ミカサ「怪談」(35)
ミカサ「そう、あれは私がシガンシナにいた頃のこと…」
ミカサ「……」ジ-
アルミン「ミカサ!そんな所で何してるの?」
ミカサ「アルミン。見て、この花」
テロ-ン
ミカサ「下を向いてしょぼくれてる。かわいい」
アルミン「待雪草だね。もう3月になるけど、きっとまだ雪が降るのを待っているんだ」
ミカサ「待雪草。いい名前」
アルミン「ミカサ、エレンにこの花を贈ってあげなよ」
ミカサ「…贈るのならこっちの元気そうな花がいい」
アルミン「ううん、ミカサ、君は待雪草をエレンに贈るべきだ」
ミカサ「なぜ?私はエレンにこの花みたく下を向いてほしくない」
アルミン「いいから。待雪草には『逆境に見る希望』って花言葉があるんだよ」
ミカサ「!エレンにぴったり」
アルミン「だろ?それにね…」
ミカサ「『恋の最初の眼差し』…そんな花言葉もあるなんて」
ミカサ「決めた。私、この花をエレンに贈る。アルミン、色々とありがとう」
アルミン「いいんだ!」
ミカサ「そうして私はエレンに待雪草を贈った」
クリスタ「じゃあ、ミカサはきっとその時からエレンを……」キラキラ
ユミル「オイオイ、主旨が変わってんじゃねーか!誰が惚気話しろっつったよ!」
サシャ「ミーナの話からの落差がすごいですね」モグモグ
ミーナ「蝋燭まで立てて雰囲気作ったのに~!でもキュンキュンできるから許しちゃう!」
アニ(いいのか…)
クリスタ「やっぱり怪談なんてやめてラヴリーなトークに切り替えない?はい、賛成のひと~」
ミーナ「えぇ⁉︎」
クリスタ「ノ」
サシャ「ノ」
ミーナ「ちょっとサシャまでー!」
アニ「でも2人だけ。過半数には到底届かないね」
ユミル「クリスタ!こっちに来い。私の膝の上に座っていいぞ!」
クリスタ「ユミル!…ううん、やっぱいいや。決めたことだし、最後までやり通さないとね!」
クリスタ「それに、ミカサの様子じゃべつにそんなに身構えなくても……」
ミカサ「いや、この話はまだ終わりではない」
クリスタ「え?」
ミカサ「あの後、私はアルミンと別れて家に向かった」
ミカサ「何て言ってエレンに渡そう。花言葉は教えたほうがいいのかな」
ミカサ「確か花言葉は…『逆境に見る愛』…いや違う……『恋の希望』?これも違う」
ミカサ「もっとエレンにぴったりな言葉だったはず。辞書で調べよう」
ミカサ「待雪草…待雪草……」ペラッ...ペラッ...
ミカサ「あった。花言葉は……」
ミカサ「……え?」
『あなたの死を望みます』
ミカサ「…という話なのだけど」
クリユミミ-ナ「」
サシャ「待雪草って食べられるんですかね?」
アニ「アルミン、意外と黒い…」
ミカサ「黒ミン?」
アニ「わるミンだね」
ミカサ「ふふっ…」
アニ「じゃあ、次私いいかい?」
クリスタ「…ハッ!ちょ、ちょっと二人とも、ストップ!ストーップ!!」
アニ「あれは私が足技の稽古を始めて1年が経った頃…」
アニ「段々と訓練に慣れてきた私は、いつしか日頃の恨みもサンドバッグにぶつけるようになっていったんだけど」
アニ「ある日、サンドバッグにシミができている事に気づいたの」
アニ「最初はただの汚れだと思って全然気にしていなくて」
アニ「でも、私が恨みをぶつければぶつけるほど、そのシミはさらにどす黒く、大きくなってるように見えた」
アニ「私が怖くなったのは、」
アニ「そのシミが顔に見えるようになってから」
アニ「お父さんに頼んで張り型を替えてもらっても、そのシミはすぐに浮き出てくる」
アニ「真夜中、私は誰かの声で目が覚めた」
アニ「横を向くと、枕元にあの張り型が立っていて」
アニ「そいつが言ったの」
「ユルサナイ」
ユミル「」ゾワッ
アニ「悪い夢だと思って直ぐに布団を被ったんだけど…」
アニ「朝起きたら、体じゅう痣だらけになっててね……。その時、わかったんだ。あの張り型が、今度は私に恨みをぶつけにきたんだって」
クリミナ「」
ミカサ「あなたを痣だらけにするとは、なかなかやり手」
アニ「全くだよ。彼にはその日のうちに謝ったから、その後は友好な関係を築けていたけどね」
サシャ「普段は素っ気ないのに、お化けと交友を結んでいたとは……アニも隅に置けませんね。」
ユミル「お前らには恐怖心ってもんがないのか…?」
クリスタ「あわわわ…」
ミーナ「ク、クリスタ!ちょっと二人がいきなり怖い話するからクリスタが気を失っちゃったじゃない!」
ユミル「なんだと⁈うわぁ、クリスタぁ!」
ミカサ「もともとそういう集会だったのでは…」
アニ「クリスタにはまだ早かったか。」
ミーナ「ウキウキで「ラブリーなトークに切り替えない?」とか言ってるから…」
アニ「ミーナの話聞けば気も緩むよ。なんだっけ、確かおもらしのシミの形が…」
ミーナ「うわあもうその話やめよおよおおお」
ミカサ「これはお開きの流れ…皆、今日の女子会も楽しかった。またやろう」
ユミル「オース。さ、帰るぞクリスタ…」
クリスタ「むー…」
アニ「おんぶしてる…」
サシャ「ちょ、ちょっと待ってください、まだわたしが残ってますよ!私の生活は怪談の宝庫ですから、取っておきを最後に残しといたんです!」
ミカサ「コニーと教官のカツラを燃やした話?それ前も聞いた」
サシャ「いやちがいますって!てかした覚えないですよそんな話なんで知ってるんですか」
キース「ほう。その件で私も聞きたいことがあったところだ…」
サシャ「」
ミーナ「どんまい。」
ミカサ「…という話をしていた」
エレン「サシャは相変わらずだな…てかアルミンまじかよ」
アルミン「子供向けの本で得た知識だったからね…その花言葉の存在を知った時は泣きながらミカサに謝りに行ったよ」
ミカサ「しょうがない。真実は時に残酷。大人達はそれを教えてくれなかった」
エレン「それいつだよ!初めて聞いたぞそんなエピソード」
アルミン「10歳になる前くらいかなぁ」
ミカサ「あ、ちなみにあの集会にいた皆にはそのことをちゃんと説明しといた」
アルミン「よかった…」
ミカサ「アニはしばらくわるミンって呼んどこって言ってたけど」
アルミン「ミカサー!!」
エレン「アニってそっちだとそんなキャラなのか」
ミカサ「そう。割としゃべる」
エレン「てかいいなー怪談とか。俺も男子寮でやってみてえ」
ジャン「そりゃーお前がチビるから無理だな!」
エレン「あ?」
アルミン「あれ、ジャンおはよう。」
ジャン「ヒャー俺はもうだめだ!アルミン一緒に寝てくれー!」ケラケラ
エレン「てめえなあ!」
ミカサ「エレン、朝から喧嘩はだめ」
ジャン「ちっ…」
ミカサ「あと、ジャンおはよう」
ジャン「?!おはよう!!!」
アルミン「…その後ろにいるのはベルトルトとライナー?」
ベルトルト「あ、わるミンおはよう」
ライナー「いい朝だなわるミン」
アルミン「おいこらぁ!」
エレン「てめーら盗み聞きはいい趣味とは言えないぞ」
ライナー「いや、お前らの声がでかすぎんだよ!つか、怪談集会いいじゃねえか。俺らも取っておき持って集まろうぜ」
ジャン「どっかの死に急ぎは寝れなくなんだろうな」
エレン「この馬面うるせえ」
ジャン「何だと!!」
ベルトルト「すぐ噛み付く…」
アルミン「そういやマルコは?」
ミカサ「さっき水汲みしてた」
ライナー「監視役がいないと大変だな。それにしても、怪談集会やるならいつがいけるか…」
エレン「めっちゃやる気だなライナー」
ライナー「あぁ、なんか楽しくなってきちまった。これはやらねえと収まらねえ!」
ベルトルト「…今日は月曜日だよね。やるならやっぱり週末かな?」
ジャン「いや、もっと近いうちにやろうぜ。皆が乗り気な今がチャンスだ!」
ミカサ「じゃあ今日の夜皆の部屋に集合するのは?」
男子勢「え?」
ミカサ「なに?」
アルミン「あぁいや、いいと思う。じゃあ時間はどうしよう」
ベルトルト「ミカサも来るのかと思った…」
エレン「それな」
ライナー「やっぱ消灯ギリギリだろ。23時消灯だから、22時集合だな!」
ジャン「よっしゃ決まった!じゃあミカサも後でな」
ミカサ「うん。絶対遅れない」
ジャン以外の男子「やっぱり来んのかよ!!」
すげー懐かしいノリの進撃SS
支援
>>18
ありがとう
そんなこんなで夜も更けて22時半
エレン「お前の後ろだあ!!」
ジャン「うわああああああ!!!」
アルミン「うわあ?!」
ベルトルト「ひぃ…」
エレン「だっはっは!どうだ俺の「Dr.ピエロ」!めちゃくちゃ怖かっただろ!」
ジャン「て、てめぇ!勢いでおどかすのはずりいだろうが!」
アルミン「そ、そうだよエレン!」
エレン「計算された演出ってやつだ。へへー初っ端からハードル上げてやったぜ」
ベルトルト「僕も別に怖くはなかったな。何かこう、真に迫る恐怖を感じなかった」
ライナー「お前が一番ガチな怖がり方してたような…」
ミカサ「アルミンはジャンの声に驚いただけ…それにその話、おじさんのまるパクもがっ」
エレン「一発芸やります、驚いた時のジャン。うわああああ!!」ヘンガオ
ライナー「ブフーッ」
ジャン「許さねえぞてめええええ」
アルミン「騒いだら教官きちゃうよ…」
ベルトルト「うわ、もう10時半過ぎてるのか」
ライナー「元はと言えばお前とミカサが遅れてきたせいだぞ…」
ミカサ「ごめん、ベルトルトと私は掃除当番だった。時間ないから次の人はクジで決めよう」
ベルトルト「よし…」
ライナー「入団からずっとあたためといたやべえのがあるからな…エレン、お前まじでチビるぞ」
エレン「怖い話、ちょうだいちょうだい~」
ジャン「おいうぜえぞこいつ」
アルミン「くそ…下手にリアクション取ったから調子に乗り始めた…」
ミカサ「みんなつかんだ?じゃあせーので見よう。せーの!」
ジャン「俺だあああああ」
ベルトルト「ほっ」
ライナー「何だと…」
アルミン「エレンにやり返そうと思ったのに…」
エレン「馬小屋に閉じ込められた話じゃね?」
ミカサ「エレン、馬鹿にするのはよくない。ジャン話して」
エレン「ぜってー怖くねえからwww」
ジャン「よし。……お前ら、見てはいけないものを見ちまったって経験はあるか?」
ジャン「あれは俺がまだトロスト区に住んでいた頃の話だ…」
ジャン「その日、俺たちがいつものように街角で遊んでいると、小汚ねえ格好をした老人が声をかけて来た」
ジャン「なんでも、マリアの僻地からはるばる行商に来たのに全く物が売れず、滞在費も底を尽いちまったらしい」
ジャン「行商人と聞いて気になった俺らはそいつのカゴに入った品を見せてもらったんだけどよ」
ジャン「なぜか全部紙で包装されてて、中身が見えねえんだ。」
ジャン「おいオッサン、子どもだからって舐めてんじゃねーぞ!客にガラポンさせようってのかよ!」
「そうだそうだ!中身がわからない箱なんか誰が買うってんだ!」
「第一、その箱ほんとに何か入ってるのか?」
「まさか、空っぽかよ?!」
ジャン「俺と仲間は口々に責め立てたが、そいつは一向に口を割らない」
ジャン「冗談じゃねえと俺らが立ち去りかけたその時、カゴを置いてオッサンが言った」
ジャン「わかった、全部くれてやる。ってな」
ジャン「こうなったら仕方がない、手放せるだけでも儲けもんだ…」
ジャン「そんな薄気味悪い台詞を残してそいつは去ってったんだが、俺以外誰も聞いてなかった」
「すげえ、まじかよ!!よりどりみどりだ!」
「はやく開けてみようぜ!」
ジャン「包み紙を破ると、中から着物に身を包んだ、白い顔に細長い目の人形が現れた」
ジャン「一同は少し気味悪がったが、孤児院にでも売りつければいいと皆、家へ持って帰っちまった…」
ジャン「その日を境に一人、また一人と仲間達は姿を現さなくなった」
ジャン「そいつらの家へ話を聞きに行こうとしても、扉を開けてすらもらえない」
ジャン「近所には、その家の窓に大量の髪が張り付いているのを見たと言う人がいた」
ジャン「彼らに何があったのか…その真実を知る術はもうない。俺に残されたのは、あのカゴに残された紙切れのメモだけ…」
ジャン「真夜中に鋏の音が聞こえたら、絶対に人形のほうを向いてはいけない。自分の髪を切っている人形と目が合えば、たちまち呪われてしまうだろう…」
ジャン「…っていう話なんだけどよ」
ベルトルト「」ガタガタ
アルミン「なかなか怖かったね…僕こういう呪いとかそういう話に弱いんだ。エレン、どうだった?」
エレン「ぜ、全然怖くねー」ブルブル
ライナー「つ、つまりそいつらは呪われたってことか…?」
ジャン「言っただろ、真実を知る術はもうないって。今となっては謎が残るのみだ」
ジャン「クックック、まあお前らも人形には気をつけるこったな!もしも夜に鋏の音が聞こえでもしたら…」
チョキ チョキ...
ジャン「そう、こんな……!?」
ライナー「な、何の音だ?」
アルミン「ひぃっ…ベッベルトルト、懐中電灯を!」
ベルトルト「うわわわ…あっ!」パリィン
ジャン「何やってんだよチクショオ!!」
部屋の電気「カチッカチッ」
窓に張り付く大量の髪の毛「モサモサ」
ベッドたち「ガタゴト」
アルミン「うああああああああああああ」
ライナー「なんだよおい、これもお前の仕込みか?!」
ジャン「んなわけねーだろ!!」
エレン「」ジョロロロ
ベルトルト「ジャン、後ろ…」
ジャン「あぁ!?」
ミカサ(白塗り)「見ぃたぁなあああああ」
ウワアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ミカサ「…ということがありました」
リヴァイ「何やってんだお前ら…」
ハンジ「えぇいいなあ怖い話し合うの‼︎ まだ礼拝堂まで時間あるしみんなでやらない?」
アルミン「やりませんよ!!」
おわり
乙
原作が今つら過ぎてこういう日常系SSに癒される
ミカサかわいい
久しぶりにこういうの読んだな
ありがとう
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