相葉夕美「プロデューサーに花束を」 (105)
プロデューサー。
何度唱えてみても、やっぱり変な言葉だと思う。
カメラさんとか、監督さんとか、そういう人をそういう風に呼ぶのは、何となく分かるけど。
でもプロデューサーはいつも隣に居る人で。
この事務所だけかどうかは分からないけど、そう呼ばせたがる人が多くて。
私の担当さんもその一人。
「ありがとね。Pさん」
「夕美もお疲れ様。ゆっくり休んで」
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帰り道を車で送ってもらって、気付けば引っ越したばかりの家に着いてて。
――もう少しゆっくり送ってくれてもいいのになぁ。
そう思うのは心の中だけ。
この人が遣ってくれた気は、とてもじゃないけど無駄になんて出来ない。
「あのさ、夕美」
「うん?」
「試しに、試しにさ。昔みたいに、プロデューサーって呼んでみてよ」
「ううん、やだ」
「……これ以外の聞き分けは良いのに」
「だって、急に『プロデューサー』『相葉さん』に戻ったら、そっちの方が変だよ?」
「それはそうなんだけど……こう、公私の。そういう、曖昧な……」
「彼女を名前で呼ぶの、そんなにイヤ?」
「そんな訳無いよ。ただ、何となく……一緒くたにしたくないんだ。アイドルと、普通の女の子と」
Pさんとナイショで交際を始めてから、そろそろ一年。
凛ちゃんにも、周子ちゃんにも、藍子ちゃんにだって秘密のお付き合い。
でも何となくだけど、多分バレちゃってるんじゃないかな、とはちょっと思ったり。
私もPさんも、あんまり嘘が得意な方じゃないし。
「だから、簡単だってば」
Pさんの手を握ってみる。
ゴツゴツしてて、カサカサしてる、男の人の手。
「好きって。ちゃんと言ってくれたら、私だって……そう呼ばない事も無い、かも」
「……ごめん」
Pさんが首を振って、薄く笑って、手を離して。
世界で一番優しいこの人は、私の一番欲しい言葉だけはくれなくて。
ズルいなぁ。本当に、ズルい。
乙女心を弄んでばかりだと、この気持ちだって枯れちゃうよ?
うん、えっと、今の無し。
心の中でつく嘘は、いつか本当になっちゃいそうで怖いから、やめやめ。
「おやすみ」
小さくなっていく社用車を見送るりながら、自然に溜息が一つ。
普通のデート経験、無し。
キスした事、何回かだけ。
その先――もちろん、一切無し。
「……はぁ」
アイドル生活はとっても楽しいけど、アイドルの肩書きはちょっとキライ。
そんなわがままをPさんに伝える訳にもいかなくて、もやもや、モヤモヤ。
「ただいまー…………あっ」
玄関を開けた所で思い出して、急いで靴を脱いだ。
今朝、日向ぼっこをさせてあげたポインセチア。
窓際に置かれたままの彼女は、少し元気が無くなっていて。
……ごめんね。
甘い甘い花束こと相葉夕美ちゃんのSSです
http://i.imgur.com/fqzRg2B.jpg
http://i.imgur.com/jGHF05W.jpg
前作とか
高垣楓から脱出せよ ( 高垣楓から脱出せよ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483426621/) )
相葉夕美「真冬に咲く」 ( 相葉夕美「真冬に咲く」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439725937/) )
鷹富士茄子のブーケトス ( 鷹富士茄子のブーケトス - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1462010577/) )
上記『真冬に咲く』より一年ほど経った頃の話です
だいぶ直接的な性描写を含みます
― = ― ≡ ― = ―
「夕美さん、最近何かありました?」
「えっ?」
事務所のカフェでお茶をしていると、藍子ちゃんが首を傾げる。
何かと言われても、うーん、何だろう。
「この前から、『薄れゆく愛』とか、『貴方を忘れない』だとかむひゅっ」
「しーっ! しー……っ!」
慌てて藍子ちゃんの口を塞ぐ。
周りを見渡せば、他の娘たちからは少し席が離れていて。
しばらくもごもごしていた藍子ちゃんと目を合わせてから、何度も頷いた。
そっと手を離すと、藍子ちゃんはぷはぁ、と息を吐いて、責めるように私を見つめる。
「……息が、出来ませんでした」
「ご、ごめん……でもっ、どうして知って」
「花言葉、ですか?」
私とPさんは、一月に一輪ずつ、お花を贈り合ってる。
花に言葉を載せて、花に載せた言葉で返してもらって。
シュウメイギク、シオン、バーベナ。
あんまり有名な花だとみんなにも分かっちゃうから、ちょっとマイナーな花を選んで。
藍子ちゃんも、そこまでお花には詳しくない、筈なんだけど……。
「ええと……実は、こっそり写真を撮っていたんです。鞄や花瓶に挿したのを」
「しゃ、写真?」
「その、携帯電話で。それを、その……凛ちゃんに」
「……あー、あー」
凛ちゃん家のお店は、私も贔屓にさせてもらってる。
お花や種やアンプルを買うついでに、他の娘とは話せないような事も、少しだけ。
凛ちゃんも私と同じような真似をしているらしくて、相談にも乗ってもらったり。
それこそ、Pさんへ贈るお花を買っていったり。
写真を送って来られたら、確かにすぐ分かっちゃうと思う。でも。
「……どうして、わざわざ?」
「ごめんなさい。やっぱり、上手くいってるのかどうか、気になっちゃって」
「上手く、って」
「だって、友達が担当さんとお付きゅむぅ」
「しぃーーっ!!」
何度も頷き合って、今度はすぐに解放してあげた。
ここR板じゃなかったね ごめんね つい癖でね
運営の方で判断してRへ飛ばしてくれるらしいのでとりあえず続けます
「……知ってたの?」
「知ってたと言うか、ええと……誰でも分かるんじゃないかなぁ、夕美さん達の事」
何か言おうとしても、口はぱくぱくとするだけで、私はテーブルにつっ伏してしまった。
うぅ、一応は隠してたつもりだったのに。
「それで、どうしたんですか?」
「……」
辺りを伺いながら、藍子ちゃんが耳元へ寄せた口に手を添えてくれる。
顔を上げて、むっつりとした顔を作ってやって、小さく呟く。
「Pさんがね」
「はい」
「好きって、どうしても言ってくれないの」
「はい。ご馳走様です」
「の、ノロケとかじゃなくってっ」
「叫んじゃいますよ?」
「…………ノロケです」
何だか最近の藍子ちゃん、つよふわになってきた気がする。
「――なるほど。そういう事でしたか」
一通り話し終わると、藍子ちゃんがすっかりぬるくなったカフェラテを口に運ぶ。
私も真似をしてハニーラテを傾けて、やっぱりぬるくなってた。
「ずっと変わらずいようとするのって、難しいですよね」
「……そう、かな」
「はい。私、よく日向ぼっこをするんですけど」
そう笑って、藍子ちゃんが窓の外へ目を向ける。
釣られて外を見渡すと、春の日差しが東京を優しく照らしていて。
「太陽って、意外なくらいすぐに動いちゃうんです。日向ぼっこって、実はコツが要ったり」
「暑過ぎず、寒過ぎず……って?」
「はい。でもそれって、何でもそうだと思うんです」
藍子ちゃんの言葉は柔らかくて、聞いていると段々と眠たくなってきちゃう。
眠気を飛ばそうと手元をいじって、空になったカップの意外な冷たさに少し目が覚めた。
コーヒーを飲むのにも、コツが要るのかな。
「恋人という関係……とても、素敵だと思います」
にこりと笑って。そういう藍子ちゃんこそ、とっても素敵な表情。
たまには担当さんへも、素直にそういう顔を見せてあげたらいいのに。
「ずっと隣に居たいなら、ちょっとだけ近付いてみるのもいいんじゃないでしょうか」
「……そう、かも」
「夕美さん、そろそろお誕生日ですよね?」
「うん」
「花や花束を贈り合うのも良いですけれど、たまに別の何かをねだってみてはいかがでしょう」
「……プレゼント、かぁ」
私はお花が好きで、Pさんも好きになってくれた、と思う。
でも確かに、お花を贈ればそれでいいのかって言うと……少し、違うような。
恋人らしく。
まだまだ難しいけど、確かに大切な事かも。
「……うん。何となく、分かったかも。ありがとうね、藍子ちゃん」
「どういたしまして」
「じゃあ、今度は藍子ちゃんの話だね」
「……」
笑顔で席を立とうとする腕を捕まえた。
意外に力強いゆるふわさを逃がさないように、私もにっこりと微笑んで。
根掘り葉掘りって、園芸が語源なんだよ? 藍子ちゃん。
「こ……この後、日向ぼっこの予定がありまして……」
「ダメ。私だけなんてズルいし。……ユニットメンバーとしての義務だよっ」
「ゆ、ユニットって、デュオじゃないですかぁっ……!」
そうして騒ぎ合ったせいで、他の娘たちも集まって来て。
結局うやむやのまま、私達は逃げるようにカフェから転がり出て。
女の子にとって、コイバナは何よりの栄養なのに。
……恋人らしく、かぁ。
― = ― ≡ ― = ―
「お疲れ様、夕美」
「うん」
初めてのバースデーライブは、規模こそ小さいけれど、大成功。
会場中に黄色いサイリウムが咲き乱れて、まるでお花畑の中に居るみたいで。
まだふわふわとした気持ちのまま、いつものように助手席へ沈み込んだ。
……あ、マズいかも。
疲れて、寝そうで……ううん、今日だけはダメ。ダメ。
「約束の夕ご飯、行けそう? 疲れてるんだったら」
「行くっ! だいじょぶっ!」
「……そ、そっか。流石はパッションと言うか」
思わず被せ気味に答えちゃって、ほっぺたが熱くなる。
ドキドキする胸を抑え付けて、何でも無いように、視線は窓の外。
何か話すべきなのに、何も話題が思い浮かばない。
どうしよう、どうしようと焦っている内に、車はレストランへ到着しちゃった。
「――みんな集まってくれて、良かったね」
「……うん」
「チケット回収率97%だって。払い戻し含めたらほぼ100%。凄いよ、夕美」
「そ、そう……かな?」
「夕美」
「う、うん。聞いてるよっ?」
「いま、何食べてる?」
「え? えっと……スズキ?」
「シタビラメだよ」
とっても美味しい筈の味も分からなくて、何を喋ったかも覚えていなくて。
二人きりの大切な時間なのに、私は緊張でただ固まってるだけだった。
Pさんも分かっているみたいで、話を振りながら、困ったように笑ってる。
「そろそろ、出ようか」
「……うん」
この一時間がすっぽ抜けたみたい。
私はぐるぐると回るだけの空っぽ頭を抱えて、出口の自動ドアをふらふらと潜った。
変わらないエンジン音と、時々小さく跳ねる時の振動。
家への帰り道を辿る車に乗ってしばらく、鼓動が少しだけ落ち着いてきた。
すっかりからからになった喉を鳴らして、精一杯の自然さを装って、口を開いてみる。
「あの……Pさん。あの、あのね?」
「ん、ああ……プレゼントだよね。大丈夫、忘れてないよ」
「その、それも、なんだけど。えっと……静かな場所に、連れてってほしいの」
「静かな……うん、いいよ。どこで渡そうか迷ってたんだ」
「なら、ちょうどよかった、のかな」
「さっき渡してたら、そのままテーブルの上に置いて来そうだったしね」
「そっ、そんな事無いよっ!?」
「ははっ」
大丈夫。ちゃんと話せてる。
嘘で着飾る訳じゃない。思ってもない言葉を並べるつもりなんかじゃない。
ほんのちょっぴり、近付いてみるだけ。
それだけだから、きっと大丈夫。ぜったい大丈夫。
― = ― ≡ ― = ―
「綺麗だね」
「……うん」
小高い丘の上に造られた、ちょっと広めの公園。
けっこう最近になって出来たみたいで、夜なのに歩く人の姿がちらほら見える。
私は眼鏡と帽子を被って、Pさんは私の名前を呼ばない。
私はアイドルで、Pさんはプロデューサーだから、窮屈なルールに縛られないといけなかった。
「Pさん」
「うん」
「この前のライラック、ありがとね」
「……あ。そっか、そろそろそっちの番か」
月の初めにPさんが、半ばに私が。
それぞれ花を贈り合って交わす、みんなには秘密の会話。
自分でもちょっと乙女過ぎるかなと思う趣味に、Pさんもよく付き合ってくれると思う。
今回のライラックは、籠めた花言葉と言うよりも、誕生日記念だろうけどね。
(スレタイ以外、特にアルジャーノン成分は無いのであしからず)
「今日は私も……プレゼントにとっておきのお花、用意してきたんだ」
「……え?」
手ぶらでそう呟いた私に、Pさんが小さく首を傾げた。
空っぽの掌を見せつけるように振って、震えそうな顔をむりやり笑わせる。
「Pさん。私、幾つになったっけ?」
「22。アイドルになって、四年目」
「私、少しは綺麗になれたかな?」
「少しなんかじゃないよ。凄く、綺麗になった」
欲しい言葉はくれない癖に、恥ずかしい言葉はすぐに返って来て。
ズルいな、ズルいなぁって思いながら、一歩ずつPさんへ近付いていく。
「お花みたいに?」
私が呟くと、Pさんが、気付いたみたいに小さく口を開ける。
葉桜の頃。あの夕焼け。
出会った時にはもう散っちゃってた、ソメイヨシノの花びら。
小さな、沢山の桃色が、春風に吹かれてゆっくりと舞い上がった。
「夕美」
Pさんが、私のプロデューサーが、名前を呼んでくれる。
「好き」
空っぽの手が寂しかったから、すぐそばにあった手を握る。
いつも通りの真面目な顔を、逃がさないように、真っ直ぐ見上げる。
「私をあげる。私の全部を、あなたにあげます」
ぴかぴかの街灯は多分LEDで、Pさんの顔が夜でもはっきりと分かった。
背中の向こう、通り過ぎるカップルがちらりとこっちを見て、すぐに元通り歩いて行った。
「……交際しといてなんだ、って思うだろうけどさ。そういう」
「勘違いじゃないよ。言い間違いでも、ないから」
「アイドル。アイドルだよ。僕は、多分まだ、プロデューサーだ」
「知ってる」
ずっとずっと、あなたを好きになる前から。
「好きって、言ってくれなくてもいい。Pさんが、どうしても守りたいなら」
「……」
「だから。今日だけでもいいから……私を、Pさんのものにして……ください」
言いたい事は全部言い切って、途端に胸が震え出した。
すぐに手脚が続いて、春の夜だっていうのに、私はぷるぷると震えていた。
震えてる癖にどこもかしこも熱くて熱くて。
「……プレゼント、あげる立場なんだけどね」
「うん」
「貰っても、いいのかな」
「……うん」
頭を掻いて、Pさんがポケットからお財布を取り出した。
何枚かのカードを見比べて、ぱたんと二つに折り直す。
「おいで」
来た道を戻り出す背中に、私も凝り固まった足を踏み出してみる。
一歩進む度にぴりぴりと痺れて、何だか無闇におかしかった。
― = ― ≡ ― = ―
「いらっしゃいませ」
思わず見上げちゃうくらいの高さに気を取られて。
慌てて後を追い掛けると、ロビーはどこもかしこも白くてぴかぴか。
行き交う人達の身なりも立派で、その度に自分の服と見比べちゃう。
ふかふかのソファーで帽子を深めに被り直して、フロントに立つPさんを横目で眺める。
「ダブルを一室お願いしたいのですが」
「恐れ入りますが、ご予約などされていらっしゃいますか」
「いえ……それと、これ、使えますか」
「失礼致します……かしこまりました」
Pさんが緑のカードを取り出すと、フロントの人が何回か頷いた。
「ダブルを一室でございますね。只今調べますのでお待ちください」
「あ、すみません。それと……なるべく、良い部屋を」
「そうしますと、スイートに幾つか空きがございますが」
「……えっ」
聞こえて来た言葉に、呟きが零れて。
ダブル。スイート。
た、確かに私がお願いした。お願いしたんだけど。
いざ、そういう事をするんだって思うと、どんどん、どんどん顔が熱くなってきて。
帽子の深さじゃ足りなくて、鍔を引っ張りながら顔を伏せた。
「景色の一番良い部屋をお願いします」
「でしたら……ミレニアスイートがございます。少々手狭にはなってしまいますが」
「では――」
胸がうるさい。
すぐそこではあの人が淡々と手続きしてるのに、私の方は大騒ぎ。
自分から入って来た癖に、今すぐ駆け出て行っちゃいたかった。
「あの、聞こえてる?」
「ひゃ、はいっ!?」
「っと……行こう。51階だって。案内も断ってきたから」
「う……うん」
素っ頓狂な声で叫んじゃって、ますます顔が、熱く。
……このままじゃ、茹で上がっちゃいそう。
エレベーターも見たことが無いくらい広かった。
行き先のボタンを押そうとして、2階から45階まで飛んでいるのにまた驚いて。
ゆっくりと昇っていく箱の中で、黙ってると溺れちゃいそうになる。
「……さっきのカード、何?」
「ん、ああ。昔、ちひろさんに言われるまま入会したやつ」
「それ、大丈夫なのかな」
「困ったら使えって言われてたし……まぁ、お金を使う宛も特に無いから」
「と言うか、えっと何で、こんな」
「家はマズいし、こういう所の方が変な輩も入り込めなくて――」
じりじりと増えていくパネルの数字が51になる。
小さく鳴りながら開いたドアから踏み出して、柔らか過ぎる絨毯に足を取られた。
「っわ」
「とっ……大丈夫?」
「うん……あ、歩き辛い、かも」
「これは……やり過ぎじゃないかなぁ」
不思議な感触を少しずつ踏み締めて、やたら部屋数の少ない廊下を歩く。
流れているクラシックが無かったら耳が痛くなりそうな静かさで。
目的の5102号室は何だか高そうな木製の扉だった。
金色のリーダーへPさんがカードをかざすと、電子ロックの外れる音がする。
「……」
「手狭?」
「って、言ってたね」
お部屋の中に、ロビー。
一瞬だけ、本気でそう思っちゃった。
黒塗りのテーブルの周りには椅子が何脚か。
窓際には大きめのフラワーベースが二つ。
照明スタンドはこんなに要るのかなっていうくらい沢山あって、それでもちょっと暗い。
お部屋の角は聞いた通りに窓が填め込まれていて、私とPさんの姿が並んで映ってた。
「え……あっ、まだ部屋がある」
「う、うそっ」
Pさんの言う通り、奥にはまだ部屋があって、こっちと同じくらいの広さ。
でも飾りは随分と少なくて、ダブルベットと、壁一面の夜景がいやでも目立ってる。
「……」
Pさんと二人、そわそわしながら立ち尽くす。
何から何まで想像以上で、どう感想を言っていいかも分からなくて。
「……え、っと。まだ、扉があったっけ」
「うんと、ここは……あ」
ベッドルームと反対側の扉を開くと、こっちにもぴかぴかの鏡が一面に。
中はガラス板で仕切られてて、その向こうに金の猫足付きのバスタブが置いてあった。
……初めて見たかも。猫足。
「何と言うか、眩しい」
「確かに……ん」
バスタブの横に置いてあった、小さな藤籠。
中には幾つもの薔薇の花だけが入っていて、どれも摘みたてみたいに良い色。
「お風呂場に、バラ? 何だろう、これ」
「あれじゃないかな。多分、お湯を張った後に浮かべる為の」
「バラの……お風呂」
お湯の上に浮かぶ色とりどりの薔薇を想像してみる。
昔からちょっと憧れてて、でも流石にもったいなくて出来なかった夢。
それが今、出来ちゃうかも。
「……うずうずしてるね、夕美」
「へっ? そ、そうかな?」
「うん。新曲のお披露目前みたいな」
「だ、だってだって、バラのお風呂だよっ。普通出来ないよっ」
「……本当に、花が好きなんだね。夕美は」
気付いたら私は花籠を握りっぱなしで。
Pさんの目は、はしゃぐ子供でも見守るみたいに。
私、もう子供じゃないよ?
「入る?」
「え?」
「Pさんも」
少しだけ間が空いて、Pさんが気付いたように口を開ける。
どういう返事が飛んで来るのか怖くて目を逸らした。
大きめのバスタブは真っ白で、私の顔を薄く映してた。
― = ― ≡ ― = ―
ジャケットを脱いで、ネクタイとベルトを外して、ワイシャツを籠へ放った。
僕の手はそこで止まって、こっそりと後ろを振り返る。
「あ」
同じように振り返っていた夕美と目が合う。気まずい方の沈黙が流れた。
彼女は上着と靴下を脱ぎ捨てて、参ったようにキャミソールの裾を摘んでいる。
しばらく迷った末、僕は肌着を脱いで半身を晒した。
男の肌なんて面白くもないだろうに、夕美は目を丸くしてじっとこちらを見つめて。
「……」
何度か深呼吸をしてから、夕美が一息にキャミソールを捲った。
その下から現れたのは当然ながら、下着。
勢いを逃したくないみたいに、そのままフレアスカートの留め具も外す。
「……ああ」
「な……なにっ?」
「あ、いや、ごめん……何でもない」
――そこは花柄じゃないんだ。
揃いの薄緑。
胸中で呟く僕の頭をはたいてから、こちらもスラックスを捨てて身軽になる。
そこで再び手が止まった。
大きな鏡越しに、夕美の綺麗な背中がよく見えた。
今日はここまでです 続きます
実は俺、夕美ちゃんがかなり好きなんすよ
この話を書き終えたらお迎えしようと
ジュエルも用意してあったりして
希「第39問、川神舞は生まれ変わったら何になりたい?」
ことり「もうこんなの・・・」
穂乃果「・・・・・」
絵里「・・・・・・」
花陽「まだ39問目だよ、2人ともだまっちゃっだよ・・・」
希「解答オープン」
穂乃果:魔法使い
絵里:女性
ことり:ナース
花陽:おっぱいバレー
穂乃果「おっぱいバレーって何?」
ことり「おっぱいを生かしてバレーをするの?」
花陽「ちがうよ、映画のやつだよ」
絵里「あの綾瀬はるかさんが出演した映画のやつなのね」
穂乃果「穂乃果はあまりしらないけどね」
希「川神舞はもし生まれ変わったら何になりたい?」
舞「生まれ変わったらねぇ・・・・まあ生まれ変わっても私のままでいいかな」
ことり「まあ、あの子はあの子のままでいいよね。」
絵里「そうだね」
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