◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城』―
カムイ「白夜兵の方々は武器を納めてくれましたか……」
フウガ「ああ。皆、警戒心はあるが問題は起きていない、むしろ受け入れる流れになっているともいえる。最後に手を貸すことしかできずにすまなかった」
カムイ「いいえ、フウガさんたちが来てくれなかったら、今の結果はありませんでした」
フウガ「ふっ、元々私たちを戦力として考えていたのだろう?」
カムイ「さぁ、どうでしょうか?」
フウガ「まあよい。どちらにせよ、まだ傷は癒えていないのだ。今は休むといい」
カムイ「はい。……あの」
フウガ「どうした?」
カムイ「アクアさんの容体はどうでしょうか?」
フウガ「今は問題ない。話に聞いていた発作はまだ起きていないが、その様子ではいずれ来るということだろう。それも避けようのないもののようだ」
カムイ「……そう考えています。ですから――」
フウガ「わかっている。アクアのことは私たちにまかせ、今はゆっくり休むといい。カムイを信じる皆を安心させるためにもな」
カムイ「はい……。あの、フウガさん」
フウガ「なんだ……?」
カムイ「ありがとうございます」
フウガ「……気にすることはない。あとで白夜の代表者を含めて話をするのだが、参加してもらえるか?」
カムイ「はい――」
「私もそのつもりでしたから、問題ありません」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483807375
このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。
最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」
カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438528779/)
所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443780147/)
アクアが暗夜兄妹と和解した3スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456839703/)
タクミとの戦いが終わりを迎えた4スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466084140/)
個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
ご了承のほどお願いします。
主人公のタイプは
体 【02】大きい
髪型 【05】ロング・セクシーの中間
髪飾り 【04】ブラックリボン
髪色 【21】黒
顔 【04】優しい
顔の特徴【04】横キズ
口調 【私~です】
長所短所には個人趣味の物を入れ込んでいます。
長所 心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
短所 盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】
※時々、番外編を挟むことがあります。
番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。
◇◆◇◆◇
リリスが主人公的な物をやっているR18スレ:【FEif】セツナ「ヒノカ様…?」(R18スレでキャラ崩壊とか普通にある場所になります)
【FEif】セツナ「ヒノカ様…?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1472664951/)
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773]
【消滅した組み合わせ】
・ラズワルド×リリス
C[1スレ目・490~491] B[1スレ目・892~893]
・ゼロ×リリス
C[1スレ目・835~837]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
【消滅した組み合わせ】
・ピエリ×リリス
C[1スレ目・609~614] B[1スレ目・894~897] A[2スレ目・97~99]
元旦から結構経ちましたが、あけましておめでとうございます。
今回はスレ立てと、ちょっとした安価だけになります。
―4スレ目の安価の結果―
○カムイの様子を見に行くキャラクター
・ルーナ
○次にやる番外
・もしサクラ隊がレオンじゃなくてカミラに匿われていたら?
このような形になりました。参加していただきましてありがとうございます。
最後に、前章で戦闘に参加したキャラクターたちの安価をしたいとおもいます、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
・モズメ
・アクア
・リンカ
・カザハナ
・ツバキ
・サクラ
・ギュンター
・ルーナ
・エリーゼ
支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
すでに支援がAに達している組み合わせや、キャラクターが被った場合には、次に選ばれたキャラクターが選ばれる形になります。
このキャラクターたちの中で現在Aになっている組み合わせは『アクア×リンカ』『アクア×ルーナ』です。
>>8と>>9
>>10と>>11
このような形で、よろしくお願いいたします。
ことよろです
エリーゼ
カザハナ
モズメ。
ツバキ
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオンの屋敷―
カザハナ「んっ、なんだかすごく花の香りがするけど……」
エリーゼ「んしょ、んしょっと!」フラフラ
カザハナ「わわっ、な、なに!?」
エリーゼ「あ、その声カザハナ? ごめん、ちょっと手伝ってほしい、かも……」プルプル
カザハナ「その声はエリーゼ王女? ちょっと待ってて。はい、これで楽になった?」
エリーゼ「うん。ありがとー、カザハナ」
カザハナ「気にしないでいいよ。それにしても、すごい量の花だけど、これどうしたの? 今から花屋でも開けそうなくらいあるけど……」
エリーゼ「えへへ。前にサクラと一緒にお花の冠とか作ろうって話をしてたの。でも、レオンおにいちゃんのお屋敷のお庭、あんまりお花がないからあたしで準備しようって思ったの」
カザハナ「なるほど、ふふっ、白夜で咲いてる花とは違うものがいっぱいだからサクラもきっと喜ぶと思うよ」
エリーゼ「えへへ、ありがとう。あ、そうだ、カザハナも一緒にどうかな?」
カザハナ「え、でもあたしが入っていいの。エリーゼ王女、サクラ様と約束してるんでしょ?」
エリーゼ「あのね、サクラもカザハナと一緒ならもっと安心できると思うの。あたしは暗夜の王女だし、カザハナだってあたしとサクラが二人っきりって聞いたら、その――」
カザハナ「大丈夫、別に怪しんだりとかそういうこと思わないから」
エリーゼ「ほんと?」
カザハナ「うん、ほんとほんと。それじゃ、いこっ? あたしが花を持っててあげるから、早く行ってサクラ様を驚かせてあげないと」
エリーゼ「うん!」
『エリーゼとカザハナの支援がCになりました』
◇◆◇◆◇
―白夜・朽ちた村周辺の街道―
モズメ「ここも何かに襲われたんやろか……」
モズメ「あたいの村と同じで、全部ボロボロになっとる……」
ツバキ「何してるのかなー」
モズメ「うわっ、ツバキさん。脅かさんといて」
ツバキ「ごめんごめん。隊列から離れてどこに行くのかって思ったからねー。戦闘中じゃなくても、あまり勝手な行動はしない方がいいよー」
モズメ「そうやね。ごめんよ」
ツバキ「わかればいいよー。それで何を見てたのかな?」
モズメ「うん、あの村を見てたんよ。もう誰も住んでないってわかるくらいボロボロで、あたいの住んでた村と重ねてしもうて……」
ツバキ「そっか」
モズメ「ツバキさんは、そういうことあらへんの?」
ツバキ「俺はないかなー。あまり似ている風景っていうのがないからかもしれないけどさ」
モズメ「似ている風景なぁ。ツバキさんほどの人やから、けったい大きなお屋敷に住んでたんやない?」
ツバキ「そうだねー」
モズメ「それはうらやましいなぁ。あたいが住んでたのはあの家が近い大きさやろか? みんな昼間は動きまわってて、静かになるのは夜くらいやったな。夜は虫の鳴き声が仰山聞こえて、なんだかとっても落ち着くんよ」
ツバキ「……」
モズメ「ん、ツバキさん? どないしたん?」
ツバキ「いやなんでもないよー。それじゃ、そろそろ隊列に戻ろうっか。みんな待ってるだろうからねー」
モズメ「う、うん」
モズメ(ツバキさん、なんやか暗い顔しとったけど、なんなんやろ?)
『ツバキとモズメの支援がCになりました』
今日は支援だけです。
王族はその臣下たちとも支援があったらなぁと今でも思う。
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村・烈風城『カムイに宛てられた部屋』―
カムイ「スゥ……スゥ……」
ガチャッ ギィイイ……
ルーナ「まだ寝てる……。まったく、もう結構時間が経ってるっていうのに……」
カムイ「ん……んんっ……」ゴロンッ
ルーナ「なによ、可愛い寝顔しちゃって……。本当、戦ってる時と全然違う顔してるし、いろいろと変わりすぎなのよ……」ツンツン
カムイ「……んっ、んんっ。誰、ですか?」
ルーナ「やっと起きたわね」
カムイ「あ、その声はルーナさん……。えっと……」
ルーナ「? なによ」
カムイ「その、なんで馬乗りしているんですか? お腹の上に座られると、すこし圧迫感が……」
ルーナ「なに? あたしが重たいとか言いたいわけ!?」
カムイ「いえ、そんなことはありませんけど」
ルーナ「な、なら、このままでも別にいでしょ。ふふん、こんな夕方になってまで寝てるなんて、しっかりしなさいよね。あたしはやさしいからこれくらいで済ませてあげてるんだから」
カムイ「ふふっ、だとしたらお礼を言わないといけませんね。ありがとございます、やさしくしてくれて」
ルーナ「い、いきなり変なこと言わないでよ、調子狂ちゃうじゃない////」
カムイ「?」
カムイ「……それで、そろそろ起きたいので退いていただけたりとかは……」
ルーナ「やっぱり重いんでしょ!? ふんだ、軽いって言うまで絶対退かないからね」
カムイ「……どかないんですよね?」
ルーナ「ええ、どかせるもんならどかしてみなさいよ」
カムイ「困りましたね」
ルーナ「困ってるようには見えないけど?」
カムイ「いいえ、これでも困ってます。だって、少しルーナさんに迷惑を掛けてしまいますから」
ルーナ「? 一体何――」
カムイ「こういうことですよ」ガシッ
グイッ ダキッ ギュウウッ
ルーナ「ちょ、ちょちょちょ、い、いきなりなんで抱きしめ――」
カムイ「ふふっ、ルーナさんの体とっても温かい。布団より、とってもあったかいですよ」チョンチョン
ルーナ「んやっ、くぅん……」
カムイ「ふふっ、やっぱり髪の毛先、弱いんですね。口で咥えてもいいですか?」
ルーナ「やったら、はっ倒すからね」
カムイ「もう倒れてますよ」
ルーナ「もっと倒してやるわ」
カムイ「それは怖いですね。ふふっ、それじゃここまでにしておきます」パッ
ルーナ「はぁ、なによもう。あたしの攻撃全然効いてないし、そのうえ後手に完全負けとか凹むわ……」
カムイ「ルーナさんはどちらかというと後手のほうが強くなったりしますよね?」
ルーナ「慌てるとか何かしらのポーズくらい取りなさいって言ってんのよ! これじゃ、あたしの一人負けじゃない」
カムイ「なら、私の完全勝利ですね」
ルーナ「ふんだ……。心配してきたっていうのに損した気分よ」ブツブツ
カムイ「? なんですか?」
ルーナ「な、なんでもない。なんでも無いから。」
カムイ「変なルーナさんです。それより怪我のほうはもう大丈夫ですか?」
ルーナ「ん、あんなの平気平気。あのあとエリーゼ様に手当してもらったから、もうぴょんぴょんできるくらいに回復したから……。それより、あんな無茶は止めなさいよ。さすがに目の前で投身自殺まがいの行為されたりしたら……」
カムイ「あの時はあれしか方法がなかったので、でも大丈夫です。こうやって私はピンピンしていますし、タクミさんも生きていますから」
ルーナ「結果が良かったからそう言えるだけでしょ、こっちがどれだけ心配したと思ってるわけ!? 少しは悪かったっていう態度を――あ……」
カムイ「……」
ルーナ「……え、えっと……」
カムイ「……すみません。軽率な発言でした。ごめんなさい、ルーナさん」
ルーナ「こ、こっちこそ、その、ちょっと言い過ぎたって言うか」
カムイ「いいえ、ルーナさんの言う通りですから。ありがとうございます、こんな私のことを叱ってくれて」
ルーナ「し、叱りたかったわけじゃなくて……ああ、もう」
カムイ「ふふっ」
ルーナ「……もう」ピトッ
カムイ「ルーナさん?」
ルーナ「あんたが死んじゃったら、あたしはどこにも行けなくなっちゃうんだから、ちゃんとしてよね」
カムイ「はい」
ルーナ「右手、すごい状態だったんだから」
カムイ「流石に落下を抑えるのに苦戦しましたから。夜刀神のほうが先に折れてしまうかと思いました」
ルーナ「折れたりしたらどうするつもりだったわけ?」
カムイ「右手をもっと酷使したでしょうね」
ルーナ「冗談でも、そういうのやめなさいよ」ギュッ
ルーナ「崖からあがってきたらすぐに倒れるし……」
カムイ「無茶をしましたから、仕方無いです」
ルーナ「それに――」
カムイ「それに、なんですか?」
ルーナ「……」
ギュウッ
ルーナ「……なんでもないわ」
カムイ「気になりますよ。そこで止められると」
ルーナ「うるさいわね。それよりも、あとでちゃんと見に行ってあげなさい」
カムイ「?」
ルーナ「アクア様のとこ……カムイ様と同じで、戦いが終わったら気を失っちゃったから。まだ眠りっぱなし」
カムイ「はい。今回の戦いでタクミさんが助かったのは、アクアさんのおかげですから。それに力の影響もありますし、フウガさんのお話でまだ発作は起きてないと言っていましたけど……」
ルーナ「……」
カムイ「本当なら、力を使わないでどうにかできればよかったんですけど、アクアさんに負担を掛ける結果になってしまいましたから。とても感謝してます」
ルーナ「ちゃんと本人に言ってあげなさいよ。あたしに言ったって何の意味もないんだから」
カムイ「はい、そうさせてもらいます。それにしても、ルーナさんから抱きついてくるなんて、最初の仕返しですか?」
ルーナ「……勝手にそう思ってればいいでしょ……」ギュウウッ
カムイ「ふふっ、あったかいです。すみません、まだ疲れが取れてなくて」
ルーナ「いいわよ、まだ眠ってて。ちゃんと起こしてあげるから」
カムイ「はい、お言葉に甘えさせてもらいます。……ルーナさん……」
ルーナ「はいはい、さっさと寝なさいよ。夜には話し合いでしょ、だから……おやすみカムイ様」ナデナデ
カムイ「……スゥ……スゥ」
ルーナ「……」ナデナデ
カムイ「……――さん……」
ルーナ「……」ピクッ
ルーナ「……やっぱり、ちょっと悔しいわね……」
「本当に……」
今日は短いですがここまでで
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村・烈風城『長の間』―
フウガ「ふむ、ここにこうして座するのも久しぶりだな」
レオン「僕とサクラ王女には、なんだかんだで一番見慣れてる姿ではあるけどね」
サクラ「そうですね。あとはツクヨミさん達に村が解放できたことをお伝えすることができればいいんですけど……」
レオン「だけど、まだイズモで戦闘が続いてる可能性だってある。伝令だけを送るだけだと、もしもの時に間に合わないかもしれない」
マークス「本国に増援要請を出したが、それもまだ辿りついているかもわからない。となると、一度イズモに向かうべきかもしれん」
カミラ「そうね。だけどテンジン砦にお父様が率いている暗夜軍が攻撃を考えているかもしれないわ。イズモにいた時より、多くの時間が過ぎてしまったことも考えるとね?」
カムイ「今すぐにでも今後の動きを決めたいところですが、それを決めるための情報があまりにも少ないというのが現状と言ったところでしょうか」
カムイ(イズモではまだ戦闘が続いているかもしれません。その戦いもどう転がっているのか……)
カムイ「みんな無事だといいのですが……」
フウガ「心配することはない。ツクヨミも立派な風の戦士、あいつの力を活かす立地を得ているのであれば、あのような者たちに遅れはとらんさ」
カムイ「……信頼しているんですね」
フウガ「弟子を信頼するのは師匠にだけ許された権利だからな。それに信じるというのは見えないところでこそ力を発揮するもの、今がその時だろう」
カムイ「見えないところですか」
フウガ「ふっ、あまり深く考えることでは無い。それほどに信頼することというのは難しいことではないのだからな」
カムイ「……はい」
コンコンコンッ
部族兵「フウガ様、白夜王族とお付きのものがいらっしゃいました」
フウガ「そうか、ではここへ通せ」
部族兵「はい。こちらへ」
タクミ「……」
ヒナタ「……」
オボロ「……」
フウガ「すまぬな。戦いが終わって少しばかり、兵たちに色々と話すべきこともあったのだろうが」
タクミ「みんなには待機を命じてある。それにここに通されるとき、武器の没収だけで済まされるなんて思ってもいなかったよ」
フウガ「ふっ、本来ならその身を縛っておくべきなのだろうが。それをする必要はないと判断しただけのことだ」
タクミ「……それは――」
フウガ「勘違いするな。お前たちの力量を計ってのことでは無い、タクミ王子の顔つき故だ。まるで憑き物が落ちたように見える。すべてとは言わないが、あの独房で剣をかざした時のような狂気はない」
タクミ「僕がそう見えるようにしてるだけかもしれないよ?」
フウガ「ふっ、そんな真似ができるならあの時無表情でいられただろう。憑き物が落ちただけでは成長したことにならん。これからのことをどう考えるかはタクミ王子次第だろう」
タクミ「……わかってるよ。そんなことくらい」
フウガ「ならばよい、この話はここまでだ。今は今後について話をしなければならん。カムイ、あとは任せるぞ」
カムイ「はい、わかりました」
タクミ「カムイ……」
カムイ「傷の具合はどうですか、タクミさん」
タクミ「問題ないよ。それよりも……あんたは大丈夫だったわけ?」
カムイ「え?」
タクミ「あの時の傷だよ。あんな事をしたのに、すぐに治るとは思えないからね」
カムイ「ああ、崖を降りた時のですね。あと数日もすればほとんど癒えると思いますから、問題ありませんよ」
タクミ「そ、そう……」
カムイ「ふふっ、なんだか不思議です。まさかタクミさんに心配してもらえる日が来るなんて思ってもいませんでした」
タクミ「なっ、僕は心配なんて!!!!」
カミラ(どことなくだけど、レオンに似ているところがあるわね。あまり素直じゃないところとか、ふふっ、可愛らしい)
レオン(カミラ姉さん、なんで僕とあの白夜の王子を行ったり来たりしてるんだ?)
サクラ「タクミ兄様は少し素直になったほうがいいと思います」
タクミ「サクラまで何を言い出すんだ。たしかに、僕達は負けたけど、そう簡単に――」
カムイ「なら、少し顔を触ってもいいでしょうか? もう、すっかり触っていなかったので、思い出すのも兼ねて……」
タクミ「ごめん、それだけは簡便してくれないかな………」
カムイ「そうですか。残念です」ワキワキ
タクミ「それで僕たちをここに呼んだ理由っていうのはなんだい? まさか、顔を触りたいとかそんな理由じゃないよね」
カムイ「顔を触りたいのは少し本音ですが、私が知りたいのはここにタクミさんが来ることになった理由です」
タクミ「僕達がここに来た理由?」
カムイ「はい、私達が知っていることと、タクミさん達が知っていること、まずはそれを照らし合わせたいんです」
タクミ「……わかったよ」
カムイ「ありがとうございます、タクミさん」
タクミ「勘違いしないでよ。僕もあんたたちに聞きたいことがあっただけ、ただそれだけだから……」
カムイ「はい、それだけでいいですよ。まずは私たち暗夜の状況からでいいでしょうか?」
タクミ「僕から話すべきじゃないのか?」
カムイ「いいえ。私から話をさせてください。タクミさんにも知ってほしいんです。私達が白夜との争いを望んでいないということを……」
タクミ「わかった、まずは暗夜のことから聞かせてほしい」
カムイ「はい……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タクミ「……暗夜が二つに分かれたって言うのは本当のことだったんだね」
カムイ「はい、さすがに一つの国の内情が変わったんです。蓋をすることなどできない内容だとは思いますから」
タクミ「たしかにね」
カムイ「それで私達、新生暗夜の目的は戦争の終結にあります。この長く続いてきた争いを終わらせようと考えています」
タクミ「だとしたら、テンジン砦で起きたことはどう説明するつもりだい?」
カムイ「テンジン砦のことですが、タクミさんが聞いたこととサクラさん達が体験したことは、全く異なると思います。タクミさんはテンジン砦で何があったと聞いていますか?」
タクミ「僕達は暗夜がサクラを人質に砦の武装解除を迫られ、その結果戦闘になった。そう聞いてる」
カムイ「……そうですか」
サクラ「……。タクミ兄様……、誰か、誰か捕虜になった方々はいませんでしたか……」
タクミ「……僕が付いたときに、そんな話は上がってなかった。白夜の死傷者が大勢いたっていう話はあったけど……捕虜の話は聞いていない。むしろ、白夜側の被害が大きいって――」
ヒナタ「タクミ様、そのことなんだけど……」
タクミ「?」
ヒナタ「その、その遺体の中に、その……」
オボロ「ヒナタは……テンジンで死んだ白夜兵の遺体の中にマカラスに置いて来た者に似た者を見たと……」
サクラ「!!!!」
タクミ「ヒナタ……それは確かなのかい?」
ヒナタ「俺にはそう見えました……」
タクミ「……」
サクラ「ヒナタさん、その、その方が誰だったのかは……」
ヒナタ「……スズメって言う巫女だ」
サクラ「……そう……ですか……」
ポタッ ポタタタッ
サクラ「ひどい、こんなこと……スズメさんたちは、そんなことのために、ここまで来たわけじゃなかったのに。どうして……」
レオン「サクラ王女……」
サクラ「ごめんなさい……レオンさん……。覚悟はしていたはずなのに……ううっ……」
レオン「……」
タクミ「ヒナタ。スズメは、白夜兵の遺体として置かれていたのかい……」
ヒナタ「見た限りでは全員、白夜の装束でした。あれで暗夜兵っていうのはちょっと難しいです。顔を覚えてなかったら、俺も気づかなかったと思いますから」
タクミ「……」
レオン「……こう最低なことばかりをされると、流石に堪えるね……」
タクミ「え?」
レオン「味方には同胞の死体として闘争心を煽る道具にして、さらに自分たちにとっては敵を見せしめにできるようにしてる。趣味が悪いってレベルじゃないよ」
カムイ「捉え方は見た人に依存しますからね……。都合のいいものに見せる方法を知っているということでしょう」
タクミ「そんなこと……。じ、じゃあサクラを人質に迫ったっていうのは……」
サクラ「……」
レオン「言ったはずだよ。タクミ王子が聞いていることと、僕達が体験したことはまるで違うんだ」
タクミ「……そんな」
カムイ「だからこそ、タクミさんから聞きたいんです。ここに来た理由を」
タクミ「……」
レオン「タクミ王子、僕たちは書簡を出した相手に何かあったんじゃないかって考えてる。それがあって君はカムイ姉さんを殺しに来たんじゃないかな?」
タクミ「それは……」
レオン「タクミ王子がここに来たのは、多分姉さんが見舞われた出来事に似たことがあった所為じゃないかと思ってる」
タクミ「同じようなこと、そんなこと……」
レオン「カムイ姉さんは一度反逆の疑いを掛けられたことがある。潔白の証明として戦果をあげろってね……」
タクミ「……なんだよそれ」
カムイ「私はマークス兄さんを人質に取られて反乱の鎮圧を命令されました。それと同じようなことがあったのではないかと思っているんです」
タクミ「……」
カムイ「タクミさん……」
タクミ「……リョウマ兄さんが反逆の容疑を掛けられて捕らえられている」
「例のテンジン砦の襲撃に関与した、売国奴として……」
今日はここまでで
FE無双。一体誰が出るのかな?
ピエリは無双向きのキャラクターだから出る(願望)
リリスもマスコットキャラクターとして出られるよね、ね?(DLCでもいいからお願いします)
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・長の間』―
タクミ「……」
カムイ「嫌なものですね。こうして悪く思っていたことがその通りだったというのを知らされるというのは」
タクミ「……もう、僕たち王族の言葉に耳を傾けてくれるような奴は上にいなかった。リョウマ兄さんが関与したっていう話は、国民には伏せておく、そう言われた。でも、そんなの信じられるわけがない……」
レオン「流れるだけで自分たち利点なことを黙っていられる甲斐性があるとは思えないからね」
マークス「王族が飾りとなっているこの現状を打開するためにも、タクミ王子は手柄を立てる必要があったということか……」
タクミ「そうだよ。そこにいる、すべての元凶を殺して僕たちの……いや、王族の汚点を洗い流して、少しでも、少しでも現状を変えられたらって……」
カムイ「……」
タクミ「だけど、そんな相手に僕は負け、あまつさえ命を助けられた。兵の安全も先に保障されて僕が出る幕は最後の最後のここだけ……散々な結果だよ。僕はただがむしゃらに力をふるってただけだ……」
カムイ「でも、タクミさんはこの村にいる方々に手を出していなかった。だからこうして、私はこうして話が出来ているんです」
タクミ「……それはちがう、僕は手を出そうとしてた。ここの生き残りを全員殺してしまおうとしていたんだ」
レオン「……それがどういう結果を招くのか考えてなかったわけじゃないよね?」
タクミ「……僕にはやらなくちゃいけないことがあった。……結果を出してでも守らなくちゃいけない人たちがいるから、こんな僕でもちゃんと見てくれたから……」
カムイ「タクミさん……」
タクミ「必要としてくれる人がいる、僕がいないと駄目な人がいる。だから、僕は結果を出さなくちゃいけない。だから従わないならって……」
フウガ「だが、あの時の殺気、とてもお前の物とは思えなかった」
タクミ「……」
カムイ「そうですね。先ほどの戦闘の最後にも、タクミさんの雰囲気は変わっていました」
タクミ「……」
カムイ「……あの時何があったんですか?」
タクミ「……」
タクミ「声が聞こえたんだ」
エリーゼ「こえ?」
サクラ「どんな声……だったんですか?」
タクミ「その声が聞こえると目の前が暗くなっていくんだ。暗くて冷たい、何も見えない闇になっていく。だけど殺す相手だけはわかるんだ」
カムイ「殺すべき相手だけはわかるですか……」
タクミ「だからあの牢獄で襲撃の報がなかったら、僕はここにいる全員を殺してイズモに向かっていたかもしれない。僕は一人であの声に逆らうことができなかったはずだから……」
カムイ「タクミさん……」
タクミ「だけど、あの歌を聞いた時からそれがなくなった気がする……」
カミラ「アクアの歌ね……」
タクミ「いつもアクアが歌っていたあの歌が僕の中にあるその黒いものを押し出してくれたような、そんな気がするんだ。闇が晴れて僕がちゃんと見えるようになったような、そんな感じだった……」
カムイ「……」
カムイ(アクアさんの歌。あれはガロン王を奴から取り戻すために使った歌。ガロン王はもう戻ってこれないほどに浸食されていましたが。今回タクミさんはまだそれほど影響を受けていなかったから、戻ってこれたということでしょうか……)
カミラ「そう、なら後でアクアに会いに行ってあげなさい。あなたの無事な姿を見れば、喜んでくれるはずだから」
タクミ「……か、考えておくよ……」
エリーゼ「でも、タクミさんが無事で、本当によかったよー」
タクミ「なんであんたが喜ぶんだよ。僕が死んだって関係ないはずだろ」
エリーゼ「そんなこと言わないで、タクミさんが死んじゃったらサクラが悲しんだはずだから……」
サクラ「はい、本当に良かったです……」
タクミ「サクラ、その……」
サクラ「タクミ兄様」タッタッタッ
ギュッ
タクミ「わっ、サクラ……いきなりなんで抱きついて――」
ポタッ ポタタッ
タクミ「サクラ?」
サクラ「ううっ、よかった。本当に、スズメさんだけじゃなくてタクミ兄様まで失ってしまうんじゃないかって……私……私……ううっ」
タクミ「や、やめてくれないか。みんなの前で、兄妹同士でも恥ずかしいから」
サクラ「嫌です……」ギュウウウッ
タクミ「ちょ、ちょっと――」
カムイ「タクミさん、しばらくサクラさんを抱きしめてあげてくれませんか?」
タクミ「あんたまで、僕をそんなに恥しめたいわけ?」
カムイ「サクラさんは久しぶりに……本当に久しぶりに家族に会えたんです。ずっと寂しかったはずですから」
タクミ「……あんたたちと一緒にいたんじゃないのか?」
エリーゼ「あたしたちもサクラのこと大切に思ってる。でも、あたしたちはサクラの肉親ないから。どんなことをしてもそこは埋められないものだから……だから、タクミさんにはサクラのこといっぱいぎゅーってしてもらいたいの」
レオン「僕からもお願いするよ、タクミ王子。サクラ王女のことを抱きしめてあげてくれないかな」
タクミ「……」
サクラ「タクミ兄様……」
タクミ「……僕はさっきの戦いでサクラの話に耳を傾けなかったんだよ?」
サクラ「それでもいいんです。私にとって兄様はリョウマ兄様とタクミ兄様しかいません。だから……」
タクミ「許してくれるのかい……」
サクラ「はい」
タクミ「……サクラ」ギュウッ
サクラ「タクミ兄様……」
タクミ「ごめんよ……本当に……」
サクラ「私の方こそ、ごめんなさい……」
カムイ「……」
カムイ(……家族ですか。私は……どうなんでしょうか。自分の意思で白夜から離れて、結果として戦う結果を引きよせてしまった私は……。みんなにとっての姉さんや妹でありたいとしても。……結局私は……)
カミラ「カムイ?」
カムイ「いえ、なんでもないですよ。ふふっ、サクラさん、うれしそうにしていますか?」
カミラ「ええ、とってもやっぱり、落ち着くものなのね。まぁ、それを見て少し妬いてる子もいるけど」
レオン「や、妬いてなんていないよ……」
エリーゼ「あー。レオンおにいちゃんおもしろくなさそうな顔してるー」
レオン「してないから!」
マークス「ふむ、やはりレオンは……」
レオン「だ、大事な仲間ってだけ。そ、それだけだから」
マークス「ふっ、そういうことにしておいてやろう。しかし、ここに白夜の王族全員がいてくれれば本当によかったのだが……」
カムイ「でも、こうして少しでも可能性が生まれたのなら、今はそれでいいと思います」
マークス「そうだな」
カムイ「はい」
フウガ「しかし、話し合いをするという雰囲気ではなくなってしまったな」
サクラ「あっ。そ、その、私はもう大丈夫ですから……」
フウガ「ふっ、こうして家族と共にいるのは久しぶりなのだろう。それに今日はもう遅い、さすがにこの夜からイズモに向かうことは叶わん。ツクヨミにはもうしばらく辛抱してもらうとしよう」
カムイ「よろしいんですか?」
フウガ「ああ、それに考えていることはある。明朝にもう一度話し合いをするとしよう。そこで私の考えを言わせてもらう。今日はこれで開きとしよう」
カムイ「はい、わかりました。ところで、フウガさん」
フウガ「む、なんだ?」
カムイ「顔をペタッとしてもいいですか?」
フウガ「ふっ、面白いやつだ。だが、今日は疲れている今度の機会にしてもらえるといいのだがな?」
カムイ「そうですか……」
フウガ「ふっ、すまんな」タッタッタッ
カムイ「はぁ……」
エリーゼ「カムイおねえちゃん、どうしたの?」
カムイ「いいえ、フウガさんの顔を触りたかったんですが、断られてしまって……」
エリーゼ「本当にカムイおねえちゃんは触るの好き好きだね!」
カムイ「はい、気配で感じるあのツルツルとした頭皮をモミモミしたかったのですが……」ワキワキ
エリーゼ「か、カムイおねえちゃん、手の動きがなんだかやらしいよ……」
カムイ「普通ですよ。これくらい柔らかくないと戦闘もうまくこなせませんし、エリーゼさんの顔をいっぱい触れませんからね……」ピトッ
エリーゼ「ひゃっ、い、いきなり触らないでよ」
カムイ「ふふっ、ごめんなさい、エリーゼさん」
サクラ「あ、あのカムイ姉様」
カムイ「はい、どうしましたサクラさん」
サクラ「今日はタクミ兄様と一緒にいてもいいでしょうか? その……」
カムイ「いいですよ。今日はいっぱい話をして来てください。私たちのことは気にしないでいいですから」
エリーゼ「うん。そのちょっと寂しいけど、サクラもいっぱい話したいことあるはずだ、いっぱいお話してきてよ」
サクラ「は、はい! 行ってきます!」
カムイ「はい、行ってらっしゃい」
タタタタタッ
マークス「カムイ」
カムイ「マークス兄さん?」
マークス「先ほどの話、お前は聞いてどう思った?」
カムイ「……タクミさんの言っていたことですよね? あの声が聞こえたという……」
マークス「ああ、あれが奴のことを指しているのなら、おそらく……」
カムイ「そうですね。奴の手が白夜の中にまで入り込んでいる可能性が高くなったと言えます……」
エリーゼ「……もしかしたらタクミさんもおとうさまみたいになっちゃってたかもしれないってことだよね……」
マークス「タクミ王子が本当の意味でその闇に飲み込まれていたとしたら、父上のようになっていたのかもしれない」
レオン「……そうなると強硬派を動かしている者が父上のような状態になっている可能性が高くなってきたね」
カムイ「それをどうにかすることができれば、この戦いを終わらせることができるはずですね」
カミラ「そうね。だけど、アクアがどうなるかわからないわ」
カムイ「はい」
カミラ「まだ眠ったままだから、後で様子を見に行ってあげなさいね?」
カムイ「はい、そのつもりです」
カミラ「そう。それじゃ、私たちもここで解散にしましょう?」
マークス「うむ、そうするとしよう」
タッ タッ タッ
カムイ「……」
カムイ(少しだけ時間を置いてから、アクアさんの部屋に向かうことにしましょう……)
(さて、どこにいきましょうか……)
休息時間1 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターB++
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
カザハナB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]←NEW
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]←NEW
今日はここまで
明日は朝早く起きないと……
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
カムイと話をする人物を二人(支援A以外)
>>49 >>50
安価、次のレスに続きます
◇◆◇◆◇
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
>>51と>>52
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は>>52の次のレスのキャラクターとの支援になります)
◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド←表に入れ忘れていました。
・オーディン×ニュクス
・ベルカ×スズカゼ
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・アシュラ×サクラ
・ツバキ×モズメ
この中から一つ>>53
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・カミラ×サクラ
・スズカゼ×オーディン
・ラズワルド×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
この中から一つ>>54
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
ギュンター
カザハナ
ハロルド
ツバキ
ベルカ スズカゼ
カミラ×サクラで。
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・街道―
ハロルド「うおおおおおおっ」
ドンガラガッシャーンッ
ハロルド「ぐぅう。またか、ただ歩いているだけでもこうなってしまうとはな」
ツバキ「なんかすごい音がしたと思ったら、そんなところで何をしてるのかなー」
ハロルド「むぅ、君は確かサクラ様の臣下のツバキくんだったかな」
ツバキ「うんそうだよー。それにしても、見事な転びっぷりだったけど……」
ハロルド「なに、歩いていたら突然道に樽が現れ、それにあたったところで今度は鳥のフンが落ちてきた」
ハロルど「さらにその先には水の入ったバケツがあった。そこに頭を突っ込み、転んでしまっただけのことだよ」
ツバキ「さらさらと言うけど、それってすごいことだよね。そんなに絵に書いたように不運が重なるなんてさ」
ハロルド「まぁね……。しかし、それももう馴れてしまったことだよ。私はどうやらそういったことに巻き込まれやすい体質のようでね……」
ツバキ「えーっと、それってどういう意味かな?」
ハロルド「説明するのもあれなのだが、そのだな――」
ゴロゴロゴロゴロゴロ
ハロルド「うおおおおおおっ。い、いきなり荷車が!!!」
ドゴンッ
ハロルド「ふぅ、危なかった。まぁこういうことだ。だが安心したまえ、どのような危機が起きようともこの私がどうにかしてみせる」
ツバキ「……ははっ、ありがとう」
ツバキ(ハロルドにはあまり近づかないようにしておこう、それが一番安全な気がするからね……)
【ハロルドとツバキの支援がCになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎―
ベルカ「うん、いっぱい食べるようになったわ」
スズカゼ「はい、それにベルカさんにこんなに懐いていますから、よほどベルカさんのことが好きなのでしょうね」
ベルカ「……本当にそうだといいけど。ただ、私がご飯をくれる人だから懐いてるだけかもしれない」
スズカゼ「ふふっ、それがそういうわけでもありません」
ベルカ「?」
スズカゼ「私も時折食事をあげていますが、この子猫はご飯を見るとまずベルカさんのことを探しているようでした。多分ですが、ベルカさんは子猫と一緒にご飯を食べられているのではありませんか?」
ベルカ「……そうね。それに食事の時間を決めておけば、この子も困らないと思ったの」
スズカゼ「ええ、だからこそ。一緒にご飯を食べてくれるベルカさんに懐いているのかもしれません。こうやって一緒に同じことをしてくれるからこそ、言葉の通じないこの子が懐いていくれたのかもしれません」
ベルカ「……そ、そういうことなの?」
スズカゼ「はい、そのとおりです。ですから、今日はここで三人で食事をしようと思って私も準備してきました」
ベルカ「……」
スズカゼ「もちろん、ベルカさんもご準備は済んでいると思います。子猫も待っているようですから」
ニャオンッ
ベルカ「あっ……膝の上に乗らないで」
スズカゼ「悪い気はしていないという顔をしていますよ?」
ベルカ「気の所為よ。でも、そうね。スズカゼも食べたいなら食べればいいと思う。私も好きにさせてもらうから」
スズカゼ「はい、そうさせていただきますね」
ベルカ「……」
スズカゼ「あと、別に私に遠慮することはありません。いつもどおりニャオニャオと口にしてもらって構いませんよ」
ベルカ「なっ!///////」
スズカゼ「まさか、ベルカさんにあのような一面があるとは思いませんでした」
ベルカ「……//// ん?」
ニャオー
ベルカ「………」
ベルカ「……ニャア……」
ベルカ「はっ……」バッ
スズカゼ「思ったよりもベルカさんにとって子猫と戯れる時間は良いものだったみたいですね。この頃は表情がとても柔らかくなった気がしますから」
ベルカ「私には、よくわからないわ」
スズカゼ「でも、今子猫に声を掛けたベルカさんはとても楽しそうな顔をしていました。それだけは私が保証いたしますよ」
ベルカ「……あなたに保障されても困る。でも、これからも、時折来てもいい?」
スズカゼ「はい、子猫も喜ぶと思います」
ベルカ「うん、そうさせてもらう。ありがとう、スズカゼ」
スズカゼ「はい、ベルカさん」
【ベルカとスズカゼの支援がAになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオン邸―
カミラ「?」
サクラ「じーっ」
カミラ(また、サクラ王女が私に事を見ているみたいね? 見つめられるのは別に構わないのだけど、理由がわからないのは少しだけ気になるわ)
カミラ「ねぇ、サクラ王女?」
サクラ「あっ、えっと、こ、こんにちはカミラさん」
カミラ「ええ、こんにちは。それで私に熱い視線を送ってたようだけど、何用かしら?」
サクラ「あ、えっとその……」
カミラ「前みたいにこの格好を注意するつもりだったのかしら?」
サクラ「え、えっとその、そういうわけでは無いんですが……」
カミラ「?」
サクラ「その、前見てた時から思ってたんですけど、カミラさんの髪ってすごく長くて奇麗だなって」
カミラ「……そう。そんなこと考えたこともなかったわね」
サクラ「その、私はそこまで伸ばしたことがないので、その羨ましく思ってしまったんです」
カミラ「そう。ふふっ、てっきり私の胸ばっかり気にしているのかと思っていたけど、勘違いだったみたいね」
サクラ「……そ、その胸も少しうらやましいです」
カミラ「あら、わざわざ口にしなくても良かったのよ?」
サクラ「あの、隠れて見るようなことをしていたので、その……」
カミラ「ふふっ、いい子ね」ナデナデ
サクラ「あっ……」
カミラ「サクラ王女。あなたの夢、少しだけ私に叶えさせてくれないかしら?」
サクラ「え、そんなことできるんですか?」
カミラ「ふふっ、そんなに難しいことじゃないもの、だから任せてくれる?」
サクラ「そ、それじゃ、そのお願いしてもいいですか?」
カミラ「ええ、私がサクラ王女を大人の女に変えてあげるわね」
【カミラとサクラの支援がBになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・正門』―
カムイ「……んー」
カムイ(夜風が心地よいです。少し前まで、戦いがあった場所とは思えないほどに)
ブンッ ブンッ
???「やぁ!せいっ!!! はあああっ!!!」
カムイ(誰かが何かしているようですね。音を聞く限り、これは素振りをしているようですが……)
カムイ「誰かいるんですか?」
カザハナ「やっ……って、か、カムイ様?」
カムイ「その声はカザハナさん? どうしたんですか、もう夜だというのに」
カザハナ「そ、その久しぶりに素振りがしたくなっちゃって。この頃、あんまりしてないって思ったから……」
カムイ「そうでしたか。まだ疲れが抜けきってない私とは大違いですね」
カザハナ「いやいや、崖から飛び降りて体ボロボロだったんだから、カムイ様のほうが休まないとだめだよ」
カムイ「いえいえ、私の方がいっぱい休ませてもらいました。それにやっとサクラさんを家族に会わせてあげることができましたから」
カザハナ「うん、サクラも今日はタクミ様といっしょに過ごすってさっき言ってたから……」
カムイ「ええ、久しぶりに家族で話をするのもいいと思いますからね」
カザハナ「うん、だから今日はやることなくなっちゃって、こうして素振りしてるんだ。でも、剣を握るのは久しぶりだから、なんか変な感じ。ちょっと、怠け過ぎてたかなー」
カムイ「でしたら、今日から毎晩やって感を取り戻すしかありませんね」
カザハナ「うん、そうなったらいいな……」
カムイ「……ふふっ」
カザハナ「ねぇ、カムイ様……」
カムイ「どうしました?」
カザハナ「……今の状況に納得がいかないって言ったら、カムイ様はどう思う……」
カムイ「私がそれに何かを言えるわけじゃないですよ。カザハナさんが思ったことはカザハナさんだけのものですから……」
カザハナ「そうだよね……」
カムイ「でも、少し苦しいなら口に出してみるのもいいかもしれません。私もそれで救われたことがありますから……」
カザハナ「……」
カムイ「大丈夫です、私はなにも言いません。肯定もしませんし、否定もしません。だって、カザハナさんは私の仲間ですから……」
ブンブンッ
カザハナ「あたしね。サクラがタクミ様と再会して和解出来たことはうれしいって思ってる。この頃、白夜のことでいい話ってなかったけど、今回だけはいい話だったからさ……。でもね、あたし全然納得できてなかった」
カムイ「……」
カザハナ「あたし、どこかで白夜のこと見限ってたのかもしれない……。王族とか強硬派とか、どっちが悪いとかどっちが正しいのかとか考えるのが嫌になって。ほんと馬鹿だよね、サクラを白夜に返してあげるって言ったのに、こんなこと思ってるなんてさ……」
カムイ「……」
カザハナ「今、サクラがタクミ様と一緒にいるって考えると、すごく辛くなる……」
ブンブンッ
カザハナ「今すぐにでもタクミ様とサクラのいる部屋に行って、サクラが無事なことを確認したいって思ってる。今の白夜の人にサクラに触れてほしくないって……」
カムイ「……」
カザハナ「あたしたちが守ってきた。レオン王子も、カムイ様も、ツバキも、みんなで力を合わせてサクラを守ってきた。だけどサクラは、タクミ様を許して今一緒にいたいって言って……」
カムイ「……」
カザハナ「わかってる。サクラは信じたい人を信じてるって。暗夜とか白夜とかじゃなくて、信じたい人を信じてるって……。でも、あたしにはそれがとっても、とってもつらくて、スズメのことを大切に思ってたサクラがタクミ様と一緒に話していることを、まだ受け入れられなくて……」
カザハナ「何かしてないとそれに押しつぶされそうで……」
カムイ「……」
カザハナ「サクラが笑ってくれるのはとっても嬉しい。でも、それがあたしたちじゃないことがすごく悔しかった……」
カムイ「……」
カザハナ「それに気づいて、あたしって全然心が弱いままなんだなって思って、どうやったら強くなれるかなって思ったら、昔みたいに素振りをしたいって思ったの」
カザハナ「素振りしてる間は、難しいこと考えなくていいから……。ただ振ることだけに集中してればよかったから。……サクラのこと考えなくてもいいから……って、そう考えてる自分がいて、すごく嫌な気分になってた」
カムイ「……」
カザハナ「そこでカムイ様が来たっていう感じ……」
カムイ「そうですか。なんだかすごいタイミングで来てしまったみたいですね」
カザハナ「すごいタイミングって、少し傷つくんだけど……」
カムイ「……」
カザハナ「あははっ……今の言葉結構効いたのかも。目の前、滲んできちゃった」
カザハナ(一瞬でも、サクラのことから逃げようとして、あたし臣下失格だよね……)
カムイ「では、その滲む原因がでなくなるまで、素振りをしましょうか?」
カザハナ「え?」
カムイ「やぁ! はぁ!!! ていっ!!!」
カザハナ「ちょ、ちょっとカムイ様、いきなり何始めて――」
カムイ「やぁ! はぁ! ていっ!」
カザハナ「……はぁ、いいわよ。付き合ってあげる」
カムイ「はい、よろしくお願いしますね?」
カザハナ「うん……その、ありがと。何も言わないでくれて、すこしすっきりできた……」
カムイ「それが条件でしたからね」
カザハナ「そういうこと言うんだ……」
カムイ「嘘は苦手なんです」
カザハナ「はぁ、よく言う。最初にガロンの前にたたきだされた時のこと、忘れてないんだからね」
カムイ「ふふっ、元気が出てきたみたいですね。やっぱりカザハナさんは元気じゃないといけませんよ」
カザハナ「元気だけが取り柄みたいな言い方やめてほしいんだけど……。決めた、カムイ様、今日からあたしの素振りに付き合って」
カムイ「いきなり唐突ですね……でも、別に構いませんよ。私も、この頃あまりしていなかったので」
カザハナ「よぉーし、それじゃ今日はあと1000回はやるからね!」
カムイ「病み上がりですから、お手柔らかにしてほしいのですが」
カザハナ「参加するって言ったからだーめ」
カムイ「はい、わかりました」
カザハナ「ふふっ、素直でよろしい。それじゃ、行くよ! せーの」
『1、2、3、4、5、6―――』
今日はここまでで
カザハナもツバキもだけど、サクラの臣下は精神的には脆い気がするわけで、こういった悩みを持ってしまう気がした。
3DS新作、まさかの外伝リメイクでびっくりした
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・カムイの部屋前の通路』―
カムイ「久しぶりでしたね。こんなに長い時間素振りをしたのは……」
カムイ(白夜との戦いに私たちは突入している。白夜と協定を結ぶためには暗夜を認めない強硬派、その首謀者と対決することは避けられない……)
カムイ「……結局、武力でしか事を解決できないなんて、皮肉もいいところですね……」
カムイ(戦わずしてどうにか出来るかもしれないという自惚れで、スズメさんたちを失って。結果として、タクミさんたちとも戦うことになった……。もっと、できることがあったかもしれない、それを今さら詮索しても意味はないとわかっていても……)
ポスッ
カムイ「ああ、すみません」
ギュンター「前方に気配を向けていないとは、少しお疲れのようですな。カムイ様」
カムイ「ギュンターさん、いえ、別に疲れているというわけではなくて……」
ギュンター「ここまであなた様に仕えている身、主の体調を見誤ったりはしますまい」
カムイ「……それもそうですね。少し疲れてしまったかもしれません。あれ、ギュンターさん御一人なんですか?」
ギュンター「はい、他の者は治療などに専念しておりました故、明日に備えて休息しております」
カムイ「もうそんな時間になっていたんですか……。ちょっと励み過ぎてしまいましたね」
ギュンター「よろしければ、紅茶をお淹れいたしましょう。御休みの前に体を温められた方がよろしいはずです」
カムイ「……そうですね、お願いできますか?」
ギュンター「御意、ではお部屋でお待ちください」
カムイ「はい」
ギュンター「カムイ様、どうぞ」
カムイ「はい、ありがとうございます。ふふっ、とっても温まります。白夜でも、夜はこんなに寒いんですね。初めて訪れた時は温かかったんですが、場所が変わればなんとやらですね」
ギュンター「ええ。私も白夜に来るまでは、こう寒いとは思ってもいませんでしたので、この直に来てみると場所によっては暗夜のほうが温かいと思えるほどですな」
カムイ「ええ、本当に。でも、ギュンターさんの淹れてくれる紅茶はどこでも変わりませんね……。今まで読んでくれた本のように、温かいままです」
ギュンター「すみませんが、今は例の恋愛小説は持ち合わせておりません」
カムイ「ふふっ、大丈夫です。それはあまり期待していませんでしたし、今はそういう気分でもありませんから……」
ギュンター「……ふむ」
カムイ「……少し城塞っが恋しく感じます」
ギュンター「おや、ホームシックですかな」
カムイ「多分そうかもしれません。こうやって、昔みたいにギュンターさんが隣にいるだけだったころ、私の世界が暗闇だけだった頃。そんな昔が今はなんだか恋しく感じてしまうんです。離れているからじゃなくて、多分私は……」
ギュンター「……」
カムイ「すみません。みんな元の場所に帰りたいと思っているはずなのに、こんなことを言ってしまって、そんなことを口にするわけにはいきませんよね」
ギュンター「……カムイ様」
カムイ「はい、ギュンターさん」
ポスッ
ナデナデ ナデナデ
カムイ「ギュンター……さん?」
ギュンター「……こうして、よく頭を撫でておりましたな。ここにはありませんが、暖炉の明かりと温かさ、カムイ様は見えないそれに怯えながらも、時折温かいと笑みをこぼしておられました」
カムイ「そうですね。そして、ギュンターさんに頼んでましたね。こんな風に頭を撫でてって……」
ギュンター「はい……どんなに大きくなっても私にとって、あの頃のカムイ様と何も変わっていませんよ」
カムイ「私も成長は下と思います。見た目も女性らしくなれたと思いますから」
ギュンター「ええ、とてもうれしく思います。ですが、今の間は昔のようにしていただいても構いませんぞ」
カムイ「昔のようにですか?」
ギュンター「ええ」
カムイ「……ギュンターさん、頭をもっと撫でてくれませんか?」
ギュンター「はい、わかりました」
ナデナデ ゴシゴシ
カムイ「んっ……ギュンターさんの手、とっても温かいです」スゥー
ピトッ
ギュンター「む、カムイ様?」
カムイ「ふふっ、頭を撫でられたら、こうして顔を触ってましたね。教えられたとおり、相手の輪郭をすべて理解できるようにって」ペタペタッ
ギュンター「そうですな。では、少しだけ顔がどうなっているのかを口にしてもらえますかな」
カムイ「はい、とっても深い傷があります。左の目じりから口もとにまで延びた、深い傷です」ペタペタッ
ギュンター「はい、その通りです」ナデナデ
カムイ「前に比べて、少しやせてしまったみたいですね。頬骨とえくぼも堀が深くなった気がします」
ギュンター「歳には構いませんからな」ナデナデ
カムイ「ふふっ、私の中にあるギュンターさんの顔の時間が一気に進んでしまいました。なんだか、一気に時間が駆け抜けてしまったみたいです」
ギュンター「……思い出は思い出すべきもの、そこに留まり続けるためのものではないのですよ」
カムイ「ええ、そうですね。どんなに頑張っても、城塞にいた頃には戻れません……。ここまで来てしまった以上は……進み続けるしかありませんから」
ギュンター「どうやら、この私の出番は必要なかったようですな」
カムイ「そういうわけでもありませんよ。少しだけ心に整理を付ける時間はもらいましたから……。やっぱりギュンターさんはすごい人ですね」
ギュンター「すごいことはありませんよ。カムイ様がとても強くなられたということです」
カムイ「……皆さんのおかげなだけです。私にはまだ皆さんの力が必要ですから、その私が迷うわけにはいかない。私は先頭に立って戦い続けるだけです。すべてが終われば、私は先頭にいることができなくなりますから……」
ギュンター「……」
カムイ「ギュンターさんは、こんな道を選んでしまった私をどう思いますか?」
ギュンター「……カムイ様が選ばれた道に口を挟める立場ではありません。それにカムイ様は今おっしゃられました。迷うわけにはいかないと、でしたらその道を信じ進むことがすべて。この私はその道につき従い、あなた様を支える剣となるだけです」
カムイ「……剣ですか。でも、戦いが終われば剣でいる必要もありませんよ?」
ギュンター「いいえ、私が仕える主はカムイ様だけ、この短い命が尽きるまでそれは変わりませんぞ」
カムイ「ふふっ、ギュンターさんは頑固者ですね」
ギュンター「ふっ」
カムイ「でも、そう言ってもらえてうれしいです。ですから、この戦いが終わって城塞に戻ったら、最初にお願いしたいことがあります」
ギュンター「なんでしょうか?」
カムイ「あの恋愛小説を最初から、ギュンターさんと一緒に読みたいんです」
ギュンター「……それは声に出してということですかな?」
カムイ「はい。いろいろとあの恋愛小説は理解が難しかったので、口に出せばそのニュアンスがわかる気がするんですよ」
ギュンター「な、なるほど……」
カムイ「それが、戦いが終わった後も付いて来てくれるギュンターさんにお願いしたいことですね」
ギュンター「わかりました。カムイ様のご要望にお応えできるように精進いたしましょう」
カムイ「はい、よろしくお願いしますね。んっ」ズズッ
カムイ「とってもおいしいです、ギュンターさん」
ギュンター「ありがとうございます……」
カムイ「とっても体が温まります。これからもよろしくお願いしますね」
ギュンター「ええ、その時が来るまで死ぬつもりはありませんので」
「ご安心ください、カムイ様……」
今日はここまでで
昔の城塞で暖炉前の安楽椅子にギュンターと一緒に座ってるカムイとか、そういうのを想像してしまう。
カムイにおじいちゃんとか言われて、まんざらでもなさそうなギュンターとかね
外伝リメイクで、もう少し武器の説明とかわかりやすくなってたらいいな。UIはもっと洗礼されると思うけど、はたして……
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・アクアに充てられた部屋』―
アクア「……ん……」
アクア(ここは……どこ……私は……)
アクア(確か烈風城の修練場で戦闘があって、それから……力を使ったのよね)
アクア(タクミの中にいるアイツから、どうにかタクミを救い出すために。カムイのために……力を使った……)
アクア(力を使って、そして……カムイは……)
アクア「あのあと、確か崖からタクミが落ちて……!!!!」ガバッ
スタッ
アクア(カムイは、カムイはどうなったの。早く、確かめに――)フラフラ
ガタッ ドタッ
アクア「っ……はぁ、はぁ」
???「今の音は?」
アクア(声……外に誰かいるの?)
スーッ
部族の巫女「アクア様?」
アクア「はぁ……はぁ……」
部族の巫女「アクア様、大丈夫ですか!?」
アクア「あ、あなたたちは?」
巫女「私は風の部族の者です。それよりもアクア様、今は布団へ戻って休まれてください」
アクア「私のことは気にしないで。それより、カムイは……カムイは無事なの?」
部族の巫女「カムイ様ですか? はい、白夜兵の方々も含めて無事にございます」
アクア「そう……よかった」
アクア(あのあと、カムイは助かったのね……)
部族の巫女「あの、よろしければカムイ様をお呼びいたしましょうか?」
アクア「いいわ。それに見たところ、もう真夜中のようだから……今はもう眠っている時間のはずよ」
部族の巫女「確かにそうですね」
アクア「多分だけど明日の朝に来てくれると思うから、大丈夫よ」
部族の巫女「アクア様がそうおっしゃるのでしたら、そのように――」
タタタタタッ
アクア「足音?」
カムイ「なんだかすごい音がこちらからしたようですけど……」スタスタッ
アクア「……まだ朝じゃないのに、もう来ているのね」
部族の巫女「みたいですね。お呼びいたしますね、流石に近くまで来ていらっしゃるのでしたら、拒む理由もないはずですから」
アクア「ええ、おねがい」
カムイ「アクアさんがいる部屋の方角から音がしたので駆けつけてしまいましたが……」
部族の巫女「こんばんは、カムイ様」
カムイ「あ、こんばんは。すみません、先ほどこちらから音が聞こえて、なにかあったんですか?」
部族の巫女「はい、アクア様が目を覚まされました。ですが立ち上がる際に躓いたようでして、音の原因はそれだと思います」
カムイ「え、アクアさんが目を覚ましたんですか? それに躓いたって、怪我などは?」
部族の巫女「怪我などはされていないようです。安心してください」
カムイ「そうですか、よかった。あの、アクアさんに会いたいのですが、いいでしょうか?」
部族の巫女「はい、私もそのためにカムイ様を呼びに来ましたので、どうぞ、こちらへ」
スタスタスタ
カムイ「……えーっと」
アクア「……」
カムイ「アクアさん、よかった目を覚ましたんですね!」
アクア「……ええ、できれば明日の朝にでもしてほしかったのだけれど、まさか、タイミングよくここを通り掛かるなんて思ってもいなかったわ」
カムイ「ふふっ、正直アクアさんの容体を確認しに来て正解でした。心配したんですよ」
アクア「そ、そう。それで、流石に姿を確認しただけで帰るつもりはないのよね?」
カムイ「そうですね。あの、アクアさんとできれば一緒にいたいのですが。よろしいですか?」
部族の巫女「はい、特にこれといったことは起きていませんし、体を無理に動かさないようにしていただければ大丈夫です。無理なことをしてはだめです、アクア様はまだ病人なんですから」
カムイ「……結構たくましい病人さんなんですね」
アクア「さすがに怒りたくなる発言ね。カムイ、少し頭をこっちに向けてくれる? 力強く撫で回してあげるから」
カムイ「どちらかというと私が撫でまわしてあげたいところなんですけど。アクアさんの顔とか、色々なところを」
アクア「一応病人だから、優しくしてほしいのだけど?」
部族の巫女「その、変なことしたらダメですからね」
カムイ「変なコト?」
アクア「ご期待に添えられないようで悪いけど、私とカムイはそういう仲じゃないわ」
部族の巫女「冗談です。では、私はまだ外の通路で待機しておりますので、何かありましたらお声掛けを」ペコリッ
カムイ「はい、そうさせていただきます」
スタスタ
部族の巫女「カムイ様……お話にありました発作は確認できていませんので、もしもの時は……」ボソッ
カムイ「はい、わかりました」
部族の巫女「それでは……」
スーッ ピシャリッ
カムイ「まずはおはようございますと言ったところでしょうか?」
アクア「時間的にはこんばんはが正しい気もするけどね?」
カムイ「いいじゃないですか。それに眠りから覚めた時はおはようございますがしっくりきます。目が覚めたってそう思えますから、目が見えないので夜なのか昼なのかはわかりませんから」
アクア「あなたにとって景色はわからないものだったものね……」
カムイ「はい、だから起きたらおはようが、一番しっくりします」
アクア「そう。カムイに掛かればどんな時でも朝になってしまうわ。どんな昼でもどんな夜でも起きた時は朝なんだもの」
カムイ「いつでも夜にだってできますよ。でも、夜よりは朝の方がいいです、明るい世界はそれだけで闇の位置までくっきりわかるそうですから。すごく親切だと思います」
アクア「闇の位置まで……ね。今の私たちにはそれを理解できる光はあるのかしら?」
カムイ「ありますよ。その光はアクアさんが教えてくれた事実に他なりません。アクアさんがいてくれたから、今回の戦いに勝利することができたんですよ」
アクア「……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「その、怒ってるわよね?」
カムイ「何をですか?」
アクア「勝手に力を使ったことよ……。私はあなたに心配ばかり掛けている気がするから、今回私は相談もせずに行動してしまった。そしてこうして倒れて、心配を掛けてしまったもの……本当にごめんなさい」
カムイ「アクアさんを怒る権利なんて、私にはありませんよ」
アクア「え?」
カムイ「それに心配ばかり掛けているのは私の方です。アクアさんの力が無ければ、私はここでタクミさんを失っていた。サクラさんの目の前で、大切な人を殺してしまうところでした。だから、怒る理由なんてありません。むしろ、その可能性を考えていなかった私の方が愚かだったということです。エリーゼさんが言っていたお父様の話、それと白夜にも奴の影が伸びている可能性、それを考えればタクミさんが操られている可能性も考えられたはずです」
アクア「……カムイ」
カムイ「私はタクミさんがそれに負けているはずはないと思っていた。その可能性を排除していたに過ぎないんです。だから、それが表に現れた時、何もできなかった。抗う術なんて持ち合わせていなかったんです」
カムイ「だから、アクアさんを叱ることなんてできません。私にはアクアさんを叱る権利なんてありはしないんです……」
アクア「……でもタクミが崖から落ちた時、貴方は真っ先にそれを追いかけた。それはあなたにしかできなかったこと。それに、私はあの直後にタクミを助けには行けなかった。私はタクミを救う手助けをしただけ、本当の意味で命を救ったのはあなたよ。それは変わらないことだから……」
カムイ「アクアさん……」
カムイ「……ダメですね、私は」
アクア「え?」
カムイ「アクアさんにそう言ってもらえてようやく安心できているんです。この結果が良かったのかどうか、その判断を私はアクアさんの言葉で補っていて……、本当に心が弱くなってしまった気がします。竜石に拒絶されてしまったみたいに……心の辛みが残り続けている気がするんです」
アクア「カムイ……」
カムイ「すみません。こんな弱気なことを言うために来たんじゃなかったんです。今回もアクアさんに助けられました、本当にありがとうございます。でも、今度は事前にお願いしますね、次は流石に怒りますからね」
アクア「ふふっ、力が必要だと言っているのに。今度からは怒るのね?」
カムイ「当たり前です。それに、またあなたの苦しむ声を聞きたくなんてありませんから……」
アクア「……ねぇ、私が眠っている間に発作は起きたの?」
カムイ「いいえ。ずっと部屋にいてくれた方々の話では、そういったことは起きていないと……」
アクア「そう、あの現象は眠っているときには絶対に訪れないみたいだから、覚悟はしていたのだけれどね」
カムイ「そうなんですか?」
アクア「ええ。本当なら眠っている間に苦しいことが過ぎ去ってくれればと思う。でも力の代償から目を背けるなって言われている気もしてる。私が力を使ったこと、それが意味することから目を背けられないようにね……」
カムイ「目を背けられないようにですか……」
アクア「ふふっ、またあなたに迷惑をかけるかもしれないわね」
カムイ「大丈夫です。私もそうですけど、他の皆さんもアクアさんのために頑張ってくれるはずですから」
アクア「ありがとう……。でもね、カムイ、私は――」
ドクンッ
アクア「!!!」
カムイ「アクアさん?」
ドクンッ
アクア「―――ぐっ!!!!」
ドクンドクンッ
アクア「うううっ、うああああっ」
カムイ「アクアさん、しっかりしてください!」
ズオオオオッ シュルシュル
カムイ「!」
カムイ(何かが這い上がってくるような気配、これは――)
カムイ「待っててください、すぐに外にいる方を呼んできますから」
カムイ(早く、どうにかして痛みを和らげてあげないと――」
ガシッ
カムイ「え?」
アクア「はぁ、はぁ……カムイ……呼ばないで……」
カムイ「何を言ってるんですか、すぐに何かしらの処置をしないと」
アクア「どんな処置も意味がないの……それぐらい、わかっているから……、うぐうううっ」
カムイ「ですが……」
アクア「カムイ……私は嫌なの……」
カムイ「何が嫌なんですか……。私はこれ以上苦しんでいるアクアさんを――」
アクア「私は見られたく……ない……。こんな姿、見られたくなんてないの……」
アクア「ひっ……くぅ……うううっ」
シュオン シュオンッ
アクア「誰にも見られたくなんてない、マークスやカミラ、レオン、エリーゼにだって。こんな……痛々しい姿を見せたくなんてない……。あなたにだって、聞かれたくないの……」
カムイ「アクアさん……」
アクア「お願い、カムイ。部屋に人を呼ばないで……。その代り私、頑張るから。声を出さないように……頑張るから……。だから……。っ!!!!」
カムイ「……」
アクア「カムイ、お願いよ……」ポタポタタッ
シュオンシュオン
カムイ「……わかりました。アクアさん」
アクア「あ、ありがと……うううっ、ひぐっ……」
カムイ「アクアさん、ちょっと抱きしめますね?」ダキッ
アクア「ううっ、か、カムイ」ギュッ
カムイ(私の肩のところを少しだけ肌蹴させて、うん、これでいいはずです……)
カムイ「アクアさん、辛くなったら私の肩を噛んでもらって構いません。私に今できることはこれだけですから」
アクア「カムイ……」
カムイ「私はアクアさんの苦しむ声を聞きたくはありません……。だから私のお願いも同時に叶えてください、それでお相子ですよ」
アクア「あなたは、やっぱり馬鹿よ」ギュウッ
カムイ「ふふっ、その通りです。さぁ、覚悟はできてますから……」
アクア「……すごく痛むはずよ」
カムイ「任せてください……。そんな華奢じゃありませんから……。信じてください」
アクア「ありがとう……。あむ……」
カムイ「……大丈夫です。ちゃんと、私が受け止めます。アクアさんの痛みを……だから、安心してください……」ナデナデ
アクア「ん」コクリッ
ドクドクンッ
ドクンッ!!!!!!
アクア「――――っ!!!!」ギリギリギリ
カムイ「っ!!!」ギュウウウッ
ポタポタリ
アクア(カムイの血が口に広がってく……)
ポタポタタッ
アクア(体中が痛い、痛くてたまらない。視界も暗くて耳にも何も聞こえないのに……口の中に広がるカムイの血の味だけははっきりとわかる……)
ドクンドクンッ
アクア(カムイが抱きしめてくれる。頭を優しく撫でてくれる。とても痛いはずなのに、本気で噛みしめているからとても痛いはずなのに)
ドクン……ドクン
アクア「どうして……そんなに私を気遣ってくれるの)
ドックン ドックン
アクア(どうしてあなたといると、こんなに暖かいものを感じるの……)
ドックン ドックン……
アクア(……どうして)
シュオン シュオン……
カムイ「……」
カムイ(あの気配が消えました……。ということは、もう大丈夫なんでしょうか……)
アクア「……」
カムイ「アクアさん。大丈夫ですか?」
アクア「……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「うん、収まったみたい……ありがとうカムイ……」
カムイ「そうですか、よかったです。ずっと震えていましたから、心配しましたよ」
アクア「ごめんなさい。いろいろと」
カムイ「いいえ、気にしないでください」
アクア「あ、肩の傷……」
カムイ「すごくヒリヒリしますね。でも、本当に抉れているわけではないようですから、少し手当をすれば大丈夫だと思います」
ポタタッ ポタタタッ
アクア「血が出ているわ……」
カムイ「仕方ないですよ。すごく噛まれましたから」
アクア「……」
カムイ「でも、アクアさんの苦しみに比べたらこんなもの――」
アクア「……れろっ」ペロ
カムイ「ひゃああっ。あ、アクアさん、な、何するんですか」
アクア「わからない? 傷口を舐めてあげているだけよ」ペロペロ
カムイ「ちょっと、もう発作は終わったんですから、離れてくださ――」
アクア「はむっ、ちゅっ」
カムイ「ふああっ、だめ、だめです、アクアさん……。そんな、やっ、傷口に舌を這わせて、んああぁ――」
スーッ
部族の巫女「カムイ様、アクア様の容態はどうで――」
アクア「んっ、んー」チュパチュパ
カムイ「ふああっ、だ、めぇ、傷口そんなに吸ったらぁ……」
部族の巫女「」
部族の巫女「ここはカムイ様、任せますので、よろしくお願いいたしますね?」
カムイ「は、はい。わかりました」
スーッ バタンッ
スタスタスタスタッ
カムイ「はは、すごく叱られちゃいましたね」
アクア「そ、そうね……」
カムイ「それもこれもアクアさんの所為ですからね」
アクア「今回は反論出来そうにないわ」
カムイ「まったくですよ。発作をごまかすためならいいですけど、そのあとの行為に意味があるとは思えませんでした」
アクア「そ、そうね。確かに意味はないと思うわ。私もなんであんなことをしたのかわからないもの……」
カムイ「それはそれで怖いですね。ある意味、アクアさんも奴に乗っ取られかけているんじゃ……」
アクア「だったら、このタイミングであなたの首を掻っ切ってるはずよ。いえ、もっと前にもそうできたと思う場面がいくつもあった気がするわ」
カムイ「ふふっ、それもそうですね。アクアさんの力なら、首をへし折ることくらい簡単ですもんね?」
アクア「今すぐに折られたいって言ってるみたいだから、試してあげてもいいけど?」
カムイ「ごめんなさい」
カムイ「それじゃもう眠りましょう。明日には色々なことを決めないといけませんし、アクアさんの元気な姿をみんなに見せてあげたいですからね」
アクア「ええ、そうね……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「ねぇ、カムイ、向こうを向いてくれる?」
カムイ「出来ればアクアさんとは向き合って眠りたいんですけど……」
アクア「だめ?」
カムイ「いいえ、構いませんよ。でも、傷口はもうありませんからね?」クルッ
アクア「……んっ」ソッ
カムイ「アクアさん?」
アクア「……カムイの背中、とても暖かいわ……」
カムイ「そうですか? 私にはアクアさんの方が温かく感じますけど」
アクア「そう。でも今一番暖かく感じるのは……あなただけよ」
カムイ「ありがとうございます。もう眠りましょうか、アクアさん」
アクア「ええ。その、このまま寝てもいい?」
カムイ「はい、アクアさんのお好きなように私を使ってくれて構いませんから」
アクア「それじゃ、そうさせてもらうわね」ギュッ
カムイ「ふふっ、大胆ですね」
アクア「……好きにしていいって言ったのはカムイのほうよ」
カムイ「確かにその通りでした」
アクア「……色々とありがとう」
カムイ「気にしないでください。それじゃおやすみなさい、アクアさん」
アクア「ええ、おやすみなさい、カムイ……」ギュウウッ
◆◆◆◆◆◆
―白夜・白夜平原『旧暗夜軍駐屯地・マクベスの天幕』―
貴族連合代表者「……」
マクベス「なるほど。結局敗走ですか……。こちらが作戦を作り上げている間に、どんどん兵を消耗しておいて結果がこれとは、目も当てられませんねぇ」
貴族連合代表者「そ、そもそも、白夜はすでに虫の息、ならば引き返し王都を奪還するべきだ! 多くの貴族は私の案に賛同していた。貴様が賛同してくれれば、すでに王都を奪取できていたというのに!」
マクベス「補給線と抑えるべき個所を全て抑えられているこの状況下で、まともに偵察もしないまま兵を動かしておいて何を言い出すかと思えば。ここはあなたがいた屋敷の執務室ではないのです。すでに終了した案件だけに目を通す場所ではないのですよ」
貴族連合代表者「だ、だが、我々の考えた計画は――」
マクベス「私は前から言っていましたね。ちゃんとした作戦書を作り上げてくれば、目を通し判断すると」
貴族連合代表者「そ、それは――」
マクベス「兵士と武器だけを要求するだけの紙に価値などないと言っているのですよ。本来なら五百はあったはずの騎馬戦力を、今回の勝手な行動で百五十以上減らした時点で、あなたの考える計画など役に立たない。それが証明されただけのこと、これ以上、無駄な時間を取らせないでいただきたいものですねぇ」
貴族連合代表者「ぐっ、ぐぐっ……さっさと……」ギリギリ
マクベス「……なにか?」
貴族連合代表者「さっさと王都を取り返すために戻ればよかったのだ! そうすれば、そうすれば我々の土地も財も、栄光すら約束されたというのに!!!!」
マクベス「あなたの経歴に関する話など聞いておりません。用がないならさっさと戻ることです。今回、あなた方が使い、浪費した物資は帰ってきませんが、残っている物資の数を数えることくらいはできる。違いますかな?」
貴族連合代表者「ちっ……なにが暗夜王国だ。ふざけやがって……」
マクベス「……」
スタスタスタッ
ファサ
マクベス「誰ですか?」
メイド「マクベス様、私です。調べが済みましたのでご報告に……」
マクベス「挨拶は抜きで、それで?」
メイド「はい、すでに離反者が出ています。それもほとんどが地方部族からの志願兵で構成された物資部隊で、マクベス様の手配通り物資担当から貴族連合に充てた者たちになります」
マクベス「そうですか。今回の貴族連合の無限渓谷への独断先行も、その者たちの引き金かもしれませんね。はぁ、よもやこのような形になるとは思っていませんでしたが……。しかし、物資はどうにか守れましたし、離反者の分だけ食事は浮きました。この状況とタイミングで仕掛けるべき相手はもう一つしかありえませんね」
メイド「……白夜ですか」
マクベス「ええ、あなたにもわかっているでしょう。あの無限渓谷がどれほどに強固な場所なのかということが」
メイド「……はい」
マクベス「その気になれば向こうは橋を落としてしまえる。山岳部を迂回していくには装備が貧弱で、第部隊を率いて動くわけにもいかない」
マクベス「ならば、あの者の言う通り、早めに手を下せばどうにかということはありますが……。こちらが動くころには王都は落ちていたでしょうし、何より今回の進撃に混じって抜けた離反者たちが、そのタイミングで我々が動こうとした瞬間に何かしら手を打ってきたはず……」
マクベス「以上の点を見るに、初手はどんなに工夫しても勝てない戦いだったと言えますな……」
メイド「マクベス様……」
マクベス「でも、それもここまで。私たちにはガロン王様がおられる。こんなことで負けることはありえませんよ。そして、この私が付いているのです……、そう簡単にあの王女たちの好きにさせるつもりはありません」
メイド「……ふふっ」
マクベス「む、なにを笑っているのです?」
メイド「いえ、マクベス様はとても強いお方だと思っただけです。そんなあなた様に仕えることが出来て、私はとてもうれしく思っています」
マクベス「お世辞は結構と何度も言いましたが?」
メイド「お世辞ではありませんよ。臣下にとって仕える主は最高の人で間違いありませんから」
マクベス「……なるほど、確かに私が仕えるガロン王様は最高の方ですからね。話が逸れました、それで例の件は本当なのですか?」
メイド「はい、白夜の前線のことですが。こちらの報告が……」
マクベス「………なるほど」
マクベス(妙な動きですね。とても奇妙と言ってもいい、そもそもカムイ王女が率いる似非暗夜の者たちと白夜の交渉は決裂したという話、ということは……それが原因でこのようなことが起きているのだとすれば……)
メイド「マクベス様、どうぞ。紅茶になります」
マクベス「ありがとうございます……」ズズッ
メイド「……」
マクベス「とてもおいしいですよ」
メイド「はい、ありがとうございます」
マクベス「……はぁ」
マクベス(……この報告書の情報を信じ、この機に乗じる以外に活路はありませんね。あとは、成功のために練り上げる……)
マクベス「新しい仕事を与えます。早急に取りかかってくれますか?」
メイド「はい、わかりました。マクベス様」
マクベス(……もう、多くの時間は残されていません。不本意ですが、この作戦が――)
(これが唯一の反撃なのですからね……)
休息時間2 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターB++→A
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB→B+
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]←NEW
今日はここまで
アクアとカムイは健全だから、問題ないはず。
ヒローズの配信が近いですが、無理のない課金で楽しもう!
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
>>99 と>>100
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
安価は次レスに続きます。
◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・アシュラ×サクラ
・ツバキ×モズメ
この中から一つ>>101
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のレスのものになります)
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・カミラ×サクラ
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ラズワルド×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
この中から一つ>>102
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
おつおつ
アシュラ
乙です
ジョーカー
アシュラサクラ
あ、一つ下のになっちゃうのか
じゃあ連投有りだったらカミラサクラ、無しだったら下の人の安価でお願いします
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―
アシュラ「王族に仕えて一度は落ちぶれたってのに、何の因果かもう一度王族に仕える事になるなんてな……。しかし――」
ジョーカー「……」
アシュラ「一体何なんだ? 四六時中ってわけじゃねえが、こう見られてばかりってもの気疲れしちまう。
ジョーカー「……」
アシュラ「おい、出てこい」
ジョーカー「ちっ、気づいてやがったのか」
アシュラ「そういった疑り深い視線を向けられるのには慣れてるからな。あんた、カムイ様の臣下だったな」
ジョーカー「ああ」
アシュラ「それで、なんのようだ? とてもじゃないが誰かに仕える奴の雰囲気じゃねえからよ」
ジョーカー「単刀直入に言っておく、俺はお前を信じてねえ。カムイ様はやさしいお方だが、その優しさを利用しないとも限らねえからな」
アシュラ「なるほど、カムイ様のことが本当に大切みてえだな……」
ジョーカー「あたりまえだ。ここまで生きてこれたのはカムイ様のおかげだからな」
アシュラ「……そうかい。なら、せいぜい見張っていればいいさ。あんたの求めるような結果になるとは思わないがな……」
ジョーカー「ああ、そうさせてもらう。もっとも、信用する日は来ないと思うがな」
アシュラ「はは、可愛くねえな……」
【アシュラ×ジョーカーの支援がCになりました】
◇◆◇◆◇
―マイキャッスル―
サクラ「アシュラさん、こんにちは」
アシュラ「はい、サクラ様」
サクラ「あの、そこは普通に挨拶してもらいたかったんですけど……」
アシュラ「す、すみません……」
サクラ「そ、それじゃ改めて……アシュラさん、こんにちは」
アシュラ「こ、こんにちは……」
サクラ「はい、こんにちは、あのやっぱり、話し辛いですよね?」
アシュラ「そ、そんなことはありません」
サクラ「だって、言葉遣いが戻ってます」
アシュラ「……はい、正直話し辛いです」
サクラ「ふふっ、そんなアシュラさんの話し辛い感じをどうにかする、秘密道具を持ってきちゃいました」
アシュラ「……」
サクラ「これです」
アシュラ「……甘味?」
サクラ「はい、とってもおいしいんですよ。これを食べればおいしさで硬くなってる気分も柔らかくできます」
アシュラ「は、はぁ?」
サクラ「というわけで食べましょう……。とってもおいしそうです」
アシュラ「まぁ、おいしそうですけど……。結構大きい――」
サクラ「ごちそうさまでした」
アシュラ「へ?」
サクラ「あれ、アシュラさん。まだ食べないんですか?」
アシュラ「いや、結構な大きさだったよな、それ」
サクラ「ふふっ、甘いものには目がないんです」
アシュラ(甘いものには目がないって……結構大きいのに、どうやって食べたんだ?)
サクラ「それじゃアシュラさんも召し上がってください。とってもおいしいですから」
アシュラ「わ、わかったよ……。んっ……ああ、うまい」
サクラ「はい、とってもおいしいですよね」
アシュラ「ああ、うまかったぜ……
サクラ「はい。それにアシュラさん硬くなくなりました」
アシュラ「硬くなくなった? ……な、俺としたことが……」
サクラ「ふふっ、秘密道具作戦、大成功ですね。今度もおいしい甘味を持ってきますから、一緒に食べましょう?」
アシュラ「……ははっ、サクラ様には叶わねえな。ああ、いいぜ」
サクラ「はい!」
【サクラとアシュラの支援がBになりました】
◇◆◇◆◇
―王都ウィンダム・カミラの屋敷―
カミラ「ふふっ、これで完成ね。さぁ、目隠しを取ってあげるわ」
サクラ「は、はい」
カミラ「ふふっ、緊張してるの?」
サクラ「は、はい。その、どうなってるのか全然想像が出来ませんから……」
カミラ「それじゃ行くわよ、そーれ」パッ
サクラ「……え、こ、これ……私なんですか?」
サクラ(いつもの髪の色じゃないけど、腰まで届く長い髪になってます……)
カミラ「ふふっ、どうかしら?」
サクラ「はい。とっても素敵です。カミラさんに魔法を掛けられちゃったみたいです」
カミラ「魔法じゃないわ。サクラ王女が私を見て、そうなりたいって思ってくれた。なにより、それを私に伝えてくれたこと。それが今の出来事の正体だもの……」
サクラ「でも、カミラさんがこうして準備をしてくれたからです。私って、その、小さいからカミラさんのような方に憧れてて、いつか、私もって思ってたんですけど、その、全然大きくなれなくて……」
カミラ「ふふっ、エリーゼと同じね。あの子は私の胸をつんつんしてきたりするもの」
サクラ「そ、そうなんですか……」
カミラ「ええ。でも、サクラ王女はまだまだ大きくなると私は思うわ」
サクラ「そ、そうでしょうか?」
カミラ「ええ、憧れてるといっても、サクラ王女は私になりたいわけではないのでしょう?」
サクラ「……それはなんというか当たり前のことのような気もするんですけど」
カミラ「ふふっ、その当たり前に気付けない人もいるものなの。サクラ王女はサクラ王女であることが当たり前って思っている、それはすごいことだから」
サクラ「わ、私にはよくわかりません」
カミラ「ふふっ、いずれわかってしまう時が来るはずよ。その頃には、サクラ王女が私もため息をもらいしちゃう素敵なレディになってるかもしれないわね?」
サクラ「ふふっ、カミラさんにそう言ってもらえると、本当になれる気がしてきます……。あのカミラさん」
カミラ「何かしら?」
サクラ「この格好で、今日一日カミラさんのお屋敷で過ごしてもいいですか?」
カミラ「ふふっ、大歓迎よ。それじゃ、お茶会の準備をしてあげる。おいしいお菓子もいっぱい用意してあげる。心で思ってるだけじゃなくて、ちゃんと口に出来るサクラ王女へのご褒美よ」
サクラ「そ、そのご褒美をもらっていいのかどうか……」
カミラ「あら、それじゃ食べたくないの? 今日は街で評判のおいしい砂糖菓子があるのだけど?」
サクラ「……た、食べたいです///」
カミラ「ふふっ、素直ないい子は大好きよ。これからもよろしくね、サクラ王女」
カミラ「はい、カミラさん」
【サクラとカミラの支援がAになりました】
今日は支援のみで
FEHの配信始まりました。
熱い札束の絆でエンブラ帝国を滅ぼす、どっちが悪者かわからん
初回ガチャにピエリいた。
でも、なんでリリスいないんですか……なんで?
キャラクター同士の支援に関して説明不足のようでした、申し訳ありません。
・支援イベントの組み合わせを決める安価について
この安価は支援イベントの組み合わせを決めるものになっています。
すでに支援イベントが発生している組み合わせが選ばれた場合はそれが進行します。
その選ばれた組み合わせの支援レベルがAになっていた場合、一人目に選ばれたキャラクターはそのままに、二人目のキャラクターのみ選び直すという形になります。
・進行する異性間支援と同性間支援について
この安価は異性間支援、同性間支援ごとに発生している支援イベントのどれを進行するかを決めるものになっています。
もしも支援イベントの組み合わせ選ばれた組み合わせが、ここの安価で指定されてしまった場合、選び直すという形になります。
(基本的にこれらが起きた場合は、安価がずれる形になりますので、よろしくお願いします。)
・支援イベントの組み合わせ安価で選ばれたキャラクターについて
選ばれたから、次の侵攻する支援安価で選べないということはありません。
これらの安価は個々に独立しています。同じものは選べないというルールがあるだけです。
すみませんが、こういった形でよろしくお願いいたします。
・最後に安価で今後の展開を決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
カムイと話をする人物(支援A以外)
>>110 >>111
すみませんが、よろしくおねがいいたします。
エルフィ
紋章チキと旅するんだ(*^○^*)
カザハナ
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・アクアに充てられた部屋』―
カムイ「……ん、んんんっ……。ふあああっ」
カムイ(……もう朝でしょうか……。アクアさんは……)
カムイ「アクアさん……?」
カムイ(気配がありませんね。ふふっ、もう動けるようになれたんですね。でも、起こしてくれてもよかったんですが……)
カムイ「んっ……」
カムイ(昨日、噛まれた場所。まだ少しヒリヒリします……)ナデナデ
カムイ(ここ、アクアさんが舐めていたんですよね……)
コンコン
カムイ「ん、はい」
スーッ
巫女「カムイ様、お目覚めのようですね」
カムイ「はい、おはようございます。そのアクアさんは」
巫女「はい、体を清めに向かわれました。その、カムイ様もご案内いたしますが……」
カムイ「いえ、今は大丈夫です。それに突然おじゃまするのもあれですから」
巫女「そうですか……」
巫女(やっぱり、昨夜そういうことをされていて、その翌日だからとアクア様に気を使ってのことでしょうか?)
カムイ「?」
巫女(そのように考えているようにも見えませんが……。うーん、アクア様とカムイ様、どういったご関係なのか、謎は深まるばかりですね)
カムイ「あの、どうかされましたか?」
巫女「あ、いえ、大丈夫です」
カムイ「そ、そうですか」
巫女「でしたら朝食のほうをお済ませください。食堂に準備されていると思いますので」
カムイ「はい、そうさせてもらいます。アクアさんにが戻られましたら、食堂にいるとお伝えください」
巫女「わかりました」
カムイ「よろしくおねがいします。それでは」テクテク
カムイ(……なんだか、良くわからない誤解をされている気がするのですが……。まぁ大丈夫でしょう)
~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「……こうやって、何も決まっていない朝というのは久しぶりですね。ん?」
部族兵「おらっ、せいやぁ!!!」ブンッブンッ
カムイ(大分、部族兵の方たちも体調が整ってきたみたいですね。フウガさんの言っていた通り、今日にでも考えを話すと言っていましたが……)
カムイ「一体何をするというんでしょうか……」
???「やあっ、はああっ!!!」ブンブンッ
カムイ「ん? この声は……」
カザハナ「やあっ、はあっ、せいっ!!! ふぅ……まだまだ……」
部族兵「ははっ。もうへばっちまったのかい?」
カザハナ「そんなわけないから、まだまだこれからよ。はあっ、せいっ」
カムイ(やっぱり、カザハナさんみたいですね。昨日の夜にしたばかりなのに……)
カザハナ「やあっ! ていっ! はああっ!!! よし、これくらいで――」
カムイ「朝から頑張ってるんですね、カザハナさん」
カザハナ「わっ、カムイ様。な、なんでこんなところにいるの!?」
カムイ「それは私の言葉でもありますよ。昨日の夜、素振りしたばかりじゃないですか」
カザハナ「べ、べつにいいでしょ。あたしがやりたいからやってるだけなんだから」
カムイ「ふふっ、わかりました。でも、あまり頑張りすぎないでくださいね」
カザハナ「それくらいわかってるから、そういう事、よくサクラが言ってきたよ」
カムイ「サクラさんらしいですね」
カザハナ「まぁ、カムイ様もありがと、心配してくれて」
カムイ「まぁ、昨日の今日ですからね」
カザハナ「あー、その昨日はごめん」
カムイ「いいえ、気にしないでください。それに困った時はお互い様です。それに言ったじゃないですかカザハナさんは元気な姿が似合うって」
カザハナ「だから、それじゃ取り柄が……。まぁ、確かにそうかもしれない。あたし、気落ちすると中々立ち直れないみたいだから……」
カムイ「そうですか。でしたら、もう少し朝の訓練をしませんか?」
カザハナ「別にいいけど、流石に素振りはもうしたくないかな……」
カムイ「なら打ち込みでもしましょう。私は受けにまわりますから、カザハナさんは攻めでいいですよ」
カザハナ「一方的に決めちゃうのね。そういうところは積極的だよね」
カムイ「ええ、それに今考えるとカザハナさんとは刃を交えたことがないと思ったので……少し興味はあったんです。一つここでどうでしょうか?」
カザハナ「……わかった。でも、手加減しないよ」
カムイ「ええ、そんな必要はありませんので。あ、すみません、私にも木刀を一ついただけますか。はい、ありがとうございます」
カザハナ「……いいのね?」
カムイ「はい、来てください。目は見えなくても、ちゃんと分かりますから」
カザハナ「そうだった。あんたって目が見えないんだよね……結構忘れがちになるけど……」
カザハナ(そう考えると、なんだか攻めづらいんだけど……。ぱっと見、盲目の人に剣を向けてるって事態、正直あれなのに……)
カザハナ「……うーーん」
カムイ「カザハナさん?」
カザハナ「あ、あのさ。今回はカムイ様からでいいかな?」
カムイ「私からでいいんですか?」
カザハナ「う、うん。その、なんだかやっぱり気が引けちゃうっていうか」
カムイ「そうですか。わかりました、それじゃ私から行かせてもらいますね」クルクルシュタッ
カザハナ「うん……」
カザハナ(さて、どう来る?)
カムイ「っ!」タッ ブンッ
ガキィン
カザハナ「っ!?」
カザハナ(なにこれ、重い!? 木刀がすっごいしびれるんだけど!?)
カムイ「やあっ!!!」ブンッ
ギィン!
カザハナ「うわっ、うぬぬぬぬ!!!」ググググッ
カムイ「カザハナさん、まだまだ行きますよ。やあっ、はぁっ、せいぃ!!!」ブンブンガッ
カザハナ「はっ、ふっ、んっ!!!」
カザハナ(……目が見えないから大丈夫なんて油断してたら、即座に殺されそうなくらいじゃない……。やばい、木刀が飛ばされそうになる)
カムイ「ふふっ、どうしたんですか。まだまだ、続けられますよね?」ブンブンッ
カザハナ「あ、あたりまえよ」
カムイ「はい。それじゃペースをあげますね」
カザハナ「えっ!?」
ブンブンブンブンッ
キィンキィン ガキキィン
カムイ「すごいですね。速度をいきなり変えて攻撃すれば崩せると思ったんですけど……」
カザハナ「はぁはぁ、これでも場数は踏んでる。刀の心得はカムイ様以上だと思ってるから」
カムイ「みたいですね」
カザハナ「……はぁ、だけど今までしてきた訓練とか修行とかに比べると、カムイ様との手合わせってなんか違うから……その、楽しいかな」
カムイ「楽しいですか?」
カザハナ「うん。こうやって一方的にやられてるけど、カムイ様は力を抜く気がないってわかるから」
カムイ「……当り前ですよ。というよりも、訓練で力を抜いていたら、私は戦えるようになんてなっていなかったはずです」
カザハナ「……ごめん、カムイ様」
カムイ「何をあやまってるんですか?」
カザハナ「その、あたしカムイ様のこと目が見えないって改めて思って、その自分よりも格下に見てたから……」
カムイ「そうでしょうね。だから私に先手を譲ったんでしょう?」
カザハナ「うん、でも今ので目が覚めた。カムイ様はこういうので手を抜いたりしない人だってわかったから、あたしも全力で行かせてもらうね」
カムイ「ええ、その意気です。それじゃ――」
カザハナ「あたしに交代ね」チャキッ
カムイ「……え、まだ私の攻撃は終わって――」
カザハナ「せいやあああっっ!!!!」ダッ ブンッ
カムイ「ちょ、ちょっと、いきなりは卑怯ですよ!?」
カザハナ「カムイ様だって、さっきいきなり攻撃してきたでしょ? だからお相子、容赦なし!」ブンブンッ
キィンキィン
カムイ「くっ、思った以上に振りが早い」
カザハナ「これでも速さには自信があるんだから、さあ、どこまでも打ち込みしてあげるからね」ブンブンブンッ
カムイ「……ふふっ」
カザハナ「な、なんで笑うわけ!?」
カムイ「いえ、カザハナさん。今とっても楽しそうにしているんだなって思ったんですよ」
カザハナ「……そうかも。だって――」
カムイ「?」
カザハナ「……やっぱり、なんでもないよ。それじゃ続き始めよっか?」
カムイ「はい、わかりました」
カザハナ「うん……。いくよ」ダッ
ブンブンッ
キィンキィン
カムイ「っ! とても早いですね。カザハナさんの攻撃主体は早さなんですね」
カザハナ「まぁね。もっと早くするから、耐えきってみせてよ!」チャキッ ググッ
ズビシャ ズビシャ ズビシャ!
カムイ「はぁ、やっ、せいっ!!」
カキキィン
カザハナ「全部受け切られた……。よーし、もう一回よ!」
カムイ「まってください、ここで交代、交代です。今度は私が攻めです」
カザハナ「えー、わかったよぉ。でも、さっきみたいに行くとは思わないでよね」チャキッ
カムイ「ええ、私もいろいろと手を尽くしてみますから、全部受け止めてくださいね」
カザハナ「っふうん、全部受け止めてあげるんだから」
カムイ「はい、すぅー、はぁー」
カザハナ「ねぇカムイ様、早くしてよ」
カムイ「呼吸は整えさせてください」
カムイ(……よし)コクリッ
カムイ「……では、行きます!」ダッ
カザハナ「……うん、どこからでも掛って来なさい」チャキッ
カムイ「ええ――」
「そうさせていただきます!」ダッ
今日はここまで
暗夜ルナ22章のカザハナは相手をするのが嫌になるレベルで強すぎる(剣聖+速度37)
FEH、リリスが来るまでオーブを磨いて待たざるを得ない
◆◆◆◆◆◆
―白夜・風の部族村『烈風城・食堂』―
暗夜兵「……へぇ、イズモ公国で食べたものとは違うな」
暗夜兵「ああ、俺はこっちの濃い味のほうが好みだぞ。暗夜で食ってた肉のスープを思い出す」
暗夜兵「なんだなんだ、ホームシックか?」
暗夜兵「そんな歳じゃねえよ。さっさと食って仕事に戻らねえと、何があるかわかったもんじゃねえからな」ガツガツガツ
暗夜兵「……たしかにそうだな」ガツガツガツ
カムイ「……」
カムイ(何があるかわからないですか……確かにその通りですね)
カムイ(強硬派の動きもそうですが、暗夜側の動きも注視する必要があります。レオンさんと相談して偵察を行うことにしましょう。少しでも情報をを得るべき時でしょうし、それから――)
ドンッ
カムイ「あっ、すみません。その考えごとをしていて……」
エルフィ「カムイ様?」
カムイ「その声はエルフィさんですか、おはようございます」
エルフィ「はい、おはようございます」
カムイ「……はい、それにしてもエルフィさん、なんだかいっぱい物を持っているみたいですけど、それは?」
エルフィ「朝ごはんです」
カムイ「朝ごはんですか?」
カムイ(……山盛りを越えている気がしますが、こんなに朝から食べて大丈夫なんでしょうか?)
エルフィ「白夜のお米はとってもおいしいですね。いくらでも食べられる気がします」
カムイ「ほどほどにしてくださいね」
くぅ……
カムイ「あっ……」
エルフィ「ふふっ、カムイ様もお腹が空いているんですね」
カムイ「さっきカザハナさんと朝の訓練をしていたので、思った以上にお腹が減ってしまったみたいです」
エルフィ「なら、いっぱいご飯が食べられますね。わたしと同じ量もいけると思います」
カムイ「流石にそれは難しいかと。私が食べられるのはエルフィさんの量の三分の一くらいですね」
エルフィ「そうですか……」
カムイ「はい……そうです。よかったら、ご飯をご一緒してもいいですか?」
エルフィ「いいですよ」
カムイ「それじゃ、席をお願いします。私は食事をもらってきますので」テクテク
エルフィ「わかりました……えっと、これをこうして、これを……あれ、机のスペースが……」
カムイ「すみません、エルフィさんお待たせしました……。何をしているんですか?」
エルフィ「あ、カムイ様……。少しお待ちください。はむ、もぐもぐ……」
カムイ「あの、エルフィさん?」
エルフィ「んっ、少しおかずを減らしますので……はむ、もぐもぐ……」
カムイ「あの、別にそんな急がなくてもいいですよ?」
エルフィ「いえ、一緒に食べたいので……」
カムイ「先に食べてしまっていますけど」
エルフィ「あ……」
カムイ「ふふっ、本当に食べるのが好きなんですね」
エルフィ「はい、とても……」
カムイ「……ふふっ、本当にいっぱい食べますね。エルフィさんは」
エルフィ「いっぱい食べるといっぱい訓練ができますから」
カムイ「すごい理論ですね……」
エルフィ「食べないと、動きたい時に動けない、それで仲間を助けられなかったら意味がないもの。守るためにもいっぱい食べて強くならないといけないから」
カムイ「エルフィさんはまっすぐですね。とても純粋な方だと思います」
エルフィ「難しいことを考えられないだけです。その、昔から考えるのはあまり得意じゃなかったから……」
カムイ「でも、そういう風に考えないことが今のエルフィさんの基礎なのかもしれませんね」
エルフィ「そうなんでしょうか?」
カムイ「私はそう思います。私は色々と考えてしまう性質ですから、エルフィさんと初めて訓練したとき、いろいろと違ったものが見えた気もします」
エルフィ「……カムイ様のお役に立てたなら良かったです……」
カムイ「はい。あむあむ……」
エルフィ「……カムイ様」
カムイ「はい、なんでしょうか?」
エルフィ「ほっぺにご飯粒が……」
カムイ「え、本当ですか……。えっと、どこでしょうか」
エルフィ「……ここです。今取りますね」
カムイ「はい、ありがとうございます……」
ヒョイッ
エルフィ「……ふふっ」
カムイ「え、えっと、そんなに変な場所についていましたか?」
エルフィ「いいえ、昔、こんな風にエリーゼ様のお口周りを奇麗にしてあげたことがあって、それを思い出してしまっただけです」
カムイ「……私とエリーゼさんでは、ちょっと体格的に違いすぎる気もしますよ」
エルフィ「そうですね……。でも、わたしとお話しして、こういうことに気付かないのはエリーゼ様に似てると思いました」
カムイ「そ、そうですか……。なんだか照れてしまいますね」
エルフィ「ふふっ、ご飯が冷めてしまいます。すぐに食べましょう」
カムイ「はい、そうですね……」
エルフィ「……」
カムイ「な、なんですか?」
エルフィ「いえ、またご飯粒が付いてしまうかもしれないと思って」
カムイ「さすがにそこまでおっちょこちょいじゃありませんから……」
エルフィ「ふふっ、そうですね。あむ、もぐもぐ」
カムイ「もう……あむ、もぐもぐ」
エルフィ「もぐもぐ……」
カムイ「もぐもぐ……」
エルフィ「ごちそうさまでした」
カムイ「はい、ごちそうさまです。エルフィさんと朝の食事ができてよかったです」
エルフィ「はい、わたしもです……」
カムイ「……はい、よければ今度――」
タタタタタッ
部族兵「カムイ様! カムイ様はおられますか!?」
カムイ「……なんでしょうか?」
カムイ(あまり、良い知らせとは思えませんけど……)
エルフィ「カムイ様、食器は私が片付けておきますので」
カムイ「はい、ありがとうございます。今度は夕食かお昼御飯を一緒に食べましょう。訓練の後などに」
エルフィ「はい、たのしみにしています」
カムイ「それでは……」タッ
部族兵「ああ、カムイ様。こちらにおられましたか」
カムイ「はい。何かあったようですね?」
部族兵「はい。詳しい話は長の間で、他の皆さまもお待ちになられております」
カムイ「他の皆さんもですか?」
部族兵「はい。お早く!」タタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―烈風城「長の間」-
タタタタタッ
カムイ「皆さん、遅れて申し訳ありません」
マークス「む、カムイか。われわれも今来たばかりだ、問題はない」
カミラ「ええ。朝のお風呂の最中だったのだけれど、もう少し浸かっていたかったわ」
エリーゼ「うん。でも、カミラおねえちゃん、アクアおねえちゃんと一緒にすみっこにいたけど、なにしてたのー?」
カミラ「ふふっ、秘密よ」
アクア「……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「何も聞かないで頂戴」
カムイ「あ、はい」
スーッ
サクラ「すみません、遅れてしまって」
タクミ「僕も呼ばれたのはどうしてだい?」
フウガ「ああ、正直状況が状況だ。タクミ王子にも話し合いに参加してもらわなければならない」
カムイ「……良い知らせではないようですね」
フウガ「ああ、少なくと悠長にことを構えている暇はなくなったと言える。それは私たちでは無い、カムイたちにとってのことだ」
カムイ「……フウガさん教えてください。一体何が起きたというんですか?」
フウガ「白夜が侵攻を開始した」
カムイ「!!!!」
フウガ「白夜は撤退を繰り返している。このままいけば、あと数日のうちにテンジン砦に達するだろう」
サクラ「そんな……」
タクミ「ばかな、地の利は僕達にあるはずだ。白夜平原からテンジン砦に至る街道は、そう簡単に突破できるものじゃない!」
レオン「物量に圧倒的な差があったのかもしれない、どちらにせよ。白夜は街道を放棄したらしい」
タクミ「……ヒノカ姉さんとリョウマ兄さんはどうなるんだ!?」
マークス「落ち着け白夜の王子よ。騒いでも状況が好転するわけではない」
タクミ「だけど!」
サクラ「タクミ兄様……」
アクア「……ついに、あいつが動き出したということね」
カムイ「はい」
カムイ(タクミさんの意思を操っていた、それができなくなったから今度は暗夜を動かした……そういうことなんでしょうね)
マークス「しかし、どうする。イズモ公国の安全の確認はできていない状態、本国の応援もどうなっているのかわからない以上は、それを確認すべきではないか?」
カミラ「でも、確認している間にテンジン砦が陥落するかもしれない。そうなったら、元も子もないわよ?」
カムイ「……どちらかを選べというんですか」
カムイ(また、選ばせるというんですか。また、このような……)
フウガ「カムイよ、落ち着くのだ」
カムイ「フウガさん?」
フウガ「ふっ、まだ私たちの話をしていなかったのでな」
カムイ「では、フウガさんはどうしようと考えているんですか?」
フウガ「うむ、ここは分かれて行動すべきだろう。イズモへと向かうもの、テンジン砦へと向かうものとでな」
カムイ「二手にですか?」
フウガ「ああ。だが、カムイよ。お前が進むべき道は決まっていると私は思っている」
カムイ「……」
フウガ「それがお前のすべきことだ、夜刀神に選ばれたお前にしか進めない道、そこをあゆむことは私達にはできん」
カムイ「……フウガさん」
フウガ「イズモのことは私に任せろ。ツクヨミの奴がどれほどこなせるようになったのかも確認しなくてはならんからな」
カムイ「わかりました。イズモ公国のこと、よろしくおねがいいたします」
フウガ「ああ」
カムイ「タクミさんは、部族の村で待機していてもらえますか?」
タクミ「……やっぱり信用できないってことだよね」
カムイ「それは……」
タクミ「いいんだ。わかってる……。あんたと僕は敵同士だったんだ、いきなり一緒に戦えるようになるわけじゃない。どんな形でも白夜は白夜だから」
サクラ「タクミ兄様、私は……」
タクミ「わかってる。サクラはサクラの戦いがあるってことでしょ? 僕に気を使う必要はないよ、だけど、今の僕にはこれを持つ資格がないみたいだから、サクラ、これを預かっていてくれないかな」チャキッ
サクラ「これは……風神弓。だめです、これはタクミ兄様がミコト母様から頂いたものじゃないですか」
タクミ「うん、わかってる。母さんから受け取ったものだよ、でもだからこそ、今僕が持つわけにはいかないんだ」
サクラ「タクミ兄様……」
タクミ「……」
サクラ「わかりました。大切にお預かりします」
タクミ「うん、よろしくたのんだよ」
カムイ「タクミさん……。すみません」
タクミ「謝らないでくれないかな。僕達はフウガ様たちが戻ってくるまでは、ここにいるよ。ここには負傷した兵もいる、僕たちがしたことの償いはきちんとする。だから……」
タクミ「……」
タクミ「いいや、なんでもないよ。ごめん、時間を取らせちゃって」
カムイ「いいえ、大丈夫です。ちゃんとテンジン砦を守り切って、白夜との和平の道を作り上げてみせます」
アクア「となると、少なからずまだ残っている王族派の人が信頼する人が必要になるわね」
カムイ「信頼する人でしょうか……誰かそのような人が」
タクミ「……ならテンジン砦にいるはずだよ。まだ、あそこには幽閉されている人たちがいるはずだ。最初の頃にユキムラと一緒に幽閉された人たちがさ」
サクラ「……もしかしたら、まだユキムラさんがいらっしゃるのかもしれません」
アクア「最初に拉致されたという話は聞いたけど、彼はまだ生きているの?」
タクミ「わからない。でも、ユキムラが処刑されたっていう話は聞いていないから、賭けてみる価値はあると思うよ。ユキムラは多くの将兵から信頼を得ていたし、リョウマ兄さんも信頼を置いていたはずだから……」
カムイ「……なら、その一縷の望みを奪われるわけにはいきません、まだユキムラさんが生きている可能性を信じましょう」
カムイ(そうです、好き勝手にはさせません。異形神ハイドラ……あなたの思い通りには決して!)
カムイ「皆さん、準備を。私達はこれより――」
「テンジン砦に向けて出陣します」
休息時間 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB+→B++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB+→B++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]←NEW
今日はここまでで
黄泉の階段だけは絶対に許さない。(リリス的な意味で)
英雄総選挙の結果リリスが125位、ピエリが75位。やったね!
今後の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
カムイと話をする人物(支援A以外)
>>131 >>132
このような形でよろしくお願いいします。
乙
レオン
オーディン
更新の前に……
前回の話の>>124なのですが
フウガ「白夜が侵攻を開始した」 となっていますが、白夜ではなく暗夜でした。
間違ってしまい申し訳ありません。
◆◆◆◆◆◆
―白夜・黄泉の階段出口周辺『レオンの天幕』-
レオン「暗夜の侵攻再開で時間がないから、ここまで来るのに何事もなくてよかった」
カムイ「はい、白夜の防御網がある可能性もありましたからね。しかし、私達がいるというのに防衛網が作られていないのはなぜなのでしょうか?」
レオン「タクミ王子や強硬派も既にこちらに向かっていたからね。テンジン砦にいる連中はイズモ公国までの制圧は済んでいると踏んでいて、今は北から侵攻を始めている旧暗夜を押し返すために人員を割いている。そう考えれば、スカスカな防衛網の説明も付くんだけどね」
カムイ「そんな楽観的に考えているものでしょうか?」
レオン「和平の申し込みをあんな理由で否定する奴らだから、そう考えていてもおかしくないと僕は思っているよ。自分の都合のいいように開始借しているなら、悪いことなんてあまり考えない。特に現状、劣勢だということがわかっているならね」
カムイ「そうですね……。ですが、今テンジン砦の人手は足りていないということになります。もしかしたら交渉の余地があるかもしれません」
レオン「それはあまり期待しない方がいい、多分だけど戦うことになるはずだし、交渉の話を向こうが持ちかけてきてもすぐに信用するつもりはない」
カムイ「……レオンさん」
レオン「ごめん。姉さんは戦いを望んでないってわかってるのに……」
カムイ「いいえ、私のほうこと軽率でした。あそこにいなかった私が何か言えるわけでもないのに……腹部の傷はもう大丈夫なんですか?」
レオン「ああ、大丈夫。もう痛みはないからさ、ただ痕は残っちゃったけどね」
カムイ「……痕がですか?」
レオン「うん、かなり痛い仕掛けだったからね。飛んできて結構抉られたし、ツバキに出してもらった時に傷も付いたから。塞がって後遺症も無い、運が良かったかな」
カムイ「レオンさん」
レオン「なに、姉さん」
カムイ「その傷痕に触れてもいいですか?」
レオン「傷痕って、そこに触れたから治るってものじゃないんだけど」
カムイ「いえ、私その傷を知らなければいけないと思うんです、レオンさんが受けなくてもいいものだったはずですから……」
レオン「……」
カムイ「……だから」
レオン「それは違うよ、姉さん」
カムイ「え?」
レオン「これは僕が姉さんについて行くこと、その証明みたいなものなんだからさ」
カムイ「レオンさん?」
レオン「姉さんはこう考えてるんだよね? 私がレオンさんに頼んだから、もっと違うやり方があればとか……」
カムイ「それは……」
レオン「ははっ、図星みたいだね」
カムイ「でも、そうじゃないですか。私がもう少しやるべきことをしていれば、スズメさんたちやモズさんも……」
レオン「……姉さんってそういうところは頑固だよね」
カムイ「え?」
レオン「姉さんは僕たちのことを信じてるけど、それは多分姉さんから考えていいことだったり、正解だったりのことだと思う。だけど、その選んだことが後々に悪いことになった時、姉さんは全部自分の所為として処理をしようとしてる」
カムイ「……」
レオン「それは指揮官だからとかじゃなくて、姉さんの癖なんだと思う。でも、姉さん、世の中悪いことは絶対に起きるものだし、それを防ぐのはとても難しいことだから、それを全て背負いこもうとするのは間違っているって僕は思う」
カムイ「レオンさんはそれでいいんですか?」
レオン「……ああ、少なくとも悪いことは絶対に無くならない。良いことがあれば悪いこともある、だけど僕達はそれを姉さんの所為には決してしない。だから姉さんも僕達にその悪いことをちゃんと背負わせてほしいんだ」
カムイ「……レオンさんはおかしいです。そんなもの、欲しがる人なんていないはずなのに」
レオン「そうかもね。でも、僕のこの傷はその一つだよ。姉さんが背負うべきものがあるとするなら、こうするべきだったっていう過去への回答じゃなくて、この出来事を考えて今後するべきことを見つけることだと思う。痛みと傷は僕達が受けるべきもので、姉さんが覚えるべきものじゃないからさ」
カムイ「……はぁ、レオンさんにそう言われてしまうと。もう何も言い返すことができません」
レオン「これでも姉さんのことはよく見てるつもりだからね」
カムイ「え? それはどういう意味ですか?」
レオン「あ、えっと、それは、姉さんがよく頑張ってるのは知ってるってことで……」
カムイ「そうですか。でも、レオンさんもいっぱい頑張っていますよ。私もちゃんと感じてますから、レオンさんのことを」
レオン「……僕のことを感じてるって///」
カムイ「ええ、法衣をひっくり返して着て慌てている気配とか、トマトを食べて嬉しそうにしているところとか」
レオン「ちょ、なんでそう言うところばっかりなんだい!?」
カムイ「ふふっ、だってレオンさんとても可愛らしいですから、ついついそう言うところばかり気配を探ってしまうんですよね」
レオン「な、なんでそんなところばっかりなんだよ」
カムイ「その、できればおねえちゃんらしくトマトまみれになった口元を拭いてあげたりとか」
レオン「流石にそんな年じゃないんだけど」
カムイ「あとは、裏表逆になっている法衣を……」
レオン「指摘して笑うんでしょ?」
カムイ「いえ、着せ直ししてみたいなって思っていたんですけどね」
レオン「……え?」
カムイ「できれば、レオンさんに法衣を直してほしいと頼まれたかったのですが、それはさすがにレオンさんに失礼ですね」
レオン「あ、あの姉さん?」
カムイ「気にしないでください。そう言ったことで甘えてもらうのも姉冥利に尽きるものなのかもしれないと、考えていただけですので。さすがに子供のように扱われるのは嫌ですよね」
レオン「……そ、それは」
カムイ「ふふっ、でもレオンさん、甘えたくなったら言ってくださいね。私にできることならしてあげられると思いますから」
レオン「う、うん……」
カムイ「それじゃ、レオンさん。私は偵察部隊の方々に話を聞いてきますので、こちらのことはお任せします。それでは」
カツンカツンカツン
レオン「……」
レオン(さっきのって、法衣が裏返ってたら一度脱がして着せ直してくれるってことだよね……)
~~~~~~~~~~~~~
カムイ『もうまた裏返ってますよ? ふふっ、いつもはしっかりしてるのに、こういうところだけはおっちょこちょいなんですから』
カムイ『あ、やっぱり男の子なんですね。肩は結構がっちりしてますし……。ふふっ、ごめんなさい、今着せますから』
カムイ『はい、これで大丈夫です。手探りでしたけど、大丈夫でしたか?』
カムイ『よかったです。ふふっ、明日も法衣が裏返ってたらなって……、ふふっレオンさんが間違っちゃうことに期待するなんて、私は駄目なお姉さんですね』
~~~~~~~~~~~~~
レオン(……)
パサッ クルリッ パサッ
レオン「……べ、別に期待してるわけじゃないよ。そう、裏返ってないか確認しただけだから……」
「ま、まぁ、もしも裏返ってたりしたら、頼んでみようかな……うん」
今日はここまで
法衣を脱がしてもう一度着せてくれる、そんなお姉ちゃん
◆◆◆◆◆◆
―白夜・黄泉の階段出口付近―
ゼロ「白夜軍がどれだけいるかと思ったが、拍子抜けもいいところだったな」
オーディン「ああ、軍勢どころか、白夜兵の影も形も無い……」
ゼロ「気味が悪いな……」
オーディン「やっぱり、そう思うか?」
ゼロ「これを奇妙に思わないのはド素人だな。もしくはこっちの策が見事に決まっているってくらいか?」
オーディン「だよなぁ……」
ゼロ「しかし、時間がないからな。どうぞお進みくださいって道が作られてるのなら、相手の股座に入りこむってのも悪くないねぇ」
オーディン「はぁ、そういう言葉遣い、少しは改めたらどうだ?」
ゼロ「おやおや、漆黒のオーディンは、一体ナニを想像したんだ?」
オーディン「あのなぁ……」
カムイ「股座、つまり急所ということですよね、ゼロさん」
オーディン「カ、カムイ様!?」
ゼロ「おやおや、面白いタイミングで現れるもんだねぇ」
カムイ「オーディンさん、ゼロさんお疲れ様です。ふふっ、ゼロさん、股座というのは面白い表現ですね」
ゼロ「面白くないねぇ。そうやって素の顔で言われちまうと、もっと恥ずかしく口ずさんでもらいたいもんだ」
カムイ「ふふっ、人間の中心はほとんど急所ですから、ゼロさんの言葉は間違ってないと思いますけど?」
ゼロ「はぁ、そういう返しはつまらないんだ。まぁいい、俺はレオン様に報告してくる、オーディンはカムイ様に報告しておいてくれ」
オーディン「あ、ああ、わかった」
ゼロ「それじゃな」
タッタッタッ
カムイ「ゼロさん行ってしまいましたね。やはり、私の答えは間違っていたんでしょうか?」
オーディン「ど、どうでしょうか……」
カムイ「オーディンさん的にはどうでしたか? 股座といえば急所ですよね?」
オーディン「そ、そのノーコメントでお願いします」
カムイ「偵察に向かった、他の方々は?」
オーディン「まだ偵察を続けてます。俺達は一度報告に戻っただけで、すぐ戻る予定なんで」
カムイ「そうですか。中々、時間を取ることが出来ない役割を押しつけてしまって」
オーディン「いや、休む時間は作れてますし、カムイ様のお役にたてるなら――」
カムイ「いいえ、休み時間のことではありませんよ」
オーディン「え?」
カムイ「ほら、何かの名前を一緒に決めましょうって約束です。この頃、そういう時間がなかったので、オーディンさんには申し訳ないって思っていたんですよ」
オーディン「律儀に覚えててくれたんですか……」
カムイ「当り前です。私との絆も一緒に扱ってくれるって言ってくれたように、私が思っているオーディンさんとの絆も同じなんですから」
オーディン「な、なんだか恥ずかしいですね。その、本当に////」
カムイ「ふふ、赤くなっているんですね」ナデナデ
オーディン「ちょっと、頭を撫でないでくださいよ。ああ、誰かに見られたら漆黒のオーディンとしての威厳が……」
カムイ「ふふっ、名付けてくれた淫靡手で撫で撫でしてるんですから、少しは喜んでくださいよ。それとも、首筋をモフモフしてあげましょうか?」
オーディン「ひやあああっ、それだけはやめてーーー」
カムイ「冗談です、冗談ですから」
オーディン「カムイ様の冗談は冗談に思えないんですよ……」
カムイ「ふふっ、ごめんなさい。それで偵察の状況を教えてくれますか?」
オーディン「そうでしたね。見た感じですが――」
~~~~~~~~~~~~
オーディン「以上です」
カムイ「全く敵の軍勢はいなかったということですね」
オーディン「ええ、本当におかしいくらいで。その代り、このまま行けばテンジン砦近辺まで時間は掛らないと思います。あと一日半もあれば……」
カムイ「なるほど、レオンさんが立てた推測通りと考えれば、今は北から迫っているマクベスさんたちの侵攻部隊の迎撃を行っているということでしょうね……」
オーディン「流石に侵攻部隊の状況までは探れないので、その申し訳ないんですが……」
カムイ「さすがにそこまで危険なことをさせるわけにはいきません。オーディンさんとゼロさんが偵察隊の指揮を執って頂いているおかげで、こんなに早く情報が集まっているといっても過言じゃありませんから」
オーディン「いえ、俺は自分にできることをしてるだけげ、期待に添えてるとは……」
カムイ「いいえ、それが私たちのためになっているんです。だから自信を持ってください」
オーディン「……はい、カムイ様」
カムイ「ふふっ、いつもだったら自信満々のオーディンさんにしてはなんだかおかしいですね」
オーディン「その、俺にも色々とあるんですよ」
カムイ「色々ですか。ふふっ、オーディンさんの色々はとても難しいことが多そうです」
オーディン「……あの、カムイ様、その何かの名前を決めるって話なんですが……」
カムイ「はい」
オーディン「その、これの名前を決めてもらってもいいですか……」スッ
カムイ「……何か見つけていたんですね。ふふっ、少し触れてもいいですか?」
オーディン「は、はい」
カムイ「では……スベスベしていますね。それに手のひらに収まるくらいの大きさです……」
オーディン「……」
カムイ「あ、もしかして石でしょうか?」
オーディン「はい。この道中で見つけた。いや、この遠征の最中、俺と出会い、そしてカムイ様と共に決めた名前を授かる運命にある魔石です」
カムイ「ふふっ、そうですか。形は大体分かりました。ところで色は何色なんですか?」
オーディン「その……」
カムイ「?」
オーディン「か、カムイ様の髪と同じ色です……」
カムイ「そうですか、私と同じ色なんですね。でも、私と同じ髪の色の石なんてすごく不吉な物にも感じます……」
オーディン「不吉じゃありませんよ!」
カムイ「えっと、オーディンさん?」
オーディン「俺はカムイ様と出会えて、そしてここまで一緒に戦ってこれたことに感謝してます。あなたに会うことがなかったら、俺は何もかも忘れていたはず。だからそんなことを言わないでほしいんです」
カムイ「……ごめんなさい。あまり自分に関係することで良いことというのは考えられなかったので」
オーディン「いいえ、その、俺の方こそ声を荒げてしまって……」
カムイ「いいえ。むしろ私のことをそういう風に思ってくれてるって口にしてもらえただけでもとてもうれしいです。この石は、私とオーディンさんとの絆の証と考えていいんでしょうか?」
オーディン「……はい」
カムイ「ふふっ、なんだかいいですね。これがオーディンさんと私の絆ですよね……。うーん、どんな名前にしましょうか? 私にはそういうセンスというのはないんですけど」
カムイ「そうです、カムーディンとかどうですか? 私の名前とオーディンさんの名前を掛け合わせた名前なんですけど」
オーディン「カムーディンですか……」
カムイ「……やっぱり変えましょうか」
オーディン「……」
カムイ「うーん、こうして真面目に考えるとなると、すごく難しいものなんですね」
オーディン「……あの、カムイ様」
カムイ「はい、なんでしょうか?」
オーディン「カムーディン、いいと思います。二人の名前を掛け合わせた物、まさに絆って感じがしますよ!」
カムイ「そ、そうですか。ふふっ、名前を決めるのも楽しいですね。このカムーディンが私とオーディンさんの絆、その強い証になるんですね」サワサワ
オーディン「ええ。この証に誓います。俺はあなたを守り、あなたの道のために戦うと……」
カムイ「はい、ありがとうございます」
オーディン「……はい」
オーディン(カムイ様との絆。そう考えただけで力強くなれる気がしてくる、これが絆の力……)
カムイ「……」ニヤッ
オーディン(……よし)
オーディン「カムイ様――」
カムイ「隙ありですよ、オーディンさん」スッ
シュッシュ
オーディン「ひゃひひいいいんっ!!!」ビクンビクンッ
カムイ「ふふっ、やっぱりオーディンさんのリアクションは最高ですね。体中が跳ねる気配がなんとも癖になります」シュシュシュッ
オーディン「やめっ、やめてぇえ。うわあああっ。なんで、なんでかっこよく終わらせてくれないんですかぁ!!!」
カムイ「だって、そんな隙を見せられたら、触ってくれと言われているようで……我慢をするのが難しいんですよ」
オーディン「そんなこと頼んでません、頼んでませんから! やっ、首に指、うひゃはあ」
カムイ「こちらはどうですか、どうですか? あ、耳までのラインも感じるようになってるみたいですね?」
オーディン「やめ、やめてぇえええ。もう、ふああああっ」
カムイ「ふふっ、それじゃ、もっと撫で撫でしてあげますから、うふふふっ」
オーディン「いや、いやああああっ!!」ビクンビクン
タタタタタッ
偵察兵「オーディン様、ゼロ様、いらっしゃいますか、ん……オーディン様?」
オーディン「」
カムイ「ふふっ」ツヤツヤ
偵察兵「あのカムイ様。オーディン様に一体何を?」
カムイ「少し体を解してあげただけですよ。それで、どうかしましたか?」
偵察兵「はい、そのご報告にオーディン様からすでに報告を?」
カムイ「少し前までの報告は聞いています。それで現在の状況は?」
偵察兵「それが何も変化はありません。不気味なほどに白夜軍の姿もありません。私はこれより戻りますが、すぐに動けるよう準備は整えてありますので、何かありましたらお伝えください」
カムイ「わかりました。ありがとうございます」
偵察兵「はい……それでは、失礼いたします」
タタタタタッ
オーディン「首、首筋は弱いって……言ってるのに」ビクンッ
カムイ「オーディンさん、立てますか?」
オーディン「カムイ様からしておいて、それはないですよ」
カムイ「ふふっ、ごめんなさい。手をどうぞ」
オーディン「……んしょっと」
カムイ「オーディンさん、そろそろ動くことになると思いますので、偵察部隊の方に随伴してください。ゼロさんにも後で合流するように伝えておきます」
オーディン「わかりました……。その、カムイ様」
カムイ「はい?」
オーディン「この戦いが終わるまで、あなたをお守りします。この絆石・カムーディンに誓って」
カムイ「ええ、私もあなたを信じています。カムーディンに誓って」
オーディン「はい、では俺も偵察に戻ります」
タタタタタッ
カムイ「……全く姿を見せない白夜軍に侵攻を続けているマクベスさん率いる侵攻軍ですか……」
カムイ(どちらにせよ、侵攻軍よりもさきにテンジン砦に辿りつかなければいけないことを考えれば……)
カムイ「今のタイミングを逃すわけにはいきません……」
カムイ(他の皆さんと話し合って、すぐに動き始めるとしましょう)
(少しでも可能性があるのなら前に進む。それが今できる最大の手なんですから……)
今日はここまで
絆石・カムーディン 名前的に風魔法が出そう。
◆◆◆◆◆◆
―白夜・南東部『周辺を一望できる丘』―
タタタタタッ
アクア「……見えたわ。まさかこういう形でもう一度、ここを見ることになるとは思っていなかったけど」
サクラ「テンジン砦……」
カムイ「……レオンさん。周辺に白夜兵の姿はありましたか?」
レオン「オーディンとゼロ達に確認させているところだよ。だけど、ここまで目立った軍勢はいなかった事を考えると……」
カムイ「はい。南に意識を向けていたわけでは無いと考えていいかもしれません」
マークス「うむ、それに戦闘が始まっているようには見えない。どうやら父上の軍勢より先に辿りつくことができたようだ」
カミラ「ひとまずは一歩先を行けたというところね。それでこれからどうするの?」
カムイ「私達はこんな場所にいます。テンジン砦に兵がいるのであればもう気づいているはず……」
エリーゼ「んー。……でも、テンジン砦に動きはないみたいだよ?」
レオン「こそこそ動いてるのかもしれないね。あそこには地下道がいくつも張り巡らされていた。あの時にスズメ達が多くを破壊してくれたけど、いくつかは使えるように修繕されているはずだよ」
アクア「そんな場所、できれば近づきたくもないけど」
カミラ「安心しなさい、おねえちゃんが頑張って守ってあげるから」
カムイ「敵が私たちに気づいている前提で行きましょう。何時でも戦えるようにしておいてください」
マークス「ああ、任せておけ」
―テンジン砦・第一関所付近―
カムイ「……」
レオン「……なんだか」
アクア「静かすぎるわね。ここまで来たけど」
カムイ「はい、周辺に気配はありません」
エリーゼ「もしかして、もう侵攻軍が制圧しちゃってるとか……」
マークス「それにしては戦闘の傷跡が無い。まるで放棄したかのような静けさだ……」
カミラ「ええ、空を飛んで確認してもいいわよ?」
レオン「いや、それは迂闊すぎるよ。何があるかわからない以上、カミラ姉さんに危険な真似をさせるわけにはいかないから……」
カミラ「ふふっ、お姉ちゃん思いのいい子ね」
レオン「からかわないでくれないかな」
アクア「……あっさりと門に近づけたわ。罠の類はないようだけど……」
マークス「レオン、この関所は後いくつほどあるんだ?」
レオン「大きなものは、こっち側には五つくらいかな。それらを抜けるとテンジン砦の正門のはずだよ」
カムイ「まずはここを抜けて二つ目の関所を目指しましょう。マークス兄さん、手伝ってくれますか」
マークス「ああ」
ググッ グオオオオオオッ ガタンッ!
レオン「中にも誰もいないみたいだ……」
カムイ「……周囲に気配もないみたいですね」
エリーゼ「本当にどうなってるの?」
アクア「さぁね。ただ、気味が悪いのはたしかよ……」
カムイ「次に進みましょう」
―第二関所―
エリーゼ「ここも誰もいないよ?」
カミラ「ええ、本当に気味が悪いわね。こんなに大きな場所なのに、誰も見かけないなんて」
マークス「うむ、大勢で進んでいる以上、奇襲もあり得るかと思っていたが」
カムイ「そんな気配は微塵もありませんね」
―第三関所―
サクラ「ここも無人みたいです……」
レオン「たしか、このあたりの関所には地下道があったはずだけど……あれ?」
サクラ「どうしたんですか? レオンさん」
レオン「地下道への道が完全に塞がれてる。こんなことをして何のメリットがあるんだ?」
カムイ「ということは、ここから白夜兵が出てくる可能性はないということなんですか?」
レオン「そういうこと。この状態じゃ地下道を生かせない、こんなことをするのには何か意味があるはずだけど……」
カムイ「気にはなりますが、今それを調べる時間はありません」
レオン「そうだね。あいつらテンジン砦を守るつもりがないのかもしれない」
アクア「もしかしたら関所が落ちた後、地下道を敵に利用されないようにしたかったのかもしれないわね
レオン「まぁ、今考えられる中での有力な考えはそれくらいかな。さぁ、行こうあと二つ越えれば砦の正門に付くはずだ」
カムイ「ええ」
カムイ「……」
アクア「カムイ?」
カムイ「確実に罠ですね」
アクア「ええ、みんな周囲へ気を配っているわ。ここまでするする入れたことで安心してるのは誰一人いないもの」
カムイ「ですが、この先の関所を抜けると大きな平原を経由することになるんですよね?」
アクア「ええ、それほど大きいというわけでは無いけど、囲い込んで倒すには不向きな場所になるわ。門の先で待ち構えていたとしても、いきなり何かができるわけじゃないわ」
カムイ「睨み合いになるだけですし、こちらには関所の壁がありますから攻撃も防げるはずです」
アクア「ええ、ここまで私たちを侵入させているのだから、何かあるのだろうけど……」
カムイ「周囲の気配は変わらずです。本当に、人の気配がありませんから。正直、マクベスさんの部隊との戦闘に苦戦していて、出払っているのだとすれば」
アクア「その時は、ここを抑えて対処する物を決めればいいわ。今は何があるかわからない、それを忘れないで」
カムイ「はい、アクアさん」
カムイ「ここが第四関所ですか」
レオン「そうだね。ここまで何もなかった事を考えると、ここで何かしらあるかもしれない」
カムイ「はい、慎重にいきましょう」
レオン「うん、マークス兄さん」
マークス「わかった。万が一ということもある、準備は怠るな……」
グッ グオオオッ
タタタタタタッ
カムイ「……」
アクア「……何もないようね」
サクラ「は、はい。本当に何が起きているんでしょうか?」
マークス「……む?」
レオン「誰かがこっちに来てるみたいだ……」
カムイ「え?」
マークス「砦の方角からだ。一人だけのようだが……」
カムイ「一人だけですか?」
レオン「うん、それになんだかフラフラしているみたいだ……」
カムイ「……」
アクア「罠かもしれない」
カムイ「だとしても、ここまでだれ一人として見てこなかったのです。私が直接向かいます、皆さんは少しだけ離れて周囲の様子を確認していてください」
マークス「いや、カムイだけに任せることはできん。私も共に行こう」
カムイ「わかりました。他の皆さんはここで待機していてください」
???「……」フラフラ
マークス「特に何かを隠しているようには思えない」
カムイ「なら、テンジン砦から逃れてきた人でしょうか?」
マークス「逃れてきた……。前に幽閉された者たちの誰かかもしれん」
カムイ「……まずは接触しましょう。話はそれからです」
タタタタタッ
???「……」
マークス「そこのもの、止まれ」
???「……」
マークス「別に危害を加えるつもりはない。私はマークス、新しき暗夜を率いるものだ……」
???「新しい暗夜、ですか?」
カムイ「はい、その通りです」
???「あなたは……」
カムイ「すみません、勝手にここまで入らせていただきました。私は――」
???「……カムイ様……。カムイ様ですか?」
カムイ「え?」
???「カムイ様、ご無事だったんですね……。多くの兵がイズモへと攻め入ったと聞いていましたので、もう駄目ではないかと……無事で何よりです」
カムイ「そ、その声は、まさか――」
「ユキムラさん、なんですか?」
今日はここまで
次の更新で戦闘に出るキャラクターの安価を取りたいと思いますので、ジョブ一覧を張り付けたいと思います。
参考にしていただけると幸いです。
○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)
―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)
―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)
―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)
―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)
―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)
―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)
―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
◆◆◆◆◆◆
―白夜・テンジン砦『第四関所』―
シャランッ
サクラ「これで大丈夫です、ユキムラさん」
ユキムラ「申し訳ありません、サクラ様。お手を煩わせるような真似をさせてしまいました」
サクラ「いいえ、御無事で何よりでした。本当に良かったです」
ユキムラ「いいえ、私もサクラ様とお会いできるとは思っていませんでしたので、とてもうれしいですよ。ん?」
レオン「……あなたが白夜の軍師なのかい?」
ユキムラ「ええ、そうなりますね。私はユキムラと申します、あなたはもしかしてレオン王子ですか?」
レオン「ああ、そうだよ」
ユキムラ「そうですか、あなたが……」
アクア「それでユキムラ、一体どうやって牢から脱出を?」
ユキムラ「はい、実のところ牢の鍵自体は持っていました。かなり前にモズが届けてくれたものです」
レオン「……ユキムラ。その、彼は……モズは……」
ユキムラ「わかっています。あの日、あなた方と会合があったという日を最後に彼を見ていません。おそらくはそういうことでしょう、彼には様々なことを任せていました。それが結果として彼の命を奪うことになってしまったのですから……」
レオン「……」
カムイ「ここまではどうやって?」
ユキムラ「隙を突いて抜け出してきました。表を歩くというのは無謀でしたが、地下道を使うことは出来なくなっていたので、止むを得ずといったところです」
カムイ「そうでしたか。やはりここにも兵がいるんですよね?」
ユキムラ「ええ、多いわけではありませんが」
カムイ「私達は向こうの丘からやってきましたから姿は確認しているはず、なのにどうして防衛の準備がされていないのですか?」
ユキムラ「北部の侵攻が思ったよりも早いようです。テンジン砦にいるほとんどの兵は北部からの侵攻を食い止めるために出払っていて、中にいる人数では分散するより固まったほうが砦の守りを強くできるということでしょう」
カムイ「そうでしたか……。一緒に協力できればと思ってはいるのですが、そううまくはいかないんですね」
ユキムラ「協力……ですか?」
カムイ「はい。私は白夜と争いたいわけではありません。正直、私が訴えかけてもあまり意味は無いと思います。でも、私達が戦うべき相手、そして手に入れるべきものは同じだと信じています」
ユキムラ「なるほど、それがカムイ様が戦う理由なのですね……」
カムイ「ええ、皆さんと一緒に進む理由です」
ユキムラ「……」
サクラ「あの、関所正面以外に砦正門区画へ入れる場所はないんですか?」
ユキムラ「一つあります。この第五関所沿い壁の東側にわずかに崩落している個所があります。私もそこから抜けてここまで来ましたので」
カムイ「なるほど、ではそこからテンジン砦の正門前へ忍びこむことができるんですね」
ユキムラ「はい。ですが、中にいる兵たちもすでに準備を整えています。第五関所を抜けた先で陣を組んでいるでしょう。あまりお勧めできることではありませんが、多くの兵は陽動のために第五関所の前で待機させ、少数で内部に攻撃を仕掛ける。基本といえば基本になりますが、今はこれが一番かと……」
レオン「なるほど、指揮官を叩いて降伏を促すってことだね」
サクラ「今、このテンジン砦で指揮を取っているのは誰なんですか?」
ユキムラ「すみません、そこまではわかりません。ですが、テンジン砦に籠っていると思われます」
カムイ「やはり、砦の中ですか……」
ユキムラ「はい。ですが、あなたを殺したがっている方々は先頭に多くいることでしょう。なにせ、彼らはあなたを怨んでいるはずで――」
アクア「ユキムラ、その話はいいわ。暗夜の侵攻軍がどの地点にいるかはわからないけど、この先のことを考えればこのテンジン砦がそれを防ぐ最後の要、そうそうに機能出来るようにした方がいい」
ユキムラ「その通りですね。それでは行きましょう、私が先を行きます」
カムイ「はい、お願いします。残りの方々は第五関所前で待機してください。正門は開けずにお願いします」
暗夜兵たち「はい、わかりました。全員、関所前で待機、合図があるまではなにもするな!」
~~~~~~~~~~~~~~~~
ザッザッザッ
ユキムラ「……カムイ様」
カムイ「はい、なんでしょうか?」
ユキムラ「私のことを、そんな簡単に信用してもよろしいのですか? ずっと私はテンジン砦にいた人物でもあります」
カムイ「いきなり何を言い出すんですか? ユキムラさんのことはスズメさんなどから聞いています。長い間幽閉されていたと聞きましたから、いたとしても意味が違うじゃないですか」
ユキムラ「ええ、正直どれほどの時間が過ぎたのかよくわかっていません。テンジン砦も大きく様変わりしてしまったようですから、まるで亀を助けた昔話に迷い込んだようです」
カムイ「ユキムラさん以外にも幽閉された方々がいたという話も聞いています。正直、ユキムラさんはすでに処刑されているのではないかと、そんなことも考えていました。すみません、こうして無事な人の前でいうことでは無いと思うんですけど」
ユキムラ「ははっ、いろいろな憶測を立てさせてしまったようですね」
カムイ「でも、無事でよかったです。これでリョウマさんを助けることができれば、きっと……」
ユキムラ「ええ。白夜にとって良い結果をもたらすことができるはずです」
カムイ「そうですね」
アクア「それでユキムラ、一緒に幽閉された他の人はどうなったの?」
ユキムラ「すみません、私はすぐに引き離され一人別の場所に収容されましたので、彼らがどうなったのかはわかりません。お役に立てなくて申し訳ないのですが」
アクア「そう……ごめんなさい。あまり聞かれたくないことだとは思ったのだけど……」
ユキムラ「いいえ、気にしないでください」
サクラ「ごめんなさい、ユキムラさん。私が勝手なことをしたばかりに、こんなことになってしまって……」
ユキムラ「今それをどうこう言っても何も解決はしません。あの時、目を離していた私にも責任があること、サクラ様だけの所為ではありません」
サクラ「そんなこと……」
ユキムラ「ですから、こうしてまた戻ってきてくださったのはうれしいことですよ。今は亡きミコト様も喜ばれているはずです、サクラ様が白夜に戻られたと……」
サクラ「……はい」
ユキムラ「それと……レオン王子。ここまでの道中、サクラ様を御守り頂いたこと感謝しています」
レオン「いいや、僕だけの力じゃない。カムイ姉さんや他の皆の力があってこそだと思うよ」
ユキムラ「そうですか。ですが、あなたが繋いでくれたということは間違いないことです」
レオン「……あなたのような人があの会合にいてくれたら良かったんだけど……」
ユキムラ「できればそうありたかったのですが……」
レオン「わかってる。どちらにせよ、今このテンジン砦にいる強硬派の兵は少ないようだから、今のうちにどうにかしておきたい」
ユキムラ「はい、今ならそれができるでしょう。この混乱に乗じることができれば……」
カムイ「でも、ユキムラさんと再会できたことで、この危機を乗り越えられる気がしています」
ユキムラ「ふふっ、それは過大評価ですよ」
カムイ「そんなことはありません。それに私はあなたと再会できてとてもうれしいんです」
ユキムラ「……なぜですか?」
カムイ「どんな形でもあって出来れば争いは避けたかったので、少ない戦いでそれを終えられるなら、それはとても良いことですから。そう考えると私は運がいいかもしれません」
ユキムラ「私もこうしてカムイ様にお会いできたのは運が良かっただけのことです。本来なら風の部族村までの遠出を覚悟していましたから、内部が騒がしくなった今ならと抜けてみれば、カムイ様がここにいたんですからね」
カムイ「そう考えるとすごい偶然です」
ユキムラ「ええ、そう思います」
アクア「ねぇユキムラ、今から強硬派を抑えることはできると思う?」
ユキムラ「やはりそれには結果が求められるかもしれません。ですが――」
アクア「その結果は私達の首でしょう? とくにカムイの首……」
ユキムラ「残酷ですがそうなりますね」
カムイ「……そうですか」
ユキムラ「ですが、もう一つ方法があるにはあります。と言っても、それを行うのはとても難しいことになりますが」
カムイ「どんな方法ですか?」
ユキムラ「白夜の皆に、改めて本当の敵が何であるかを認識させることです」
カムイ「敵を、改めてですか?」
ユキムラ「ええ、カムイ様はガロン王こそがそれであると考えているのでしょう?」
カムイ「……そうなりますね」
ユキムラ「でしたら、それを改めて示すために何かしらの形を取るべきかもしれません」
カムイ「形ですか?」
ユキムラ「はい。たとえば、このテンジン砦にもいずれガロン王の部隊が達することでしょう。それを迎え撃ち、撤退させることができれば……」
カムイ「私達が白夜の敵でないことを示し、同時に倒すべき敵を示すことができるかもしれないということですか?」
ユキムラ「そういうことです」
ユキムラ「はい。それにタクミ様もサクラ様も無事であることが背を押してくれるはず。ですが、そのためにはカムイ様の力が必要不可欠になるはずです」
カムイ「わかっています。その時はきちんと白夜の方々と向き合います、必ず……」
ユキムラ「そう言っていただけて助かりました」
アクア「それで、その崩れている場所というのは?」
ユキムラ「見えました、あれになります。木の陰に隠れているので分かりにくいかもしれませんが……」
レオン「……木の裏に……これだね。うーん、一人が通れるかどうかってところ?」
カミラ「そうみたいね……あら?」
エリーゼ「カミラおねえちゃんどうしたの?」
カミラ「この亀裂、思ったよりも奇麗に出来てるから……」
ユキムラ「ええ、そのおかげで内部を通っている時に怪我をすることもありませんから」
カミラ「そう、なら安心ね……これだけ狭いとお胸がこすれちゃいそうだったから」
エリーゼ「うー、あたしはスカスカだよー」
カムイ「私はどうでしょうか……。結構ぎりぎりかもしれません……」
レオン「人前で胸を触るのはやめてよ」
ユキムラ「では、私が先に向かいます。安全が分かり次第、合図を出しますので、そしたら通り抜けてください」
カムイ「わかりました」
ユキムラ「では……」
ズズッ ズズズッ
ジャリジャリ ジャリジャリ カツンカツンカツン……
アクア「一人で大丈夫かしら?」
カムイ「……気配を読む限り、向こうに誰かがいる気配はありませんから、きっと大丈夫です。ここ一体の敵を探るために上空偵察ができればいいのですが……」
マークス「仕方あるまい。われわれがするべきことは敵の裏をかくき敵の陣形を崩すことにある。敵が混乱し右往左往しているその間に砦へ到り、指揮官を倒すことができれば、敵の被害も抑えられるはずだ」
カムイ「ええ、白夜とのすれ違いもここで終わりにしなくてはいけません。ここを終えて、ユキムラさんが言ったように侵攻してくる暗夜軍を迎え撃ち撤退させることができれば……」
サクラ「もしかしたら、リョウマ兄様の考えを多くの人たちが見直してくれるかもしれません!」
カムイ「はい」
レオン「だけど、まずは白夜の強硬派をどうにかするのが先だよ。それにスズメたちの犠牲の清算は済ませないと気がすまない」
アクア「……そうね。奴らには戦争が終わるまでユキムラ達にしたように牢に入っててもらう必要があるわ。不安要素はできる限り排除しておくべきだもの」
カムイ「あまり、そうはしたくないんですが……」
アクア「……仕方のないことよ」
カムイ「はい、わかってます」
コツンッ カランカランッ
カムイ「?」
ユキムラ『こちらは大丈夫です』
カムイ「はい、わかりました。今からそちらに向かいます」
ユキムラ『はい、わかりました』
カムイ「それでは、先に行かせていただきます。皆さんは私が辿りついたら合図を出しますので、一人ずつ来てください」
アクア「ええ、わかったわ。亀裂の中は狭いから気を付けるのよ」
カムイ「さすがに一本道ですから怪我をすることはないと思いますよ。ふふっ、心配症ですねアクアさんは」
アクア「そんなこと……もう、早く行きなさい!」ドンッ
カムイ「わわっ、押さないでくださいよ」
カムイ(さて……、ここがその亀裂ですね。ちょうど木の裏にある形ですか))
カムイ(気配だけでも分かります、本当に奇麗な亀裂ですね。まるで道具を使って作り上げたかのようです。亀裂の向こうにある気配は……ユキムラさんですね)
ユキムラ「さぁ、カムイ様。こちらへ」
カムイ「はい、待っていてください」
ジャリッ ジャリッ
カムイ(向こうに皆さんが集まるまでに、ユキムラさんからテンジン砦の構造を教えてもらって攻略の準備に取り掛かる必要がありますね。でも今はユキムラさんがいてくれるんです。きっと大丈夫のはずです)
カムイ(きっと……)
ジャリジャリッ ジャリジャリッ カツンッ
チクッ
カムイ「あつっ!?」
ユキムラ「どうかなさいましたか、カムイ様?」
カムイ(今、指に微かな痛みが……これは?)
ユキムラ「カムイ様、早くこちらへ、皆が通るのにも時間が掛りますので」
カムイ「……」
ユキムラ「カムイ様?」
カムイ「……すみません、少しだけ足を止めてしまっただけです」
ユキムラ「そうでしたか、何分狭い空間ですので、私からカムイ様の姿はあまり見えませんが、私の気配はわかりますよね?」
カムイ「はい」
ユキムラ「では私に向かって来てくだされば大丈夫です」
カムイ「ええ、わかってます。今から向かいます」
ユキムラ「ええ、ゆっくりで大丈夫ですから、進んでください」
ジャリジャリ ジャリジャリッ
ユキムラ「はい、そうゆっくり……」
カツンッ――
ユキムラ「もう少しですよ、もう少し……」
カツンッ――
ユキムラ「……」
カツンッ
ユキムラ「そこです、カムイ様」ガコンッ
カチャコンッ
バシュシュシュッ
ズサ ズサササッ!!!!
ズサササササッ ガキンッ……
シュウウウウッ………
ユキムラ「………」
ポタッ ポタタタッ
ユキムラ「………」
ポタタタタタッ
ズズッ
ユキムラ「………いけませんね」
ユキムラ「どうしてそこで信じてくれないのですか?」
ユキムラ「お人好しはお人好しらしく……」
ユキムラ「裏切られて死ぬのが道理というもの、そうは思いませんか……」
ユキムラ「カムイ様?」
ポタタタッ
カムイ「ぐっ……ユキ、ムラさん」
カムイ(砂利が敷かれている場所としかれていない場所の境目、そこを境に壁に感じる鋭い突起物。まさかと夜刀神で地面を叩いてみましたが……)
ポタタタッ
カムイ(こんな串ざしのような仕掛けを隠していたなんて……)
カムイ「どうして……こんなものを……」
ユキムラ「この状況でわからないというんですか?」
カムイ「信じたくないだけです……」
ユキムラ「はぁ、人を信じて死んでいくあなたの悲鳴を間近で聞けると思っていたのですが……。本当に無駄なところで運がいいんですね、あなたは」
カムイ「くっ……」
アクア「カムイ! 今の音はなんなの!?」
ユキムラ「ふふっ、気づかれました。ですが、これはさすがに避けられませんよね?」
カラカラカラッ
カシャコン バシュッ!!!」
カムイ(正面から何か来る!? 夜刀神で軌道を逸らせれば!!!)
カムイ「はああっ」ブンッ
ガキィン!!!
トズンッ!!!
アクア「なにかが出てきたみたいよ」
レオン「気に刺さったけど、これはあの時の矢と同じものじゃないか。どうしてこれが……っ、まさか!!!!」
カムイ「はぁ、はぁ……」
レオン「アクア、カムイ姉さんを今すぐ亀裂から出すんだ! 早く!!!」
アクア「わかった、カムイ!!!」
カムイ「アクアさん!」
アクア「手を、早く!!!」
カムイ「はいっ!!!」パシッ
アクア「んっ、早くこっちへ!」グイッ
ユキムラ「逃がしませんよ……」ガチャ
カラカラカラ
カシャコンッ バシュシュッ!!!
カムイ「はああっ!!!」ズサーッ
ドスドススッ
カムイ「くっ、はぁはぁ」ドサッ
アクア「カムイ、大丈夫?」
カムイ「はい、助かりました。ありがとうございます、アクアさん」
アクア「いいわ。それよりも亀裂から離れるのよ」
カムイ「はい、ぐっ、少しもらいましたか……」ポタポタッ
マークス「カムイ、一体何が起きている」
カムイ「……最悪の事態というやつです。本当に……」
マークス「あのユキムラは敵であったというのか……」
カムイ「……」
アクア「……。聞こえているのよね、ユキムラ」サッ
ユキムラ「ええ、ちゃんと聞こえていますよ。しかし残念ですね、最後の最後で裏切られてしまいました。お人好しでもどうやら自分の命は可愛いようです……。白夜のこと、この先の世を思えば、自ら命を絶つことさえ考えるべだというのに」
アクア「ふざけないで。どうして、どうしてあなたがこんなことを!?」
ユキムラ「ははっ、それに答える義理はありません。なにせ、ここであなた達はおしまいなんですから。本来なら先にその恥知らずを殺しておきたかったが、神は味方してくれない。なんとも理不尽この上ありませんね……」
サクラ「ユキムラさん、嘘ですよね。これは、これは何かの間違いですよね……」
ユキムラ「口にして変わるのなら何度でも口して構いませんが、変わることなどありえません。サクラ様、そしてタクミ様が見限られたのは、そこにいる恥知らずが原因なのですから」
ユキムラ「もっとも、私にとっての原因について見当違いなことを、カムイ様は考えているのでしょうが」
カムイ「見当違い……?」
ユキムラ「ふふっ、これ以上答えるつもりはありません。皆さん、もう茶番は終わりました。白夜の敵である暗夜を根絶やしにしましょう」
ザッ ザザザザッ
白夜弓聖「はい、ユキムラ様。全員準備、放て!!!!」
パシュッ パシュッ
ヒュンヒュンヒュン
マークス「全員、攻撃が来るぞ!!!」
カムイ「ユキムラさん!!!」
ユキムラ「……軽々しく名前を呼ばないでいただけますか。耳が腐ります。できれば最後は悲痛で絶望的な叫びを期待していただけに、拍子抜けでしたが、それももう聞くことはないでしょう……」
カムイ「聞くことはないって……」
ユキムラ「意味を知る必要はありません。……それに役者もようやく揃いました。これで私たちの敵は消えてなくなることに変わりはありません」
アクア「一体何を言って……」
ドゴォオオオオンッ!!!!
マークス「何事だ!?」
カミラ「この音、北部からみたいね。見て、黒煙が上がっているわ」
レオン「北部から黒煙だって!?」
カムイ「北部からということは、まさか――」
◆◆◆◆◆◆
―白夜・テンジン砦北部『第二関所近辺』―
侵攻軍「関所二を破壊完了! 続いて関所三、関所四を順次爆破突破します」
マクベス「関所は破壊して構いません。北部から来る敵はもういませんので、このままテンジン砦を制圧します。ここを抑え橋頭保とするのです」
マクベス(白夜軍の撤退に次ぐ撤退、どうやら南から迫るカムイ王女たちを危険視してでしょうが。こちらは最後の戦いに掛けている以上、その隙を見逃すつもりはありません。ですが、先ほどの情報が本当ならば……)
タタタタタッ
メイド「マクベス様。丘の観測部隊からです。情報に間違いはないようです」
マクベス「やはりそうですか」
マクベス(なにせこれ以上に皆を駆り立てる者はありません。今回の戦い、私たちの勝ちですね)
マクベス「皆さん、暗夜を奪い去り裏切ったカムイ王女の一行がここにいるようです。今は白夜と交戦中のようですが、どちらも我々にとっては敵であることに変わりない」
バッ
マクベス「容赦することなく地に伏し、あとは好きにして構いません。今こそ進み、我々こそが暗夜であることを証明するのです!!!」
ウオオオオオオオッ!!!!
マクベス「私も先頭に立ちます、あなたは――」
メイド「いいえ、私もお供させていただきます……。ですから、マクベス様のお傍に」
マクベス「わかりました、好きにしてください。ただ、自分の身は自分で守るように」
メイド「はい、マクベス様」ペコリッ
~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「侵攻軍がここまで……。ユキムラさん、このままではテンジン砦が白夜防衛の要が落ちてしまいます。ここは一時――」
ユキムラ「……わかっていませんね。私たちはあなたと協力するつもりはないど、どうして分かりませんか?」
カムイ「ここが落とされたら、白夜は本当に滅んでしまうかもしれないんですよ!?」
ユキムラ「だとしても、あなたと協力などできませんよ。それが私たちの答えというだけのこと。さぁ、選んだ国と裏切った国、二つに挟まれ苦悩しながら死んでください。そんなあなたが苦しむ様を、私は高みから見物させていただきますから……」
タタタタタッ
アクア「ユキムラ、待ちなさい!!」
カムイ「ユキムラさん……」
レオン「どうするんだい姉さん……」
カムイ「……」
アクア「カムイ?」
カムイ「あの、アクアさん。あれは本当にユキムラさんなんでしょうか」
アクア「え?」
カムイ「もしも、もしも奴の手が回っているとして、それがユキムラさんだったとしたら……」
アクア「……彼を追うつもりなのね」
カムイ「はい。ユキムラさんを奴から解放することができれば。ですが、そのためにはアクアさんの力を……」
アクア「わかってるわ。だからカムイあなたが決めて、私達が何をするべきなのかを……」
カムイ「はい……。皆さん、これより私はテンジン砦内部を目指します――」
「戦闘準備を始めてください」
第二十二章 前篇 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンB++→A
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB+ →B++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
今日はここまで
テンジン砦で白夜と暗夜に挟まれて戦うというシチュの面があったらなという感じです。
この頃、更新が短めで微妙な流ればかりで申し訳ないです。
この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
戦闘部隊のメンバーを決めたいと思います。
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
・カムイと一緒に戦うメンバー
(固定アクア)
>>179
>>180
>>181
・暗夜軍と戦うメンバー
>>182
>>183
>>184
・白夜軍と戦うメンバー
>>185
>>186
>>187
キャラクターが重なってしまった場合は、つぎのレスの方のキャラクターが有効になります
少し多めですみませんが、よろしくお願いいたします。
ルーナ
オーディン
さてさて面白くなってきました
最近見てないニュクスさんでも
二方面作戦というか、複数の敵と戦うのいいよね…
両方にそれぞれ因縁があるとなおよし
カムイ同行ならラズワルド、暗夜ならギュンター
暗夜と戦わせたいユニット…まあマークスだわな
槍騎兵剣騎兵と来てるし、斧飛兵のカミラ姉さんを希望しよう
スズカゼで
ラズワルドで
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦―
タタタタタッ
カムイ「偵察は済みましたか?」
カミラ「ええ、砦正門まで行ける道はわかったわ。かなりの迂回路だけど、今はそこだけを開けているみたい。他の門にはすべて頑丈な錠がかけられてる。開けるのにかなりの時間が掛るわ」
カムイ「となると、その場所を目指した方が早そうですが、確実に罠ですね」
アクア「だとしても行くんでしょう?」
カムイ「ええ、それしか道がありませんから。アクアさん、ユキムラさんのこともあります、一緒に来てくれますか?」
アクア「そのつもりよ。私も力を惜しむつもりはないわ」
レオン「だけど、その門があるのはマクベス達のいる方角だ。運が悪いと鉢合わせになるよ」
カムイ「それは覚悟の上です。今私達は白夜軍と侵攻軍に挟まれている形、どちらからも狙われている以上、二正面での戦いを余儀なくされます。ですから唯一開けている入口を侵攻軍に抑えられたらそれまです。私達には関所を簡単に破壊できる装備はありません」
ルーナ「それに壁を越えようにも返しが付いてるみたいだから上りづらいし、数人は上れても気付かれたら残りは蜂の巣よ」
マークス「仕方あるまい。しかし、ここまで離れていると命令の伝達の手段も考えねば……」
ニュクス「それは任せて、これを使えば問題は解決するわ」
オーディン「これは……王都攻略で使っていたあの水晶か?」
ニュクス「ええ、改良を加えたからテンジン砦くらいの広さなら機能するはずよ。ただそれほど数がないの、ごめんなさい」
カムイ「いいえ、ありがとうございます。伝達に使いを使わないで済むのなら、それに越したことはありませんから」
ニュクス「そう行ってもらえると嬉しいわ」
カムイ「ふふっ」ナデナデ
ニュクス「ちょっと……子供扱いしないで」
カムイ「あ、すみません。これで敵の状況がそれなりに分かりますね」
カミラ「私達は白夜の射程に入らないように上から偵察するわ。竜騎兵のみんなは私に付いて来てちょうだい」 バサバサバサッ
カムイ軍竜騎兵「わかりました! よーし、みんな、カミラ王女に続け、古い暗夜の制空権をすべて奪ってやるんだ!」
カムイ軍竜騎兵たち『おおーーーっ!!!』バサバサバサッ
カムイ「では、私達は開いている門へ向かいましょう」
◇◇◇◇◇◇
―テンジン砦『上層階・監視矢倉』―
白夜兵「むっ……カムイ王女の軍勢が動き始めました。唯一開いている門へと向かっているようです。奥、暗夜軍勢もそのまま前進、先頭集団接触まで残りわずか!」
ユキムラ「そうですか。では、弓部隊を送るように合図を出してください、正門周辺の部隊にも戦闘の準備をするように通達をおねがいします」
白夜兵「はい! 鏑矢準備!!!」
白夜弓兵「鏑矢準備完了」
ユキムラ「では、お願いします」
白夜弓兵「はっ!」パシュッ
ヒュイイイイィン!!!!
ユキムラ「……」
ユキムラ(さて、どう立ち回りますか? カムイ王女、いえ裏切り者……)
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦『第四関所区域・北部』―
ヒュイィィンッ
アクア「この音は何かの合図ね」
カムイ「ええ、そうみたいです」
カムイ軍竜騎兵『こちら上空、白夜軍に部隊の展開を確認。装備は把握できませんが、内側から出てくる気配はありません』
カムイ「わかりました。引き続き周囲の観察をお願いします」
パカラパカラッ パカラパカラッ
カムイ軍騎兵「前方に北部第4関所を確認! まだ侵攻軍の姿はありません!」
マークス「わかった。このまま関所周辺を――」
カミラ『マークス兄様、聞こえる?』
マークス「カミラか、どうした?」
カミラ『今侵攻部隊を確認したわ。もう関所の裏に大勢詰めかけてるみたい、あとごめんなさい飛行部隊に見つかったみたい。こっちに向かっているわ。同時に攻めてくるでしょうから、戦闘の準備を済ませておいて』
マークス「ああ、わかった。こちらも準備に掛る。カミラ、竜騎部隊の相手を任せられるか?」
カミラ『ええ、マークス兄様の頼みだもの、彼らを皆殺しにしてあげるわ。だから上のことは気にしないで戦ってちょうだい』
マークス「ああ、任せたぞ」
カミラ「ふふっ、それじゃ行きましょう」クルクルクル チャキッ!
カムイ軍竜騎兵たち『はい、カミラ王女!』ジャキッ
カミラ「ふふっ、私達がいっぱい相手をしてあげるわね」バサッ!!!
マークス(上はカミラが率いる竜騎兵たちに任せる他あるまい。今われわれがするべきことは……関所から入ってくる者たちの目をくぎ付けにし、カムイ達を進ませることだ)
マークス「ギュンター」
ギュンター「はい、マークス様」
マークス「半数の兵を任せる。この先に入り込んでくる侵攻軍をできる限り足止めする」
ギュンター「御意。カムイ様、私はマークス様と共に侵攻軍を抑えに向かいます」
カムイ「わかりました。では部隊をここで二分しましょう、半分はマークス兄さんと共に侵攻軍の足止めをお願いします。残りの方々は私と共にテンジン砦へ正門の制圧に向かいます」
マークス「カムイ」
カムイ「はい、なんですか?」
マークス「幸運を祈っているぞ」
カムイ「ええ、マークス兄さんも」
ドドドドドドッ
ドドドッ ドドドドドッ
カムイ「私に付いて来た重装兵の方々は二列になって、部隊右側側面に展開してください。あと盾はいつでも掲げられるように準備を」
重装兵隊長「は、はい。わかりました……。重装部隊はそれぞれの部隊右に展開、盾を使えるように準備をしておけ!」
カムイ軍重装兵たち『わかりました』
ドゴンドゴンッ!!!!
カムイ「侵攻軍が来たようですね」
カムイ(マークス兄さん、お願いします)
ガタッ
ドゴオオオオオンッ!!!!
ガタンッ ドゴンッ バラバラッ
ガシャンッ!!!
侵攻軍「関所、破壊しました!」
侵攻軍部隊長「よぉし、進めぇ!!! 敵は誰であろうと見つけ次第皆殺しだ!! 日頃の鬱憤を晴らしだぱーっとやれぇ!!!」
侵攻軍『うおおおおっ!!!!』
パカラッ
侵攻軍「!?」
パカラパカラッ
マークス「はあああっ!!!」
ブンッ ザシュッ
侵攻軍兵「ぐおおおおああっ」ドサッ
侵攻軍部隊長「むっ!? はっはっはー、これはこれは親を裏切る姑息な御子息ではないか? どうだ、力で奪った王座の居心地というのは? 最高だろう?」
マークス「どうとでもいうがいい。今の暗夜は未来を築くことはできない。国は王族のためにあるのではない、国はそこに生きるすべての者のためにあるべきものだ」
侵攻軍部隊長「ははっ。この偉大なる暗夜王国の立役者であり、実の父であるガロン王様に反旗を翻して置いて何を言うか反逆者め。今さら善人面を決め込むつもりか。まったく、ガロン王様も衰えたものだ。だが、貴様を殺すことでガロン王様への土産としてやる」シャキンッ
侵攻軍部隊長「あの、マークス王子を…いや、生意気な反逆者の首を取れ!」
マークス「……」
侵攻軍部隊長「あいつを殺せば、新しい暗夜の結束など紙も同然! 我らは我らの暗夜を取り戻し、再び繁栄を極めるのだ!! 我らの繁栄の歴史に華を添えてやる!」ジャキッ
侵攻軍『偽りの王を殺せ!!! 反逆者を殺せ!!!』
マークス「……」チャキッ
マークス(ジークフリード。カムイが目指す道を覆おうとする影を消し去るために、お前の力を見せる時だ)ジャキンッ
シュオオオオオンッ!!!
マークス「……」ブンブンッ ジャキンッ
ギュンター「マークス様、こちらの準備は整っています」
マークス「行こう、われわれが信じる正義のために、一歩足りとも屈するな。新しき暗夜の夜明けはわれわれが作り上げる!!! 戦い手に入れた新しい暗夜、その先の道を信じる者たちよ。私と共に立ち向かえ!」
ギュンター「全員、剣を抜け!」
チャキッ カチャ
マークス「私に続け!!!」ダッ
カムイ軍軍勢『うおおおおおっ!!!』
侵攻軍軍勢『おらああああっ!!!!』
ドドドドドドdッ
キィン キィン ザシュッ
バシュッ ザシュンッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ニュクス「マークス達が戦闘を始めたみたい」
カムイ「はい、この隙を突きます。オーディンさん、先導していただけますか?」
オーディン「ふっ、任せておけ。この漆黒の黒騎士オーディンが闇の道を示して――」
ルーナ「ふざけてないでさっさと進みなさいよ」
オーディン「ちょ、まだ台詞終わってないんだけど」
ニュクス「口より手を動かしなさい。まったく、最近の若い子は駄目ね」
アクア「若くても若くなくても口だけなのはよくないと思うけどね」
オーディン「なんで、こんなに痛めつけられなくちゃいけないんだ」
カムイ「まぁ、早く進んでくれると私も助かると思っていますので、すみません」
オーディン「ちくしょー!」
パカラパカラッ
ルーナ「それにしても、侵攻軍はマークス様達が抑えてくれてるからどうにかなってるけど、白夜のほうはさっきの弓攻撃以外何も仕掛けてこないわね。ちょっと拍子抜けって感じ、そう思わないカムイ様?」
カムイ「……」
ルーナ「えっと、カムイ様?」
カムイ「……そろそろですね」
ルーナ「そろそろって?」
カムイ「オーディンさん、速度を落としてください。一番右側を進む重装兵の方々に合わせるくらいまでお願いします」
オーディン「え、わ、わかりました」
ルーナ「ちょっと、速度落としてどうするのよ。重装兵はどんなに頑張っても馬には追いつけないんだから。騎兵が早く門に付いた方がいいんじゃ」
カムイ「いいえ、これでいいんです」
カムイ(ユキムラさんは上にいる。つまり、私達がどう動いているかは丸見えのはずです。先ほど鏑矢が一回放たれたことを考えれば、何かの準備を終えたと考えた方がいい。たぶん、それを行うとしたら……もう一度合図があるはず……)
ニュクス「カムイ、マークス王子たちが相手をしている軍勢がこぼれ始めた。こっちに気づいたみたいね」
ルーナ「もうっ、少しくらい相手した方がいいみたいね。さっさと倒して砦までいかないと」チャキッ ダッ
スッ
ルーナ「え、なんで止めるわけ?」
カムイ「相手をする必要はありません。それよりも、私が合図をしたら全力で重装兵に寄るようにお願いします」
オーディン「それでどうにかなるとは思えないが……」
カムイ「大丈夫ですから、そうしてください。あと武器は抜いておいてください。迎撃するように見せかけたいので……」
ルーナ「え、どういうことよくわかんないんだけど」
アクア「……カムイ、侵攻軍が近づいてきてる」
カムイ「わかりました。皆さん、不安かもしれませんが合図するまではこのままでお願いします!」
侵攻軍「別行動している敵部隊を発見しました!」
侵攻軍「でかした、何をする気か知らないが、逃がすと思うなよ!」
侵攻軍「……待て、あそこにいるのは――」
侵攻軍「間違いないカムイ王女だ! 全員逃がすなよ、一気にかかれ!!!」
ドドドドドドッ
アクア「カムイ、来るわ!」
ルーナ「ちょっと、このまま何もせずにいろっていうわけ!?」
カムイ「……」
ルーナ「ああもう、あたしはたたか――」
ヒュイイイイイイイィィン!!!!
カムイ(鏑矢の音!)
カムイ「今です、右へ! ルーナさんも早く」ガシッ
ルーナ「ちょ、ひっぱらないでってば!!!」
ドドドドドッ
侵攻軍「ちっ、逃げる気か!? 全員、このまま壁まで追い詰め――ん?」
ヒュンヒュンヒュン
バシュッ ザシュッ
ブシュ ドスッ ザシュシュッ
侵攻軍「ぎゃあっ」ドサッ
ヒヒーンッ
侵攻軍「うぐあ、ま、ま、ぐぇあ……」
ドスッ
グチャッ
侵攻軍「なんだ、これは。弓の攻撃!? まさか白夜も奴らの味方なのか!?」
侵攻軍「ちっ、分からないが、このまま距離を詰めるのはまずい。攻撃中断して、距離を取れ!!!」
グアアアッ ドサッ
ドサササッ
グアアアアアッ
ルーナ「え、何よこれ!?」
オーディン「この大量の矢、砦の方角から飛んできたみたいだが」
ニュクス「もしも迎え撃っていたら、私達もああなっていたわね」
カムイ「ええ、彼らにとっては私たちも侵攻軍も、どちらも敵ですから。でも侵攻軍から見たら私達が誘いこんだように見えるでしょう。私達と白夜が手を結んでいると勘違いするかもしれません」
アクア「それを狙っていたの……」
カムイ「人数が足りませんから、そういう勘違いをしてもらわないと対等になれませんので」
カムイ(最短距離を進んでも、私達と侵攻軍の接触は避けられない。戦闘が起きそうになった瞬間に矢を放つだけでも効果があります。それを狙っているならと思いましたが……運良く全てが噛みあいましたね)
タタタタタッ
白夜弓兵「ちっ、掛ったのは北部から入り込んだ連中だけか」
白夜弓聖「奴らを足止めするぞ。壁の下に潜り込まれる前に仕留めろ!!!」
ニュクス「見つかったみたいね」
カムイ「ええ。でも大丈夫です、重装兵の皆さんは盾を掲げてください。他の方々はその下をくぐるように通過して壁際、弓の死角へと移動を」
一同『はい!』
タタタタタッ
白夜弓兵「逃がすか!!!」パシュッ
キィン
カムイ軍重装兵「ははっ、俺の盾に大当たりだ。もっと当ててくれてもいいんだぜ」ガシンッ
白夜弓兵「このやろう!!!」パシュッ
キィンキィン
白夜弓兵「くそ!」
白夜弓聖「馬鹿、狙うならその奥にいる奴らにしろ。全員死角に入り込むぞ!」
白夜弓兵「ちっ、くそ、もう見えねえ!」
カムイ軍重装兵「カムイ様、全員壁側に抜けました!」
カムイ「では重装兵の皆さんも死角へ、このまま開いている門まで壁沿いに向かいます。侵攻軍は今混乱していますから、この機を逃してはいけません! 前進します!」
白夜弓聖「くそ、奴ら死角を進んで向かうつもりだ。北部関所に待機している白兵部隊に合図を送れ!」
白夜弓兵「はい、鏑矢を放ちます」パシュンッ
ヒュイイイイイイィィン!!!!
白夜弓聖「よし、半分は俺についてこい。北部関所の守りに回る!」
白夜兵たち『はい!』
白夜弓聖(こっちには時間がないっていうのに……)
白夜弓聖「くそっ!」
タタタタタタッ
オーディン「すごいな、ここまでうまくいくなんてよ」
ルーナ「相手もアテが外れて怒ってる最中だけど、この手際のよさまるであの軍師みたいね」
カムイ「いいえ、敵の目が重装兵の方々に向いてくれたことや、あの矢は的確に乱戦発生地点へと向けられていました。敵の腕が良かったのもこの結果の要因です」
アクア「でも、さっきの鏑矢の音がしたわ」
カムイ「多分、違う部隊への合図でしょう。重装兵の方々を左右に展開して、一気に攻め行って門を制圧、重装兵を中心に門の防備を固めます」
ラズワルド「でも、本当にここまでうまく嵌ったよね」
カムイ「ええ、ですがここからが本番です。気を抜かないようにお願いします」
ラズワルド「うん、まかせてくれるかな。ルーナもオーディンも気を抜かないようにね」
ルーナ「ふん、誰に物を言ってるわけ。そんなヘマなんてするわけないでしょ?」
オーディン「ふっ、貴様も同じだ蒼穹のラズワルド」
ラズワルド「うわっ、その名前まだ続けるわけ……。さすがに恥ずかしいなぁ」
アクア「どうでもいいから早く準備しなさい……。どうやら相手の方が先手を取ったようだから」
ラズワルド「みたいだね」
ギィィイイイッ!! バタンッ!
タッ タッ タッ タッ
シャキンッ チャッ
カタカタタッ カチャコンッ
白夜軍勢『……』
スズカゼ「ふむ、白夜兵の見本市のようですね」
ラズワルド「うーん、門が閉じられちゃったみたいだね。このまま突破するのは厳しいかな」
スズカゼ「ここは人力で開けられるようにはなっていないようです。おそらく上部に仕掛けがあるかと。逆に言えば、そこに入り込めさえすれば……」
ラズワルド「簡単に開門できるかもしれないってことだね。それじゃ、ささっと仕事に取り掛かろう。壁ならどうにか登れるようだから」
サクラ「……あ、あのラズワルドさん」
ラズワルド「ん、サクラ様。どうしました?」
サクラ「私も一緒に同行してもいいですか」
ラズワルド「え、危険ですよ。あそこは敵の真っ只中なんですから」
サクラ「ここも真っ只中です。それに一つ気になることがあって、それを調べたいんです」
カムイ「気になることですか?」
サクラ「はい。その、地下道が封鎖されていたことがどうにも気になっているんです。あそこにも地下道はあったはずですから……。カムイ姉様、行ってもいいですか?」
カムイ「……わかりました。サクラさんの気になったことを探ってください。どうぞ水晶です」
カムイ「私達は開門次第、テンジン砦を目指します」
サクラ「はい、ご武運を」
カムイ「ええ、ありがとうございます」ナデナデ
サクラ「あ、うふふっ、くすぐったいですカムイ姉様……」
カムイ「そういうわけですから、サクラさんをお願いしますね。ラズワルドさん」
ラズワルド「わかりました」
スズカゼ「全力でお守りいたします。まずは私のからくりにお乗りください、流石にサクラ様に壁上りは辛いでしょう」
サクラ「は、はい。ありがとうございます……。あ、結構柔らかい……」
スズカゼ「ふふっ、暗夜にいる際に準備していただいた物になりますが、これはとても良いものですよ」
サクラ「では、行きましょう」
スズカゼ「はい。ではカムイ様、私達は数名を引き連れて壁を上がります。少しの間、敵の注意を逸らしてくれると助かります」
カムイ「はい、任せてください」
ラズワルド「それじゃ」
ドドドドドッ
ニュクス「それにしてもスズカゼのからくり、暗夜で作られたものだったのね」
カムイ「はい。たしか物資などはマクベスさんに頼んでいましたね」
アクア「仕事だけはきっちりこなしてくれるのはいいところかもしれないわね。カムイを反逆者に仕立て上げようとしたことを許すつもりはないわ」
カムイ「ええ、それを許すつもりはありませんよ。ただ……」
アクア「?」
カムイ「いいえ、なんでもありません。では、第五関所に攻撃を仕掛けます!」
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦『北部・第四関所外周』―
マクベス「くしゅん!」
メイド「マクベス様、いかがしました?」
マクベス「いいえ、なんでも……しかし、わかりませんねぇ」
メイド「カムイ王女が率いる者たちの動きですか?」
マクベス「いいえ。ああ動くことにわからない点はありません。戦うつもりがなければ南部へと逃げ帰ればいいだけのこと、戦いを行っているのであれば、ああして動くことに不審な点はありません」
メイド「では……?」
マクベス「白夜軍の動きです。とてもではありませんが、この砦を守る人数が配置されているようには思えない、最低限の防備、今は優位だとしてもいずれ私たちの物量がそれを包み粉砕できることなど理解出来ているはず」
マクベス(だとすれば、何かしらの策があると考えた方がよさそうですが、一体何があるのか、想像できませんね)
メイド「誰ですか?」
サッ
侵攻軍偵察「報告に上がりました」
メイド「はい……わかりました。では偵察の任を続けてください」
マクベス「偵察は何と?」
メイド「はい、北部に人員が集中していますが。南部はほぼガラ空きだそうです」
マクベス「そうですか」
マクベス(私達とカムイ王女が争っているところを一網打尽にするというのが狙いでしょうが……)
マクベス(こうして双方が膠着することこそが敵の軍師の狙いだとするならば、ここは部隊を分断し片方にテンジン砦攻略に向かわせて敵の兵力を分散させるべき……)
マクベス(……ですがカムイ王女をこのまま野放しにしておくのも癪ですね)
マクベス「……」
メイド「マクベス様?」
マクベス「部隊を二分し、片方は南部の関所の破壊しテンジン砦を目指すように指示を出してください」
メイド「はい、かしこまりました。マクベス様」
マクベス「あと、カムイ王女たちはテンジン砦内部を目指しているようです。多くの人員では向かえませんが、少人数なら同じように忍びこめます」
メイド「マクベス様」
マクベス「ええ、あなたに新しい任務を与えます。カムイ王女と白夜の軍師、その両方を殺してくるのです。人員はあなたにお任せします」
メイド「はい、わかりました。あの、マクベス様……」
マクベス「なんですか?」
メイド「……私、がんばってきます」
マクベス「……正直なのは良いことですが、そこは遂行すると言っていただけると嬉しいのですが。まぁいいです、仕事が終わりましたらおいしい紅茶でも淹れてあげましょう。特別にです」
メイド「ふふっ、それは楽しみです。任務に取り掛かります」スッ
タタタタタッ
マクベス「……さて」
マクベス(敵の何が狙いかはわかりませんが……。カムイ王女と一緒にその命を奪うことができれば――)
(私達の……いえ、ガロン王様が築いてきた暗夜の勝利が決まるんですからねぇ……)
今日はここまで
キャラクターのサクラ王女は抜けていただけでした、申し訳ありません。
あと>>194の『ドドドドドドdッ』のdミス、申し訳ない。
面的にはそれぞれが独立戦力で全ての敵が二正面作戦を行っているような状態で、実際やったらかなりカオスなマップになりそう。
城塞の兵舎化に伴いピエリちゃんちでメイドとして働くことになったリリスのお話
『ピエリちゃんちのメイドラゴン』とか考えた。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦『北部第五関所・壁上通路』―
ガシッ スタッ
スタタッ
スズカゼ「……まだこちらには気づいていないようです」
ラズワルド「よいしょっと、そうみたいだね」
カランコロン シュタッ
サクラ「ふぅ、スズカゼさんありがとうございます、助かりました」
スズカゼ「いいえ、お気づかいなく。あそこから関所内部へと入れるようです。他の方々も準備は済んでいますか?」
シュタッ シュタタッ
アドベンチャラー男「おう」
アドベンチャラー女「ええ、任せてください」
タタタタッ
アドベンチャラー女「……ん? 向こうから団体様のようで」
スズカゼ「……そのようです」
タタタタタッ
白夜弓聖「全員攻撃準備!」
白夜弓兵部隊『はい!』チャキッ
ラズワルド「あちゃー、もう来ちゃったんだね……」
アドベンチャラー女「ええ、もう少し待ってくれてもいいんですが。白夜の男はせっかちですね」
スズカゼ「仕方ありません。一度彼らの相手を――」
アドベンチャラー男「いいや、その必要はないぜ。あいつらは俺達で止めておくから、そっちはさっさとカムイ王女様が通れるように関所の開門に向かえって」チャキッ
ラズワルド「無理はいけないよ」
アドベンチャラー男「無理じゃねえ。こっちには足止め用のフリーズもたんまりあるから問題ねえんだよ」
アドベンチャラー女「まぁ、どうやら暗夜の男もせっかちだったということです。足止めは私達が引き受けますので、サクラ様達は関所の開門を急いでください。私たちの任務は関所の門をあけることですから」
スズカゼ「……わかりました。開門を終えたら合図をしますので、すぐに合流してください」
アドベンチャラー女「ええ、いくわよ」ダッ
アドベンチャラー男「へへっ、おうよ!」ダッ
スズカゼ「ここは彼らに任せて行きましょう」
ラズワルド「うん、僕が先に踏み込むからスズカゼは援護を、サクラ様もお願いできるかな?」
サクラ「はい、わかりました」チャキッ シュオンッ
ラズワルド「それじゃ、行くよ……」タタタタッ
シュオンシュオン
呪い師「……」
陰陽師「……どうだ?」
呪い師「あと少しで完成します。もうしばらく時間をください」
陰陽師「急ぎなさい。この布陣を設置し終えたら合図を出して、私達も――」
ドゴンッ!!!
戦巫女「なんだ!?」
ラズワルド「失礼するよ。」
戦巫女「ちぃ!!!」チャキッ パシュッ
ラズワルド「ふふっ、浅いよ」サッ
戦巫女「くそっ、まだ――」
ラズワルド「……ごめんね」ダッ
ズシャリッ
戦巫女「あ……うぐあぁ……」ドサッ
陰陽師「くっ、一度迎撃します!」チャキッ
呪い師「はい! これでも――」カララランッ
スズカゼ「遅い、はっ!」パシュッ
ドシュッ
呪い師「ぐぁ、まだだあ!!!」シュオオオンッ
タッ
サクラ「させません!」シュパッ
バシュッ!
呪い師「くっ、くそぉ……」ドサリッッ カランカランッ……
スズカゼ「残りは一人です!」
陰陽師「ちっ、ここでしくじるわけには。いけ、蛇神!!!」カララララッ
シュオンッ
シャアアッ!!!
サクラ「!!! 次――」
陰陽師「ふっ、サクラ王女、白夜を裏切った以上、あなたは王女でもなんでもない! 自身の行いを恥じて死に行くがいい!!」
シュパッ シャアアアアッ!!!
サクラ(間に合わない!)
サクラ「!!!」
……ズビシャッ
サクラ「……あれ、どうして……」
ポタポタタッ
スズカゼ「くっ、サクラ様。お怪我はありませんか……」
サクラ「ス、スズカゼさん!?」
スズカゼ「どうやら無事のようですね。良かった」
サクラ「すぐに治療します」
スズカゼ「いいえ。それはこの危機が去ってからにしましょう」チャキッ
陰陽師「ふん、抜け忍風情が。死にたければ、望みどおりにしてあげましょう」カララララッ
シュオンッ
陰陽師「くらえ!!!」
サクラ「スズカゼさん!」
スズカゼ「ふっ、安心してください。ラズワルドさん、おねがいします」
ラズワルド「うん。それじゃいかせてもらうよ!」ダッ
陰陽師「なに!? くそっ、そっちが本命か!」スッ
ラズワルド「はああっ」ブンッ
キィン!!!!
陰陽師「ぐっ、くぅう……。蛇神!!!」シュオンッ!!!
シャアアッ!!!
ラズワルド「これで終わりだよ!」ダッ
陰陽師「くそぉおおおお!!!!」カラララッ
ラズワルド「はあああああっ!!!!」ブンッ
ズビシャアアッ!!!!
ブシャアッ
陰陽師「がっ、うぐっ、がはっ」ポタポタタッ
ヨタヨタッ
陰陽師「うぐっ、ぐ、ユキムラ……様……申し訳ありま……せん」ドサッ
スーッ チャキンッ
ラズワルド「何とかなったね」
スズカゼ「ええ、どうやら負傷したのは私だけのようですね。うっ……」
サクラ「スズカゼさん、今すぐに治療します、えいっ」シャランッ
スズカゼ「ありがとうございます、サクラ様。もう大丈夫です」
サクラ「いいえ、私がお礼を言わないといけない立場です。ありがとうございます」
スズカゼ「いいえ、カムイ様と約束しましたから、ラズワルドさんは間に合わない距離にいましたので」
ラズワルド「さりげなく、僕の立ち位置が良くなかったって言ってるよね……」
スズカゼ「さぁ、それはどうでしょう? それよりも早く開門を急ぎましょう。中にしかけがあることは間違いありません」
サクラ「でも、ここにそう言ったものはないみたいですね……」
ラズワルド「となると下の区画だね……。ここから下に降りられるみたいだけど……」ガチャッ
スズカゼ「敵は?」
ラズワルド「誰もいない」
サクラ「よかった」
ラズワルド「うん、よかったけど、おかしいね……」
サクラ「何がおかしいんですか?」
ラズワルド「あまりにも関所の中に人がいない。もしかしたら今倒した三人だけだったりするのかもしれないよ」
サクラ「息を潜めているのかもしれません……」
ラズワルド「結構な音がしてたはずだからね。外はわからないけど、この真下に兵がいたら気づかないはずがないし、なにより本当に静かすぎるんだ」
スズカゼ「気にはなりますが、今は開門を急ぎましょう。カムイ様たちにテンジン砦までの道を作り上げてからでも遅くはありません」
ラズワルド「それもそうだね、それじゃいこう。僕が先行するから、二人とも付いて来て」
サクラ「はい……あれ?」チラッ
シュオンシュオン
サクラ(あれは布陣みたいですけど。なんで、こんなところに?)
スズカゼ「サクラ様?」
サクラ「は、はい。今行きます」タタタタッ
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・北部第五関所『門周辺』-
キィン カキィン
カムイ「はぁああ!!」ブンッ
キィン
剣聖「その程度か、裏切り者。その不埒な格好で暗夜に入り込んだのだろう? 暗夜はお前のようなあばずれも簡単に受け入れる国のようだからな」
カムイ「そんなことは、ありません!」
剣聖「ふん、口ではなんとでもいえるさ。恥も感じない貴様の力など、大したものでは無い!!!」ググッ ドンッ
カムイ「くっ……」ズザザッ
剣聖「このまま我が剣の錆にしてくれる! 行くぞ、くらえ!!!」ダッ
ブンッ ブンッ ブンッ ブンッ ブンッ!!!
ガキィン
カムイ「!」
剣聖「捕えたぞ!!! 裏切り者、このまま死に晒せ!!!」ダッ!
カムイ「ニュクスさん、今です!」
バッ
ニュクス「相手をしてあげる……」
剣聖「はははっ、餓鬼に何ができる! 怪我をしたくなければさっさと失せろ!」
ニュクス「……」
ニュクス「そう、教育がなってないみたいね……」シュオオオオオッ
剣聖「な、なんだこの光、まぶ――」
カムイ「はああっ」ドゴンッ
剣聖「ぐっ、ちっ、逃げ――」
ニュクス「逃げられないのはあなたのほうよ。はああっ!!!」
ヒュオオオッ ドゴォンッ!!!
剣聖「ぐぎゃあああっ……」ドサッ
ニュクス「……女は怖いのよ。良く覚えておきなさい」
カムイ「ニュクスさん、助かりました。その、すごい威力でしたね」
ニュクス「気にしないで、ええ、気にしないでちょうだい」
カムイ「でも、ありがとうございます。おかげで助かりました」
ニュクス「別にいいわ。それより、あなたは……」
カムイ「少し追い込まれましたからね。擦り傷が少しというところでしょうか」
ニュクス「ちがう、そうじゃないわ」
カムイ「えっと、ではなんですか?」
ニュクス「さっき奴が言っていたこと……」
カムイ「大丈夫です。それに私を見て罵声を浴びせることに間違いなんてありません。私は白夜を裏切った、それは変わらない事実です」
ニュクス「カムイ……。だとしても、あの言葉は……」
ポンポン
ニュクス「ちょっと何をして……」
カムイ「ふふっ、そうやって気にかけてもらえるだけでも十分です」
ニュクス「……撫でて話を逸らさないで」
カムイ「ふふっ、アクアさんたちがそろそろ攻撃を仕掛ける頃です。私達もタイミングよく攻め込みましょう」
ニュクス「……わかった。でも、カムイ。あなたはあの男が言ったような人間じゃない、それだけは間違いない。少なくとも私はそう思っているわ」
カムイ「なら、それだけで十分です。戦いが終わったらいっぱい撫で撫でしてあげますね」ダッ
ニュクス「……子供扱いするなら。さっきの奴と同じ目に会わせるわよ?」
カムイ「ふふっ、肝に銘じておきます」タタタタッ
ニュクス「はぁ、困った子ね……」タタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~
キィン カキィン!!!
兵法者「ひるむな、攻撃を続けろ! 暗夜の者共など、さっさと切り伏せてしまえ!!」
白夜兵『おおおー!!』ドドドドッ
パカラパカラッ
アクア「先頭に立っているあの男がリーダー格のようね」
オーディン「ああ、あ何時を狙おう。漆黒のダークナイトオーディンの力を見せてやる」
アクア「ふふっ、中々に長い名前ね」
ルーナ「まったく、漆黒のダークナイトって黒が被ってるじゃない」
オーディン「それがかっこいいんだ。ほら、黒の中の黒とかさ。こう、禍々しさがすごいって感じするだろ?」
ルーナ「はぁー、思った以上にあんたって子供よね」
アクア「まぁ、それがオーディンのいいところだと思うわ。そういう無邪気なところって大人になると忘れてしまうもの」
オーディン「……それって、俺が子供だって言ってません?」
アクア「ええ。だって、オーディンって大きな子供みたいな感じがするから」
オーディン「ひ、ひどい。俺だって、大人なのに」
アクア「大人は自分のことを大人なんて言わないわ」
オーディン「ぐっ、アクア様って時々意地悪なところありますよね、なんでですか?」
アクア「……そうね。単純に面白いからかしら?」
ルーナ「まぁ、オーディンにちょっかい出すのってそれなりに面白いから仕方無いわね」
アクア「同意が得られて嬉しいわ」
オーディン「二人してひどい。俺の心を弄ばないでくれないか」
ルーナ「はいはい、大の大人がしょぼくれないでよ、恥ずかしいから……」
オーディン「はい……もういいです」
アクア「おしゃべりはそこまで、敵が見えてきたわ」
ドドドドドッ
ルーナ「よぉし、敵軍団の横っ腹に食いついてやるわ」チャキッ
アクア「それじゃオーディン、手筈どおりにおねがいね」スタッ チャキッ
オーディン「ああ、任せろ」
ルーナ「アクア様、ちゃんと繋いであげるから安心してよね」
アクア「そうね、ルーナがくれる寝癖直しよりは安心できそうなのは確かよ」
ルーナ「ううっ、こ、今度のはちゃんとした奴用意するから。その……期待してなさいよ」
アクア「ええ。それじゃ、さっさと終わらせましょう」
兵法者「むっ?」
パカラパカラ
オーディン「いくぞ!」
兵法者「ふんっ、一人で来るとはいい度胸だ!!」
兵法者(奴の得物は魔法か、なら一気に肉薄して斬り殺してやるまでよ)
オーディン「喰らえ!」シュオンッ
ボワアアッ
兵法者「ふん、暗夜の妖術など、はああっ」ダダダダッ
バシュンッ
兵法者「だあああああっ!!!!」ダダダダッ
オーディン「そのまま向かってきた!?」
兵法者「ふっふっふ、肉を切らせて骨を断つ!!!! 死ねぇえ」ググッ
タッ
兵法者(影!? 横からか!)
アクア「そこよ」クルクルクル シュパッ
ザシュッ
兵法者「ぐぬぅ、くそ、正面は囮か。だが、槍が相手なら棍棒でぇ!!!」ジャキッ ガシンッ
ブンッ ドゴンッ
アクア「ふふっ、そんなステップじゃ。満足に踊れそうもないわね」
兵法者「へっ、ならお前を踊れない体にしてやるまで、そのような軽装で来たこと、後悔させてやる!!!」ブンッ
アクア「!」サッ
兵法者(馬鹿め、この距離もらった!!!)ブンッ
タタタタッ
ルーナ「はあああああっ」ブンッ
キィン ドスンッ
兵法者「なっ、流された!?」
ルーナ「はいはい、お疲れ様。あたしの友達に手を出そうなんて100年早いのよっ!!!」シュッ
ドスッ
兵法者「がふっ、ぐぅ、うううっおおあ。こんな、ばかな……」ドサッ
ルーナ「楽勝ね。さぁオーディン、この調子でどんどん行くわよ」
オーディン「ああ。っていうか、アクア様かなりぎりぎりだったぞ。正直冷や汗が出ましたよ!」
アクア「ふふっ、だってルーナが繋いでくれるって言ってくれたから、それを信じてみたの」
ルーナ「へへん、どう? あたしの実力思い知った?」
アクア「ええ。ありがとう、助かったわ」
ルーナ「う、うん。ど、どういたしまして……」
アクア「それじゃ、この調子で門の周辺を掃除するわ。フィナーレにはまだ早いわ」
オーディン「ああ、まだまだ俺たちの力を見せつける。この漆黒のダークナイト・オーディ――」
パシュッ
オーディン「うわっ、矢が飛んで――」
キィン!!
ルーナ「ちょっと、なにしてるわけ?」
オーディン「す、すまん……」
アクア「本当に締まらないわね、あなたは」
オーディン「ううっ」
キィン キキィン
ルーナ「アクア様。一度カムイ様と合流しよ。こっちの白夜の軍勢もだんだん減ってきたみたいだし」
アクア「みたいね……。白夜の兵力も散り散りになってる」
ルーナ「まぁ、あたしたちの圧勝だったってことね。このまま関所周辺を抑えちゃえばこっちのものよ」
アクア「ええ、正直うまくいきすぎてて怖いくらいよ」
ルーナ「ならこのまま行くしかないでしょ。まずはカムイ様と合流して、砦の内部に入り込んでユキムラだっけ? そいつをとっちめて終わり。最後に侵攻軍を抑え込めれば戦争の終わりも見えてくるはずなんだから!」
アクア「……そうね。その通りよ」
アクア(そう、ルーナの言うとおり。このテンジン砦の戦いでユキムラをどうにかすることができれば、白夜との戦いを終えることができるはず。カムイがこれ以上、白夜と戦うこともなくなる。ユキムラが操られているなら、力を使ってでも解いてみせる。必ず……)
アクア「オーディン、カムイと合流するわ、乗せてくれる?」
オーディン「ああ、いいぜ。よっと。ほら、ルーナも早く」
ルーナ「あたしはいいわ。それよりも、アクア様を落としたらただじゃおかないからね」
オーディン「そ、それはさすがにないからな!」
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・北部第五関所『関所内部・仕掛け部屋』―
ガタンッ!!!
タタタタタッ
ラズワルド「見つけた! たぶんこれだよね?」
スズカゼ「はい、これを動かすことができれば門を開くことができるはず、ラズワルドさんは左の歯車をお願いします」
ラズワルド「わかった。準備できたよ!」
スズカゼ「はい、いきます。せーの!」
ガシャンッ
ゴゴゴゴゴッ
ガタンガタンガタンガタンッ ギイイイイィィィィイイ!!
サクラ「スズカゼさん、ラズワルドさん。門が開きました!」
カムイ『サクラさん!』
サクラ「あ、カムイ姉様! 今門の開閉装置を作動させました!」
カムイ『ありがとうございます、私達は砦に向かって進みます、すみませんがしばらくの間、関所で耐えてください』
サクラ「はい、わかりました。その、カムイ姉様。気を付けてください……」
カムイ『ありがとうございます。サクラさんも無理はしないようにしてください。では』
ブツンッ
サクラ「カムイ姉様……」ギュッ
ラズワルド「……よし、門はこれでいいはず。スズカゼは二人に合図を送ってきてくれるかな?」
スズカゼ「はい、そのつもりです」カラコン カラカラ
サクラ「でも、ここまで本当に誰もいませんでした。どうなっているんでしょう?」
ラズワルド「うん、正直妙というか気持ち悪いくらいなんだけどね……」
スズカゼ「砦本陣に兵を集中しているのかもしれませんが……」
ラズワルド「だとしても、こうやって関所の防御を疎かにする理由がわからない。ここは白夜の生命線なんでしょ? そこが抑えられたらどうなるかなんて子供でもわかると思うんだけど」
スズカゼ「そうですね。陸路で王都に辿りつく整備された道はここしかありません。少ない数を送っても、白夜の王都に入るにはスサノオ長城が待ち構えていますから、生半可な数では突破は困難でしょう」
ラズワルド「でも、それはここがあっての話。ここは拠点に敵してるから、敵の駐屯地にしないようにするのが普通なんだけど……」
サクラ「……もしかして、あれがこの状況に関係があるのでしょうか」
スズカゼ「サクラ様、どうかしましたか?」
サクラ「いえ、そのさっき戦いがあった一室に布陣のようなものがあったんです。たぶん、あそこにいた方たちが作っていたものだとは思うんですけど」
ラズワルド「さっき戦った三人のこと?」
サクラ「はい、攻撃用というわけでもないようでした。まだ完成していなかったところを見ると、何かしらの仕掛けだとは思うんですけど……」
ラズワルド「サクラ様はそれが気になるんだね」
サクラ「はい……。でも、地下道のことも調べておきいんです」
ラズワルド「テンジン砦下に張り巡らされてるっていう移動用の地下道のことだよね? でも、ここまで調べてきた場所は全部、塞がれていたんでしょ。それなら……」
サクラ「はい、たぶんここも塞がれていると思います。だから伏兵とかそういうのはないと思うんです。だけど、このいろいろと不気味な状況に関係がある気がするんです」
ラズワルド「この状況との関係性ね……。確かに何かあるのかもしれない、調べてみる価値はあるね」
スズカゼ「でしたらラズワルドさん、私は足止めをしてくれていたアドベンチャラーの方々と行動しますので、サクラ様と共に地下道を調べていただけますか?」
サクラ「え、でも……」
スズカゼ「大丈夫です。あの場所の扉には閂もありましたから、そう簡単に入ってこれないはずです」
ラズワルド「でも、正直二人じゃ……」
スズカゼ「では、こうしましょう。はっ!!!」
シュオンッ
サクラ「え、スズカゼさんが二人!?」
スズカゼ「驚かせてしまったようですね。これは写し身人形ですよ。こちらの私を随伴させますので、これで幾分か大丈夫だと思います」
ラズワルド「あ、ありがとう。それ本当に便利な技術だよね……」
スズカゼ「今利用しない手はないので。それに私としてもこれほど簡単に制圧できることに何かしらの意図があると考えています」
サクラ「スズカゼさん……。では上をお願いできますか?」
スズカゼ「はい。では、ラズワルドさん、サクラ様の護衛をお願いしますね」
ラズワルド「スズカゼの写し身もでしょ? それじゃサクラ様、行きましょう」
サクラ「はい」タタタタタッ
スズカゼ「……サクラ様が気にしているという布陣、こちらで調べておいたほうがよさそうですね……。本当に何か関係があるなら、見落とすわけにはいきません……」
タタタタタタッ
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・北部『壁上』―
シュッ シュッ シュシュッ
メイド「どうにかここまでは来られました。すみません、突然の招集とはいえ、快諾していただいて」
ブレイブヒーロー「別に構わない。マクベス様のお役にたてるのであれば本望だ」
アドベンチャラー「あーあー。心にも無いこと言ってやがるよ。実際は富と名声のほうが重要だって言うのにさぁ」
ブレイブヒーロー「……現軍師の役に立つことはそれに繋がるだけの話だ。深い詮索はするものじゃない」
ランサー女「しかし、本当に監視網もスカスカですね。ここまで白夜兵の影を一人として見てませんよ」
メイド「北部第五関所はすでに反乱軍が落としていますから、もう敗走したのかもしれません。それにカムイ王女がテンジン砦に向かっている以上、そちらに目が向いていると考えれば、ここ一帯への警戒も薄れます」
ブレイブヒーロー「我々が見つかっていないこの状況に説明が付くということだな」
アドベンチャラー「そうかいそうかい。まぁ、俺は白夜の財宝を少しちょろまかせればそれでいいさ」
ランサー女「少しは真面目にしたほうがいいですよ。一歩間違えると死にかねません
ブレイブヒーロー「おまえはまず装備から見直した方がいい。槍に簡易な防具にヘルム、とても大きな攻撃は耐えられまい」
ランサー女「私は槍が好きなんです。ここは譲れません」
アドベンチャラー「あっはっは。女だからだな」
ランサー女「サイテーですね。その横っ腹を私のランスで刺しますよ」
アドベンチャラー「おおこわいこわい。でもよ、この人数差で負けるとは思えないけどな。それに南部方面に砦を攻撃する部隊を再配置してるんだろ? そこを攻めてテンジン砦入口を抑えられれば俺たちの勝利は決まったも同然ってもんだ」
メイド「ええ、マクベス様の采配に間違いはありません。あのカムイ王女も今回ばかり届きません。私達がそれを阻止します。それが私たちに与えられた任務なんですから」
ブレイブヒーロー「……ああ」
アドベンチャラー「それに王族の武器とか奪って売れば、高値になるだろうしよ」
ランサー女「なるほどなるほど。そういうことですか! メイドさん。私も頑張りますよ」
メイド「はい、よろしくおねがいします」
メイド(マクベス様の紅茶、久しぶりに飲みたいですね……)
メイド「行きましょう。壁にそって移動します」
全員『了解』
シュタッ シュタタタッ
◇◇◇◇◇◇
―テンジン砦・上部―
シュオンッ
白夜兵「南部第五関所より合図が出ました。北部は以前無し、門を開いて数名が砦に向かってきています」
キリリリッ カチャカチャッ キリリリッ カチャコンッ
ユキムラ「そうですか。北部は最終準備まで届かなかったということでしょう、残念なことです。ですが少し遅れるだけで何の問題もありません。暗夜軍、いえ王女に負けた暗夜軍の状況は?」
白夜兵「はい、南部第五関所周辺に兵を集めています。攻撃を仕掛ける準備をしているようです」
ユキムラ「なるほどなるほど、そうですか。それは嬉しいお知らせですね。まぁ、手薄な場所を攻めたくなるのは、性というものですから」」
白夜兵「ええ、それでは準備に入りますか?」
ユキムラ「はい、次の合図を準備しておいてください。次の合図で最後ですから、気を抜かないようにお願いします」
白夜兵「わかりました」タタタタッ
ガチャ バタンッ!
ユキムラ「……あと少し、あと少しの均衡が作れればそれで私たちの勝ちですね……」
コトッ
キュルキュルキュルキュル
からくり人形「……」カチッ
ボウッ……
ユキムラ「……待ち遠しいですね。すべてが消え去るその瞬間が――」
「とても、とても待ち遠しい……」
今日はここまで
ランサーのあのヘルムは可愛い。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦『北部・第四関所周辺』―
マークス「……侵攻軍の動きが変わったようだな」
ギュンター「ええ、何かを考えているのかもしれません」
マークス「……うむ、カミラに一度確認させる。カミラ、そちらの状況を伝えてくれ」
カミラ『侵攻軍飛竜部隊は付かず離れずに徹しているわ。どうもこちらを足止めする意図があるみたいね』
マークス「それ以外に何か気になることはあるか?」
カミラ『他にはそうね……、関所の奥で燻ってた部隊が移動を始めてる。大きく迂回して南部に向かっているみたい。多分、敵の本命はそっちね』
マークス「くっ、謀られたか……。マクベスめ、やるな」
マークス(敵の動きを聞く限り、おそらく南部は手薄になっている。侵攻軍はそこを抜けて砦を抑えるつもりか……)
マークス(もしも砦正門を抑えられればカムイ達は砦内部で孤立することになる……。それは何としても阻止しなければならん)
マークス「ギュンター、制圧の終わった第五関所まで退けるか?」
ギュンター「可能でしょう。ですが、今の状況で敵がその隙を逃すとは思えませんぞ」
マークス「一度、大きな動きを見せて、敵の注意を逸らす必要があるということか……」
マークス(現在の地上兵にそれを行わせるのは難しい、となれば……)チラッ
バサバサ
バサバサ
マークス(上空にいるカミラたち、飛竜部隊を動かすしかない)
マークス(しかし、それはあまりにも危険すぎる)
マークス(だが、砦前まで侵攻軍の侵入を許せば、われわれは包囲され逃げ場がなくなる)
マークス「くっ、どうすれば……」
カミラ『……マークスお兄様。どうすればいいのか言ってちょうだい』
マークス「カミラ?」
カミラ『ここで手を拱いているわけにもいかないでしょ? 敵の狙い、私も理解しているわ。それは絶対に阻止するためにできることをやりましょう?』
マークス「だが、これは死地にお前たちを向かわせているようなものだ……」
カミラ『戦場はどこも同じよ。だけど今は死地が私達に近づいてる、それから離れるために一石を投じるのも必要なこと。それにお姉ちゃんも頑張ってカムイの手助けがしたいの。だからお兄様、私に命令してちょうだい』
マークス「カミラ……」
カミラ「……」
マークス「カミラ、部隊を率いて敵地上部隊に攻撃を仕掛けろ。敵の混乱と同時にこちらは北部関所まで退く。撤退は合図をするまで耐えてくれるか?」
カミラ『ふふっ、手厳しい事を言うのね……。でも、がんばっちゃうわ。お兄様からの頼みごとだもの』
マークス「すまない」
カミラ『困った時はお互いさまよ、それじゃね』
マークス「……ギュンター、後方の者から順次第五関所まで退かせるのだ」
ギュンター「いいえ、私がしんがりを務めさせていただきます。マークス様は第五関所にて、後続を迎え入れるための準備をお願いいたします」
マークス「……わかった。任せるぞ、ギュンター」
ギュンター「御意」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「それじゃ、みんなで一暴れしにいくわよ」
ドラゴンマスター男「一暴れって言いますけど……敵陣に突っ込むんですか?」
カミラ「ええ、スリル満点よ?」
レヴナントナイト女「あの中とか一歩動くごとに蘇生処置してもらいたいくらいなんですけど。ああ、胃が痛くなってきた……うううっ」
カミラ「あら、大丈夫?」
レヴナントナイト女「いや、その、すごく胃が重いです。心臓もバクバクしてます」
カミラ「ふふ、しょうがないわね。ここを越えられたらハグハグしてあげてる」
ドラゴンマスター男「マジッすか!?」
カミラ「ふふっ、あなたじゃないわ。男なんだから、しっかりしなさい?」
ドラゴンマスター男「なんで女だけ!? 別に女は抱きつかれても嬉しくなんて……」
レヴナントナイト女「よぉし、頑張るぞ」パンパンッ
ドラゴンマスター男「あれぇ?」
カミラ「ふふっ、他の皆も準備はいいかしら?」
カムイ軍竜騎兵部隊『準備出来ています、カミラ王女様』
カミラ「いい返事ね。容赦しなくていいわ、たっぷりと可愛がってあげなさい!」チャキンッ
ドラゴンマスター男「よっし」チュキッ
レブナントナイト女「うん」パララッ ボウッ
カミラ「すぅーーー、はぁ……… !!」ガシッ
バサバサバサッ
レヴナントナイト女「みんな、カミラ王女様に続くのよ!」
ドラゴンマスター男「いっくぜーーー!!!」ガシッ
バサバサバサッ
侵攻軍飛竜部隊「敵、飛竜部隊、こちらに突っ込んできます!」
侵攻軍飛竜部隊長「痺れを切らしたか、敵の打ち込みにあわせて旋回して注意を引け、こちらを追わせて時間を稼ぐんだ。南部への部隊の移動は済みつつある。もうひと踏ん張りだ!」
侵攻軍飛竜部隊「はい!」
ヒュン! ヒュンヒュン!
侵攻軍飛竜部隊長「今だ! 上昇、敵の旋回を確認したら付かず離れずの距離を維持しろ!」
ババババッ
カミラ「ふふっ、道を開いてくれてありがとう」ヒュン
ドラゴンマスター男「サンキュー」ヒュン
レヴナントナイト女「御苦労さま」ヒュン
ヒュンヒュン!
ヒュンヒュン!
侵攻軍飛竜部隊「え、て、敵第一陣、そのまま地上部隊の方角へと進軍していきます!」
侵攻軍飛竜部隊長「な、なに? くそ、謀られたか! 今すぐに追いかけ――」
侵攻軍飛竜部隊「敵の第二陣来ます! 先ほどより数は多いです!」
侵攻軍飛竜部隊長「ちっ、同じように抜けるつもりか。通過した瞬間に後ろを取れ!」
侵攻軍飛竜部隊「はい……。ち、違います。第二陣、こちらに向けて攻撃を――ぐああああっ」
侵攻軍飛竜部隊長「な、なに!?」
カムイ軍飛竜部隊「敵は混乱している、今のうちに大部分を叩く。カミラ王女様たちの方角に向かわせるな!」
カムイ軍飛竜部隊「おらああああっ!!!」ブンッ
侵攻軍地上兵「よし、このままの距離を維持、次の指示があるまで釘づけに……」
バサバサバサッ
侵攻軍地上兵「むっ? なんだこの音――」チラッ
バサバサバサッ!!!
侵攻軍地上兵「敵襲!!!!」
カミラ「遅いわね」チャキ ブンッ
バシュッ
ドラゴンマスター男「よっと、おらああっ!!」ブンッ
レヴナントナイト女「はああっ」シュオンッ
侵攻軍地上兵「ぐああああっ」ドササッ
ワーワーッ ワーワーッ
ギュンター「よし、全員これより前方的集団に攻撃を掛ける。後方部隊が退いたことを悟られ無い様に努めること、よいな!」
カムイ軍地上部隊『はい!』
ギュンター「よしっ、攻撃せよ!」
タタタタタタッ
侵攻軍地上兵「て、敵こちらに迫ってきます!!! 中央部が敵の飛竜隊の攻撃を受け、混乱が広がっているようです!」
侵攻軍地上部隊長「ちっ、数が少ないと見て潰しに来たのか。くそ、全員応戦、目の前の敵を片っ端から八つ裂きにしろ!!! こっちの方が数は多い!」
キィン キィン
カキィン カキィン!
カムイ軍地上部隊「敵、応戦を開始しました!」
マークス「今だ、後方から徐々に退くぞ」
カムイ軍兵「はい、全員後方から退く準備を始めろ!」
ドドドドドッ
マークス(カムイたちは砦の内部に入れた頃かもしれん。正門をこちらで抑え、白夜軍を抑え込めればどうにかなるはずだ。白夜の動きがないのは不安ではあるが、今はこれ以外に手はない)
マークス「これより第五関所へと向かう!」
タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・砦内部―
ギシッ ギシィ
ルーナ「……」
オーディン「……」
カムイ「………」
ニュクス「……」
アクア「……」
ギシ ギシ
タタタタッ スッ
ルーナ「……ちょっと、どうなってんの。砦に入って結構時間経ってるのに一度も攻撃されないとか、気味が悪いんだけど」
オーディン「なぁ、これって確実に罠だよな……」
アクア「そうね……。カムイ、何か気配を感じる?」
カムイ「いいえ、何も。さすがに微動だにしていないカラクリなどの気配を読むことはできませんから、その類の可能性は捨てきれません。ニュクスさん、呪いなどはありそうですか?」
ニュクス「……大丈夫。そう言ったものはないみたい」
カムイ「このまま進めということでしょうか?」
アクア「なら、その言葉通りに行くしかないわね」
カムイ「はい、ユキムラさんの意図がわかりません。このような見え見えの罠に飛び込むのは避けたいところですが……」
ルーナ「大丈夫大丈夫、どんなのが来てもあたしたちで何とかしてあげるから!」
カムイ「ふふっ、頼りにしていますよ、ルーナさん」
ルーナ「そ、そう。は、はぐれるんじゃないわよ」タタタタッ
カムイ「はい、そうさせていただきますね」
ルーナ「……」
ギシィ
ルーナ「……ん?」
タタタタタッ
ルーナ「今の音……」
オーディン「ああ、向こうの階段からだな……」
ニュクス「ええ、来るわ……」
ルーナ「どうせ白夜の連中でしょ? あがったところで攻めてくるなんて動きが遅いわね。それじゃ、さっさと倒し――」
タタタタタッ
ザッ ザザッ
メイド「見つけました。攻撃、お願いします」チャキッ
ブレイブヒーロー「ああ、わかった」タタタタッ チャキンッ
ルーナ「暗夜軍!?」
ブレイブヒーロー「はあああああっ!!!!」ブンッ
ガキィン
ルーナ「ちょ、どうして、あんた達がここにいるわけ!?」
メイド「はあっ」チャッ チャッ
ルーナ「!」
オーディン「ルーナ! はああっ」ボウッ ボボッ
カキィキィン ゴトゴトッ
オーディン「よし!」
ニュクス「これはお返しよ、いきなさい!」ボボッ ヒュオオオッ
シュオオオッ
ルーナ「いい感じよ、えいっ」ドゴンッ
ブレイブヒーロー「ぐっ……!!!」ズザザッ
ルーナ「やった!」
シュオオオオンッ
ブレイブヒーロー「ちっ!!!」
メイド「七難即滅!」シャランッ
ヒュオンッ
ボボウッ!
メイド「怪我は?」
ブレイブヒーロー「大丈夫だ……」
メイド「それは良かったです。もう一度仕掛けられますか」
ブレイブヒーロー「任せておけ……」チャキッ
ルーナ「ちょっと、いきなり仕掛けてくるとかいい度胸じゃないの」
メイド「そこです」シュパッ
ルーナ「ちょ、言葉で返しなさいよ! 危ないでしょ!?」サッ
メイド「ブレイブさん、ランサーさんと組んで攻撃を、私達は後方から援護しますので」
アドベンチャラー「ああ、援護は任せな。ところで王女を殺したらその装備品を奪っても構わねえよな?」
メイド「ええ、別に構いません。私たちの目的はそこの王女を殺すことです。その後のことは好きにして構いません」
カムイ「敵は少数で来たようですね……。なら、ここで――」
ルーナ「ううん、カムイ様とアクア様はさっさと上に向かって。ここはあたしたちで何とかするわ」
ニュクス「ええ、そういうことだから、二人は上に向かいなさい」
ブレイブヒーロー「行かせると思うか……」ダッ
オーディン「おっと、行かせないぜ」ボウッ
バシュッ
ブレイブヒーロー「っ……」
オーディン「ここは任せて先に行ってください。カムイ様、アクア様」
カムイ「……はい、お願いします! アクアさん、行きましょう」
アクア「ええ。ここは任せたわよ」
タタタタッ
ランサー女「逃げられましたよ、他の道を探して追いますか?」
メイド「いいえ、ここで彼らを殺せばそれで済みます。後顧の憂いを断ってから追いかければいいだけの話、上に逃げ場はありません」
ランサー女「わかりました。攻め入りますよ! ブレイブさん、一緒にお願いします」ダッ
ブレイブ「ああ、行くぞ」タタタタッ
ニュクス「何度来ても同じよ。オーディン合わせなさい」パラララッ
オーディン「いいぜ。よし喰らえ、合体攻――」
メイド「今です、神風招来を彼らに」クルクルッ カラランッ
アドベンチャラー「そら!」クルクルッ カラランッ
シュオンッ シュオンッ
ニュクス「っ! 魔法が封じられた!?」バチンッ
オーディン「な、くそ! ルーナ、今行く!!!」タッ
ブレイブヒーロー「遅い、まずは貴様からだ……」ジャキッ ググッ
ルーナ「そう簡単にやられると思ってるわけ? 掛って来なさいよ!」チャキッ
ブレイブヒーロー「はああっ!!!」ブンッ
ザシュッ
ルーナ「きゃっ、ううっ、まだまだぁぁぁ!!!」ダッ
ブンッ
キィン
ブレイブヒーロー「捕らえた。今だ、やれ」
ランサー女「はい、てやあああっ!」ブンッ
ルーナ「やられるわけにはいかないのよ!!!」キィン
ランサー女「なっ、受け切られちゃった!?」
タタタタッ
ランサー女「あ、しまっ――」
オーディン「ルーナから離れろ!!!」ドゴンッ!!!
ランサー女「うわっ」ゴロンッ
オーディン「はああっ」ブンッ
ランサー女「っ!!! はああっ」キィン
サッ タッタッ……
ランサー女「あ、あぶなかった……」
メイド「うまくいきませんね……」
ダキッ サッ
オーディン「はぁはぁ、ルーナ大丈夫か!?」
ルーナ「ど、どうってことないから。もう、そんな顔しないでもいいでしょ?」
オーディン「馬鹿、さすがに心配したんだぞ……。少し傷を塞いどけ、ここは俺に任せ――」
ルーナ「なに一人で格好つけてんのよ。あたしだってまだやれるんだから……」ググッ
オーディン「あのな、その怪我でさっきみたいに動けるわけないだろ、少しは俺のことを信用してくれないか」
ルーナ「何言ってんの、信用してるから戦うの。あたしたちカムイ様に背中を預けられてるんだから……。今一人でも抜けたら押し込まれる。だから退けない、退いたらカムイ様とアクア様の背中を誰が守るのよ……」
オーディン「ルーナ……」
ルーナ「二人の背中、絶対に守り切ってみせるんだから……」ググッ チャキンッ
オーディン「はぁ、相変わらず負けず嫌いだいな、お前はさ……」
ルーナ「うっさいわね……文句ある?」
オーディン「いや、ルーナらしいって思っただけだよ。ここからはお前の指示に合わせる、頼んだぜ」
ルーナ「そ、そう……ありがと」
オーディン「ん、なんだ?」
ルーナ「なんでもないわよ、それじゃ――」
ニュクス「ねぇ、二人とも盛り上がっているところ悪いのだけど」
オーディン「ん?」チラッ
ルーナ「え?」チラッ
ニュクス「射線を開けてちょうだい……」シュオンシュオンシュオン
二人『あ、はい』 サッ サッ
メイド「!!! 全員、避け――」
ニュクス「灰にしてあげる。はああっ」シュンシュンシュン!!!
ボボボボッ
ドゴゴゴンッ!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・最上層『大広間前・廊下』―
タタタタタッ
カムイ「ここが最上階ですね」
アクア「そうみたいね……。それに部屋も一つしかないみたいだから」
カムイ「はい、時間はありません、行きましょう」
アクア「ええ」
タタタタタッ
スーッ パタンッ!
スタスタッ
カムイ「……」
アクア「カムイ」
カムイ「はい、わかっています。ユキムラさん、そこにいるんですよね……」
ユキムラ「ふむ、思ったよりもはやく到達されてしまいましたか、どうやら兵が少なかったようですね……」
アクア「ここから逃がすつもりはないわ」チャキッ
ユキムラ「そうですか。まぁそうでしょうね、ここから逃げるのはとても難しそうです」
カムイ「はい。ユキムラさん、投降してください、もうテンジン砦の内部に白夜の軍勢はいません。あなたはもう一人です」
ユキムラ「ええ、そのようですね……」
アクア「あなたが何を考えていたか知らないけれど、私たちのほうがそれよりも早く辿りついたということよ。もうできることはなにもないわ」
ユキムラ「………」
カムイ「ユキムラさん。私はあなたと争いたくはありません、リョウマさんだってそう考えているはずです」
ユキムラ「……ふふっ、争いたくないですか。ならばここで死んでください。そうすれば、私はすぐにでも投降しますよ」
カムイ「え?」
アクア「何を言ってるの?」
ユキムラ「カムイ様はこの戦争を終わらせたいのでしょう? 私の戦争はあなたが死ぬことで終わりを迎えるんですよ。そうあなたが死んでしまえばそれでいい、とても簡単なことですよね? あなたが一人死ぬことで、この争いは終わるんですから、さぁ、今すぐ死んでください……。戦争を終わらせるために、ね?」
カムイ「今さら私一人が死んで何が変わるというんですか! そんなことで変わるのなら、とっくに私は!!!」
スッ
カムイ「あ、アクアさん……」
アクア「カムイ、ユキムラに何を言っても無駄よ」
カムイ「でも――」
アクア「これ以上あなたに辛い話を聞かせ続けるわけにはいかない。だから私が終わらせる……」
サッ シュオオオンッ
ユキムラ「一体何をするつもりですか……」
アクア「……教えるつもりはないわ」
アクア(絶対にあいつの思い通りにはさせない。たとえ、呪いに苦しむことになっても、カムイにこれ以上の苦痛を与えさせたりしない!)
シュオオオオンッ
アクア『♪~ ♪~ ♪~』
シュオオオオオオンッ!!!!!
アクア(あなたの野望はここで終わり、だからカムイ――)
(もうあなたが苦しむこともなくなるはずよ……)
今日はここまで
ユキムラとミコトの関係は、なんていうか女王と軍師とは違うものな気がしている
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・北部第五関所『地下道・入口』―
ラズワルド「サクラ様、足元に気を付けて」
サクラ「は、はい……。ここまで誰もいませんでしたね……」
ラズワルド「そうだね。第五関所は捨てる前提だったのは間違いなさそうだよ。気になるのは関所を放棄して何をしたかったのかってところだね」
サクラ「そ、そうですね」ソワソワ
ラズワルド「どうかした?」
サクラ「いえ、その……」チラッ
写し身スズカゼ「」
ラズワルド「あー、スズカゼには悪いけど、無言で付いてくるからちょっと不気味だよね」
サクラ「あ、あはは……」
写し身スズカゼ「」チャキッ
サクラ「ご、ごめんなさい……。その、悪気とかはなくて……」
ラズワルド「いや、そうじゃないよ。あれを見て」
サクラ「? あ、あれって……」
からくり人形「」カタカタカタ
サクラ「からくり人形ですね、ここを守っているんでしょうか?」
ラズワルド「こっちに気づいてないみたいだから、今のうちに壊しちゃおう。写し身も一緒にしかけてくれるよね?」チャキッ
写し身スズカゼ「」コクリッ
ラズワルド「いくよ」タッ
写し身スズカゼ「」タッ
バシュッ ドゴンッ
からくり人形「」ガシャンッ……
ラズワルド「まぁ、こんなものかな……。サクラ様、何かあった?」
サクラ「はい、地下道の入口がありました。……やっぱり、ここも塞がれてます」
ラズワルド「そっか……。ここまで念入りだと、地下道を利用されないためっていうのが有力かな。さすがに少ない人員だと地下道全てを使いこなすのは難しいからね」
サクラ「やっぱりそういうことなんでしょうか。……あれ?」
ラズワルド「サクラ様?」
サクラ「ラズワルドさん、あの天井の隙間なんですけど、何かあるみたいです」
ラズワルド「天井の隙間……これはヒモみたい、だけどただのヒモじゃないね、なんかヌメヌメしてる。スンスン……油が染み込んでるみたいだ」
サクラ「そのヒモ、塞がれた地下道に繋がってるみたいなんです。利用されたないために作業をした残りでしょうか……」
ラズワルド「……この石をどけて調べてみた方がいいかもしれない。このヒモは上から来てるみたいだから、サクラ様が見つけた布陣となにか関係があるかもしれない。もしかしたら、サクラ様が不思議に思ったことの答えが見つかるかも」
サクラ「ラズワルドさん、ありがとうございます。それじゃ、さっそく――」
マークス『サクラ王女、聞こえるか』
サクラ「は、はい。どうかしましたか?」
マークス『サクラ王女、現在侵攻軍が南部へと移動している。おそらく、南部の関所を越えてテンジン砦に向かうつもりなのだろう。現在、われわれは第五関所に向かっている。周辺の安全は確保されているか?』
サクラ「はい、大丈夫です」
マークス『よし、私は関所に留まれるが第一陣はそのまま道を抜け、テンジン砦正門に展開するために関所に残ることはできん。第二陣は敵と交戦している。第二陣到達時に敵も攻めてくるはずだ、すまないが援護の準備をしてくれるか?』
サクラ「わかりました。みなさんに指示を出しておきますね」
マークス『すまない、一度合流しよう』
サクラ「はい」
ラズワルド「マークス様からだったみたいだね」
サクラ「はい、侵攻軍が南部から攻めてくると言っていました」
ラズワルド「南部から攻めてくるってことは、白夜兵はもうそこにいないってことだよね……。このままじゃ包囲殲滅されかねない。気になるけど、まずは安全を確保しよう」
サクラ「はい、簡単にこの石をどかせられるようには見えませんから」
ラズワルド「結構時間を掛けないと中には入れないだろうし、皆がここまで退いてからもう一度調べに戻ってこよう」コンコンッ
パラ……
パラパラッ
サクラ「?」
ラズワルド「え?」
ドゴォンッ ゴロゴロゴロッ
ラズワルド「うわっ!!!」ササッ
ドゴンッ……
サクラ「ラズワルドさん、すごい力持ちだったんですね」
ラズワルド「いや、ちょっと剣で叩いただけなんだけど……」テクテク
カコンッ カランッ
ラズワルド「……パッと見すごく頑丈に見えてたけど、ただ石を積んでるだけか。視覚的に崩すのが難しいって思わせたかったみたいだね」
ラズワルド(今さっきのヒモは……まだ先まで続いてるのか……)
ラズワルド「少しだけ調べておこう」
サクラ「は、はい」
ザッ ザッ ザッ
ラズワルド「……ん、これって」
サクラ「俵ですね……」
ラズワルド「壁に打ち付けるみたいに固定されてる。物が入ってる気配はないけど……。でも、変わりにすごい魔力を感じるね」
サクラ「一つ外せそうですか?」
ラズワルド「ちょっと無理そう、かなり頑丈に付けられてるみたいだからね、中に何が入ってるのかだけは確認しよう」
ラズワルド「よし、それじゃあけるよ」チャキンッ
サクラ「はい」
ザシュッ スッ
ブォンブォン……
ラズワルド「これは白夜の布陣だね、かなり何重にも重ねて作られてるみたいだけど……」
サクラ「……え、これって、まさか――」
~~~~~~~~~~~~~~~~
スズカゼ「火を起こす布陣ですか?」
アドベンチャラー男「ああ、安心とけって、威力は直に触れて火傷するくらいってとこだ」
アドベンチャラー女「ここにいた敵が、こんなものをわざわざ準備していたということですか……」
スズカゼ「はい。妙ですね」
アドベンチャラー男「それも妙だけど、こっちも妙だったんだよ。白夜の連中の動き、あの数で全然攻めてこねえんだからな」
アドベンチャラー女「スズカゼさんが戻ってきたと同時に去っていきました」
スズカゼ「ですが関所が落ちたことを察して帰っていった、おかしい話ですね。彼らは関所を守りに来たはずではなかったのですか?」
アドベンチャラー女「彼らの目的は内部で行われていた作業完了の手助けだったのかもしれません」
アドベンチャラー男「関所が俺達に制圧されることは関係なかったのかもしれないな、だって簡単に取らせてるって感じしかしねえぞ」
アドベンチャラー女「……ん、これは」
スズカゼ「何か見つけましたか?」
アドベンチャラー女「いえ、この柱の根元にロープのようなものが……」
アドベンチャラー男「どれどれ。うわっ、ネトネト、油が染み込んでやがる。それにまだまだ引っ張れそうだ。よっ、よっと」スルスルッ
ペチャンッ
アドベンチャラー女「長さは……ちょうど布陣に届くくらいですね」
スズカゼ「火の布陣にまで届く、油が染み込んだ縄ですか……」
ドドドドドドドッ
スズカゼ「むっ?」
パカラパカラッ
アドベンチャラー男「あれって第四関所で戦ってた連中だよな。なんでこっちに?」
アドベンチャラー女「サクラ様が応援を要請したとか?」
ドドドドドドドッ
アドベンチャラー男「って、おい。通り抜けていったぞ」
スズカゼ「ふむ、すでに何かしらの準備が始まっているのかもしれません」
アドベンチャラー男「なら、さっさと合流しようぜ。ここで待ってても埒が明かねえ」
スズカゼ「そうですね、一度サクラ様たちと合流しましょう。いろいろと気になったこともあります」
スズカゼ(おそらく、サクラ様たちも何かを見つけられたはず、それによっては……何が行われようとしているのか、そのおおよその察しが付くかもしれません)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・北部『第四関所周辺』―
ドドドドドッ
カムイ軍地上兵「第一陣が関所を越えました、テンジン砦正面に向かったとのことです」
ギュンター「よし、われわれも退くぞ。後続より、撤退準備に入れ」
カムイ軍地上兵「はい、弓兵、一度前方へ正射! 敵の足が止まったと同時に反転、関所まで退け!」
カムイ軍弓兵「全員正射準備! 放て!!!」
ヒュンヒュンヒュン!!!
ザクッ キィン カキィン ズビシャッ
侵攻軍「ちぃ、弓に注意しろ! おい、いつまで敵の飛竜部隊を相手にしてんだ! 早くどうにかしろ!!!」
ギュンター「よし、今だ!」
カムイ軍地上兵「はい、全員関所まで退け!!!」
ドドドドドドッ
レヴナントナイト女「最後の撤退が始まったみたいです、カミラ王女様」
カミラ「そう、ならもうひと踏ん張りしないとね?」キィン
ドラゴンマスター「やっとかよ、くそ、腕が痺れてきやがった……」
カミラ「男の子なんだからしっかりしなさい?」
カミラ(どうにかここまで耐えてきたけど、残りの人数も少なくなっちゃたわね……)
侵攻軍「おらああっ」ブンッ
レヴナントナイト女「わわっ」
侵攻軍「しねええぇ!!!」シュッ
ドラゴンマスター「よそ見してんじゃねえぞ、こら!!!」ブンッ
ザシュッ
侵攻軍「ぐえあああっ」ドサッ
ドラゴンマスター「おら、最後まで気を抜くんじゃねえ。カミラ王女様にハグハグしてもらうんだろ?」
レヴナントナイト女「あ、ありがと……。あいつらさっきより攻勢に出てきてるよね……」
カミラ「多分撤退に感づいたのね。このままだと、私達が包囲されかねないわ」
ドラゴンマスター「じゃあ、どうするんだ」
カミラ「私達も撤退の準備に入りましょう。敵の最前列を強襲しつつ、合図を待つわ」
レヴナントナイト女「わ、わかりました!」バサバサバサ
ドラゴンマスター「最前列って、また地獄が近くなった気がするぜ」バサバサバサ
カミラ「でも、これで少しは時間が稼げる。敵の矢に気を付けて、当たったらそれまでよ」ザッ
侵攻軍「敵、飛竜部隊最前列に向かいます!」
侵攻軍「よぉし、無防備な背中にたらふく当ててやれ!!! 弓兵、準備次第各自放て!!!」
パシュッ
パシュッ
パシュッ!!
ザシュッ!
カムイ軍飛竜兵「うあああっ、ぐっ、くそ――」ドサッ
侵攻軍「落ちたぞ! とどめを刺せ!!!」
ザシュシュ
カムイ軍飛竜兵「ぎゃあ!!!」
侵攻軍「残りも逃がすな!!!」
ドドドドドッ
レヴナントナイト女「もう一名やられました。ああっ、また一人!」
ドラゴンマスター「今は自分の心配だけしとけ! よし、最前列を視界にとらえた!!!」
カミラ「いくわよ!!!」ジャキッ
ブオンッ
ビュンッ
カミラ「はあああっ!!!」ブンッ
ズシャッ
侵攻軍「くそっ、邪魔をするな!!!」
侵攻軍「敵の兵が逃げます!」
侵攻軍「今はこっちをどうにかするのが先だ!!!」
カミラ(うまくこちらに意識を向けさせられた、このまま戦えれば……)
……サッ……バサッ
レヴナントナイト女「ん! カミラ王女様、上を!」
カミラ「え?」
バサバサバサッ
侵攻軍飛竜部隊「よし、すでに敵の地上兵は退いている! 残っているのは奴らだけだ! 上空から抑え込んで叩き伏せろ!!!」
ドラゴンマスター男「うっそだろ、おまえ!!! 上空の連中全員やられちまったのか!?」
カミラ(上が抜かれた。全滅したわけではなさそうだけど……)チラッ
レヴナントナイト女「はぁ……はぁ……うっ、このままじゃもたない!」
ドラゴンマスター男「こんなのきりがねえ……。ぐああっ、ちくしょう!!! 死んでたまるかってんだよ!」
カミラ「みんな、落ち着いて。敵の数に圧倒されちゃ駄目よ」
レヴナントナイト女「そ、そんなこと言われても!!!」
ドラゴンマスター男「こんな数、相手に出来るわけないだろぉ!!!」
カミラ「私達ならどうにかできる、マークスお兄様はそう判断してくれたの。マークスお兄様の合図があるまでここに踏み止まりましょう。最後まで一緒にいてあげるから……ね?」
ドラゴンマスター男「ちくしょう……。そこまで言われたらもう退けねえじゃねえか。王女にそんなこと言われちまったらよぉ!!!」
レヴナントナイト女「これ、カミラ王女様からのハグだけじゃ釣り合わないよ……」
ドラゴンマスター男「俺ら男はなにももらえないんだけど!?」
レヴナントナイト女「それはそれ、これはこれだよ。いいもん、カミラ王女様にハグしてもらったら、いっぱいスンスンしちゃうんだから!」バサッ
ドラゴンマスター男「なにそれ、ちょっとみたい」バサッ バサッ
カミラ「あらあら、少しご褒美を追加しないといけないわね……」
マークス『ははっ、そのようだな』
カミラ「……え、マークスお兄様?」
マークス『こちらの収容はもうすぐ完了する。敵は引き連れてきても構わん、歓迎の準備は整っているのでな』
カミラ「そう、よかった。いっぱいお客を連れて行くから、思いっきり抱きしめてちょうだいね?」
マークス『まかせておくといい』
カミラ「……みんな、最後に攻撃を繰り出したら一気に上昇するわ。上空で戦ってるみんなにも合図を出して」
ドラゴンマスター男「え、ってことは……」
レヴナントナイト女「もしかして、準備ができたってことですか!?」
カミラ「そういうこと。さぁ、最後の攻撃だから、気を抜いちゃ駄目よ」
侵攻軍「来たぞ!!!」
バサバサバサッ
カミラ「はあああっ!」ブンッ
ドゴンッ
侵攻軍「ぐあああっ」ドサッ
カミラ「今よ、上がって!!!」
バサバサバサバサ!
侵攻軍「え、急上昇して反転……。そうか、やつら逃げるつもりだ! 全員、このまま関所まで攻め入るぞ!!!」
カムイ軍飛竜部隊「カミラ王女様!」
カミラ「全員合流したわね? それじゃ、関所へと向かいましょう」
ヒュン
ヒュン
ヒュン
マークス「……来たぞ。ギュンター!」
ギュンター「はい、皆の者、構え!」
カムイ軍弓兵「……」チャキッ
マークス「目標、敵飛竜部隊!!!」
バサバサバサッ
カムイ軍兵士「我が方の飛竜部隊の通過確認しました」
マークス「よし、やれ!!!!」
ギュンター「放て!」
タンタンタンッ!!!
フギャアア ドサッ
ドスンッ
ギュンター「弓を絶やすな!」
マークス「よし、今だ門を閉めよ!」
ガチャンッ ギギギギギイッ バタンッ
侵攻軍「ちっ、門を閉じられたか! 上空のはなにをやってんだ、さっさと制圧しろ!!!」
侵攻軍「敵の弓の攻撃により進軍を制限されています!」
侵攻軍「くそ、関所を破壊する。術式を準備しろ!」
侵攻軍「そ、そうしたいのですが。敵の攻撃が激しくとても近づけません!!」
侵攻軍「ちっ、一度距離を取れ、体勢を立て直す!」
タタタタタッ
カミラ「はぁはぁ、どうにかなったわね」
ドラゴンマスター男「も、もうさすがにこんな修羅場はご免ですよ。しばらく夢に見ますよこんなの……」
カミラ「ええ、私もごめんよ……」
タタタタタッ
レヴナントナイト女「カミラ王女様ーーー」
ギュウウウッ
カミラ「きゃ。もう、まだご褒美の時間じゃないわよ?」
レヴナントナイト女「はぁはぁ、カミラ王女様、とってもいいにおいです」スンスンスン
カミラ「もう、がっつかないの。でも、いっぱい戦ってくれてありがとう」ナデナデ
レブナントナイト女「ぼへへっ……」スンスンスン
ドラゴンマスター男「まったく、まだ戦いは終わってないってのによぉ。まったく…………ふぅ……。まったく……」
タッ タッ タッ
カミラ「?」
マークス「その様子では、おまえを抱きしめるのは難しそうだな?」
カミラ「マークスお兄様」
マークス「無事でよかった。そしてありがとう、お前たちのおかげで撤退は無事に完了した」
カミラ「ふふっ、お礼はおいしいケーキがいいわね」
マークス「ああ、戦いが終わり次第ピエリに頼んでおこう」
カミラ「ふふっ、ピエリの作る料理はおいしいから楽しみが増えちゃうわ」
マークス「……カミラ」
カミラ「なにかしら?」
マークス「危機を脱してすぐにすまないが移動を始める。すぐに準備をしてほしい」
カミラ「え? ここと南部の侵攻軍を抑えるんじゃなかったの?」
マークス「いや、われわれはこのままテンジン砦を抜け、白夜側へと出る。テンジン砦へサクラ王女たちを向かわせた。カムイ達と合流した後、ここは放棄する」
カミラ「テンジン砦をマクベスたちに手渡すというの? それにそんなことになったら白夜は数少ない防衛の要を失うことになるのよ?」
マークス「カミラ……おまえの言う通りだ。ここを失うことは白夜にとって大きな痛手になる、普通なら奪われないように戦力を集中させなくてはいけない。白夜を侵攻軍から守るためにも、本来なら守り抜かなくてはいけないこともな」
カミラ「なら……」
マークス「普通ならばそう考える。だがそうすることで、あの男……ユキムラの策が完成してしまう」
カミラ「え?」
マークス「奴にとってここはもう防衛の要、死守すべき砦ではない。テンジン砦からの脱出は迅速に行う必要がある。まずは正門を侵攻軍より先に抑えなければならん。侵攻軍に逃げ道を塞がれたら最後、われわれに助かる道はない……」
カミラ「その策っていうのは一体何なの……」
マークス「奴の狙い、それは――」
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・内部『最上層・大広間』―
アクア「♪~ ♪~ ♪~」
アクア「♪~」
カムイ(もう、長く歌を歌っている。ユキムラさんはそれほどまでに侵されているということなんですか……)
アクア(……)
アクア(おかしい……)
アクア(ユキムラがさっきから発している悪意、殺気は衰えない。これが奴の物であるなら、その感触を得ることができるはずなのに……)
アクア(そんなものは感じない。カムイに向けられてる悪意は純粋で、殺意は一片たりとも途切れることがない。私の歌なんて届いていないようにさえ感じる……)
ユキムラ「……」
アクア(……まさか、そういうことだというの……)
アクア「♪ ……」
ユキムラ「もう終わりですか」スタッ
サッ
カムイ「アクアさんには指一本触れさせません」
アクア「カムイ……」
カムイ「大丈夫です、私があなたを守ります。それにあと少しのはずです、あと少しでユキムラさんの中にいるあいつを追い出せるんですよね?」
アクア「……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「……ごめんなさい」
カムイ「何を謝っているんですか? アクアさ――」
アクア「どんなに歌っても、私の歌はユキムラに届かない……私の力は何の役にも立たないの……」
カムイ「何を言って……、ユキムラさんは奴に侵されているだけのはず……」
アクア「カムイ、それは推測よ。でもタクミの一件もあって、私も奴の仕業と思っていたわ。でも違う、ユキムラはユキムラ本人の意思でここにいる。誰かに操られているわけじゃない、純粋な悪意は私の歌で抑えられる物じゃないのよ……」
カムイ「そ、そんな……」
カムイ(この殺気や悪意はユキムラさん本人のものだというんですか……)
ユキムラ「はぁ、歌を歌い始めたので何かと思ってみていましたが、何も起きませんでしたね」スタッ
ユキムラ「ふぅ、少しばかりの暇つぶしにはなりました。何がしたかったのか、私にはさっぱり理解できませんでしたが、あなたにとって都合のいいことを信じての行動だったんですよね、カムイ?」
カムイ「!!!」
ユキムラ「だからあなたは私の元までやってきた。大方、なにかしら私の心を変える事ができると思いあがっていたのでしょうが、先ほど言いましたね。私の願いはただ一つ、あなたが死ぬことだけなんですから。ですが、おまけに暗夜の滅亡を含んでもいいくらいですね。あなたを信じる方々、そして白夜をこの先も苦しめるであろう暗夜などという国を生かしておく通りはありません。あなたというミコト様を裏切った存在がいる国なのですから……」
カムイ「そ、それは……」
ユキムラ「ミコト様がどれだけあなたを腕に抱く日を待ち望んだのか。たとえ時間が過ぎようとも家族としての日々をもう一度歩み出せると思っていたのに、あなたはその心を踏みにじってくれました。ミコト様を殺した暗夜に加担するという最悪の形で、だから白夜から去っていくあなたの姿を見たその時から決めていたんですよ」
ユキムラ「あなたの持つ希望や夢、それを根こそぎ奪い去ってから殺そうとね」
ユキムラ「あなたが紡ごうとしている平和に価値などありませんし、あなたの行いによって平和を謳う民など存在していいわけがない……。そんな者たちを生むわけにはいきません。続いて来た歴史、ミコト様が紡いできた白夜の歴史にそんなものは必要ありません……」
カムイ「私がしてきたことは無駄だったというんですか!?」
ユキムラ「少なくとも私にとっては無駄ですよ。あなたの望む平和など無い方がいい……。私はそう思っているんですよ」スッ
アクア「それは……なに?」
ユキムラ「これですか、これは今日のために作り上げた特別なからくりです。このためにテンジン砦であなた方の動きを予想するのに骨が折れましたが、ここまでうまく決まるとは思いませんでした。暗夜の侵攻軍を指揮する方がそれなりにうまく動いてくれましたので、準備は整いましたよ……」カチッ
シュオンッ!
ホッ ボッ ボッ
アクア(部屋にこんな大量の布陣が? でも、ただ炎が付いただけだけど、これは一体……)
ユキムラ「……」ガチャンッ
ガゴンッ ビュオオオオオッー
カムイ「うっ、なにが……」
ユキムラ「それでは、失礼しますね」タッ
アクア「! 逃がさないわ!!!」ダッ
ユキムラ「最初から、そうすればよかったのですが、生憎もうその時間はありませんよ」
バサ バサッ
金鵄武者「……」チュキッ
アクア(金鵄武者!?)
パシュッ
アクア「くっ」サッ
カムイ「アクアさん。こっちです」ガシッ
タタタタッ
トスッ パシュッ
キィン
カムイ「……くっ」
ユキムラ「さぁ、行くとしましょうか」
金鵄武者「はい、ユキムラ様」バサバサッ
バサバサバサ……
バサバサ……
バサ……
……
アクア「……」
カムイ「……アクアさん、私は」
アクア「大丈夫、あなたの進んできた道に間違いはないわ。だから、そんな声を出してはだめ……」
カムイ「……はい」
タタタタタタッ
バタンッ!!!
カムイ「!!!」チャキッ
サクラ「カムイ姉様!!!」
カムイ「サクラさん!?」
アクア「サクラ、どうしてここに?」
サクラ「早く、ここから、このテンジン砦から出ないとダメなんです!」
カムイ「どういうことですか?」
サクラ「それが――」
~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―テンジン砦・上空―
ユキムラ「それで、北部第五関所以外は点火されましたか?」
金鵄武者「はい、問題無く起動したようです」
ユキムラ「そうですか、それで兵たちは?」
金鵄武者「現在本隊は砦白夜方面に展開しています。合図があればいつでも」
ユキムラ「そうですか、それで敵はどんな動きを?」
金鵄武者「旧暗夜と呼ばれている方は、現在南部第五関所を破壊してテンジン砦正門へ向かっています。ですが、新生暗夜の軍勢はこちらの狙いに気づいていたようです」
ユキムラ「なるほど、本当に悪運が強いものですね。気づかなければ、焦ることなく最後を迎えられたというのに……」
金鵄武者「今から飛行戦力を送って妨害しますか?」
ユキムラ「いいえ、その必要はありませんよ。テンジン砦から脱出するために無様に転げまわる姿を見るのも楽しいものですし、もし脱出できたとしても結果は変わりません」
金鵄武者「はい、わかりました。それにしてもユキムラ様も大胆なことをされますね……」
ユキムラ「そうでもありませんよ。同時に集めた二つの脅威を取り除こうとするなら――」
「砦を丸ごと吹き飛ばすくらいしないといけませんからね……」
今日はここまで
アクアの力はハイドラによって扇動された悪意は歌で沈められるけど、その本人によって作り出された悪意はどうにも出来ない的な感じです。
あと、多分ゲームにすると、このテンジン砦からの脱出がステージになる気がする。左から旧暗夜軍、脱出方角の右には白夜軍という感じで。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦『内部』―
タタタタタッ
カムイ「サクラさん、それは本当なんですか」
サクラ「はい、地下道に幾重にも重ねた呪いの布陣が大量に設置されていました。おそらくですけど、地下道すべてに仕掛けられているんだと思います」
アクア「そんなものが一斉に発動したら、ひとたまりもないわね……。どうにか取り除くことはできないの?」
サクラ「すみません。呪いが発動するのに熱が必要だということはわかったんですけど……。一つ外すのにも時間がいっぱい必要で、とても全てを外すことは……」
カムイ「仕方ありません、テンジン砦から脱出しましょう。サクラさん、白夜方面へと抜ける門はどうでしたか?」
サクラ「それが白夜に向かう正門は完全に破壊されていて、今二階のほうを皆さんに探索してもらってるところなんです」
アクア「二階から地上へ降りて、そこから白夜方面へ向かう。今はそれしかなさそうね」
サクラ「はい、スズカゼさんとラズワルドさんも向かっています」
カムイ「では、サクラさんはお二人と一緒に脱出路の確保をお願いします」
サクラ「わかりました」
アクア「サクラ、その仕掛けはどれくらいで起動するものに見えたかしら?」
サクラ「呪いを大量に重ねていましたから、すぐに発動はしないと思います」
アクア「そう……、だけどあまり時間はないと考えるべきね」
サクラ「どういうことですか?」
アクア「さっき、ユキムラがからくりを使用して、その瞬間に多くの呪いが動きだしたから、おそらくもう起動自体は始まっているはずよ」
カムイ「そういうことですから、サクラさんはラズワルドさん達と合流して、脱出路の確保に専念してくれますか?」
サクラ「はい、わかりました!」
タタタタタッ
カムイ「とりあえず、ルーナさん達と合流しましょう」
アクア「ええ、向こうで何やら燻っているようだから……」
カムイ「皆さんの先にある部屋にあの人たちが逃げ込んだのかもしれません」
アクア「だけど、相手をしている暇はないわ。何時仕掛けが火を噴くかわからないもの」
カムイ「ええ。こう話してる間にそうなってしまうかもしれませんからね」
アクア「そういう冗談はやめ――」
ドゴォンッ
アクア「きゃっ」
カムイ「アクアさん、大丈夫ですか?」
アクア「え、ええ。ありがとう……///」
カムイ「ふふっ、それにしても大きく揺れましたね」
アクア「もう、仕掛けが動いたというの?」
カムイ「いいえ……、だとしたら私達は死んでいると思います。それに今の衝撃と音は正門のほうからみたいです。同時に多くの魔法が使われたのかもしれません。たぶん、侵攻軍がやってきているのでしょう」
アクア「そう、思った以上に逃げ場がないのね。私達は……」
カムイ「はい……」
カムイ(だとしても、私は……)
アクア「カムイ?」
カムイ「なんでもありません、それより脱出路の確保に向かいましょう。マークス兄さんたちがスムーズに抜けられるようにするために」
アクア「わかったわ」
タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦・西部正門前―
マークス「被害の状況は?」
ギュンター「今の攻撃で軽装部隊に大きな被害が出ました」
マークス「ちっ、まだ持ちこたえてくれ」
侵攻軍「しね、マークス王子!!!!」ダッ チャキッ
マークス「ジークフリート!!!」
シュオンッ バシュウッ!!!
ザシュッ ドサッ
侵攻軍「ぐあああっ……」ドサドササッ
侵攻軍「ひるむな、正門の抑えテンジン砦確保の橋頭保を築く! 北部から展開している者たちの合流も近い、このまま押し込め!」
マークス「ちっ、北部からも敵が流れてきたか」
ギュンター「はい、先ほど爆発音を確認しました。おそらく、突破されたのでしょう」
マークス「くっ、よし正門内部まで下がる。重装兵は敵の攻撃を防ぐために横列陣形に切り替えろ!」
カムイ軍重装兵「はい、全員隊列を組み直せ、正門へ一人たりとも通すな!」
バサバサバサッ
カミラ「マークスお兄様、全方位から敵の飛竜隊が来る。かなりの数よ」
マークス「包囲するつもりのようだな。よし、軽装兵は砦内部へと入り、退路確保の応援に向かえ。カミラ、上空から援護を頼む」
カミラ「わかったわ……ん?」
シュオオオオッ
カミラ(これは魔法の文様! はっ!)
???「見つけましたよ、マークス王子……」シュオオオッ
カミラ「マークスお兄様!」
ガシッ グイッ!
マークス「な、なにを――」
???「ミョルニル!!!!」
ドゴオオオンッ!!!
マークス「!?」
カミラ「あぶなかったわ」
マークス「カミラ、ありがとう。おかげで助かった」
カミラ「どういたしまして、でも会いたくない相手に見つかっちゃったみたいね」
マークス「そのようだな」
???「ふむ、カミラ王女に気づかれるとは思いませんでした。マークス王子は腑抜けになっているようですがねぇ……」
マークス「マクベスか……」
マクベス「まだ私の名前を覚えているとは、正直忘れていただきたかったものですよ」
ギュンター「マークス様、お下がりください」
マクベス「ふん。そのような老兵に守られているとは、王女の軍勢は思った以上に寄せ集めのようですな」
ギュンター「ふっ、その寄せ集めにここまで苦戦するようでは、ガロン王の率いる者たちの力も知れるというものだ」
マクベス「減らず口を叩けるのも今のうちです。魔法部隊、敵の壁を叩きますよ」
ザザザザッ
マークス(すでにこの人数を配備していたのか!?)
マークス「全員、隊列を崩し、散開せよ!!!」
マクベス「遅い、やれ!」
シュオオオオッ
ドゴォオオオンッ!!!!
カムイ軍重装兵「ぐああああっ!!!!」ドサッ ガシャンッ
マークス「くっ、負傷者を救出する、ギュンター!」
ギュンター「任されました」ダッ
マクベス「無駄なこと、さぁこちらへ。ドロー」ブンッ
シュオンッ ドサッ
カムイ軍重装兵「ぐううぅ、たすけ――」
ガシッ
マクベス「ここまで御苦労なことです。あの王女を恨みながら死ぬと良い」ボッ
ボワアアアアッ
カムイ軍重装兵「ぐぎゃあああっ、あづ、あぢぅ、うあがああっ……」
プス……プス……
マクベス「ふん、哀れなことですねぇ。ガロン王様と共に歩めば、ここで死ぬこともなかったでしょうに。愚かで見ていられませんねぇ」
マクベス(くくっ、ガロン王様に仇成す者を殺すというのは、これほどに楽しいものなのですか)
マクベス「ひゃは、ひゃはははははは」
マークス「貴様……」
マクベス「おっと、思わず笑ってしまいましたよ。さぁ、容赦はいりません、存分に殺し付くすのです!!!」
ウオオオオオオッ
ドドドドドドッ
マークス「くっ、数の上では完全に劣勢か……」
マークス(このまま、一点を突破されれば正門前を抑えられることになる。それは避けなくてはならん!)
マークス「ギュンター、ここが限界点だ。全軍にテンジン砦に入るよう通達せよ」
ギュンター「わかりました。全員、テンジン砦内部へと退け!」
マクベス「今さら撤退の選択とは遅いですねぇ。騎馬隊は移動している集団に横から喰らいついて分断し、各個に撃破しなさい。敵は好きにして構いませんのでねぇ」
侵攻軍騎馬隊長「了解! よぉーしてめえら、逃げ腰の奴らに教えてやれ、てめえらがガロン王様に叶うわけもない虫けらだってことをな!!!」
ドドドドドッ
カミラ「まずいわね。ギュンター!」
ギュンター「心得ております」
マークス「私も向かう! 全員、テンジン砦へと向かい続けろ! はぁ!!!」
ヒヒーンッ パカラパカラ!
侵攻軍騎馬隊長「へっ、くそ王子の集団が来るぜ。神器ジークフリートだなんだかしらねえがビビんじゃねえぞ。結局、あれもただの剣だ。気にすることもねえ!」
侵攻軍騎馬隊「なら隊長、俺たちから行きます!!!!」
侵攻軍騎馬隊長「いいぜ、喰らいついてこい!」
侵攻軍騎馬隊「よっしゃ、行くぞ!!」
パカラパカラッ
バサバサッ
カミラ「行かせないわよ」ブンッ
ザシュッ ゴトリッ…… ドササッ
ギュンター「行かせはせん!」ザシュッ
マークス「くらえ!!!」シュオンッ ザシュンッ!!!!
ドササッ
侵攻軍騎馬隊長「おおっ、こわいこわいねぇ。だが、こっちの人数をすべて相手取るのは無理だろうけどな! おら、右側が開いたぞ、一番最初に敵の列に達した奴には何でも好きな物くれてやるぜ」
侵攻軍騎馬隊「うおおおおっ!!!」
侵攻軍騎馬隊長「残りは左から行きな。あの三人を相手にするこたねえ。無視していけ!」
侵攻軍騎馬隊「いくぜ!!!」
ドドドドドドッ
カミラ「しまった――」
ギュンター「くぅ……」
マークス「させん!!!」グルンッ
シュオンッ バシュッ!!!
サッ
マークス(くそっ……)
侵攻軍騎馬隊「一番乗りだぁああ!!」ブンブンッ ポイッ
ザシュッ
カムイ軍兵士「ぐああっ」ドサッ
カムイ軍兵士「横から来るぞ!!!!」
侵攻軍騎馬隊「このまま突っ切れ!!!」
ドドドドドッ
カミラ「分断……されたわ」
マークス「待っていろ、今向かう!!!」
カムイ軍兵士「いいえ、マークス王子たちはこのままテンジン砦へ!」
マークス「しかし!!!!」
カムイ軍兵士「残念ですが、私達に逃げ場はありません、ここで戦い少しでも時間を稼ぎます……」
ギュンター「……マークス様」
マークス「……すまない」
カムイ軍兵士「共に戦えたこと光栄でしたと、カムイ王女にもお伝えください。いくぞ、私達に退路はもはやない、ここで戦い新しい暗夜の力を見せつけよ!!!」
ウオオオオオッ
キィン ザシュッ
カキィン!
マークス「……残っている者たちはテンジン砦へ向かえ! カミラは迂回し白夜方面の様子を探って欲しい」
カミラ「ええ、サクラ王女たちの援護に回るわね……」
バサバサバサッ
マークス「……」
マークス(……お前達の意思、決して無駄にはしない)
侵攻軍シーフ「マークス王子の一団がテンジン砦に向かいます。どうやら逃げに転じたようです」
マクベス「そうですか。まぁ、そうなるでしょう、分断した敵の部隊は好きにして構いません」
侵攻軍シーフ「はい、すでに貴族連合の者がテンジン砦に肉薄ししつつありますが……」
マクベス「勝手に動かれては困るのですが。今はいいでしょう。それより……」
侵攻軍シーフ「いかがされましたか?」
マクベス「いいえ、なんでもありません。手の空いている者に負傷者の移動と手当てをするように伝えておきなさい」
侵攻軍シーフ「はっ」シュタッ
マクベス「……戻ってきませんねぇ」
マクベス(あのメイド、おそらく砦の中で……。これで紅茶を淹れはなくなりましたねぇ……)
マクベス(……)
マクベス「テンジン砦を手にいれた後に遺体くらいは探してあげましょう……」
タタタタタタッ
マクベス(むっ……後方から数名、一体誰が?)クルッ
ランサー女「はぁはぁ、運良くここまでこれた―」
ブレイブヒーロー「ああ、どうなるかと思ったが試してみるものだな」
アドベンチャラー「抜け道作っておくとか、白夜ナイスぅって感じだぜ」
メイド「……マクベス様、申し訳ありません。カムイ王女の命、奪うこと叶いませんでした」
マクベス「……」
メイド「マクベス様?」
マクベス「そ、そうですか、まぁいいでしょう。よもや、こちらの勝利は揺るぎませんので。それよりもどこからここへ?」
メイド「それなのですが、マクベス様。実は――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦・第二層『奥へと続く道』―
ルーナ「もう、なんであんな場所に隠し通路があるわけ? あたしたち、ずっと待ち構えてて馬鹿みたいじゃないの!」
ニュクス「最初は物音がしていたから様子を見たけど、途中音がしなくなったところで気づくべきだったわね」
オーディン「しかし、それが地下道に続いてるってことは、あいつらいっぱい置かれてるその呪いの真横を歩いたってことか、普通寿命が縮まるぞ」
ルーナ「まぁ、ニュクスの本気魔法みたいなのが飛んでくるかもしれないって思ったら、まず足が止まるわね」
ニュクス「人を化け物みたいに……化けものだったわね」
カムイ「ニュクスさんはニュクスさんです。化けものなんかじゃありませんよ」ナデナデ
ニュクス「子供みたいに扱わないで……」
カムイ「ふふっ、ごめんなさい」
ルーナ「……」
カムイ「ルーナさん、どうしたんですか?」
ルーナ「……ねぇ、カムイ様。何かあったの?」
カムイ「何とは?」
オーディン「俺もそう感じる。なんだかざわついてるって言うか……。その、こんなことになってるってことは、話し合いはうまくいかなかったんだって。でも、それ以上になんだか……。カムイ様のその雰囲気が変わっているって言うか……」
カムイ「たしかに、ユキムラさんとの話し合いは残念な結果でしたが、だとしてもあきらめるわけにはいきません。だから、私は大丈夫です」
ルーナ「………そう、カムイ様がそういうならあたしはもう何も言わないから」
オーディン「そうだな。だけど、本当に辛くなったらなんか言ってくれよ。眠れないとかそういうのなら、俺が力になりますから」
カムイ「ふふっ、頼もしいです」
ニュクス「……お話はそこまでよ。先行したサクラ王女の部隊がいるわ」
ルーナ「あれか……だけど変ね。サクラ様もそうだけど、ラズワルドの姿が無いし、なんかざわざわしてる……」
アクア「何かあったと見るべきね……」
カムイ「行きましょう……」タタタタッ
カムイ軍兵士「くそっ、なんてことをしやがるんだ。こんな中をどうやって抜けて行けってんだ!」
カムイ「どうしました?」
カムイ軍兵士「カムイ様!?」
カムイ「見たところ、脱出路の確保はできているようですが……」
カムイ(うっ、なんですか、この血の匂いは……)
オーディン「どうなってんだよ……」
ルーナ「な、なによこれ……。あ、あそこから一人出てきた」
カムイ軍兵士「はぁはぁ、畜生、なにがなにがどうなって、へ?」タタタタタッ
ヒュンヒュンヒュン
ザシュシュシュッ
カムイ軍兵士「ぐぁあああ……」ドサッ
ルーナ「うっ……」
アクア「文字通り、矢の雨と言ってもいいわね」
カムイ軍兵士「くそ、あいつらほとんどの奴が降りたところを攻撃してきやがって、ほとんどがやられちまった」
カムイ「そんな、サクラさんたちは!?」
ニュクス「待って……いたわ、あそこにサクラ王女たちがいる。負傷した兵の傷を癒しているみたい」
アクア「でも、あそこから動く事はできないみたいよ…。敵は一つ壁の向こうみたいね……。かなりの数がいる」
カムイ軍兵士「くそ、どうして壁越しなのにこんな的確に当てられんだよ」
ニュクス「それは空に目がいるからみたいよ……」チラッ
ルーナ「目?」
ニュクス「あそこ、太陽に隠れているけど、一匹飛んでいるのがいる。監視役よ」
オーディン「ま、まぶし……よく見えるな……」
ニュクス「奴が標的の位置を指示してる。さっきの兵士の位置周辺に矢を放てたのもそれが理由ね」
カムイ「では、上の監視役をどうにかできればいいということですね」
ニュクス「そうなるけど、問題はどう落とすかかしら?」
ルーナ「流石に普通の攻撃じゃ届かないわね。どうするのよ」
カムイ「どうすれば……」
カミラ『何か困ってるみたいね?』
カムイ「カミラ姉さん?」
カミラ『カムイ、私達は砦の側面にいるわ。ちょっと敵の弓兵隊がいて立ち往生してるところなの』
カムイ「こちらもです。こちらはサクラさん達が弓兵隊に攻撃を受けていて、こちらもこのままでは抜けることができません」
カミラ『そう。そっちが弓兵の気をそらしてくれるなら、そのうちにどうにかして見せるけど、どうかしら?』
カムイ「時間がありません、その手で行きましょう」
カミラ『わかったわ。私達は合図を待つわね。こっちの飛竜隊の数もかなりすくなっているから、チャンスは一回だけよ』
カムイ「わかってます」
カミラ『ふふっ、それじゃお願いね』
カムイ「……弓兵の注意を逸らします。ルーナさん、手を貸してくれますか?」
ルーナ「別にいいけど、一体何するわけ?」
カムイ「何簡単なことです――」
「今、矢が降り注いでいたあそこを、交互に全力疾走で走り抜けるだけのことですから」
今日はここまで
後二回くらいで、この章は終わります。
メイドが無事だったけど、素直に無事でよかったと言えないマクベスさん
外伝リメイクEchoseの戦闘開始いいですね。最初から全力疾走で敵に向かってく殴り込みスタイルかっこいい。
ミラの歯車、発売されないかなー。
あと、ひっそりまたR18スレを始めました。
前回のR18スレの続きで、主人公はリリスなスレです。
エロとかキャラ崩壊とかよくするスレですが、読んでいただけたら幸いです
【FEif】リリス(……これは、だめそう……ですね……) - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1490710052/)
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦・白夜側通行路―
カカカカッ
ラズワルド「サクラ様、大丈夫ですか」
サクラ「は、はい。大丈夫です。それよりも負傷している人は言ってください、すぐに治療に向かいますから」
スズカゼ「下手に動くのは危険です。向こうの監視の目は甘くないようです」
ラズワルド「こうやって仕掛けてくるなんてね。地下の仕掛けの発動タイミングを完全に理解してるってことかな」
スズカゼ「だとしても、彼らが去ったあとでは私達は助からないでしょう」
サクラ「なんとかここを抜けて、壁の奥にいる弓兵をた押せればいいんですけど……」
ヒュンヒュンヒュン ストトトトッ
ラズワルド「こんな矢が絶え間ないと、そうもいかないか……」
サクラ「相手に隙が生まれれば、動ける人たちと一緒に一気に距離を詰められるんですけど……」
スズカゼ「今は叶いませんね……」
カランッ カラカラッ ズザザザザッ
スタタッ
スズカゼ「む? 誰かが下りてきたようです」
サクラ「え、だ、だめです。こんな危険なところに、早く戻るように言ってください!」
ラズワルド「えっと……多分言っても聞かないと思うな」
スズカゼ「そうですね。あの方はそういう人ですから、サクラ様もそう思いませんか?」
サクラ「……あ、あれはカムイ姉様!?」
タタタタタッ
カムイ「ルーナさん、準備はいいですか?」
ルーナ「もう駈け出してるのに何言ってんのよ。それでどうするわけ?」
カムイ「このまま一緒に進みます。たぶん相手は先を読んで矢を放つはずです。それを私が探りますので合図を出したら散開してください」
ルーナ「わかったわ。ちゃんと合図出してよね!」
カムイ「わかっています……」スッ
カムイ(集中して、壁の先その先にいる弓兵の攻撃の瞬間を。聞き逃さないように――)
……
……
……
……シュン!
カムイ「今です!」
ルーナ「!」
バッ ババッ
ヒューーーーーッ
バスバスバスッ
ルーナ「あのまま進んでたら、本当に串刺しになってたわね……」
カムイ「うまく行きました。では、このまま進んで監視役の目をテンジン砦から逸らしましょう。ただ、出口付近に敵が控えているかもしれませんから気を付けてください」
ルーナ「誰に言ってんのよ。こんなことで優位に立ってる奴らなんてぱぱっと倒してやるんだから」
カムイ「ふふっ、頼もしいですね」
カムイ「カミラ姉さん、矢は私達に向かって放たれています。今、監視役は私達に注目しているはずです」
カミラ『わかったわ。そのまま少しの間、鬼ごっこを続けてて、すぐに全員殺してあげるから』
カムイ「はい、おねがいします」
カムイ(よし、このまま一気に抜け切ります!)
金鵄武者C「合図出しました!」
金鵄武者A「よし」
タッタッタンッ!!!
ヒューーーーーッ
バスバスバス
金鵄武者C「敵、未だ健在です」
金鵄武者A「ちっ、あの二人まだ生きている。もっと、広範囲に打ち込むよう指示を出して!」
金鵄武者B「たぶんこれで、いけるはず。この通りに弓兵部隊に合図を送って、はやく!」
バサバサバサッ
金鵄武者B「おい、羽音をもう少し抑えろ、聞こえな――」
カミラ「あらごめんなさい。あなたの言葉はよく聞こえなかったわ……」
金鵄武者B「なっ、暗夜の竜騎兵!? なぜ、ここに――!!!」
カミラ「それを聞くのはお馬鹿さんのすることよ。もっとも、ここまで近づかれるくらいだもの、腑抜けには違いないわね!」ブンッ
ザシュッ!!!!
金鵄武者B「ぐあああっ。うわあああああああ―――」
ドサリッ
金鵄武者A「ちっ、これでも――くらえ!!!」パシュッ
サッ!
カミラ「甘いわね。それじゃ、楽にしてあげるわ」クルルルルッ ザシュンッ!!!
金鵄武者A「ひぎゃ、ぎゃああああっ」フラッ
……
グシャリッ
カミラ「ふふっ、これで終わりみたいね。カムイ、おねえちゃんよ。今監視役を全員潰したわ」
カムイ『ありがとうございます。これで敵の攻撃精度は下がるはずです』
カミラ「ふふっ」
カムイ『どうしたんですか?』
カミラ「それは間違いよ、もう攻撃はそうそうこないんだから。だって、今頃弓兵たちも……ね?」
カムイ「……ん?」
ウワッ、アンヤノリュウガキタゾッ!!!!
ウギャアアアッ
バサバサバサッ
カムイ「そういうことですか。ありがとうございます」
カミラ『お安い御用よ。それよりも、早くしましょう、あまり時間はなさそうだから』
カムイ「はい、わかっています」
カムイ(ここ周辺はそろそろ制圧下ということですか。なら、あと一息で!)
ルーナ「カムイ様!」
カムイ「!!!」
タタタタタッ
チャキチャキッ
剣聖「これ以上、白夜の地に入れると思うな! 裏切り者め!!!」
槍聖「ここで、殺してくれる!!!」
ルーナ「先に仕掛ける。カムイ様、援護して!」
カムイ「はい」
ルーナ「やああっ!」タッ ブンッ
キィン
カムイ「そこです!」
ズビシャ!!!
剣聖「ぐおっ、だが、そこもらった!!!」ジャキッ ブンッ
ザンッ!
ルーナ「ううっ、やってくれるわね!!!」チャキッ
タタタッ
ルーナ「これで!!!」
槍聖「我がお相手する。この剣殺し、受けてみよ!!!」
ルーナ「上等よ!!! はあああっ!!!」ブンッ
槍聖「むんっ!!!」ドゴンッ
カキィン クルクルクル
ルーナ「しま――」
カムイ「ルーナさん!!!!」
剣聖「もらった!!!」
ルーナ「!!!」
……
キィン!!!
ザシュリッ
ポタポタタッ
ルーナ「……あ、あれ? あたし、生きてる?」
ラズワルド「もうっ、少しは相手を考えて攻撃したほうがいいよ」
ルーナ「ら、ラズワルド、なんであんたがいんの!?」
スズカゼ「ラズワルドさんだけじゃりませんよ。見ているだけに徹するには、あなたの戦い方は少し危なく思えましたので」
シャランッ
ルーナ「あれ、傷が……さ、サクラ様……」
サクラ「はい、これで傷は塞がりました、少し無茶しすぎですよ。ルーナさん」
ルーナ「そ、そんなこと――」
サクラ「むー」
ルーナ「あ、ご、ごめんなさい」
カムイ「サクラさん」
サクラ「カムイ姉様、早くここを抜ける道を作りましょう。もう時間の猶予はあまりありません」
槍聖「くそっ、暗夜に身を売った王族の恥さらしが、ここで死ねえええ!!!」ダッ
カムイ「サクラさ――」
サクラ「……」チャキッ
……
サクラ「……ごめんなさい。でも、外しません。絶対に……」
シュオオンッ パシュッ
ザシュンッ
槍聖「ぐおおっ」
ドサドササッ
カムイ「サクラさん……」
サクラ「……もう迷えないんです。ここで死んでいったスズメさんや他の人たちが守ってくれた私が生きている道を、もう迷うわけにはいかないんです」
シュオオオッ パシュッ
ザシュンッ
ドサササッ
カムイ(サクラさんも見つけたということですよね、戦う理由。それを……。自分で信じられるそれを……なら、私は、私は……)
カムイ(私は……)
アクア「カムイ!!!」
カムイ「!」
アクア「大丈夫?」
カムイ「アクアさん?」
アクア「こんなところで考えごとはやめてちょうだい……」
オーディン「ああ、瞑想は穏やかな場所でやらないとな……。ここは少し殺気に溢れすぎてる」
ルーナ「そうね、っと。サクラ様の部隊が正門を抑えてる、今のうちに負傷者を運びだしてできるだけ距離を取らないと!」
ニュクス「カムイ、指示を出して頂戴」
カムイ「……」
ニュクス「カムイ?」
カムイ「は、はい。このまま、一気に白夜側に抜けて、安全地帯で負傷者の治療を――」
ドゴォオオオオオオオオオオンッ!!!!!!
ルーナ「きゃあああっ!!!」
オーディン「な、なんだこれ!?」
ニュクス「この魔力……まさか――」
カムイ「も、もう仕掛けが作動したって言うんですか!? だって、まだ白夜の兵もいるというのに」
アクア「……ユキムラにとっては味方さえも、駒にすぎないということかもしれないわ……。でも、このままじゃ……」
カムイ「くっ……」
タタタタタッ
マークス「カムイ!」
カムイ「マークス兄さん! 無事だったんですね」
マークス「ああ、それよりももはや時間はない。テンジン砦の仕掛けが作動し始めた、ここも時期、その猛威に晒されることになる」
ドゴオオオオオオオオオオオンッ
ヒューーーーッ
ドゴンッ ゴロンゴロンッ
マークス「全員、飛翔物に気をつけろ! あれに当たっては一溜まりもないぞ!」
カムイ「全員、出口に向かってください! 負傷者の方には手を差し伸べて、ここを脱出しましょう!!!」
タタタタタッ
ドゴオオオオオンッ!!!!
バゴオオオオオンッ!!!!
カムイ「はぁはぁ、早く! もう少しです!!!」
負傷兵「ぐぅ、うううっ」
カムイ「大丈夫、大丈夫ですよ。きっと、きっと辿りつけるはずですから……」
アクア「ええ、あきらめちゃ駄目よ」
負傷兵「す、すみません……カムイ様……」
カムイ(そうです、ここまで、ここまで来たんです。きっと、きっとここまでしてきたことが……きっと報われる結果があるはずなんです……)
カムイ(だから……)
……
……
ピカッ
カムイ「え……」
ブオッ ドゴォォオオオオオオオオオンンッ
ビュオオオオオッ
カムイ「ぐっ、うわあああっ!!!!」ズササササッ
アクア「きゃあああああっ!!!」
ヒューーーッ
ドスンッ
ガラガラガラッ
バシュンッ
ドササササッー
カムイ(……ううっ、いったい、一体何が起きたんですか……)
カムイ「だ、大丈夫ですか……」
負傷兵「ううっ、体がいてぇ、いったい、何が起きて……」
カムイ「立ってください、肩を貸します。立てますか?」
負傷兵「あ、ああ。すまない、カムイさ――」
パシュッ
ドスリッ
負傷兵「ま……」ドサリッ
ポタタタタッ
カムイ「え……」
カムイ(今のは矢? 一体どこから――)
パシュッ
ドスリッ!
カムイ「ぐっ、ぐあああっ!!!」カランッ
バサバサバサッ バサーッ
カムイ「ぐっ、くっ、はああっ」チャキッ
ユキムラ「やりなさい」
パシュシュッ
ドスドスッ
カムイ「あああっ」ドサリッ
カムイ(くっ、う、腕が動かない……)
ユキムラ「ふむ。先ほどの爆発で死んだかと思っていましたが、やはりあなたは悪運が強いようですね」スタッ
カムイ「そ、その声……ユキムラさん……」
ユキムラ「ええ。まずは少し褒めたいところです、私の仕掛けに気づいたことは素晴らしかったですよ。まぁ、もっともあの爆発だけで終わりにするわけはないというのに、のんびりとした脱出劇でしたよ。最後に青息吐息に疲れ果てた敵を刈り取るだけにしてくれたのは、とてもありがたいことです」
カムイ「はぁはぁ、くっ、うううっ」
ユキムラ「ははっ、とても無様ですね。カムイ、あなたが戦ってきた結果ですが、このようになりました。ふふっ、どうですか? あなたの率いた人たちは今、一人一人と殺されている最中でしょう。もしかしたら、死ぬよりも辛い目に会っているかもしれませんね」
カムイ「え……」
ユキムラ「わかりますか、カムイ。あなたは私に負けて、そして奪われているんですよ――」
「私があの日、すべてをあなたに奪われたように……です」
今日はここまでで
あと一回でこの章が終わります。
このところ、グダって申し訳ないです。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・破壊されたテンジン砦『破壊された東門周辺』―
ザシュ
ザシュッ
ザシュンッ
カムイ軍兵「ぎゃああっ……」ドサリッ
白夜軍「ここ一帯の者は片付けました。ユキムラ様」
ユキムラ「そうですか……。ということは、ここ周辺にはもうあなたしかいないということですね、カムイ」
カムイ「ゆ、ユキムラさん。なぜ、なぜなんですか……。私は白夜も暗夜もどちらも救いたいと願って、ここまできたというのに、なぜ――」
ユキムラ「ふんっ」ドゴンッ
カムイ「がっ……」ドササッ
ユキムラ「まだわからないとは、どこまであきらめの悪い頭なんですか? 先ほどお話をしたでしょう、あなたの道を私は認めないと……。まさか、ここまでされても理解できないと?」
カムイ「うぐっ、こんなことをあなたがするはずが、ありま――」
ユキムラ「……あなたに信用されたくありませんよ」ドゴンッ
カムイ「あぐっ……」
ユキムラ「こうしてあなたを痛めつけている私を見て、共に歩めるわけがない。そんなこともわからないと言いたいのですか?」ガシッ
カムイ「うぐっ…うううっ…」
ユキムラ「……やはり、あなたは夢ばかり見ていて、現実を見据える覚悟がないのでしょう」
カムイ「か、覚悟……?」
ユキムラ「ええ、あなたの仲間達に同情したくなります。もしかしたら仲間達は何度も何度もあなたの成長を見てきたのかもしれませんが。根本的に見据えているわけでは無いことに気づいていなかったんでしょう」
カムイ「……みんなが戦ってきたこと、それが平和という形で報われる。そのために戦うことが間違っていると言うんですか……」
ユキムラ「報われるためですか……。くくっ」
カムイ「え……」
ユキムラ「くはははっ、あははははははは!」
カムイ「な、なにがおかしいんですか!」
ユキムラ「いえいえ、まさかそんな考えで戦っているとは思っていませんでしたよ。報われるためですか……、ただの被害者になれる便利な言葉ですね」
カムイ「便利って……私は――」
ユキムラ「カムイ、あなたを殺す前にいいことを教えてあげます」ガシッ
カムイ「ううっ……」
ユキムラ「戦争で報われることなどありえません。あるのは戦った結果として得られる現実だけ、そこに報いなどあってはならないんですよ」
カムイ「そんな、そんなことは――」
ユキムラ「なら、こうして私があなたの前に立ち、あなたの心を踏みにじる行為がその到達点になります。良かったですね、あなたの行いはちゃんと報われていますよ?」
カムイ「私が望んでいることは、こんなことじゃ……ない……」
ユキムラ「ええ、私と和解し白夜との戦争を終わらせたかったと言いたいんですね? それがあなたにとっての報われるということなんですから、自分で求めるのではなく結果的にそれがあることであなたは安心できる。作り上げるのではなく、ここまでの行為が報われることを願って戦っている。そんなあなたの到達点がこれというだけの話です」ザシュッ
カムイ「うああああっ」ポタッ ポタタタッ……
カムイ(なんで、なんで……。なんでこんな……)
ユキムラ「どうですか、あなたが望んできた報いの味というのは……」グリグリ
カムイ「あぐっ、っ……」ブチブチッ
ユキムラ「ここで死んだ者たちがとても哀れです。こんな夢ばかりを見ている子供について来たばかりに、このような最期を迎えることになるとは思ってもいなかったでしょう……」
カムイ「あ、あなたが……あなたがそうした、んじゃないですか……」
ユキムラ「ええ、そうですね。これを引き起こしたのは私です。ですが、それを止めることはできました。私を殺す機会はあった、だがあなたは殺すという判断を下せなかった……。勝手にそうすれば報われると信じた。これがその結果です」
カムイ「ううっ、うううっ。私は……私は……」
カムイ(だとしても……。私は……)
ユキムラ「はぁ、ここに至ってもその心は頑なようですね。見ているだけで呆れてしまいますが、ある意味私の望む、最後の姿としては申し分ないですよ」チャキッ
スッ ググッ
カムイ「あぐっ……」
ユキムラ「流石にこれ以上痛めつけるつもりはありません。楽に逝かせて差し上げます」
グググッ
ツププッ ポタタタタッ
カムイ「ひぐっ………」
カムイ(こ、これで終わりなんですか……。私は……私は、こんな形で、死んでいくというんですか……。こんな、なにも、何も報われていないまま……。私はここで――)
カムイ(死ぬんですか……)
ユキムラ「お別れです。次は報われる人生になるといいですね……」
カムイ(皆さん……。アクアさん……)
カムイ(ごめんなさい……)
ユキムラ「死ね――」グッ
シュオンッ
???「リザイア!!!」
バシュンッ!!!
ユキムラ「ぐあっ!!! くっ、ううううっ。なにが……」
白夜兵「ユキムラ様!? ちっ、どこからの攻撃だ!?」
白夜兵「……! あれを!」
ユキムラ「……ははっ、参りましたね」
バサバサバサッ
???「一気に攻めます、相手は攻撃を行える状態ではありません。カムイ殿を救い出すのです!!!」
増援兵「いくぞ!」
白夜兵「煙の影にまぎれて南西方角より敵の飛竜部隊が近づいていたようです。包囲網を完成させつつあります。数、把握できるだけでも100以上です」
ユキムラ「……神というのは本当に理不尽極まりない。仕方ありません、撤退しましょう。私達では太刀打ちできる数ではありません」
白夜兵「はい、全員、残兵に構う必要はない。撤退せよ!」
カムイ「は……あ……あ……」
スッ ドサリッ
ユキムラ「……命拾いしましたね。これに懲りて報われようなどという思いは消し去るといいでしょう」
カムイ「……」
ユキムラ「もっとも、あなたがどんな決意、覚悟を持とうとも私はあなたを殺すためにどんなことでもする覚悟です。これは死ぬまで変わることはありませんよ、今も頑なに夢を見続けるあなたのようにです」
タタタタッ
バサバサバサッ
カムイ「……」
???「ご無事ですか、カムイ殿」
カムイ「……あ、あなたは」
???「申し訳ありません、イズモ公国からここまでに時間を掛けてしまいました。しかし、ご無事で何よりでした」
カムイ「クーリアさん……」
クーリア「カムイ殿、まずはこちらで手当てをいたします。残りの兵は生存者の捜索に専念しなさい、まだ助かる者がいるはずです」
増援兵「はい、わかりました」
タタタタタッ
クーリア「遠くから高い火柱が立つのを見ました。恐ろしい力が行使されたのでしょう、すぐに駆けつけて正解でした」
カムイ「クーリアさん……私は――」フラッ
クーリア「カムイ殿、今は休まれてください。敵は去っています。あなたにとっての多くの友はきっと無事です。今はお休みください」
カムイ「……はい」クタリッ
ピチャンッ
カムイ(……もしも、これが夢ならと今だけは思います)
ピチャンッ
カムイ(意識が覚めたら、まだ私は村の中にいて……。最悪の夢を見たってアクアさんに話をして、大丈夫だって言ってもらえたらどれだけ救われるのでしょうか……)
ピチャン
ポチャンッ
カムイ(だけど……)
ガシャンッ
カムイ(これが私の現実、変えられない現実なんですよね……)
カムイ(……私の引き寄せた結果――)
カムイ(逃れられるわけがないんですから……)
◇◇◇◇◇◇
―スサノオ長城・城壁内兵舎―
ピトピト
スラスラスラッ
コトッ
???「今も尚 赤く燃えゆく 西の地に 争う者の 音は途絶えん」
???「……はぁ、あまりいいものが出来ませんわ」クシャクシャ
???(このところの血なまぐさい雰囲気では筆も乗りません。正直、こんなところにいたくはないと言っているのに、はぁ、人手不足というのはわたくしから惰眠を貪ることや、歌を楽しむ時間さえも取り上げていくなんて理不尽ですわ……。あ……)
???「帰る地の 寝床に敷いた 夢の城 思い馳せつつ 不貞寝するなり……」ゴロンッ
アサマ「……今のあなたを表していますねぇ、ミタマさん」
ミタマ「アサマ様、わたくしはこんな戦いに参加したくはありませんわ。家に戻ってゆっくりゴロゴロしていたいですの」
アサマ「はは、誰だってそうでしょう。私だってできればすぐにでもお山に戻ってゆっくりしたいものですよ。できれば、主君も連れていきたいものですねぇ」
ミタマ「そのアサマ様……ヒノカ王女様のことですけど……」
アサマ「思ったことを言ってもらって構いませんよ。そんなことを言われてこの顔が崩れることはありませんよ。もう、一度崩れてしまったものは戻しようがありませんのでねぇ」
ミタマ「……はぁ、なら顔を少しは変えてくださいまし……。いつものような澄まし顔をされても説得力がありませんけど」
アサマ「ははっ、それでどう思われました?」
ミタマ「その、ヒノカ王女様の精神はとてもではありませんが元になど戻りません。あれは、得体のしれない何かですわ……」
アサマ「ええ、そうでしょうね。セツナも気の毒です、セツナとしてではなく共に近くにいてくれると信じた者の代用品として扱われています。もっとも、セツナもそれを理解しているでしょう。あれは鈍感ではありますが、自身のやるべきことには前向きですので、折れることはないでしょう」
ミタマ「あまりよくない前向きですわ……」
アサマ「ははっ、確かにそうですね。それよりも最初の歌、あれはテンジン砦の話を思い返して作ったのですか?」
ミタマ「ええ、テンジン砦が吹き飛んだそうですの。たしか旧暗夜と新生暗夜……ですか?」
アサマ「暗夜で構いませんよ。新しいも古いも暗夜であることに変わりはありませんからね」
ミタマ「ええ、暗夜に破壊されたらしいですけど……」
アサマ「ははっ、多分嘘でしょう」
ミタマ「まぁ、嘘です。たぶん、強行派が何かしたんですわ」
ミタマ「まったく、白夜を守るよりも何かを刈り取るのに必死みたいで、巻き込まれるこちらの身になってほしいですわね」
アサマ「はっはっは、結局人間とはそういうものですよ。私も同じですからわかります」
ミタマ「変わり往く 人の心は 雲のよう。アサマ様も変わってしまいましたわ。悪意を隠し切れていませんもの」
アサマ「ははっ、全てが終わったら、もう一度修行しなくてはなりません。また童心時代に逆戻りしなくてはいけませんが仕方ありませんね」
ミタマ「その、アサマ様は何時かヒノカ王女様が元に戻ると信じていますの?」
アサマ「私はそういった期待などしていませんよ」
ミタマ「……そうなんですの?」
アサマ「神などいはしません、ヒノカ様が元に戻ることなどありません。私はただ、今のヒノカ様が望むことをするだけですよ」
ミタマ「……それだけ?」
アサマ「ええ、それだけです。このまま戦争が終われば文句はありませんが、それは難しそうです」
ミタマ「強硬派の知らせは戦争の終結を知らせるものではありませんでしたわ。白夜はこの戦争に勝てなくなったと言ってもいい状態です。でも、まだまだ戦いは続くのですわ」
アサマ「もう戦争と呼ぶには状況が状況です。まぁ、終わりまでにヒノカ様の望みを聞ける日が来るでしょう。私はその時を静かに待つだけですよ」
ミタマ「……はぁ、思った以上に不毛な日々。わたくし、こんなところにいては血なまぐさい歌ばかりを作り上げることになりそうで、憂鬱へ真っ逆様ですわ……」
アサマ「あなたにはそうでしょう。おっと、そろそろ時間です。眠るとしましょう。何時起こされても動けるように休める時に休まないと」
ミタマ「はぁ、山の音が恋しいですわ。夢の中くらいゆっくり楽しく眠りたいものですわね……」
アサマ「それは難しいですね。なにせ、戦場で見る夢は――」
「悪夢ばかりと決まっていますから……」
第二十二章 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
今日はここまで
ミタマはアサマの出身地の後輩巫女的な感じです。歌詠みと昼寝に命を賭けている。
ただ、ミタマにさん付けするアサマにすごい違和感。
番外の「もし、サクラ隊がレオンじゃなくてカミラに匿われていたら?」は次の休息時間終了くらいになると思います。
この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
出撃したキャラクターチームで支援を決めたいと思います。
キャラクターが重なった場合は、次の書き込みが有効になります。
・一組目
ギュンター
マークス
カミラ
「この中から二人」
>>297 >>298
・二組目
サクラ
スズカゼ
ラズワルド
「この中から二人」
>>299 >>300
◇◆◇◆◇
次にカムイが話しをする人物を決めたいと思います
・ニュクスは確定
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
カムイと話をする人物(支援A以外)
>>301
このような形でよろしくお願いします。
ギュンターさんでお願いします
マークス
サクラ
ラズワルド
フローラ
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『クラ―ケンシュタイン城』―
マークス「ギュンター、ちょっといいか?」
ギュンター「これはマークス様。私になにようですか?」
マークス「ああ、今度の軍事演習、ギュンターにも参加してもらおうと思っているのだ」
ギュンター「私にですか?」
マークス「ああ、ギュンターは多くの経験がある。その点を踏まえて、お前に出席してもらいたいと考えている」
ギュンター「多くの経験ですか、このような老兵の経験など教本に乗っているものと大して変わりないものでしょう。お役にたてるとは思えませんが」
マークス「いいや、どんなに知識を得ていようとも経験の差はそう埋められるものでは無い。生きてきた時間の長さ、潜ってきた死線の数は訓練でそう養えるものではない。だからこそ、それを見てきたギュンターに参加してもらいたいのだ」
ギュンター「……わかりました。そこまで言われて断る理由はありません」
マークス「ありがとう、日時や場所はこちらで決めている。すまないが準備などよろしく頼む」
ギュンター「御意」
【マークスとギュンターの支援がCになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『城下町』―
サクラ「……うーん」
ラズワルド「あれはサクラ様? 何をしてるんだろ、サクラ様ー」
サクラ「え、あ、ラズワルドさん……こんにちは」
ラズワルド「うん、こんにちは。それよりどうしたんですか。なんだかすごく考え込んでるみたいだけど……」
サクラ「え……、あの、そんなことは……」
ラズワルド「別に隠さなくてもいいよ。それに何か悩んでるなら相談してほしいしね」
サクラ「ありがとうございます。実は、これなんですけど……」
ラズワルド「えっと……『魅惑の魔法タルト』?」
サクラ「はい、その限定品でその味はまるで魔法みたいで、食べた人は魔法を受けたみたいな気分になるそうなんです」
ラズワルド「へぇー、でも今日はもう売り切れなんだね」
サクラ「はい。その、この頃は出られるようになりましたけど、ずっと外に出ることはできません。今日みたいに買いだしのお手伝いということくらいでしか出られないので。人気の商品だから、こういう時間に来ても売り切れてばかりなんです」
ラズワルド「なるほど、それでサクラ様は魔法のタルトが食べたくて、ずっと看板を見つめてたってことだね」
サクラ「ううっ、そのやっぱりはしたないですか?」
ラズワルド「ううん、そんなことないよ。看板を見てるサクラ様、とても可愛かったしね」
サクラ「ううっ、恥ずかしい///」
ラズワルド「よーし、それじゃ僕が今度買ってきてあげるよ」
サクラ「え、いいんですか」
ラズワルド「うんうん。そういうわけだから、楽しみにしてて」
サクラ「は、はい。その、よろしくおねがいします」
【サクラとラズワルドの支援がCになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『大天幕』―
マークス「これが今回の犠牲者のおおよその数になる」
エリーゼ「いっぱい死んじゃったんだよね……」
クーリア「おおよそ七割ですか……」
マークス「あの時、クーリア達が来てくれなければ、われわれはここにはいなかった。ありがとう」
クーリア「いいえ、こちらも間に合って何よりでした。マークス殿やカムイ殿も含め、この先を担う暗夜王国の基盤を失っては戦い以前の問題となってしまいます」
レオン「ごめん。テンジン砦の構造を知っていたのに何の役にも立てなかった……」
カミラ「レオン気にしないで。そもそも砦を丸ごと吹き飛ばすなんて常人じゃ思いもつかないことだもの」
クーリア「部隊は私達がそのまま後を引き継げる形になっていますので、この先の戦いに大きな支障ははないでしょう。本当の問題は別でしょうか」
マークス「カムイのことだな……」
サクラ「……カムイ姉様、その大丈夫と言ってはいるんですけど。とてもそう見えません」
カミラ「とても見ていられないわ……。私達に心配を掛けないようにしてるけど、もう隠し切れていないもの」
レオン「これが一時的な物ならいいんだけど……」
エリーゼ「え?」
レオン「タクミ王子を助けられたことで姉さんは自信を持ってたはずだよ。今回もうまく行くって、そう思った」
エリーゼ「あたしだってそう思ったよ」
レオン「僕だって同じだ、同じで考えもしなかったんだ」
ドンッ
サクラ「レオンさん……」
レオン「本当ならユキムラに初めて会った時、少しでも疑問持つべきだった。逃げてきた、そんなことを信じる状況じゃなかったのに……」
マークス「われわれが知っていたユキムラの情報は王族派だという点もある。そしてユキムラの救出は白夜との戦いの終わりと考えていたのも確かで、私もそう信じていたのだからな」
エリーゼ「裏切られちゃったってことだよね……」
レオン「裏切られたわけじゃない、同盟なんて結んでもいない以上、僕達と白夜は敵同士。みんなそのことを忘れていたんだ」
カミラ「レオン……」
レオン「ただ……姉さんにはその現実が重すぎた。僕たち以上に姉さんは戦いが終わることを信じていたはずだから……」
マークス「……しかし、このまま足を止めているわけにはいかないのも事実だ。現在の状況、とてもでは無いが白夜の攻撃が終わる気配はない。酷かもしれないが、戦いはまだ続いている……」
レオン「そうだね……。僕は次の戦いの策を考えるよ。同じ藪は踏みたくないからね」
カミラ「ええ、こっちは生き残った子たちのサポートに回るわ」
エリーゼ「あたしは負傷者の手当てをするね。サクラも一緒におねがい」
サクラ「はい、エリーゼさん」
マークス「私はクーリアと共に部隊の再編成を進める。それぞれのするべきことに努めてほしい」
タタタタタッ
マークス「……」
クーリア「マークス殿」
マークス「なんだ?」
クーリア「あの時……カムイ殿を見つけて、私は娘たちが子供の頃を思い出しました」
マークス「子供のころか……」
クーリア「はい。まるで迷子のようでした……。私はあのようなカムイ殿をみたことがありません」
マークス「……私もだ。あのように本当の意味で弱弱しくしているカムイは見たことがない……。正直、立ち直れるのかもわからん」
マークス「だが、私は待ち続ける。カムイが立ち直ってくれる事を信じてな」
クーリア「ええ。さぁ、カムイ様がここに来るまでに準備を整えることとしましょう」
マークス「ああ……」
マークス(……カムイ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦跡地『カムイの天幕』―
カムイ「……」
ユキムラ『これは死ぬまで変わることはありませんよ』
カムイ「変わることはない……ですか」
カムイ(私は報われることを望んでいて……この先に全てが報われる何かがあると信じてる……。私の選んだ道が間違っていない何かがある、そう考えてはいけないということですか……)
カムイ「私の考えは……子供なんでしょうか……」
ファサ
フローラ「カムイ様、いらっしゃいますか?」
カムイ「その声はフローラさんですか?」
フローラ「はい、フローラです。失礼いたします」
フローラ「体の具合はどうですか?」
カムイ「はい、大丈夫ですよ。治療のおかげで傷は癒えましたから」
フローラ「そうですか、それは良かったです」
ボフッ
フローラ「では服を着替えましょう。昨日の夜から着替えていないみたいですから、体も一緒に清めて差し上げますね」
カムイ「え……もう、そんな時間が経っていたんですか?」
フローラ「はい、その様子だと眠られていないんですね……」
カムイ「……みたいですね。ははっ、いつもならすぐに眠れるのにおかしいですね」
フローラ「……」
フローラ「まず服を脱がしますね」
ゴソゴソッ
カチャンッ カチャンッ
バサッ
カムイ「フローラさんの手、少し寒いですね暗転…」
フローラ「これでも冷気は抑えていますから、ちょっとだけ我慢してください。それでは、拭かせていただきますね」
ゴシゴシ
カムイ「……」
フローラ「……」
カムイ「……あの、フローラさん」
フローラ「なんでしょうか、カムイ様」
カムイ「体だけ拭いていただければいいですよ。服は自分で着れますから……」
フローラ「いいえ、カムイ様のお世話をするのは私とフェリシアの仕事ですから。あの子、治療魔法の使い過ぎで今はゆっくり眠っているんです。まったく、あの子は気が抜けています」
カムイ「なら、フェリシアさんの様子を見に行ってください。私のことはいいですから……」
フローラ「……」
カムイ「フローラさん?」
フローラ「……カムイ様は今、一人でいたいんですね……」
カムイ「……ごめんなさい」
フローラ「謝らないでください。本当ならこうやってお世話をすること自体、主を傷つけているともいえるんですから」
カムイ「なら、どうしてフローラさんは。こうしてここにいるんですか」
フローラ「いつかカムイ様が私に言ってくれましたね。もう少し誰かに甘えてもいいって」
カムイ「はい……」
フローラ「正直、それが私では無いことくらいわかっています。カムイ様にとって私はその位置にいないはずですから」
カムイ「そんなことは……」
フローラ「ふふっ、そういう風に言葉が出てしまうのもカムイ様の癖ですよ」
カムイ「……ごめんなさい」
フローラ「いいんです。私はカムイ様のメイド、それ以上を望むつもりはありません。でも、私というメイドでは無い心はカムイ様のことを心配しているんです。こうやって一人で悩み続けている姿を見ているととても辛いんです」
カムイ「……フローラさん」
フローラ「だからカムイ様、誰かに甘えて気を落ち着けてください。カムイ様の一番信じているお方になら、カムイ様もお話しできるはずです」
カムイ「……」
フローラ「そして、いつものカムイ様に戻って欲しいんです。私が甘えたい、いつものカムイ様に……」
カムイ「フローラさんは……私に甘えたいんですか?」
フローラ「あ……いえ、その今のはですね。」アセアセ
ギュッ
カムイ「フローラさん」
フローラ「あうっ、ちょ、カムイ様。その、は、裸で、こんな密着されたら、風邪になって――」
カムイ「ごめんなさい。今はこれくらいしかできません」
フローラ「……カムイ様」ギュッ
カムイ「……」
フローラ「少しだけでも甘えてくださってうれしいです。でも、私は自信に溢れてるカムイ様に甘えたいですし、出来れば甘えられたいです」ギュッ
カムイ「……自信に溢れたですか?」
フローラ「はい。ですから、早く元気になってくださいね。私の仕える主は自信に溢れている人ですから」
カムイ「……」
カムイ(自身に溢れている……ですか)
ギュウッ
フローラ「だから誰かに甘えてください、本当のカムイ様として……」ナデナデ
カムイ「……」
カムイ(本当の私として……ですか……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦跡地『新生暗夜野営地』―
リンリンリン
リンリンリン
カムイ(虫の鳴き声が聞こえる……)
カムイ(今皆さんに心配を掛けているのは百も承知です。でも、口に出せるわけない……)
カムイ「……誰かに甘えてくださいですか」
カムイ(誰か……。私にとってのその誰かは多分……)
タッタッ……
カムイ「?」
ニュクス「辛気臭い顔をしてるわね」
カムイ「ニュクスさん? 怪我はもう大丈夫なんですか?」
ニュクス「ええ、それよりもあなたはあなたで問題を抱えているように見えるけど?」
カムイ「……そうですね。問題だらけです」
ニュクス「そう、それを口にしてくれるだけでもいい傾向かもしれないけど。その問題を私に話すつもりはないんでしょう?」
カムイ「……その」
ニュクス「はぁ……。そうやってぐるぐる回っても意味はないわ」
カムイ「え?」
ニュクス「一人で悩んでも答えなんて出ないと言っているの。私がずっと過去の罪を許せないままでいるようにね」
カムイ「……一人で悩むことはいけないことなんでしょうか?」
ニュクス「一人で答えが出るならいくらでも悩べばいいわ。それがある意味大人っていうことなのかもしれないから。でも今のあなたはまだまだ子供だもの。ずっと同じ場所を回り続ける。納得するまでに多くの時間が必要よ」
カムイ「……ニュクスさんは昔、呪いの代償を背負ったんですよね。その時はどうだったんですか」
ニュクス「……私は一人でどうにかしようと思った。もともと魔法に絶対的な自信を持っていたから元の体、成長できる体を取り戻せると躍起になってね。それに私は恐れられる存在、誰かに助けを求めることも出来なかった。あなたたちに出会うまでは頼りにする個人なんていなかったもの」
カムイ「……私にそれはできないと?」
ニュクス「できないとは言わないけど、それはお勧めできないとだけ言っておくわ。隣いいかしら?」
カムイ「……はい」
スタッ
ニュクス「私と違ってあなたには時間がない、それが一番の理由ね」
カムイ「そうですよね。私が一人悩んでいても、戦争は続きますから……」
ニュクス「たしかにそうね。だけど私が言っているのはここの時間のことなの」スッ
カムイ「……胸ですか?」
ニュクス「心のこと。このまま、戦い続ければあなたは戦争よりも先に壊れることになる。そういう人を私はそれなりに見てきたからね」
ニュクス「だから、そうやって一人でどうにかできると思うのはやめなさい。自分のことを自分がわかっているからこそ、受け入れたくないことに蓋をしてしまう。人間っていうのはそういう生き物なの」
カムイ「でも……」
ニュクス「……でもじゃないわ。それに、このままあなたが壊れていくのを私は見たくないのよ」
カムイ「え?」
ニュクス「少しでも私に許されることがあるかもしれない、そう思わせてくれたあなたが私と同じような過ちを背負って埋もれる必要はないって言っているの」
カムイ「……」
ニュクス「私は信頼できる相手がいなかった。だから自然と埋もれて一人で考えることになった。でもカムイ、あなたは一人じゃない、それが私と違うところよ」
カムイ「……」
ニュクス「……カムイ、あなたは一人じゃないわ、みんながいる。なのにそんな中であなたは一人になろうとしている、このままじゃ最後の最後であなたはあなたを信じられなくなって終わってしまう。私はそんな最後を見たくないの」
カムイ「……」
ニュクス「あなたが壊れてしまった後に言葉を連ねる。そんな意味の無いことをするつもりはないの」
カムイ「ニュクスさん……」
ニュクス「私も含めてだけど、ここにいるみんなはあなたの行為を許されないものだとは思ってない……。それだけは忘れないでちょうだい」
カムイ「……」
ニュクス「カムイ……」
カムイ「……すみません、もう戻りますね。ニュクスさんももう戻って休まれた方がいいですよ」
ニュクス「ええ、そうさせてもらうわ……」
カムイ「それじゃ」
タッ タッ タッ
ニュクス「……」
ニュクス「……はぁ、私じゃ、カムイに道を示すことはできないみたいね……」
ニュクス「許されるもの。それを誰かが言ってくれたとしてもそれは示してくれるだけ、結局受け入れるのは自分自身。だけど、もしそれをカムイが示してくれたなら……」
ニュクス「それを信じてみたいと思っているのにね……」
>カムイ「フローラさんの手、少し寒いですね暗転…」
この文だけ元がどうだったのか教えてほしい
~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦跡地『カムイの天幕・前』―
カムイ(許されるもの……ですか)
カムイ(私の進んできた道、私が切り捨ててきたもの……。その結果が白夜との完全な戦いの幕開けだったとするなら、私のやってきたことに意味なんてありません)
カムイ(アクアさんならなんと言ってくれるでしょうか。優しくしてくれるんでしょうか、大丈夫だと言ってくれるんでしょうか……。私の泣き言を全部受け入れてくれるんでしょうか……)
カムイ(……やってきたことは間違いじゃなかったって言ってもらえるんでしょうか。報われる可能性はまだあると言ってくれるんでしょうか……)
カムイ(私は……そう言ってもらえることで報われることができるんでしょうか……)
ファサ
カムイ「……誰ですか?」
アクア「カムイ、遅かったわね」
カムイ「え、アクアさん?」
アクア「どうしたのかしら、わたしがあなたの天幕に来ていることが意外だったかしら?」
カムイ「えっと……」
アクア「それよりもカムイ、何があったのか教えてくれる?」
カムイ「えっと、何をでしょうか?」
アクア「ユキムラとのことが気になっているの。あの後にも、何かあったんじゃないかって思って……」
>>315さん
すみません、『暗転』は『…』のミスです。
カムイ「フローラさんの手、少し寒いですね暗転…」×
↓
カムイ「フローラさんの手、少し寒いですね……」○
申し訳ないです
カムイ「……」
カムイ(もう、話して楽になってもいいんですよね……。アクアさんに甘えてもいいんですよね……)
カムイ(アクアさんならきっと、私の話を聞いて答えを出してくれるはずだから……。それで私は報われるはずだから……、また同じように戦っていけるはずだから……)
カムイ「はい……」
アクア「そう。それで何があったの?」
カムイ「ユキムラさんから、私は報われるために戦っているだけの子供だと……。どんなことがあろうとも私と同じ道を歩めないといわれたんです」
アクア「……」
カムイ「あの爆発の後、ユキムラさんに多くの人たちを目の前で殺されました。でも私にはなにもできなくて、これが夢だったらって思って……。でもユキムラさんが私に向けた悪意は本物で今までのことが意味の無いことに思えてしまって、こんな中で私はどうすればいいんでしょうか?」
アクア「カムイ……」
カムイ「アクアさん、私はどうすれば報われる道を進めるんでしょうか……」
アクア「……」
カムイ(もう、私に言えることはこれだけです。アクアさんの答えがあれば私は……また歩めるはずだから……)
アクア「そう……。ねぇ、カムイ」
カムイ(アクアさん……)
スタッ スッ
アクア「少し痛いけど、我慢して」
カムイ「……?」
アクア「っ!」ブンッ
バチンッ……
アクア「……」
カムイ「……」
カムイ(頬が痛い……これって、殴られたんですよね。なんで私……殴られているんでしょうか……)
ドサッ
カムイ「う……、アクアさん何をして……」
アクア「……カムイ、情けないことを言わないで」
カムイ「アクア……さん?」
アクア「……カムイ、私はあなたの進んできた道を信じている。でも、進んできた道を信じられなくなった挙句、誰かにその良し悪しを求めるあなたを信じることはできないわ」
カムイ「アクアさんは……私の道が正しかったと言ってくれないんですか?」
アクア「今のあなたにその言葉をあげることはできないの。私の言葉は責任から逃れて報われるための物じゃない。そんなことに私の信じたいという心を差し出すつもりはないわ」
カムイ「……」
アクア「……カムイ、残念だけどユキムラはもう選んでいるの、私達と対立する道を自分自身で選んだのよ。それを私達がどうにかできるものじゃない。それを見せつけられて、あなたは自分の道を見つけることを止めてしまうというの?」
カムイ「こんな多くの犠牲を出した私の道に何の意味があるっていうんですか!?」
アクア「カムイ……」
カムイ「わかっているんです、あの時ユキムラさんを見限っていればこんなことにならなかったって」
カムイ「ユキムラさんの言葉をすぐに受け入れて倒していれば、ここまで付いてきてくれた人たちをたくさん失うこともなかった……。でもそれができなかった、私の歩んできた道は戦争を大きくしただけで、この先に意味なんて……」
アクア「だから報われたかったのね……。私の言葉で失敗の重みから、その罪から救われたら歩めるから……」
カムイ「ユキムラさんにも言われましたよ……。私は子供で、罪から逃れようとしてるだけだって……」
アクア「それが出来なくなったから投げ出すつもりなの?」
カムイ「……」
アクア「考えることも立ち向かうことを止めて、逃げ出すというの?」
カムイ「……わからないんです」
カムイ「もう、どうすればいいのかわからないんです。タクミさんを助け出して、ユキムラさんと和解したら白夜との戦いを終えることが出来ると信じていたから。もう、その先のことなんて何も考えてなかった。白夜と暗夜で力を合わせて、あいつを……ハイドラを倒してすべて終わるはずだったんです……」
アクア「……そうね。でも、現実は違った。だけどそんな現実だったとしてもあなたは逃げ出しちゃいけないの」
カムイ「どうしてですか……」
アクア「この戦争はあなたが始めたことだから……」
カムイ「……」
アクア「暗夜で革命を起こして、新生暗夜として白夜との和平を結んで戦争を終わらせる。あなたの考えに多くの人々が賛同して、マークスを指導者に新生暗夜が生まれた」
アクア「途中まで大きな失敗はなかった。暗夜王国の奪還、部族村での戦闘、タクミの救出……。だけど、私たちが現れたことによって犠牲になった人たちもいる」
アクア「白夜の焼き討ちにあった村の人々、妖狐の山の妖狐、暗夜の兵。陣営が違うだけでその死んだ人間の数は数えられるものじゃない。だけど、あなたが立ち止まらなかったのは可能性を追っていたから。でもそれは形あるものじゃなくて、あやふやな報われる何かだったのね」
カムイ「……」
アクア「だけど、それが崩れた。ユキムラはあなたを心の底から憎んでる。私の歌はユキムラの心に届かなかった……。その現実をあなたは受け入れられないでいる。私の力は奴に扇動された人々にしか通用しない以上、白夜との戦いを避けることができないって言う現実を……」
カムイ「なら、ガロン王を操っている奴を倒すことができれば――」
アクア「奴を先に倒したところで白夜との戦いは終わらないわ」
カムイ「……なら、どうすればいいんですか……」
カムイ(まだ戦い続けてもっと多くの血を流せって言うんですか……。これ以上の犠牲を私に生めというんですか……)
アクア「カムイ、報われる戦いなんて存在しないわ。あるのはそこに残る結果だけよ」
カムイ「アクアさんもユキムラさんと同じことを言うんですか……」
アクア「ええ、戦って得られる物はすべて奪ったものでしかないわ……。そこに報われるなんてことがあっていいはずないから。それにね……」
ギュッ
アクア「私は戦いで血に濡れたあなたに報われたと思ってほしくないの」
カムイ「……」
アクア「悲しすぎるじゃない。戦って流れた血で濡れた道を結果的に報われたなんていうのは」
カムイ「なら、私がここまで戦ってきた道はなんなんですか……」
アクア「この何も見えない暗い世界に差し込む、一筋の光だと私は思っているわ」
カムイ「こんな、こんな犠牲で溢れている現実が光のわけないです……」
アクア「どんなに辛い現実でもその光はきっと続いてる。カムイにとって手に入れるべき本当の場所にきっと辿りつけるはずだから……」
カムイ「辿りつけるわけありません、私は私はただ報われるためだけに戦って……」
アクア「ならここから変えていきましょう。もう報われることを捨て去って、現実と向き合うしかないわ」
カムイ「アクアさん……」
アクア「目を逸らしているあなたの力に私はなれない。でも、ちゃんと向き合っているあなたのためなら力になれる」
アクア「光の中にどんな酷い現実が待ち受けていても、あなたと一緒に進み続けてみせるわ」
アクア「私はどんなことがあっても進むあなたが好きよ……。あの時、アミュージアで身を呈して私を繋いでくれたそんなあなたに命を預けているんだから……」
ピトッ
アクア「あなたの心臓が苦しく嘆いているなら支えてあげる。苦痛を完全に癒すことはできないことくらいわかってる。でもちゃんと傍にいてあげるわ。約束通りあなたの選んだ世界をあなたの横で見つめていきたの……」
カムイ「……それでアクアさんはいいんですか」
アクア「ええ、だって私はあなたと共に歩むと決めているから……」
カムイ「……」
アクア「それにみんな信じているわ。あなたならきっと戦争を終わらせて平和な世界を築いてくれるって……」
アクア「だからお願い、現実と向き合って……」
カムイ「……」
カムイ(………)
カムイ(私はアクアさんに期待していたんです。もう逃げてもいいって言ってくれるって、私があなたを守るって言ってもらえるはずだって……報われるって思っていたんですよね……)
カムイ(私のこの結果を優しく受け止めて無かったことにしてくれる、そんなことを私はアクアさんに求めていた……)
カムイ(馬鹿じゃないですか。ここに来て、今までの犠牲とか恨みすべてから逃げようとしているなんて。アクアさんに価値観を押し付けて、アクアさんの許しに頷くだけ、それでいい、そうあろうとしていた……)
アクア「カムイ……」
カムイ(こうやって何度もアクアさんに助けられてて、甘えん坊が抜けなくなってしまってます。だから、アクアさんの言葉に従うだけになろうとしていた……)
カムイ(……でも、それをアクアさんが切り捨ててくれた。私を落ちないように支えてくれた。私に選ぶ余地を残してくれた……)
カムイ(そういえば、虹の賢者様は言っていましたね)
虹の賢者『カムイよ、お前さんが選んだ道にこそ、あの者たちは付いて行くはずじゃ』
カムイ(…私が選んだ道に意味がある。私が進むべきなのは終わった時に誰かに示してもらえる報われる戦いじゃない。私は選んで行くんです。それがどこに向かうことになるのかわからなくても……)
アクア「……カムイ?」
カムイ「アクアさん」
アクア「……落ち着いた?」
カムイ「はい、その……ちょっとだけ甘えてもいいですか?」
アクア「……はぁ、まだ決意表明を受けていないのだけど?」
カムイ「駄目ですか?」
アクア「……今のあなたならいいわ」
ギュウッ
ナデナデ
カムイ「……温かい。アクアさんの匂いがします……」
アクア「恥ずかしいからやめて////」
カムイ「……ふふっ」
カムイ(この先に待っているのは辛い戦いです。だとしても私は進み続けます。アクアさんや他の皆さんと――)
(光の筋、その先に広がる辿りつく場所、それを目指して……)
休息時間1 終わり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB→B+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB+→B++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303]←NEW
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]←NEW
今日はここまでで
誤字脱字多くてすみません
アクアさんが思ったよりヒロインしている。
こんなカムイとアクアですが支援はA。
日付越えちゃったけどエルフィさん誕生日おめでとう。
この後の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
ギュンター
ラズワルド
オーディン
ルーナ
カミラ
エリーゼ
サクラ
シャーロッテ
>>331
アクアがカムイをナデナデしている天幕に入ってくるカムイ支援Aのキャラクターを一人
◇◆◇◆◇
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
>>332と>>333
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行
支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
安価、次レスに続きます。
◇◆◇◆◇
進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・アシュラ×サクラ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・サクラ×ラズワルド
この中から一つ>>334
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
◇◆◇◆◇
進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・ジョーカー×ハロルド
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・ラズワルド×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・マークス×ギュンター
この中から一つ>>335
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
エリーゼ
ジョーカー
ハロルド
サクラ×ラズワルドで
ラズ×オデン
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―
ジョーカー「よく来たな、ハロルド」
ハロルド「ああ、私に用があるということだったねジョーカーくん」
ジョーカー「前回の料理で世話になったことも兼ねて、今回も俺の自信作を振る舞ってやろうと思ってな。ありがたく思え」
ハロルド「……また何かしら細工をしたものかね?」
ジョーカー「安心しろ、今回は特に何もしていない。これだ」
ハロルド「準備しておいてくれたのか……」
ジョーカー「ああ、残念だが俺はそれほど暇じゃない。食べるのなら帰ってからにしてくれ」
ハロルド「そうか、この私のために時間を作ってくれたのか、わかったありがたく頂くとするよ。エリーゼ様やエルフィくんも喜ぶはずだ」
ジョーカー「ふっ、俺の一流の腕を堪能するんだな」
ハロルド「ああ、任せたまえ!」
~~~~~~~~~
ジョーカー「ハロルド、前回のケーキの出来はどうだった?」
ハロルド「む、ジョーカーくん」
ジョーカー「お前に食べさせるのはもったいないくらいの出来だっただろう?」
ハロルド「それなのだが……。実は私は食べていないんだ」
ジョーカー「なんだと……まさか運んでる最中に落としたんじゃねえだろうな?」
ハロルド「確かに帰りの途中、馬車に轢かれそうになったり、ドラゴンの群れに出くわしたりと色々あったが。ケーキは無事に持ち帰ることができた」
ジョーカー「なら、なんでお前は食べてないんだ?」
ハロルド「その……エリーゼ様とエルフィくんに全部食べられてしまってな。だが、二人はとてもおいしい美味しいと言っていた。さすがはジョーカーくんだ」
ジョーカー「当たり前だ。しかし、つくづくお前は運がないな」
ハロルド「そうだな。だが、エルフィくんもエリーゼ様はとても喜んでいた。それだけでも十分なのだよ」
ジョーカー「……そうか」
ハロルド「良くを言えば私も食べてみたいが」
ジョーカー「残念だが、俺は気まぐれなんでな。二つ目の予定はない」
ハロルド「むむ、そうか……。なら仕方無い。はっはっはっは」
【ジョーカーとハロルドの支援がBになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオン邸『ロビー』―
サクラ「ど、どうでしたか?」
ラズワルド「それが、今日行った時にはもう完売してたんだ……」
サクラ「そ、そうですか……」
ラズワルド「まだ開いてから一時間くらいしか経ってなかったのに、なくなっちゃうなんてお店が準備してる量が少ないのかもしれない」
サクラ「……そうかもしれません。とってもおいしいから下準備が大変ってお店の人も言ってましたから」
ラズワルド「そうだったんだね」
サクラ「すみません、事前に色々と教えていなかった私の所為です」
ラズワルド「そ、そんなことないよ。ごめんよ、僕がもう少し早く行けば……」
サクラ「ふふっ、ラズワルドさんは優しいんですね。流石にもう一度御願するのも悪いですから、タルトのことは大丈夫です」
ラズワルド「サクラ様……」
サクラ「ですから、ラズワルドさんが謝らなくてもいいんです。私もその我慢しなくちゃいけないって思いますし、ラズワルドさんだってお仕事があるはずですから」
ラズワルド「たしかにそうだけど……」
サクラ「私のためにありがとうございます。その、お茶でもどうですか。この頃淹れ方を習って、まだ味が渋いかもしれないんですけど」
ラズワルド「え、いいの?」
サクラ「はい、ちょっと待っててくださいね。準備をしてきますから」
タタタタタッ
ラズワルド「……ははっ、先手取られちゃった感じかな」
ラズワルド「お茶を先にもらっちゃったら、もうやるしかないよね……」
【ラズワルドとサクラの支援がBになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王国兵舎『オーディンの部屋前』―
ラズワルド「前回注意してから兵舎の噂は聞かなくなったね。オーディンもようやく静かにすることを覚えてくれたのかなー」
コンコン ガチャッ
ラズワルド「オーディン」
オーディン「俺はオーディン、漆黒の力を得た選ばれし戦士、この血に流れるは全てを無に帰す――」ボソボソ
ラズワルド「え、えっとオーディン、部屋の隅で何してるの?」
オーディン「ああ、蒼穹ラズワルドか……どうした……」
ラズワルド「どうしたはこっちの台詞だよ。なんでそんなに衰弱してるんだい?」
オーディン「……だって俺の叫び声が変な噂になってるんだろ?」
ラズワルド「そ、それはそうだけどさ。そんなブツブツ部屋の隅で唱えてるのもすごく怖いよ」
オーディン「……いいんだ、俺はこの小さな部屋の中でぶつぶつ考えるだけでいい。所詮、選ばれし者は孤独だ……」
ラズワルド「変な拗らせ方しないでよ」
オーディン「それに俺のことでレオン様に迷惑かけられないし……」
ラズワルド「レオン様はそういうことあまり気にしないと思うけど、オーディンは仕事も出来てるんだし」
オーディン「……あとラズワルドとルーナにも変な噂が立つのはいやなんだよ」
ラズワルド「え……」
オーディン「だから、俺のことは気にしなくていいんだ……」
ラズワルド「オーディン……」
【オーディンとラズワルドの支援がBになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『カムイの天幕』―
カムイ「……すぅ……すぅ……」
アクア「ふふっ、少しだけって言っておきながらもう眠ってる……。まだあなたから答えを聞いてないって言うのに……、安心するとすぐにこうなるのもあなたの悪い癖よね」ナデナデ
アクア「まぁ、そこが可愛いところでもあるんだけど」
カムイ「んー……アクアさん」
アクア「!!」
カムイ「すぅ……すぅ……」
アクア「寝言……。はぁ、冷や冷やさせないで」ナデナデ
カムイ「ふふっ……」
アクア「こうやって笑ってるのを見るとまるで子供ね……」
アクア「あなたのことをみんながどれくらいあなたのことを心配しているのか……。いいえ、わかってないわけじゃないのよね……」
アクア(皆の前では何事もないように振舞ってるのに、私の前ではそれを隠さないでくれる。だからこんなことを私は思えるのよね)
アクア(多分これは優越感ね……。そんな風にされるから私だけが特別だって思えてくる……)
アクア「……それとも本当に私のことは特別に思ってくれているの?」ナデナデ
アクア「……カムイ」
タタタタタッ
アクア「ん?」
バサァ
エリーゼ「カムイおねえちゃんいるー?」
アクア「エリーゼ?」
エリーゼ「あれ、アクアおねえちゃん? どうしてカムイおねえちゃんのところにいるの?」
アクア「ちょっとね、エリーゼはどうしたの?」
エリーゼ「えっとね、カムイおねえちゃんの様子を見に来たんだよ……。えへへ、これ向こうに咲いてたの。これを見たらカムイおねえちゃんも元気になるかなって思ったんだけど、カムイおねえちゃんもしかして眠っちゃった?」
アクア「え、ええ。色々と考え込んでいたみたいだから」
エリーゼ「まだ落ち込んでるの?」
アクア「ううん、もう大丈夫なはずよ」ナデナデ
エリーゼ「ほんとぉ?」
アクア「ええ」ナデナデ
エリーゼ「えへへ。カムイおねえちゃんはアクアおねえちゃんがいないと駄目だよね」
アクア「そ、そうかしら……」ナデナデ
エリーゼ「うん、だってこうやってナデナデしてもらわないと眠れないんだもん。これならあたしの方が大人のレディだね」
アクア「そうね。ん、ナデナデ……あっ、こ、これは……」
エリーゼ「ん、どうしてアクアおねえちゃんが動揺してるの? もしかして、アクアおねえちゃんがナデナデしてただけなの?」
アクア「そ、それは……」
エリーゼ「じーーーーっ」
アクア「あ、その花を入れる花瓶をもらってくるから少しの間だけカムイのことを見てて」
エリーゼ「花瓶はあたしが用意するよ。それより――」
アクア「いいの。カムイの傍にいてあげて、エリーゼがいてくれるならカムイも安心できるはずだから」
タタタタタッ
エリーゼ「あ、いっちゃった……」
エリーゼ「……あたしが一緒にいてカムイおねえちゃんは安心してくれるのかな……」
テトテト ポスッ
エリーゼ「……カムイおねえちゃん」ナデナデ
カムイ「すぅ……すぅ……」
エリーゼ「カムイおねえちゃんはずるいよ。あたしのこといっぱいいっぱい知ってるのに、カムイおねえちゃん全然教えてくれないんだから。こういうのふこーへいって言うんだよ」
エリーゼ「この前レオンおにいちゃんから借りた本に書いてあったよ。すっごく分厚い本で、カムイおねえちゃんが持ってる本なんかよりも大きくて色々なことが書いてあって、あたし毎日少しずつ覚えてるの……」
エリーゼ「でも、その本を読んでもカムイおねえちゃんの力にあたしはまだなれないのかな……」ナデナデ
カムイ「んっ……んんっ……」
エリーゼ「……あ」
カムイ「あれ、アクアさん。なんだか細くなりました?」
エリーゼ「アクアおねえちゃんならちょっと外に出てるよ。すぐに戻ってくると思うけど……」ナデナデ
カムイ「エリーゼさん?」
エリーゼ「うん、おはようカムイおねえちゃん」ナデナデ
カムイ「は、はい。おはようございます……。あの……」
エリーゼ「なに、カムイおねえちゃん」ナデナデ
カムイ「どうして私の頭を撫でているんですか?」
エリーゼ「えへへ、さっきまでアクアおねえちゃんがいっぱい撫で撫でしてたから、あたしもしてあげようって思って」
カムイ「そうですか……。ありがとうございます。すみませんこんな格好で、すぐに起きますから」
エリーゼ「ううん、カムイおねえちゃんはもっともっと休まないとだめ、だからこのままでいいの」
カムイ「もう十分休みましたから」
エリーゼ「……あたしはそう思わないよ」ギュッ
カムイ「え、エリーゼさん?」
エリーゼ「カムイおねえちゃん、ずっと頑張ってきたんだもん……。本当ならもっと、もっと休んでいたいはずだから……」
カムイ「いいえ、アクアさんにいっぱい支えてもらいました。だからもう大丈夫なんです」
エリーゼ「……あたしだってカムイおねえちゃんのこと支えたいよ」ギュウウッ
エリーゼ「アクアおねえちゃんみたいに大人じゃないことくらいわかってる……。でも、あたしはカムイおねえちゃんが好き、大好きだから……。力になりたいって思うから……」
カムイ「エリーゼさん……」
エリーゼ「カムイおねえちゃん、あたしは……まだ可愛いだけの妹なのかな……」
エリーゼ「まだ、カムイおねえちゃんを安心させてあげられる人にはなれないのかな……」
カムイ「……」ギュッ
エリーゼ「あ……」
ドクン……ドクン
エリーゼ「……カムイおねえちゃんの音が聞こえる」
ドクンドクン
カムイ「エリーゼさんの音が聞こえます。すごく早いんですね」
エリーゼ「そ、その少し恥ずかしい。こんな風に抱き合うのは、初めてだから……」
カムイ「ふふっ、そうなんですね」
エリーゼ「カムイおねえちゃんの音、全然変わらないね……」
カムイ「これでも鍛えてますから」
エリーゼ「えへへ、やっぱりカムイおねえちゃんはすごいね……」
カムイ「……ねぇ、エリーゼさん」
エリーゼ「なに、カムイおねえちゃん」
カムイ「私がこの戦いからすべてを捨てて逃げだしたいって言ったら、エリーゼさんはどうしますか?」
エリーゼ「……カムイおねえちゃんらしくないって思っちゃう。でも、それがあたしがしらないカムイおねえちゃんなんだよね……」
カムイ「幻滅しましたか?」
エリーゼ「ちょっとだけ。だってあたしの知ってるカムイおねえちゃんは自信に溢れてて、諦めない立派なおねえちゃんだから」
カムイ「ふふっ、すごく評価されちゃってますね」
エリーゼ「えへへ、でもカムイおねえちゃんがこんなこと言ってくれたのはちょっとうれしい。あたしでもカムイおねえちゃんの力になれるってわかるから……」
カムイ「それでエリーゼさんはそんな私になんて言ってくれるんですか?」
エリーゼ「あたしが一緒にいるって言ってあげるから。皆が一緒にいるって、カムイおねえちゃんのことを信じてるって……」
カムイ「エリーゼさん……ごめんなさい」
エリーゼ「なんでカムイおねえちゃんが謝るの?」
カムイ「私はそう言ってもらえないとまだまだ安心できないみたいですから……」
エリーゼ「だったら、ありがとうって言ってほしいな」
カムイ「はい、わかりました。ありがとう、エリーゼさん」
エリーゼ「えへへ、なんだか照れちゃうね////」
カムイ「ふふっ、そうですね」
エリーゼ「……あ、あのね、カムイおねえちゃん」
カムイ「はい、なんですか?」
エリーゼ「辛いことがあったらあたしに甘えてもいいんだよ……。ずっとずっと一人で悩むなんて悲しいもん」
カムイ「…皆さんの力を借りてるのに、そんな甘えてもいいんでしょうか?」
エリーゼ「いいの。だって、みんなカムイおねえちゃんのこと大好きに決まってるもん」
カムイ「……ありがとうございます。エリーゼさん」
エリーゼ「そ、それにね、あたしはカムイおねえちゃんにならいろいろしてあげたいから……//」
カムイ「色々ですか」
エリーゼ「うん、その、ちょっとはずかしいことだっておねえちゃんのためなら////」
カムイ「嬉しいんですが、さすがに恥ずかしいことというのは問題が……」
ガシッ
カムイ「ん?」
アクア「……」
カムイ「アクアさん?」
アクア「ふふっ、すごく元気になったみたいね」
カムイ「はい、アクアさんとエリーゼさんのおかげです」
アクア「そう、さっきまでエリーゼに色々してもらえて元気になれたということね……。それじゃ、もっと元気が出るようにマッサージをしてあげたいのだけど」
カムイ「マッサージですか?」
アクア「気にしないで。ただ、ちょっと痛いの我慢するだけでいいから……」コキコキッ
カムイ「痛いのは嫌ですね……」
アクア「大丈夫よ、痛みもいつか快感に変わっていく特別なものだから」
エリーゼ「ふふっ」
アクア「エリーゼ?」
エリーゼ「ごめんね。でも、アクアおねえちゃんもカムイおねえちゃんがいないとだめなんだなーって思ったら面白くて」
アクア「な、なにを言っているの? これはエリーゼによからぬことをしようとしてるカムイにお灸を据えようと思っただけで他意はないのよ」
エリーゼ「だってアクアおねえちゃん、カムイおねえちゃんに触りたくて仕方無いって感じがする。カムイおねえちゃんに見てもらいたいって言ってるみたいだもん」
アクア「そ、そんなこと……」
エリーゼ「じゃあ、今日はあたしがカムイおねえちゃんと一緒に過ごしちゃうね」ガシッ
カムイ「エリーゼさん」
エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃん大好きだよー」スリスリ
カムイ「ええ、私も大好きですよ」ナデナデ
アクア「…あっ」
エリーゼ「カムイおねえちゃんはアクアおねえちゃんにもぎゅ―ってしてもらいたいよね?」
カムイ「そうですね。ぎゅ―ってしてもらえたらとっても嬉しいです」
アクア「……そ、そこまでいうなら……。そ、そのぎゅってするけど」
カムイ「はい、おねがいします」
アクア「いい、あなたが言うからするだけよ」
カムイ「わかってます」
アクア「そ……それじゃ」
ギュッ
カムイ「アクアさんとエリーゼさん、とってもあったかいです」
アクア「そ、そう……」
エリーゼ「カムイおねえちゃんもあったかいよ……」
カムイ「……色々と心配を掛けてごめんなさい。でも、もう大丈夫ですから」
カムイ「私は前に進みます。どんなことがあっても、一緒に歩いてくれる人たちがこんなにたくさんいてくれるから……」
アクア「……カムイ」
エリーゼ「カムイおねえちゃん……」
カムイ(私はもう逃げたりしません……。たとえこの先に……心が引き裂かれてしまいそうなそんな現実が待っていたとしても……)
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『地下牢』―
リョウマ「……」
カツンカツン
リョウマ「……ユキムラか」
ユキムラ「……よくわかりましたね。私がここにいることに驚くこともないところを見るともしかして知っていましたか?」
リョウマ「……テンジン砦に向かう道中に拘束された時からおおよその察しは付いていた。お前が現れることを覚悟をしていたんだ」
ユキムラ「そうですか、立派ですね。あなたが信じたあの裏切り者は覚悟の足りない子供でしたよ。あんな者と一緒に白夜を立て直そうとしていたなんて、あなたは愚かな人ですね」
リョウマ「……」
リョウマ「それを言うためにわざわざ俺の前に姿を現したわけでは無いだろう?」
ユキムラ「ええ、形とはいえリョウマ様は現白夜王国を統べる方ですから。スサノオ長城に敵が迫っていることをお伝えしておくべきかと」
リョウマ「その敵というのは白夜にとっての敵ではないだろう……」
ユキムラ「いいえ、白夜にとっての敵ですよ。リョウマ様はミコト様や民が死んでいったことを忘れるというのですか?」
リョウマ「忘れるわけがないだろう……」
ユキムラ「では、敵が何であるかなど考えることもないことです。敵が迫っているならば、それをどうにかしなくてはいけませんからね」
リョウマ「その敵を討つためにテンジン砦を破壊したのか、多くの兵を巻き添えにしてまで……」
ユキムラ「足止めのために必要な犠牲でした。うまく行くと思ったのですが、彼らはしぶといものです」
リョウマ「ユキムラ、今ならまだ間に合う。もうこの戦いに意味などないはずだ……」
ユキムラ「あなたにとって意味がなく見えても、私にとっては意味があります。理解できないのはお互いでしょう? 私にとってヒノカ様の戦う理由が理解できないようにです」
リョウマ「なぜ、そこでヒノカの名を出す……」
ユキムラ「なぜと言われましても……」
リョウマ「ヒノカはとても正常とはいえない! ヒノカは――」
ユキムラ「ええ、だからこそ願いを叶えられる舞台を準備して差し上げたんですよ。立派な舞台でしょう、白夜の最前線となる場所で対峙することになるんですから」
リョウマ「ユキムラ!!!!」ダッ
ガシャンッ!!!
リョウマ「お前はすべてを巻き込んででも復讐するつもりなのか!?」
ユキムラ「ええ、そのつもりですよ。私が憎いでしょう、その瞳が何よりの証拠です」
リョウマ「なに?」
ユキムラ「その瞳、それは私がカムイに向けているものと同じです。憎いですよね、わかっているのにそうされるという事の意味が……」
リョウマ「……ヒノカを下がらせろ」
ユキムラ「それは無理です。ヒノカ様はご自分の意思でスサノオに向かわれました。臣下と一緒にです。もう、今さらあなたの言葉に従うことはありませんよ。言っていました、私が残ったリョウマ兄様を守ってカムイを取り戻してすべてを元通りにしてみせると。ははっ、本当に素晴らしいことですね」
リョウマ「……ヒノカ」
ユキムラ「まぁ、リョウマ様はそこで待っていてください。運が良ければヒノカ様が彼女を連れ帰って来てくれるはずです。あなたの望んだ国を直すこともできるかもしれませんから……」
ユキムラ(もっとも、今のヒノカ様にカムイを五体満足で捕らえる余裕――)
(そんなものがあるとは到底思えませんがね……)
休息時間2 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB
(イベントは起きていません)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+
(イベントは起きていません)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]←NEW
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
今日はここまで
ユキムラがすごく悪い人になっていますが、ミコトの死とカムイの白夜離反という現実はこれくらいの衝撃があったんじゃないかと思うのです。
あと、エコーズ楽しみやね。
この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物を二人(支援A以外)
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>355 >>356
◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>357と>>358
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
安価続きます
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・オーディン×ニュクス
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・アシュラ×サクラ
・サクラ×ラズワルド
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
この中から一つ>>359
(支援イベントキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、次のレスのものになります)
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・ギュンター×サイラス
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ラズワルド×オーディン
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・マークス×ギュンター
この中から一つ>>360
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
モズメ
アシュラ
ラズワルド
サクラ
オデンニュクス
サイラスとギュンターでお願いします
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオン邸―
ラズワルド「サクラ様」
サクラ「あれ、ラズワルドさん、どうしたんですか?」
ラズワルド「へへっ、ちょっとサクラ様にプレゼントがあって、これです」
サクラ「え……。まさかこれって」
ラズワルド「うん、魔法のタルト。ほんとすごい人気だね、開店よりも前に行ってみたけどいっぱい人が並んでで、でもなんとか買えてよかったよ」
サクラ「でも、どうして買ってきてくれたんですか? あの、大丈夫って言ったと思うんですけど」
ラズワルド「それは、サクラ様が僕に紅茶を淹れてくれたからだよ」
サクラ「え?」
ラズワルド「ほら、この前、僕に紅茶を淹れてくれたでしょ?」
サクラ「は、はい。でも、覚えたてでしたし、それに少し渋かったと思います。とても、お礼を受け取れるものではなかったと思うんですけど」
ラズワルド「ううん。紅茶もそうだけど、サクラ様にお茶に誘われたのはとっても嬉しかったからね。正直、タルトだけじゃ足りないんじゃないかって思ってるくらいなんだ」
サクラ「そんな、大げさです」
ラズワルド「まぁ、そういうわけだからこれはサクラ様に……」
サクラ「でしたら、ラズワルドさんも一緒にタルトを食べてくれませんか?」
ラズワルド「え、いいよ。これはサクラ様のためにって買ってきたものだから、僕が食べることはないと思うし」
サクラ「いいえ、ラズワルドさんにも一緒に食べてもらいたいです。あと、その出来れば紅茶の方の感想も聞かせていただけたらなって……」
ラズワルド「え?」
サクラ「その、紅茶をもう少しうまく淹れられるようになりたくて、その練習のお手伝いというかですね。だ、駄目ですか?」
ラズワルド「ううん、そんなことないよ」
サクラ「あ、ありがとうございます」
ラズワルド「それにしても二回も同じ女の子からお茶に誘われるなんて、僕の人生初かもしれない」
サクラ「それじゃ、わたしは紅茶の準備をしてきます。そのタルトを切ってもらってもいいですか?」
ラズワルド「わかったよ。サクラ様の紅茶楽しみにしてるよ」
サクラ「私もラズワルドさんの買ってきてくれた魔法のタルト、とっても楽しみにしてます」
ラズワルド「あははっ」
サクラ「ふふふっ」
【サクラとラズワルドの支援がAになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都近くの平原―
ニュクス「それでこんな夜に私を呼び出して何の用かしら?」
オーディン「ふっ、来たな。この漆黒のオーディンが生み出すあまねく新世界の舞台に!」
ニュクス「はぁ、ふざけてるなら帰るけど」
オーディン「あ、ちがいます。ここまで足を運んでくれてありがとうございます!」
ニュクス「で、その新世界の舞台って何のこと?」
オーディン「ニュクスは言ってたよな。昔は魔法が好きだったって」
ニュクス「昔の話よ。今はそんなことを言う資格もないと思ってる。私が作りあげることができるのは、人を傷つけるだけの魔法だけだから」
オーディン「ふっ、そのニュクスに巣食う暗黒世界を新世界に変えてやろう」
ニュクス「え、何を言って――」
オーディン「はあああっ、行くぞ。夜空を彩れダークネス・シャワー!!!」
シュオオオオオンッ ヒュウウウウッ
バシュッ ドンドンドドンッ!!!
シュオオオッ
ニュクス「!!!!」
キラキラキラ
シュオンッ パアアッ!!
ニュクス「……すごい」
オーディン「はぁはぁ、はぁ~~~。真面目に疲れた……」
ニュクス「今のは……」
オーディン「ニュクスから教えてもらったことを全部まとめて、俺なりに考えた魅せる魔法だ。これでもいろいろと考えたんだぜ?」
ニュクス「でも、どうしてこんなものを?」
オーディン「言っただろ。俺はニュクスに巣食う暗黒世界を新世界に変えるって。ニュクスから教わったことを俺は戦うために使うべきじゃないそう思った。それに戦いの場よりも戦いが無い時に皆に見せる魔法のほうがいいし、これぐらいきらびやかな物にもできるだろ?」
ニュクス「あなたって変わっているのね。教わった魔法をこんな形で使おうとする人は、初めて見たかもしれない」
オーディン「ふっ、なんたって俺は漆黒のオーディン、摂理を破壊し新たなる道を作る選ばれし者だからな」
ニュクス「そう、でも最初はみんなを驚かせるものを作りたいって言ってたのに。目標を変えちゃうのはどうかと思うわ」
オーディン「わ、忘れてるわけじゃない。ただ、そのだ……」
ニュクス「はいはい、またわからない所があるんでしょう? 大丈夫、ちゃんと教えてあげるわ」
オーディン「助かるぜ。よし、今のよりもっともっとかっこいい魔法を作り上げてみせる。ニュクスの力と俺のイマジネーションを爆発させてやるぜ」
ニュクス「ふふっ、私の魔法でどんなことをしてくれるのか、期待しているわ」
オーディン「ああ、任せてくれ! よーし、今の爆発をさらに増やして――」
ニュクス(……)
ニュクス(私の中の暗黒世界、どうやら壊されちゃったわね)
ニュクス(漆黒の魔法使いさん……)
【オーディンとニュクスの支援がAになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―
ギュンター「でやぁ!」
サイラス「はあああっ!!!!」ブンッ
ガキィン ヒュンヒュンヒュン カランカラランッ
ギュンター「むぅ、私の負けのようだな……」
サイラス「はぁはぁ、ようやくギュンターから一本取れた……」
ギュンター「今の戦い方、私のものでは無いお前だけのものを感じらとれた。まぁ及第点だろう」
サイラス「約束したからな。でも、いまいちまだよくわからない、俺は俺だってわかってるけど、これが俺らしさなのかどうかは……」
ギュンター「当り前だ。そんな簡単に理解できるものではない。誰しも生まれたばかりで立つことが出来ないように、ゆっくり成長してようやく立つことができる。お前は今その途中にいるだけのことだ。心配することはない」
サイラス「ありがとう、ギュンター」
ギュンター「礼をするのはこっちの方だ。カムイ様の幼少期を過ごしてくれたこともそうだが、こうして刃を交えてくれたこと、そして私を目標にしてくれたことを」
サイラス「え?」
ギュンター「正直、私のような人間の背中を見て騎士になることを望む者がいるとは思ってもいなかった。サイラス、お前のことは生涯忘れることはないだろうな」
サイラス「な、なんだか照れるな……」
ギュンター「そこでだ、サイラス」チャキッ
サイラス「ギュンター、それって……」
ギュンター「お前なら知っているだろう戦士の誓いを」
サイラス「し、知っています。でも、俺なんかがいいのですか?」
ギュンター「私がお前と誓いを立てたいと思っているのだが……」
サイラス「俺はまだ未熟です。誓いを立てていいのかどうか……」
ギュンター「ふっ、自分に自信が持てないか?」
サイラス「ギュンターからの申し出、できればすぐにでも応えたい。でも、今の俺にはまだ早い気がしてならないんだ。俺はカムイを守るために騎士になった。ギュンターがカムイを守っているように、俺もそうなりたいって。でも、それはまだギュンターをまねているだけのような気がして……」
ギュンター「ふむ」
サイラス「信頼も尊敬もしています。でも、だからこそ俺はギュンターと同じくらい強くなってから誓いを立てたい。いや、正直に言うと俺はギュンターを越えてからこの誓いを立てたいんです」
ギュンター「ふっ、私を負かせてから誓いを立てるか……。若造が調子に乗ったことをいうものだな」
サイラス「……」
ギュンター「だがよかろう。その私を越えることを望む瞳を信じ、この誓いはお前のその時が来るまで静かに待つことにする」チャキンッ
サイラス「ギュンター……」
ギュンター「若造がどこでこの誓いを立てることができるか、確かめさせてもらうぞ」
サイラス「ああ、必ず俺はギュンターを越える。だから待ってほしい、向き合って誓いを立てられるまで」
ギュンター「ふっ、ゆっくりと待たせてもらう……。お前との誓いを立てるその時をな」
【ギュンターとサイラスの支援がAになりました】
今日はキャラ支援だけ、明日本編です
バレンシアエディションについてくる映像、大画面で見るアミュージアの踊りは良いものだ
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『作戦会議用天幕』―
マークス「もう大丈夫なのか、カムイ」
カムイ「はい。すみません、いろいろと迷惑を掛けてしまって……」
マークス「なに、気にすることはない」
レオン「姉さん、本当に大丈夫なんだよね?」
カムイ「ええ、と言ってもあまり信じてもらえるとは思えませんけど。もう、大丈夫ですよ」
レオン「……ならいいんだ」
エリーゼ「レオンおにいちゃん、カムイおねちゃんのこととっても心配してたもんね」
レオン「それはそうだよ。また同じようなことになったりしたら……」
カムイ「レオンさんの心配はもっともです。私はただの子供でした。だからユキムラさんの向けてくる悪意を受け入れることができませんでした」
カミラ「カムイ……」
サクラ「カムイ姉様」
カムイ「私はシュヴァリエ公国での一件で、全てのことを受け入れられることができると思いこんでいたんです。リリスさんにクリムゾンさん、他にも多くの人が犠牲になったこと、それを背負っていけると……」
クーリア「カムイ殿……」
カムイ「でも、実際は違っていました。私は背負ってなんていなかった……。だから、ユキムラさんの言葉を受け入れられなかったんです」
カムイ「自分の思い描いた筋書き通りに物事が進んだからかもしれません。私は終わりを作り上げていたんです。自分にとって都合のいいそんな終わりに全てを肩代わりさせたんです。そこに至ればすべてが報われる。そんな形にもなっていない幻想に逃げていただけだったんです」
マークス「だが、お前はこうしてもう一度ここにいる。お前は逃げることをやめた、そうだろう?」
カムイ「……はい。逃げたところで私の罪が消えるわけじゃありません、戦いが終わってもそれは変わりません。それを私は受け止めて戦いを終わらせるために剣を取ります。たとえ、それが辛い戦いであったとしてももう逃げません。それが私の目指すべき道ですから」
アクア「ふふっ、昨日までのあなたとは大違いね……」
カムイ「アクアさん。色々とありがとうございます、そのこんな風に立ち直れたのはアクアさんの手助けがあったからです」
アクア「いいのよ。ようやく自信に溢れてるあなたを見られたんだから」
カムイ「それほど自信はないんですけどね……」
マークス「自信を持つのはいいが過剰なのも問題だ。実行に移す前はそれくらいでいい。肩の力を張りすぎてもいいことはないからな」
カムイ「はい、力み過ぎなようにしますね」
マークス「ふっ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『外周』―
カムイ(あのあと色々と話をしましたが、やはり夢というわけにはいきませんか……)
カムイ(撤退した白夜軍はスサノオ長城を中心に防衛陣を展開しているみたいですね。国を囲い込む様に伸びている長城は白夜にとって最後の防衛線。ここを抑えることができれば、残るは……シラサギ城だけとなると――)
カムイ「やはり私達が来るのを待っているんでしょうね」
カムイ(テンジン砦はすでに破壊されていることから奪還の必要もありませんし、わざわざ戦線を拡大して壁を薄くする必要もない、今白夜が執れる優位な手はこれだけでしょう)
カムイ「私達はどうするべきでしょうか……」
アシュラ「何がだ?」
カムイ「わっ、あ、アシュラさん、脅かさないでください」
アシュラ「ははっ、悪かったな。それで何を悩んでるだ?」
カムイ「この先に待ち構えているスサノオ長城のことです。あそこを避けて通ることはできませんから」
アシュラ「あー、あの城か。あれは俺がまだ小さい餓鬼だったころからあったか。まぁ、話を聞く限りあそこまで暗夜軍が迫った記録はねえな」
カムイ「やはり、王都まで暗夜軍が迫ったことはなかったんですね」
アシュラ「知ってる限りじゃどんなに迫ってきてもテンジン砦が支えてたらしい。それを自分たちで破壊しちまうんだから、ここで決めるつもりだったんだろうぜ。まぁ、結果的に失敗したみたいだけどよ」
カムイ「こちらは間一髪でした。サクラさんたちのおかげですよ」
アシュラ「九死に一生ってところだな」
カムイ「ええ……」
アシュラ「……へぇ」
カムイ「どうしたんですか、アシュラさん」
アシュラ「いや、テンジン砦での戦いが終わった後のあんたを見て、もう駄目かもしれないって思ってたからよ。こうしてケロッとしてるを不思議に思っただけだ」
カムイ「……あの時はそう見えていましたか?」
アシュラ「ああ、心ここにあらずってところか。とてもこれから白夜を相手に戦っていけるようには見えなかったんだが……」
カムイ「色々とあったんです。私自身、現実と向き合うには考えが子供過ぎたんだと思います……」
アシュラ「まぁ、俺から見ればカムイ様もまだまだ子供だな。」
カムイ「酷いですね。これでもスタイルには自信があるんですよ? あと指のテクニックとか、相手が気持ちよく感じる場所を探るのは一流だと思ってます」ワシワシ
アシュラ「さりげなく顔を触るのはやめろ。そもそも、こんなおっさんの喘ぎ声なんて聞きたい奴なんているわけねえよ」
カムイ「そうですか、私は聞きたいですよ?」
アシュラ「こう言えばああ言うの見本みたいだな、あんた」
カムイ「そう言えばアシュラさんの昔の話って聞いたことがありませんね。特に暗夜で過ごしていた時のこととか」
アシュラ「聞いたところで面白いものじゃない。闇に紛れて物を奪うだけ、華やかな話ってわけじゃないからな」
カムイ「でも、気になります」
アシュラ「暇つぶしにもならない話だ」
カムイ「わかりました。それじゃ……」ピトッ
アシュラ「なっ! なにして――」
カムイ「アシュラさんの顔をいっぱい触るので我慢しようと思いまして」
アシュラ「はぁ!? なんでそうなるんだよ」
カムイ「話を聞かせてもらえないから、仕方ありません」
アシュラ「そこはなにもせずに諦めるってならないのか?」
カムイ「それだとなんか癪なんです。というわけで、まずは頬から耳裏に掛けて――」
アシュラ「あー、わかった。わかったよ。話してやる、話してやるからその手を下ろせ!」
カムイ「はい、わかりました」ニコニコ
アシュラ「はぁ、少しでも心配した自分を呪いたくなる」
カムイ「ふふふっ」
アシュラ「はぁ、そうだな……。最初に俺が所属してた賊の話でいいか?」
カムイ「はい、いいですよ。お願いしますね、アシュラさん」
アシュラ「わかったよ。まったく変わった王女様だよ、本当に……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『周辺の森』―
タタタタタッ
カムイ軍偵察兵「ただいま戻りました、カムイ王女様」
カムイ「お疲れ様です。すみません、このあたりの地形はまだまだ把握し切れてないというのに偵察の任を与えてしまって……」
カムイ軍偵察兵「いいえ、モズメ様のご協力もありまして偵察地の設営はそれほど苦ではありませんでした」
モズメ「え、そ、そんなことあらへんよ。あたしが先頭でむしろ遅なってるんやないかって……」
カムイ軍偵察兵「いいえ。白夜の地ではモズメ様の経験のほうが重要視されるます。それに途中遭遇したクマとの戦いぶりはすさまじいものでした」
カムイ「え、途中でクマに出会ったんですか?」
モズメ「うん、でも結構小振りやったな。小刀あれば十分やったから、あたいがどうにかしたんよ」
カムイ「小振りってどれくらいの大きさなんですか?」
モズメ「カムイ様の身長に拳一つ乗っけたくらいやったかな。本当に大きいのやと屋根に手が届くくらいのになるから。あ、クマはその場で捌いたから偵察地で干して食べられるように準備してもらっとるんよ」
カムイ「手際がいいですね」
カムイ軍偵察兵「はいとても手際がよかったです。われわれはそれに圧倒されて見ているだけでしたので……」
カムイ「そうですか。モズメさん、すごいですね」ナデナデ
モズメ「ひゃっ、カムイ様。いきなり撫でんといて、びっくりするわ」
カムイ「ふふっ。偵察のほうは交代で行うようにしてくださいね」
カムイ軍偵察兵「はい。偵察はいつまで?」
カムイ「予定では後続の援軍が到着次第スサノオ長城に進軍することになっていますので、その間よろしくお願いします」
カムイ軍偵察兵「はい、わかりました。モズメ様、干し肉の方、ありがたく頂きますね」
モズメ「ええよ、気にせんといて。それと様付けはやめてほしいわ、そのくすぐったい気持ちになるんよ」
カムイ軍偵察兵「そうですか、ではモズメさんと呼ばせていただきます。クマとの戦いがありましたから、モズメさんは少しばかり休まれてからいらしてください」
モズメ「ありがとうな……」
カムイ軍偵察兵「では、カムイ王女様。我々は持ち場に戻ります」
カムイ「はい、よろしくお願いしますね」
タタタタタッ
モズメ「そんなすごいことしてるとは思わへんのやけど……」
カムイ「自分に出来ないことをすごいと思うのは不思議なことじゃ無いと思います。それにモズメ様といわれているモズメさん、なんだか初々しい気配で可愛らしかったですよ」
モズメ「様付けされるなんて本当に初めてやから……照れてまうんよ」
カムイ「ふふっ、可愛いですね」
モズメ「もう……」
モズメ「それより、カムイ様。もう大丈夫なん?」
カムイ「はい、いろいろと心配を掛けてしまったようで、ごめんなさい」
モズメ「……そうやね。前みたいに肩肘張ってる感じせえへんし、あたいの知ってるカムイ様になっとるから安心したわ」
カムイ「ふふっ。でも、モズメさんが偵察の任務に出るなんて珍しいですね」
モズメ「えへへ……ちょっとだけ見ておきたかったんよ」
カムイ「何をですか」
モズメ「白夜の道やな。前にここを通ったのは白夜を出て行く時やったから……」
カムイ「そうでしたね……。あの白夜平原での戦いでモズメさんは私について来てくれる選択をしてくれました」
モズメ「あたいにはもう帰る場所もないし、頼れる人はカムイ様しかおらへんかった。でもなによりカムイ様の力になりたいってあの時思ったんよ。だから後悔とかはあらへん」
カムイ「そう言ってもらえると助かります」
モズメ「ふふっ。それよりもカムイ様。おなか減ってたりすんやない?」
カムイ「……そうですね。朝から色々とあって細々と食べていただけですから」
モズメ「そうなんか。それはあかんで、ちょっと付いて来てや」
カムイ「え、モズメさん? ちょっと、待ってください」
タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~
グツグツグツ
モズメ「ふんふ~ん。さっきとれたクマの肉がぎょうさんあってな、これで鍋にするのもおいしいんよ」
カムイ「へぇ、そうなんですか。あ、とてもいいにおいがします」
モズメ「村にいた時は狩でクマが取れると夜に皆で鍋を囲んでな。今日あったこといっぱい話しあったんよ」
カムイ「仲が良かったんですね。モズメさんの村の人たちは」
モズメ「しょっちゅう喧嘩してた人もおったけど。あれって信頼とかそういうのやと思うんよ。本当に信じてるから本音を言って本音で返せる。言い合いでも落ち着ける場所がわかるってそういうことやと思うんよ」
カムイ「落ち付ける場所ですか……。なんだかいいですね、その言葉」
モズメ「ふふっ、カムイ様にそう言ってもらえると嬉しいわ。はい、カムイ様、あたい特製のクマ鍋や」
カムイ「……いただきますね。うん、おいしいです」
モズメ「久々に作ったから心配やったけど、カムイ様の口に合ってよかったわ」
カムイ「ええ、なんだか不思議な味ですね。なんだかとっても胸がぽかぽかしてきます。モズメさんの愛情でしょうか?」
モズメ「か、カムイ様。恥ずかしいこと言わんといて……顔が熱くなってまうよ///」
カムイ「ふふっ」
カムイ「ごちさそうさまでした。とってもおいしかったです」
モズメ「いっぱい食べてもらえてうれしいわ」
カムイ「ええ、結構入ってしまうものですね。ちょっと自分でも驚いてます」
モズメ「以外にいっぱい食べてまうんやね。びっくりや」
カムイ「ふふっ、なんだかふとした時にまた食べたくなってしまいますね」
モズメ「カムイ様がそう言うなら時々作ってもええよ?」
カムイ「いいんですか?」
モズメ「もちろんや。それにカムイ様、食べてるときとっても嬉しそうに食べてくれて、作ったこっちとしてはとっても嬉しくなれるんよ」
カムイ「なら、ときどきでいいのでお願いできますか?」
モズメ「まかしとき。今度もおいしいもの作ってみせるで」
カムイ「はい、楽しみにしてますね、モズメさん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『カムイの天幕』―
カムイ「……」
カムイ「ふぅ……」
ファサ
リリリリリリッ
カムイ「……虫の鳴き声、暗夜では聞いたことの無い物ばかりですね」
ザッザッ
カムイ「ん?」
サクラ「あ、カムイ姉様……」
クーリア「む、カムイ殿」
カムイ「クーリアさんにサクラさん? なんだか珍しい組み合わせですね」
クーリア「ははっ、たしかにそうですね。白夜の姫君と共にこうして歩くというのは、なんとも新鮮なものですから」
カムイ「ふふっ、でもどうしたんですか? もう夜ですし、あまり出歩くのはよくないかと」
クーリア「まぁ、そうなのですが。訪れたい場所がありまして、サクラ殿に案内していただいているところです」
サクラ「……あの、よろしければカムイ姉様も一緒に来てくれませんか?」
カムイ「え、私もですか?」
サクラ「はい、あの、できれば一緒に来ていただきたいんです。そのツバキさんとカザハナさん、それにレオンさんもいますから」
クーリア「そうですね。できれば私からもお願いしたいのですが、よろしいですかな?」
カムイ「いいですよ。それでは行きましょうか」
サクラ「はい」
タタッ タタッ
カムイ(破壊されたテンジン砦を越えて西側までやってきましたけど、ここ周辺も瓦礫の気配しかありません。ユキムラさんは本当に誰ひとりとして逃がさないつもりだったんですね……)
サクラ「……あ、レオンさん!」
レオン「サクラ王女にクーリア。あれ、カムイ姉さんも来たんだ」
カムイ「はい、二人に来てもらいたいと言われたので。えっと、ここは?」
ツバキ「もう跡形もないけど、南西門だった場所になるよ」
カムイ「そうなんですか、でもどうしてこのようなところに?」
レオン「それは僕達に生きてほしいって思ってくれた人たちが眠る場所だから……かな」
カムイ「え、それって……、まさかここが?」
カザハナ「うん、あたしたちここでスズメたちと別れちゃったんだ。あとで追いつくからって言ってたのにね……」
カムイ「そうだったんですね……」
カムイ(ここでスズメさんたちが……)
サクラ「……」タッタッ
カムイ「サクラさん?」
サクラ「……スズメさん、私達またここに戻ってこれました」
サクラ「カザハナさんもツバキさんも元気ですし、レオンさんも治療のおかげで回復できました。あと、カムイ姉様とクーリアさんも一緒なんですよ」
サクラ「そのいきなりであれですけど、やっぱり約束を破るのはよくないと思います。スズメさん、私に故郷のこと夜通しでお話してくれるって約束してくれたじゃないですか。なのにあなたは帰ってきてくれませんでした。私はあなたにもう一度再会できるって思ってたのに…」
レオン「サクラ王女……」
サクラ「……でも、スズメさんは私達を安心させるためにそう言ってくれたんですよね。本当は怖かったはずなのに、私達を逃がしてくれました」
サクラ「私はスズメさん達の意思を無駄にしません」
サクラ「ここに来たのは悲しいからじゃなくて、スズメさん達に見てもらいたかったからなんですよ」
サクラ「私はスズメさん達が戻りたかった白夜……ううん、すべてが狂ってしまう前の白夜、それに戻っていくために今の白夜と戦います。そして平和になったら、スズメさんの故郷で咲いている桜を見に行きたいです。あなたが私に見せたいって言っていた、私と同じ名前の花をちゃんと……」
スタッ
サクラ「?」
ツバキ「もちろん、俺たちも付いていきますよー」
カザハナ「うんうん。あとサクラ、私じゃなくて私達って言ってほしいなぁ。レオン王子もそう思うでしょ?」
レオン「……僕もその集団に加わってるって言うんじゃないよね?」
カザハナ「加わってるに決まってるでしょ? レオン王子はあたしたちを白夜に返すって約束してくれたんだから、約束破るのはいけないってサクラも今言ってたし?」
サクラ「そ、そういうわけですから、レオンさんもちゃんと付いて来てくださいね」
レオン「分かったよ。はぁ、本当にサクラ王女は頑固なところがあるね。そこがサクラ王女らしいところだと思うけど」
ツバキ「たしかにねー」
カザハナ「そうかも、サクラって頑固だもんね」
サクラ「もう……ふふっ」
サクラ「スズメさん、私達は前に進みます。みなさんが生きられなかった分まできちんと生きるために……」
ポンッ
サクラ「あ、カムイ姉様……」
カムイ「サクラさん、とても強くなったんですね」
サクラ「そんなことないです……」
カムイ「いいえ、私なんかよりずっとずっとサクラさんは強くなってますよ。スズメさん達が託してくれた事にちゃんと向き合っているんですから、自信を持ってください」
サクラ「カムイ姉様……」
カムイ「スズメさん達が託してくれた未来をサクラさんなら見つめていけるはずです……」
サクラ「はい!」
クーリア「そうですね。スズメたちが託してくれた未来に私達は近づかなければなりません」
ガサゴサッ
クーリア「少々寒々しい場所ですが、しばらくここで見守ってください……」
カムイ「何を置いているんですか?」
クーリア「これは魔法で作り上げた雪の雫です」
カムイ「雪の雫……」
クーリア「はい。私の村で過ごし共に闘うことを選んでくれた二十五人の家族たち、それは白夜暗夜も関係ありません。白夜で降る雪も暗夜で降る雪も同じものであるように、彼らは私達にとって変わることの無い家族なのです。この先、私達はスズメたちのことを忘れず生きていく、この雫はその証です」
カムイ「忘れずに生きていくですか」
クーリア「ええ、今度スズメたちと再会する時は、平和になった世界のことを土産にしたいと思います。この不毛な戦いが終わった平和な世界の話を彼女達は楽しみにしているはずです」
カムイ「クーリアさん……」
クーリア「カムイ殿、私はあなたの目指す平和な世界のために力を貸し続けます。スズメ達が見ることのできなかった世界にあなたなら辿りつけるはずです」
カムイ「ありがとうございます」
カムイ(平和な世界を手に入れるために戦う。それは私が選んだ戦い、それから逃げていたのは事実です)
カムイ(でも、もう迷いません。私は平和な世界を手にするために戦います)
カムイ(その道がどんなに辛く険しくても――)
(それが私の始めた戦いなんですから……)
休息時間 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB+
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+
(イベントは起きてません)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB→B+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)←NEW
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラC+→B
(暗夜での生活について話をしています)←NEW
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]←NEW
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
今日はここまで
次回は番外編になります。
◇◆◇◆◇
異伝『妖艶に射す桜色』
―1-
ひとえに殺してしまえばいいのだとその時ばかりは思った。目の前で倒れ伏す臣下二人の前に震えながら立っている弱弱しい王女、こんな王女を生かしておいて意味があるわけもない。背後で合図を待っているベルカとルーナに手を出さないように伝える。
私が一歩歩み出す度にその王女の顔は曇っていく、死が近づいていることを理解しているからか、それとも何をされるのか理解できないからなのか。どちらにせよ、カムイを白夜に連れ帰るためにやってきた以上、生きて返すつもりはない。手に持った斧で奇麗な花にしてカムイが戻ってきた記念にしてあげるのも悪くない。そんなことを考えて進んでいたらあと数歩で息が届く距離になる。
「ふふっ、安心しなさい。三人ともすぐに楽にしてあげるから」
その言葉に倒れている女が一人顔をあげた。さっきルーナに吹き飛ばされた子で、庇ってくれている主君の前に出ようと腕に力を入れている。眼尻に涙を溜めながらも這いずって進んでくる姿は健気でとても可愛らしく見える。
主君を守るために行っているその行動、でもそれは守るべき主君によって止められる。
「さ、サクラ……だめ、あたしたちのことは、もういいから……逃げて……まだ、逃げられるかも、しれないから……」
「ふふっ、そうね。あなた一人だけなら逃げ切れるかもしれないわよ? 白夜方面まで抜けられれば、さすがにこちらも追いかけられないもの」
便乗するように私は言葉を添える。逃げだしたら、ここで倒れている二人を殺して追いかけるだけのこと、追い掛けられないというのは嘘、たぶん、後方から帰還している兵士たちに見つかってそれで終わり。
逃げ出さなくてもこのまま殺されて終わり、それが目の前にいる白夜の第二王女、サクラ王女の辿る運命だから……
「ぐっ、ううっ、さ、サクラ様。逃げてください……俺たちのことはもう、放っておいていいですから……」
もう一人、男のほうの臣下が言葉を漏らす。驚いた結構深く痛めつけたつもりだったけど、まだしゃべれる体力が残っているなんて、頭を撫でて褒めてあげるのもいいと思えるくらい。そんな優秀な臣下二人は主君、サクラ王女が生き延びることを切に願っている。
なのに、サクラ王女はその場から走り出すことも声をあげることもなかった。曇った顔のままに私だけを見つめていた。何かを私にいたいようだけど、それがなんなのかはわからない。無論、理解しようなんて思いもしないけど、手に持った斧を肩まで持ち上げる。
そろそろ時間、私の頭の中はカムイをどうやって守るかという事ばかりになっていた。カムイは白夜に長く身を置いていたから、スパイの疑いを掛けられるはず。そんな状態のカムイを、お父様が再び暗夜に向かえ入れるとはとても思えなかった。カムイの立場はとても悪く、何も無しに帰ってもそのまま処刑されてしまう気がしてならない。
「どうしようかしら……」
曇っていながら、まだ絶望していない瞳が私を見つめている。
そんな中で、私はどうするべきかを考えた。考えて、考えて、少しの時間が過ぎた時……
「カミラ姉さん!」
私にとって大切な家族の声がした。
白夜の捕虜になったと聞いたとき、とても胸がざわついた。この子のために色々なことをしてあげられることが、私が出来る罪滅ぼしでそれがある意味私がする事のできる愛情表現、その愛情を与えてあげたい妹、カムイがそこにいる。
「カムイ、どうしたの?」
「戦いは終わったんですよね? 怪我などは大丈夫でしたか?」
「ふふっ、心配してくれてありがとう。何もなかったから大丈夫よ」
「本当ですか?」
「疑り深い子ね、それじゃこれでどう?」
無傷の体でカムイを優しく抱きしめる。
カムイの体に触れて、確かにここにカムイがいるんだという安心が得られて、同時に心の中に確かな優越感が沸々と競り上がる。
この優越感が何から来てるのかはすぐにわかった。わかって静かに視線をその方角に向ける。
見るべき相手は少し悲しそうにしていて、さらに優越感が高まるのを感じた。カムイが暗夜を選んだことを見せつけるように力強く抱きしめると、カムイの手が私の二の腕をタッチしてくる。
強く締めすぎたみたいで、離れたカムイの顔は少しだけ赤くなっている。
私に向かってもう少し優しくしてと語りかけるそんな仕草だけでもとても愛おしく感じた。あのサクラ王女が得られなかったものを得られていることが何よりの幸福で、カムイを取り戻すために無謀なことをした王女は、私とカムイの中睦まじい姿を見てから死んでいくと考えると、不憫な役回りねと心でつぶやく。
そこで、カムイが顎に手をやって何やら考えていることに気づいた。視線の先にはサクラ王女たちの姿がある。
「カムイ、可哀そうだけど。サクラ王女たちを救うことはできないわ」
「……やっぱりそうでしょうか?」
「ええ、今のカムイの立場を考えてみてちょうだい。とてもじゃないけど、今のあなたが何を言ってもサクラ王女たちを救う力にはならない。無駄な問題を抱えるだけよ?」
カムイは優しい、それは昔から知っていること。本当ならサクラ王女たちを殺していたところだけど、それをしなかったのはカムイに殺さないように頼まれたから。逃げ出したらそれは知らなかったけど、こうしてここに残っている以上、カムイの言葉を待つしかない。でも、道は決まっている。この三人は死なないといけないのだから……。だから、私はカムイのために選択を一つ提示する。
「ねぇ、カムイ。さすがに辛いでしょう?」
「何がですか?」
「ここでサクラ王女たちをあなたの手で殺すのは……」
「……カミラ姉さんが手を下すというんですか?」
「ええ、それで首を持ち帰ってカムイの手柄にするのよ。そうすれば、少なくとも表だって文句を言う奴はいなくなるわ」
私が考えたことはそういうこと、私がサクラ王女たちを殺してその手柄をカムイの物にすれば、すべてが丸く収まるはず。
カムイは白夜ではなく暗夜と共に闘うことを決め、その証として第二王女の首を持ち帰ったとすれば、お父様だって納得してくれる。そうなれば私達はちゃんと家族として、過ごせるのだから。
私の考えを聞いて、カムイは再び考え始める。
それに仕方がないことだと囁きかける。もしも、もしも万が一にでも私がサクラ王女たちを助けたいと思っても、この状態で救えるとは思えない。
だからカムイが殺してくれますかと頼んでくれるまで待った。まって、待ってようやくカムイの口が静かに開く。
「カミラ姉さん」
「大丈夫よ、おねえちゃんが手伝ってあげるわ。カムイに辛いことさせたくないもの。だから、おねえちゃんをたよってね?」
「はい、そうさせてもらいます。かなり難しいことでしょうけど、その可能性に掛けてみようと思いますから」
そのカムイの言葉に諦めがないことに私は若干困惑して、そのままカムイの頼みごとに耳を傾けた。
それは私にとって考えていなかった選択で、それを聞いたとき私は驚きに目を見開いて……
その守ることになる王女たちを静かに見つめたのだった。
今日はここまで
今週は番外編です。
カミラがサクラ隊を匿うことになったというifになります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さぁ、入ってちょうだい」
私の言葉を受けておずおずと三人が部屋の中に入ってくる。先に用意させた来賓室にはティーセット、豪華な装飾を施した椅子に幾人かのメイド、それは私からすればいつも通りの光景だけど、三人はとても驚いていた。
先のクラーケンシュタインでの一件もあって、三人の顔には未だ困惑が張り付いていている。それは見ているだけでも面白い。自分たちがどうしてここに招かれているのかを理解できない、そんな状況の迷子たちは私に縋るような視線を向けてくる。
「ふふっ、まずは座ってからにしましょう。あなたたちに話をしないといけないこともあるし、状況をきちんと確認しないと安心できないでしょう?」
わざとらしい笑みを浮かべながら三人に座るよう促すと、ようやく三人が視線の先にある長椅子に向かう。ツバキが最初に腰を下ろし、次にサクラ王女、最後にカザハナの順番で落ち着いたのを確認してから、それぞれの表情に目を向ける。
まずはツバキ。男というにはもったいないくらいにとても整った美しい顔立ち、でも今その顔にはカムイから受けた蹴りの跡がくっきり残っていて、薄い痣はまるで化粧の失敗のようで無様だ。
次にカザハナ、彼女は目を赤くしたままだった。その体はまだどこか少し震えていて、王の間で叫びをあげていた時の姿に比べると弱弱しい、でもその手はしっかりとサクラ王女の手を握っている。健気なものだ。
最後にサクラ王女だけど、サクラ王女の顔にも目に見えて疲れがあった。それもそうだ、さっきほど信じていた実の姉に殺されそうになっていたのだから、私だってカムイに刃を向けられて殺されると思えてしまったら、そうなるかもしれない。
もっとも私にそんな出来事が降りかかることはありえないから、するだけ無駄な想像だとすぐに考えを捨てて、私は後ろで待機しているメイドの一人に紅茶を準備するよう指示を出した。
部屋の中に紅茶を準備する音が響き、注がれた紅茶がそれぞれの前に差し出されるが、一向に手に取る気配はない。
明らかに警戒されている。
ここで私が「毒なんて淹れてないわ。とてもおいしいから飲んでみてちょうだい」と笑顔で言ったところでそれを信じてもらえるとは思えなかった。
ならと、私はサクラ王女の目の前にあるカップを手に取ってそれを口へと運ぶ。一口分の紅茶の香りが口の中に広がっていくのを味わいながら、メイドの子たちが私の言葉通りにとても良い葉を使ってくれたのだとわかった。
あとで撫で撫でしてあげよう、そう思ったところで微かに左端の人影が動くのを見る。ツバキが何かを言いたそうにしていた。
「ツバキ、何か言いたいことでもあるのかしら?」
「もしかして、それで安全って見せつけてるのかなーって思ってさ」
「ええ、その通りよ。だってあなた達、全然手を伸ばしてくれないんだもの。今日は特別なものを用意したから、できれば味わって飲んでもらいたいの」
それは私の本心でもある。
「そ、そんなこと言って、ほ、ほんとはあたしたちに何か変な物飲ませようとしてるんでしょ! だ、騙されないんだからね」
「ふふっ、変な物を飲ませるなんて真似はしないわ。それに毒薬で殺すなんて面倒なことだもの、殺すならとっくに殺しているからね?」
「じゃ、じゃあなんで殺さないわけ……。あたしたちは敵なんだよ」
「確かに敵だけど、今は敵って言うわけじゃないの。あなたたち、さっきのカムイの話を忘れたの?」
「……そ、そのあの話って本当のことなんですか?」
サクラ王女がすかさず話に入り込んでくる。あの話、そうあの話、カムイが私に頼んできたお願いのこと。
ようやく話をすることができるようになったと、もう一つティーカップを用意させる。
サクラ王女に新しいカップが差し出されたところで、私は息をひとつ吐いた。
「カムイが別れ際に言っていた通りだけど、私があなた達を匿うことになったの」
そう、それがここにサクラ王女たちがいる理由だった。
さっきクラーケンシュタインで行われた茶番、カムイがサクラ王女を殺そうとしたところに私が割り込んで、お父様にカムイが考えた筋書きを伝えるというもの。それは、カムイが私の手柄であるサクラ王女を奪い、お父様の目の前で殺すことで暗夜王族として再び認めてもらうなんていうもので、私はサクラ王女たちが白夜との駆け引きで幾分か使える価値があるから生かすべきと話をするのである。
その結果として、私はサクラ王女たちの命を預かる立場になったのだ。
「もちろん、白夜との交渉に役に立つであろう捕虜としてになるけど。不自由な生活っていうわけじゃないから安心して、ずっと部屋篭りの生活なんて美容と健康に悪いもの」
私の言葉にカザハナがきょとんとしていた。
ツバキは未だに疑りを抱えているけどカザハナは本気で困惑しているみたいで、サクラ王女にどういうことかと聞いている。状況を把握できていないようで、サクラ王女もようやくあの王の間での一件を受け入れ始めたようで、カザハナの質問に一言一言答えていく。
こちらとしては話がようやく進み始めたので一安心と言ったところだった。
そして、サクラ王女に色々と話を聞いて状況が整理できたのだろうか、カザハナがゆっくりと手をあげた。
「なに、カザハナ」
「あ、あたしたち、もしかしてこの御屋敷で過ごすってこと?」
「ええ、そういうことになるわ。ふふっ、これから立場は違っても一緒の場所に住むことになるんだから、疑われたままはいやでしょ?」
「疑うも何も敵同士だしねー」
「だからこうして紅茶を飲んでみせたのよ」
「そうやって信用させたところでって言うこともあり得るよね?」
ああ言ったらこう言うを体現するような発言に私は少し苦笑した。まるで負けを認めない子供のようで、そのあり方は何とも微笑ましいものにすら感じてしまう。まるで背伸びをして無理やり勝とうとしている子供、私はまず子供に華をあげることにした。
「そうね、あなたの言うとおり、そういうこともありえるわね」
「そうそう、簡単に信用されるなんて思わない方がいいよー」
ツバキは勝ち誇ったように笑みを浮かべている。うっすらとついた痣がなければ完璧な笑みだろうけど、それもすぐに消え去ると思うと愉快で仕方なかった。
「ふふっ、それじゃ信用されるように色々としないといけないものね」
「色々?」
「ええ、そうね。まずは手始めにだけど、今晩みんなでお風呂に入りましょう?」
私の言葉に三人が見事に動きを止めた。サクラ王女もカザハナも、そしてツバキも三者三様に言葉の意味を理解するために数秒だけ顔を固まらせ、漸く意味を理解したカザハナが顔を真っ赤にした。
「い、いきなり何言ってるわけ!?」
「あら、だめかしら? 一緒にお風呂に入って仲良くなるのも悪くないと思ったのだけど?」
「え、えっと、その、いいんでしょうか?」
サクラ王女がおずおずと聞いてくるので、私は別に構わないと言葉を添えて一番反応を期待知る人物に目を向けた。
向けて、その少しだけ嬉しいような恥ずかしいような顔をしているツバキを発見する。
「そ、その俺は、えーっと、やっぱり、その……」
「ふふっ、どうしたちゃたのかしら、そんなに照れて、もしかして想像しちゃったのかしら?」
私の言葉にツバキの顔がさらに赤くなっていくのを確認する。
そういう初なところも可愛いと思う、そしてそんな顔を赤くした結果、カザハナの視線が厳しいものに変わっていった。
「こ、こんな緊急事態に何想像してんの!?」
「ち、ちがうんだ。これは…」
「別に恥ずかしがることないわ。男の子だもの、そういうことを考えちゃうのは変なことじゃないから」
さらにツバキに追い打ちを掛けると、彼は私を恨めしそうに睨んでくる。もっとも、顔を赤くしていることもあって機嫌の悪い子供にしか見えないので怖くも何ともなかった。
「え、えっとツバキさん……」
「だめよ、サクラ。今のツバキはスケベなことを考えてるお猿さんなんだから」
顔を真っ赤にしていることもあってか、カザハナはサクラ王女を守るようにツバキと距離を置く。主にすら距離を開けられるというのは不憫なものねと、思いつつ私は二人の手を握った。
「でも一緒に入るのは女の子だけなのに、ツバキはなにを勘違いしているのかしらね?」
最後にそれだけ告げると、ツバキはうなだれてしばらく顔をあげることはなかった。
今日はここまで
ツバキは多分、カミラに弄られるタイプなんじゃないかと思っています
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そんな話があって私は今バスルームにいる。
唐突だけど、私はお風呂が好き。知り合いを多く当たっても、私より長くお風呂に入る人はいないんじゃないかというくらい長く入る。その長さはルーナもベルカも付き合い切れないと、途中で上がってしまうくらいだ。
準備された大きな湯船に身を入れると自然と息が漏れた。あまり歳だとは思いたくないけれど、今日だけで色々なことがあったから仕方のない事だと思いつつ、私は目線の先にある頭を軽く撫でた。
「ひゃうっ……」
ピンク色の髪に触れると漏れる可愛らしい悲鳴、お風呂に反響する水独特のねっとりした音が少しやらしい空気を醸し出す。私はただ頭を触っているだけだというのに、向かい合って湯船に浸かっているカザハナの視線が厳しくなるのが見て取れた。
「サクラに変なコトしたらただじゃ置かないから」
「あらあら、変なコトって一体どういうことかしら?」
頭に触れていた手を前で小さくなっているサクラ王女へ静かに滑らせる。体の輪郭線を調べるよう、カザハナの言う変なコトに該当するなら舐めまわすように手で撫であげていく。小さく収まっているサクラ王女の体が小刻みに震える姿にカザハナの顔色が更に厳しいものへと変わっていった。
「ふふっ、私にはどういうことかわからないわ」
挑発するように私は告げた。カザハナが考えている変なコトがどういったものなのか、私に教えてという意味を含んだ仕草にカザハナは我慢ならないと勢いよく立ちあがる。
ザッパン!という音共に湯船からお湯が零れ、零れたお湯から湯気が上がると視界が白へと染まる。
「カミラ王女がしてるそういう行為のことなんだけど!」
声が先に響いて、それが晴れると指差しつつ前を隠さないカザハナの姿があった。
私にズバッと言ってやったという自信に待満ちた顔、同じように小振りだけどしっかりとした女性の象徴を隠すこともなく見せつけており、この姿を見て慌てているのはサクラ王女だった。
臣下の恥ずかしげもなく自身を発信する姿に顔を赤くする。
「カ、カザハナさん、その格好はまずいですよ!」
「え、サクラ、なんのこと?」
「ふふっ、白夜の女の子は思ったよりも大胆ね。女同士だからってそんなに見せつけるなんて誘っているの?」
私の言葉でようやくカザハナは自分が今どういう立ち振る舞いをしているのかに気づく、正面を隠さず堂々としていたのは勢いだけの結果だったようで、その顔はみるみる赤に染まっていく。
その可愛らしい顔が瞬く間にレオンの大好きなトマトのような彩になったところで、突如腕で正面を隠して湯船に座り込む。勢いよく立ちあがった時と同じようにお湯が跳ね、壮大に湯気が立ち上った。
ぶくぶくと沸騰した顔を冷まそうとしているけど、お風呂でそれが意味のある行為でないことくらい彼女自身も分かっているようで、最後は逃げるように背中を向けて丸くなった。
「うううっ、恥ずかしい…」
「別に恥ずかしがることないわ。カザハナは人に体を見せたい子ってだけのことだもの」
「違うから、全然違うから! 元はと言えばカミラ様が、サクラに変なコトするのが問題なんだけど」
「カ、カミラさん。その腰に当ててる手を放してもらえませんか。その、さっきからサワサワされて、そのくすぐったいから」
「ふふっ、くすぐったいだけかしら? もっと違うものも感じてると思うのだけど?」
「ん、ひゃ……」
私の手の中でサクラ王女は思った通りの反応を返してくれる。こういったじゃれ合いに態勢がないとは思っていたけど、可愛く揺れる髪や敏感な体、そして赤くなっている顔、すべてを支配しているような気分になってくる。カムイに言われた通りサクラ王女たちを守ることは決まっていたけど、できれば私の思った通りにしてくれるのが好ましかった。
そういう意味では、この湯船の中にいるサクラ王女は見事にそれだった。無限渓谷と貴賓室で見たサクラ王女とは違う、ただの女の子としての王女に私は好感を覚えている。
エリーゼもカムイもこんな反応はしてくれない。エリーゼはどちらかというと私に自分から甘えてくるタイプだし、カムイはカムイで無表情なことが多かった。私がすることに色々と反応を返してくれることは見ていて面白い。
でも、なぜ二人の妹のことを考えてしまったのかと思った時に、サクラ王女に触れていた手が自然と止まった。
サクラ王女の体を引き寄せるように私の体へと近づける。私の大きな胸にサクラ王女の背中が重なって、王女の顔が一気に赤くなった。こっちもトマトみたいに見えた。
「カミラさん?」
サクラ王女が私の名前を呼んでいる。それに返答することはなかった。
カザハナは静かにサクラに寄り添って私を眺めているみたいだけど、それを気にする頭を今は持っていない。お風呂の時間だからリラックスしたいと欲求が叫んでいるだけだと決めつけて、私はそのまま長いお風呂の時間を楽しみ始める。
(……なんでかしら、初めての人と入るときは少し距離感があるっていうのに)
その距離感はカザハナにはあった。ちゃんと存在している線引き、暗夜王国と白夜王国の人間というもの、だけどそれを差し引いてもカザハナは可愛らしい女の子だった。だからこうして距離を近くに置いていけるかもしれないと思えてくる。
だからこそ、不思議なのはサクラ王女だ。さっき、私は彼女のことを普通の女の子のようだと言ったように、サクラ王女への印象はコロコロ変わる。苛立ちを覚えたり、安心した、そんな見た目と裏腹に変化するその風貌は得体のしれない何かにも思えてくる。なのに、こうして近くにいるのに苦痛は感じなかった。
そんな不思議な感覚に包まれながら私は湯船で長い時間を過ごし、それにカザハナとサクラは付き合ってくれた。
そして、三人揃ってのぼせて、貴賓室で待っていたツバキに呆れたような視線を向けられていたことをおぼろげに覚えている。
さっき二人の妹のことを考えてしまったその理由から逃げるように、私は愛想笑いを浮かべる。
このまま大きな問題もなく、日々が過ぎればいいと思っていたけれど、そうは行かないのだとすぐに知ることになった。
今日はここまでで
その夜はいつにもまして静かな夜だった。カザハナとツバキは私が告げた事実に対して疑問を投げかけようとしているけれど、サクラ王女は淡々とその事実に驚いているだけ、でも何も変えることなく私は同じ言葉を繰り返した。
「白夜が侵攻してきたわ」
この言葉にカザハナは喜ぶかと思っていた。自分たちを助けに祖国が動いてくれたのだと考えれば、少し浮足立つのも仕方ない。そんな風に思っていたけど、さすがにカザハナもツバキと同様にことの重大さには気づいているようだった。
「嘘ってわけじゃないんだね?」
「こんな嘘を吐く必要はないでしょう? 白夜のことで嘘をあなたたちに告げたても、得することがないもの」
「じゃあ、本当に……白夜王国が攻めてきたんだ…」
カザハナの唇が結ばれ、視線は隣に座り何も言わないサクラ王女に向けられている。サクラ王女は思ったより物分かりがいい子だ。そういう子だからこそ、この出来事がどういったものなのかを理解することが出来ているのだろう。その瞳は少し暗く見える。
淹れた紅茶はまだ熱いままだけど、部屋の中は冷たい風に当てられているかのように寒々しい。さらには緊張という針が周囲を漂っている。
そんな刺の中で、口を開いたのはツバキだった。
「サクラ様の事を隠していたってわけじゃないんだよね?」
ツバキはこの白夜侵攻がサクラ王女の存在を隠していることによって起きたのではないかと推測したようだった。
「ええ、そもそもカムイはあなたたちの存在を公にすることで安全を得ようとしていたのだから、ちゃんと白夜には伝えたわ。サクラ王女をこちらで預かっているって」
「だったら、なおさらおかしいよ、サクラが暗夜にいるってわかってるなら……」
「それが方便って思われたのかもしれない。すでにサクラ王女は死んでいると白夜が判断したなら、この侵攻も理解できるものになるわ」
「でも、サクラはまだ生きてるんだよ。なのに、こんなことしたら……」
その先の言葉をカザハナは口にしなかったけど、それが何かはこの部屋にいる者たち全員が理解している。
サクラ王女がこうしてまだ生きていられるのは抑止力と交渉材料の意味がある、そう思われていたからこそカムイは三人を生かすための計画を考えて、そしてそれを私に託してくれた。だから私も内心は焦っている。白夜がこちらの予想を裏切って動いてきたのだから。
この状況はサクラ王女の命を白夜側は気にしていないと言及しているようなもの、白夜の侵攻が行われたことでサクラ王女を生かしておく必要性があるのか疑問視する声が多く上がっているのも確かだ。
それにどうすればいいのかと考えても、私にはわからない。それがとても歯がゆいことだった。
王女という身ではあってもそういった政治的なことを考えたことなどない身の上、選んだことによって国や世がどのように変わるのかなんて皆目見当がつかない。唯一思いつくのはマイナスなことばかりだ。
「何とかできないのかな……」
カザハナの弱弱しい言葉が浮かんで消える。それはサクラ王女を思ってのこともあるだろうけど、それ以外の事はわからない。
私は暗夜の人間でサクラ王女やツバキ、カザハナが感じていることを理解できるわけがないのは当然だ。白夜王国に対しての価値観がただの敵という私と、生まれ育ってきた祖国という価値観を持った三人、何もかもが異なって当然だ。
全てがわからないままに今こうしよう、ああしようなんて決めることは出来ず。紅茶が冷め切った頃になって私は皆に部屋に戻るよう告げる。
今夜はあまり眠れないかもしれないとこの時ばかりは思った。
~~~~~~~~~~~~~~~~
案の定、私は眠れないまま執務室に籠っている。お父様が何を考えているのかはわからないけれど、この白夜の強襲は予想以上の速度だったようで、今日になって報が入り込んできたため対策はあまり取れていない。
サクラ王女の存在で白夜が足踏みをし、人質として意味がある以上暗夜も動けないという拮抗状態を作り上げるカムイの考えは、残念なことに白夜に通じなかったのだ。
「……はぁ、あまりうまくいかないものね」
手にした羽ペンの尻尾を弄りながら、明日開かれる議会を予想する。
港町ディアにいる同胞の数は思ったよりすくない。黒龍砦を抑えない限りは多くの増援を送ることも叶わない、こんな中にサクラ王女をどうするかなんて話をする必要性など感じなかった。
サクラ王女の無事と、こちらの人質であることを白夜に確認させるために前線に連れていく?
いや、それこそ火に油かもしれないし、今さっき私自身無事かどうかはあまり問題ではないかもしれないと思ったばかりだった。
この侵攻がサクラ王女を奪還するためなのか、それとも殺されていると考えた故での報復としてなのか、それがわからないこともあって決定できることなどない状態だ。気を落ち着かせようと紅茶に手を伸ばす。
「……?」
紅茶がもう無くなっていた。
考えごとをしていたためか体中が汗ばんでいて、気分転換にお風呂に入りたくなる。でもお風呂に入ったらすぐに眠ってしまう気がして、入ることを諦めた。
「はぁ、今日はお風呂もあまり楽しめないわね……」
ベルカとルーナには何かあったらと、城に残ってもらっていることもあって、今日の屋敷は一段と静かだ。
窓の外を掛け抜ける風の音もしっかり聞こえるくらいで、妙な寒々しさがある。
いや、私が色々と敏感になりすぎているだけかもしれない。そう考え、もう一度視線を資料に向けたところで扉を叩く音がした。
メイドの誰かが来たのかもしれない。夜の巡回にはまだ早いけど、紅茶を淹れてもらおうと立ち上がって扉を開けた。
どこかひんやりとした外気と共に、扉の前に立っていた人影が静かに顔を上げる。驚いたことにカザハナがそこにいた。
数着与えた中の可愛らしいレースの付いた夜着に身を包み、彼女の動きに合わせて石鹸の香りが鼻を擽る。
どうやらメイドに頼んでお風呂には入れてもらったらしく、お風呂に入りたくてもまだ入れないから純粋にうらやましく思う。
「どうしたのかしら?」
私の声にカザハナの肩が跳ねる。その様は怒られるのではと心配する子供の様だ。
実のところ、私は三人にあまり制約を敷いていない。唯一してはいけないこととすれば屋敷の外に出ることくらいで、こうして私の部屋に夜な夜な可愛らしい服を着てやってくること自体に問題は無い。問題なのはどういった用事があってでやってきたのかだった。
カザハナの表情は可愛い服を着ているというのに似合わないほどに暗く、何も言わずに立ちつくしてばかり。このままでは埒が明かないと部屋へと招き入れる。
ソファに座らせて、私も横に腰を下ろす。ようやく落ち着いたのかその弱弱しい瞳が私を見据えた。
「何とかできないの……」
カザハナの口から絞り出したのはその言葉だ。それはさきの話に関することだろう。サクラ王女をどうにかして守ってほしいと懇願してきたのだろうが、それに私が答えを出せるわけもなかった。
「わからないわ」
だから私が返すことが出来るのはこの言葉だけで、それを聞いたカザハナは何も言わずにただただ床を見下ろす。今にも泣き出しそうにしている彼女の頭を優しく撫でる。少しだけ湿り気が髪にあって、ちゃんと乾かすためにタオルを被せた。
「だめよ。ちゃんと髪は乾かさないと、女の子なんだから」
優しく湿り気を拭っていくと、だんだんタオルに水気が溜まり始めていた。タオルを動かし続けると少しだけくすぐったそうにカザハナの顔が綻び、愛玩動物を愛でているような気分になりながらタオルを取ると、ついでにと髪を梳かす。
「とてもきれいな髪をしているのね。見たところそれなりに手入れをしてるみたいね。あなたがしているの?」
「ううん、いつもサクラがやってくれるんだ。昨日も髪を梳かしてくれたんだよ」
「そう。あなたとサクラ王女って臣下になる以前から関係があったのかしら?」
「え?」
「だって、あなたサクラ王女の事は呼び捨てにしているじゃない? だから昔から付き合いがあるんじゃないかって思ったのよ」
「うん……サクラとは幼馴染なんだ。小さい頃からずっと一緒で、あたしがサクラのこと守って見せるって決めて、いっぱい頑張って臣下にしてもらえたの。それからずっと守っていけるって思ってなのに…」
尻窄みになっていくカザハナの言葉は、現状を嘆いているかのように感じられた。私に話をしに来たのは自分ではどうにもできない状態だとわかっているからで、本当なら私に頼み事なんてしたくないはずだろう。でも、この状況でどうにかできるのは私だけだと考えての行動のようだった。
「あたし、サクラに死んでほしくない…。そのためならなんだって……」
「まるであなたが代わりに死ぬ、そう言っているようにも聞こえるけど?」
私の言葉にカザハナが静かに振り返る。その目は決意を含んだ瞳、真っ直ぐにただ自分のするべきことが何なのかを考えた結果決めたことだと、その瞳は語っていた。。
カザハナはサクラ王女の代わりに死んでもいいと言っているのは間違いないようで、私は思わずため息を吐く。
臣下が一人見せしめとして殺されたとしても、果たして白夜が考えを改めるか。いや、改めることはないだろう。
カザハナは自分の命をサクラ王女のために使うと考えているみたいだけど、この行為で考えればそれは無駄な死という印象しかなかった。
「だめね、あなた一人の命じゃサクラ王女に釣り合わない。どんなに背伸びをしてもあなたは意味もなく死ぬことになるだけよ」
きっぱりそう答える。期待など持たせないように、淡い期待を燻らせることが危険なほどに、この話は現実味がなかったからだ。
「じゃあ、どうすればいいわけ!? あたしにできることなんてこれくらいしかないのに、他にできることなんてないのに……どうしてぇ……」
多分、カザハナは自分の命を差し出すこと、それを覚悟してここに来たのだと思う。泣きじゃくりながらも、カザハナの手が私の手を掴んだ。
とても強い力、華奢な見た目とは裏腹にそこには戦士としての積み重ねが確かに見て取れる。それは幼い頃からサクラ王女を守るために積み重ねてきた物なんだろう、よく見れば襟の隙間から見える肌に無数の傷が見えた。
とても古い傷、今まで体一つでサクラ王女を守ってきたからこそ、彼女は自分の命を差し出す決断をしたのかもしれない。そこにあるのは臣下としての忠誠だけではなく確かな絆なのだろうと思った。
「サクラ、悲しそうな顔してた。あたしはそんな顔見たくない。死んじゃうのなんて絶対駄目。サクラには花みたいに可愛いままでいてもらいたいのに……」
カザハナは相手が私だというのにわんわん泣いた。それが私から同情を誘うための物なのかはわからなかった。こんなに泣いても状況が変わるわけでもないというのに、だけどその純粋な姿は私を動かす理由として足りた。私はカザハナを後ろから抱きしめる。
石鹸の匂いに交じって涙の香りがして、私はそのまま耳元に口を寄せた。
「……わかったわ」
「え?」
「さすがに絶対の保証はないわ。返答はわからないで変わらない。でもできる限り頑張ってみるから、もう泣くのをやめなさい。そうじゃないと、部屋の外にいる誰かさんたちが入ってきちゃうから」
私の言葉にカザハナの顔色がえ?という疑問に変わったのはすぐのことだった。
扉の先、二つの気配があり、それらは入るべきか躊躇っているようで多分サクラ王女とツバキじゃないかと思ったのだ。
「で、でも…カミラ王女、どうしてやる気出してくれたの?」
「そうね。一つだけ、あなたに共感できたことがあった…。それが理由ね」
それは、カザハナがサクラ王女の悲しむ顔を見たくないと思っている部分だ。
私も同じようにカムイの悲しむ顔を見たくはない。大切な人にはいつも笑顔でいてもらいたいというカザハナの思いは確かなもので、それを見捨てることが出来なかった。
思ったよりも甘い判断をしている自覚はある。カザハナと向かい合って涙で濡れた目尻を優しく拭うと、そのおでこに軽くキスをした。
途端にカザハナは狼狽し始める。またトマトが出来上がった。
「ちょ、な、なにして!!!」
「ふふっ、そんなに恥ずかしがることないわ。暗夜ではよくしてることだもの。それとも、もしかして唇に欲しかったかしら?」
「あたしもカミラ王女も女だよ!?」
「とっても赤くなって可愛いわね。もちろん冗談よ、冗談、本気にしちゃったのかしら?」
「なっ……」
私の言葉にだんだんとカザハナの表情が赤くなっていき、それを横目に私は扉を開く。開くと前の廊下をウロウロしているサクラ王女と、じっと扉を見つめていたであろうツバキがいた。
「あ、えっと、その……」
「わかってる、カザハナなら私の部屋に来ているわよ?」
「やっぱりね。はぁ、どうして勝手に動いちゃうかなー」
ツバキが呆れたように言葉を漏らす。確かにツバキの言うことは一理あるけど、それが私をここまで動かす原動力になったとは思ってもいないだろう。
「カザハナさんは……その……」
サクラ王女がおどおどとした様子で私に尋ねてくる。カザハナのことを心配しているのは見るだけでもわかるもので、二人の絆がとても強いものだと感じられた。
「中にいるわ。今は顔を赤くしてるところよ、多分多くはすでに聞いていたと思うけど…」
その言葉にツバキは肯定の笑みを浮かべ、サクラ王女は恥ずかしそうに顔を赤らめる。あんなことを聞かされては、恥ずかしさと嬉しさが混在してこうなってしまうのも仕方の無いこと。
一方のカザハナはというと、サクラの反応とにんまりとした笑みを浮かべるツバキを見て、さらに赤くなって最後にソファの陰に沈んでいった。
「少し話があるの、二人とも私の部屋に入って」
私の言葉にツバキは少しだけ用心しながら、サクラ王女はカザハナとどうやって話せばいいのか悩みながら部屋に入った。
顔を赤くしたカザハナはツバキとサクラ王女に挟まれている。そんな三人を見ながら私は口を開く。
「一つ考えがあるのだけれど、あなた達はこれを受け入れられる?」
それは私なりに考えたサクラ王女たちを生かす理由。政治的でもなかったし、どちらかというと悪趣味と呼べる部類のものだけれど、ある意味うまく重なるかもしれないと考えたこと。そんな私の考えを三人は聞いてくれた。
その話を聞いて最初に同意してくれたのはサクラ王女で、その後に続くようにカザハナ、ツバキがそれに同意してくれたおかげで、私は眠りを経て静かに朝を迎えられた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私はその話を持って翌日の議会に足を踏み入れる。結果的にいえば、それは見事に通った。
『白夜の王女たちには白夜が滅んで行く様を特等席で見せてあげるのはどうかしら? それは死ぬことよりも辛いことのはず、だから人質として使うことも含めて生き残らせましょう?』
多くの人々からそれはいいという話が上がり、サクラ王女たちは延命を許された。
それは人質を前提としたものではあったけど、違う楽しみが付与されたものだ。
私は三人に今日の出来事を伝える立場にいる。それがどれだけ酷いものであったとしても、私が示した形である以上、それから目を逸らすわけにはいかないのだから。
前篇 おわり
今日はここまで
カザハナとカミラは大切な人に対する思いはかなり強い気がする。
カミラとサクラ隊番外なんですが、構想が大きくなってしまったので前篇、中編、後編という形で分割してやっていこうと思います。
次回から本編に戻ります。
次の展開を決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
カムイと話をする支援A以上のキャラクター
アクア
ギュンター
ラズワルド
オーディン
ルーナ
カミラ
エリーゼ
サクラ
シャーロッテ
>>419
◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>420と>>421
このような形でよろしくお願いいたします。
エリーゼ
ベルカ
フローラ
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『カムイの天幕』―
アクア「今まで入ってきた情報をまとめるとこんなところになるわ。どうにか立て直せそうね」
カムイ「はい。それにしてもすみません、いろいろと説明を頼んでしまう形になってしまって」
アクア「気にすることはないわ。それに目が見えないあなたには誰かが伝えるのは当然のこと、それを私が進んでやっただけよ」
カムイ「そう言ってもらえると助かります。……でもユキムラさんを筆頭に強行派の方々は私達のことを許すつもりはないでしょうね」
アクア「ええ、残念だけど白夜との戦いはもう避けられないわ。向こうが何をしかけてくるかはわからないけど、おそらく時間が経てば経つほど色々と面倒なことになるのは確かね。」
カムイ「リョウマさんの処罰を盾にしている以上、リョウマさんを慕う方々も私達と戦う道を選ぶでしょう。出来れば、そう言った方々と戦うことは避けたいのですが。それをユキムラさんが許してくれるとは思えません」
アクア「カムイ……」
カムイ「……でも、すべてをあきらめているわけじゃありません。ユキムラさんと和解できないからと言って、白夜を滅ぼす理由にはなりません。私は流されるためにこの道を選んだつもりはありませんから」
アクア「そう……ふふっ」
カムイ「?」
アクア「ごめんなさい。でも、少しだけ嬉しかったから、あなたがそう自信を持って言ってくれることが」
カムイ「色々と躓き続けてしまいましたから。アクアさんの言葉がなかったらどうなっていたか、わかりませんよ」
アクア「私なんてそれほどの役には立っていないと思うけど……」
カムイ「いいえ、アクアさんがいなかったら私は重みに潰されていたか、何も考えずに戦うことを選んでいたはずです」
アクア「そんなこと……」
カムイ「無いとは言い切れませんし、どちらかといえばそうなっていた可能性のほうがとても高いです。だから、私はアクアさんに感謝しています。こんな私をちゃんと叱ってくれましたから」
アクア「……でも、あなたが立ち直れるかはわからなかった。私はあなたに現実を見るように強いただけ……」
カムイ「でも、そうしてくれなかったら私は抜け殻になっていたはず。それに信じてくれたんですよね。私なら立ち直れるって」
アクア「それは、そうだけど…」
カムイ「それだけでも十分です。アクアさんの気持ちに応えられて、こうしてまだ共に歩んでいることだけでも十分すぎるくらいですから」
アクア「時々、あなた恥ずかしいことを口にするけど」
カムイ「私なりの愛情表現ですよ」ニコニコ
アクア「それはからかっている笑みね。少しほぐしてあげるわ」ぎゅーーっ
カムイ「いひゃいです、あくあしゃん……」
カムイ「はぁ、でも私はアクアさんに甘えてばかり、共に支え合っていくっていうのには程遠い関係ですね」
アクア「ふふっ、自覚はあるのね」
カムイ「それは、そうですよ。このところは特にそう感じていましたから……」
アクア「私はそのままでも構わないけど?」
カムイ「ううっ、私の敗戦続きになってしまいます。それに少しはアクアさんに頼りにされたいですし」
アクア「ふふっ、情けなく甘えてくるカムイも可愛いわよ」
カムイ「意地悪ですね、アクアさんはこれは頑張らないといけませんね」スタッ
アクア「どこかへ行くの?」
カムイ「はい。明日には後続が合流するということですから、今日の夜に先行偵察を向かわせることになっていますから」
アクア「そうだったわね」
カムイ「はい、少しでも手伝えることがあればと思っているんです。アクアさんはもう休んでもらって大丈夫です」
アクア「なにか私も手伝うことがあれば手を貸すけど?」
カムイ「いいえ。今日はもう大丈夫です。それじゃ、私は行きますね?」
アクア「え、ええ。頑張ってね」
タタタタタッ
アクア「……」
アクア(頼りにされたい……ね。私は今のままでも別に構わないのに……)
アクア「……さすがに今日は色々とあって疲れたわね。ん?」
アクア(カムイの眠るところ……)
アクア「……」
アクア(少し疲れているから横になってもいいわよね?)
ストンッ
アクア「……」
アクア「……カムイの匂いがする……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・テンジン砦跡地『物資貯蔵天幕』―
暗夜兵「カムイ様、いいのですか?」
カムイ「はい。それに先行偵察を指示したのは私ですから、これから向かう人たちに渡す食事を運ぶことくらい手伝わせてください」
暗夜兵「いえ、むしろありがたいです。少しばかり量がありますので、手伝っていただけて助かっているくらいです」
カムイ「そう言ってもらえると嬉しいです、ところで先行偵察に出る部隊は決まったんですよね?」
暗夜兵「はい、ベルカ様を中心に選出を行いましたので、確実な情報を得ることができるはずです。ベルカ様は任務を必ず遂行されるといわれていますから。あ、見えてきました。私は向こうの方々に渡してきますので、カムイ様はあちらをお願いします」
カムイ「はい、わかりました」
カムイ(結構な人数がいるみたいですね……。えっと、こちらの人たちに配り終えて……あれ、向こうに集まっている気配、まだお渡ししていない人たちですね……)タタタタッ
偵察兵「ベルカ様、私たちも最後の準備に取り掛かります」
ベルカ「わかった…。出発はもう少し後になるから今はゆっくりして…、食事がそろそろ来るはずだから、ちゃんと取っておいて…」
偵察兵「はい、わかりました」タッタッタッ
ベルカ「……」
ベルカ(もう少ししたら出発ね…。私も食事をもらいに行きましょう…)
ガサッ
ベルカ「だれ?」
ベルカ「……だれ?」
カムイ「その声はベルカさんですか? 他の方々はこちらに来てくれんですけど、一人だけ来なかったのでどうしたのかと思いました」
ベルカ「カムイ様、どうしてここに?」
カムイ「はい、偵察部隊の方々に食事を届けに来たんです」
ベルカ「どうしてそんなことを…。カムイ様がやることじゃないと思うけど…」
カムイ「いいじゃないですか。はい、これがベルカさんの分になります、いっぱい食べてくださいね」
ベルカ「ありがとう…。あつっ……」
カムイ「あ、もしかして少し熱かったですか? 私がふーふーしますよ?」
ベルカ「大丈夫…。スタンバイもしなくていい…」
カムイ「そうですか、ちょっと残念ですね」
ベルカ「……んっ、……ふぅ」
カムイ「まだ出発しないんですか?」
ベルカ「ええ、それぞれの準備がまだ残ってる。安心して、そんなに時間は掛からないはずよ…」
カムイ「そうなんですね。そうだ、出発までの間、ご一緒してもいいですか?」
ベルカ「別にかまわない…」
カムイ「ありがとうございます。それじゃ失礼しますね」ポスッ
ベルカ「……ん」
サーーーー
ベルカ(風……)
カムイ「ん、夜風が心地よいですね。戦いが始まらなければいいと思ってしまいます。ベルカさんもそう思いませんか?」
ベルカ「ごめんなさい…よくわからないわ」
カムイ「?」
ベルカ「戦いが始まる前と今の私の生活は変わってないから。任務を受けてその任務をこなすだけ、だからカムイ様のように夜風を感じることは出来ない…」
カムイ「戦う前からですか?」
ベルカ「正直、戦争が始まる前から……。いえ、カミラ様の臣下になる前から私は暗殺を主に生きてきた…。夜風の音は相手の隙を見たり、一気に背後に近づく手段でしかなかい、だからカムイ様みたいな感想を抱けない…」
カムイ「ベルカさん……」
ベルカ「私とカムイ様では生きている世界が違う、そういうことを言われても私には――」
カムイ「えいっ」グイッ
ベルカ「……カムイ様?」
カムイ「生きている世界が違うなんてことはありませんよ。現に私とベルカさんはこうしていっしょにいます、私の手はちゃんとベルカさんの顔を捉えているんですよ?」
ベルカ「……」
カムイ「だから、そんな申し訳なさそうに言わないでください。ベルカさんにとっての夜風はそうかもしれませんけど、それが私とベルカさんを隔てる壁にはなりえないんですから」
ベルカ「……」
カムイ「……」
ベルカ「カムイ様…」
カムイ「なんですか、ベルカさん」サワサワッ
ベルカ「…っ、首、触るの……んっ、ふっ、止めて…」
カムイ「これも壁をなくすために必要なことです」
ベルカ「う、うそっ…顔がずっとにやけて……ふぁっ、んっ」
カムイ「にやけてなんていません。ベルカさん、我慢してるんですね……」
ベルカ「……ふっ、くっ、んんっ、あぁっ……だめ、やめっ……て」
カムイ「ふふっ、体をくねらせて可愛いですね」
ベルカ「っ/////」
カムイ「ベルカさんは思ったより小柄です。私でもすっぽり抱えられちゃうかもしれません」
ベルカ「な、なにを言って……」
カムイ「ふふっ、今度は私の膝の上でいっぱい触ってあげたいって思っただけです。ベルカさんの小刻みに震える体を楽しみたいですから」
ベルカ「か、カムイ様……だ、だめ…」
カムイ「だめとは何がダメなんですか? ベルカさん」
ベルカ「ふーっ……、く、首筋…だめっ……声が、出る……から……ぁっ!!」
カムイ「声が出たら何がダメなんですか?」
ベルカ「は、恥ずかしい……から、おねがい、……もう…んんっ!!!」
カムイ「わかりました。それじゃ、止めますね」パッ
ベルカ「はー、はー……んっ、はぁ……はぁ……」
カムイ「すこしやりすぎちゃいましたね。大丈夫ですか、ベルカさん」
ベルカ「……カムイ様、今度こんなこと……したら……」
カムイ「ふふっ」
ベルカ「何がおかしいの?」
カムイ「他の人とは違うって言っているわりには、多くの人と同じ反応をするのがおかしくて」
ベルカ「……こ、これは、あなたが変なことをしたから…」
カムイ「……」ニコニコ
ベルカ「……もういい。準備を始めるからカムイ様はもう戻って…」
カムイ「はい、そうしますね。あ、それとベルカさん」
ベルカ「なに?」
スッ ナデナデ
カムイ「無事に戻ってきてくださいね。ベルカさんも大切な仲間なんですから…」
ベルカ「わかってる、任務もそうだけど命令は完璧にこなすつもり…」
カムイ「たしかに命令ではありますけど、ベルカさんを心配する一人の人間としてのお願いも含まれてますよ。戻ってきたら今度もお話しましょう? 大丈夫です、今度は御顔を勝手に触ったりしませんから」
ベルカ「なら、構わない…。だけど約束を破って顔を触ったら、その手を反対方向に曲げてあげる…」
カムイ「あ、はい」
今日はここまでで
長く更新できなくて申し訳ありません。フローラとエリーゼは次の更新で。
支援イベントを安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>431と>>432
>>433と>>434
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
現在の支援組み合わせ状況は>>381、>>382を参照ください。
このような形ですがよろしくお願いいたします。
カミラ
シャロネキ
乙、ゆっくりでも全然大丈夫よ
安価はラズワルド
ブノワ
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎『訓練場』―
ラズワルド「はぁ、やっ。せいっ!!!! うん、今日はこれくらにかな。そろそろ夜になるし、そろそろ戻らないと……ん?」
ブノワ「……ふんっ!!!」ドスンッ
ラズワルド「うわっ、すごい気迫。さすがはブノワだね」
ブノワ「……ラズワルド? もう、鍛錬は終わったのか?」
ラズワルド「うん、それにしても流石っていうのかな。この距離からでもすごい気迫が感じられたよ。目の前にいたら足がすくみそうなくらいだったからね」
ブノワ「……俺はただ、一生懸命なだけだ」
ラズワルド「一生懸命ね……。でも、もう時間だからそろそろ切り上げた方がいいと思うよ。一生懸命なのもいいけど、倒れたら本末転倒だからね」
ブノワ「……わかった」
ラズワルド「……!」
ブノワ「……なんだ?」
ラズワルド「いや、やっぱりブノワってすごく大きいって思って、熊に間違われたりするのも案外納得したっていうか……」
ブノワ「……」
ラズワルド「あ、ご、ごめん。その、悪気があったわけじゃなくて、その……」
ブノワ「大丈夫だ、別に気にしていない」
ラズワルド「そ、そう」
ラズワルド(ずっと顔色が変わらないから、全然わからないんだけど……)
ブノワ「……戻らないのか?」
ラズワルド「え、あ、そ、そうだね。それじゃ戻ろっか…」
ブノワ「……」
ラズワルド(や、やっぱり怒ってる気がする…。な、なんとか誤解を解かないと……、でも、どうすればいいんだ!?)
【ブノワとラズワルドの支援がCになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『クラーケンシュタイン城』―
シャーロッテ「はぁ……」
カミラ「あら、シャーロッテ。どうしたのかしら、そんなつまらなそうな顔をして……」
シャーロッテ「……なに、落ち込んでる私の様子をわざわざ見にきたの? 王族ってそんな暇なわけ?」
カミラ「ふふっ、確かにそうね。でも落ち込んでるあなた、思ったより可愛い顔をしているから、抱きしめてあげてもいいわよ?」
シャーロッテ「けっ、女にそんなことされたり言われても嬉しくないから……」
カミラ「ところで駐屯地の団長と幹部がボロボロな姿で見つかったって聞いたけど」
シャーロッテ「……」
カミラ「あれって、あなたの仕業なんでしょ?」
シャーロッテ「……な、なんのことですかぁ?」
カミラ「団長と幹部が見つかる前日の夜、そいつらとあなたがいたって聞いてるから、たぶんあなたがやったと思ったの。それにあなたの落ち込み具合を見てると間違ってない気がしてね?」
シャーロッテ「変な噂を広めたら、王族だからって容赦しないからね」
カミラ「ふふっ、広めるつもりはないわ。それにあなたの日頃の振る舞いもあって、事実を言っても多くの男性は信じたりしないもの」
シャーロッテ「……当然よ、私がどれだけ頑張ってきたと思ってるわけ。純粋でおっとり、素直で礼儀正しい、完璧な女を演じてきたんだから」
カミラ「だから気になるのよ。あんなに玉の輿を狙ってたあなたが、あの団長とその周りにいた奴らをボコボコにしたのか……お金をもっている相手なら受け入れられるのではなくて?」
シャーロッテ「……あいつ、慕ってくれてる女の作ってきたお弁当を捨てたのよ」
カミラ「……」
シャーロッテ「そりゃ、毎日食べてる料理に比べれば見劣りするかもしれないけど、一生懸命作ってきたことがわかるものなのに食べもせずに捨てたの。しかもその子の目の前で、その子泣いて出て行ったわ。私の弁当のほうがおいしいから、要らないとか言ってたけど、気付いたら顔面殴って、そしたら媚売るために我慢してたこと、全部噴き出しちゃって……」
カミラ「ふふっ、ふふふふふっ」
シャーロッテ「ちょ、そんなに笑うことないでしょ!?」
カミラ「ごめんなさい。でも、あなたって思ったよりも女の子の味方だったのね。その子のためにそんなことしちゃうなんてね?」
シャーロッテ「そんなんじゃないし。はぁ、団長の周りの奴にも媚売ってたっていうのに、全部パァになっちゃったわ。まぁ、我慢できなかった私にも原因があるけど……」
カミラ「でも、自分の幸せよりもその泣いちゃった子のために動くなんて、あなたのこと少し見直したわ。本当はやさしい子だったのね」
シャーロッテ「べ、別に見直さなくてもいいし、っていうか優しくなんてないから」
カミラ「いいえ、あなたは優しい女の子よ。シャーロッテ、あなたのその優しいところ、これからどんどん見せてちょうだい」
シャーロッテ「それじゃ、見せてあげるからカミラ様の知り合いを誰か紹介してよ。それでお相子ってものでしょ?」
カミラ「あらあら、少しは遠慮してほしいものね」
シャーロッテ「今さらじゃない?」
カミラ「……」
シャーロッテ「……」
カミラ「ふふっ」
シャーロッテ「ふふふっ」
【カミラとシャーロッテの支援がAになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地―
カムイ(ベルカさんたちはもう出発したみたいですね。はぁ、明日には戦うために道を進まないといけないと考えると、私のやっていることは酷く矛盾しているとわかってきます。なにせ、戦いを終わらせるために戦っているんですから……)
カムイ(子供だってばかばかしいと思うようなことかもしれません。でも、私に残っている選択肢の前提に力があることは否定することのできない事実で、それがなければいけない……)
カムイ「皮肉なものですね……」
カムイ(いつか虹の賢者様が言っていた通り、私は私が倒すべき相手をもう決めている。これが生易しい倒すじゃないこともわかっています。できれば、そういった決定や結果を全て背負えればよかったんですけど……。それが出来るほど私は強くはありません……)
カムイ「それに、全て背負うなんて言ったらアクアさん……だけじゃありませんね、皆さんからあれこれ言われてしまいそうです。私一人だけで戦っているわけじゃないんですから、私だけの戦いというわけにもいきませんし、そう考えるには時間が経ってしまっていますからね」
???「たしかにカムイ様一人だけの戦いと呼ぶには少々時間が経ってしまったと私も思います」
カムイ「え?」
フローラ「こんばんは、カムイ様」
カムイ「フローラさん、こんばんはです。まだ、お仕事ですか?」
フローラ「はい、と言っても今終わったところです。荷車に載せる予定の物資を確認していました。明日の準備はすべて整っていますよ」
カムイ「そうですか。すみません、いろいろと任せきりになってしまって」
フローラ「いいえ、気にしないでください。私はカムイ様に使える従者、カムイ様の指示通りに動けるよう下準備をするのは当然ですから。カムイ様はどうしてこちらに? もう眠られたのだとばかり思っていました」
カムイ「先ほどまでアクアさんに色々と会議の内容を話してもらったんです。明日から動くことになりますから、一度確認しておこうと思いまして」
フローラ「そうでしたか。お声掛け頂ければ、私達もお手伝いしたのですが」
カムイ「アクアさんが進んでやりたいと言ってくれました。それにフローラさん達にもその時こなしていた仕事があったはずです、適材適所ということならこれで間違いはなかったと思います」
フローラ「ふふっ、カムイ様らしい考えです」
カムイ「まぁ私はその点、あまり役に立てている気はしないんですよね……」
フローラ「ですが話を聞いていると、カムイ様とアクア様は本当に仲がよろしいんですね」
カムイ「そ、そうでしょうか。その色々と迷惑ばかりかけているので、仲が良いと言われると、アクアさんに申し訳ない気持ちになってしまいます」
フローラ「嫌いな人の頼みや、力になる人なんてこの世にはいません。傍から見ていてもカムイ様とアクア様の関係は微笑ましいです。互いに信頼し合っていることは嫌でも分かりますよ」
カムイ「なんだか、そう言われるとなんだか照れてしまいますね……」
フローラ「……カムイ様」
カムイ「はい、どうしました?」
フローラ「その、気分転換に紅茶でもどうでしょうか?」
カムイ「紅茶ですか?」
フローラ「はい。私の天幕にティーセットは準備されていますので、そのカムイ様がよろしければですけど……」
カムイ「いいですよ。気分転換にもなりますし、それにフローラさんが淹れてくれる紅茶はとても久しぶりですから」
フローラ「ふふっ、久しぶりですから私も頑張らないといけませんね。どうぞ、こちらへ、私の天幕までご案内しますので」
カムイ「はい、わかりました」
~~~~~~~~~~~~~~~
コポコポコポ……
フローラ「どうぞ、カムイ様」
カムイ「はい。いい香りですね、なんだかとても落ち着きます」
フローラ「暗夜からこちらに戻る際に準備した葉です。そのカムイ様には一度もふるまったものでは無いと思います」
カムイ「たしかに、初めての香りです。ふふっ、フローラさんから初めてをもらっちゃいましたね」
フローラ「ふふっ」
カムイ「でも、これだけいい香りなら。来賓の方々にも振舞っていいと思うのですけど」
フローラ「その、これは私だけの茶葉なんです」
カムイ「フローラさんだけの?」
フローラ「はい、いつも仕事が終わって一人で部屋に戻ったら使う葉、今日の仕事が終わって明日を迎える意味を込めているんです」
カムイ「……そうなんですね。でも、それをどうして私に?」
フローラ「……カムイ様と私は主と従者の関係です」
カムイ「ええ、そうですね」
フローラ「本当ならずっとそうあろうと思ってきました。そうであれば、何事も受け入れられるし、いつか来るかもしれない別れも辛くないはずだと思っていましたから」
カムイ「……それはフリージアの反乱のようなことで別れが来ると思っていたということですね」
フローラ「はい。だけどカムイ様はそんな私達を許して、私に甘えてもいいと言ってくれました」
カムイ「フローラさんも、誰かに甘えていいと思いますし。でも、この前は私が甘えてしまって、まったく様になりませんよ」
フローラ「ふふっ、今思うと弱弱しいカムイ様を見るのは初めてでしたね。無理に私を支えようとして、でもそれは私に支えてほしいっていう誘いでしたけど」
カムイ「ご、ごめんなさい」
フローラ「謝らないでいいですよ。少しだけ、それに流されてしまおうかと私も考えてしまいましたから。カムイ様に頼りにされる最高の従者になれる、そんな気がしたんです」
カムイ「最高の従者……」
フローラ「はい。たぶん私はアクア様に少なからず嫉妬していたと思います。カムイ様に頼りにされていることが、従者という立場から見てもうらやましいものでしたから。だけどあの時のカムイ様が私の仕えていたカムイ様では無いことくらいわかっていました。私は自信に溢れているカムイ様にお仕えしたいと素直に思いますし、同時に甘えられるならそのカムイ様であってほしかったんです」
カムイ「フローラさん……」
フローラ「ごめんなさい。紅茶をこうしてカムイ様と飲みたかったのは、このことをお伝えしたかったからなんです。私はカムイ様に命を救われました。そして救われたあなたのために命を掛けています。だから……」
カムイ「いいえ、私はフローラさんにチャンスをあげただけです。それを私のために選んでくれたのはフローラさんで、私はそれに甘えているだけに過ぎないんですよ」
フローラ「そんなことありません。私が出来ることなんてたかが知れています……誰にでもできることを、私はやっているだけで……」
カムイ「フローラさん」
ギュッ
フローラ「……カムイ様」
カムイ「フローラさんはいっぱい私のためになることをしてくれていますよ。あの時、フローラさんが助言をしてくれなければどうなっていたのかも分かりませんし、なによりこうして私にすべて話してくれたことで、もっとフローラさんを知ることができたんですから」
フローラ「カムイ様……」ギュウッ
カムイ「フローラさんはいっぱい頑張ってます。だから、もっともっと甘えてもいいんですよ」ナデナデ
フローラ「……はい」
カムイ「ふふっ、こんな姿フェリシアさんやジョーカーさん、ギュンターさんが見たら驚きますよ、きっと」
フローラ「フェリシアはすごく慌てそう」
カムイ「ふふっ、フェリシアさんがとてもあわただしく動きそうです」
フローラ「……カムイ様」
カムイ「はい、なんですか?」
フローラ「また、一緒に紅茶を飲んでくださいますか?」
カムイ「ええ、もちろん。フローラさんとご一緒させてくださいね」
フローラ「……はい、ありがとう……ございます」
……
スー スー
カムイ「フローラさん?」
フローラ「スー……スー」
カムイ「ふふっ、眠ってしまったんですね。ちゃんとベッドに入らないと風邪を引いてしまいますよ。よいしょっと……」
カツンカツン
ポスッ
フローラ「ん……」
カムイ「……私にできることはあまり多くありませんけど、私もフローラさんのためになりたいと思っています。どんなに小さなことでも、あなたが望んでくれるのでしたら私もちゃんと応えていきたいです」
カムイ「主人としてではなく、あなたを心配する一人の友人として私を頼ってくれる日を私は待っていますよ……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―テンジン砦・跡地『カムイの天幕・前』―
カムイ「もう、夜も深くなってきた頃ですか……私もそろそろ戻って眠りましょう。アクアさんはもう戻っているでしょうし……?」
カムイ(天幕に気配があります。アクアさん、まだ戻られてなかったんでしょうか……)
バサッ
カムイ「アクアさん?」
エリーゼ「わっ……か、カムイおねえちゃん?」
カムイ「あれ、エリーゼさん、どうかしましたか?」
エリーゼ「ご、ごめんなさい。その、カムイおねえちゃんに会いたかったから……」
カムイ「ふふっ、ありがとうございます。それよりもエリーゼさんの一人ですか? 少し前までアクアさんもいたと思うんですけど」
エリーゼ「え、えっとね。アクアおねえちゃんならそこにいるよ」
カムイ「……あ」
アクア「スー……スー…んっ」ギューッ
エリーゼ「えへへ、眠ってるアクアおねえちゃん、とっても可愛い顔してるんだよ。あ、枕ぎゅ―ってしてる」
カムイ「なんですって!? くっ、私も目が見えれば。こういうタイミングだけは自分の運命を呪いたくなります」
エリーゼ「か、カムイおねえちゃん、騒いだらアクアおねえちゃんが起きちゃうよ」
カムイ「……そうでした。すみません、でもどうしましょうか。アクアさんを起こさないとなると、私がアクアさんの天幕で……というわけにはいきませんし。ここは潜り込んで一緒に眠るしかないですね」
エリーゼ「なら、あたしも一緒にいいかな?」
カムイ「いや、冗談ですよ。さすがにこのベッドに三人は入れませんからね。仕方ありませんけど、私は合同天幕の空きベッドを探してくるとします。エリーゼさんはエリーゼさんの天幕に戻って休んでください。明日は色々と忙しくなりますから、休めるときに休んでおかないと」
エリーゼ「だったらカムイおねえちゃんはあたしと一緒に眠るの。これしかないよ!」
カムイ「エリーゼさんとですか? でも、いつもよりベッドが狭くなってしまいますよ?」
エリーゼ「カムイおねえちゃんとあたしだから問題ないと思う。それに、あたし久しぶりにカムイおねえちゃんと一緒に眠りたかったから、その駄目かな……」
カムイ「ふふっ、可愛いエリーゼさんのお誘いを断るわけないじゃないですか。とっても嬉しいですよ」
エリーゼ「えへへ、カムイおねえちゃんだーーーい好き!」ダキッ
カムイ「おっとっと……。私もエリーゼさんのこと大好きですよ」
エリーゼ「えへへ、これってそーしそうあいって言うんだよ。互いに好きなことを言うんだって、えへへ~」
カムイ「ふふっ」
エリーゼ「だから、カムイおねえちゃんの頼みなら出来る限り、叶えてあげたいなって……」
カムイ「今日はベッドを提供してもらいましたからね。これ以上は欲張りになってしまいますよ」
エリーゼ「そんなことないよ。だって……」
ギュッ
エリーゼ「カムイおねえちゃんは大好きで大切な家族だもん……」
カムイ「エリーゼさん……」
エリーゼ「……」
スッ ナデナデ
エリーゼ「ん……」
カムイ「色々と寂しい思いをさせちゃったみたいですね」ギュッ
エリーゼ「……あ」
カムイ「エリーゼさん、私はエリーゼさんとこうしていられるだけでも十分なんですよ」
エリーゼ「……カムイおねえちゃんはずるい……。そう言われたら、何も言えなくなっちゃうよ」
カムイ「私はずるいおねえちゃんですからね。だからエリーゼさんを困らせちゃってばっかりです。でも、今の私にはこれだけで十分なんですよ。大きな幸せは、全てが終わった後でいっぱい楽しみたいじゃないですか」
エリーゼ「……あたしも一緒に楽しんでいいのかな……」
カムイ「その答えは最初から決まっていますよ。だからエリーゼさん、まだまだ寂しい思いをさせてしまうかもしれませんけど、その日が来るまで我慢してもらえますか?」
エリーゼ「……少しだけ……今日もらいたいよ」
カムイ「エリーゼさん」
エリーゼ「……」
カムイ「エリーゼさんはなにをしてほしいんですか?」
エリーゼ「……布団の中でぎゅっとしてくれる?」
カムイ「いいですよ。エリーゼさん、少しだけ楽しいことしちゃいましょう。残りはすべてが終わってから、おねえちゃんとの約束ですよ」
エリーゼ「カムイおねえちゃん……わかった、約束だよ!」
カムイ「はい、それじゃエリーゼさんの天幕に行きましょう。いっぱい、ぎゅってしてあげますからね」
エリーゼ「うん!」
◆◆◆◆◆◆
―白夜・テンジン砦跡地『エリーゼの天幕』―
チュンチュン チュチュン……
カムイ「ん、んん……」
エリーゼ「スー スー……」
カムイ「朝……ですか。エリーゼさん……」
エリーゼ「うー、んんっ……カムイおねえちゃん?」
カムイ「おはようございます、エリーゼさん」
エリーゼ「うん、おはよー」
カムイ「ふふっ、寝ぼけてますね。そんなエリーゼさんも可愛くていいですよ」
タタタタタタッ
バサッ
アクア「エリーゼ、カムイを見なかったかしら……って」
カムイ「あ、アクアさん。おはようございます、昨日はゆっくり眠れましたか?」
アクア「ええ、ごめんなさいね。その、あなたの寝床を使ってしまって」
カムイ「いいえ、こちらはエリーゼさんと一緒でしたから大丈夫でしたよ。それよりもどうしたんですか、なんだか慌ただしいようですけど」
アクア「ええ、後続の部隊が到着したわ。寝起きで悪いけど、すぐに来てちょうだい」
カムイ「そうですか、わかりました。ところで、後続の部隊は代表者は?」
アクア「もうすでに天幕で待っているわ。正直、色々と人数が多くて困るかもしれないけどね」
カムイ「え?」
アクア「とにかく、行きましょう」
カムイ(色々と人数が多くて困るとは一体どういうことでしょうか……)
(一体誰がやってきたというんですか?)
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB+→B++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカC+→B
(生きてきた世界の壁について話をしています)←NEW
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]←NEW
今日はここまで、FEifが発売されて2年経ちました。2周年おめでとう。
そろそろリリスの誕生日を教えてほしい。(設定資料集は出るんですかね)
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外で前回選ばれたキャラ以外のみ表記)
ジョーカー
フェリシア
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>452と>>453
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アクア×ゼロ
・アシュラ×サクラ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
この中から一つ>>454
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
・ラズワルド×オーディン
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
この中から一つ>>455
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
カザハナ
レオン
アクアとゼロ
ラズオデン
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・森の中―
アクア「ゼロ、いる?」
ゼロ「はい、アクア様。それで今日のは話題はどうしますか?」
アクア「……そうね。といっても前回は朝食の話をしたけど、あれでよかったのかといわれると頷けないのが現状かしら」
ゼロ「ええ……。正直、何も考えずに話をしているのを見ると、どうしてそんなことで話をできるのか、理解に苦しむこともあるんで」
アクア「そうね……。ふふっ」
ゼロ「?」
アクア「いいえ、あなたが言っていた私と似ているっていうこと、少しだけ本当かもしれないって思ったのよ」
ゼロ「というと?」
アクア「今、私とあなたは同じことで悩んでいた気がするの。どんな話をすることが仲良くなる近道なのか、そんなことばかりをね」
ゼロ「……確かにそうですね。何気ない会話なんていう、正直どんな話なのかもわからないものに頭を捻ってるところです」
アクア「積極的に輪に入ろうなんて思いもしなかったことが裏目に出た形ね……」
ゼロ「積極的に入っていいことがあるとは思えませんからね。俺はこんな身なりですから、興味本位に近づいてくる奴らは基本詰ってましたけど……。いや、この話はなしですね」
アクア「確かにね。今のあなたの顔、少し嬉しそうにしてたからね?」
ゼロ「……仲良くなるための会話っていうのは、なんとも理解しがたいものですね」
アクア「そうね。でも、こうして話をしていることに意味がある気がするわ」
ゼロ「え?」
アクア「何気ない会話ってそういうものな気がするの。ただ、話をしたいって言うだけの行為、そこに大きな意味なんてないのかもしれない。こうやって、お互いに話の意味がわからないっていう話が、そういう何気ない話なのかもしれないじゃない?」
ゼロ「なるほど……」
アクア「それに、あなたとの距離感は嫌いじゃない、どこか安心できるの。たぶん、これ以上の距離は私達には必要ないってそんな気がする。仲良くなりたくないって意味じゃなくて、これが最適な気がするから」
ゼロ「まるで針鼠のようですが、確かにそう言われればそんな気がしてきました」
アクア「ふふっ、それじゃ昨夜の話でもしてみない?」
ゼロ「いいですね。俺は昨晩は月をゆったり眺めてました、屋根の上で見る月は奇麗ですからね」
アクア「そうね、でも私は風に乗って聞こえる色々な音を楽しむのもいいと思うわ。たとえば――」
【アクアとゼロの支援がAになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・兵舎『オーディンの部屋』―
ラズワルド「オーディン」
オーディン「ラズワルド…、どうした、神妙な顔をして」
ラズワルド「この前のこと、どういう意味なのかなって思ってさ」
オーディン「前のこと…。一体何のことだ?」
ラズワルド「言ってたでしょ、僕とルーナに変な噂が立つのは嫌だって、あれはどういう意味なのかなって……」
オーディン「いや、そのまんまの意味だ。俺は二人に変な噂が立ってほしくない、そう思っただけだ」
ラズワルド「……だけど、君はまるで一人でもいいみたいに言っていたよね」
オーディン「そんなことは……」
ラズワルド「オーディン、そんな寂しいことを言わないでほしいんだ。僕らは一緒に世界を渡ってここに来たのに、君だけ一人になるなんてことあっていいわけがない」
オーディン「……だけど、子供っぽいとか思ってるだろ?」
ラズワルド「そうだね……。でも、それが君らしさだとも思ってる。どこにいても変わらないのがオーディンのいいところだって思うし、何より少しだけ不安になるんだ」
オーディン「不安?」
ラズワルド「ここにいること、いや今こうして話していること自体、僕が都合のいいように変えてるだけで、誰かのことをオーディンだと思っているんじゃないかって……」
オーディン「……ばかばかしい、そんなことを考えているなんて蒼穹のラズワルドの名が泣くぞ」
ラズワルド「オーディン?」
オーディン「俺達はここにいる。俺にはちゃんとお前の姿が見えてるし、ここまでの事をお前だって覚えてるはずだ」
ラズワルド「……」
オーディン「そんな情けない顔をするな。俺達は世界を渡ってここに来た、俺とお前にルーナの三人でこの世界にやってきた。まやかし何かじゃない」
ラズワルド「……ははっ、本当に自信を持っていうんだね。まやかしじゃない……か。そうだね、この世界で出会った女の子たちがまやかしだなんて、そんなことあるわけないからね」
オーディン「はぁ、お前って奴は……」
ラズワルド「だから、僕らから離れようとしないでほしい。僕らは三人一組なんだ。その関係はずっと変わらない、この世界で僕らの距離が変わるわけないんだからさ」
オーディン「……壁を作ってたのは俺だったっていうことか。この漆黒のオーディンがなんて様だ、ずっと共に歩んできた仲間から離れようとしていたなんてな。はぁ…約束を守るはずが、逆に支えられるなんて」
ラズワルド「たしかにそうかもしれないけど、今はお相子かな」
オーディン「お相子?」
ラズワルド「うん、今さっき少し不安だった僕を支えてくれたからね。これでお相子ってこと」
オーディン「ということは振出ってことか……。ならこれから困ったことがあれば言ってくれラズワルド、この漆黒のオーディンが力になってやるからな」
ラズワルド「はいはい、あまり大きな期待はしないけど、頼りにしてるよ。ずっと変わらない君だからこそね」
【オーディンとラズワルドの支援がAになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡地『会議用天幕』―
マークス「そうか、暗夜王都の方は大分落ち着いているということか」
???「後から来た暗夜の人に聞いた話ではそうなってるよ~!」
レオン「予定通り、無限渓谷から暗夜に近づかせないよう監視を続けてくれてる。ただ、ちょっと今はそれが裏目に出るかもしれない」
クーリア「ええ、ガロン王が率いている旧暗夜が動いてくるかもしれません」
マークス「ああ、今回の戦いでマクベスたちも大きな被害を受けただろうが、準備が整い次第、進軍してくる可能性は高い」
???「たしかにな。だが、それに関して私に考えが――」
暗夜兵「お話の最中失礼いたします。カムイ王女様が来られました」
マークス「わかった、通してくれ」
暗夜兵「はい。どうぞ、お入りください」」
ファサ タッタッタッ
カムイ「すみません、遅れてしまったようですね」
レオン「そうだね。できればもう少し早起きしてほしかったんだけどさ」
???「そうだね~。ちょっとだけ遅かったかな~?」
カムイ「え、その声……もしかしてイザナさんですか!?」
イザナ「そうそう、ボクだよ~! いやいや、お互い無事で何よりだね。イズモの外に出るのはなんだかんだ久しぶりだったけど、ここまで無事に来れて本当によかったよ~!」
カムイ「イザナさんも無事で何よりです。そのイズモ公国の方は……」
イザナ「さすがに無傷ってわけにはいかなかったからね~。でも、ツクヨミがいっぱい手伝ってくれたし、クーリアたちの応援も間に合ったから、大きな被害にはならなかったから安心してよ~!」
カムイ「よかったです。イズモ公国周辺の村々は大丈夫でしたか?」
イザナ「それについては彼から話を聞いた方がいいかもしれないね」
フウガ「そうだな、それについては私から話そう」
カムイ「フウガさん、お久しぶりです」
フウガ「久しぶりだなカムイ、無事で何よりだ」
カムイ「ええ、なんとか……」
フウガ「ここでの戦い、辛きものだと聞いた。そして、お前にとっては信じがたいものであったともな…」
カムイ「はい……、多くの仲間を失ってしまいました。私の未熟さが生んだ結果です。私はここで事が終わるまで、真実を受け入れることが出来なかったんですから……」
フウガ「だが、今のお前はそれを受け入れて前に向かおうとしている。だからこそ、こうして私たちの前にいるのだろう? ならば私たちはそんなお前を信じるだけのことだ」
カムイ「ありがとうございます、フウガさん」
カムイ「ところでフウガさん、先ほどイザナさんの言っていたことというのは?」
フウガ「うむ、イズモ公国へと向かった強行派はすでに無力化し、今はイズモで監視している。白夜の兵士たちがな」
カムイ「白夜兵がですか?」
フウガ「ああ、ここに来る道中、タクミ王子から提案があったのだ。白夜の兵はこちらで監視をするとな。こんなことで許されるわけもないが、白夜が行ったことへの償いだと言っていた」
カムイ「そうだったんですね」
フウガ「……疑わぬのか? これがいずれお前を挟撃するための準備をするための詭弁ではないのかと?」
カムイ「その可能性は確かにないとは言い切れません。でも、私はタクミさんの提案を信じます。タクミさんは白夜王国のことを大切に思っているはずで、少なくともユキムラさんたちとは違う考えを持っているはずですから」
フウガ「そうか、ならば何も言うことはない。タクミ王子が率いている兵士に新生暗夜軍の兵士で、白夜南西部の防衛網は出来上がりつつある。実はこのテンジン砦のことは私とイザナで引き受けようと考えていてな」
イザナ「そうそう、カムイ王女が来た時に話を止められちゃったけど、そのためにボク達がここに来たんだよ」
カムイ「そんな、あなた方を最前線に置くなんて……」
フウガ「カムイよ、これはもうお前だけの戦いでは無い。お前に力を貸すということは、共に血に濡れる覚悟があるということだ。お前たちだけにすべてを押しつけるわけにはいかんからな」
イザナ「そうだよ~。前にボクはカムイ王女の力になるって話したし、当然のことだよ~!」
カムイ「それはそうかもしれませんが……」
マークス「カムイ、フウガとイザナ公王の申し出、ありがたく受け取るべきだと私は思う」
カムイ「マークス兄さん……」
レオン「姉さん、僕も兄さんの意見に賛成だよ。僕たちだけの戦力でこの先の戦いはかなり厳しくなる。それに、白夜で大きな存在であるイズモ公国、部族のフウガたちが加わることで、白夜から離反する人々が出てくるかもしれないからね」
カムイ(短期間での戦いが結果的に被害を抑える一番の方法、そういうことですね……)
フウガ「……」
イザナ「……」
カムイ「ここの死守、お願いできますか?」
フウガ「ああ、任せておけ」
イザナ「もちろんだよ~!」
カムイ「わかりました。イザナさん、フウガさんにはこのテンジン砦周辺をお任せします」
クーリア「カムイ殿、私もこのテンジン砦に残りましょう。多くの兵はカムイ殿にお渡ししますので、役立ててください」
カムイ「クーリアさん……わかりました、よろしくお願いします。ですが、決して無理はしないでくださいね」
クーリア「御心配などいりません、私は死ぬつもりはありませんよ。色々とこの目に焼き付けてからでないと、スズメ達と再会することもできませんから。旧暗夜のことは私達にお任せください」
カムイ「はい、よろしくお願いします……」
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・テンジン砦跡『外れの草原』―
カムイ「ふぅ……どうにか部隊の再編成は終わりました。これならあと数時間の内に出発できそうです。侵攻軍は多くの方が巻き込まれてしまったようですから、すぐにこちらへ来ることはないと思いますけど……)
カムイ(……この状態に安心しているというのも複雑ですね。侵攻軍も結局はあの異形神に操られているだけだともいえるのに、今回の被害があったことで私達は白夜王都へと向けて進めるんですから)
カムイ「争いを止めるために争いをしているなんて、酷い矛盾ですね」
カムイ(こんなことを多くの人が考えなくてもいい、そんな時代が来ればいいんですけど……)
ヤアッ! トオッ!
カムイ「? この声は……、こっちの方からですね」
カザハナ「はあああっ! せやあああっ!」ブンブン
カザハナ「はぁ……はぁ……。ふぅ……。これくらいでいいかな?」
カムイ「精が出ますね。カザハナさん」
カザハナ「わっ、カムイ様。脅かさないでよ、もぉ」
カムイ「ふふっ、すみません。元気な掛け声が聞こえたので誰かと思ったんです。もう少しで出発なのに素振りなんて、元気なんですね」
カザハナ「そんな軟じゃないからね」
カムイ「なるほど。でも酷いですよ、カザハナさん素振りに付き合ってと私を誘ったのに、今回は声を掛けてくれませんでした」
カザハナ「あ、ご、ごめん」
カムイ「ふふっ、冗談ですよ。むしろ、私は夜とか朝早くくらいしか時間がありませんから、むしろ昼間御一緒できるわけではありませんから」
カザハナ「もう……。今は自由時間なんでしょ、だったら一緒にやろうよ」
カムイ「ええ、いいですよ」
ブンブンッ
ブンブンッ
カザハナ「ねぇ、カムイ様」
カムイ「なんですか、カザハナさん」
カザハナ「その、ありがとね。こうやって一緒に素振りしてくれて、その色々と助かったっていうか」
カムイ「助かったといわれても、あまりピンときませんけど」
カザハナ「あの日ね。一人で素振りしてても、たぶんこんな風に前を向けたとは思えなかったから……」
カムイ「前に進めたのは私の力じゃありませんよ。カザハナさんがちゃんと折り合いを付けて、自分で進もうと思ったからです。誰かに言われてそれに従うのと、自分で決めて歩き始めるのでは意味が違うことを、この頃ようやく私も知りましたから」
カザハナ「……カムイ様も? もともとそんなことわかってた気がするけど」
カムイ「わかっているだけで、それを本当の意味で理解していたわけじゃないということです」
カザハナ「なんか難しい」
カムイ「ふふっ、カザハナさんは考えるよりも体を動かすことの方が似合ってますからね」
カザハナ「それ、人のこと馬鹿にしてるでしょ!?」
カムイ「いえいえ、カザハナさんの魅力だと思いますし、そういったあなたの姿にサクラさんも信頼を寄せているのだと思います」
カザハナ「……一瞬でも逃げようとしたのに?」
カムイ「誰にだって逃げ出したくなる時はありますよ。でもあなたはちゃんと足を止めて戻ってきています。それが前に進むということだと私は思いますから」
カザハナ「……ああもう、よくわかんないよ。もう!!!」ブンブンブンッ
カムイ「ふふっ」
カザハナ「でも、いろいろとありがとう。あたしね、カムイ様とこうして素振りしたり、手合わせしたりしてもらってすごく助かってた」
カムイ「そうなんですか?」
カザハナ「うん、最初は逃げるために再開したことだったけど、カムイ様と一緒にこなしてから楽しく思えるようになって、どうして剣の道に進んだのか思いだせたの。結局、あたしはサクラを守ることが戦う理由なんだって」
カムイ「ふふっ、カザハナさんらしいです」
カザハナ「そういうわけだから、カムイ様。素振りはここまで、手合わせしてよ」
カムイ「いいですよ。今回も全力で行きますからね」
カザハナ「もちろん望むところだよ。いつか、カムイ様を打ち負かせて尻もち付かせちゃうんだから。それまでは絶対に付き合ってもらうんだから」
カムイ「そうですか。では、私が勝ったらカザハナさんの御顔をさらわせてくださいね?」
カザハナ「え、なんでそうなるわけ!?」
カムイ「ふふっ、やっぱり勝てるとうれしいです、もっと褒美があればもっとやる気が上がりますからね。それに私も負けたらカザハナさんの言うことを何でも聞いてあげますから」
カザハナ「な、なんでもっていわれても、今は何もないんだけど」
カムイ「今はないということはいずれあるということですね。では決まりです」
カザハナ「ちょ、勝手に決めて……。いいわ。あたしが勝ったらその御褒美を取り消しにするからね」
カムイ「わかりました。それじゃ、行きますよカザハナさん」チャキッ
カザハナ「行くわよ!!!」チャキッ
ダッ
◆◆◆◆◆◆
―テンジン砦跡地『レオンの天幕』―
レオン「はぁ、準備が終わってるからってそんなことしなくてもいいのに、姉さん本当にもの好きだよね」
カムイ「いいじゃないですか。それに休み続けるより、適度に運動をした方が体は楽になるものですよ」
レオン「はぁ、カザハナもカザハナだね。まぁ、あいつはじっとしてるよりも動いてる方が性に合ってるって僕も思うからね」
カムイ「ええ、私もそう思います
レオン「ちなみにだけど、その手合わせの結果はどうなったの?」
カムイ「レオンさんのご想像にお任せします。それともちゃんとお伝えした方がよろしいですか?」ツヤツヤ
レオン「いや、遠慮しておくよ……。でも、どうして僕に会いに来たんだい?」
カムイ「ちょっと、聞きたいこともありましたし、それにレオンさんには作戦の全てをお任せしてしまっていましたから、何かお役に立てるかなと思いまして」
レオン「それが僕の仕事だから気にしないでいいよ。それにすごく大変ってわけでもないからさ」
カムイ「そんなこと風には思えませんよ、レオンさんはとっても凄いと思いますから」ナデナデ
レオン「ちょ、ちょっと、頭を撫でないでよ!」
カムイ「んー、レオンさんはあまり私に甘えてくれないからちょっとさびしいです……」
レオン「はぁ……姉さんって、そういうところ全然変わらないよね」
カムイ「変わらないって失礼ですね。私はいつでもレオンさんに甘えてもらえるように、いろいろと準備をしているんですよ?」
レオン「そんな準備しなくてもいいよ」
カムイ「そうですか、残念です」
レオン「……ふっ」
カムイ「レオンさん?」
レオン「ごめんごめん。でも、こう話してるとやっぱり実感出来るんだ。姉さんが元気になったんだって。元に戻ってくれたんだってさ……」
カムイ「この前はすみません、いろいろと心配を掛けてしまって」
レオン「そのことはもう言わないで。僕は姉さんが元気になってくれただけでもうれしいんだからさ」
カムイ「……私は駄目なお姉さんのままですね。レオンさんに甘えてくださいと言っているのに実際、励まされているんですから」
レオン「姉さん」
カムイ「……私もレオンさんに何かしてあげられればいいんですけど、やっぱり今の私は頼りないですか?」
レオン「……そんなことないよ。今の姉さんはとっても強い人だからさ」
カムイ「そ、そうでしょうか?」
レオン「だって、姉さんはまた戦う道を選んだんだ。そんな姉さんに甘えることなんてできないよ。僕の中で姉さんはとても大きな存在だから……」
カムイ「レオンさん、そんな風に言われるとちょっと恥ずかしくなってしまいますね////」
レオン「……なんだか、僕も恥ずかしくなってきたよ。その、こんなこというものじゃなかったね///」
レオン「なに、カムイ姉さ――」
ギュウウッ
カムイ「……ふふっ」
ナデナデ
レオン「え、な、なにして――」
カムイ「レオンさん、いろいろなことありがとうございます。私にはこうやって抱きしめて、優しく頭を撫でてあげることくらいしか、今はできません」
レオン「カムイ姉さん……」
カムイ「……」
レオン「……。姉さん、もっと頭を撫でてくれないかな……」
カムイ「……いいんですか?」
レオン「姉さんは、僕に甘えてもらいたかったんでしょ?」
カムイ「はい、それじゃ失礼しますね。ああ、レオンさんの髪って女の子みたいに柔らかいんですね……」
レオン「なんだか褒められてる気がしないよ、それ……」
カムイ「ふふっ、怒っちゃいましたか?」
レオン「……別に怒ってないから」
カムイ「そうですか……」
レオン「……」
カムイ「……」
レオン「ねぇ、カムイ姉さん」
カムイ「なんですか?」
レオン「……絶対に戦いを終わらせよう。こんな合間の休憩みたいなのは嫌なんだ」
カムイ「レオンさん」
レオン「戦いが終わって平和になったら、甘えてもいいかな?」
カムイ「……はい、レオンさん。戦いが終わって平和になったら、いっぱい甘えてください。駄目駄目でも、私はあなたのお姉さんなんですから……」
◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城『中央城壁・固定弓砲台装置周辺』―
カチャ カチャ カコンツ
白夜弓聖「ど、どうですか?」
セツナ「…うん…できた。軽く動かしてみて…」スタッ
白夜弓聖「はい」
ギリギリギリ バシュシュンッ!!!!
白夜弓聖「おおーっ、これなら多くの敵に対応できそうです。ありがとうございますセツナ様」
セツナ「気にしないで…。これもヒノカ様を守るためだから…」テトテトテト
白夜弓聖「本当にセツナ様はヒノカ王女様のために身を粉にしておられるのだな」
白夜弓聖「前まではあんなにまじめじゃなかったんだけどな。ぼんやりしているだけの昼行燈だとばかり思っていたが……」
白夜弓聖「ヒノカ王女様があのような状態なのだ無理もない。我々もできる限りのことをする以外に手はないだろう」
白夜弓聖「ああ、ところで軍師ユキムラが言っていたこと、お前は信じるか?」
白夜弓聖「テンジン砦の件か……正直信じる信じないで考えるつもりはない。どんな事情であろうとも、白夜を目指す者たちがいるならそれを迎え撃つだけだ。それがリョウマ王子様や、ヒノカ王女様を救うことに繋がるのであるなら、疑問を抱くこともない……」
白夜弓聖「ああ、そうだったな。よし、向こうの弓砲台の状態も調べておこう。ついて来てくれ」
タタタタタタッ
セツナ「……」
ポフッ
セツナ「?」
アサマ「おやおや、私の気配に気づかないとは、珍しいこともあるものです」
セツナ「アサマ…?」
アサマ「おやおや、珍しく疲れた御顔ですね。やれやれ、いつもはぼんやりとしているばかりのあなたが、わざわざ整備の手伝いなど、珍しいこともあるものです」
セツナ「ん……。アサマも谷との境目にある砲台の整備してた…」
アサマ「おやおや、見られていましたか。といっても、ミタマさんが作業をしていたので横にいただけに過ぎないのですがね」
セツナ「えへへ…。でも、アサマもヒノカ様のために色々とがんばっててすごいと思う…」
アサマ「私はあなたのほうがすごいと思いますよ。ヒノカ様の訓練を見ながら、他の作業もこなしているんですから」
セツナ「それでヒノカ様を悲しませる奴をいっぱい殺せるなら、私もっとがんばれるよ…」
アサマ「セツナさん……」
セツナ「えへへ、アサマはあんまり変わらないよね…」
アサマ「いえいえ、私も変わってしまいましたよ。本当に、昔の私が見たら笑い転げるほどには」
セツナ「そうなんだ…。えへへ、アサマも私とヒノカ様と一緒なんだね…。うれしい」
アサマ「ええ、一緒ですよ。さぁ、今日はもうお仕事も終わりです。戻ってヒノカ様に報告に行きましょう」
セツナ「報告…、なんて言うの?」
アサマ「そうですね……」
「あなたの敵をタコ殴りにする準備は進んでいますと伝えましょうか……」
第二十三章 前篇 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB+→B++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンB++→A
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナB++→A
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541]
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今日はここまでで
アサマとセツナは狂っても見た眼があまり変わらないから一番怖いタイプだと思う。
FE無双にプレイアブルとしてピエリ、マスコットにリリス。こんな感じの参戦情報、きてくれませんかね……
この先の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>475と>>476
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ギュンター×ニュクス
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
この中から一つ>>477
(支援イベントキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、次のレスになります)
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・フェリシア×エルフィ
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
この中から一つ>>478
このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
乙- 安価はラズワルド
乙
シャロネキ
ギュンター×ニュクスで
フェリシア エルフィ
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『大広場』―
ラズワルド「ふーっ、もうこんな時間かー。はぁ、マークス様に怒られて町に出る時間もなかったよ。こんな時間に可愛い子なんて歩いてないだろうしなぁ……ん?」
シャーロッテ「はぁ……」
ラズワルド「あれは、シャーロッテ? 何してるんだろう、こんな時間に……。おーい、シャーロッテ」
シャーロッテ「ん? あれぇ、ラズワルドさん、どうしたんですか?」
ラズワルド「いや、こんな時間なのに一人でいるからさ。どうしたのかなって思って、夜の街は危ないからそろそろ戻った方がいいと思うよ」
シャーロッテ「ふふっ、ありがとうございます。ラズワルドさんはどうしてここに?」
ラズワルド「ちょっと気分転換かな。マークス様の言葉が頭でぐるぐる回ってて、今にも倒れちゃいそうだよ。でもそんな疲れもシャーロッテみたいな可愛い女の子と話ができたから吹き飛んじゃったよ」
シャーロッテ「そ、そうですか?」
ラズワルド「うんうん、そうだ。今から地下街でお茶でもしない? とっておきの穴場があるんだけど…」
シャーロッテ「ごめんなさい。今日はそういう気分じゃなくて……」
ラズワルド「そっか、それじゃ兵舎まで送るよ。夜道を女の子一人で歩かせるわけにはいかないからね」
シャーロッテ「いえ、そんなお構いなく、ラズワルドさんも用事があると思いますから」
ラズワルド「君を兵舎まで送るのが僕の用事ってことでどうかな?」
シャーロッテ「……わ、わかりました。おねがいします」
ラズワルド「うん、それじゃいこっ」
シャーロッテ「……はぁ、部屋に戻るまで演技を続け無いと駄目みたいね。あ、まってください~、今行きますからぁ~」
【ラズワルドとシャーロッテの支援がCになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞『書庫』―
ニュクス「……ふんっ、はっ、ううっ!!!」
ニュクス「駄目ね、届かないわ。前回はギュンターがとってくれたおかげでどうにか本を手に入れられたけど……。戻すのはどうにもならないわね…」
ニュクス「どこかに椅子は……あった。これで……。くっ、乗っても届かない……」
ギュンター「ニュクス様、いかがされたか?」
ニュクス「わっ、ギュンター……。脅かさないで頂戴」
ギュンター「これは失礼した。椅子に乗って小さく跳ねる背中が見えましたもので、早急に声を掛けた次第です」
ニュクス「そ、そう。別にこれといった問題じゃないわ」
ギュンター「そうですか。ふむ、その本は……」
ニュクス「そ、そうこれが今上から落ちてきたのよ……。それを戻そうとしたのだけど……」
ギュンター「そうでしたか。少々本の入りが弱かったようです。すぐに戻しましょう」
ニュクス「ええ、お願い」
ギュンター「ところで、こちらの冒頭をニュクス様はどう思われましたか?」
ニュクス「そうね、呪われた魔法の書が持ち主に恋心を抱くというのもだったかしら? 物に心が宿るというのは昔からよく聞くけれど、恋心というのは初めてかもしれないわ」
ギュンター「ふっ、やはりその本を読まれていたのですな」
ニュクス「……私を嵌めたわね?」
ギュンター「そうなりますな。とても熱心に読んでくださったようで」
ニュクス「そ、そんな熱心に読んでなんていないわ、勘違いしないで頂戴」
ギュンター「ちなみにですがあれには続巻がございます。確かここに……ありました」
ニュクス「……続巻って……」
ギュンター「ああ、失礼した。ニュクス様は興味がないのでしたか、すぐに戻し――」
ニュクス「ま、待ちなさい」
ギュンター「どうされましたか?」
ニュクス「……そ、それを貸して頂戴。その読みたいから……」
ギュンター「ふむ、そうでしたか。ではこちらをお貸しいたしましょう。その本は戻させていただきますので」
ニュクス「……なんで、こういったものは上にばかりあるのよ……」
ギュンター「ははっ、それには少しだけ事情がありましてな」
ニュクス「事情?」
ギュンター「ええ、といってもそれほど重大なことでもありませんがな。では私は失礼いたします。本を返される時、今度は一度お声掛けください」
ニュクス「え、ええ」
ニュクス(……恋愛系の書物が上にある事情ね。一体何なのかしら?)
ペラペラッ
ニュクス「……冒頭から破局してるじゃない」
【ギュンターとニュクスの支援がBになりました】
◇◆◇◆◇
―暗夜王国・クラーケンシュタイン城『兵舎内』―
フェリシア「え、エルフィさん!」
エルフィ「フェリシア、どうしたの?」
フェリシア「その、この前のことを謝りたくて……。私、エルフィさんのしてくれたことにあんな失礼なことを……」
エルフィ「フェリシア……。いいえ、わたしが謝ることよ。ごめんなさい」
フェリシア「そんな、エルフィさんが謝ることじゃないです。私がそのエルフィさんの役に立ちたいって思って、それが空回りしちゃっただけで……。結局、エルフィさんを困らせてしまっただけですから」
エルフィ「困ってないわ。だけど、少しだけ驚いたの」
フェリシア「驚いたことですか?」
エルフィ「ええ、あなたはわたしが死んでしまったら悲しいって言ってくれたこと。わたし、あまりそういうことを言われたことがなかったから」
フェリシア「え……」
エルフィ「口にしなくてもいいことだから誰も言わないことよ。誰も死ぬために戦ってるわけじゃないから。わたしだって死にたいわけじゃないから、それくらい理解してる。でも、フェリシアはわたしに直接そう言ってくれたから…」
フェリシア「……そんなことわかりませんよぉ。ちゃんと言葉にしたほうがいいことじゃないですか」
エルフィ「だからうれしかったの。あなたが直接わたしにそう言ってくれたこと、今までそんな顔をして心配してくれるたのはエリーゼ様くらいだったから」
フェリシア「エ、エルフィさん」
エルフィ「ええ、あなたのありかたは純粋にすごいって思っているの」
フェリシア「ええっ、全然すごくないですよぉ。私、エルフィさんみたいに力持ちじゃありませんし、ドジばっかりで皆に迷惑ばっかりかけてて、そんなすごいことなんて」
エルフィ「ううん、フェリシアは誰かのために毎日頑張ってる。あの日もわたしを守るために前に出てくれて、その後わたしに言葉で伝えてくれた。わたしはそんなフェリシをすごいと思ってるの」
フェリシア「はわわっ、エルフィさん、そんな風に言われると私恥ずかしくなってしまいますよぉ…///」
エルフィ「人のために頑張ってるいるあなたを、わたしはまだまだ見ていたいわ。だからあなたにわたしを信じてほしい、みんなを守る盾であるわたしのことをね?」
フェリシア「エルフィさん。で、でしたら…一つだけ約束してほしいです。もしも、危ないって思ったら私を呼んでください。エルフィさんがみんなを守る盾でいられるようにお手伝いします。私もあなたの役に立ちたいんです」
エルフィ「ええ、約束するわ。その時だけ、あなたのみんなのために動く力をわたしに貸してね、フェリシア」
フェリシア「はい、がんばります」
【エルフィとフェリシアの支援がAになりました】
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城に続く街道『外れの小道』―
カムイ「すみません、一緒に来てほしいというお願いを聞いていただいて」
カミラ「いいのよ。それにここは始めてくる場所だもの、カムイ一人で迎えになんて行かせられないわ」
カムイ「ありがとうございます」
カミラ「ふふっ、もっともっと頼りにしてくれてもいいのよ? 私はあなたのお姉ちゃんなんだから」
カムイ「はい、そうさせてもらいますね」
ガササッ
ガサッ
カミラ「……ふふっ、着たみたい」
偵察兵「カミラ王女にカムイ王女…。すみません、お待たせしましたか?」
カムイ「いいえ、そんなことはありません。どうやら、あともう一人いるみたいですね。この気配は多分……」
ガサッ
ベルカ「私よ、カムイ様…」
カムイ「やっぱりベルカさんでしたか、お久しぶりです」
ベルカ「まだそれほど時間は経っていないと思うわけど?」
カミラ「ふふっ、時間は関係ないものよ。私もベルカと再会するのが久しぶりに感じちゃうもの」
ベルカ「……そう」
カムイ「では、久しぶりということで、触って無事を確認させてください」
ベルカ「冗談はよして…。ここは敵地なのよ…」
カムイ「では、敵地でなかったらいいんですか?」
ベルカ「そういうわけじゃない…」
カムイ「うーん、無事を確認するためにあの夜の続きをと思ったんですけど、やらせてもらえないみたいですね」
偵察兵「ベルカ様、夜の続きとは?」
ベルカ「詮索しないで…。それよりも、これが今現在わかっている兵の規模を記したものよ…」
カミラ「そう、ありがとう。それで、他の皆はまだ監視を?」
偵察兵「はい、スサノオ長城全体で敵に動きがありましたので、私とベルカ様で報告に上がった次第です」
カミラ「そう。さすがに大所帯で移動したこともあって、もう敵に捕捉されちゃったみたいね」
カムイ「さすがにこの大人数は隠しきれませんからね。お二人の話は天幕でお聞きしますので、付いて来てください」
ベルカ「わかったわ…」
タッ タッ タッ
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城へと続く街道『会議用天幕』―
偵察兵「すでに城壁の前には多く弓砲台が設営されていました。また敵の多くは天馬武者と金鵄武者の構成で、地上部隊の規模より多いようでした」
ベルカ「城壁に密着するためには橋を渡る必要があるけど、その箇所もかなり限られてる…。調べた限りだと、ここと、ここと、ここの三か所…。敵にその気があるなら、いくつかを落としにかかるかもしれないわ…」
マークス「なるほど。これはテンジン砦よりも手強いな」
レオン「ある程度は資料で作戦を考えていたけど、この橋で侵攻ルートが限られているのがネックになるね。一気に空中戦力で強襲したいところだけど……、弓砲台がかなりの量だ。視界が開けてる場所で、そんな自殺行為はさせられない…」
カミラ「ええ、テンジン砦の戦いで竜の数も減ってしまったから、真正面からぶつかるわけにもいかないわ。それより、スサノオ長城を指揮しているのが誰かはわかったの?」
偵察兵「申し訳ありません。そのような人物は特定できていないのです」
カミラ「そう、残念ね。ならそれに繋がるような人物はいなかった? 名の知れてる敵の兵士でもいいのだけど」
ベルカ「二人だけ、見たことのある人間がいたわ…」
カムイ「見たことのある人ですか、それは誰ですか?」
ベルカ「あの白夜の王女の臣下が二人を見たの…。港町で一戦交えた奴よ…」
カムイ「それってヒノカさんのことですよね。その臣下というと……」
サクラ「もしかしてアサマさんとセツナさんでしょうか?」
カムイ「おそらくは。そう考えるとヒノカさんがスサノオ長城での指揮権を持っていると考えるべきでしょうね」
サクラ「やっぱり、ヒノカ姉様と戦うことになるんでしょうか……」
カムイ「避けられるなら避けたいです。でも、そう上手くはいかないでしょう。おそらく、ユキムラさんはこうなることをわかっていたんだと思います」
カムイ(私とヒノカさんを戦わせること、それをあの人は望んでいるはずですから…)
エリーゼ「だったらそのヒノカさんがいない場所から、スサノオ長城をどうにかすばいいんじゃないかな」
レオン「というよりも、そうするほうがいいだろうね。正直、ヒノカ王女が守っている場所を特定して、そこ以外を叩いた方がいいだろうからね」
カムイ「というと?」
レオン「今の白夜の状況がどうであろうとヒノカ王女は王族だ。王族が戦場にいる以上、その場所の防御は厚くなる。僕たちの戦力は確かに最初の想定よりは多くなったけど、実際のところ真正面からまともに戦ったら被害は大きくなる」
マークス「なるほどな。現状、王族を慕う者たちが多くいる以上、ヒノカ王女を最優先で守るために動くのは当然ということか」
レオン「その点を踏まえれば、敵のリーダーがいる場所に兵が密集するから、こちらは手薄な場所を強襲して突破、そこを制圧するのがいいと思う」
カムイ「ヒノオさんを守るという敵の方針を利用するということですね……」
アクア「たしかに敵の戦線を一か所でも壊せれば、スサノオ長城そのものを分断できる可能性も高まってくるわね……」
レオン「うん。後は四方から攻撃を繰り返して包囲する。一つ拠点を抑えられれば竜騎兵の運用方法もかなり楽になるはずだよ。ヒノカ王女たちに勝てない状況を作り出せれば、説得して降伏させることだってできるはずだ」
サクラ「これなら、ヒノカ姉様と戦わないで済むということですね……」
レオン「これが僕の考えだけど。どうかな、カムイ姉さん」
カムイ「確かに、正面から白夜軍と戦うことは難しいです。それに私もできればヒノカさんと戦いたくはありませんから。ですが、ヒノカさんが私の存在を無視するとは思えないんです」
レオン「え?」
カムイ「……シュヴァリエ公国で再会したヒノカさんは、私を連れ戻すことだけを目的としていたように感じました。私がいるからヒノカさんはやってきたように思いました……」
カミラ「そうね。前回のジュヴァリエでの戦いは白夜の人間が先頭に立つ必要があったけど、今回は白夜での戦い。本来ならヒノカ王女が前に出る必要なんてないけど、カムイがいるとなれば話は別よ。あの子はきっと前に出てくるわ」
マークス「カミラ、お前はヒノカ王女がそう動いてくると読んでいるが、その根拠はなんだ?」
カミラ「ふふっ、私もカムイのおねえちゃんだもの、私があの子の立場だったら同じカムイを助けだすために動くわ。カムイを取り戻して、同時に奪った奴らを皆殺しにできる。カムイを奪った存在を目の前で消し去ることができるとすれば、縮こまってるわけにいかないもの」
マークス「……ヒノカ王女も国では無く、得たい個人のために戦うということか」
カミラ「それくらいにヒノカ王女にとってカムイは尊いものなのよ。ヒノカ王女の正義はカムイが白夜にいることだと思うから……」
マークス「……ヒノカ王女の正義か」
カムイ「だとしても、私は今そのヒノカさんの正義を認めるわけにはいきません。そこに暗夜と白夜が共に歩む道は無いはずですから……」
アクア「カムイ……」
カムイ「だから、私はヒノカさんと戦います。それにもしも私達の考え通りに事が進むのなら、そこを突くまでです」
エリーゼ「どうするの?」
カムイ「簡単なことです。ヒノカさんがこちらに向かってくる可能性があるなら、ヒノカさんをどうにか捕らえるしかありません。ヒノカさんを慕う人たちなら剣を収めてくれるかもしれませんから……」
カムイ(正直、それがさらなる悪意を生んでしまうかもしれません。でも、そうすることでヒノカさんとの戦いを終わらせられるなら、それで構いません)
カムイ「私はここで、ヒノカさんをこの戦いから救い出そうと考えています。皆さん、先ほどの作戦以外の方法で臨ませていただけませんか……」
レオン「つまり姉さんは味方よりもヒノカ王女を優先する。そういうことだね?」
カムイ「……はい」
マークス「その決断に、後悔はないのだな?」
カムイ「はい」
一同「……」
マークス「わかった。レオン、もう一度作戦を練り直してもらえるか?」
レオン「うん、ヒノカ王女がこちらに向かってくる前提で作戦を練り直すよ。相手に時間を与えることになるけど、構わないよね?」
カムイ「ありがとうございます。その代り私にできることは何でも言ってください、きっちりこなしてみせます」
レオン「こなしてもらわなくちゃ困るよ」
マークス「その通りだ。よし、全員作業に取り掛かれ!」
ガタガタッ タタタタタッ
カムイ「……」
カミラ「カムイ、大丈夫よ」
カムイ「カミラ姉さん……」
カミラ「マークスお兄様もレオンも、あなたの考えていることを理解している。だから自信を持ちなさい」
カムイ「はい。ベルカさん達には……」
カミラ「ええ、ベルカ達にはヒノカ王女がいるかどうかをちゃんと調べてもらうつもりよ。もしもいないのなら、それはそれで気が楽になるのだけどね?」
カムイ「……カミラ姉さんは、あそこにヒノカさんがいると思っているんですよね」
カミラ「そうね。例の二人の臣下がいることもあるけど、あのヒノカ王女が王都で燻りながらあなたを待っているようには思えないもの……。あなたを取り戻すためなら、命を賭けることなんて容易い、そう思っているはずだから」
カムイ「……」
カムイ(ヒノカさん……。あなたはそこにいるんですか……)
カムイ(私達が向かうそこに、いえ……。私が辿りつきたいその場所に、私を拒む壁として、待っているのですか…)
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城『総大将の部屋前』―
アサマ「それは本当ですか?」
白夜兵「はい。現在、王都に増援の要請を出していますが、反応は良くありません。おそらく、増援がこれ以上来ることは……」
アサマ「仕方ありません。これで兵がすべて来ては王都が手薄になりますからね。そんな事態になるのはまずいと、ユキムラ様も難しいと顎を撫でていることでしょう」
白夜兵「今の状況では全ての場所に十分な兵力を置くことは叶わないかと……」
アサマ「こちらは守り切ればよいのです。相手を追い掛けて外に出るわけではありませんからね。状況に応じてことを成せばよいのですよ。そういうわけですから、持ち場に戻って作業を続けてください。ヒノカ様にお伝えしておきますから」
白夜兵「はい、わかりました」
タタタタタタッ
アサマ(思ったよりも早く来ている。ヒノカ様にはもう少しゆっくりしていただきたかったのですが……)
アサマ「はぁ……前途多難とはこのことですね」
ミタマ「アサマ様、またため息が漏れてございますわ」
アサマ「おやおや、ミタマさん。そちらの部隊は編成を終えたようですね」
ミタマ「疲れたわ、ねどこに倒れ、ねむりたひ。朝から動きっぱなしで、クタクタでございますわ」
アサマ「はっはっは、修行と言いながら多くを眠ることばかりに費やしてきた罰が当たりましたねぇ」
ミタマ「笑うとこではありません。それよりも、ヒノカ王女様は?」
アサマ「部屋の中です。セツナさんが一緒ですから、心配はいりませんよ」
ミタマ「セツナ様とですか?」
アサマ「今朝の訓練が終わったらすぐに弓砲台の整備、昔のセツナさんとは比べ物にならないくらいよく頑張っていますから」
ミタマ「そうですか。それよりも、先の話ですけど……」
アサマ「ええ、どうやら暗夜の方々がこちらに向かているようです。いやはや、ゆっくり休ませてもらませんね」
ミタマ「はぁ、そう言っている割にはどこか嬉しそうです。アサマ様、本当は彼らが来ることを喜んでいますわ」
アサマ「……それはあなたの勘違いというものです。主のことを思えば、戦いなど来ない方が良いことですよ」
ミタマ「……わかりました、そういうことにしておきますわ」
アサマ「では、私はヒノカ様にこのことをお知らせしてきますので、ミタマさんは少しばかりここで待っていてください」
ミタマ「お待ちしておりますわ」
ガチャッ バタンッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
セツナ「んっ、ヒノカ様……」
ヒノカ「セツナ、もっと近くに……。はぁ、温かい、近くにいるのを感じられるよ……」
セツナ「んくっ……、ヒノカ様。もう時間ですよ…」
ヒノカ「セツナ……そんなことを言わないでくれ……。まだ、共にいてほしいんだ」
セツナ「ヒノカ様…大丈夫ですよ…。私は…傍にいますから…」
ヒノカ「す、すまない。我儘を言ってしまって……」
セツナ「ヒノカ様、謝らないでいいです…。わかりました、今日はもう少しだけこうしてましょう?」
ヒノカ「……ありがとう、セツナ……」ギュウウッ
ヒノカ「……スースー」
セツナ「……寝ちゃった…。ふふっ、眠ってるヒノカ様、可愛い…」
セツナ(……ヒノカ様が私に謝ることなんてほとんどなかったのに、この頃は謝られてばっかり…)
セツナ「……」ナデナデ
ヒノカ「んっ、くぅん……」
セツナ(怒られてた頃が懐かしく感じる…。もう、あの頃のヒノカ様には戻らないってアサマが言ってた…。信じたくないけど…多分そうなんだと思う…)
セツナ(ヒノカ様が守りたいものは…)
ガタンッ
セツナ「…誰?」
アサマ「おやおや、セツナさん。眠っていたのかと思いましたが、起きていたんですね」
セツナ「アサマ…どうしたの?」
アサマ「ええ、どうやら暗夜軍が迫っているとのことですから、ヒノカ様にお話をときたんですけど。眠っておられるようですね」
セツナ「うん、この頃怖い夢を見ることも少なくなったみたいだから…。夜ね、よくヒノカ様が震えてた…。私が傍にいても全然震えが納まらなかったのに、今はこうやって落ち着いてる…」
アサマ「少しだけ憑き物が落ちたのかもしれません。これはセツナさんの頑張りのおかげですよ」
セツナ「アサマも手伝ってくれたらよかった。もっと早く、ヒノカ様は安心できたと思う…」
アサマ「ヒノカ様が私を見て安心ですか、あまり想像できませんね」
セツナ「ヒノカ様、朝起きて私がいると安心してくれる…。起きてアサマが挨拶してくれたときも安心してくれる…。だからそんなヒノカ様を不安にさせたり悲しませたりすることは…全部私が殺してあげるの…。それでヒノカ様が欲しい人だけ残せば、それでいいの…」
アサマ「そうですか、セツナさんがここまで主のために働くようになったとは。いやはや、本当に私達は動くのが遅かったようです…」
セツナ「うん…本当だね…。やっぱり、そうなんだなって思う…。だけど…私はどんな事になってもヒノカ様のために…いっぱい頑張りたいから…。アサマも頑張ってくれるよね?」
アサマ「はっはっは、あまり頑張りたくはありませんが、仕方ありませんね」
セツナ「そう言ってくれて、うれしい……」
ヒノカ「んん……セツナ、それにアサマ?」
アサマ「……おはようございます、ヒノカ様」
ヒノカ「アサマも一緒に眠ってくれるのか?」
アサマ「生憎ですが、あまり眠くはありません。それよりも一つ知らせがありました。テンジン砦を越えて暗夜軍がここを目指して進軍しているようです」
セツナ「…」
ヒノカ「そうか…」
ヒノカ「その中に、カムイはいるのか?」
アサマ「ええ、姿を見た者がいるそうですよ」
ヒノカ「そうか、やっと、やっと私の元に来てくれたんだな……カムイ…」
ヒノカ「これでようやく、ようやくお前を救いだせる。あの下劣で最低な暗い王国から、お前を救い出してみせるから……」
ヒノカ「救い出した後も、ずっとずっと私が守ってあげるからな……」
「大切な私のカムイ……ふふっ、ふふふふっ……」
今日はここまで
スサノオ長城で白夜の飛行部隊と戦うっていうの、あったらよかったなーって思った。
次の更新で戦闘メンバーの安価を取ろうと思っています。ジョブの一覧を張りますので、参考にしていただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
○仲間ジョブ一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)
―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)
―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)
―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)
―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)
―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)
―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)
―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城『中央敵台』―
ヒノカ「……」
ヒノカ(未だに動きはないか…)
カツンカツン……
ヒノカ「ん?」
セツナ「ヒノカ様、ここにいたんですね…」
ヒノカ「セツナか。ここにいれば敵が来てもすぐに発見できるし、カムイが来たのならすぐに会いに行ってやりたい。ようやく私に会いに来てくれるのだからな」
セツナ「そうですか…」
ヒノカ「カムイはまだ暗夜に捕らわれているんだ。自分の意思じゃなく無理矢理戦わされているに違いない。私はそんな場所から救い出してやりたいんだ。カムイには本当の家族と幸せに過ごしてほしいし、私はそれを守っていくつもりだ。カムイには白夜で幸せになってもらいたいからな」
セツナ「ヒノカ様…。カムイ様のことを支えていくつもりなんですね…」
ヒノカ「ああ、カムイが私に助けを求めてここに来ているんだ……。姉としてそれに応えるのは当然のことさ。それにカムイが戻ってくれれば、あとはすべてうまく行くきがするんだ。セツナもそう思うだろう?」
セツナ「………。はい、ヒノカ様…」
ヒノカ「……ん?」
ゴロゴロゴロ……
セツナ「雷の音…。雲行きが怪しいみたいです…」
ヒノカ「そうか、晴天なら夕焼けに照らされた奇麗な長城の姿をカムイに説明できたんだが。まぁいい、カムイが戻ってくれればいつでも話せる、だから今日はお預けになるな」
セツナ「……」
カツン カツン カツン
アサマ「ヒノカ様、こちらにいましたか」
ヒノカ「ん、アサマ。それにミタマも一緒か?」
ミタマ「はい、こんな見つかりそうな場所にいては危険ですわ」
ヒノカ「いいんだ。ここにいればカムイが私を見つけてくれる。そんな気がしてな」
アサマ「おやおや、すごい自信ですね。しかし、こう天気が崩れそうになっているところを見ると、今日は来ないと思えなくもありませんが……」
ミタマ「まるで想い人を待っているよう、いい歌ができそうですわ」ボソッ
アサマ「私としては複雑ですね。ここまでヒノカ様を追い詰めた人間が想い人というのは、神も少し趣味が悪いというものです」ボソッ
ミタマ「少しで済ますのはアサマ様らしいですわ。もっとも、アサマ様にとってもある意味待ち人が来たと言えるものでしょう?」
アサマ「……まぁ、そうなりますね。暴力はあまり得意ではいないんですが……」
ミタマ「武器を撫でながら言うことではありませんわ」
ヒノカ「……」
クルルル……
ヒノカ「ん、ふふっ、安心しろ。ユウギリの仇はちゃんと取ってみせるさ。大丈夫、私の手に入れたいものとお前が欲しがっているもの、どちらもきちんと満たしてやるからな……」サワサワ
クルル……
セツナ「……?」
タタタタタッ ガシッ
ヒノカ「セツナ? どうかしたか?」
セツナ「あの森で、何か動いた気がする…」
ヒノカ「……ん?」
ガサガサッ
アサマ「姿は見えませんが、何かがいるみたいですよ」
ミタマ「…敵?」
アサマ「偵察はだしていませんからね。それに獣はあまり近づいてくることもありませんので、おそらくは……」
ミタマ「はぁ。『争いの 足音響く 夕刻か』あと少しで夜が忍び寄るというのに、こんな時間に来ないでほしいものですわ」
アサマ「今が晴天なら、夕刻とわかりやすかったかもしれませんね」
ミタマ「この歌は風景ではなくて今を現してますの。だから夕日など要りませんわ」
アサマ「ミタマさんがそういうのでしたら、これ以上言うことはありませんよ」
ミタマ「なら、最初から横槍は入れないでくださいまし。そう言うところだけ変わらないのはアサマ様らしいですけど」
アサマ「はっはっは」
アサマ「それでヒノカ様、どうしますか?」
ヒノカ「……一度確認に向かおう。もしかしたら、カムイが暗夜の者たちの隙を見てこちらに来ているのかもしれない。今なら助けだせる可能性もある」
アマサ「わかりました。ミタマさんはもしもに備えて準備を始めてください、城壁全体に報告者を走らせるようにお願いしますよ」
ミタマ「ええ、わかりました。鏑矢の準備もさせておきますから、そちらの合図をお願いしますわ」
アサマ「ええ、ご安心を」
ミタマ「ヒノカ様、お気を付けて」
タタタタタッ
セツナ「森は私が確認に行ってきます…。ヒノカ様はここで待ってて…」
ヒノカ「……いいや、私も一緒に行く。アサマも一緒に来てくれるか?」
アサマ「指揮官がすることでは無いと思いますが、ヒノカ様がそうおっしゃるのでしたらお供いたしますよ」
セツナ「私もヒノカ様と一緒…」
ヒノカ「二人とも、ありがとう」
アサマ「ああ、それと後続に三名ほど山伏を連れて行ってもよろしいですか?」
ヒノカ「別にかまわない。それじゃ行こう……」
ヒノカ(カムイ……今、迎えに行くからな……)ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―スサノオ長城・近隣『森の中』―
カムイ「……」
アクア「カムイ、ヒノカは来てくれると思う?」
カムイ「それは向こう次第といったところです。もしもヒノカさんで無かった時は話がしたいと伝令を頼むしかありません……」
アクア「そう、その伝令に説得力を持たせるために、サクラもここにいるというわけね……」
カムイ「はい。すみません、このような役割を頼んでしまって」
サクラ「いいんです。私もヒノカ姉様とお話ができたらって思っていますから。それにヒノカ姉様と戦いたくなんてありません。家族に刃を向けることなんて申したくないんです」
カムイ「はい」
ゴロゴロゴロ……
アクア「すごい音ね。森の中だから空模様をあまり確認できないのに天気が悪くなっているのがわかるわ」
サクラ「はい。いつもは夕焼けがとても奇麗な場所なんですけど、今日は暗くてなんだか怖い感じがします」
カムイ「へぇ、そうなんですか一度は見てみたいものですけど、私では難しいですね。今度私が想像できるように説明してくれますか」
サクラ「カムイ姉様…、そのきちんと説明できるかわかりませんけど……がんばりますね」
カムイ「ふふっ、楽しみにしてます」
ガササッ
アクア「カムイ、誰かが向こうからやってくるみたい……」
カムイ「わかりました、お二人は私より一歩下がっていてください」
アクア「わかったわ……。来たようね」
サクラ「……あ」
アクア「どうやら、あなたの読みが当たったみたいよ、カムイ」
カムイ「……みたいですね」
ガササッ タッ タッ ジャリッ
ヒノカ「カムイ……」
カムイ「……ヒノカさん、お久しぶりですね。何カ月ぶりでしょうか。たぶん、最後にお会いしたのはシュヴァリエでだったと思うのですけど」
ヒノカ「……」
カムイ「えっと、ヒノカさん?
ヒノカ「カムイ……カムイ!!!」タッ
ガシッ ギュー
カムイ「わっ……ヒノカさん。いきなり何を……」
ヒノカ「はぁはぁ、カムイ。カムイなんだな……。私の、私のもう一人の妹の……」
カムイ「……はい」
ヒノカ「ははっ、ようやく私たちの元に帰ってきてくれたんだな。あの日、シュヴァリエでお前を救えなかった私を許してほしい……」
カムイ「もう、それは終わったことですから、気にしないでください。その、苦しいので少し離れてもらってもいいでしょうか?」
ヒノカ「もう少しだけ抱きしめさせてくれ、お前の温もりを感じさせてほしいんだ」ギュウウッ
ヒノカ(はぁ、カムイだ。カムイの心音も香りも、ようやく帰ってきたんだ……。私の元にあの日、再会した姿のままで……)
ヒノカ「すまなかった」
カムイ「いいえ、すごく強くてびっくりしました」
ヒノカ「ふふっ。アクアにサクラ、二人とも無事だったんだな」
アクア「久しぶりね、ヒノカ」
サクラ「お久しぶりですヒノカ姉様、お会いできてうれしいです」
ヒノカ「ああ、私もだ。もう会えないと思っていた家族にこうしてもう一度会えるなんて、まるで夢を見ているようだ……」
ヒノカ(でもこれは夢じゃないんだ。私の目の前にカムイがいて、アクアもサクラもいる。これでようやく全てが元通りになる。私が戦ってきたことが、やっと報われるんだ……)
ヒノカ「さぁカムイ、私と一緒に戻ろう。リョウマ兄様も会いたがっているはずだ。お前の戦いはここで終わり、あとはゆっくり休んでくれ。これからは私がお前たちをずっと守っていく、辛い思いや苦しい戦いのことはもう忘れていいんだ」スッ
カムイ「……」
ヒノカ「私達と一緒に失った時間を一緒に埋めていこう。家族としてもう一度、歩いていけるように……」
カムイ「うれしいです。こんなにも私のことを気にかけてくれて、本当なら私は心配される資格もないはずなんですから」
ヒノカ「カムイ……。そんなことはない。私にとってお前は共に一緒に過ごしたい大切な存在だ。だから、そんな悲しいことを言わないでくれ」
カムイ「私も同じです。ヒノカさんやリョウマさん、それにタクミさんにサクラさん。他の多くの人達と一緒に過ごしていきたいです」
ヒノカ「タクミ、タクミも無事なのか?」
カムイ「はい、タクミさんは風の部族の村にいるはずです。多分、情報が間違って伝わったんだと思います」
ヒノカ「そうか……。そうだったのか」
カムイ「私は白夜を滅ぼすために戦っているわけではありませんから……。私は皆さんと笑って過ごせる、そんな日々のために戦っているんですよ」
ヒノカ「皆と笑って過ごせる日々か。私もお前と一緒に笑って過ごせるそんな日々が来てほしい、そう思っているよ」
カムイ「だから、先に聞いておきたいことがあるんです」
ヒノカ「なんだ。なんでも聞いてくれていい、私はカムイの姉さんなんだからな…」
カムイ「はい。……ヒノカさんにとっての皆さんに、暗夜の人々は含まれていますか?」
ヒノカ「……カムイ?」
カムイ「……」
ヒノカ「何を言っているんだ? そんなこと聞かなくてもわかることだろう?」
カムイ「答えてくださいヒノカさん。私は白夜暗夜の生まれ関係なく、そこにいる人々が笑って穏やかに過ごすことのできる平和を願っています…」
ヒノカ「……」ドクンッ
カムイ「私はこの不毛な戦いを終わらせるためにここにいます。だからヒノカさんと戦うことを私は望んでいません。でも、ヒノカさんが暗夜の人々に対して、私とは違う感情を抱いているのなら。その手を取ることはできないんです」
ヒノカ(……なんだ、その私が間違っているというような、その言い方は……)
ヒノカ「カムイは私たちの元に帰ってきてくれたんじゃないのか?」
カムイ「いいえ、帰ってきたわけではありません。私は意思をヒノカさんに伝えるためにここにいるんです」
ヒノカ「カムイ、なぜ私の手を取ってくれないんだ! 暗夜の奴らはお前を利用しているだけだ!」
カムイ「私が知っている暗夜の方々はヒノカさんの考えているような方たちじゃありません。私と一緒に歩んできてくれた大切な仲間です」
ヒノカ「大切な……仲間?」
カムイ「はい。私が悩み、足を止めた時も支えてくれた人たちです。私はその人たちと白夜の人たちが争い続ける世界を望んでなんていません。だからこそ、私はヒノカさんに私の手を取ってもらいたんです。この不毛な戦いを終わりするために、私たちと一緒に戦ってほしいんです」
ヒノカ「……」
カムイ「ヒノカさん」
ヒノカ「何を言っているんだカムイ。お前が、お前にとっての仲間や大切な者たちがいるのは、こちら側じゃないか……。父様を殺し、母様まで奪い、土地を侵略してきた暗夜になぜ従うんだ。サクラ、アクアもなんですぐにこちらに来てくれないんだ……」
アクア「……ごめんなさい。私はカムイについて行くと決めたの。それに、今の白夜に私たちの居場所なんてありはしないわ」
ヒノカ「アクア?」
サクラ「私も同じです。命をかけて私を救ってくれた人が戻りたかった白夜はもう無いんです。ヒノカ姉様、今の白夜に目を背けて戦いから逃げることなんて私にはできません」
ヒノカ「サクラ……どうして……」
ヒノカ(なんで、そんな目で私を見るんだ……。そんな敵を見るような目で……)
カムイ「ヒノカさん、私と一緒に来てください。そして、この争いを終わらせるんです。まだ、私達は剣を抜いていない、今ならまだ間に合います」
ヒノカ(カムイ、これは本当にカムイなのか?)
ヒノカ(本当のカムイはどこに行ってしまったんだ。暗夜のことを優先して、まるで暗夜の人間のように振舞って……)
カムイ「ヒノカさん」
ヒノカ(聞きたくない、聞きたくない。こんなこと聞きたくない!!!!)
ヒノカ「………れ…」
カムイ「え?」
ヒノカ「……だまれ……」
アクア「ヒノカ?」
ヒノカ「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!!!!」
サクラ「ヒノカ姉様!?」
ヒノカ「……そうやって、奪っていくんだ。お前たち暗夜は、私から全てを奪っていく!!!!」
ギリッ
ヒノカ「カムイを助けるという意志も、白夜を守るという意志も、家族としての絆も、なぜ、なぜすべて奪おうとするんだ!!!!」
カムイ「ヒノカさん……」
ヒノカ「……私がお前を守る。アクアもサクラもだ。これからお前達が戦う必要なんてない、その考えもすべて元に戻してみせる……」チャキッ
アクア「ヒノカ、正気に戻って!」
ヒノカ「私は正気だ。お前達の方こそ目を覚ますんだ、暗夜のために命をかける必要なんてどこにもない」
サクラ「ヒノカ姉様……」
ヒノカ「カムイ、私の手を取れ、一緒に白夜に戻ろう。もう、そんなまやかしを口にする必要なんてない!」スッ
カムイ「ヒノカさん……」
ヒノカ「頼む、私にお前たちを傷つけるなんていう選択肢を選ばせないでくれ……」
カムイ「……」
ヒノカ「カムイ。さぁ、手を――」
カムイ「私はその手を取るわけにはいかないんです…。ごめんなさい」
ヒノカ「……そうか」
チャキッ
ヒノカ「ならもう言うことはない……力ずくで連れて帰る」ググッ
アクア「カムイ!」
カムイ「アクアさん、サクラさんは私の後ろへ!」
ヒノカ「アサマ、セツナ、行け!」
ガサッ!!!
セツナ「うん…」チャキッ
アサマ「はい、ヒノカ様」タタタタタッ!
ヒノカ「射て!」
カムイ「っ!!!」チャキッ
シュパッ!
シュパッ!
カムイ「くっ!」キィン キィン
アサマ「こちらからも行かせてもらいますよ!」ダッ ブンッ
ドゴッ
カムイ「ぐっ、くううっ……」
アクア「カムイ! 今すぐ離れなさい!」チャキッ ブンッ
アサマ「おっと、怖いですね……」サッ
カムイ「くっ、少し入りましたか……」
サクラ「カムイ姉様! すぐに治療を、待っててください」
カムイ「サクラさん、治療はいいです。それよりも、合図を出してください。もう、話を聞いてくれる状態ではありません」
サクラ「でも、怪我が……」
カムイ「これくらいなら問題ありません。だからおねがいします……」
サクラ「わ、わかりました。えいっ」パシュッ
ヒュイィィイイイインッ!!!!!
セツナ「この音、なに?」
ザザザザッ
アサマ「ん?」
ザッ ザザッ
暗夜兵たち「カムイ王女、ご無事ですか!」
カムイ「はい、なんとか……」
セツナ「敵がいっぱい…」
ヒノカ「……カムイ、なんでこんなことをする。私はお前が帰ってくるのを待っていたというのに、なぜだ!?」
???「なら、どうして話を聞いてあげないの? あなたにとって大切な妹ならちゃんと耳を傾けるべき、そうでしょう?」
ヒノカ「!!!!!」
タッ タッ タッ スッ
ヒノカ「きさまは……」
カムイ「……カミラ姉さん」
カミラ「下がってて、大丈夫おねえちゃんが守ってあげるから、サクラ治療してあげて頂戴」
サクラ「は、はい!」
ヒノカ「カムイ、そんな姉でもない女の元に行くな!!!!」
カミラ「……そうね。私とカムイに血の繋がりも無いし、生まれた場所も違うからあなたの言う通り、私は血の繋がったおねえちゃんにはなれない。だけど、私はカムイのおねえちゃんなの。だからカムイを傷つける相手に容赦はしないわ」
ヒノカ「この女狐が!!!!」ダッ
タッ チャキッ
セツナ「ヒノカ様、落ち着いて…」
ヒノカ「セツナ、どけ! 私はそこにいる女を、カムイを籠絡するあの女狐を!!!!」
アサマ「ヒノカ様。ここはセツナの言う通りです。すでに私達は包囲されているようですからね……」
ヒノカ「なんだと……」
ガササッ
暗夜兵「……」チャキッ
暗夜兵「……」キリリリッ
ヒノカ「…くそっ!」
カムイ「ヒノカさん、投降してください。これ以上、私はあなたと戦いたくはないんです」
ヒノカ「お前らがカムイを操り人形にしたのか!!!」
カミラ「これはカムイが選んだことよ。この子の決意をあなたの考えで汚さないでちょうだい」
ヒノカ「カムイの決意? 私達と戦うことが決意だと? そんなことあるわけない! お前達はずっとずっと奪ってきた、そんなお前達がカムイに選択させることなんてありえない」
カムイ「ヒノカさん……。私の言葉は届かないんですね……」
ヒノカ「……カムイ、早くこっちに戻ってくるんだ」
カムイ「もう、こうするしかありません」スッ
暗夜兵たち「……」チャキッ
セツナ「ヒノカ様!」ダッ
アサマ「おやおや、こういう形で来ましたか」
ヒノカ「か、カムイ……どうして……」
カムイ「最後の忠告です。投降ください、ヒノカさん……」
ヒノカ「……」ドクンドクン
ヒノカ(カムイ、なぜだ。なぜ、私に武器を向ける。私はお前を取り戻すために、ここまで、ここまで戦ってきたというのに)
ヒノカ「なぜだ、カムイ!!!」
カムイ「……ごめんなさい、ヒノカさん」
ヒノカ「カムイ、待て――」
ガシッ
セツナ「ヒノカ様、今はだめ…」
アサマ「セツナさんのそう言う通りです。この状態でカムイ様を奪還するというのは無理な話、まずは長城へと戻りましょう」
ヒノカ「……く、わかった……」
カミラ「どこにも逃げ道なんてないと思うけど?」
アサマ「心配いりません、道はできていますので。セツナさん」
セツナ「うん…」パシュッ
ヒュイイイイイインッ!!!!!
カムイ「これは何かの合図、今すぐ三人を取り抑えてください!」
暗夜兵「はい!」ダッ
セツナ「間に合う?」
アサマ「ええ、間にあったようです」
シュオンッ シュオンッ シュオンッ
カムイ「くっ、ヒノカさん!」
ヒノカ「……」
シャララランッ……
カミラ「これは転移魔法……。あのアサマっていう男、ちゃんと準備をしていたということね」
サクラ「ヒノカ姉様があんなに取り乱しているところ、初めて見ました」
カミラ「ヒノカ王女も人間だもの。私も逆の立場なら、どうなっていたかわからないわ」
サクラ「……」
カムイ「ヒノカさん……」
アクア「……ん?」
ヒュイイイイイン!
ヒュイイイイインッ!
ヒュイイイイインッ!
カミラ「……長城の方角から大量に聞こえてくるわ。おそらくだけど、戦闘態勢にはいる合図でしょうね」
カムイ「はい……。レオンさんに報告してください。ヒノカさんへの説得は失敗、捕らえることも失敗したと」
暗夜兵「わかりました」タタタタッ
チャキッ
カムイ「……」
ギュッ
カムイ「カミラ姉さん?」
カミラ「カムイ、私が一緒にいてあげるわ。だからヒノカ王女にもう一度会いに行きましょう?」
カムイ「ありがとうございます……」
カムイ(もう戦いは避けられない。ヒノカさんに私の声は届かなかった。なら、私が取れる道はもう一つしかありません。それが血塗られた道で、私の進む道なんですから……)
カムイ「皆さんに戦闘の準備をするように伝えてください」
「これより、スサノオ長城へ攻撃を開始します……」
今日はここまで
スサノオ長城で飛行部隊と戦闘って、かなり難易度高いのかもしれない。
FEHで暗夜の夏ガチャが始まったけど、可愛いリリスの配信はまだですか?
先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◇◆◇◆◇
・カムイと一緒に戦うメンバー
固定メンバー『カミラ(レヴナントナイト)』
>>511
>>512
>>513
・遊撃部隊に属するもの
>>514
>>515
>>516
・城壁攻略部隊に属するもの
>>517
>>518
>>519
・アクア(歌姫)
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)
※キャラクターが被った場合は次に選ばれたキャラクターになります。
このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。
乙
まあこの枠はサクラだわな
スサノオ長城ってタクミ城だよな
金鵄が怖すぎて飛兵出しにくいよなあ…
アクアと迷ったけどルーナで
ヒノカの糞龍脈がなければ、飛行部隊がつっこんで来ても
「ぐはっはっは、おもしろいように落ちる。まるでトンボとりでもしてるようだな」
できる
アクア
乙
魔法兵はお荷物になりそうなマップと予想
遊撃として移動高、弓持ちのラズワルドは間違いじゃないだろ(適当)
あと聖黒馬武者今気づいたいつからだ
える知ってるか、獣特攻は天馬にも効く
フランネル、きみに決めた
ワンポイントでベンチ暖めてたキャラが駆り出されるのFE感あるよな…ない?
俺はピエリが見たいからピエリを選ぶぜ
エルフィ
ハロルド
ブノワ神
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『中央部・森林群』―
タタタタッ
カミラ「それでマークスお兄様、どう攻めていくのかしら?」
マークス「向かい側へと渡ることのできる大橋の数は限られている。まずはそれぞれ戦力を均一にし前進し、敵の動きを見る。レオン、お前は西部の指揮を、私は東部の指揮を執る」
レオン「わかった。中央部は姉さんたちに任せるからね」
カムイ「はい。そちらも気を付けてください」
レオン「それはこっちの台詞だよ。ヒノカ王女のこともあるけど、熱くなりすぎないようにね。姉さんにもしものことがあったら……」
カミラ「ふふっ、大丈夫よ。アクアにサクラ、それにおねえちゃんがいるんだから、安心してレオンも戦ってちょうだい」
カムイ「むしろ、レオンさんが私達と離れてちゃんと戦えるのか少し心配です」
レオン「だ、大丈夫だよ! 変な心配しないでいいから!」
マークス「ふっ、ではそろそろ森を抜ける。各位健闘を祈る!」
カムイ「はい。マークス兄さんもご武運を!」
ガサササッ
ダダッ
カムイ「まず、城壁までの道を確保します。ジェネラル部隊を盾に後続が続いてください。エルフィさんにブノワさん、お二人に最前線の部隊を任せます。ハロルドさんは随伴兵の指揮をお願いしますね」
エルフィ「わかったわ」
ブノワ「ああ……わかった」
ハロルド「ああ、任せたまえ!」
ラズワルド「さてと、それじゃ僕達はなにをすればいいかな?」
ピエリ「そうなの。ピエリたちが一番乗りじゃないなら、することを教えてほしいのよ」
カムイ「はい、ラズワルドさんとピエリさんたちは遊撃班の指揮をお願いします。命令があるまで各自の判断で局所を援護、敵の攻撃による戦線崩壊を防いでください。フランネルさんも遊撃班で大丈夫ですか?」
フランネル「ん、なんかわかんねえけど、敵を見つけたら叩けばいいってことだよな。簡単で助かるぜ」
ピエリ「えへへ、フランネルよろしくな。ピエリと一緒にカムイ様のためにいっぱい頑張るのよ」
フランネル「ああ、歩いてるだけで退屈だったからな。いっぱい暴れさせてもらうからよ!」
ラズワルド「それじゃ、僕達は一歩下がった位置で状況を見てから行動するよ。遊撃班は僕に付いて来て!」
パカラパカラッ ドドドドッ
カムイ「私達もまずはエルフィさん、ブノワさんの部隊について行きます。サクラさんは後方から援護と治療をお願いします。できれば前線を支えるエルフィさんやブノワさんなどの重装兵の方々を優先してください」
サクラ「は、はい。わかりました、カムイ姉様」
ルーナ「ちょっと、カムイ様!」
カムイ「なんですか、ルーナさん」
ルーナ「なんですかじゃないわ。戦場に着くまではあたしがカミラ様の竜に乗せてもらうはずだったのに。なんであたしは走ってるわけ?」
カミラ「ふふっ、ベルカは違う作戦区域だものね。出来れば乗せてあげたいけど、ごめんなさい。今日はカムイを乗せてあげるって決めてたから」
カムイ「ごめんなさい、ルーナさん。席を私がもらってしまって」ギュッ
ルーナ「謝りながら見せつけてきて、あたしを苛めたいわけ?」
アクア「ルーナ、少しは自分で走りなさい。それに今乗ったら、しばらく降りてこられないと思うから」
ルーナ「……みたいね」
カミラ「それで、カムイはどうしたいのかしら?」
カムイ「先頭集団と共に戦います。私はあくまでもマークス兄さんの剣、それに私がいるなら……」
カミラ「ふふっ、私も援護してあげるから安心して頂戴」
カムイ「はい」スタッ
アクア「……カムイ」
カムイ「なんですか、アクアさん?」
アクア「ヒノカを救いだしましょう。たとえ今分かり合えなくても、戦いから引き離すことができれば、いつかはきっと……」
カムイ「はい、もちろんそのつもりです。アクアさん」
カムイ(そうです。今はそのための戦いなんですから……)
カムイ「……攻撃開始!」
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城『中央城壁区域』―
白夜軍弓聖「暗夜軍の姿を確認、中央大橋へと向かっています」
アサマ「まぁ、定石ですね。こちらもそれを見越しているんですから。大橋前の砦は準備を終えていたはずでしたね?」
白夜軍弓聖「はい。現在、兵を展開中。接触までもう時間はそれほどないでしょう」
アサマ「ところで、敵集団にあの王女の姿はありましたか?」
白夜軍弓聖「少々お待ちを……。大橋前砦より合図あり! カムイ王女の姿を確認したそうです」
アサマ「わかりました。いかがされますか、ヒノカ様」
ヒノカ「カムイが……来ているのか?」
アサマ「ええ。目的はヒノカ様を捕らえることでしょう。真意はさておき、先ほどもそれが目的のようでしたからね」
ヒノカ「……カムイはただあの国に操られているだけだ」
アサマ「そうかもしれませんし、そうでは無いかもしれません。どちらにしてもヒノカ様、このまま何もしなければ早々にこちらの負けです。何もされないのでしたら、先ほど言われた通り投降しますか?」
ヒノカ「……するつもりはない。私はこの戦いでカムイを戦いから救い出すと決めた。それにここが落されれば、もう王都を守る拠点はない……」
アサマ「そうですね。なんだかんだで、ここは白夜の最前線、落ちれば王都までそう遠くはありませんから、いわば命綱ですよ」
ヒノカ「それくらいわかっている……」
ヒノカ「……迫る者たちに容赦する必要はない、誘いがあっても乗るな、こちらは防御に徹する。防御に徹すればいくら暗夜軍でも、ここを越えることはできない。白夜を穢されることはもうない……」
ヒノカ(そうだ、これ以上暗夜に奪われるわけにはいかない。ここはカムイが帰ってくるべき故郷……。暗夜に入り込まれてなるものか)
ヒノカ「各砦の者たちにも砦と大橋を中心に戦闘をするように伝えてほしい。無理に突出することがないようにな。もしも、包囲殲滅の可能性に見舞われたなら、砦を放棄しこちらへ下れとも伝えておいてほしい」
白夜軍弓聖「わかりました。よし、伝令!」
白夜軍金鵄武者「各砦へ命令を伝達してきます、ヒノカ王女様」
ヒノカ「ああ」
バサバサバサッ
ヒノカ「……アサマ、セツナ」
アサマ「はい」
セツナ「うん…」
ヒノカ「まずはセツナ。弓兵を率いて城壁前を固めてほしい。寄ってくる暗夜の竜騎兵がいれば容赦なく撃ち落してかまわない」
セツナ「わかった…。ヒノカ様」
ヒノカ「次にアサマ。中央門から大橋に部隊を展開し指揮を執り、砦で戦う者たちを遠距離から支援してほしい。敵が大橋に向かって来るならば反撃、命を奪っても構わない」
アサマ「わかりました、ヒノカ様」
ヒノカ「私は金鵄部隊の指揮を執る、二人ともよろしく頼んだぞ」
セツナ「あの、ヒノカ様……、ちょっといいですか?」
ヒノカ「なんだ、セツナ?」
セツナ「その、ヒノカ様……」
ヒノカ「?」
セツナ「この戦いが終わったら…。いっぱい褒めてほしいです…」
ヒノカ「褒める?」
セツナ「うん…。いっぱい敵を倒す…、ヒノカ様のために私頑張るから…、褒めてほしい…」
ヒノカ「ああ、セツナが望むなら…」
セツナ「えへへ……。約束ですよ、ヒノカ様。アサマも何か約束したら?」
アサマ「生憎ですが、特に約束をしたいものもありませんので」
セツナ「そうなんだ…。お揃いじゃなくて残念…。
アサマ「あまりお揃いになるべきことでもないと思いますがね。しかし、こうしてヒノカ様にお願いをするセツナさんはなんとも初々しく感じますよ」
セツナ「えへへ、それじゃヒノカ様、行ってきます…」タタタタッ
アサマ「では、私も持ち場に向かいますので」タタタタタッ
ヒノカ「……二人は大丈夫だ。私と一緒にいてくれると約束してくれたんだから……」
ヒノカ(カムイ、お前も一緒にいてくれるんだろう。こんな風にいいなりになって戦うのは今日で最後、私が終わらせるから)
ヒノカ「カムイ、待っていてくれ……」
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『中央部・大橋前砦』―
エルフィ「はあああっ!!!!」パカラパカラッ
ブンブンッ チャキッ
ザシュッ!!!
白夜軍槍聖「ぐうううっ」
ブノワ「そこだっ!!!」
ブンッ
白夜軍娑婆羅「させねえ! うおらああっ!」グオンッ!!!!
ガキィ
ブノワ「っ!」
白夜軍娑婆羅「もらったっ!」ダッ
ハロルド「そうはいかないっ! はあっ!」
バシッ ドゴンッ
白夜軍娑婆羅「ぐああっ!!!」ドササッ
ブノワ「ハロルド、助かった……」
ハロルド「ブノワくんが無事で何よりだ」
エルフィ「ハロルド、少し下がって。敵が隊列を入れ替えてる。何かあるかもしれない」
ハロルド「うむ、そのようだな。こちらは間接攻撃の準備をしておく、破壊力はありまないがエルフィくんやブノワくんの援護にはなるだろう」
エルフィ「ええ、お願い」
ブノワ「ああ、頼む…」
カムイ軍ジェネラル「しかし、向こうには重装備はあまりないみたいだな。このままじりじりと押しこんでいければ、砦は制圧できるぞ」
エルフィ「そうね。私たちの目的はあくまでも城壁の攻略だから、ここで倒れないようにしないと」
ブノワ「ああ……。まだ、終わりには程遠い、気を引き締めていこう」
エルフィ「そうね」
ハロルド「よし、間接攻撃の準備はオーケーだ。エルフィくん!」
エルフィ「わかったわ」
ブノワ「前進……」
ザッザッ ザッザッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
白夜軍娑婆羅A「敵がこっちに来る。全員準備はいいか?」
白夜軍娑婆羅B「ああ、大丈夫だ。鈍器振り回すだけが能じゃないってこと、奴らに思い知らせてやる」
白夜軍槍聖A「そうだな。よし、第一列! 武器を構えろ。抜けさせるな!」
白夜軍槍聖たち「おーっ!!!」
白夜軍娑婆羅B「あとは援護の成功次第だな」
白夜軍槍聖A「そうだな。こればっかりは上手く決まることを願うしかない」
白夜軍槍聖A(さて、右から崩せるように頼むぜ。アサマ様よぉ……)
◆◆◆◆◆◆
―スサノオ長城『中央区域・小さな丘』―
ラズワルド「砦の駅の動き、こちらの攻撃を受け止めてから包囲をするっていう流れにしようとしているのかな? だけどこっちのジェネラル相手にうまくいくようには思えないけど」
フランネル「そうか? 白夜の兵士ってそんな弱いってこともないと思うぜ」
ラズワルド「弱くはないけど、ジェネラルとグレートナイトの隊列を崩すにはちょっと力不足だよ。たぶん、暗夜でいう魔法みたいなのを準備はしてるはずだけど。それだけじゃ止められない」
ピエリ「なら、ピエリたちも加わっていっぱい倒すのよ」
フランネル「そうだな。さっさとあの中に混ざって一暴れしようぜ。見てるだけは退屈だからよ」
ラズワルド「そうだね。そろそろ行動しよう。ピエリ達は包囲を完成されないように大きく広がって、敵の囲いを阻止するように動いてくれるかな?」
ピエリ「うん、ピエリいっぱい戦ってカムイ様を御守りするの。ちゃんとカムイ様をお守りして、リリスとの約束守っていくの」
ラズワルド「頑張らないとね」
ピエリ「えへへ、それじゃ――。……あれ?」
ラズワルド「ピエリ、どうかした?」
ピエリ「ラズワルド、あれ何かわかる?」
ラズワルド「あれ?」
ピエリ「あれなの、大橋に人が集まってるのよ」
ラズワルド「大橋……本当だね。抜けてくるかもしれないこちらの別動隊に備えてるのかな?」
フランネル「んー、それにしては数が少なくないか? 砦の援護に行くようにも見えねえしよ」
ラズワルド「うーん」
フランネル「おっ、それよりも先頭集団が砦の大部隊とぶつかったみたいだぜ」
ピエリ「あ、今何かしたの!」
ラズワルド「腕を振ってる? いや、手に何か持っているみたいだけど…」
ラズワルド(あれに一体何の意味が……)
チョンチョン
ラズワルド「? フランネル、どうかした?」
フランネル「………ラズワルド、白夜の兵士ってめちゃくちゃ強いじゃねえか」
ラズワルド「え?」
フランネル「ほら、見ろよ。こっちの隊列、崩れてるぞ」
ラズワルド(え、ジェネラルの隊列が押されてる!? そんな馬鹿な、数は明らかにこっちが上だったはずなのに!?)
ピエリ「ラズワルド、このままじゃ皆が危ないの!」
ラズワルド「わかってる。部隊の半分を砦に向かわせる。その部隊をさらに分割してA班は反対側から間接攻撃、残りはすぐに城壁部隊の援護に回って!」
暗夜軍混成部隊「了解!」
パカラパカラッ
ピエリ「残りはどうするの?」
ラズワルド「僕達は丘を降りて、様子を見る」
フランネル「おいおい、ここは全員で助けに行く場面じゃねえのかよ?」
ラズワルド「そうしたいところだけど、全員で援護にいくわけにはいかないよ。僕たちには状況によって動く責任がある。今全員で動いたら、次の有事に備えられない」
フランネル「次の有事って、いつ来るんだ?」
ラズワルド「わからない。だけど、それに備えるのが僕たちの役目だ」
ピエリ「ピエリはラズワルドの判断を信じるの」
フランネル「んー、よくわからねえけど。ラズワルドがそうだって言うなら、それでいいのかもな」
ラズワルド「ありがとう。おそらくだけど、敵の狙いは中央対処にすべての兵力を集めさせることだと思う。本当に何かしてくるとしたら、この後だよ」
ラズワルド(それに事前偵察で中核とされてた天馬部隊と金鵄部隊の姿がない。敵も何か考えてるはずだ…)
ラズワルド「この判断が、間違ってないことを祈るしかできないなんてね……。まずは丘を降りるよ!」
ピエリ「わかったの。みんなピエリに続くの!」
フランネル「よっし、それじゃ行くぜ!」シュオオンッ!!!
パカラパカラ……
ドドドドッ
◆◆◆◆◆◆
―スサノオ長城『中央区域・大橋前砦周辺』―
ウワアアッ シュオンッ ドゴンッ!!!!
カムイ軍ジェネラル「ぐああっ」ドサッ
サクラ「あ、今治療を! リライブ!!!」シュオンッ
カムイ軍ジェネラル「ぐっ、うううっ。くそ、治療を受けているのに、ち、力が入らない……」
サクラ「後方に下がってください! アクア姉様!」
アクア「ええ、さぁこっちよ」
ルーナ「ああもうっ、なんで数はこっちが上だったのに崩されるわけ!?」
アクア「文句を言っても始まらない。ここは耐えきらないと」
カミラ「ええ、上から見てると奇麗なL字になっているわ。右が崩れたから、中心部からぽっきり折れた形ね」
カムイ「先手を先に撃たれましたか。最前列の状況は?」
サクラ「まだだいじょうぶそうです。でも、このまま押され続けたら……」
カムイ「わかりました。カミラ姉さん、遊撃部隊の方々に動きは?」
カミラ「半分がこっちに向かってる。それをさらに半分分けて一つはこちらの援護、もう半分は反対側から砦へ間接攻撃を行うみたいね」
ルーナ「残りの半分は様子を見ているてことよね……」
カムイ「そうなります。次に何が来る変わりませんからね、ラズワルドさんの判断を信じましょう」
ルーナ「まったく、これで何もなかったら承知しないわよ!」
アクア「どちらにせよ、こっちは敵の手を打破しないといけない。このままじゃ、戦線に穴が開いて分断されかねないわ」
カムイ「はい、カミラ姉さん敵に新しい動きは?」
カミラ「……大橋に敵がいるわね。こちらに来るつもりはないみたいだけど、何かをしているみたい」
カムイ(となると、この現状を作り上げている元はそっちですか)
カムイ「危険な賭けですが、そっちを叩く必要があるみたいですね」
ルーナ「方針は決まったわけ?」
カムイ「はい、エルフィさん!」タタタタッ
エルフィ「なに?」
カムイ「正面の大橋がわかりますか?」
エルフィ「……敵がいるみたいね。数はそれほど多くないみたいだけど……」
カムイ「はい。おそらく、呪術の類でこちらを妨害していると思われます」
エルフィ「そこをどうにかすればいいのね?」
カムイ「話が早くて助かります。すぐにいけますか?」
エルフィ「任せて、ただ人数はそれほど多くないけど……」
カムイ「エルフィさんがいれば百人力ですよ」
エルフィ「……そんなことない。けど、もっと頑張れる気がしてきたわ」
カムイ「ふふっ、それじゃ行きましょう。グレートナイトの方々は一度後退、敵呪術範囲の一つ外にジェネラルの皆さんは隊列を組み直してください!」
ブノワ「わかった。全員、弓型に形を取れ、敵の攻撃を受け切る……」
カムイ軍ジェネラル部隊「わかりました!」
カムイ「グレートナイトの皆さんは一度馬から降り、ジェネラルの影に隠れて左端へ移動してください。到着する遊撃部隊の左側面攻撃を待って、大橋正面の敵へ攻撃を加えます! ハロルドさんの部隊は砦の南から攻撃をお願いします」
ハロルド「よし、全員南側から攻撃を仕掛ける! 私に続きたまえ!!!」ダダダダッ
カムイ「それじゃ、私達も左端へ移動します。グレートナイトに乗せてもらって、一気に大橋にいる敵との距離を詰めましょう。私は」
バサバサッ
カムイ「ふふっ」
カムイ「カミラ姉さん?」
カミラ「カムイ、乗りなさい」
カムイ「大丈夫ですか? あの大橋付近は弓に狙われる可能性も……」
カミラ「ふふっ、安心してちょうだい。そんな簡単にやられるおねえちゃんじゃないわ。必要なのは一気に肉薄できる早さでしょ?」
カムイ「わかりました、おねがいします。サクラさん、後方森で待機している竜騎兵の方々に合図をお願いします」
サクラ「わ、わかりました。合図あげます!」パシュッ
ヒュイイイイイイィィン!!!
◇◇◇◇◇◇
―スサノオ長城『城壁前』―
ヒュイイイイィィィン!!!
白夜軍弓聖A「敵軍から合図が出ました。何かが来るかもしれません」
セツナ「敵が動いてるみたい…。皆準備して…」
白夜軍弓聖A「はい、セツナ様。全員、役割通りに動けよ!」
ザッザッ
カチャッ、ジャキンッ
セツナ「森のほうに注意して…。こっちは大群に接近されたら終わり…。近づかせなければこっちの勝ち…」
白夜軍弓聖B「弓砲台、すべて装填完了しました」
セツナ「うん、当てなくていいよ…。こっちは通さないっていう感じで威嚇だけすればいいから……。それでも近づいてくるのは私達に任せて…」チャキッ
白夜軍弓聖B「わかりました。よし、最初の攻撃合図以降は各員の判断に任せる。奴らをこの城壁に近づけるな!」
バサバサバサッ!!!!
セツナ「出てきた…」
白夜軍弓聖A「来るぞ! 暗夜の竜騎兵だ!」
白夜軍弓聖B「この距離なら届く! よし、攻撃開始!」
バシュシュシュシュ!!!!
ヒュンヒュン!!!!
~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ軍ドラゴンマスターA「全員、止まれ。敵の攻撃だ!」
ヒュンヒュン!
カムイ軍ドラゴンマスターB「おっと、流石にそうきましたか。どうします?」
カムイ軍ドラゴンマスターA「さすがに簡単に通してはくれないな。だが装填までに時間は掛る。数騎で敵砲台の攻撃を誘え、第一陣はその隙を突いて肉薄する。敵の飛行戦力が出ていない今がチャンスだ!」
カムイ軍レヴナントナイトA「敵、砲台の第二射が来ます」
カムイ軍レヴナントナイトB「合図準備完了です」
カムイ軍ドラゴンマスターA「よし、散開合図出せ」
シュオンッ パシュンッ
バシュシュシュシュ!!!!
カムイ軍ドラゴンマスターB「全て回避しました!」
カムイ軍ドラゴンマスターA「よし、中央の連中より先に城壁を抑える。第一陣向かえ!!!」
カムイ軍ドラゴンマスターC「了解! 行くぞ、弓も至近距離まで近づけば怖くねえ!」
カムイ軍ドラゴンマスターC(一気に近づいてそれで終わりだ!)
バサッ バサッ バサッ
~~~~~~~~~~~~~~~
セツナ「来た…。みんな準備…」チャキッ
白夜軍弓聖A「よし、準備だ。俺と同じ刺青入りは一歩前だ。残りは後方から攻撃、奴らを奈落に付き落としてやれ!」
チャキチャキキ
セツナ「……」ググッ
バサバサバサッ
セツナ(ヒノカ様…)
ヒノカ『ああ、セツナが望むなら…』
セツナ(私はヒノカ様にわたしとして見てもらえるようになるんですよね…。昔の時みたいに…)
セツナ(わたしを……)
白夜軍弓聖A「セツナ様、来ます!」
セツナ「うん、射て…」パシュッ
シュパパパッ
ザシュシュッ! ザシュッ!
ギャアアアッ ウワアアアアア――
ヒイイイイイイアアアアア――――
カムイ軍ドラゴンマスターC「くそっ、何人落ちた!?」
カムイ軍ドラゴンマスターD「四人です。ですが、このまま接敵できます!」
カムイ軍ドラゴンマスターC「よし、俺はこのまま正面の青髪をやる! 各自、突出してる奴に攻撃を集中しろ!」
バサササッ
カムイ軍ドラゴンマスターC「女だからって容赦はしねえ。悪く思うんじゃねえぞ!!!」
セツナ「……んっ」パシュッ
ザシュッ
カムイ軍ドラゴンマスターC「ぐあああっ。だが、この距離なら外さねえ!!!」バサバサバサッ
セツナ「……」チャキッ
カムイ軍ドラゴンマスターC「おせえ、喰らいやがれ!」ググッ ブンッ
セツナ「!!!」
ズビシャアア!!!!
カムイ軍ドラゴンマスターC(へへっ、致命傷とは言わないまでも、これならすぐに行動なんてできねえ)
セツナ「……」ポタタタタッ
カムイ軍ドラゴンマスターC「次で終わ――」チャキッ
シュオンッ
バチュンッ グチャアアッ……
カムイ軍ドラゴンマスターC「ごふっ……」ビチャッ
カムイ軍ドラゴンマスターC(な、なんで、俺が……やられ……)
グラッ ドサリッ
セツナ「ごほっ……はぁはぁ……。自分の攻撃で死ぬのって、どんな気持ちかな…」シュオンッ シュオンッ
カムイ軍ドラゴンマスターD「何がどうなって……」
ギャアアアアッ
ドサッ…… バタリッ…
カムイ軍ドラゴンマスターD(攻撃を仕掛けた仲間が全員やられた。なにか…何か仕掛けが……はっ!)
セツナ「……」チャキッ キリリリッ
シュオオオオン……
カムイ軍ドラゴンマスターD(さっきまではわからなかったが、奴ら体中に何かを彫り入れて――)
セツナ「ばいばーい……」パシュッ
ザシュンッ グチャリッ
ボトンッ ゴロゴロゴロッ……
プシャアアアアアアッ
カムイ軍ドラゴンマスターD「」フラ……フラッ
ズルリッ ドサッ
セツナ「いたい……」ポタタタタッ
セツナ(思いっきり攻撃受けちゃった…。でも、生きてるから大丈夫…。それに敵を一人殺せた…。うれしい…)
白夜軍弓聖A「セツナ様、大丈夫ですか?」
セツナ「すごく痛いけど…平気だよ…」
白夜軍弓聖A「血だらけですよ。すぐに治療部隊に合図を送ります。血良が終わるまでは少し下がってください」
セツナ「それより敵は?」
白夜軍弓聖A「こちらの仕掛けが見事嵌りました。向かってきた竜騎兵は全滅、残りも様子を伺っているようで追撃はまだありません」
セツナ「そう」スタッ
白夜軍弓聖A「セツナ様、すぐに立ち上がられてはまずいです……」
セツナ「いいの…。それより、次の攻撃に備えて…。ここを抜けられるわけにはいかないから…」
白夜軍弓聖A「……わかりました。よし、股向かってくるようなら攻撃を続行しろ、一匹たりとも城壁に触れさせるな!」
セツナ(……こっちは何とかなってる…。あとは砦のほうだけど……)
セツナ(アサマ、大丈夫かな…)
◇◇◇◇◇◇
―スサノオ長城『中央大橋』―
白夜軍山伏A「敵、重装兵部隊への呪い掛けは成功したようです。アサマ様」
アサマ「これで砦で戦っている方々にどやされずに済みます。しかし、陰に隠れられては何もできませんね」
白夜軍山伏B「アサマ様、先頭集団より、騎兵の姿が消えました。おそらく砦への一斉攻撃のための準備かと」
アサマ「まずは手堅く、砦からということですね。まぁ、間違っていませんが、こちらの手を理解していないのなら愚かな行為です」
アサマ(大量の禍事罪穢。これだけ集めるのに苦労しましたが、その効果は火を見るより明らか。このまま砦も取れずに敗退してもらうとしましょう)
白夜軍山伏B「砦に新たに接近する部隊あり、おそらく敵の騎馬隊と思われます!」
アサマ「では、先ほどと同じようにお願いします。全員、準備してください」
ザザザッ
白夜軍山伏部隊「……」
アサマ「今です。禍事・罪・穢……!」シャンッ!
シャランッ
アサマ(これで……)
白夜軍山伏A「!!! アサマ様、こちらに向かってくる一団があります! 先ほど姿を消した重装騎兵群です!」
白夜軍山伏B「くっ、姿を隠していたのはこちらを攻撃するためだったか」
アサマ(……なるほど、少しは考えているようで)
アサマ「いっぱい食わされてしまったようです。まあいいでしょう、各自白兵戦の準備に掛ってください。奴らをタコ殴りにしますよ」
パカラパカラッ
エルフィ「全員、突撃準備!」
カムイ軍グレートナイト部隊「おうっ!!!」ジャキッ
アサマ「来ましたね。まったく、暗夜で静かに暮していればいいというのに、まったく面倒な方々ですね」チャキッ
ドドドドドッ
エルフィ「突撃っ!」
アサマ「各自、回避して重装騎兵を後方に送ります。馬は突然止まれませんから、止まったところを一気に殲滅します」
白夜軍山伏B「わかりました。全員、通過の際に来る攻撃に注意し、回避後反転。各個撃破に向かえ」
ドドドドドッ
エルフィ「はああああああっ!!!!!」チャキッ
ブンッ
アサマ「おっと、中々に力強い攻撃ですね。ですが……。後ろが隙だらけですよ」ブンッ
エルフィ「はぁっ!」カキィン
アサマ「む、振り抜いた力で盾を後ろに持ってきましたか。凄い動きですね。ですが、それもここで終わりに――」タッ
バサバサッ
アサマ(この音は、竜の羽根!!)サッ
チャキッ
カムイ「はあああああっ!!!!!」チャキッ ブンッ
ガキィン
ズサササッー
カムイ「……くっ」
アサマ「なるほど、騎兵隊は視覚的な囮で、私を一撃で昏倒させるのが狙いでしたか。目が見えないあなたらしい作戦ですね、カムイ様」
カムイ「アサマさん、今すぐ武器を捨ててください。本当は戦いたくなんてないんです」
アサマ「なるほど、なんとも素晴らしい言葉です。先ほど森でヒノカ様を殺すのではなく捕らえようとしていたのは間違いではないということですか」
カムイ「……アサマさん」
アサマ「ですが、だめですよ。私にはヒノカ様から承っている命令がありますから。敵が来るようなら命を奪っても構わない、そう言われておりますので」クルクルクル チャキッ
カムイ「……」
アサマ「正直、この日を待っていたんです。神仏に身を捧げた身でいうのもなんですが、今ばかりはここに至った方々を御仏の元へ導きたくて仕方がないのですよ」
カムイ「白夜を壊したからですか?」
アサマ「ははっ、そんな愛国心のある答えを私は持っていませんよ。私が持っているものは一つだけ――」
ジャキッ グググッ
「仕えてきた主を壊されたという、私個人の恨みだけですからね……」
今日はここまでで
カウンターとかのスキル、白夜では体に刺青を入れるみたいな感じじゃないかと思った。
橋に禍事罪穢を満載した山伏とアサマがいたら、血反吐じゃ済まない。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『中央大橋』―
ダダダダッ
カムイ軍グレートナイトA「くらえ!!!」ブンッ
アサマ「おっと」キィン
ザッ ザザッ
カムイ軍グレートナイトB「カムイ様、我々よりも後方に」
カムイ「いいえ、大丈夫です。私が退いては意味がありませんから……」
アサマ「ほう、続々とやってきましたか。本当にあなた方は浸透する病のように入り込んでくる。少し身をわきまえていただきたいものです」
カムイ「身をわきまえるつもりはありません。申し訳ありませんがあなたの決意、容赦なくて叩き伏せます。それがヒノカさんをあと一時、苦しめることになったとしても」チャキンッ
アサマ「あと一時ですか……」
タタタタタッ
アクア「カムイ、砦の方から敵の移動はないみたい」
カムイ「砦を飛び出しても追撃を受けると判断してくれたのかもしれません。その判断が揺らがないうちに、ここを制圧します」
アサマ「そうですか。しかし、簡単に行くとは思わないことです」ダッ
フォン…
アサマ「!!!!」
サクラ「そこです、ウィークネス!」シャランッ
シュオオオンッ
アサマ「はぁ!」サッ
パシュンッ
アサマ(今のは暗夜の魔法ですか。それにしても――)
アサマ「人の陰に隠れて狙ってくるとは、卑怯なことを覚えたのですね。サクラ様」
サクラ「アサマさん……」
アサマ「先ほどまで無理に従っているのかと考えましたが、なるほどあなたは自身からその穢れに染まっていったということですか」
サクラ「そう思っていただいて構いません。私はカムイ姉様の目指す場所に一緒に行くことを決めたんですから」
アサマ「ええ、そう思いましょう。しかし、これは中々に骨の折れる戦いとなりそうです」チャキッ
アサマ「殺さないように手加減しなくてはいけない相手が増えるのは、あまり望んではいなかったのですが。仕方がありません、これも主のためです」ジャリッ
アサマ「ですから、該当しない皆さんには御仏への道を与えてあげましょう。ご安心をそれほど痛くはありませんよ」
カミラ「やっぱり、カムイたちを殺すつもりはなかったのね。あの王女もまだ諦めてないってことかしら?」
アサマ「ははっ、流石にカムイ様アクア様、そしてサクラ様は含んでいません。ヒノカ様の生きる糧は困ったことに私たちではないのですからね」
カムイ「あなた達だって、ヒノカさんに必要とされているはずです」
アサマ「あなたがそう思っているのであれば、ここで命を賭けることこそが今必要とされている事です。この戦いが終わった時、もうヒノカ様が苦しむことが無いように主の敵を倒し、その悲願に対して命を賭けていくだけのことですよ」
サクラ「そんなこと、ヒノカ姉様は……」
アサマ「サクラ様、あなたの中にあるヒノカ様は変わっていません。凛々しく優しくとても脆いヒノカ様を秘めていられるのですから、暢気なものだと笑いたくなりますよ」
カムイ「だとしても、それをあなたは受け入れるというのですか?」
アサマ「あなたにとっての必要なことは戦いを終わらせることや国のために命を賭けること。それでようやく均衡が取れるのでしょうが、そんなもの私から見れば小石にも劣ります。だから今のあなたはとても重くて軽すぎるんですよ」チャキッ
アサマ「カムイ様、あなたにはその釣り合う物になっていただかないと困ります。今のあなたのままではヒノカ様は安心できません。ここであなたの信じるものをすべてへし折り、釣り合う存在に変える。それが命を賭して受け入れる私の仕事です」
カムイ「……それが命を賭ける理由、必要とされている事なんですか」
アサマ「ええ、あなたは壊れ、ヒノカ様は理想的な守ることの出来るあなたを手に入れる。神道に背を向ける最後の行いですが、仏も大目に見てくれます。それがどれほど残虐的であろうとも、主が闇の淵で抗える形となり得るなら、それに縋りたくなるのが人情というものでしょう。ですから、カムイ様。そこですべてが消え去るのを受け入れてください」
カムイ「残念ですが、その申し出を受けることはありません。私はそんなものに屈するわけにはいかないのですから……」
アサマ「そうですか。では、仕方ありません。少しの間、眠っていただきしょう!」ダッ
アサマ「上手いですね。手加減などしていてはこっちが殺されてしまいます」
カムイ「なら、無理して戦う必要などありませんよ。私はあなたを殺したくはありませんから」ブンッ
サッ
アサマ「うれしいお言葉です。やはり、あなたに手加減の必要はありませんねぇ」ダッ
カムイ(来る!)
アサマ「ていっ! やああああっ!!」ブンッ ガシッ キィン!
カムイ「くっ、そこ!」ザンッ
アサマ「来ると思っていましたよ。はああっ!」ドゴンッ
カムイ「っ!!!」
カムイ(蹴り、あの体勢で槍を軸にしたというんですか…。くっ、息が乱れて――)
アサマ「もらいましたよ」チャキッ ダッ!
カムイ「くっ」グッ
バサバサッ
アサマ「!」
カミラ「そうはいかないわ」ブンッ
ガキィン
シュタッ ズササーッ
アサマ「ふむ……、横槍を入れられてしまいましたか」
カムイ「カミラ姉さん!」
カミラ「ちょっと危なかったけど、間に合ってよかったわ」
アサマ「一人相手に二人がかりとは無粋ですね」
カミラ「ふふ、生憎だけど容赦なんてできないわ。あなたがあの王女様のためにすべてを賭しているように、私もカムイのすべてを守るために命を賭けているんだもの……。攻撃してくるなら、容赦なく殺してあげる」
アサマ「あっはっは、それもそうでした。私やセツナと同じように一人の人間のために戦うことを選ぶとは、とても王族に思えませんね」
ブンッ
カミラ「あなたと一緒にしないでちょうだい」
サッ
アサマ「私も一緒にされたくありませんので」
アサマ(しかし、このままでは多勢に無勢ですね。そろそろ頃合いだとは思いますが……)
白夜軍山伏B「アサマ様、砦と大橋の間に空間が出来ました。機を起こすなら今かと」
アサマ「そうですか、思った通りに事が運んでくれるようです。では、次の合図を出してください」
白夜軍山伏B「はっ、合図準備! 放て!」
パシュッ ヒュイイイイイイイイッ
アクア「この合図、何かを始めるつもりね」
カムイ「全員警戒を怠らないでください。はあああっ!」
ザンッ ガキィン
~~~~~~~~~~~~~~~~
―スサノオ長城『大橋前方砦周辺』―
ヒュイイイイイイイイイイン!!!!!
カムイ軍ジェネラルA「大橋方角から合図と思われる音がします。こちらの物ではありません」
ハロルド「む、そのようだが、敵は一体何をしようというのだ?」
ルーナ「敵が何しようが関係ないわよ。こっちは、砦をさっさと制圧して合流すればいいだけなんだから」
ブノワ「ああ、砦からの反撃は徐々に弱まっている…。遊撃隊の援護が効いているようだ…」
ルーナ「まぁ、当然よ。これだけの数で押してるんだから、ラズワルドも丘で様子を伺ってないでこっちに加勢しちゃえばよかったのに。このまま、押し切って制圧よ」
ハロルド「ああ、よし、私が道を作り上げる! ルーナくん、ブノワくん、一気にいくぞ!」
ルーナ「ちょっと、あんたが仕切るんじゃないわよ!」ダッ
ルーナ(ああもう、あたしだってカムイ様にカミラ様と一緒に戦いたかったのに。べ、別に一緒にいたかったんじゃなくて、あたしが守ってあげようって思っただけで……。その、深い意味はないわよ。本当に……)
ルーナ(それにしても……)
カキィン キィン!
ルーナ(こんな状況になってまで、この砦で粘り続ける意味なんてあるわけ? こっちに騎兵隊は確かにいるけど、そこを抑えて残りは橋の援護に向かう事もできないわけじゃないのに。さっきの合図ってそういうものだと思ったんだけど)
ブノワ「砦から敵が出てくるようだ…」
ルーナ「え? もしかして橋に向かうの?」
ハロルド「いや、打って出るつもりらしい。こちらの人数は上回っているから問題はない」
ルーナ「ちょっと、今さら戦線を再構築って向こうは何がしたいわけ? あたしたちを足止めしても、大橋が落ちたら元も子もないのに」
ブノワ「なにかしらの意味があるはずだ…」
ルーナ「どんな意味よ」
ブノワ「それは……わからない」
ルーナ「もう、少しは考えなさいよ。ああ、もう、橋の様子が確認できなくなっちゃったじゃない」
ハロルド「ふむ、数の上ではこちらが優勢だ。砦を攻略してカムイ様と合流しよう。向こうにはエルフィくんが率いているグレートナイトもいる。正面から新手が来ても、こちらへ後退が出来るはずだ」
ルーナ「そ、そうよね……。それじゃ、ちゃっちゃと砦を落とすから、二人ともよろしく頼むわよ」
ハロルド「任せたまえ!」タッタッタッ
ブノワ「ああ、いくぞっ!!!」ダッダッダッダッ
ルーナ(大丈夫だよね……カムイ様)タタタタッ
~~~~~~~~~~~~~
―スサノオ長城『戦場を見渡せる丘の上』―
ラズワルド「……敵が動いた、けどなんだろうこの陣形……」
ピエリ「砦から敵が出来てきたから、橋の方に向かったカムイ様を追うのかと思ったけど、その場で広がっただけなのよ」
ラズワルド「人数差だけでも橋の部隊が劣性なのに、どうして敵はこんな采配を?」
ラズワルド(カムイ様たちに逃げる道は残ってる。橋を落とせないとみれば、そのまま砦を再攻略すればいいだけ、敵がそれに気づいてないってこと?)
フランネル「気づいてないってことか?」
ラズワルド「そうかもしれない。敵の動きを見てる限りだと――」
フランネル「ん、俺が言ってるのはカムイ達の事だぜ?」
ラズワルド「……え、どういうこと?」
フランネル「あれっていざとなったら抜けやすいって状況を敵が意図的に作ってように見えるんだよ」
ラズワルド「あの状況が意図的に作られてるっていうのかい?」
フランネル「ほら、後方ががら空きになってる。何か起きても真後ろに逃げられるっていう状況を作っておけば、どんどん相手は攻めてくるだろ? 俺たちの縄張りを荒らしに来る奴らなんかは、ああやっておびき出してたからな」
ラズワルド「……フランネルたちは、ああやっておびき出した後、敵をどうするんだい?」
フランネル「ん、人間じゃ時間が掛かる崖なんて俺たちならパパパって登れちまうからな。後ろを塞いで挟み撃ちにするだけ、それでこっちの勝ちだったな。へへっ、襲いに来た奴が慌てふためくのを見るとスカっとするからよ」
ラズワルド「包囲殲滅の基本だね……」
ラズワルド(今の状況を見る限り砦の人間が動く気配はないし、カムイ様たちの場所は橋の手前。敵の援軍は正面からだけだとすれば、有事にカムイ様たちは後退すればいいだけの話、確かに天馬や金鵄なんかなら側面からの強襲もできるけど……)
ラズワルド「ピエリ、空に何か見えるものはある?」
ピエリ「ううん、何もないの。とっても静かなのよ」
ラズワルド「敵が橋に詰めかけた集団を倒すチャンスはここくらいしかないのに。あの合図はただ砦で戦う味方を展開させる合図だったってこと?」
フランネル「だけどあれ、狩りの最終段階って感じだぜ。相手に勢い持たせて、狩場に持ち込むのは常套手段だからよ」
ラズワルド「だとすると、どうやって向こうはこっちに攻撃してくる?」
フランネル「そんなのわかんねえよ。俺考えるのは苦手だからな」
ラズワルド「……」
ラズワルド(橋にいる敵を強襲できて、かつ後方を塞ぐことも出来、この丘に陣取る僕たちに見られることのない場所……)
ラズワルド「そんなのが存在するのか? こんな視界が開けてる場所を見られずに移動できる場所が……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―スサノオ長城『中央大橋』-
キィン カキィン!
エルフィ「はああああっ!!!!」グッ ドゴンッ
白夜軍山伏A「ぐあああっ……」ドサーッ
アサマ「ふむ……」
エルフィ「立ちはだかるなら、このまま吹き飛ばすだけよ……」
アサマ「出来るならどうぞ、思う存分力を振って構いませんよ」
カミラ「立ってる仲間も減ってきているのに、まだ戦うつもりかしら?」
アサマ「いやはや、やはり野蛮な方たちだけあって、力だけは無駄に有り余っているようです。ですが、撤退するわけにもいきませんよ。主が心待ちにしていますので」
カムイ「……」
カムイ(エルフィさんのグレートナイト部隊も含んだこの戦力を、アサマさん達が受け切れるとは思えない。なのに……)
アサマ「やはり押されてしまいますか。長持ちはしないものです。しかし、まだまだ終われませんよ」
カムイ(こんな状況なのにまったく怯む気配もない。明らかな自信に満ちている。この自信は一体なんなのですか……)
カミラ「もう少しで橋の入口よ。全員、対岸の弓兵に注意してちょうだい」
カムイ「……カミラ姉さん、向こうの弓兵の動きは?」
カミラ「こっちの様子を伺っているみたい。先発した竜騎兵たちは残念だけどやられてしまったみたいね。残りは機会を伺っているから、私達の動きに合わせて動いてくれるはずよ」
カムイ「わかりました。ここにきて橋を落とされる可能性もありますから、慎重に行きますよ」
カムイ(あまりにも敵に動きが無い、一体何を企んでいるんですか……)
白夜山伏C「敵の動きが止まりました。やはり、橋を落とされるか警戒しているようです」
アサマ「それはいいことですね、脳まで筋肉で出来ていたらすぐに飛びかかってきたことでしょうが、どちらにせよ。こちらの仕掛けは完成しました」
白夜山伏C「ええ、少し時間が掛かりましたが。おおむね、予想通りかと」
アサマ「ええ、相手を誘うので杖を準備してください。先頭は私が務めますから、皆さんは安心して呪いを掛けることに集中するようにお願いします」
アサマ(さぁ、カムイ様。ここで終わりにさせていただきますよ……)シュオンッ
カムイ軍グレートナイトB「敵集団に動きあり、呪いの準備をしているようです!」
カムイ「仕方ありません、グレートナイトの皆さん、敵戦列へ攻撃を。このまま戦線を崩壊させて橋をもらいます」
カムイ軍グレートナイトA「よし、無防備になった今がチャンスだ! 一気に蹴りをつける。いくぞ!!!」ブンッ
ドドドドドドッ
アサマ「ははっ、やはり来ましたか。まぁ、呪われる恐怖を理解しているならそう出るのは間違いないでしょう」
カムイ軍グレートナイトA「くらええええっ」チャキッ
アサマ「もっとも、このような素手の人間に手を上げる者には……」
アサマ(痛みが帰る。それが通りですがね……)
アサマ「禍事罪穢……」カランッ
カムイ軍グレートナイトA「させるか!!!」ブンッ
ジュオンッ!
カムイ軍グレートナイトA「ぐうううっ」
ザシュッ ビシャアアアッ
アサマ「……ぐっ」ポタタタタッ
カムイ軍グレートナイトA「もらっ――」
シュオンッ パァンッ!!!!
カムイ軍グレートナイトA「ごふっ……」ビチャアアッ
ブチャアアアッ……
カムイ軍グレートナイトA「かはっ……」グラッ ドサリッ
アサマ「ははっ、さすがに虚弱になった体では自身の力に耐えられないようですね」シュオンッ シュオンッ……
アサマ(深々と切られましたが、まだ大丈夫です。セツナさんとお話しして作り上げた形ではありますが……。なるほど、身を切って主を守るにはもってこいの呪いですねぇ。もっとも……)
ホワンッ……
アサマ(癒しの印も刻んでいる以上、半永久的に相手を呪い殺せますがね)
白夜軍山伏B「アサマ様、お怪我を……」
アサマ「大丈夫です、ちゃんと傷は癒えますし、それほど痛みはありません。さぁ、集中してください、ここからは一人一人に呪いをかけていかなくてはいけませんからね……。一撃で御仏の下に迎えるように」シュオンッ
カムイ軍グレートナイトB「がっ、まだまだ!! うおおおおおっ」ドドドドッ
カムイ軍グレートナイトB(たとえ呪いであろうとも、元の命が尽きれば発動はしないはず! ならば、この一撃であの剽軽な男を倒せば!!!)
カムイ軍グレートナイトB「くら――」
バサバサバサッ
カムイ軍グレートナイトB(これは、羽音?)
バサバサッ
カムイ軍グレートナイトB(ど、どこだ。正面から? いない? なら既に上を取られているのか……)キョロキョロ
カムイ軍グレートナイトB「くそ、どこに――」
バサッ
キリリリリッ カチッ
カムイ軍グレートナイトB(この音、側面――)クルッ
???「死ね……」パシュッ
ドスッ……
カムイ軍グレートナイトB「……ぐ、ぐぎゃあああっ。目が、うああああっ目がああっ、あつい、あづいいいっああああ!!!!」ドサッ
???「……」パシュシュ
ドススッ!!!
カムイ軍グレートナイトB「」クタリッ
アクア「金鵄武者!?」
バサバサバサッ
ヒヒィーーンッ
サクラ「天馬武者も!?」
カムイ「なっ、一体どこから。皆さん、一度砦まで後退します!」
エルフィ「カムイ様、後方にも敵が!」
カムイ「え!?」
タタタタタッ
白夜軍弓聖隊「いけ、攻撃範囲ぎりぎりまで接近し、攻撃準備で待機せよ」チャキッ
白夜軍兵法者隊「弓聖隊の攻撃後に一気に片を付ける、合図あるまでは迎撃態勢のまま待機!」
カミラ「まずいわね」
カムイ(どこからやってきたんですか。そんな影を誰も口にしていなかったというのに!)
カミラ「カムイ! 乗りなさい!」ギュッ
カムイ「は、はい。カミラ姉さん!」
アクア「エルフィ、サクラをお願い」
エルフィ「わかったわ。サクラ様乗ってください」
サクラ「は、はい!」
アクア「完全包囲とまではいかないけど、このままじゃ……」
カムイ軍グレートナイトC「呪いを受ける前に橋を出て、砦まで一気に――!!!!」
バサバサッ
バサバサバサッ
白夜軍金鵄武者隊「……」
カムイ軍グレートナイトC「うっ、なんだこれは。一体どこからこんな数の天馬や金鵄を気づかれずにつれてきたというんだ!」
カミラ「どうやって、ここまできたというの? まさか転移魔法でも使って送り込んできたのかしら」
カムイ「わかりません。ですが、このままでは包囲殲滅されます。援護要請の合図をあげてください」
サクラ「は、はい、合図を――」
バサバサッ
???「それを放つようなら、その腕を飛ばさないといけない。そんなことを私にさせないでくれないか、サクラ」
サクラ「え……。っ!!!」
???「それとカムイを下ろしてもらおうか、そこの女狐」キリリリッ バシュッ!!!
ドスッ
グオオオオオオッ!!!!
ブンブンッ
カミラ(打たれた!? くっ、言うことを効いて!!!)
カムイ「あっ……」バサッ
カミラ「カムイ!」ダッ
ドゴンッ
ゴロゴロゴロゴロッ ズサササーーッ
カムイ「うっ、うううっ。か、カミラ姉さん!」
カミラ「だ、大丈夫よ。おねえちゃんは強いんだから……っ。でも、少しだけ痛いわね……」
アクア「カムイ! カミラ!!!」
白夜軍金鵄武者A「動くな。できれば、あなたを私たちは殺したくない。武器をおろせ、アクア王女」
アクア「……っ」
白夜軍天馬武者A「暗夜の者たちもだ、動けばどうなるか。わかるだろう?」
カムイ軍グレートナイトC「…エルフィ様」
エルフィ「……言う通りにしましょう」
エルフィ(今動いたら、みんな殺されてしまう……)
???「アクアもサクラもわかってくれてうれしいよ。大丈夫、二人とも私が守ってやるからな」
クルルルー
???「ふふっ、わかっている。必要なもの以外は殺してしまうさ、お前の前でちゃんと殺して、ユウギリとオロチの恨みも晴らそう……」ナデナデ
カムイ「カミラ姉さん。大丈夫、傷は深くないです」
カミラ「当たり前よ。まだ、戦えるわ」
カムイ「はい、肩を貸してくださ――」
キリリリッ
???「カムイ、そんな目狐に優しくする必要はない。そこを退くんだ」
カムイ「……まさか堂々とやってくるなんて思いませんでした。ヒノカさん」
ヒノカ「ははっ、お前を助けるためなら私はなんだってするさ。お前が戻ってくることが私の悲願だ。心の中でカムイもわかってるはずだ、帰ってくる場所はここしかないって」
カムイ「……私は白夜に戻るわけにはいかないんです」
ヒノカ「ふふっ、暗夜にいるからともう意固地になる必要なんてない。大丈夫だ、お前のことは私が守っていく、一緒に平和な日々を送ろう?」
カムイ「……私の願うものはヒノカさんに用意はできません。私は、私の力でその平和な日々を勝ち取らないといけないんです。だから、私は戻りません」
ヒノカ「そうか、どこまでも暗夜に汚されているんだな……」チャキッ
ヒノカ「なら、お前を誑かした暗夜をここで終わりにしよう。その女狐が植えつけてきた偽りの関係もここで終わりだ。そしたら私と一緒に戻れるだろう?」
「お前の住むべき世界、私達が生きる白夜の世界に」ニヤァ……
今日はここまで
アサマスキル『天罰』『カウンター』『回復』
無双でヒノカ参戦、やはりヒノカコプターは攻撃技だったんやなって
FEHで水着マークスを手に入れたが、リリス(浮き輪)を攻撃や防御(破裂させる)に使っているのをみて、やっぱり暗夜は滅ぼさないといけないって思った。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『中央大橋』―
カムイ「……」
ヒノカ「……」チャキッ
カミラ「カムイ……」
カムイ「カミラ姉さん、今は私の陰から出ないようにしてください」
カミラ「……ヒノカ王女が狙っているのね」
カムイ「はい……」
バサバサッ スタンッ
ヒノカ「こちらの手に乗ってくれて助かったよ。こんな簡単に制圧出来たのだからな」
カムイ「ええ、まんまと乗せられてしまいました。今現れた飛行部隊、ヒノカさんも含めて谷を通ってきたんですね……」
ヒノカ「ああ、今頃わかったでも遅いがな。おかげでこちらの策は見事に決まったよ。もっとも、その女狐は殺し損ねてしまった……」
カミラ「っ……」
カムイ「……では、なぜ止めを刺さないんですか? 今なら私達に止めを刺せるというのに……」
ヒノカ「お前を殺すわけにはいかないからに決まっているだろう? さぁ、こちらに来るんだカムイ、サクラとアクアも連れてだ」
カムイ「それに従うつもりはありません。私はあなたにカミラ姉さんを殺してほしくありませんから」
ヒノカ「……やはり、その女狐に絡め取られているんだな。そんな偽りの女と姉妹であることに何の意味がある?」
カムイ「偽りではありません。血が繋がっていなくても、カミラ姉さんは私にとって姉さんだと言うだけのことです。だからこそ、私のことを未だ妹だと言ってくれるあなたに、姉さんを殺させるわけにはいかないんです」
ヒノカ「殺させるわけにはいかないか……」
カムイ「ええ」
ヒノカ「ははっ、命乞いするのは癪だからそう言うよう女狐に指示されてるのか? なら私からの答えはこれだ。女狐、お前に逃げ場はない。お前の命乞いなど意味の無いことさ」
カムイ「これは私の本心です、ヒノカさん」
ヒノカ「……まあいい。どちらにしてもこの状況を考えて、誰に従うべきかなどすぐにわかることだろう?」
カムイ「……」
カムイ(私達を中心にほぼ包囲は完成している。でも、すぐに手を下さなかったのはヒノカさんが私を連れ戻そうとしているからなのでしょう。臣下の方々がどう考えているかはわかりませんが、少なくともここにいる方々はヒノカさんの命令に忠実なようです。返答と行動次第ということなら……)
スッ
ヒノカ「ふふっ……」
カムイ(今は時間を稼ぎつつ、様子を見るしかないですね……)
カムイ「そのようですね。私達はあなた達の手に掛ってしまったようですから……」
ヒノカ「理解できるならもう迷うことはないだろう。さぁ、そこを退け。その女狐を殺してお前を自由にするから……」
カムイ「カミラ姉さんを殺して手に入るものは自由じゃありません。それを選べば私は一生、ここで道を開いたことを悔やみ続けることになる。そんなのはごめんです」
ヒノカ「大丈夫さ。その女を見殺しにしたことなんて私がすぐに埋めてやる。お前の望むことなら私はすべて受け止めてみせるさ……」
カムイ「なら、剣を収めてください」
ヒノカ「ああ、暗夜の人間と袂を分かった後でな。白夜に王女として戻ってきたお前となら戦う必要もなくなるだろう?」
カムイ「……私は暗夜の王女です。白夜の王女になることはありません。それに私のような人間が白夜の王族に戻ることなど許されない」
ヒノカ「私は許そう。お前が戻って来てくれるなら、すべてからお前を守り、すべての罪を許して忘れさせてみせるよ。そうしてやっと、私はお前との時間を埋めることができるんだ。妹であるカムイに戻ってくれるのだからな……」
カムイ「……それがあなたの望みなんですか。ヒノカさん」
ヒノカ「ああ、だからお前を惑わし、私の席を奪って過ごしてきたその女はここで殺さないといけない。それにシュヴァリエで殺された愛馬の恨みもある、その借りは返さないとな……」チャキッ
カムイ「カミラ姉さんを殺したところで、あなたの天馬も私も帰って来たりはしません。あなたがカミラ姉さんを殺そうというのなら、私は命を掛けて守るだけです……」
ヒノカ「……」
カムイ「……」カチャ
ヒノカ「……ならカムイ、どちらか選べ」
カムイ「え?」
ヒノカ「全員、構えろ」
チャキッ
チャキッ
カムイ「……全員を殺すつもりですか?」
ヒノカ「言っただろう? どちらか選べと。答えは二つだけ、そこの女狐を差し出すか。動かないで女狐以外の全員を見捨てるか……」
アクア「っ!」
サクラ「!!!」
カムイ「正気ですか? アクアさんにサクラさんもここにいるというのに。あの二人もヒノカさんにとって家族のはずです! なのにどうして?」
ヒノカ「サクラもアクアもわかってくれる。お前が再び白夜で家族と一緒に平和に過ごすことは、命を賭すほどに尊いものだと。そのためなら命を賭してもいいって、思ってくれるはずだ」
カムイ「あなたはずっと共に育ってきた妹たちより、私のような人間を選ぶというのですか……」
ヒノカ「ああ、そうだよ。これほどの愛しく感じるのはお前しかいない。この世の果てまで行ってもだ……。だから、カムイ選んでくれ。妹達と私の元に帰ってくるか、お前だけでも帰ってくるか……。さぁ、カムイ……」
カムイ「……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サクラ「ヒノカ姉様……」
エルフィ「サクラ様、出来るだけわたしの後ろに回ってください。アクア様、サクラ様の傍にいてあげて」
アクア「ええ、わかったわ……。サクラ、大丈夫?」
サクラ「……はい」フルフル
アクア(震えてる……当然よね。私も心がざわついているから……)
ヒノカ「……」
アクア(ヒノカ……)
アクア(……ユキムラの時と同じ、奴の気配は感じない。それはこの狂気がヒノカ自身のものだっていう証明。どこかで、奴の影響だったらと思っていた。これが異形神の影響だったなら、どれだけ心が救われたか……)
アクア(でも、実際は違う。あれはヒノカの本心だから……)
サクラ「アクア姉様……ヒノカ姉様の言っていたことって…」
アクア「……残念だけど脅しじゃないわ」
アクア(カミラを守れば私達は攻撃にさらされる。今はこうして守られているけど、後方にいる歩兵にまで近づかれたらそれまで。機動力を失ってる騎兵じゃ、矢の猛攻と近接戦で時間を掛けて殺されるだけ……)
アクア(でも、カミラを犠牲にするという答えを出したとしても、ヒノカがここにいる暗夜兵を許すトは思えない。カミラを殺した後に私とサクラ、カムイだけを手に入れて他の皆を殺すはず。どちらを選んでも救われないことがわかってるこんな中で――)
カムイ「……」
アクア(カムイは選ぶことに耐えられるの? どちらを選んでも犠牲が出ること前提のこの状況にカムイが……)
ギュッ
アクア「?」
サクラ「アクア姉様、大丈夫です。だからそんなに辛い顔をしないでください」
アクア「サクラ……」
サクラ「私よりもアクア姉様のほうが、カムイ姉様をよく知っているはずです。そのアクア様がカムイ姉様を信じてあげないといけないはずです」
アクア「……」
サクラ「……アクア姉様」
アクア「そうね。ごめんなさい、カムイは強いし、もう大丈夫だもの。でもサクラ、あなたは大丈夫なの?」
サクラ「辛くないって言ったら嘘になります。ヒノカ姉様の言っていることとか、ああいう姿を見せつけられて、こうしていられるのが不思議なくらいです。でも、こうしていられるのはカムイ姉様がいてくれるからだって思うんです」
アクア「カムイがいてくれるから?」
サクラ「はい、たしかにカムイ姉様はヒノカ姉様と戦うって決めてます。でも、助けることを諦めてるわけじゃないと思うんです」
アクア「どうしてそう思うの?」
サクラ「さっき言っていたこと、ヒノカ姉様にカミラ王女を殺させないって言ったのは、先のことを考えてるからだって思うんです」
アクア「先のこと?」
サクラ「はい、戦争が終わった先のこと。平和になったときにそれが必ず実を結ぶって、カムイ姉様は信じてると思うんです」
アクア「……」
サクラ「そんな真直ぐなカムイ姉様だから、私は諦めないで信じ続けることができるんです。アクア姉様は違うんですか?」
アクア「……」
アクア(……そうね。その通りだわ。ここで馬鹿げた選択を選ぶ必要なんてないものね……)
アクア「違わないわ……。サクラと同じよ、私達はカムイを信じてここまで来たんだから……」
アクア(カムイ、あなたの言葉は決まってると思う。誰もそのことに異を唱えたりしないわ。結局、一番生き残れる可能性があるのは一つしかないなら、ヒノカの答えになっていなくてもそうなるはずだから)
アクア「こっちはいつでも大丈夫だから、安心して答えを出して……カムイ」
~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒノカ「カムイ、時間だ。さぁ、どっちを選ぶ?」
カムイ「……もうですか。もっと考える時間をくれてもいいとは思いますけど」
ヒノカ「……」
カムイ「なら、答えを出させていただきます。私はカミラ姉さんを見殺しにするつもりもありませんし、他の皆さんも差し出すつもりはありません。私達はあなたに屈するわけにはいかないんです。ですから……」チャキッ
カムイ「あなたの提案を受けることはできません」
ヒノカ「そうか……。なら仕方無い。足と手が動かなくなっても、生きてさえいてくれればそれでいい、それだけでも十分すぎる。何もできなくなったお前の前で、その女狐の首を刎ねて悪夢を終わらせよう」
スッ
ヒノカ「全員構えろ」
白夜軍金鵄武者A「よろしいのですか?」
ヒノカ「ああ、容赦する必要はない。ここにいる者は全員敵だ。アクアもサクラも暗夜に懐柔されたんだろう。もう白夜の王族に戻れないのなら、私達で白夜王族として送ってやるだけのことだ」
白夜軍金鵄武者A「……わかりました。悪く思わないでください」チャキッ
白夜軍弓聖隊「……全員攻撃準備」チャキッ
エルフィ「来る。みんな、中心を守るように陣を組んで!」
カムイ軍グレートナイトC「わかりました! 全員、盾を構えろ。こちらに敵が向かってくるまでは矢を受け止め続けるんだ! 近接戦を仕掛けられたなら、やり返せ!」
カムイ「……」チャキッ
カミラ「カムイ……」
カムイ「大丈夫です。ここは任せてください……」
カムイ(あとは、信じるしかありません。他の皆さんのことを……)
ヒノカ「……やれ」
パシュシュシュシュ!!!
パシュシュシュシュ!!!
カムイ「はああああっ!」ザンッ
ヒュン! ヒュン!
ヒュインッ!!!
ドスッ
カムイ軍グレートナイトD「ぐうああっ」ドサッ
エルフィ「くっ、負傷者を中心に! 早く変わりに誰か穴を埋めて!」
カムイ軍グレートナイトE「はい。誰かこいつの手当てを!」
サクラ「こちらへ!今、癒します。大丈夫、きっと大丈夫ですから……」カラランッ
シュオンッ
サクラ(負傷者がどんどん増えてきてる。このままじゃ、いつか溢れて……)
白夜軍金鵄武者A「盾が一ヶ所崩れているぞ、あそこに打ち込むんだ」パシュッ
パシュシュッ!!
ヒュンッ!
サクラ(このままじゃ、負傷した人たちに矢が!)
サクラ「だめっ!」ガバッ
カカンッ
ザシュンッ
サクラ「あううっ……ううっ」
アクア「サクラ!」
サクラ「っ、だ、大丈夫です。これくらい……」
アクア「…まずは傷を少し癒しなさい、その間に来る矢は私が弾き落とすわ」クルクルクル チャキッ
サクラ「アクア姉様、危険です……」
アクア「歌姫だからって、歌うことだけが能じゃないわ。サクラにしか負傷者は癒せない、だからそっちはあなたにすべて任せるから……」
サクラ「……わかりました、アクア姉様。負傷者の方々は私に任せてください!」
アクア「ええ、矢のことは私にまかせなさい……」ググッ
白夜軍金鵄武者A「まだ穴は埋まってない、続けて狙え!」パシュシュッ
カムイ軍グレートナイトC「アクア様!」
アクア(……来た)
アクア「やあっ! はっ! はあああっ!」ブンッ ブンッ ガキィン!
サクラ「す、すごいです。アクア姉様……」
カムイ軍グレートナイトC「我らグレートナイトの部隊に入りませんか。その腕なら確実に活躍できますよ」
アクア「生憎だけど、私は歌を歌うのが好きだからそうなるつもりはないのよ。それよりも次が来るから、みんな気合いを入れなさい」
カムイ軍グレートナイトC「はい!」
エルフィ「……ふふっ」
アクア「エルフィ?」
エルフィ「あまりにも勇ましかったから…。アクア様、意外に熱い人なのね…」
アクア「……負けられない戦いだからよ。いつもこういうわけじゃないわ」
エルフィ「そういうことにしておくわね…」
アクア「そういうことって……」
カムイ軍グレートナイトC「砦方角に展開していた敵弓隊の攻撃を中断、兵法者の一団が接近中、近接戦闘に切り替えてくるつもりです!」
アクア「これでケリを付けるつもりね……」
アクア(持つかわからないことなんて百も承知。でも、何かがあるなら一秒でも先を目指すだけ。そこにカムイの理想が実を結ぶ道があるはずだから!)
カムイ「はぁはぁ……」
ヒノカ「時間を稼いだところでこの結末は想像出来ていたはずなだ。さっさとその女狐を差し出せばあまり苦しまないで済んだと言うのに、どうして粘る?」
カムイ「時間を稼いだところで何も変わりはしないことくらいわかってます。誰が見たって、選べる選択の中に良いものなどありませんし、結果は三人か一人が生き残るかどちらしかありませんから……」
ヒノカ「私から見ればすべていい選択さ。お前がこちらに戻って来てくれるのだからな。だが、生き残れる数が多かったのはその女狐を殺すことだったのに、どうしてそれを拒否する? 多くを生かそうとするなら、その選択をするはずだ」
カムイ「そうですね。カミラ姉さんを犠牲にして可能性を得るというのが本当の選択なのかもしれません。少なからず、私はそれで生き延びることができますし、あなたの言葉を信じるかどうかはさておき、今よりも長く時間を得られたはずですから」
ヒノカ「そこまでいえるなら、なぜ選ばなかったんだ?」
カムイ「……あなたが私を諦められないように、私にも諦められないことがあるだけのことです……」
カムイ(……ああ、そうでした。私はこんな選択をした人を知っています。自分が生き残れる可能性を賭してまで私を守ってくれた人……初めて失った仲間が……)
カムイ(今になってあなたが命を掛けてまで私を守ろうとしてくれた理由がわかった気がします…。命と同じくらい大切なことがあったらこうなってしまいますよね。だって、あの時……)
リリス『私はカムイ様を守るためにここまで生きてきたんですから、それを否定されるわけにはいかないんです!』
カムイ(リリスさんはこう言ってくれたんですから。ははっ、諦めの悪いところはなんだか似ていますね。でも、そうですよね。生きてきた自分を否定することなは死ぬのと何も変わりません。私はそれを折るわけにはいかないんですから)
カムイ「カミラ姉さんは私の理想のために戦っています。なら、私は仲間のために命を賭します。ここで死ぬことよりも恐ろしいことがあるとすれば、それは私が信じる理想を私の弱さで投げ出すことです」
チャキッ
カムイ「もう目を逸らさずに向き合うと決めたことを諦めて、そこから逃げだすわけにはいかない」
カムイ「私はその理想のために命を掛けて戦っているんですから……」
ヒノカ「……ははっ、あはははははっ。ここまで毒されてるとはな……。所詮それは暗夜で与えられたこと、白夜にいたならそれは違うものになっていたはずだ。そんな暗夜で培われた理想に意味などあるわけがない……」
チャキッ
ヒノカ「それを何度言っても理解できないなら、もう手加減する必要もない……」スッ
バサバサバサッ
白夜軍金鵄武者隊「ヒノカ様」
ヒノカ「全員準備しろ。手足と体を狙え、頭には当てないようにしろ」
白夜軍金鵄武者隊「はい、全員用意!」
ヒノカ「アサマ……」
アサマ「はい、ヒノカ様」
ヒノカ「カムイが倒れたらすぐに治療して長城内部に運べ」
アサマ「わかりました。お任せください、ヒノカ様」
カムイ「……」
ヒノカ「カムイ、最後の忠告だ……。そこをどけ」
カムイ「お断りします。私自身で意思を崩すつもりはありませんし、崩されるものではありませんから……」
ヒノカ「そうか。かなりの痛みだろうが我慢してくれ。大丈夫、次に目覚めた時には――」チャキッ
ヒノカ「私が傍にいてやるからな……」
カムイ「……」
カミラ「カムイ、ごめんなさい」
カムイ「謝ることはありませんよ、カミラ姉さん。ここを目指した時にはヒノカさんたちの罠に私達は掛っていた。それにカミラ姉さんを放って逃げるようなことを、私はしたくありません。もう、自分に負けるわけにはいきませんから」
カミラ「カムイ……」
ヒノカ「構え!」チャキッ
チャキキキキッ
白夜軍金鵄武者隊「……」
カムイ「カミラ姉さん、私の陰へ……」
カムイ(……どこまで耐えられるかはわかりません。でも耐え続けてみせます)
キリリリリッ
カムイ(命が尽きるまで、私は守り続けるだけ。ただそれだけでいい!)
ヒノカ「全員、射て!!!」
カムイ「!!!!」チャキッ
ダッ
ヒノカ「なに?」
ヒュオオオッ
???「そうはさせないの!!!!」ダッ
ブンッ
ザシュンッ!!!!
白夜軍金鵄武者B「ぐあああっ」ドサリッ
パカラパカラッ
チャキンッ
???「一人やったの!」
ヒノカ「なっ、ぼやっとするな! そいつを――」
???「今なのラズワルド! いっぱいやっちゃえなの!」
ラズワルド「そうさせてもらうよ」
ザザザザッ
ヒノカ「!!!」
ラズワルド「みんな、一斉正射! カムイ様たちを助けるんだ!」カチャッ ギィッ
カムイ軍ボウナイト隊「よし、狙え!」
パシュシュシュシュッ!!!!
ヒュンヒュン!
ヒノカ「くっ、どうしてこんなところに敵が!? くそ、構うなカムイを射て!!!」
白夜軍金鵄武者C「はい。カムイ王女、覚悟!!!!」チャキッ
ダッ ダンッ!
???「まずは俺が相手だ。行くぜぇ……」ザッ シュオオオオンッ
グオオオオオオオオォォォォ!!!!
白夜軍金鵄武者C「なにっ!?」
白夜軍金鵄武者C(なんだこの毛むくじゃらな存在は!!! こんな高さまで、迎撃が間に合わ――)
フランネル「おらよっと!!!!」ブンッ ズシャアアアッ ドゴンッ
白夜軍金鵄武者C「けふっ……」ドサッ ドサリッ……
白夜軍金鵄武者D「くっ、ならお前から先に――」
ラズワルド「そうはいかないよ。それっ!」パシュッ
ズビシャッ!!!
白夜軍金鵄武者D「ぐううっ、うあああ……」ドサリッ
ラズワルド「うん、上手く行ったね」
フランネル「ああ、きれいに決まったぜ。やっぱり戦いはこうでないとな!」
ラズワルド「ははっ、周りのみんなは威嚇射撃で敵を遠ざけて、射程外に逃げるまで執拗にやるんだ」
カムイ軍ボウナイト「はい。わかりました! おらおら、さっさと離れやがれ!」
カムイ「……一体何が起きたんですか?」
フランネル「カムイ、かなりヤバイところだったな。少し冷や冷やしたぜ」
カムイ「どうしてここにフランネルさんが……それにラズワルドさんも」
ラズワルド「その説明は後だよ。どうにか間に合ってよかった。正直、動くのがあと少し遅れてたらって思うとぞっとするよ…」
カムイ「丘からこちらに来てくれたんですか、ありがとうございます。それより後方からも白夜軍が迫っていたはずです、それは――」
???「そっちはパラディン隊が対応してるから大丈夫なの!」
カムイ「……その声、ピエリさんですか?」
ピエリ「うん、ピエリなの。カムイ様……」スタッ
ギュウウッ
カムイ「ピエリさん?」
ピエリ「今度は間に合ったの……。リリスの時みたいに間に合わなかったらって、怖かったの。でも、カムイ様ちゃんと生きてたの。ピエリ、とっても嬉しいのよ」
カムイ「……はい。ピエリさんに助けられちゃいましたね、ありがとうございます」
ピエリ「お礼なんていいの。これはピエリがすることなの。リリスとの約束は守るって決めたから当たり前なの。だから、カムイ様が気にすることなんてないのよ」
カムイ「わかりました、ピエリさんがそう言うんでしたら。これでこの話はおしまいです」
ピエリ「ん、それじゃ準備するの。ピエリ達が来たからもう安心なのよ」
「カムイ様に酷いことする人は、みんなえいってしちゃうから覚悟するのよ!」チャキ!
今日はここまで
橋に乗ると谷から天馬武者と金鵄武者が現れるみたいなマップギミックがあったらとかいう感じです。
リリスの死は無駄じゃない。そう思える場面が本編で色々ほしかった……
◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『中央大橋・橋付近』―
ドドドドドドッ
カムイ軍ボウナイトA「敵の動きが止まった、一気に走り込んで戦列を作りあげろ!」
白夜軍金鵄武者E「く、奴らの足を止めろ!」
ラズワルド「そうはいかないよ。彼らにはここまで来てもらわないといけないからね」チャキッ
パシュシュシュ!
白夜金鵄武者E「くっ、狙いが定まらない。敵の弓騎兵の動きを止め無ければいけないというのに、くそ!!!!」
ラズワルド「……どうにか間に合ったみたいだね」
ザザッ
カムイ軍ボウナイトA「ラズワルド様、戦列が整いました」
ラズワルド「攻撃を開始して、敵を近づけさせちゃ駄目だよ」
カムイ軍ボウナイトA「わかりました。よし、前列斉射開始! 後列は矢の準備に取り掛かれ!」
カムイ軍ボウナイト隊『おおおおおおっ!!!』
パシュシュシュシュッ!!!
ヒノカ「ちっ、一度退け! 敵の射程外から機会を伺うんだ!」
バサッ
バサササッ
カムイ軍ボウナイトA「敵、射程範囲外へ退いて行きます」
ラズワルド「……ふぅ、今はどうにかなったね」
カミラ「はぁ、どうにか助かったみたい……」
カムイ「はい、ピエリさん達のおかげです。本当、奇跡というのは起こるものなんですね」
ピエリ「えへへ、それにしてもカミラ様、大丈夫なの? 体中、あちこち泥だらけなの」
カミラ「泥だらけなだけよ。体に問題はないから安心して」
ピエリ「よかったの! あと怪我してるけどあの子も無事だったのよ」
カミラ「あの子?」
ヨタヨタッ
グオオオオンッ
ピエリ「カミラ様のドラゴンなの。たぶん、何もできないからって無視されてたから無事だったのよ」
カミラ「そう。ごめんなさい、私がヒノカ王女の接近に気付けなかったから……。打たれて痛かったでしょう?」ナデナデ
クオオオオ……
カミラ「まだ私と一緒に戦ってくれるかしら?」
クオオオオンッ
カミラ「ありがとう、とってもいい子ね」
カムイ「とはいっても、まだ傷が癒えていないはずです。この子は下げた方が――」
グオオオオッ!!!
カムイ「わっ」
カミラ「ふふっ、この子は戦いたいって言ってるみたい。なら、この子の意思を汲んであげたいの。でも、その傷を軽くでもいいから癒してからよ。そうすれば、もっといっぱい戦えるから、ね?」
クオオオンッ
カムイ「わかりました、カミラ姉さんがそう言うならもう何も言いませんよ。ですが、軽く治療はしてくださいね。飛んでる最中に勝手に落ちられては堪りませんから」
カミラ「ふふっ、わかってるわ」
ラズワルド「撃て!!!」
パシュシュシュッ
カムイ軍ボウナイトA「敵の動きが変わりつつあります」
ラズワルド「そうだね……。正直、ここまで早いとは思ってなかったけど」
ラズワルド(さすがに狙いを定めてるわけじゃないから、タイミングよくこっちに向かおうとしてるのがちらほらいる。斉射で大群を足止めし続けないといけない以上、人数を割くわけにもいかない……。そうなると出来ることは……)
タタタタタッ
カムイ「ラズワルドさん、状況はどうなっていますか?」
ラズワルド「今はどうにか敵を抑えられてます。でも、少なからずこちらに抜けてくるようになるのもそろそろです。多分、歩兵を乗せてこっちに向かってくると思うので、がむしゃらに打っているわけにもいかなくなりますね」
カムイ「そうですか……」
カムイ(今、敵を抑えられているのはボウナイト部隊の攻撃が続いているから。そこを抜けてくる者たちまで相手にするとなると攻撃の密度が下がる。そうなるとそこから崩される可能性もあるということもありえるというわけですね)
カムイ「どう対処しましょうか……」
ラズワルド「あのカムイ様……」
カムイ「はい、なんでしょうか?」
ラズワルド「その、カムイ様には僕たちの護衛をお願いしたいんです」
カムイ「護衛ですか?」
ラズワルド「うん、ボウナイト隊はこのまま大規模な進軍が無いように敵を抑えないといけないから、抜けてきた敵を各個に攻撃する余裕は正直ありません。その穴をカムイ様に埋めてもらいたいんです、そのこんなことを頼むのは間違っているとは思うんですけど……」
カムイ「わかりました。ラズワルドさんの指示に従いましょう」
ラズワルド「い、いいんですか?」
カムイ「今、この状況を作ってくれたのはラズワルドさん達です。なら、それに従うのが一番だと思いますから」
ラズワルド「ありがとうございます、カムイ様」
カミラ「でも、向こうの猛攻を受け切り続けるのはさすがに不可能よ。いずれ崩されてしまうわ、何か考えがあるのでしょう?」
ラズワルド「それはもちろん。僕の最終的な目的は後方部隊との合流なんです」
カムイ「後方部隊……、ブノワさん達のことですね」
ラズワルド「はい。ピエリ、ちょっといいかな?」
ピエリ「なに、ラズワルド?」
ラズワルド「ピエリは後方で戦ってるパラディン部隊を指揮して、砦からこちらに向かってると思う友軍のために突破口を作ってもらいたいんだ」
ピエリ「わかったの、ピエリは敵をいっぱい倒して道を作るのよ。フランネルも一緒に来るの。いっぱいいっぱい敵が倒せるのよ」
フランネル「お、おいちょっと待てって、まだ俺は行くなんて――」
ピエリ「なら、ピエリがいっぱい倒してフランネルより強いことを証明しちゃうの」
フランネル「なっ、まだ勝負もしてねえのに勝手に決めるなよな。いいぜ、その後ろにいる奴らは俺が相手してやるから、ピエリの出番なんてないと思うけどな……」
ラズワルド「そういうわけで、援軍が来るまでの戦いっていう感じなんですけど……」
カムイ「それで行きましょう。時間もありませんし、今できる最大限はおそらくこれだけです」
ラズワルド「ありがとうございます。それじゃピエリ、後方は任せたよ」
ピエリ「わかったの。それじゃカムイ様、ピエリはもう行くの、いっぱい敵を倒してくるから楽しみにしててなの!」
カムイ「あ、ちょっと待ってくださいピエリさん」
ピエリ「ん、どうしたの?」
カムイ「ありがとうございます。ピエリさんが来てくれて助かりました」
ピエリ「ううん、カムイ様を守るのはピエリの役目なの! だから、お礼なんて必要ないのよ。でも、そういってもらえてピエリとっても嬉しくて、なんだかお胸がポカポカしてなんでもできそうって感じなの!」
カミラ「ふふっ、でも無茶はしちゃ駄目よ?」
ピエリ「わかってるの。ピエリが死んじゃったら、カムイ様のこともカミラ様のことも守れなくなっちゃうの。カムイ様を守れて、ピエリとっても嬉しかったの」
カムイ「私もピエリさんに守ってもらえてうれしかったです。だからこそ、気を付けて行って来てください」
ピエリ「はーいなの! それじゃフランネル、早く乗るのよ!」
フランネル「それじゃカムイ、すぐに道を作って戻ってくるからな!」
カムイ「はい、よろしくお願いしますね。フランネルさん」
ヒヒーンッ パカラパカラパカラ
カムイ「では私も行きます。カミラ姉さんはドラゴンの傷を癒してきてください」
カミラ「ええ、少しの間だけ一人で頑張って、すぐに助けに戻るから」
カムイ「心配しないでください、一人でも大丈夫です。だって、私はカミラ姉さんの妹なんですから」
カミラ「ありがとう、カムイ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
バササササッ
白夜軍聖天馬武者A「よし、どうにか抜けた!」
白夜軍金鵄武者E「抜けたものたちから敵に食らいつけ! 目標は敵弓兵群、近づけばこちらに分はある。一気に突き崩せ!!!!」
バササササッ
カムイ軍ボウナイトA「敵が抜けてきました! 各自迎撃に――」
ラズワルド「いや、抜けてきたのは無視してかまわない。僕たちの役割は敵の大隊進軍を食い止める事だよ」
カムイ軍ボウナイトA「し、しかい、このまま接近されては――」
ラズワルド「大丈夫、抜けてきたのは他のみんなが片付けてくれる。それを信じるんだ」
カムイ軍ボウナイトA「……わかりました。このまま攻撃を続けます」
ラズワルド「ありがとう……」
パシュシュシュシュ
ヒュンヒュンヒュン!!!
白夜軍聖天馬武者A「こちらを無視するか馬鹿な奴らだ、その考えをすぐに後悔させてやる。このまま低空移動で側面に回り込み、端敵騎兵隊を狙う。正面はお前達に任せるぞ」
白夜軍剣聖A「ああ、かなり厳しかったがこの距離なら一気にいける。同時に攻撃出来ればこちらの勝ちだ」
白夜軍聖天馬武者A「そうだな。崩して、白夜の勝利を掴み取るぞ」
白夜軍剣聖A「ああ、そのつもりだ。よし、全員このまま突き進め!」ダッ
白夜軍剣聖隊「うおおおおおっ」ダダダダダッ
パカラパカラッ
ザンザンザンッ
カムイ軍グレートナイトD「防御陣、構築完了しました」
カムイ「間に合ってよかったです。これで、どうにか迎え撃つことができます」
タタタタタタッ ズササー
白夜軍剣聖A「むっ……」
カムイ「ここは私たちが相手です」チャキッ
白夜軍剣聖A「カムイ王女……。貴殿を連れ帰れとヒノカ王女の命令が出ている。だが、手足の一本は覚悟してもらうぞ……」チャキッ
カムイ「覚悟はできています。もちろん、そう簡単にやられるつもりはありません。あなた方に負けて倒れるわけにはいきませんから」ダッ
白夜軍剣聖A「そうか、ならば容赦はせん。各員、抜刀!」
シャキン!
カムイ「グレートナイトの皆さん、準備はいいですか?」
カムイ軍グレートナイトD「はい。全員、防御姿勢準備!」
ザンッ!
カムイ「……では、行きましょう」
クルクルクル チャキンッ
カムイ(ここが一つの正念場――)
(折れるわけにはいきません……)
今日はここまで
ゲームでこんな盤面になったら、絶対誰かロストするって言う盤面になってると思う。
セリカも参戦したFE無双の発売は今月28日。
ところで、ピエリとリリスはどこ……どこ?
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『砦周辺』―
ルーナ「ちょっと、なんでカムイ様とカミラ様がピンチになってるわけ?」
ブノワ「敵の策にのせられたということだろう…」
ルーナ「冷静に理解してる場合じゃないわ、砦の相手はやめてカムイ様たちを助けださないと」
ハロルド「ルーナくんの言う通りだ! よし、砦から広がった敵の一団に攻撃を仕掛けて一気に突破するとしよう。全員、私に続け!」
ドドドドドドッ
ルーナ(もう、どうしてこうなっちゃうのよ。あたしのこと信頼して砦のことを任せてくれるのはいいけど、こんな風にピンチになったら意味ないじゃない!)チャキンッ
白夜兵「敵が動き始めました。右翼部隊に攻撃が集中しています!」
白夜兵長「くっ、感づかれたか。右翼に兵を回せ! このままでは――」
ルーナ「今さら動いたって遅いのよ。それじゃ今度はこっちの番、突っ切らせてもらうからね!」チャキンッ
タタタタッ バシュバシュンッ ザシュシュッ!
白夜兵「ぐああああっ」ドササッ
ハロルド「よし、ルーナくんの後に続け、一気に切り抜けるんだ!」
オオオオオオーーーーッ
ドドドドドドッ
ルーナ(よし、砦の包囲は抜けたわね。このまま中央集団を奇襲できればいいけど……)
白夜兵「奴ら、大橋の援護に向かうつもりだ。中央で展開している者たちと協力し挟み撃ちにする。突破したことを後悔させてやれ!」
ドドドドドドッ
ルーナ(まぁ、流石に一気に行けるわけもないわよね。でも、中央で遊撃隊が動いているから、これで敵の戦力も分散できてるはず。これはチャンスよ)
タタタタタッ
ルーナ「ん?」
白夜軍槍聖A「捉えたぞ、暗夜兵。ここで果てよ!!!」チャキッ
ルーナ「そう簡単に果てるわけにはいかないのよ!」ブンッ
ギギィ カキィン
白夜軍槍聖A「ふっ、そんなものでは届くまい!」
ルーナ(っ、剣じゃ届かない。こうなったら斧に変えて槍ごとへし折って――)
白夜軍槍聖A「得物を変える暇など与えるか! そこだ!!!」ダッ ドスッ
ルーナ「!!!」サッ カキィン!!!
ザシュンッ ポタタッ
ルーナ(っ! 少し喰らったけど、まだまだいける!)チャキッ
ルーナ「さぁ、来なさい」
白夜軍槍聖A「ふん、寸でで避けたか。しかし、そう運が続くと思って――」
ガシャンガシャンガシャンッ
白夜軍槍聖A「な、なんだ!?」
ブノワ「うおおおおおおおっ!!!」ダッ ガシンッ
ズドンッ
白夜軍槍聖A「がっ……」ドササー
ブノワ「ふう……」
ルーナ「……」
ブノワ「ルーナ、大丈夫か?」
ルーナ「ちょっと、あそこはあたしがやっつけるところだったんだけど」
ブノワ「……すまん」
ルーナ「まったく……でもありがとう。その、助かったっていうか、その、ありがとう////」
ブノワ「そうか、なら良かった」
タタタタタッ
ハロルド「ブノワくん、ルーナくん。二人とも無事かね」
ルーナ「大丈夫大丈夫、かすり傷程度だし」
ブノワ「ああ。ジェネラル部隊は大体が抜けたところだ。しかし、敵の動きはこちらよりも早い、想定していた人数には達していない」
ハロルド「そうか、これから中央に攻撃を仕掛けようと思っているところだが、これでは少し厳しいかもしれないな」
ブノワ「……その、いいだろうか」
ルーナ「早く言いなさいよ。こんなところで立ち往生してる暇なんてないんだから」
ブノワ「ああ、俺達ジェネラルはここで敵の集団を食い止めようと思う。ジェネラルの重装備では敵に追いつかれてしまう。それでは、この行動の意味がなくなってしまう」
ハロルド「たしかにそうかもしれないが、この数を相手にしてはいくらジェネラルでも……」
ブノワ「正面集団との戦闘で二人の盾になりたかったが、それができるとは思えない。なら、二人が不自由なく戦えるようにするのがいいと思った。この考えは駄目だろうか……」
ルーナ「いいわよ。ブノワの案、あたしはそれで構わないわ。あんな風に囲んで勝てたと思ってる相手、ぱぱっとやっつけちゃうんだから」
ハロルド「ブノワくんたちを残していくのは忍びないが、今できる最善はそれしかないだろう。よし、私はブノワくんを信じるよ」
ブノワ「ありがとう」
ルーナ「それじゃ、あたしたちがぱぱっとカムイ様とカミラ様を助けだしてくるから、それまで頑張ってよね」
ブノワ「ああ、頑張ってみるさ…。カムイ様のことは頼んだ…」
ルーナ「言われなくてもわかってる。ハロルド、先行よろしく」
ハロルド「うむ、しかしものすごい数だ。この数をいきなり持ってくるとは、見事に敵の型に嵌ってしまったということなるのか」
ルーナ「数に圧されてる場合じゃないでしょ。気負けなんてしてる暇があったら、どうにかすることを考えた方が建設的じゃない」
ハロルド「その通りだ。それに数だけならばある意味同じだろう。ラズワルドくんの部隊が敵の進撃を抑えてくれている。その頑張りに応えなくてはな!」
ルーナ「ええ、こっちは左右からくるのを相手にするから、一気に敵の壁に穴をあけてくれればいいわ」
ルーナ(ハロルド達が作った溝を一気に切り開いて敵の戦線を崩せば、どうにか辿りつけるはず……。そしたら、あたしだけおいてったこと後悔させてあげるんだから)
ブノワ「よし、行け」ガシンッ
ハロルド「いこう、ルーナくん」
ルーナ「ええ、一気に行くわよ!」
タタタタタッ
白夜軍兵法者A「この蛮人共が、一人残らず叩き斬ってやる!」
ルーナ「それはこっちの台詞よ」ダッ
ルーナ(何が何でも合流してみせるから、こんなところであんたを失うわけにはいかないのよ!)
ルーナ「はああああっ!!!」ザシュンッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
キィン キィン
カムイ「はっ、せいっ、やあああっ!」ザシュッ
白夜兵「ぐうううっ……」ドササッ
白夜軍剣聖A「くっ、故郷である白夜に対しこのような真似をして、何も思わないのか!?」
カムイ「……今の私の故郷は暗夜王国です。私にそれ以外の故郷を述べる権利はありませんよ」
白夜軍剣聖A「ならば、こんな戦争に加担することなく、その故郷で燻っていればいいだけのことだ。もしも、貴殿と出会う場所がこのような場所では無く、暗夜の奥深くであったのならば、ヒノカ様はああはならなかったはずだ」
カムイ「……私が戻ることでそうなるのならそうしますが。今のヒノカさんは私が戻ったところで、何も変わらないでしょう。ヒノカさんのためにも、私は暗夜の王女であり続けるだけです」
白夜軍剣聖A「血迷いもいいところだ。覚悟!!!」ダッ
カムイ「……そこです」タッ ザシュンッ
白夜軍剣聖A「がふっ……」ドササッ
白夜軍剣聖B「貴様!!!!」ダッ ブンッ
カムイ「はああっ」チャキッ ブンッ ブンッ
キィン カキィン
ドスリッ
白夜軍剣聖B「うぐっ……こんな裏切り者に……」ドサッ
カムイ「……」
白夜軍聖天馬武者A「ならばこちらから行くまでだ。はあああっ!!!」バサバサッ バシュンッ!!!
カムイ「上からですか……」
白夜軍聖天馬武者A(この距離、腕を取った!!!)ブンッ
カムイ「では、こちらも行きますよ」グッ
シュオオオオオッ!!!
カキィン!
白夜軍聖天馬武者A「なっ……」
カムイ(竜状態)「グオオオオオッ」ザザッ
白夜軍聖天馬武者A(くっ、すぐに距離を!!!)
カムイ(竜状態)『残念ですけど、逃がすわけにはいきません』
ダッ バシュンッ
ビチャアアッ!!!
白夜軍聖天馬武者A「っあああ―――」ドサッ
白夜軍聖天馬武者B「ならば、同時に攻撃するまでだ。竜だろうと中身は人間、勝てない相手では無い!」
白夜軍聖天馬武者C「行けえ!」バサバサッ
カムイ軍グレートナイトD「カムイ様、お下がりください」
カムイ(竜状態)『いいえ、このまま敵を迎え撃ちます。隊列を崩さないでください、崩したらそこを突かれてこちらの負けです。私にここは任せてください』
カムイ(竜状態)『行きますよ』ダッ!
白夜軍聖天馬武者B「こちらに向かってきたか。ならば、望みどおりにしてやる!」
白夜軍聖天馬武者C「くらえええっ!」チャキッ スッ!!!
白夜軍聖天馬武者B「そこだ!!!」ダッ ブンッ
カムイ(竜状態)『はああっ!!!』ダッ ガキィン!
白夜軍聖天馬武者B「ぐっ、武器を取られ……」
ドゴンッ ヒヒーンッ
ドスンッ ドサリッ
白夜軍聖天馬武者C「馬鹿め、背中が御留守だぞ!!!」クルクル チャキッ シュパッ!
カムイ(竜状態)『ええ、あなたもですけど』
タンッ シュオオオオオオンッ
白夜軍聖天馬武者C(私の攻撃を飛んで避けた。それに変身を解いただと!?)
カムイ「……終わりです」チャキッ
白夜軍聖天馬武者C「! 避け――」
ズシャッ ググググッ
白夜軍聖天馬武者C(あぐっ、背中が胸が……痛い、焼ける、け、剣が背中を貫いて……)
白夜軍聖天馬武者C「がはっ……うあああっ、うぐぐあああっ……あ……――」
ポタタタタッ ザシュンッ
ドサリッ
カムイ「……」
カムイ(ごめんなさい……)
カキィン ザンッ
スタッ ズササーーッ
白夜軍剣聖C「ええいっ、怯むな。敵の壁はあとわずかどこでもいいから崩し、そこから分断させろ!!!」
カムイ軍グレートナイトD「敵、再びこちらに向かってきます」
カムイ「はい、まだ持ちこたえられそうですか」
カムイ軍グレートナイトD「心配しないでください、我々はまだ大丈夫ですから」
カムイ「……」
カムイ(息が上がっている。正直、あと二回と持たないかもしれない。ですが、そんな状況でもまだ余裕な私がいるなんて……)
カムイ「ふふっ」
ラズワルド「カムイ様、どうしたんですか?」
カムイ「なんでもありませんよ。それより、状況はどうですか?」
ラズワルド「やっぱり左右端に対する攻撃の頻度が多いかな。グレートナイトの皆も頑張ってくれてるけど、正直あと数回で崩されるかもしれない……」
カムイ「そうですか、中々思うようにはいきませんね」
ラズワルド「ははっ、でもそれにしては余裕そうな感じですけど」
カムイ「ええ、思ったよりも危機を感じているわけでは無いみたいです。これは慢心でしょうか?」
ラズワルド「僕にはそこまでわかりませんよ。でも、カムイ様がそうしているのって、信じている人たちがいるからかもしれませんよ」
カムイ「信じている人たちですか……。たしかにそうですね。その人たちが負ける姿というのはあまり想像できませんし、何より私と一緒に戦ってくれていることを知っていますから」
ラズワルド「うん、できれば僕もその中に入ってたら嬉しいんですけど」
カムイ「ふふっ、もちろんですよ。ラズワルドさんも皆さんを信じて待ちましょう。ここで、折れるほど私たちの思いは弱いものではありませんから」
ラズワルド「そうだね。こっちも最後まであきらめないで敵を抑え続けるから、カムイ様も頑張ってくださいよ」
カムイ「もちろん、そのつもりです」
カムイ(そう、最後まであきらめないこと。私はまだ理想を捨ててなんて言ない、まだ可能性があるならその先を目指して戦い続ける。そして、それを信じてくれる人たちを私は信じる。それが私を勇気づけてくれることだから!)
白夜軍聖天馬武者D「よし、カムイ王女を狙うぞ。あの裏切り者が倒れれば、敵に動揺が生まれるはずだ!」
白夜軍剣聖C「わかった。同時に仕掛けるぞ。この人数なら、さすがにどうにもなるまい!」
カムイ(気配から察するに天馬武者二騎と剣聖二人ですか……。退くことはありません。それに……来てくれる頃ですから)ダッ
白夜軍聖天馬武者E「行けぇ!」
白夜軍聖天馬武者D「はあああっ!!!」
白夜軍剣聖C「この数を一人でどうにかできると思っているのなら、それは自惚れだ。これで終わりだ、裏切り者!!!」
バサバサッ
カムイ「一人ではありませんよ。そうですよね……」
バササササッ
カムイ「カミラ姉さん?」
バサササッ ヒュオオオオッ!!
白夜軍聖天馬武者E「なっ」
カミラ「待たせちゃったわね。カムイにいけないことをする悪い子は、おしおきよ……」ザシュンッ
白夜軍聖天馬武者E「きゃあああっ」ドサッ
白夜軍剣聖C「なっ、竜騎兵だと!? 一体どこから――」
カムイ「余所見はよくないですよ……。終わりです」グッ ザシュンッ
白夜軍剣聖C「がふっ……」ドサッ
白夜軍剣聖D「貴様!!!」チャキッ
カムイ「はあああっ!!!」ダッ ドゴンッ!
ドサササー
カミラ「はい、それっ!!!」ブンッ ブンッ
キィン バキンッ!!!
白夜軍聖天馬武者D「くっ、武器が。くそっ!!!」
バサバサッ!
カミラ「ふふっ、出直してらっしゃい。私と可愛いカムイがいつでも相手になってあげるわ」
カムイ「カミラ姉さん。もう大丈夫なんですか?」
カミラ「ええ、サクラ王女に治療してもらったから、もう平気よ」
カムイ「そうでしたか。それよりも、本当に良かったです。カミラ姉さんが無事で」
カミラ「ふふっ、ありがとうカムイ。それじゃ、お姉ちゃんも一緒に頑張っちゃうわね」
カムイ「はい、状況はあまりよくないですが。カミラ姉さんと一緒なら心配もありません」
カミラ「そう、それじゃお姉ちゃんいっぱい戦っちゃうわね」
カムイ「ええ、地上部隊は私が相手をします。低空で飛んできた敵の排除をお願いしますね」
カミラ「ええ、任せて頂戴。さぁ、行きましょう。私達姉妹の強さ、見せつけてあげないとね?」
カムイ「はい」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城『中央区・城門上部敵台』―
白夜軍弓聖A「思ったよりも地上は苦戦気味だな。新しい伝令を出して状況に対処させないと」
白夜軍弓聖B「くそっ、こっちは戦場の全体図を抑えているって言うのに、あの騎兵隊の行動を予測できなかったなんて」
白夜軍弓聖A「今さらそれを言ってもどうしようもない。それに、すくなからず俺たちの役目も終わりそうだ」
白夜軍弓聖B「なんでだ?」
白夜軍弓聖A「向こうを見ろ」
白夜軍弓聖B「向こう?」
ピカッ ゴロゴロゴロ……
白夜軍弓聖A「かなり大きなのが来る。西側はもう降り始めてるころだろう」
白夜軍弓聖B「こっちに来るのもあと少しってところか。雨が降り始めたら、視界確保どころじゃなくなっちまうな」
白夜軍弓聖A「だからできれば雨が降る前にどうにか位置を作り上げたいが、どう転がるか……」
白夜軍弓聖B「雨が降ったからって敵が変わるわけじゃないだろ。どちらにしても、偵察の役目ができないなら、違う役目に付くだけさ」
白夜軍弓聖A「そうだな――」
「ここをどうにかできなくても、俺たちにとっての勝ちはきっと変わらないからな……」
今日はここまで
ハロルドとルーナの支援で、一度もルーナを名前でハロルドは呼んでいなかったという事実を知った。
FE無双、サクラに手を上げた敵兵を無言で倒すクロムとシオンの流れが面白かった。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『大橋周辺』―
白夜軍兵士「これでどうだ!」ダッ
ザンッ
サッ
カムイ「カミラ姉さん!」
カミラ「ふふっ、任せなさい。いくわよ…」
ザシュンッ ガキンッ!!!
白夜軍兵士「ぐわああああっ」ドサッ
白夜軍聖天馬武者E「なんだこれは、なぜあのわずかな壁を崩せない!」
白夜軍剣聖D「駄目です。こちらの攻撃に対して、まったく怯む様子がありません。被害も甚大になりつつあります」
白夜軍聖天馬武者E「甚大であろうと、ここをどうにかしなければいけない。我々が守るべきは仕えるべき主とこの王国、あんな者たちに負けるわけにはいかない! 後続と合流し連隊を組う。波状攻撃でどうにかならないなら、一点に集中させるまでだ!」
カミラ「流石にがむしゃらじゃどうにもならないって思ったみたいね。一番鋭いのが来るわよ」
カムイ「ええ、ならばこちらもその一点に攻撃を仕掛けるだけです」
カミラ「敵の動きを見る限りだけど、最左翼への攻撃を考えているみたいね」
カムイ「まぁ、そこですよね。みなさん、できる限り持ちこたえてくれますか?」
カムイ軍グレートナイトD「お任せください!」
カムイ(ピエリさんたちが道を作りあげて、ルーナさんたちが来るまで持ちこたえるだけですのことです! みなさん、信じていますよ)
~~~~~~~~~~~~~~~
ザシュッ バシュンッ!
ピエリ「いくの!」パカラパカラッ!
クルクルクルッ ザシュンッ!!!
白夜軍兵士「ぎゃああああっ」ドサッ
フランネル「おらおら、こっちからも行くぜ!」シュオオンッ
ドゴンッ ザシュッ!
白夜軍兵士「がはっ……」ドササッ
ピエリ「ん、こっちに来てた矢の勢いが弱くなった気がするの」
フランネル「みてえだな。こりゃ、砦にいたハロルドとかが動いたのかもしれねえな…」
ピエリ「なの、ルーナならやってくれるはずなの。ピエリたちもこのままいっぱい敵を殺して、大きく道を作ってみせるの」
スッ!
ピエリ「みんな聞くの。カムイ様のピンチをピエリたちが助けて、いっぱい褒めてもらうの。このまま一気に道を作り上げちゃうから付いてくるのよ!」
カムイ軍パラディンA「ピエリ隊長の言う通りだ、敵の壁を突き崩し、カムイ様への道を作り上げろ!」
カムイ軍パラディン隊『おおおおおーーーーっ!!!』
ピエリ「いっけーなの!」
ドドドドドッ
白夜軍兵法者B「敵が来るぞ。全員、迎撃態勢に入れ!!!」
ピエリ「フランネル、先頭お願いなの」
フランネル「ああ、それじゃいくぜっ!!!」シュオオオンッ
白夜軍兵法者B「なっ、怪物!? 暗夜の者どもはこんなものまで従えているというのか!?」
フランネル「へへっ、驚いてる暇なんてねえと思うぜ。おらっ!!!」ダッ ドンッ
ブンッ カキィン!
白夜軍兵法者B「くっ、やる! だが、これならば!!!」サッ ダッ
ザシュンッ
フランネル「くあっ……」
白夜軍兵法者B「そこだ、もらった!」
フランネル「っ!!!」
ピエリ「させないの」ブンッ
カキィン!!!
白夜軍兵法者B「なっ……」
フランネル「え……」
ピエリ「フランネル、今がチャンスなの!」
フランネル「……だな! おらよっと!!!」ダッ グオオオッ ザシュンッ
ブシャアアアアッ ドサリッ
ピエリ「よかったの、フランネル。もう気を抜いちゃ駄目なのよ」
フランネル「ゆ、油断なんてしてねえよ! 今のは少し調子が悪かったって言うか、そういうことだよ!」
ピエリ「どういうことかわからないの。でも、フランネルが無事でよかったの」
フランネル「そ、そうか。その、ありがとな……」
ピエリ「えへへ、ありがとうなの。それよりも、敵の右側がおろおろしてるの。もしかしたら、あそこが一番押されてる場所なのかもしれないの」
フランネル「ふーん、ならあそこを突けば崩せるかもしれねえってことか。よし、攻めて押しきっちまおうぜ」
ピエリ「なの! みんな、あそこに向かって攻撃開始なの!」
パカラパカラッ ドドドドドッ
~~~~~~~~~~~~~
ルーナ「あたしが最初に仕掛けるから、援護任せたわよ!」
ハロルド「ああ、わかった。では、いくぞ!」
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「ウオオオオッ」
白夜軍兵法者A「敵の一団が来るぞ。弓兵はこちらの援護も頼む」
白夜軍弓聖A「わかった。砦方面への攻撃に部隊を割く。砦から来た敵は手負いだ、さっさと殲滅してみせろ!」
ルーナ「言ってくれるじゃなの。その思い込み後悔させてやるんだから」
チャキッ
ルーナ「今日のあたしは人一倍カンカンなんだから。さぁ、道を開けなさい!!!」
ハロルド「攻撃開始だ!」
タタタタッ
白夜軍兵法者A「ここは通さん!!!」
ルーナ「なら、押し通るだけよ! はああああっ!!!」
ダッ ザシュンッ!!!!
白夜軍兵法者A「ぐうううっ!!! だが、これしきの攻撃!!」ダッ
ルーナ「っ、浅かったみたい。まぁ、関係ないけど、ハロルド!」
ダッ
ハロルド「任せたまえ!」
白夜軍兵法者A「なにぃ!?」
ハロルド「いくぞ、ルーナくん!」ダッ
白夜軍兵法者A「くそおおおおっ」チャキッ
ハロルド「正義の鉄鎚、受けてみたまえ。でやあああっ!!!」スタッ バシュンッ!!!
ドサッ ドサリッ……
ハロルド「よーし、勝利のポー―」
ルーナ「そんなのしてないで次よ、次!」タタタタタッ
ハロルド「そ、そうだな。ブノワくんたちがどうにか支えてくれている、このまま、一気に突き進むとしよう」
ルーナ「ええ、ここら辺が一番あわただしくなってるみたいだからね。そろそろ中央の弓兵隊の場所に入り込めるわ」
ハロルド「うむ、敵が同士討ちを避けるために分散するだろう。一番薄くなった場所を一気に突き進むとしよう」
ルーナ「それしかないわね。孤立したら袋叩きになっちゃうから、はぐれないようにしなさいよ」
ハロルド「心配するな、ルーナくん!」
ルーナ「運が悪いあんただから心配なのよ……」
ダッ
白夜軍弓聖C「敵、こちらに向かってきます!」
白夜軍弓聖B「なんだと。割りこませるな。さっさと迎撃して――」
白夜軍弓聖A「やめろ、こんな場所で放てば味方にまで攻撃が当たる」
白夜軍弓聖B「では、このまま逃げ惑えというんですか?」
白夜軍弓聖A「……よし、敵の切り込みに合わせて、手薄な場所を作り上げろ。御望みどおり、正面は突破させてやろうじゃないか」
キィン キィン!
白夜軍兵士「ぐあああっ」ドサッ
白夜軍弓聖D「ちっ、全員距離を置くんだ!」
ダダダダダッ
ルーナ「ん、ハロルド。あそこ、かなり薄くなってるみたいよ」
ハロルド「うむ、戦列も崩れ始めている。あそこを突いて、道を開くとしよう!」
ルーナ「ええ、行くわよ」タタタタッ
白夜軍弓聖E「行かせるか!!!」パシュッ
サッ
ルーナ「そんな攻撃当たらないわよっ!!」ダッ チャキッ
ザシュッ
白夜軍E「ぐうううっ……」ドサッ
ハロルド「今だ、全員突撃!」
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「おおおおーーーっ!!!」
ドドドドドッ
ルーナ(行ける! もう敵の壁も無くなってるし、このままカムイ様とカミラ様に合流できるわ!)
タタタタタッ
ルーナ(本当に攻撃にビビってるのね。敵もまばらだし、あたしたちを止めようとする敵も周りにいない。本当、あたしたちだけしかいないみたいな……。あたしたちだけしかいない?)
ハロルド「よし、このまま――」
ルーナ「ハロルド、止まって!」
ハロルド「な、何? このまま、一気に中央まで行くのではなかったのか?」
ルーナ「気づくのが遅すぎた。ここは敵の戦線の中、なのにこんな広々としてるなんておかしいのよ」
ハロルド「む……たしかに、敵が回りにいないが……」
ルーナ「いないのが問題なのよ!」
ドドドドドッ
ハロルド「!」
ルーナ「!!!」
白夜軍弓聖A「奴ら、まんまと入り込んだな。よし、攻撃しろ!」
白夜軍聖弓隊『攻撃開始!』パシュッ
バシュッ
バシュシュシュ!!!
ヒュンヒュンッ
ズサッ ズサササッ
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「ぐあああっ!!!」ドサッ
カムイ軍ブレイブヒーローA「こ、後方から敵の攻撃、いや、左右からもきます!」
ルーナ「こんなのに気づかなかったなんて、最悪よ。これじゃ、袋叩きじゃない……」
ハロルド「くっ、すまないルーナくん。私の考えが浅はかだったために……」
ルーナ「今ここで後悔したってしかたないでしょ。何が何でもここを突破して、合流すればいいだけのことなんだから、くよくよしてる場合じゃないのよ」
ハロルド「……そうだな。すまなかった。もう戻ることも難しい、このまま進み合流するしかないだろう」
ルーナ「そうね、それ以外に今道はないわよ。もう、前しか逃げ道ないんだかあ、ひょっとしたらひょっとするかもしれないしね?」
ハロルド「……そうだな。よし、このまま突き進むとしよう。みんな、このまま直進したまえ!」
タタタタタタタタッ
白夜軍弓聖A「あいつら、このまま突破するつもりのようだ。わざわざ死地を進む選択をするとはな。ありったけの矢をくれてやれ!」
カムイ軍ブレイブヒーローA「敵の攻撃がまた来ます!」
ルーナ「横からも来るから、みんな気張っていきなさいよ!」
白夜軍弓聖A「よし、放て!!!!」
パシュッ!
パシュシュッ!!!
ヒュンッ
トスッ
ドスッ
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「ぐあっ……」ドサッ
ハロルド「はああっ!!! ふんっ!」ブンッ バキィ
ルーナ「こんなのに当たってなんていられないのよ!」ブンッ
カムイ軍ブレイブヒーローA「! 前方に敵弓兵!」
ハロルド「むぅ……」
ルーナ「さすがにそう来ることくらいわかってるわよ」
白夜軍弓聖B「へっ、袋の鼠だ! 攻撃準備!!!」
ルーナ「はぁ、少しはこっちの事情も考えなさいよね」
白夜軍弓聖B「ははっ、馬鹿な奴らだ。あんな裏切り者を助けに来ることなどなければ、逃げきれたものを。その後先考えない行動、死んだ後に悔いるがいい!」スッ
ルーナ「悔いるくらいなら元からこんなことしないし。それにそっちこそ、あたし達に近づかれたところで後悔しても遅いから覚悟しなさいよ」
白夜軍弓聖B「ふん。やれ、白夜の強さを、我々の正しさを証明するのは今この――」
ワーーーッ
白夜軍弓聖B「な、なんだ!?」
白夜軍弓兵「こ、後方で何かが――」
ドゴンッ
フランネル「おらっ、逃がさねえぜ!!!」ドゴンッ バシュッ!!!
白夜軍兵士「ぐあああっ」ドササッ
白夜軍弓聖B「な、なんだこいつは!!!」
フランネル「よし、なんか広い場所があるから何かと思ったけど、ここで当たりみたいだな!」
ルーナ「あ、あれって!」
ハロルド「ははっ、私の不運もどうやらここまでのようだぞ、ルーナくん」
ルーナ「不運ってそんなの自慢にもならないわよ。でも、今回ばっかりはそうみたいね」
白夜軍弓聖B「か、構うな。まずは向こうの暗夜兵たちを――」
パカラパカラッ
白夜軍弓兵「て、敵の騎馬隊です!!!」
白夜軍弓聖B「なんだと!?」
ピエリ「フランネル、すごいの! よーし、みんなピエリについてくるの! 敵の穴をさらに広げちゃうのよ!!!」
カムイ軍パラディン隊「オオオオオオーーーッ!」
ドドドドドドッ
白夜軍弓聖B「慌てるな! 半数は後方の騎馬隊に攻撃、残りは――」
タタタタッ
白夜軍弓聖B「っ!」
ルーナ「さてと、可愛がってあげるわ!」ダッ
ドゴンッ
白夜軍弓聖B「がっ!!!」
ルーナ「はああっ!!!」クルクル チャキッ
ザシュンッ
白夜軍弓聖B「ぐふっ……」ドササッ
ルーナ「後悔しても遅いっていうのはこういうことよ」
白夜軍弓聖A「くっ、貴様ぁぁぁぁ!」チャキッ パシュッ
ルーナ「!」
パカラッ
ピエリ「させないの!」パシンッ
ルーナ「えっ、ピエリ?」
ピエリ「許さないの。ピエリの前にひざまづくのよ!!!」パカラッ
白夜軍弓聖A「馬鹿め、この距離ですぐに避けられるとでも!!!」パシュシュッ
ピエリ「よっ、はっ、当たらないのっ」パカラッ パカラッ ダッ
白夜軍弓聖A「なにっ!?」
ピエリ「えへへ、これでバイバイなの!」クルクルクルッ ザシュッ
ブシャアアアッ ドサッ
ピエリ「ピエリの勝ちなの! あ、ルーナ、御迎えに来たのよ。もう少し早く侵攻してほしかったの」
ルーナ「こっちはこっちで色々あるのよ」
ピエリ「それじゃ、乗るの。カムイ様達が待ってるの!」
ルーナ「え、乗っていいの?」
ピエリ「もちろんなの。もう道はできてるの。早くカムイ様と合流しなくちゃ駄目なの」
ルーナ「そ、そうね。それじゃ、よいしょっと」
ピエリ「ちゃんと掴まってるのよ。いっぱい揺れるから、振り落とされちゃったら大変なの」
ルーナ「わ、わかったわよ。これでいい?」ギュウッ
ピエリ「うん、これでいいの。ルーナも無事でよかったのよ」
ルーナ「こんなところで死ぬ気なんてないから。その、助けてくれてありがと……////」ボソッ
ピエリ「ん、何か言ったの?」
ルーナ「な、なんでも無いわよ!」
ハロルド「おーい!」
ピエリ「あ、ハロルドなの! ピエリはここなの!」
ハロルド「ピエリくん。ありがとう助かった。あのままでは、さらに犠牲が出るかもしれないところだったからな」
ピエリ「えへへ、ピエリ上手にできたの。褒めてほしいの」
ハロルド「ああ、すごいぞピエリくん!」
ルーナ「そんなことより、早く合流よ、合流!」
ピエリ「わかってるの。フランネル」
フランネル「ん、なんだ?」
ピエリ「ここはお任せするの。他のみんなと一緒にここの敵をいっぱいいっぱい殺しておいてほしいの」
フランネル「ああ、いいぜ! そう言えばブノワの奴がいねえみたいだけど……」
ハロルド「ブノワくんの部隊は砦からの敵を食い止めているところだ」
フランネル「そっか、ならそこまで行って連れてこないとな」
ピエリ「うん、フランネル。任せたのよ! ルーナとハロルドはカムイ様と合流するの!」
ハロルド「わかった。よし、このままカムイ様の援護に向かうぞ!」
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「オオオオーーーーッ!」
ピエリ「ピエリたちも行くの」
ルーナ「そうね。それにしても、またあんた血だらけね」
ピエリ「そう? 褒められて嬉しいの」
ルーナ「別に褒めてるわけじゃないわ。だけど、もう奇麗になりたいって思って戦ってるわけじゃないんでしょう?」
ピエリ「うん、ルーナが教えてくれたの。だから、ピエリただ戦うだけなのよ。ピエリが戦いたいから戦ってるの。守りたいから戦ってるのよ。今までのピエリとは一味違うのよ!」
ルーナ「そう、笑顔が血で台無しだし、かなり禍々しいけどね」
ピエリ「えへへ。それじゃ、カムイ様の元へ行くのよ!」ヒヒーン
パカラパカラッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城中央区『城壁裏』―
バサバサッ
ミタマ「どうですか?」
ミタマ隊聖天馬武者A「正直、状況はよくありません。ヒノカ王女様の策は形にはなりましたが、それもここまででしょう。中央の戦列は敵の騎馬隊によって崩壊を迎えつつあります」
ミタマ「なるほど、はぁアサマ様のおっしゃった通りに事が進んでいるということ、出番がなければここで眠っていられると思ったのですが……。余の期待 触れることすら 難しき。何事もそううまくはいかないということですわ」
ミタマ隊聖天馬武者A「では……」
ミタマ「ええ、わたくしたちはそのための部隊ですから。隠し道を使って谷に出ます。アサマ様もこちらが動くことは予想されているでしょう」
ミタマ隊聖天馬武者A「しかし、ヒノカ王女様が許されるかどうか……」
ミタマ「その懸念はもっともです。でも、城壁前で敵を抑えるのは難しい状態、少なくとも今のままでは逆にヒノカ王女様の命が危ないというものですわ」
ポツ ポツツッ
ミタマ隊聖天馬武者A「これは……」
ミタマ「……雨が降ってきました。この中では天馬も満足に動けなくなってしまいます。動きましょう。どうやらとても大きなものが来るようです」
ミタマ隊聖天馬武者A「ですね。わかりました、部隊にはすぐに配置に付くように伝えます」
ミタマ「ええ、お願いしますわ」
バサバサバサッ
ミタマ「アサマ様も嫌なことをわたくしに頼みますわ。こういうことを頼まれるから戦いに参加などしたくなかったのですけど……。仕方無いですわね」
ポツリポツリッ
ミタマ(はぁ、雨の中を走り回りたくありませんけど仕方ありませんわ。なにせこの戦況になっては――)
(敵が外に中にもいる状態……、とても安心などできるものではありませんから)
今日はここまで
ミタマがアサマの子供でなかった場合、確実にこき使われる弟子的なものなんだと思っている。
あと、ピエリとルーナはもっとニコニコし合ってほしい。
FE無双クリアした。最強の戦術は弓キャラにダブルで魔法を付けて、敵のボスを角に追いやることでした。
マクベスプレイアブル来るって思っていいんですよね?
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『大橋前』―
アクア「サクラ、大丈夫?」
サクラ「はい、大丈夫です。みなさんの手当ても終わりました」
アクア「それじゃ、そろそろ歩を進めることになるから準備をしておいて」
サクラ「え?」
アクア「後方の敵の戦列に穴が開いたみたい。砦にいた味方が合流してくるはずよ」
サクラ「ほ、本当ですか」
アクア「ええ、この流れに合わせてカムイと合流しましょう。無茶をしているようなら止めないといけないから」
サクラ「正直、無茶をしてると思います。カムイ姉様はそういう人ですから」
アクア「そうね。人が見ていないとすぐに無茶をするから、こっちの気も知らないで……」
サクラ「ふふっ」
アクア「?」
サクラ「いいえ、アクア姉様って本当にカムイ姉様のことを大切に思っているんだなって」
アクア「……サクラ、それは勘違いよ」
サクラ「勘違いですか?」
アクア「ええ、カムイは私達にとって大切な存在じゃない。そんなカムイが倒れたら全てが終わってしまうでしょう? だから、心配するのは当然ということよ」
サクラ「わかりました、そういうことにしておきますね」
アクア「そういうことって、サクラ――」
エルフィ「あのアクア様……」
アクア「なに? 今私は――」
エルフィ「後続が到着したみたい…。ピエリにルーナ、ハロルドも一緒です…」
アクア「そう。サクラ後でその認識を改めるために、お話をしましょうね?」
サクラ「か、顔が怖いです。アクア姉様」
パカラパカラッ
ピエリ「あ、エルフィなの! こんなところにいたのね」
ハロルド「エルフィくん、状況はどうなっているのかな?」
エルフィ「正直、正面があとどれくらい持ってくれるか分からないわ。カムイ様とカミラ様、ボウナイト隊が前線を抑えてくれているみたいだけど」
ルーナ「もうぎりぎりでしょ? ラズワルドの奴、自分だけカムイ様にいいところ見せようとして、あたしがその野望を打ち砕いてやるんだから」
アクア「どちらにしても、正面の敵攻勢を止めないことには何も始まらないわ」
サクラ「はい。それにグレートナイトの皆さんもかなり傷ついているはずです、早く手当てをしてあげないと」
ピエリ「そうなの? ならルーナは降りて、サクラ様がピエリの馬に乗るの!」
ルーナ「ちょ、あたしが一番乗りするって話だったでしょ!? それに乗るんだったらエルフィの馬でも……」
ピエリ「ピエリのお馬さんはこの中で一番早いお馬さんなの」
エルフィ「そうね、わたしの馬もそれなりに早いけど、装備があるから一番早いとは言えないわ。それに前線のみんなが戦っている時間を考えれば、手当は早い方がいいと思う…」
ルーナ「ううっ、わかったわよ。譲ってあげる、その代りちゃんとみんなを手当てするのよ!」
サクラ「は、はい! がんばります!」
アクア「それじゃ私たちは、走ってカムイの元まで行きましょう?」
ルーナ「結局徒歩ってことでしょ。ああもう、馬に乗って颯爽と登場したかったのに!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ポタッ ポタタタタッ
カムイ「どうやら雨が降り出したようですね」
カミラ「ここの地盤、あまり雨に強いようには見えないわね」
カムイ「このまま戦うとなると、重装備の方々は足を取られかねません。どうにか、雨が本格的になる前に城壁まで近づきたいところですけど……」
カミラ「でも、そう易々と手放してくれ無さそうよ。向こうも、こちらをここに踏みとどまらせるつもりのようだから」
白夜軍聖天馬武者F「雨が強くなる前に相手の陣を破壊しろ! ここを崩せばこれ以上の新軍は出来なくなるはずだ!」
白夜軍剣聖D「いくぞ、この攻撃で崩し切る!」
カムイ軍グレートナイトD「敵を絶対に通すな! ここを食い止めろ!!!」
ウオオオオーーーーッ
カキィン キィン!!!
カムイ「はあああっ!!!」ザシュンッ
カミラ「それっ!」ドスンッ
白夜軍兵士「ぐああああっ」ドサッ
カムイ「くっ、かなり押されています」
カミラ「陣形を弓形にして耐えてはいるけど、敵の攻撃が集中しているここら一帯は、もう限界に近いわ」
カムイ「ええ、流石にこれは厳しいところです。敵は右翼陣形を貫こうとしているみたいですから、応援が来てくれると助かるのですが」
カミラ「グレートナイトの損耗も激しくなっているわ。せめて手当でもできればいいのだけれど……」
カムイ「サクラさんがいてくれればいいんですが。もしも、ここにいてくれたとすれば、それは中央のグレートナイト隊に後続のルーナさんたちが合流したという証拠でもありますよね」
カミラ「ええ。できれば今すぐにでも来てもらいたいところだけど。そううまく――」
パカラパカラッ
カムイ「ん?」
サクラ「カムイ姉様たちはどちらでしょうか?」
ピエリ「あ、一番攻撃されてる場所にいるの。あそこに行くけど、サクラ様平気なの?」
サクラ「はい、大丈夫です。向かってください」
ピエリ「わかったの!」
カミラ「驚いたわね。こうもうまくいくものだなんて」
カムイ「ええ、私達にもようやく突破口が与えられたということです。この機を逃すわけにはいきませんね」チャキッ
カミラ「ふふっ、そうね。ここが大橋までを落とす絶好のチャンスだもの、もぎ取ってあげましょう?」
カムイ「はい」
パカラパカラッ
ピエリ「サクラ様はグレートナイトの皆を元気にするの。ピエリはこのまま戦いに向かうのよ」
サクラ「は、はい、分かりました。皆さん、遅くなってごめんなさい。今から手当を行いますね。そ、その、それまで頑張ってください」
カムイ軍グレートナイト隊(サクラ様に手当てしてもらえる? ここで先に死んだら手当てをしてもらえない……。つまり死ねない!)
カムイ軍グレートナイトD「全員、死ぬ気で敵を受け止めろ!」
オオオオオーーーーーッ‼‼‼‼
カムイ「なんでしょうか、今グレートナイトの方々の士気がぐっと上がった気がします」
カミラ「ふふっ、勇ましくて何よりよ。で、あなたが来てくれたということは、中央突破はうまくいったみたいね」
ピエリ「なの。カムイ様、遅れてごめんなさいなの」
カムイ「上出来です、ピエリさん。本当に助かりました」
ピエリ「えへへ、ピエリ頑張ったの!」
カムイ「はい、よくやってくれました」ナデナデ
ピエリ「んふふー、カムイ様にナデナデしてもらえたの。ここからはピエリも戦いに参加するの、いっぱいやっつけちゃうの!」
カムイ「それで、残りの方々は?」
ピエリ「大丈夫なの。敵が右翼に寄ってるから、それを横からえいってするように指示を出してあるのよ」
カムイ「わかりました。では、私達はここを抑え続けましょう。左翼からの援軍がもうすぐ到着します!皆さん、あとわずかな時間頑張ってください!」
オオオオオーーーーーッ‼‼‼
~~~~~~~~~~~~~~~~
ドドドドドドッ
カムイ軍グレートナイトE「むっ、後方より援軍が来るぞ」
アクア「こちらに気づいたみたいね。ルーナ、指示を出して」
ルーナ「わかったわよ。エルフィ、ちょっと頭低くして」
エルフィ「ええ、これでいい?」
ルーナ「上出来よ!」
サッ ササッ ススッ バッ
カムイ軍グレートナイトE「なるほど。よし、右翼陣隊列を再編成! 隙間を作り上げて後方部隊を前方へ送りだせ!」
ドドドドドッ
ルーナ「ふふん、さすがはあたしの指示ね。すぐに伝わったわ」
アクア「今の下手なダンスみたいな動きでよく理解できるものね。感心するわ」
ルーナ「へ、下手なダンスって!!!」
アクア「安心しなさい、カムイよりはマシだから」
ルーナ「納得いかないわ。もう一度、あたしの華麗な指示を――」
アクア「エルフィ、グレートナイト隊を率いて先陣をお願い」
エルフィ「わかったわ。ハロルド、他のブレイブヒーローのみんなは準備できてる?」
ハロルド「もちろんだ、エルフィくん!」
エルフィ「そう、なら行くわよ!」バシッ
ヒヒーーーーンッ!!!
ドドドドドドッ
白夜軍兵士「敵戦列右側に動きあり! 隊列に隙間が作られています!」
白夜軍聖天馬武者F「なに!?」
白夜軍兵士「て、敵重騎兵隊です。歩兵も続いてやってきます!」
カムイ「どうやら間に合ったみたいですね。ここからは一転攻勢で行きますよ」
カミラ「ええ。いっぱい可愛がってくれたお礼をしてあげないとね?」
バサバサッ
カムイ「ラズワルドさん!」
ラズワルド「うん、わかってるよ。後方部隊への攻撃はここまで、前方敵陣へ正射! 一回だけでいい。それだけで僕たちの脅威を相手は理解できるはずだからね」
カムイ軍ボウナイト部隊「わかりました。目標変更、射てぇ!!!」
バシュッ バシュシュッ!!
ヒュンヒュン ザシュッ
白夜軍聖天馬武者F「な、なぜだ、貴様らでは無く私達が……」ドササッ
白夜軍剣聖E「くそっ、この攻撃ではくそっ、距離を取るんだ!」
タタタタタッ
カミラ「敵が距離を取り始めたわ」
カムイ「……このまま敵を押し込んで、城壁まで突き進みましょう。負傷兵の方々は護衛と共に後方の敵戦列の隙間から森林地帯まで後退してください。残りは私と共に大橋の先、城壁を目指します!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城・中央区『城壁前』―
白夜軍兵士「敵弓兵が前衛部隊に攻撃を開始、釘付けにされかけています。このままでは、敵重騎兵の混成部隊に挟撃されかねません!」
ヒノカ「くっ……」
ヒノカ(何が足りないというんだ。私はこれほどにお前を、お前を助けだそうとしているのに。なぜ、私の手を拒むんだ……カムイ)
アサマ「ヒノカ様」
ヒノカ「アサマか、増援を送る準備をしろ」
アサマ「……いいえ、増援は送るのはよしましょう。残念ですが、大橋はここまでのようです」
ヒノカ「それはここで退くというのか!? アサマ、何を言っているんだ、ここで退くことなど――」
アサマ「残った戦力では彼らの大橋到達を抑えることはできないでしょう。雨が本格化する前に後退命令を出すのが賢明です」
ヒノカ「ならば私も共に出る。あんな野蛮な者たちなどに負けはしない、あんな奴らにこれ以上道を進ませるわけにはいかない」
アサマ「それは理解できますが、策もなく兵を送っても意味などありませんよ。もはや敵の戦列はこちらの規模を瞬間的に越えているのですから」
ヒノカ「くっ……」
アサマ「ここは大橋を捨て防衛に回るべきでしょう。どうにかセツナさんたちが竜騎兵の進出を抑えてくれている、今がその機会です」
ヒノカ「……」
アサマ「ヒノカ様」
ヒノカ「……兵たちに城壁まで撤退するように伝えてくれ。ここから金鵄隊は私が指揮を執る、前線で孤立している兵は天馬隊で救出し、城壁内で手当てをし動けるものは防衛に当たらせるんだ」
アサマ「わかりました」
ヒノカ「……いくぞ」
バサバサっ
アサマ「もはや、見る影もないとはこのことでしょうか……」
アサマ(かつてのあなたなら、この被害を前にして兵の撤退を一番に考えたでしょうに……)
アサマ「悔やみきれませんね。本当に……」
白夜軍山伏隊「アサマ様、いかがしますか?」
アサマ「ヒノカ様の命令通りです。大橋周辺の兵は城壁まで退くように指示を、私達は救える者を回収するとしましょう」チャキッ
白夜軍山伏隊「はっ、わかりました」
アサマ「セツナさん、弓兵隊へ伝令を、そのまま竜騎兵の足止めを続けるようにと、金鵄に天馬隊は救出に回るので、竜騎兵に動かれては堪りませんからね」
白夜軍兵士「わかりました!」タタタタタッ
アサマ(さて、ミタマさんもこの状況を見て動き始めている頃ですか。こちらは見える範囲の人々を救うとしましょう)
アサマ「では、仕掛けますよ。……七難即滅」シャランッ
シュオンッ!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
カムイ「やあああああっ!!!」ダッ ブンッ
白夜軍剣聖E「くそ――」シュオンッ
スカッ
カムイ「え?」
カムイ(敵が消えた!? これは一体――)
シュオン シュオンッ!!
カミラ「カムイ、谷底から新しい敵よ。注意して」
カムイ「そちらが主力ですか、ボウナイトの皆さんはそちらの迎撃を――」
バサバサッ
カムイ「え?」
ミタマ「そうはいきませんわ」タッ パシュシュッ
カムイ「はぁっ、せいっ!!!」キィン カキィン
ミタマ「撃ち落とされてしまいました、でもこちらに意識を向けていただけただけでも十分ですの」
カムイ「あなたは……」
ミタマ「はじめまして、わたくしはミタマと言います。あなたがカムイ様ですね、お話は聞いております。白夜を裏切った最低な王女でしたか?」
カムイ「ええ、そういうことになります」
ミタマ「否定はされないのですね。結構ですわ」チャキッ パシュッ
カムイ「!」サッ
ミタマ「はぁ、やはり当たらない、こんなものより筆を握っていたいものですのに」
カムイ「なら、このような場所に来なければいいだけのことです。私は白夜を蹂躙することが目的ではありませんから」
ミタマ「だといいのですが、その目を閉ざした澄まし顔が本当はなにを考えているのか、知れたことではありませんけど。どちらにしても、わたくしはわたくしの仕事を始めるだけですの」
カムイ「……そうですか」
ミタマ「ええ、生憎殺生は苦手です。なので、このようなことしかできませんが、十分に効果はありますので安心してくださいまし」カラランッ
シュオンッ
カムイ「ぐっ!!!」
カムイ(これは弱体呪術!?)
カミラ「カムイ!」バササッ
ミタマ「さて、準備もできました。今です」
ミタマ隊聖天馬武者「はい、ミタマ様! 全員、行け!」
ミタマ隊聖天馬武者達『いきます!』バサササササッ
カミラ「くっ、カムイには指一本触れさせないわ」
ミタマ「……」
バササッ バササッ
バササッ バサササッ
カミラ「え」
カミラ(私たちを無視して後方に向かった?)
カムイ「カミラ姉さん、彼らを追ってください! 彼らの目的はおそらく後方部隊への――」
ミタマ「ふふっ、今動けばその背中を貫かせてもらいますわ。動かないでくださいまし」
カミラ「そういうことね……」
ミタマ「できれば、殺生等という無粋な真似をわたくしにさせないでくださいまし」チャキッ キリリリッ
カミラ「この状況でよく言うわね。あなたの目的は何かしら?」
ミタマ「ここにお二人を足止めすることですわ。それ以外にすることなどありませんもの。わたくしは別に白夜を守るためにいるのではありません、ただ――」
ミタマ「ここで戦っている方々に、少しでも多く生き残ってもらうこと。それがわたくしたちが上から賜った命令ですの……」
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『地下牢』―
リョウマ「……ヒノカ」
リョウマ(もう幾日の時間が過ぎたのか、それはもうわからない。スサノオ長城での戦闘はもう始まっている頃だろうか、それとももう終焉を迎えているのか)
リョウマ「なにが白夜の王だ……」
リョウマ(俺は、俺自身の力で何ものも救うことが出来ない。こうして牢の中で、結果だけを待つ事しかできないとはな……)
シュタッ
リョウマ「む?」
サイゾウ「リョウマ様……」
リョウマ「サイゾウか、外はどうなっている?」
サイゾウ「はい、王都周辺に混乱が生じ始めています。ユキムラ様の筋書き通りにことは進んでいないようです」
リョウマ「テンジン砦を暗夜が破壊したという報は、戦意の向上させるどころか、逆に臣民たちに恐怖を与える結果となったということか。ユキムラはどうしている?」
サイゾウ「……部隊の再編を行っているようですが。現在の戦力で王都の防衛を行うことはほぼ不可能でしょう。最悪、民間人を強制的に兵士として運用することすらあり得るかと」
リョウマ「……そうならないためにも、多くの者には生き残り王都に戻って来てもらわなければならない。そのために王都にいた未だに俺たちを信じてくれている者たちを向かわせたんだ。これは俺の身勝手な考えだ。俺にも失いたくないものはある、それがたとえ修復できないとわかっているものだったとしてもだ……」
サイゾウ「リョウマ様」
リョウマ「…すまん、このような話をするべきではなかった」
サイゾウ「いいえ。そうした事を話してくださること、臣下としてとてもうれしく思っています」
リョウマ「ふっ……。それで俺のことをユキムラはどう民に説明しているんだ?」
サイゾウ「いいえ、表向きには何も発言はありません。ですが、すでに噂は広まっています。それもまた人々から白夜への関心を削いでいる理由でもあるのでしょうが。このような状況を続けるのならば、嘘であろうとも奴らの作り上げた真実を公にすると思っていましたが」
リョウマ「ことはそううまくいかないということだ。ユキムラはただ一つの目的のためだけに戦っている。使えるものは使おうと考えるはずだ。この長城での戦いも、その一つに過ぎないだろう。勝敗の行方をユキムラは気にしてなどいないはずだ。たぶん、奴の目的は暗夜に対して決定的な悪意を植え付けることだけだ」
サイゾウ「……まさか」
リョウマ「……だからこそ、俺は彼らを送ったんだ。俺では手の届かない場所に大切な者を守るために――」
「ヒノカを戦火の薪にさせないためにな……」
今日はここまで
暗夜王国で戦う相手は国ではなく、こういった人間の中に芽生える悪意だと思っている。
FEH、やっとピエリがきた。うれしいです(青の割合80%越えしてて唖然とした)
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城・中央区『大橋、砦周辺』―
カムイ「少しでも多くに生き残ってもらうことですか?」
ミタマ「ふふっ、こんな話をあなたにしたところでどうにかなるとは思いませんでしたけど…。話に聞いていたような血の通っていない化物、というわけではありませんのね」
カムイ「……あなたは私を恨んでいないのですか?」
ミタマ「そういう問題ではありませんわ。わたくしは自分のことを第一に考えておりますの」
ミタマ「確かにこうして戦火が広がり、白夜が疲弊していった背景にあなたが関係しているのは間違いないでしょう。でも、それは白夜の民であれば少なからず持ち合わせているものです。わたくし個人があなたを恨む理由はありませんわ」
ミタマ「それでも強いてあげなさいと言われれば、静かに眠る時間が減ってしまったというところでしょうか。はい、これだけですわね」
カムイ「そ、それだけですか?」
ミタマ「ええ」
カミラ「……変わった子ね。兵士を助けたいのなら、今すぐ降伏したらどうかしら?」
ミタマ「ヒノカ様にそれが通るわけありませんし、それをしてはすぐにことが動いてしまいますわ。リョウマ様の望んでいない結果を早急に導くわけにはいきませんもの」
カムイ「リョウマさんの望んでいない結果……?」
ミタマ「ええ、少し考えればわかることですわ。このような戦場で会い見える敵に派閥が二つあるとするなら、どちらも混ざり合っていると考えるのが筋というもの。ですが、その志は決して同じではありませんわ」
カムイ「……まさか、ここにも強行派の方々が混じっているというんですか……」
ミタマ「そうですわね。すべての人間が王族、ヒノカ様に忠誠を誓っているという証拠は何処にもありませんから、少なからずそういう方々が混じっていることは不思議ではありませんの。問題はその中でも異質な志を持っている者がいることですわ」
カムイ「異質な志?」
ミタマ「ええ、起きた出来事を歪曲して伝えようという方々がその筆頭ですわね。あの方々にとって、一個人の死を自分たちに都合のいいものに変えることは良心の痛まぬことなんでしょう。それが重要な方であるならば特に……」
カムイ(……都合のいいように変える……。今、ここで重要な立場にいる人、白夜側で考えるならヒノカさんくらいしか……)
カムイ「まさか、彼らはヒノカさんを……ここで殺すつもりなんですか……」
ミタマ「それを信じるか信じないはカムイ様にお任せいたします。ですけど、リョウマ様はそう推察していますの。白夜を守るために戦った王女は奮戦むなしく暗夜に殺されてしまった。多分勝ったとしても、隙を突かれて暗夜の卑劣な攻撃にと着色するかもしれません。どちらにしても、ヒノカ様をユキムラ様は見限っていますわ」
カムイ「ヒノカさんにそんな悲しすぎる道を絶対に歩ませるわけにはいきません。私が必ず止めてみせます」
ミタマ「少しは疑ってもいいと思うんですけど……。わたくしがこうしてここに来たのはそのことをあなたにお伝えしたかったからですわ」
カムイ「……なぜそれを私たちに伝えたりしたのですか? これは明らかに白夜を裏切る行為ですよ」
ミタマ「今の白夜に忠誠など誓っておりませんわ。わたくしが忠誠を誓うのはかつてのゆったりと歌を愉しむことのできる穏やかな場所ですもの」
カムイ「……いつかそうなる日がやってきます」
ミタマ「そう思いたいですわ。さて、わたくしたちの仕事も一段落したようですし、そろそろ失礼させていただきます」
カムイ「え?」
ヒュオオオオオオオオオンッ‼‼‼‼
カミラ「この合図、こちらのじゃないわね。ん?」
バサバサッ
ミタマ隊聖天馬武者「ミタマ様、こちらへ。先頭集団のほとんどを救出しました。大橋からの弓部隊援護がある間に私達も戻りましょう」
ミタマ「はい、もうここに用はありませんわ。あとのことは、こちらのリョウマ様が信じるお方に任せることにしますわ」カランッ
シュオンッ シュオンッ
カミラ「あっ……」
カムイ「くっ、また呪いを掛けたんですか」
ミタマ「はい、背後を襲われてはかないませんので。それに動いたら攻撃すると見せかけることが出来ますから。今にも飛びかかってきそうな方々が数名、睨みを利かせているので許してくださいまし」
カムイ「え?」
ピエリ「なにかカムイ様にしたの! 今から八つ裂きにしてやるの!」
アクア「下手に動いたら危ないわ、今は様子を見て攻撃するようなら、一気に攻め倒すわよ」
サクラ「カ、カムイ姉様!」
ルーナ「サクラ様、少し下がってて敵はほとんど引き始めたけど、何が起きるかわからないんだから」
カミラ「そうみたいね……」
カムイ「みなさん……」
ミタマ「それでは、失礼いたしますわ」バサバサッ
カムイ「うっ、ようやく動けるようになりましたね」
タタタタタッ
アクア「カムイ!」
カムイ「あ、アクアさん。私は大丈夫ですよ」
アクア「呪いを掛けられて動けなかったのによく言うわ……。それに傷もこんなに」
サクラ「すぐに手当てをしますね。えいっ」カラランッ
カムイ「ありがとうございます。それで状況は?」
ルーナ「あの谷から出てきた敵の増援、戦闘しないで杖使って兵を回収するだけだったわ。おかげで戦場が殺風景になっちゃったわよ」
カムイ「あのわずかな時間でですか?」
ルーナ「すごいのなんのって、飛んできた奴らが兵を拾ったすぐに杖で引き寄せてって感じ。こっちの部隊に目もくれないでそのまま城壁まで飛んでいったわ」
カムイ「なんですかそれ、私も気配で感じたかったです」
ピエリ「ともかくなの、もう砦周辺に敵はいないのよ。大橋の敵も城壁に向かってるから、もうここら辺は捨てるつもりだと思うの」
アクア「だけど、肉薄できるのは今の内よ。この雨、もっと強くなると思うわ」
カムイ「そうですか、進めばもう後戻りはできないということですね……」
カムイ「……」
カミラ「カムイ、さっきの話、信じるつもりなの?」
カムイ「そうですね。もしかしたら罠かもしれません。私とヒノカさんが一緒にいる場を作り上げるための嘘の可能性もあります」
カミラ「そうね」
カムイ「でも、ミタマさんは敵である私に話をしてくれました。しかも、殺される可能性があるのに、私の前に来て話してくれたんです。たとえそれが仕事だとしても、そうできるものではないと思います」
カムイ(それに強行派がヒノカさんの命を狙っているなら、まだ戦況が落ち着く前に見つけ出して叩かないといけません。彼らにとっては一瞬でもその機会が得られればいいはずです。それを作り出してしまったらそれまでなんですから)
カムイ(同時に、ヒノカさんたちを打倒してここを制圧する必要もあります。それはどうあがいても避けられない道。たとえそれでヒノカさんが私を恨む結果になったとしても……私が優先すると決めたのはヒノカさんの事です。なら、私は戦いに勝ってヒノカさんの戦いを終わらせないといけません……。なら、もうするべきことは決まっています)
カミラ「ふふっ、決まったみたいね?」
カムイ「はい、まずは全軍兵士に連絡を、このまま大橋を渡り敵城壁に接近します。負傷した方々は森林地帯まで後退、体を休めるようにと」
カミラ「ええ、伝えておくわ」
カムイ「ピエリさんはラズワルドさんとフランネルさんに合流の指示を、かなり動いてもらうことになると思いますので覚悟してください」
ピエリ「わかったの! みんなを集めてくるのよ!」
パカラパカラ
エルフィ「カムイ様、ケガはない?」
カムイ「ええ。どうにか大丈夫です。エルフィさんはハロルドさんにブノワさんと共に直ちに城壁へと向かうための陣を作り上げるようお願いします。おそらく、敵は城壁上部から攻撃を仕掛けてくるでしょうから、頭上からの攻撃に注意してくださいね」
エルフィ「わかったわ。グレートナイト隊は大橋に集まって、ジェネラルとブレイブヒーローのみんなも合流して! ハロルド、こっちよ」
ハロルド「わかった、行くぞエルフィくん!」タタタタタッ
カムイ「アクアさんにサクラさん、ルーナさんは私と一緒に来てください。私たちはヒノカさんとその周辺にいる敵を強襲します」
アクア「わかったけど、何かあったみたいね?」
カムイ「悠長にことを構えているわけにはいかなくなったというのが本当のところです。詳しい話は道中でもいいですか?」
アクア「ええ、それで構わないわ」
カムイ「はい。では、いきましょう」
タタタタタッ
カムイ(彼らの好きにはさせません。そんなことのためにヒノカさんは戦ってきたんじゃないはずです。なにより――)
(私もあなた方に苦しめられるために戦ってきたのではないのですから……)
今日はここまで
スサノオ長城戦、色々と長々とやってしまって申し訳ない。
ここから後半戦に入ります。
七難即滅を使った戦略、暗夜ルナ多クミ1ターン撃破は芸術的だと毎度思う。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『大橋』―
エルフィ「城壁からの攻撃に注意して、壁沿いに味方が通れる道を作りましょう」
ブノワ「ああ。ハロルド、敵が来るまでは俺たちの後ろにいるようにしてくれ…」
ハロルド「助かるよ。しかし、もう砦方面へと戻るのは難しい状態になってしまったな」
ブノワ「ああ、あの泥濘では素早く動けそうにない。敵が退いたとはいえ、谷底からまた奇襲される可能性もある。そうなってしまえば、あそこで攻撃を防ぎきるのは難しいだろう…」
ハロルド「ああ、しかし、複数の敵が砦に逃げ込んだと聞いているが……」
エルフィ「そのことだけど、地下に大きな坑道があったらしいわ」
ハロルド「坑道?」
エルフィ「ええ、それはこの谷に続いていたみたい。もう誰もいなかったらしいわ…」
ハロルド「なるほど、そこから脱出したということか。しかし、こちらも向こうもこれ以上の戦闘が無かったのは良いことだ」
ブノワ「ああ、どうにかこうして合流することもできたし、なによりできれば戦いたくはなかった…」
エルフィ「そうね。でも、戦い続けるために後退したみたいだから、状況的に変わっているわけじゃないわ」
ブノワ「……。すでに向こうは戦いを再開するつもりのようだ…」
ハロルド「む……」
スタッ スタッ
白夜軍剣聖A「よし、全員準備は出来ているな。縄を斬れ、敵を一人たりとも城壁にあげるな‼‼」」
白夜軍兵士「わかりました」ザシュッ
パラパラッ
エルフィ「城壁から直接降りてきたみたい。大橋まで押し込まれないようにしないといけないわ。グレートナイトのみんな、準備は良い?」
カムイ軍グレートナイト隊「はい!」
エルフィ「ええ、それじゃ突撃よ!」
ドドドドドドッ
ブノワ「大橋に敵を近づけさせないようにするぞ…。防御姿勢前進…」
カムイ軍ジェネラル隊「はっ、全体進め‼‼‼」
ザッ ザッ ザッ
ハロルド「私たちも続くぞ! 正義の力を見せる時だ!」
カムイ軍ブレイブヒーロー隊「オオオーーーッ!」
タタタタタタッ
白夜軍剣聖A「いくぞ! 白夜の底時からを見せつけてやれ、突撃‼‼‼」
白夜軍兵士「ウオオオオオオオオーーーーーッ!」
ドドドドドドッ
キィン
カキィン!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
アクア「先頭集団が交戦状態に入ったみたい。残念だけど城壁までは生かせてくれなかったみたいよ」
カムイ「さすがに触れさせてはもらえませんでしたか。竜騎兵の皆さんは?」
カミラ「強い雨と風に翻弄されてるわ。それと悪い知らせよ。敵の弓兵部隊は撤退していないみたい。竜騎兵の動きを牽制するために弓砲台も使用しているみたいね」
カムイ「……城壁攻略に竜騎兵の皆さんの力が必要です。どうにかして敵の弓兵を退かせないといけません」
ルーナ「どうするわけ、さすがに竜騎兵隊の援護なしに城壁に挑むとなると、入り口から堂々と上がっていくしか方法がないんだけど」
サクラ「でもそれをしたら敵にも味方にも大きな被害が出てしまいます」
カムイ「ええ、できればそれは避けたいところです」
カムイ(ミタマさんの口ぶりでは、王族派は先頭に出てくるはずです。必然的にそうなってしまえば、城壁上部に残る多くの者は強行派。段階を踏んでいては、不利と取られた瞬間にことを起こされる危険性があります……)
カムイ「さすがに、そうなってはまずいです。ここは、どうにかしないといけません」
カムイ(どうにかするには一つしか手はないのが現状ですか……。かなり危険な任務ですが、今はこれしか……)
カムイ「ラズワルドさん」
パカラパカラッ
ラズワルド「どうしました?」
カムイ「竜騎兵部隊を孤立させている弓兵隊へ攻撃を行ってもらえませんか。場所は城壁東側のようです」
ラズワルド「……敵陣深くの場所ですね。ここ一帯の制圧はどうするんですか?」
カムイ「ここ一帯を落とすよりも先に、竜騎兵部隊との合流を終えておきたいんです。竜騎兵の皆さんがこのまま満足に動けなくなると、城壁を落とす際に敵にも味方にも甚大な犠牲が出てしまいます。それは出来る限り避けなくてはいけません」
ラズワルド「敵でもできる限り助けるっていうことですよね、それ」
カムイ「すべてを助けることは出来なくても。被害を最小限にする。それが私の戦いですから」
ラズワルド「カムイ様……。わかりました、その任務引き受けます」
カムイ「ありがとうございます」
ラズワルド「それとピエリとフランネルを連れて行きますけど大丈夫ですか? 騎兵隊の足が必要になりますし、なにより機動力が無かったら敵に追いつかれちゃいますから」
カムイ「ええ。かなり厳しい任務になりますが、よろしくお願いします」
ラズワルド「はい。それじゃ任務報酬はデートでお願いします」
カムイ「そうですね、考えておきます」
ラズワルド「え、マジですか。僕、すごくやる気が出てきました。それじゃ、突入路の確保だけお願いできますか」
カムイ「わかっています。正面、東側へ抜けるために敵陣を押し上げ、突入路の確保をするように伝えてください。これより、打って出ます!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
エルフィ「東側に味方を送るみたい。ハロルド、一気に右翼の敵を押し上げましょう…」
ハロルド「うむ、何とかやってみよう。行くぞ!」
ブノワ「俺も援護に回ろう…。ハロルド、危うくなったら任せてくれ…」
ハロルド「ああ、頼りにしているよ、ブノワくん!」
白夜軍兵士「ここは通さん‼‼‼」
ハロルド「だあ‼‼」ブンッ
スカッ
白夜軍兵士「そこだ!」ダッ ズビシャ‼‼
ハロルド「ぐっ……」
白夜軍兵士「くらえ‼‼‼」ダッ
ブノワ「あぶない!」カキィン‼
白夜軍兵士「なに?」
ハロルド「その隙、いただこう‼‼」ダッ
ググッ
ハロルド「フィニッシュだ!」
ザシュンッ
白夜軍兵士「がはっ――」ドササッ
白夜軍剣聖A「陣が崩れている!? くそ、すぐに抑えろ!」
白夜軍兵士「は、はい!」タタタタタッ
エルフィ「させないわ。はああああっ」パカラパカラッ
白夜軍兵士「くっ、割り込まれた!」
アクア「東側に抜ける道が出来上がったわ。今よ!」
ラズワルド「よし、それじゃ一気に行くよ、ピエリ!」
ピエリ「わかったの。フランネルもちゃんとついてくるのよ」
フランネル「任せとけって。さっさと行って敵をどんどん倒してやるぜ」
ドドドドドドドッ
白夜軍兵士「申し訳ありません! 敵の侵攻を許してしまいました」
白夜軍剣聖A「くそっ、城壁上部に伝令を送れ! この雨では鏑矢の音は届かん!」
白夜軍兵士「は、はい‼‼‼」
カミラ「敵が数名戦線を離脱したみたい。多分、増援を送るつもりかもしれないわ。早く止めないと」
カムイ「ええ、カミラ姉さん上空から強襲しましょう。敵も、この中を飛んで来るとは思わないはずです」
カミラ「わかったわ。それじゃ乗ってカムイ、城壁よりも低く飛んであげる。私は竜を操るのに集中するから、援護は出来ないけど。大丈夫?」
カムイ「大丈夫です。それに敵の真上を飛んでいれば城壁上部の敵もおいそれと矢を放てなくなるでしょうから。あと、サクラさんよろしいですか?」
サクラ「なんでしょうか、カムイ姉様」
カムイ「アクアさん、ルーナさんと一緒に敵の動きを牽制してください。動こうとする敵がいたら、その動きを通せんぼするように前方へ攻撃を、敵をこの城壁前で動けなくしてほしいんです」
サクラ「はい、わかりま――」
ルーナ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
カムイ「ルーナさん、どうかしましたか?」
ルーナ「どうかしたじゃなくて、あたしまた置いてけぼりなわけ!? カムイ様とカミラ様を守るのがあたしの役目なんだけど」
カムイ「大丈夫です、私もカミラ姉さんも無事に戻ってきますから」
ルーナ「そうじゃなくて、そのあたしが二人を守りたいっていうか、その……」
カミラ「ふふっ、もしかして妬いているの? 私、それともカムイかしら?」
ルーナ「そ、そんなことあるわけないし……。あたしは二人が心配なだけで、さっきだって結構ピンチだったでしょ」
カムイ「そうですね。でも、今はここにルーナさんたちがいてくれることをわかっていますから、私もこんな手に打って出られるんです。本当に頼りにしているんですよ」
ルーナ「そ、そう……。しょ、しょうがないわね。あたしがちゃんと敵を抑え付けてあげるから、見てなさいよ」
カムイ「ええ、感じさせてもらいますね」
ルーナ「で、できれば普通に言ってほしいんですけど……」
カムイ「ふふっ、私は見ることは出来ませんからね。だからルーナさんをいっぱい感じる事しかできません。それとも少し触らせてくれますか?」
ルーナ「ば、馬鹿! 変なこと言ってんじゃないわよ!」
アクア「……」
サクラ「アクア姉様、なんか目線が冷たいです」
アクア「気の所為よ」
サクラ「は、はい……」
ルーナ「そういうわけだから、アクア様。あたしがドンドン動けるようにいっぱいサポートしてよね」
アクア「わかっているわ。カムイ、敵の伝令を止めたらすぐに戻ってきてちょうだい。さっきの話、考えるまでもなく敵が本気で動くまえに先手を打たないといけないから」
カムイ「わかっています。カミラ姉さん」
カミラ「ええ、しっかり掴まっていなさいね。行くわよ」バサバサッ
サクラ「行っちゃいましたね」
アクア「ええ、私達も行動に移りましょう。左翼の敵に動きが見えるから、そこをグレートナイトやジェネラルと一緒に包囲して、動けなくするのがベストね」
ルーナ「その案で行きましょう。サクラ様は後方からカムイ様の言ってた通りに敵を牽制してくれればいいわ。近接戦はあたしとアクア様で何とかするから」
サクラ「はい、ルーナさん」
アクア「ええ。ルーナの活躍期待してるわね?」
ルーナ「アクア様も、頑張ってよね」ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
セツナ「……はぁ……はぁ」ポタタタッ
セツナ(大丈夫、まだいける……。まだ、倒れてないから……)
白夜軍弓聖A「セツナ様、少しばかりお休みください。その傷では」
セツナ「大丈夫……。それよりも、あそこにいるのをこっちに越させちゃダメ……。ヒノカ様、こまっちゃう……」
白夜軍弓聖A「わかっていますが。この豪雨の中、そのような傷で立ち続けることなど……」
セツナ「立ち続けるの…。だって、ヒノカ様がそれを望んでるから…。死んでもここを離れない…。敵がいなくなるまで戦い続けるのが私の役割だから…」
白夜軍弓聖A(……すでに二、三回は攻撃を受けているというのに。幾ら、呪いの力があるとしても、このような捨て身の戦法では……)
白夜軍弓兵「敵の竜騎兵群に動きあり、突破を試みるようです」
セツナ「動けないように牽制して、弓砲台の射角は高めに後退もさせちゃだめ…」
白夜軍弓兵「わかりました。む、こちらに数騎やって来ます!」
セツナ「そう……。それは私たちに任せて…」チャキッ
バサバサッ
カムイ軍ドラゴンマスター「このままでは埒が明かない。この攻撃で敵の注意をこちらに向けさせ、多くを中央の部隊と合流させるんだ」
セツナ「…きた…」チャキッ
セツナ(さっさとみんな死んじゃえばいいのに……。戦いが終わったら、それでヒノカ様が私を褒めてくれるから…。あの、苦しめた人の代わりじゃなくて、ちゃんと私を……)
シュオンッ
白夜軍弓聖A「全員構え‼‼‼」
チャキキッ
カムイ軍ドラゴンマスター「一度谷に潜り、そこから急上昇し敵を打つ‼‼‼」
バババッ
白夜軍弓聖A「敵、谷に潜りました!」
セツナ「ん、出てくるまで待機して……。一度受けても、呪いで隙を作れるはずだから。痛いけど、我慢して…」
白夜軍弓聖A「セツナ様は後方へ、これ以上は……」
セツナ「だめ、絶対に離れない…。ここを離れたら、ヒノカ様とした約束が無駄になっちゃうから…」
セツナ(それだけは絶対にしたくない…。ヒノカ様との約束は絶対に守りたいから…)
バシュッ
カムイ軍ドラゴンマスター「くらえ‼‼‼」ザシュッ
ブシャアアッ‼‼
セツナ「っ‼‼‼」シュオンッ‼‼‼
バチィンッ‼‼‼
カムイ軍ドラゴンマスター「がふっ――‼‼‼」
セツナ「ふふっ、これでおしまい……」パシュッ
ドスッ
カムイ軍ドラゴンマスター「く、そぉ……」ドササッ
セツナ「はぁはぁ……。痛い……」ドクドクッ
セツナ(……ヒノカ様の髪の色…。まだいっぱいある…。私の中に…)
セツナ「ヒノカ様……」
白夜軍弓聖A「よし、向かってきた竜騎兵はこれですべてか!?」
白夜軍弓兵「現状はこれだけです!」
白夜軍弓聖A「敵竜騎兵の本隊は?」
白夜軍弓兵「少しばかり抜けただけです。まだ多くを抑え付けています。このままでいけば、中央への大々的な攻撃を抑え続けることが出来るかと」
白夜軍弓聖A「わかった。セツナ様、すぐに治療を。染みますが我慢してください」
ポチャチャチャ
セツナ「ん…。傷、もうほとんど塞がらなくなっちゃった……」
白夜軍弓聖A「戦いが終わりました、腕の立つものに治療させましょう。大丈夫、きちんと綺麗に戻りますよ」
セツナ「ヒノカ様をいっぱい安心させてあげられるかな……」
白夜軍弓聖A「ええ、もちろんですよ」
セツナ(あと何度かな。あと何度敵を殺せば……。ヒノカ様は笑ってくれるのかな…)
パカラパカラッ
白夜軍弓聖A「む?」
セツナ「何か来る…」
~~~~~~~~~~~~~~
ピエリ「…突入した竜騎兵のみんな、ダメだったみたいなの」
ラズワルド「少なからず中央に合流できたみたいだけど、このままじゃドラゴンたちが疲弊して、攻撃が難しくなる。ここでどうにかして弓兵隊を叩くよ」
ピエリ「分かったの。パラディンのみんな、一気に行くのよ」シャキンッ‼
ラズワルド(だけど、至近距離にまで近づいた竜騎兵がどうしてやられるんだ? 相手は弓兵、近づけただけでもこっちが有利になるはずなのに)
フランネル「なんか仕掛けでもあるんじゃねぇか?」
ラズワルド「おそらくだけど、何かしら策を打ってるはずだよ。それがどんなものなのか、知らないまま行くのは正直怖いけど……」
ピエリ「あ、あそこなの。大きな砲台を見つけたのよ!」
カムイ軍パラディンA「敵、捕捉しました! 弓砲台を守る様に陣を作っています」
ピエリ「所詮は弓兵なの、近づいて一気に制圧するのよ!」
カムイ軍パラディンB「はい。残りの者は私に続け‼‼‼」
ドドドドドドッ
白夜軍弓聖A「暗夜軍!? くそ、大橋が落ちたということか?」
白夜軍弓兵「ど、どうしますか? 弓砲台で迎撃を――」
セツナ「ううん、弓砲台は向こうの竜が動かないように牽制を続けて…、入り込んできたのは私たちでなんとかするから……」
チャキッ ギリリッ
セツナ「一人残らず殺せばいいだけ…」
シュオンッ
カムイ軍パラディンB「悪いが立ち塞がるならば容赦はしない!」ダダッ
セツナ「それっ」パシュッ
ザシュンッ‼‼
カムイ軍パラディンB「くっ、だが、このまま押し切る‼‼‼ うおおっ」パカラパカラッ
ザンッ バシュッ
セツナ「あぐっ……」
ピエリ「やったの!」
カムイ軍パラディンB「このまま、い――」
シュオンッ バチュンッ‼‼‼
カムイ軍パラディンB「……な、なぜ……。私が……」ドササッ
セツナ「えへへ……。これでまた減ったね…」
カムイ軍パラディンB「」
ピエリ「な、なに、今の何なの?」
ラズワルド「ピエリ下がるんだ! 相手は何か呪いを使ってる。見た限り攻撃者に対する呪いみたいだけど、このまま行くのはまずい!」
ピエリ「みんな一度止まるの!」
ヒヒーーンッ‼‼
セツナ「敵が止まった…。みんな攻撃して…」
白夜軍弓聖A「はい、全員射て!」
パシュシュシュッ‼‼‼
カムイ軍騎兵隊「ぐあああっ」ドサッ
ピエリ「ううっ、皆大丈夫なの?」
カムイ軍パラディンA「なんとか、ですがこのままでは第二射が来ます!」
ピエリ「ううっ、足を止めちゃったからすぐに動けないの」
ラズワルド「ピエリ、援護するよ。みんな矢を構えて!」
カムイ軍ボウナイト隊「はい、準備完了しました」
ラズワルド「放て‼‼‼」
パシュシュシュッ‼‼‼
セツナ「敵も弓、これじゃ届かない。みんな砲台の陰に隠れて…」
白夜軍弓聖A「全員、砲台の影へ!」
カイキィンッ キィン‼‼
ザシュシュッ!
白夜軍弓兵「うあっ、ぐっ、くそ……」シュオンシュオン
ピエリ「あれ、あの敵。今さっきの弓兵と同じように光ってるけど、こっち誰も血が出てないの」
ラズワルド「なるほど、敵の手が大体わかったよ」
ラズワルド(あの敵、同じように呪いを施しているけど、誰にもその影響がない。単純に考えて、多分あの呪いの効果が届いていないんだ。知らずに飛びつけば呪いと攻撃の連携でやられる。でも、からくりさえわかればこっちにも手はあるよ)
ラズワルド「ピエリ、敵の呪いの突破口はある。このまま、僕たちの攻撃で敵に傷を与え続けるから、時を見計らって攻撃を仕掛けてほしい」
ピエリ「でも、大丈夫なの? 呪いで攻撃返されちゃったらとっても痛いの。ピエリ痛いのは嫌なの……」
ラズワルド「多分だけど呪いを受けた人間が倒れたら、あれは発動しないはずだよ」
ピエリ「うう、わかったの。ピエリとフランネルで突撃するのよ」
フランネル「本当に大丈夫なのかよ。近づいて殴ったら俺が吹っ飛ばされたなんてことになったら嫌だぞ」
ピエリ「ラズワルドの言葉を信じるの。もし間違ってたら、ラズワルドのことをえいってしに戻ってくればいいの」
ラズワルド「えぇ……」
ピエリ「えへへ、冗談なの。それじゃピエリたちは待つのよ。ラズワルド、いっぱい攻撃しちゃってなの」
ラズワルド「うん、仕上げは頼んだよ」
セツナ「……」チャキッ
ラズワルド(死ぬまで戦い続ける、相手はそういうつもりなんだろうね。そういう風に命を賭けて戦う理由があるからこそ、こんな作戦に打って出る。だけど、僕たちだって命を賭けて戦う理由がある、だから……)
ラズワルド「悪いけど、ここは勝たせてもらうよ……」チャキッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国スサノオ長城中央区『城壁上部』―
ヒノカ「状況はどうなっているんだ?」
アサマ「はい、現在大橋から接近した敵の対処をしているところですね。あと、収容した前線兵ですが、思った以上に損耗が激しいです。手当てをしたところで、満足に戦える状態ではないでしょう」
ヒノカ「……私たちが落ちるわけにはいかない。まだ、スサノオ長城のどこも落ちていないんだ。カムイを前にしている私たちが一番初めに敗北することなど許されない……」
アサマ「わかりました。それにしてもセツナさんは戻ってきませんね……」
アサマ(まさかだとは思いますが。まだあそこで戦っているというのですか…。この状況、城壁前が制圧されるのも時間の問題です。このままでは孤立しかねませんね)
アサマ「ミタマさん、ヒノカ様のおそばにいてください。私は困った臣下の様子を見てきますので」
ミタマ「わかりましたわ」
タタタタタタッ
ミタマ「……」
ヒノカ「ミタマ……。使いを出し城壁全体の状況を調べさせてくれるか」
ミタマ「はい。すぐに手配いたしますわ」
ヒノカ「……」
ヒノカ(負けるわけがない。あんな卑劣な暗夜に、カムイを誑かし利用して白夜を攻撃した暗夜に負けることなんて許されない)
ヒノカ「大丈夫だ……きっと、きっとすべての場所が耐えてくれているはず……」
ヒノカ(きっと、きっと――)
~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・スサノオ長城最西区『城壁上部』―
白夜軍兵士「くそ、この雨の中では敵の姿も分からないぞ」
白夜軍兵士「どうにかして持ちこたえるんだ。無理なら橋を落としたっていい」
白夜軍兵士「そうしたいのはやまやまだけどよ。もう城壁に暗夜軍は張り付いてる。こんな状態で下に降りれるわけがないだろ?」
白夜軍兵士「くそ、天馬や金鵄隊は何をやっているんだ。森林帯に潜み奇襲をかける手はずだったというのに!」
白夜軍兵士「敵の部隊と交戦してるのか? しかし、あんな崖に面した森林地帯に敵が待ち構えている事なんてあり得るのか!?」
ドゴンッ! ドゴンッ‼‼‼
白夜軍兵士「くそ、封鎖した門を破壊するつもりだ。このままじゃ、ここから敵がなだれ込んでくるぞ」
白夜軍兵士「ええい、弓兵たちは攻撃を続けろ。残りは門を守る準備に取り掛かかれ!」
白夜軍兵士(くそ、こんなところで我々は負けるのか。リョウマ様やヒノカ様を愚弄されたまま、屈して落ちていくというのか‼‼‼)
白夜軍兵士「敵の攻撃止まりません。このままでは、あと少しで……」
白夜軍兵士「くそっ、くそくそくそぉ‼‼‼」
ドゴン! ドゴンッ‼‼‼
白夜軍兵士「……‼‼‼‼ お、おい! あれを見てくれ!」
白夜軍兵士「なんだ?」
白夜軍兵士「あれだ、あの森の方角!」
白夜軍兵士「……何かがこちらへ来ている?」
白夜軍兵士「ああ、間違いない。天馬と金鵄隊の連中だ! これで一気に挟撃できる。こんな雨の中、あんな速度でやってくるなんて。俺たちの危機にゆっくりしてられないと考えてくれたんだ!」
白夜軍兵士「ははっ、よし、ここからが正念場だ。全員に伝えろ、天馬隊がようやく到着したとな!」
白夜軍兵士(しかし、この雨の中だから見間違えかもしれないが――)
(ここにいた金鵄に天馬隊は、あれほど大規模なものだったか?)
今日はここまで
負傷してボロボロになったセツナを抱きしめて介抱するヒノカのSSください。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『右翼弓兵陣地』―
ザーーーーッ
ポチャンッ ポチャチャ
ヒュンッ!
ヒュンッ!!
キィン カンッ!
ドスッ
白夜軍弓兵「がっ、くそぉ……」ドサリッ
セツナ「っ、みんな大丈夫?」
白夜軍弓聖A「大丈夫と言いたいところですが、すでに数名が倒れています。傷は深くありませんが、意識がありません」
セツナ「そう…。どうして邪魔するのかな…」
セツナ(このままじゃ、すぐにでもやってくる…。接近されたらもう後がない…。ココが落ちたら、ヒノカ様のところに敵が行っちゃう…)
ギュウッ
セツナ(敵は私達で倒せばいい…。ヒノカ様の前に暗夜の奴らなんて行かせたくない…。ここは守らないといけないの…)
白夜軍弓聖A「セツナ様、ここは敵の突撃に備えて防御陣を――」
セツナ「行くよ…」
白夜軍弓聖A「え?」
セツナ「行く…。向こうが来るよりも前にこっちから仕掛ける…」
白夜軍弓聖A「こちらからですか!?」
セツナ「うん…」
セツナ(あの数が来たら…おしまい。指揮してる人をなんとかできれば…、少しは猶予が生まれるはず…)
セツナ「私は片方の指揮官を狙うから…、もう片方おねがい…」チャキッ
白夜軍弓聖A「…わかりました、セツナ様! ここにいる者だけでいい、こちらから打って出る!」
オオオオーーーッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピエリ「敵が動くみたいなの」
ラズワルド「みたいだね。できればその選択を取ってほしくはなかったんだけど。ピエリ、行けそう?」
ピエリ「大丈夫なの、それでどうするの?」
ラズワルド「一番手前の弓砲台だけを制圧しようって考えてる。奥のは放っておこう」
ピエリ「手前だけなの? 全部制圧しなくて大丈夫なの?」
ラズワルド「カムイ様の命令はドラゴンマスターと本隊を合流させることだからね。ドラゴンマスターの合流が終われば、あの砲台を確保し続ける必要性もなくなる。それに、確保し続けても無駄に血が流れるだけだよ」
ピエリ「どうしてなの?」
ラズワルド「この攻撃の目的は殲滅じゃない。それにカムイ様、敵にも味方どちらの犠牲もできる限り抑えようとしている。それを僕たちが無視するわけにはいかない。僕たちはカムイ様と一緒に戦ってるんだからさ」
フランネル「なるほどな。でもよ、あの呪いはどうすんだよ? さすがにあれにむやみやたらに攻撃なんてできねえんだけど」
ラズワルド「敵の呪いだけど意識のある時だけ発動するものなら、気絶させれば抑えることが出来るはずだよ。それに相手を殺さなければ敵に色々と選択を迫れる形にもなる、負傷者を救出するものだって現れるはずだからね。どちらにしても、生きてる味方を放っておくことは出来ないはずだからさ」
フランネル「でもよ、相手が味方を見捨てる可能性だってあるんだよな…」
ラズワルド「わかってる。でも、この戦いの場で味方を助けるために動く人が多いことを僕は信じるよ。こんな戦いの中で、誰かを殺すよりも誰かを救うことのほうを優先してくれるってさ」
ピエリ「ラズワルド……」
フランネル「気絶させればいいってことだよな。わかった、なんとかしてみるぜ」
ラズワルド「フランネル、ありがとう。ピエリもそれでいいかい?」
ピエリ「大丈夫なの。それにリリスがいたら喜んで頷いてくれたと思うの。リリス、カムイ様のこと大好きだったから、ラズワルドがそう言ってくれたことにとっても感謝したと思うの」
ラズワルド「ははっ、そうだといいけどね」
ピエリ「きっとそうなの!」
ラズワルド「ピエリがそう言うならそうなんだろうね。自信が沸いてきたよ。それじゃピエリ、次の攻撃が合図だ。僕たちも攻撃後に二分隊に分かれて攻撃を仕掛けるから、ピエリたちは前進してきた敵の相手をして」
ピエリ「わかったの。フランネル、しっかり掴まってるのよ」
フランネル「ああ、一気に行こうぜ!」ガシッ
ラズワルド「……よし、斉射!」
パシュシュシュシュッ!
ピエリ「よぉーし、一気に行くのよ!」ドドドドドドッ!
ラズワルド「よし、僕たちも動くよ。半数は戦列から一歩離れたところで援護、残りは剣を準備」チャキンッ
ラズワルド「このまま手前にある弓砲台を制圧して、合流路を確保する!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タタタタタッ
ピエリ「……ん」スッ
フランネル「どうしたんだ、ピエリ。変に動いて――これって?」
パカラパカラッ
ピエリ「フランネルもわかったの?」
フランネル「まぁな。だってこんな殺気じゃ簡単に気づくし、向こうも誤魔化す気が無いみたいだからな」
シュバッ
ピエリ「えいっ!」ブンッ
キィン!
セツナ「っ…」タタタタッ
フランネル「ピエリ、援護するぜ」
ピエリ「お願いするの。今度はこっちから行くのよ」チャキッ
タタタタタタッ
カチャッ
スタッ グッ
セツナ「そこ…」パシュッ
ヒュンッ!
フランネル「そうはいかねぇぜ」ブンッ
ボキンッ
ピエリ「この距離、いくの!」チャキッ
ダッ
セツナ「ふふっ…」クルッ チャキッ パシュッ
ピエリ「あ、あぶないの!」スッ
ガキンッ!
ピエリ「っ! 今の攻撃すごく早かったの……」
ピエリ(しかも、この距離で攻撃してきたの。この子、すごく強いの)
フランネル「ならこっちから行くぜ。おらよっと!」グルンッ
セツナ「……」
フランネル「逃がさないぜ! そらっ!!!」ブンッ
セツナ「っ!」サッ
ドゴンッ!
フランネル「ちっ、避けられたか」
セツナ(今のはだめ…。多分倒れちゃう…。倒れちゃったらヒノカ様の敵を倒せなくなる…)
シュオンシュオン
セツナ「はぁ……はぁ……」
ピエリ(雨でよくわからなかったけど、あの子ボロボロなの。紋様が少し光ってるだけなのに傷がいっぱいわかるの……)
フランネル(なんだこの継ぎ接ぎみてぇな体。こんなの今に倒れても不思議じゃねぇってのに)
セツナ「あれ、こないの? なら、こっちからいくよ…」チャキッ
ピエリ「させないの! 届いてなの!」クルクルクル バシュッ
ヒュンッ
グサッ
セツナ「あうっ……」シュオンシュオン
ピエリ(このまま距離を詰めて、剣のお腹で叩いて気絶させるの!)パカラパカラッ
セツナ「……」シュオンシュオンッ
ピエリ「倒れてなの!!!」ブンッ
ドスンッ
セツナ「がふっ…」ゴホッ
ピエリ(入ったの! 今のなら倒れてもおかしくないのよ!)
………
……
シュオンッ!
バシュンッ!!
ピエリ「きゃああっ!」
ピエリ(そんな、急所に入ったはずなの。なんで、倒れないの?)
セツナ「えへへ…」タタタタッ
チャキッ
ピエリ(え、嘘……。目の前にいる。だめ、反動で盾が戻せないの。だめ、避けられないの)
セツナ「これで、褒めてもらえる…」チャキッ
キリリッ
セツナ「さようなら…」
ピエリ「っ!」
フランネル「ピエリ!」ダッ
シュオンッ‼‼‼
フランネル「グオオオオオオッ!」グッ
セツナ「っ……」サッ
ドゴンッ!!!
ダッ バッ
セツナ「……これでどう…」シュパパッ
フランネル「でぇい! おらぁっ!!!」ブンブンッ
キィン
バキィン!
ピエリ「フランネル…ありがとうなの。」
フランネル「どうにか大丈夫って感じだな……」
ピエリ「うん、助かったの…」チラッ
セツナ「はぁ……はぁ……」シュオンシュオン
ピエリ「まだ、立ってるの。今さっきの攻撃、どうやって受け止めたのかわからないの」
フランネル「受け止めたってより、奇跡的にって感じだぞ。どちらにしても、あいつまだ戦うつもりみたいだ」
セツナ「……」チャキッ
シュオンッ シュオオオオンッ
ピエリ(ううっ、ピエリたちがここに来てから時間が経っちゃったの。もしも敵の援軍が向かってたら終わりなの……。絶対気づかれてるはずなの……)
ピエリ「ううっ……」
フランネル「……ピエリ、今は目の前奴だけ見といた方がいいと思うぜ」
ピエリ「う、うん。わかってるの」
フランネル「大丈夫だって、俺たちに攻撃を任せてんだ。そういうのはカムイがなんとかしてくれてるって」
ピエリ「え?」
フランネル「だから、そんな泣きそうな顔してんじゃねぇって。そんな顔してたら気持ちで負けちまうだろ?」
ピエリ「……うん。ピエリ頑張るの!」
フランネル「おう、それでどうすんだ?」
ピエリ「さっきみたいに一気に距離を詰めて昏倒させるしかないの。でも、普通にいったらもう近づかせてもらえないの」
フランネル「ああ、もう弓引いてこっちを睨んでやがるからな。一筋縄じゃ行かねえし、手当なんてする暇もねえぞ」
ピエリ「なら、することは一つなの。フランネル、耳貸すの」
フランネル「なんだよ?」
ゴニョゴニョ
フランネル「お、俺は別に構わねぇけど、本当にそれでいくのか?」
ピエリ「それくらいしかないの。ピエリ、お胸はおおきいけど軽いはずだから大丈夫なの」
フランネル「胸の事は別に聞いてねえけどな。でもピエリくらいならどうにかしてやるよ」
ピエリ「決まりなの。それじゃ行くのよ!」
フランネル「おう、頑張ってやるぜ!」シュオオオンッ
ピエリ(こっちは最後の攻撃なの。ラズワルドはうまくやってくれてるとうれしいの)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ軍兵士「よしいくぞ! 弓砲台を制圧して対岸の竜騎兵を大橋にいる本隊に合流させるんだ!」
タタタタタタッ
白夜軍弓聖A「暗夜の人間共がここから先は通すわけにはいかない!」シュパパッ
ヒュンヒュン
ドススッ
カムイ軍兵士「ぐあっ」ドサリッ
白夜軍弓聖A「これで止めだ!」パシュッ
カムイ軍兵士「ひっ!」
キィン
カムイ軍兵士「ら、ラズワルドさん」
ラズワルド「下がって、こいつの相手は僕がする。他のみんなはこのままの弓砲台を目指すんだ!」
カムイ軍ボウナイト隊「わかりました!」ドドドドッ
白夜軍弓聖A「くっ、行かせるか!」
ラズワルド「それはこっちの台詞だよ!」パシュシュッ
ヒュンッ!
白夜軍弓聖A「くっ、邪魔をするか。ならば、先にお前を仕留めてくれる!」チャキッ
ラズワルド「そう簡単にいくとは思わないでほしいかな。これでも、かなりの場数は踏んできてるんだからね!」ダッ
白夜軍弓聖A「……そこだ!」シュパッ
ヒュンッ
ラズワルド「今度はこっちの番だよ!」
クルッ パカラパカラッ
白夜軍弓聖A「!」サッ
ラズワルド「いけっ!」シュパッ
ザシュンッ
白夜軍弓聖A「ぐっ!」シュオン シュオン
ラズワルド(あの紋様、ほぼ全員に呪い返しが刻まれているってことか。攻撃を受ける前提で施されてるし、確かにカウンターで相手を倒しえる可能性のある行為だけど……あの体、もうかなりの攻撃を受けてる。となると……)
白夜軍弓聖A「ぐぅううう……」ブルブルッ
ラズワルド(明らかに攻撃を受けすぎて体がおかしくなり始めてる。傷を癒せたとしても、ズタズタにされた体はちゃんと異常を感じてる……。敵のほとんどが、今その状態にいるみたいだ……。なら――)
パカラッ ヒヒンッ
白夜軍弓聖A「?」
ラズワルド「……」チャキンッ
白夜軍弓聖A「貴様、何の真似だ」
ラズワルド「降伏してくれるかな。もう、その体で戦えるわけがないし、そんな相手と戦いたくはないんだ」
白夜軍弓聖A「何を言い出すかと思えば。そのような無防備な姿、後悔させて――」
カタンッ ポチャンッ
白夜軍弓聖A「っ! く、くそ。言う通りにするんだ……」チャキッ ブルブル
ラズワルド「もう、きみの体はボロボロになってることくらいわかるはずだよ」
白夜軍弓聖A「まだだ、まだ終われない。セツナ様に比べれば、このような傷で終わるわけには!」チャキッ
シュパパパッ!!!
キィン キィン!
ラズワルド「……」
白夜軍弓聖A「くそ、くそおおお!」シュパパ シュパパ
ラズワルド「!」サッ
タタタタタッ
白夜軍弓聖A「ここで倒れるわけにはいかない。リョウマ様やヒノカ様、白夜を支え導いてきた王族の方々が、このようなこのような醜悪な扱いを受けて消えていくことなどあっていいはずがない」
グググッ チャキッ
白夜軍弓聖A「白夜を導くべきはリョウマ様やヒノカ様の様な方々。正しい人々が白い目で見られるこんな状況を正したいというこの信念。それを、それを貴様らは!!!」ググッ
ラズワルド「たとえそうだとしても……。こっちにも同じように導いてくれた人がいる。その人のために引くことは出来ないんだ!」チャキッ
白夜軍弓聖A「うおおおおおお!!!」フルフル ギリッ
ラズワルド「はあああああああっ!!!」ブンッ
ズビシャアアアア!!!
白夜軍弓聖A「がっ、あああっ、うぐっ、あ……、リョウマ様……」シュオン……
ラズワルド「……」
白夜軍弓聖A「ううっ……」シュオオオ……
ズルッ ドサリッ!
ラズワルド「……本当に嫌になるよね。命を賭けて戦うその理由がわかればわかるほど、相手も僕自身も何も変わらないって気づかされるんだからさ」
ラズワルド(ピエリとフランネルたちの部隊が出てきた敵を相手にしてる間に、このまま砲台を制圧しないと……)タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タタタタタッ
セツナ「……ふーっ、はーっ。見つけた…」チャキッ
ギリリリッ
ピエリ「……チャンスは一回だけなの。フランネル、頼んだのよ」
フランネル「ああ、わかってるって。ここぞって時はやってやるからよ!」
パカラパカラッ
タタタタタタッ
ピエリ「仕掛けるの!」ダッ
パカラパカラッ!!
セツナ「……」
タンッ!
ヒュォンッ
ピエリ「っ」サッ
ピエリ(一つ目は避けられたの! 次に正面に回り込んで――)
セツナ「正面…? ならこのまま…」チャキッ ギリリッ
ピエリ「そこなの! やああっ!」ブンッ!
ヒュンッ!
セツナ(槍…、避けなくちゃ…。大丈夫、避けてすぐに打てば、それで終わり…)サッ
トスッ……
セツナ「これでおしまい…」
チャキッ ギリリッ!
タンッ!
ピエリ「そこなの、フランネル」
フランネル「おう、行くぜ」シュオオンッ! ダッ
ブンッ
カキィン!
セツナ(多分、あの変なけむくじゃらに隠れて騎兵が来るはず…。なら、それを殺せばいいだけ…)チャキッ
セツナ「仕留める…」キリリッ
パカラッパカラッ
セツナ「やっぱり、そう来た…」ダンッ
ヒュオンッ
セツナ(多分あそこらへんが頭だから…、これで死ぬよね…。あとはあのけむくじゃらも殺して……、それで――)
スカッ
パカラパカラッ
セツナ「え……誰もいない?」
ダンダンダンッ
ピエリ「引っかかったの!」
フランネル「うまく決まるもんだな。それじゃピエリ、思いっきり行くぞ」ガシッ
ピエリ「うん、フランネルピエリをあの子に向かって投げちゃえなの!」
フランネル「おらああっ!!!」ブンッ
セツナ(直接投げてきた!? だめ、矢の準備が間に合わない…)
セツナ「っ!」
ピエリ「もらったの。痛いけど我慢してなの!」チャキッ
セツナ「あ……」シュオンンッ!
ピエリ「やああああっ!!!」
ドスンッ!!!
セツナ「うっ…あっ…ううっ……」
セツナ(ヒノカ様…。ごめんなさい……。私、役にたてなかった…)
ズサササーーッ
セツナ「……」
ピエリ「はぁはぁ、ピエリたちの勝ちなの……」フラッ
フランネル「ピエリ、大丈夫かよ?」
ピエリ「フランネル…。うん、なんとか大丈夫なの。でも、何かされたら死んじゃいそうなの……。それより、相手は……」
フランネル「ああ、相手ならあそこに倒れて……あれ?」
シャラランッ シュオンッ!
ピエリ「あ、消えちゃったの……」
フランネル「今の消え方、多分敵が回収したってことだよな?」
ピエリ「多分そうなの。攻撃に出てきたのは、ほとんど倒せたみたいなの」
フランネル「あとはラズワルドの方だけど、うまくやったか?」
ピエリ「わからないの。でも、きっとうまくやってるのよ」
フランネル「だな。それじゃ、先に少し手当するぞ」
ピエリ「うん、そうするの……。ピエリ、ちょっと疲れちゃったのよ」
フランネル「俺もだ。流石にきつかったぜ……」
ピエリ「えへへ、ピエリとフランネル御揃いでお疲れなのよ」
フランネル「ああ、とりあえず簡単に手当て始めるぜ」
ピエリ「はーい」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―スサノオ長城中央区『城壁上部』―
シュオンッ ドサッ
アサマ「セツナさん……」
セツナ「……」
アサマ(すでに弓部隊の半数は壊滅していましたか……。セツナさんはヒノカ様の命令を優先して、後退をしなかったのでしょうが。大局的に見れば、ここは城壁での防衛戦に的を絞って戦うべきだったでしょうに……)
アサマ「……はぁ、あなたという人は本当に愚かですね。そんな風に命を賭けたとしても、死んでしまってはヒノカ様に申し開きが出来ないというのに…。ですが、どうにか息はあるようです。本当によかった」
セツナ「っ、うううっ」シュオンッ
アサマ「おや、もうお目覚めですか?」
セツナ「あ、アサマ……、私…」
アサマ「ええ、負けたようです。もうその体では満足に戦うこともできないでしょう。残念ですが」
セツナ「……ううっ」ポタッ
セツナ「私、約束を守れなかった…。ヒノカ様と約束したことなのに…。ヒノカ様の敵は、全部私が殺すって決めてたのに…」
アサマ「そんな大それたこと、本来あなたが背負うべきものではありませんよ。気づかれていないかもしれませんが、ヒノカ様はセツナさんのことをとても大切な人と思っているに違いありません。だから、今はおやすみください」
セツナ「アサマ、私は……。ヒノカ様の役に…、立てたかな…」
アサマ「……」
セツナ「ずっと、ずっと迷惑かけてたから…。こんな時だけでもちゃんと役に立てたかな……」
アサマ「そうですね。それに関していえば、セツナさんはずっと前からヒノカ様のためになることをしてくださっていましたよ。私が、腫れものに触れるくらいしかできなかったことに比べれば、セツナさんはヒノカ様にとって心の支えとなっていたはずです」
チャキッ
アサマ「ですから、今はしばらく休んでください。あとは私にまかせてですね?」
セツナ「うん…。えへへ…」
アサマ「む、どうしましたか。私の顔を見て笑顔になどなって、顔に何か付いていましたか?」
セツナ「うん…。今のアサマすごい顔してる…。アサマがそういう顔をするときって…、ヒノカ様に何かあった時だけって思ってた…。私の時は、そんな顔しないって思ってたから…」
アサマ「……」
セツナ「うん…。すこし、うれしいな…」
アサマ「負傷してうれしいとは…。おかしなところは前のセツナさんと変わりませんね。少しだけホッとしたような、そうでもないような…」
セツナ「アサマ…」
アサマ「はい、なんですか?」
セツナ「アサマも死なないで…。ヒノカ様、アサマがいなくなってもだめだから…」
アサマ「はい、もちろんですよ。この身はヒノカ様をお守りするためのものですからね。それにセツナさんだけでは危なっかしいですよ」
セツナ「えへへ、褒めれらちゃった…」
アサマ「褒めてはいませんよ」
セツナ「……すー……すー」
アサマ「はぁ、迷惑を掛けていたと思ったということは、少し成長したということでしょうか。もっとも、私はわかって迷惑と思われる行動をしていた側ですがね」
アサマ(もう、戻れないとわかっていても、セツナさん。あなたはまだ、昔のままのヒノカ様が戻ってくると信じているのですね…)
白夜軍山伏「アサマ様、弓砲台の一つが制圧されたようです。伝令は途中で敵に阻止されたと見ていいかと」
アサマ「これで弓砲台を守る必要は無くなりましたね。一度、杖を使って全員を上にあげてください。敵の竜騎兵が向かってくることは確実ですからね」
白夜軍山伏「わかりました。負傷した者たちはミタマ様の部隊に任せますか?」
アサマ「ええ、セツナさんの事もお願いします。それと、ミタマさんにはそのままヒノカ様の警護をするようにお伝えを。彼らはやってくるでしょうからね」
白夜軍山伏「! わかりました。それでアサマ様は?」
アサマ「私は部隊を再編して階段付近で暗夜軍を待ちますよ。ここまで攻めてきたこともそうですが。なにより――」
「このままでは煮えくりかえった腹の虫が収まらないものですからね…」
今日はここまで
戦う理由が自分に理解できるものであればあるほど、戦う必要があったのかを考える事になる。
FEHの水着マークスのチビキャラを叩いていたら『リリスー!!!!』とマークスが叫んだのでびっくりした
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『中央大橋付近』―
白夜軍伝令兵「はぁはぁ……」タタタタッ
カミラ「あれね、伝令を見つけたわ」
カムイ「わかりました、一気に接近してください。あとは私が片付けます」
カミラ「ええ、一度旋回して戻ってくるわ。それまで、どうにか耐えてちょうだい」バササッ
カムイ「はい」
ヒュオオオオオッ
白夜軍剣聖B「な、竜騎兵!? 単騎で入り込んできたというのか!?」
カムイ「行きます!」ダッ
スタッ
白夜軍伝令兵「な、なんだ?」
カムイ「すみませんがあなたを向かわせるわけにはいきません」
白夜軍伝令兵「か、カムイ王女! く、くそっ、こんなところにどうして――」チャキッ
カムイ(動揺しているようです。今なら――)ダッ
カムイ「はああっ!!」
ドスンッ
白夜軍伝令兵「ぐああっ!!!」ドサッ
カムイ(どうにか気絶させることが出来ました。それに、これでピエリさん達が向かった方角へ、敵の増援がすぐに行くこともないでしょう)
カムイ「ですが……。他の方々はそうもいかないようですね」スッ チャキンッ
白夜軍剣聖B「ははっ、先ほどの攻撃に恐れをなして後ろで隠れているだけと思っていたが、まさかこうして前に出てくるとはな…」
カムイ「後ろで縮こまっているために、私は暗夜を選んだわけではありません」
白夜軍剣聖B「たわけたことを……。そうして白夜侵攻を手助けした人間として、暗夜での地位を確立するつもりなのだろう。祖国を裏切って戦う気持ち、さぞ愉快な物なのだろうな?」
カムイ「そんなに愉快なものだと思いますか?」
白夜軍剣聖B「ああ思うとも。だが、貴様が感じるべきものなど、苦痛や後悔で十分だ!」ダッ
ブンッ
キィン!
カムイ「ええ、その通りですね。私にはそれだけで十分ですよ。人並みの幸せを得られるような道を私は選んでいませんから。でも、まだその中に私はいなくてはいけません」
白夜軍剣聖B「はっ、それは暗夜で死ぬまで贅沢をするためか? それとも白夜が完全に滅ぶ姿をその目に焼き付けるためか?」
カムイ「いいえ、白夜と暗夜が共に歩めるその日を迎えるためです!」ドゴッ
白夜軍剣聖B「ぐっ、なにが共に歩むだ。貴様がそれを望んでいるなどと、戯けたことをぬかすなああああっ!」グッ
カムイ「はああっ!」グッ
ザシュンッ!!!
白夜軍剣聖B「……ごふっ」ポタタタッ
チャキンッ カランッ……
白夜軍剣聖B「はは、貴様がそのようなことを口にしたところで、白夜の者たちは誰も……お前のことなど……」ドサリッ
カムイ「……」
バサバサッ
カムイ「!」
カミラ「カムイ、乗りなさい!」
カムイ「はい!」タタタタッ パシッ
バサバサバサッ
カミラ「敵の伝令は?」
カムイ「もう大丈夫です。ですが、他にも伝令がいないとも言えません。まだ、敵を探す必要があるかもしれませんが……」
カミラ「ふふっ、ならいい知らせよ。ドラゴンマスターたちへの攻撃が弱まったわ。それに右翼陣地の敵兵が後退を始めてる。すでに半分はこちらの制圧下になったみたい」
カムイ「流石はピエリさん達です。ということはドラゴンマスターの皆さんも……」
カミラ「ええ、もうこっちに向かっているみたい。あとは合流できれば一段落ね」
カムイ「ですが向こうも、こちらの動きには気づいているでしょう。弓兵や金鵄武者などの敵戦力の動きに注意しなくてはいけません」
カミラ「それでどうするの? このスサノオ長城の一番上まで援護なしに迎えるとは思えないわ」
カムイ「わかっています。そのためにも、上部の制圧を行わなくてはいけません。ジェネラルとブレイブヒーローの部隊はどうなっていますか?」
カミラ「大橋の防衛を続けている。敵の攻撃は収まりつつあるみたいだけど、正直城壁前を取れたところであまり意味はないわ」
カムイ「はい、敵は右翼の弓兵陣地を放棄しつつあります。このまま行けば、城壁内部の防御が厚くなって、容易に配置こむことが出来なくなるはずです。まだ、敵の部隊が外部と内部に分かたれている今のうちに城壁内部と上部を繋ぐ階段を閉鎖して敵を分断できればと思っているのですが……」
カミラ「そうね。ここで一気に仕掛けて敵の策を封じるのも悪くないと思うわ。だけど、入り口と上部出口を封鎖するなら大人数が必要よ。でも、そんな人数で強襲するには時間が掛かるわ」
カムイ「はい……そのためにまず陽動として少数先鋭で攻撃を仕掛けます。その間に準備を済ませるしかないでしょう」
カミラ「妥当な所ね。その攻撃を仕掛ける部隊だけど……」
カムイ「私も加わります。ピエリさんたちには頑張ってもらいましたから、私もやらなければいけないことを果たすだけです」
カミラ「はぁ……止めても無駄みたいね」
カムイ「すみません」
カミラ「いいのよ。それがカムイの選んだ答えだもの。だけど、私達まで行っちゃいけないなんて言わないわよね?」
カムイ「ええ、むしろ力を貸してもらいたいんです。カミラ姉さんのお眼鏡に合うドラゴンマスターの方を数名選んでいただけますか? 弓が飛んで来ても怯まないような方々がいいです」
カミラ「あらあら、中々逞しい要望ね。ところでカムイ、その言い方だとおねえちゃんもその逞しいのに入っているみたいに聞こえるけど?」
カムイ「気の所為ですよ。さぁ、行きましょう」
カミラ「ふふっ、誤魔化すなんて悪い子ね」
バサバサッ
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城中央区『上部』―
アサマ「……セツナさん。あなたが先に倒れてしまってはいけないというのに、どうして先に倒れてしまうのですかね」
アサマ(いや、これはヒノカ様の事を全て押し付けてしまった私の責任でもあるのかもしれません。今思えば私は――)
カツンカツンッ
アサマ「?」
白夜軍山伏「アサマ様。多くの兵が坑道を開始しました。城壁へと上がる通用路の防衛の準備も整いつつあります」
アサマ「そうですか……。弓兵の方々はどうなっていますか?」
白夜軍山伏「はい、現在。一番奥の通用路を使ってこちらに向かっています。もう、弓砲台で敵を抑えることは出来ないようです」
アサマ「まぁ、仕方ありません。敵の動きが予想以上に早く、こちらは対策を講じていなかったというだけの事ですよ」
白夜軍山伏「アサマ様、ここは我々に任せ、ヒノカ様の警護に戻られては……」
アサマ「……それは出来ない相談ですよ。それにそれはミタマに任せています。私のような主に粗相ばかりしてきた人間がいるよりよっぽどためになるはず。私がいてもヒノカ様の力にはなれませんからね」
白夜軍山伏「何を言っているんですか、アサマ様はヒノカ様の臣下として――」
アサマ「ヒノカ様の臣下としてですか。今の私は果たして……」
アサマ(そう呼べるのでしょうかね……)
アサマ「……ん?」
白夜軍山伏「ど、どうかしました?」
アサマ「いえ、時は待ってはくれないとそう思ってしまいました」
スタッ
アサマ「このまま意味のない話をし続けるだけかと思っていましたが、いやはや天というのは意味のない行為をお許しにならないようですね」チャキッ
白夜軍山伏「?」
アサマ「気配というか気の流れというものか。とりあえず、敵が来るようです」
白夜軍山伏「! 全員に戦闘の準備をさせます」
アサマ「ええ、お願いしますよ」
タタタタタタッ
アサマ「ヒノカ様にカムイ様を差し出すことが私の最後の戦いでしょうね。本当にヒノカ様にとってはカムイ様が全てになってしまいましたからね……」
アサマ(全てですか……。セツナさんの献身も、この私のこの戦いも、すべてがカムイ様の存在に縛られているようですね……。まるでこれでは――)
アサマ(……。ああ、そういうことですか……)
アサマ「ははっ、私のこの心にあるものがなんとこんなものだったとは……ほとほと呆れてしまいますよ」
アサマ(……はぁ、でもそうですね。私もこうして歳を重ねて生きて来た身ですから。仏法に精通してきましたが、私はここまでの生きてきたことを評価したことなどなかった。これもそのツケでしょう。もっとも……)
アサマ「そんな評価はいただけません。なにせ、私の歩んで来た時間、それこそヒノカ様の臣下として歩んで来た時間が――」
「すべてカムイ様のために費やされていたなど認めたくありませんし、そうであったなどと思いたくありませんからねぇ……」
今日はここまで
スサノオ長城って恨みで空気が重そうなイメージ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
バサバサッ
ドラゴンマスター「城壁上部左側の敵弓兵は準備を終えているようです。敵配置が比較的緩い、右側面から奇襲するのが一番でしょう」
カムイ「分かりました、それで行きます。皆さんもよろしいですね」
ハロルド「ああ、しかしこれだけの数で城壁路制圧に挑むとは、カムイ様の思い切りには毎度毎度驚かされる」
エルフィ「わたしにはわかりやすくていいですけど…」
アクア「実際、驚かされるというより心配になることの方が多いわ。正直、長く一緒にいる人ほど良くわかってると思うけど」
カミラ「ふふっ、そうね。カムイの突拍子もない行動に肝を何度冷やしたかしらね?」
カムイ「そ、そんなにみなさんに心配を掛けていますか?」
ブノワ「そうだな…」
サクラ「え、えっと、はい……」
ルーナ「いやいや、心配掛けまくってるでしょ!? 現に今さっきなんて心配とかすっ飛ばしてピンチだったじゃない」
カムイ「そ、そうですね……。すみません」
ルーナ「だから、ここはあたしに任せてよね。カミラ様もあたしより前に出たら許さないんだから」
カミラ「ふふっ、頼りがいのあるナイトね。期待してるわよ?」
ルーナ「うん、カムイ様も期待してくれる?」
カムイ「ええ、もちろんです。期待してますよ、ルーナさん」
ルーナ「えへへ、それじゃ頑張っちゃうから、見てなさいよ、あたしの活躍!」ブンブン ユラユラ
ドラゴンマスター「ル、ルーナ様、暴れないでください」
ルーナ「あ、ごめん」
カミラ「うふふっ」
ブノワ「む…。待機している部隊へ白夜軍の攻撃が始まったようだ…」
カムイ「囮としてドラゴンマスター隊の大半を置いてきましたからね。こちらの動きを完全に悟られてはいないようです。このまま一気に城壁路の敵を落としに行きしょう」
ドラゴンマスター「カムイ様、ここから先の攻撃は薄いようです。今ならまだ、突破できます」
カムイ「では、そこから行きましょう。カミラ姉さん、よろしくお願いしますね」
カミラ「わかったわ。カムイはしっかりと掴まってなさい。激しく動くことになるから、振り落とされないようにね?」
カムイ「はい、わかりました。これでいいですか?」ギュッ
カミラ「ふふっ、いい子よ。これならどんな動きをしても大丈夫ね」
ドラゴンマスター「よし、今までの訓練を思い出せ、皆を城壁路へお連れするぞ!」
ドラゴンマスター達『オオオーーーッ!!!』
バササササササッ
白夜軍弓兵「下から複数の竜騎兵だと!? くそっ、攻撃しろ!」チャキッ パシュッ!
アクア「バレたようだけど、どうするの、カムイ」
カムイ「構いません、敵が連携を取る前に城壁路へ。私たちを連れて行ってください」
ドラゴンマスター「任せてください! このまま突破し、弓兵を即座に叩け!」
バサササッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
チリンッ…
白夜軍山伏「……」
チリンッ……
白夜軍山伏「……」
チリンッ………
アサマ「……来ましたか」
ヒュンヒュンッ
バササッ!
ドラゴンマスター「よし、今だ。敵弓兵を攻撃、安全を確保するんだ!」
ザシュンッ
ドスンッ
白夜軍山伏「隙を突かれたというしかありません。しかし、このようなわずかな数でやってくるとは、自殺行為でしょうに」
アサマ「油断はしない方がいいですよ。なにせ、こんなことをやってのけるような方々ですからね」
白夜軍山伏「命知らずですか?」
アサマ「命知らずですか、確かにその言葉はぴったりですね。しかし、そんな命知らずが死んでも地獄だろうと天国だろうと何処も願い下げでしょう、彼らには御仏と出会い、そのままどこともわからない場所にでも行く以外の道などありませんから。さて、弓兵の方々に後ろへ下がる様に指示をしてください。このまま踏ん張られても無駄に犠牲が出るだけですからね」
白夜軍山伏「わかりました」
タタタタタタッ
スタッ
スタタタッ
バサバサッ ドスンッ
カミラ「あら、弓兵を退いてその入れ替わりで攻撃に来ると思っていたけど。何もしてこないなんて……」
カムイ「……」
アクア「カムイ……どうするの?」
カムイ「……どうして、攻撃してこないんですか、アサマさん」
アサマ「ええ、できればそうしたいのですが。このまま混戦するよりも仕切り直しが良いと思いましてね。まぁ、傍若無人な相手には通用しませんが、あなたのような方は不思議に思ってくれるだろうと思いまして……。こうして何もせずに立っていれば、私から何か話があるのではと思い込んでくれるのではと……」
カムイ「……戦闘をせずに済むのでしたら、それに越したことはありませんからね。ですが、今の言葉を聞く限り、ただ私たちの足を止めるためだけのようですが?」
アサマ「ええ、こちらには色々と時間がありませんので、作っていただけるのであれば幸いです。死地に入り込んで、まさか立ち止まるとは思ってもいませんでしたが……」チリンッ
ザザザッ
白夜軍剣聖・槍聖「……」チャキッ
カムイ「……話をするためではないということですね。アサマさん」
アサマ「そう思って足を止めるとは甘い方ですね。でもご安心ください、こうした選ぶという面倒から私が開放して差し上げます。あなたはこの先、ヒノカ様のために存在する日々を送ればいいだけの事ですから」チャキッ
カムイ「ヒノカさんの傍にいるべきは、私ではないと言ったはずです。そこはあなたたちの居場所だ、私が入っていい場所ではないんです」
アサマ「そのセツナさんは負傷されました。ええ、そういうあなたの仲間によってです。おかしなものですね、傍にいるべきだと言っておきながら、こちらを攻撃してくるとは、言っている事とやっていることがとてもあべこべです、何か理由があるならお聞きしますよ」
カムイ「……理由があるとすれば、それは私の所為でしょう。あなたたちの所為ではありません」
アサマ「おや、私達が攻撃をしてくるからとは言わないのですかな? もしくは、話を聞いてくれないからというかと思っていましたが……」
カムイ「私はヒノカさんの言葉を聞きましたが、それに従うことは出来ません。そしてヒノカさんも私の言葉を聞いてはくれましたが、手を取ってはくれませんでした。私とヒノカさんには曲げることのできない物がある、それがこの戦う理由です。セツナさんにもアサマさんもそうであるように」
アサマ「当然です、私にセツナさん、そしてヒノカ様はあなたの操り人形ではありません。あなたが望むような形に進んで嵌るつもりはありませんよ。人は人、私は私、だからこそ、あなたにはここでヒノカ様にとっての意味になっていただかないといけないのです」
カムイ「ヒノカ様にとっての意味ですか。それは一体……」
アサマ「これをあなた方に話したところで理解などされないでしょうし、されたくもありません。いや、理解できたとすればそれはそれであなたを天の下へ導く理由にもなります。それでは勝負と行きましょう」チリンッ
白夜軍山伏「構え……」ザッ チャキンッ
アサマ「今さらですが、カムイ様、その剣を谷に捨ててこちらに来てもらえますか? それだけでこの戦いはひとまず終わるので、悪い話ではないと思いますよ」
カムイ「お断りします。私はヒノカさんと共に戦う道を選ぶことは出来ません。私は戦いに付いてきてくれた人たちと共に、理想を求めて戦うと決めたのですから」
アサマ「そうですか。では、行かせてもらいます」クルクルクルッ チャキン! カララランッ!
シュオオオッ ボワンッ!
白夜軍兵士「!!!」
白夜軍剣聖「来たか。よし、敵を切り倒し、白夜の底力を見せつけてやるのだ!」
ボワンボワンッ
白夜軍兵士『おおおおおーーーーっ!』
ルーナ「また引き寄せ!? ほとんどが城壁内部に入ったんじゃなかったの!?」
アクア「救出に使用したっていうことは、その逆も然りということね。すでに包囲されてると言ってもいい状態ね」
カムイ「エルフィさんにブノワさん、ハロルドさんは階段の封鎖に向かってください。サクラさんは三人の援護をお願いします」
サクラ「は、はい! わかりました!」タタタタッ
カムイ「他の皆さんは、私と一緒に来てください。ここを制圧して、敵弓兵部隊を側面から攻撃します!」タタタタッ
アサマ「敵に容赦は要りませんよ、一人残らず蛸殴りにして見せてあげましょうか」
アサマ「死後に見る、御仏のお顔というものを」
タタタタタッ!
白夜軍兵士「はああっ」
カミラ「来たみたいね、カムイ」
カムイ「はい。カミラ姉さん、ここは――」
ダッ
ルーナ「はいはい、ここはあたしに任せなさい。さっきの期待にちゃんと応えてあげるんだから!」チャキンッ
白夜軍兵士「くらえっ!」ブンッ
キィン
ルーナ「あまいあまいっ、そんな攻撃カミラ様との訓練に比べたら、鼻で笑っちゃうくらい軽いわよ!」ガンッ ドスンッ
白夜軍兵士「うあああっ」ドサッ
ルーナ「はい、次! 今のあたしは止められないわよ!」
白夜軍槍聖「はっ、調子に乗るなよ。小娘が!!」ダッ
ザンッザンッ
サッ サッ
ダッ
ルーナ「言ったでしょ、今のあたしは止められないって。その槍、叩き割ってあげるから、覚悟しておくことね」チャキッ
白夜軍槍聖「くっ、間合いに――」
ルーナ「さっさと、視界から消えてよね。目障りなのよ!」ドゴンッ
バギィ!
ルーナ「はあああっ」グッ ドガッ!
白夜軍槍聖「がふっ――」ドサッ ゴロゴロ クタリッ
ルーナ「フンッ! 今のあたしに勝つつもりなんて、あんた馬鹿じゃないの?」
カムイ「……す、すごい」
カミラ「ふふっ、ルーナのこともっと好きになっちゃいそうだわ」
ルーナ「えへへ、カムイ様。その今のあたしの動き、その……感じてくれた……よね?」
カムイ「はい、ルーナさんの波動、すごく感じました。とってもカッコよかったですよ」
ルーナ「そ、そうでしょ。ふふん、もっともっとあたしが戦うところ感じさせてあげるんだから!」
カミラ「ふふっ、張り切っているわね。おねえちゃんも負けてられないわ」バササッ
白夜軍兵士「敵の竜騎兵が来るぞ!」
カミラ「失礼するわね」ザッ ドスンッ
カミラ「さぁ、カムイが見ているから、いっぱいカッコいいところみせちゃいましょう?」
ザッ ザシュッ ブンブンッ! ドゴンッ
白夜軍兵士「がっ」ドシャ!
カミラ「ふふっ、熱くなっていくわね」ボワアアアアア!!!
白夜軍兵士「あぐっ、あつい、うあああっ!!!」ジタバタッ
カミラ「はい、これでおしまい。ライナロック!」シュオオオッ ドゴォンッ!!!
白夜軍兵士「うわあああああああっ」ドササッ
カミラ「ふふっ、痛かったかしら? カムイ、このまま押し切ってここを――」
タタタタッ……
アサマ「そこです!」グッ
カムイ「カミラ姉さん!」ダッ
シュキンッ
キィン
アサマ「おや、カムイ様に反応されてしまいましたか、余韻に浸っているその背中を串刺しにしようと思っていたのですが……。あまり、うまくはいきませんね」
カムイ「アサマさん……。はあああっ!」グッ キィン
ザッ
ザザッ
アサマ「……」
カミラ「女性を後ろから狙うなんて、なってないわね?」
アサマ「生憎、それほどまじめな僧ではありませんからね。それに、あなたも捕らえられてからじわじわ殺されるのは嫌でしょう。これは情けというものです、ありがたく受け取るべきことですよ」
カミラ「そう、ありがたいけど。私は暗夜の人間よ。白夜の習わしでもそういう物に興味は無いわ。残念だけどお引き取り願いましょう」シュオオンッ
ドゴォンッ!
サッ
アサマ「そうですか、非常に残念です。今止めをさせればヒノカ様の手を煩わすこともなかったのですが……」チャキッ
カミラ「そう、見上げた忠誠心ね。でも、ヒノカ王女は私を殺したがっているはずよ。なら、あなたが殺してしまったら、ヒノカ王女としては面白くないとは思わなくて?」
アサマ「そうですね。たしかにヒノカ様はあなたを殺したくて仕方ありません。捕らえられたならば楽に死ねるとは思えないでしょう。死ぬ頃にはとても見れたものではありません。そのように、あなたを苦しめ続けるヒノカ様の姿を私は簡単に想像できます。いえ、想像できるようになってしまいましたね……。とても認めたくはないのですが…、あの頃のヒノカ様をあまり思い出せなくなりました」
カムイ「アサマさん……」
アサマ「……ちっぽけなことかもしれませんが、それがとても大切なことでした。私はそれを理解することなく、ずっと仕えていたのです。あの日、あなたが暗夜に付くと口にした時にヒノカ様は崩れていたのかもしれません。それに気が付けなかったのは、私がまだ本当の意味でヒノカ様の臣下ではなかったからでしょう。私に覚悟は無かった、何かによって平穏が崩れ去るという現実に対峙する覚悟が、です。それを破壊したあなたを……私は破壊しないといけないのですよ。今までに意味をもう一度考えられるように……。もう一度、ヒノカ様の顔を思い出せるように……」
カムイ「……」
カムイ(アサマさんが今カミラ姉さんを殺そうとした理由が少しだけ分かった気がします。それは、とても優しいことです。思わず口に出したい。あなたの歩んで来た道は貴方だけの道だと。ですが……)
グッ
カムイ(今それを私が口にして何になるというのですか。だって、それは……、崩した側の私が言っていい言葉ではありませんし、無暗に入り込んではいけないことです。私がその理由を口にすることが出来る機会はもう、とっくに失われているのですから)
チャキッ
カムイ「アサマさん、あなたの戦う理由。それが何であろうと私は負けるつもりはありません。私はあなたのその願いを切り伏せて、私の道を進みます」
カムイ(……私はアサマさんの戦う理由をここで切り伏せる。たとえそれが……)
(ヒノカさんを大切に思っている故の理由だとしても………)
今日はここまで
アサマの現実主義は入り込みたくない事に対する防衛本能だと思っている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
―スサノオ長城中央区『東部城壁上層』―
パカラパカラッ
タタタタタッ
サクラ「この先に三カ所、内部から上がるための通用路があるみたいです」
エルフィ「まずは手前の二つを抑えましょう。ブノワはハロルドと一緒に手前を、わたしはその一つ奥を何とかするわ…」
ブノワ「ああ、わかった…」
ハロルド「エルフィくんの突撃に動揺している敵を叩いて一気に制圧しよう。通用路を何かで塞げば、そう簡単に突破はできないはずさ」
ブノワ「ああ、こちらに人数はいない以上、仕えないように封鎖するしか以外に手は無さそうだ…」
サクラ「はい。それに、これで敵の進軍を遅く出来れば、殺さないで無力化することも難しくなくなるはずです」
ハロルド「うむ、ここへ来るための通用路を一つに絞れば、互いの被害を抑えられるということだな」
ブノワ「誰も殺さないで済むわけではないが…。多くの者を殺さないで済むのなら、それにこしたことはない…」
サクラ「はい。頑張りましょう」
エルフィ「サクラ様、このまま勢いを殺さずに突撃するわ。一番奥の階段から来る敵は戦列を整えられれば、そう簡単に攻撃を仕掛けてこれなくなるはずだから、封鎖次第合流してちょうだい…」
ブノワ「わかった。封鎖が済み次第、後続を連れて合流する…」
ハロルド「ああ、エルフィくん、サクラ様、二人の幸運を祈っているぞ!」
エルフィ「ええ」
サクラ「ハロルドさん、ブノワさん頑張ってください!」
ブノワ「ああ。サクラ様も気を付けていくんだ…」
サクラ「はい」
エルフィ「それじゃ行くわ。サクラ様、しっかり掴まってて!」
サクラ「わ、わかりました!」ギュウッ
エルフィ「はああああああっ!!!!」パカラパカラッ!
白夜軍兵士「て、敵の重装騎兵が、うわあああああ!!!」
ドゴンッ
白夜軍婆娑羅「くっ、この上まで重装騎兵を運ぶとは…。こちらへ反転してくるかもしれん、奴の攻撃に備えろ!」
ブノワ「よし、敵がエルフィに意識を向けている。行くぞ、ハロルド…」
ハロルド「ああ、先に行かせてもらうぞ、ブノワくん! たあっ!」ダッ
ブンッ バキィンッ
白夜軍兵士「がっ――!」ドサッ
白夜軍婆娑羅「なっ、先行した重装騎兵はこちらを狙っていたわけではないのか? だとするなら、貴様らを抑え包囲殲滅するまでのこと……。いくぞ!」ダッ
ハロルド「かかってきたまえ! そう簡単にエルフィくんの下に行けると思わないことだ!」
白夜軍婆娑羅「だああっ!」チャキッ ブンッ!
ガキィン
ハロルド「うおおおっ! 中々やる、だがこちらも負けていられない。やああっ!」
ダッ グオンッ!
ザシュッ!!
白夜軍婆娑羅「ぐおおおっ……くっ、近距離では相手が悪い。ならば」チャキッ
スッ バサァ!
ハロルド(む、あれは白夜の呪い書!)
白夜軍婆娑羅「鳥神・酉! さぁ、いけぇ!!!」カラララッ シュオンッ!!!
バッ ザシュッ!!!!
ハロルド「ぐっ……!」
白夜軍婆娑羅「はははっ、あと一撃だ! これで終わりだ!!!」カラララ
ハロルド「!」
白夜軍婆娑羅「死ね!」
ザッザッザッ!
ブノワ「うおおおおおっ。死なせはしない!」
シュオンッ
ザシュッ!!!
ブノワ「ぐおおおっ……」バチンッ!
白夜軍婆娑羅「なに!?」
ハロルド「ブノワくん!?」
ブノワ「今だ、ハロルド!」
ハロルド「ああ、このチャンスを逃すほど、私も運は悪くない!」ダッ
白夜軍婆娑羅「ちっ、このまま返り討ちに――」スッ
ハロルド「出来ないさ、なにせ今の君は私よりも運が悪いからね! いくぞ!」ダッ
白夜軍婆娑羅「酉よ。いけえええぇぇ!」カラララッ……
ハロルド「フィニッシュだ!」チャキッ
シュオンッ バッ
サッ ドゴンッ!!!
白夜軍婆娑羅(くっ、急ぎすぎた! 奴め、姿勢を低くしてこちらの攻撃を――)
ハロルド「はああああっ!!!!」
シュタッ ズビシャアアアアッ!!!!
白夜軍婆娑羅「うっ、くそおおおおおっ……」ドサッドササッ!
ブノワ「今だ! うおおおおっ」ガッ ドゴンドゴンッ!!!
白夜軍兵士「うわああああっ!!!」
ハロルド「すごい…」
ブノワ「よし、このまま通用路を封鎖しよう…」
ハロルド「ああ、作業は私に任せるといい、すぐにパパッと仕上げてみせよう!」
ブノワ「ああ、よろしく頼む…。その間、敵は一人として近づけさせない!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エルフィ「敵が出ているみたい…。あそこが通用路ね」
サクラ「はい、エルフィさん。ここから私が援護します。エルフィさんは通用路の封鎖をお願いします」
エルフィ「それは危険です。ここは敵の真っただ中、いくら敵が白夜の人でも、手加減してくれるかわかりません」
サクラ「それは当たり前です。だって、私はカムイ姉様と一緒に闘っているんですから。むしろ、殺される覚悟が無いのにここにいてはいけないって思います。それにこのままエルフィさんと一緒にいても、エルフィさんの足を引っ張てしまうだけです」
エルフィ「サクラ様……」
サクラ「これは私が決めたんです。おねがいしますエルフィさん、どうか私にあなたの援護をさせてくれませんか?」
エルフィ「……」
サクラ「……」
エルフィ「わかりました…」
サクラ「ありがとうございます、エルフィさん」
エルフィ「ううん、何を言ってもダメな気がしたから…」
サクラ「えへへ、これでも結構頑固なところがあるんですよ」
エルフィ「ふふっ、そうなんですね…。サクラ様、援護をお願いします。通用路を封鎖は任せてください…」
サクラ「はい! ご武運を」バッ スタッ
エルフィ「はあああああっ!!!!!」パカラパカラッ
白夜軍兵士「き、来たぞ!!!!」
エルフィ「退いて! 退かないならこのまま行かせてもらうわ…」パラカパカラッ!
白夜軍兵士「ち、敵が通用路に向かっている! そこだけでもいい防御を厚くするんだ!」
エルフィ「させない! はあああっ!!!」ガシッ ブンッ
ドゴンッ
白夜軍兵士「がっ……」
白夜軍兵士「ちっ、怖気づくな。敵は単騎で来た阿呆、引きずり降ろして叩き潰してしまえ!!!」
エルフィ(攻撃は大丈夫、でもこうも四方八方から来られたら……)
白夜軍兵士「おら、背中ががら空きだ!」ダッ
エルフィ「しまっ――」
サクラ「させません!」
ヒュンッ バシュンッ!
白夜軍兵士「うあああっ」ドサッ
エルフィ「え?」
白夜軍兵士「な、なんだ。今の攻撃は!? 敵は一人ではないのか!?」
白夜軍兵士「くっ、雨に紛れて……。くそっ、どこに隠れてやが――」
サクラ「ごめんなさい!」パシュッ
ヒュンッ バシュンッ!
白夜軍兵士「なっ、いてえええっ」ドサッ ジタバタジタバタ
エルフィ(サクラ様。攻撃も加減してるから敵も死んでない。こんな中でそんなことが出来るなんて、すごいわね…)
サクラ「エルフィさん、敵が一箇所に固まりました、今なら一網打尽にできるかもしれません!」
エルフィ「ええ、このまま一気に全員吹き飛ばしてあげる!」ジャキッ ヒヒーンッ!
白夜軍兵士「て、敵が突貫してきます!!!」
白夜軍兵士「なっ、散らばれこのままではまとめてやられてしまうぞ」
エルフィ「させないわ!」チャキッ グンッ
サクラ「行かせません!」パシュシュッ
ドゴンッ
ザクザクッ!
白夜軍兵士「うわっ、斧が飛んできた」ピタッ
白夜軍兵士「こっちは、矢だ!」ピタッ
白夜軍兵士「ばっ、今足を止めたら――!」
エルフィ「そこ、みんな捻り潰してあげる!」パカラパカラッ!!!
ドゴゴンッ!!!! ドササッ!
白夜軍兵士「ぎゃあああっ!!!」
エルフィ(よし、これで……!)
タタタタタッ
エルフィ(通用路から足音! なら――)
エルフィ「はああっ」ブンッ
ヒューンッ ドスンッ
白夜軍兵士「なっ、敵の槍か!? 一度止まれ、敵が待ち伏せしている。隊列を組み直すんだ!」
エルフィ「よし、あとは……封鎖するだけ、急がないと…」スタッ
エルフィ(これはだめ、小さすぎるわ。えっと、これもダメね……)ペタペタッ
ガッシリッ
エルフィ(あっ、これならいけそう。ここと、ここをもってあとは……)
ガシッ
ググググッ
エルフィ「っ―――はあああああっ!!!!」グググッ ガコンッ!
エルフィ「よいしょっと!!!」ドゴンッ!!!!
エルフィ(これで封鎖できた……よね?)
サクラ(す、すごいです。城壁の一部を塊のまま取り出して、通用路を塞いじゃいました)
サクラ「エルフィさん!」
エルフィ「サクラ様、的確な援護で助かったわ。ありがとう…」
サクラ「いいえ、エルフィさんがいなかったら通用路の封鎖は出来ませんでした。あ、今すぐ治療しますね、はいっ!」シャランッ!
エルフィ「ふぅ、ありがとう。封鎖はそんな大したことじゃないわ。サクラ様が一緒に戦ってくれたおかげよ」
サクラ「え、そんなことありません、私がしたことに比べたらエルフィさんの方がすごかったです……」
エルフィ「いいえ、わたしだけだったら包囲されて動けなっていたもの…。サクラ様がわたしを守るために戦ってくれたからどうにかできた。本当にありがとう…」
サクラ「エルフィさん……。その、照れてしまいます///」
エルフィ「ふふっ。見て、向こうも通用路の封鎖が出来たみたい…」
サクラ「え……あっ、ブノワさんにハロルドさん!」
ブノワ「二人とも無事か…」ガシャンガシャンッ
ハロルド「ふむ、二人で本当にどうにかしてしまったのか。二人とも、ナイスだぞ!」ビシッ
サクラ「え、えっとナイスですか?」
ハロルド「ああ! しかし、もう一つは流石に間に合わなかったようだ」
サクラ「え?」
タタタタタッ
白夜軍兵士「よし、封鎖された通用路を開放し、中央集団と連携して挟み撃ちにするぞ。全員掛かれ!」
ウオオオオオオオ!!!
ドドドドドドッ
サクラ「そんな、こんなにもう上がってきているんですか?」
ブノワ「かなりの量だ……。だが、こちらも増援がいる……」
エルフィ「え?」
タタタタタタッ
カムイ軍ブレイブヒーロー「よし、どうにか間に合ったぞ」
カムイ軍ジェネラル「ドラゴンマスターの部隊に感謝しなくてはな。よし、ここからは重装の我々に分がある。横列陣形、敵を一歩たりとも進ませるな!」ガシャンガシャンツ!
ウオオオオオオッ!!!
サクラ「こんなにいっぱい、すごいです」
ハロルド「よし、エルフィくん、ハロルドくん。ここで敵の侵攻を共に食い止めるとしよう」
エルフィ「言われなくてもわかってる…。だけど、サクラ様はカムイ様と合流して…」
サクラ「え、でも援護は……」
エルフィ「こちらはもう大丈夫、敵の金鵄も天馬もこの雨の中で無暗に動いたりしないはず。どうやら中央付近に集中しているはずだから、あなたの力がきっと必要になるわ…。それに封鎖が済んだ以上、サクラ様はカムイ様の元に戻るべきよ…」
サクラ「エルフィさん……」
ブノワ「行くんだサクラ様、ここは俺たちが踏ん張り抜く…。この隊列を崩せるほどの兵力を敵は準備できないはずだ…」
ハロルド「そういうことだ。サクラ様、カムイ様たちを助けに行ってほしい」
サクラ「ブノワさん、ハロルドさん。わかりました、ここは皆さんに託します」
ハロルド「君、サクラ様をカムイ様の元までエスコートするように」
カムイ軍ブレイブヒーロー「分かりました。サクラ様、カムイ様の元まで護衛させていただきます」
サクラ「はい、おねがいします!あ、ハロルドさん、ブノワさん!」
ブノワ「む、サクラ様…」
ハロルド「なにか忘れ物でも…」
サクラ「えいっ!」シャラランッ
シュオンッ!
ブノワ「傷が癒えている……」
ハロルド「サクラ様……」
サクラ「皆さん、行ってきますね!」
タタタタッ
エルフィ「サクラ様、行っちゃったわね……」
ハロルド「ふむ、今の姿、とても凛々しく見えた」
ブノワ「可憐だ…」
エルフィ&ハロルド「!?」
ブノワ「う……////」
タタタタタッ
白夜軍兵士「いけぇ。こんな盾など押し切れ!!!!」
エルフィ「押し返してあげましょう!」
ハロルド「ああ、一気に決めるぞ!」
ブノワ「ここで負けるわけにはいかない…。うおおおおおおっ!」ダッ
白夜軍兵士「くっ、何という力だ!」
エルフィ「やああああっ!!!」ブンッ!
ドゴンッ!!!!
白夜軍兵士「うわあああああっ」ドッサッ
白夜軍兵士「くそっ、押し負けるな。白夜の力を見せつけてやるのだ!!!」
ウオオオオオオオオッ!!!!!!
ダダダダダダッ!!!!!
エルフィ「ここは絶対に通さないわ…」
ハロルド「エルフィ君の言う通り、そう易々と通すわけにはいかないさ」
ブノワ「ああ、ここは何が何でも守り抜く、ただそれだけのことだ…」
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城中央区『中央高台』―
ヒノカ「……セツナが負傷したというのか?」
ミタマ「はい、ですが安心してください。するべき処置は済ませましたし、容体も安定していますわ」
ヒノカ「そうか……よかった…。それよりも、周囲の状況はどうなっているんだ?」
ミタマ「周囲の状況ですか? はい、みんなまだ持ちこたえてくれています。まだ落ちている区域もありませんわ」
ヒノカ「……そうだな。カムイを力で支配しているような連中に、ここが落とせるわけがない。私たちがしてきたことに間違いなどあるわけがないんだからな……」
ミタマ「はい、ヒノカ様」
ヒノカ「カムイの場所は私が守るしかない。あんな暗闇の中で過ごし続けたせいで、狂ってしまっている。あの王女にはその報いを与えなければいけないな…。楽に死なせてやる物か……、カムイに偽りの姉として接し続けたことを後悔させてやる……。はははっ」
ミタマ(……アサマ様はこれを見たくなかったのですね。まだ日は浅い私でも、今のヒノカ様を見続けるのはいささか辛いもの。だって、セツナ様の負傷の際はわずかに表情を変えるだけでしたのに、暗夜の王女を口にしたときの顔は……)
ヒノカ「あははっ、あははははっ」
ミタマ(まるで何かに憑りつかれているよう。まさに――)
(鬼そのものですわ……)
今日はここまで
ああいうマップの階段を使って竜とか騎馬兵が現れるのを見て、どう進んでいるんだろうって時々思う。
あと3回ほどでスサノオ長城戦は終わる予定で、いつも通り番外を挟む予定です。
『サクラ組がカミラに匿われていたら 2章』と、もう一つ何かやろうと思います。
今考えているのはこんな感じです。
『ガンズが笑うとき』
『まきゅべす2』
『三匹のリリス』
『星界裁判』
その時に安価をお願いすると思いますので、その時はすみませんがよろしくお願いいたします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区『東城壁路』―
キィン
ガキィン!
カムイ「そこっ!」ダッ ザシュンッ!
アサマ「ぐっ……」ドスッ
シュオンッ!
バチィン!
カムイ「っ、はあああっ!」ダッ
アサマ「っ!!!」チャキッ
キィン カキィン
カムイ「……はぁはぁ」
アサマ(私に攻撃すればどうなるか、それくらいわかっているはずだというのに……。なぜ向かってくるのですか、この人は……)チャキッ
カムイ「やあああっ」
アサマ「っ!」サッ
タタタタタッ
カムイ「逃がしません!」タタタタッ
白夜軍山伏「アサマ様、今参ります!」ダッ
カムイ「カミラさん、その敵を頼みます」
カミラ「ええ、任せて。残念だけど、カムイの邪魔はさせないわ。はああっ!」シュオンッ!
ドゴンッ!
白夜軍山伏「くっ、魔法を使うか。だが、一人で我々をどうにかできるなどと――」ダッ
タタタタッ
ルーナ「残念だけど一人じゃないからね」チャキッ
アクア「そういうことよ……」チャキッ
ルーナ「勢いはいいけど、そう簡単にあたしたちを突破できるなんて思わないことね! アクア様、追撃よろしく頼むわ」
アクア「まかせて」
白夜軍山伏「こいつら、来るなら来いっ!!!」チャキッ
ルーナ「言われなくても向かってあげる。カムイ様の邪魔は誰にもさせないから!」グッ
タッ
ルーナ「そこっ、いただくわ!」ブンッ
ガキィン!
白夜軍山伏「くっ、なんていう力だ。女にしてはやるっ」
アクア「感心していられるなんてね。それじゃ、私のおまけも貰いなさい」ググッ
ブンッ
ガキィン ヒュンヒュンヒュン カランッ
白夜軍山伏「な、武器が――」
アクア「これでフィナーレね。やあぁっ!!!」ブンッ
ドガンッ
ドササッ
ルーナ「本当に力強いよね、アクア様って」
アクア「さっきの言葉あなたに対してのものよ、私じゃないわ。それよりカミラ、正面の敵をお願い」
カミラ「ええ、任せて。カムイの戦いに割り込ませるつもりはないわ」クルクルッ パシッ
アクア(カムイ、ここは私たちがどうにか食い止めるわ。あなたはあなたが望むことを手にするために戦って……あなたの戦いは私たちが必ず守るから!)ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
キィン カキィン!
ズザザーッ!
アサマ「ふむ、どうして一人で私の相手をしますか? 他の方々も呼んで私を蛸殴りにすればいいだけかと思うのですが」
カムイ「あなたにとっての悪が私だとするなら、それと向き合うことは私にしかできません。それがこうして一人で対峙している理由です」
アサマ「……なんですか。それが暗夜の騎士道精神というものでしょうか。まったく、戦争に卑怯も何もあったものではないでしょうに。そうまでして、私と一対一を望むなんてねぇ」
カムイ「アサマさん、あなたは私を恨んでいるのでしょう?」
アサマ「少しくらい誤魔化して聞くことは出来ないんですか。はぁ、王族とは思えない真っ直ぐさですね」
カムイ「生憎、こういったことに工夫を凝らすことは出来ない性質なもので」
アサマ「そうですか。ええ、恨んでいますよ。長い間、あなたはヒノカ様に思われていたというのに、裏切り暗夜に向かった」
カムイ「はい。私は白夜ではなく暗夜の人間であることを選びました。ずっと、ずっと、戦いの意味を見つけるために」
アサマ「ほぉ、これほどまでにヒノカ様を狂わせたのですから、その戦いの意味というのはとても高貴な物なのでしょう。たしか戦争を終わらせるでしたか……」
カムイ「それをとてもちっぽけなものだと、アサマさんは言いましたね」
アサマ「はい、私からすればあなたの望みや願いは、これっぽっちの価値もありません。私にとって価値のあることは……」
カムイ「かつてのヒノカさんに戻れる可能性があることだけ、そうでしょう?」
アサマ「!」
カムイ「私からすべてを奪ってヒノカさんの下へ連れていくのは、かつてのヒノカさんに戻れる可能性が少なからずあるから、先ほどカミラ姉さんを殺そうとしたのは豹変したヒノカさんにしないようにするため……。アサマさん、あなたは――」
アサマ「少し静かにしてもらえますか、カムイ様」
カムイ「……」
アサマ「先ほどから、言いたい放題ですね。まったく、ヒノカ様の近くにいなかったあなたに何がわかります?」
カムイ「……わかりません。わかるわけがありません」
アサマ「そうでしょう? なら、そのような言葉を――」
カムイ「ですが、考えることは出来ます。私のような人間が考えるちっぽけなことだとしてもです。そして今、口にしていることはアサマさん、あなたのことです」
アサマ「……ほぅ、そうですか。共に戦ったこともありませんが、私のような人間のことなど簡単に考えられると? さすがは白夜を裏切った王族です」
カムイ「……アサマさん、先ほど大橋でサクラさんに言いましたね。昔のヒノカさんの姿を覚えているからそのようなことが言えると。私には、あなたがサクラさんをとてもうらやましがっているように感じたんです。だって、今の貴方にとって、常に現実のヒノカさんが傍にいるのですから、どんなに昔を思い描こうともそれは叶わないでしょう」
アサマ「……」
カムイ「アサマさん、あなたは誰よりもヒノカさんを元に戻してあげたいと願っている。違いますか?」
アサマ「……はは」
アサマ「これは困りました。あなたという人はどうしてこうもズバズバと……」
カムイ「それは、あなたのその思いを私は切り伏せなくてはいけないからです……。私はそれを知っておかなくてはいけない。この先、それを忘れないために……」
アサマ「切り伏せる、ですか。本当にあなたはすべてを自分の物のように語るのですね」
カムイ「……」
アサマ「私の戦う意味すらこう推測してしまうとは、私はあなたにそう言われるために戦ってきたのではありませんよ。ヒノカ様と出会ったことや、セツナさんがヒノカ様を救うためにしたすべての事が、あなたに起因しているかもしれないというふざけた事実、これを認められると思っていますか?」
カムイ「認められませんね」
アサマ「そうでしょう」
カムイ「ええ……そのような勘違いをすることは」
アサマ「勘違い…?」
カムイ「アサマさん、その勘違いと一緒に私はあなたの戦う理由を切り伏せます。その思いを勘違いのままに終わらせるわけにはいきませんから!」チャキッ
アサマ「では、それが勘違いかどうか、ここで見極めさせていただきましょう」チャキッ
カムイ「……」グッ
アサマ「先に断っておきますが。この先、二度と動けなくなるものと思ってくださいね。カムイ様!」ダッ
カムイ「覚悟はしていますよ! はあああっ!」ダッ
アサマ(踏み込んできましたね。よもや、今の体力では呪いも反応しません。なら、渾身の一撃で、その首を折らせていただきますよ)
ガキィン
アサマ「はああっ!」バシッ
ドゴンッ!
カムイ「ぐっ……」
アサマ(よし、この距離もらいました!)ダッ
ジャキッ
アサマ「諦めてください……。それが今の貴方にできることですよ、カムイ様」ブンッ
カムイ「……」
アサマ(これは入った、この距離で避けられる攻撃ではありません。このまま、首が折れればそれでいい。加減は心得ています。これで、ヒノカ様は守ることのできるカムイ様を手に入れられます。そして――)
ググッ
アサマ(ヒノカ様は戻ってきます。セツナさんと私の行動に呆れ、優しくどこか儚い脆さを持った、あの頃のヒノカ様にもう一度――)
アサマ「はあああああっ!!!!」
カムイ「……」
シュオンッ!
カムイ「まだ終わりじゃありませんよ、アサマさん!」グッ
ショワアアアアアアンッ!!!!
アサマ「なっ」
カムイ竜形態『グオオオオッ!!!!!!』ダッ
アサマ(竜の姿に!? くっ、私に攻撃をさせるのが狙いでしたか)
バキンッ!!!
アサマ(くっ、人間相手と力を加減したせいで、槍が――)
カムイ竜形態『行きますよ、アサマさん。私は折れるわけにはいかないんです!』シュオオオオオッ
アサマ「くっ」バッ!
カムイ竜形態『終わりです!!!』
ピチャンッ ドバアアンッ!!!
アサマ「ぐああっ……」
アサマ(ここまで……でしたか……)
ドサッ
ドササッ……
カツンカツン
カムイ竜形態『……アサマさん』
アサマ「……ははっ、あなたの勝ちです。さぁ、止めをどうぞ……」
カムイ竜形態『いえ、その必要はありません。私の目的はあなたを殺すことではありませんから』
アサマ「きれいごとですね……。今、ここで私が起き上がってあなたを攻撃するかもしれません。その可能性は――」
カムイ竜形態『そうしたいならしてください。その時は、また昏倒させるだけです。私にはあなたの命を奪う理由はありません。むしろ、私はあなたに頼みたいことがあるんです』
アサマ「……なんですかそれは?」
シュオンッ
カムイ「頼みたいことは、ヒノカさんのことです」
アサマ「ヒノカ様……のこと?」
カムイ「この戦いが終わったとしても、私にヒノカさんの傍にいる資格はありません。そして、今から私はヒノカさんの戦う理由を切り伏せに行くつもりです。今、アサマさんから奪い取ったように、私は容赦なくヒノカさんからも奪うつもりです」
アサマ「それがどういう意味か分かっているとは思いますが……」
カムイ「はい、わかっています。だからこそ、アサマさんにはこれから先、ヒノカさんの傍にいてほしいんです。もちろん、セツナさんも一緒に」
アサマ「何を言っているのかわかっているのですか? あなたに拒絶されたヒノカ様がどうなってしまうのかを知って言っているのでしょう?」
カムイ「はい。だとしても、暗夜として戦うことは私自身が決めたことだと、ヒノカさんに伝えるつもりです。私という呪縛からヒノカさんを救い出してみせます。そして私がいなくなってもヒノカさんにはあなたたちがいてくれる。ここまでずっと、ヒノカさんの傍いてくれたあなたたちが……」
アサマ「……はぁ、そんな簡単に行くと思っているのですか?」
カムイ「簡単にいくわけはありません。でも、私がヒノカさんの下へ戻っても意味はないと思っています。ヒノカさんにもちゃんと人としての心はあるはずです。私はその人としてのヒノカさんを助け出したい。アサマさん、ここは私を信じてくれませんか、このスサノオ長城での戦いで、ヒノカさんを死なせたりはしません。絶対に、助け出してみせます」
アサマ「……」
カムイ「……アサマさん」
アサマ「すでに私とあなたの勝負は決しました。私は地に伏し、あなたは両足で立っている以上、あなたの戯言に付き合う以外の道はありませんよ。ただ……」
カムイ「……」
アサマ「あなたがその戯言を現実にするつもりでしたら……。ヒノカ様を助け出してみせてください。あの方は、こんなところで死んでいい人ではありませんから」
カムイ「もちろんです」
アサマ「ならさっさと行ってください。この雨の中、まだ戦況を理解していないお馬鹿さん方がいますが、それもいつまでもつかはわかりません。この惨状を見聞きすれば彼らも容赦はしないでしょう」
カムイ「……それを知っていても、あなたは私を倒そうとしていたんですね。ヒノカさんのために……」
アサマ「ええ。あなたを捕らえて、差し出して喜ぶヒノカ様が見たかったんでしょう。ですが結局、私は逃げていただけ、近くで見るのがつらかっただけ、私が命を賭けて守りたかったのは今のヒノカ様で無く……、変わってしまう前のヒノカ様だった……」
カムイ「だとしても、アサマさんがヒノカさんを思う気持ちに嘘はありません。少なくとも私はそう思います」
アサマ「本当、癪に触りますね。そこは私を罵倒する所だと思うのですが、まあいいです。さぁ大口を切ったのですから、見せてもらいますよ。あなたの戦いというものを」
カムイ「はい、必ずヒノカさんを助けてきます! 待っていてください」
タタタタタッ
アサマ「……」
ポタタッ
アサマ「ヒノカ様、申し訳ありませんが、私は負けてしまいました。それも相手に言い伏せられるような形で……。もしも、昔の貴女ならこの結果をどう思うでしょうか?」
ヒノカ『大丈夫か、アサマ? まったく、お前という奴は私を心配させることしかできないのか? だが、無事でよかった。なんだ、なぜ笑う、臣下の無事に安堵しては悪いというのか!? はぁ、では私も共に行く、お前だけではどうなるかわからないからな』
アサマ「……はぁ、思った以上にまだまだ私は未熟者です。塗り捨てられたと思っていたのに、これほど多くのことを考えられるのですからね」
アサマ(はぁ、ここまでの道がカムイ様によって作られていたですか……。そうですね、そんなこと認められません。でも、そんなことを思うこと自体、間違いです)
アサマ「私はヒノカ様のためにこうして戦っているのですから……。そこに他人が入り込む余地などあるわけがない」
アサマ(……素直になるべきですね。私はヒノカ様のためにすべてを選んできたのだと、そして認めたくないヒノカ様の姿から逃げていたことも……)
アサマ「ですが、こうして恨むべき相手に諭されるとは、本当に格好のつかない話ですね」
タタタタタッ
白夜軍山伏「アサマ様、ご無事ですか!」
アサマ「はい、無事ですよ。この様ですが……」
白夜軍山伏「ああ、すぐに手当てをします。残りの者たちにはカムイ王女を追うように指示を……」
アサマ「いえ、その必要はもうありません。周囲で倒れている仲間を回収して、治療に専念するようお願いします」
白夜軍山伏「ですが、まだ戦っている者たちもいます」
アサマ「戦おうとする者は気が済むまで戦わせればいいでしょう。彼らは向かってくるものに容赦はしませんが倒れている私のようなのに手を出すことはまぁないと思いますし、戦いたい者たちを引き留める通りは私にはありませんからね」
白夜軍山伏「アサマ様……」
アサマ「あなたは戦いたいのであれば、戦ってきてくれて構いませんよ」
白夜軍山伏「……勝敗は決しています。もう、ここ一帯を守る力はありません。生存者の治療を主に行うこととします」
アサマ「ええ、そうしてください。負けたとしても多くの兵が助かったとなれば……」
アサマ「ヒノカ様も喜んでくれますからね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カミラ「? 山伏隊が退いていくみたいね」
アクア「ええ、そのようだけど……」
ルーナ「どういうこと……」
タタタタタタッ
カムイ「みなさん」
カミラ「カムイ、山伏部隊が退いて行ったようだけど……」
ルーナ「もしかして、今さっきまで戦ってた奴にそうするように言ったわけ?」
カムイ「いいえ、そんなことを言った覚えはないんですけど。でも、この機会を逃すわけにはいきません、アサマさんからヒノカさんのことを託されましたから」
アクア「え、それって……」
カムイ「はい。もしかしたらアサマさんが何かをしてくれたのかもしれません。他の皆さんは?」
カミラ「後方から敵の接近が無いところを見ると、エルフィたちが通用路を抑えてくれたと見ていいし、山伏部隊がいなくなったとなると敵陣に横穴が開いたことになるわね」
カムイ「はい。この機に乗じて、一気に攻め上がります。多分、これが唯一の機会ですから……」
アクア「そうね、それじゃ……ん?」
タタタタタッ
カムイ軍ブレイブヒーロー「サクラ様、こちらです!」
サクラ「はい! ここまでありがとうございました。カムイ姉様!」
カムイ「サクラさん、こちらに戻られたんですか?」
サクラ「は、はい。その通用路を封鎖出来たのでで、カムイ姉様と合流してと言われて……」
カムイ「そうですか。エルフィさんたち、うまくやってくれたんですね」
サクラ「はい、私が必要になるはずだって言ってくれたんです。カムイ姉様、私にしかできないことを教えてください」
カムイ「もちろんです」
アクア「それでどうするのかしら?」
カムイ「はい、私に策があります。同時に、これは私の我侭にもなるはずです。それでよければ……」
ルーナ「今さら一つ二つ増えても変わらないし、それがカムイ様の中の英断なんでしょ? ならそれに従うのがあたしたちの仕事なんだから」
カムイ「ルーナさん……」
アクア「大丈夫よ、あなたの判断はきっとヒノカを救い出せるわ。自信を持ちなさい」
カムイ「アクアさんも……その、ありがとうございます」
カミラ「それでどうするのかしら?」
カムイ「はい、倒すべき敵は決まっています、同時に助け出すべき人もです」
カムイ(やるべきことはすべて出そろっています。あとは……)
「ヒノカさんを救い出します。皆さん、最後の準備に入ってください!」
今日はここまで
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城中央区『最上部』―
白夜軍金鵄武者「くっ、よもやここまで暗夜軍がやるとは」
白夜軍聖天馬武者「各自持ち場から目を逸らすな。敵は何処から来るかわからないぞ」
ミタマ(目に見えて包囲されつつあるようですね。カムイ様の軍勢の能力はこちらの戦力を上回っているのは明白、もう撤退すべきところですが……)
ヒノカ「……カムイ」
ミタマ(ヒノカ様に指示を出せるような状況ではありません。誰かが他に指示を出せばという話にはなりますが……。それが出来ているならもう誰かが出している。それを出さないのは)
ヒノカ「……どこにいるんだ。はやく、私の元に……。お前は暗夜に、あの女に操られているだけで……」
ミタマ(見ているだけでも痛々しいことはあります。だけどそれよりも目に入るのは手に持った槍の矛先……。あれが串刺しにするのは白夜王国の敵ではなく、ヒノカ様にとっての……)
ミタマ「ん?」
バサバサッ
ミタマ隊聖天馬武者「ミタマ様!」
ミタマ「どうでした?」
ミタマ隊聖天馬武者「ダメです。一人としてここへやってきていません。兵が集中してるここですらこのような状況で、他の城壁が無事であるとはとても……」
ミタマ「暗夜が完全に城壁全体を制圧化に置きつつあるにしても、生き残っている者がいるなら、ヒノカ様に陥落の知らせに来るはずです。それがどこからも現れないとなると、何かが起きたと感がるしかありませんわ」
ミタマ(まさか、カムイ様の軍勢が一人残らず逃がすことなく殺めたということですか?)
ミタマ「……」
ミタマ(いいえ、その可能性は低いですわ。散り散りにという逃げ方をするならまだしも、そんな逃げ方ができる程、皆は弱くありませんし、敗走する兵を追い立てて殺しつくすような人々なら、暗夜での革命を実行できるほどの指示は得られないはず)
ミタマ「だとしたら、この状況は一体どういうことです?」
ミタマ隊聖天馬武者「もしやユキムラ様の息が掛かった者たちに……」
ミタマ「ユキムラ様の意見に従う方々は確かに多いですが。この城壁戦力にはとても届きませんし、それにわざわざ壁になってくれるヒノカ様を信じて戦う方たちを、自分たちの手で間引くとは思えません。彼らにとって重要なのは、ヒノカ様が奮戦むなしく暗夜に殺されたという事実を作り上げることだけです」
ミタマ隊聖天馬武者「……ならば、もうヒノカ様に撤退を具申しましょう」
ミタマ「それはここにいるヒノカ様を信じて戦う方々が最もしたいことです。でも、今のヒノカ様を見て、あなたはそう告げられますの?」
ミタマ隊聖天馬武者「……いえ」
ミタマ「そういうことですわ。告げることがどういう状況に繋がるのか、皆知っています。自分が切り刻まれることより恐ろしいことが何なのか、あの人たちは理解しているんですよ」
ミタマ隊聖天馬武者「はい……。ミタマ様はこれからどうされるのですか?」
ミタマ「わたくしはここを離れるわけには参りませんわ。潮時と眼鏡さんの犬が知れば、そこらかしこで鼻を利かせ始めるはず。」
ミタマ隊聖天馬武者「では、私もお供を――」
ミタマ「いいえ、あなたは他の城壁へ。わたくしたちの仕事は多くの兵を王都に返すこと、何が起きているかを確かめてきて来てくれますか?」
ミタマ隊聖天馬武者「……わかりました。ミタマ様をお気をつけて」
バサバサッ
ミタマ「……ふぅ」
ミタマ(彼らの事です。この戦況になって手を拱いているとはとても思えません。援軍という名目でこちらに現れて、ヒノカ様の周辺でその機を待とうとするはず。でも、援軍は今のところない……)
ミタマ「…何が起こっているのかさっぱりわかりませんけど、今はあなただけを信じる以外に道はありませんわね……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―スサノオ長城中央区『城壁第二棟』―
バサバサッ!
白夜軍聖天馬武者「はあああっ!!!」ブンッ
ルーナ「甘いわ。それっ!」クルルッ ブンッ
ザシュンッ!
ルーナ「今よ、サクラ様!」
サクラ「は、はい。ごめんなさい!」パシュッ!
ズビシャ!!!
白夜軍聖天馬武者「あぐっ!!!」ドササッ
白夜軍金鵄武者「なっ、サクラ王女、本当にあなたまで! くそっ、どこまで我々を苦しめるつもりだ、この裏切り者!!!」ビュンッ
シュパッ!
カムイ「当るわけにはいきません。私はまだ裏切り者であり続けなくてはいけませんから」チャキッ ダッ
ザシュンッ!!!
白夜軍金鵄武者「きゃああっ!!! うううっ、まだ、まだだ!」
カムイ「カミラ姉さん!」
カミラ「ええ、あなたに恨みはないけど、今は少し眠っていなさい」グッ
ドゴンッ
クエエエエエッ!!!
白夜軍金鵄武者「ヒ、ノカ様……」ドササッ
サクラ「あっ、間に合って、ライブ!」シャランッ
白夜軍金鵄武者「ううっ、すぅ……すぅ……」
サクラ「……大丈夫、気を失っているだけです。よかった……」
カムイ「はい、皆さんありがとうございます。命を奪わないようにしてくれて」
カミラ「いいのよ。多く敵がいる場所とは違うのだから、これくらいどうにかしないと。それに、ようやく見える所まで来たのだから、これ以上の犠牲は極力避けないといけないわ」
カムイ「はい」
アクア「だけど、この豪雨の中だから動いている天馬や金鵄はいないわ。その代り、中央の高台に多くいるみたいね」
ルーナ「下から近づいてもばれたらそう簡単に上らせてくれないわよ」
カムイ「ええ、それにあそこで戦いが始まれば、ユキムラさんの配下が容赦なく攻撃を仕掛けてくるはずです。皆さんも、そしてヒノカさんを守るためにいる方々の命も奪わせるわけにはいきません」
ルーナ「それで、さっき話した方法ってことね」
カムイ「はい、今できることの中で、一番可能性があるのはこれだと思いますから」
カミラ「それで本当にいいの?」
カムイ「はい、これは私にしかできないことですから。私が決着を付けなくてはいけない以上、ヒノカさんを助けられません」
カミラ「そう、ならおねえちゃんは何も言わないわ。カムイの信じる事にまっすぐでありなさい」
カムイ「はい。アクアさんにルーナさん、サクラさんはヒノカさんを狙う何者かの探索を。私がヒノカさんと対峙する以上、これ以上の機会はないと彼らは動き出すはずです。それらを叩いてください」
ルーナ「わかったけど、本当に大丈夫なの? やっぱり、あたしも付いて行った方が――」
カムイ「これは私の問題で、私が解決するべきことです。皆さんを巻き込むわけにはいきませんよ」
アクア「……本当に大丈夫なのね?」
カムイ「はい。アクアさん、大丈夫です。ヒノカさんを、ちゃんと助けて戻ってきますから。サクラさんも待っていてくださいね」
サクラ「はい、カムイ姉様。お願いします」
カムイ「行きましょう、カミラ姉さん」
カミラ「ええ、行きましょう」
バサバサッ
ルーナ「行ったわね。で、どうやって見つけるの?」
アクア「さすがに近距離から命を狙うことは無いはず、となれば弓での暗殺が妥当ね。カムイの予定通りに事が進めば、その周辺の高台に彼らが現れるだろうから、先回りして確実に潰していくわ。こんなことでヒノカを死なせるわけにはいかないもの」
サクラ「はい、アクア姉様。行きましょう!」
タタタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒノカ「……ん?」
白夜金鵄武者「どうかしました、ヒノカ様?」
ヒノカ「……何か聞こえないか?」
ザーーーーーッ
白夜軍聖天馬武者「いえ、私にはなにも……」
ザーーーーーッ
バサササッ!!!
ヒノカ「……! 全員構え!」
白夜軍金鵄武者「え?」
バササッ
カミラ「遅かったわね。残念だけど、倒れてちょうだい」ブンッ
クエエエエエッ!!!
ビシャアアアッ
白夜軍金鵄武者「なっ!!!」
カムイ「はああっ!」シュタッ ドゴンッ!
白夜軍金鵄武者「はぐっ!!! うううっ……」ドサッ
白夜軍聖天馬武者「敵襲!? くそっ」バッ
カムイ「させません!」ダッ ザシュンッ!
白夜軍聖天馬武者「がっ、うううっ」ドサッ
ヒノカ「っ、カムイ!」
ミタマ「っ!」チャキッ
カミラ「カムイ、乗りなさい!」スッ
カムイ「はいっ!」パシッ
バサバサッ!
ミタマ「……」パシュッ!
スカッ
ミタマ「はぁ、当りませんでしたわ」
ミタマ(さて、カムイ様がこうして現れた以上、ヒノカ様もじっとしてはいられないことを狙ってでしょうか。その、なんというか、すごい手で来ますのね)
バサバサッ
白夜軍聖天馬武者「ヒノカ様!? いったい何が……」
ミタマ「敵襲です。どうやら、思った以上に肉薄されているみたいですわ」
白夜軍聖天馬武者「もうここにまで、敵が来たというのか?」
ヒノカ「くっ、カムイ……!」
バササッ
白夜軍聖天馬武者「ヒ、ヒノカ様!? どちらに向かわれるつもりですか!」
ヒノカ「決まっている。カムイを連れ戻す! あの暗夜の王女を殺して、カムイを私の元に――」
白夜軍聖天馬武者「ヒノカ様、これは罠に決まっています。ヒノカ様を孤立させるために敵が打った手に違いありません。ヒノカ様!」
ヒノカ「行くぞ。さぁ、お前の主人の怨敵、暗夜の王女を一緒に撃とう」
クエエエエッ!
バサバサッ!
白夜軍聖天馬武者「くっ、仕方ない。みんな、ヒノカ様を援護しに向かうぞ! 白夜の聖天馬武者隊の力を見せる時だ!」
白夜軍聖天馬武者隊『はっ!』
バサササッ!!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~
バサバサッ
カミラ「ヒノカ王女、予定通り追いかけてきたみたい。話にあげた小さな高台までもうすぐよ。ふふっ、よかったわ敵はいないみたい」
カムイ「では、そこに私を下ろしてください。私だけになったとすれば、ヒノカさんもカミラ姉さんを追いかけることを止めるはずです。城壁下から敵陣を突破して、アクアさんたちと合流してください」
カミラ「……」
カムイ「カミラ姉さん?」
カミラ「それは出来ないみたい。ヒノカ王女の後方に何騎か天馬の姿が見えるわ」
カムイ「そうですか。あれですべてではなかったということですね。仕方ありません、私一人であの数を相手します」
カミラ「……ダメよ。そんなことさせないわ。カムイ、言っていたでしょうヒノカ王女を救い出すのは私の役目だって。なら、そこに邪魔者を入れないのがおねえちゃんの役目、そうでしょう?」
カムイ「カミラ姉さん」
カミラ「カムイ、心配しないで。それとも、私は頼れるおねえちゃんではないのかしら?」
カムイ「いいえ。とっても頼りになるおねえちゃんです。お願いできますか?」
カミラ「ふふっ、任せてちょうだい。行ってらっしゃいカムイ」
カムイ「はい、行ってきます」
シュタッ
バササササッ
カムイ「……来ましたか」
バサバサッ
カムイ(カミラ姉さん、お願いします。私は私にしかできないことを……)
バサバサッ ドスンッ
ヒノカ「カムイ……」
カムイ「………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ルーナ「……ここで待っていればいいわけ?」
アクア「カムイが下りた高台に弓で攻撃ができるのは、ここと向かい側にもう一つ。カミラが合流してこない以上、多分そちらに向かったと考えるべきよ」
ルーナ「そうならいいけど。これで外れてたら目も当てられないわ」
サクラ「不安になること言わないでください。ルーナさん」
ルーナ「そ、それはそうだけど……。ほら、万が一っていうこともあるから……」
アクア「たしかにね。だけどこの場合、万が一を考えなくちゃいけないのは……」
タタタタタッ
アクア「敵の方よ」
タタタタッ
カムイ軍?アドベンチャラー「なっ、何だお前たちは!?」
ルーナ「何ってこの格好見て分からない? 暗夜軍の服着てるならって……。驚いたわ、こっちの服着て何してるわけ?」
アクア「なるほどね。恰好も暗夜兵にしておけば、誰もが暗夜軍の仕業と思うものね?」
カムイ軍?アドベンチャラー「な、なにを言っているんだ。私は暗夜の人間だぞ。冗談はよしてくれないか。私は下にいる者たちから周囲を見るように言われてきただけだ」
ルーナ「ふーん、もうそんなところまで攻め込んでるわけ?」
カムイ軍?アドベンチャラー「あ、ああ。ほら、さっさと退いてくれ。待っている仲間に合図を送らないといけないんだ」
サクラ「……では、あなたが仲間なら合言葉を知っているはずです。合言葉をお願いします」
カムイ軍?アドベンチャラー「あ、合言葉だって?」
サクラ「はい。当然知っていますよね?」
カムイ軍?アドベンチャラー「あ、ああ、もちろんさ」
アクア(合言葉なんてものは無い、それを知ってると言った時点でこの男は――)
ルーナ(間違いないわね……)
カムイ軍?アドベンチャラー「えーっと、確か……そうだそうだ、思い出したよ。たしかこういうのだったな!」スッ パシュッ
ルーナ「サクラ様!」ダッ グッ
キィン!!!
サクラ「ルーナさん!」
ルーナ「大丈夫、大丈夫。シールドで弾いたから、それにしてももう少し粘ってもいいと思うけど?」
カムイ軍?アドベンチャラー「……」
サクラ(この人、殺すつもりで矢を射っていました……。間違いありません、この人は私たちの仲間じゃなくて……)
カムイ軍?アドベンチャラー「なんだよ。そっちこそ、何出しゃばってくれてるんだ。今の決まれば、暗夜に使われそして裏切られた悲劇の王女っていうその身にふさわしい、最後をサクラ王女が迎えられたっていうのにな」バサッ
アクア「……その口ぶり、繕うつもりはないということね?」
白夜軍弓聖「ええ、そういうことです。先客がいても今だに王族などという存在に夢を見ている同胞かと思っていましたが、まさか先を読んで暗夜の人々がいるとは思いませんでしたよ」タッ タッ タッ
アクア「残念だけど、それくらい浅はかな行いということよ」
サクラ「皆さんは、ユキムラさんの配下の方なんですね……」
白夜軍弓聖「そこまでわかっているとは……。まったく、白夜の王族は本当に使えない方ばかりですね。暗夜の人質だったが、奇跡的に救われた時の人として暗夜報復への導き手として歩んでくれるとばかり思っていたんですが」
サクラ「私は人質じゃありません」
白夜軍弓聖「ええ、そうですね。暗夜に身も心も売った売国奴、王族として白夜のために死ぬべきだと思わなかった、甘い王女。ここでその命を奪い、ヒノカ王女が戦死の報の箔にして差し上げましょう。信じていたあなたは最後の最後でヒノカ王女を無くし、絶望したまま命を奪われたと。ええ、これがいいでしょう」
白夜軍アドベンチャラー「ははっ、そりゃいいな。もう少し姿に箔をつけてもいいと思うがな。王女がひどい死にざまを晒したとなれば、なぁ?」
ルーナ「最低ね。それが自国の王女に対して言っていいものだと思ってるわけ?」
白夜軍アドベンチャラー「へへっ、別に人質じゃないって言ってるんだ。なら、暗夜の敵ってことで、それに対してナニしたって別に構わねえ、そうだろ? ああ、ヒノカ様もいいな。殺してからじゃあまり楽しめねえから、生きてることを願いたいね。ひひひっ」
サクラ「……ヒノカ姉様は死なせません。カムイ姉様が必ず助け出してくれます。あなたたちのように都合よく覆い隠すような人たちに手を出させるわけにはいかないんです……。」
白夜軍弓聖「これは何というか、本当に死んでから出ないと役に立たない王女だ……。貴方たちの死がこの先語られる暗夜の滅亡に説得力を持たせるものになるというのに。暗夜は滅ぶべきして滅んだと、後世の者たちは頷くことでしょう」
ルーナ「本気でそう言ってるなら、頭沸いてるじゃすまないわね」
サクラ「そんな未来は絶対に認めません。私は戻れなかった人たちが見るべきだった白夜を取り戻してみせます。あなたたちの描く白夜になんて絶対にさせません!」チャキッ
アクア「ええ、ユキムラの考えている筋書き、全力で叩かせてもらうわ」
白夜軍アドベンチャラー「へへっ、そうこなくっちゃな。よく見れば三人とも良さそうな奴らばっかりだぜ……」
白夜軍弓聖「殺してから楽しんでください。なぁに、箱入り娘が二人と戦士が一人、たやすく殺して差し上げますよ!」パシュッ
サクラ「!」サッ シュオンッ シュパッ
アクア「ルーナ!」タタタッ
ルーナ「行くわよ!」ダッ
白夜軍アドベンチャラー「へっ、おらよ! フリーズ」シュオン
ルーナ「!」
白夜軍弓聖「くらいなさいっ!」パシュッ
アクア「あぶない!」カキィン!
ルーナ「アクア様、ありがと」
アクア「あの男を先に叩きましょう。サクラ、援護して」
サクラ「はい!」キリリッ パシュッ!
白夜軍アドベンチャラー「っ! ち、まだまだ!」チャキッ パシュシュッ!
ヒュンヒュン!
サクラ「!」サッ サッ
サクラ(何とか避けられ――)
白夜軍弓聖「こっちにも気を配った方がいいですよ!」パシュッ
ズビシャ!!!
サクラ「きゃあっ!」
白夜軍弓聖「ふん、何が戻れなかった人たちですか。奴らは白夜ではなく暗夜に媚びを売った輩、暗夜で死ぬのがお似合いだった者たちです。まぁ、少しばかりは白夜に戻って死んだようですが」
サクラ「スズメさんたちは白夜に帰ることを望んでいました。そして、ようやく故郷に戻ってこれたのに、それをあなたたちが!」
白夜軍弓聖「ははっ、ユキムラ様は白夜を守るためにやっただけのこと。むしろ戻ってこれただけでも幸せ者でしょう。自分たちが白夜にいてはいけない存在だと改めて理解できたのですから」
サクラ「……あなたたちの方が、白夜にいてはいけない人たちです。いいえ、暗夜にだってあなた方に居場所なんてありません。暗夜も白夜も関係ありません、あなたたちのような人たちがいるから、いつまでも戦いが終わらないんです!」
白夜軍弓聖「はっ、先に仕掛けてきたのは暗夜でしょうに。それを忘れているとは、都合のいい王女様ですね!」パシュッ
ザシュッ
サクラ「ううっ……」
白夜軍弓聖「おやおや、その弓は飾りですか? さっさと手放したらどうです。大丈夫、腐っても王族、痛みが無いように一撃で葬って差し上げますから」
サクラ「はぁ、はぁ……。お断りします」チャキッ
白夜軍弓聖「……頑固な王女です。まぁいい、動けなくなるまで、矢を射ってさしあげます。少しばかり残忍な死体になりますが、そのほうが暗夜の恐ろしさを表せて、ちょうどいい」チャキッ
サクラ「……」チャキッ シュオンッ
サクラ(絶対に負けない。私が暗夜に殺されたなんていう出まかせ、そんな嘘で終わらせない。そんな悪意を私は絶対に許しません)
サクラ「覚悟してください……。私たちはあなたを倒します!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アクア「片を付けてあげる!」
ルーナ「アクア様、一気にいくわよ!」ダッ
白夜軍アドベンチャラー「さっさと倒れちまえってんだよ! フリーズ!」シュオンッ
アクア「っ!」
白夜軍アドベンチャラー(よしっ、この距離なら次の動きであいつを殺せる。へへっ、どう遊んでやろうか?)
ルーナ「アクア様」ザッ
白夜軍アドベンチャラー「へへっ、無駄無駄! これでおわ――」
ルーナ「甘いのよ……。アクア様」
アクア「ええ、♪~ ♪~」
白夜軍アドベンチャラー「なんだ、突然歌って、気が狂っ――」
ルーナ「敵を前にして余裕なんて、そっちの方が気狂いじゃない?」
白夜軍アドベンチャラー「はっ、こんなに距離を置いてなにを――」
ダッ スッ
ルーナ「残念だけど、距離はこんなに近いのよ」グッ
白夜軍アドベンチャラー(な、馬鹿な。今のわずかな時間で!? こいつ動きを止めたと思った瞬間に一気に距離を詰めてきたってのか!?)
ルーナ「本気で行くわよ。はああああああああっ!!!」ダッ
ドゴンッ グサササッ!!!
白夜軍アドベンチャラー「あぐっ、うがああああああっ!!!! はら、腹に、うが、ぬけ、ぬけええええっ!!!!」
ルーナ「……いやよ。」ググググッ
白夜軍アドベンチャラー「あ……ひぐ、……がはっ、てめえら、この、くそあま……が……」
ルーナ「……生憎だけど、あんたにそう言われても悔しくもなんともないから、それじゃあね」ズシャリッ
白夜軍アドベンチャラー「」
ズシャリ……ブンッ!
ルーナ「ふぅ……あんたなんかに負けるはずないでしょ」
タタタタッ
ルーナ「アクア様、大丈夫!? まだ魔法が切れてないみたいだけど……」
アクア「ルーナ、私はいいから。それよりサクラをおねがい。一人で敵と対峙してるはずよ」
ルーナ「わかったわ! 間に合うといいんだけど!」タタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サクラ「はっ、てやっ!」パシュシュ!
ヒュンヒュン!
白夜軍弓聖「おっと、中々にやりますね」ササッ
サクラ「私はあなたを倒します。ヒノカ姉様やリョウマ兄様を苦しめるような人を、許すわけにはいきません」
白夜軍弓聖「そうですか。もっとも、無理でしょうがね。箱入りのまま、暗夜でも守られる側で会ったあなたに負けると思っているとは、お笑い事です!」パシュッ
サクラ「これで決めます!」チャキッ
サクラ(危険ですけど、ここなら一直線に!)
タタタタッ
白夜軍弓聖(なるほど、縁に誘導してそこを攻撃してくるつもりですか。では、その策に乗ってあげるとしましょう。ずっと籠りっぱなしだった王女ごときに命を奪う一撃が即座に出せるとは思えませんのでね)タタタタッ
パシュッ
パシュンッ!
タタタタタッ カッ!
タタタタッ カッ!
サクラ「そこです!」チャキッ キリリリッ!
白夜軍弓聖「もらいましたよ」チャキッ キリリリッ!
白夜軍弓聖(こちらの攻撃、この角度ならサクラ王女の顔面に当たりますね。それに比べてサクラ王女の攻撃、当たりはしますが死ぬほどじゃない。結局、箱入り王女は王女のままということ。ですがご安心を、あなたのは死は有効に使わせていただきますから!)
パシュッ
パシュッ!
バシュンッ!!!ィンッ!
白夜軍弓聖「がふっ!!!」
白夜軍弓聖(ぐっ、深く入りましたが、なんとか耐えきれた。ほら、もうサクラ王女は頭を貫かれて、そこに倒れ――)
白夜軍弓聖「……て?」
カランカランッ
ルーナ「なんとか間に合ったわね…。そう言うことするんだったら事前に一言言ってほしいんだけど…」
サクラ「ごめんなさい、合流してくれるって信じて動いてしまいました」
白夜軍弓聖(なっ、奴は足止めを――)
白夜軍アドベンチャラー「」
白夜軍弓聖(あの馬鹿、先に息絶えたというのですか!?)
ルーナ「そうそれはどうも、それじゃ決めちゃいましょ?」
サクラ「……はい」キリリリッ
白夜軍弓聖「くっ、聞いてない。こんなの聞いていないぞ! くそっ」ダッ
白夜軍弓聖(こんなところで死ぬわけには、いずれ暗夜が無くなった先で、私は穏やかな生活を――)
サクラ「……行きます!」シュオンッ!
シュオンッ
バシュンッ!!!
ポタタタッ
白夜軍弓聖「がっ、あ……ぐっ、うあ……」ケホッ
ビチャッ
白夜軍弓聖「くそっ、なぜ……こんな……うそだ……。こんな終わり方……」ドサッ
サクラ「……」
白夜軍弓聖「」
ルーナ「終わったみたい。もう大丈夫ね」
アクア「二人とも無事?」
サクラ「は、はい、大丈夫――」クタリッ
ルーナ「ちょ、サクラ様!? 大丈夫、傷が痛むの?」
サクラ「いえ、その傷はそれほど痛くないんです。なんだか、足の力が抜けて――」
ポタッ ポタタッ
サクラ「あれ、なんで……なんで私、泣いてるんでしょうか…」
アクア「サクラ」
サクラ「おかしいですよね。ヒノカ姉様やリョウマ兄様を助けたいって、そう思って人を手に掛けたのに、どうして……」
ギュッ
アクア「それが普通の事なのよ、サクラ。人を殺すことはとても恐ろしい事、サクラはそれを知っている。相手が敵であっても、命を奪うことは取り返しのつかないことだから」
サクラ「……私がしたことは正しかったんでしょうか?」
アクア「あなたがしたことは、ヒノカを守っているわ。でも、人を殺めたことを正しいなんて言えないわ」
サクラ「……」
アクア「だけどね。それを忘れないでいる事には意味があるわ。サクラが殺めた人のこと、それを忘れない限り、この行いは意味を持ち続けるはずよ。それはカムイも同じだから」
サクラ「カムイ姉様もですか?」
アクア「ええ、カムイにとってヒノカを救うことは願いそのものよ……」
サクラ「願い……ですか」
アクア「ええ、カムイにとっての願い。人々を動かす理想と違う、カムイの中にある純粋な願い。少なくとも私はカムイが多くを犠牲にしてでも得たい願いがあるとするなら、それは――」
アクア「名前も知らない誰かじゃなくて、知っている誰かを救うことだと思うから……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヒノカ「カムイ、さぁ帰ろう? お前ひとりでいるということは、私と一緒に戻るためなんだろう?」
カムイ「ヒノカさん。遅くなってしまってごめんなさい」
ヒノカ「何を謝っているんだ。お前が帰ってきてくれるなら、謝罪なんて必要ないさ。リョウマ兄様も国のみんなもお前が戻ってきたら喜んでくれるはずだ。共にもう一度、家族として時間を過ごそう? それに私はお前の姉なんだから、姉さんと――」
カムイ「違います。ヒノカさん。私が謝っているのは帰ってくるのが遅れたからじゃありません。あなたにちゃんと伝えなくてはいけないこと、伝えていなかったからです」
ヒノカ「伝えなくてはいけないこと……。それはなんだ?」
カムイ「……ヒノカさん。私は白夜の人間に戻ることは出来ません」
ヒノカ「何を言っているんだ? 多くの者がお前を咎めようとするからか? なら心配しなくていい、お前のことは私が守ってやる。口出しするようなものは――」
カムイ「いいえ、私は私を咎める人のことを恐れて白夜に戻らないわけではないんです。私はあの時、あの平原で暗夜の人間であることを決めた。あの日、白夜の王族としてずっと慕われていた私は死んだんです」
ヒノカ「死んでなんていない! カムイ、目を覚ませ。私はお前が帰ってくるのをずっと待っていたんだ! 幼い頃から攫われたお前をいつか白夜の下に取り返すと信じて、ずっとずっと!」
カムイ「ヒノカさんが私のことを強く思ってくれている事、とてもうれしく思ってます。こんな私をこんなにも大切に見てくれている人がいるなんて、信じられないくらいです」
ヒノカ「なら、ここが戻ってくるべき場所だ。私はお前を守るために――」
カムイ「私は守られるわけにはいかないんです。それは暗夜であろうと白夜であろうと変わりません。私は守られるような立場にいることは許されないんです。私は終わりまで戦い続けると決めた、それを投げ出して守られるわけにはいかないんですよ」
ヒノカ「カムイ……」
カムイ「ヒノカさん。もう終わりにしましょう、私はもうあなたに守られることはありません。共に戦うことは出来ても、私の望む形で戦いを終わらせることは出来ないんです」
ヒノカ「……ははっ」
ヒノカ「あはは、あははははははっ!!!!」
カムイ「ヒノカさん?」
ヒノカ「そうか、そうだったんだな。そうすればよかったんだ、私はずっとお前が戻ってきてくれると思って待っていた。ああして拒絶していても、最後には白夜に戻ってきてくれると……でも、違ったんだな」
チャキッ
ヒノカ「お前は暗夜で育ってきたんだ。それはそうだ、私の考えが通じるわけもない。お前には暗夜の人間としての血が流れているんだからな……。でも大丈夫、私が全て洗い流してやるからな」
カムイ「ヒノカさん……」
ヒノカ「大丈夫、暗夜の記憶を持つお前を私が全て拭い去ってやる。そうすればカムイは白夜の人間に戻れる。あの女の事も忘れれば、カムイは私を姉と呼んでくれるだろう? ずっと守ってほしいと懇願してくれるだろう? 私の時間には意味があったと証明してくれるだろう?」
カムイ(……これがヒノカさんに絡みついている私という存在なんですね。本当なら私は、あの時白夜の旗の元で共に戦うはずだった。でも、それを私は否定して暗夜に向かった。それがヒノカさんにとってどれだけの衝撃だったのか、私にはわかりません。でも、だとしても――)
カムイ「私はあなたにこの身を捧げることは出来ません。そして、その願いもここで断ち切らせてもらいます。ヒノカさんの中にある私という鎖、それをここで終わらせてみせます」
ヒノカ「そうか、お前はそう言うんだな。安心てくれ、カムイ。その反抗的なお前をすぐに収めてやる。そして次に目を覚ました時は、ちゃんとカムイになっているはずだ。もう誰もお前を傷つけたりしない、私が守り続けるよ、カムイ……」バサバサッ
カムイ「ヒノカさん、勝負です。ここであなたの悪意を断ち切って、必ず――」
クルクル チャキッ!
「助け出してみせます!!!」
今日はここまで
ヒノカの中で、今のカムイと理想のカムイが分離したら。
今のカムイを『お前』と呼び、理想のカムイを『カムイ』と言うんじゃないかと。
FE無双DLC、やはりアクアの参戦は予想通りと言わざるを得ない。
そしてまさかの服剥ぎ実装予定とか(いいぞもっとやれ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城中央区―『城壁上部』―
白夜軍聖天馬武者「うっ、くそぉおおおっ」フラッ ドタンッ!
カミラ「はぁはぁ……っ、さすがに三騎全てを相手するのは骨が折れるわね」
グオオオッ グオオオッ
カミラ「ふふっ、いっぱい頑張って疲れちゃったかしら? 次の食事はいっぱいおいしいものを食べさせてあげる。だから、もうひと頑張りよ」
カミラ(これでカムイの下に向かおうとしてる天馬隊は片づけた。あとは……)
カミラ「最後のお邪魔虫をどうにかしないと。アクアにルーナ、サクラ王女が向こうの高台はどうにかしてくれているはず。ならもう一つの高台に向かうべきね」
バサバサッ
カミラ(静かね、私が来ていることには流石に気づくとは思うのだけど)
カミラ「……どういうこと、兵がいないわ。全員が地上に回ったとしても、こんながらんどうになったりはしないはずなのに……」
カミラ(……なにかしら、確かに戦いが行われた形跡はある。でも、もう――)
カミラ「戦いが終わった後みたいに静かね……」
カミラ(それに白夜軍はおろか、暗夜軍の姿もない。白夜の人間がいないなら、暗夜の誰かがここにいるはずなのに。一体どういうこと?)
カミラ「今は考えても仕方ないわ。その高台を狙える場所はあそこだけ、まずはそこを目指さないと」
バサバサッ ドスンッ
カミラ(ここみたいね、まだ誰もいないみたい、階段を上ってくる気配もないから、先回りできた……?)
カミラ「ん、壁に何かが付いて……。……これは血?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城中央区『外れの高台』―
ヒノカ(お前はどうして、そんなに私を拒むんだ?)
キィン カキィン!
ヒノカ(お前はどうして、私の願いを踏みにじろうとするんだ)
カキィン
ヒノカ(ここまで生きてきた時間をどうしてお前は否定する? 私はただカムイに、白夜へと戻ってきてほしいだけだというのに……。なぜ、私の目の前に現れたのはカムイで無く、お前なんだ?)
ヒノカ(カムイの殻を被った暗夜のお前はどうして、何の恨みがあって私からカムイを遠ざける? これ以上、私から何を奪おうというんだ?)
ヒノカ(ユウギリもオロチも、私の願いのために戦ってくれた。白夜に戻ったら、カムイを助け出すために力を貸してくれると言ってくれた二人を殺した暗夜は、私からカムイまで奪うというのか? この体に残っているわずかな希望さえもお前は奪うというのか……)
ヒノカ「はあああああっ!!!!」チャキッ ズシャンッ
バサバサッ
カムイ「ぐっ! まだまだぁ!」ダッ
ヒノカ(やめろ。その体はカムイの物だ。暗夜で育ってきたお前の物じゃない。それは白夜で育ってきたカムイの物で暗夜の王女、お前の物なんかじゃない。それは私が守るべきものだ。その守るべきものにどうして攻撃をしなくてはいけない。今すぐ、今すぐ剣を下ろせ!)
ヒノカ(戻れないのなら、私がちゃんと手を握ってやる。カムイとしてもう一度、白夜の人間としての人生を歩めるように。この手でちゃんと繋ぎ止めてやるから、もうこれ以上、私にカムイを傷つけさせないでくれ)
ヒノカ「はぁはぁ、お前はどうして……どうして、私を苦しめるんだ」
カムイ「……それが私の選んだことだからです。それがどんなにヒノカさんを苦しめることだとしても、私はあなたの願いを容認できません」
ヒノカ「なぜだ、カムイは白夜でもう一度幸せな時間を得る権利がある。お前さえ、お前さえそれを認めれば私は……私は!」
カムイ「私をヒノカさんの望むカムイとして迎え入れる。いえ、変えるつもりなんでしょう」
ヒノカ「ああ、そうだ。私のすべてをカムイに捧げてもいい、あの日、カムイが酷く悲しい目に合っている時、何もできなかった私にとっての罪滅ぼしがあるとすれば、この体の隅々、髪の毛一本から血液の一滴までカムイの姉として捧げることだ。カムイが望むならそうしてもいい、それが私にできる唯一の事だからだ」
カムイ「それを昔の……。記憶を失う前の私が望んでいると思っているのですか?」
ヒノカ「ああ、そうだ。カムイにだって得るべきだった時間がある。その時間をもう一度与えてみせる。だからお前は要らない、お前はカムイを傷つけるだけだ」
カムイ「……それはあなたの中にいる私です。今の私はそんなものを必要となんてしていません」
ヒノカ「だからこそ、お前を排除しないといけない。その体からお前という暗夜の意識を取り除いて初めて、カムイはもう一度白夜の人間に戻れるんだ」
ヒノカ(そうだろう? カムイの中にいるお前を取り出さないと、カムイは戻ってこれないんだ。カムイはまだ、どこかで私たちとの時間を取り戻したいと嘆いているはずなのに。多分、それをお前が邪魔しているんだ。そもそも父上、そして母上を殺した暗夜をどうして選べる? 選べるわけがないんだ、あのカムイなら……)
チャキッ
ヒノカ(なら、どうして選べたのか。簡単だ。それはお前がカムイじゃない何かだからだ。だから、私の声に応えてくれなかった。あの時、あの港でお前が私の手を取ってくれたなら、オロチもユウギリも死ぬことはなかった。このように暗夜に白夜を踏みにじられることもなかった。すべてはお前がカムイの中にいるから起きたことだ、お前は私を苦しめるためにここにいる、鬼だ……)
ヒノカ「覚悟しろ、カムイの殻を被った鬼……。その喉から貴様の死が聴こえるまで、何度でも叩き潰してやる」
カムイ「……ええ、そうしてください。あなたがそうしたいと望むのでしたら」
チャキッ
カムイ「ですが、私はその願いに真っ向からぶつかる以外にできることはありません。私の願いを叶えるために手を下ろすつもりはありません。私はあなたを救い出します。その願いという名の呪縛から、きっとあなたを」
ヒノカ「ハッ、呪縛だと? お前に何がわかる、お前のような殻を被っただけの偽物に、なにがわかる。わかるわけがない、わかったように語るな。お前はもう私など覚えていない。だから……だから立ち塞がる。そうだろう、あの時触れてくれたお前の手の感触も、すべてまやかしだったじゃないか!」
カムイ「……」
ヒノカ「私の元から、すぐに離れてしまった。そんなこと、もう覚えてもいないくせに私のことを理解しているだと? そんなことを口にするな!!!!」バサバサッ!
◆◆◆◆◆◆
カムイ(理解できていい事じゃない、私にヒノカさんの何がわかるのか? それは多分何もわからないと答えるしかない。私はヒノカさんの事を多く知らない。それは間違っていません)
グッ
カムイ(だけど私の手は、まだあの時触ったヒノカさんの顔を覚えている。私を前にして泣いてくれたヒノカさんのことを、私はまだ覚えています)
カムイ(私がどれだけの時間、ヒノカさんを苦しめてきたのか。それを考えただけでも暗夜を選んだことは間違いにさえ思えてくるほどに、ヒノカさんは私を思ってくれていた。募り募った思いは私が白夜に戻ってきたという一度の結果を得た。でも、それを私自身で踏みにじった。ヒノカさんの中にあった感情はすべて、私が選んだものへの憎悪になったのかもしれない)
カムイ(ヒノカさんはずっとずっと私を心配してくれていた。私が攫われてからの長い時間を全て捧げてくれた。そんなこと普通は出来ないことです。私が光を失って始めた訓練の時間とは違うものでしょう。私はそうしなければ生きられなかった。光の無い真っ暗な世界で生きるためにそれを必要としたことでした)
カムイ(だけど、私が攫われたことはそう言う物じゃない。多くの人々は私が攫われたことに最初何かしらの言ってくれたはずです。でも、何れは落ち着いてしまう。忘れるわけではなく、ただ、そういうことがあったと、それが自然の事だと思う)
カムイ(ヒノカさんも選べる立場にいた。私の事は過去という落ち着いた出来事にできる。それをヒノカさんは生きる目標にしてくれた。すべてを賭けて私を救い出そうとしてくれて。その行いを私は裏切った……)
カムイ(最悪の形でヒノカさんの思いを踏みにじった。真っ直ぐなその心さえ折り曲げてしまうほどだったのかもしれません。私はあの時、選択する事の意味を解っていなかった。考え続けるために選んだ道、暗夜に留まり、選び続ける事を望んだ。だけど私は選ばれなかったもののことを理解などしていなかったのですから)
カムイ(今思えば、私はあの時ヒノカさんを殺してしまったのかもしれない。そしてその現実がここにある。ヒノカさんは遥か前にいた私を求め始めていて、今の私ではその代わりにはなれないことも分かっています)
カムイ(だとしても、私は今のヒノカさんの在り方は間違っていると思ってしまう。憎しみだけで戦い続けた結果に何が生まれるのかはわかりません。でも――)
カムイ「このまま願いが叶っても、貴女はきっと幸せになれません」
ヒノカ「ははっ、どうしてそう言える。昔に戻れるのになぜ幸せになれないと言えるんだ? 私はそれを望んでいるのに、なぜおまえはそれを否定する!」
カムイ「昔になんて戻れません。少なくとも私たちにそんな力は無いんです。でも、戻ったところで私はこの道を辿ることになる。今の私がこうしてあなたの前に立つことが私の信じた道で、そして何度でも私はあなたを救うために剣を取るはずですから」
ヒノカ「私と戦うことが、お前の道だっていうのか? これほどまでに――」
「私はカムイを愛おしく思っているというのに……」
カムイ「だとしても、私は戦ってきたことを違えるわけにはいかないのです。争いを終わらせることもそうですが。私はもう一度……」
カムイ「あの時、私のために優しく涙を流してくれたあなたに会いたいんです、ヒノカさん」
ヒノカ「……」
ヒノカ「……だ」
ヒノカ「……嘘だ」
ガンガンッ
ヒノカ「嘘だ嘘だ!!!」
ガンガンガンッ!
ヒノカ「嘘だ、嘘だ嘘だ!!!! でたらめだ、お前は私の事なんてどうでもいいと思っているに決まっている」
ヒノカ「あの女狐の方を姉として慕うお前にとって、私はただの敵なんだろう!? 私は騙されない、お前の中にいるカムイを私は救い出してみせる。お前のような、お前のような奴に、私のこの願いを踏みにじられてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
バサバサッ
カムイ(気配が上空に上がった、決着をつけるということですね。なら私も、ここで終わらせます!)チャキッ
バサバサッ
ダッ
ヒノカ「しねえええええええええええええっ!!!!」クルクルクルッ チャキンッ
カムイ「はああああああっ!!!!!!!!」グッ ブンッ
ザンッ!!!!!
◇◇◇◇◇◇
ブシャアアアアアアーッ
クエエッ! ドサリッ
ヒノカ「っ!」バッ スタッ
ヒノカ(金鵄をやられた! だが、この距離ならいける。この距離なら取れる!)
ヒノカ「カムイ!!!!」
カムイ「っ、そこです! やああああっ!」ダッ
カランカランッ……
ヒノカ「……」
カムイ「………くっ、うううっ……」ポタポタタタッ
ヒノカ「がはっ……」ポタタッ
カムイ「私の勝ちですね、ヒノカさん……」ポタタッ
ヒノカ「……うううぅぅっ」クラッ
ドサリッ
ヒノカ「なぜ、なぜ……斬らなかったんだ。お前はどうして、こんな真似をする。なんで、命を奪わない……」ググッ
カムイ「あなたを助けると誓ったからです、それでどんなにこちらの兵が傷つこうとも、白夜の兵士を殺すことになっても、私はあなたを助けると……」ポタタタタッ
ヒノカ「ははっ、なんでお前はそういうことをするんだ。お前はただの殻被り、カムイじゃないのになんで……」
カムイ「……私は天秤にかけて選んだんです、あなたの命を救うことが多くの人命よりも大事だと……。私は身勝手に、ただ子供のままに、あなたを助けるために戦っただけのことです。ヒノカさん」
ヒノカ「……なんでそんな顔をする?」
ヒノカ(そんな、優しい顔をどうしてするんだ。まるで、昔のカムイみたいに……。今になってどうして、私の求めていたものを見せるんだ……)
カムイ「決まっています、貴方がそこにいてくれるからです。ちゃんと生きて私の前にいてくれる。それだけで私はこんな顔になっちゃうんですよ」ピシャッ ピシャッ
ダキッ
ヒノカ「なにを……」
ギュウッ
ヒノカ「なんの、真似だ……」
カムイ「許してとはいいません、私という偽物を許さなくても構いません。私はもうあなたの望む人になることは出来ませんし、あなたの力でそれになることもありません。私は私としてあなたを救います。それがどれほど穴だらけであっても、どれほどそれを貴方が望まなくても、私はあなたを救います」
ヒノカ「お前はなんなんだ?」
カムイ「私は暗夜の王女です。あなたの願いを潰して奪いに来たただの侵略者、同時にあなたを救いたいと綺麗ごとを口にするそんな人間です。救いたいと言いながら暴力しか振るえない、自分の理想と願いを実現するために奪うだけの、そんな存在ですよ」
ヒノカ「……お前はそれでいいのか? その殻を破って。昔に戻りたくないのか……」
カムイ「……私は私です。私が踏みにじり奪ってきた願いと共にこの道で生きていくのが私のするべきことです。だから、それを捨てて違う何かになることを、私は選ぶことは出来ません」
ヒノカ「……なんで、そんなにお前は強くいられるんだ」
カムイ「強いわけじゃありません。でも、こうしていられるのは私に希望があるからです」
ヒノカ「……希望?」
カムイ「はい、それがどんなに小さくてどんどん輝きを失うものだとしても……今ここに……」ギュウッ
ヒノカ「んっ……」
カムイ「ちゃんとこの手で確かめられる希望があるんですから」
ヒノカ(……なんで、こんなに暖かい気持ちが溢れてくるんだ。こいつはカムイの殻をかぶっているだけなのに……)
ヒノカ(どうしてさっきまで渦巻いていたものが収まっていくんだ……。もう、わからない……でも)
ヒノカ「……カムイ」
ヒノカ(今だけはとても心が安らいでいる。どうしてかわからないけど……)
ヒノカ(お前にとっての希望でいられるのは、なんだかとても……)
◆◆◆◆◆◆
ヒノカ「すぅ……すぅ……」
カムイ「……ヒノカさん。眠ってしまったんですね……」
カムイ(さすがにここで待機しているわけにもいきませんね。早く、ヒノカさんの事を伝えてこの戦闘を早く止めさせないといけません)
カムイ(それにミタマさんはリョウマさんの命令で多くの兵を王都へ戻すと言っていました。リョウマさんにどのような考えがあるかはわかりませんけど、ここでの戦いに終止符を打たなくては……)
バサバサッ!
カムイ「?」
カミラ「カムイ、大丈夫?」
カムイ「カミラ姉さん……はい、大丈夫です」
カミラ「大丈夫には見えないわ。かなり深く突かれてるじゃない。気休めだけど処置をするわね」
カムイ「はい、お願いします」
カミラ「ええ。じっとしていて? ふふっ、どうやらうまくいったみたいね」
カムイ「はい。すべてが流れるわけではありませんけど、確かに私はつなげられたんだと思います。これも皆さんが協力してくれたおかげです。高台から私たちに向けて攻撃がなかったのはとても助かりました。ありがとうございます、カミラ姉さんには高台だけじゃなくて後続の相手まで任せてしまって、申し訳ないです」
カミラ「……それが少し違うの。確かに後続の天馬隊は私がどうにかしたわ。でも、あの高台にいた敵をどうにかしたのは私じゃないわ」
カムイ「え、どういうことですか?」
カミラ「カムイ、気づかないかしら? ここは戦場よ。戦場なのに人の気配がまるでないわ。あのわずかな通用路を越えた先、そこを境にして世界が変わってしまっているのよ」
カムイ「…変わっている?」
カミラ「この高台が空いている事も、考えればおかしいこと。あなたとヒノカ王女の戦いが始まっているなら、誰かしらが駆けつけてきてもおかしくない頃合いなのに、白夜軍も暗夜軍も姿を見せていないわ」
カムイ「ここは戦場とは呼べないということですか?」
カミラ「確かに多くの場所に痕跡はあったわ。その中でカムイ、あなたとヒノカ王女を狙える場所にあった奥の高台には真新し痕跡があったの。階段へと続く壁におびただしい血がこびり付いていた。あそこで戦闘があったことは間違いないと思う」
カムイ「そうですか。それで死体はあったんですか?」
カミラ「それがどこにもなかった。あの様子だとかなり大雑把に殺したはずだけど、肉片の一片もない、きれいに片づけたみたいだったわ」
カムイ「……何者かがここに入り込んでいるということですか?」
カミラ「わからない。けど、この周辺に全く人の気配を感じられないことと何か関係があるかもしれない。どちらにしても、このまま白夜と殺し合いをしている場合ではないわ」
カムイ「はい、カミラ姉さん。私とヒノカさんを乗せていけますか?」
カミラ「ええ、急いで戻りましょう」
バサバサッ!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ザーーーーッ
ミタマ「それは本当の事ですか、信じられませんわ」
ミタマ隊聖天馬武者「私も同じです。ですが、最寄りの高台を転々としましたが、同胞はおろか敵である暗夜軍の兵さえ発見できませんでした。未だに戦闘を続けているのはここだけなのではないかと思えるほどです。その先、幾分耳を澄ませても、聞こえるのは雨音ばかりで――」
ミタマ「この先しばらく、誰もいないと思ったということですか」
ミタマ(敵も味方もいない、何がどうなっているのでしょう。一体、この場所で何が……)
カツンカツンッ
ミタマ「?」
アサマ「おやおや、困っているようですね。ミタマさん」
ミタマ「アサマ様、無事で何よりですわ」
アサマ「ええ、それでヒノカ様は?」
ミタマ「カムイ様を追いかけて飛び出していきました。他の天馬隊の方々もご一緒に、わたくしは徒歩ですのでとても追いかけられませんわ」
アサマ「なるほど、カムイ様にヒノカ様をお任せしたということですか。まったく、あなたがここに来た理由をもう少し考えておくべきだったかもしれませんね。考えていれば、もう少し違った立ち回りもできたでしょうに」
ミタマ「仕方ありませんわ。それにこのスサノオ長城での戦いの結果を、実権を握っていると思い込んでいる人々が重要視することはありませんわ。リョウマ様はそのことに感づいています」
アサマ「……なるほど、そういうわけですか。ヒノカ様の命を守るには、ここで敗走しないといけない。そう言うわけですね」
ミタマ「この戦闘で白夜の敗走が決まれば、王都を守る壁は無くなります。そんなところで敗走の原因探しなどやっている暇などありませんわ。カムイ様も、そんな時間を与える事無く王都までやってきますから、そこでリョウマ様も何かしらの策を打つはず。出来ればすぐにでも撤退したいところですけど、肝心のヒノカ様がいません。探しに行かないとだめでしょう」
アサマ「……ふむ、それは要らぬ心配のようです」
ミタマ「?」
アサマ「ほら、あれをご覧ください」
バサバサッ
ミタマ「暗夜の竜騎兵……背に乗っているのはカムイ様とヒノカ様ですわ!」タタタタッ
バサバサッ
カムイ「ありがとうございます、カミラ姉さん。しょっと……」
アサマ「ヒノカ様……」
カムイ「大丈夫、気を失っているだけですから。アサマさん、ヒノカさんを」
アサマ「え、ええ……」スッ トスッ
ヒノカ「……んっ、すぅ……すぅ…」
アサマ「はぁ、この大雨の中、よくこんなに寝ていられるものです。しかし、いつもより穏やかな寝顔ですね」
カムイ「すみませんが治療などをお願いします。剣の腹で叩いたにしても骨までは達しているはずですから……」
ミタマ「そういうカムイ様の傷は……」
カムイ「いいんです……。軽い処置は済ませてあります。それより、聞きしたことがあります」
ミタマ「聞きたいこと、一体何です?」
カムイ「はい、このスサノオ長城にはどれほどの兵がいたかわかりますか?」
アサマ「かなりの数でしょう、なにせ王族を慕う方々の七割はこの戦線に身を置いておりますのでね」
ミタマ「ええ、この中央区はもっとも人数が多かったはずですし。ですが、さすがに全体の人数はわかりませんわ」
カムイ「そうですか。それで多くの場所の撤退はもう始まっているのですか?」
ミタマ「いいえ、撤退を始めるにもヒノカ様の無事を確認してからでないといけませんでしたから……。ようやく、その知らせを出せるところです。ですが、中央区に区画からの戦況報告はある時を境にぴったり止んでしまいましたわ。使いを出して確認させましたが……」
カミラ「もしかして、もぬけの殻だったということかしら?」
ミタマ「は、はい。仲間たちがいないのは撤退しなくてはいけないからとしても、暗夜軍の姿も確認できなかったそうです。カムイ様の軍勢は逃げる相手を追い立てる方々ということですか?」
カムイ「そんな命令は出していません。となると、暗夜軍の皆さんも姿を消してしまったということですか……」
カミラ「これは思ったよりもよろしくないことが起きているみたいね」
カムイ「はい、もう一刻の猶予もありません。まずは戦闘を――」
ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!‼‼‼‼
カムイ「な、なんですか今の悲鳴は」
カミラ「下からみたい、行きましょう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
カムイ軍ジェネラル「がはっ、こ、こんなところで……」ドサッ
???「……」シュオンッ カラララララッ!
ドゴンッ ブチャアアッ!!!!
カムイ軍ジェネラル「ぐぎゃあああっ!!!」ドササッ
???「……」クスクスクス
カムイ軍ジェネラル「な、なんだ。くそっ、一体どこから現れた!? 貴様!!!」チャキッ ブンブン
???「……」サッ サッ!
カムイ軍ジェネラル(なんだこいつ、確かにそこにいるのはわかるというのに。なぜ姿が見えん!)
カラララララッ シュオンッ!!!
ザシュンッ グチャリッ
???「……」カラララッ シュオンッ!!!
ズシャッ!!!
カムイ軍ジェネラル「」フラッ ドサッ
???「……」クスクスクス
白夜軍兵士「え……援軍が来てくれたのか!?」
白夜軍剣聖「谷を通って援軍が来てくれたんだ! よし、このまま暗夜軍を押し切るぞ。彼らを援護し、白夜の強さを見せつけるんだ!」
ピチャンピチャン……
シュオオオッ
スタッ
???「……」
白夜軍剣聖「ありがとう助かった。しかし、そこにいるのはわかるが姿は見えない。いったいどんな幻術を使っているのか」
ピチャン ピチャン
スゥ
???「……」チャキッ
???「……」カチャンッ
白夜軍剣聖「まぁいい、よしこのまま敵をなぎ倒すぞ。全員、我々に続け――」
ブシャリ
白夜軍剣聖「……え……」ドクンッ
???「……」
白夜軍剣聖「な、なんで、俺を――」
???「……」ドンッ ドサリッ
白夜軍剣聖「はっ、あぐ……な、お前たちは味方では――」
???「……」クルクルクルッ チャキッ
ドスッ
ドスッ
ドスッ
白夜軍剣聖「」
???「……」
ドサササッ
白夜軍兵士たち「」
???「」タタタタッ
タタタタッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
ウワアアア―――
ナニガオキヒギャアアアアーーー!!
カムイ「なにが、何が起きているんですかカミラ姉さん!」
カミラ「暗夜も白夜も関係なく襲っている何かがいるみたい……」
ピチャンピチャン
シュオンッ!
カムイ(何かが横からくる!?)
???「」ダッ チャキッ
カムイ「カミラ姉さん! 危ない!」ダッ
ブンッ キィン!
???「」グググッ
カムイ「こ、この敵は!?」
カムイ(この気配、レオンさんの屋敷に現れた奴らと同じ!?)
カミラ「カムイ、そいつを一気に押し出しなさい!」
カムイ「はい、はああっ」ドゴンッ!
???「」フラッ
カミラ「はあああっ!!!!」ダッ ザシュンッ
???「」ドサッ
シュオンッ
カミラ「カムイ、これは一体何。姿かたちが見えなかったわ」
カムイ「レオンさんの屋敷でこの者たちと戦ったことがあります。どうやら、暗夜と白夜どっちの味方をするつもりもないみたいですね」
カムイ(まさか、多くの場所に敵も味方もいなくなっていたのは……。彼らが動いていたからということですか!?)
カムイ「くっ……」
タタタタタッ
ミタマ「カムイ様。こ、これは一体なにが起こって……」
カムイ「ミタマさん、一刻の猶予もありません。ここは私たちがどうにかして抑えますから、撤退できる人々たちだけでもいい、今すぐ脱出するように指示を!」
カミラ「カムイ、また次が来るわ」
ピチャンピチャン
シュオオオオオンッ
???「」チャキッ
???「」カチャンッ
ミタマ「わ、わかりましたわ。アサマ様、下層にいる方々に指示を、この領域から撤退するようにと」
アサマ「ええ、そうさせてもらいましょう。それはそうと、カムイ様」
カムイ「なんですか?」
アサマ「ありがとうございます。まだ私はヒノカ様をお守りすることが出来ます」
カムイ「はい。それでは行ってください!」
ミタマ「合図を上げますわ」キリリリリッ パシュンッ
キュイイイイイイイイイインッ!!!!!
カミラ「それだけでどうにかなるの?」
ミタマ「はい、どうにかなります。なにせこの音は……」
キュイイイイイイインンッ!
キュイイイイイイイインッ!
カムイ「返事のように音が帰ってきました。この合図は――」
ミタマ「この音はヒノカ様の負傷と撤退の時に使う物ですわ。これで白夜軍は撤退を開始します」
カムイ「……わかりました。いつかまた会いましょう、ミタマさん。ヒノカさんにもそう伝えてください、必ず会いに行きますから」
ミタマ「はい、ちゃんと伝えておきますわ。運が良ければ、またお会いしましょう」タタタタタ
カムイ「……私たちはここの敵の相手をして、白夜の方々が遠くまで逃げられるように時間稼ぎをしましょう」
カミラ「それじゃ、最初に目の前のをどうにかしないとね?」
カムイ「ええ、右のは私が討ちます」
カミラ「わかったわ。それじゃ左は私が――」
ザシュンッ
バシュンッ!
???たち「」ドササッ
シュオンッ!
カムイ「え?」
サクラ「カミラさん、カムイ姉様、大丈夫ですか!」
アクア「大丈夫、カムイ?」
カムイ「アクアさん、サクラさん!」タタタタタッ
アクア「二人とも無事でしたよかったです。ルーナさんも無事だったんですね」
ルーナ「なんか、すごくオマケな言い方に聞こえるんだけど。それよりどうなってるわけ、もう終わったと思ったら、敵がこんなに……って、カムイ様、その傷、大丈夫なの?」
サクラ「す、すぐに治療します。はああっ!」カランッ
カムイ「ありがとうございます。サクラさん、でも今はあの敵を倒すことが先決です」
アクア「あの見えない敵のことね……」
カムイ「アクアさん、やはり彼らは……」
アクア「ええ、奴の使役する者たちで間違いないはずよ。ここにいる私たちと白夜を全滅させるつもりで送り込んで来たみたいね」
カムイ「ミタマさんは多くの区画から戦況の報告が来なかったと言っていました。それはつまり……」
アクア「カムイ、今それを考えても仕方ないわ。マークスやレオン、いいえ、他のみんながそう簡単にやられるわけがない。そうでしょう?」
カムイ「はい」
アクア「なら今すぐことはわかっているでしょう?」
カムイ(ええ、私はちゃんと希望をこの手に感じられたのだから、それをここで諦めるわけにはいきません。ヒノカさんや他の白夜の方々が安全な場所まで逃げ切れるまで)
カムイ「ここを死守します! 白夜の撤退命令は出ています。私たちはまだ取り残されている白夜軍の方々を守りましょう」
一同「はい!」
???「……」チャキッ
カムイ(さぁ、来るなら来てください。どんなことがあってもこの先には行かせません。絶対に、絶対に行かせるわけにはいかないんですから!!!)
???「………」
???「……」カチャンッ
カムイ「え?」
シュオン……
シュオンッ
カミラ「逃げていく?」
シュオンッ
シュオンッ
サクラ「ど、どういうことでしょうか?」
ルーナ「なに、あたしたちに怖気づいたってこと?」
???『人間ごときに怖気づくと思ったか?』
カムイ「!?」
アクア「カムイ?」
カムイ「誰かが、私に直接話しかけて…」
???『ははははっ、未だもがき苦しみたいようだ。束の間の安息を手に入れ、まだ手が届くと思い込んでいるとは、我を見くびらないでもらいたいものだ。お前の希望の光がどれほどちっぽけで、お前がどれほど力のない存在か。身の程を知りつつ、もがき苦しむというのにな』
カムイ「何を言って――」
???『我の狙い通りにお前は指示を出してくれた。感謝してもしきれない、お前が思っているほど人間は悪意を忘れることは出来ない、それを知ることになるのだろう』
カムイ「そんなこと!!!」
???『くっくっくっ。さぁ、お前の希望が絶望に変わって、王都で待っていることだ。精々足掻き、我を愉しませるがいい、カムイ。ふふっ、ふはははははははははは!!!!』
シュオオオンッ
サクラ「最後の1人も、消えてしまいました……」
カミラ「カムイ、大丈夫?」
カムイ「は、はい」
アクア「敵の気配が消えたわ。奴に一体何を言われたの?」
カムイ「その、絶望が王都で待っていると……」
カムイ(希望が絶望に変わって、一体どういう意味ですか)
カムイ(希望……希望、私にとっての希望、今手に入れたばかりの――)
カムイ(『この手で確かめられる希望があるんですから』)
カムイ(……まさか!!!)
アクア「カムイ!?」ダッ
カムイ「はぁはぁっ、んぐっ、はぁはぁ!」
タタタタタッ
カムイ(やめて、それだけはやめてください。なんで、なんでそんな、殺すのなら私でいいはずだ)
タタタタタッ
カムイ(もう、もう、これ以上、これ以上、私以外の人間が苦しむ必要なんてない。なんで、なんで!)
タタタタッ
???「……」チャキッ
パシュンッ
パシュンッ!!!
カムイ「そこを退いてください!!!!」キィンキィン!
シュオンッ
???「……」チャキッ パシュッ
パシュ
パシュシュッ!!!
アクア「カムイ!」ダッ ガシッ
ズササ―ッ
キィン
カキィン!
アクア「カムイ、ダメよ。奴らが森に溢れてる。そんなところに走り込んだら、貴方が……」
カムイ「アクアさん、離してください! ヒノカさんがヒノカさん達が危ないんです! 今すぐ、今すぐ追いかけないとだめなんです! このまま、このままでは……」
アクア「カムイ……」
カムイ「やっとやっと、ヒノカさんに手が届いたんです。やっと、やっと。なのに、なのに――」
アクア「カムイ。だとしても、貴女を死地に送ることは出来ない……。それにもう、今から追いかけても間に合わない」
カムイ「そんなこと!!!!」
アクア「向こうは天馬や金鵄を使って一番先を飛んでるはず。徒歩で追いつけない、竜でも奴らが放ち続ける弓の雨のような攻撃は避けられない。カムイ……。ヒノカ達がうまく逃げられることに賭けるしかないのよ」
カムイ「……」ヘナッ ポスッ
アクア「カムイ……、一緒に信じましょう。きっと、きっと大丈夫だから……」
カムイ「アクアさん……」
カムイ(ヒノカさん……大丈夫ですよね。きっと、きっと大丈夫ですよね。アサマさんやミタマさん、それにセツナさんと一緒に今も逃げていて、そしてたどり着いた王都で私を待っていてくれるんですよね……)
ギュウウッ
(ヒノカさん……どうか、どうか無事でいてください……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・森林地帯『王都に近い森』―
ヒノカ「……」
ガサガサッ
ヒノカ「……」
ガサガサッ
ヒノカ「……あ……ああ」
クタリッ
ヒノカ「……あ、あああああ」
白夜軍兵士「む、何者だ!?」
ヒノカ「……あ」
白夜軍兵士「ひ、ヒノカ様! ど、どうされたんですか。な、全身血まみれではないですか!? すぐに治療を行わないと、それと他の者たちはどうされたのですか?」
ヒノカ「ああ、あああああっ」ポタタタッ
白夜軍兵士「ヒノカ様?」
ヒノカ「ああああ、ああああああっ、うううっ、ああああああっ!!!!!」
白夜軍兵士「! ここでお待ちください、今人手を連れてきます! おーい誰か! ヒノカ様が戻られた! 早く、こっちだ!!!! 錯乱されている、他の者たちの姿はない、支給応援を――」
ヒノカ「あっ、うううっ、うああああああっ」ガクッ
「うあああああああああああああっ!!!!!!!!!」
二十三章 終わり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今日はここまで
スサノオ長城での戦いはこれで終わりです。
暗夜編はハイドラが一歩抜きんでているから、こういう風に達成したことを一瞬で壊すみたいなことをするのではないかと思うのです。
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけたら幸いです。
◆◇◆◇◆◇
番外を挟もうと思います。
決定済み
「カミラがもしサクラ隊を匿っていたら2」
上に加えて、もう一つ軽い番外をやります。
下から先に2回選ばれたものをやろうと思います。
・『ガンズが笑うとき』
・『まきゅべす2』
・『三匹のリリス』
・『星界裁判』
このような形で、すみませんがよろしくお願いいたします。
◆◇◆◇◆◇
今日はカミラ×サクラ隊番外―中編―です
前編は>>386になります。
◆◇◆◇◆◇
―2―
白夜の侵攻作戦は見事に失敗に終わった。
それがマクベスの判断で、それは間違っていないことは誰が見ても明らかなことだった。
当初、白夜軍は谷を越えて黒龍城を抑えノートルディアに向けて進軍……、すると見せかけて港町ディアと同盟であるシュヴァリエ公国を襲撃。後者を落としてマカラスまで侵攻してきた。
この圧倒的ともいえる進軍が結果的に囚われているサクラ王女たちの首を絞めていることを白夜側が理解していないとは思えない。
もしもの時がやってきたら、お父様は私にサクラ王女を殺すように命令を出す可能性もある。そんな漠然とした不安はあったけど、それは杞憂に終わった。
港町ディアでの戦い、そしてマカラスまで迫った白夜軍をカムイが抑え、それを後押しするように現れた正規軍の進軍によって白夜軍は暗夜から撤退していった。それは嵐のように突然現れ、突然去っていく、まるで災害のようだと将校の1人が口にしていた。
それは大いに間違っている。戦争は災害とは違う。人が人を殺す、そこに自然の意思は存在しない。ただ、この侵攻に救いは何もなかった。あるのはどす黒い、何かだけ……。
未だに続くマクベスの話を耳にしながら、私は違う事に意識を走らせる。
昨日の夜、カムイとレオンがやってきて話してくれたことについてだった。
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「……民間人にそんなことを」
私自身、声のトーンが一つ二つ下がっていることを理解できた。それくらい、屋敷にやってきたカムイとレオンの話はとても歓迎できる話ではなかったからだ。
二人が来るからと奮発した紅茶はどれも空になっていない。飲むのは息だけ、安堵ではなく自分の口から溢れそうになる呆れと落胆を零さないために。
こうして家族が生きて帰ってきたということだけでもうれしいことだというのに、終始部屋の中に漂う欝々とした空気は晴れる気配がなかった。
「明日にでも、マクベスが作戦終了を知らせる軍議を開くと思う。正直なところ、マクベスのしたことは間違えじゃない。だから、それに関して僕たちが言えることは何もないよ」
レオンは淡々と現実的な言葉を口にした。それはそうだ、暗夜に観光にやってきたわけじゃない。
彼らは戦いにやってきた、多くの裏切りものを連れて、その処理を暗夜に押し付けてきたということ。
話に聞いていた白夜の人々がするにはあまりにも短絡的、暴力的、排他的な行動に何も言葉が見つからなかった。
「多くの人々が犠牲になったはずです。私たちが救えたのはその一握りにも満たないでしょう。唯一の救いがあったとすれば、ヒノカさんが多くの方々を生き残らせるために動いてくれたことでした」
その言葉は一瞬、私の心臓を掴みあげた。
カムイの本当の姉という存在は、なんというか認めたくないものだ。これが嫉妬なのだとわかっている。
心の中に渦巻く、何とも言えない黒いものが、少しだけ込み上げてくる気配がして、それを押し出すように口を開く。開かないでいたら、毒が脳にまで回ってしまうような気がしたから。
「ヒノカ王女はなんて?」
「はい。サクラさんのことをお願いされました。あと、多くの白夜の民間人の方々をどうにか匿ってほしいと……」
「多くは戦闘力を持たないただの一般人だったからね。ヒノカ王女はその人たちを後方に下げていた。正直、ディアで戦ったタクミ王子の一行より、まだ理性はあったと思うよ」
「完全に和解できたというわけではありませんが、ヒノカさんは私の言い分を少なからず聞いてくれました。本当のことを言えば、ヒノカさんに撤退してもらうためにその民間人を受け入れたというのが実際のところです」
「正直、カムイ姉さんの優しいところに付け込んで来たようにも思えるけどね」
レオンはその時のことを困ったように語ってくれる。
でも、そういうところを突いてくるヒノカ王女の赴きをレオンは嫌っているような雰囲気は無い。むしろ、好感を持っているような話し方で、多分カムイはそれを一言返事で受け入れたんだろうと一人で納得する。
「それでカムイは引き受けたのよね?」
「はい。白夜ではなく暗夜を選んだ、それが罪もない方々の命を奪う意味にはなりませんから。白夜軍が撤退した後、民間人の方々にはフリージアへと向かっていただきました。流石に捕虜という形で守ることは出来るとは思えなかったので。彼らの命を交渉の材料としても白夜は目をくれることは無いでしょうから……。正直、それをサクラさんたちにお伝えしないといけないのが、この上なく辛い事です」
その言葉で私の意識はようやく動き始めた。この辛い事実をカムイが直接サクラ王女に伝えるべきなのかを考える。
カザハナの一件もあって、あまり悪い知らせを与えたくないという気持ちがあった。それはサクラ王女たちの事を心配してというわけじゃない……。
わけじゃないというのは妙ね?
それ以外の理由があるのか、私は少しだけ考えた。
考えたけど、答えは出ない。
先にふいと浮かんできた悪い知らせを与えたくないという心は、一体どこからやってきた物なのか、いくら考え込んでも出てくることが無い。暗闇へとダイブしているように思考が黒く塗りつぶされていく。
何も見えない中で私は何を探しているのか。見つからないなら、今は放っておけばいいと、明るい方へと意識を戻す。
記憶の終わり、来賓室の出口扉から少しだけ軋む音がした。
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「つまり今回の戦闘結果、私たちの大勝利と言って良いでしょう。白夜は多くの犠牲を出したにもかかわらず、何も得られず敗走したのですからねぇ」
マクベスの最後の言葉に会議に出席している多くの者たちが笑いと拍手で応える。私はというと、別の事を考えていたから話など入っていなかった。
隣に座っているレオンは何も言わない、カムイもエリーゼも、マークス兄様もマクベスの報告を淡々と聞いているだけだった。私も同じような顔つきだったからか、何も言われることはなかった。
マクベスの報告を最後にこの軍議は終わりを迎え、各々が立ち上がる。そんな中、私はカムイに目を向けた。
閉じられた目に女性にしては凛々しい顔立ち、私の視線に気が付くとそれがやんわりとほぐれていく。
「どうしたんですか、カミラ姉さん」
「ふふっ、それはこっちの台詞よ、カムイずっと難しい顔をしていたわ」
「……そうですね。マクベスさんのお話がどんなものかはわかっていたので、つい違う事ばかり考えていましたから」
その違う事というのはサクラ王女たちへの説明の事かと聞けば、カムイは頷いた。カムイと同じことを考えていたことが、なんとも姉妹らしくて頬が自然と和らいでしまう。
何とも言えない優越感が私にはあった。だから、カムイの言葉を待ってあげる。私が全て聞いてあげるからと。
「正直、私一人ではサクラさんたちも安心できないと思います。カミラ姉さんもご一緒していただけたらありがたいのですが」
「ええ、もちろんよ。それにあの子たちを守るのは私の仕事なんだから」
それは今の私にとっての唯一の役割と言って良かった。
カムイが私を姉と慕ってくれて、私に何かを頼んでくれる。それが今の私を動かす原動力で、それに身を任せて軍議会場を後にする。
「私は先に戻って三人と一緒に待ってるから、カムイは話すことを決めてからきて」
「はい、私自身もどう話せばいいかわからないので。その、すべてをあるがままに話すしかないのかもしれません」
「だとしてもよ、カムイがサクラ王女たちのことを心配に思っていることは伝わるはずよ。おねえちゃんが保証してあげるわ」
そう言って額に軽いキスをする。カムイはそれを受けて静かに笑みを浮かべてくれる。
それに笑みを返して、私はサクラ王女たちの待つ屋敷へと戻った。
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昨日と同じ紅茶を準備するように指示を出して、私はサクラ王女たちの部屋へと向かう。
一人一人に部屋を与えているから、三回分ドアをノックする必要がある。別段気にすることもないことを考えてしまうほどに、今回の話は私の中で尾を引いていた。
別に話さなくてもいい事でもある。捕虜としてここにいる三人に、わざわざ白夜のことを話すべきなのかどうか……
カムイは三人に今起きていることを話すべきだと考えていて、私はそれに賛成している。
でもそれは、カムイがそうしたいから賛成しているだけで、内心では伝えなくてもいいのかもしれないと思う部分もあった。
多分どちらに転んでもサクラ王女達の立場は変わらない。捕虜としてここにいて、いつ終わるかもわからないこの共同生活をただ過ごしていくしかできないのだから。
なら、何も変わらないからと言えばいいのに、私はその答えを無理矢理作り出して押し込めている。
本当の答えがどうなのかわからないのに。
「馬鹿馬鹿しいわ」
どうなのかわからない、いやそんなことはない。今、私は答えを出した。
なるほど単純な事である。私はサクラ王女達をカムイに任されている。なら、どう転んでもその状態が変わらないのであれば、無理に伝える必要もないと。つまり、変わらないのなら無理に手を加える必要はないというのが、私の考えということ。
そう区切りをつけたところで、目の前の廊下に赤い髪が揺れた。
私の屋敷で赤い髪というと臣下のルーナだけだった。そんな場所にもう一人、赤い髪の人間が入り込んでいる。その人影はそのまま隣の扉をノックしようとしたところで、私の姿に気づいた。
端正な顔立ち、下ろせば長い髪を後ろで一つにしている。それは私を見るなり、警戒心を隠さないままニコニコと顔を作った。
「カミラ王女様、戻ってたんだねー」
「ええ、さっきね。ちゃんとお留守番してたかしら?」
「ははっ、何もすることが無いからねー。もしかして、何かしててほしかったりしたかな?」
ツバキは挑発を含んだ瞳で私に言葉を連ねる。
自身の立場を考えれば行動を慎むべきところなのに、彼はそれが全くなかった。
ある意味、サクラ王女の部下の中では一番の死に急ぎと思えなくもないけど、私にはどうもこの行動をそこまで邪険にする気が起きなかった。
「何もしてないの? 屋敷の施設は適当に使って構わないわよ」
「勝手に何かして殺されるのは嫌だからね。俺はそういうことで死ぬわけにはいかないからさ」
「なら言動を直したらどうかしら? 今すぐ首と胴の間の風通りを良くしてあげてもいいけど?」
楽しむように私は言葉を紡いでも、ツバキは仮面のような笑顔を絶やすことはなかった。
そうしてしばらく、にらめっこが続くと観念したように扉が先に根を上げる。
「部屋の前に誰かいると思ったら……ツバキにか、カミラ王女!?」
私とツバキの気配に気が付いてカザハナが恐る恐ると顔を覗かせてきた。
まるで怖がる小動物のように私を見て体を小さくしているが、そのふわふわした暗夜のメイド服の所為で、怯えているという印象は無い。
「あら、カザハナ。暗夜のメイド服、とても気に入ってくれたみたいね」
「あ、これは、その、ほ、ほらずっと同じ服はダメって言われたから、仕方なく」
「そう、でもメイド服以外でも動きやすいものはあったと思うけど」
「……こ、これが動きやすいって思ったの! ほら、こうやって簡単に回って……きゃあああっ!」
動きやすいことを私に見せるためなのか、その場で華麗にターンを決めようとしたカザハナは、見事に足を滑らせて床にビターンと倒れる。
しかし、倒れるまでにちゃんと受け身を取っていて、それに思わず感嘆の息が漏れた。隣からは呆れの息が漏れる。
「カザハナ……。今の状況、わかってる?」
ツバキの視線がカザハナに刺さる。
困った相手を見るようではなく、一種の軽蔑に近い視線だ。流石のカザハナもまずいと思ったのか背筋をピンと伸ばす。
「わ、わかってるわよ、それくらい!」
「その格好じゃ説得力がないかなー」
「ううっ」
ツバキの言葉はカザハナに次の一手を与えない。
与えないようにしているのはわかっているけれど、今日の言葉はどこか冷たいものがあった。
いつものやんわりとした感じがない。断罪するような強い口調と雰囲気が、カザハナに言葉を躊躇させている節さえある。
妙にピリピリしていると私は間に入った。
「だけど、ツバキも何か状況が変わる様にしているわけではないでしょう? まぁ、家主である私からすれば状況を変えるようなことなんて起こしてもらいたくはないわ。あなたたちの安全を保障し続けるには、それが最低前提だもの」
「そんな保証はどこにもないと思うけど? 目を閉じたら明日が来ないなんてこともありそうだよねー」
「そうならないように、あなたたちには各々の部屋を与えて、合鍵も渡しているの。夜になったら内側から鍵を閉めればいいし、緊急事態なら鐘を鳴らしてくれればいいだけ。小さい子供でも分かることよ?」
実際のところ、サクラ王女達の待遇は捕虜というより来賓の部類だ。
捕虜なんて男なら殺されて女ならそれ相応の道が待っている。サクラ王女は政治的に利用価値があるからまだしも、カザハナのような子はすぐに食い物にされることだろう。
勝てば官軍負ければ賊軍、お父様が戦い手に入れた地で略奪や陵辱の限りを尽くした騎士とは名ばかりの兵士たちも多くいる。
マクベスが連れていた多くの正規兵は多分その部類、カムイの命令でシュヴァリエを見に行ったベルカは、凄惨な現場のことを淡々と話してくれた。
草むらの中、身ぐるみを剥がされて乱暴に扱われた死体が、いくつもいくつも転がっていたと……。
そうならないのはカムイがそう言ってくれたからだというのに。
そう思って顔を上げると、ツバキは何も言わなくなっていた。
ただ、少しだけ影のあるその横顔がとてもアンバランスで、立ち去ったあとも視線で追っていた……。
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「か、カミラ王女。そのごめんね……」
「何も謝ることは無いわ。むしろ、ツバキの反応の方が普通な事よ、カザハナは馴染みすぎだと思うわ。そう思うでしょ、サクラ王女」
「え、えっとその……」
「サクラ様、あたし何も変わってませんよね? ね?」
「……えーっと」
メイド服を着たまま、そう言われてもと返答に困っているサクラ王女と否定してほしいカザハナが向き合って談笑している。
私はその二人の会話に耳で転がしつつ、用意された紅茶を口に含む。ツバキが立ち去って少しした頃、サクラ王女が戻ってきた。
カザハナと同じくサクラ王女も自由にこの屋敷の中で過ごしている。あの日、カザハナの事を受け入れてから、サクラ王女も私に少しだけ心を許してくれたような気がして、それはとても良いことだった。
しかし、少しだけ距離感が縮まった二人に比べて、ツバキとの距離は当初よりももっと開いている気がしてならなかった。
ここ数日の白夜の侵攻などを踏まえて考えれば、暗夜が白夜を撃退したことが面白くもない事だったから機嫌を損ねているのかとも思ったが。正直、彼がそういう悩みを抱えるようには思えない。
ツバキという人物は、そういうことで癇癪を起したりはしない気がした。
彼は思ったよりも真面目な人間だと私は思う、単純に慎重なのだろう。正直、こうして出された紅茶を何の疑いもなく口にする二人の方が、どうかしている。
だけど、どうかしているように見えるのは私だけのようで、彼女たちは彼女たちなりに異変を感じ取っていたのだ。
「……どうしちゃったのかな、ツバキ。前まで、あんなふうに当たってくることなんてなかったのに」
カザハナがぽつりと呟いた。サクラ王女もそれに連なる様に頷く、あれがいつも通りでないということは、私が感じている距離の隔たりはどうやら勘違いでは無いようで、それは二人に対しても広がりつつあるようだった。
最初、カザハナは先に行動してしまったことがツバキを怒らせた原因かと思っていたらしいが、どうもそうではないらしい。確かに先走って私の元に自身を売りに来たカザハナの行動は、慎重だと思われるツバキから見れば軽率なことだろう。しかし、だとすれば何が原因だろう?
「カミラ王女はなんで機嫌が悪いのか、わかりますか?」
「あらあら、どうして私に聞くのかしら?」
「だ、だって、その経験豊富にみえるから……」
「ふふっ、それは買い被りよ。私もある意味で箱入り娘だから、残念だけどヒントもないのにツバキの心の淵は触れないわ」
「え、カミラ王女、そんな体してるのに!?」
「そうよ。暗夜王国の勢力は戦いで得たものばかりだったから、ああ見えてお父様は国と国とを繋げるための政略結婚の話を上げたことは無いわ。私にはお見合いの話なんて今の一度もなかったのよ?」
代わりに母同士で醜い争いがあった。
子供ではなく誰が一番お父様の近くにいられるのか、エカテリーナという正妻という壁はあっても、その壁の淵に手が届く可能性があるなら自分の子供を売ってもいいと考える母たちがいた。
運が良かったのは私の母はその一線を越えない人だったというだけのこと、社交界の場は華やかな雰囲気ではあったけど、内情は混沌としていたのだから。
「カミラ王女みたいな人が相手なら、だれでも舞い上がっちゃうと思うけど」
「ふふっ、それじゃ、カザハナが結婚してくれるのかしら?」
「えっ、ちょ、あたしもカミラ王女もお、女――」
「冗談に決まっているでしょう。それとも、本気に思ってくれたのかしら?」
私の言葉にあ……うと声を漏らして、赤くなったカザハナは紅茶を一口ずつ飲むだけになる。私はさっきの質問を頭で反復した。
しかし、反復してもツバキの機嫌が悪い原因はわからない。そもそも、これは理解すべきことなのかどうか私にはわからなかった。
溜息が部屋を包み込む、そんな中でサクラ王女もお手上げというように口を開く。
「そう言えばツバキさん、夜は私のお部屋に尋ねてこなくなりました」
「そう、訪ねてこなくなったのね……」
「そっかぁ……ツバキがサクラの部屋にね……」
数秒の沈黙。カザハナにつられて私もずいっと紅茶を飲んだ。
紅茶の味を口の中で感じながら、夜、サクラ王女の部屋にツバキが来ているのね、と……
「え、えええええーーーーー!!!! ちょちょちょちょっと、さ、サクラ!?」
「え、わ、私何か変なコトを言ってしまいましたか!? わ、カザハナさん紅茶が、零れて!!!」
紅茶を豪快に零してサクラ王女を拘束したカザハナはそんなことはお構いなしに、そのままベッドまで押し込む勢いでサクラ王女を抑え付けていた。
「まままま、まさか、サクラ。ツバキと、その夜に何かして――」
た、たとえばこんな風にベッドの上でと、興奮したカザハナの様子は只事ではなかった。
一瞬、ツバキの事でこうなっているのかと思ったが、どちらかというとサクラ王女の身を案じての行動な気もする。しかし、このまま暴走させておくのは良くないと、私はベッドに腰を下ろした。
「カザハナ、落ち着きなさい。サクラ王女の服がめくれちゃいそうよ」
「ふぇ……。あ、ああああ! ササ、サクラ、ご、ごめん! あ、あたしてっきり……」
てっきりナニを考えていたのか?
そこが少し気になるけれど、カザハナは顔を真っ赤にしたまま、サクラ王女か幾分か距離を取った。
押し倒されて少し乱れた衣服が、サクラ王女の幼さも相まってとても危ないものに見える。
もしも、あの渓谷でマークス兄様かレオンが残っていたのなら、サクラ王女たちを匿うのは二人だったのかもしれないと思うと、私が匿うことになったのは良かったことなのかもしれない。
「い、いえ、いいんです。その、ツバキさんと私はその、そういう間柄ではありませんから、むしろ、私が慰めてもらっていたというか……」
「え、サクラがツバキに!?」
「カザハナ、少し落ち着きなさい。今のままだと大抵のことを違う解釈でまとめてしまいかねないわ」
どうやらカザハナの暴走はそう簡単に終わりそうもないようで、少し落ち着くまでサクラと少しの間、見守った。
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「え、ツバキ。そんなことしてくれてたんだ」
「はい、きっと白夜のみんなが助け出してくれる。リョウマ兄様やヒノカ姉様、タクミ兄様も、私を助けるために頑張ってくれてるはずだからと」
それは私の耳には痛い話だった。ツバキの口にしていた白夜の印象というのは、幻想と言ってもいいものに過ぎなかった。
なにせ私はカムイから白夜の残した爪痕を耳にしている。とても、民を守るために戦っているとは言い難い惨状、暗夜に手を貸した者を容赦なく凶弾し、死地へと送る。
なんの手助けも、何の援助もしない、勝てば故郷へと戻ることが出来る。そんな叶うことのない望みをちらつかせて、多くの人間を暗夜に置き去りにした。
ヒノカ王女はその中の一握りを助けただけに過ぎない。敵になったはずのカムイに懇願しなくてはいけないほどに、今の白夜に彼らの安息は無いのだと知っていたから。そうなっているかもしれない白夜の現状を私は聞いている。
その言付けが何時から行われていたものなのか、それはわからない。でも、白夜が侵攻を開始した夜と知らせが来た夜。あの日、カザハナが私の部屋の扉を叩いた夜までは……。
今さっき、部屋の前で言い合いをした時、彼の顔に一瞬だけ走った色が今になって頭を巡る。あの嫉妬に似た、暗い影……
「それで、ツバキが部屋に来なくなったのはいつかしら?」
「え、えっと数日前です。その、白夜が侵攻してきたっていう話があってからだと思います……」
予想通りと言えばいいくらいにツバキはその日を境に、サクラ王女に話をしなくなったみたいだ。
それがどういうことなのか、少しだけ分かる気がする。
「……思ったより、ツバキにも可愛いところがあるのね」
可愛いというよりも、少し幼い部分なのだと思う。
でも、それがどういう経緯でやってきている物なのか、それはわからなかった。
「可愛いところって、そんなところあるように思えないんだけど……。でも、初めて会った時のツバキは今よりもっと堅物だったから、ある意味可愛くなったってことなのかな?」
「そうなの?」
「うんうん、ツバキって完璧主義者だからさ。もう、何でもできなくちゃ気が済まないっていう、同期の女の子からは完璧主義者のツバキ様とか、黄色い悲鳴も多かったよ」
「そうですね。ツバキさん、とっても人気がありましたから」
懐かしむように話をする二人、確かにあれは美少年で振る舞いだけでいえば、完璧と言って差し支えない。
完璧主義者の青年とすれば多くの無理をしているのは確かだろう。完璧なんてものはまやかしだ、ツバキにとって完璧でいることは生きるために必要な事なのだから。
だとすると、サクラ王女に話をしなくなった理由も不思議と埋められてくるものだ。
「いきなり話を切り出すわけにはいかないみたいね…」
「えっと、カミラ王女、どうしたの?」
「ふふっ、ちょっと段階を踏まないといけない気がしたのよ。そうしないと、色々な問題が起きてしまいそうだから」
「いろいろな問題って……。カミラさん、一体何のことなんですか?」
サクラ王女の問い掛けに私は「すぐにわかることだから」とだけ伝えて部屋を出る。
廊下に漂う静かな気配、ずっと過ごしている場所のはずなのに、どうしてかとても違う場所のような気配がした。
いや、それも当然だ。
だって、ここは境界線、私から動くか動かないかの境界線。カムイが来るからと来賓室の準備に向かうこともできるそんな場所。
出しゃばる必要はない、私がするべきことは決まっているし、それだけでも十分、私は役割を担えているはず。
というのになぜだろう、それはとてもいけないことだと、私は自答する。
この先に進めば、もっともっと深みにはまる。
そこまでする義理は無い、そんなことまでする必要はない、相手は敵国白夜の人間、むしろこのままにしておく方が暗夜のためになるかもしれない……。
「……はぁ、仕方ないじゃない。私はカムイのおねえちゃんで、あの子たちを任されてるんだから」
歩み出す。境界線の導は来賓室ではない場所へと向かっていく。隣の部屋をノックするけど、気配はない。ココにはいない、ならどこにいるのか。静かに私は屋敷を進む。
私の部屋、食堂、大浴場に書斎、それらに影は無かった。
最後に行っていないとするなら中庭だけ、私はそこを目指して足を進めた。
中庭に続く扉を開ける。手入れの行き届いたガーデンと白い大理石の導が中央にある屋根付きの休憩所まで続いていて、そこにぼんやりとした影が一人、ポツリとあった。
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雲行きは少しだけ怪しく、すぐにでも大きな音を立てて地面を濡らし始めるような気配もあった。
あの中央の休憩場は確かに雨風を防ぐことは出来るけど、空の天気を見る限り戻った方が濡れずには済む、だというのにツバキはそこから動こうとしていなかった。
ただ、白い大理石の床に視線を落として、ただただぼんやりと時間を無駄に過ごしている。私は静かに休憩所に入り込むと、その対面に腰を下ろした。
私が来たことにツバキは何も言わないし、動こうともしなかった。
少しばかりの沈黙、その沈黙をかき消したのは耳に走り始めたぽつりぽつりと降り注ぐ雨の雫の音だった。
静寂が無くなると、それはまるで物語の開演を促すかのように。
「白夜軍は撤退したんだってね……」
物事の境界線に入り込んで来た私に、ツバキが口を開く。すでにツバキはそのことを知っていたようだった。
淡々とした声には、それを静かに受け止めている姿勢が感じられる。むしろ、観念しているという雰囲気があった。
なら、それをごまかす必要はないと答えを出す。
「ええ、黒竜砦、港町ディア、そしてマカラス、すべての場所で白夜軍は敗退。白夜の完全撤退という形で、今回の戦いは幕を下ろしたわ」
淡々とツバキが知っている白夜敗退という話、その知らない内部の事を口にする。ツバキは何も言わなかった。
ただ、その敗退を受け入れている。だけど、それを受け入れているにしてもツバキには何か聞きたいことがある。それがなんであるのか、少しだけ予想は出来ていた。
「……あの話は本当のこと?」
「あの話というのは、どの話の事かしら?」
真意を探る様にツバキから言葉を出すように促す。声のトーンは幾重にも落ちている、ツバキはただ虚ろともいえる瞳で私を見るとそれを口にした。
「……白夜が……。白夜が多くの民を、暗夜に連れてきて置き去りにしていったっていう話のことです」
「どうしてそれを?」
「いいから、答えてくれる?」
「……私は現場を見たわけじゃないわ。でも、カムイとレオンの話を聞く限り、本当の事よ。白夜は暗夜と関係を持った人間を、この戦いに連れて行って置き去りにした。そして、私たち暗夜に処理させた」
私は知っている限りのことを全て語る。ツバキはその言葉をずっとずっと静かに聞いていた。
マカラスでの戦闘の事、カムイが受け入れた白夜の民間人の事、そして、今の白夜で起きている事。それはカムイが来てから三人に話すべきことだった。
それをこうして話しているのは、ツバキにとってこの話が他のみんなといるときに聞きたくないであろう話であったからだ。
多分ツバキは……、白夜のこの所業をサクラ王女の前で聞くことに堪えることは出来なかったと思う。
ツバキの顔は酷く歪んでいる、青ざめていた。それは白夜の所業に対しての反応にも思えたけど、私には違うものに思えた。
それが、多分あの白夜侵攻の知らせが、サクラ王女の下にツバキが足を運ばなくなった理由だろう。そして、先日カムイとレオンから聞かされた話をツバキは扉の影に潜んで聞いていたんだと思う。あの来賓室の扉の軋む音は、多分彼の動揺で響いた音だったということだ。
いずれ話すことだからと、あの日来賓室に近寄らないようにとは伝えていない。カザハナとサクラ王女は座して待つことを選んだけど、ツバキは待つことを選ばなかったそれだけのこと。
「ははっ、そっか……。俺の存在に気づいたからした与太話じゃなかったんだねー」
「やっぱり、扉の前で聞き耳を立てていたのね。感心しないわ、そういうことは」
「……少しでもいい知らせがあったらって思ってさ……。サクラ様の耳に入る前に俺はそれを聞きたかったんだ」
「そう、だけどそれだけじゃないでしょう?」
それだけじゃないと私は思っている。私との言い合いの後のあの嫉妬が混じった視線、そういうのを考えるとツバキは情報が欲しかったのではなくて、もっと違う意味でほしい何かがあるのだと思った。
ツバキはサクラ王女に大丈夫だと毎日のように言い聞かせていたそうだ。でも、それが途絶えた日に何があったのか、それを考えれば少しだけツバキの求めている物がわかってくる。
あの日の白夜侵攻はどちらかの意味があった。一つはサクラ王女を助け出すために奮起したという意味、もう一つはサクラ王女の命を軽視しているという意味。向こうの意図はわからないけれど、当事者でないサクラ王女達がどちらであるとすれば、きっと前者に賭けるだろう。白夜はサクラ王女のためにこの侵攻を行ったと。
だが実際、この侵攻で行われたのは何のためだったのか?
サクラ王女を助け出すためではなく、自軍内にいる信用に値しない者たちを切り捨てるための侵攻だった。
もう一度、サクラ王女に伝えるためには何かしらの意思が必要で、それをツバキは求めていたのだとすれば、カムイとレオンの報告はその意思とは真逆の黒く穢れたものでしかなかったのだ。
ヒノカ王女がカムイにサクラ王女と救えた僅かな民を託したのは、今白夜がそれらを守ることができない場所になりつつあるということを証明する証拠でもあった。
「俺は白夜のみんながサクラ様を助けてくれる。だからサクラ様もみんなを信じて待ちましょうって、そう言ってきたんです」
「そう……」
「でも、あの日、白夜はサクラ王女が暗夜に囚われていることを知って侵攻してきました。カザハナの言ってた通り、そんなことしたらサクラ様の身に危険が及ぶことくらいわかってたはず、だからサクラ王女を救うために侵攻してきたんだって思った……。いいや、実際は思うことにしたんですよ…」
「あなたが欲しかったのは白夜がサクラ王女のために侵攻したっていう確信だったのね……」
「……」
無言のままのツバキを見ながら、それを肯定と私は受け取った。
ツバキは何も言わないまま、ただただ項垂れているばかりで、私は静かに腰を上げて彼の横に立つと、その背中を優しく撫でる。
泣きそうな子供をあやすように、背中を数回、そうすると不快だというように彼は顔を上げた。
「……何の真似かな」
その瞳にはさっき、部屋の前を後にしたときと同じ面影があった。
嫉妬しているこの視線の正体、それがなんであるのかようやくわかった。
「大丈夫。サクラ王女はあなたの事をちゃんと信頼しているわ。私じゃない、あなたのことを信頼しているはずよ」
「え……」
「それに聞いているわ。あなたってなんでも完璧に熟さないといけない、そう思ってるって」
「……」
誰から聞いたのかときょとんとした態度になる。誰から聞いたのか、それは答えを聞かなくても分かる問題で、ようやくツバキが恐れていることに私は手が届いたと思う。
「ツバキ、誰でも失敗はするものよ。あなたが信じたことがここに来て否定されたことは、覆せないことだとは思うけど、そんな失敗でサクラ王女はあなたを見放すような人じゃない。こんなにわずかな時間しか一緒にいないけど、私はそう思うわ」
「……そんなこと、貴女にわかるわけ」
「ええ、わからないわ。そんなことわからない、これは私が考えただけの結論だもの。だけど、それを確認もしないで自分だけの答えに固執するのは、サクラ王女を信じていないのと同じじゃないかしら?」
完璧であればあるほど、間違えを犯せなくなる。完璧であればあるほど、前後の矛盾に対応できなくなる。
ツバキは何も悪くはない。彼はごく自然にサクラ王女のために白夜は動いてくれると信じたのだから。
「それとも、その考えは完璧故の考えだったのかしら? サクラ王女を心配したからじゃなくて、完璧な人ならこう考えるはずなんて、そんなことを思った。そう言う事?」
そんなことあるわけないだろう。サクラ王女の臣下は本当に主君を案じている。それも身だけじゃない、その在り方にも一緒に動くことが出来る。そうでなかったら、無限渓谷まで追いかけてくることは無いはずだから。
本来あっていい事じゃないけど、主君の願いのために自分たちを賭ける。そんなことをやってのけるツバキが、サクラ王女の事でいわゆる完璧な判断をするとは思えなかった。
もしも完璧な判断を求めるなら、彼はサクラ王女を殺していただろう。敵地で何をされるかわからないし、死ぬまでの在り方はこちらの都合よく模造される。だらしなく命乞いをして死んでいったというそんな不名誉な話が流れ、白夜やサクラ王女の名誉に傷かつくのであるなら……。
あの無限渓谷で、サクラ王女達は命を絶っていた。
それが王族としての潔い最後であり、誰もが胸を打たれる完璧な終わりなのだから。
少しの間の沈黙、だけどこの場所だけは何十分にも感じられるほどに濃密な物だった。
雨の音は激しさを増していた、か細い声をかき消すようなそれ、でも彼の声は確かに……
「俺は……。俺はサクラ様に安心してもらいたかったんです」
この雨の中でも私の耳に届く。ちゃんとした意思を持った言葉として、私に伝わっていく。
「だけど、こんな結果になって……。俺の言葉が間違っていたってサクラ様が気づいたら…、それでサクラ様にとても辛い思いをさせてしまったらって……。俺の言葉でサクラ様が泣いてしまったらって思うとすごく辛くて……。日に日にサクラ様が貴女と打ち解けていく姿を視ていると、白夜を信じるっていった俺の言葉が紙切れみたいに思えてきて……」
「そう、だから私にあんな目を向けてたのね」
だから、ツバキは私に嫉妬に似た目を向けてきたんだろう。サクラ王女が暗夜の人間に信頼を置き始めている事、そして白夜が行った侵攻の顛末と結果、それを全て自分の中にため込んでいた。
今日の夜、その話を一気にしたらどうなっていたのか、予想などできない。
「間違っても人の主人を勝手に食べたりしないわ」
「……あんまり信用できないけどね」
「はぁ、そこなのよね。サクラ王女とカザハナ、素直でとってもいい子だけど、ツバキほどじゃないにせよ、出来れば少しくらいは敵意を抱いてもらいたいわ。そういう意味では貴方がいるおかげで適度に緊張感があっていいのよ」
「ふーん、緊張感で済んだらいいねー。ほら、何かしら企んでるかもしれないからさ」
調子が戻ってきたのか、ツバキの声量が大きくなり始める。
顔に先ほどまでの焦燥感は無い。私を敵と認識しているからか、それともこれ以上の貸しを作らないためなのか。
これを貸しとは思わない。そう、これは必要なことだから。
雨の勢いが少し落ち着いていた。視線は中庭入り口を見ている。
そこに、メイド数名に傘を刺してもらいながらやってくる影があった。
「なら、ちゃんと伝えないと、あなたの事を信頼して心配してくれる王女にね?」
「……あ」
冷たい雨の中、テトテトと歩んでくるサクラ王女とカザハナの姿にツバキは罰の悪い顔をする。
私は静かにツバキの横の席を開けて、やってきた二人を招き入れた。ツバキはこの後、どんな話をするのだろうか。
ここで誤魔化すようだったら私が代わりに話してあげると目線を送れば、余計な心配ありがとうございますと、挑発的な笑みを向けてくる。
意を決してツバキが離し始めたのを確認して、私は視線を雨の降る中庭へと向けた。もう、私が入り込む必要はなくなったのだから。
三人の話が終わったら、私も話すべきことを話そう。カムイのお株を奪ってしまうというのは何時もならしないことだけど、ここまで入り込んだのだからそうしよう。
いや、そうしようというのではなくて、単純に――
今はそうするべきだと、私がそう思ったのだ。
今日はここまで
カミラ王女、誕生日おめでとう。
カミラはこう母性的だから、ツバキとかはそれに甘えるみたいなのある気もする。
まきゅべす2は次回になります。
FEH第2部始まった。早くリリスの配信をお願いします。
◆◇◆◇◆◇
前作「カムイとまきゅべす」3スレ目889
【カムイとまきゅべす2~氷の双子~】
朝の始まりは優しいメイドの囁きである。朝の日差しが部屋を仄かに照らす中、薄ぼんやりと意識が顔を上げ始める。
昨日、突然やってきた資料を確認していたのだが、忙しさと暖炉の心地よさに船を漕いで寝てしまったらしい。
自身の仮面が顔に食い込んでいる感触を確かめつつ、マクベスは自身の顔を上げた。
「おはようございます、まきゅべす様。本日も良い天気にございます」
深々とお辞儀をするモーニング担当のメイドにそうですかと、小さく返事を零してマクベスの一日は始まる。
よもや、まきゅべすと呼ばれることに抵抗は無く、正すことをあきらめていた。
だが、目の前のメイドが寝起きの一杯を準備していないことが少々気にかかった。
昨日は熱い珈琲を準備してくれたというのに、なぜ今日は準備していないのかと。
「何かしら飲み物を準備してもらいたいものですね。昨日は準備してくれたと思いますが?」
「今日は御準備しておりません」
その言葉にメイドは釈明しなかった。
マクベスはなぜ?と聞き返す。
「この時間、窯に火が入っているのは一箇所だけですが。その一つをカムイ王女様が使っております」
「……なるほど、そういうことですか。はぁ、王女は朝の楽しみまで奪っていくというのですねぇ」
大きくため息を吐く、王女というのはこの城塞に住まうカムイ王女の事である。
こうして共に過ごして一年ほどが過ぎたが、未だに自身のことをマクベスと呼ぶ気配はなかった。
いや、むしろマクベスと呼ばれることの方が稀で、なんというか王城に出向いた際、兵士からマクベス様と呼ばれることに違和感を覚える程である。
「まぁいいです。あなたも違う仕事に行くように。私を起こしただけで仕事が終わるわけではないのですからねぇ」
「はいはい、わかっていますよ、まきゅべす様。それでは失礼いたします」
深々とお辞儀をしてメイドは部屋を出て行き、彼は先ほどまで突っ伏していた机の上に置かれている仕事に目を向ける。
そのほとんどはこの城塞の維持管理の事ばかりで、マクベスは可能な限りこれを切り詰めていた。
王族と聞くと華やかなイメージを持つものが多い。
王族は民を無視して華やかなパーティーを連日催しているという話は、中間層の民が口にする典型的な愚痴である。
しかし、そんなことを連日行えるわけがないことなど、普通に考えればわかることだ。
マクベスは見せるべき時に主君は着飾る必要があると考えている人間だ。
常日頃の生活は最低限の支出で抑えるべきと考えているし、無駄な投資は無くすべきとも考えている。
だからこの城塞の経費というのは暗夜の中で群を抜いて抑えられていた。
彼の手腕は確かな物、それがこの城塞で仕事を熟すメイドたちの共通認識でもあった。
「……ふむ、少々外壁の修理が必要ですねぇ。あまり立ち寄らない場所と言っても、何かが起きてからでは遅い…。メイドたちの中でそう言った作業経験のあるものは――」
城塞の問題個所を記した資料に目を通しながら、自然と手が空を切る。
空を切ったところで今日の朝は飲み物が準備されていないのだったと思い出す。
いつも仕事に取り掛かる前にコーヒーを飲むのが日課であるマクベスは、ため息を吐くと共に立ち上がる。
朝のモーニングコールに関してだけ言えば準備をしてもらっているが、マクベスは基本的に自分でものを準備する。
この城塞にいる使用人の数は少ない、わざわざ一杯を用意させるために呼んで、城塞の動きを悪くするのは愚の骨頂と考えているからだ。
マクベスは人を動かすのが好きだ。しかし、その動かすというのは大局的なものであって、個人の生活の一部には当てはまらない。
それに小さな事は出来る限り自分でやるという在り方は、カムイの教育にもなる。
そんなことを考えながら、扉へと向かうとコンコンと叩く音が聞こえた。
いつも音が聞こえる位置よりも幾分か低い、それに扉が開く気配もなかった。
何かの悪戯か、それとも寝ぼけているのかと再び動いたところで、またコンコン。
どうやら、何かいるらしい……。
「ううっ、まきゅべすー、開けてぇ……」
可愛らしい声が扉越しに漂ってくる。
このまきゅべすの言い方、イントネーションはただ一人しかいない。
一つ溜息を吐いてその扉を静かに開いた。
まず目につく白い寝間着、この前マクベスが王都より持ち帰った特注品である。
そして次にマクベスのお腹に届くくらいの頭、寝癖でとんでもないことになっていて、城塞の中に天幕の森がそこにあった。
最後に目についたのはその手に持たれた小さなお盆である。
二つのカップからは静かに湯気が立ち昇っていて、その人物はマクベスの事を見上げると泣きそうな顔を花のような笑顔へと変えていった。
カムイである。
「おはよう、まきゅべす。あのね、こぉひぃもってきたの……」
少し恥ずかしそうに、でも何処か嬉しそうにカムイは語る。
そんなカムイに中へと入るよう促して扉を閉めると、ようやく一つカップを手に取った。
口に運んで味を確かめてみるが、やはりメイドの立てたモノに比べて一味足りないというのが、マクベスの感想である。
「まきゅべす、その、どうかな……」
「残念ですが、まだまだです。もう少し精進することですね」
「うん、わかった!」
言われたことを素直に受け取るカムイの頭をポンポンとして、マクベスは作業を再開する。
「紙がいっぱいだね……」
マクベスの腕の下からひょっこりと顔を出したカムイがそう呟き、そのままマクベスの膝の上にちょこんと座りこんだ。
マクベスの机の上は書類で溢れていた。
これでも夜長毎日目を通して処理をしているのだが、終える量よりも増える速度のほうが明らかに早い。
口にしたコーヒー一口分の安らぎが、今まさに溜息と共に何処かへと旅立っていったように感じる。
更に問題があるとすれば、今日の午前中、これの相手をすることが出来ないということだった。
マクベスはとりあえず適度に資料を分けると、カムイに膝上から降りるように視線を向けた。
「え、まきゅべす。今日もここにいるんじゃないの?」
「人を引きこもりみたいに言うのは感心しませんねぇ。私だってここ以外でする仕事がありますから」
「うー、今日はまきゅべすの仕事してるところ、見てたかった……」
頬を膨らませながら訴えてくるカムイにマクベスはため息を漏らした。
少し前まで従順であったというのに、この頃はわがままを口にするようになってきていることに対してだ。
前回の七色ソースハンバーグの件から、どうもカムイはマクベスに対してわがままなお願いをしてくる。
それをマクベスは受けたり受けなかったりと時を考えて選別していた。
受ける理由を説明するつもりはない、大抵受けたりするときは受けない理由が無いからに決まっているからだ。
しかし、ダメな時にはちゃんと理由が存在するものだ。
それをマクベスは説明する。
それがある種の礼儀だと、カムイが覚えのを信じて。
「カムイ王女、私がそこに行かなくては成り立たないことというものがあるのです。それに貴女は先ほど、私が仕事をしているところを見たい、そうおっしゃいましたね?」
「うん……」
「なら、私の仕事を円滑に行えるようにすることが、今カムイ王女のすべきことです。結果的にそれが私の仕事をしている姿を視ることに繋がります」
「………でも」
「でもではありません。それに別の仕事があるのは午前中だけの話、午後にはまたこちらに戻っております」
「……わたし、午後からおべんきょうある……。午前中だけしか、まきゅべすの仕事見られない……」
不貞腐れたように、ぷくぅと頬を膨らませるカムイ。
しかしマクベスはパンケーキのように膨らんでますねぇと、思いながら今日の用事はカムイにも来てもらう必要があるのだと今さら思い出した。
「まぁ、こうしてここに来てくれたことで手間が省けたというものなのですがね。カムイ王女」
「うーうー」
「うーうー言うのはやめなさい。そろそろ行かなくてはいけません。支度をしにあなたの部屋まで戻りますよ」
「え?」
カムイはその言葉でむくれた顔を元に戻した。こういうところの理解だけは早いとため息を吐こうとして、無理やり飲み込んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイはマクベスの手を握って廊下を闊歩していた。
とても上機嫌であり、服も寝間着から与えられたドレスに変わっている。
まるで遠足にでも向かうのかというほどにルンルン気分のカムイを気にすることなくすれ違うメイドたちに、マクベスは挨拶をしていた。
おはようと返せば、おはようございますまきゅべす様とメイドたちが深々と礼をし、逆に挨拶をされればおはようと返す。
「まきゅべす、今日誰か来るの? ここってお父様をお迎えした、あの大きな広い場所に続く廊下だよね?」
「ええ、そうです。カムイ王女があそこに行くことが出来るのは来賓が来る時だけですからね」
それがマクベスの敷いているもう一つの条件である。
カムイがこの城塞のエントランスに来れるのは来賓があるときだけとなっている。
つまり、カムイにとってエントランスというのはとても特別な意味を持っているのだ。
前回はお父様であるガロン王がやってきた、なら今回は誰が来るのかとカムイは少し興奮気味で、一方のマクベスはあまり乗り気ではない。
「まきゅべす、なんだか元気ないよ……」
「おやおや、カムイ王女にそうみられるとは心外ですねぇ。この軍師(予定)マクベスの体調を伺うとは……」
「だって、まきゅべす、めんどーって顔してる……」
「……はぁ」
歯に衣着せられないカムイの言葉に、マクベスは溜息を漏らす。
しかし、漏らしたところで時間は止まることは無く、足はその扉を越えて至るべき場所に至った。
そこには少なからずメイドたちがいた。
だが、ガロン王をもてなした時のような華やかさは無く、カムイも今日来る人というのがお父様のような人ではないということを察する。
「それでその者たちは?」
「はい、そろそろ到着する頃だと思います……」
「そうですか。はぁ、まったくどうしてこういう事ばかり押し付けられるのでしょうかねぇ」
マクベスは頭を振り、その仮面の淵をなぞった。
マクベスの態度は明らかな苛立ちがある。カムイはその原因がわからなかったが、その手を強く握り返す。
「まきゅべす、怖い顔してる」
「怖い顔ですか。どちらかというと、こういったことを押し付けてくる方々に一言投げかけたいという顔ですよ」
それは実際怒っているのと大差ないのではないか、メイドの誰もが思ったが野暮なツッコミを入れることはない。
入れようとしたときには、エントランスの扉が大きな音を立てて開かれたからである。
そこには三つの影があった。
一つは暗夜の兵士、それを見るのが初めてではないカムイは自然と残りの二つの影へと目は向かう。
兵士の後ろ、一人とその陰に隠れるもう一人。二人はマクベスたちの様子を伺っていた。
カムイは二人の様子を眺めていたが、不意にマクベスの手から力が抜けるのを感じて、その手を放す。
手が離れたことを確認してから、やってきた兵士へと近寄っていく。
その兵士の後ろで震える影と、凛として立ち続ける影を一瞥した。
「マクベス様、ただいま到着いたしました」
「ええ、ご苦労。それでその二人が?」
「はい、反乱の疑いを持った部族、フリージアの娘になります」
「そうですか……」
説明を聞いてようやく視線を真っ直ぐ、その二人へと向ける。
あまりにも弱弱しい二つの影、背の高さはカムイより少し大きいほどか。
多分、歳も十を越えた頃合いだろう。
ここは託児所ではないのですがねと心で愚痴をこぼしながら、兵士から鍵を受け取る。
その鍵は今、この空間に響く鈍い金属音を消すためのものだ。
彼女たち二人の足元手元から響く鈍い音、カムイはそれをずっと見つめていた。
「では、私はこれで失礼いたします」
「ええ、あとはこちらにお任せくださいと、ガロン王様にお伝えください」
「わかりました、それでは」
一度姿勢を正して、兵士はエントランスを後にする。
大きな門が音を立てて閉じていき、完全に閉まったところで、陰に隠れていた少女が怯えたように肩を揺らした。
マクベスが一歩近づく度に少女の顔は慄いていくが、守るように立つ少女だけはそれを無理矢理抑えて対峙した。
強い瞳を軽く流しながら、マクベスは問う。
「さて、まずは名前を聞いておきましょうか?」
「……ふ、フローラといいます……」
その言葉に前に立つ少女はためらいながらも、静かに答えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数日前、ガロン王からマクベス宛に書簡が届いた。
王直々の書簡、ついに私も王城デビューを果たせる。
そう舞い上がっていたマクベス。
しかし、内容を知って浮足立った心は無限渓谷の底に落ちるかのように急速に冷めていった。
事の発端は、マカラス周辺の部族に不穏な動きがありという情報である。
なんでも、氷の部族フリージアは、暗夜転覆を模索しているという噂が立ったのだ。
それがどういった根拠で作り上げられたものなのかはわからないが、フリージアにはその疑いを晴らすために人質を差し出す必要があり、それがここに連れてこられた二人、フローラとフェリシアという少女だった。
「はぁ、まったく。部族が反乱を企てたところで、大きな運動になるわけがないというのに」
マクベスは執務室に戻って、開口一番にため息を漏らした。
ガロン王から受け取った書簡には日実の指定など書かれていない。
それが一番困ったことなのだ。
それは状況によっては何年間もということになるわけで、それが何かのプラスになるようには思えなかった。
「ガロン王様も何を考えておられるのか」
カムイはいずれ暗夜の王族としてその名を連ねる。
それは自身の軍師としてのポジションをモノにするためのプラス要素となりえる。
しかし、今回の二人がここに送られてきたとして、昇進の役に立つようには思えない。
「はぁ、いくら考えても仕方ありませんね」
落胆しながら執務室を出る。
廊下を進み、先ほどの二人の少女を通すように告げていた来賓室へと入り込むと、そこにはどうすればいいのかわからずキョロキョロしているカムイとその様子を楽しそうに眺めるメイド、そしてフローラの陰に隠れるフェリシアの姿があった。
「あ、まきゅべす……」
カムイの瞳が入ってきたマクベスを捕らえる。
その瞳は前回のハンバーグ事件と同じすがるようなもので、大きなため息を持ってマクベスは耳を貸した。
「何か問題でも起きましたか、カムイ王女」
「な、何を話せばいいのかわからないよ……。まきゅべすも一緒にかんがえてよぉ」
「はぁ、そんなことでは社交界でにぎやかに談笑など夢のまた夢ですねぇ」
そう口にしてマクベスはカムイの横に腰を下ろす。
それを合図と見たのか、フローラの背筋が伸びた。
相変わらずフェリシアは目を合わせようとしないので、マクベスも溜息を吐くしかない。
「フェリシア、いつまで隠れているの?」
「だ、だってぇ……ひっ」
マクベスの顔を見るたびに怯える。
これでは話ができたものではないと、マクベスは諦め気味にもう一度溜息を漏らそうとしたときである。
カポッという音が聞こえた。
マクベスの視線に一度だけ肌色が差して、視界を何かがかすめていくと、目の前に付けているはずの仮面を持つカムイの姿があった。
「まきゅべす、仮面外したほうがこわくないはず――あはははははっ」
次に聞こえてきたのは笑い声、マクベスは何が起きたのか全く分かっていなかったのでメイドに視線を向けた。
「いかがしましたか、まきゅべすさ――、ふふっ、うふふふっ」
それを見たメイドも笑った。マクベスはなぜ笑われているのかわからないまま、もう一度正面を向く。
そこには今にも決壊しそうな二人の顔がある。
なぜ、そんなことになっているのか、もう一度カムイに目を向ければ、また再び吹き出してマクベスの顔を何度も指差した。
「まきゅべす、顔にすごい痕がついてる! あははははは」
カムイの言葉に昨日は仮面をつけたまま寝落ちしていたことを思い出して、近くの鏡に自分の姿を視る。
寝ている最中にずれたのであろう、仮面の痕がこうもくっきり残っていて、まるでノスフェラトゥを彷彿とさせる。
慌ててカムイから仮面を奪い取り、装着して場を取り繕うと試みるが、慌てて付けたために仮面がまた落ちる。
ノスフェラトゥが顔を覗かせたところで、対面の一人は限界を迎えた。
「ふふっ、あはははっ……」
フェリシアが笑いを堪えられずに笑い出す。
しかし、すぐにやってしまったと無理に顔を戻そうとするものだから、アンニュイな表情が出来上がってしまう。
そんなフェリシアを見て、カムイが再び笑い出す。
収集の着かない現場にマクベスはしばらく話すことを止め、顔のほてりを冷ます時間に当てることとした。
「さきほどは妹が、その……」
「もう過ぎたことです。いいですか、あなた方は何も見ていなかった。よろしいですね?」
ようやく落ちついたので威厳をもってそう口にするマクベスであるが、一連の流れの所為もあって威厳も何もあったものではない。
フェリシアは小さくなってはいるものの、マクベスへの怯えは軽減しているように見える。
むしろ、マクベスに同族意識のようなものを感じているのか、ちょこんとフローラの横に座れるまでになっていた。
(これは舐められていますね。このマクベス、何れはガロン王様の右腕となる男だというのに)
輝かしい未来予想図を脳内ではためかせ、ようやく落ち着いた。
フローラはそんなマクベスから視線を逸らして、その横に座るカムイへと目を向ける。
まだ外部の人間とあまり関わりを持たないカムイはフローラの視線に気づくとビクリと体を震わせて、マクベスの裾を気付かれないように握ったが、マクベスが気づかないということはなかった。
蛇に睨まれた蛙が如く、カムイはじっとしたまま身動きが取れない様だ。
このままでは埒が明かないと、マクベスはようやく本題に入る。
「私はマクベス、この北の城塞を任されている者です。そしてこちらがこの城塞の主であるカムイ王女」
「は、はじめ、まして……カムイです。その、あ、ううっ」
言葉に詰まってマクベスに助けを求めるが、今回彼から助け船は無かった。
というよりも、彼よりも早く、対岸から船がやってきたのだ。
「こちらこそ初めましてカムイ王女様、それにマクベス様。改めまして、わたしはフローラ。フリージアからやって来ました。こっちは妹の――」
「あ、フェ、フェリシアです。その、今日からお世話になります……」
フローラはきちんとしたお辞儀、フェリシアはペコリという柔らかいお辞儀をする。
どうやら姉であるフローラはそれなりに作法を学んでいるようだが、フェリシアにはそのような経験もないらしい。
手を重ねて優雅さを保っているフローラに比べて、膝の上でグーを作って相手を気にするフェリシア、なんともあべこべな姉妹である。
「フェリシア、お世話になるんじゃないわ。私たちはこの人たちに仕えるのよ。その握りこぶしをほどきなさい」
「あ、姉さん、ごめんなさい…」
フローラの言葉にシュンとするフェリシア、喧嘩とまではいかないその会話の流れをメイドとマクベスは特に気にせずにいたが、一人だけあわわっとしている者がいる。
カムイだ。
今にも殴り合いが始まるのではないかと、マクベスの裾に顔を隠しながら、でも事の成り行きには興味があるとおっかなびっくり状況を確認している。
(何をやっているんですか、カムイ王女は。ああっ、裾が寄れてしまいますよ。このヒラヒラした衣装、皺無く伸ばすのに結構な時間が掛かるんですから、ああ、あああああ)
先ほどの指摘が原因か、フローラはフェリシアの至らない部分をチクチクと指摘していく。
確かにフローラの言うことはその通りなのだが、だんだんと過熱していく躾もマクベスから見ても行きすぎた度合いにまで膨れ上がり始める。
フェリシアの視線が時々マクベスたちへと向けられて、仕方ないとその躾に切り込みを入れていった。
「フローラ、今は不問としますから肩の力を抜く様に。こうしてカムイ王女の前で言い争う事こそ失礼でしょうに」
「は、はい……すみません。マクベス様」
「その正そうという姿勢は評価しますが、心の余裕は常に少なからず身に持っておくべきものです。何を焦っているのか知りませんが、ここはあなた方が喧嘩をするための部屋ではありません。わかりましたね?」
二人はそのまま静かに俯く、その細い腕と足に付けられた腕輪と足輪はまだ外れそうになかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから数日、二人はこの城塞のメイドとして内部で活動していた。
もう鎖の音は聞こえないが、その腕輪はまだ足と腕に付けられている。
マクベスは二人の腕輪と足輪の鎖を外しはしたが、輪を外すことしなかった。
それはまだ、ここの住民として受け入れていないという証明でもあり、認められるために二人は仕事をこなす。
てきぱきと仕事をこなしていくフローラに比べて、フェリシアはというと、通算十五回目になるバケツとの格闘に従事していた。
フェリシアが物を使うと、それは生きているのではないかと思う奇妙な動きをする。
今日もバケツがあっちへフラフラ、こっちへフラフラ、まるで酔っぱらいのように揺れ、やがて中身を吐き出してしまう。
無論、掃除用具が生きて動くわけはなく、問題はフェリシアであることに間違いはなかった。
「はわわわっ!、ど、どうすれば……。あっ、ひゃあああっ!」
どうすればそう不器用に振舞えるのか、自身の零した水面に転んで体中が水浸しになる。
腕輪と足輪が転んだ衝撃で大きく音を上げて、腕に痕を付けた。
「また、やっちゃいました……。なんで、こんなこともうまくできないのかな……」
水を吸って重くなったメイド服はそのままに、モップで床に広がった水面の処理に追われる。
どうしてうまくいかないのだろうと彼女は考える。
でも、何をしてもうまくいくことなんてなく役に立てない自分自身の不甲斐なさが先に沸き立ち、胸の内で沸々と音を立て始めた。
「……うううっ。だめ、泣いちゃダメ、泣いちゃだめなんです……」
しかし、涙がどうも抑えられそうになかった。手が自然と瞼へと向かう。涙を拭うために。
そうして手が瞼に触れたところで――
「フェリシアさん……?」
後ろから声を掛けられた。
潤んだ瞳で見た世界に、カムイの姿がある。
水浸しで今にも泣きそうなフェリシアを見たカムイは何も言わずに立ち去っていく。
一人になった心細さにもう限界だと目から雫が一つ落ちると、背中から柔らかくて暖かいものが掛けられた。
「え……」
そこにはカムイの姿があって、フェリシアは自身に掛かる毛布を見る。
「これ……?」
「フェリシアさん。すごく、濡れてる……。このままじゃ風邪引いちゃう。何があったの?」
「あ、あの、これは……」
バケツを零してしまってと言おうとして、これがフローラに知られたらと思った途端に、口が二の足を踏む。
自然と視線が下に向かって、もうどうすればいいのかわからなくなる。
だから――
「え、えっとね。フローラさんに言ったりしないから、でも、このままじゃだめ、こ、こっち……」
そう先に口にしてくれたカムイに自然と顔が上がった。
掃除用具はそのままにカムイはフェリシアの手を握って廊下を進む。
誰にも見られないようにコソコソと歩みを進めて、ようやく目当ての部屋にたどり着く。
コンコンと二回ノックすると、少しして部屋の主が現れた。マクベスである。
「む、カムイ王女。どうされましたか?」
「あ、え、えっと……その」
ここに来てカムイが二の足を踏んでしまう。
でも、訴えかけるように毛布を上から被ったフェリシアに視線を向けている。
フェリシアは震えていた。
カムイは粗相をした自分をマクベスに見せびらかすためにここまで連れて来たんじゃないかと。
数日前の時とは違う。
フェリシアはここで生活をしている以上、前のように甘くはいかないだろう。
きついお仕置きが待っているかもしれない、もしかしたらもっと酷いこともありえる。
そんなことを考えて、恐る恐るフェリシアは顔を上げる。
「とりあえず入りなさい、フェリシアもです。奥に小部屋がありますから、そこで服を着替えるように、拭くものはあるものを使って構いません」
「うん、ありがとうまきゅべす! フェリシアさんも、はいろ?」
「え、でも……」
「その格好では風邪を引きます。体調は崩すだけで、人手を割かなくてはいけなくなるもの。ただでさえいっぱいいっぱいの人員問題を増やさないでいただきたいものです」
マクベスは興味が無いという表情で、さも当然のように奥の部屋を使うように促す。
最低でも平手打ちくらいは覚悟していたフェリシアはきょとんとして、再び握られた手の力に導かれる様に奥の部屋へと入っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
奥の部屋にフェリシアに合う服は無かったので、下着姿に毛布を被って出てくる。
男性の視線ということを気にしていたフェリシアであったが、予想に反してマクベスは机に向かって資料の整理ばかりしていた。
指示を貰っていないフェリシアはどうしていいのかわからずそこに立ちつくすしかない。
ようやくカムイが出てくると資料を見ていた顔が上がり、貴女がフェリシアをここに連れてきたのですから、濡れた服やタオルなどはあなたが運ぶのですよとマクベスは告げる。
フェリシアはその言葉に驚く、ここにはメイドとして自分がいるのに持っていくのはカムイの仕事だというのだ。
自分に持っていかせるべきだとカムイが口にするかと思ったが、一方のカムイは二つ返事でタオルと濡れたメイド服を毛布に纏めて、部屋を出ていく。
ちゃんとフェリシアに待っててね、すぐに服を持って戻ってくるからと添えてだ。
フェリシアが聞いていた暗夜王国の王族、貴族の印象とはまるで違うことに内心驚きが隠せない。
もっと、人をボロ雑巾のようにこき使って、ミスをすればひどいお仕置きをするような人々かと思っていたのだから。
「なにを立っているのですか。そこに立たれていても迷惑なだけ、座ってカムイ王女を待ちなさい」
「す、座っていいんですか……」
「ええ、座りなさい」
マクベスの指示を受けて、フェリシアはその椅子に腰を下ろした。
毛布に下着だけという姿であるが、マクベスの視線がこちらに向くことはない。
ただただ、いくつもの報告書に目を通しては印を押していく行為を繰り返す。
とても静かな時間、いつも仕事の最中はこんなに静かではなかった。
何かしらの失敗が音になるから耳が休まることは無く、今日も水浸しになった服の水の音を聞きながら、仕事に勤しむことになると思っていたのに。
とても静かで、それがとても心地よく感じる。嫌な話をすれば、どこよりも今が一番落ち着いていた。
「仕事がうまく出来ていないようですね、フェリシア」
だから、唐突のマクベスの言葉に体が跳ねる。
怖くて頷くことしかできなかった。
「このところ、城塞内部の出費が増えていますので、色々と調べてみましたが、多くのことが貴女のミスだとわかりました……。正直、この量は驚異的ですよ」
マクベスは紙の束を見せた。
そこには廊下の絨毯の全清掃や食器の破損枚数、ダメにしてしまった茶葉の量など、フェリシアの仕事の成果が事細かく記されている。
フェリシアは委縮する。
こうして叱られることは予想していたのに、少しだけ静かな時間があったから期待してしまったのだ。
考えて見れば、何か間違いを犯して怒られない通りは無い。
しかし、マクベスを直視するのは難しかった。
でも、それは口にしないといけないと、ようやく絞り出すようにその言葉は出た。
「……ごめんなさい」
か細い声である。
今の精一杯のフェリシアの言葉にマクベスは特に表情を変えることはなく。
「今度からは誰かと一緒に仕事をしなさい。このままでは調度品を全て取り替えないといけない事態になりかねませんので」
「……」
「……」
「あ、あの」
「なんですか?」
「えっと、その……」
何かもっと言われるかと思っていた。ダメな奴だとか、何をやっても成長しないとか、姉さんと比べてまったく使えない、そういったことを……。
「まさか、姉であるフローラと比べて何か言われると思ったのですか?」
「な、なんでわかったんですか……」
「はぁ、誰かと比べてなんていうのは意味のないことです。フローラはここに来るまでにそれ相応の事を踏んでいるようですが、あなたは何も知らないズブの素人、そこに何を期待しろと?」
マクベスは淡々と意見を述べていく。
もう少し包み込んだ言い方をしてもいいのにと思えるほどにズバッとストレートに伝えてくる。
しかし、そこに相手を貶すような音色は無かった。
ただただ、事実を述べるだけ、それはなんだか先ほどの静かな時間に似た心地良さがあり、フェリシアは少し呆けて我に返ると頭を下げた。
「あ、はい……ごめんなさい」
「ですから、出来ないことは先人に尋ねるべきことです。努力をしているのであればなおさらというものです」
「でも、全然できてないです。今日もバケツをひっくり返しちゃいましたし……。カムイ様にも迷惑を掛けてしまいました」
「あなたに手を差し伸べたのはカムイ王女です、あなたが助けを求めたわけではないでしょう?」
「……はい」
「なら、それはカムイ王女が行ったこと。それをあなたは拒否しなかった、ただそれだけの事です。気に病む必要はありません。それに助けた後、処理をせずに立ち去るのであれば、助けない方がいい。助けるという責任は、その一時の後も支えることであるべきですからね」
マクベスはそう告げて紙の束を持ち、フェリシアの対面に座る。
毛布から顔を出して、その紙の束を静かに見つめていると、マクベスの顔は特に怒っているわけではない、むしろ少しばかり楽しそうだった。
「それに、あなたの努力は形になっていますからねぇ」
愉快な口調で、フェリシアは頑張っていると真正面から褒めてくれた。
だから困惑した、今日までにミスをしなかった日は無いというのに、なぜなのかと。
フェリシアは不思議を通り越した表情で、マクベスに尋ねた。
「見て見なさい、損傷の具合が段々と減っています。ミスは確かにありますが、その頻度や規模が減っているのは、あなたの努力によるものでしょう。ただ、今のままではその失敗をフォローできそうにありません。だからこそ、貴方は誰かと共に行動すべきだということです。努力を怠らず、少しでもどうにかしようとする姿勢事態は嫌いではありませんから」
「その……失敗してもいいんですか」
「いやいや、開き直られては困ります。いいですか、失敗は無い方がいいに決まっています。しかし、失敗しない人間などいはしません。まぁ、私は違いますがね」
自信満々に告げるマクベスに、最初の日の仮面の痕のことが過った。
言っている事はあべこべだけど、マクベスは忠実に評価を下している事だけは、フェリシアにもわかった。
「そういうわけです、わかりましたか?」
「は、はい、がんばります。えへへ」
先ほどまで落ち込んでいたのが嘘のようにフェリシアはやる気を取り戻している。
持ち直すのは早い様で、それはそれで助かるとマクベスは思いつつ、素朴なことを口にした。
「しかし、これほどまでに家事が絶望的とは、何か得意なことは無いのですか?」
「と、得意なことですか……」
ええ、さすがに一つはあるでしょう、と口にしてみたが正直このどん臭さだ。肉体関連で得意なことがあるとは思えない。
今度は書類の整理でも手伝わせてみてもいいが、資料にインクを零されたりしたら大変で、口に出すのが憚られる。
一方のフェリシアは神妙な顔で、そのマクベスの質問に答えるべきかを悩んでいる。
驚いた、フェリシアにはそれなりに自信のあることがあるらしい。
「思い当たるものはあるようですね?」
「え、あの……ここでは役に立つようなことじゃないと思って……」
フェリシアはそうきっぱりと言った。
役に立たない、ここでは役に立たないことというのはどんなものだろうか。
「わかりました。ならこれ以上言うことはありません。貴女はあなたにできる限りのことを頑張りなさい」
「言わなくてもいいんですか?」
「役に立たないと貴方が言っているのであれば、それが100%の力で運用されることは無いでしょう。ですが、この城塞でその力を振るうに値する出来事があったのであれば、一度試してみるなさい。それで、役に立つと思うのでしたら私にお見せするように。それから判断いたします。ですので、今は与えられた仕事を熟せるように努力すること、わかりましたね?」
「も、もちろんです! 私、頑張っちゃいます!」
体と言葉が同時に動く性質なのか、フェリシアは勢いよく立ち上がった。
その足に何かが絡む、大きな毛布はフェリシアの足を包み込んでいたのだから、そんな中で勢いよく立ち上がればどうなるのか、答えは簡単である。
「はわっ! あわわわっ!」
踏まれた毛布はそのまま力任せにフェリシアの体を前のめりに変えていく。
目の前には机があり、このまま行けば前頭部が直撃することだろう。マクベスもさすがに危ないと手を伸ばしてその体を支えたところで、ガチャリと扉の音がした。
「まきゅべす様、失礼いたします。カムイ様からフェリシアの服を用意してほしいと言われましたので、お届けにあがりま……した」
「フェリシアさん、服を持ってき……たよ」
果たして入ってきたメイドとカムイは、そこでマクベスに抱きしめられているフェリシアの姿を目撃する。
フェリシアは泣いているのか目元が少し赤くなっていた。
下着姿の年端もいかない少女を抱きしめているマクベスという構図は、とてつもない偏向した趣味であることを示すかのような光景で、さすがのメイドも驚愕した。
大袈裟にフラフラとその場に尻もちまでついて、口に当てた手はわなわなと恐怖に震えさせる。細かな演技が光る場面だ。
「ああ、やはりおかしいと思っていたんです。こんなにメイドがいるというのに、まったく興味を示さなかったのは、まきゅべす様が幼い少女しか好きになれないためだったのですね」
「何を言っているのですか貴女は、私にはそのような趣味はありませんよ」
「説得力がありません。はっ、もしかしてまきゅべす様という言い方も、カムイ様がしたのではなくて、幼い子の舌足らずな感じを出すために強要した、そういうことなんですね……」
「これ以上、変なコトを言ったら三月ほど減給としますが、よろしいですね?」
「……服をお持ちしました、まきゅべす様」
打って変わってとはこの事だろう。抱きとめたフェリシアをやんわり離すと、その頭に落ちた毛布を掛ける。
その行為はとても暖かくて優しいもので、フェリシアの視線は自然と上にあがった。
「何をしているのですか? さっさと服を着替えてくるように。今日は始まったばかり、仕事は終わっていません。そうですね、彼女が一緒に仕事をしてくれますので」
「え、私ですか」
「あなた以外に誰がいますか、私に対する暴言をこれで無しにしてあげようというのですから、これはとても安いものですよ」
「……はぁ、わかりました。フェリシア、早く着替えてきて、そうしないと私の給料が減額されかねないから」
「は、はい、すぐに着替えてきます!」
勢いよく奥の部屋へと入っていったフェリシアを見送って、マクベスは疲れたようにため息を吐き、仕事を再開した。
新しい作業着に着替えたフェリシアに目を向けることはなかったが、彼女はとてもうれしそうにマクベスに視線を送りながら部屋を後にしていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜になると、城塞はとても静かな場所となる。
城塞の入り口となる下町はとても静かな場所であるから、人々の声は聞こえず。辺りを包むのは漆黒の闇と言っていい冷めた空気だけであった。
そんな中でもマクベスの執務室には、まだ小さな明かりが灯っている。
連日の処理はまだ終わりが見えない。
「……ふぅ、もう真夜中ですか。しかし……」
まだ休めそうにありませんねと、溜息を漏らす。
膨大に積まれた資料の山は、今日も夜深くまで作業が必要なことを暗示していた。
「ふむ……」
先ほど入れたコーヒーはもう無くなっている。
あと数時間は仕事をしなくてはいけないとなると、もう一杯は欲しいと椅子から立ち上がったところで、扉を叩くか細い音が聞こえた。
こうして仕事に集中していない時でないと聞こえないであろう音、それに気が付いてマクベスは扉へ向かう。
メイドが今日の終業報告をしに来たのかもしれない、そう思って扉の奥を覗いて予想外の影に目が点となる。
「……こんな時間に何の用ですかな? それとも、まだ仕事が終わっていなかったのですか?」
「……」
扉の先にいたフローラは未だに仕事着のままでそこにいた。
しかし、仄かに香る石鹸の匂いが仕事は終わっていると伝えている。
仕事の話ではない、とするといったいなぜ夜にやってくるのか理解が出来ない。
「こんな夜中に来てもらっては要らぬ誤解を招きます。明日ではだめですか?」
「要らぬ誤解ですか……。いずれは誤解でもなくなるのでしょう?」
フローラの声は淡々としていた。
マクベスの言葉にどこか噛みつくような視線と態度、どうやら彼女が来た理由というのはその要らぬ誤解に関することのようだった。
マクベスとしては、そんな話に付き合いたくはないのだが、この折れるまで絶対にここを動かないというフローラの気概に折れることを選ぶ。
「……まあいいでしょう、入りなさい。寒いですから、暖炉の前で話をしましょう」
フローラを自室へと促して、扉をゆっくりと閉める。
燃え盛る暖炉の前、用意された椅子にフローラは腰かけると、その面持ちが更に真剣な物へと変わった。
「それで、話とは何ですか?」
「あなたに謝ってもらう問題ではありません。すでに謝罪は本人からもらっていますのでね。まさか、そんな謝罪のために来たのではありませんね?」
それはそうだろう、そんな話をするためにわざわざここまで足を運ぶ必要はない。
どうやらその通りで、フローラの顔に安堵は無い。
スカートの上に置いた手は開かれておらず、握りこぶしは少しばかり震えている、怖がっているようにも思えた。
(いいえ、違いますね。恐怖しているならば瞳に現れるものですが、この瞳にあるのは……。圧倒的な敵意といったところでしょうか)
フローラの視線にはマクベスに対する敵意だけがあった。
この城塞を預かっている人間に対して、このようなことをしてくるということは、何かしらの覚悟があっての事だろう。
それともまだまだ子供故、そう言った感情を隠しきれないのか。
歯に着せた衣を拭わんばかりの剣幕、しかしそれをどうにか抑えてフローラは言葉を紡いだ。
「……に手を出したのですか?」
「なんですか、もっとはっきりと言いなさい」
聞こえないとマクベスは言った。
その言葉にフローラは力強く立ち上がり、その額に青筋まで立てはっきりとそれを告げた。
「……私の妹に手を出したのですか、と聞いているんです!!!」
暖炉の炎はフローラの感情に起伏するかのように炎の柱を上げる。
部屋全体がマクベスを凶弾するかのように、部屋に寒々しさが広がっていく。
マクベスは、その言葉を受けて……
「………は?」
何を言っているんだこの小娘は。
目の前に仁王立ちするフローラを蔑むように眺めるほかなかった。
私がフェリシアに手を出した、ホワイ、なぜ?
なぜそのようなことになっているのか? マクベスの脳内には大量の疑問符が軍団となって連なり、今や理解の壁に大挙して押し寄せていた。
そのようなこと身に覚えがない、そんな素振りを見せるマクベスにフローラの怒りは限界と言わんばかりで、証拠は光っているのだとさらなる追撃に移行する。
「しらばっくれても無駄です。今日、フェリシアから聞きました。仕事のことを。今日もうまく出来なかったと。そしてあなたに抱かれたって……」
かなり飛躍した話だ。
フェリシアは事細かに説明をしないらしい、これは報告書などを手伝わせることもできないとマクベスは心底呆れていた。
そして不運にも、その呆れた態度を開き直っていると見るのが、このフローラであった。
マクベスの態度はそれがどうしたと言っているように見えるし、彼女はストレートにそう解釈してしまったのだ。
「あの子のミスに付け込んで迫ったのでしょう。フェリシアがあんな顔になってしまうくらいのことを、この部屋で迫ったのですね!?」
「あんな顔っていうのは一体どういう顔の事ですか?」
「っ!!!」
その言葉がまさに起爆剤で部屋の中が更に凍り付いた。
マクベスは身に感じるその冷たさに体を震わせる。
このマクベスともあろうものが、少女の剣幕に身を震えさせているのかと。
いや違う、これは心が恐怖しているから寒いのではない。
物理的に冷気が対面する方角から流れている。
見ればわかる、発生源はフローラであった。
「な、なるほど、氷の部族というだけはあぁ、ありますねぇええ」
流石は氷の部族、冷気の扱いになれているということですかと心の中で感心するが、まったく体は温まらん。
部屋の中に吹き荒れる木枯らし、暖炉の炎は風に吹かれて勢いを増しているが、その熱気が届かない。
マクベス執務室は、今や絶対零度の極寒地へ変貌しつつあった。
「寒いですよね。当然です、私はあなたを殺すつもりでここに来たんですから、要らぬ誤解ではありません。ふふっ、フェリシアに手を出しておきながら、生きていられるとは思っていなかったでしょう?」
「ま、まさか、こんなに思い込みの激しいいい、小娘だとは、おも、おもいま、せんでで、したよおよよ」
姉妹揃って一癖も二癖もある。
こうして妹の言葉を鵜呑みにしてやってくるのだ、あの過剰なまでの躾は、多分妹の身を案じての事なのだろう。
フェリシアはその躾に怯えているようだが、何のことは無い。
このフローラからすればあれが愛情表現なのだから。
「ふふふっ、妹に手を出した報いを受けてくださいね、マクベス様。大丈夫です、明日にはあなたは凍死したという形で報告されるだけ、フェリシアと私は慎ましく生き残らせてもらいます」
「――――っ、ううっ……」
段々と視界が薄くぼんやりとしていく。
(ああ、何という事か、こんなことでガロン王様から承った任から外れてしまうなど)
もう、体を動かそうにも動かせる気配がなかった。
(まったく、日頃の行いには注意をしていたのですがねぇ……)
目の前では殺気を隠すこともなく、冷気を垂れ流すフローラだけが見える。
指向性を持った冷気はマクベスだけを容赦なく凍えさせていく。
部屋全体ではない、マクベスだけが絶対零度の極致へと連れ去られつつあったのだ。
もう思考も止まりつつある。この先の黒い縁は死に繋がっている。
もう、何処にも戻ることのできない死が近づいていて、マクベスの視界が真っ白に溶け込み始める。
どうにか視線を動かして打開策を練ろうとするがすでに遅く、最後に見つめたのはこの部屋の出口であった。
(ああ、コーヒーを飲んで温まろうと思っていたのに……。これなら、ポッドなどを部屋に置くべきでした……)
沈黙を守り続ける景色、フローラの勝ち誇った笑み。
すべてが凍り付いていく。そんな光景が目に凍り付いていく、その刹那……。氷の背景に一瞬だけ変化が起きた。
扉が少しだけ開いた。
開いて何かがフローラに近づいていくと、とても機敏な動きでそれはフローラの背後を取り、そのままフローラを昏倒させた。
正に早業で、冷気が一気にその姿を無くしていく。
ぼんやりとした視界の中、マクベスはその靄の掛かったピンク色の物体を前に意識を落とした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして目覚めた。
「……?」
悪い夢を見ていたのか。どうにか記憶を掘り起こして失う前の景色を思い出す。
勘違いしたフローラに氷漬けにされた記憶が蘇ってきた。
しかし、氷漬けにされたというのなら、こうしてベッドにいるわけがないし、光景を克明に思い出せるわけもない。
そうして体を起こしてみれば、ここはあまり使わない奥の寝室であることに気が付いた。
隣の部屋では何やらごちゃごちゃと音がしているものの、誰かが入ってくる気配はなく、自身の腹が鳴ったことに結構な間、眠っていたことを感じ取った。
「はぁ、一体何が起きているのか」
と、そこで扉が開かれる。
ノックが無いのはマクベスが未だに眠っていると思われているからだろう。
ぼんやりとした視線で目を向ければ、そこにはカムイとフェリシアの姿があった。
二人はまるでおばけを見るかのようにマクベスを見る。
肌は思ったよりも白いので、確かにお化けに思えなくもないなどと自身で思いながら、おはようございますと声にすれば、それを合図にカムイは床を蹴って、勢いそのままにマクベスの腹へと頭突きを喰らわせた。
「まきゅべす! まきゅべす、よかったよぉ」
「ごふっ、カムイ王女。頭をグリグリするのはおやめください……。いったい何があったのか……教えていただきたい所です」
「え、えっとね……」
「その……あの……」
「まきゅべす様、殺されかけたんですよ」
カムイとフェリシアの二人が言い辛そうにする中で、淡々と執務室からメイドが一人現れて何の感慨もなくそう告げた。
見えた執務室は多くの家財が無くなっているものの、机だけは健在であるようだ。
仕事机だけでも残って良かったと、マクベスは安堵の息を漏らす。
「…そうですか。それでフローラは?」
「今は地下牢にいます。もう、三日になりますか。何も言っては来ませんけど、できうる限り何もしないように目は光らせています」
目を光らせているというのは多分、自害しないようにという意味であった。
勝手に死なれてはマクベスとしても困るのだ。反逆の噂があるとはいえ、死なれでもしたら色々な問題が発生するのは目に見えている。
最悪、本当に部族反乱が始まりかねない。
そうなれば、ガロン王の手を煩わせることになる。
それだけはダメだ。
だからこそ、そうならないように命を助けてくれた者に礼を言わなければならなかった。
「そうです、私を助けてくれたものに、礼をしなければいけません。あの時間、メイドの誰かが私の部屋を訪ねてきたようですが……」
マクベスはそうして意見を求めるとメイドは丁寧にその人物を示す。
どうやらこの部屋にもう入ってきているようだと、マクベスは部屋を眺め、自身を含めて四人しかいないことに首を傾げ、さらにそのメイドが指示している人物を見て困惑した。
正直、それはないだろうと疑いを持ったまま。
「まさか、貴女だというのですか? フェリシア」
「はい、マクベス様……。私の得意なこと、役に立ててよかったです……」
フェリシアはそれだけを淡々と告げた。
その言葉からマクベスは彼女が得意なことをようやく理解する。
このぽわわんとしていて、何をするにもドジなこの小娘は見た目に反して戦闘という意味では、他よりも優れた才覚を持ち合わせていると。
ならば、フェリシアが自身の特技を役に立たないものと言ったのも頷ける。
メイドとして仕事をするのに、そんな戦闘技術は必要ないと考えるのが一般的なのだから。
自身の得意なことをマクベスに語って彼女は静かになった。
もう覚悟をしているのだろう。
それは当然のことか、姉であるフローラがしでかしたことを止めたとはいえ、実際マクベスは殺されかけたのだ。
それを不問にすることは出来ない、何かしらの処罰が無くては示しがつかない。
「覚悟はできているようですね。その在り方は素晴らしいものです。ですが、その前に一つ、お聞きしてもいいですかな?」
だが、命を助けてもらった手前、何も聞かないというのは筋が通らない。
物事はできうる限り平等に見るべきである。だから、マクベスはそれをフェリシアに問う。
「一つだけ願いが叶うとするなら、フェリシア。貴女は今を望むのです?」
その質問に彼女は慌てることも、何より悩むことなく一つの願いを口にした。
本当にそれだけが今ある願いであるように。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
地下牢でフローラはその最後の時を待っていた。
もう助かることもない、自分はこの先殺される運命にあると信じて疑わなかった。
勘違いと思い込み、それを制御できずに駆け出した結果が今のこの状況である。
あれほどの啖呵を切ってしまったのだ、マクベスは容赦ない処罰を下すことだろう。
なにせ、命を狙われたのだ、そんな危険人物を生かしておく理由などない、それが当たり前の事なのだから。
「ふむ、思ったよりも元気そうですね。部屋の隅で震えていると思っていましたが」
突然聞こえたその声に視線が上がった。鉄格子の先に殺そうとした男がいる。
不敵な笑みは浮かべていない、閉じ込められたフローラを確認しても表情を変えず淡々とした面持ちでのままに見下ろしていた。
「……私の処遇が決まったんですね。あなたが目を覚ましたということは……つまりそういうことでしょう?」
「ええ、そうなります」
「そう、それじゃ。さっさと殺していいわ。これは私が個人的に行ったこと、フェリシアは関係ないことだから」
この首を持っていけばいいとフローラは首を出す。
マクベスはその行動を眺めつつ、その手に持ったものを使って――
牢の鍵を開けた。
重々しい錠前が解除された音にフローラは顔を上げた。
そして、中に入ってきて止めを刺すのだろうと、マクベスの到来を待つことにする。
しかし、マクベスは入ってこない。
当然のことだ、マクベスはフローラが出てくるのを待っているのだから。
互いが互いの動きを待つ中で、しびれを切らしたのはマクベスの方であった。
「いつまでそこにいるつもりですか、早く出てこちらに来なさい」
「え?」
「え、ではありません」
マクベスが手招きしてくる。
それに従うように両足に力を入れて立ち上がると、重々しい牢の扉を押し開ける。
今さっきまで入っていたはずの牢の外に自分がいることが、とても信じられなかった。
温度は変わらないけれど、鉄格子に囲まれた先ほどに比べて息苦しさは感じられない。
どうして外に出してもらえたのか、それがわからないとマクベスに視線を向ければ、彼はすでに先を歩いていた。
フローラはそれを追いかける。
その背中は付いてくるように語っていたからだ。
冷たい石の階段を上がり続ける。
だんだんと肌が暖かい空気に触れ始め、気づけばこの数日で見慣れた廊下に出た。
それで終わりではなく、結局そのまま廊下を進み、やがてその部屋にたどり着く。
そこはマクベスの執務室だった
「……あの、どういうことですか?」
この事態にはさすがのフローラも声を上げた。
なぜ、ここまで連れてきたのか、処刑を自身の執務室で行うつもりだというのなら、このマクベスという男、かなりの変態ということになる。
それに、処刑するのにわざわざこんな場所を用意する必要はないと思うのだ。
「私の処刑なんて、あの地下牢か寒空の下ですれば……」
「処刑? あなたは一体何の話をしているのですかな?」
マクベスは何を言っているんだこの小娘はという視線を向けた。
「まさか、処遇と聞いて処刑されると思っていたのですか?」
「ち、ちがうの? 私はずっと殺されるものだと……。どうせ、死ぬならすぐにでもと何度か……牢で死のうとしていたのに」
「はぁ、本当にメイドたちは頑張ってくれたんですねぇ。牢で勝手に死なれてしまっていたらと思うと胃が痛くなります。勝手に死なれては困るのですよ、いや本当に」
フローラは混乱していた。
マクベスからそのような言葉を聞けるとは思っていなかったからだ。
こうしてここにやってきたとき、すでに死を覚悟していたフローラからすれば、そんな言葉を聞くことなどないと思っていたのだから。
「それはどういう……」
「それについてはあなたが知る必要はありません。いいではありませんか、こうしてあなたは生きているのですから。それに、貴女がこんなに早く復帰できたのは私の決定ではありません。まずは、その方に礼をしなさい」
そうして、マクベスは部屋の中へと入っていく。
フローラは恐る恐るとその部屋の中に入っていく、三日前にマクベスを凍死させようとした部屋には、いつもの仕事着に身を包んだフェリシアの姿があった。
「あ……姉さん!」
フローラの姿を視た直後に、フェリシアは駆け出す。
飛んできた彼女を抱きしめる。三日ぶりの妹の感触、妹の匂い、妹の温もり。
すべてが生きているからこそ得られる感触で、それが急速に生きているということをフローラに実感させる。
「フェリ……シア……」
「うん、姉さん。よかった……。あ、あの、後ろから叩いた時の傷とか残ってないですか……。その思いっきり叩いちゃったから……」
「大丈夫、大丈夫よ。フェリシア……。本当に、あなたは戦闘だけは得意なんだから……」
抱きしめ返してくれたことが何よりもうれしくて、フローラの視界はみるみる濡れていく。
それを見ながら、マクベスは呆れたようにため息を漏らしていた。
「フェリシアに感謝するように。私を救った礼、その願いとしてあなたを助けることを望んだのですから」
「え……、どうして、そんなことを」
それはフェリシアの判断に対するものではなく、マクベスがそれを受け入れたことに対する疑問であった。
それこそ聞かなくてもいい事だというのにと、面倒くさそうにマクベスは首を上げた。
「……貴女は私を殺そうとしました。しかし、逆にフェリシアは私を助けてくれたのです。死と生を同じ価値で見れば、フェリシアの願いは私が貴女に殺されそうになったという事実を消すに値した。今回は動機が動機でしたから、それを掘り下げる意味もないので不問としただけの事です。というよりも、正直思い出したくもありません。あのような低俗な勘違いで殺されかけたなど、認めたくもありませんのでね」
マクベスは語気を荒げて言葉を紡ぐ、ああ、まったくもって面倒くさいと。
フローラの方も、その部分を口にしたくはなかった。
誰が言えようか、実の妹が食い物にされたと勘違いをして腹を立てた末の行動だったなどと……
「そうです、そうです。姉さんがマクベス様を襲ったのってどうしてなんですかぁ?」
「フェリシア。そのことは掘り下げないでほしいのだけど……」
「私からもお願いします。変な噂が立ちかねませんので」
そう言葉を添えて、マクベスは執務の机に向かっていく。
その背中を少しだけ追いかけて、突然握られた手の感触にハッとする。
顔を上げれば、そこにはフェリシアがいた。
「姉さん、ありがとうございます」
「ありがとうって、私はいい事なんて何もしてない……」
「ううん、マクベス様言ってました。姉さんがこんなことをしたのは、私のことを大切に思っているからですって」
「あれがそんなことを? とてもじゃないけど、そんな風には思えない」
「えへへ、私もびっくりしちゃいました。マクベス様、私の答えを聞いた後にそう言ってくれたんです。姉さんは、私の事をとっても大切に思っているって」
その言葉に開いた口が塞がらない。
どういう顔で話せばいいのかわからず、金魚のようにパクパクと開閉運動を繰り返す。
「なんですか、そのように口をパクパクと。もう少しは反省の色というのを見せていただきたいものです」
「な、なんてことを妹に吹き込んで!」
「実際事実でしょう。あなたの優しさはとても不器用です。相手に伝わらなければ、それはタダの暴力になりかねません。こうして、私の命を狙ったのですから、その動機の最もたる部分には正直になるべきでしょう。それが嫌なら別にかまいませんよ、これからもまるで妹を厳しく躾ける姉を続けるといい」
マクベスはそう憎たらしい笑みを浮かべた。
ここまで状況を作られて、否定できるほどフローラは冷たい女ではない。
フェリシアの手のぬくもりは本物だし、フェリシアを大切に思っているのも事実だ。
よもや逃げ場はない。
「……わかりました。わかりました、私の負けです。私は妹を大切に思っています」
「ね、姉さん。そんなどうどうと言われても……照れちゃいますよぉ」
「ここは言わないと、納得してもらえませんからね。でも、ミスをするようだったら、変わらずに指摘しますから。そのつもりでいなさいフェリシア」
「は、はいぃ……ううっ、もう少し優しくしてほしいですぅ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これでいいでしょと、フローラの目は訴える。
マクベスは私が良いと決めるわけではないのですがと、口にして二人の元へと歩み寄る。
「二人とも手を出しなさい」
「え?」
「いいから出すのです。もう、さすがに付けておく必要はありませんからね」
フェリシアとフローラの手がマクベスへと向かう。
その手の平を通り抜けて、腕まで手が伸びると、カチャリという音が静かに響く。
それは腕から始まって、次に足元へ。
重みを持って響いたそれは、やがて床に転がり音を発することは無くなった。
「腕輪と足輪を外しちゃっていいんですか?」
「マクベス様?」
「もう、あなた方には必要ありません。それは奴隷が付けるべきもの、すでにこの城塞の一員となったお二人が身に着けるべきものではないのです。それに、主の前でそのような物を付けるのは無粋ですからねぇ」
「あ、主?」
フローラは睨みつける、もちろんマクベスをだ。
それにマクベスも睨みを返す、誰がお前たちの主になるかと。
そもそも、この城塞の主は一人しかいないのだから、どうしてそういう勘違いが出来るのか、まったくこれだから忠誠を誓ったことのない田舎者はと心底呆れた。
「まぁいいです。まずは、顔合わせと行きましょう」
そうして手を叩く。
その新しい主は奥にあるマクベスの寝室から、メイドを一人従えてやってくる。
両手と両足が同時に出ているのは愛嬌ということで見逃すしかない。
そうして現れた主、カムイは二人に深々とお辞儀をして、何もしなかった。
「カムイ様?」
「そ、その……。ううっ、フローラさんが怖いよぉ」
別に睨んでいたわけでもない、しかしカムイはマクベスの背後に隠れてしまう。
マクベスのはぁ……という溜息が響く。
「カムイ様、臣下を恐れては舐められてしまいますよ」
「……だって、フローラさん。まきゅべすに酷いことしたから、私にもひどい事するかもしれない……」
「それはもう終わったことです。カムイ様、たとえ過ちを起こしたとしても、その物に改正の余地があるのであれば向き合うのも一つ上に立つ者の役割。少なくとも、私はフローラが改正すると思っております。それを含めて、カムイ様に二人を臣下として与えるのです」
ご自慢の高説を謳いあげるマクベスであるが、カムイは足に巻き付く様に掴まっていて、一向に出てこようとしない。
その状態をフローラに投げかける。
それはある意味、最初の臣下としての仕事という物だろう。
主から信頼を勝ち取るという重要な仕事、スタート地点と言ってもいいものだ。
一歩、また一歩と進む。
気づけば、フェリシアも一緒に横を歩いてくれていた。
もう、フェリシアとカムイの間には少なからず絆が出来上がっている。
今、そこに立たなくては姉として妹を守っていけない気がした。
だから、臆することなくフローラは歩み、そしてカムイの前に立った。
「……カムイ様。今日から、貴女の臣下として仕えさせていただきます。私がマクベス様に行った狼藉、それは消えないことです。そんな私を信用しろというのは難しい話かもしれませんが、お願いします。私を貴方の臣下としてください。私にフェリシアと一緒に仕えることを、お許しください……」
「わ、私からもお願いします。カムイ様!」
深々としたお辞儀、沈黙の時間が流れた。
フローラは頭を上げない、フェリシアも頭を上げない。
マクベスは何も言うことは無く、カムイはその足に捕まったまま――
「まきゅべすに酷い事、もうしない?」
そう問いかけた。
顔を半分だけ見せて、二人の姿を視て。
「はい、もう致しません。カムイ様」
カムイはその言葉を吟味するかのように、少しだけ思案して、ゆっくりとマクベスの陰から出てくると、二人の前に立った。
フェリシアとフローラは頭を下げたままだ。
カムイはその二人を前に沈黙を守り続け、そして、どうすればいいかわからないという視線をマクベスに向ける。
「単純な事です、カムイ王女。この二人を臣下として認めるなら、頭を上げさせる。ただそれだけのこと」
「……。フローラさん、フェリシアさん。顔を上げて」
「はい、カムイ様」
フェリシアとフローラの声が重なり、同じように上がる。
視線の先には今、主となった女の子がいる。
その子はさっきまでの怖がっていたのが嘘のように、笑顔で二人に抱き着いた。
「よろしく、フェリシアさん、フローラさん」
「はい、カムイ様!」
「はい、ありがとうございます。カムイ様」
三人が抱擁し合う姿をマクベスは眺めつつ、ちょっとした悪戯心にこんなことを口にする。
「ところでカムイ王女、ここで二人に初めての仕事を与えてみるというのはどうでしょうか?」
「仕事?」
「ええ、仕事です。臣下となった今、二人も何かしらの命令を欲しているはず。それに応えるのも主の義務というものですからね」
マクベスは楽しそうに笑みを浮かべている。
これが彼なりのフローラへの復讐であるが、スケールの小ささにメイドは内心で哀れな男を眺めていた。
マクベスの言葉にカムイは考える。
考えてみるが、一向に思いつく気配がない。
いきなり何か命令をしろと言われても、簡単に思いつくものではなかったのだ。
「マクベス様、それは無茶ぶりというものです。カムイ様が困惑しています」
「そうですよぉ、マクベス様」
「おやおや、臣下になると言った傍から、これではいけませんねぇ。なにご心配なく、このマクベスがここまで教育を行ってきたのです。無理難題を口にすることはありません」
マクベスは自信を持ってそう伝える。
ある意味、ここが教育成果を見せる一つの機会でもあった。
カムイが臣下を持ち、そして下す初めての命令に高揚感を感じながら待ち続け。
「いん、決めた。決めたよ、フェリシアさんとフローラさんへの命令!」
「おおそうですか、さすがはカムイ様です」
マクベスはよくやりましたと、その頭を優しくポンポンとし、カムイはその感触を堪能した後に、二人と向き合った。
「カムイ様、ご命令をお願いしますぅ」
「カムイ様、ご命令を……」
「うん、あのね二人には――」
二人の声にカムイはにっこりと笑って、その初めての命令を口にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
朝の始まりは優しいメイドの囁きである。
そう、それは何時も通りの朝の始まりだった。
しかし、困ったことにあの日を境に、それは少し変わってしまった。
「まきゅべす様~。起きてください、朝ですよぉ~」
「まきゅべす様、起きてください。起床時間をオーバーしています」
机で伸びているマクベスを左右から揺さぶる声、片方はどこかしっかりした口調で、もう片方はおっとりとした口調。
それぞれの音色がマクベスの鼓膜を揺らす。
あの日、カムイの臣下となった二人は、カムイの命令通りに事を遂行していた。
ああ、いやだ、なんでこんなことになったのかと、マクベスは己のうっかりを呪う。
カムイの命令は、二人にマクベスをまきゅべすと呼ばせることであったのだから。
「ううっ、毎度毎度思いますけど、なんでこんないい方をしなくてはいけないんですか」
「私は気にしてないです。それにまきゅべす様って、可愛い呼び方だって思いますから」
姉妹の会話が耳に入る。
どうして二人がマクベスを起こしに来ているのかといえば、それもカムイの所為である。
コンコンと扉を叩く音が響き、それに合わせてフローラが扉を開ける。
そこには四つの湯気の立つコーヒーをお盆に乗せたカムイがいた。
「まきゅべす、おはよう。今日もこぉひぃ淹れてきたよ」
もう日課となったカムイのコーヒーが部屋へと運ばれてくる。
マクベスの机に置くと、そのままフェリシアとフローラに手渡す。
そして、椅子に座ってマクベスを待つ態勢へと移行した。
マクベスはというと、その日課となりつつある光景にため息さえ出ない。
わずかに開いた扉から感じる視線、どうやら今日もフェリシアとフローラの身を案じるメイド数名が張り込みをしているようだ。
前までは朝に一人メイドが来るだけだったのに、こんなことに時間を割く暇があるなら、さっさと仕事を始めなさいと心で辛辣に叫ぶ。
しかし、フェリシアとフローラにさえもまきゅべすと呼ばせているという形から、ロリコンまきゅべすなる異名まで付いている始末。
それが勘違いであり、身も蓋もない誹謗中傷であることを示すためにも、抗議の声を上げることは出来ないのだった。
「まきゅべす、はやくはやく~」
「まきゅべす様~、珈琲がさめちゃいますよぉ」
「まきゅべす様、早くこちらへ。まさか、主の命令には従うことと言っていたあなたが、カムイ様の命令に背くなどということをするわけがありませんよね?」
三者三様でマクベス包囲網が出来上がってい中、フローラは一番群を抜いていた。
マクベスの発言をそっくりそのままカウンターで返してくるのだ。
主従の力量バランスが危うくなっていることをマクベスは察している。
ならば、その席には着くべきではないのだが、朝の一杯というのは、気持ちの切り替えを行う上ではとても有用な物で、それをマクベスは無下にしなかった。
観念したように机から立ち上がり、机に置かれたカップを取ると空いている椅子に腰かけた。
隣にカムイ、対面にフローラ、その隣にフェリシアという形でそれぞれのカップから湯気が立っている。
特に号令はない、四人が全員カップを持ち座ったところで、それぞれが飲みたいタイミングでコーヒーを口に運んでいく。
今日のマクベスは三人目くらいであった。
口の中に入ってくるコーヒーの味は、やはり他のメイドが淹れるモノに比べればまだまだであるが……
「ふむ……」
新しい住人たちと共に飲んでいるからなのか、それともこうして何度も口に運んでいるからなのか。
思ったよりも飲み慣れたものになっていた。
さぁ、仕事をに取り掛かりますかと、マクベスは机へと戻り、他の者たちも部屋を後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
これはどこかの物語。
カムイとマクベス、そして人質として連れてこられた双子の邂逅の物語。
If(もしも)の一つ……。
カムイとまきゅべす2―おわり―
今日はここまで
マクベスパルレとか、あったらやりたいよね。
次回から本編に戻ります。12/31に無双のifDLC、槍は騎乗ユニットしかいなかったからオボロとアクアが地味に楽しみである。
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
カムイと話をする人物。
前回のスサノオ長城戦に参加した仲間から二人。
・カミラ
・サクラ
・アクア
・ルーナ
・ラズワルド
・ピエリ
・フランネル
・エルフィ
・ブノワ
・ハロルド
>>816 >>817
◆◇◆◇◆◇
遊撃部隊のメンバーで支援イベントの組み合わせ
・ラズワルド
・ピエリ
・フランネル
>>818 >>819
◆◇◆◇◆◇
城壁攻撃部隊のメンバーで支援イベントの組み合わせ
・エルフィ
・ブノワ
・ハロルド
>>820 >>821
このような形ですが、よろしくお願いいたします。
サクラ
ルーナ
ラズワルド
ピエリたそ~
エルフィ
ブノワ
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『郊外の森』―
エルフィ「あれは……ブノワ。こんな森で何をしているのかしら? ブノ――」
熊「グルルル……」
ブノワ「……」
エルフィ「熊に襲われてる!? 助けないと!」ダッ
ガサササッ!
ダダッ
ダダダッ
ブノワ「あ……。だ、誰だ?」
エルフィ「わたしよ、ブノワ。危ないところだったみたいだけど、怪我はない?」
ブノワ「エルフィか。大丈夫だ、俺に怪我はない」
エルフィ「そう、よかった。それにしても王都の近くに熊が現れるなんて……。周囲の警備を強化してもらった方がいいかもしれないわね」
ブノワ「いや、あれはただ迷い込んで来ただけで、王都に悪意を持って近づいてきたわけじゃない……」
エルフィ「そう……なの?」
ブノワ「ああ、帰り道を教えているところにエルフィが来た。どうやら驚いて逃げてしまったみたいだ……」
エルフィ「そうだったの、ごめんなさい……」
ブノワ「いや、エルフィの所為ではない。もう少し周囲に気を配るべきだった。あの熊はとても不安そうにしていた、本当なら安心して話をしてくれる場所にまずは誘導するべきだった……。俺の落ち度だ……。だから、探しに行く」
エルフィ「ブノワ……。わたしも手伝うわ。一人よりも、二人の方が早く見つけられると思うし、何より邪魔をしてしまったのはわたしだから……」
ブノワ「そうか……なら、すまないが頼んでもいいか?」
エルフィ「ええ、わかったわ」
【ブノワとエルフィの支援がCになりました】
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『廊下』―
ラズワルド「はぁ、マークス様に叱られてへとへとだよ。どこから街に繰り出してることがばれたのかな?」
ピエリ「あ、ラズワルドなの。またマークス様に叱られたの?」
ラズワルド「あはは、まぁ、そうだよね。うん……」
ピエリ「お仕事しないで街に行くのがいけないの。ピエリ知ってるの、ラズワルドお仕事で街に出てるんじゃなくて、女の子とお話しするためだって。マークス様が怒るのも当然なのよ」
ラズワルド「そうは言っても僕にとっては欠かせない日課の一つだし、こんな一日でも一つ一つの出会いを大切にしたいんだ。もちろん、今日ピエリに会えたのもその大切な一つだよ」
ピエリ「すごいの、ラズワルド! この前、他の女の子に言ったことと、同じこと言ってるの」
ラズワルド「ぐっ、今のはちょっとダメージ高いよ。僕の引き出し、足りなくなってきちゃったかもしれない……」
ピエリ「ねぇ、ラズワルド。女の子とお話しするのが日課の一つって言ってたけど、もう一つ何かあるの?」
ラズワルド「え、もう一つ?」
ピエリ「そうなの。ピエリ、ラズワルドの日課は女の子とお話しすることくらいだって思ってたの。他に何してるの? 今すぐ教えるの!」
ラズワルド「えっと、それは……」
ピエリ「教えないと、えいってしちゃうの」
ラズワルド「わわっ、槍を取り出さないで。教える、教えるから!」
ピエリ「わーい、ピエリとっても嬉しいの。ピエリ、ラズワルドの事大好きなの!」
ラズワルド「そ、そう……////」
ピエリ「あ、ラズワルド照れてるの。ウブってやつなのー!! とっても可愛いの」
ラズワルド「は、恥ずかしいから大声で言わないでよ、もう……」
【ラズワルドとピエリの支援がCになりました】
今日は支援だけで
エルフィはブノワが熊と話が出来ているという事実に疑問を持たない気がするのよね。
ピエリとラズワルドは見てて安心できる二人組だなって思う。
◆◇◆◇◆◇
今日はピエリの誕生日なので、ピエリリスのピエリ誕生日SSを少々。
~~~~~~~~~~~~~~~~
くしゅんと鼻が鳴って、私はふと顔を上げた。
綺麗にラッピングされた数多くのプレゼントを背景に、その子は恨めしそうに窓の外を眺めている。外には雪がチラついていて、今日の夜も大分寒くなることを予感させていた。
「ピエリ、もう風邪治ったの…ずずっ」
「そんなに顔真っ赤にして何言ってるんですか。子供じゃないんですから、風邪を治さないと新年をきちんと迎えられませんよ?」
「ううっ……それは嫌なの」
自室のベッドで布団に包まりながら私にしょぼくれた顔を向けてくるピエリさんを、私はポンポンと宥める。今日の朝、私は一番に城塞を出てピエリさんのお屋敷にやってきた。
去年の誕生日は私が風邪を引いてしまったこともあって、プレゼントをちゃんと渡せなかったから、今回はフライング気味にササッとやってきたのである。
しかし、出迎えてくれたのはメイドの方で、丁度良かったとこうしてピエリさんの寝室に案内されて、この状況を目の当たりにした。
この様子ではとても誕生日会を行うわけにもいかないだろうと決まったらしく、私はプレゼントを置いて帰ろうとしたところで、こうして呼び止められたのだ。
でもと言いよどむ私に、うるうる涙ぐんだ瞳とそのわがままボディを駆使してピエリさんは迫り、こうして傍に今日一日いることになった。
そして、これで何十個目になるのかわからない、ピエリさんへのプレゼントが届く。今度はマークス様からのようだった。
「あ、マークス様からのなの……ごほごほっ」
「起き上がっちゃだめですよ」
「でも、みんなからもらったプレゼント、開けてみたいの」
「それは明日の楽しみにしててください」
「ぶー、リリスはケチなの。リリスはケチケチなの!」
「ケチとかじゃなくてですね……。はぁ、本当にピエリさんは出会った時から変わりませんね」
そうやって拗ねる所とか、癇癪を起すところとか本当に成長が止まってしまった子供のようだ。だけど、そういう姿に見合わない女性らしい豊満さは彼女がきちんと生きてきた証でもある。だから、変わっていないというわけではないと思うのだけど……
「リリス、リンゴの皮むき終わったの?」
「はい、終わりましたよ。待ってくださいね、今食べやすい大きさにカットしますから」
「早くしてなの、早くあーんしてほしいの!」
ベッドの上で楽しそうにはしゃいでいる姿は、ずっと変わらない彼女のいいところの一つで、私の好きな部分だったりする。戦場で見せる人殺しとしての面の無邪気さと同じだけど、そこには純粋にその時を愉しんでいる子供の顔があった。それが堪らなく愛おしく感じるから、こう負けてしまうのだ。
「はぁ、私も相当甘いですよね」
「リリス?」
「なんでもありません、はいこれくらいの大きさですけどいいですか?」
「わぁ、一口サイズなの。リリス、ありがとうなの」
「お礼はいいですよ。よし、出来ました。はい、あーん」
「あーんなの!」
ピエリさんが私の差し出したリンゴを頬張る姿を見る。正直、これほどの贅沢はないかもしれないと、今さらになって私は思い始めた。だって、今ここには私とピエリさんしかいない、時々メイドさんがピエリさんに届いたプレゼントを私に来るが、それは一瞬の事だ。
プレゼントを置いたらすぐに部屋を出て行ってしまう、また二人だけの時間が始まる。その、そういう趣味はないけれど、これでも私はピエリさんの事がそれなりに好きなわけで、こう誕生日に独占しているというのは、こうなんだか優越感に似たものを覚えてしまう。
好きな友人と二人きり、しかも誕生日に。こんな無防備にリンゴを食べている姿を世界で私が一人だけ見ているのだ。
「ん、リリス。なんだかうれしそうな顔してるの」
「え、そ、そうですか?」
「うん、ピエリのこと見ながらニコニコしてたの」
どうやら顔に出ていたらしい、少し自分自身を自制しないとだめだと思ってリンゴを口にする。口の中に広がるまろやかな味わいに、先ほど意識した優越感がマッチして再び顔が綻んだ。
それをもう一度味わおうと、もう一つのリンゴを口にしようとしたところで、ピエリさんが声を掛けてきた。
「ねぇ、リリス」
「なんですか? ピエリさん」
どうにか綻んだ顔を直してピエリさんに目を向けると、そこにはさっきまでとは違うなんだか元気のない姿があった。
「ど、どうしたんですか、ピエリさん? もしかして、お腹を痛めて……」
「ううん、ちがうの……」
そう言って口元を布団の中に隠してごにょごにょする。その顔はさっきよりも赤くなっている気がした。心配になってその額に手を当てると冷たかったのか、ピエリさんがひゃっとする。もっと赤くなった気がした。
「あのね、ありがとうなの。ピエリの我侭聞いてくれて……」
「我侭って自覚あったんですね。ピエリさん」
「うー、ピエリだってそれくらいわかるの……リリスは意地悪なのよ」
口元を未だ隠して瞳だけで抗議してくるピエリさんの額をペタペタと触って、機嫌を直してくださいと気持ちを込める。今日は一年で特別な日だから、出来る限り笑顔でいてもらいたいというのは、私だけの我侭ではないはずだ。
「ふふっ、ごめんなさい。だけど、どうしたんですか? いつもなら私たちの事情なんて気にしないのに……」
「……それはわからないの」
「風邪の所為ですね。違いありません」
「リリス、さすがに怒るのよ」
ぷりぷりと怒りながら、でも私の手に額を押し付けて、もっと撫でてとせがんでくる。今日は誕生日だからと、それに応えるように額を優しく撫で続けてあげた。
「……今日、ひとりぼっちでいたくなかったの。朝起きて、体がフラフラして、熱があるって言われて、今日のピエリのお誕生日会はやらないって言われた時、すごく不安になったの」
「仕方ないじゃないですか。無理に誕生日会を開いて、ピエリさんの風邪が悪化したら、それこそ問題になってしまいます」
「わかってるの。でも、この頃の誕生日はみんながお祝いしてくれたから……。また、前みたいなのは嫌なの……」
その言葉に私はハッとする。ピエリさんが俯いて、何も言わなくなってしまった。
ピエリさんがしてきたことを考えれば、今までの誕生日会に多くの人が集まってくれたとは思えない。快楽的に人を殺す少女の誕生日にわざわざ行こうなんて言う酔狂な人はそういないはずだから。でも、カムイ様と一緒に世界を救うために戦った多くの人たちは、ピエリさんを理解してくれた。
だから、あの頃の誕生日に、ピエリさんは戻りたくないのだと、今ここになって理解した。
「ピエリさんは、皆さんと一緒に誕生日を過ごしたかったんですね」
「……うん」
弱弱しい声。それを少しだけでも元気付けたいと心がトクンっと鳴った。
「その、今日は私だけじゃダメですか?」
鳴った。思った。口に出た。
私は無意識にそう零して、数秒してから何を言っているのかと首を振る。
いや、本当にそんな趣味はないんです、ただピエリさんを元気付けるにはどうしようかと思って考えを巡らしたら、たまたま考えがそのまま口に出たと言いますか、不可抗力というか。なんか、そんな意味にも聞こえてしまっていたらどうしましょう?
混乱する私、そんな私のほっぺたに柔らかい感触があって、横を向くとそこには体を起こしたピエリさんがいる。私の手は、いつの間にかピエリさんの手の中に納まっていた。
「ダメじゃないの。さっきありがとうって言ったのよ。リリスが一緒にいてくれて、ピエリとっても嬉しいの」
そう、さっきよりも赤みの引いた顔でそう伝えてくれる。手中に収まった私の手は、今の言葉への返答を模索して、カチコチに固まっていた。
そして何よりも、今さっきのほっぺに感じた柔らかさは何なのかと、残った手でその個所に触れる。
感じるとても熱い熱量、どうしてここだけが熱を帯びているのかわからないままに私はピエリさんに視線を向けた。
すると、ピエリさんは無邪気に笑顔を咲かせていく。とても、恥ずかしいことを言われる気がした。
「カミラ様から、お礼にはこうするといいって言われたの。リリスのほっぺ、とっても柔らかかったのよ」
そう言われて、私の方が風邪を引いたみたいに真っ赤に染まっていく。どうやら私も風邪にやられてしまったらしい、そんなことを思いながら、ピエリさんに伝えるべき言葉があったと今さら思い出した。
「ピエリさん、お誕生日おめでとうございます」
「うん、ありがとうなの」
「はい、それじゃちゃんと暖かくしてください、今日は一日ピエリさんが寂しくないように一緒にいてあげますから」
私の言葉にピエリさんは笑顔を満開にして、ゆっくりとベッドの中へ戻っていく。さっきまでの落ち込んだ面影は無くなっていた。
「リリスの手、欲しいの」
「はい。どうぞ」
「ありがとうなの。ピエリ、早く良くなるの。良くなって、改めてお誕生日会するの!」
「はい。微力ですけど、私もそのお手伝いをしますから、今はゆっくり休んでくださいね」
私の言葉にピエリさんは安心したように目を瞑り、差し出した手に感じる温もりが段々と弱くなっていく。やがて、その手は力を失った。
ピエリさんにとっての大切な日を守る様に、私はその力の抜けた手を握った。
雪はその勢いを弱め始める。まるでピエリさんが安心して眠れるようにと気を利かせているかのように思えて、明日にはピエリさんの体調も良くなる気がした。
だから、こうして握った手を優しく温める。ピエリさんが寂しくないように、ひとりぼっちじゃないと言い聞かせるように。
何よりも今日という日が、ピエリさんにとって幸せでありますように。
そう私は静かに願った。
―終わり―
今日はこれだけ
ピエリ誕生日おめでとう。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『暗夜野営地・天幕』―
暗夜偵察兵「以上が報告になります」
カムイ「そうですか、何も見つからなかったんですね」
暗夜偵察兵「はい、白夜王都方角の大規模な森林地帯に戦闘の痕跡を見つけることは出来たのですが……」
マークス「痕跡だけだったということだな……」
暗夜偵察兵「はい。遺体がどこにもないのです……」
カミラ「ベルカが一緒にいたと思うけど、あの子はなんて?」
暗夜偵察兵「出血の量から見て、とても逃げきれるとは思えないと……。豪雨の影響もあって痕跡が徐々に消えつつあります。また調査している者たちも、あの見えない敵の陰に怯えています……」
レオン「わかった、今日の探索と調査はここまでだ。調査に出ている者たちに戻る様に伝えてほしい。今日も交代で監視をしながら夜を越すことになるだろうからね」
暗夜偵察兵「はっ、わかりました。失礼いたします」バサッ
マークス「やはり、敵が死体を奪っていったということなのか? レオン、話に聞いていたが、王都でゾーラがお前を襲撃した際、奴の死体が消えたということだったが……」
レオン「うん、ゾーラは殺されて死体ごと姿を消した。おそらくだけど、今回の件と同じように回収されたのかもしれない」
マークス「……死体を隠して何をするつもりだ。アクア、その目的が何かをお前は知っているか?」
アクア「おそらくだけど、死体を自身の駒として使っているのだと思う」
カミラ「死体を駒として?」
アクア「ええ……それが奴の力の一つ。今回の戦いの目的の一つが多くの死体を回収することだったのかもしれない。それを利用して何をするのかはわからないけど、ここで起きたことよりもっと醜悪なことをするつもりなのかもしれないわ」
エリーゼ「……どうにかして止められないの」
アクア「奴を倒す以外に手はないわ。でも、そうすると白夜の問題を後回しにすることになる。今の白夜の状況を考えると……」
レオン「そうだね。前線を預かっていたヒノカ王女は敗走、そもそも彼女が戻れているかもわからないんだ。ただ、結果はどうあれ強行派はそこを確実に突いてくるよ。こんな時なのに失敗の清算を王族に求める可能性だってある。」
サクラ「失敗の清算って……」
レオン「……言いたくはないけど、王族の誰かが処刑される可能性がある。この処刑に意味なんてない、ただ少しでも白夜が敗北するという現実から逃れるための小休止に過ぎないとしても、それをしないといけない状況に白夜はなっているかもしれないからね」
カムイ(誰かが……処刑される?)
???『さぁ、お前の希望が絶望に変わって、王都で待っていることだろう』
カムイ(リョウマさんか、ヒノカさんのどちらかが……)
カムイ「……」
アクア「カムイ?」
カムイ「……あ、なんですかアクアさん」
アクア「大丈夫、顔色が悪いわ」
サクラ「カムイ姉様……」
カムイ「すみません、少しだけ悪いことを考えてしまって。もう大丈夫です、心配をかけて申し訳ありません」
カミラ「いいのよ。心配させてちょうだい?」
エリーゼ「そうだよ。カムイおねえちゃんのこと、心配するのは当たり前のことだもん」
レオン「まぁ、そうだね。カムイ姉さんは思ったよりも背負い込んじゃうみたいだからさ」
サクラ「はい、カムイ姉様は一人じゃないんですから。もっと、こう、私たちをいっぱい頼ってください」
マークス「そうだな。それはお前のいいところでもあるが……。いや、これは前にも言ったことか」
アクア「マークスの言いたい気持ちも分かるわ。でも、カムイのそこが治るとは思えない、私たちでちゃんと支えてあげないとね?」
カムイ「言い返せないところが、ちょっと痛いところですよ、本当に」
カムイ(そうですよね。私がそんな最悪を想定してどうするんですか……。私がそれを否定しないで誰がするというんです。こんなに支えてくれる人たちがいるんですから)
マークス「ところでカムイ、お前はどう思う?」
カムイ「今後の方針についてですよね?」
マークス「ああ、現在の戦力のまま、白夜王都へと向かうか。応援を待つか。それともテンジン砦まで……」
カムイ「マークス兄さん、それだけはありません。私は白夜との戦いを終わらせることを選んだんです。だから、今背中を向けて帰るわけにはいきません」
カムイ「私たちは先に白夜との戦いを終わらせることを選びました。なによりも奴を倒したところで、ユキムラさんが私に抱いている憎悪が消え去るわけではありません。白夜と暗夜の戦いを終わらせるために、ここまで戦ってきた意味を私は消したくありません。まだ、手が届いていないのに諦めるわけにはいかないんです」
マークス「……わかった。それがお前の答えということだな」
カムイ「はい」
マークス「わかった。ならば、そのお前が信じる道を進もう、この剣はお前と共にある、そう胸に秘めて戦いに加わったのだからな」
カムイ「マークス兄さん……」
マークス「レオン、伝令隊を組めるか?」
レオン「明け方までにはどうにかするよ。目的地はテンジン砦でいいかな?」
マークス「ああ、クーリアへ応援要請を頼む。侵攻の手助けではなく、このスサノオ長城で医療活動を行えるものを多く寄越すようにとな」
レオン「わかった。すぐに取り掛かるよ」
カムイ「レオンさん、お願いしますね」
レオン「任せて」タタタタッ
マークス「よし、スサノオ長城を任せる後続部隊の到着を持って、白夜王都へと侵攻する。各自、それまで体を休め、万全を喫するよう努めてほしい、兵にもそう伝えておいてくれ」
カミラ「ええ、わかったわ。カムイも誰か見かけたら教えてあげてね?」
カムイ「はい、わかりました。カミラ姉さん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・スサノオ長城『野営地・離れの草むら』―
カムイ「誰かを見かけたらと言われましたが、多くの方々は野営地の中で、ほとんど話は通っているみたいですね。もしかしたらと、野営地周辺に繰り出してみましたが、誰かいるようには……ん?」
ブンッ ブンッ
カムイ(この風を切る音、誰かが鍛錬でもしているのでしょうか?)
タッ タッ タッ
ガササッ
カムイ「誰かそこにいるんですか?」
ルーナ「やあっ、て――ん? あれ、カムイ様?」
カムイ「その声、ルーナさんですか。どうしたんですか、こんな野営地から離れたところで」
ルーナ「なにってみればわかるでしょ」
カムイ「はい、素振りですね」
ルーナ「訓練って言ってほしかったんだけど」
カムイ「あ、訓練ですね。わかりますよ、この草むらを越えて聞こえてましたから、精が出ますね」
ルーナ「そうそう、今度からはそう言ってよね。それでどうしたの、何か話があったんじゃなくて?」
カムイ「そうなんですけど、今後の方針についてはもう耳にはしてますよね?」
ルーナ「ようやく決まったの。ならさっさと教えなさいよ。あの見えない奴らを叩きに行くわけ?」
カムイ「いいえ、私たちは後方からの援軍の到着予定が立ち次第、白夜王都を目指すことになりました。あの姿の見えない不気味な者たちのことは気になりますが、今私たちが向かうべき問題は白夜のこと以外にありえません」
ルーナ「そう……。大本を叩いてからっていう考えはないってことね」
カムイ「大本ですか。確かにその考えもありましたけど、それですべてが解決するわけではありませんから。私たちが大本に近づいている間に、あの見えない兵が現れ白夜王都に攻撃を加えてしまったら、もう暗夜と白夜の関係を修復することは出来なくなると思ったんです」」
ルーナ「たしかに、あたしたちがいない間に白夜に攻撃を加えられたら、その攻撃が暗夜の物だって考えるしかないわけね……」
カムイ「はい、だから私は白夜との長い戦いをまず終わらせるつもりです。それがルーナさんたちの使命に繋がっていればいいんですけど」
ルーナ「繋がってるわよ。そうじゃないと、どの面下げて帰ったらいいのかわからなくなるし……」
カムイ「ふふっ、どの面ですか。私はどんな人が見ても可愛いって思う、とても素敵なお顔だと思いますけど?」ピトッ
ルーナ「ひゃひっ! ちょっと、いきなり触るなんて反則、んやっ」ピクリッ
カムイ「ふふっ、くすぐったそうですね。この頃はあまりこうしていなかったからか、力加減が難しくなってきました。ここらへんの耳裏当たりとか、どうでしょうか」サワサワッ
ルーナ「ちょ、タイム。だめ、だ、誰もいないからってこんなことし、んっ! や、やるならちゃんとカムイ様のお部屋で……その」ボソボソ
カムイ「そうですね。ルーナさんのこんな可愛らしい反応、他の誰かに見せたくはありません。できれば私だけが知っていたいものです」
ルーナ「ば、ばばばばばばばば」
ルーナ「ばっかじゃないの!? そ、そんな恥ずかしい事、よく口に出して言えるわね!? そ、そんなこと言ってると、色々と勘違いされるっていうか。その、そういうことよ!」
カムイ「なにを怒ってるんですか。私は本心で――」
ルーナ「あー、やめやめ! こういう話はこれで終わり! もう、顔が熱くて死にそうよ……////」
カムイ「……」
ルーナ「な、なに。まだ何か言いたいわけ?」
カムイ「いいえ。こうやって話をしていますけど、いつかルーナさんは故郷に帰られるんですよね?」
ルーナ「まぁ、そうなるわ。戦いが終わったら、あたしたちも移動しないと。元々、戦いのために来たんだから」
カムイ「なんだか悲しいですね」
ルーナ「悲しいって、いずれ別れる時なんて来るもんでしょ?」
カムイ「違いますよ。ルーナさんの戦いはまだ続いていくのかもしれない、そう思ってしまって。私たちの戦いが終わった後、ルーナさんもゆっくり休めたらと思うのですが。こんなに戦ってくれたルーナさんに、その休みが訪れないのはあまりにも悲しいじゃないですか」
ルーナ「……悲しいね」
カムイ「少なくとも私はそう思いますよ。戦いの合間にある小休止のようなものじゃなくて、もっと自由になれるそんな時間が訪れてほしいって思っていますから」
ルーナ「……そう、なら言い出しっぺのカムイ様は、あたしのその時間に付き合ってくれるってことよね?」
カムイ「え……」
ルーナ「ふふん、これで戦争を終わらせる目標が一つ増えたわ。カムイ様、この戦いが終わったら、あたしのショッピングの手伝いをすること。自分から提案してきたんだから反故になんてさせないから」
カムイ「うう……困りました。まさかルーナさんがここまで鋭く入ってくるなんて、てっきりそんな心配される筋合いはありませんと、言われて終わりになるかと思っていたので」
ルーナ「ひどっ、カムイ様の言ってる事、それなりにわかってるつもりなんだけど!」
カムイ「ふふっ、ごめんなさい。だけど、ルーナさんならそのあとに照れながら、ありがとうって言ってくれたと思いますから」
ルーナ「い、言うわけないでしょ////」
カムイ「そ、そうなんですか。すみません、本当におせっかいだったみたいですね」
ルーナ「いや、そのベ、別にお節介だなんて思ってないっていうか……。その心配してくれるのはうれしいし、えっと――」
カムイ「ふふっ、やっぱり思った通りでしたね」
ルーナ「あ、カムイ様あたしを試したわね!」
カムイ「試したわけじゃありませよ。ルーナさんのことはそれなりにわかっているつもりです。実は仲間思いで努力を怠らない人で、とっても優しいそんな女の子、それが私の知ってるルーナさんです」
ルーナ「……そ、そう/////」
カムイ「はい。約束の方、覚えておきますね。戦いが終わったらルーナさんのお手伝い、させてもらいます」
ルーナ「ふ、ふん、見てなさいよ。いっぱいいーっぱい買い物して度肝抜いてあげるんだから」
カムイ「お手柔らかにお願いしますね」
ルーナ「ふふっ。そ、それより、カムイ様はもう戻る?」
カムイ「はい、ルーナさんはまだ鍛錬を?」
ルーナ「もう暗くなり始めたからこれで終わりよ。そ、それとちょっと冷えるから……」ギュッ
カムイ「ルーナさん?」
ルーナ「い、いいでしょ。カムイ様の手が寒そうだから握っただけなんだから。その、他意はないんだからね!」
カムイ「はい、丁度寒さを感じてたのでとても助かりました」
ルーナ「でしょ、感謝しなさいよね」
カムイ「はい、それじゃ戻りましょうか?」
ルーナ「う、うん……。そのカムイ様」
カムイ「はい、なんですか?」
ルーナ「約束、破ったら怒るから。本気で、怒るからね!」
カムイ「それは怖いですね。わかりました、肝に銘じておきます。戦いが終わった、一緒にお買い物をしましょう」
ルーナ「うんうん、素直にそう言えばいいのよ。カムイ様」
ルーナ「……」
ルーナ「えへへ……」ギューッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・スサノオ長城『城壁上部通路』―
ヒュオオオオオッ
カムイ「……思ったよりも冷え込みますね。できれば皆さんにもゆっくり休んでもらいたいんですが……」
カムイ(見えない敵のことで皆さんが怯えている。この不安を払拭出来ればいいのですが……)
カムイ「白夜王都へ向かうまでの間は、怯えながら過ごすことになるかもしれません。精神的にも辛い待機時間になりそうですね」
テトテトテトッ
サクラ「あれ、カムイ姉様?」
カムイ「その声はサクラさん?」
サクラ「はい、どうしたんですか、もう辺りは真っ暗になってますよ?」
カムイ「それはこちらの台詞ですよ。サクラさんこそどうしたんですか? カザハナさんとツバキさんが一緒ではないんですか?」
サクラ「カザハナさんとツバキさんは今日の夜に当番らしいので」
カムイ「そうだったんですね。でしたらサクラさんはいったい今まで何を?」
サクラ「その、夕陽を見てました」
カムイ「夕陽、ですか?」
サクラ「はい、このスサノオ長城から見る夕陽はとってもきれいなんです。山の陰に隠れていくのが最後まで見えるんです。段々と夕陽が落ちていくと森の木とかも夕陽の光で照らされて、最後に山に消えるときがとってもまぶしくて、綺麗なんですよ」
カムイ「そうなんですね。サクラさんが言うんですからとってもきれいなんでしょうね」
サクラ「あ、ごめんなさい。その、カムイ姉様は……」
カムイ「いいんですよ。それにサクラさんが説明してる仕草はとても可愛らしく感じました。それにどんな風景なのか、今教えてくれたじゃないですか。私にはそれだけでも十分ですよ」
サクラ「そう言ってもらえると、うれしいんですけど。その少しだけ恥ずかしいです」
カムイ「……今回の戦いのこと、色々と申し訳ありませんでした」
サクラ「え?」
カムイ「サクラさんにその、人を……」
サクラ「……大丈夫ですよ。カムイ姉様」
カムイ「……ですが」
サクラ「確かにとっても怖かったです。今まで人の命を本当に奪うために矢を射ったことはなかったから。いつも、どこかで攻撃を加えることに仕方ないとか、そういう思いがありました。でも、それがそもそも間違ってたんです」
カムイ「サクラさん」
サクラ「本当はそんなことで濁しちゃいけないことなんです。人を殺める事っていうのは、仕方ないことで済ましていい事じゃなくて……。もっと、向き合わなくちゃいけないことだって……」
カムイ「……向き合うことですか」
サクラ「はい、人を殺すということを本当の意味で行った時、体中が震えました。とっても怖くなりました。今までの私が壊れてしまうような、そんな錯覚を覚えてしまうようで。怖がっちゃいけない、自分のしたことを受け止めなくちゃいけないって」
カムイ「怖がることが受け止めていないというわけではないと思いますよ。サクラさんはきっと、それをわかっているから怖く思ったんです」
サクラ「……」
カムイ「えっと、サクラさん?」
サクラ「ふふっ、カムイ姉様、アクア姉様と同じようなことを言ってます」
カムイ「すでにアクアさんがそんなことを言っていたんですか。その……」
サクラ「大丈夫です。それにカムイ姉様にもそう言ってもらえて、とっても自信が持てます。人が死ぬことを悲しんでもいいんだって……。怖い事とか、悲しいことになれなくてもいい。ずっと、ずっと、怖がっていてもいいって……」
カムイ「はい。サクラさんの優しさは、誰かのことを心配できるその姿勢だと思います。ずっと、ずっとその気持ちを温めて大事にしていってほしいです」
サクラ「はい……わかりました、カムイ姉様」
カムイ「ふふっ」
サクラ「そ、そのカムイ姉様……一ついいでしょうか?」
カムイ「はい、何でしょうか?」
サクラ「その、えっと、良ければその、お部屋まで一緒に来てもらってもいいですか?」
カムイ「別にかまいませんよ」
サクラ「そ、それじゃ行きましょう。その、ココも暗くなってきましたし、それに何かが出そうな気がして……」
カムイ「なにか、ですか?」
ビュオオオオオッ!!!
サクラ「きゃっ!」ガシッ ギュウッ
カムイ「サクラさん?」
サクラ「うう、いません。いません、お化けなんていません。うううっ」
カムイ「そういうことですか、わかりました。ちゃんとお部屋までお連れしますね」
サクラ「あ、あの。もう一つ、いいですか……」
カムイ「ふふっ、甘えん坊さんですね」
サクラ「そ、そんなこと……」
ビュオオオオオオッ!‼‼
サクラ「きゃあああっ!」ガクガクブルブル
カムイ「さ、サクラさん。本当に怖いんですね。わかりました、何でも聞きますよ。おねえちゃんに何でも言ってください」
サクラ「そ、その、今日はカザハナさんが帰ってこなくて、その兵舎の一室を頂いているんですけど、思ったよりも暗くて……今日、その一緒に寝てくれませんか?」
カムイ「……ふふっ」
サクラ「笑わないでくださいよ……」
カムイ「いいえ。わかりました、今日はこのままサクラさんのお部屋にお泊りしましょう。あ、布団は持ってくるべきでしょうか?」
サクラ「そ、その出来れば一緒の布団で…その/////」
カムイ「わかりました。今日は一緒に寝ましょうね」
サクラ「はい……。そのわがまま言ってごめんなさい、カムイ姉様」
カムイ「ふふっ、いいんですよ。なんだかおねえちゃんみたいで悪い気はしませんから」ナデナデ
サクラ「ありがとうございます、カムイ姉様……」
カムイ「……」
カムイ(ヒノカさん……。あなたは生きて、ちゃんと王都で待っててくれますよね。リョウマさんと一緒に私が来るのを……)
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―
ユキムラ「ほう、これは面白い結果になりましたね。王族を支持していたもののほとんどが未帰還とは、笑い話にもなりません。そうは思いませんか、リョウマ王子?」
リョウマ「……何が言いたい」
ユキムラ「言わなくてはわかりませんか? この責任をどう取るのかという話です」
リョウマ「責任か、未だに多く残っていた人員を王都に待機させたままにしたお前たちにも原因はあると思うが?」
上級武将A「王子、そのような喧嘩腰では困りますな。結果を見ればわかること、スサノオ長城での防衛戦はとても大きな傷跡となりました。それも王族であるヒノカ様がいながら、これでは我々も王族への態度を改めなくてはいけなくなります」
上級武将B「まったくです。しかも、増援として贈られた部隊は我々を打倒するための戦力を白夜王都へ帰還させるために向かわせたというのを、風の噂に聞きましたが……」
リョウマ「ほう、貴殿の耳には風の囁きも真実というわけか。なるほど、ならば今後のことはその風とやらに聞けばいいだろう。こんなところで俺の話を聞くよりは、いい噂を聞けるはずだ」
上級武将B「リョウマ様! ご自分の立場をわかっていないようですね!?」
リョウマ「立場をわきまえていないのは貴様らだ。ここは王である者がいるべき場所、そこに俺を呼び弾圧する。ここはそのようなことのために使う場所ではない。少しでも白夜の侍であるのなら、場所への配慮を考えてもらいたいものだな」
上級武将A「貴様、言わせておけば!」
ユキムラ「まぁまぁ、リョウマ王子の言うことも一理あります。そうですね、確かに弾圧するのはよくありません。ここで話すべきことはもっと単純な事。この大敗の結果をどう拭うかということです。多くの民はこの大敗で戦意を失いつつある、このままでは暗夜に王都は落とされてしまうことでしょう。暗夜に侵攻を許し、ココを奪われることこそ、代々続いてきた白夜王国にとって許されることのない出来事、それくらいはリョウマ王子も分かるでしょう?」
リョウマ「……御託はいい。ユキムラ、お前は俺に何を望んでいる」
ユキムラ「そうですね。リョウマ王子、先ほどの風の噂、残念ながら多くの者たちが噂ではないと思い始めているのです。そして王族には大敗という結果がある。それを拭うのに一番いい方法は何かわかっているでしょう?」
リョウマ「……っ」
ユキムラ「別にそれをしないというのならば結構です。あなたをもう一度独房に放り込み、残った王族にその責任を取ってもらうだけのこと……」
リョウマ「貴様!!!」
ユキムラ「おやおや、恐ろしい顔をされます。ですがリョウマ王子、これも白夜王国のため。すべてが一丸とならなければ、暗夜と戦うことは出来ません。もちろん、それはあなたの事も含まれています」
リョウマ「ユキムラ……お前はそれまでして――」
ユキムラ「話は以上です。独房の中でゆっくりお考え下さい、なにどちらを選んでも構いませんよ。なにせ――」
「流れる血はどちらかの妹の血であることに変わりはないんですから……」
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB
(イベントは起きていません)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ←NEW
C[5スレ目・822]
・ラズワルド×ピエリ←NEW
C[5スレ目・823]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338]
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今日はここまで
この疑いと大敗の結果を覆す方法は一つだけ……
今年の更新はここまでで、更新頻度が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。もう少し頻度を上げられるように頑張っていきます。
次の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>852と>>853
◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>854と>>855
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
次に続きます。
○カムイと話をする人物(支援A以外)の項目
レオンとカザハナはカムイとの支援がAになってるので、選択不可でお願いします。
すみませんでした。
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ブノワ×エルフィ
・ピエリ×ラズワルド
この中から一つ>>856
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
この中から一つ>>857
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
リンカ
ベルカ
サクラ
ニュクス
マークス
ルーナとカザハナ
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『宿場』―
サクラ「ふふっ、とってもおいしいです」
ニュクス「サクラ王女、何をしているの?」
サクラ「あ、ニュクスさん……えっと、これはその……」ササッ
ニュクス「そんな隠さないで。白夜の甘味のようだけど……」
サクラ「はい、その久しぶりに食べたくなってしまって……」
ニュクス「そう。でもそんなに甘いものをどんどん食べられるわね」
サクラ「とってもおいしいから、いっぱい食べられちゃいます。カザハナさんには食べ過ぎって怒られちゃいますけど」
ニュクス「そう、若いっていいわね。私はそんなに多くの量は食べられないわ」
サクラ「そうなんですか?」
ニュクス「正直、そういう甘いものよりも苦いものの方が好きなの。それに私みたいなのが食べていてもサクラ王女みたいに可愛いものじゃないわ」
サクラ「そんなことありません。誰が食べても甘いものはおいしくて顔が綻んじゃうんですから。ニュクスさんだって、可愛くなっちゃうはずです」
ニュクス「可愛くなっちゃうはずって……。サクラ王女、口元が白くなってる」
サクラ「え、あ、どうしましょう。えっと、布巾を………」
ニュクス「動かないで、今拭いてあげるから。これでよしと……」
サクラ「あ、ありがとうございます。ニュクスさんってすごいですね」
ニュクス「こんなこと、特に褒められることでもないと思うけど?」
サクラ「だって、私より年が下なのにこんなに気配りが出来ていますし、その甘いものより苦いものが好きっていうのも、なんだかすごく大人っぽいって言いますか」
ニュクス「……大人っぽい、私が……」
サクラ「ニュクスさん?」
ニュクス「ふふっ、大人っぽいね……」
サクラ(どうしたちゃったんでしょうか……。さっきまで大人な感じがしたんですけど。今はなんていうか見た目の通りと言いますか……)
ニュクス「サクラ王女、その、もう一度どこが大人っぽかったのか、言ってもらえないかしら?」
サクラ「は、はい……。えっとですね――」
【サクラとニュクスの支援がCになりました】
◆◇◆◇◆◇
ー白夜・イズモ公国『宿場』―
ルーナ「ど、どう?」
カザハナ「へぇ、暗夜の人でも浴衣って似合うのかわからなかったけど、結構似合ってるわね」
ルーナ「ふん、だから言ったでしょ!」
カザハナ「でもすごね、この浴衣を一から手作りしたなんて、ルーナって器用なんだね」
ルーナ「こんなの朝飯前よ。まぁ、あたしの完全オリジナルってわけじゃないんだけどね」
カザハナ「作れるだけでもすごいと思うけど? うわぁ、この花とってもきれいね。すごく丹念に縫われてて、ふふっ、ルーナ、ここ一番頑張ったでしょ?」
ルーナ「な、なんでわかるわけ!?」
カザハナ「だって、この花だけとっても豪勢だし、なんていうのかな気持ちが伝わってくるっていうのかな?」
ルーナ「物を見て気持ちが伝わってくるね……。そうかも、これを作ってるとき、どうにかして形を再現したいって躍起になってた気がする」
カザハナ「ふーん、でもどうして?」
ルーナ「無くした浴衣だけど、故郷から唯一持ってきた物だったの。肌身離さずってわけじゃないけど、そういう物って一つは持っていきたくなるでしょ?」
カザハナ「そうだったんだ。あたし、ルーナはそういうの気にしない人かと思ってたけど、違ったんだね」
ルーナ「なによそれ、あたしそんな薄情じゃないんだけど!?」
カザハナ「あはは、ごめん」
ルーナ「まったくそれじゃもう着替えていい? 久しぶりに着たけど、とくに何かするわけでもないし」
カザハナ「えー、まだ来てようよ。他のみんなも呼んで来るから」
ルーナ「嫌よ、動きづらいし、あたしの浴衣姿は安くないの。ふふん、もっと見たかったら、何か催し物でも考えてから出直してきなさい」
カザハナ「むー」
【ルーナとカザハナの支援がBになりました】
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『裏路地』―
ラズワルド「ふぅ、ようやく終わったよ。ああ、もう、こんな時に何で賊が現れるのかなぁ」
ピエリ「あ、ラズワルドなの。こっちはみんな殺しちゃったの! 見て見て、ピエリとってもきれいになってるの」
ラズワルド「うん、そうだね。今回もとっても派手になってるね……。ってなんでこっちに来るの!?」
ピエリ「派手は綺麗ってことなの。ピエリうれしいからラズワルドに抱き着きたかったの!」
ラズワルド「それはうれしいけど、今その姿では止めて。ただでさえ、ピエリと一緒に戦ってると血が飛び散って服への出費が酷いんだ。この戦闘服、まだ新調したばっかりなんだよ?」
ピエリ「ひぐっ、ラズワルド。ピエリにハグされるの嫌なの? ピエリが嫌いだからハグハグさせてくれないの?」
ラズワルド「いや、ピエリの事は嫌いじゃないよ」
ピエリ「ほんとぉ? 本当にピエリのこと嫌いじゃないの?」
ラズワルド「本当だよ。だから機嫌を直してくれるとうれしいんだけど」
ピエリ「じゃあ、ハグハグしてほしいの」
ラズワルド「はぁ……そうなるよね。だめだよ、さすがに僕まで血まみれだとマークス様に色々と、その、えっと、うん、あれだよ、あれ!」
ピエリ「ピエリ、難しいことはわからないの。さぁ、ラズワルド、ピエリとハグハグするの。ピエリは準備できてるのよ」バッ
ラズワルド「えーっと……僕からしなくちゃいけない?」
ピエリ「そうなの。ハグハグしてくれなかったらピエリ、マークス様に今週のラズワルドの予定をぜーんぶ教えちゃうのよ」
ラズワルド「な、そこまでしてハグハグされたいのかい!?」
ピエリ「されたいの!」
ラズワルド「はぁ、わかったよ。ピエリ、ちゃんと約束は守ってよね」
ピエリ「任せてなの! えへへ、ラズワルドだーい好きなの」
ラズワルド「はぁ、もうピエリのその言葉にも馴れちゃったなぁ……」ダキッ ベチャ
【ラズワルドとピエリの支援がBになりました】
今日は支援だけで
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『暗夜軍野営地』―
アクア「はぁ、カムイは一体どこに行ったのかしら?」
アクア(マークスに頼まれて起こしに来たけど、部屋はもぬけの空。見た限り、昨日の夜からいなかったように思えるけど……)
アクア「仕方ないわ。まずはサクラを起こして、それから探しましょう」
アクア(カムイは大丈夫かしら。昨日は問題なかったけど、リョウマ達が処刑される可能性に動揺してるかもしれない……。そういうことを悩んでいたら……)
アクア「……」
アクア(カムイは一人で背負い込む癖がある。カムイもようやく一人で戦っているんじゃないって自覚を持ち始めたけど、そう簡単に変われるわけがない。私たちがちゃんと支えてあげないと……)
アクア(だけど……。出来れば私が支えて行きたかったわね……。他の誰でもなくて、私だけで……)
アクア「……だめね、こんなことを考えるなんて。しっかりしなさい、私」
アクア(確かサクラの部屋はここだったわね……。手早く済ませて、一緒に探すのを手伝ってもらいましょう)
アクア「サクラ、入るわよ。悪いのだけどマークスから招集が掛かっているわ。あと、よかったらカムイを一緒に探してもら――」
カムイ「あ、その声はアクアさん? おはようございます」
アクア「……」
アクア(なんでカムイがサクラの部屋にいるの……それと)ジーッ
カムイ「?」ナデナデ
サクラ「んっ……すぅ、すぅ……カムイ姉様ぁ……」ギューッ
アクア(なぜ、サクラを膝枕して頭を撫でているわけ?)
カムイ「どうかしましたか、まだ朝も早い時間だと思いますけど」
アクア「そんなに早くないわ。」
カムイ「そうでしたか、すみません時間に関しては曖昧なので……。その、私何かアクアさんの機嫌を損ねてしまうようなことをしてしまったんでしょうか?」
アクア「なぜそう思うの?」
カムイ「その、なんだかツンツンしてると言いますか、トゲトゲしいと言いますか。語尾がとても重たいと言いますか……」
アクア「気の所為よ」
カムイ「でも……」
アクア「き・の・せ・い、そうでしょう、カムイ?」
カムイ「は、はい…」
アクア「それでカムイ、なんで朝からサクラの部屋にいるの? 昨日は部屋に戻っていないようだったけど」
カムイ「昨日、上でサクラさんにお会いして、そこで色々ありまして」
アクア「色々ね……」
カムイ「はい。サクラさん、人を殺めてしまったことを悩んでいました。そして、私はサクラさんに人殺しをさせてしまったんだと、わかってしまって……」
アクア「それが戦いという物よ。それに彼らの狙いはわたしたちにとって、とてもじゃないけど受け入れられるものではなかったわ」
カムイ「はい。だけど、どんな理由があったとしても、私たちは人を殺めていることに変わりはありません。今行っていることが、その犠牲に足るものなのか。答えは見つからないままです」
アクア「どんなに悩んでも、今その答えを得ることは出来ないと思う。だけど、いつかきっと見つかるはずよ。だって、それがあなたの戦いでしょう?」
カムイ「……そうですね。ふふっ、アクアさんの前だとどうも弱みが出てしまいます、精進しないといけませんね」
アクア「別に私はそれで構わないのだけど……」
カムイ「?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―スサノオ長城『暗夜野営地・会議天幕』―
マークス「そうか、アクアはサクラ王女と一緒に来るという事か」
カムイ「はい。まだ私とマークス兄さんしかいない様ですけど、他の皆さんは?」
マークス「ああ、レオンとカミラには資料の準備を任せている。エリーゼは……おそらく寝坊しているな」
カムイ「ふふっ、では私が起こしに行きますね」
マークス「いや、私が向かおう。お前はここで他の者が来るのを待っていてくれ。さすがに誰もいないとすれ違いも起きやすい」
カムイ「それもそうですね。わかりました、ここは任せてください」
マークス「よろしく頼んだぞ」タタタタタッ
カムイ「……」
カムイ「……」
カムイ「……はぁ、こういった準備作業ではあまり役に立てないのが悲しいところですね。誰かが戻ってくるまでお留守番ですか……」
バサッ バサッ
カムイ「?」
ベルカ「……カムイ様だけ?」
カムイ「その声、ベルカさんですか?」
ベルカ「おはよう、カムイ様」
カムイ「はい、おはようございます。もしかして、カミラ姉さんに用事ですか?」
ベルカ「ええ、ここ周辺の調査が終わったからその報告をしに来たのだけど……」
カムイ「そうなんですね。カミラ姉さんはレオンさんの手伝いをしているそうです。少しすれば戻ってくると思いますけど」
ベルカ「そう、なら待つわ」
カムイ「はい。良かったです、一人でいるのは何かと寂しいので。それにベルカさんとはもう一度お話をしたいと思ってましたから」
ベルカ「……私は別に話すことはないわ。周辺のことで聞きたいことがあるなら答えるけど…」
カムイ「いいえ、それはこの後の会議で聞くことにします。すみません、色々と嫌な仕事を頼んでしまう形になってしまって」
ベルカ「前にも言った。命令や仕事は完璧にこなす、その内容に文句を言うつもりはないわ」
カムイ「でも、とても危険なことを任せているのですから……。心配になります」
ベルカ「……そんな心配は必要ない。そんな簡単に死ぬつもりはないし、カミラ様から最後の任務を受けたわけでもないから。私にとってカミラ様が戦えと言えば戦う、もういいと言われればそれで終わる、ただそれだけのことだから」
カムイ「だとしても、私はベルカさんの事が心配です。ベルカさん、とっても可愛い声で鳴いてくれますから、もしも死んでしまったらあの声が聞けなくなってしまいますし」
ベルカ「……あなた、まだ懲りてないのね。言ったはずよ、変なコトをしたらその手を……」
カムイ「そう言われましても、やっぱり私にとっては触れ合うことが一種のコミュニケーションです。ベルカさんのことをもっと詳しく知りたいと思ったら、やはり触るのが一番だと思うんです」
ベルカ「私はあなたに忠誠を誓っているわけじゃない、そんな相手とコミュニケーションを取る必要があるとは思えないけど」
カムイ「私はあなたともっと親しくなりたいですし、できれば信頼されたいと思っています」
ベルカ「あなた、やっぱり変わっているわ。私から見たらとてつもなく、おかしな人間よ」
カムイ「はい、私もそう思います。だから私とベルカさんの生きる世界は同じです。だって、互いに変わっているって思えるのですから、こうして同じ気持ちを抱いている以上、私とベルカさんの生きる世界が違うなんてことはありませんよ」
ベルカ「……そういうことはわからないわ。けど、カムイ様がとてもおかしな人だっていう事だけは、確かなことだと思える。本当に、おかしい人ね」
カムイ「これでも結構まじめに考えているんですよ、どうやったらベルカさんを私の膝上に誘導できるのかとか……」
ベルカ「残念だけど、それが実現することはないわ」
カムイ「ふふっ、それを今打ち砕いてあげましょう」ポンポン
ベルカ「……それは、なに?」
カムイ「さぁ、ベルカさん。今私の膝上は空いています!」ポンポンポン
ベルカ「……座らないわ」
カムイ「まぁ、そういわずに」ポンポン
ベルカ「……」
カムイ「……おかしいですね。エリーゼさんやサクラさんはこうすると乗ってくれるんですが……」
ベルカ「私は二人とは違うから、いくらやっても座ることはないわ」
カムイ「そうですか。私の膝も魅力が足りないみたいです。もっと精進しましょう」
ベルカ「……何を訓練するのよ?」
ガササッ
レオン「姉さん、もう来てたんだね」
カムイ「おはようございます、レオンさん。それにカミラ姉さんも」ポンポン
カミラ「挨拶を先越されちゃったわね、おはようカムイ。それにベルカもいるのね。頼んでいた資料を持ってきてくれたのかしら?」
ベルカ「ええ、カミラ様これを」
カミラ「ありがとう。ふふっ、いい子よ、ベルカ」ナデナデ
ベルカ「んっ、カミラ様……止めて」
カミラ「ふふっ、今日も可愛いわ。ところでカムイ、さっきから膝をポンポンしてるけど、どうしたの?」
カムイ「ベルカさんに私の膝上は空いてますと伝えているんですが、座ってもらえなくて」ポンポン
カミラ「あら、勿体ないわね。私がお邪魔してもいいかしら?」
レオン「今はよしてよ。マークス兄さんに気難しい顔をさせるのはあれだからさ」
カミラ「残念。それじゃ、今度の機会にしましょう。ベルカは次の指示があるまでゆっくり休んでいて」
ベルカ「わかったわ。カムイ様、私はこれで」
カムイ「はい。私はいつでもお待ちしてますからね、ベルカさん」
ベルカ「……そう、気長に待てばいいと思うわ」テトテトテトッ
カミラ「ふふっ、ベルカにまでちょっかいを出して、カムイはいけない子ね」
カムイ「いけない子って、私は純粋な気持ちでお誘いしているだけなんですよ?」
レオン「純粋ね。純粋な誘いだったらあんなふうに振舞わないとは思うけど?」
カムイ「ただ私はベルカさんに可愛い声を出してもらいたいだけで……」
レオン「とても不純な動機で言葉に困るかな」
カミラ「とりあえず、準備に入りましょう。みんなが集まったらすぐに話を始められるように」
カムイ「はい」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
マークス「以上が偵察隊のまとめたここ周辺の状況になる。多くの場所に戦闘の痕跡などが見受けられたが、死体も生存者もその姿を確認できなかったらしい」
カムイ「やはり、もうこの周囲には……」
カミラ「ベルカ達も懸命に探索してくれたみたいだけど。現在行方不明の人がおそらく見つかることは、もう無さそうね」
アクア「ええ、おそらくはもう……」
カムイ「ええ、なら私たちはこれ以上の犠牲を出さないために動くだけです。マークス兄さん、本題というのは……」
マークス「ああ、後続への増援要請はおそらく今日の夜には届く。その点を踏まえて、白夜王都攻略の手筈を整える。それが本題となるな」
カムイ「わかりました。アクアさん、申し訳ないのですが、その……」
アクア「任せて、わからないところはちゃんと教えるから」
レオン「それじゃ、まずはこれからだね。よいしょっと」バサァ
エリーゼ「わわっ、すっごく大きい紙……これってなに?」
レオン「ああ、このスサノオ長城にあった白夜王都の地図だよ。生き残った白夜の兵士に聞けるだけ話を聞いて、現在の王都の状態を書き写してある。といっても、王都自体に大きな変化はないってところかな」
カミラ「大きなものだからどんなものかと思ったけど、こんなものを準備していたのね」
サクラ「すごいです。流石はレオンさんですね」
レオン「まぁね。さてと、ここからが本題なんだけど。僕は正直、王都の構造的な部分に脅威を持ってない。王都自体はかなりシンプルに作られてて、守るのには向いていない。かなり広々としているし、暗夜みたいに谷や崖を利用して作っているわけでもないみたいだからね」
マークス「ああ、王都まで敵が来ることが無かったからかもしれないが、外敵からの防衛という意味ではあまり強いとは言えない。代わりに王城であるシラサギ城の防備は万全を喫しているだろう……」
レオン「ああ。話を聞いた限りだと、この数日で王都全体に迎撃の陣を敷くのは難しい。少なくとも設備を整えるのは不可能だよ」
エリーゼ「じゃあ、何が脅威になるの? やっぱり、敵の兵隊さん?」
レオン「そうなるけど、僕が脅威に感じているのは敵兵の中でも一番問題のある相手だよ。多くの兵が死んだ今、まだ兵士は多くいると見せるために駆り出される人たちがいてもおかしくない」
カミラ「それって……」
サクラ「王都に住んでいる民の皆さんがそれに巻き込まれる。レオンさんはそう考えているんですよね」
レオン「……ああ。僕たちにとって一番の脅威はそれを出されることだ。そして、ユキムラはこの手を確実に使ってくる」
カミラ「なりふり構っていられない状況という事ね……」
レオン「ああ、スサノオ長城での惨敗でリョウマ王子やヒノカ王女への責任追及が行われているなら、残った王族派はそれを覆すためにこの戦いに加わるしかない。戦力はユキムラ達、強行派のほうが高い、もう彼らに戦いを回避する術はないと思う」
マークス「出来る事ならユキムラたち、強行派だけを一網打尽にしたい。しかし奴らの事だ、王城に最後まで籠城するつもりだろう。そして戦っているところをテンジン砦と同じような手口で殲滅するつもりかもしれない。奴らが前線に武装した市民を出してきたのなら、その可能性も考慮する必要がある」
カムイ「武装した市民を抑える役割と、シラサギ城へ攻撃を仕掛ける部隊。二つの部隊が必要ということですが……」
マークス「正直、そのような戦力を用意することは難しいだろう。形としては少数先鋭でシラサギ城を落とす以外に方法はないだろう」
レオン「そういうこと。僕としてはその方がまだ勝算はあるし、なにより白夜の民の犠牲を抑えられると思っている。リョウマ王子とヒノカ王女、この二人を助け出して王族派と一時的な協力関係を築ければ、状況は覆る可能性もある」
カムイ「レオンさんはそこまで考えているんですね」
レオン「当たり前だよ。サクラ王女やカザハナ、それにツバキをちゃんと白夜に返してあげたいし、なにより僕たちは白夜を滅ぼすために戦ってるわけじゃない。なら、白夜と暗夜にとって意味のある結末を望みたい」
サクラ「レオンさん……」
レオン「それに、もうこの戦争は何処の陣営も人員と規模が臨界点に達してる。旧暗夜も僕たちも、そして白夜も戦いを継続できる状態にない。もう戦争を続ける状況では無くなっているんだ」
マークス「……だが、あの男……、ユキムラは違うだろう。あいつにとっての戦争は続ける価値のあるものになっている」
カムイ「そうですね、私を殺すことが唯一、ユキムラさんにとっての戦争の終わりなのですから」
サクラ「……ユキムラさんは、どうしてこのようなことを続けるんでしょうか……」
カムイ「いずれ、本当の意味が分かるときが来ます。それがどんな理由であっても、負けるわけにはいきません」
エリーゼ「うん、あたしも頑張って戦うよ!」
カミラ「ふふっ、元気いっぱいね。それでマークスお兄様、どう動くことにするの?」
マークス「全ての物事が順調に進んでいると仮定して動こう。白夜兵の捕虜と負傷者を任せられるだけの先行部隊が来る予定だ。その先行部隊の到着を持って、我々は白夜王都へと侵攻する。各自、準備に取り掛かるのだ!」
カムイ「……」
カムイ(ようやく私は足を踏み入れるんですね。白夜王都、私の生まれ故郷……私が壊してしまった場所)
カムイ(かつて優しく暖かった、あの国に……)
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『橋を越えた先の平原』―
カムイ「……」
ザーーーーー
カムイ「ん、風が強いですね……。しかし、誰もいない草原というのはなんとももの悲しく思えてきます」
リンカ「あれ、カムイ?」バサバサッ
カムイ「リンカさんですか。 あれ、えっと……どちらにいるんですか?」
リンカ「上だよ、上。戦闘が終わったって言っても、こんなところに一人でいるのは危険だぞ」バサバサ
カムイ「そう簡単にやられることはありませんよ。それに、ちゃんとリンカさんが見回りをしてくれてるみたいですから」
リンカ「いや、見回りは終わってる。こいつを自由に飛ばしてやりたかっただけで、たまたま通りかかっただけだよ」
カムイ「そうですか。なら、偶然にも私はリンカさんに見つかってしまったというわけですね」
スタッ
リンカ「そうなるな。まぁ危険なのは確かだ、あの姿の見えない気配だけの奴らがどこにいるかもわからない以上、用心した方がいい」
カムイ「思ったよりもリンカさん、私のことを心配してくれているんですね」
リンカ「途中からこの戦いに参加した奴らはマークスの言葉に乗った奴らだけど。あたしたちはあんたの言葉を信じてここまで来たんだ。この戦争で白夜から切り捨てられたあたしを受け入れてくれたあんただからこそ、心配するんだよ」
カムイ「そうですか。ふふっ、なんといいますか。本当に私たちは不思議な縁で繋がっていますね。元は捕虜として、次には助けた恩人として、次には敵として、そして最後には仲間になる。こんなに大きな世界で、こうやって繋がりあえたことは、ある意味奇跡ともいえるのかもしれません」
リンカ「ああ、だからこそ。あたしはこの戦いの終わりは少なくとも悪い物で終わらせたくはない」
カムイ「……そう言ってもらえるのはとてもうれしいです」
リンカ「まぁ、戦っている以上。勝って終わりにはしたいだけさ。戦いっていうのは勝ってこそ意味がある。あたしはそう考えているからな」
カムイ「勝ってこそですか。極論ですけど、確かにその通りです」
リンカ「まぁ、カムイには負けっぱなしだ」
カムイ「そうですね。ふふっ、リンカさんは私にとってある意味初めての臣下でしたから。スズカゼさんと一緒にお父様の前で戦ったのが懐かしいですね」
リンカ「言うな。負けた時の話は聞いても面白くない」
カムイ「ふふっ、いじけているんですか?」
リンカ「いじけているわけではない! だた、面白くないだけだ」
カムイ「そうですか。でも、私はあの時、とても楽しかったですよ。私の今までの修行の成果を試すことが出来たんですから」
リンカ「あたしとスズカゼはお試し相手という事か……。ますます気に入らないな」
カムイ「では、もう一度手合わせしてみますか?」
リンカ「ほう、前までのあたしが相手ではないんだぞ?」
カムイ「そうですね。ここまで一緒に戦ってきたリンカさんが相手となると、苦戦しそうです」
リンカ「ふっ、苦戦で済めばいいがな」
カムイ「では、手合わせしましょうか。今のリンカさんの本気、私が受け止めてみせます」
リンカ「いいだろう。あたしが今持っている本気を全てぶつけてやる! あたしが勝ったら、あの時の試合結果は無かったことにしてもらうとしよう」
カムイ「過去を無かったことにですか。中々に難しいことを言いますね」
リンカ「どうなんだ。受けるのか受けないのか」
カムイ「いいですよ、その条件で行きましょう。ところで、私が勝った場合はどうなんですか?」
リンカ「万が一にもないなこというのか。だが、もしもそうなったら同じように何かあたしに命令すればいいさ」
カムイ「わかりました。では、私が勝ったら―――」
カムイ「リンカさんの顔を、いっぱい触らせてもらいますね。このところ、リンカさんの感――いえ、表情のリニューアルをしないといけないので」
リンカ「ちょ、ちょっとまて! それは――」
カムイ「はい、これで成立です。それじゃいきますよ、リンカさん」ダッ
リンカ「くっ、いやここで勝てばいいだけの事だ。いくぞ、カムイ!!!」ダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「ふふふっ」
リンカ「っ、くっ、うううっ、ふああっ/////」
カムイ「はぁ、やっぱりリンカさんの鳴き声、とってもいいです。頬の筋肉とかピクピクしていて、とても触り甲斐があります」サワサワスリスリ
リンカ「つ、次は、次は必ず勝ってみせる、っぅぅぅう、カムイ、次は絶対に――。っんあ/////」ビクンッ
カムイ「はい、私はいつでもお待ちしてますよ――」シュッシュ
「リンカさん。ふふふっ……」
休息時間2 終わり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB→B+
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB→B+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ラズワルド×ピエリ
C[5スレ目・823] B[5スレ目・862]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
C[5スレ目・822]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
・サクラ×ニュクス
C[5スレ目・860]←NEW
今日はここまで
戦いが始まる僅かな合間は、誰にとっても大切で暖かい時間であってほしい。
FE新作の情報がそろそろ出てくるのかな……。次回作、召喚士の持ってるのが形的に銃だから、もしかして銃あたりが出てくるのかもと期待している。
次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>881
◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>882と>>883
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
次のレスに続きます
◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
・ラズワルド×ピエリ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ
この中から一つ>>884
(会話しているキャラクターと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×カザハナ
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・サクラ×ニュクス
この中から一つ>>885
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
ベルカ
マークス
リンカ
ラズピエリ
レオンエルフィ
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『会議室』―
マークス「む、来てくれたか、リンカ」
リンカ「あたしに暗夜王国の王子がいったい何の用なんだ?」
マークス「呼び出したのは他でもない。お前は白夜王国の人間ではあるが、馴れあいを好まない部族の出だと聞いた。そこで一つ、お前に訪ねたいことがあった」
リンカ「そうか……。それでその訪ねたいことっていうのはなんだ?」
マークス「ああ、お前の部族がどのような戦い方を行っているのか、それが気になったのだ」
リンカ「部族としての戦い方、そんなことを知ってどうする?」
マークス「活かせるものは活かしたいというだけの事だ。戦いの基本は集団戦術にあるが、リンカの戦い方は一人で抜きんでることが多いと聞いている。並みの者ではそのようなことをして生き残れるはずもないが、お前はここまで生き残っている」
リンカ「なるほどな。だけど何も話すことはない」
リンカ(別に話すことはないからな。あれはあたしが好きに戦っているだけに過ぎない、マークスもよくよく考えれば理解できるはずだからな)
マークス「そうか、そう簡単に話せることはないということだな。すまなかった、お前の気持ちを理解していたなかったようだ」
リンカ「え? 何を言っているんだ?」
マークス「いいんだ。だが、話す気になったのなら言ってほしい。その時を私はゆっくり待つことにしよう」タッ タッ タッ
リンカ「いや、だから、あたしの戦い方は……。くっ、勝手に決めつけて帰っていった。あたしは、どうすればいいんだ!?」
【マークスとリンカの支援がCになりました】
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『露店通り』―
サクラ「あ、ニュクスさん」
ニュクス「あら、サクラ王女。貴方も買い物に?」
サクラ「は、はい。ニュクスさんもですか?」
ニュクス「ええ、珈琲を切らしてしまったから、代わりになるものをと思っているのだけど」
サクラ「珈琲、初めて聞きます」
ニュクス「飲んだことはないの?」
サクラ「はい、飲み物なんですか?」
ニュクス「ええ、苦いものだから甘くする人もいるけど、私はブラックのままが好みなのよ。サクラ王女は甘いものに目がないみたいだから、あまり向かないものかもしれないわね」
サクラ「そ、そうかもしれません。やっぱり、ニュクスさんはすごいと思います」
ニュクス「ふふっ、ありがとう。だけど、ここにも出回ってはいないみたい。戦争中っていうこともあるから仕方ないことね」
サクラ「……あ、でしたらこれはどうですか? はい」
ニュクス「これは、白夜の紅茶?」
サクラ「暗夜にあった紅茶とは違いますけど、白夜ではよく飲まれているもので、お茶って言います」
ニュクス「オチャ?」
サクラ「はい、これは煎茶という種類なんですよ。甘い和菓子にとっても合うんです」
ニュクス「うれしいけど、別に紅茶が欲しいわけじゃないの。私が欲しいのは……」
サクラ「苦いものですよね。煎茶は程良く苦みがありますから、そのニュクスさんがよろしければ……」
ニュクス「……そうね。サクラ王女が勧めてくれたのだから、いただくことにするわ」
サクラ「はい。ご一緒に甘いものはどうですか?」
ニュクス「そのお茶だけで十分よ、いただくわね」ズズズッ
サクラ「……あの、どうですか?」
ニュクス「珈琲とは違うタイプの苦みね。でも後味はすっきりしてて……悪くないものね」
サクラ「すごいです、ニュクスさんは。私だとお供に甘いものが欲しくなっちゃうのに。私も大人っぽくなりたいです」
ニュクス「別にそんな急ぐことじゃないわ。ゆっくりと大人になっていけばいい、貴女はちゃんと成長できるんだから」
サクラ「ニュクスさん?」
ニュクス「ごめんなさい、なんでもないわ。それより、甘いものを買うんでしょう? 一緒に見てあげるわね」
サクラ「は、はい……」
【サクラとニュクスの支援がBになりました】
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『廊下』―
ラズワルド「はぁ、マークス様に呼び出された。また何かあるのかな……」
ピエリ「あ、ラズワルドなの! またマークス様に呼ばれちゃったの?」
ラズワルド「うん、そうなんだよね」
ピエリ「またラズワルド怒られちゃうの?」
ラズワルド「うん、そうかもしれないね。はぁ、呼び出されるって基本そういう事ばっかりだから、気が滅入っちゃうなぁ」
ピエリ「ラズワルド、落ち込んでるの?」
ラズワルド「少しだけね」
ピエリ「そうなの、ならラズワルドじっとしてるの! えーいなの!」ダキッ ナデナデ
ラズワルド「わっ、ちょ、ピエリ! な、何してるわけ!?//////」
ピエリ「何ってハグハグしてナデナデしてるの。ラズワルドが頑張ってる事、ピエリちゃんと知ってるのよ」
ラズワルド「ピエリ……」
ピエリ「えへへ、それにピエリとラズワルドはマークス様の臣下なの。ラズワルドが困ってたら、ピエリが支えてあげるの」
ラズワルド「こんな僕の事でもピエリは心配してくれるんだね」
ピエリ「当たり前なの。だって、ラズワルドはピエリの仲間で相棒なのよ」
ラズワルド「……相棒?」
ピエリ「そうなの。だからこうやって一緒に支え合えって、マークス様が言ってたのよ」
ラズワルド「……うん、確かにそうだね。ねぇ、ピエリ」
ピエリ「なの?」
ラズワルド「その、なんだか改まって言うのも何なんだけど……。こういう風に呼び出されちゃう僕だけど、これもからも相棒として支えてくれるかな?」
ピエリ「もちろんなの! ラズワルド、辛くなったら言ってなの、ハグハグして頭をナデナデしてあげるのよ」
ラズワルド「……それじゃ、僕はピエリにハグハグしてって言われたら、ちゃんと抱きしめてあげないといけないってことだね。この前みたいにさ」
ピエリ「ラズワルド、これからもピエリがいっぱい頑張れたらハグハグしてくれるの?」
ラズワルド「どうせ、しないって言ったら泣き出すでしょ?」
ピエリ「なの!」
ラズワルド「やっぱり……。まぁ、そういうわけだからこれからもよろしくね、ピエリ」
ピエリ「うん、ピエリがんばちゃうの!」
【ラズワルドとピエリの支援がAになりました】
今日は支援だけで
リンカは炎の部族の一人。しかし部族は炎の紋章とは何も関わりがない。なぜなのか……
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『カムイの天幕』―
カムイ「……」
カムイ「………」
カムイ「…………」
ムクリッ
カムイ「眠れませんね……。休めるときに休まないといけないというのに、こんなのはよくありません」
カムイ(……かといってここにいても眠れる気はしませんし、少しだけ外に出て気分転換しましょう)ガサッ
バサッ バサッ
タッ タッ タッ
リンリンリンリン……
カムイ「これは虫の鳴き声でしょうか。ふふっ、暗夜も白夜も、夜に聞こえる音はどこか似ていますね」
暗夜兵「おや、カムイ様。如何されましたか?」
カムイ「あ、すみません。その寝付けなかったので、少しだけ歩こうと思っていたのですが」
暗夜兵「そうでしたか。現在、特に異常はありません。しかし、あまり遠くへと行かないようにお願いいたします」
カムイ「はい。引き続き、警備をお願いしますね」
暗夜兵「はっ、お任せください。応援到着までの間は、我々が皆様をお守りいたしますので」
カムイ「はい、ありがとうございます。でも、無理はしないでくださいね」
暗夜兵「わかっております。では、失礼いたします!」タタタタタタッ
カムイ「あまり、遠くには行かないよう言われましたから、橋や森の方へと行くことは出来ませんね。ただでさえ、敵の襲撃があるかもしれない状態ですからね。さて、どうしたものでしょう?」
ベルカ「それなら、寝床に戻って休んだらどう?」
カムイ「わっ、ベルカさん!? もう、気配を消して近づいてこないでください。流石にびっくりしてしまうじゃないですか」
ベルカ「気が緩んでいるだけよ、私の所為じゃないわ」
カムイ「気配を消して近づく必要はないと思うんですけど。ベルカさんも巡回ですか?」
ベルカ「ええ、今日の夜から朝に掛けて応援が到着する見込みだから、竜騎兵隊も定位置で待機するように命令が出ているわ。上空からなら、森から向かってくる先行部隊の発見も容易だし、確認に行くのも速いわ」
カムイ「なるほど、そういうことだったのですね。さすがはカミラ姉さんの臣下さんです」
ベルカ「関係ない。言われた通りに仕事をこなす、それが私のするべきこと、ただそれだけ。そういうことだから、カムイ様は戻って休んだ方がいいわ」
カムイ「そうしたいのは山々なんですけど、どうも寝付け無いようで。少し気晴らしに出てきたところなんです」
ベルカ「そう……」
カムイ「どうやら、ベルカさんもまだ巡回の時間ではないみたいですね」
ベルカ「どうしてそう思うの?」
カムイ「強いて言うなら雰囲気でしょうか。なんだか柔らかい感じがして、まだ任務に入っていないって思ったんですよ
ベルカ「……何か不思議な術を使っているみたいね」
カムイ「そんなもの使ってませんよ。目が見えない分、雰囲気を読み取るのに自信があるだけの事です」
ベルカ「私には理解できない。相手がどう動いてくるのかはそれなりにわかっているつもりだけど、そう言った他人の心情は役に立たないから……」
カムイ「今後、興味を持ってみるのもいいですよ。それよりも、まだ時間が余っているなら、少しご一緒しませんか?」
ベルカ「一緒にいる意味ても、特に何もないと思うけど?」
カムイ「一人で気晴らしをするのは寂しいですし、それにベルカさんとはまだまだ色々と話したいことがありますから」
ベルカ「話すだけね……。そうは思えないわ」
カムイ「警戒してます?」
ベルカ「あまりあなたの事を信用していないから」
カムイ「おかしいですね。ここまで色々と話をして、私に対しての不信感などを丁寧に拭ってきたつもりなんですけど、何処がいけなかったんでしょうか」
ベルカ「……はぁ、あなたって本当に戦っている時と、今では人が違うわ」
カムイ「そうかもしれませんね。いえ、そうしないといけなくなったといったほうがいいかもしれません。前のまだ何も知らない私でしたら、こんなことを口にさえしなかったでしょう」
ベルカ「……それは弱くなったってこと?」
カムイ「いいえ、私は元から弱かったんです。弱くて、でも自分の弱い場所に気づいてさえもいなかった。それくらい、前の私には何もなかった。毎日起きて、マークス兄さんやレオンさん、カミラ姉さんにエリーゼさんに見守られながら剣技を磨いて、お土産やお話をいっぱい聞いて、そして一日を終えることの繰り返し。多分、あの頃の私には世界がそれだけで、自分が関わる事の意味を理解していなかったんです」
ベルカ「……」
カムイ「私は何かを失ってようやくそのことに気づく、そんな愚かな人間です。戦闘と今のような時に人が違うように見えるのは……、二つの現実を混同できないからだと思います」
ベルカ「その言い方だと、生きている世界が二つある様にも聞こえるわ」
カムイ「実際そうでしょう。前のようにどちらの世界にいても大丈夫だった私はいなくなってしまいました。どこかで仕方なかったという区切りを付けないと、私は今いる私に帰ってこれない。それがここまで歩んで来た私の本質でしょう、私はこうして皆さんを率いていますが、実際私にその立場は務まっていませんよ。マークス兄さんのような方こそが、人々を率いて導く者だと思っていますから」
ベルカ「なら、どうして戦いを続ける? 戦わなければ、区切りをつける必要もないと私は思う」
カムイ「ベルカさんは手厳しいですね」
ベルカ「私が生きてきた世界はそういうものだった。暗殺もそう、任務が終わった時に死んでしまう人間もいた。どんなに辛いことでもしなければ生き残れなかったから」
カムイ「……」
ベルカ「でも、カムイ様は戦いを止めてもいい。辛いことならやめても構わない。私はそれを責めたりはしないし、他の誰も責めることは出来ないはずよ」
カムイ「ふふっ、ベルカさんは思ったよりも優しい方なんですね。そんな風に言ってくれるなんて……」
ベルカ「逃げることが出来るなら戦いから身を引くべき、そういうことを言っているの」
カムイ「言い直されちゃいましたね。だけど、それが一番楽になれる事は知っています。でも、私はそれを選ぶことが出来ませんでした。あんなふうに、私の事を叱ってくれた人がいたら、逃げるわけにはいきませんからね」
ベルカ「……」
カムイ「すべてを投げ出して逃げることはしたくない、そう思ったんです。逃げたらどうなるかなんてわかりません、だけどその先の可能性を考えることは、あまりにも空しいじゃないですか。こうして皆さんと積み重ねてきた物よりも、捨てた先の事を考えるなんてことは、だから私はその選択をしませんでした。こうやって皆さんと辛い道を歩んでいく方が、意味のあるものだと思っていますから」
ベルカ「そう……」
カムイ「だから、ベルカさんも私と同じ世界の一員です。一緒に戦ってくれる戦友なんですからね」
ベルカ「……わからないわ。でも、悪い気はしない」
カムイ「ふふっ」
ベルカ「ふふっ」
カムイ「ですから、私はベルカさんとのコミュニケーションも諦めませんよ!」
ベルカ「……どうして、そういう話になるの?」
カムイ「さぁ、ベルカさん。私の膝上は空いています! ほら、少し少し寒いでしょう、今から巡回に出るのに体を冷やしてはいけません。さぁ、私の膝上で温まってください」ポンポンッ!
ベルカ「……」
カムイ「……」ポンポンッ
ベルカ「……」
カムイ「……ダメですか?」シュン……
ベルカ「……わかったわ。これ以上振り回されるのも面倒、すぐに済ませて」
カムイ「ふふっ、やりました。それじゃ、座ってください」
ベルカ「……それじゃ」チョコンッ
カムイ「ふふっ、ベルカさんをようやく膝上に乗せることが出来ました」
ベルカ「……そんなにうれしいもの?」
カムイ「ええ、こうして触れ合う事しか、私にはベルカさんを感じる術がありませんから。お話をするのもいいですけど、断然こちらですね」
ベルカ「そう……。ほんのりだけど、たしかに暖かいわ」
カムイ「では、もっと暖かくしてさしあげ――」ガバッ
ベルカ「何かしたら、その手を逆に曲げてあげるわ。覚悟しておいて」パシッ
カムイ「………ハイ」
ベルカ「………」
ベルカ(………だけど、こういうのも偶にはいいかもしれない。偶にだけど……)ポスッ
一旦ここまで
残りは夜にでも
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「はぁ、ベルカさんは最後の最後でガードが堅いです。そこは少しサービスしてくれてもいいと思うのですが……」
アクア「なにがサービスなのかしら?」
カムイ「あ、アクアさん、こんばんは」
アクア「こんばんは。まったく、何処に行っていたの?」
カムイ「少し気晴らしに、その中々寝付けなかったもので……」
アクア「そう、逆に都合が良かったかもしれない。眠っているあなたを起こして話をするのは、少しだけ気が引けるから」
カムイ「そう言いますけど、アクアさん、容赦なく起こしますよね?」
アクア「そうね、それなりに重要な話なら」
カムイ「では、それなりに重要な話があって探していたということですね。ここで話もなんですから、天幕に戻りましょう」
アクア「あ……」
カムイ「?」
アクア「その、今日は私のところへ来てほしいわ。その、紅茶を準備しているから」
カムイ「それはもったいないです。すぐに向かいましょう?」
アクア「ええ、そうしてくれると助かるわ」
アクア「はい、紅茶よ。馴れてはいないから、渋いかもしれないけど……」
カムイ「ありがとうございます。いただきますね」ズズッ
アクア「ど、どう?」
カムイ「おいしいですよ。体もぽかぽかして来ました」
アクア「そう、うまく出来たみたいでよかったわ」
カムイ「で、話というのは何ですか?」
アクア「そのことなのだけど、竜石は持っているかしら?」
カムイ「はい、持っていますよ。と言っても、もう状態に変化があるとは思えませんけど……」ガサガサッ ゴトリッ
アクア「……」
カムイ「どうですか?」
アクア「……真っ黒なままよ。おそらくだけど、もう獣の衝動を抑えるような力が残っているとは思えないわ」
カムイ「そうですか。アクアさんは、またいつか私が暴走してしまう。そう考えているんですね」
アクア「そんなことはないって言いたいけど、貴女はそれを許してくれないでしょう?」
カムイ「はい、出来れば偽ってほしくありません。それにわかっていた方がいい事もあります。それがどんなに辛いものであったとしても、覚悟をしておけばその分、準備できるものもあります。それに、アクアさんは悪いことを否定するためにこうして話をしに来てくれたんですよね? 色々と気を遣わせてしまって、申し訳ないです」
アクア「カムイ、そういうことじゃないの」
カムイ「?」
アクア「もう一度私の力を使って竜石との繋がりを強めておくべきだと思って呼んだのよ」
カムイ「アクアさん……」
アクア「私は、貴方に消えてほしくない。戦いが終わるまでに暴走しないとも限らない、ならここでもう一度……」
カムイ「……ありがとうございます」
カムイ「でもそれは受け入れられません。お気持ちだけ受け取っておきます。それは今するべきことではありませんから」
アクア「それは、暴走したときに使うべき力だということなの?」
カムイ「勘違いしないでください、私はアクアさんの事を道具として見ているわけではないんですから」
アクア「……ごめんなさい。だけど、私はあなたにあのような姿になってほしくないわ。他のみんなだってそう思ってるはず。なら、私が力を使ってそれを押しとどめるのは間違いでも何でもないでしょう?」
カムイ「そうかもしれません。でも、私はそのアクアさんが苦しんで得る力より、もっと身近で大切な力を信じたいんです」
アクア「身近で大切な力?」
カムイ「はい、私は皆さんとの絆を信じています。どんなに辛いことがあっても、私を信じてくれる皆さんとの絆、私が私としてい続ける理由にその絆を繋ぎ続けることは含まれています。獣としての衝動や、憎悪なんかに負けるつもりはありません。だって、皆さんとの絆はとても暖かくて、かけがえのないものなんですから」
アクア「そう、皆の絆ね……。ふふっ、カムイらしいことを言うのね。私もその中の一つなら、そう簡単に解かせないからね?」
カムイ「たしかに、アクアさんがいるととても強いものになりますね」
アクア「私が力強いと言っているように聞こえるのだけど?」
カムイ「そうですよ。私の中でアクアさんとの絆はとっても強いものですから」ギュッ
アクア「え、カムイ?」
カムイ「……ほら、こんなに近くにいてこんなに力強く結ばれていて、私のために命の危険がある提案をしてくれる。そんな強いアクアさんに強い絆を感じるのは自然だと思います」
アクア「そ、そう……」
カムイ「それに、なぜかアクアさんと一緒にいるととても落ち着くんです。なんだかポカポカするって言いますか、その……えーと、言葉が見つかりません。でも落ち着くんです」
カムイ「私が逃げることを止めてくれましたし、何よりもあなたと出会えたことは私にとってとても重要なことでした。あなたに出会うことが無ければ、私はこうして誰かとの絆を信じる事無く、どこかで死んでいたはずですから」
アクア「カムイは、私と出会ったことで後悔することはないの?」
カムイ「それは私の台詞ですよ。アクアさんに無理な約束を押し付けたり、竜石の処置をしてもらったり、色々と面倒を起こしてばかりじゃないですか」
アクア「そう言われてみると、確かにそうね」
カムイ「あれ、そこはそうでもないと言ってくれるものだと思っていたんですけど」
アクア「事実だから仕方ないでしょ?」
カムイ「ううっ、予想外の展開です。ここはアクアさんに慰めてもらえると思っていたんですけど」
アクア「…隣にいるっていうのが私とあなたの約束だけど、甘やかすのは約束じゃないわ。だけど、覚えていて私はちゃんと隣にいるから……」
カムイ「ふふっ、ありがとうございます。あの紅茶をもう一杯貰ってもいいですか?」
アクア「ええ、すぐに淹れるからまって……?」
バサッ
レオン「アクア、ちょっといいかい?」
カムイ「あれレオンさん、こんな夜にどうかしたんですか?」
レオン「あ、姉さんここにいたんだね。アクアなら姉さんの居場所を知ってると思ったけど、ここにいるとは思ってなかった」
アクア「……それで、何の用かしら?」
レオン「……なんか、刺々しい声だけど。僕、何かしたかな?」
アクア「別に……」
レオン「そ、そうかい。ならいいんだけど……」
カムイ「私に用があるみたいですが、一体?」
レオン「そうだった。今、先行隊が今到着してね、一度打ち合わせをするから姉さんにも来てもらいたくて」
カムイ「わかりました。ということは応援部隊の完全到着は明日の昼頃ほどになるかもしれませんね」
レオン「大体それくらいだね。それを見越しての小さな会議ってところかな」
カムイ「では、すぐに向かいますね。アクアさんはゆっくり休んでいてください。その紅茶は今度でもいいですか?」
アクア「ええ、仕方ないもの。私が出る必要はないみたいだから、ゆっくり休ませてもらうわね」
カムイ「はい。では、いきましょう、レオンさん」
カムイ(この戦いの終わり。それがいったいどこに至るのかはわかりません。でも、進み続けるしかありません)
カムイ(白夜と暗夜の戦争。この戦いを終わらせるために……)
一旦ここまで
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『ヒノカの部屋』―
ヒノカ「……すぅ……すぅ……」
リョウマ「……」
ヒノカ「ううっ、うううううっ……うあああああっ!!!!」
リョウマ「ヒノカ! 今薬を準備する、少しの間、我慢してくれ」ガサゴソガサゴソッ
ヒノカ「ううっ、一人に……しないで……。うああああっ」
リョウマ「ヒノカ、これを。ゆっくりでいい、少しずつ飲むんだ……」
ヒノカ「んっ、んぐっ……はぁ……はぁ……。リョウマ兄様……? ここは、私は……」
リョウマ「大丈夫だ、俺はお前の傍にいる。何も心配することはない、だから今はゆっくり休め。疲れているだろう?」
ヒノカ「そうか、私は疲れているんだな……。疲れたままではアサマとセツナに迷惑を掛けてしまう……」
リョウマ「なら、今は休むべき時だ。大丈夫だ、次に目が覚めた時には疲れもなくなっているはずだからな」
ヒノカ「ああ。すぅ……すぅ……」
リョウマ「……」
タタタタタッ
ミタマ「失礼いたしますわ、リョウマ様」
リョウマ「ミタマか……」
ミタマ「物音が聴こえましたので、ヒノカ様になにかあったのかと思いましたので」
リョウマ「もう大丈夫だ。すまない、本当ならばお前も休みたいはずだというのに、ヒノカの事を任せてしまって」
ミタマ「いいえ、敵の待ち伏せに気づかず、途中で逸れてしまった私たちは、ヒノカ様を守れなかった、お世話をするのは当然のことですわ」
リョウマ「いや、わずかだが王都にたどり着けた者もいる。それにヒノカはこうして生還した、これ以上望むことなどありはしない」
ミタマ「ですが、臣下のお二人はまだ……」
リョウマ「……聞いている。探索隊を出してはいるが、それももうないだろう。ユキムラは王都の防衛を優先するつもりだ、もう戻ってこない者たちを探すことはないだろう。それよりもミタマ、お前たちが対峙した敵はカムイ達にも刃を向けたのだったな」
ミタマ「はい……。ユキムラ様を支持する方々には、何を言っても通じませんでしたが、彼らは私たちも暗夜軍も見境なく攻撃してきました。おそらく、ガロン王の手の者と思いますけど、話ではテンジン砦の一件で、ガロン王の部隊は大きな損害を出したと……」
リョウマ「出所はわからないが、向こうにはまだそれほどの力があるということだろう。しかし、そんな中でもカムイはヒノカを救うために戦ってくれたのだな。こんなに近くにいながら、何もできなかった俺と違ってな……」
ミタマ「リョウマ様は監禁されていました。私たちをスサノオ長城に送り、出来る限りの人々を王都へ帰還させる。それがあの時に出来た最善の手ですわ」
リョウマ「最善か……」
リョウマ(多くの将兵を死に追いやっておきながら、これが最善と思わなくてはいけない。思いたくもないというのに、心のどこかではこれしかなかったと諦めている己がいる……。それが、とても不快でならない)
リョウマ「……ユキムラは何と言っている」
ミタマ「敗北に対する罪の清算を民に見せないままでは収拾がつかないということを言っていましたわ」
リョウマ「形を成したいんだろう。ユキムラも民が思ったように動いてくれないことに、いい加減苛立ちを隠せないでいるようだからな……。もう、白夜は国として歩むことさえままならなくなっているということだ……」
ミタマ「リョウマ様、あまり大きな声では言えませんが、多くの兵が最後の機会を伺っています。こちらの数は多くはありませんが、今打って出ることも……」
リョウマ「それ以上は言わないでいい。俺がそれに頷くことはない。お前たちにその気があろうとも、俺はそれに賛同することは出来ない」
ミタマ「リョウマ様……」
リョウマ「ミタマ、ヒノカの傍にいてやってほしい。俺はもう牢に戻らなければならない。よもや、監視もつかないほどに、俺を脅威と思っていないとしても、体だけは取っておいたほうがいいからな」
ミタマ「は、はい……」
ヒノカ「……んんっ」
リョウマ「……ヒノカ、いい夢を見るんだぞ」
ヒノカ「すぅ……すぅ……」
タッ タッ タッ
スーッ ピシャリ
ミタマ「リョウマ様は多くの兵を王都に戻して、何をしようとしていたのでしょうか。いえ、もうそれを考える意味はありませんわね。多くの兵は、あの戦いで命を落としてしまいましたから」
ミタマ(私たちは運よく逃げ切れただけ、もうこの王都に……。いえ、白夜王国には満足に戦える戦力など残っていません。それはユキムラ様も分かっているはず、たとえ王族の誰かを処刑したところで、戦いに人を駆り立てられるわけもないというのに……)
ミタマ「それでも戦うのは、やっぱり人の性というものでしょうか」
ミタマ「……『死地の庭、佇む陰と、陽の光』……」
ミタマ「陰と陽、どちらの理由であっても、これは思いが作った地獄に他なりませんわ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・シラサギ城『個室』―
上級武将A「聞いたか……。民の間の暗夜軍の噂を」
上級武将B「まったくです。それもこれも王族の失態が原因でしょう。よもや、民の中に降伏するべきだと口にする者がいるとは」
上級武将A「これは由々しき事態だ。早く、王族の一人でもいい。先刻の失態の責任を取らせるべきところだろう! 多くの将兵も暗夜の影に怯え、これでは何のためにユキムラの下に付いたかわからぬ。白夜の民を戦地へと送った我々を彼らは、許しはしない。奴がそう言ったからこそ、我々はこうしてユキムラの指示にしたがっているというのに!」
上級武将B「それを言っても始まりませんよ。今は生贄となる王族を決めることの方が先、と言っても使い物にならなくなったヒノカ王女以外に選択肢などありませんが」
上級武将A「しかし、あのリョウマ王子がそれをするとは思えない。ユキムラ様は大丈夫だと言っていたが、果たしてそうなるのか? それにリョウマ王子がこの状況下で暗夜軍と手を組み、襲い掛かってくるかもしれない。そうなってしまったら、我々は袋の鼠だ」
上級武将B「……やはり、風の噂は本当の事と考えていいでしょう。ほら、突然決まったスサノオ長城への応援、あの者たちは王族を慕う方々ばかりでした。それに、ヒノカ王女戦死という形で白夜の指揮を高めるというユキムラ様の案。そのことに気づいているからこその応援と考えれば、私たちに反旗を翻す大義名分をリョウマ王子は持ったと言ってもいい」
上級武将A「ではどうするというのだ!? 暗夜とリョウマ王子が手を結べば、我々に勝ち目など……」
上級武将B「ですから、そうさせないようにすればいいんですよ。リョウマ王子に選択肢などないということを、教えてあげればよいのです」
上級武将A「しかし、ユキムラに何も言わずにことを進めても良いのか?」
上級武将B「いいのです。どちらにしても、風の噂を流すだけですから。それが早ければ早いほどいいし、流れても困る物ではありません。なにせ――」
「それで恨まれるのは私たちではなく、ユキムラ様だけなのですからね……」
休息時間3 終わり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB++
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB+→B++
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
C[5スレ目・822]
・マークス×リンカ
C[5スレ目・888]←NEW
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]
・サクラ×ニュクス
C[5スレ目・860] A[5スレ目・889]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今日はここまで
白夜で蠢く悪意、それが齎すものは……
次の展開を安価で決めたいと思います、参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)
ジョーカー
フェリシア
フローラ
マークス
ピエリ
レオン
ゼロ
ベルカ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
モズメ
リンカ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>913と>>914
次に続きます。
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。
アクア
ジョーカー
ギュンター
フェリシア
フローラ
マークス
ラズワルド
ピエリ
レオン
ゼロ
オーディン
カミラ
ベルカ
ルーナ
エリーゼ
ハロルド
エルフィ
サイラス
ニュクス
ブノワ
シャーロッテ
モズメ
リンカ
サクラ
カザハナ
ツバキ
スズカゼ
アシュラ
フランネル
>>915と>>916
(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)
○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ
・マークス×リンカ
この中から一つ>>917
(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×カザハナ
・サクラ×ニュクス
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・エリーゼ×カザハナ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
この中から一つ>>918
このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。
フローラ
乙
ハロルド
サクラ
ニュクス
・マークス×リンカ
エリーゼカザハナ
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『宿場の部屋』―
サクラ「あのニュクスさん……」
ニュクス「あら、サクラ王女。いったいどうしたのかしら? また甘いものを食べに行ったのかと思っていたのだけど?」
サクラ「そんな毎日食べませんよぉ」
ニュクス「ふふっ、ごめんなさいね。つい、揶揄いたくなってしまって。それでどうしたの?」
サクラ「……ニュクスさんって、本当は私よりもずっと年上なんですよね?」
ニュクス「……どうしてそう思ったの?」
サクラ「前にニュクスさんが言ってたことが気になって、それで……そのニュクスさんってとても落ち着いていますし、私と同じくらいに見えるけど、違う気がして、もしかしたらって……」
ニュクス「そう、サクラ王女って見た目と違って、よく考えられる子なのね。これだけしか話してないのに、見破られてしまうなんて、私も色々としゃべりすぎちゃったのかもしれないわ」
サクラ「そ、それじゃ、やっぱり……」
ニュクス「……気持ち悪いでしょう? 貴女よりも小柄なのに、ずっと年上だなんて言われたら、気味が悪くてしょうがないと思うのも無理はないわ」
サクラ「どうして、そうなってしまったんですか。こんな風に成長が止まってしまうなんて…」
ニュクス「私はね、悪魔と言われてもおかしくないほどに罪を犯して来たの。あなたと同じくらいの時の事だけど、思い起こせば子供だったからという言い訳が通用しないような、恐ろしいことを行っていたの」
サクラ「それが原因なんですか?」
ニュクス「ええ、これは私に与えられた罰なの。どんなに時間を掛けても拭えない、一生背負っていくことになるもの。そんな女と一緒にいたくはないでしょう?」
サクラ「……そんなことありません。私、ニュクスさんと一緒にいて楽しかったです」
ニュクス「話を聞いてなかったの? 私は……」
サクラ「その話だけ聞いてるとニュクスさんが昔ひどいことをしてたことはわかります。でも、それは今のニュクスさんと接する私には関係のないことです。私が知ってるのは、大人っぽくて落ち着いてて、甘いものよりも渋かったり苦かったりするものが好きで、大人っぽいって言われてウキウキしちゃうニュクスさんだけです」
ニュクス「な、何を言っているの。あの時の態度はそういう物じゃないわ」
サクラ「では、どういう物なんですか?」
ニュクス「うっ……、中々やるわね。あなたの事、ただの箱入り娘だと思っていたけど、中身は思ったよりしっかりしてるじゃない」
サクラ「えへへ。私、ちゃんと大人になります」
ニュクス「?」
サクラ「ニュクスさんに言われた通り、ちゃんとゆっくり大人になっていきます。ニュクスさんにいつか大人になったって言ってもらえるように」
ニュクス「……ふふっ、そういう事だったのね。いいわ、あとどれくらいで大人になれるのかはわからないけど、サクラ王女が成長していくのをのんびりと見させてもらうわね」
サクラ「はい。見ててください。ニュクスさんが驚くくらい、立派な大人になって見せますから!」
【サクラ×ニュクスの支援がAになりました】
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・クラーケンシュタイン『訓練場』―
リンカ(結局、マークスに誤解されたままだ。だが、今日こそは誤解を解いておかないといけない)
リンカ「マークス、少しいいか?」
マークス「む、リンカ。どうかしたのか?」
リンカ「この前の話のことだ。あたしの戦い方について、聞きたいと言っていただろ」
マークス「ああ、もしや話してくれる気になったのか?」
リンカ「いや、そうじゃない。あたしの戦い方を知りたいと言ってくれるのはうれしいが、教えることなんて何もないんだ」
マークス「……」
リンカ(この無言、わかったということか?)
マークス「リンカ」
リンカ「なんだ?」
マークス「つまりお前はこう言いたいのだな。私には伝える意味がないと?」
リンカ「そ、そうだ。あたしの戦い方はマークスには理解できないものだろうし、なによりも教える意味のないものだからな」
リンカ(この説明で、納得してくれるはずだ。なにせマークスは暗夜の王子なんだからな……)
マークス「なるほど、すまなかったな、リンカ。私は誤解をしていたようだ」
リンカ「わかってくれたか」
マークス「ああ、どうやらお前は根っからの実力主義者のようだ。今の言い方、おそらく対等に渡り合えるもの出ない限り、戦い方の作法を教えられないし、理解できない。そういうことだな?」
リンカ「な、何を言っているんだ!?」
マークス「ならば、私は私の力をお前に示すまでのことだ」
リンカ「どうしてそうなる!? マークス、落ち着いて話を聞け。あたしの戦い方はあんたの求めてるようなものじゃなくて――」
マークス「行くぞリンカ! 我が剣捌きがお前と渡り合うことのできると証明してみせる!」
リンカ「なっ、くそっ、こうなったら戦うしかない。うおおおおおおっ!!!!!」
【マークスとリンカの支援がBになりました】
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・レオンの屋敷『中央の庭』―
エリーゼ「カザハナ、白夜にはどんな花が咲いてるの?」
カザハナ「白夜に咲いてる花だよね。えっと、たんぽぽ、梅、椿に牡丹、それに菊とか……他にもまだまだいっぱいあるかな」
エリーゼ「そうなんだ。ねぇねぇ、カザハナはどの花が一番好きなの?」
カザハナ「えへへ、あたしは桜だよ」
エリーゼ「えっと、あたしサクラの話じゃなくて、好きな花の事を聞いてるんだけど……」
カザハナ「あ、エリーゼ王女は知らないんだね。白夜には桜って名前の花があるんだよ」
エリーゼ「ええ、そうなの!?」
カザハナ「うん、花としての桜も主君としてのサクラも大好きだから。エリーゼは好きな花はあるの?」
エリーゼ「え、えっと、うーん、いっぱいあるからすぐに決められないよぉ」
カザハナ「そっか。エリーゼ王女の特別にも特別な花が出来るといいね。あたしは、ずっとサクラと一緒に過ごして来たから、桜の花の事も好きになっていったんだ」
エリーゼ「どんな花なの?」
カザハナ「桜ってこんなに大きな木なんだよ、それで春先になると小さな蕾が出来て、それがぱぱぱって開くの。満開の桜はとっても綺麗で、見てるだけで思わず息が漏れちゃうくらいなんだから」
エリーゼ「そうなんだ。いいなぁ」
カザハナ「?」
エリーゼ「羨ましいって思って。サクラはとっても大きくて綺麗な花と同じ名前だから……。だけど、あたしは……」
カザハナ「エリーゼ王女?」
エリーゼ「……ううん、何でもないよ。それより、今日は何して遊ぼっか?」
カザハナ「……うん、なにしよっか? あ、そうだ。互いに花束を作って交換するっていう遊びはどう?」
エリーゼ「花束だね。よーし、とびっきり綺麗なのを作って、カザハナを驚かせちゃうんだから! がんばるぞー!」タタタタッ
カザハナ「あ、ちょっと先に始めるなんて、ずるいよ!」
カザハナ(さっき、何か言ってたけど……。もしかしてエリーゼ王女の名前も、サクラと同じで花の名前なのかな?)
【カザハナとエリーゼの支援がBになりました】
今日は支援だけ
ニュクスの呪い云々は多くの仲間たちには知られていないらしいけど、恋愛小説と珈琲を欠かさない当たり。多くが勘ぐってる気がしてならない。
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『作戦会議用天幕』―
カムイ「それで、準備の方はどうなっていますか?」
暗夜兵「はい、大まかな作業は終わっております。残りは各員の携帯物資の仕分けなどですが、これも間に合いそうです。そして、先行隊からの話では応援本隊の到着予定は正午程と思われます」
カムイ「わかりました。引き続き、残りの作業に取り掛かってください。後続の到着後、すぐに動き出さなくてはいけませんから」
暗夜兵「わかりました、それでは失礼いたします!」
タタタタタッ
レオン「みんなよく頑張ってくれてるよ。あんなことがあって、まだ日もそれほど経っていないっていうのにね」
カムイ「はい。皆さんにはずっと戦い続けてもらっていますから。本当に感謝しないといけません。ところで、白夜王都までの道に何かしらの障害はあるのでしょうか?」
マークス「偵察のために数人を向かわせた。今日の明け方に戻った者たちの話では、しばらくの間は森が続いているが、白夜軍が駐留している気配はないと報告がある」
レオン「仕方ないよ、このスサノオ長城から王都まで生きて帰った兵はあの見えない敵を知っているし、ユキムラの案に乗った人間も王族派のほとんどが帰っていないとなれば、準備はしても王都の周辺でもない限りは陣を作らないはずだ」
マークス「王都周辺に陣を作って我々が来るのを待っているとすれば、この森を抜けるまでの間に白夜軍との大規模な戦闘は起きないと考えられる。もっとも、ただの仮説に過ぎないがな」
カムイ「仮説でも十分です。それに戦わないで済むのならばそれに越したことはありません。王都まで出来れば早く至れるなら、この機会を逃すわけにはいきません」
マークス「その通りだ。しかし、王都決戦を考えている以上、向こうも兵力の補強を無理矢理にでも図る可能性があるな」
カミラ「ええ、足りない兵を民間人で埋める可能性もあるわ。私たちからすれば一番してもらいたくないことね」
アクア「彼らが市民に武器を持たせて戦いを始める前に終わらせたいところだけど、それは難しそうね。それに土壇場で切り札を使われる可能性もあるわ」
サクラ「切り札、ですか?」
マークス「我々にとって脅威となりえる切り札。やはり、リョウマ王子にヒノカ王女といった王族の存在になるだろう」
アクア「ええ、それを盾にしてくる可能性もあるという事よ」
カムイ「リョウマさん、ヒノカさんを使って降伏を迫ってくるという事ですか?」
レオン「その可能性は高いけど、もしかしたらユキムラはそういう形で王族を使わないかもしれない」
エリーゼ「レオンおにいちゃんはどうしてそう思うの?」
レオン「単純な話だけど、二人のどちらかを人質としたその瞬間に白夜のパワーバランスは変化する。処刑の話が上がれば、王族派はもうユキムラに従う必要がなくなるからね。ヒノカ王女もリョウマ王子も処刑されるという話になれば、さすがに王族派の離反は必死だ。王族の死というが僕たちが原因であるとは言えなくなる以上、その手を使ってくるとは思えないんだ」
サクラ「暗夜王国の所為に出来るから、ヒノカ姉様を殺そうとしていたということですよね」
レオン「恐らくはね。ヒノカ王女が無事に王都へと戻っているなら、まだ時間はある。ただ、死亡しているという最悪のケースを想定した場合、もうユキムラはヒノカ王女の死を僕たち暗夜の仕業として謳いあげているはずだ……。もっとも、スサノオ長城から王都まで逃げ切れた人間は少なからずいるだろうから、そう簡単にユキムラの思う通りに事が運ぶとは思えないけど」
カムイ「……最悪の場合だったとしても、今はそれに賭けるしかないということですか。どちらにしても、白夜王都には早く到達する必要がありそうです」
エリーゼ「そうだよね。もたもたしてたら、もっと悪いことをするかもしれないもん」
マークス「敵に新たな策を討たせる余裕を与えるつもりはない。王都までの道は最短を通っていく予定だ。だが、大勢で動けばいずれ発見されるのは間違いない。そこから敵の準備が整うよりも早く、王都に肉薄するのが最初の目的となるだろう」
カミラ「そうね、だけど王都の陣を突破してから王城の攻略では時間が掛かりすぎるわ」
マークス「ああ、そこで王都での戦いと王城への少数先鋭による攻撃は、ほぼ同時に行う。王都の攻撃部隊は敵を引き付け、王城に侵入した者たちで敵の中枢を叩く。これが主な作戦行動となるだろう」
レオン「カムイ姉さん、同時に行う作戦だから土壇場でメンバーは決められない。突入するメンバーの選抜を最優先に考えてくれるかな? 出来る限り早くでお願い、それによってこっちも作戦を練ることになるからさ」
カムイ「はい、わかりました。レオンさん」
サクラ「これで、両国の戦いが終わるんですよね……」
アクア「ええ、長く続いてきた戦いだけど。もう、この戦いは終わるはずよ」
マークス「多くの者が望まない戦いであることはわかっている。だが、それでも我々は戦わなくてはならない。そうだろう、カムイ?」
カムイ「はい、マークス兄さん。すみませんがよろしくおねがいします」
マークス「よし、正午の出発に備え、各員最終調整と準備に取り掛かれ。ここからしばらくの間、休むことはできないとすべての兵に伝えよ! 一時解散とする」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『兵員物資置き場』―
カムイ「あと少しで白夜王都に向かって出発ですか……」
カムイ(私の戦ってきたことの一つの終着点、それがもう迫ってきているという事なのでしょうね。この血に溺れている正義、それが得ようとしている一つの結果……。それが奴の言う絶望だったとしたら、私は……)
カムイ「……いいえ、こうして考えても仕方ありません。それに悪いことを考えても意味はないとこの前思ったばかりじゃないですか。しっかりしないと……」
ハロルド「おや、カムイ様」
カムイ「その声、ハロルドさんですね。こんにちは」
ハロルド「ああ、こんにちは。どうかしたのですか?」
カムイ「いえ、物資の仕分けが終わっているそうでしたので、こうして自分の分を取りに来たんです」
ハロルド「そうでしたか。よし、ここでお待ちください。私が取ってきますので」
カムイ「いえ、私が取りに……。そうですね、仕分けされていたとしても、目が見えない私に荷物を取れるわけがありませんから、すみませんがお願いできますか?」
ハロルド「もちろん、お安い御用です。では!」
タタタタタッ
ガサゴソガサゴソッ
タタタタタタッ
ハロルド「お待たせしました。それでは行きましょう」
カムイ「え、行きましょうとは?」
ハロルド「はい、カムイ様の天幕まで物資をお運びいたしますので」
カムイ「いえ、悪いですよ。ここからは私が――」
ハロルド「ご心配なく、それにカムイ様には色々と迷惑を掛けてばかりですから、これくらいのことでも手伝わせていただきたいのです」
カムイ「ハロルドさん……。わかりました。それじゃ行きましょう」
ハロルド「はい、荷物はきちんとお守りしますので、安心してください」
カムイ「ふふっ」
タッタッタッ
タッタッタッ
ハロルド「……白夜の天気というものは暗夜に比べると澄んでいますね」
カムイ「はい、でも夜は暗夜とあまり変わりませんね。虫達の鳴き声も時折聞こえてきますから、少しだけ懐かしい気持ちになります」
ハロルド「やはり、暗夜が恋しくなったりするのですか?」
カムイ「そうですね。暗夜の事を時々思い出します。といっても、ほとんどが暗闇の中にある音の記憶ばかりですが。私にとっては鮮明に残っている思い出です。ハロルドさんにはそういう思い出はあるんですか?」
ハロルド「もちろんあります。そうですね、やはり正義とは何かということを親に教わったことかもしれません」
カムイ「正義……そういえばハロルドさんは正義の味方なんですよね。やっぱり、親の影響だったんですか?」
ハロルド「はい、王都の治安を守ることが喜びでありますが、思えば両親の言葉が今の私を育てたと言えるでしょう」
カムイ「そうなんですね。親はどんな言葉を掛けてくれたんですか?」
ハロルド「はい。正義とは何か…。それを心に問いかけて行動しろ、そう言われました。幼い私はいっぱい考えて、その一つとして自衛活動を始めた。そして今の私がいるというわけです」
カムイ「そうだったんですね。そうですか、ハロルドさんはそんなに幼い頃に正義というものを考え始めていたのですか……」
ハロルド「はい。しかし、お恥ずかしい話を聞かせてしまいましたね」
カムイ「そんなことないですよ。いい話ですし、なによりハロルドさんのしようとしていることは正義と言っていい者ですから。それに比べたら、私のしていることが正義なのかどうかわからりません……」
ハロルド「……カムイ様」
カムイ「はい、なんですか?」
ハロルド「その、あなたが思う正義が間違っているという事はないと、私は思うのです」
ハロルド「……カムイ様は正義というものが何なのか、よくわからないという顔をしていますが、それは誰にもわからないものです」
カムイ「でも、ハロルドさんは正義の味方なんですよね? では、ハロルドさんのやっていることは正義ではないんですか? 少なくとも、私には正義だと思います。人のためになることを率先して行っているじゃないですか」
ハロルド「そうですね。それが私の思う正義だからです。カムイ様もここまで戦ってきた事は、少なくとも悪いことだと思って始めたわけではないでしょう?」
カムイ「それはそうですが……」
ハロルド「なら、それは正義と呼んで間違いありません。私が育んで来た正義がある様に、カムイ様にも考え育んだ正義がある。正義とは考え抜いた先にある自身の善意の心であり、その志が折れない限り、それは正義であり続ける。私はそう思っています」
カムイ「……すごいですね、ハロルドさん。まるで正義の伝道師みたいです」
ハロルド「伝道師と言えるほどではないと思いますが。でも、よかった」
カムイ「?」
ハロルド「いえ、カムイ様のお力になれたようなので。私は兵士ですから、本当なら戦いの場で力になれることの方がいいのかもしれません。ですが、こういったお話の方で、貴女のお役に立てたのはとてもうれしいのです。それに、このところは色々と辛い出来事ばかりでしたから、力になれたらと思っていたので」
カムイ「……そうでしたか。すみません、そんな風に心配させてしまって。もう、前のようにはいかなくなってしまいましたから、色々と皆さんを幻滅させているかもしれません」
ハロルド「そんなことはありません。カムイ様も人ですから、辛いことや悩みがあるのは当たり前です。それをこうして支えられるのなら、皆喜んで力を貸してくれるはず。もちろん、このハロルドも全力でお支えいたしますよ!」
カムイ「ふふっ、ありがとうございます。やっぱり、ハロルドさんとこうして話している、なんだかとても落ち着きます」
ハロルド「そう言っていただけるだけでも、私はうれしいで――うおおおっ」ツルッ
ドンガラガッシャンッ!
カムイ「ハ、ハロルドさん、大丈夫ですか!? ものすごい勢いで転んだみたいですけど?」
ハロルド「あ、ああ。ふぅ、気を抜いてしまうと直ぐこれだ。はぁ、最後までカッコよく決めさせてはくれない様だ……」
カムイ「そうみたいですね。ふふっ、うふふっ」
ハロルド「まったく、はははっ」
カムイ「ここまでありがとうございます。それに荷物はきちんと守ってくれたんですね」
ハロルド「もちろんだとも、カムイ様。それではまた何かあったら相談してほしい。少しでも力になれるのなら、それはとても誇らしいことだからね」
カムイ「はい、でも次はこういうくらい話じゃなくて、もっと明るいお話にしましょう。そうですね、ハロルドさんの武勇伝か何かを聞かせてもらいたいです」
ハロルド「武勇伝ですか、わかりました。とびっきりの話をご用意いしましょう!」
カムイ「はい、楽しみにしています」
ハロルド「ええ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カムイ「よいしょ、よいしょ……ふぅ、私の分の物資はこれで運び終わりましたね。あとは仕分けだけですか。と言っても、すぐに戦闘が始まるとは思えませんし、予備はこちらの荷物入れの中に入れて置きましょう」
カムイ(……しかし、物の形を捕らえるのはやはり難しいです。これは傷薬で、これは、えっと大きさは携帯食のようですけど、でも、この感触は――)ムニムニ
カムイ「うーん、どちらでしょうか?」
バサッ
フローラ「失礼いたします、カムイ様。……何をされているのですか?」
カムイ「あ、フローラさん。えっと、この携帯食料をどうしようかと思いまして……」
フローラ「カムイ様、それは負傷時に使用するガーゼですよ」
カムイ「あ、ガーゼでしたか。形だけだと、携帯食の類かと思ってしまって、ありがとうございます」
フローラ「ふふっ、カムイ様の気配を読む力は素晴らしいものですけど、そういったものはやはり苦手なのですね」
カムイ「ええ、こればっかりはうまくいきません。それで、どうかしたんですか?」
フローラ「その用は後ほど、今はカムイ様の荷造りを手伝った方がよさそうです。出発の時になってカムイ様の荷造りが終わっていないとなれば、色々と問題になってしまいますから」
カムイ「いえ、大丈夫ですよ。ココから失敗はしませんから」
フローラ「そうですか……。では、これが何かわかりますか?」スッ
カムイ「え、えっと……今度こそ携帯食料ですね」
フローラ「これもガーゼです」
カムイ「……。手伝ってもらってもいいですか?」
フローラ「はい、お手伝いいたしますね。私が品を言うのでどちらにいれるべきかをカムイ様が選んでください」
カムイ「は、はい……」
カムイ「ふぅ、ようやく終わりました。一人ではやっぱり難しかったです。ありがとうございます、おかげで出発まで少し休める時間が出来ました」
フローラ「いいえ、主を支えるのが私たち臣下の仕事ですから」
カムイ「いろいろと面倒を掛けてしまう主ですみません」
フローラ「そんなことありませんよ。むしろ、城塞を出てからあまりカムイ様にしてあげられる仕事も減ってしまいましたから、こういう小さなことでもお役に立ててうれしいものです」
カムイ「そう言ってもらえると、助かります。それでフローラさんはどうして私の元に? さすがに私が荷造りで困っているのを予想してきたようには思えませんでしたから」
フローラ「それはですね……。カムイ様と紅茶を一緒にと思いまして……」
カムイ「紅茶ですか、そうですね。今度もご一緒すると約束しましたから」
フローラ「はい、カムイ様にその約束を守ってもらうために来たんですよ? ここを出たら、しばらくの間、ゆっくりできるとは思えませんから」
カムイ「ええ、白夜との戦いも大詰めですから、しばらくの間は休むことは出来ないでしょう」
フローラ「そんな戦いに行く前に、ゆっくりカムイ様と過ごしたいと思ったんです」
カムイ「ありがとうございます」
フローラ「それでは、今から淹れさせていただきます。少々――」
カムイ「そんな畏まった言い方はいいですよ。今は主君としてではなくて、フローラさんの友人として接してほしいんですから」
フローラ「友人と言われましても……」
カムイ「逆に難しいですか?」
フローラ「そうですね。カムイ様は命の恩人であり、主君でもあり、そしてなにより私に甘えてもいいなんて言ってくれた、大切で特別な人ですから」
カムイ「フローラさん」
フローラ「ふふっ、このわずかな期間でカムイ様はとても変わりました。そうですね、前まで感じられなかったカムイ様の内にあるものも、感じられるようになったと言った方がいいかもしれません」
カムイ「なんだか、恥ずかしいですね。私の中を見られてしまっているようで」
フローラ「少しだけです、ほんの少しだけですから。はい、カムイ様。熱いのでお気を付けください」カチャッ
カムイ「ありがとうございます。……んっ、ふふっ、やっぱりフローラさんの紅茶はおいしいです」
フローラ「ジョーカーやフェリシアが淹れたものにも同じことを言っているじゃないですか」
カムイ「それはそれ、これはこれです。それに、こうしてフローラさんと二人きりで楽しむ紅茶は特別なものですからね」
フローラ「特別ですか」
カムイ「はい。この戦いが終わって城塞に戻っても、時折こうして二人で紅茶を楽しむ時間を続けたいです。こうやって二人きりでゆっくり紅茶を飲みながら、ゆったり過ごすんですよ」
フローラ「……本当にそう思ってくれるのですか?」
カムイ「ええ、フローラさんがそれを望んでくれるならです。フローラさんの日常の中に、私を少しでも頼ってくれる時間が合ってもいいなら、私を求めてください。私から甘えてくださいって言った事です、否定する事なんてありませんから」
フローラ「……そうですか」
カムイ「ですから、今だけでもいっぱい甘えてください。今なら、自信満々の私があなたを抱き留めますから」
フローラ「ふふっ、カムイ様はやっぱりおかしな人です。では、少しだけ失礼しますね」スッ
カムイ「はい」スッ
ダキッ
カムイ「……いいですよ、もっと強くしていただいても」
フローラ「はい、では遠慮なく」
ギューーッ
フローラ「はぁ……暖かいです。カムイ様」
カムイ「フローラさん。戦いが終わったら、もっといっぱいお話をしましょう。お仕事終わりの秘密の密会みたいで、とてもワクワクします」ナデナデッ
フローラ「はい、カムイ様。ああ、だめですね」
カムイ「?」
フローラ「こうされる¥ていると、依存してしまいそうで。その、ご迷惑になるかもしれません」
カムイ「私に依存すると大変ですよ。毎日、顔を触られたりとかしちゃいますし、もしかしたら先にフローラさんが根を上げるかもしれません」
フローラ「それは、悪くありませんね。だって、カムイ様は私をこんなに甘やかしてくれる人ですから。逆に、カムイ様が困ってしまうくらい甘えちゃうかもしれませんよ?」
カムイ「ふふっ、そんな日が来ると思うと、少しだけ楽しみになってきますね。フローラさんが私に甘えている光景というのは中々に貴重な物でしょうから」
フローラ「今がそうじゃないですか?」
カムイ「もっとすごいかもしれませんから、ほら理想は高くあるべきだって言いますし」
フローラ「そうですか。なら、無事に城塞に戻れた時は、もっともっと甘えさせていただきますね、カムイ様」
カムイ「ふふっ、わかりました。フローラさん」
カムイ(あと少しの時間、動かないでほしいと思っていてもそれは来てしまうんでしょうね……。いえ、もうそれは来ているのかもしれません。だって――)
タタタタタタッ
フローラ「……カムイ様」スッ
カムイ「ええ、どうやらもうおしまいみたいですね」
フローラ「そうみたいです。すぐにご準備を、お手伝いいたします」
カムイ「はい、よろしくお願いします。あ、ごくっ……。美味しかったです、フローラさん。また今度、ご一緒しましょう」
フローラ「はい、カムイ様」
カムイ「……」
カムイ(そうです。私は戦争を終わらせるために戦いを選んだ。戦いの歯車が回り始めた以上、終わりはそう簡単に訪れない。いや、訪れるものではないんです、なぜなら……)
暗夜兵「カムイ様。後続部隊の姿が確認できました、マークス様がお呼びです」
カムイ「はい、今すぐ向かいます」タッ
カムイ(この戦争は私が始めたもので、そして止めることが私の使命でもあるのですから……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・スサノオ長城『白夜王都へと続く街道入り口』―
ザッ ザザッ
マークス「これで全員だな?」
レオン「うん、これで全員だよ。到着した後続部隊への引継ぎも完了して、今は怪我人や病人の手当ても始まっている。もう僕たちがここで待つ必要は無くなった」
マークス「そうか……。いよいよ、我々は白夜王都に向かうということだな」
カムイ「ええ、出来れば戦う以外の理由で訪れたかったのですが」
エリーゼ「仕方ないよ。カムイおねえちゃんはやれることはやったんだから」
カミラ「やりきれない思いはあるだろうけど、それは今考えてもひっくり返らないこと、今できる最善を出せるようにすることが今できる事なんだから」
カムイ「はい、その通りですね。今できることを、私たちは行うだけです」
マークス「カムイ」
カムイ「はい、マークス兄さん。もう覚悟はできています」
マークス「わかった。お前の意思、確かに伝わった。あとは私に任せてほしい」
カムイ「ええ、お願いします」
マークス「うむ……」
パカラパカラッ
暗夜軍兵士一同「………」
ヒヒーンッ
パカラパカラッ
マークス「皆の者、よく聞け。ここまで長きにわたる戦いを共に歩んでくれたこと、言葉だけでは言い表せぬほど感謝している。まだ戦いは終わっていない、しかし戦いの終わりはもうそこまで来ている。この長きに渡る暗夜と白夜、両国を蝕んで来た遺恨。それはこの戦いを持って断ち切るべき連鎖であり、戦いの終わりはこれを断ち切ることに他ならない」
シャキンッ チャキッ!
マークス「諸君の力を貸してほしい」
マークス「諸君の命を預けてほしい」
マークス「諸君の隣を歩ませてほしい。そう――」
マークス「この混沌とし、すべてが失われつつある戦いを終わらせ、真の平和を迎えるために!」
暗夜軍兵士一同『!!!!』
マークス「共に来る先鋭たちよ、その剣を抜き、空へと掲げよ!」シャキンッ
チャキンッ バッ
暗夜軍兵士一同『うおおおおおおおーーー!‼‼‼』
マークス「みんな、ありがとう。これより、白夜王都へと進軍する!」
ワーーーーーッ
ワーーーーッ
カムイ(さぁ、行きましょう。暗闇に包まれた、私の戦いの路――)
(その一つの終着地へ……)タッタッタッ
休息時間終わり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラB++→A
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB→B+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・マークス×リンカ
C[5スレ目・888] B[5スレ目・920]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
C[5スレ目・822]
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14] B[5スレ目・921]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今日はここまで
カムイと城塞組は戦いが終わった後、ゆったりとあの城塞で一緒に暮らしてほしいと思う。
なんだかんだ言っても、カムイの故郷はあの城塞であるはずだから。
FEHにまだリリスがこない。選挙はもちろんリリスにいれたけど、いつ来てくれるのかね
次回はカミラ×サクラ隊の番外とあともう一つ、プチ番外をやってこのスレは終わりだと思います。
安価にご協力いただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
・『ガンズが笑うとき』
・『三匹のリリス』
・『星界裁判』
・『ソレイユのフォレオ追跡紀行』
上の四つの中で先に3回選ばれたものにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
◆◇◆◇◆◇
番外『ソレイユのフォレオ追跡紀行』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「可愛い」
ぼそっと呟いたあたしの気配を感じたのだろう。落ち着いた色の帽子が振り返った。
しばしの間、歩いてきた道を見ると、やがて何事もなかったようにテクテクと歩き始める。その足取りはとても穏やかで、あたしの存在に感づいたわけではないようだった。いつもの可愛らしい服ではなくて、旅行客を思わせる服装でフォレオが前方を歩いている。そして、あたしは彼を追っていた。
いつもの暗夜の紋章が施されたレザーアーマーではなく、一般観光客を装った出で立ちだ。それはもちろん、フォレオにばれないためである。
「うん、やっぱり可愛いなぁ~」
久しぶりに見えるフォレオの姿に私はため息を漏らす。あの巻かれた髪もそうだけど、何より溢れる女の子らしさ、それを見ただけで体中の細胞一つ一つが、ぱあっと花開くような感覚に陥る。いや、実際陥っていると思う。それくらいフォレオはあたしにとっておいしい栄養なのだ。
「ああ、今すぐ抱きしめたいよぉ。こんなに長い間、フォレオを抱きしめてないなんて、ちょっと信じられないくらいだし」
あふれ出た欲望を口にしながら、でも飛び出さないように細心の注意を払って、フォレオの後を追いかける。
いつもならすぐに飛び出すところだけど、今はそうもいかない。
「オフェリアとエポニーヌのために、ちゃんと探ってからにしないとね」
今、王都にいるフォレオの臣下である友人たちを思う。
どうして二人がフォレオと共に行動していないのか。そして、あたしがなぜこうしてフォレオから隠れて行動しているのか。
それは一週間ほど前、クラーケンシュタイン城に向かって日課を熟そうとしたときに遡る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あのね、私の中にある乙女の純石が震えているの」
「えっと、もう一回話してもらっていいかな?」
椅子に拘束されながら、あたしは目の前に立つオフェリアにもう一度話すように促す。
朝、少しばかりの自主練を終えてやってきた王城、狙いはもちろん可愛い女の子の観察である。この観察を行うことで、あたしは毎日の幸せ成分を補充しているのだ。
いい男を見るとやる気が出ると言っている門兵のシャーロッテさんには悪いけど、あたしからすればシャーロッテさんみたいな綺麗で可愛い女の子を見た方が、俄然やる気が沸いてくる。立て続けに可愛い女の子を見てモチベーションを高めて、こうしてゴールにやってきたというわけ。
そのゴールはなんともくぁわいいレースがあしらわれたルームプレートの場所、今日も最高の可愛いさ、それを満喫して一日を始める、はずだった……。
叩いた扉からは何の音もなく、捻ったドアノブからはくぐもった施錠の音、そして極めつけに通りかかったメイドから、フォレオは朝方にお出かけになったと知らされた。
こうしてノルマは達成されなくなった。でも、仕方ないよねと、半ば諦めて反転したところ、視界を奪われた。
そして、気づけばエポニーヌの部屋にいて今に至る。
そこにはエポニーヌとオフェリアがいて、フォレオが出掛けているのに二人がいることに疑問が浮かんだ直後に、先ほどの説明を受けた。
「由々しき問題だよ。フォレオが私を置いていくなんて……」
「あの、フォレオの彼女か何か?」
「そうね、本当に由々しき問題だわ。これじゃ、毎日の日課が台無しよ。いつも、朝早くから門に立っている衛兵、何気ない挨拶から始まった禁じられた恋……そして二人は朝日に互いを重ねながら……うふふっ」
「うん、やっぱりエポニーヌの考えはあたしに理解できないよ」
オフェリアとエポニーヌ、二人とも平静を装っているけど、それが出来ているようには思えない。
オフェリアは魔石を床に散りばめて何かを占っているらしく。エポニーヌに至っては、何だろう脳内で何かを考えているみたい、多分あたしには理解できないことだろう。
で、そんな理解できないことを考えるより、今この状況を考えることの方が有意義なのは間違いなく、あたしはとりあえず現状を二人に確認する。
「つまり、フォレオは出かけていて、だけど二人とも王城にいるように言われたってこと?」
『………』
二人はだんまりした。だんまりしているけど、オフェリアの魔石を持つ手は不思議と震え、エポニーヌは、ここでフォレオが上になるとかよくわからないことを言っている。
二人はとても混乱していた。
そんな二人に純粋な疑問を投げかける。
「で、あたしが束縛されてるのはなんで?」
「ソレイユ、大地の精霊が囁いているの。あなたはフォレオがどこに行ったのかを知っているって」
「その精霊、絶対に碌な精霊じゃないよ」
「あたしも感じているの。フォレオが男に会いに行ったって、ソレイユがその行方を知っているって」
「フォレオ女の子説を唱えてるあたしとしては、不本意だけどその説を推したいかな……」
しかし、フォレオは男の子だ。多くの仲間に確認してそれはもう揺らぎようのない事実だと知っている。だけど、考えてほしい、あんな華奢な体つきで、常に女の子らしい仕草をしていて、尚且つ可愛いのだから女の子と思いたくなる。むしろ自然に女の子って思うはず。
一部ではそれで男なのがいいとよくわからない発言を耳にするけど、フォレオは私の中で未だに女の子としての位置付けがとても強い。実際、あの服の下に男の勲章があるなんてこと、正直想像できない。
「で、結論から言うと、二人はあたしに何をしてほしいのかな?」
「精霊は言っているわ。フォレオとの契りを破れない今、すべての希望はソレイユにあるって。この私の胸の高鳴り、アウェイキングホーリーの加護を、今こそ貴方に授けるべきだと」
「フォレオがどんな相手と駆け落ちしたのか、知りたいじゃない?」
「どっちの言い分が本当かは知らないけど、つまりフォレオの事を追跡してほしいってこと?」
あたしの言葉に二人は静かに頷く。確かにフォレオが二人に王城待機を命じるのはとても珍しいことだ。必ずどちらかが外出の際には同伴するのが普通の事、この状況に対する二人の懸念も分かる。
しかし、もうすでに城を出発したという話、今から追いつけるのかどうか、正直わからないのが現状だった。
「フォレオがどこに行ったのか、心当たりはあるんだよね?」
「大丈夫、それについては心当たりを見つける予定だから」
「おかしいな。こういうのってすでに見つけてるものなんじゃないの」
「大丈夫、大丈夫。すぐに見つかるはずだから、ソレイユはあたしたちに協力するって言ってくれればいいだけ」
「そうだよ、ここで協力してくれるってソレイユが頷いてくれるだけでいいんだよ」
協力しないと縄を解いてくれない、そんな気がした。おかしい、自分は結構な変人だと思っていたけど、今ここに至ってはあたしが正常な人間に思えてくるほどに、エポニーヌもオフェリアも会話が成立しそうになかった。
でも、あたしは毎日の日課としてフォレオを抱きしめているんだから、ある意味正常だ。そう、これは生命活動に必要な事なんだから、もう仕方がない。
「わかったよ。あたしもフォレオに用事があるからさ、朝の元気貰わないと頑張れないからね」
「また抱き着く気だよね……。ソレイユ、そういうのはどうかと思うの。フォレオ、すごく困ってたから」
「その相手にフォレオの追跡を任せてようとしてるって自覚ある?」
「フォレオからもらえる朝の元気、中々に意味深ね」
そして、あたしは縄を解かれる。このわずかな間に疲れが溜まって、体がフォレオ分を求め始めていた。今日の終わりまでにそれを叶えないと割に合わないよね、これ。
そうして、あたしはエポニーヌとオフェリアに連れられて、あのくぁいいネームプレートの掛かった部屋の前にたどり着く。
「さぁ、何処に向かったのか、突き止めるわよ」
「うん、エポニーヌ」
「え、そんなことしていいの!?」
いきなりドアノブを調べ始めるエポニーヌの姿に声が出た。
さすがのあたしも勝手に入ったりしないんだけど。
しかもエポニーヌが使っているのがどう見てもピッキング用の器具で、ちゃんとした鍵じゃない。これは忍び込むつもりということだろう。
だけど、そんなことを気にさせないくらいにエポニーヌは堂々としている。オフェリアも堂々としていた。あたしの不安気な表情に、エポニーヌは優しく語り掛けてくる。
「大丈夫、心配する事ないわ」
「本当?」
「うん、ソレイユに無理やりやらされたってことにしておくから、これも選ばれし者の特権ね」
「は?」
大きな音を立てて扉が開き、エポニーヌとオフェリアが中へと入り込み、あたしは背を向けて逃げようとしたところを引きずり込まれる。
部屋の中はとてもきれいに片付いていた。それ故に机の上に置かれている手紙が目に付く、それは中身の入っていないものだけど、その表の紋章には見覚えがあった。
「これって……」
「これは……」
「……」
これが旅の始まりになるとは、この時思いもしなかった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日、あたしは馬に乗って大地を駆けていた。
休暇の申請はすんなり通った。相当無駄遣いをしている気がしなくもなかったけど、それはもう言いっこなしで、暗夜王国を駆け抜ける。
結局、フォレオが向かった場所がどこであるかはわかっていない。だけど、大体の予想は付いた。
それは、フォレオの部屋にあった書簡。中身は無くなっていたけど、表に付けられた紋章は白夜の物だった。
それが今回のお出掛けに関係していると二人が直感的に告げたこと、そして協力すると言ってしまったあたしは、こうして白夜を目指して馬を駆っている。
唯一持ってきた、アンナ商会から買った着物姿のフォレオの写し絵を見て元気をもらいながら、休むことなく駆け続ける。
暗夜と白夜の境、無限渓谷は今も変わらず悪天候で、雨が降ってきたら大変だと写し絵は防水に優れた入れ物に包んで一気に駆け抜けていく。ざぁざぁと風で木々が軋む音は、どこかあの戦いの日々を思い出させるけど、敵を追いかけて駆け抜けた日々に比べると、贅沢なことで走り回っている気がする。
戦争が終わっても変わらない傷跡はある。この無限渓谷はまだ白夜と暗夜の蟠りが残っていることを示している。暗夜側からは簡単に通れるここも、こうして白夜の領域に入り込むとなると、白夜の衛兵に止められるからだ。
衛兵に止められて、自身の身分を証明するものを見せると衛兵は「ほー、暗夜王マークス様のご子息の臣下さんとはな。そう言えば昨日だったか、確かレオン様のご子息が通られたよ。いやー、あれで男だって言うんだから、世の中不思議なこともあるもんだねぇ」と零した。
どうやら、フォレオが白夜に向かったのは間違いない様で、もう少し詳しく尋ねると、それを合図とするように空に轟音が響く。
ポツリポツリと地面に斑点模様が広がって、気づけば本格的な雨足になった。いわゆる立ち往生という奴で、あたしは溜息に沈む。しかし、衛兵曰くこういった雨は少しすれば止むそうで、ならフォレオがここで何をしていたのか、訪ねることにした。
衛兵は、そうだねぇと顎に手をやって、そして思い出したようにあたしに話し始める。
やはりというか、この衛兵もフォレオの事を女の子だと思ったらしい。
「あの容姿で男とは本当に信じられなかったよ」
「うん、あんなに可愛いのに男の子なんだ。フォレオ様は……」
様を付けつつ、あたしはため息交じりで答えた。
最初、衛兵はこんな別嬪さんを一人で旅に出すなんてどんな親だと思ったそうだけど、暗夜王の弟の息子とわかったところで、その認識を改めたそうだ。
フォレオの実力は暗夜だけではなく、白夜にも届いているからだろう。衛兵は瞳を入れ替えたようにフォレオを見直したそうだ。
通り雨があって、フォレオは少しだけ濡れていたとか。雨露が絡まった髪は何とも言えない美しさがあって、最初声を掛けるのを躊躇うほどだったのだそうだ。話を聞いている限り、そんなものを目に出来るなんて、正直とてもうらやましい。
あのフォレオが雨露に濡れている姿をこの衛兵は独り占めしていた。その事実がとてもうらやましい。多分、あれだ、雷の音にきゃっ、とか声を上げたりするに違いない。あたしが近くにいたら抱きしめて守ってあげられるのに。
衛兵との他愛のない話を続けていると、フォレオがどうして白夜にやってきたのかという点が上がった。衛兵もそれが一番気になるし、それを確認することが仕事であるのだから当然のことだろう。
その質問にフォレオはちょっと人と会う用があって白夜に来たんです。とだけ答えたそうだ。
となると、あの机に置いてあった空き封筒は、白夜に住む誰かからの手紙だったということ、臣下を置いて会いに行くとはよほど大切な用事だろう。
「ちなみにどこで会うかっていうのは……」
「たしか、テンジン砦で会う約束をしてるって言っていたな」
「テンジン砦か……」
テンジン砦、そこがゴールなのかどうかはわからないけれど、次の目的地が決まったのは確かだ。
衛兵と話を負えると、あたしは雨が止むのを待つことに専念する。旅の終わりには程遠いいようだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今、テンジン砦は大きな交易所として稼働している。
戦争が終わり、暗夜と白夜の間で交流が盛んになると、多くの物資が流入するはず。リョウマ王はそれを見越してテンジン砦の改装を行って、大きな交易所へと姿を変えたというわけだ。
ここには東西の様々な物資が溢れていて、暗夜の地下街で見る商品も並んでいるから、少しだけホッとする。
なんだかんだ、暗夜の地を離れて不安に思っていた部分もあったということかもしれない。暗夜でよく見る商品を目にする度に、どうも父さんと母さんの顔が頭を過った。
「はぁ、少しホームシックなのかな……」
手にしたティーカップを眺めてため息交じりに呟いた。これは家にあるのと同じ型の物で、いつも母さんが珈琲を準備してくれる。しかし、いくら思い浮かべても珈琲の香りはしてこないので、早々にカップを置いてその露店を出た。
呼び込む声は暗夜も白夜も変わらない。活気も変わらない、どんな状況であっても人が生きていくことは、そう言った変わらないものの積み重ねなのかもしれない、そんなことを思いつつテンジン砦にいるのかはわからないけれど、フォレオの探索を始める。
まずは可愛らしい小物の類や、フリフリの可愛らしい洋服など、フォレオが興味を持ちそうな物が置いてあるお店を中心に写し絵を見せながら、こんな可愛い女の子が来なかったかと尋ねて回る。しかし、どの露店でもそんな子は見ていないという返答ばかりが帰ってきた。
「この露店街には足を運んでないってことかな?」
誰かと会う約束をしていたということは、露店に用はなかったということだろう。
なら、宿場になら手掛かりはあるはずと向かい、同じように写し絵を見せて尋ねるが、今日までの宿泊客にこのような方はいないと言われてしまう。
どうやら、フォレオは宿を利用していないという事らしい。
「……万事休すだね」
オフェリアとエポニーヌの頼みでここまで来たけど、あまりの八方塞がり具合にお手上げ状態だった。
フォレオの痕跡を完全に失い、途方に暮れてあたしはとぼとぼと歩き続ける。
徒労に終わるとはこのことだろう。何も得る物がないと諦めが付いたところで顔を上げたところ、立派な建物が目に入る。同時に彩鮮やかな布が顔を覗かせていることに気が付いた。
「ん、これって……」
思い出したように写し絵を取り出して見比べる。フォレオの姿とそこに並べられている物、柄は違うけど多分同じタイプの着物だ。この頃、暗夜の市場にも少なからず出回るようになったけど、大量に扱っているお店はないからと食い入るようにあたしは眺める。
写し絵の姿と置いてあるものを交互に見ていると、段々こういったものを着てみたいという欲が出てくる。そう考えた時には、入り口を潜って中に入っていた。
店内は外の活気に比べるととても静かで、別世界に入ってきたような錯覚に陥るほどだ。少しばかりキョロキョロと視線を巡らせていると、ようやく奥から声が聞こえてくる。
「いらっしゃいませー、ごめんなさいねぇ。おまたせしちゃって……あら? 見たところ暗夜の人みたいね。何をお探しかしら?」
「え、えっと、そのちょっと興味があって覗きに来ただけで」
「そう、見て行くだけでもいいから、目を通していってちょうだい」
独特の音色の店員さんはそう言うと、並んでいる浴衣の中の数着へとあたしを誘導する。あたしに合いそうな色というのは確かにある、そしてちゃっかりともう着付けに必要なものまで集め始めていた。どうやら、一着は着ないといけないみたいだ。
そろそろ夏場も近づいているからか、生地の厚みが少し薄い気がした。確かにこの写し絵のフォレオが着ている物は夏にはちょっと熱いよねと思いつつ、商品に視線を向ける。
赤い生地の物、薄いピンクの生地、そして青……。
父さんのイメージの色だからかもしれないけど、自然と青に手が伸びる。どちらかというと男性向けの色な気がして、隣にある水色はまだ女の子向けかなと、手を伸ばす。
「うーん、これかな……」
そうして手に取って振り返ると、もう着付けの準備を終えていた店員さんと目が合った。
パパッと脱いで胸を布で撒かれる。少しだけきつくしたのは、着物はこの方が見栄えがいいからだそうだ。着物の着付けは生れて初めてのことだから、言われるままに袖を通して言われた通りに動く。気づいた頃には着付けも後半に差し掛かっていた。
「一人で着るのは大変ですね、これ」
「そうね、馴れてない人だと腰巻みたいになったりするから。特に暗夜の人は袖を通しても、その後はボロボロって感じね」
「店員さんはとってもうまいですね。それにとっても美人さんです。そうだ、この後お茶でもどうです?」
もうフォレオを追いかけるのは難しそうだと判断して、あたしはこの女の人とお茶をして暗夜に戻ろうと考えていた。
相手はあたしの提案に少しだけきょとんとして、だけどすぐに砕けたようににっこりと笑った。
「あらあら、この歳になってお茶に誘われるなんて思ってもいなかったわ。でも、残念ね。交代の子が来たら、すぐにイズモへと行かなくちゃいけないのよ」
「イズモって、イズモ公国の事?」
「ええ、今そこでお祭りの準備が行われてるのよ。向こうで着物の販売と着付けとかを行う予定なのよ」
「そうなんだ。それじゃ、無理してお茶するわけにもいかないよね」
「ええ、それに非番でも暗夜王の息子の臣下が、白夜でナンパするのはまずいと思うわよ?」
その言葉に方がピクリと跳ねた。すぐに振り返ると変わらないニコニコスマイルがあった。この人、あたしのことを知っている!?
「え、えっと、あのあたしとどこかでお会いしたことありましたっけ? その、見覚えが無いんですけど……」
「直接はないわ。タクミ様とレオン様との交流の場が設けられると、夫と一緒に暗夜へ向かうことがあるから、時々女の子を追い回してる貴女を見かけていたからね?」
「……もしかして、父さんの戦友?」
あたしの問い掛けにその人はええ、と答えた。キョロキョロと周囲を見回すと、入り口にある看板が目に入る。そこには『オボロ呉服店』という文字があった。
「お、オボロさんっていうんですか?」
「ええ、よろしくね。いきなりこんな話をされても困惑するだけだと思うけど、少しは王の息子さんの臣下であることを自覚したほうがいいわよ。いつかこんな顔で怒られるかもしれないから」
背後から感じる気配に覇気が混ざりこむ。いったいどんな顔をしているのか、確認したくても確認できない。
「は、はい。き、気を付けます……」
「ふふっ、それにしても一緒に来たわけじゃないのね?」
「一緒?」
「昨日、フォレオ様がいらっしゃってね。予定通りに来てくれて助かったわ」
その言葉を聞いてフォレオの部屋に置いてあった白夜からの書簡が頭を過った。
どうやら、フォレオが会いに来たのはオボロさんのようである。
「そ、そのどういった要件だったんですか?」
「フォレオ様から着物の件で話があって、本当ならこちらが暗夜王国に着物を届ける予定だったんだけど、直接見に来るっていう話になってね。ちょうど、イズモ公国の祭事で用事があったから、ここで商品を確認してもらうことにしたのよ。昨日は夜遅くまで時間が掛かってね、ここに泊まってもらったわ」
「そ、そうだったんですか……」
こういったものを妥協しないフォレオの事だから、長い時間を掛けてしまったんだろう。そしてあの書簡の正体が分かり、ホッと一息吐いた。エポニーヌとオフェリアはあの書簡の相手とその内容を気にしていたけど、これですべての謎が解けたと言ってもいい。
安心すると、今度は違う事が気になった。ここに着物の件でフォレオが来たということは、無論それを買っていったということだろうから、その内容が気になったのだ。
「ちなみにフォレオは何着買っていったんですか?」
「たしか、四着ね」
「四着!?」
新しい情報が追加されて、あたしの中のフォレオが四人に分裂した。しかし、何色かわからないから展示されている着物をそれぞれ着せ替えていくことにする。
最初は桜をあしらった薄ピンク、次に情熱的な赤、百合の花が刺繍された白、他にもまだまだ色々とあるけど、それだけでも口元が緩みまくってしまう。こんな素晴らしい世界が望めるなんて……
「着物って素晴らしいですね、オボロさん!」
「そんな腑抜けた顔で言われても、返しに困るわね。だけど、すごくいいものだと思うわ」
そう言って、あたしの腰当たりがポンと押された。
「はい、終わったわ。中々、似合っているわよ」
「……わぁ」
大きい姿見に映る自分の姿に感嘆する。自分の姿に見惚れるなんてと思うけど、今までこんな自分は見たことない。
水色の着物はあたしの桃色の髪に合っていたし、装飾された赤い金魚が生えていて、とても良かった。
「ふふっ、その様子だと、気に入ってくれたみたいね」
「はい! こんなに可愛いなんて思ってなかった。えへへ、フォレオと一緒に着物でお祭りとか回ってみたいなぁ……」
「お祭りと言えば、イズモ公国の祭事だけど……。フォレオ様は最後にそこに寄ってから帰ると言っていたわ。着物も持って行ったから、もしかしたら参加するのかもしれないわね」
「参加ですか……」
フォレオがお祭りに向かったと聞いて、この着物が欲しいという思いが過る。
「ちなみに……これっていくらなんですか?」
それにオボロさんはにっこりと笑みを浮かべて親切丁寧に答えてくれた。
あたしはもう何とも言えない気持ちになり、その日のうちにテンジン砦を後にした。
そして、あたしはこの旅を終わりにするために、決戦の地へと赴くのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
イズモ公国に到着したのは祭りが始まる前日ほどで、まだ本格的に見物客が溢れてはいなかった。
ここには白夜の人も暗夜の人も同じくらいいる。この時期、イズモ公国の祭事に合わせて港町ディアやミューズ公国からも特別便が設けられていることもあるからかもしれない。
でも、混雑のピークは明日であることを考えると、今が一番落ち着いている時間だとも思えた。
「はぁ、着物欲しかったなぁ……」
宿で腰を下ろしての開口一番はこれだった。
実際、あの水色の着物に若干惹かれていた部分もあったから、今の手持ちで買えたらと思ったけど無理な話だった。
オボロさんの言った通りフォレオがここに来ていると考えれば、お祭りには参加するだろう。
フォレオを追ってここまで来たのだから、探し出して抱き着かないことにはあたしの旅が終わらない。
出来れば着物姿で驚かせたかったが、逆立ちしてもそんなお金は出てこない。
「今度からそれなりにお金を持って旅をしないと。どこにチャンスが転がってるかわからないからね」
そうして、あたしは腰を上げて宿屋を飛び出す。腰に忍ばせた携帯用のバックにフォレオの写真を忍び込ませて、街道を歩く。
目に映る提灯や神輿という白夜で使われている神様を乗せる台座が、風景に彩を加えている。暗夜の収穫祭とはまるで違うその様をまじまじと眺めつつ、道を進んだ。
そして、もう一つ大きな街道に出たところで、帽子を被った誰かが目の前を通り過ぎた。
一度は視線を外して前を向いたけど、視界の隅で揺れる縦ロールが無理矢理視線を戻させる。
手に持ったバックに可愛らしい横顔、フリフリと揺れる縦ロールと口元に時々伸びるやんわり握った手。服装だけだと誰かはわからないけれど、何度も何度も目にして抱きしめて、さらに追いかけ回しているあたしには一目瞭然だった。
「……フォレ――」
名前を叫ぼうとした口、しかしそれを咄嗟の判断で止めて素早く物陰に隠れる。
今の声に気づいたのか、立ち止まった人がキョロキョロと周囲を見回す。横切った時の顔に比べて不安気そうに周囲の様子を伺っていて、その被っている帽子から顔が見えた。
フォレオだった。
「今、ソレイユの声が聞こえたような……」
何度も追っているからかもしれないけど、フォレオはあたしの声をよく覚えてるみたいで、その事実にうれしさと緊張が同時に走った。
ここまで来て、フォレオに逃げられるわけにはいかないという心と、もうどうでもいいから今すぐハグっとしに行きたいという心が鬩ぎあう。
その合間もフォレオは小動物のようにフルフルとしている。ハグっとが一歩踏み込んだ。
同時に体が動く、物陰から飛び出してフォレオを抱きしめようとするハンターとしてのあたし。
「だ、誰ですか!」
フォレオの声が響く、静寂を切裂いたその言葉、その視線の先にいたのは……
「にゃーお」
「……猫? そうですよね、ソレイユにお出かけの予定は伝えていませんし、第一ここは白夜なんですから、いるわけありませんよね」
裏路地から現れた猫にフォレオは安堵の息を漏らす。その手前でどうにか踏ん張りとどまったあたしは、額から顎先までを駆け抜けた汗に生き心地をようやく感じる。
間一髪だった。一瞬でも遅れていたらフォレオに感づかれていたことを思うと、慎重に事を運ぶべきだと改めて自覚する。
そして、ようやくフォレオが歩みを始めたので、それを追った。
フォレオは街の様子を眺めつつ、奥へ奥へと進んでいく。周囲の風景を眺めながら、時折女の子みたいに柔らかい笑みを浮かべる。
それを見る度にあたしの中が温かい気持ちで溢れ、長い禁フォレオ生活の苦しみが浄化されていくのを感じた。
そうして時々、振り返るフォレオの視線を退けながら、坂の前にやってきた。
どうやら、フォレオはこの坂の上にある何かに用事があるようで、フォレオはまったく後方を確認しないで、ただただ坂を上り続けていった。
ようやく上り切ったそこには小さなお店があって、フォレオは吸い込まれる様に入っていく。逃げ場のない空間だけど、あたしはそのお店の中に入り込む。
そこはとても煌びやかな世界だった。
キラキラと光る髪飾りや、服に添える装飾品などが展示されていて、その一つ一つが特別な輝きを持っているように感じる。
「すごく、綺麗……髪飾りとかみたいだけど……」
その一つ一つが身に着けた人の幸せを願っているように感じられて、あたしはウキウキとそれらを眺める。
そして、フォレオがこのお店に来た意味を大体理解した。
おそらく、着物に合う装飾品を選びに来たんだ。四着、柄も別々な物を買ったはずだから、装飾品もそれぞれに合わせて用意したいということだろう。少女みたいに可愛いものが好きなフォレオがどんなものを選ぶのか、すごく気になった。
ちらっと奥を見ると、店の主人とフォレオが話をしているのが分かる。着物も一緒に置かれているから、真剣に悩んでいるみたいだ。多分、背後に立ってもばれないと思う。
(もう、ばれる前提だから覗きこんじゃおう)
そう思って、フォレオの後方に立って、聞き耳を立てることにした。同時に、どれが似合うのかなと、フォレオの写し絵を取り出して一度目を通し、すぐに取り出せるようにと、バッグの口は開けたままにする。
ちょうど最後の着物に似合う物を選んでいるようで、聞き耳を再開したところだった。
「そうかい、贈り物なのかい」
「はい、ソレイユが気に入ってくれるといいんですけど……」
その言葉を聞いて全身が固まった。
今、誰が気に入ると言った?
ソレイユ……、もしかして、あたし?
どうしてあたしの名前が出てくるの?
混乱しかけた頭に釘を打って、あたしは再び耳を傾ける。主人はこの色で刺繍が赤だとこれかこれと話している。それを受けてフォレオは真剣に考えながら、でもあたしのことを考えるとこっちの方が可愛いかもしれないとか言い出す。
あたしは、体の一部が破損したみたいにガクッとなった。
ちらっと顔を伺う。そこにはいつも以上に真剣な表情のフォレオがいる。あたしの中にあるフォレオ像とは全く違う輝きがあって、いつもの恥じらう可愛い乙女なフォレオは何処に行ってしまったのか。そして、さっきまでハグしようと意気込んでいたあたしもどこに行ってしまったのか。
意識の迷路に迷い込みつつあるあたし、それにさらなる追い打ちが襲う。
「へぇ、こんなに真剣に悩んでるってことは、その相手を大切に思ってるみたいだな」
「はい。みんな、こんな僕のことを受け入れてくれる、大切な人ですから」
たた、たたた、たららったたらた、大切な人ぉ!?
いつからあたしはそんな存在になったのか、全く分からない。わからないけど、思わず背筋をピシッと伸ばす。落ち着けと、手ごろな装飾品であるアヒルを手にした。
アヒルとにらめっこしながら、そう言えばことあるごとにフォレオのこと考えていたことを思い出す。バックにはフォレオの写し絵まで入っているし……。
自身の行いを思い出しながら、第三者から見て多分そうなのかもしれないと思い始める。このままだと脳が破裂するかもしれないと、アヒルを置いてお店から脱出を開始した。
まだフォレオは店主と話しをしている、今なら気づかれずに抜け出せるはず。そう思って一歩を進む。そしてもう一歩進んだところで、何か音がした。
コトンッと静かだけど、きちんと耳に響く音が木霊する。足元には置いたと思ったアヒルの装飾品が鎮座していて、それは意図的かあたしの後ろを見ている気がした。振り向いたら命は無い、そう実感したからこそ、何食わぬ顔でそのまま出口に進もうとして。
「え、ソレイユ?」
「……」
フォレオの声が背中に刺さった。
心臓が思った以上に跳ねる。
跳ねて転んで、喉が一瞬でカラカラになった。おかしい、いつもみたいにフォレオは可愛いなぁとか言って抱き着きに行けばいいのに、今は何とも足が重い。
フォレオの呼び止めはまるで呪縛だ、回避率がとてつもなく下がる。しかも範囲がやたら広い、二人分距離が開いているのにあたしはもう攻撃を避けられないほどになっている。
こうなったら恍けるしかないと、下手な芝居に興じる。
「え、えっと……。あ、あたしはソレイユじゃないよ。と、通りすがりのセレイユだよ……」
「ソレイユですよね? その桃色の髪、白夜じゃあまり見ませんし」
「へ、へぇ、そのソレイユっていうのは、あたしと同じ色の髪をしてるんだね、いやー、すごい偶然だなぁ」
しどろもどろになりながら、どうにか動く足を使ってじりじりと出口へと向かっていく。アヒルは未だに後方を見つめていたけど、拾って棚に戻す暇はなかった。まずはこの窮地を脱出しないと、そうして体を思いっきり動かした。
パサリッ……そんな音が真後ろからやってくる。今の音はなに?
振り返ることが出来ないまま、新しい音が生まれたことで深みを増す無音空間にさらなる呪縛を掛けられてしまう。
それを打ち破ったのはフォレオの声だった。
「……それじゃ、今バックから落ちたそれは何なんですか?」
それ? 後ろのバッグに入っていた何かが落ちたらしい。震える手でバッグを前に持っていき、中身を確認した。
写し絵が無かった。無かったということは落としたということだ。ここに来るまでに落とした? でも、今さっき一度手にもって確認して、バッグに戻した。ハラリッという音を聞いた。つまり――
「しょ、しょれ、しょれはぁぁぁ……」
「……ソレイユ」
「あう、あううっ」
逃げ場が無くなると、視界がぐにゃぁと歪むって聞いたことがある。本当にその通りで、立っていられなくなったあたしはへなへなとその場にへたり込むのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お店のすぐ外にあるベンチに腰掛けながら、あたしはカチコチになっていた。
隣に座るフォレオを見ることが出来ず、ただただ自身の手に視線を下ろし続けるしかない。
さっき、フォレオがあたしのことを大切な人だと語っていた。そのことがどうも頭から離れないからだ。
いつもならうれしぃなぁとなるのに、今日ばかりは勝手が違う。なにせ、脳裏には先ほどの凛々しいフォレオが焼き付いているのだ。どんなに乙女フォレオを思い浮かべても、すぐに霧散してしまう。
どうにかして誤魔化さないと、そう思って顔を上げる。
「その、ソレイユ……」
恥じらいを感じさせる音色が、あたしの耳に届いた。
一マス隣にいるフォレオは顔を赤らめている。いつもの流れなら可愛いと即ハグするけれど、今はとてもそうできない。
あたしの顔も真っ赤っ赤で、胸のドキドキがどうしても止まらない。踊りの練習を見られた時よりも、ドクドクしている。恥ずかしさじゃない気がした、よくわからないけど、これはそういう物なんだと、なぜか思ってしまう。
いつも通りの空気に戻すことはもうできない。フォレオは指を付き合わせながら、あたしに視線を向けた。
「その、さっきのお店での僕の話……、聞こえてましたか?」
よし、落ち着けあたし。今からでもいい、どうにか軌道を修正するの。
ここでの答えは『ううん、聞こえなかった』だ。これ、これしかない。
さぁ、いくわよ!
「うん、聞いてた……」
ちょちょ、ちょっと待ってよ脳内回路。どうして肯定した!?
ここは回避、回避の一点張り。すこしでも避けられる可能性に賭けて森とか柱、墓に逃げ込むところでしょ!?
いや、もしかしたらこれはフォレオが『ソレイユ、聞こえてなかったですよね?』と聞き返してくるパターンを予期したに違いない。後手不敗がモットーの傭兵ならではの戦術を、脳が導き出したという事ね。
つまり、フォレオの返答は……
「そうですよね、あんなに近くにいたんですから、聞こえてないわけないですよね……」
「……うん」
駄目でしたー。
レオン様から受け継いだフォレオのブリュンヒルデがあたしに刺さりました。もう、逃げ場がありません。
そんな追い詰められたあたしに、フォレオがさらに接近する。肩が密着するような状況、こんな時だけどやっぱりフォレオの香りはいい香りだった。
可愛らしい乙女の香り、でも乙女の香りで浮かび上がるのは凛々しいフォレオ。どっちがほんとのフォレオなの?
混乱するあたしを尻目に、フォレオは一度俯いて膝の上で拳を作って、決心を固めたように口を開いた。
「ソレイユ……。その、こんな形でお伝えするべきことではなかったんですけど。でも、今さらここまで来てやり直すこともできないから……その、いいですか?」
いいですかって何のこと?
そう、思っていても言葉が出ない。あたしの無言を肯定と受け取ったようで、フォレオが静かに動き始める。
それに合わせて、なぜかあたしは目を瞑る。なんで目を瞑るのかはわからないけど、お母さんが言っていた。こういう時は自然と目を瞑ってしまうんだと。
「ソレイユ……」
フォレオの膨張した声が耳に入り込んで、あたしの意識を束縛する。何かの音がして、少しだけ身構えた。
そしてずっと待った、待った待った、長い時間を待った。
だけど、何も起きなかった。
暗闇の中、何かがおかしいとようやく思い至る。
「ソ、ソレイユ、その、そういうことを求められても……ぼ、僕たちは恋人同士とかでもありませんから……」
うん、何かがおかしいとようやく踏ん切りがついて、勢いよく目を開けた。するとどうだろう、隣にいたはずのフォレオは真正面に立っていて、その手には大きな包みがあって、それはあたしに向けて差し出されているようだった。
「えっと……これは?」
「ソレイユ、受け取ってくれますか?」
ずいっと差し出されたそれをあたしは受け取る。包まれたそれは感触から察する限り重いものでもないし、特別硬いものでもなかった。
フォレオに視線を向けると、開けてみてくださいと可愛らしく言われた。
ゆっくりとそれを開いてみると……中から水色の下地に浮かぶ、赤い金魚が現れた。
「これって……」
「はい、ソレイユに似合うのはこれかなって思ったんです。その、お気に召しませんでしたか?」
そこには、あのオボロ呉服店で着用した着物と同じ柄の物が入っていた。あの刺繍された赤い金魚があたしの視線にまた現れたことに感動する一方で、どうしてという思考があたしの頭の中をぐるぐる回る。
「どうして、あたしに?」
「ソレイユだけじゃありませんよ。オフェリアとエポニーヌにもプレゼントする予定だったんです。ここにソレイユが現れるのは予想外でした」
そう言ってフォレオは後方に置かれているバックを指差す。どうやら、あの中にも着物が入っているらしい。
「え、フォレオは自分用の着物を買いに来たんじゃ……」
「自分用のも買いましたけど、いつもお世話になっている人にもプレゼントしたいなって思っていたんです。オフェリアとエポニーヌは異界のお祭りで着ていましたから、二人の柄はすぐに決まりました。でも、ソレイユは着ていなかったので、すごく迷っちゃいました。その、どうでしょうか? 僕なりにソレイユに似合う色だって思ったんですけど……」
不安そうな表情を浮かべるフォレオに対して、あたしは困惑だけが張り付いていたと思う。
「いや、そうじゃなくて……。どうして、あたしに?」
「え?」
「だって、あたしっていつもフォレオに迷惑かけてるから。それに、本当ならサプライズで渡したかったと思うし、あたしフォレオの邪魔ばっかりしてて、一緒にいるのだって本当は――」
「……確かに、ソレイユはその色々と僕が苦手に思ってることをしてきたりします。今回は同時に渡したかったっていう僕の計画もめちゃくちゃにされてしまいました」
「うっ……。返す言葉もありません」
「だけど、こうやって僕のことをいっぱい可愛いって言ってくれる女の子のことを嫌ったりなんてしません。ソレイユがお世辞じゃなくて、本当にそう言ってくれてることはわかっていますから」
世の中、何が幸いするかわかったものではないなと、この時ばかりは思う。
「だからソレイユにも着物をプレゼントしたいって思ったんです。僕の大切な友達であるソレイユに、喜んでもらいたいから」
「……あー、大切な人ってそういう意味だったわけね」
そして矢継ぎ早に先ほどの発言が受け取ったあたしの勘違いだと気付く。もう胸のドキドキは形を潜めて、今はその反動からか安堵と疲労がぷっくり顔を出し始めた。
「えっと、ソレイユ、その駄目でしたか?」
「え、ううん、そんなことないよ! ただ、ちょっと長旅で疲れちゃっただけで……」
「そうだったんですね。でも、ソレイユの行動力には脱帽しちゃいます。白夜に一人で来るなんて」
「はぁ、サプライズもいいけど、二次災害に巻き込まれるあたしの気持ちも考えてくれるとうれしいんだけどね」
「?」
フォレオは首を傾げていた。出来るならエポニーヌとオフェリアのことも伝えるべきかと思ったけど、それはしないでおくことにした。というか、ここで話して色々と問題が再発するのは御免だからだ。
ようやく肩の荷が下りたような開放感を得て、あたしはふぅーと安堵の息を漏らす。隣ではまだフォレオがきょとんとしていて、これが何とも可愛らしいではないですか。
「フォレオはこれからどうするの? すぐに暗夜に戻る?」
「まだ戻りませんよ。ソレイユ、明日からここではお祭りがあるのは知ってますか?」
「知ってるよ。フォレオは参加するの?」
「はい、着物の試着も兼ねて参加しますよ。と言っても最後まではいません、多分明後日にはここを発つと思います」
「そっか、ならここで別々に行動するのもアレだから、一緒にいてもいいかな?」
「はい、もちろんいいですよ。それじゃ、荷物を置きに行きましょうか」
そう言ってフォレオは着物の入った風呂敷を手に立ち上がる。
いつも通りの可愛いフォレオになっている。
そう、あたしが抱きしめたくて止まない、女の子にしか見えないフォレオ。
そう言えば、色々とあって頭の中から抜け落ちていたけど、少し前まで何をしようとしていたんだっけ?
あたしは腕を組んで考えた。この旅の目的、こうしてフォレオの痕跡を辿りつつ追いかけた時間、そのゴールが何かを思い出す。
「ふふっ、この着物は浴衣っていうんですよ。前に着た物と比べて気軽に着替えが出来てとても良さそうです。はやく、明日になるといいですね」
そうルンルン気分に語るフォレオ。背を向けて先を歩いていくその姿と、写し絵の姿が重なる。
とてもかわいらしい、本当に抱きしめたいくらいに可愛らしい。
抱きしめたい……、抱きしめたい……。
フォレオに飛びかかって、後ろから抱きしめて頬ずりしたい、頬ずりしてフォレオ分を回復したい。
そう、回復だ。
「……うん、そうだったね」
スッと立ち上がる。一歩二歩三歩、軽快なリズムで進む。
フォレオの真後ろまで接近して、手をガバッと開く。
そして、閉じた。
「え?」
「ふああああっ、久しぶりの感触~」
「そ、ソレイユ!? な、何をしているんですか!?」
「え、何ってフォレオ分の回収。もう、一週間もフォレオを抱きしめてなかったなんて、信じられないくらいだよ」
ぎゅうぎゅうと抱きしめて、柔らかいプニプニな頬に頬ずりもする。あたしの頬とフォレオの頬、二つが重なってまさに夢心地だった。
「そ、ソレイユ! こんなこと止めてください。周りの人が!!!」
「気にしないでいいよ。フォレオもあたしも女の子なんだからさー」
「僕は男ですよ! なんで、やめ、そんなきつく抱きしめられたら、はううっ」
腕の中で暴れるフォレオ、それすらもあたしは楽しむ。
空っぽになり、飢えに襲われていたあたしの内部集落にフォレオ分がみるみる注がれていく。
フォレオは今にも泣き出しそうだけど、その姿も可愛い。というか、どんな姿のフォレオも可愛い。
結局のところ、やっぱりフォレオは――
「可愛いすぎるよぉ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クラーケンシュタインに戻ってきたのは休暇の最終日で、あたしはオフェリアとエポニーヌが待つ部屋に行き、結果を報告した。
「そう、やっぱり私の思った通りだったわ」
「どこがどう思った通りなのか、教えてほしいんだけど」
「着物の買い物で、あたしたちが同行できなかった訳が分からないんだけど」
「まぁ、色々とあるんだよ、きっと。二人ともフォレオに嫌われたわけじゃないんだから、よかったでしょ?」
「そ、それはそうだけど……」
フォレオがどうして着物を買いに行ったのかということは伏せたままにして、特に密会とかでもなく、ただの買い物だったと伝えた。
二人は少し納得できない様子だったけど、連れて行ってもらえなかったのは嫌われたではないことに安堵する。それが確認できただけでも十分だった。
そしてあたしは立ち上がって部屋を後にする。部屋を出ると、そこにはフォレオがいた。
その手には袋が握られていて、打ち合わせ通りやってきたあたしを見て笑みを零す。
「二人なら部屋にいるよ」
「はい、ありがとうございます。すみません、今日までの休暇なのに、こんなことを頼んでしまって」
「いいよ、あたしもそれなりに楽しかったし。だけど今度からはちゃんと説明したほうがいいよ。あの二人、結構ショック受けてたみたいだからさ。それと、あたしにも出かけるときは事前に言ってよね。フォレオを抱きしめて元気を貯めておかないといけないから」
「はい、今度からは気を付けます。だけど、その元気を貯めるのだけは勘弁してください」
そう言ってフォレオは二人がいる部屋の扉を見つめた。袋を持つ手に力が入っている。
「はぁ、このプレゼントを気に入ってくれるといいんですけど」
そう不安げなフォレオを見て、あたしは自然と手を伸ばして頭を撫でる。元気付けるような感じで、もう元気はいっぱい貰ったから、あたしが出来る最大限の応援を送る。
「大丈夫、あたしはすっごく嬉しかったから。二人とも喜んでくれるはずだよ」
「ソレイユ、ありがとうございます。でも、男なのに頭を撫で撫でされるのは、少し恥ずかしいです」
「……もう、可愛いなぁ」
ようやく撫でるのを止めて、あたしはフォレオを見送る。
扉を叩いて、少しして部屋へと入ったところでフォレオの姿が視界から消えた。
あたしは、最後の休日をいつも通り町で過ごすために、王城を後にした。
こうして、あたしのフォレオ追跡紀行は終わりを迎えたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これはもしもの話
ソレイユがフォレオを追う、奇妙な旅の話。
ifの一つ……
『ソレイユのフォレオ追跡紀行』おわり
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日はここまで
ソレイユとフォレオは友人関係なスタンスが好みです。
やっぱりドラゴンは緑色だなって、ミネルバを見て思った。
◆◇◆◇◆◇
番外『カミラ×サクラ隊・最後』
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「そんなことがあったのね」
白夜の暗夜侵攻の熱が冷めないうちに起きたシュヴァリエ公国の反乱は、カムイを苦しめた。
シュヴァリエ公国の騎士の一人と交流があったことを理由に王都で反乱を企てていたという疑いを掛けられ、身の潔白を証明するために鎮圧に向かった。
そして、反乱鎮圧の知らせが届き、数日すればカムイが戻ってくると聞いて、私は到着を待った。
到着予定の今日、扉を叩いてやってきたのはレオンで私にシュヴァリエで起きたことを教えてくれた。
カムイが暴走したこと、アクアがそれを止めたこと。そして、カムイの臣下であるリリスが戦死したこと。何よりも私の中で一番衝撃的だったのは、お父様がカムイから光を奪ったという淡々とした事実だった。
「お父様は、どうしてそんなことをする必要があったの?」
「わからない。出来ればそのことについて調べたいところだけど、今父上に昔のことを尋ねたりすれば、新しい疑惑を生むことになるかもしれない」
「動けないというわけね……。カムイ、苦しんでいないかしら。目のことだけでも酷なのに、リリスまで失ってしまうなんて」
「本人は大丈夫だって言っているけど、実際は消耗してる。だから僕が代わりに伝えに来たんだ。それに姉さんにこういうことに馴れてもらいたくない、一人でいられる時間があれば、きちんと向き合って落ち着けるはずだからね」
レオンの言葉は切実にそれを願っている言葉だ。
私もそうだ、あの優しいカムイが友人や家族の死に動じなくなってしまう事なんて考えたくはない。カムイは何時だって誰かを大切に思っているはずだから……
「まかせて、シュヴァリエでの事はサクラ王女たちに伝えておくわ。カムイには落ち着いてから顔を出すように伝えてちょうだい」
「わかったよ、カミラ姉さん。ごめん、サクラ王女達が眠る時間まで待ってもらってさ」
「いいのよ。それにいきなりそんな話をされても、あの子たちが困ってしまうもの。だけど、カムイが無事だってことが分かっただけでもいいことよ。あの子ね、カムイの事ばかり心配していたから」
私は思い出して、そう呟いた。
シュヴァリエが反乱を起こしたという知らせが入ったあの日……。カムイが反逆者として捕まったという知らせに、一番動揺していたのはサクラ王女だった。この反乱に白夜が絡んでいるとわかった時点で、その報復があるかもしれないよ自分たちの心配をするべきなのにサクラ王女はカムイの事ばかり気に掛けていて、それがとても印象に残っている。
「あの子たちはいい子よ。いい子すぎて、白夜の人間だってことを忘れてしまいそうになるくらい」
「ははっ、カミラ姉さんは長く一緒にいるからそう思うのかもしれないね」
レオンの言い方は、僕は違うけどねと告げていた。多分それが正解だと思う。
だとしても、私の中には少なからず違う感情が芽生えているのが分かる。
初めて会った時に比べて、私はあの子たちの力になってあげたいと、どこかで思っているのだから。
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中庭の休憩所でゆったりと月を眺める。少し前にここでツバキを慰めて、三人にカムイが伝えるべきだったことを、掻い摘んで伝えたのは記憶に新しい。そんな中で起きたシュヴァリエでの反乱は、三人の心を休ませてはくれなかっただろう。
「……サクラ王女、今日はぐっすりと眠れているかしら?」
反乱鎮圧の知らせが届いたのは二日ほど前、そしてカムイが無事だという知らせは昨日届いた。その時のサクラ王女の安堵した表情はとても印象に残っている。
見ている人も安心させるような穏やかさ、純粋に人のことを思い、そして誰かのために祈ることが出来る、それがサクラ王女の人間性なんだと思う。
おそらく、サクラ王女は大切な人のことを素直に思うことのできる人なのだろう。理由は要らない大切から大切なのだと。
そう考えていたら、ふと笑みがこぼれた。
サクラ王女のことを考えて笑みを零すなんて、ここに彼女たちが来た当初では考えられないことだった。思った以上に私も変わっているのだとつくづく思う。
そろそろ戻ろうと視線を屋敷へ向ける。視線の先には屋敷内へと戻るための扉が見え、そこを目指して足を進めようとしたところだった。
その扉の前に立ちつくしている影があることに気づく。それは私の存在に気づくことなく、空を見上げている。
空には月があって、その光に照らされたサクラ王女がそこにいた。彼女は一人、静かに月を眺めている。どこか儚さを覚えるそのシルエットを見つめながら、いつも一緒にいるカザハナとツバキの姿が無いことに気づく。
そう言えばこうして二人きりになるのは初めてだと、私は改める様に腰を上げて歩み寄ることにする。
しかし、歩み寄っているというのに、彼女は気づかない。どれくらいで気付くのだろうかと思って歩を進めていると、もう手の届く距離になっていて、観念したように声を掛けた。
「こんな時間にどうしたの、サクラ王女」
「え、あ、カ、カミラさん! こ、ここんばんは……」
私の声にようやくサクラ王女は行動する。ふいに声を掛けられたからか慌てて動く、そして私に背を向けた。
「……もしかして、私のことが嫌いだったかしら?」
「あ、これは違うんです。そ、その……」
「違うっていうのは何が違うのかしら、声を掛けてすぐに背中を向けられちゃったら、勘違いも何もないと思うけど?」
声を掛けた直後に背を向けられれば、勘違いも何もあったものではないと思う。それに対して、サクラ王女は大きく深呼吸してから答えてくれた。
「え、えっとその……、実は私、あがり症なんです……」
「あがり症?」
「は、はい……。その、大勢の人と一緒にいるときは大丈夫なんですけど。こうして誰かと一対一で向き合って話をするのは、そのえっと……」
意外な事情だと思った。いや、嘘を吐いているのかもしれないと、話し続けるサクラ王女の正面に回る。その顔は真っ赤で、正面の私に気づいていない。そうして、次の言葉を考えているところで不意に上がった顔が私を見つけた。そして、くるっと回って背を向ける。
「か、カミラさん近いです、近すぎます!」
「あらあら、本当に苦手なのね。私を遠ざけるための方便かと思ったのだけど」
「ご、ごめんなさい」
どうやらサクラ王女と二人きりになる機会が無かったのはこれが原因のようだ。ツバキもカザハナもよくサクラ王女の近くにいるけれど、多分このあがり症のことも含めて傍にいたと考えられる。小さくなった背中、見えなくても顔を真っ赤にしているだろうサクラ王女の姿が思い浮かんだ。
「本当は、克服したいと思っているんです。でも、中々うまくいかなくて。同い年の人とかはどうにかなるんですけど、そのカミラさんみたいにとっても大人っぽい方とかは、まるで別世界の人に思えてしまって、何を話していいのかわからなくて……」
「まぁ、人を異世界の住人のように言うなんて……。はぁ、傷ついちゃうわ」
そう言いながらも私の口元は綻んでいる。背中を向けたままで不安を感じているのか、小刻みに揺れている彼女にゆっくりと近づく。私の接近に気づいていないようで、サクラ王女は矢継ぎ早に言葉を連ねていった。
「ご、ごごごめんなさい! その、別に話しをしたくないっていうわけじゃないんです、出来れば、カミラさんとはちゃんとお話しできたらって思ってはいるんですけど――」
「なら、これはどうかしら?」
それを止める様に、私は静かに背中を合わせる。背中に感じるサクラ王女の感触は見た目通り小さく柔らかい。そして、背中を合わせてから少しするとサクラ王女もやがて落ち着き、私の背中に身を預け始める。さっきまでの流れていた空気が軽いものになるのを感じた。
「カミラさんは優しいですね」
「そうかしら、あなたたちを最初殺そうとしていた以上、優しいなんて言えないと思うけど」
「いいえ、カミラさんはとても優しい方です。少なくとも私はそう思っています」
落ち着いているからなのか、サクラ王女の言葉に詰まりは無かった。
だけど、私を優しいというのは間違っている。私が優しく接しているのはとどのつまり、それがカムイのためになるからに他ならない。
「ふふっ、ありがとう。お世辞でもうれしいわ」
「お、お世辞なんかじゃありません! 私、カムイ姉様が信じているカミラさんを信じられます。カザハナさんにもツバキさんとも向き合ってくれたあなたが優しくないなんて、そんなことあるわけないです!」
饒舌に話すサクラ王女、その言葉に少しだけ暖かい気持ちを感じた。あまり嘘を吐ける性格ではないと思ったけど、ここまでストレートに言ってくるのは誤算だった。気恥ずかしさをごまかすように、私は空を見上げる。まだ月が私たちを見下ろしていた。
「ねぇ、どうして月を見ていたの?」
「もしかして、見ていたんですか」
「ええ、あんなに一生懸命月を見つめちゃっていたから。もしかして気になる人のことでも考えていたのかしら」
「そ、そんなこと考えていませんし、気になる人もいませんから……」
私の問い掛けをサクラ王女が慌てて否定する。なら、どうして月を見つめていたのか尋ねると、見えない先で彼女の視線が上がる気配があった。
「ここから見る月も、白夜で見る物と変わらないって思ってしまって。それがどうしてなのかを考えていたんです」
それはサクラ王女のような幼い外見の子から出てくる言葉には思えなかった。
月は月だと言ってしまえばそれまでだけれど、サクラ王女の言いたいことは物体としての事ではないことくらい理解できる。おそらく、ここから見える月と白夜で見た月、違う場所にいるのに全く同じに見えてしまうその理由を、サクラ王女は知りたがっているようだった。
「そうね、例えばサクラ王女にとって月が大切なものではないから、そういうことだったりはしない?」
「大切なものじゃないですか?」
「ええ、私にとって敵の命がどうでもいいものであるように、サクラ王女にとって月はどうでもいいもの。だからどこから見ても変わらない、ほら理由になりえるでしょう?」
「え、えっと、そうかもしれませんけど。それはなんだか悲しすぎると言いますか、寂しいと言いますか」
サクラ王女の言いたいことはわかる。すべての物を二つに分けてしまったら、それは興味のある物と無いものになってしまう。極論ではあるけど、世界は多分これだけで成り立っているはずだ。考えて見ればとても寂しいことかもしれないけれど、私にはそれくらいの分別で丁度よかった。
私の考えを口にするとサクラ王女は少しだけ唸って考えていたが、やがて降参するように肩を落とした。
「ごめんなさい、私にはそういう風に考えることは出来ません。でも、どういう風に思うべきなのかもわからなくて……」
「ふふっ、サクラ王女にはまだそういうのは早いのかもしれないけど、いずれわかる日が来るはずよ」
「そ、そんなものなんでしょうか」
それに私は、そういうものなのよと答えた。
うーん、とサクラ王女は再び考え始め、私はそれを背中に感じながらこの子たちのことを思う。シュヴァリエの反乱には白夜が一枚噛んでいることはわかっていた。それが彼女たちを危険に晒す可能性があることも……。
戦争が進めば進むほど、それはサクラ王女達の命が消費されていくことを表している。白夜が優勢になれば、人質としての価値は上がる。逆に暗夜が優勢で白夜が劣勢なら、人質の価値は下がっていくことだろう。だけど、どちらの終わりも深く暗い闇に違いはなかった。
サクラ王女たちの命が助かる可能性は、今現在どこにもない。それは誰もがわかっているけれど、口に出さないことだった。
(サクラ王女達は気づいているのかしら……)
背中越しに感じるサクラ王女の温もりは確かなものだけど、それが何時消えてもおかしくない灯でもある。
だけど、彼女は知っているのかもしれない。自分の命が何時潰えてしまうのかわからないということを。だから、ふとこんな疑問が浮かんだのかもしれない。それがどういう意味なのかは分からないけれど、サクラ王女には必要な事だと思えるから。
「うーん、カミラさん。やっぱりわからないです」
「ふふ、考えて見つかる物じゃないのかもしれないわ。ある時ふとわかる物だったりするものだから、気長に考えたほうがいいわ」
「わかりました。あの、もしもそれがわかったら、カミラさんに最初にお話してもいいでしょうか?」
「ふふっ、いいわよ。楽しみにしているわ」
「はい、ありがとうございます」
今はその夢が続く様にと、私は手を差し伸べた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
サクラ王女と夜に話をしてからわずか一週間後のこと、そのセレモニーは開かれた。
カムイを公式に暗夜の王族として公表するその式典は、かつてないほどに盛大なものとして扱われた。
反乱を鎮圧した英雄、暗夜を勝利に導く女神、マークス兄様に並ぶ剣の名手、他にも様々な二つ名がある中でダークブラッドという称号が今のカムイを表している。そんなカムイの姿を私は遠くから眺める。
「行かなくていいんですか?」
「ええ、ここからでもカムイの姿は見えるもの。それにあなたたちを置いて行くわけにはいかないわ」
私の近くにいたサクラ王女はそう言ってぎこちなく笑う。サクラ王女がここに呼ばれたのはいわば見世物のようなもので、正直こういう雰囲気に馴れていると言われなかったのでホッとした。
周囲からはシュヴァリエ公国の反乱に加担していた白夜を誹謗する言葉が時々漏れてくる。中には下世話な視線と言葉でサクラ王女を見ている者たちもいる、なんとも性質が悪かった。
本来、ここにサクラ王女達が来る必要はない。カムイの式典だとしても、それに白夜の人間が参加する通りなど無いのに彼女たちはここに呼ばれた。
お父様の命令だから仕方ないかもしれない。でも、ここに呼ぶことに意味があるようには到底思えなかった。
「あ、いたいた。カミラ王女、サクラ様!」
「サクラ様、大丈夫ですか?」
「あ、ツバキさん、カザハナさん。そんな慌てなくても大丈夫です」
少しの間だけでもサクラ王女を見失ったからか、慌てた様子で二人が駆け寄ってくる。カザハナはもう離れたりしたらダメだからねとサクラ王女の手を取り、ツバキは周囲でそう言った下世話な話をする者たちを牽制し始める。
その視線にうんざりしたのか、サクラ王女が反応を示さないからなのか、興味を無くして散っていく。ようやく落ち着いたところでカザハナが呆れて溜息を漏らした。
「サクラ様、大丈夫? ああいう奴らってホント信じられない」
「は、はい、ありがとうございますカザハナさん。その、手が少し痛いです」
「ダメだよ、手を離した隙に変な奴がサクラ様を攫うかもしれないでしょ、これだけは譲れないからね!」
ますます強くなっていく手の力にサクラ王女の眉間に皺が寄っていく。サクラ王女にしては中々に渋い顔が出来上がりつつあって、可愛さが台無しになりそうな勢いだった。それをツバキがやんわりと緩ませるように指示たところで、サクラ王女の表情に安堵が混じった。
「ふふっ、カザハナはサクラ王女のナイトなのね」
「ナイトって白夜でいう侍みたいなものだよね! もちろん、そうだよ。これからもサクラの事はあたしが守っていくんだから!」
「カザハナ、それは聞き捨てならないなー。俺もずっとサクラ様のことを守っていくつもりなんだけど」
「何を言われても、サクラは渡さないからね」
「へぇ、なら今度勝負しよっか。それで負けた方が引き下がるってことでどう?」
「カザハナさん、ツバキさん落ち着いてください。カミラさんも二人を説得してください」
「さぁ、どうしようかしら?」
困って顔を赤らめているサクラ王女はなんとも幸福そうだった。
サクラは白夜の花の名前だからかもしれない。花が開いたような笑顔というのはあながち間違いではないと思う。そんな可憐で美しいものを見ると、口元が綻んでしまうのも当然のことねと、自身の口を緩ませたままにした。
「カザハナさんにツバキさん、それ以上続けるなら、私カミラさんに護衛を頼んじゃいますよ」
と、今度は私の元にサクラ王女が駆け寄ってくると、ドレスの裾を掴みつつ私を盾に隠れる。私もこの修羅場にもなっていない修羅場の輪に入れられてしまったようだ。
そしてサクラ王女のその行動に二人は驚く。信じられないものを見た様にあんぐり……とまでとはいかないが、ぽかんと口を開けていた。
「え、いつの間にカミラ王女とそんなに仲良くなったの!?」
「俺たちの知らない間に何かあったみたいだけど……」
二人は羨望の眼差しと言っていい物を私に向けている。その二人の反応にサクラ王女が隠れるのを止めて、私の真横に立った。
「え、えっとですね。その……」
何とか弁解しようとしているみたいだけど、二人が他人にそういう視線を向けたのは珍しいことなのか、言葉を選びきれないようだった。
「ふふっ、ちょっとおねえちゃんが相談に乗ってあげただけよ。あなた達と同じ、カザハナにもツバキにもそうしたように、サクラ王女のお話を聞いてあげただけ」
「そ、そうです。カミラさんに色々と聞いてもらって」
「ええ、私としてはもっと大胆な夜のコミュニケーションも悪くないのだけどね?」
私の言葉にカザハナが顔を真っ赤にして、ツバキに続いてカミラ王女まで!? サクラ、あたしも夜にお話しに行ってもいい?と矢継ぎ早に言うものだから、それにサクラ王女まで真っ赤になる。
そんなカザハナの発言から庇うように、私はその頭を優しく撫でてあげた。
「あらあら、サクラ王女に頼まれたら守ってあげないといけないわね。サクラ王女」
「ひゃっ、カミラさん。そんなに撫でないでください」
「いいじゃない、守るものは愛でてこそだもの。ふふっ、サクラ王女を守ってあげたくなる二人の気持ち、わからないわけじゃないわ」
「そ、それはそうかもしれないけど、サクラはあたしが守るの!」
「俺たちはサクラ様の臣下だからね、カミラ様に悪いけど、その役目は返上してもらわないと」
「そう、サクラ王女は幸せ物ね。こんなにあなたを守ってくれる人がいるんだから」
私はサクラ王女に視線を下ろした。まだ赤くなっているその顔を見てあげようと考えて覗き込んだ。だけど、その顔は予想と違う物だった。
「……」
私が見た時、サクラ王女はただ静かに見えている景色を見つめていた。
まるで時間が止まってしまったように、さっきまで可愛らしく思えたその顔はどこか冷めているようにさえ感じてしまった。
「サクラ王女?」
「……あ、カミラさん」
声を掛けられるまで、時間が止まっていたのかもしれない。声を掛けなかったらサクラ王女の時間は止まったままだったのかもしれない。そう思えてくるほどに、サクラ王女の言葉はか細いものだった。
一体何が原因なのかと視線を動かす。まずは正面、カザハナとツバキもサクラ王女の様子を心配している。二人がこの変化の原因とは考えられないから、視線を奥に進めた。
しかし、進めても同じような貴族の姿以外に何もなかった。何も特徴的な物はない、誰かがサクラ王女の命を狙っているのかとも考えたけど、このセレモニーはあのマクベスが全体の指揮を執って行っていて、それはお父様からの指示を受けての物だ。生ぬるい警備などしていないだろう。
だから原因は何もわからなかった。わからないけどサクラ王女に起きた異変は確かなもので、今できることは気遣う事くらいで、あまりにも弱々しい言葉しか出てこない。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ごめんなさい、少しだけ眩暈がして」
「も、もしかして風邪とか? 今から屋敷に戻る?」
「大丈夫です、カザハナさん。もう収まりましたし、それにカムイ姉様の式典には最後までいたいです」
「……そ、そう」
カザハナも気づいているし、ツバキはわかっているから何も言わない。
サクラ王女の苦し紛れの嘘、眩暈で誤魔化した本当の理由。その理由の力になりたいと二人は思っているはずなのに、聞き出そうとはしなかった。
それで区切りをつけた様にカザハナは調子を戻してサクラ王女と接し、ツバキも同じように接していく。物事を修正するように動く世界の中で、私だけが取り残された気がした。
同時にさっきの原因が他の誰でもない……
私にあるのかもしれないという予感を、なぜか感じるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
セレモニーが終わり、屋敷に戻るとカザハナとツバキはすぐに部屋へと戻る。それは自分たちに出来ることは今なにもないと言っているようにも感じられた。
二人は多分信じているんだろう、サクラ王女がいつかきっとそのことを話してくれる。だから、今は静かに待つのが私たちに出来ることだということを。
そして、私はその理由をサクラ王女から聞くべきだと思った。
少しの間、書斎で資料の整理を行って時間を弄んだ。終わりの来ない時間の渦があるとするなら、それは思考の中にあるのだろうとサクラ王女を見て思う。
あの時、サクラ王女の思考に浮かび上がったものは何だったのかはわからない。だけど私が関係している気がするのは、自惚れではないと思う。だって、私はサクラ王女の悩みを聞いているのだ。
月の印象が変わらないという話、その原因である何かをサクラ王女はさっき掴んだのかもしれない、ならそれを聞くのは私の役割だった。
なぜなら、私はそれを最初に聞くと約束しているのだから。
どれくらいの時間が過ぎただろうと、私は腰を上げる。他の扉には目もくれず、私は中庭への扉を叩いた。
自分の居場所だというのに、今日の扉の感触はいつもと違うものに思える。それはこの先にサクラ王女がいることを予見させるには十分すぎる物だった。
重々しい中庭への扉、それを開いた先にサクラ王女はいた。
「……」
あの日と同じでじっと静かに月を眺めている。どこか儚げに感じたシルエットもそのままに、彼女はそこにいる。それに話しかけないでもいいと、考える自分もいた。サクラ王女の悩みに手を差し伸べたところで、もしかしたら意味などないのかもしれない。そう考えれば自室に戻ってしまうのもいいだろう。
「……そうはいかないわよね。あんな顔をされちゃったら……」
セレモニーのあの瞬間だけ見せたサクラ王女の顔。冷めたように見えた顔、あれはどこか喪失感を漂わせていた。私はあの顔を知っている。昔、あらゆる日々に怯えなくてはいけないと知った時、私もあの顔をしていたような、そんな気がするからだ。
最初の一歩を踏み出すのは時間が掛かったけど、歩き出してしまえばもう止まることは無い。その背中を見た時、この距離はそうそう埋まらないものだと思っていたけど、気づけばもうその背中に手が届く場所にいた。
「何を見ているのかしら?」
「……月を見ていました」
サクラ王女は短くそう答えた。前と同じように背を向けたままだ。
この前話をした時のように、私はその背中に背を合わせた。サクラ王女は驚くことは無くて、そのまま私に背中を預けてくる。少しだけ支えてくれますかと尋ねているかのようで、それには私は少し背を丸くして腰を下ろす。二人して背中合わせに膝を抱える。そのわずかな静寂は思ったよりも重く圧し掛かってきた。
でも、それにも終わりはやってくる。私はそれを、ただただ待ち続ける。そして、その時は静かに訪れた。
「カミラさん、あの約束覚えてますか?」
「月が同じに見える理由を、私に最初に話してくれる約束の事?」
「はい、覚えててくれたんですね」
「サクラ王女が私に最初に話してくれるんだもの、忘れるわけがないわ」
「はい、ありがとうございます」
弱弱しい微笑みが聴こえた。サクラ王女の思ったことが何なのか、それを私から聞くことは無い。彼女が話したいと踏み出すまで、私は静かに待つことにする。
「カミラさん……」
「なに、サクラ王女?」
幾度かの呼吸の音を経て、覚悟を決めたサクラ王女の声が耳に届いた。
少しだけ震えるサクラ王女の手に私の手を添える。それが私のできる最後の譲歩、ここからはあなたが紡がないといけないのだから。
「……この前の事、その理由が今日分かった気がしたんです。多分変わっていないのは月じゃないんだって……」
なら、変わっていないものはなんなの?と私は尋ねる。サクラ王女の背中の感触が一層強くなった気がすると、彼女は静かに語り始めた。
「私、白夜にいる頃からずっと守られてばかりだったんです。常に危ないことから守られる立場で、危険なことを進んでやるなんてこともありませんでした。お城にいるときも侍女の方がいて、軍議への参加も強制されていませんでしたし、何か怖いことがあるとお母様が優しくしてくれて、私はずっとそうやって過ごして来ました」
それはなんと恵まれた世界だろうか、幼少期の私にはそんなものは無かった。常に親族の争いに怯えて、出来る限りお母様同士の争いに巻き込まれない様にと願う日々。私が泣いてもお母様がそれを殺めてくれたことはほとんどない。機嫌がいい時は違う母親の子が死んでしまった時くらいだった気がする。
「あの日、カムイ姉様を追いかけた時、私は何かが変われていた気がしたんです。守られるだけじゃない私になる事が出来た気がして……。でも、それは違いました。さっきの会場で、わかってしまったんです。私は守られることをどこかで当然のことのように思っていて、それが普通の事だと思っていたんです。月を見て何も変わってないって思ったのは、何も変わっていないことを誤魔化したかっただけで、結局私は成長も何もしてなかった…。私の身勝手が多くの出来事を引き起こしたかもしれないのに……」
サクラ王女の声にあるのは失望と虚しさだった。
まだ守ってもらえているということにホッとしている自分が許せない、あんなことをしておいて未だにそう思っている自分自身に失望していた。
危険を承知でカムイを追いかけた結果、カザハナとツバキを巻き込んでしまった。そして、もしかしたら白夜の侵攻なども自身が原因なのではと考えてしまっているのかもしれない。
それは彼女の他人を思いやる優しさ故のこと。誰かを思うことがどれほど大変な事なのか、それをサクラ王女は知らずにこなしている。だけど、そんな優しい彼女だからこそ、ここまでずっと守られ続けてきたことを理解してしまったのかもしれない。
「……」
それを優しい言葉で繕うことは簡単だ。なぜなら、弱まった心にはそういった言葉が良く浸透する。
状況が状況だ、仕方ない、あなたの立場を考えれば仕方のないことだ、言葉の形は色々だけど、その本質は同情という名の逃げていいという口実で、今のサクラ王女はそういった言葉を求めているわけじゃなかった。
サクラ王女は慰めてほしいからこういう話をしているんじゃない。ただ迷っているだけ、ならそれに少し手を差し伸べるのが私に出来る事だ。
いつか、私がカムイを守るために強くなろうと決めた時のように……。それは自然と自分の胸に浮かび上がる物なのだから。
「そう、それが貴女の思う理由という事ね」
「ごめんなさい、こんな話をされても迷惑でしたよね……」
「これは約束だもの、迷惑でも何でもないわ。ねぇ、サクラ王女」
「なんでしょうか、カミラさん」
「あなたには、もう変われる力があるわ。こうして私に心の内を話せていることもあるけど、何よりあなたはそれを自覚して変わりたいと願っているもの。それはね、一番単純だけどとても重要な事。サクラ王女はそれを知っているのだから、そんなに怯えなくてもいいのよ」
変わるために必要なのは今までの自分を知って、なりたい自分を思うことだと私は思う。
サクラ王女は自分のことを知っている、そしてなりたい自分の姿も知っている気がした。
「カミラさんはどうして、そう言ってくれるんですか?」
「ふふ、サクラ王女を見ていると、昔の私のことを思い出すの。あなたみたいな悩みではなかったけれど、そこに共通していた悩みの形は同じだったはずだから」
私はずっと恐怖にさらされてきた。ずっと、ずっと。だけどそれはカムイと出会って変わったことだ。
私は、私よりも悲惨な彼女を助けたいと思った。今まで自分が逃げていても手に入れられなかったものを、この子に与えたいと思ったのだ。
だけど、このままじゃ彼女を助けられないと理解したときから、私は変わろうと考えた。
それが私の起点だった。変わりたい自分を見つけて、そしてそれを克服しようと動き出すこと、それは今のサクラ王女と同じように思えた。
「……カミラさんを変えたのは何だったんですか?」
「カムイよ。私はあの子と出会って変わったの。昔の私はね、怖がりの臆病者で、とてもじゃないけど誰かのために何かをするなんて発想を持っている子じゃなかったわ」
私の言葉にサクラ王女が驚きの声をあげる。それはなんだか今の自分の姿が間違いじゃなかったと思わせてくれるものだった。
「ねぇ、サクラ王女。人は勇敢にもなれるし臆病にもなれる。でも、それは勝手になっていくものじゃなくて選ぶことによって得られるものなの。今の自分から変わりたいと願うなら、選ぶことを恐れてはいけないわ」
「だけど、私は選べてなんていません……」
「今まさに選べているじゃない」
土を強く握っているサクラ王女の手に手を重ねると、その綺麗で小さな手を優しく介抱する。爪に入った土を優しく出すよう、その悔しさは重要だけどもう必要ないものだというように。だって、その悔しさに値するものをサクラ王女は選んでいるのだから。
「こうして私に話してくれたことがその証拠よ。自分の弱いところを敵である私に教えてくれたこと、そして私の話を全部聞いてくれたこと。貴女は選んでいるわ、ちゃんとあなたが望むあなたの姿のためにね?」
「カミラさん……ううっ、ひぐっ……」
サクラ王女が静かに涙を流し始めると、私の手が強く握られる。背中越しに聞いたサクラ王女の悩みが溶けだしていくようにも感じた。
「私、誰かを守れる人になりたいです……。今まで、いっぱい、いっぱい守ってもらえた分、誰かを、誰かを守れる自分になりたいです……」
「ふふ、素敵な夢ね」
「カミラさんのこともきっと、きっと守れるようになりますから……」
「あらあら、いいのかしら? 私を守るのは結構大変だと思うけど?」
「大変だとしても守ります。私、いつかきっと守れるようになりますから……」
泣きながらサクラ王女は話してくれた。その約束が果たされる日が本当に来るかはわからないけれど、私には大きな絆の流れが感じられる。
だから自信を持って言葉を返した。
「そう、楽しみにしているわね。サクラ王女」
「は、はい……」
サクラ王女は私に背中を預けたまま、静かに涙を流し続ける。それが悲しみの涙ではなくて、嬉しさの涙だろう。
私とサクラ王女の交わした新しい約束。
それが何時か果たされる日が来ることを願いながら、夜の月を私は眺めて彼女が泣き止むのを静かに待ち続ける。
今日見えている月が、サクラ王女にとって特別な意味をもつ月になりますようにと、心の中で願いながら。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あの、みなさん昨日はお騒がせしました」
そうサクラ王女が頭を下げて現れたのは、ツバキとカザハナに今後の事について意見を聞いている時だった。昨日の夜の事を思い出しながら、私の対面に腰かけるサクラ王女に笑みを返す。
「サクラ、えっと……」
「サクラ様」
「ツバキさん、カザハナさん。その昨日はごめんなさい。そしてありがとうございます、待ってくれて」
「いいんですよ。サクラ様にも色々と事情はあると思いますし。それに、どうやら解決したみたいで何よりですよ」
「みたいだね。今日のサクラ様、とっても可愛いもん」
「わっ、カザハナさん。くすぐったいですよ」
カザハナに抱きしめられて楽しそうなサクラ王女を見て、私はくすりと笑った。この先の苦難は確かに辛いものだけど、この子たちにしてあげられることのすべてをしてあげたいと思えてくる。それは、なんだか自分が変わっていくような感触だった。
(……そういうことね。まさかこんな形で、気づかされちゃうなんて)
この子たちの力になりたいと思っているのではなく、そうしたいと私は動いていた。カムイに頼まれたからという理由を前に置いていたのは、多分自分の中のプライド的なものが素直になる事を許していなかったからだろう。
昨日、サクラ王女に伝えた言葉がそのまま私に帰ってきたようで、そのおかしさに苦笑すると三人が私に視線を向けてきた。
「ごめんなさい。本題に入る前に一つだけいいかしら?」
私はそう言って、三人と向き合った。
カザハナ、ツバキ、そして、サクラ王女。この三人に出会うことが無ければ、私はきっとカムイと一緒に過ごしているだけだったのかもしれない。
それも確かにいいことね。でも、こうして選んできたこの道にも、確かな意味があるのだと私は思う。いや、この道を進んだからこそ得ることのできる物が確かにあるのだから、私はこうして伝えなくちゃいけないんだと思う。
「あなたたちのこと、私に守らせてちょうだい。いつか、白夜にあなたたちを送り届けるその日まで……ね?」
私は伝える。三人を守っていくことを、どんな形であっても三人をきっと白夜に送り届けることを。それがどんな苦難の道だったとしてもだ。
なぜなら、これはカムイの願いではなく、私が願うことなのだから。
三人は少しの間、きょとんとしていたけれど最後に嬉しそうに笑みを浮かべてくれて、それに私は微笑んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これはもしもの話。
カミラがサクラ王女達を守っていくことを誓う物語。
Ifの一つ……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『サクラ隊カミラ』番外 おわり
○カムイの支援現在状況●
―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)
―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています)
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)
―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)
―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)
―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)
―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)
―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)
―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)
仲間間支援の状況-1-
●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・マークス×リンカ
C[5スレ目・888] B[5スレ目・920]
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
C[5スレ目・822]
仲間間支援の状況-2-
●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]←NEW
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]
・エリーゼ×カザハナ
C[5スレ目・14] B[5スレ目・921]←NEW
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
C[5スレ目・435]
今回のスレはここまでになります。一ヶ月近く更新できずに申し訳ありません。
サクラはこういう悩みも抱えているんじゃないかなっていう感じの話です。
次スレは少ししたら立てる予定です。長くなりすぎていますが、次もよろしくお願いいたします。
最後に埋めも兼ねて安価を取りたいと思います。参加していただけると幸いです。
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○進行する異性間支援の状況
【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
・マークス×リンカ
【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ
この中から一つ>>995
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援
【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×カザハナ
・エリーゼ×カザハナ
【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
この中から一つ>>996
◆◇◆◇◆◇
〇カムイと会話をするキャラクター(支援Aのみ)
アクア
ギュンター
ラズワルド
オーディン
ルーナ
カミラ
エリーゼ
サクラ
シャーロッテ
カザハナ
フローラ
この中で最後に書き込みのあったキャラクターにしようと思います。
このような形ですがよろしくお願いいたします。
更新乙!
マークス×リンカで
エリーゼ×カザハナでお願いします
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