凛「最近、雪穂ちゃんの様子がおかしい」【ラブライブ】 (305)


という珍しいカップリングが見たいが為だけのSSです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469896217


前作

雪穂「凛さんと」凛「雪穂ちゃん」【ラブライブ】
雪穂「凛さんと」凛「雪穂ちゃん」【ラブライブ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449838837/)

の、完全な続編になります。

読んだことのない人は是非こちらの方も読んでいただければ幸いです。


本編に入る前に一言


前のスレを落としてしまったので新しく作り直しました。今回は落とす事なく最後まで書き上げる予定です。

あと、このタイミングになりますが、前の板で感想やコメありがとうございます。それから催促のコメを書いてくださった方、長い間お待たせしてすいませんでした。

もう書き溜め自体は最後まで終わっているので、今度は落とす事なく終わりまで書き上げていきます。

ちなみにざっと見積もって300レスはいくと思います。


では書いていきます。
本当に、お待たせして申し訳ありませんでした。


あと本編の入り方とタイトル変更しました。
ではささっと、書いていきます


凛こと、星空凛には付き合ってる人がいる。



その子は、凛より1つ年下の女の子。

友達の妹さんで、中学生で、でもその割にすごくしっかりして、周りからは姉よりもしっかりしてるとか言われてるけど、実はそんな事はなくて……

すごく可愛くて、時々見せる可愛い一面がキラキラしてて女子って感じで、そして……、どこか放っておけない女の子 ――…



名前は―――、高坂雪穂ちゃん。



一緒にいるだけですっごく楽しくて、ずっと一緒に居たいって思っちゃうくらい大好きな存在。

いろいろあったけれど、この間ようやく付き合い始めたばかり。

>>4
死.ね
原形ないのに何がラブライブだよ


そして、それから数日が経ちました。


……ちょうど今が一番楽しい時期。


凛にとって雪穂ちゃんは初めて出来た恋人で、すごく嬉しくて、ついつい浮かれちゃって、

そして雪穂ちゃんも凛のことを好きでいてくれる。


毎日が楽しくて、すっごく幸せで、そんな日がずっと続くと思ってて……。




だけど、その時の私はまだ知らなかったの。

好きな人と付き合うという事は、楽しいことばかりでは無いということを――…



これは、凛と雪穂ちゃんが付き合い始めてから数日後のお話――――。

――――――


――穂むら――


凛「おじゃましまーす!」

穂乃果「いらっしゃい」

希「うん、おじゃまします」

絵里「穂乃果ごめんなさい、いきなり押しかけちゃって」

穂乃果「気にしないで。みんな上がって上がって~♪」


今日は穂乃果ちゃん家でμ's の作戦会議です。

μ's のみんなが揃って……いるワケではなく、穂乃果ちゃん家にお邪魔するのは凛と絵里ちゃん希ちゃんの3人だけ……。

今日はみんなそれぞれのグループに分かれての作戦会議なの。


ちなみに真姫ちゃんと海未ちゃんは二人で曲作り。かよちんとにこちゃんは、ことりちゃんの衣装作りのお手伝い。

……で、凛たちは穂乃果ちゃん家で新しいダンスの振り付けを考える事になってるのにゃ!


絵里「ねえ……?」

凛「どうしたの絵里ちゃん?」

絵里「気にするほどの事でもないんだけれど、振り付けを考えるのに4人も必要かしら?」

凛「どういうこと?」

絵里「どうせ3グループに分けるなら、時間のかかる衣装と作曲の方に人数を割いた方がいいんじゃないかしら」

絵里「別に急いでる訳でもないんだし、振り付けを考えるのは曲が出来てからでも遅くはないんじゃないか?……て思ってね」

凛「えっ、それは……」


絵里ちゃんの問い掛けに、少し答えづらくて凛は思わず言葉に詰まる

相変わらずの的確な質問……

やっぱり絵里ちゃんは賢いにゃあ


凛「ふ、振り付け考える為には、やっぱり人数は多いに越したことはないと思うの!」

絵里「そう?」

凛「ほ…ほら! 振り付け考えるには絵里ちゃんは必要でしょ? 凛も思いついたばかりの振り付けを試しに踊ってみてって……って、よく頼まれるし……」

絵里「じゃあ穂乃果は?」

凛「広い場所が必要でしょ!? 穂乃果ちゃん家は広いし!」

絵里「……希は?」

凛「希ちゃんは……えっと……」


まずい、上手な言い訳が思い浮かばないにゃ……

ばつの悪い顔でおもむろに希ちゃんの方を見ると、希ちゃんと目が合っちゃった

希ちゃんは凛と目が合うなりニコリと微笑むと、そのまま目線を外して……


希「ウチは、なんや面白そうなものが見れそうやなーって思ったから付いて来ただけや」

絵里「?」


穂乃果「そういえば穂乃果の家でやろうって言い出したのって凛ちゃんだったよね」

凛「うん!」

絵里「そうよ? そもそも どうして穂乃果の家なのよ?」

凛「にゃっ!? そっ、それはね……」

凛(穂乃果ちゃん家なら、ついでに雪穂ちゃんに会えるかもしれないと思ったからなんて……、口が裂けても言えないにゃ!!)

絵里「?」

希「ふふ、それはあれやな。穂乃果ちゃん家ならついでに……って魂胆やろ、凛ちゃん?」

凛「ちょっと希ちゃん!」

希「ふふふっ♪ でも凛ちゃん? μ's の活動とプライベートはちゃんと分けらんと。公私混同はあかんで?」

凛「……分かってるよ」


分かってる。今日はμ's の活動にかこつけて便乗したのは分かってるけど……

でも雪穂ちゃんとは学校が違うから。お互い自然と顔を合わせる事はない訳だし……、でも毎日会いたいから、会いに来るために毎回理由を考えてる訳で……


とにかくっ!
凛だって口実作るために必死なんだにゃあ!


絵里「?……??」

凛「だ、だって…ほら!絵里ちゃんと希ちゃん家はアパートだからうるさくできないでしょ?」

絵里「そうだけど、だからといって穂乃果の家でうるさくしていい訳じゃないのよ」

穂乃果「あ、家は大丈夫だから気にしないで」

凛「ほら穂乃果ちゃんもそう言ってるよ!それに和菓子も出るし!」

希「ふふっ。凛ちゃん? これから体を動かすのに、和菓子なんか食べたら水分取られてすぐに喉カラカラになってしまうで?」

凛「はっ!……そうだった!」

絵里「……まさか凛、もしかして!」

凛「ギクッ」

絵里「あなた、まさかっ……」ゴゴゴコ

凛「…………」

絵里「穂乃果の家のお饅頭が食べたかったのね!?」

凛・希「え!?」

モバ付けろカス


絵里「それで穂乃果の家だったのね!」

凛「…………」

絵里「確かに凛の気持ちも分かるわ! 穂乃果の家の お饅頭は美味しいものね!」ウンウン

凛「う…うん」

絵里「それで穂乃果の家だったのね……、納得したわ!」

凛「…………」

希「っ、…………っぷぷ」

絵里「でも駄目よ凛? やるべき事はちゃんとやらないと」

希「……ぶはっ」

凛「…………」

希「そうやで凛ちゃんお饅頭を食べたい気持ちも分かるけど、まずは振り付けをちゃんと考えないと」ククク…

凛「えっ、う…うん!そうだね」

絵里「?」

希「まあまあエリチも、この際細かい事はええやん」

凛「そ、そうにゃ!そうにゃ!」

絵里「うーん、それもそうね」


前言撤回

やっぱり絵里ちゃんは賢くないにゃあ


雪穂「あ、凛さん!」

凛「雪穂ちゃん!!」


……で、紹介が遅くなったけれど、この子がいま付き合ってる高坂雪穂ちゃん!


凛の1つ下で、穂乃果ちゃんの妹でもあり、凛の付き合ってるお相手。

いろいろあったけど、この前ようやく付き合い始めたばっかり。

一緒にいるだけですっごく楽しくて、ずっと一緒にいたいって思っちゃうくらい大好きな存在。

付き合い始めてから数日が経って、毎日が楽しくて今すっごく幸せなの!



だけど、最近ちょっと問題があって――…


凛「ねえねえ雪穂ちゃん。この後 時間ある? 凛、後で雪穂ちゃんのお部屋に行こうかなーって思ってて……」

雪穂「あっ、ごめんなさい! 私 今から出掛けなきゃいけないんで!」

凛「へぇ~、どこ行くの~?」

雪穂「えっと……ごめんなさい! 急いでるんでまた今度にしてもらえますか!?」

凛「えっ!?……ちょっと待っ――――

雪穂「じゃあ凛さん、また今度」バタバタ

凛「あっ、……う、うん」

雪穂「じゃあ行ってきまーす」ガラガラ

凛「…………」




ちょっと問題があって……



最近、雪穂ちゃんが冷たい!


――――――

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」 
↓ 
信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか? 
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ 
いちいちターキー肉って言うのか? 
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」 
↓ 
鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。 
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋 
↓ 
信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw 
んな明確な区別はねえよご苦労様。 
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」 
↓ 
>>1「 ターキー話についてはただ一言 
どーーでもいいよ」 
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです 
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ! 
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469662754/)


余談
7 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:06:48.44 ID:10oBco2yO
ターキー肉チーッスwwwwww
まーたs速に迷惑かけに来たかwwwwwwwww

9 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:12:33.84 ID:LxY8QrPAO
>>7
はいNG設定


この速さである
相変わらずターキー肉くん=>>1という事を隠す気も無い模様

31 ◆xmciGR96ca4q sage saga 2016/07/28(木) 12:50:19.79 ID:g6WSU+sH0
昨夜寝ぼけてスレ立てミスったんで憂さ晴らしも兼ねて久々のロイミュ飯でした。書き溜め半分残り即興なんで色々アレかもしれませんがアレがアレなんでアレしてください何でもシマリス(熱中症

建てたら荒れると判ってるスレを憂さ晴らしに建てる
つまり>>1は自分の憂さ晴らしにs速を荒らして楽しんでる

うーん、いつも通りのクズ>>1で安心するわー


真姫「考え過ぎじゃないの?」

花陽「そうだよ凛ちゃん。気にしすぎだよ」

凛「……そうなのかな?」


三人、いつもの帰り道。

凛はとうとう我慢できずにかよちんと真姫ちゃんに雪穂ちゃんの事を話ちゃった。

かよちんはいつも凛の相談にのってくれるし、真姫ちゃんも面倒くさそうにしながらも、ちゃんと凛の話を聞いてくれてる。


やっぱり二人とも、すごく優しいにゃ!


真姫「要は、雪穂ちゃんが凛にかまってくれなくなったって事でしょ?」

凛「うん。ざっくり言えばそういうこと、だね……」

花陽「なにかあったの?」

凛「分かんない。雪穂ちゃん、なんだか急に様子がよそよそしくなったの」

凛「話し掛けてもぜんぜん相手にしてくれないし、すぐどこかに行っちゃうし……」

凛「そのままどんどん流れていっちゃって、最近じゃとうとう会えなくなっちゃった」

真姫「ふーん、どうせ凛が変なこと言ったんじゃないの?」

凛「そんなことないにゃ!……多分だけど……」

花陽「でも確かに……、ぜんぜん会えないっていうのはちょっと辛いかも……」

凛「そうでしょ? かよちんもそう思うよね!?」

真姫「ふぅん……? ちなみに聞くけど、会えなくなってからどれくらい経つのよ?」

凛「3日」

真姫「…………ん?」

凛「…………」

真姫「ごめんなさい、もう一度言ってもらえるかしら」

凛「だから……! 雪穂ちゃんが凛に冷たくなってからもう3日になるんだってば!」

真姫「……3日」

花陽「あはは……」


花陽「3日なら……」

真姫「別に大丈夫じゃない?」

凛「でもでも、前は毎日会ってたんだよ!」

真姫「いやいや、別に恋人同士だからって毎日会わなきゃいけないワケじゃないのよ?」

凛「でも凛は……、真姫ちゃんと恋人じゃないけど毎日会ってるよ?」

真姫「いや、そりゃあ学校が同じなんだし……」

凛「かよちんとは、学校がない日でもよく遊んでたよ」

真姫「それは二人とも、家が近くで幼なじみなんだし……」

凛「…………」

真姫「…………」

凛「じゃあやっぱり凛の考え方がおかしいのかなぁ?」

花陽「えぇ!? そんなことないよ!」

真姫「凛。あなた達が毎日会うほど仲がいいという事は分かったわ。良い事だし駄目とは言わないわ」

真姫「でも二人は学校が違う訳だし、中学生と高校生じゃ勝手も違うでしょ?」

真姫「凛には凛の生活があるし、雪穂ちゃんには雪穂ちゃんの生活がある。中学の友達と予定の一つくらいあるし、それに……やっぱり毎日会うって事は難しいんじゃないかしら」

凛「うーん、そうなのかな……」

真姫「何より私たちにはμ's の活動がある。放課後は練習で忙しいし、二人の予定が合わなくなる事くらいあるわよ」

真姫「第一、雪穂ちゃんにだって自分の予定くらいあるでしょ?」

凛「……そうだけど」


真姫「それに……。あなた達、付き合う前は苦労したんだから……」

凛「…………」

真姫「遊びで付き合ってる人たちならともかく、二人は違う。二人は、お互いの事をきちんと考えてから付き合い始めたんでしょう……?」

真姫「だったらそんな簡単に相手のことを嫌いになったりしないわよ」

凛「でも、本当に急なんだよ!?」

凛「それまではいつも通りだったのに、3日くらい前から急に相手してくれなくなった」

凛「急に会えなくなって、連絡してもなかなか返ってこないし、心配になっちゃうよ」

花陽「確かに連絡しても返ってこないってのはちょっと……」

真姫「……気になるわね」

凛「でしょでしょ!やっぱり気になるでしょ!?」

花陽「うーん、その3日くらい前ってのが引っかかるね」

真姫「どうせ雪穂ちゃんに変な事でも言ったんじゃない?」

凛「そんな事ないよ!だって最後に会ったあの日だって――――



――回想スタート――


雪穂「―――それでね亜里沙ったら……、私と凛さんのことバカップルって言うんですよ」

凛「あ~、凛も真姫ちゃんにおんなじ事言われた!二人はイチャイチャし過ぎ、……だって!」

雪穂「ぜんぜんそんなつもりないんですけどね~」

凛「ねー、毎日会ってるだけなのにね~」

雪穂「だって、私にだって凛さんについて知らない事くらいいっぱいありますよ」

凛「そうだよねー」

雪穂「凛さんの好きな食べ物はラーメンってことは最近知ったけど……、だとしたら嫌いな食べ物でしょ?」

凛「うんうん」

雪穂「あとは趣味とか、休日は何してるのかとか、μ's に入る前は何してたのか、とか」

凛「そうにゃそうにゃ♪」

雪穂「まだまだ知らない事がたくさん……、ほらバカップルなんかじゃない!」

凛「ねー♪」

雪穂「あとはそうだな……、誕生日とか!!」

凛「あ、誕生日ならすぐ教えられるよ。凛の誕生日は11月1日だにゃ!」

雪穂「そうなんですか~」


雪穂「………えっ、11月1日?」

凛「うん、そうだよ!」

雪穂「もうすぐですね……」

凛「もうすぐだね!」

雪穂「…………」

凛「………雪穂ちゃん?」

雪穂「ごめんなさい凛さん!私…、ちょっと用事が出来たので帰りますね」

凛「えっ!? なんでそんな急に―――

雪穂「じゃあ凛さん、さよなら!」

凛「えっ…う…うん……、バイバイ……」
 

凛「…………」


――――回想終了



凛「―――て事があったの」

真姫「はあ?」

凛「え!?」

花陽「り、凛ちゃん……」

凛「え? えっ? もしかして二人とも何か分かったの!?」

真姫「いやいや、むしろなんでその会話の流れで分からないよ!?」

凛「えぇ~、そんなこと言われても……」

真姫「心配して損した。気にしなくても大丈夫なんじゃない?」

凛「ええっ!? 真姫ちゃん無責任にゃあ!」

真姫「はぁ……」

凛「…………」イラッ

花陽「真姫ちゃん!」

真姫「……あっ」

凛「ちょっと真姫ちゃん!? 凛は本気で相談してるんだよ! 本当に真剣に悩んでるんだよ!?」

真姫「ご、ごめん……」

真姫「ちょっと花陽、どうしたらいいのよ?」ヒソヒソ

花陽「えぇっ、私!?」ヒソヒソ

真姫「雪穂ちゃんが凛の誕生日の為に何かしてるって事は、なんとなく察しがつくけど……」ヒソヒソ

花陽「凛ちゃんには何も話してないみたいだね」ヒソヒソ

真姫「さしずめ雪穂ちゃんのサプライズ計画ってところかしら」ヒソヒソ

花陽「私たちの口から言う訳にもいかないし……、どこまで言ったらいいのかな?」ヒソヒソ

真姫「凛もあんな調子だし……、もうどうしたらいいのよぉお」


真姫「………り、凛?」チラッ

凛「…………」

真姫「ほ…ほら……! 凛と雪穂ちゃんは誕生日の話をしてた訳でしょ?」

凛「…………」

真姫「雪穂ちゃんは凛の誕生日を聞いてから様子がおかしくなったんでしょう?……だからその……分かるでしょ?」

凛「」イラッ

凛「……分からない」

真姫「……なんで分からないのよ」

凛「分からない!分からないものは分からないにゃあ!」

真姫「ちょっと、凛―――

凛「だいたい、なんで真姫ちゃんが雪穂ちゃんのこと分かった風に言うの!」

真姫「え!?」

凛「凛の方がずっと雪穂ちゃんと一緒にいるのに!!」

花陽「りっ、凛ちゃん落ち着いて!」

凛「」フーッフーッ


真姫「………大丈夫よ」

凛「でもっ!」

真姫「大丈夫よ!そのうち雪穂ちゃんの方から話し掛けてきてくれるわよ」

凛「真姫ちゃんはどうせ自分には関係無いことだと思って適当なこと言ってるんだにゃあ!」

真姫「凛、私の目を見て!私が適当なこと言ってるように見える?」

凛「…………」

真姫「…………」

凛「そう……なのかな……」

真姫「そうよ、だから雪穂ちゃんを信じてあげなさい」

凛「…………」

真姫「私の方から穂乃果や希に雪穂ちゃんの事で何か知ってる事がないか、聞いてみるから……ね?」

凛「…………うん、分かったよ」

真姫「…………」

――――――


真姫「……はぁ」グッタリ

花陽「凛ちゃん落ち込んでたね」

真姫「もう……! めんどくさい!」

花陽「あはは…。凛ちゃんって、好きな人のこととなると周りが見えなくなっちゃうから」

真姫「そうだとしても鈍感すぎ!」

花陽「そうだね」

真姫「…………」

花陽「…………」

花陽「……そういえば二人が付き合う前もこんな感じだったね」

真姫「…………そうだったわね」

花陽「相談されるのも久しぶりだったね」

真姫「……って言っても、まだ数日前の話だけどね?」

花陽「うん、確かあの時も――――

エタったかと思ってたわ



――回想スタート――


――数日前


凛「あのね、凛は雪穂ちゃんのことが気になるの!」

真姫「はあっ? 何よいきなり……」

花陽「ど、どういうこと?」

凛「う、うん。あのね……、凛は雪穂ちゃんのこと、好き……なのかなぁ?」

花陽「……なんで疑問系?」

真姫「好きって……、普段から花陽や私たちにも同じようなこと言ってるじゃない。好き好き――って……」

凛「うん、かよちんや真姫ちゃんのことも大好きだよ!」

凛「でも、その好きと雪穂ちゃんに思う好きは同じ意味ってワケじゃなくて、何と言うか……、雪穂ちゃんに嫌われたくないってとこから来る感情っていうか……」

凛「とにかく、凛にもよく分からないの!」

真姫「ふうん……?」

凛「あとね…、雪穂ちゃんと一緒にいるとドキドキするの」

花陽「ドキドキ?」

凛「うん、ドキドキ。でもそれはかよちん真姫ちゃんやμ's のみんなと一緒にいても、そんな事にはならないの。だから困ってるのにゃ」

真姫「ドキドキ、ねぇ……」

凛「それだけじゃないよ。ドキドキが始まるとどんどん止まらくなって胸がキュゥゥって苦しくなるの」

真姫「ちなみにどんな時にそうなるのよ?」

凛「あのね……、この前、雪穂ちゃんの部屋に遊びに行ったときにね……」

真姫「へぇ~、雪穂ちゃんの部屋に……珍しいわね」

凛「特に何もなく遊んだだけなんだけどね……」


凛「でも帰り際に、雪穂ちゃんに凛の服の袖をギュッて捕まれてね」

真姫「へぇ…!袖グイッてやつね」

花陽(真姫ちゃん詳しい……)

凛「もうドキドキして緊張して、ぶわぁって頭が真っ白になってね」

真姫「年下からの袖グイッなんてレベル高いものね……、仕方ないわ」

花陽(あぁ、真姫ちゃんががどんどん前のめりに……)

凛「あと、凛みたいな人がお姉さんなら良かった、……みたいな事も言われた」

真姫「え!?………へ…へぇ、そんなこと言われたのね」

花陽(あれ?これって雪穂ちゃんも凛ちゃんのこと……)

凛「それで、もう意味が分からなくなっちゃってね……」

真姫「それでそれで!?」

凛「雪穂ちゃんにメールアドレス聞いちゃったの」

真姫「えっ、なんで!?」

凛「ほらぁ!やっぱりおかしいよね!?」

真姫「ヴぇぇ!?」

凛「雪穂ちゃんも意味分からないって顔してたもん」


凛「………凛、どうしたらいいかのかなぁ」

真姫「…………」

花陽「真姫ちゃんこれって……」

真姫「ええ、そういう事よね……?」

凛「…………」

真姫「だったら一度、雪穂ちゃんと出掛けてみたらどうかしら?」

凛「えぇ!? 雪穂ちゃんと!?」

真姫「そうよ」

凛「無理、無理、無理! 今 雪穂ちゃんと会っても、どう接したらいいのか分からないよ! 凛は…きっと変な事しちゃう……」

真姫「だからよ」

凛「え?」

真姫「よく分からないからこそ、一度雪穂ちゃんと一緒に出掛けて、自分の気持ちをきちんと整理するのよ」

凛「おぉ、なるほど!真姫ちゃん頭いいにゃー!」


――――――
――――

――――――


凛「はぁ……」

真姫「どうしたのよ、元気ないわね?」

凛「だってぇ、なんでμ's の集まりを穂乃果ちゃん家でやる事になってるのにゃ」

真姫「何? 都合でも悪いの?」

凛「だってだって! 穂乃果ちゃん家っていうことは雪穂ちゃんにも会うかもしれないんだよ?」

真姫「はあ……? なら、むしろ都合いいじゃない」

凛「だって分からないんだもん。今、雪穂ちゃんとどんな顔して会えばいいのか分からないんだもん!」

真姫「重症ね……」

凛「かよちんも先に行っちゃったし……。だいたい真姫ちゃんに相談すること自体が不本意にゃあ」

真姫「……不本意なのはこっちよ」

凛「凛、どうしたらいいのが分かんないよ」

真姫「いつも通りの凛で会えばいいのよ」

凛「やだやだ恥ずかしいにゃあ!」

真姫「だからって、行かない訳にはいかないでしょ!?……ほら、さっさと行くわよ!」

凛「にゃああ!真姫ちゃん引っ張らないでよぉ、凛まだ心の準備がああ!」

真姫「あぁもう!めんどくさいわね!」


――――――
――――

――――――


真姫「凛、いよいよ今週末は雪穂ちゃんと出掛ける日ね」

凛「うん、明後日行ってくるね」

真姫「日曜日ね。ちゃんと行くところ決めた?」

凛「うーん、いろいろ考えたけど、雪穂ちゃんが行きたがる所ってよく知らないし……」

凛「だったらいっそのこと凛の行きたい所に行こかなーって。その方が雪穂ちゃんにも凛のこと、もっとよく知ってもらえるでしょ?」

真姫「けどそれ……、行き当たりばったりにならない?」

凛「うーん、そうかもしれないけど……。でも正直 凛は、一緒に食事をして、ゆっくりお話できればそれで十分だと思ってるんだよね」

真姫「へぇ…!凛にしてはなかなか良い事言うじゃない」

凛「あー!真姫ちゃんバカにしてる?」

真姫「褒めてるのよ!」

凛「褒めてるの!?」


真姫「で、食べに行くお店は決めた? そこ重要なところよ?」

凛「えっ、ハンバーガーでいいんじゃないかにゃ?」

真姫「え?」

凛「えっ?」

真姫「まさか凛……、あなた雪穂ちゃんをハンバーガーショップに連れて行くつもりだったの?」

凛「え、まずいの?」

真姫「まずいって、だって……

真姫(そりゃ初めて出掛ける相手と行くお店がファーストフードなんて……、それに仮にもあなた達は両想いなんだから……

真姫「もっと他にもあるでしょ!」

凛「他って?」

真姫「ほ…ほら! 美味しいお店は他にもあるでしょ?」

凛「だってハンバーガー美味しいよ?」

真姫「はぁ……」

凛「あ、分かったにゃ!真姫ちゃんの言ってることが!」

真姫「…………分かったの?」

凛「ラーメン屋だね!!」

真姫「…………」


真姫「凛!」

凛「にゃ!?」

真姫「いい? 凛は自分の事をどう思ってるか知らないけど、雪穂ちゃんから見ればあなたは先輩なの」

凛「……先…輩?」

真姫「そうよ!つまり雪穂ちゃんは、あなたのことを高校生のお姉さんと思ってる訳!」

凛「お姉さん……っ、悪くない響きにゃあ」パアア

真姫「だからこそ、オシャレなお店に連れて行って自分は年上のお姉さんだぞっていうところをガツンとアピールするのよ!」

凛「なるほど~、理解したにゃ」

真姫「……て事で、私のよく行くカフェを教えてあげるわ」

凛「おぉ!真姫ちゃんありがとぉー!」

真姫「いい? ちゃんと一度下見に行くのよ? ネットで調べるだけなのも駄目よ」

凛「了解にゃー!」


花陽「…………」

花陽「別にハンバーガーでも大丈夫なんじゃないかなぁ?」

 

――――回想終了



真姫「そ、そんな事もあったわね……///」

花陽「懐かしいね。自分の気持ちが分からないって言ってあたふたしてた頃が」

真姫「そうね。……まあ、まさかあのデート1回で付き合うことになるとは思ってもみなかったけど」

花陽「凛ちゃんから相談されるのはその時以来だね」

真姫「それで振り回されるのは私たちなのよ?」

花陽「そ、そうだね」アハハ

真姫「…………花陽は良かったの?」

花陽「えっ?」

真姫「私はてっきり、花陽は凛のことが好きなんだと思ってたから……」

花陽「うん、凛ちゃんのことは大好きだけど、恋愛感情の好きじゃないよ。私の好きは大事な友達としての好き」

花陽「それに私は凛ちゃんの幸せを願ってる。凛ちゃんが幸せなら私も嬉しいの」

真姫「そう……、本当に仲が良いのね あなた達……」

花陽「うん!」


真姫「とにかく。雪穂ちゃんが凛の誕生日の為に何かしてるのは明白なんだし……」

真姫「凛には大丈夫と言ったけど、連絡を返さないって事はきちんと注意しておかないといけないわね」

花陽「そうだね」

真姫「そうと決まれば行くわよ」

花陽「えっ、どこに?」

真姫「どこって穂むらよ」

花陽「ええっ、今から行くの!?」

真姫「当たり前でしょう」

花陽「でも雪穂ちゃん、家にいるかな?」

真姫「もし居なくても、穂乃果あたりに言っておけばなんとかなるでしょう」

花陽「あ、そっか」

真姫「……まあホントは、私たちがどうこうしなくても大丈夫なワケなんだし? 正直、面倒なだけなんだけどね?」

花陽「……ふふっ」クスクス

真姫「え? どうしたのよ?」

花陽「ううん、……ふふっ」

真姫「私、なにか変な事でも言った?」

花陽「ううん、なんでもないよ♪」

真姫「?」

――――――

もうだめかと思ってた
待ってましたよ!


凛「………やっちゃった……」


家までの帰り道を一人で歩く――。

少し時間をおいて冷静さを取り戻したところで、真姫ちゃんに八つ当たりしちゃったことを反省した。


真姫ちゃんに怒鳴っちゃったこと、今度会ったら謝らないとな……


凛「真姫ちゃん、ごめんね」


………分かってる。
悪いのは凛の方だって分かってる、けど……


でも、しょうがないないじゃん!


だって、毎日会ってた人とぜんぜん会えなくなるんだよ。


好きな人と会えると思って楽しみにしてた1日が、けっきょく会えず終いで終わっちゃって、

同じように次の日も、そのまた次の日も会えなくて、少しずつ会えない期間が長くなっていったら……



凛「焦っちゃうよ……」


――凛の家――


凛「ただいまー」

凛ママ「」ドタバタ

凛「お母さん ただいま~って、そんなに慌ててどうしたの?」

凛ママ「あら凛、ちょうどいいところに帰ってきたわね」

凛「?」

凛ママ「お母さん これから町内会の人たちと食事会に行ってくるわね」

凛「ええっ、そんなこと言ってたっけ!?」

凛ママ「そうなのよ、お母さんすっかり忘れてて……。さっき思い出したばかりでね」

凛「そうなんだ」

凛ママ「それで、今日は夕飯の用意をまったくしてないのよ」

凛「ええ!? じゃあ凛はどうすればいいの!?」

凛ママ「そうね。お父さんも今日は外で食べてくるって言ってるから、家には誰もいないし……」

凛ママ「お金渡すから外で食べるなりお弁当買ってくるなり、凛の方で好きに夕飯を済ませておいてくれないかしら?」

凛「………分かった。凛はそれでもいい」

凛ママ「ありがとう。じゃあお金渡しておくわね」

凛「うん!」

――――――


今日の晩ご飯は外に食べに行くことにした。


凛「そうだっ!」


外に食べに行くついでに雪穂ちゃんも誘ってみよう!

夕食のいい時間帯だから、もしかしたらもう食べちゃってるかもしれないけど……

ダメもとで、誘ってみるのもいいよね?


凛「そうと決まればさっそく雪穂ちゃんに連絡にゃ! 雪穂ちゃん、ちゃんと返してくれるかな……」


『晩ご飯 これから一緒に食べないかにゃ』


凛「……と、これで良し!送信!飛んでくにゃあ!」


ピッ――


凛「よし!じゃあ返事を待ってる間に何食べるか決めるにゃ」


うーん、ここはやっぱりラーメンかにゃ?

今日は雪穂ちゃんに、凛いち押しのラーメン屋を紹介してあげたいにゃ!


ピピピッ――


凛「――っ!雪穂ちゃんからだ!」


雪穂ちゃんから返事が返ってきた。

スマホの画面に表示された名前に驚きつつ、ホッと胸をなで下ろす。


真姫ちゃん、きっとなにか手を打ってくれたんだね


凛「ありがとう真姫ちゃん!」

 
凛「…………」

凛「ふむふむ、雪穂ちゃんは亜里沙ちゃんやクラスのみんなと約束があるんだね」


一緒に食べに行けなくなったけど、ひとまず連絡が返ってくるようになって良かった

とりあえず一安心にゃ


………でも、やっぱり一緒に食べに行きたかったな


凛「いや、しょうがない!雪穂ちゃんにだって都合があるもんね。今日は我慢にゃ。クヨクヨしても仕方ないし、早くご飯食べにいくにゃ~!」

――――――


凛「うーん、やっぱりラーメンは最高にゃぁ…」


けっきょく夕飯はラーメンにした。


昔から通い続けてる行き着けのラーメン屋――。

小さい頃から家族と一緒に行ってたお店は、高校生になって友達と食べに行くようになった今でも通い続けてる。

もう言わば、凛の第二のおふくろの味――

ぜひ、雪穂ちゃんにもこの味を知ってほしいな


凛「今度 雪穂ちゃんも連れてきてあげないとね」


きっと、雪穂ちゃんも気に入ってくれるにゃあ♪


凛「…………」


凛「………一体いつになるのかな?」




凛「あ、コンビニ……、ちょっと寄っていこ……」


――――――
――――


――コンビニ店内――


凛「買っていくのは、お茶だけでいいよね……」


そういえば、最近雪穂ちゃんが淹れてくれたお茶、ぜんぜん飲んでない……


凛「久しぶりに飲みたいな」


凛「それにしてもヒマだにゃあ」


もう晩ご飯食べちゃったから帰ってもやる事もないし、暇つぶしに雑誌コーナーでも見ていこ……。


凛「あっ、少女マンガの最新巻出てる!続きが気になってたんだよね。雪穂ちゃん、買ったかなぁ?」


そう言って、タイトルを忘れないよう頭の隅っこにインプット、今度雪穂ちゃん家に行ったら読ませてもらわなきゃね!

また気になるマンガが増えちゃったよ~♪ 早く読みたくてワクワクするにゃ。


………ワクワクしてる、ハズなのに……


凛「…………あんまり楽しくないや」


はぁ…、
凛は一人で何やってるんだろう……



「……それでね~」



凛「にゃ!?」ピクッ


聞き覚えのある声。凛はふと我に返った。


凛「この声は……雪穂ちゃん?」


凛「コンビニの中にいるみたい。……どこだろう?」


そう言って、ぐるっと店内を見渡した。


凛「あっ、いたいた!」

雪穂「…………」

凛「おーい、雪穂ちゃん…と……ことりちゃん!?」 


目線の先にいたのは、楽しそうに笑う雪穂ちゃんとことりちゃんだった。


雪穂「あははっ」

ことり「えへへ」


――え!?

どうして雪穂ちゃんとことりちゃんが一緒にいるの!?


何で!? 意味が分からない!!


意味が分からなくて、凛はつい、二人に見つからないよう物影に隠れてしまった。

それどころか、いてもたってもいられなくて、二人に見つからないよう商品棚の影に隠れて、聞き耳をたてた。


今、この場で二人に声を掛ければいいにも関わらずに……。この行動が、後で後悔することになるとも知らずに―――。


雪穂「すいません、今日も泊めさせてもらちゃって……」

ことり「ううん、気にしないで」

雪穂「でも、ちょっと楽しみです」

ことり「えっ?」

雪穂「だってことりさん家にお泊まりだなんて……ちょっと楽しみです♪」


凛「…………っ!?」


お泊まり!?

雪穂ちゃんがことりちゃん家に!?


しかも『今日も』って言ってたよね?


どういうこと!?
お泊まりするのは今日だけじゃないってこと!?


意味分かんないにゃ!

頭の中がパニックでどんどん真っ白になっていく。


そもそも、なんでことりちゃんと一緒なの!?

雪穂ちゃん、今日は亜里沙ちゃんと友達と一緒だって言ってたのに……

凛は雪穂ちゃんに嘘をつかれたの?



雪穂「だって今夜も気合い入れていかないと!今日も夜は長いですから」

ことり「そうだね……、じゃあ今夜は寝かさないよ♪」

雪穂「はい、私も途中で寝ないように頑張ります」

ことり「言ったね、じゃあ遠慮なくいくよ? ことりよりも先に寝ちゃダメだよ?」

雪穂「がっ、頑張ります!」

ことり「ふふふ」

雪穂「あははっ」


凛「…………」


凛(二人とも楽しそう……)


――ズキッ

凛「……痛っ」


胸の奥がチクチクと痛い。


………駄目だ、見てられない。

仲が良さそうな二人を見てるのが辛くて、凛はすぐにその場を立ち去っちゃった。

――――――

モバ付けろカス

はよ


家までは、走って帰った。


理由は、帰り道を歩く自分の足取りが重くなっている事に気付いてしまったから……。

そして、些細な事で傷ついてしまった自分を認たくなかったから。だから……

ただ、何も考えずに走った。


凛「たっだいまぁ!」


て言っても、家には誰にもいないんだけどね?

中途半端な笑みを浮かべながら、買い物袋を机の上に広げていく。


凛「ふっふっふ、コンビニで一番高いお茶を買ってやったにゃ!」

『玉露入り』

凛「ぎょくろ…入り? うーん、よく分からないけど高級そうにゃ」

凛「」ゴクリ

凛「………あんまり美味しくない。雪穂ちゃんの淹れてくれたお茶の方が美味しいにゃ……」


凛「………雪穂ちゃん」ボソッ


さっきは、どうしてことりちゃんと一緒にいたんだろう?

どうして亜里沙ちゃんと一緒だなんてウソ言ったんだろう?


ううん、ホントは雪穂ちゃんが誰と一緒にいても構わないの。

凛にとっては嘘をつかれた事の方がショックだったんだよ


……どうして嘘をつく必要があったのかな?


凛「……まさかっ!!」


『浮気』


最悪のワードが頭をよぎる。

そんな訳ないにゃ!
だって凛と雪穂ちゃんは付き合ってるんだよ!?


凛「にゃ…、にゃー、にゃー!」


焦りをごまかすために、無理やり大声を出してみる。


凛「凛は元気だにゃー!」


そうだっ!
元気を出したい時は体を動かせばいいんだにゃ!

だから一度立ち上がって、スっと一呼吸おいて―――


凛「くるりん回ってぇ~……にゃあ!」


その場で1回転して決めポーズ 


ほら、予想通り元気が出たにゃ!


そしたら、凝り固まった頭もほぐれてきたよ!

もしかしたら、今日の事は凛の思い違いなだけなのかも!


凛「うん。雪穂ちゃんは亜里沙ちゃんと別れた後、ことりちゃんと会ったんだよ」


そうだよ……、きっと、そうだにゃ!


凛「ことりちゃんとは偶然会っただけなのかも!」


やっぱり今日の事は、凛の勘違いだったんだにゃ!

だいたい凛は考えるよりも前に行動するタイプなんだから、くよくよ考えるなんてガラにもない事、する必要なんてなかったんだにゃ!


凛「真姫ちゃんも言ってたもん! 信じてあげなさいって……、だから凛は雪穂ちゃんのことを信じてあげなきゃ!」


凛「雪穂ちゃんのことを信じっ―――





凛「………本当に信じて……いいんだよね?」


――――――


――数時間前


――穂むら――


真姫「悪いわね。こんな時間に急に押しかけたりして……」

穂乃果「ううん、気にしないで。それで二人はどうして穂乃果の家に?」

真姫「凛と雪穂ちゃんの事で話があるの」

穂乃果「凛ちゃんと雪穂?」

真姫「えぇ、特に雪穂ちゃんの事なんだけれど―――

穂乃果「ゆ、ゆゆゆ雪穂!? 知らない知らない! 雪穂が何やってるかなんて知らないから!」

真姫・花陽(分かりやすっ!!)

真姫「……まだ何も言ってないわよ」

穂乃果「は!……しまった!」

真姫「大丈夫よ、なんとなく察しはついてるから」

穂乃果「えっ、そうなの?」

真姫「凛にも余計なことは言ってないから安心して」

穂乃果「な~んだ、ビックリしたぁ~」

雪穂「それで? 雪穂ちゃんは、凛に隠れていったい何をしてるのよ?」

穂乃果「いやぁ、それがねぇ――――



――回想スタート――


雪穂「―――と、言う事で…」

穂乃果「ちょっと待って!」

雪穂「なに、お姉ちゃん?」

穂乃果「急に私達を集めたりして、どういう事?」

雪穂「ちょっと相談したい事があってさ……」

穂乃果「相談?」

雪穂「う、うん」

亜里沙「……ど、どうして私まで?」

雪穂「それは亜里沙がちょうど家にお饅頭買いに来てたから。ついでにと言うか……」

希「」ニコニコ

雪穂「……ていうか! なんで希さんが家にいるんですか!? 私はむしろ、なんでこの場に希さんがいるのか、そっちの方が気になります!」

希「」ニコニコ

雪穂「 私……、希さんを呼んだつもりは無いんですけど……?」

希「え~、ウチは駄目なん?」

雪穂「駄目ってわけじゃないですけど……、家に買い物に来てた訳じゃないですよね?」

希「いやぁ、カードがウチに告げたんよ。穂乃果ちゃんの家に来れば面白いものが見れるって」

雪穂「意味が分からな――、スピリチュアルですね……」

希「おっ!雪穂ちゃん、分かってきたやん♪」

雪穂「いやぁ、それほどでも……///」

雪穂「………じゃなくてっ!」


雪穂「凛さんの誕生日のことですよ!」

穂乃果・希「あ ーーー」


雪穂「凛さんの誕生日、聞けば11月1日らしいじゃないですか!」

希「そうやね」

雪穂「もうすぐじゃないですか!!」

穂乃果「うん、ていうか来週だね」

雪穂「なんで教えてくれなかったの!?」

穂乃果「何度も言おうとしたよ!?」

雪穂「嘘だ!どうせ適当なこと言ってごまかそうとしてるんでしょ!?」

穂乃果「ホントだよ!? でも雪穂ったらぜんぜん聞こうとしないんだもん!」

雪穂「えっ!?」

穂乃果「何度話そうと思っても、今は凛さんと遊びに行く場所を考えてるから静かにして……とか、もうすぐ凛さんが遊びに来るからとか後にしろ……とか」

雪穂「///」カアア

穂乃果「凛さんが、凛さんが…って言って全然聞こうとしないんだもん。そうだ昨日だって―――

雪穂「うわあああ!!バカお姉ちゃんっ////」

亜里沙「っ!……穂乃果さん!その話、私にも詳しく教えてください!!」

亜里沙「ちょっと亜里沙までぇええ///」

希「おーおー、雪穂ちゃんったら顔を真っ赤にしちゃってぇ♪」●REC

雪穂「希さんも何撮ってるんですか!!」


穂乃果「」シクシク

亜里沙「」シクシク

雪穂「はぁはぁ…///」

穂乃果「雪穂ヒドいよぉ。正座させるなんて……」

雪穂「お姉ちゃんが悪い」

亜里沙「なんで私まで……」

雪穂「……それは悪ノリするから」

希「…………」

穂乃果「ていうか、なんで希ちゃんはお咎めナシなの!?」

雪穂「そりゃあ、希さんにはいろいろお世話になってるから?」

穂乃果「あー!えこひいきだ!!」

雪穂「お姉ちゃんっ!」キッ

穂乃果「ひゃい!」

希「あはは……(別にウチも正座させられても良かったんやけどなぁ)


雪穂「それで本題ですよ!」

雪穂「もう誕生日まであまり時間もないし、早急に凛さんにあげるプレゼントを考えなければならない訳ですよ」

穂乃果「なるほど」

雪穂「それでそのプレゼントなんだけどさ……、私は凛さんに何あげたらいいのかな?」

穂乃果「えっ? それ、私たちに聞くの?」

雪穂「だって私、凛さんが何を貰ったら喜んでくれるのか、まだよく知らないから……」

希「なるほど、それで私たちに聞けば何か分かるかもって思ったんやね」

雪穂「はい」

亜里沙「やはり凛さんの好きなものをあげることがイチバンなんじゃないですか」

穂乃果「凛ちゃんの好きなものか~」

雪穂「凛さんは、何をもらったら喜ぶかな?」

希「凛ちゃんの好きなものと言えば……」

穂乃果「やっぱりラーメン?」

希「いやいや!付き合い始めて、初めての誕生日プレゼントがラーメンって……」

亜里沙「……ハラショー」

穂乃果「じゃあお洋服とか、可愛い小物とか?」

亜里沙「アクセサリーなんてどうですか?」

穂乃果「うーん、あとは、なんだろう……?」

雪穂「…………」

穂乃果「雪穂?」


雪穂「…………手作りがいいな」ボソッ


一同「えっ!?」


穂乃果「………手作り?」

雪穂「あ!いやっ、なんでも…」

希「手作りって、なに作るか決めてるの?」

雪穂「それは……、まだこれから考えるつもりですけど……」

穂乃果「手作りプレゼントなんて素敵♪ 私はいいと思うな!」

希「でも今から手作りだと時間が要るで? ただでさえ誕生日まであまり時間も無いんやし……」

雪穂「分かってますけど……」

穂乃果「?」

希「まあ……、雪穂ちゃんの言いたいことも分からないでもないよ?」

希「付き合い始めて初めての誕生日やし、プレゼントはいいものをあげたい、こだわりたいと思う気持ちは分かる」

雪穂「…………」

希「でも大切なのは凛ちゃんへの気持ち。その気持ちを雪穂ちゃんがちゃんとプレゼントに込めたかどうかがいちばん大事なんじゃないかな?」

雪穂「私の気持ちをプレゼントに……」

希「そ…、雪穂ちゃんの気持ち」

希「雪穂ちゃんが凛ちゃんの為を想って選んだプレゼントだったら、きっと凛ちゃんはどんなものでも喜んでくれると思うんや」

希「だからね? 別に手作りにこだわる必要は無いんじゃないかな?」


雪穂「でも……」

穂乃果「……それでも雪穂は手作りのプレゼントがいいの?」

雪穂「……うん」

穂乃果「よし、分かった!」

希「ほ、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「だったら私は協力するよ!」

雪穂「えっ?」

穂乃果「だって、雪穂は凛ちゃんの為に頑張りたいって思ってるんだよね?」

雪穂「う、うん」

穂乃果「だったら私は協力する。みんなで一緒に考えようよ!」ニコッ

雪穂「お姉ちゃん……」

希「まったく……、しょうがないなぁ」

亜里沙「私も協力するよユキホ!」

雪穂「みんな……、ありがとう」


希「問題は雪穂ちゃんが何を作るかってところやな」

穂乃果「やっぱり、ラーメン?」

希「いやいや、穂乃果ちゃんは1回ラーメンから離れようか」

雪穂「他には……」

亜里沙「最近ではアクセサリーを自分で作るというのも流行ってるみたいですよ」

希「作り方は分かる?」

亜里沙「それは一度調べてみない事には……」

雪穂「うーん、なかなか難しいな」

穂乃果「あ~!分かった!」

希「え!?………分かったの?」

雪穂「なにっ? 教えて!!」

穂乃果「いや、分からないんだけれど……」

雪穂「どっち!?」

穂乃果「けど分かった!」

雪穂「はぁ!?」

穂乃果「正確には、分かる為の方法が分かった!」

雪穂「なに言ってるの?」

穂乃果「こういう時は『分かる人に聞け』だよ♪」

雪穂・希・亜里沙 「?」


――数分後


ことり「それで、私が呼ばれたと……」

穂乃果「うん! だってことりちゃんはμ's の衣装作ってるし、お菓子も作れるし、色んなこと出来るでしょ? まさに手作りのエキスパート!」

穂乃果「だからきっと雪穂の力になってくれるハズだよ!」

ことり「エキスパートは言い過ぎだよ~」アハハ

雪穂「お願いします!なにか助言だけでもっ!」

ことり「うーん、そうだな……手作りか~、……あっ!じゃあ手編みのマフラーとか!」

雪穂「マフラー?」

ことり「うん。マフラーなら、これから寒くなってくるこの時期に丁度ピッタリなんじゃないかな」

穂乃果「手編みのマフラーか~。いいんじゃないかな雪穂?」

ことり「それに手編みのマフラーなら、初心者でも一週間もあれば出来るからそんなに時間も要らないし」

ことり「それから自分でデザインも決められる。だから雪穂ちゃんの納得のいくものを作れる。……と、思うんだけど………どうかな?」

雪穂「いいと思います!!」

希「決まりやね」

ことり「うん。プレゼントは雪穂ちゃんの手作りマフラーで決まり!」


雪穂「でも手編みのマフラーか~。私、やった事ないよ」

ことり「なら私が教えてあげる」

雪穂「ほ、本当ですか!?」

ことり「うん!」

雪穂「じゃあお願いします!」

ことり「はーい。それじゃあ行こっか」

雪穂「えっ、どこにですか?」

ことり「私の家だよ」

雪穂「今からですか!?」

ことり「うん!もう あまり時間も無いんだし、すぐにでも取り掛からないと」

雪穂「でも、今からだとお邪魔じゃないですか?」

ことり「ううん。私の方は大丈夫だよ」

雪穂「でも……っ」

穂乃果「行っておいでよ雪穂!この事は、私がお母さんにちゃんと説明しとくから」

雪穂「お姉ちゃん……。ありがと」ボソッ

穂乃果「ん、何か言った?」

雪穂「なんでもない!」

雪穂「じゃあことりさん!改めてお願いします!」

ことり「はい、お願いされました♪」

雪穂「あ……! 皆さん このことは凛さんには内緒で……、お願いします!」

一同「はーい!」


――――回想終了


真姫「そう――。そんな事があったのね……」

穂乃果「うん! 雪穂は、今日もことりちゃん家で頑張ってるよ」

花陽「そっか。雪穂ちゃんは凛ちゃんの為に頑張ってたんだね、良かった~」

真姫「でも……、それと凛を相手にしない事とは、話は別よ?」

花陽「うん、凛ちゃんすごく心配してたから」

穂乃果「まさかそんな事態になっていたとは……」

真姫「だから雪穂ちゃんにも言っておいて。せめて、ちゃんと凛に連絡を返すことくらいはしなさい、て……」

穂乃果「分かった、雪穂に伝えとく」

真姫「えぇ、お願い」

花陽「それにしても……」

穂乃果・真姫「?」

花陽「連絡返すことを忘れちゃうくらい夢中になっちゃうなんて……」

真姫「よっぽど凛のことが好きなのね」

花陽「そうだね」

穂乃果「雪穂ってたまにこういうところがあるんだよね。夢中になると周りが見えなくなるっていうか……」

真姫「そうみたいね」

穂乃果「まったく!いったい誰に似たのやら……!!」

真姫「…………」

花陽「…………」

――――――


――ことりの家――


ことり「それでは早速取り掛かりたいと思います」

雪穂「はい!お願いします!」

ことり「いやいや。そんなにかしこまらなくていいよ」アハハ…

雪穂「いや、だってことりさんは一応 年上なんだし」

ことり「ほぇぇ、雪穂ちゃんが上下関係を気にするようになるなんてね」クスクス

雪穂「えっ? 私、なにか変なこと言いました?」

ことり「いやー、ただ小さい頃はあんなに懐っこくて可愛かったのになーって思って……」

雪穂「へっ?」

ことり「雪穂ちゃん……。私と海未ちゃんが穂乃果ちゃんと遊んでる時、必ず私たちの後ろをついて来てたよね」クスクス

ことり「小さい頃は小動物みたいで可愛いかったのにな~♪」

雪穂「ちょっと! 昔のことは関係ないじゃないですかっ///」

ことり「照れちゃって可愛い♪」


ことり「では今度こそ、マフラーの編み方を教えていきます」

雪穂「はい!」

ことり「まず最初はね――…

雪穂(凛さんの為に……、頑張るぞ!)


――数分後


雪穂「…………」

ことり「…………」

雪穂「ぐぬぬ…」

ことり「あの~、雪穂ちゃん?」

雪穂「なんですか!? 今、集中してるんで後にしてもらえませんか」

ことり「あ…、あのね……」

雪穂「ぐっ…」

ことり「えっとね……」

雪穂「うわわ、またミスったぁあ!」

ことり「あ、焦らなくていいよ」



……ぜんぜん知らなかったよ

雪穂ちゃんって、すっごく不器用なんだね……


穂乃果ちゃんも不器用だとは思ってたけど、まさか雪穂ちゃんまでも不器用だったとは……

こんな変なところで似るなんて、やっぱり雪穂ちゃんは穂乃ちゃんの妹なんだね……。


雪穂「うーん、難しいな……」

ことり「落ち着いて雪穂ちゃん、ここはこうして……」

雪穂「こうですかっ!」

ことり「ゆっ、雪穂ちゃん、編み物に力は必要ないんだよ? だから肩の力抜いて……ね?」

雪穂「分かってます! だからこうして全力で肩の力を抜いているんです」

ことり「いやっ、さらに肩に力が入っちゃってるよ!?」

雪穂「…………」

ことり「…………」

雪穂「……んなぁ!!」

ことり「あはは…」

――――――


プルルルル……

ピッ――


穂乃果『あっ、もしもし ことりちゃん?』

ことり「穂乃果ちゃんどうしたの?」

穂乃果『『どうしたの』は、こっちのセリフだよ!』

ことり「え?」

穂乃果『雪穂に一体何があったの? すっごくテンション低くして帰ってきたんだけど……』

ことり「あ~、雪穂ちゃんね……」

穂乃果『出掛ける前と帰ってきた時とでテンションが違いすぎて、もうビックリしたよー』

ことり「あはは」

穂乃果『何かあったの?』

ことり「うーんとね、一言でまとめると雪穂ちゃんは恐ろしく不器用だったって事だよ」

穂乃果『?』

――――――


雪穂「つーかーれーたー!」


結局、その日の作業はまったく進みませんでした。


ことりさん曰わく、私は相当な不器用らしいです。


当初の予定では、やり方を教えてもらったら後は自分で進めていく予定だったんだけれど……、

私があまりにも不器用だからと、私がコツを掴むまでことりさんが暫く付きっきりで教えてくれる事となりました。


ことりさんが家に来てくれたり、ある時は私がことりさん家に行ったり、時には お泊まりしたりして……

次の日も、また次の日も、ことりさんは自分の時間を割いてまで丁寧に教えてくれました。


そして、流れるように一日一日が過ぎていった。

編み物は思うようには進まないけど、でも少しずつだけど着実に進んでいった。


でもさ……


雪穂「私って……、そんなに不器用かな?」


――また次の日


――ことりの家――


ことり「ここをこうして……」

雪穂「む…、難しいなぁ」

ことり「まあ慌てずゆっくりやっていこ?」

雪穂「はい」

ことり「それじゃあもう1回最初からやってみよっか。私がゆっくりやって見せるから」

雪穂「お願いします」
 
ことり「ここをこうして……こう」

雪穂「こ…こうして?」

ことり「そうそう!で…ここに通して」

雪穂「あっ、間違えた!」

ことり「落ち着いて。一度戻してやり直せば大丈夫だから」

雪穂「は、はい!…ええっと……うわっ、また間違えた!」

ことり「落ち着いて、……ここはこうやるの」

雪穂「あ、なるほど」

ことり「次はこうして」

雪穂「うーん、難しいなぁ……」


雪穂「疲れたぁ~!」

ことり「雪穂ちゃん、お疲れ様」

雪穂「すいません……。ぜんぜん進歩が無くて……」アハハ…

ことり「気にしないで~。はい、お菓子とジュース用意したよ」

雪穂「ありがとうございます!」

雪穂「……はぁ~、ジュースが美味い♪ 糖分が頭に染み渡るよ~」ゴクゴク

ことり「ふふっ、じゃあそれ食べたらまた編み物再開しよっか」

雪穂「はい」

ことり「雪穂ちゃんがコツを掴むまで何度でも教えてあげるからね」

雪穂「あ……!」

ことり「?」

雪穂「…………あの、ことりさん」

ことり「なあに?」

雪穂「………すいません」

ことり「え?」


ことり「……な、何が?」

雪穂「私の編み物が一向に上達しないから……。ことりさんが自分の時間を割くハメになって、ホントすいません。……迷惑ですよね?」

ことり「ううん、そんなことないよ」

ことり「私は雪穂ちゃんに協力したいと思ったから協力してるの。だから気にしなくていいんだよ」

雪穂「でも、やっぱり申し訳ないっていうか……、本当にすいません」

ことり「…………」

雪穂「……ん、ことりさん?」

ことり「だったら……」

雪穂「?」

ことり「申し訳ないと思ってるのなら、私のお願いを聞いてもらってもいいかな?」

雪穂「え?……いいですけど……て、うわっ!?ことりさんがすごく悪い顔をしている!?」

ことり「ふっふっふっ…、ちょーっと、ことりに付き合ってもらいます」ニコニコ

雪穂「ひいっ!」

雪穂(……いったい私に何させるつもりなんだろう?)

――――――


ことり「雪穂ちゃんありがと~」

雪穂「いや、あははは……」

ことり「ことりの買い物に付き合ってくれて、ありがとう」

雪穂「いや…、私は荷物持ちをしてるだけだし……」

ことり「おかげで新しい衣装の材料が揃ったよ」

雪穂「えっ、衣装ってμ's の衣装のことですか?」

ことり「うん!」

雪穂「これが……!? この布地や糸やフリルがμ's の衣装になるの!?」

ことり「そうだよ」

雪穂「じゃあさっき寄ったお店って……」

ことり「うん、ことりがよく衣装の材料を買いに行くお店なんだ」

雪穂「ええ!? そうだったんだ……」

ことり「雪穂ちゃんもスクールアイドル始めるつもりなら覚えておくといいよ」

雪穂「はい!」


ことり「でも、ホントにありがとね」

雪穂「いいんですよ~! 私も編み物手伝ってもらってるワケだし……」

雪穂「それに、この後またことりさん家にお世話になるんですから……、これくらい当然です」

ことり「そっか、当然か。……あ!じゃあ帰る前にちょっとコンビニでも寄って行こっか?」

雪穂「はい、構いませんよ」


――――――
――――


――コンビニ店内――


雪穂「でもすいません。今日もことりさん家におじゃまさせてもらっちゃって……」

ことり「ううん、気にしないで」

雪穂「でも、ちょっと楽しみです」

ことり「えっ?」

雪穂「だってことりさん家にお泊まりだなんて滅多にない事ですから……、だからちょっと楽しみです♪」

ことり「そっか」クスクス

雪穂「」クスクス

ことり「じゃあせっかくのお泊まりだから、お菓子いっぱい買っていこっか」

雪穂「そうですね」


ことり「雪穂ちゃんは、お菓子なに買ってく?」

雪穂「あ、じゃあ私はベビースターラーメン!」

ことり「え!? い、意外だね……」

雪穂「そうですか?」

ことり「だって、雪穂ちゃんがそういうものを好んで食べるなんて、そんなイメージ無かったから」

雪穂「いや~、凛さんがよく食べてるから私もその影響で食べるようになったんですよね」

ことり「ふーん。……そうなんだ」

雪穂「それでね凛さんったら……、ベビースターにお湯をかけたらラーメンに戻るんだよ~って言ってね……」

雪穂「お湯を入れた器にベビースターを入れようとするから、そのたびに私が止めてくださいって言ってね―――

ことり「ふふふ」クスクス

雪穂「どうしたんですか?」

ことり「ねぇ、雪穂ちゃん気付いてる?」

雪穂「何がですか?」

ことり「雪穂ちゃん、この間からずっと凛ちゃんの話ばっかりしてるんだよ?」

雪穂「えっ、嘘!? ぜんぜん気付かなかった!」

ことり「よっぽど凛ちゃんのことが好きなんだね♪」

雪穂「や、止めてください……///」

ことり「えへへ」


ことり「ねえねえ雪穂ちゃん♪」

雪穂「もうっ…、今度はなんですか!?」

ことり「少しは気分転換できた?」

雪穂「え!?」

ことり「…………」

雪穂「どういう意味ですか?」

ことり「そのまんまの通りだよ」

雪穂「だって雪穂ちゃん、かなり煮詰まってたみたいだったから……」
 
雪穂「え……? それで私を外に連れ出したんですか?」

ことり「うん」

雪穂「まあ……、確かに煮詰まってましたけど……」

ことり「雪穂ちゃん、昨日も夜遅くまでずっと編み物してたでしょ?」

雪穂「………なんで知ってるんですか」

ことり「なんとなく♪」

雪穂「…………」


ことり「ねえ雪穂ちゃん? いくら煮詰まってるからって、根を詰めすぎるのは流石に良くないよ? たまには休憩しないと……」

雪穂「だって……。編み物が思うように進まないんですもん」

ことり「だからって朝も昼も夜もずっと編み物しなくても……」

雪穂「だって私、一向に編み物が上手くならないから……。ただでさえ凛さんの誕生日も迫ってきてるっていうのに、ぜんぜん進歩ないし作業も進まないし……」

ことり「そういう時は息抜きしないと」

雪穂「でもでも!……ホントに時間が無いし、息抜きしてる時間さえ惜しいって言うか……

ことり「だからこそ息抜きが必要なの!!」

雪穂「えっ?」

ことり「……あのね雪穂ちゃん。同じ事をずっと頑張るっていうのは、実は凄く難しい事なんだよ」

ことり「誰だってそうだよ、私だってμ's のみんなだってそう」

ことり「例えば、私達だってラブライブに向けて一生懸命頑張ってるけど……、ずっとラブライブのことばっかり考えてる訳じゃないんだよ」

雪穂「…………」

ことり「確かに集中すること、全力で打ち込むことは大切な事だし、良い事だよ? それに、夢中になれるモノがあるって事はすごく素敵なことだと思う」

ことり「でも、ずっと同じ事ばかり考えてたら一番大事なものが見えなくなるんじゃないかって、私は思うんだ……」

雪穂「一番大事なもの?」


ことり「そうだよ。ずっと同じ事ばかり考えてたら、視野が狭まるっていうのかな?」

ことり「頭がカチカチに固まって、視界もどんどん狭くなっていって、いつかきっと大事な何かを見失う。だから、そうならないように時々こうして違う事をして気分転換をするの」

雪穂「だから、私を外に連れ出したんだ……」

ことり「そうだよ」

ことり「こうやって外を歩いたり、お買い物したり、お話したり、楽しい事を考えたり……。遊んだり、美味しいものを食べたり……」

ことり「なんて言うのかな? 視点を変えるっていうか、視野を広く保つっていうか……、分かるかな……?」

雪穂「……なんとなくですけど、分かります……」

ことり「………ねぇ、雪穂ちゃんはどうしてマフラー作りを頑張ってるの?」

雪穂「それは……、凛さんが喜んでくれると思ったから」

ことり「………そっか」

雪穂「あの、ことりさん……」

ことり「なあに?」

雪穂「私は凛さんのために頑張れてるかな?」

ことり「それは……うん、もちろん!」

雪穂「!!……良かったぁ」パアア


ことり「コンビニで長話しちゃったね。ささっと買い物済ませて早く帰ろっか」

雪穂「はい! あっ、じゃあ私ブラックのコーヒー買っていきますね!」

ことり「えっ、ブラックコーヒー? 雪穂ちゃんブラックなんて飲めるの?」

雪穂「いえ、飲めません」

ことり「じゃあ、なんで?」

雪穂「それは、普段飲まないものを飲むのは、ちょっとした気分転換になると思ったから!……それに……」

ことり「?」

雪穂「だって今夜も気合い入れていかないと!今日も夜は長いですから」

ことり「ふふっ、そっか、……そうだね! じゃあ今夜は寝かさないよ♪」

雪穂「はい、私も途中で寝ないように頑張ります」

ことり「言ったね、じゃあ遠慮なくいくよ? ことりよりも先に寝ちゃダメだよ?」

雪穂「がっ、頑張ります!」

ことり「ふふふ」

雪穂「あははっ」


ことり「あはは…って……あれ?」

雪穂「どうしたんですか?」

ことり「今、凛ちゃんがいたような」

雪穂「えっ、どこですか!?」

ことり「もう店の外に出ていっちゃったけど……」

雪穂「えぇ~ 残念。せっかく凛さんに会えると思ったのにな~」

ことり「うーん、私の気のせいだったのかも」

雪穂「そうですか……」


凛さん……。


そういや最近、編み物で忙しくてぜんぜん会えてなかったな……

マフラーが完成したら真っ先に凛さんに会いにいこう!


雪穂「よーし、頑張るぞ!」

ことり「わ!?……ど、どうしたの?」


だから もう少しだけ待っていてください、凛さん!

――――――

見てるぞ


それからも、編み物に打ち込む日々が続きました。


私の編み物は、相変わらず下手なのには変わりないけれど、少しずつ順調に進んでいきました。


マフラーを編み始めて間もない頃の私は、不器用でぜんぜん上達しなくて焦ってばかりだったけど……

ことりさんのアドバイスのおかげで気持ちが楽になったみたいで、少しずつだけど上達してきて、今ではようやく自分一人ででも進めていけるようになりました。



そして、あっという間にまた数日が経ちました

おつ


――雪穂の部屋――


雪穂「うはぁ!疲れたぁあ!」


編み物漬けの1日が終わって帰宅した私が、最初に発した言葉がそれだった。

少しずつ上達しているとはいえ、やはり慣れないことをしている事には変わりないワケで……

くたくたに疲れ果てた私は、勢い良くベッドに突っ伏した。


雪穂「ぜんぜん知らなかったよ~!」


編み物があんなに大変だったなんて……

ことりさん、あんな難しい事よく出来るなとちょっと尊敬。


わたしゃあもうヘトヘトだよぉ~


雪穂「…………」


凛さんと付き合い始めてから、私の部屋の風景は少し変わりました。

変わったといっても、凛さんの私物が部屋のあちこちに置かれてて目につくようになっただけなんだけどね……。


凛さんが持ってきた、読みかけファッション誌。忘れたまま置きっぱなしのノートや、私のケータイには対応してない充電器……

本棚には自分の本や雑誌に混じって、凛さんに借りたマンガも一緒に並んでいる。



私の部屋を訪れるようになってから凛さんは、よく自分の私物を持ち込んでは、そのまま置いていくようになった。


それから、凛さんから貰った物もたくさんある。


凛さんがもう読まなくなったマンガや、途中で読むのを諦めたという小説。

中には真姫さんに無理やり薦められたとかいう難しそうな本もあったっけ……?


それから洋服。凛さんが、自分が着るよりも私が着た方が似合うからと言って持ってきてくれた洋服。まぁ…、これはほぼ凛さんから無理やり押し付けられたようなものだけれどね……


あとは一緒に出掛けた時に買ったお揃いのストラップや、ゲームセンターで凛さんに取ってもらった景品。



この部屋には少しずつ……、

でも確実に凛さんとの思い出が増えてきている。


………今はそれが実感できる。


雪穂「あっ!そういえばお姉ちゃんに、凛さんに連絡をとるよう言われたんだった」


前にお姉ちゃんに注意されたことを思い出してケータイを取り出した。


雪穂「凛さん。……そういや編み物を始めてから、ぜんぜん会えてないな」


雪穂「………会いたいな」ボソッ


えーと……、

確かお姉ちゃんの話だとお姉ちゃんは凛さんに言われて、……あれ? 凛さんに言われたのは真姫さん達だっけ?

で、その真姫さんと花陽さんとお姉ちゃんが話し合って……いや違うな。真姫さんと花陽さんが家に来てお姉ちゃんに言って……

あれ、どうだったっけ?


駄目だ、疲れてて頭が回らない。


とにかく今は凛さんに連絡しないと……!


雪穂「凛さんに、連絡…を……Zzz


――――――
――――


雪穂「…………あれ?」


外が明るくなっている。

どうやら、いつの間にか寝てしまったみたい。


雪穂「ええぇ!? 嘘、寝てた!?……って、うわ!もう昼前じゃん!!」


部屋の時計を見て私はビックリした。
だって、時間はもう昼前になっていたから……。


どんだけ寝てんだ、私は……っ!!

……じゃなくて!


今日は朝からことりさん家にお邪魔するつもりだったのに、完全に約束の時間を過ぎている。


雪穂「………遅刻だ」


私は急いでベッドから飛び出した。

――――――


――穂むら・廊下――


穂乃果「あっ、待って雪穂!ちょっと話があるんだけど……」

雪穂「なに? 今、急いでるんだけど……」

穂乃果「ごめんごめん…て……、雪穂ったら、またそのコート着てるんだ?」


お姉ちゃんはそう言って、私が今 着ているコートを指差した。


雪穂「コートじゃなくてオータムコートね!?」

穂乃果「でも、コートはコートでしょ?」

雪穂「まあ、その通りなんだけど……」


ちなみに、このコートも凛さんから譲り受けたもの。


凛さんと初めてデートをした日―――。

自分に嫌気がさして泣き出してしまった私に、凛さんが慰めようと私に着せ掛けてくれたコート。

凛さんに返そうとした時、凛さんは「雪穂ちゃんにあげる!」と言ってくれて、少々強引だったけど私が貰い受ける形になった。


――それ以来、私はそのコートをよく着るようになった。


雪穂「それで、話ってなに?」

穂乃果「おぉ、そうだった!」

穂乃果「凛ちゃんがさ……、最近元気ないんだけど、なんか知らない?」

雪穂「凛さん? ううん、知らないよ」

穂乃果「そっか、分かった」

雪穂「うん」

穂乃果「…………」ジー

雪穂「……な、なに?」

穂乃果「雪穂さ……、最近凛ちゃんと会ってる?」

雪穂「ううん、会ってない」

穂乃果「え!? どうして?」

雪穂「いや。完成の目処がたったら、ゆっくり会いたいと思っててさ……」

穂乃果「雪穂はそれでいいの?」

雪穂「いい訳ではないんだけど……」

雪穂「たぶん今 凛さんと会っても、きっと編み物の事でそわそわしちゃって、しっかり向き合えないと思うから……」

雪穂「だったらちゃんと気持ちの整理をつけてから、ゆっくり会いたいと思ってる」

穂乃果「ふーん……、雪穂がそれでいいなら、いいんだけどね……」

雪穂「うん」

穂乃果「まぁ、ほどほどにね?」

雪穂「うん……うん?(どういう意味だろう?)


穂乃果「それで? 今日もことりちゃん家?」

雪穂「うん。ことりさん家のだと編み物がはかどるんだよね。なんか自分の家でやるよりも集中できるし……」

穂乃果「あ、分かる分かる!私もことりちゃん家とか海未ちゃん家で勉強した方が、集中出来て はかどるんだよね~」

雪穂「うわっ、お姉ちゃんと同じ発想!? なんかショックだな……」

穂乃果「むう、それはちょっとヒドくない?」

雪穂「ごめんごめん」

穂乃果「………ところで雪穂?」

雪穂「なに?」

穂乃果「時間は大丈夫なの? ことりちゃん、待ってるんじゃない?」

雪穂「あ……、うわああ忘れてたー!とりあえず、先にことりさんに連絡しないとっ……って、あああ!ケータイの電池切れてる!?」

雪穂「そうだ、昨日充電しないまま寝ちゃったんだった!!」

穂乃果「もう何やってるの? ことりちゃんには私が連絡しておくから、早く行っておいでよ」

雪穂「あ、じゃあ お姉ちゃんお願い! 行ってきまーす!」

穂乃果「行ってらっしゃい」

――――――


プルルルル……、プルルルル……

ッ――


『お掛けになった電話は、電源が入っていないか電波の届かない場所にある為―――


プツッ――



「…………」



凛「………寝よ」


――――――


――ことりの家――


ことり「すごーい雪穂ちゃん!もうこんなに進んだんだね」

雪穂「はい! 時間は掛かりましたけど……、でも ようやく終わりが見えてきましたよ」アハハ

ことり「一人でここまで進めるなんて凄いよ」

雪穂「いいえー。これも、ことりさんのご指導のおかげです」

ことり「ううん、頑張ったのは雪穂ちゃんだよ!編み物、ずいぶん上達したんじゃない?」

雪穂「はい。今では ようやく一人ででも進めれるようになりました」

ことり「凄い進歩だよ雪穂ちゃん♪ でも……、ならどうして今日も私の家で?」

雪穂「それはー、ことりさん家だとなんだか編み物がはかどるですよね。部屋で一人でやるより集中できるというか、なんというか……」

ことり「へぇ~(穂乃果ちゃんと同じようなこと言ってるよ……)クスクス

雪穂「あ!……だからって何度もおじゃましていい訳じゃないですよね」

ことり「そんな事ないよ♪」


ことり(……ちゃんと頼ってくれて、ことりは嬉しいんだよ♪)


ことり「そうだ! アップルパイ残りは全部雪穂ちゃんが食べていいよ」

雪穂「えっ、いいんですか?」

ことり「うん♪」

雪穂「いただきます、……うん! 美味しいです!」

ことり「ありがとう。今回は上手に出来たと思うんだ!」

雪穂「えっ! これ、ことりさんが作ったんですか!?」

ことり「そうだよ」

雪穂「………凄いな」

ことり「そんなことないよ~」

雪穂「そんなことありますよ!」

雪穂(……だってことりさん。可愛いし女の子っぽくて、μ's の衣装が作れてお菓子も作れて女子力高いし……)

雪穂「私……、ことりさんって絶対モテると思うんです」

ことり「……へっ?」

雪穂「…………」

ことり「ななな、いきなり何言ってるの!?///」


ことり「私がモテるなんて、そんなことないよー。それにモテるって言うなら海未ちゃんや絵里ちゃんがいるし、それに……」

ことり「μ's にはまだまだ可愛い子がいっぱいいるから、誰もことりには目もくれないと思うな」

雪穂「そんな事ないですよ! だってことりさんはμ's の衣装が作れるし、編み物やお菓子作りも得意だし……

雪穂「まさに理想的な女の子じゃないですか!」

ことり「ううぅ///」

雪穂「だから絶対モテると思います」

ことり「……そうかな?///」

雪穂「そうですよ!」

雪穂「……だって、ことりさんに比べたら私は編み物が下手だしお裁縫も出来ないし、料理もお菓子作りも得意な訳じゃない……」

雪穂「私には無い良いところが、ことりさんには沢山ある。だから私なんかより断然モテると思います」

ことり「…………」


ことり「………うーん、それは違うかな~」

雪穂「えっ?」

ことり「私は、雪穂ちゃんも十分モテると思うけどな~」

雪穂「そ、そんなこと無いですよ」

ことり「ううん。そんなことあるよ」

ことり「さっき雪穂ちゃんは、自分には無い良いところがことりにはあるって言ったけど……。同じように雪穂ちゃんにだって、ことりには無い良いところがいっぱいあるんだよ」

雪穂「……例えば?」

ことり「すっごく可愛い♪」

雪穂「んなっ!? ///」

ことり「」ニコニコ

雪穂「ちょっと茶化さないでくださいよ///」

ことり「ごめんごめん。でも他にもちゃんと良いところがいっぱいあるよ」


ことり「しっかりしてるところ、真面目なところ、友達思いなところ」

ことり「不器用で文句も多いけど、人を大事に思えるところ」

雪穂「……なんだか、聞いてるだけで恥ずかしいですね///」

ことり「そうだ!あと一番大切なところがあるよ」

雪穂「何ですか、それは?」

ことり「駆け引きが苦手なところ!」

雪穂「か、駆け引き?」

ことり「人付き合いでとか、恋愛で駆け引きとか、そういう事が出来ないところかな」

雪穂「ええっ、それって短所じゃないですか!?」

ことり「ううん立派な長所。……雪穂ちゃんの一番良いところだよ」

雪穂「そ、そうなのかな?」

ことり「うん♪」

雪穂(解せない!)

ことり「あ、雪穂ちゃん紅茶のおかわり淹れるね」

雪穂「あ! お願いします」


雪穂「それよりも、今日はすいませんでした」

ことり「え、何が?」

雪穂「今日は朝からことりさん家に行きますって言っておきながら寝坊しちゃって……。言い出したのは私の方なのに……」

ことり「気にしなくていいよ~。雪穂ちゃん編み物で疲れたみたいだし……

ことり「それに、ぐっすり眠れて疲れがとれたみたいだから、むしろ良かったんじゃないかな?」

雪穂「そうかもしれませんね」

ことり「それに私も、今日は休みで朝からゆっくりしてたから」

雪穂「……それは嘘ですね」

ことり「え、……どうして分かったの!?」

雪穂「いやいや。だって家に着いたらことりさん、アップルパイを焼いて待っていたし……」

ことり「…あっ」

雪穂「さすがに誰だって気付きますよ!」

ことり(・8・)

雪穂「そんな顔してごまかしても駄目ですよ」

ことり「ええ~」


ことり「ところで雪穂ちゃん? ちょっと早いけど今日の晩ご飯どうする?」

雪穂「あ、どうしましょう……」

ことり「雪穂ちゃん。晩ご飯食べた後も、また頑張るつもりだよね?」

雪穂「はい」

ことり「だったら一緒に外に食べに行こっか?」

雪穂「いいですね!」

ことり「あと帰りにコンビニにも寄ってもいい?」

雪穂「え? いいですけど……、何か買うんですか」

ことり「うん。最近コンビニスイーツにハマってるんだ~、特にチーズケーキ♪」

雪穂「は~。本当にチーズケーキが好きなんですね」

ことり「うん、雪穂ちゃんの分も買ってあげるね」

雪穂「え、やった♪ ありがとうございます!」


ことり「うんうん♪ じゃあ雪穂ちゃんの区切りが付いたら、食べに行こっか!」

雪穂「はい」

ことり「じゃあ私は、……それまで何してようかな」

雪穂「あ、ことりさんは自分の事をやってて大丈夫ですよ」

ことり「えっ、でも……」

雪穂「大丈夫ですよ。もう大分編み物にも慣れてきましたから、今なら一人ででも出来ますし……」

雪穂「だからことりさんは自分の事やってて大丈夫ですよ」

ことり「うん、分かった」

雪穂「…………」

ことり「…………」

雪穂「うわっ、ミスった!!」

ことり「あはは……」


――――――

――――――


ことり『雪穂ちゃん』

雪穂『ことりちゃん』



凛「にゃっ、なんで二人が一緒に?」



ことり『ふっ、今夜は寝かさないよ』

雪穂『はい、できる限り頑張ります』



凛「ちょっと、二人とも近くないかにゃあ!?」



ことり『雪穂……』

雪穂『ことり……』



凛「あああ、どんどん二人の顔が近づいていく……」



ことり・雪穂『』スッ ―



凛「駄目にゃあああ!!」


――――――



凛「ぁぁあああ!!」



凛「………へ?」



叫びながら凛は飛び起きた。


凛「………ゆ、夢?」


目が覚めた凛は自分の部屋にいた。どうやら、いつの間にか寝てたみたい。


良かった~
夢だと分かってホッと一安心。


凛「あれ?」


凛「………どうして凛は安心してるんだろう?」


そして、寝ぼけまなこを擦りながら、さっき見た夢の内容を振り返る。


さっきの夢……、二人は確実にあれだよね?

良く分からないけど、マンガとかテレビで何度も見たことがあるから、流石に凛でも察しがつくよ。

なんであんな夢見ちゃったんだろう……?


ゾクッ――


凛「――っ!?」

想像しただけで寒気が走った。


凛「………怖かった」


………え? 怖い?


どうして?
どうして凛は怖がっているんだろう……?


だってこの前の雪穂ちゃんとことりちゃんの事は、勘違いだという事で、もう凛の中で結論が出てるんだよ。なのに……

だとしたら凛はいったい何に怖がってるの?


凛「…………」


もう嫌だ、こんな気持ち……

もう何がなんだか意味が分からないにゃ!


今の凛は何も考えたくなくて、ベッドから勢い良く飛び出した。




凛「お母さーん、お母さんいないの?」


――シーン


……あ、そうだった。

お母さん、今日はいないんだった……


だから晩ご飯は自分で用意しなきゃいけないんだ……。


でも凛はさっきお昼寝から目覚めたばかりだし、今からご飯を作るなんて気力なんか無いし……


凛「晩ご飯は、コンビニでいいや……」

――――――


――コンビニ前――


雪穂「コンビニでの買い物はこれくらいでいいですね」

ことり「そうだね」

雪穂「じゃあ、またことりさん家に―――

ことり「あっ、そうだ! ごめん雪穂ちゃん。私、買い忘れたものがあったんだった」

雪穂「買い忘れたもの?」

ことり「大した物じゃないよ。ノートと消しゴムを買うだけ。買い物自体はすぐ終わるからここで待っててくれないかな」

雪穂「使い切っちゃったんですか?」

ことり「ううん、そういう訳ではないんだけど……、さんすうとこくごのノートが欲しくって!」

雪穂「さ…、算数と国語?」

ことり「違うよ、『さんすう』と『こくご』」

雪穂「?」

ことり「じゃあ、すぐ買ってくるからちょっと待ってて」

雪穂「分かりました」



雪穂「…………編み物、今日中に終わるかな……?」


編み物の作業自体は、もう最後の方に差し掛かっている。だから今日の内か、それか明日あたりで終わるかな?

けっきょく期限ギリギリの完成になっちゃったけど……、でも なんとか凛さんの誕生日に間に合いそう。


雪穂「凛さん、喜んでくれるかな」


凛さんに渡す時の事を想像して、つい笑みがこぼれた。


編み物が終わったらどこに行こうかな?

家でゆっくりお話をするってのもアリだし……、とにかく楽しみだな♪



「雪穂ちゃん!」



雪穂「あ、待ってましたよ、ことりさん…って、……え!?」

凛「…………」

雪穂「………凛さん?」

なるほど


雪穂「凛さん!」

凛「…………」

雪穂「偶然ですね、凛さんもお買い物ですか?」

凛「…………」

雪穂「………凛さん?」

凛「雪穂ちゃんこそ……」

雪穂「?」

凛「雪穂ちゃんこそ、こんなところで何してるの?」

雪穂「ああ、それは買い物というかなんというか……、あはは」

凛「…………」

雪穂「あの~、凛さん 機嫌悪い?」

凛「」イラッ

雪穂「あの…、凛さん……」

凛「どうしてそう思うの」

雪穂「えっ?」

凛「凛が機嫌を悪くするような事でもしたの?」

雪穂「え、どういう意味……
 
凛「凛に隠してる事があるんじゃないの?」

雪穂「へ!?」ギクッ


凛「凛、全部知ってるんだよ。雪穂ちゃん、最近ずっと ことりちゃんと一緒にいるよね」

雪穂「え!? どうしてそれを……」

凛「否定しないんだね」

雪穂「…あっ」

凛「それだけじゃないよね?」

凛「ことりちゃんと一緒にいるのは今日だけじゃないよね? 凛、ちゃんと知ってるんだよ?」

雪穂「あっ、え……」

凛「それに雪穂ちゃん。前、凛に亜里沙ちゃんと一緒って言っておきながら、ことりちゃんと会ってたよね?」

雪穂「…………」

凛「まだ凛に秘密にしてる事があるんじゃないの? ねえ……? 何か言ってよ雪穂ちゃん!」

雪穂「それは……」

凛「ねえなんで凛にウソ付くの? なんで凛に秘密にするの? なんでことりちゃんといつも一緒なの!?」

雪穂「え…えっと……」

凛「答えてよ雪穂ちゃん、ねぇなんで?なんで!?なんで!?なんで!?」

雪穂「うう……」


そ、そんなの答えられる訳ないじゃん。凛さんの為にプレゼントを作ってますだなんて――…


でも、とりあえず何か話さないとマズいよね。だけど、ありのままに全部話す訳にもいかないし……

どうしよう……、どう説明したらいいんだろう……


だけど凛さん、全部知ってるって言ってたよね……?


まさか、お姉ちゃんが喋ちゃった?
それとも他の誰かが話した?

そういえば真姫さんと花陽さんは事情を知ってるとか言ってような……、でもサプライズのことをバラすようなことはないと思うし……


凛「雪穂ちゃん!!」

雪穂「――っ!」ビクッ


どうしよう……
凛さんがどこまで知ってるのか分からないよ


雪穂「凛さんには……」

凛「?」

雪穂「凛さんには…関係ない……じゃないですか」

凛「………え?」


雪穂「………あ」

凛「…………」

雪穂「り、凛さん……」

凛「そうだよね」

雪穂「ち、違……」

凛「雪穂ちゃんが誰と一緒にいようが、凛には関係ないよね」

雪穂「違います!そういう意味で言った訳じゃ……

凛「何が違うって言うの!?」

雪穂「ひっ」

凛「凛はね、本当に雪穂ちゃんのことを心配してたんだよ!」

凛「最近の雪穂ちゃんは様子が変で………

凛「話し掛けても、すぐどこかに行っちゃうし、それに連絡しても全然返ってこないし……」

凛「だから、また前みたいに何かに悩んで、一人で溜め込んでるんじゃないかって思って心配になって……

凛「相談にのりたいと思って声を掛けも何も話してくれないし、心配で……」

凛「本当に心配で心配で、凛はずっと雪穂ちゃんのことを気がかりに思ってたのに……!」


凛「でもそんな凛の気持ちも、雪穂ちゃんにとってはどうでもいい事なんだね。凛には関係のないことなんだね」

雪穂「違うんです!そういうつもりで言った訳じゃ……お願いですから話を聞いて―――

凛「言い訳なんか聞きたくない!!」

雪穂「ひっ」ビクッ

凛「凛の気持ちも知らないで……、雪穂ちゃんのバカ! もう知らない!!」ダッ

雪穂「あぁ!凛さん待って!!」

凛「うるさい!話し掛けないで!」

雪穂「待ってよ凛さん!」




雪穂「凛さん 凛さん!!」


――――――


街中を全速力で駆け抜けていく。

最近の凛は走ってばっかりだ。


凛「っ、うう……」

走りながら、涙が出そうになるのを必死にこらえる。


バカ、バカ、バカ――

凛の気持ちも知らないで……。


凛はただ、雪穂ちゃんと一緒に居たかっただけなのに……


凛「雪穂ちゃんのバカっ!」


ズキッ――

凛「――っ!」

ズキズキ――


あぁ、またこの痛みだ

また胸が痛い。

チクチクなんて軽いものじゃない。
締めつけられてるみたいに痛くて、ツラい……


凛には耐えられない。


もう嫌だ……

もう嫌だよ、こんな気持ち――!


痛い、辛い、めんどくさい

もう、うんざりだ!


こんなに辛いんなら、こんなに苦しいのなら……


凛「好きになるんじゃなかった」


ズキッ――

あぁ、まただ。
……また胸がズキズキと痛い

もう駄目だ。もう限界だ。

もうこれ以上、凛にどうしろっていうの!?


ズキズキ――

行き場のない感情が胸を締め付ける。


もう凛には耐えられないよ


凛「雪穂ちゃんの、バカ……」

――――――

はよ


雪穂「凛さん……」


凛さんがいなくなって、一人その場に残された私はそう呟くことしかできなかった。


フラッ――

雪穂「……っ!?」


一気に足の力が抜けるのが分かった。そのまま私はその場に座り込んだ。

痛い……、心が痛い。

足に力が入らない。好きな人に本気で嫌われる事が、こんなにも精神的にくるモノだなんて知らなかった。


どうしていいのか分からず、一人うなだれる。

横を通り過ぎていく人たちが、横目に私をチラチラ見つめてくるのが分かる。……周囲の人の視線が痛い。


ことり「雪穂ちゃん」

雪穂「…………」

ことり「ごめんね、出ていくタイミングがなかなか見つからなくて……」

雪穂「…………」


ことりさんがバツが悪いって様子で話し掛けてきた。この様子だと何が起きたのか全部知っているのだろう……

私は顔を合わせたくなくて、視線を下に向けまま、ずっとうつむいて、沈黙を決め込んだ。


ことり「その……、ごめんね」

雪穂「なんでことりさんが謝るんですか……」

ことり「でも……」

雪穂「ことりさんは何も悪くないですよ。悪いのは……」


私だ。

凛さんじゃない……


私が凛さんに隠し事をして、ホントの事を言わず、適当に はぐらかそうとしたから。

凛さんの気持ちを考えようとしなかったから。


だから悪いのは私だって分かってる、けど……

けど、それにしたって あんなに一方的に言いたい放題言わなくてもいいじゃん


雪穂「凛さんのバカ……」


バカ、バカ、バカ、バカ――、


凛さんのバカ……


だって私は……、私はただ……


雪穂「凛さんの為に一生懸命だっただけなのに」

ことり「…………」


なのに凛さんったら、自分一人だけ言いたい事を言うだけ言って、どっかに行っちゃうんだもん

………少しは私の話を聞けっての!


私の気持ちも知らないで……


雪穂「凛さんのバカっ……」


精一杯の強がりで、またそんな言葉を捻り出す。


ことり「雪穂ちゃん……、大丈夫?」


ことりさんが私の背中にそっと手を当ててくれた。そして そのまま手を上下に動かして私の背中をさすってくれた。

背中に感じるぬくもりで、ことりさんが私を慰めようとしてくれているのが分かる。分かるけど……

今の私には、その優しさが辛い。

それでも、ことりさんは構わず背中をさすってくる。


正直、止めてほしい

だって今、優しくされたら……


涙が、こぼれる―――


希「お二人さん!」

雪穂「あっ……」

ことり「希ちゃん?」


雪穂「……希……さん?」

希「…………」

ことり「どうしてここに?」

希「いやぁ、別に大した用じゃないんよ。ただ、夜のお散歩 兼 コンビニにお買い物ってところ」

希「で、そしたら凛ちゃんの大きな声が聞こえてな? その声がする方に来てみたら、二人がいたってところ」 

ことり「そうなんだ……」

希「それで? 二人はこんなところで何をしてるん?……て、なんとなく状況は察しがついてるけど」

雪穂「…………」

希「とりあえず場所を変えよっか。コンビニの前で座り込んでたら他の人の目に付くやろ?」

ことり「そうだね」

希「雪穂ちゃん立てる?」

雪穂「あ…、すいません、希さん……」

希「謝らなくていいよ。こんな時まで気を遣おうとしなくていいから」

雪穂「………ありがとうございます」

――――――


希「雪穂ちゃん、はい。コーヒーで良かった?」

雪穂「ありがとうございます」

希「うーん、美味しい」

雪穂「そうですね」

希「…………」

雪穂「………希さん。何があったのか聞かないんですか?」

希「あれぇ? もしかして雪穂ちゃんは、傷口をえぐって欲しいのかなぁ?」

雪穂「い、いえ……!」

希「なかなかのドMさんやね」

雪穂「もうっ、やっぱいいです!」

希「ふふっ」

雪穂「…………」

希「…………」

雪穂「凛さんが……」

希「うん」


雪穂「凛さんがヒドいんですよ! 私のことをバカって……」

希「…………」

雪穂「確かに、悪かったのは私だってことは分かってる……、分かってるんです」

雪穂「でも、少しくらい私の話を聞いてくれたっていいと思いませんか?」

雪穂「なのに凛さんは、自分だけ言いたい放題言って……」

雪穂「一方的に喋って、一人で話に蹴りをつけて、勝手にいなくなっちゃって……」

雪穂「ほんと、まったく凛さんには困ったものですね」

希「………本心でそう思ってる?」

雪穂「…………」

希「…………」

雪穂「っ…ううっ……」ボロボロ

希「雪穂ちゃん、泣かないで……」

雪穂「うっ………」


雪穂「希さん……」

希「うん」

雪穂「………私は間違えてたのかな?」

希「…………」

雪穂「凛さんの為にマフラーを作ろうと思った事も、今まで頑張ってきた事も、全部間違いだったのかな?」

希「ううん、そんな事ない。雪穂ちゃんは凛ちゃんの為に頑張りたいと思ったんやろ?」

希「雪穂ちゃんは凛ちゃんの為に一生懸命だった。……だから、ぜんぜん間違ってなんかない」

雪穂「だったら……」

希「でも雪穂ちゃんはそれに夢中になり過ぎて、凛ちゃんのことをほったらかしにしてしまった」

希「間違いではなかったけど、間違えてしまったんや」

雪穂「なにそれ……、難しいよ」

希「うん、難しいよな」

希「だからこそ、自分が何のために頑張っているのか見失わないようにしないといけない」

希「自分にとって一番大事なものが何か、見失わないようにしないといけないんよ」

雪穂「…………」


希「ねぇ、雪穂ちゃんが頑張るのはなんで?」

雪穂「それは……、凛さんの為です」

希「そうやな。一番大事なのは凛ちゃんやな。……だったら今、雪穂ちゃんがやるべきことは何やろう?」

雪穂「私は………。私は凛さんと仲直りがしたい。凛さんとちゃんと話がしたい」

雪穂「会って、ちゃんと向き合いたい」

希「うん」

雪穂「凛さんを追いかけなきゃ!」

希「うんうん」

雪穂「あ、でも……! 凛さんがどこにいるのか分からない」

ことり「それなら大丈夫だよ」

雪穂「えっ、ことりさん?」

ことり「これ見て」

雪穂「ケータイの……、LINE?」

希「凛ちゃんの誕生日用に作ったLINEグループやん」

ことり「うん、これでみんなに凛ちゃんがどこにいるか聞いたの。そしたらね……」

ことり「さっき真姫ちゃんから返信があって、凛ちゃんは今 真姫ちゃんの家にいるって」

雪穂「真姫さんの家に……」

ことり「ホントは凛ちゃんに連絡したんだけどね、返ってこないから こっちで連絡してみたの。そしたら案の定 真姫ちゃんから、ね……」

希「当初は凛ちゃんのサプライズパーティーを計画する用に作ったグループなんやけど……、思わぬ形で役に立ったな」

雪穂「そっか真姫さん家に……そっか……、よし……!」

雪穂「私、ちょっと行ってきます!」


希「えっ? そ、そう……」

ことり「真姫ちゃんの家は分かる?」

雪穂「大丈夫です! 私、なんとか凛さんと話が出来るよう頑張ってみます!」

ことり「そっか!」

雪穂「あ!……あの…、ことりさん……」

ことり「ん?」

雪穂「ごめんなさい。この後のこと……私の方からことりさん家にお邪魔したいって言ってたのに……」

ことり「あ、私の方は大丈夫! 雪穂ちゃんの都合に合わせるつもりだったから、気にしないで行ってきていいよ」

雪穂「すいません、ことりさん……。希さんも!ありがとうございます!」

希「気にしなくていいよ」

雪穂「本当にありがとうございます。じゃあ私、凛さんのとこに行ってきます!」ダッ

希「…………」

ことり「…………」

希「行ってしもたな……」

ことり「うん」

希「なんていうか……、切り替えが早いというか あっという間というか、雪穂ちゃんは行動力があるな~」

ことり「うん♪ なんと言っても穂乃果ちゃんの妹さんだからね」

希「あぁ…なるほど。姉妹は似るってことか」クスクス

ことり「そうだね」クスッ

――――――


――真姫の家――


凛「ごめんね真姫ちゃん、こんな夜遅くに突然押しかけちゃって」

真姫「別に構わないわ。凛こそ こんな時間に一体どうしたのよ?」

凛「…………」

真姫「まあ、私も晩ご飯を食べ終えてちょうどヒマしてたところだから、構わないのだけれど……」

凛「…………」

真姫「何かあったんでしょ? 話してみなさいよ」

凛「………うん」

真姫「…………」

凛「凛ね……、雪穂ちゃんに酷いこと言っちゃった。雪穂ちゃんに向かってバカって……」

真姫「…………」

凛「それに雪穂ちゃんは何か言おうとしてたのに、凛はそれを振り切って、怒鳴りつけて……」

凛「雪穂ちゃん……凛の名前をずっと呼んでた。何度も何度も凛の名前を……、なのに凛はそれを無視して……」

真姫「そう……」

凛「どうしよう、凛は取り返しのつかないことしちゃった」

凛「凛は雪穂ちゃんに酷いこと言っちゃった。雪穂ちゃんを傷つけちゃった」


凛「ごめんね。こんな話を真姫ちゃんにするなんて……、いきなりこんな話をされても真姫ちゃん迷惑だよね……」

真姫「迷惑だなんて、そんなこと思ってないわよ!」

凛「でも……」

真姫「私のことはいいから……。そんな事より、言いたい事があるなら全部吐き出しちゃいなさい。……我慢して溜め込んでると体に良くないわよ?」

凛「うん、ありがとう」

真姫「いいのよ、……友達なんだから」

凛「ありがと……」

凛「…………でもでもっ、ホントにホントにどうしよう!?」

凛「雪穂ちゃん、きっと怒ってる。きっと凛にムカついてる。たぶん凛のことを許してくれない」

凛「凛たち、もうおしまいなのかな……?」

凛「どうしよう真姫ちゃん……!?」

真姫「そんなの私に聞かれても分からないわよ」

凛「そうだよね……」

凛「あぁ、どうしようどうしよう!? 凛はこんな終わり方ぜったい嫌だよ」

 
真姫「凛!」

凛「にゃ!?」

真姫「それを決めるのは私じゃないわ」

凛「……うん」

真姫「ましてや凛一人で決めることでもない。凛と雪穂ちゃん、二人で決めることよ」

凛「…………」

真姫「そもそも そんな話をする前にあなた達、ちゃんと二人で話をしたの? ちゃんと雪穂ちゃんと向き合った?」

凛「それは………してない」

真姫「やっぱりね」

凛「だって、雪穂ちゃんは凛に隠し事してるみたいだし、聞いても何も言ってくれないし……」

凛「それに何より、凛はもう傷つきたくないよ」

真姫「凛……」

凛「…………」


真姫「凛も、もう分かってるんでしょ?」

真姫「凛が傷ついてしまったのは、雪穂ちゃんに相手にされなくなったからじゃない」

真姫「ましてや凛が、傷つくのを怖がってるからでも無い」

真姫「凛自身が、雪穂ちゃんにヒドいことをしてしまったと思っているから……。雪穂ちゃんを傷つけてしまったと思っているからじゃないの?」

凛「…………」

真姫「ヒドいことをして、自分の気持ちに嘘付いて、本心に蓋をして……。なのに雪穂ちゃんに八つ当たりして、そして雪穂ちゃんを傷つけて……」

真姫「そして何より、雪穂ちゃんのことを信じきれなかった、そんな自分自身が許せない。雪穂ちゃんに八つ当たりすることしか出来なかった、そんな自分が許せない。……違う?」

凛「…………」

真姫「一度、2人でゆっくり話しみなさいよ」

凛「…………でも怖いよ。きっと凛はまた雪穂ちゃんにヒドいことしちゃう」

真姫「そうだとしても、一人で抱え込んでいても何も変わらないわよ」

凛「それでも……っ!」


――ピンポーン


凛「…………」

真姫「…………」

凛「真姫ちゃんチャイム鳴ってるよ?」

真姫「…………」


――ピンポーン


真姫「凛が出てくれないかしら」

凛「ええー、なんで凛が?」

真姫「別にいいでしょう」

凛「いいけど……、変な真姫ちゃん」

真姫「…………」

凛「はーい」


ガチャ――


雪穂「凛さん!」 

凛「!」

雪穂「はぁ…はぁ……」

凛「え!?……雪穂…ちゃん?」


どうして雪穂ちゃんがここに? どうして真姫ちゃん家に!?

………まさか真姫ちゃん、図ったにゃあ!?


雪穂「凛さん!話を聞いてください」

凛「い、嫌だ」フイッ


嫌だ、
聞きたくない……


だから凛は雪穂ちゃんからそっぽを向いた。

だって、今は雪穂ちゃんと話したくないから……


雪穂「お願いします!」

凛「……帰ってよ」

雪穂「凛さん!」

凛「聞きたくない!!」


聞きたくないよ!


だって凛は……

凛はもう傷付きたくないよ


真姫「ちょっと!」

凛「っ!? 真姫ちゃん……」

真姫「人の家の玄関で騒がないでくれる?」

雪穂「す、すみません」

凛「元はといえば、真姫ちゃんが焚き付けたようなもんだにゃ」

真姫「なんですって?」

凛「い、いや……」

真姫「丁度いい機会だから、二人で話してきなさいよ」

凛「でもっ!」

真姫「辛いんでしょう? 苦しいんでしょう?」

真姫「でもここで逃げたら、もっと苦しくなるだけよ」

凛「…………」

雪穂「少しだけでいいんです、お願いします!」

真姫「凛……」

凛「………分かったよ」

――――――


――公園――


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「あの…、凛さん……」

凛「先に言っておくけど、言い訳なんか聞きたくないから」

雪穂「分かってます」

凛「…………」

雪穂「凛さん……」

凛「…………」

雪穂「ごめんなさい!!」

凛「…………えっ?」

雪穂「言い訳なんかするつもりはありません!」

雪穂「私は凛さんにヒドいことしちゃったから……、凛さんの気持ちを考えようとしなかったから……」

雪穂「だから悪いのは私の方なんです! いまさら言い訳するつもりなんかありません!」

雪穂「ごめんなさい!!」

凛「!?」



なんで!?
なんでなんでなんで!?

どうして雪穂ちゃんが謝ってるの!?


凛「…………」


謝るのは凛の方なのに……


雪穂「凛さん……」


あぁ……、
雪穂ちゃんが凛のことをまっすぐ見つめている。

すごく真剣な目をしてる。


凛「………あっ」


雪穂ちゃん、目がすごく腫れてる……。

すごく泣き腫らしたような目をしてる。


………きっと、いっぱい泣いたんだろうな……


この距離で向かい合って、ようやく凛はそのことに気付いた。


……ぜんぜん気付かなかった。

今の今まで、雪穂ちゃんが泣き腫らしてる事に全く気が付かなかった。


どうして?
どうして気付けなかった?


それは凛が雪穂ちゃんのことを見ようとしてなかったから


ずっと雪穂ちゃんと目を合わせようとしなかったから……


雪穂ちゃんも凛と同じように傷ついてた。なのに、凛はそんな現実から目を背けていた。それなのに……



凛「う…ううっ……」ボロボロ

雪穂「り、……凛さん!?」

凛「ううっ……うわあああ」


凛「うっ…うわああん」

雪穂「凛さん、どうしたんですか? なんで泣いてるんですか!?」

凛「だって……うえぇん…っ」グスッ

凛「だって凛は雪穂ちゃんを傷つけちゃったから、取り返しのつかない事をしちゃったから………だからっ……」

雪穂「り、凛さん!」

凛「………だから……、だからね……」

雪穂「…………」


ギュッ――


凛「………え?」

雪穂「」ギュー

凛「どうして雪穂ちゃんは凛を抱きしめてるの?」

雪穂「凛さん、泣かないでください……」

雪穂「凛さんは前に私が泣いちゃった時、慰めるためにこうして抱きしめてくれましてよね」

凛「っ、うぅ……」

雪穂「だから次は私の番です」

雪穂「凛さんが辛いのなら今度は私が凛さんをギューッて抱きしめます」

雪穂「だから泣かないでください」


凛「ど、どうして? どうして雪穂ちゃんは凛に優しくするの!?」

雪穂「…………」

凛「だって凛は雪穂ちゃんにヒドいことしちゃったんだよ? 雪穂ちゃんにヒドいこと言って傷つけちゃったんだよ!?」

凛「なのに、どうして……」

雪穂「それでも……」

雪穂「それでも凛さんのことが好きだから」

凛「っ!」

雪穂「だから凛さんが泣いてるのに優しくしないなんて出来ません!」

凛「だって、だって……」

凛「凛は雪穂ちゃんのことを傷つけて、その上 自分のことばっかりで……」

凛「………凛はこんなんなのに、それでも雪穂ちゃんは凛のことを好きでいてくれるの? どうして………

雪穂「」ギュー

凛「だって……、ごめん、ごめんね雪穂ちゃん!」

雪穂「…………」

凛「っ……ごめんね」

雪穂「っ、……ううっ」ボロボロ

凛「うぅっ……、うわああん!」

雪穂「うっ……うわぁぁあん!」

凛「ううぅ…、ごめんね雪穂ちゃん」

雪穂「グス……っ、私の方こそ、ごめんなさい」


――――――
――――


凛「……それで?」

雪穂「?」グスッ

凛「それで雪穂ちゃんはことりちゃんと何をしてたの?」

雪穂「え!? ええっと、それは……」

凛「むうっ……、雪穂ちゃん?」

雪穂「分かってます……。もう途中で凛さんから目を逸らしたりしません」ジッ

凛「にゃ…///」カアア

雪穂「照れないでくださいよ」

凛「ご…ごめん……」

雪穂「別にやましい事は何もしてないんです。それは本当です。ごまかすつもりはありません」

雪穂「ただ、やっぱりまだ凛さんには秘密と言うか」

凛「………やっぱり凛には言えないの?」

雪穂「いえっ、そんなつもりはないんですけど……」

凛「?」


雪穂「ただ私には今、頑張りたい事があって……、大切な人の為に一生懸命になれる事があって……」

雪穂「今は、その事に全力で打ち込みたいんです」

凛「………そうなんだ……」

雪穂「でも私一人じゃ なんにも出来なくて、誰かに頼ることしか出来なくて……」

雪穂「だからことりさんに手伝ってもらってたんです」

凛「それで一緒にいたんだね」

雪穂「はい」

凛「じゃあ亜里沙ちゃんと一緒って言ってたのは?」

雪穂「そ、それは……」

凛「?」

雪穂「ことりさんと一緒だって言ったら、凛さんは絶対に付いてくると思ったからです」

凛「……にゃあ?」


雪穂「けれどいい言い訳が見つからなくて……、別に嘘を付くつもりはなかったんです」

雪穂「でも、ことりさん家にいるって言ってそれで凛さんが来たら、それどころじゃなくなるからと言うか……」

凛「でも! そこは正直に言ってくれても良かったのに~」

雪穂「だって、ことりさんと一緒だって言ったら、凛さん絶対に付いて来るでしょう?」

凛「えぇ~、そんな事は」

雪穂「ないんですか?」

凛「………あるかもにゃ」

雪穂「でしょう?μ's の人たちはみんな仲が良過ぎるんです」

凛「うぅ、否定できないにゃ」

雪穂「でも……、だからといって凛さんに嘘を付いていい訳じゃないですよね……。ごめんなさい!」

凛「……もうっ!雪穂ちゃん!?」

雪穂「はい!?」

凛「雪穂ちゃん、さっきから謝ってばっかり!」

雪穂「ごめんなさい、……あっ!」

凛「凛はもう怒ってないから謝らなくていいよ。それに謝るなら、頭ごなしに怒鳴っちゃった凛の方だよ?」

雪穂「そんなことない!元はといえば私が凛さんをほったらかしにして、凛さんの気持ちを考えなかったから……だから……」

凛「それを言うなら自分のことしか考えてなかった凛こそ、ごめんなさい」

雪穂「………おあいこ、ですね……」

凛「うん……。おあいこ、にゃ……」


凛「でも、そっかぁ~。雪穂ちゃんはその大切な人の為に頑張ってたんだね」

雪穂「はい」

凛「だったら凛は応援しないといけないね」

雪穂「凛さん!」パアア

凛「でも~」ズイッ

雪穂「わっ! 近っ///」

凛「そういう事は、ちゃんと言ってほしかったな」

雪穂「ごめんなさい」

凛「…………」

雪穂「でも約束します。それが全部終わったらちゃんと会いにいきます。ちゃんと凛さんに会いにいきます、だから……」

雪穂「だから凛さんにはそれまで待っていてほしいんです」

凛「………そっか……」

雪穂「…………」

凛「分かった!じゃあその時がくるまで気長に待ってるにゃ」

雪穂「お願いします」

凛「約束だよ」

雪穂「はい!」


凛「あーあ、それにしても凛はダメだなー」

雪穂「……えっ?」

凛「だって凛の方が先輩なんだから、もっとしっかりしないといけないなーって思ってさ……」

凛「そしたら雪穂ちゃんに変に気を遣わせなくて済むでしょ」

雪穂「そ、そんなことないですよ! ちゃんと対等に接してくれてるんだなって思えて、私は嬉しいです」

凛「そっか……///」

雪穂「///」

凛「でも……、それでも凛は頑張るからね!」

雪穂「話聞いてないし、……まったく凛さんったら///」

凛「………ねぇ、雪穂ちゃん」

雪穂「なんですか?」

凛「凛はね…、いっつもこんな調子で、また雪穂ちゃんを傷つけちゃうかもしれない」

凛「また雪穂ちゃんに、つらく当たっちゃうかもしれない」

雪穂「…………」

凛「それでもね、こんな凛だけど好きでいてくれる?」

雪穂「そんなの当たり前です!……ていうか、私の方からお願いしたいくらいです!」

凛「……そっか……、そっか そっか!」

凛「えへへっ、嬉しいにゃ♪」

更新多くてうれしい


――ぐうぅぅぅう


凛「にゃっ!?」

雪穂「………す、すごいお腹の音ですね」

凛「なんだか安心したらお腹すいちゃったにゃ」

雪穂「もう凛さんったら、……お姉ちゃんみたい」

凛「あはは…/// そういえば凛、晩ご飯まだ食べてないんだった!」

雪穂「はぁ、今までいったい何やってたんですか……」

凛「だってぇ!ずっと雪穂ちゃんのことで頭がいっぱいで、それどころじゃなかったんだもん!」

雪穂「まったく……しょうがないですね~。じゃあ一緒にごはんでも食べに行きましょうか」

凛「えっ、いいの?」

雪穂「はい」

凛「やったー!じゃあどうしよう、どこに食べに行こう?」

雪穂「うーん、そうですね……」

凛「そうだ!じゃあラーメンにしない? 前から雪穂ちゃんに教えてあげたかったラーメン屋があるの!」

雪穂「うーん、いいですけど……、そこはまた今度にしませんか? そのラーメン屋は もっと ちゃんとした時に行きたいです」

凛「?」

雪穂「ほ、ほらっ!もう夜も遅いし……」

凛「あ、そっか!営業時間ギリギリだとゆっくり出来ないもんね!」

雪穂「ま…まぁ、そんなところです!」


雪穂「じゃ、じゃあ今回はひとまずファミレスにしておきませんか?」

凛「ファミレスか~、それでもいいにゃ」

雪穂「決まりですね」

凛「うん、ファミレスで決まり!」

雪穂「はい!」

凛「じゃあ雪穂ちゃん、………んっ」

雪穂「なんですか凛さん? 手なんか差し出して……?」

凛「手、繋ご?」

雪穂「え……えぇ!? は、恥ずかしいですよ~」

凛「えぇ~、さっき凛のこと抱きしめておいて恥ずかしいだなんて、今さらだにゃ」

雪穂「……ううっ」

凛「………駄目?」

雪穂「っ……じゃあ、………はい ///」ギュッ

凛「にゃあ…、ありがと///」ギュッ

雪穂「うぅ……/// そ、そんなことより早く行きますよ!」

凛「そうだね、あはは」


凛「あ~ 楽しみだにゃ~、ファミレスで何を食べよっかなぁ♪」

凛「ハンバーグもいいし、がっつりステーキでもいいし、どれも捨てがたいにゃ! 雪穂ちゃんは何食べる?」

雪穂「それは、お店に着いてからでもいいじゃないですか? いくらなんでも気が早いです!」

凛「だって凛は腹ぺこなんだもん! よし、そうと決まれば早く行こ!」

雪穂「わっ、凛さん!? いきなり引っ張らないでくださいよ、早いです!」

凛「だって凛はホントにお腹がすいたんだにゃあ!」

雪穂「だからって、そんなに急がなくても……!」

凛「だってだって、久しぶりに雪穂ちゃんと一緒なんだよ♪ 雪穂ちゃんと一緒で、それに ご飯も食べられる。まさに幸せ倍増!楽しみだにゃ!」

雪穂「もう、凛さんったら~」

凛「~~~♪」

雪穂「…………入るかな」ボソッ

凛「えっ、何か言った?」

雪穂「いえ、こっちの話です!」

凛「ふーん、変な雪穂ちゃん」

雪穂「私のことはいいじゃないですか。それより早く行きましょうよ!」

凛「えへへ、そうだね♪ じゃあ行っくにゃー!!」

雪穂「わっ、だから凛さん早いっ!早いですよぉ~」

凛「あはは、だって凛は今すっごく幸せなんだもん♪」

雪穂「まったく、凛さんったら~、……ホントにしょうがないですね」

凛「えへへっ♪」

――――――


――――――
――――


真姫「…………まったく……」


真姫「二人が心配で様子を見に来たけれど……、心配するだけ無駄だったみたいね」

真姫「これじゃ物陰に隠れて様子を探ってた私が馬鹿みたいじゃない!」


真姫「はぁ…、それにしても凛ったら―――



『私には今、頑張りたい事があって……、大切な人の為に一生懸命になれる事があって……』

『今は、その事に全力で打ち込みたいんです』



真姫「なんで、あそこまで言われて気が付かないのよ、凛は!?……ほんと鈍いというか、純粋というか……」

希「そこが凛ちゃんの良いところでもある」

真姫「きゃあああ!……の、希!?」

希「静かにしないと二人に気づかれるで?」

真姫「誰のせいよ!……って、なんで希がここに居るのよ!?」

希「細かいことは気にしない」

真姫「気にするわよ!!」

希「心配なのは真姫ちゃんだけじゃないってことや」

真姫「あっ、そう……」

希「…………」

真姫「…………」

希「ねえ真姫ちゃん」

真姫「なによ?」

希「二人のこと……。もうウチらが心配しなくても大丈夫みたいやね」

真姫「……そうね」

――――――


夏休み中には終わらせたいです


――数日後


――ことりの家――


………そして、雪穂ちゃんと凛ちゃんが仲直りしてから、また数日が経ちました。


雪穂ちゃんはいつものように私の家に来ては、毎日編み物を頑張っています。

相変わらず雪穂ちゃんの編み物は危なっかしくて、見てて心配になるけど……

だけど凛ちゃんと仲直りして、何かが吹っ切れたみたいであっという間に仕上げていって


そしてついに―――


雪穂「で・で・で……」

ことり「」ゴクリ

雪穂「できたー!!」

ことり「やったね雪穂ちゃん、おめでとう♪」


雪穂「ありがとうございます!ことりさんのおかげですよ」

ことり「雪穂ちゃん頑張ってたもんね」

雪穂「いや~、でもまさかマフラーの完成が誕生日の前日になるとは……」

ことり「ふふっ、お疲れ様」

雪穂「………ことりさん……、本当にありがとうございます。ことりさんがいなかったら私……」

ことり「私はほとんど何もしてないよ。頑張ったのは雪穂ちゃんだよ」
 
雪穂「それでも、ありがとうございます」

ことり「また雪穂ちゃんったら、もう……」

ことり(自分自身の頑張りだっていうのに、……本当にブレないというか何というか……)

雪穂「凛さん……」ギュ

ことり「ん?………雪穂ちゃん?」 

雪穂「凛さん、喜んでくれるかな」

ことり「……っ!」ドキッ


ことり(わぁ……! 雪穂ちゃん、すっごく乙女っぽい)


ことり(すごく優しい目……)

ことり(こんな目をする女の子だったなんて……)

ことり(………今の雪穂ちゃん、とっても綺麗)


雪穂ちゃんを見てたら『恋は人を綺麗にする』なんて、そんな言葉が頭の中をよぎった。

小さい頃からテレビか何かで、似た言葉を何度も耳にしては聞き流してたけれど。なるほど……

ようやくその言葉の意味を理解して、目の前の光景に目を奪われる。

そして、思わず息をのむ。


だって好きな人のことを考えてる雪穂ちゃんの姿は、とっても綺麗だから……


雪穂「凛さん……」

ことり「 ――っ!」


その姿に吸い込まれちゃいそうで、慌てて雪穂ちゃんから目を逸らす。


危ない、危ない


駄目だと、自分にそう言い聞かせる。


ただ、凛ちゃんが雪穂ちゃんを好きになった理由――…

それがようやく分かった気がするな……


ことり「……っ、そ…、そんなことより雪穂ちゃん!」ドキドキ


ことり「そんなにマフラーをギュッてしてたら、つぶれちゃうよ?」

雪穂「あっ、そうですね」パッ

ことり「ふぅ……」

ことり「大丈夫!雪穂ちゃん頑張ったんだもん。凛ちゃんはきっと喜んでくれるよ」

雪穂「凛さんですもんね」

ことり「うん、凛ちゃんだもん」

雪穂「あはは」

ことり「ふふふ、……それで? 凛ちゃんには、どうやって渡すの?」

雪穂「………へ?」

ことり「え!?」

雪穂「…………」

ことり「だって誕生日は明日だよ。明日は凛ちゃんにとって特別な1日になるんだよ」

ことり「どうやってマフラーを渡すかって問題もあるし、明日1日、凛ちゃんとどう過ごすかってことも……」

雪穂「…………」

ことり「もしかして明日の予定、何も考えてないの?」

雪穂「か……、完全に忘れてた!」

ことり「もう、雪穂ちゃんったら……」

雪穂「だって編み物で精一杯だったから」

ことり「しょうがないな~、……でも、多分そうだろうと思ってた」

雪穂「お恥ずかしいです」


ことり「だからね、実はことりには考えがあります」

雪穂「考え?」

ことり「うん、前からμ's のみんなと話しててね……」

ことり「明日学校が終わったら、凛ちゃん家で誕生日パーティーをしようって計画を立てててね……。凛ちゃんには内緒で準備して、驚かそうと思ってるの」

雪穂「サプライズパーティーってやつですね!」

ことり「そうなの。でもそれには問題があって……」

雪穂「準備してる間に凛さんが帰ってくると、まずいですね」

ことり「その通り。だから凛ちゃんがすぐに帰ってこないように誰かに足止めしてもらわないといけないの」

雪穂「そうですよね」

ことり「……で、ここからが本題なんだけど」

ことり「私達がパーティーの準備を終えるまでの間、雪穂ちゃんにはその役を引き受けてほしいの」

ことり「雪穂ちゃんに凛ちゃんの相手をしててほしいの」

雪穂「私がですか!?」

ことり「準備が終わったらこっちから連絡するから、お願ぁい!」

雪穂「分かりました!」


雪穂「でも、私なんかでいいんですか?」

ことり「……と、言うと?」

雪穂「凛さんの相手役なら、他の誰かでもいいと思うんですけど……」

ことり「ええ~、雪穂ちゃんが一番適任だと思うんだけどな~」

雪穂「だとしても、やっぱりμ's の皆さんの輪の中に入るのは……」

ことり「居づらい?」

雪穂「そういう訳じゃないんですけど、私ひとりだけじゃ……心細いというか何というか……」

ことり「じゃ、亜里沙ちゃんも誘っちゃおう!」

雪穂「え、亜里沙も!?」

ことり「うん!亜里沙ちゃんも誘って、みんなで一緒に凛ちゃんをお祝いしちゃおう!」

ことり「それに大勢で賑やかな方が凛ちゃんも喜んでくれると思うの!……駄目かな?」

雪穂「確かに凛さんに喜んでもらうなら、そっちの方が……」

ことり「決まりだね」

雪穂「っ……分かりました! 私、覚悟を決めます!」

ことり「お願いね♪」

きてた


ことり「じゃあ明日の作戦も決まったことだし、晩ご飯にしよっか♪ 雪穂ちゃんも食べていってね♪」

雪穂「うーん、そうしたいんですけど……、今回は遠慮しておきます」

ことり「もしかして忙しい?」

雪穂「そういう訳じゃないです。ただ、今日はもう眠くて……」

ことり「あ~、そっか雪穂ちゃん、最近ずっと夜遅くまで編み物してたから」

雪穂「もう眠気が限界で、この間からずっと眠たくて眠たくて しょうがないんですよね」
 
ことり「お……、お疲れだね」

雪穂「明日のこともあるし、ゆっくり疲れをとろうと思ってて……。だから今日はもう帰って すぐに寝るつもりだったんですけど……」

ことり「だからこそ、だよ」

雪穂「?」

ことり「明日も頑張るために、今日ご飯をしっかり食べて明日に備えるの」

雪穂「なるほど」

ことり「だから帰るなら、ご飯を食べてからにしてね♪」

雪穂「………問答無用じゃないですか……」

ことり「えへへ」

雪穂「じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」

ことり「ご飯は私が作るから雪穂ちゃんはゆっくりしてていいよ」

雪穂「ありがとうございます」

ことり「じゃあちょっと待っててね」

雪穂「はい」


雪穂「ん……? 何だろ これ? ことりさん、これ何ですか?」

ことり「あっ、それは私の凛ちゃんへの誕生日プレゼントだよ」

雪穂「可愛いお洋服ですね。どこで買ったんですか?」

ことり「ううん、それ私が作ったの」

雪穂「作ったって……、ことりさんが!?」

ことり「うん」

雪穂「いつの間に……」

ことり「それは、雪穂ちゃんに編み物を教えてる合間にちょこちょこっとね」

雪穂「ちょこちょこって、ずいぶんさらっと言ってくれますね」

ことり「花陽ちゃんに聞いて、凛ちゃんが好きそうなデザインを私なりに考えて作ってみたんだ」

雪穂「へぇ~、これをことりさんが……」


私は感心しながら、ことりさんがこしらえた洋服を見極める。


さっきまでずっと編み物してたからか、普段は注目しない細かなところまで目が行き届く。……慣れって怖いものだと思う……

縫い目は綺麗だし、胸元の装飾が綺麗だし、所々ひらひらしてる箇所がとっても可愛い。

これを、ことりさんは一から作ったのかと思うと尊敬するよ


凛さんのイメージにピッタリで、着ているところを容易に想像できる。

……きっとすごく似合うんだろうなぁ


それに何より、この洋服自体がとっても可愛い。


それに比べたら私のマフラーなんか――…


雪穂「………なんか自信無くしちゃうな」

ことり「え!?」


ことり「……どうして?」

雪穂「だって私のマフラーなんて、あんまり上手に出来なかったし、ところどころ不格好だし……」

雪穂「それに私はことりさんの何倍も時間をかけたのに、そんなに良い出来栄えじゃないし……」

ことり「そんな事ないよ。雪穂ちゃんは初めての編み物だったのに、とっても上手に出来てると思うよ」

雪穂「でも、マフラーと洋服一着とじゃ全然違う」

雪穂「私は苦労して、ようやく完成に漕ぎ着けたっていうのに……」

雪穂「その隣でことりさんがあっという間に、私のマフラーよりも完成度の高い物を用意されたら、……やっぱり自信が無くなるって言うか……」

ことり「…………」

雪穂「…………」

ことり「そりゃあ、もちろん! 今回のは自信作ですから!」

雪穂「……っ! そんな自信満々に…、少しは謙遜くらいしてくださいよ」

ことり「えっへん!これでも私は衣装担当ですから!」

ことり「μ's の衣装を担当している者としての、意地とプライドがあります」

ことり「だからもちろん今回のお洋服にも自信があります!」

雪穂「やっぱり……」

ことり「それでもね、雪穂ちゃん……」

ことり「そんな私の自信作でも、雪穂ちゃんのプレゼント以上に凛ちゃんを喜ばす事はできないの。私がどんなに素敵なお洋服をプレゼントしても、私は凛ちゃんの一番にはなれないんだよ」

雪穂「………よく意味が分かりません」

ことり「でも、そういうモノなんだよ」

雪穂「そういうモノなんですか?」

ことり「うん!だから雪穂ちゃんはもっと自信を持っていいんだよ」

雪穂「そ……、そうかな?」

ことり「そうだよ!……だから、この話はもうおしまい!」


ことり「晩ご飯、もうすぐ準備できるから、もうちょっとだけ待っててね」

雪穂「……あ! お願いします、ことりさん♪」

ことり「…………」ピタッ

雪穂「ん? ことりさん?」

ことり「………ねぇ、雪穂ちゃん」

雪穂「何ですか?」

ことり「あっ、…えっとね……、私ね……」

雪穂「?」キョトン

ことり「ううん、何でもない! すぐに準備するね!」

雪穂「はい、お願いします!」

ことり「…………」


――数分後


ことり「じゃじゃーん!今日の晩ご飯は凛ちゃんにあやかってラーメンにしてみました!」

雪穂「わあ、美味しそう!」

ことり「冷めないうちにどうぞ召し上がれ」

雪穂「いただきます」ズルズル

ことり「…………」ドキドキ

雪穂「美味しいです!」

ことり「本当!? 良かったぁ!じゃあついでに、こちらもどうぞ」

雪穂「これは?」

ことり「トッピングの具材だよ。取りやすいよう小分けにしたの。雪穂ちゃんのお好みで入れてね」


雪穂「じゃあ私はチャーシューとメンマを入れますね」

ことり「うん」

雪穂「……ん、これは?」

ことり「味付け卵だよ」

雪穂「ふふっ定番ですね、いただきます」

ことり「はい、どうぞ」

雪穂「……これは?」

ことり「焼き海苔だよ」

雪穂「海苔……」

ことり「えっ、入れない?」

雪穂「まあ、最近は入れてるラーメン店も増えてきてる訳だしアリ……かな?」

ことり「うんうん」

雪穂「じゃ、じゃあこれは……?」

ことり「さけるチーズだよ」

雪穂「え!?」

ことり「サケルチーズダヨ」

雪穂「…………」

ことり「えっ、入れなぁい?」

雪穂「…………」

ことり「…………」

雪穂「…………」

ことり(・8・)

雪穂「…………」




いよいよ明日は、凛さんの誕生日

明日が凛さんにとって特別な1日になりますように―――


――――――


――誕生日、当日


――学校・教室――


――キーンコーンカーンコーン

凛「今日も1日、終わったにゃー!!」

真姫「放課後になった途端、急に元気になったわね」

凛「真姫ちゃん何言ってるにゃ? 凛はいつだって元気一杯だにゃっ!」

真姫「ついこの間まで、この世の終わりみたいな顔してたクセに良く言えたわね」
 
凛「切り替えの早い所が凛の良い所でもある!」

真姫「自分で言うな!」

花陽「あはは…、まあまあ二人とも」

真姫「……それよりも凛、今日の練習の事だけれど……」

凛「うん?」

真姫「もう連絡が回って分かってると思うけど、今日の練習は休みになったから」

凛「分かってるにゃ」

凛「なんだかよく分からないけどメンバーひとりひとりに、会う度会う度、念押しされたにゃ」


花陽「え、みんなに…? あ、あはは……」

凛「?」

花陽(もうっ、みんな何やってるのぉ!?)

真姫(サプライズのこと、凛に気づかれちゃうじゃない!!)

凛「そんなに凛がスケジュールを忘れちゃうような人間に見えるのかなぁ?」

真姫・花陽「」ピクッ

真姫(ん、これは……)

花陽(そもそも今日が自分の誕生日だって事を……)

真姫「完全に忘れてるわね」

凛「え、何が?」

真姫「何でもないわ」

凛「とにかく、今日はみんな様子がよそよそしいにゃ」

花陽「そそ、そんな事ないよ」

真姫「そうよ、凛の気のせいじゃないかしら」

凛「ふぅん…、まぁいっか!」


真姫(ま、誕生日の事を忘れてるなら、それはそれで、私達はごまかす必要もなくなったし都合がいいってことじゃない?)

花陽(そうだね)


真姫「ところで、凛はこの後の予定は?」

凛「にゃ?」

真姫「今日は練習も休みになったことだし、凛はこの後ヒマな訳じゃない?」

真姫「私と花陽はこれから用事があるし、だから凛には悪いけど―――

凛「おぉ!そうだ聞いてよ真姫ちゃん♪」ダキッ

真姫「ヴぇぇえ!?」

凛「実はこの後、雪穂ちゃんと一緒に遊びに行く約束してるんだぁー! いいでしょ、いいでしょー、えへへ♪」

真姫「分かった!分かったから!(り…、凛ってば顔が近いっ ///)

凛「あっ!そろそろ雪穂ちゃんが校門にむかえに来てくれる時間だ!」パッ

凛「じゃあ真姫ちゃんかよちん、またね! ばいばーい!」


真姫「」フラフラ

花陽「真姫ちゃん、お疲れさま」

真姫「………はぁ、使れた」グッタリ

花陽「凛ちゃん、元気になって良かったね」

真姫「元気になり過ぎよぉ…」

真姫「凛は落ち込んでる時も面倒だと思ってはいたけれど……、元気すぎるのも面倒ね」ガクッ

花陽「お…、お疲れさま」アハハ

真姫「いえ! でも、これでもう凛の愚痴を聞かなくて済むと思うと清々するわ」

花陽「分からないよ? もしかしたら、愚痴が減る分 ノロケ話が増えるかも♪」

真姫「どちらにしろ面倒くさそうね」

花陽「ふふっ」

真姫「……何? 私なにか変な事でも言った?」

花陽「ううん、ただ面倒くさいって言ってる割には、ずいぶん嬉しそうに話すな~って思って♪」

真姫「んなっ!?///」

花陽「」クスクス

真姫「止めてよ、もう……///」


花陽「………ねえ真姫ちゃん」

真姫「何よ?」

花陽「凛ちゃんのこと、ありがとね」

真姫「え、何? いきなりどうしたのよ?」

花陽「凛ちゃんの力になってくれたこと、一言お礼を言いたくて」

真姫「私は、別に何も……」

花陽「ううん……、たぶん私じゃ何も出来なかったから……」

真姫「むっ!? こら花陽っ!」バシッ――

花陽「痛ぁ!?」

真姫「あなたは凛の幼なじみなんでしょう? なのに、なに弱々しい言ってるのよ!!」

花陽「だからってチョップは痛いよ真姫ちゃん……」

真姫「今回はたまたま凛が家に来たから話を聞いてあげただけよ」

花陽「…………」

真姫「だから! 私は大したことはしてないの!」

花陽「ううん…」フルフル

花陽「仮に私が真姫ちゃんの立場だったとしても、 私じゃ二人を仲直りさせるまでは出来なかったと思う」

花陽「私じゃ、きっと凛ちゃんの味方になってあげる事しか出来なかったと思うから……」

真姫「…………」

花陽「だから凛ちゃんと雪穂ちゃんが仲直りできたのは真姫ちゃんのおかげだよ。本当にありがとう」


真姫「そんなことないわよ」

真姫「私には私にしか出来ない事がある。同じように花陽には花陽にしか出来ない事があるの。だから花陽はもっと自信を持っていいのよ?」

真姫「だって二人は幼なじみなんだから、ね?」

花陽「真姫ちゃん……、分かった ありがとう!」

真姫「それに私は友達として当然の事をしたまでよ」

花陽「当然…か……」

真姫「そうよ、当然よ」

花陽「そっか!」

真姫「さ、そんなことより早く部室に行きましょう。すぐに支度するからちょっと待ってて」

花陽「うん!」

真姫「」ガサゴソ

花陽「…………」

真姫「」ゴソゴソ

花陽「あのね、真姫ちゃん」

真姫「何よ?」テキパキ

花陽「あの…、私ね……」

真姫「?」ピタッ

花陽「私は真姫ちゃんのことが―――


バサバサッ――


真姫「!?」

花陽「ぴゃあっ!?」

クラスメイト「あ、二人ともごめんなさい!」

真姫「なになに? どうしたのよ?」

クラスメイト「いえ…、さっきの授業で回収したノートを運んでたんだけど途中で落としちゃって……」

花陽「さっきの授業で回収したノート?」

クラスメイト「うん。職員室まで運ぶ途中だったんだけど、慌ててたから、つい……」

真姫「もう何やってるのよ! 拾うの手伝ってあげるから、早く集めちゃいなさい」

クラスメイト「ありがとう西木野さん」

真姫「何言ってるのよ、当たり前のことよ!」

真姫「……じゃあ、あなたは足元に散らばってるノートを拾ってね。私は机の下に散らばってる分を拾うから」

クラスメイト「あ、ありがとう!」

真姫「花陽はそっちの方をお願い」

花陽「えっ!?……は、はい!!」


花陽「…………」テキパキ

真姫「ずいぶん派手に撒き散らしたわね」テキパキ

クラスメイト「ごめんなさい」

真姫「いいのよ、気にしないで」

花陽「」チラッ

真姫「…………」テキパキ

花陽「 ……っ///」

真姫「………はい、こっち側半分は集めておいたわよ。これで全部よね?」

クラスメイト「ありがとう、助かったわ!」

真姫「気にしないで」

クラスメイト「本当にありがとね西木野さん、小泉さん!」

真姫「…………さ! 待たせたわね花陽、行きましょう」

花陽「」ポケー

真姫「花陽?」

花陽「うぇ!? ど…、どうしたの真姫ちゃん!?」

真姫「どうしたのはこっちの台詞よ、あなた大丈夫?……顔赤いわよ?」

花陽「何でもない!何でもないの!!」

真姫「ふぅん、それよりも早く部室に行きましょう。きっと もうみんな待ってるわよ」

花陽「う…、うん ///」

真姫「?」

――――――


前も言ったと思いますが、この2人は単に書きたかっただけです。
おやすみなさい

完結したらまきぱなよろしく


まきぱなですが、正直なところ何も考えていません。
まずは先にこちらを完成させてから、ゆっくり考えていきます。


――校門前――


生徒玄関を出て校門までの一本道を駆け抜けていく。

短い距離にも関わらず、凛は走り出した。


凛「はぁ…はぁ…」


最近の凛は走ってばっかりだ。

いつもと同じように何も考えずに走り抜けていく。


凛「………あっ!」


けれど今日は少し違う。今日は走らずにはいられない。


だって今日は―――


雪穂「りーんさん♪」

凛「雪穂ちゃん!」


だって今日は、彼女と会えるから。


雪穂「約束通り、会いに来ました」ニコッ


そう言って彼女はいたずらっぽく笑いかけてくる。

――ドクンッ

凛「にゃぁぁ…」


一瞬、ドクンッと体中を大きく脈打った。

彼女の笑顔を見た途端、凛の胸の鼓動は早くなる。

自分でもドキドキしているのが分かる。


――ドクン、――ドクン


彼女の姿を見つめるだけで何度も心臓が跳ねる。

心拍数も一気に上がって、どんどん胸が苦しくなっていく。

それに、自分の力でその胸の高鳴りを抑えることが出来ない。


もう体中がむずむずして、凄く……もどかしい。


凛「…………」

雪穂「…………」


胸の高鳴りを抑えることに意識が向いてしまって、言葉がなかなか出てこない。

雪穂ちゃんも同様に言葉を探してるみたいで、私達の間で沈黙が流れる。

どちらから話を切り出すのか、互いに出方を伺う。


だけど、けっきょく先に耐えきれなくなったのは凛の方みたいで……


凛「会いたかった」

雪穂「……っ///」


気が付くと、こちらから話し掛けていた。無意識に口から出た言葉はそれだった。


雪穂「私も……、凛さんに会いたかったです///」

凛「大切な人のために頑張ってるって事はもういいの?」

雪穂「はい、もう全部終わりました!」

凛「そっか!じゃあ、またいつものように会えるんだね」

雪穂「はい」

凛「凛たち、また一緒にいれるんだね」

雪穂「はい!長い間お待たせして本当にすいませ―――

凛「ゆっきーほちゃーぁん!!」

雪穂「うわああ!?」

凛「雪穂ちゃん、もぎゅーッ」

雪穂「ちょっと凛さん!?」

凛「凛はもう我慢できない!雪穂ちゃん、会いたかったにゃあ!」

雪穂「だからって、いきなり抱きつかないでくださいよぉぉっ///」カアア

凛「えっへへ、照れてる照れてる♪」

雪穂「ちょっと凛さん!!いい加減にして―――

凛「にゃあぁ……」スリスリ

雪穂「――――っ!? 」

凛「恥ずかしがってる雪穂ちゃんも可愛いにゃぁ~♪」

雪穂「――!?、―――っ!?」

凛「にゃあぁ~」

雪穂「もう凛さんったら~、恥ずかしいです……///」

凛「」スリスリ

雪穂「少しは私の話聞いてくださいよ~!」

凛「」スリスリ

雪穂「はぁ…、駄目だこりゃ」


雪穂「もう凛さんってば! そろそろ離れてくださいよ~。それに、こんな人目につく所でこんなことしてたら流石に……


ザワザワザワ……


生徒A「くすくす」

生徒B「何あれ?」

生徒C「こんな所で大胆~!」


ザワザワ――


雪穂「ほら~、めっちゃ見られてるじゃん!」

雪穂「とにかくまずは場所を変えなきゃ……。ほら凛さん、少し移動しますよ!」

凛「んにゃ!」ギュー

雪穂「抱きついたまま歩かないでくださいよ~」

凛「えへへー♪」

雪穂「それで、今日はどこに行きますか?」

凛「にゃあ?」

雪穂「………へ?」

凛「え?」

雪穂「まさか凛さん……」

凛「ああー、しまった!何も考えてなかったぁ!」

雪穂「ええっ、いったい今まで何してたんですか!?」

凛「だってぇ! 雪穂ちゃんに会えるって思っただけで、凛はもう楽しみ楽しみで、しょうがなかったんだもん!」

雪穂「えぇ~」


雪穂「だったらどうします? ずっとここにいます?」

凛「むっ……それは、やだっ!」

凛「凛は雪穂ちゃんと、楽しい事いっぱいしたい!」

雪穂「じゃあどうしましょう?」

凛「うーん、そうだなぁ……あ、そうだ! じゃあとりあえずね……」


凛・雪穂「ゲームセンター!」


凛「……え!?」

雪穂「やっぱり」

凛「なんで分かったの!?」

雪穂「ふふっ…、だって、いつもそうなんですもん」クスクス

凛「いつも?」

雪穂「そうです、いつもですよ。いつも凛さんと一緒に出掛けた時、最初に行くのは決まってゲームセンターなんですもん」クスクス

凛「そうだっけ?」

雪穂「そうですよ! とにかくリズムゲームで体を動かしたいんですよね、凛さんは」

凛「うん。体を動かしてたら考えがまとまるっていうか、まずはとりあえず体を動かしておきたいって感じ?」

雪穂「凛さんらしいですね」クスクス

雪穂「じゃあ時間ももったいないことだし、そろそろ行きましょうか」

凛「うんうん♪ じゃあ出発にゃあー!」

雪穂「はい!!」

――――――


こうして私と凛さんは一緒に街へ繰り出した。


大勢の人混みの中を二人で進んでいく。

平日とはいえ、アキバほどの街となると放課後のこの時間帯でも人通りが多い。

いつものように、凛さんが前を歩いて私がすぐ後ろを付いて行く。


それにしても、凛さんは相変わらず歩くスピードが速い。

私はいつもと同じように、ところどころ小走りになりながら必死に凛さんの後を付いていく。

そんな私の為に、凛さんは時々振り返って、私の姿を確認しては歩調を合わせてくれた。


ただ、前と少し違うのは……


凛「雪穂ちゃん、……んっ」


私に、手を差し伸べてくれること。


凛「手、繋ご」

雪穂「ありがとうございます///」


―― ゲームセンター ――


凛「たあー!」

雪穂「フィニーッシュ!」


――チャララーン♪


凛「やったぁ!凛の勝ちー!」

雪穂「また負けた~」

凛「ふふふっ、まだまだだね雪穂ちゃん!」

雪穂「はぁ~、流石というか、やっぱりリズムゲームじゃ凛さんには敵いませんね」ハァハァ

凛「これで凛の二連勝だにゃ!」

雪穂「連勝って言っても……、このゲームは毎回、凛さんの独り勝ちなんですけどね」

凛「そうだっけ?」

雪穂「そうですよ! 凛さんはダンスが上手すぎるんですよ!」

凛「あはは…、まぁ こういうものは楽しんだもの勝ちだよ。細い事は気にしないで、さあ次の曲いっくにゃー!」

雪穂「あ、ちょっと待って凛さん!」

凛「?」

雪穂「その前に…ちょっと休憩を……」ハアハア

凛「」ピクッ


雪穂「はぁ…はぁ…」

凛「…………」ジー

雪穂「……はぁ…っ、なんですか凛さん?」

凛「ねえ雪穂ちゃん、もしかして体調悪い?」

雪穂「え!? ……どうしてそう思うんですか?」

凛「うーん、なんとなく?」

雪穂「なんですかそれ……?」

凛「でも凛は適当に言ってる訳じゃないよ?」

凛「だって雪穂ちゃん、普段はこれくらい踊っても、そんなにしんどそうにならないよね?」

凛「それになんとなくだけど、この間から何だか眠たそうにしてるし……」

雪穂「あ…、それは……えっとですね……っ」ドキッ

凛「ねえ雪穂ちゃん。具合が悪いなら言って?」

凛「凛は、雪穂ちゃんに無理をさせてまで一緒に居たいなんて思いたくないから」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「はぁ…、まったく凛さんは……」


こういう時は、変に勘がいいと言うかなんと言うか……


凛「………雪穂ちゃん?」ジー

雪穂「うっ……」


それに凛さんはいつもズルい。

凛さんがこうなってしまったら、もう誤魔化しが利かないという事は痛いほど良く分かってる。


それに何より私がもう嘘を付きたくないから。

だから、結局話すことにした。


………っていうか!!
そもそも隠すほどの事でもないんだけどね?


雪穂「別に具合が悪い訳じゃないんですよ、ただ少し寝不足で……」

凛「寝不足?」

雪穂「はい」

凛「あ!……もしかして雪穂ちゃんが一生懸命 頑張ってたって言ってた事が関係してる?」

雪穂「そうです。それで毎日夜遅くまで頑張ってたんでちょっと寝不足で……。それに、実はそれが終わったのも、つい昨日の事なんですよねー」アハハ

凛「ふうん…、そっかぁ……」

雪穂「あはは、だから最近あんまり寝てなくて……」


雪穂(……ていうか、それって凛の為にマフラーを編んでたって事なんだけどね)アハハ


凛「でも……、それなら これからどうしよっか?」

凛「雪穂ちゃん疲れてるみたいだし、体を動かすのはこれくらいにして、どこかゆっくりできる場所にでも行こっか?」

雪穂「そうですね」

凛「うん! 決まりだね!」

雪穂「………ありがとございます」ボソッ

凛「え?」

雪穂「いえ、なんでもありません /// ……あ! だったらクレープでも食べに行きませんか?」

凛「クレープ?」

雪穂「はい。この間お姉ちゃんが言ってたんです。最近この辺りに新しいクレープ屋が出来たらしくて……。屋台になってて、街公園の中にあるからゆっくり出来るらしいんです」

凛「へえ~、穂乃果ちゃんが……」

雪穂「私、一度行ってみたいと思ってたんです。行ってみませんか?」

凛「いいと思う! 凛は雪穂ちゃんが休憩できる所ならどこでもいいにゃ! それにクレープなんて、なんだかとっても美味しそうにゃ♪」

雪穂「ふふっ、決まりですね♪」

――――――


――アキバ街広場――


雪穂「あ、凛さん!ありましたよ!」

凛「すごーい!ホントに広場の中に屋台が出てるよ!」

雪穂「街中にある屋台って雰囲気がいいですよね。私、けっこう好きなんです」

凛「うん、凛もそう思う!」


ザワザワ――


凛「それにしても……、すごい行列だね」

雪穂「どうやら少し並ばなきゃいけないみたいですね」

凛「でも言っても数分ほどの辛抱にゃ。それに待つのも行列の醍醐味だにゃ!」

雪穂「わ、すごい前向き!?」

凛「さ、並ぼう?」

雪穂「そうですね。じゃあ何を頼むかは、並んでる間に考えましょうか」

凛「そうだね」


……行列、待機中 


凛「ねえねぇ、雪穂ちゃんは何頼む?」

雪穂「うーん、私はイチゴにしよっかな。お姉ちゃんがここのイチゴはすごく美味しいって言ってたから」

凛「へえ~、穂乃果ちゃんが……」

雪穂「はい! 唸ってましたよ」クスクス

凛「じゃあ、凛もイチゴにしよっ~と!」

雪穂「え!? 同じもの頼むんですか!?」


雪穂「だったら私は別のにしようかな……」

凛「違うの頼むってこと?……どうして?」

雪穂「え…? だって……」


――――――

『雪穂ちゃん美味しい?』

『はい、すごく美味しいです!』

『凛が食べてるものも、とっても美味しいよ!……食べてみる?』

『いいんですか!?』

『うん!……じゃあ雪穂ちゃん、はい! あーん♪』

『えぇ!? でもこれって……』

『どうしたにゃ? あーんだよ、あーん♪』

『いやっ! だってこれって、か…か…間接……っ///』

――――――


雪穂「~~~っ///」 

凛「雪穂ちゃん?」

雪穂「うわああ!凛さんの天然 人たらし!!」

凛「えぇ!? 雪穂ちゃん、いきなり酷いにゃあ!?」ガーン

雪穂「……ハッ!……す、すいません」

凛「うぅ、凛はショックだにゃあ……」

雪穂「あわわ、ごめんなさい!」


――――――
――――


雪穂「で……、けっきょく凛さんがイチゴ。私はチョコにしましたとさ」

凛「あ、ベンチ空いてるよ。座ろっ?」

雪穂「はーい」

凛「じゃあ早速いただきまーす♪」

雪穂「もう凛さんったら……食いしん坊ですね。食べ始めるのが早いですよ」

凛「モグモグ、うーん美味しいにゃー♪」

雪穂「ふふっ、じゃあ私も……いただきます!」モグモグ

凛「」チラッ

雪穂「…………」モグモグ

凛「」ジー

雪穂「美味しい!」

凛「うん、美味しいね♪」

雪穂「あぁ~、幸せ~♪」

凛(うん、幸せだね。やっぱりスイーツを食べてる時の雪穂ちゃんは可愛いにゃ♪)

雪穂「ん~♪」

凛「凛のクレープも美味しいよ!……特にイチゴ! さすがイチゴ好きの穂乃果ちゃんが唸るだけのことはあるにゃ」

雪穂「へぇ~、そんなに美味しいんですか?」

凛「うん、美味しいよ! 食べてみる?」

雪穂「え!?」

凛「はい、どーぞ」

雪穂(こ…、これはまさか……!?)

凛「雪穂ちゃん、あーん♪」

雪穂「ちょ…ちょっと待ってよ凛さん!私、まだ心の準備が……」

凛「いいからいいから♪ ほら食べてみてよ、美味しいよ?」

雪穂「うう…、問答無用じゃないですか…///」


凛「ほらほら!雪穂ちゃん、あーん♪」

雪穂「……うっ、あ…あーんっ///」パクッ

凛「美味しいでしょー?」

雪穂「は…、はい……///」モグモグ

雪穂(恥ずかしくて味なんか分からないよ!)

凛「あー! 雪穂ちゃん顔が真っ赤になってるにゃー!」

雪穂「むぐっ!?」ゴクン

凛「可愛い~♪」

雪穂「………なっ!?」

凛「…………」ニヤニヤ

雪穂「///」カアアア

凛「うわ~っ♪ 雪穂ちゃん イチゴさんみたいに真っ赤で可愛いにゃ~♪」

雪穂「もぉ、凛さんっ! やめてくださいよ……///」

凛「えへへー♪」

雪穂(……くっ/// 想像してたのとぜんぜん違う。やっぱりこの人、天然の人たらしだ……!)

雪穂「………はっ、閃いた! こうなったら……、凛さん!」

凛「にゃ?」

雪穂「はい、どうぞ」

凛「?」

雪穂「私からの仕返しです、はい凛さん!あーんですよ、あーん」ニヤニヤ

雪穂(これで凛さんも、私と同じ恥ずかしめを……)

凛「やったぁ!いただきますにゃー♪」パクッ

雪穂「…………」

凛「うーん、チョコレートもなかなか美味しいにゃ」モグモグ

雪穂「ぐぬぬ……」

――――――

前板で書いてたのはこの辺までだったと思います。


凛「いやぁ~、食べた食べた。美味しかったねー♪」

雪穂「…………」

凛「にゃ? おーい、雪穂ちゃーん!」

雪穂「え、なんですか?」

凛「なに見てるの?」

雪穂「え? ああ……。凛さん、あの人たちって……」

凛「あっ! 音ノ木坂の生徒だね!」

雪穂「知り合いですか?」

凛「うーん、違うよ。リボンが違うから上級生かな~」

雪穂「学校帰りかな?」

凛「そうみたいだね」

雪穂「買い食いってやつですね」

凛「学校から近いから立ち寄り易いのかも!」

雪穂「………そっかぁ……」

凛「?」


雪穂(なんでだろう……? さっきから楽しそうに話す音ノ木坂の生徒の人達がすごく気になる)

雪穂(同じ色のリボンを付けた二人組。友達同士かな? それとも付き合っているのかな?)

雪穂(どちらにせよ、すごく仲良さそう……)


雪穂「………いいなあ、羨ましい」ボソッ

凛「…………」


凛「ねえねえ雪穂ちゃん!」

雪穂「?」

凛「雪穂ちゃんは来年、音ノ木坂を受験するんだよね?」

雪穂「………そうですけど?」

凛「もし…、もしもね?」

雪穂「?」

凛「雪穂ちゃんが音ノ木坂に通うようになったら、凛たちもあんな風になるのかな?」

雪穂「うぇえ!?」

凛「凛たちも、あの二人組みたいに一緒に買い食いしたりするのかな?」

雪穂「私と凛さんが、あんな風に……?」

凛「うん♪」

雪穂「私が凛さんと同じ制服を着て、音ノ木坂に通う……」

凛「そっ! 朝は二人で一緒に登校して、放課後になったら部室に集合する」

雪穂「で、私はスクールアイドルを始めて……」

凛「屋上で雪穂ちゃんと凛と、亜里沙ちゃん、かよちん真姫ちゃん、それに穂乃果ちゃんやμ's のメンバー、みんなで一緒に体を動かすにゃ!」


雪穂「練習が休みの日は、今日みたいに学校帰りにどこかに遊びに行ったりして」

凛「その時は、凛が雪穂ちゃんの教室に迎えに行ってぇ~」

雪穂「凛さんは大声で話し掛けてきそうだから、教室に来るのはできるだけ控えてくださいね」

凛「えー!!」

雪穂「だからその時は、私の方から凛さんの教室まで迎えに行きます!」

凛「えへへっ♪ 楽しみだね~♪」

雪穂「だけど、その話は『私が音ノ木坂に合格すれば』が前提の話ですけどね?」

凛「大丈夫にゃ! 雪穂ちゃんなら必ず音ノ木坂に合格できるよ!」

雪穂「………いい加減ですね」

凛「雪穂ちゃんのことを信じてるって事だよ」

雪穂「うわプレッシャー!? が、頑張ります!」

凛「うん頑張って! 凛、応援してるから!」

雪穂「はい、ありがとうございます」クスクス


ここまでが、前板で書いた内容になります。


そして、お待たせしました。このレスから先が新規のストーリーです。

リスポーン地点


凛「ああ~ でもね!でもね!」ソワソワ

雪穂「?」

凛「雪穂ちゃんが音ノ木坂に通ってる事を想像しただけで、なんだかワクワクしちゃうね。えへへ♪」ニコッ

雪穂「……うっ///」


――トクンッ

雪穂「………あっ」


不意に胸が高鳴った。

凛さんの笑顔を見た途端、私の胸の鼓動が早くなる。

その屈託のない笑顔を見つめるだけで、胸の鼓動は一気に加速していく。


――トクン、――トクン


その鼓動は軽やかに、小刻みに……

でもはっきりと分かるくらいにテンポ良く鳴り響いては、私の胸に負荷を与えてくる。


何度もトクン、トクンと――


何度も、何度も……


今日の私は凛さんと会ってからずっとドキドキしっぱなしだ。


だけど、まだ大丈夫。
この状況は今この瞬間だけに限った事じゃない……
 
だってこの胸の高鳴りは、さっきからずっと鳴り続けていたから……。


学校の前で会ってから、移動中もゲームセンターの中でも、クレープを食べてる最中も……

凛さんと一緒にいるだけで、私の中でずっと鳴り続けてる。

何度も鳴り出しては、その度に冷静を装ってきた。


だから……、まだ大丈夫。

まだいける、まだなんとか誤魔化せる、まだ―――


凛「だからね、雪穂ちゃん―――」

凛「必ず音ノ木坂に来てね!凛は雪穂ちゃんのこと待ってるから……ね? 約束だよ♪」


――ドクンッ――


今日一番大きく心臓が跳ねた。


雪穂「 ――っ!?」


なにかに心臓を叩きつけられたんじゃないかと錯覚してしまうほどに、大きな鼓動が私の体中を襲った。


その鼓動を皮切りに、急に胸が苦しくなる。まるで締め付けられてるみたいにどんどん苦しくなっていく。

心拍数が一気に上がり息が詰まる。それが私の心を、より一層締め付ける。


それと同時にほっぺたがどんどん熱くなっていく。自分の顔が赤くなってる事はすぐに分かった。


凛「雪穂ちゃん?」


凛さんはそんな私の事情も関係なしに、躊躇いなく私の顔を覗き込んでくる。


雪穂「あ、いえっ!……なんでも、ない………です……


――トクン


雪穂「………あ」


――トクン、――トクン、――ドクン


その音は変わらずに、ひたすら私の中で鳴り続ける。

さっきよりも速く、さっきよりも強く……


雪穂「………あ…えっ……あの……」


ヤバい、声が出ない。
おまけに凛さんの顔をまともに見ることも出来ない。

自分の体なのに、ぜんぜん思い通りに動いてくれない


雪穂「…………」


結局、私は一人うつむいて黙り込んでしまった。


………もう どうしたら いいのか 分からないよ……


凛「雪穂ちゃん、大丈夫?」


そんな私を凛さんは当たり前の事のように心配してくる。当然の事のように私を気遣ってくれる。

その優しさを感じるだけで……


――ドクンッ


雪穂「………あぅぅ」


あぁ、もう駄目だ……

さっきからなんとか頑張ってきたけど、もう無理だ。ずっと凛さんに悟られないようにしてきたけれど、もう限界だよ。


さっきからずっと鳴り続けている、この胸の高鳴りがぜんぜん止まってくれない。

トクン トクンと体の奥で何度も強く打っては、その度に息が出きなくなる。

もう本当に張り裂けてしまいそう。


あまりにも苦しくて、思わず私は自分の胸元をキュッと押さえる。だけども何も変わらない。そんなことをしても胸のドキドキはどんどん激しさを増していく。


そもそも、どうして今日はこんなにもドキドキするんだろう?


凛さんと二人っきりの状況なんて、今までにもたくさんあったのに……

いつも通り過ごしているはずなのに……

いつもと変わらない日常のはずなのに……


雪穂「…………」


そうだよ……
いつもと変わらない。

いつも通りデートして美味しいものを食べて、他愛のない話をしていっぱい笑って……

ただ、それだけ。
いつも通り。お決まりのデートコース。


なのに、どうして今日はこんなにもドキドキするんだろう。どうして今日に限って、こんなにも胸が苦しくなるんだろう……。


思い当たる節があるとしたら一つしかない。



久しぶりに凛さんと会えたから



でも、そうだとしても、本当にそれが原因なのかな……。本当にそれだけでこんなにも変わるモノなのかな?


凛さんと会えない日が、たった数日続いただけ。


たったそれだけの事で、私の気持ちはこんなにも変わってしまった。……どうして?どうしてそれだけで、私の気持ちはこんなにも揺れ動くのだろう……。

まるで今まで会えなかった日々を埋めるかのように、私の想いだけが勝手に先走っていく。その気持ちに歯止めをかける事なんて出来ない。

思い通りにならない自分の感情が、私をかき乱していく―― 。

嬉しくて楽しくて、でも苦しくて、胸の高鳴りを抑えられないくらい幸せなんだけど同時にそれが辛くて、でもそれが私の心を満たしてくれる。

色んな気持ちが入り乱れてグチャグチャになって、気が狂ってしまいそう。


もう耐えられない……

もう、どうにかなっちゃいそうで、私には耐えられないよ


私……こんなにも弱かったんだ……、これほどまでに凛さんに惚れてたんだ……。

こんなになってみて、ようやく気が付いた。


この人がいないと駄目だ。

そう思ってしまうほどに……、狂おしいほどに……


あぁ…
そんなにも私はこの人のことが―――


雪穂「……凛さん」

凛「ん、なあに?」

雪穂「私、やっぱり凛さんのことが好きです」

凛「え!?……い、いきなり何言ってるの!?///」カアア

雪穂「今日、改めてそう思いました」

凛「むう……! そう言ってくれるのは嬉しいけど……、それにしてもいきなりだよ! 凛はぜんぜん心の準備してなかったのに~!」

雪穂「ごめんなさい」

凛「雪穂ちゃんはズルいにゃあ!!」

雪穂「うわ、凛さんがそれを言う!?」

凛「だからね……て、……っ!?」

雪穂「え?………わ!?」


凛(凛の顔と雪穂ちゃんの顔が……っ!?)

雪穂(近っ!?)


雪穂「す…、すいません!」バッ

凛「ううん、凛こそゴメン……」

凛「///」ドキドキ

雪穂「///」ドキドキ

凛「ゆ…、ゆゆゆ雪穂ちゃん!」

雪穂「は、はいっ!」

凛「………うぅぅ、えっとね……///」

雪穂「……っ///」


――プルルルルッ


凛「んにゃあ!?」

雪穂「うわっ!?」


――プルルルル……


凛「………!?」

雪穂「ご、ごめんなさい電話が……、ちょっとすいません」

凛「う…、うん……」

雪穂「はい、もしもし……」

凛「…………」

雪穂「はい…、はい…、……分かりました、失礼します」


ピッ――


凛「終わった?」

雪穂「え?……あぁ、はい。終わりましたよ」

凛「…………」

雪穂「?」

凛「………///」モジモジ

雪穂「ねえ凛さん!」

凛「はいにゃ!」

雪穂「今から凛さんの家に行ってもいいですか?」

凛「え、凛の家に?……う、うん!もちろんいいよ!」

雪穂「やった♪」

凛「でも、なんで急に?」

雪穂「えーっとそれは……、まあ細かい事はいいじゃないですか。だって行きたくなったんですから!」

凛「え…そう?、……凛は別に構わないけど」

雪穂「ありがとうございます! じゃあ凛さん。そうと決まれば早く行きましょう!!」

凛「あー、雪穂ちゃん待ってよー!」


――――――


ざっくりと こんな感じです。
ちょこちょこ休憩をはさみながら更新していきたいと思います。


――凛の家――


雪穂「おじゃまします」

凛「うん、入って入って!」


久しぶり入る凛さんの家……。

もう何度目だろう……
慣れた足取りで廊下を進んでいく。

……て言っても、この家で行くところといえば凛さんの部屋くらいだから、迷うことはないんだけれどね。なんてことを考えてるうちに、あっという間に凛さんの部屋の目の前に差し迫った。


凛さんが流れるような動作で自室のドアノブに手を掛けようとしたところで―――


雪穂「あ、凛さん!ちょっと待ってください!」

凛「え?」

雪穂「ちょ~っと待っててくださいねぇ~」ポチポチ

凛「?」

凛(どうしてこのタイミングでケータイをいじり始めるんだろう……?)

雪穂「………さ、凛さんお待たせしました、どうぞお入りください」

凛「『お入りください』って……、ここ凛の部屋だよ?」

雪穂「分かってますって♪」

凛「ふぅん、変な雪穂ちゃん」

雪穂「…………」


ガチャ――

期待



パン! パパン! パパパパン!



「 誕生日おめでとう!!」



凛「!?」

花陽「凛ちゃんお誕生日おめでとう♪」

真姫「凛、おめでとう」

穂乃果「凛ちゃん、お誕生日おめでと~!」

亜里沙「凛さん、おめでとうございます」

ことり・希「凛ちゃん誕生日おめでとう」

にこ・絵里「おめでとう、凛」

海未「凛、おめでとうございます」

凛「……え?……えっ!?」

雪穂「凛さん♪」

凛「……雪穂……ちゃん?」

雪穂「お誕生日おめでとうございます」

凛「…………」ポカーン

一同「?」

雪穂「り、凛さん?」

凛「!!」


凛「おお!今日は凛の誕生日だ!!」


にこ「忘れてたんかーい!」

凛「え? うん、あはは……」

雪穂「はぁ……、やっぱりそうだと思った」

凛「も、もしかして雪穂ちゃんは知ってたの!?」

雪穂「そりゃぁもちろん。大切な人の誕生日ですから」

凛「じゃあ今日約束を取りつけたのって……」

雪穂「はい! そういうことです」クスクス

凛「むう…! せめて一言 言ってくれても良かったのに!」

雪穂「それは……、一応サプライズだったから」アハハ

凛「む~」プクー

絵里「まあまあ、そんなに雪穂ちゃんをせめなくても……そんなことよりも凛? ケーキあるわよ?」

凛「えっ!? ケーキあるの!?」

絵里「ええ、みんなで食べましょう」

凛「やったぁ!」


凛「よーし、ロウソクの火を消すにゃ!」フウ~~

穂乃果「凛ちゃん、おめでとー!!」パチパチ

凛「さ、早くケーキ食べるにゃー!」

海未「待ってください。その前にロウソクを取らないと……」

絵里「それに切り分けるからちょっと待ってて―― 」

雪穂「…………」

希「雪穂ちゃん!」

雪穂「あ! 希さん」

希「うん、どうやら凛ちゃんと、ちゃんと仲直りできたみたいやな。良かったね」

雪穂「はい! 希さんのおかげですよ。ありがとうございます」

希「いやいや、ウチは雪穂ちゃんの話を聞いただけで、特に何もしてないよ」

雪穂「それでも ありがとうございます」

希「はいはい」

希「……って、それよりどうしたん? ケーキ食べないの?」

雪穂「あぁ…、ええっと……、もちろんケーキは食べたいんですけど……」

希「?」

雪穂「ええっとですね……」

希「あ、……もしかして体重のこと気にしてるん?」

雪穂「はい……、最近食べ過ぎてしまって」シュン

希「ふふっ、そうだと思った♪ 雪穂ちゃんは どうやら損な役回りになってしまったみたいやな」

雪穂「そうかもしれません」


確かに――…

最近、その場の流れでやむを得ずとはいえ、明らかに食べ過ぎだと思う。

たった今クレープを食べたばかりだし、その前はことりさん家にお世話になった時にお菓子をいっぱいごちそうになったし、それからファミレスにラーメンに……

だから出来ればもうこれ以上体重を増やしたくないし、ホントはケーキは我慢したところ、なんだけど……


凛「雪穂ちゃん雪穂ちゃん!」

雪穂「……っ!」

凛「はいケーキ♪ 絵里ちゃんが切り分けてくれたよ! これ、雪穂ちゃんの分ね♪」

雪穂「…………」


でも、そんなの無理に決まってる。

こんなキラキラした目で凛さんにケーキを差し出されたら……


雪穂「………食べない訳にはいかないじゃん」

凛「?」

雪穂「あ、ありがとうございます」

凛「うん! 一緒に食べよ♪」

雪穂「……うっ///」

希「…………」ニヤニヤ

雪穂「希さん?」ジトー

希「さ、ウチもケーキをもらいに行こうかな」

凛「にゃあ?」


――――――
――――


穂乃果「そうだ!今日は凛ちゃんにプレゼントがあるんだよ」

凛「え!ほんと!?」

にこ「そうね、そろそろいい時間だしプレゼント渡しちゃいましょうか」

凛「みんなありがとうにゃ~!」

にこ「しょうがないわねぇ~♪ じゃあまずは私から―――


――中略――


穂乃果「さ、あとプレゼント渡してないのは、ことりちゃんと雪穂だけだね」

にこ「………途中、思いっきり はしょったわね」

穂乃果「やだな~、作者が凛ちゃんのプレゼントを全員分考えるのが面倒だから途中丸々カットしただなんて、そんな訳ないじゃん」

海未「だ、誰に言っているのですか?」

穂乃果「まあまあ、細かいことはいいじゃん。それよりさ二人とも早く渡しちゃいなよ」

ことり「うん!じゃあ私から」スッ

ことり「はい凛ちゃん!私からのプレゼント♪」

凛「ありがと~」

ことり「私、お手製のお洋服だよ」

凛「え? これ、ことりちゃんが作ってくれたの!? 可愛いにゃ!」

穂乃果「凄い凄い!さすがことりちゃん!μ's の衣装を担当しているだけのことはあるね♪」

ことり「そ、そんなことないよ~」

穂乃果「そんなことあるよ。可愛いお洋服だね~♪ 凛ちゃんが着たら絶対に似合うよ!!」

雪穂「……げっ」


お姉ちゃんのバカッ!

また後先考えずに無責任なこと言って……。お姉ちゃんの脳天気な一言で変にプレッシャーが掛かっちゃったじゃん。


まあ…、確かにことりさんのあしらえたお洋服が素敵なのは私も良く分かってるけどさ……

その次に渡すことが、どんだけハードルが上がって、躊躇ってしまいそうになることか――

……何も考えずに適当なこと言っちゃってさ


凛「えへへ♪ そうかな?」

穂乃果「そうだよ!穂乃果が保証する!」

ことり「も~、二人とも~」アハハ

雪穂「…………」


やっぱり場違いだったのかな……?

μ's はみんな仲が良いんだから、この人たちの環の中に入るのは簡単なことじゃない……、分かってたハズじゃん……

どうせなら二人っきりの内に渡しておけば良かった……

なんてことを考えてたから――


穂乃果「次、雪穂ね!」

雪穂「んえ!?」


いきなりのご指名についキョドってしまった。

恥ずかしい……。
素っ頓狂な声を出してしまったことが恥ずかしいよ~

けど、恥ずかしがってる私を尻目にお姉ちゃんはというと、私の後ろに回っていつの間にか私の背中を押していた。

ほらほらと、有無を言わさず部屋の隅っこから最前列に引きずり出される。


雪穂「ちょ、ちょっと……!?」


最後に軽くポンと突き飛ばされると、私はいつの間にか部屋のド真ん中――

目の前には凛さんがいる。


雪穂「…うっ///」

凛「…………」


緊張、恥じらい――
いろんな感情が沸き立つ

一瞬の出来事で思考がついていかない。


雪穂「…………」

凛「…………」


一瞬、沈黙が流れる。

まるでこの空間には私と凛さん二人しか居ないような、そんな感覚に陥る。


雪穂「あの……凛さん……」


正直、言いたい事はいっぱいあった。

このマフラーは私の手作りなんです とか、マフラーを自分で編むのは初めてだったんです とか……


いろんな言葉が頭の中で浮かんでは消えていく。

どの言葉を凛さんに伝えようか、一つ一つ吟味して言葉を選んでいく。


だけどその前に、いちばん伝えたい言葉がある。

それは……、その言葉は一つだけ……。たった一つのシンプルな言葉だから……

だから私は軽く深呼吸して……


雪穂「凛さん、お誕生日おめでとうございます!これ、私から凛さんへのプレゼントです」


そう言って私は綺麗に包装した紙袋を手渡した。

余計な言葉は口にしなかった。


凛「………開けていい?」

雪穂「はい」


私の了解を得てから凛さんは袋を開け始める。ガサガサッと、紙袋がこすれる音とともにマフラーが現れる。

もうすっかり見慣れた、お手製の手編みのマフラー。

この数日間ひたすら向き合い続けたマフラーがついに凛さんの手に渡る。……ついにこの瞬間が来たんだ。


凛「……マフラー?」

雪穂「……はい」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「?」

雪穂「…………」


雪穂「…………」


ヤ…ヤバい、声が出ない。
さっきまで言いたい事がいっぱいあったハズなのに……

いざ話すとなると、何を言えばいいのか分からな……


バシッ――

雪穂「痛っ!?」


突然感じる背中の痛み。

それが、お姉ちゃんが私の背中を勢いよく叩いた為だということはすぐに分かった。


雪穂「もう……! 何するのお姉ちゃん!?」

穂乃果「それはこっちのセリフ! 雪穂こそ、なにしてるの!?」

雪穂「はあ!?」

穂乃果「まだ凛ちゃんに伝えてない事があるんじゃないの?」

雪穂「………あ」


そうだ……、肝心な事を言ってなかった


穂乃果「私達の口から言っても意味ないからさ。雪穂、ファイトだよ!」

雪穂「…………」


まただ……、またいつものお姉ちゃんの口癖。

その言葉がいつも私の背中を押してくれる。


そうだ……

まだ凛さんに大事なことを伝えてない。まだ凛さんに肝心な事を言ってない、それは……


雪穂「凛さん!……あの……!!」

凛「っ! はい!!」

雪穂「そのマフラー、……私の手作りなんです!」

凛「手作り……これが……?」

雪穂「私……、編み物なんて初めてで、マフラーを自分で作るなんて初めてで……」

雪穂「ぜんぜん上手に出来なくて、不器用で、下手くそで、ぜんぜん綺麗に出来なかったけれど……」

凛「…………」

雪穂「……でもっ!」

雪穂「凛さんに喜んでほしくて一生懸命頑張りました!凛さんに喜んで欲しくて私頑張りました!だから受け取ってください!」


……けっきょく思っていること全部ぶちまけてしまった。


凛さんは凛さんで、私の言葉を一つ一つ噛み締めるようにマフラーと睨めっこしている、そして……


凛「……これを……雪穂ちゃんが?」

雪穂「………はい!」

凛「…………へへ」

雪穂「え?」

凛「えへへ……これを雪穂ちゃんが、凛の為に……」

凛「そっかぁ……そっか!……えへへっ♪」

雪穂「……り、凛さん?」

凛「嬉しい!!」

雪穂「……っ!」ドキッ


凛さんの満面の笑顔―――


………眩しい。

今まで見てきた笑顔の中でも一番じゃないかと思ってしまうほど、今の凛さんの笑顔は眩しかった。


あぁ…、
私はこの笑顔を見るために今まで頑張ってきたんだな

満足だ……。
私の心は満たされていく。


凛「えへへ~♪」

雪穂「~~っ///」

一同「…………」

穂乃果「ど……どうしよう……」

真姫「二人とも、すごくいい雰囲気……」

にこ「この雰囲気の中、話し掛けるのは勇気がいるわね」

花陽「ダレカタスケテ~」

亜里沙「ユキホ、ハラショー」

穂乃果「どうしたらいいのかな?……ことりちゃん?」

ことり「えぇ!ことりに振るの!?」

海未「他力本願ですよ、穂乃果!」

穂乃果「じゃあ海未ちゃんがどうにかしてよ」

海未「私ですか!?」

にこ「そうよ、どうにかしなさい」

海未「こ…、この良い雰囲気の中、二人の腰を折るのは些か気が引けます」


チラッ――


雪穂「」デレ

凛「」デレデレ


一同「どうしよう……」

砂糖吐きそう


絵里「さあ!」

絵里以外「!!!」

絵里「みんなプレゼントも渡したし、またパーティーの仕切り直しよ!」

凛「にゃ! そ、そうだね!」

雪穂「そうですね!」

一同「…………」

絵里「さてと私も……って、何? みんなどうしたの?」

にこ「絵里、あんたナイスよ」

絵里「……何が? ていうか、どうしてみんな敬礼してるのよ?」

海未「絵里、今日ほどあなたを尊敬した日はありません」

絵里「ありがとう……って、……もしかして私、馬鹿にされてる?」

穂乃果「そ、そんなことないよ!」

亜里沙「お姉ちゃん……」

希「くっくっく……」

絵里「?……??」

まだまだ続きます!

期待

更新していきます

――――――


雪穂「さてと……」


パーティーも中盤、各々プレゼントを渡し終えて一段落といった様子。

みんなそれぞれのグループに分かれて、それぞれにお喋りをしている。

……で、私達はというと――


雪穂「…………」ポツーン

亜里沙「…………」ポツーン


自然と、この組み合わせになってしまった。


……そりゃそうだ

私も亜里沙も勢いで誕生日会に参加したけれど、私たちはμ's 全員の仲の良さを忘れてた。

冷静に考えれば、端から見ればμ's の9人+2人。

自然とこの二人が余るのは至極当然。


雪穂「まぁ、そうなるよね……」

亜里沙「う、うん」


目線の先には楽しげに話す凛さんたち。

みんなそれぞれ楽しそうにお喋りしてる。


亜里沙「μ's はみんな仲良いね」

雪穂「そうだね~」

亜里沙「ねえユキホ……。私たちも音ノ木坂に合格したら楽しい事いっぱいしようね」

雪穂「うん」

亜里沙「………ねえ、ユキホ」

雪穂「ん?」

亜里沙「あのね、私……、ぜったいに音ノ木坂に行きたいって思ってるの」

雪穂「なあに!? いきなり?」

亜里沙「私。ぜったい音ノ木坂に合格して、スクールアイドルを始めようって思ってるの」

雪穂「うん」

亜里沙「でも……でもね? 私はユキホも一緒じゃなきゃ嫌だ」

雪穂「…………」

亜里沙「もし音ノ木坂に合格してスクールアイドルを始めることが出来たとしても、私はユキホがいないと嫌なの!」

亜里沙「ユキホと一緒にスクールアイドルを始めたいと思ってるの! だからね……

雪穂「うん……、じゃあ約束!」

亜里沙「えっ?」

雪穂「私と亜里沙、ぜったい二人で音ノ木坂に合格しようね! 約束だよ♪」

亜里沙「うん!!」

雪穂「ねえ亜里沙……」
 
亜里沙「うん?」

雪穂「………絶対行こうね、音ノ木坂」

亜里沙「うん」


真姫「二人とも、なーに傍観決め込んでるのよ?」

亜里沙「あ、真姫さん!」

真姫「楽しんでる?」

雪穂「まぁ……そこそこ」

真姫「ふぅん、そう……。と言っても、その様子じゃ皆の環の中に入り難い……といった感じかしら?」

雪穂「まあ、そんなところです」

亜里沙「さっきユキホと話してたんです。μ's はみんな仲良しだなーって」

真姫「そうね。……でも、だからって私たちに遠慮すること無いのよ?」

雪穂「そんなつもりはありませんよ。ただ……」

真姫「ただ?」

雪穂「みんな楽しそうだなって思ったから」

真姫「そう……」

雪穂「それに~、真姫さんみたいに、ちゃんと私たちのことを気にかけてくれる人もいますしね」ニイ

真姫「え!?」

亜里沙「フフっ、そうですね♪」

真姫「と、当然の事をしたまでよ!」

亜里沙「ふふふ」

雪穂「あはは」

真姫「……もおっ///」


希「楽しんでいるかね? 君たち」

真姫「あら、希」

希「……なんだ、真姫ちゃんもいたんだ」

真姫「『なんだ』って何よ、悪い?」

希「いやいや、そんなことないよ。ただ雪穂ちゃんも亜里沙ちゃんも二人揃って部屋の隅っこにいたから、馴染めずにいるのかなって思ってね」

亜里沙「そんなことありませんよ。ただ、さっきまでμ's は仲良しだなーって話してたところで……」

雪穂「そんな私たちを真姫さんが気に掛けてくれてたんです」

希「ほほう、真姫ちゃんが……」ニヤニヤ

真姫「べ、別にいいでしょう? 仮にも二人は来年音の木坂受験するんだからっ///」

希「ふふっ、そっか そっか♪」

真姫「……ふんっ///」プイ

希「……それより雪穂ちゃん亜里沙ちゃん。二人はみんなとお喋りしないの?」

亜里沙「そう思っていたんですけど、なんだか気が引けちゃって……」

希「そう……」


希「…………」ジー

亜里沙「?」

真姫「……あっ(この顔はよからぬことを考えてる時の顔ね)

希「」スタスタ

雪穂「の、希さん?」

希「それっ!」ガシッ

亜里沙「ほわあああ!?」

希「そんなこと言ってる子にはワシワシやな♪」

亜里沙「わ、わ、うわああああ!!」

ことり「な、なに? どうしたの!?」

凛「なんで亜里沙ちゃんがワシワシされてるにゃ?」

花陽「これって……」

穂乃果「一体どういう状況!?」

絵里「ちょっと希!? 亜里沙に何てことしてるのよ!?」

希「いやー、ちょこっと亜里沙ちゃんとスキンシップをと思ってな」

絵里「どこがスキンシップよ!? いいから亜里沙から手を離して!」

希「は~い」


亜里沙「ふぁああぁ……ふぁあ……」ピクピク

絵里「亜里沙、亜里沙っ! しっかりして!」

雪穂「」ポカーン

真姫(よ、容赦ないわね……)

希「さてと♪ 丁度いいからついでに~」ニコニコ

雪穂「!?」ゾワ

希「それぇっ♪」

雪穂「きゃああああ!!!!」

希「ふむふむ」

雪穂「ちょ、希さ……んっ///」

希「うーん、中学生にしては なかなか」モミモミ

雪穂「な、な……、ななな///」


穂乃果&凛「なにしてるの希ちゃん!?」


希「うおっ!?」

穂乃果「なにやってるの 希ちゃん! 雪穂から手を離して!」

希「あはは…、まあ穂乃果ちゃん? そんなにムキにならんでも……」

穂乃果「なるよ! 人の妹に手を出しておいて!」

凛「そうにゃ、そうにゃ!」


凛「私の雪穂ちゃんに何してるにゃあ!!」


一同「え!?」

雪穂「………へ?」

凛「…………にゃ?」


花陽「凛ちゃん……、今なんて……?」

真姫「『私の雪穂ちゃん』て……」

凛「にゃ!?」

雪穂「な、な……///」カアア

ことり「凛ちゃん大胆~♪」

凛「にゃああ!?」

穂乃果「ちょっと凛ちゃん!? 雪穂は私の妹なんだからね!」

凛「分かってる……、にゃ…」

穂乃果「そういう話は穂乃果を通してもらわないと困ります」

凛「えっと……」

にこ「凛、あんたも言うようになったわね」グスッ

凛「ち、違っ……」

海未「凛!」

凛「……っ、海未ちゃん!そうだ、海未ちゃんからも何か言ってほしいにゃ!」

海未「大切な人を守ろうとする その姿勢――、立派です!」

凛「なっ!? 海未ちゃんまで なに言ってるにゃ!」


ギャーギャー


希「…………」

希「ふっ、………計画通りやな」

真姫「はあ? どこが?」

雪穂「…………い、い、いい……」

希「?」

雪穂「いつまで触ってるんですかーー!!」


希「」シクシク

雪穂「はぁはぁ…///」

希「ヒドいで雪穂ちゃん。正座させるなんて……」

雪穂「誰が原因だと思ってるんですか!」

雪穂「いくら希さんとはいえ、今回ばかりは許しません!」

希「ええ~」

雪穂「希さんなんかもう知りません!フンっ――!」

希「…………」


希(ふふっ、なんだかんだ言っても……)

希(みんなと平等に接してくれて、ウチは嬉しいんよ)


希「ふふっ」

にこ「………希、あんた……」

希「ん?」

にこ「なんで正座させられてるのにそんなに嬉しそうなのよ?」

希「いやぁ~、雪穂ちゃんがウチに心を開いてくれたみたいで嬉しいなーって思ってな」

にこ「はあ!? 今の状況のどこが、あんたに心を開いてるって事になんのよ!? ドMか!!」

希「あぁ…もう、にこっちはうるさいなぁ~、……そりゃ!」

にこ「!?」

穂乃果を通せばいい…ひらめいた

いいねぇ


希「にこっちにもワシワシや♪」

にこ「なああ!?」

希「はあ~、にこっちのは小さくて扱いやすいから、落ち着くわ~」モミモミ

にこ「ちょっと、そんなお手軽なリラックスグッズみたいに言うな! 私の胸はそんなに安っぽくないわよ!」

希「…………んん?」

にこ「な、何よ?」

希「…………」

にこ「………の、希?」

希「」モミモミ

にこ「ひゃあっ! だから止め……っ///」

希「」チラ

雪穂「な、今度は何ですか!?」

希「」チラ

にこ「な、何よ!?」

希「…………」

希「………ふむ」

にこ「?」

希「………にこっち、ドンマイ」

にこ「あんた、今 誰と比較したぁああ!!」

くっ


穂乃果「まったく……、希ちゃんが変なことするから のど乾いちゃったよ~。ねえ海未ちゃんジュース取って~」

海未「もう穂乃果! そのくらい自分で取ってください!」

穂乃果「気にしない気にしない♪」

海未「まったくもうっ……ことり、何か残っていませんか?」

ことり「うーん、あとはもうお茶くらいしか残ってないよ?」

穂乃果「あ! なら穂乃果はお茶でも構わないよ!」

海未「では穂乃果、はい どうぞ」

穂乃果「え~、海未ちゃん淹れてくれないの!?」

海未「自分で淹れてください」

穂乃果「えー! 海未ちゃんが淹れてよ~」

海未「はいはい、分かりました」ハア…

穂乃果「やったぁ! 海未ちゃんありがとー!」

海未「分かりましたから……、早くコップを出してください」

穂乃果「あ…、ごめんごめん、はい」

海未「入れますよ」

穂乃果「うん。ありがとう」


トクトク――


穂乃果「………んん?」

海未「どうかしましたか?」

穂乃果「ねえ海未ちゃん、……これ、なんて読むの?」

海未「どれですか?」

穂乃果「このペットボトルに書かれてるこの文字。ぎょ…ぎょ……」

海未「?」

穂乃果「……ぎょく…じ?」

海未「はぁ、違います……。それは玉露(ぎょくろ)と読むんです!」

穂乃果「へぇ~、そうなんだ!」

海未「『そうなんだ!』じゃ、ありません! これくらいの漢字は読めて当然です!」

穂乃果「そ、そんなことないよ!」

海未「読めないのは、ただ単に穂乃果が勉強不足なだけです!」

穂乃果「そんなことないもん!この漢字は難しいよ!読めないよ!……凛ちゃんもそう思うでしょ!?」

凛「え? 凛?」


穂乃果「ね? 凛ちゃんも『ぎょくろ』だなんて読めないよね!?」

凛「いや、凛は読めたよ?」

穂乃果「え!?」

凛「玉露って確か日本茶の最高級ランクの茶葉の事だよね」

穂乃果&海未「!?」

凛「と言っても、凛もあまり良く知らないんだけどね……」

凛「確か栽培の仕方が他のお茶と違うんだよ。一定の期間、日差しを遮って育てるから渋みが抑えられて、それでね………

穂乃果「!?、――っ!?」

海未「すっ――…

凛「?」

海未「素晴らしいですよ、凛!」

凛「にゃ!?」

海未「よくそんな事を知っていましたね」

凛「うん。この間飲んだお茶に玉露入りって書いてあってねー、気になったからちょっと調べたんだー」

穂乃果「凄いよ!凛ちゃん、博識!」


花陽「あ! そういえば最近の凛ちゃん、すごく勉強を頑張ってるんだよ」

海未「ほう……!!」

真姫「そうね。最近 少しずつだけど成績も上げてきてるし……」

花陽「特に英語! 凛ちゃん凄く英語を頑張ってるんだよ。ちょっとずつ成績も上げてきてるし……」

真姫「もう3バカと呼ばれてたのは過去の話ね」

雪穂「へぇ~、そうだったんだ……」

凛「あ!ちょっと二人とも! 雪穂ちゃんの前でその話をするのは……っ!」アタフタ

雪穂「え……?」

雪穂(もしかして凛さん……。前に私が、英語ができないことをバカにしたことを気にして……) 

雪穂「…………」

雪穂「り、凛さん凛さん」チョンチョン

凛「にゃ?」

雪穂「もしかして……、この前 私が凛さんが英語ダメなのをバカにしちゃったことを、その……気にしてます?」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「気にしてないよ?」プイ

雪穂「嘘だ!じゃあどうして目を逸らすんですか!?」

凛「うぅ~/// うるさい、うるさい!別に好きな人に勉強が出来ないことを指摘されたからムキになって頑張ってるワケじゃないんだから!!」

雪穂「全部声に出ちゃってますよぉお!?」


真姫「そこ、イチャつかない!!」

ゆきりん「ご、ごめんなさい!!」

真姫「とにかく……! 私が言いたいのは、最近 凛が勉強を頑張る様になったって話よ!」

凛「うん……て言っても、毎日勉強してようやく平均点を取れるくらいの状態になったばかりなんだけどね。まだ……」アハハ

海未「いえ、それでいいんですよ」

凛「え?」

海未「そうやって毎日、少しずつでもコツコツ積み重ねていく姿勢が大事なのです」

凛「海未ちゃん……」

海未「よく頑張りましたね。偉いですよ、凛」ナデナデ

凛「にゃっ! 海未ちゃんが誉めてくれた! 嬉しいにゃ♪ もっと撫でて~♪」

海未「いいですよ。本当によく頑張りましたね♪」

凛「にゃあぁぁ~♪」

海未「誰かさんも見習ってほしいものです」ジッ

穂乃果「あ…、あははは…」

にこ「…………」


にこ「て言うか凛! あんた一人だけ抜け駆けなんて卑怯よ!」

凛「にゃ!?」

穂乃果「そ、そうだよ! にこちゃんの言う通りだよ!」

にこ「なに一人だけ、ちゃっかり成績伸ばしたりしてるのよ!」

穂乃果「私達、3バカ組の絆はどこにいったの!?」

凛「そんなこと言われても、にゃ……」

海未「二人とも止めなさい! 凛が困っているじゃないですか!」

ほのにこ「ブー!ブー!!」

雪穂「あの……、私からもいいですか?」

海未「……雪穂?」

穂乃果「雪穂っ♪ 雪穂からも何か言ってやってよぉ!」

雪穂「私も、お姉ちゃんはもっと勉強した方がいいと思います」

穂乃果「んなっ!?」

海未「ほら、雪穂もそう言ってますよ」

穂乃果「ヒドいよ、雪穂~!!」

凛ちゃんかわいい

まだまだ更新していきます


海未「………どうやら、穂乃果には地獄を味わってもらわないといけないみたいですね」

穂乃果「え? 何をする気!?」

海未「今から私の家で、勉強です!」

穂乃果「今から!?」

海未「もちろんです!!」

穂乃果「なんで今なの!?」

穂乃果「だって今日は凛ちゃんの誕生日パーティーなんだよ!? なのにどうしてこのタイミングで……」

海未「このタイミングだからです!」

穂乃果「……?」

海未「何度、同じことを言っても穂乃果は懲りないという事は、もう分かり切っていますからね……!」

海未「だから穂乃果には一度、理不尽を味わってもらいます」

穂乃果「理不尽すぎるよ!!」

海未「問答無用!さぁ行きますよ!」

穂乃果「うええん!凛ちゃあ~ん」

凛「あはは……」


にこ「ふん、穂乃果の奴ざまあないわね」

希「にこっち?」ゴゴゴ

にこ「希!?」

希「丁度いいから、にこっちも勉強していこっか?」

にこ「はぁあ!? 嫌よ!なんで私まで―――

希「問答無用!!」ガシッ――

にこ「――ひぃっ!?」

希「さ、行こっか?」ニコッ

にこ「分かった! 分かったから胸から手を離しなさい! い、い、嫌ぁぁあ~」

凛「希ちゃんが………、にこちゃんの胸をワシワシしながら引きずっていく……、なんて業だにゃ……!」

凛「……っ!?」ゾワゾワ

雪穂「……凛さん?」

凛「…………」


凛「………頑張ろう」グッ


真姫「じゃあ花陽、私たちも……」

花陽「うん」

凛「えぇ~、真姫ちゃんとかよちんも行っちゃうの!?」

花陽「凛ちゃん、ごめんね♪」

凛「なんでー!? もっと一緒にいようよ~」

真姫「新しい曲のイメージを思いついたのよ。意見が欲しいから花陽に付き合ってほしくて……、ね」

花陽「うん、そういうことだからゴメンね♪」

凛「うーん、ならしょうがないにゃ」

真姫「じゃあ花陽。行きましょう」

花陽「……うん///」

真姫「?」

絵里「あらあら、みんな忙しいわね。じゃあ私もこのお茶を飲んでから――

真姫「あなたもこっちよ!エリー」グイッ

絵里「チカァ!?」


ドタバタ――


『何してるのよ、これじゃ凛と雪穂ちゃん二人だけになっちゃうわよ?』

『それでいいのよ』

『?』

『もしかしてエリーあなた……っ、まさかまだ気付いてないの!?』

『?……??』


バタン――


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「なんか、皆さんに気を遣わせちゃったみたいですね」

凛「……そうだね」

亜里沙ェ…


雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「あ……」


今の状況……
凛さんの部屋に私たち二人だけ。


雪穂「…………」

凛「…………」


二人の間に沈黙が流れる。


言葉が出ない…… 

けど不思議と苦には感じない。


なんて言うのかな……?

お互い言葉を交わさないから沈黙が流れてるハズなんだけれど、気まずくはなくて……

むしろ下手に言葉を発して自分からこの状況を壊したくないと思ってしまうような、……そんな感じ。

沈黙が重くないってこういう状況のことを言うのかな?


でも、その沈黙もそう長く続かないということは分かっている。


だって凛さんがさっきから何か言いたそうにしてるから。

さっきから何かを言いたくてウズウズしてる、といった様子でこちらを見ているから……

本当に分かりやすい。


凛「雪穂ちゃん……」


――ほら、来た。

亜里沙は完全に忘れてました >>242
やはり11人も出てくる会話シーンなんてややこしいし書くもんじゃないですね、笑

皆さまのご都合主義でよろしくお願いします


凛「もしかして、雪穂ちゃんが言ってた、大事な人のために頑張ってたことって……」

雪穂「……そうですよ。凛さんのために手編みのマフラーを編んでた、ってことです」

凛「それじゃあ、ことりちゃんと一緒にいたのって……」

雪穂「はい。マフラー作りが上手くいかなかったから、ことりさんに手伝ってもらってたんです」

凛「じゃあ凛は勘違いしてたんだね。なのに凛は一方的に雪穂ちゃんを怒鳴りつけちゃったんだね。………ごめんね」

雪穂「そんな……! 元はと言えば、私が凛さんと ちゃんと話をしなかったから……、だから謝るのは私の方ですよ!」

凛「……うん。分かってはいるんだけど……」

凛「凛は雪穂ちゃんにヒドいことを言って傷つけちゃったから、一度言っちゃった取り消すことは出来ないから、だからね……」

雪穂「凛さん!」

凛「…………」

雪穂「そんなことありませんよ」

凛「……だって!!」

雪穂「そんな事を言い始めたら、私だって凛さんのことをほったらかしにして傷つけちゃいました。私の方こそ無神経でした」

凛「…………」

雪穂「だからこのお話はこの辺で終わりにしませんか? 私も凛さんもお互いに傷つけちゃいました。だから おあいこです!」

凛「……うん」コクリ


凛「…………ねえ」

雪穂「今度は何ですか?」

凛「あのね……、凛は勘違いしてたの」

雪穂「はぃい?」

凛「凛はね、今まで恋人の証明って毎日会うことだと思ってた」

雪穂「………凛さん?」

凛「恋人なら毎日会って、特に用事が無くても会って、ただ一緒にいるだけでいい。とにかく毎日一緒にいないと恋人じゃないって……そう思ってた」

凛「……そう思って、焦ってた」

雪穂「…………」

凛「でも違うんだよね」

凛「毎日会えなくても、毎日一緒にいなくても、大事なのはそこじゃない」

雪穂「どういうことですか?」

凛「だって凛は雪穂ちゃんが好き。大好き」

凛「凛はずっと雪穂ちゃんのことばっかり考えてた。学校にいる時も、登下校の途中でも、食事中でも、夜一人で部屋にいる時も……、それこそ寝ている時まで……」

凛「ずっと雪穂ちゃんのことばかり考えてた」

雪穂「わ、私も!」

雪穂「私もずっと凛さんのことを考えてた」

雪穂「マフラーを編んでる最中もずっと凛さんのことばかり……、凛さんの喜ぶ顔が見たくて、ただそれだけだった」

雪穂「相手が凛さんじゃなきゃ、きっとこんなに頑張れなかった」

凛「ありがとう」

雪穂「い、いえっ……///」

凛「でも、それでいいんだよね」

凛「凛は雪穂ちゃんのことが好き。雪穂ちゃんも凛のことが好き。お互いが、互いに相手のことを大事に想ってる。それだけでいいんだよ」

凛「私たちがこの気持ちを忘れなければ、これから何があっても、きっと凛たちは大丈夫なんじゃないかな」

雪穂「凛さん……」ジワッ

凛「えへへ」ニコッ

雪穂「私もそう思います!」


凛「でも やっぱり、ね……」ボソッ

雪穂「?」

凛「……ううん、やっぱり今の無し!」

雪穂「え~、なんですか!? そこまで言いかけておいて……、気になります」

凛「いや、だって……」

雪穂「凛さん? もうこの際だから言いたいことは全部ぶっちゃけてしまいませんか? 私も、凛さんも、お互いに……」

凛「う、うん」

雪穂「…………」

凛「…………寂しかった」

雪穂「え?」

凛「凛は、やっぱり寂しかったにゃ!!」

雪穂「うわっ、結局それ言っちゃうんですか!? さっきまでカッコいいこと言ってたのに全部台無しじゃないですか!」

凛「うぅ~、だって寂しかったものは寂しかったんだにゃ!」

雪穂「…………」

凛「凛は寂しかったんだにゃあ!」ガシッ

雪穂「うわっ!ちょっと凛さん!? こんなところで暴れたりしたら……


――ズルッ


雪穂「わっ!?」

凛「にゃ!?」


どすん――


雪穂「痛たたた……」


じゃれあってた勢いで私も凛さんも盛大にすっ転んだ。

勢い良く倒れ込んだ私達だったけれど、ベッドが上手い具合にクッションになってくれて助かったよ、ホント……


思わず後頭部を撫でる。別に頭をぶつけたワケではなかったけれど、なんとなく心を落ち着かせたくて自分の頭を撫でた。


突然の出来事で、視界がチカチカする。


雪穂「ほら~、ベッドのすぐ横ではしゃぐからこんな事に……」

凛「ご、ごめん……、にゃ!?」

雪穂「え? どうしたんですか?」


凛さんが何かに言葉を失ったのは分かった。

……どうしたんだろう?

私は何が起きたのか分からないので、ゆっくり目を開けてから状況確認。


雪穂「…………」

凛「…………」


今の状況……。

ベッドに横たわる私と、その上から覆い被さるような形で四つん這いの体勢になっている凛さん。


雪穂「…………」


ま、分かりやすく言うとね……

凛さんに押し倒しされちゃった!


雪穂「はああ!?」

凛「にゃぁ…」

更新はまた明日にします

チカァ

良き


凛「ご、ごめん! すぐに どくから……」

雪穂「い、いえ……///」

凛「…………」

雪穂「なんで どかないんですか」

凛「う、うん……」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂(か…、体が動かない……)


全身が金縛りにあったみたいに動かない。自分の体なのに動いてくれない。

凛さんも凛さんで全く動こうとしないし、何もせずにジッと私の方を見つめている。……なんで!?

私も私で、動きたくても体中が強張って全く言うことを聞いてくれない。


凛さんに押し倒された状態のまま、何をする訳でも無く、ただ時間が流れていく。いったいどうしたら―――


凛「………ねえ雪穂ちゃん」

雪穂「っ、……はいっ!」

雪穂「…………どうして……」

凛「え?」

雪穂「どうして凛の為に頑張ってくれたの?」

雪穂「え? いったい何の話……?」

凛「マフラー」

雪穂「あ……」

凛「実はことりちゃんに全部聞いたの。雪穂ちゃんが凛の為にマフラーを作るの、スゴく頑張ってくれたって事……」

雪穂(な、なんで今その話をするの!?)

凛「すっごく不器用でミスも連発したのに、それでも頑張ってくれたって……」

雪穂「あ~、アハハ……(ことりさんったら、余計な事まで……)

凛「ねぇ、どうして?」

雪穂「…………」

凛「どうして雪穂ちゃんはそんなに真剣になれたの?」

雪穂「…………」


凛「ご、ごめん! すぐに どくから……」

雪穂「い、いえ……///」

凛「…………」

雪穂「なんで どかないんですか」

凛「う、うん……」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂(か…、体が動かない……)


全身が金縛りにあったみたいに動かない。自分の体なのに動いてくれない。

凛さんも凛さんで全く動こうとしないし、何もせずにジッと私の方を見つめている。……なんで!?

私も私で、動きたくても体中が強張って全く言うことを聞いてくれない。


凛さんに押し倒された状態のまま、何をする訳でも無く、ただ時間が流れていく。いったいどうしたら―――


凛「………ねえ雪穂ちゃん」

雪穂「っ、……はいっ!」

凛「…………どうして……」

雪穂「え?」

凛「どうして凛の為に頑張ってくれたの?」

雪穂「え? いったい何の話……?」

凛「マフラー」

雪穂「あ……」

凛「実はことりちゃんに全部聞いたの。雪穂ちゃんが凛の為にマフラーを作るの、スゴく頑張ってくれたって事……」

雪穂(な、なんで今その話をするの!?)

凛「すっごく不器用でミスも連発したのに、それでも頑張ってくれたって……」

雪穂「あ~、アハハ……(ことりさんったら、余計な事まで……)

凛「ねぇ、どうして?」

雪穂「…………」

凛「どうして雪穂ちゃんはそんなに真剣になれたの?」

雪穂「…………」


失礼しました。
吹き出しの名前を間違えて、一部、凛と雪穂が逆になっていましたので修正しました。後から載せた方が正しいです。
大事なところなので書き直しました。


雪穂「…………だから……」

凛「え?」

雪穂「私が、凛さんから貰ってばかりだから」

凛「それって、どういう意味……?」

雪穂「…………」

凛「あ! もしかして凛があげたお洋服やマンガのこと?」

雪穂「…………」

凛「そういえば雪穂ちゃん、この前も凛があげたコートを着てくれてたよね。そんなに気に入ってくれたんだ?」

凛「そこまで気に入ってくれたのは嬉しいけど、別にそんなに気にしなくていいのに! あれは凛があげたくて雪穂ちゃんにあげたモノなんだから……

雪穂「ち、違う!……そうじゃない!……そうじゃないんです」

凛「?」

雪穂「違うんです……、モノじゃないんです……」

凛「モノじゃない??」

雪穂「私は……、凛さんと付き合い始めてから沢山のことを知りました」

雪穂「人を好きになること。好きな人の為に一生懸命になること。それはスゴく素敵なことなんだということ……」

雪穂「それから自分の気持ちと向き合うこと。自分の気持ちに素直になること」

雪穂「伝えたい事があるなら相手の目を見て話すこと。伝えたい事はきちんと言葉にしないと伝わらないということ」

凛「…………」

雪穂「それから大好きな人に嫌われることが、どれだけ辛いかということ」

凛「………あの時は、ごめんなさい」

雪穂「ううん、いいんです。私も無神経だったから……」

凛「…………」

雪穂「だけど……、そのお陰で私は、それがどれだけツラいことか知ることができた。どんなに痛いのか知ることができた。それを知れて良かったとは言いません、でも……」

雪穂「だからこそ……その痛みを知れたからこそ、私はもっと人を大切にしようと思えることが出来た」


雪穂「凛さんと付き合えたから気付くことが出来たんです」

雪穂「全部全部、凛さんに教えてもらったものばかりなんです」

雪穂「感謝したくても仕切れません。何度ありがとうを繰り返しても足りません」

凛「……それで手作りのプレゼントにしようと思ったの?」

雪穂「はい。私が凛さんから貰ってばかりだから……。恩返ししたくても仕切れないから。全部返したくても無理だから……」

雪穂「だから手作りにしようと思ったんです。感謝の気持ちを精一杯届けたくて……、たとえ私の気持ち全部は無理でも、出来る限り伝えたくて」

雪穂「普通のプレゼントじゃ意味が無いんです。お店に行って、既に出来てるモノをただ買うだけじゃダメなんです。……それじゃ私の気持ちは伝わらない……」

雪穂「私が、凛さんにどれほど感謝してるか伝えかったから。だから……」

凛「分かった!……分かったから……」

雪穂「っ……」

凛「ありがとう。雪穂ちゃんの気持ちは、ちゃんと届いたよ」

雪穂「凛さん」グスッ

凛「雪穂ちゃんの気持ち、ちゃんと伝わったから……」

雪穂「凛さん……」

凛「うん」

雪穂「…………」


雪穂(……ハッ!……て、いうか私……、凛さんに押し倒されてる状態で何言っとるんだ!)


雪穂(は、恥ずかしい……///)


凛「………雪穂ちゃん」

雪穂「……っ、はい!」

凛「マフラー、 大事にするね」

雪穂「…はい」

凛「でも、やっぱりもったいないな~。よごしたくないし大切に保管しておこうかな、えへへ♪」

雪穂「そんな……、たまには使ってくださいよ」

凛「雪穂ちゃんの想いが詰まったマフラーだもん。大事にしたいんだにゃ」

雪穂「……ありがとうございます」

凛「…………でも、ね?」

雪穂「?」

凛「ホントはね……、凛が本当に欲しかったモノって、もっと違うものなんだよ?」

雪穂「………えっ? 何ですか それは!?」

凛「……うぅ、えっとね……」

雪穂「あ! もしかしてことりさんみたいにお洋服の方が良かったですか? それともネコ系のグッズとかぬいぐるみの方が――

凛「ち、違うの!」

雪穂「え……?」

凛「モノじゃなくてね……、その……///」

雪穂「?」

凛「『モノ』っていうより、『して欲しいこと』…かな……」

雪穂「して欲しいこと?」

凛「……うん、あのね……」

雪穂「?」





凛「キスしてほしいな」





雪穂「………へ?」

凛「…………」

雪穂「……キ、キス……ですか!?」

凛「………う、うん///」

雪穂「…………」

凛「ダメかな?」

雪穂「だ、ダメだなんて――!


そんなこと無い!
私だって好きな人とキスくらいしたい。

今のは、いきなりの事でビックリしただけ。


けれど……、やっぱり―――


凛「怖い?」

雪穂「え!?」


なんで?

……と言いかけたけれど、凛さんがどうしてそんな問い掛けをしてきたのか……、その理由はすぐに理解できた。


だって私は、いつの間にか無意識に自分のスカートの裾をギュッと握りしめていたから……。

それからスカートを掴む指先は軽く震えていて、いつの間にか目もギュッと瞑っていて、体全体が強張っていたところを凛さんに気づかれたんだと思う


別に、怖くはない…………と思う……


私だって凛さんとキスの一つくらいしたい。凛さんとの関係を進展させたいと思ってる。

でも、だって……


キスをしたら何かが変わってしまうと思ってしまった


もちろん悪い方向にでは、ない……ハズだけど……

ここでキスしたら私と凛さんの距離はグッと近付けると思う。

だけど、この先に進んでしまえばもう後戻りできなくなる。この先に進んだら何かが変わってしまうと思った。突然、突きつけられた選択を前につい躊躇ってしまった。

………だとしたら、やっぱり怖がってるのかな……?


だってやり直しは効かないんだもん。その時その時が本番で、やり直しの効かない一発勝負なんだもん。だからつい慎重になってしまう。

私はもう凛さんとの付き合い方を間違えたくない。もし間違えて後悔なんかしたくない。だったら――…


凛「雪穂、ちゃん……」

雪穂「あっ……」


プツン――、我慢の糸が切れる音がした。

凛さんと目が合う。至近距離だからこそ聞こえた、小さくて、でも芯の通った力強い凛さんの声。それが私の名前を呼んだ。

頭が真っ白になっていく。



もういいや。
ぐだぐだ考えるは、もう止めよう。



凛さんになら何されてもいいや


雪穂「………分かりました。私、覚悟を決めます!」

雪穂「キスしましょう!」

凛「にゃっ///」

雪穂「……なんでそこで照れるんですか///」

凛「ごめん、つい意識しちゃって///」

雪穂「じゃあ、いきますよ」

凛「うん、きて……」

雪穂「…………」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「………あっ!雪穂ちゃんが下側だとキスし辛いよね」

雪穂「そ、そうですね///」

凛「じゃ、じゃあ今回は凛からするね」

雪穂「お…、お願いします」

凛「」ドキドキ

雪穂「」ドキドキ

凛「…………じゃあ……いくよ……!」


――ドクンッ

雪穂「……っ!」

その言葉を合図に心臓が跳ねた

 
――ドクン、――ドクン、――ドクンッ


どんどん心拍数が上がっていく。

ドキドキし過ぎて心臓が張り裂けそう


凛「…………」


少しずつ凛さんの顔が近づいてくる。


雪穂「……っ」ゴクリ


凛さん、すごく真剣な顔つき――…

こんな顔する人だったんだ。


それに すっごく色っぽい。
こういうのを艶めかしいっていうのかな?


バカップル――…。今まで亜里沙やお姉ちゃん、周りから散々そんなことを言われてきた。二人ともイチャイチャし過ぎだって……

でも……

そんなことはない。全然そんなことない。


私にだって凛さんの知らない所くらいある。まだまだ知らないことなんて山ほどある。


今だって、そうだ……

今の凛さん、今まで見たことのない顔してる。

目がちょっぴり潤んでて、頬もほんのり赤くしてトロンとした顔をしている。


………こんな顔、初めて見た。


そんなことを考えてる間に、凛さんの唇が近づいてくる。

私は変に体を動かすことを止めて、全てを凛さんに委ねる。

10㎝、5㎝と――、どんどん凛さんの顔が近づいてくる。やがて凛さんの吐息が私の顔にかかる距離に近づく。そして――



私たちは唇を重ねた――…



自分の唇に凛さんの唇が触れる。


凛さんの唇は予想以上に柔らかくて、そして温かかった。

唇に凛さんの唇を感じる。体中が電流を流されたみたいにびりびりと痺れる。頭がボーッとしてクラクラする。だけど、それがすごく気持ち良かった。


凛さんが目を閉じ、私も目を閉じた。

暗闇の中で凛さんの温度が唇に感じられる。


――ドクンッ、――ドクンッ


心臓の音が大きくなっていく。

1回1回がとても強い。それから早い。血液が私の体内で血管を張り裂かんとばかりにドクドクと脈打つ。

あまりに強くて、血管が破裂してしまうんじゃないかと心配になってきちゃう。


体全体が熱い。それから顔面も焼かれてるように熱い。私の顔もたぶん真っ赤になっているんだろうな……


気が付くと、私はいつの間にか自分の両腕を凛さんの背中に回していた。

そのまま体を抱き寄せにかかる。やがてお互いの胸をくっつけ合う形となり、私はその姿勢を維持しようとして凛さんの制服の背面をキュッと掴んだ。

自然と凛さんを抱き締める体勢になる。

凛さんも姿勢を安定させようとして片膝を私の両脚の間に滑り込ませてきた。

その拍子に凛さんの膝と私の内ももが擦れた。


雪穂「ん……んあっ///」


へ、変な声が出てしまった………。

普段触られることのないデリケートな部分なだけに、こそばゆくて、つい声に出してしまった。だけど口元が凛さんの唇で塞がれていて、結果的に変な声になってしまった。


だけど、そんなことは全然気にならない。

その一瞬の羞恥を感じる暇もないくらい、とてつもない満足感が私の羞恥を塗り替ていく。


凛さん……
私は今、とっても幸せだよ


その気持ちを表現したくて、私は自分の腕に力を込めた。体が密着していてゼロ距離なのにも関わらず、私は凛さんの体を更に抱き寄せる。

体が完全に密着する代わりに背中が少し浮いた。けれど、体勢を崩さないように凛さんがちゃんと支えてくれた。


凛さんのぬくもりを感じる……。凛さんの体は私以上に熱い。


私の心は満たされていく



「プハッ――」


やがて私たちは息が続かなくなって唇を離した。

キスをしていた時間は1分も経っていなかったと思う。……たぶん数十秒、いや…もっと短いかかったかもしれない。


凛「っ……はぁ///」

雪穂「はぁはぁ……っ///」


自分の呼吸が荒い。運動してないというのに息が乱れ、脈が乱れる。心臓もバクバクと鳴り続けている。

目を開けると凛さんと視線が重なった。


凛「……っ、うぅ///」トローン


凛さんったら、顔真っ赤じゃん……。って、私も人のこと言えないか……。

自分の顔が熱い。たぶん私も顔を真っ赤にしてるんだろうな。確かめなくても分かる。

凛さんも何か言いたげな様子だ。


凛「………雪穂ちゃん、どうして泣いてるの?」

雪穂「……へ?」ポロポロ


泣いてる? 私が?

すぐさま自分の目元に手を当てる。凛さんの言うとおり、私の顔は涙で濡れていた。

いつの間にか溢れ出た涙が、私の頬を伝いながら、途切れることなく流れていく。


………ホントだ何これ!?

凛さんに指摘されるまでぜんぜん気づかなかった。


雪穂「何これ……? 何で!? ぜんぜん止まんない」


何度、自分の目元を拭っても拭っても、どんどん涙が溢れてくる。


凛「ご、ごめん!もしかして痛かった!? 凛、なんか変な事しちゃった!?」

雪穂「ち、違っ……、違うんです」

凛「違う?」

雪穂「嬉しくて……、私…今とても嬉しくて……」

凛「…………」


凛さんは、今にも消えてしまいそうな私の言葉に耳を傾けてくれている。だから私も、何度も涙を拭いながら続ける。


雪穂「だって私…、凛さんを感じることができたから……、全身で凛さんのぬくもりをちゃんと実感できたから……、それがすごく嬉しくて……」

凛「………雪穂ちゃん」


最後の方は自分でも聞き取れなかった。聞き取れないくらい声が小さくて、弱々しくて、か細くて、口に出したそばから嗚咽と交じりほとんど聞こえなかった。


今言った言葉は嘘じゃない。たった今、赤裸々に語った言葉全てが私の本心だった。

凛さんとキスできた事、凛さんのぬくもりをきちんと感じられた事――。それが何よりも嬉しかった。


嬉しくて、幸せで幸せで、幸せすぎて――…


どんどん涙がこぼれ落ちていく。

何度拭っても、とめどなく溢れてくる。


雪穂「凛さん――…」

凛「………、うん」

雪穂「大好きです!!」 

休憩します

ハラショー

たまらんな

ピャアアア


ひとこと。長々と書きましたが、やっている事はあくまでキス1回です

いたって健全

あら^~

また、ちょこちょこっと更新していきます。


――――――
――――


夕暮れ――、私は凛さん家からの帰り道を一人で歩く。

数分前の出来事を思い出して、思わず自分の唇に触れた。唇にまださっきの感触が残っている。




あの後、私は早々に凛さんに帰されました。


どうして?
……と思ったけれど、口にはしなかった


だって私たちには、私たちのペースがある。私に考えがあるように、凛さんにも何か思うところがあるんだと思う。

それに私の独りよがりだと、きっとまた失敗する。真剣に向き合おうとしているのは私だけじゃない。

だからこそ互いのことを尊重し合わないと――。それを今回の出来事で痛感したから……。


それに何度も言うけれど、私たちには私たちのペースがある。時間をかけて、ゆっくり凛さんと向き合っていけばいい。

私たちは私たちなりに付き合っていけばいいんだと―――



……今は、そう思う


穂乃果「おーい!」

雪穂「?」

穂乃果「おーい!雪穂――!」

雪穂「……お姉ちゃん?」


声のする方向に目を向けると、お姉ちゃんがいた。公園の中にいて、ブランコで遊んでいる。

ちなみに、ことりさんと海未さんも一緒だ。


穂乃果「雪穂? 凛ちゃんとは もういいの?」

雪穂「うん。二人っきりにしてくれたおかげで、ゆっくり話できた」

穂乃果「そっか。良かったね!……にしても~、……帰ってくるの、ちょっと早くない?」

雪穂「確かに早かったかもしれないけど……でも大丈夫。私も凛さんも、言いたいことは全部言い合えたから」

穂乃果「そっか!」

雪穂「うん!」

雪穂(だから……ありがとね、お姉ちゃん)

海未「…………」


海未「雪穂。もしかして身長 伸びましたか?」

雪穂「え? いやっ…分からないですけど……、どうして?」

海未「いえっ、私の気のせいかもしれないのですが……。なんだか雪穂の雰囲気が少し変わったなと思いまして」

雪穂「え?」ドキッ

穂乃果「雪穂? 凛ちゃんとなに話してたの?」

雪穂「な、なんでもいいでしょ!お姉ちゃんには言わない!」

穂乃果「え~!? 教えてよ雪穂~。お願ーい!」

雪穂「ぜ…ぜったい言わない! 秘密っ///」

穂乃果「ふ~ん…、まぁ いっか!……それにしても……」ジッ

海未「な、なんですか?」

穂乃果「海未ちゃん。もう雪穂のことを破廉恥だとか思ってないの?」

雪穂「はっ!?」

海未「ちょっと穂乃果!?」

穂乃果「だって雪穂と凛ちゃんが付き合い始めた頃はずーっと破廉恥だとか、ぜったいに認めないとか言ってたのに……」

雪穂(そんなこと言ってたんだ……)

穂乃果「もう破廉恥とは思ってないんだ?」

海未「いえ、思ってますよ」

穂乃果&雪穂「思ってるんだ……」

海未「ですが、雪穂も凛も成長してるみたいですし? だったら私が横やりを入れることもないと思ったので……」

雪穂「海未さん……!」

海未「ですので! 雪穂は凛のことを大切にしてあげてください!」

雪穂「ふふ、分かりました」

穂乃果「やったね雪穂♪ これで海未ちゃん公認の仲だよ」

海未「……いったい私は雪穂の何なんですか、もう……///」


穂乃果「うーん…、でも意外だな~」

海未「何がですか?」

穂乃果「凛ちゃんだよ! きっと凛ちゃんのことだから、ぜったい雪穂に今日は泊まっていけって言うと思ったんだけどな」

海未「あぁ~」

穂乃果「だから私も、いつでも雪穂の着替えを持っていけるよう そのつもりで待ってたのに……」

海未「ふむ……。確かに凛のことですし、雪穂に無理矢理にでも泊まっていくよう薦めるところだとは思いますが……」

ことり「二人とも分かってないな~♪」

穂乃果&海未「?」

ことり「凛ちゃんはきっと、雪穂ちゃんが疲れてることに気付いてたんじゃないかな」

雪穂「え?」

ことり「だって雪穂ちゃんは昨日までずっとマフラー作りを頑張ってたんだよ」

ことり「毎日夜遅くまで頑張ってたことも、寝不足で眠そうにしてたことも、凛ちゃん全部気付いてたんじゃないかな?」

海未「そ、そうでしょうか?」

雪穂「うーん、まぁ 確かに? 今、家に帰ってベッドで横になったらソッコーで眠れるような状態だとは思うけど……」

ことり「うん!だから凛ちゃんはきっと雪穂ちゃんに無理してほしくなかったんだと思う!」

雪穂「あっ……!(そういえばゲームセンターでもそんなこと言われたっけ……)


『凛は、雪穂ちゃんに無理をさせてまで一緒に居たいなんて思いたくないから』


雪穂「…………」

穂乃果「愛だね」

海未「愛ですね」

雪穂「う、うるさい///」


雪穂「はぁ、まったくもう……」



ところで、お姉ちゃん達を見ていて不意に思ったことがある。


それは この三人は本当に仲がいいな、ということ。


お姉ちゃんと海未さんとことりさん。この人たちは子どもの頃からずっと一緒にいる。


少なくとも私が物心つく前から、それから小学校でも中学校でも……

そして高校も同じ学校に行くんだーって言ってた事も、私は全部知っている。

絶対に三人で一緒に音ノ木坂に通うんだって言って、毎日一緒に勉強したり面接の練習をしたりして、そして今、音ノ木坂に通っている。


高校生になった今でも変わらず三人一緒で、よく家に来たりお泊まりしたり、一緒に勉強したりして、

朝、お姉ちゃんの準備が遅い時なんかは、二人がわざわざ迎えに来て、休日には三人でどこかに遊びに行って……


本当に仲がいいんだな……

ホントに、三人ずっと一緒なんだな



………なれるかな?


私と凛さんもこんな風になれるだろうか……?


音ノ木坂に行きたい


昔からそんな事を漠然と考えていた。音ノ木坂に通うことが小さい頃からの私の夢だった。


別に特別な夢だった訳じゃないし、特に理由がある訳でもなかった。

お母さんやおばあちゃんが音ノ木坂に通っていたから、お姉ちゃんが音ノ木坂に進学したから、私も同じように音ノ木坂に通うんだと……、地元の高校なんだからと……

単純に音ノ木坂の人たちに憧れていたから、と―――


…………ただ、それだけだった……

 


だけど、その夢はもう私一人だけの夢じゃない。


凛さんと同じ学校に行きたい。

亜里沙と一緒に音ノ木坂に合格したい。

音ノ木坂でスクールアイドルを始めたい。亜里沙と一緒にスクールアイドルを始めたい。


――たい、たい、たいって、願望ばかりで、欲張りで……

私の夢も、みんなの願いも約束も、亜里沙との約束も――…


全ての願いが叶う場所


いつの間にか音ノ木坂は私の中でそんなにも大きな場所になっていた。


雪穂「………ねえ、お姉ちゃん!!」

穂乃果「ん? どうしたの?」

雪穂「私、絶対に音ノ木坂に行くから! 絶対絶対、合格してみせるから!!」

穂乃果「お…おぉ! 雪穂、ファイトだよ!」

雪穂「うん!」




そうだ、私は絶対に音ノ木坂に行く。


自分の夢を全部叶えるために、みんなとの約束を叶えるために、そして―――




凛さんのいる学校へ行く




これが今の私の願い。



全部全部、叶えたい―――、私の夢。




………いつか叶うといいな。


――――――


それからの日々は あっという間に流れていきました。


あの後すぐ、私は受験モードに突入。

勉強で忙しくなり、凛さんに会えない日が多くなりました。


でも……、確かに凛さんと会えない日も多くなったけれど、そこはちゃんと二人できちんと話をして折り合いをつけることができた。

それに音ノ木坂に入学すれば毎日凛さんと会えると思うと苦ではなかったし、同じ学校に通うことを想像すれば、それだけで頑張れた。


そうして、どんどん月日が流れていった。


それから、凛さんにも私にも色んなことがありました


私はその後、無事に音ノ木坂に合格。

これからの高校生活が楽しみでワクワクする反面、亜里沙とどんなスクールアイドルになりたいか真剣に話し合った。


凛さんも凛さんで色々あったみたいで……、ラブライブ優勝、海外ライブ、それからμ's の活動終了――…


一言では語りきれないくらい沢山の事がありました。


私も凛さんも色んなことを経験しながら精一杯頑張って、頑張ってる凛さんを見て、また頑張って。

お互い、一歩ずつ成長しながら、そして……



また桜の季節がやって来ました

 

――――――
――――


今日はこれぐらいにします。
ちなみに、あと2回くらいの更新で終わるかと思います。


もう終わりも近いのか

今日は1レスだけ更新します、おやすみなさい。


――音の木坂・校門前――


春――、桜の季節です。

私は音ノ木坂の校舎の前に立っていた。おろしたばかりの新品の制服を身にまとい、まだ少しかたいスカートと青いリボンを風になびかせて……


子どもの頃からずっと憧れてた音ノ木坂の制服―――。


身長が伸びる事を見込んで選んだ少し大きめのブレザーが、まだちょっぴりブカブカで、自分の身の丈にしっくりこない。

これからの成長に期待といったところかな?


……と、今はそんな話は置いといて――っ!!


今年の春から私は音ノ木坂の新入生です。

ずっと夢焦がれてた音ノ木坂の生徒……。と言っても入学式は明日なので、正真正銘、音ノ木坂の生徒を名乗れるのは正確には明日からということになるのかな……?


じゃあどうして私が入学式の前日にわざわざ学校にやって来たかと言うと、それは……


凛「お~い!」

雪穂「あ、凛さん!」


それは……

凛さんと会う約束があったから


雪穂「お待たせしました!」

凛「えへへ♪ 待ってたよ~、雪ちゃん♪」

だって可能性感じたんだ

雪ちゃん呼び良き


凛「ごめんね、急に呼び出しちゃって……。なんか明日だと雪ちゃんとゆっくり会う時間が無いんじゃないかなーって思って……」

雪穂「いいえ。私も入学式当日は式とか新しいクラスとかで忙しくて、ゆっくり会えないと思ってましたから」

凛「うん。だからその代わりに今日は凛がばっちり学校を案内するからね!」

雪穂「お願いします」

凛「…………なんだか久しぶりだね」

雪穂「そうですか? こないだアキバのライブで会ったじゃないですか」

凛「うん、そうなんだけどね。あの後いろいろあったから……」

雪穂「そうですか……」

凛「…………」

雪穂「…………」

凛「そうだ、 忘れる前にこれ! 約束のリボン!」

雪穂「あっ! ありがとうございます!」

凛「約束だったよね。雪ちゃんが音ノ木坂に合格して、凛も2年生に上がったら、凛が使ってた この青いリボンを雪ちゃんにあげるって……」

雪穂「はい。凛さんとの約束、守ることができました」

凛「………うん」

雪穂「?」

凛「…………」


雪穂「凛さん……、もしかして寂しいんですか?」

凛「え?」

雪穂「なんとなく、そんな顔してた……」

凛「うん……」

雪穂「…………」

凛「寂しくない……って言ったら嘘になるのかな」

凛「やっぱり凛にとっては、μ's の皆がいることが当たり前で……」

凛「部室に行けば絵里ちゃんや希ちゃんにこちゃん達がいて、皆がいて……、やっぱり3年生がいない高校生活なんて想像できないもん」

雪穂「…………」

凛「だから……、そういった意味では、やっぱり寂しいのかな……」

雪穂「………そうなんですか」

凛「……でもね! その分ワクワクもしてるんだよ♪」

雪穂「えっ?」

凛「だって、これからは雪ちゃんと一緒の学校に通えるんだよ」

雪穂「あ…」

凛「寂しいけれど、ワクワクもしているにゃ!」

雪穂「……っ///」

凛「約束、守ってくれてありがとう」

雪穂「い…いえっ、私が、来たくて音ノ木坂に来たワケ……ですから……///」

凛「……にゃ? 雪ちゃん顔真っ赤だよ?」

雪穂「あ!……い、いえ……///」

凛「……あ!もしかして……。あ~、やっぱり!照れてる照れてる!」

雪穂「や、止めてください///」


凛「そんなことより雪ちゃん! 胸元のリボンが曲がってるよ!?」

雪穂「えっ? あぁ、ほんとだ」

凛「もうっ! こういうのはキチンとしなきゃダメなんだよ!」

雪穂「すいません、まだ新しい制服に慣れなくて……、あはは…」

凛「も~。凛が直してあげるから、ちょっとジッとしてて」

雪穂「は、はい! お願い…します……」

凛「むむむ…」

雪穂「……うぅ///」

凛「これでよし……、はい! 直ったよ、雪ちゃん♪」

雪穂「ありがとうございます! 凛センパイ!!」

凛「にゃ……にゃ!? 凛が先輩!? にゃあああ!?」

雪穂「ふふっ♪」

凛「…………悪くない響きにゃ!」グッ


ぶわっ――


凛「にゃ!?」

雪穂「わっ、突風!?」


強い風か吹いた。

……と、同時に、桜の花びらが飛び散った。


強風に煽られると共に、校舎に向かって伸びる桜並木から、無数の花びらが一斉に散っていく。

いくら最盛期とはいえ、これほど強い風だと桜も流石に耐えきれなかったみたい。

一気に散った花びらは、空中でひらひらと舞い、ゆっくりと空を漂いながら、地に落ちることなく流れていく。


幻想的な風景に思わず息をのむ。


いきなりの事で思わず会話が途切た。私も凛さんも話すことを止めて、そっちのけで桜に見とれる。

こんなに綺麗な風景も、もうあと数日も経たない内に見られなくなるんだと考えると信じられない。


雪穂「綺麗……」

凛「………うん」


いつまでもその風景を眺めてたい気持ちもあったけれど、私はふと横を見た。理由は桜に見とれる凛さんを見たかったから……

そしたら凛さんと目が合った。たぶん、凛さんも同じ気持ちだったんだと思う。


凛「ねぇ、雪ちゃん……」

雪穂「はい?」

凛「キス、しよっか?」

雪穂「え!? ここでですか!?」

凛「うん。だって桜の木の下でキスだよ。ロマンチックだと思わない?」

雪穂「そ…そうですけど、ここじゃ目立ちませんか!?」

凛「雪ちゃん なに言ってるにゃ? 入学式は明日だよ? それにまだ春休みだし、今日学校に来てる人なんて居ないにゃ」

雪穂「……うっ///」

凛「ダメ?」

雪穂「あー、も~!分かりました!!」

雪穂「やりましょう!」

凛「やった♪」

>>292
タイが曲がっていてよすき


雪穂「じゃ、じゃあ……凛さんお願いしま……」

凛「…………」

雪穂「あれ……? 凛さん?」

凛「雪ちゃんから……して欲しいな?」

雪穂「えっ!? 私からですか!? 」

凛「うん。……雪ちゃんから、来て」

雪穂「で…ででで、でも……///」

凛「来て」

雪穂「うっ……///」


そういって凛さんは動こうとしない。

それどころか凛さんは自分の体の後ろで手を組んで、瞼を閉じて、待ちの体勢に入る。


その場に留まったまま、自分から動くつもりがないことを私にアピールしてくる。


雪穂(凛さんったら……、先に待ちの体勢に入りよった……)


こうなってしまったら、もう凛さんのペース。こういう時の凛さんは決めたことは意地でも変えない。

だから私も覚悟を決めて(……て言うか半ば諦めムードで)、凛さんの元へ歩み寄る。


凛さんは目を閉じて私がキスするのを今か今かと待っている。

だから私も一歩ずつ凛さんに近づいて――…


雪穂(……あれ? 凛さん、少し背が伸びた……?)


正面で向かい合ってみて、私と凛さんとに身長差があることに気づいた。その差はほんの数㎝程度なのだけれど、キスをするとなれば大きな差になってくる。
 
このままだと互いの身長が合わなくて上手くキスが出来ない。だからといって、ここで止めるつもりもない……。


だから私は少し背伸びして―――




凛さんとキスをした――…




人生2度目のキス―――。


そのキスは2回目とはいえ全然慣れなくて、前と同じように体中がカーッて熱くなって、ドキドキして、心臓が張り裂けそうで、

冷静を装ってはいるけれど、気をつけないとドキドキしているのが、凛さんに気づかれてしまいそう。


この前と全く同じ状況だ……。


初めてだろうが2回目だろうが関係ない。前と同じでドキドキする。前と同じで涙が溢れそうになる。心が満たされていく。

でも前と少し違うところがあって、それは………



何かが始まる予感がした。


その時 ぶわっ――と、また強い風が吹いた。


春風……、それが合図だったかのように私たちは唇を離した。

そして思わず空を仰いだ。桜の木々が大きく揺れている。それが たった今吹いた風がどれだけ強かったのかを物語っていた。

その風は吹き抜けた後もやまることなく、途切れることなく、長い時間 吹き続けている。そして その風は桜の幹を揺らしながら私の短い髪も一緒に揺らしていた。


不意に校舎の方に視線を移した。この建物が、私がこれから3年間お世話になる学校――。ちょっぴり気持ちが高ぶってウズウズした。

これから始まる高校生活に、期待とワクワクとほんの少しの不安を胸にして……。


私の高校生活はまだ始まったばかり―――――




凛「……そうだ、大事なことを言い忘れてた!」

雪穂「?」

凛「ようこそ音ノ木坂へ。これからはずっと一緒だね♪」

雪穂「はい!」



――――― END ―――――


以上で『凛「最近、雪穂ちゃんの様子がおかしい」』は完結となります


ここまで読んでいいただいた方、ありがとうございます


……本当に長かった。

皆さまには長い間お待たせして、本当に本当にすいませんでした


また今回は続編ということで、やり過ぎ上等で沢山の要素を詰め込みました

所々で適当なところ、やり過ぎてしまったところが多々あって読みにくいと感じる点もあったかと思いますが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございます


そして途中のレスや感想、本当に感謝感謝です


では、稚拙な文章でしたが最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました

あーついに終わってしまったかー
面白かったでーイッチ乙

エンディングテーマはススメだな(適当)

1乙
またまきぱなとか頼む

コメントもらえていいなぁ…

コメントありがとうございます

まきぱな ですが けっこう勢いで組み込んだものなので、いつになるか分かりません。ですが またこれからもラブライブのSSを書いていくつもりですので、よろしくお願いします。

今度は軽い内容のものを書きたい。

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