高垣楓「結末の顛末」 (187)



 「プロデューサー」


俺を捕まえていた手が、するりと頬へ回される。
滑らかな指先に包まれて、冷えた頬が温度を取り戻していく。


 「冷たいです」


良い匂いがする。
吐息が首をくすぐる。
衣擦れが耳に響く。
ベッドが軋む。


 「だから」


彼女の瞳は今、どんな色をしているだろう。



 「あったかくしてください」


身体をむりやり捻って、楓さんと顔を突き合わせた。
横倒しになった色違いの瞳が、薄暗さの中にあってなお、神秘の光を湛えている。

 「かえっ、ぁ……あの、ですね」

決意とともに吐き出した筈の言葉。
頼もしさは一息の間にかき消えて、あっという間に喉が震え出す。
目の前のアイドルは笑うことも無く、二度、控え目なまばたきを繰り返した。

 「お酒を……飲みました」

 「はい」

 「だからつまり、楓さん、その」

 「ええ」

 「こんな風な、酔ったままの勢いの、そういうのは、良くないと」

竜頭蛇尾とはきっと俺の事を指してるんだろう。
威勢の良さは最初だけで、言葉は見る間に途切れてしまった。
15センチ前の美貌。
揃ったまつ毛すらよく見えるこの距離で、楓さんは何事かを考えていた。


 「えーっと……」

そう思ったのも束の間。
おもむろに半身を起こすと彼女は枕元にあった携帯電話を拾い上げた。
混乱する俺をよそに、白い顔が液晶のバックライトに照らし出される。
何度か操作をすると明かりは消えて、再び暗闇が俺達を覆い隠した。
一瞬の輝きに慣らされた目が、すぐそこにある筈の姿を見失う。




 「じゃあ、来月末の、金曜日の夜。きちんと、しましょう」


言葉というのは、主語が抜け落ちていようと案外伝わってしまうもので。

だからこそ俺は固まった。
今までの行動に何か間違いが無かったか考え直す。
いや結局、全て間違えてた、という事なんだろうけれど。

 「…………あ、の」

 「おやすみなさーい」

話は終わったとばかりに話を終え、楓さんが布団を被る。
その時ようやく、せっかく向けていた背中を戻してしまった事に気付く。
気付いた時には全てが遅過ぎて、楓さんの両腕が俺の身体を捕まえてしまっていた。

 「おやすみなさい、プロデューサー」

 「…………おやすみなさい」

俺の胸元へ顔を埋めて、楓さんがそれきり黙り込む。
ワイシャツから染み込んでくる吐息は火傷してしまいそうな熱さだった。
僅かに髪が揺れる度、それはそれは良い香りが漂う。

 「……」



……いや、寝れる訳ないだろう。


小悪魔な女神様こと高垣楓さんのSSです


http://i.imgur.com/hO5sXIB.jpg
http://i.imgur.com/uiuQicB.jpg

前作とか
アナスタシア「流しソ連」 神崎蘭子「そうめんだよ」 ( アナスタシア「流しソ連」 神崎蘭子「そうめんだよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501850717/) )
相葉夕美「プロデューサーに花束を」 ( 相葉夕美「プロデューサーに花束を」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1485851599/) )

関連作
高垣楓から脱出せよ ( 高垣楓から脱出せよ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483426621/) )


上記『脱出せよ』の続編です
直接的な性描写を含みます



※本作はリアルタイム性(性だけに)を重視しています
 完結予定は10月1日です

期待
アレの続きが来たか!


 ― = ― ≡ ― = ―

あまりに穏やか過ぎたせいか、しばらく目覚めているのに気付けなかった。
目の前10センチには相変わらず楓さんの顔があって、俺を楽しそうに眺めている。

 「目、覚めました?」

 「……ええ」

 「おはようございます」

 「……おはようございます」

どうも、眠っていたらしい。らしいとしか言えない。
眠りに落ちた記憶は無かった。
幾ら精神で抗おうとも、本能が勝てなかったと見るのが妥当か。

 「朝ごはんにしましょうか」

呟いて、楓さんが身を起こす。
薄いシルクのネグリジェに何かが透けて、俺は慌ててベッドから転げ落ちた。

 「着替えますので、覗く場合は、どうぞ」

何がどうぞなのか理解するのを拒否し、俺は縺れた足のまま部屋から逃げ出した。


 「……」

 「……」


さくっ。もしゅ。さく、さくり。


何も無いと聞いていた冷蔵庫には予想以上に何も無かった。
缶ビールは一ダースほど良く冷えていた。

 「……」

俺はジャムを、楓さんはバターを塗ったトースト。
何ともシンプルな朝食を、インスタントのコーヒーをお共に食べ進めていく。
楓さんの髪は寝癖がついたまま。
そのくせテキトーに選んだだろう室内着は、何故だかお洒落に見えた。
常々思うが、本当にズルい人だと思う。

とうとう無言のまま皿とカップは空になった。
何をするでもなく俺達はお互いを眺めていた。
……よく眺めてみれば、思ったよりすごい寝癖だ。

 「楓さん」

痺れと口火とを切ったのは俺の方だった。
聞こえているのかいないのか、テーブルの向こうに座る楓さんがゆるゆると首を傾げる。


 「昨日のは……冗談、ですよね」

 「冗談は、苦手です」


二の句も継げずに息を詰まらせた。
つまらない冗談でも言ってくれれば、いっそこの一息を飲み込めたのに。

 「あの、プロデューサー」

 「はい」

 「好きです」


言葉というのは、楓さんが、主語を 好き


 「以前に言ったままの意味で、以前よりずっと大きな、好きです」

 「楓さんは」

 「アイドルです。こんな感じでも、一応」

自分と俺とを指差して、それから二人きりの部屋を示すように両腕を広げて。
しでかした事態を改めて俺に突きつけながら、楓さんは微笑んだ。


 「私、頑張りますから。楽しみにしててくださいね、プロデューサー」

やったぜ楽しみにしてる

楽しみ

楓さんきた


 ― = ― ≡ ― = ―

 「本当に、何も、していないんですね?」

 「本当に、何も、していません」

 「誓って?」

 「誓って」


まだ。


言える訳のない一言を飲み込んだ。
小会議室の中で、机を挟んで、ちひろさんと見つめ合う。
掌の中のタイピンがひどく生暖かい。

随分と久しぶりに見る気がするちひろさんの真顔。
脂汗も垂れそうになる頃に、ようやく見慣れた笑顔へと変わってくれた。

 「ふむふむ。分かりました」

 「……ご理解頂けて何よりです」

 「言うまでもないですけれど、あなた達はアイドルとプロデューサーなんですからね」

 「はい」

言われるまでもない。
言われるまでもない台詞が鼓膜に突き刺さる。

 「ああ、でも」


 「……?」

 「一番困るのは、アイドルさんがやる気を失っちゃう事ですし」

 「はぁ」

 「アイドルのモチベーションを維持するのも、プロデューサーの責務かもしれませんね」


 「……ええと……ちひろさん。その」

 「あぁ、今日も良いお天気ですね。お仕事、頑張ってください♪」

ちひろさんはすっかりいつもの調子を取り戻していた。
同僚達から閻魔帳と呼ばれているファイルを抱え、スキップで小会議室を後にする。
閉じるタイミングを失って、しばらく馬鹿みたいに口を開けていた。

 「……」

以前から気になってはいた。
気になってはいたが、深く考えてはいなかった。
何か、こう、何とは言えないが、繋がっている気がする。

ふと、いつの間にか置かれていたスタドリに気が付いた。
奇天烈なデザインの蓋を指で撫でる。
ちくりと痺れる痛みと共に、今日もまた一日が始まろうとしていた。

待ってたぞ…!


 ― = ― ≡ ― = ―

 「はっ……はぁ、っ」

頬を染め、息を荒げ、楓さんが喘ぐ。
浮かんだ珠の汗を拭うと、下がりつつあった視線を戻した。

 「まだ……まだ、でき、ます」


信じられないものでも見るように、麗さんがぽかりと口を開けた。

 「高垣……お前……」

 「お願い、します。もう少しだけ」

肩を揺らして、それでも楓さんは確かにそう言った。
その瞳をじっと覗き込んでから、麗さんが背後の俺を振り返った。

 「今のを聞いたか。プロデューサー君」

 「……ええ」

 「随分と……久しぶりだよ。こんなに迫力のある彼女は」

 「……ええ」


普段通りのダンスレッスン。
ジャージに身を包んだ楓さんがスポーツドリンクを空にする。
タオルで拭われた表情は、変わらぬ真剣さを帯びていた。

 「一体、どうしたっていうんだ」

 「……アイドルとして」

 「ん?」

 「だらしない身体では、がっかりさせちゃうかもしれませんから」

 「た、高垣……!」

麗さんがとうとう目元を拭い始めた。
感じ入ったように頷く彼女の前で、楓さんが身体のあちこちへ確かめるように触れる。
一通り撫で終えると、今度は俺へと微笑んで。


 「ね?」


同意を求める笑顔を、俺は真っ直ぐに見られなかった。

よい

いやーーー すんません ホントすんません

これからひと月やきもきしながら焦らされるとか控えめに言って至福


 ― = ― ≡ ― = ―


落ち着かない。


いや、自宅に居ても落ち着かない状況自体は珍しくも何ともない。
ライブの前やCDのリリース直前なんかは落ち着く事の方が少ないくらいだ。
ただ、そういった場合に心を宥める方法なら、俺はもう知っている。

ベッドから身を起こし、本棚に納まる分厚いファイルから一冊を抜き出した。
適当に開いてみると、挟まっていたのは何枚かのメモと写真。
『Nation Blue』発売前のものだった。

 「……」


『こいかぜ』。
『ワンダフルマジック』。
『プロダクションPV』。


プロデューサーとはつまり、アイドルを信じる仕事だ。
これまで積み重ねてきたものを、俺達が魔法と呼ぶそれを、ただ愚直な程に。
だから、新しい何かが始まる時は、こうして過去を振り返る。
そうしている内に、逸っていた心は穏やかになっていく。

いつもなら。


ご機嫌な笑み。
打ち上げの赤ら顔。

今までの彼女を見つめ直す度、ページをめくる度、落ち着くどころか。


 『アイドルとして』

 『がっかりさせちゃうかもしれませんから』

 『ね?』


アルバムを閉じる。
しばらく部屋を眺め回していると、クッションが目に留まった。
ベッドの木枠に挟み、その間に両足を差し込む。
膝を曲げ、大きく息を吐いて、上半身を持ち上げた。


後でランニングにも出よう。
焼け石に水だろうと、掛けないよりはずっとマシだ。

全裸で待ってたからいま牢獄から見てるよ、期待


 ― = ― ≡ ― = ―

 「楓さんは何にしますか?」

 「麦茶で」


 「麦茶?」

 「麦茶を」


 「何にしますか?」

 「麦茶です」


ひょっとして聞き間違えたかもしれない。賑やかな店だし。
もしかしたら楓さんが言い間違えたのかも。レッスン頑張ってたし。
そして訊ねた三度目の正直は、やはり麦茶に違いなかった。

 「え、っと、あの……体調が優れないようでしたら、送りますが」

 「いえ、元気いっぱいです。お腹も空きました」

 「何頼みます?」

 「旬魚のお造りとチーズの挟み揚げを」

 「あとビールですよね」

 「いえ、結構です」


楓さんは結構な人気アイドルになった。
大変めでたく、ありがたい事だ。

だからこうして二人きりで飲むのは控えましょう。
そう提案したのも随分と前の話になる。

一悶着の末、結局は俺が折れる形となった。
変装を条件に、今でも月二回の飲み会は絶賛開催中。
店こそ毎回違うが、楓さんの一杯目は大抵、ビール。
少なくとも、アルコール。

 「……どうされたんですか、楓さん。本当に」

 「んーと、別に、大した事ではないんですけど」

 「と、言いますと?」

 「ほら。私、人よりちょっと飲む方じゃないですか」

 「ちょっと?」

 「何か?」

 「いえ」

酒の席で議論をしても無為に過ぎる。
すっかり肩を竦めて、俺は続きを促した。



 「だから、抜けるのにも少し時間が掛かるかな……って」


 「……」

 「念の為、ですけれど」

楓さんが微笑む。
俺は不意を突かれて、思わず口の端がひくりと上がった。
気のせいなんかじゃなかった。
後ろにあった逃げ道がどんどんと削られ、細く、細く。


 「プロデューサーは、何にしますか?」


楓さんがメニューを差し出してくれた。
頭だけがぐるぐると回り、行き場の無い目がメニューの上を滑っていく。

 「……冷奴と、ごぼう天を」

 「お飲み物は、何を?」

 「……」

 「……」


 「……麦茶を」

 「プロデューサーって、真面目ですよね」

少しだけ悪戯な笑みを見せてから、楓さんは片手を挙げた。

ポリネシアンセックスっていうんだっけ
この日にするっていう予定日を決めたセックス

そういう有用な知識がこぼれ落ちるほど欲しい


長時間かけて行う性行為かと思ってた

たくみんがポリネシアンするスレの知識だが

時間をかけてねっとりするイメージ

浄化された為、本日分の更新は明晩に延期されました
よろしくお願いします


 ― = ― ≡ ― = ―

 「ふぅ……」

日課になってしまった腹筋を終える。
しばらくベッドの上で溜まった乳酸を逃してやる。
Tシャツ越しに腹を撫で、ゆっくりと起き上がった。

夕飯も済ませた。風呂にも入った。歯だって磨いた。
後は寝るだけ。寝るだけだが、それにはまだ少し早い気もする。
布団被ってネットサーフィンでもするか。
脳がそう結論を下す間際、いやちょっと待て、と身体が申し立てる。
良いタイミングだろう、と。

 「……」

確かに良いタイミングだった。
最近忙しかったし、何より……何と言うか。
そう、イメトレだ。イメトレにもなる。かもしれない。

そうと決まれば善は急げ。
ズボンを緩めながら携帯電話を手に取る。
動画プレーヤーを呼び出し、トイレのドアを開けた。



結論から言うとダメだった。
幾ら動画に意識を集中させ、丁寧に竿を扱いてやっても。
脳裏に悪戯な笑みがチラついて、とてもじゃないが続けてなどいられない。

それでもこのまま中断するのが悔しくて、インターバルを挟みリトライを繰り返す。
三度目の挑戦に失敗し、頭を抱えそうになったところで掌が震えた。
メッセージの着信で、差出人は楓さんで、俺は携帯を取り落とした。
思わずどこかの誰かに謝罪した。

心臓がバクバクとうるさい。
そんな訳ないと思いつつも、つい周りに視線を巡らせてしまう。
恐る恐る携帯を拾い上げ、ズボンで手を拭い、通知欄をタップする。


 『自撮りの練習、してみました』

あかんて


結論から言うと非常にダメだった。

写っていたのは見覚えのあるネグリジェに身を包んだ楓さん。
胸に大きめのクッションを抱えていて、そういった部分はギリギリ見えない。
よく見ると背景は皺が寄っている。
どうやらベッドに横たわっているらしい。

それは見た事の無い構図で、何故なら絶対に撮らせない構図だったから。
彼女のイメージにそぐわないという理由で幾度となく提案を跳ね除けて。
これまでの数少ないグラビアでも、こんな写真は一枚も無い。


まるで楓さんを組み敷くかのような画。
ベッドとネグリジェとこちらへ伸ばされた手。
否が応にもそういった想像が膨らんでしまう。


再び携帯が震えて、再び俺の手から携帯が飛んでいった。


 『ごゆっくり、どうぞ』


拾い上げた画面には短くそう表示されていて。
気付けば先ほどのメッセージに既読が付いてから5分以上が経過していた。
手はいつの間にか脈打つ竿へと添えられていて、見る間に顔が熱くなる。


あらぬ誤解だった。
いや、誤解でも何でもない千里眼なのだが、そういう事にしないとマズかった。

慌ててチャックを閉めようとして、挟まって、悲鳴を上げる。
ズボンを履き直し、手を洗い、画面をタップする。

 「……」

何でもいいから打たなくちゃならない。
けれど茹だった頭は何の助言も授けてくれない。
刻一刻と時間が流れていく中で、俺は全てを諦めた。


 『おやすみなさい』

 『おやすみなさい、プロデューサー。良い夢を』


携帯を枕元に投げ付け、勢い良く布団を被った。

http://i.imgur.com/gnFji9Q.jpg

こいかぜと肇ちゃんのお声でいま大変な事になってる 幸せ

支援と期待しかない

なんて言っていいのか分からないけど、本気で攻めに入った楓さんとか、クリティカル必中防御無視くらいの壊れ性能なんじゃ…

この楓さんは防御無視の貫通ダメージがヤバい


 ― = ― ≡ ― = ―


 「何かさー。綺麗になったよね、楓さん」


 「……え。あ、はぁ」

 「いやまぁ前からだけど……何て言うの? 最近ますます?」

朝の社内カフェは賑わいを見せていた。
ばったりと会ったのは春休みに入ったらしい北条さん。
奢ってあげたアーモンドオレを片手に、彼女が何気なく呟く。

 「コスメ変えたのかなー。プロデューサーさん、何か知らない?」

 「……さぁ」

 「ちぇー、プロデューサーさんもヒミツか」

 「え、あの、俺も?」

 「ん? いや、昨日楓さんとお買い物デートしたんだけどね」

傍目から見ても、北条さんは楓さんに懐いている。
楓さんも悪い気はしないようで、彼女の事は妹分として可愛がっているようだ。
オフの日もよく連れ立って遊んでいるらしい。

ちょっと羨ましい。


 「服を選ぶ時にさ、『加蓮ちゃん、どう? 似合うかしら』って。いつもより弾んだ声で」

 「……なるほど」

 「なんかちょっと変わったなって、そう思いながら見てたら、あーやっぱ綺麗だなーって」

担当アイドルを褒められて悪い気などしない。
ましてや同じ女性アイドルからなら尚更だ。
けれども、その、アレだ。
周りから見ても分かるくらい浮かれている楓さんというのは、こう。

 「あら。私のウワサですか?」


 「あ。おはよー楓さん」

 「おはようございます。加蓮ちゃん、プロデューサー」

 「……おはようございます、楓さん」

クロワッサンとブレンドを片手に楓さんが顔を出す。
傾げられた首に頷くと、俺の横へ腰を下ろした。
脇の鞄を退けようとした北条さんが、にこやかに笑いつつその腕を引っ込める。

 「それで、何のナイショ話だったんですか?」

 「んー? 楓さんって可愛いよねーって話。ね、プロデューサーさん?」

 「あら。そうなんですか、プロデューサー?」

 「……ええ、まぁ」


楓さんが鼻歌を口ずさむ。
その小さな旋律はひどく美しくて、ただのカフェラテがお供では少し味わいに欠けた。
そんな俺の感慨を知る由もなく、楓さんは下ろしたばかりのトートを漁っている。

 「どうぞ」

取り出されたのは雑誌だった。
四人掛けのテーブルに小さな山が出来て、俺は思わず立ち上がる。
頂上の一冊を手にとってみれば、それは聞き覚えのあるファッション雑誌だった。
俺も北条さんも、驚いたように楓さんを見つめてしまう。

 「……え。これ、ひょっとして……楓さんが載ってるやつ?」

 「ええ」

 「み、見ていいのっ?」

 「ですから、どうぞ」

北条さんが驚くのも無理はない。
モデルという経歴こそ知られてはいても、モデル時代の楓さんを誰も知らない。
もちろん、俺ですら。
北条さんが齧りつくようにページをめくり、見慣れたその姿を見つけた。

 「……楓さん、本当にモデルだったんですね」

 「はい。たまにファッションショーにも、出る、くらいの♪」



――ひとの過去は詮索しちゃ、めっ、ですよ。


見渡す限りの草原。
思わず口を突いて出た問いに、楓さんは確かにそう答えてくれた。
どことなく拗ねているようにも聞こえた声音は、今でも耳の奥に眠っている。

 「……」

 「おおー……」

チュニック。
コート。
ショートパンツ。
ジーンズ。

俺の知らない楓さんが、俺の知らない表情を浮かべていた。
北条さんがページをめくる度、楓さんの過去が、地平線の雲みたいに遠く膨らんでいく。

 「でも、どしたの? 前は頼んでも見せてくれなかったのに」

 「知ってほしくなったんです」

楓さんがゆっくりとページをめくっていく。
慈しむようなその手つきは、大切なアルバムを紐解く時とよく似ていた。

 「もう、私の全部を、知られちゃっても……いえ」

ぱたりと雑誌を閉じ、いつも通りの素敵な笑顔が覗く。

 「全部……知ってほしくなったんです。あなたに」


 「へー……プロデューサーさんも、やるじゃん♪」

 「……えっと」

 「楓さんが認めてくれたって事でしょ? 一人前のオトコとして!」


正しくは、一人の男性として、ですね。


物言わぬ筈の瞳が、何故だか俺に語りかけてきた。
幾らなんでも神秘的に過ぎる。
せめて千里眼だけで勘弁してほしい。切に。

 「それもありますけれど、後は、今後の参考にと、是非」

 「……参考、ですか」

 「ええ。どんな装いがいいか、考えておいてくださいね?」

 「やりがいのあるお仕事だねー?」

からからと笑う北条さんの横で、楓さんが鞄から携帯電話を取り出した。
何度か操作を繰り返すと、俺のポケットが震え出す。


 『お好みのものを、着て行きますので』


画面にはそんなメッセージが表示されていて、全力で平静を装った。
行き場のない力みが液晶を軋ませた。

77連0新衣装楓さん0SSRでした
ありがとうございました

お疲れ様です…

以前は微課金とか言ってたのに
奮発したね

77連とか微課金にしてはすごいですね…。
うーん、楓さんは策士可愛い

脱がせる服を選ばせるとか確実に仕留めにきてるんだよなぁ…

楓さんのタンクトップにジーンズが見たい

これまでもこれからも微課金だよ


 ― = ― ≡ ― = ―

閉じた一冊を伏せると、次の分はもう無かった。
気付けば全て眺め終えてしまったらしい。
溜息を垂れ流しながら寝返りを打つと、安物のマットレスが小さく鳴いた。

彼女は。高垣楓はモデルだった。
決して目立たず、涼し気な顔で、時には笑んで。
ただそれだけだった。

 「……良かった」

昔の彼女を否定したい訳じゃない。
けれど、それでも、俺は今の楓さんの方が、ずっと魅力的だと思った。


――あんな冗談みたいなスカウトで、彼女をアイドルにしてしまってよかったのか。


それだけが今までずっと引っ掛かっていた。
思い出そうとしても記憶はアルコールまみれ。
よく覚えてはいないけども、きっと碌な口説き文句じゃなかっただろう。

またアルバムを引っ繰り返そうかと手を伸ばして、やめた。
いま振り返ってしまったら、みっともなく泣き腫らしてしまいそうだ。


読み終えた雑誌の山を切り崩した。
冬物を中心としたファッション誌に紛れていたカタログをつまみ出す。

帰り際、いきなり差し出された封筒には困惑するしかなかった。
唇に指を立てながら見舞われたウィンクは目眩がするくらいに決まっていて。
詳細なんて訊けず、開封したのは結局ついさっきの事。
まろび出てきたこの本に、困惑は晴れるどころか増すばかりだった。

表紙に載っていたのはもちろんモデルさん。
楓さんには敵わないものの、なかなかの美人には違いない。
異国情緒を感じさせる顔立ちが、下着姿で笑顔を見せていた。


その、何と言うか、下着のカタログだった。


 「……」

もちろん、この本に楓さんは載っていない。載ってて堪るか。

載ってない筈なのに、どうしてこんなモノを渡されたのか。
ヒントはどうやら数カ所に貼られたこの付箋らしい。


トンネルを抜けると、そこは下着だった。

思わずそう表現したくなるくらい紙面は下着にまみれている。
モデルさん達はどの方も健康的で、さしたる色気は感じさせない。

そして嫌でも付箋が目に付いてしまう。
付箋にはメモも何も記されていないが、その、ええと。


――中まで選べ、という事だろうか。


 「……いやいや」

イメクラじゃないんだから。
いや、利用した経験はないけども、とにかく。

俺好みバッチリの服装で、楓さんがやって来てくれる。

それはとんでもなく馬鹿馬鹿しい妄想で、途方も無く魅力的な提案だった。
そりゃ、妄想の中で楓さんにバニースーツやらを着せた事はあるさ。
あるけども、それはあくまで脳内の話。
単なる男の悲しい性で、本当にやってしまおうなどと思う筈もない。


けど、着てくれる。来てくれる。


いつの間にか鳴っていた喉を、誰に聞かせるでもない咳払いでごまかした。
少々荒くなっていた呼吸を落ち着ける。
念のために深呼吸も少々。よしオーケー。
いきなり着信音が鳴り響いて、表示されていたのは楓さんの名前だった。
ベッドから落ちて肘を痛打した。


 「……もしもし」

 『高垣です……あの、大丈夫ですか?』

 「な、何がでしょう?」

 『呼吸が荒いですけど……何をしてらしたんでしょう』

 「何むっ、何も、していません。大丈夫です」

 『そうでしたか』

通話しながらも室内を見渡してしまう。
いや、たまたまだ。有り得ない。偶然に違いない。

 「それで……どうかされました?」

 『あ、そうでした。お渡しした本についてなんですけれど』


横目を飛ばす。
雑誌の山の頂に、下着姿の女性が微笑んでいた。

 『新しく買う訳ではなくて、同じのか、似たようなのを持っていますので』


 「……は」

 『遠慮なく、お好きなものを選んでくださって大丈夫ですからね』

 「……」

 『それだけです。お休みのところ、すみませんでした』

 「あ、え、いえ、はい」

本当にそれだけで通話は切れた。
耳元から離すとオフになっていた液晶が再表示され、『高垣楓』の名が映し出される。
そりゃそうだ。間違い無い。

いま聞こえていたのは間違いなく楓さんの声で。
手渡されたカタログは間違いなく楓さんの意思で。
俺はもう、間違いなく楓さんの掌の上だった。

 「……」

崩れていた雑誌の山から一冊を拾い上げる。
机の引き出しから緑の付箋を取り出して、俺は再びページをめくり直した。

(明朝に続く。)

もう待ちきれないよ!早く出してくれ!

これはひと月かけた高度な前戯

読者を惹き付ける展開誇らしくないの?
楓さんの掌の上で踊りまくりたい


 ― = ― ≡ ― = ―

 「あら」

挨拶もそこそこに、楓さんへトートバッグを差し出した。

 「お早いですね」


 「……え」

 「もっと、じっくり選んでくださってもよかったんですけれど」

 「……」

 「結構、楽しみにしてらっしゃるんですね」

あっと言う間に血が顔へと集まってくる。
両手で覆って俯いて。
一分ほどそうしている間、楓さんは含み笑いを漏らし続けていた。

 「ふふっ……落ち着きました?」

 「……はい」

 「じゃあ、拝見しますね」


 「えっ」

 「どれどれ」


主の出払っていた隣のデスクへ腰を下ろし、楓さんはトートバッグに手を突っ込んだ。
掴み取った雑誌たちからは幾つかの付箋がはみ出している。
持って帰るでもなくロッカーへしまうのでもなく。
楓さんは俺の目の前で、付箋付きのそれらを、じっくりとチェックし始めた。

 「んー、なるほど……」

 「……」

 「あ、確かに……こういうの……ふふっ♪」

 「……」

 「なるほど……こういう感じ、ですか」


一言で言えば、殺してくれ。


色を失っているだろう俺の顔と雑誌とを見比べて、楓さんは嬉しそうに笑う。
緩んだ頬がどこまでも無垢に見えて、立つ瀬は探すまでもなく消え失せていた。

雑誌を片手に、二人でお喋り。
傍から見れば特にどうという事もない光景だ。
例えその実が、どうしようもない性癖チェックの真っ最中であれ。

もう始まってる!



 「――分かりました」


体感では小一時間ほどにも感じられた五分間。
閉じられたページのぱたりという音がようやくの終わりを告げる。
俺の精神はこれ以上ない程にズタボロで、一刻も早く帰宅してしまいたかった。
何でもいいから逃げ出したかった。

 「プロデューサー」

 「…………はい」

 「こんな感じのが、お好きなんですね?」

 「……相間違い御座いません」

頷く分のエネルギーすら怪しかった。
どうにかこうにか頷いて、もうどうにでもしてほしい。

 「ふふっ……そろそろ、レッスンの時間ですね」

 「そうですね……」

 「じゃあ、行ってきます。お仕事、頑張ってくださいね?」

 「……はい」

立ち上がって伸びをして。
事務所のドアを開きかけた所で楓さんは足を止めた。
振り向いて、戻ってきて、俺の頬に唇を寄せて。


 「お楽しみに」



もちろん、その後は仕事になる筈もなく。

次回更新は今週末予定です
もう1、2エピソード挟んだらYes! Party Time!!です

食い気味な気持ち持て余しまくりなのに勝負のコスチューム万端なんだもん
曝け出して無敵にも程があるでしょうよ

これは、生まれついての小悪魔は天使に見えるとか言うやつですか。

今週末だぞ(気が早い)


 ― = ― ≡ ― = ―

少しフラついて見えて、そしてそれは気のせいじゃなかった。
三船さんが覚束ない足取りでこちらへ向かってくる。
廊下のところどころに積まれた荷物にちょくちょくぶつかっている。
……新年度前に片付けておこう。

 「あの……三船さん?」

声を掛けた途端、ぴたりと動きが止まった。
俯いていた顔が上がる。
呆然とした表情のまま、三船さんは俺の顔を見つめていた。

 「プロデューサーさん……?」

 「あ、はい」

 「……プロデューサーさん」

 「何でしょう……というか、あの、大丈」

肩を掴まれた。
がしり。と確かに聞こえた。
そのままダンボール山の陰に、壁際に追い詰められた。
不覚にも少し、ときめいた。


 「ええと、ちょっと、三船さん」

 「かえ、楓さんがっ、楓さんが……おかしいんですっ……!」

 「……へ?」

唐突に飛び込んできた楓さんの名前。
楓さんは割と、おかしな何かをやる事も多い気がするが。

 「一緒にお酒、お酒を飲みませんか……って、誘ったんです……」

 「……ええ」

 「そしたら、『すみません、控えているんです』って、楓さんが……言っててっ」

 「……はい」

 「絶対ぜったい、おかしいです。変です……ライブ前でもないのに……お酒を断るなんて……!」


鬼に金棒、楓に酒瓶。


いつかの折に聞いて、うっかり頷いて、隣の楓さんに頬をつねられた事がある。
それくらい彼女とアルコールは親和性が高い。
体の半分はお酒で出来ていて、もう半分はおつまみだとも聞いた。

ともかく。
楓さんがお酒を断るのはおかしい。それは事務所での共通認識らしい。
普段、楓さんがアイドル達の間でどう扱われているのか考えると、少し頭が痛くなる。


 「プロデューサーさん、教えてください……楓さんに、いったい何が……」

 「その、何がと言うか、ええ」

 「お願いです……! 何か、あるのなら……私も、力に……」

 「待って、三船さん、待って、あの、離れて」

間近に迫られ、ぐいと壁に追い詰められ。
潤み始めた瞳と、染まり出した頬と、押し付けられた柔らかさ。
駄目だ。ダメになる。

 「私も、楓さんの……友達として……」

 「分かったから、三船さ、離れ、アイツにぶん殴られるんで、あのホント」

 「プロデューサーさんっ……!」

三船さんの優しさに感動しつつ、柔らかさにはそれ以上に感動してしまう。
俺も男だ。許してほしい。
しかしマズい。早くごまかさないと非常に非常にマズい。
万一にでもこんな状況を楓さんに見られたらと思うと。

 「あら。こんな所で、何をしてらっしゃるんですか、プロデューサー?」


血の引いていく音が鮮明に聞こえた。
横を向くのも怖い。向かないのも怖い。
今ならモーフィアスの気持ちも痛い程によく分かる。

 「楓さんっ……ぁ」

 「さっきぶりですね、美優さん」

ようやく気付いたように、三船さんの身体が慌ただしく離れてゆく。
ちらりと胸元を見下ろせば、やはり少し寂しい。

 「かえ、あの、ちが、えう」

 「大丈夫です。分かってますよ、美優さん」

 「そのえと、本当に……私は」

 「プロデューサーは、そんないやらしい事をする方では、決してありませんから」

にこりと三船さんへ笑いかけたまま、後ろの尻尾で俺の耳を突き刺してくる。
心なしかいつもよりも平坦な声で。
聞いているだけで腹の奥が底冷えしてくるような。

 「でも、楓さん、お酒……どうして」

 「うーん……ヒミツ、だったんですけど……」

色違いの瞳がようやく俺の顔を捉えてくれる。
口の端が僅かに上がって、俺の背筋はそれだけで簡単に震え上がった。

 「美優さん。耳を貸してください」


 「……え?」

 「まぁまぁ、まぁまぁ」

止める間も無く三船さんの耳に手が添えられる。
色の良い唇を寄せて、楓さんは二言三言、何かを囁いた。
頷いた美優さんはハッと気付いたように眉を上げて、こちらの顔色を伺っている。


これが社会的死か。意外にあっけないものなんだな。


 「……そ、そう、だったんですね。私ったら、また……また、とんでもない早とちりを」

 「あ……え、いえ…………あ、あはは……?」

この期に及んでぺこりと下げられた小さな頭。
控えめな彼女のつむじを見つめたまま、乾いた笑いは勝手に零れていく。

 「じゃあ……お二人とも、頑張ってくださいね。応援……しています」

 「…………あ……は、どうも……」

ぺこぺこと頭を下げたまま、三船さんの背が廊下の角を曲がって消えた。
頑張ってください。
うん、温かい言葉だ。死にたい。

 「ふぅ……頑張る事になっちゃいましたね、新曲」


 「…………はい?」


新曲?


 「こっそり、とびきりの新曲を練習しているんです」

 「え。いや、新曲の予定なんて」

 「だから、そういう事にしちゃいました」

 「……」

 「ひょっとして、ぜんぶ、本当の話をしてほしかったですか?」

 「いえいえいえいえいえ」

押し黙っていた心臓が久しぶりに脈打ち始める。
どっと脂汗が滲み出て、今すぐにでもシャツを替えたい。
暑くて暑くてどうにも堪らなくて、二月だと言うのにネクタイを緩めてやった。

 「心臓が止まるかと思いましたよ……」

 「ふふっ……私も、そんなに迂闊な女じゃないですよ」

身に染みるほど知っている。
高垣楓はどこまでも額面通りに――魔性の女神だ。

 「だから、美優さんの為にも、頑張っちゃいましょう」

 「……新曲、かぁ。また作曲家さんに挨拶回りしないと……それから」

 「あ、そっちもですけど」


緩めたばかりのタイを掴まれた。
何かを考える暇すら与えられず、どかりと壁に押し付けられる。
ついでとばかりに押し付けられたのは、ひどく熱くて柔らかい何かで。


気付けば、奪われていた。


 「は、ぁ……」

ちゅぷり。

離れた唇はそんな音を立てて、荷物だらけの廊下に妖しく響いた。
何かを考える余地すら与えられず。
俺はただ、2センチだけ上に輝く二粒の瞳を、馬鹿みたいに見つめていた。

 「ふふ……私も、そこまで落ち着いた女じゃありませんから」

 「……っ……あ」

 「嫉妬くらい、しますよ」

 「…………」

 「頑張りましょうね、プロデューサー」

頷く力も抜けて、壁に背を預けたまま崩れ落ちる。
動かせない視界から長い脚が消えていって、後は小さな足音だけが聞こえた。
ダンボール箱の山にもたれ、また忘れかけていた呼吸を取り戻す。


ビンタ代わりのプレゼントは、コーヒーの味がした。

次回更新は木曜日の予定です



木曜日…た生殺しが始まるのか…

これずっと主導権握られっぱで終わりそう

楓さんの方が背高いのか?

>>83
Yes. 彼女の方が微妙に高い設定です

楓さんが本気を出したせいで(恋愛的な意味で)プロデューサー絶対殺すウーマンになってる…繰り出す攻撃全てが弱点特効クリティカルヒット…

楓さん172cmだしヒール履いたら男性の平均身長より高くなるよな
つらい(平均並感)

この生殺しさえも焦らしプレイだとして楽しもう…

この楓さんはヒールを封印してる設定なんよ!

ああ、木曜日って決戦は金曜日の前日やないか…

楓さんが強すぎて好きなの…

25歳で元モデルなんだからさすがに処女ではないよな

処女はさすがに引くから経験人数2~3人であってほしい

モバマスは現実じゃないんだから処女に決まってるだろ…
ちゃんと現実と向き合えよ

名言ワロタ

>>93
クッソwwwwww

まあ初期の性格知ってたら男性経験あるとは思えねえ

いよいよ明日か…


 ― = ― ≡ ― = ―


 「あ。プロデューサーさん」

 「再来週分のスケジュール案です。どうぞ」

 「……ありがとうございます。それと」

 「次の衣装でしたら現場帰りに見てきました。裾飾り増やす方向で修正中です」

 「…………そ、そうですか。順調そうで何よりです」


ちひろさんに書類を手渡し、再びキーボードを叩く。
用件はそれだけだったらしく、中途半端な笑顔を提げながら戻っていった。
気を取り直してメールチェック。
今日も今日とて依頼やら打診やらのメールが電子の山を成していた。

最近は営業回りに出る事も少なくなった。
こちらが何も言わずとも仕事が勝手に舞い込んでくる始末だ。
その中から楓さんの為になりそうな幾つかを選び、当人に感触を尋ねるばかりで。

 「……そろそろ、回ってみるか」

けれどどうも、楓さんは俺が獲ってきた案件の方がお気に入りのご様子。
この間の新人の子とのミニイベントなんて、それは素敵な笑顔が眩しいくらいだった。


ああ、畜生、駄目だ。
気が付いたらまた楓さんの事を考えている。


この一週間は仕事しか手に付かなかった。
それ以外の時間が少しでも出来ると、頭が勝手に彼女について考え出す。
高垣楓じゃない、楓さんについての愚考を。

結局、逃げ場なんて無かったんだろう。
スカウトから丸三年、俺の生活は高垣楓を中心に回っていたと言っていい。
高垣楓は実に回りがいのある女性で、この三年は余りにも満たされ過ぎていた。
磨けば磨いただけ輝く宝石を、とにかく手元に置いておきたかった。

 「コーヒー……」

カップを手に立ち上がり、不意に柔らかな感触が蘇った。
手からカップが滑り落ちる。
カーペットがごとりと鳴って、小さな染みが幾つか出来た。


どこか遠く、蠱惑的な含み笑いが聞こえた。

という訳で、たいへん前置きが長くなりましたが、明日の夜は是非よろしくお願いします。
あとオチが下ネタでもどうか怒らないで

ヤッターマン

コーヒー

ライター

パンツは明日の夜脱げばいいんだな?


 ― = ― ≡ ― = ―


 「じゃあ、お先に準備してきますね、プロデューサー」

 「あら、今日もですか? ふふ。二人とも、本当にお好きですねぇ♪」

 「ええ。大好きですから」


ちひろさんが指で作った杯を傾ける。
楓さんはどうとでも取れるような笑みを返し、俺は更に曖昧に笑い返した。

 「みなさんお給料も入りましたし、月末ですし、良いタイミングですよね♪」

 「……そうですね」

ちひろさんの場合、月の中で一番ご機嫌になる時期なのは間違いない。
理由はよく知らない。
知ってはいけない気がしてならない。

 「……では、俺も」

 「ああ、引き留めてすみません! また来月お会いしましょう♪」

後ろ手にドアを閉めれば、自然と息が零れた。
腕時計はちょうど18時を指している。

 「……」

そして、歩き出した。

21~22時頃より、ガンガンいきます

パンツはもう燃やした

期待

この日のために一週間禁欲してきた

ピロトークに期待


 ― = ― ≡ ― = ―


かつてない。
かつてないほど整頓された部屋だ。
恐らく今後もないだろう。


昨夜の帰宅からすぐ取り掛かった大掃除。
一日経った今でもその精緻さは失われていない。

床はもちろん、ベッド、風呂、キッチン。
念の為、を重ねるうちに少しやり過ぎてしまった感は否めない。
お陰で自分の部屋だと言うのにどうも据わりが悪い。


自分でも驚くべき事だが、さっき食べた夕飯が何だったのかよく思い出せない。
必死に思い出そうとしても、磨いた歯からミントが香って邪魔をした。



 ぴんぽーん。


 「っはい!」

思わず立ち上がった。
そのままつんめのめりそうになるのを何とか堪えた。

一度、深呼吸をする。
床を一歩ずつ踏みしめ、ドアノブに手を掛けた。


 「こんばんは」

 「あこ、こんばんは」

 「あこ?」

 「いえ」


こんな格好の楓さんとデートとかしてみたいなぁ。
そう考えたそのままの楓さんがそこに居た。


クリーム色のニットは毛玉一つ無い。
変装用の質素さともまた違うハットの下で、髪は編み込まれていた。
薄緑のスカートは、こう、詳しくないので分からないが、とにかくふわふわだ。
そこから伸びる脚はタイツで覆われ、長さがより強調され。
白くなった吐息は微かにバニラの匂いがした。


 「こういうふわふわの格好、プロデューサーはお好きですか?」

 「……それは、もう」

 「ですよね」

何せ、選んだのだ。
全部が全部、直撃だ。
反則だ。

 「少し、今の時期には寒いですけれど」

 「あ、ああ……すみません、気が利きませんで……」

 「いえ、好きで着て来たものですから」

 「……とにかく、中へどうぞ」

 「ありがとうございます」

楓さんを招き入れて、ドアが閉じて、少し静かになる。
靴を脱いだ楓さんは部屋に入り、テーブルの前にゆっくりと腰を下ろした。
俺もその向かいに腰を落ち着ける。落ち着かない。
自分の部屋に楓さんが居るだけで、それはもうとんでもない違和感があった。

 「お茶、飲みますか」

 「どうも」


見ているヤカンは沸かない。

誰の言葉か忘れたが、全くその通りだった。
ヤカンから少し目を逸らしてみると、彼女は忙しなく辺りをきょろきょろ。
正直恥ずかしい。

 「……そこまで面白い部屋でもないと思いますが」

 「いえ、面白いですよ。初めて入りましたし」

 「そりゃ、初めて入れましたからね」

 「それに、あなたの匂いがします」

ヤカンの蓋が鳴った。
手早く火を止め急須へ。
3月はもう目の前だが、それでもまだまだ冷える。

 「粗茶ですが」

 「粗茶なんですか?」

 「それはもう」

 「ふむ……美味しいですね」

上品に備前の湯呑みを啜り、楓さんは微笑んだ。
笑むだけで男は壊せるのだと、彼女はどこかで教わらなかったんだろうか。


二つの急須はほとんど同時に空となった。
形容し難い沈黙が室内を満たす。

 「……」

楓さんが立ち上がった。
二歩だけ歩いて、すぐにまた座る。
いつもより軽い負荷に、ベッドはいつもより小さく鳴いた。


ぽん、ぽん。


腰掛けたベッド。
そのすぐ隣を叩いて、楓さんに手招かれる。
抗う手段は無い。
最初から、どこにも。

 「……」

拳二つ分だけ間を空けて座る。
楓さんが座り直し、指一本も入らなくなった。


 「全部、済ませてきました」


バニラの香りがする。


 「はい」

 「お化粧も、薄めなので、大丈夫です」

 「……はい」

 「じゃあ、セックス、しましょうか」


そうか。
俺はこれから、彼女を抱くのか。


 「……あ」

肩を抱き寄せた。
あんまりに華奢なものだから、場違いな驚きに包まれてしまう。
こんな身体で、彼女はあの大舞台を踊っているのか。

改めて、近付いた小さな顔を見つめる。
精緻。端正。形容する言葉は尽きない。
しばらくにらめっこを続けていると、楓さんが首を傾げた。
そしてぽんと手を叩く。


 「召し上がれ?」


今度は、奪ってやった。


唇を重ねているだけなのに、ひどく興奮する。
瑞々しい感触が、弾けるように、何度も何度も伝わってくる。
行き場を失くした吐息が思い出したように零れる。

 「ちゅ、む……ん……」

上手いだとか下手だとか、俺達のキスはそんな域にすら達していなかった。
とにかくこの感触を逃したくないだけで。
多分、お互いに、与えるのではなく。
ただ求めているだけだ。

 「っ、ん……ちゅ、は……」

 「……っ、ふ……」

 「……けっこう、激しいんですね?」

 「……仕方ないでしょう」

 「どうして?」

 「だって、楓さんと、セックス……するんですよ」

口にするだけで顔が熱くなる。
付け焼き刃の真似事は、まだ俺には早かったらしい。


 「ふふ……プロデューサー、すごくドキドキしてます」

楓さんの手が俺の背を撫でた。
言われるまでもなく激しい鼓動は、先程から鎮まる気配が無い。

 「楓さんは、どうなんですか」

 「私ですか? ……ほら」

手首を掴まれ、導かれる。
指先が膨らみに触れて、そこで止まった。
そこから先は、俺自身の意思が必要だった。


 「……」

 「……ぁ」

身を寄せ、指先を沈める。
包み込むようにニットの丘を掌へ収めた。
少しだけ鼓動が伝わってきた。

 「……どう、ですか?」

 「柔らかいです」

 「……」

 「あと……ドキドキしてます」

 「……逆で……ん」


止まれる筈も無くて、俺は楓さんの胸を両の掌で楽しんだ。
軽く力を籠めると、衣擦れと共に柔らかな感触が伝わってくる。
ちょうど収まるくらいの温かな膨らみを、手放す事が出来ない。

 「……ふふ。つまらない身体で、んっ……ごめんなさい」

 「そっ、んな事ないです! すごく面白いで……す……」

鈍った思考が反射的に言葉を返した。
そうじゃない。
どこまでもそうじゃない。
ようやく冷えてきた鼓動を数えていると、編まれていない髪が小さく揺れた。

 「……ふ、ふふっ……」

 「あ、いや……違……」

 「……じゃあ」

 「え?」

 「たくさん、楽しんでくださいね?」


揉みしだいた。
捏ね回すように柔らかさを堪能し、首筋に鼻先を埋める。

 「……楽しいです」

 「っ……もう……」


左手で鼓動と柔らかさを確かめながら、右手で彼女を撫で回す。
ニットの下はこれまた手触りの良いシャツで、裾を腰から出してやる。
どうにも冷たかったのだろうか。
指先がおなかに触れた瞬間、楓さんはぴくりと肩を跳ねさせた。

腿はタイツに包まれていて、触れる肌に確かな熱を伝えてくる。
裾に指先を潜り込ませ、そこを探り当てる。

 「あ、っ」

声のトーンが変わった。
少々乱れていた息を整えるように、楓さんは黙り込む。
沈黙をイエスと取り、ゆっくりとスカートの裾を捲り上げた。

 「え」

 「……」

タイツ越しだからか、はっきりとは分からない。
分からないが、ええと、多分。

確かめようとした指先が端を捉えるより先に。
楓さん自らの手がタイツを脚から抜き去っていく。
心なしか、俺に見せつけるように。
黒を脱ぎ去った脚はそれでも細く、長く、眩しく。
爪先から伝い着くそこは、黒のレースに包まれていた。


 「こういうのが、お好きなんですよね?」


結局、俺はちっぽけなプライドを優先した。
あのカタログは、全ての付箋を外してから返却した。
だから、俺の希望じゃなくて、この、これは。

 「ふわふわの服と、こういう感じのギャップとか、お好きですよね?」

 「……」

 「……」

 「……好きです」

 「ですよね」

ささやかな抵抗は彼女の一息で吹き飛ばされた。
この期に及んでごまかそうと、腿の内側へ手を滑り込ませる。

既に竿はいきり立っていて、楓さんの腰の辺りへ当たっていた。
楓さんがもぞつく度に先が擦れ、すっかり湿気を帯びている。
それは、彼女も同じだったらしく。

 「っ、ゃ……」

黒のショーツは既に潤っていた。
指先でなぞる度、小さな口から吐息が漏れる。
吐息すら愛おしくなって、僅かにでも逃したくなかった。

 「んっ……」

再びキスを見舞い、指先をショーツの中へと進めた。
まず薄い毛の感触があって、その先に柔らかな窪みがあった。



ぴちゃ。


そのまま中指をゆっくりと沈め込む。
離れかけた唇を、頬に添えた手で再び捕まえてやる。
唇を奪ったまま、俺は楓さんの中をじっくりと確かめた。

 「……、……」

 「……」

 「っ……ん……!」


くちゅ、ぴちゅっ、くちゅ。


入り口がますます潤って、生々しく水音を立てる。
二人きりの部屋は静かで、だからこそ響く音が耳に残った。


 「――ぷ、ぁ……」

ひとしきり確かめ終え、そっと指を抜く。
重ねっぱなしだった口を解放してやる。
楓さんの頬は少しだけ朱が差していた。

 「……プロデューサー」

 「はい」

 「気持ちよくしてくれて、ありがとうございました」

 「それは、どうも」

 「是非、お礼をさせて頂ければ」


 「えっ」

 「失礼しますね」

腰掛けたベッドから降り、楓さんが床へ跪いた。
俺の両脚の間へ身を収めると、チノパンの留め具を手際よく外す。
ジッパーを下ろせば当然、まぁ、息子が現れて。
主張する竿を一度だけつつくと、彼女の指がボクサーをずり下ろした。

 「プロデューサー」

 「……はい」

 「興奮してらっしゃるんですね」

 「…………はい」

見れば分かるだろう。
そう言わんばかりに竿は硬く脈打っている。
びくり、びくりと揺れる度に、楓さんは興味深そうに観察していた。

 「ぅ、あ」

いきなり楓さんの指が触れた。
滑らかな指先に、竿が堪らず跳ねてしまう。

 「硬い……」

 「あ、楓さ、っ」

ゆっくりと、竿を手で擦られる。
くすぐったいような気持ち良いような、何とも言い難い味わいだった。


 「……」

 「く……うぁ、っ……」

彼女の手つきはひどく丁寧だった。
達するでもなく、かといって休ませるでもなく。
楓さんは何も言わないままで、眼差しはひどく優しくて。

 「プロデューサー」

 「……は……い」

 「いつでも、どうぞ」

 「え、な、っ……!」

先を咥え込まれる。
刺激され続けていた所に新たな快感が加わって、脳がパニックを起こしかけた。
止める暇も無いまま、瑞々しいその唇で、高まりきった竿を愛撫される。
堪らなく気持ち良かった。

 「かえ、っ……! あ……!」

 「ちゅ……ふ、ぅ……」

 「ぅ、くっ」

誰もを虜にする喉が、口が、唇が。美貌が。
欲望の象徴を舐め、扱く。
背徳感と征服欲が膨れ上がって、奥底にあった、単純な欲求を押し上げる。


 「出っ、楓、さんっ……! もう、うぁ……離して、くだっ」

 「……」

 「っう……楓さん、っ……」

脈打つ竿を飲み込んだまま、楓さんは愛撫を止めた。
ちらりと俺の顔を見上げると、ゆっくりと唇を引いていく。
その感触すら痺れるくらいに甘かった。

ゆっくり、ゆっくりと竿が空気に晒される。
濡れた唇が離れ、溜息を零そうとしたその直前。
楓さんの舌先が鈴口を撫で上げて、俺は為す術もなく欲望をぶち撒けた。


――びゅくっ!


 「っあ!! っ……!!」

 「あ……っ」

噴き上がった白が目の前の美貌を汚す。
驚いたような表情に再び白が飛び散って、それからようやく楓さんは手で遮った。

 「く……ぅ……」

何日ぶりだか分からない射精は勢いがあって、かなりの量をまき散らした。
堪らない余韻が遠のきかけ、ようやく俺はしでかした事態に気付く。


 「すっ、すいませんっ!」

 「……」

白く汚れた掌をじっと見つめ、楓さんは小さく口を空けていた。
慌ててティッシュを引っ掴み、丁寧にその顔と手を拭う。
何度もティッシュを替える間、彼女はずっと黙ったままだった。


 「……あの……すみませんでした」

 「……」

ようやく綺麗になった彼女へ、俺は頭を下げた。
楓さんは俺の顔と、すっかり小さくなった竿を見比べる。

 「たくさん出ましたね」

 「……」

 「いつも、こんなに出るんですか?」

 「……いえ」

 「気持ち良かったんですね」

 「…………はい」


何だろう。
たぶん、いや決してわざとやっている訳ではないんだろうけれども。
何と言うか。
これは言葉責めなんだろうか。


 「別に、怒っていませんよ」

 「……なら、よかったんですが」

 「むしろ、嬉しいくらいです。ご褒美をあげたいくらいに」

言い終わらない内に腰へ手をかける。
ボタンを外す音が二度聞こえると、スカートは床へと落ちた。
汚れたニットを下のシャツごと捲り上げ、頭から引き抜く。
それですっかり、彼女は下着姿になって。
揃いの黒は、白い肌にこれでもかと映えていた。

 「あ、え?」

 「いいから、任せてください」

 「いや……あの、う、ぁ」

彼女の唇が再び俺の竿を咥え込む。
出し終わったばかりで鋭敏になっていたそこへ、また快感が襲い掛かってくる。

 「ちょ、いま……今っ、いっ」

 「ちゅぷ、ちゅ……ちゅ……」

小さくなっていたのはポーズだったのか。
くすぶっていた熱を呼び起こされ、あっという間に硬く張り詰めていく。
何ともまぁ正直な奴に、思わずこちらが赤くなってしまった。

 「プロデューサー」

 「……何でしょう」

 「気持ち良かったなら、これで終わりにしましょうか?」


女神が小悪魔のように笑ったら、きっとこんな顔に違いない。
神秘の瞳が挑むように俺を見上げている。

 「……もっと」

楓さんを抱き寄せる。
ベッドの上へ引っ張り上げて、そのまま押し倒した。
俺の頬へ楓さんが手を伸ばす。
どこかで見たような光景だが、デジャヴだろうか。

 「楓さんを……気持ち良くしてあげたいです」

引き千切るように上を脱ぎ、破り捨てるように下を投げた。
びくびくと震える竿へ、楓さんが悪戯に微笑みかける。

 「……ん」

ずれていたフロントホックを外す。
濡れそぼったショーツを抜く。
それで、俺達は生まれたままの姿になった。

 「……裸を見られちゃうのは、これで二度目ですね」

 「え?」

 「見たでしょう。スカウトの時……えっちな覗き犯さん?」

懐かしい話だった。
あの最悪なスカウトも、もう三年も前になるのか。


 「い……いえ、あの時は湯気でよく見えませんでしたし」

 「見えなかったって、やっぱり見たかったんですね?」

 「見、その、そうじゃなくてですね……!」

 「見ていいんですよ」


俺の顔を真っ直ぐに見つめ返す。


 「触っていいんですよ」


滑らかな手が、芸術品のような身体を撫で回す。


 「好きにして、いいんですよ」


身体中が煮え滾って、枕元に手を伸ばした。


 「ところで、先月の話ですけれど」


 「……え?」

 「一緒に寝た日にですね、ちゃんと予定をしっかりかっちり確認しまして」

 「……?」

 「今日は、大丈夫な日なので、大丈夫です」


伸ばした手が震え出した。


 「ほら、そろそろ春ですし、春と言えば、そういう季節で」


急いで封を破く。
うまく破けない。


 「ねぇ」


ようやく取り出した中身を、覚束ない手で被せ終えた。


 「今だけでも、Pさんと呼ばせて頂けませんか」


余裕なんて無かった。
すっかり準備も出来ていた秘所へ、一息に竿を埋めた。

 「あ……ぁっ……」

 「……っく、ぅ」

初めからこうなる事が決まってたみたいに。
沸騰した欲望を、楓さんはただ静かに受け入れてくれた。
しばらく動けないまま、荒く息を乱し合った。

 「……ズルいひとだ」

 「……何が、ですか?」

 「全部です。楓さんは、全部……ズルいです」

 「……ふふっ。ズルい女はお嫌いですか、Pさん?」

楓さんの手が髪の中へ潜る。
留め具が外されて、編み上げられていた髪がゆるりと流れた。
美しい、いつもの、楓さんだった。

 「こういうのも、お好きでしょう?」

 「もう、全部、俺の負けで、いいです」

 「はい」

 「抱かせてください」


楓さんを抱き締めた。
腕を背へ回し、肌と肌とで触れ合った。
バニラが香って、温かくて、ズルくて、気持ちよくて、幸せだった。

 「Pさん」

 「はい」

 「きっと、これが、幸福なんですね」

唇で答え合わせをした。
足りなくて、舌で答えを確かめ合った。

 「ちゅ……ん、ちゅうっ……ぁ、ん……」

甘噛みのように、悪戯に、柔肉が竿を締め付ける。


 「あ……」

唇と身体を離し、楓さんを見下ろした。
寂しそうに、幸せそうに笑った。
女神がそこにいた。


 「――ん、ぁ……っ」


腰を引き、竿を突き挿れた。



くちゅ、ちゅぷっ。


 「は……ん、ぁ……」

楓さんの反応は控えめなものだった。
大きな声を上げる訳でもなければ、身をよじったりする訳でもない。
ただ静かに、俺から受け取る感触を確かめるように息を乱して。
それが堪らなく興奮した。

 「っ、や……っ」

挿入する度に控えめな胸が弾む。
誘うように揺れる果実へ、矢も盾も堪らずに手を伸ばした。
服越しなんかじゃない、肌で触れる柔らかさ。
俺の掌の中で抵抗もなく崩れて、容易く形を変えた。

 「楓、さん……」

 「あ……Pさん、っ……」

 「柔らかくて……気持ち良い、です……」

弾力がある、という表現は当てはまらないかもしれない。
優しく揉みしだいてみると、沈めた分だけ指が沈む。
腰を揺らすと、揺らした分だけ掌の中で弾む。

気持ち良い。
いつまでもこうして楓さんの中を味わっていたい。

だけど、こみ上げてくる。
このまま腰を振り続ければ、すぐにこの幸福な時間は終わってしまう。


突き挿れるペースを緩め、その分深く、奥まで挿入する。
髪を梳いて、頬を撫でて、じっくりと膣内を竿で擦り上げる。
このままゆっくりと楓さんを堪能して、

 「P、さん」


彼女が、そんな隙を見逃す筈も無かった。


 「交代、です」


 「ん、ぇ?」

 「……えい」

 「わ」

伸ばした腕で横に引き倒される。
入れっぱなしだった竿が抜かれ、その感触すら心地良い。
抵抗は出来そうだったが、彼女の瞳がそれをさせなかった。
どの道、楓さんには逆らえっこない訳で。
なら、このまま身を任せて、楽しんでしまった方がいい。


そう考えたのが間違いだったかもしれない。


 「よい、しょ……」

天井がよく見えた。
今更だけど、電気を消した方がムードは出たかもしれない。

仰向けに寝かされる。
楓さんが俺の腹へ馬乗りになって、小ぶりなお尻をもぞつかせる。
俺の胸板に両手をついて。
楓さんは、もう女神なんだか小悪魔なんだか分からない笑みを浮かべた。

 「Pさん」

 「……あの、楓さん。あの、これ」

 「いつでも、どうぞ」

浮かせていた腰をすっと降ろす。
重力に逆らっていた竿がそのまま柔らかな感触に包まれる。
思わず腰が浮いて、声にならない声が喉を震わせた。

 「ん……んっ……」

 「う、ぁ、ぁ……っ!」


ぐちゅっ……ぐちゅん。


俺の上で楓さんが揺れる。
浮きそうになる身体を抑えつけるように、何度も何度も秘所を押し付けられる。

 「は……ぁ……」


楓さんの騎乗位は、暴力的なまでの快感だった。


細められた瞳はただ俺だけを捉えている。
挑発するように二つの果実が弾む。
竿と、両手の添えられた胸板だけが、灼けつくほど熱い。

 「P、さん」

 「あ……楓、さんっ……! い、」

 「気持ち、いい、ですか?」

 「は、っあ……っ!」

手で、口でされるだけで簡単に達してしまったのだ。
これで首を横に触れる野郎など存在する筈もなく。

 「んっ……はぁ、あ……」

少しでも長くこうしていたい。
やみつきになるような甘さを拒めない。

鈍った思考に輪が掛かる。
もう保たない。
駄目だ。
このまま、与えられるばかりじゃ、駄目だ。



同じ目線で、楓さんを愛したい。


 「……っ!」

彼女にそうされたように。
手を伸ばし、肩を掴み、引き倒す。

 「はぁ、っ……! は、ぁ……!」

再び楓さんを組み敷いた。
鼓動は破裂しそうなくらいにうるさくて。
竿は今にもはち切れそうなくらいに脈打っている。

暴発しそうな衝動を抑え込む。
忙しない脈動が収まるまでの間、俺は楓さんの上で目をつぶっていた。
そして目を開けた時。


大丈夫。ぜんぶ、分かっていますよ。


全てを見透かすような瞳で、無邪気に笑っていた。



――ぱんっ!


 「っ、あ……っ!」


勢い任せに竿を突き挿れる。
楓さんの喉が反って、甲高い声が漏れて、ようやく俺は間違いに気付く。
そうじゃない。これは違う。
彼女は何かを堪えるように目をつぶっていて、少しだけ頭が冷える。
最初から俺は間違っていたんだ。

 「楓さん」

 「……はい」

大切な事を伝え忘れる癖は、まだまだ治りそうにない。

 「好きです」

もう抜いた


 「…………ぇ」

 「好きです。以前に言ったままの意味で、以前よりずっとずっと大きな、好きです」

 「……い、今っ、それ……言いますかっ……!?」

 「言い忘れてた分、言わせてください」

 「……」

 「大好きです。貴女を心の底から愛しています、楓さん」

よそ行きの化粧でもしたみたいだった。
僅かに上気していた楓さんの頬が、見る間に、それは見事に紅葉していく。
あぁ、お酒以外でも染められるのか。
場違いな納得が頭を満たした。

 「……っ!!」

楓さんが顔を逸らし、手で俺の目線を遮った。
けれどここはベッドの上で。
俺も彼女も逃げ場なんてどこにも無くて。
指を絡ませながら、俺は彼女の弱々しい手をどけた。

 「楓さん」

ぎゅっと目を閉じて、あぁだとかうぅだとか言いながら、彼女は首を振った。

 「目を開けて」

頬に手を添えると、確かな熱を感じた。

 「貴女の、宝石みたいな瞳が、大好きです」

少しだけ間があって、それから楓さんはゆっくりと目を開ける。
ほとんど泣きそうな神秘の瞳は、やっぱり宝石めいて美しかった。


 「好きです」

 「……ぁ、ぅ」

ゆっくりと腰を引く。
再び緩やかに、でも強く。確かめるように挿入する。


くちゅ……っ。


 「んぅ……ぁ」

 「愛して、います」

 「ぁ、っ……♡」

 「大好きです」


ぱん。くちゅ、ぱちゅ、ぱんっ。


 「楓さん」

 「ぁ、Pさ、ぁ、んんっ……♡」

 「楓、さん……っ」

楓さんの中が何度も狭くなる。
きつく締め付けられて、囁く言葉が途切れそうになる。
それでも目を逸らせなかった。
きっと、もう二度と。



 「ミステリアスな瞳が、好きです」

 「ぅあ、Pさん、っ……っあ」

 「すらりと伸びる、脚が素敵、です」

 「や、んっ……あ、ぁ」

 「なびく髪が、綺麗です」

 「ん、んっ……♡ あぅ」

 「取るに、っ、取るに足らないような、駄洒落が、好きです」

 「やっ……も……い、いっ♡」

 「愛しています。大好きで、ぅ……っ、大好きです」

 「……~っ♡」

 「綺麗……です。楓さん……ぅく」

 「っあ♡ ま、待っ、ぁ♡」

 「可愛いです。綺麗です。楓さん、大好きです」

 「い、いっ……♡ Pさ、ぁ♡ わた、っ」

 「く……あ、あっ……! 愛して、います」

 「もう、いっ♡ いって、か……ら……っ♡」

 「楓さん、っ、楓、さん……っ!」

 「Pさん、っあ、あっ……♡」


この感情を伝えるのに、言葉はひどく頼りなかった。
伝える言葉の無くなった唇を重ね、壊れそうな身体を強く抱き寄せた。


ぱんっ、ぱんっ。くちゅっ、ぱん、ぱちゅ、ぱんっ。


気持ち良いのか、気持ち良くさせられているのか、分からなかった。
ただ、ただ、この甘い感触を味わっていたくて、何度も竿を突き挿れる。
もう何をしても気持ち良くて、すぐそこまで迫っていた。

 「はぁっ……はぁ、ぁ……っ!」

 「……っ♡ んぅっ……♡」

 「く……うぁ、あ!」

快感の波が何度も押し寄せてくる。
耳元では楓さんが美しい声を零し続けて、どうにもならなかった。
もっともっと甘く蕩けた声を聞いていたい。
ずっと貴女のそばにいたい。


崩れるのは、一瞬だった。



びゅっ……どくんっ。


 「――ぅ、あ……っ!!」

 「――っ、あっ……♡」


これまでの快感をまとめて重ね上げたような、抗いようも無い甘さだった。
腰どころか身体ごと震えて、言葉も息も出てこない。
駆け抜けていく快感を、ただ歯を食いしばって噛み締めた。


どくっ。びゅ、どくん。


何度も射精を繰り返して、その度に堪らない感触が伝わってくる。
楓さんを抱きしめたまま、少しずつ射精の脈動が収まっていく。


 「P、さん」

 「……ぁ、ぇ」



 「全部――してください」


色香を形にしたような声だった。
楓さんの腕に抱き返される。
柔らかな身体を押し付けられる。
悪戯な指が腰をするりと撫で上げる。

灰に埋もれかけた炎が、ほんの一瞬だけ燃え盛った。


――びゅくっ。


 「ッあ、うぁ……ッ!!」


全く未知の感覚が、僅かに残っていた理性を叩き壊す。
あまりの快感に獣じみた声を上げる。
思わず握った指先が安物のシーツを引き裂いた。


 「~~……っ!」

 「はぁっ……あっ…………ふふ」

 「かえ、でさ」

 「素敵、でした。Pさん」



ちゅっ。


わざとらしく音を立てて、頬にキスを見舞われた。
こういうの、大好きです。
訊かれる前にそう答えようかと思った。


 「Pさん」

 「……はい」

 「気持ち良かったですか?」

 「……答えなきゃ駄目ですか?」

 「ええ」

 「……」

わざとらしく音を立てた。
こういうのがお好きならいいなと、ぼんやりそう思った。

 「なら……よかったです」


身体を重ね合ったまま、しばらく、気怠くて甘い時間が続く。
そのまま眠ってしまいそうになった時、再び楓さんの指が腰を撫でた。
少しだけ意識が覚醒する。

 「Pさん」

 「はい」

 「今日は、着けて頂きましたけど」

 「……は、え、はい」

 「いつか、もっと気持ち良くさせてあげますね」

言葉が耳を素通りし、しばらく意味が飲み込めなかった。
ようやくピースが組み上がった途端、どくんと胸が脈打った。

 「あ」

 「あっ」

 「……Pさん?」

 「え、いえ、これはですね」

 「私は、今がいつかでも……構いませんよ?」

 「……」



眠りかけた血が、巡り出した。

やったぜ。

ふぅ……。

次回更新は朝9時ごろの予定です 宜しければもう少しだけお付き合いください

お疲れ様です

さて使うか

>>116
急須じゃなくて湯呑みかな、とか野暮なツッコミを入れる賢者タイム

ピロートークの破壊力がすさまじいぞこれは…

確かに湯呑みだわ ありがとう旦那

処女なわけないよなあ……

おっと、野暮は無しだよ

やけに手慣れてるし痛がる描写もなかったしやっぱり非処女なんですかねぇ。そこら辺はっきりしてほしいわ。

ユニコーンが定期的に来ますね・・・

>>154
賢者だけど冷静じゃないみたいだな


 ― = ― ≡ ― = ―


 「おはようございます」


 「……おはようございます」

目の前5センチに神秘の瞳が並んでいた。
こつり、とおでこをぶつけられる。

 「良い朝ですね」

 「はい。本当に」

 「しちゃいましたね」

 「……しましたね。それはもう」

 「ふふ」

楓さんを抱き寄せる。
もう答え合わせは必要無かった。
どこか窓の外で、鳩が鳴き交わしていた。


 「Pさん」

 「何でしょう」

 「久々に、暦通りのお休みですね」

 「そうですね……随分と久しぶりな気がします」

この界隈は曜日だとか時間だとかの概念が薄い。
日曜にも仕事はごくごく普通に舞い込んでくる。
深夜ラジオの生放送だってある。
だからこそ何ヶ月ぶりかの土日休みは、俺を少し人間に戻してくれる。

 「それで、今日も明日もお休みですけれど」

 「はい」

 「今日は、何をしましょうか?」

誰が居る訳でもないのに。
楓さんの声は密やかで、少し弾んでいた。

 「お買い物に行くのもいいですね」

 「……」

 「一日ひなたぼっこ、なんていうのも、素敵だと思います」


目は口ほどにものを言う。
至言だった。
宝石めいた瞳が悪戯に細められて、俺の瞳を覗き込んでいる。

 「……ちなみに」

 「はい」

 「楓さんは、一番なにがしたいんですか?」

 「……そう、ですね」

朝起きてから今まで、彼女から目を逸らせない。
逸らしたくない。


 「――今日は一日、ゆっくりしたい、ですね」


日本語というのは、とても難しく。
言葉というのは、主語が抜け落ちていようと案外伝わってしまうもので。


 「俺も、今日はゆっくり、したいです」


鳩が鳴いている。


 「まずは、お風呂に入りましょう」

そう言いながら楓さんは身を起こし、俺の手を引いた。
指先は相変わらず滑らかだった。

 「……一緒に?」

 「いっしょに」

 「ウチの風呂、狭いですよ」

 「それは丁度いいですね」

 「……」

 「ゆっくり、しましょうか」


思い出した。
一晩寝るだけで忘れてしまうとは、俺の頭もなかなか色ボケしているらしい。



彼女に抗う事なんて、端から出来やしないのだ。

次回更新は明朝の予定です
エピローグを含め、完結させます
よろしくお願いします

もう終わりか

涙出て来た

最高かよ…

最後少し逆転したけど、結局は掌の上だった感
世紀末歌姫はつよすぎる

神(語彙力0

お願いですので一秒でも長く計算高垣楓さんとの一瞬を過ごさせていただけませんでしょうか


 ― = ― ≡ ― = ―

 「プロデューサー」

虚を突かれ、返事が出来なかった。
けれどよく考えれば当たり前の事で、ただいつもへと戻るだけの話だ。

 「ふふ……そんな、泣きそうな顔をしないでください」

 「し、してませんよ」

 「じゃあ、そういう事にしておきましょう」

狭い玄関口。
俺のコートを揺らし、楓さんは小さく笑った。


他はともかく、上等なニットを洗濯機で洗う訳にもいかず。
結局、身から出た錆と言うか、いや出たのは錆ではないんだけれども。
預かってクリーニングに出すのは当然の責任だろう。

もちろん楓さんをそのまま寒空の下へ放り出す訳にはいかない。
少々肩幅が大きいが、やむなく男物のコートを羽織らせる。
幸いと言うべきか情けないと言うべきか。
サイズにそこまで不都合は無いようで。

 「……♪」

楓さんが何度も、俺のコートを嬉しそうに撫でる。
そんな仕草もいちいち呆れるくらい可愛くて。
本当に、ズルい。


 「プロデューサー」

楓さんが微笑んで、また俺を壊そうとした。
いや、そうだ。もう壊れていたんだった。

 「ありがとうございました。この思い出は、ずっと忘れません」

 「……俺だって」

 「ここで起こった事。私が貰ったもの。あなたが伝えてくれた言葉。全部を」

 「ええ」

 「では、また来月」

ドアノブを握り、楓さんはドアを開けた。
流れ込んでくる空気は思ったほど冷たくない。
そうか。明日から3月だった。


春はもう、そこまでやって来ていた。


 「ここで」

 「はい」


かたん。

ドアが閉まり、しばらく無音になった。
それからこつこつという靴音が響き出す。
途中で早足になって、最後は駆け足が遠ざかって行った。
急いで階段を駆け下りる音が聞こえた。
鐘なんて鳴っていないのに。

 「……」


ずっと忘れません。
あなたが伝えてくれた言葉。
また来月。
ここで。



はい。



 「……やられた」


手ひどく、それはもう文字通りに。




  【エピローグ】



 「では、お先に。プロデューサー」

 「はい。お疲れ様でした、楓さん」


いつの間にか定例となってしまった。
月末の金曜日は定時退社厳守の日だった。

 「いやぁ、本当にお好きですね、お二人とも♪」

相変わらずちひろさんは上機嫌だった。
閻魔帳を眺めては、それはそれは嬉しそうに眉尻を下げる。

 「最近の楓さんは絶好調ですし、うん、モチベーション管理は完璧ですね」

 「……」

 「流石はプロデューサーさん。ひょっとして、魔法でも使ったんですか?」

 「ちひろさん」

 「はい、何でしょう♪」

 「……」

 「プロデューサーさん?」

 「あの」

 「ええ」

 「…………繋がってませんよね?」


訊いてはいけない事ぐらい分かっている。
だが、男には負けると分かってても戦わなきゃならない時がある。
この前こてんぱんにしてやられたけども、それはともかくとしてだ。

 「ところでプロデューサーさん」

ちひろさんは微笑み続ける。
閻魔帳を閉じると立ち上がって、俺の方へと歩み寄って来た。

 「ほんの一つだけ、伺っておきたいんですけれど――」

そして、俺の耳元へ口を寄せる。
アイドルでもやれそうな甘い香りに、俺は考えを改めた。


勝てない戦いなんて、挑むべきじゃない。




 「――繋がってませんよね?」


ふぅ…………おしまい。
楓さんは計算高一枚上手えっち


月末に繋がる物語、これぞ結末の顛末也
一ヶ月間に渡りお付き合い頂き、ありがとうございました

今年のクリスマスは加蓮ちゃんの話の予定です
加蓮ちゃんと神様の話とかそんな感じだと思います


ちなみに微課金なので恒常楓さんガシャ77連0SSRはちょっと堪えます
誰か助けてくれ あとスカチケくれ

気付かれないと寂しいので書いとくと、けつまつの点を待って月末に至るというアレです

ほたるSSRのために生まれて初めて課金した


これから何回も使わせていただきます

おっつおっつ

面白かった。
なんで元カレは別れたんだろう。こんなに良い女なのに。不思議ね。

上京した時とかいくらでもタイミングはあるでしょ

繋がる(物理)

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