかないのよ!」チャキッ ブンッ
ヒュンヒュンヒュンッ!
マクベス「なっ!」
ザシュッ
マクベス「ぐっ!」ポタタッ
旧暗夜軍ソーサラー「マクベス様!」
シュオオオオ……
カミラ(風がわずかに弱まった、今なら!)
カミラ「はああああっ!」ググッ
グオオオッ
バサバサバサッ!
マクベス「っ、逃がしましたか。足掻くことなく諦めてしまえばいいものを……」
カミラ「生憎だけど、生きている間は諦めない事に決めたのよ」
マクベス「ガロン王様の築いた暗夜を裏切ることで得た覚悟に価値などあってなるものか……」
カミラ「マクベス……」
マクベス「っ、なるものか。くらえ――」スッ
新生暗夜軍レヴナントナイトB「ムーンライト!」シュオンッ
マクベス「!」
バシュッ!
マクベス「ぐっ!」フラッ
新生暗夜軍レヴナントナイトA「カミラ様、こちらです」
カミラ「ありがとう」
マクベス「っ、逃がすか!」シュオンッ
ヒュオオオオオッ!
新生暗夜軍レヴナントナイトA「退け!」
新生暗夜軍レヴナントナイトB「はっ!」
バサバサッ!
マクベス「逃がしましたか……。あと少しだったというのに、っ……」ポタタタッ
マクベス(苦し紛れとはいえ正確に当ててきますか……。しかし、あの状況になっても諦めずに抗うとは……)
マクベス「まったく、本当に嫌になりますね。そういったところに、ガロン王様の子だという事実を感じてしまうというのは……」
マクベス(傷口は思ったよりも浅い、この程度の傷ならば応急処置だけで十分……)
マクベス「はぁ、はぁ……。よし、まだ大丈夫ですね」
旧暗夜軍ソーサラー「マクベス様、大丈夫ですか!?」タタタタッ
マクベス「ええ、問題ありません。すでに処置は済ませましたので。そんなことより、敵が再度攻撃を仕掛けてくるでしょうから備えなければ……」
旧暗夜軍ソーサラー「それなのですが、敵竜騎兵は回避行動を取りつつ、西へと向かっているようなのです」
マクベス「西……!」
マクベス(そうか、カミラ王女がわざわざ向かってきたのは……)
マクベス「………アドベンチャラー」
旧暗夜軍アドベンチャラー「はい、マクベス様」
マクベス「至急、お願いしたいことがあります」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷入口の村内部『中央西区域・魔道砲台周辺』―
バサバサッ
バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「敵、魔道砲台の射程まであとわずかです」
ベルカ「魔法部隊を迎撃に向かった敵部隊は?」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「彼らもこちらに気づいたようですが、魔法部隊に妨害されてまだ動き出せてはいないようです」
ニュクス「仕掛けるなら今ね」
ベルカ「ええ、一気に距離を詰めて砲台周辺を制圧するわ。突撃!」バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「いくぞ!」バサバサッ
バササササッ!
旧暗夜軍兵士「敵竜騎兵、こちらに向かって前進してきます!」
旧暗夜軍ボウナイトB「ちっ、奴らの本命はこっちだったということか。戦線に上がった味方が戻って来るまでなんとしても守り抜く。砲台は標的を向かってくる竜騎兵を攻撃しろ!」
旧暗夜軍魔道砲台兵「はい、攻撃開始します!」
シュオンッ ゴオオオッ!!!
ニュクス「砲台から攻撃が来るわね。どうする?」
ベルカ「私達を狙っているみたい。あなた達はこの隙に前進して」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「わかりました!」バサバサッ
ニュクス「来るわ!」
ベルカ「回避する、しっかり捕まって」ググッ
バシュンッ!
ザシュッ!
ベルカ「っ!」
ニュクス「ベルカ、大丈夫!?」
ベルカ「かすり傷よ。懐に入ってさっさと無力化するわ。後方のレヴナント部隊の状況は?」
ニュクス「安心して、もう合流したわ」
バサバサッ
新生暗夜軍レヴナントナイトC「すまない、少し遅れたようだ」
ベルカ「いいえ、問題ないわ。カミラ様は?」
新生暗夜軍レヴナントナイトC「カミラ様は敵部隊の注意を引くと、中央区域に攻撃を……」
ベルカ「そう……わかったわ。カミラ様ならきっと大丈夫、私たちは私たちの役割を果たすわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトC「はい」バサバサッ
ベルカ「……」
ニュクス「心配?」
ベルカ「……少しだけ」
ニュクス「少しだけ、ね?」
ベルカ「ええ、少しくらいでいいの。カミラ様はそんな簡単に死ぬような人じゃないことくらいわかっているから。それよりも、言われた通りの仕事を熟せなかった時のことが心配ね」
ニュクス「もしかして、酷いお仕置きをされるのかしら」
ベルカ「ええ、お風呂でもみくちゃにされるのは慣れないわ……」
ニュクス「え、それだけ?」
ベルカ「それだけ、じゃないわ。あなたは知らないからそう言えるだけよ」
ニュクス「そうね、体験していないからわからないけど」
ベルカ「体験しない方がいいと思うわ。そういうわけだから、さっさと制圧に向かいましょう。成功させて後顧の憂いは経たないといけない」
ニュクス「ふふ、そうね。さっさとそうしましょう」
バサバサッ
旧暗夜軍兵士「この!」
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「くらえ!!!」
キィンッ!
カキィン ザシュンッ!
旧暗夜軍兵士「ぐああああっ!」ドサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「よし、やったぞ!」
旧暗夜軍弓兵「くそっ、当たれ! 当たれ!!!」チャキッ パシュンッ
ザシュンッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターB「ぐああああっ!」ドササッ!
旧暗夜軍弓兵「よし、一人やったぞ! このまま、もう一騎――」
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「はあああっ!!!」ググッ ブンッ
ヒュンヒュンッ ザシュンッ!!!
旧暗夜軍弓兵「ぐえっ……」ドサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「レヴナントの後続部隊も合流した。恐れることは無い、このまま押し切れ!」バサバサッ
ウオオオオッ!
バサバサッ!
旧暗夜軍ボウナイトB「ちっ、増援はまだなのか!」
旧暗夜軍兵士「もう少しです。ですが、多くの兵を中央部への支援部隊として送ることにしていたこともあって、もうここにいる戦力で守り切るのは……」
旧暗夜軍ボウナイトB「悲観してる暇があるなら手を動かせ、敵はどんどん迫っているんだ。マクベス様のために、この戦い負けるわけには!」
バサバサッ
旧暗夜軍弓兵「くそっ、ちょこまかと動きやがって、素直に落ちろ!」パシュンッ!
スカッ
旧暗夜軍弓兵「っ、また避けやがった! 今度こそ当てて――」
ザシュッ……
旧暗夜軍弓兵「がっ……」ポタッ ポタタッ
アシュラ「すまねえが、当てる機会はもうねえよ」
ズシュリッ
ドサッ
旧暗夜軍弓兵「」
アシュラ「……悪いな」
新生暗夜軍兵士「アシュラ様。地上戦部隊合流しました」
アシュラ「よし、それじゃさっさと奪い取るぞ。逃げる敵は放っておいていい、向かってくる奴は倒す。敵の援軍が到達するよりも前に終わらせるんだ。進め!」
ワアアアアアッ!
ドドドドドドドッ!
旧暗夜軍ボウナイトB「! 敵の地上戦部隊!?」
旧暗夜軍兵士「は、はい。竜騎兵と共に移動してきたようで……」
旧暗夜軍ボウナイトB「くそ!」
旧暗夜軍ボウナイトB(だめだ、この敵の数では押し切られる。味方の援護は間に合わない……。ここは落ちる)
旧暗夜軍ボウナイトB「ここまでか……」
ヒュイイイイイィィンンッ!‼‼‼
旧暗夜軍ボウナイトB「この音は?」
旧暗夜軍兵士「中央からの合図です! この合図は……」
旧暗夜軍ボウナイトB「マクベス様……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷入口の村内部『中央区・左弓砲台周辺』―
旧暗夜軍アドベンチャラー「合図あげましたよ、マクベス様」
マクベス「わかりました。あなた方は引き続き中央区への攻撃を継続しなさい」
旧暗夜軍アドベンチャラー「了解しました。よし、弓砲台は引き続き敵の先頭を攻撃し続けろ!」
旧暗夜軍弓砲台兵「はっ!」
マクベス「くっ、このような初歩的な策に乗せられるとは……」
マクベス(カミラ王女を含めた少数の飛竜兵の攻撃が陽動だと気づいていれば、西部に向かう本命への挟撃が成功していたというのに……)
マクベス「西部砲台周辺は破棄します。あなた方は中央へ撤退してくる仲間の援護に向かいなさい」
旧暗夜軍兵士「わかりました、マクベス様!」タタタタタッ
旧暗夜軍ソーサラー「マクベス様、我々はいかがします?」
マクベス「西部の奪還は不要です。西部を失う事で敵に選択を与えるのは癪ですが、ほぼすべての飛竜部隊は西側に集結しています。こちらの動きに横槍を入れられる敵はいません」
マクベス(二方面から圧力を掛けていく算段なのでしょうが、その準備が整っていない今は唯一の隙、付け入ることのできる絶好の機会でしょう)
マクベス「敵の戦力は分散しているいまが、中央戦況を掌握する最大のチャンスです。敵の戦列を薙ぎ払い勝利を手にするときです」ザッ
旧暗夜軍魔法部隊『はい!』ザッ!
マクベス「進軍!」タタタタタッ
旧暗夜軍魔法部隊『オオオオーーーッ』ドドドドド
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「アクアさん、戦況の方は?」
アクア「カミラ達はうまくやってくれたみたい、西部の砲台陣地から敵が撤退しているようだわ。だけど、少しまずいことになったわね」
カムイ「というと?」
アクア「中央に到達した敵援軍が、こちらに向かっているわ。残念だけど西部奪還のために敵が動くというシナリオではなくなったみたいね」
マークス「そうか、読みが外れてしまったようだな」
カムイ「ええ、敵が西部砲台の奪還に動くと同時に戦線を押し上げるつもりでしたが、そう、うまくはいきませんか……」
マークス「フローラ、敵部隊の構成は?」
フローラ「魔法を中心としているようです。こちらの部隊構成では厳しい相手になります」
カムイ「中々に厳しい戦況ですね」
ブノワ「それと西部の戦線にいた敵も、こちらに向かってきている。敵の攻撃はさらに激しくなるだろう…」
フェリシア「だ、大丈夫でしょうか?」
カムイ「マークス兄さん、どうします。先ほどの比ではない敵が迫っているようですが」
マークス「ああ、こちらは消耗も激しくなっている。あと耐えられるのも一度くらいだろう。一度下がれば、そのまま押し潰されかねない」
カムイ「カミラ姉さんたちの攻撃が始まって、敵が退くまで耐えるしかありませんか」
マークス「いや、まだ手が無いわけではない」
カムイ「え?」
マークス「作戦の手順を変えるまでだ。至急、東部に向け合図を出してほしい」
新生暗夜軍兵士「わかりました」
カムイ「東部……ということは」
マークス「ああ、今できることはこれだけだ。あとは、それが実を結ぶように信じよう」
カムイ「はい、マークス兄さん」
マークス「全員聞いてくれ、西部砲台周辺の制圧は成功した。援軍到着もあと少しで到着する、ここが雌雄を決する正念場だ。私と共に勝利を掴むため、戦ってほしい」
新生暗夜軍兵士たち『オーーーーーッ!』
フローラ「敵援軍、もうすぐ接触します!」
マークス「新しき暗夜の力、存分に見せつけるのだ!」スッ
「迎撃開始!」バッ
今日はここまで
この頃更新頻度が下がって申し訳ないです。
煤闇、中々に難易度高かった。
乙
リリス実装おめでとう!
◆◆◆◆◆◆
―渓谷入口の村内部・中央区『中央戦線』―
旧暗夜軍弓兵「くらえっ!」パシュッ
キィンキィンッ!
新生暗夜軍ジェネラルA「ふん、その程度の攻撃でこちらが退くと思うか!」
フローラ「正面の敵にだけ気を取られないで、側面から敵の騎馬隊が来るわ。ほとんどがアーマーキラーを装備しているみたい」
新生暗夜軍ジェネラルA「ほとんどって……」
フローラ「こんなに露骨な隊列を組んでいる以上、それに対処しに来るのは当然ということね……」
ブノワ「ああ、気を抜くはわけにはいかない……」
マークス「弓兵隊、側面から迫る騎馬隊に集中攻撃せよ!」
新生暗夜軍兵士「はい、マークス様!」チャキッ
旧暗夜軍パラディンA「敵の防御も揺らぎ始めている。マクベス様の到着まであとわずか、あと一手まで敵を追い込むぞ!」
旧暗夜軍パラディン隊『おーーーっ!』
新生暗夜軍兵士「敵部隊左右に展開!」
マークス「攻撃せよ!」チャキッ
新生暗夜軍兵士「くらえっ!!!」パシュッ!
グアアアアッ ヒヒーンッ ドササッ
旧暗夜軍パラディンA「怯むことはない、進め! この程度のことで我々は止まるものではないと、奴らに見せつけてやれ!」ググッ
旧暗夜軍パラディンB「よーし! 今度はこっちの番だ。これでも喰らいやがれ!!!」チャキッ ブンッ!
新生暗夜軍ジェネラルB「くそっ!」グッ
ガギィンッ ギギギッ ズビシャアアッ!‼‼
新生暗夜軍ジェネラルB「ぐああぁぁ……」ガシャンッ ドサリッ
旧暗夜軍パラディンB「へっ、分厚い鎧もこれの前じゃ、果物の皮みたいだぜ。この調子で、全員丸裸にしてやる!」チャキッ
フローラ「カムイ様、左翼部隊に損害が出始めています!」
カムイ「私たちでカバーします。ブノワさんとフローラさんは引き続き応戦してください」
フローラ「わかりました、カムイ様」
ブノワ「ああ、ここは任せてくれ」
カムイ「はい! アクアさん、フェリシアさんは私と共に左翼の防衛へ!」
アクア「ええ、急ぎましょう。マークスたちも援護しているようだけど、左翼から来る敵の数のほうが多いわ」
フェリシア「きちんとサポートしますね、カムイ様」
カムイ「ええ、お願いします」タタタタッ
ブノワ「フローラ、後方から援護してくれ。攻撃は俺が受け止める……」
フローラ「わかったわ。援護は任せて」チャキッ
ドドドドドドッ
旧暗夜軍パラディンC「向こうの攻撃は始まったか。よし、こちらも攻撃開始する。敵の壁を削ぎ落してやる!」
ブノワ「……」グッ
旧暗夜軍パラディンC「身構えたところで何も変わらないというのに」チャキッ
旧暗夜軍パラディンC(受け止められるものなら、受け止めてみろ!)
ブノワ(大丈夫だ。薬もある、おまもりも準備してきた。なにより、後ろにはフローラがいる……)
ブノワ「問題ない……。生き残ってみせる……」グッ
旧暗夜軍パラディンC「はあああっ!」ググッ ザンッ!
ガキィンッ! ギギギギギッ キィンッ!!!
ザシュッ……
ブノワ「っ!!!」ポタタタッ
旧暗夜軍パラディンC(ちっ、鎧を完全に破壊しきれなかったか。だが、次の一撃で終わらせられる。反撃に対処して、あとは後ろからの攻撃に気を付ければ――)チラッ
ブノワ「……」ゴゴゴゴゴッ
旧暗夜軍パラディンC「な、なんだこの威圧感は!!!」ビクッ
ブノワ「そこだ……」チャキッ シュッ
ザシュッ!
旧暗夜軍パラディンC「がっ……」
フローラ「そこよ!」パシッ ヒュンッ
旧暗夜軍パラディンC「しま――」
ズシャリッ!
旧暗夜軍パラディンC「うううっ……」ドササッ
ブノワ「ありがとうフローラ、助かった……」
フローラ「気にしないで、それより次が来るわ」
ブノワ「ああ、任せてくれ」
ブノワ(これなら、何が来ても怖くはない……。恐怖に負ける事無く戦える)チャキッ
ブノワ「ここは必ず守り抜く……。絶対に……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タタタタタッ
カムイ「アクアさん、マクベスさんの部隊が到着するまであとどれくらいですか?」
アクア「もう時間は無いわ。その前に、左翼の立て直しを図らないと、負傷した兵も多いみたい」
カムイ「フェリシアさん、まずはジェネラルのみなさんの治療を優先してください」
フェリシア「わかりました! みなさん、今治療を行います!それっ!」シュオンッ
アクア「それで、どうするの?」
カムイ「これ以上の消耗は無視できません。このまま防戦に徹していても、今行われている敵の攻撃、そしてマクベスさんが率いる援軍の攻撃が重なればあっという間に蹴散らされてしまうでしょう。ですから、こちらも打って出るしかありません。最低でも今行われている敵の攻撃は抑えなくてはいけません」
アクア「わかったわ。だけど、どうするの? ジェネラル部隊を動かすというわけには……」
マークス「カムイ、打って出るのか?」
カムイ「はい、もう遠距離から相手を抑えることはできません。もう、マクベスさんの援軍はすぐそこまで迫っている状況、すでに勝負は見えています。なら、こちらから仕掛け、敵の足を止める以外に手は無いと思います」
マークス「……わかった。ならば、私が前に出よう。お前たちも行けるか?」
新生暗夜軍パラディン隊「はい、マークス様」
マークス「我々が先行し、敵の騎馬兵力の殲滅に掛かる。カムイ、お前たちは抜けた敵の迎撃を行ってくれ」
カムイ「わかりました」
マークス「よし、現在もっとも敵の攻撃がない戦列はどこだ?」
新生暗夜軍パラディンA「左翼に一箇所あります」
マークス「よし、そこのジェネラル達に伝えよ。これより打って出ると」
新生暗夜軍パラディンA「はっ! 左翼、中央の部隊に伝達、道を開けよ! こちらも打って出るぞ!」
新生暗夜軍ジェネラルC「よし、聞いたか。ここをマークス様達が通られる、戦列を整理し、道を作れ!」
ガシャンガシャンッ!
ザザッ
アクア「すごい、こんなわずかな時間で……」
マークス「よし、行くぞ! 私に続け!!!」
新生暗夜軍パラディンA「いけ、マークス様に続くのだ!」
オオオーーーーッ!‼‼‼
カムイ「よし、私たちも行きましょう、アクアさん」
アクア「ええ」
フェリシア「カムイ様、皆さんの治療の方は終わりました」
カムイ「フェリシアさん、ありがとうございます。私たちは接近してきた敵を討ちます。一緒に来てください」
フェリシア「わかりました!」
カムイ「弓兵の皆さんは敵の騎馬戦力に向けて矢を放って進路の妨害をお願いします」
新生暗夜軍弓兵隊「わかりました、カムイ様。全員構え、打て!!!」
パシュシュシュッ
ヒュンヒュンッ
旧暗夜軍パラディンB「おい、敵が出て来やがったぞ!」
旧暗夜軍パラディンA「なに!?」
旧暗夜軍パラディンB「おまけに矢も飛んで来やがった!」
旧暗夜軍パラディンA「ちっ 敵の矢が進行方向に来るぞ、各々攻撃を避けて進軍を続けろ!」
ドドドドドドドッ
新生暗夜軍パラディンA「敵の部隊、展開しました」
マークス「殲滅せよ!」チャキッ ブンッ
ドドドドドドッ
旧暗夜軍パラディンD「な、マークス王子!?」チャキッ
マークス「そこにひれ伏せ!!!」ブンッ
ザシュンッ
旧暗夜軍パラディンD「ぎゃああっ!」ドササッ
旧暗夜軍パラディンE「くそっ、攻撃を避けた所為で分断されちまった形じゃねえか! このままじゃ――」
新生暗夜軍パラディンA「そこだ!」ブンッ
ガキィンッ
旧暗夜軍パラディンE「っ、そう簡単にやられてたまるか!」ブンッ
キィンッ
カキィンッ!‼‼
旧暗夜軍パラディンA「ちっ、だが、突破できればこっちのものだ!」
旧暗夜軍パラディンB「おらおら、邪魔するんじゃねえ!!!」
ドドドドドドドッ
カムイ「はあああっ!」ブンッ ザシュッ!!!
旧暗夜軍兵士「ぎゃあああっ!」ドササッ
アクア「これで」チャキッ ザシュシュッ
旧暗夜軍兵士「ううっ……」ドサッ
フェリシア「てやぁ!!!」シュパッ
旧暗夜軍兵士「がはっ……」ドササッ
フェリシア「これで今いる敵は全部です」
カムイ「ええ、そのようですね。アクアさん、そちらは大丈夫ですか?」
アクア「なんとか片づけたわ。だけど、まだ敵は向かってくるみたいよ」
カムイ「ええ」
カムイ(西部砲台の敵戦力も次々とこちらの攻撃へと移行しているようです。敵の戦力を減らせたとしても、このままでは……)
ドドドドドドッ
フェリシア「カムイ様! 敵です!!!」
カムイ「!」
旧暗夜軍パラディンA「はあああああああっ!!!!」チャキッ
フェリシア「カムイ様、やああっ!!!」シュパッ!
旧暗夜軍パラディンA「ふんっ!!!」ブンッ キィンッ
フェリシア「は、弾かれちゃいました!?」
旧暗夜軍パラディンA「喰らえええ!!!!」ブンッ
カムイ「!」サッ
カムイ(回避、いえ、この剣先は避けられるものではありません。避ける事が出来ないのならば――)
カムイ「これで!」チャキッ
シュキンッ
キィンッ!
カムイ「中々に鋭い攻撃ですね」
旧暗夜軍パラディンA「くそ、外されたか。まあいい、この距離まで近づけたのだ。貴様の命、奪い取る!」
カムイ「そう簡単に倒されるほど私は甘くありませんよ」
旧暗夜軍パラディンA「勝負だ!」チャキッ ヒヒーンッ!
カムイ「やあああっ!」チャキッ
アクア「カムイ!」
旧暗夜軍パラディンB「おっと、よそ見してる場合じゃねえぞ!」チャキッ ブンッ
シュパッ
アクア「!」サッ
旧暗夜軍パラディンB「ちっ、外したか。だが、次は外さねえ、その華奢な格好を丸裸にしてやるぜ」
アクア「そう、なら生憎だけど丸裸になるのはあなたのほうよ」チャキッ
旧暗夜軍パラディンB「へ、やれるもんならやってみやがれ!」
アクア(一撃で仕留めてあげる)
旧暗夜軍パラディンB「はああああっ!!!!」ググッ ブンッ
アクア「やああああっ!!!」ググッ ブンッ
バギンッ!!!!
旧暗夜軍パラディンB「はあ!? 俺の武器が折れ……、ちょ、まて!」
アクア「邪魔よ!」チャキッ ダッ
ブンッ ドゴンッ!!!
旧暗夜軍パラディンB「ぎゃあああっ!」ドササッ
アクア(どうにかなったわね、それよりもカムイは……)
キィンッ
キィン!
カムイ「はあっ!」ブンッ
旧暗夜軍パラディンA「っ、まだまだ!」チャキッ
カムイ(激しい剣戟です。一つ一つがとても力強い。ですが、それなら――)
旧暗夜軍パラディンA「死ねぇ!!!」チャキッ シュッ
カムイ「そこ!」
グッ
キィィィンッ
旧暗夜軍パラディンA「な、受け流しただと!?」
カムイ「ええ、避け辛い攻撃ですからね。それも、これで終わりです。取らせてもらいます」ググッ
旧暗夜軍パラディンA「っ、この!」ググッ
カムイ「はあああっ!!!」シュキンッ
ブンッ
ザシュリッ
旧暗夜軍パラディンA「ぐ……ううっ、マクベス様、申し訳……ありま……」ドササッ
カムイ「……」
アクア「カムイ!」
カムイ「アクアさん、無事で何よりです」
アクア「あなたのほうも無事でよかったわ」
カムイ「それで状況は?」
アクア「敵の攻撃部隊は散り散りになったから、どうにか戦線の維持はできた。どうにか奴が来るまでは持たせられたわ」
カムイ「……来たということですね」
アクア「ええ……」
フェリシア「カムイ様! 敵の援軍が……」
カムイ「わかっています。少なくとも、援軍が来るまでここを持たせられたのです。なら、この策は無駄ではありません。次の戦いに移りましょう」
カムイ(そう、これでどうにか繋げました。あとは信じて待つだけです。私は、それが結ばれるまであきらめるつもりはありません)
カムイ「レオンさん、頼みましたよ」タタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
渓谷入口の村内部『中央区・東部戦線』―
レオン「……」
新生暗夜軍兵士「レオン様」
レオン「敵の動きはどうだ?」
新生暗夜軍兵士「はい、敵魔道砲台の稼働を確認、兵もゆっくりとですがこちらに向かっています。中央の援護に向かう様子はありません」
レオン「敵の目的は砲台周辺の死守か……」
サクラ「レオンさん、どうしますか?」
ルーナ「中央が結構やばいんでしょ。一度全員で中央の援護に向かった方がいいんじゃない?」
シャーロッテ「応援要請も来てるじゃないですかぁ、なら援護に向かった方がいいですよ」
レオン「援護に向かうよ。だけど全員で行くことはできない。全員で移動すれば、それを見た敵は中央に向かう。そうなってしまったら中央線戦は瓦解して、僕たちは負けだ。砲台へ攻撃をする部隊と、援護に向かう部隊を作る必要がある」
エリーゼ「それで、どうするの?」
レオン「ああ、馬止めを越えられない以上、僕たち騎馬戦力が中央の援護に向かう。歩兵隊は東部魔道砲台への攻撃を頼みたい。シャーロッテとルーナにそれぞれ部隊を割り当てるから、魔道砲台の攻略を頼めるかい?」
ルーナ「任せて、なんなら制圧してみせるんだから。シャーロッテ、行くわよ」
シャーロッテ「はいはい、あ、レオン様頑張ってきますね!」
レオン「よろしく頼むよ。それとリンカにも魔道砲台の攻撃部隊に加わってほしい」
リンカ「あたしも?」
レオン「お前は高度を取れる。それを活かして、先頭で戦う皆のサポートに回ってほしい」
リンカ「そうか、わかったできる限りのことをするさ」
レオン「あと、サクラ王女は……」
サクラ「私も砲台攻撃部隊に付いて行きます」
サクラ「エリーゼさんもレオンさんも中央の援護に向かわれます。私もそれに付いて行ってしまったら、ここで戦う人たちを手当てできる人がいなくなります。それは絶対に避けるべきです。だから……、私はここに残ります」
レオン「……わかった。サクラ王女、ここを任せたよ」
サクラ「レオンさん……、はい、一生懸命頑張ります!」
リンカ「なら、サクラも動き回れる方がいいはずだ。あたしの後ろに乗りな」
サクラ「え、いいんですか?」
リンカ「ああ、その方が柔軟に対応できるだろ? 上から状況を見つつ、サクラを負傷者の元に運んで手当するって感じでさ」
サクラ「ありがとうございます、リンカさん。すみませんが、お願いします。それじゃレオンさん、行ってきます」
レオン「気を付けて」
バサバサッ
エリーゼ「やっぱり、サクラってすごいね」
レオン「本当にね。僕らも負けていられないよ」
エリーゼ「うん!」
新生暗夜軍ダークナイト「レオン様、後方から迫るノスフェラトゥの軍勢ですが、家屋を破壊しながら進み続けているようです」
レオン「お前達には奴らの足止めと誘導を頼みたい。できるか?」
新生暗夜軍ダークナイト「わかりました。二部隊ほど、戦力をお借りしますがよろしいですか?」
レオン「ああ、出来る限りでいい後方からの脅威を遠ざけるんだ」
新生暗夜軍ダークナイト「はっ!」パカラパカラッ
レオン「残りの者たちは僕に続け――」
「兄さんたちを助けに行くよ」
今日はここまで
マクベスと共に戦う兵士たちも勝利を信じる様に、カムイもまた勝利のために仲間を信じ続ける。
FEHに念願のリリスが来て、すぐにピエリと支援を結ばせました。
宿屋の中をビュンビュンと飛び回ってて可愛い。
そして、まさかのマクベスまで実装されるという、最高の出来事が重なって幸せだ。
乙
fehいろいろおめでとう
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷入り口の村『中央区域』―
旧暗夜軍ソーサラーA「敵、こちらの攻撃を退けたようです」
マクベス「さすがに防戦では耐え抜けないと判断しましたか。他の部隊は?」
旧暗夜軍ソーサラーA「はっ、西部の部隊は中央の弓砲台近辺へ撤退を終えました。部隊の再編が終了次第攻撃に加われるでしょう。ボウナイト隊は敵先発隊への攻撃を切り上げ、敵本隊への攻撃に向かっていると」
マクベス「敵の動きは?」
旧暗夜軍ソーサラーA「東部にて待機していた敵部隊が隊を分けたようです。そのうち一つが中央の援護に向かっていると」
マクベス「ふむ、東の敵戦力が全て中央へと合流してくれれば包囲殲滅も出来ましたが、まぁいいでしょう」
ザッ
マクベス「どちらにせよ、この機を逃しはしません。三カ所同時に仕掛けることとしましょう。あなたは西方面をボウナイト部隊と連携を取りつつ攻撃しなさい」
旧暗夜軍ソーサラーA「はっ」
マクベス「私たちが中央に進撃します。それを見て、残りの部隊は東方面への攻撃を開始するように。敵の目がこちらに向いている内に敵戦線に肉薄し端から切り取ってやりなさい」
旧暗夜軍ソーサラーB「お任せください、マクベス様」
マクベス「では、行動を開始しなさい」
オーーーーーッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドドドドドドッ
新生暗夜軍パラディンA「敵増援、展開していきます」
マークス「敵は魔法戦力が中心だ、距離を取りつつ隙を突いて攻撃せよ。レオンたちが到着するまでの辛抱だ」
新生暗夜軍パラディンA「わかりました、マークス様。各自、敵の動きを見極めろ、下手に動けば命は無いぞ、わかったか!」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
マークス「突破を図ろうとする敵を出来る限り喰い止める、行くぞ!」
新生暗夜軍パラディンB「はっ! マークス様に続け!」
オーーーーーッ!
ドドドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「はっ! てやああっ!!!」ザンッ!
旧暗夜軍兵士「ぐあああっ」ドササッ
旧暗夜軍兵士「ひるむな! すでに援軍は到着している! このまま一気に押し潰せ!!!」
カムイ「はぁはぁ……」
カムイ(くっ、敵の士気が下がる気配はありません。むしろ、援軍の到着が彼らを奮い立たせている)
旧暗夜軍兵士「そこだ!」チャキッ ブンッ!
ザシュッ
カムイ「っ!」ポタタッ
旧暗夜軍兵士「もらった!」チャキッ ブンッ
ガキィンッ!
旧暗夜軍兵士「なっ!?」
アクア「そこまでよ」グッ ブンッ
ドゴンッ
旧暗夜軍兵士「がっ!!! この――」グッ
アクア「!」
フェリシア「ええい!!」チャキッ シュパッ!
ザシュッ
旧暗夜軍兵士「かはっ……」ドササッ
アクア「ありがとう、フェリシア」
フェリシア「いいえ、そんなお礼なんていいですよ。カムイ様、すぐに治療しますね。それっ!」シャランッ
カムイ「ふぅ、ありがとうございます、フェリシアさん。それにアクアさんも、おかげで助かりました」
アクア「気にしないで。それよりも敵の士気が上がっているわ。さっきよりも勢いを増しているみたい」
カムイ「ここで戦う人たちはマクベスさんのことを信頼しているようですから」
フェリシア「それに、こっちよりも兵の数は多いです。このままじゃ、飲み込まれちゃいますよぉ」
アクア「最初は五分五分と思っていたけれど、今の状況は向こうに分があるわね」
カムイ「ええ、マクベスさんが陣地をすぐに放棄できたのも、こうして攻勢を掛けるためだったのでしょう」
カムイ(こちらが部隊を三つに分けることもすでに織り込んでいたのでしょう。どう戦況が動いても大丈夫なように策を巡らせていたはずです)
カムイ「思った以上に強いですね、マクベスさんは」
アクア「ええ、本当にね。マークスは敵の援軍に攻撃を仕掛けるみたい。レオン達がこちらに向かっているから、到着までの間を繋ごうとしているようね」
カムイ「魔法部隊に距離を詰められれば、戦線は崩壊してしまいますからね。私たちは向かってくる敵の迎撃を続けましょう、レオンさん達が到着するまでの辛抱です」
フェリシア「わかりました。カムイ様」
アクア「右翼側も大丈夫だといいのだけど」
カムイ「大丈夫です、あそこにはブノワさんとフローラさんがいますし、抜けられる敵もそう多くは無いはずですから」
カムイ(きっと、大丈夫……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新生暗夜軍ジェネラルB「新たな敵を確認!」
フローラ「敵の増援が来たみたいね……。ブノワ、あなたは下がって」
ブノワ「しかし……」
フローラ「敵は魔法を中心としているわ。流石のあなたでもあれを耐えきるのは困難よ」
ブノワ「だが、それではフローラが……」
フローラ「そういう方面の攻撃には耐えられるつもりよ。それに遠距離ならそれだけで私に分があるわ」
ブノワ「……わかった。だが、危険だと判断したらすぐにサポートする」
フローラ「ええ、お願い」チャキッ
ドドドドドドッ!
旧暗夜軍兵士「現状、ここまで来れたのは我々だけの様です」
旧暗夜軍ソーサラーB「上出来です。さすがにすべてを止めることは、かのマークス王子でも不可能というもの。このまま、敵戦線を端から刈り取っていくとしましょう。行きますよ!」
旧暗夜軍兵士「はっ! 掛かれ!!!」
旧暗夜軍兵士たち『おーーーっ!』
タタタタタッ
フローラ「どうにかして敵の足を止めてください」
新生暗夜軍ジェネラルB「はっ! 各自攻撃を開始せよ!」
新生暗夜軍兵士「はい! これでもくらえ!!!」ググッ ブンッ
新生暗夜軍弓兵「我々も援護に入ります!」
フローラ「助かります」
フローラ(これで少しは数を減らせる。あとは奴らの魔法に注意さえすれば……)
旧暗夜軍ソーサラーB「火力は落ちますが、まずは手始めに攻撃と行きましょう。一斉攻撃!」バッ
フローラ「攻撃が来ます、備えて!」
新生暗夜軍ジェネラルB「くっ!」ググッ
旧暗夜軍ソーサラーB「ライナロック!」シュオンッ
ドゴンッ‼‼‼
フローラ「っ‼‼‼」グググッ
フローラ(さすがの威力です。ですが……)スッ
シュオンッ
旧暗夜軍魔法兵「よし、あともう一撃で――!」
ドクンッ!
旧暗夜軍魔法兵「がっ!!! ううっ、ぐ、ぐる、くるしい……」
旧暗夜軍魔法兵「ど、どうした!?」
旧暗夜軍魔法兵「さ、寒い、なんで、こんな――」
フローラ「そこ!」チャキッ ブンッ
ザシュッ!
旧暗夜軍魔法兵「かはっ………」ドササッ!
旧暗夜軍魔法兵「こ、これは……」
旧暗夜軍ソーサラーB「落ち着きなさい。見たところ、魔法反射の施しではありません。おそらく、何かしらの呪いを駆使する者がいるのでしょう。ですが、この程度の呪いなど恐れることはありません」
旧暗夜軍ソーサラーB(この呪いはとても強力なようですが、そんな相手に怯える必要がどこにもない。このまま、物量で押し切ってしまえばいいだけなのですから)
旧暗夜軍ソーサラーB「さて、次の手は果たして耐えられるか、見せてもらうとしましょう」
新生暗夜軍ジェネラルB「攻撃の手を休めるな、攻撃し続けるんだ!」
新生暗夜軍弓兵「はっ、攻撃開始!」
ヒュンヒュンッ!
旧暗夜軍ソーサラーB「白兵部隊は正面へ攻撃を、奴らの注意を逸らすのです」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタッ!
新生暗夜軍ジェネラルB「くっ、近接戦も仕掛けるつもりか」
フローラ「向かってくるのなら相手をするまでです」グッ
旧暗夜軍兵士「へっ、そんなてめえから、始末してや――」
フローラ「はあああっ」チャキッ ズシャシャッ!‼
旧暗夜軍兵士「ぐえっ……」ドササッ
フローラ「まずは一人、次!」チャキッ
旧暗夜軍兵士「くらえ!」ブンッ
フローラ「ふんっ!」ガキィンッ
旧暗夜軍兵士「くそっ、固い!」サッ
フローラ「逃がしませんよ」ググッ
旧暗夜軍兵士「この構え!? 盾で吹き飛ばす気か!?」
フローラ「はああっ!」ダッ
ドゴンッ
旧暗夜軍兵士「ぐへぁ!」ドサッ ゴロゴロンッ……
ブノワ「しかし、すごい勢いで飛んでいった…」
フローラ「はぁはぁ、貧弱な方ですね。この程度、全員返り討ちにして差し上げましょう」チャキッ
フローラ(このまま耐え抜ければ……)
旧暗夜軍兵士「はああっ!」ブンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「ふっ、その程度の攻撃!」チャキッ
旧暗夜軍兵士「おっと!」ササッ
新生暗夜軍ジェネラルB「ちっ、ちょこまかと」
旧暗夜軍弓兵「おら、後方ががら空きだ!」チャキッ パシュッ!
新生暗夜軍弓兵「がっ、くそ!」チャキッ パシュッ
フローラ(敵は一箇所に攻撃が集中しているけど、この攻撃の規模なら受け切れる。だけど、そこに敵魔法部隊の援護がないのはなぜ?)
フローラ「魔法部隊は?」
フローラ(さっきと変わらない。攻撃の準備をしてゆっくり前進してきている。だけど、多くの場所がこちらからの攻撃にさらされて攻勢に出られていない。敵の攻勢は弱まっている……)
フローラ「この攻勢部隊を抑え込めれば、ここは守り切れ――」
ブノワ「フローラ、まずい!」
フローラ「え?」
ブノワ「敵白兵部隊の後方だ…」
フローラ「後方?」
旧暗夜軍魔法兵部隊「……」
フローラ「魔法部隊!」
旧暗夜軍兵士「白兵部隊の損耗がこれ以上無視できないところまで来ています」
旧暗夜軍ソーサラーB「ええ、ですがもう大丈夫です。さぁ、報いる時が来ましたよ。皆さん、攻撃の準備は整っていますね?」
旧暗夜軍魔法兵「はい」
旧暗夜軍ソーサラーB「よし、敵戦列に攻撃を仕掛けている兵に射線確保の合図を出しなさい」
旧暗夜軍兵士「はっ! 合図を出します」チャキッ パシュンッ
ヒュィィィィンッ!
フローラ「この音は……」
新生暗夜軍ジェネラルB「な、なんだ!?」
旧暗夜軍兵士「ようやくか! おらっ!!!」ドゴンッ
新生暗夜軍ジェネラルB「はっ、その様な攻撃が何度来ようとも意味など――」
旧暗夜軍兵士「全員射線を通せ!!! 消耗してるいい的を教えてやるんだ!」
タタタタタタッ!
フローラ「!!」
新生暗夜軍ジェネラルB「こ、これは……」
旧暗夜軍兵士「視界開けます!」
旧暗夜軍ソーサラーB「ふっ、とても狙いやすい的が揃いましたねぇ」
旧暗夜軍兵士「射線通りました」
旧暗夜軍ソーサラーB「さぁ、マクベス様に立て付く愚かな敵を蹴散らすのです!」
新生暗夜軍ジェネラルB「か、各員、防御し――」
旧暗夜軍ソーサラーB「ライナロック!!!」シュオンッ!
フローラ「!!!!」
ブノワ「!!!」ダッ
シュオンッ
ドゴオオオオオオォォォン!‼‼‼
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「な、なんですか、この音は!?」
アクア「右翼最奥の方からよ」
カムイ「ブノワさんとフローラさんがいる所じゃないですか!?」
フェリシア「そ、そんな……」
カムイ「っ、すぐ援護に――」
新生暗夜軍兵士「正面、敵魔法部隊、接近して来ます。さらに西方向からも来ます!」
タタタタタタッ
旧暗夜軍ボウナイトA「どうやらうまくタイミングを合わせられたようだ」
旧暗夜軍ソーサラーA「よし、西部の部隊と合流できたようだな。このまま敵陣を叩く! 全員進め!」
ウオオオオオオオーーーーッ!
カムイ「っ、こんな時に!!!」チャキッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新生暗夜軍パラディンA「右翼最奥が攻撃を受けたようです、被害の状況はわかりませんが、かなりの被害が予想されます」
マークス「くっ」
マークス(中央と西側に注意を逸らしつつ、隙を突いたということか。くそっ!)
マークス「お前たちは攻撃された箇所へ援護に向かえ。攻撃を加えた者たちを背後から強襲せよ。私はここに残り指揮を続ける」
新生暗夜軍パラディンA「わかりました。援護に向かう、行くぞ!」
パカラパカラッ
マークス「……む?」
ジャリッ シュオンッ
マークス「!」サッ
バシュンッ
マークス(魔法攻撃か……)
???「おやおや、避けられてしまいましたか。次期王の肩書はお飾りではないようですね、マークス王子」
マークス「貴様も父上の下で動いていただけはあるようだな。マクベス」
マクベス「ふっ、お褒めの言葉と受け取っておきましょう。こうして戦うのはいつ以来のことでしょうか?」
マークス「テンジン砦以来だろうか。だが、あの時とは違うぞ」チャキッ
マクベス「それはこちらの台詞です。ですが、あの時に比べれば優しいものですねよ、なにせ……」
シュオンッ パラパラッ
マクベス「直撃を受ければ、痛み無く死ぬことが出来るのですから。これは最大級の慈悲と思っていただきたいくらいですよ」
マークス「ふっ、ならばその慈悲が私に通じるか試してみるといい」チャキッ
マクベス「いいでしょう、私もあなたがガロン王様の後を継ぐのにふさわしかったのかどうか――」
「試させていただきましょう、マークス王子」ニヤッ
今日はここまで
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・新生暗夜軍戦線右側』―
フローラ「……」
ブノワ「フローラ、大丈夫か!?」
フローラ「………うっ、ううっ……ブノワ?」
ブノワ「ほっ、無事でよかった……」
フローラ「ええ……! ブノワ、その傷は」
ブノワ「大丈夫だ、大したことは無い……。攻撃が俺たちに直撃したわけではないからな……」
フローラ「駄目よ、すぐに治療するわ」
ブノワ「……すまない」
フローラ「いいえ、私の方こそごめんなさい。敵の動きに気づけていれば……」
フローラ(そう、気づけていれば、きっと……)
ウウッ……
ダレカ……テヲカシテクレ…
フローラ(こんな被害が出る事なんてなかった……)
フローラ「………」
ブノワ「フローラ、大丈夫だ……」
フローラ「だめよ、まだ治療は済んで――」
ブノワ「違う、俺のことじゃない。フローラのことだ」
フローラ「私のこと?」
ブノワ「ああ、この被害はお前の所為じゃない。俺も敵の狙いに気づけなかったし、ここにいる全員も気づいていなかった……」
フローラ「……」
ブノワ「だから、その、なんだ……」
フローラ「大丈夫、言いたいことはわかるわ。ありがとうブノワ、気遣ってくれて」
ブノワ「う、うむ……」
フローラ「なら、さっさとこの状況をどうにかしないといけないわ。はい、これでいけるわよね?」ポンポン
ブノワ「ああ、問題ない。それでどうする……」
フローラ「空いた穴を塞いで、次の攻撃に備えないと。あれほどの魔法を次々に繰り出せるほど敵も余裕があるとも思えないわ。まずは負傷者を下げて陣形を再構築しないと……」
フローラ(だけど、敵の突撃部隊はすぐにでも再侵攻してくるはず。このわずかな間に負傷者を下げる方法なんて……)
ブノワ「フローラ、負傷者のことなんだが……」
フローラ「ええ、仕方ないけれど下げられるだけになってしまうわね……」
ブノワ「いや、一つだけ考えた手があるのだが……」
フローラ「とりあえず説明して、今はどんな手でも使えるなら使わないといけないから」
ブノワ「ああ、わかった。その手だが――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ソーサラーB「ふむ、攻撃を収束させすぎましたか」
旧暗夜軍兵士「ですが、敵の隊列には穴が開いています。突入部隊は指示があり次第、攻撃に移れます」
旧暗夜軍ソーサラーB「よろしい。再攻撃に入るように指示を出しなさい」
旧暗夜軍ソーラサーB(しかし、思ったよりも混乱はありませんか。流石に敵の練度も筋金入りでしょう。ですが、これほどに穴だらけになった陣形を維持することは困難、もうこちらの勝利は確実でしょう)
ガシャンガシャンッ
旧暗夜軍兵士「敵に動きあり!」
旧暗夜軍ソーサラーB「この期に及んでまた陣を組み直すつもりですか。さて、穴だらけの陣をどう埋めるつもりでしょうか?」
旧暗夜軍兵士「それが、敵は前進しています!」
旧暗夜軍ソーサラーB「前進!?」
新生暗夜軍ジェネラルB「突撃してくる者たちの攻撃を恐れることは無い! 前進し陣を再構築するんだ」
新生暗夜軍兵士「側面、弓兵隊で固めました」
新生暗夜軍ジェネラルB「よし、弓兵隊は側面から迫る敵の迎撃に努めよ。手の空いている者はこの内に負傷者を後方へ下げるのだ」
新生暗夜軍兵士「はっ!」タタタタッ
フローラ「一時的に前進して負傷者を後方へ下げるための陣を作るっていう案だけど、うまく行きそうね」
ブノワ「ああ、よかった。だが、その分、敵の攻撃は激しくなる……」
フローラ「それは覚悟の内よ。少なくとも、これで穴は埋められたわ」
フローラ(あとは耐えるだけよ)
旧暗夜軍ソーサラーB「敵は前進しつつ被害範囲から負傷者の退避を行うつもりですか」
旧暗夜軍兵士「どうしますか?」
旧暗夜軍ソーサラーB「敵は負傷者の退避が終わり次第、防御を密にするはずです。そうなれば……」
旧暗夜軍ソーサラーB(すでに突撃部隊の過半数を失い、こちらの攻撃魔法の手は見せてしまいました。次からこちらへの妨害は激しくなるはずです。そして、敵にもう一度強固な陣形を作り上げられてしまえば、この戦力で崩しきることは不可能でしょう)
旧暗夜軍ソーサラーB「私たちも覚悟を決めなくてはいけないようですね」スッ
旧暗夜軍ソーサラーB(こちらの攻撃は戦場全体に響いています。敵は間違いなく援軍を向かわせているはず。ならば、それが来るよりも前に……)
旧暗夜軍ソーサラーB「前方の敵陣に全員で攻撃を仕掛けます」
旧暗夜軍兵士「はっ! 各員、白兵戦闘準備」
旧暗夜軍ソーサラーB「進軍するのです!」
オーーーーーーッ!‼‼
ドドドドドドドッ
新生暗夜軍兵士「後方の敵魔法部隊、前進を開始!」
フローラ「さすがにこちらの狙いを読んできましたね」
ブノワ「ああ、だがやるべきことは変わらない…」
フローラ「ええ、迎撃するだけよ。負傷者の退避状況は?」
新生暗夜軍兵士「現在全体の四割ほどが後方に下がりました」
フローラ「わかりました。引き続き退避作業を続けてください」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
新生暗夜軍ジェネラルB「残りの者たちは接近してくる敵に注意しつつ、後方から迫る魔法部隊に攻撃を集中するのだ」
一同『はっ!』
旧暗夜軍ソーサラーB「っ、前進しつつ被害範囲から負傷者の退避を行うつもりですか」
旧暗夜軍兵士「どうしますか?」
旧暗夜軍ソーサラーB「敵は負傷者の退避が終わり次第、防御を密にするはずです。そうなれば……」
旧暗夜軍ソーサラーB(すでに突撃部隊の過半数を失い、こちらの攻撃魔法の手は見せてしまいました。次からこちらへの妨害は激しくなるはずです。そして、敵にもう一度強固な陣形を作り上げられてしまえば、この戦力で崩しきることは不可能でしょう)
旧暗夜軍ソーサラーB「私たちも覚悟を決めなくてはいけないようですね」スッ
旧暗夜軍ソーサラーB(こちらの攻撃は戦場全体に響いています。敵は間違いなく援軍を向かわせているはず。ならば、それが来るよりも前に……)
旧暗夜軍ソーサラーB「前方の敵陣に全員で攻撃を仕掛けます」
旧暗夜軍兵士「はっ! 各員、白兵戦闘準備」
旧暗夜軍ソーサラーB「進軍するのです!」
オーーーーーーッ!‼‼
ドドドドドドドッ
新生暗夜軍兵士「後方の敵魔法部隊、前進を開始!」
フローラ「さすがにこちらの狙いを読んできましたね」
ブノワ「ああ、だがやるべきことは変わらない…」
フローラ「ええ、迎撃するだけよ。負傷者の退避状況は?」
新生暗夜軍兵士「現在全体の四割ほどが後方に下がりました」
フローラ「わかりました。引き続き退避作業を続けてください」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
新生暗夜軍ジェネラルB「残りの者たちは接近してくる敵に注意しつつ、後方から迫る魔法部隊に攻撃を集中するのだ」
一同『はっ!』
旧暗夜軍ソーサラーB「……この距離、先制させていただきましょう、ギンヌンガガプ!」シュオンッ
新生暗夜軍兵士「ぎゃあああっ!!!」ドサッ
新生暗夜軍ジェネラルB「ちっ、魔法部隊がもう来たか」
フローラ「だけど、敵の射程はこちらの射程でもあるわ」
フローラ(注意深く見ていれば……)
旧暗夜軍魔法兵「……」スッ
フローラ「そこ!」チャキッ ブンッ
ザシュリッ
旧暗夜軍魔法兵「がっ……」ドササッ
ブノワ「すごい……む!」グッ カキィンッ
旧暗夜軍兵士「くそっ、もう一度――」
ブノワ「はああああっ!!!」ググッ ブンッ
ドゴンッ‼‼‼
旧暗夜軍兵士「ぐえっ!」ドサッ ドサササッ……
フローラ「その調子でお願いね」
ブノワ「ああ、善処する……」
新生暗夜軍兵士「負傷者の退避、全体の七割終わりました」
フローラ(あと少し……)
新生暗夜軍兵士「敵の魔法攻撃が来ます!」
新生暗夜軍ジェネラルB「近くの者と連携を取り、何としても耐え抜け!」
ブノワ「フローラ支える!」
フローラ「お願い!」ザッ
旧暗夜軍魔法兵「くらえ!!!」シュオンッ ボッ
旧暗夜軍ソーサラーB「はあああっ!」シュオンッ
ドゴンッ‼‼‼
フローラ「っ!」バシュンッ!
ブノワ「ぐっ、そこだ!」チャキッ ブンッ
ヒューンッ ズシャリッ!‼‼
旧暗夜軍魔法兵「ぐっ、くそぉ……」ドササッ
旧暗夜軍兵士「敵に耐え切られました。どうしますか」
旧暗夜軍ソーサラーB「このまま敵陣に肉薄し、陣を……ううっ」
ポタタタッ
旧暗夜軍兵士「た、隊長、その傷は……」
旧暗夜軍ソーサラーB「ふっ、例の呪いです。実際貰ってみるとこれは強力だ。ですが、こうして生き残れましたからね、元が誰なのかはわかりました」ポタタタタッ
旧暗夜軍兵士「すぐに治療を……」
旧暗夜軍ソーサラーB「薬など持っていませんよ。それに、この場には傷を癒せる者もいません」
旧暗夜軍ソーサラーB(そして、この傷では動き続けることも難しくなる。弓砲台まで退避することは難しいでしょう。ならば、最後に一矢でも報いてみせるまで……)
旧暗夜軍ソーサラーB「まだ、こちらの戦力は残っています。このまま、敵陣に肉薄し崩しきる事は可能です。そこに賭けなくては、戦うことを許して下さったマクベス様に失礼というもの、あの方を裏切るわけにはいきません」
旧暗夜軍兵士「わかりました。私も共に戦いましょう」
旧暗夜軍ソーサラーB「ええ、お願いします。攻撃を継続、さらに接近し敵に集中攻撃するのです!」
新生暗夜軍ジェネラルB「ちっ、敵の勢いは止まらないか」
ブノワ「向こうもここを落とすことに賭けている……。退くことは無いということか……」
フローラ「それはこちらも同じよ。ここを崩させるつもりはないわ」チャキッ
新生暗夜軍兵士「負傷者の退避が完了しました!」
フローラ(負傷者の退避は無事に済んだようですね。ですが、死にもの狂いで崩しに来る以上、陣形を動かすことは出来ない)
新生暗夜軍ジェネラルB「上出来だ。あとはこの敵の攻撃を受け止めるだけだ! 各自、最後の踏ん張りだ、根性を見せろ!」
オーーー!‼‼
ドドドドドドドッ
新生暗夜軍兵士「敵、横一列に展開しつつ接近!」
ブノワ「面で攻めてくるつもりのようだ……」
フローラ「ええ、勝負ね」チャキッ
タタタタタッ
旧暗夜軍ソーサラーB「あの兵士ですか、見つけましたよ」スッ
フローラ「そこ!」ググッ
旧暗夜軍ソーサラーB(この距離、敵の攻撃は止められません。ですが、それはこちらも同じこと!)シュオオオオンッ
フローラ「はああっ!!!」ブンッ
旧暗夜軍ソーサラーB「くらえ、ギンヌンガガプ!!!!」シュオオオンッ
ヒューーンッ!‼ ザシュンッ
ゴゴゴゴッ ドゴンッ‼‼‼
フローラ「きゃああああっ!!!」バチンッ ガシャシャンッ
旧暗夜軍ソーサラーB「………ぐっ」
旧暗夜軍ソーサラーB(奴の攻撃は喰らいましたが、まだ大丈夫。どうにか奴を仕留められた。私の――)
ビシャアアッ……ビチャッ……
旧暗夜軍ソーサラーB「こふっ……」ビチャッ……
旧暗夜軍ソーサラーB(ああ、呪いの感触が体に広がっている……。どうやら仕留め損ねてしまったよう…です…。マクベス様……)
旧暗夜軍ソーサラーB「」ドサリッ
フローラ「っ、はぁ、はぁ……ううっ……」
ブノワ「フローラ!」
フローラ「ブノワ……」
ブノワ「はやく、俺の後ろに!」
旧暗夜軍兵士「逃がすか!」ダッ!
ブノワ「っ、うおおおおおっ!!!!」グッ ブンッ!!!
旧暗夜軍兵士「!」サッ
ブノワ「!」
ブノワ(しまった!)
フローラ「っ」ガシャンッ
旧暗夜軍兵士「隊長の仇、死ねえええ!!!!」グッ バッ
フローラ「!!!」
???「ライナロック! いっけええええ!」シュオンッ ボオオオッ
ドゴォンッ!‼‼
旧暗夜軍兵士「がはっ!!!」ドササッ
フローラ「え……。私、生きて……」
エリーゼ「何とか間に合ったみたいだね」パカラパカラッ
ブノワ「……エリーゼ王女」
フローラ「エリーゼ様……」
エリーゼ「もう大丈夫だから。よぉし、みんなで敵を追い返しちゃえ!」
新生暗夜軍ダークナイトA「はっ、敵をここから一掃する。脅威を取り除くのだ!」
ドドドドドドドドッ
フローラ「はぁはぁ……、エリーゼ様。ありがとうございます、おかげで助かりました」
エリーゼ「ううん、こっちこそごめんね。来るのが遅くなっちゃって」
フローラ「いいえ、そんなことはありません。現に私はこうして生きているのですから」
ブノワ「フローラ、肩を貸そう」
フローラ「ありがとう……、っ、中々体に響くわね。鎧が重たいわ」
ブノワ「そうだな。今日はいつも以上にそう感じるかもしれない……」
フローラ「今日だけにしてもらいたいわ。エリーゼ様、今の状況はどうなっていますか?」
エリーゼ「えっとね、左側が一番攻撃を受けてるから、そっちの援護にレオンおにいちゃんが向かってる。こっちにはあたしが行くことになったの。間に合ってよかった」
ブノワ「む、敵が退いて行く……」
フローラ「どうしたのかしら?」
エリーゼ「あ、あれ見て!」
ドドドドドドッ
ブノワ「あれはパラディンか……」
フローラ「応援を送ってくれたのね。中央も大変だというのに……」
新生暗夜軍ダークナイトA「エリーゼ王女。中央からのパラディン部隊合流もあり、ここ一帯の敵は撤退を開始しました。これより、陣の再編成を行います」
エリーゼ「うん、お願い」
新生暗夜軍ダークナイトA「はっ!」パカラパカラッ
エリーゼ(あとは反対側を立て直せれば、きっと大丈夫……)
エリーゼ「マークスおにいちゃん、カムイおねえちゃん。信じてるからからね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・新生暗夜軍戦線左側』―
旧暗夜軍ボウナイトA「そこだ!」シュパッ
新生暗夜軍兵士「ひっ!」グッ
カムイ「はあああっ!」チャキッ カキィンッ
カランカランッ……
旧暗夜軍ボウナイトA「ちっ」パカラパカラッ
フェリシア「逃がしませんよぉ。これで――」チャキッ
旧暗夜軍ソーサラーA「させはしません。はああっ!」シュオンッ! バシュッ!
アクア「フェリシア、伏せなさい」
フェリシア「は、はい!」サッ
旧暗夜軍ソーサラーA「うまく避けましたか、ですが今はこれでいいでしょう」
旧暗夜軍ボウナイトA「助かった、乗れ」
旧暗夜軍ソーサラーA「助かります。っと」ボフンッ
パカラパカラッ
アクア「っ、逃げられたわね」
カムイ「フェリシアさん、大丈夫ですか?」
フェイシア「は、はい。アクア様のおかげで助かりましたぁ」
アクア「気にしないで。それにしても、予想以上に敵の攻撃が激しいわね」
カムイ「ええ……」
カムイ(フローラさんたちが守っている反対側の状況が気になりますが、今はここを守ることに集中しないといけません。ですが……)
カムイ「敵はなかなか尻尾を掴ませてはくれませんね」
アクア「ええ、攻撃したらすぐに距離を取られる。このサイクルを続けられたら、こちらが不利になっていくばかりよ」
カムイ「ですが、相手の機動力の高さの前では前に出る事も叶いません。攻勢に出るにはこちらの戦力では追いつく間もなく包囲殲滅されるだけですから」
カムイ(歩兵中心のこちらとは違い、向こうは騎馬を用いた機動戦を主体、真正面から攻勢に出ても勝ち目はありません)
アクア「援軍と到着を待つしかないということね」
カムイ「はい、でもその時はもうそこまで近づいているはずです。だから、もうひと頑張りです」
フェリシア「わ、わかりましたぁ」
カムイ(きっと、それはすぐそこまで来てくれているはずですから)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パカラパカラッ
新生暗夜軍ダークナイトB「敵、左翼と中央部に確認。最も戦力が集中しているのは左翼部の様です」
レオン「右翼への攻撃から察していたけれど、端から陣を削り切るのが狙いか」
新生暗夜軍ダークナイトB「中央部ではマークス様、左翼部ではカムイ様がそれぞれ奮戦されているようです。如何します?」
レオン(西砲台の敵守備隊が侵攻に合流していると考えれば、今一番敵戦力が多いのは左翼部に違いない。中央部はこちらの騎馬戦力がまだ残っているから、まだ持ち堪えられるはずだ)
レオン「まずは左翼部の敵を片付ける。各自、すぐにでも攻撃に移れるように準備、左翼に向け前進――」
「カムイ姉さんの援護に向かう!」
今日はここまで
途中同じものの連投もうしわけない。
レオンはなんだかんだでカムイを優先して助けに行くと思う。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・新生暗夜戦線左側』―
新生暗夜軍ジェネラルD「敵の第二波が来ます!」
カムイ「負傷した方々の退避を優先、ジェネラル隊の皆さんは弓の攻撃への対処を」
新生暗夜軍ジェネラルD「わかりました。弓兵隊、攻撃隊は我々を盾にして待機せよ!」
カムイ(先手ボウナイトへの対処はこれで大丈夫です。問題はソーサラーを主力とした魔法部隊の攻撃ですね)
タタタタタタッ
アクア「カムイ、みんながジェネラルの陰に入ったわ」
フェリシア「負傷した方々の退避も終わりました」
カムイ「わかりました。さて、ここからどうしましょうか」
アクア「ボウナイトの攻撃はなんとかなるけれど、ソーサラーの魔法は脅威よ。一点に攻撃を集中されることは避けないといけないわ」
カムイ「敵は面攻撃に徹しているようですから、今のうちに何かしら手を打たないといけませんね」
カムイ(といっても、敵がこちらの攻撃範囲に入り込んでくるのを待っているわけにはいきません。こちらの弓兵の数ではソーサラー部隊を倒すことも叶いません。となれば……)
カムイ「こちらから強襲する以外の手はありませんか……」
アクア「打って出るつもり?」
フェリシア「だ、大丈夫なんですか?」
カムイ「危険ですが敵と同じように攻撃をして退くだけです。ただ、向こうは飛び道具ですがこちらは近接戦ですので、タイミングを見て攻撃に打って出ないといけません」
カムイ(敵はボウナイトで攻撃後に乗せてきた部隊を降ろして、一度散開します。敵部隊は陣を形成後に攻撃を行うようですから、その合間を突ければ……)
フェリシア「だ、大丈夫でしょうか」
カムイ「こちらが防御に徹していると敵が思いこんでいる今なら上手く行くはずです。ボウナイトは攻撃後に兵を降ろす時間があります。その隙に距離を詰め、敵ソーサラー部隊を攻撃、敵の後続が動き次第退却といったところでしょうか」
アクア「苦肉の策ね」
カムイ「ええ、でも重要なのは援軍が来た時にこの陣が健在していることです。なら、そのためにやるべきことをやるしかありません」
アクア「……そうね、わかったわ。他の皆にも伝えておくわね」
カムイ「はい、お願いします。フェリシアさんも私と一緒に来てください。その、少々無茶をしてしまうと思うので……」
フェリシア「わかりました、怪我をしたらすぐに治療します。でも、あまり無茶しないでくださいね。カムイ様に万が一のことがあったら、みんな悲しんじゃいますから」
カムイ「はい」
アクア「カムイ、みんなに作戦のことを伝えたわ」
カムイ「ありがとうございます。あとは――」
新生暗夜軍ジェネラルD「敵、ボウナイトが接近! 各自、弓攻撃に備えよ!」
フェリシア「はわわ、カムイ様、隠れましょう」
カムイ「はい。アクアさん、攻撃を仕掛けるタイミングをお願いできますか?」
アクア「ええ、任せてちょうだい」
旧暗夜軍ボウナイトB「全騎弓を構え。今だ、放て!」
パシュシュシュッ
キキキィンッ!
旧暗夜軍ソーサラーA「さすがに矢ではビクともしませんか」
旧暗夜軍ボウナイトB「ああ、すまないが攻撃を頼む」
旧暗夜軍ソーサラーA「任せなさい」ダッ
旧暗夜軍ソーサラーA(敵はジェネラルを盾に防戦の構え。ですがそれは物理に対しての城壁、そんなもの魔法の前では木壁に過ぎません)
旧暗夜軍ソーサラーA「各自、配置に付きなさい。敵の城壁を崩しますよ」
旧暗夜軍魔法兵「はっ!」タタッ
新生暗夜軍ジェネラルD「敵、ソーサラー部隊展開、ボウナイト隊が離れます!」
アクア「今よ、カムイ」
カムイ「はい、歩兵隊の皆さんは敵ソーサラー部隊へ攻撃を開始してください! 大丈夫です、道は私が作ります!」チャキッ
シュオオオオンッ
竜化カムイ『グオオオオオオオッ!!!』ダッ
新生暗夜軍兵士「よし、カムイ様の後に続け!!!」
ウオオオオオオオッ!!!!
ドドドドドドッ
旧暗夜軍魔法兵「敵歩兵隊、前進してきます!」
旧暗夜軍ソーサラーA「ほう……」
旧暗夜軍ソーサラーA(ボウナイト隊が離れた隙を狙われましたか。敵は防御一辺倒だと思っていましたが……)
旧暗夜軍ソーサラーA「中々厄介なものですね。各自、迎撃するのです」
旧暗夜軍魔法兵「はっ!」シュオンッ
旧暗夜軍ソーサラーA(それに、どうやらこちらが狙うべき相手も向かってきているようですからね……)
旧暗夜軍ソーサラーA「先頭を行くあの竜、ここで仕留めてみせましょう」
旧暗夜軍魔法兵「このっ、くらえええ!」シュオンッ!
竜化カムイ『はあっ!!!』シュッ ブンッ
ドゴンッ
旧暗夜軍魔法兵「ぐへっ!」ドササッ!
旧暗夜軍兵士「くそ、竜がなんだってんだ! これで切り殺してやる!!!」チャキッ ダッ
旧暗夜軍兵士(よし、あいつは気づいてねえ。もらっ――)
ザザッ
アクア「どこに行くつもりか知らないけれど、私が相手よ」チャキッ ダッ
旧暗夜軍兵士「邪魔するな!」ブンッ
アクア「それはこちらの言葉よ。はああっ!!!」ググッ シュパッ
ドスリッ!
旧暗夜軍兵士「がはっ……」ドササッ
アクア「ふぅ……」
フェリシア「ア、アクア様、待ってください。あっ、そこです!」シュパッ
ヒュンッ ザシュッ!
旧暗夜軍魔法兵「がっ……」ドサッ
フェリシア「あたりました!」
アクア「やはりだけど、やっぱりあなたは奉仕職ではなくて戦闘職になった方がいいと思うわ」
フェリシア「ア、アクア様まで……ひどいです」
竜化カムイ『でも実際フェリシアさんの戦闘技術は見事な物ですからね。そう言われるのも仕方ないことですよ』
フェリシア「ううっ、カムイ様まで……」
竜化カムイ『ふふっ……』
旧暗夜軍ソーサラーA「このような場所で談笑とは、気が抜けていますね」
三人『!』
旧暗夜軍ソーサラーA「ライナロック!!!」シュオンッ
竜化カムイ『二人とも、避けてください!』サッ
ドゴンッ!!!
竜化カムイ『アクアさん、フェリシアさん、無事ですか!』
アクア「私は大丈夫よ」
フェリシア「大丈夫です!」
竜化カムイ『よかった……』
旧暗夜軍ソーサラーA「ふん、隙だらけだと思いましたがそうでは無いようですね……」
竜化カムイ『気を抜いているつもりはありませんよ』
旧暗夜軍ソーサラーA「そうですか。ならば、それどこまで維持できるのか試させてもらうとしましょう」スッ
タタタタタッ
旧暗夜軍魔法兵たち『……』
旧暗夜軍ソーサラーA「狙うのは王女だけで構いません、各自放て!」
竜化カムイ『アクアさん、フェリシアさんは離れていてください!』ダッ!
アクア「カムイ!」
フェリシア「カムイ様!」
竜化カムイ(気配だけでも十人弱。ですが、何とかしないと!)タタタタッ
旧暗夜軍ソーサラーA「そこです」シュオンッ ボオオッ!
旧暗夜軍魔法兵「くらえ!!!」シュオンッ
ドゴンッ!
ザシュッ バシュンッ!
竜化カムイ『グオオッ』クラッ
竜化カムイ(ぐっ、魔法の気配が多すぎて、とても避け切れない!)
アクア「っ、このままじゃ……。フェリシア、付いて来て」
フェリシア「は、はい! ど、どうするんですか?」チャキッ
アクア「敵はカムイだけを狙うことに集中しているわ。なら、今私達は意識されていないはず。なら、横合いから殴りかかるだけよ」
タタタタタタッ
暗夜軍魔法兵「ちっ、あの体躯のくせにすばしっこい」
旧暗夜軍魔法兵「大丈夫だ、着実に動きは弱まっている。このままなら直撃も時間の問題だ」
旧暗夜軍魔法兵「おら、もっと動きまわらないと当たっちまうぞ!」シュオンッ
バシュッ
竜化カムイ『グオオオオッ!!』
竜化(このままでは……)
旧暗夜軍魔法兵「これで終わりにしてやる! 死ねぇ!」
ヒュンッ ザシュシュッ!!
旧暗夜軍魔法兵「ぐあ……、うううっ、こ、これは暗器!?」ポタタタッ
アクア「フェリシア、その調子でお願い。倒さなくてもいいわ、奴らの詠唱を阻止しつづけて」
フェリシア「わかりました。カムイ様に手出しはさせません! はああっ!」チャキッ シュパパッ
ザシュッ ザシュシュッ!
旧暗夜軍魔法兵「っ、くそ、腕が……」
旧暗夜軍魔法兵「なら、変わりに俺が仕留めてやる!」スッ
アクア「させない!」ダッ
タタタタッ スタッ
アクア「……」
旧暗夜軍魔法兵「つ、突っ込んで来やがった」
アクア「眠ってなさい」ドゴンッ
旧暗夜軍魔法兵「ぐへっ!!!」ドササッ
アクア「次は誰に子守唄を歌ってあげようかしら?」チャキッ
アクア(こうして懐に入られたのならば、さすがに無視はできないでしょう)
旧暗夜軍魔法兵「ちっ、ならお前から始末してや――」スッ
アクア「はあっ!!!」チャキッ ドゴンッ!!!
旧暗夜軍魔法兵「ごはっ……」ドササッ
旧暗夜軍ソーサラーA「まさか接近を許すことになるとは、思ったよりもカムイ王女は頑丈なようだ」
アクア「あなた達の魔法の腕が悪いのも理由の一つよ」
旧暗夜軍ソーサラーA「ふん、その華奢な体で私の魔法を果たして受け止められるとは到底思えませんが、試して差し上げましょう。なに、あなたの言う通りならば当ることもないでしょうから」シュオンッ
アクア「……」チャキ
フェリシア「アクア様! 今助けます!」チャキッ
旧暗夜軍兵士「そうはさせるか!」チャキッ ダッ
フェリシア「!」スッ
ブンッ
フェリシア「あ、あぶなかったです」チャキッ
旧暗夜軍兵士「ちっ、避けやがったか。まあいい、一対一だ。安心しろ、痛みがないように一撃でその可愛い顔を体から切り離してやるよ」
フェリシア(何とかしないとアクア様の援護にも、カムイ様の御手当にも行けません)
フェリシア「わかりました、お相手します」チャキッ
旧暗夜軍兵士「ほう、一人になったところで命乞いしてくるかと思ったが、可愛い顔して中々肝が据わってるじゃねえか。おらああ!」ダッ!
フェリシア「はあああっ!」ダッ
竜化カムイ『アクアさん、フェリシアさん』
竜化カムイ(二人のおかげでどうにか危機を脱せました。なら、今度はこちらの番ですよ)
タタッ
旧暗夜軍魔法兵「隊長、王女は我々にお任せを! くらえ!」シュオンッ
竜化カムイ(先ほどの数ではありません。気配もきちんと把握できます。これなら!)
サッ
ササッ
旧暗夜軍魔法兵「ちっ、器用に避けやがって」
旧暗夜軍魔法兵「一点にしなければいい、面で攻めるぞ!」
旧暗夜軍魔法兵「ああ、わかった。これでどうだ!」シュオンッ
竜化カムイ(一点ではない広範囲攻撃。なら、その火力が薄くなる場所もあります。そこなら!)
ボオオオッ
竜化カムイ『はあああっ』ダッ
バチンッ!
旧暗夜軍魔法兵「よし、当たった!!! って、あれ?」
竜化カムイ『退いてください!!!』ググッ ト
゙ゴンッ‼‼
旧暗夜軍魔法兵「がへっ!!!」ドサササッ
旧暗夜軍魔法兵「くそ、浅かったか。ならもう一撃――」
竜化カムイ『ふん!!!』クル
旧暗夜軍魔法兵「尻尾!?」
バシンッ ドササッ
旧暗夜軍魔法兵「がっ……」
竜化カムイ『アクアさん、今向かいます!!』
キィンッ
カキィンッ!
旧暗夜軍兵士「はっ、そら!!!」
フェリシア「っ! はっ、そこです!」キィンッ!
旧暗夜軍兵士「はは、これはすげえ。そんな暗器だけで剣に渡り合ってくるなんて思いもしなかったぜ。だが、さすがに息が上がってきたか?」
フェリシア「はぁはぁ……。まだまだ、戦えますよ」
旧暗夜軍兵士「見た目にそぐわずタフな女だ。どこまでやれるか確かめてやる!」チャキッ
ダッ
フェリシア(……剣を下に構えています。そのまま上に切り上げるつもりでしょうか。ううん、違います。見るべきは相手の視線の先です)
旧暗夜軍兵士「……」ググッ
フェリシア(このまま斬って――)
旧暗夜軍兵士「……」フッ
スッ
フェリシア「!!!」ザッ チャキッ
旧暗夜軍兵士「そらっ!!!」シュパッ!‼‼
キィンッ!‼‼
旧暗夜軍兵士「なに!?」
旧暗夜軍兵士(この状況でこいつ、俺がダガーを投げることに感付きやがったのか!?)
フェリシア(今です!)
旧暗夜軍兵士「っ、うおおおおおっ!」チャキッ
ブンッ
フェリシア「!」サッ
ドゴンッ!
旧暗夜軍兵士(しまった、勢いよく振り下ろした所為で剣が地面に!)
フェリシア「はああああああっ!!!!」チャキッ
ザシュッ
ビシャアアアアアアア……
旧暗夜軍兵士「かっ……」ポタタタッ
フェリシア「……」
旧暗夜軍兵士「く……そ……。強いじゃねえか……」
フェリシア「……敏腕メイドですから」
旧暗夜軍兵士「ははっ……違い……ねぇ……」ドサッ
フェリシア「……」
タタタタタッ
フェリシア「? あ、カムイ様!」
竜化カムイ『フェリシアさん、無事だったのですね。アクアさんは?』
フェリシア「まだ、向こうで戦っています。まずはカムイ様すぐにお怪我を治しますね。それっ!」シャラランッ
竜化カムイ『ありがとうございます。すぐにアクアさんを助けに行きましょう。フェリシアさんも付いて来て下さい』
フェリシア「わかりました」
竜化カムイ『……フェリシアさんはすごいですね』
フェリシア「えっと、何がでしょうか?」
竜化カムイ『さきほど戦っていた時と、今の雰囲気がまるで違うんですから』
フェリシア「そ、そんなに違いますか?」
竜化カムイ『はい、とても違いますよ。なんていうかそれはそれ、これはこれっていう感じでさっぱりしてると言いますか』
フェリシア「……そうかもしれません。でも、それでいいんです。私はカムイ様に仕えるメイドである自分が一番好きですから。こうしていつもの自分に戻れるのはうれしいことなんですよ」
竜化カムイ『フェリシアさん』
フェリシア「援護は私に任せてください。カムイ様は早くアクア様の下に」
竜化カムイ『はい、よろしくお願いします』
タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アクア「はっ、せいっ!!!」ブンブンッ
旧暗夜軍ソーサラーA「っ。まったく、その様な姿で繰り出されると思えない連撃ですね」
アクア「伊達にここまで戦い続けてきたわけじゃないのよ。そこ!!!」ブンッ
ドゴンッ
旧暗夜軍ソーサラーA「っ!!!」ズササッ
アクア(決まった!)
旧暗夜軍ソーサラーA「ふっ、そこです。ギンヌンガガプ!」シュオンッ
アクア「この程度!」サッ
旧暗夜軍魔法兵「逃がすか!!! サンダー!!!」シュオンッ
アクア「!!!!」
アクア(回避先を予想された!?)
バチンッ!‼‼
アクア「きゃああああ!!!」
ドサッ
アクア「ううっ、まだまだ……」ググッ
旧暗夜軍ソーサラーA「立ち上がらせると思っていましたか。王女を守るための行動とはいえ、少々軽率でしたな」
アクア「っ!」
旧暗夜軍ソーサラーA「それも、これで終わりです!」スッ
タタタタタッ
竜化カムイ『そうはさせません!!!』ダッ
アクア「えっ!?」
旧暗夜軍ソーサラーA「カムイ王女!? くらえっ!!」シュオンッ
ゴオオオッ
竜化カムイ『この程度の攻撃なら!!!』ダッ
ドゴンッ‼‼
竜化カムイ『!!!!』ググッ
旧暗夜軍ソーサラーA「ちっ」
旧暗夜軍ソーサラーA(死にかけの処理にと、ファイアーを使おうとしたのが裏目に出ましたか)
旧暗夜軍魔法兵「へっ、どちらにしても的が増えただけだ。ここで燃やし尽くしてや――」
フェリシア「はっ、それっ!!!」シュパッ!
ザシュ
旧暗夜軍魔法兵「がっ」ドサッ
フェリシア「誰も攻撃させたりしませんよ」チャキッ
旧暗夜軍ソーサラーA「っ、ですが、この一撃は外しません。カムイ王女もろとも吹き飛ばしてあげましょう!!!」スッ シュオオオオンッ
竜化カムイ『すごい魔力……』
竜化カムイ(あれの直撃を受ければ一溜りもありません。ここは一度退いてもう一度機を――)
アクア「カムイ、ちょっと失礼するわね」ググッ
竜化カムイ『え、アクアさ―――』
アクア「はああああっ」ダッ!
竜化カムイ『アクアさん!?』
旧暗夜軍ソーサラーA「ほう、飛び込んでくるとは無謀な方だ。まずはあなたから消し炭にしてあげましょう」スッ
アクア(敵は一点集中で攻撃、私が飛び出して狙いを改めて定める時間があるはず。そのわずかな時間があれば)
アクア「それで十分よ」ググッ
旧暗夜軍ソーサラー「死ね、ギンヌンガ――」
アクア「それはあなたの方よ! はあああっ」ブンッ
ドスリッ
旧暗夜軍ソーサラーA「……な」
旧暗夜軍ソーサラーA(投擲だと、飛び出して来たのは切り込んでくると見せかけるためで、本命の攻撃方法はこれだっということですか……)
旧暗夜軍ソーサラーA「ふ、ふふっ、まったく、ごふっ、こんな奇天烈な事ばかりされては、対処……するのも……」ズズッ ズズズッ
ドサリッ
旧暗夜軍魔法兵「くっ、退け! 他の部隊への合流を急ぐんだ! 隊長を運ぶぞ、全員手を貸せ!」
タタタタタッ
アクア「はぁ、はぁ……。ここは何とかなったわね」
タタタタタタッ
竜化カムイ『アクアさん!』
アクア「カムイ、うまく行ったわね」
竜化カムイ『うまく行ったではありません! あんな危険なことをいきなりしないでください。ただでさえ怪我をしているのに、あの攻撃を受けることがあったら……』
アクア「ご、ごめんなさい、心配を掛けてしまって」
竜化カムイ『全くですよ。でも、本当に無事でよかった。あなたに何かがあったら私は……』
アクア「カムイ……」
タタタタタタッ
フェリシア「アクア様、大丈夫ですか! わっ、カムイ様も怪我してるじゃないですか。さっき、治療したばっかりなのに」
竜化カムイ『そ、その。アクアさんを助けるためには仕方なかったんです。さきほどフェリシアさんが治療してくれたおかげでどうにかなりましたから』
フェリシア「だとしても、本当に無茶しちゃだめですよ、すぐに治療しますね。それ!」シャラランッ
竜化カムイ『ふぅ、それで状況はどうなっているのでしょうか?』
アクア「展開していた魔法部隊に打撃を与える事には成功したみたいね。でも、こんなに派手に動いた以上、後続の敵も黙っていないわ」
竜化カムイ『でしょうね』
竜化カムイ(あとは敵の行動にあわせて陣へ戻り、どれだけ粘れるかに掛かっています。まずは敵の動きを見極めなくてはなりません)
竜化カムイ『正念場ですね、私たちもそして向う側も……』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区西側・旧暗夜軍陣』―
旧暗夜軍ボウナイトA「敵が前進したか……」
旧暗夜軍兵士「はい、前衛はかなりの損害が出ているようです。どうします、隊長」
旧暗夜軍ボウナイトA「交代しつつ敵に圧力をかけて潰すつもりだったが、そうはいかないか」
旧暗夜軍兵士「どうします?」
旧暗夜軍ボウナイトA「残っている者も馬に乗れ」
旧暗夜軍兵士「前線と合流するのですね」
旧暗夜軍ボウナイトA「いや、合流に向かうのは全体の半分だ。どうせこちらが動けば敵は巣に戻るつもりだろう」
旧暗夜軍兵士「ならばなおさらです。戦線と合流し、そこから攻撃を仕掛ければ、敵の陣はこちらの総攻撃に耐えられるとは思えません」
旧暗夜軍ボウナイトA「いや、準備をしている時間はない。敵陣の後方を見てみろ」
旧暗夜軍兵士「……あれは」
旧暗夜軍ボウナイトA「南東門から侵入した敵部隊が向かっている。こっちが足並みを揃えて攻勢に出る頃には合流されているだろう」
旧暗夜軍兵士「これでは……」
旧暗夜軍ボウナイトA「あの陣を落とすことは厳しい。だが、それでも打てるものはある」
旧暗夜軍ボウナイトA(今はそれを打つ可能性に掛けるほかない)
旧暗夜軍ボウナイトA「タイミングは私が出す、今は戦線への合流を目指せ」
「行くぞ!!!」
オオオオオーッ!
今日はここまで
FEif、五周年おめでとう
久々の更新うれしいです!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍兵士「く、来るぞ!」
ドドドドドドッ
竜化カムイ『はあああ!』ザッ ブンッ
キィンッ!
旧暗夜軍兵士「ちっ、この野郎!」ダッ
旧暗夜軍ボウナイトB「待て、突出するな、それじゃ敵に囲まれるぞ。各自周囲の者と連携を取り、なんとか持ちこたえるんだ!」
アクア「カムイ、敵は防戦に切り替えつつあるわ。それに後方の敵部隊が向かっているみたい、このまま戦い続けるのは危険よ」
竜化カムイ『どうやら、ここまでのようですね。アクアさん、皆さんに撤退の指示をお願いします』
アクア「わかったわ。みんな、引き上げよ」
竜化カムイ『時間は私が稼ぎます。負傷した方々の輸送を最優先にしてください」
新生暗夜軍兵士「わかりました。全員、陣に戻るぞ!」
タタタタタタッ
旧暗夜軍兵士「敵が退いて行きます!」
旧暗夜軍ボウナイトB「追う必要はない、今は負傷者の手当を優先しろ」
旧暗夜軍兵士「わかりました」
旧暗夜軍ボウナウイトB(ちっ、できるならば追撃に移りたいが、多くの兵が負傷している今、出来る事ではない)
アクア「……敵は追撃に移るつもりはないみたいよ」
竜化カムイ『私達は運がいいみたいですね。このまま、安全に戻らせてもらいましょう』
竜化カムイ(敵が再度魔法攻撃を行うためにはかなりの時間を要するはずです。その準備が整うよりも前に、こちらの援軍が到着してくれれば……)
アクア「どうやら敵の援軍が到着したようね。だけど、こちらに来る気配はないみたい」
フェリシア「はい、早く退いて正解でしたね。……あれ?」
竜化カムイ『フェリシアさん、どうかしましたか?』
フェリシア「いえ、その、なんだか敵さんの数が少ない気がして……」
アクア「……確かにそうね。もう少し多い気がするけれど――」
ヒュンッ!!!
竜化カムイ『アクアさん!』ダッ ブンッ
キィンッ!!!
アクア「え!?」
フェリシア「こ、攻撃です! でも、一体どこから……」
ドドドドドドドッ
旧暗夜軍ボウナイトA「どうにか側面を取れたようだ。このまま一気に攻勢に出るぞ」
スッ
旧暗夜軍ボウナイトA「魔法兵はここで降り、敵の後方を足止めしろ。残りの者は弓を収め、剣を抜け!」
旧暗夜軍兵士「はっ!」
旧暗夜軍ボウナイトA「敵増援まであまり時間はない。一気に畳みかけ敵を殲滅する、私に続けぇ!!!」
旧暗夜軍兵士たち『おーーーーっ!』ドドドドドッ!
旧暗夜軍魔法兵「各自、後方の分断に尽力せよ。攻撃開始!」シュオンッ
ドゴンッ ドゴゴンッ!
新生暗夜軍兵士「ぐっ、前方に連続で魔法を放たれています! これじゃ進めません!」
アクア「西側から来たのね。どうやら、私達を分断して撃破するのが狙いみたい」
フェリシア「はわわっ、て、敵が来ますよ!」
竜化カムイ『すぐに逃げたいところですが、遠回りしている余裕はなさそうですね』
竜化カムイ(相手は騎馬兵、この魔法を迂回したところで追い着かれます。ここは魔法部隊を叩いてこの障害を排除する以外に手はありませんね)
竜化カムイ『アクアさん、敵魔法部隊までの距離は?』
アクア「それほど遠くはないけど、どうしてそんなことを……まさか」
竜化カムイ『はい、私が打って出ます。彼らは私達の足止めに意識を集中していますし、まさか、突撃してくるとは予想していないでしょう』
アクア「でも、さすがに危険すぎるわ」
竜化カムイ『だとしても、今それができるのはそれなりに早く動ける私だけです。フェリシアさんに治療してもらいましたし、攻撃を済ませたらすぐ離脱しますから大丈夫です』
アクア「何も大丈夫じゃないのだけど。仕方ないわね、私が付いて行くわ。いくら周囲を把握できると言っても、あなたは目が見えないのだから一人では厳しいでしょう?」
竜化カムイ『それはそうですが。今回は回避行動が多くなると思うので、私にしがみ付き続けるのは辛いと思いますが……』
アクア「大丈夫。この前、本気で暴れているあなたにしがみ付いていられたのだから、落ちる心配なんてしないでいいわ」
竜化カムイ『アクアさん……』
アクア「そういうわけだからフェリシア、ここはあなたに任せるわ。こっちが魔法部隊への攻撃を行って、賑やかになってきたら後退を始めてちょうだい」
フェリシア「わ、わかりました。アクア様も治療しておきますね。それっ!」シャラランッ
アクア「助かるわ」
竜化カムイ『それじゃ、アクアさん。進行方向の指示をお願いします。あなたの言う通りに激しく動いてあげますから』
アクア「ええ、行きましょう」
竜化カムイ『はい!』ダッ
新生暗夜軍兵士「あの中に飛び込むなんて……本当に大丈夫でしょうか?」
フェリシア「きっと大丈夫です。だから、私達もやられるわけにはいきませんよ」チャキッ
旧暗夜軍ボウナイトA「よし、このまま一気に距離を詰めて敵を討つぞ」
旧暗夜軍兵士「! た、隊長、竜がこちらに向かって来ます!」
旧暗夜軍ボウナイトA「なに!?」
ダダッ ダダッ ダダッ
旧暗夜軍ボウナイトA(まさか、包囲されかけているこの状況で打って出てくるというのか? ならば、すれ違いざまに切り殺してやる)チャキッ
アクア「カムイ、前方にボウナイトの部隊よ」
竜化カムイ『敵に止まる気配は?』
アクア「ないわね。このまま、後方の攻撃に向かうはずよ」
竜化カムイ『でしたら、このまま突破しましょう。こちらも止まって相対する暇はありませんからね』
ダッ
ダダッ
旧暗夜軍ボウナイトA「来たか、その首もらった!!!!」チャキッ
ブンッ
スカッ
ズサササッー
旧暗夜軍ボウナイトA「滑り込まれた!?」
旧暗夜軍ボウナイトA(背後を取って、そこから攻撃をするつもりか!?)
ダダッ ダダッ
旧暗夜軍ボウナイトA「なに!?」
竜化カムイ『残念ですが、あなたの相手をしている暇はありません』ダッ
旧暗夜軍兵士「あいつ、魔法部隊の方角に向かっています!」
旧暗夜軍ボウナイトA「ちっ、そういうことか。奴は俺が追う、残りは正面の部隊を狙え、奴の狙いが後方だろうと、敵を削れるだけ削る方針は変わらない」
旧暗夜軍兵士「わかりました!」
旧暗夜軍ボウナイトA「……大した度胸だが、敵中に一人で飛び込んできたこと、後悔させてやる!」
ダダッ ダダッ
竜化カムイ『……追ってきていますか?』
アクア「一人だけね。まだ距離が離れているけれど、さすがにあなたより早いわ」
竜化カムイ『この状態でも馬の脚力には敵いませんからね。でも、先に手が届くのは私達のほうです』
アクア「そうね。もうすぐよ」
竜化カムイ『はい、私も捉えられる範囲に入りました。一気に叩き潰します。アクアさんは降りずに掴まっていてください』ダッ
アクア「ええ、任せたわ」ギュッ
竜化カムイ『行きます!』ダッ!
旧暗夜軍魔法兵「よし、敵の後退を絶対に許すな。このまま――ん?」
竜化カムイ『そうはいきません!』
旧暗夜軍魔法兵「な、竜!? なぜこのようなところに!?」
竜化カムイ『はああああっ!!!』グッ ザシュンッ!!!
旧暗夜軍魔法兵「がっ!!!」ドササッ
旧暗夜軍兵士「っ、たかが一匹で調子にのるんじゃ――」
竜化カムイ『そこ!!!』ググッ ドゴンッ
旧暗夜軍兵士「がはっ!!!」ドササー
旧暗夜軍魔法兵「っ! くそ、まずはこいつを倒せ、今ならやれる!!!」スッ
旧暗夜軍魔法兵「これでどうだ!!!」シュオンッ バシュンッ!
ササッ
旧暗夜軍魔法兵「くそ、ちょこまかと動きやがって! 当たれ!!!」
アクア「妨害はこれで十分みたいね」
竜化カムイ『ええ、すぐに離脱します』ダッ!
旧暗夜軍魔法兵「ちっ、奴を逃がすな!」
竜化カムイ(よし、魔法部隊は私を倒すことに躍起になっています。あとはこの間にフェリシアさんが部隊を後退させてくれれば!)
パカラパカラッ
旧暗夜軍ボウナイトA「捉えたぞ、このまま逃げられると思うな!」チャキッ パシュッ
ザシュッ!
竜化カムイ『っ! 追いついてきましたか』
旧暗夜軍ボウナイトA「さすがに後方を狙いに行くとは思わなかったが、あそこで私を討たなかったのが運の尽きだ。その首、落させてもらう!」チャキッ
竜化カムイ『アクアさん、しっかり掴まってください!』ググッ! ダッ
アクア「!」
旧暗夜軍ボウナイトA「逃がすか!」ブンッ
ザシュッ!!!
竜化カムイ『っ!!!』
竜化カムイ(くっ、流石に早い!)
旧暗夜軍ボウナイトA「一人で乗り込んできたその度胸は認めるが、詰めが甘かったようだな」
旧暗夜軍魔法兵「隊長、援護します!」シュオンッ!
ドゴゴンッ
バシュンッ
竜化カムイ『っ!』
アクア「カムイ!」
竜化カムイ『まだ大丈夫です。向かうべき方角の指示をお願いします』
アクア「わかったわ。このまま、まっすぐ進んで、そうすればフェリシア達と合流できるはずよ」
竜化カムイ『はい』ダッ
旧暗夜軍ボウナイトA「奴の侵攻路を塞げ、奴を倒すことだけに集中せよ」ダッ
旧暗夜軍魔法兵「はっ!」シュオンッ
旧暗夜軍ボウナイトA(まだ間に合う。今ここで奴の息の根を止めてみせる)ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍兵士「おらああああ!」ブンッ
サッ
フェリシア「そこですっ、せやっ!」シュパッ
ザシュシュッ
旧暗夜軍兵士「ぐあっ! くそ!」ポタタタッ
新生暗夜軍兵士「フェリシア様、敵の魔法攻撃が止みました。今ならば!」
フェリシア「わかりました。後退しましょう」
新生暗夜軍兵士「はい!」ダッ
旧暗夜軍兵士「させるか! 奴らを動けないように包囲しろ。逃げようとする奴から重点的に叩け!」ダッ
旧暗夜軍兵士「逃がすと思ってるのか、そこだ!」ググッ ブンッ!
ザシュンッ!
新生暗夜軍兵士「ぎゃああっ!」ドサッ
ドドドドドッ
フェリシア「っ!」ブンッ
フェリシア(まずいです、敵の動きが早くて撤退できません!)
新生暗夜軍兵士「ど、どうしましょう、フェリシア様」
フェリシア「ううっ……」
フェリシア(ど、どうすれば……)
旧暗夜軍兵士「ふん、退かないか。ならば、このまま叩きのめしてやる!」
フェリシア(どうすれば……)
旧暗夜軍兵士「一気に決めるぞ、全員で―――」
???「ライナロック!」シュオンッ
ドゴオオンッ!!!
旧暗夜兵士「ぎゃあああっ!!!」ドササッ!
フェリシア「え、なんで敵が倒れて……」
新生暗夜軍兵士「フェリシア様、あれを!」
フェリシア「あ、あれは―――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
竜化カムイ『はぁ……はぁ……』ダダッ ダダッ
旧暗夜軍ボウナイトA「はああっ!」チャキッ ブンッ!!!
竜化カムイ『っ!』グッ!
サッ
アクア「っ、カムイ、大丈夫!?」
竜化カムイ『まだ、大丈夫です』
竜化カムイ(ですが、この敵の猛攻の中では……)
旧暗夜軍魔法兵「サンダー!」シュオンッ
バチンッ
竜化カムイ『っ、まだまだっ!』ダッ
旧暗夜軍魔法兵「そこだ!!」シュオンッ
竜化カムイ『!』
バチンッ!!!
竜化カムイ『ううっ!!!』
アクア「きゃあっ!!」
ズササーッ
竜化カムイ『アクアさん!』サッ
旧暗夜軍ボウナイトA「もらった!」ブンッ ビシャアアッ!
竜化カムイ『ああっ!!』ヨロッ
グッ ダンッ
旧暗夜軍ボウナイトA「トドメだ!」チャキッ
竜化カムイ『はあああっ!!!』ブンッ!
ドゴンッ!!!
旧暗夜軍ボウナイトA「がっ」ドササーッ
旧暗夜軍魔法兵「隊長!」
旧暗夜軍ボウナイトA「だ、大丈夫だ。くそ、本当にしぶとい奴だが、それもここまでだろう」
アクア「カムイ!」
竜化カムイ『だ、大丈夫です。まだ、動けますからアクアさんは私の影に……』
竜化カムイ(ですが、動けると言っても先ほどの様には行きません。仕掛けられるタイミングに賭けるしかありません)
ザッザッ
旧暗夜軍ボウナイトA「しぶとかったがこれで終わりだ。全員、構えろ」
旧暗夜軍魔法兵「はっ」スッ
アクア「カムイ……」
竜化カムイ『アクアさん、しっかり捕まってください』
アクア「でも……」
竜化カムイ『大丈夫、きっとうまく行きます』
アクア「わかったわ……」
旧暗夜軍ボウナイトA「……」スッ
アクア「……」ギュッ
竜化カムイ『……」
旧暗夜軍ボウナイトA「やれ!!!」バッ
竜化カムイ『そこです!!!』ググッ ダッ!!!
ドゴゴンッ!!!
旧暗夜軍ボウナイトA「な、その傷でまだ動くというのか!?」チャキッ
竜化カムイ『そう簡単に折れるわけにはいかないんですよ!!!』グググッ
旧暗夜軍ボウナイトA(攻撃が来る。くそ、間に合うか!?)
旧暗夜軍ボウナイトA「うおおおおおお!!!」グッ
ドゴンッ!!!
ドササッ……
旧暗夜軍ボウナイトA「ごふっ」ビチャアアッ……
旧暗夜軍ボウナイトA「く、くそ……、まだ、私は戦え……る、マクベ……ス様……」
旧暗夜軍ボウナイトA「」
旧暗夜軍魔法兵「隊長! ちっ、奴を逃がすな!!! ここで――」
???「ブリュンヒルデ!!!」シュオンッ
旧暗夜軍魔法兵「があああっ!!!」ドササッ
アクア「この魔法は……」
竜化カムイ『どうやら、間に合ったようですね』
ドドドドドドドッ
レオン「まずは姉さんたちを助け出す。攻撃開始だ」
新生暗夜軍ダークナイトA「はっ!」
旧暗夜軍魔法兵「敵の援軍だと。くそ、あと少しだというのに!」
旧暗夜軍魔法兵「今は離脱しましょう! この数を相手にはできません!」
旧暗夜軍魔法兵「くそ、後退だ!」
タタタタタッ
アクア「なんとかなったみたいね」
竜化カムイ『はい、なんとか……。ぐっ、ううう……』ドスン シュオオン……
アクア「カムイ、大丈夫?」
カムイ「ええ、なんとか大丈夫です。アクアさんの方は?」
アクア「私の方は大丈夫、ん?」
タタタタタッ
レオン「姉さん、アクア!」
カムイ「レオンさん」
アクア「レオン」
レオン「色々と言いたいことはあるけど、とりあえず治療するから動かないで」シャラランッ
カムイ「ふぅ、レオンさんが間に合ってくれて、本当に助かりました。ありがとうございます」
レオン「ありがとうじゃないよ、敵の中に単身飛び込むなんて自殺行為にもほどがある……」
カムイ「あの状況ではこれしか方法が思いつかなかなかったんです。許してください」
レオン「はぁ、確かに敵の魔法による妨害が無いおかげでフェリシアたちの援護にすぐ取りかかれたけど、姉さんはこの軍にとって必要な人だ。それを忘れないでほしい。もちろんアクアもだ、わかった?」
アクア「ごめんなさい」
カムイ「はい。それでフェリシアさんたちは無事ですか?」
レオン「負傷者がそれなりに出ているけど大丈夫だよ。今は協力して治療に専念してもらっている」
カムイ「それはよかった。そうでした東側、フローラさん達が守っている方角で何かがあったようなのですが……」
レオン「そこにはエリーゼが向かったよ。状況から見てどうにか対処できたみたいだから、これで西と東は一安心のはずだ。後は中央の侵攻部隊を抑え込むことが出来れば、一気に勝負を決めに行ける」
カムイ「中央……、マークス兄さんは大丈夫でしょうか」
レオン「兄さんなら何とか持ちこたえてくれるはずだ。東の魔道砲台はサクラ王女を中心とした部隊が攻略を行っている。今なら敵の援軍が中央の援護に来ることはできないはずだ」
カムイ「サクラさんが?」
レオン「ああ、本当に強い人だよサクラ王女は。だから東のことは彼女達に託して、僕らはこちらの援護に回る事が出来たんだ」
カムイ「そうだったんですね……。それで、これからどうしますか?」
レオン「これから兄さんの援護に向かいつつ、敵の包囲を開始する。中央戦線の立て直しが出来る段階になってきたし、カミラ姉さんたちの部隊は西側から仕掛けられる態勢を整えている。あとは僕らが準備を整えるだけだ」
カムイ「マークス兄さんのいる中央は敵の攻撃がまだ続いているようですね」
レオン「西と東の攻撃が失敗に終わったことはマクベスに伝わっているはずだから、奴も本腰を入れてくるはずだ。姉さんも兄さんの援護に付いて来てくれるかい?」
カムイ「もちろんですよ、レオンさん」
レオン「ありがとう、僕は部隊の再編に取り掛かることにする。準備が出来次第、すぐに兄さんの援護に向かおう」タタタタタッ
カムイ(レオンさん達のおかげでどうにかここを守り切ることができました。あとは中央の攻撃を押し留め、押し返すことが出来れば勝てるはずです)
カムイ「不安要素があるとするなら、やはり東側の魔道砲台周辺の敵の動きですか……」
アクア「そこはサクラ達を信じましょう。大丈夫、あそこにはルーナもいるみたいだから、きっとなんとかしてくれるわ」
カムイ「アクアさん……。そうですね、サクラさんたちを信じて私達はマークス兄さんの援護に向かいましょう」
アクア「ええ」
カムイ(サクラさん、頼みましたよ)タタタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区東・魔道砲台周辺』―
―少し前―
旧暗夜軍魔法兵「敵部隊の残りがこちらに向かって前進を開始しました」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「そうか、敵の全てが中央へ移動するならばこちらもマクベス様と合流するつもりだったが、そうはいかないようだ」
旧暗夜軍魔法兵「はい、いかがしますか。隊長」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「迎撃態勢を整えろ。砲手には射程に入り次第攻撃するように伝えておくんだ」
旧暗夜軍魔法兵「わかりました」
旧暗夜軍ランサー女「ようやく攻めてくるわけね」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、だが中央に向かった敵もいる。向かってくる敵の掃討を終え次第、こちらも部隊を分けマクベス様の援護に向かうことになるだろう」
旧暗夜軍ランサー女「なるほどね。まぁ私としては敵を倒せればそれでいいよ。暗夜のためにも、なにより……私のためにもね」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
旧暗夜軍ランサー女「私が倒せば暗夜のためになる。そうすれば、あいつらの分もきっと……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……お前がそうしたいのならばそうすればいい。だが先ほどのように助けられるかはわからん。少しは慎重に動く様にしろ」
旧暗夜軍ランサー女「わかってるよ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「わかっているなら、それでいい」
タタタタタタッ
旧暗夜軍兵士「隊長、準備が整いました」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「わかった」
旧暗夜軍ランサー女「そういえば、さっきの奴らはいるかな」
旧暗夜ブレイブヒーロー「さぁな。だが運が良ければいるだろう。そうなれば先ほどの借りを返さなくてはならないな、もちろん――」
「奴らの命を奪うという、最高の形でな」チャキッ
今日はここまで
色々と更新が遅れていまして申し訳ないです。
乙
魔法壁は超竜石カムイになりがち
蛇毒+四牙は許されないんだ
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東部魔道砲台周辺』―
新生暗夜軍ジェネラル「敵部隊、展開しました」
ルーナ「うーん、レオン様たちを追って中央の援護に向かうって動きじゃないわね」
シャーロッテ「まぁ、そうじゃないと私達がここに残った意味がないから助けるけど」
ルーナ「たしかにね。リンカ、敵は動きそう?」
リンカ「いや、向こうから動くつもりはないようだが、サクラはどう見る?」
サクラ「そうですね。砲台を中心に左右へ広がっているようですから、砲台を起点にこちらの前進を拒みつつ迎撃する作戦なのかもしれません」
ルーナ「さすがに陣地を捨てて攻めてくるなんて期待できないか。はぁ、制圧して見せるなんてレオン様に言っちゃったけど中々にきついわよ、これ」
リンカ「戦う前から負けているようでは勝つことなどできないぞ?」
ルーナ「ふん、勘違いしないで。きついって言っただけで勝つことが出来ないなんて言ってないんだから。見てなさい、あんな敵陣、あたし一人でパパっと壊してやるんだから」
サクラ「あまり無茶な事はしないでくださいね」
ルーナ「わ、わかってるわよ。今のは、……そう、景気付けに言ってみただけだから」
シャーロッテ「ルーナが一人でどうにかしてくれるなら私は楽で助かるんだけどね。でも、あんまり無茶なコトすると、サクラ様も無茶なこと始めちゃうだろうから気を付けないとね」
サクラ「私、そんな無茶なことなんてしません」
シャーロッテ「そう、それじゃ例えばだけど、敵陣のど真ん中で私が負傷したらサクラ様はすぐに治療しに来るでしょ?」
サクラ「当たり前です。助けに向かいます」
シャーロッテ「即答されるとなんだか照れるわ。だけど、状況を考えたらそれってすごく無茶なことだってわからない?」
サクラ「それはそうかもしれません、でも――」
シャーロッテ「放っておけない、それがサクラ様の考え。だからこそレオン様と一緒に中央戦線に行かないでこっちに残ってくれた。正直、それだけでも十分なのに更に無茶までさせちゃったら、サクラ様ばっかりに働かせているみたいで、その、ちょっと、あれよ」
サクラ「えっと、不公平……ですか?」
シャーロッテ「そう、そういうこと。サクラ様が無茶しないラインで、私たちも行動する。一人しか出来ないことがあるなら、一人で出来る範囲の状況に留めないとね」
サクラ「シャーロッテさん……」
シャーロッテ「だから、安心しなさい、さっき言ったみたいな危険な状態に陥ったりなんてしないからさ」
サクラ「はい、ありがとうございます。でも、怪我をしたらきちんと治療してあげますからね」
ルーナ「それじゃ、そろそろ仕掛けましょう。手筈通りにリンカは空から敵を監視して、攻められそうな場所があったら教えてちょうだい」
リンカ「わかった」
シャーロッテ「魔道砲台があるからジェネラル部隊は私たちが敵と交戦に入るまで待機。戦闘が始まったら各戦列の援護に回って」
新生暗夜軍ジェネラル「はっ、わかりました!」
サクラ「あの、リンカさん……」
リンカ「わかっている。空から見るのがあたしの仕事だが、同時にサクラを望む場所に連れて行くのもあたしの仕事だ。癒すべき相手を見つけたのなら言え、そこに連れて行ってやるさ」
サクラ「はい、よろしくおねがいします」
リンカ「よし、それじゃ行くぞ!」ググッ
バサバサバサッ!
ルーナ「それじゃあたしたちも行くわ、みんな付いてきなさい!」
シャーロッテ「よし、行くぞ!」
新生暗夜軍兵士たち『オオーーーッ!』
ドドドドドドッ
リンカ「そろそろ魔道砲台の射程だ」
サクラ「砲台に動きがありました、攻撃が来ます!」
ルーナ「みんな、攻撃が来るわ。気合で避けなさい」
新生暗夜軍兵士「了解!」
リンカ「来るぞ!」
ゴオオオオオオッ ドゴオンッ!‼‼‼
ルーナ「うまく避けたわね。それじゃ、このまま距離を詰めるわ。シャ―ロッテ、初撃は譲ってあげるからきちんと決めなさいよ」
シャーロッテ「任せな、一気に吹き飛ばすから、そっちも援護よろしく」ググッ
ルーナ「ええ」タタタッ
旧暗夜軍兵士「来るぞ! 数はそれほど多くないが油断するな!」
チャキキッ
シャーロッテ「見た目で甘く見てくれればこっちとしては都合がいいのに。それじゃいくわよ、はああああっ!!!」ググッ ブンッ!‼‼
ドゴンッ‼‼‼
旧暗夜軍兵士「がっ!!!!」ドサササッ
旧暗夜軍兵士「な、何て力だ。だが、その勢いを付けての攻撃直後では、避けられまい。やああっ!!!」ダッ ブンッ
シャーロッテ「ルーナ!」
ルーナ「よっと!」サッ
ガキィンッ!!
ルーナ「さすがにそれくらい御見通しよ。それっ!!」ブンッ
旧暗夜軍兵士「ちっ!」サッ
シャ―ロッテ「助かったけど、思ったより敵の層が厚いわ」
ルーナ「本当にね。だけど魔道砲台はあたしたちを狙ってないみたいだし、一気に穴をあけるまでよ」チャキッ
旧暗夜軍兵士「ふん、開けられるものなら開けてみせろ!」ダッ
ルーナ「ご要望通りに開けてあげるわ」ダッ
シャーロッテ「はあああああっ」ググッ!‼
ブンッ!‼‼‼
ドゴンッ‼‼‼‼‼
新生暗夜軍兵士「ぐああああっ……ぐっ、くそ……」ズズッ ズズズッ
旧暗夜軍兵士「止めだ!!!」チャキッ
新生暗夜軍兵士「!!!!」
バサバサッ
リンカ「させるか!!!」チャキッ ブンッ
ズビシャアアッ!‼‼
旧暗夜軍兵士「ぐあああっ!!!!」ドササッ
新生暗夜軍兵士「リ、リンカ様。ありがとうございます、助かりました。ううっ……」
リンカ「礼は不要だ、サクラ頼む」
サクラ「はい、今すぐ治療します」シャランッ
シュオオンッ
新生暗夜軍兵士「あ、ありがとうございます、サクラ様」
サクラ「いいえ、気にしないでください。ご武運を」
新生暗夜軍兵士「はい!」タタタタッ
リンカ「ここ周辺は落ち着いて対処できているようだ」
サクラ「ええ、でも問題は東側ですね」
リンカ「ああ、魔道砲台からの攻撃が激しい。あいつら、東側から崩していくつもりみたいだからな」
サクラ「負傷者も多く出ているはずです。すぐに救援に向かいましょう。」
リンカ「よし、飛ばしていくぞ!」バサバサッ
サクラ(後方で待機していたジェネラル隊の皆さんも前進しています。どうにか、ジェネラルの皆さんが到着するまでに、負傷した方々の治療を終えて態勢を維持しないといけません)
サクラ「待っていてください、今向かいますから」
◆◆◆◆◆◆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍砲台兵「放て!‼‼」シュオンッ!
ゴオオオオオッ バシュッ!!!
ドゴンッ……
旧暗夜軍ランサー女「東側は順調って感じかな」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、だが他は拮抗している。現状拮抗しているのであれば、あの後続の敵重装兵団に介入されれば崩されるのは明らかだ」
旧暗夜軍ランサー女「本当にね。それにしてもさっき白夜の王女を倒すチャンスだったのに邪魔をしてきた敵、あれだよね?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「あれだろう。どうやら東側の援護に向かっているようだな」
旧暗夜軍ランサー女「あれ私に任せてくれる。それに、さっきブレイブは倒すのをしくじったんだから、今度は私でもいいでしょ?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、わかった。奴らはお前に任せるとしよう」
旧暗夜軍ランサー女「ありがと。ついでに東側も崩して来るから。みんな、行くよ」
旧暗夜軍兵士「わかりました、副隊長」タタタタタッ
旧暗夜軍ランサー女「それじゃ、運が良かったら戦線でね、ブレイブ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ」
タタタタタタタッ
旧暗夜軍兵士「隊長、良かったのですか。副隊長に任せて」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、空からの目が厄介なのはこちらも同じだ。それをあいつが潰してくれるのならば、こちらも助かる」
旧暗夜軍兵士「ですが、その副隊長は……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「大丈夫だ。あそこで誰が死のうとも、あいつは取り乱したりはしない。もう、あいつにとっての仲間はすでにいないのだからな」
旧暗夜軍兵士「隊長……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「だから心配する必要は無い、ランサーがうまく戦果を挙げることを信じるだけでいい。それだけで十分だ」
旧暗夜軍兵士「わかりました。我々も出ますか、隊長」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ああ、おそらく敵重装兵と戦うことになる。対装備を忍ばせておくように他の者たちにも伝えておけ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタタッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(もう、あのようなことは起き得ない。そしてあいつがもう一度壊れることもない。なにせもう起きてしまったことだ……)
旧暗夜軍ランサー女(みんな、死んじゃった……。ブレイブさん、みんな死んじゃった、あははははは、暗夜のためにみんなで頑張ろうって、暗夜のために敵を倒していこうって決めてたのに。隊のみんな私だけ置いて死んじゃった……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(テンジン砦での戦いで、あいつはすべての仲間を失った。あいつの所属していた部隊はテンジン砦と一緒に吹き飛んだのだから。そして壊れてしまった)
旧暗夜軍ランサー女(あははは、あはははははははっ!‼‼ でも大丈夫、私がみんなの分敵を倒せばいいんだ。暗夜のために敵を倒して、みんなの分戦えばいい。そうだよ、それでいい。だからさ、くよくよしてても仕方ない……よ。そうだ、部隊長が言ってたんだ。くよくよしてても仕方ないって。そうだよ、みんな死んじゃったけど、そんなの気にしてたら戦い続けられないよね。だから、気にしない私はみんなが死んだことなんて気にしない、ただみんなの分も私が暗夜のために戦えばいい。ねぇ、そうだろ……ブレイブ?)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(縋りつくような視線と声でそう聞いてきたから答えた。お前が望むように戦えばいいと。それでよかったのかどうかわからない。分からないからこそ、私は私の道を信じて戦う。あの日の言葉を彼女がどう思っていようとも……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
旧暗夜軍兵士「隊長、準備が整いました」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「よし、砲台の防衛部隊だけを残し、俺たちも攻撃に向かう。敵の侵攻を阻止し、砲台をなにがあっても守り抜くぞ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「よし、ランサーの部隊に後れを取るな!」タタタタッ
「続け!!!」
今日はここまで
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東部魔道砲台近辺』―
ルーナ「はっ、それ!!!」チャキッ シュババッ!
ザシュンッ ザシュンッ!
旧暗夜軍兵士「ぐえ……」ドササッ
ルーナ「ふぅ、一段落ね。さて次は――」タタタタッ
シュオンッ
ルーナ「やば!」サッ
ゴオオオッ ドゴンッ!!!
ルーナ「ああもう、砲台が鬱陶しい! あたしに何の恨みがあるわけ!?」
シャーロッテ「恨みとか以前に敵なんだから、狙ってくるのが当たり前でしょ」
ルーナ「そうかもしれないけど、もっと集団を狙うとかあるでしょ? ここ、あたしとあんたしかいないじゃん。絶対狙ってるわ」
シャーロッテ「まぁ、たしかにね。よっと!」ブンッ
キィンッ
旧暗夜軍弓兵「気づかれた!?」
旧暗夜軍弓兵「ちっ、だが当てればいい、あんな軽装、一回当てるだけでも致命傷に――」
シャーロッテ「それはあんたらも同じだよ、おらあああああっ!!!」ブンッ
ブンブンブンッ ズシャッ!!!!
旧暗夜軍弓兵「ぎゃああっ!!!」ドサリッ…
旧暗夜軍弓兵「あの女、武器を投げてきやがった!?」
シャーロッテ「ルーナ残り任せるわ」
ルーナ「はいはい」タタタタタッ
旧暗夜軍弓兵「っ、来るな!!!」チャキッ パシュッ!!!
ルーナ「!」サッ
旧暗夜軍弓兵「くそっ」チャキッ
ルーナ「遅い!」チャキッ ブンッ
ズビシャアアッ!!!
旧暗夜軍弓兵「く、くそぉ……」ドサリッ
ルーナ「これでよしっと!」
シャーロッテ「決まったみたいな言い方しているとこ悪いけど、あれの相手をしないとだめそうね」
ルーナ「あれ?」チラッ
旧暗夜軍兵士たち『……』ドドドドドドドドッ
ルーナ「はぁ、まだ来るの?」
シャーロッテ「本当、嫌になるわ……」
旧暗夜軍兵士『……』ガチャガチャ
ルーナ(うーん、対重装装備を持っているから、本当の目的は到着するジェネラル部隊の殲滅みたいね)
シャーロッテ(ジェネラルが隊列を組むところを一気に狙われると対処し辛くなるだろうから、ジェネラルが来る前にできる限り数減らすしかないか)
ルーナ「ねぇ、ちょっといい?」
シャーロッテ「あのさ、ちょっといい?」
二人『………』
シャーロッテ「それで、ルーナは何をしたいわけ?」
ルーナ「単純よ、打って出るから援護してほしいの。それで、あんたの要望は?」
シャーロッテ「こっちも打って出るから援護よろしくって感じ」
シャーロッテ「……」
ルーナ「……」
二人『ふふっ』
ルーナ「それじゃ、方針も決まったし行くわよ」ダッ
シャーロッテ「ええ、一気に決めるわ」ダッ
旧暗夜軍兵士「敵が来ます!」
シャーロッテ「まずは挨拶だ。おらああああっ!」ググッ ブンッ!
旧暗夜軍兵士「ちっ、この程度撃ち落としてしまえば!」ブンッ
ガキンッ ゴトンッ
ダッ!
ルーナ「まずは一人!」ブンッ
ズビシャアアッ
旧暗夜軍兵士「ぐああっ」ドサッ
旧暗夜軍兵士「この!」チャキッ
シャーロッテ「当たれ!」チャキッ ブンッ
ヒュンヒュン ドスリッ!!!
旧暗夜軍兵士「がっ、手斧だと……」ポタタッ
シャーロッテ「邪魔よ!」ググッ ドゴンッ!!!
旧暗夜軍兵士「がはっ」ズサーーッ
旧暗夜軍兵士「っ、せめて一人だけでも! 死ねええ!!!」ダッ ググッ
ブンッ!
カキィンッ!!!
旧暗夜軍兵士「っ!!!」
ルーナ「甘いわね。もう一人いることくらいちゃんと覚えておきなさい」ググッ キィンッ
カランッ!
旧暗夜軍兵士「しまった、剣が――」
シャーロッテ「それじゃ、おやすみっと」ググッ ブンッ
ドゴンッ!!!!
旧暗夜軍兵士「ぎゃああああっ」ドタッ……
旧暗夜軍兵士たち『……』
シャーロッテ「ふぅ、一丁上がり!」
ルーナ「あんた、せめて武器使いなさいよ」
シャーロッテ「こっちのほうが手早いし、確実な距離だったからいいでしょ。それに、今はルーナしかいないから気にしなくてもいいわけだから」
ルーナ「まったく、でもその馬鹿力が頼りになるのは確かね」
シャーロッテ「馬鹿力っていうんじゃねえよ。これでも、か弱い乙女で通ってんだから」
ルーナ「か弱いって……ここまでの活躍を見てか弱いはないでしょ……ん?」
タタタタタタッ
新生暗夜軍兵士「ルーナ様、シャーロッテ様。ご無事でしたか」
ルーナ「ええ、何とかね。それより、そっちの様子は?」
新生暗夜軍兵士「残炎ですが、敵の援軍に徐々にですが押されつつあります。砲台への侵攻に向けて準備していた左翼付近に攻撃が集中している状態です」
ルーナ「そう、右翼と左翼を落として、そのまま囲んで潰すつもりかも。早急にどうにかしないと……」
シャーロッテ「どうするの、ルーナ?」
ルーナ「私が援護に向かうから、シャーロッテはここで状況を見て動いてくれる」
シャーロッテ「状況を見てって」
ルーナ「そういうわけだから、援護はあたしと数名で行くから、残りのみんなはここを守って」
新生暗夜軍兵士「わかりました。ここは我々がジェネラル隊到着まで必ずや守り抜きます」
ルーナ「そういうわけだから、向こうはあたしに任せていいから。シャーロッテはあっちの万が一に備えていて。こっちのことは後回しでいいから」
シャーロッテ「わかったわ。気を付けなさいよ」
ルーナ「それじゃ、お願いね。ほら、行くわよ」タタタタタタッ
新生暗夜軍兵士「わかりました、ルーナ様」タタタタタッ
シャーロッテ「さてと、あとは向こうの様子次第ね」
シャーロッテ(まぁ、何事もなくて動かないで済めばいいけど……)
シャーロッテ「ここに私を残していった時点で、そういうわけにもいかなそうね……」チャキッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シュオオオンッ
サクラ「……はぁはぁ、終わりました」
新生暗夜軍兵士「ああ、ありがとうございます。ううっ……」
サクラ「今はできる限り安静にしてください。まだ、持ちこたえられていますから」
サクラ(予想以上に負傷者が多い。下がろうにも何時後方からノスフェラトウの軍勢が来るかわかりません。砲台がこちら以外の場所を狙ってくれているのは不幸中の幸いですが、このままでは……)
リンカ「サクラ、そいつで最後のようだぞ」
サクラ「はい、状況はどうですか?」
リンカ「あまりよくはない。敵の増援が来てから目に見えて押され始めている。いよいよ、後がなくなってきた。あたしも戦闘に出るが、サクラ様はここで指揮を」
サクラ「いいえ、私も出ます。皆さんが戦っているのですから、それに今戦線にいる負傷者は後退できない状態になっているはずですから」
リンカ「わかった。それがサクラの考えなら、それに従うさ」
サクラ「はい、お願いします」
リンカ「よし、一気に前に出る。ここをどうにかしてからじゃなきゃ、いろいろと判断もできないからな」
サクラ「はい、ジェネラル隊の皆さんの到着まではどうにかして持たせましょう」
リンカ「ああ、そうだ――」
ヒュンッ!!!
リンカ「!!!」ググッ
ヒヒーンッ バサバサッ
ヒュンッ!!!
サクラ「わっ、わわっ!!!」グラッ
リンカ「サクラ!」ガシッ
サクラ「あ、ありがとうございます。その、今のは一体……」
リンカ「槍だ。どうやら、あたしたちが来るのを待っていた奴がいるようだ」
サクラ「待っていたって……あ、また来ます!」
ヒュンッ
リンカ「よっと!」ググッ
サッ
リンカ「あいつだな……」
サクラ「……あの人は」
サクラ(先ほど戦った槍使いの人……ですよね)
リンカ「さっき、戦っていた奴だな」
サクラ「……はい」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ランサー女「ようやく姿を見せたから一撃で決めたかったけど、うまくいかないね」
旧暗夜軍兵士「副隊長、このまま敵を押し込みましょう。このまま押し切って瓦解させれば残りの敵を側面から攻撃することも可能になります」
旧暗夜軍ランサー女「ええ、後方から向かっているジェネラル隊のこともあるし、このまま一気に敵陣を崩しにかかろう。そのほうが、私にとっても都合がいい」
旧暗夜軍兵士「都合がいい、ですか?」
旧暗夜軍ランサー女「そうそう、都合がいいの」
旧暗夜軍ランサー女(だってそうだろう、救援のためにあいつらは来たんだから、こちらが攻勢に出れば、問答無用で前に出てくるだろうからね)
旧暗夜軍ランサー女「そういうわけだから、早速蹴散らしに行くよ」
旧暗夜軍兵士「はっ、すでに準備は整っています」
旧暗夜軍ランサー女「ふふっ、手際がいいね」
旧暗夜軍ランサー女(あいつらを殺す。殺せばそれが暗夜のためになる。みんなが成しえなかったのなら、私が載せていけばいい。それにあの日、ブレイブは言ってくれた……望むように戦えばいい、そう言ってくれた)
旧暗夜軍ランサー女「大丈夫……私はまだ戦える……」ボソッ
旧暗夜軍ランサー女(そう、国のために戦うことをまだ続けてもいい、こんな状況になって勝利が消え去っていく中であっても、私は戦ってもいいと言ってもらえた……。もっとも、ブレイブはそんなこと思ってもいないだろうけど)
旧暗夜軍ランサー女「あれがこっちに向かってきたら教えて、私が相手をするから」
旧暗夜軍兵士「はっ、わかりました」
旧暗夜軍ランサー女「ありがと。……それじゃ仕掛けるよ。みんなついてきて!」ダッ!
旧暗夜軍ランサー女(どんなに敵を倒しても暗夜の勝利はもう無い、そんなことはわかっている。だとしても私は戦う。それが――)
(あの言葉に救われた、私の唯一出せる答えなのだから……)
今日はこれだけ
乙
◆◆◆◆◆◆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東側魔道砲台周辺』―
旧暗夜軍兵士「よし、一気に突き崩せ!」
新生暗夜軍兵士「攻撃が来るぞ、各自迎撃せよ!」
リンカ「あいつら、一気に決めに来たみたいだ。サクラ、攻撃できるか?」
サクラ「はい、この高さを維持してください」チャキッ
新生暗夜軍兵士「この、これで!!!」
旧暗夜軍兵士「そこだ! はああっ!」ググッ ブンッ!!!
ガキィンッ!!!
新生暗夜軍兵士「あっ……しま――」
旧暗夜軍兵士「死ね!!!」チャキッ
新生暗夜軍兵士「ひっ!!!」グッ
サクラ「させません!!」パッ
シュパッ!!!
ドスリッ!!!
旧暗夜軍兵士「が……」ドサッ
新生暗夜軍兵士「え、俺、生きてるのか?」
新生暗夜軍兵士「おい、ぼーっとする暇があったらすぐに武器を拾え。まだまだ、敵は来るぞ!」
新生暗夜軍兵士「あ、ああ! うおおおおっ!」タタタタタッ
リンカ「よし、間に合ったぞ」
サクラ「次を狙います」チャキッ
パシュッ!
旧暗夜軍兵士「副隊長、あそこです!」
旧暗夜軍ランサー女「どこかに逃げられるかと思ったけど、そうじゃないなら好都合だ。この距離なら届く!」グッ
リンカ「もう、追いつかれたか。サクラ、掴まれ!」ググッ
サクラ「は、はい!」ギュッ
バサバサッ
旧暗夜軍ランサー女「喰らえ!!!」ブンッ
ヒュオンッ!
リンカ「っ、どうにか避けられたか。サクラ大丈夫か」
サクラ「はい、なんとか。リンカさん、次が来ます!」
リンカ「ちっ!」ググッ
ヒュン! ヒュンッ!
リンカ(ちっ、思ったよりも器用に狙ってくる!これじゃ、援護も偵察もできないぞ)
バサバサッ
旧暗夜軍ランサー女「次!」ブンッ!
リンカ(回避はだめだ。なら、叩き落す!)
リンカ「はあああっ!!!」チャキッ ブンッ
ガキィンッ!
サクラ「っ!!! リンカさん、大丈夫ですか?」
リンカ「大丈夫だ、それよりもどうする?」
サクラ「ジェネラル隊の皆さんが到着するまであと少しですから、突破されそうな箇所の援護に向かいたいところですけど……」
リンカ「どうやら、あたしたちを行かせるつもりは無いみたいだね」
旧暗夜軍兵士「敵ダークファルコンはこちらの攻撃で思うように動けなくなっているようです」
旧暗夜軍ランサー女「よし、奴がいる真下の敵陣に戦力を集中させる。奴は動けないように抑えつけておくから、存分に暴れてきて」
旧暗夜軍兵士「了解しました!」タタタタッ
旧暗夜軍ランサー女「ふふっ、もう逃がさないから!」チャキッ ブンッ
リンカ「くそっ、あいつの所為で思うように援護に入れない」
サクラ「まずいです、敵の戦力がこちらに向けて集まっています。ここを突き崩す気です」
リンカ「このままじゃ、ジェネラルが来る前にここの瓦解は避けられないぞ。どうするサクラ」
サクラ(見たところ、敵に弓兵はいないみたいです。なら、敵の頭上を通り過ぎることは難しい事じゃありません。だったら――)
サクラ「これくらいしか、ありません」
リンカ「何か思いついたか?」
サクラ「敵の隊列に攻撃を仕掛けて混乱させましょう。今の状況で行える時間稼ぎはこれくらいしかありません」
リンカ「わかった、すぐに高度を上げる。サクラは攻撃に――」
サクラ「いいえ、狙うのは正面に見えている隊列じゃありません。その後ろの隊列です」
リンカ「後ろの隊列って、まさか合流しようとしてる隊列のことか?」
サクラ「はい。敵に弓兵はいないので、投擲と魔道砲台の攻撃以外に私たちへ危害を加えることはできません。幸い、今は魔道砲台の攻撃は別の場所に集中していますし、混戦になることを予想してこちらへの攻撃は控えているのだと思います。それに、一騎で敵地に飛び込むなんて自殺行為を行ってくるとは思っていないでしょうし、だからこそ頭上を気を配っている方もいないはずです。そこを狙い打ちます」
リンカ「なるほどな」
サクラ「でも、不意を付けたとしても一瞬です。すぐに敵の多くが私たちに意識を向けて、攻撃してくると思います。ですが、それは同時に敵の隊列が乱れて前進が少し遅れるということにもなるはずです。そうなれば、ジェネラル隊の合流が間に合うかもしれません。だから、その、どうでしょうか?」
リンカ「どうでしょうかって、あたしには違う考えもなければ文句もないよ。考えることは苦手なんだ」
サクラ「でも、とても危険な作戦ですから……」
リンカ「はは、こんな危険なことを実行しようとしてるなんて知ったら、シャーロッテが飛んで来そうだ。さっきまで無茶な事はしないとか話してたのに、これだからな」
サクラ「だ、大丈夫です。無茶じゃなくて危険なだけですし、私一人じゃなくてリンカさんも一緒です。それに、これは二人で出来る範囲の行動ですから、問題ありません」
リンカ「ふふっ、確かにそうだな。あたしとサクラ、二人で出来るならシャーロッテの言う不公平じゃないのは確かだ」
サクラ「リンカさん」
リンカ「よし、そうと決まればさっさと仕掛けよう。それに一時とはいえ敵を飛び越すならついでに偵察もするぞ。勿体ないからな」ググッ
サクラ「はい。……よし」
チャキッ
サクラ「リンカさん、次の攻撃を流したら少しだけ前に進んでください。その次の攻撃に合わせて一気に前進、敵の頭上に入り込んでください。攻撃は私が行いますから、リンカさんは飛ぶことにだけ集中してください」
リンカ「ああ、わかった」
サクラ「……」
リンカ「……」チャキッ
ビュオオオッ!
リンカ「はああっ!」ブンッ!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガキィンッ!!!
旧暗夜軍ランサー女「っ、また落された。だけど攻撃の処理に手一杯で、なにもできないみたいだね。戦列の状況は?」
旧暗夜軍兵士「はい、合流部隊が加わりました。あとはこのまま押し切るだけです」
旧暗夜軍ランサー女「よーし、一気に片を付けるよ。暗夜の敵は一人残らず殺さないといけないからね」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタッ
旧暗夜軍ランサー女(ふふ、敵陣を崩して、あいつらを仕留める。ブレイブにいい報告ができそう)
バサバサッ
旧暗夜軍ランサー女「ん、あいつら動くつもりか? 今になって援護に出るつもりかもしれないけど、そんなことをさせるつもりなんてさらさらないよ!」グッ ブンッ!
バササッ!
旧暗夜軍ランサー女「避けられた。ならもう一回……。え?」
バサササッ!
旧暗夜軍ランサー女(私の投げた槍を撃ち落とさないで躱すのはいい。だけどなんで躱しながら、あいつら――)
バサバサバサッ!
(こっちに向かって来るんだ?)
今日はここまで
乙
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リンカ「サクラ、しっかり掴まっていろ!」
サクラ「はい!」
ヒュオオオオッ
バサバサッ!
旧暗夜軍ランサー女「突破した!?」
リンカ「よし、奴らの上に出た。サクラ、任せたぞ!」
サクラ「はい!」チャキッ キリリリ……
サクラ(誰でもいいから攻撃を当てて、私たちに意識を向けさせないと!)
バサバサッ
サクラ「はっ!」パシュンッ!
ドスリッ!
旧暗夜軍兵士「ぐああああっ」ドササッ
旧暗夜軍兵士「なっ、うおおおあああああ」ドサササッ
旧暗夜軍兵士「どうした!?」
ザワザワ
リンカ「よし、奴らの足が止まった。だが、まだこっちには気づいていないみたいだな」
サクラ「はい、こちらに気づくまで攻撃を続けます」チャキッ
旧暗夜軍兵士「くそ、いったい何が起きて……」
サクラ「……そこ!」シュパッ!
ザシュリッ
旧暗夜軍兵士「ぎゃっ」ドサッ
旧暗夜軍兵士「あ、あそこだ。頭上だ、頭上にいるぞ!」
旧暗夜軍兵士「何時の間に!? ええい、敵は一騎だけだ、すぐに落とせ!」
サクラ「喰いつきました。リンカさん!」
リンカ「ああ、このまま一度敵の最後尾まで抜けるぞ」バサバサッ
サクラ「はい」
サクラ(あとは戻る合間に手薄な場所をつかめればいいのですが……)
バサバサッ
リンカ「よし、最後尾まで抜けたぞ。魔道砲台はこっちを狙うつもりはないみたいだな」
サクラ「はい。砲台付近は少なからず防衛部隊がいるみたいですね」
リンカ「ああ、数はそれほど多くはないみたいだ」
サクラ「手薄というわけではありませんけど、敵陣を部隊規模で突破できれば制圧はできそうです」
サクラ(魔道砲台を制圧できれば中央の援護もできますし、敵も一度体制を立て直すために退いてくれるかもしれません)
リンカ「あとはジェネラルの合流に合わせて突き崩せそうな場所を見つけて戻るだけだ」
サクラ「はい!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ランサー女「まさか、こんな風に動いて来るなんて……」
旧暗夜軍ランサー女(最前列の部隊は攻撃に入ったからまだいいけど、後続はだめか……)
旧暗夜軍兵士「副隊長、後方の部隊が奴らを追っています」
旧暗夜軍ランサー女「見事に乗せられたってわけ。ああもう、ここに来て戦列を乱しにくるなんて考えなかったよ」
旧暗夜軍兵士「どうします、奴らの狙いが砲台の方であったとするなら、彼らにそのまま追わせるのも……」
旧暗夜軍ランサー女「いや、出来る限りでいいから戻して、あんなのを追いかける必要はないし、もし本当に砲台占拠が狙いなら行かせて構わないよ。所詮、敵は一騎、防衛部隊だけでも処理できるはずだから」
旧暗夜軍兵士「わかりました、出来る限りの範囲で兵に戦列へ戻るよう指示を出します」
旧暗夜軍ランサー女「よろしく」
旧暗夜軍ランサー女(もっとも、あいつらはそんな無謀なことはしない。少なくとも、砲台占拠が目的だったら攻撃を加えずに一直線に進むよね。わざわざ自分の居場所を教えるような攻撃なんてしなくてもいいわけだし、追われるメリットなんてどこにもないはずだから)
旧暗夜軍ランサー女「となると、侵攻妨害と強行偵察が目的かな……」
旧暗夜軍ランサー女(危険を犯しても足止めに来たってことはジェネラル隊の到着はもう間近、こっちは隊列を崩されたから面倒な戦いになるのは避けられそうにない。けど、そのまま偵察までしようっていうのはちょっと欲張り過ぎたかな)
旧暗夜軍ランサー女「数人、私と一緒に来て」
旧暗夜軍兵士「はい! 奴らを追いかけて打ちますか?」
旧暗夜軍ランサー女「今さら追いかけるなんて馬鹿なことできないよ」
旧暗夜軍兵士「では、どうするのです?」
旧暗夜軍ランサー女「簡単、逆のことをするだけだよ」タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドドドドドッ
旧暗夜軍兵士「奴ら、砲台を目指しているみたいだぞ」
旧暗夜軍兵士「なら砲台の奴らと挟み撃ちにするだけだ。無謀な手に出たことを後悔させてやる」タタタタッ
バサバサッ
リンカ「サクラ、砲台の敵も迎撃態勢に入ったぞ。後ろの連中はどうだ?」
サクラ「はい、私たちを追いかけています。後続の敵を出来る限り戦列から引き剥がせたようですから、もう大丈夫です」
リンカ「よし、反転して自陣に戻るぞ。敵の追撃も避けながら進むからな、かなり揺れるぞ。しっかり掴まっておけ」
サクラ「はい。敵陣の確認は私が行いますから、リンカさんは回避行動に集中してください」
リンカ「わかった」
旧暗夜軍兵士「よし、奴の動きが鈍くなった。これならいける!」チャキッ
旧暗夜軍兵士(その背中に刃を生やしてやる)
旧暗夜軍兵士「くらえ!!!」ググッ ブンッ
リンカ「ここだ!」ググッ!
グオンッ
バサバサッ!
旧暗夜軍兵士「なっ、砲台の攻撃に向かうんじゃないのか!?」
旧暗夜軍兵士「ちっ、あいつ戻っていくぞ! 何をしている、逃がすんじゃない!!」ダッ
旧暗夜軍兵士「ですが、この方角で投擲攻撃は出来ません。味方に当りかねません!」
旧暗夜軍兵士「くそ!」
バサバサッ
リンカ「へっ、さすがにここまで来て戻るとは思ってもみなかったみたいだな。連中、攻撃も出来ずに棒立ち状態だぞ」
サクラ「私たちの進行方向に味方がいますから、投擲攻撃はできないでしょう。何はともあれ助かりました」
リンカ「まったくだ。それで攻められそうな場所は見つけられそうか?」
サクラ「確認してみますね」
サクラ(今なら、敵の後方がもっとも薄い場所が分かるはずです。そこを探し出さないと……)
バサバサッ
サクラ(ここは駄目、あそこも駄目です。他に突き崩せそうな場所。あ、あそこなら……)
リンカ「サクラ、目星は付きそうか?」
サクラ「はい、反対側の場所。敵の後続が他よりも少ないみたいですし、一気に突き崩せれば砲台までの道を一気に抜けられるかもしれません」スッ
リンカ「よし、確認も出来た、さっさと戻るぞ」
サクラ「はい!」
旧暗夜軍兵士「副隊長の予想通り、こちらにやって来たぞ」
旧暗夜軍兵士「手筈はわかっているな?」
旧暗夜軍兵士「わかっている。よし、仕掛けるぞ」チャキッ
バサバサッ
旧暗夜軍兵士「くらえっ‼」ブンッ
サクラ「リンカさん!」
リンカ「ちっ!!!」ググッ
ヒヒーンッ!
バサバサッ
旧暗夜軍兵士「行かせるか! そらっ!!!」ブンッ
リンカ(ちっ、待ち伏せされたか。くそ、見えない毒霧の所為で思った以上に高くは飛べない。どこか抜けられる場所は!)
サクラ「リンカさん、右が手薄です!」
リンカ「右だな、行くぞ!」
バサバサッ
サクラ「はぁ、危なかったですね」
リンカ「ああ、どうにか無事に抜けられそうだ。ふっ、サクラあれを見ろ」
サクラ「え?」
ガシャンガシャンッ!
新生暗夜軍ジェネラル「よし、各自敵の迎撃に当れ。我らが新生暗夜の頑強さを奴らに思い知らせてやるのだ」
新生暗夜軍兵士たち『おーーーっ!』
サクラ「あれはジェネラル隊の皆さん。よかった、間に合ったんですね」
リンカ「これでこちらも簡単に落ちることは無くなった。ようやく、攻勢に出られるぞ」
サクラ「ええ」
サクラ(まずは戻ってシャーロッテさんとルーナさんに報告しないといけませんね。それで、攻勢部隊を編成して一気に砲台を占拠することが出来れば、姉様たちの力にもなるはずです)
リンカ「よし、あと少しだ。なんとかなったな」
サクラ「はい、どうにかなりましたね。ふふっ」
バサバサッ
旧暗夜軍兵士「どうだ?」
旧暗夜軍兵士「ああ、奴らは手筈通りの場所を通る。俺たちの役割はこれ終わりだ、さっさと戦列に戻ろう。あとは、副隊長に任せればいい」
旧暗夜軍ランサー女「ふふ、来た来た」
旧暗夜軍ランサー女(手薄な場所があったらそこに行きたくなる。そうだよね。仲間の下に帰れるっていうのは、とても安心できることだからさ。私も、そうやってみんなの下に帰れれば良かったけど……)
旧暗夜軍ランサー女「この距離なら外さない。特に背中に乗ってる奴は絶対に……」チャキッ
旧暗夜軍ランサー女(あれは白夜の王女だ。暗夜の敵、みんなが倒そうとしていた敵、そしてみんなを奪った国の人間……。容赦する必要はどこにも無い)ググッ
旧暗夜軍ランサー女「みんな、最高のお土産を送ってあげるからね。ふふふっ」
旧暗夜軍ランサー女(さぁ、殺すよ)ダッ
タタタタッ
リンカ「ん?」
リンカ(後方から、誰かが来ている?)スッ
旧暗夜軍ランサー女「死んでね、白夜の王女!!!! はあああっ!!!!」ブンッ!
リンカ(敵!? ダメだ、手綱を緩め過ぎて、回避が間に合わない!)
リンカ「サクラ!!!」
サクラ「え?」スッ
サクラ(あ、敵が、いつの間に後ろに。ちがう、恐らく待ち伏せされた? 飛んできてる、あれは槍? リンカさんが慌てているのは、どうして? あ、間に合わないから……。そうか)
サクラ(私、無茶しちゃったんですね……)
旧暗夜軍ランサー女「ははっ、貰ったよ」
サクラ(………ごめんなさい)
タタタタタッ
???「おらああああっ!!!!!!」ブンッ
ヒュンヒュンヒュンッ
ガキィンッ!‼‼
カランカランッ!
旧暗夜軍ランサー女「は?」
旧暗夜軍ランサー女(なんで、私の投げた槍が落ちるの? あの王女の背中を貫くはずの槍が、なんで……)
旧暗夜軍ランサー女「もう一回――」チャキッ
???「やらせるかよ!」ブンッ!
旧暗夜軍ランサー女(トマホーク!?)グッ
ガキィンッ!
ズシャッ!
旧暗夜軍ランサー女「っ‼‼‼」ポタタッ
旧暗夜軍兵士「副隊長、ここは退きましょう。敵ジェネラルも迫っています」
旧暗夜軍ランサー女「くっ、ちくしょう!」タタタタタッ
旧暗夜軍ランサー女(あと、あと少しだったのに、くそ、くそぉ!!!)
???「はぁ……はぁ、まったく、無茶してんじゃねえよ、本当に」
バサバサッ
サクラ「い、生きてる……私、助かったんですか」
リンカ「ああ、そうみたいだ。すまない、あたしがもっと気を配ってればこんなことには……」
サクラ「いいえ、私も注意が足りませんでした。それよりも、一体誰が助けてくれたんでしょうか……」
リンカ「あー、下を見ればわかるよ。どうやら、あたしたちの行動を見てたんだろうな。急いで来たって感じだ」
サクラ「下ですか? えっっと……あ」
シャーロッテ「サクラ様、それとリンカも無事!?」
サクラ「シャーロッテさん……。はい、二人とも大丈夫です!」
シャーロッテ「そう、無事なのね。とりあえずさっさと降りてきなさい。っていうか降りて来い! 今すぐに!」
リンカ「あれは怒ってるな」
サクラ「怒ってますね……」
リンカ「とりあえず降りよう、降りないと守ってくれたみたいにトマホークが飛んできそうだ」
サクラ「は、はい」
シャーロッテ「降りてこないなら、これぶん投げるぞ」
リンカ「わかった、わかったからちょっと待て!」
バサバサッ
ドスンッ
シャーロッテ「……」
サクラ「あ、あの、シャーロッテさん……」
シャーロッテ「サクラ様、無茶しないって言った直後に何してんのよ。あれ、完全に無茶な行動でしょ?」
サクラ「うう、ごめんなさい」
シャーロッテ「まったく、見てたこっちは冷や汗ものよ。いきなり敵陣に突っ込んでいくなんて、無茶にもほどがあるっつーの。もう心配させんじゃないわよ、わかった?」
サクラ「は、はい、シャーロッテさん」
シャーロッテ「よし、それじゃこの話は終わりね。それで、なんであんな無茶なことをしたわけ? さすがに敵陣の中に負傷した味方が取り残されているってわけじゃなさそうだけど」
サクラ「その敵の進軍を遅らせるために攪乱を。そうしないと、ジェネラルの皆さんが到達するまで戦列を維持できないと思って……」
シャーロッテ「なるほどね。自分がやらなきゃって思うのはいいけど、少しは立場を考えてよ。こういうことがあったってレオン様やカムイ様に説明する身にもなってほしんだけど」
サクラ「ご、ごめんなさい」
シャーロッテ「でも、そのおかげでどうにかジェネラル部隊の到着は間に合ったみたいだから、まぁ結果だけは良かったからいいとして。ともかく、戦場に安全な場所はそうそうないんだから、ちゃんと注意すること、わかった?」
サクラ「はい。それと、敵の一番手薄な場所を見つけてきました。ジェネラル隊の方々も合流しましたから、こちらから仕掛ける準備はできたと思います」
シャーロッテ「いいわね。それで、その場所ってのはどこ?」
サクラ「はい、反対側です。こちらが一番圧されている場所です。けど、その所為か敵の数も他に比べると少ないようですから」
シャーロッテ「反対側ね」
サクラ「それで、出来ればこのことをルーナさんにも知らせたいのですけど、ルーナさんはどちらに……」
シャーロッテ「なるほどね。でもルーナに知らせる必要は無いわ。だってその反対側っていうのは、今ルーナが援護に向かってる場所だからね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東側魔道砲台周辺・左側』―
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はっ、せいやあああっ!!!」ブンッ
ズシャッ
新生暗夜軍兵士「ぎゃああっ!」ドサッ
新生暗夜軍兵士「くそ、こいつ強い!!」
新生暗夜軍兵士「このままじゃ押し切られちまう、どうすれば!」
ガシャンガシャンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「む?」
新生暗夜軍ジェネラル「ようやく合流できたな。全員、交戦準備! 敵を押し返せ!」
新生暗夜軍兵士「よし、援軍だ。これでどうにか持ち堪えられるはずだ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、ようやくお出ましか」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(敵の数はそれなりに減らせている。複数戦ならば苦戦はするが、今の状況ならば一対一で相手が出来るだろう)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「各員、装備をアーマーキラーに変更。奴らの壁、その全てを剥がし落とせ!」
旧暗夜軍兵士「はっ! よし行くぞ!」
ドドドドドドッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(ここ一帯の敵を壊滅させ、あとは側面からやつらの戦列を圧迫する。最終的に敵を一角に抑え込めればそれで終わりだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふっ、勝ったな」
ルーナ「勝利を確信するにはまだ早すぎると思うけどね」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「!」スッ
ルーナ「はあああっ!!!」ダッ
ガキィンッ!
ズササーーッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ほう、まさかもう一度会うことになるとはな」
ルーナ「ええ、本当にね。それじゃ、さっきの続きよ、覚悟しなさい」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、覚悟をするのはお前だ。今回は守ってくれる仲間はいないぞ?」
ルーナ「それはあんたも一緒よ。さっきみたいに逃げるなんてできないと思いなさい。それにあんたがここの指揮官みたいだし、あんたを倒して一気に決めさせてもらうわ」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「いいだろう。出来るのならばやって見せることだ」チャキッ
ルーナ「ええ、見せてあげる。それじゃ――」
「行くわよ!」ダッ
今日はここまで
FEHに新しいカザハナが実装されましたね。
乙
ルーナでは、ルナ暗夜ブレイブヒーローにはかてなーい!!
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東側魔道砲台周辺・左側』―
ルーナ「はああああっ!」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふんっ!」
ガキィンッ
ルーナ「っ!」
ルーナ(剣戟が予想以上に重い。純粋な力比べじゃやられる。なら!)
ルーナ「はっ! やあっ!!!!」ブンッ ブンッ
ルーナ(攻撃を加え続けて、付け入る隙を与えなければいけるはず!)
キィン! ガキィン!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、この程度の攻撃でこちらの動きを止められるとは思わないことだ。はあああああっ!」グッ ガキィンッ!‼‼
ルーナ「や、やばっ!」フラッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「」チャキッ ブンッ
ルーナ(この構え、振り下ろしね。なら、距離を取って仕切り直しすれば――)ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「逃がすか!」ググッ
ルーナ(振り下ろしじゃない。この構えは、突きだ!)チャキッ
ガキィンッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「防いだだと!?」
ルーナ「っ、やああっ!」ブンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ちっ」サッ
ルーナ「はぁ……はぁ…」
ルーナ(間一髪。だけど、この次は受け切れるかわからない。少なくとも、受けに回って勝てるほど、優しい相手じゃない。なら、最初に決めた通りに攻め続けるまで)
ルーナ「はあああっ!」チャキッ ダッ
キィン! カキィンッ!
ルーナ「っ! はああっ!」ブンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「っ、はあっ!」キィンッ グッ
ガキィンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「そこだ!」グッ ドゴンッ!!!
ルーナ「っ、まだまだっ!」ブンッ ブンッ!
キィン ガキィンッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「その程度か。はああっ!」ググッ ドゴンッ!‼‼
ルーナ「っと! 」ササッ チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(積極的に攻撃に出てきたが、この程度か。ならば次は容赦なく吹き飛ばし、その命を一撃で絶ってやるとしよう。その剣戟も次で終わりだ)
ルーナ「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」チャキッ
ルーナ(なるほどね。こいつの癖、ちょっとだけわかってきた。なら、そこを突くしかないでしょ)ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はああっ!」チャキッ
ルーナ「はあああっ!」ブンッ!ブンッ!
キィン!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」スッ グッ
ルーナ(待ってたわ、その構え!)スッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「!?」
ルーナ(あんたは癖でタイミングを見計らって受け止めて一気に弾いて間合いを詰めてくる。なら、その瞬間は隙が出来る!)
ルーナ「そこよ、はあああっ!」ググッ ドゴンッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ぐっ!!! 蹴り……だと!?」グラッ
ルーナ(やった、うまく入って姿勢も崩せた! このまま切り倒してあげる!)チャキッ
ルーナ「もらった!」ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「くっ」スッ
ルーナ「遅い!」ブンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「!」バッ
ガキィィィィンッ!‼‼ ザシュンッ!‼‼ ブシャアアッ!
ルーナ(ん、手ごたえはあったけど、なに今の音。金属に当ったみたいな音だったけど……)スッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はぁ…はぁ…、次はこちらの番だ」チャキッ
ルーナ(嘘、生きてる!? ちゃんと首筋めがけて振り下ろしたはずなのに、なんで――)
カランッ ガシャンッ!
ルーナ「ショルダーシールド!?」
ルーナ(受け流したんだ。ショルダーシールドを使って、あたしの攻撃を!)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「この距離ならば、外さん!」ググッ
ルーナ「っ!」サッ
ルーナ(回避だけじゃだめ、剣で受け流さないとやられる! 間に合え!!!)スッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はあああああああああああああっ!!!!」ブンッ!‼‼
ガキィンッ!‼‼
ザシュッ!‼
ルーナ「っ、痛ぁ……」ズササーーッ
ルーナ(っ、どうにか流せたけど思ったより深くもらっちゃった。だけど、敵も無事ってわけじゃなさそうね)ポタタタッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はぁはぁ……。ちっ、仕留め損ねたか」ポタタタッ
ルーナ(受け流して致命傷は免れたみたいだけど、さっきの攻撃はどうにかあいつの左腕には届いた。相手が無傷でこっちは負傷ってわけじゃない。なら――
(あたしにも、まだ勝機はある!)チャキッ
今日はここまで
今日はピエリの誕生日なので、ピエリ誕生日SSになります。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日はピエリさんの誕生日である。そんな当たり前のことを目覚めてすぐに思い浮かべた。いつも寝起きしている部屋とは違う城下町の小さな宿舎の一室、その部屋の隅には今日渡すプレゼントも入った小物入れが置いてある。
ラッピングはピエリさんの好きな赤で、リボンの色は彼女のお気に入りであるリボンを思ってストライプ柄で決めている。抜かりはありません。
今日はみんなでピエリさんにプレゼントを贈ろうという話になっていて、各自がそれぞれ贈る物が出来る限り被らない様にと事前の打ち合わせもこなしていたりと、中々に徹底していると思う。
「よし、早く行かないと」
目的が決まっていると体はすぐ動くもので、身支度を手短に済ませて受付にあいさつをして宿を出た。
とても冷え込むことで有名な暗夜の冬は、今日もその通りにとても冷え込んでいた。一ヶ月ほど前の初雪から断続的に降雪は続いていたこともあって、城下町全体がフリージアになってしまったかのように錯覚するほどに、一面が白い化粧で彩られている。
化粧といえば、ピエリさんの化粧は思ったよりも濃い。そういった化粧道具というのもプレゼントとしてはとても良かった。でも、私には化粧道具の知識なんてこれっぽっちもないので、ニュクスさんとシャーロッテさんが化粧道具をプレゼントとして送ることになっている。
そんな化粧を施された大通りを進んでいると、とても香ばしい香りが漂ってきた。視線を向けると、すでに幾つかの露店が開業の準備を始めている。パンにスライスしたチーズ、そして鉄板で焼いたブロックミートを挟んだお手軽だけどボリュームのある商品が調理されている。
やはり、ピエリさんといえば料理で、これは多くの知人の共通見解だった。あのマークス様もピエリさんの誕生日には質のいい料理包丁を一つ送ろうと言っていたし、ラズワルドさんもそうすると言っていた。そのため料理包丁についてはお二人にお任せしたのである。
続いて鼻を突いてきたのは甘い香りで、視線の先にはたっぷりとはちみつを掛けて、最後にホイップクリームを乗せたパンケーキの準備が行われている。ピエリさんは甘いお菓子が好きだった。最初、そういったスイーツの詰め合わせを模索していたけれど、それを送る役目は私がしたいというカゲロウさんと、ならば私もというスズカゼさんたちに譲ることにした。なんでも、ピエリさんでもおいしくお茶が飲める和菓子を送るつもりらしい。
そして、洋菓子はブノワさんとハロルドさんが用意することになっている。ハロルドさんはいろいろと運が悪い人だから心配だったけれど、ブノワさんと相談した結果、ブノワくんと同じ甘いお菓子を頼むことにすればきっと私の頼んだ物はしょっぱいお菓子になるはずだ。これで甘いお菓子としょっぱいお菓子、両方をピエリくんに渡すことができるぞ、と言っていた。
お茶といえば紅茶というのもあったけれど、紅茶に関してはジョーカーさんとフェリシアさんが送ることになっていて、同時に今日一日はピエリさんの専属給仕として仕えることになっている。残念ながら、私には紅茶の葉の見分け方も、給仕としての腕もないから、あきらめるしかなかった。
大通りをさらに進んでいくと、今度は武器防具店が目に入った。あの戦いが終わりを迎えてからこういったものの出回りは落ち着いたけれど、未だに山賊や盗賊による被害が地方の村で起きている。そういえばフランネルさんはさすがに何を送ればいいかわからないから、後日人狼を狙う狩猟団退治を正式にピエリさんの騎士団にお願いするって言っていた。フランネルさんなりに考えた結果らしい。まぁ、人それぞれですよね。
で、そういうこともあってまだまだこういった武具に需要があるというのはなんだか複雑なものだった。そして、そんな武具を送ろうと言い出したのはオーディンさんとルーナさん、そしてベルカさんである。ルーナさんはどっちが強いのかをさらに決めるためにはいい武器でやりあわないと意味がないと言っていた。ベルカさんは贈り物がよくわからないからとルーナさんと一緒に選ぶことにするらしい。そして、オーディンさんは蒼き赤き混沌が身に纏う衣は俺が選ばなければならないとよくわからないことを言っていた。どちらにしても、ピエリさんに誕生日プレゼントを贈りたくてたまらないのだ。もちろん私もその一人です。
また少し進むと書店が目に入る。本というのはとてもいいものだけど、ピエリさんのイメージという点ではあまり繋がりを見出せない。だけど、料理のレシピ本はそれなりに読んでいるらしい。だからこその腕前だと思えることもある。ならと、本を送ることにしたのはエルフィさんだった。正直、エルフィさんは本を読むよりもそれで訓練をしているイメージが強いから、石のような本をプレゼントしそうな予感はあるけど、ピエリさんの作るおいしいごはんのレパートリーが増えることを期待している節もあるのではないかと思う。そういえば、レオン様も本関連で何か送ろうとか考えているらしい。特にレオン様が送る本っていうのがどういうものなのかはとても気になる。少し前に人を殺してはいけないことを他人にどう説明すればいいのかとカミラ様に相談していたようですが、カミラ様も心底悩んでいました。
次に見えたのは調理道具の店舗。調理というのは思ったより重労働で使用する道具もできる限り重くない方が好ましい。つまり料理は運動といっても差し支えないものなのだ。だからなのか、ピエリさんの殺人衝動を運動に昇華させるなら、料理をさらに進んでできるように質のいい調理器具をプレゼントすればいいのではないかと、サイラスさんが名乗りを上げた。さすがは、ピエリさんの殺人衝動を運動で解消しようと考えた人なだけはあります。
さらに歩いていくと装飾品を売っている小さなお店が目に入った。いわゆる古今東西の煌びやかな装飾を取り扱っているのが売りみたいで、淡いランプの光が積もった雪と相まって、落ち着いた雰囲気を醸し出している。店先にはきらきらと揺れる花や蝶の飾り、雪にちなんで雪だるまの形をしたアクセサリーなども置かれていた。アクセサリーもプレゼントとしていいですが、それに関してはニシキさんとヒナタさんがすでにプレゼントを考えていた。ニシキさんは、ピエリは変わってるよね、芋虫はだめだけど蝶は平気なんだからさ、とすでに渡すものの形が想像できることを口にしていたし、ヒナタさんもリボンのお返しするにはいい機会だからなと張り切っているようだった。
そして最後に通るのは衣装を扱うお店だ。ここにはいろいろな種類の服が扱われている。店頭のショーケースに並べられたドレスが目に入った。今日ピエリさんが着るドレスは私の主であるカムイ様がピエリさんと共同で制作したものだ。理由は、ピエリさんが可愛いので、私が思う最高に可愛いピエリさんがかわいいと思うドレスを作って誕生日に着てもらいたいからという欲望に忠実なもので、これにはさすが姉様だと感服してしまう。
そして、それの完成にはあともう一つ、必要なものがあって、私はそれを届ける役目を担っていて、それが今日の朝から熟すべき私の目的だった。
そんな時、目的地のシルエットが目に入った。
ピエリさんのお屋敷は、この雪の中であっても、その明かりから存在を認識できる、こんな朝だけれどさすがに会場ということもあって準備に余念がないということでしょう。そう思いながら駆け足気味にお屋敷へと、私は向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はピエリの誕生日、そう思うとぱっちり目が覚めた。
起き上がると、数日前に設置された大きな衣装棚が目に入る。カムイ様と一緒に一ヶ月以上前から作った今日のドレス。出来れば今すぐにでも着たいけど、まだ必要なものがそろってないから我慢する。
部屋の外からは人が行き来する音が絶え間なく聞こえる。ピエリがベッドから降りるとその音に気づいて部屋前に待機していた使用人が入ってきた。
「おはようございます、ピエリお嬢様」
「おはようなの。うー、思ったより寒いの」
「はい、先日までの降雪の影響でかなり冷え込んでいるみたいですから、まだ休まれますか?」
「ううん、もう起きるの。誰かが訪ねてきたらすぐにお出迎えしたいから」
「かしこまりました。すぐにご準備いたしますので、少々お待ちくださいませ」
そして、着替えを使用人二人に手伝ってもらって着替えを済ませる。専用のドレスになるのは早いけど、誕生日に来てくれる人を持てなす分には問題ない格好だった。
それに着替え終えて一息吐こうとしたら、ドアをノックして執事が入ってきた。
「ピエリお嬢様、リリス様が到着されました」
「え、もう来たの!?」
居ても立っても居られなくてすぐさま部屋を飛び出した。
長い廊下を進んで、ホールの階段を下りていくとそこに黒いコートに身を包んだリリスの姿があった。使用人と談笑しているようで、まだピエリが来たことに気づいてないみたいだから、踵を返して反対側の階段から降りる。
まだ談笑を続けているその無防備な背中を視界にとらえてじりじりとにじり寄る。リリスと話をしている使用人と目が合うと、使用人は小さく頷いたまま話を続けた。厚意に甘えてそのまま背中ににじり寄る。そして――
「捕まえたの!」
「わっ! ピ、ピエリさん、脅かさないでくださいよ」
「そうなの、ピエリなの。こんなに早く来てくれるなんて、ピエリとっても嬉しいの!」
ピエリの腕の中に収まったリリスをもっとぎゅうぎゅうすると、だんだんぽかぽかと暖かくなってきた。
「ちょ、ちょっとピエリさん、その、あ、当たってます」
「ぎゅうぎゅうしてるから、体が当たるのは当たり前なのよ」
「いえ、その、体の一部分が問題というか、と、とりあえずもうぎゅうぎゅうは大丈夫ですから」
しぶしぶ離すとリリスはこちらを向いてくれた。なんだか顔が少し赤くなっていた。寒い外にいたからだと思う。視線をゆっくりと下ろすと手には小物入れがあって、そこからひょっこりとリボンが見えた。ピエリのお気に入りのリボンと同じ柄だからすぐに目に入った。
「リリス、それって」
「はい、例のものですよ」
「これで完成なの。リリス、早くピエリの部屋に行くのよ!」
リリスの手を握って階段へと駆け出す。握った手は最初冷たかったけど、少ししたら暖かくなっていった。
「ピエリさんの手、暖かいです」
「リリスは外にいたんだから手が冷たくて当然なの。ピエリがいっぱい温めてあげるの。ぎゅーっなの!」
「ふふっ、ありがとうございます、ピエリさん」
さらに暖かくなった手を強く握って、ピエリは部屋に戻った。
部屋に戻ると、リリスが来たという言葉を聞いた使用人がすでにドレスの最終チェックの下準備を済ませて待ってくれていた。今日の衣装にはある物が必要で、それを今日のパーティー開始前にリリスが届けてくれる手筈になっていたのだ。
「えへへ、これでドレスが完成なの。リリス、持ってきてくれてありがとうなの」
「いえいえ、出来れば昨日届ける事が出来てば良かったのですけど」
「ううん、今日間に合ったからとっても良かったの。それじゃ、それを貸してほしいの」
「はい」
リリスは小物入れの中から箱を取り出して、ピエリに差し出して来る。でも、それはリボンが付いた箱じゃなかった。それが予想外で、ちょっとだけ固まった。
「はい、ピエリさん。まずは開けて中身を確認してみてください」
「う、うん」
受け取った箱を開けると、ドレスに着ける赤と青の宝石をあしらったブローチが入っている。ピエリの青い髪の色とピエリの好きな色が揃ったこれが、特製ドレスの最後の装飾品だからだ。
「これで間違いないの。リリス、ありがとうなの」
「どういたしまして、間に合って良かったです」
必要な物を受け取った。でも、だからこそ、未だに小物入れに残っている箱が気になって仕方なかった。
「え、えっと、リリス。そっちの箱はなんなの?」
「決まっています、ピエリさんへのプレゼントですよ。皆さんも色々なプレゼントを用意しているみたいですから、中々悩みました」
その言葉になんだかとてもうれしくなる。
「ありがとうなの」
そして手を差し出す。だけど、いつまでたっても小物入れから箱が出てこなかった。
「……今くれないの?」
「駄目です。これは他の皆さんが揃った時にお渡しします。私だけ抜け駆けするわけにはいきません」
「いいの。ピエリがいいって言ってるから今すぐ渡すのよ!」
「いいえ、こればっかりは駄目です」
「むー、リリスのケチ!」
「私がケチなのではなくて、ピエリさんが我侭なだけですよ」
そう言い返して来るリリスを見ながらも、そのきちんと用意された箱の中身がピエリへの贈り物だとわかってとても満足だった。頼まれた荷物を運んでリリスはすぐに帰っちゃうかもしれないと思っていたから。だから、それだけで今は十分だって思えた。
「わかったの。今は我慢するの」
「えらいですよ。ピエリさん」
「子ども扱いしないでなの」
「ふふっ、安心してください。時間が来たらきちんとお渡ししますから」
「もう、リリスは融通が利かないの」
「よく言われます。でも、やっぱりこういうのはみんなで一斉に渡したい物なんですよ」
そう言ってリリスは柔らかい笑顔を浮かべて、ピエリのことを見つめる。
「誕生日っていうのはみんなで一緒にお祝いしたいじゃないですか。特に一番大好きな友達の誕生日っていうのは」
そう恥ずかしげもなく伝えてくるリリスになんだか恥ずかしくなる。
「そういうわけですから、プレゼントはその時間までお預けです」
「わかったの。でも、待たせた分だけプレゼントには期待しちゃうから覚悟するのよ」
「うーん、そう言われると中々にプレッシャーが掛かりますね」
「えへへー、どんなものが飛び出すのか楽しみにしてるの」
そうして、ピエリはリリスを連れて自室を出ることにする。ブローチの取り付けは使用人がやってくれるし、このドレスに身を包むのは、恐らくリリスのいうその時間になるはずだからだ。
「あ、そうでした」
突然リリスが立ち止まる。なにかあるのかなって振り返るとリリスは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ピエリさん、お誕生日おめでとうございます」
ピエリだけに向けられたお祝いの言葉、それは確かにピエリの中に届いた。
「うん、ありがとうなの」
足取り軽く、ピエリはその時間が来るのを楽しみに待つことにする。
いっぱいいっぱいのプレゼントと、いっぱいいっぱいの言葉が待ってるその時間を。
―終わり―
今日はこれだけ
リリスや他の仲間たちと一緒に楽しい誕生日、ピエリお誕生日おめでとう!
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東側魔道砲台周辺・左側』―
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はぁはぁ……ぐぅ、うううっ……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(ちっ、仕留め損ねた上にこの様とはな……)
ポタタタタッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(左腕はもう使い物にならない。だが、向こうも無事というわけではない。あと一息で殺せるはずだ……)
チャキッ
ルーナ「はぁはぁ……」ポタタッ
ルーナ(っ、結構深く入ってる。一緒に来てくれたみんなが奮戦してくれてるおかげで、どうにか持ちこたえられてる。でも、ジェネラルが結構やられちゃってるから、そろそろやばいわね)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「どうした観念する気にでもなったか?」
ルーナ「そんな気さらさらないわ。むしろあんたを倒してこの状況、ひっくり返すつもり満々なんだから」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「そうか。ならば、ひっくり返す暇など与えずこのまま潰してくれる!」ダッ
ルーナ「!」ダッ
ガキィンッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「っ!」
ルーナ「っ!!!!」
ルーナ(さすがに重い。片腕が使えなくてもこの重量の差は馬鹿にできないか)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「どうした! ひっくり返して見せるという威勢の良さはどこへ行った!」ブンッ
キィンッ
ルーナ「今から見せてやるんだから!!!」ググッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ふん、そんなものを見る義理はないのでな、このまま死ね!!!」グッ
ルーナ(剣を振り上げた、なら、ここで仕掛ける!)ダッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はあああっ!」ブンッ
ドスッ!
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「なにっ!?」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(くそっ、狙いが逸れて剣が地面に!)ググッ
ルーナ(このチャンス逃さないわよ!)ダッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(側面に回り込むつもりか。こちらの左手が動かないからと攻撃を仕掛けるつもりだろうが、その程度予想していた)
チャキンッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「捉えたぞ!」グッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(剣が地面に刺さったのは予想外だったが、それでもこちらの方が先だ)
チャキッ
旧暗夜ブレイブヒーロー(勝った。私はこの先もあいつの戦う意味を見守り続けられる。そうだ、お前を殺し私はあいつを――)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「はあああああっ!」ブンッ
ルーナ「!」ダッ!
ザシュンンッ‼‼‼‼‼
今日はここまで
乙でした ルーナの力成長率はマジで低かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(自分のために戦うことこそが私の戦う意味だった。何よりもそれ以外にしたいことなど見つかりもしなかったし、望むものもなかった)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(ましてや誰かのために戦うということを理解することなどできなかった。それは対象が祖国になって同じことだ。私にとって暗夜王国は所属している国以外の意味は持っていない、暗夜王国の勝利のために戦うという考えなどなかった。だからこそ、テンジン砦での敗北の一件そのものに私は何も思うことなどなかったのだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(テンジン砦で多くの仲間が命を落としたことも、新生暗夜軍が無限渓谷に防衛線を築き始めたという話も、それがどうしたというくらいのものだった。そして、気づいたころには離反する兵士たちも増えた。旗色は確実に悪くなっていたからこそ、多くの兵士は負ける戦いに身を置くことをやめ、静かに消えていった)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(本当なら私もその一人になっていたはずだった。なにせ、この戦いで得られるものなどもう何もないと理解していたからだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(なのに、そんな場所でこうして死にかけながらも戦っている。無様に息を切らせて、満身創痍になりながらも戦っているのは、同じ戦場で戦うあいつがいるからだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(思い返せば、あいつは猫かぶりな女だった)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(初めてテンジン砦でともに行動した時のあいつは馬鹿真面目な兵士だった。それはランサーが共に過ごしてきた隊はとてもまじめな者たちの集まりだったこともあってああいう馬鹿みたいにまじめな兵士であったのだと思うし、それがあいつにとっては仲間と育んだものだったのかもしれない)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(それをテンジン砦の一件は崩していった。真面目な兵士の下にいたのは在り方を無くした一人の女、暗夜のために戦うという仲間との誓いだけがしか残らなかった女だけだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(そこで放っておけばよかった。関係ないと何も言わずに立ち去ればよかった。戦場で多くの仲間を失うことなど珍しいことではないのだから)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(だというのに……支えたい、そう思ってしまったのだ……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(縋るために何かを求める女を支える。そんな何の足しにもならないことを私は選んだ)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(この女の傍にいよう、支えてみよう、そう思っていた)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(……だが、そうではなかったのだな)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……」
ルーナ「……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……っ」ポタッ ポタタタッ
ルーナ「……」チャキッ
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「……ああ」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(まったく、もう少し早くに気づけばよかった……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「ランサー……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(単純なことだというのに、自分のこととなるとわからないものだ。そして、それに気づくのがこんな時だというのも、なんとも愚かなことだ……)
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「は……、はは……」
旧暗夜軍ブレイブヒーロー(本当は、私がお前に傍にいてほしいと……)
カランッ……
ドサリッ……
旧暗夜軍ブレイブヒーロー「」
今日はここまで
いろいろと更新が遅くて申し訳ないです
ルーナ「……はぁ……はぁ……、なんとか勝てた……」
ルーナ(あそこで踏み込んでなかったらこっちが倒れてた。本当、紙一重ね)
ルーナ「次に行かないと……っ!!!!」ズキンッ
ルーナ(っ、思ってた以上に体中が痛い。なんでもいいから痛みを和らげないとまともに動けないじゃないの)
ルーナ「ん?」
タタタタタッ
旧暗夜軍兵士「た、隊長! 貴様、よくも隊長を‼‼‼」チャキンッ
ルーナ「ちっ、こんな時に!」スッ
旧暗夜軍兵士「取らせるか!」ブンッ
ガキィンッ
カランカランッッ
ルーナ「しまった!」
旧暗夜軍兵士「隊長の仇だ、死ね!」グッ
ルーナ「お断りよ!」グッ
ドゴンッ
旧暗夜軍兵士「がっ!」
ルーナ(ううっ、蹴りするだけでもめちゃくちゃ痛いけどなんとかなった。今のうちに剣を!)ググッ
ズキンッ‼‼‼
ルーナ「っ!」
ルーナ(ううっ、剣まであと少し――)ググッ
旧暗夜軍兵士「させるか!!」ダッ
ルーナ「この、届けぇ……」フルフル
チャキッ
ルーナ(届いた!)
ルーナ「これで!」スッ
旧暗夜軍兵士「こちらが先だ、死ね!」ブンッ
ザシュンッ‼‼‼
ポタッ ポタタタッ
旧暗夜軍兵士「……は? なんだこれ……どうして、斧が刺さって……」ポタタタッ
ルーナ(え、なに何が起きて……)
タタタタタッ
シャーロッテ「おい、何ボケっとしてんだよ! 死にたいわけ!?」
ルーナ「!」
旧暗夜軍兵士「っ、しねえ」グッ
ルーナ「はああああっ!」ブンッ
ザシュリッ
旧暗夜軍兵士「がっ」ドササッ
ルーナ「はぁはぁ………本当、タイミングばっちりね。狙ってたみたいだわ」
シャーロッテ「おい、こっちはとっさに助けたっていうのにそれはないだろ」
ルーナ「ごめんごめん、助かったわシャーロッテ」
シャーロッテ「最初から素直にそう言えっての。それで大丈夫?」
ルーナ「体中、どこもかしこも痛くて最悪よ」
シャーロッテ「そう、ならこれ使いなさい」ポイッ
ルーナ「ん、これって治療薬?」
シャーロッテ「そう、サクラ様からあんた宛にね。負傷してるかもしれないからってね」
ルーナ「さすがサクラ様ね、助かったわ」ピチャピチャッ
ルーナ「それで、あんたがこっちに来てるってことは中央は問題ないってこと?」
シャーロッテ「問題ないわ。重装部隊も追いついたし、敵は右翼の攻撃に集中してるみたいだからね。こっちは、結構やられたみたいだけど」
ルーナ「本当にね、半数はやられたわ」
シャーロッテ「半数ね。まぁ、半分残ってれば何とかなるわ。これからあの魔道砲台を奪いに行くわ」
ルーナ「それが次の作戦ってことね」
シャーロッテ「そういうことだけど、何か思うことはないわけ?」
ルーナ「別に、こうやって敵の指揮官を一人倒して準備は済んでるんだから、その作戦に何の不満も意見もないだけだし、この作戦サクラ様の案でしょう?」
シャーロッテ「そうだけど、なんでわかるのよ」
ルーナ「いや、こんな作戦あんたは考えないでしょ?」
シャーロッテ「そうだけど、なんかむかつくわその言い方。なら話は早いわ、さっさと片付けに行くわよ」
ルーナ「ええ。ところで一応聞いておくけど、サクラ様は?」
シャーロッテ「右翼の敵を限界まで引きつけるって」
ルーナ「そう……。こっちに合流してもいいっていうのに、本当に頑固っていうかあたしたちのこと信じてくれてるっていうか」
シャーロッテ「ふふっ、怒るに怒れないっていうのはこういうことかもしれないわね」
ルーナ「まったく、その通りだわ」
チャキッ
シャーロッテ「こっちの部隊はもう準備が整ってるから、あとはルーナの準備だけよ」
ルーナ「大丈夫、あたしも準備万端よ」
シャーロッテ「よし、行くわよ」
ルーナ「ええ」
ルーナ(こっちが砲台を抑えるまでなんとか耐えてよね、サクラ様)
タタタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サクラ「はい、これでもう大丈夫です」
新生暗夜軍兵士「ありがとうございます、サクラ様」タタタタッ
リンカ「どうにか治療も間に合ったみたいだな」
サクラ「ええ、どうにか間に合ってよかったです」
リンカ「しかし、本当によかったのか? あたしたちも合流してもよかったと思ったが……」
サクラ「いいえ、私たちまで合流したら戦力方ですし、シャーロッテさんとルーナさんのお二人ならきっと成し遂げてくれるって信じてますから」
リンカ「ふっ、そうか」
サクラ「はい、だから私たちは二人が成し遂げてくれるその時まで耐え抜くだけです」チャキッ
リンカ「ああ、その通りだ。サクラ、今度はきちんと周囲に気を配ってお前を守るよ。同じ失態をしてシャーロッテにどやされたくないからな」
サクラ「ふふ、よろしくお願いします」タッ
新生暗夜軍兵士「サクラ様、敵は攻勢をかけてくるつもりのようです」
サクラ「わかりました。このまま、敵を引き付けて機を待ちます。だから、その時まで耐えてください。その時が来れば、私たちの勝ちです!」
新生暗夜軍兵士一同『おーーーっ!』
ザッザッザッ
旧暗夜軍兵士「敵の士気、衰える気配がありません」
旧暗夜軍ランサー女「構わないよ。叩き潰してしまえばいいだけのことなんだ。どうせ、すぐにブレイブの部隊が側面にやってくる。挟み撃ちにして終わりだよ。それでブレイブの方はどうなってる?」
旧暗夜軍兵士「それが、出した伝令は帰ってきていません。かなり乱戦の様相なので、戻るのに手間取っているのかもしれません」
旧暗夜軍ランサー女「まあいい、あいつが来るよりも先に私があいつを仕留めるだけのことだからね」
旧暗夜軍ランサー女(邪魔が入ったけど、今度はそんな邪魔はさせないし、邪魔ができる隙なんて与えるつもりもない。さっさと殺して、手柄をブレイブに見せつけつけるんだ。そしたら……そしたら?)
旧暗夜軍ランサー女「……」
旧暗夜軍兵士「副隊長?」
旧暗夜軍ランサー女「なんでもない。さぁ、一気にせめて奴らの壁に大きな穴をあけてやるんだ!」
旧暗夜軍兵士一同『おーーーーっ!』
旧暗夜軍ランサー女「これで終わりだ、全員進めぇ‼‼‼」グッ ブンッ!
ドドドドドドドドッ!
今日はここまで
乙
次回も期待してます
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東部』―
旧暗夜軍兵士「はあああっ!!!」ダッ
ザシュンッ???
新生暗夜軍兵士「が、くそぉ……」ドサッ
旧暗夜軍兵士「よし、ここをこのまま切り崩せば!」
リンカ「させるか! はあああああっ!!!」バサバサッ
旧暗夜軍兵士「なに!?」チャッ
リンカ「遅い、くらえ!」グッ ブンッ???
ドゴンッ!
旧暗夜軍兵士「っ、ぐあああぁぁぁ!」ズササーッ
リンカ「はぁはぁ……。何とか間に合ったか」
新生暗夜軍重装兵A「助かりましたリンカ様。ここは我々に任せてほかの援護に向かってください。すぐに隊列の穴を塞げ、敵に付け入る隙を与えないようにするんだ!」
新生暗夜軍兵士「はっ!」タタタタタッ
新生暗夜軍重装兵B「敵、側面に展開しています。端の援護に回れ!」
新生暗夜軍兵士「わかりました!」タタタタタッ
リンカ「くそ、敵が勢い付いてやがる」
リンカ(このままじゃ、包囲されて潰されるのも時間の問題だ……)
サクラ「リンカさん、大丈夫ですか?」
リンカ「ああ、なんとかな。ただ、敵の攻撃は激しくなっている。次はどうなるかわからないぞ」
サクラ「はい、このままだといずれ崩され分断されかねません。どうにかしないと……」
リンカ「ちっ、一度上に上がって敵の動きを見るしかないか。こっちがあいつらに唯一対抗できる手段ってなるとそれくらいしかないからな」
サクラ「すみません、お願いします」
リンカ「ああ、一度確認したら降りてくるよ」グッ
サクラ「はい、わかりました!」
ヒヒーンッ
バサバサッ
リンカ「さてと……」
リンカ(……ちっ、こっちを囲むように展開してやがる。後ろの奴らはどうだ?)
ドドドドドドッ
リンカ(こっちの側面に向かっているのが殆どだが、中央にも少なからず残ってる奴らがいるか。この様子だと同時に攻撃を仕掛けるつもりかもしれない……)
リンカ「ちっ、このまま上空に待機してサクラに伝えるしかないか……」
ヒュンッ!
リンカ「っと!」チャキッ ブンッ
ガキィンッ!
旧暗夜軍ランサー女「ちっ」チャキッ
リンカ「あんたが狙ってくることくらいは、さすがに予想済みだよ」
サクラ「リンカさん、大丈夫ですか!」
リンカ「あたしは大丈夫だ。それよりも迂回して側面から仕掛けようようとしてる一団がいる。まずはそいつらをどうにかするんだ!」
サクラ「わかりました。リンカさんも一度下に降りてきてください、上にいたらずっと狙われ続けてしまいます」
リンカ「いいや、このまま上で奴らの動きを探り続ける。ここで下がったら二度と上がれない気がするし、なにより」ブンッ
ガキィンッ!
リンカ「あいつにサクラを狙わせるわけにはいかないからな」
サクラ「リンカさん……」
リンカ「そういうわけだから、下のことはサクラに任せたよ」
サクラ「はい!」
バサバサッ
サクラ(よし、敵は側面から迫っているということでしたね。まずは側面を厚くして、それ以外の敵にも対処できるようにする。なら……)
サクラ「あなた方は左翼の援護に向かってください。残りの皆さんは私と待機して、敵の次に備えます」
新生暗夜軍重装兵C「はっ、わかりました。よし、行くぞ!」
新生暗夜軍兵士たち「はっ!」タタタタタッ
サクラ(必ず防ぎきってみせます!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍兵士A「っ、副隊長。第一波の攻撃が防がれています。第二波の攻撃も対処されつつあります」
旧暗夜軍ランサー女「わかっている。くそ!!!」チャキッ ブンッ
旧暗夜軍ランサー女(なんでだ、なんで当たらない。さっき、一度は届きかけたんだ。なら、次もきっと届くはずだ。届くはずなのに、なんで!)
ガキィンッ
リンカ「はぁはぁ……まだまだっ!」バサバサッ
旧暗夜軍ランサー女「くそっ!」
旧暗夜軍ランサー女(なんで落ちないんだ。くそ、)
旧暗夜軍兵士B「くそ、砲台の連中は何をしてるんだ。敵の重装兵に対して援護しないばかりか、さっきから沈黙したままで何もしてないぞ」
旧暗夜軍兵士A「まさか砲台はすでに敵の手に落ちているんじゃ……」
旧暗夜軍ランサー女「あるわけない、そんなことあるわけない!」
旧暗夜軍兵士A「副隊長……」
旧暗夜軍ランサー女(後方の砲台を攻めるにはどこかを突破する必要がある。少数先鋭でというのも考えられなくはない、でもそんな敵の動きに気づかない状況はない。それにこっちの敵は足を止めてるし、ブレイブなら問題なく対処できてるはず。だから、砲台がすでに敵の手に落ちているなんてことあるわけがない!)
旧暗夜軍ランサー女「今は混戦状態で援護ができないだけ、援護できる場所があれば砲台の部隊も動くはず、だから無用な心配はしないでいい」
旧暗夜軍兵士A「は、はい、副隊長。申し訳ありません」
旧暗夜軍ランサー女「それよりも第三波の部隊をに部隊に分けて行動させるわ。上にいるあいつにこっちの動きが筒抜けになってるなら、対処できない攻撃で一気にねじ伏せるだけのこと。あんたたちにそれぞれ指揮を任せるから、左右からそれぞれ奴らの脆そうな場所を強襲しておいて。残りの部隊は私が指揮を執る、それで敵の戦線を崩して終わらせるわ」
旧暗夜軍兵士A「わかりました」タタタッ
旧暗夜軍兵士B「ああ、わかったよ」タタタッ
旧暗夜軍ランサー女(もともとこっちの兵力の方が上なんだから敵全体は包囲できる。敵は第一波の対応に多くの兵力を使って、小出しでこっちの第二波以降に対処しているから、最後の攻撃を突破口にできるこっちに分はある。どんなに向こうがうまく対処しようとしても、最後の最後は兵力差でこっちが勝つのは目に見えているんだからね)
旧暗夜軍ランサー女「ふふっ」
旧暗夜軍ランサー女(そうなればあとは逃げ惑う白夜の王女を殺すだけ、あの小柄な体を切り刻めれば死んだみんなも満足してくれる。そうすればブレイブだって、きっと……)
旧暗夜軍ランサー女(……きっと、安心してくれる……)
ドドドドドドドッ
旧暗夜軍ランサー女「よし第三波組が動いた。次で最後だよ……白夜の王女」タッ
今日はこれだけ
更新滞って申し訳ないです。
乙
~~~~~~~~~~~~~~~~
新生暗夜軍兵士「サクラ様、敵の第三陣は二手に分かれたようです」
サクラ「はい、二か所を同時に攻めるつもりみたいです。こちらも部隊を分けて対処します。防御陣を築いているこちらの方に分はあるから大丈夫なはずです」
新生暗夜軍兵士「わかりました。お前たちは左翼の敵部隊を、お前たちは右翼だ。残りはここに待機せよ」
新生暗夜軍兵士たち『はっ!』
タタタタタタタッ
新生暗夜軍兵士「左翼の部隊が接敵、続けて右翼にも敵が近づいていますが、この程度ならば持ちこたえられるはずです」
サクラ「はい、後方の敵の動きはどうなっていますか?」
新生暗夜軍兵士「はい、見た限り集団の形成しているものはありません。敵も三度の襲撃で落ちないこちらを見て動くのをためらっているのかもしれません」
サクラ「そうですか……」
サクラ(リンカさんからも敵の動きについて指示はありません。これなら、なんとか――)
~~~~~~~~~~~~~~~
旧暗夜軍ランサー女「……どう?」
旧暗夜軍兵士「はい、予想通りに敵は部隊を分けて対処するようです」
旧暗夜軍ランサー女「そう。それで、どっちが薄い?」
旧暗夜軍兵士「目測ですが、右です。この距離なら敵が対処に回るより先に到達できるはずです」
旧暗夜軍ランサー女「わかった。それじゃ、右に向かうよう残りの奴らに合図を出して」
旧暗夜軍兵士「はっ!」チャキッ ググッ パシュンッ!
キィィィンッ‼‼‼‼
旧暗夜軍ランサー女「ここで、一気にたたき崩す、行くよ!」ダッ
旧暗夜軍兵士「はっ、行くぞ!」
旧暗夜軍兵士たち『おーーーーっ!』
ドドドドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
リンカ「なに!?」
リンカ(後方の奴らが動きを変えやがった!)
リンカ「サクラ右だ!!! 奴ら右に向かってるぞ!」
サクラ「え!?」
リンカ「右に残りの敵が雪崩れてやがる。このままだとまずい!」
サクラ「! みなさん、行きましょう!」タッ!
新生暗夜軍兵士「はっ、行くぞ!」
サクラ「はぁ、はぁ!」タタタタッ
サクラ(お願い、間に合って!)
サクラ(あと少し、あと少しで魔道砲台をシャーロッテさんたちが抑えてくれるはず! だから、だから!!!)
グアアアアアアッ‼‼‼‼
サクラ「!」
旧暗夜軍兵士「これでどうだ!」ブンッ
ズビシャ‼‼
新生暗夜軍兵士「ぐあああっ」ドササッ
新生暗夜軍兵士「っ、く、くそ!!! 数が多すぎる!!! このままでは――」
タタタッ
旧暗夜軍ランサー女「邪魔だよ」チャキッ ドスンッ
新生暗夜軍兵士「がっ……」ドサリッ
新生暗夜軍重装兵「軽装のものは下がれ、ここは我々が――」
旧暗夜軍ランサー女「今だ!」
旧暗夜軍兵士「はっ!」チャキッ
新生暗夜軍重装兵「っ! アーマーキラーか!?」グッ
旧暗夜軍兵士「遅い!」ダッ ブンッ
ガキィィィィィンッ! ズビシャアアアッ
新生暗夜軍重装兵「うぐおおおおっ」フラッ
旧暗夜軍ランサー女「死ね」ドスリッ
新生暗夜軍重装兵「……」ガシャンッ
旧暗夜軍ランサー女「ふふっ、ここは崩した。このまま一気に殲滅するよ!」
旧暗夜軍兵士「おおおおおっ!!!」
ドドドドッ
サクラ「……っ」
新生暗夜軍兵士「サクラ様」
サクラ「一刻も早く、皆さんの援護に向かいましょう」
新生暗夜軍兵士「はっ。孤立しかけている味方の援護に入れ! どうにかして戦線を立て直すんだ!」タタタタッ
サクラ(まだ戦いは終わっていません。突破されたことよりも、それをどうにかするために動かないと!)
サクラ「よし」タッ
旧暗夜軍ランサー女「はああっ」ブンッ!
サクラ「っ!!!」サッ
ドスンッ‼‼‼
旧暗夜軍ランサー女「ちっ、外したか。まぁ、あっさり終わるのも味気ないからいいけどさ」グッ チャキッ
サクラ「あなたは……」
旧暗夜軍ランサー女「白夜の王女、あんたは殺せばみんな喜んでくれる。隊のみんなも、ブレイブもね」チャキッ
サクラ「……」
旧暗夜軍ランサー女「二回も見逃したけど、三度目はもうない。そうだね、無様に命乞いでもしたら、ちょっと考え直してあげてもいいけど。どうかな?」
サクラ「……そんなことはしませんし、私はあなたになんて殺されません」チャキッ
旧暗夜軍ランサー女「ははっ、この状況でも怖がらないんだね。見た目と違って強情で、心底むかつくね」ギリッ
サクラ(この人から感じる物。ユキムラさんがカムイ姉様に向けたものと同じもの。きっと、この人も多くのものを失ってしまったのかもしれません)
サクラ(だけど、だとしても私は、そのために命を明け渡すことはできません。多くの人が私に託してくれた思いを無駄にするわけにはいかないから)
旧暗夜軍ランサー女「本当にむかつくよ。これから切り刻まれるのに、震えもしないなんてさ」
サクラ「怯えるわけにはいかないんです」
旧暗夜軍ランサー女「……なに?」
サクラ「この先、私のために命を賭してくれた方々を覚えて生きていくためにも、そしてあなたのその執念にきちんと向き合うためにも。怯えて震えているわけにはいかないんです」
旧暗夜軍ランサー女「……そうかい、なら向き合うついでに死んでよ。そうだけでこっちは満足なんだ。ああ、殺してやるよ、今回は絶対に逃さない」ググッ
サクラ「受けて立ちましょう。白夜王国の人間である私が――」
「あなたのその思いを終わらせてみせます」チャキッ
今回はこれだけ
サクラ「……」
旧暗夜軍ランサー女「……そうかい、終わらせてみせるねぇ。たしかに終わらせられるよ。もちろん――」
グッ
旧暗夜軍ランサー女「お前が死ぬっていう結果でな!」ダッ
サクラ「!」
旧暗夜軍ランサー女(奴の武器は弓、この距離ならこっちの方が早い!)
旧暗夜軍ランサー女「はあああっ!」ブンッ
サクラ「っ!」サッ
旧暗夜軍ランサー女「逃がすか!」チャキッ ブンッ
ザシュッ!
サクラ「っ!!!!」タッ
旧暗夜軍ランサー女「ほら、どうした白夜の王女、さっきの言葉はどこ行ったんだい?」
サクラ「!」チャキッ
シュパッ!
旧暗夜軍ランサー女「はっ、その程度!」ブンッ
カキィンッ!
カランカランッ
サクラ「はああっ」ググッ
シュパッ!
シュパパッ
旧暗夜軍ランサー女「っ」
キィンカキィンッ
旧暗夜軍ランサー女(次のタイミングで一気に距離を詰めてやる)
サクラ「これで!」チャキッ
旧暗夜軍ランサー女「そこだ!」ダッ!
サクラ「!」パシュッ
ズビシャッ!
旧暗夜軍ランサー女「っ!」
旧暗夜軍ランサー女(っ、一本もらったけど、この程度なら!)
ググッ
旧暗夜軍ランサー女(この距離、殺せる)チャキッ ググッ!
旧暗夜軍ランサー女「死ねぇぇぇえええ!」ブンッ‼‼‼‼
サクラ「!」
ズビシャアアアッ‼‼‼‼
サクラ「あああっ!!!!」 フラッ
サクラ(っ、だめここで体勢を崩したら!!!)
旧暗夜軍ランサー女「ふん、しぶといね。だけど――」チャキッ
ドゴンッ
サクラ「きゃああっ!」ドササッ
旧暗夜軍ランサー女「これで終わりだ」ダッ
旧暗夜軍ランサー女(誰かわからないくらいに、その顔をぐちゃぐちゃにしてやる!)
サクラ(まだ、ここで死ぬわけにはいかないんです。私は見届けないといけない。リョウマ兄様やヒノカ姉様、そしてスズメさん達が繋げてくれた未来を見届けること、それを諦めるわけにはいかない)
グッ
サクラ(いかないんです!)
旧暗夜軍ランサー女「死ねえええ!」スッ
ブンッ
サクラ「!」サッ
ズシャリッ
旧暗夜軍ランサー女「!!!!」
旧暗夜軍ランサー女(こいつ、こっちが顔を狙ってるって読んで――)
チャキッ
サクラ(この距離、外しません!)ググッ
旧暗夜軍ランサー女「っ、この――」スッ
サクラ「……ごめんなさい」
パシュンッ!
ドスッ!
◆◆◆◆◆◆
旧暗夜軍ランサー女「ぐっ、あああああああっ!!!!!」ググッ
旧暗夜軍ランサー女(っ、胸が熱い! っ、なんで、なんでだよ、なんでこうなるんだよ!)
旧暗夜軍ランサー女「ぐ、うあああああっ」ブンッ
サクラ「っ!」タッ
旧暗夜軍ランサー女「っ、くそ、くそくそくそ!!!!」
旧暗夜軍ランサー女(どうして殺させてくれない、白夜の人間の一人や二人どうして殺させてくれないんだ。私には、その機会さえも与えてくれないっていうのか?)
旧暗夜軍ランサー女「っ、ううううっ」ググッ
旧暗夜軍ランサー女(大丈夫、まだ立てる。武器だって握れる、まだ、まだやれる……)
ポタタタッ
旧暗夜軍ランサー女「はあ…、はあ…、っ、この程度でどうにかなると思ってるなら、大間違いだよ」ズズッ ズズッ
サクラ「……」
旧暗夜軍ランサー女(なんだよ、なんでそんな目をするんだよ。なんでそんな、悲しい顔をする? そうか、そうだよな。先の攻撃でこっちを殺すつもりだったからだ。それがこうして動いてるから……敵わない……って……)ズササッ
ドサリッ
旧暗夜軍ランサー女「……え?」
旧暗夜軍ランサー女(なんでこっちが倒れてるんだ? 目の前に敵がいるのに何で倒れるんだよ。あと少しでみんなの仇も取れて、あいつにもブレイブにだって安心してもらえるのに、なんでこんな……)
旧暗夜軍ランサー女「……ごふっ」ビチャッ
旧暗夜軍ランサー女(くそ、こんな矢の一本、この程度で……)
旧暗夜軍ランサー女「こ、こんなもの、ぐううっ……」グッ
旧暗夜軍ランサー女(こんな程度で諦められるわけがない。こんな、こんなもの……)
ググッ グッ
旧暗夜軍ランサー女「なんで、なんで……抜けないの……」
旧暗夜軍ランサー女(力が入らない、目の前に殺したい奴がいるのに……。なんで、なんで――)
サクラ「ごめんなさい」
旧暗夜軍ランサー女「?」
旧暗夜軍ランサー女(なんだよ、なんで謝るんだよ。謝るくらいなら今すぐ死んでくれてもいいだろ。私が失った分、少しでもいいから……何か……示せるものを、手に入れさせてよ)
旧暗夜軍ランサー女「ブレイブ……が、安心……できる、何か……かはっ……」ビチャチャッ
旧暗夜軍ランサー女(体が寒い、手が震えて矢を握ってられない……。ああ、死ぬんだ、私はここで……何も示せないまま)
旧暗夜軍ランサー女「う、ううううっ……」ポタ……
旧暗夜軍ランサー女(ブレイブ……私、何も得られなかった……。結局、私は救われただけで、何も返せなかった)
旧暗夜軍ランサー女「ご、めん……よ……」
クタリッ
カランッ……
旧暗夜軍ランサー女「」
サクラ「はぁ……はぁ……、っ」
旧暗夜軍ランサー女「」
サクラ(……)
バサバサ
リンカ「サクラ!」
サクラ「リンカさん……」
リンカ「くそ、すぐに治療するから一度下がるぞ。誰でもいい援護してくれ!」
新生暗夜王国兵士「はっ、ここは我々に任せてください」
リンカ「ああ、任せた。サクラ歩けるか?」
サクラ「はい、大丈夫です。っ……」
リンカ「すまん、シャーロッテに任されたっていうのに、あたしは肝心な時に……」
サクラ「でもこうして一番に駆けつけてくれたじゃないですか。リンカさんが私のことを助けようとしてくれているのはわかってますから」
リンカ「だが――」
サクラ「ふふっ」
リンカ「な、何で笑うんだ」
サクラ「いいえ、リンカさんは頑固だなーって思って」
リンカ「……サクラも同じくらい頑固だと思うけどな」
サクラ「ふふっ、そうかもしれませんね」
リンカ「急いで駆け付けたっていうのに、まったく」
ザッ ザッ
リンカ「とりあえずあれだ、無事でよかった」
サクラ「はい、リンカさん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東部』―
旧暗夜軍兵A「おい、副隊長はどうした!?」
旧暗夜軍兵B「左翼からの敵陣に入ってから姿を見ていない」
旧暗夜軍兵A「どうするんだ!? このまま押し合いへし合いしてても落とせるわけない!」
旧暗夜軍兵C「くそ、後方の砲台班は何をやってるんだ!? もう敵陣は射程に入ってるのになぜ援護しない!?」
旧暗夜軍兵A「ん、ちょっとまて」
シュオオオオオオンッ
旧暗夜軍兵A「砲台に動きがあるぞ。敵はさすがにこの逃れるような回避行動はとれないはずだ。魔道砲台の援護射撃に合わせて一気に打ち崩す」
旧暗夜軍兵A(よし、そのまま敵陣をなぎ倒して―――)
ヒュオオオオオオオオッ ドゴオオオオンッ
旧暗夜軍兵B「はっ?」
旧暗夜軍兵C「馬鹿、目測を誤ってどうるするんだ!? そっちには誰もいないからよかったものの、もしも部隊がいたら――」
旧暗夜軍兵A「………まて、なんだあれは?」
旧暗夜軍兵A(あれは狼煙? 狼煙の合図など聞いていない。あれは一体……)
シュオオオオオンッ
旧暗夜軍兵C「また発射準備に入ってるが、あの狼煙はなんだ!?」
旧暗夜軍兵B「っ、おい、敵がこちらを圧し始めてるぞ!?」
旧暗夜軍兵A「なに!?」
旧暗夜軍兵C「お、おい。どういうことだ!? 今さっきまで攻勢に出られるような素振りなんてなかったはずだ。砲台のことが見えてないのか?」
旧暗夜軍兵A「……ま、まさか……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区・東部』魔道砲台―
ルーナ「威嚇射撃はこれで終わり、次からは直接狙っていいわ」
新生暗夜軍兵A「はっ」
シャーロッテ「これで敵を撤退させればこっちの勝ちね」
ルーナ「ええ、だけどまだ戦いは終わってないから気を抜かないで行くわよ。なにせ、敵本陣はまだ生きてるんだからさ」
シャーロッテ「そうね。でもまずはサクラ様の援護からしないと」
ルーナ「ええ、かなり待たせちゃったからね。まずはサクラ様の救出に向かうわ」
シャーロッテ「わかったわ。数名を防衛に残して。残りはサクラ様を助けに行くわよ」
新生暗夜軍兵たち『はっ!』
シュオオオオオオッ
新生暗夜軍兵A「準備整いました」
ルーナ「いいわ、始めちゃって!」
新生暗夜軍兵A「了解、砲撃開始します!」シュオンッ
ゴオオオオオオッ!
ルーナ(東部はこれで抑えられた。あとは敵の心臓部―――)
(中央部の戦いがどう動いていくのか、それ次第ね……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・渓谷出口の村『中央区』―
パカラパカラッ!
マークス「はああああっ!」チャキッ
ブンッ
マクベス「ふん、そこです」シュオンッ
ヒュオオオッ
マークス(この風の流れ、まずい!)
マークス「はああっ!」ググッ‼‼‼
ヒヒーンッ! ダッ
マクベス「エクスカリバー!!!!!」
ヒュオオオオオオッ‼‼‼‼
マークス「っ、うおおおおおおっ」
パカラパカラッ!
マクベス「ふん、逃げ切られましたか。さすがはマークス王子だ」
マークス「……マクベス」
マクベス「ですが、次は避けられますかな?」パラパラパラッ
マークス(っ、マクベスめ、予想以上の攻勢だ。ここまでの力を持っているとはな。だが――)
マークス「避けるか、それは貴様の方だ!」チャキッ シュオンッ
バシュンッ!
マクベス「!」サッ
タタタタタッ
マークス「逃がさん!」シュオンッ
バシュ! バシッ! ヒュオンッ!
マークス(このままジークフリートで追い込めば!)
マクベス「追い込まれるつもりはありませんよ、マークス王子」ググッ
ダッ‼‼‼
マークス「!?」
マークス(距離を詰めるか、マクベス!)チャキッ ググッ
マクベス「今です!!!」
ザザッ
旧暗夜軍ソーサラー「いけっ、ここでマークス王子を仕留めろ!」
マークス(敵の援軍!? くっ、これが奴の狙いか)
マクベス(マークス王子、あなたは少し素直すぎます。それはある種人を惹きつけるものかもしれませんが、同時に付け入る隙でもあるのです)
マクベス「さぁ、どう動きます、マークス王子……」シュオンッ
マークスww
旧暗夜軍ソーサラー「この機会、絶対に逃すな。この孤立してる今が最大の勝機、マクベス様からの援護もある。行くぞ!」
旧暗夜軍兵士A「うおおおおっ!」タタタタッ
マークス「……」
マークス(マクベスがこうして私の前に現れた時点で、私を孤立させる算段をしていたことを考慮すべきだったな。だが、それが歩みを止める理由になどなりはしない)
マークス「そちらが策を弄するならば、正面からすべて切り捨てるまで。はああああっ!!!」チャキッ
マクベス「ライナロック!」シュオンッ
マークス「!」サッ
ドゴンッ!
旧暗夜軍兵士A「そこ、もらった!」チャキッ ブンッ!
ガキィンッ
旧暗夜軍兵士A「っ!」
マークス「狙いはいい、だがその程度で私は倒せんぞ」チャキッ
旧暗夜軍兵士「しまっ――」
マークス「はああっ」ググッ!
旧暗夜軍ソーサラー「させるか。ファイアー!」シュオンッ
マークス「!」キィン ダッ
ボウッ
旧暗夜軍ソーサラー「未だ、距離を取れ!」
旧暗夜軍兵士A「は、はいっ、すみません」
旧暗夜軍ソーサラー「気にするな、それよりもすぐに仕掛けられるよう息を整えておけ」
マークス「……」
マークス(敵の士気、練度が今までの者たちとは桁違いに高い。……マクベス、これほどまでの者たちを従えているとはな)
マークス(いや、この者たちが優れているだけではない。戦う意味、その力量、あらゆるものが異なる者たちをまとめ導く力があるからこそ……)
マークス「……父上はお前を軍師の席に置いていたのだろうな」チャキッ
マークス(……今ここにいるすべての敵は父上が育て上げてきた暗夜王国、その理想なのかもしれん)
マークス「だからこそ、越えねばならん。父上と異なる道を歩む以上」ダッ
旧暗夜軍ソーサラー「ライトニング!」シュオンッ
バシュンッ! バシュンッ!
マークス(おそらく、奴の攻撃はこちらをキルゾーンに誘い込むためのもの。ならば――)ググッ
旧暗夜軍ソーサラー「今だ!」
旧暗夜軍兵士A「はい、これで!!!」チャキッ
旧暗夜軍兵士A(このまま槍を投擲して足止め、一気に距離を詰めれば!!!)
旧暗夜軍兵士A「くらえ!」ググッ ビュンッ
マークス「そう来るだろうと、思っていたぞ。はああっ!」ググッ
ズササッ ダッ
旧暗夜軍ソーサラー「なに!」
旧暗夜軍ソーサラー(こちらに向かってきた!? 馬鹿な、まだこちらの放ったライトニングは生きているというのに、死ぬ気か!?)
バチンッ
マークス「っ!!!」グラッ
旧暗夜軍ソーサラー「自棄になったみたいだな、次で終わりだ」シュオンッ
マークス(一発はもらった、だが――)
マークス「この距離はお前だけの攻撃距離ではないぞ」シュオンッ
旧暗夜軍ソーサラ―「ライトニ――」スッ
マークス「ジークフリート!」
バシュッ! ズビシャ!!!!
旧暗夜軍ソーサラー「がっ、ぐっ、くそぉ……」ドサッ
マークス「はぁ……はぁ……」ポタタタッ
マークス(どうにか凌いだ。だが……)
タタタタタタッ
旧暗夜軍兵士B「マクベス様!」
旧暗夜軍兵士C「指示をお願いいたします」
マクベス「上出来です。彼らが作ったこのチャンスを逃す手はありません」シュオンッ
旧暗夜軍兵士たち『はい!』
マクベス「あなた方は私の後ろへ、マークス王子の動きは私が止めます。そこを挟撃するのです」
旧暗夜軍兵士B「はっ!」
マクベス「行きますよ」ダッ
タタタタッ
マクベス(先ほどの我が身を顧みない戦い方には感服いたします。ですが、この状況を覆すにはまだまだ足りませんよ、マークス王子!)
マクベス「ライトニング!」シュオンッ
バシュンッ! バシュンッ!
マークス「はあっ!」ググッ
サッ
旧暗夜軍兵士B「そこだ!!!!」チャキッ
ブンッ
マークス「させん!」チャキッ
ガキィンッ‼‼‼
旧暗夜軍兵士B「ちっ」サッ
旧暗夜軍兵士C「くらえ!!!」ブンッ
マークス「甘いぞ、はあああっ!」グググッ
ブンッ ガキィンッ
旧暗夜軍兵士C「うおっ! くそ、届かないか」
マークス「はぁ……はぁ……はぁ……」
マクベス「ここは凌ぎますか、さすがです。ですが……もう長くは持たないようですねぇ、マークス王子」
マークス「……」
今回はこれだけ、更新が鈍足過ぎて申し訳ない。
闇リリスが実装されて、最高でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―渓谷入口の村内部『中央西区域・魔道砲台周辺』―
カザハナ「ライブ! はい、これで大丈夫だよね」シュオンッ
カミラ「ええ、ありがとう。西側の魔道砲台周辺は制圧できたみたいね」
アシュラ「ああ、何とかな。ただ、中央にある弓砲台周辺の防護は厚い。ここにたまってる竜騎兵の動きをけん制してやがる」
ニュクス「魔道砲台で援護したいところだけど射程はぎりぎり敵の弓砲台には届かないわ。きちんと計算しているみたい」
カミラ「さすがに抜け目はないということね」
ニュクス「そうね。ん?」
タタタタタッ
旧暗夜軍兵士「失礼いたします。他戦線の情報が来ました」
カミラ「聞かせて頂戴」
旧暗夜軍兵士「はっ、中央での戦線は現在拮抗、東側魔道砲台の制圧もほぼ完了しているとのことです」
カミラ「そう、順調みたいね」
ニュクス「ええ、あとは中央の弓砲台を抑えることができれば、敵は下がるしかなくなるはずよ。ここは慎重に動いて弓砲台の制圧に向かうのが得策だと思うけれど
カミラ「確かにそうね、だけど……」
アシュラ「ん、どうした?」
カミラ「……中央の戦線は拮抗しているそうね」
旧暗夜軍兵士「は、そのように聞いております。カムイ様にマークス王子がおりますから」
カミラ「でも、同時に敵の狙いが集中する場所でもあるわけね。マクベスが前に出ていたことを士気の高揚を狙ってのことかと思っていたけれど……そういうことね」
タッ
カミラ「マクベスはこの戦いの狙いを定めているわ。私たちにとっての暗夜王国を導く人を殺すこと、それが今のマクベスたちの狙い。こちらから攻めている状態だから勘違いしていたわ」
ベルカ「カミラ様?」
カミラ「ここの守備は最低限にして、中央の敵を強襲するわ。敵の戦力が中央に纏まりつつある以上、今マクベスはその狙いを遂行するために動いているはずよ」
ニュクス「敵の狙いはマークス王子……ということね」
カミラ「おそらくね。マクベスの狙いはこちらの殲滅でも、ここを守ることでもない。ただ一点――」
「お兄様を討つことよ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―渓谷入口の村内部『中央区域・弓砲台周辺』―
旧暗夜軍アドベンチャラ―「それで状況はどうなってんだ?」
旧暗夜軍兵士「はい、西区域の敵にまだ動きはありません、東区域はだんだんとですが押し込まれつつあります」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「だとしても東のことは東の奴らに任せるしかねえさ。こっちはこっちで、横やりが入らねえよう戦うだけだ」
旧暗夜軍兵士「はい。マクベス様の策、うまく行くといいのですが」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「そのために俺たちがいる。マクベス様の策がうまく行くようにフォローするためにな」チャキッ
旧暗夜軍兵士「アドベンチャラ―殿?」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「至急だ、弓砲台の奴に連絡しろ。西の奴らが動き出しそうだってな」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「………」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(まったく、本当に焼きが回ったっていうのはこういうことを言うんだろうが……)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「はぁ、金銀財宝を奪うこと以外にやりがいのあることなんてないって思ってたが、悪くねえもんだな――」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(誰かのために、戦うっていうのはさ……)
チャキッ
旧暗夜軍兵士「弓砲台に伝達完了しました。全員、戦闘準備整っています」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「よし西からくる奴らを迎え撃つ、誰一人もマクベス様の下に行かせるんじゃねえぞ!」
旧暗夜軍兵士たち『おおおおーーーーーーっ!』
旧暗夜軍アドベンチャラ―「おい、伝令を一人メイドちゃんに出しておけ、こっちの敵が動き出したってな」
旧暗夜軍兵士「了解しました!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「さてと……」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(迂回してくるつもりはないってことは、こっちの狙いがそれなりにわかってるってことか……)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「たく、簡単に勝たせてくれねえな……」
旧暗夜軍兵士「敵の竜騎兵隊を確認。こちらに向かって前進してきます」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「よし、弓砲台はまず牽制だ、奴らの隊列を崩せ。残りは当たらなくてもいい、撃ちまくって相手の動きを鈍らせろ。まずはそそれからだ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」タタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(奴らの機動性は馬鹿にできねえ。だが、少しでも動きを止められれば勝機はある。マクベス様が敷いた上空の見えない毒霧の所為もあって、あいつらだって好き勝手に動ける状況じゃないはずだからな)
旧暗夜軍兵士「敵先陣、弓砲台射程に入ります!」
旧暗夜ぐアドベンチャラ―「よし、放て!」
バシュシュッ‼‼‼‼‼
旧暗夜軍兵士「こちらの攻撃に合わせて敵が散会します」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「上々だ、とりあえず無理やり抜けようとする奴がいたら優先的に叩き落してやれ。それと杖が仕える奴は各部隊の後方に付いて敵の妨害、奴らの機動力を奪い取る。だが、あくまでもこっちは迎撃に徹しろ、奴らの誘いに乗って前に出すぎるんじゃないぜ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(頭数は向かってくる敵に仕掛けに行ってどうにかなる数じゃねえ。奴らの誘いには乗らないようにしねえと簡単に突破されちまう)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「いいか近くの仲間に意識を配って前に出そうになってる奴がいたら静止させろ。状況はギリギリ、俺たちにとって正念場だからよ」
旧暗夜軍兵士「はい!」
旧暗夜軍兵士アドベンチャラ―「よし、砲台前に展開――」
「行くぞ!」タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~
バサバサッ
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「敵部隊、砲台前に展開していきます」
カミラ「こっちの動きはさすがに読んでいるわね。だけど、こちらも退くわけにはいかないわ。ベルカ、ニュクスと一緒に敵をかき乱しなさい。敵に隙が生まれたら一気に畳みかけるわよ」
ベルカ「わかったわ。ニュクス、かなり動きが激しくなるわ、しっかりつかまっていて」
ニュクス「ええ」
アシュラ「俺とツバキも相手の攪乱に徹する。突破は任せるぜ」
カミラ「ええ、お願いするわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「カミラ様、私が先行します」
カミラ「任せたわ」
新生暗夜軍レヴナントナイトA「はっ! 行くぞ、何としてでも中央部への道を切り開くのだ!」
新生暗夜軍レヴナントナイト部隊『おーーーっ!』
バサバサササッ!
旧暗夜軍兵士「来たか、通れるもんなら通ってみやがれ!」チャキッ パシュッ
ベルカ「ニュクス……」
ニュクス「ええ!」ギュッ
バサバサバサッ
旧暗夜軍兵士「くそ、ちょこまか動きやがって!」チャキッ パシュ!
ベルカ「ニュクス、今よ」
ニュクス「ええ、攪乱程度ならこれで十分よ。ファイアー!」シュオンッ!
ゴオオッ! バチンッ!
旧暗夜軍兵士「うぐっ、だがこの程度の攻撃なら!」ギリリッ パシュンッ
ベルカ「……この程度」ブンッ ガキンッ!
ニュクス「はっ」シュオンッ!
ドゴンッ
旧暗夜軍兵士「ぐっ……この!」チャキッ
ニュクス「敵の意識がこっちに集中し始めたみたい」
ベルカ「……ここからは回避に専念する。さらに動きまわすことになるから気を付けて」
ニュクス「ええ、私は打てる隙があったら打ち込むから、ベルカは好きに動いて」
ベルカ「わかったわ」
ベルカ(ここの敵の意識はこっちに向いてる。これならアシュラたちも距離を詰められるはず。あとは、それが突破の糸口になるまで避け続けるだけ)
バサバサッ
ベルカ(必ず、カミラ様を中央部に向かわせてみせる!)
新生暗夜軍ドラゴンマスターA「敵の攻撃がベルカ様たちに集中し始めています。今なら距離を詰めるのも可能かと」
アシュラ「よし、この機を逃さず行くぞ。ツバキ行けるな?」
ツバキ「うん、問題ないよ。援護は任せて」
アシュラ「ああ、任せるぜ。よし、一気に距離を詰めるぞ。相手に選択の余地を与えるな」
新生暗夜軍兵士「はっ!」
タタタタタッ
旧暗夜軍兵士「敵、地上部隊が動きます」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「きやがったか。弓砲台に標的を変更させろ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(竜騎兵での牽制からの地上部隊での強襲、手慣れた手順だ。だが、こちらもそれくらいは織り込み済みだ)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「こっちもわずかなチャンスに賭けてんだ。そう簡単に突破できるなんて思うんじゃねえぞ」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「弓部隊構え、次の次の攻撃を接近する敵地上部隊に切り替えろ。奴らの距離が迫った瞬間に一気に畳みかけるぞ」
旧暗夜軍兵士「はっ!」
新生暗夜軍兵士「敵、弓部隊展開!」
アシュラ「展開してきやがったか。みたところ狙いは竜騎兵、一気にこのまま距離を詰めるぞ」
ツバキ「なるほどねー。だけど、少し注意した方がいいかな」
アシュラ「注意?」
ツバキ「うん、先までよく動いてた弓砲台、静かになったみたいだからね……。こっちの動きに合わせてるようにしか見えないからねー」
アシュラ「……なるほどな、ならそれも織り込んで進むまでだ。ツバキ、お前に頼みがある」
ツバキ「ん、なにかなー?」
アシュラ「何、簡単なことさ。ちょっとだけ間をあけてくれ」
ツバキ「……結構危ないと思うけど、本当にやるのかい?」
アシュラ「このくらい渡れないでどうする。相手の策は少し読めてんだ、あとはその裏を掛ければめっけもんさ」
ツバキ「はは、ぶっきらぼうな考えだねー。あんまりそういうのは好きじゃないんだけど」
ツバキ「ここは乗る以外に手はなさそうだねー」チャキッ
異界の神竜軍で戦場でのエロハンドが横行しております
旧暗夜軍兵士「弓砲台、敵地上部隊へ先頭への攻撃準備完了」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「よし、砲台部隊は指示まで待機。弓兵隊は引き続き竜騎兵隊に仕掛けろ」
旧暗夜軍兵士「はっ! 一番隊放て!」
シュパパパッ!
ヒュンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラ―「敵の隊列は?」
旧暗夜軍兵士「はい、敵地上部隊、以前距離を詰めてきています。あと少しですべて射程に入ります」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「よし、弓砲台の攻撃が合図だ、各自敵の地上部隊を各個撃破しろ。接近してこない限りは白兵戦を仕掛けるなよ」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(敵の隊列がしっかりしてるとことを見るに、おそらく機を見て一気に飛び込んでくるつもりだろうが、そうはさせねえぞ)
旧暗夜軍兵士「二番隊に隊列入れ替え。構え!」
チャキッ
旧暗夜軍兵士「放て!」
シュパパパパッ!
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ちっ、竜騎兵どもは落とせずじまいか。だが、ここからは――」
ドドドドドドドッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「なんだ?」
旧暗夜軍兵士「敵部隊、急速に接近してきます!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「そうかい、予想よりちょっと早いが迎え撃つまでだ。砲台で、奴らの先頭を抑えな。それに合わせて、飽和攻撃。奴らを一人として通すな!」
旧暗夜軍兵士「はっ、砲台部隊へ。攻撃を開始せよ。目標は接近中の敵地上部隊!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(これで奴らの足が止まればそれで終いだ!)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「射て!!!!」
バシュシュシュンッ!!!
新生暗夜軍兵士「弓砲台からの攻撃、来ます!」
ツバキ「進軍を一度停止! 向かってくる砲台の矢に気を配っておくように」
新生暗夜軍兵士「はっ」
ツバキ「それじゃ、先人は任せるよ」
アシュラ「ああ、そのつもりだ。行くぞ、弓砲台の再装填と、敵戦線がこっちに狙いをつける前に距離を詰めろ。弓砲台のでかい矢にやられるじゃねえぞ」
新生暗夜軍兵士「了解!!!」
ダダダダッ
バシュシュシュッ!
アシュラ(来たな、あの角度から察するに奴らの狙いはこっちの足止め。こっちが全員足を止めたら、そのまま奴らの攻撃態勢が整っちまう。かといって、このまま全員で突撃しても面攻撃で頭を押さえられる。となれば――)
アシュラ「こういうのに賭けるしかねえってことだ」
ドドドドドッ!
ドスンッ!
ドゴンッ
新生暗夜軍兵士「うお、あぶねえ!」
新生暗夜軍兵士「っ、あと少しで貫かれるところだったが、これで!」
アシュラ「全員、正面の攻撃に備えろ。ここで決めるぞ!」
新生暗夜軍兵士「おおーーーーっ!!!」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「へっ、そう簡単に前進させるか。このまま、抑えて弓砲台で一網打尽にしてやる」
旧暗夜軍兵士「敵、動きが鈍り始めています。これなら!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ああ、このまま抑え込め!」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(これで決まりだな。さすがに後続は間に合わねえはず、ここは抑え込んだ!)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「……ん?」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(敵の陣形は変わってない、変わっていないはずだ。だが、何か違和感がある)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「……頭数が足りてねえ?」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(敵の先頭列は変わってねえ、だが、あの人数、想定より全然少ねえ。もっといるはずだ。少なくともまだこっちは大打撃は与えられてない。だとすれば――)
ドドドドドッ
旧暗夜軍兵士「先陣後方より敵多数、左右に展開、急襲してきます! ど、どちらを狙いましょう」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ちっ! これが狙いか」
新生暗夜軍兵士「ツバキ様、アシュラ様の部隊への攻撃が弱まっています」
ツバキ「アシュラたちが引っ張ってくれた分、的が増えて混乱してるみたいだね。なら、ここを突かないわけにはいかない」
「敵の陣はここで崩す」
旧暗夜軍兵士「て、敵軍来ます!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「俺を中心にして左右それぞれに対処しろ。前列は白兵戦準備、後列は可能な限りでいい、敵を狙え!」
旧暗夜軍兵士「は、はい!」
ザザザッ チャキンッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(最初の奴らはまだここまで届かねえ。弓砲台の攻撃を今止めたらそれで終わりなら、これ以外に手はないだろうが)
新生暗夜軍兵士「はあああああっ!」ダダダダッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「さぁ、やるぞお前ら!」チャキッ
旧暗夜軍兵士「おおおおーーーー!!!!」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「全員返り討ちだ。行くぞ!!!!」ダッ
旧暗夜軍兵士「くらえっ!」パシュンッ!!!
ヒュンヒュンッ
ツバキ「はっ!」ブンッ
ガキィンッ カランッ
ツバキ(不意を衝けたと思ったけど、まだ完全に崩れてるってわけじゃないみたいだね)
ツバキ「でも、ここまで来たらあとは勝負するだけだね」チャキッ
旧暗夜軍兵士「ちっ、くらえっ!」チャキッ ブンッ
ツバキ「よっと」サッ
旧暗夜軍兵士「っ! この――」
ツバキ「はい!」ブンッ
ザシュンッ ビチャアアッ!
旧暗夜軍兵士「かっ、ぐおっああああ……」ドサリッ
ツバキ(よし、切込みは成功した、あとはアシュラの部隊が到達するまで攪乱して――)
チャキッ パシュンッ!
ツバキ「!」サッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ちっ、感がいいやつだな」チャキッ パシュッ
ツバキ「ははっ、そうかもね。で、見逃してくれはしないよね」サッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ああ」チャキッ パシュッン!
ヒュンッ
ツバキ「!」サッ チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(敵の獲物は暗器か!)
ツバキ「それっ!」ブンッ
ヒュンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラ―「っ、くらえ!」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(距離を詰めると奴に距離を詰められるが、このままじゃ奴らの後続が間に合っちまう。なら――)
ガサゴソガサゴソ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「こっちから間合いに引き入れてやるさ」チャキッ
タタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「おら、おらあああ!」パシュッ パシュンッ!
ツバキ「はっ、ふんっ!」キィンキィンッ
カランカラン……
旧暗夜軍アドベンチャラー「そこだ、ドロー!」シュオンッ!
ツバキ「!」サッ
グオンッ……
旧暗夜軍アドベンチャラー「ちっ、避けやがったか。だが、次は同じようにいかねえぞ」
ツバキ「……」
ツバキ(今のは危なかった。アシュラが来る前に俺のことをどうにか仕留めるつもりでいるみたいだし、次も避けられるかはわからないか)
ツバキ「そうだね、でもそれは俺も同じ、次は同じようにはいかせないよ」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「そうかい、ならみせてもらおうじゃねえか!」チャキッ パシュンッ!
ツバキ「はっ」ブンッ
カキンッ カランッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(矢に充ててきやがったか。やりやがる。できればすぐにでもやつを引き寄せてえところだが、今はまだだ。やつが獲物を入れ替えたとき、そのタイミングで仕掛ければ)
旧暗夜軍アドベンチャラー「おらっ、食らいやがれ!」シュパッ
ツバキ「はっ、それ!」ヒュンッ シュパッ!
カキィンッ ザシュッ!
旧暗夜軍アドベンチャラー「ぐっ!!!」ポタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラー(一発もらった、だがこれで奴の手はがら空き、ならこのタイミングで奴は獲物を入れ替えるはず、そこを狙えば――)
ツバキ「……」スッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「もらったぞ、ドロー!」チャキッ シュオンッ
ツバキ「!」
旧暗夜軍アドベンチャラー(もらった!!!!)チャキッ
ザシュンッ!!!!
ポタッ ポタタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「……」
ツバキ「……」
ポタタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「て、てめえ……」
ツバキ「ははっ、予想はしてたけど結構痛いね。もっとも――」ポタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ぐっ、うううううっ……」ポタタタッ
ツバキ「そっちはこっちの比じゃなさそうだけどさ」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「っ」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(くそ、こいつ、ドローでの引き寄せに合わせて暗器を……。くそ、こっちの攻撃も完全に読んでやがった。くそ、深く刺さって抜ける気がしねえ……)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「はぁはぁ……、くそが……こんな動きされるなんて想定してねえんだよ、こっちはよ」チャキッ
ツバキ「そこが唯一の隙になると思ったんだ。特に命がけで戦ってくる奴の相手をするんだからさ、こっちも命を掛けないと、割に合わないからね」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「……」
ツバキ「……」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(ちっ、退くのは無理だな。下手に動けば、それで終わりだ)
ツバキ「……」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(……割に合わねえか。ああ、そうだな、ここで逃げ切れる確率に賭けるってのは割に合わねえ)チャキッ
ジジッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(だからこっちも賭けるしかねえよな)
チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラー「はぁはぁ……」
ツバキ「………」
旧暗夜軍アドベンチャラ―「はぁ……はぁ……」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(…………)
ギュッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「っ!!!!」パシュンッ
ヒュンッ
キィン!
ツバキ「っ!」ダッ
タタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(投擲じゃねえ、一気に詰めてきたか!)
ツバキ「はああああっ!!!!」ググッ
ブンッ!
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ぬぅ!!!! 当たれるかよ!」ササッ
チャキツ!
グググッ
シュパパンッ
ツバキ「はっ!」ブンブンッ
キキィンッ!
カランカラン……
旧暗夜軍アドベンチャラ―(ちっ、ここまで反応してくるのか……だが――)
ズキンッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「ぐっ……」
ポタッ ポタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(動き続けてもこっちが不利になるだけ、ならこちらから!!!)ダッ!!!
ツバキ「……」チャキッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「……」グッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―(こっちの傷の広がりようじゃ、何度もチャンスがあるわけじゃねえ……)ポタタタッ
旧暗夜軍アドベンチャラ―「まったく、本当にどうしてこんな得にもならねえ戦いに残っちまったんだろうな」
旧暗夜軍アドベンチャラ―(……まぁ、わかってはいるさ。結局のところ、俺もここに残ってる奴らと同じ。暗夜王国のためじゃない理由で戦いたくなったからだよな)
旧暗夜軍アドベンチャラ―(本当、救いようがないくらいに馬鹿野郎さ。前の自分が見たら頭でもおかしくなったのかって思うこと間違いなしだぜ)
旧暗夜軍アドベンチャラ―(たとえ、マークス王子を殺しても、新生暗夜の勢いは止まらねえ。旧暗夜が復活することはない。それはマクベス様もここにいる奴ら全員が分かってる。勝っても負けても大局に影響しない、そんな戦いだ)
旧暗夜軍アドベンチャラ―(だからこそ、だな)
旧暗夜軍アドベンチャラ―「最後くらい、おこぼれの勝利をくれたって罰は当たらないぜ、神様よぉ」チャキッ
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