高垣楓「アイスるふたり出会いすれば」 (41)


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高垣楓「あいするふたりであいすれば」
高垣楓「あいするふたりであいすれば」 - SSまとめ速報
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ミーンミーン…



楓「あーつーいー…」


ちひろ「暑いですねえ。もう夕方なのに」


楓「なーんにもする気がおきませんー」


ちひろ「家に帰ってのんびりしてればいいじゃないですか」


楓「それは…だって…」


ちひろ「…? …ああ、Pさんもそろそろ帰ってきますしね」


楓「わかっちゃいますか」


ちひろ「ま、わかりますね。そういえば、この前の足水はどうでした? 距離、縮まりましたか?」


楓「その節はもう、ちひろさんのおかげで大変楽しい時間を過ごさせていただきました」


ちひろ「私は呼ばれたからいなくなっただけですよ?」


楓「それでも、ですよ」


ちひろ「それでも、ですか……おっと」


楓「どうしました?」


ちひろ「私今日、友だちと花火大会に行くんです。待ち合わせまでまだありますけどー…帰って一息つきたいしなー…」チラ


楓「…?」


ちひろ「…本当は今すぐにでも帰りたいんですけどー…Pさんが帰ってくるまで誰かにお留守番してもらわなきゃならないしなー…」


楓「! はい、ちひろさん」


ちひろ「はい、楓さん」


楓「私、お留守番しましょうか?」


ちひろ「えーわるいですよそんなー」


楓「ばっちこい、ですよ?」


ちひろ「ばっちこい、ですか。じゃあお願いしようかな? ありがとうございます、楓さん」


楓「ゆーあーうぇるかむ♪ …今度、何かご馳走しますね。美味しい唐翌揚げを出してくれるお店を見つけたんですよ」


ちひろ「ふふ、楽しみにしてます。それじゃ、楓さん……ふぁいと!」


楓「はいっ」



ーーーーーーーーーーーー



楓(とは言ったものの…)


楓(Pさん、おそい…)


楓(…Pさーん…楓がひとり寂しくまってますよー…)


楓(…あれ、これまさか、直帰しちゃった? でもちひろさんから連絡もないし…)



ドーン…


楓(…あ、花火の音。遠くて見えないけど)


楓(…Pさんとふたりで見たかったな、なんて。恋人でもないのに)


楓(…25の女が、こんなことでうじうじしてて、情けないかな。でも、あんまり恋愛経験ないですし? 仕方ないですよ)


楓(…こんなに誰かのことで頭がいっぱいになるんですね、人を好きになるって。心の中が好きだらけ。今の私は隙だらけ。ふふっ)


楓「Pさん…」



P「え!? どうしてわかったんですか!?」



楓「え!? ……Pさん?」


P「あ、どうも。こんばんは」


楓「…こんばんは?」


P「なんで疑問形なんですか」


楓「…あれ、Pさん、いつからそこに?」


P「まさに今、ですね。あれ、じゃあなんで俺のこと呼んだんですか?」


楓「え!? ……Pさん?」


P「あ、どうも。こんばんは」


楓「…こんばんは?」


P「なんで疑問形なんですか」


楓「…あれ、Pさん、いつからそこに?」


P「まさに今、ですね。あれ、じゃあなんで俺のこと呼んだんですか?」


楓「…今日は、みなさんと予定が合わなくて」


P「ああ、花火大会に行ってるらしいですよ? バレて騒ぎにならないように付き添いのプロデューサーたちと」


楓「付き添いって。なんだか子どもみたいですね」


P「…あれ? でも、川島さんや三船さんたちも行くと言っていたような。楓さんは行かないんですか?」


楓「ええ、まあ」


P「……ケンカでもしたんですか?」


楓「は?」


P「誰だろう、美優さん…は違う気がするし、早苗さん…? 違うな。あ、わかった、川島さんとまた痴話ケンカでもしたんでしょう。素直にごめんなさいしないとダメですよ」


楓「…違いますよ?」


P「違いましたか」


楓「なんとなく、です」


P「なんとなく、ですか」


楓「でも、私の気まぐれのおかげでPさんを捕まえることができました。ラッキーです」


P「はは、俺も楓さんと会えてラッキーですよ。事務所に帰ってきて誰もいないって寂しいですから」


楓「よければ飲みに…あ、でも、今日はどこも混んでそうですよね」


P「俺が作るんでよければ何か作りましょうか?」


楓「あら、いいんですか?」


P「ええ、いいですよ。の前に……楓さん」


楓「はい?」


P「アイス食べませんか?」


楓「食事前なのに?」


P「外が暑くて暑くて。アイス食べたいです、アイス!」


楓「うーん…」


P「楓さんもたーべー?」


楓「…まーす♪」


P「よっしゃ、じゃあ冷蔵庫の中から選んできますね」


楓「…くすっ」


P「お、これは…」


楓「何かいいのがありました?」


P「じゃんっ!」


楓「…ちひろさんの真似ですか?」


P「似てませんか?」


楓「可愛くないです…」


P「えー、結構評判なんですけどね」


楓「うっそだー」


P「プロデューサー、ウソつかない。アイスあげませんよ?」


楓「いじわるすると、ちひろさんに言いつけちゃいますよ?」


P「さ、楓さん。一緒に食べましょうね」


楓「弱い……って、あら?」


P「パピコです。この前楓さんと食べてからちょっとハマっちゃって」


楓「そうなんですか? その割にはあまりお見かけしませんけど」


P「いやー、パピコってちょっと苦いじゃないですか。美味しいけど2本は多いなって。だから誰かふたりとじゃないと食べれないんですよね」


楓「ひどいっ」


P「え?」


楓「Pさんがアイスるのは私だけだと思っていたのにっ」


P「楓さん、それ、アイスるが「アイスを食べる」の略だってすぐにわからないから、俺以外に使っちゃダメですよ」


楓「わかってますよ。で、私以外の誰とアイスりあったんですか?」


P「えーと、早苗さん、肇、藍子、ちひろさん…」


楓「見境いなしですかっ」


P「あ、あと社長とも」


楓「ついに性別の壁を超えてっ」


P「いや、そんな変なことでもないでしょ」


楓「まあ、そうですね」


P「さ、食べましょう。ちょうどいい感じに溶けてきましたし」


楓「はいっ、せーの…」



パキン



P「…」チュー


楓「…」チュー


P「…」


楓「…」


P「〜!」キーン


楓「〜!」キーン


P「っあー…」


楓「うぅ…」


P「…」


楓「…」


P「っはは!」


楓「ふふっ」


P「キーンときましたか?」


楓「キーンときましたよ。キーン況報告です♪」


P「あ、今のは上手い」


楓「えっへん」


P「…楓さん、変わりましたよね」


楓「え?」


P「いや、ふと、出会った頃の楓さん思い出して。こんなに仲良くなれるなんて思わなかったなって」


楓「そうでしたか? 私は、出会ってすぐになんとなく感じましたよ。「この人とならうまくやっていけそうだな」って」


P「デキる男オーラ出てましたか?」


楓「いいえ?」


P「まあ、そうでしょうね。じゃあ、なんで?」


楓「…私、人見知りじゃないですか。それに引っ込み思案で」


P「まあ、打ち解けるまで時間が必要なタイプですよね」


楓「うまく自分を伝えられないから、つい黙ってしまって。そうすると、呆れられちゃったり、見放されちゃったりすることも、あったわけです」


P「…なるほど」


楓「でも、Pさんは、そんな私を急かすこともせず、側に寄り添ってくれていたから。私が新しい世界に踏み出すことを、私以上に喜んでくれていたから。だから、この人とならずっと一緒にって…」


P「なんか、照れますね……俺もあの時は、まだまだわからないことだらけで、いっぱいいっぱいで。だけど、楓さんが頑張ってる姿を見て、励まされていたんです。俺も」


楓「Pさん……ありがとう」


P「…こちらこそ。ありがとうございます」


楓「…私、少しはPさんに恩返しできたでしょうか?」


P「十分すぎるほどに」


楓「私はそうは思いません」


P「え?」


楓「もっともっと、Pさんに、私の大切なプロデューサーに素敵な景色を見せてあげたい。今度は、私があなたを連れて、ね?」


P「…ええ、是非」


楓「……………」


P「……………」


楓「…ごめんなさい」


P「…ホントですよ」


楓「お酒入ってるわけじゃないのに、パピコなのに…」


P「…なんで急にお礼なんてするんですか…」


楓「…ぐすっ」


P「…楓さん、泣いてるじゃないですか」


楓「Pさんだって…」


P「…」


楓「…」


P「…」チュー


楓「…」チュー


P「…ぷは」


楓「…無くなっちゃいましたね」


P「後半はなんか、味わかりませんでしたね」


楓「ふふ、ええ」


P「いやー…最近楓さんとアイス食べる機会が多いですけど…まさかこんな話をするなんて思わなかったですよ」


楓「出会いさえすればアイスるふたりになっちゃいましたからね。お酒の代わりがパピコだなんて、なんだか可愛いですね」


P「はは、そうですね……そういえば、最近楓さんと飲んでませんね」


楓「アイスるのもいいですけど、またPさんと飲みに行きたいです」


P「俺もです。今度時間作りますね」


楓「ふふ、楽しみにしてますね?」


P「俺もです。いっぱい付き合いますよ」


楓「一杯ではなく?」


P「俺が潰れたら、介抱は楓さんにお願いします」


楓「いいですよ♪ 膝枕してあげます」


P「魅力的な介抱ですね」


楓「ふふ、美優さんにも「気持ちいいですけど、それよりもお酒を飲みすぎて気持ち悪いです…」と好評です」


P「それは本当に好評なんでしょうか…」


楓「さあ? ふふっ、楽しみ…♪」


P(ずるい笑顔だ)


P「…さ、じゃあ、そろそろご飯作りましょうか。片付けますよ」


楓「…あ、よく見たらまだ少し残ってました。ちょっと待ってください」チュー


P「…」ジー


楓「…あんまり見つめられると、ちょっと恥ずかしいです」


P「あ、すみません。チューチュー吸ってる楓さん、なんだか可愛いなって」


楓「もう、お上手ですね」


P「本当ですよ?」


楓「わかっていますよ。だから、恥ずかしいんです」


P「それはそれは、すみません」


楓「もう…」


P「さてと、じゃあ改めて料理しましょうかね。楓さん、それ、捨ててきますから渡してください」


楓「あ、はい」


P「どうも。肉とかあるかなー…ま、無かったら買いに行けばいいか」


楓「…」


P「あ、お酒がない。楓さーん、飲みたかったらちょっとスーパーまで買いに行きますか?」


楓「…」


P「…楓さん?」


楓「…Pさん」


P「はい?」


楓「チューチューする私、可愛かったですか?」


P「え? ああ、はい。お酒の印象がやっぱり強いですからね。ちょこんと座りながらアイスを吸ってる姿が、なんか愛らしいというか…」


楓「…」


P「あー…年上の方に失礼ですね、すみません」


楓「あ、いえ…それは、別に」


P「はあ…?」


楓「…Pさん」


P「はい」


楓「先に謝っておきますね、ごめんなさい」


P「…何が?」


楓「Pさん」ズイッ


P「か、楓さん…ちか…」


楓「チューチューする私だけじゃなくて…」



楓「…チュウする私を、見せてあげますね?」




それでは、またの機会に。

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