【艦これ】阿武隈「提督と、支え支えられ」 (20)

トントン――

阿武隈「おはようございます提督。阿武隈です、入りますね?」

ガチャ

阿武隈「失礼します……提督まだ寝てますね」

阿武隈「よいしょ。随分とぐっすりです。毎日一生懸命ですもんね。お疲れ様、提督」

阿武隈「あ、うっすらとおひげ生えてます……ふふ、ちょっとかわいいかも」

阿武隈「本当はもうちょっと寝かせてあげたいけど……朝ごはん遅れちゃいます」

阿武隈「提督、朝六時です。起きてくださいよ」

阿武隈「てーとくっ。ほら、朝ですよーっ」ゆさゆさ

提督「ん……おはよう、阿武隈」

阿武隈「はい。おはようございます、提督。今日もいい天気ですよ」

提督「ああ。今日も良い一日にしたいものだ」

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提督「にしても……起こしてくれるのはありがたいが、わざわざ部屋まで来て、起こしてもらわなくてもいいんだぞ?」

阿武隈「別にいいですよ。あたしが好きでやっているんですから」

提督「しかしだな。阿武隈も大変だろう? それに、こう毎日起こしてもらっているとな。一人で起きれなくなりそうだ」

阿武隈「でも、あたしが出撃や遠征でいないときは、一人で起きているんじゃないですか?」

提督「それはもちろんそうなんだが……起こしてもらうことに慣れそうで怖い」

阿武隈「提督真面目ですし。その辺りは大丈夫じゃないですか? ……もしかして、迷惑です?」

提督「いやいやいや、そんなわけないだろう。ありがたいって言うのは本当だ」

提督「朝から阿武隈と会えるというのは、嬉しいんだが……その、寝ているところを見られるというのは、気恥ずかしい」

阿武隈「それは代金だと思って、諦めてください」

提督「随分安い代金だな」

阿武隈「はい。お支払いはあたしのモ、モーニングコールです……なんて」

阿武隈「……あう」

提督「自分で言って恥ずかしがるな……こっちまで恥ずかしくなってくる。いちいち可愛いな本当に」

阿武隈「かっ……!? も、もう! からかわないでくださいよぉー!」

提督「何を言ってるんだ。これも本当だ。私はお世辞なんて言えるほど器用じゃない」

阿武隈「むう……たしかにバカ真面目なてーとくが、そんな器用なことできるとは思えないです」

提督「おーい、そこで納得しないでくれ。誰がバカ真面目だ。バカ正直な一水戦さん」

阿武隈「バカ正直じゃないですー。てーとくのバカ……えへへ」

提督「顔にやけてるぞ」

阿武隈「えっ、やだ!?」

阿武隈「むー。提督、前より意地悪になった気がします」

提督「そうか? そんなつもりはないが」

阿武隈「そんな意地悪な提督には、こうです」すっ

――ナデナデ

提督「……なんだ、これ?」

阿武隈「いつもの仕返しに、提督の前髪を崩してあげます」

提督(……仕返しになっているのか、これ? そもそも寝起きだから元から崩れているんだが)

提督(毎度ながら、微笑ましいというか。というよりも仕返しのつもりないな)

阿武隈「どうです、降参します?」

提督「降参にはまだ早いな。やられたらやり返す、常識だろう」

阿武隈「ふえ? ってだから前髪触らないでくださいよぉー!? セットしたばかりなのにーっ!」

提督「大丈夫だ。そうそう手荒に触らないからな」

阿武隈「本当です? まあ、それなら……特別ですからね」

提督「ああ、ありがとう」

阿武隈「あの~、提督? それ、楽しいんですか?」

提督「ああ、(阿武隈の反応が)楽しくて飽きないぞ」

阿武隈「提督、ちょっと変わってます」

提督「いやいや、そうでもないぞ、誰だって楽しいはずだ。というより、阿武隈の方からやってきたんだろう」

阿武隈「それは提督へのお仕置きです」

提督「それは恐ろしいなー」

阿武隈「むー、声が白々しいです」

阿武隈「ねえてーとく。これからも朝に起こしに来ていいよね?」

提督「さっきも言った通り私としては歓迎するよ。阿武隈は負担にならないか?」

阿武隈「大丈夫です。えっと……だって」

提督「どうしたんだ?」

阿武隈「普段、なかなか二人きりになれないじゃないですか……だから」

提督「……そうか。なら、これからもお願いするよ」

提督「阿武隈に起こしてもらえると、今日も頑張ろうって元気が出てくるからな」

阿武隈「あ……はいっ! えへへ、仕方ないですねてーとく」

提督「さ、そろそろ準備するか」

阿武隈「はい。外で待ってますね」

――提督執務中。

阿武隈「てーとく、報告書よ! 成績はどう……?」

提督「ありがとう阿武隈。どれどれ……ああ、順風満帆とは言えないが概ね良い感じだよ」

阿武隈「あたしも見てもいいですか?」

提督「ああ、良いよ。こんな感じだが」

阿武隈「なるほど、資材も皆さんの練度も概ね問題ない感じですね。装備の改修がちょっとだけ不安ですけど」

提督「まあ、何もかも完璧とは行かないさ。そんな状態はほぼあり得ないし、なにより慢心を呼ぶ」

阿武隈「戦いは五分(ごぶ)の勝利をもって上(じょう)となし、七分を中となし、十分(じゅうぶ)をもって下(げ)となす……ですか?」

提督「その通りだが、良くスラスラとそんな言葉が出てくるな」

阿武隈「ふふーん、これでも結構勉強しているんだから」

提督「駆逐の子達の先生役もしているもんな。さすがは阿武隈先生だ」

阿武隈「えへへ、褒めて褒めてー」

提督「よしよし、阿武隈は頑張り屋さんだな。この鎮守府が概ねうまく運営できているのも、阿武隈のお陰だ」

阿武隈「ふえ!? え、えっと、その……あ、あたしはそんな大したことはしてないですし」

阿武隈「それは電ちゃんや赤城さん、金剛さんとか、いろんな人達のお陰で……」

提督「自分で褒めてって言っておきながら、本当に褒めたら照れるのか……」

阿武隈「むー。だって、なんだが恥ずかしいじゃないですかぁ」

提督「たしかに電を始めとした、他の人達にはずいぶんと助けられているのは事実だな。私は良き仲間に恵まれているよ」

阿武隈「でしょでしょ? うん、電ちゃん達は本当に良い子ですよねえ」ニコニコ

提督「あはは、まったく阿武隈お姉ちゃんはかわいいなあ」わしゃわしゃ

阿武隈「なんですか阿武隈お姉ちゃんって、あんまり前髪わしゃわしゃしないでくださいよー」

提督「満面の笑顔で電達を褒めてるからだ、一水戦さん」

阿武隈「だって良い子達なのは事実じゃない」

提督「それも阿武隈が一生懸命に電達を率いてきたからだと思うぞ。上官次第で、部下というものは良くも悪くもなるものだ」

提督「電達が良い子だというなら、それは全てとは言わなくても、阿武隈のおかげだろう」

阿武隈「だから、そんなんじゃないんですってばーっ!?」

提督「あはは、だからそう照れるな。あんまり謙遜していると、また神通や暁にもっと自信持てって言われるぞ」

阿武隈「うう……でも普段言うこと聞いてくれない子もいるし。響ちゃんとか」

提督「響は、隙あらば阿武隈にじゃれつこうとしてくるからなあ」

阿武隈「でもちょっと困るんですけどぉ。いきなり背中に飛びついてきたりするし、ちょっと危ないかなって心配なんですよ」

提督「それは先ほども言ったとおり、完全な状態は慢心を呼ぶからな。そういう響みたいな子を、気を引き締めるための要因だと思って頑張れ」

阿武隈「むー」

提督「まあ、阿武隈を頼りがいのある優しいお姉さんみたいに思ってるんだろうな。ああ見えて寂しがり屋なところあるし」

提督「かと言って、暁達にはあまり弱いところは見せたくないんだろう。好かれているな、阿武隈お姉ちゃん」

阿武隈「それは嬉しいけど……だからお姉ちゃんなんかじゃないんですって」

阿武隈「それとてーとく? さっきから髪触りっぱなしなんですけどぉ」

提督「はいはい。そんな嬉しそうな声出されて抗議されても、説得力ないな」

阿武隈「むー、あんまり髪崩さないようにしてくださいね……えへへ」

提督「なんだ、続けて良いのか?」

阿武隈「そ、その……こうしてもらえるの、あたしも嬉しいですし」

提督「前は全力で拒否してたのにな」

阿武隈「そ、それは、あんまり髪崩れると、やっぱり恥ずかしいし、それに……」

阿武隈「その、照れくさくて……てーとくにこう、頭を撫でられると」

提督「そ、そうか……今は大丈夫なのか?」

阿武隈「い、今も照れくさいですけど……それ以上に、幸せな気分になれるから」

阿武隈「って何言わせるんですか、もう」

提督「自分で言っといて理不尽だぞ、まったく」

阿武隈「てーとくだって、にやけた顔してて説得力ないですよーだ」

提督「にやけた顔はお互い様だ」

阿武隈「そ、そんな顔してません!」

提督「阿武隈が幸せそうなのはこちらとしても嬉しいから、私としては全然構わないぞ」

阿武隈「あたしが気にするんです! 提督の前でそんなだらしない顔見せたくないですから!」

提督「阿武隈はちっともだらしなくなんてないだろ。この間の親善艦参加観艦式のときだって、とても凜々しかったぞ」

阿武隈「ふええ!? あたしが凜々しいって本気ですかてーとく!?」

提督「僚艦との隊列も整っていたし、動作もキビキビとしてた。日頃の訓練の成果だな。本当に格好良かったぞ」

提督「上の方々や、ザラ達も阿武隈達を賞賛していたよ。練度が高く、統率も取れているとな」

阿武隈「そうですか? えへへ、やっぱり電ちゃん達はすごいですよね」

提督「だから阿武隈も評価高かったんだって。何度もいうが格好良かった」

阿武隈「……かっこいい、あたしが? えへへ。嬉しいな……」

阿武隈「はっ!? も、もう提督! さっきからあたしのこと、からかいすぎです!」

提督「それから、終わったら響や島風達が阿武隈に集まってきて埋もれていたが、あれは何だとも言われていたぞ」

阿武隈「……え?」

――回想。

響「ハラショー。無事に親善観艦式をやり遂げたお祝いだ」バッ!

暁「響、いきなり阿武隈さんの背中に飛びついてるんじゃないわよ! 危ないし、それにレディーとして相応しくない振る舞いだわ!」

島風「響ちゃんずるーい! 島風も島風も!」

長波「おっ、島風かけっこか? 長波も負けないぜ!」

霞「アンタらなに馬鹿騒ぎしてんのよ! まだ周りに人が大勢いるのよ! 恥ずかしい真似してんじゃないわよ!」

若葉「霞、そう怒鳴るな。響をクッキーで釣る作戦を敢行するぞ」

初霜「いくら何でもそれは響さんを甘く見過ぎです! せめて大福にしましょう!」

磯風「……初霜、それはそれでどうかと思うぞ。ここは磯風が作ったおにぎりをだな」

阿武隈「ふえええ、皆さん静かにしてくださいいいいいぃ!? 響ちゃんと島風ちゃん、長波ちゃんも降りてー!?」

雷「これじゃあ駄目だわ、五十鈴さんを呼んできて! ツッコミを入れてもらわないと!」

五十鈴「雷! 前から疑問なんだけど、アンタは五十鈴をなんだと思っているのよ!?」

電「みなさんケンカしたら駄目なのですーっ!」

ザラ「……なにこれ」



阿武隈「……うああああ、思い返すだけで恥ずかしいですぅ!?」

提督「私だって恥ずかしかったよ……」

阿武隈「うううう、てーとく! お仕事再開しましょう! いつまでも休んでちゃ駄目です!」

提督「ははっ、そうだな。真面目に仕事しないと皆に申し訳ない」

――数時間後。

提督「よし、取りあえず一段落だな」

阿武隈「そうですね。そろそろ休憩します?」

提督「ああ、そうするとしよう」

阿武隈「それじゃあ、なにか淹れてきますね」

提督「いや、ちょっと待ってくれ。今日は私が淹れてくるとしよう」

阿武隈「ふえ? てーとくが?」

提督「なんだその反応は」

阿武隈「ちょっとしたジョークです。でも、良いですよ。提督は休んでいてください」

提督「いやいや、普段は阿武隈にやってもらってばかりだから、たまには私がだな」

阿武隈「もう、てーとくってば。それじゃあ、一緒に淹れよ」

提督「そうするとしよう」

阿武隈「はい! えへへ、てーとくと一緒~」

提督「阿武隈はなに飲むんだ?」

阿武隈「えっと……あれ? てーとく、随分コーヒーとか紅茶の種類増えてません?」

提督「ああ、この執務室にもいろんな人や艦娘が来るだろう?」

提督「そういう人達に対応できるようにと、遅まきながら勉強し始めたら思いの外楽しくて、ついな」

提督「まあ、今まで仕事ばかりで無趣味だったからちょうど良いかなと思ってるよ」

阿武隈「それは良いですね! あたしもいろんなお菓子に合う飲み物とか、結構調べたり試したりするんですよ」

提督「ああ、それで阿武隈にいろいろと教えてもらいたいって思ってたんだ」

阿武隈「えへへ、アタシ的にもOKです。あ、このクッキーも提督が作ったんですか?」

提督「よく分かったな」

阿武隈「ホワイトデーのときにも提督からクッキーもらってますから」

阿武隈「なんだかちょっと似ているなあって」

提督「阿武隈が良くお菓子作って、駆逐の子達だけじゃなく、私や他の人達にもあげているからな。たまには阿武隈にお返ししないと」

阿武隈「ありがとうございます、てーとく」

提督「阿武隈みたいに、上手にはまだまだできないけどな。まあ、まずくはないと思う」

阿武隈「形がずいぶん整ってますねえ。あのクッキーもかわいくて素敵でしたけど、このクッキーも素朴さがとってもキュートです」

提督「あはは、そう言ってもらえると助かる」

阿武隈「もーお世辞なんかじゃないんですって。あたしは本当に嬉しいんですよ?」

提督「ああ。ありがとう」

阿武隈「なんでてーとくがお礼を言うんですか?」

提督「良いんだよ、言わせてくれ……それで、阿武隈さえ良ければ、今度お菓子作るときは手伝わせてくれないか?」

阿武隈「ええ、もちろんOKです! えへへ、てーとくとお料理~」

提督「よし。それじゃあ足を引っ張らないようにしないとな」

阿武隈「そんなの心配しなくても大丈夫ですってば。提督と一緒にお菓子作りするの、楽しみです」

提督「それにしても今日はありがとう。秘書艦の代理、本当に助かった」

阿武隈「いえ。電ちゃんにもお休みは必要ですし。でも提督も誰かいないと大変でしょうから」

提督「でも阿武隈も多忙だろう? 別に無理しなくても良かったんだぞ?」

阿武隈「むー。てーとくはちょっと鈍感さんです」

提督「む。すまない。今日は阿武隈がいてくれて、助かったし、嬉しかった」

阿武隈「えへへ、あたしも今日はてーとくとずっと一緒にいられて嬉しいです」

提督「もうちょっと二人でどこかに出かけたりとかできたら、良いんだけどな」

阿武隈「それは仕方ないですよ。でも、たまにはそうできたら嬉しいな」

提督「ああ、そうできるようするよ」

阿武隈「でも、あまり無理はしないでくださいね。それで体調崩したりしたら、あたしだって悲しいです」

提督「阿武隈もな。一水戦、及び主力護衛の第二艦隊旗艦はなにかと大変だろう?」

提督「なにかあったら、無理せず私や五十鈴とかに相談するんだぞ?」

阿武隈「ありがとうございます……でも、なんであたしに第二艦隊旗艦を任せてくれたんですか?」

提督「阿武隈が適任だとおもったからだ。それ以上でもそれ以下でもない」

阿武隈「……そうでしょうか?」

提督「……どうした? なにか不安や悩みでもあるのか?」

阿武隈「はい……艦娘『阿武隈』として生を受けてすぐ、提督から一水戦旗艦を。しばらくして第二艦隊旗艦を任されて」

阿武隈「それから、皆に支えられながら、それでも皆を引っ張っていけるよう、長らく旗艦として頑張ってきました」

阿武隈「皆、とても素晴らしい仲間ばかりです。皆と一緒にいられるのは、あたしにとって大きな誇りです」

阿武隈「けれど、あたしはそんな誇りある仲間達の旗艦として……誇りを汚さないような、そんな自分でいられているのでしょうか」

阿武隈「これからも、いられるでしょうか……?」

提督「阿武隈は、どう思っているんだ?」

阿武隈「……正直、分かりません」

あっまーい!

提督「それじゃあ質問を変えようか。阿武隈は何のために戦っているんだ?」

阿武隈「深海棲艦に脅かされる人達を、仲間を護るためです」

提督「そうか。ならやはり阿武隈が適任だよ」

阿武隈「……?」

提督「旗艦に必要な資質とはなんだと思う?」

阿武隈「資質ですか? えっと……」

提督「そうだな。人によって答えは異なるだろう」

提督「他を寄せ付けない、圧倒的な戦力を保持する者。他を引っ張っていく指導力を持つ者。冷静に戦局を見極め、対応できる者……」

提督「それらは重要かつ貴重な資質と言えるだろう」

提督「だが、私が旗艦に求める資質はそういうものじゃない」

阿武隈「それじゃあ……?」

提督「……深海棲艦。人類だけでは対抗できない、大いなる脅威」

提督「それに怯え、苦しめられる人々にとって、艦娘達の存在はどれほどの希望であり、救いであっただろうか」

提督「当時、しがない一軍人でしかない私はなにもすることができなかった」

阿武隈「……提督」

提督「力なき人々の理解者となれる者」

提督「そして、自分一人にできることが多くないことを自覚しながらも、仲間と力を合わせ、懸命に自分の役割をに果たせる者」

提督「人々を護る艦隊を指揮する旗艦として、私が求めるのはそういう者だ」

阿武隈「それじゃあ、あたしは……このままでいいんでしょうか」

提督「阿武隈以上の適任はそういない。これからも期待しているぞ」

阿武隈「……はい! 阿武隈、ご期待に応えます! これからも頑張りますね!」

提督「あまり張り切り過ぎて、無理や無茶はするなよ。さっきも言ったとおり、阿武隈の代わりはいないんだからな」

阿武隈「もー、提督ってば心配し過ぎです……でも、心配してくれてありがとう」

提督「……そうだな。私は、少し心配し過ぎなのかもしれない。けれど、怖いんだ」

提督「誰よりも……貴女を失うのが」

阿武隈「提督……大丈夫ですよ」ぎゅっ

提督「……阿武隈」

阿武隈「あたしも、皆もそう簡単に沈んだりしません。大丈夫です。ねっ」

提督「……すまない。そうだな、そしてそのように指揮を執るのが私達上層部の仕事だ。もっと自分がしっかりしないとな」

阿武隈「はい、提督なら絶対大丈夫です! 信頼してますからね、提督」

提督「ああ、私も信頼している。ありがとう、阿武隈」

阿武隈「えへへ。さっきあたしも励ましてもらったんですから、おあいこです」

提督「そうか、でも阿武隈に励まされて、すごく安心できたし、前向きになれた。本当に阿武隈には助けられているよ」

阿武隈「あたしも……あのね、てーとく。最近、あたしは艦娘になれて良かったと思っているんです」

提督「そうなのか?」

阿武隈「艦のままじゃ、電ちゃんや初霜ちゃんと一緒にお菓子作ったり、神通や蒼龍さん達と友達になれることも」

阿武隈「足柄さんや五十鈴お姉ちゃん、皆と一緒にお話したり、霞ちゃんや潮ちゃんといろんなことを相談したりもできなかったし」

阿武隈「……それに、こうして提督を抱きしめてあげることもできませんでした」

阿武隈「ですから、今こうしてできることを、神様に感謝しているんですよ」

阿武隈「もちろん、提督にも……あたしを呼んでくれてありがとう」

阿武隈「それと、提督を好きでいさせてくれて、あたしを好きになってくれて……その、あ、ありがとうって」

提督「こちらこそ。私を好きになってくれて、ありがとう。いつも支えてくれて、感謝している」

阿武隈「……うわあぁ、あたし、今すっごく恥ずかしいです」

提督「それはお互い様だ……でも、もうちょっとだけこうしてていいか」

阿武隈「恥ずかしすぎて頭がショートしちゃいそうです……でも、もうちょっとだけこうしていたいです」

提督「難儀な子だなあ」

阿武隈「それは諦めてください……もう少ししたら、お仕事再開しないといけないですし」

提督「そうだな、今日も、後もう少し頑張ろうか」

阿武隈「はい。てーとくエネルギーを沢山補給したから、とっても頑張れそうです」

提督「なんだその謎エネルギー。響の阿武隈エネルギーと似たようなこと言ってるぞ」

阿武隈「てーとくエネルギーを定期的に補充しないと、あたしの元気がなくなっちゃいます」

提督「なら仕方ないな。私も阿武隈エネルギーを補給するとしよう」

阿武隈「えへへ、どんどん補給してくださいね、てーとく」

提督「いや、残念ながらそろそろ休憩を終わりにしないとな」

阿武隈「……むー。それもそうですね」

提督「けど、おかげですごく頑張れるよ」

阿武隈「はい、あたし的にも気力万全です! とっても頑張れそうです!」

提督「そこまで張り切ってもらえるのはすごく嬉しいけど、さっきも言ったとおり、張り切りすぎるなよ?」

阿武隈「大丈夫です。提督や皆に心配掛けるようなことはしません」

阿武隈「それで、そのてーとく。今日、一杯頑張ったら……その」

提督「どうした? 遠慮なく言って良いぞ?」

阿武隈「また、てーとくエネルギーを一杯補給してもらっても、いいかな?」

これで終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

いよいよ夏イベント始まりますね。今回も楽しみです。

>>13さん
ありがとうございます。とても嬉しい言葉です。


本作は下記の話の設定を引き継いでおります。
ですが、読まなくても本作を理解するのに支障はないと思います。

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ていとくエネルギー(ボロン

乙乙です

んぅ!(乙)

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