カムイ「トラキア王国のアルテナ王女?」アクア「わたしたちとそっくりな境遇ね」 (52)


カムイ「ふぁーあ…」ノビー

アクア「カムイ、お茶を淹れてきたわ。少し休憩したら?」

カムイ「ん、アクア。ありがとう、助かるよ」

アクア「……。コーヒーの方が良かったかしら?」

カムイ「いや、オレはどっちも好きだぜ。 なんでだ?」

アクア「目が笑ってないから」

カムイ「そうか? すまん…」


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アクア「もう、妻にくらい甘えていいのよ。最近あまり寝てないんでしょう? 気持ちはわかるけど、あなたが倒れたら意味ないわ。一日くらいしっかり休んで」

カムイ「はは…敵わないな、アクアには。オレのことはお見通しか」

アクア「ええ、もちろん。だから、『みんなや私のために休んで』。こんな風に言ったほうがあなたが言うことをきいてくれやすいことも知っているわ」

カムイ「まったく、アクアは…。わかったよ、じゃあ明日は一日休暇だ!」

アクア「よろしい」

カムイ「アクアのために、ね」

アクア「結構ですわ、旦那さま」

カムイ「はは、なんだそのしゃべりかた!」

アクア「あら、私だって王族の端くれだもの。このくらいお手の物だわ」

カムイ「なるほどな」


カムイ「じゃあさ、奥さん」

アクア「はい、なんでしょう」クスクス

カムイ「オレはアクアの言うことを一つきいた。ならアクアもオレの注文をひとつきかなくちゃフェアじゃないよな?」

アクア「そうね。なにをして欲しいの?」

カムイ「明日は久しぶりに、アクアの踊りが見たいな」

アクア「あら、嬉しいわ。じゃあ明日は二人で白夜平原に行きましょうか。そこで踊ってあげる」

カムイ「いいな、アクアと初めて会ったところか」

アクア「ええ」


アクア「さ、カムイ。明日のために今日はたくさんお仕事しなくちゃね」

カムイ「ああ、そうだな!」

カムイ「…なぁ、アクア。歌を歌ってくれないかな。アレを聴くと元気になるんだ」

アクア「あら? 私の歌はタダじゃないって言いだしたのはあなたのはずよ?」

カムイ「はは、ホントに…。いいよ、オレはなにをしたらいい?」

アクア「……キス、してほしいわ」

カムイ「――ああ」


―翌日―


アクア「??♪ ??♪」

カムイ「……さすが、良かったよアクア! 最高だ」

アクア「…ありがとう。楽しんでもらえて良かったわ」

カムイ「ほら、アクアも飲みなよ」

アクア「ふふ、どうも。…うん、おいしい」

カムイ「なんたらのダイギンジョウ…だっけ? さすがリョウマ兄さんのくれたお酒だ」

アクア「久しぶりに顔を見せたらみんな喜んでいたわね。すぐに出発するのが申し訳なかったわ」

カムイ「そうだな。でも、アクアと二人きりがいいんだから仕方ないさ」

アクア「あら? そんな恥ずかしいこと言うなんて、飲みすぎじゃないかしら」

カムイ「まったく、茶化さないでくれよ」ギュッ

アクア「!……」


カムイ「なあ、アクア。政治って難しいな。ハイドラさえ倒せば平和になると思ってたけど、人間ってやつの方がよほど手強いかもしれない」

アクア「…そうね」

カムイ「暗夜の貧困は深刻だ。土地も人も荒みきっている」

カムイ「リョウマ兄さんは白夜の物資を分けてくれるとは言ってくれた。でもそれは、白夜の農民が苦労して収穫した作物を取り上げることになるんだ」

カムイ「白夜の民だって暗夜兵やノスフェラトゥに家族や友人を殺されている。反発するのも当たり前だ」

カムイ「戦争が終わったいまも、両国の民はいがみ合ったままだ。王族同士が勝手に始めた戦争のはずなのに、いつの間にかオレ達の手に負えない事態にまで発展してしまった」

アクア「…私たちが勝手に和解したところで、国民からすればお互いは憎いカタキ同士…。そう簡単に割り切れるものではないものね」


カムイ「なあアクア…。オレはどうしたらいいんだろう? 毎日やまのような紙の束を相手にしていて、本当に彼らの傷を癒せるんだろうか」

アクア「……」

カムイ「マークス兄さんやリョウマ兄さんと協力すれば出来ないことなんてないと思えた。…そのはずなのに、いまはなんだかとても虚しいんだ」

カムイ「結局、あの戦いは王族の自己満足で終わったんじゃないか? そう思うと、怖くてたまらないんだよ、アクア…」

アクア「カムイ…」

アクア「嬉しいわ。めったに弱音を吐かないあなたが、本心を伝えてくれて」

カムイ「アクア…」


アクア「ねえカムイ。人助けしない?」

カムイ「えっ?」

アクア「困った人は放っておけない。それがカムイの原点で本質のはずでしょう?」

アクア「迷ったり、自分の信念に自信が持てなくなったら一度原点に立ち直れって、お母さまが言ってたわ」

カムイ「人助け…か。そうだな! それがオレという人間かもしれない」

アクア「でしょう?」

カムイ「じゃあ早速なにか問題を見つけないとな。とりあえず白夜のどこかを…」

アクア「待って。悩みのタネの白夜だの暗夜だのをうろつくのは良くないわ。まったく無関係のところがいいと思う」

カムイ「無関係の、って?」


フェリシア「竜の門ですね!!」ガサガサッ

カムイ「うわぁ!?」
アクア「フェリシア!?」


カムイ「な、なんでここに?」

フェリシア「だって私は、カムイ様のお世話係ですから! カムイ様のおられる所にフェリシアあり、です!」

アクア「…まさかいつも私たちの後をつけてるわけじゃないでしょうね?」

フェリシア「それはもちろんえっと…。あっ! 痛い! 痛いですアクア様! いたたた…あの、力強くないですか!?」

アクア「まったく…信じられないわ!」プンプン

カムイ「まあまあアクア。そのくらいで…」

フェリシア「あ、ありがとうございますカムイ様ぁ」

カムイ「でも今度やったら承知しないからな」

フェリシア「あう」


――竜の門――


カムイ「さてと。じゃあ異界に行ってみるとするか」

フェリシア「あのあの、私たち三人だけで大丈夫なんでしょうか」

アクア「ほかの人は復興で忙しいわ。付き合わせるわけにもいかないでしょう」

カムイ「それにオレたちはハイドラを打倒しているくらいだ。たいていのことなら対処できるだろう」

フェリシア「そうでしょうか…? 異界ですよ? どんな恐ろしい敵が待っているかもわかりませんし」

アクア「なあに? 怖気づいたの」

フェリシア「そういうわけじゃないですけど…やっぱりわたしは欠席したいな~なんて。代わりにジョーカーさまあたりを…」

カムイ「オレのいるところにフェリシアあり、なんだろう?」

フェリシア「か、カムイさまぁ~」

アクア「ふふ。さ、行きましょ」

カムイ「ああ!」

フェリシア「ちょ、ちょっと待ってください~」


――???――


カムイ「……うーん」

アクア「気が付いた?」

カムイ「アクア。ここは?」

アクア「ぶじ異界に着いたみたいよ」

カムイ「そうか…。フェリシアは?」

アクア「まだ寝てるわ」

カムイ「…よし、じゃあフェリシアが起きしだい…」


???「妙な気配がしたから探りにきてみたが…これは驚いたな」ガサッ

カムイ「!? だれだっ!」


アクア(…そんな、気配なんてまるで感じなかった)

???「私か? お前と同じ『竜』さ」

カムイ「なっ!」

アクア「竜!?」

???「同族に対してなにをそんなに驚く。お前は毎朝かがみの前でそんなリアクションをとるのか?」

カムイ「…あいにく、竜にいいイメージを抱いてないものでな」

???「ふん…。して、わが同族よ。この地になに用だ? 竜は異界への干渉をきらうはずだ」

カムイ「なにが正義なのか…わからなくなった。その答えを探しに」

???「迷い子か。ぶざまなことだな」

カムイ「なんだと!?」


???「…だが、ちょうどいい。この地にはいま危機が訪れている。竜の力を借りられるのならば心強い」

アクア「まだあなたに与すると決めたわけではないわ」

???「ふふふ、そうだな。もとよりお前たちは正義を見つけにきたのだからな…。その目その心で感ずるままに動けばいい」

カムイ「あんたに言われなくともそのつもりだ」

???「ただ…私の見るところ、いずれまた味方としてまみえそうではあるな。いい目をしている」

アクア「それはどうも」

???「だが万一、私たちの前に立ちふさがるようなら、その時は容赦しないぞ。覚えておけ」

カムイ「……」
アクア「……」

???「ではな。竜よ、また会おう…」

_____
____


フェリシア「ん。うぅーん…あ、おはようございます~。…お二人ともどうしたんです? 神妙な顔をなさって」

カムイ「いや、なんでもないよ。それよりもまずはどこか泊まれそうな所を探そう」

アクア「そうね。いきなり野宿はごめんだわ」



カムイ「…しかし、それなりに歩いたけどみごとに林がつづくばかりだな」

アクア「そうね…。観察してみたところ木こりがいるような形跡も見られないし、よほどの僻地に飛ばされてしまったのかしら」

フェリシア「それか、木々を大切にしなくちゃいけないほどの痩せた土地か…ですね」

カムイ「ああ、そういえば暗夜もそんな感じだったな。木々も草もまばらにしか生えなくて、むりに伐採すれば砂漠になる」

フェリシア「ええ。氷の部族の村でも燃やす木材すら確保に困って、暖をとることさえ困難でした」


ガサガサッ

アクア「……! どうやら、フェリシアの方があたりのようね。ここは別に人里はなれた僻地なんかじゃなさそうだわ」

カムイ「アクアも気づいたか。人の気配…それも、えものを狙うような視線だ」

フェリシア「山賊さんでしょうか…?」

カムイ「だろうな。…かなりの人数だ。すでに囲まれているな」

アクア「どうする? ひとに会えたのは僥倖と言えなくもないわよ」

カムイ「ははっ、そうだな。前向きなのはアクアのいいところだ」

フェリシア「ちょ、ちょっとお二人とも! わたしたちピンチなんですよ?」

アクア「そうだったわね」

カムイ「今回の敵は姿が見えるやつだといいな」

アクア「同感だわ」


山賊「おうおうおう!」ガサッ

カムイ「やった、姿の見えるやつだぜ」

アクア「ハイドラの他にもあんな芸当ができるやつがいたら困るわよ」

カムイ「それもそうだ」

山賊「無視すんじゃねぇ! ここいらはこのコルホさまのナワバリだ! 通行料として金目のものはありったけ置いていってもらおうか!」

カムイ「…いやだと言ったら?」

コルホ「死ねや!」


ガサガサガサ!!

アクア「……! これは」

フェリシア「はわわ…す、すごい数なんじゃないですか? この山賊さんたち!?」

カムイ(すごいな…。山賊たちの姿こそ見えないものの、まるで森が動いているかのような地響きだ)

コルホ「げへへへ。どうしたぁ? 怖くなったか。いまなら謝ればまだ間に合うぜぇ?」

フェリシア「か、カムイさまぁ! 敵は50人ほどはいそうですよ! これ、ピンチなんじゃないですか!?」

アクア「…三人じゃさすがに厳しいかもしれないわ。どうする?」

カムイ(だが、目に見える敵はコルホとかいう山賊ひとり。…これは)


カムイ「コルホ、っていったか?」

コルホ「へっへっへ。怖気づいたか。だが安心しなぁ、おれさまは優しいんだ。金目のものと…そうだな、その女どもも置いていってもらおうか。それで命だけはカンベンしてやる」

カムイ「いや、断る」

コルホ「なにぃ!?」

カムイ「来るならこい。死ぬ覚悟ができたやつから相手になってやる」

フェリシア「か、カムイさま!?」

アクア「……カムイ」

コルホ「…うぐぐ。てめぇら! かまうこたぁねぇ! こいつを八つ裂きにしてやれ! そのあとは女どもを○○○だあ!!」


ガサガサガサ!


カムイ「…来るか!?」

フェリシア「死んだらお恨み申し上げますよぉ、カムイさま」


「おまえたち! そこでなにをしている!!」バサッバサッ

コルホ「!?」

カムイ「…! ドラゴンナイト…」

アクア「この地の治安部隊かしら」

コルホ「お、女ドラゴンナイト…まさか」

アルテナ「わが名はトラキア王国の王女、アルテナ! おい山賊、まさか旅の者を襲っているわけではあるまいな」

コルホ「めめめ、めっそうもない! この連中も仲間でさぁ。なっお前ら!?」

アクア「調子のいい…」ボソリ

カムイ「ああ、そうだな。…アルテナ王女。私がこの軍団のリーダー、カムイです」

コルホ「んなっ!?」

アクア「なるほど、王女の前ならそんなの言ったもの勝ちだものね」
フェリシア「くすくす」

カムイ「コルホ。みんなに出てくるよう命じてくれ。アルテナ様に拝謁させるんだ」

コルホ「てめぇ…覚えてろよ」ボソッ

コルホ「おい! 出てきやがれてめーら!」


山賊たち「へいっ」
ガサガサガサ!


フェリシア(…10人ぽっち? そんな。50人はいるような気配でした…!)

アクア(なるほど。この山賊たちは森を利用して少数を大人数に見せかけていたのね)

コルホ「これで全員でさぁ」

アルテナ「うむ。それで、お前たちはここで何を騒いでいたんだ」

カムイ「コルホ」

コルホ「へいっ。私らぁ山賊じゃあありません。貧乏傭兵団でさぁ。われらがトラキア王国に例の軍団が攻め入ってくるときいてもう、いてもたってもいられずに。ぜひ私らも雇ってくだせぇ。私らもトラキアを守りたいんでさ」

カムイ「…そういうわけです」

アルテナ「そうだったか…。それはご苦労なことだ。よし、わたしから父上にかけあってみよう」

カムイ「本当ですか!?」

アクア「ありがとうございます」

コルホ「…けっ」

アルテナ「さて…ではトラキア城に行こうか。ここカパトギアからは高山を越えなければならないが心配するな、わたしの飛竜に2、3人ずつ乗せていってやろう」


コルホ「…ちっ。妙なことになっちまったぜ」

山賊「でもコルホさん。もしかしたらトラバント王直々に雇ってくれるかもしれませんぜ」

コルホ「ばっきゃろー! そんなわけねえだろうが。せいぜいうまくおだてられて囮でもやらされるのが関の山だ。あいつら王族にとっちゃあな、俺たちなんか使い捨てのコマなんだよ!」

カムイ「でも、アルテナ王女はいい人そうだけどな」

コルホ「てめえは黙ってろクソ野郎。リーダーなんて大ぼらこきやがって。アルテナ様の前じゃなきゃ血祭りにあげてやるとこだ」

山賊「にしてもカムイはなんで俺たちが少人数だってわかったんだ?」
山賊「そうだな。俺たちのこの作戦が通用しなかったのなんてはじめてだ」

カムイ「ちょっと考えればわかることだ。数が圧倒的に有利なら最初から有無を言わさず殺しにかかるだろう?」

山賊「お前らが強そうだから出来れば戦闘したくなかった、とか」
山賊「俺らがひと殺しをいやがる優しい山賊かもしんねーぜ」

カムイ「はは、強そうならなおさら死角から奇襲したい。優しいにしても仲間を隠す意味がない」

山賊「はぁー」
山賊「なるほどなぁ」

カムイ「なんにせよ、中途半端なんだよ」

コルホ「へっ、俺ならもっとうまくやれると言わんばかりだな」

カムイ「ああ、やれる」

コルホ「……けっ! 不愉快なヤロウだ!」


アクア「なんだか申し訳ないです。戦争中なのにわたしたちのために時間を割いていただいて」

アルテナ「…いや、いいんだ。実は父上に任されたミーズ城を陥としてしまって、逃げ帰っていた最中なんだ。正直、だれかと話したかった」

フェリシア「はわわ…! 侵略されているのですか? 大変です…!」

アルテナ「いや、さきに仕掛けたのはわがトラキア王国だ。しかし解放軍の反撃にあって、逆にわが領地を…」

アクア「解放軍? …反乱が起きているということですか?」

アルテナ「おや、踊り子殿は解放軍をご存知ないのか」

アクア「…最近はあまり踊り子稼業も儲からないもので、そういうウワサを聞く機会もなくなってしまいまして」

アルテナ「…そうか。いや、仕方ない。トラキアは貧しいからな…。それも我ら王族の責任だ」

アルテナ「解放軍は、大陸中央のグランベル帝国の圧政から世界を解放しようと結成された義勇軍だ」

フェリシア「じゃあ…なぜトラキア王国と戦っているのですか?」

アルテナ「そうだな…。本来、トアキア王国は中立の立場だ。戦う意味などない…。でも、事情はそう簡単じゃないんだ」

アクア「……」


―トラキア城―

トラバント「アルテナ! どうしたというのだ、なぜマンスターを攻撃しなかった!?」

アルテナ「父上…ですが…」

トラバント「言い訳など聞きたくないわ! アルテナ、わしをみくびるなよ」

トラバント「おまえは女でありながら武技にひいで、アリオーンと共にわしの手足として働いてくれるものと期待しておった」

トラバント「ところがどうだ、わしの命令を無視し、部下だけを失ってのこのこ帰ってくるとは…失望したぞ!」


カムイ「…俺たちが出ていく隙がないな」

アクア「敗戦の報告だものね…。トラバント王が怒るのも無理はないわ」

カムイ「それにしても、どうして帝国の対抗勢力である解放軍とこのトラキア王国が戦っているんだろう」

アクア「アルテナ王女の言いぶんでは、本来トラキア王国の立場は中立…でもトラバント王は解放軍の攻撃を命じたらしいわ」

カムイ「…まさか、ガロンのように誰かに操られているんじゃあ」


アリオーン「おい! きさまら何者だ、そこで何をしている!」


カムイ(! …服装と態度からして、相当の身分のひとだろうな)

カムイ「失礼しました、我らは傭兵です。トラキア王国が戦争するときいて、ぜひお力ぞえしたくアルテナ様に申し上げたところ、王に取り次いでいただけるとのことでしたのでここで待機しております」

アリオーン「…まったく、アルテナのやつめ。王宮をなんだと思っている。このような素性もしれない者を…敵の密偵だったらどうするというのだ」ボソボソ

アリオーン「傭兵どもよ、トラキア城はきさまらのような分際の者が軽々しく立ち入れるほど敷居は低くないぞ」

アリオーン「王には私からかけあっておくゆえ、城下で適当な宿でも借りるのだな」


カムイ「……」


フェリシア「想像以上にひどい扱いですね…」

アクア「まあ…私たちは客観的に見ればかなりあやしいものね」

カムイ「でも、一時的にでもトラキア王宮に入れたおかげですこし情勢がわかってきたな」

アクア「ええ。最初に会った男の言っていたこの地に迫る危機というのはきっと、トラキア王国と解放軍の戦争のことね」

カムイ「ああ。そしておそらく元凶はトラキア国王トラバント。アルテナ王女は話せばわかりそうだ」

フェリシア「じゃあ、難しい話はよくわかりませんがそのトラバントって男をやっつければいいんですね!」

アクア「いえ、それは早計よ。情報がすくなすぎる…。もっとこの地の情勢について詳しく知りたいわね」

カムイ「やっぱり例の山賊たちを率いて、傭兵としてどちらかの陣営につくのがてっとり早いだろうな」

フェリシア「と、とにかく一度、お城から出ませんか? 偉そうなひとに怒られちゃいましたし、まわりの視線も痛いです…」

カムイ「そうだな…。それにとりあえず、コルホたちにも報告しないと」


アルテナ「申し訳ありません。ですが、父上! 他国の民をしいたげて豊かになることが、トラキアの民にとって幸せといえるのですか! 父上のなさりようは、あまりにも…」

アリオーン「だまれ、アルテナ。おまえなどが口をはさむことではない。いまはだまって、父上に従え!」ガチャッ

アリオーン「父上、アルテナはまだ若い。実戦をまえにして気が昂ぶっているのでしょう。今回だけは、どうか許してやってください」

トラバント「アリオーン、お前がそうやって甘やかすからアルテナがつけあがるのだ」

トラバント「アルテナ、もう一度だけチャンスをやる。竜騎士団をひきいてミーズ城をとりもどしてこい。今度失敗すれば、娘とて容赦はせぬぞ。わかったか!」

アルテナ「はい……」


トラバント「ふっ、血とはおそろしいものよ。あいつはわしを嫌っておる……」

アリオーン「父上、アルテナはまだ子供なのです。父上にあまえて、感情のままに憎まれ口を…」

トラバント「もうよい…」

アリオーン「…そういえば父上。アルテナが道中ひろってきたという傭兵どもがいたのですが」

トラバント「なに? いまそいつらはどこにいる」

アリオーン「このタイミングです。解放軍の密偵の可能性もあるので、追い払っておきました。一応、ご報告をと」

トラバント「…ふむ。いや、あるいは使い物になるかもしれん。呼び戻しておけ」

アリオーン「ち、父上? ですが」

トラバント「二度は言わん、命令だ」

アリオーン「…はい」

トラバント「よし、ではわしはカパトギア城へいく。ハンニバルのやつめ、わしのやり方が不服のようだ。やつが裏切らぬよう、手を打っておかねばならぬ」

アリオーン「……父上」


コルホ「で? 体よく追い出されましたってかぁ、リーダーさま」

カムイ「アルテナ王女は敗戦報告でそれどころじゃなかったんだ。待っている間に位の高そうなひとに見つかってな…」

コルホ「そんで果てがこの厩舎か。はぁ、やってらんねぇぜ」

コルホ「なあおめーら、もうこんなとこ出ようぜ。王に雇ってもらおうなんてしょせんは夢物語なんだよ」

山賊「…へぇ、でもおかしら。まだアルテナ様からはお返事をもらってませんぜ」
山賊「それにもとのナワバリに戻って山賊続けたって食っていくのすら危ういですし…」

コルホ「ああ!? なんだてめーら、おれさまの言うことが聞けねーってのか!?」

山賊「…へぇ」

アクア(…山賊たちがカムイとコルホの間で揺れている。彼らにもカムイの器はわかるようね)

アクア(ただ…いままで従ってきたリーダーにも慣性のように尾をひく隷属意識がある)


アクア「カムイ、どうするの? いまあなたがもうひと押しすれば、きっとコルホをリーダーの座からおえるわよ」ヒソヒソ

カムイ「…そうだな」ヒソヒソ

アクア「コルホを追放したら、トラキアを出て解放軍と接触しましょう。彼らは義勇軍だって話だし、身元のしれない私たちにも寛容かもしれないわ」

カムイ「解放軍と接触するのは賛成だ。…でも、コルホはこのままにしよう」

アクア「…どうして? リーダーがふたりいる組織なんてまともに機能しないわよ」

カムイ「いいかアクア。オレたちは時がきたら元の世界に戻るんだ。その時、コルホもいなかったら彼らはどうするんだ」

アクア「…それは」

カムイ「アクア。コルホがきみに下卑た視線を送っていることはしっている。不快だろうけど、がまんしてほしい。大丈夫、いざとなったらオレが守るよ」

アクア「…あなたが、そこまで言うのなら」

今回は以上です
ちなみにコルホはトラキア12章のボスだったりします
ttp://i.imgur.com/8gmtEnl.jpg

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